03/11/25 薬事・食品衛生審議会医療材料部会 平成15年11月25日議事録 薬事・食品衛生審議会 医療材料部会 議事録 1.日時及び場所   平成15年11月25日(火) 16:40〜   浜松町東京會舘 チェリールーム 2.出席委員(9名)五十音順   小  田   豊、 川 田 志 朗、 倉  田   毅、 田 野 保 雄、  ◎土 屋 利 江、 新 田 澄 郎、○長谷川 紘 司、 松 村 英 雄、 山 口 照 英 (注) ◎部会長 ○部会長代理   欠席委員(8名) 北  畠   顕、 北 村 惣一郎、 櫻 井 秀 也、 勝  呂   徹、 武 谷 雄 二、 橋 本 信 夫、 橋 本 久 邦、 松 田 武 久 3.行政機関出席者   鶴 田 康 則(大臣官房審議官)、 岸 田 修 一(審査管理課長)、   北 條 泰 輔(医療機器審査管理官)、 豊  島   聰(審査センター長)他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ── これより医療材料部会 ── ○医療機器審査管理官 それでは医療材料部会の方に入らせていただきたいと思いま す。以後の進行を土屋先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○土屋部会長 それでは議事に入ります前に、まず資料の確認と資料作成に関与された 委員の報告を行ってください。 ○事務局 それでは資料の確認をさせていただきます。資料7があらかじめお送りさせ ていただいたものでございまして、医療用具パーフルオロンの生物由来製品又は特定生 物由来製品の指定の要否、輸入承認の可否及び再審査期間の指定についてという資料で ございます。資料8が医療材料部会報告品目でございます。資料9が再審査の結果につ いてでございます。次に本日の審議品目の資料作成に関与された委員ですが、該当され る方はいらっしゃいません。以上でございます。 ○土屋部会長 それでは次に資料7の議題に入ります。まず、医療用具パーフルオロン の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、輸入承認の可否及び再審査期間の 指定について、審査センターから報告をお願いします。その後報告事項として医療用具 の承認の18件です。それでは審議に入ります。議題1について、審査センターの方から 審査報告書に基づく審査概要の説明をお願いします。 ── スライドによる説明 ── ○事務局 審査センターより御説明申し上げます。資料7になります。スライドを御準 備いたしましたので御覧ください。本品の審査においては、医薬品医療機器審査センタ ー審査第四部での審査に当たり、御覧のように小口委員、金井委員、田野委員、土屋委 員、寺崎委員の5名の専門委員の御意見を頂きました。  本品の外観写真をお示しいたします。本日は見本を御用意いたしましたので御覧くだ さい。本品は網膜硝子体手術において、剥離した網膜を物理的に伸展・復位させるため に用いられる眼科用手術材料であり、手術終了後にはすべて除去されるものであります。  剥離した網膜が伸展・復位される原理について御説明いたします。針を用いてパーフ ルオロンを視神経乳頭上に滴下いたしまして、網膜を後極から前方に向かって伸展させ ます。網膜下液は前方へ圧排され周辺裂孔から置換されます。パーフルオロンを最後部 裂孔縁まで注入し、剥離した網膜を伸展いたします。パーフルオロンのバブルを通して 伸展された網膜の縁に沿って眼内光凝固を行います。そして網膜固定治療の後、液-空気 置換を行いパーフルオロンを除去いたします。この手術の後、適切な代用硝子体を使用 いたします。  本品は2003年4月現在、米国、EUを含め世界27か国において承認されております。 ただし、EUは1か国として計上しております。海外で市販後に発現した不具合として、 本品の起因が疑われた1例が報告されており、術後視力が指数弁であったとされており ます。  物理的化学的試験として、性状、赤外吸収スペクトル、紫外吸収スペクトル、19F-核 磁気共鳴スペクトル、1H-核磁気共鳴スペクトル、質量スペクトル、その他物理的化学 的性質に関して実施されておりまして、パーフルオロ-n-オクタンの物性が示されてお りました。  本品には御覧のとおりの規格及び試験方法が設定されており、すべて試験に適合する ことを確認し了承しております。  本品には御覧のとおりの安定性試験が実施されており、いずれも設定された規格など に適合していたことを確認しております。これらの結果より使用期限を室温で3年間と 設定しており、審査センターはこれを了承いたしました。  生物学的安全性試験は、パーフルオロン及び包装に用いられるゴム栓について実施さ れております。パーフルオロンについては細胞毒性試験、皮膚感作性試験、刺激性試験 として眼球内暴露試験が、ゴム栓については急性全身毒性試験、発熱性物質試験、溶血 性試験が実施されておりますが、いずれも陰性でありました。また、「培養細胞を用い たコロニー形成阻害試験(間接接触法)」は陰性でありましたが、本品は水より比重が重 いため、細胞毒性物質が存在した場合細胞へ到達していない可能性が考えられましたの で、参考資料として開発者であるInfinitech社の試験報告書の提出を求めました。これ に対し硝子体内注射試験の試験報告書及び文献が提出され、ウサギの硝子体内に本品を 48時間埋植した場合でも網膜に有害反応が認められなかったという報告があることか ら、本品は安全であるとの回答があり、これを了承いたしました。  本品の性能を裏付ける試験といたしまして、パーフルオロンの密度、屈折率、動粘度、 蒸気圧、可視・紫外吸収の各試験が実施されておりました。これらの試験結果より、網 膜硝子体手術に際して剥離した網膜を物理的に伸展・復位させるに足る物性であること が示されておりました。  本品の臨床試験としては米国の2施設で行われ、試験成績が提出されました。本試験 はオープン試験であり、観察期間は3か月、症例数は68例でありました。有効性評価項 目と安全性評価項目は御覧のとおりでございます。  急性解剖学的成功及び後部網膜切開術の有無の結果をスライドにお示しいたします。 急性解剖学的成功とは術中における網膜の完全平坦化のことを指しており、完全な平坦 化が認められないものは解剖学的復位の失敗といたしました。  医師評価は有効性、経験的比較評価の二点について、手術終了後に試験担当医師によ り各症例ごとに評価が行われました。再剥離と視力の結果についてスライドにお示しい たしました。再剥離については手術終了時に網膜の完全平坦化が認められた61例で算出 いたしております。  術後の眼状態、角膜浮腫、房水細胞及び房水フレア、術後白内障の結果は御覧のとお りでございます。眼圧、術中の網膜の滑り、パーフルオロンの網膜下迷入及び残留の結 果は御覧のとおりでございます。  手術後90日までの観察期間中に、パーフルオロンの使用と関連性のある有害事象は1 例1件認められました。これは術後硝子体腔に本品の残留が認められ、除去のため外科 的処置が行われました。また、本品との関連性のない有害事象は、眼で35例74件、眼 以外で19例23件認められ、一部治療を必要とした事象もありましたが、試験中止には 至りませんでした。 本品と類似の骨格を有する化合物であるパーフルオロハイドロカーボンについては、 平成13年11月13日付け医薬安発第151号安全対策課長通知「中空糸型透析器等の自主 点検について」において、米国で透析患者の死亡(平成13年11月12日現在56例)が報 告されておりまして、「中空糸型透析器の製造工程においてリークテスト時に使用した パーフルオロハイドロカーボン(PF5070)が十分除去されなかったことが原因である可能 性が高いこと、並びに当該物質及びこの類縁物質は、気化しやすい性質を有しており、 血管内に投与することにより肺塞栓症を引き起こす可能性がある」旨記載されておりま したことから、審査センターは本品が血管内に入るリスクについて確認するよう求めま した。  これに対して申請者は、本品は硝子体手術時に使用した場合蒸気圧が低く血管内に気 泡を形成する可能性が極めて低いこと、市販後調査による肺塞栓症との関連性を疑わせ る不具合は報告されていないことなどから、肺塞栓症のリスクは極めて低く、有用性を 考慮するとそのリスクは許容できる範囲内であるとの回答を得ました。しかし、申請者 からはこの回答とは別に、類似化合物の血管内流入による肺塞栓症発生の可能性が報告 されていることに関しては、本申請品目の添付文書の「警告」欄にその旨を記載し情報 提供を行うとの回答を得ておりまして、審査センターはこれを了承いたしました。  審査センターでは提出された申請内容について以上のとおり審査した結果、「性能、 使用目的、効能又は効果」の欄の使用目的をスライドにお示ししたとおりとし、承認し て差し支えないと判断いたしました。また、再審査に関しては3年間の調査を実施する ことが必要であると考えております。さらに、生物由来製品又は特定生物由来製品につ いては非該当と判断いたしました。  勝呂先生より、残留したものがどのように吸収されるのかという御質問を頂きました。 本品は網膜剥離の患者における網膜硝子体手術の際に使われ、手術終了時に除去される ものであります。臨床試験において68例中7例に残留が認められましたが、視力、眼圧、 眼状態、再手術の有無等は、残留が認められなかった症例と類似しており、眼合併症も 認められておりませんでした。現時点では眼内に残留するパーフルオロ-n-オクタンの 小滴が吸収されるか、あるいは取り除かれるかに関する報告は存在しておりませんが、 少量のパーフルオロ-n-オクタンが6か月残留したウサギ眼において、網膜前方のマク ロファージが油状の小滴を含有していたとの論文報告がなされております。このことか ら眼内に残留したパーフルオロンは、マクロファージにより貪食された後に網内系によ り取り除かれる可能性が考えられます。  鎌倉先生、北畠先生よりは、特にコメントがないという御意見をちょうだいしており ます。許先生よりは、特に問題ないと考えられますという御意見をちょうだいいたしま した。  田野先生より、眼科領域で強く求められる品目であり、既に世界中で膨大な臨床試験 があり、本邦での早急な承認が望まれますという御意見をちょうだいしました。  そのほか、専門協議に御参加いただいた金井先生より書面にてコメントを頂いており ますので、読み上げさせていただきます。外傷性網膜剥離、巨大網膜裂孔や糖尿病など により、増殖性硝子体網膜症に対する硝子体手術の際、タンポナーデ効果のある物質を 硝子体腔内に注入して剥離した網膜を復位させる必要がありますが、我が国ではこれま で未承認物質が使用されていました。パーフルオロンの使用は上記疾患の手術成績を向 上させることが期待できる手術材料と思います。パーフルオロハイドロカーボン及びそ の類縁物質の血管内投与により肺塞栓症を発症した報告がありますが、本申請物質は硝 子体腔内に一時的に入れ、術終了時に除去するために眼内に残らないこと、本物質は気 化しにくく解剖学的にも硝子体腔内に注入しても網膜組織内の血管に入ることは考えづ らいと思います。しかし、増殖性硝子体網膜症では手術中網膜組織内の新生血管から出 血することがあるので、止血を確認してから本物質を注入するように、添付文書中に注 意喚起をすることが必要ではないかと思います。以上のようなコメントを頂きました。  こちらからは以上でございます。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○土屋部会長 どうもありがとうございます。それではただいまの説明に対しましてコ メント等ございませんでしょうか。ハイドロフルオロカーボンというのは透析器で事故 があって数十名の方が亡くなられたのですが、この化合物はすべてフッ素で置換されて いまして、このフッ素のところが一部水素になっていたり、あるいはフッ素が抜けて二 重結合になっていると毒性物質になるということが知られています。ですから、純度の 点が非常に重要であるということ。それから眼の中に入れるものですので、粒子のよう なものがあるとそれが眼圧の昂進につながるということが知られています。ですからそ ういった粒子がないと。それらについてはすべて検査されておりまして、臨床的にも非 常にいい成績であるということが本品目の内容であります。どうぞ。 ○川田委員 今のお話で不具合といいますか、添付書ですけれども、透析器のいわゆる 漏れ試験に使ってそれが残留し、これは体内循環といいますか、血液を循環させる装置 で当然流血の中に入るわけで、こういうものといわゆる充てん物といいますか、一時的 な剥離のためにそれを除去するもので、全然的外れな比較のような気もするのです。確 かに血管内に間違って投与すればこれに限らずかなりのものが…、造影剤の一部でもそ うですし、そのようなことを言い出したら切りがないような気もするので、こういう対 照の仕方が表現として本当にいいのかどうか、ちょっと疑問に思ったのです。 ○土屋部会長 審査センターの方で何かございますか。 ○事務局 恐らく川田先生から御指摘いただいたのは添付文書の件ではないかと思うの ですが、添付文書においては必要な情報は知っている以上できるだけ開示していくとい う基本的なスタンスにのっとって記載させていただいております。そのために、お手元 の資料でインデックスに「添付文書(案)」と書いているところがございますが、通しの ページで14ページになりますけれども、その「警告」の(2)として記載しておりまして、 この物質そのものではないということははっきりと分かるようにはさせていただいてお ります。血管内投与については一般的に危険性が否定できるところではありませんので、 そのような書き方にさせていただいたということでございます。  それから、通常で行けばきちんと止血をするということが重要だと思いますので、15 ページの「使用上の注意」に「1.重要な基本的注意」がございますが、その(1)で「眼 内にて多量の出血が認められる場合には、止血を確認した上で本材を使用すること」と いう形で記載させていただいております。以上です。 ○土屋部会長 よろしいでしょうか。そのほかにございますか。 ○田野委員 ただいまの件ですけれども、添付文書にこういう警告を書いていただいて も実際上大きな問題はないかもしれませんが、確かにこれは見当違いでございまして、 この手術において血管内に迷入することはちょっと考えられないということがまず第一 点。  □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□。私は余り詳しくはないのですけれども、実際に肺の方の治療 でこれが用いられることもございますし、生体に対しては非常にバイオコンパチビリテ ィーが高い物質でもあります。仮に手術中に非常に大量の出血が起こったとしても、誤 って血管内に入ることは考えられませんので、それについても全く問題ないだろうと考 えます。  一番大きな問題は網膜下の迷入でございますが、これもごく少量ですけれども、1年 近く迷入された状態のものを抜去してその部分の暗点が消失したという報告もございま すので、それに関しても生体適合性あるいは安全性が非常に高い物質であることを併せ て申し上げたいと思います。 ○土屋部会長 審査センターの方からコメントはございますか。御意見として、「本材 はパーフルオロハイドロカーボン(PF5070)の類縁物質であるため、血管内投与しないこ と」というところが不要であるということなのでしょうか。確かにいわゆる類縁物質は 炭素とフッ素から成っているという意味で、パーフルオロは更に水素が入っているわけ ですが、そういう意味では類縁物質ではありますけれども、全く血管内には…、片方は 人工血液として開発されたようなものであり、片方は正しく反応的に見て危ないと。こ れはリークテストに使われて、そういう本来は使わない方法をたまたましたために大き な事故が起きたわけですけれども、それは「再使用禁止」のところの「警告」欄から除 いていただきたいということなのでしょうか。 ○田野委員 ですから、これは別にそのまま置いていただいてもいいのですけれども、 少し妙な記載が残るということだけでございます。 ○土屋部会長 それではいろいろな使用者の方がおられると思いますので、そこは誤解 されないように少し修正して承認していただくということでよろしいでしょうか。再度 メーカーの方に少し訂正していただくと。 ○医療機器審査管理官 多分情報として入れる場所がこの冒頭にあることにより、非常 に違和感があるのではないかと思いますので、適切な場所に移し替えるとか、安全対策 課などと少し検討してみたいと思います。 ○土屋部会長 分かりました。そのほかにコメントはございますでしょうか。ございま せんようでしたら、この品目自体は非常に優れたものでありますので、承認ということ でよろしいでしょうか。では、承認ということで薬事分科会に報告させていただきます。 それでは次に報告事項の方をお願いします。 ○事務局 それでは審査センターより御報告させていただきます。資料8、9を御覧い ただきたいと思います。こちらは平成15年8月1日〜平成15年10月31日までの間に、 資料8については医療材料部会関係品目として、専門協議の方で御審議いただいて承認 させていただいたものでございます。先ほど冒頭で部会長から18品目というお話がござ いましたが、資料の見方といいますか、数え方が難しゅうございまして、20品目でござ います。同じ類別のものを二つ書いているところがありますので、訂正させていただき たいと思います。  次に資料9につきましては、同じく専門協議の結果一部変更する必要はないというこ とで、再審査の御報告をさせていただいたものでございます。こちらはすべてステント で5品目ございます。資料8、9共に、個々の製品の内容については御説明を省略させ ていただきますが、何かございましたら後ほどまた事務局の方に御連絡をお願いしたい と思います。よろしくお願いいたします。 ○土屋部会長 それでは今の報告事項につきまして御意見等ございますでしょうか。ど うぞ。 ○小田委員 質問なのですけれども、2ページの上から四番目のいわゆる「他に分類さ れない歯科材料(支台築造用ポスト)」で「ファイバーコア ポスト システム」というも のが承認されたのですが、海外製品がたくさん使われております。日本ではようやくこ の秋になって市販されるようになった、承認されたという形です。これはかなり個人輸 入して使われている現状にあるのですけれども、ほかにも承認申請が出ているのでしょ うか。 ○土屋部会長 審査センターいかがでしょうか。 ○事務局 私ども今すべての品目を把握しているわけではございませんで、後日調べま して先生の方に御回答申し上げたいと思います。 ○土屋部会長 そのほかにございませんでしょうか。それでは審議事項と報告事項は以 上で終わらせていただきまして、何か連絡、それから今後の日程等についてお願いしま す。 ○医療機器審査管理官 特にございません。また品目が出てまいりましたら、その都度 調整させていただきたいと思います。 ○土屋部会長 今後また連絡していただくということで。 ○医療機器審査管理官 ただ、先ほど合同部会の一番最初に御説明申し上げたように、 今後第三者認証基準に係るものが常時出てくるということになりますので、そういう意 味では3か月に1回は必ず開催させていただくことになると思います。 ○土屋部会長 ということで、また今後とも御協力のほどよろしくお願いいたします。 以上で医療材料部会を終了いたします。どうもありがとうございました。 ( 了  ) 連絡先: 医薬食品局 医療機器審査管理室 室長補佐 束野(内線2912) - 1 -