04/04/09 第5回労働政策審議会勤労者生活分科会            第5回労働政策審議会勤労者生活分科会                        日時 平成16年4月9日(金)                           16:00〜                        場所 経済産業省別館1028号室 ○齋藤分科会長  ただいまから第5回労働政策審議会勤労者生活分科会を開催いたします。本日はお忙 しい中お集まりをいただきまして、ありがとうございました。  まず最初に、本分科会の労働者代表委員である大賀康幸さんが、9月8日付で辞任さ れまして、後任として篠原淳子委員が就任されましたので、ご紹介させていただきま す。 ○篠原委員  篠原でございます、よろしくお願いいたします。 ○齋藤分科会長  今日は西村委員、南雲委員が欠席です。事務局のほうも人事異動の関係でメンバーが かなり替わっておりますので、改めて紹介をお願いしたいと思います。 ○企画官  紹介いたします。まず、松崎労働基準局長です。昨年8月29日付で就任しました松井 勤労者生活部長です。本年4月1日付で就任しました山越勤労者生活部企画課長です。 最後に私、企画官をしております大塚と申します、よろしくお願いいたします。 ○齋藤分科会長  議事に入ります。お手元に議事次第が用意してありますが、議題1「平成16年度税制 改正について」、議題2「総合規制改革会議の動向について」、議題3「平成16年度予 算について」、それぞれ御説明をお願いいたします。 ○企画官  資料2、3、4で説明いたします。この3案件については、平成15年度に取り組んだ ことということで、すでに1月19日の基本問題懇談会に報告しています。今回改めて分 科会に御報告ということです。  2頁の資料2をご覧ください。これは税制改正の要望で、非常に貯蓄優遇税制に逆風 が吹いている中、なかなか改正が認められない状況にある中で、何とか成果を得たもの です。これは転職等をした労働者が、転職先で引続き財形を実施していきたいという場 合の継続措置の関係です。現行では、一旦退職してから1年以内に必要な手続きを取れ ば、継続加入ができるとなっています。非課税措置も、住宅貯蓄、年金貯蓄の場合は認 められるという制度になっています。  これを最近の厳しい雇用失業情勢の中、失業期間が非常に延びているという中で、1 年を2年に延長することが何とか認められた次第です。実際の適用は、本年4月1日以 降に離職等をして、転職等される場合に適用されます。平成6年に半年から1年に猶与 期間を延長した際に、1年未満の失業期間の方は大体83%をカバーできる状況でした が、最近では1年未満の失業期間というと、60%台になっていて、80%をカバーするに は2年くらい延長しないとカバーできないということで、何とか2年延長できたこと で、失業者の中で80%ぐらいの方をカバーできるということになりました。  参考までに4頁をご覧ください。この関係で、財形法の政令も整備して、継続期間が 2年になりました。もう1つ、これに準ずる措置として、転職先が財形を実施していな い場合、事務代行団体の構成員である企業であれば、事務代行団体に事業主代わりに払 込代行を行ってもらって、1年間はそこで暫定的に財形に加入できるという、特例自己 積立制度というのがあります。それについても、いままで離職後1年間は、その間に必 要な手続きを取れば継続可能だったのですが、これも1年を2年に延ばしています。  5頁をご覧ください。イメージとしてはこういうことで、いちばん上の太い線の期間 が、Aという会社で財形貯蓄(A)に入っていて、退職されたということです。いまま では、1年以内に新たな契約手続きを取らなければならなかったのですが、新しい事業 主の下で2年以内に必要な手続きを取ることによって、財形を継続でき、非課税措置も 継続できるということです。  次に6頁の資料3をご覧ください。これは総合規制改革関係で要望があって、事務代 行制度の趣旨の明確化ということで通達を出しています。もともとの趣旨は、いま財形 法上、中小事業主であれば事務代行団体という制度があって、そこに財形事務を委託で きるということが明記されています。  それの反対解釈であれば、それ以外のケースでは、例えば大企業は他にアウトソーシ ングできないと受け取られて、そういう誤解も生じていました。そこを少し整理して、 この規定があるからといって、必ずしも大企業が定型的な財形事務について、他の団体 なり、会社なりに委託することを制限するものではないという趣旨を明確化したもので す。  財形法第14条の2の規定ですが、助成金の中で財産形成貯蓄活用助成金というのがあ りますが、これは本来なら支給請求の手続きは社会保険労務士でなければできないので すが、中小企業が事務代行団体を利用する場合は、社会保険労務士でなくても事務代行 ができるということを、特別に規定しているということです。  7頁の(2)ですが、中小企業が事務代行団体に委託する場合に、民法上は委託契約 の手続きについては特段の要請はしていないところですが、この財形法上は、特に勤労 者本人の同意を事業場ごとに一括して書面で得なければならない、という特別の規定を 置いています。これは労働者の保護と、財形事務の一括管理による効率化のために、あ えて特別な規定を設けているということです。そういった財形法上の規定は、社会保険 労務士法や、民法の特則と位置づけられる規定を置いているわけで、それ以外のケース を規制するものではないということを、今回通達で示させていただいて、いままでの誤 解を解消するように努めているところです。  実際にどうしたらいいかということを8頁以降の別紙で、具体的な財形事務の事例を 挙げています。委託できるものには○、×は本来は事業主自身が行うべき事務であり、 これはもともとどこにも委託できないという性格のものです。例えば11頁のいちばん上 に×が付いていますが、これは事業主のほうから勤労者財産形成基金のほうに拠出する 金額なので、これは事業主自身がやらなければならないことです。それから、15頁のい ちばん上にも×が付いていますが、これは賃金控除、天引の際の事務です。これは当然 事業主が行わなければならないということです。そういった本質的な事務以外の定型的 な事務については、大体は委託が可能であるということを示しています。  次に予算の関係です。21頁をご覧ください。平成16年度の予算額の事項別表というこ とで示しています。一般会計についても、特別会計についても、ほとんどみんな△の減 になっています。単価の見直しや、実績見合いで、雇用・能力開発機構が独立行政法人 化する関係で、事務の効率化が求められています。いままでの業績見合いで、なるべく カットして効率化を図ったという観点で、減になっている分が多いということです。  その中で特に目立つのが、2の(2)のハの管理費です。特に大きく2億4,000万円 ほど減っています。これは管理費の中に含まれる人件費等が減ったということではな く、費目の整理が変わったということです。いままで雇用・能力開発機構の交付金の中 に、これが一括して含まれていたのですが、独法化に伴って運営費交付金という項目が できてそちらに整理されたということです。それで、こちらの財形業務については、勤 労者財産形成促進事業費の補助金の中で見ているところ、この補助金から外れたこと で、その部分は別の費目に整理していることとなり、実績の問題ではありません。それ 以外については、業務実績見合いで効率化を図ったということです。平成16年度におい て、支障のない範囲内で、何とか業務を遂行できる予算が組まれていると考えていま す。 ○齋藤分科会長  今の御説明について、何か御意見、御質問はございますか。 ○山口委員  財形法第14条の2の関係で、「いままでの誤解を解消する」という御説明でしたが、 私も不勉強で申し訳ございませんでしたが、少なくともここで意見提起したように、大 企業の話も出ましたし、労働組合が事務代行できるような制度拡充についてお願いした というように、単なる誤解ということで片付けられないようなことではないかと思って います。そういう点では、我々の立場でいえば労働組合が代行できるのか、どうなのか という確認をいただきたいと思います。  それともう1つは、前回の基本懇でもいただきましたが、ある意味ではもっときちん と周知をしないと、この周知によって、仮に財形全般の普及促進が図られる可能性もあ ると思っているので、是非そういう点では、この周知徹底についてさらによろしくお願 いしたいと思います。 ○企画官  労働組合においても、この整理表に基づいて委託は可能ということです。  周知のほうですが、現在パンフレットの中にも盛り込んでいます。そうしたものと、 この通達を都道府県知事宛てにしたというのも、幅広く各都道府県内の事業主団体、勤 労者に周知していただくという趣旨で通達を出したところです。また、いろいろと工夫 をしたいと思います。 ○齋藤分科会長  他にございますか。ないようでしたら、議題4「雇用・能力開発機構の独立行政法人 化について」の説明をお願いいたします。 ○企画官  22頁の資料5です。雇用・能力開発機構はいままでは特殊法人でしたが、本年3月1 日から独立行政法人に移行いたしました。その関係でどのように内容が変わったかを一 覧にしたものです。  名称が独立行政法人となったわけですが、雇用・能力開発機構で行っている財形に関 する業務は、財形融資に関する業務と、助成金に関する業務です。勤労者財産形成部で もともと24名で行っていました。これについては独法移行後も、全く同じ組織で、24名 体制で、引続き行うということです。業務の内容自体は従前通り同じということです。  ただ、業務の形態として、独立行政法人になったということで、いままでは特殊法人 として国の指導監督の下に、指図を受けながら業務をいろいろと行っていたわけなので すが、今度は独法化ということで、ある程度自主的に創意工夫をしながら、法人自らが 努力することになります。国がまず中期目標を示して、それに対して機構が中期目標を 達成するための中期計画を作成します。その中期計画に沿って、機構が業務を遂行しま す。  この雇用・能力開発機構の場合は、平成16年3月で、1カ月半端な期間があるので、 4年1カ月の中期目標期間となっていて、4年1カ月後の業務の達成状況を、独立行政 法人評価委員会で評価をして、もし達成状況に問題があれば、業務の見直し、組織の見 直し等が行われるという、事後チェックの仕組みに移行したということです。もちろん 4年1カ月後に一括して評価するだけではなく、年度ごとに毎年度の進捗状況も評価委 員会によってチェックされることになっています。  財形業務に関してどういう目標が立てていられるかが23頁です。財形業務について は、それほど大きな内容はなくて、財形の促進業務については、制度の周知徹底を図る ということです。例えば、制度変更等があった場合にホームページで1週間以内に公開 するということや、毎年度1回は必ずホームページの更新をすることや、平成14年度の 実績と比べて、アクセス件数を各年度とも10%以上増やすことなどです。あとはなかな か数値目標は難しいのですが、パンフレット、手引を作成し、説明会や相談業務を通じ て周知徹底を図るということなどがあります。あるいは、手続き面で申請者の負担を軽 減するように、記載項目の簡略化、添付書類の簡素化に努めるということや、担当職員 の研修をしっかりやって、審査能力を向上させ、サービスの向上に努めるというような ところです。このような目標と計画に基づいて、業務を効率的に実施していくというこ とです。 ○齋藤分科会長  今の御説明について、何か御意見、御質問はございますか。 ○新村委員  予算のところで、大きく減ったところは費目整理で運営費交付金になったとおっしゃ いましたが、ここでの運営費交付金は、今度労働保険特会から離れたということです か。 ○企画官  一般に運営費交付金には特会もありますし、一般会計もあります。この件につきまし ては、特会の運営費交付金という中に、財形業務以外の全ての業務に係る人件費と一括 して納まったということです。 ○新村委員  その抜けた分は先ほどの予算の中に載っていないのですか。 ○企画官  載っていません。それで減っているということです。 ○新村委員  ただ、労働保険特会から出ていることは同じなのですか。 ○企画官  同じです。 ○松井委員  1月に基本懇があり、そこで同じ説明を受けたのか忘れてしまったのですが、予算の ところでは、いろいろな項目については相当減ったとおっしゃいましたが、先ほどの雇 用・能力開発機構のほうでは、独立行政法人化されても、現実に業務をされている方に ついては全く人数も変わっていないという御説明がありました。基本懇の中でも、いま まで私どもとしてはいろいろと指摘してきた点なのですが、それぞれのものについてど れだけ管理のための運営費がかかっているのか、そういうものがおそらくそういった制 度を、本来独立行政法人であろうとなかろうと、運営していくのがいいのか、悪いのか ということに、最終的に決めていく重要なデータになり得るのだと思っています。  したがって、業務費と書いてあるのですが、これは予算額で減ったということになっ ていますが、実績が大体どのくらいになったのかということをもう少しお示しいただい たほうがいいのではないかと思います。  もう1点は、業務費という形で大枠で書かれていますが、例えば助成金などの場合に は、それに対して助成金そのものが本当はいくら支給されているのかというのも、本来 は示していただくことによって、それぞれの制度がどのくらいの費用がかかっていて、 現実に最終的に事業主なりが受け取るのがどのくらいになっているのか、そういうもの も今後議論をしていく中でしっかり示していただければと思います。 ○企画官  今御指摘いただいた点について、技術的にどうかというところを精査させていただい た上で、なるべく整理できるように努めたいと思います。 ○齋藤分科会長  それはまた別の機会に出していただくということにします。他に何かありますか。 ○松井委員  先ほど独法の中期計画なり、目標ということで御説明がありましたが、三事業そのも のの目標というようなものが出されていると私どもとしては理解しています。そこで見 ると、たしか事務代行団体を現状より少し増やすか、現状維持なのか。さらには、新規 の財形転貸融資決定件数が過去5年平均以上というものなどを記憶しているのですが、 勤労者生活部として他のものについて目標を立てたり、そのようなものはないのでしょ うか。  いままで審議会でいろいろと議論してきましたが、財形の件数が圧倒的に減ってきて いる、それに対する歯止めをかけるための目標など、その辺のものは立てたのでしょう か、立てていないのでしょうか。立てていないとすれば、どのような理由なのでしょう か。わかる範囲で教えていただければと思います。 ○企画官  今御指摘いただいた事務代行の部分と転貸融資の確保を現状維持以上に努力するとい うのが、雇用保険三事業の関係で目標を立てています。あと一般的に政策評価が行われ ていて、政策というのが一つひとつの事業ではなくて、大括りに見て、全体的に国民の 役に立っているかということも、毎年度推移を評価していて、その中で総合的な評価と して行われていることで、一つひとつについて、事業がどうなったかというところまで 細分化したものは出していません。 ○松井委員  でも、あまりにも転貸融資と事務代行団体ということで言うと、本当に限られたもの に対する目標、それに関与する方々は非常に限られていると思うのです。財形がかなり 減ってきているといっても、財形貯蓄の件数は圧倒的に多いわけですから、本来目標に ついて、そういう立て方については今後の議論に委ねられるかと思いますが、ちょっと 違うのではないかと私は感じたところです。 ○企画官  なるべく政策評価などでも数値目標を立ててということが言われているのですが、具 体的に数値目標を設定した場合、単にそれが上がればいいのか、また下がったり、現状 維持であった場合でも、それ以外の経済情勢の影響もかなり受けるので、外部要因もか なり受けるということで、単純に数値を達成することが正しいものかどうかというのが あります。ある程度転がしていかないと検証ができないと考えています。政策評価制度 が始まったのが、平成13年度からですので、そこのところを十分に転がしながら、どれ だけ政策評価手段が的確かどうかを確かめていくというところもあるので、今後検討し ていきたいと考えています。 ○奥村委員  関連してですが、目標をどうつくるかというのは、経済環境など、いろいろな要因が あるから難しいとおっしゃるのですが、我々の企業の事業は、いろいろな変化予測も含 みながら、株主に対して、これだけ投資をしてこれだけリターンを上げるのだという計 画をつくっているのです。それがもともと当たり前だと思うのです。もともと独立行政 法人化しようというのもそういう目的があったはずなので、いまの答えはちょっと納得 できないので、それは別途の機会にお答えいただきたいと思います。  松井委員が言われたことで、実績を見せてください、それと予算を考えましょうとい うことに関連して言うと、それなら目標として挙げることは平成16年度予算額というの が、実際に補助の件数、転貸融資の件数、そういうものをベースにして作られているは ずなのです。次回で構わないので、それを見せていただけないと。それは目標でなく て、見込みでも言葉は何でもいいのです。そうやって我々は、この事業がどういった 方々に利用されていて、本当にある意味では勤労者の福利厚生全体にどのように影響を 及ぼし、効果を上げているのかを見る責任があると思うのです。それを是非お願いした いと思います。 ○勤労者生活部長  今の御指摘はごもっともでありまして、謂わば財形制度のメリットを勤労者が享受で きるようにするために、今の制度の道具立てで足りるのか、仕組みを直した上で、それ に目標設定をするかという基本的な議論が、従前から言われながらなかなか議論できて いないのです。ですから、それをやる必要があるかと思っています。そういうところ で、もう少し詳細な議論をしていただければと思っています。  その際には、まさに今言われましたように、年々の予算と実績を見比べて、どうなっ ているかということも分析していただいて、それが制度としてうまくいっているのかど うかという評価をしつつ、それを直すのか、新しい制度にするのか、あるいは抜本的に 見直すかということを1回やっていただきたいと思います。それはこういう場で議論し ていただきますが、その前に基本懇という場もありますから、そういったところでもう 少し詰めた議論をぜひお願いしたいと思っています。 ○齋藤分科会長  他に何かございますか。ないようでしたら、次に議題5「基本懇の状況について」の 御説明をお願いいたします。 ○企画官  24頁の資料6です。基本問題懇談会を2回開催しています。第1回の基本問題懇談会 は昨年の7月4日に開催して、今後の進め方について御議論いただき、ニッセイ基礎研 究所に委託研究報告書を作ってもらっていますので、一応進め方として、この研究報告 書の課題を中心に検討していこうという方向で合意を得たということです。  第2回の基本問題懇談会が本年の1月19日に開催されましたけれど、その中で、報告 事項の後、ニッセイ基礎研の委託研究報告書のテーマである「企業の関与を基本としつ つ、企業形態の変化や労働慣行の変化を受けての制度の構築」と、「より多くの勤労者 が財形制度のメリットを享受できるようにするための改善策」について御議論をいただ いたところですが、このテーマにこだわらないかなり幅広いいろいろな御意見が出まし て、その御意見は25頁以下で述べています。どんな御意見が出たかと申しますと、まず 制度全般について、例えば財形制度を検討するに当たって、制度を単独で論ずるのでは なくて、福利厚生制度とか年金制度等関連する他の制度の動向を見ておかなければなら ないという御指摘、あと、年金等のいろいろな問題があるので、老後の生活に不安を抱 く方が非常に増えているということで、自助努力とか自己防衛が重要になっているとい う中で、財形制度は行政としても雇用主のほうからも勤労者側からも非常に重要な制度 であるという共通の認識を持つ必要があるという御意見、誰がどこでどのように働いて も1年のうち一定額までは非課税で財産の形成ができるような仕組みを作ったらどうか という御意見もありました。  また、社会環境も変わってまいりまして、財政事情も厳しいという中で一律に勤労者 のみをターゲットとした政策の妥当性というものがあるのかどうか、そこまで遡って考 え方の整理を行ってから中身の議論をすべきではないかという御意見、最近整備されて いるいろいろな企業年金等との位置づけの整理も必要だという御意見もありました。  また、個別の事項にばかり議論をしていると、全体として大事なところが埋没してわ からなくなるおそれがあるということで、中小企業の勤労者にあまねく普及し得るよう な制度にするにはどうしたらよいか、根本から議論すべきであるという御意見、最近の 金利の変動など様々な環境の変化の中で、そういった変化に弾力的に対応できるような 制度にすべきであるという御意見とか、そういう御意見があった中で、一方で基本論を 見すえて議論するのが当然ですけれど、年金とか税の問題とか政府全体での議論との関 わりがいろいろあるということで、これは単独ではなかなか決められない問題なので、 慎重にできるところから進めていく必要があるという御意見も出されたところです。  また、税制との関係では「貯蓄から投資へ」という基本的な流れがあるわけですが、 こういった基本的な考え方も頭の片隅に置きながら、そういった問題に耐えられるよう な議論をちゃんとすべきであるというようなこととか、特に低所得者、そういったもの の現状を見ると、財産形成というのはいま大事なことであって、制度の枠組みは、基本 的には国が備えてやるということをもっと打ち出していくべきだという御意見とかがあ ります。  次に、26頁です。アンケート調査等で分かったのですが、勤労者は天引きとか非課税 措置にメリットを感じているということは事実ですので、政府税調等のいろいろな動き に関しては、こういったものを維持するということなのでしょうけれど、早めに理論を 構築した上で対応していく必要があるという御意見、あと、「貯蓄から投資へ」と一概 に言っても、それはマクロ的にはそうかもしれないけれど、個々の勤労者を見た場合に は、それはライフサイクルの中である程度の貯蓄をしていかなければならないというこ とは事実なので、何から何まですべてが「貯蓄から投資へ」ということではないという 御意見もありました。  あと、財形制度の普及促進という意味で、非課税措置があるにもかかわらず中小企業 には普及していないと。財形制度は利用しやすい仕組みになっているかどうかというと ころをもっと本質的に議論すべきだという御意見があります。それと、元々それ以前の 問題として、制度を知らないために利用できないという人が多いので、今回、ここにあ りました転職継続期間の延長などもよく周知してほしい、という御意見がありました。  その他として、基本問題懇談会に報告したものはそれだけに留まらず、ちゃんと分科 会に挙げてくださいという御要望とか、先ほどもデータに関していろいろ御要望があり ましたけど、例えば事務代行の趣旨の明確化をしたことによってどれだけ普及が進むの かが見えるようにするため、大企業とか中小企業の別、あるいは新規契約と解約の対比 などの実績のわかる資料を出してほしい、という御意見が出されたところです。 ○齋藤分科会長  今の御説明について何かありますか。 ○山口委員  私は基本懇の委員ですから。ただ、心配なのは、基本懇に入っているとどうしても大 きな枠組みもきちんとしなければいけないと、私自身も議論をしていながらそう思いま す。早めにやるとか、そういう話もかなりしてきたと思います。国会での附帯決議に関 しても、失業状況の中でああいう附帯決議が認められて、今回、1年が2年になったと いうのもその一環であると言えるのですけれど、もっと幅広い内容を含んでいると理解 しているので是非、来年度に合わせるとか、次の法律改正に合わせるとか、それと、基 本的なものをどうするのかというのをごっちゃにならないように、時期的なものとか少 しめり張りをつけてきちんとしてもらいたいと思っています。1年が2年になっただけ だって大したものだと言えば大したものなのですけれど、特別な配慮というのは課税問 題もあるでしょうし、肝心の年金とかああいう大事なものができないという、そういう 点に大変注目もしているので、具体的な議論と基本的な枠組み論というのを明確に分け ながら是非めり張りをつけて議論をしてもらいたいと思います。 ○齋藤分科会長  他にも何か御意見ありますか。 ○前田委員  いまの御意見と同じようなことなのですが、基本懇のどういう議論をいつこの分科会 に報告するのか、やはりある程度スケジュール化というか、そういうのを見せていただ きたい。率直に申し上げて、大変いい議論をしていただいたとは思いますが、基本懇の 回数も2回しか開かれなかったのかと率直に思うところなどもありますし、もうちょっ と進めてもいいのではないかという感想を持ちますので、是非次回でも、基本懇の中で どういう項目をいつ発表するのかということをおっしゃっていただけると有難いと思い ます。 ○野澤委員  先ほど松井部長のほうから一言ありましたけれど、今の報告以外に何かあるのであれ ば、先にお考えを聞いた上で意見を申し上げたいと思いますが、これ以降はないのか、 松井部長からまだ一言あるのかどうか、それを聞いた上で意見を出したいので待ってい るのです。 ○勤労者生活部長  意見ということで、まだ確定ではないですが、前回の1月19日の基本懇のときに、当 初の予定ではこの夏ぐらいまでの間で精力的な御議論をという気持ちで御議論をしてい ただいたところ、この25、26頁にあるように、後半の議論が相当起こりまして、これは 本当に皆様方のいろいろな思いがマグマのように溜まっているので、私は1回2時間で 当初の予定通りやるのは難しいだろうということを申し上げました。今もありましたよ うに、是非とも実績をきちんと出して、検証していただいて、制度の基本の議論をす る。そういう意味で、短期的にやるべき話、長期的にやるべき話と、問題もきっちり整 理してやるという、要するに議論の仕方もちゃんと整理しなければいけないと思いまし て、次回やるときに是非そういう整理もしながらしたいという決意です。  もう少し頻度も上げるということに関して、わが部の体制も変わりましたので、もう 少し時間をいただいて、できれば5月に入って早速、基本懇をもう一度しっかりしたス タンスでやるとともに、年内、できれば年度いっぱいぐらいを考えながら、2カ月に1 回、もうちょっと短く、それぐらいの頻度で精力的に議論していただければと思ってい ます。そういう意味では、今日報告した1月19日の御報告は、当初立ち上げたときから 少し基本懇の考え方を変えるという、謂わば運営方法の切替えをここで御了解いただく べく、本当に途中経過で、本格的な議論は今からやれればと思っています。もし必要で あれば、またこの分科会を開く頃、途中でそういう報告を聞きたいというお話であれ ば、経過報告をするということもやらせていただければと思います。 ○野澤委員  私は中央労働者福祉協議会の立場で協議会に出ているのですが、ちょうど2年前に事 務局長を務めて、それからこの財形問題等について労福協という立場で、厚生労働省に 対して制度改善のお願いをしたりしているわけです。その中ではこの勤労者生活分科会 があると、また、今この分科会で議論をやっていますから、その成行きを少し見た上 で、それに合わせて対応するということで応えてもらいたいと。  それから、政令その他に関わる部分と、そうでなくて、スピードを上げてやれる部分 はやっていこうということを聞いていますが、先ほど使用者側から御三方の話がありま したが、まったく同感です。労働側とかそういうことではなくて、我々労側に関わる者 も、本当にそういう代行業務が、文書が入っているだけではなくて、本当にどうやって やれるのかどうかということをもっと知恵もしぼらないといけないと思います。ただ、 私は法律に関わるところで、政治的にどう解決するかとかいうこと以上に、今後の基本 懇のもち方も含めて分科会で議論をやっていくことがやはり必要ではないかと。という のは、これだけ雇用が流動化している中で、やはりもっときめ細かく対応するとか、そ れから、今まででもこの制度の運営の中でいろいろ提出書類が多いとか、こんなものは もっと簡素化できるのではないかとか、それから、私どもから言えば、企業が財形の給 付金等を支給していると、国から降りて来る補助金が出るまで数カ月かかっていると。 こんなことなんかもっと短縮できるのではないかとか、それから、今ITの時代ですか ら、非課税の申告書というと、A4でなければいけないとか、こんなことは法律と関係 ないことですから、やはりてきぱきとやっていくことが行政でも望まれていますし、先 ほど政策の評価基準がどうかという前に、やはりごく当たり前のことは当たり前にこな していくということが今の時代では必要ではないかと。今までの会議でもそうですが、 私は使用者側からおっしゃられることもまったくそのとおりだと思っています。ですか ら、今部長からそういう御提案というか、今後の取組みを含めての一つの見解が出まし たから、是非私はこの場でもう少し議論を積極的にやるとか、また、今報告の中であり ました中小企業の方々はこの財形を本当に受けられないと、また、あり方の調査の中で も、中小企業では取扱金融機関が一金融機関であるということも過去言われているわけ ですから、そういう代行業務だとか、普及をするとかいうこと、政治なり法律に関わる 部分と関わらなくても判断できる部分と区分けしながら同時進行でやっていくことが必 要ではないかと思うので、これ以上細かく言えませんが、是非やっていただきたいのは この分科会です。基本懇をやるだけではなくて、分科会の中で議論しながら、やはりそ こで進めていくことが必要ではないかと私は思います。基本懇の方を袖にするとか、そ んなことではなくて、部長から提案あることは、提案の中身をもう少し具体的に出して いただいて、お互いがどういう角度でやっていくかという作業委員会のようなものを、 より前進するように検討してもらいたいし、実行してもらいたいとお願いしたいと思い ます。 ○勤労者生活部長  非常に貴重な意見をありがとうございました。1つ、手続き的なことだけを申し上げ ますと、分科会はこんなに大規模な三者構成でおられるので、頻度を上げてやろうとし てもなかなか日程がとれないというのは物理的なものです。しかし、議論の基本につい てはある程度こちらの分科会で方向性というか、手続き論を決めて、あとは基本懇でど うするというかがおっしゃるとおりの手続きなのです。要するに、本格的な議論はもう 少し絞り込んでということです。今言われたものはすべて動いている実績をもう少し把 握しなければいけないのですけれど、いろいろな資料収集等々が相当な事務簡素化でな かなか集まらなくなっているので、もう一遍集め直して皆さんに御提示するということ も要ります。先ほど申し上げたように、本格的な議論をするとしても、2カ月ぐらいい ただきながら、問題点を言われて、サンプルでもいいからとにかく資料を集めて次に議 論することを一方でやりながら、基本的な議論、法律、言われていることとか政治的な ことも含めた議論を同時並行的にやると、それを年度内ぐらいでとなれば、2カ月に1 回ぐらいでやれば5、6回はいるのではないかと思われますので、その辺のところで御 了解いただければ、次の5月に開く基本懇のところでスケジュールを確定して、議論の 手順も御了解いただいてやれないかと。しかも、議論するときに、私自身、財形制度を 大きく分けて、貯蓄制度と融資制度と助成金制度と、この3つぐらいのグループに分け て、それぞれ基本議論と実務を組み合わせながらやれれば御指摘の点は大体議論できる ではないかと思っています。それを踏まえて整理して、どうやるかはここに御報告な り、また、基本懇を開くところでスケジュールを確定することにしていただくと有難い です。 ○齋藤分科会長  他に何か。 ○奥村委員  ささいなことになるかもしれませんけれど、現場の実感みたいなことでちょっとお話 ししたいと思います。実はつい最近、我々でも事業を強化しようということで、子会社 を合併統合しようと、こういうことを決めていま取り組んでいるのです。子会社は独立 しているからいろいろな制度を作ることもあるのですけれど、例えば生保さんの商品で 財形をやっていたというのがあるので、我々は生保さんは取り扱ってなく、それなら受 け入れようということで、その生保さんに、我々はおたくで財形をやりたいと、取扱金 融機関でやってくれないかと、こういう話をしたら、いや、我々は財形はもうやらない ことになっているということで断わられたと。  先ほど、継続、転職云々の、1年2年の延長の話があるのですけれど、ほとんど全体 的な、構造的な枠組みを見ると、金融機関によっていろいろ違うと思うのですけれど、 かなり変わってきていると思います。それから、たまたまいま4月で、新入社員の受入 れ時期なのですね。昔であれば、特に高度経済成長期からずうっと財形も見ているので すけれど、新入社員には、とにかくまず自分の資産を作りなさいということで、皆さ ん、この財形制度は非常にいい制度だから入りなさいと。金融機関も多分つぶれること はないという前提があったわけです。今は新入社員に対してどう言わなければいけない かというと、まずは自分で自分の資産をしっかり作りなさいと、こういうことを言うの です。その中で、実際にいろいろな制度があるから、それはあと自分の責任で考えなさ いと。財形の説明をするときには、例えば自分でリスクヘッジをできるような仕組みに なっているかというとどうもそうではないと、預け替えが自由にできるかというとどう もそうではないということがあって、いま新入社員がドッと各企業に入ってきているわ けですけれど、おそらくそういう人たちの加入率も相当減っている気がするのですね。 そういったことで考えると、実際もかなり、財形の地盤沈下というのがどんどん進んで いるのではないかと。先ほど言った分社化だとか、労働者が移動するとか、そういうこ とで財形を利用する機会もなくなってしまうということがあると。だから、先ほど早く という意見が前にありましたけれど、まったくそのとおりで、このまま放っておくと財 形の地盤沈下が進んでしまって、今まで財形が勤労者福祉に対して出してきた効果が、 胸を張って言えた部分があると思いますけれど、そうではなくて、あまねく勤労者が利 用できるということがどうも言えなくなってきているのかと。特に中小企業なんかはそ うだろうと思われます。本当にいまお話を聞いて思ったのですけれど、財形に新しい加 入者を加えるのは、ある意味では新入社員の入る4月の時期が非常に大事な時期なので すけれど、そういうことを見るにつけ非常に残念だという気がしているので、そういう 意味では制度としても非常にいい意味があると思いますから、何とかこの財形制度をみ んながうまく利用できるようにしないと財形の使命も終わってしまうのではないかと感 じています。 ○齋藤分科会長  他に何かありますか。 ○野澤委員  松井部長がおっしゃるように、2カ月ぐらいということであればそれ以上は申しませ んけど、またこれで1年調査して何だかんだということはもうやめていただきたいとい うことが1つです。それから、いろいろ議論する中でも、僕は事務手続きをどうしたら いいとか、これはもっと相手の人にこうしたらいいとかいうのは、これは失礼な言い方 ですけれど、事務局の方だけではわからないのであれば民間の専門の方も入れて、作業 部会でいいと思うので、今の事務はどうだということをもっと詰めてやってもらうと か。だから、独立行政法人になって何がどう変わったということではなくて、本当に目 に見えて変わっていくことがわかることを僕は少しやってもらう必要があるのではない かと。基本懇も基本懇として、基本の部分をどうやるかがありますけど、僕のところの 関係でも、労働金庫とか、いろいろなところから事務をこうしてもらいたいとか、異動 のときはこうだとか、先ほど言った、何でA6の用紙なのですかとか、いろいろ出てく るわけです。細かいことと言ったらあれですが、こんな要求を出すような筋ではない し、日頃の業務の中で、そのように民間でやればクリアしながら行っていることですか ら、それは是非使用者の知恵も出してもらいながら、作業部会の関連の金融機関も入れ ながら、やはりスピードを上げてやっていくということは必要かと思うので、いろいろ な工夫でやってもらいたいと思います。 ○勤労者生活部長  御指摘はまったくであります。あと、運用のほうでもう少し今までと違って弾力的に できるようになったかと。通し番号の23頁を見ていただくと、この独立行政法人に、手 続き等について中期目標を制度で定めましたけれど、個別の中期計画で、まさに助成金 等を中心にやっていますが、申請書の記載項目の簡略化であるとか、添付書類の簡略化 による事務手続きの合理化を進める等と、申請者の手続き面での負担の軽減を図るとい うことが具体的な命令で降りているわけです。そこで、運用している主体のところに今 言われたような意見を入れて、何も法律レベルでなくてもある程度動けるような仕組み には変わってきているわけですね。そこを、今言われたような意見をどう取り込んで、 早めにやるかという運用の工夫もやる中で御意見をいただけないかと思っています。 ○齋藤分科会長  このような用紙のサイズとか運用面の話は業務方法書だとかは何かで決まっている話 でしょう。そんなのは機構に早くそういうのをやれと言えばそれで済む話ではないので すか。 ○勤労者生活部長  それは大分できるようになりまして。 ○齋藤分科会長  自らやろうと思えばできる話でしょう。業務方法書は認可が要りますか。 ○勤労者生活部長  はい。一応チェックはかけますが、相当主体性を持たせるような運用にしています。 ○齋藤分科会長  今野澤さんが言われたようなのは、業務方法書等の段階で解決できるような話があ る。 ○野澤委員  いや。だから、文字では中期計画に色々簡素化すると書かれているけれども何をどう するか見えない。 ○勤労者生活部長  はい、そうです。具体的なものがわからない。 ○野澤委員  その先を申し上げているので、文字はよく読んでますから具体的に示してほしい。 ○勤労者生活部長  今回、そういう受け皿ができましたので、その仕組みを具体的に改善に向けて十分に 活用していくということで御理解いただきます。 ○齋藤分科会長  他に何かありますか。基本懇ができるときも申し上げましたが、基本懇のメンバーだ けではなく、この分科会のメンバーで御都合のつく方は是非議論に参加してもらいたい ということを申し上げたので、これからも御都合のつく方は是非議論に加わっていただ けたらと思います。  どういうテンポでどうやっていくかは少し基本懇の場で議論したほうがいいだろうと 思うので、この次にやる基本懇のときにそれを議論していただきたいです。そのときま でに事務局で粗々のたたき台を作ってもらい、それを元にしてやったほうが効率的だろ うと思うので、そうしていただけたらと思います。 ○勤労者生活部長  はい。たたき台を作ります。 ○齋藤分科会長  それから、私の個人的な意見なのですが、この財形制度そのものができてから大分時 間が経っていますし、その間の社会情勢の変化なり、就業構造の変化から始まっていろ いろなところで大きい変化があるわけですね。そういう中で、この制度の意義なり存 立、いったい依って立つ所はどういうところにあるのかということをもう1回整理した ほうがいいと思います。そうでないと、いつまでやってもそれはそのままの話だけしか できなくなってしまうから、もう少し今の時代に合うようなものにするにはどうかとい うこともあるのですけれど、どういう形であればいまの時代に生きていけるかというこ とを議論しておくことが必要だろうと思います。皆さん全員の一致を見なくてもかまわ ないから、議論の進め方として、少しだけでもそういう議論をやっておいたほうがいい と思います。私もこれからの議論の進め方について関心を持ちたいと思うので、今まで に2回基本懇があったのに出て来なかったのですが、是非議論に参加して議論に加わら せていただきたいと思いますので、皆さんよろしくお願いします。  それでは、今日の議事はこれで終わりにしたいと思います。議事録ですが、野澤委員 と田沼委員に署名委員をお願いしたいと思います。  今日はどうもいろいろお忙しいところお集まりいただきましてありがとうございまし た。                       照会先                       労働基準局勤労者生活部企画課企画係                       電話 03−5253−1111                       内線 5353