04/09/29 第15回社会保障審議会の議事録              第15回社会保障審議会 ○日時  平成16年9月29日(水)16:00〜18:00 ○場所  厚生労働省 省議室(9階) ○出席者 貝塚啓明会長      <委員:五十音順、敬称略>      岩男壽美子、岩田正美、鴨下重彦、岸本葉子、北村惣一郎、      京極宣、久保田泰雄、長谷川眞理子、廣松 毅、星野進保、      堀 勝洋、宮島 洋、山出 保、若杉敬明、渡辺俊介     <臨時委員:五十音順、敬称略>      野中 博、矢野弘典     <事務局>      井口直樹 政策統括官(社会保障)、清水美智夫 参事官(社会保障)、      宮島俊彦 大臣官房会計課長、牧原厚雄 統計情報部企画課長、      原 勝則 医政局総務課長、高井康行 雇用均等・児童家庭局総務課長、      椋野美智子 社会・援護局総務課長、村木厚子 障害保健福祉部企画課長、      山崎史郎 老健局総務課長、間杉 純 保険局総務課長、      貝谷 伸 年金局総務課長、宇野 裕 社会保険庁総務部総務課長、      古川夏樹 政策企画官 ○議事内容 1.開会   (古川政策企画官)  定刻になりましたので、ただいまから「第15回社会保障審議会」を開催させていただ きます。  審議に入ります前に、今回初めてご出席いただく委員のご紹介をさせていただきます。  全国市長会会長の山出保委員でございます。  続きまして、今回、2名の委員が交替され、新たにご就任いただいた委員のご紹介を させていただきます。  高木剛委員が退任され、後任として、8月26日付でご就任されました日本労働組合総 連合会副事務局長の久保田泰雄委員でございます。  糸氏英吉委員が退任され、本日は欠席しておられますが、後任として、日本医師会副 会長の櫻井秀也委員にもご就任いただいております。  先の参議院議員選挙で当選された中村博彦委員は、7月16日付で辞任されております。  また、事務局におきましても7月23日付で異動がございましたので、ご紹介させてい ただきます。  政策統括官の井口でございます。  社会保障担当参事官の清水でございます。  本日は、浅野委員、稲上委員、翁委員、奥田委員、櫻井委員、清家委員、永井委員、 西尾委員、山本委員がご欠席でございます。  若杉委員につきましては、遅れて出席とのご連絡をいただいております。  また、本日は、臨時委員の野中委員と矢野委員にもご出席いただいております。  出席いただいた委員が総数の3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりま すことをご報告いたします。  それでは、以後の進行は貝塚会長にお願いいたします。 (貝塚会長)  皆様、本日はお忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。  本日は、前回の審議会以降、各分科会・部会における審議も含めまして、社会保障に かかわる様々な動きがございましたので、事務局から報告してもらった上、委員の皆様 方からご意見・ご議論をお願いしたいと考えております。  それでは、早速議事に移りたいと思います。  議題1の「平成17年度厚生労働省予算概算要求の概要等」及び議題2の「三位一体改 革等の動き」については関連が深いことから、事務局から一括してご説明いただき、そ の後、ご意見を伺うこととしたいと思います。  それでは、資料1−1から資料2−2まで、一括して事務局から、簡潔に説明をお願 いします。 (宮島会計課長)  会計課長の宮島と申します。資料1−1に基づきまして概算要求の概要をご説明いた します。  1ページですが、17年度の一般会計の要求・要望額は21兆2,673億円でございます。  2ページの図に移っていただきまして、この中で義務的経費が20兆1,277億円、これ は主に年金国庫負担、医療費、介護などの国庫負担で構成されております。ここにつき ましては自然増が1兆800億円あるんですが、年末までに2,200億円削りなさいという 閣議了解の上で認められております。  公共投資関係費は社会福祉施設整備費や水道の整備費ですが、3,073億円の要求をし ておりまして、年末までには341億円を削り、マイナス3%の要求額になっております。  福祉関係などの裁量経費は1,127億の増で要求していますが、これも年末までに2% 削ることになっております。  下に書いてありますが、予算編成過程で検討することとして、一つは、社会保険庁の 年金でやっている事務費を一般会計のほうに振り替えるという話。もう一つは無年金障 害者の給付金制度に要する経費の取り扱いについて、これも年末までの予算編成過程で の検討ということになります。  3ページにいきまして、特別会計は年金、医療保険、労働関係ですが、総額で72兆 7,360億円の要求・要望額になっております。  4ページ以降は個別の政策立ての要求ですが、まず第1は「健康フロンティア戦略」 の推進のため、総額で1,126億円の要求となっています。生活習慣病対策、介護予防対 策によって、医療費や介護の費用を減らしていこうというものです。  8ページですが、第2は次世代育成支援対策の更なる推進です。新エンゼルプランに 代わる新たなプランとして、子育て支援、保育サービスなどを盛り込んでおります。あ とで清水参事官から説明がありますが、三位一体改革になると、このへんの予算はほと んどなくなってしまうことになっております。  13ページですが、第3として、フリーターや無業者の若者にどうやって働いてもらう かということで、若年者を中心とした「人間力」強化対策を盛り込んでおります。  17ページですが、第4は雇用のミスマッチ縮小のための雇用対策の推進です。これは 従来から取り組んでおりますが、市町村や地域で雇用のミスマッチをなくす対策をして いただくための予算を主に盛り込んでおります。  20ページですが、第5は高齢者対策です。介護対策の充実、高齢者の雇用、年金、社 会保険庁予算などが盛り込まれております。  24ページですが、第6は障害者の自立支援の推進と良質な福祉サービスの提供です。 障害者につきましては、新障害者プランの推進とともに、今年は雇用・就労に結びつけ ていく対策を充実していくという予算立てを行っております。  28ページですが、第7は安心・安全の職場づくりと公正かつ多様な働き方の実現とい うことで、新しい時代に対応した雇用のための環境整備を盛り込んでおります。  30ページからは第8.医療の関係、34ページからは第9.医薬品、食品等の安全対策、 39ページ以降は第10.各種施策の推進として、国際社会への貢献、戦傷病者・戦没者遺 族の援護等ということになっております。私からの説明は以上でございます。 (清水参事官)  引き続きまして、社会保障担当参事官の清水でございますが、私から資料の説明を申 し上げます。  その前に、参考資料について一言だけコメントさせていただきます。  黄緑色の冊子は27日に発表させていただいた「社会保障給付費」ですが、平成14年度 の社会保障給付費は総額83.6兆円になっております。  その後ろに、日本経団連の「社会保障制度の一体的改革に向けて」という資料がござ います。今日は貴重な機会ですので、配付をという日本経団連からご要請がありました ので、添付させていただいております。  私からは資料1−2に基づきまして、税制改正の説明をさせていただきます。  表紙にありますように、5本の柱で税制改正要望をしておりますが、全部で58項目に のぼります。内容的に一番多いのは租税特別措置です。2年なら2年の期限をつけて創 設されたものでして、その期限到来とともに延長していただきたいという要望をするも のが一番多くなっております。  2番目は法律改正を伴うものです。ある法律でAという名前の給付があるとしますと、 それをBという名前の給付に名称変更をする、あるいは今までの給付の在り方を見直し て、Cという新しい名前の給付を作るといった場合、当該給付について非課税などの措 置を講ずるためには、このような形で要望しておいて、法律の形が定まった時に整理を するといった手続きになっておりますので、そのような形で要望しているのが10項目あ ります。  ページをお示ししないで恐縮ですが、主要な項目として、幼稚園と保育所に係る総合 施設に関する税制上の所要の措置、教育・人材育成関係の費用の税額控除制度の要望、 病院・診療所の建物の耐用年数の短縮の要望、介護や子育て支援サービス事業を行うN PO法人に関する税制上の支援の充実など、これらを税制改正要望として税制当局に要 望しております。  引き続きまして資料2−1、三位一体改革の関係についてご説明申し上げます。  骨太の方針において3兆円の補助金改革をすべしということが書かれておりますが、 17年度と18年度にどういう形で改革するかというのを16年の秋までに固めるべしとして います。それに基づいて、どういう補助金を改革するかというのを地方にご意見を出し てくれということで、内閣官房から地方団体に要請がありました。  8月24日、地方六団体から総理に三位一体改革案、その一部として補助金廃止リスト の提出がありました。内閣官房の指示ですと、11月中旬までに三位一体改革の全体像を 固めるというスケジュールになっています。  地方六団体の案では3兆2,000億円の国庫補助金負担金の廃止すべきとなっておりまし て、そのうち9,444億円が厚生労働省関係です。  4ページをご覧ください。円グラフの真ん中にありますように、厚生労働省関係の地 方公共団体向け国庫補助負担金は12兆円にのぼりますが、義務的な負担金といわれてお ります国民健康保険、介護などが多うございます、その他が約1兆8,000億円ありまし て、そのうち9,444億円を廃止するというご提言です。  残りの中にも公費負担医療、原爆被爆者援護等々が入っていますので、9,444億円は 厚生労働省関係の一般会計の裁量的補助金のほぼすべてといってもいいものです。  5ページの三位一体改革に係る地方六団体の提案概要をご覧いただきたいと思います。 平成17年度及び18年度に廃止して税源委譲すべき国庫補助負担金として、総額約9,444 円の中身は次のようになっております。  まず施設整備関係が全部で約1,677億円となっています。主なものとしては、福祉の 整備の関係、BSE関係の検査キットとか保健衛生の関係の整備、医療施設近代化、救 命救急センター等の医療施設の整備の関係など、国債発行対象経費関係です。  次に運営費・事業費関係が書いてありますが、補助金名ですのでおわかりになりにく いかと思いますので、6ページをご覧いただきたいと思います。  地方団体廃止リストに挙げられています廃止事業は、へき地医療対策、救急医療対策、 8020運動の推進、SARS・新型インフルエンザ等の感染症対策などを国庫補助負 担金をゼロにすべきというご提言です。  その下にあります国に残る事業としては、難病医療費、結核医療費、原爆被爆者関係 になります。  次に8ページをご覧いただきたいと思います。児童福祉関係では、保育所の整備、民 間保育所の運営費、母子家庭の自立支援事業、DV法に基づく女性保護、婦人相談所の 運営などを国庫補助負担金をゼロにしたらどうかというご提案です。  残りますのは、小児慢性疾患医療費、未熟児医療費、児童手当等になります。  1ページに戻らせていただきます。9月14日に「地方と国の協議の場」というのがあ りまして、地方六団体の知事会長をはじめ6名の方と、国側は官房長官をヘッドとする 協議の場がありまして、そこで厚生労働大臣が配付したものです。  社会保障は、国民に対して一定水準のサービスを保障していくという国民合意の下で 実施されてきたものである。  また、今日、急速な少子高齢化が進行する中で、将来に向けて給付と負担の均衡を展 望しつつ、社会保障制度の一体的見直しを進めろという重要な時期に差し掛かっている。  したがって、国において責任を持って施策を推進することができる実効性のある手段 を確保するとともに、地方においても自主性を活かしつつ社会保障について応分の責任 を持って取り組んでいただきたいということが書かれています。  2ページですが、8月24日に出された地方六団体の提案の問題点を書いています。  介護費用、老人医療費、国民健康保険医療費、生活保護費等の負担金に関しては具体 案を示さないという問題点がある一方で、少子化対策に係る補助負担金及び裁量的補助 金の全般について廃止することとしている。  廃止に係る補助金に関しては、国と地方の役割分担という観点から、次のような問題 があると考えられます。  すべてはご説明いたしませんが、(2) 介護施設のハードは地方、ランニングは国の費 用負担割合が高いままといったことはどうなのか。生活習慣病対策など予防は地方で、 様々な医療費は国の負担割合が高いのはどうなのか。  (3) 少子化社会対策大綱が策定され、これから少子化対策に取り組もうという時に、 国の責任が果たせなくなるのではないか。  (4) 障害者施策について、18歳を境にして取り扱いが全く違うというのはいいことな のだろうかといった点等々あるということです。  3ページにありますように、地方との協議の場で厚生労働としての対応方針をお示し しました。厚生労働省としては、社会保障の基本的な考え方に立って、これらの問題点 について地方六団体と十分に議論を行い、対案を示していくこととしたいということで す。  三位一体の関係は社会保障に影響が大ですので、本日のこの場でもいろいろご論議を 賜わればと思っております。今後の議論に役立てたいと思っておりますので、よろしく お願いいたします。  最後に、資料2−2「社会保障の在り方に関する懇談会開催について」ご説明申し上 げます。  趣旨ですが、社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくため、社会保障 制度全般について、税、保険料の負担と給付の在り方を含め、一体的な見直しを行う必 要がある。このため、有識者の参加を得つつ、「社会保障の在り方に関する懇談会」を 開催するということです。  3ページにありますように、メンバーは民間有識者として石先生、笹森会長、潮谷知 事、杉田理事、西室副会長、宮島部会長と、政府側の関係閣僚が集まるというものです。  6ページにスケジュール(案)を示していますが、第1回が7月30日、第2回が9月 10日に開催され、いろいろと論議が行われました。このあと10月の第3回では介護保険 制度改革と医療保険制度改革について、11月の第4回では生活保護・少子化対策につい て検討し、12月の第5回では議論整理をしていく予定になっております。  以上、資料1と2につきまして事務方からご説明いたしました。 (貝塚会長)  ただいま事務局から社会保障の一体的見直しについての説明がありましたが、先般、 日本経済団体連合会でまとめられた「社会保障制度等の一体的改革に向けて」は、こう したテーマとも密接に関わる話でもあります。  資料も提出していただいておりますので、何かご説明等がありましたら、矢野臨時委 員からお願いしたいと思います。 (矢野臨時委員)  今日は奥田が用事で出られませんので、代わりに出席いたしました。お手元の資料に は、本文の最後のページに概要図がございます。これに基づいて概略をご説明させてい ただきたいと思います。  根本的な考え方は、いかに持続性のある社会保障制度を作っていくかということです が、一体的改革が必要だということを主張しております。一体的改革には2つの意味が ありまして、まず社会保障制度そのものを一体的に改革する。もう1つは、財政・税制 と一体的に改革することでございます。  社会保障制度改革の基本的な思想は一番上の網掛けをしたところにありますが、社会 保障・福祉制度共通の基盤整備を進めようということです。その中身は2つあって、1 つは社会保障制度等に共通する個人番号制を作ろうというもの。もう1つは、社会保障 個人別の会計を設けようということです。これによりまして、国民健康保険には加入し ているが国民年金には未加入であるというような不公正を直していきますし、個人番号 制を将来は納税者番号として活用することも可能になるだろうと思います。また、重複 した給付をなくすという面でも役に立ってくるだろうと考えております。  個別の制度についての説明は省略いたしますが、年金、医療、介護は相互に最も関係 の深い制度でありまして、そのほかに雇用保険、労災保険、社会福祉制度を含めて社会 保障制度という取り上げ方をしております。  最初の3つの制度に共通する考え方として、真ん中よりちょっと下に網掛けがありま すが、高齢期の最も基本的な生活費は年金に集中して、入院・施設入所時の食費・居住 費等は自己負担化する。在宅での医療・介護サービスとの公平性を保つということであ ります。  本文をご覧いただければお読み取りいただけますが、高額所得者については給付を抑 制するなど、いろんな施策を提言しております。  この提言のもとになるマクロ的なシミュレーションも行いましたが、大ざっぱに言い まして、現行の制度のままでいった場合は給付の20%程度の抑制が将来必要ではないか と考えております。そのため、財政・税制改革も同時に進めまして、特に税制改革では 消費税の引き上げという問題に本格的に取り組む必要がありますし、年金税制の原則か らして特別法人税の廃止についても盛り込まれております。そして最終的には潜在的国 民負担率50%を目指すということで全体の大枠を設けまして、これによって国民経済の 活力向上を期することができます。そして目指す社会というのは自助努力を基礎とする 社会の実現ということです。  以上を総括して税制・財政を含めた社会保障制度の一体的改革の推進ということで、 「社会保障の在り方に関する懇談会」あるいは「経済財政諮問会議」という場を利用し て具体化していく必要があると考えます。いつまでも時間をかけることはできないので、 私どもの腹づもりとしては、1年以内にグランドデザインを作って、実行できるものは 実行していく。税制については3年後という与党の税制大綱の方針もありますので、そ れも一つのめどになっていくだろうと思いますが、計画は早く作るにこしたことはない と考えております。  私ども経済界のこうした提案について皆様方のご意見を賜りまして、本当に持続性の ある良い制度ができるように、私どもも積極的に議論に参画してまいりたいと思います。 よろしくお願いいたします。 (貝塚会長)  それでは、ただいままでに説明のありましたことについて、どのテーマからでも結構 ですので、ご意見・ご質問がございましたら、お願いいたします。 (京極委員)  三位一体のことなんですが、時代の趨勢としてやむを得ない面はあるにしても、特に 補助金のカットは大事な問題だと思います。地方の独自性を発揮するのは大事だという のはよくわかりますが、どの分野の補助金をカットするかということが非常に大きな論 点だと思いまして、拝見いたしますと、児童分野にかなりメスが入れられています。昨 年、私どもも政策統括官のもとで次世代育成支援の在り方を検討いたしまして、昨年度 は小泉内閣の一番の目玉は次世代育成支援だったはずなんですが、1年たちますと、切 るほうの目玉になってるということで、これは問題ではないか。  地方六団体の中でも都道府県知事会等で医療費の抑制策等を考えて、適正化というか、 そういうことで努力するところは多分にあるわけなんで、プライオリティをどこに置く かということについては厚生労働省としても、この審議会においても再検討する必要が あるのではないかと思っております。 (久保田委員)  連合の久保田でございます。日本経団連から社会保障のビジョンのご説明がありまし た。「社会保障の在り方に関する懇談会」に連合も労使の労という立場で加わらせてい ただいておりますが、労使は似通ったところと、違うところとあるのではないかと思い ます。日本の労働組合としましても21世紀の社会保障の在り方を考えていく上で、今は 非常に大事な時期で、このチャンスを逃すと大変なことになるのではないかという危機 感から、組合自らの既得権益という観点だけではなく、持続可能で、みんなが信頼感の 持てるものを作っていかなければならないという思いで、社会保障ビジョンをまとめて おります。機会がありましたらご報告させていただきたいと思います。  三位一体のことについてですが、労働組合としても国と地方の役割分担を明確にしつ つ、地方分権は進めなくてはならないという方向であります。ただし、現在おこなわれ ている作業や手順については非常に強い危機感を持っております。このまま財政的に数 字合わせということでずっと進行していった時には、社会保障や福祉はウエイトが非常 に大きいため、結局、切り捨てられることになりはしないか。  これから21世紀の中で国が何をし、地方が何をし、しかも生活者が納得のいく形で何 をやればいいのかということについては拙速ではなくて、その役割についてしっかりし た議論をしていくべきではないかと思います。  具体的には、これから取り組まなければならない少子化対策が再編せざるを得ないと いうことになっていますし、障害児、障害者の問題なども地域差がさらに拡大すること にならないかとか、エイズとかSARSとか都道府県を越えて全国的に緊急にやらなく てはならないことが、地方分権の中で取り上げられているというのは非常に疑問を感じ ます。  加えて、老人医療費とか介護給付費については手つかずのままになっています。こう いうところは地域差が大きいので、地域差に着目しながら、より的確にやれるところに ついてベンチマークをしながら全体をどうしていくかという議論が極めて重要だと思う んですが、現状は現役世代の保険料で全国調整がされている仕組みにあります。こうい うところこそ踏み込んで、保険者機能の発揮・強化という観点から国と地方の分担を考 える。そういう努力が全体の医療費や様々な社会保障費の抑制につながると思うんです が、肝心の本丸のところに対する踏み込み方が足りないことに対して強い危機感を持っ ています。  次年度予算の義務的経費のところで2,200億円の削減合理化の問題が出されています。 それなりの努力は必要だとは思いますが、この中で生活保護費の見直しが検討されるの ではないかという懸念を持っております。新聞報道もされていますが、現在の生活保護 費の不正受給は言語道断ですので、そういう問題については、良貨が悪貨を駆逐するこ とになるように見直すべきだと思います。しかし、日本のミーンズテストは諸外国に比 べると、民法における扶養義務の範囲は3親等ということで非常に広いとか、様々なと ころが諸外国と比較しても厳しい生活保護の枠組みというのがあるのではないかと思い ます。個々人が抱えている問題や課題を個別に把握して、保護受給者が自立することの できる、そういうところに応援するための生活保護政策はどうあればいいかという意味 合いで検討すべきではないかと思っています。こういう機会に、一律の削減縮小という ことについては極めて強い問題意識を持っているということを申し上げておきたいと思 います。 (北村委員)  三位一体のところですが、東京など大都会中心から地方まで医療レベルの均てん化と 質の均てん化ということを強く進めている時に、6団体提案の廃止事業の内容を一期的 に行うと、それに逆行するようなことが起こり得るのではないかという気がしてなりま せん。むしろ国に残る事業こそ地方に任せて、廃止事業を国に残したほうがいいのでは ないかと思うような項目がたくさんあります。  その中で厚生労働省が対案を出しているということが書いてありましたが、対案とい うのはいつ出てきて、どんなものなのか、それを示すのは、いつどこでどうされるのか、 わかりましたら教えてください。 (清水参事官)  内閣官房から10月末までに各省庁としての考え方を提出するようにという依頼があり ましたので、そのスケジュールに従って私どもは対案づくりをやっていきたいと思って おります。内容につきましてはいろいろ検討しなければなりませんが、本日のご意見も 参考にさせていただきながら検討してまいりたいと考えております。 (岩田委員)  先ほど経団連のほうと、この一体的見直しのご説明の中で、年金、介護保険、医療保 険と一緒に生活保護の関係についてもご説明いただきましたが、ただいま福祉部会の中 の専門部会として生活保護の検討もしております。生活保護と年金との一体的な取り扱 いを考える時に、ここでは高齢層の年金水準のほうを軸にして生活保護基準を下げると いうニュアンスのご提案がありましたが、生活保護は補足性の原理ということで、他法、 他施策を先にやって、それでもなお足りないところを補って、国民の最低生活を保障す るという制度です。ですから現在の高齢層で生活保護を利用している方たちの中にはた くさんの年金受給層があります。  年金のほうに合わせますと、足りない部分がずれるわけですね。年金という意味は、 ここでは主としてフローの生活費を念頭に置いてこれまで水準が決められてきたと思い ます。ただ、年金はあくまで従前所得の代替ということを中心に考えられてきたわけで、 最低生活費をきちっと計算して、高齢層の最低生活費はこれだといういうふうに決めら れてきたわけではないと私は承知しております。  フローですから、その中には住宅への配慮もありません。この部分を生活保護はカ バーしてきたわけです。年金プラス住宅扶助と医療、介護が組み合わされてこの水準に なっているわけで、その水準と年金とを比較するというのは無茶な話でして、逆ではな いかと思います。高齢者の老後生活は年金で保障されていくというのが筋だと思います が、そういう意味で一体化を図る時に、フローの生活費は年金だけど、持ち家を持って ないとか、住宅費が十分払えるほどの年金がないという場合に住宅扶助がくっついてい くという補足の仕方があるんですね。そのあたりをご検討いただかないと筋が違ってく るのではないかと懸念しております。年金以外の失業保険との関係でいっても、日本は 失業扶助というものを持たないわけですから、その代替をしていくという役割があると いうことをご承知いただきたいと思います。  日本の生活保護の水準は、そういうものを全部くっつけますと、OECD諸国との比 較の中でも比較的いいほうの部類に入ると思いますが、窓口が厳しいというか、家族扶 養とか資産の調査という点ではOECD諸国の中で下から数えるほうが早いぐらい非常 に厳しいという調査結果があります。一体的にリンクして落ちないように、あるいは先 ほどおっしゃったトランポリンのようにもう一回戻すという機能がありませんと、自立 支援にはなかなか向いていきません。自立できないまでギューッと締めちゃって、利用 してから自立支援しろといっても大変難しいんですね。そのへんの実態をよくご検討い ただいて、一体的見直しを進めていただくようお願いしたいと思います。 (貝塚会長)  生活保護の制度というのは今までほとんど議論されたことがないんですね。援護局の 所管なんですよね。社会保障の制度は外側に寝ていた感じがあった。しかし今や世の中 が変わってくると、生活保護の制度というのは下支え的なものとして重要な役割を持つ と同時に、そのレベルをどうするかというのは難しい問題ですが、そういう時代に入っ たというのが私の個人的な印象です。 (若杉委員)  一体的改革について意見が出ましたので、私もそれについて述べさせていただきます。 一体的改革をするにあたって、社会保障という時に、公的年金もそうですが、医療保険、 介護保険、雇用保険、労災保険など将来のリスクに備えた保険の部分と、生活保護のよ うに純然たる所得の再分配とは機能が違うと思うんですね。経済的に見た時に。そこを きちんと整理しないと、全体的に整合的な制度ができないと思うんですね。保険という のは将来のリスクに備えたものですから、全体としてまとめればまとめるほどリスクの 分散ができるわけです。従って、何々保険制度とつくものは一体として運営するほうが いいわけで、地方と国に分けるのはリスクの分散にならない面があります。  年金には税金が入っていまして、再分配の部分も含まれてますから、保険的な社会保 障と所得分配的な社会保障をきちんと概念的に分けて、これから整理したほうが生産的 な議論ができるんじゃないかと思って、その点をご提案したいと思います。 (渡辺委員)  尾辻新大臣も記者会見で混合診療容認という趣旨の発言をなさってるようだし、小泉 総理も年内に結論を出すようにと指示をなさってるんですが、混合診療の定義が不明瞭 なんですね。ここまでは保険が使えて、新しい技術なり薬を使うと、これは保険外とす ると、全部が自己負担になってしまう。これをやめろ、つまり混合を認めろということ を尾辻新大臣も小泉総理も考えていらっしゃるのかなという気がするんです。混合診療 はほかにもあるわけでして、一部の医療行為や薬を保険給付から外すといった混合診療 もあるわけなんですね。日本経団連のペーパーにも混合診療のことが書いてありますが、 日本経団連としてはどの混合診療を指していらっしゃるのか伺いたいと思います。 (矢野臨時委員)  資料の5ページをご覧いただきますと、d)のところに混合診療の問題が書いてあり ます。現在は特定療養費制度という枠組みで混合診療が行われているわけですが、抜本 的に改革し拡大していこうということです。どれとどれをやるべきかということではな くて、根本的に全部を見直したらいいのではないかと思っております。現実的にやれる ものについて合意が生まれると思いますから、そこから実行していくことになります。  一体改革ですが、今年は年金、来年は介護、その次は医療というふうにシリーズで順 番に改革していくのではなくて、全部を見通して、そしてタイムスケジュールに乗せて いく必要があると思います。そうでないと部分最適になって、全体の整合性がとれない のではないか。そういうギリギリのところにきていると思います。給付と負担の問題に しても、今までは高度成長の中でやりくりできましたが、それがうまくいかなくなって きているという現実を見ていく必要があるだろうと思っています。  その場合、高額所得者の給付の問題にだけ触れましたが、低所得者に対する配慮が必 要になります。現行では制度的な裏付けもあるわけだし、必要ならば、そういう視点か らいろいろな改革があってもいいと思います。全体にバランスのとれた改革を進めてい くということで、持続性のある制度が実現するだろうと思っています。 (貝塚会長)  まだ、ご質問等があろうかと思いますが、時間も限られておりますので、次に移らせ ていただきたいと思います。  議題の3の「社会保障をめぐる最近の動き」について、各部会等の報告なども含めて、 事務局から説明をお願いします。 (山崎総務課長)  老健局でございます。資料3−1「介護保険制度の見直しについて」をご覧いただき、 介護保険部会の検討状況も含めて、ご説明いたします。  2ページは、これまでの経緯と今後の予定です。  2000年4月に介護保険制度が施行されまして、現在、施行5年後に定められている 「制度の見直し」の検討を進めております。  昨年5月から社会保障審議会・介護保険部会において検討が開始されまして、今年の 7月に「介護保険制度の見直しに関する意見」という形で報告をいただいております。 一部分については更に協議を続けておりますが、こうした意見を踏まえまして、来年の 初め、介護保険制度の改革法案を国会に提出したいと考えております。  3ページは介護保険制度の実施状況です。介護サービスは伸びておりまして、要介護 認定者は4年間で81%の伸びを示していますし、介護サービス利用者は106%の伸びと なっています。1カ月で3万人の方が新たに介護サービスを利用していることになりま す。  4ページは介護費用の推移です。2005年度の概算要求は、総費用として約6.7兆円を 見込んでおります。給付費は約6兆円です。  サービスが伸びますと保険料も高くなります。保険料は3年ごとに見直すこととして おりますが、2003年度から3カ年に適用される保険料は月平均3,293円となり、前の3 カ年に比べて13.1%増加しています。  5ページは介護保険部会における検討状況です。  昨年5月より16回にわたり審議を行い、本年7月30日に報告書を取りまとめました。 これで見直しの大枠についてご意見をいただいておりますが、以後、被保険者・受給者 の範囲について引き続き議論をすることになっています。9月21日に第17回を開催し、 この分野について議論をしていただき、11月末もしくは12月初めを目途に結論を出して いくことになっています。  6ページですが、制度見直しの基本的視点として3つ挙げています。一番大きな部分 は制度の「持続可能性」ということです。今後の超高齢社会においても持続可能性を高 めていくことが基本目標です。そのために給付の効率化・重点化ということで、給付全 般についても見直しを行っていくということです。  「明るく活力ある超高齢社会」の構築のため、介護になった段階でのケアではなく、 予防を重視したシステムに転換する。  介護制度のみでなく、年金を含め、社会保障全体として効率的かつ効果的な社会保障 体系を確立して、社会保障の総合化という観点から検討を進めるということです。  7ページは介護保険制度改革の主な内容ですが、具体的には4項目あります。  1.予防重視型システムへの転換ですが、総合的な介護予防システムの確立と軽度者 の給付の見直しを考えています。  2.給付の効率化・重点化として、施設給付の「範囲・水準」の見直しが一つの論点 になっています。  3.新たなサービス体系の確立ですが、痴呆のお年寄りの問題が増えていますので、 そういう方々に対する対応として新たなサービス体系を作っていく。地方分権という観 点から、地域密着型のサービスの創設を考えています。  4.被保険者・受給者の範囲についてどう考えるかということです。  以上の4点について、次のページからそれぞれ説明を加えています。  8ページは介護予防の強化について図で示しています。  要支援、要介護1の方々が180万人おられます。非該当と書いてありますが、予備群 の方々もおられますので、全体を含めて、一貫性・連続性のある総合的な介護予防シス テムの確立が1点目のテーマです。9ページは、2点目の施設給付の見直しです。  要介護4の方が施設に入ったケースと在宅でサービスを受けるケースをモデルとして 比較しています。特別養護老人ホームに入りますと1カ月約33.3万円の費用がかかりま すが、そのうち保険から約28.2万円出ますので、一部負担は5万円になります。  在宅サービスを受けた場合は1カ月約13.8万円の保険給付分があります。限度額いっ ぱいまで使うと27.5万円まで使えますが、13.8万円でいくと、1割負担ですから一部負 担が1.5万円になります。一部負担では施設のほうが高いんですが、在宅の場合はこれ に加えて食費、居住費がかかります。実質的には10万円程度の費用がかかります。同じ 所得水準の場合は施設のほうが利用者負担が低いという状況があります。従って、在宅 と施設の負担のバランスをどうするかというのが一つの議論になります。  この問題は年金との関係もあります。下に諸外国の利用者負担の例が書いてあります が、欧米諸国の介護施設では入居者の食費、居住費は自己負担となっています。つまり 年金がここを賄うんだという形で整理されています。年金は在宅でも施設でも出るわけ ですが、施設の入居者の場合は食費、居住費は年金からも出て、かつ介護からも出る、 重複ではないかという指摘があります。そういう観点から施設給付についてどう考えて いくか。特に食費、居住費の在り方が議論になっているということです。  10ページは新たなサービス体系の確立(地域密着型サービスの創設)についてです。  これまでは都道府県知事が指定して、全国共通型のサービスが中心でしたが、今後は 地方分権の観点から、市町村の手づくりによる地域密着型のサービスを進めるべきだと いうご指摘です。特に小規模施設のサービスについて新たに地域密着型のサービスがで きるような体系を整備していきたいというのが3点目です。  11ページ以降は、引き続き協議となっています被保険者・受給者の範囲の問題です。  現行の介護保険は40歳以上が被保険者・受給者です。中心は65歳以上の高齢者でして、 いわば高齢者介護保険という仕組みになっています。  今回議論になっておりますのは、被保険者・受給者の対象年齢を引き下げるべきかど うかという点です。この問題は制度創設当時から議論がありました。20歳以上か65歳以 上かという議論の中から最後に40歳以上ということになったんですが、当初から宿題に なっておりまして、今回の見直しにおいても当然これについて議論を進めているという 状況です。  左側にありますように、介護保険制度との関わりですが、40歳以上という現行制度は 介護全般を対象にしておりません。「老化に伴う介護ニーズ」だけを対象にしています。 従って、対象年齢を引き下げるということは、「老化以外の介護ニーズ」を普遍的にカ バーする仕組みになっていくことを意味しているわけです。  この問題は障害者施策とも関係があります。現在、65歳以上の高齢障害者については 介護保険が適用されていますが、64歳以下の若年障害者についてどう考えるかというこ とになります。  12ページは現行制度の適用関係について書いています。  現在、65歳以上の障害者は既に介護保険制度の対象になっています。  65歳以上における介護保険制度と障害者制度との関係ですが、まず介護保険制度が優 先的に適用されます。それで足りない部分は公費の支援費制度から給付されまして、両 者が組み合わさった仕組みになっています。これを65歳未満についても拡大するかどう がということが介護保険制度の議論になっています。  13ページは被保険者・受給者の範囲拡大を図で示しています。  拡大した場合は保険料の負担もありますが、給付という面では介護保険にも障害者施 策にも対象になっていない制度の谷間と呼んでいる方もおられまして、この方々にも適 用になっていく。給付と負担の両方に関係する問題ということです。  14ページは7月30日の介護保険部会における審議状況ですが、積極的な意見と慎重な 意見と両論があります。  積極的な意見としては、年齢や障害種別を問わず介護ニーズは普遍的である。地域ケ アの展開、介護保険財政の安定化、障害者施策の推進になるのではないか、こういう視 点からのご意見がありました。  慎重な意見としては、保険システムになじむのかどうか。若年の方に保険料を新たに 負担していただくということで、保険料負担の増大の問題。現行の障害者サービス水準 の低下に対する不安、時期尚早であるなどのご意見がありました。両論を含めまして、 引き続き介護保険部会において議論が進められているという状況です。以上です。 (村木企画課長)  引き続き、障害保健福祉部からご説明させていただきます。障害保健福祉の関係につ きましては障害者部会で議論していただいております。障害者部会におきましては今年 の2月から「今後の障害保健福祉施策の在り方」についてご議論をいただいております。 7月に中間とりまとめをしていただき、9月24日から審議を再開いたしました。  部会の議論では、平成15年度にスタートした支援費制度、これは身体障害、知的障害、 児童の一部をカバーする制度ですが、現行制度の課題、精神保健福祉施策の課題等々に ついて議論をした上で、これからの大きな制度改正の在り方についてご議論をいただい ております。  9月24日に、これからの制度改正の基本的な視点と主な検討事項まで議論が進みまし たので、ご報告をさせていただきたいと思います。  資料3−2の1枚目をご覧いただきたいと思います。障害保健福祉施策の現行の制度 的課題について書いています。  支援費制度になりましてから障害者福祉サービスが大きく伸びており、財政面がなか なか追いつかない部分があります。地域間でサービスの格差があるということが一つ大 きな問題になっています。  格差の現状が書いてありますが、支援費の支給決定者数を都道府県で比べますと7.8 倍という大きな格差があります。  格差の原因としては、サービス提供基盤の整備状況の成熟度が地域間で差があること。 支援費制度の中にサービスの支給決定について客観的な基準が弱いこと。数値の入った 市町村あるいは都道府県の計画がまだ制度の中に組み込まれておりませんので、サービ スの計画的な整備ができていないこと、これらが原因になっているかと思っております。  障害者施策について市町村からたくさんのご要望をいただいておりまして、そのペー ジの最後にまとめてあります。  (1) 国庫補助を含めた安定的な財源の確保ということ。  (2) サービスを利用するにあたってケアマネジメントの制度化するようにということ。  (3) 客観的なサービスの支給決定基準の策定をしろということ。  (4) 地域の実情に合わせたサービス提供の弾力的な仕組みも入れるようにということ。 このような要望が市町村からあがっているところです。  次の1ページは、制度改正に係る基本的な視点をまとめています。  視点は3つありまして、1点目は、障害保健福祉施策の総合化です。身体・知的・精 神と障害の種別ごとに対応してきた障害者施策について、「市町村を中心に、年齢、障 害種別、疾病を超えた一元的な体制を整備」する中で、創意と工夫により制度全体が効 果的・効率的に運営される体系へと見直し、「地域福祉を実現」することが必要である ということです。  2点目は、自立支援型システムへの転換です。障害者施策については従来から地域で の自立した暮らしということが理念面ではいわれておりましたが、政策のレベルでは保 護的な面が強くありました。この発想を転換して、政策の面においても「障害者のニー ズと適性に応じた自立支援」を促すため、就労支援等にも力を入れて、障害者による 「自己実現・社会貢献」を図る。そういった方向に転換するということです。  3点目は、制度の持続可能性の確保です。現行の支援費制度や精神保健福祉制度は、 既存の介護保険制度やその他のいろいろなシステムに比べて資源配分をコントロールす る仕組みが脆弱です。そのような点を改善して、国民全体から信頼を得られるように 「給付の重点化・公平化」や「制度の効率化・透明化」を図る抜本的な見直しが不可欠 であるということです。  次のページはそれを図式化したものですので、あとでご覧いただきたいと思います。  最後のページは、基本的な視点に基づいて、今後の具体的な政策です。とりあえず検 討項目を挙げた段階ですが、政策群を2つに分けています。上の半分が現行制度の欠点 を解決するためのもの、下の半分が今後の新しい福祉施策を構築していくためのもので す。それぞれ大きな柱が3つ立っています。  まず現行制度の課題解決を図るための政策群です。  1.市町村を中心とするサービス提供体制をきちんと作るということです。まだ都道 府県に残っている事務を市町村へ順次移行するとともに、市町村が計画的なサービスの 整備ができるような枠組みを作っていきます。  2.効果的・効率的なサービスの利用促進ということで、相談支援体制の整備、ケア マネジメント制度の導入、支援の必要度に係る各サービス共通の尺度、こういったこと をきちんとやっていきたいということです。  3.公平な費用負担と配分ということで、福祉・医療サービスに係る利用者負担の見 直し、国費による地域格差の調整機能などです。  次に、新たな政策群です。  1.障害保健福祉サービス体系を自立支援型のシステムとして体系整備を図りたいと いうことです。その方向に合わせて現在の施設体系やサービス体系、設置者の要件等も 見直していきたい。権利擁護の推進とサービスの質の評価、新たなサービス体系に適合 した報酬体系の導入も図りたいということです。  2.ライフステージに応じたサービス提供ということで、障害児施設、事業のサービ ス体系の見直し、雇用施策と連携のとれたプログラムに基づく就労支援の充実、極めて 重度の障害者に対するサービスの確保、これらを充実させていきたい。  3.良質な精神医療の効率的な提供ですが、精神病床の機能分化の促進と地域医療体 制の整備、入院患者の適切な処置の確保、精神医療の透明性の向上などが考えられます。  以上のような形で障害保健福祉施策の枠組みをきちんと整理をした上で、議論になっ ております介護保険制度との関係も整理をしていきたいということです。  ここでは検討項目だけを挙げておりますので、少し肉付けをして、厚生労働省の案と して議論のたたき台を10月12日の審議会にお出しし、部会で議論をしていただく予定に なっております。以上です。 (貝塚会長)  ただいまの説明について、ご意見・ご質問等がございましたら、お願いいたします。 (山出委員)  私は自分の町へ帰れば介護保険の運営をするわけです。国民健康保険の運営も大変難 しいし厳しいんですが、同時に介護保険の運営も大変厳しい。いま説明がありましたと おり給付費が増えてくる、グループホーム等も増えてくる、結局それは財政にかかわる、 こういうことになるわけです。なぜつらいかと言いますと、保険料を上げることがたや すい対象ではない。ここに基本的な私どもの苦しみがあるわけです。  先ほどの説明の中に地域密着型のサービスを作りたいということがありましたが、私 は結構だと思います。事業者の指定権限とか指導監督権限を市町村長に与えよう、これ も供給サービスをコントロールする手当ての一つだとおっしゃれば、それも理解できる と思います。同時に、都道府県が事業者を指定する時には、市町村に事前協議をしてほ しい。こんなことも申し上げたいと思っています。  支援費制度ですが、国が制度を作られた。作られた上は、まずは国が責任を持つべき だと思っていまして、予算が足りないから介護保険と一緒にするんだということについ ては、いかがなものかと思っています。理屈としては、介護保険と障害者施策は目的が 違うんだ、障害者施策というのは社会保険になじむんだろうか、こういう議論があるこ とは承知しておりますが、基本は、介護保険の運用は厳しい、財政が厳しい、これを一 つ申し上げたいと思います。  もう一つは、支援費制度というのは作ってから、たった1年半です。私自身の思いは、 支援費制度の制度設計を作った時に、果たして精緻な検証をしたのか、その上にできて いるのかどうか、実績はあるのか、実績の上に制度設計がなされたのかどうか、私はこ こを大変疑問に思っている一人なんであります。そういたしますと、まずは実績を踏ま えた制度設計を作るべきでありまして、そういう意味で私は拙速はいけないと申し上げ たいと思っています。先ほど生活保護のお話が出ました。予算がないから負担率を落と そう、こういう考え方というのは弱いところにしわ寄せをして、安易な手段に走る傾向 を感じてなりません。違うとおっしゃっても、私も違うと言いたいなというふうに思っ ています。  支援費制度は制度設計の甘さからだと思いますが、大変厳しい事情にあることは事実 でありまして、施策改善は支援費制度の中において解決すべきだと思っています。  介護保険の仕組みは、実施主体は市町村です。市と町村です。なかなか苦しいわけで、 よく市町村の現場の意見も聞いてほしい。単に聞きおいただけだというのではいけませ ん。聞きおいた上で、なおかつ本当に心を一つにして相談をしあって、そして実のある 案を作り上げるという姿勢であってほしいと思います。 (久保田委員)  介護保険について一言申し上げておきたいと思います。被保険者と受給者の範囲の問 題ですが、労働組合としては拡大すべきだという意見を持っております。財政的に厳し くなったから拡大せよということではありません。5年前に介護保険が始まるころから の懸案でしたが、介護というのは高齢者特有のニーズではなく、病気や交通事故の後遺 症でも必要となるものですし、本来、年齢や事由を問うというものではないと考えてお ります。すべての介護ニーズを社会全体で支え合うという意味からも、また、地域生活 と社会参加を保障するという観点からも、人間としての尊厳を重視する、そして社会連 帯で改革をするというのが本来ではないかと考えております。  負担と給付の関係が現状ではあまりにも高齢者のところにかたよりすぎているという のが実態ではないでしょうか。そういう意味で、介護保険制度を本来の真の社会保険制 度に変革することを目指すことが基本ではないか。持続可能性という意味からすると、 給付の効率化とか、無駄なところを極力省くとか、トータルのコスト意識を持ちながら やることは当然のことですし、全力をあげて汗を流しながらも本来の在り方からスター トをしていくべきではないかと考えています。そういう意味で、医療保険加入者及びそ の扶養者はすべて介護保険の加入者にすべきであるという考え方で意見をまとめ、運動 をしていこうと思っておりますので、そのことを表明しておきたいと思います。 (山崎総務課長)  山出会長のご意見の第1点目ですが、地域密着サービス以外につきましても市町村の 意見を都道府県が聞くようにという義務付けと申しましょうか、そういう方向で検討さ せていただきたいと思っております。  地方団体のご意見ですが、来月中旬から私どもの幹部が出まして、全国6ブロックで 意見交換会をさせていただきたいと思っております。そこでのご意見を踏まえまして、 見直しに反映していきたいと考えております。 (村木企画課長)  支援費の関係ですが、山出会長のご指摘のとおりでございます。支援費が始まって1 年余がたちまして、制度の実績等を踏まえて、結論ありきではなくて、現行の制度を ベースにして改善点を見つけだしていくという形で議論を進めたいと思っております。 (貝塚会長)  私は介護保険部会の会長をしておりますが、市町村のご意見は非常に重要でして、全 国町村会長の山本さんの発言は重みがあります。市町村の財政は大変なところがありま すので、重要な点だと私も思っております。  それでは、次に資料4−1から資料5−2について、事務局から説明をお願いします。 (高井総務課長)  まず資料4−1、少子化の施策の関係ですが、1ページにありますように、現在、新 エンゼルプランと待機児童ゼロ作戦という施策を進めております。中ほどにありますよ うに、出生率の低下、子育ての負担感・不安感、虐待の発生などの問題から、集中的・ 総合的な新たな取り組みが必要と考えているところであります。  右側にありますように、昨年7月、少子化社会対策基本法ができ、次世代育成支援対 策推進法及び改正児童福祉法が成立しております。  今年の6月に少子化社会対策大綱を決定し、来年4月に向けて地方公共団体及び企業 において行動計画の策定をお願いしております。今年の12月、これらを踏まえて、新エ ンゼルプランに代わる新たなプランを作ろうという流れになっております。  2ページは新エンゼルプランの進捗状況です。カッコで書いてある数字は実績ですが、 おおむね順調に推移しており、中には目標を大きく上回っているものもあります。15年 度までの実績が出ておりますが、そのような状況で推移しています。  3ページは待機児童ゼロ作戦の状況です。受入児童数は平成14年、15年と5万人を超 える増加がありまして、本年4月時点で待機児童数は5年ぶりに減少に転じ、2万4千 人になっております。引き続き重点的に保育所の整備を進めたいと考えております。  4ページから6ページまでは少子化社会対策大綱の概要ですが、時間が押しておりま すので省略させていただきます。  7ページは新エンゼルプランに代わる新たなプラン(新新エンゼルプラン)について の基本的な考え方です。  上の囲みにありますように、少子化社会対策大綱に基づき、具体的な実施計画を本年 中に策定する予定です。新たなプランにおいては、現在、地方公共団体や企業において 行動計画を策定していることも踏まえ、働き方の見直し等の分野も含め、社会全体で今 後5年間で達成すべき目標等について検討していきたいと考えています。  下の表にあります数字は概算要求の数字です。のちほどご覧いただければと思います。  次に資料4−2ですが、就学前の教育・保育を一体として捉える総合施設についての 検討状況です。中央教育審議会幼児教育部会と、岩男委員が部会長をされている児童部 会の合同の検討会議を今年に入って進めておりまして、その中間まとめです。これから 更に詰めまして、11月に最終的なとりまとめを行う予定になっております。  時間が押しておりますのでポイントだけ申し上げますが、2ページの下から2行目か らご覧いただきたいと思います。総合施設については、地域によって既存の制度の枠組 みだけでは必ずしも多様化する幼児教育・保育のニーズに柔軟に対応できにくい状況が あることから、規制改革や地方分権の流れを踏まえ、地域が自主性を持って地域の実情 やニーズに適切かつ柔軟に対応することができるような新たなサービス提供の枠組みを 提示しようとするものである。ということで、教育と保育の機能を併せもった総合プロ グラムの枠組みを提示するという基本的な位置付けが示されています。  3ページの3.基本的機能のところでも、「親の就労の有無・形態等で区別すること なく、サービスを提供する」。次の○では、「子育てに関する相談・助言・支援を行 う」といった機能も付け加えようということが示されています。今後、更に細部を詰め て、11月には報告書をまとめる予定になっております。簡単ですが、以上です。 (間杉総務課長)  保険局総務課長でございます。資料5−1について簡潔にご説明申し上げます。昨年 3月に改革の基本方針を閣議決定でとりまとめさせていただきました。昨年7月から新 しく医療保険部会という部会をこの審議会の中に立ち上げまして、これまで9回、ご議 論をいただいてきております。閣議決定を作りました時も短期間でございました。大臣 が様々な関係団体の皆様方と意見交換をさせていただきましたが、時間が短うございま したし、私どもの意を尽くせないところがあったのではないかということで、再度こう いう形で、基本方針の基本的な物の考え方を中心にご議論をお願いしてきているところ でございます。  こ覧いただきますように、高齢者医療そのものの在り方、保険者の再編・統合、高齢 者医療制度などについてご議論をいただいてきております。  今年の7月で第1ラウンドが終わりまして、2カ月ほどお休みをいただいております が、この間、事務局において、秋から第2ラウンドとして更に深まった議論をお願いで きますように、様々の宿題の整理とか準備をさせていただいているところです。  2ページ以降は、今後の検討の方向性(事務局案)ということで、第1ラウンド最後 の審議会に提示させていただいたペーパーです。様々なご意見も踏まえながら、議論を 進めていきたいと思っております。  詳しくはお読みいただきたいと思いますが、高齢者医療そのものが加齢に伴ってどう 変化していくかというサイエンスの面と制度的な側面とを、どう整合性をとって形づく っていくかということに重点を置いたご議論をお願いしてきているということが1点で す。  8ページをご覧いただきたいと思います。高齢者医療制度の問題を中心に議論をお願 いしていきますと、どういう医療制度を形づくっていくにしても、医療費の今後の適正 化、特に高齢者医療費の適正化ということが重要ではないか。医療費は各県ごとに様々 な地域差もあるということで、地域ごとの様々な取り組みの中で、医療提供の在り方、 介護サービスの提供の在り方、生活習慣病対策等々、関連する分野にも議論が広がりつ つあるという状況でございます。以上です。 (原総務課長)  医政局の総務課長でございます。同じ資料の9ページをご覧いただきたいと思います。 医療部会の開催についてご報告を申し上げます。  医療提供体制の在り方について議論するのが医療部会でして、14年3月に意見書をと りまとめていただいて以来、開かれておりませんでしたが、このたび開催いたしました。  1.趣旨ですが、15年8月に厚生労働省として「医療提供体制の改革のビジョン」を とりまとめました。このビジョンを踏まえて、今後、このビジョンをどのように実現し ていくのか。このビジョンでは手がついていない課題が出てきておりますので、そうし たことについて幅広い観点から部会でご議論いただきたいということが一つあります。  もう一つは、医療保険制度改革が議論されておりますが、私どもとしては医療提供体 制と医療保険制度は密接な関係があると思っておりますので、ちょうどよい議論の機会 ではないかということもありまして開催している次第です。  2.主な検討事項ですが、当面は、このビジョンの項目に沿って論点を整理していた だき、その上で具体的な議論に入っていただきたいと考えております。  3.日程ですが、9月14日に第1回を開催し、年内は月1回を目途にフリートーキン グをお願いしたいと考えております。論点整理を踏まえて、来年の年末までに部会とし ての意見をおまとめいただければと希望しておりますが、いずれにしても9月から議論 に入っているということをご報告申し上げます。以上です。 (宇野総務課長)  社会保険庁でございます。資料5−2ですが、社会保険庁の改革の現状についてご報 告申し上げたいと思います。  社会保険庁改革につきましては、現在、庁内に社会保険庁改革推進本部を設置し、保 険料徴収の徹底、システムの抜本的見直し、国民サービスの向上、予算執行の透明性の 確保、個人情報保護の徹底、年金福祉政策等の整理合理化、この6つのテーマについて 改革班を設けて検討しております。  検討の方法として、民間の発想や感覚を大胆に導入しようということで、高い見識に 基づくアドバイスをいただけるような顧問的役割を担う方を迎えることとし、9月6日、 (株)リコー最高顧問の浜田広氏、弁護士でさわやか福祉財団理事長の堀田力氏にご就 任いただいたところでございます。また、プロジェクトリーダー、アドバイザリース タッフなどを経済界のご協力によって配置することとし、日本経団連にも大変なご助力 をいただきまして、9月27日、3名のプロジェクトリーダーにご就任いただいておりま す。  運営評議会ですが、社会保険庁長官の下に、労使代表、保険料納付者の代表、学識経 験者等に参加していただき、社会保険庁の在り方、事業運営の内容について広くご意見 をいただこうということで、9月15日に第1回を開催しております。  内閣官房長官の下に「社会保険庁の在り方に関する有識者会議」が設置され、緊急に 対応すべき方策については、できるだけ早く方向性を出した上で、年内にも中間的にと りまとめ、組織の在り方についても1年以内を目途に結論を得たいと考えておりまして、 8月11日以降、3回開催されています。  9ページ以降に「第3回社会保険庁の在り方に関する有識者会議」に提出した資料を 載せています。「緊急対応プログラム」ということで、5つの領域について方向性を出 させていただいております。  10ページは、1.保険料徴収の徹底です。納付率80%を目指して、それを着実に実現 するため、年度別に行動計画を社会保険事務所ごとに策定するという内容でして、その ための方策を11ページ以降に細かく示しています。  13ページは、2.国民サービスの向上です。対応の方向性としては、国民ニーズの把 握、ニーズに対応したサービスの提供、必要なサービスを提供するための体制の見直し ということですが、抽象的でわかりにくいかと思いますので、14ページをご覧いただき たいと思います。  具体的な方策として、まず国民ニーズの把握ですが、社会保険庁の業務やサービス改 善に対して国民の皆様からご意見をいただくために「長官への手紙・長官へのメール」 を10月から実施する予定です。  ニーズに対応したサービスの提供については、年金週間における平日夜間及び休日の 相談の実施、毎週月曜日における相談時間の延長、土日における相談のモデル事業を16 年度中に実施しようと思っております。  15ページですが、来年度以降に実施する事項として、社会保険事務所等における年金 相談において、現在は55歳以上の方の年金額見込額に関して情報提供を行っていますが、 これを50歳以上に引き下げることを計画しております。  16ページですが、必要なサービスを提供するための体制の見直しにつきましては、年 金相談の急増に対応するため年金相談センターを増設したり、年金電話相談センターを 拡充することを計画しております。  17ページは、3.予算執行の透明性の確保等です。対応の方向性として、予算執行上 の無駄の排除は当然のことですが、予算執行の透明性の確保のため競争入札を原則とし ます。また、新たなチェックシステムとして、調達委員会を設置するなどによって適正 化を図っていこうということです。  19ページは、4.個人情報保護等の徹底です。個人情報管理システムの強化のため、 職員が個人情報にアクセスする際の制限を強化する、規定を整備する、監視体制を強化 する、こういうことで情報保護の徹底を図ってまいりたいと考えております。  21ページは、5.組織の改革です。まず内部統制(ガバナンス)が弱いということで、 これを強化していかなくてはならない。組織・人員配置に地域間格差があるので、それ の見直し、職員の意識改革の3点を実施してまいりたいと思います。  24ページは、6.組織の在り方の見直しです。保険料徴収、国民サービスの向上、予 算執行の透明性の確保、個人情報保護、組織の改革、この5つの事項を検討していった 結果として、社会保険業務の効率化・サービスの向上を踏まえつつ、社会保険業務にふ さわしい組織形態の在り方や民営化又は外部委託できる部門の範囲について検討してい きたいと考えております。以上です。 (貝塚会長)  ただいまの説明について、ご意見・ご質問等ございましたら、お願いいたします。 (廣松委員)  いまご説明いただいたことだけではなくて全般的なことなんですが、2点申し上げた いと思います。  一つは統計分科会,人口部会の立場からなんですが、現在、介護保険の見直しが進行 中であり、そのご説明をいただきました。また、今年の前半は年金改革の議論が行われ たわけですが、その時に使う基礎データが古いものであることが気になります。という のは、平成14年1月の将来人口推計が基礎的なデータになってるわけですが、この推 計は平成12年の国勢調査の結果に基づいておりまして、年金改革も介護保険の見直しも、 それから4年たったタイミングで制度の見直しが行われるという形になっています。  それぞれに法的な規定がありますので調整が難しいのかもしれませんが、最新のデー タに基づいて制度の見直しを行うという形にうまくもっていけないものかと考えます。 今のままですと、ずっと4年前のデータに基づいて議論を行うことになります。もちろ ん、人口動態統計に基づいてアップデートが行われてはいるわけですが、それでも2年 ぐらいタイミングがずれてるというのが1点目の問題点です。  2点目は、年金や介護制度など高齢者を対象とした施策と子どもを対象とした施策の ご説明があったんですが、来年度の概算要求のところに出ております、その谷間という か、若年層を対象とした施策に関して、今回、重要項目の柱の一つになってるというこ とに関しては高く評価をしたいと思います。  最近、大学の1年生でもNEETということをよく言います。無業者と訳されている ようですが、必ずしも無業というだけではなく、もう少し深い意味があるんだろうと思 います。失業予備軍という位置付けも可能かと思いますが、そういう層を中心とした施 策に関しても今後いろいろご配慮いただければと思います。 (山出委員)  今日、私は介護保険と国保のことを言いたくて来ました。もともと国民健康保険は農 業従事者と自営業者の保険でした。農業や林業の後継者は本当にいないんです。町の中 の万商屋さん、酒屋さんも米屋さんも呉服屋さんもなくなってる。そうすると国保の被 保険者は誰か、無職者と高齢者。そういう人たちに「保険料を上げてください」と言え るかといったら、なかなか言いづらい。ここが私の苦しいところです。  どういうことを一般的にしているかというと、一般会計から国民健康保険の会計へ繰 り入れる。繰り入れるということは、税金を入れるということです。税金は誰が納めて いるかというと、職場のサラリーマン。サラリーマンは職場で自分の健康保険に入って、 国民健康保険の被保険者の保険料を税という形で援助してるということですから、国民 健康保険の制度は完全にほころびたと理解をしたいと思っています。  いま自治体が法定分、法定外分で、一般会計から国民健康保険の会計へ入れてるお金 の総額は1兆円と聞いております。ですから私から見て、国民健康保険はもうほころび たなという感じであります。  市長会等は国を保険者として、高齢者を含むすべての国民を対象とする医療保険制度 への一本化というのが切なる願いです。もっとわかりやすく言うと、国保は国直轄でや ってほしい、それくらいの気持ちだと申し上げておきたいと思います。  高齢者医療制度のうち後期高齢者の扱いですが、公費による運営を国の責任において 実施すべきが基本だと思っています。  最後にひとこと言いたいんですが、国民健康保険、介護保険両方の運営は大変厳しい。 市町村が新たな保険者を担うということは到底考えられない、こう申し上げておきます。 (若杉委員)  スペシフィックな問題なんですが、児童虐待についてきちんとした施策をとっていた だきたいと思って発言します。最近、虐待だけでなく子どもを殺すようなことがいっぱ い起きているわけです。そういう親から子どもを取り上げ、子供と切り離すことも必要 だと思いますので、児童相談所などの権限を強くするとか、そういう児童を引き受ける 施設をきちんと作るとか、そういうことをもう少し強力に進めていただきたいと思いま す。児童相談所がそれだけ権限を持つためには、職員のプロフェッショナリティという のが非常に重要になりますので、そういう人たちの育成にも十分なお金をかけて、児童 虐待を防ぐことに力を入れていただければと思います。 (貝塚会長)  児童虐待について研究グループを作られるんですよね。 (高井総務課長)  これまでも児童相談所の体制につきましては充実を毎年やっているわけですが、プロ フェッショナリティも含めまして、いろんなことを検証し、分析をしていくことが必要 ではないかと思いまして、あした児童部会を開きまして、そういったことを深める専門 委員会を作りたいと思っております。 (渡辺委員)  最近、社会保険庁は本庁の課長が逮捕されれるなど、信用は失墜だと思っております。 先ほどの宇野課長からのご説明で、努力なさってることはわかるんですが、私自身の体 験によると、総職員数の90%以上を占める地方での勤務の方々は国家公務員でありなが ら地方事務官の名残のせいか、まだ意識は地方公務員といったようなずれがあると思い ます。そういう意味で、一番重要なのは職員の意識改革だと思います。  資料5−2の23ページに来年度以降に実施する事項というのがありますが、(1)だけ が17年度で、(2)、(3)はいつだかわからない。もっと早急に手を打たなければ社会保険 庁に対する信頼は回復どころか、ますます失墜すると思いますので、この点だけはもっ と早めていただきたいと思います。 (宮島委員)  先ほど山出さんが国保や介護保険は国が責任を持ってやるべきだと言われましたが、 当初の三位一体の議論に戻ってみますと、三位一体というのは地方分権の系譜で出てき たとすれば、地域にこういうニーズがあり、地方がそれに応じてサービスを行うという ことが理念であるのに、お金がかかって大変なものは国にやってくれという感じがして しまう。  地域によって住宅状況の違いがあるとか、生計費の違いがあるとか、ほとんどのこと が地域によって大きな差があるわけです。そういうものを扱う時に、国が保険者になっ て画一的なやり方をすることが望ましいのかどうかということも含めて、三位一体改革 の中で、どういう事業を地方が責任を持って行うべきか、国が行うべきかという議論を 初めに提起されたんだと思って、私もそのへんが大変気になってるものですから、そう いうことを議論していただければありがたいなという気はいたします。 (山出委員)  生活保護の制度とか国民健康保険制度というのは国の一体的なシステムの中で処理さ れるべきものであって、町の子どもさんのお世話とか、こんなこととは別ですよ、国と 地方の行政のシステムの議論をしようやと、こういうことを我々は言ってますので、厄 介なものを地方はよけてるとか、そんなケチなことは思っていません。 (北村委員)  先ほど障害保健福祉サービスの話で、改善すべき点がいろいろ挙がりました。これを 国が補助金等々も含めてコントロールする方向で見直したほうがよいというようなご説 明にもとれるんですけど、これがこういう状況をもたらしているのは、三位一体の改革 で、国として全体を見回したような均一的な施策を行うことを中止した場合の問題点と してとらえてよろしいんでしょうか。端的に言いますと、障害、福祉、健康の部分で地 方で行っている時にこういう問題が出てきた、これを見直したいということは、三位一 体改革がうまくいかなければ、いろんな広い部門で同様なことが起こりますよというこ とと重なる部分があるような気がしてならないんですが、そこはいかがなんでしょうか。 (村木企画課長)  障害者福祉の一番の基本というのは、障害のある方が地域で普通に暮らすということ ですから、施策そのものはかなり地域性があると思います。そういう施策を展開してい くための枠組みを国全体としてきちんとした形で整備する必要があるのではないか。そ ういう観点から国の役割、地方の役割を考えていかなければいけないと考えております。 (北村委員)  先ほども質問させていただきましたように、医療の部門における三位一体の施策の中 でもそういうことを踏まえて、厚生労働省の対案というものを出していただければと思 っております。 (堀委員)  急用ができて、遅刻して申し訳ありません。既に議論が出ているかと思いますが、社 会保障の在り方について官房長官のもとで議論がされています。また、経済財政諮問会 議で議論されています。広い視野で検討されることは結構だと思います。社会保障審議 会は昨年意見をまとめ、我々の意見はそこに集約されていると思うのですが、社会保障 の在り方に関する懇談会とか経済財政諮問会議で、昨年の我々の意見を反映させていた だきたいと思っています。  2点目は、三位一体改革は既にいろいろ議論されたと思うのですが、特に次世代育成 支援は、国の将来にかかわりますので、どうしても国が主導してやっていくべきだと思 います。それを全面的に地方に委ねるというのはどうかなと思います。次世代育成支援 だけではなく、障害者福祉なり児童福祉なり老人福祉なりの部門は、意識のある市町村 は取り組んでいると思います。しかし、3,300あるうちの町村の中には、余り関心がな く、公共事業に力を入れているところもあると聞いています。このため、遅れていると いうか、まだ十分に市町村に定着してないような施策については、補助金を残して施策 を進めていただきたいと思っております。 (山出委員)  補助金をなくしたい、そして地方の自由度を増したいというのが我々であって、補助 金をなくして次に切り替えたい、こういう主張でありまして、仕事をやらないというこ とを我々は言ってるのではありません。誤解のないようにお願いします。 (若杉委員)  先ほども申し上げたことなんですが、社会保障はリスクの問題があるわけですから、 まさに全体としてやるべきであって、社会保障こそ国が責任を持ってやることだと思う んですね。宮島委員が言われたように地域によって特殊性があるわけですが、それは国 がやってもちゃんと考慮できるわけです。地域の特殊性があるからといって地方がやる ことにはならないと思うわけでして、社会保障はトータルで国がきちんと扱うべきじゃ ないかということを改めて申し上げたいと思います。 (矢野臨時委員)  三位一体のことについて一言申し上げたいと思います。地方分権を進めていくことは これからの大事な方向だと思っています。医療、介護、福祉の施策というのは基本的に は地方自治体が担う仕事だと思います。地域に密着した状況の中で、あるいはそのニー ズの中で、我々がよく使う言葉では現場主義と言いますが、そういう観点で施策の具体 化を進めていくことが必要だろうと思っています。中央政府と地方自治体の役割分担と いうのはしっかり議論をして、スムーズな移管をしていただきたい。サービスを受けて いる人は財源がどうなろうと、日々そこに住んでいるわけですから、地方自治体の責任 のもとで支障なく移管を進めることを検討していただきたいと思っています。 (貝塚会長)  三位一体について私の個人的な感想を述べますと、地方分権というのは原則的には重 要でありますが、どういう仕事を地方に渡せばいいか。一律にすべて地方に渡すという のはもともとの趣旨としてはおかしいのではないか。お皿の上に豆を乗せてバーッと傾 くと全部が傾く、やがて今度は別の方向に全部傾くというのが日本社会でして、もう少 しバランスをとってやらないと、また変なことが起きてくるというのが私の個人的な感 想です。  時間がまいりましたが、現在進行中の社会保障のいろんな問題について、皆様方の忌 憚のないご意見を伺わせていただきました。本日の審議についてはこれくらいにしたい と思いますが、事務局から何かありますか。 (古川政策企画官)  次回の開催日程につきましては、別途、日程調整の上、あらためてご案内させていた だきますので、よろしくお願い申し上げます。 (貝塚会長)  それでは、以上をもちまして第15回社会保障審議会を閉会とさせていただきます。ど うもありがとうございました。                                    −以上− 照会先 政策統括官付社会保障担当参事官室 政策第一係 代)03−5253−1111(内線7691) ダ)03−3595−2159