04/09/13 第6回雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会議事録         第6回雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会議事録 1 日時 :平成16年9月13日(月)13:30〜 2 場所 :厚生労働省専用第21会議室 3 出席者:委員  (公益代表) 椎谷座長、白木委員           (雇用主代表)奥田委員、才賀委員、林委員           (労働者代表)池口委員、池田委員、笹田委員、寺澤委員       事務局 大石職業安定局次長、吉永建設・港湾対策室長、           小宅室長補佐、森下室長補佐、下出室長補佐       オブザーバー           職業能力開発局育成支援課 杉澤補佐           国土交通省総合政策局建設振興課労働資材対策室 藤田補佐 4 議題 :(1)建設業をめぐる状況について       (2)新たな建設労働対策の検討について 5 議事 : ○森下補佐  ただいまから第6回労働政策審議会建設労働専門委員会を開催いたします。本日の会 合には、冨田安信委員と下永吉優委員が都合により欠席されました。議事に入る前に、 平成15年12月12日に開催された第5回専門委員会以降、委員の間で異動がありましたの で紹介いたします。公益代表委員の廣見和夫委員と松本斉委員が辞任し、後任に椎谷正 委員と白木三秀委員が就任されました。また、労働者代表委員の高橋義典委員が辞任 し、後任に池口誠委員が就任されました。椎谷委員においては、建設労働専門委員会の 設置についてという規則において「専門委員会に座長を置き、専門委員会に属する公益 を代表する委員又は臨時委員の中から部会長が指名する」という規定に基づいて、あら かじめ諏訪部会長から本専門委員会の座長に指名されておりますのでご了承、よろしく お願いいたします。新たに就任された椎谷座長から一言お願いいたします。 ○椎谷座長  ただいまご紹介いただいた椎谷です。お聞きしますと、この問題については皆様方の ほうが大変ご専門ですし、私ごとき者が出てどうなるかと思いましたが、諏訪部会長か ら指名を受けました。皆様方のご協力を得て、この問題について審議を取り運びたいと 思いますので、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。  いま建設労働問題は、経済の状況と相俟って、なかなか大変だと聞いております。皆 様方の経験と専門的な知識を駆使していただいて、良い成果が出るようにしたいと思い ますので、よろしくお願いを申し上げて挨拶に代えさせていただきます。 ○森下補佐  議事に先立って、事務局を代表して、次長より一言挨拶をいたします。 ○大石次長  本日はお忙しいところお集まりいただき、誠にありがとうございます。日ごろから建 設労働行政の推進に多大なご協力を頂いていることについて、この場を借りて厚く御礼 を申し上げたいと思います。  いま座長からも話があったように、建設関係は非常に厳しい状況が続いており、今後 ともこの状況は改善するというより、長期的にはなかなか難しい状況が続くのではない かと懸念されているところです。このような中で、「経済財政運営と構造改革に関する 基本方針2004」、いわゆる「骨太方針2004」においても、地域の中小・中堅建設事業主 の新分野進出への取組の支援策を関係省庁が連携して本年秋までに取りまとめ、速やか に実施する、と記されております。  また、構造改革特区の提案などにおいても、建設業における労働者派遣に関する要望 が提出され、建設業における労働力需給調整システムの整備についての要望も高まって いるところです。さらに、技能労働者の高齢化が進んでいるわけで、中長期的に見て、 技能労働者の不足が懸念されるところです。  厚生労働省としても、こうした厳しい状況の下で、建設業の再生に向けた取組を雇用 の面から支援するということで、今年度から「建設雇用再生トータルプラン」を展開し て、事業主の新分野進出、離職者の円滑な労働移動などを支援しているところです。そ うした状況を踏まえながら、今後新分野進出の支援等々について総合的な検討を行い、 来年度以降の施策に反映させていきたいと考えております。そうした意味から、新たな 建設労働対策について本専門委員会でご議論いただくために、本日から皆様方にお集ま りいただいて検討を深めていただきたいと考えております。  この専門委員会での検討については、いま申し上げたように、来年度以降の施策に反 映できるようにしたいと思っておりますので、今年中にも何らかの一定の結論を示して いただけるとありがたいと思っている次第ですが、委員の皆様方の貴重なご意見を是非 賜りたいと思います。私どもとして、必要な準備を鋭意進めてまいりたいと思っており ますが、是非皆様方の貴重なご意見を重ねてお願いし、初めに当たっての挨拶に代えさ せていただきます。 ○森下補佐  これからの議事の進行を、椎谷座長にお願いいたします。 ○椎谷座長  早速議事に入らせていただきます。8月27日に開催された職業安定分科会と、9月8 日に開かれた雇用対策基本問題部会において、新たな建設労働対策の検討については当 専門委員会において審議を行い、その結果を取りまとめて部会及び分科会に報告するこ ととなりました。これを受けて本日より、新たな建設労働対策について審議・検討を行 っていくこととなりました。本日はその第1回目となります。そこで全般的なご議論を お願いしたいと思いますが、初めに事務局から、全般的な資料についての説明をお願い します。 ○下出補佐  まず資料を確認させていただきます。お手元に配付されているのは資料1「建設業を めぐる状況」と資料2の2点かと思います。  配付資料1について説明いたします。前回第5回のこの委員会において、このデータ による説明をいたしましたがその後これまでの間にアップデートされた部分も含めて、 再度説明いたします。資料1の目次の裏に「建設業の雇用動向等」という、このデータ の概要を書いた部分がありますので併せてご覧ください。それでは、配付資料を頁に沿 って順次説明させていただきます。  1頁建設業における投資、許可業者及び就業者の推移というデータを付けておりま す。これは建設の動向をいちばん如実に表しております。平成2年の建設投資約85兆円 をピークにして、直近の平成15年は約55兆円、約3分の2にまで減少していることがわ かります。  いちばん下の棒グラフで、その反面、就業者は、平成9年の685万人をピークに、直 近の平成15年には604万人。就業者は1割程度の減少に収まっております。  建設業許可業者数(中間の青い△)は平成12年がピークで、約60万社ありました。そ れが直近の平成15年では55万社、約1割程度の減少になっています。つまり就業者と建 設事業者は1割程度減少しております。が、これに対して建設投資が大幅に減少してい るということを示すのがこのグラフです。  2頁は地域別の建設就業者数の変化の推移を、北海道から九州まで全国各ブロック別 に、昭和60年、平成9年、平成14年というように棒グラフで表したものです。このグラ フによると、平成9年の建設投資がピークとされていたころに比べると、いずれも減少 しておりますが、昭和60年に比べれば増えております。昭和60年の建設投資は、平成15 年の建設投資とほぼ同じぐらいの状況です。そんな中で南関東、東海、近畿は依然就業 者数が増加しているという状況も示されております。  3〜11頁には就業者の過不足状況をデータとして載せてあります。3頁で、0という バーから上は不足感を、0から下は過剰感を表すというグラフです。平成10年度以降、 過剰感が強まっております。情報通信業はその時点から不足状態になっておりますが、 建設業では過剰感が見られます。平成14年ぐらいから建設業においても過剰感が若干は 解消されて、不足方向には向かっているものの、他産業に比べると、まだ過剰感のほう が強いという状況になっています。  4頁は、それを建設業労働者の過不足状況ということで抜き出してグラフにしたもの です。平成6年からデータを取ってありますが、平成10年以降は、下の赤いバーで示さ れるとおり、過剰感がかなり強くなっています。また、直近においても、過剰感と不足 感を比べると過剰感のほうが上回っているという状況を示してあります。  5頁はそれを職業別に見てみようということで、専門・技術職、販売、技能工のよう な職種については、最近の傾向として不足感が若干出てきている。しかしながら管理、 事務、単純工等については、平成10年以降、一定した過剰感があるという状況にありま す。  6頁に移って建設業における技能工の過不足状況を見ますと、平成10年まではかなり 不足感があった技能工ですが、平成10年以降は、過剰と不足とが双方一定量存在し、過 剰であったり不足であったりということを繰り返している状況です。  7頁にある単純工については、平成10年以降は一定して不足感のほうが多い。かなり 不足感が目立っている状況です。  8頁は建設業における事務職について。このデータでいきますと平成6年からです が、継続して、過剰感が不足感を大幅に上回って進行しているという状況を表しており ます。  9頁は管理の状況ですが、これもいまの事務職と同じような傾向を表しており、過剰 感のほうが不足感を上回っている状況です。  10頁は専門技術職ですが、これも技能工と同様、平成10年以降、過剰と不足が一定量 存在しているという状況を表しております。直近の平成16年8月のデータにいきます と、今年になって若干不足気味というデータになっております。  11頁では、建設技能労働者を抽出し、技能労働者を職種別に見て、どのような工種で 過不足が推移しているのかというグラフです。これも上段のほうにかけては不足感、下 が過剰感ということです。この中で見ますと、最近に至っては建築の型枠工、建築の鉄 筋工の職種で若干不足感が強まっているという状況を表しております。  12頁は建設業就業者数の推移です。これは1頁の下段の部分を大きくしたわけです が、情勢として、平成9年をピークとしております。全産業に占める就業者の割合が赤 い折れ線グラフで表されておりますが、やはり平成9年の10.4%から、平成15年は9.6 %。全産業に占める割合も低下しているという状況になっております。  これから19頁までは建設業就業者数の推移を表しております。13頁は地位別の就業者 数の増減推移を表しておりますが、平成9年以降、主に常用雇用者数が減少していると いうことを表しております。これは各年の対前年に対する減少の実質数を表しておりま すが、直近の平成14年では、雇用者数は対前年と比べて11万人減少しているという形に なっています。  14頁は職業別の建設業就業者数の推移を表しております。これについても、平成9年 をピークとして、どんどん減少しているのは建設作業者。平成15年で409万人となって おりますが、この部分の減少が大きいということが見て取れます。  15頁は、対前年でどのぐらい増減しているのかという実質数を棒状のグラフにしたも のです。平成10年には21万人、平成13年には18万人建設作業者が大きく減少している状 況です。平成14年に至っては、管理的職業、事務従事者8万人の減少というのが目立っ ております。  16頁は最近のデータです。平成16年7月までの就業者数の推移を調べてみましたが、 総計は571万人という数字です。ですから、平成15年の年間トータルの604万人から571 万人まで、約30万人程度すでに減少し、月別に見ても減少傾向が続いていることが見て 取れます。  17頁は最近の建設業労働者の、従業上の地位別対前年同月増減の推移です。これも最 近の、月別にどのぐらい減っているかという状況を表しております。平成16年7月も15 万人ほど常用雇用が減っておりますが、2〜7月と常用雇用は減っております。平成15 年4月ぐらいから、だんだん減少傾向が弱まっているという状況が続いています。  18頁は、職業別の建設業就業者数の推移を(月別)に表したもので、先ほどのグラフ と同じものです。  19頁は最近の建設業における就業者数の職業別対前年同月増減の推移です。建設作業 者、管理的職業、事務従事者が直近7月では8万人と減少しておりますが、相対的に見 ると、平成15年3月ごろからは、技能工と建設労務者等の建設作業者の減少が多く見ら れます。  5月6月には管理的、事務的職業が飛び出しております。この内訳は管理が4万人、 事務系が7万人に増えておりますが、なかなか特異的なところかと思います。  20〜21頁には産業別の雇用調整を実施した割合を示してあります。平成9年以降、雇 用調整の割合が増加しています。いちばん上の折れ線が製造業ですが、この製造業は雇 用調整を行ったり、平成12年にはグッと下がったりという乱高下を続けています。  その中で建設業は、一定して25%程度の雇用調整割合。平成13年に一時期上がりまし たが、最近、減少傾向にあります。直近の平成16年4〜6月期には若干雇用調整割合は 増加しておりますが、総じて雇用調整割合はだんだん減少傾向になっています。  21頁は雇用調整の方法がどうなっているのかを示しています。いちばん多いのが残業 規制で雇用調整を実施している場合です。これは建設業におけるデータですが、これも 直近を見ると、4〜6月では希望退職者の募集、解雇が上がっている状況になります。  22頁は建設業の倒産件数です。平成2年がいちばん底ですが、それからどんどん増加 傾向にあります。平成12年がピークで、1年間に5,928件倒産してしまいました。全産 業に占める比率が31.1%。その後13年、14年と横ばい傾向になっています。そして平成 15年には約800件程度減少しています。全産業における比率は30.5%と3割を堅持して いる中で、建設業はまだちょっと苦しい状況だと思います。  23頁は最近の建設業の倒産件数をデータにしてあります。平成14年2月から月別に記 載してありますが、徐々に減少しています。直近7月では357件倒産していますが、相 変わらず、全産業の比率で見ますと3割を超える比率が続いているという状況です。  24頁は常用雇用者の規模別企業構成比です。下段の全産業のグラフと比較して、上段 の建設業は5〜19人規模の非常に小規模企業が多いのです。また、紫の所は30人未満の 企業ですが、これまでで約95%。全産業でもかなり多いのですが5%程度。30人未満は 少なく、90%程度ということで、建設業は中小零細系の業者が多いという状況を示して います。このデータは平成13年度のもので古いのですが、平成16年6月に調査したもの の集計がまだできていない状況です。  25頁は非農林業における産業・年齢階級別就業者の推移です。右のほうからだんだん 年齢が下がってくるわけです。不動産業はかなり高年齢化しておりますが、その他の産 業を見た中で、建設業が45歳以上51.7%で高齢化がかなり進んでいる部類に入ります。 また、その中で55歳以上が26%、つまり4分の1が55歳以上の就業者で占められている という状況を示しています。  26頁には建設就業者の年齢階級別構成を示してありますが、50〜54歳がいちばん多 く、それ以上65歳までを合わせると全体の41%を示しており、高齢化傾向がよく見えま す。なおかつ言えることが、20〜24歳が36万人で、この層が就業者としては少し少ない という状況がわかるかと思います。  27頁は建設就業者の年齢階級別構成比の推移です。これはいまの年齢分けがどのよう に推移しているかということですが、55歳以上が増加傾向にあります。25〜34歳(青い △)も、最近に向けて増加傾向にありますが、35〜44歳と15〜24歳が減少傾向にあるこ とがわかります。35〜44歳は平成2〜8年に急激に低下していますが、これは建設業も 好調な時期だったと思いますので、より高給を目指して他産業に移ったのかとも思える 状況です。  28頁は産業別の女性就業者比率の推移です。建設業(下の青い△)は他産業に比べる と女性の就業者比率は低い状況です。平成4〜9年にかけて徐々に増えつつありました が、平成14年度の調査では若干減少傾向にあるということを示してあります。  29頁は入職者と離職者の状況について何頁かにわたって示してあります。まず産業別 の入職超過率の推移ですが、製造業やサービス業等と比べて、建設業(赤い△印)の離 職状況が強い。サービス業は離職超過の状況があるということを示しています。  30頁はその入職・離職者数の実数を、棒グラフで表してあります。平成3年から若干 入職超過の状況です。それが平成8年まで続き、平成9年からは離職者の超過傾向にな っています。直近の平成15年度では19万1,000人の離職超過という状況を示しています が、就業者数も減少している状況から、離職者数は超過しているかと思います。  31頁はこの入・離職者超過の状況を職別に表してあります。これで見ると、生産工程 ・労務作業者、いわゆる建設作業者(ピンクの部分)の減少傾向が、平成8年度以降、 離職の超過傾向が顕著であるという状況が見られると思います。  32頁は年齢別の入・離職者の超過状況ですが、これも平成9年度から離職超過を示し ています。その内訳では、55歳以上が常に離職超過という状況になっています。平成14 年からは、15〜19歳という若年層以外は離職超過、平成15年度の内訳では55歳以上で14 万人離職超過という状況になっています。  33頁は産業別の入職者の年齢階級別構成比です。建設業に入ってきた人を年齢別に見 ると、建設業へは45歳以上の方の入職割合が多い。45歳以上ですと、足し算しますと 34.5%。鉱業を除くと、全産業的にはいずれも高い比率で入職傾向にある。離職傾向も 高いけれども、入職傾向もやはり高いという状況です。  34頁は入職者の職歴別の状況です。この中で学卒者に注目しますと、その比率は低い 状況です。青い×は学卒者が全産業では何パーセントいるかという状況です。かなり高 位の数字ですが、建設業はそれに対してかなり低い状況です。  35頁は新規学卒就職者のうち建設業に就職する割合はどれぐらいかということです。 オレンジ色の折れ線グラフがありますが、これを見ますと、平成8年では新規学卒者の うち建設業へ就職する方が8.4%ぐらいいたわけですが、直近の平成15年では、それが 5.4%ぐらいまで下がっているという状況を示しています。この中で減少数が多いのは 棒グラフのブルーの部分、つまり高等学校卒業者です。それから、平成10年と11年では 大学卒業者があります。この高校と大学の減少が結構多いということが見てとれます。  36頁は全産業及び建設業における新規学卒就職者の学歴別構成比です。全産業と比較 して目立つのは、高等学校の卒業者が割合としては多いことです。先ほど、全体として は高卒の方の減少が多いということでしたが、学卒者の中の割合を見れば高卒者の割合 が高く、これが建設業の今のところの特色かと思います。  37頁は入職者の入職経路別の比率です。どういう方法で入職しているか、どういう形 で入職しているのかということですが、全産業(黄色の「広告」という欄)は32.5%と かなり多いのですが、建設業においてはその割合が若干低く出ています。縁故採用と 17.2%が前の会社の紹介、いわゆる縁故的なもので45.7%、約半数近くを占めていま す。いちばん左側はハローワークですが、全産業より少し多いという状況で、縁故割合 がかなり高いことを示すものです。  38頁は入職者の入職経路を職業別に見ています。いちばん下の生産工程・労務作業 者、いわゆる技能工や労務作業者が、足し算すると59.6%、約6割がいわゆる縁故採用 であるということです。  39頁は産業別離職者の年齢階級別構成比です。全産業で年齢別に見ても45歳以上の比 率が高い。60歳以上の離職者比率がかなり高率という状況です。調査産業計から比べる と、約17%ほど45歳以上の離職者が多いという状況を表しています。  40頁からは学校関係の卒業者の離職率を表しています。まず40頁は中学校卒業就職者 の3年以内の離職率ですが、かなり高く、80%を超える離職率です。41頁は高校です。 高校はだんだん上昇しており、50%を超える離職率です。42頁は短大等の卒業者の離職 率ですが、これは若干下がって、直近では45%。43頁は大学卒業者の離職率ですが、こ れについては、全産業と比較しても逆転しており、建設業のほうが低い状況で、平成12 年度は約3割、大学生については頑張っている状況にあるかと思います。  44頁は建設業への転職者の前産業比率の推移。前にどういう産業についていた人が建 設業に転職してきたのかという数字です。圧倒的に多いのが建設業(水色の部分)から 来たのだと。つまり、前も建設業で、転職しても建設業というのが、平成14、15年で71 %程度。かなり高率で建設業に戻っているという状況です。  45頁は建設業への前産業別転職者数の推移です。これは前の頁のグラフを実数に置き 換えたものです。平成10〜15年には約10万人ほど転職者が少なくなっている状況です が、内訳は建設業からというのが非常に多いということです。  46頁は建設業離職者の転職先産業比率です。これは逆に、離職者がどういうところに 転職したのだろうかというグラフですが、やはり裏腹で、もちろん建設業へ転職すると いうのがいちばん多く、6割ぐらいを占めております。その次はサービス業、卸売・小 売業、飲食店が高い割合で続いています。47頁は、同じく産業別転職者の推移を実数で 表したものです。  48頁は建設業と他産業間の移動状況を、対前年度の増減数と同年度、前年度との比較 をし、その割合をグラフにしたものです。転出超過が平成9年以降増えておりますが、 建設業から他産業への転出が多いのは卸・小売業、飲食店業、サービス業という状況で す。  49頁は産業別の新規常用求人数の推移です。建設業(太い赤の線)は平成9年以降減 少傾向にあり、片やサービス業は順調に増加傾向にあるという状況です。50頁にはその 常用求人の充足状況をしてあります。平成2年度以降充足率は各産業とも徐々に上昇を 始めております。建設業も、直近の平成15年度は前年度に比べて下がっておりますが、 同様です。充足率が上昇していくというのは、求人が容易になっていることを示してい るかと思います。  51頁は産業別の新規臨時・季節求人数、いわゆる季節労務者の推移です。これについ ては圧倒的に建設業の割合が多いのですが、平成2年度以降、臨時・季節求人数はずっ と減少しており、建設投資減少の影響がこの辺にも表れているのかなというところで す。52頁にはその充足状況を示してありますが、充足率はかなり高率で、70%を占めて おり、求人というのは、状況としては容易であるということです。  53頁は出稼労働者の就労先産業の推移です。一貫して建設業は高く、一時期平成12年 度は逆転しておりますが、平成14年度においては、約半数程度はまだ建設業であるとい うことを示しております。  54頁以降に学卒者の求人数をグラフにしてあります。まず54頁は中学卒業者の推移で すが、平成3年3月卒業をピークにドーンと減少しており、平成15年3月ではピークの 93%減少、中学卒業はかなり減っています。55頁はその充足状況ですが、少ないことを 反映して、充足率としてはかなり高率になっています。  56頁は高等学校卒業者の産業別求人数です。これも中卒と同様、平成4年3月をピー クに減少を続けております。平成15年3月卒業では、ピーク時の約88%ぐらい減少して いる状況です。そして、その充足率の状況が、最後の57頁にございます。これは他産業 に比べると若干充足率は低位になっております。長くなりましたが、以上が私どもが持 っているデータの説明です。 ○椎谷座長  まだ説明は続くのですが、ちょっと長い説明ですので、ここで一旦切って、もしこれ までのデータその他について、ご質問なりありましたらどうぞ。とりあえずここで1回 ご質疑をお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。 ○池田委員  いま、下出室長補佐から建設業をめぐる状況の統計的な報告がありました。いま本当 に中小・零細業者の実態、そこに働いている者の実態というのを統計は口頭ですからあ まり出せませんが、若干時間をいただいてご報告をしておきたいと思うわけです。  小泉政権が発足して4年に入りました。小泉さんの政策は、ジャングルの法則です。 強い者が勝ち、弱い者が負けていく。まさに二極化の時代に入ったと思います。日銀短 観にしても、どこの調査にしても、大手ゼネコンとかあるいは大手住宅メーカーの業績 は非常に回復している。これが事実だと私は思います。しかし、その実態はまた報告を していただきたいと思っていますが、私は中小・零細業者の実態についてお話をしてお きたいと思います。  特に、私の所属している全建総連というのは、70万の仲間を抱えています。業種は多 種、建設業、一般の人たちが入っています。平均年齢は先ほど言いましたように同じで す。やはり、50.4歳ぐらいがうちの平均年齢です。そこで何が起きているかというと、 全国すべて沖縄から北海道まで組織しておりまして、そこの仲間から聞えてくる声は 「仕事がない、仕事がない」。  実は、今日私、東京都連という15万の組織の執行委員会に出て、中央情勢報告をした ところですが、東京都連から5月末の賃金アンケート調査というものの速報が、私の手 元に入りました。それによりますと、2万6,052人調査をしたそうです。そしてその調 査の中で、職人、一人親方の常用賃金は、全職種で1万6,255円。1万6,255円なのです が、それが20日とか23日働ければいいのです。いまは、13日から20日間の間ですがひど いものです。ですから、15日働いても仲間は24万しかもらえない。ボーナスがないです からね。大変な状態。それから、一人親方の手間受け賃金が1万7,238円というと1,000 円ぐらいしか違いません。一人親方ですから、自分たちで道具を持って働いているわけ です。生産手段を持って働いている人たちが1,000円しかない。この人たちも、20日と か25日働ければ本当にいいのです。もう20日というのはめったにないと言っていますか ら、本当に厳しい情勢にあるわけです。ですから、「仕事がない」、仕事がないという のは1番目の問題です。  2つ目には、賃金が先ほど言った、上がらないのですね、下がったほうが多いので す。実は、全建総連企画調査室というのがあります。そして、全国の工務店を960人ぐ らいモニターにしてやっていますが、今回は60%の仲間が回答しています。賃金を上げ た方というのは、600人のうちに何と2%しか上がっておりません。圧倒的に41%ぐら い下げているのですね。下げても上げてもないという人も40何パーセントいますから 100%になるわけですが、上げている人は2%、下げている人が40何パーセントですね。 それはなぜかというと、収益がないからですね。収益がないというのは、何からきてい るかというと、工事完成高が全然ない。元請も直接お客さんから仕事がない。それか ら、下請も元請が指値発注で叩いて叩いて叩き売る。そこで利益がない。ですから、1 番目が工事完成高がない。2番目が請負単価が下がってしまう、指値発注、やっぱりそ こなのです。  3番目が競争が激しくて、もうだめだと負けてしまうということです。ですから、2 番目には賃金が上がらない。3番目に多いのが、先ほどデータに出ましたが、帝国デー タバンクがこの4年間1,000万以上の負債を抱えて倒産したのが5,000件。今回は5,067 件ですね。しかし、1,000万以下の……ですね。ですから、そのようなものが出たら、 もっとあるわけですが、そこから生じるのは何かと言ったらば、1つに大変なのは、そ こで働いている人たちが事業所を変更するのですね。なかなかできないそうですよ。す ごい苦情がきますね。  2つ目に問題なのは、そこから働いた者の賃金の単価がもらえないのです。ですか ら、そこからやくざがからんだり、トラブルが起きるわけです。そういう問題が労働組 合にいまたくさん来るのです。我々も大変です。ああいう人たちを相手にしたり、して いくわけです。だから、これからそれを意識していっているわけではございませんが、 とにかく建設産業というのは、そういうものを持っているのですね。それから、先ほど 言っているのですが、指値発注で儲かるわけです。平成元年がバブルでピークですね。 そこから、いまの単価は半値8掛け2割引。まさに自転車操業です。自転車は、漕がな ければ走りません。ここは、ペダルを止めた途端にバッタリ倒れてしまうのが倒産とい うことで、自転車操業です。  次に困っているのが、金融関係ですね。金融関係が貸し渋り貸しはがし。貸し渋りだ ったらいいのですが、貸しはがしです。業者が反面調査するのです。例えば、あまり材 料をあまり買ってないとか、すぐ取引先を調べてしまうのです。銀行との取引関係と か、あらゆるものを調べて、そして人通りがいないと、そのうちお客さんが工務店に入 って来ない。下請の人たちも入って来ないというのを見たらこれはもうだめだ。  そういうことで、貸しはがしというので、どんどんやって来ました。うちでこの前調 査したのですが、40数パーセントの人たちが貸し渋りと貸しはがしで、本当に苦しんで いるというデータが出ております。  その次に苦しいのは何かというと、雇用労働者。そこで働いている雇用労働者が先ほ ど言ったように、帝国バンクのデータでも5,000件で、失業して今度は働く先が本当に みつからない。ですから、先ほど言ったように、また建設業に戻るのです。例えば、サ ービス業に行ったって、ほかの所に行っても、やっぱり40、50の人たちが働いてもなか なかなじまないですよ。また、なじむ所へ来るのですね。こういう実態というのは、吉 永室長もご存じだと思いますが、こういう実態は本当にデータは、確かに私は正しいと 思ってますが、その実態というものが本当におつかみになっているのか。これは分科会 でも私言ったのですが、是非そこらについては、一つ調査をしてその実態をきちんと明 かしていただかないと、今後の検討課題に入る前に一つそういう実態を是非お聞かせ願 えればありがたいと思っています。以上です。 ○椎谷座長  大変雇用問題だけではなく、もうちょっと幅広くいまご説明というか、お話ありまし たが、何かありますか。 ○吉永室長  詳細なご指摘ありがとうございます。全くご指摘のとおりだろうと思います。私ども で、把握しております統計調査等を見ますと、かなり改善の兆しが見えてきているとい う形になってしまいます。ただ、兆しと言いましても改善しているわけではなくて、相 変わらず厳しい中ですが、厳しさがだいぶ緩んできているというデータがかなり出てき ています。ただ、実際にいろんな方とお話いたしますと非常に厳しい。どの辺が厳しい のか、正直私どもその辺りいろいろな方とお話して実感と統計数字とのギャップに一瞬 とまどっているところです。  確かに、統計などを見ても例えば大都市近郊のマンションが比較的好調で、それに伴 うセールスが好調であるという実態というものは、把握しています。  ただ、一方で地方の実態を見てみると、これらの状況もありませんし、まさに地方で あれば中小事業主は非常に中心であるということで、いま本当に池田委員がおっしゃら れたような実態で、非常に厳しい実態になるのだろう。また、そうしたものが地域の中 核的な産業であるという実態から地域全体への非常に経済環境が改善しない1つの要因 になっていると理解している次第です。もちろん、金融の状況についても一時期よりは 改善されたとは言え、なかなかその投資が建設に回るという状況にはございません。ま た、ご指摘があったように建設労働者の方が、一度失業してしまうとなかなか他産業へ 就職することは、難しいとご指摘のとおりです。確かに、事業所サービスなどに出てい る方もいらっしゃいますが、大層は建設業にまた戻ってきてしまう。建設業に戻ってく ると、非常に少ない求人の中から仕事を選ぶということで、また賃金にもあまり良い影 響がないという状況にあるだろうと思っています。  こうした状況で、私ども次に説明いたしますが、何とか新分野進出ということ、それ はもちろん、建設業の外でうまくいけばいいわけですが、そういうものというのは、な かなか難しい。なんとか建設業の中でもリフォームなど一部好調な分野がございますの で、こういった分野にシフトしていただくことはできないか。この辺り、知恵をしぼっ ていきたいと思っていますし、なかなか知恵がないものですから、この審議会の1つの 検討課題にいたしたいと考える姿第です。  なにとぞ、この辺りにつきまして、率直なご意見をいただきまして、今後の対策に活 かせるような形にさせていただければと思っています。  なかなかご指摘がありましたような厳しい実態というものは、統計的に見いだすもの は難しいものですが、その辺り何らかの形で検討して、私どもで聞いているような話と この統計とのギャップというものを、何らかの形でご報告できればいいなと思っていま す。以上です。 ○椎谷座長  この初めに説明がありました雇用動向等について、何か更にございますか。今回に限 らなくてもいいと思います。どうぞ。 ○寺澤委員  統計の関係ですが、20頁雇用調整という話が出てきてまして、この数年持ち越し雇用 調整もピークを打って、少し少なくなってきたかという感じの中で、またつい最近にな ってなんか雇用調整の動きみたいなものがこのデータからは少し見てとれるのです。い ま世の中を見てますと、かなり民需が出てきて民需で少し建設投資も増えてきている。 一方でいわゆる公的な需要というのは、ずうっとマイナストレンドで、これからもマイ ナストレンドになっていく中で、かなり建設投資の中身的なものが、変わってき始めて いる。そういう関係の中で、いわゆる対応においてのミスマッチといいますか、その労 働力のとか、またそれぞれの企業の市場との関係の中で、ミスマッチが起きてて、一部 では非常に人手不足感が出てきている中で、一方では非常に雇用調整をしなければいけ ないような現状が出てきているようなことを、ちょっと私は感じたのですが、その辺り はどういう受け止め方でしょうか。 ○吉永室長  ただいま寺澤委員からご指摘がありました一部において、労働者の不足感が出てきて おり、特に日本労働者についてそういう傾向があるということです。  先ほどの資料の中でも一部出てきております。全体として過剰である状況というもの は、否定し難いものがあるわけですが、技能労働者について、一部専門的な分野につい ては、不足している企業も見られると考えております。  こうした状況の中で、先ほどの説明にもありましたが、非常に全体として技能労働者 が高齢化している中で、その技能労働者をいかに建設業の中で保持していくかというも のは、非常に重要な課題と思っております。また、雇用の安定の趣旨からも実際に建設 業を離職した方が、建設業に就労している場面が非常に多いという、先ほどの池田委員 のご指摘もありましたが、こういった状況の中で、そういう過不足感をうまく調整する 手法というものはないだろうか、と考えている次第です。これも後ほど次にご説明する ことになるかと思いますが、今回の建設労働委員会の審議の1つの中心議題だと考えて おります。  全体として厳しい雇用情勢が続く中で、雇用の安定を図りながら、建設事業に必要な 労働力を確保していきたい。そのための方策について、ご議論いただきまして、何らか のご提言いただければと考えている次第です。 ○林委員  資料をたくさん作っていただいてありがとうございます。いろいろわかっていること もありますが、見直すとそれなりの価値がある。  資料1ですが、どう読むか、なかなか難しいところがあるのですが、さっきもご説明 がありましたように、建設投資のピークは平成2年で85兆円。それでいまが55兆円です から、単純に言うと、35%ほど落ちてます。その平成2年の就業者数が588万、いま604 万ということは逆に増えているのです。この理由は、いろいろあろうかと思うのです が、なぜ、労働者が減ってないのか。建設投資は35%減少で、就労者はなぜ減ってない かというのが1つあると思うのです。  その理由の1つは、平成2年の頃はバブル経済ピークのころでは高付加価値のものを 作ってましたので、例えばPC板を取り付けましても、付加価値の高いものを取り付け た。手間は一緒でも非常に生産高が上がっていった。やはり、価値の低いものを取り付 けると、同じ生産高でも人手がたくさんいるということです。例えば、建設の延べ床面 積はピークのときとあまり変わってないとか、いろいろな裏付けデータもあると思うの ですが。例えば588万と604万人は、就労1日当たりの労働時間といいますか、1人あた りの労働時間の変遷というのは、何かデータがあるのかどうか、ほかに投資が35%も下 がりながら、就労者が増えていることを説明できるような何かあるのかというのが1点 です。  それからもう1つは、この35頁。これもなかなか感慨深いものが私どもにはあるので すが、バブルのころから、この委員会で建設雇用改善の5カ年計画を何回かやらせても らっているのですが、新規の学卒者、中卒者、高卒者でもいいのですが、新規の学校卒 業者が建設業に来る割合が増えたと、非常に喜んでいたのです。平成2年から平成7年 ぐらいにかけて、どんどん新規の学卒者が建設業に来てくれた。7万8,000人も来てく れたと喜んでいたのですが、最近これが減っております。資料をもらいましたが、新規 学卒者求人も減っているということは、前は単純に若年者が建設業に入ってくれて非常 にいいという見方をしていたのですが、これも事業主からといいますか、そういう技能 労働者を雇われる方からしますと、中学や高校の方をとって、1年間、2年間訓練して ペイするかというシビアな話が出てきていると思うのですね。それで、やはりなかなか 好んで学校卒業者をすぐに採用せずに、どこかで自分で腕を磨いた人を雇う。そのほう が企業側としては、いいという実態があって、考え方が変わってきているのではないか と思うのです。  もう1点の最後は、年齢別の人数とかいろいろさっき教えてもらったが、平均年齢 は、ほとんど動いてないと思う。ここ10年ぐらい公共工事労務費調査の平均年齢も45歳 弱のまま動いていないと思いますので、たぶん、若い人が入ってくれて、高齢化を押さ えており、平均年齢は増えてないということだと思う。製造業と平均年齢で接近してい ます。その点では、若い人が何らかの形で入ってくれていいかな。その入ってきた若い 人を、いまからどのように訓練したり教育したりしていくのかというシステムづくりと か、そういうものが大きな課題かと考えています。  ちょっとご意見と、ご意見聞かせてほしいことと、私の感想を交えて述べさせていた だきました。 ○吉永室長  1点目の労働時間の関係ですが、いま手元に資料ありませんので、資料を確認したい と思います。ただ、直感的な形でお答えさせていただければ、平成2年まさにバブルの 時期、人手不足で採用ができなかった時期です。そういう意味で、労働時間が延びてい たということは、想像に難くないと思っています。昨今の状況ですが、先ほどの雇用調 整実施企業の割合の中で、残業規制というものがかなり出てきておりました。そういう 意味で、平成2年当時と比較すれば、その状況というものは大きく違うだろうと考えて います。  2点目、年齢構成のご指摘がありました。全体としてみれば、それほど大きく平均年 齢が変わっていないということがあるのだろうと思っています。先ほどの資料の中にも ありましたが、新規学卒層の入職というものは、減ってきています。ただ、25歳から35 歳ぐらいの層というものについては、かなりのボリュームで入職しているという実態は あるだろう。こういう層が何らかの仕事をして、あるいは腕を磨いて建設業に入ってき ているという実態。それは、それで非常にいい傾向だろうと思ってますし、そういう方 が入職前にその建設業の訓練を受けるということ。訓練校いくつかございますが、そう いう所で受けるというのも可能かと思いますし、また、入職されてからいろいろな形で OJTあるいはOff-JTという形で訓練を受けていただくというのは、非常に重要 だろうと思っております。そういう意味で、私ども各種助成金等もありますので、こう いうものを活用していただきながら、全体としての産業全体に必要な労働力を確保する ということが重要ではないかと思っています。  3点目、学卒の関係でお答えする必要はないというご指摘もございましても、若干触 れさしていただければ、確かに企業が即戦力を欲しがるということは建設業に限らず、 いずれの産業でも言えるのだろうと思っています。  ただ、1つ言えますのは、即戦力だけに頼ってしまうと、その即戦力が自分で湧いて くるわけではございませんので、そういう意味で全体的にその産業に必要な労働力が即 戦力という形で得られる環境が常にあるかと言われると、なかなかそういう環境には必 ずしもないだろう。そういう意味で、企業が学卒・新卒という意味ではなく、若年の方 を採用していただいて、あるいは企業内トレーニングを中心にトレーニングを積んでい ただくということは、1つキャリア形成の中では、必要なステップだろうと思っていま す。そういう意味で、学卒が直ちに建設業に入るべきだということを言うつもりは毛頭 ないですが、若い人がともかく建設業に魅力を感じて、その中で技能を磨いていただく ということ。こういう形のものは重要ではないかと考えています。 ○椎谷座長  ほかによろしいですか。いまご説明のありました雇用動向等についても、今回でこれ が全部終わりというわけではなくて、これから議論を進めていく中で、またこういうデ ータがないのかというお話も出てくると思いますので、その都度また対応していただく ようにして、先に進んでよろしいですか。  それでは、II以下の資料についての説明を引き続きお願いします。 ○下出補佐  それでは、IIの「建設業をめぐる最近の動き」から資料2まで続けて説明させていた だきます。II建設業をめぐる最近の動きの中の1頁です。「経済財政運営と構造改革に 関する基本方針2004」、いわゆる「骨太2004」という中で、平成16年6月4日に閣議決 定されたところですが、この中の予算制度改革の本格化という所の(政策群)という中 で、(建設業の新分野進出の円滑化)という所が位置付けられています。また、経済活 性化に向けた重点施策として、地域再生の分野におきまして、地域の基幹産業等の再生 ・強化を図るということで、建設業の新分野進出の支援策のとりまとめを行うというこ ととして、下記の文書にありますが、情報提供、中小企業対策、雇用対策の活用など、 新規成長分野、進出への取組が円滑になされますように、国土交通省など関係省庁が連 携して本年秋までにとりまとめ、速やかに実施するという決定がされています。  2頁になりますが、地域再生推進のためのプログラムといたしまして、これも平成16 年2月27日、地域再生本部において決定された事項ですが、地域の基幹産業の再生とい うことで、建設業の新分野進出など経営革新の促進を行っていこうということで、(ア )から(オ)などの各種の施策が出ています。その中で、(オ)建設業の新分野進出等 を促進するための関係省庁連携会議の開催をしますということで、次の3頁になります が、実際、建設業の新分野進出を促進するための関係省庁の連携会議というものが持た れています。  第1回につきましては、本年の3月30日に行われておりまして、今後の取組につい て、国土交通省を含めて意見交換が行われたということです。そして、直近先月8月27 日に、第2回目を開催したところですが、先ほど言いましたように、「政策群」として 提案しておりますということから、関係省庁が連携して取り組んでいくことについて、 更なる意見交換がなされたところです。この中では、都道府県ごとに設置されるワンス トップサービスセンターの関係省庁の協力ということについて、意見交換がなされたと ころです。  このように、今申し上げました3点は、建設業の新規成長分野への進出ということを 1つのツールといたしまして、建設業の再生及び地域の再生というモードに取り組んで いこうという姿勢です。  4頁に移ります。建設事業における労働者派遣に対するこれまでの要望です。このよ うなことを踏まえて、構造改革の特区提案というものと、地域再生の検討要請というこ とで、地域のほうから意見が提案されています。  まず、上の構造改革特区提案においては、長野県小谷村から第4次、昨年11月、それ から、第5次提案、本年6月から6月30日までの2期の受付期間において、小谷村から 提案がなされています。第4次の提案といたしましては、村内の建設業者が共同で人材 派遣会社を設立し、建設業の従業員を1カ所に登録し、近隣地域若しくは県内の建設会 社の依頼に応じて、登録者を派遣するようにしてほしい。  第5次においては、建設業を取り巻く状況は厳しさを増しているため、従業員の雇用 が難しくなっているということで、先ほどの人材派遣会社というものではなく、建設業 者が、その雇用する建設労働者を近隣地域の他の建設業者へ派遣することを認めてほし いという提案が小谷村からなされています。  また、地域再生検討要請という部分で、岐阜県の建設業協会からこれは昨年12月から 今年の1月までの募集期間におきまして提案されていますが、これについては、市町村 単位で建設業者は事業協同組合を設立して、その組合の中において、建設労働者派遣業 務の適用除外というものを緩和していく。つまり、派遣をさせてほしい。それは組合の 構成員に対してのみ派遣が可能であるもの。そして、組合の構成員が一定期間経過後に 合併することを前提とする条件ではどうだろうか、という提案がなされています。  また、いちばん下には全国規模での規制改革要望として、東京商工会議所から建設業 も労働者派遣法の対象業務とするという提案がなされております。  次の5、6、7頁と3頁にかけましては、先ほどの長野県小谷村からの特区提案につ いての詳細のレポートがここに掲載されています。内容につきましては、先ほど申し上 げたとおりです。8頁からは、地域再生に係る支援措置という地域再生の提案としての 先ほどの岐阜県建設業協会からの提案書というものを付けています。10頁をご覧いただ きますと、その岐阜県の建設業協会の提案というものがわかりやすいかと思いますが、 各建設1市町村内の建設業者が何社か集まりまして、事業協同組合を設立し、そこに資 機材ですとか労務者というものを集約して1つの組合を作る。その組合参加の建設業者 間では、労務者という資機材というものを提供しようということです。そして、その将 来協同組合というものが1つの会社として、合併するという条件を前提としている案で す。  以上が最近の建設業をめぐる動きでして、大きく言いまして、新規成長分野への進出 のこと。それから労働者の派遣ということ。このようなことが若干最近話題となってい るということです。  続きまして、III建設雇用再生トータルプラン等ですが、このトータルプランにつき ましては、第5回の委員会におきましても議論され、その結果を受けまして、平成16年 度建設雇用再生トータルプランとして現在実施しているところです。そういう状況もあ りますので、この場では詳しくお話を申し上げませんが、雇用再生をするために、厚生 労働省として現在取り組んでいるという状況です。その次の頁からは、建設雇用改善助 成金という私どもが所掌している各種助成金についての概要を掲載しています。これに つきましては、特にこの場では説明を省略させていただきます。  そして、最後の「参考」という資料です。これにつきましては、今年度平成16年度で すが、建設業における雇用管理現状把握実態調査ということで、雇用能力開発機構のほ うで、毎年度調査しているのですが、ここに付け加えまして、本年度最近の雇用情勢と いうものを若干アンケートさせていただきましたので、その結果につきまして、報告さ せていただきます。  調査の概要としましては、このような基礎資料として毎年度行っている中で、今言っ たような情勢の中で、補足して調査をしたということで、全国1万4,000社にアンケー トを要請しましたが、回収率は約30%程度で実数で4,000社程度が回答をしていただき ました。設問におきまして、こういう20業種。それから職種におきましては6職種等に 分類した中で、次の2頁目以下の設問について若干聞いているその概要を簡単にご説明 させていただきたいと思います。  まず1番目ですが、雇用の動向及び将来の見通しということで、お聞きしたわけです が、3年前と比較して常用労働者数が増えたのか、減ったのかということを実態として お聞きしています。結果といたしますと、3年前と今と比べまして、全体として9%程 度は、やはり常用労働者は減少している。その傾向の中で、技能労働者及び現場作業員 の減少傾向というのが、やはり14.9%ということで、多い状況になっています。また、 現在の労働者の過不足感では、営業専門的職業、それから技能労働者というものには、 若干不足感が多いという状況もあります。  それから下のグラフですが、これは一般土木建築工事業。いわゆる土木建築業者です が、この部分をちょっとデータとして抜き出していますが、やはり減少割合が技能労働 者や現場作業員というのは、やはりこの工事業においては、抜きん出て27%程度減少し ているという情勢になっています。  3頁に今さっき申し上げました労働者の過不足感というものを、グラフにしていま す。全体としては、77%の方々が適性です。「今の状況に適性です」と答えているわけ ですが、16%は不足感のほうが多い。多く感じている。特に、専門的・技術的職業従事 者22%の不足感に対して7%の過剰感。それから技能労働者におきましても、約12%ほ ど不足感、なおかつ、営業的職業従事者の方も若干16%程度不足感のほうが多いという 情勢が、アンケートとしてはお答えになっている状況です。  また、3年後は一体どういう見込みになるのだろうという見込み感ですので、単なる 感覚なのですが、全体としては、過不足感が大体同じぐらい。適性と感じるのがやはり 7割ぐらいという状況です。技能労働者は、やはり増加と減少と相俟っているような感 じでして、いま言いましたように、営業とか専門的技術に関しては、若干労働者が増加 するだろうという見通しを答えています。  4頁になります。先ほど新規成長分野という話題が昨今多いわけですので、その新規 成長分野の進出の状況というものを、アンケートさせていただきました。今、現在すで に進出している業者が約12%、4,000社の中で12%。400社程度がこういうことでお答え しています。また、計画・検討中というのが19%。合わせますと全体の3割程度の業者 におきましては、新規分野へ進出をしている。あるいは、検討したりという情勢を表し ています。その中で、もし進出するならば、あるいは進出しているのも含まれています が、どういう関連業種なのかと言いますと、やはりいちばん多いのは、建設業関連、こ れには住宅等のリフォーム、先ほどありましたが、そういったものも含まれている状 況。それから次に多いのが環境・リサイクル関連、廃棄物処理とかそういう業種だと思 います。その次に、福祉、サービスと続いている状況です。  5頁に移ります。その新規・成長分野へ進出するのはいいが、どういった課題がある のだろうといったことをお聞きしましたところ、やはり、事業計画策定する。その場合 のいろいろ中心的に進出を担う、役割を担う人材。その確保がいちばん難しい課題であ る。  次に、市場開拓、資金調達というような順位で、やはり分野に進出する場合には、従 業員の教育訓練というものが、重要になると考えています。  次に、就業者の募集・採用・定着状況についてお聞きしています。技能労働者や現場 作業員の採用方法を聞いているのですが、先ほどの統計条項にもありますように、やは り、縁故採用というのが42%、このアンケートによりましてもハローワークというもの も多くありまして46%で、合わせまして88%ほとんどが縁故とハローワークという状況 になっています。  次の頁ですが、主に縁故により採用する理由というのは何ですかと聞きますと、いち ばん上にありますように、「事前に労働者の能力や経験に関する情報を得ることが出来 るため」、これがやはりいちばん多い回答でして、やはり人材の情報というものを、的 確につかみたいということです。  次に多いのが「縁故採用でも労働者の確保に困難を感じない」、次に来るのが「ハロ ーワーク、広告等では必要な能力をもつ応募者が少ない」。やはり、ここでも事前の情 報というものがある程度必要なのかということが現れているかと思います。また、縁故 のみによる優秀な人材の確保は、できているのでしょうか、できてないのでしょうかと いう質問ですが、「できている」というのが34%、「現在は確保できているのですが、 将来は確保できなくなると思う」、厳しいと思っている方々が39%。  ですから、なかなか将来的には縁故というシステムで、人材を確保していくのが難し いのではないかという考えを持っていらっしゃるようです。  それから、技能労働者の雇用形態に移ります。この雇用形態におきます中身として1 つ目は、賃金につきまして、どういう支払い体系、雇用体系を持っているかとお聞きし ましたところ、主に常用雇用で月給制を敷いているというのが43%、常用で日給の月払 い制度というのが52%、やはり若干に日給月払い制というのを採用している業者の方々 が上回っているということです。その方々、月給制に出来ない理由としては、どういっ たことがあるのかということを下の設問で聞いていますが、やはり工事受注量が変動す る、この変動が大きいということがいちばん。次には、勤労意欲の低下や欠勤の増加に つながる。あるいは、昔からの慣習です。そして、財政基盤が弱く、固定費増が困難、 なかなか財政上厳しい状況にあるというのを反映しているかと思います。   次に、離職を余儀なくされる、あるいは「本人の都合」で辞められる方がいる。その 場合の再就職の支援というのはどうしているでしょうかと聞きましたが、この8頁のグ ラフでは、離職者の離職理由をまず聞いています。どういう理由で辞めたのがいちばん 多いかというとやはり、「本人の都合」というのが6割。次に、「事業主都合」が22 %。「定年」は17%ぐらいというような口答でして、次の9頁でちょっと立体縦グラフ で見づらいかと思いますが、過去3年間に離職した人の割合というのは、年齢層別でい きますと、このように分かれていまして、「本人の都合」が6割として多いのですが、 この中で年齢的に見ますと、29歳以下というのが37%ということで、各年齢層の中では いちばん多い。次に、50歳から64歳「本人の都合」、やはり「事業主の都合」で辞めら れているというのが50歳から64歳がやはり51%と断トツとして多い。リストラ的な傾向 もあるのかと思います。設問の1つ、再就職支援の実施状況ということですが、会社と しては、「再就職の支援をすることはしていない」とお答えになっているのが、半分の 51%、「会社としては、そういう場合には支援する」というのは、1割で11%。「特に 要望があればする」というのが38%、合わせまして50%半分はそういったことで何らか のフォローする。  10頁ですが、従業員を規模別に見てみましたが、やはり300人未満、中小建設業では、 会社として支援を行うというところは、やはり少ない。大企業301人以上になりますと、 28%3割近くは会社として支援を行っているという状況です。再就職試験の内容として は、他の建設会社へ斡旋するというのが、57%6割近く、そのほかの建設会社以外の会 社へ斡旋するというのが20%。有給休暇を付与するというのが18%と続いている状況で す。  ざっとこのようなアンケートを行いましたが、何分アンケートで1万4,000社のうち 4,000社というサンプル数ですので、これがすべて建設事業を表しているというわけで はありませんが、何らかの参考になればと思っています。  続きまして、資料2の説明をさせていただきます。 ○森下補佐  引き続きまして、資料2をご説明申し上げます。こちらの資料では、本専門委員会に おきまして、新たな建設労働対策を検討するに当たって議論を深めていくべき検討項目 ということで、大きく4つほど設定しております。前後でやや重複感がございますが、 それぞれの項目を現状と課題について簡単に整理してあります。  まず、1の事業主の新分野進出の支援です。(現状)の1つ目にありますように、建 設当時ははピーク時に比べて3分の2にまで減少しているという説明がございました。 今後も一層減少していく見込みです。ただ、2つ目にありますように、地域によっては 基幹産業となっておりますが、その一方で十分な雇用の受け皿が外にない状況もありま す。  3つ目では、こうした状況を受けまして、厚生労働省といたしましても、例えば新事 業の業務に従事するための能力開発を行う事業主に対する助成を実施したり、また都道 府県レベルで相談窓口を設置するなども行っております。  4つ目にありますように、政府全体の動きも本格化しています。「経済財政運営と構 造改革に関する基本方針2004」、いわゆる骨太と言われるものですが、この中におきま しても「関係省庁が連携して本年秋までに取りまとめ、速やかに実施する」とされてお ります。これを受けまして、国土交通省を中心として、関係局長を構成員とする「建設 業の新分野新出を促進するための関係省庁連絡会」が開催されております。こういった 現状を踏まえまして、今後の(検討課題)として、既存の労働者の能力開発等を通じて 建設業の労働者の雇用の安定に向けた取組が何かないだろうかということについて検討 していただけたらと思っております。  2は建設業離職者の円滑な労働移動の推進です。こちらも、(現状)の1つ目にあり ますように、やはり建設業は過剰感が強いところがあります。建設投資が減少する中 で、就業者数も685万人から604万人に減少しています。過剰感も、全産業中で最も高い という状況がございます。  2つ目では、建設業の中で職業別に見ますと、管理・事務、単純工といった職種につ きましては、一貫して過剰が強い状況が続いておりますが、例えば技能労働者につきま しては、先ほどからデータで申し上げておりますとおり、過剰とする企業と不足とする 企業が双方とも一定量存在する状態が続いております。このような中で、建設事業主に よる再就職支援がどんどん行われていくことが適当ではあるのですが、中小零細が多い ことから取組は低調になっております。  こういった現状を受けまして、以下の2つを(検討課題)として掲げております。1 つは、建設業内で、例えばリフォームなど有望な分野があるのではないか、そのような 分野に労働移動を推進していくことができるのではないか。それから、建設業の外側に 対して、もっと円滑な労働移動が推進できないだろうか、といったことを挙げておりま す。  3つ目は、建設業における労働力需給調整システムです。(現状)の1つ目にありま すとおり、技能労働者の過不足状況につきましては、過剰とする企業と不足とする企業 がほぼ一定量存在する状況が最近では生じています。ただ、2つ目に書いてありますよ うに、建設業につきましてはブローカーの介入、強制労働の可能性といったことから、 有料職業紹介あるいは労働者派遣などは禁止でございます。こういった現状を踏まえま して、先ほども言いました中間搾取や強制労働の恐れが高いなどの建設業の特性に配慮 しつつ、建設労働者の就業機会を確保し、その雇用の安定を図るための労働力需給調整 を可能とするシステムができないだろうか、ということを検討項目として掲げておりま す。  4つ目では、必要な技能労働者の育成・確保の促進を掲げています。これは、1〜3 に比べてやや中長期的な設定をしておりますが、(現状)としましては、先ほどから申 し上げておりますとおり高齢化が進んでいます。具体的には45歳以上の層が過半数を占 めております。また、その中でも過半数が50歳代という状況にあります。中長期的にみ れば、これらのものが引退したならば技能労働者の不足が懸念されるところです。  一方で、2つ目にありますとおり、教育訓練施設の休・廃止や、教育訓練がなかなか 十分に実施されない状況が発生しています。このような現状を踏まえて、(検討課題) として事業主による技能労働者の育成・確保のための教育訓練の実施を支援するための 共同あるいは広域的実施がもっと推進できないか、また技能労働者の有する熟練技能を 効率的、かつ体系的に伝承する教育訓練方策をもっと検討できないだろうか、といった ことを挙げております。以上で資料2の説明とさせていただきます。 ○椎谷座長  ありがとうございました。盛りだくさんの資料でしたが、これからはどうぞ自由に、 ご意見なりご質問なりをしていただければと思います。 ○奥田委員  「建設雇用再生トータルプランの実施」は平成16年度から大々的に動かれていると理 解しているのですが、それでよろしいでしょうか。具体的に、書いてある中身について かなり提案内容とラップする部分があるわけですね。現状はどういう状況なのか。進ん でいるのかいないのか。進んでいなければ、どのような問題が横たわっているのかをク リアにしていけば、我々が考えるうえでここに出ました4項目の提案内容の具体化にも 参考になるのではないかと思っております。わかる範囲で結構ですので、お願いしたい と思います。 ○吉永室長  建設雇用再生トータルプランは昨年度から動いているスキームですが、正直申しまし て、私どもがパッケージをしてご提案しているところですが、一定程度は機能している と考えておりますが、建設業の厳しい現状からして十分かと言われれば、まだ十分に機 能しているとは言えないのかなと思っております。どうしても必要なき労働移動が目立 つ場合に受け皿がしっかりしていれば、そこへ誘導することは可能になるわけですが、 実際にこの業種であればきちんと受け入れられるという所がなかなかございませんし、 特に建設業の場合は、先ほどの資料にもありましたように、再就職先も建設業に限られ てしまうケースが非常に多い。また、建設業の周辺の産業につきましても、具体的な雇 用に結びつけるのが非常に難しい状況にあります。建設業の中でリフォームなど、一部 成長分野がありまして、その辺りが一部の吸収力を持ってはいますが、全体として見て 過剰感のある全体の労働力を吸収するまでには至っていない状況です。そういう意味 で、テーマが重複しているというご指摘がありましたが、まさにおっしゃるとおりで、 事業主の新分野進出の支援や需給調整機能の強化などは、当初私どもの建設雇用再生ト ータルプランの中の目標としてきたわけですが、これをどういう形で強化していくか、 その辺りをこの委員会の場でお知恵をお借りして、より効果的な対策が来年度以降実施 できればということでお願いしている次第でございます。 ○池田委員  資料IIの3頁に、「建設業の新分野進出を促進するための関係省庁連携会議」とあり ますね。そのいちばん下に、第2回平成16年8月27日(金)概要、とあります。その中 で、ワンストップサービスセンターという横文字があります。私は大変興味を持ってい ます。ここには概要しか出ておりませんが、日本型だと思いますがワンストップサービ スセンターとはこういうものだとわかるものがあれば、細かいものがあればいちばんい いのですが、概略でもかまいません。次回でもよろしいので、このような討議をすると きにひとつ提出していただければありがたいというのが1つです。  2つ目は、ワンストップサービスは、きっとアメリカで相当進出していると思いま す。ですから、できればアメリカでもどこでもいいので、資料が手に入ったら提出して いただければありがたいと思っているわけであります。 ○吉永室長  ワンストップサービスセンターにつきましては、国土交通省が中心となりまして、国 土交通省でお持ちの新分野進出のためのさまざまな措置についての相談業務を行う。ま た、私どもの抱えております雇用に関する助成金制度等について相談や援助を行う。さ らに、中小企業庁が行っております経済再生に対する取組について支援を行うというこ とで、連携しながら支援をするという内容です。この辺りは、次回資料をお付けしたい と考えております。  いま、アメリカ型のワンストップサービスセンターについてご指摘がありました。お そらく、池田委員のおっしゃった点と今回のワンストップサービスセンターは、内容的 に違う面もあろうかと思います。アメリカ型のワンストップサービスセンターは職業紹 介や訓練などを組み合せた形のものですので、若干性質が異なるかと思いますが、関係 資料を次回提出させていただきたいと考えます。 ○林委員  この資料の2の「新たな建設労働対策の検討」はこれからの課題になっているという ことですが、私が感じていることを述べさせていただいて、また今後お役に立てるよう な意見がまとまれば言わせていただきたいと思います。  1番目の新分野進出は、建設労働対策としてやるものかどうか、各企業はそれぞれの 戦略がありますので、建設労働対策のために、これを本気で取り上げるのは難しいかと 思います。  2番目の建設業離職者の円滑な労働移動は、やはりやる必要もありますし、何らかの 形で支援をしていかないといけませんので、我々のほうで何らかの方法を考える必要が あるのではないかと思います。  3番目の建設業における労働力需給調整システムですが、これは私が前に理事長をや っていました建設労務安全研究会で、2002年に近未来の建設労働で提言をいたしまし た。当時は連携請負という名称で取り上げました。重層になりますと経費が1社につき 約5%かかりますので、5つ重層になりますと約25%経費がかかり、労働者にいってい る賃金は75%になってしまうので、横に連携して請け負ったらどうか。横へ請け負うと 重層にならず1次か2次でとまってしまいますので、経費としてかかっている原資をも って労働条件の改善と専門工事業者の経営の近代化のてこ入れに使ったらどうかと提言 させてもらいました。そのときに、請負だけでいいのか派遣も必要なのかについて、当 時は派遣まで踏み込まず請負で処理する形だったのですが、いま、建設労務安全研究会 のほうで派遣まで踏み込んだ連携請負を提言しようと、案をとりまとめ中です。  小谷村の提案がありましたように、真っ当な建設業の許可業者が雇用している技能労 働者を、真っ当な許可をもって仕事をしている建設業者に派遣する。たぶん、業界の中 では同じ職種になると思うのですが、例えば才賀さんの会社のように鳶・土工さんなら 鳶・土工さんの中で、同じような仕事をしているところで過不足が出ますので、そこで 抱えている技能労働者をやりくりしようとすることは、一定のルールで認めても支障は ないのではないかというのが建設労務安全研究会の考えているところです。  4番目は、これもなかなか難しいけれども、何らかの形でいま手を打たないと、将来 禍根を残すのではないかと思います。2001年に、日本土木工業協会からスイス、ドイ ツ、イタリアへトンネル工事を中心に視察に行きました。ドイツで新幹線の駅舎の建設 現場の視察に行きましたが、500人の建設労働者が働いている大工事でドイツ人は100人 だけです。100人のドイツ人は技術者で、技能労働者は東欧の関係の人でした。従事し ている専門工事業者はほとんどが東欧のポーランドやハンガリー、チェコなどの会社 で、これらの会社が労働者を連れてきて施行している形です。スイスへ行きますと、ス イス人の技能労働者はなり手がいないということでした。農業も同じようなことで嘆い ておりました。旧東独地区の失業率は若者でも20%でした。これらの若者を建設業で働 かすことはどうなのかと、現場の所長や関係者に聞いたのですが、ドイツ人の若者は魅 力を感じないので働かないと言うのです。  ですから、そのような状況を見ていきますと、幸い日本の若者は24〜35歳までの人が 建設業に入ってきてくれているのですが、ドイツの現状のような考え方になってきて、 失業していても建設業はいやだ、と言う事態にならないように、何か真剣に考えておか ないと困ってしまうのではないかと思います。外国人労働者と言っても、日本の社会シ ステムなどを考えますと、ヨーロッパと違って簡単な受入れが難しく、社会的コストも かかると思いますので、できれば日本の若い人が働いてくれる環境を整備する必要があ るのではないかと思います。いまもらった資料を見ての私の感想でございます。 ○吉永室長  ご指摘ありがとうございます。1つ1つ非常に重みのあるご発言だったかと思いま す。事業主の新分野進出の支援は私どもの職業安定行政を中心とした対策としてどうか というご指摘は、非常に耳の痛い点だと思っております。このビジネスモデルであれば 建設業が新分野に進出できて、雇用が拡大するというものがあれば簡単なのですが、そ のようなものは存在しないわけで、そうするといかに建設業に従事した労働者の方の雇 用を吸収していくかが非常に難しい。先ほどの奥田委員のご指摘にもありましたが、な かなか現状の施策が機能していない面もあるのが事実だろうと思います。難しい課題で はありますが、私どもとしては非常に重要な点ではないかと考えている次第でありま す。  また、円滑な労働移動に関して、繰返して同じ話ではありますが、既存の建設業ある いは建設業外において、ともかく雇用を吸収するような仕組、失業がない形で労働移動 をすることが何より重要だと思っております。そういう意味で、需給調成システムとの 関係もあるかと思われますが、この辺りで何らかの方策がご提言いただければありがた いと思います。  3点目の需給調成システムにつきまして、連携請負の枠組みは私も読ませていただい て、参考とさせていただけるものだろうと思います。今回、小谷村あるいは岐阜県の建 設業界のご提言等々を資料として配付しております。いずれも、労働者派遣をやりたい という形でした。正直申しまして、先ほど事務局からの説明にもありましたとおり、労 働者派遣法で建設業務を禁止している趣旨は、いまでも非常に重みのあるものなのだろ うと思っております。小谷村にしましても、岐阜県の建設業界の要望にいたしましても 非常に厳しい中で雇用を確保していく、その前提としての建設業を継続していくという ことで、ある意味緊急避難的な事態を想定した形で、失業がないように何らかの方法で お互いに融通し合い、その中で雇用を確保していく。この考え方自体は、派遣法云々の 問題は別にして是とすべきものではないかと考えている次第です。具体的なスキームが どういう形になるか、労働者派遣になりますと非常に難しい問題がありますが、何らか の需給調整システムを考えられないかというのが私どもの問題意識です。林委員の新し い連携請負のスキームなども拝見させていただきながら、具体的な議論を詰めていきた いと考えております。  最後の外国人労働者の問題ですが、これは非常に大きな問題で、なかなか当委員会に おいて、特に今回、時間のない中で議論をするのは難しいと思いますが、いずれにいた しましても地域において基幹産業であるものについて、基幹労働者はいかなる事態があ ろうとも日本人で行うのが基本だろうと考えます。なかなか即効性のある結論は得られ ないかと思われますが、今後につながるご議論をいただければと考えている次第です。 ○池田委員  林委員が感想を述べましたので、私も感想だけ述べさせていただきます。特に、建設 業における労働力供給調整システムについてであります。  林委員が、連携請負プラス派遣の取入れも、いま研究会の中で取りまとめているとい うご発言をなさいました。派遣法は、昭和61年7月に施行されたと思います。そのとき に、派遣法第4条の中に「適用除外」というものを入れたわけです。それが建設、港 湾、警備の3つであります。これが作られたときの審議委員から、やはりいま室長から 言われたように、歴史的で特殊な建設業という重みがあって適用除外にしたのだと聞い ております。  派遣法については私も委員ですからやらせていただきましたが、1つは、やはり建設 業は重層下請けであります。これが本当に解決するならばいいと思いますが、現況の中 ではなかなか難しい。2つ目には、いかがわしい団体が派遣元を軽々しく通過してしま う。いまこのようなときですから、いかがわしい団体は資金集めに躍起になっておりま すから、針穴のような隙を見ても入り込む。  そういう意味で、大変大きな問題をお持ちになると思います。例えば、ここに書いて ありますように、中間搾取などをどんどんやっていきます。トラブルが発生します。そ のトラブルはどこで解決するのか。各地方の労働局で解決できるのか、できないのか。 いろいろな問題があります。次に建設業法の問題があります。建設業法の41〜43辺りを 読んでいただければわかるように、やはり賃金の不払い等々については元請が責任をと っております。労災でもそうです。いろいろ考えると、建設業の派遣についてはなかな か難しく、いかがなものかという感想を持っております。以上です。 ○才賀委員  いま池田委員が言われたように、人材派遣について、ちょうどそのころの委員が出た のです。そのときに、確かタカナシ先生だったと思いますが、最終的に主査から出たそ のころの話では、建設業の労働者について、親があって子があるのだ、親分子分の間で は中間搾取はない。じかに経営者が払うのであって、その中で人材派遣は要らないだろ うという話だったのです。でも、これから何十年も先にはこのような問題が出ますよ、 ということでした。我々専門業社だけが100%労務者を抱えてやっている時代はなくな るという話もあったのですが、その中で人材派遣の枠から外れたのが現状だと思ってい ます。  しかし、いまになってみて建設業、特に我々労働者を扱っている業種については人材 派遣は必要ないのではないかと思います。それと同時に、いま世の中は建設業は即悪と いうことで公共工事が非常に減っている中で、まだ大都市はいいのでしょうけれど、地 方都市の大手ゼネコンさんがこれから非常に厳しくなってくるのではないか。それで、 先ほど出たように、やはり大手ゼネコンさんが地場の専門子事業社のような立場に変わ ってやっていくのではないかと思います。  逆に、いまのスーパーなりはダンピング受注をしている中で、指値、発注なので最終 的には労働者に負担がかかってくるのも現状ではないか。それと同時に、従来いちばん 良き時代に、6〜8割を職業工で雇っていたものが、だんだん苦しくなって、いま職業 工を持っている企業は2割ないのではないですか。それは全部二次下請なり一人親方に 移行しているわけです。最終的に末端で働く労働者をどうするかという問題よりも、そ れをしないような何らかの方法を考えていただかないと、増えるばかりで、それを増や したものの、いくら力を入れてやってもどうにもならないです。その辺りを、もう少し 前の段階で何とか抑えていかないと、末端で働く労働者の方々が年に200〜250万の給料 で飯は食えないですよ。ということは、最終的に建設労働者がいなくなってしまうとい うことであるし、この間もここでお話をしましたが、特に外国人労働者の研修制等々で 何億も金を使っているのであれば、やはり日本人の徒弟制度や学校などに大いに設備投 資をしていただいて、働く若い者が銭もなくても助成してもらえるのだ、一生懸命やっ ていくのだ、と言うような土壌づくりが大変必要ではないかと思います。 ○寺澤委員  いまの関連になるかもしれませんが、いわゆる不安定雇用につながるような制度は好 ましくなく、いま才賀さんがおっしゃったように、安心して働ける環境をきちんと作る 方向に全体が目を向けなければいけないと思います。ですから、いま非常に苦しい状況 の中で、何とか雇用を守りたい気持ちはよくわかりますが、そのようなことがもっと別 のところに影響して、本質でないところでの小手先の対応になってしまうことを危惧し ております。そういう意味では派遣法の世界ではなく、室長もおっしゃっているように 極めて緊急避難的、限定的にやるとすれば、その範囲で何か具体的なものを出していた だいて議論する。自由化に向かっていくのではなく、そこは慎重に扱っていくべきもの だろうと、私は思います。むしろ、本質的にそこで働く人たちが安心して生活できる、 そのための環境をどうやって作っていくかということだろうと思います。  それから、外国人の話が出ていましたが、いま海外との関係で非常に自由化に向けた 議論があるのですが、これはグローバルの社会になってきたときにいろいろな議論があ って難しいところですが、少なくとも建設産業において安易にそのような選択をするこ とは、いま一生懸命働いている人たちの労働状況を確保していく意味においてはますま すマイナスになるので、是非慎重に皆さんで対応していかなければいけないことではな いかと思っております。以上です。 ○椎谷座長  いろいろご議論が出ました。この問題は、非常に微妙なものも含んでいますし、互い に考えを深めていかないと、なかなかいい結論が出ないと思います。今日は大変たくさ んの資料をいただいてご説明を受けました。さらにこれを持ち帰って、それぞれの側で ご検討いただき、次回からさらに議論を深めていければいいのではないかと存じます。 まだご議論あるかと思いますが、おそらく今日すべてをし尽すことはできないと思われ ますのでこの辺りにとどめ、次回以降にまたご議論をお願いいたします。本日ございま した議論につきましては事務局のほうで取りまとめておいていただければと思います。  最後に、私のほうから本日の議事録の署名委員について指名させていただきます。本 日の署名委員は、雇用主代表の奥田委員、労働者代表の笹田委員にお願いします。よろ しくお願いいたします。それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。ご協力あ りがとうございました。 ○下出補佐  次回の労働専門委員会の日程について、9月27日から10月15日までの間でご都合のつ かない日をご回答いただきたいと思います。このペーパーに書きまして、このファック ス番号に送っていただければ幸いと存じます。よろしくお願いいたします。 ○椎谷座長  よろしくお願いします。                     照会先:厚生労働省職業安定局                          建設・港湾対策室 建設労働係                     TEL 03-5253-1111(内線5804)