04/03/29第16回社会保障審議会児童部会議事録              第16回社会保障審議会児童部会                    議事録              厚生労働省雇用均等・児童家庭局            第16回社会保障審議会児童部会議事次第  日時:平成16年3月29日(月) 13:00〜15:00  場所:厚生労働省 専用第18・19・20会議室   1.開会   2.地方自治体関係者及び幼児教育の専門家からのヒアリング     ●山田孝夫氏(前北海道東川町長)     ●山口啓二氏(岡山市保健福祉局子育て勤労部保健課長)     ●山口茂嘉氏(岡山大学教授)   3.閉会 ○岩男部会長  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第16回の社会保障審議会児童部会を 開催させていただきます。  本日は、大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。  まず、本日の委員の出席状況について事務局から御報告をお願いいたします。 ○中村総務課長  本日の出欠状況ですが、服部委員、前田委員、松原委員が御欠席でございます。大日 向委員は30分ほど遅れて来られるということでございます。 ○岩男部会長  それでは、議事に入ります。本日は、地方自治体の関係の方及び幼児教育の御専門の 方、合計3名の方からヒアリングを行うこととしております。  まず、事務局から本日お出でいただきました方々の御紹介と本日の進め方について御 説明をお願いいたします。 ○唐澤保育課長  それでは、私の方から本日御出席をいただきました、3人の先生方の御紹介をさせて いただきます。  最初に、前北海道東川町長の山田孝夫さんでございます。山田孝夫さんは、平成3年 4月から平成15年3月まで、3期にわたり北海道東川町長を務められました。その間、 公立の保育所と幼稚園の一体型施設である東川町幼児センターの開設に尽力をされまし た。本日は、公立の施設である東川町幼児センターにおける取り組みを中心に、保育所 と幼稚園の連携の取り組みについてお話ししていただければと考えているところでござ います。よろしくお願い申し上げます。  続きまして、岡山市保健福祉局子育て勤労部保育課長、山口啓二さんでございます。 岡山市では、社会福祉法人の保育所と学校法人の幼稚園との一体型施設である御南幼児 教育センターを平成14年4月に開設していらっしゃいます。本日は、民間の保育所と幼 稚園の一体型施設である御南幼児教育センターにおける取り組みを中心に、保育所と幼 稚園の連携の取り組みについてお話をしていただければと考えております。よろしくお 願い申し上げます。  続きまして、岡山大学教育学部教授、山口茂嘉さんでございます。山口先生は、岡山 大学教育学部教授でいらっしゃいまして、発達臨床心理学が御専門でございます。ま た、山口先生は中央教育審議会幼児教育部会の委員でもいらっしゃいます。本日は、幼 児教育という視点から、保育所と幼稚園における合同保育の現状と課題についてお話を していただければと考えているところでございます。  続きまして、本日のヒアリングの進め方について事前にお話を申し上げたいと思いま す。まず、本日、山田孝夫さんにおかれましては、御都合により途中で退席されるとい うことでございますので、最初に山田さんに15分程度お話をいただきまして、その後15 分程度質疑を行いたいと考えております。その後で、岡山市の山口さん、それから、岡 山大学の山口先生に、それぞれ15分程度ずつ続けてお話をいただきまして、その後、一 括して質疑応答としてはどうかと考えているところでございます。  以上でございます。 ○岩男部会長  本日は、大変遠くからお忙しい中をお出でいただきまして、ありがとうございます。  それではまず、山田孝夫さんからよろしくお願いいたします。 ○山田孝夫氏  ただいま御紹介に預かりました東川町の山田でございます。  東川町と言いましても、皆さんにどこと言われるのが落ちでございますので、わかり やすく話をしたいと思います。大雪山国立公園23万ha、神奈川県の広さがありますが、 朝日岳のある町であります。旭川市の隣の町で、昔は「旭川村」と言ったんですが、分 家しまして「東川町」ということであります。人口は、過去には1万1,000人ぐらいい たときもありましたが、今は7,500〜7,600人ということであります。4市20町村では平 成12年の国勢調査で人口が増えたところが3つありますが、そのうちで一番増えた町と いうことですけれども、増えた町とは言いながら全体を見ますと減っていまして、特に 少子化が顕著になっております。  私が町長になりましたのは1991年、平成3年でございますが、そのときは常設保育所 が2か所、それから、季節保育所が3か所、それに幼稚園が1か所ということで、6つ のいわゆる就学前の施設がございました。ところが、中央の市街地の施設は余り園児が 減らなかったんですが、地方の各学校の保育所は惨たんたる有様でございまして、10名 を切るような状況で、保母さんが2人というようなことで、行ってみたら寒々とした環 境でやっているということでございました。これはいけないな、何とかしなければなら ないと思っておりましたけれども、その当時としては幼保一元化という雰囲気ではなか った。幸いに平成7年に分権推進委員、諸井虔さんの委員会ができまして、私もいろい ろな委員の先生方と深くかかわることができまして、幼保一元化の勧告を出していただ きました。  そういう中で、資料2−1「東川町幼児センターの概要」というものがあります。モ モンガは大雪山に住んでいる珍しい動物ですが、このモモンガの絵が描いてある資料2 −1の2ページを開いていただきますと、2「幼児センターの検討経過」というのが出 ております。初めにこの検討が始まったのは平成8年でありますから、ちょうど分権委 員会の合築に対する指針が出たときから検討が始まりまして、特に幼稚園を私のところ は4歳・5歳しかやっていなかったために、上の方からも3歳児をやりなさいという強 い指導がありましたし、また、父母の皆さんからもアンケートをとりますと、やはり3 歳児保育はやってほしいというようなことと両方ありまして、これは合同的な施設をつ くらなければならないというようなことを考えて、着々と計画を進めたわけでありま す。  そして、平成13年に、これは厚生労働省あるいは文部科学省の補助をいただきまし て、ここに『モモンガの家』というカラー刷りの冊子がありますので見ていただきたい と思いますが、こういう建物、これは表の一部でありますが、全部開いていただいて一 番右上を見ていただきますと、全景が出ております。工費も出ておりますが、約11億 円。外構工事を含めて11億円掛けてつくりました。見取り図も出ておりますが、大体建 物は3,000平方メートルであります。駐車場が左側に広いのがありますし、運動場が右 側にあると。全部含めまして約1.7haという広さの用地、これは水田を確保してつくっ たわけであります。  そんなことで、やり方としては端的に申し上げますが、3歳児以上の方は午前中は幼 稚園。保育所というのは午前中はない。3歳以下は全部保育所でございます。午後から 残られる方は保育所というようなことでやっております。国の規則からいくといろいろ 問題がありますが、厚生労働省の重元課長補佐さんも、委員の方も何人か見られたと思 いますが、非常に効率的な運営をしています。なぜ町村がこういうことを考えなければ ならんかといいますと、先ほど申し上げたように、幼稚園を含めて6か所の施設をこれ から維持管理していく、しかも、物すごく児童の数が減っていくのにやっていくという ことはもう無理でありまして、限界を超えております。ですから、少子化の時代に何と しても効率的な、しかも、利用者の立場から見ても非常に質の高いものにするのは、や はり一元化しかない、私はそう考えてやったわけであります。決してスムーズにいった わけではありませんで、特に幼稚園の父母の方から、質の悪い保育所と一緒になること は反対というようなこともありまして、教育委員会に委託したんですが、教育長も一時 音を上げまして、建物は一緒だけれども中は別々にやろうなどという話が出たこともあ りますが、私はそれなら小学校、中学校は、お母さんが働いているからといってあなた は学級を別にしているのかという話をしましたら、していないと言うから、それは差別 ではないかと。特に幼児の中から、幼稚園の子どもの親というのは役場の職員とか農協 の職員で、農村において最も恵まれた方が、たった月5,000円の保育料でやっておる。 こういうような状況でありますし、中には幼児からは保育所は貧乏人の子どもが行くと ころだなどという話がありましたので、私は強いリーダーシップを発揮しまして、父母 も説得いたしました。障害児も入れましたし、延長保育も、一時預かりも全部国の制度 は入れました。そして、そういう多様な家庭の子どもが一緒に生活することが、はやり 子どもの将来のためにいいのではないかと考えて、強くそういうことで進めさせてもら いました。  保育料でありますが、これは今申し上げました資料の21ページを見ていただきたいと 思います。実は21ページに載っておりますのは、厚生労働省が示した保育料は段差が7 つしかないということでありまして、私の町はその中を4段階あるいは5段階、6段階 を更に3段階から5段階まで分けて、いわゆる所得に合った、できるだけ近い保育料を ということでやりました。ただ、これは一番高いところが厚生労働省の基準であります ので、3段階、5段階でやっているところはみんなそれだけ安くなっていますから、こ れが超過負担になっているという実態があります。  これを基本として、18ページに幼稚園の保育料が出ております。例えば、第2階層の 3歳児は2,500円です。ところが、保育所の第2階層の3歳児は5,700円ということで倍 ちょっと高い。こういう形で、幼稚園の保育料もいわゆる厚生労働省の基準を使って、 そして、1つは時間、1つは所得、1つは年齢という3つの方法を立体的に組み合わせ た方法でやっておりまして、この制度がどこに行ってもよく考えたものだなと言われる ような、一体的な保育料でやっております。  それからもう一つは、子育て支援センターを一緒にしました。これは、当初は幼保一 元化の中では私の考えの中になかったことであります。なぜ子育て支援センターを抱き 込んだかといいますと、検討のかなり進んだ段階で、実は私の上川管内中央部のいわゆ る保健所が、私の町を含めまして16人の幼児を育てておるお父さん・お母さんのアンケ ート調査をやりました。その結果を会議で公表されたわけでありますが、実は私の町で 16人の調査の中で、子どもを虐待しているということを認識しているお父さん・お母さ んが3人いらっしゃった。それから、ひょっとすれば子どもを虐待しているのではない かと考えている人が16人のうち8人おったわけであります。私は非常にショックであり まして、私のいる田舎でこんなことがあるはずがないと。いじめだとか何とかは、よそ の国の出来事だと実感しておりましたところ、非常にショッキングな統計が保健所から 出ました。それで、私の町の幼稚園、保育所のお父さん・お母さんにアンケート調査を しましたら、同じような傾向が出てまいりました。実は愕然としたわけであります。こ れは何とか解決しなければならん。  だから、例えば、保育所であれば3歳以上だけれども、3歳以下の子どもで来られな い人たちもあるわけです。保育が欠けるとかという要素がなかったら専業主婦はどっち にも行けないという中で、昔の私たちの時代は大家族で、中おばあさんもおり、大おば あさんもおり、嫁さんが困ったら、熱が出たらキャベツをゆでて葉っぱを額に当てたら 熱が下がるよとか、そういう家族の中で救済するというか、そういう嫁さんに不安を与 えないような家庭ができていたのに、今は子どもとお嫁さんと2人で家庭の中で孤独で 格闘しているという状況がつぶさにわかったわけです。これは何とかしないと大変なこ とになる。それで、実は子育て支援センターをつくらせていただきまして抱き込みまし た。これは、資料2−2に出ておりますが、時間がありませんのでそっと目を通してい ただきたいと思いますが、遊びの広場だとかいろいろな触れ合い事業などをやりまし て、保育所も幼稚園にも入っていないお母さんが子どもを連れて、週に何回か一緒に親 子が遊び合う。そのことによってお母さんも友達ができ、あるいは安心をする。子ども も友達ができるという、そういう施設が一緒に抱き込めたということは保健所の統計が 事前に出たお陰で、それがなかったら幼保一元化だけで終わったのではないだろうかと 考えております。  それから、時間が限られておりますので、資料2−3のセンターの運営費の対比を見 ていただきたいと思います。早く読みますので皆さん追いつけないかもしれませんが、 実は、保育所と幼稚園と別々でやっていた時期の平成14年度以前の形でありますが、収 入としては6,198万円。ところが、これは一元化しますと収入が7,970万円ということ で、1,771万円増えております。増えた原因は、先ほどちょっとお話を申し上げました が、子育て支援センターの補助金が入ってきたのが500万円余りあります。それから、 今まで幼稚園は食事がなかったんですが、一応、副食給食をやってから帰ってもらうと いうことで、そういう食費なども増えた分であります。ところが、歳出の分はここで見 ていただければわかるんですが、従前は約1億3,000万円。ところが、1億9,400万円に なりまして、6,300万円ほど持出しが増えました。交付税や何かありますけれども、 4,000万円ぐらいの純粋な持出しが増えた。  16ページの予算のところで各町村が非常にパニックになっておりますのは、保育所の 運営補助金が交付税化されたんです。この中が現在では全く不透明なわけです。そうい うことで、一方では大体幼稚園であれば40万円程度、ところが、保育所も今まではバラ ンスがとれていたんですが、これは全く不透明な中で、うちの町などもできるだけ預か り保育をやって、幼稚園の子どもを多くしようということで8時間までやると、ちょう ど保育所の通常の時間になりますが、それだけ預かり保育をやろうと。そして、できる だけ定員いっぱいの幼稚園の園児を増やした方が、いわゆる交付税の中の仕切りで園児 一人当たり何ぼ、1か所当たり何ぼという金額がわかります。ただ、保育所の方は児童 福祉費の中で一人当たり1,974円という金額に人口を掛けて出すという方法であります から、区分ができないということから非常に不安を持っておりまして、経営的に考える と有利な方へどうしても走るということになって、中身は保育所だけれども、表は幼稚 園というようなことで予算をもらおうというような動きが出てきております。これは非 常に憂慮すべきことでありますから、時間が限られておりますので早くしますが、私は これからできます幼稚園、保育所、それから、第3の施設としてのいわゆる合同施設も 含めて、できるだけ政府の助成制度というのは平準化されるべき、均等化されるべきだ と思います。その中で選択されることがいいと思いまして、いわゆるそういう国の助成 によっていろいろと思惑があって揺れ動くという状況はよくないことだと思っておりま す。  それから、実は私も今、特区の委員をやっておりまして、公募の委員で幼保一元化で 応募したら、今は農村活性化部会長をやらされておりますが、その面で合同保育という ことで今、全国からかなり出ております。前半で幼稚園の方で10、保育所の合同保育で 9つということで出ておりますが、まだまだ増えていっております。  何と言っても、やはり今までのやり方は、ショチョウのあるかないかによって単価が 違うよとか、あるいは配置基準が幼稚園と保育所では違うんですね。例えば、4歳・5 歳であれば30人と35人の違いがある。それから、資格の相違、これは経験年数などによ って、戦争のときには臨職という臨時免許の教員がおりまして、それを一般教員にする ためにスクリングなどで通信教育をやって先生にしたという経過措置がありますが、私 はそういうふうに両方からとりやすいようにすることが、これから大事ではないかと思 います。  それから、建築に当たって、時間がないので言えませんが、私は2年間掛けてやった んですが、厚生労働省は2年間補助金をくれました。文部科学省は1年しかくれないん です。だから、高い方の年に申請するということになっていまして、補助制度も全く違 うわけです。これは、これから第3の仕組みを考える上においては、やはり均等化して いくべきではないか。  私が一番言いたいことは何かというと、今、少子化の問題はどんどん進んでおりま す。1.3人を1.39人にしますと坂口厚生労働大臣が年金改革で言いましたが、あんなこ とにはなりません。私は1.3人を切るのではないかと思っています。そういう日本のす べての制度の存立にかかわる問題は少子化問題であります。それにやはり国が最大の重 点政策として取り組むことが、最も私は大事だと思っております。そういう意味では、 3つの制度で選択をさせる。そして、将来は総合施設に収斂するけれども、差し当たっ ては3つでやって、そしてその中で選択をさせていく。特に、過疎がどんどん進む農山 村は今、財政は大変でありますから、そういう中で効率的なことができ、しかも利用す る側からは非常に満足していただく、そういう仕組みを第3の制度として考えるべきで はないかと思っております。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、ただいま御説明がございました内容につきまして、御質問あるいは御意見 等がございましたら、どうぞ御自由に御発言いただきたいと思います。 ○阿藤部会長代理  本題から反れるかもしれませんが、幼児虐待がいわゆる農村地域でも見受けられると いうことで、事例として専ら専業主婦家庭の例を挙げられたんですが、例えば3世代な らうまくいく、核家族だとうまくいかないとそこまで言い切れるのかどうかということ がちょっと。 ○山田孝夫氏  私は兄弟が8人でして、親を入れて十何人家庭だったんですよ。うまくできていたの は、子どもが悪いことをすると怒る人となだめる人とちゃんとおったんですね。例え ば、馬小屋の中に悪いことをしたら投げ込まれました。そうしたら、母親がほかの兄弟 に連れにいけと、それでちゃんとうまく調和がとれていた。言わば餅をつく人と手返し をする人と。今は核家族でお母さんが1人で子どもと孤独に向き合って、旦那さんが遅 くまで働いて帰ってこないという中で、やはり私は閉塞感の中で苦闘しているのだと思 うんです。それが苦闘だけで終わればいいが、病む部分になってしまって、やはり子ど もをはけ口にたたいたりする。だから、専業主婦だけではなくて保育所の子どもでも核 家族化によってそういう問題が生まれてきていると思うんですが、これは避けられませ んから、そうだとすればどうするかということになれば、こういうような第3の施設で みんな集めてやるということが解決法としてはいいのだろうと思います。 ○柏女委員  貴重な御報告をありがとうございました。  1点伺いたいんですけれども、先ほど山田先生が当面は3つ、幼稚園、保育所、総合 施設をそれぞれの状況に置いて進めていって、やがては総合施設に収斂していくような 方向を考えるべきだという御発言があったと思うんですが、具体的にはどのような道筋 といいましょうか、あるいはどのようにすることが総合施設に収斂させていくに当たっ て有効となり得る政策となるのか、その辺のお考えがもしありましたら、お伺いできれ ばありがたいんですが。 ○山田孝夫氏  今、東川町は特区でやっていますやり方が認定されまして、小泉純一郎さんの立派な 幼保一元化を認定するという認定書をいただいたんですが、玄関に掛けてあるそれをコ ピーして、この間、評価会で金子大臣に似て非なる改革だと。あれは、実際の改革では ありません。省庁がそう主張されているのでしょうが、いわゆる幼稚園で人員に不足な 部分があれば保育所の子どもを入れて、保育所は不足の園児がおれば幼稚園の子どもを 入れていいよという小手先の改革であります。今、先生の御質問にありましたとおり、 農村部においては財政的に、北海道は特に交付税に依存する官依存体質が本州の倍以上 高いですから、それがどんどん今回、三位一体で減ってきておりまして、もう予算を組 めないような町村がどんどん出ております。これだけバラバラの施設を持ちながら、バ ラバラの職員を配置してやっていけるのかといったら、それは不可能な話でございます し、ちょうど保育所ができて約30〜40年。建替えの時期に全国一斉に入っておりまし て、この機会にやはりこれを認めてくれれば、何も町村の場合は民間に委託したいと言 ったって、先ほど申し上げたとおり、建築費も含めますと1年に1億円からの繰出しで ございますから、民営化などということになり得ないんです。どうして持出しをすると いうことになれば、その中でより効率的にやるのはどうかということになれば、もうそ れは幼保一元化しかないと断言しても私はいいと思うんです。ただ、これは市の場合な どはちょっと違うと思います。市で私立でやっておられる方などは、旭川市はほとんど 公立がありませんから、そういうところと農山村とは別でありますし、もう一つは、今 の待機児の問題などを見ましても、保育所には入れない。ところが幼稚園は子どもが減 って経営ができない。そういうことであれば、一元化すれば問題は何もないんですね。 ですから、私はそういうことに収斂していくのだろうと。時間は掛かるけれども、初め は定率にして、そして、助成措置がほとんど均衡化されておれば、どんどんそっちへこ れから民間でやっておられる方も、札幌などの話を聞いていましたら、そのようなこと を言っております。でありますから、私はそういう方法がいいのではないかと思ってい ます。 ○津崎委員  1つお聞きしたいんですが、背景に少子化の問題と効率的な運営の問題が非常に大き な動機になっているようにお伺いしたんですが、実際、幼保一体の形で運営なさってい て、運営上の一番の今の課題というふうに感じられているのはどういう点なのかを教え ていただければと思います。 ○山田孝夫氏  実は幼稚園の先生は御案内のとおり、昼過ぎに帰りますと、後は次の日の授業に備え て研修をするんですね。ところが、今は玄関も職員室もみんな1つですから、保育所を 持っている、特に3歳児未満を持った人は、遅い人は夜の7時過ぎまで子どもを見なけ ればならん。ところが、幼稚園児を持った人は1時半に昼食を食べさせて帰しますか ら、それで終わるということで、同じ職員室の中で労働条件がかなり違うわけです。そ こで、私たちは両方の資格を与えればローテーションが組めると。例えば、40年勤めた うち20年が保育所型、いわゆる長時間型。それから、20年が短時間型、幼稚園型になれ ば、トータルとして同じ勤務状態になるのではないかということを実は考えていまし て、資格をもっと取りやすくして経験年数などを考えてはどうかということ。  もう一つ一番悩みを言われていますのは、幼稚園の先生をやられた方々です。幼稚園 の先生などは午後から一体的な会議や研修ができるわけです。ところが今度、混合保育 になりますとローテーションで回りますので、早い人はバスが出るときに同乗する保母 さんも2人ぐらいいますから、それから、帰り・送りから全部、7時まで来ない方はや はり保母さんが2人最低でもおらなければならん。そういう形で、一遍に集まって会議 や打合せをすることができなくなった。やはり何人かは業務に就かなければならんとい う状況の中で会議をしなければならんというのが、先生方の苦情であります。  それから、子どもの父母の方からどんなことが出ているかというと、先生が固定して いないんですね。例えばローテーションを組まれていますから、早朝バスに乗った先生 は担任であっても早帰りになってしまう。午後からは遅番の先生に代わってしまうとい うので、以前は先生を固定してくれたのに、先生が代わるということは困るという意見 があると聞いております。 ○遠藤委員  ただいまの質問と非常に重複する部分もございますが、総合施設というのを単に幼保 一元化の話ととらえないで、預かり保育とか子育て支援センターの併設というようなお 話をいただけたかと思うのですが、そうしますと、職員の関係にしましても、子育て支 援センターの内容を見てみますと、福祉にかなり保健の部分を組み込んで事業としてや っていらっしゃるようにお見受けしたのですが、その辺りは町の保健課といいますか、 健康課といいますか、その辺りとはどのような調整をとっていらっしゃるのか、お教え いただけたらと思います。 ○山田孝夫氏  子育て支援が全くうちの町でなかったときは、保健婦さんがいわゆる乳幼児健診など をやられておったんです。今回はこういうカリキュラムの中に栄養相談とかいろいろな 問題について栄養士さんとか、今は「保健師」と言うのですか、出てきて、そして一緒 に遊びの広場の中に入ったりしてやっていただいております。そういう点では、立体的 に教委と町長部局の保健衛生課と今の幼児センターとは一緒にやっておりますし、これ はお医者さんもかかわる問題がありますが、そういう点は今まで以上に濃密に立体的に やれていると。だから、ほとんど総体で言いますと、先ほど申し上げた問題点は一部あ りますが、点数をつけていただくなら、従前に比較して90点以上の満足度でよかったと 言ってくださるのではないかと思っています。 ○吉田委員  保育料についてなんですけれども、いわゆる所得と時間に応じて、かなり見た目は複 雑な徴収でございますが、特に幼稚園は大体均一の保育料で、所得の違いは就園奨励費 で見るというケースなんですけれども、むしろ幼稚園を逆に保育所の徴収基準に近づけ ているということなんですが、考え方としては均一の保育料にして、所得の違いは就園 奨励費のように別の形で負担軽減をやるという発想と、保育所の保育料のように最初か ら保育料徴収自体を所得によって変えていくというのがあるんですが、その辺について どうお考えかということと、それから、行政事務としてこれだけの保育料の基準がいろ いろあると、かなり手間が掛からないかという点をお聞きしたいんですが。 ○山田孝夫氏  確かに、事務局は言っています。これは、やはり一元化してもらって単一の方法で計 算させてもらわないと、台帳は両方つくって、厚生労働省の職員の方には悪いんです が、やはり補助金をもらわなければならんですから、一人一人これは幼稚園型、これは 保育所型とつくるんですから、事務の錯綜というのは大変でありまして、早く幼保一元 化するように頑張ってほしいということを職員は言っております。  それから、今、先生がおっしゃったようなことがありますが、実はこれも厚生労働省 の関係の95%で実は決めているんです。そこで5%は超過負担が現実に出ているんで す。厚生労働省のものは一般に、これは住民の甘えがあるのかもしませんが、高いとい う認識があるんですね。ですから、さっき言ったように4段階、5段階で一番高いとこ ろに厚生労働省の真ん中のものを持っていっているということで、そこでも緩和をされ ております。  実は、幼稚園の授業料は私の町で20年間5,000円で来たんですよ。私が町長になった ときに、ほとんど父母の方は先ほど申し上げたように役場の職員や農協の職員で、町に とっては最も高給取りなんです。その方々は専業主婦でやっていけますから、5,000円 というのはとんでもない話だと、人件費の1人分もないんです。こんなばかなことがあ るか、上げろということを何回も言ったんですが、私の町村が1市8町の中で一番高い んです。ごみも何でも私の評判が悪かったのは、何でも一番高い町長ということで、あ のころは国はじゃんじゃん金をくれますし、ばらまきでバブルで来ますから、官が面倒 をすべてただで見てやるというのが常識になっているんです、今でも。その中で、やは りこうやってやっていくというのは大変なことでありまして、特に今度の場合、5,000 円ものが平均1万7,000円に上がるんです。食事がつきますので。そうしますと、やは り低所得の方は払われない方が出てくるんです。それで、いわゆる厚生労働省型にし て、生活保護や町民税も均等割も払えないような方には、ただですよということで幼稚 園もそういう形にしたし、勿論、応能の能力のある高給取りの役場の職員などは、今ま では5,000円だけれども、あなたは3万7,000円になるんだよと、これは我慢してもらわ なければ困るよというような形でやって、これについては皆さん事前に納得してくれま した。サービスが物すごく上がりましたから、逆にサービスが上がったことに対しては 負担をしなければならんという最近の意識も変わってきておりますから、これはそれで うまくいったのではないかと思っています。 ○網野委員  大変貴重な御意見をいろいろいただいて、ありがとうございました。  1つ、私自身お聞きしていまして、いわゆる3歳未満を中心とした地域子育て支援セ ンターの機能の部分とか、例えば預かり保育といったようなことに関しては、職員の勤 務体制あるいは職務体系というのは全く別枠なんでしょうか。それとも、全体の職員の 構成を考えて、さまざまな役割分担とかローテーションで進めておられるのでしょう か。あるいは当然、予算はそれぞれ分化されていますが、実態上はどういうふうなこと が望ましいとお考えでしょうか。 ○山田孝夫氏  実は、職員の数は39名というので、従前より13名増えたんですよ。私は本音ところ、 こんなことを職員の前で言ったら怒られますが、私は何でも本音で話をするので。そう いうバラバラな施設を一緒にしたら、職員が余って辞めてもらわなくてはいかん人が出 てくるかもしれないと実は考えて悩んだんですよ。ところが、それぞれ職員のいろいろ な検討会で立ち上げてきたものは、さっき先生がおっしゃったように一時保育だとか延 長保育だとか、預かり保育というのは、それこそ十二分にシステムとしてつくりました 関係上、逆に人が足りないという話になって驚きまして、13名増員になりました。これ は、パートの方もおられますし、それから、正職員と同じような勤務状態で臨時職員の 方もおられますが、これは厚労省から言うとうまくないのでしょうが、人件費が今80% を超えています。これでは経営は全く成り立ちません。でありますから、できるだけ人 件費を低く抑えたいというようなことで、今はパートを入れて臨時職員が半分ぐらいに なっているのではないか。正職員が大体半分ぐらいということで、そこはやはり父母に しましてはちょっと不満というか、全部正職員にしてほしいということでありますが、 今1億円からの繰出しがありますので、そういうことをしますと2億円ぐらいになりま すので、うちの町では財政がもちませんので、その辺は事情を理解していただいてやっ ているところです。 ○山縣委員  いろいろ貴重な御意見をありがとうございました。  行政上のメリットについて幾つかお話をいただいたんですが、幼稚園の保護者から、 それから、幼稚園の職員からのマイナス面といいますか、負担の面のお話があったんで すが、幼稚園、保育所の利用者あるいは職員の方から出ているプラス面というか、どう いうところに効果があったか、とりわけ子どもの育ちとかそういうところの声がありま したら、幾つか教えていただきたいんですが。 ○山田孝夫氏  1つは、環境が物すごくよくなったということですね。カラー刷りのものを見ていた だいてもわかりますが、よその町村から視察がどんどん来ますが、こんなものは建てら れんぞと。御殿のような建物であります。すごく環境がよくなりまして、これだけの環 境で、しかも、中を見たらみんな木造りであります。木造りにしますと大体鉄筋コンク リートより2割ぐらい高くなりますが、できるだけ道産材、国産材を使いたいというこ とで、やわらかい雰囲気を出したいというのでほとんど木造りにしております。そんな ことで、環境がまずよくなったということ。  それから、いつでも自分の時間に合わせて保育していただけるということで、いろい ろな選択肢が広まったと。今までは4時間、8時間で、それ以上はだめよというのが、 例えば延長保育などは11時間半というのがありまして、それでも預かっていただけると いうことで、どういう対応でもしていただける環境が整ったということが、やはり父母 の皆さんの安心というか、それで私はいつも卒園式に行ったら、まず、子どもをできる だけ頑張って産んでくださいというあいさつをするんですが、それが国のいわゆる再生 の道だと思っていますので、ここには私の町長12年の在任中、一番贅沢な投資をさせて いただきました。 ○岩男部会長  よろしゅうございますでしょうか。  それでは、山田さん、大変貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。  それでは、次に岡山市の山口課長にお願いをいたします。 ○山口啓二氏  岡山市の山口でございます。大変お世話になります。  岡山市における保育園と幼稚園の連携の在り方について、お話をさせていただきたい と思います。  岡山市は現在、人口約64万人の都市でございます。保育園の数は、認可保育園が公立 で43、私立で54でございます。ちなみに、幼稚園が公立で68、私立で15でございます。  幼稚園と保育園の連携でございますけれども、いずれも就学前の教育あるいは子育て 機能の重要な役割を担っているものでございますが、岡山市におきましては、今お手元 に配らせていただいております「岡山市における就学前教育の今後の在り方について」 という報告がございますけれども、平成13年6月に岡山市就学前教育検討委員会から報 告をちょうだいしております。  現在の岡山市における幼稚園、保育園の連携につきましては、この報告を基に進めさ せていただいてございますが、こういった報告をいただくに至った経緯がございます。 1つには、岡山市の中心部から西の方へ車で10分ぐらいのところへ、今日お話をさせて いただきます御南という地域がございます。そこは、ベッドタウン化と申しますか、非 常に人口が増加をしている地域でございます。私どもも行くたびに、田んぼがコーポに 変わっているとかそういうところで、若い世代がどんどん入ってきているという地域で ございます。  そこの岡山市立の幼稚園、白石幼稚園というんですけれども、老朽化による建替えの 計画が出てまいりました。しかし、先ほど申しましたように、非常に人口が伸びている 地域でございますが、保育園がなかったというところでございまして、地域の方から是 非、保育園をつくってほしいという要望がございました。幼稚園の園舎の建替えに伴い まして、幼稚園と保育園がどうにかならないかということでございます。  それから、もう一つには、都心部のドーナツ化現象と申しますか、市の中心部におき まして人口がやはり減少してきていると。児童数も当然減少してきているということ、 あるいは市の周辺部では過疎化が進行して、これも子どもの数が減ってきているという 都心部と周辺部における減少という中で、子どもの数が減っていることから、望ましい 集団生活、集団的な子どもの活動ができないのではないか、そういう状況になってまい りました。  そういう背景に立ちまして、民間の方々にも入っていただいてございますけれども、 検討委員会を平成11年に設立いたしまして、種々協議を重ねまして、最終が平成13年6 月に報告をいただいたものでございます。内容的には、ごらんいただいたらわかると思 いますが、基本的な考えは、幼稚園と保育園の垣根を低くしていこうということでござ います。その具体的なものとしまして、先ほどもお話ししましたけれども都心部の児童 数が減っていることから、幼稚園の数が5園ございましたが、現在はこれを1園に小規 模幼稚園の適正化を図ってございます。  また、全国的に問題となってございます保育園の待機児を解消するということでござ いますけれども、岡山市におきましても平成13年4月には243人の待機児が、1年後の 平成14年4月には68人の待機児がございましたが、いろいろ民間保育所も含めまして定 員増を頑張ってきたことから、平成14年9月から今月に至るまで待機児童数はゼロとい うことでございます。施設の創設や増築、定員を超えての受入れ、民間も含めて努力し てきたということだと考えてございます。  それから、岡山市が目指している幼稚園と保育園の関係ということでございますけれ ども、先ほど申しました垣根を低くいたしまして、どちらの子どもも同じ就学前の子ど もととらえるということでございます。  また、幼稚園と保育園の連携を強化して、その内容を、教育・保育の質を高めていこ うとも考えてございます。そういった中で、岡山式カリキュラムというものを教育委員 会と一緒になってつくってまいりました。岡山市における人づくりの重点である自然を 愛し、人間を尊重する心豊かな子どもの育成を目指してございます。  4ページにございますが、岡山式カリキュラムにつきまして、メリットということで ございます。まず、子どもにとっては発達段階に応じた教育・保育の展開ができると。 幼稚園教員と保育士が協力をして、それぞれの年齢に応じた発達にふさわしい教育・保 育を受けることが可能となるということでございます。  また、多様な体系の共有ということでございますが、異年齢、同年齢の子どもたちが ともに生活をするとといことで、集団生活を通して生活のルールを学ぶことが可能とな ると。特に、子どもの数が少ない地域におきましては、幼稚園の子どもと保育園の子ど もが一緒に生活をするということで、多くの子どもと接することができる、そういう中 で、子どもが自ら考えて行動する能力が備わっていくということでございます。  また、保護者にとってのメリットでございますけれども、1つには、いろいろな保育 形態の中からニーズに合ったものを選択することができるということや、子育て支援の 充実、いろいろな子どもを育てていただく上での悩みを幼稚園の教員や保育士に幅広く 相談することができると。1人だけで悩むことなく、いろいろな保護者とも知り合いに なれるということから、子育て支援の充実が図られるということでございます。  それでは具体的に、岡山市ではどういった幼稚園、保育園の連携、取り組みがされて いるのかということでございますけれども、これも資料で1枚もののペーパーをお配り させていただいてございます。具体的な保育園、幼稚園の名前が出てございますが、ま ず一番上に先ほどお話をしました御南保育園、御南幼稚園でございます。建物の棟は分 かれてございますけれども、1つの建物の中に保育園と幼稚園が入所してございます。 私どもは「岡山市御南幼児教育センター」と呼んでございます。平成14年4月1日に開 園いたしたものでございますけれども、幼稚園、保育園それぞれ公募をいたしまして、 運営につきましては私立がされてございます。幼稚園につきましては学校法人虫明学園 と申します。保育園につきましては、社会福祉法人橘会と申しますけれども、民間活力 によりまして、より細やかな教育・保育をしているということでございます。  ここに具体的に書いてありますが、毎日11時ごろにはみんな幼稚園、保育園の子ども が園庭に出まして、自ら選んだ遊びということで一緒に遊んでいると。いろいろな年間 の行事、クリスマス会とか遠足とか運動会等々も積極的にやっていると。また、隣が小 学校でございます。幼稚園、保育園の連携だけではなく、小学校との連携もできるとい うことでございます。  それから、先ほど町長さんのお話にもございましたけれども、地域子育て支援センタ ーを開設してございます。人数的には登録者が今200組近いと聞いてございますが、保 育園に入っていないけれども、そういう方々がたくさん来てございます。支援センター だけの運動会も開催しているところでございます。非常に情報交換の場となってござい ます。  それから、その下の小串保育園・同幼稚園でございます。小串というのは岡山市の一 番南、児島半島という半島がございますけれども、どちらかといえば過疎化が進んでい るということで、幼稚園の子どもが去年の3月では1人になってしまったと。この春、 3人入ってきまして、幼稚園の子どもは今現在4人でございます。保育園の方は三十数 人おりますけれども、果たして4人ということで子どもの将来にとっていい集団生活を 営むことができるのかという不安の声が教育委員会あるいは地元の方からございまし た。緊急避難と申しますか、隣の保育園には三十数人子どもがいるわけですから、一緒 に行事もし、場合によっては一緒に保育もするということで、集団的な生活を一緒にし ているところでございます。今年4月からこういうやり方をやりましたけれども、同じ 子ども同士、保育園の子ども、幼稚園の子どもが一緒に生活してどうなるかという心配 もございましたが、子ども同士の中ではそういう心配も吹き飛んでしまいました。ある いは保護者にとりましても、数が少なくなっているわけですが、一緒に幼稚園、保育園 の保護者が交流することによって、いろいろな体験をすることができる、相談もできる というところでございます。  それから、その下の「太伯(たいはく)」と呼びます幼稚園の空き教室を保育園が利 用するということでございますけれども、幼稚園の子どもは現在、年少・年長合わせて 25人でございます。ちょうど幼稚園の2階の2室が空いてございました。保育園の方は 子どもの数が80〜90人ぐらいで、遊戯室も一時的には保育室に変わる時期も出てくると いう状況で、地域の方々の中にもこういう状況を見られて、幼稚園の教室が空いている なら保育室に使わせてあげてはどうかという話がございました。幼稚園の方もあるいは 教育委員会の方も御理解をいただきまして、今、工事も最終局面に入ってまいっており ますけれども、幼稚園の2階の一室をこの4月から保育室に使わせていただけるという ことで、今現在、両方の園舎を結ぶ渡り廊下を建設しているところでございます。  今までもこの太伯というところは隣り合わせになっておりますので、いろいろな運動 会とか遠足、小学校へ遊びに行く、いろいろな行事も今まで連携してやってきていると ころでございますけれども、こういう事情によりまして保育室として幼稚園の教室を使 わせていただくといったことから、来年度また新しい幼保の連携が始まるのではないか と、私どもも期待しているところでございます。  それから、その下に岡南保育園・同幼稚園、それから、弘西保育園、これは私立でご ざいます。岡山中央幼稚園、この2つの事例が出てございます。両方とも昨年度の末に 園を分けておりますフェンスを取り除きました。弘西保育園、岡山中央幼稚園の方は、 これによりまして園庭が1つになったと。これは、本当に岡山市の都心部に立地をして いる保育園、幼稚園でございます。今までやや園庭も狭かったということでございます けれども、これによりまして、十分な広さの園庭を確保することができてございます。 また、岡南の保育園も非常に子どもの数が多い地域でございますけれども、フェンスを 取り除くことによって自由に、園庭は立地的に1つにはなりませんけれども、自由に子 どもが行き来することができる、空いているときは幼稚園の教室を使わせていただくこ とができる、こういう取り組みをしているところでございます。  それから、一番下に書いております甲浦保育園・同幼稚園でございますけれども、こ れも隣合わせの幼稚園、保育園でございます。保育園の子どもの数はやはり非常に定員 を超えての受入れが進んでいるところで、必要に応じて園庭や幼稚園の遊戯室を行事に 利用させていただいてございます。  こういうような岡山市のパターン化はされておりますが、実際に取り組んでいる事例 を御紹介させていただきました。いずれにしましても、これはということではなしに、 その地域、地域の実情に合わせた幼稚園との連携の仕方でございます。これによって、 子どもの発達はもとより、保護者の社会教育といいますか地域的な教育、先ほど山田町 長さんの方から虐待の問題のお話がございましたけれども、これは岡山市においても深 刻な問題でございます。親の子育て能力が昔に比べて落ちていると。こういう幼保の連 携は、子どもだけではなしに親同士の連携にもつながり、子育て能力が上がる、意識の 向上につながるというような期待をしているところでございます。  以上、岡山市の取り組みについてお話しさせていただきました。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、続きまして、岡山大学の山口先生、お願いいたします。 ○山口茂嘉氏  それでは、私の方からはちょっと引いた話なんですけれども「保育所と幼稚園におけ る合同保育の現状と課題について」というお話なんですが、特に幼児教育の視点からな んですが、1番目は、人の一生の中での乳幼児期の位置付けと発達の相互性・相補性と いうことから入ります。  最初に、乳幼児期の問題と言うと乳幼児期だけに限定されるんですが、ここで見てい ただきたいのは、田邊順一さんの『老い』という写真ブックがあります。これを見てい ただくと、このおじいちゃんは指しゃぶりをしていますし、下のおばあちゃんは毛布の 端をチューチュー吸っています。これを見ますと、乳幼児期の問題を考えるということ は、乳幼児期だけの問題だけではなくて、広く一生の問題の中で乳幼児期を考えていか なければいけないということだと思います。  そう考えたときに、もし万が一乳幼児期の生活がすごく寂しかったら、いずれ返って くる老後の世界というのはもっと寂しい世界ではないだろうかということを私の専門か らはすごく考えています。この図は、私たちの一生というものを横が時系列で、その中 に発達段階を入れ、上がエリクソンの発達段階を配したものですけれども、そこのライ ンの下のところに、要するに人生というのは他力に始まる。私たちは生まれてこようと 思って生まれてきた人は1人もいないわけです。大きな力の中からこの世の中に存在し ている。そして、青年期になって初めて、自分はこういう仕事に就きたいとか、こうい う家庭を営みたいとか、他力から自力に目覚める。そして、最終的には大きな他力の中 に帰る、帰るというのは還暦という、私は今日が61歳の誕生日なんですが、そういうふ うな一生の流れの全体の中で、では、どういう乳幼児期の過ごし方が一番望ましいのだ ろうかという視点を忘れてはいけないのではないかと私は強く感じております。エリク ソンも言いますように、やはり乳児期のテーマというのは基本的信頼ということでしょ うし、幼児期の前半ではしつけ、自立性の問題でしょうし、そういうふうにして私たち が1つずつ発達の課題を乗り越え、そして、最終的には統合された非常に高い境地の中 で死を迎えることができるか、それとも絶望の中で自分の一生を閉じるかというのは非 常に大きな問題ではないのかと思います。  そういうふうに考えたときに、私は全体の構造の中での乳幼児期というのは一体どう いう時期なのかという視点を強調しなければいけないと思うんです。そして、子育てと か保育とか教育というのは、一方的な関係でなくて、相互性とか相補性、補い合う関係 だと思います。これを保育所と幼稚園の合同保育を考えるときの1つのキー概念に私は 持っていきたいと思っております。子どもを育てるということは親が育てることである し、保育するということを通して保育者が育つという、教育とか保育ということを考え ると、どうもワンウェイで一方だけを考えるんですが、そうではなくて、育てられる部 分というか、だから、そういう意味では、親が親になるという非常に貴重な機会も保障 していかなければいけないのではないかと思います。だから、そういう意味での人の発 達というものの中での、要するに相互性とか相補性で支えられながら私たちは生きてい くんだということを、まず最初にお話しします。  2番目に、幼稚園と保育園の一体的施設での合同保育の現状なんですが、これは平成 15年5月現在の時点ですが、文部科学省の調べで保育所と幼稚園との合築をしていると ころが82か所、それから、併設のところが33か所、同一敷地が101か所となっています。 今、岡山市からの発表がありましたように、それぞれいろいろな取り組みですし、その かかわり方も随分いろいろあると思います。それを大きく2つに分類すると、年齢区分 型というものと合同活動型、これは文部科学省の指標からとったものですが、その2つ に大きく分かれるのではないかと思います。  左の図を見ていただければ、これが年齢区分型で、例としては東京都の千代田区のい ずみこども園などの例ですが、0〜2歳児が保育所で、3〜5歳児が幼稚園と預かり保 育という形で、一貫した乳幼児の育成方針に基づいて、同一年齢の子どもについて幼稚 園児と保育所児を区別することなく保育するというパターンであります。  これと、もう一方は合同活動型と言われるもので、東京都台東区の石浜幼稚園と橋場 保育所などの例ですが、保育所児が隣接する幼稚園の園児とともに幼稚園の教育課程時 間に、同じ教育を受けるという形の大きく2つのパターンが考えられると思います。  その下の図3は、保育所と幼稚園の子どもの1日の生活の流れ。これは、いろいろな ところで見るものですが、保育所の子どもの方が早く来ます。幼稚園の子どもが大体8 時半ぐらいに来ます。大体8時半から11時半ぐらいが合同活動と言っていますけれど も、これは合同保育と置き換えていいと思います。それから、昼食後、保育所の子ども は午睡に入りますし、幼稚園の子どもは降園する。預かり保育の子どもは、保育所と同 じ生活をするわけですけれども、午睡から覚めるとおやつがあり、遊びがあり、その後 残留保育あり、降所するという形になります。  その下に「※」がありますが、土曜日とか夏季とか冬季とか年末年始とか、幼稚園の 子どもには休業日があるということです。それと比べて保育所の子どもは、年末年始の みが休園で、その意味では、この辺にも差があるということが理解いただけると思いま す。  私が住んでいます岡山県でも、今、御紹介がありましたけれども、岡山市とか県北の 大佐町、それから、哲西町、清音村などいろいろな合同保育の試みが始まっています。 私は、それらを見学させていただいて、その中での経験に基づいて今からお話をします けれども、合同保育で予想される課題について、7つぐらいの視点でまとめてみまし た。  まず、1番目ですが、合同保育は集団生活の経験の異なる幼児の集団である。当たり 前といえば当たり前なんですが、メリットとデメリットもあると思うんですけれども、 主に私は今日はメリットの方でお話をさせていただこうと思って考えてきましたが、保 育所児の方が園での生活が長くて園生活になれているので、新しく入園してきた幼稚園 児の園生活への適応を助けることができる。ある園では「ちびっこ先生」などという言 い方をしていましたけれども、そういう面でのメリットがあると思います。  それから、幼稚園児は家庭や地域社会での多様な経験をしているので、それを園生活 に持ち込むことができる。例えば、幼稚園児の方が好奇心の幅が広くて、園庭での外遊 びとかそういうことが得意なので、そういう子どもが入ることによって保育所の子ども たちも外遊びをするようになるという事例があります。  右の図4は、ちょっとごらんいただければと思いますが、これは先生などの社会適応 の過程の図式です。縦軸になっているのが個人適応です、自己充実とか内面適応です。 横軸が集団適応、集団参加とか外面適応というふうに考えます。下のところが未成熟な 行動、だから、年齢が低い場合は当然そこに入ると思います。それが、集団適応の力が 強い方では、見せ掛けの社会適応ということに陥ってしまいやすいのではないかと。自 分というものの世界がまだできないうちから集団というもの、集団というのは力ですか ら、入ってしまうと、一見集団の中に適応しているようだけれども、やはりそれは見せ 掛け的な集団適応の場合があるのではないか。逆に今度は、家庭で長く生活をし、今の 少子化の中で甘やかされてしまうと、自己中心的な行動、自分のことはするけれども、 集団適応には欠ける部分があるのではないか。ちょうどこの個人適応と集団適応のクロ スする辺が大体3歳ぐらいと考えれば、一番うまくわかりやすいのかと思いますが、そ ういう意味では、それがクロスすることによって当然変化とかいろいろなトラブルとか 起こりますけれども、その中で子ども自身が学び合いながら、真の社会適応ができると いう形が望ましいのではないかと考えています。  園での共通経験をどう組織するかということですが、全員の幼児がそろう午前中を保 育のコア時間として、幼稚園教育要領に従った活動とか遊びをするようにする。そのた めには、幼児の主体的な活動、遊びが確保されるように、幼児一人一人の行動の理解と 予想に基づいた計画的な環境を構成する必要があります。このためには、やはりそれを 準備する時間というのは非常に必要になってくると思います。  3番目は、1日の生活リズムが異なります。1日の生活の流れのところでもごらんい ただきましたように、やはり生活のリズムが違っています。それにどう対応するかとい うことを考えるならば、保育士と幼稚園教諭との組み合わせによるチーム保育を有効に 使う。幼稚園児が降園した後の時間で、次の日のコア時間のための教材研究や環境の構 成を行う。そういう保育の教材研究とか準備のための時間を是非確保する必要があると 思います。  4番目ですが、夏休みなどの長期休業のある幼児とない幼児の取扱いをどうするかと いうことです。これもなかなか大きな問題だと思います。保育所児は長期休暇の間に、 その時期にふさわしい何かの活動を行う。そして、休み明けに幼稚園児が登園すると、 保育所児の活動に刺激されて、その活動に取り組むようになる。私が見ましたある園の 取り組みで、夏休みの間に郷土の太鼓ですか、そういうものの練習を保育所の子どもた ちはしました。それを秋の運動会にみんなの前で披露するというような形で計画をしま した。幼稚園の子どもが夏休みに明けになったときに、それに刺激されて太鼓の練習を 一生懸命やって、運動会ではなかなか立派な活動ができたというような事例がありまし た。  それから、5番目ですけれども、環境としての生活空間と教育空間をどう確保する か。幼児にとってふさわしい生活をどう確保するかということなんですが、家庭的でほ っとできる生活空間と活動に取り組むことができる教育空間をどのように使い分けをす るか。例えば、同じ部屋でもじゅうたんを敷くことでほっとできる空間にしたり、机を 出すことで同じ空間を違うように演出することもできるし、部屋やコーナーを生活空間 と教育空間に使い分ける工夫も必要である。例えば、千代田区のいずみこども園の場合 は、教育空間としての保育施設と生活空間としての午睡室は別に分けている、こういう 事例もあります。  6番は、これもなかなか難しいんですけれども、教員文化と保育者文化の違いをどう 共有化するか。保育士と幼稚園の教諭が日ごろの保育についてともに学ぶ研修の機会の 保障ということが欠かせない。それと、チーム保育においても役割を交換して、お互い の文化から学び合えるようにするということが必要になってくると思います。  岡山市でも、本年度から幼稚園教員とか保育士というのは別々の採用条件になってい たんですけれども、窓口を一本化するという形になってきています。そうすることによ って、お互いの人事交流とか、お互いがよりお互いを理解できるという工夫もなされて きているようになっています。  7番目は、保護者の園行事とかPTA活動、保育に対する期待や意識の違いをどうす るかということです。保護者が参加しやすいように土曜日などに園行事やPTA活動な どを計画し、幼児を巻き込んだ子育ての共通体験を通して、相互の理解を図る。私の見 た事例も、土曜日に親子活動を入れて、両方がその経験をしました。それまでは、保育 所の場合はまだ保育時間があるからといって、子どもだけを残してお帰りになるような 保護者の方もいらっしゃったんですけれども、こういうふうなお互い同士が共通体験を することによって、一緒に帰っていくという形が見られてきているということがありま した。  最後、子育てにおける保護者の役割の延長線上に保育士や幼稚園教諭の役割がありま す。幼児をめぐる発達の相互性とか相補性によって豊かな合同保育が実現できるよう に、地域社会にも開かれた、例えば、隣接する特別養護老人ホームとか、隣接する小学 校の子どもたちも巻き込んだような園運営というものをもっともっと広げていく必要が あるのではないかと思います。  以上です。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、ただいまお2人の御説明をいただきましたけれども、御質問あるいは御意 見等御自由に御発言いただきたいと思います。 ○堀委員  岡山市の方の山口さんにお伺いしたい。この表に岡山市の幼保一体化の取り組み状況 というのがあって、いろいろなパターンがあるのですけれども、こういうパターンに応 じてどういう結果というか、効果というかあるいは違いというものが出てきているの か。あるいは、どういうパターンが連携の在り方として望ましいのか、そういう結果が 出ているのか、そういったことがあれば教えてほしいというのが1点です。  2点目は、今日お話があったのは、幼稚園と保育所という言わばサービス現場での連 携です。山口さんは保育課長ということで保育所サイドの方だと思うのですが、教育委 員会の幼稚園サイドとの連携みたいなことは、どういうふうにされているのでしょう か。この報告は、どうも教育委員会の方で検討されたみたいなのですが、そういったこ とも含めて、教えていただきたいと思います。 ○山口啓二氏  ありがとうございます。まず、いろいろなパターンがあるということですけれども、 幼保の連携につきまして、岡山市におきましては先ほどの報告書を基にさせていただい ているわけですが、いろいろな地域の実情がございます。過疎化の地域もございます し、あるいは逆に非常に人口が密集している地域もございます。そういったことで、あ えてのパターン化ですけれども、共通して言えるのは先ほど虐待のお話も出ましたが、 地域に密着をした取り組みをしたいなと考えております。子育て支援センター等もそう ですが、園の行事に地域の方、老人会の皆さんが一緒に芋掘りをやったりとか、この 前、御南の保育園に行きましたら、保育園児がコンバインに乗って作業をさせていただ いたと、そういう事例もございます。近隣の農家の方が田んぼにレンゲの種をまいてや ろうというようなこともされてございます。虐待とかいろいろ難しい問題で地域の民生 委員、児童委員の方にもいろいろお世話になってございます。フェンスを撤去した岡南 の保育園・幼稚園は、職員が撤去したのではなく、地域の町内の方が来て撤去してくだ さったということで、いろいろな子育ての難しい問題を解決していくのに、やはり幼稚 園や保育園だけではなしに、地域の皆さん方、小学校、中学校の方々の助けをいただき ながらしていくと。そういう中で保育園、幼稚園が地域に結びつくと。保育園から育っ た子どもたちも、何年か後には、困ったときにはもう一遍保育園に行って、昔の先生に 会ってみたい、地域の人に会ってみたい、これが私が出た保育園だというふうに言われ るような地域に密着した幼稚園、保育園をつくっていきいと考えているところでござい ます。  それから、幼稚園との連携でございますけれども、先ほどの太伯の幼稚園の話もさせ ていただきましたが、教育委員会の方との連携につきましては、いろいろな御相談等さ せていただきながらしてございます。研修というところでは、平成14年度から公立の幼 稚園と保育園の職員を1週間なら1週間、保育園の職員は幼稚園に行く、幼稚園の職員 は幼稚園の夏休みを利用して保育園に行くと。そういうところで実際に仕事をして、そ れぞれこれからの仕事に役立てると。今までやっていなかったところが見えてくるとい う部分もございます。非常に連携をとって今後も進めていきたいと考えてございます。  以上でございます。 ○吉田委員  1つは確認で、1つは質問なんですけれども、岡山式カリキュラムということでござ いますが、検討委員会の報告書の5ページに、一体型施設のイメージがありまして、こ の岡山式カリキュラムというのは、例の御南のセンターの場合、すべてに掛かるのでは なくて、お昼までの合同の幼保の園児の活動の部分についてのみ岡山式カリキュラムが 適応されるのかという確認をしたいのと、もう一つは、やはりこの報告書の9ページに 今後の課題として制度上の隔たりを取り除くということで、文部科学省、厚生労働省の 所管の違いにより云々ということで、御南のセンターも約2年間ほどされていまして、 2年間の実績を踏まえて、やはり総合施設的な方向に向けて、今何かこういうふうにし てもらったらなおいいのではないかというような市、行政としての御希望やお考えはご ざいますでしょうか。 ○山口啓二氏  ありがとうございます。岡山式カリキュラムにつきましては、保育園あるいは幼稚園 の全体ということではなしに、合同してやっていく部分については、こういう岡山式カ リキュラムを1つの土台としてやっていただけたらということでございます。  それから、9ページの制度上の隔たりということでございますけれども、先ほど申し ました御南の幼稚園・保育園が2か年経過をしているところでございます。両方とも私 立でございまして、それぞれの園長にこの2年間どういう思いだったか、あるいは今後 どういうふうな方向へと尋ねてみたところ、それぞれ幼稚園、保育園で若干、思いは違 う部分はございます。幼稚園の方は2年間過ぎて、今後更にどういう連携のやり方があ るか、隣接する小学校も含めてどういうやり方があるか、いろいろやってみたいという ふうな思いでございます。保育園の園長の方は、特に地域の子どもたちが多いところで ございます。定員120人で現在140名ほど入っているところでございまして、日々の保育 が本当に一生懸命、いっぱい、いっぱいの状況でやっているということで、なかなかそ の辺の余裕がもう少しできないと、そういう思いがございました。  いずれにいたしましても、方向性につきましては、同じ地域の子どもたち、ほとんど が同じ小学校に行くわけですから、連携やはりもう少し深めていくという方向になるの ではないかと思います。こういう連携を深めていくのに、どこが基本的な役割と言って いいのか、つなぎ合わせる役割を果たしていいのかというのが難しいところですけれど も、やはりそこは先ほど申しました地域の皆さん方にあるいは小学校にいろいろお世話 になるという方向があるのではないかと私は考えてございます。  以上でございます。 ○網野委員  岡山大学の山口先生にお尋ねしたいと思います。3つほど教えていただきたいんです が、1つは、これからの合同保育を進める場合の課題を挙げていただきまして、特に2 ページの3の(1)でそれぞれのメリットを生かすというお話がありましたが、その中で 幼稚園児は好奇心の幅が広いと。ここに書かれている「家庭や地域社会での多様な経験 をしているので」という部分と関連すると思うんですが、この辺りは、いわゆる幼稚園 教育空間の効果なのでしょうか、教育の場としての効果なのでしょうか。それとも、い わゆる先ほど来いろいろほかの話との関連もありますが、家庭環境とかさまざまな地域 とのかかわりとかでそのような違いがはっきり見られるのでしょうか。その辺りの研究 とかそういうことがありましたら。これは恐らく合同保育とか総合化という構想の中 で、これがかなり明瞭なことであれば、それを含めながら考えなければいけないという ことが1つありました。続けてよろしいですか。 ○山口茂嘉氏  1つずつでよろしいですか。この点は、それほど研究が進んでいるわけではないと思 います。保育所の子どもの場合は、保育所での生活が長いですよね。そうすると、園の 中での生活が長いわけですから、その意味では家庭で育った幼稚園児と比べれば生活の バリエーションというのは差があるのだろうと思います。そういう意味で、幼稚園の子 どもの方が実際に聞いてみると、いろいろな経験を持っているから外遊びができるし、 いろいろなものに好奇心を持つ。保育所の子どもはどうしても室内での生活が多いの で、例えば部屋の中で活動することが多い。それを混ぜることによって保育所の子ども も外遊び出るようになったというようなことを聞いています。 ○網野委員  続けてよろしいでしょうか。2番目が、これは岡山市における就学前教育の今後の在 り方とも関連するんですが、このような幼稚園、保育園がそれぞれ合同的な部分が広が ることによって、確かに小学校との連携という点ではいろいろ進む面があるかと思うん ですが、実際に岡山市でのさまざまな試みを通じて、小学校との連携ということで何か 目に見えるような効果といいますか、あるいは課題でもよろしいんですが、そのような 点はありますでしょうか。保育課長の山口さんの方が部分的には詳しいかもしれません が、その辺りはいかがでしょうか。 ○山口啓二氏  小学校との連携ということ、それから、岡山市におきましては、例えば保育園の隣が 中学校であるというところもございます。その連携の効果といいますか、保育園から小 学校へ上がったときになじみやすくなるというようなことが一般的にあるんですけれど も、小学校や中学校の方から保育所の方へ子どもが遊びに来ると。今時の中学生はつっ ぱっている中学生もいるのだと思うんですけれども、そういう子が小さい保育園の子ど もを見て「かわいいわ、一緒に遊ぼう」という表情を見せてくれるということで、中学 校だけの教育ではなかなか芽生えないようなといいますか、小さいかわいいものを見た らかわいらしいといった心を高めていくことにもなっているんだということを保育園の 園長から聞いたりいたしております。 ○岩男部会長  山口先生の方から何かありますか。 ○山口茂嘉氏  別にございません。 ○網野委員  簡単に質問させていただきます。  いろいろお話を伺いまして、総合施設をどう考えるかというときに、いろいろな参考 になるお話を聞けたんですが、山口先生としては、例えば一体型施設とかあるいは一体 的な施設とか、それから、文部科学省の調査では年齢区分型とか生活合同、いろいろな タイプがあると思うんですが、それぞれ勿論ケース・バイ・ケースだと思うんですが、 一番中心になる重要なポイント、あえて質問させていただければ、1つの理想的な形と いうのはどのようにお考えでしょうか。 ○山口茂嘉氏  岡山県も私が見ただけでも5〜6か所ございます。その中で、あるKという幼児園な んですけれども、そこのところが割とうまくいっていると私は判断しています。それ は、園長先生はベテランの校長先生上がりの男性の先生がリーダーシップを持たれてい まして、やはり基本理念は同一にし、頭が2つあると非常に運営が難しいということが 1つあります。そして、副園長として幼稚園長格の方と保育所長格の方がいらっしゃっ て運営をしています。そして、合同の職員会とか研修会を非常に積極的になさっていま す。そういう意味では、ここに文化の違いというようなことも書いたんですけれども、 幼稚園教育が1つの長としてある部分と保育所が1つの長としてある部分があると思い ます。養護の部分では保育所が長い歴史を持たれていますし、3歳以上の教育について は幼稚園の教諭の方がいろいろなノウハウ、知識を持っています。それをうまく統合し ていくキーパーソンとしての園長の役割というのは非常に重要だと思います。私は、年 齢区分型ではないけれども、3歳以上の子どもたちの動きとか行動範囲ということを考 えたときに、そこの部分は幼稚園教育要領に記されているような教育の在り方がもっと 前面に出ていく必要があるし、それから、長く保育所が預かりますから、やはりほっと する家庭的な空間とか時間というものを確保していく必要があると思います。 ○津崎委員  いろいろお話をお聞きしていますと、一体化の中で出てくるメリットをいろいろ強調 しておっしゃっていただいているように思うんですが、ただ一般に、3歳児以上につい てをイメージしやすい部分があるんですが、やはり0〜2歳児がどういう形になってい るのかがちょっと見えにくいといいますか、何回かこの場で私も言わせていただいてい るように、基本的には今後の子育て支援というのは0〜2歳児の支援体制をどうするの かということが一番大きいと思うんです。その意味で、合同施設の在り方というのは1 つの方法だと思うんですが、0〜2歳児に限ったときは、例えば合同施設という形をと っても、それは旧来の保育施設の形に極めて近いのか、あるいは合同化の中で0〜2歳 児も従来の保育とは違う何かが出てくる形になっているのか、その辺のところをもし既 存の取り組みの中で何らかのお考えをお持ちであれば、教えていただきたいと思いま す。 ○山口茂嘉氏  私は、選択肢はあっていいと思いますし、それから、0〜3歳児ぐらいまでのところ は山田先生の方からもありましたように、やはり子育て支援センターみたいなものをも っと充実させることでカバーしていかなければいけないのではないかと考えています。 ○岩男部会長  ほかに何か今の答えにつけ加えるようなことがおありでしたら。 ○山口啓二氏  0〜2歳というと三未なんですけれども、岡山市の私立の乳児保育園、0〜2歳だけ を預かっているところがあるんですが、園長、理事長先生と話をしておりますと、就学 前教育ということなんですけれども、本当に根本的なところは本当に小さいときに正し い保育をしないといけないと。その必要性ですね、ものを食べるときのかみ方を正しく 教えないといけないという、そういう乳児に対する正しい教育保育の在り方についてお 話を聞いたことがございますけれども、こういった中、これが幼稚園と保育園との連携 の中でどういうふうにそれを生かしていくことができるのか、具体的なことは今、思い つかないんですけれども、その重要性は認識しておかなければと思っております。 ○山田孝夫氏  実は、私の図面の色の中で、小さくてちょっとわからんのですが、左下に部屋が4つ あるんですけれども、これを含めて上のところと4か所がいわゆる3歳児未満と子育て 支援センターの部屋なんです。ほかのところは十分スペースがあるんですが、今になっ てちょっと困ったなというのは、3歳児未満の預かりが予想したものをはるかに超えて いるんです。今言われているのは、この部屋では足りないんだと。もっとどこかの部屋 をつぶして3歳児未満の子どもを預かるようにしてほしいという話が出てきまして、 今、当惑をしているんです。私はもう辞めたから後の町長が苦労すると思うんですが、 それで実は、読まれた方もおられると思いますが、井深大さんが『幼稚園では遅すぎる 』という本をリバイバルで書いていて、今かなり売れておりますが、副題では「人生は 三歳までにつくられる」と書かれております。あの方と私はけんかをしたことがあるの で、よく知っているんですが、財団をつくられて教育に熱心に情熱を傾けられたすばら しい方ですけれども、この間もうちの特区の委員会で、英語教育を3歳未満児にするこ とについてどうかという議論があって、日本語と文法が全く違うんだから、それは日本 語をしっかり教えてから外国語を教える方がいいんだという意見と、そうではない、や はりできるだけ早くからがいいんだという意見と両方ありましたが、井深さんなどによ りますと、3歳児未満というのはいろいろな形で体系的に覚えるのではなくてパターン として覚えるのだから、それは早い方がいいんだという説をとっておられるので、参考 としてそういう意見も言わせてもらいました。  「三つ子の魂百まで」、昔の人はうまいことを言ったものだと思いますが、やはりそ こで人格の基本ができるのではないかと思うんです。ですから、3歳児以前の保育の問 題はこれから国にとっても重要な問題になるだろうと思っております。そこを手抜きし てしまうと、3歳児以上で何ぼ力を入れても、井深さんによると3歳までの分と後の分 とでは17年掛かるんだそうです。それぐらい3歳までが大事なんだということを言って います。私も孫などを見ておりますと、やはり性格というのは3歳ぐらいまでにできて いるのかなと思いますので、そういう点では、今回もそういうことを考えてこういうス ペースをたくさんつくりましたが、それでもなおかつ不足するというような状況ですか ら、こういうことはこれからやはり大事な視点として考えていかなければならんことで はないかと思っています。 ○山縣委員  先ほどの網野委員の3つ目の質問にほぼ近いものを岡山市の山口さんの方にお聞きし たいんですが、岡山市の改革案は総合施設提案の前のものですよね。2つの制度を前提 にした議論に当然なっていると思うんですが、北海道の方から少子化した地域では是 非、総合施設化、そういう方向しか考えられないというお話がありましたけれども、都 市部の岡山市でも総合施設というのは大きなメリットがあって、新たに今、ここに示し ていただいたようなものを超えた、もう一段の改革というものが必要というふうにお考 えなのでしょうか、都市部ではこの程度で何とかなるのではないかとお考えなのでしょ うか。その辺いかがでしょうか。 ○山口啓二氏  先ほどの御質問の3歳までの教育をどうしていくかということにもかかわってくると 思うんですけれども、御南の幼児教育センター、幼稚園、保育園の部分で運動会をする と。そうしたら、幼稚園の子どもと保育園の子ども、例えば4歳児なら4歳児が一緒に 走ると、保育園子どもの方がたくましいという話を聞くんですね。保育園の方が勝って しまうと。なぜかなということですけれども、0、1歳から保育園に入園をして、周り との子どもとの中でいろいろなものを学んでいくと。そういった部分が集団生活を始め た幼稚園の子どもと一緒にやると、保育園の子どもの方が早いということなのかなとも 思うんですが、いずれにしても、いろいろな地域の実情がある中で、小さいころから集 団的な生活をやっていくと、集団的な中で子どもが自分自身でいろいろなことを考えて 身につけるということは、将来的に非常に大切なことではないかと考えてございます。 ○小笠原委員  岡山市の山口課長に御質問いたします。合同の時間帯の問題が出ておりまして、私は 保育園の現場にいる者で、大変失礼な言い方になるのですが、幼稚園と保育園の一体化 された岡山式カリキュラムの中に「子どもにとってのメリット」というのがあります。 そのメリットのアとイというところは、統合したことによって幼稚園でもない保育所で もない、内容のメリットが出てくるということを期待しておりました。 私は経営や運営費の効率性という以外に、一本化されることによって、「教育」とか 「養護と教育」という部分で子どもたちの成長をよりよく図れるとか、「理念」や「ね らい」というものが「岡山式カリキュラム」でもう少し出てくるのではと、期待してい るのですが。 実は、このアとイの文言は保育園でよく掲げているような文句でもあるわけですね。平 成15年度から一体化され、まだ歴史がきわめて浅いので、保育園と幼稚園が一体施設に なってからの子どもたちにとってのメリットというのは表れないのでしょうが・・・。 保育現場から見ますと、「岡山式カリキュラム」の「子どもにとってのメリット」は、 そのまま保育園で使っている文言ではないかという認識になるわけです。今後、岡山市 では実践をされていくなかで、この「岡山式カリキュラム」を評価し反省され、また計 画をお立てになるという工程をおやりになると思いますが、この「岡山式カリキュラム 」の「子どもにとってのメリット」を出されたところで保育園現場からは意見は出ない のでしょうか。保育園現場から異論でありますとか、「これはこう思う」という意見は 出ないのでしょうか。そこを少しお聞きしたいんですけれども。  私が申し上げたいことは、合同保育になったときの特性がもっとここに出てくるべき ではないかと思うわけです。幼稚園と保育所が一体になったのだからもっとはっきりと したものがここに出て、『こういうところが違うんだと』ということがないのでしょう か、ということです。 保育所における保育内容の欠陥とは言いませんけれども、保育園や幼稚園で補えない部 分がここで補足されて出てくるのではないかというような意識でいるわけですが・・ ・。何度も申しあげますが、これを見ますと私ども保育園は、保育の中で既にやってい ることでありまして、「岡山式メリット」という部分を手で隠しましても、これは保育 所の実態ではないかと思うわけです。幼稚園側からの反発というか、おかしいではない かということも何も出ないのでしょうか。 ○山口啓二氏  今のお話の中で、保育的な立場の展開で幼稚園の方はということですけれども、具体 的にこれはというのは聞いてございませんが、幼稚園の立場としては、連携につきまし ても更に突っ込んだ具体的な連携をこれから図っていきたいと。保育園、小学校との具 体的な連携を図っていきたいという話は聞いてございますが、保育園の方が今手いっぱ いな状況で、なかなかついていけていないといったところが現状でございます。 ○遠藤委員  同じく課長さんにお聞きしたいのですが、先ほど御南に関しまして、地域子育て支援 センターに200組くらいの登録があるというお話だったかと思うのですが、そうします と、保育所の方が140入っているということだったでしょうか。数的には非常に大きな 子育て支援の部分も持っていらっしゃると思うのですが、先ほど津崎委員の方から質問 がありましたように、まさにそこの部分の何か特質といいますか、そこに通ってきてい る子どもの保育と同時に、エリクソンの理論も先ほど御紹介いただきましたけれども、 結局親が子どもを育てていくというところの支援をやっていらっしゃるのだろうと思う んですが、その辺りの一元化されている中でメリットみたいなものがあれば教えていた だきたいのですが。 ○山口啓二氏  一元化のメリットといいますか、やはり幼稚園、保育園のそれぞれ保護者が交流する ことができると。保育園は保育園の親だけではなしに、幼稚園の親ともかかわりができ ると。逆に、幼稚園も同じことが言えますから、勤務をされている家庭の保護者のいろ いろな子育てに関する苦労も聞けるということで、保護者個々人にとって子どもを育て ていく中での幅が豊かになっていくのではないかと思っております。  それから、先ほど来地域とのかかわりをということを何回も申し上げましたけれど も、子育て支援センターの活動を通して、地域の皆さん方と交流をする、民生委員、児 童委員、町内会長だけではなしに、農家の方々とかそういうかかわりを持つことによっ て、子ども同士だけではなくて、地域の大人の方とかかわってくるということで、子ど もにも地域の中で生きているという芽生えが出てくるのではないかと思っております。 ○柏女委員  時間も迫っておりますので、山口先生に1点だけお伺いしたいんですけれども、こう した合同保育をしていくと、園長のリーダーシップといったものが非常に大事になって くると思うんですが、公立であれば幼稚園の教員あるいは保育士かどちらかをお持ちの 方、あるいは両方お持ちの方がなる可能性が高いと思うんですけれども、私立などの場 合は、言わば保育園の方は資格のない状況もあるわけですが、こうした園長の資格要件 についてどういうふうに考えていったらいいか、ちょっと御意見だけお伺いできればと 思います。 ○山口茂嘉氏  難しい問題だと思います。もし、そういう適任者がいなければ、そういう方にお願い されるというか、例えば、そういう意味では30歳以上の方で両方の資格を持っている人 はなかなか難しいと思います。今は、うちの大学でも養成していますけれども、そうい う意味ではなかなか適任者は得られないと思いますが、見識があって校長先生をなさっ たりというような、かなりリーダーシップを持てる方にお願いができれば、うまくいく かもしれませんね。そういう意味では、私立の場合はなかなか難しい問題があると思い ます。 ○渡辺委員  それぞれの地域で、新たな気持ちで新しい時代の育児を、そして、幼児教育を支援し ていらっしゃるというのは大変関心を持って伺ってはいたんですけれども、津崎先生な どがおっしゃるのと同じように、急務になっているニードというのは、やはり0〜3歳 までの育てにくい我が子、どうしていいかわからないで家庭で不安定な形で育児してい る専業主婦の方や、あるいは御自分自身の体調とか経済状況とかあるいはパートナーと の関係がうまくいかないために、不本意な形で長期に子どもから離れて仕事をしなけれ ばいけない方たちが増えているという状態は、御本人たちがすごく苦しんでいて助けを 求めていても、例えば、それぞれ家にいる方は子どもと2人きりですし、外にいる方は 御自分のそういった経済活動にも振り回されています。ですから、そういう一番悲鳴を 上げていて、本当に子どもが影響をもろにかぶっている方たちは、誰かがしっかり見て あげて、地域の一員として母子を把握していくというものがない場合に、津崎先生がお っしゃったように、あっという間にリスク群になっていくと。そういうことを考えます と、やはり保育園か幼稚園かではなくて、3歳前の母子のともに生きている状態を、そ れぞれのお母さんが選んでいるあるいはやむを得ず置かれている状況の中でうまくいけ るようにコーディネートしてあげるような、フレキシブルで、かつ、開かれた場をもう 少しリッチに用意しなければいけないのではないかということだと思うんです。そこさ えうまくいけば、例えば、幼稚園というのはカリキュラム的に細かいですけれども、保 育園は生活教育的に非常に深いですし、人との関係の濃密さは、明らかに保育園の子ど もたちは親代わりに保母さんたちを慕ったり、保母さんたちの影響を受けますから、よ り長期的に、そして、生活としてその場に生きている子どもたちにとってケアする人た ちの質というのは、社会が責任を持って見ていかなければいけないとかそういうことが あると思うんです。ですから、これは0〜3歳の方にもう少し焦点を当てていただくと いうこと。  それから、結果的に見た行動がどっちがたくましいかというのではなくて、より長く いて、より依存度の高い関係における大人の影響とか場の影響は、当たり前ですけれど も子どもの方が大きいと思いますので、そちらで落ちこぼしている子どもやお母さんが いないか見ていくという辺りに絞ってやっていかないと、リスクの重いケースの受け止 めというのは、例えば、一リスクの高い母子がいるだけで、その園の園長先生や先生た ちがくたくたになると思うんですね。ですから、一番リスクが高いケースを何とか自然 に生活の中で救済していけるような課題というものをもう少し大事にしてもいいかなと 思いまして、これは津崎先生も御意見を伺いたいんですけれども、いかがでしょうか。 ○津崎委員  私も、基本的には今の渡辺先生と同じ意見なんですね。0〜3歳までの子どもたちの 子育て状態が極めて不安定になってきている。3歳児以降については、従来の子育ての システムがある程度確立している。今はただ、地域性であるとか効率性であるとか少子 化のいろいろな問題があって、統合化する方がより運営がうまくいくのではないかとい う発想のもとに、いろいろな施策が進められようとしているんですが、0歳児から1、 2歳児は、従来ある意味で施策が十分とられていなかった部分に、非常にリスクの高い 問題も含めた新たな問題がむしろ生じてきていることに対して、社会としてどう支援す るのかということが非常に大きなテーマであると。その部分について、単に効率性ある いは少子化、いろいろな影響で合同施設がいい、その部分を0〜2歳児にスライドさせ たらうまくいくんだという形だけでは収まり切らないのではないか。もっと多面的な0 〜3歳未満の子どもの支援の体制というものをしっかりとつくらないと、リスクがうま く救済できない。そこで、いろいろな課題が生じてくるという状況がますます広がって いくのではないかという危惧感がありますので、その辺の施策をもっと多元的にいろい ろ検討する必要があるのではないかというのが、私の思いとしてあります。 ○岩男部会長  まだ御発言の御希望があろうかと思いますけれども、予定をいたしました時間になり ましたので、本日はこれでヒアリングを終了させていただきたいと思います。遠路お出 でいただきました先生方、どうもありがとうございました。  それでは、次回につきまして事務局から御説明がございますので、よろしくお願いい たします。 ○中村総務課長  それでは、次回につきましては、先般お話しいたしましたように4月9日、午後2時 から5時までということで開催させていただきます。議題につきましては、本日に続き まして有識者の方からのヒアリングを予定させていただいております。なお、場所につ きましては、本日と同じくこの会議室となりますので、よろしくお願いいたします。 ○岩男部会長  それでは、これをもちまして本日の会合を終了させていただきます。どうもありがと うございました。 (照会先) 雇用均等・児童家庭局 総務課 03−5253−1111(内線7823)