04/04/20 第10回社会保障審議会福祉部会      生活保護制度の在り方に関する専門委員会議事録    社会保障審議会福祉部会 第10回生活保護制度の在り方に関する専門委員会    日時:平成16年4月20日(火)10:00〜12:00 場所:厚生労働省 専用第21会議室 出席委員:石橋委員、岩田委員、大川委員、岡部委員、京極委員、田中委員、根本委員、      布川委員        後藤委員、鈴木委員、八田委員、松浦委員は欠席 議題:(1)自立支援の在り方について    (2)その他 (岩田委員長)  それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第10回「社会保障審議会福祉部会 生活保護制度の在り方に関する専門委員会」を開催したいと思います。  早朝より毎回ありがとうございます。  それでは、まず事務局から、本日の委員の出席状況及び配布資料についての御説明を お願いしたいと思います。 (事務局)  それでは、事務局の方から御説明いたします。  まず、委員の出席状況でございますが、本日、後藤委員、八田委員、松浦委員の方か ら御欠席と連絡をいただいております。また、同じく本日は御欠席でいらっしゃいます が、栃木県の保健福祉部長であります麻生委員が異動になりまして、後任の保健福祉部 長である鈴木委員が新しく委員に御就任されますことを併せて、ここで御報告をさせて いただきます。  また、行政側のメンバーについても、前回のメンバーから一部異動がありますので、 御紹介をさせていただきます。  指導監査室長の池田でございます。  続きまして、資料の確認をさせていただきます。上から順番に 「議事次第」 「座席表」 資料1「生活保護制度の在り方に関する専門委員会名簿」 資料2「説明資料」 資料3「大川委員提出資料」 資料4「布川委員提出資料」 資料5「岡部委員提出資料」 となっております。  資料は以上でございます。お手元に以上の資料がない場合にはお知らせいただければ、 事務局の方からお渡しいたします。  以上でございます。 (岩田委員長)  ありがとうございました。  それでは、本日の議事を進めたいと思います。本日の議事に関しましては、前回、御 案内しましたように「自立支援の在り方について」及びその他がございますが、自立支 援の在り方を中心に議論をしていただきたいと思います。  これまで相談体制、あるいは保護の要件等、少しあちこち議論を進めてまいりました が、前回の議論で扶養調査の考え方については、ほぼ一定の合意を見たというふうに思 っています。今回、自立支援の在り方について御議論いただいて、次回、入口の保護の 要件、あるいは相談について、もう一度議論をしていただいて確認をしていきたいと思 っています。  自立支援の在り方についての議論ですが、これも非常に多岐にわたりますが、1点目 は、扶助の種類と関わって自立支援の問題が議論できるかと思います。例えば、教育扶 助とか生業扶助、あるいは前回でしたか、岡部委員の方から新しい扶助の提案等もござ いましたが、そういう扶助と関わった議論でございます。  2点目は、これも制度内でございますが、勤労控除とか、あるいは保護受給中の、例 えば貯金とか、保険とか、いろんな形の資産保有の問題があります。これは御承知のよ うな判決も出ておりますので、そういうことも含めた御議論をいただきたいと思います。  3点目は、いわゆる現金給付の外側に生活保護制度は自立支援のサービス部分を持っ ているわけですが、その問題について、どういう自立支援の積極的なプログラムをそこ に預けていけるかということがあると思います。ただ、この問題は生活保護制度という 枠の中でプログラムそのものを制度の中に開発していくという在り方と、それとも生活 保護制度の外のサービスと、むしろ何かくっ付けるようなサービス、変な言い方ですが、 積極的にそれをどういうふうにジョイントアップしていくかという観点の御議論と、二 通りあると思います。その辺を少し意識して御議論いただければ、大変幸いだと思いま す。  4点目は、相談体制のところでも問題になりましたが、人の問題と大変絡んでおりま すので、私どもがこういうのも必要、ああいうのも必要というふうな議論をしても、実 際それを担えるかどうかという問題も絡んでおりますので、その辺りも含んだ御提言等 々いただければ、大変幸いです。  5点目は、施設については別途議論をいたしますが、もちろん、非常に関わっておりま すし、自立支援についてはむしろ施設の方で大変積極的な取組みもあるかと思いますの で、適宜、御発言いただければというふうに思っております。  資料は事務局以外に委員の先生方からも3つ出ております。それで大変恐縮ですが、 前回、資料の説明に大変時間がかかりまして、議論の時間が非常に少なくなったもので すから、事務局の方にも御協力いただいて最小限の資料にしていただきました。事務局 の資料説明も、是非最小限の時間で必要な範囲でお願いいただき、その後の委員の先生 方の資料につきましては御発言の中で引用して御紹介いただければというふうに思いま す。よろしいでしょうか。  それでは、まず事務局の方から、その資料に基づいた御説明をお願いいたします。 (岡田保護課長より資料2「説明資料」に沿って説明) (岩田委員長)  ありがとうございました。  今、御説明いただきましたように、最初の稼働能力の活用に関わる論点というのは、 さっき私が言った区分で言いますと、自立助長の中の就労支援を行っていく際の稼働能 力の判断基準というものをもう少し明確に持った方がいいのではないかというふうなこ とかと思います。その他、生活支援あるいは健康面も含む多問題型のケースに対しての いろんな解決プログラムを、多分制度内にというニュアンスだろうと思いますが、もう 少し開発してはどうかというふうなこと。そして勤労控除に関して、そのほか、さっき 申しました資産保有の問題等々も、要するに、自立助長の観点からどういうふうなこと が考えられるかということになるかと思います。そのほか、生業扶助、教育扶助あるい はまた別の扶助との関係で自立助長を促すような改善というのがどういうふうにあり得 るかということになるかと思います。特に順番を付けませんが、ただ、ちょっとその仕 切りを意識していただいて、御自由に御発言いただければと思います。  どうぞ。 (布川委員)  その前に資料のことで質問よろしいでしょうか。6ページの平均勤労控除額の表の数 字ですが、例えば、母子世帯ですと25,644円というふうになっていますが、これは基 礎控除の額だということでいいのか、それともいろんな控除も混ざってこういう額にな っているのか、その内訳はどういうふうなことなのかお願いできますか。 (事務局)  お答えいたします。これは勤労控除額適用額でございまして、この場合でありますと 約十二万円弱の収入に相当する収入があるという前提の数字でございます。この実費控 除につきましては、全部含んでございます。  失礼しました。最初から申し上げますが、この25,644円というのは、6ページで言 いますと、「参考」の一番上にございますB番の勤労控除額と実費控除額を含めた実際 控除されている総額でございます(※)。 (※第11回生活保護制度の在り方に関する専門委員会において「勤労控除額のみである 」と訂正。) (布川委員)  収入額で言うと、12万、13万とおっしゃられたのよりも、もうちょっと少なくなると いうことですね。 (事務局)  失礼しました。ちょっとこの内訳が詳細には出てございませんが、おおむね10万円強 の収入と必要経費、保険料とか通勤費などの実費を含めた額ということでございます。 (布川委員)  それと関わるのですが、その前の5ページにあるように、勤労控除にもいろいろ種類 があります。私のメモの最後にも書いたのですが、例えば、資料5ページ(3)の「新規 就労控除」は継続性のある仕事という条件になっています。そうしますと、現在のよう に雇用そのものがとても不安定になっていて、どこまでが継続か不安定かという基準も わからないのですが、それはさておき、割と使いにくくなっているのではないかと思い ます。こういう個別の控除それぞれのデータも、もしあるようでしたら出していただけ ませんか。 (事務局)  それは御用意して、後日提出させていただきたいと思います。ちなみにですが、その 新規就労控除の場合にはそこにありますような継続性のある職業に従事したという条件 の下に適用になるわけでございますが、このほかに不安定就労控除というのがございま して、非常に不安定で一過性の就労につきましては、8,000円を控除するという制度も ございます。 (布川委員)  ありがとうございました。済みません。細かいところから入ってしまいました。 (岩田委員長)  そのほか、もしも御質問がございましたら、どうぞ。よろしいですか。  それでは、どうぞ御意見をいただけますでしょうか。  どうぞ。 (京極委員)  議事の進行についてですが、全体をアバウトにやるのか、この柱立てに基づいて議論 するのでしょうか。 (岩田委員長)  事務局からは、さっき申しましたように、かなり自立支援に関わる資料が出ておりま すし、各委員からも出ておりますし、知事会のアンケートを大川委員がまとめてくださ ったものもございます。ですから、この資料だけに基づいてというよりは、先ほど、私 が申し上げたような枠でやっていただくとありがたいですが。では、その枠ごとにやっ てみましょうか。  そうしましたら、まずは扶助そのものですね。生業扶助とか教育扶助という辺りがど うも関わりそうですが、もちろんそれ以外の可能性というのもあると思います。まずは その辺りで。 (大川委員)  まず、教育扶助の考え方ですが、これは要するに教育扶助の高校まで認めるかどうか という問題があるかと思います。これを最低生活の保障として位置づけるのか、それと も自立助長として位置づけるのか、この整理はまず必要かと思います。その上で私の意 見を言わせていただくと、やはりこの間のいろんな動き、あるいは高校の進学の状況、 雇用情勢等を見ますと、あるいは国民的な論議の中で高校就学というのが最低生活の保 障の中に位置づけていいだろうというふうに理解していいのではないかと、私は思って います。ただ、現行法で生活保護法が義務教育に限るという形で書いてありますし、教 育基本法も義務教育は中学校までとしている問題もありますので、その辺の整合性をど ういう形で取るかということはあります。やはり私は是非、最低生活のために必要なも のであるということを確認した上で、後は技術的に法律を改正するのか、教育扶助の通 知の中に高等学校就学を認め一定の扶助が支給できる形にするのか、あるいは個人的に はちょっと裏技かと思いますが、生業扶助の中に入れ込むのかということを検討してい ければというふうに思っています。  教育扶助については、以上です。 (岩田委員長)  今、御指摘のように、実は自立支援というのは大変難しい位置にありまして、これは 前に布川委員からも御指摘があったと思うのですが、生業扶助あるいは教育扶助も今の ように考えた場合に、最低生活という考え方と、なかなか難しい関係に置かれていくわ けですね。自立助長をその言葉どおりに解釈していきますと、学歴は高い方がいいし、 いろんな技術もたくさん付けておいた方がいいわけですが、それを生活保護制度という 枠組みの中でどの程度できるかという問題がなかなか難しい問題としてあります。しか し、教育扶助に関しては、高校進学までは利用者の観点からいいのではないかという御 発言でした。 (大川委員)  加えて言うならば、やはり最低生活ということが一番大きな基本にあるということで す。 (岩田委員長)  教育扶助に関して、今の点はいかがでしょうか。  どうぞ。 (京極委員)  やはり、最低生活の保障ということですが、貧困の再生産をいかに防ぐかという視点 も必要だと思います。イギリスなどでもよくやられていますが、私も読売愛と光の事業 団の児童養護施設の子供たちへの奨学制度の委員長をやっております。やはり高等教育 を受けられて更に進んでいくということは、長い目で見て、その親御さんの方はなかな か大変ですが、子どもさんたちが自立していくために大きな意味があります。  残留孤児の調査も致したことがあるのですが、やはり中卒まではいいのですが、それ 以降は、今度は非常に生活が苦しくなるということがありまして、現状に見合った数字 にするということが重要かと思います。  生業扶助ですが、今の就業というのは自営業とか昔の戦後やったような仕事というの は余りありません。かと言って、ハローワークですぐ受けてくれないということもあり ますので、この辺りはお金をただ付与するのがいいのか、もっと就業資金みたいので貸 し出して少し頑張ってもらう、この辺は選択性があるような気がいたします。 (岩田委員長)  貧困の再生産を防ぐというのは、これは非常に大切な視点だと思います。この点も前 にも御指摘があったと思います。まずは教育扶助について、今の義務教育制度というの は確かに最低限という一つの非常に明確な仕切りですが、実体から見ると高校進学を最 低生活の中に認めると、貧困の再生産を予防するということにもつながるのではないか ということかと思います。教育扶助に関しては、そのほか。 (根本委員)  最低生活は一般との相対性を追求するという形で基準を構成するという意味からも、 やはり教育扶助については高校までは認めるという方向が至当かなと思います。 (岩田委員長)  ありがとうございました。そうしますと、3つぐらいの観点が今あると思います。一 般の高校進学率というのは非常に高まっているという意味と、最低生活の保障としても 当然入るという意味と、貧困の再生産なり自立助長という観点からも高校進学は認めて いくという方向が妥当ではないかということで、この委員会としては少しまとめていく というふうにしたいと思います。 (岡部委員)  これは前回の資料でお示しさせていただきましたが、そういう観点からしますと単に 認めるという形だけではなくて、水準についても学校の補助教材であるとか、塾等の費 用であるとか、そういうようなものをトータルに考えていただいた上で、水準の設定を 是非していただきたいということを追加して要望いたします。  以上です。 (岩田委員長)  今の点について、いかがでしょうか。その水準ですね。この辺は少し生業扶助とも関 わってくるかと思います。いずれにしても、今のように、これは経済給付に関わってく るわけですが、結果的に高校の教育費に対して扶助を行うということになると思います。 先ほど京極委員の方からお話がありましたが、生業という言葉自体、今の若い人はもし かしたら知らないかもしれないほど、成立時の社会情勢の中から選び取られた言葉だと 思います。岡部委員は訓練・教育支援というふうにお書きになっていますが、いわゆる 就労支援につながるような職業訓練とかスキルアップとか何かそういうようなことと、 京極委員がさっきおっしゃったように、例えば、具体的に何かを始めるときの資金を貸 すとか、あるいは供与するとか、そういうこととおそらく幾つかの種類に分かれると思 います。それに対する扶助ですから、そういう枠を決めて一定の現金給付をする。ある いは給付ではなくて貸付というのもあり得るのではないかという話もあったと思います が、その辺りについてお話を進めていただければと思います。 (布川委員)  教育扶助については高校進学までというのは、当然だと思います。ただ、今、高校に 進学してから中退するような高校生がとても多くて、例えば、その人たちが後になって もう一回高校に行きたいとなったときにどう対応するのか。生業扶助で対応するのか、 今の位置づけから言えば教育扶助で対応できるのかなとも思うのですが、そこも確認を していただけたらと思います。 (岩田委員長)  それは、何かシチュエーションがいろいろあり得ると思うのですが、つまりどういう ことになりますかね。教育扶助でそこまで認めるということになれば、当然そうなると 思います。 (布川委員)  年齢によってもいろいろ違ってくると思うのですが。 (岩田委員長)  そうですね。つまり、高校と同等のというふうに考えて、高校というふうに言ったと きに職業専門学校みたいのをどういうふうに考えるかとか、そういうような。 (布川委員)  能力訓練みたいなイメージになるか、一般的な教育となるか。 (岩田委員長)  基礎的な。 (布川委員)  ということになるのではないかと。 (大川委員)  ちょっと細かい例ですが、私が過去、生活保護のケースワーカーをやっていたときに 夜間中学のケースを所内で検討して教育扶助の認定が出来ることを確認した経緯がござ います。ですから、今の考え方でいけば、高校を基本的には卒業して、言ってみれば就 職に必要な資格であるとか社会的なそういったものを得るのが目的であるわけです。今、 言ったケースについては従来の生活保護の考え方で十分対応できると思いますし、私が 先ほど生業扶助ではなくて最低生活という中にそれを入れ込むべきではないかと言った ことも、今、布川委員が提起された問題と絡んでいると思うので、そういうふうに理解 していただければなというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。 (岩田委員長)  よろしいですか。  では、少し生業扶助というネーミングも含めて御意見ございますか。  どうぞ。 (大川委員)  では、引き続き生業扶助の方で意見を言わせていただきたいのですが、現在の生業扶 助が使いにくいということはよく言われますが、基本的にはこの枠組みが今の雇用とか 就労の情勢に合っていないということは言えると思います。例えば、生業扶助の一番頭 にある、いわゆる生業費ですが、これは小規模の自営業を営むことが前提になっており ます。現在このような形で、言ってみれば世帯の自立を図るという方は非常にまれです し、むしろ生業扶助の名前もですが、生業扶助で想定している支援の在り方について、 もう一度整理した上で、それに必要な扶助を考えるという形で論議をした方がいいかな というふうに思っております。その中でもう一つは、生業扶助の中に実はいろいろ細か い制限がありまして、例えば、就労に直接つながるとか、運転免許証の取得であるとか、 あるいはさまざまな専門学校、最近はヘルパーの学校を受ける方もあるのですが、それ を福祉事務所が認定するに当たっての要件がまだ厳しいのではないか、限定的ではない かということ。もちろん、以前に比べれば随分緩やかにはなっておりますが、実施機関 はどうしても就労の具体的に結び付くということが確定していないと、お金を出すこと に非常に消極的になります。ですので、この辺について、やはり再度整理をしておく必 要があるように思います。 以上です。 (岩田委員長)  そうですね。そして、この辺、大変難しいと思うのですが、特に就労に関する外部環 境というのは非常に大きく変化しますので、この訓練の内容やレベルも非常に変容して いると思います。ですから、これを生活保護の制度内でかなりどの辺までできるのかと。 プログラム自体は外部にかなり依存したとして、それをどのくらい生活保護の費用の範 囲内でできるのかという問題と、外部サービスがむしろ、これは他方との関係になりま すが、生活保護世帯に関しては一定の何かプレミアムを付けてもらうというか、特別な 待遇をしてもらって、そこと結び付く、といった幾つかの方法は多分あるだろうと思い ます。今の生活保護の運用の中でも。  ですから、1つは、今の教育扶助で言えば高校進学のように、制度内で最低どういう ことはやっておいた方がいいかについて今の現実的な整理をすれば、就労がほぼ決まり かかっているとか、この要件さえあれば決まるということがあったときは今でも認めて いるという要件を、余り遠い将来ではないが具体的なプランがあればそのプランを認め てOKを出していくというようなことはあり得ます。  ですから、生業扶助に関しては、後のこととも関わりますが、全体的な自立支援して いく上での計画立案ということが個々のケースの中でしっかりあって、その計画立案を 担当のソーシャルワーカーとよく相談し合いながら、御本人がつくっていく。これは社 会福祉法の趣旨で行きますと、御本人が自分でつくっていく。そのプロセスの中でおそ らく必要不可欠であろうというスキルのレベルアップとかブラッシュアップとか、ある いは新しいスキルの獲得とか、そういうことがあった場合に検討していく。つまり一つ 一つの枠を、これも認めよう、あれも認めようというのは、なかなか生業扶助という考 え方になじみにくいという感じもします。しかし、全体の自立支援を、これは普通今の サービス利用の場合、介護保険や何かでもみんな計画をつくるわけですが、それと同じ ように見直しを含めて計画をつくった上でやってみると。それでだめだったら、また見 直しをするという方向に自立支援全体を持って行けば、その中で認められる範囲という ものをなるべく自立支援にウェートを置いて、この生業扶助の場合は自立支援に非常に 近いので、自立支援の観点に重心を置いて利用する。要するに、ある項目を、例えばこ ういう資格はいいとか悪いとかいうふうに置いてしまいますと、ケース・バイ・ケース なことがあると思います。ですから、むしろ支援計画をきちんとつくった上で、生業扶 助の表現はもうちょっと抽象的にしておいた方が実際上は利用しやすいような感じもし ます。ただ、整理はしておいた方がいいように思います。例えば、生業扶助という言葉 をもう少し違う言葉にした上で、そこに職業上の技能、知識を向上させるような費用と いうようなこととか、具体的に就労する場合のさまざまな費用に関わる部分とか、ある いは小さな経営を始める、生業を始めるときの費用とか、何かそういうふうに分けてお く。現在も分かれているわけですが、それを少し今風にアレンジするというようなこと は考えられるかもしれません。  どうぞ。 (岡部委員)  1点目は、生業扶助の観点で、生業扶助というのは現に生活保護を受けていらっしゃ る方以外にそのおそれのある者という、要するに要保護性のある方に対して適用すると いう区分についてです。その場合、そのおそれのある者について、要するに生活保護に 受給することになります。したがってこの条文からは生業扶助を単給で行えるようなこ とが考えられますが、ほとんど適用されていないというのが実態かと思います。ですか ら、この現行制度の中でもそのおそれのある者という予防的なものと、現在は生活保護 を受けていらっしゃる方が就労をするという2つのレベルで制度を分けて考えるという ことが必要なのではないか。以上が第1点目です。  2点目は、京極委員がおっしゃられたように、生業扶助ということは一体何を指すの か。名称も内容も知られていない。その周知の問題があるので、名称とともにその内容 をより利用者の方にきちんと教示していく仕組みにしていく必要があるのではないかと いう点です。  3点目は、やはり皆さんがおっしゃられていることですが、非常に制度的な制約があ り、使い勝手が悪過ぎる点です。したがって、もう少し適用の要件を緩和して、もう少 し弾力性のある制度にしていく必要があるのではないか。  4点目は、現行制度の外でやるのか、内でやるのかという制度の枠の問題があります。 今、現行制度の中で就労支援員制度がモデル的にやられています。これは一定の効果を 上げているところもあります。ですから、これの拡充は是非お願いをしたいという要望 として挙げさせていただきたいことです。  5点目は、訓練というところで生業扶助を入れさせていただいたのですが、生業扶助 を適用するに当たってなかなかノウハウ、就労支援のプログラム開発や蓄積が十分され ていないということもあります。今後、この点必要なのではないかと考えております。 この点を先にお伝えさせていただきます。 (岩田委員長)  京極委員、どうぞ。 (京極委員)  私は専門的なことはわからないのですが、一つだけ述べさせてください。元来被保護 者ははっきり言って労働力としてみなしておらず、行政側にも、余り期待しない気持ち があったと思うのです。しかし、潜在的労働力として考えたときに自立支援の一番大き な方向で、労働行政としては職業訓練とかいろいろやっていますが、そのジョイントが どうなっているか見えにくいところがあって、失業者だったら雇用保険を企業がかけて いればいいのですが、一般のそういう被保護者に対する職業訓練みたいなのができるの かどうか。  一時、介護保険で、家政婦さんたちに、あるいは潜在的にやっているということが条 件でしょうが、かなりヘルパー2級を取らせて相当役に立ったのですが、厚生労働省の 方はどちらかというと介護施設養成校でお金払ってみんなに行かせる。こちらはある程 度支援してやっていると。かなり格差があったのですが、その辺のジョイントについて 何かあったら教えていただきたいと思います。  前から出ていますが、岩田委員長の支援計画というのは大変大賛成です。是非そうい うときにハローワークとか協力して、せっかく厚生労働省になったので、確かにハロー ワークの職員は国家公務員で福祉事務所の職員は県か市町村、市の職員という、確かに 身分上の違いがありますが、何とか執行ではないが、知恵を2つ出して、どこのエリア はハローワークの誰が担当とか柔軟な対応ができないかと感じております。 (岩田委員長)  労働とのつながりについて、事務局で何かあれば。 (岡田保護課長)  包括的にお話いたしますと、一応、労働とも協力を得てやっていますし、先ほど、岡 部先生から出ました就労支援員という形でハローワークのOBの方に来ていただいて、 いろいろと御努力いただいていて、結構うまく行っているケースはありまして、全国に 相当広がりつつあるという現状でございます。ただ、私がいろいろと聞いている感じで すと確かにハローワークに行ったり、そういう職業訓練というものを実施されている方 もいるのですが、どうもそこに行く前にいろんな問題を抱えている人が少なからずいる という印象を持っています。  例えば、母子家庭でうつ病みたいになってしまって、見てみると引きこもりみたいに なっているのではないかなというようないろんな精神的な問題を抱えている。ヨーロッ パの話を聞きますと、ボランティア、NPOが朝、会社に通勤するのを手伝っていると いうことがあるという話です。普通の職業訓練に行く前に、もうちょっと精神的ないろ んな問題だとか、そういった職業訓練というものをきちんとしないと、なかなか就労に つなげられないというケースが少なからずあるというような印象を持っています。です から、生業扶助についても先ほどからお金だけで解決しない部分が多いというふうに申 し上げているのはそういう意味で、なかなか要件を外して自由に使えるようにしても、 やはり自治体としてこれを本当に使ったら、ちゃんと自立してくれるのかと。言葉は悪 いですが、費用対効果みたいなものをどうしても考えざるを得ないというところもござ いまして、そういう意味では今の仕組みでできればやっているところは、それはそれな りに効果を上げている部分も相当あると思いますが、そこに行く前にまだもうちょっと 大きなところがあって、そこに対して手が十分に届いていないというような印象を、私 は感じているということでございます。 (岩田委員長)  その辺りがもう少し、さっきおっしゃった生活支援というか、問題解決型の支援とい うか、そういうこととも絡んできて、逆に言いますとそういうものとセットになった形 で多分生業扶助というのが生かされるというようなイメージだろうというふうには確か に思います。特に現状を前提にしますと。  もちろん、こういうものが整ってきますと、さっき京極委員がおっしゃったように失 業なら雇用保険でハローワークですが、保険の対象にならないような、ほかの国では失 業扶助のような形で別立てしてある部分を、日本の場合は一般扶助として生活保護がカ バーするというような、非常に単純なケースも引き受けることができるということはあ ると思います。  先ほど、岡部委員がおっしゃったように生業扶助がおそれのある者にも適用する場合に は、1つはぎりぎり生活扶助をかかるまではないが、就労のところだけ支えてあげると、 逆に言うと丸ごと生活保護にならないで済むというような可能性。  もう一つは、出口のところで生活保護が廃止した後、少し生業扶助でフォローしてい くというようなことができますと、貧困のわなみたいなものが非常に少なくなるという 可能性がある。おそらく使い方として、入口、出口のぎりぎりの、つまり相談に来たよ うなケースに対してですね。単給でやっていくということは、もしかしたらあり得るの かなというふうに伺っていました。  そうしましたら、さっき課長がおっしゃったように少し制度、それは全体的な支援の ありようということとも関わるということなのでそちらに移ろうかと思います。その前 に少し今のお金絡みのことで言いますと、今、御説明いただきました勤労控除と資産保 有の問題があるかなと思います。資産の中にはこれも自立助長と絡んだことで言うと、 就労するために車の保有とか、もしかするとそういうことも絡んでくるということがあ ります。これはもちろん、就労だけではなくて社会参加とか自立を社会福祉法の新しい 理念の中で捉えるとすると、もう少しいろいろ関わってくると思います。その辺りの御 議論をいただいた上で、全体的なサービスプログラムというか、そういうものを少し御 議論いただくというふうにしたいと思います。勤労控除、資産についてはいかがでしょ うか。  どうぞ。 (大川委員)  いつも最初に発言して申し訳ありません。勤労控除については、まず現行の考え方は 先ほど説明がありましたとおり、金銭で一律でというふうになっていますが、やはり今 後もし自立支援の論議をする中で言えることは、基本的に自立、つまり将来的に生活保 護を脱却していくという人の勤労収入のとらえ方と、福祉的就労の勤労収入のとらえ方 とを分けてとらえるべきではないかということです。  当然、将来的に自活していくという人であれば、今の金銭のやり方で段階的に減らし ていくという考え方でいいかと思います。一方、例えば地域共同作業所あるいはNPO が最近提供している、私どもでは半福祉半就労などという言い方をしておりますが、生 活保護からの脱却というよりも社会参加的な要素を持つ就労については、むしろ生活保 護を脱却させるためよりも、その人に地域の一員として関わっていただくということで 捉えるわけですので、それについての控除の枠組みについては別な考え方が必要なので はないか。はっきり申し上げて、通常の勤労控除よりも高い額を設定すべきではないか という意見です。加えて、一時的な就労、例えば、よくあるのは今、正規の仕事を探し ているが、なかなか見つからない。先日、私が受けた相談だったのですが、正規の職業 を求職中に、偶然、郵便局のアルバイトが入ったということで、それを募集された方が いました。そういう形で例えば自分が自立に当たって一時的に、まず訓練的に就労され る部分についても、これは通常の生活保護の脱却のための基礎構造とは考え方を異なる ことにすべきではないかという意見です。  もう一つ、これは別のところで再三申し上げたので繰り返しませんが、やはり能力活 用を求める要保護者に対しては、やはり一定の手持ち金や資産、これを大きく認めると。 それは就労が始まってからではなくて、就労の準備段階から、つまり保護の開始時点か ら認めていくという考え方に立つべきだと思います。これが実質的な控除ということに なるかと思います。  もう一つは、新規就労控除というのが先ほど御説明の中にありましたが、これも非常 に額が限られています。特に私が個別に受けた相談で、就労で自活される方が数か月後 に病院の検査を控えていると。そのときに幾らになるかわからない、大変心配だと。実 は生保ぎりぎりの基準で、御本人の申し出もあったので生活保護一時的に廃止という形 にさせていただいたのですが、就労を始めた初期のころというのは非常に不安定な状態 です。ですので、この新規就労控除の額についてもそれなりの拡大をしつつ、もう一つ は対象です。現在の通知を見ますと中卒で就職するということが文言の中に含まれてお りますが、先ほどの教育扶助を最低生活として認めようという話をした問題と絡むので すが、やはりこの辺の部分についてはももう少し緩める形でやっていくということで、 今、言った3点で勤労控除の拡大と言いますか、柔軟化を図るべきではないかというの が、私の意見です。 (岩田委員長)  勤労の中身を少し整理してはどうかというご提言でした。これはなかなか難しいです が、おっしゃる意味は大変よくわかります。ただ、技術的にとても難しいかもしれませ ん。福祉就労との枠は非常にはっきりすると思いますが、一時的というのは。でも、確 かにおっしゃるようなことがあり得ます。だから、一時的な就労をどういうふうに考え るかということでしょう。  もう一つは、もちろん生活保護の場合はいつも出ているように、やはり一般との整合 性というものが当然出てきます。それと余り制度内で控除の幅を大きくしますと、逆に 貧困の罠という問題も生じてくるので、その段階の付け方とか、控除したお金をどうい うふうにするかでしょう。控除だけするのか、それとも何か、そういう使途を特定する というのは非常に難しいとは思いますが、安定した就労に移行するための貯蓄みたいな ものをむしろ奨励して、その部分は逆にそういう形での貯蓄を認めていって、それであ る程度たまったところで何とか生活保護の廃止と一致しながら、ある程度手持ち金がで きているというような感じにするとか。技術的には難しそうだなとも思うのですが、勤 労控除と何かそういう自立支援計画みたいなものを少し連動させてやっていく方法とい うのも、もしかすると考えられるのかなと思います。  どうぞ。 (大川委員)  補足ですが、今の御指摘というのは、事務局で出していただいた4ページ目の資料に 単に勤労控除を引き上げるだけでは保護の脱却を阻害するのではないかという御指摘が あって、確かにそのとおりだと思います。ただ、現行の新規就労控除は6か月という限 定がある中で、これを上手に活用すれば、今の問題はかなりクリアーされるのではない かというのが、私が先ほど新規就労控除を持ち出した一つの理由です。 (岩田委員長)  どうぞ。 (京極委員)  先ほどの扶助の種類と絡むのですが、控除に関しても、私は自立のためと考えるのな ら、ただ、生活の安定のためと考えるとまた違ってくるのですが、自立のためのステッ プということであれば、期間の限定というのはすごく重要ではないかと思います。今6 か月とおっしゃいましたが、例えば、原則的にみんな6か月とかにしても、後はないと いうことで頑張ってもらわないと、まだまだ続くということになるとずるずる引きずっ てしまうという、それが貧困の罠になってしまうということもあります。やはり生活扶 助と他の扶助ないし控除は原理的に違って、幹と枝葉の関係なので、やはり枝葉の方は 短期という原則ですべて行かないといけないのではないかと、私は思っています。これ はケース・バイ・ケースで違うといってずるずると延ばしてしまうといけないので、そ れはもうケースワークとしてきちんと、「あなたはいつ、これで切れます、そのために 頑張ってください」というしかないと思います。教育のように3年間とか高校卒業する までとかありますが、それぞれの一定のタイムラグというのを明確に示すということが、 制度上必要ではないかと思っています。 (岩田委員長)  どうぞ。 (布川委員)  私のレジュメの最後に書いたのがその問題でして、どう考えたらいいのかと思ってい ます。就職して仕事に就いて、それを基に保護から抜けられるような形で控除をちゃん と設定するというのが今のお話の中では一つのテーマだと思います。そのために期間を 区切って全額控除をして、それを自立に当てるというような対応が是非できればと思い ます。  それと、京極先生がおっしゃったこととの関わりで言うと、もう一つは、今、仕事そ のものがとても不安定になっていますから、そうなると仕事に就いて、それが自立につ ながる金額のお仕事ならいいのですが、圧倒的というか多くはなかなかそうはいかなく て、保護のお金も足しながら暮らしていくという形で暮らしていかざるを得ないことに なると思うのです。そうなったときに、この控除をなくしてしまうというのはきつい話 です。積極的に時間を区切って、例えば、半年、1年は控除を高くするというのはいい と思うのですが、ぎりぎりの仕事のところで控除さえないとなると、ちょっときついの ではないかなと。その辺をどう区分するか検討が必要だと思います。 (岩田委員長)  今の布川委員の御説明は提出していただいた資料の最後のところかと思います。一種 のモデル的に考えると、仕事を始め、そして、ちょっと安定すると保護から抜けられる 形の仕事が得られる人に対しては、ある程度の期間限定で、例えば、思い切って全額控 除して貯蓄を可能にして自立の経済的基盤づくりをするというようなこともあり得るの ではないか。一方、さっきの一時雇用のような、仕事があるときもあるし、ないときも ある。あるときでもアルバイト、パート的な仕事しかない。それでも働いた方がいいと いう価値は社会の中にやはりあると思います。そして、生活保護制度の実はかなり大半 の人たちがむしろそちらのタイプだとすると、そういう就労の仕方をどういうふうに認 めてエンカレッジしていくか。それはたくさん働くということに意味があるというより は、やはり少しでもそういう働く場があれば、そういう形で社会参加をしていこうとい うような、さっきの福祉的就労と違うのですが、精神としては、結果的には似てしまう と思います。もちろんそうではないように労働環境を整えていただくとか、さっきの労 働行政とのつなぎをよくするということは片方で大事ですが、結果としてそうなったと きに控除の問題をどう考えるべきかということだろうと思います。ここは、多分整理を すれば少しまとまるかもしれません。  岡部委員、どうぞ。 (岡部委員)  勤労控除制度については、事務局の方で説明していただいた必要経費と自立助長とい う2つの機能が合わさり、自立助長機能が強めているといってよいかと思います。そこ で、私は勤労控除を必要経費に特化させるか、自立助長、要するに働いたときに一定の ボーナスとして出るという形に特化させるか、ある程度、性格づけをはっきりさせると いうことも一つの方策として考えられるのではないかと思っております。  ペーパーで書かせていただきましたが、現在の仕事を継続することが経済的な自立に 結び付く場合もあれば、結び付かない場合もあります。この点について分けて考えられ ないのか。具体的に言いますと、一定就労をして、あと勤労控除というのが自立助長の ものであるならば、控除額を増やし将来の自立支援のための資金にする、あるいは、こ こにも書かせていただきましたように、稼働収入を収入認定から除外し累積金を認め、 これを自立支援資金にするといったことが考えられます。また経済的な自立を果たす方 と、あるいは就労しながら生活保護を受けるというような、いろんなパターンがあると 思います。この辺りは少し勤労控除という制度がどういう位置づけにするかによっても、 その内容が変わってくるのではないかと思います。ただし、自立の観点からするならば、 勤労控除を廃止して保有を認めるか、勤労控除の控除額を広げていくか、あるいはそれ を両方タイアップさせてインセンティブを高めるかといった方策が考えるのではないか と考えます。ですから、私としては、勤労控除は、もう少し性格づけを明確にして方向 づけをしていくというのがよりインセンティブを高めることにつながるのではないかと 考えます。  以上です。 (岩田委員長)  先ほどの事務局の御説明では、勤労控除については既にかなり必要経費から就労イン センティブの方に移っているという認識だと思います。ですから、この委員会としても、 現代においてはそこが大事だというふうに前提を置いた上で、しかし、就労の在り方と いうのはかなり多様なので、それを整理する。しかも、どういうインセンティブになる かというのも、なかなかさっき言った就労の対応によっても違う。ですから、そのこと を踏まえて控除の在り方を再検討するというようなことでいかがでしょうか。そして、 もちろんその場合は実行的にその対応によって、差異を含んだようなインセンティブと して考えていく。単に控除して非常に増えた収入をどうぞ御自由にというだけではなく て、それは実際上の生活再建と言いますか、そういう計画づくりに非常に寄与するよう な形でなるべく置けるようにしておけば、一般との均衡も図れるのではないかというの が、さっき布川委員がご発言されたことかと理解しました。  ですから、全額控除というところまでやるかやらないかは、なかなか難しい問題だと 思いますが、これも期間限定という考え方がその場合はかなり有効ですね。そのときに タイプを幾つか見るというようなことかなと。  そうしましたら、今の点をもう少し含めながら、最後の論点と言いますか、そうは言 ってもなかなかいろんな問題を抱えた人はたくさんいるとか、具体的な就労支援につい ては今の就労支援員ですか、そういう人たちの配置とかというお話がもう既に出ていま すが、いわゆる生活保護で言う自立助長サービスと言いますか、そういうものを進めて いく上でどんな方策が考えられるかというようなことについて御議論いただければと思 います。 (大川委員)  再三済みません。今までの話の中で生業扶助の在り方とかも自立支援の中で出ていた わけですが、考え方によったら全員が全員、就労していく方が生業扶助を使うわけでも ありませんので、基本的には自立支援。もっと言うならば就労支援というというのは生 活保護を受けている方、だれもがそういった支援を受ける権利があるという考え方に立 つべきでないかなと思います。これは自立支援ということで言えば、広い意味でいくと 現在、生活保護にケースワーカーという社会福祉主事が付きますので、ある程度制度的 には担保されていますが、それに加えてやはり就労も含めた支援を受ける権利が受給者 にはあると。もっと言うならば、生活保護になる前からそういったものが社会的に担保 されているということが必要かと思いますが、とりあえず生活保護を受けている方につ いてはそういった状況から脱却するために就労の支援を受ける権利があるということに 立つべきではないかと思います。その上で、例えば経費が必要だということであれば、 生業扶助という形で支給をしていくという考え方で整理をすべきであると思っています。  その上で、先ほど前段のところでいろいろ話がありました、要するに生活保護の枠だ けではなくて、さまざまな就労支援プログラムの中にむしろ生活保護制度をはめ込んで いくべきではないかという提起がありましたが、基本的には私もそのようにするべきだ と思っています。現在、例えば、職安というか労働行政を中心にさまざまな就労支援の 政策が取り込まれておりますが、例えば、障害を持っている方とか母子家庭の方につい ては、こういった制度がある程度優先的に利用できるということが明記されているわけ です。ところが、現実には生活保護の方についてはそれがありません。職安では温度差 はありますが、生活保護を受けている方について、ある程度配慮してくれるところもご ざいますし、実はそうでないところもあるのですが、だけどやはりそういった意味で労 働行政あるいは生活保護以外の全体の就労支援行政の中に、生活保護の方を意識してシ ステムの中に入れていく。これは専門委員会の論議というよりも、むしろ社会保障審議 会全体の論議の中に是非反映させていただきたいというのが私の意見です。  ただ、その上で生活保護を受けている方については、先ほど課長の方からも御指摘が ございましたが、やはり個別のさまざま支援を必要とする方がいます。ですので、率直 に言って職安に連れていく以前の方に対する支援に、実施機関ではエネルギーと時間を 大変かけております。その例を、今日2枚つづりの資料をお付けいたしました。これは さまざまなパターンを全部一緒に詰め込んでありますので、このようなケースがすべて、 保護を受けている方に該当するわけではありませんが、これはいろんなことがあるのだ なとお読みいただくというのと、もう一つは非常に小さなこと、我々にとって小さいな と思えることに受給者の方がつまずいていると。これは自己責任とかいうことではなく て、やはり一つひとつ彼らが越えていかなければいけないことであり、あるいはそれに 対してやはり社会的な支援が必要とされることであります。これは現実に生活保護のケ ースワーカーが日々やっておりますが、先ほど言いましたとおり、福祉事務所あるいは 実施機関が積極的に就労を支援するという位置づけが現在のところで明確ではない中で 、個人の努力で行われているという実情があります。これは個別に説明はいたしません が、参考までに見ていただければと思います。  そういった意味で、やはり生活保護の中に就労支援のプログラムをはめ込んでいくと いうことが必要ではないかというのがとりあえず私の意見です。  以上です。 (岩田委員長)  これは、例えば生活保護を利用するようになったと。もちろん、利用するようになる わけですから、大変困っているわけで、利用するようになると差し当たり大変安定して くると。これは生活保護法制度のねらいですね。だから、今でもある程度それに類似し たことはなさっていると思いますが、少し安定した時期を見計らって生活保護を利用し ながら、どういうふうに生活を再建していくかといった計画をつくっていく。さっき言 ったようにある期間の中で見直しをしながら、その方にとってふさわしい対応、例えば、 ゴールが就労であったり、高齢の方については病気の問題といった社会生活上の問題で あったり、ほとんどそういうことは問題がなかったり、いろいろあると思います。そう いうものをはっきり御本人も自覚する中でそういう計画をつくっていくというステップ が1つあると思います。その上で具体的な問題解決のためには、例えば、アルコール依 存の問題とか、さっきおっしゃった精神的ないろんな問題とかという場合は、福祉事務 所が直接対応することは不可能ですし、借金の問題とか、そういうような問題があった ときには、むしろそういうのに適切なプログラムに結び付ける。  そのときはやはりきちんとした契約として社会福祉法の理念にのっとって営々に行き ましょうねという、そしてやはり自分も行くということできちんと契約を結んで、いつ いつまでこういうのをやってみようというようなことでやっていくと、何かそういう中 にさっきの生業扶助の支援などが裏づけとして付いていくというような、何かそういう ふうにもう少し見直してはどうか。多分やっていらっしゃるところは実際にそういうふ うにやっていらっしゃると思うのですが、きちんとして、やはり一定の期間で見直しな がら、それが多分短期で見直す方がいい人と、もっと長期でいい人と、いろいろ違うと 思いますが、何かそういう辺りはいかがでしょうか。 (布川委員)  メモで出させていただいたのはそれに近いイメージです。例えばドイツでもずっと議 論してきましたが、やはり職安と福祉をどう連携させるかがとても難しい。去年の末に 大きな制度改革を決めたのですが、私としては余り望ましくない制度改革に思えるので すが、それは外国の話です。ただどんな議論をし、何を大切にしているかという点では 参考になるかと思います。  1つは「総合的な支援」ということです。就労の支援はもちろん、ここに挙げている いろんな支援、負債とか病気、依存症の問題とか、家事、育児、家庭の問題、住宅の問 題なども含めて、総合的に支援することと、時間をかけて、「連鎖」を作っていくこと です。委員長がおっしゃったように、まずはやはり生活保護を受けて生活が落ちついて という段階から始まって、アセスメントが始まって、計画をつくって、それで総合的な 支援も受けながら、能力活用の機会の提供も実際に受けて、能力を発揮できるという流 れをつくっていくのが大事だと思うのです。  もう一つは、その場合に福祉事務所が全部はやれないが、ただ、そこがやはり核にな らないといけないということです。調整をする、一手に全部自ら引き受けるというので なくても、マネージメントを責任ある人がちゃんとやらないといけない。1つの手から の支援とか、ワン・ストップ・サービスとかいろいろな言葉で言われています。さらに、 1つの手からの支援という形の上で、計画を持つことです。岩田委員長が言われたこと から、長期的な計画を持つというのがどれだけ大事かを、今日の議論の中で改めて自分 でも自覚できました。その際、計画を共同に決定していく。決めたことは実施機関も責 任を持つし、受給者の方もやれることを必ずちゃんとやっていくということも大事だと 思います。 (岩田委員長)  布川委員の2番目に書いてある、この「支援計画」というのは、私がさっきちょっと 言ったようなことで、でも、これをきちんと最初から契約としてやるということでしょ うか。 (布川委員)  同じ対等な立場でできれば。 (岩田委員長)  どうぞ。 (京極委員)  関連して、支援計画というのは行政側なりワーカー側がつくるということですが、私 は生活プランというか両方から、受け手も支え手も両方からつくって、それが逆に言う と給付の条件ぐらいに、生活保護の視点から言いますと、ただ人によってケース・バイ ・ケースなので、それがある人は救護施設まで最後は行くかもしれない。いろんなケー スがありますが、しかし、就労に結び付いてうまく出て行く人もいる。それぞれケース ・バイ・ケースでいいので、そういうのを指導するのがケースワーカーではないかなと。 そういう点で、例えば、私も前から言っていますが、そういう能力のある、あるいはケ ースワーカーをスーパーバイズできる人材をやはり福祉事務所にきちんと置いてやると いうことが、ひいては生活保護費を効率化するというか、必要以上出さないで済むとい うことにもつながっていきますし、本人も将来自立にもつながっていくということでい いのではないかと思っています。 (岩田委員長)  どうぞ。 (田中委員)  特に、1つの例でこれが今までの論議の中で関連する問題なのかどうか、ちょっとわ かりませんが、先般、私どもの施設の関係者の生活保護所帯のある方から相談を受けま して、子どもの教育の問題でした。中学を何とか出る。生活保護のお世話になりながら、 中学を出られるようになると。しかし、本人は中学を出た中で就職をするよりも、何と かもうちょっと勉強をして、高校へ入って少しでも自分の希望する職に就きたい。これ は長い意味で言えば、やはり就労の問題です。保護所帯の中での就労の問題ですが、た だ、中学3年の中で生活保護所帯ということで、これはあってはならないことですが、 いろんなつらい思いをして、このまま本人の希望で生活保護の世話になりながら高校へ 行くのは、金銭的にはもしそういう制度があればいいと思うのだが、今までの経験から すれば、生活保護を受けながら高校へやるのは、親としては忍びない。もし、そういう ときに、いずれは返すという前提で生活保護制度の中にあるかどうか、私は今ちょっと わからないのですが、せめて高校へ行く間は育英資金的なものがあって、ちゃんと本人 が働くようになったら必ず返すという制度があれば、生活保護ではないが、そういう育 英資金のようなものの世話になりながら何とか高校へ行けると。それなら今までのよう ないろんなつらい思いが少しは軽減されるのではないかという率直な相談を受けて、ど うしたらいいのだろうかと。私どもは施設の立場で相談を受けても、これはなかなか難 しい問題で、これはもうやはり福祉事務所のケースワーカーの方によく相談なさったら どうでしょうかという程度しか我々もできません。  確か義務教育までは生活保護の中で何とかやる。しかし、今では高校はほとんど義務 教育化している実態があるわけです。しかし、そのまま生活保護をかけて高校へ行くの が果たしていいかどうか、私でもよくわかりません。ただ、そういう育英資金的な思想 がもし生活保護制度の中にあれば、かなり別の考えないしは精神を持って高校へ十分勉 強できて、長い目で見れば、それがまたその所帯の生活保護脱退の非常に大きな助けに なるのではないかなということを感じました。何しろそういう相談を受けても我々施設 の立場としては、なかなかこうするああするという助言はできないものですから、そこ ら辺も今後の21世紀の生活保護の在り方の中で、そういう思想も加味した中で、せっか くの抜本的な生活保護制度の検討ですから、そういうのも検討していただきたい。委員 の方々のいろんなお話を伺いながら、ちょっと思い出して申し上げました。 (岩田委員長)  それは今の制度で言いますと、生活福祉資金貸付制度というのがございますので、多 分それが一番使える制度だと思います。生活保護制度の周辺にある低所得者対策と言わ れているような制度は、資源として生活保護制度の利用者にかなり使われてきた制度で す。もちろんそうではない場合には、それがかなり大きな支援となるというので、その 辺がうまく使えているかどうかという問題にもしかするとなるかもしれません。 (田中委員)  ただ、そういうときに私はそういうふうに思うのですが、生活保護所帯としての中で、 子供は子供でつらい思いをするらしいのです。そこら辺を加味して、全く収入認定もさ れない、そういう育英資金的な考えをぴしっと打ち出されるものがあればいいんですが なというのが、そこの親御さんの気持ちだったのですね。そんなことです。 (岩田委員長)  どうぞ。 (京極委員)  田中委員のおっしゃることはよくわかりまして、そのとおりだと思います。しかし、 現実には、高校に進学した者は、もう少し勉強したいということになれば、実際には短 大・専門学校・四年生大学に進学するのです。大体において、文部科学行政において奨 学金というか、学内奨学金制度というのが国立は1割、今はカットされて5%になりま したけが、それでかなり生活の苦しい方は授業料免除になります。ただ、問題は頭金と いうか、入学金はまだ免除になっていないのです。例えば、国立1本で受かる人は問題 はないと言いますか、まだ何とかなるのですが、実際には複数受けたときにお金が払え ない。読売愛と光の事業団で奨学制度をやっていますが、文部科学省でやるのか厚生労 働省でやるのかわからないですが、そういう入学金補助みたいなのができると、かなり 意欲を増すのではないか。授業料程度は何とかなるのですが、問題は一時的に要るお金 がないことなのです。したがって、1つ落ちたらもうあきらめるという形で就職される わけですが、その方はもう高校出ているから、さほど問題がないというのは言えるかも しれませんが、しかし、もうちょっとステップアップできる立場にある方々もいらっし ゃるので、その辺が必要なのではないかと思っています。これは生活保護以外でやるべ きではないかと、むしろ私は思っています。 (岩田委員長)  多分、日本の今までの福祉制度の体系的に言えば、貸付金制度は生活保護制度の中に 持たずに、むしろ外に持ったということだろうと思います。ですから、中に持つとする と、それはそれでまたその辺の整合性が必要になると思いますし、しかし、もちろん、 給付だけではなくて、いろいろな制度の整備はあった方がいいわけで、そこで選択をす るわけです。だから、それはおっしゃるとおりだと思います。  どうぞ。 (岡部委員)  まず、1つ目は、この自立支援に関しては、布川委員がお出しになっていただいた、 相談から例えばその能力活用の機会を提供するという一連の流れをきちんとマネージで きる、そういう人的体制が組織の中でどれだけつくれるかということになろうかと思い ます。これは京極委員がおっしゃられていますとおり、平均2年ないし3年の現業員、 また、彼らをつかさどる査察指導員の方もその経験が乏しい。私は一つ、ここのところ で、これはうちの大学でも行っていますが、社会福祉士という資格制度を取得する要件、 受験資格の要件は福祉事務所の職員は非常にハードルが高くなっています。現業員は何 年経験をしても受験資格が得られない。査察指導員にしても5年です。5年というハー ドルでは、実質的にはそういう方はなかなかいらっしゃらない。ですから、例えば、2 年ないし3年をしたならば受験資格を取得できるようにする。資格取得のプロセスの中 で専門性が向上していくと考えます。あとはやはり組織の中でのキャリアアップをもう 少し考えるような人員政策というのも必要なのではないかと思っております。これが1 点目です。  2つ目は、自立支援のプログラムについてです。先ほど、事務局の方がおっしゃって いたように、それこそ就労の場に行く以前の問題、要するに、例えば健康の維持とか生 活の管理とか就労の前提であり、それに対してのプログラムというものをどうするのか があろうかと思います。もう一つはやはり能力の活用といった場合に一般就労と福祉的 な就労と、今回出した社会参加と言われる地域生活にコミットするための費用という形 です。こういうような、どの方にとっても自立は大切であり、それぞれの方に合わせた 自立の在り方とそのためのプログラムを開発していかなければいけないと思います。そ うなったときに、私が先ほどちょっと言った、生業扶助の仕切りという形で、就労支援 のための扶助としてやるのか。また、地域生活に積極的に関与するような自立制度とし てはつくる必要がないのか。あるいは、生業扶助というところに膨らますのか、他の扶 助の中に入れ込むのか、あるいは新たに扶助をつくるのか、そういうようなことの論議 をしなければいけないのではないかと思います。  私、精神障害者の方の例ということで、このペーパーの後ろに載せていますが、例え ば、精神障害者の方が社会復帰をする場合に、最初はやはり投薬であるとか通院ができ るとか、そういう健康管理から、あるいは生活を自分で管理する段階。それから、ある 程度その地域社会の中に参加するようなものにするという段階。そしてボランティアを やってみる段階から、一定の福祉的な就労という段階につながる。人によってはさらに 一般就労につながるというような一つの流れみたいなものをつくると考えたときには、 やはり自立支援の枠組みというのを、それぞれ例えば就労支援というところでもありま すけれども、大きく枠組みの中で、例えば生活支援あるいは健康支援みたいなものをど のようにしていくのかとか、そういうところを少し整理をした上で、あるいは教育扶助 であるとか生業扶助というのを、収まりきれないのであれば、また別の扶助というのを つくるという形も必要なのではないかと考えております。 (岩田委員長)  今の、後の点は要するにプログラムとして、大方多分合意を得られていると思います けれども、何らかの計画というものを支援者も利用者も合意の上でつくっていって、そ れぞれのいろいろな生活のありように応じた自立というものをされていくということが あるかと思います。その扶助は基本的には経済給付ですから、その裏づけとなるような 給付が必要な場合には教育扶助なり生業扶助なりの中でそれを裏づけすると。でも、プ ログラムによっては、お金をかけない、つまりいちいちそこの利用者からお金を取らな くてもできるということもあり得ると思うので、むしろ仕組みが大事ということはあり ます。ですから、それはやはり整理が必要かもしれません。私は基本的には余り扶助の 種類を増やすというのは賛成ではないものですから。それから、生活保護の所得上との、 つまり大変難しいと思います。生活保護というのは一定の保護水準以下の人は利用する 権利があるわけですから、計画を立てないから利用できないというふうにはならないと 思います。しかし、そういう人たちがやはり自立する努力する義務はあるということに なりますから、そこのレベルで契約を交わして、そうしていく方がいいのだという、合 意をしていくというプロセスがあるように思います。余りサービスをごちゃごちゃと、 たくさんの扶助を制度内にいっぱいつくると、ますます生活保護というのは非常に区切 られた特別な階層に対する制度となってしまうのではないか、というおそれを持ってい るものですから申し上げただけです。おっしゃる趣旨は私も大変賛成です。  石橋委員、どうぞ。 (石橋委員)  私はいつも感想みたいなことばかり申し上げているのですが、1番目に、随分前に諸 外国の受給者に対する自立支援というのを調べたときに、さっき委員長が言われたよう に生活保護制度の中でどこまで引き受けるべきかということで驚いたり、なるほどと思 ったりしたことがあります。ただ、やろうとすれば、御承知のように生活保護の目的は、 最低生活の保障と自立助長ですが、その自立助長ということを強調していけば、ある程 度その生活保護制度の中でやろうとする支援の範囲が決まってくる。それで自立という ことを支援するということを強調していけば、先ほど言われたように勤労控除もそうで すが、前回申し上げましたように保有し得る資産というのも大幅に緩和していいのでは ないか。自動車も東京は別でしょうけれども、熊本辺りに行きますと、かなり緩和され たとはいえ、やはり厳しく条件が付いております。そういうものも認めていくとかです ね。判例を見ますと、どうしても4条に引きずられて、この程度の金額ならば社会通念 から見て、いいのではないかという判断をして、だから活用し得る資産に当たらないと いうようなことで認定するようです。むしろ活用し得る資産に当たるかどうかわからな いが、自立のためにこれは必要であるというようなことを考えていけば、相当弾力性が あると思います。  2番目に、これは受給者と行政との契約関係、誰が契約をするのかわかりませんが、 そういう考え方はずっと従来からありました。私も対等な当事者として契約を結んでい くことは、反対ではないのですが、やはり契約と言っても一方的に義務を課されるので はないかという批判が、20年前はかなりありました。それから、アメリカのこともちょ っと調べたのですが、当時、自立も成功しなかった最初の段階というのは、とにかく日 本で言えば職安に行きなさい、仕事を見つけてきなさい、どういう仕事がありましたか というようなことでやってきた。専門の方々が対応するわけでもないし、アセスメント も十分ではないし、質問票も定型的だし。その間でこういうことを希望したいとか、あ るいは不服を申し立てるということが十分でないままやっていったということがありま す。やはりもし契約という考え方をするのであれば、こういうこともお願いするかもし れないが、行政としても積極的にこういうことをお伝えして、この場合にはこう対応し ていきますよというようなことをやらなければ、なかなか対等ということにならない。  実際、職場に就いたとしても、アメリカの場合、非常に低賃金だったり、あるいは保 育料の問題とか、これは日本にはないんですが、医療の問題などがあって、結局また生 活保護というような形に戻ってこられる事情もあった。だから、そういたものも含めて、 行政側できちんとした対応を持って、そして、当事者で契約を結ぶというのであれば、 それならば私はいいかなと考えています。  以上です。 (岩田委員長)  ありがとうございました。  根本委員、いかがでしょうか。もう時間がなくなってきましたので。 (根本委員)  今のお話は稼働年齢層を中心とした自立についてのものだと思いますが、やはりその ように最初の区分けのところで、特に高齢者等非稼動層をきちんと分けて論を展開する 必要があると思います。それから、今の自立のための資産保有、先ほど勤労控除の枠の 中と、働くまでのある程度一定のものを普通の生活扶助費の中から貯蓄することへの問 題が出ておりましたが、もし後者の方も認めるということであれば、それはある意味か ら言うと、現在の基準に一定の余裕があるということを認めざるを得ないことになると 思います。要するに、最低生活以下の生活を認めるというわけにはいけないでしょうか ら。ですから、その意味から言うと現行の基準に、やはりラインではなくて、一定の幅 があって、ある程度のやりくりできる余裕があるということをこの段階で確認しておく 必要があるのかなと思います。それはおそらく、基準の考え方からすれば、もう既にエ ンゲル方式の後期ぐらいの段階から国民との相対性を追求する中で、その程度の余裕は 基準の中に既にあるということを確認することだと思います。  もう一つ、社会参加の経費、岡部委員から出ていたものですが、それについては私の 考えでは、既に生活扶助の中にその程度のものは、今、お話しした基準の一定の余裕の 中でそこら辺をカバーするだけのものもあると思います。ただ、御趣旨はわかるので、 そこのところは何か特別に抽出できるようなものがあればいいかなと思います。  もう一方は、いろいろな形での就労支援プログラムを事務局の方で御用意いただいた のですが相当うなずけるものがたくさんあるわけですので、それが実際に実施できるか どうかは、それぞれの事務所を取り巻く環境に左右されるころも多いかと思われます。 また場合によっては相当程度の経費なり資源を投入しなければいけない部分もあると思 いますので、今のはやりの言葉ですが、「特区」みたいな形でいろいろな資源なり何な りを集中して時限的・モデル的にやるということも必要ではないかと思ったりしていま す。 (岩田委員長)  では、布川委員、どうぞ。 (布川委員)  先ほどの契約とか計画の中身ですが、石橋委員が危惧されているように、今のままだ と就労可能な人については、月に何回職安に行きますぐらいの契約で終わってしまう可 能性があると思います。そうでなくするには、やはり1つはキャリアカウンセリングと 言うのでしょうか、今まで福祉事務所でもそういう専門性がなかったし、職安にあるか というと職安にもなくて、実際には再就職支援会社などが1人当たり100万円ぐらいで 再就職するまで最後まで責任を持ちますよという形で請負って、ノウハウをいろいろつ くってきていると思うのですが、そうしたキャリアカウンセリングをちゃんと入れるの が大事なことの一つだと思うのです。  もう一つは、具体的な稼働能力活用の機会を提供できないまま、ただ職安に行きなさ いとだけ言っている現状を超え、プログラムをどうつくるかということだと思います。 職安からの補助金で手厚くキャリアカウンセリングをする、例えば現在リストラをする 会社に対して補助金が出るようになっていますが、そうした人が再就職するまで世話を する、再就職したところで成功報酬としてお金をもらうという会社があるのですが、そ れがいいかどうかは別としても、例えば、1人100万円かけて最終的に再就職までしっ かり手厚く援助するということになれば、それがそのくらいのお金でできるということ であれば、1人当たりにすれば結局1年の保護費よりもかからないのですから、その人 がその後1年、2年、3年とその仕事を続ければ行政の経費とすれば助かるということ にもなります。稼働能力のある人の場合にはしっかりしたアセンメント、カウンセリン グから始まって、いろいろな生活上の問題を含めて総合的に解決しながら手厚くやって いけば、費用対効果でも割が合うのではないか思います。 (岩田委員長)  では、田中委員、どうぞ。 (田中委員)  来月、次回と言いますか、保護施設の問題が出てくるのですが、先ほど委員長が保護 施設について、関連として発言してもよろしいということですので、保護施設の在り方 というよりも関連の制度の問題として発言させていただきます。今、私ども全国の保護 施設や救護施設も生活保護法の中であるのですが、入所あるいは入院中心から地域生活 へ、これは1つの大きな流れになっています。施設関係者もそれなりに個別支援計画を 作成しながら、その大きな社会の要請に少しでも対応できるように、それなりの努力を して自立、あるいは地域生活へという努力をさせていただいています。その中で、やは りどうしても、その1つの流れを阻害する要因の中に、御案内のように救護施設は都道 府県によっては県で1か所しかなかったり、あるいはあっても県の中にせいぜい2か所、 3か所程度です。したがって、入っている利用者が相当幅の広い実施機関から入ってい るわけです。実施機関とは別の県の救護施設に入ったりすることも非常に多いわけです。 これは救護施設の性格上、長い間の中でそういう実態が生まれてきたのです。そういう 中で第一段階として、地域生活あるいは通所事業に戻す努力をしている中で、一つの大 きな問題はこの実施機関の変更の問題です。どうしても結果的に施設の所在地の実施機 関に集中してしまう。そうするとなかなかこれはスムーズに受けられないという実態が あります。極端な話ですが、私どもの施設もかなり幅が広い利用者が利用しているので すが、我々も1人でも2人でも地域に出したい。本人もそれを希望して出す場合に、今 まで例えば、都内であった実施機関が、施設の所在地に移ってしまうということで、こ れはこんなところで言っていいかどうかは別として、「田中さん、地域に出すのはよく わかるが、出した後は我々がみんな受けるのだから、余りそういうことをほいほいやら ないでくれ」という言葉まで出るのです。つい「そんなことをおっしゃっていいのです か」と言ってしまいかねないのですが、しかし、今の制度から言えば、やはり負担の問 題はやはり大きいです。金の問題でそう言うなということは言えませんから、やはり市 町村なり何なりが相当の負担を、今後補助率が下がってくれば、その問題は一層出てく るわけです。そういう場合に、やはり地域に対して、そのまま生活保護を脱却できれば いいのですが、やはり一定の期間、保護を受ける。そのときにはみんな地域に集中して しまう。そこら辺のところを実は私どもの保護施設の在り方というよりも制度そのもの に対する悩みがあります。そこら辺をどういうふうに法律的に調整していくか。あるい は補助率の問題で若干の考慮をするか。それはいろいろあるでしょう。  私どもよくわかりませんが、そういう問題をやはりいずれ、来月以降、保護施設の問 題があるのですが、今日は、関連した問題としてそういう問題もあるということをとり あえず提起させてもらいますが、この問題も是非一つ御検討いただければというふうに 思っております。 (岩田委員長)  今の点は、施設から地域へだけではなくて、地域間の移動の場合、自立のために、例 えば公営住宅が当たったとか、あるいは就労先が行政区を越えたといった場合に、類似 の問題が出ているということは、私もときどき聞きます。ですから、これは級地の問題 はどうせ後でやるのですが、地域問題と言いますか、ある地域に生活保護利用者が集中 する問題はいずれどこかで議論したいと思います。それは今、根本委員がおっしゃった ように、例えば特区みたいな考え方で一部地域で先進的にプログラムを走らせてみる。 今だとともかく生活保護の利用者が増えることを非常に好まないわけですが、逆に増え ても自分たちが立派に自立させてみせるというプログラム。極端な話ですが、そういう いいプログラムをどんどんつくっていかないと、みんなが何かとてもネガティブイメー ジで生活保護を扱うという、そのことの問題の反映ではないかなというふうにも思いま す。いずれその問題も議論させていただきたいと思います。  そうしましたら、ちょっと時間が残り少ないですが、何か。 (岡部委員)  1点だけ。根本委員から、社会参加扶助の話をしていただきましたが、現行の中の一 般の生活扶助の中で社会参加の費用というのが入り込んでいるとするならば、どの程度 の社会参加が可能なのかどうかという、そこのところはやはり一定試算をする必要があ るのではないかと考えます。例えば、高齢者、障害者の方が病院に連日行くとか、ある いはテレビを1日中見ている実態があります。なぜ出かけないのかというのは、やはり そこで引け目を感じることがあるのではと考えます。出かけるとお金がかかります。決 して無駄遣いをしていると思えない人が、地域社会の中でひっそりと生きている。そう いうことというのは、やはり私は余り望ましい形ではないのではないかと考えます。で すから、それぞれの方が一定何かいろいろ社会活動に参加していく。あるいは、ボラン ティア活動をして社会の中で一定貢献していく。社会的に有用なことを無償であるけれ どもやっていくことが、やはり必要なのではないかと考えます。ですから、私自身は社 会参加扶助という、社会参加支援的なものを、今の枠の中でどの程度のことを想定する か。例えば、一般施策の中で、できるかどうか。そこのところは少し考えていただけれ ばなと思います。現行制度の中では、移送費です。臨時的な生活費の移送費の中で限定 列挙で項目別に、社会参加的なこういう事項というのは書いていない。ですから、だっ たらそういうことに入れていただくとか、何か工夫していただければより可能になるの ではないかと考えます。 (岩田委員長)  どうぞ。 (京極委員)  今日、資産の問題をやると思わなかったのですが、やはり現代生活の中で適切な考え 方であれば、望ましい資産保有、自動車を持つとかコンピュータを持つとか、そういう ものによって仕事が広がる、社会参加が広がるということであれば、むしろ持ってもら った方がいいと。それから、やむを得ない資産保有で、例えば不動産ですね。これは死 後、清算した場合にいわゆる行政から生活保護費用をたくさんもらっても一切それは相 続人が無傷でそっくりいただくという仕掛けになっているわけです。これに関しては法 的な歯止めとか、いろんな法制的な検討もしなくてはいけないと思います。ここはけじ めをちゃんと付けた方がいいのではないかと。特に今の比較的高齢な方は結構資産をお 持ちなので、しかし、そうは言っても生活保護費を受ける場合がある。では、家を売っ て何かにするということは望ましくないので、保護費を受けることはいいのですが、亡 くなった後は清算をするというのは当たり前ではないかと。ここはちょっと声を大にし て言っておきたいものです。よろしくお願いします。 (岩田委員長)  その点は、この間扶養の件でもその議論になりまして、それはきっちりするべきだと いう話になりましたので、それを緩和していく場合には当然付帯的にそれが付いてくる。 今のお話は入口の問題としてまた次回やりますので、是非そこで議論したいと思います が、今日はむしろ出口の方と言いますか、保護を利用している間に、どうやって自立あ るいは生活再建、よりよい生活という方向に向いていくかという場合の支援という範囲 で資産のことも御議論いただきました。もちろん、まだ議論し尽くせないので、今、岡 部委員が言われたようなことや、先ほど根本委員がおっしゃったような、結局今の議論 で特に自立支援というのを積極的に考えていきますと、ますます実態的な保護基準には 相当の幅ができてくるということを私たちは自覚させざるを得ないのですね。そうでは ないと、つまり自立支援などあり得ないということに逆に言うとなっていくかもしれな い。しかし、では、その幅はどこまでも開いていくかということには、やはりさっき言 った最低生活扶助という枠で言うとそうもいかない。ですから、両方をどういうふうに 勘案するかというのは、扶養のところでも出ていたような常識的な判断というのは、私 はやはり大事になってくるのでないかと思います。現在の普通の生活の中で、つまり、 最低というのはそこから切り離されたという意味ではなくて、普通の生活の下というこ とで前半も議論したわけですから、その範囲でどのぐらい幅を考えるかということに結 局はなっていくと思いますが。  いずれにしても、今日は、高校進学を認めていこうということや、あるいは全体的な 計画的な支援というものをきちんと段階的に追っていって、それに生業扶助等の裏づけ をしていこう。しかし、その就労の在り方や、あるいは稼働年齢にない人たち、あるい は重い障害を持っていらっしゃる方たちなどへの対応は、またそれとは何か少し違った 形であり得るのではないか。あるいは、就労以外の社会参加をどういうふうに考えるの かというのが少しまだ詰め切れてないままにあります。全体的な方向としてはそういう ものを少し区分しながら、それぞれ一番適切な支援の在り方をもう少しきちんと明示的 にしていって、その上で、各福祉事務所で弾力的な活用をしていただこうということだ ったかと思います。  もちろん、誰がするのかとか、さっき言った専門性の問題や、あるいはとりわけ人数 の問題ですね。福祉事務所の体制の問題というのは以前残っておりますが。  時間がまいりましたので、この件に関しては一応これで終わりにさせていただいて、 次回入口の議論のところで少し重ね合わせて議論したいと思います。  その他のことでは何か議題がありますでしょうか。事務局で。 (事務局)  特にございません。 (岩田委員長)  そうしましたら、委員の方々よろしいでしょうか。  それでは、少し時間をオーバーしましたが、以上で本日の議論を終わりたいと思いま す。次回以降の日程等について、事務局の方から。 (事務局)  次回の日程につきましては、5月18日の火曜日15時〜17時に厚生労働省5階の第7会 議室で開催したいと考えております。詳細につきましては、文書によりまして、事務局 の方より別途御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。  次々回以降につきましては、また委員の日程の調整は別途させていただきたいと思い ます。よろしくお願いいたします。 (布川委員)  1回分議題が延びている感じですが、それはどういう調整になるのですか。議題から 行くと1つ、1か月遅れていますが。 (岩田委員長)  そうですね。ですから、どこかで2回させていただくことになるかなと思っておりま す。それでちょっとまた、取りまとめも1回ですっと済むのだろうかという問題もあり ますので、大変申し訳ありませんが、後の方は少し御相談させていただくということで よろしいでしょうか。6月以降についてはなるべく早く御相談させていただきます。よ ろしいでしょうか。  それでは、長時間どうもありがとうございました。本日の議題はこれで終わらせてい ただきます。                                     (以上) (照会先) 社会・援護局 保護課 企画法令係       電話 03-5253-1111(内線2827)