04/10/15 第18回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会議事録 厚生科学審議会 疾病対策部会 第18回 臓器移植委員会 議事録                        日時 平成16年10月15日(金)                           10:00〜12:18                        場所 中央合同庁舎5号館                           専用第18〜20会議室(17階)  事務局(永野補佐)  お待たせいたしました。定刻になりましたので、ただいまより第18回厚生科学審議会 疾病対策部会臓器移植委員会を開催いたします。  本日は、大島委員、藤村委員から御欠席との御連絡をいただいております。  また、本日は、議事に即しまして、社団法人日本臓器移植ネットワーク菊地チーフコ ーディネーターに参考人として御出席をいただいております。  議論をいただく前に、厚生労働省で人事異動がございましたので、ごあいさつさせて いただきます。  疾病対策課長の関山でございます。  事務局(関山課長)  関山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  事務局(永野補佐)  臓器移植対策室長の片岡でございます。  事務局(片岡室長)  片岡でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  事務局(永野補佐)  次に資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第を1枚おめくりいただきま した裏側に資料一覧がございます。  資料1といたしまして、臓器提供意思表示カードに関する作業班報告。また昨日の作 業班の資料をつけております。  資料2といたしまして、臓器移植等におけるウエストナイルウイルス対策について。  資料3といたしまして、移植施設(レシピエント)への意思確認時期について。  資料4といたしまして、平成17年度臓器移植対策予算概算要求の概要でございます。  不備等がございましたら、議事の途中でも結構ですので、事務局までお申し出くださ い。  それでは以降の議事進行を委員長にお願いいたします。  黒川委員長  お久しぶりでございます。お忙しいところありがとうございます。  本日は四つの議事について御討議願うわけですけれども、まず臓器移植の意思表示カ ードについて、時々不備なカードがあるということで、これについての調査がありまし て、その後、5月の討議会で議論をしていただき、これまでの運用その他について、そ れからネットワークの方からも、具体的にどういう問題があったのかということで、法 律家を含めて、オープンの場で議論していただくことにしたということでありました。  そこで法律の先生にお集まりいただきまして、意思表示カードに関する作業班を開設 しまして、一定の結論を得ていただいたということで、昨日、カードの作業班の結論が 出たということでございますので、本日はそれを伺って、この委員会でどう扱うかとい うことになると思いますので、事務局から御説明をお願いいたします。  事務局(永野補佐)  それでは事務局より、お手元の配付資料の資料1と、昨日の第1回臓器提供意思表示 カードに関する作業班の資料3に沿いまして御説明をさせていただきます。  資料1は昨日の作業班の新美先生の報告でございます。今、委員長からお話がありま したように、5人の法律家の方が御出席されております。法律家のリストは、昨日の資 料の中に一覧が載っております。  作業班は、東海大学宇都木先生、明治大学新美先生、上智大学町野先生、神戸大学丸 山先生、名古屋大学山本先生の5人に御議論をいただいております。座長は新美先生で す。  昨日の議論の概況を申しますと、議論は大きく二つに分かれました。一つは、そもそ もの臓器移植法の立法趣旨を踏まえて、どのようなカードの運用をしていくべきかとい ったところを総論的にお話しいただいております。  また、5月6日の臓器移植委員会で問題になりました個別の記載不備事例につきまし て、個々に議論をしていただきました。  続きまして、お手元の作業班報告について簡単に御説明をさせていただきます。ま ず、臓器移植法の6条第1項及び第3項で、署名により脳死判定と臓器を提供する意思 表示を要求しているということでカードが用意されているところでございます。  2番目に、カードの運用に当たっては、形式のみにとらわれるのではなく、本人の生 存中の意思を確認する書面でありますけれども、その意思を正確に確認するように、例 えばカードのみではなく、家族の証言などの他の資料を用いることがあってもよいので はないかといった御指摘をいただいております。  3番からが各論でございまして、昨日の作業班の資料3もあわせてごらんいただけれ ばと思います。  7年間のカードの記載不備事例105件を参考に、法的有効性について御議論いただい た結果は以下のとおりでございます。  ここでは、どちらかというと運用の方を見直した方がいいのではないかといった結果 をいただいたものを並べていただきました。  まず(1)でございます。カードの記載に不備があるけれども、脳死判定に従う意思 及び臓器提供する意思が表示されていると判断すべきであるという結論をいただいた事 例でございます。  まず、(1)でございますが、これは作業班資料3の1ページ、A-1というところでご ざいますけれども、前回の臓器移植委員会でも議論になりましたように、番号に○がな く、臓器だけを○で囲んでいただいているような事例でございます。ここにつきまして は、当然書面による本人の意思がうかがい知れるものだといった御結論をいただいてお ります。  その理由としては、根拠に書いてありますように、番号1には○がないけれども、提 供したい臓器を○で囲んでいただいておりますので、脳死判定に従い、脳死後に臓器を 提供するという前提のもとで、提供したい臓器が特定されていると考えられるというこ とで、これは当然本人の意思は認められるというような結論をいただきました。  2番目は資料3の4ページ、Cの事例でございます。1番と、それから臓器の名前の ところに○をいただいて、同時に3番に○をいただいて、さらに×をいただいた事例で ございます。  これは、1番に○があり、提供したい臓器も明確に表示されておりますので、番号3 に○と×の両方が記載されているということにつきましては、番号3に○をつけたもの の、間違いに気づいたので×をつけたといったことが、社会通念に照らして、当然その ような結論であるというようなことをいただきました。  3番目は作業班資料の5ページ、Dの事例でございます。カードの番号のみに○があ り、提供したい臓器に○がない事例でございますけれども、ここのところはいろいろな 考え方ができるということでさまざまに議論をいただきました。  根拠の部分に書いてございますように、基本的には番号1に○がありますので、その 下に書かれている臓器につきましては、当然脳死判定にしたがって臓器を提供する意思 を持っていらっしゃると考えていいのではないか、例えば提供したくない臓器があるの であれば×をつけるということも考えられますし、心臓等、書かれている臓器をすべて 提供するという意思表示だといった御結論をいただいております。  次のページをごらんください。カードの記載に不備があるものの、一律に書面の有効 性が確認できないというふうに入り口のところで判断してシャットアウトするべきでは ないという結論をいただいた事例でございます。  例えば、Eの本人署名と家族署名の記載が逆になっているような事例でございます が、これについては、外見上は家族のカードになっておりますけれども、当然書き間違 いなどを確認する手段もあるのではないかということで、署名した家族を含め、他者の 証言によって本人の意思表示であることが明らかである場合には書面の有効性が確認で きるものとして取り扱うことが適当であるというふうにいただいております。家族の証 言などを補強資料として、本人の意思を正確に把握すべきではなかったかというような ことを結論としていただいております。  続きまして、作業班資料の8ページと9ページにありますFの事例です。さらにFの 中が細かく分かれておりますけれども、カードの署名年月日の日付に不備がある場合及 び署名年月日が未記入の場合でございます。こちらにつきましては、そもそも署名につ いてはどういう意味があるのかというようなことで、先生方からさまざまな意見をいた だきましたけれども、先生方の御意見としましては、文書としての有効性と本人の意思 の有効性というものは分けて考えるべきだというようなことでございまして、一番重要 なことは、直前まで意思表示が続いていたかということであるといった御意見をいただ いております。  例えば、書面としては署名年月日に不備のあるかもしれませんけれども、意思の有効 性につきましては、カードを携帯していらっしゃったり、カードを大事に保管されてい たりというようなことで意思表示があったということも考えられますし、例えば本心で 書いたのではないということや、署名をしたときに正常でなかったといった可能性もあ りますけれども、そこは補強材料で本人の意思を確認できればよいのではないかという ことで、記載の不備だけでシャットアウトするという運用は、あまりに形式に縛られて いるといった御結論でございました。  続きまして(3)でございます。ここは少数意見と多数意見に分かれたところでござ いまして、カードの記載に不備があるけれども、脳死判定に従う意思及び臓器を提供す る意思が表示されていることには慎重になるべきといった意見と、それらの意思は表示 されていると判断すべきであるという両方の意見があったものでございます。  こちらはさまざまな議論がありましたけれども、作業班資料2ページのA-2と書い てある事例でございます。番号、臓器ともに○がなく、その他の欄に、全部あるいは全 臓器提供というような記載をしていただいた事例でございまして、こちらは左側と右側 で議論が分かれました。  例えば、全部と書いていただいた左側の事例では、臓器を提供する及び脳死判定に従 うという意思表示が積極的に行われているとは言えないので慎重になるべきだといった 意見もありましたけれども、多数の意見では、これは当然、脳死下で臓器を提供すると いう意思表示が行われているといった意見でございました。  また、全臓器提供という言葉を入れていただいた事例ですが、こちらは臓器を提供す るという意思表示は積極的に行われているけれども、脳死判定に従うという意思表示は 積極的に行われていないという少数意見もあったのですが、多数の意見では、これも脳 死下で臓器を提供するという意思表示であるというようなことでございました。  以上、事務局から概略を説明させていただきましたけれども、昨日は町野先生に御議 論をいただいておりますので、もし不備等がありましたら、追加をお願いしたいと思い ます。  町野委員  あまりつけ加えることもないのですが、考え方といたしましては、資料2の法第6条 というものがありますけれども、結局書面による臓器提供及び脳死判定の意思というこ との解釈です。極端な考え方として、これは旧研究班の中で出た考え方で、私もそれに 賛成したのですが、書面というのは本人がそういう意志を持っているということを確認 するための証拠にすぎず、極端にいえば署名がなくてもよいということになります。  つまり、○だけはつけてあって署名はしていないけれども、本人の筆跡であるし、本 人がそういう意思であることが確認できれば構わないという考え方もあり得るわけで す。  しかし、やはり書面というのは文書でなければいけないと考えるべきで、少なくとも 署名は必要だということで、少し議論がありましたが、さすがに署名がないものについ てはだめだということで意見が一致したということがありました。書面というのは文書 と理解すべきであり、署名は最低限の要求であり、その中で何らかの意思が表明されて いるかという問題であるということです。  そして意思が表明されているかどうかについては、書面ばかりではなく、○の上に× があるなどのいろいろなことがあるわけですから、いろいろな事情や、家族の意思、本 人の日記などの状況を考慮した上で決定すべきであるということでございます。  今のような考え方を取ったといたしましても、現行法では遺族の意思を確認しなくて はいけないことになっておりますので、本人の意思であるということが言えたといたし ましても、遺族がノーと言えば臓器提供はできないということで、第2のチェックが働 くわけですので不都合はないだろうという議論の推移だったと思います。  黒川委員長  それではこれについてコメントをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。  実際の現場から、いろいろと資料が出ているところではありますが、いかがですか。  菊地参考人  現場で一番困るのは、御家族が御本人と臓器提供を行うお話をしていたのにもかかわ らず、臓器に○があるけれども1番に○がないというような、記載が完全でないカード とのことから、提供ができないということが一番困っているところでございます。  例えば、意思表示カードには変遷により発行時期がありますが、カード発行以前の記 載年月日であった場合は、そのカードが存在していない時期の記載年月日との理由で、 記載不備とし、臓器の提供をいただくのは断念しています。そういった事例について、 臓器提供したいという御本人の希望を何とか救済できないかという考え、ぜひ御議論を いただきたいと思います。  小中委員  先ほどの作業班からの報告の中で、署名が必要であるという点と、本人の意思表明に ついて不備があっても、家族の証言や日記などの補足によって補完できればいいであろ うという2点を明確にしていただければ、今までの不備のかなりの部分が了承できるの ではないかというふうに思っております。  また、今、ネットワークの菊地さんのお話の中で記載年月日ということがありました が、これは今回の中であまり大きく取り上げられておりませんので、意思表明にはそれ ほど大きなものではないという認識で受け取ったので大丈夫ではないかと思っているの ですが、具体的に言えば、今、意思表示をするものの中に、ネットワークが作成した意 思表示カード以外に、各県またあるときには病院で作成しようかというお話もあります し、いろいろなお話があります。  そうすると、作成した日時というものは掌握できるものでもないので、記載年月日が 作成日よりも前であったということは常識的にはナンセンスなのではないかと思います ので、撤廃できるものであれば撤廃していただければありがたいということと、もう一 つは、もし残すのであれば、そこはさほど重要ではないというふうにしていただける と、現場では非常にありがたいというふうに思います。  黒川委員長  そのほかにいかがですか。  山本委員  日付のことですが、患者さんの提供症例の中で、家族が、もっと新しい意思表示カー ドがあったかもしれないと言った事例がありました。日付は要らない、またはそれほど 重要ではないということになると、そのように本人の意思が変わっていた場合は、どれ が一番新しいもので有効なのかというところの証明はどのようにすればよいのですか。  小中委員  私自身の考えでは、本人が携帯していたという事実と、御家族の証言で、御本人の意 思が変わっていないだろうというあたりが確認ができればいいのではないかと思ってい ます。  ただ、二つのものが出てきた場合には、新しい日付の方を採用するという形になるか とは思います。日付がない場合は御家族の証言ということになると思います。  黒川委員長  今、町野先生がおっしゃったように、基本的に本人の意思については最終的には家族 が同意しなければいけないという第2段がありますので、そことコンシステントでない 場合には、それぞれで問題が別になってくるだろうと思います。  そのほかに御意見はございますか。  町野委員  日付についてですが、今言われたように複数のカードが出てきたときには当然新しい 方の日付に従うということになります。つまり意思表示カードが何のためにあるかとい うと、提供時に意思が継続しているということの証拠ですので、新しいものに従うとい うことだろうと思います。  また、例えば元禄何年というように、冗談で日付を書くような場合があります。それ は提供の意思がなく、いわば法律的に心裡留保と言われるようなものですので、そうい う場合は論外であり、だめだということになります。  また、例えば20年ほど前の意思表示カードがあった場合に、現在でもそれで構わない のかという問題は確かに残りますが、それほど古い法律ではありませんので、今のとこ ろはその点は問題になっておりません。ただ、将来は問題になりうるだろうということ があります。  意思表示カードがいつ発行されたのか、いつのバージョンなのかということがわかっ ておりますので、意思の表明がいつごろあったかということは、これでほぼ確認できま す。  例えば、その人が生まれる前の日付が書いてあるような場合には、ほかの人が偽造し たのではないかという疑いが生じるわけですが、筆跡等で偽造ではないということが確 認できれば、意思表示カードを有効なものとして扱っていいだろうということで、単純 に日付の不備や記載がないということだけで最初からシャットアウトすることは妥当で はないという議論だったと思います。  山本委員  私もそのとおりでいいと思います。私が先ほどお話ししたのは、複数のカードが出て くれば新しいカードに従うということでいいのですが、複数のカードがあるけれども、 新しいカードがないと家族が言っている場合です。また、複数出てきたとしても、両方 ともに日付がなければどちらが新しいのかわからないのではないかということです。  黒川委員長  意思については、ほとんど家族とは話していないというような場合ですか。  山本委員  はい。あのときも出てこなかったと思います。  黒川委員長  家族も決めかねていて、私たちにはわかりませんと言われてしまうと困るということ ですね。それは法律的には難しいですか。  町野委員  法律の条文の書き方としては、家族が拒まないときということになっていまして、実 は同意しなくてもいいということになっているのですが、実際には家族の方の同意がな ければやらないというふうに運用されているということです。  ですから、これについても議論をすればかなりの問題が確かにありますが、私はその 運用は必ずしも不当とは思いませんので、それで結構ではないかと思います。  今のように、もう1枚あり、その内容がどのようなものであるかわからないという場 合には、やはり最終的には遺族が判断をするしかないということになるだろうと思いま す。  法律上の解釈論としては、恐らく出てきた意思表示カードだけで足りるということに なるだろうと思いますが、最終的には遺族が了承しなければいけないということでチェ ックをするということしかあり得ないだろうと思います。  黒川委員長  そのほかにいかがですか。  北村委員  大変前向きに御議論をいただいて、移植側の立場の人間としては大変ありがたいと思 います。実行に移してもらえることを強く望んでおります。  この議論は、この委員会でも半年から1年をかけてきて、最終的に法学の先生方でこ のような意見を取りまとめられたときには、次は、全体合意が得られるのか、あるいは どういうステップで実行に移せるのか、厚生労働省が細則あるいは運用の見直しをする のかというような点まで本日の議論で尽くせればと思います。  既に新聞紙上にはこの内容が報道されておりますので、前に進むということをこの会 で早めに決めていただいて、運用の面ではどのようにするのか、そしていつごろにその 予定ができるのかというところまでいければという期待を持っております。よろしくお 願いしたいと思います。  松田委員  今、北村委員がおっしゃった運用のことにも関連するかと思いますが、今回の報告 は、事例を中心に、こういった事例についてはこのようにするという判断をしたという ことですけれども、検討しておかなくてはいけないことが二つあると思います。  同じ事例が出ればそれでいいのですが、違うケースが出てきたときに、基本的な考え として、こういった事例についてはこのように考えたので、類似するものも含めて、基 本的にある考えで進むというような話まで持っていくのかどうかです。そうでなけれ ば、少し違った事例が出ると混乱します。  もう一つは、前から申し上げていることですが、疑義解釈的になったときに、最終的 にはどこで判断がされるのかということです。ネットワークの方で基本線が出たら、現 場はその基本線でかなり判断ができるのかどうかです。そこをよく議論しておかない と、具体的になると、後から混乱するのではないかという心配があります。  黒川委員長  今までもそうですが、予想されるいろいろな場合を想定すると、そういうことを書き 込むと動かなくなります。むしろ基本的な考え方というものが出ていると、それに合っ ているものはいいけれども、判断に迷う場合には、もちろんネットワークだけの判断で はなく、行政にも相談して、どのように書けばできるかという話を今まではしています ので、それを後でリポートしてここへ上がってくるという話で、どういうプロセスでど ういう疑義が起こって、どういう判断になったので、そういう場合には時間がありませ んので、そういうことをしてきたというのが現在の歴史だと思います。  脳死移植の最初の1例が出る前までは相当の議論をしまして、準備状況もそうです が、ありとあらゆる場合を想定していろいろなことを書き込むと、結局1例も起きてい ないのにマニュアルが膨大なものになってしまい、それでも実際にはカバーできないこ とがどんどんと出てくるというような話がたくさんありました。  そこで、4症例の脳死移植が行われた後で、チェックリストのようなものをつくって 整理をして、そうすると共通の問題点がわかってきますので、やはりバーチャルの議論 だけをしていると、現場でどうするかという話は、基本的な解釈の意見がここで出てく ると、実際にはそうだと思っても当てはまらないこと、予想できないことがいくらでも 出てきますから、そのときはネットワークと行政の移植室で相談して決めていくだろう と思います。  それが先例になりながら、どのくらいの問題が出てくるのかということをまたここで チェックしていくという話になっていくのではないかと思います。  そうは言っても、町野先生のようなすばらしい法律家がそうだと言っても、法律は解 釈の問題もありますから、現場では乖離していることがありますので、この場でオーケ ーだということでそれなりの手続をしてもいいですし、きょうの新聞にも出ていますの で、きょうの委員会そのものがどのくらい注目されているかということは別としても、 過去の実績からいえば、明らかにこれは本人が意思を表示しているが一つ欠けていて、 家族もぜひにと言っているにもかかわらず、1点の曇りもないということでなければだ めだというような話がなかったわけではないので、それが問題の一つです。  それから、意思表示はカードに限ることはなく、意思をはっきりと文書で出していた だければいいわけですので、意思表示カードや、運転免許証に張れるような小さな紙か らすると、一つの意見としては、きょうは町野先生たちの委員会からそういったリコメ ンデーションが出てきて、その後、ここでもそういう判断にして、ここに出ていないよ うな事例があればどうしますかというようなことは、その場その場の判断で、基本的な 解釈ということだろうと思いますので、最近のはやりですが、一度パブリックコメント を求めるということをやっても構わないのではないかと思います。  パブリックコメントはどのくらいやりますか。  事務局(片岡室長)  1カ月程度が原則となっています。  黒川委員長  そうすると、きょうの新聞に出ているので、パブリックコメントを出せばみんなが知 っているかというとそういうわけでもないので、きょう傍聴しておられる方も、行政 も、できるだけこういう意見について、こういう方向で、実際の事例はこういうことが あって、こういうことはどう見ても解釈としてはそちらの方が適切ではないかと思うこ とがいろいろとあるので、今度はこのようなフレームでやっていこうというリコメンデ ーションが出たけれどもいかがでしょうかというパブリックコメントをいただいて、そ うすると、12月あたりにパブリックコメントを分析していただいて、もう一度この委員 会をやる、あるいはその前に町野先生たちの委員会にも御相談してやっていただくとい うことで、そのあたりはパブリックコメントの反応にもよると思いますが、せっかくや っていただいたわけですから、法律家の委員会にも一度通して、話をして、現在の時点 ではこうしましょうという話が出てくればいいのではないかと思いますが、いかがです か。  相川委員  今、パブリックコメントを求めるというお話が委員長からありました。これは恐らく 事務局でもお考えになっていた方向かもしれませんが、私は賛成します。そのような形 で、それを作業班に戻すのか、あるいはこの委員会に戻すかということはここで決めて いただきたいのですが、パブリックコメントを求めることについては私は大賛成です。  また、もう一つは作業班の報告でございますけれども、私はこのような報告が出たこ とは、社会通念上も非常に妥当な報告であると評価したいと思います。すなわち賛成と いう意味です。  どうしてかと言いますと、先ほど御指摘がありましたが、個々の事例についての解釈 がかなり明快に書かれておりまして、意見の別れたものも幾つかありますが、それぞれ の解釈は妥当だと思います。  さらに基本的な考え方をはっきりしておかなければいけないのですが、脳死の臓器移 植、あるいは心停止後の移植もそうですけれども、特に脳死後の移植に関しましては、 このことが日本で議論され、また実際に法がつくられて施行されてからでも、初期には やはり脳死体から臓器を取るということに関する国民の了解というものが非常に脆弱だ ったということがあると思います。  しかしながら、数は少ないですけれども、脳死移植も進んできまして、それに対して 国民の理解もかなり得られたのではないかと私は推測しております。  脳死体から臓器を取ることを疑問視していた方々にとっては、本人の意思違って臓器 を取ってはいけない、脳死移植をしてはいけないということが前面に来ていたために、 本人が脳死になったときに臓器を提供したいという意思がその後ろに来てしまいまし た。  したがいまして、この事例を見ても、本人の意思はどう判断しても提供したいという ことではないかと推測されるものでも、完全でなければ提供できなかったということが あったわけですが、これは本当にいいことだったのかどうかということを考えますと、 提供したくない人から取るということは悪いことですが、提供したいという意思を否定 してしまうことも、本人の意思が生かされないということですから、それも悪いことだ ったと私は思います。提供したくないという意思を尊重するあまり、提供したい、提供 してもいいという意思を否定してしまった事例が随分あったということです。  ですから、このような作業班の報告に基づいて、社会通念上常識と思われる、あるい はいろいろな証拠を見ると、9割方は提供したいのではないかと考えられて、1割はは っきりしないけれども、臓器を提供しないということをどこにも言っていないというよ うなことに関しては、一つの基準を設けて、臓器移植をするべきだと言ってよろしいと 私は思っております。  橋本委員  私もパブリックコメントを求めるということに賛成です。それとは別に、作業班報告 についてお伺いしたいと思います。  1枚目の2番に、「カードの運用に当たっては形式性のみにとらわれるべきではなく 」という記述があり、「ほかの資料を用いることがあってもよい」と書かれてあります が、あってもよい、なくてもよいということは、ほかの資料の重みづけというのは、法 的にみて有効性はいかがでしょうか。  つまり、カードが不備の場合には3番が適用されるということでよろしいと思います が、カードがある程度はっきりしているけれどもほかの資料を用いてもよいということ では、万一ほかの資料とカードの意思が違っていることがなきにしもあらずと思います が、その場合のほかの資料の重みづけでカードの運用が変わるということがあったとし たらどうするかということはいかがでしょうか。  町野委員  例えば、カードを持っていて、そこには臓器を提供すると書いてあったけれども、そ の日付の後のいろいろな人との会話の中で、やはりやめたと言っていたとか、あるいは 日記の中でそのようなことが書いてあったというような場合にはどうするかというお話 ですね。  橋本委員  そうです。また、ほかの資料の内容です。  町野委員  資料というのは、書面に限らず、いわゆる会話でも何でもいいということです。  橋本委員  そこにあいまいさはないのですか。  町野委員  それは当然あり得ます。しかし、そのときは遺族が確認するので大丈夫ではないかと いう判断です。  相川委員  法の6条では書面と書いてあるわけですが、例えば臓器提供の意思表示カードは持っ ていないけれども、遺言が出てきて、脳死になった場合には臓器を提供するというよう なことが書いてあり、その遺言に日付や本人の署名等があり、遺言として有効であれ ば、カードがなくてもいいと考えてよろしいわけですね。  町野委員  事務局からもその旨の御返事をいただいていますが、それはオーケーだということで す。また、民法上の遺言というのは非常に形式的なものでございまして、どこかに不備 があればすべて無効になりますけれども、それが無効になったとしても、この書面とし ては有効だということが当然あるということだと思います。  相川委員  ありがとうございます。  町野委員  また、パブリックコメントの件でございますが、私はもちろんパブリックコメントを していただいて結構だと思いますけれども、この内容だけで出すというのはいかがなも のかと考えております。  基本的に、現行法の解釈の問題であるということをはっきりさせなくてはいけませ ん。立法論ではありません。立法論からは、こんな書面など入らないという考え方も当 然あるわけです。ですから、現行法の解釈の問題であって、この法を運用すべきだとい うことをまず確認しなければいけないということが一つあるだろうと思います。  また、もう一つは、先ほど申し上げましたように、2段階の議論とをごちゃ混ぜにし てしまってはいけないのであって、まず書面が存在しなければいけないということが大 前提です。書面がなかった場合には、いろいろな資料から見て、本人がそういう意思で あったことが確認できたとしても、やるべきではないということです。  その場合の書面の内容としては、一つは日記の中に意思が書いてあるような場合です が、それでは足りないということだと思います。それはなぜかというと、そこのところ で意思を表明したとしても、それがいわゆるかたい決意と言えないという解釈だろうと 思います。  ですから、私は日記のようなものは書面には入らないということと、もう一つは、法 文には書かれていないけれども、署名を必須要件として要求せざるを得ないだろうと思 います。  その次の問題として、書面はあるけれども、そこに表明された意思が臓器を提供する 意思であるか、さらには脳死判定に従う意思であるかということの解釈については、カ ードだけではなく、ほかの資料も参考にするという順番になるわけですので、解釈論で あるということと、書面の要求と、意思表示の解釈の三つの問題をごちゃ混ぜにしたよ うなパブリックコメントを取ると、かなり混乱すると思います。  私はパブリックコメントは必要だろうと思いますけれども、そのためにはまず総論的 な文書をこしらえて、考え方の筋道を明らかにした上で各論的にこの問題についてのこ とを出すということにいたしませんと、全体的によろしかろう、あるいは悪かろうとい う程度のものしか出てきませんので、それをぜひ御検討いただきたいと思います。  ちなみに作業班は「町野の班」ではなく、「町野がいる班」でございますが、そちら の作業班でやられても結構ですし、事務局で整理をされまして、パブリックコメントの 案というものをつくっていただいても結構でございますけれども、今のようなものをつ くっていただくことは必要だと思います。  黒川委員長  先生のおっしゃるとおりで、パブリックコメントは、読んだときに何を聞きたいのか という背景がすぐにわかるようにとはいっても、やはり論理性がなくてはいけないし、 何を聞いているのかということがないと、拡散してしまって、問題点は何かということ を急に言われても困りますので、それは少しドラフトを書くなり、何がポイントかとい うことを新美班の方で相談して、行政と法律の専門家で話し合った上で、何についての 意見といった話をきちんとしなくては全く意味がなくなってしまうと思いますので、そ の辺はよろしくお願いしたいと思います。  相川委員  先ほどパブリックコメントに賛成するということを申し上げましたけれども、まさに 今の町野先生の意見に賛成でございます。あのときには各論では言わなかったのです が、先ほども署名のことや年月日のことがありましたので、各論で言わせていただきま すと、報告書の中の本人署名と家族署名が逆の場合についてが一番気になりました。  まず、資料3の6ページの事例ですが、私は筆跡鑑定家ではありませんけれども、こ れはどう見ても同じ人が書いているように見えます。例として簡単につくってしまった のかもしれませんが、これはあまり適切ではないと思います。同じ人が書いたというこ とであれば、自筆ではないという別の要素が入ってきます。細かいことですが、このよ うなものを出すとさらに混乱しますので、やはり別の書体で出していただきたいと思い ます。  その場合にも幾つかの問題があります。例えば兄弟がいて、お互いに臓器提供意思表 示カードを書こうということになって、お互いに書いて署名をして、しかしながら、兄 弟の意思は多少違うとか、場合によっては全く違っていて、Aさんは臓器提供をしない とか、あるいは提供する臓器が違うということで、AさんとBさんの意思が違うとしま す。そして、お互いのカードを間違って持ってしまったという場合に、Aさんが脳死状 態になったときにBさんに連絡がつかないと確認ができないということになります。あ るいはBさんが死んでしまうというようにいろいろなことがありますので、やはり署名 の記載が逆というところはもう少し慎重にしてもらった方がよろしいかと思います。全 般としてはこの報告書に賛成ですが、細かいところでは、もう少し慎重な方法がないか ということです。  大久保委員  全般的には私も賛成です。また、パブリックコメントについてはかなり難しいのでは ないかと思います。もちろん取ることは大事ですけれども、皆さんがどれだけこのこと がわかっているか、コーディネーターが現場でどのような立場になっているかというこ とを一般の方が理解されているかは非常に疑問ですので、かなり難しいかと思います。 パブリックコメントを取ることは良いと思いますが、それが実際に一般の方々の意見と してきちんと表現されるかということは非常に疑問に思っています。  やはり最終的には町野先生がいらっしゃる班での検討と、この場での検討が一番重要 ではないかと考えています。パブリックコメントがどういう形で出るかはわかりません けれども、それは参考にすぎないと私は思っています。  今回の作業班の結論については、今まではどうしてこういうことができなかったのか と思うくらいにごく常識的な線だと思います。ただ私も、今先生がおっしゃったよう に、自分の署名と家族署名の書き違いについては少し難しいのではないかと思います。 私自身の考え方としては、これは外した方がいいのではないかという気がしています。  それ以外についてはすべてこれでいいのではないかと思っています。以上です。  小中委員  実際に署名が逆になっていたカードを見た者としてお話をしたいと思います。本当に たまたま署名が逆になったというのがそのカードの実際でした。ですから、御本人さん が家族のところに書いて、お話をした御家族が御本人さんのところに書いていたという ケースで、字体も全く違いましたし、当然それはサンプルにはできませんので、こうい う形になったのだろうと思いますが、実際に見た者としてはそのままでしたので、その 部分はやはり御本人さんの意思として、明確なものとして進めていただきたいという思 いがあります。  先ほど町野先生から、実際の考え方として、家族が証言をするという形で確認をする というお話がありましたが、その範疇に入るものではないかと私は受けとめておりま す。  また、先ほどからパブリックコメントの話も出ておりますけれども、相川先生のお話 の中に、実際は本人の意思があったのに、確認していく段階で、すべてが確実ではなか ったので意思が生かせなかったということはいいことではなかったのではないかという お話がありましたけれども、現実に御家族とお会いする者としてはそのとおりだと思い ます。  自分たちが証言してもいいということで、家族が文書を書いたこともございました。 しかし、今まではそれは認められていないので、記載不備のために本人の意思が明確で はないというものも、自分たちが証人として証言をするので何とかできないかというこ とは生かしていただきたいので、今回パブリックコメントを取って、確実な取り方が非 常に難しいという中で、また日にちが延びていったり、あるいは違う問題が出てくるこ とによって、今回せっかくここまで上がってきたものが無駄にならないような形にぜひ ともしていただきたいと思いますし、できるだけ早く決めていただきたいと思います。  必要な日数はいたし方がないと思いますけれども、また延び延びになって、最初の問 題が何かわからなくなるということにならないようにしていただいて、意思が生かせる ような結論に導いていただきたいというのがコーディネーターとしての願いです。  黒川委員長  ここに出ている人は何が問題かということがわかっていますが、問題点がぼけないよ うな質問をしない限り、うまくいかないのではないかということは町野先生もおっしゃ っていましたし、それはそのとおりだと思います。  山本委員  いちいちの症例というのは出ないかもしれませんが、コメントを求めたときに、意思 表示カードそのものに不備があるのではないのか、もう少し書きやすくするという方法 もあるのではないかといった意見は当然出てくると思います。それも含めてコメントを 求めてはいかがでしょうか。  黒川委員長  ドナーカードをもう少し何とかするという話も、ネットワークと行政で相談しなが ら、次の改訂版を考えた方がいいと思います。  つくっている方はわかっているからいいけれども、受けた方はわからないというよう なことで、もう少し何とかならないかということを考えていただきたいと思います。  山本委員  症例ごとではなく、もう少し総論的な答えが出るといいのではないかと思います。  黒川委員長  おっしゃるとおりです。カードについての御意見をいただくかどうかは別として、そ ういうことを踏まえて、カードについてもっといい考えはないのかということについて も、もう少し検討してもらうということで、それはセットになってくるものかもしれま せんので、そのようにさせていただきたいと思います。  北村委員  これは私の杞憂であればいいのですが、ちょうど今おっしゃった12月取り決めの時期 が国会でのこの案の提出とオーバーラップしてくると、このコメント、あるいはこれが 国会審議の方にプラスさせようというためのものではないかと人々が考えた場合、少し 複雑になる可能性はないかのと思います。改案を通すための第1ステップではないかと いうことです。  これは解釈論であって立法論ではないのですが、その辺の時期的な配慮も要るのでは ないかという気がしますけれども、おっしゃるとおり秋の国会に出てくるものであれば どうかと思いますが、そのあたりで何かわかりますか。  事務局(片岡室長)  自民党の試案がことしの2月に出まして、その後に各党で御議論されているという状 況で、それ以上のことは特に聞いてはおりませんが、パブリックコメントをまとめると いたしましても、先ほど町野先生がおっしゃったように、現行法の中の話であるという ことを、きちんと誤解を招かないような形にしたいと思います。  黒川委員長  そういう懸念もなくはないと思いますが、現行法の問題ですから、問題点の提起の問 題でしょうね。  それではカードの見直しも含めて、なるべくわかりやすくするということをやってい ただいて、その結論を踏まえて、リバイスのバージョンのカードが次に出てくるから、 それまでに間に合うかどうかは別にして、パブリックコメントが出てきた後で、一度新 美先生の委員会でそれを通させていただいて、またこちらへ来ていただきたいと思いま す。これはやはり法律の解釈論ですから、やっていただいた上でどうかということを出 させていただいた方がいいと思います。  それでは、次は最近ニュースをにぎわしているウエストナイルウイルスですが、新し い感染者がどんどんと出てきますと献血の問題が出てきますので、臓器についてもどの ようにするかということを決めなくてはいけませんので、これについて事務局から説明 をお願いいたします。  事務局(斎藤主査)  それでは事務局より、議題2、臓器移植等におけるウエストナイルウイルス対策につ いて御説明申し上げます。資料2をごらんください。  ウエストナイル対策につきましては、本委員会におきましても、第10回、第11回、第 13回で御議論をいただいております。臓器移植対策室としましては、これまでの議論の 結果、また、献血における供血者の取り扱い等も踏まえまして、ドナーの渡航歴につい て問診により確認しなければならない期間をウエストナイルウイルスの流行地域より帰 国して3週間以内としているところです。  具体的には眼球以外の臓器移植と角膜・強膜移植に分けまして、必要な対策を通知と して出させていただいております。  資料2の5ページから7ページにかけて、通知の写しをおつけしております。要約し て御説明させていただきます。眼球を除く臓器移植におきましては、米国等のウエスト ナイルウイルス流行地域から帰国後3週間以内のドナーについて、PCR検査で陽性で ないことを確認できない限りは移植には提供しない。また、角膜・強膜等の移植におい ては、同じく当該地域より帰国後3週間以内の者については、問診の結果を踏まえて慎 重に移植の可否を判断すること。また、医療機関が輸入した角膜等を移植に用いる場合 においては、当該バンクに対して、眼球摘出前3週間についての問診の強化を依頼し、 その結果を踏まえて慎重に移植の可否を判断することとしております。  その一方で、資料の2ページ、3ページになりますが、従来考えておりましたよりも 少ないウイルス量で感染する例が米国でありましたことから、ウイルスの期間がさらに 長くなる可能性があるといったことを踏まえまして、献血におきましては、供血者の採 血禁止期間について、国外からの帰国後3週間となっていたものを4週間へと延長され たところでございます。  なお、この通知においては、対象となる地域は、海外すべてとなっております。  このウイルス血症の期間の延長ということに関しまして、4ページに概念図をお示し しております。これは薬事・食品衛生審議会血液事業部会運営委員会の配付資料でござ いまして、国立感染症研究所の岡田義昭先生が7月に配布されたものでございます。  米国での輸血によるウエストナイルウイルス感染例を模式的にあらわしたものでござ いまして、米国では輸血用血液に対してウエストナイルウイルスの核酸増幅法を導入し ておりますが、輸血によって何人かが感染してしまったということでございます。  これらの例では、複数のドナーのプール検体に対する核酸増幅法では陰性でございま したけれども、それぞれの血液を詳細に調べますと、個々の核酸増幅法ではウイルスが 検出されることがわかっております。そこでプール検体に対する核酸増幅法を通り抜け ました血液中のウエストナイルウイルス感染価を調べまして、その概念図をグラフにし て示しております。  横軸は感染後の時間をあらわしておりまして、縦軸はウイルス量、感染価をpfu (プラーク・フォーミング・ユニット)であらわしております。  これまでは0.8pfuくらいまで、つまり、グラフに2本の横線が引いてございます けれども、上側の線を越えている期間が感染可能の期間だと考えられておりましたが、 実際には下側の線を越える期間において感染が成立したということでございます。その ため、感染可能なウイルス血症である期間が延長するということを想定しまして、安全 期間として1週間を追加するという提案がなされたものです。  以上のように、献血における採血禁止期間の変更を踏まえまして、臓器移植等におい ても、ドナーの渡航歴について確認を要する期間を帰国後4週間以内とさせていただく ことについて御議論をいただきたいと思います。  また、対象地域につきましては、これまでどおり、ウエストナイルウイルスの流行地 域とさせていただく方向でよろしいかということにつきましても御議論をいただきたい と考えております。  事務局からは以上でございます。  黒川委員長  ウエストナイルは、最初はアメリカの東海岸だけだったのですが、どんどん西へ来 て、カリフォルニアでも何人かが感染しているという話が最近出ていますので、輸血の ドナーでも出てくるという話からすると、前もそうですけれども、3週間を4週間とし て、それと並ばせて処理させていただいてはどうかという話でございます。これはいい と思いますけれども、いかがでしょうか。  山本委員  カリフォルニアでは数人ではなく、既に220や230人だったと思います。  黒川委員長  亡くなった方は何人くらいですか。  山本委員  17人というようなデータだったと思います。  黒川委員長  去年まではほとんどゼロでしたね。  相川委員  基本的にはこれでよろしいと思いますが、この文章は病原微生物と感染症を混同され ていますので、整備していただけないでしょうか。  例えば、前は感染症に対しては、ウエストナイル熱とか脳炎というように、感染症と 病原微生物を分けていましたが、病原微生物の名前をそのまま感染症の表現として使わ れているようなところがありますので、文章を整備していただきたいと思います。  北村委員  現行でも改正のものでも米国等となっていますが、アメリカだけでいいのでしょう か。ふえてくるということを考えて、等となっていると思いますけれども、少し詳しく した方がいいかもしれません。  事務局(斎藤主査)  運用上、現在の流行地域をどのように処理されているかということにつきましては、 臓器移植ネットワークの方から御説明をいただきたいと思います。  菊地参考人  現在は、ウエストナイル熱については、インフォームド・コンセントの際に必ず渡航 歴を確認しています。現在の通達では提供前3週間以内ということですので、アフリ カ、中東、西アジア、ヨーロッパ、北アメリカについて3週間以内に渡航歴があればP CR検査を行って、陽性のないことを確認しているわけですけれども、通達が出て以 来、現在までに渡航歴3週間以内に適用した事例は1例ございます。  以前、こちらの委員会でも報告させていただきましたけれども、PCR検査のシステ ムをつくっていましたので、その検査システムに乗せて検査をいたしまして、陽性でな いことを確認しまして、移植に至ったという事例が1例ございます。  北村委員  等というものがあってもなくても、とにかく外国へ行っておれば、地域を問わず、P CRを行うというふうに理解すればよろしいのですか。  松田委員  採血の通達の3ページの2のところでは、海外からのすべての帰国者ということです から、これに合わせればいいのではないかと思います。  北村委員  ここはそのように整理していただくか、国を決めるのであれば明確にしていただかな いと、現場では難しいです。特に組織移植の方も同等に扱いますので、よろしくお願い いたします。  黒川委員長  献血の方ではどうなっていますか。  事務局(片岡室長)  資料3ページになりますが、献血の方は従来からすべての海外の地域ということにな ります。  黒川委員長  場所はすべてということですね。  事務局(片岡室長)  献血についてはすべての海外地域となっておりまして、臓器移植に関してましては米 国等のウエストナイル流行地域で、具体的には東南アジアとオーストラリアと東アジア 以外はすべて流行地域ということで取り扱っておりますが、やはり献血との並びの方が よいということであれば、そのようにさせていただくことも一つの案だと思います。  黒川委員長  なぜ違うのかという話にもなりますね。献血との並びでこれまでずっとやってきたわ けなので、基本的にはすべての外国ということにするのがいいのではないかと思います が、いかがですか。  行政としても、献血と一緒にしておかなくてはまずくないですか。  事務局(関山課長)  御意見を承って、そのような方向で改めたいと思っておりますけれども、恐らく当時 の通知では、現在は流行地ではなくても、過去3週間以内において流行地であった場合 もなくはないということもあり得ますので、そこを厳密に調べていればよろしいのです が、今、御提案のように、そういった危惧も解消するとすれば、献血と同じように整合 性を保つ方がよろしいと思いますので、そのように改めさせていただきたいと思いま す。  小中委員  今後はすべての海外から帰ってこられた方ということですが、医学的に妥当なことで あるととらえるのであればいたし方ないと思いますけれども、それはずっとということ になるのでしょうか。例えばこれがまた改められる時期というのは来るのでしょうか。  事務局(関山課長)  それはまさに献血と整合性を保つといったことであるならば、そこの見直しと連動し ながら検討させていただくことになるのではないかと思います。  菊地参考人  すべての国とすることは可能ですけれども、ウエストナイルウイルスには株がござい ますので、日本で保有していない地域の株もありますので、その場合はPCR検査がで きないということだけは御了承いただきたいと思います。  相川委員  私も輸血との横並びは賛成です。しかし、その前提は、日本国にはないけれども、海 外にはあり得るということが基本的な前提になっています。そうでなければ日本人もす べてということになりますので、大前提はそこにあるわけです。  そうすると、例えば島国の台湾はどうなのかとか、あるいはアイスランドのような国 に本当に蚊がいるのかということになってしまいますが、まず海外はすべてで、日本は いいという前提は、日本にはないからという前提でよろしいのですね。  事務局(関山課長)  現在は流行地ではないという感染状況を確認しておけばよろしいわけですので、そう いう状況でなければ対象にはなり得ないということになるのではないのでしょうか。  相川委員  決して複雑にしようということではないのですが、文章の書き方として、4週間以内 の海外からの帰国者はすべて検査をするということで、日本の人は一切検査をする必要 はないというスタンスの前提には、我が国にはなくて、海外はどこの国にもあり得ると いう前提の考えで、流行地という言葉を外すということでよろしいわけですね。  海外と書けば、流行地であってもなくても検査をするということですから、それは基 本的にはよろしいのですが、スタンスとしてよろしいですね。  黒川委員長  それは行政的な問題と、最終的なデシジョンをするときにはだれが責任を持つのかと いうのは、日本の国のあり方ということもあって、日本だけは正常だと思っている日本 人は一般的に多いけれども、日本の常識は世界の非常識だということがたくさんあると いうことを知らない人の方が多いのかもしれない。文章としては、現在はそうだけれど も、流行しているのかしていないのか、お医者さんがいなくて診断しているのかしてい ないのかということや、PCR検査をやるのかと言えば、64億の人のうち、80%は非常 に貧乏なところにいるわけだから、そんなことはまずするわけがないので、そんなこと はわからないわけです。  アイスランドへの直行便などはないと思いますので、どこかで少しおりたときはどう なのかというような話もあると、ばかげた議論になってしまうので、一応、献血と同じ ようにしておく。日本ではないけれども、よそではどこにでもあるというような話にな ってしまうと、どのように特定するのかというような話になってしまうので、一応横並 びにして、献血のポリシーとどうするかということはこれから問題になります。  30年前は、年間12万人くらいしか海外へ行かなかったということだけれども、今は年 間1800万人も外国に行っているという話ですので、ここは一応このように整理をさせて いただいてはどうかと思います。  それでは次に、前から懸案になっている移植施設、レシピエントへの意思確認時期に ついてです。ドナーになりそうな方が出るのですがどうですかという話のタイミングに ついての議論があるわけですが、これまでの問題について、昨年、この委員会でも議論 しまして、脳死下の臓器提供事例については、家族から時間がかかりすぎると、最初の 脳死の判定である時間をやって、第2回目をするということを現場ではやるわけです が、それと具体的なデータを示してどのようになるかという話について言わないと、非 常に感情的になるといいますか、数例だけで判断するのはどうかということもあります ので、これについては事務局とネットワークに、この間の議論の成果を踏まえて調べて いただきましたので、説明をよろしくお願いいたします。  事務局(斎藤主査)  それでは議題3、移植施設(レシピエント)への意思確認時期について御説明いたし ます。資料3をごらんください。  この議題につきましては、第15回、第16回にも、効果的・安定的・効率的なあっせん 体制の確保という議題で御議論をいただいておりますが、コーディネートのあっせんの 手続的な面につきまして、再度御議論をいただきたいと思いまして、資料を御用意させ ていただいております。  まず、論点の位置づけということでございますが、これまでに、あっせん業務を効果 的・安定的・効率的に実施するに当たり、どのような問題点があるか、あるいは臓器提 供の意思確認から臓器摘出終了までの時間が、ドナー家族や臓器提供施設に対する負担 となっているのではないかという観点で考えた場合に、主に三つの論点を想定して御議 論をいただきました。  (1)臨床的な脳死診断は不要ではないかという点。(2)移植施設(レシピエント)への 意思確認時期を、第1回法的脳死判定終了後に早めることができるのではないかという 点。(3)臓器提供に係る情報公開の時期を臓器摘出終了後に遅らせることはできないか という3点でございます。  本日は、特にこの中の(2)移植施設(レシピエント)への意思確認時期に関してでご ざいます。まず資料3の5ページをごらんいただきたいと思います。これは既にごらん いただいているものでございますけれども、脳死下における臓器提供の流れをまとめた ものでございます。  特に移植施設(レシピエント)に対する意思確認の部分につきましては、法的脳死判 定の終了後、脳死判定終了時をもって死亡時刻とし、その時点からネットワークから移 植施設への連絡を行い、その上で、現実にレシピエントの方、あるいはドナーの方の状 態を見まして、レシピエントが決定されております。  その後、摘出チームが現地に到着しまして、臓器の摘出が開始されるという流れにな ってございます。この提供手続に時間がかかって、ドナーの御家族に対する負担がかか っているのではないかという指摘がなされているということでございます。  次に資料3の1ページ目にお戻りいただきたいと思います。こちらも以前に一度お示 ししたものですが、この論点に関するこれまでの経緯や現状についてまとめさせていた だきました。  まず、臓器の移植に関する法律に関するガイドラインでは、死亡時刻というものは第 2回目の法的脳死判定の終了時ということを前提としております。  2ページに移りまして、1例目における取り扱いに関してでございますが、公衆衛生 審議会疾病対策部会臓器移植専門委員会の方で、1例目と2例目のあっせん業務に関す る作業班というものがありまして、その報告書では、レシピエントの意思確認時期を、 2回目の脳死判定終了後よりも早くするべきではないかという議論は当時もあったよう でございますが、作業班の結論といたしましては、連絡時期を早めることは適切ではな いという結論になっております。  こうしたことを受けまして、初期事例の後につくりましたマニュアル及び質疑応答で は、脳死判定終了後にレシピエントのいる施設に連絡を取るということになってござい ます。  続いて4ページをごらんいただきたいと思います。臓器移植専門委員会当時あるいは 臓器移植委員会になってからのこの論点に対する主な意見をまとめております。  現状が望ましいという意見につきましては、第2回目の判定に影響が出るのではない か、また、レシピエントに過度な期待を持たせないか、また、法的脳死判定の2回実施 という理念を尊重するべきだといった意見がございます。  また、早期が望ましいという意見につきましては、ドナー家族の心情を考慮すべき、 レシピエントの考える時間を確保するべき、また、法的判定の2回実施は当然だが、時 間的ロスをなくすべき、第1回目判定の直後でなくとも、少なくとも第1回目以降に動 ければよいというような意見もございました。  法的な脳死判定が終了してからの具体的な手続につきましては、特に臨床的脳死診断 から臓器摘出終了までの各手続にどれだけの時間がかかっているのかということについ て、具体的なデータに基づいて議論を進めたいという御意見が前回にございましたの で、臓器移植ネットワークの方でまとめていただいております。詳しい内容につきまし ては、臓器移植ネットワークの菊地チーフコーディネーターから御説明を伺いたいと思 っております。  事務局からは以上でございます。  菊地参考人  それでは資料の6ページをごらんください。脳死臓器移植の流れ、日米の比較がござ います。これは以前にも提出させていただきましたが、米国と日本との臓器提供事例の 流れを比べたものです。  米国では、臓器提供には関係なく、脳死が人の死ですので、死亡が確定した後の選択 肢のひとつとして、臓器提供を行うか否かという選択肢があります。死亡が確定してい ますので、移植施設への連絡も非常に早くできるわけです。  日本では、臨床的脳死診断が終わった後に、まだ法的に脳死と確定しない段階から、 ネットワークのコーディネーターが、臓器移植の説明であるとか、患者の選定、これは 選定のみですが、そういった作業に入ることになります。  2回の法的脳死判定が終了して、脳死と確定した後に、はじめて移植施設へレシピエ ントの意思確認を行って、臓器摘出、移植に至ります。  この流れの中で、事務局からの説明にもございましたように、臓器提供者の御家族、 臓器提供施設から、提供に至るまでの時間を何とか短くできないものかという話があり ました。  そこで、どういったところが短縮できるのかということを考え、資料の7ページにな りますけれども、第1例目から29例目までの脳死判定事例にかかる平均所要時間とし て、時系列ごとの平均を出してみました。右から3番目の棒グラフをごらんいただきた いと思います。意思確認開始から臓器摘出開始までには平均10.5時間がかかっていると いうところです。  この部分の短縮を考え、1回目の脳死判定の終了後に移植施設へ連絡するという方法 はいかがかということで問題提起をいたしました。次の資料8ページには、臨床的脳死 診断から臓器摘出までの公表されている所要時間と、それぞれの合計時間等がありま す。臨床的脳死診断終了から摘出終了までの全事例の平均時間は44時間15分で、提供施 設では約2日間という非常に長い時間をかけて脳死体からの臓器提供が行われているこ とがわかります。  資料の9ページをごらんいただきたいと思います。先ほど棒グラフで示した2回目の 脳死判定終了から臓器摘出開始までの時間のうち、17時間以上かかった事例と8時間以 内であった事例とを分析してみました。  提供臓器、また、その臓器が機能しているかというところは、この表を見た限りでは 前者と後者の間に差はないというふうに見ています。  意思確認の早期化といいますか、1回目の脳死判定が終了した時点で移植施設へ連絡 するということについては賛否があることと思います。どちらの意見も非常によくわか りますので、御議論をいただきたいと存じます。提供施設には時間的な負担以外にも、 金銭的、人的な負担などがたくさんあると思います。何とか負担の軽減につながればと 思って提案をさせていただきました。以上です。  黒川委員長  前から議論になっていることですが、本邦ではある一定の間隔をおいて2回の脳死判 定をし、念には念を入れているということがあります。もちろんいろいろな事例はある と思いますけれども、ドナーになるポテンシャルのある方にしてみればその時間は、や はり救命救急の現場ではそうですけれども、できるだけの医療をしているということに なります。そして2回目が終わってから脳死という判定が成立するということになりま す。しかし、随分と時間がかかるのはやむを得ませんし、もちろん救急の現場の先生は 全力を尽くしているということがここに保証されるわけです。  もう一つは、レシピエントの方は、2度目が終わってから、さあどうしますかと言わ れたときに、ディシジョンするというのは、かなり時間が迫ってくるということがあり まして、突然言われてもなかなか大変であるということが一つと、場所的な問題、また はクロスマッチなどのいろいろな問題がありまして、技術的な問題もたくさんあります し、距離その他もありますし、その現場に行くという話で、その後にも相当な時間がか かるのは大事だし、特になるべく早く決めないと、次の人へ行きますと急に言われて も、精神的になかなかつらいものがあるというようなことが確かにあるということであ ります。  また、確かにドナーがおられる方の病院では時間がかかって大変だということです が、これは治療を一生懸命やっていますので、これを見ていても確かに大変は大変で す。  その後の摘出の手術に入っている場合も、その場所も、定時にスケジュールされたオ ペ室がみんな取られてしまうとか、器具やスタッフなども全部ついていますから、相当 大変だということは確かに理解ができるところです。  それから、第1回の脳死判定の後に、レシピエントの方に意向を確認して、もしかし たらそういうことになるかもしれませんので考えておいてくださいと言っても、そうで はなくなりましたというような話もありまして、実際に法律的にはまだ亡くなっている わけではないですから、そういう懸念もあるというのは当然の話で、しかし現場の家族 と、お医者さんの側と、両方の医療にかかわっている先生方と、その間に入っているコ ーディネーターの人は、なかなかやきもきするというか、パーソナルのプレッシャーな どのいろいろなことがあると思います。  特に2回の脳死判定が終わってからの行動が、いろいろなところに連絡をし、判断を いただきながら、その後ではクロスマッチ、いろいろな話をしなくてはいけませんし、 方々に連絡をするという話が出てきますので、本当にコーディネーターとしてはテンシ ョンがだんだん上がってくるところですけれども、時間が予測できないというようなこ ともあります。  そういうことで、確かに7ページを見ると、実際には相当な時間がかかっているわけ で、40時間くらいかかっていますが、もちろんその間に、ポテンシャルにドナーになる 患者さんのいるところでは救命救急が多いわけですけれども、そうではなくても医療を 一生懸命やっておられるスタッフのすごい努力をこの時間の経過とともに見て取ってい ただきたいわけです。しかしその次の8ページには実際の時間の流れというものがあり まして、相当な時間がかかって、すごくストレスフルな状況で皆さんは毎日仕事をして いるわけで、しかも病院としてはその患者さんだけではないですから、すごいテンショ ンです。  2度目の脳死判定を行ってからも、そのテンションが猛烈に続いて、間に入っている コーディネーターは、摘出のチームへの連絡など、すごくテンションの高い時間がずっ と経過しておりまして、同じ病院ではないし、とんでもなく遠い場所ということがいく らでもあるので、現場にかかわった人はそうだと思うけれども、かかわらないでコメン トしている人にはなかなかわからないかもしれない。このあたりが難しいのですが、し かし、2回の法的な脳死判定の終了から摘出手術するまでですから、また患者さんのと ころへ運んで手術をするのに数時間がかかるということで、とんでもなくハードで、テ ンションの高い時間がどんどん経過していくわけです。それで摘出手術の開始ですか ら、摘出手術が終わるわけでもないですし、移植が始まるのはこの後ですので、ヘリコ プターなどで運んだりしながら、いろいろな人が絡んでくるわけですから、全部が終わ るのはもっともっと先の話ですけれども、その間にたくさんの人が、非常にテンション の高い時間に追われて走り回っているわけなので、そこでふだんの医療が行われている ということですから、この辺をよく理解してほしいと思います。  そういったことで、長時間かかったものと、8時間以内というものはかなり早いと言 えば早いです。いろいろな摘出チームがそれぞれの臓器の摘出に来られるわけですか ら、順番その他があって大変ですが、結果を見てみると、移植の手術というのはこんな に成績がいいのかと思うくらいで、数は少ないですけれども、うまくいっている方が圧 倒的に多いということが示されているということです。  手術としては、移植医療そのものは非常に定着しているのかということがもう一度コ ンファームできるようなデータではないだろうかと思います。  コメントがありましたらお願いいたします。  大久保委員  1例目のことが出ていますが、私はそのときにも、あまりにも時間がかかりすぎるの で、第1回目の脳死判定後に各施設に通知できないかという意見を出させていただきま した。  当然、先ほど先生がおっしゃったように、レシピエントとしても非常に短い時間の中 で決断をしなくてはいけないということで、レシピエント側から見ても、第1回の脳死 判定後にぜひ通知をしていただきたい。この前も、特に救急の先生からのお話もありま したけれども、私も提供された幾つかの施設の先生方に伺ったところ、この部分は何と かできないのかということを皆さんおっしゃっていて、もちろんドナーの家族の方も大 変ですし、それにずっと携わる提供施設の先生方やスタッフも本当に大変だと思いま す。今の日本の現状では、このアメリカの方式のようにはならないわけですから、その 中で何とか時間を短縮して、提供施設、それから提供家族の負担を減らす方向でぜひ御 検討いただきたいと思います。  山本委員  第1回、第2回の6時間という時間はむだな時間ではないかもしれませんけれども、 委員長はネットワークのテンションが高まっているとおっしゃいましたが、我々も非常 に高まっているところでございまして、第1回の脳死判定の時点で連絡を取れるという ようなことができれば、最低でも6時間は助かるわけでございますので、何とかこのア イデアは取っていただきたいということを私からもお願いしたいと思います。  北村委員  レシピエントへの意思確認の通知は、第2回の判定が終了してからでなければならな いという規則はあったでしょうか。2回の判定を行って脳死と判定するという観点から そのようになっているだけで、規則としてはありませんね。  菊地参考人  法律やガイドライン等には記載はされていないと思います。  北村委員  そして、先ほど提供側の山本委員からもお話がありましたように、保険医療にも承認 されない中で、経済的負担のことも言われていますので、6時間の短縮に何らかの効果 があるのか、まして第1回目の判定が第2回目で覆った例はないわけですので、そうい った科学的、医学的なことと、なおかつ、実質的には第2回も行うわけですが、御家族 の方から、通達していただいても結構ですという了解があれば、法的なものを変える必 要もないし、そして御遺族の確認があれば行える範囲のことではないでしょうか。  そうすれば、時間の短縮により、テンションのお話もありましたが、経済的な効果も あるかもしれませんし、レシピエント側にもそれなりのメリットがあると思います。  事務局(片岡室長)  手続上はガイドラインにおいて死亡時刻が決められておりまして、マニュアルの中 で、死亡を確認した後に移植施設へ連絡するとなっております。  北村委員  2回を行わなければ確認ができないということになっているからそうなっているわけ ですね。  事務局(片岡室長)  はい。  相川委員  これは既に委員会で討議されているわけで、私は前にも申し上げましたが、第1回の 法的脳死判定の後に、既に本人の意思は確認されているわけですから、レシピエント側 に通知することを、将来ドナーとなり得る患者さんの家族が了解すれば、第2回を待た ずに通知するということでよろしいと思っております。  しかしながら、今、北村委員から御発言がありましたように、過去の29例において、 第1回で脳死と判定されたものが第2回で覆ったことがないということは事実ですが、 それを今の議論の中に入れますと、第2回目の意味というものが複雑になりますので、 むしろそのことは別に置いておきまして、やはり現在は第2回の脳死判定をもって死亡 とするということはいじらずに、手続の上では、第1回判定後に家族の了解が得られれ ばレシピエントに通知するということでよろしいと思います。  しかしながら、第1回と第2回の間の6時間あるいはそれ以上に関しまして、さらに 救命に力を尽くすということも、今のところは変えないというスタンスでやってはどう かと思います。  貫井委員  私は前からここで主張しているのですが、技術論ではないだろうと思います。30例の 移植がなされているわけですけれども、これをもって、既に日本では移植が定着したか という判断があると思います。  実際に、今までにやってきた4例について人権擁護委員会から訴えられているという 状況もございます。  現場の脳外科の人たちが、臓器の提供施設に相当の関与をしているわけですが、そう いう人たちに聞いてみますと、一つは、今、相川先生と言われたこととは反対に、もし 第1回目のときにやってしまうと、まず移植ありきになってしまい、第2回の脳死判定 がいいかげんに行われるのではないかという批判がマスコミから必ず出てくるというこ とと、1回目から2回目の間の治療でも、移植の準備をしているのではないかというこ とが必ず出てくるだろうということです。  実際にそういう場面で批判をされているところもあります。何とか移植をふやしたい といいますか、協力したいという気持ちはあるわけですが、今、そのあたりのことをし てしまって本当にいいのか、少なくともしばらくはもう少し慎重に行った方がいいので はないかという意見が、実際に脳外科の中では強いです。  現実に、30例中、脳血管障害が22例と、外傷が6例ありますから、もちろん救急に属 して関与している人たちもいますけれども、ほとんどのケースに脳外科の医者が関与し ております。提供で終わればいいのですが、その後1年以上も調査が入るというような いろいろなことがあって大変に迷惑をしているということも現実にあるものですから、 そう簡単に、第1回の脳死判定終了時にすぐ臓器移植のレシピエントに対して問い合わ せをするということは現状ではよくないのではないかと私は思います。  黒川委員長  確かに家族の方も、1回目に脳死となっても、まだ2回目をしなくてはいけません し、もう少しお願いしますということで、何とかならないかというような話もたくさん 入ってきますし、貫井先生がおっしゃるような懸念をされる人もいると思います。  もう一つは、ドナーが出ている施設の経験の温度差というものもいろいろとあるので はないかと思います。数が少ないと、それぞれの施設のエクスペリエンスが非常に少な いということも問題なので、認識の温度差はかなりあると思います。どこが平均的なと ころなのか、マジョリティーなのかという話はなかなか難しいと思いますが、ドナーを 出しているところは大変だと思います。  貫井委員  言い忘れていましたが、この統計は私がベーシックなデータを示してくださいという 話をしたので出てきたのだと思いますが、これで見ますと、少なくとも長くかかったか ら臓器が生かされなかったという証拠は全くありません。時間がかかるので、現場の人 たちが大変であるということは確かにあるかもしれませんが、前回の、せっかくの意思 を生かすために短くしたらどうかという議論はなくなってしまったわけです。  今度は、家族及び現場の人たちからそういう批判が起こるかもしれないけれども、そ れでいいのかどうかという意見聴取をしなくてはいけないのではないかと思います。  山本委員  3人の患者さんの御家族、あるいはその他のところでのお話しをさせていただきます と、やはり一番疲れるのは、現場のドクターでもネットワークの皆さんでもなく、家族 です。家族の負担を何とかしていただけないだろうかということが3症例での我々の印 象でした。  もう一つ大事なことは、経済性の問題で、第1回の脳死判定と第2回の脳死判定で覆 ったことはないということは厳然たる事実で、その間の6時間プラスアルファの経済性 ということも、命の尊さということはありますけれども、逆に見れば、相当に大きな支 出を我々はしているわけで、そのあたりのところもあると思います。  相川委員  今の議論はレシピエントに通知するということの議論であって、可能性が高いという ようなことで1回目の後に通知をするということでありますので、私のスタンスは、先 ほど言いましたように、1回目から2回目の間の6時間プラスアルファには最善を尽く すということです。  山本委員  経済性ということはそういった意味ではなく、我々のところでは、大体すべてが終わ るまでに45、6時間がかかるわけですが、その中の6時間プラスアルファというのは、 医療費ということではなく、ガードマンや職員、あるいはナースのディスカッションの 中に入ってくるというような、医療ではないところの問題だけでも相当な負担がかかる という意味です。  相川委員  負担がかかるのは事実で、私もその御意見に賛成ですけれども、今回の話は、通知を 1回目にしようが2回目にしようが、それは経済性にはあまり関係のない話だと思いま す。全体の話ではまさにそのとおりだと思います。  議論を戻しまして、私は今、貫井先生がおっしゃったようなお考えもあると思います が、一つの例として、前の委員会でも申し上げましたけれども、実際に救急の臨床現場 でも、一生懸命に治療をしていても、全身状態がかなり厳しくなってきますと、危ない からということで、御家族、あるいはかなり近い御親族をお呼びする事例は行われてい ます。しかし、呼んだからといって、治療に全力をあげないということではありませ ん。  そういう点では、第1回目の後で通知をしても、または先ほど北村委員がおっしゃっ たように、現実的には2回目で覆ったことはないということがありますが、私は2回目 を省略するというような意味で言っているわけでありませんけれども、そのようなこと をすべて考えますと、第1回目のときに、その可能性が非常に高くなってきたから、レ シピエントとしてもどうですかということを聞くことはレシピエントのメリットにつな がると思います。  つまり、自分が移植を受けるのかどうかという判断も大きなことですので、急に言わ れるよりも、その判断のために4、5時間の時間をあげるということでありますし、レ シピエントの施設では、キャンセルされる可能性もありますけれども、可能性が高いと いうことをもって、いろいろな準備態勢に入れるということはよいことだと思っていま す。  黒川委員長  確かに両方のコストはほとんど変わらないけれども、やはり両方の家族と、特にポテ ンシャル・レシピエントのサイコロジー、不安はすごく高いと思います。貫井先生のお っしゃることも無理のないところもあって、やはりもう一つは、ドナーになった方は予 定外に出てきますから、オペ室が20もあるような大きな病院であれば別かもしれません が、そうでないところでは、スケジュールされた昼間の手術などが全部飛んでしまうよ うな可能性が相当にあります。それでもいろいろな人がかかわってきますから、最近は プレスがたくさん押し寄せるというようなことはなぜかなくなってきて、それはそれで 結構なことですが、そういう意味で、今回と前回の議論では、メディカルなイッシュー としてはどうなのかというデータを出していただいたところ、それについては比較的満 足できるようなデータがあるということが今回初めてわかりました。  そうなると、やはりどうしても、ドナーを提供に至ったということになった病院なり 施設に、どうにかファイナンシャルな手当てをしないと、ただでさえ医療事故があっ て、スタッフはみんなくたびれきっていて、看護師さんもドクターも足りないことがわ かっているにもかかわらず、ドクターはふやさないと言っているし、医療費は減らすと 言っていて、仕事ばかりさせて、リスクがどうだ、インフォームド・コンセントがどう だ、態度が悪いなどと言われてしまっていて、それをどうするかということはパブリッ クが決めることで、最近の内閣府の国民の意識調査では、一番の悩み事は経済や就職で はなく、医療と健康です。  しかし、パブリックの意見が一番高いにもかかわらず、どうしてそこに政策として公 共投資のインベストをしないのか。そこに問題があるのではないですか。  ここで聞いておられる方は何を思っているか広く伝えて欲しいけれども、にもかかわ らず、まだ高速道路を2000キロつくってもらいたいという人が形式的には日本には多い わけで、国民の意識と乖離しています。また、ダムを380カ所つくってほしいわけです。  そういうポリシーを変えるのは我々ではありません。ここにはメディアの人はいない かもしれないけれども、メディアは何をしているのかということが問題で、きのうもあ る大新聞の人と、ポリシーはだれが決めるのかという話をしていたけれども、ポリシー を決めるためには内閣府の調査があって、みんないらいらしていても、決めるのは結局 政治だから、今度の法律をどう改正するかといっても、国民の声がそれだけ出てこなけ れば政治家もやらないし、それは国民の声がないのに一生懸命やっても、次の選挙に落 ちたらただの人になるからでしょう。  行政も、政治が決めなければ何もしないというふうに、待っているだけで何もしない から、自分が予算を取ったら出世ができるというようなことがあるかもしれませんが、 最初はみんな高い志で来るけれども、国家のビジョンは何かということを考える人がい なくてはいけない。まだ2000キロも道路をつくってほしいというけれども、国民の意識 調査は医療と健康で、しかし医療と健康は事故が多くて、医者と看護師さんやスタッフ に、あれをやれ、これをやれと言われて、だれもお金は払いたくないというのであれ ば、勝手にしてくれと言わざるを得なくなってしまう。結局はそれをどうするのかとい う話に来るのではないかと思います。  松田委員  議論がずっと続いてる中で、臨床的脳死診断というところが議論の外に置かれている のが問題と思いますが、そろそろ臨床的脳死診断というところについて、もう少し専門 の方々がそれなりの判断をすれば、大分スタートが違うと思います。臨床的脳死診断に ついて、どうもあいまいに受け取られているからこういった議論になるのではないかと 感じています。やはり臨床的脳死診断については、それなりの見解といいますか、何か を示した方が、この議論は進むのではないかと思います。  小中委員  今のお話は私もそのとおりだと思います。実際の現場の脳死臓器提供のときの医療ス タッフ、家族の問題ということを現実に感じているので、何とか短縮できないかという 思いが一つと、さらに先ほどの前回の脳外科学会に対するアンケート調査の結果を見ま しても、また、今の貫井先生のお話を伺いましても、また、実際の提供の現場ではない 場所で、いろいろなドクターの話を伺いましても、やはり貫井先生のおっしゃっている ような御意見もたくさん伺っています。  ですから、コーディネーターとしては、ここでどのように発言をすればということに 悩んで、発言のしようがなかったところですが、要するに臨床的脳死診断のところか ら、提供病院も御家族も既にスタートしてしまっていて、全体の時間が非常に長いとい うところで、心労、経済性の問題もあるので、そのあたりを少し解決していただければ いいのではないかというふうに思っております。  山勢委員  私は看護の立場からですけれども、実際に臓器提供をした施設の看護師への調査をし たことがありまして、何が一番困ったかということでは、臓器提供のドナーが出てしま うと、特別な看護チームを編成せざるを得ないということがありました。  まだ定着していない医療ですので、通常のスタッフでは対応できませんから、とにか く特別なナースのスタッフのチームを編成しなければいけないということですが、その ときに何が困ったのかというと、実際にそのチームに入った人の心労ももちろんありま すし、その他の患者さんへの看護の質が明らかに低下したということが現実にあったと いうことです。  1人の方の命に関する重みというのはあると思いますけれども、そのほかの患者さん への看護の質、量が低下してもいいのかどうかということは、やはり考えていかなくて はいけないことではないかというふうに思っています。  黒川委員長  そのように附帯した問題がいろいろとあって、一つだけのセグメントではなく、そう いうときに十分なマンパワーを、例えば臨時の人でもリクルートできるのかというバッ クアップ態勢が日本の医療でできますかという話もあるわけです。  40年前の健康保険はアクセスが非常によかったし、コストも比較的よくて、アウトカ ムも一番の高齢社会というのはいいけれども、やはり生活習慣も変わり、医療も進み、 情報が広がって、みんなはあれも欲しいこれも欲しいと言うけれども、国はそこにお金 を出したくないと言っているわけ。もっと国民が反乱を起こしてくれなくてはいけない けれども、意識調査と政策がこんなに乖離をしているのはなぜかということをもっとみ んなに考えてもらいたいと思います。  そういう意味では、今度、看護師さんは派遣もできるようになったので、例えば、移 植のドナーらしい人が出るから、4人ほど出してくださいというようなことはできるの でしょうか。  そのようにそこへ行くけれども、しかし看護師さんの質がどこでも同じくらいのレベ ルになっているかということや、中の人でなければわからないというようなこともある でしょうし、それはお医者さんについても同じことが言えるわけです。  そういう世界になっていかなければいけないけれども、それは今までの日本のあり方 ではみんなはよくわからなかったのではないかと思います。  山本委員  そういった部分で我々が看護師さんやその他のコ・メディカルの皆さんを雇うわけに はいかないので、エクストラの中でやるということでは、ネットワークからの補助金の 対象にはならないわけです。そこのところで、リクルートできるドクターなりコ・メデ ィカルがそういう形になってくればいいわけですが、それができないわけです。  黒川委員長  そうです。ですからこういう問題を、2回目を待たなくてはいいのではないかという ように矮小化せずに、もっと大きな問題があるということを現場の人たちは知っている けれども、役所にもそういうことをもっと認識してほしいということと、内閣府の国民 調査をどのように政策に生かすのかといったことも考えなくてはいけないのではないか と思います。  北村委員  貫井教授の脳外科医としてのお考えも、気持ちはよくわかるのですが、第2回の前に 通知することは移植ありきという観点は、このセッティングには少し合わないのではな いかと思います。  第1回の脳死判定が行われて、臓器を提供するという本人と御家族の意思のもとで行 っている段階ですので、我々はこの流れの中で、目的に向かって、いかに移植を成功さ せるかという道順に乗った話ですから、ここでもう一度、第2回目の脳死判定前の通達 が移植ありきということが前面に出るとおっしゃるのは理解ができないと思います。  貫井委員  私がそう思っているのではなく、一般にそう思われがちだということです。今までの 例を作業班でいろいろと検証してきた経験でも、私たちは提供側の気持ちも移植側の先 生方の気持ちもわかるのです。しかし、こういうことをやって、移植が後退しないの か、あるいはもっと進むのかという判断は必要だろうと思います。  私が移植ありきと思っているということではなく、マスコミを含めたいろいろな人た ちがそういう動きをする可能性は十分あるので、そのときに提供側の人たちが、面倒く さいからできるだけ提供しないようにしようという感じになっては困るということを心 配しているだけです。  黒川委員長  そのとおりです。これによって移植がふえるとか減るという話ではなく、やはりジェ ネラルな国民の信頼の問題でしょう。しかしパブリックは、ポリシーメイキングのプロ セスにエンゲージするのかということは、日本の伝統では今までにありません。  役所が政策をつくって、役所がそれについて何かやっているのだから無責任だと私は 言っているのだけれども、今ようやく、そういうプロセスがおかしいのではないかとい う情報が開かれてみんな考え出したのではないか。  今まで、みんなが役所にお願いしますと言っていたのはなぜかというと、そこが権限 を持っていたと思っているからでしょう。  それがいつもこの議論の最後に来るけれども、だれが決めるのかということでは、こ れを公開しているということもそうだし、聞いている人は自分でどのようにそれをでき るのかということを考えてほしいと思っているわけです。  私は今、たまたま内閣府の総合技術会議などに出ることになっているからいろいろと 言うけれども、例えば大学改革ということがあります。大学の偉い先生たちが15人くら い来ているので、いろいろなヒアリングをすると、いろいろと立派なことを言うわけで す。  それは公開されているから役所の人もたくさんいるし、役所にもまじめで若くてすご い人たちがたくさんいるし、報道もいるけれども、例えば、私は国立大学が独立行政法 人化するに当たっては非常に期待したことがあります。先生たちは学の世界にいる。先 生たちの常識は、学部長というのは教授会が選んでいるのではないですか、こんなこと をやっているのは日本だけですよ、しかも学長というのは学部長経験者の中から選ばれ ているのではないですか、こんなことをやっているのは日本だけだということを先生た ちは知っているのかという話をした。それが常識だと思っていながら、省庁の縦割りの ことを言う資格などがあると思っているのですかと私は言ったけれども、学の世界で自 由度の高い人がそれが常識だと思っているのに、福沢諭吉は明治5年にそんなことはお かしいというようなことを言っています。明治5年と今では違うけれども、学の世界が 今までそれが常識だと思っているのが私は非常に情けなくて、将来の日本を背負う人 が、そんな大学に4年間も通ってくるということでは非常に心配だという話をした。そ のくらいのことを言わないと、日本の常識がいかに世の中とかけ離れているかというこ とを学の人がわかっていないのが困ります。  1カ月前に、MITのプレジデントに選ばれたのはだれか知っていますか。49歳の女 性です。エール大学の学長をやっていた人です。学長になったのは1年前です。エール の教授になったのは4年前です。エールに来たのは10年くらい前です。ニューロサイエ ンティストですが、運営能力も優れていて、教育にも優れていて、エールの学部長もし ているけれども、その人をMITのプレジデントに呼んで来るという大学の責任感とい うか、何をするのかということを社会に訴えているようなことを、大学という比較的フ リーダムが高いところでやらないということに日本の問題がある。お医者さんのコミュ ニティーもそうだけれども、どういうことをすべきなのかということを明らかにして社 会に発しているという歴史がないから仕方がないけれども、そういう話で、移植がふえ ないかということについては、日本の人は別に移植は欲しくないのではないか、脳死は 嫌だということかもしれないし、どうするかということではないかと思います。  やはり、移植が必要だと言っても、最終的に必要かどうかを決めているのはパブリッ クだから、自分には関係がないからいいという人の方が圧倒的に多いのであれば仕方が ないという気もするので、この委員会は公開されていますから、どのようにやるかとい うことは難しいです。  これをやったからといって、ふえるとも減るとも言えないし、現状では医療関係者は 悲鳴を上げるほど働かされているということだけれども、国民の認識としては、まだや ってくれることが足りない、よく診てくれない、インフォームしてくれない、時間がな いと言うけれども、あれだけ働かされて、時間がないと言われても困るという話です。 皆さんはまだ2000キロの道路にお金を払いたいのだから仕方がないですが。  そういったことで、どうするかということでは、続けてやるより仕方がないと思いま す。貫井先生もそう言われるし、提供側も、山本先生と相川先生がそう言ってくださる ということは私どもは非常に心強いと思っているけれども、国民の意思がどこにあるの かということを探るためには、やはりメッセージを出さなくてはいけないと思います。  松田委員  めったに集まらないのですが、その都度、ある程度進むかと思って来ますけれども、 またいろいろな議論が先へ行きます。  例えば、ずっと論点整理をやっていますが、きょうの議論でも、一つ一つの各論的な ところへいくから、また総論の話になって、本質の話になります。  例えば先ほどの話でも、貫井先生がおっしゃったように、検証の問題は、既に30例あ ったのであれば、変えていくためのステップが来ているわけで、そこを幾つかクリアす れば、ほかももっとまとまっていくと思います。  最初のカードの話でも、結局は本人の意思がはっきりしないけれども、否定もしてい ないのであれば家族にゆだねようということでは大変なので、現在は、せっかく出して くれた答申で、現状としては、あの事例に限っては、同じものが出てきた場合はこのよ うにするというように、何か進めてもらわないと、なかなか難しいのではないかと思い ます。  黒川委員長  町野先生に聞きたいと思いますが、脳死の立法の精神からいうと、ガイドラインなど で、1回目、2回目の脳死判定といったことをセットしたけれども、この委員会でそう いうことをどんどん変えていいのですか。  町野委員  法律事項ではありませんから、それは構わないと思います。レシピエントへの通知を 早めるという議論が随分昔からあったという御紹介がありました。2ページにあります レポートですけれども、私はそのときには早めていいのではないかという考えでした が、多くの人は、時期がそこまで熟していないという判断でした。  きょうの御議論を承っていますと、かなり昔とは雰囲気が違ってきているという感じ がしましたけれども、一つは、第2回目の脳死判定の前にレシピエントに通知するとい うことは、本人の死ということを前提にした行動であるからよくないのではないかとい う議論があったのですが、必ずしもそうではないということを皆さんが認識をされたと 思います。  もしそれを言うのであれば、臨床的脳死判定の次に動き出すというのもよくないとい うことですが、それは認められています。さらに、恐らくマニュアルの中には出ている と思いますけれども、第2回の脳死判定が終わる前から検視の人に連絡をするという手 続がありますが、それもおかしいとは思わないわけです。ですから、この点については 恐らく受容されただろうと思います。  もう一つの問題は、脳死臓器移植ということを前提にして動き出すと、延命医療や脳 死判定がおろそかになるのではないかという危惧があるということですが、それも現在 は恐らく解消されているのではないかと思います。  もう一つは、家族がそれを受容するかということですが、それについても今のお話を 承っていると、家族の側はむしろそれを希望しているということですので、その点は問 題ないと思います。  最後に、貫井先生や黒川委員長が言われましたとおり、世論がそのことを受け入れる かという最大の問題が残っていると思います。そのためには、きょうの御議論でもいろ いろとありましたとおり、臨床現場でのいろいろな問題等を全部出した上で、マスコミ の方が全部書いてくださればよろしいのですが、今までのところはなかなかそうはなっ ていないようですので、透明性ということで、ここから発信する必要があるのではない かと思います。  パブリックコメントをするかどうかは別として、そういったことをやってからでなけ れば話が進まないのではないかと思います。  北村委員  時間もなくなってきましたので、黒川委員長の御英断で、厚生労働省臓器対策室に、 何をするかということをこの委員会からおっしゃっていただいて、例えば先ほどパブリ ックコメントを取るということがありましたが、それをどの時期にやって、どの委員会 を開いて進めましょうということにつきましては、黒川先生の御英断をぜひお願いした いと思います。  黒川委員長  ここはやはり皆さんの知恵の絞りどころで、お医者さんのコミュニティーもそうだけ れども、患者さんのグループなんかにも、当然レシピエントに登録している人たち、ま たドナーカードを持っているような人たちもだんだんと広がってはいるけれども、自分 自身のこととして考えるかどうかです。  それにはやはりふだんから情報が出るかどうかですが、例えば行政的には、ホームペ ージに出しているといっても、そんなものはだれも読みません。ホームページに出てい るからよく読んでくださいということをしょっちゅう言わなくてはいけないけれども、 そこまではなかなかやれないのは仕方がないですが、例えばこの委員会やネットワーク や学会というようなところで、小さくてもいいから、課題があるということを出してい ることが大事で、突然ここへ来て、それを決めるのは非常に難しいと思います。  突然出てくるのではなく、ふだんのアクティビティーの中で是か非かという話があっ て、確かに町野先生がおっしゃるように、念には念を入れて、1点の曇りもないように ということになってきた理由についても、ヒストリカルにないわけではないけれども、 やはりパブリックのパーセプションもそうですし、救急の現場のお医者さんの方も、か なり信頼関係が変わってきているのではないかということは認識していると思います。  しかし、本当にそうなのかということを即断するためには、そういうイッシューがあ るというキャッチボールを積極的にやっていないと、新しい案件があって、またキャッ チボールするということではなく、数は少なくてもふだんからキャッチボールをしてい るということが非常に大事なので、メディアの場合は、彼らから見たニュースとしての バリューとプライオリティーがありますし、紙面が限られているということで、そうな ってくるのはやむを得ないけれども、そういう意味で、脳外科もそうですし、救急もそ うですし、移植もそうですし、そういういろいろなところで、常に何らかの形でキャン ペーンをしていないといけないのではないかということを事務局とよく考えないと、急 にどうでしょうかということでは、やはりデータも見せていただくと、こういうデータ を学会などのいろいろなところへ出してくるといった話もしなくてはいけないのではな いかと思う。私たちも最終的にどういうリコメンデーションをするかということについ ては、もう少しカンファタブルで、よりコンフィデントで、しかもみんなが100%アグリ ーするということはないにしても、マジョリティーはそういう認識だという話で持って いくということはできると思いますので、ネットワークも事務局も少し考えましょう。  また、文書を出すなどして、関係学会などに、どういう意見があるのかということを 聞くのかどうかということを含めて考えましょう。  事務局(関山課長)  パブリックコメントというお話がありましたが、それには一般的に、具体的で、ある 程度わかりやすい形で問うていかないと難しいので、今、町野先生がおっしゃったよう に、問題となっている点がどういうものか、それは具体的にどのようにクリアできるの かというところを、私どもでももう一度整理させていただき、今後の進め方について は、委員長にお話しいただいたように、もう一度委員長とよく相談をさせていただきた いと思っております。  黒川委員長  今はパブリックコメントということよりも、むしろ学会やドナーやネットワークとい った、もう少し狭い関係者の範囲で、どういう感じなのかという話が少し出てきて、こ ういう反応になってきているという話がないと、パブリックコメントをするにはまだあ まりにも準備不足です。広報活動は大事なので、それをよく考えていないと、突然出て きても難しいと思います。  そういうことで、きょうは結論は出さずに、結論を出すための雰囲気づくりといって はおかしいですが、町野先生がおっしゃるとおり、より広いと言っても、関係者といっ たあたりもそういうことを認識しているという話が広がってこないと、全員一致という ことは世の中にあり得ないと思いますが、そういったプロセスを取ることが大事だと思 います。  それでは続けて予算にいきましょう。  事務局(片岡室長)  それではお時間もありませんので簡潔に御説明をいたします。資料4、17年度の移植 対策関係予算の概算要求をごらんください。  臓器移植関係は1番でございます。現在は5億2400万を要求しておりまして、対前年 度では若干のアップになっております。  内容的には(1)にあります公共広告資料作成費でございます。国民の関心あるいは 移植カードの普及等が少し伸び悩んでいるような状況もございますので、効果的なPR ということで、公共広告機構を活用したテレビCMやラジオCMといったことをやって みたいという要求をしております。  また、(2)と(3)は施設・設備整備費でございます。これはメニュー予算ではご ざいますが、現在の三位一体改革で、地方団体からの方からは一般財源化の話が出てい る内容でございます。移植関係は、メニュー予算で額も小さいですので、全体の動きの 中でしかるべく対応をしていくということで考えております。  以上でございます。  黒川委員長  ふえるということもほとんど期待されませんし、むしろ税収が減っているから方々で 切っていかなくてはいけないし、三位一体で厚生労働省や文部科学省も大変だと思いま すが、やはりパブリックがどう思うかという話をどうするかという話はなかなか難しい ですけれども、少なくとも関係者の中では、どういう問題が今、議論されているかとい うことや、どういう問題が認識されているかということは個別の案件ではなく、そうい う話をどうやって広げていくかということですので、移植学会その他、救急学会、ネッ トワークに、情報をどのように集中して、ホームページをアップグレードするかという ような話も非常に大事なので、そのあたりはまたぜひ相談させてください。  特に先生方の意見は非常に大事ですので、ネットワークと対策室の両方がどのような 政策を出すかということを十分に考えて、予算の手配はどうするかということはまた厳 しいところですが、ぜひやっていただければと思います。  大久保委員  今、お話がありましたように、認識ということで、皆さんにこれから考えていただき たいと思いまして、問題提起させていただきます。  先の日本移植学会の評議委員会の中で、膵島移植のやり方について一応の合意ができ まして、ようやく日本でも、あるシステムに乗って膵島移植が始まったというところで す。  数としてはまだ6例か7例くらいですが、非常に有効な手段であるということと、も う一つは、組織移植ではありますが、実際は、摘出してどなたに差し上げるかというこ とを決めなければいけない、要するに非常に臓器に似た移植ですので、将来的に進む中 で、レシピエントの選択といったようなことを公明公正にするためにも、組織移植では ありますけれども、ネットワークの関与をふやすといった方向で、ここは臓器移植の委 員会ですが、ぜひ議論をしていただきたいと思っています。  黒川委員長  そのほかに何か御意見はありますか。  いつも生産的でない問題になるようだけれども、これは根本的なあり方を言っている だけの話で、それぞれのソサエティーが自分の社会的責任は何かということをもっと考 えてくれと言っているのだけれども、なかなかそういうふうに動くことは難しいという ことを痛感しているこのごろですのでよろしくお願いいたします。  北村委員  カードのことに対する社会の理解については、きのうかきょうの新聞でもディスカッ ションされましたけれども、やはりやるべきではないかという意見が以前にも増しては っきりと出てきているように思いますので、パブリックコメントを取られた後には、ど うするのかという態度をはっきりと示していただきたいと思います。  パブリックコメントには決定権はないと思いますし、しばしば反対意見の方はしっか りと書かれて、賛成の人は何も書かないということもありますけれども、その結果を踏 まえて、どう踏み込むのか、いつ踏み込むのかということについても、委員長の英断 で、我々の多くで集約したものがきょうのところであろうかと思いますし、やはり踏み 出すべき時期ではないかと思いますので、それぞれの立場の役割を努めなくてはいけな いとおっしゃいましたけれども、先生がどちらになられるかということが焦点ですの で、よろしくお願いいたします。  松田委員  今回、町野先生のおられる委員会でカードのことをまとめられましたが、それをまと めたときの皆さんの雰囲気と、きょうの議論でもう一度パブリックコメントを云々とい うことがありましたが、その方向が、期待と少し違うというようなことはないですか。  町野委員  私の印象ではほとんど同じでございますが、本人の署名と家族の署名が入れ違ってい たところについては、きょうは疑問を示される見解の方が少し強かったという感じがい たします。  松田委員  もう一度委員会に戻すという議論がありました。要するに手続的なことですが、作業 部会としては、これだけ渡したから役は終わったと考えられているというような雰囲気 はなかったのですか。  町野委員  私は、実はきのうの段階ではもう終わったというふうに思っておりましたけれども、 皆様がどうお考えになっているかということは私はわかりません。  例えばパブリックコメントの文案を練り直して、それをそのままこの委員会や作業グ ループで議論せずに出していいのかという問題は確かにありますので、やはりもう一度 やった方がいいかという感じはしますけれども、それについてはこの委員会でお決めい ただければいいのではないかと思います。  あとは、委員会の中で、メールなどで回覧した上で御意見を承るというようなやり方 もいろいろとあると思います。  黒川委員長  パブリックコメントについての問題点を明らかにして、何について聞きたいのかとい うことをはっきりと出さないといけないと思いますので、それを集めて分析して、町野 先生が属している委員会で一度検討していただいて、ここでやりましょう。  北村委員  しかし、この委員会では、出してよいという意見だと考えてよろしいですか。  町野委員  あのときは、パブリックコメントの話は事務局の方からはありましたけれども、それ に対しては、そうですかという程度でございました。  黒川委員長  これはこちらから出しています。  北村委員  そうですが、この委員会としては、その案を、運用上の改正という形でお願いしたい という総意があったと判断してよろしいのですね。  黒川委員長  それはパブリックコメントを見た上のことですが、先生のような懸念があるのはわか っているけれども、インターネットで出すとすると、わざわざそれを読んでパブリック コメントを書く人というのは、ある程度のバイアスがあるかもしれないけれども、どう いう人かと言うことは知らないわけではないですし、マジョリティーがどうかというよ うな大統領選挙のような単純なこととは違いますから。  北村委員  しかし、しばしばこのような委員会の報告には、多数意見はこのようであったという ことや、少数ながら反対意見があったということがありますが、この委員会としては、 この案を進めるべきだという意見が多数だったと解釈してよろしいですね。  黒川委員長  そうでしょう。  北村委員  反対意見がなかったということでもよろしいですね。  黒川委員長  大きな反対はなかったと思います。署名のことと、ドナーカードをわかりやすくする ためにはどのような工夫があるのか、もっと知ってもらうためにはどうすればいいかと いういろいろな話が附帯して出てきているということは認識しているということだと思 います。  北村委員  この委員会ではそれが総意に近いということであれば、ぜひ厚生労働省臓器対策室は 進めてもらいたいと思います。  黒川委員長  以前、生前の遺言でやっていいかという話があったときに、7回の会議とパブリック コメントをしたら、それでいいという意見が9割で、反対であるという意見は1割でし た。  それはどういう人が言うかというと、やはりドナーやレシピエントになった人のファ ミリーはどうだろうかという話もありました。すると、両方にありました。そういう分 析をした上で、遺言でやってもいいという意見が圧倒的に多かったですし、意見は二つ くらいに分けていたけれども、それでもそれを決めるのはここではないという結論に達 して、法律の趣旨がそうではないのだから、それは国会で決めてくれない限り、こちら では動けないという結論で、そういうプロセスをつくっていくのはすごく大事だと私は 思っていますので、ここで決められることは決めるけれども、ここで決められないとい うことを認識したということは非常に成果があったと思います。  だから町野先生に、どこまで決めていいのか、そのプロセスはどうなのかということ を伺って、それをするための要件は何かというと、より広いところにそういうことが十 分に知られているというプロセスが大事ではないかという話ですから、そういう話をす るのは当然だと思っているわけですので、そのあたりの共通のコンセプトとプロセス と、それから決めていくプロセスのリーガルフレームワークということをお互いに理解 しているのが大事なのではないかと思います。大変よかったと思います。  時間を超過してしまってすいませんでした。きょうはありがとうございました。                                     −了−                        ┌――――――――――――――┐                        │照会先:健康局臓器移植対策室│                        │担当者:斎藤・永野     |                        │内線 :2362・2366 │                        └――――――――――――――┘