04/05/25 第18回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方 に関する専門委員会議事録             第18回厚生科学審議会科学技術部会         ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会                    議事録            平成16年5月25日(火)15:00〜17:20            厚生労働省 6階 共用第8会議室 〇事務局  ただいまより、第18回厚生科学審議会科学技術部会「ヒト幹細胞を用いた臨床研究の 在り方に関する専門委員会」を開催いたします。  まず、お手元の資料について確認させていただきます。本日は資料が3点と参考資料 が1点ございます。  資料1   ヒト幹細胞を用いた臨床研究を前提とした死亡胎児利用についての論点  資料2−1 死亡胎児の利用についてのヒアリング概要(前回と同じ資料)  資料2−2 死亡胎児の利用についてのヒアリング資料集  参考資料 ヒト幹細胞等を用いる臨床研究に関する指針(案)(未定稿)  資料につきまして、何か不備等がございましたら、途中でも結構でございますので、 事務局までお申しつけください。  それでは、以後の議事進行を委員長にお願いいたします。 〇中畑委員長  前回、前々回と「ヒト幹細胞臨床研究を前提とした死亡胎児の利用について」多方面 の専門家の方からヒアリングを含め、いろいろとご議論をいただきました。今回は、前 回に引き続きましてヒト幹細胞臨床研究を前提とした死亡胎児利用の可否についての議 論をさらに進めたいと思います。  まず、事務局から資料が出ておりますので、その説明をお願いします。 〇事務局  その前に1点ございます。今回、委員のご交代等がございましたので、こちらから御 紹介をさせていただきます。お手元に委員名簿がございます。澤委員のかわりに社団法 人日本医師会常任理事の橋本信也委員が今回からご参加をされております。残念ながら 本日はご欠席ということでございますが、よろしくお願いいたします。  委員の所属に変更がございました点が2点ございます。石井委員が明治大学法学部教 授に、北村委員が塩野義製薬株式会社顧問になられましたので、この点につきましても よろしくお願いいたします。 〇事務局  引き続きまして事務局から資料の説明をさせていただきます。お手元にございます資 料1、資料2−1、資料2−2についてです。資料2−1と資料2−2については、前 回配付させていただいた死亡胎児の利用についてのヒアリング概要と死亡胎児の利用に ついてのヒアリング資料集となっております。  資料1について説明させていただきます。お手元にある資料1ですが「ヒト幹細胞を 用いた臨床研究を前提とした死亡胎児利用についての論点」です。前回及び前々回のヒ アリングについて出てきた倫理面での論点についてまとめております。  左側の倫理面における問題点、心理面における問題点、というのは前回事務局から提 示させていただいたペーパーにあげている問題点に、前回出てきた新しい論点を若干加 えたものになっております。  まず左側の「倫理面における問題点」について説明いたします。(1)の胎児の生命を 犠牲にすること、というのが問題点ではないかという点、それと(2)の中絶の意思決定 への影響を及ぼすのではないか、という問題点が倫理面における問題点として、前回と 前々回においてあげられました。この(2)の中絶の意思決定への影響のところについて は、細かい論点がさらに出ております。  1つ目としては、経済的な理由によって中絶を誘発する可能性があるのではないか、 という点です。2つ目は、死亡胎児を研究利用に用いることによって罪悪感が軽減され て中絶の誘発を招くのではないか、という指摘です。3つ目は、インフォームド・コン セントによってかえって中絶を誘発してしまう可能性があるのではないかという点。4 つ目は、使用可能な細胞・組織の採取と保存を目的とするような中絶を誘発する恐れが あるのではないかという点。この4点について、中絶の意思決定への影響への問題点が 指摘されております。  その下に「心理面における問題点」ということで、中絶をする女性の心理についての 問題点をまとめております。  (1)は中絶時の女性の心理状態への配慮が必要ではないかという点。(2)は死体を研究 対象として取り扱うことへの心理的抵抗感。こういう点が今までの心理的な問題点とし てあげられてきております。  それに対する対応ということで、右側にまとめてあります。前回の議論でこれに対す る反論であるとか、あるいはそれらの問題点についてどのようにすれば解決できるの か、というご指摘を受けた点を右側に提示しております。それぞれ対応するものについ て矢印で結んでおりますので、比較しながら見ていただければと思います。  まず左側の(1)の胎児の生命を犠牲にすることへの対応として、(1)のヒト胚細胞の利 用とは違うのではないか。生命の萌芽をつぶすわけではないので、ヒト胚のように命を 犠牲するというのとは違うのではないか、という指摘がございました。  左側の(2)の中絶の意思決定の影響への対応です。まず1つ目の経済的理由による中 絶誘発の恐れについての対応は、無償性を担保するべきではないか、というご意見がご ざいました。  2つ目、左側の死亡胎児を研究利用に用いることの罪悪感の軽減とか、あるいはイン フォームド・コンセントによる中絶誘発の可能性があるのではないかという点。あるい は心理面で中絶時の女性の心理状態への配慮についての対応です。右側ですが、イン フォームド・コンセントの時期を考慮するべきではないか、というご指摘がございまし た。  中絶の意思決定への影響の3つ目のものとしては、倫理面における問題点の(2)の4 つ目のところであげた、使用可能な組織の採取と保存を目的とする中絶誘発の恐れがあ るのではないかという点です。これについては、そもそも業務上、堕胎罪が成立する恐 れがあるということがヒアリングの際に秋葉参考人からご指摘があったところでござい ます。  右側の(3)の中絶時の女性の心理状態への配慮、というものをあげております。これ については、心理面における問題点で指摘された点への対応として、リサーチコーディ ネーターを設置するべきではないか、というご議論がございました。  右側(4)の死亡胎児への礼意の保持をするべきではないか、これは左側に書いてある、 死体を研究対象として取り扱うことへの心理的抵抗に対する対応として議論が出てきて いるところでございます。  前回は、この問題点に対する対応だけではなくて、今後のヒト幹細胞を用いた臨床研 究の議論の方向性についてのお話しもございました。  まず1点目です。指針に強制力を持たせることはできないので、死亡胎児の利用につ いての最低限の規制を設けるべきではないか、というご議論です。もう1つは、何らか の方法でこの委員会として利用の可否についての考え方をまとめるべきではないか、こ ういう議論であったところでございます。  事務局でまとめた論点は以上の点でございますが、これ以外の論点も含めて倫理面、 特に死亡胎児利用についてのご議論を深めていただければと思います。以上です。 〇中畑委員長  ありがとうございました。こういうまとめ方について、少し問題があると思われる先 生もいらっしゃると思います。その点も含めてご議論をいただきたいと思います。  最初の(1)の胎児の生命を犠牲にする。こういう表現は良くないのではないか、とい うことが、前回、北村委員からありました。委員の言葉をそのまま読みます。「胎児の 生命を犠牲にすることというのはイメージがよくないですね。中絶が合法的に行われて いるわけですから、亡くなった胎児の細胞を使わせていただくと書かないと、犠牲にす るという表現はミスリーディングな感じがするんですが」というご指摘がありました。 まさに僕もそうだと思います。  ES細胞は、生命の萌芽をつぶす、こちらからも手を加えてつぶすということです が、この死亡胎児の利用ということでは、そことは全く一線を画さないと大きな混乱に なるのではないかと思います。その点については、「犠牲にする」という表現も良くな いというご指摘がありました。  そのほか、意思決定への影響、心理面における問題点、ここに非常に分かりやすく書 いていただいておりますが、これ以外のことも含めて今日は忌憚のないご意見をいただ き、最終的にさらに議論を深めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたしま す。  前回、長沖委員から発言がございましたが、今まで手続論的にずっと来ていたのが、 倫理的な根本的な死亡胎児をどう扱うのか、という根本問題に来ているので、そこには 当然ながらいろいろな意見が出てくるということで、長沖委員がいろいろと述べられま した。きょうは30分ぐらい遅れるということですので、来られてからその辺についても 議論を深めたいと思います。  どの点についても結構です。漠然とした資料1の1枚紙を見て議論をするのは少し難 しいかもしれませんが、いかがでしょうか。 〇岡野委員  確かに長沖委員がおっしゃるように、全くこういうことに関して倫理的問題点がない とは私たちは思っていなくて、それをいかに透明化するか。あるいはその倫理的問題を ミニママイズするかという努力をしてきたわけであります。まずミスリーディングな点 に関して、倫理的問題点、倫理面における問題点の(1)に関しては、まさに北村委員の おっしゃるとおりであると思います。  (2)に関しての中絶の意思決定への影響です。これは山崎参考人のプレゼンテーショ ンを聞く限りにおきましては、中絶を何らかの原因によって経済的理由、あるいは妊婦 の心臓病などがあるという多くの理由によって、意思を決定した後に、コーディネータ ーの方がコンタクトを取るという形をとっております。妊娠中絶を決める前に、こうい う細胞を採取するかどうかの意思を聞いておりませんので、この(2)の可能性に関して は100 %の否定はできないかもしれませんが、これはかなりミニママイズできる問題で はないか。これに関しましては、中絶の意思決定の影響として免罪符的にこういう提供 をすると思われては、実際、これを考えている方にとってこれはそぐわないのではない かと思います。  罪悪感の軽減、これは否定できないことであります。これはお母さんが罪悪感に悩ま れることは否定できないことであります。これに関しましては、何らかのこういうこと があるかもしれない。我々が考えないといけないことです。しかし、これは決定した後 でのお話しです。しかも撤回できるということを付けておりますので、この点に関しま してもいろいろな対応をしているのではないかと思います。  女性への心理状態への配慮ということは、山崎参考人の多くのプレゼンテーションか らかなりの配慮をしているということは、私は感じ取っているところであります。  もちろん、この死亡胎児への礼意の保持というのは忘れてはいけないことです。それ を忘れている研究者は僕はいないのではないかと思っております。胎児を用いた臨床研 究、確かに倫理的ないろいろな問題点があるから、この臨床指針において触れないわけ にはいかないという位田委員のご提案によりまして、我々が議論してきたわけでありま すが、この問題は非常に深い問題です。これは臨床指針に盛り込む前に、こういうすべ ての点で議論をし尽くすということを考えますと、2年たっても3年たっても、この臨 床指針ができないことになるのではないかと、私はそこを危惧するわけであります。  なぜ危惧するのかといいますと、臨床指針ができる前に比較的、かなりクルードと思 われる治療法を各大学のIRBが通して、それを実行し兼ねないという危機を感じま す。  この問題に関しましては、この程度の議論で最大限の倫理的配慮のもとに、これに関 して議論をするべしということです。これを用いる場合に関しては、各論的なところに 落とさないと議論は先に進まないのではないかと思います。  私サイドから申し上げさせていただきます。特に脊髄損傷の基金の方に関しまして は、私はよく問い合わせを受けます。何に関する問い合わせかといいますと、最近、中 国の医師におきまして胎児の嗅球の細胞を移植するという治療法をやっている。これは 1人に対しまして日本人の場合には280万円を払った場合に移植してくれるということ である。これをどう思うか、と私は聞かれました。  実際にその人のプレゼンを聞きに行きましたが、実際に彼らがどういう方法で何を目 指してやっているのかよくわかりませんでした。これは一緒に聞きました英国の研究者 の方も確かにそのように申しておりました。非常に不透明なところが多すぎる治療法で あります。かといって私は否定はできません。ただ何年間も車椅子の方が、移植をして から二日後に歩き始めるという、私にとってはとても信じられないビデオを見せていた だきました。そういう方に日本人が28名も登録しているという事実をどう考えるか。や はりガイドラインができていないから、良心的な人はなかなか始められない、というこ とが本当にあるのではないかと思います。  ですから、この議論をいつまでもしているよりは、私はきちんとしたガイドラインを 作って、この胎児の問題は個別に議論をするという仕組みにしないと、私はとんでもな いことになるのではないかと思います。以上です。 〇中畑委員長  ありがとうございました。非常に貴重なご意見です。ずっとこの委員会の議論とし て、今各施設のIRBに任された形で新しい先端医療が行われている。この再生医療に ついては、中央の委員会を作って、そこである一定の基準というものを担保しながら進 めていく必要がある、ということで今までの議論が来ております。「歯止め」という言 葉には語弊がありますが、そういう中央の審査委員会を通すということを含めて、私と してはできるだけ早く結論を出して指針を作りたいと考えております。  今の岡野委員のご意見を含めて、最初の(1)については、北村委員の意見で、この点 についてはES細胞とは明確に区別ができる、という考え方でよろしいのではないかと 思います。この点について、どなたかご意見がございますか。 〇石井委員  確認をします。ここでいっている胎児は、中絶胎児のことが対象になるということで しょうか。流産ではなくということです。あとのほうで流産という言葉が出てきたとこ ろもありますが、中絶胎児を対象とするということでよろしいのですね。 〇中畑委員長  中絶胎児、こういうことを目的に中絶をするということはあり得ないことです。中絶 をした後にインフォームド・コンセントを取って、研究に資するかという形で対応する ことになります。だからその点では死亡胎児と同じ扱いということです。 〇石井委員  中絶の意思決定をした後ということですね。 〇中畑委員長  そうです。訂正します。その点では解釈的には流産と両方を含める形の指針というこ とになると思います。 〇岡野委員  その点は前任地の大阪大学で少し議論をしたことがあります。実際に自然流産のもの を含めるかどうかということです。自然流産のものに関しましては、かなりの染色体異 常がある可能性があるので、将来的な治療を考える上では、その時にはもちろんながら 治療用の細胞採取ではないのですが、将来的な治療的なことを少しでも考えるのであれ ば、自然流産は染色体異常がある可能性があるので、そういうものは含めないほうがい いのではないか、というアドバイスをいただきまして、それは除外するとしておりま す。これは皆さんのお考えによると思いますが、私はそう思っております。 〇中畑委員長  その点については、今まではそういう議論をしたことはなかったのです。どなたかご 意見ございませんか。 〇位田委員  実際に中絶胎児を使っているのか、自然流産の胎児を使っているのか、ということに ついて、それほど区別してここで扱ってきたわけではないと思います。もちろん中絶を するということ自体に非常に大きな倫理的問題がある。したがって、これは十分に議論 をしないといけないと思います。しかし自然流産だから、中絶だから、という区別の仕 方はなかったと思います。  澤委員であったと思います。多分この委員会の初期の頃であったと思いますが、プレ ゼンテーションで出てきたのは、あれは流産の胎児であった、というご発言があった。 そういうことも含めれば、流産だからとか中絶だからという区別をするべきではないと 思います。  実際に、自然流産の胎児は使いにくい、使ってもあまり意味がない、という問題は、 それは科学的にもう少しはっきりさせていただかないといけない。いま岡野先生がおっ しゃっただけでは、ちょっと納得がいかない。科学的に問題があって使わないという慣 行があるとか、もしくはそういう暗黙のルールがあって、自然流産のほうは実際上はあ まり倫理指針の対象にはならないとしてもです。 〇岡野委員  確かにこの問題はそれほど議論はされていなかった。ですから澤委員からご意見が出 たというのは仕方ないと思います。ですから今の位田先生のご意見は確かにごもっとも です。考えてみれば、大阪大学でそういうご意見が出ましたのは、小児科系及び遺伝学 者から出たご意見であります。  だから、自然流産だからといって、では100%が染色体異常があるのかというと、こ れもまたエビデンスがないところであります。それぞれの原因にもよります。それぞれ の細胞治療にもっている段階において、染色体なら染色体、それから細胞増殖、腫瘍性 をきちんと検討するという検討事項を加えるなら、別に私は特に両方を区別する必要は ない。ただ細胞の安全性に関しては、どこかで必ず歯止めをつけないといけないと思っ ております。安全性に関しては、私はきょうは途中で失礼しますので、その時に申し上 げさせていただきます。 〇中畑委員長  いまの問題は、臨床で患者さんに使うときの安全性ということを基盤にして、流産の 場合には使えないのではないか、ということから出てきている問題です。根本的に使う とか使わないという問題とはちょっと外れるのではないかと思います。安全性をどう担 保するのか、ということはまた別の議論です。もし死亡胎児を使うということになれ ば、こういうことに留意して安全性を十分に確保する必要がある、という一項目を入れ れば、恐らく解決する問題ではないかと思います。  一応、両方を含めた形で議論をするということでよろしいでしょうか。 〇石井委員  確認したいことがもう幾つかあります。「生命の萌芽をつぶすわけではない」という ことです。これは再度の確認ですが、死亡していることが確認をされている胎児の使用 の問題ですね、ということが2点目です。  3点目としては、胎児というので一般的に表現をしていますが、これは母体保護法に よって中絶が認められる最大の期間まで1週から21週までずっと一括に考えてしまう、 区別はしないということでございますか。  もう1点あります。この死亡胎児の問題は、ドナーが死亡している場合の一項目とし て胎児についてだけ検討しているということですが、胎児については胎児本人に承諾能 力がないことは当然ですが、死亡の死体の場合についても、遺族の承諾といって、本人 の意思ということをここでは問わない形になっている。そこのところの問題はきちんと 議論をしなくてもいいのだろうかということです。それが前提になれば、母親の同意で 良いということは言いやすい。もちろん、胎児本人は承諾はできないのですが、という 点です。 〇中畑委員長  その点について、ここで死亡胎児として扱うその胎児の週数については、どうするの かということです。きょうは澤委員がいらっしゃいませんし、委員が交代されましたの で、的確なお答えができないのではないかと思います。事務局では今までのことから、 一応は12週で一つの線が引かれるということで、その前と後をどう扱うのかということ について、何か資料はございますか。 〇岡野委員  これは法律で決まっております。要するに、13週以降の場合は、死体遺棄法に準じる わけです。12週以下の場合には母体の一部、すなわち胎盤などと同様の扱いをするとい うことで議論をされております。それと倫理問題は別問題であると思っております。  ただ、この指針においては、当然ながら13週以降に関しては法律的な取り扱いは違 う。それは当然それぞれの申請において議論をするべき問題である。13週以降は違う、 何らかのノーティスはかけてもいいと思います。ここでは倫理的な問題を加味した場合 にはどうでしょうか。少なくとも国立大阪病院その他に関しては、13週未満のものしか 対象にしていないと私は理解しております。  13週以降から22週までは、一応、対象外としているということです。それをこのガイ ドラインに盛り込むのかどうかは、皆様にお諮りをしたと思います。明らかに法律的取 り扱いは違います。 〇中畑委員長  その点については、12週までは今まで議論があって、13週以降21週までの胎児をどう 取り扱うのかということについては、議論がなかったわけです。いまの石井委員のご意 見は、死亡したドナーという考え方でいえば、成人の死体から組織をとって利用をする ということと同じ範ちゅうで13週から22週までを、全くの一致ではないのですが、そう いう関係はどうなるのかということではないかと解釈しました。  その点について、死体の議論の中ではまたそこは出てくるかもしれませんが、岡野委 員の今までの流れとしては、12週まで13週未満ということで死亡胎児については限定 し、今までやってきたというご意見でした。だからこの指針の中でもそういう限定をし たほうがいいのではないかということです。これは死体ドナーのことにも関係します が、その点についてご意見ございませんか。 〇位田委員  13週以降の死亡胎児から幹細胞を採るというのは、医学的にはどうなのでしょうか。 かなり重要でしょうか。12週未満のほうが通常のやり方であって、逆にいえば13週以降 はここで認めなくてもいいと考えていいのでしょうか。 〇岡野委員  純粋科学的にいいますと、できてくる種類のニューロンのうち細胞体が比較的大きい 投射性ニューロンは大体は10週ぐらいまでに作られます。例えば.パーキンソン病にお いて欠落しているドーパミンニューロンは10週までで作れます。ですからそれを考えな ら、パーキンソン病の治療を考えるなら13週未満でいけます。  さらにより小さいニューロンやグリア細胞に関する再生医学を考える場合には、13週 以降のものが、これは倫理的な問題を切り離して、これは全くサイエンティフィックに 無意味であるというわけではありません。ですからそれぞれの対象とする疾患によって 変わってくると理解をしております。私は専門家ですのでそのように考えております。 〇中畑委員長  神経以外のいろいろな体の臓器ということで考えると、13週以後のほうがより有用性 が高いというものももしかしたらあるのかもしれません。それぞれの組織の発生してく る時期が違います。13週以後の胎児については、12週で区別をされますので、その辺に ついては、死体ドナーとの中での議論に含めたいと思いますがいかがでしょうか。倫理 的な問題は別です。 〇岡野委員  法律的に扱いが変わってくる以上は、別々に考えないとどうにもしようがない問題で はないかと思います。死亡胎児ということで一括した倫理的問題は、ここで考えてもい いのですが、それぞれの実際のディテールに関しましては、実際に書類がいるようにな ります。それは全然違います。役所に届ける書類がいるのかいらないのかというのは、 全く違います。それぞれのケースにおいて、それぞれの申請が出たときに、もしそうい うことになれば、それで議論をしないといけないところです。それにフレキシブルに対 応できる指針にしておかないといけない。これはマストではないでしょうか。 〇中畑委員長  そういう解釈でよろしいでしょうか。 〇青木委員  法的なことが入ってきますが、13週以前というのは死亡胎児ということでくくると、 なかなか区別はつきにくいですね。 〇岡野委員  我々が言っているのは、概念的なものであります。ただ、法律的な取り扱いが出るの は13週以降である。法律的な名前は残念ながら知りません。胎子とかだんだん変わって きます。それは澤委員が詳しいと思います。我々はある同一の概念として扱っていて、 ただ13週以降は法律的なしばりが変わってくる、ということで今のご質問が出ていたと 思います。 〇青木委員  それはいいのですが、この辺をしっかり定義しておかないと、あとになって死亡胎児 とはどこまでだ、ということにもなってくるので限界ですね。私はこれを読んで、13週 以前を死亡胎児ということに、ちょっと引っかかります。前にも議論をしていますが、 今の法律論的ないろいろなものを入れていくと、もう一回そこで混乱が生じるではない か、という心配があるということです。 〇中畑委員長  最終的に指針のとりまとめの段階で、どういう文言でここで今議論をしていることを 表すのにふさわしい言葉であるのかどうかということは、その時に判断すればよろしい かと思います。  我々の知識の整理を含めて、胎児の法律的な取り扱いとか、その辺についてもう一度 次回に整理して、資料としてお作りいただきたいと思います。 〇事務局  今の点です。お手元の資料2−2の14ページに、秋葉先生からヒアリングの資料とし て出たときに資料の中で整理がされております。これは現段階で参考までにということ ですが、こちらにありますように、死体解剖保存法の第1条で4月以上の死体のみが死 体とみなされるということです。これは澤委員からも前回の会議でもお話しがありまし た。12週未満でも日本産婦人科学会の会告によれば、死体解剖保存法に従う、というよ うな提言というか会告が決められているという状況でございます。 〇岡野委員  片方は法律で片方は学会の会告です。だから違うということです。 〇位田委員  あまり言葉づかいで議論をしても仕方ないので、中身をどうするのかという問題から 考えると、確かに岡野委員がおっしゃっているように、使用する胎児が何週目であるの かというのは、法律的には取り扱いが違う。そこは法律に従わないといけない部分があ ると思います。同時にこの指針というのは、一方で法律に従いながら、しかし死亡胎児 の組織細胞を使うのだということについては、1週であれ、15週であれ、変わりはない といえば変わりはないわけです。  するとその時に、この指針の観点からして何が問題かというと、インフォームド・コ ンセントを誰がやるのか、誰が何の資格でやるのかという話になります。結果的に死亡 胎児の利用、死亡胎児というのかどうかは問題ですが、1週から最後の段階までの胎 児、お母さんの胎内から外に出されて死亡しているという状態を前提にした胎児につい て、法律とうまく整合性をとりながら、誰がインフォームド・コンセントをするのかと いうことを決めれば、ある程度のイエス・ノーはいけるのではないかと思います。  死体になれば、当然ながら遺族の資格で例えばお母さんなり両親がやる。その前は母 体の一部という取り扱いであれば、お母さんと、当然、お父さん、カップルの同意がい る。それはしかし遺族ではないと思います。だが、結局のところは、誰からインフォー ムド・コンセントを取るのかというと、基本的には両親からということになろうかと思 います。  あまり細かく、法律が違うからインフォームド・コンセントの形態も何も違うという ように考えるのは、かえって議論をややこしくしてしまうのではないかと思います。 〇中畑委員長  その点についてはよろしいでしょうか。あとはインフォームド・コンセントを取る時 期については、前回も、あるいは先ほどからの議論の中でも、中絶についての最終的な 意思確認が行われて、それも複数回意思確認をした後ではじめて臨床研究のための利用 ということについてのインフォームド・コンセントが取られる、ということでずっと議 論が来ていると思います。その点については、あまり議論をすることはないのではない かと思います。何かありますでしょうか。  あとはインフォームド・コンセントを取るのは誰かということについて、これも前回 コーディネーターというような言葉も出てきているわけです。そういう具体的な名前を 出すのか、指針ということも考えれば、そういうこともあるわけです。 〇石井委員  中絶についての同意を複数回、通常の中絶とは違った手続きで、中絶についてもイン フォームド・コンセントを行うということですか。 〇中畑委員長  澤委員からも出たように、通常も意思確認というのは1回ではなく何回か行って、最 終的にそれを決定するという議論があったと思います。 〇岡野委員  ですから細胞を採取するかしないかということによって、全くこれまで医療的な指示 を変えない、というコンセプトでありポリシーであります。ですからそれに関しては、 全く変わらない。やたらこれは丁寧ではないか、というご批判はありますが、それはこ れを機会に、こういうことに関して医療に携わる人間が丁寧になれば、それはそれで良 い話ではないかと思っています。再生医療をする場合だけどうしてこんなにばか丁寧で はないか、というご意見をしていた委員があったと記憶しておりますが、それは本来は 丁寧であるべきであるというのは当たり前の話です。ですから、だからといってそれを 施行する病院においては、細胞を採る場合でも採らない場合でも全く同じようにやって いる、これが大事なポイントではないかと思います。 〇位田委員  この倫理面における問題点であるとか、心理面における問題点、整理はこれでよいと 思います。ただ対応のところで(4)の死亡胎児への礼意の保持、これは言ってしまえばよ くわかるようですが、一体どうやって礼意を保持するのか。これはある意味では制度面 もしくは手続き面でどうやって礼意を保持するのか。もしくは、これは倫理的な指示が あって礼意を失わないようにちゃんと考えなさいということであれば、それはそれでま た規定する意味もあると思います。  もう1点です。今後の方向性の枠の中の最低限の規制というものをどうするか。先ほ ど中畑委員長がおっしゃったような中央での審査にかける、ということもここに入るの かどうかです。それを規制というのかどうかは問題ですけどもね。  例えば、これは法律に基づかないから許可制にはできないと思いますが、例えば登録 制にするとか、登録をするときに幾つかの条件があって、その条件をクリアしているか どうかを中央の審査委員会が判断をする。いまESの指針でやっているような形にする のか、その辺の最低限の規制をどうするのか。私は規制がないといけないと思っており ますが、設ける場合に具体的にどうするのか、ということを少し考える必要があるので はないかと思っております。 〇岡野委員  礼意に関しましては、ヒトES細胞については、かなり総合科学技術会議及び文部省 の生命倫理委員会で議論をされているところがあります。恐らく、それに準ずるのがよ ろしいのではないかと思います。実験が終わった後に荼毘に付すという意味で焼却する とか、よほどの理由がない限り他の動物の細胞と同じ部屋では扱わないとか、いろいろ な議論がES細胞についてはありました。それを遵守して礼意を払う、というのは大事 なことであります。  もう一つ、こういう死亡胎児を利用するということは、倫理的な問題が必ず伴う問題 でありますので、これは無制限にやらないというのは非常に大事なことであります。  例えば良いセルラインがもし樹立した場合には、しばらくそういうことは行わないと か、幾つか国全体として統制するテクニックはあると思います。その意味ではかなりラ イセンス制度に近いものを中央できちんとして、こういう治療に使われるセルラインが あるからこういう中絶後の細胞を使うという操作はしばらくやめておくとか、既に樹立 された細胞を使った治療に専念するとか、そういうレギュレーションは必ず付けていか ないといけない。そうしないといろいろなことでは問題になると思います。  それくらいプラクティカルに、そこが一番重要なポイントであると思います。ずっと 悩んでおりまして、私なりの結論でございます。 〇中畑委員長  非常に前向きなご意見をいただきましてありがとうございました。具体的に中央審査 の在り方とか、あるいは全体的にどういう規制とまではいきませんが、ライセンス制度 的なものにしていくのか、ということに意見が及んでおります。この中央審査というこ とが出てきた背景には、そういうこともある程度は入った形で出てきたのではないかと 解釈しておりますので、この中央審査をするということについては、死亡胎児に限定し たことではありませんが、数回前に何回か議論をしました。この中央審査の事務局的な ものをどこに置くのかということまで議論をして、厚生労働省の中に置いたほうがいい のではないか、ということまで出てきたわけです。  その点については切り離して議論を煮つめたいと思います。きょうのところは死亡胎 児利用の問題点、ということで議論を深めていただきたいと思います。  いま倫理面における問題点と、それに対する対応ということで、事務局でしていただ いた論点整理にしたがって議論をしております。(1)の胎児の生命を犠牲にする、この 言葉は前回の委員会でもこういう表現は非常に誤解を生じやすいし間違いではないかと いう、北村委員からのご意見がありました。まさにその通りであると思います。  これについてはヒト幹細胞利用とは違う、ES細胞とは違う。生命の萌芽を積極的に こちらの意思でつぶすという形で扱うわけではないということで、この(1)の点につい ては各委員の合意が得られたと思います。  (2)の中絶の意思決定への影響ということについて、幾つかほぼまとまってきている のではないかと思います。この意思決定への影響ということでは、中絶の意思決定を何 回か確認した後で、当然、死亡胎児の利用についてのインフォームド・コンセントを取 る、その時点ではじめてこれがスタートするということについては、ほぼ合意されてい ると思います。  あとは無償性の担保、これについても問題はないと思います。インフォームド・コン セントを誰が取るのか、どういう人が取るのが一番いいのか、ということについて、ご 意見がありましたらお願いします。  コーディネーター的な産婦人科医、直接の主治医とは別な人がインフォームド・コン セントをとるべきではないか、という意見がかなり出てきていました。  一方では、中絶する女性、いろいろな心理的なことを考えると、最も彼女をサポート できるような人、すなわち産婦人科医とか、そこに一緒についている看護師なり助産婦 なり、そういう人のほうが良いのではないかという意見もあったと思います。全くの第 三者がこういうところに入ってくるのは問題があるのではないか、という意見もありま した。その辺についてご意見をいただきたいと思います。  今回、こういう現場に立ち会われてきた澤委員が今回から交代してしまったというこ とで、本委員会としては非常に損失が大きいと思います。 〇高坂委員  これは数回以上前にかなり議論したと思います。私の記憶が正しければ。皆さん方の コンセンサスとしては、主治医よりもコーディネーター、あるいはできればあの時の議 論は助産婦、そういう者がお話を聞いてあげてインフォームド・コンセントをとったほ うがベターであるという議論はかなりしたと思います。 〇中畑委員長  まさにそうでありました。それを最終的にここで確認をするということだと思いま す。産婦人科医ではない別の人ということでした。 〇岡野委員  基本的にこういう結論になったのは、比較的リーズナブルではないかと思います。こ れがベストであるかどうかわかりませんが、少なくとも産婦人科医の場合には、実際に 患者さんが医療を受ける立場ですので利害関係がある。そういう方がもしインフォーム ド・コンセントを取るとすると、実際の臨床研究はそういう場合が多いのですが、それ はいろいろな問題点が指摘されています。利害関係が発生する可能性がより低い人がや るというのは、基本的にはいろいろなこういう中絶をされる非常にデリケートな立場に ある方の立場に立つと、こうするのがベストとはいいませんが、こうせざるを得ないの ではないかと思います。 〇長沖委員  前のことがわからずに言います。高坂さんがおっしゃった助産婦という合意はできて いなかったと思います。私も産婦人科の医師がやるべきではないと思っております。そ の意味では、この前、大阪のヒアリングをしたところの方も、元々は助産師出身で、今 は心理学を勉強している方でしたね。ですから、どちらかというと心理のほうがメイン の方であったと思います。コーディネーターをつけるとすれば産婦人科領域ではない、 そのバックグラウンドを持っていたほうがいいと思いますが、ほかの人がいいと思いま す。  ただ私はこういうように議論がなっている行方というものを納得して話をしているわ けではありません、ということで申しておきます。  その前の話でちょっとあります。岡野さんがインフォームド・コンセントのことに関 しておっしゃっておりました。おっしゃるとおりです。ほかの中絶のものについても、 きちんとインフォームド・コンセントが行われないといけないと私も思っています。と ころがこの前澤委員がおっしゃったのは、中絶にインフォームド・コンセントなどはあ りませんとおっしゃいました。私があれが産婦人科の今の実態であると思っているの で、そこをきちんとしてほしいということを前回申し上げたのです。  ですから、私がこの前も申し上げたのは、現場の中絶を実際にやっている産婦人科の お医者さんたちから現状をきちんとヒアリングしてほしいということを、最初のときか ら申し上げています。結局はしていないということです。だから中絶の現場がはっきり しないところで、そう簡単にルールが決められてもいいのかなということがひとつあり ます。  もう一つは、中畑先生がやっていらした調査で、中絶の胎児を使った実験そのものに 関しての数が出てきて調査されておりました。その材料そのものがどこからどういうふ うに得られているのか、ということがあのデータにはなかったのです。そこがまず調べ られるべきであろう。  私たちが議論しているように、この前のヒアリングに来ていらした方のように、きち んとしたルールでやっているケースだけではなく、実際にどういう形で胎児の細胞を得 て、どうやって使っているのか、ということがはっきりしないと、ルールはきちんと作 れないと思います。  先ほど岡野委員が、ライセンス制度のようなものを作ってきちんとやればいいとおっ しゃいましたが、ここで決められるのは臨床研究だけです。基礎研究の部分で、誰がど こで何をやっているということを置いておき、臨床研究のところだけを決められるので しょうか、こういうことがこの前から私が投げかけている疑問です。 〇中畑委員長  最初に澤委員のことが出ましたので議事録も確認します。当然、中絶をやるからには リスクとかを説明して、最終的に二人で決めてもらう、そのこと自身はインフォームド ・コンセントを取るということです。澤委員がいっていたこの文書をみますと「中絶の 意志決定に医者側の説明云々や、いわゆるインフォームド・コンセントは関連性が薄 い。基本的にはカップル2人で決めてもらう以外にないんですよ。それ以前に関与して はならないということは絶対でしょうね。最終決定までには、「いいですね」という確 認は複数回あったほうがいいかもしれないですね」という表現があります。  当然、いろいろな説明をして、どこでもインフォームド・コンセントを取るわけです が、ただそのインフォームド・コンセントを取るのが、最近言われているような非常に 厳しいような形での説明、あるいはインフォームド・コンセントは、本来は文書できち んと取るという形であろうと思いますが、そういう形では行われていないということ で、ああいう表現をされたと思います。 〇岡野委員  お名前を出していただきましたので、少しコメントをしたいと思います。インフォー ムド・コンセントについて、今まで中絶に関して行われていなかった。いまはっきりい ってそれに関してここでは議論をする場ではないと考えております。先生がいらっしゃ る前に言いましたが、この指針ができないと日本の再生医療自身が非常にガタガタにな ります。ですから早めに、これはなんとしてでもこれを出さないといけないミッション があります。ですからその問題の各論的なことに関しては、それぞれの提案について議 論をするべきである。今までの議論は、先生がいらっしゃる前にしてまいりました。  再生医療というのは、私が考えるに、透明性があって、非常に人さまに尊敬されるべ き事実であると考えております。ですからこれだけきちんとインフォームド・コンセン トその他透明性をもって決めていくのは当然であると思います。  それに周りが倣って、産婦人科の医療が変わるということであれば、それはそれで良 いことではないかと思っています。  基礎研究はどうかというのは、基礎研究も当然それに準じて行うべきであると思って おりますし、我々はそのようにやってきたつもりでございます。  ここは臨床研究の指針ではございますが、ヒトの胎児由来の幹細胞を使っての基礎研 究についても、当然、同じような基準で行っていくべきである。ですからそれに準じた 倫理委員会、申請、その他、ここで議論をするべき問題ではない。ここは臨床研究のガ イドラインを決める場ですが、同じように倫理委員会に出していただくというのは当然 あってしかるべきであると思っています。そのようにして非常に透明性を考える。  胎児を使う問題に関しては、問題がないといっているわけではありません。いつも言 うのですが、そのためにやるわけではないのです。その問題をいかにミニママイズする か。しかし、だが有効性を捨ててはいけないということで、一旦、非常に有効なセルラ インが樹立した場合には、しばらくこういう中絶胎児由来の細胞の樹立というのは、し ばらくはやめるべきである。何年かしたらコンタミネーションその他、災害によって耐 えた場合には再開するということをまた議論する。それぞれに関しては、中央の倫理委 員会できちんと議論をするべきである。ここまで考えないとそう簡単に安易にスタート をするべきではない。ですからそこまで考えているということです。  一般的な産婦人科医療の実態うんぬんは、ここで議論するのはそぐわないと思ってい ます。それはまた別な場所で議論をしたいと思います。 〇長沖委員  岡野さんがおっしゃることは、最もであると思います。岡野さんがずっとこの委員会 でおっしゃっていたのは、つまりきっちりしているところときっちりしていないところ がある、ということをずっと問題にしていらっしゃいました。だとすると、今のでいう と、岡野さんが考えていらっしゃるのは、きちんとしてやるべきだということですよ ね。  だけど、実際にはそうではないところがある。この委員会に関していえば、臨床研究 のことに関しては、コントロールできるかもしれないが、基礎研究のところで、きちん としていないものというのは、ここではコントロールできないということになりますよ ね。 〇岡野委員  ですからそれは、きちんとするべきであるというキャンペーンを張る、などというこ としかないわけです。ここで議論をするべき問題ではない。先生がいろいろなところで 訴えればよい問題であって、ここで暇があればという言い方は問題になりますが、確か に、このガイドラインを早く作らないといけないという状況を考えると、いまその問題 に関して、じっくり1年も2年も議論をしている場合ではないと私は考えます。少なく ともこの臨床指針を考えるピンポイントに関してミニママイズして議論をする。その問 題に関して、この委員会が解散した後でいくらでも先生と議論をしたいと思います。 〇中畑委員長  そういうことも含めて中央の審査をするという形です。それは法律ではありませんの で、罰則規定はつけないという議論も前にありました。しかしそれは何らかの形で指導 という形で日本の医療はどんどん変わっていくという形です。再生医療についての指針 を出すということが、非常に今の時期は大事であるということで、ある程度はコンセン サスのもとに進んできたと思います。その辺の確認はよろしいかと思います。 〇高坂委員  一つだけ確認をしておきたいと思います。いま岡野先生がおっしゃったように、ほう ぼうで闇でやっているのではないかというような議論というのは、ちょっと脇に置いた ほうがいいと思います。最初に、科学的な根拠として神経系の疾患に関しては、胎児か ら由来の細胞が必須であるということがある程度実験で確かめられているということ で、胎児由来の神経幹細胞を使いたいという方々が非常にたくさん待っている、という 状況が大事なことであると思います。  ですからそのためには、先生がおっしゃったように一刻も早くしかるべき倫理指針を 出さないといけない、という状況であると思います。だから闇でいろいろとやっている からということではなく、我々は科学的根拠をもって使っているのだ、ということは強 調させてください。 〇中畑委員長  ありがとうございました。ほかにご意見ございませんか。 〇加藤委員  ちょっと抽象的な話です。どうも岡野先生と長沖先生のやりとりを聞いていると、大 事なのは信頼関係というか、研究チームに対して提供しようというカップルなり母親の 方がどこまで信頼できるかという問題だと思います。そこのところをしっかりしない で、ニーズがあるからとか、いろいろな議論をしても、多分、まずいことが出てくると 思います。  そういうことを考えたときに、もちろん指針の案の中にいろいろなものが既に入って いるわけですが、例えば心理面における問題点というところの対応のところに、死亡胎 児の礼意の保持という言葉ではなく、どういうようにしっかりした研究体制をその点に ついて作るのか。そのことを対応としてはっきりとあげるべきではないかと思います。 抽象的な言い方ですが、それがないと、いつまでたっても掛け合いになる気がします。 〇中畑委員長  この礼意の保持というのは何を意味するのかということでは、先ほどちょっと議論が あったと思います。こういう礼意の保持という抽象的な文言ではなく、少し具体的な実 際の取り扱いのときに、本当に、礼意をもって取り扱うとはこういうことである、とい うような細胞の取り扱いを含めた、あるいは処理の仕方を含めたこともその中に入れ る、ということは当然ながら出てくると思います。 〇位田委員  2つあります。1つは、基礎研究をどうするのだという話です。もちろん基礎研究に 関する指針も作ればいいのですが、いままたその議論をはじめると、また時間がかかっ て、この指針そのものがなかなか先に進まない。取りあえずは、いま我々が議論をして いるのは、ある程度臨床研究の段階まで来ている幹細胞の利用について、指針を早く作 らないといけないという状況なので、これはこれで作っておいて、この中の基礎研究に も使える部分、例えばいま加藤委員もおっしゃいましたが、心理面の問題とか倫理面の 問題、これは共通している部分があると思います。  ですから、この指針を作って基礎研究についてもこの指針をできるだけ遵守すると か、この指針の考え方を遵守するとか、そういう一項を入れておく必要があるのではな いかと思います。そうすればある程度の歯止めはできると思います。  もう1点です。岡野先生がおられる時に言ったほうが良かったのですが、この臨床研 究に死亡胎児から採る幹細胞を使うときには、この種の臨床研究という範囲を決める。 例えば神経幹細胞とか限定したほうがいいのではないか、という議論が少しあったと思 います。それはどうなのでしょうか。つまりそういうことを限定しないのか。  ある程度基礎研究ができているから臨床研究に移れると思いますが、臨床研究の問題 点は、それが安全な臨床研究であるのか、そこの部分が基礎研究に付け加わると思いま す。そうすると基礎研究がある程度はできているという段階のもののみを、この指針の 対象として臨床研究を認めるのか。それともそうではなく、死亡胎児から採るヒト幹細 胞については臨床研究に使ってよろしい。もちろんいろいろな規制をかけてですが、使 ってよろしいという形にするのか、前にそういう議論があったと思ったのです。 〇中畑委員長  その点については、死亡胎児を用いて臨床研究をするというからには、そこには十分 な科学的根拠がなければいけないと思います。それを裏付ける十分な動物を使った実験 がそのベースにないと非常にまずいと思います。そういうことの延長として、いま一番 近いのは、脳神経疾患の領域ということになります。ただそれに限定できるのかどうか ということについては、またちょっと問題があります。  例えば最近、心筋の移植とかということも議論になっております。欧米では筋肉の細 胞を使った心臓への再生医療というものも大規模に始まっております。筋肉からとった 場合には、非常に不整脈が起こりやすい。しかも非常に致死的な不整脈が多いというこ とです。動物実験の段階では、胎児の心筋を使うと、それが非常に電気的な信号もうま くいくということも報告されております。  ただ神経領域に限定できるのかどうかはまだわかりません。いずれにしましても、十 分な基礎的な検討と、動物実験、非常に詳細な動物実験に基づいて、そういうことがな くていきなり死亡胎児を使って臨床研究に入るということは、絶対にいけないというこ とで、その辺は何らかの形で明記して歯止めをかける必要があると思います。その程度 のことになると思います。 〇北村委員  位田先生がおっしゃった問題は、中央で審査をすればおのずから限られると思いま す。審査するということにしておけばですね。 〇位田委員  それで私が若干危惧しているのは、許可制ではなく登録制にしかならないだろうとい う話です。  ESの指針と同じようにかなり厳しくやればいいのですが、これが年間で何件くらい 出てくるのか実はよくわかりませんし、それをどのようにして審査するのかという具体 的な体制の問題にもかかわると思います。例えばこういう神経幹細胞であればいいです よ、というような範囲をある程度明記する。指針の中に書けと申し上げているわけでは ありませんが、何らかの形で明記しておいてあげないと、現場の方はかなりお困りにな るのではないかという気はします。 〇中畑委員長  指針の中にそれを盛り込むのはちょっと難しいですね。 〇石井委員  提供施設は限定されないのですか。 〇中畑委員長  恐らく、こういう臨床研究をしたいという計画が出てきますね。それが施設の倫理委 員会にもかかり、また中央にも上がってくる。その段階では、その施設がどこから提供 していただいた胎児を用いるのかというのは、その時点では当然ながら限定されるわけ です。最初からこことここの施設で提供された胎児はこの研究に資することはできる が、それ以外はだめだということは、なかなか難しい気がします。しかし、そういうこ とも一つの方法であるとは思います。 〇岡野委員  それは事実上できないと思います。そうなるとますます意思決定に影響をするとか、 そっちの方向までに影響しますので、それは良くないのではないか。しかしながら、こ の指針を見ていただきますと、相当に厳重な包囲網があります。実際に二重審査体制と かGMPレベル、これ全部を満たすのはそう簡単にはないと思っています。その意味で はかなり事実上限定をせざるを得ない状況である。そこがクリアしたところで始めてみ る。  もう少し緩和してもよさそうであるということになったら、徐々に緩和するなり、そ れぞれの委員会で議論をする。ですから限定は難しいのではないかと思います。 〇中畑委員長  そういうことでよろしいでしょうか。 〇石井委員  中絶胎児を用いるとすれば、審査の対象としては、提供におけるインフォームド・コ ンセントだけではなく、中絶のインフォームド・コンセントがどのように行われている のかも審査の対象にするべきではないかと思うということです。それが前提になってい るのですから。 〇岡野委員  各々のケースについて、今、石井委員の言われたことを審査するのは難しいことだと 思います。それは連結不能匿名化にするわけでございますから、そういうものは審査は 事実上は無理だと思います。ただ一般的に、こういうことでやっていたという形での審 査は可能であると思います。  何度も申し上げますか、いったんそういうふうに樹立した場合には、それはセルライ ンとして使える。それはGMPレベルで増えた場合には、それは非常に安全な細胞とし てチェックが行われた後にいろいろな組織で使われる。  ですからいったんオーソライズされたセルラインについて、いったんこうなった場合 には、全部の案件に関して全部にさかのぼるのではなく、このセルラインを使っている からこうであるというES細胞的な考え方をしないと、毎回毎回全部をさかのぼってい たら、審査をするだけで医学研究者及びその他の生命倫理学者は忙殺されて何もできな いということになります。  ですから、いったんは審査する必要はありますが、審査をしてそれで良いとなった細 胞株的なものに関しては、それでそれを使っているということで審査をせざるを得ない のではないでしょうか。  ただ、それは連結不能匿名化になる。そこがまた問題です。連結可能にするか、不能 にするのかはまた問題があります。 〇中畑委員長  以前も遡及調査ができるということも一つありました。そこの連結可能匿名化にする か、不可能匿名化にするのかということについては、遡及調査という観点からすると、 可能匿名化という形にしないといけない。この医療ということでは、安全性を担保する ということは最も重要なことですので、その意味では遡及調査ができるという前提に立 ってこういう医療を進める必要があると思いますので、その点では連結可能匿名化とい う形をとらざるを得ないと思います。  その時に、管理者をどういうところに置いて、しっかりデータが管理されるのかとい うことがまた議論されればいいと思います。 〇位田委員  何度も発言して申し訳ないです。石井委員がおっしゃったことと関連します。ちゃん と中絶の手続きが整っているかというか、中絶がきちんと行われているのかということ に関しては、結局は、中央ではそれは各施設がどうやっているのかというのはなかなか 難しい。そこは研究計画で出てくると思いますので、インフォームド・コンセントを取 っているのかどうかという問題とか、その施設でこの種のヒト幹細胞の研究ができるよ うな施設であるか、もしくはそれに対して提供できるような施設であるのかということ を、下の倫理委員会できちんと審査をしていただく。  その倫理委員会の審査記録そのものが上にあがってくる、という形で中央でも審査を するというのが現実的かなと思います。ESの審査と同じような形ですが、それでやれ ばある程度はコントロールできるかなと思います。 〇長沖委員  中絶をするところと、再生医療を研究する場所とは違いますよね。 〇位田委員  もちろん、中絶をした死亡胎児から幹細胞を採るわけですから、研究全体のサイクル としては、中絶のところから実際に臨床研究をするところまでのサイクルと考えて、こ れをひとつの臨床研究の計画であると考えれば、最初からどういうような倫理審査をし ているのかというところを入れていかないと、問題が残ると思います。ただ単にインフ ォームド・コンセントをした死亡胎児から採りました、というだけではうまくいかない と思います。 〇中畑委員長  恐らく、もし別々になるとすると、その死亡胎児を提供する施設についても、もちろ ん、そこの施設の倫理委員会での審査が必要です。それから再生医療を実際にやろう、 臨床研究をしようという施設については、それを含めた包括的な倫理委員会の審査を受 けるということになると思います。それでよろしいでしょうか。 〇石井委員  インフォームド・コンセントのための説明を産科・婦人科医以外の方が行うことは、 研究としては当然ということですが、一方で患者のプライバシーということが、この場 合には特に患者本人はあまり公にしたくない事柄が含まれますので問題になる。そこを どう確保するのか、第三者が入る前に産科・婦人科のお医者さんがある程度まで説明し て、第三者の説明を聞くかどうかという選択をきちんとした上で、第三者が入ってくる ような手続きにしていかないといけないと思います。  ただ手続きが煩雑になっていくと、中絶はなるべく早い時期に行う方がいい、それが 遅れるという危険性がある。研究におけるインフォームド・コンセントのための熟慮期 間をどう確保するのか。そこのバランスが問題です。 〇中畑委員長  もちろんこういう臨床研究のために、死亡胎児を提供するお母さんの健康が損なわれ るということは絶対にあってはならないことですので、その辺を十分に配慮した形で、 しかも中絶についての十分なインフォームド・コンセントを取って、その後に、臨床研 究についての更に説明をする。そのタイミングということです。  実際を考えると、例えば10回やって1人だけ採れたということで十分にいいと思いま す。毎回それが確実に採れるということはあり得ないと思います。それが非常にうまく タイミングが一致して、ご両親も十分にそのことを理解し、そして提供してくださると いうことが10人の中で1回でも得られれば、そういう胎児を使って神経幹細胞の樹立に 使う。そういう形でスタートできるのではないかと思います。その辺については、なか なか具体的にイメージするのは難しいと思います。これこれだけはしっかりやってイン フォームド・コンセントを取る、その辺を押えておけばいいのではないかと思います。 〇岡野委員  恐らく、病院長の責任でコーディネーターを雇うわけですから、病院長が秘密保持に 関してその人に対して担保する。これは当然ながら倫理委員会に上がってきたときにマ ストのチェック項目になるのではないかと思います。  何らかのそういうインフォームド・コンセントを取っている間に緊急性がある場合に は、対象から外すとするというのは、当然ではないかと思います。その点は、しかるべ き病院ならそういう配慮がある。そういうものしか通さないという方向にする、という のが大事なところではないでしょうか。 〇中畑委員長  石井委員から出た、全くの第三者はなかなか入り込めないのではないか、というよう なこともあって、直接の産婦人科医ではない助産師とかがコーディネーターとしては一 番良いのではないかというようなニュアンスで今までこの委員会でも来ました。またヒ アリングのときにもそういうことが一部あったと思います。  それは限定する。どういう職種の人というのを限定するのは難しい気がします。だか ら直接の主治医である産婦人科医以外の人という形で、しかも十分にこの再生医療とい うものを理解していて、両親に対しても十分に配慮できる人、非常にあいまいですが、 そういう人という形でしか仕方ないという気がします。 〇位田委員  いまの石井委員の質問に関連しますが、中絶をする時期と、それに片一方で審査をす るプロセスがあって、中絶をしてしまってから審査にかけるというわけにはいかない。 AさんならAさんが中絶をしたいといってこられて、ではその中絶をした胎児から幹細 胞をとって臨床研究に使いましょうというときに、当然、その施設の倫理委員会を通さ ないといけない。かつ中央の審査委員会を通さないといけない、ということになるとか なり時間がかかると思います。  しかし、中絶を決めて、中絶をしてくださいと言って来られる人は、ある意味では多 分ギリギリの時期に来ていると思うので、その辺をどう考えればいいのか、という問題 が出てくると思います。 〇岡野委員  1件1件審査するのではなく、ある決まったプロセスで行うということを前もって審 査して、決めてそれを遵守する、それしかしょうがないのではないでしょうか。 〇中畑委員長  私は別です。各施設でしっかりしたプロトコールなり倫理委員会にかけるわけです ね。しかも中央にあがってきて、そこの審査も受けている。そういう施設で、対象とな る患者さんが出た場合には、緊急にもう一度その施設の倫理委員会にかける。その時に は既に大元の臨床研究のものが審査を受けて合格をしていますので、その場合には特定 のドナーとなる母親とその辺のことに関してだけ審査をすればいいということになりま す。  そういう二重の審査を各施設でやってもらえれば、非常に迅速に対応できるのではな いかと思います。 〇位田委員  多分、問題は中央の審査をどこでどういう形でやるかだと思います。今の中畑委員長 のご説明では、プロセスというか手続き、もしくは体制をきちんとできるかについて、 審査を中央でやる。これはわかります。でも具体的にAさんが中絶をしてくださいと言 ってきたときに、中央に上がってくるのかどうかという問題だと思います。もし上がっ てこないとすると、中央の審査で審査するのは、体制の審査しかできない。つまりこの 施設であればいいです、ということしかできない。そういう中央審査でいいのか。個別 に審査をしないといけないのか。そこの問題だと思います。  というのは、こういう臨床研究に使いたいといって、岡野委員がおっしゃったように セルラインが出来上がっているのに、それにもかかわらず、自分のところで中絶胎児か ら幹細胞を取り出したいという臨床研究が出てきたときに、それは中央では審査できな いという形になってしまう。それでもいいのかという問題です。 〇中畑委員長  それは中央に上がってきたときに、中央の審査委員会で、現在は、こういう研究はや るべきではないという返事を各施設に出すわけです。それはほかでもちゃんとこういう セルラインができているので、それを使った臨床研究をやりなさいという形で、各施設 の倫理委員会に返事がいきます。するとその施設の責任としては、中央からのものを受 け入れるのか。あるいは、それを無視してやる施設は絶対にないとはいえませんが、多 くの施設はそれを受け入れる。 〇位田委員  それはよくわかります。具体的な臨床研究も上がってくるかどうかです。もし上がっ てこないといけないとすると、それまでは中絶はできない話になるのです。そこのタイ ミングの問題をどうするかということです。 〇鍋島委員  この問題は非常に重要な問題であると思います。京大では頻繁に審査を行ってきてお り、一定の経験とルールを積み上げておりますが、いろんなレベルの大学・医療機関の 審査委員会に大きく依存することになります。現時点で、この問題の審査を行うとすれ ば、まず、大学、あるいは医療機関の審査委員会で計画を審査することになると思いま す。審査内容は、第一に、基礎的な実験の積み重ねがあるかどうか、次に基礎研究に基 づいた治療計画を含む全体計画がしっかりしているか、それから、その計画を保障する 施設をもっているか、この3点が審査の中心的な対象になると思います。次の段階で、 この計画を中央審査にかけ、しっかりした計画なら、許可をする。  この許可を得た段階で、もし、相応しい患者さんが現れたならば、その時点では、お そらく中央審査は時間的な制約から無理で、現場の審査でその患者さんの死亡胎児から 幹細胞を採取することが妥当であるかどうかを緊急に審査することになる、こうせざる を得ないと思います。現場の審査によって、相応しいとの判断が下されたら、一旦、幹 細胞を採取し、細胞を増殖させ、次いで、様々な点を解析し、臨床に使用可能な細胞で あるどうかを判断します。この結果を現場の審査会にかけ、次いで、この一連のプロセ スと得られた細胞についての結果を速やかに中央にあげてもらい、中央審査にかけ、そ の許可をもって治療へのステップに移る。この様な方法でやるしかないのではと考えて おります。 〇中畑委員長  ありがとうございました。非常にわかりやすく説明していただきました。それでよろ しいでしょうか。 〇長沖委員  それは細胞の樹立と移植そのものとは、ある程度分けて考えないといけないというこ とですよね。さっき岡野さんがおっしゃっていたこともそういうことです。だとすると 連続したものとして考えるのではなく、細胞の樹立のための計画というのと、移植のた めの計画というものが別々に審査されるべきだ、という話のように聞こえましたが、そ ういうことでよろしいでしょうか。 〇鍋島委員  だから最初の計画の段階、すなわち中央審査の段階で、その方針とか方法が正しく行 われれば、しかるべき患者さんがいればそれを使って治療しますよ、という方針の審査 です。だけども、それが正しく行われたかどうかという確認は、どの患者さんから細胞 を採るのか、どのタイミングで採れるのか、というのは全くわかりませんので、その確 認をとってから治療をすることになるだろうと私は思っています。恐らく、二度確認が できるチャンスはあるだろうといっているのです。 〇位田委員  細かいプロセスの話なので確認します。いまおっしゃったシステムを仮に作るとする と、AさんBさんという中絶をしてくださいと来る人が来る前から、一応は臨床研究計 画は作っておく。そのときにたまたまAさんが来られて中絶して提供します、と言った ときにそれが使えるようになる。しかしその研究計画の中には来られたときに、例えば 神経幹細胞を取り出して、それを具体的にどの病院に使うとか、XさんYさんの病気に ということではなく、一般的にこの病気に使うということになるのか。または、いま患 者さんでXさんという方がおられるから、この人に神経幹細胞を使いたい、ついては死 亡胎児から得られる機会があればXさんに使います、という臨床計画になるのか、その 辺りはいかがでしょうか。 〇高坂委員  これも以前議論したことです。例えばまず患者さんありきです。例えばパーキンソン 病であれば黒質ドーパミンニューロンが脱落している。それ治すためにはどうすればい いのか。すなわちドーパミンニューロンが欲しいという話で研究の計画が成り立つわけ です。  そういう研究がきちんとできているかどうか、ということが上がってこないといけな い。その場合にもし胎児が使えるとすれば、その胎児のインフォームド・コンセントが きちんとしているかどうか、あるいは採った組織からニューロン、もっといえばドーパ ミンニューロンを作るまでの技術がその施設で確立しているかどうか。そういうことが まず計画としてきちんとできている、ということが前提になっているのです。  ですからまずAさんB子さんありきで、これを利用してどうこうではなく、まずこの 病気ではこういう流れがきちんとあるという計画があるべきであると思います。 〇位田委員  その通りであると思います。今度はAさんBさんの話ではなく、きちんと計画を作ら ないといけないとおっしゃったときに、Xさんという患者さんを目当てにして、こうい う計画を作るのかどうかという問題です。一般的にドーパミンニューロンを作るという 話ではない。 〇鍋島委員  これは私の意見です。恐らく、パーキンソン病の人をたくさん治したいとか、筋ジス トロフィーの人をたくさん治したい、患者さんがたくさんいるということを前提にして 医師は考えているのではないでしょうか。医者というのはそういうことをよく考えてい ると思います。  それで、一般的にそういう疾患の治療方針を確立したいというのは基礎研究の動機で す。だからその基礎研究に基づいた臨床研究に移るときも、そういう動機が必ずありま す。だけども、最終的にこの細胞をこの患者さんに打つか打たないかという判断は、一 回どこかで倫理委員会の許可を得ないといけない。それはその細胞がその患者さんにふ さわしいかどうか、あるいはその患者さんが移植治療にふさわしいかどうか、そういう ことの治療の妥当性を評価するべき委員会がどこかに必要であるということだと思いま す。 〇高坂委員  もう一つは、その患者さんの年齢とかも加味して、本当にその患者さんに対してそう いう治療をやっていいのかというのは、当然、倫理委員会の議論になるところであると 思います。だからその病気であれば誰でもいいということではないのです。 〇位田委員  それは中央に上がるのでしょうか。それとも下の倫理委員会でいいのでしょうか。 〇高坂委員  基本骨格は当然中央にその情報は上がってくると思います。計画の段階からですね。 〇位田委員  その計画をしたときに、Xさんという名前が上がったものが中央に上がってくるの か、ドーパミンニューロンの話が一般的な臨床計画の一般的な計画として上がってくる のか、そこがよくわからないところがあります。その時には神経幹細胞は取り出されて いるので、その段階では中絶の時期の問題ではないと思います。ただ中央で審査をする ときに、一般的な形でドーパミンニューロンを使っていいですかという話ではなく、こ のXさんという病気の人に、これから採られるであろう神経幹細胞を使っていいのか、 という形で上がってくるのか。どちらかによるかで中央の審査の体制が全然違ってくる と思います。 〇高坂委員  断定的なことはいえないのですが、両方のケースが出てくるかもしれません。本当に その病院でたまたまある患者さんがおられて、この人を治したいということで上がって くる場合もあるでしょうし、いまいったように一般的に普段から考えていて、この疾患 の人にこういうことをしたいという考え方で上げてくる。この二つがあるように思いま す。 〇中畑委員長  いずれにしても、基本骨格の中央での審査というものは受けますよね。それから実際 に患者さんが特定されて、例えば神経幹細胞であれば、神経幹細胞を実際に患者さんに それを使うというときには、また改めて中央に上がってくる。あるいは報告、報告でい いのか、そこでもう一度審査をするのかというのは、ちょっと議論をする必要がありま すが、いずれにしても、実際に患者さんへの医療ということについては、そういうこと になると思います。  ただ、多少危惧するのは、例えば神経幹細胞ということであれば、セルラインにして それを患者さんに使うということであれば、かなり時間的な余裕があるわけですよね。  ところが米国で行われたように胎児の脳を取り出してそのまま患者さんに使う、しか もあれは何百例も行われたわけですので、そういうことだと非常にそこの時間が短いわ けです。ですからそういうケースをどういう形でこのシステムの中でしっかり審査がで きるかということになります。  いずれにしても、患者さんに細胞が投与されるということについては、この再生医療 の安全性ということから考えれば、中央でもそれはしっかり審査をする必要があると思 います。だから、基本骨格は大分前に審査を受けていて、例えばいまのような、日本で は行われないと思いますが、例えばの例では米国で行われたような胎児の脳を取り出し て、そのままパーキンソンの患者さんに投与したというようなことのケース、そういう 極端な例を考えますと、基本骨格はすでに承認を得ている。実際に患者さんが特定され て、死亡胎児の脳が手に入りそうである、インフォームド・コンセントが取れて、施設 の倫理委員会が速やかな審査で一応は通った、それをすぐに中央にあげていただいて、 中央で何らかの手段で迅速に審査をして戻す。  ですから医療をやるときには、必ず審査というのは中央でもチェックが必要ではない かというのが私の考えです。 〇北村委員  いま委員長がおっしゃった、何人かの胎児から採って、いきなり患者さんに移植する というシステム、そういうことをやってもいいのかというのは当然ながら審査するべき ですが、いまは1例の胎児から幹細胞株を採るということも非常に難しい段階ですか ら、日本では多数の胎児から採取して1人の患者に移植する、幹細胞株を作らないで移 植するというのは認められないと思います。ですから現段階でそれを言うとややこしく なると思います。 〇中畑委員長  極端な例を出してかえって混乱を招いてしまって申し訳ありません。ただ、私の意見 としては、医療をやるときには、基本骨格がたとえ承認をすでに得ていたとしても、中 央でのチェックはする必要がある、そのことを言いたかったわけでございます。 〇大野委員  私自身の考え方としては、中央はあまり口を出すべきではないと思っています。基本 的な問題について、骨格について審査をするのは当初は仕方ないと思いますが、実際の 現場のところの倫理委員会なり、こういうところで任せられるところは任したほうがい いと思っています。  それが信用できないとか、当初のしばらくの間はきちんとした確認が必要であるとい うことでしたら、この今の案の中央審査委員会のところの(2)に「重大な事態に関する 情報について報告を受け、必要に応じて調査を行い」となっております。これは重大な ことと限定をしておりますが、いまは遺伝子解析の研究に関しては、定期的に調査に来 ております。私どもも受けております。そういう形で重大なこと以外にも、定期的に施 設に関して調査をする、そういう形にすれば十分に審査が確認できると思います。  中畑先生もおっしゃいましたが、タイミング的にとても中央に出す余裕がないという ことも十分にあると思います。 〇中畑委員長  その議論も以前からあったのですが、最終的には各施設の倫理委員会が責任をもって やるわけです。もちろん中央からのチェックというのはありますが、最終的には各施設 の倫理委員会、あるいはその施設の長が、あるいは研究者が責任をもって医療をやると いうことになります。  ただその段階で、現時点では各施設の倫理委員会の間に多少のバラツキはあるので、 ある程度はこういう形で中央でやっていく。そして全体のレベルが上がっていけば、自 然に中央での審査が必要なくなるだろう、というのが今までの大体の皆さんのコンセン サスではないかと思います。 〇青木委員  これは遺伝子組換のときもそうです。初めはいろいろとバラツキが多すぎるのです。 ですから1回中央にあげてからしていかないと、うまくいかない。それが先生のおっし ゃることはわかりますが、初めのうちは中央でやるという方向でいったほうがいいと思 います。 〇大野委員  それに特に反対をしているわけではないのです。当初はそのようにやって、それを継 続してもよろしいと思いますが、その関与、あまり個別の審議までずっと続けるという のは、望ましくないのではないかと思います。 〇中畑委員長  先ほど出てまいりましたインスペクションです。各施設を、例えば中央あるいは厚生 労働省、何らかの組織が視察にいって調査にいくということが行えることができれば、 それは一つの理想であると思います。今度はそれをやるとなると、またその組織をどう 作るのか、どこにどう作るのかということになって、また指針作りが更に遅れるという ことになりますので、その点についてはいかがでしょうか。今回はそこまでは盛り込ま ないということで、その辺については意見はございませんか。それは中央から行くべき だというようなご意見はございませんか。 〇青木委員  それは中央審査委員会で細則のようなものを作っておいて、中央委員会で議論をし て、本当にこれでいいのかということで調査をする必要があるということになれば調査 をするということで、細則のようなものを求めさせればよろしいのではないでしょう か。 〇中畑委員長  そういうところでよろしいでしょうか。 〇土肥委員  先ほど北村委員がおっしゃったところが気になっていました。委員の、死亡胎児を使 った研究の原則として、先ほど何10例も胎児を集めてするような研究は、そういう研究 はしないというか、そういうものを認めるためにこの規則を作ったのではない、という ことをどこかに、委員の先生方の同意が得られれば、指針の中に入れたほうがいいので はないかと思います。  この決まりを作っただけなら、ではこれでOKですねということで、1人の患者さん に何10例を集めるという研究が上がってくる可能性はあると思います。しかしながら、 私の個人的な考えでは、そういう研究はこの指針ではあまり認める方向には行きたくな いと思いますので、もし同意が得られれば、そういう考え方もこの指針に盛り込んでは いかがかと思います。 〇鍋島委員  これは基本的な考え方として、採った細胞をそのまま打つのか、エクスパンドするの かどうかは別として、その細胞をチェックしてから打つのか、という考え方の問題であ ると私は思います。何人から採ったからどうこうということで問題を考えるべきではな いと思っています。その辺の採った細胞の安全性をどう確保したのか、ということを規 定すれば、必然的に決まることだと思います。 〇中畑委員長  私がさっきあんな変な例を引いたのでこんな議論になってしまって、非常に申し訳な く思っています。きょうの岡野委員から意見がありましたように、例えばある死亡胎児 から神経幹細胞が樹立されれば、しばらくそれに関する研究は、その細胞を使ってやり なさいという形で、中央からのアドバイスがいくという形です。  この死亡胎児をこういう臨床研究に使うということに対して、できるだけほかの方法 でやることができれば、使わないというのは基本的な原則です。その辺については、何 らかの形で盛り込めるかどうか、それは検討してみたいと思います。 〇高坂委員  これも当初、なぜ神経幹細胞を使わないといけないのか、ということでかなり議論し たことです。いまおっしゃったように、1人の患者さんを治すために10人も20人も流産 をした患者さんのものを使わないといけないということをしなくても済むから、神経幹 細胞であるという議論があったと思います。これは確か増えるということ、増殖能をも っているということがメリットがある。それを1人の胎児の方からいただける、増やせ るということがミソなので、何10人もの患者さんをしなくてもいいというのが一つの科 学的根拠になっているはずです。  当然、そういう計画のときに、神経幹細胞を採るにしても、例えば複数の何人もから 採りますという計画というのは、本来はあり得ない計画になってくると僕は思います。 ただ鍋島先生がおっしゃったのは、カルチャーした後に、本当にこの細胞自身の品質と いう意味で異常がないかという意味でチェックする、そういう機会は当然必要なことで はあると思います。 〇位田委員  10人も20人も場合によっては30人もの死亡胎児から細胞を採らないとできないような 臨床研究はあるのでしょうか。 〇中畑委員長  今のところはそういうものはないです。 〇位田委員  先ほど鍋島先生がおっしゃったのは、まずAさんからいただいてみて、チェックした ら使えなかった。次にBさんからいただくとこれもだめであった。結果的に10名になる のは、これはある意味ではしょうがないと思います。最初から高坂先生がおっしゃった ように10も集めますといっておいて、そこからでないと採れない幹細胞があるのか。も しそういう種類の幹細胞があるとすれば、そこは認めざるを得ないという気もします。 〇高坂委員  これは幹細胞ではなく、それは臨床研究としては、スウェーデンとかアメリカで行わ れている例は、例えばスウェーデンの例というのは、2例の胎児から植えた場合にはあ まり効果がなかった。ところがアメリカの例というのは、5例の胎児から集めて入れた 場合には効果があった。そういう現実からひょっとしたら入れる細胞の量に依存するの ではないかということは議論されたのです。  もう一つ大事なことは、胎児の場合にあくまでもこれはある程度分化されてしまった 細胞を入れているということなので、これは分裂増殖能を持っていない細胞のほうが圧 倒的に入れたものとしては多いわけです。ですから幹細胞の場合には、原則的には多 分、分化能と増殖能を持っているわけですから、当然、理論的にはお1人の胎児の脳か らも十分に増えると理解してもいいと思います。 〇中畑委員長  そういう米国で行われているような医療というのは、この委員会での検討では、日本 ではよろしくないのではないかということもあって、中央で審査という過程を作ったほ うがいいのではないか。それのベースになるような指針に基づいて中央で審査をして、 日本のそういう臨床研究を進めていく。そういうことになったと思います。 〇位田委員  そうすると、この指針は、幹細胞を使った臨床研究なので、先ほどから話題になって いる胎児から取り出した細胞そのものを入れるという話は、この指針からは対象になら ない。したがって禁止されると考えてよろしいでしょうか。 〇中畑委員長  それも最初に議論があった。恐らく北村先生からであったと思いますが、いろいろな 細胞は幹細胞から作られてくる。だから幹細胞から作られた細胞も含めてというような ことで「等」をつけたわけです。北村先生のご意見で「等」をつけるということになっ たと思います。 〇鍋島委員  私もその「等」は付けておいたほうがいいと思います。なぜかというと幹細胞だけが 細胞ソースになるというのは、あまりにもサイエンスの進歩を期待しない考え方です。 もっと良い細胞ソースというのは十分にあり得るのです。それは研究が進めばあり得 る。そのたびにまたこれをやり直すということは、極めてばかげたことなので、「等」 を付けておいて、当面の運用ではそれは認めないとか認めるとかのほうが良いと思いま す。 〇石井委員  今の点は、当然、これはやむを得ずどうしても必要な研究である、ということが条件 で、かなり可能性もある研究ではじめて許される。そこのところは厳密にクリアできな いようなものは排除される。そこが1点です。  もう1点は、先ほどの手続きの関係です。妊婦に提供を求めるときには、計画全体に ついて、中央で審査されて認められた計画が前提にあって、それをもとに提供を求める 形にしていただく必要があると思います。もう1点、私が時間的問題と申し上げたこと です。普通は、最後の同意の日に中絶をするのだと思います。それがその後に研究のた めのインフォームド・コンセントの手続きが行われることになり、一定期間延びるとい うことの問題性を考えておかないといけないという点です。  さらに、インフォームド・コンセントそのものが大変に難しいということは長沖委員 が書いていらっしゃるとおりです。ここで何回聞いていても十分に理解できないような ことをいきなり聞かされて、インフォームド・コンセントですということになる、とい う問題をどうクリアできるのかということを、詰めて考える必要があると思います。 〇鍋島委員  先ほどの倫理のところでも、どう倫理性を確保するのかということが問題になってい たと思います。インフォームド・コンセントの時期だけの問題ではないと思います。実 は、我々は今ある手術患者さんから細胞を使わせていただくためのインフォームド・コ ンセントを私のところで書いているのですが、そういうものの中に何を含めたら患者さ んが納得してくれるのかという問題があります。  実はこの死亡胎児を使わせていただくときに、ふさわしいインフォームド・コンセン トはどういうものかというのは、実は私にはよくわからない部分があります。それでど うしても死亡胎児を使う際に含まれないといけないもの、普通のインフォームド・コン セントは当然ですが、この場合に特別に含まれないといけないことは何かということを きちんと決めておかないと、インフォームド・コンセントはできないのではないかと思 いますがいかがでしょうか。 〇中畑委員長  それを限定するのはなかなか難しい気がします。中央の審査というのは、このインフ ォームド・コンセントの書式を含めて審査されるということになります。対象とする疾 患というものも、もちろん違う可能性はあります。だからいま神経幹細胞の話だけが出 ておりますが、それ以外の死亡胎児を使った臨床研究というものもこれから上がってく る可能性はあります。ですからインフォームド・コンセントの書式、当然書かないとい けないインフォームド・コンセントの必要性ということで、いままでの指針の中にも少 しインフォームド・コンセントのことは書かれておりますが、その範囲を超えて死亡胎 児だけの書式を作るというのは難しいと思います。 〇鍋島委員  必要ないと考えるか、そうしたほうがいいと考えるのか、私は実はよくわからないの で、そこは確認したほうがいいと思っています。死亡胎児にどうしてもこれだけは確認 しないといけないことがあるのかないのか。特に連結できるとなったときに、私は非常 に問題があると思っています。 〇中畑委員長  そうですね。 〇加藤委員  インフォームド・コンセントのフォームに何を書くまで議論をするかどうかは別です が、誰が取るかという問題があったと思います。理想的なケースというのは考えられな いかもしれないが、もう少し我々として具体的にこのようにいくのではないか。すると 匿名化が保障されるとか。するとこういう方がインフォームド・コンセントを取ればい いのではないか、そういう議論はやらざるを得ないのではないかと思うのです。その時 に、心理面のケアがどこまでできるのかということが、はじめて我々として議論ができ るのではないかと思いますがいかがでしょうか。  どこまでも細かく議論をしようといっているわけではないのです。 〇鍋島委員  私の意見は、一回そういうことの議論をきちんとして、それできちんと決めようとい うのが私の意見です。ずるずるとこれをやるという意見ではない。一回そういうことを きちんと考えて、それで恐らくこの倫理問題に決着をつけて、次のステップにいけばい いというのが私の意見です。今のところは、恐らく委員の中で、どういうふうなのが良 いという具体的なイメージがない。私の中にも具体的なイメージがなくて、具体的なイ メージが委員の間である程度できたということを確認して、次のステップにいこうとい うのが私の意見です。 〇加藤委員  具体的に産婦人科医の方がおられるだろうし、助産婦の方もおられるだろうし、ドナ ーになり得る方がおられるわけです。だからそれをイメージして、どの方が一番インフ ォームド・コンセントを取るのがいいのか。物理的にイメージしてみないといけないの ではないでしょうか。 〇中畑委員長  その議論は前々回から前回について、先生はご欠席であったのかもしれませんが、大 分ありました。 〇加藤委員  きょうの議論を聞いていると、それが皆さんの間でイメージがあるように見えなかっ たのです。 〇中畑委員長  澤委員からは、直接の主治医がインフォームド・コンセントを取るのは良くない。そ うかといって全くの第三者ということになると、非常に患者さんのプライバシー、心理 的に非常に厳しい状況にあるということからすると、助産師さんとか、ある程度医療を 理解している人で直接でない人がいいのではないか、という議論があったわけです。 〇加藤委員  それはインフォームド・コンセントを取る方とドナーの関係に注目をしたときの議論 である。きょう私が申し上げているのは、例えば匿名性をどう確保するとか、審査体制 とどう関係してくるのか、という問題をそこに乗せたときに、実際に誰がどのように振 る舞うのがいいのか。そのイメージが皆さんの中にコンセンサスとしてあるのかなとい うことです。 〇中畑委員長  だから匿名性の確保というのは、研究者とは全く別の第三者が管理者になるわけで す。それは一般的な研究のどの指針でもそうであると思います。だから第三者、データ はその方が管理をするわけです。最終的にはその施設の長が全責任をもっていると思い ます。 〇位田委員  匿名化の問題に関していえば、インフォームド・コンセントを取られる方が守秘義務 を負っているかどうかの問題です。お医者さんなら職業上負っているのです。そうでな い方の場合、例えば先ほど心理学のプロフェショナルという話がありましたが、そうい う人たちにどういう形で守秘義務が課せられるのか。そこの施設の職員であれば守秘義 務が科せられているのかというのは、必ずしもよくわからない。その辺の制度的な整備 です。  ですから、ある特定の資格を持っておられる方で、その職業について守秘義務が法律 上でかかっている場合には問題はない、そういう人たちに限定をするのであれば、それ はそれで筋が通ると思います。そうでないケースが出てきた場合にどうするか、という 問題がある。  これは多分、遺伝子解析のインフォームド・コンセントを取るときも同じだと思いま す。例えばメディカルコーディネーターというのがいたときに、それは一体どういう人 なのかというほうが問題になる。 〇中畑委員長  きょう出てきた人のような場合は、もちろんその施設の長が最終的には責任を取りま すが、当然、守秘義務は伴っているのではないかと思います。法律的にはよくわかりま せんので、それは事務局で検討してみてください。 〇高坂委員  例えばこういうことをやりましょうという施設レベルですと、専門のカウンセリング の方がおられると思います。例えば遺伝子カウンセリングもそうですし、あなたはこう いう遺伝子異常を持っていますということをきちんとお話しをしないといけないとき、 そういうコーディネーターは必ず病院にはいます。そういう方々は、その人がこういう 病気をもっているということは絶対にしゃべってはいけないという守秘義務が、法律上 でかかっているのかよくわかりませんが。 〇中畑委員長  それを調べてほしいということですので、一応、事務局に調べていただくということ にしました。 〇長沖委員  ちょっと前の話に戻ります。さっきの胎児の細胞を使うという件に関していえば、胎 児の細胞を直接使うのではなく、株を樹立してから使うということで、それは確認でき ることなのかどうか、もう一回はっきりしてください。あそこから急に「等」の話に入 ってしまいました。胎児細胞のことに関していえば、そこでさっき言っていたように、 直接いっぱい使ってというようなことは、この中に入ってないのですね、ということを 確認してよろしいかどうかです。 〇中畑委員長  指針上は恐らく盛り込まれていないと思いますが、そういうことについては中央で審 査されるという形です。ただ株になった細胞だけを使うのかというと、そうではありま せん。この再生医療というのは、科学の進歩とともにどんどん進歩していくので、必ず しも株になった細胞だけを使うということには限定した指針にはならないと思います。 〇長沖委員  将来的にどうこうという話は置いてほしいのです。例えば今の段階でそれは違う、そ ういうことはやらないと先ほどおっしゃっていましたよね、そういうことを確認したい ということが一つです。 〇中畑委員長  神経疾患については、米国で行ったような複数の胎児の脳を採って、それを再生医療 に使うというようなことは、この委員会としては、そういうことはやらないということ でコンセンサスができたと思います。当然、それは中央の審査の段階で、そういう計画 というのはふさわしくないという形でチェックされるということになると思います。  ただ必ずしも株細胞だけが使われるのかということについては、それは科学の進歩も ありますし、先ほども例にあげたような心筋ということであれば、心筋というのはずっ と先になるかもしれませんが、胎児の心筋というのを採ると、非常に心臓の筋肉を治す 力が強いということも報告されておりますので、そういうことも、その場合には必ずし も株化はできないわけですが、そういうことまで絶対にやってはいけないという指針に はならないのではないかと思います。そのために中央審査ということでチェックをして いくという、私自身はそのように理解しております。  ただ、特定に株化された細胞だけを使ったものしか認めないということでは、あまり にも狭すぎるのではないかと思います。 〇長沖委員  その点に関して、きょうの話の中でも随分人によっておっしゃっていたことが違うと 思いますので、その点は整理しないといけないことだと思います。多分、それによって 意見も皆さんが違ったりする気がするのです。将来の話と、現時点の話と、現時点でそ のような研究までOKをここの委員会がしたかのようになることと、将来、そういう研 究に効果がはっきりあるとわかった時点でそれを認めるということは、別の問題になっ てくると思います。可能性があるから全部に間口を広げましょうということだと。 〇中畑委員長  いや間口を広げるということではないのです。当然そこにはずっと議論がありました ような基礎的な十分な積み重ねがあり、十分な動物実験のデータがあり、そういうもの の中でこういう臨床研究ということが計画されて上がってきたときに、中央でそれが本 当に妥当なのかということで審査をしてチェックをする、という体制をいま作ろうとし ているところです。  その場合に、非常に限局され株化された神経幹細胞だけを使ったものだけをここで認 めるという、非常に限定した指針というのは、実際には指針としてはあり得ないのでは ないか、ということを私はいっているわけです。 〇位田委員  これは土肥委員にお聞きしたほうがいいのかもしれません。例えばいま30個という数 字を出されたのですが、先ほどの高坂委員のお話しと合わせて考えると、セルラインに なったものは一応は認められるとして、それとは別の話です。死亡胎児の細胞は1個よ りは2個、2個よりは5個、5個よりは10個、10個よりは30個入れたほうが効果があ る。つまりベターになっていくということが分かった時点で、その30個を認めるかどう かという、そこが一番難しい問題であると思います。そこはどうお考えでしょうか。 〇土肥委員  私の個人的な感覚として、多分感覚的なものなのですが、死亡胎児に関して、これだ け議論をしているのは、30個というところに非常に感覚的な抵抗があるからだと思いま す。それがもし委員の中で共通なものであれば、そのためのこういう委員会であると思 いますので、日本人的であるかもしれませんが、そういう感覚があって、それを患者の 立場として盛り込むというようなことは、してもいいのではないかというのが私の意見 だったのです。 〇中畑委員長  わかりました。少なくとも、例えば複数の胎児を使った臨床研究は、禁じるというこ とですか。 〇土肥委員  禁じるというところまでというか。 〇中畑委員長  避けるべきである。避けるべきであるという文書を何らかの形ですね。二つ以上です ね。すみません。 〇土肥委員  すみません。胎児を使うというのは、一番歯止めがかからない研究であると思いま す。ほかの場合には、本人からインフォームド・コンセントを取れたり、亡くなってい ないとだめであったりということで、おのずと歯止めがかかるのですが、これが一番歯 止めがかからない気がして、一番恐ろしい気がすると思います。ですから何らかの制限 を設けることがいいのかどうかわかりませんが、胎児を無制限に使用するようなこと を、最終的な治療法とするような研究を認めるものではない、というふうな文言を入れ たらどうかと思います。 〇中畑委員長  それはぜひそういう形にしたいと思います。事務局メモをしてください。  時間も過ぎてしまいました。きょうは大分論点が整理されてきましたので、きょう整 理した内容を次回に皆さんにお諮りして、最終的に詰めたいと思います。また積み残し のところで死亡胎児以外の死体の問題とか、あとは安全性の問題、細胞を処理したりす るときの施設の問題をどうするのかという問題がまだ積み残しになっております。次回 はきょうのまとめと残された問題について議論をしたいと思います。きょうはありがと うございました。 〇位田委員  1点確認です。この資料1の最後に利用の可否についての考え方をまとめるという事 が書いてあります。ここの委員会としては、もちろんいろいろな限定した条件はつける としても、利用しても良いという方向で合意ができていると考えてよろしいのでしょう か。 〇中畑委員長  私はきょう、その合意ができたのではないかと考えました。よろしいでしょうか。非 常に限定されたものになりますが、ではそのようにさせていただきたいと思います。 〇石井委員  インフォームド・コンセントの確保など本当にできるかどうかということが、わから ないと可とは言えないというところがあると思います。 〇中畑委員長  そうですね、細かいところはまた最終的に詰めて、指針の実際の文書になった段階で またいろいろとご議論をいただくと思います。 〇石井委員  それと私が手を挙げたのは事務的なことです。今回のものをまとめてまた次ぎにつな げるために、ぜひ、議事録をきちんといただけないでしょうか。 〇中畑委員長  それは事務局よろしくお願いします。では事務局から次回の予定についてお願いしま す。 〇事務局  次回以降の予定でございます。以前の段階で委員の先生方の予定を調べさせていただ きまして、全員の先生方のご都合がすべて合うような日はないので、一番多くの先生方 のご参加が得られるということから、次回は6月17日、次々回を7月1日ということで いま考えてございます。6月17日につきましては、時間は午後3時からということで考 えております。7月1日につきましては、場所の確保等がありますので、時間について は未定ですが、午後になると思います。詳細は改めて確認をさせていただきます。 〇中畑委員長  立て込んで委員会をやることになりますが、最初、岡野委員が非常に訴えられたよう に、非常に緊急性が高まってきているということで、できるだけ早く指針をまとめたい ということがあります。開催の間隔を狭めて行いたいと思いますので、ご協力のほどよ ろしくお願いいたします。きょうはありがとうございました。                        ○照会先                         厚生労働省健康局疾病対策課                         tel 03−5253−1111                         担当:菊岡(内線2353)