04/03/05 第15回社会保障審議会児童部会議事録                社会保障審議会児童部会                  第15回議事録              厚生労働省雇用均等・児童家庭局            第15回社会保障審議会児童部会議事次第           日時:平成16年3月5日(金)15:00〜17:00           場所:厚生労働省共用第7会議室 1.開会 2.「次世代育成支援対策関連3法案について」、「児童虐待死亡事例の検証と今後の   虐待防止対策について」(報告) 3.総合施設について 4.閉会 ○岩男部会長  それでは定刻になりましたので、ただいまから第15回「社会保障審議会児童部会」を 開催させていただきます。  本日は、大変お忙しい中を御参集いただきましてありがとうございます。  前回の部会におきまして、今後、児童部会で就学前の保育教育を一体としてとらえた 総合施設について議論を行うに当たり、保育の関係に詳しい方々を臨時委員として任命 するということを決定をいたしました。それで、今般5名の方が新たに臨時委員に任命 されました。また、本部会の委員である阿藤委員の任期満了に伴う改選が行われまし た。その経過等につきまして、事務局から御報告をお願いいたします。 ○中村総務課長  それでは、御報告をいたします。  この度、新たに5名の先生方に児童部会の臨時委員に御就任をいただいたということ でございます。  御紹介をいたします。猪股委員。 ○猪股委員  猪股でございます。よろしくお願いいたします。 ○中村総務課長  小笠原文孝委員。 ○小笠原委員  小笠原でございます。よろしくお願いします。 ○中村総務課長  山縣文治委員、今日は御欠席でございます。  吉田正幸委員。 ○吉田委員  吉田でございます。よろしくお願いいたします。 ○中村総務課長  それから、本日御欠席でございますけれども、前田正子委員が新たに加わっておられ ます。以上、5名の先生方でございます。  また、阿藤委員におかれましてはこの度任期満了となられましたけれども、引き続き 臨時委員への御就任をお願いしたところ御快諾をいただきました。  今回、臨時委員への御就任に御快諾をいただきました先生方には心より感謝を申し上 げたいと思っております。  それから、本日の出席状況でございますけれども、山崎委員、先ほどお話しいたしま したように、前田委員におかれましては御欠席ということで、先ほど御紹介いたしまし た山縣委員につきましては、ちょっと遅れて来られるということでございますので、訂 正をさせていただきます。 ○岩男部会長  それから大日向委員も少し遅れてお見えになるというふうに伺っております。  本部会の臨時委員に御就任いただきました阿藤委員には、これまで本部会の部会長代 理をお引き受けいただいておりました。本部会の部会長代理につきましては、社会保障 審議会で、第6条第5項に部会長に事故があるときは、当該部会に属する委員または臨 時委員のうちから部会長があらかじめ指名する者がその職務を代理すると、こういう規 定がございますので、この規定に基づいて引き続き部会長代理人は阿藤委員にお願いを したいと思います。どうぞ、よろしくお願いをいたします。 ○阿藤委員  阿藤でございます。よろしくお願いいたします。 ○岩男部会長  それでは、早速、議事に移りたいと思います。  まず、事務局で御用意いただきました資料について、御説明をお願いいたします。 ○中村総務課長  それでは、資料について御説明をいたしますけれども、配布資料の資料ナンバー2か ら6につきましては、総合施設の資料でございまして、これについては後ほど保育課長 の方から説明をいたします。  それから参考として、「次世代育成支援対策関連3法案について」というものと、そ れから「児童虐待死亡事例の検証と今後の虐待防止対策について」という資料が出され ておりますけれども、これについて簡単に私の方から御説明、御報告をいたします。  まず、次世代育成支援対策関連3法案でございますが、これにつきましては1月の会 議でも御紹介をいたしましたけれども、16年の国会には次世代育成3法案ということ で、児童手当法の一部を改正する法律案、それから児童福祉法の一部を改正する法律 案、育児介護休業法等の一部を改正する法律案ということで、3法案を提出をいたすこ とにしておりましたけれども、去る2月10日に閣議決定をさせていただきまして、同日 付で国会に提出をいたしました。ただ、まだ審議の時期は未定でございます。中身につ きましては前回御説明をしましたので省略をさせていただきます。  それから、もう一点の方の「児童虐待死亡事例の検証と今後の虐待防止対策について 」という資料でございますが、これにつきましては、概要の方を見ていただきますと、 児童虐待防止法が平成12年の11月20日から施行になっておりますが、それ以降、昨年の 6月末までに新聞報道あるいは都道府県、指定都市の方から厚生労働省に報告があった ということで、死亡事例が全体として125 件、127 人のお子さんが亡くなった事件がご ざいました。 これにつきまして、私どもの方で都道府県等の分析を基に、更に集約を して、例えば、養育支援が必要となりやすい要素としてはどんな、例えば、そこにござ いますように養育環境が非常にウエートが大きいとか、あるいは養育者の状況、子ども の状況という、どういうふうな状況になっておるかとか、2ページの辺りですと、関係 機関のかかわり合いがどういうような状況であったか、あるいは接点のあった関係機関 としてどういうものが多いか、保健医療機関であるとか福祉機関、あるいは学校という のが非常に多いとか、そんな状況を調べ、整理した上で、虐待防止に向けた対策という ことで、大きく分けまして3つほど書かせていただいております。  1つは児童相談所をはじめとする児童相談体制の強化というようなこと。それから2 つ目は連携の強化を更に一層進めなければいけない。それから養育力不足への支援とい うこと。また、それぞれにおける虐待予防への取り組むというようなことで整理をさせ ていただいております。この件につきしましては去る3月1日に都道府県の課長会議が ございましたので、その際に地方自治体の方々にも御説明をさせていただいて、より一 層の取り組みをお願いしたところでございます。  以上でございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、何か御意見あるいは御質 問等がございましたら御発言をいただきたいと思います。よろしゅうございますか。  それでは、引き続き事務局の方の御説明をお願いをしたいと思います。 ○唐澤保育課長  それでは、皆さんのお手元の資料をごらんいただきたいと思いますが、資料の2から 6が総合施設の関係でございまして、資料1はこの部会の先生方の名簿でございますの で、ごらんをいただきたいと思います。先ほど御就任をいただきました5人の先生方、 それから、引き続き委員として御参加をいただく先生方には御審議の方をよろしくお願 いしたいと思います。  資料の2から3、それから4、5、6と5つ資料がございます。2と3はこの総合施 設の検討事項の概要を整理をしたものでございまして、4と5は現在の次世代育成支援 を取り巻く状況、それから保育所と幼稚園の現状ということで2つの基礎的な事項に関 する数字等の資料を整理をさせていただきました。これは後ほど御説明させていただき ます。  それから、資料の6でございますが、ちょっと先に資料の6の方をごらんをいただき たいと思いますが、これは前回の部会におきまして、これは1回目になるわけでござい ますが、総合施設の関係で御議論をいただいた項目を私ども事務局の方で整理をしたも のでございます。  ごらんをいただきますと、まず『「総合施設の機能・サービス」の関係』では、例え ば最初にいろいろな選択肢というようなことを考えたらどうだということでありますと か、次世代育成の考え方あるいは子ども家庭福祉の観点からのアピールでございますと か、子どもの育ちを保障するというような問題、保育の質の確保というものをどうする か、あるいは人の手当、費用の手当をどうするか、斬新な考え方で検討すべきではない かというようなことが1ページ目でございます。  それから、2ページ目に入りまして、質を維持しつつ多様なニーズに応える供給量の 拡大という視点が重要でありますとか、財源の在り方ということを十分考えなければな らないという御指摘もございました。それから、施設や人員や運営の基準の関係では、 現在の状況では他の子ども、親、大人とつながることがなかなかできないというような 現状があるというような御指摘がございますし、それから3歳というような年齢の前後 で養護的な側面ですとか、あるいは教育的な側面のウエートということを考える必要が あるのではないかという御指摘もありました。  それから、資格等につききまして保育者の専門性、研修あるいは新卒者は両方の資格 がございますけれども、それぞれ実際にはどちらかで仕事をされていますので、その再 訓練というようなことをやはり考える必要があるのではないか、あるいはいろいろなタ イプのソーシャルワークでありますとか、教育に強い総合施設でありますとか、いろい ろなタイプがあればいいのではないか、あるいは資格も両方ということでは必ずしもな くてはいいのではないかという、さまざまな御意見をいただいたところでございます。  これは事務局の方で整理をしたものでございますので、ちょっと私が言ったことと違 うという先生がいらっしゃればまたそれは後で御指摘をいただきたいと思います。  資料の方をごらんをいただきたいと思います。まず、私の方から検討事項の方を御説 明をさせていただきまして、その後、重元の方から現状の資料を進めさせていただきま すが、今回は、前回に引き続きまして検討事項についての論点全体についての自由な御 議論をいただきたいと思っております。また、部会長とも御相談しながら、個別ごとに 御審議いただくということが必要だと思っておりますが、今回はまだ2回目ということ でございますので、全体的な自由な御議論をお願いをしたいと思っております。  検討資料の2をごらんいただきたいと思います。これは前回と同様でございますけれ ども、総合施設にかかる主な検討事項を私どもなりに整理をしたものでございます。勿 論、総合施設につきましては御承知のように、検討事項の一番下の点線の枠の中に囲っ てございます「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」という部分ですが、こ こをちょっと念のため読ませていただきます。  「新しい児童育成のための体制整備」ということで、「近年の社会構造・就業構造の 著しい変化等を踏まえ、地域において児童を総合的に育み、児童の視点に立って新しい 児童育成のための体制を整備する観点から、地域のニーズに応じ、就学前の教育・保育 を一体として捉えた一貫した総合施設の設置を可能とする」。  こういうことが閣議決定の文書で記載されていることでございまして、そこから先を どうしていくかということはまだ決まっておるというものはございません。これは先生 方に念のために申し上げておきますけれども、総合施設に対する関心が大変高まってき ておりまして、いろんな御議論はございますけれども、まだ決まっているということは ございませんので、そこのところを御議論をいただいているということでございます。 文書として固まっておりますものはこの下の枠の中のことだけでございます。  それで、主な検討事項として前回も御紹介をさせていただきましたけれども、1つに は総合施設の機能・サービスということで、基本的な役割・機能といたしましては次代 を担う子どもたちの育ちを支える一貫した次世代育成支援及び養育教育のための施設サ ービスというような視点が必要ではないか。それから、地域の子育て家庭の多様なニー ズに応える施設・サービスという視点が必要ではないか。  それから、待機児童が大変多い現状でございますので、待機児童の解消に資する施設 ・サービス、こういったような視点が、役割・機能というのが求められるのではないか ということで、ここに掲げさせていただきました。  そして、サービスの内容といたしまして、基本的な役割・機能を踏まえ、総合施設に おいてはどのようなサービスを提供するか。これは基本論でございます。言わば基本論 ということで、どういう役割あるいは機能というものを持って、今の時代の子どもたち の育ちに貢献をしていくか、責任を果たしていくかという基本的な視点の部分でござい ます。  2以下は具体的な技術的な面も含めた論点でございますけれども、資料と関連をいた しますので、資料を参照にしながらごらんをいただきたいと思います。先生方のお手元 の資料5「保育園と幼稚園の現状」の21ページをお開きいただけますでしょうか。保育 園と幼稚園の比較を主な項目について並べてございますので、そちらも御参照いただき ながら資料の御説明をさせていただきたいと思います。  まず、2といたしましては、利用として利用できる者の対象者の範囲ということでご ざいます。これは就労の条件とか、保育に欠けるという要件は今は保育園の方にござい ますけれども幼稚園の方ではそういうものはないわけでございますが、そういうような 対象者の範囲、それから入所の仕組みなどの利用方法、こういうようなことがある。  それから、総合施設の施設・人員・運営の基準ということで、設置できる主体という ことで申しますと、これは保育所の方につきましては、設置主体については制限がない わけでございまして、言わばだれでもと言うと変ですけれども、設置が可能になってい るのでございますが、幼稚園の方は基本的には学校法人、社会福祉法人等も設置ができ ますけれども、営利法人についてはその設置ができないというような状況になっている わけでございます。  それから、構造設備につきましては、この21ページの表にもございますけれども、施 設基準というようなものがございまして、基本的に保育室それから遊戯室等はそんなに 大きな違いがあるわけではございません。面積については微細な違いがございますけれ ども、調理室等、これは保育時間の違いということがございますので、調理室について は保育所につきましては直接必ず置いていただく、こういうような構造設備になってお ります。  それから、従事者が有すべき資格については、これも先生が既に十分御承知でござい ましょうが、保育所の方におきましては、保育士という国家資格、それから幼稚園につ きましては幼稚園教諭という資格になっております。ただ、新卒の方につきましては、 おおむね8割前後で両方の資格を持っていらっしゃるというのが若い方の現状でござい ます。これは養成校の方でもそうした対応をして、就職しやすいように御努力をいただ いておりますけれども、新卒の方はそうした現状でございます。  それからもう一つ、職員配置基準ということで、これもごらんをいただきますと、保 育園におきましては0歳に3:1、それから1・2歳が6:1、3歳20:1、4・5歳 30:1と、こういうような配置基準になっておりますが、幼稚園の方につきましては1 学級35人以下というような形で違っているわけでございます。幼稚園の方は原則的に3 歳以上という子どもさんを対象にしておりますけれども、そうした形で職員の配置が行 われております。  それから、保育・教育内容並びに運営の基準でございますけれども、こちらの方は保 育・教育内容につきましては、保育所保育士指針、それから幼稚園教育要領ということ で、それぞれ定めておりますけれども、この内容につきましては、類似の改定等におき まして、それぞれの内容については、できるだけ整合的なものにするということで、こ れまで改定を進めてきておりまして、私どもといたしましては、内容につきましてはか なり整合性の取れた形になっているのではないかと思っております。そうした形でこれ まで進めてきているところでございます。  それから、運営という関係では例えば開設日数というようなことで、21ページの一番 上の欄でございますけれども、開設日数は保育所につきましては、平日等におきまして も、平日と申しましても土曜日も含めてでございますけれども、約300 日という開設日 数でございまして、開所時間と申しますか保育時間は11時間というような形で基本的な 設定をしております。幼稚園の方は春夏冬休みがございます。大体4時間というような 形で実施をしておりますが、預かり保育を実施をしている幼稚園、これはまた後ほど資 料で出てまいりますけれども、大変高い割合になっているのが実情でございます。  費用負担につきましては、国と地方の負担の財源の在り方ということでございますけ れども、保育所につきましては、国庫負担金、民間分が平成16年度の予算案で約2,700 億円という国の予算になっております。同額を都道府県と市町村で負担をいたしますの で、国の基準で5,400 億円という金額になっているわけでございますけれども、そうし た形で運営費の手当てをしております。  公立保育所につきましては、昨年の三位一体の改革におきまして、一般財源化をする ということが決定をされましたので、現在その一般財源化をするための法案を国会に提 出中でございます。児童福祉法等の一部改正法ということで提出中ということでござい ます。  幼稚園の方につきましては、これは私立幼稚園につきましては私学助成というのがご ざいます。それから公立の幼稚園は、これは交付税措置の一般財源というような形で実 施をされておりまして、所得の低い方向けに就園奨励費の補助金があるというような形 でございます。  更にその他といたしまして、基盤整備の在り方あるいは既存制度との関係、既にある ものとの関係というようなことも考えていく必要もあるということで、こうした事項が 主な検討事項でございます。  資料3の方は先ほど御説明をさせていただきました総合施設の機能・サービスの関係 を少し詳しくしたものでございますけれども、AからCということで、例えばAでは次代を 担う子どもたちという部分では、1つ目といたしまして、「子どもの視点に立ち、子ど ものしあわせを第一に、保護者の就労形態等で区別せず、就学前のすべての子どもに対 し質の高い保育・教育を提供することにより育ちを支える」、あるいは「サービスの内 容及び提供主体の多元化を図る」というような観点。  それから、2番目の子育て家庭の多様なニーズという観点では、「子育て家庭の視点 に立った、利用しやすい施設・サービス」というような視点。それから、「すべての子 育て家庭への支援」というような視点。「地域の自主性を尊重した柔軟な制度設計」と いうような視点。というような視点も必要ではないかということで、これは1つの視点 としてし整理をしてみたものでございます。法令で決まったということでは勿論ござい ませんので、御審議の参考として整理をしたものでございます。  以上のような項目について自由に御議論をいただきたいと思いますが、その前に現状 について先生方の確認のために余りお時間を取らないようにいたしまして、現状につい ての資料の御説明をさせていただきます。 ○重元課長補佐  引き続きまして資料4及び資料5に基づきまして、現状整理、データを整理させてい ただきましたので、御説明をさせていただきます。  まず資料4でございます。こちらは最近の「次世代育成支援を取り巻く状況」という ことでございまして、例えば、少子化の動向でございますとか、子どもさんを取り巻く ような状況、御家庭を取り巻く状況などについて整理をいたしたものでございます。  資料をおめくりいただきまして、まず2ページでございますけれども、こちらは最近 の出生数及び合計特殊出生率の推移についての経年経過でございます。ごらんいただき ますとおわかりになりますように平成14年出生数、合計特殊出生率、いずれも過去最低 を更新をしておりまして、近年いずれにつきましても、低下の傾向というのは下げ止ま らないというような状況になっておるところでございます。  続きまして3ページでございますが、こちらは合計特殊出生率につきまして各都道府 県別の状況を整理したものでございます。全国平均は1.32ということでございますが、 地域によってかなりばらつきがございまして、高いところは上の沖縄の1.76とか1.56と かというところがある一方、一番下の東京都などにおきまして1.02であるとか1.17とか 1.2 というような、かなり地域のばらつきがあるというような状況でございます。  続きまして4ページでございますが、こちらは少子化の要因ということでございまし て、従来少子化につきましては晩婚化、未婚化の進行が大きな要因だというふうに言わ れておりましたけれども、右側にございますように最近は夫婦の出生力の低下というと ころも新しい現象として見られておる。この両者が相まって少子化が進行しているとい うような状況になっているところでございます。  続きまして、子どもを取り巻く状況ということでございますけれども、6ページでご ざいますが、これは兄弟姉妹構成の推移ということで、お子さんがいらっしゃる世帯に おきまして、お子さんが何人いるかというその割合をグラフにしたものでございます。 1985年以降の流れを見ていただきますと子どもさんが1人という世帯が増えている、2 人という世帯が減ってきているというような状況で、兄弟の数というのが近年減少傾向 にあるというところがこのデータでも見て取れるところでございます。  続きまして7ページ、これは子どもさんの遊びに関してのデータでございますが、放 課後や休みの日によく遊ぶ場所。ごらんいただきますとおわかりになりますように、自 分の家の中でありますとか友達の家、いずれにいたしましても室内で遊ぶというような 状況が非常に多くなっているということがこのデータからおわかりになるかと思いま す。  続きまして8ページですけれども、こちらは外で遊んでいるお子さんについてどのぐ らいの人数集団で遊んでいるかという、一種のサンプルを基に調査をしたものですけれ ども、外遊び集団のおよそ半分が1人または2人という非常に少人数というか、小集団 で遊んでいるというような状況がわかるところでございます。  続きまして9ページ、こちらは母親を対象にした調査でございますけれども、近隣子 どもの遊び場で困ることは何かということでありまして、ごらんいただきますと、例え ば、雨の日に遊べる場所がないでありますとか、遊び場周辺の道路が危険である。十分 な広さがない。近くにそういう遊び場がないとか、同年齢の仲間がいないとか、こうい ったなかなか外に出ていっても十分に遊べるような場所がなかったり、遊ぶ仲間がいな いというような状況がここに表れているところでございます。  続きまして10ページ、「乳幼児の世話を体験したことがあるかどうか」。こちらは1 歳6か月健診を受けに来られたお母さんを対象に行った調査でございまして、このグラ フの右から2つ目の斜線部分になっている部分が乳幼児の世話を体験したことがなかっ たと答えた方の割合でございますけれども、20年前と比較しまして、その割合が非常に 大幅に増えているというようなことがここからわかるところでございます。  11ページでございますけれども、子どもたちの心の健康ということで、例えば何もし たくないと思うことがあるとか、イライラしたりむかついたりすることがあるとか、そ ういったことが「よくある」「ときどきある」というふうにお答えになったお子さんの 割合というのが例えば例えば前者だと約6割、イライラとかだと4分の3にわたるお子 さんがそのように答えているというような状況で、こういった子どもさんたちの心の健 康の問題もあるのではないかということでございます。  12ページ、児童虐待相談の処理件数でございますけれども、近年非常に虐待相談処理 件数が増加しているというところがかなり見てとれるわけでございます。  続きまして、子育て家庭をめぐる状況ということでございますが、14ページをお開き いただきますと、こちらは女性の労働力率ということで、いわゆるM字カーブでござい ますけれども、近年、25歳から34歳ぐらいの辺りの層の労働力率というのが増えてきて いる。いわばM字の底に当たっていた部分が底上げしてきているというような状況にな っておるところでございます。  15ページでありますけれども、こちらは55歳以上の既婚の女性の方の労働力人口の推 移をグラフにしたものでございますけれども、祖母世代となるような既婚の女性の方の 労働力人口というのが近年実数の上でも増えてきているということが表れているところ でございます。  16ページですが、「子育ての不安や悩み」。これは母親を対象とした調査でございま すけれども、例えば、子どもとの接し方に自信が持てないとか、仕事や自分の事が十分 にできない、子どもについて周りの目が気になるといったような項目について「そう思 う」であるとか「ややそう思う」と答えられる方の割合が非常に高くなっているという ところでございます。非常に子育ての不安・悩みを抱えておられるという状況がここか らよくわかるところでございます。  17ページですけれども、育児中の不安。これは共働きの主婦の方、専業家庭の主婦の 方、それぞれについて、自信がなくなるとか自分のやりたいことができなくて焦るであ るとか、そういったことが、「よくある」「ときどきある」というようなことについて 尋ねたものでありますけれども、いずれにいたしましても、専業主婦家庭の方であると 答えた方の割合が高くなっている。共働き主婦よりも専業主婦の方が育児不安が大きい というところがここに表われているところでございます。  続きまして18ページ、「子育てにおける負担感」ということでありますけれども、こ ちらは身体的な負担感あるいは精神的な負担感につきまして、お子さんがいらっしゃる 世帯にそれぞれお子さんの時期、就学前、小学生、中高生のそれぞれに分けて聞いてお るわけでございますけれども、身体的負担、精神的負担いずれについても就学前の時期 というのが非常に負担であると感じておられる割合が高く出ているということでござい ます。身体的に負担は特に高く出ている状況でございます。  続きまして19ページが母親の意識の比較ということで、例えば子どもといると楽しい かどうか、あるいはイライラすることが多いかというようなことを尋ねましたところ、 いずれも20年前と比較をして見ますと、楽しいと答える割合の方が減っておったり、イ ライラすることが多いと答えている方が増えているという状況でございます。  ここで、済みません。上のグラフの「1981年88.3」と出ておりますけれども、これは データの入力ミスでありまして、「98.6」というのが正しい数字でございますので、恐 縮でございますけれども訂正をお願いいたします。  次、20ページでありますが、子育てに関する意識の比較でございますが、こちらは東 京都に居住しておられる6歳以下のお子さんを持つお母さん方に調査を行ったものでご ざいます。グラフの下の方に、例えば「子育てが負担に感じる」とか、「世の中から取 り残される」などの事項がございますけれども、それぞれについて「そのとおりである 」と答えた場合は4点、「どちらかというとあてはまる」と答えた場合は3点、一番下 の※印のところに書いてありますけれども、このように答えに応じまして点数化をいた しまして、その事項ごとの平均点をとってみたものでございます。ですので、それぞれ の項目について点数が高ければ高いほどそれぞの項目にネガティブに感じておられる割 合が高いということが出ているわけでございますけれども、これも20年前と比較します と、左側の3つの項目「負担に感じる」とか「世の中から取り残される」とか「視野が 狭くなる」といったお答えについて、ネガティブに感じられる方が増えてきているとい うような状況でございます。  21ページ、「世帯構造別児童のいる世帯」でございますけれども、こちらはいわゆる 核家族と呼べる夫婦とお子さんの世帯の割合というのが、近年割合としては増えてきて いる。その一方で3世代世帯、これは右から2つ目の横線になっている部分であります けれども、この3世代世帯の割合というのが減ってきているというような状況が出てき ております。 22ページ以降が、いわゆる育児に関する男女共同参画的なデータが出て くるわけでございますけれども、まず育児休業の取得率ということで、これは男性と女 性の育休の取得率を比較したものでございますけれども、ごらんになるとおわかりにな るとおり、かなり男性の育児休業取得率が低いというような状況が出ているわけでござ います。  続きまして23ページ、こちらは夫婦の育児時間あるいは家事関連時間、それぞれ核家 族世代と3世代の同居世帯、また一番末子のお子さんの年齢ごとに区分をいたしまし て、それぞれ夫と妻の時間について書いたものでございますけれども、こちらは夫の方 の家事参加・育児参加というのはどちら合わせましても1日1時間にも平均して及ばな いというような状況になっているところでございます。  続いて24ページでございますけれども、こちらは平日の帰宅時間が夜の11時以降にな る父親の割合についてデータを取ったものでございますけれども、全国平均で約14%、 一番左の棒グラフでありますけれども、なっておりますが、特に南関東の地域において は2割を超える父親が非常に深夜に帰宅をしているというような状況であります。  続いて25ページ、いろいろ子育て支援について各自治体において子育て支援事業に取 り組んでおられるところでございますけれども、その実施の状況につきましては全国 3,200 ある市町村のうちなかなかまだここに表われているとおり地域子育て支援センタ ーや一時保育については例えば全体の4割であるとか、35%ぐらいの取り組みになって いますけれども、それ以外の事業についてはまだ全市町村の1割にも及んでいないよう な状況でございます。  次からが求められている子育て支援ということで、27ページごらんいただきますと、 こちらは子どものいる世帯、いない世帯それぞれにつきまして、今後充実が必要な施策 でありますとか、サービス・支援策について聞いたものでございますけれども、いずれ の世帯、いる・いないにかかわらず、まずは子育てをしながら働きやすい職場環境の整 備というのが非常に高く出ております。あと以下、子どもが居る世帯ですと、例えば上 から2つ目の小児医療体制の充実であるとか、あるいは下から4番目の子育てへの経済 的支援というのが高く出ておりますし、子どものいない世帯ですと、例えば真ん中にあ る保育サービスという項目であるとか、あるいは子育てへの経済的支援といった項目が 高く出ているところでございます。  次、28ページでございますけれども、こちらは保育サービス以外のサービスへの期待 ということで、こちらは母親を対象にした調査でありますけれども、例えば、子どもを 遊ばせる場や機会の提供でありますとか、親のリフレッシュの場や機会の提供、不安や 悩みの相談、支援に関する総合的な情報提供、こういったサービスを求められている母 親が非常に高くなっているというような状況になっております。  以上が「次世代育成支援を取り巻く状況」でございましたけれども、引き続き資料5 に基づきまして、「保育所と幼稚園の現状」につきましてデータを整理しておりますの で、こちらにつきましても簡単に御紹介をさせていただきます。  まず表紙をおめくりいただきまして1ページ、保育所利用児童数等の状況でございま すけれども、こちらの折れ線グラフが保育所の数、棒グラフが利用児童数ということで ございます。色が黒くなっている棒グラフをごらんいただきますと、平成6年に159 万 人と底を打っておりますけれども、以後、保育需要の高まりとともに利用児童数が年々 増加傾向にある。直近の15年4月ですと192 万人というような状況でございます。  2ページが今度は変わりまして幼稚園の方の状況になります。幼稚園の方につきまし ては、平成15年の時点で176 万人ということでありまして、近年、若干の減少あるいは 横ばいといったような傾向になっておるところでございます。  3ページは保育所児童数と幼稚園児童数につきまして、1つのグラフに整理をしたも のでございます。  4ページでございますけれども、こちらは就学前のお子さんの居場所と申しましょう か、保育所、幼稚園、家庭、それぞれどこにいるかということをまとめたものでありま して、3歳以上児に黒い部分が出てきます。この部分は幼稚園でございます。全体的に 見てみますと、一番右端の計の部分ありますように、全体のおおよそ半分強の5割強の お子さんが保育所あるいは幼稚園に行っておられて、半分弱の方が御家庭にいらっしゃ るというような、年齢を通して見るとそのような状況になっているところでございま す。  続きまして5ページが、保育所の利用児童であるとか待機児童の直近の状況を整理し たものでございます。待機児童ゼロ作戦ということで、平成14年度以降、毎年5万人を 超える受け入れ児童数の増ということで施策を進めているところでごさいますけれど も、待機児童数につきましては一番右端にありますようになかなかまだ依然として2万 5,000 人〜2万6,000 人とかがいらっしゃるような状況であります。この2万6,000 人 いらっしゃる待機児童の方の内訳ということでございますが、下の半分の表であります ように、低年齢児、0〜2歳児のお子さんの待機児童が全体の7割弱ということで、待 機児童の多くは年齢の低いお子さんというような状況になっているところでございま す。  6ページは、認可保育所以外の例えば認可外保育施設もろもろを含めました全体の保 育に関する施設の数あるいはそこを利用しておられるお子さんの数を整理をしたもので ございます。認可保育所については192 万人ということでございますけれども、それ以 外にも認可外保育施設をはじめとする施設に約23万人弱のお子さんが行っておられると いうような状況でございます。  7ページ、こちらは延長保育をはじめとします多様な保育サービスの実施状況を整理 をしたものでございます。それぞれ公営、私営ごとに出ておりますけれども、具体的な 傾向としましてはいずれにつきましても民営、民間保育所の方で多様な保育サービスの 提供には取り組んでいただいているというような状況でございます。  8ページでございますけれども、こちらの「保育サービスの多様化」ということで、 特に最近就労形態の多様化などを背景といたしまして、延長保育であるとか休日保育で あるとか、こういった保育需要が増えてきているわけでございますけれども、実際の実 施個所数で見てみましても、近年、増加しているというような状況がここに表われてい るところでございます。  右半分は平成元年を1とした場合の保育所利用児童の年齢別伸び率を指数化したもの でございます。近年0歳児、1・2歳児といった低年齢児の伸び率が非常に高くなって いるということでございます。この辺りは次の9ページをごらんいただきますと、実際 に保育所に通っておられるお子さんの年齢別のシェアでございますけれども、左から0 歳児、1・2歳児となっておりますけれども、この0、1、2の割合が近年急速にシェ アが高まっているというような状況がここに表われているところでございます。  10ページからは保育所における今いろいろな多様な子育て支援への対応に取り組んで おられますけれども、その事例を3事例ほど御紹介させていただいております。10ペー ジの「子育てひろば・みつわだい」でございますけれども、こちらは1つ目の○にござ いますように、保育所の園庭であるとかあるいは地域子育て支援センターの交流スペー スを地域に広く開放しておる。それによりまして、保育所に通っておられる方、そうで ないお子さん方、みんなが一緒にその場で遊んだり集ったりできる場を提供しているよ うな特徴が1つあるということと、2つ目の○にありますとおり、そこでさまざまな幅 広いボランティアの方々であるとかそういった方々からなるスタッフの方が随時育児相 談に応じておられるということ、あるいは1つ飛ばしまして4つ目の○にありますよう に、自治体でありますとか児童相談所でありますとか、そういった多くの関係機関と非 常に連携をしておられまして、例えば、児童虐待など気に掛かるケースについては連絡 会議を開いて児童相談所につなげたりとかしておられるような取り組みをしておられる とうような事例でございます。  11ページは、埼玉県熊谷市の子育て支援センターの例でありますけれども、こちらは 1つ目の○にありますように、地域の育児の先輩ママさん方が「先輩子育て応援隊」な るものを結成いたしまして、自らの経験に基づいた育児相談を実施をしておられたり、 あるいは地域子育て支援センターを多くのボランティアの方々が支えておられて、地域 住民自らで子育てを支援していこうというようなコンセプトの下で取り組みをしておら れるというような例でございます。  12ページでございますけれども、こちらは今までの2つと若干毛色が違いますが、こ ちらは16年4月に開所予定の保育園でございまして、こちらはここに真ん中辺に書いて あります延長保育だとか一時保育だとか、主要な特別保育をフルメニューで実施をして いる保育所を開園する。しかも敷地内に小児科病院も誘致しまして、必要に応じて病後 児保育にも対応できるような、そういった総合的なサービスを提供する保育園というこ とで16年4月開設というようなものでございます。  13ページでございますけれども、こちらは幼稚園における対応ということでありまし て、預かり保育。これは幼稚園は通常1日4時間が教育時間ということでございますけ れども、この4時間の教育時間の終了後に、例えば夕方ぐらいまでに希望者を対象にお 子さんをお預かりということを預かり保育ということでやっておりますけれども、その 実施園数の割合ということでございまして、一番右端の15年を見てみますと、全体の65 %ぐらいの幼稚園でこの預かり保育とというのを実施しておられる。近年、その割合は 伸びてきているということでございます。  14ページは、少々制度的な話になりますけれども、保育所の利用方式でございます が、保育所につきましては基本的には保護者と市町村との間の契約という形で保護者の 方は市町村の方に申し込みをするというような形になっております。これに対しまして 幼稚園の方は15ページに挙げて出ておりますけれども、個々の幼稚園との間の契約とい うような形で利用形態が保育所と幼稚園では異なっているというような制度的な面の紹 介でございます。  16ページ、保育所の利用の対象に関する諸規定でございますが、こちらはいわゆる保 育に欠けると、保育所の方はそういう要件がございますけれども、そちらの根拠規定を 紹介したものでございます。こちらは後ほどお読みいただければと思います。  それと関連いたしまして、18ページの方で保育所の方で一時保育でありますとか特定 保育というところで、例えば、専業主婦の家庭の方が一時的に緊急的に保育が必要とな るような方に対して一時保育をやったりとか、あるいはパートタイム労働者の方が例え ば週に2日とか3日とか、あるいは午前とか午後とか決まった日時に保育所を利用でき るような保育サービスというのを提供しているわけでございますけれども、通常その保 育に欠けないお子さん方に対しましてもこういった一時保育や特定保育事業という中 で、保育所でも対応しているというような状況にあるということであります。  続きまして20ページでございますが、こちらは保育所を利用しておられる世帯の課税 区分別構成比ということで、一番棒グラフの右側が所得税課税世帯でございますけれど も、保育所利用の一般化ということで、近年この課税世帯の割合が増えておりますけれ ども、最近は、最近の経済情勢を反映してか、若干この課税世帯の割合が若干落ちてい るというか、減っているというような状況がここに出ているところでございます。  21ページは保育所と幼稚園の比較表、これはもう保育課長の方からも御説明しました ので、省略をさせていただきます。  22ページが保育所と幼稚園の連携の取り組みについて紹介をさせていただいておりま す。平成10年以降、施設の共用化ということで、共用化指針を出しまして、両施設の連 携ということに取り組んでいるところでございますけれども、先ほども御紹介ございま したように、例えば11年には保育所保育士指針を幼稚園教育要領と整合性を図るために 改定をしたりであるとか、平成14年には保育士と幼稚園教諭の養成課程について相互取 得が容易になるような見直しを行ったり、さまざまな連携の取り組みをしておるところ でございます。 23ページでございますが、こちらは資格の比較でございまして、今、 申し上げましたように、上に囲っておりますけれども、両資格の併有を促進するための 措置を講じてまいりました。  また、今後2つ目の○にございますように、まず平成16年度におきましては、幼稚園 の教諭の免許のみを持っておられる方に対する保育士の試験科目の一部免除措置という のを実施をすることとしております。具体的には保育士資格のところに書いてあります 教育原理、発達心理学、保育実習の3科目につきまして、幼稚園教諭免許を持っておら れる方については免除をするというような措置を講じることとしております。合わせま して、幼稚園教諭免許の方のサイドからは17年度実施となっておりますけれども、保育 士資格を持った方に対する幼稚園教員資格認定試験というのを、文部科学省さんの方で 新たに創設をされるというふうに伺っておるところでございます。  24ページでございますけれども、保育指針と幼稚園教育要領の比較を行った表でござ います。詳細はごらんいただくことといたしまして、いずれにしましても、両方の整合 性が図れるようにこれまで順次改定を行ってきており、現段階におきましてはほぼ両方 そろっているような状況でございます。  25ページ以下は、現実に保育所と幼稚園の連携について取り組んでおられる事例を4 事例紹介させていただいております。詳細の説明は省かさせていただきますけれども、 例えば、いずみこども園であれば、0歳児から2歳児は保育所として処遇し、3歳児以 上は幼稚園で処遇する。この幼稚園につきましても長時間お預かりする子と短時間の子 と2種類の類型で事実上保育に欠けるというような方も処遇できるような形になってい るというような事例でございますとか、次の26ページの北海道の東川幼児センターにお きましては、3歳以上児については同じクラスの中に保育園児と幼稚園児が一緒に混合 クラスを編成しておるというような形で、一体的に処遇をしておられるというような取 り組みでございます。  27、28ページにつきましては詳細はまた後ほどお時間あるときにごらんいただきたい と思います。  29ページでございます。こちらは保育サービスの財源ということで、先ほど課長から の説明にもありましたけれども、公立の保育所の運営費につきましては、16年度から一 般財源化することになっています。民間保育所につきましては引き続き公費、国が負担 を行っていくことになっておりますけれども、その負担割合につきましては、国であれ ば2分の1、都道府県4分の1、市町村4分の1という形で所要の財源が賄われている ところでございます。公立保育所につきましても一般財源化部分につきましても、財源 状況により必要な財源が手当てをされていくというようなところでございます。  30ページでございますが、こちらは年齢別の保育単価あるいは費用徴収基準額という ことで、いずれも国の基準でございますけれども、その状況でございます。上の方の保 育単価、こちらは幅がある金額で書かれておりますけれども、こちらは保育単価は地域 区分でありますとかあるいは施設の定員区分によりまして単価が異なっておりますの で、このような幅が出てきているというようなところでございます。また、保育単価徴 収基準額いずれにつきましてもこちらは月額の金額ということになっております。  最後の31ページでございますけれども、こちらは幼稚園と保育所の費用負担につきま して財源構造の比較を行った絵になっております。参考までに31ページの下の方にそれ ぞれの類型ごとに1人当たりの保護者負担、1人当たりの公費負担を載せております。 こちらにつきましてはいずれも年額の数字でございます。なお、保育所につきまして は、幼稚園との比較の都合上、3歳以上児を特に取り出した金額も下の方に掲げさせて いただいております。  以上、早口で誠に申し訳ございませんでしたけれども、私の方から、資料4、5の説 明を終わらさせていただきます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。ただいま、これから私どもが検討してまいります総合施設 に関する主な検討事項の案であるとか、あるいは検討するに当たって共有しておかなけ ればいけない情報について詳しく御説明がございました。大変たくさんの御説明でござ いましたけれども、ただいまの御説明につきまして、御質問あるいは御意見等がござい ましたから、自由討議の時間を取ってございますので、御自由に御発言いただければと 思っております。  はい、どうぞ。阿藤委員。 ○阿藤委員  中身というよりはこの総合施設にかかわる検討というのが、今の御説明でよくわかり ますように、要するに、厚生労働省と文科省が管轄している2つのものを融合するそう いう施設の検討ということなんですけれども、それを厚生労働省の我々社会保障審議会 児童部会でやっている。これとカウンターパートにあたる、文科省の方でもそういう類 似の検討する組織というのが存在するのか、もしないとすれば、ここが中心になってや って文部科学省から例えば人を呼んで来て御意見を聞くとか、そういうことになるのか どうか。その辺の位置付けをちょっとお聞かせ下さい。 ○唐澤保育課長  実は前回の部会でもお話しさせていただきましたけれども、文部科学省の方では幼児 教育部会というところで御検討をされております。これは私どもの方は児童部会の方で 先生方にお願いしておりますが、幼児教育部会で御審議をいただいているという状況で ございます。それで前回少しお話しをさせていただきましたのは、それぞれごとに検討 して、それぞれごとでやっているというだけではやはり全体のそれぞれの広い視点から の合わせた御検討というものが必要ではないかということで、時期はもう少し後に、連 休前後だと思っておりますけれども、両方の部会での合同の検討の場というものを設置 をさせていただきたいということをお願いをいたしました。それで、このことにつきま しては具体的にどうやるかというのは、これから部会長と御相談しながらやらなければ いけませんけれども、そういうものを設置をする。そのことにつきましては、幼児部会 におきましてもお話しをしていただきまして、御了解をいただけたというふうにお聞き をしております。 ○岩男部会長  ほかにいかがでございましょうか。どうぞ。 ○津崎委員  今回のポイントは、総合施設の在り方を検討するということですが、そのものだけを 表面的に理解すると、就学前幼児が1つは保育というシステムの中でケアされている部 分と、幼児教育という分野でケアされている部分をどう融合させることができるのかと いうことなんだろうと思うんですが、その根底に、いろいろ今資料を説明いただくと、 要はむしろ0歳、1歳、2歳という従来は家庭で養育されていた子どもが家庭でケアで きなくなっている。その部分について社会的な養育の在り方をどうするのかということ が問われる中で、この幼保の一元化の問題が出てきているのではないかと思うわけで す。  待機児童を見ていましても、要は基本的には0歳児、1歳、2歳児の問題。いわゆる 従来家庭で養育されることがある意味で当然というふうに思われて取られてきた施策で は追い付かなくなってきている。その部分に対してどう社会として対処していくのか。 これはある意味では高齢者の介護と似ています。高齢者が従来は家庭で介護されるとい うことが前提として社会のシステムが成り立っていた。ところが社会変化の中でそれが できなくなってきて、むしろ家庭の介護から社会的介護にどう変えるのかということ で、非常に大きな政策の転換を求められた。それとやはり共通するものがあるのではな いかというふうに思うわけです。  そういう意味で、幼保の単に総合施設をつくるというだけの発想ではなくて、前提に 0歳児、1歳児、2歳児の社会的な養護の在り方を基本的にはどういう施策で対応して いくのか、その発想が要るのではないか。例えば、0歳児、1歳児、2歳児を基本的に はやはり従来と同じように家庭で養育されるということを前提にし、それを支えるとい うことであれば、その家庭の養育を支えるための育児休暇であるとか、あるいは0歳 児、1歳児、2歳児に集中的な経済的な何らかのサポートをするとか、いろいろそうい う施策があります。そういう形で施策を誘導して行くのか。  そうではなくて、この部分も本来的には全部保育所等の政策の中で、最終的にはサポ ートしていくんだと、そのための保育なり幼児教育なりの融合を考えていくということ であれば、これは相当大きな施策になってくるだろうと思いますし、あるいはまた0歳 児、1歳児、2歳児を抱えている保護者、特に母親を労働力として活用するんだと。そ れに対して、企業と本人たちと社会がどう連携の中で0歳児、1歳児、2歳児をケアし ていくのかというふうな取り組みを今後整備していくんだというふうなことなのか。こ の前提となるいわゆる0歳児、1歳児、2歳児の基本的な社会的養育の在り方をきっち りと整理をした上で、幼保の一元化という問題を考えていかないと、そこを置いたまま 幼保の総合施設をつくりますということだけで問題が解消されるのかどうなのかという のは非常に難しい部分があると思います。そういう発想とその辺の部分についての一定 の論議が要るのではないかなというふうに思いますので、とりあえず意見を述べさせて いただきます。 ○岩男部会長  ただいまの津崎委員の、どうぞ。 ○唐澤保育課長  そういう幅広い視点からも、先ほど申しましたようにまだ固まっているわけではござ いませんので、いろんな観点から御議論いただきたいと思います。ただし、1つだけ、 私どもで、今回のものは保育園と幼稚園と、そして総合施設ができるということなの で、幼保一元化は一種類にしてしまうということなので、幼保三元化になりますので、 前の幼保一元化とは違うということをお話ししておきたいと思います。 ○岩男部会長  ほかに。どうぞお願いいたします。松原委員、どうぞ。 ○松原委員  ちょっと別の観点というか、津崎委員に関連して別の観点から発言したいんですが、 資料の方の6ページですか、保育施設の状況ということで、およそ23万人ぐらいが認可 保育所に近いような施設にいるということで、仮にこれが0、1、2が中心だとして、 粗い計算ですけれども、0、1、2歳児で各年代10万人という仮に計算をして、それで 4ページに戻って、ここで1歳児でいうと18%、同世代人口を113 万というふうに考え て、そうすると、そこに仮に10万を加えてみても、まだ家庭という場に7割から6割強 いるということになります。  でも、これは潜在的なニーズとかいろいろありますから、こんな粗いことで正確な数 値とは言いませんけれども、考えなければいけないのは、やはりそういう中で、現状で 家族ということを選んでいらっしゃる部分もある。しかし一方で、ちょっとページ数を メモしていないんですけれども、そういったいわゆる専業主婦の方たちが非常にリフレ ッシュを必要としている、あるいは仲間を必要としているということで、親子というこ とでターゲットにしたような社会的な施設、つまり子どもだけ日中どこかにいるという ことではなくて、親と子どもが一緒にどこか日中にいるという、それが家庭の中ではな くて、地域の中での居場所ができる。そういうようなことも、それだけというふうには 言いません、実際の保育の拡充等も必要だと思いますけれども、そういう親子で地域の 中でいられる場所というのを社会的な施設として準備をというのは、これは子育てサー クルとか子育てサロン等々やられていますけれども、もう少し建物設備なども常設のも のを持ったような、それが保育だとかあるいは幼稚園教育などとも同じ空間の中で自由 に相互利用ができる、移動ができるというようなものが、私は前回、選択肢を増やすと いうような話をさせていただきましたけれども、そういう流れの中でも改めてこういう 数字をみさせていただいて、必要ではないかということを1点感じております。  それから、先ほどの全体の世帯構成の中でもう一つ気がつくことはやはり一人親世帯 が増えてきていますね。ですから、このことも私たちは忘れてはいけないのではないか なというふうに思います。以上の2点です。 ○岩男部会長  ありがとうございました。松原委員の御発言とも若干関係するかとも思いますけれど も、やはりニーズに応えていくということで1つだけ、これは御質問なんですけれど も、資料の5の1ページに保育所の利用児童数の経年の変化が示されているわけですけ れども、働く母親の数はこの間ほぼ一貫して増えてきたのではないかと思うんです。そ れにもかかわらず平成6年が底ですか、利用者が減ってきたというのは、これはどうい うふうに理解をしたらよろしいんでしょうか。 ○唐澤保育課長  これはなかなか難しいんでございますが、私どもが1つの理由だと思っておりますの は、先ほど待機児童の子どもさんの数字を見ていただきました。その3分の2は低年齢 のお子さんだということを見ていただきました。こういう低年齢のお子さんの受け入れ ですとか、延長保育でありますとか、あるいは一時保育・休日保育というようなものは 実は平成6年にエンゼルプランがスタートしてから供給を増やしていったという経過が ございます。したがって、そういう社会的なニーズはあったんだけれども受け皿がなけ れば入所をお願いすることができないというような事情もあって、ニーズが潜在化をし ていたということもあろうかと思います。  ただし、それだけで全部説明できるかというと私は思いませんで、やはり人間の行動 として、これは数字的に証明ができませんので1つの仮説でございますけれども、やは り仕事をしながら育児もしていこう、それから余裕を持ちながら少し子育てもしたいと いうような、そういう行動の変化というようなものはやはりあるのではないかと思いま して、両方相まって、こうした形になっているのではないかと思います。今は平成6年 以降一貫して増加を続けている状況でございます。ちょっといろんな、先生方からもも し御意見をいただければと思います。 ○岩男部会長  はい、無藤委員どうぞ。 ○無藤委員  ちょっと違う論点にもなりますが、3歳未満の家庭にいる子どもの問題あるいはそれ に対する子育て支援その他に絡んでですけれども、子育て支援の考え方というものが、 この10年近くの間に私は大きく広がってきたんだと思います。それが今の次世代育成に つながったと思うんですけれども、それは何かと言うと、要するに、家庭における育児 というものの補完を保育所等がするという発想から、補完は勿論するんですけれども、 家庭の育児力の向上まで含めて子育て支援にいくんだということだろうと思っているん です。  そこまで入ってくると、実は幼稚園においてもその課題というのがかなり大きなもの に上がってきているということだと思うんです。つまり、特に幼稚園の場合には標準の 保育時間4時間ということはそれ以外は家庭・地域にいるわけですけれども、そうする と、そちらでどう育っているかということを、言わば当てにして幼稚園教育は成り立っ ているわけですが、そちらの方で、先ほどいろんな資料がありましたけれども、例えば 外で遊んでいるわけでもないよとか、いろんな問題が出てきたときに従来の幼稚園教育 が成り立ちにくくなってきているのではないか。そうすると、かなり子育て支援の発 想、つまり育児力の向上というものを入れざるを得ないという意味になってきたという ふうに私は理解しています。だから、そういう意味でも幼稚園と保育園のつながり、総 合化というのは非常に大きな意味を持つのではないかと、これが1つ申し上げたいこと です。  それからもう一つは、特に幼児教育という視点で考えていきますと2つのことがある と思うんです。1つは幼児教育の教育的発想を3歳未満の下の方にどう、いわば下ろし ていくか。つまり3歳未満は単純に養護で、それ以上は教育だよという、すごく大ざっ ぱに言えばそうかもしれませんが、でも、乳幼児の小さい年齢においてもある種の教育 的な働きがあって、保育所は保育指針にある程度書いてありますけれども、それをもう 少しきちっと考える必要があるというふうに思います。  それからもう一つの問題は、幼児教育というものが今度小学校教育につながっていく わけですね。これが幼児教育と小学校の連携という形で今議論されていると思いますけ れども、やはりその点を見据えて、上の年齢の方にどう発展していくかということ、特 に総合施設を議論する際に取り入れて、小学校への展望を持つような幼児教育というも のを明確に打ち出せるともっといいのではないかというのが私の意見です。以上です。 ○岩男部会長  はい、服部委員。それから次に網野委員。 ○服部委員  先生方のお話を伺わせていただき、私自身の考えも少し述べさせていただきたいと思 います。総合施設ということでございますが、どちらかと言うと全体が親側のニーズが 中心の考えかなと思うんです。つまり母親に仕事がある、あるいは子育て不安や負担感 が多い、そういうものを支援していくという。しかし、私はまず、一番大事なことは子 どもが発達をするということは何かという一番中心になる議論をしっかりしておかねば ならないと思うんです。  それは単に幼稚園とか保育園の問題ではなくて、例えば、渡辺先生は御専門でいらっ しゃいますが、新生児期、0歳、1歳、2歳のころの人間としての発達はとても重要 で、基本的には極めて親密で持続的な非常に親密な中での養育を人格形成上必要としま す。親のニーズとか都合とかでだれかが子どもの安全を見ればいいというだけではない のです。そういうまさに危急のときはそのとおりです。また虐待になったり不安を抱え た親御さんを助けるというのはとても重要ですが、大切なことは多くの平凡な、しかし 本当に健康な素朴な親たちが、非常に深く乳幼児期にはかかわらねば人格の形成という のはできないと思うんです。  これがやはり私は基本に必要と思います。特に今小学校・中学校の子どもの時間とい うのがどんどん食いつぶされていっています。社会化が非常に早く子どもに迫ってきま す。そうしますと、社会に出ていく前の就学前の6年間というのは子どもを最も手厚く 養育し、個人的に価値観、それから個人の持つ自我の形成、対人感情、そういうものを 地道に本当に積み重ねて6年間基礎づくりをしておきませんと、社会に出て、自分が一 人で生きていくとき、特に思春期の嵐の中に出る時、大変になります。私は思春期が専 門なものですから、渡辺先生の新生児期と非常に呼応したいとかねがね思っております が、乳幼児期にいきなり多数の人間にさらされて人間関係、対象関係がきっちりできな いままに人格を形成をしてしまうということは、体は安全で大きくなったとしまして も、内的成熟が非常に危ういと思うんです。  ですから、原則は私は親が子どもを慈しみ育てることがいかに大切かということで、 それは義務ではなくて非情に健康で素朴な人間のありようではないかと思います。そし て、それを基にしながら、各自が例えば仕事でも長期ではなくて、もっと短い預かり方 にしてほしいとか、病気のときには預かってもらいたいが、多様なメニューと書いてあ りましたね。とても私は重要なことだと思いますが、その多様なメニューを用意するこ とが大切と思います。まず、親が子どもを豊かに育てていくという原理原則があった上 での豊かな支援、補完であり、更にサポートしていく支援があるということです。基本 になる子ども側からの人間としての発達ということをどこかできちっととらえておくこ とが、幼保の一元より前に必要ではないでしょうか。将来の人間の発達、大人になる彼 らを思いますときに、私はやはり背骨が大切だろうという気がしまして、できました ら、合同会議も、ここの会もそうですが、何かそういう辺りを、機能とサービスを論ず るより前に、まず子どもとは何か、子どもが育ちゆくことは何かという辺りの議論を深 めておく必要があるのではないかと思います。渡辺先生、どうぞ。先生の御専門の辺り が一番大きいと思いますが。 ○岩男部会長  今、服部先生が非常に具体的におっしゃったことは恐らくこの資料2の下の囲みの中 にあります児童の視点に立ってというか、子どもの視点に立ってこの問題を検討してい くという、それを先生は非常に具体的におっしゃってくださったんだというふうに私は 理解しておりまして、基本的には私たちはその視点を絶対に失ってはいけないというふ うに思っております。渡辺先生、どうぞ。 ○渡辺委員  今、服部先生がおっしゃったことは恐らくそれに反対する人はこの部屋には一人もい ないと思うんです。そして、1つの問題はやはり人類にとって非常に不自然な形で孤立 した母子の状況が特に都会で増えていることだと思います。  それで、服部先生がおっしゃったのは、母親がわが子を産み育てる喜びというもの が、家庭の中に豊かに日々展開しつつ、それが地域社会の原点であり、家族がつながる ことで地域社会ができ、そしてそれが時の流れの中で私どもは個々の文化を伝達し、と いう生き延び方を人間はしているわけです。そのときに、ひとつ服部先生のおっしゃっ ている原点をもう一度乳幼児の心の発達という視点からとらえ直す必要があると思うん です。  新しいニューロサイエンスでははっきりと人間の赤ちゃんの脳というものは生まれ落 ちてから環境によってつくられるというふうに言われています。動物の赤ちゃん、犬や 猫の赤ちゃんの生まれたときは成人期の半分ぐらいの回路、成人期の半分ぐらいの完成 度だそうですけれども、人間の赤ちゃんは生まれたときの脳の完成度は4分の1だとい うふうに言う人もいるわけです。ここら辺は勿論厳密な話と言うよりももう少し研究者 たちの話ですから幾らでも変わると思うんです。それぐらい未熟な状態で生まれてきた 乳幼児に対して、その乳幼児の体と、それから心、一つで言ってしまえば脳の土台がで き、かつ工事機能ができつつある発達期に多くの子どもたちにとって、生まれ落ちるこ と自体も、この新しい機械的な環境に生まれ落ちること自体も多くの子どもたちにとっ てストレスなんです。 そのために、新生児室から泣かない赤ちゃん、あるいは泣き続 ける赤ちゃんがいるわけですね。あるいは、その刺激が強いために胎内から早く生まれ てしまう赤ちゃんもいるというぐあいに、胎内というとどこか別世界で守られているよ うに思いますけれども、たかが私どものそれこそジャケットの下のポケットぐらいに、 つまり私どもと同じような工業化社会のいろんな刺激、いろんな雑音とか、いろんな汚 染物質の中に赤ちゃんは胎内からさらされていて、そしてその出産状況も非常に悪くな っています。お母さんたちの周産期の障害が増えております。それから周産期に入る以 前に不妊治療という形で子どもさんを産むか産まないか、あるいは子どもさんが産まれ るかどうかのことで長く人知れぬトラウマを受けている状況の中での出産などが100 人 に1人というふうになっていますから、核家族が進行していくこの都会の中の若いお母 さんの周産期から始まる育児状況はものすごく悪いと思います。つまり私たちの時代の 育児環境の方がずっと常識的な普通の期待された温かい環境は身近に用意されておりま したけれども、今のお母さんは必ずしもそうではない。  例えば、変な話ですけれども、赤ちゃんの声一つで下のアパートやマンションからど んどんという、ほうきの音が聞こえてくるわけです。そうすると、外から見てどんなに すばらしそうな家族であっても、お母さんは下からどんどんとほうきの柄でたたいてく るかもしれない。それにおびえて赤ちゃんを抱っこしているときに、赤ちゃんはおびえ ているお母さんによって緊張して、そこから吐いたり泣いたりということが始まってし まって、母子そのものが安心しておかれる状況ではない。その中から厚生省の方ですこ やか親子21で出していますけれども、周産期、産後の10人の母親の中の1.3 〜1.4 人 が産後のうつ病にあると。そして、世界的な研究でうつ病のお母さんに触れている赤ち ゃんたちの発生は特に男の子たちの発達がやはり障害されるというリスクが高い。  例えば、すごく敏感な時期にお母さんが落ち込んでいる機械的な育児に触れるだけで も、その子どもたち自身が例えばよちよち歩きの時期に落ち着かなくなったり、人に対 して過剰におびえたり鈍感になったり、非常にむらのある偏りのある発達をしやすいと いうことが実証的に1980年からずっと欧米で言われていて、日本でも同じようなことが 起きているわけです。  そんな中で、今、服部先生がおっしゃったように、乳幼児を守るお母さん自身が喜び の中で赤ちゃんを育むことができるような社会環境を、どのように、ミクロのレベル、 ミニのレベル、マクロのレベルで見ていくかだと思うんです。そして、マクロのレベル で障害されているいわゆる事件になっている虐待ケースも、事の発端はもう少し見えな いミニのレベル、家族しかわからない、あるいはお母さんしかわからないミクロのレベ ルでのボタンの掛け違いが何か月も前から、あるいは何年かから前からずっと起きてい るわけです。 そういった入り口のところをできるだけ早く理解して、子どもたちとお 母さんの相互関係の苦しみを防ぐために、より機能のフレキシブルで選択肢の広い、そ ういったシステムを何かつくれないのかというのが恐らくこの総合施設のねらいだと思 うんですけれども、そこには例えば保育園にしましても、10の保育園があれば10の先生 たちがつくり出している場の環境の情緒的な環境がどうかとか、それから、その場とお 母さんたちの出会いはどうかとか、それから幼稚園もそうだと思うんです。そういった 細かい吟味がないと本当の意味で子どものための発達環境にはなっていかない。  幸いにして私どもは、ここにいる人間は全員が1人の固体として、命として、この世 の中に表れるというのはまず受精卵が最初ですけれども、受精卵が羊水と出会ってい る。そして子宮壁で守られている。この体験の10か月の胎内体験は恐らく戦後のベビー ブーム以降、私ども生き延びた人間はみんなそうだと思うんです。生まれ落ちたときの 環境が古きよき時代の命を育むという時代とはまるで違ってきているビジネス原理の、 大人にとって都合がいいけれども命にとっては非常に生きにくい、特に敏感で違いのよ くわかる質の赤ちゃんやお母さんたちにとっては生きにくい社会ができているのだと、 そういった論点を明確にしていかないと、例えば、単に長時間保育がいいとは私は絶対 に思わないんです。子どもが耐えられる範囲の平均的なゆとりの時間というのはあると 思いますし、それから、分離が遅れれば、家に帰ってほっとして、そして寝付くまでの 時間がやはり障害されますから、そうすると、眠りが浅ければ疲労は取れない。疲労が 取れないで、お父さんやお母さんの都合で朝早く起こされてまた、いくらなれていると 思っても、少し通勤とか通園の時間がありながら集団にばーんと入っていく。そこで頑 張って頑張れたからいいものではなくて、そこからまた疲れがたまっていくといったよ うな悪循環の無理をしている子どもたちはもう既にたくさんいると思うのです。  そこら辺の議論は抜きにして、どんどん母親の、あるいは女性の仕事のことに合わせ てというのは、ちょっと次の世代の問題を棚上げにしながら、今さえよければいいとい うふうなことになりかねない。しかし、そのつけは例えば今日生まれた子どもが例えば 30歳になったときに、その子どももたちが温かい1対1のもの言わぬ人間とのやりとり がとても心地いいし、それが体の中にたまっているから、だから寝たきり老人の私と か、そのころ私は80代になりますが、寝たきり老人の私に対して、自分がやってもらっ たように細かくこまやかにケアしていけるそういう大人になっていけるかどうかという のは、今、服部先生がおっしゃったようなやはりその子の日々のクオリティーを保障し ていく生活、広い意味では今核家族の狭いマンションやアパートで自己充実を全部でき るお母さんがいるとは思わないので、そういう意味では広がりのあるいろんな機能が必 要だとは思いますけれども、でも人間の赤ちゃんというのは刻々と目の前がお母さんが うつ状態であれば、それを吸収して人の目を見なくなってしまうんです。人の目を見な くなってしまうと、1歳半ぐらいで、この子は目を見ないから自閉症ではないかという ふうにまた不安の種なんです。そうではなくて、家庭状況の喜びがないときに、赤ちゃ んはお母さんの顔が見られなくなるんです。そこら辺のことや虐待や、いろんな学習障 害の根っこがやはり0、1、2歳の日々の生活に必要だと思います。  そして、トレバーさんという人はアタッチメントといって、今、服部先生がおっしゃ ったようにだれかにつながっているという、港があるという感じがあると人間の赤ちゃ んは必ず家族以外の人に対して、人とお友達をつくりたい。それはもう0歳から始まっ ている。0か月から始まっている。特に初期は最初の2か月ぐらいから発揮しますけれ ども、第2次的な主観と主観の交流が大好きな生きもので家族以外の人との主観的な交 流を喜ぶのはもう9か月ぐらいから出ている。  だから、人間の赤ちゃんはお父さん、お母さんに守られて、家庭に守られた港がある と、すぐに大きな海ではないけれども、瀬戸内海みたいな感じで出たりはいったり出た り入ったりする人の輪が必要であって、昔は核家族がみんな軒続きで、地続きで、隣と つながっていましたら、それ自体が保育園の園庭みたいな形になっていたわけですけれ ども、今は重い鉄の扉でばんと閉められ、しかも土のレベルからうんと高いところに孤 立しているので、逆に保育園や、それから地域の家庭支援センターの子どもたちの人に 対する発達、それから物に対する発達もありますけれども、この3点、愛着というもの と、それから看取感性と言って人に対して伸びていく社会性ですね、それとものに対し て操作していく認識的発達のこの3点が守られていく場所というのが立体的でないとい けないと言われております。 ○岩男部会長  ありがとうございました。網野委員、済みません。お待たせをしておりました。どう ぞ、お願いします。 ○網野委員  津崎委員とそれから服部委員、渡辺委員のお話とやはり一番関連すること1つと、そ れからもう一つ、2点お話をしたいと思うんですが、私も総合施設という言葉が出てき て、総合施設化構想、いろいろ議論されている中で、本当にまだまだ検討を深めなけれ ばいけないのではないかと思っていたのがやはり0歳から2歳までの段階ということ で、子どもの視点に立ったときの総合施設はどうなんだろうかということです。明らか にまだ全く議論は不足していると思います。検討が不足していると思います。  ほかの委員の先生方のお話しされていることもみんな関連して共通してこのことが、 いよいよこの場で本当にもう少し本格的に議論されることを期待するんですが、その場 合に、保育課長はいわゆる幼保三元化だというお言葉がありました。確かに総合施設は 本当に一体ということでは非常に進めやすい部分がありますが、一元ということでは余 りにも多くの課題をまだ抱えていると思います。ただし、諸外国の大きな動向を見た場 合、日本も常に一元化論争を進めた場合に今議論されている総合施設と非常に関連する ところが当然ありますので、中でも最近の動向で言いますと、イギリスとスウェーデン がいわゆる幼保一元ということで言えば、両方とも全く同じ方向、つまり具体的に言え ば教育省といいますか、行政管轄で言えば教育系統に一元化された。その背景、意味、 実態、私も十分につかみ切れてないんですが、両方に共通していることはどうもやはり 3歳ぐらいから上の年齢の子どもたちにとっての主要な流れとして受け止めた方がいい のではないかと思うことがよくあります。  イギリスは明らかに日本とは違って保育園というシステム自体がそれほど普及してい ませんし、むしろますます幼稚園と保育園との関係がそれぞれの地域や地方で違ってき ている。これは一貫した教育という点でむしろ効果があるのではないかという趣旨はか なり見られたように思うんです。そういう点でいえば、やはり3歳以上の子どもたち、 増してプレスクールでの段階での保育との関連ということで重視すれば、一体化と言う んですか、一元化と言うのですか、そういう部分では進めやすい部分は二元性であった にもかかわらず見られたと思いますが、私はかつて乳児保育に関してのいろんな内容を 相当配慮して進めていたスウェーデンが教育省系統に一元化された。これも大変関心を 持って見てきたんですが、どうも正確にはまだ言えないんですが、やはり3歳以上とい う段階で、もっと広く言えば勿論生涯教育というのは0歳からの内容をすべて含んでは いますが、どうも具体的に見ると、生涯教育に当たっての視点ということで出ていまし て、もう一つ、これは先ほど来委員の先生方が議論していることと非常に関連してくる と思うんですが、0歳、1歳の段階で本格的に働いているとか働いていないに関係なく 家庭での親の子どもとのかかわり方を重視する。例えば具体的に言えば育児休業を本格 的に深めていく。これは父親も含めて。そのような大きな視点、政策と今議論されてい ることは非常に関連しているのではないかと思います。  そうしますと、スウェーデンが一元化していくという中で、勿論、乳児保育の一定の ウエートは置いていますが、比較的やはり乳児保育の割合はむしろ育児休業とか、子育 て支援の部分で強化していく中で、0歳からの保育というのは決してどんどん増やそう としているということは見られないわけです。そうしますと、日本で今総合施設につい ていろいろ議論しているときに、私は言うまでもなくこれは0歳から就学前全体につい てのことですので、ますます日本で低年齢時期の、あるいは乳児保育と呼ばれる段階で のことをしっかり踏まえながら議論していく必要が1つある。これは非常に委員の先生 方に非常に強く賛成します。  2番目に、これとも関連するんですが、具体的に進める場合に総合施設と言ったとき に、もし大きく機能を分けますと3つあると思うんですが、1つはいわゆる生活の場と しての施設と、2番目が教育の場としての施設、それから3番目が親もともにかかわる 子育て支援の場としての施設、この3つが非常に混在していると思います。特に生活の 場としての施設から言いますと、まさに先ほど申し上げたことと関連するんですが、乳 児保育の在り方は先ほどの幾つかのモデル例が出ていましたけれども、0歳から3歳は 保育園ですよ、それから上は一緒ですよというパターンは結構見られるわけです。しか し、先ほど教育保育を一体としてとらえた一貫した総合施設、この考え方が固まってい る段階でこれをどうするかを議論したいというお話がありましたが、この趣旨から言い ますと、言うまでもなく0歳からしっかり何をということを考えないといけないと思い ます。  そうしますと、やはり余りにも生活の場としての施設という視点を抜きにしたとき に、非常にいろんな問題が出てくるのではないかというふうに思います。まさに子ども たちにとっては、家庭と同じぐらいの場ということが基本にあるわけでして、私も個人 的には0歳からの保育が子どもの発達に及ぼす影響ということを今もう3年間プレジェ クトで進めておりますが、本当に大事なことはほとんどいつも結論としては、家庭であ ろうと保育園であろうとケアの質、保育の質が、どうしても結論としてはこれを抜きに できない。抜きにできないというか、出てくる結果はそういうことであって、もう乳児 保育是非論とか、3歳児神話はとっくに超えなければいけないと思っている1人ですけ れども、その場合に、親、とりわけ母親とかマターナルなケアというものをどう本当に 保障しているのだろうか、質を含めて。そうした場合に総合施設で行う場合にはやはり 生活の場として、人間関係をしっかり踏まえた生活の場としてということを、例えば、 スタッフ、専門職員や物理的な環境、施設まで含めたのが必要かというふうに思いま す。  とりわけ小児保健とか乳児保育に関してはすべての職員が相当踏まえなくてはいけな いと思いますし、その一方で、お昼寝をするところ、これをものすごく軸に置いている 子どももたくさんいるわけで、ここでゆっくり食べてお昼寝をする。これも本当に生活 の場としての欠かせないところですが、これを総合施設として全体的にとらえたとき に、従来の基準とか保育園・幼稚園の基準をどう考えたらいいかということが出てくる かと思いますし、ましてや預かり保育ということになりますと、まさに生活としての場 ですので、夕食を取る可能性もあるし、シャワーを浴びる可能性もあるし、そのような ことを含めた保育園・幼稚園の在り方ということがやはり検討される必要があると思い ます。  教育の場としてといった点で言いますと、先ほど無藤委員がおっしゃられたように当 然関係してくる部分が出てくると思うんですが、特に3歳・4歳以降に関しては統合と いうのでしょうか、そういう部分があるかと思いまし、むしろ最近、小1プロブレムと いう言葉まで新しく用いられようになっていますが、小学校1年に入学したまさにその 段階で授業不成立、学級崩壊の問題ということが数年前から言われていますが、文部科 学省の調査や東京都のある自治体の調査などで見ても、この小1プロブレムと呼ばれて いる問題の背景に保育園や幼稚園の教育、保育の仕方が関係しているのではないかと思 っている方もどうも多いようです。  むしろ私は今の義務教育段階からの、特に小学校低学年において家庭でも不足してい る生活の場としての、ある意味での生活学校的なことが保育園・幼稚園の継続性の中で 本当に必要ではないかと私も思っております。そういう点でも、総合施設というのがそ ういう小学校教育までの全体性、特に生活の場もある程度配慮し、人間関係も配慮し た、そういうことを考えたときに、やはり3歳以上の段階での総合施設の在り方という のも、この面でいろいろ具体的には出てくるかと思います。  3番目の子育て支援ということに関しては、本当にどの親もここに来てほっと一息つ けるというぐらいのものが、これこそだれもが共通に思って受け止めている部分だと思 います。したがって、子どもも親も生活の流れとして本当に楽しく過ごせるという場と してということを、子育て支援という具体的な目に見えるものだけではない、そういう ことも含めた環境づくりが必要かと思います。以上、申し上げたいと思います。 ○岩男部会長  はい。それでは順番に、大日向委員、それから堀委員。それから小笠原委員とお願い します。 ○大日向委員  私も総合施設の在り方に関しては慎重な議論が必要であろうと思います。ただ、その 場合の前提となる考え方に関して、今までいろんな委員の方がおっしゃってくださった ことと基本的にはそんなに違わないかもしれませんが、見方によっては私はニュアンス が違う考え方もしてみたいなというふうに思っています。  それは先ほど来、子どもの発達の視点を重視しなくてはいけないということを基本と して随分御意見が出ました。私も全くそれには異論はございません。しかし、子どもの 発達を重視する、子どもの視点に立つということと、親のニーズというのは決して拮抗 しないというふうに考えております。0歳、1歳、2歳ぐらいに安定した愛着関係が必 要だということは、これも発達心理あるいは精神医学の基本的な前提ですが、それを果 たして、だれがどういう保育の質で保障していくかということを考えるべきときだと思 います。  たしか、前回、柏女委員が、今、日本社会の子どもたちはすべての子どもたちが保育 に欠けるんだというそういう点でこれからの子育て支援なり、こういう発達保障をして いかなくてはならないとおっしゃったことが私は非常に印象深くて、従来は働いている 家庭の子どもが保育に欠けるという視点でいろんな施策が組まれていたけれども、今は 在宅の母親もさまざまな育児ストレス、育児不安が非常に強まっています。その母親が 安定して、父親もそうなんですが、子どもと向き合えていないという現実を見たとき に、やはりそこを保障していくということが結果的には子どもの視点に立つのだという 表裏一体の視点を考えていくということが必要だと思います。  それは先ほど、網野委員がおっしゃった働く働かないよりも保育の質をどう保障して いくかということを前提にしていくということではないかと思います。そういう点で総 合施設の在り方に対していろんな課題があると思いますが、母親はその時期家庭で見る べきなんだからという前提でスタートするというのは少し違うかなというふうに思って おります。○岩男部会長  ありがとうございます。堀委員、お願いします。 ○堀委員  総合施設についても、国が何らかの形で制度化する、あるいは財政支援も多分行うの ではないかと思います。そうすると、やはりニーズのあるものに対して行わないと、資 金あるいはマンパワーといった資源が非効率的に使われるということになります。した がって、ニーズのあるところに総合施設で対応するという、そういう観点が必要ではな いかと思います。  先ほど、保育所・幼稚園とは別に総合施設をつくるということが、保育課長からお話 がありました。保育所は働く女性の、女性とは限りませんけれども、就労のニーズに対 応する。幼稚園は子どもの教育ニーズに対応する。したがって、就労や教育のニーズに 対応する施設はすでにあるわけなので、総合施設はそれ以外のニーズに対応する必要が ある。それではどういったニーズがあるのか。私はまずこういうものをつくるに当たっ ては、ニーズを調査する必要があるのではないかというふうに思うのです。今まで見せ ていただいた資料から見ると、これから述べるところにニーズがあるのかなという感じ がするわけです。  1つは待機児です。2つは育児に対する支援のニーズです。この資料を見ると、育児 不安があるとか、あるいは子育ての不安感がある。こういったところに対しては施設だ けで対処するのは難しい面があるかもしれませんけれども、ここに1つニーズがあるの ではないかと思います。  それから、3つ目としては遊ぶ場がないとか遊ぶグループがないという資料がありま した。そうすると、そこに1つニーズがあるのではないか。4つ目としては、虐待の事 例が増えて、虐待に対して総合施設が何らかの対応ができないか、そこに1つニーズが あると思うのです。このほかにもニーズがあると思うのですが、そういったことを検討 していくことも、総合施設を考える上で重要ではないかと思います。 ○岩男部会長  ありがとうございました。小笠原委員、どうぞ。 ○小笠原委員  大日向先生がおっしゃいましたように、保育現場を与るものといたしましては、乳児 保育を30年経験してまいりまして、いわゆる3歳児神話というものに対しては、かつて 子育ての社会化の批判があった中で、職員も葛藤しながら今日まで保育をしてきたわけ です。確かに超長時間保育というものを実践して感じることは、たとえば親がどうやっ て子どもとかかわり合いをもっているのか訊いてみますと、保育所で行う保育時間が余 りにも長すぎますと親も育児意識が育っていかないように思えます。  それは、親が保育所に依存的になるからだめになるという意味だけではなくて、我々 が日々の保育の中で子どもの成長の喜びや、育ちの喜びを自分のものにして、親へどの ように伝えていくかという働きかけが欠落しないように留意することが重要だと思うの です。 これも「保育の質」であり、私たちがこれから「総合施設」を求めるところの 大きな課題だと思います。  乳児保育のニーズは、全国的な離婚率のデータがないのでわかりませんが、地方で は、非常に離婚率が高くなっているところがあり、片親で育てている現状があります。 あるいは都市部では、高層住宅で、母親が独りで育児をしている状況があります。それ に、先ほどのご説明の資料にありましたように父親の帰宅時刻が遅いというデータがあ りましたが、それを例にとっても母と子だけの関係だけで、外に出ることも少なく、ひ たすら帰宅の遅い父親を待つということが果たして正常な関係なのかと疑問を持ちま す。  乳児保育をしておりまして、特に6か月を過ぎまして、渡辺先生も少しおっしゃいま したけれども、乳児は乳児としての友達を求めるということがはっきりと出ておりま す。乳児は乳児を見て喜び、乳児を見て嬉々として喜びの声を上げます。そして相手の おもちゃでも取ろうとする、ハイハイをする、という成長の姿を見せるようになりま す。乳児と乳児との関係も必要だと思うのです。  私は、親と子という特定の関係だけを重要視するのではなくて、子育てを担ってきた 地域社会というものが崩壊してきたために、保育所が確実にその代替をしているそのこ とが重要ではないかと肌で感じております。  こういう離婚率の問題であったり、高層住宅の中で一日中、育児をすることが本当に 良いことなのかと思っているのですが、親が保育所などの力を借りて子育ての力が安定 していく、その過程の中で子どもも変わっていくと信じています。  子どもに笑顔が出た、言葉を発した、その一つ一つのことで親自体が変わってくると いうのを保育現場で実感しております。  それをタイムリーにやってくださったのが厚生労働省です。  それは「一時保育」です。これは「子育て対策」というより「親育て対策」だと保育 現場では言っておりますが、たとえば、離乳食の作り方が分からないので、母親を乳児 保育の専門施設に誘って、ちょっとした時間に他の乳児が食べている離乳食を親が目の 当たりに見て、「離乳食というのは見かけは汚いものかと、月刊誌で見るようなきれい なカラー写真ではない、こんなものじゃなくていいのだ」というのを知り、育児に自身 を得る、「来て良かった」と安堵されるのです。  また、「嘱託医が毎月、園に来てくださるのでせっかくの機会ですからどうぞおいで ください」と伝えますと、離乳食をはじめ、子育てについての助言や指導を受け、分か ってもられるようになります。  このような中で母親がどんどん生き生きと変わってくることは、大変嬉しいことで す。「特例保育」でありますとか「一時保育」というのはこれが本当の「親育て対策」 をしているという実感があります。  網野先生からお話がありましたように、今後も保育園側の技術でありますとか質とい うものがしっかりしておかなければならないと思います。  この問題は親子関係だけの問題ではなくて、育てる親と育てていく保育所側の意識の 問題と合わせて、保育所は技術というものをしっかりしなければいけないと思っていま す。  もう一つは子どもの発達をどうとらえるか、ということなんですが、保育現場から見 ますと、発達をどうチェックするかということになると思うのです。  たとえば、生まれて3か月まではこういう発達をし、6か月まではこういう発達をす るという、細かなチェックリストが必要だと思います。  乳幼児期の早いうちに、母子分離が行われると発達に遅れがあるとか、発達に問題が あるというのは、早計な問題ではないかという気がするのです。  当保育所では、嘱託医師と一緒に、乳児保育を実施するなかで、「このような発達が 正常である」とか、保育士や親の働きかけのポイントや押さえどころなどをチェック し、データ化して保育現場の中で考えて実践するように心がけています。  小学校との連携において感じますのは、無藤先生がおっしゃっていましたように、幼 稚園に比べますと保育所は、市町村の教育委員会との関係もあり、そのかかわりが薄い と思います。連携を取ろうと思っても教育委員会から避けられるということも多いよう です。 ○岩男部会長  今の発達のチェックリストという点についてちょっと私は違った考え方をしておりま す。そういうものを何か過信といいますか、過剰に信じてしまって、赤ちゃんの発達と いうのは一人ひとり大きく違うにもかかわらず、ほんのちょっとスタンダードというか 平均からずれるということが大変にお母さんを苦しめ、そしてそれがまたお母さんの子 どもへの対応に悪い影響を与えているようなケースも随分あるように思いますので、今 の点はまた今後いろいろ慎重に検討した方がよろしいように思いました。  猪股委員、どうぞ。 ○猪股委員  現場から一言言わせていただきます。先ほど服部先生や渡辺先生からのお話、とても ありがたいと思って伺っています。保育所には地域性があり、それぞれ状況が違いま す。私ども中都市では、今お子さんたちの表情や育つ状況が、基本的に心配と思うこと が多くなっています。この総合施設を語り合うときに、現在の乳幼児の出産のところか ら、胎生期から、生物として、動物として原理原則どうあることによって子どもが守ら れるか、子どもの発達が守られるためにどうなくてはならないか、子どもというのはど んなものなのかということを、今成長しつつある子どもの姿をクローズアップして、共 通理解をした上で次の施策の話題に入れたらと思います。 ○岩男部会長  それでは、柏女委員、それから阿藤委員で、もうそろそろ時間がおしまいになります ので、お願いいたします。 ○柏女委員  皆さん方のお話を非常に興味深く伺っていました。私自身はどうしてもこの相互施設 の検討を前回もお話しをさせていただきましたように、次世代育成支援サービス全体の 在り方の中でどういう位置を占めていったらいいのかという視点でとらえるものですか ら、今のお話を伺っていて少しマトリックスを頭の中でつくりながらきたんですけれど も、子どもが昼間どこにいるかということで、横軸に左側に在宅、そして右側に施設で すね。これは幼稚園であろうが。保育園であろうが、総合施設であろうが、認可外であ ろうが、どこでも施設だと。縦軸に養育支援の必要性の軸を取ると、上の方は割りと高 い方ですね。下の方は低い方ということになりますと、4つの象限ができるわけです が、そうしますと、左上の象限は養育力、養育支援の必要性が、済みません、養育力と した方がいいかもしれませんね、上の方は養育力と育児力が高くてしかも在宅というこ とですから、この部分については子どもの発達の保障、こどたちが手をつなぎ合える場 とかそういうものが必要でしょうし、それから親たちにとってはリフレッシュができれ ばとか、あるいは集い出会える場とか、そういうものが必要になるだろうと思います。  その下の領域は親の養育力がそんなに高くなくて、しかも在宅ということですから、 この部分はいわば訪問型の援助が必要になるというふうに思いますし、はなはだしいの は児童相談所なりが出掛けていって介入的なサービスを行わなければいけない。この領 域だと思います。それから、右下の部分は子どもは何らかの施設に昼間いて、しかも親 の養育力が低いという、つまり保育所などの力を借りながらやっと子育てをしている方 々ということになりますから、この方々に対してはわりとソーシャルワーク的な保育ソ ーシャルワークとしての視点が必要になる。あるいはカウンセリングなどの視点が必要 になるというふうに思います。右上の方がわりと親の養育力が高くて、しかも昼間子ど もは施設にいる。この部分はさまざまなニーズに答えていくというサービスが必要にな るんだろうと思います。  こうしたものを総合的に果たせる、ないしはこれをコーディネートできる施設が総合 施設かなというイメージですね。そうしますと、これをすべてを全部やるのは無理です から、何か基本機能というのがあって、総合施設の基本機能みたいなものがあって、そ してその基本機能にオプショナルな機能を付けていくような、そういうことは考えられ ないかなということをちょっと思いました。  それからもう一つは、この総合施設なり、総合施設に持たれている機能が小学校とつ ながり、つまり縦のネットです、縦のネットを持ちながら、もう一つは横のネットとい うことで、児童相談所とか保健センターとかさまざまな機関と横につながれている。こ んなイメージを描きながらお話を伺っておりましたが、勿論、皆さん方によってどうい うふうに思っていらっしゃるかは違うと思いますので、そんなことをちょっと感じまし た。 ○岩男部会長  ありがとうございました。これからの議論に非常に役に立つ整理をしていただきまし た。他にもいろんな御意見があると思いますので、これをたたき台に使わせていただけ ればと思います。  阿藤委員、お願いいたします。 ○阿藤委員  私のは余りこれからの議論に役に立つかわかりませんけれども、伺っていて、要する にこの場を専業主婦対就業主婦の論争とか、あるいは昔のアグネス論争とか、そういう 場にはなるべくしたくはないなと思います。これはしかし私自身も全然答えを見出だし ておりませんけれども、子どもの発達、子どものケアの問題と、やはり現代社会に置か れた、あるいは現代社会が持っているそもそものそういう子育ての社会的なニーズと、 これは先ほどもありましたように個人がこれだけ自由になって離婚が増えるとか、ある いは経済構造、産業構造そのものが変わって、女性労働のニーズが高まるとか、やはり 昔とは違うわけです。そういう社会的なニーズにやはりどこまで答えるのかという、こ の2つのジレンマというか、これをうまく調整していく社会がこれからの新しい望まし い社会ではないかと思うわけです。  ですから、欲張って言えば、子どもの保育の質そのものを十分確保しながら、しかし 社会的なニーズに答えていく。その中のいろんなバラエティーの1つとしては総合施設 があるのだということで、やはりどなたかからもありましたように、育児休業制度そし て保育・幼稚園、こういった総合施設全体としてやはり視野に入れながら、余りどちら かに偏った議論にならない方が私はいいのではないかと、こういうふうに思っておりま す。 ○岩男部会長  それでは、特段の御発言がなければ、これで本日の自由討議は一応おしまいにさせて いただきまして、大変貴重な御意見をいただきましたので、これを次回からの議論のベ ースにさせていただきたいと思います。  それで事務局の方から御説明があるというふうに承知しておりますので、お願いいた します。 ○中村総務課長  では、次回以降の日程につきまして、お話をさせていただきます。先ほど文科省の幼 児教育部会との合同的な検討というお話もさせていただきましたけれども、そういうこ とも少し勘案をさせていただきまして、あらかじめ先生方の御都合もお伺いした上で、 3回ほど日程を決めさせていただいておりますので、よろしくお願いいたします。 次 は3月29日月曜日でございますが、13時から15時まで、それから4月に入りまして、9 日金曜日14時から17時まで3時間ほどお願いいたします。それから4月はもう1回23日 金曜日10時から12時までということで決めさせていただいております。場所につきまし てはまた追って御連絡をしたいと思いますが、よろしくお願いをいたします。  それから、次回以降の、つまり3月の29日と4月9日でございますが、この2回につ きましては、保育あるいは幼児教育の専門家の方、それから幼稚園を経営されている 方、あるいは自治体の関係者などからヒアリングを行うということで、そのヒアリング を中心に進めたいと思っております。具体的にどういう方からお話をお伺いするかとい う点につきましては、また部会長ともよく御相談をしながら進めさせていただきたいと 思っておりますので、よろしくお願いいたします。 ○岩男部会長  先ほどの日程につきましては、また改めて御連絡が行くというふうに理解してよろ しゅうございますか。 ○中村総務課長  はい。 ○岩男部会長  それではお忙しい先生方ですけれども、一応日にちを確保していただいて、引き続き お忙しいと思いますが、立て続けにございますけれども、議論に是非お繰り合わせの上 御参加いただきたいと思います。  本日は大変お忙しい中を貴重な御意見いただきましてありがとうございました。 (照会先) 雇用均等・児童家庭局総務課 03−5253−1111(内線7825)