04/07/26 社会保障審議会福祉部会生活保護制度の在り方に関する専門委員会第15回議事録    社会保障審議会福祉部会 第15回生活保護制度の在り方に関する専門委員会 日時:平成16年7月26日(月)10:00〜12:00 場所:厚生労働省 5階共用第7会議室 出席委員:石橋委員、岩田委員長、大川委員、岡部委員、京極委員、鈴木委員、      田中委員、根本委員、布川委員、八田委員、松浦委員   後藤委員は欠席 議題  :(1)意見交換       (2) その他 (岩田委員長)  定刻となりましたので、ただいまより第15回 社会保障審議会福祉部会 生活保護制 度の在り方に関する専門委員会を開催いたします。  猛暑の中、皆様には足をお運びいただきまして、どうもありがとうございます。  まず事務局から、本日の委員の出席状況及び配付資料についての説明をお願いいたし ます。 (事務局)  本日の出席状況でございますが、後藤委員から御欠席との連絡をいただいておりま す。また、事務局におきまして、前回までのメンバーから一部異動がございますので紹 介をさせていただきます。社会・援護局総務課長の椋野でございます。 (椋野総務課長)  よろしくお願い申し上げます。 (事務局)  続きまして、資料の確認をさせていただきます。上から順番に議事次第、座席表、資 料1としまして「説明資料」、資料2としまして「生活保護制度の在り方に関する論点 の整理」、それから第14回の議事録案となっております。  資料は以上でございます。お手元に以上の資料がない場合はお知らせください。事務 局より別途お渡しをいたします。なお、第14回議事録案につきましては、これから各委 員に内容を御確認いただくため、委員のみの配付となっております。  以上でございます。 (岩田委員長)  よろしいでしょうか。  本日の議題に入る前に、既に御連絡が入っているかと思いますが、当初予定しており ました案の取りまとめを少し延期いたします。そのことも含めて今後の進め方について 事務局から御説明をいただきたいと思います。 (岡田保護課長)  今後の進め方について御説明させていただきます。本専門委員会におきましては、今 年の夏を目途に意見を取りまとめていただくべく委員長始め委員の皆さん方に大変精力 的な御議論をお願いしたところでございますが、前回までの御議論の状況を見ますと、 保護施設の在り方であるとか、保護の要件などの基本的な部分について、なお、議論す べき点がございます。  そういう状況でございますので、次回の予備日を考慮いたしましても、この夏に議論 をまとめるにはかなりの駆け足になってしまうのではないかと考えておりまして、先般 開催いたしまして起草委員会におきまして、こういう状況を踏まえまして御相談申し上 げましたところ、起草委員の先生方ももう少し議論を深めた方がよいのではないかとい う御意見でございましたことから、秋にもさらに例えば3回程度委員会を開催して議論 を取りまとめることにしたいと考えております。  こうしたことから、8月につきましては開催を見送りまして、9月以降に議論を開催 させていただきたいと思います。詳細につきましては追って御連絡を差し上げたいと思 いますので、よろしくお願いいたします。  なお、本日、資料2ということで資料を出させていただいておりますが、先般の起草 委員会におきまして、主な論点を整理してはどうかというような御意見がありましたこ とを踏まえまして、主に中間取りまとめ以降の専門委員会におきます議論を踏まえまし て、事務局において論点を整理させていただいたものでございます。  以上でございます。 (岩田委員長)  よろしいでしょうか。少し延びるということでございますが、そんなにたくさん延び るわけでもございません。また専門委員会の議論も取りまとめの寸前というところまで かなり煮詰まっているかと思いますので、さらに慎重に詰めまして、決められること、 あるいは今後の議論に残すこと等を整理して、まとめるというような作業を秋に3回使 って行うとお考えいただければ幸いでございます。  この点について御質問がございますでしょうか。 (大川委員)  何月ごろをめどにというお考えでしょうか。秋に3回ということですが、回数でなく て大体の時期について。 (岡田保護課長)  これからの御議論にもよりますが、最終的に予算編成に間に合わせるとすれば、少な くとも年を越えるのは難しいと思いますし、そういう意味では、10月か11月。12月に入 るとなかなか難しいのかなというような印象を持っています。これは今後の御議論によ るかと思いますが。 (岩田委員長)  よろしいでしょうか。そのほかの点についてはよろしいですか。 (布川委員)  きょうお出しいただいた資料2ですが、これは起草委員会の議論を踏まえてというこ となのか、事務局のまとめということなのか、今後の進め方の土台になるということな のか、どのような性格のものなのでしょうか。 (事務局)  これは事務局においてまとめたものでございますが、もちろんこれを踏まえて今後も 委員の皆様に御議論をお願いしたいということでございます。 (岩田委員長)  ちょっと補足します。ここに書いてありますように、中間取りまとめというのを既に まとめておりますので、それがまず一つあります。それ以降、割合最近までの議論を事 務局でまとめてくださったのが、この資料2ということになります。さらにまだ、今日 以降の議論が少しあるということになります。特に第1回目にかなり御議論いただいた ような理念といいますか、背景といいますか、そういうようなことが当然さらに大前提 としてあるということになると思います。  資料2については、論点をある程度確認していただきながら進めた方が、起草委員会 としても作業しやすいということもあります。これは今御案内ありましたように、事務 局の方で起草委員会の後、まとめていただいたものです。起草委員会でこういうものが あった方がいいという話はいたしましたが、少し回数が延びるということになったもの ですから、いきなり起草委員会の作業に入るというよりは、ちょっとワンクッション置 いたという趣旨です。 (松浦委員)  第1回目の資料に、「介護保険制度全般の見直しの際に、生活保護の在り方につい て、十分検討を行うこと」と書いてありましたが、介護保険も相当難航しているようで す。そのことと専門委員会の延期は全く関係ないのですか。 (岡田保護課長)  介護保険との関係は直接ございません。 (松浦委員)  全くでしょうか。 (岡田保護課長)  全くございません。 (岩田委員長)  生活保護制度の議論自体、私はかなりまとまってきたとは思っています。もちろん議 論し出せば切りがないたくさんの問題ございますが。そのほか、よろしいでしょうか。 起草委員の先生方、よろしいですか。  それでは、8月は少しお休みいただいて頭を休めまして、秋以降、また少しリフレッ シュしたところでまとめの作業に入っていくという段取りで議論を今後進めていきたい と思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、本日の議論ですが、議事次第に沿いまして進めてまいります。本日は、こ れまで既に何回か議論しておりますが、まだ、少しいろいろな御意見がありまして、議 論を詰めた方がいいだろうという保護施設の問題、労働能力の活用、それから資産、こ の三点について、本日は議論をしていただきたいと思います。  まず資料1がございますが、事務局の方で御説明ありますか。 (岡田保護課長)  資料1は、本日施設について御議論いただくということで、前回までに出しました資 料を念のためにもう一度用意させていただいているという趣旨でございます。既に説明 はさせていただいていますので省略させていただければと思います。 (岩田委員長)  それでは、まず保護施設から議論したいと思います。前回、田中委員から、これまで の議論を踏まえた上で保護施設についての率直な意見をこの委員会でしていただきたい という御要望があったと承っております。特に何か田中委員から御発言がございますで しょうか。 (田中委員)  既に資料として出していますが、私どもの全国救護施設協議会でまとめたペーパーで は、意見のポイントを5点に絞ったわけです。保護施設が生活保護法の制度の中で、自 立支援、被保護者の生活を維持する上でどのような役割を担ってきたか、今後このよう な大きな変革の時代における保護施設がどのような役割を期待できるのか、またなさな ければならないのかという観点から、救護施設を代表している者として申し上げたつも りなのですが、これらについて御意見等を伺えれば大変ありがたいと思っております。  追加してあえて申し上げたいことは、これは組織の中で十分な論議をしたというわけ ではありませんが、「救護施設」という名称の問題でございます。実はこれについては 5点の意見のポイントには一切触れておりません。ただ、「救護施設」という名称につ いては、組織の中でも、過去何回か当事者同士の中で論議されてまいりました。普通施 設の種別名というのは、その種別の名称を申し上げると、大体中身もある程度推定でき るものになっています。50年以上もの長い間「救護施設」という名称を我々は使ってい るわけですが、普通ですと、長く使っている名称は、ある種の愛着というものを持つの が当然なのです。これはこれでもちろん我々は愛着を持っておりますが、ただ、当事者 から、この名称は変更した方がいいのではないかという意見がございます。  一つの理由は、「救護施設」といってもなかなか理解できないといいますか、わかり にくいということでございます。もう一つは、イメージの点でございます。これはもち ろん聞く人の、あるいは言う人の考えによってかなり違うと思うのですが、何となくマ イナスイメージといいますか、暗いイメージがちょっと出てくると、そういう率直な考 えが私ども当事者の中にもあります。  かつて養老院が老人ホームに名称を変更したように変更してはどうかと、何回も意見 が出ておりまして、またいろんな名前の案が出ております。いずれ必要があれば、そう いうものを資料として出したいと思うのですが、「障害者総合支援ホーム」、あるいは 「障害者総合援護ホーム」といった、名称から大体こんな方々が利用しているのだなと いうことが推定でき、かつ、時代にふさわしい、もうちょっとからっとした名前がいい のではないかという意見でした。  このようなことも含めて、御意見、御議論いただければありがたいと思っておりま す。  以上でございます。 (岩田委員長)  名称の問題ですが、「救護施設」という名称を、それから、恐らくそれにかかわっ て、以前に私もちらっと申し上げたと思いますが、もう一つ、更生施設という施設がご ざいます。田中委員のこれまでの御説明で、救護施設でも十分自立できる方がいらし て、自立支援は十分やっているというお話もございましたように、この救護施設と更生 施設を明確に区分する基準が難しいという実態もあると思います。  それから、根本委員から、施設の存在というのは特に短期的にとても大事な役割を果 たすので、もうちょっと短期型の施設という位置づけもできるのではないかとの御発言 があったように記憶しております。そのあたりも踏まえて名称も変えていく、あるいは 保護施設の種別をもう少しすっきりさせてしまうことが考えられます。一方、障害者総 合となりますと、障害者施策との関係が非常にややこしくなるかもしれませんが、括弧 付きでなら可能かもしれません、更生施設でもかなり専門的に特化している施設がござ いますので。そういうあたりが少し問題になると思います。  いかがでしょうか、施設について、御意見ございますか。根本委員、どうぞ。 (根本委員)  施設についてはだいぶ御議論があったと思います。保護施設が長い間果たされてきた 機能、役割は十分尊重するといたしまして、特にその中で生活保護行政のみならずに、 社会福祉行政全般に対して、非常に先駆的なモデル的役割があったと思います。しか し、数回前の委員会でもお話したと思いますが、果たして現行の施設体系がよいのかど うかということについては、きちんと点検、見直しをしていく必要があるのではないで しょうか。  特に、今も委員長がおっしゃいましたように、救護施設と更生施設の壁が薄いという か、グレーの部分があります。また、田中委員からの御報告の中にもありましたよう に、救護施設自体の中にも非常に多様な状況があり、一方では、授産施設、宿所提供施 設、その他、現在では柔軟な運用が強く求められている状況も随分言われています。ま た、医療保護施設については事務局の方から御説明がありましたように、実態として意 味がない状況です。こういう中で、私は少なくとも現行の法の上にある施設体系につい ては、もう少しすっきりというか、概念としては保護施設という一つの大きい概念で括 ってしまって、あまり細かく分けないというのも、一つの手法としてあると思います。  そういう中で、この保護施設で、いろいろな人の危機的な状況に対して、一体的、総 合的にどのようなニーズに対しても柔軟に対応できるようにしていくこととしてはどう かと思います。  さらに、できればの話ですが、今言ったような総合的な機能を有する保護施設を、原 則として各福祉事務所に1カ所置き(もちろん、実態として1つの施設を複数の福祉事 務所が共同して活用することを含めて)、そして一方では、生活保護の居宅処遇原則の 規定をきちんと踏まえて、居宅処遇で対応できないときに、その総合的な機能を活用す るというのはどうか。その施設の中に、入所生活の部門、一時保護・シェルター的な機 能を有する部門、就労促進を図るような部門を備え、それぞれの地域における状況に応 じて多様に柔軟にそれらの機能を出したりへこませたりして対応することも、一つの方 向として検討してよろしいのではないかと思っています。 (岩田委員長)  大変抜本的で、大変大事な点だと思います。特に一時保護的な機能というのはどうし ても必要になると思いますし、最初からアセスメントも含めた機能が発揮できれば、存 在意義がさらに増すかもしれないという気が私もいたします。 (京極委員)  救護施設については十分調査した経験はないのですが、田中先生などの御指導でいろ いろ情報は提供していただきまして、根本委員の言っていることと一部重なりますが、 戦後果たした役割とこれから果たす役割を考えてみます。例えば、救護施設は保護施設 の中でも精神障害者の方が多い中で、これまでなかった精神障害者の社会復帰施設が出 てきています。これまでは精神障害者の施設がなかったがゆえに救護施設でお世話にな ったという状態があったわけで、他法他施策が発展していく段階で、発展的解消という のではなくて、移しかえていく必要が出てくるものと思われます。それから緊急一時保 護的なものはどうしても生活支援では必要なので、保護施設の性格として、総合性のこ とをおっしゃいましたが、総合性と並んで緊急性がございます。これはいわば救急病院 みたいな性格で、別に救急病院は老人だ、子供だということを言っていたら救急対応で きませんから、今後、そういう施設の役割があるのではないかと思います。  ただ、名称もそうでしょうが、体系性から言うと、ややまとめた方がいいのではない かということは全く同感です。  それから、あと補助金の割合について、確かに生活保護施設であるがゆえに国の負担 割合は大きいというので、他の措置施設では国2分の1に対して、保護施設は4分の3 になっていますが、これは施設に関しては横並びでもいいのではないかという気がして います。やはり市町村の責任もあるのではないか。今日は市町村長がいらっしゃいます から言いにくいのですが、県と市だけの責任かどうかだと思います。町村も一部負担を するということはあってもいいのではないか。そうすれば、他の措置施設と同様な形が かなり考えられるのではないか。場合によっては、保護施設の中でも、A型、B型に分 けて、かなり国の責任が大きいところとそうではないところと、少し整理する必要があ るのではないか。  現に医療施設などでは診療報酬でやっているわけですから、必ずしも生活保護費でや っているわけでもないわけなので、今の段階では、施設というのは、なるべく国立、国 営みたいなことではなくて、地域との関係も考えていく必要があります。費用負担の問 題は、かつて国の負担が10分の8から10分の7になって、それから10分の7.5になったと きに、生活保護費に関しては私も少し引き上げるように言ったのですが、その一環で保 護施設も同じ負担になりました。しかし、将来的に考えて、果たしてそういうふうにす ることが国の手厚い保護かどうか、ちょっとそこは疑問なので、むしろ施設体系として は他の社会福祉施設と横並びで考えてもいいのではないかと思います。 (大川委員)  以前、田中委員から出していただいた5つのポイントについては、私も基本的にはこ の線で進めるべきだと思っていまして、その上でこれを具体化するために制度体系をど うするかということをちょっとお話ししたいと思います。これについては、以前根本委 員から、生活保護制度の在り方、施設の在り方も含めて、社会福祉法の理念に沿っても う一度検討し直すべきではないかという御意見もありました。それと今回の田中委員の 出された5つのポイントとのすり合わせということを最後にやっておく必要があると思 います。  その上で、私から提起したいのは、いろいろな論議はありましたが、社会福祉施設の 「措置から契約へ」という大きな流れについてです。今、救護施設が、社会福祉施設の 中で最後のところというと失礼ですが、隅っこに置かれてしまっているというのは、い ろいろな経過の中で措置体制を残したということもあります。可能であれば、契約制度 に変えていくことができないかどうか、そうする必要があるのではないかと私は思って います。  実務的にも、私どもは救護施設の入所に当たっては、大概御本人と面接をし、あるい は見学をし、それも1カ所ではなくて、場合によっては神奈川は複数ございますのでい くつか見ていただいて、アルコール依存のプログラムがあるとか、施設の雰囲気がどう だとか、そういったことを見ていただいて、御本人が一番合うところに決めているとい う現実があります。  救護施設に入られる方も、そういった契約や説明の要素に耐え得る方がほとんどで す。自立支援ということを考えたときに、入口のところできちんと御本人の動機づけを 行う意味も含めて、現行の仕組みを維持しながらも、ほかの施設と同じように契約とい う形式にできないかというのが、私の一つの提案です。  それともう一つは、これも前に私申し上げたかもしれませんが、現物給付というスタ イルです。かねてから思っていたのは、長期で精神の病院などに入院しているときは、 2万いくらかの入院患者日用品費が出るのですが、いざ、救護施設に入ると出ないので す。その際私どもは、病院は住むところではない、あなたにとって施設の方が環境的に はいいというお話をいたしますが、やはり使えるお金が少ないというのは私は抵抗があ りますというお話を何回か聞いたことがあります。  これも制度的に非常に難しい面もありますが、今の施設事務費の形態ではなくて、基 本的には御本人たちが使えるお金も含めて、いわゆる生活扶助の組合せの形で扶助を受 けて、施設に入っていただいて生活をしていくのはどうか。その上で、例えば金銭管理 であるとか、様々なケアの必要な方については、救護施設の側でケアしていただくとい う考え方に立つ方が適切ではないかと考えております。  それともう一点、介護保険の問題なのですが、現行では確か介護保険の被保険者で1 号保険者になれないのです。これによってどういう問題が起きているかというと、まず 介護保険に入れていませんので、65歳過ぎると一回居宅に戻らないと介護保険の施設に 入ることが不可能です。間違っていたら訂正していただきたいのですが、救護施設に入 って65歳を超えると介護保険施設に入るのが非常に厳しくなります。  救護施設の方から聞いた話なのですが、救護施設にいる40歳から64歳の方で、15症例 の疾病に該当する方については、早めに介護保険の手続をして先々にはそっちへ移って くださいというお願いを福祉事務所にしても、実施機関側は逆に救護施設にいてもらう 方が、こう言っては何ですが、楽ですから、どうしても手続が前へ進まない。先言った 扶助と同じ考え方になりますが、例えば救護施設に入っても介護保険や支援費といった 他の制度が使えるような形で、救護施設はあくまでも居住の場と様々なケアを保障す る。そこでの支出についてはいろいろな制度を使う。これも一足飛びには難しいかもし れませんが、生活保護の他法優先の原理に帰る、そういった制度改正の方向というのが 出せないかと考えております。  救護施設が制度的に他制度と切り離されていると、本人たちが出たいという意欲を持 っていても施設から出られないという問題が出てくるかと思います。この辺について検 討していただければ、田中委員、救護施設の方々が出されたこの5つの意見のポイント が具体的なものとして生きてくるのではないかというのが私の意見です。以上です。 (岩田委員長)  例えば、施設の箱自体は住宅扶助の現物給付にした上で、生活扶助を個人単位で給付 し、必要に応じて医療扶助やその他の扶助がつくというような居宅タイプを、施設で実 施するという御提案でしょうか。  先ほどの京極委員のお話のように、社会福祉施設を横に並べると、補助率などの点 で、今、優遇されているとすると、施設のサービス部分、自立支援のプログラムや様々 なサービスの部分を何でやるかという問題が出てくるので、例えばプログラム補助のよ うな形で施設につけるという形は理念的には考えられます。  一気にそういくかどうかわかりませんが、施設体系として、そういう形で、しかもず っと長くそこにいるということではなくて、緊急性とか総合性という観点から必要なと きに使って、居宅に戻るか、あるいはもっと専門的な施設に移るというような通過的な ものであるという位置づけを全体としてもっとはっきりさせて、名称もそれに適切なも の、あるいは保護施設という名称を使うという感じでしょうか。 (田中委員)  いろいろな委員の先生に御意見を伺って、全くそのとおりでございますが、私の個人 的なことを申し上げて恐縮ですが、長い間、救護施設と一緒にやってまいりまして、昭 和30年代から、救護施設は他法の施設の補完的な役割、あるいは一時的な役割である、 ほかの専門施設が整備されたら、そこへ行くまでの一時的な生活の場である、と言われ てまいりました。前々回申し上げたように、法律的には全くそのとおりで、理屈の上で は全くそのとおりなのですが、現実は補完的というよりもかなり長期的な生活の場にな っている機能もあります。それから、当然いろいろな救護施設がございますから、自立 のためのかなりそういう訓練的な色彩の強い施設もございます。本当に生活扶助的な、 生活施設的な、そういう施設もあります。  問題は、先ほどちょっとおっしゃられたように、例えば一時的な、あるいは期間を定 めた役割を持った保護施設も必要ではないだろうかということです。そのとおりでし て、実際に、例えば東京のように10カ所あるところでは、ある程度役割分担ができま す。東京の施設の中には本当に一時的な、期間を定めた施設もございます。例えばアル コール依存症患者、アルコール中毒者の方が自立するためには、ただ、ずっと施設に生 活していればいいというものではないのです。一定の期間を定めて、その目標を果たす ということで、当初は6カ月。6カ月ではなかなかできない。1年経つ。というふうに だんだんその期間が長くなって、やがてその期間が必ずしも当初の目的どおり機能しな い。機能しないというよりも非常に難しい面もあるのです。6カ月経ちました、あなた は社会復帰しましょうと言っても、今度は一般社会の受け入れの問題、本人の自覚の問 題、あるいは環境の問題等を考えれば、そのとおりなかなかいかない。やっぱりちょっ と6カ月というのは現実的ではないということで、少しずつ期間を延ばしていく。  それは、全国にアルコール依存者の方を受け入れて、自立支援を行っている救護施設 が東京にも1カ所あります。北陸、島根県に1カ所あります。各施設でも1人、2人と 入っているのです。そこでは、期間を定めて受け入れることに非常に難しい面もござい ます。それはその施設だけの努力、その本人だけの努力では実現しない面もあるもので すから、しかし、救護施設の中には、そういう一時的な、あるいは期間を定めたそうい うものも必要だと思います。  かつて、救護施設の機能の中に、一般救護と緊急救護と2つありました。もちろん現 在はないのですが、精神障害者の方々を受け入れている施設には緊急救護施設というの がありまして、それがいろいろな事情で全部救護施設一本になったのですが、そういう 機能別に考えていくのも一つの手法だと思います。ただ、最近、精神障害者の方々が救 護施設に入ってくる人数が非常に多くなりまして、実態調査によりますと、既に五十何 %になった。ですから、病院を退院してきた受け皿としてはかなり時代的な機能を発揮 しております。  ただ問題は、地域によってかなり違う。というのは、10カ所ある東京都や、3カ所、 4カ所もある県でも比較的いいのですが、1カ所という県がかなりあるのです。京都、 栃木など全国7府県では1カ所しかないのです。こういう1カ所しかない県では、役割 分担ができずに全部入ってきてしまいます。これを機能別にどう分けるかというのは非 常に難しい問題で、今後どういうふうになっていくか、そのあたりも少し検討の必要性 があるのではないかと思います。 (岩田委員長)  現実に利用されている方もいらっしゃれば、事業をしている方もいらっしゃるわけで すから、一気に全部なしにしてこういうふうにするということは、そう簡単にはできな いと思います。ただ、全体的な理念といいますか、方向性としては、なるべくもう少し すっきり一体化した体系にして、名称もなるべくふさわしいものにする。そして、性格 としては、緊急性とか総合性というところに一つの特徴を置く。あとは他法との関係で 重複障害とか、どうしても制度の谷間になるとか、そういうようなことはどんな時代で もあるわけですから、そういう方々にはとりあえず入所していただくものの、他法の施 設が充実すれば、そちらになるべく速やかに移っていく、という性格の施設にしてはど うかというぐらいで、この委員会ではいかがでしょうか、。  実際上、やるとなれば、もうちょっと更生施設とか、宿所提供施設か、それぞれまた 別の御意見もおありでしょうし、この委員会でそこまではちょっと詰めにくいような感 じもいたしますが、いかがでしょうか。 (岡部委員)  私からは、授産施設について報告をさせていただきます。ちょっと性格が違います が、同じ保護施設として担っている役割については、ある意味で救護施設と同じではな いかと思っております。それで、田中委員がおっしゃったように、地域の他法の施設資 源が不足していれば、保護施設がその代替、補完的あるいはそれを全部結びつけるよう な総合的な機能を担っているのが実態かと思います。  そう考えると、これは生活保護制度と他の社会保障、社会福祉制度と同じような構図 になると思いますが、どういう関係性でやっていくのかを整理することが必要になって くると思います。私はそのときに、保護施設の問題の中で解決できる問題と、もう一 つ、社会福祉の施設体系の中で専門分化した施設の中に入っていくことが望ましいが、 逆にいろいろな複数の生活課題、あるいは障害を持っていらっしゃる方はどこが担うの かという整理の問題があると考えます。例えば救護施設の中でいくと、相当高齢の方で 介護保険の対象になっているのではないかという方が入られているとか、これは当然知 的障害の施設に入っていてよい方も入っていらっしゃる。身体の場合もそうです。  そこで、例えば介護保険の施設で必ずそういう余地がある方を受け入れるという形の 仕組みを作るのか。先ほど委員長がおっしゃられたように、総合性や緊急性の面から、 短期から長期にわたる場合のどちらも含め、保護施設の中で広く受け入れるような仕組 みを作るのか。このような点を抜本的に考えなければいけないのではないか。ですか ら、先ほど出ましたように、当面の問題と将来的な問題を切り離して整理をするという 形が必要なのではないかと思います。また、保護施設の問題として他の施設との格差の 問題があります。利用者にとって、入所している人にとって、格差はあってはいけませ ん。さらに、職員についても、職員の条件が他の施設よりも低い現状がありますが、複 数のいろんな課題を抱えている方が入所しているので、私個人は、逆に手厚くしなけれ ばいけないのではないかと考えます。そういう仕組みがどういうふうに作られていくの かという観点からも整理する必要があるのではないかと思っています。  私自身は、在宅については生活保護の給付水準でいいと思うのですが、保護施設につ いては、他の福祉施設と給付水準が同等あるいはそれに近い水準であるべきであると考 えています。たまたま介護保険の施設に入った、たまたま保護施設に入った、といった 原因で利用者にとって給付水準が違う、格差があるというのは、これは実施機関と受入 施設の問題ですので、整理する必要があるのではないかと思います。  授産施設の場合、授産施設という法律名称がありますが、社会的な就労や「社会就労 」という名称も使っています。一つは法律の名称と一体化するのが一番いいのですが、 少しそこのあたりも実態に即した形で、あるいは今後の保護施設の在り方にふさわしい 名称を作っていく必要があると思います。以上です。 (岩田委員長)  授産施設は、自立支援や生業扶助についても名称の問題もあると思いますが、こうい うものとむしろ関連していて、今の救護施設などの生活施設的なものとはちょっと性格 が違います。もちろん実体がほとんどない医療保護施設についても、少し区別して議論 する必要があるかと思います。  また、生活保護における「最低限度の生活」という意味は、もちろん最低生活費とい う意味において用いられていますが、岡部委員の今の御意見は、施設が必要な方に対す る福祉サービスに格差があっていいのだろうかということだろうと思います。もし、受 けられるサービスは最低ではなくて常に最適であるべきだという考え方が妥当であると すれば、そういう問題になると思います。先ほど申し上げたように、住宅部分と生活費 部分とサービス部分、医療、介護、そしてそれ以外のサービスが仕分けられた上で、そ れらを組み合わせるという体系になっていますと、介護保険を活用しても、障害者福祉 のサービスや施設を利用しても、生活保護を利用しても、みんな同じになり、それが一 番公平な感じがするのだろうと思います。しかしながら、全体の体系はまだそこまで整 理されていません。また、生活保護は総合的であるものの、実はパーツ組合せ方式なの です。ですから、決してどんぶり勘定でやるというものではなくて、非常に細かい組合 せですから、逆に言うと一つずつ持っていったって構わないというようなことが本当は あるのだろうと私も思います。 (田中委員)  ちょっとつけ加えさせていただきます。今回、私どもが組織の中で議論した際には、 ちょっと窮屈な面がありますが、生活保護制度の在り方の問題、生活保護制度下におけ る救護施設という前提を置いて、意見をまとめさせていただきました。  というのは、今、岡部先生もおっしゃったような、長期的な問題と短期的な問題を考 えれば、当然我々も当面の問題と長期的な問題を考えることとなったと思います。長期 的な問題になると、もっと大きな施設間の制度の問題、介護保険との関係、支援費施設 との関係の問題、介護認定の問題も含めて、そのあたりをどういうふうに調整をしてい くか、どうあるべきかといった問題があると思うのです。しかし、私どもは、生活保護 制度下における救護施設の在り方という前提を自らつけて、その中でこうありたい、こ うあるべきだ、こうあってほしい、こういう努力をしようということでまとめさせてい ただいたわけです。  もう一つ、格差の問題で言いますと、岡部先生がおっしゃったような格差の問題を、 私も常に感じている一人です。私どもの法人には、支援費の身体障害者授産施設、身体 障害者の旧重度更生施設も一緒に同じ敷地内にございます。入っている人は視覚障害者 が中心です。その実態を見ますと、救護施設に入っている人の方が、障害の重さ、年 齢、生活機能の内容において、明らかに重いのです。何となく生活保護の救護施設は最 低生活の保障をするというイメージがありますが、最低生活の保障が、いつの間にか最 高の、最も手助けが必要な施設になっています。ですから、救護施設に入っている方々 の実態を見れば、職員に関してもかなり手厚い処遇があってしかるべきだと思うので す。  私が実際に施設を運営しながら不思議に感じるのは、こんなに救護施設の入所者の障 害などが重いのに、職員基準はむしろ逆になっていることです。ですから、生活保護制 度において、施設の利用者の方々の生活がどうあったらいいかについて考えると、もう 少し救護施設に光が当たってもいいのではないかと考えます。こういう場所でこういう ことを言うのが果たして妥当なのかどうかわかりませんが、そのように感じてきた一人 なので、そのあたりも踏まえて一つよろしくお願いしたいと思います。 (岩田委員長)  保護施設については今日かなり議論ができたと思いますが、それに関連して、今日の 論点の中にも少し出ておりますが、実施責任との関係、保護施設への入退所と実施責 任、福祉事務所との問題もあります。以前、田中委員が大分いろいろおっしゃったわけ ですが、施設や、場合によっては施設以外の公営住宅とか何か被保護世帯が利用しやす いとか、利用した方がいいような住宅あるいは施設がありますと、当然生活保護世帯が その地域に多くなりますし、退所した後もその周辺に住む可能性が非常に高くなる傾向 があります。こうしたことから、地域がちょっと後ろ向きになったり、また、施設など に利用が決まると、実施責任がないかのような、投げてしまうと言いますか、そういう 傾向があるようにも聞いております。これは施設だけの問題ではなくて、前に八田委員 がおっしゃったように、生活保護世帯はいろいろな選択によって地域異動する場合もあ ると同時に、制度的にある地域への集中したり、その周辺への居住が促されていくとい う側面があるだろうと思います。ですから、そのあたりが実施責任との関係で言うとな かなか難しいところなのかなと思います。 (田中委員)  そのあたりについては、むしろ大川委員にお伺いしたいところなのです。今おっしゃ られたように、自立を何とか実現をしたい、また、通所事業とか、そういう地域で一定 の訓練をした結果、あるいは施設で生活した結果、非常に健康的にも精神的にも安定し て、そういう方が地域に出たいとなったとき、皆さん施設で何年間か生活しています と、地域といった場合、どうしても施設の周辺になるといった問題があります。これは いろんな理由がありまして、その一つに、施設とつながっていたいという気持ちが非常 に強いのです。  私ども施設の関係者も、この人がどこかずっと遠くへ行ったらかなり難しいなと思う ケースもあるのですが、施設のそばにいらっしゃれば、いろいろな面でアフターケアが できます。制度があろうがなかろうが、施設関係者は施設から出す場合には本能的に心 配になるものです。その地域に出す場合に一番問題になるのは、今も委員長がおっしゃ られたように、生活保護の大原則、適用の原則と言いますか、その人の今の住所地で適 用することになる点です。私どもの施設でも毎年一人、二人退所しますが、今まで都内 などずっと遠くから措置された人がいざ外へ出るとき、やはり施設の周辺に出る。みん な施設の所在地がある市の方に全部変わってしまうのです。その場合の適用の問題で、 けんかするというところまではもちろんありませんが、こんなに施設から地域の近くに 出ると負担が大変だね、という言葉が必ず出てくるのです。何となく私ども気の毒だな という気持ちになってしまうのです。施設から出たときに一挙に保護から外れると一番 いいのですが、普通、一定の期間はさらに保護が必要です。したがって、そこら辺をど うやって解決をしていくかが、これからの施設から外に出て自立をしてもらうための、 非常に大きな課題ではないだろうか、そういうふうに感じます。 (大川委員)  施設の問題に限らず、現場では他の地域から移管されてくることを非常に嫌がるとい うか、消極的になるという傾向があります。これは生活保護全体の在り方や保護受給者 に対する住民の見方の問題などいろいろあると思います。ただ、今の施設のお話です が、恐らく年間でそれほどたくさんの方が、その地域で、例えばA町に救護施設があっ て、毎年10人ぐらいの人が自立をして、その空いた部分にまた10人が入ってきて、ま た、次の年には10人自立するとか、そういう回転のペースではないと思いますが。 (田中委員)  ほとんどの施設ではおっしゃるとおりですが、精神障害者の方や旧の緊急救護と言わ れている施設の方では、かなりあるようです。 (大川委員)  そうですか。年間でどのくらいあるのでしょうか。 (田中委員)  私が聞いているのは、年間に相当あるようですね、十数名。 (岩田委員長)  大川委員いかがですか。 (大川委員)  先ほど長期の方が多いということでしたが、私たちが現場でかかわっている中では、 入所者はかなり事情のある方というイメージもあって、そんなにたくさん退所される方 はいないかなとは思っておりました。ただ、それでも実施機関の被保護世帯数からすれ ば、それほどの数ではないと思うので、それについては、原則どおりその地域で受ける という形をとるしか、多分ないという気もしております。ただ、先ほど根本委員からお っしゃっていましたが、一つの実施機関あるいは、その地域、都道府県なり、ある程度 のエリアの実施機関が共同で、別に直営という意味ではありませんが、その施設を持 ち、その利用者の自立について関係の実施機関が共同で考えるという考え方に立ってい くべきではないかなとは思います。  どういう形で制度化し、具体化するのかは、今日根本委員から初めて聞いたアイデア だったので、まだイメージが湧かないのですが、私は先ほどの提起は大きなヒントにな るかと思います。  具体的に各実施機関が社会資源として一つの施設を持ち、そこで共同でその人たちの 自立を図っていく。財政負担については、現在でも住所不定の方は市町村ではなくて都 道府県が持つスタイルをとっています。つまり広域的に移動があるわけだから、例えば 救護施設に入った人が地域で自立をしたときに、今度は都道府県が4分の1で国が4分 の3持つことが法的に可能かどうか。そういう形で、できるだけその施設のある市町村 だけに負担をかけないアイデアをいろいろ出して工夫をしてみる必要があると思ってい ます。 (京極委員)  現行では、生活保護の町村の負担というのは原則的になく、福祉事務所が居宅なり、 施設なりで保護するという形になっており、県と市ということで対応しております。今 後のことを考えていくと、もちろん先ほど田中委員からも大川委員からも出ましたが、 職員の待遇条件やケアを厚くすることも必要です。しかし、国と県と市町村の役割分担 で考えたとき、福祉事務所の措置だけでいいのかという問題があって、私は福祉事務所 についてはなるべく県でやった方がいいのではないか、市町村は行なわなくてよいので はないか、政令指定都市と県で十分であるという考えを持っています。しかしそうしま すと、ますます保護施設の方は、地域から離れていってしまいます。一度町村の住民が 保護施設に入ったら、私たち町村長は関係ないということになりかねず、住民の方も自 分たちと無縁の世界にいってしまって、もちろん戻って来ることも想定しないという、 今後の地域福祉の進展から取り残されたような施設になってしまう可能性が大きいの で、実施機関と保護施設の関係については、もうちょっと整理し直す必要があるのでは ないかと思っています。 (岩田委員長)  ちょっと難しい話になってまいりましたが、どうぞ。 (岡部委員)  これは保護施設だけではなくて、例えば集合住宅においても、転出された方のところ にまた一定の所得以下の方が入って来られることがあるわけです。ですから、そういっ たときに、うちでは困るという話では、生活に困窮されている方の住居、拠点がなくな ってしまうのです。逆に言うと、そのために実施責任はどこなのかを決めているわけで すので、例えば、施設から転出をして住居設定をしたときには、その施設の周辺に住ま われるというのが一番望ましいわけですし、生活権とかいろいろな医療の問題であると か、そういう観点から、そこのところは譲ってはいけないのではないかというのが私の 考えです。  施設からグループホーム、在宅からグループホームへの移動のときに、グループホー ムでの生活を認めないという実施機関も実態としてはあるようです。そういうことをし たときに、施設からグループホーム、それから在宅という、地域生活の中で生活をする という流れを止めてしまうことになりますので、ここは割と慎重にしなければいけない のではないか。先ほど京極委員がちょっとおっしゃったことですが、生活保護が都道府 県、政令市の問題だとなってしまうと、これは地域福祉というか、そこで暮らす住民の 一人としてきちんと考えるという考え方から遠ざかっていくのではないかと思います。 ですから、財政負担もありますが、考え方だけはきちんと押さえておかなければいけな い。これが一点です。  もう一点は、これは八田委員からちょっと言っていただくといいと思ったのですが、 給付を受けている方というのは、地域経済の中でそのお金を使うわけです。ですから、 単に財政負担だけということではなくて、もう一方では、給付を受けた人がその地域の 中でお金を使うということの効果や、施設があることによる雇用の創出とかがあるかと 思われます。社会保障の給付が地域経済に与える影響について御示唆いただければと思 っております。 (京極委員)  誤解を与えるといけないので追加です。先ほど私が言ったのは、生活保護行政の広域 化という意味で言ったので、市町村が何も負担しなくてもいいとか、役割を持たなくて いいということではありません。やはり国、都道府県、市町村がそれぞれ役割を持つ が、エリアとしては、市町村ごとにというのは生活保護行政としては無理があって、も う少し広域性でやる必要がある。そのときに、市町村の絡み方、参加の仕方、これは少 し工夫が要るのではないかと思っています。 (岩田委員長)  八田委員、どうぞ。 (八田委員)  二つ論点があると思います。今、岡部委員がおっしゃったことについては、後でお話 ししたいと思います。  まず、一点目は根本的な問題です。松浦委員がいつも、交付税化して自由に使えると いうことにすると、それは市町村としては財政的にどうやって配分していくかというこ とになり非常に大きな問題があるとおっしゃっています。これは基本的な問題だと思う のです。地方自治で地元がいろいろ工夫するということと、生活保護のようなものに対 する財政負担をどこがやるかというのは全く別の話で、生活保護については全面的に国 が全額負担すべきだと思います。これは、単に私が思うだけではなくて、当たり前のこ とだと思います。例えば、ある産業に対して保護をするというようなことは、各地元で もっと競争して、当然自主的に税負担する人を引き寄せればいいわけです。生活保護で 一生懸命頑張ると担税力のない人ばかりが集まってくるわけですから、そんなこと競争 するわけがないわけで、そこで競争させるのは初めから意味がない。  これについては、実は私の特殊な考えではなくて、あまりに今行われている三位一体 改革の議論が現実遊離していて、今の30代、40代の地方財政を考えている第一線の経済 学者は、全員これが最大の問題であると言っています。全員といったら誇張になります が、少なくとも多くの人たちは、本当にこれが最大の問題だと考えていて、いろいろな 社会的発言をもうすぐやっていくだろうと思います。したがって、私はこのことについ ては、この委員会がどれだけそういうことを提言していっていいのかわかりませんが、 制度の根幹にかかわることだから、そういうことを提案していいと思います。それが一 点目です。  二点目は、それとは別に、よく地域でもってお金を使うことに、例えば文化施設に使 うと、そこでもっていろいろ経済の波及効果があるから、それで地元でやってもいいじ ゃないかという話があります。しかし、これは国全体の観点から見たら、そこで金が落 ちれば、ほかのところから必ずその分減っているわけです。だから、あまりそれは奨励 する必要はないと思うのです。もちろん地元の都市経営の観点から見たら、それが重要 だと言えるかもしれないですが、国全体の観点から見たらプラス・マイナス・ゼロです から、それは強調する必要はないと思います。むしろさっきのように、各市町村が生活 保護に金を使いたくなくなるような制度は困るということが問題の中心だと思います。 (岩田委員長)  何かちょっとパンドラの箱をあけてしまったような感じもします。今までいろいろな 制度の議論をしてきたわけですが、現実には、先ほど大川委員がおっしゃったように、 生活保護というのはものすごくローカルルールの世界なのです。全国制度なのにみんな 地域で、全然違うルールもって、特にこの移管については極端に言うと移管を認めない ことも私は聞いたことがあります。したがって、そういうことが傍らにあると、一生懸 命ここの委員会で制度の改善をしても何の意味もないということがちょっとあるかなと 思ったので、保護施設の退所問題とからめてちょっと申し上げました。この点について は、恐らく根本委員、御意見あると思いますので、どうぞ。 (根本委員)  先ほど言われたことは先ほど私も申し上げたとおりですが、居宅処遇原則というのを まず大前提とするということを確認した上で施設利用というのがあるのであれば、当然 のことながら実施機関においては、居宅を前提として、施設を利用するか、しないかを 利用者の方と決めていくというやり方になります。ですから、当然そこには居宅の裏腹 として、実施機関ごとに、ある意味自由に、相当フリーに使える施設がその背景になか ったら、それはできないのでしょうという趣旨で申し上げました。それについては、一 定のエリアの中で、実際に自由に使える施設が前提としてなくてはいけない。  また、京極委員が言われた福祉事務所の体系の問題は、もう一つ大きい問題としてま た別途あると思っております。しかしながら、とりあえずそういうものがないと、実態 として自由な形での保障ができないと思ったものですから申し上げたということです。 (岩田委員長)  この議論は、大体このぐらいにしておきたいと思います。いずれにしても、生活保護 制度は一面でもちろん今日の地域福祉における一番の下支えといいますか、大事な制度 であります。しかし同時に、八田委員がおっしゃったように、生活困窮という問題の特 殊性から、全国的な制度として、国の責任としてこの制度があって、ただ、身近な地域 に任せておけばいいという問題としては出てこない。いわゆる施設だけではなくて病院 もそうですが、施設資源のようなものは当然偏在しますので、様々な点で広域的な問題 として出てくるわけです。ですから、そういうことを見据えると、ある程度、広域的な 調整やブロック化など、極端に言うと都道府県が生活保護は運営するとか、そういうよ うなことも必要でないかということかと思います。都道府県が実施するというところま で言っていいかどうかわかりませんが、例えば高齢者福祉や保育所のように地域に身近 なところで実施することに非常に意味があるものと、生活保護というのはやや性格が違 います。そのデリケートなところをよく咀嚼する必要があります。片方で国の責任とし て保護を実施しながらもう一方で地域福祉を支えると言いますか、何かそういう二重路 線というのはどうしても必要になるのかなと感じております。  田中委員、よろしいでしょうか。 (田中委員)  はい。 (岩田委員長)  そうしましたら、ちょっと時間が非常に長くなりましたが、続きまして、資産と労働 能力の活用の問題に入ります。これもずっと議論してまいりましたが、資産について は、一度、最低生活費の3カ月分ぐらいの保有を容認するということで意見の一致を見 たかなと私は思っています。前回、栃木県の方の調査結果を説明していただいたわけで すが、それによれば、今0.5カ月で保護を決定していた場合の3割増の方が保護決定と なると推計できるということでよろしいですか。 (鈴木委員)  若干正確に言わせていただくと、栃木県内の一つの県の福祉事務所で昨年度61件の申 請がありました。そのうち最低生活費の0.5カ月未満の預貯金の所有であったケースが 36件、59%でした。0.5カ月以上3カ月未満のケースが19件ありました。数字で言いま すと31.2%になります。  私の理解するところによると、もし3カ月ということにした場合には、多分次の3つ のことが起こると思います。  一つ目は今まで認めていなかったケースを認めるようになるものがあるかもしれない ということ。  二つ目は、0.5カ月分といっているところを3カ月分にすることによって、我々の側 からすると負担が増えざるを得ないということ。  3つ目は、これは恐らく推計がかなり難しいと思いますが、一般の家庭でも2割近く の家庭の貯蓄がないとすると、入りやすく出やすい制度にするということによって、今 申請していない人が新たに申請してくるかもしれないということ。  これをリスクというか、可能性というかは議論の余地がありますが、以上の3つの可 能性があると思います。ですから、財政を預かる側としては、恐らくここである程度の 推計をした上で結論を出さないと、理論的にこれが正しいというだけではなかなか結論 が出ないのかなという気がしました。 (岩田委員長)  私からお願いしたかと思うのですが、たまたまある一つの福祉事務所ですから全体の 分布というわけではないですが、この0.5カ月から3カ月の間に入る19世帯の方は、今 の基準ですと即座には保護決定にはならないわけです。いずれ来るような方なのか、そ れとも来ない方なのか、それを伺いたいのです。つまりそれは期間の問題なのかどう か。それが期間の問題であれば早く始めた方がいいのではないかというのが、ここの議 論だったと思います。しかし、全く違う質の方を入れることになると、またこれは別の ことだと思います。それを前回ちょっとお願いしたつもりだったのですが。 (鈴木委員)  今、私の手元にある例ですと、31.2%、19件の例のうち、実際生活保護として認定し た例が17件あり、2件が取下げという形になっています。この17件の例については、3 カ月に至らないところ、0.5カ月以上の部分については、いわば生活保護支給額から、 逆に取り崩して支給をするということになっていて、6カ月以上の人について保護を要 しないこととしているというのがどうも現在のやり方のようです。 (岩田委員長)  今の話は、多分いずれ来てしまうということなのではないかと思います。多分相談を 継続するなりしていて、それで持っているものをまずお使いなさいという指導になりま すね。 (大川委員)  鈴木委員にお伺いしたいのですが、今のお話というのは、最低生活費の0.5カ月から 3カ月の預貯金があった19世帯中17人の方は、そのお金を使ってしまってから、結果的 に保護になったという方なのか、それとも持っているお金を、収入充当なり何なりの形 をして、その中で保護にしたという方なのか、どちらでしょうか。 (鈴木委員)  収入認定をしたと聞いております。 (大川委員)  認定して保護を開始したということでしょうか。 (鈴木委員)  そうでございます。 (松浦委員)  今、最低生活費の3カ月分の預貯金を保有していても保護を認めようという方向の議 論でしょうか。私はこの委員会で初めから申し上げているのですが、今、社会は非常に 厳しくなっており、基礎年金の保険料を480カ月かけて、やっと月6万数千円の老齢基 礎年金です。私も当初大体その数字を頭に置いていたのですが、実際にはそれだけみん なもらっていないと言う人がいたものですから、ちょっと調べてもらいました。する と、基礎年金のみを受給している方の平均では5万円ぐらいで、基礎年金以外の年金も ひっくるめて厚生年金などももらっている人にいたっては基礎年金部分が4万円切って いるような状況なのです。  そうすると生活保護を少しでも優遇すれば、今の若い人たちは、もう年金はいいやと いう感じが出てくるのではないかと考えるのではないかという心配をしてしようがない のです。ですから、その辺のバランスは考えておかないといけないと思います。 (岩田委員長)  おっしゃることはごもっともです。最低生活費の3カ月の預貯金の保有を認めるかど うかについてのポイントは、先ほども申しましたが、いずれ生活保護に来るのかどうか なのです。つまり同じ状態でも、福祉事務所に来る人も来ない人もいると思います。そ して、相談に来たときには何かとても困っている。たまたま最低生活費の2カ月半の貯 金があった。しかし、2カ月半分の貯金があるから、まず、それを使ってくださいとい うことであれば、生活保護の適用が2カ月半延びる。使った後にまた福祉事務所に来る と、同じ人が来てトータルとしては数が減らない。どうせ同じ人が生活保護に来るので あれば、早いときに来た方が、生活保護から出て行くときのスプリングボードになるよ うな生活の枠をそれほど壊さないで生活保護を使えるのではないかという議論です。決 して生活保護受給者をたくさん増やそうとか、そういうことではなくて、むしろあまり 裸にしないということです。その水準が最低生活費の3カ月分になるかどうかというの は議論の余地がありますが。  私はたまたま破産法が3カ月という基準を使ったので、3カ月ではどうでしょうかと 言っただけで、もちろんそれは2カ月であるべきだとか、様々な議論はあり得ると思い ます。 (松浦委員)  私は帰ってその辺のことを現場の職員にちょっと話をしたのですが、いいところ最低 生活費の1カ月でしょうということでした。 (岩田委員長)  それは一つの御意見だと思います。それで1カ月だと、今までの議論の中でありまし たように、最低生活費の0.5カ月分以下の貯金を保有している36ケースのうち、栃木県 のこの市の場合はわかりませんが、横浜や東京などの話を聞きますと、実態はもう借金 抱えてくるような、つまりマイナスの人が相当含まれていると聞いています。また、預 貯金がゼロになりますと、当然お金がありませんので、生活福祉資金で借りるという形 でスタートします。ですから、もし最低生活費の1カ月分の貯金を持っていれば、まず それが当面の生活費に充当される。ですから結局スタートするときはゼロです。今、そ れをさかのぼって支給して返すということで精算しますから結局同じことです。しか し、私は個人の心理状態はとても違うと思います。そして、そのことは自立にとって大 変大事だと考えています。  したがって、そのあたりをどう考えるかで、決して大盤振る舞いして被保護者がとて も増えると思うかもしれないが、それはちょっと違うのではないかと思っています。た だ、松浦委員のところでも、今の栃木のようにきちんと計算していただかないと困りま す。しかし、そのときのポイントは32%増えるかどうかではなくて、その32%の人が結 局生活保護に来るのか来ないのか。そして援助するときに、少し自分の何か手持ちのも のがあった方が支援しやすいのか、それとも全部脱いでもらってあてがった方が支援し やすいのか。そのあたりだと思います。 (松浦委員)  前に田中委員さんがおっしゃったと思いますが、本来、生活保護に入ってしまうと、 それ自体が自立に非常にマイナスの要素を持っているのではないか。私も、生活保護の 制度というのは、入りやすくて出やすいというものではないと思います。一度入ってし まうと、大変出にくいものと思います。田中委員は、生活保護費を当てにする意識を持 つからだということをおっしゃったと思いますが、まさにそういうことがあると思いま す。ですから、私はできるだけ生活保護に入らないように説得をして、とにかく生活保 護に入る前に支援するということも非常に大事なことだと思います。 (岩田委員長)  ですから、説得をして何とか生活保護を受けずに暮らせるのであればそれでいいと思 うのですが、そうでないから議論しているのではないでしょうか。 (岡田保護課長)  この前に議論したときも申し上げたのですが、この問題は、いつから就労などに向け た支援を始めるかという議論です。福祉事務所に来られたときにいろいろと御相談に乗 って、いつからいろいろな支援を始めるかという問題と、いつから生活保護を適用する かという問題は、これは必ずしも一緒であるという必要はありません。先ほど栃木県さ んが言われましたが、その最低生活費の何カ月分かの預貯金を持っている段階で、いろ いろな就労支援を始めるということはとても重要であると思いますし、現在十分にでき ていない地方自治体があれば、そのあたりは十分やっていただく必要があると思いま す。  このような自立支援サービスを開始する時期と、生活保護の現金給付をいつから始め るかという問題は、別の次元の問題として整理してお考えいただく必要があります。一 つ論点整理という意味でちょっと申し上げた次第です。 (岩田委員長)  それは前にも資料でお出しいただいたところですし、その際にいわゆる低所得者対策 と言いますか、そういう資源が導入されるというようなことは御披露いただいておりま すので、一応は承知しているわけですが、さて、現実にどういうふうにその辺がなされ るのかが問題です。  それから、一番大事なのは国民がどういう理解で福祉事務所に相談に来られるかとい うことだと思うのです。ですから、私は必ずしも最低生活費の3カ月分の預貯金という ことに別にこだわる理由は全然なく、1カ月分でもそれは構わないと思いますが、結局 生活保護に来る人は、その基準以下であれば救済するという制度であり、お断りする理 由はないのです。しかし、そこに安住するのではなくて、なるべくいい形で自立してい ただけるように支援しようというのが今回の議論の初めだったと思うのです。そして来 る、来ないにかかわらずそういう制度があることが、また安心につながるのではないで しょうか。今回は何とか世話にならずに済んだものの、そういう制度があるのが安心だ というような制度がないと、松浦委員がおっしゃったように、社会全体の一番底が抜け てしまうと思います。  資産調査というのは非常に大事で、要するにミーンズテストの枠を決めるわけですか ら、全くしないというわけにいかない。これは公的扶助制度として当然だと思うのです が、一方で、今の生活の中でどの程度が妥当なのか。この制度ができたのは戦後間もな いころです。そして最低生活費の0.5カ月分としたのはもっと後ですが、資産条件につ いては、日本は大変厳しい国の一つだと言われています。  また、私がなぜ破産法を出したかというと、ある社会の中で資産保有の最低限をどう 考えるかという基準がいくつもあるというのは好ましくないのではないかと考えたから です。ただ3カ月といっても、今はその世帯の支給される最低生活費を基準としていま すが、もう少し限定した3カ月ということはあってもいいのかもしれません。 (松浦委員)  その生活保護に入ってくる場合に、例えば貯金を30万なら30万持っていた。30万持っ てきたときから、既に自立支援に向けてどんどん相談を仕向けたらいいわけです。最終 的に貯金が0.5カ月分か1カ月分になったときに、それでもどうしてもだめだった、生 活保護に入らざるを得なかったというならそれでいいのですが、最後の最後が、例えば 3カ月30万というのは、私はちょっと周囲から見てどうかなという気が起こってくるの ではないかと思います。 (大川委員)  先ほど松浦委員がおっしゃっていたように、保護申請に来たとき、ちょっと工夫すれ ば生活保護にならなくて済むという方については、既に全国どこの福祉事務所の窓口で も、工夫をするように促しています。ところが、前回も言いましたが、実際にはそれで 立ち行かなくなっていて、その結果がこの間の保護率の増加だと思うのです。別にここ 数年福祉事務所の窓口が随分やさしくなったとか、緩くなったという話は私も聞きませ んし、その点、やるべきことは恐らくどこもやっていると思います。  ただ逆に、例えば、今、手元にお金があるが、明らかにこの人はこのお金がなくなっ たら、生活保護だという状態の人が来たときに、現実的には現場では、このお金を全部 使ってから来てください、という言い方をせざるを得ないのです。福祉事務所が浪費を 勧めると言いますか、おかしな話です。預貯金が30万円あるから、いろいろ買い物をし てなくなって来てくださいと、浪費を勧めるという見方もできます。逆に、言われた側 からすると非常に不安で、では一体どのぐらい使ったら自分が生活保護になるのか、と いうことがわからないのです。この30万を、3カ月で使い切ったらなるのか、1カ月で 使ってしまっていいのか、あるいは一晩で全部使い切っていいのか。そういった基準が 何もない中で、実際に明らかに生活保護になっていく人たちに対して対応が遅れてしま う。それでも「使ってからおいで」と言う福祉事務所は親切な方で、「あなたは生活保 護を受けられないですよ」ということを言われて、結果的にそれを知らずにずっとがま んしていた。それから電気も止まり、水道も止まりで、どうにもならなくなって、近所 の民生委員さんが慌てて福祉事務所に連れていくような事態など、この間、新聞等で報 道されていますように、初動の遅れが指摘されています。  私は、先ほど栃木県さんのデータを聞いても、最低生活費の0.5カ月分から3カ月分 の預貯金を持っていた19世帯は、そこで生活保護を認めようが認めなかろうが、恐らく いずれ生活保護に来る人たちであれば、早めに救って、早めに出すという考え方に立つ 方がわかりやすいかなと思います。  それともう一点。これも前回お話しましたが、生活保護制度は、全部預貯金を使い切 って、その代わり生活に必要な部分については、一時扶助とか生活扶助で逆にどんどん 出しますから、入るときは全部使ってきてくださいという仕組みになっています。しか し、そうすると結果的には生活保護から出られなくなる。  この先、恐らく生活保護の給付水準を上げたり、一時扶助の枠組みを広げたりという のは大変困難だと思うのです。そうしたときに、ある程度の預貯金を持って生活保護に 入ってもらって、その代わり、入ってからの給付水準は若干厳しいものの、しっかり自 分たちの持っているお金でやってくださいという考え方に立つ方が、財政的に非常に厳 しい現状では適切なのではないかというのが私の意見です。ですから、決して資産を無 尽蔵に持っていて、どうぞ、どうぞということではなくて、少なくともある程度、先ほ ど委員長が3カ月という言い方もありましたし、あと今の生活保護は、自立助長や保護 停止について6カ月という考え方をしていますから、例えば入るときは3カ月で、出る とき6カ月とかいろいろな考え方ができると思いますが、ある程度の資産を持って入る ということは、逆に国民感情からしても必要なことではないかと私は考えます。 (石橋委員)  いくつかの裁判を見ますと、秋田で起きた事件もある程度の預貯金というのを認めて おりますし、私たち法律の分野では受給者の自己決定権の尊重が次第に認められつつあ るという表現をする人もいます。今までは、保護を受ける、何となく客体のような感じ でしたが、これからは、自立した主体として社会保障で位置づけていくとすれば、それ を個人の尊厳というのか、自己決定権の尊重というのか別として、ある程度余地を残し た上で、その間にどうやって強力な支援をしていくか、そういう議論をした方が皆様に 納得いただけるかなと思います。  それから、私も生活保護法の第4条ができたときのことを調べたのですが、4条の条 文そのものが、その他あらゆるものを活用することを条件として行われると言っている から、とにかくすっからかんにならなければ受けられないのだという解釈に結びつきが ちで、制度自体を暗いものにしていて申し訳ないと当時の法律制定に携わった関係者の 方も言っておられました。保有できる預貯金の額を1カ月分にするか、3カ月分にする かは別として、そうした余地を残しながら自立へ向けていく方策を考えていく方が私は いいのではないかと考えています。以上です。 (京極委員)  資産には固定資産と流動資産があって、流動資産のことで今議論があると思います が、資産には現金のみならず多少の家具その他いろいろあるわけで、生活全体でやはり 見ないといけないと思います。例えば本当に全部質屋に入れてすっからかんになってか らでないと受給できないとはしていないわけで、現金だけに着目して全部使い切ってく ることが原則というのはちょっと解釈論としてもおかしいと思います。  それから、そういう生活保護を受ける人の中で、例えば急に病気になって難病になっ たとか、あるいは厳しい病気になったときも、先が見えているわけで、毎日毎日ものす ごいお金が出ていきますから、それは生活保護の医療扶助を申請せざるを得ないという 状態の方もいらっしゃるでしょう。あるいは借金ですごく後ろから追われて、実際には 預貯金という形であってもほとんどはそれを返したらマイナスが相当大きいものの、名 目上は確かに口座にあるということもあるので、実態を調べないとわからない問題が随 分あるのではないかと思います。  それで、どのくらいの基準にするかというのは課題だと思います。ただ、岩田委員長 がおっしゃったように、自立支援のシステムとして、生活保護を適用して、なるべく早 く経済的に自立の方に向けて支援していただくということになると、全部すっからかん にして出すというのがいいとは、これまでもやっていなかったはずです。その基準は地 域社会、都市や農村部でいろいろな違いがあります。農村部では畑があって野菜が採れ たりする一方、大都市みたいに全部現金でやらなくてはいけないところもあるし、地域 社会の差があるので、国としてはある幅で決めて、あとは県で考え、執行を選んでいた だくしかないのではないのではないか。あまり結論らしい結論ではないですが。  ただし、他法他政策の原則、あらゆるものを使うという要件について、流動資産、つ まり現金だけではなく、自動車保有なども認めようという方向ですから、公平論からい っても、そういうものがない人の一定程度の現金保有は認めることが必要と思います。 具体的に3カ月が適当かどうかは、私にはすぐには答えられません。 (松浦委員)  「たくさんお金を持っていてゼロにならなかったら生活保護に入れないと言ったら無 駄遣いするかもしれない」ともおっしゃっていましたが、そういう人は、入ったらもう 出ないのではないでしょうか。恐らく自立はしないと思います。ずっと生活保護に頼る と思います。「持っている30万円を使わなければ生活保護に入れない」と言ったら、パ パッと一晩のうちに使ってしまう。このような人は、恐らく一たん生活保護に入ったら なかなか出ないと思います。  生活保護に入ってから、ある程度働いて、その分生活保護を減らして支給するという ケースもあるようですが、そういう場合には多少生活保護の出口で預貯金を持っていく というのは認めてもいいと思います。  しかし、初めに、ある程度の資産を持っている人には、その資産がある間に強力に自 立のための指導をしていくべきです。それが次第になくなっていって、本当に生活がで きないというときには、当然生活保護で面倒を見るべきですが、資産を持っているうち に自立支援をせずに、初めに入れてしまって、さあ、それから自立支援をするというこ とになると、やはり予定をしてしまうでしょう。田中委員が確か「予定をする」という 言葉を使われたと思いますが。ですから、私はよほど慎重に、データ等もとらなければ いけないと思います。  それから、もう一つ、法律の問題が石橋委員さんから出ましたが、これについては事 務局の方でどうなっているのかしっかり調べてもらいたい。また、車の保有なども認め ることにすると、今の若い人たちは「年金はもう当てにしない、生活保護を受ければい い」となるのではないでしょうか。車も持ってもいいのだったら、車庫証明なども要る のでしょうから、そういう費用も生活保護で出すとなると、私相当年金制度がだめにな ってしまう気がします。 (岩田委員長)  そのほかにいかがでしょうか。 (田中委員)  松浦委員から私の名前が何回か出ましたので、何か申し上げなければならない感じが いたします。私は前回か、松浦委員がおっしゃるような趣旨のことを申し上げました。 私は、保有の額を何カ月にするのがいいか、これはあまり考えてもいないのですが、大 事なことは、やむを得ない事情があったときに、その最終的な目的には自立という問題 がありますが、人間の尊厳を損なわないために、福祉の制度の一つとして生活保護があ るということだと思います。  そういうことを考えたときに、私もできるだけ入りやすいことは重要だと考えます。 大分前から、「入りやすい生活保護制度」「出やすい生活保護制度」、このような表現 でいろいろ伺っているわけですが、入りやすいというのは適当に自分の持っている金を あまり使わずに制度を利用するということではなくて、いろいろな事情でやむを得ず生 活保護に頼らなければならないというときには、きちんと生活保護を適用することでは ないでしょうか。それはあくまでも生活保護を受けることによって、人間の尊厳が維持 できるためにあるべきだと思うのです。ですから、生活保護を適用する一方、実施機関 の方も、自立の追求、自立のための指導、自助精神を持って生活保護から出るための指 導をもう少し強力にしていくことで、私はこの制度が本当の意味で人間の尊厳を維持す る上で生きてくると思います。  ですから、私のような言い方をすると誤解されるのですが、「なるべく生活保護にか かるな」ということではなくて、人間の弱さというものがありますから、安易にかかっ てしまうと、どうしても現実的には生活保護費を予定してしまいます。生活保護の収入 が自分の生活の予定に入ってしまって、本人がつい予定してしまうものです。そういう 弱さというものを我々はいろんなケースで体験していますが、やはり大事なことは、そ こから抜け出て、可能な限り自分の力で生きていくことだと思います。脱却できるなら 脱却していく。自分で働けるときには働いていく。自分の稼働能力を十分生かしてい く。こうしないと、生活保護に入る、入らないということについて、どうしても生活保 護制度にまつわる一種のトラウマと言いますか、生活保護に対する心の傷のようなもの が、何となく社会にできてしまう。そのようなことをしばしば感じるものですから、で きるならば、私は活用できるものは十分活用して自立した生活をする。そのときには現 金もあるだろうし、稼働能力もありますが、自立をどこまでも目指すという意味で私は 言ったつもりです。私は3カ月でいいのか、2カ月でいいのか、それはよくわかりませ んが、そういう趣旨です。 (布川委員)  同じような議論をこの間、何度かしてきて、そのために深まって、なるほどと思う意 見が出るのと、やっぱりただ繰り返しになっていると感じることとがあります。それは 入り口を広げるということに対して、ではちゃんと出やすい制度にできるのかどうかと いう、実はそっちの議論をちゃんとしないといけないまま残っているからだと思いま す。自立支援の在り方についての議論が、まだそんなに固まってないという気がするも のですから、入り口の問題と、自立支援としてどうするのかというのは分けて、ちゃん と時間をとっていただいた方が議論が進むのではないかと思います。 (岩田委員長)  ありがとうございました。八田委員、どうぞ。 (八田委員)  二つ問題がありまして、入口の預貯金の保有をどれほど認めるかということと、その 後どれだけ貯金していいかということがあると思います。  後者について、自立支援や先ほど石橋委員がおっしゃったことも、生活保護に入った 後に関係していると思います。一たん生活保護に入ったら、何カ月の貯金を持っていい かという基準は、私は無制限でいいと思うのです。制限は全く要らない。貯金というの は、基本的には、今できるだけ倹約して、その分後で使えるようにしようということで すから、例えば何らかの形で子供にに技術を持たせる、教育をさせようと思ったら、大 変な倹約をしてお金を貯めて、子供に学校に行かせるということはあっても全然おかし くないと思います。  前者の入口をどうするかということなのですが、基本的には大川委員がおっしゃった ように、「とにかく0.5カ月にしないと生活保護は受けられない。今は、あなたは貯金 を持ちすぎだよ。」と言うことによって、すぐ使うことを奨励する結果になるのは、全 くそのとおりだと思います。要するに制度が間違っているから奨励することになるわけ で、合理的な人はみんなそうする。そこで、私は人間の尊厳がどうのこうのといろいろ な問題はあるかもしれませんが、とにかく貯金をゼロにすればくれて、ゼロにしない限 りくれないというなら、合理的な人であれば、できるだけ急いで使うのが当たり前で す。しかも、それを家具などの形でも持っておけるならば、現金からそちらに変えるの が当然のことだと思うのです。要するに制度がおかしいわけで、そうする人がずっと長 く居続けるということはない。むしろ頭の普通に回転する人は、出るのも恐らく早いだ ろうと思います。  では、0.5カ月がいいのか、3カ月がいいのか。これは例えば松浦委員がおっしゃる ように非常に危惧を持たれている方もいらっしゃるし、それから、恐らく多くの方が内 心感じていらっしゃるのは、むしろ3カ月にした方が、全体的に見たら財政負担が少な くて済むのではないかとお考えの方もいらっしゃると思うのです。徹底的に貧乏してし まうためにかえって負担がかかるので。  そうすると、ここでは私は制度で可能かどうかわかりませんが、京極委員がおっしゃ ったように現場に選択肢を与えるというのはどうでしょうか。自治体に選択肢を与え て、心配な場合には1カ月にし、ある程度これはいけると思ったらば3カ月にする。ま たそういう例の蓄積がだんだん進んできて、そして、そんなに怖いことじゃないなとい うことになったら、それを広げていく。そういう幅を持たせることが、恐らく多くの心 配に応えることになるのではないかと思います。 (岡部委員)  三点申し上げます。  一点目は、入口の論議ですが、私は以前、生活保護の相談の窓口に来られたときのイ ンタビューをとったことがあるのです。面接のところで何回かもう少し自分で生活しな さいと言われて帰されて、一定のお金がなくなった段階で来るというのは、相当精神力 と体力と根気が要る作業で、そういうことを繰り返しながら、生活保護の申請に至って います。これは要するに0.5カ月の基準です。中には、何回か来るうちにもう来なくな ってしまう人もいる。それは何とかやりくりができたのかと言えば、別の手だてをして いる。それは何かといえば、八方手を尽くして、それは消費者金融であるとか、そうい うところでお金を借りる。今度来たときや申請の段階では、もう一定の借金を抱えて来 ている。これでは非常に再建が難しい。心身ともに相当タフでなければ、なかなか入口 のところまでいかないが、ほかの手だて、選択肢があるのかどうか。栃木県の方から御 紹介がありましたが、質的なレベルでもう少し見て、そこのところはどうなのかという ことは、またぜひお聞きしたいと思います。  私自身としては、その調査からわかったのは、0.5カ月という基準は、その方の生活 の再建であるとか、心身の回復であるとか、いろんなレベルからみてなかなか厳しい基 準ではないかなということです。ですから、そこのところはもう少し幅を持つという形 があっていいのではないか。それが私の言いたかった一点です。  先ほどの相談と給付というのは別のレベルで考えていいのではないかという意見につ いては、相談というのは、相談だけではなくて、何らかの手だてがあるから相談に結び つくのではないか。相談と支援というのは結びつける必要があるのではないかと考えま す。  私は、第14回のときにペーパーを出しているのですが、要否判定の基準を二つ持てば いいのではないかと考えています。生活扶助の基準にかかわる基準と、他の扶助にかか わる基準です。もっと端的に言うと、生業扶助は、「そのおそれのある者」も対象に含 んでいます。生活保護の基準のところまでいったときには生活保護の中で考えてもいい のですが、生活扶助のところまで行き着かなくても、もう少し扶助の幅をつけて何か手 だてを講じていく必要があるのではないか。そういう選択肢も考えることができるので はないかなと思っております。これが言いたかったことです。  二点目ですが、私個人としては、生活保護に入ってすぐに出るという方もいらっしゃ れば、実態として生活保護を受け続けるという方もあって当然なことだと思います。雇 用、経済環境によって、就労して生活ができる、経済的に自立するという方もいらっし ゃれば、生活保護を受けながら、自立した地域生活を送ることも可能性としてあるわけ です。今の論議でいくと、「入ったのがいけない」、「入ってそのまま留まったのはい けない」という考え方になりますが、正しくは「出やすい」という形の制度にもしなけ ればいけないし、受けながら生活をするという選択も保障する、という幅を持つという ことを考えていただくのがいいのではないかなと思います。  三点目ですが、自立支援のプログラムをもっと作らないと自立しない人が留まるか ら、入口を狭めていくという議論は、少し消極的な話です。逆に言うと、生活に困窮す る恐れのあるという段階の方も少し入れて、積極的にその人に合ったプログラムを作っ ていく。そういう方向性が、石橋委員がおっしゃったような、自立した主体として考え ていく今の流れとしては、大きくなっているのではないかなと思います。以上です。 (岩田委員長)  ありがとうございました。大分時間も経ってしまいまして、実は論点の整理について も説明していただこうと思っていたのですが、とてもそういうわけにいかなくなりまし た。時間が延びたので安心したという気持ちのもあったのですが。  今ございました、1カ月か、3カ月かという議論については、それを地方自治体の選 択に委ねてはどうかという意見や、要否判定を二段階にするという意見は、大変興味深 い御提案だと思います。八つの扶助は実は別の目的がそれぞれあって、組み合わせて総 体としては最低生活保障ですが、例えば生業扶助などは先行してやれないだろうかとい うことや、あるいは手持ち金はあるがアパートから追い出されそうというときには住宅 扶助だけ支給するとか、あり得るかもしれません。少し複雑な話ですが、それも一つの 考え方かもしれません。そういう非常に興味深い御提案ありましたが、今日はもう時間 がなくなってしまいました。  また、労働能力の活用についても、実は入口とその後というのはほぼ同じ議論が出て まいります。これも大分議論しておりますが、なかなか議論が尽きません。  資産については、単純な制度を考えますと、ミーンズテストに幅があっていいのかと いう気はするのですが、まず今おっしゃったような扶助をばらして考えるというような 考え方があります。また、低所得者対策一緒にやっていくという考え方、つまり福祉事 務所の生活相談の機能として低所得者対策と一体化していくという方法は一つの考え方 かもしれません。  そうなりますと、御意見が出ていますように、一つは自立支援も大分議論はしたもの の、具体的なプログラムについてのきちんとした議論と、それからもう一つは、最初の アプローチにおいて相談もしっかり行うという御提案が事務局の方からあったわけです が、そこで今のような話を少し組み込めるのか、最初のアプローチをどのようにやって いくのかという議論が大事だと思います。  その話の中に、労働能力の活用の件も入れて、布川委員にはいろいろな御提案をいた だきましたが、事務局の方からも具体的に、例えば総合的な判定する場合にどういうふ うな判定が必要か、もしあれば何かひな型のような御提案をしていただきたい。また、 委員の皆様方からも、今の資産のような御提案をいただけますと、大変具体的な議論に なるかと思います。  それで、大変申し訳ございませんが、事務局のおまとめになった論点整理について は、お帰りになってよくご覧いただいて、どうしましょうか、御意見がもしあれば、次 回までの間に事務局に寄せていただく、ということでよろしいですか。それとももしど うしてもここだけとか、短時間に説明がございましたらこの機会にどうぞ。 (事務局)  特に説明はさせていただかなくても結構です。この論点整理については、短時間に委 員の意見を集約してまとめなければいけないというものでは特にないので、各委員から 御意見をいただくという手続をとる必要はないと思いますが、もし何か御意見等あれば 参考にさせていただきたいと思います。  もちろん最終的な報告においては、皆さんの御意見は別途集約をさせていただきたい と思っております。 (岩田委員長)  ありがとうございました。 (布川委員)  起草委員会の関係というのはどういうふうになるのですか。起草委員会は続いて議論 をされていくわけですか。 (岩田委員長)  事務局、起草委員会はどうなるのでしょうか。 (事務局)  当面の間は起草委員会の開催というのは考えておりませんが、また、秋以降に開催を して、起草委員の皆様と御相談したいと考えております。 (松浦委員)  大分意見が違いますから。 (大川委員)  例えば先ほどの資産の問題についても、両論併記するとしても、論点の整理をきちん と何らかの形で出した上で一個一個確認していくべきではないでしょうか。最後の取り まとめで、「いや、こんなことは言ったつもりはない」、「こうではない」と議論をま た蒸し返されても、時間が大変もったいないと思うので、むしろこの間、論点として明 確になったことは積極的に出していただいて、それを意見として集約してはどうでしょ うか。 (松浦委員)  法律の問題、判例の問題、これは大事なことですので、これは事務局、相当詳しいデ ータを出してもらいたいと思います。 (岡田保護課長)  次回御説明しますが、石橋先生のおっしゃった判例は、実際に現に保護を受けている 方が累積金として持っているものを収入認定することが適当かどうかという判決と思い ますので、入口の議論とは少し次元が違うと思います。次回、整理して御説明させてい ただきたいと思います。 (岩田委員長)  もちろん、両論併記というか、両論どころかもっと様々な意見があるかもしれないで すが、ただ、私の感触では、随分と違うように見えますがそうでもないという気もしま す。そうやって丸め込むつもりではありませんが、それは入口の相談全体の議論など、 今のようにステップを踏んでいくという考え方もありますし、地域の事情も勘案してい くというような考え方もあります。自立支援の考え方も、何となく随分話したつもりで すが、具体的なプログラムや財政的な裏付けがはっきりしていませんので、不安になる のは当然だと思います。私たちは言ってしまえばいいわけですが、松浦委員のところ は、それで取り組まなければならないので、御心配になるのは本当にもっともだと思い ます。 (大川委員)  それに関して、先ほど少し言いかけていたことなのですが、もし両論併記という形も 含めてまとめていくのであれば、以前、前半の部分で岩田委員長から論点の整理をペー パーとして出していただきましたが、あのような形で何らかの交通整理的なペーパー を、お忙しい中申し訳ないのですが、委員長又は起草委員会の方から出していただい て、それに対して意見を進めていく方が時間を有効に使えるのではないかと思うので、 それについては御検討をお願いします。 (京極委員)  両論併記ということが最近はやっているのですが、学者の研究会はそれでも構わない と思うのですが、こういう政府の検討会では、これだけ時間をかけていますし、なるべ く一致したところは一致した意見で出すべきです。論点をまず明確にする。一致してい るところは一致させる。どうしても違うところについてのみ「こういう意見もあった」 という形にしないと、何のためにこれを何カ月間も議論してきたかわからなくなりま す。  安直なやり方でよく両論併記して大体だめになってしまうことが多いので、それはぜ ひ避けていただきたい。その点は起草委員にぜひ思い切って頑張っていただきたいと思 います。 (岩田委員長)  それは本当にそうだと思います。せっかくここまで議論しましたので、一つでも二つ でも、実質的に意味のある改革ができるような形でまとめていきたいと思います。一回 で全部がよくなるということはないと思いますし、少しずつ変えていくしかないと思い ますが。 (八田委員)  それにしても、松浦委員のように予算を制限された中で考えたいという考え方と、予 算は結構いくらでも出していいという考え方があって、この場合はこう、この場合はこ うとならざるを得ないのではないでしょうか。 (岩田委員長)  そうですね。両論併記といっても書き方が大事です。 (八田委員)  そう思います。 (岩田委員長)  そうですね。松浦委員いかがですか。予算をいっぱいくればいいですか。 (松浦委員)  その細工はありますから。 (岩田委員長)  ありがとうございました。また、起草委員のお二人とも御相談しまして、事務局とも よく相談して少し論点もまとめながら進めたいと思います。しかし、まず9月ごろに多 分行うことになる委員会では、今日の続きと言いますか、特に自立支援と最初のフロー 値の相談、その話とからめて労働能力の活用について議論する、ということでよろしい でしょうか。  どうも長時間ありがとうございました。大変有意義な議論をしていただいたと思いま す。それでは、暑い夏ですが、8月は十分にお休みいただいて、9月にさわやかな頭で いいアイディアが出て、いい制度になっていくような議論をさらに積み上げていきたい と思います。どうもありがとうございました。 (照会先) 社会・援護局 保護課 企画法令係       電話 03-5253-1111(内線2827)