04/10/05 薬事・食品衛生審議毒物劇物部会 平成16年10月5日議事録         薬事・食品衛生審議会 毒物劇物部会 議事録 1.日時及び場所   平成16年10月5日(火) 14:00〜   厚生労働省専用第15会議室 2.出席委員(10名)五十音順   赤 堀 文 昭、 井 上   達、◎井 村 伸 正、○櫻 井 治 彦、    白 濱 龍 興、 鈴 木 和 夫、 出 川 政 邦、 百     弘、   森 田 昌 敏、 吉 岡 敏 治 (注) ◎部会長  ○部会長代理   欠席委員(3名)五十音順   金 原   勲、 松 本 和 子   3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、   成 田 昌 稔(化学物質安全対策室長)  他 4.備  考   本部会は、公開で開催された。 ○化学物質安全対策室長 ただいまから平成16年度第1回薬事・食品衛生審議会毒物劇 物部会を開催いたします。よろしくお願いします。まず開催に先立ち、黒川大臣官房審 議官よりごあいさつ申し上げます。 ○審議官 大臣官房審議官医薬担当の黒川でございます。本年7月23日付けで拝命いた しました。毒物劇物部会の委員の先生方におかれましては、お忙しい中御出席いただき、 本当にありがとうございます。  今年2月に行われた前回の部会においては、長時間の輸送に係る基準の改正について 御審議いただいたと了解しております。関係政省令の改正については、7月2日に公布 され、この10月1日に施行されたばかりでございます。お力添え本当にありがとうござ います。  化学品の分類と表示に関する世界調和システム、いわゆるGHSでございますけれど も、毒物劇物に関する分類と表示をGHSという国際基準に合致させるための準備を進 め、現在来年度の予算要求において所要額を財政当局へ要求している状況でございます。 その一環として、本日の部会においては判定基準について御審議をお願い申し上げたく、 議題の一つに挙げさせていただいております。そのほか詳細については後ほど担当より 説明させていただきますが、本日は8件の毒物劇物からの解除についてお諮りする次第 です。委員の先生各位の忌憚のない御意見、御議論を頂きますよう、よろしくお願いい たします。簡単ではございますが、私のあいさつとさせていただきます。どうもありが とうございました。 ○化学物質安全対策室長 それでは部会長、本日の議事進行をお願いいたします。 ○井村部会長 皆様、大変御苦労様でございます。本日は審議事項として一応9件が予 定されています。よろしくお願いします。いつものことでございますが、議事に入る前 に事務局から本日の出席状況と配付資料の確認をお願いします。 ○事務局 まず本日の委員の先生方の出席状況ですが、本部会の委員定数は12名です。 本日は10名の御出席を頂いておりますので、開催に必要な定足数である過半数を満たし ており、本部会が成立していることを御報告いたします。なお、本日は金原先生と松本 先生が所用のために御欠席という御連絡を頂いております。  次に本部会の公開について申し上げます。本日の議題については、公開することによ り委員の自由な発言が制限され、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれ、又 は個人の秘密、企業の知的財産等が開示され、特定の者に不当な利益や不利益をもたら すおそれがあると認められないことから、開催は公開とさせていただきます。配付資料 についても、公開とさせていただいております。  続いて配付資料の確認をいたします。今回御検討いただく毒物劇物からの除外に係る 8物質の資料は、資料1〜8です。事前にお配りしたもので誤字等があった部分につい ては、修正して今日お配りしております。また、毒物劇物の判定基準の改正案の資料を 付けております。改正資料については資料9-1〜9-4、参考資料9-1〜9-4が添付されて おります。  なお、従前に委員の先生方に配付したin vitroの腐食性試験のOECDテストガイド ラインのドラフト案については、OECDの審議はもう既に終わっているのですが、ま だ公の場には公開されていないようでしたので、本日の資料からは除かせていただきま した。また参考資料として、現行の判定基準を付けております。資料の過不足等があり ましたら、おっしゃっていただければと思います。 ○井村部会長 ありがとうございました。資料はそろっておりますでしょうか。それで は議題1から始めさせていただきます。議題1は「2-フルオロ-4-(トランス-4-ビニ ルシクロヘキシル)ベンゾニトリル及びこれを含有する製剤の毒物及び劇物取締法に基 づく劇物からの除外について」でございます。最初に事務局から説明をお願いします。 ○事務局 資料1を御覧ください。この物質の名称は2-フルオロ-4-(トランス-4-ビ ニルシクロヘキシル)ベンゾニトリルで、現在有機シアン化合物として劇物に指定されて いるものです。主な用途としては液晶素子として用いられています。この物性について は別紙1を御参照ください。常温で白色の固体で、通常の取扱いにおいては反応性もな く、安定に存在するものです。別紙2を御覧ください。毒性試験の結果ですが、経口・ 吸入の急性毒性試験においては、劇物の毒性値の上限をはるかに上回っております。ま た、経皮の急性毒性試験は実施されておりませんが、ウサギの皮膚刺激性試験において は刺激性なしという試験結果を得ています。これらの結果を踏まえ、7月27日に行われ た毒物劇物調査会においては、除外することが適当である旨の御意見を頂いているとこ ろです。御審議のほどよろしくお願いします。 ○井村部会長 ただいま事務局から説明がありましたが、調査会の座長をしてくださっ ている櫻井委員から、何か付け加えていただくことはありますか。 ○櫻井部会長代理 特段ございません。 ○井村部会長 それではただいまの説明について、委員の先生方から御意見なり御質問 がありましたらお願いします。いかがでしょうか。もし問題がなければ、議題1〜8ま でのすべてについて薬事・食品衛生審議会あてに諮問を受けておりますので、議題1の この物質に関しては劇物から除外することが適当であるという答申をさせていただきた いと思いますが、よろしいでしょうか。  それでは議題2に移ります。化合物名は長いので省略させていただきますが、議題2 も同じような化合物です。これについても事務局から説明をお願いします。 ○事務局 この物質の名称は、2-フルオロ-4-[トランス-4-(E)-(プロパ-1-エン- 1-イル)シクロヘキシル]ベンゾニトリルです。現在、有機シアン化合物として劇物に 指定されているものです。資料1の物質とは、シクロ環の置換基がビニル基からプロペ ニル基に置き換わっただけのものです。また、シクロ環とプロペニル基の両方がトラン ス構造を持っております。この物性については、別紙1を御覧ください。先ほどと同様、 常温で白色の固体です。先ほどより若干融点は下がっておりますが、通常の取扱いにお いては反応性もなく、安定に存在するものです。別紙2を御覧ください。毒性試験の結 果ですが、経口・吸入の急性毒性については、最高投与量において毒性徴候は見られて おりません。またウサギの皮膚刺激性試験においても、刺激性がないとの試験結果を得 ているところです。これらの結果を踏まえ、毒物劇物調査会においては除外することが 適当であるという旨の御意見を頂いたところです。御審議のほどよろしくお願いします。 ○井村部会長 櫻井委員、何かございますか。 ○櫻井部会長代理 これについても特段のことはございません。 ○井村部会長 それでは委員の先生方、ただいまの説明について御質問なりコメントな りを頂けたらと思いますが、いかがでしょうか。これは今までにも随分いろいろな例が あったのですが、有機シアン化合物ということで、そのまま劇物になってしまうという ケースだと思います。 ○出川委員 前のものを見て、もう一度化合物のところを見たのですが、今審議してい る化合物は急性吸入毒性で、ラットに対してLC50が5.124mg/L(4hr)となっています ね。しかし「毒物劇物の新判定基準(案)」で見ますと、吸入のダスト、ミストが「0.5 mg/L(4hr)を超え」となっています。たしか先ほどの化合物もそうだったようですが、 これはよろしいのですか。 ○井村部会長 「ダスト、ミスト」のところですか。 ○出川委員 「(1)急性毒性」の(c)の項目の一番下のところに、「(ダスト、ミスト)劇 物」とあって、「LC50が…」と書いてありますね。これを超えているように思うので すが。 ○井村部会長 超えているのでいいですね。 ○化学物質安全対策室長 ダスト、ミストに関しては、吸入で毒物が0.5mg/L以下とい うことです。 ○出川委員 分かりました。私の勘違いでした。失礼いたしました。 ○井村部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、また先に進ませ ていただきます。  次は議題3です。これも劇物からの除外についてです。事務局から説明をお願いしま す。 ○事務局 この物質の名称は、2,6-ジフルオロ-4-(トランス-4-ビニルシクロヘキシ ル)ベンゾニトリルです。現在、有機シアン化合物として劇物に指定されているものです。 資料1の物質のベンゼン環にフッ素が一つ置き換わっています。この物性については、 別紙1を御覧ください。先ほどと同様白色の固体で、常温では特段反応性のない物質で す。別紙2を御参照ください。毒性結果については先ほど同様、経口・吸入は最高投与 量において毒性徴候は見られておりません。また、ウサギの皮膚刺激性試験においても 刺激性がないとの試験結果を得ています。これらの審議を踏まえ、調査会では除外する ことが適当であるという御意見を頂いたところです。御審議のほどよろしくお願いしま す。 ○井村部会長 櫻井委員、よろしいですか。 ○櫻井部会長代理 これも結構です。 ○井村部会長 特にないそうです。委員の先生方から何かコメント、あるいは御質問が ありましたらどうぞ。特に問題がないようでしたら、議題4に進ませていただきます。 先ほど申し上げませんでしたが、議題2についても3についても、劇物から除外するこ とは適当という答申をさせていただきます。  次に議題4です。これも劇物の除外についてです。事務局から説明をお願いします。 ○事務局 この物質の名称は、N-シアノメチル-4-(トリフルオロメチル)ニコチンアミ ド、ISOの名称としては「フロニカミド」という別名が付いています。現在、有機シ アン化合物として劇物に指定されています。この物質は農薬として農林水産省に農薬取 締法に基づく申請があり、農林水産省より照会を受けたものです。特に殺虫剤として開 発されたものです。この物性については、別紙1を御覧ください。常温では白色の固体 ですが、水への溶解度が5.2g/Lあり、実際の使用においても水に1,000倍以上希釈して、 農薬として使用されます。通常の取扱いにおいては安定な物質です。別紙2を御覧くだ さい。毒性試験の結果について説明します。経口試験においては高濃度で毒性により死 亡が見られており、LD50が雄では884mg/kg、雌では1,768mg/kgという結果が出てお ります。しかし劇物の判定基準である300mg/kgよりは、はるかに大きな値です。経皮毒 性においては、最高投与量において若干の毒性徴候はありましたが、死亡はありません でした。次に吸入毒性についてです。これも最高投与量において死亡は見られませんで した。これらの結果を踏まえ、毒物劇物調査会においては除外することが適当である旨 の御意見を頂いているところです。御審議のほどよろしくお願いします。 ○井村部会長 櫻井委員、これについてはいかがでしょうか。 ○櫻井部会長代理 これも特段問題はないということで、調査会では除外することが適 当という意見でした。 ○井村部会長 それでは委員の方々から御質問なり、御意見なりはいかがでしょうか。 よろしければこの物質についても、劇物から除外することが適当であるという旨、答申 させていただきます。  それでは議題5について、事務局から説明をどうぞ。 ○事務局 この物質は、(Z)-{5-[4-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニル スルホニルオキシイミノ]-5H-チオフェン-2-イリデン}-(2-メチルフェニル)アセト ニトリルという化学物質名称です。現在、有機シアン化合物として劇物に指定されてい るものです。この物質はシアン基が置換しているところの二重結合においてシス構造を 持っています。主な用途としては、フォトレジスト用の材料として用いられております。 この物性についてですが、別紙1を御参照ください。常温では黄色の粉末で、水には不 溶で有機物にはよく溶ける物質です。次に試験結果について、別紙2を御参照ください。 毒性試験については、経口・経皮・吸入のそれぞれの最高投与量において毒性徴候が見 られず、毒性がないとの試験結果を得ております。これらの結果を踏まえ、毒物劇物調 査会においては除外することが適当である旨の御意見を頂いたところです。御審議のほ どよろしくお願いします。 ○井村部会長 これについても調査会の方ではいかがでしたか。 ○櫻井部会長代理 追加はございません。 ○井村部会長 ただいまの事務局からの説明について、御意見、御質問がありましたら、 何なりとお出しいただきたいと存じます。よろしいですか。それでは議題5の化合物に ついても、劇物から除外することが適当であるという答申をさせていただきます。  次は議題6です。議題6についても劇物の除外についてです。事務局、よろしくお願 いします。 ○事務局 この物質は、4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウム・ヘキサフルオロ アンチモネートという物質です。現在はアンチモン化合物として、製剤共に劇物に指定 されています。この物性については、別紙1を御参照ください。常温では白色結晶の粉 末で、通常の取扱いにおいては安定に存在するものです。アルカリ性の水溶液に混和し た場合、分解するという知見が得られているそうです。別紙2を御参照ください。試験 結果ですが、経口については劇物の基準である300mg/kgにおいては、死亡が見られなか ったという結果を得ております。経皮については、最高投与量においても死亡が見られ ませんでした。吸入においては最高投与量で死亡が見られたものの、雄雌共に5匹中1 匹ということで、50%未満という結果が得られております。これらの結果を踏まえ、毒 物劇物調査会においては、除外することが適当である旨の御意見を頂いたところです。 御審議のほどよろしくお願いします。 ○井村部会長 櫻井委員、これはいかがでしょうか。 ○櫻井部会長代理 これも特にありません。 ○井村部会長 アンチモン化合物ですが、最近、液晶用の化合物が随分多いようですね。 先生方から何か御質問、御意見がありましたらどうぞ。 ○森田委員 経口のLD50が300mg/kg以上という書き方ですが、実際問題として、例 えば400とか500といったLD50の数値化はされていないで、とにかく値として300mg /kg以上なかったからいいということでいいのでしょうか。 ○井村部会長 300mg/kgを超えているから仕方がないと思いますが、事務局はいかがで すか。 ○事務局 今のOECDのテストガイドラインというのは幅で規定する試験になってお りますので、その試験でされたものですから、300mg/kg以上かどうかということで試験 がなされたものです。そういった意味では今後は幅での試験が出てくると思いますので、 正確なLD50を決めた試験は今後は出てこない可能性が多々あると思います。ただ、劇 物の原体はLD50300mg/kg以上は除外できると決まっておりますので、幅での結果も受 け入れることは可能だと思います。 ○井村部会長 森田委員、よろしいですか。 ○森田委員 大体それでいいと思いますが、御存じのようにアンチモンは例えばアンチ モニーハイドライドみたいなものが比較的毒性が強く、それでアンチモン化合物が全般 として比較的強いレギュレーションの下に置かれていると思うのです。例えば経口投与 の議論をしたときにブドウ酒と一緒に口に入れるとそうなるとか、そういう部分が若干 残ってはいるのですが、全般としてはこれでいいのでしょうねというような感想です。 ○井村部会長 ほかにございませんか。問題がなければ、この物質についても劇物から 除外することが適当であるという答申をさせていただきます。  次の議題に移らせていただきますが、この次は多少問題があります。議題7について 事務局から説明をお願いします。 ○事務局 この物質については昨年の部会において、原体と製剤を劇物に指定しました。 この物質は調査会で何度も議論されております。その議論の内容については、資料7の 最後のページに付けております。若干ややこしい話ですが、簡単に説明いたします。こ の物質はもともと農薬として開発されたもので、原体については吸入において劇物相当 の毒性を持っていたということで、昨年度劇物に指定されたわけですが、この物質の製 剤を除外できるかどうかということで、調査会の方で何度か議論されたものです。  別紙2に戻って、試験番号6を御覧ください。これはフロアブル剤という形状の剤を 使い、6.8%の製剤で試験をやった結果です。5.7mg/Lで毒性による死亡が1匹あったと いうことから、現行の判定基準の2-1の(1)により、毒性徴候で死亡が見られたので劇 物からは除外できないということで、いったん審議は終わったわけです。  しかし、この試験で用いられたフロアブル剤というのは、原料の調整段階から粉砕化 処理を加えて、その水で懸濁し更に濾過してということで、可能な限り噴霧される粒子 が小さくなるように特別に調整されたものです。実際にはあり得ないような厳しい条件 下で毒性徴候による死亡が1匹あったとしても、実際の流通経路ではこのような曝露リ スクはほとんどないのではないかという話もありました。また、実際の使用はドライフ ロアブル剤ということで乾燥剤として流通するわけですが、この状態で農家に供給され、 更に水で100倍に薄めて散布されるような使用状況において、6.8%ドライフロアブル剤 という実際に流通する剤としての試験データと、このフロアブル剤としての結果を比較 して、リスク評価において議論するべきではないかという調査会の議論がありました。  再度、別紙2に戻ってください。今述べた議論を踏まえ、色を付けている試験番号7 の試験結果が出てきました。この7の結果ですが、ドライフロアブルの試験においては 最高投与量の5.2mg/Lにおいて、毒性徴候も死亡も見られなかったということで、調査 会においては除外することが適当である旨の御意見を頂いたところです。御審議のほど よろしくお願いします。 ○井村部会長 この件については櫻井委員から、調査会での審議の経過をお願いします。 ○櫻井部会長代理 2度ほどにわたり、かなり議論が行われました。その内容は今の御 説明のとおりです。別紙2の「急性吸入毒性試験結果」を御覧ください。原体について は一番下の「参考」にありますが、経口毒性と経皮毒性がいずれも非常に低かったわけ です。経口毒性の一つの例を取りますと、原体の場合300未満が劇物になりますが、こ れは5,000を超えています。にもかかわらず、上記の1、2、3の吸入急性毒性試験は いずれも毒性が極めて高くなっていまして、その差が非常に大きいのです。そのことか ら前回は吸入毒性のデータを取って、一番上のものがLC50が0.3と1の間ですので、 判定基準に従って劇物に指定したのです。  原体はそうですが、製剤としては6.8%のフロアブルということで、まず6が出てま いりました。製剤の場合は10倍の安全率を見ましょうということになっております。判 定基準の2枚目の「2.毒物劇物の製剤の除外に関する考え方」の(1)では、「原則とし て次の要件を満たす必要がある」ということで、(1)として「除外する製剤の急性毒性は 弱く、基準で示された劇物の最も弱いものと比較して、10分の1程度以下と考えられる ものであること」というのが、まず第一条件なわけです。  そうですと、どういうことになるかというと、これはダスト、ミストですので、劇物 の最も弱い場合というと1mg/Lですから、その10倍以上であれば全く問題ないという ことになります。この場合、現実には10倍というのが実験不可能ということで、最大の 5.7、あるいは5.2で実験が行われました。そうするとその後の「この場合において投与 量、投与濃度の限界において安全が確認されたものについては、当該経路における急性 毒性は現実的な危害のおそれがないものと考える」に相当すると考えていいと思うので す。  ただ、例として「経口 2,000mg/kgの投与量において使用した動物すべてに、投与物 質に起因する毒性徴候が観察されないこと」という一文を設けたわけですが、この例を そのまま取ると、6のデータはこれに引っ掛かるわけです。と申しますのは、1匹死亡 があったわけです。これは毒性徴候の最たるものです。いずれにしましても、これは少 なくとも通常の1mgよりははるかに大きいLC50が5.7mg/kgを超えたところにあると 考えられるけれども、1例が死亡したことをどう考えるかと。厳密に例示されているも のも採用するとすれば、やはり適用除外にはできないだろうという意見もありました。  しかし10倍の安全サイドを見ているということが一つありますし、極めて毒性の出や すいスタイルで実験が行われています。それからもう一つは、吸入において4時間こう いった濃度が維持されることに偶発的、あるいは意図して曝露されるリスクは非常に考 えにくいわけです。経口でしたら誤って飲んでしまうこともあるでしょうけれども、こ の場合は吸入毒性です。そのようなことを考えると、リスクに対する防衛という意味で は、必ずしもそこまで厳しくする必要があるかないかという議論が行われました。  その後に7のデータが出てまいりました。これは6.8%のドライフロアブルというこ とで、より現実的な物質です。粒子の大きさもかなり効いてくるわけですが、濃度も粒 子の大きさも2.9μmや3μmではなくて4μmです。このデータでは除外の考え方の (1)の(1)に沿ったデータが出てきているという結果でした。6の結果で決定できなかっ た、迷いがあったところへ持ってきて、7の結果が出てきていると。それにもかかわら ず、また6に返って安全サイドを取って適用除外にするというのは適切ではないだろう と。調査会では全員一致というわけではなかったかと思いますが、6と7の両方のデー タを総合的に考えて適用除外を認めるという方向でおおよそいいだろうということで、 事務局案のとおりになった次第です。 ○井村部会長 ありがとうございました。そういう経緯があったようですが、いかがで しょうか。委員の皆様方からの御意見をちょうだいしたいと思います。実際に流通する 場合の状態は6.8%のドライフロアブル剤ですよね。これを使うときは、また水に溶か すのですか。 ○事務局 物によって希釈倍率は違いますが、実際に流通した後はこれを水に最低1,000 倍以上に希釈してから噴霧させます。実際はペレット状で、大体ミリオーダーのもので 流通します。噴霧する粒子径は20〜500μmということで、普通の農薬散布で使われる 粒子径で散布されます。 ○井村部会長 流通過程と同じような状態で死亡例が見られなかったということを調査 会では評価されたようですが、いかがでしょうか。それでよろしゅうございますか。そ れでは調査会の御意見のとおり、これは劇物からは除外するという答申をさせていただ くことになろうかと思いますが、それでよろしいですか。 ○出川委員 一点だけよろしいでしょうか。これは生産というか、製造にかかわる人の ことは余り考えなくてよろしいのでしょうか。そういう過程でこれを高濃度で扱う人の 立場は、こういう決定のときには考慮しなくてもよろしいのでしょうか。 ○事務局 毒劇法という範疇の中では、労働者曝露は考慮しないと言うとちょっと言い 過ぎではありますが、基本的には流通の際の規制と考えております。 ○井村部会長 櫻井委員、その辺はそれでよろしゅうございますか。 ○櫻井部会長代理 労働の場のリスクについては、また別に考えるべきことだろうと思 います。 ○井村部会長 ほかにはよろしゅうございますか。それでは除外するということで答申 をさせていただきます。  次は議題8です。事務局、よろしくお願いします。 ○事務局 名称は六水酸化錫亜鉛です。現在、原体の100%のもののみ無機亜鉛塩類と して劇物に指定されております。この物質は難燃剤として用いられております。物性に ついては別紙1を御覧ください。常温では白色の固体で、水等にはほとんど溶けません。 通常の取扱いにおいては、安定に存在するものです。別紙2の試験結果を御覧ください。 毒性試験では経口・経皮・吸入において、それぞれ最高投与量で死亡が見られないとい う結果を得ております。この結果を踏まえ、調査会では除外することが適当である旨の 御意見を頂いているところです。御審議のほどよろしくお願いします。 ○井村部会長 櫻井委員、これは溶媒に溶けないようですが、経口毒性のLD50を求め たときは、どういう試験をしているのですか。 ○櫻井部会長代理 懸濁液を使用しています。 ○井村部会長 何か特に付け加えることはございますか。 ○櫻井部会長代理 特段ございません。 ○井村部会長 ということでございますが、何か御意見ございますか。これは難燃剤と して使うということですが、どういう使い方をするのですか。 ○事務局 通常、難燃剤というとカーテンなどが燃えないように使われますが、これは 配線の皮膜などに用いられているそうです。 ○井村部会長 そういう品物ですが、いかがでしょうか。この物質を劇物から除外する ことが適当というように答申してよろしいでしょうか。それではそうさせていただきま す。  それでは議題9に入ります。これは毒物劇物の判定基準の改正をしたいということで す。これについて、まず事務局から説明をお願いします。 ○事務局 少し説明が長くなりますが、資料に沿って説明させていただきます。毒物劇 物の判定基準というのは、毒物劇物部会の内規という形になっております。今回は二つ の事項について改正を考えております。一つは腐食性に係る判定基準の改正、もう一つ が判定に係る化学的物性の考慮です。  まず、腐食性に係る判定基準の改正について説明します。資料9-3を御覧ください。 これは現行基準と改正案の比較表です。現行基準の方を御覧ください。まず皮膚・粘膜 に対する刺激性ということで、現行では硫酸、水酸化ナトリウム、フェノールなどと同 等の刺激性を有するものについては、劇物に指定するという基準になっております。資 料9-3の3ページを御覧ください。今度は劇物から除外する場合ですが、現行の劇物で ある硫酸10%、水酸化ナトリウム5%、フェノール5%の刺激性以下のものについては 除外するという基準になっております。しかし、この基準はOECDのテストガイドラ インに沿った試験結果、あるいは国際的な化学物質の毒性、物性等の分類基準である化 学品の分類と表示に関する世界調和システム(GHS)との関係も明確ではありません。  若干話がそれますが、ここで今話に出たGHSについて説明させていただきます。参 考資料9-1を御覧ください。GHSとは化学品の危険有害性に関して世界共通の分類と 表示を行い、いわゆる労働現場や流通過程において正確な情報を相手に渡し、人の健康 確保や環境保護を目的として国連で作成されたものです。この勧告の内容は国際機関の システムに基づいて、化学品が有する様々な有害性についてその程度を分類し、その有 害性に見合った国際標準のシンボル、ここで挙げてあるどくろマークや手が溶けている ような腐食性マークをラベルにはっていこうという基準になっております。GHSに基 づく化学品の有害性の分類というのは現行では26種類あり、それぞれ有害性の程度と区 分により、シンボルとそれに対応する注意書き等が定められております。今回議論させ ていただく皮膚の刺激性についても、ここで定められております。その基準の詳細につ いては参考資料9-2に付けております。  話を戻します。国際基準との関係を明確にするに当たっては、まず実際の試験結果を 踏まえ国際基準により分類されたものが、いわゆる毒物劇物の劇物に相当するのか毒物 に相当するのかを比較していかなければなりません。そこで硫酸、水酸化ナトリウム、 フェノール、水酸化カリウムについて、実際の試験データを使って国際基準で分類した 結果をまとめたのが資料9-4です。ここで用いられた試験結果は、OECDで評価され たものや国際的に評価された資料を使っております。  まず資料9-4を説明いたします。表1は現行の毒劇法での毒物劇物の判定基準、刺激 性に関する判定基準を示しております。表3がGHS、いわゆる国際基準に基づいた分 類基準を示しております。腐食性(corrosive)がカテゴリー1に、刺激性(irritation) がカテゴリー2に該当します。表3は少しややこしいのですが、簡単に説明すると、腐 食性というのは曝露後、皮膚に現れる症状がずっと元に戻らないような皮膚の変化をも たらすもので、刺激性というのは曝露後に症状が現れるものの、2週間など一定期間を 置いて元の状態に戻る程度のものという分類になっております。  これらを踏まえ、表2に戻ってください。横軸がGHSに基づく分類、縦軸がそれぞ れの物質を示しております。この結果を見ますと、硫酸については10%で刺激性なしと いうことになります。水酸化ナトリウムについては、曝露時間はいろいろな実験によっ て差がありますが、4%程度でGHSで言うところの腐食性と刺激性の境が来ておりま す。水酸化カリウムについては、大体10%から5%辺りでGHS上の腐食性と刺激性の 境が来ております。これらの結果により現在毒劇物は、硫酸については10%で劇物と普 通物の境が、水酸化ナトリウムについては5%で劇物と普通物の境が、水酸化カリウム については5%で劇物と普通物の境が出ております。若干の差異はありますが、おおよ そ毒劇法の劇物と普通物の境がGHS上の腐食性と刺激性の境辺りに来ているというの が、この表で類推されます。  国際基準では皮膚だけでなく、眼についても刺激性に基づく判定基準が定められてお りますが、それが表5-1です。国際基準ではウサギを用いたDraize試験によって判定を 行いますが、表5-1の分類、眼に対する重篤な損傷があるのか、それとも眼刺激性なの かというカテゴリーに基づいて分類した表が、資料9-4の2ページ、表2の(2)です。 これも横軸がGHS上の分類で、縦軸がそれぞれの化学物質を示しております。硫酸に ついてはかなりばらつきがあるのですが、大体5〜10%辺りで眼に対する重篤な損傷と 刺激性の間ぐらいに境が来ています。水酸化ナトリウムについては2〜3%、あるいは 10%辺りで眼に対する重篤な刺激と刺激性の境が来ています。水酸化カリウムについて 1〜5%、フェノールなら5%以上となっております。この表を比較しまして、現行の 判定基準では硫酸は10%、水酸化ナトリウムについては5%、水酸化カリウムについて は5%、フェノールについては5%で毒劇法の劇物と普通物の境になっております。若 干厳し目ではありますが、眼に対する腐食性ということで、毒劇法で言うところの劇物 と普通の境が、眼に対する重篤な損傷性と刺激性の国際基準の境が来ているということ になります。  次に化学的物性での判定及びin vitro試験についての話をいたします。資料9-3に戻 ってください。1ページの上にありますように、現行の判定基準においては原則として ヒトや動物の試験から判定することとされております。しかし、現在は動物愛護の観点 から代替試験法の開発が進んでおり、in vitro試験や物理化学的性質から合理的な判定 をすることが求められています。  参考資料9-3を御覧ください。試験ガイドライン404というのは皮膚の刺激性の試験 です。この最後の12、13ページを御覧ください。これは実際に404の試験ガイドライン に沿って実験を行う前にいろいろ考えなければいけないということで、フローチャート が作られております。12ページの3を御覧ください。ここで言いますとpH2以下、ある いは11.5以上については、動物試験をせずにcorrosiveに分類してくださいという判定 基準になっています。これをクリアして4、5と進んで、5を御覧ください。13ページ です。バリデーションが終わった有効なin vitro試験については、corrosiveの結果が 出たものは特に試験をせずに、corrosiveとして取り扱ってくださいということです。 現行の404の腐食性のin vitro試験のガイドラインについても、このような記述が既に されており、物性やin vitro試験で判定を行ってくださいということが書いてあります。  実際にOECDの方では、腐食性については既にin vitro試験ができております。ま だ公開はされておりませんが、既に審議は終えておりますので、いずれ公開されること になると思います。そうすると公開されたin vitro試験によって腐食性が出たものにつ いては、今後はその試験結果をもって判定しなければならないということになると思い ます。ですから、これらも今後の判定基準の考慮に入れていくということで、改正させ ていただきます。  資料9-1に戻ってください。以上の二つの話を踏まえ、以下のような改正をしたいと 思います。2に書いておりますように、現行の劇物指定の基準である水酸化ナトリウム 等の皮膚に対する作用及び国連勧告、GHSを踏まえ、皮膚に腐食性を有するもの、又 は眼等の粘膜に重篤な損傷を与えるものについては劇物にします。それからin vitro試 験等のデータも判定可能とします。また(2)にありますように、化学的な反応性や物理 化学的性質、あるいは構造等によって腐食性あるいは急性毒性が明らかなものについて は、毒物劇物に指定することを可能としたいと思います。実際の改訂案は資料9-2にあ ります。それから新旧表が資料9-3になります。  資料9-3で説明しますと、まず腐食性の皮膚・粘膜に対する刺激性については現行の GHSの基準をそのまま持ってきて、皮膚については腐食性を有するもの、眼について は重篤な損傷を有するものについての基準をそのまま持ってきております。2ページに 「(3)その他の知見」というのを新たに加え、「化学物質の反応性等の物理化学的性質、 有効なin vitro試験等における知見により、毒性、刺激性の検討を行い、判定を行う」 という一文を入れております。そして最後の3ページですが、いわゆる試験データにつ いて、皮膚に対する腐食性、眼に対し重篤な損傷性又は同等の刺激性よりも弱いものに ついては除外するということを入れております。  なお、この新しい判定基準は従前と同様、腐食性の程度にかかわらず急性毒性のない ものについてはすべて劇物として分類されることになります。急性皮膚毒性のように皮 膚を浸透して毒性徴候を引き起こすものと異なり、腐食性というのはたとえ曝露しても 皮膚の腐食にとどまることですから、腐食性物質についてはその物質が気体であるとか 特殊な用途で健康被害が強く懸念されるような特殊な事情がない限り、従前同様、原則 としてその程度にかかわらず劇物に整理してもよいと事務局では考えております。さき の調査会では語句や書きぶり等々の修正はありましたが、内容については適当である旨 の御意見を頂いたところです。御審議のほどよろしくお願いします。 ○井村部会長 櫻井委員、これらについて何か追加はありますか。 ○櫻井部会長代理 特段問題となるような討議はありませんでした。急性毒性について も従来30と300だったのを、GHSに合わせて50と300にしたという経緯はあります が、これも当然だろうと。たまたま従来の判定基準と比較的一致したところで区切れる というデータも示されたので、事務局案のとおりでいいというのが調査会の意見でした。 ○井村部会長 ありがとうございました。ということでございます。今の事務局の判定 基準の改正の説明について、委員の先生方はいかがでしょうか。御意見、御質問はござ いますか。まだ公開されていないからということで、今日in vitro試験のガイドライン は出てこなかったのだと思いますが。 ○事務局 もう既にOECDの審議は終わっており、決定したという案内は出ていたの ですが、まだホームページ等には公開されておりませんので、今回は下げさせていただ きました。 ○井村部会長 ただ、今度の新しい基準案の中の「その他の知見」で、「有効なin vitro 試験等における知見」という記述があります。このときに「in vitro試験」と書いてあ るのは何だろうと、委員の皆様がイメージを持ちたいとお思いになるのではないかと思 いますが、いかがでしょうか。どのようなin vitro試験を考えておられるのですか。 ○事務局 今ここに当てはまるであろうin vitro試験というのは、従前先生方にお配り したドラフト案のものになると思います。皮膚の腐食性に対する試験で、細胞のレイヤ ーを直接観察するものと、レイヤーの電気抵抗を測る試験です。いずれにしても両方と も試験管というか、細胞のレイヤーを使った試験です。これらについて例えば三次元の レイヤーを直接観察するものですと、どれぐらい溶けたかというところで基準がありま すので、その溶け具合というか、損傷具合によってcorrosive、あるいはirritantに分 けるという試験になっております。 ○井村部会長 いかがでしょうか。調査会でもリーズナブルであろうという判定があっ たようですが、この改正については御提案のとおりお認めいただけますか。もしお認め いただければ、この判定基準についてはこの案のとおり改正するということにさせてい ただきます。  今日は議題1〜9までずっとやってまいりましたが、これらは恐らく答申とは別に薬 事分科会の方に報告事項として報告されることになると思いますが、それでよろしいで すか。 ○事務局 議題1〜8については審議事項として、この部会に上げております。議題9 については部会の内規ということで、別途御審議いただいております。議題1〜9につ いては次の薬事分科会に報告させていただきます。 ○井村部会長 そういう予定になるそうですが、よろしゅうございますか。  最後に事務局から今後のこと等について、何かございますか。 ○事務局 次回の開催予定ですが、まだ決定しておりませんので、審議事項が固まり次 第、別途開催場所等については御連絡させていただく予定ですので、そのときにはよろ しくお願いします。 ○井村部会長 恐らく先生方の御都合について、日程調整が行くことになると思います。 本日の部会はかなり短時間で済みましたが、これで終了させていただきます。どうもあ りがとうございました。                                   ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 化学物質安全対策室 江原(内線2426) - 17 -