04/06/18 社会保障審議会障害者部会(第13回)の議事録             第13回社会保障審議会障害者部会 日時  :平成16年6月18日(金)13:00〜16:40 場所  :経済産業省別館11階 1111号会議室 出席委員:京極部会長、嵐谷委員、安藤委員、江上委員、岡田委員、北岡委員、      新保委員、末安委員、高橋(清)委員、高橋(紘)委員、丹下委員、長尾委員、      妻屋委員、堂本委員、徳川委員、野中委員、広田委員、福島委員、町野委員、      松友委員、小板委員、兒玉明氏、前田保氏、小林文雄氏、松本晶行氏、      大濱眞氏、中西正司氏、藤井克徳氏、小松正泰氏 ○京極部会長  ただいまから第13回社会保障審議会障害者部会を開催させていただきます。委員の皆 様におかれましては、お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。本 日は障害者団体の方々から御意見を伺いたいと思います。4時半ということで長丁場で ございますので、途中で15分の休憩を取りたいと思います。それでは事務局から障害者 団体の方々の御出席者の紹介と委員の交替、及び委員の出欠並びに資料についての御説 明をお願いいたします。 ○間課長補佐  本日御出席をいただいておりますのは、日本身体障害者団体連合会より会長の兒玉明 様でございます。同じく同会の副会長の前田保様でございます。続きまして日本盲人会 連合より総合企画審議会副委員長の小林文雄様です。全日本聾唖連盟より副理事長の松 本晶行様でございます。全国脊髄損傷者連合会より副理事長の大濱眞様でございます。 DPI日本会議より常任委員の中西正司様でございます。日本障害者協議会より常務理 事の藤井克徳様でございます。全日本手をつなぐ育成会より常務理事で、本部会の委員 でもいらっしゃいます松友了様でいらっしゃいます。全国精神障害者家族会連合会より 理事長の小松正泰様でございます。同じく同会の専務理事で、本部会の委員でもいらっ しゃいます江上義盛様でございます。  続きまして委員の交替でございますが、日本知的障害者福祉協会の加藤委員が協会役 員の改選に伴いまして委員を御辞退されました。その後任者といたしまして本日付で社 会保障審議会臨時委員になられました日本知的障害者福祉協会会長の小板孫次様でござ います。  また、委員の出欠状況でございますが、本日は猪俣委員、岡谷委員、亀井委員、君塚 委員、武田委員、永井委員から欠席との御連絡をいただいております。また、高橋清久 委員、高橋紘士委員、堂本委員、広田委員が少し遅れておられるようでございます。  次は傍聴の関係でございますが、多数のご応募をいただいておりまして、会場の都合 もあり、やむなく抽選をさせていただいておりますことを御報告を申し上げます。  続きまして資料の御確認をお願いいたします。お手元に配布させていただいておりま す資料ですが、資料1としまして論点整理、資料2としまして前回までの議事概要、そ して資料3としまして日本身体障害者団体連合会からの提出された資料と題された資料 があろうかと思います。そしてあとは印刷の関係で枝番になっておりますが、資料3の 2としまして日本盲人会連合からの提出資料と題された資料がございます。  続きまして資料4としまして、全日本聾唖連盟からの提出資料がございます。それか ら資料5としまして日本脊髄損傷者連合会からの提出資料というものがあろうかと思い ます。そして追加で同じく全国脊髄損傷者連合会の大濱様より資料番号のないものが配 布されております。  そして資料6としましてDPI日本会議からの提出資料というやや厚手の資料が御用 意させていただいているかと思います。そしてDPI資料と書かれた別刷のものがござ います。さらに今しがた追加的な資料を机の上に御用意させていただいたところでござ います。3種類あろうかと思います。  そして資料7として日本障害者協議会からの提出資料というものを御用意させていた だいております。そして資料8としまして全日本手をつなぐ育成会からの提出資料があ ろうかと思います。そしてこちらにつきましても追加的な資料を2枚ほどお配りをさせ ていただいております。そして資料9として全国精神障害者家族会連合会からの提出資 料というものを御用意させていただいているところです。  あとは2種類ですが、資料番号はついておりませんが、本日新保委員から御提出をい ただいている資料がございます。そして最後に1枚紙ですが、全国市長会と町村会から 緊急の申し入れということでございまして、介護保険の保険者である市町村長の意見を 十分尊重するようにという趣旨の申し入れの資料を1枚お配りさせていただいていると ころでございます。  そして最後に前々回の議事録を委員の皆様の机の上には御用意させていただいており ます。御発言内容に誤り等がございましたらば7月2日(金)までに事務局までお知ら せいただきたいと存じます。また、資料の不足がございましたら御指摘をいただきたい と存じます。以上でございます。 ○京極部会長  それでは議事に入ります。今回は前々回の最後に御相談いたしましたように、今後の 進め方に従いまして障害者団体からのヒアリングを行ないます。本日は御発表の後15分 ほど休憩を挟みたいと思います。3時5分をメドにしております。質疑については休憩 後あわせて一括して行ないたいと思います。御発表時間ですが、皆様方思いはたくさん あると思いますので、1時間ぐらい差し上げたいところですが、時間の都合で15分以内 にお願いいたします。  それではまず日本身体障害者団体連合会の兒玉様と前田様に御意見を発表していただ きます。よろしくお願いいたします。 ○兒玉氏  私は日本身体障害者団体連合会会長の兒玉でございます。介護制度問題に係る内部検 討委員会というのを私ども日本身体障害者団体連合会内部におきましてたち上げまし た。4月24日から5回ほどやりまして、結論を得たわけでございます。本日はその委員 長が来ておりますので、委員長より累次報告をさせていただきます。 ○前田氏  日本身体障害者団体連合会の副会長の前田でございます。ただいま会長の方からお話 がありましたように、私ども連合会の中に検討委員会を設けましてこれまで議論してま いりました。その内容について今日報告をしたいと思います。なお、これから発言する 内容については、6月11日の理事会で組織判断をした見解であるということを冒頭に申 し上げておきたいと思います。  私たち日身連は、我が国を代表する障害者団体として障害者の自立と社会参加を求め て長年にわたり活動を行ない、関係者の理解と協力を得ながら、ノーマライゼーション の実現に向けて前進してきました。  とりわけ「完全参加と平等」を謳った1981年の国際障害者年を契機として、障害者が その障害の種類や程度に関わらず、地域で当たり前に暮らす「地域生活支援」の実現を 中心的な課題として取り組み進めてきたところでございます。  この方針は、いかなる社会経済状況であろうとも、変わらず堅持されなければならな い。そして、理想を高く掲げると同時に、社会の一員として多くの国民の理解と共感を 得る努力と、障害者が将来にわたって安心して地域での生活が送れるよう現実的な取り 組みが必要であると考えております。  現在、支援費制度の介護保険制度への統合問題が論議されているが、障害者を取りま く現状を考えた場合、地域生活支援を進める観点からは、障害者福祉サービスの提供に ついて、平成16年6月4日に社会保障審議会・障害者部会の3臨時委員名で提示された 『障害者福祉を確実・安定的に支えていくために 〜支援費制度と介護保険制度をめぐ る論点の整理と対応の方向性(以下「中間報告原案」という)』にある、介護保険制度 を活用する新しい障害者施策体系の案は現実的な選択肢の一つであるとも考えられま す。  しかしながら、この場合において日身連としては、平成16年5月26日に開催した第49 回日本身体障害者福祉大会で採択した「支援費制度を現状の介護保険制度に統合するこ とについては、障害者の生活と福祉の後退を招く恐れがあるため、強く反対する。」と いう緊急決議の基本方針が示すとおり、現行の支援費制度による障害者一人一人のサー ビス水準については、高めることがあっても、低下させることは認められない。また、 「中間報告原案」が示す通り、統合には解決されなければならない多くの課題がありま す。今後、日身連とこの課題の解決のための新たな協議をしていくことを、国をはじめ とする関係機関に対して強く要請する必要がある。  また、日身連としても地域社会に対して、障害者の地域生活支援と全ての市民が安心 して生活できる地域社会の構築について、一層の理解と協力が得られるよう、引き続き 力強くかつ粘り強く働きかけていくものであります。  以上が一応理事会でまとめた見解ということでございますが、少し補足をさせていた だきます。今申し上げましたこの8行目の理想を高く掲げるというところと、それから 10行目の現実的な取り組み、これについてはやはり私ども障害者として理想に掲げるい くつかの課題があるわけでありますが、その中でも特に現時点での取り組みをしなけれ ばならない大きな問題があると考えております。  そして下から6行目から7行目にかけて、臨時3委員の方々から出された中間報告原 案があります。ここで示している通り、統合には解決されなければならない多くの課題 がありますということでございまして、私どもはそのいくつかを実はあげております。 10点ほどあります。  一つはサービスの水準、現行の支援費制度による障害者一人一人のサービス水準を低 下させないようにすること。  二つ目は地域間格差、サービスの利用状況に関する地域差を縮小し、全国どこでも必 要なサービスを平等に利用できるようにすること。これは介護保険制度が始まった当時 議論になりましたが、ある町ではこうだ、ある町に行ったら違うということのないよう に、全国どこへ行っても同じサービスができるようにということでございます。  三つ目は上限の問題です。長時間のサービスを必要とする障害者にとって、地域生活 を維持できるよう、上乗せ部分をどのような仕組みとするかが重要です。従って国が責 任を持って関与し、安定した制度となるようにすることということで、特に必要とする 障害者ということは、特に重度障害者を指して言っております。  それから利用者負担についてでありますが、多くの障害者にとって保険料、医療時の 自己負担が大きな負担となるため、十分な低所得者への対応が講じられるようにするこ と、また本人本位の視点から、扶養義務者の負担制度を撤廃すること。これはいろいろ 障害者に対する現在の制度では扶養義務者も負担するということになっておりますが、 例えば労災の場合で例をとりますと、居宅の場合は家族に介護料が引き出されていると いう現実もあるわけでして、そういう面でも含めまして扶養義務者についての負担制度 は撤廃することというふうに考えております。  それから五つ目はアセスメント、要介護認定ですね。多様な障害に対応したアセスメ ントとなるよう、要介護認定のプログラムの内容について検討されるようにすること。  六つ目はケアマネジメント、障害者支援の特徴をふまえた自己決定を尊重したケアマ ネジメントが可能となるようにすること。  七つ目はガイドヘルパーです。視覚障害者のガイドヘルパーは障害者特有のものであ り、保険外の施策として位置づけられるようにすること。  八つ目は身体障害者のグループホームです。24時間のサービスと安心を確保できる一 つの方法として、障害者向けのグループホームを検討すること。  九つ目として、障害者特有の用具ですが、オーダーメードの車椅子等の支給も障害者 特有のものであり、保険外の施策として位置づけられるようにすること。  最後ですが、これら制度設計については日身連との協議、相談の場を設けることとい うことで、冒頭申し上げたことのように、これから一層の理解と協力が得られるよう に、我々は努力はしていきますが、これらの課題についての解決の方法として国とのい ろんな協議を重ねていきたいと考えているところであります。  最後に、臨時委員名で示された中間報告議案について、これについても私ども日身連 としてはいろいろ理事会で議論になりましたが、四点ほど申し上げておきたいと思いま す。一つは、障害者を有する人々が、その自己決定に基づいて必要な福祉サービスを活 用して地域で生活を営むことができるような支援の制度を、良質かつ適切なサービスが 提供できる持続可能な安定した制度として確立することが緊急の課題であるということ が言われております。  次は今後の障害者福祉制度の再構築ということで、全ての障害を有する国民が利用で きる普遍的な制度であると同時に、支援が必要な障害の状態と程度に応じて必要なサー ビスを活用して、地域での生活が可能となるような個別対応も可能となるような制度構 築が重要であります。  三つ目として、全国市長会などから障害者福祉をはじめ、福祉施策の国庫補助金につ いては一般財源化が求められているというふうに3人の方々からまとめられておりま す。これについては先程申し上げたように、どこへ行っても格差がないようにというこ とを言っておりますので、この格差について非常に心配がありますよということでござ いますので、この件については今後十分検討する必要があるだろう。  そして最後に、ケアマネジメントの制度化であります。障害の程度や状況に応じて適 切なサービス利用を促進し、利用者の自己決定を支援するためのケアマネジメントが制 度化されていないということでございまして、この制度については政策課題として制度 導入をぜひやるべきだということを申し上げて私の方からは終りたいと思います。あり がとうございました。 ○京極部会長  ありがとうございました。それでは次は日本盲人会連合より小林様、よろしくお願い 致します。 ○小林氏  御紹介をいただきました日盲連の小林でございます。まず冒頭に申し上げておきたい ことがございますが、今や支援費制度の介護保険への統合の問題についてであります が、5月6月と都道府県レベル、あるいは市レベルで視覚障害者団体の間で総会ないし は福祉大会等で話題にのぼっているわけですが、この支援費制度の問題が何と言っても 最大の関心事ではないかというふうに感じております。どこの団体の決議を見まして も、やはり統合には反対という意見が圧倒的に多いようでございます。  先頃、5月19日から22日にかけまして石川県で行なわれました全国盲人福祉大会の席 上においても、やはり同様のことが言えるというふうに思っております。特に代表者会 議等においては、指導者の皆様が口々に支援費制度の成り行きが非常に不安視されると いうことがもっぱらの御意見でございました。  1年足らずで支援費制度が挫折してしまい、したがって統合の問題が浮上して、今や もう統合の方向にどんどんと傾いているというような状況にあるといってよいかと思う わけですが、措置制度の方がむしろ良かったのではないかというふうな声も多く聞かれ ております。  この支援費制度が始まる時には、様々な福祉サービスを当事者が自由に選択できるん だ、また自己決定の道も開かれるというようなことで、いいことづくめのようなことを 聞かされて始まった制度ですが、ここで破綻をきたしてしまったということを考える時 に、やはり将来に対する不安と、また国の見通しの甘さといいますか、そういうことに 対しての不信感というものはあって当然ではないかというふうに感じております。  統合の問題については、手放しで賛成できるものではないというふうに思っておりま す。1年間支援費制度を行なってくる中でいろいろと矛盾点が浮き彫りになってきてお ります。先程、日身連の代表の方からのお話の中にもありましたが、費用負担の問題、 あるいは地域格差の問題、あるいは1時間あたりの単価の問題等々をどのようにしてク リアしていくのかということは非常に大きな問題だというふうに考えております。  特に費用負担の問題については、統合になった場合にはたしてどういうことになるの かということは誰しもが不安に感じているところではないかというふうに思っておりま す。一部に1割負担では到底やっていけないんだ、2割3割負担ということでなければ 介護保険制度は持ち堪えられないだろうというふうなことをはっきり言っている学識経 験者もおられるように聞いております。  賛成はできませんけれども、仮に統合ということになった場合にあっても、やはり介 護保険制度に馴染むものと馴染まないものとの精査をきちっと行なって、馴染まないも のについては別途やはり方策を講じていく必要があろうかというふうに思っておりま す。特に、私ども視覚障害者にとって最もニードの高いガイドヘルパー派遣の問題につ きましては、やはり介護保険制度下ではなかなか馴染みにくいものがあるというふうに 考えざるを得ません。  そこで最後に御提案を申し上げたいわけですが、先程やはり日身連の方からも御提起 がありましたが、ガイドヘルパーの派遣につきましては、特に視覚障害者のガイドヘル パーの派遣につきましては別途の扱いで行なっていただきたいということを御提案申し 上げたいと思います。すでに聴覚障害者の手話通訳の派遣事業につきましては税額で行 なっているという実績もあるわけですので、決して不可能とは考えられないというふう に考えます。ぜひこの点は強く要望し、提案をさせていただきまして、私からの提起を 終わらせていただきたいと思います。以上です。 ○京極部会長  ありがとうございました。それでは全日本聾唖連盟より松本様、よろしくお願いいた します。 ○松本氏  全日本聾唖連盟の副理事長を努めております松本でございます。よろしくお願いいた します。二つほど御了解いただきたいことがあります。一つは私は手話でお話をさせて いただきますので、通訳を介して音声に変換してもらいます。また、ぜひ私の手話を皆 さんに見ていただきたいという意味で立ってお話しするということを御了解いただきた いと思っております。  私たち全日本聾唖連盟は、この問題に関しまして3月12日、6月10日、定期理事会で 討議いたしました。また、別に4月28、30日に臨時理事会を開催して討議をいたしまし た。6月12日、最終的に夜10時から12時にかけまして2時間半、臨時理事会で最終的に 見解をまとめました。その立場から25人の理事全員の一致した意見をただいまより申し 上げたいと思います。  一つ、支援費制度と介護保険制度の統合の必要性は何なのか、財源の問題が最も大き な理由だと思います。しかし介護保険制度というのは、福祉サービスの内容が不十分で あります。自由な利用ができない現状というものがあるわけです。これは財源以前の問 題であると思います。支援費制度もまた不十分である現状がある。ですから不十分な制 度をまた別の不十分な制度と統合する、そこで新しい解決が生れるとは到底思えませ ん。  ですからまず大切なことは、それぞれの制度が持つ問題をどのように解決していく か、聾唖者が自由に利用できるように制度を改善するためにはどのようにしたらいいの か、その改善の道筋が明らかにならない限り、統合の可否というものは検討ができない のではないかと申し上げざるを得ません。  私ども聾唖者としては最大の問題になりますのは、音声コミュニケーションからの阻 害、また音声情報から獲得はできないということにあります。社会の中で生きていく限 り、自分が伝えたい内容を自由に伝えられる環境、また相手が伝えたいことを自由に正 しく理解できるような、その環境が大切であると思っております。また、様々な社会的 な情報を正しく獲得する、これもまた生きる上での大切な根幹を成すものです。それら は一つの権利ということのみならず、様々な基本的人権の骨幹を成すものである。一人 一人が法的な権利の基盤を成すものである。その根拠であるというふうに考えておりま す。  その立場から申しますと、先程申し上げました通り、介護保険の介護サービス、また 支援費における支援サービス、どちらも聾唖者が自由に利用できるかといいましたら、 現実には自由に利用もできない、自由に決定できない、自由に選択できないという現状 があるということを御認識いただきたいわけです。  高齢者介護について申し上げますと、例外的な地域での例外的な場を別とすれば、聾 唖者が自由にできるサービスというのは、事実上存在し得ないということです。例えば デイサービス一つをとりましても、聾唖者が利用できる限度というのは2、3回までと 言われております。家族に勧められて聾唖者がデイサービスを利用します。その場合、 回りにたくさんの人たちがいます。聞こえる人たちです。自然に自由にコミュニケーシ ョンをしている状況がそこにはあるわけです。しかし自分だけがそこに取り残されてい る。自分だけが孤立を強いられる。聾唖者が非常にそこで淋しい思いをし孤立感を味わ い、二度と行く気持ちが起こらないという状況が起こって来るわけです。もう2回目、 3回目、4回目はもう行きたくないという、そういう拒絶反応も起こって来るというの が現実です。  支援費制度も同様ですが、また別の問題もはらんでおります。支援費制度の対象とな りますのは聞こえないことに加え、さらに別の障害をもっている方々です。コミュニケ ーション方法におきましても、共通するようで異なります。例えば知的障害を持つ聾唖 者の場合には普通の手話とはまた別にコミュニケーション方法が必要になります。支援 者とまた障害者が共同でその人独自のコミュニケーション方法を作り出すという例も珍 しくはありません。また、聾唖者の方が視覚障害というダブルの障害をもった場合に触 手話という特別なコミュニケーション方法が必要になります。これは相手の手に触れて 理解をするというコミュニケーション方法です。ですからここでも新たなコミュニケー ション問題が出てくるということです。  そして私ども聾唖者にとって、このサービスというものは実際に現実的には利用がで きない制度ということで、今まで経過しております。統計的な調査については把握して おりませんが、介護保険制度も支援費制度も聾唖者の利用の割合といいますのは、一般 の方々に比べて極めて低いのではないかと推察されます。これは利用していないという ことではなく、利用ができないという現状にあることを御認識いただきたいわけです。  ですから仮に統合問題を考える場合に、それぞれの制度の問題を明確にし、課題整理 をし、解決の見通しを整理し、そのことがまず前提になってくるだろうと思います。介 護保険の場合、例えば聾唖者のヘルパーの養成、またその聾唖者のヘルパーを事業所と して採用する義務づけ、あるいは利用者集団を形成する場所においては聾唖者専用の自 由なコミュニケーションができる施設、少なくとも十数人以上のグループを形成してい く、その保障というものが必要になります。また職員が手話ができることは無論言うま でもありません。支援費制度の場合、この考えを基本にして、個人個人のニーズを満た す必要があるわけです。  この二つの制度を別にして、また介護サービスの必要としない聾唖者もおります。一 般の聾唖者です。一般の聾唖者に対しましては、介護保険、支援費制度とは別にまたコ ミュニケーション保障、情報保障を目的とした新しい制度を構築する必要があります。 理念的には手話を言語として認めること、具体的に申し上げますと、権利としての手話 通訳保障を法的制度として位置づけ保障すること、またその確立ということになりま す。  主となるのは厚生労働省かと思いますが、しかしやはり各省庁にまたがる関係した問 題でもあります。また、行政分野には限ったことではありません。司法、立法にも関係 する分野にもなります。文字通り生活全般に影響を及ぼす制度であるわけです。  また、受益の対象といいますのは、つまり受益者は聾唖者だけでしょうか。相手の聞 こえない方々、もちろん機関もそうです。私自身は今ここに会議に参加しております。 私は今発言しております。また他の方がおっしゃることも手話通訳を介して理解ができ るわけです。この手話通訳の存在があるからこそコミュニケーションができるわけで す。もし手話通訳者がいなければ、私も社会の中での孤立を余儀なくされ、皆様のお話 も十分理解することはできません。  そしてあえて申し上げますが、この通訳保障の受益するのは私だけでしょうか。ここ に参加しておられる皆様方全てが通訳保障の受益者であると考えます。通訳がいるから 聾唖者も皆様の意見が聞くことができる。また、必要があれば皆様も私に対して質問も できる、また私も答えることができる。まさにこれは皆様方も受益者であると考えま す。  コミュニケーション保障といいますのは一方だけのためではありません。当事者双方 のためにあるものです。そのようなことをきちっと確認した上で、聾唖者のニーズに応 じた自然な自由なコミュニケーション保障、社会的な情報を獲得を保障される必要があ ります。これは基本的人権の根幹をなすものであり、人間全て一人一人の権利の根底に 関わる問題ではないかと思います。  そういう立場から全日本聾唖連盟といたしましては、支援費制度の見直し及び改善、 また、介護保険制度の見直し、改善、そしてまた全ての分野をカバーできる新しい手話 通訳制度の法的制度的な構築ということをぜひ要望申し上げたいと思います。以上で発 言を終わらせていただきます。御静聴ありがとうございました。 ○京極部会長  どうもありがとうございました。それでは引き続いて全国脊髄損傷者連合会より大濱 様、よろしくお願いいたします。 ○大濱氏  全国脊髄損傷者連合会の大濱です。資料5をお願いします。脊髄損傷者連合会はこの 5月に総会を行ないまして、そこでまず四点を決めております。それについて簡単に述 べさせていただきます。  まず第一点としましては、現在、厚生労働省より介護保険と統合された場合の具体的 な内容も盛り込んだ案の提示がない限り、私たちの団体としては判断の材料がありませ ん。したがって現行の支援費制度発足1年を、むしろこの支援費制度を発達させること が重要なのではないかというのが一点目です。  二点目としましては、この制度がまだ3,300の市町村にきちんと浸透していないとい う時期で、これをどうだこうだということはまだ言えないので、やはり3年から5年ぐ らいその猶予期間というか、この制度執行を、内容を検証する期間があるというのが二 点目です。  三点目としては、この制度が発足して間もない、地域に浸透してない時点で、一般財 源化するというのは非常に無理がある。したがって一般財源化には反対であります。  四点目としましては、現在、この支援費制度の一番の欠陥であるというのは、在宅サ ービスが裁量的経費、国庫補助金で負担することができるという項目になっていること でありまして、施設サービスはそれに比べて義務的経費を負担するということになって おります。このような欠陥の在宅サービスについても、施設サービスと同様に義務的経 費、国庫で負担するというようなことにしていただきたいというのを決議しておりま す。  それで今日お配りしました資料Aは大変長いので、15分間の中でこれを説明するとい うのは無理なことがありますので、資料Bのペーパーをご覧いただきたいと思います。 これからはそのペーパーにそってお話をさせていただきたいと思います。この資料Bは 資料Aのリテールの中の主要な部分だけを洗い出したものです。  ここで障害福祉と高齢者福祉について私たちは考えました。まず高齢者福祉というの は、やっぱり要介護度4〜5の人たちがベッドで寝たきりで人生最後のライフステージ である、この人たちはどういうことかというと、家族介護では家族が崩壊してしまうと いうことでありますから、やっぱりレスパイトの意味合いが強い福祉なのではないか。 それと特別なアクシデントがない限り、人間は必ず最終のライフステージというのはあ るわけですね。要するに途中で障害になったりとか、そういうことがない限り必ず高齢 になる、年齢をとるというのは必須のことであります。  それと第三点は、高齢者人口は現在約2,400万人おります。これは総人口1億2,000の 約20%にあたるわけで、それが今後20から30%の割合で加速的に増加するであろうと言 われております。そしてまた高齢者の方を見ますと、現在介護保険の利用者数は約280 万人で、その増加の割合はやはりこの高齢者人口の伸びの割合と同様に比例して増加す るのではないかということで、高齢者を分類しております。  一方、障害者福祉を考えた場合、要介護度5以上の人はやっぱり重度の障害者だと思 うのですが、こういう人たちも普通に自立して社会で生活して生きてこそ価値がある。 このような幅広いライフステージにある人が、その障害の程度が軽度であろうと重度で あろうと、ベッドに寝たきりでなくて、車椅子や場合によってはストレッチャー、そう いうものによってでも外に出よう、社会参加しようというのがやっぱり障害者の視点で はないか。障害者はそれぞれ特有の、場合によっては先天的な遺伝子的な、薬物的な、 物理的なそういうアクシデントによって個別の障害特性を持っていますので、その原因 は高齢者のように必然的ではないと私たちは考えております。  一方、障害者の人口は高齢者の2,400万人に比べて400万から600万で、総人口の約5 %であります。ではこれが今後増大するのかというと、決して増大することはなくて、 むしろ横這いか低下傾向になるでしょうと私たちは推定しております。  一方、支援費の利用者は、高齢者の280万人に比べて32万人であり、やはり地域にあ る程度移行がすんだ段階ではこの増加の割合は横ばいになるであろうというのが私たち の考え方でありまして、高齢者のように将来的にも何十倍にも増大するというようなこ とはないというふうに考えております。  今、こういう委員会の中でよく議論されていますユニバーサル介護という言葉があり ますが、これは大変きれいな言葉です。ただ、このユニバーサル介護というのはどうも 違うのではないか。一つの言葉のごまかしではないかとここでは考えざるを得ない。高 齢者の介護と障害者の介護を一緒くたになって考えるのはちょっと無理がありますとい うことで考えております。  二点目として三位一体の改革、そして一般財源化についてですが、これと裏腹に介護 保険との整合性の問題が出て来るんだろうということで、ここに述べさせていただいて おりますが、三位一体の改革、つまり一般財源化というのは基本的には小さな国家、小 さな政府という考え方でありますから、やっぱりそこには地方分権を確立することであ るというのは言うまでもないことです。  このことは結局各省庁、民間のようにリストラしてスリム化しなさいということを多 分言っているのだろうと思います。そしてそれで各省庁、国の役割とは何だろうという ことを考えた場合、外交とか防衛、それから生命に関わる部分、これについてはやっぱ り国が担保すべきではないかということが、この三位一体の改革の中にもきちんと盛り 込まれていいのではないか。  そしてこの命に関わる部分ということを考えた場合、やはり私たちはこれからこの制 度が20年か30年続くということになりますと、やっぱり介護保険ではかなり如何なもの であろうかということを猶予せざるを得ないというのが現状です。  数日前の報道で社会保険庁の民営化を視野に入れた改革という報道がなされました。 このように厚生労働省の中にある様々な分野にわたって、昨年は労災の関係の保険の民 営化議論が厚労省の中でされました。そして当面は見送りということがなされています が、そうなると今後介護保険も民営化議論の中に入っている可能性が多分にあるわけで すね。その介護保険の中に私たちの制度が、いわゆる2階建てとか横出しとか、別枠と いうことで言われていますが、その制度が本当に2階建ての中でやっていった場合に、 民営化ということには決して障害者の部分は馴染まないということは決定的に言えるわ けで、その時にまたじゃあ障害者施策をどうするということをしますと、これは非常に 無駄な議論になってくる可能性が将来的にあるという、将来の民営化議論にも備えても う一回ここでちゃんと議論していただきたいというのが本当のお願いです。  私たちは障害者団体として、私たちの団体はほとんど地域で生活している当事者が揃 っている団体なんですが、私たちがただお願いしたいことは、地域で障害者がどうやっ たら普通に暮らせるかということだけの一点なわけで、地域で障害者が普通に暮らせる ことであり、障害や難病がどの程度に重度であろうと、一人の人として社会に認めら れ、地域で自立することを支援することこそが国の役割であろう、今求められている公 平とはこういうことではないかというふうに考えています。介護に係る金額の多寡によ って、それが公平とか公平じゃないというのではなくて、いかにして普通に暮らせるか というのが公平の視点ではないかというふうに考えております。このように人権とか生 存権が守られるかどうかであるのが公平の基準、原則であります。  このように考えた場合、つい最近の話ですが、省内予算の流用が認められたにも関わ らず、一部の高福祉の地域を切ったという実績が過去にはあるわけです。これは三大都 市を言っているわけですが、東京、大阪とか札幌において、高福祉の部分を切ってしま ったという、この部分については私たちは非常に残念だと思っております。このような 基本的な役割、これが限界だからわかってくれというのではなくて、昨年の予算不足の 際のように一緒になってお金が足りないから何とかしようようというような姿勢がもっ と厚労省の中に見えなかったのかということは、今でもまだこれが残念でならないとい うのが本音であります。  重度障害者の地域生活ということで私たちが考えた場合、障害者の基本的な視点は、 重度のベンチレーターの使用者たち、たとえばこの資料にあるせいや君ですが、ベンチ レーターをつけた6才の子どもですが、この子はつい最近小学校にあがっております。 例えばこの子たちが将来大きくなって、30才40才になった時に、やっぱり本当にこの改 革で良かったんだというような制度にしたいというのが私たちの思いでありまして、こ この大きな改革の時期に本当に悔いがあるようなことになってはならないというのが基 本的な視点であります。  例えばこのせいや君を普通に社会で生活させようとするためには、1日の介護時間は おそらく30時間とか40時間という時間が必要になってくるのではないか。じゃあそれは そういうことが許されるのかどうか、24時間以上の介護というのは普通のことになるわ けです。そしてこの24時間の介護ということになりますと、社会参加も含めると、やっ ぱりICFなんかも見ましても、普通のケアマネのやり方では無理があるでしょう。ま してやこの部分をボランティアにお願いするということは、命の危険が伴いますので、 これは不可能です。ボランタリーな精神ではこういう部分はできないというふうに考え ていますので、そこで金額の多寡の問題がやっぱり公平の問題ではないだろうというこ とを言いたいと思っております。  私たちいろんな地域に住んでいる人たちからいろんな話を聞いて、資料Aのペーパー をまとめましたが、その中のポイントだけを述べさせていただきましたが、最後にあと は勝手にお前が発言しろうというふうなことも言われておりますので、最後にまとめと してここで発言させていただきます。  最後に、今年は年金、そして来年17年度は介護保険、そしてそのあとは医療保険、消 費税、こういう形で国のスケジュールが淡々と進んでいくことは十分承知しておりま す。障害保健福祉部の部長はじめ、優秀な方々とこの1年間ずっと話をさせていただい ております。私たちはこうやってずっと話をしてきたわけですが、非常に熱意は感じま す。しかし本当に心にこもったものがどうしても伝わって来ない。何回話をしても、ど うしてここで裏切られるんだろうということで、裏切られておるというのははっきり言 って現状にあります。  この場でこのような発言は不適切なのかもしれないが、しかし敢えて言わせていただ ければ、私はこの1年間、ああこの人は本当に一貫して血が通っていると思ったのは、 本当に部局の中ではただ1人だけの人がいますが、この方にも何度もお会いして、ちょ っと今障害福祉部と私たち障害者当事者の団体との間に非常に乖離ができているという のが残念でならない。このままでこういう形が進んでいっちゃうと、非常に悲惨なこと が起こる可能性があるのに、何とかこの辺の心の温もりのある政策をお互いにやりとり をもっとしたいというのが本音であります。  具体的につい最近、要介護認定の調査ということで資料が配られました。それを見て 私たちはびっくりしたわけですが、これが本当だったら厚生労働科学研究費でやられて いるわけですが、やっぱりこの時も前面に出てきているのは介護保険制度本部というこ となのですが、実際は老健局の補佐が説明に来たいと私たちの団体に言ってきました。 だけど本来でしたら、これはきちんと障害福祉部がやるべき仕事ではないか。何でそこ に老健が絡んで来るんだ。障害福祉部主導で何で出来ないんですか。それでまたこの要 介護認定の調査の時、この資料や何かを作るのに何で当事者団体を入れないんだとい う、こういう不思議な構造があって、どうしてもそこらへんに不信感が拭えません。  やっぱり3障害50人ずつ各地域で調べる、知的、精神、身体ということで、各政令指 定都市で調査するということなんですが、その調査表に何で調べる際に障害者当事者が 入った調査表を作らないのか、こういう委員会自体、こういう調査自体、非常に不信感 を招くと思うんですね。こういうことがぜひ今後はないようにしていただきたい。  それが私たちのお願いで、それが障害福祉部のむしろ役割なのではないか。それこそ 障害福祉部がどういうことをちゃんと私たちに伝えたいのか、お互いのメッセージのや りとりというのはそういう中できちんと見えて来るのではないかというふうに考えてお ります。この大きな制度設計の変わり目、これから20年30年先に、障害者達からあの時 の選択は良かった、間違ってなかったと言われる、人として血の通った制度設計をもう 一度再チャレンジしてもらいたいと思っています。本当にこれにもう一度やり直しても らいたい。  はっきり言って障害福祉部に今お願いしたいのはそういうことで、ここらへんは私た ちは非常に疑義の念を感じているということで、やっぱり6.9に障害者がああいう形で 集まったというのは、やっぱりそういうことの抗議の現れが自然に集まって来たのでは ないか、これがこのまま続くともっと大きなことになりかねないという、もっと悲惨な ことになりかねないということを非常に懸念しております。  したがって現段階では厚生労働省、私たち当事者及びその団体との間にはっきり言っ て信頼関係に溝があります。介護保険への障害者福祉の統合について、具体的な内容が 全く不透明な現段階で、障害者施策のみを切り離して考えるべきなのか、統合論でいく べきなのか、全く今判断ができないというのが本音のところでありまして、現段階では 比較的、皆さんどこの段階でもおそらく当事者団体は一緒だと思いますが、はっきり言 ってノーに近いというのが現状なのではないか。  そしてノーをイエスに変え、お互いもっと歩み寄るためには、やっぱりここには信頼 の原則とか、やっぱりお互いの信頼関係をもっときちっともう一回構築しなおす必要が あるというふうに考えております。以上で終わらせていただきます。ありがとうござい ますした。 ○京極部会長  ありがとうございました。それでは次はDPI日本会議より中西様、よろしくお願い します。 ○中西氏  中西です。プロジェクターを使わせていただきます。6月9日に支援費の問題につい て、介護保険統合の問題について、全国の精神・知的・身体・難病、全ての当事者団体 と関連団体が集まりまして、6.9障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動実行 委員会を開催しまして、日比谷公園で行なわれて1200名、480団体が集まりまして、デ モ隊の先頭が厚労省を出発して総務省、財務省を回って帰ってくる時に、ようやく末尾 が出るというようなことで、先頭と末尾がチェーンのようになりました。それだけ大勢 の障害者たちが今地域でこの問題を心配しております。これは声をかけて僅か4日間で 全国から1,200名が集まったということを考えても、非常に大きな反響だったと思いま す。  この集まった障害者たちは一体どういうことを考えているのかということで、次のア ンケート調査を御覧ください。これは2004年3月に行なった最新のものであります。こ この中で介護保険反対、賛成を聞いたわけです。そして介護保険反対が575で、これは 85%、賛成は3%、わからないが10%というふうなことで、障害者の今の不安というの は次のようなことにあります。  介護保険では支給限度額がある、それから保険料や1割の利用負担を払えない、医者 を含めた認定制度で本人のニードが反映されない、2階建て部分が不安だ、国の責任で なく保険で賄うのは根本的な間違いだ、介護保険の財源も将来的に行き詰まる可能性が 高いということがあげられています。私はいまヒアリング資料というDPIの資料6月 18日版というのを使っております。  もう一つ、DPIの分厚い資料がありまして、そちらの方にも今の表が入っておりま す。それでこの高齢者、この2階建て部分に対する不安というのは非常に大きいし、将 来の生活の不安感からやむを得ずみんな出てきたということだと思います。  次に2003年8月に実施された、これは自立生活センター協議会で行なった高齢と障害 のニーズ調査ですが、高齢者700名、障害者300名に対して、今これは一人暮らしへの希 望を並べていますが、高齢者が左側で右側が障害者の方です。高齢に関しては、親族介 護が望ましいが56%、親族同居、他人介助は35%ということで、圧倒的に親族介助を望 んでいます。右側の障害は自立希望が48%、そして同居でも他人の介助でやりたいのが 35%ということで、80%は夫婦である同居人がいても介助者を入れたいというふうに言 っております。  次に2004年6月18日のデータです。これは障害部会に我々が出した資料ですが、高齢 との比較です。これは高齢者の方ですが、本人が自分で決めたか、それとも家族が決め たかということで、まず47%というのは家族がサービス依頼先を決めている。ケアプラ ンも決定しているが53%です。そしてケアマネージャーの決定者も家族である。本人決 定というのは22、37、16%ということになって、家族の意向による介助になっているこ とはわかります。次に障害者の方の同じデータですが、ここでは77.8%、それから介助 内容についても78.2%で、圧倒的に自分で決めたというふうに言っております。このあ たりが自己決定で大いに内容が違うということだと思います。  これが高齢の介助利用時間1カ月で見たデータです。高齢の方は1時間から30時間、 30時間で1日1時間ということですね。それから次が31時間から60時間で、ということ は30日でやれば1日2時間の人が61%、1日2時間から90時間の3時間のあたりで、介 護保険のホームヘルパーが1日3時間しか出ませんから、このあたりで大体90%近く、 80何%がカバーするということはおわかりかと思います。  これは障害者の1カ月の利用時間です。0から120時間、30で割ると1日4時間のと ころまで、介護保険で賄えるのが3時間ですから、それで介護保険で賄えるのは30%と いうことで、これは全身性障害者のデータではありますが、こういうふうなデータにな ります。ですから介護保険では残り70%は2階建てになる。2階建て部分が一階建てよ り大きいみたいな逆転現象が起こるということがおわかりいただけると思います。これ でプリントの方に戻ってください。  我々は今の支援費から介護保険への話ということが突発性に出て来るのは、まさに制 度が迷走しているのではないか。迷走する制度、そして理念なき福祉になりつつあるの ではないか。これは財源先行で議論が進むということは介助の問題、地域差別の問題と いうのは理念がないがしろにされているのではないか。支援費制度は初年度予測した時 間数より需要が伸びた、本来歓迎すべきいい制度だったという捉え方をすべきところな んですが、これは新しい制度が始まる時にはいつもこういう問題が起こります。ですか ら介護保険の時も相当な余裕を見て財源を確保しながらスタートしたわけですが、それ を読み間違えたという厚労省側の問題はあろうと思います。  介護保険の総額は今5.5兆、支援費の在宅サービスは1,200億というふうな比率から見 ますと、まさに支援費制度はお金が足りないので、象を連れてきてアリを引っ張るよう な感じに思います。なぜそれほど巨大なパイを持ってこなければいけないのか、他の財 源のことも含めて考えていく必要があると思います。  このような制度設計の問題については、将来20年30年50年先を見越して、どういう福 祉サービスが本当に日本の福祉で求められているのか、どういう福祉社会を我々は今作 りたいのか、そういう意思があって当然ですね。ですからその時にどのような福祉社会 を描くのかという時に、どの財源を使えばいいのか、他の制度について使えるようなも のはないのかという検討はいいにしても、支援費制度、財源の問題ですぐに介護保険だ というにはあまりに理念が無さ過ぎるのではないか。もともと違う内容、違うサービス で来たわけですから、そのあたり財源論しか厚労省からこのところは伺えなかったとい うことは、やっぱり理念というのが厚労省福祉に喪失されてしまったのではないかとい う危惧を抱きます。  4番は行き先がわからない船に白紙委任状を持って乗れないということで、障害部会 で6月25日に中間まとめをやると聞いています。そのためにここでヒアリングをやっ て、介護保険に入りたいのか入りたくないのかを迫られているということだと思います が、この内容も何もわからない。それで我々は介護保険に乗ることを求められている。 中身がわからない、行き先もわからないものに今乗せられて、あとは任せておけと言わ れるのですが、そのような白紙委任状を持って我々が乗ることはできないというのは、 我々の背後に大勢の地域で本当に明日の介助に困っている障害者がいるわけですね。  それでもうここで話されることによって、来年の地域でのホームヘルプサービスの財 源確保というのは様子は変わってきます。もう介護保険に入るのなら予算獲得はいい加 減にしておこうみたいな話になりかねない。我々はそういう状況を非常に心配します。 きちんとこれはそういう方向づけを示してやらなければいけない。  DPI日本会議では、4月1日の常任委員会でこれだけ中身のわからないものには無 理だ、それで介護保険反対という方針を確認しました。それで5月17日に沖縄で開催さ れた全国自立生活センター協会総会でも反対の決議をしました。この目前の我々の世代 の財源問題で後世の障害者がどういう目に遭うか、今、数十年後の障害者の進路を介護 保険に入ることで我々は決定してしまうわけです。  そのような決定を、今来年の予算がないからといって我々の都合だけで決めていいも のなのか。これはとても許されないだろう。我々は今若くて成長していこうという障害 者達のことも考えて地域のサービスをやっているわけです。その時に介護保険に我々が 入れてしまった、後世20年30年後に「お前らの2003年の障害者達は何をやってくれたん だ」というふうなことを言われかねないだろう。そういう意味では我々は介護保険に入 っても大変、支援費サービスでいても大変なんですが、でもここで今の支援費サービス の使いやすい制度を我々は残していきたいという結論を利用者全員がやったということ です。  そしてこのような背景を持って我々は語ってきましたが、これは我々は7年前から、 今日この場に僕が出ることは予定されていたこととしてプログラムを組んできたわけで す。介護保険に入れるということは決まった1989年に、これはイギリスのコミュニティ ケア法の中の障害者はどう扱われているか、高齢と障害の差別を一体化したらどうなる のか、そしてコミュニティケア法の中では明らかに障害者のサービスは成り立たない、 高齢と同じレベルになってしまうということで、ダイレクトペイメントというシステム で障害者は・・?・・に入れました。  次は99年に出たカナダのオンタリオ州のデータです。この時には我々介護保険に入る 時に障害者側としてはどういう方策を考えられるのか、それをうまくやり抜いた例とし てオンタリオ州の自立生活センターがありました。ここは長時間介助の問題を自立生活 センターと行政が話しあって、これは解決していく道筋をダイレクトファンディング、 セルフマネジドケアという新しい方法を生み出して出しました。これがその時のデータ です。  ですからいろんなこういう提案を我々は98年、99年、まあ97年にドイツの研修をやっ ておりますが、介護保険下の障害者、この時にドイツの障害者たちはどう言ったかとい うと、ドイツは介護保険に障害者を入れてしまったけれどこれは失敗だった、日本は障 害者は絶対に介護保険に入ってはいけないよ、高齢と一緒のサービスになることはどう いうことになるか、よく見て帰ってくれということで、我々はドイツの介護保険を見ま した。そしてやはりその時から統合には無理があると考えていたわけです。  そして去年「当事者主権」という本を上野千鶴子さんと一緒に出しました。この中で 介護保険の統合問題が今年には問題になるということが予想された2年前からこの本を 書きました。これによって皆さんに自立生活センターはどういう血と汗を流しながら今 の地域でのサービスを向上させてきたか、そして重度の障害者だけでなく知的障害者、 精神障害者に至っても地域での支援をどんなふうにやってきたか、この本を読んでいた だくとそれがつぶさにおわかりいただけると思います。  まさに最初の頃、僕が自立した頃も民家を借りまして、そして普通の民家を貸してく れなかったものですから、首吊り自殺があって2年間空き家になっているところを、い いから貸してくれと言って僕はそこを借りました。それでボランティアの介助者がうち に泊り込んで介助をしてもらいながら、それで夜中には20件ぐらい電話をかけまくって 明日の朝の介助者を探すというようなことを7年間続けて地域での自立生活をやってき ました。その結果、あまりにそれは可哀相だ、市でもサービスを出そうよというふうな 話になってきたわけです。  特に70年80年代、全国でこのような命がけの自立生活、サービスがない地域におりて きて、そこでサービスを増やしながら生き延びてきた障害者たちが今の支援費制度を作 り上げてきたわけです。その30年間の成果をたった10カ月でつぶすのか、我々はそこに 非常な怒りを持っていますし、無責任にテーブルの上で考えていく人たちが本当に涙ぐ ましい努力をしながら地域で1時間、今年は時間が増えたというふうなことで、毎年1 時間30分と行政と話しながら時間を伸ばしながら地域での暮しを成り立たせてきて、今 があるということも御承知おき願いたいと思います。  次に精神、知的障害者、難病の当事者はなぜ統合に反対しているかということなんで すが、やはり精神障害者にとっては、なぜ支援費の時に声をかけられなかった精神障害 者が今声をかけられるのか。大阪精神障害者連絡会の塚本さんは、政策の都合で翻弄さ れるのではなく、まず支援費制度に精神障害者を入れる議論があってしかるべきだろう と、このペーパーの3頁で語っています。たしかにこれは意味のある言葉だと思いま す。失礼じゃないか、我々精神障害者をダシにして介護保険という統合の話をされると いうのは違うのではないか、誠実に支援費制度からやって欲しいということでしょう。  知的障害者については、移動介護が利用が高くて全体の56%です。支援費が介護保険 に統合された場合に移動介助がどう位置づけられるかというのを非常に心配していま す。この介護保険で長時間のホームヘルプサービスというのが見回りを含めて等なかな か難しいということで、知的障害者の人たちはバスに乗るのに付き合ってもらえば2カ 月やれば自分で帰れるようになるとかいうふうなことがあるわけですね。ですからこの ガイドヘルパーの問題はやっぱり彼らがそういうトレーニングできるような期間をきち んと保障してあげないと自立していく芽を摘んでいくのではないか。  次に人工呼吸器や意思伝達方法が自分でできない、寝返りもできないというふうな人 たちに1時間単位の細切れの介護保険業者が対応していくということは難しいだろう。 やはり障害者サービスはこういう長時間の方に限ってはもっと考えられた障害者の支援 費制度の延長上に考えていかなきゃあいけないだろうということです。  次に7番の2階建て制度は保障されたものなのかということですが、前の6月4日の 部会で部長がおっしゃったのは、法律的なことで裁量的経費じゃない、もっと保障した 方法を考えようとおっしゃったけれども、我々は特定財源を確保するということについ ては、地方特例交付金という制度しか考えられないんですね。国が地方特例交付金を出 した場合にどう扱われるかというのは、市町村障害者生活支援事業が一般財源化された 時に、ある市ではこれを使われました。地方特例交付金です。  これは国から見ればこの用途に使いなさいよというわけですが、やはり現場の市町村 に下りて来るとこれが生活支援事業に使われたケースはなかったです。そういう意味で は介護の2階建てをこれでやるということはこれは保障にならないだろうな、国は保障 された制度として他に何のことを考えてらっしゃるのか、全額国で持つようなことを考 えない限り、2階建ての安全性というのは市町村では保障されないだろう。これを健康 で文化的な生活を保障するという憲法の精神に則って保障してもらいたい。  次に8番の障害者の介助サービスは国家責任じゃないか。これは障害者のサービスと いうのは非常に突発的に起こった事故による場合が多いわけですね。こういう場合に国 がそれは支援するよということをやるがために税金を集めているんだと僕は思っていた んですが、これを介護保険でやるということは市町村に任せちゃおうという話ですね。 ですからこういうことを市町村に任せていいのか。まさに税金でやる根本的な財政で、 まず第一に払うべき障害者のサービスというのを、こういうやり方をやって将来に禍根 を残さないのか、私はこれは論理的には間違いだと思います。税金でやるべきものであ ろうと思います。そして応益負担や稼得能力のないような人に課す介護保険のこのよう な制度というのは、いくら辻褄合わせをしたとしてもすっきりした形にはならないんで すね。やはりこれは無理がある。やっぱりすっきりと国の責任を認めて、税によるサー ビスにもう一回戻す。従来の方針を継続すべきだということです。  9番では譲れない基本問題ということで、介護保険の中でどうしても我々これは無理 だよという問題を非常に絞ってあげましたが4点です。1点目は介護保険には35万円の 上限がある。これはホームヘルプサービスにおいて1日3時間にあたる。これでは全身 性障害者80%、知的・精神障害者にとっても十分なサービスはできない。  第2点は自立の理念が異なるという点です。介護保険においては介助を使わなくなる ことが自立で、それに対して障害者においては1982年の障害者に関する世界行動計画で リハビリテーションは期限と目的を限って行なわれるべきものであるという規定をして 以来、、介助を受けながらの自立という方向に障害者福祉は大きく舵を切ったと考えて います。ですから介護保険の要介護状態でないこと=自立という概念は、これは82年以 前に戻るんだ、我々の福祉を82年以前に戻さないで欲しいというのがこの根本的な立場 の違いで承服し難い点です。  第3点は、介護保険にはないサービスでガイドヘルパー、移動外出がある、このあた りは手足の機能の不十分な人、外出でも必要な手助けが必要なわけで、家の中でいるの と同じように外でもそれが必要なんです。汗を拭く、倒れた体や首を起こすなどの介助 が必要になるわけです。このあたりガイドヘルパーというふうに介護保険の中でことさ ら横出しにしてしまうと、これは市町村はラグジュアリーなサービスとして見なくなる 心配が非常にある。実際私の市で聞いても「そんなものは出せないですよ、生命維持の 部分の介護保険で終りますね」いうふうな答をしています。  それから第4点に、介護保険制度が要介護度で4〜5になると半数以上が施設入居を させられちゃう。これは重度障害者の自立生活が始まったばかりで、こうした動きを逆 行させていくことは施設から在宅への動きを大きく変えることになってしまうというこ とで留意願いたい。  第5点は、介護保険の利用料1割負担というのは、同居家族全員の扶養義務を強化す ることにつながるわけです。これは17,000円なりの上限が設定されている介護保険では ありますが、家族がいた場合にはそれを超える額は請求されてきますから、長時間介助 の場合の家族の負担というのは3万5万10万というふうな月単位での猛烈な額になる可 能性があります。これは非常に難しいでしょう。兄弟もこれだけの給与の中から払う人 はいないだろう。  10番の重度障害者はなぜ介護保険に反対するか。地域で暮らす障害者は365日休めな く生活します。特に命の危険にさらされながら介助者の到来を夜待っている人たちもい ます。筋ジストロフィーで両手両足がきかない利用者は一人で寝ているとゴキブリが顔 をはって、その時でも払うこともできません。それでも地域で自分で生活していきたい と彼らは言っているわけです。自立生活をした人たちがもう一回施設に戻るかと言った 時に、いや死んでも二度と戻らないというのが普通の答です。  それで僕も施設から出てきた障害者に何が一番嬉しいですかと聞いた時に、彼女は自 分の好きな時にトイレに行けることだというふうに答えました。本当にこういう言葉を 聞くと胸が詰まりますが、施設から出て何が嬉しかった、外へ出歩けて映画が見れて嬉 しいとか、そういう答を期待したんですが、いや自分の自由に好きな時にトイレに行け るのが嬉しい。施設では職員が「あとでね」と言って放ったらかしにされることが多か ったために、彼女たち、彼らはそういうトイレに行く自由もなかったということです。  これがまた介護保険に入って、1日3時間のサービスで我慢してくれということにな る時に、トイレに自由に行きたければ施設に戻れと宣告するような無慈悲な福祉サービ スを我々は二度と受けたくない。それが6月9日に1,200名が僅か4日で集まったこと の意味です。  この地域の利用者、当事者、行政の現場、窓口の職員、サービス提供者は現場のサー ビスのあり方をつぶさに知っている人たちです。その現場の人たちは「障害者は介護保 険に入れない方がいいよ、介護保険に障害者が入ることはよいサービスを提供すること にはならないよ」、彼らは言います。たしかに現場の人たちは厚労省のテーブルに向か っている人よりは遥かに現場の声、その障害者のゴキブリが顔を這うというような、本 当に切実なニードというのを感じている人たちだからそう言えるのだと思います。  この全ての障害者たちを納得させる材料がこの障害部会の中で今提示できているか。 これは障害者がそういうふうな生活を余儀なくされるという背景の中で、それが完全に 保障されるという保証がない限り、介護保険の議論を安易に統合賛成という形でこの障 害者部会で決めるべきではないと思います。今後、利用者の何十年にわたる障害者の苦 しみを考えて、冷静な判断を委員各位にお願いしたいと思います。ありがとうございま した。 ○京極部会長  ありがとうございました。次は日本障害者協議会より藤井様よろしくお願い致しま す。 ○藤井氏  私ども日本障害者協議会は、約70団体で構成していますが、現在これについては懸命 に議論をしております。団体の中には反対、あるいは一部慎重に、そういう意見もあり ますが、今日は、私どもの先日の理事会での議論を代表する形で意見を表明いたしま す。  結論から申し上げます。先日の社会保障審議会障害者部会での3人の臨時委員により ます「論点の整理と対応の方向性」をめぐってですが、いわゆる統合について賛成を考 えるだけの材料は見い出せない。引き続き賛否の判断に耐え得る材料の提供を厚労省に はお願いしていきたいと思います。端的に、あるいはあえて言うならば、この程度の提 案では賛成できかねるということであります。  まず、意見表明の冒頭に少し我が国の障害者施策の現状を概観してみたいと思いま す。釈迦に説法かもしれませんが、何と言っても看過できない象徴的な現象は精神障害 者の社会的入院問題です。あるいは知的障害者などの社会的入所問題ですね。その数は 夥しい数でありますが、ほぼ固定化の様相、あるいは微増の傾向にあります。  また、働く分野を見ましても、障害者の雇用率については、雇用率が法定化されまし てから27年間一回もこれをクリアできてないという不名誉な現象が続いています。さら には無認可の作業所が6,000カ所以上というのも、どう見ても異常な現象ではないでしょ うか。これと裏腹の関係で、授産施設が設置されている市町村は全国のたったの3割程 度ですね。7割以上の市町村で今なおゼロ地帯が続いているのです。  さらには、障害種別間の制度の格差、これも目に余るものがあります。不当と言って もいいかもしれません。精神障害者の遅滞ぶりは言うに及ばず、難病、てんかん、ある いは自閉症、高次脳機能障害など、こういった分野の身体障害者施策との格差は一向に 埋まっていかないのです。また、重度、重複、重症の障害者にとっても適合感の得られ る施策は講じられていない、あるいは講じられそうにないと言っていいと思うんです。  なぜこうした現象が常態化しているのでしょうか。それは法律の仕組みと内容のおか しさ、加えて制度の体系と運用のおかしさ、これらによるものです。同時に、こうした 現象に対して、あるいは障害者問題の本質に対して、厚労省が真正面から取り組んでこ なかった、このことが挙げられると思います。正確に言うならば、ごく個人的には懸命 に取り組んだ役人もいたかと思います。しかし、厚労省という行政体という点から見る ととても我々はそういうふうには見えないのです。  そう言いますとこういう声が返ってきそうです。この10年間だけ見ても障害者プラン を作ったではないか、あるいは社会福祉基礎構造改革をやってきたじゃないか、新たな 障害者基本計画や新障害者プランも作ったではないかということが聞こえてきそうで す。たしかにさまざまな施策や行政計画を策定してきたことはまちがいありません。し かし、問題はいかに策定してきたのかということではなく、いかに事態が変わってきた のかということです。残念ながら、今も言ったように事態の本質は変わってはいないの です。例えば、昨年3月で7年間の期限を終えた旧障害者プランは掲げられた数値目標 のほとんどを達成したのです。はっきり言いまして、目標達成して事態好転せず、こう 言って差し支えないと思います。  さて、焦点となっています介護保険制度と障害保健福祉施策との統合論議ですが、考 えてみれば統合論議も所詮は政策手段であり、それが目的とするところは、あくまでも 安定とそして安心、そして安全が保たれた地域生活の確立ということになるのです。そ ういう点からしますと、介護保険との統合問題、あるいは介護制度というのも大きな政 策目標を実現していくための条件の一つにすぎないのです。もし、今般の介護保険の統 合論議が歴史的な一大政策転換というのであれば、わが国における障害分野の政策目 的、すなわち地域生活の保障の確立の全体像を先ずは明確にすることであり、同時に前 述したさまざまな今日の障害のある人びとをめぐる問題現象、ここにどうメスを入れる のか、このことについてきちんと方向付けが示されなければなりません。このような、 全体像や基本的な方向付けの議論が前提にあって、その中の一つに介護保険との統合論 をどうするのか、介護制度はどうあるべきか、こういう位置づけ方で論議が交わされる べきです。「とりあえず」とか、「よりまし」、「一歩前進では」、この言葉は障害者 分野に限っては決して好ましい結果を生んではきませんでした。すなわち、基幹的な課 題、基本的な課題は先送りされ続け、表層的で部分的な改変、これに終始してきた感が あります。今問われていますのは、この基幹的で基本的な課題に真正面から対処してい くことではないでしょうか。  そこで、この時期に優先して考えるべきは何かということです。繰り返しになります が、今考えるべきは、障害者の地域生活の安定、安心ということを得るための、全体像 をどうするのかということ、そして基幹的な政策課題にどうメスを入れていくのかとい うことです。むろん、このことがすべて決着がつけられなければ介護保険との統合問題 に入れないと言っているのではないのです。少なくとも、本腰を入れて検討に着手する こと、論議の方向付けをしっかりとすること、あるいは検討のタイムテーブルを示すべ きではないでしょうか。  それではその基幹的な課題、あるいは全体像に関わるテーマが何かということです が、これについて代表的なものを列挙してみたいと思います。その一つは扶養義務制度 の見直しです。かりに今般統合問題が成った場合に、おそらくは本人負担が出てくるこ とが想定されます。現行の扶養制度の下では、結局は家族の所得まで合算されて本人負 担額が決められていく、そうなるのではないでしょうか。私は、扶養義務を規定してい る民法877条をただちに全面的に改正しなければならないと言っているのではありませ ん。厚労省の範囲で解決できること、すなわち福祉施策の費用徴収にあたっては本人の みの収入を対象とすること、あるいは精神保健福祉法の保護者規定をはずす、こういう ことはあってもいいのではないでしょうか。この扶養義務制度というのは、最終的には 家族の責任で世話をしなければならない、言い換えればぎりぎりのところで公的責任を 免れるというもので、公的責任回避の温床にもなりかねないのです。加えて、障害者自 身の自立意欲の減衰とも関係があるように思います。「どうせ自分は家族の庇護のもと でしか生きていけないのでは」、こんな感覚を抱かせることにもなるのです。根本的な 問題を内包する扶養義務制度については、見直しに着手しなければなりません。  二つ目は、障害の認定、等級制度です。我が国の場合は、おわかりのように障害関連 の施策サービスの量と質は、障害認定等級制度と連動します。しかし相変わらずこれに ついては医学モデルというのがベースになっております。ICFの考え方を含めて、そ ろそろ国際的な基準に合わすべきではないでしょうか。  三点目は、所得保障の確立です。自立の基礎的な条件というのは、経済面での自立と いうことになります。このことは、個人であれ、組織体であれ、自治体であれ、国家で あれ、共通するのではないでしょうか。そのベースを成すのは経済面だと思います。と ころが、稼得能力に難がある障害者の多くは、障害基礎年金に頼っているというのが実 情です。年金受給者の大半は2級年金、これではどうにもなりません。  四点目は、雇用や授産施設、小規模作業所などを含めて、障害者の就労施策体系を改 正していくことです。  五点目は、障害に関連した福祉法の一元化を図ることです。すべての障害者を対象と した、障害者福祉法の制定、あるいは障害者地域生活支援法、これを具体化していくこ とです。  六点目は、60種類以上にも及ぶ現行の施設制度、施設体系を再編、簡素化していくこ とです。1995年に策定された障害者プランにおいても検討を約していながら、手が付け られていないのです。  七点目は障害関連の社会福祉施設や事業を大幅に増やしていくことです。つまり、障 害に関連した社会資源の整備、基盤整備を図っていくことです。とにかく、現状は余り に少なすぎるのです。量的な増大、適正配置を早急に進めていかなければなりません。  八点目は、先にも述べましたが、固定化の様相にある精神科病院における社会的入院 問題の解消、知的障害者を中心とする入所型施設での社会的入所問題の解消を図ってい くことです。  これらの事柄を一度に解決とは言いません。滅多に訪れない大きな政策転換に際し、 これらについての方向づけと解決へのタイムテーブルをはっきりさせて欲しいのです。  もう少し時間があるようですので、三点ほど付け加えておきます。その第一は、今回 の統合論議を通して感じるのは、あまりにも国レベルで実態の把握に関する正確なデー タがないということであります。大変不足しているということです。こういうデータが ない中での制度の設計というのはさまざまな支障があるのではないでしょうか。のみな らず、作られた政策それ自体がどの程度妥当性があるのか疑問です。また、これを利用 する当事者との関係も好ましいものにはなりにくいのです。制度を利用する者と制度と の信頼関係は得られるはずがないように思います。  基礎データが不備であることの矛盾はこれまでにもいろいろとあったのではないでし ょうか。例えば、今度の支援費制度の「失敗宣言」の背景の一つに、予想以上にニーズ が表在化した、金が足りない、ある人はニーズ爆発なととも言っていますが、要するに データ不備の中での見込み違いだったのです。ちゃんとしたデータがあったらこういう ことはなかったはずです。起こるべくして起こった失策、こう言ってもいいと思いま す。支援費制度そのものに欠陥があるのではなく、制度設計に際しての見込みに欠陥が あったのです。厚労省は施策水準を表すのに、よく「前年度比何%増」という表現を用 います。今年度の支援費のホームヘルプ事業についても昨年度予算と比べて、15%増と 言われました。問題は前年度比ではないのです。障害のある人たちのニーズに照らして 妥当かどうかということがポイントなのです。データなき、あるいは実態の把握なき前 年度比増減というのはほとんど意味がないように思います  第二は、今般の統合論議にあって、統合論に否定的な意見の中に看過できない主張が あるということです。それは企業サイドの一部、または市町村の一部に財政負担増から これに消極的あるいは反対するという論調です。消極論や反対論で言うと、本日の意見 表明を含めて、障害団体間にもあります。しかし、企業サイドの一部や市長会や町村長 会のそれとは訳が違うのです。明確に区分けして捉える必要があるように思います。つ まり、財政面や実務面などの負担増を理由とする反対論もしくは消極論は、考えように よっては「障害者排斥」ということになります。こうした考え方に対しては、ここにい る私たちは賛否の立場を超えて立ち向かっていかなければなりません。  そして第三ですが、今乗り遅れたら一般財源化へ持って行かれるという考え方、つま り一般財源化不可避論ですが、これを強調し過ぎることへの危惧であります。確かにこ の三位一体論という圧力については承知しています。しかし、統合方向ありきとか一般 財源化不可避論といった論調だけでは、余りに論議の幅を狭めてしまうのではないでし ょうか。もう少し自由で幅のある議論をしなければ、出てくる答えが萎縮したものにな ってしまうのではないでしょうか。たしかに、厳しい財政状況についてはこれを認識し なければなりませんが、一方で重要な政策転換に関わる議論であり、さまざまな視点か らの議論を期待したいと思います。全体的な視点から、私も述べてきましたように、障 害を持った人々のニーズ、あるいは障害者施策の基本的な方向性をベースとした議論が あってもいいのではないでしょうか。  以上、こういう話をふまえて、改めてもう一度繰り返しますが、今回の三人の臨時委 員による提言については、賛成と言うにはあまりにも材料が乏し過ぎると思います。引 き続き基本的な材料の提供をお願いしておきます。  発表をしめくくるにあたりまして、私はもう一言言っておきます。去る1月16日に塩 田障害保健福祉部長が私ども障害団体に説明していただいた折です。席上、部長の口か ら出た言葉としまして、「皆さんが反対したらこの話は壊れるんですよ」、こう述べら れました。私はこれは名言だと思うんです。と同時に非常に大きな安心感を覚えたわけ です。民間団体としましても、この言葉を拠り所に今後のこの議論を見守っていくつも りであり、また厚労省の方々もこれを胸に刻んで今後の対応に当たってほしいと思いま す。そして社会保障審議会障害者部会の皆さんにおかれましても、ぜひとも歴史の検証 に耐え得る論議を、そして結論を導いていただきたい、このことを強調しまして、意見 発表を終ります。 ○京極部会長  ありがとうございました。それでは全日本手をつなぐ育成会より、松友様よろしくお 願いいたします。 ○松友委員  社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会常務理事の松友でございます。社会保障審議会 障害者部会の場にて介護保険制度との統合問題について私たちの会を意見を述べる機会 を与えていただきましたことに感謝申し上げます。理事長の藤原に代わりまして審議会 の委員でありますが、会を代表して発言させていただきます。  全日本育成会は一昨日、6月16日の第202回理事会において、圧倒的多数の賛同によ って、知的障害者福祉の安定と発展のために介護保険制度との統合は〈必然〉という 『意見書』を決議いたしました。その全文は、本日の資料として配布されております。 ここでは、その『意見書』の決議に至る経緯と趣旨について、簡単にご説明をさせてい ただき、私たちの意見発表といたします。  その前に私たちの会について簡単にご説明いたします。私たちの会は、知的障害児・ 者の親が中心に作る、いわゆる「親の会」であります。市町村を単位に、全国で2,700 を越す地域の会(組織)があり、およそ32万人の個人の会員がそこに属しています。全 日本育成会は、その「親の会」運動の全国本部にあたります。今年の夏に34歳になる私 の長男もてんかんと知的障害があり、私は父親として障害者運動に参加してきました。  半世紀以上の育成会の歴史は、わが子を守る闘いの歴史でありました。わが国では長 らく、知的障害があることにより、教育や労働の機会が剥奪され、安心して暮らす場さ えも、地域の中には見い出せませんでした。特に母親は、「障害のある子を生んだ」と いう批難の目にさらされ、知的障害のある人の生活は、家族の責務の中に放置されたの です。その結果、少なからぬ親がその任に疲れ果て、施設にわが子を託せざるを得なく なりました。地域での支援システムが不足する中で、障害者に犠牲を強いることで、家 族は「安息と平和」を得たのです。しかし私たちは、この状態に終止符を打つことを決 意いたしました。  私たちは、地域での当たり前の暮しを本気で実現することを、50周年記念全国大会の 「決議文」の中で謳い上げました。そして、その決意を至るところで明らかにし、その ために強力な支援システムを求めて懇願し、要望し、そして行動しています。今回の介 護保険制度との統合問題も、このような視点から検討し結論を出したものです。  私たちの『意見書(案)』は6月2日(水)の月例の三役会議でその基本的方向性が 確認され、4日(金)の社会保障審議会障害者部会の識者委員による『報告』を受けて まとめられ、7日(月)に役員(理事、監事)、評議員及び都道府県指定都市育成会代 表等へ送られました。またその日に開催された定例の全国事務局長会議において配布さ れ、ホームページ上に掲載されたので、翌日の朝日新聞(全国版)紙上での報道につな がりました。  この『案』に対して、拙速であるという批判があります。それは〈誤解〉というより 〈逆〉だと私たちは考えています。また、4日に『報告』が出て7日にまとめたのは、 結論が先にあったのでは、という批判もあります。それはその通りでありまして、2日 に基本方針は確認されています。というか、私たちは3月にすでに『見解』をまとめ、 公表しています。少ない情報の中とはいえ、半年間検討してきたのであり、本日のヒア リングへ間に合わせる、それも組織内討議を経て機関決定するには、これでも遅過ぎた くらいであります。  16日に臨時に開かれた理事会では、「書面」を含めて22名の理事全員が出席し、『案 』は書面出席の「保留1名・棄権1名」を除くと、圧倒的多数の賛同で可決されまし た。評議員と地方の育成会の意見は、「反対」2名(1県)のみで、9名の「一部修正 」とともに、「賛成」20名という、これまた圧倒的な結論でした。理事会には、会の内 外の意見や要望も資料としてすべて配布され、これらをふまえて議論がなされていま す。  私たちは、決して十分と思っていませんが、段階を踏んで討議を進めてきたと考えて おります。それは、施策の決定に関して、当事者である私たちも、議論に参加し提案す る責任、いわゆる参画責任があると考えるからです。それは、言い換えると「自己決定 /責任」ということです。また、今回のこの問題には、当初から異様な事態が続いてい ました。それゆえ、かなり早い段階から、検討する機会と必要を与えられたと考えま す。  このように熱気が高まっている時こそ、冷静に時間を辿って確認し、可能な限り事実 に基づいて議論する必要があると思います。そのように考えると、いわゆる「支援費制 度の財政破綻」の混乱の以前に、制度がスタートする以前から、それを予言し、介護保 険制度との統合を主張する人たちがいたことを知ることができます。彼らは何を考え、 支援費制度のどこに問題があると指摘したのか。私たちは、すでに昨年4月、全国社会 福祉協議会の「障害者協議会」において、この問題についての第1回の学習会を開いて おります。  また、10年近く前に障害者を含めた介護保険制度の『骨格案(スケルトン案)』が提 示されながら、十分な議論もないままに、「障害者を積み残す」形で、現行の保険制度 がスタートしたことを知ることができます。それゆえ、今回の「財政破綻」があろうが なかろうが、5年目の見直しの中で再検討が加えられるのは当然であり、それを最初か ら拒否感で迎えるのは、歴史的な事実認識の誤りであります。視点を変えれば、「今回 も障害者は積み残されるのか」という疑問と怒りであり、この点を論議する必要があり ます。  御存知の通り、社保審「介護部会」は、わが「障害者部会」に下駄を預けたのであり ます。「障害者部会」の結論をもって、「介護部会」は検討を始めるということです。 そうであるとすれば、私たちは明確に、現時点での結論を出さねばなりません。情報が 不十分という悪条件であっても、もはや他人任せにはできない中で、私たちは批判し、 評論することだけでは済まされない、と考えるのです。現実は、「去るも地獄、残るも 地獄」の感がありますが、可能な限り主体的に判断を下さなければなりません。  3月の『見解』で私たちは障害者福祉の発展を強く願いました。支援費制度への評価 をしながら、大いなる不満を述べました。その結果、「介護保険制度は否定しない」と して、選択肢の一つに残しました。議論をする中で、結論を模索したのです。それゆ え、当初から明確に「反対!」と表明されている方々の、その結論の速さに驚いていま した。  基礎構造改革の議論の中で、「契約制度」は厳しい批判を受けてきました。それゆえ 「措置制度」に残った分野もあります。支援費制度は「契約制度」の一形態であり、介 護保険制度も同様です。支援費制度の評価は、「契約制度」ゆえの評価なのか、それ独 自の評価なのか、かなり不明な点があります。  私たちの理事会では、介護保険制度への課題の指摘と、その解決のための一層の努力 の必要性が確認されるとともに、税に基づかない「保険方式」の可能性の強調がなされ ました。すなわち、サービスの自主性が高まる、という点であります。また、何と言っ ても「共助方式」である保険制度は、「例外的な存在」である障害者から、「普遍的な 存在」である障害者として適切な理解を高めることができる。言い換えると、それが前 提にあって初めて、介護保険制度との統合が可能になる、ということであります。  介護保険制度との統合は、究極の選択であることは否定できない事実であります。し かし、歴史的に経過を辿り、厳しい現実を直視し、将来の膨大なニーズを展望すれば、 それは〈必然(必要にして当然)〉の選択であると私たちは結論を出しました。と同時 に、追い込まれた消極的(ネガティブ)な理解だけでなく、積極的(ポジティブ)な理 解も必要であり、それはまた可能であろうということであります。  現行の介護保険制度に多くの解決すべき課題があることは事実です。具体的な内容は これから詰めるわけですから、その改善と改良は文字通りこれからの課題です。方向性 が固められたら、具体的にそれを提示し、その解決のために邁進する必要があります。 そのためにも、入り口論で時間を浪費することは実に無駄なことであります。「内容が 不明だから乗れない」という批判がありますが、支援費制度の財政破綻の内容は実に明 白であります。また、支援費制度(すなわち、契約制度)そのものも、内容は明確にな って措置制度から転換する、という方向が決まったわけではありません。それは理由に ならないのです。  それより、「障害者部会」で方向性が明確にされても、「介護部会」で受け入れられ るのかどうか、という大きな問題があります。すでに財界、(経営者団体)や高齢者福 祉業界、医療分野は、それぞれの理由と思惑で、障害者福祉との統合に〈消極的〉とい うよりは、むしろ〈否定的〉という話をお聴きしております。そして、本音は別にし て、「障害者団体も反対してる」ということを、最大の理由にあげているやにもお聞き しております。  私たちは、明確に「地域での確かな支援による共生」の旗を掲げ、その財の保障を障 害基礎年金の創設時と同様に、《社会的連帯》の思想の共有により実現したく考えま す。すなわち、文化として「共生の思想」を浸透し、定着させるよう、国民へ働きかけ なければなりません。その行動への決意と覚悟をこめて、私たち全日本育成会は介護保 険制度との「統合」の方針を決議いたしました。  少し時間がございますので、『意見書』には書いてないことですが、一言発言いたし ます。知的障害の分野、特にホームヘルプサービスの増大が、今回の支援費制度の財政 破綻の大きな原因と言われております。そして、それは事実と言えるかと思います。し かしながら、先程藤井さんがおっしゃいましたように、基本的に知的障害のデータ数そ のものについての基本認識がまさに確立していないのです。これは岡田委員からもしば しば指摘されているわけでありますが、諸外国の知的障害についての基礎数を見ます と、最も少ないと言われているアメリカでさえも人口比1%、多くの場合は4〜5%の 数がデータとなされております。 ところがわが国は、療育手帳の所有者、それも実態 としてきちんと整理されてない形で46万人の数字が使われています。今まで居宅支援サ ービス等が存在してなかった、あるいは事業体がなかったという中で、具体的にサービ スが始まれば、利用者大きく増えるのは当然でありあます。またサービスが存在してく ればその数倍の人たちが手帳の取得、あるいはサービスの利用に入るのは当然であろう かと思います。  さらには強度行動障害といわれている人や、てんかんを頻発している方等の極めて 〈高度な支援の必要な人〉に対する地域生活支援を考えた場合、いわゆる日常生活支援 等のサポートが発生するでしょう。そういうふうに考えると、今までの積み重ねを超え た財源の確保が不可欠と私たちは考えるのです。  さらには、6,000カ所と言われている、小規模作業所の利用者の6割は知的障害、あ るいは精神を入れると9割近いのではないでしょうか。そういう中で今までの積み上げ 方式でいけるか。まさに「前門の虎、後門の狼」のような中でどうするかとなった時 に、私たちとしては「座して死を待つより立って向かう」という方法を選ばざるを得な いという考えを持っているわけであります。  それゆえに「横出し」「上乗せ」とかいろいろ表現はありますが、税による付加方 式、特に、〈高度な支援を必要とする方〉に対する、基準を超えた支援体制をきちんと 確立することが重要である。それをある面ではそれと前提するというか、それを保障を もとにした中で大きな財を基盤としてて、さらには「共生への思想」に基づく保険方式 の中で移行していくということを提案したわけであります。『意見書』については読ん でいただくということで、詳しくは触れておりませんので、よろしくお願いしたいと思 います。ご清聴ありがとうございました。 ○京極部会長  ありがとうございました。それでは最後になりますが、全国精神障害者家族会連合会 より小松様と江上様、よろしくお願いいたします。 ○小松氏  トリを務めることになりまして、既に各団体からいろいろな御意見が出まして重複す る部分もたくさんあるかと存じますが、この精神障害者家族会連合会としての意見をこ れから発表いたします。  障害者基本法が平成5年にできました。それから平成7年には精神保健法から精神保 健福祉法に代わりまして、手帳制度ができるとか、あるいは在宅福祉サービスの実施 等、徐々にその厚みを増してきました。また、精神科医療におきましても入院の短期化 が進んでいる、あるいは通院医療を中心にしようというような傾向がございます。  このような状況の中、家庭や地域社会における医療及び福祉両面から精神障害者の地 域生活を支える仕組みが強く求められています。特に障害者の自立と社会参加、これを 支援することの重要性は精神障害者においても他の障害者と同様です。  しかし、残念ながら、何回も他の団体からもおっしゃっていただいたのですが、精神 障害者福祉施策は他の障害者や高齢者の福祉施策に比べて、その質量ともに大きな隔た りがある、また縦割りであるというようなことがございます。また、社会的入院患者、 この問題もまだいろいろ言われてはおりますが、残されたままになっております。当会 としては今後もさらに精神障害者とその家族が安心して暮らせる地域社会の実現のため に努力するところでございます。  こうした中で私も障害者福祉というのは原則論から言えば国の税を財源とすべきかな というふうに思っております。そういう意見が我々の会でも強いのですが、現在、国家 財政の逼迫が背景になって、障害者福祉施策とこの介護保険とが統合という課題が提示 されました。我々としましてもこの1月以来政策委員会、あるいは理事会、常務理事 会、そして最後にはつい最近ですが、書面で全国の理事に呼びかけて書面理事会を開き まして、全員一致で可決した結果を今日ここに発表しているわけです。  そういうことで安定的な財源確保という極めて現実的なことから検討するならば、介 護保険制度との統合というのは一つの選択肢として前向きに我々も考えていく必要があ るなというふうに思っております。しかし、それには条件がありまして、そのためには 十分な論議がこれから尽くされ、克服しなければならない課題がたくさんあるというこ とも認識しなければならないということです。  当会の基本的姿勢と検討課題を述べますと、現在、多くの精神障害者が家族と同居し ております。家族の世話のもと、扶養のもとに生活している。高齢の家族に扶養され、 しばしば引きこもったままの状態にある精神障害者の存在は、実は私の長男も51才にな るのにまだ家にいます。福祉サービスの対象として重視されるべき課題であります。ま た、家族扶養に依存する体質、これは過去においても社会的入院患者を生み出す要因と なってきました。在宅の精神障害者の生活を家族が背負う限り、今後もこの問題は解消 されない。だから所得保障を含め、精神障害者の介護と自立の実現を社会による支援シ ステムの構築によって実施されることで急務であると考えております。  次に2番ですが、福祉サービスは個々の障害者の実情と必要に応じて提供される。こ こで少し申し上げたいのですが、精神障害者はちょっと見ただけでは普通の人と変わり ません。全員そうとは言いませんが、そういう人が多いわけです。それから食事も自分 でできる人もいる。それから入浴も自分でできる。介助なんか要らないじゃないかとい いますが、しかし認知機能だとか、集中力だとか、あるいは生活設計ができない、それ で人間関係もまずいというのが、これがこの病気の特性でして、この辺を配慮した今後 の認定なり、あるいはいろんな施策の決定が必要だというふうに感じております。  もう一つは、ここに書きましたように、3障害共通である、縦割にしない、平等でな ければならない。それから前に述べましたように、精神障害者が利用できる福祉サービ スというのは他障害に比べて今も極めて不足しておりますし、迅速に充実させる必要が あります。また当事者やボランティアの活動、家族相談などのインフォーマルなサービ スの整備も遅れております。これらを広く育成整備する必要があります。  3番目にあげているのは、精神障害者福祉が市町村業務になったのですが、歴史が浅 い、専任の職員もいないところが多い。市町村の精神障害者に対する理解は極めて低く て、避けて通っているというのはオーバーかもしれませんが、関心が非常に低い。そう いう現状が多く見られます。市町村に精神障害者に関する相談援助、連絡調整、財政的 指導協力等に携わる専任の職員を置く必要が絶対にあるということを強く主張いたしま す。以下、具体的な課題がございますので、江上専務の方にお願いします。 ○江上委員  それでは具体的な項目としまして2頁目にありますように9項目を全家連としてはあ げました。その1項目としましては、統合される場合は、介護保険制度における「居宅 高齢者サービス」、あるいは支援費制度における「身体、または知的障害者サービス」 のうち、精神障害者に適用できるものについては、全て同等に制度化して欲しい。  2項目目としては、不就労、無年金、親の高齢化などで、最も経済的に不利な状況に ある精神障害者が、福祉制度の利用を控えなくてもよいような、新たな減額免除措置 (保険料及び自己負担について)を含め、低所得者対策を確実に行なうこと。また、減 額の基準を世帯ではなく,本人の所得とすること。  3項目目としましては、「重度の障害がある精神障害者」の居宅生活については、介 護保険制度の限度額を超える場合など、特例制度を設けること。重度精神障害者が家族 が抱えながらしている家族もたくさんおられます。  4項目目としましては、精神障害者は日常生活面、対人関係面、就労作業面などにお いて、固有の障害を有しています。この固有の障害とは、対人関係であれば、挨拶が不 得意とか、言われたことしかできない、注意力のない障害と、また気配りやら作業が遅 い等のことであります。基本調査項目の設定や認定においては、精神障害者の独自の認 定基準を作成し、障害が適当に評価される、不利益とならないように、その内容につい ても多角的かつ十分なる検討を行なってください。また、この検討にあたっては、一部 の専門家だけで決めることなく、地域で実際に行なっている関係者、当事者本人、家族 が参加し、十分に意見が述べられるようにしてください。  5項目目としまして、精神障害者独自のケアマネジメント制度を確立すること。現行 のケアマネージャーでは対応困難であり、地域において豊富な経験があり、なおかつ修 練を積んだものによって行なわれる必要があります。  6項目目としまして、高齢者介護においては、「生活技能」の向上が重視されます が、精神障害者へのホームヘルプサービスにおいては、生活全体への支援による「生活 の質の向上」を目指すことを現場に浸透させてください。この生活の質とは、顔を洗う こととか、買い物に行けるようになること、そのようなことであります。  7つ目としましては、介護保険指定施設との関係について、精神保健福祉法内施設及 び法外施設、これは共同作業所等でありますが、取り扱いについては全家連及び関係者 と十分協議を行なってください。  8つ目としては、国、都道府県、市町村等の制度における介護保険外のサービスが維 持、継続できる措置をとるとともに、その充実を図ってください。  9項目目としては、地域によって特に地方にいけばサービスを提供する事業所等がな いことがありますので、提供されるサービスの質、量に格差が生じないようにしてくだ さい。  これらの9項目を全家連の8ブロックの代表を含め、16名の理事会で一致したところ であり、また政策委員会では精神科医、弁護士、福祉関係者の専門家方の意見もお聞き しながら十分議論してこれらを提案します。以上です。  ○京極部会長  ありがとうございました。これで予定していた団体からのヒアリングを一応終りま す。御発表いただきました皆様ありがとうございました。それではこれより休憩をいた します。                   (休憩) ○京極部会長  それでは再開させていただきます。ここからは先程の御発表に対しての質疑を行ない たいと思います。委員の皆様、順次御発言をいただきたいと思います。 ○福島委員  8つの団体の皆様ありがとうございました。今お聞きしていて私なりの整理では、ま ず明確に統合問題を賛成をおっしゃったのが育成会、それから条件つきの賛成が全家 連、残り6つの団体のうち明確に反対とおっしゃったのは脊損連合とDPIの2つ、あ との4つの団体はどちらかというとあまり賛成できないか、あるいはそもそも検討の材 料が少ないので判断ができない。逆に言うと条件によっては検討という、そういう御立 場であろうというふうに思いました。  いずれにしましても明確に反対、賛成とおっしゃっているところは全体からすると少 なくて、そこで明確に反対、賛成とおっしゃっている、賛成の育成会の松友さんと、反 対のDPIの中西さんに一つずつお伺いしたいことがあります。  まず松友さんに、このように反対あるいは判断ができない、材料が不足しているので 判断できないという団体が多い中で、明確に賛成というふうに表明なさる過程ではいろ いろ御決意があったと思います。それで先程ずいぶん丁寧に発表いただきましたし、詳 しい資料もお配りいただいているのですが、賛成に至った理由、あるいは介護保険統合 は不可避であるというふうにお考えになる最も重要なポイントは何かということをもう 少し、ポイントを絞って簡単に御説明いただきたいというのが私のお願いです。つまり 資料でいうところの6番にあげておられる安定的な発展というのが一番のポイントなの か、それともいくつかのポイントが並列に並んでいるのかということですね。そのあた りは後でお願いいたします。  もう一つ、中西さんには、プレゼンテーションの中身が筋は通っていると思うんです ね。つまり生存権の保障ということで、地域生活の保障、国が第一義的に責任を持つ、 これは生存権の保障なのだから、障害者福祉はまず第一義的に税でやるべきだという理 念自体は正論だろうと私も思うのですが、ただ現実問題として明らかに財政問題があ る、財源が足りないという厳しいシビアな問題があります。  そこで障害者の団体のリーダーとして、例えば支援費に残って結局予算が足りなくな ってしまった場合、一番困るのは、例えば全身性の障害を持っている重い人たち、地域 生活をしている重い障害を持っている人たちだと思うんですが、結果的に反対して支援 費に残って、そして予算が足りなくなるということが起こった場合に、そのリーダーと してそれをどういうふうに責任を感じておられるか、正しい理念を主張するのはいいの ですが、結果的にそういう厳しい状況になった時に、リーダーとしての責務はどうなる のかという問題ですね。  つまりこれは言い換えれば、支援費に残って非常に困った状況になった時に、私たち は困っているんだというふうに社会にアピールしたとしても、いわば「それはあなた達 が選んだんだから、それは仕方がないんじゃないの」と言われたら、いわば「これはも う自己責任ですよね」というふうに仮に言われた場合にどう反論できるのか、その辺の 責任の問題をどうお考えかということをちょっと伺いたいなと思っています。 ○京極部会長  では松友さん、中西さんの順番でお願いいたします。 ○松友委員  私たちの団体だけが〈必然〉として明確に賛成というここで、いかに単純な人間の集 まりかということで驚いたわけであります。私たち自身がはっきりと驚きました。今日 は、はっきり白黒結論が出て来るかな、と思っておりましたが何と!  しかし、私たちも決して単純であるわけではありません。結論としてはこれはやっぱ り政策決定ですので、科学的なデータ分析ではない、いわばある種の政治的判断という ことで、判断を下したのです。それは、今福島委員も御指摘のように、こういう判断は 今や良くも悪くも我々利用者、あるいはその家族にまで投げかけられているわけですか ら、これはもはや意見を言ったり批判をするだけではなくて、その結果責任に対して見 通しを持って考えざるを得ない。  だからはっきり言って、中西さんに質問されたのと同じ意味で、「育成会が賛成した 中で、結果が逆にひどくなったらどうするんだ」、それも十分考えた中で私たちは、 「まだひどくなる方が少ないだろう」というところで、政治的な判断をしたということ が第一点であります。  なぜその判断をしたのかというと、先程申しましたようにな利用料の増への対応をし なければならない、ということです。今やっと知的障害者の地域生活の問題がは俎上に 上がってきました。入所施設を中心とした施設体系は、義務的経費でガチッと支えられ てきました。しかし、問題はこれから、地域の中に支援体制を強力に作らなければいけ ない。その金をどうするんだ、ということです。  御存知のように、支援費制度として知的障害の入所施設の本人負担金がおよそ倍に上 がるという提案が出されました。その時、私たち全日本育成会は「容認する」という決 定をしました。その前提として、「そこで浮いたお金(約100億円使われていました )を地域生活支援に回す」と考えたが、全然回らなかった。つまり財布が違った。明ら かにこれは我々執行部の判断ミスでありました。それで、結局は施設関係だけでこの余 ったお金が使われてしまった。地域生活にお金が来なかったのです。  ではどうするんだ、と考えたのです。6,000カ所を超えた作業所、あるいは急増する 知的障害の地域生活支援の財政を考えた時に、介護保険制度に活路を見いだしたので す。知的障害と高齢性の痴呆性老人と何が違うのか、何が同じなのか、痴呆性老人のグ ループホームは知的障害のグループホームの4倍のお金がいっているのは、何が同じ で、何が違ってどうなのかということをいろいろ考えていく中で、ある種ここに活路を 見いだす、急増するニーズに対して、対応すべき新しい制度を考えざるを得ない。これ が二つ目であります。  三つ目は、状況認識を非常に厳しく持っているからです。現在、国民1人当たり700 万の赤字を抱え,地方自治体も財政危機にあります。そのような状況の中で、保険制度 等では応益負担になるということははっきりしているわけで、「応益負担が前提で賛成 するのか」ということが一番最後まで議論がありました。  しかし、そういうことを含めて、制度の永続性を考えた時に、この厳しい財政状況、 あるいはいろんな実態を考えた時に、率直に言えば「寄らば大樹の陰」的な流れの中 で、社会保障全体が一体として大きな流れで立ち向かわないと障害者福祉支援費だけの 流れの中では戦いきれないんじゃないか、こういう判断も加わって最終的には、苦渋の 決断を私たちはさせていただきました。 ○京極部会長  それでは中西さん、お願いいたします。 ○中西氏  まず、障害者団体のリーダーの責任ということを問われているわけですが、私が責任 を団体の中で何を負っているかというと、重度の人たちが地域で暮らしている、その気 持ちや思いをここで皆さんに伝えていく、そのことが僕はきちんと意見を集約してやれ ているのかどうかということを僕は責任を負わされているんだと思います。この責任を 十分自分は果たせない、代弁できてないということであれば、会員から即刻クビになる でしょうし、それができるかどうかが僕は問われている。それをやることが僕のここで の責務だと思っています。このことが僕の自己責任の中身であり、地域で暮らしている 彼らの生活自身に僕が責任を負わなければいけないと言われれば、そんな団体の長なん か誰もやられないんだ。これはみんなに国民に訴え、そして本当の意味での生活の苦し さというのをここでお伝えしていくことが僕の責務だろうと思っています。  それじゃあ誰が一体重度の障害者の地域での生活に責任をもっているのか。それは国 家だと思います。これは憲法25条で保障された健康で最低限の生活というのは、これは 国の国民への義務であって、これは生存権というのが我々にも認められている限り、ど こで暮らしたいかということも我々が決めていいはずだと思う。そして支援費制度に乗 ってしまえば、確かにどんどん予算的には苦しくなっていくかもしれません。でもその 時に障害を持って地域で暮らしたい、そして好きな時にトイレに行きたい、そう願うこ とが悪いことなんでしょうか。委員の皆様どうお考えでしょうか。「施設で暮らして も、あんた達生きていけるんだから、地域で暮らすというのはそれはあなた達がそうい うことを選んだ限り、トイレに行けなくなるのは当たり前だ」、そういうふうにここの 委員の皆さんはおっしゃっるんでしょうか。  そうじゃないと思います。やはりこれはトイレに行きたいという希望、それは施設か ら出て地域で暮らしたあなたの自己責任だというふうに投げ返せるものなんですか。こ れはやはりその程度のことを最低限のニーズを満たしていくことは、当然のことだと思 います。国家の責務だと思います。税金を集めて何に使うのか、そこにまず最初に使う べきでしょう。それが財源が足らないということで、この制度に乗り換えるという話が 出て来るのは、何なんでしょうか。悪いのは障害者がたくさん時間を利用したから、地 域でトイレに行きたいと言ったからいけないんですか? そうじゃないと思います。悪 いのはやっぱり予算のシステムだと思います。これを考え直さなければ根本的に日本の 福祉というのは方向を間違えると思います。  障害者の福祉さえ国家が面倒を見ない、それは市町村が介護保険で責任を負うんだ、 介護保険の中でもしも3時間以上のサービスが必要になった場合、市町村は3時間以上 の責任を負う必要はありません。あなたはすすんで介護保険に入ったんだから、それ以 上のサービスがないことは御存知でしょう、上限のあるサービスが保険原理ですという 話になるに決まっているわけです。  国家責任を負おうにも負いようがないわけです。基礎部分が出ないならば国家は措置 を発動することはできますが、介護保険下で措置発動はもう不可能です。3時間出た後 にどうやって措置を発動するんですか。こういうふうな重大な問題をはらんでいる。だ からこれを我々にとっては命の問題だということで訴えているわけです。  障害者にとって本当に役立つ制度、使いやすい制度というのは何かと考えることは大 切なんであって、予算が足りないから他の制度へ移ろう、その中身を議論しようという 話はあまりに本末転倒じゃないか。障害者にとって地域で暮らすということは、それほ ど国家にとって根本的などういうことを国家は今障害者に対してやろうとしているか。 福祉制度で何をやろうとしているのか。そのことが今問われているんだと思います。こ のことは重度障害者が地域で生きていく上で最低限のサービスを受けるため、トイレに 行くような最低限のサービスを受けるために必要な予算は国が責任を持って今後も保障 する、それが責任というものではないでしょうか。 ○京極部会長  それでは徳川委員、御意見も含めてお願いします。  ○徳川委員  今日は8団体の皆さんから貴重な御発言をいただいて、とても勉強になりました。非 常に重大な点に我々は今立たされていると思います。特に今日は全国の脊損連の大濱さ んと、障害者の協議会の藤井さんの方から重度の障害者についての対策の必要性という ことを言っていただいて、私も最重度の障害者の支援をするものとして本当に有り難 い、必要なことだというふうに思っております。  御質問したいのは、お二人が賛成で、あとは明確に反対なさったのはお二人だったと 思うんですね。あとの方は少しはっきりとした反対ではなかったのですが、私は反対に は二つあると思います。一つは理念的な面で、特に全国の脊損連の方とDPIの反対 は、一つは公的責任の問題、これは今中西さんがおっしゃったように公的責任が国にあ るんじゃないか、だから保険制度は馴染まないというお考えだったと思うんですが、私 は保険制度だから公的責任が果たされていないと言い切る、その理由を一つ伺いたいと いうこと。  それともう一つは、理念的に反対ではないけれど不安だというのがほとんどだったと 思うんですが、いろんなサービスの水準の問題とか評価の問題とか、いろいろあったわ けなんですが、その方々に伺いたいのは、もしもサービスの問題が解消されれば、介護 保険でいいというふうにお考えなのか、その辺を明確にしておかないと、私たちこれか ら論議するために良くないと思うんですね。介護保険統合についての論議は理念的にど うなのかという面と、それから条件が揃えばいいんだという面、この二つをはっきり分 けておかないと話はこんがらがってしまうのではないかというふうに思うので、もし良 ければどなたからでも私の質問に対してお答えいただきたいと思います。  それからもう一つ蛇足ですが、中西さんにちょっと申し上げたいのは、私は施設をや っているものではありますが、施設だからトイレが不自由ということはございませんの で、むしろ私たちの施設から出た人が介護がなくて垂らさなければならないんだ、施設 は良かったねという人もおりますので、少なくとも私は在宅は賛成ですが、トイレに関 しては今おっしゃったのは当たらない点もありますので、御訂正いただきたいと思いま す。 ○京極部会長  徳川委員から整理をしていただきましたが、大分議論が集中しちゃって、中西さんに は悪いのですが、お答えできる方からお願いします。 ○中西氏  施設にはいい施設もあろうかと思いますので、失礼いたしました。我々、施設をどん どん良くしていくと、彼らはどう考えるかといった時に、やっぱり施設でも在宅でも同 じサービスを受けられるのであれば、やっぱり在宅の方がプライバシーがあっていいな というふうに言うのが最終的な結論だと思うので、そこのところはおわかりいただきた いと思います。  それで介護保険では公的責任を果たしたと言えないのではないかと僕は言うけれども という話ですが、介護保険制度は自己負担金を求めてる制度でありますよね。ですから 自己負担金が払えなければサービスが停止されてしまうという問題をはらんでおりま す。これは家族が同居している場合には家族に負担がいくことになります。支援費制度 はそこのところを免れているんですね。本人負担しか求めないという形で、一歩進めた 形になっています。  介護保険は最初は本人なんだけれども、限度額を超えたところでは家族負担を求めて まいりますので、そこが大いに問題のあるところじゃないか。稼得能力が高齢の場合は 1億2億ためて人生を終ろうとしているわけですが、我々の方はある意味では最初から 働くこともできない重度の障害者がいらっしゃるわけで、その方々に最初から払えない ものを払えという前提が組まれている介護保険というのが、公的責任を果たしていると 言えるのかどうかということはやはり疑問だと思います。  そこの点は、先程申し上げた措置権発動の問題もあります。僕は障害のサービスだけ 良くなければいいなんて思っておりません。高齢の方々も皆さんがいいサービスを使え るようになることが将来的な方向としてあるべき姿だと思います。そのような姿を模索 していくために、支援費制度はある意味で介護保険より一歩進んだ未来型サービスだっ たと思うわけです。介護保険に支援費制度という進んだ制度を戻しておいて、介護保険 に入った後どういう未来の福祉制度を描くのか、僕は厚労省の方もこれで悩むと思いま す。やっぱり支援費制度に戻ろうと。  介護保険の目的は支援費制度であるというふうなことであるのであれば、やはりその 未来目標をきちんと今考え直して、財源問題は確かにあるけれども、そういう優れた制 度を作り出した日本の福祉制度というのを、福祉社会というのを非常に誇りに思うべき だと思います。これは世界中に冠たるいいサービスシステムで、これを残していかなけ れば本人のニーズに応じたサービスという、最終的な我々が求めるセルフマネジドケ ア、ダイレクトペイメントという世界に到達していかないと思うんですね。  中間業者を排するような、今の支援費制度や介護保険システムというのは、やはり利 用者の介助者は給料をもらう事業所の職員の方の顔色を伺うんですね。利用者の我々の 顔色を伺ってはくれない。やっぱり我々自身が介助者に、介護保険でもいいですから、 バウチャーで、それを払うことによってあなたの雇用者なんだよという位置づけを持た ない限り、対等な関係というのは持ち得ないだろうな。  僕は日本の福祉サービスの最終的ゴールをそこに置いていますので、そこへ向かって 支援費制度はバウチャー制度というのも法の附則に入っております、それが実現できる システムをなぜ今投げ打とうとするのか? 僕はそこに対して大いにもっともっと議論 して、本当にダメなのかを議論すべき問題だと思います。 ○京極部会長  他の団体の方でいかがですか。 ○小林委員  質問ではありませんが、中西さんに一言だけ御理解をいただきたいと思いますが、先 程この介護保険制度と一般行政域である関連の話が出ましたが、福祉ではない反対側の 医療の方ではどうなっているかといいますと、医療保険制度には所得が全然ない人は生 活保護の医療というのがあって、その人たちはそれで助けられるという仕組みができて いる。それから保険では見られない医療もできるような仕組みが療養費制度という制度 を作って、そしてそれが高度先進医療というものについては、いわゆる一般の医療の入 院費だとか検査費とか病院代は払うけれども、あとの飛び出た部分だけは自己負担にし てくださいよという制度、療養費制度というのがありまして、そういうものもある。  それからもう一つ、高額療養費制度といって、あまりにも高額になった場合には、上 限があって、そこは負担しなくていいですよという仕組みを作って、それが結局医療保 険制度の中で、今言った実態の生活に合わせていろんな制度を、いわゆる日本の健康保 険制度は作っている。だからこそ私はいろいろと問題があると言っても、世界で最高の システムを医療保険の方は出来ているのではないか。介護保険を今度見直していく時 に、そういうこともやっぱり参考にはなっていくのではないかな。  そういう期待を込めて、今後統合する時にはそういうことも考えていこうじゃないか というふうになることが私は一つの方法でないかなと思っております。今それがやれる かどうかは介護の方で、それはわかりませんけれども、そういう少し医療保険制度とい うのが一方にあるんだということを理解しておくことが大事だと思いまして、発言させ ていただきました。 ○京極部会長  先程の徳川委員からの御質問で、他の団体の中で何か御発言される方はいらっしゃい ますか。 ○藤井氏  中西さんとは少し意見が違うかもしれませんが、私ども日本障害者協議会はペーパー にありますように、高齢者の介護制度が本来的に保険原理、保険方式でいくのがいいの かどうかとなると、これについては議論が残るところですが、そもそも介護制度という ものを高齢者と障害者とに区分けをするというのは、これはややきつい言い方かもしれ ませんが、一つの差別扱いに近い発想ではなかろうかと思います。1997年の年末に介護 保険法案が通りました時に、当時の厚生省から出された言葉というのは、「はっきり言 って面倒くさい」というものでした。相当、上のクラスの役人がはっきりとおっしゃっ ていました、「今回は勘弁してほしい」と。  私は、やはり、健康保険や年金保険、労災保険がそうであるように、年齢によって分 けられるのはおかしいと思います。  ただ、今般の統合論議からは、統合というよりは、高齢者介護制度への併合、吸収、 そんなイメージしか受けられないのです。先ほどの意見表明でも述べたとおり、障害分 野には基幹的で基本的な政策課題がたくさんありますが、これらの展望がはっきりしな いまま、財政論のみで重要施策の一つである介護制度を統合していくとなると、障害者 政策の基本は一体どうなっていくのか、大きな不安を抱かざるを得ないのです。統合と いうのなら、それぞれの条件や水準をもう少し整備すべきです。個々の政策水準にして も、社会資源などの基盤整備についても、障害分野は大きな遅れをとっています。例え ば、所得の条件にしても、高齢者と障害者とでは、預貯金などを含めて実態として大き な隔たりがあるのです。  繰り返しになるのですが、あるべき像はそもそも基本的な制度や施策を年齢で区分け するというのはおかしいことですね。しかし、現状ではあまりにも障害者施策の問題が ある中で、先ずは条件をもう少し整えること、ここに力が注がれなければなりません。 こうした基本的な政策整備抜きには、統合論は本格化しにくいのではないでしょうか。 ○京極部会長  この議論の整理で、この委員会の中で前提になっていると思うんですが、案外不明確 な点があって、一つは支援費制度を見直すといっても、具体的に介護保険を障害者福祉 の一部に入れていく場合にタイムラグがあるわけで、1年たってすぐ明日からというこ とは誰も言ってないわけなので、何となくそれが前提で議論しますとおかしくなるし、 それから二点目はせっかく前回3臨時委員の方がペーパーをまとめてくれて、その中に は介護保険プラスαで障害者福祉をやるとはっきり謳っているわけですから、そこは無 視して介護保険の中だけで全部あたかも展開できるという議論で、介護保険には賛成反 対という議論は、この委員会の中では少なくともいらっしゃらないはずなんですが。  それからもう一つは財政的な問題は、金額の問題だけじゃなくて、今の支援費は裁量 的な経費でありまして、これは義務的経費にしろといったってならないわけですね。た だ介護保険の在宅の経費は義務的経費ですから、きちっと確保できるという、財政の金 額の問題もありますが、財政的な質の問題があるという、この三点は少なくともこの審 議会の部会では共通の認識じゃないかと思いますが、障害者団体の方が必ずしもそうと ってらっしゃらないかもしれませんが、私はそう思っていますので、ずっと長い間1年 間議論してきた中で、そこは変わらないと思っていますが。 ○広田委員  すみません、1時半からかと思って遅れて来まして、疲れていてちょっと寝ていたの ですが、最後の全家連さんのところだけお聞きできました。それで伺っていて顔が洗え ないとか、お風呂に入るとか入れないというお話が出てきたのですが、今、京極部会長 がお話になっていましたが,前々回でしたか、いわゆる障害者の介護保険というのは高 齢者とは違って、社会活動まで含まれた考え方をするということをお話されていたんで すね。  今それにまたプラスαをされていたんですが、そういう中で私は自分が精神障害者本 人として、小松さんとは逆に、私の他の兄弟が誰も一緒に暮らせないで、母親と私が暮 らしていたわけです。母親にはホームヘルプサービスがついていた。現在母が亡くなり まして、私は本当にホッとしていますが、割とホッとした子どもというのは多いんです ね。全国にはそういうふうな高齢の親をみなければならない精神障害者もいます。  私自身は現在ホームヘルプを使っていまして、間違えてここにおられる方も、これは 議事録に載りますから偏見になってはいけないと思うんですが、顔が洗えないとかお風 呂に入れないとか、いわゆる身体障害者の方のADLといって、日常生活動作のような お話をされていると、精神障害者本来の、いわゆる生活のしづらさを誤解される。  隣に精神病院の方がおられるから非常に言いづらいのですが、例えば長い間精神病院 に入院されていた方が退院して、夜眠れないという相談の電話をいただきます。それで もう6時頃から眠れないという話が来まして、「まだいいんじゃないんですか」と言う と8時に来て、10時に来て、「今あなたは何をしてますか」と言うと、「広田さんと話 してます」という。「広田と話してれば眠れませんよね。お布団を敷いて明かりを消し て寝てください」と言う。これが何を意味するか。長い間入院しているとベッドでねて いるからお布団を敷く習慣を忘れている。そして病院は自分で明かりを消すことがない から、灯を消す習慣を忘れている。そういうこともあります。それが精神障害だという ことではないと私は思うんです。それは長い間の生活習慣の中で、そういうことが出て きた。  自宅にいて確かに小松さん自身大変な思いで、全国の全家連の方々のお近くにおられ る精神障害者が大変なことも認識しています。私自身も多くの精神障害者をうちに泊め てますから。3年前に私はこの委員になった時に、今の村木課長の2人前の当時の企画 課長と先週も話していたんですが、その時に広田和子が最初に発言したのは、「また精 神障害者は遅れてしまった、また支援費に乗せてもらえなかった」という発言でしたよ というふうに言われて、その発言した私は忘れていたのですが、この介護保険がいいか どうか、それは私はこれから皆さんのお考えを、文章を読ませていただいてゆっくり考 えさせていただこうと思いますが、精神障害者自身がサービスを提供している、ピアサ ポーター、そういう人が介護保険が出て来ることによって自分たちの今までのいわゆる そういう生活が成り立たなくなるんじゃないか。そういう心配が一方にある。  そして一方には、現在自分がサービスを使っている。そういうサービスが介護保険に よって使えなくなるんじゃないか。そんな心配がある。私自身は生活保護で暮らしてい ます。ですからほとんどお金は国ですから、国家公務員のようなものです。そして今回 もまたこれで2万円ぐらい出ますから、それで収入申告はきっちりやっています。それ で小林委員がおっしゃったように医療費はタダです。そういう中で当然生活保護は介護 保険の、いわゆる負担金はないわけですよね。そして低所得者に対する配慮はきちんと やらなきゃあいけないということは当然のことなんですが。  改めて、ぜひ小松さんと江上さんにお願いしたいのは、お話なさる時に精神障害者全 体が何か偏見や誤解を持たれるようなことではなくて、なぜそういうことが起きるの か。さっきの話ではありませんが、なぜ明かりを消すことを忘れているか、なぜ布団が 敷けないのか。私も顔を洗わない日もあります。表に出ない日は私は顔を洗いません。 それは別に精神障害だから洗わないんじゃないんです。外に出ないから口紅もつけない から、今日は顔を洗わないでうちでアイスクリームでも食べていよう、そんな気持ちで います。家にいて外へ出ない時、顔を洗わない有名人だってもしかしたらかなりいるか もしれない。  だから何でもかんでもその人のできないことを精神障害に結びつけるのではなくて、 高齢者と暮らしている精神障害者のことなんかを考えると、そういうふうなセットで使 える制度というか、そういうものがあって、一人の人間として憲法25条に保障された、 そしてその人らしく社会貢献できる、そんな日本であって欲しいというふうに思いま す。以上です。 ○京極部会長  他に意見はどうでしょうか。 ○前田氏  日身連の前田です。先程、私どもの組織の見解を述べました。実は私も介護保険制度 ができる前、厚生省時代の身体障害者の審議会の委員になっておりまして、当時の議論 を思い浮かべているわけですが、当時はやはり介護保険制度がスタートはしましたが、 64才までの若年障害者について介護保険制度にどう乗っかっていくか、どういうサービ スを取り入れていくかという議論もかなりありました。  今回、支援費制度が昨年できまして、その制度が統合という議論になっているわけで すが、当時はやはり5年後に見直しをする時に64才までの若年障害者、そしてまた難病 の方々のサービスをどうするかということを検討していきましょうということでもあっ たわけです。ですから当時は統合という考え方は全くなかったわけでして、当初から5 年後にこの介護保険制度にどう入れるかという議論を検討していきますということであ りましたから、ですから支援費制度ができて、いま財政も含めてということの議論にな って統合ということの議論になっているわけですが、5年前の話は別にして、私どもは 先程言いましたように、一つはライフステージに基づく総合的施策の展開、こういうこ とで私は考えております。それはやはり私どもがこれまでの成果をふまえながら、さら に障害者施策の充実に向けていろいろな施策の実現に取り組んでいきたいということを 提起をしているわけであります。  一つは、先だって出ましたが改正障害者基本法に基づく施策の ? 具現化、これが 一つあります。それから先程申し上げましたが扶養義務制度の負担制度を撤廃してほし い、それから所得保障とか住宅保障がいっぱいありますが、そういったものも経過をし ながら将来に向かってやはり施策を実現するという意味では、一つは自立と共生社会の 確立、それから社会連帯間ということでは、国民の理解を求めていく、共感していただ くという施策の展開、そして将来安全安心なサービスの展開、将来にわたる健全財政に 基づく施策の展開、こういうことで先程かいつまんで申し上げましたが、やはりこれか らは3人の臨時委員の中間報告の原案、これは確かに私ども共感するところがいっぱい あるわけでして、この中間報告原案を見る前までは、先程申し上げたように全国大会で は現行の介護保険制度に統合することはサービスが低下するということで反対ですよ と、こういう決議まで実はいたしました。  その後、この中間報告の原案を見ながら、やっぱりこういったいろんな課題について 解決していかなきゃあならないというものがいっぱいあります。ですから日身連といた しましては、これらの中間報告原案を良としながら、これから日身連あるいは8団体の 皆さんと厚労省との協議の場で、今出されている多くの課題について解決できるような 進め方にもっていきたいなと、実はこう考えております。  それらの今問題提起をしている課題について、解決できない場合どうするか、こうい うこともまた一つあるわけですが、それはやっぱりすぐに解決できるものと、あるいは 時間のかかるものとあるかもしれませんが、いずれにしても一つのベースに乗っかって 私どもは粘り強く解決の方向で進んでいきたいなと考えておりまして、明らかに今の段 階で反対ということではございません。したがってぜひ前向きで厚労省も障害者団体と 協議していただきたい、このことを強く要望しておきたいと思います。以上です。 ○京極部会長  ありがとうございました。他に御意見はございませんか。 ○笹川委員  今回のこの統合問題について育成会は賛成ということですが、その背景には知的障害 者の数の問題があると思います。私もよくその辺の事情がわかっていないのですが、公 的には46万人と言われているけれども、先日のこの障害者部会で岡田委員から200万ぐ らいはいるんじゃないかというようなことがございました。その辺がちょっと我々とし ては理解できないんですが、もしそれだけの3倍4倍の数があるとすれば、統合以外に はないだろうというふうに理解はできるのですが、その辺の実態がどこまで把握できて いるか。それから何でそういう誤差があるのか、もしその辺がわかったらお聞かせいた だきたいと思います。  それから藤井常務にお尋ねしますが、障害者の数がどうも定かではない、これは私も そのように思っています。障害者の数が把握できていないのに、いろいろな制度を作る ということ自体、私は非常に大きな問題だと思うんですが、障害者協議会としては障害 者の実態、今の厚生労働省の発表をどのように評価されているのか、ちょっとその辺を 伺いたいと思います。  それからもう一つ、先程小林日盲連の代表から御説明いたしましたが、我々の団体で はどこでも統合には反対という声があがっています。よくよくその理由を聞きました ら、まず支援費制度そのものを直さなければならない。その一番の理由は視覚障害者が 最も多く利用するガイドヘルパー制度が支援費制度になったために措置制度よりもはる かに悪くなった。まず現状回復だ。それから統合の問題に入るべきだという声なんです ね。ですから視覚障害者が最も必要とするガイドヘルプ事業が充実されるということで あればまた見解も変わりますが、今のままの状態で統合ということにはとてもそこまで 議論に入れないというのが実態です。  したがって先程御指摘いただいたように非常に表現が曖昧だということですが、まず ガイドヘルパー問題を十分に検討してということで、実は今日は資料としては障害者の 地域生活の在り方に関する検討会に出した資料をそのまま出しています。その辺を一つ 委員の皆様には御理解をいただきたいと思います。以上です。 ○松友委員  今、笹川委員から知的障害の問題にご質問をいただきました。本当にありがとうござ いました。こういうことに説明する機会を与えていただいて大変感激しております。た だし、私は素人ですので、岡田委員がいらっしゃいますと科学的にも正しい報告はある かと思います。素人ながら、いくつかの理由を考えています。  一つは、これを一番強調したいのですが、わが国では「知的障害」の定義がないんで す。知的障害者福祉法においても、「施設」の定義しかない。「サービス」の定義しか ない。ですからそこで人数が何かと言っても、多いも少ないもないわけなです。このよ うなことでは、国家としての体をなしてないと私は言い続けてきました。ましてや、周 辺の障害に知的障害がないと言われている、軽度「発達障害」と言われてるADHD (注意欠陥多動性障害)とか高機能自閉症、LD(学習障害)の方々においては全く救 われないのです。  そして、知的障害は御存知のようにこれは年齢で切られている。18歳までに発症しな いと知的障害と呼ばれない。「痴呆」と呼ばれる。それにはどういう制度があるんだ。 何でこういうことを放置するのでしょうか。これは精神ももっとひどいでしょうが、こ の介護保険で一気に片づくというわけではありません。これは藤井さんがおっしゃるよ うに、制度的な問題の動きが問題です。私も藤井さんみたいな論理の展開をしたかった のですが、まあ本質的には一緒の考えです。  法改正を含めた本質的な流れの中で、お金の問題だけやっていてどうするんだという 意見があります。その通りですが、逆に言うとこれを突破口にしながら、根本的な障害 概念の問題を含めていい意味でガタガタにしてやって、もう日本の国家体系を組み立て 直す必要があるという意味で、賛成してるわけです。  変な話ですが介護保険、つまり福祉のことを言っておきながら実は知的障害がある人 たちは、例えば警察統計、あるいは婦人更生統計、いっぱいいらっしゃいます。知的障 害として統計にのらない、その人たちの厚生サービスをどうするのか。まさに二重三重 の混乱の中にある人たちの問題をどうするかということを全然議論されていません。  46万が少ないの多いのという形では、本質的な問題の解決にならないということも含 めて、これは我々知的障害関係者の怠慢だったと思いますが、明確にいろんな形で出し ていきたい、と思います。そういう意味では国もきちんとした実態調査をやって欲し い。そういう意味では、今後の課題としていきたいと思っております。  ですから、介護保険だけで解決するわけではないし、多くの問題が絡むわけですが、 そういう中で間に落ちている。知的障害の方でも例えば御両親とも知的障害で、それで 全然制度が利用できてない方もたくさんいらっしゃいます。それからいろんな犯罪の被 害者であがってきて、その人たちをサポートしていく中で大いなる問題を感じておりま すので、それはそういう意味では中西さんたちの御苦労とか、あるいは藤井さんの問題 提起は私たちも共有するし、そういう意味での共感を含めながらも、現実的にはここを 突破口にしていきたいという思いで言わせていただきました。ありがとうございまし た。 ○京極部会長  それでは今の質問で藤井さん、それから前田さん、お答え願います。 ○藤井氏  笹川委員からいただきましたデータに関してどう思うかということなんですが、私は 障害者の数に関しても、基本的なデータがもっと正確であってほしいと思います。例え ば、精神障害者の患者実態調査ですが、これは3年毎にやっていますが、一回ごとに50 万単位で変わったことがあります。ああいうのを見ますと、調査結果そのものを疑いた くなってしまうのです。  また、社会資源の整備状況などの把握も弱いと思います。例えば、私が属しているき ょうされんでは、障害関連の社会資源について、5年に一回ぐらい把握しています。昨 年の調査では、支援費制度に関連した福祉施設や事業所が一か所も存在しない市町村が 約15%もあることが明らかになりました。こうした実態に基づく基本データを手元に置 きながら、政策論議をすべきです。とくに、ニーズ把握などは重要です。また、少数で ある盲重複やろう重複などの障害に関しては、ほとんど正式な実態把握はなされていな いのではないでしょうか。雇用率などについては比較的データがあるように見えます が、問題現象の背景をえぐったり、個々の就労に関したニーズとなると、不十分さは否 めません。  したがってこの度の支援費制度のいわゆる失敗宣言という背景には、先程も言いまし たが、やはりデータがなかったことから来る悲劇だと思うんです。何もニーズ爆発では ないんです。そういう点でいうと、こういう議論をする前提として、もう少し我が国は 科学的な状況把握、データということを携えないとどうも山勘で、あるいはその時の財 政事情で彷徨っていく、そうなってしまうのです。  今後、これは別に今回だけではありませんが、定点調査やいろんな地域調査を含め て、データ集約を行なう必要があります。私はNGOとも提携できると思うんです。調 査やデータ集約の目的がはっきりとしているならば、事前の意思疎通がしっかりとして いるならば、かつてのような調査反対などということはないように思います。改めて、 こういう場においても、実態把握の必要性、基礎データ集約、集積の重要さを強調して おきます。 ○京極部会長  それでは前田さんお願いします。 ○前田氏  日身連の前田でございます。少し付け加えておきたいと思いますが、3人の先生方の 中間報告がありました。この中で気になるのは三位一体改革による地方分権の推進とい う中で、実は障害者福祉をはじめ福祉施策の国庫補助負担金について、全国市長会等か ら一般財源化が求められているというのが出ております。  実は私どもこれまで経験してきたのは、市町村の障害者支援センター、これが1,500 万でスタートをいたしました。ところが昨年度から一般財源化されたということで、非 常に市の方で困っているという財政を負担しているということで、従来の1,500万から もう1,000万を下った中で、この支援センターを運営してるという状況下に実はありま す。  そういう中で経験しているということでは、今回もこの市長会から一般財源化が求め られているということではありますが、この福祉施策の全てが一般財源化することによ って、本当に本来の地方分権の姿になっていくのかというのが非常に心配しているわけ であります。したがってこの財源あるところの市町村はいいでしょうが、ますますこの 格差が生じて来るという心配をしております。また知事会もそういう考え方でいるよう でありますが、この辺についての国としての考え方も聞きたいと思うわけですが。  それからもう一つは、統合になる以前の議論を先程ちょっといたしましたが、介護保 険制度の中で現在支援費制度でやっているものが、介護保険制度の中に移行してできる もの、そしてまた介護保険制度でどうしてもできないものがあると思います。したがっ てそれはどういう形で今後いくのかという、そういう問題も一つあります。一つの考え 方とすれば、支援費制度を残してまたやっていくのかという議論もあるし、あるいは別 な制度を作っていく、こういうこともまた考えられるとは思いますが、こういったもの の棲み分けができるかという、実際に議論していく中では、統合となった場合に本当に その辺の一線を引くことができなければ、やっぱり統合賛成ということにはなかなかな りきれないという課題も残ると思います。  したがってそういうことも含めて、先程から申し上げているように、多くの課題につ いては国と協議をさせていただきたいということですので、その協議をさせていただく そのタイムリミットがどう考えれはいいのか、その辺もお聞きしておきたいなと思って おります。 ○京極部会長  それではこのあたりで事務局の方でもし財政の問題とか統計の問題とか、今のメニュ ーの問題とか、どうでしょうか。 ○塩田障害保健福祉部長  時間もございますので、全体的な私からのコメントということにさせていただきま す。今日は関係の団体の方には御意見をいただきまして、本当にありがとうございまし た。また、委員の方からも大変貴重な御意見をいただいて感謝申し上げたいと思ってお ります。一つ一つの今日の御意見、いつも重い意見ですが、今日は特に重い意見をいた だきました。一つ一つの問題提起につきましては真摯に応えていきたいと思っていま す。  いくつか私の方から考え方を申し上げたいと思いますが、まず藤井さんが言われた、 これからの障害者福祉像の全体像を早く示して欲しいということは、全く同感でありま して、前回簡単に御紹介しましたが、2004年の骨太の方針で地域生活支援のハードソフ トの充実強化を図るという、これは閣議決定の文書で書いていただきましたので、これ から向かうべき障害者福祉のハードソフト面での充実強化の方向性についてはできるだ け早くいたしたいと思いますし、それに向けたタイムスケジュールもできるだけ早く示 すように努力したいと思います。  それから二点目ですか、仮にこれからいろんな関係者と議論をして介護保険の仕組み を活用しようということになった場合でも、部会長からもお話がありましたように、当 分の間支援費制度で私たちは障害者福祉の仕事をしていくということになりますので、 その支援費制度の枠内でこれからもいろんな工夫とか見直し、場合によっては充実強化 すべきところもあると思っていますし、いろんな努力を支援費制度の中でしていかなけ ればいけないということであります。  その際に裁量的経費ということで、制度としては私は致命的な問題を抱えていると思 いますが、そういう裁量的経費ではあっても、政府部内で在宅福祉のための予算を最大 限確保する努力はやりたいと思っていますので、それについてはやはり関係の方が一致 団結していろいろやる必要がありますので、その点についてはぜひ一緒にやって、予算 確保のために努力はしたいと思っております。支援費制度の中でいろんな工夫とか見直 しをする作業そのものが、多分新しい制度に移行する準備作業にもなりますので、将来 どういう制度になるかのいかんに関わらず、やはりいろんな努力を私たちはすることが 求められていると思います。  それから新しい制度に移行する場合には、今日もいろいろ出ましたが、克服すべき課 題は山のようにありますので、そういう課題についてどう対応していくか、あるいは新 しい制度がどういう設計になるかについても、これはこれからいろんな関係者の意見を 聞きながら厚生労働省としても作っていかなければいけませんので、残念ながら今の段 階できちんとしたものを出せないことは申し訳ないと思いますが、なるべく早くいろん な人の意見を聞きながら具体的な設計デザインは示していくように努力したいと思いま す。  それからこうした公式の場で皆さん方のいろんな意見もこれからも引き続き聞きたい と思いますが、こうした場合以外にも御提案があったような関係の団体との意見交換の 場とか、協議の場というのはぜひ私たちも設けていただきたいと思っているところでご ざいます。  前から申し上げておりますが、議論はまさにこれからということでありまして、ぜひ この障害者部会でいろんな問題点とか、こういう点を解決すべきだとか、そういう発信 をしていただくことが、この問題の議論のスタートになるということでありますので、 いろいろ課題はありますが、ぜひここの部会からの発信をもとに、これから地方自治体 とか経済界とか医療界とか、ここに参加してない障害者団体の方もいらっしゃいます し、広く国民各層でいろんな議論をしていただいた上で、障害者福祉の在り方について のコンセンサスを私たちはいただいていきたいと思いますので、ぜひ今後ともいろんな 形で応援をしていだたきたいと思います。以上です。 ○京極部会長  ちょうど予定時間の16時半になりましたので、質疑については以上にいたしたいと思 います。今回ははじめて正式に障害者部会に各団体の代表の方が御出席いただきまし て、貴重な意見をいただきましたことを御礼申し上げます。最後に新保委員から資料を 提出されていますので、一言御説明をいただきたいと思います。 ○新保委員  簡単に御説明をさせていただきます。ここに提出させていただきました資料は6月18 日付になっておりますが、昨日の私どもの協会で議案として提出されまして、この見解 と方針が決定されたところでございますので、私ども全国精神障害者社会復帰施設協会 はその(2)頁の4のところに書いてございますように、介護保険の導入に賛成し、以下 の5点を介護保険の活用に向けた取組への協会の方針とするということを決定したこと をお伝えしたいというふうに思います。  その意味では先程親の会であります全家連さんの条件つきよりも踏み込んでおりま す。考えようによってはというか、私ども自身はまさに施設運営者ではありますが、精 神障害者とともにその社会参加を促進しようと一緒に歩んでいるつもりであります。そ ういう観点からしますと心情的には松友委員のお話に近いものであります。  さらにそのことをちょっとだけお話をさせていただきますと、このまとめ案も含めて ですが、大方が支援費の課題の克服と重ね合わせて介護保険問題が議論され、またまと められているというふうにも思っております。そこにある意味では介護保険を障害者施 策に活かしていく中身が見えないんだから、そういう白紙状態ではなかなか賛成できな いという議論が多かったように思うわけでありますが、精神障害者につきましては、大 変残念ながらこのような議論の土俵にさえ乗せてもらえなかったのであります。  先程、中西委員が当初の発言の中で、精神障害者は支援費の時に声をかけられなかっ たというお話がございましたが、私はこの認識は誤っているというふうに思います。私 自身は実は声をかけられております。そして声をかけられて、3障害が合同でテーブル につこうということで、住谷局長の局長室で議論をしてきたところであります。ところ が他の障害者団体の方々から精神障害と一緒には議論できないと言われたのでありま す。私どもはその時に積極的に支援費に参画しようと考えていたのであります。こうい う経過がございます。これは事実です。  こういう経過をふまえ、なおかつその後の経過等をふまえますと、精神障害者の施策 というのは、ある意味でここで議論されている議論の枠組みの土俵に乗せてもらえなか ったというふうに考えているところであります。そういう意味ではまさに精神障害者施 策が裁量経費という枠組みの中でしか制度として担われてこなかった。この事実をふま えますと、何としても義務的経費として精神障害者施策を制度設計に乗せていただきた いというのが強い願いであります。  こういう考え方に立ちますと、まずは選択肢が支援費からはずされ、そしてでは他の 税財源を求められるのかといったら、即その財源が見えない。とすれば今この場で議論 されている介護保険について検討せざるを得ないという状況にあったわけであります。 したがいまして私どもの協会は、昨年11月からこの介護保険に関する検討を制度政策委 員会において開始いたしまして、その結論としてこの介護保険を導入することに積極的 に賛成していきたいというふうに結論づけたところであります。そういう事柄を御理解 いただきながら資料をお読みいただければありがたいというふうに思います。今日は時 間がございませんので、言いたいことはたくさんあるのですが、このぐらいで御理解を いただければ有り難いというふうに思います。 ○藤井氏  一言だけ言わせてください。今の新保さんがおっしゃった、支援費制度と精神障害者 との関係についてですが、私たちもこれは1997年の後半からの社会福祉基礎構造をめぐ る論議の中で、ずっとやってきたテーマでした。私ども日本障害者協議会は、支援費制 度そのものの問題性とは別に、精神障害者を切り離すのはおかしいということをさんざ ん主張してきたのです。今の新保さんの話しは初耳なんですが、その折の当時の厚生省 側の答えは、「精神障害者の事業はすでに利用契約制度に入っている、つまり先行して いるんです、したがって支援費制度に加える必要がない」、局長も障害保健福祉部長 も、関係課長も、こう繰り返していたのです。もっとも今となっては、あれは詭弁だっ たのかと問いただしますと、そうとられても仕方が無いといったニュアンスですが。い ずれにしても、障害者団体が反対したというのは理解し難いのです。 ○京極部会長  事実確認については以上で。それではありがとうございました。これまでの議論と今 回の障害者団体からのヒアリングをふまえて、次回は3障害共通の枠組みに関する大き な方向性について議論をしたいと思います。資料2の議事概要にありますような委員の 方々の生の意見を集約しつつ、まとめ、その案を次回お出ししたいと思います。非常に 重要な会議になると思います。この議論の結果によっては、介護保険部会にかなり強い インパクトを与えることができるし、また逆に結果によっては空振りになってしまうと いうこともあるわけでありますので、一つよろしく慎重に議論をしたいと思います。最 後に次回の日程について事務局より御説明をお願いいたします。  ○間課長補佐  次回は中間的なとりまとめの議論をお願いしたいと考えております。6月25日(金) 午後3時から厚生労働省9階の省議室におきまして開催をさせていただきたいと考えて おります。現時点での出欠状況がおわかりでしたら、お手元にございます出欠表に御記 入をいただきたいと存じます。なお、詳細につきましては事務局より御連絡をさせてい ただきますので、よろしくお願いいたします。 ○京極部会長  以上で本日の部会を終了いたします。どうもありがとうございました。 (照会先)     社会保障審議会障害者部会事務局                     厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部                       企画課 企画法令係(内線3017)