03/11/20 第6回社会保障審議会介護保険部会議事録          社会保障審議会 第6回介護保険部会議事録 1 日時及び場所    平成15年11月20日(木) 17時から19時    東条インペリアルパレス 2 出席委員    貝塚、上田、青井、市川、漆原、小川、木村、見坊、潮谷、下村、田近、永島、    中村、秦、花井、矢野、山崎、喜多、京極、山本の各委員    大村委員は欠席 3 議題  (1)保険者の在り方  (2)給付の在り方 ○ 山崎総務課長より、委員の交代について報告。 ○ 渡辺企画官より、資料2、資料3及び資料4に沿って説明。 (喜多委員)  全国市長会では、今、介護保険の担当から外れる気持ちは毛頭なく、保険者でいるこ とに反対する気持ちはない。ただ、このままでは国民健康保険の二の舞になる。それは 絶対に避けたいので、いろいろ申し上げている。したがって、施行当初、国が約束した 国や都道府県が重層的に支える立場から、保険者を支えてもらわなければやっていけな いことは、御理解いただけるものと思っている。  北河内地区では7市・連合会が隣り合わせているが、保険料に微妙な差がある。厚生 労働省の説明では、人口や高齢化率はあまり保険料に関係ないとのことだが、実際は10 円、20円の差でも住民が受ける感覚には高低がある。狭い区域で保険料を計算すれば、 そういう不公平感が市民の間に出る。したがって、保険者の在り方は、もっと広域的に 考える必要がある。特に、調整交付金が少なくなると、1号被保険者はよその人のため に保険料が何百円か高くなる。そういう現状を無視して続けられるのかどうか考えてい ただきたい。  介護報酬の支払いを市町村がチェックすることになれば、国民健康保険の支払いを市 町村が苦労しながら二重チェックしているのと同じことになり人件費や経費がかかる。 保険料の決定も、市町村が政治的に上げ下げしない限り、実際はどこも同じ計算表でや る。それが果たして保険者権能なのか。  10年経てば保険料が倍以上になるが、国民や国は負担できるのか。当初から申し上げ ているが回答がない。私はノーだと思っている。国も都道府県も市町村も今の倍になれ ば、税制や財源が変わらない限り、とても負担には耐えられない。そうすれば、給付を どうコントロールするかの問題であり、保険者でなく制度をつくる側の責任ではない か。  要介護1は、在宅では16万5,800円だが、特養に入れば27万3,600円、老人保健施設に 入れば31万7,600円が保険から出ていく。サービスの選択は本人に委ねられており、保 険者はチェックできないので、保険者があわててお金を調達する事態になる。要介護度 によって支払う額を同じにして、きっちりけじめをつける必要がある。  市民税非課税者が低所得者と扱われているが、現行は75.9%が該当している。4分の 3が低所得者で保険制度が成り立つのかどうかを考えいただきたい。保険料の計算も、 個人とするか世帯とするのかすっきりさせないと給付にも影響してくる。  グループホームの指定は市町村が意見書を提出できるとあるが、市町村の介護保険事 業計画の外で行われているが現実であり、民間が自己財源で整備した場合、市町村はま ず断れない。これをどうチェックするのか厚生労働省が示す必要があるのではないか。  利用者の認定も、例えば守口市がアウトと言って隣の市がイエスと言ったらどうなる か。全国どこでも同じような感覚でできる制度にしなければならない。市長会は逃げる とは言っていない。やると言っているので、そういうことも含めて議論いただきたい。 (山本委員)  介護保険では、町村は調査権や認可権が一切なく、保険料を集めて払うだけ。だか ら、市長会は逃げないと言ったが、私は町村が責任を負わなくていいなら一番先にやめ たい。  私は72の市町村で広域連合を福岡県でつくって運営しているが、スケールメリットは 出ており、数字で現れている。  制度を実施する立場から言えば、入口が非常に無理になっている。要介護認定は、調 査員の調査結果をコンピュータに入れると出るようになっており、審査委員会はその結 果を見ただけで認定しているのが実態。ところが、そうして認定した数値に基づきケア マネジャーがマネジメントしている。ケアマネジャーが公平公正な立場であればいい が、ほとんどはサービス事業体に専任になっており、人情として自分の所属施設に偏 り、公正なケアプランができない。ケアマネジャーを独立させなければいけない。  最初の要介護認定は、本人の申請ではなく、業者が掘り起こしているのが実態。認定 だけ受けておけばいつでも介護を受けられるということで、65歳以上のほとんどが認定 を受けている市町村もある。入口からきちんとした制度を作らなければ、65歳になった らどんどん介護に行くということになりかねない。このままでは介護保険はやっていけ なくなる時期がくる。これは適正な制度の運用とはいえないので、十分検討願いたい。  保険者には、マネジメントがきちんとされているかどうかを調査する方途がない。国 保の場合は各市町村がレセプトを点検しており、専門家でなくてもレセプトを月ごとに 比べたり回を重ねることで知識が高まり、チェックできるようになる。しかし、レセプ トのようなものがちゃんとあればチェックする方法もあるが、介護保険にはそれがな い。  出口にも問題がある。一定期間後に、介護がさらに必要かどうかをチェックすること が保険者はできない。調査員とケアマネジャーしか分からない。このため、保険者に調 査権を持たせることが必要であり、是非検討いただきたい。  サービス事業体を評価する第三者評価委員会のようなものが欲しい。県に1つでいい が、定期的に検査、調査し、適正で公平なサービスを行っているかどうかを点数で評価 するシステムを作ることが必要である。評価が一番大事であり、考える必要がある。  生活保護者に対しては、医療保険はすべて生活保護費で払っているが、介護保険は一 番低い保険料を生活保護費で払い、介護の費用はすべて保険料から払っている。これは 間違っている。小さな町が決して保険料が高いとは言えないとの説明があったが、実態 は生活保護者がたくさんいるところは貧乏で保険料が高い。  施設がきちんとやっているのかどうかが分からないので、保険者に調査権を与えるこ とが必要である。  療養型病床群は医療である。医療は医療できちんとやって、医療を切って介護に持っ てくるべき。医療を併用しなければならない人は、あくまでも特例であり原則ではな い。介護と医療を重複で受けさせているのは間違っている。十分考えて欲しい。  7月に出した意見書も十分検討して欲しい。町村は辞めることができるなら喜んで辞 めさせていただく。今のまま進めばこの制度は必ず破綻する。だから考えて欲しい。 (喜多委員)  市長会は、改善していただくのであれば保険者から逃げるという気持ちはない、とい うことを申し上げたわけで、改善されなかったら山本委員と同じ方向にいくと思いま す。 (秦委員)  利用者の立場からお話したい。私は健康に自信があったが、5年半前に脳梗塞になり 生死の境をさまよった。考えてみれば、ここにいる皆さんの10人に1人は10年後には介 護保険のお世話になるのではないか。最終的には100%の人が亡くなるので、ターミナ ルケアも十分に考えて欲しい。  私は市の小さなコミュニティバスに乗ってきた。これは自治体が補助してやってお り、非常に使われている。JRでもバリアフリー化が急速に進み、かなり段差のないと ころを来られた。介護予防を考えて、国交省も含めて移動の自由をよく考えて欲しい。  第4回にケアマネジャーの議論があったが、私の周りにいる人は50時間、60時間働い ている。働いていない人も含めた平均値のマジックに踊らされて、突っ込んだ議論がで きなかった。勤務時間の平均値のデータ、分布でもいいので出して欲しい。 (潮谷委員)  介護保険が高齢者の介護ニーズのすべてを賄う性格のものなのかどうかを明確にしな ければならない。特に、これだけテンポが早く超高齢社会に動いているので、高齢者の 生きがいを支えていく施策を、介護保険とともに、住民レベル、自治体、企業という幅 広い観点から工夫して支えていく視点も大事になる。  県が保険者を担う形になると、住民ニーズから遠い形になるので、保険者は市町村で あることが望ましい。ただ、その前提条件の中に、山本委員、喜多委員の指摘をしっか り考えることも大事である。住民の意思の中で自己決定し、自己選択していく大きな分 権社会の流れがあるので、地方分権の観点からも論議することが大事だと思っている。  保険者の規模拡大と保険財政の安定性の観点から論ずることも大事だが、国におい て、高齢者保健福祉を推進するための行政基盤の強化を今後どのように展開するか整理 されねばならない。  熊本県の状態について分析したところ、保険料額や財政安定化基金の借入状況と市町 村の規模は、明確な相関関係は見られなかった。むしろ、人口規模が小さい町村は過疎 地域であり、サービス事業者の参入が進みにくいため保険料は安くなる傾向がある。ま た、人口規模が小さい町村は、第1号被保険者数が少ないなどの状況から給付費の伸び の影響を大きく受けることも明らかになっている。保険者の規模は、保険料を決定づけ るのではなく、給付費の増に伴う保険料の変動の幅、安定性に影響があると言える。  基盤整備でもっと幅広い観点でマンパワーを活用していくことも、行政や国に課せら れている役割であるので、そうした考察も積極的にやっていかなければならない。  秦委員の言うとおり、外出は生きがいを持って日常生活を営むために必要不可欠なも のと認識している。要援護の高齢者、障害者への外出支援は、生きがいと同時に介護予 防、日常生活の支援という点で大切である。介護保険制度の中でやっていく必要がある 部分とそうでない部分を明確に区分していく必要がある。是非検討していただきたい。  外出介護は、通院だけでなく趣味や社会参加の外出でも利用できるようにして欲しい との要望がある。自分は、要望を受けたとき介護保険では厳しいのではないかというよ うな答えをしたが、その後、外国の事例で健康維持や介護予防に非常に有効という側面 から、自由度の中で何%あるいは何点という形で保障し、どう使うかは個人の選択とい う制度があることも見つけた。その意味で、方法論で克服できる要素があるのではない か。 (下村委員)  保険者の問題は、医療保険でも議論しており、都道府県という議論が出ている。医療 保険と介護保険は全く別の体系でいくのか、ある程度整合性を持っていくのか、考えて おく必要があるのではないか。  2号保険料には市長も町長も余り関心がないが、誰が決定するのかもはっきりしてい ないので、不満をどこへ言えばいいのかも分からず、法律的にも問題があると思ってい る。2号被保険者は、保険料は一方的に賦課されるが、被保険者証もなく、給付と関連 していることもあまりない。非常に問題のある存在と思っている。  市町村が事業者を指定する仕組みは、ドイツでは全く効果がなかった。問題点の考え 方として整理するのはいいが、提案するならばこれが機能するという証明が要ると思 う。  痴呆については、そもそもどこに行ったらいいのかが分からないところがある。痴呆 の程度に応じてどこで処遇が考えてもらえるのか、という基本的な考え方を明確に打ち 出す必要がある。是非考えていただきたい。 (喜多委員)  市町村が2号保険料に関心ないということは決してない。国保と一緒に取ることで収 納率が悪くなっており、何とかしてもらいたいと思っている。 (中村委員)  給付の在り方を、抜本的に考え直さなくてはいけない。要介護度認定基準は、介護の 手間を表す物差しとして時間という形で決まった。また、秦委員の発言からもあったよ うに、介護の現場で一番重要になっているのがターミナルケアである。施行して3年半 が経ち、死亡場所が病院から施設へ、自宅はごく少数になっている。それを考えれば、 死への対応が介護保険の生命線だと思う。特養ホームでは、8割強の入所者が看取り、 終末ケアを希望している。  特養ホームでの重度化は、施行時の3.23が平成15年4月には3.55になった。施設内死 亡者も大きく増加しており、これらの状況も的確に把握しなくてはならない。  特養ホームの配置医師については、平成12年3月31日に改正通知が出ているが、ター ミナルケアに取り組むための体制にない。医療的行為、終末期リハビリ、医療、死亡診 断書、緩和ケア、そうした問題が出てきている。ターミナルケアに取り組む為には配置 基準のグレードアップが必要であり、ターミナルケアに値する報酬改定も必要となる。 要介護認定基準を一度抜本的に見直さなければいけない。  特養ホームに入所した場合の保険料への影響額の資料があるが、3施設のうち特養だ けが提示されており理解できない。出すなら3施設出して欲しかった。 (田近委員)  保険者問題で欠けている視点は、市町村がプレイヤーであり、サービスのプロバイダ ーでもあることである。市町村が業者の参入をブロックしている事実があることは公正 取引委員会でも報告されている。全体を公平に見る必要があり、その実態を表す資料を 提供してもらいたい。  喜多委員の資料では、介護報酬の審査は、市町村の委託により連合会が行うが、事実 上委託せざるを得ないとあるが、なぜ保険者が自分の払うお金に対するチェックが十分 できないのか、どうして難しいのか、その事情を教えて欲しい。 (山崎委員)  給付の在り方については、要介護度別の支給限度額や在宅と施設など総論的に議論す ることがまずあるのではないか。  痴呆のケアについては、グループホームのみが提案されているが、現状は精神病院や 医療施設にもたくさん入院している。介護保険の施設がない場合、精神科の病棟に入っ ている痴呆患者が結構多いのではないか。13年6月現在では、精神病院入院患者33万人 のうちアルツハイマー病の痴呆が1万4,275人、脳血管性の痴呆が2万1,954人なので、合 わせると3万6,000人になる。入院患者の10人に1人は痴呆の疾患ということになる。  患者や家族の話を聞くと、老人性痴呆疾患療養病棟のうち介護保険施設でない病床で は身体拘束や薬による拘束もあるとのことである。これらの各種病棟のことも、是非一 度このテーブルに載せいただいてはどうか。  グループホームも3,500施設、約4万2,000人がいるが、そのケアもこれでいいのかと いう見直しをしたいと思う。  弱小町村の話があったが、町村部にサービスが行き渡っているとは考えにくいので、 ゴールドプラン21の進捗状況について数字を出して欲しい。 (永島委員)  家族が介護をしていて、これは要介護なるのではないかというときに、相談する窓口 が分からなくなってきている。市町村の高齢者の担当に行くと、では介護保険を使いな さい。介護保険のところに行くと、では申請してケアマネジャーに相談しなさいと、そ ういうルートになっている。  介護保険施行前は、保健センターが、保健師が地域の状況を知っているので、施設で あればこういうところ医者であればこういうところと、イロハのイから相談を受けてい た。介護保険になってからは、いきなり介護保険申請となってきていて、保健センター の窓口が引けているような気がする。私たちは相談窓口を全国的にやっているが、そこ に初歩的な相談がきている。昨日まで元気だった人が今日倒れたとか、1年前まで普通 の人が何かこの頃おかしいというときに、普通の人はいきなり介護保険まではいかな い。地域保健にどういうふうに乗ってもらうのかを工夫していただけたらいいと思う。 (潮谷委員)  痴呆の問題はきちんとやっていくべき課題にもかかわらず、痴呆介護指導者の研究・ 研修施設は全国で3か所しかない。その3か所で研修した方々が伝達講習をやってい る。国はこういったものを全国にもっとたくさん置く。制度改正の手前のところでも、 もっとやっていかなければならない課題があると思うので、是非もっとしっかり取組を していただきたい。  相談の受け皿をどのように考えていくかは、その地域の行政の責任である。熊本県の 場合、子育て・介護支援推進課をつくり、ここでワンストップサービスをしている。こ こに行けば、いろいろな相談を受け、社会資源も含めて対応するシステムをつくってい る。 (小川委員)  保険者は、利用者により近いところにあるのが望ましい。神奈川県のケアマネジャー の実態調査結果では、認定調査の業務は保険者が行う方がいいとしている。事業者の抱 え込みやニーズの掘り起こしはいいが、使わせるための掘り起こしは別な問題である。  ケアマネジャーが、どこかの事業所に付随した存在ではなく、自立した事業者として 存在するようにということは、調査結果でも強く出ている。  事業者や報酬の決定は難しいにしても、保険者の権限が少な過ぎるのは利用側、事業 者としても非常に問題である。日常的には保険者と一番やり取りをしており、そこに決 定権がないので、サービス評価、監査権、指導権は、かなり保険者に委譲すべきではな いか。  在宅と施設の単位の格差に矛盾がある。療養型、老健に入るのが必要な方が、価格か ら特養を選ぶのは間違っている。必要なサービスからどういうサービスを選ぶかが重要 であり、在宅と施設の格差をどういうふうにするかを議論しなければいけない。  介護保険で担うべき事業が、食事サービス、移送サービスなど要求がどんどん広がっ ているが、それらを全て介護保険に突っ込んでいいのかというと、それはまた論外であ る。むしろ、介護保険ですべてが終わると思ってしまった制度導入時点にそもそも問題 があるのであって、市町村あるいは県の福祉施策にかなり怠慢があったのではないか。  それが永島委員のお話にあった相談機能すらケアマネジャーにすべて任せる形にな り、いつの間にか在宅介護支援センターの方向が見えなくなってしまった。オーバーワ ークになって、やはり在宅支援センターでやるべきという話が出てきながら、未だに制 度は混沌として整理されていない。在宅介護支援センターの方向性も含めて出していた だきたい。 (漆原委員)  施設の受給率が保険料に非常に跳ね返る。  世論調査では、自宅で介護を受けたい人が45%で、自分の身内を自分たちで看たい人 が60%いる。実際に要介護の人を抱えるようになっても同じ気持ちでいられるようにす るのが、介護保険の最大の目的だと思う。自分の経験では、特に施設を希望する人は、 疲れ切って精神的な余力をなくして希望する人が多い。世論調査の結果をずっと続けら れるような方向をまず考えるべきであり、それが何なのかが課題だと思う。  現実には、物理的なものよりも、人に介護を受ける負担感や余裕のなさなど、精神 的、心理的な要因で、介護を受けたい、提供したいという気持ちをなくしていくのだと 思う。その意味で、在宅介護には、物理的に時間や物を提供しても解決しない部分がど うしても残る。ショートステイなどのガス抜き的なものがどうしても必要になる。  在宅サービスに位置づけられる施設類似サービスも、入所者は施設サービスの一つと して選んでいることを考えれば、施設指向が進んでいることはまぎれもない事実。した がって、ただ施設を整備すればいいということではなく、今ある施設資源をいかに多く の人が利用できるようにするかも考える必要がある。必要なときに施設を利用し、必要 なときに在宅を利用して、あまり施設と在宅とを仕切らない方がいい。 (青井委員)  介護を受ける人の視点で考える必要がある。介護を要する人の半分が痴呆と言われて いるが、医療も進歩しており、痴呆の重度化を予防する方法もある。医療と介護の住み 分けではなく、医療と介護が連携してやっていかなければ、介護を受ける方にとっては 不幸である。介護の世界に医療が不足していないということは絶対ないので、介護保険 制度を変えるときには、その視点を忘れずに取り入れていって欲しい。痴呆は疾患であ るので、専門の人たちがその研究を進めることの大切さ、痴呆研究の結果を取り入れな がら対応していくという姿勢を外してはいけない。 (市川委員)  掘り起こしや囲い込みと言われるが、実際に一事業所当たりで利用者が何人なのかを 調査いただきたい。昨年3月の公正取引委員会の調査報告書では、市町村が要介護認定 の調査業務を、公社や社会福祉協議会に優先的に委託することで利用者の囲い込みをす る等の不公平が目立つ、ということが指摘されている。その後改善されたとも聞いてい るが、いまだにそういう部分がある。公社や社会福祉法人は、当然、経営戦略で積極的 に利用者の獲得を目指している実態がある。保険者と関係の深い公益法人のバックアッ プもある。社会福祉法では市町村職員が社協の役員を兼務できるので、地方に行けば行 くほどいまだに実態としてもある。それが結局、市町村の財政を圧迫する要因になるの ではないか。 (木村委員)  サービス提供体制や総合相談窓口の関係があり、保健福祉サービスと介護保険サービ スを全く違うところでやるのは、利用者側から見たら混乱する。ですから保険者は市町 村であるべき。  今年度から適正化事業の中でケアプランの評価事業をやっているので、途中経過だ が、その成果を出していただき、すべての保険者にサンプリングでやらせれば、いわゆ る不適正使用などを保険者が見つけ出せるようになると思う。その結果、事業者指定の 権限は、事務的な問題などがあるので県のままでいいが、市町村が評価事業や事業者の 立入りなどでケアプランの中身を見ていけば、自ずと情報が整理されて県にフィードバ ックされ、指定取消等の流れになっていけばよいと思う。 (下村委員)  今は年金も介護も医療も全体的に厳しく、高齢者から言えば全部辛抱してくれと言っ ているようにも聞こえる。全体の問題はここでは議論できないかもしれないが、基本的 なスタンスがどうなるのかによって、今日のいろいろな問題の答えも違ってくるのでは ないか。  年金の議論の中で他制度との関連が問題になるのではないか。年金の保険料を20%ま で上げる話は、経済団体はそれだけ単独に答えは出せないと言っているようにも聞こえ る。厚生労働省は、統一的な検討や総合的な検討の必要性は認めているようだが、どう 答えるのか、非常に関心を持っている。 (京極委員)  保険者の在り方は、地域住民の立場に立って考えたときに最も身近な市町村が単位に なる。ただ、それだけでは小さな町村は大変なので、広域連合の推進が必要である。ま た、どんどん施設ができてしまって、そのしわ寄せは市町村が負う形になっているの で、もう少し市町村に権限を与えるということは当然だと思う。  生活保護者も実は地域住民である。介護保険に見習って医療保険も生活保護者を国保 の一員にして、その代わりに、ある程度財政的支援を国や県がすることが大事だと思 う。  確かに介護保険はこれからお金はかかるが、病院での濃厚な医療と比べればはるかに 安い。市町村単位でうまく活用していけば、やり方次第では問題にならないのではない か。国民の世論も今の市町村のやっていることに対して評価をしているので、あまり荷 が重たいから県だというのはいただけない議論かと思う。 (花井委員)  介護保険で担うサービスはどこまでなのかということを是非一度検討していただきた い。すべて担えるとは思っていないし、それを求めても無理だと思っている。  高齢者保健福祉計画や地域福祉計画、老人保健計画など様々な計画が国を挙げて作ら れており、市町村によって総合的に作っているところ、全くばらばらのところがある。 そういう地域の在り方を、住宅問題も含めてどうするかが基盤にあるべきだと思ってい る。  掘り起こしとは別の問題だが、お年寄り2人で暮らしていて、片方がほとんど痴呆を 抱えて寝たきりの状態でありながら、外から人を入れるのは嫌だとか、お上の世話にな りたくないという人がまだ地域にはたくさんいる。民生委員や従来から知っているホー ムヘルパーが戸を叩いても入れてくれない。極端に言えば、強制的に入っていくような ことも起こっている。そういう高齢者にどう手を差し伸べていくのか。在宅介護支援セ ンターや保健所、民生委員、ボランティアなど地域の様々な福祉のネットワークづくり を、保険者が積極的に進めていき、有期的な計画の中で介護保険が何をすべきか検討し ていただきたい。 (喜多委員)  市町村の窓口、社協の在り方については、地域差がある。守口市では高齢者福祉と介 護は一元化できるようにしている。地域の都合によって窓口の一元化を図るべきだと思 う。社協は、守口市では大分前からカットしてやっていないので、そういうことはな い。  田近委員から介護報酬のチェックがなぜできないのかという話があったが、本来、事 務局から説明いただくのがいいと思うのでお願いしたい。  生活保護の方々は、自分で払っている感覚がない。国が生活費用の75%を持つことに なっているが、約45%カットされ、その分は介護保険からお金を持っていかれる格好に なっている。この仕組みを理解すれば、医療扶助と同じように外した方がいいという結 論になる。資料があるので、次回に出したい。 (田近委員)  事業者の需要の掘り起こしがあって需要が伸びる。在宅と施設の中間的な民間サービ スが増えたのも、施設の供給は別途決まっていて、一方で需要がたくさんあったからで あり、そうやって需要に応えている。我々の需要を反映するのがマーケットであり、そ こに事業者がいる。マーケットである以上いろいろな業者があって当然であり、それに よりむしろいろいろな事情が分かる。保険者の役割は、そういう事業者のサービスをチ ェックする機能を持つことである。掘り起こしはけしからぬというのは社会主義の考え 方である。  介護保険が安い保険だというのは、本当にそうだろうか。今は保険料を5,000円近く 払い、そして1割負担で、これでも皆払いたくないと言っているわけですね。マクロで 見ても、既にこの保険は5兆円近くなっている。これを安い保険だというのは信じられ ない。 (藤木介護保険課長)  制度的な仕組みから申し上げれば、各保険者は国保連合会にその審査を委託すること ができるとなっており、実際上、国保連合会で審査している。審査にかかる情報は、保 険者にお返しする形になっており、さらに審査のチェック機能を高める観点から、現 在、国保中央会を通じて、新たなシステムの開発を現在進めている。例えば、給付が急 激に増えてきている事業者を抽出できる、ケアプランが多いような事業者を抽出する、 そういうことができるシステムの開発を現在進めている。 ※事務局より次回開催のご連絡 ※貝塚部会長より閉会の宣言 照会先  老健局総務課企画法令係  TEL03-5253-1111(3909)