04/06/23 第10回社会保障審議会福祉部会議事録 第10回福祉部会議事録 1 日時:平成16年6月23日(水)15:03~17:00 2 場所:中央合同庁舎第5号館専用第21会議室 3 出席委員: 岩田部会長、浅野委員、大石委員、小島委員、京極委員、佐々木委員、 高岡委員、新津委員、福田委員、堀田委員、松浦委員、松尾委員 欠席委員: 佐口委員、高原委員(松井氏代理出席)、中村委員、村田委員 4 議事 (1)岩田部会長による開会あいさつ (2)事務局による出席状況、資料確認 (3)事務局による資料の説明 (4)審議 5 審議の概要 (京極委員) ○ 第三者評価に関しては非常によくできているし、世間的にも納得できるものだと思 うが、職員の有資格者の配置がどうなっているかというのは基準の中に入っていない ように見受けられるがどうか。 (福祉人材確保対策室長) ○ 基準自体には入っていない。有資格者の配置状況は評価項目というよりは事実関係 であるので、施設の概況について事実問題としてどのような開示をしていくかという 問題。 (松井氏) ○ 病院の評価ではそれなりの費用を病院側が負担して行っているが、社会福祉法人に おける第三者評価機関の整備状況について、具体的に今どのくらい動こうとしている のか。更にその認定等を行ったときにだれがどういった形で費用負担をするのか。 (福祉人材確保対策室長) ○ 現在の状況を申しますと、東京都はその評価機関も多く100機関くらいあるが、他 府県では1つ2つくらいである。導入促進という意味で若干モデル事業的な補助を各 県あるいは国ベースでも行っているが、評価費用は、措置費や運営費の中から自前で 負担してもらうというのが基本的な考え方。実際の費用負担は、大体30万から40万 円。 (高岡委員) ○ 理事の構成について、措置の時代は施設を経営・管理するためにどういう理事会構 成がいいかということで地域の住民代表を入れた経営と離れた組織体だった。それが 契約になり事業経営の責任の中心が理事会とされたときに、施設の職員は3分の1を 超えてはいけないとする理由が非常に弱くなった。それよりも、経営感覚のある人を 積極的に入れ、法人の主体性に任せるということで十分ではないか。経営の最終責任 を取る組織体だということを考えていただきたい。 ○ 社会福祉法人の実践事例を発表していただいたが、これに類するようなことは各地 域・法人で相当やっている。法人や施設によっては、内容が小さいかもしれないが地 域にとって相当貢献していると理解している。そういう中で、社会福祉法人の努力義 務規定を明記するという内容がわからない。社会福祉法人はいろいろな地域福祉に関 することを推進しなければならないという規定がすでにある中で、改めて規定すると いうことが理解できない。それよりも、措置の時代には措置費の規制が非常に厳し く、目的外使用はだめだという規制が手かせ、足かせになっていたという実態があ る。社会福祉法人を経営する者としては、公益事業にも積極的に事業展開できるとい うところへ早く切り換えていただければ、実践事例ももっと出てくると思う。 ○ それから、評議員会は諮問機関だということが明記されているが、実態を見ると理 事会と評議員会の議決事項が同じであるため議決機関になっている。評議員会を諮問 機関として機能させるためには地域住民や利用者の家族を入れても、経営そのものに は大きな影響はない。経営の将来に対して意見を受けるという意味で、諮問機関であ るということをもっと明確にしていただきたい。学校法人の場合は「意見を聞く」と なっているが、社会福祉法人の場合は「同意を得る」ということになっているため審 議項目も同じ。その辺を整理していただきたい。 (総務課長) ○ 努力義務という書き方だが、公益事業を積極的にやれるような形にするための一つ の提案として出させていただいたものである。社会福祉法第26条の書き方が、支障の ない限りできるという書き方になっており、むしろそれを積極的にできるような規定 の書き方にした方がいい。社会福祉事業をきちんとやるのがメインだが、それに支障 がない限りやるというより、もっと前向きな形での規定の書き方というのはないのか ということで、一つの提案として努力義務として言わせていただいている。 (高岡委員) ○ そういう意味ではよく理解できます。 (松尾委員) ○ もともと社会福祉法人には評議員制度は必置義務ではなく、土地建物等の寄付を受 ける場合の税制上の恩典を受ける場合の条件として創設し、この税制上の恩典を受け る場合のみ評議員会を置くこととしていたのが、法人をめぐる不祥事が起こって評議 員会が必置義務のように移行してきたのだと理解している。もしこれから情報開示、 苦情処理、第三者評価あるいは外部監査等をきっちりしていくということであれば、 評議員会の議決が必要かどうかということを是非議論してもらいたい。 ○ 地域福祉に取り組む場合、財源は剰余金か寄附金しかないので、剰余金をどういう 形に使うのか。それから、地域福祉を展開する場合の共同募金との連携の整理をしな いと、制度として取り組めと言っても社会福祉法人ではなかなかできない。財源とし てどう対応していくかということも是非議論して決めていただければと思う。 (京極委員) ○ 松尾委員の御意見はしかるべきだと思うが、以前の不祥事を境にして当時の厚生省 が、理事会にも地域の代表を入れるとして、時代から言うと逆行した動きで、理事会 が経営責任を負って対処するということをやや薄めてしまった経緯がある。だから、 理事会として学校法人と同じようにしっかり経営主体という明確さをもう少し持つべ きで、むしろそのときに議論されたのは、評議員会にこそ住民の代表とか、そういう ものを入れて見守る体制にしたらどうかという意見もあった。 ○ ところが、あのときの議論は逆で、理事会の方にどんどん入れてしまった。評議員 会と同じようなものが2つできてしまい、理事会中心にして評議員会をなくしていく のか、それとも、理事会をもう少し現場サイドに、評議員の方をもう少し地域福祉の 推進のことを考えたときに幅広く人を入れてやるか。選択肢があると思う。 (岩田部会長) ○ 今、評議員会、理事会の関係の議論が進んでいるが、理事会と理事長の責任をどう 分担していくかということもある。中間的な形としては、執行する部分と、その周辺 にある決定する理事会との関係となるかもしれない。大学などの場合でも理事会と常 任理事会というような関係がある。それから、第三者評価のような形でいわば第三者 が関わるということと、評議員会や理事会の中に第三者が入ってくるというやり方が 幾つか錯綜して出ているわけだが、その辺はもう少し整理が必要かと思う。 (堀田委員) ○ 措置時代の福祉というのは社会的弱者を公金で世話をするということだったが、そ の後、介護保険法ができてその意味が全く変わってしまい、すべての人について生活 を保障する体制をつくるという方向に移った。したがって、社会福祉法人の福祉の意 味を考えるには、「新しい尊厳、個人の尊重を実現する理念を実現するために、どの ような役割を社会福祉法人が果たすべきであるか」という問題提起をし、それに対応 した答えを探るべき。そこが、変えていくべき最も基本的な点である。 ○ 社会福祉法人が個人の尊厳という高度な理念を実現するためにはネットワークを組 むことが極めて重要不可欠の要素になってくる。したがって、社会福祉法人は医療、 保健にとどまらず、多くの尊厳を実現するための社会資源とネットワークをつくり、 それをリードしていくという役割がうたわれなければならない。社会福祉法第5条に そういう方向が出ているが、これは非常にいい理念であり、もう少し進めて、ネット ワークをつくるについて指導的な役割を果たすことを重要な役割としてうたうことが いいのではないか。 ○ そして、社会福祉法人のもう一つの特徴は、弱者に対するセーフティネットワーク の役割を果たすこと。これは従来からの役割が消えるわけではないので、極めて大き なニーズとしてある。つまり、ネットワークをつくってすべての人の尊厳をつくる仕 組みをつくりながら、その中で他のサービスによって救われない人については社会福 祉法人がしっかりセーフティネットとして引き受ける。そこがNPO等と違う社会福 祉法人の特徴であるので、そのセーフティネットになるという役割をきちんと果たせ ば、やはりネットワークをつくるについても非常にリードできる積極的な役割を果た せる。 ○ 理事会が執行機関で評議員会が諮問機関であるというような整理は当初から法律の 予定しているところであり、またそれは適切な整理であると思うが、実態はそういう 役割はほとんど果たしていない。NPOの理事会等を見ると大変議論が活発だが、公 益法人、社会福祉法人を見ると、皆、黙って座っていて、提案されて拍手をして終わ り、予定した役割を果たしていない。第三者も黙っているような人を入れるから黙っ ている。任命のところも、やはりどんどん言ってくれそうな第三者を選ぶということ が理事会についてもある程度必要。ただ、第三者は平素、執行に関係していないの で、そのときの事業計画とか報告を受けても、それは本当に適正かどうかわからな い。それで発言しろというのは無理な話。だから、営利法人も含めて理事会も社外監 査役も余り機能を果たしていない。任命のところで若干の工夫をするということはい いと思うが、これもわずかな改善効果しかもたらさないだろう。 ○ 方法の1つはしっかり責任を問うこと。不祥事があって被害が生じたら、非営利法 人についても株式会社と同じように代表訴訟を起こして連帯責任で、損害賠償を取る という形にすれば、これは大変なことだからしっかり勉強して発言するようになる。 しかし、そこまで踏み切っても、実態として執行に関与していない理事についてどれ だけのことが言えるかということは非常に疑問。何が大事かというと、情報公開によ る関係者の意見、場合によっては告発、それから従業員の組合、あるいは労働組合等 による告発、意見具申、この辺りが一番実態を見て、まずい兆候があれば意見が出や すいところであり、管理体制にそれらが反映されるようにすることが実態的には重要 なこと。 (高岡委員) ○ 今までの社会福祉法人というのは寄附金で成り立っていて、例えば施設整備をする と4分の1から3分の1くらい寄附をしないと施設が立ち上がれないというような非 常に厳しい状況の中で、企業としての主体性、自立性ができていないという現実もあ る。これは社会福祉法人自身も責任があるとしても、国の制度の中でその方向に進ん でいたので、そういう状況が変われば徐々に変わっていくだろうと思う。そういう中 においては、社会福祉法人の淘汰も想定した制度もこれから検討しておかないといけ ない。 (松浦委員) ○ 私の市長在任期間十数年中に私の市にできた社会福祉法人というのは、不特定多数 が寄附した施設はない。社会福祉法人の設立は限られた個人や医者が多いが、実態は 施設建築費の半分以上出さないと、老人福祉施設は許可が出ない。 ○ そういう実態が背景にあるので、理想的にはこれからの社会福祉法人の在り方は特 定の個人の寄付者に振り回されるというようなことではなく、多数の意見が入ってい けばいいが、一度にやると摩擦ができるのではないか。 (岩田部会長) ○ いろいろな事業をやるために社会福祉法人にお願いしてやってきたというような経 緯もあると聞いている。 (松浦委員) ○ 事業意欲のある人がおらず、官でやると赤字の種になるので、民間に活躍していた だくということで、私自身も官よりも民の方がいいのだという形で、御支援もしたこ ともある。改革はスピードを早めずに少しずつやっていくのがいい。 (大石委員) ○ 基本的に、今日挙げられている課題とその方向性に関して私自身としては異議がな く、これはどんどん進めたらいい。ただ、これをやっただけでは必要条件は満たす が、まだ十分条件ではなく、そこの落差をどう埋めるのかという話が残る。社会福祉 法人に今後担っていただきたいということで拡大しようとしているサービスに関して も、今まで基本はやってはいけないという話を、やってくださいということに変える だけでは、十分な速度を持って今後サービスニーズが満たされるような状況というの はでき上がらないと思う。その背景としては財源の問題もあり、人的資源の問題もあ り、そもそも意識の問題もある。そうだとすると、実現できるまでのステップを具体 的にどう手伝っていくのか、もしくはどう実現させていくのか。 ○ もう一つ、主体として社会福祉法人の話をしているので、社会福祉法人のあるべき 姿の延長上の話になっているが、NPO法人であるとか、民間企業であるとか、似た ようなサービスを担い得るような可能性のある主体というのをどう活用するのかとい うことも合わせて話をしていかないと、ニーズの大きなギャップというのはある程度 のスピード感を持って埋まらないのではないか。 ○ もう一つ、第三者評価について、医療機関のベンチマーキング調査をやっている関 係でコメントさせていただくと、第三者評価のガイドラインとして至極もっともなも のが挙げられている。ただ、そこから先、評価する人たちも違う中で、統一した客観 的な評価ができるような仕組みをどうするか。また、その結果を見た人たちが、これ はレベル1なのか、レベル3なのかということがはっきりわかるような仕組みをつく ることが、実際の運用上かなり重要。ベンチマーキングみたいな数値的な評価をする と、かなり客観性を持つ。 ○ もう一つ、ここに出てくるいろいろな定性的な評価項目というのはかなり数値化し にくいものなので、具体的に何をもってレベル1と言っているのか、レベル2だと何 が違うのか、レベル5だったらここまでできているというのは具体的に何なのかとい うことを全部書き出し、その中で丸付けをしていくような感じで、あるべき姿と、ど の段階であるのかということを皆、共通の認識にしないと、やる方も、受ける方も、 それを見て選ぶ方も評価を理解できるような仕組みをつくっていかなくてはいけな い。そういう話も含めて合わせてどこかで議論をしていただけるとありがたい。 (松浦委員) ○ 措置費の転用についてはある程度厳しい制限をつけておかないと、借金の返済に回 すということも十分あり得るので、やはり一つの原則は守っていかなければいけな い。 ○ 生存権の保障から個人の尊厳への転換というのは理念的に相当違う。一番気になる のは、支援費が持っている青天井的な性格。生存権の保障となると全体の立場から制 限できるが、個人の尊厳という問題になると非常に悩ましい。地方ではガイドライン でもないとかなり難しい問題になってくる。 (岩田部会長) ○ それは、公的責任の範囲という非常に根本的な問題。社会福祉法人の存在意義をめ ぐっては社会福祉をどうとらえるかが基本になければならず、それが個人の尊厳へと いう理念レベルだけでとらえられるかという松浦委員の御指摘になる。 ○ 社会福祉法人は従来経済的基盤としての裏付けが必要なためその範囲内でやってい たが、積極的に公益事業をやれというときにその裏付けはどうするか。それを何とか していくのが存在理由だという考え方もないわけではないがその辺りの整理が必要。 (京極委員) ○ 福祉以外の方から見て社会福祉法人は、競争相手にもなるし、協力するような役割 もある。福祉の中だけで見直していると甘く見直してしまうので、経済界の方、労働 組合の方、NPO法人の方にいろいろ伺いたいと思う。 (高岡委員) ○ 施設経営の実態を見ると、Aという保育所は人件費が足りず、Bという保育所は事 業費が足りないということがあっても弾力的な運用ができない。その他にも厚労省の 縦割行政がそのまま会計に生きているので、児童の問題と高齢者の問題等を社会福祉 という視点から見て展開していく方がいい。そのように活性化・弾力化してもらうこ とによって、今持っているそれぞれの役割がもっと積極的に発揮できると思う。 (松浦委員) ○ 1つの社会福祉法人の中で、保育所と老健施設とを持っていて、片方がどうも経営 が思わしくないとしたら、もう片方が順調だからそちらから回すということか。 (高岡委員) ○ それは老人の方からは回せるが、保育の方からは回してはだめ。老人同士では回し てもいいが、保育所同士ではそういう人件費だとかいろいろな事務費の統合運用はだ めとか、積極的にやりたくてもやれない仕組みがたくさんある。 ○ 社会福祉法人の会計には社会福祉事業会計と公益事業会計と収益事業会計がある が、社会福祉事業だけでも自由にお金を使うことにして、法人の規模だとか、いろい ろな主体性を発揮できるようにしてほしいというのが差し当たっての要望。社会福祉 事業のお金が公益事業に回ることで何がマイナスなのかということを考えれば、国民 から見たらその方がいいわけなので、先ほど事務局がそういう方向に向かっていくと 言っていたので、それは期待しています。ただ、収益事業に社会福祉事業のお金が回 っていくことについてはハードルがあっても当然だと受け止めている。 (松浦委員) ○ AからBに回してもいいけれども、BからAに回したらだめだとか、あるいはBか らCにはだめだというのはどういう理念に基づいてされておるのか聞かせてほしい。 (高岡委員) ○ 保育所とデイサービスセンターはよくやるが、一つの敷地でやっていてもそのお金 は片方から片方には回せない。 (福祉基盤課長) ○ 整理して次回回答いたします。 (福田委員) ○ そもそも公益法人なのに公益性をここで追求するというのはどういうことか。もう 一段の何か公益性を追求するということなのか。問題はいろいろな社会福祉事業をや るにおいて、ネックになっているのは何なのかということをしっかりと押さえた上 で、どうやったらいいのかを議論しないと堂々巡りしてしまう。 ○ 具体的な運営の話では、理事会はある程度明快にした方がいい。寄附者が限られて いるので、理事会は同族で固めるというのが今までの例。そういったところで不祥事 が起きやすいので、しっかり縛りをつけて、理事会が健全に運営されるようにすべ き。 ○ 理事会と評議員会を一緒にやっているところもあるので、役割をしっかりと見直 し、諮問機関ならば諮問機関らしくしないと、同じ案件を議決をするという形になる ので、ここは整理をした方がいい。 (松浦委員) ○ ノーマライゼーションという理念は意外に浸透していないので、社会福祉法人がそ の浸透させていく役割を担うべき。こういうことにお金を使いたいということがあれ ば、それは応援するような体制をつくるべき。 (堀田委員) ○ 目指すところが個人の尊厳であるとしても、生存権の保障という役割は決して消え るわけではない。そこについては従来の仕組みがある。ただそれだけで役割を終える べきはなく、医療等とネットワークを組んで、もう一段上の利用者の満足を求めるべ き。 ○ 一般公益法人と違って社会福祉法人はもう一段高い税制上の優遇措置が認められて いるので、やはり一般公益法人よりは当然高い内容にしないと、それだけの優遇措置 を求める根拠がなくなる。 (新津委員) ○ 私はNPO法人をやっているが、社会福祉法人が中心になってさまざまネットワー クを組むというのは実感がない。社会福祉法人は不自由で動きづらく、むしろNPO の方が思いを持って集まり、理事会、運営委員会等もディスカッションしながら進め ていくので、むしろNPOの方から働きかけた方がいいという気もする。 ○ 介護福祉士試験の在り方に関する検討委員会の報告の中で資格取得の方法と介護福 祉士の位置付けの明確化という提言をされているが、基本的にいい方向だと思ってい るので、この検討あるいはその明確化についての今後の予定等があれば伺いたい。 (小島委員) ○ 連合が介護3施設を中心に行ったアンケート調査の結果で気になるのは、これから の高度な福祉は個人の尊厳を尊重するという点では、利用者の個人の尊厳を重視する ということとは逆行しているか、きちんと理解されていないという結果が出ている。 利用者に対する扱いの問題については詳しい分析をしているが、各施設の中で社会福 祉法が想定している高いレベルまで職員あるいは施設が到達していないのが現状。そ の辺に社会福祉法人の公益性の問題がある。働いている側の立場からいうと、働いて いる意識の問題と、当然労働条件の問題、それから社会福祉法人の経営・運営の問題 に関わってくる。そういう意味で、社会福祉事業を担う組織として本当にふさわしい かどうか、そこの公益性が問われている。その問題でこれからの福祉の一つの柱とし て地域福祉をどう担っていくか、どこが担うか。今までの議論の中では地域福祉をこ れから社会福祉法人も積極的に担うべきだという議論であり、それだけ地域のネット ワーク化などに社会福祉法人が積極的に出ていくという状況にあるかということが問 われている。そこのところはもう一度社会福祉事業の公益性、公共性と、それの経営 主体という関係が今まさに問われているのではないか。そういう意味では、今まで議 論されているような地域福祉を担っていくことについて私どもは当然だろうと思って おり、果たしてそれを担うだけの経営管理も含めた主体が今、携わっているのかと思 っている。 (浅野委員) ○ 株式会社も、法人の経営という面からして社会福祉法人と同じ。評議員会が諮問機 関という話があったが、法人の経営において必要なのは執行と監督。つまり、だれが 選手として野球をするのかということ。基本的には選手は選手同士競い合ってそこで ゲームをつくり、だれが見てもボールかストライクといったことがきちんと判定でき るというところが法人の中の経営において大切。 ○ それを担保するときに大切なのが、特に内部の人に対しての情報の開示だと思う。 私どもも、取締役会等の会議をするが、即日において議事録をつくってそれをメンバ ーに返して、それを発表する。だから、当然おかしいといったことは広がる。それに より、自分たちがやるべき仕事がもっと明確になっていくと思うので、その辺の設計 をした方がいい。 ○ 事業者間のネットワークを社会福祉法人中心にというのは少し疑問。そうあってほ しいが、株式会社においても事業者間のネットワークができず、組織としてできなか ったら個人同士がやっている。改めて必要なことは事業者間の問題ではなく、利用者 及びその家族にとってのコンタクトのしやすさになっていくかどうかが大切。 ○ 最終的に社会福祉法人の存在意義、機能を設計する上で、利用者の経済的な問題、 困窮度の問題、それぞれに応じてどういうフォーメーションをとっていったらいいの か整理をしていかないと、事業者側から整理をしていくとどうしても事業者の論理で の落ち着きどころになってしまう。 (松井氏) ○ まず基本的に通知行政はやめていただきたい。それをするならば必要性について十 分関係者の合意を得た形でやっていただくということが筋である。 ○ 社会福祉法人の果たす役割、規模はそれぞれ地域によって相当違っている。理事の 定数を増やすというのは、かえって今の世の中に逆行し、必要のない管理運営体制ま で求めていくことにならないか。 ○ 理事会と評議員会の役割運営を明確化するのは賛成。評議員会は、第三者評価がよ り適切に行われるような仕組みが設けられるのであれば、なくてもよいのではない か。第三者評価の仕組みがなければ情報公開等何かほかに担保し得るものがないと、 周りで幾ら仕組みをつくっても難しい。社会福祉法人の内部で改革を進めていく必要 がある。 (松尾委員) ○ 少し経過を説明させていただくと、戦後、公が社会福祉事業を推進するために民間 に施設緊急整備5か年計画を策定し、社会福祉法人に役割を担っていただいた。その 中で、社会福祉法人は非営利で、剰余金は社会福祉事業以外には使えず、法人を解散 する場合には残余財産も国か他の社会福祉法人に渡すという厳しい条件の中でここま でやってきた。それが今変わりつつあり、社会福祉法人の公益性というものを見直さ なければという議論が始まっている。今までのこの力を考えれば、社会福祉法人が地 域福祉なりに向かっていくエネルギーはあるのではないか。 (岩田部会長) ○ 非常に本質的な問題に関わっていて、簡単な結論を出すのは大変難しいが、これま での議論で論点がクリアになってきた。 ○ 社会福祉法人の存在理由ということで、公益性ということの中身を説明しなければ ならないが、歴史的な事実としての社会福祉法人の存在が片方にあって、もう片方で は社会福祉の理念が非常に大きく変換している時代の中で、それを位置付け直すとい うようなことがある。 ○ 運営管理体制についてはNPOや企業の在り方というのは大変参考になるが、社会 福祉法人とは何かということと、公との関係が今後どうなるかということによって、 お金の問題が非常に変わってくる。そのため、当然決定ということよりも執行という ことが中心になっていく方向になっていくのかどうかという辺りに一つのポイントが ある。 (福祉人材確保対策室長) ○ 資格の取得方法の見直しについては今の段階では時期が決まっているわけではな い。実際に資格取得を統一することになると、養成施設の卒業生に対して実際に受験 していただくための環境整備や実務経験者に対して教育環境を整備するなどの環境整 備の状況を踏まえながら検討していく必要がある。 ○ 介護福祉士の位置付けの明確化については、介護保険を始めとした各種制度の中で の位置付けということになるので各種制度の中で検討される話になるが、こういった 御提言は関係局にも当然お渡ししており、現に介護保険の見直しの中でもサービスの 質の確保という観点で介護福祉士の位置付けについても議論がされているので、こう いった提言も参考にしながら検討がされることを期待したい。 (総務課長) ○ 通知行政でやっているということについて、第三者を多く入れることや租税特別措 置法の適用のために一定のラインがあるということで定めてきたが、それを法律で実 態にあった形に直すということと、経営者の方々の御意見を踏まえて、その実態に合 った形でやろうということが今回の改正の趣旨だと御理解いただきたい。 (岩田部会長) ○ 時間となったので、この内容については事務局に整理していただく。今後の進め方 について事務局より御案内いただきたい。 (総務課長) ○ 今後は、生活保護制度の在り方に関する専門委員会におきまして、現在取りまとめ に向けた議論が進んでおりますので、次回はこの取りまとめについて御議論を賜りた い。また、9月から10月ごろにかけて社会福祉施設職員の退職手当共済制度につい て、そして11月から12月にかけてこれまで御議論いただいたものを全部整理させてい ただきたいとも思っている。 (岩田部会長) ○ 以上で、本日の部会を終了する。 (照会先) 厚生労働省 社会・援護局 総務課 企画法令係 03(5253)1111(内線2815)