03/10/24 薬事・食品衛生審議会血液事業部会(平成15年10月24日開催)議事録           薬事・食品衛生審議会 血液事業部会 議事録 1.日時及び場所   平成15年10月24日(金) 13:00〜   レベル21東京會舘スタールーム 2.出席委員(17名)五十音順   大平 勝美、 岡田 義昭、 川西  徹、 倉田  毅、   櫻井 秀也、 清水  勝、 白幡  聡、 高橋 孝喜、   田中  滋、 中村 雅美、 花井 十伍、 平澤 博之、   比留間 潔、○水柿 道直、◎溝口 秀昭、 三星  勲、   宮崎 久義   (注) ◎部会長  ○部会長代理   欠席委員(5名)五十音順   池田 康夫、 小幡 純子、 幕内 雅敏、 森 真由美、   吉澤 浩司 3.行政機関出席者   阿曽沼 慎司(医薬食品局長)、鶴田 康則(大臣官房審議官)、   吉岡 荘太郎(総務課長)、  金井 雅利(血液対策課長) 、   浦山 隆雄(血液対策企画官)、平山 佳伸(安全対策課長) 他 4.備考   本部会は、公開で開催された。 ○血液対策課長  それでは定刻になりましたので、ただいまから平成15年度第3回血液事業部会を開催 いたします。なお、本日は公開で行うこととなっておりますので、よろしくお願い申し 上げます。本日は委員数22名中15名の御出席を頂き定足数に達しましたので、薬事・食 品衛生審議会令第九条により本部会が成立したことを御報告申し上げます。  まず事務局に異動がございましたので、御紹介いたします。8月29日付けで医薬食品 局長に阿曽沼慎司が着任いたしました。部会の開催に当たりまして、新局長より一言ご あいさつ申し上げます。 ○医薬食品局長  8月29日付けで医薬食品局長に就任いたしました阿曽沼でございます。よろしくお願 いします。本日は平成15年度第3回の血液事業部会を開催させていただくわけですが、 御承知のとおり本年7月30日から「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」 が施行され、新しい血液事業がスタートしました。法律には血液製剤の安全性の向上、 国内自給を基本とする安定供給の確保、血液製剤の適正使用、公正の確保と透明性の向 上といった四つの基本的理念が掲げられております。それらに基づいて国、地方公共団 体あるいは採血事業者、血液製剤の製造・輸入販売業者、あるいは医療関係者がそれぞ れの立場で必要な責務を果たすことを求められているわけであります。血液事業部会に おいては様々な分野の方にお入りいただいているわけですが、この四つの基本的理念を 実現していくために、御意見、御提案を賜りますようお願いしているところでございま す。  また、血液事業部会自体に運営委員会が設置されましたので、血液製剤の安全性に関 する情報をできるだけ早く関係者が共有・評価するという仕組みもできました。そうい う意味では、血液製剤の安全性の向上に大きな役割を果たしていけるのではないかと期 待いたしております。委員の先生方を始めまして、関係者の方々の御意見を踏まえなが ら、今後とも新しい日本の血液事業を着実に推進していきたいと考えております。  本日は、主に遡及調査に関連した血漿分画製剤の取扱いについて御議論いただく予定 になっております。昨今の新聞やテレビの報道でも、血液製剤の安全性に関する国民の 関心は非常に高いことがうかがえます。したがいまして、国民の信頼を得られる方策を 確立し、かつ実施していくためにも、本日御出席の皆様方の御経験あるいは御見識を頂 き、積極的に御意見をお寄せいただきますようお願い申し上げたいと思います。開催に 当たりまして、一言ごあいさつとさせていただきます。 ○血液対策課長  異動の御紹介を続けさせていただきます。8月29日付けで医薬食品局総務課長に吉岡 荘太郎が着任いたしております。また、安全対策課長に平山佳伸が着任いたしておりま す。また、血液対策課長に私金井雅利が着任いたしております。よろしくお願いいたし ます。この後の進行につきましては、溝口部会長にお願いしたいと思います。 ○溝口部会長  それでは早速議事に入りたいと思います。まず議題1は「遡及調査により個別NAT 陽性血液の混入が判明した原料血漿由来の血漿分画製剤の取扱いについて」でございま す。これに関しましては、9月〜10月中旬にわたり運営委員会から安全技術調査会へ申 し送られまして、科学的な観点から検討されております。10月17日に開催された安全技 術調査会において検討結果がまとまり、部会に上程されております。調査会の検討結果 につきまして皆様の御意見を頂き、この部会での意見をまとめていきたいと思います。 なお、本件につきましては、日本赤十字社事業局技監の田所憲治さんと血液安全課長の 日野学さんを参考人としてお呼びしております。参考人のお二方におかれましては、質 疑の対応などをよろしくお願いいたしたいと思います。  それではまず事務局から全体の御説明をお願いしたいと思います。 ○事務局  本件に関しましては、資料B-1を中心に御説明させていただきたいと思います。御案内 のとおり、本年6月12日に厚生労働省より日本赤十字社に対して、前回陰性だが直近の 調査で陽性となった複数回献血された供血者について、前回供血時の血液を遡及調査す るように行政指導したところでございます。これに伴いまして調査をした結果、何名か の感染者が見付かったということ、また遡及調査の対象血液の方から現在50プールで行 っているNAT検査をすり抜けた個別NAT陽性血液が発見されるという事態になった わけでございます。  まず現在の供血者からの遡及調査の進捗状況でございますが、資料B-1の1ページを 御覧いただきたいと思います。これは本年10月16日付けで、日本赤十字社に対して血液 対策課より現在の進捗状況について御報告いただきたいという事務連絡でございます。 これで要求しておりますのは、調査の対象とした血液製剤の本数、供血液の供血歴の期 間、そしてNAT検査を実施した本数、陽性判明した本数、以下割愛させていただきま すが、こういった情報について御提供いただくように事務連絡を発したところでござい ます。これに対しまして、2ページを御覧いただきたいと思います。(3)でございます が、この個別NAT検査を実施した本数が平成15年9月25日現在の数字で上がってきて おります。HBV3,903本、HCV875本、HIV378本、このうち陽性が判明した本数 はHBV64本という結果になっております。また、この遡及調査の対象となった血液を 輸血されたいわゆる受血者の方で陽転等が判明した本数については、3ページの(7)を 御覧いただきたいと思います。こちらの方を御覧いただきますと、現在判明した件数が 6件ということで、このうち(2)と(3)が陽転が判明した件数になっております。た だ、この件数については2件ということで、前回安全技術調査会等で報告した数字でご ざいまして、本日まで新たに件数が増えたということはございません。  その他、この遡及調査の対象となった血液を供血した方の情報、あるいは供血者の前 回との採血間隔についてもグラフ化し、4〜10ページまで載せていただいておりますの で、こういった資料については安全技術調査会の方で詳細に検討したいと考えておりま す。問題となりますのは、現在我が国においては採血時に輸血用製剤と分画用製剤の原 料ということが明確に分かれていないことです。したがいまして、今回の遡及調査の大 もとは輸血用血液を対象としたものでございますが、この調査の結果、原料血漿の方に 回った血液について一部陽性例が発見されたというところでございます。ちょっと飛ん で恐縮ですが、35ページを御覧いただきたいと思います。平成10年11月2日に日本血液 製剤協会あてに、当時厚生省三課の方から血液製剤の当面のウイルス対策ということで 事務連絡を発出しておりまして、これに基づき現在遡及調査の結果と個別NAT陽性が 判明したものについては、自主回収等の措置をお願いしているという状況でございま す。  11ページに戻っていただきたいのですが、今回この遡及調査により判明した個別NA T陽性血が混入した原料血漿から製造等された製剤の状況でございます。11ページは前 回運営委員会等で御説明させていただいたもので、トータルの数については13ページを 御覧いただきたいと思います。今のところ、この個別NAT陽性が原料血漿に行ったも のについては、HBV、B型肝炎ウイルスのみが判明しているという状況で、陽性とな った検体数は先ほど申し上げた64本、このうち既にNAT陽性判定が済んでいたもの、 原料血漿として使われていなかったもの、貯留保管中であったもの、あるいは各製造メ ーカーに渡ったものの使用前であったものを除きますと、対象検体数39件となります。 うち1本が二つのバッグに分かれていたということで、原料血漿のバッグとして使用さ れていたものがトータル40バッグという状況になっております。この40バッグから製造 された製品等の状況につきまして、2の方にまとめてございます。これをアルブミン製 剤で申し上げますと、献血血液以外にも現在我が国はアルブミン製剤等について一部輸 入を行っておりますので、これを分母とすると平成14年供給実績に対する割合は11.2% にほぼ匹敵する量になります。また、献血由来製品に対する割合で行きますと30.7%、 以下グロブリン製剤については14年全体に対して39.0%、献血由来製品に対して46.8 %、アンチトロンビンIII製剤については全体の49.8%、献血由来製品については68.2 %、以下の数字については表を御覧いただきたいと思いますが、こういったものに今回 この40バッグの原料が使われていたという状況でございます。こういったバッグの原料 となった血液の供血者に関する情報については、14ページからまとめさせていただいて おります。全部御覧いただきますと、26ページまで約38名の供血者の状況がございま す。こちらにつきましても、詳細な分析についてはまた安全技術調査会等において御検 討いただくということにしております。  今回この事例につきましては、血液事業部会運営委員会においてその取扱いを御検討 いただいたところで、基本的には安全技術調査会の方でその対応について申し送るとい う形を採らせていただいております。28ページを御覧いただきたいと思いますが、こち らは10月1日に開催された血液事業部会運営委員会の資料の方から、本年10月7日に開 催された安全技術調査会に対し申し送った事項でございます。基本的には「記」という ところにございますが、今後の審議において対象製剤、今回の遡及調査により判明して きた製品等を「対象製剤」と呼んでおりますが、このものの制度的な取扱いをどうする か。また医療現場への情報提供や広報の在り方、対象製剤に関する現行制度の課題、ま た諸外国における制度との整合性といったことについて幅広く検討を行う必要があると いうことで、この検討に必要とされる対象製剤の安全性に関する科学的な評価、検討を 調査会で行うということ。また、優先的に検討を行うということ。さらに29〜31ページ までがこの血液事業部会運営委員会において花井委員、大平委員より意見書が提出され たところでございまして、これについて十分念頭に置いた上で審議を行っていただきた いということが申し送られたわけでございます。  この内容を受けまして、安全技術調査会の方で実施したわけですが、32ページを御覧 いただきたいと思います。これは10月7日に先立つ会議でございまして、その席におい て今回日本赤十字社で実施している検体で個別NAT陽性という結果が出たものについ て、第三者機関においていわゆる検証を実施し、この結果を32ページにまとめさせてい ただきました。こういった内容を踏まえ安全技術調査会で調査していただきましたが、 資料B-2を御覧いただきたいと思いますけれども、こちらは今回この遡及調査に関する 科学的なデータとして、現在国内の献血由来血液を用い製造等を行っている業者より、 安全性に関する評価を頂いた結果でございます。大まかに言いますと、こちらの報告の 内容につきましては、まず今回分画製剤の安全性が問題になっておりますが、先ほど申 し上げた事務連絡に基づいて過去回収等を行った事例がございます。また、その際に健 康状況の確認などを行っておりますので、そういったものの結果について御報告いただ きたいと。また、諸外国においても同様の個別NAT陽性の血液を原料として製造され た分画製剤の安全性に関する文献、あるいはその事故例等があれば御報告いただきたい ということ。また、現時点において欧米諸国を中心として、こういった際一体どのよう な取扱いをしているのかについても情報を上げていただきたいということ。こういった ことを調査して御報告いただき、資料B-2を参考にして議論していただいたところでご ざいます。  33〜34ページが今回最終的に安全技術調査会の方から意見書を頂いたところでござい まして、本日安全技術調査会の座長代理として比留間委員にお越しいただいているの で、これについてはまた後ほど御発表いただければと考えております。以上でございま す。              ― 説明途中、橋委員着席 ― ○溝口部会長  どうもありがとうございました。それでは早速10月1日の運営委員会申し送り事項、 別添の意見書について大平委員、花井委員から御説明願いたいと思います。 よろしくお願いいたします。 ○花井委員  運営委員会における安全技術調査会への申し送りについて特にこの点をということ で、10月1日付けで運営委員長あてに29ページ以下の意見書を提出させていただきまし た。この内容でございますが、そもそも今回の一連の、言葉を選んで言えば赤十字社と 行政との連携の不手際の原因は、やはり輸血用血液製剤の遡及調査に関するガイドライ ンが存在しなかったところに問題点があるのではないかということで、今回血液製剤に 関する遡及調査のガイドラインを早急に策定すべきであるということが一点目でござい ます。  それから二点目でございますが、これについては先ほどから出ている平成10年11月2 日付けの安全対策とそれ以前の、海外から来ている血漿分画製剤と国内における血漿分 画製剤について、結果的には二重基準になっていたという問題がございます。これは患 者の立場から言いますと、安全であることはだれがどこでどのように保証してくれるの かという根幹にかかわる問題でありまして、今回血漿分画製剤に個別NATが混入して どうしようかと。そのときに取りあえず出荷をした分については回収はしないけれど も、していない分については保留するという特殊な事態が生じたわけでございます。こ ういう事態の中で、私ども患者からいろいろ意見やおしかりも受けまして、こういうふ うに出荷停止しているのに出ているものを使っていいのか、良くないのか、安全なのか どうなのかについて一体どういう意見を言っているのだと。止まっているにもかかわら ず、既に出ていってしまっているものについて回収をきちんと言わないなどというの は、むしろけしからんのではないかといろいろおしかりを受けたわけでございます。こ れはひとえに、この基準について何かあいまいさがあると。つまりこの行政指導とスペ ックを規定したものとの間にあいまいさがあるのが原因ではないかということで、やは りこれについては今回明確にすべきであると。これは今回の議題の中心でございますの で、この場で議論していただいたらいいのではないかということです。  何が基本になるかというと、やはり科学的根拠でございまして、安全技術調査会はこ の通知についてはかねがね科学的根拠はないということを言っておりますので、そうい ったことも混乱の原因の一つではないかと。科学的根拠がないのになぜそれが必要なの かということになりますと、やはりユーザーからすればこれはどう判断していいか分か らないという状況になりますので、その辺も含めて御判断いただきたいと。ですから、 サイエンスとしての判断は技術調査会の方で明確にしていただいて、製剤が足りなくな るから回収できないという議論は一番危険ではないかと思います。本当にリスクがある のであれば、たとえ足りなくなっても何とかしなければいけないということができなか ったのが80年代の教訓でございますから、一部そういう混乱した報道がされたことは非 常に遺憾でありまして、やはりサイエンスとしてどこなのかを明確にしていただいた上 で、この基準に線を引くと。線を引いたものに関しては、安全性についてはメーカーと 国が保証するという形を明確につくっていただきたいという趣旨でございます。内容は お読みいただければそのとおりでございます。以上でございます。 ○溝口部会長  どうもありがとうございました。それでは続きまして、10月7日の安全技術調査会の 検討結果について比留間委員から御説明願いたいと思います。 ○比留間委員  それでは安全技術調査会の検討結果に関しまして、岩本座長に代わり御報告させてい ただきます。資料B-1の33ページを御覧になっていただければと思います。先ほど花井 委員が科学的に判断しろとおっしゃいましたが、これが100%できるかとなるとおのず と限界がありますので、現時点で考えられる、あるいは科学的に分からなくてもどう判 断したらいいかということも踏まえてのお話でありますので、その辺も御了解いただけ たらと思います。  まず個別NATのみ陽性の血漿分画製剤、「1.対象製剤の取扱いについて」という ことですが、(1)として対象製剤の安全性についてはまず現在できる限りの技術をもっ て十分なウイルス除去、及び不活化が実施されているということ。(2)として、もし今 回こういう遡及調査で見付からなかった製剤は、流通していることとの兼ね合い、基本 的には50プールNAT陰性ですべてが出ているということ。ですから、個別NATでは 基本的には未実施で出ているのだということ。(3)として、個別NAT陽性であった血 漿分画製剤が入った患者さんに何か問題が生じたという報告がこれまでないというこ と。(4)として、先ほど事務局からも説明がありましたように、第三者機関における検 証及びその信頼性の確認、これもどこまでやれば科学的に100%信頼できるのかはおの ずと限界がありますが、今回時間が許される限りで行った検証においては、その信頼性 がある程度確認されただろうということ。(5)として、諸外国においても個別NATが 陽性であるからといって回収はしていないのが現状であります。ですから、先ほどの花 井委員の御説明のように、もし個別NATを回収することになった場合ダブルスタンダ ードが生じるという問題にも関連していると思います。以上の五点を踏まえまして、個 別NAT陽性という理由だけで今後回収、あるいは医療現場への対象製剤であることの 情報提供、回収と情報提供を「回収等」と言わせていただきますが、この回収等は必要 ないと考えます。  次に遡及調査によって個別NAT陽性と判明した原料血漿の取扱いであります。これ は中間原料も含まれるわけですが、これに関しては先ほどの理由とも重なるところがあ りますが、これから造った製剤がオーケーということですので、この原料血漿に関して も廃棄を行う必要はないと考えます。ただし、ここは100%科学的ではないかもしれな いですが、では入れる前に個別NAT陽性が判明してしまった場合、これは入れて作っ ても安全だとは言ったのですけれども、やはり分かったら入れるのもためらうというこ とでちょっと引っ掛かるかもしれません。このくらいの感情は許していただきたいとい う感じもしますが、これはやはり入れるべきではないのではないかと考えます。ただ し、これは前提条件として、先ほど申し上げたような安全技術が的確に行われていると いう前提の下でありまして、具体的には例えば各血漿分画製剤によってはバリデーショ ンの値が9未満、すなわち10の9乗分の1にウイルスを不活化できないような製剤があ れば、そういった製剤に個別に対応する検討があるのではないかと考えます。  それと「2.三課長事務連絡について」でありますが、これは35ページに書いてあり ます。これも読んでいただければ分かりますように、「それまでの当面の対応である旨 を申し添えます」と書いてありますが、これはもちろん時代によって変わるべきである という下で出された三課長の連絡でございます。今回の検討においては科学的な根拠が 乏しいものと考えられますので、まず(1)としては50プールNATで陰性が確認される レベルである製剤であること。(2)として、血漿分画製剤の製造業者により製造工程に おけるウイルス除去、及び不活化が適切になされていること。この二点の前提をもっ て、回収等、すなわち回収及び情報伝達は必要ないものと考えます。それとこの血漿分 画製剤だけでなく、原料血漿についても(2)と同様に回収、あるいは情報の伝達は必要 ないと考えます。ということで繰り返しになりますが、(1)として日本赤十字社が実施 するNATの精度管理が適切になされていること、(2)として製造業者によるウイルス 不活化が適切に実施されていることが確認されていること、そういった安全確保の充実 が図られていること。それと医療機関には情報伝達はしませんが、(3)として個別NA T陽性血液の混入事例が発生した場合は、厚生労働省への報告は迅速かつ適切になされ ること。(4)として、上記(3)の報告を踏まえて、先ほどの各血漿分画製剤によるバリデ ーションの制度を検討して、ケース・バイ・ケースも検討するということも含めると。 繰り返しになりますが、(5)として原料血漿のNAT陰性が確認されること、及び製造 業者が実施するNATの精度管理が適切になされること。これら五点を条件として、い わゆる三課長連絡を見直すことが適当であると判断しました。以上です。 ○溝口部会長  どうもありがとうございました。ただいまのお二人の委員からの御説明につきまし て、何か御質問、御意見ございますか。どうぞ、花井委員。 ○花井委員  今の点につきまして、まず混ぜる前はということについては全く賛成でございます。 諸外国でもそのように対応しているようですし、それはもういいのではないかと思いま す。  それからもう一点ですが、情報提供と回収はセットではないのではないかと。私ども の理解からすると、十分な安全性を確保したということは、私たち若しくは関係者の現 在考え得る知見と努力によって最大限の安全性を確保した上で、これは完全ではないと いうことはだれもが共有している事実だと思います。こういうものの場合、それを担保 するものは何かといった場合、情報公開にならざるを得ないと…、これは原則論です。 ただ今回の場合、例えばこのロットだけがリスクがあるという情報提供をして、この情 報を見た上でそれを気にしないユーザーはそれを使い、気にするユーザーは使わない と。これが普通に行われれば、理想論としてふさわしい姿だと思うのですが、現実はそ うはいかないという問題があると思うのです。ですから、情報公開という面については ほかの手段も考えるなど、情報公開という論点は一緒くたにせずに、分けたものとして 考えるべきではないかと思います。  私の個人的考えは、個別で情報提供はしなくても、例えば今回新しい制度がいろいろ できた中で、他国のまねをして血液事業白書のような年報を出して、赤十字におけるい ろいろな陽性事例などをそこに盛り込んで、こういう血液がこのように提供され、原料 として使われているということを定期的、年一回くらいで国民に冊子、インターネット 等で公開すると。そして、そういうものを見た上でどうもこういうことで良くないなど いろいろな意見が出た場合に、また制度全体の中で見直すということができますので、 情報提供という意味ではそういったことがあってもいいのではないかということが一つ です。  それからもう一つは個別に対応する製品について、線は引けないのですか。例えばあ る程度のバリデーション値というのはある種の基準だと思うのですが、そういった基準 等を考えれば個別ではなくてこの線というのは何かもうちょっと明確にすることは技術 的に難しいのですか。ちょっと理解しにくい部分があるのですが、もう既に50プールが 陰性であって、個別NAT陽性という例であればある程度そこに混入するウイルスの最 大値というのは推定できると思うのです。これを基準に、バリデーションデータと掛け 合わせれば個別対応と言うよりもうちょっと明確にできればその方がいいのではないか と。この二点です。 ○溝口部会長  比留間委員、いかがですか。特にバリデーションの個別対応の問題について何か…。 ○比留間委員  バリデーションに関しまして、ちょっとウイルスの専門家の御意見も聴いた方がいい のではないかとは思うのですけれども。 ○岡田委員  今のNATの感度で言いますと、大体10の5乗、悪くても10の6乗くらいで、100万 個くらいのウイルスが入る可能性があるのですけれども、それを例えば10の10乗に減ら す不活化操作をやりますと、一つのロットに入るウイルスの可能性は1万分の1個だ と。つまり一つのロットというのは、大体5,000本とか10,000本くらいの製品があるの ですが、全体で1万分の1個ウイルスが入るという率なのです。それはゼロではないか と言われてしまうとかなり厳しいのですが、そう考えると1万ロット作ればそのうちの 一つのロットに1個のウイルスが入ってくるという確率です。それで入っているウイル スと、不活化できる能力との差で、例えば1個でも入っていては駄目だということにな ると、若しくは10の6乗ウイルスが入っていれば、10の6乗ウイルスを減らすことがで きる操作をやっていればいいということになりますが、その辺は科学的に実証すること がなかなか難しいので、セーフティーマージンを付ける必要があるわけです。そのセー フティーマージンをどの程度にするかというのは、科学的にと言われますとなかなか難 しいわけです。例えば10の3乗のセーフティーマージンを付けるとか、10の4乗を付け るかというのは、科学的にそれを裏付けることはなかなか難しいのです。ですから、そ の辺では数字を出すことはかなり難しいです。もちろんどの程度までセーフティーマー ジンを取れば安全かというのは、なかなか言えないというのが私どもが悩むところです が。 ○溝口部会長  どうぞ、花井委員。 ○花井委員  例えばセーフティーマージンを10の2乗採ったとしますと、バリデーションプロセス というのは各製品のプロダクトのスペックなのではないかと思うのです。ということ は、どちらかを固定すれば、例えばその実際の数字はともかくとして、セーフティーマ ージンを取ってバリデーションプロセスがこのくらいの製品はこういう対応、これ以下 だったらこういう対応だという線引きは可能ではないかと素人考えで思うのですが。 ○岡田委員  それを科学的な根拠と言われると困ってしまうのですが、10の3乗に決めるというの であればそれでもいいのですが、ではその根拠はと聞かれたときに非常に慎重な人は3 乗ではなくて4乗にした方がいいと言うし、今までのセロロジカルの試験だけで製剤を 作っているときでも感染症の報告例はなかったのだから10の3乗も付ける必要がなく て、ぎりぎりで10とか100でもいいという考え方の人もいますので、その辺の線引きは なかなか難しいところです。 ○花井委員  ということは、これはレギュレーションの問題ですよね。どこで線を引くかというお 話ですから、例えば私は素人の患者で3乗だと何の根拠もないと、患者は3乗だと言っ ていると。ところが、レギュレーションを決める方が、諸外国では大体こういう理解を されているのだから、日本だけ特に厳しい基準を定めるとまずいとか、むしろ諸外国で これくらいと見ているからいいと、これは科学というよりもどちらかというとやはり行 政的判断もあるのではないかと思うのです。どこかで線を引くということについては、 極端な話どういう場合でも線は引いているわけです。ですから、線を引いたものが全部 科学かというと、そうではない部分もたくさんあるわけです。普通の医薬品のプロダク トでもあるわけですから、そういう意味では2乗とか3乗で線を引けばいいというのが ユーザー側の考えなのですが、行政的に難しいという理由がやはりあるのですか。 ○溝口部会長  事務局から何かありますか。 ○事務局  今回、安全技術調査会の方で参考としたウイルスバリデーション表がお手元にあるか と思います。今回、安全性評価をする上におきまして、バリデーションのデータを各企 業より御提出いただいたものでございます。こちらを御覧いただきますと、現在原料血 漿に混入するウイルスの上限値ということで、先ほど来議論になっております50NAT 陰性、なおかつ個別NAT陽性という場合に上限値がどのくらいになるかを日本赤十字 社から精度管理のデータより算出していただいたものが、原料血漿ウイルスが左に書い てあって、ウイルスというところのログでございます。数値については御覧いただきた いと思いますが、おおむね10の6乗近辺にこの数字が来ておりまして、先ほど来話があ りますけれども、1バッグ入った場合に大体100万個程度のウイルスがこの原料血漿の 中に入り込むということが、上限値として定まったわけでございます。  これで仮に2倍の安全マージンを採りますと大体6ということですので、これにプラ ス2で8乗、仮に3を採りますと今回9乗という数値になるわけです。この辺りは御議 論いただきまして、おおむね3乗の安全マージンを採った場合にログが9というバリデ ーション値をもって、未満、以上ということで今回安全技術調査会においては意見書の 方に反映させていただいているところでございます。  また、一般的なウイルスのバリデーションについては9〜10以上あることが望ましい という、これは特に根拠はないのですが、一般的にバリデーションを行っている科学者 に聞きますと、9〜10程度という辺りで合意がとれているものということで認識してお ります。 ○花井委員  いえ、答えになっていないと思うのですけれども。 ○溝口部会長  根拠はあるわけですよね。 ○花井委員  あるわけですね。ですからそうなると、あえて言えばその数値が確保されていない製 品については、個別NATが混入した場合はすべて回収というのがあり得るわけです ね。そうしないならば、やはりそうしない理由というのが要ると思うのですが。 ○川西委員  私は技術調査会には直接関係ないのですが、ウイルスバリデーションの問題というの はいろいろ微妙な部分がありまして、一つは安全性で考えると一体幾つ入ったら本当に 危ないのだろうかということがあいまいであるということ。  それからもう一つは、ウイルスバリデーションというのは普通一定量入れて測定しま すから、これでやってゼロになるという前提の話で議論している場合と、多分実際の定 数は大分違う話になっている可能性もあります。ですから、相当にいろいろな不確定要 素が、安全性という判断の上でもあると思います。確かに一定の数字を決めてしまうと いうやり方もあるかとも思いますが、ただ今1,000倍くらいの安全率ということで考え た辺りというのは、普通で考えたら恐らく大丈夫だろうという線ですから、それは邪道 だとおっしゃるかもしれませんが、その辺もやはり考慮した上で決めるというのは一つ の方策だと思います。この線だと決めることに関して、この部分は余りにも不確定要素 が大き過ぎると、私は個人的にはそういうふうに思います。 ○溝口部会長  これはさんざん長いこと議論してきた問題なのですが、in vivoのスタディーがなか なか難しいのと、それからやはり受ける患者さんの免疫状態でもいろいろ違いましょう から、安全度をかなり多く見積もる必要があるというのが今の安全技術調査会の報告だ と思うのです。やはり10の9乗という線が国民が合意できる一つの点であるかどうかと いう点ですが、そうであるならばそうでないものはやはり花井委員のおっしゃるように 排除せざるを得ないと。どうですか。 ○岡田委員  実際10の9乗などという話が出ましたが、混入するウイルスも定量ができないほど少 ないものがありますので、例えば10の3乗とか10の4乗近く入ってしまった場合もある し、それこそ100未満という場合もあります。そうしますと、10の9乗ウイルスバリデ ーションが行っていないのは駄目というのは一律に決めることができないので、セーフ ティーマージンが例えば1,000倍確保されているといった条件にした方が実用的かなと 思うのですが。 ○花井委員  私が申し上げたいのは、明確にしていただきたいということなのです。もちろん今お っしゃられた一定の数字を決定するのも、一つ私が主張している話でございまして、あ る程度のマージンを決めて、今事務局案としてはそういう雰囲気で出るように思うの で、私が懸念するのは今回回収はしないけれども出荷を止めているという状況です。今 回はそれが長いことになって、そのことについて議論したわけですが、そういう状況と いうのは一番患者が混乱する状況の一つなわけですが、それでは具体的に個別検討する 時間がどのくらいでできるのか、そういう意味で言えば現場でどういうきちんとした対 応ができるかがセットだと思うのです。ですから、そういうものも踏まえて議論しない と、一応それは個別に対応するというふうにここで論理的に決めたとしても、現実には もう出てしまっていると。患者も毎日使ってしまっていると。しかし、検討している 間、今出していないものがあるのだったら待っておけと。こういう事態というのは、や はり消費者側から言うと余り望ましくない…。今回の事態ですが、そういうこともちょ っと含めて議論しないといけない問題ではないかということです。ですから、私ども数 字を決めてビシッと線を引かなければおかしいのだということを言っているわけではな くて、そういうことも踏まえて対応というのは明確にしていただきたいということで す。 ○溝口部会長  三課長の指導というのは長いこと生きていたわけですが、それが今回根拠がないとい う理由の一つは、幾つか挙がっていましたが、50NATの採用や不活化除去の方法の改 善、開発が進んできたということ。  もう一つは、やはり一番大きいのはこのバリデーションのデータがオープンになった ということだと思うのです。やはりそうなると、それを根拠に安全技術調査会が今判断 されたものを尊重して、それに国民が同意してくれるかどうかというところが一番肝腎 なことだと思います。それで外れたものはやはり花井委員のおっしゃる方向かなという 気がするのですが、比留間委員どうですか。 ○比留間委員  正にその点についてここで御議論願えればということですが、基本的には事務局がお 話しになったように10の9乗を一つの基準にしたいということなのです。現時点でまだ そういうデータがオープンになったばかりですし、実際には幾つかで10の7乗というこ とがあったりするわけです。もし現時点で10の9乗以下は全部回収するということにし たら、先ほどから議論になっていますように、要するに今回のような事態がなかったら 個別NAT陽性かどうかすら分からないで出ているわけですから、そうなってしまうと すべて根っから回収しなければいけないということになります。ですから、その辺の線 は現時点では明確に引きたくても引きにくいという現実もあるのではないかと思いま す。 ○溝口部会長  どうぞ、大平委員。 ○大平委員  今、花井委員からもお話がありましたように、今回ケース・バイ・ケースで判断する というお話がここのところに出てきていますが、その問題よりももっと重要なのはやは り個別NATとか検査体制の迅速性が保たれていないために、例えば個別NATに遡及 して後で陽性だと分かった場合にその間の期間が今回余りにも長かったということもあ りますし、そのために社会的にいろいろな混乱があったのだろうと思います。多分今回 の反省を踏まえて、遡及調査といった全体の問題はスピーディになるのだろうと思いま すが、やはり遡及の問題がもっと迅速さを保たれて、この検体についてはやはりウイル スバリデーションから判断して止めなくてはいけないということがすぐにされないと、 やはりどこかで宙ぶらりんになっていることが利用者の方々、患者にとっては大変不利 益な問題になるということなのです。この表にあります編み掛けの部分とか、そういう ところをどう判断したらいいのかという、大変不信と言ったら誤解があるかもしれませ んが、その辺がグレーゾーンという感じだとしたら、今後もう少しはっきりしたデータ を分析していただいて出した方がいいのだろうと。市場性の問題としては、それをきち んと検証できるような遡及の体制が早くできないと、ここでグレーゾーンにあるものを 本当に患者に使っていいのだろうかどうかという判断というのは、医療者の方にとって も大変負担に感じるのではないかと思います。ですから、やはりその辺の総合的な判断 だろうと思います。ですから、やはりそれは科学が先行した形で総合的な判断を是非し ていただきたいとお願いしたいと思います。 ○溝口部会長  遡及体制のガイドラインの問題は安全技術調査会の問題とちょっと違うようですが、 事務局の方で何か案はありますか。 ○事務局  この遡及調査のガイドラインにつきましては、後ほどまた日本赤十字社の方から輸血 用血液製剤の安全対策について7項目の安全対策を進めていることが報告されると思い ますが、現在日本赤十字社においてこの遡及調査のガイドラインを作成中でございま す。ただ、これはあくまでも日赤内部の遡及調査のガイドラインになりますので、この 出来上がったガイドラインについてはまた安全技術調査会、血液事業部会において内容 を審議していただいて、きちんとしたものになるようにしていきたい。それをもってガ イドラインということで、厚生労働省として認めるという方針で現在策定を進めていた だいている状況でございます。 ○溝口部会長  企画官が手を挙げていらっしゃるようですが。 ○血液対策企画官  花井委員から御指摘のあった期間の問題でございますが、今回は平成10年のときのル ールがありまして、その辺のルールをどうしようかという問題をかなり御議論いただき ましたので、保留という期間がかなり長くなったわけでございます。本日今後の方向性 が決められるのであれば、これ未満の製剤が出たときに当然どれくらい入っているかと いうことと、バリデーションがどうかを判断すれば全体の方針は決まっているわけです ので、技術的な判断の時間さえあれば速やかに結論が出ると思います。当然何か月もと いうことはあり得ないと、せめてそう長くない週間単位で判断が出ると思っておりま す。 ○溝口部会長  そういうことでガイドラインは策定予定であることと、迅速に遡及の問題を解決する 方針であるということです。問題は、安全技術調査会から出ている10の9乗というライ ンでこの部会で御理解いただければ薬食審に上がり、国民に理解を求めるということに 手順としてはなるわけですが、その辺でよろしいかどうか…。そうすると、そうでない ものはやはり適切な処置をするということになります。そういうことをやはりきちんと 公表して、用いる人たちがある程度の危険はあるのだということを理解していることが 大切だと思います。そのレベルに達していないためにその製剤を使わない製造業者に対 しては、その基準に従ってやってほしいということに理解を求めると。 ○花井委員  今の説明で、9未満のときに迅速に対応するということを前提として、基本的には安 全技術調査会の意見を支持したいと思います。  もう一点は、やはりその場合の情報をどう提供するかという問題で、これについても 確認ができればいいかなと。繰り返しになりますが、私は実はこうなのだと知られるこ とが知らせるべきだというのは当然だと思うのですが、実際にそうなると使いたくな い、病院ではこんな製剤を納入するとはけしからんという事態が絶対起こるはずですか ら、やはりそういうことも踏まえて、情報提供の在り方として別個に確認していただけ たらと思います。 ○白幡委員  花井委員に御確認したいのですが、ここの文章としては医療現場への対象製剤である ことの情報提供を行う必要がないと、私はこれで構わないと思うのです。これはこれに しておいて、それを補う意味で例えば白書や報告書を出すというふうに…。というの は、たしかアルブミンの製剤にB型肝炎ウイルスが混入したときに、発売は構わないけ れども、その製剤がB型肝炎の汚染血を材料にして造ったものだとラベルなどに載せる ことを条件付きで認めたという過去がありましたが、結局それでは全く売れないという ことで…。ですからここで言っているのは、そういったことも含めてこの製剤が対象製 剤であるということを情報提供する必要がないと私は理解したのですが、初め私も情報 提供は必要ないと言ったときにこれでいいのかなと思ったので、先ほど花井委員が言わ れたように限定して逆にそれを補う意味で年に一回報告書などを出していくということ は賛成なのですが、これはこれでいいのではないかと思います。                ― 中村委員着席 ― ○溝口部会長  どうぞ、比留間委員。 ○比留間委員  どうも私の舌足らずな言い方で…、この点に関して情報を非公開するというつもりで 言ったのではございません。先ほど事務局から御説明があったところですが、例えば今 回の遡及調査でいろいろなことが分かったと、これは本当に情報が公開になって良かっ たという一つの点だろうと思うのです。資料B-1の13ページですが、例えばアンチトロ ンビンIII製剤の献血由来製品に対する、個別NAT陽性原料血漿が入った割合という のは68.2%です。これは既に出回っているということが今回分かったわけですが、そう なると科学的に言えば今出回っているアンチトロンビンIIIの7割近くが対象製剤であ るということになるわけです。ですから、こういった情報と今回こうやって個別NAT が判明して初めて分かった情報との兼ね合いをどうするかといった問題にもなってくる と思います。これに関しましては、基本的には血液製剤のリスクに入るのではないかと いうこともありますが、ただ花井委員がおっしゃるようにこういうものを情報提供する ことがいいのではないかと。現時点でのアンチトロンビンIIIは、実は個別NAT陽性 の原料血漿が7割くらい入っている可能性があるのだという情報提示を何かでするの は、私は非常に賛成だと思います。余り情報を隠すというふうにとられていると、安全 技術調査会の信頼にかかわりますので、その辺をちょっと訂正させていただきました。 ○溝口部会長  全部出しておいた方がいいと思うのです。ですから、10の9乗以上のものを安全技術 調査会の意見を採って認めるのであれば、それ以上のものが出ているという情報が必要 だということですよね。それ未満のものは個別に対応してどうするか、これからは行政 の問題でしょうが、出すのは望ましくはないということでしょうか。どうぞ、岡田委 員。 ○岡田委員  それとこの原料血漿は50プール陰性が確認されていることを明記して、場合によって は個別NAT陽性が混入している可能性があるけれども、それは不活化工程で10の9乗 以上確保されていることを添付文書のような形で書くのが一番混乱が起こらないかと思 うのです。それで年に一度、NATのいろいろな陽性例などを白書のような形で国民に 知らせるのはとてもいいことだと思います。 ○溝口部会長  どうぞ、大平委員。 ○大平委員  多分花井委員のお話は、すべてのいろいろなデータを公開する前提の中で、やはりど ういった不活化処理がされているかといった問題もすべてオープンにして、海外の規格 などのいろいろな問題も白書、データとして明記するということが前提なのだろうと思 います。現在の献血血液から利用されている血漿分画製剤の中に、こういった事例もあ ることをきちんと載せていくのを全体として情報公開していくということだろうと思い ます。 ○溝口部会長  どうぞ、清水委員。 ○清水委員  議論を混乱させるつもりはないのですが、二点だけ。一点目は、1948年に液状血漿を 60℃10時間加熱処理することによって、まだB型肝炎その他ウイルスが発見されていな い状況において完全に感染が成立していなかったと。それからHIVが問題になった 1980年初頭においても、我々が一番気にしたのはアルブミンだったのです。ですが、幸 いにしてアルブミンはエタノール処理と10時間処理というのがあって、これもHIVの 感染はなかったと。このときはまだスクリーニングが全く行われていなかった。そうい う時代を我々は経験してきているわけです。だからといってどうのこうの言うつもりは ないのですが、そういうバッググラウンドはまず皆さんの共通な認識として持っておい ていただきたい。その安全性を更に高めるために、バリデーションをどこに設定するの かということになってまいりますと、例えば1,000倍にするとか10の9乗にするといっ た一つの線を引いてやってみることはあってもいいのではないかと思うことが一点。も っとありていに言いますと、皆さん方が現在のウイルスについての安全性と思われると ころ、特に専門とされている方たちが安全と思われるようなレベルで一応線を引いてや ってみるという手が一つあるのではないかと。  そしてもう一点は、御覧になっていただくと分かりますようにHBc抗体が陽転した 血液を遡及してみたら個別NATが陽性だということが出てきたケースがほとんどなの です。これは多分感染して陽転したと一応考えるべきではないかという感じもしなくは ないのですが、非常にロータイターのキャリアがいるというケースがあるものですか ら。私が言いたいのは、HBc抗体のスクリーニングというのは、必ずしも先進国で全 部行っているわけではないのです。ですから、HBc抗体をやらなかったら出てこない ケースがほとんどだと。しかし、我が国ではHBc抗体を入れることによってたまたま B型の劇症肝炎が激減したという、ものすごい成果が上がったということがあって、ま た1980年代にはHIVの代替検査としてHBc抗体スクリーニングが優位にあるのでは ないかということで、検討されたこともありました。それはそれなりの意味があるとい うことでよろしいのですが、ここで結論を出す必要はないのですけれども、HBc抗体 を今後どう扱っていくのか、これは検査法自体の問題もちょっとあるのです。HI法 で、割合感度の悪い方法でわざわざやっているわけなのです。したがいまして、抗体が 陽性になって出てくるような場合もあり得るということも検査法自体の感度の問題とし てあるものですから、今後の血液事業の中におけるHBc抗体の取扱いを検討する必要 があるだろうと。そういう二点を指摘しておきたいと思います。 ○溝口部会長  ありがとうございました。非常に大事な問題ですけれども、ほかにも議題がございま すので。今までの委員の先生方のお話をお聴きしていると、一応安全技術調査会の流れ をお認めいただけると考えてよろしゅうございますか。ではそういう方向で、今後事務 局は採血業者や血漿分画製剤の製造業者に対して必要な指導を行っていただきたいと思 います。よろしくお願いいたします。 ○血液対策課長  ありがとうございます。ただいまの審議の確認でございますが、今部会長がおっしゃ られたとおり血漿分画製剤の安全性なり、その取扱いについては安全技術調査会の意見 書でよろしいと。先ほど花井委員から御指摘がございましたように、回収と情報提供は パラレルではないと、その辺は十分留意する必要があると考えております。  また情報提供でございますが、先ほど岡田委員の方から血漿分画製剤の原料血漿につ いてはNATでウイルスが確認されていないものを使用すると。ただし、NAT検査の 検出限界以下のウイルスが混入した可能性があると。さらに製造工程においてウイルス の不活化の安全対策が行われると、そういったことを製剤の添付文書に記載するように 指導したらどうかということでございます。そういったことも情報提供して、こちらと しても考えたらどうかと。ウイルスバリデーション値の低い4品目についてですが、こ ちらについて情報提供というか添付文書に書く場合は別の記載が必要かもしれません。 その辺もちょっと考えたいと思っております。  先ほど花井委員あるいは大平委員からもございましたように、血液事業白書あるいは 厚生労働省の「血液事業の情報ページ」がございますが、一部出せないところもあるの ですけれども、こういうものにバリデーション表など、あるいは先ほどの汚染血がどの 程度入っているかなどについて出す方向で検討したいと考えております。いずれにいた しましても、先ほどの安全技術調査会の意見でよろしいということになりましたら、三 課事務連絡の見直し等を行いまして、必要に応じて通知、発出等の行政対応をしたいと 考えております。以上でございます。                 ― 審議官退席 ― ○溝口部会長  よろしくお願いいたします。どうぞ、花井委員。 ○花井委員  細かい話が出たので、少しだけ。NATについては今御説明があった形でいいと思う のですが、プールのスケールの問題だったわけですよね。NAT陰性ということであれ ば、シングルと50の話があったわけですから、添付文書の書きぶりをここでこうしろと いう気はないのですが、諸外国はNATのスケールがいろいろありますよね。そういっ たものの表示との兼ね合いもちょっと検討していただいて、やっていただきたいと。情 報公開は、今回出ている公開の資料だけでも今まで見たこともない資料だと思います し、この部会で出て終わりというのは非常にもったいないので、やはり今課長がおっ しゃられたように生かす方法を考えていただきたいと思います。 ○溝口部会長  余り細かいことを添付文書に載せても我々使う側は読みにくいので、やはりホームペ ージや白書の方に詳しく書いていただいて、必要最小限のことを添付文書にお願いした いと思います。大平委員、何かありますか。 ○大平委員  バリデーションの問題とはちょっと離れるかもしれませんが、今回の遡及にかかわる 問題として、調査の対象とした血液製剤の本数はまだ途中の段階なのですか。たしか 6,000本以上が対象で、それがいつごろ最終的に終わるのか、それによってまた問題事 例などが出てくるのかどうか、その辺に大変関心があるものですから、めどとしてどの くらいなのか…。日本赤十字社の方には大変恐縮ですけれども、少し時間が掛かり過ぎ ているのではないかと思いまして、これだけ大変な量なので時間は掛かるのでしょう が、やはり関心が深い問題なのでかなり早いスピードでこういう調査をしていただきた いと思います。  もう一つは、受血者の方の問題としまして二人の方が陽転しておられ、その方のその 後の調査といったことはきちんとできているのかどうかもできれば報告していただけれ ば有り難いと思います。 ○溝口部会長  参考人の御意見を聴く必要はありますか。田所参考人、何かございますか。 ○参考人  情報の提供等については、先ほどお示しした2ページの中にどこまで伝わっ ているのか書いているので見ていただければと思います。対象6,419件のうち現在まで に5,104件行っております。まだ出ていない数につきましては、コンピューターで探せ る以前のものだという具合に御解釈いただければと思います。そのうち医療機関から情 報提供を頂いているものについては、ここで挙げていますようにまだまだ少ないわけで すが、今後輸血学会等の御協力も得まして、積極的に受血者の方の情報も集めてまいり たいと思っております。 ○溝口部会長  よろしいですか。できるだけ早くやってほしいということですね。 ○大平委員  一応検体保管されているものについて、それは全例調査できるということにはならな いのですか。 ○参考人  現在個別検体のあるものについて保管して以降、なおかつコンピューター上 で検索できるものについては取り出しております。ただ、年間600万で数年たっている 中から1本を探してくるのは実は大変な作業でございまして、これについては専任の人 を付けて−30℃の中で1日働かせるということで、残念ながら1日数十本引き出すのが やっとのところではございますが、それでも土日も含めたサンプルの取り出しを現在や っております。約7〜8割まで検体の取り出しが終わっております。ただ、その後更に 新たなものが出てきておりますので、パーセンテージでは100に追い付くのはなかなか 難しいかと思いますが、鋭意努力している最中でございます。 ○溝口部会長  そういうことで、日本赤十字社も大変努力しているようでございますので、御理解い ただきたいと思います。それではよろしゅうございますか。次の議題に移らせていただ きたいと思います。  議題2は、「平成16年度の原料血漿確保目標量(案)について」でございます。これは 10月10日に開催された需給調査会で了承されまして、この部会に上程されたものであり ます。委員の先生方の御意見を頂きまして、この部会としての意見をまとめていきたい と思っております。それでは事務局からよろしくお願いいたします。 ○事務局  それでは資料Cを御覧いただきたいと思います。これは先ほど部会長よりお話がござ いましたように、需給調査会において御了承いただいたものでございまして、本日血液 事業部会の方に案としてお諮りさせていただきたいものでございます。   まず結論ですけれども、平成16年度の我が国における原料血漿の確保目標量を108万 Lとするということでございます。これについての算定根拠でございますが、来年度に 国内製造メーカーの方から原料血漿を使ってどの程度血漿分画製剤を造る希望があるか 調査し、その結果を基に算定した量でございます。特にこの計算式ですけれども、御案 内のとおり原料血漿については脱クリオ血漿からアルブミン、グロブリン等が二重に作 られるということで、この希望量をそのまま足すと180万となるのですが、この脱クリ オ血漿での供給予定量についてはダブルカウントになりますので、3にあるように凝固 因子製剤用その他分画製剤用を足していくと、最終的な原料血漿確保目標量が108万L となるわけでございます。この量につきましては、先日各都道府県別に会議がございま して、一応都道府県の準備の状況もございますので、平成12年の国勢調査の結果による 人口、また献血年齢を加味した形で配分し、取りあえず目標量としてお持ち帰りいただ いたという状況でございます。  参考までに2ページを開いていただきたいのですが、原料血漿確保目標量については 過去5年間の推移を示しております。14年度も含め、毎年確保目標量は各都道府県、及 び日本赤十字社、献血団体等の協力も得、達成できているという状況にございます。特 にこの108万という値につきましては、需給調査会等においてもある程度現実的なとこ ろということで、この需給計画そのものがあるべき姿に向かって物を引っ張っていくと いう計画ではございません。来年度の血漿分画製剤を安定的に供給するための目標とし て設定しているものでございますので、今後国内自給等に向けた動きについては、別途 適正使用調査会その他において審議をしていただくことにしております。この値につき ましては、来年度も108万Lということで御了承いただいたという経緯がございます。 一応参考までに3ページをめくっていただきまして、今回この供給希望原料血漿による 各分画製剤の製造見込み量、これは「15年度」が今年度の予定でございますが、今年集 める108万Lでどの程度の製剤ができるかを参考までに算定したものが「16年度」にあ る数値になります。審議の際に御参考いただければと考えています。以上です。 ○溝口部会長  どうもありがとうございました。何か御質問、御意見はございませんか。特にござい ませんようでしたら、次の議題に移らせていただきます。それでは各都道府県の目標量 の通知や需給計画の作成をよろしくお願いします。  最後に議題3「その他」でございますが、平成15年7月30日に施行された血液法の施 行状況について事務局から報告があるようですので、御説明願いたいと思います。よろ しくお願いします。 ○血液対策企画官  それでは一番最初に資料D-1でございますが、新しい血液関係の法律の施行について 御報告申し上げたいと思います。今年の7月30日に施行になりましたので、御報告申し 上げたいと思います。  資料D-1の1ページを御覧いただきたいと思いますが、「新しい血液法の概要」がご ざいます。今年の7月30日に施行になりまして、法律名を変えたこと、それから下に三 つございますような「法律の目的を拡大」、「基本理念を設定」、「関係者の責務を明 確化」ということとしたわけでございます。  次のページを御覧いただきたいと思いますけれども、これは何回か御説明申し上げた ことがあるかと思いますが、血液事業の実施の関係図でして、国の下に採血事業者、地 方公共団体、審議会の関係を示してございます。  3ページを御覧いただきたいと思いますが、審議会の構成も新たに血液事業部会の中 に運営委員会を設置しており、前回の部会のときに運営委員会の委員5名の指名を頂き ました。その後、8月11日に初めての委員会を開催した後、9月17日と10月1日にも運 営委員会を開催し、定期的、必要なときは臨時でその考え方に沿い開催してきてござい ます。また、その事業部会の下に需給調査会、安全技術調査会、適正使用調査会を、そ れぞれ専門的な分野での御検討を頂くために設けているわけでございます。  4ページを御覧いただきたいと思いますが、「血漿分画製剤の需給見通し」でござい まして、今年作成した基本方針における推計でございます。従来以前の状況によっての 推計をしておりましたが、推計についても今回変えまして、平成20年の使用量としては 国内血漿分画製剤で117万Lと推計してございます。  5ページを御覧いただきたいと思いますが、その次からは基本的な方針等でございま す。5ページからは「血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保を図るための基本的 な方針」でございまして、5月19日に厚生労働省告示ということで公布してございま す。  新しい血液法で厚生労働大臣が定めると規定されているものですが、中身については 細かく御紹介するのは略させていただきます。6ページの「目次」を見ていただきます と、全体の基本的な考え方や需給の見通し、国内自給の確保の方策、献血推進等の基本 的な方針について規定してございます。  少し飛びますが、24ページを御覧いただきたいと思います。24ページは「平成15年度 の献血の推進について」でございまして、新しい血液法の10条に献血推進計画を策定す るという規定がございますが、今年度施行ですので法律に基づいた献血推進計画は実際 には16年度からの設定になります。それの15年度版ということでございまして、まだ法 律施行になっておりませんでしたので、当時の医薬局長通知という形で出してございま す。  26ページを見ていただきますと、確保すべき血液の目標量、それからそれを確保する ために必要な措置というものが規定されております。次年度以降、正式に法律の規定に 沿った計画を立てる際に、こういうような形で出していくことになるかと思っておりま す。  それから最後に31ページでございますけれども、こちらも局長通知でございますが、 新しい血液法の25条の需給計画に対応するものの平成15年度版ということで、これにつ いては前回の当部会で御了解いただいて発出したものでございます。内容的には御審議 いただいたものでございますので、説明は略させていただきます。以上でございます。 ○事務局  続きまして、生物学的製剤基準の改正について御報告させていただきます。資料とし ましては、その概要について資料D-2-1、基準の改正について資料D-2-2、新旧対照表に ついては資料D-2-3を御用意させていただいております。  資料D-2-1の概要を御覧いただきたいと思います。生物学的製剤基準につきましては、 薬事法第42条に基づき保健衛生上特別な注意を要する医薬品について定められた基準で ございます。これまでこの基準を改正するということで、医薬品第二部会の下にワーキ ンググループを設けて審議を重ねてまいりました。審議経過については、資料D-2-1の 3ページに書いております。このワーキンググループでは計10回にわたり御審議いただ きまして、この基準の案を取りまとめております。その後、10月3日に医薬品第二部会 の方で御審議いただいたということでございます。その審議の結果を反映したものを現 在パブリックコメントをとっておりまして、10月9日〜11月10日までの期間に募集して いるという状況でございます。  この基準の改正の概要について、簡単に御説明させていただきます。1ページに戻っ ていただきたいと思います。前回全面的な改正が行われたのは平成5年でございますの で、それから約10年が経過しているということで、その後の科学技術の進展、あるいは 新試験法の開発により時代に即した改善が必要ということで、今回そういった面から生 物学的製剤基準の改正を行っております。   二点目としましては、本年7月に生物由来原料基準が新しく定められ、こちらの基準 についても必要な整備を行わなくてはいけないということで、その観点からの整備を行 うということでございます。  三点目は、日本薬局方やWHO基準等の諸外国の基準との整合性を図るといった観点 からの改正を行うということにしております。  詳細については説明を省略させていただきますが、血液製剤、輸血用製剤関係で改正 した主なポイントのみ御紹介させていただきます。1ページの「2.医薬品各条」の 「(1)輸血用製剤」の(1)でございますが、赤血球製剤の貯蔵温度は4〜6℃が現行で ございますが、これを2〜6℃に変更していると。これは欧米基準との整合性を図って いるというものでございます。また、(3)の血液保存液としてCPD液を使用した場合 につきまして、ヒト血液から血漿成分を分離するまでの時間、現在は6時間以内となっ ているところを今回8時間以内に変更しております。この件に関しましても、欧米基準 との整合性、また8時間以内に変更しても凝固因子の活性上問題ないということを、文 献的なデータから確認しております。それから(5)としまして、ここに書いてございま す2品目について実際のラベルに表示する事項の変更を行っております。また、(8)の 血液保存液の発熱性試験におけるエンドトキシン試験法を今回適用するということで、 アメリカのUSPの方でもこういった試験が適用されていることに準じて採用すること を考えております。  続いて2ページの「(2)血液製剤」の関係でございますが、(1)、(2)の異種蛋白質否 定試験あるいは熱安定性試験の削除を行っております。これは現在の技術レベル、工程 管理、GMP管理による品質保証がなされているということで、既にこういった試験に ついては行う必要はないと判断しておりまして、削除するというものでございます。そ のほか一般試験法あるいは通則につきまして、先ほど冒頭に申し上げた三点の考え方に 沿い今回改正を行っております。また今後の予定ですけれども、現在パブリックコメン ト中でございまして、その後WTO通報を行い薬事分科会で御審議いただいた後、本年 度中に告示する予定で進めていくことを考えております。以上です。 ○溝口部会長  ありがとうございました。もう一つよろしくお願いします。 ○事務局  私の方からは資料D-3、「その他の血液製剤に関する報告事項について」を御説明さ せていただきたいと思います。  まず昨今新聞紙上に出ておりますけれども、先ほどウイルスのことで御議論いただき ましたが、輸血用血液製剤が原因で細菌感染が起こったのではないかということで、一 つは過去の細菌感染の原因として肺炎球菌が疑われた事例。これは食中毒菌でございま すが、低温で繁殖するという特徴を持ったエルシニア菌といったものが原因ではないか という敗血症の事例。こういったものが報道されたわけでございますが、現在これらの 事例については安全技術調査会において御検討いただいているところでございます。現 在、その細菌感染に関するそれぞれの事例の事実関係を調査しているところでございま して、そういった事例の収集をもって輸血が明らかな原因として考えられるのかどう か、この辺りについては因果関係の証明をやはり慎重にしていかないと、いたずらに輸 血用製剤に関する不安をあおる結果になります。  ただ、一方で本当にこの血液製剤が原因であれば、安全確保について一層充実させる 必要があるということで、こういった件についても先ほど申し上げたように、現在因果 関係も含め事実関係の証明に努めているという状況でございます。なお、一般的な形で の細菌感染に対する安全対策としまして、前回開いた安全技術調査会において日本赤十 字社の方からより一層の問診の徹底、特に発熱等の健康状況の悪い方からの採血はでき るだけしないということ。また、皮膚の常在菌などが入り込まないような形で十分に消 毒を行うといったこと、こういったことがすぐにできる対策。また、近々でできそうな 対策といたしまして、現在皮膚からの常在菌については採血を行う際に最初の20mL、30 mLは輸血用に使わないと、主に検査用に回すという形での対策を検討されているという こと。また、根本的な対策としましては、白血球除去あるいは病原体の不活化というこ とで現在検討しているところでございます。この対策の進捗状況につきましては、本日 日赤の方を参考人としてお呼びしてございますので、後ほどペーパーをもって説明して いただきたいと考えております。  続きまして9ページでございますが、「輸血用血液製剤でHIV感染が疑われる事例 について」ということでございます。こちらの方も、現在日本赤十字社において事実関 係等を調査しているところでございます。この方は50代の男性でございますが、貧血に 対して赤血球製剤(MAP)の投与が行われたそうです。この方は日赤の方で入っていた 血液8本を輸血されたということで、その片割れについて現在追跡をしているところで ございます。原料血漿については現在直ちに供給を停止、また新鮮凍結血漿という形で 投与を受けた方については1名が原疾患で死亡、2名については現在他院への転院等が ございますので、その追跡をもって現在健康状況を確認中ということでございます。た だ、この事例に関しましては、輸血後に陽転が確認されたという方ではございません。 あくまでも輸血を受けた方が感染者であることが判明した事例ということですので、こ ちらについても10月30日にエイズサーベイランス委員会が開催されますので、そちらの 方に新しい情報等収集できたものをできるだけ早期に報告して、この輸血が感染経路と していかがなものかも含めて御審議いただく予定になっております。  次に10ページでございます。「HBV陽性者からの供血血液が使用された件について 」ということで、こちらの方も新聞等で御案内のとおり、ロータイターのHBV感染 者、低濃度キャリアだということで考えられております。こちらは普段であれば、HB V陽性となりますと次回以降の血液については使用しない形でシステムが組まれている のですが、2回目に来られた場合前回陽性と分かっていたのですけれども、その辺りの 伝達ミスがあり採血した血液が患者に使用されてしまったという例でございます。少な くともHBV感染者なので、本来であればそういうことがあってはならないということ で、現在こちらの方も事実関係を十分把握した上で薬事法等の違反に当たるか当たらな いか判断していくとしております。  11〜13ページでございますが、これは先ほど企画官の方から御紹介した15年度の需給 計画、これに基づいて現在各社製造等していただいているわけですが、こちらは7月 分、8月分の血漿分画製剤の製造状況について報告が来ましたので、参考までに御提示 させていただきます。以上です。 ○溝口部会長  どうもありがとうございました。関連しまして、日本赤十字社の参考人の方より御報 告があるということですので、よろしくお願いいたします。             ― 医薬食品局長、総務課長退席 ― ○参考人  それではお話のありました輸血用血液の安全対策について触れさせていただ きます。7項目を既に安全技術調査会、あるいは運営委員会の方にもお伝えしておりま す。第一点目は、「日赤独自の遡及調査のガイドライン策定」でございます。これにつ きましては、赤十字内に委員会をつくって現在ガイドラインを策定中でございまして、 本年度中には作成が終わって安全技術調査会等の国のレベルにおいて御審議いただきま すようお願いしたいと思います。基本的にはどこまで遡及すべきか、あるいはどういう ときに遡及すべきかについて、我々が考え得る範囲の案を出していきたいと考えており ます。また、この案は我々だけではできませんで、医療機関の先生方の御協力等が必要 となるわけでございますので御審議いただきたいと思いますが、その際にも遡及への医 療機関の積極的な協力を呼び掛けていただくこと。またもう一つは、既に輸血療法のガ イドラインで取り上げられながら、実際保険の問題で実施されていない輸血後の感染症 の検査等についても併せて安全対策を考えていただければと希望しておきたいと思いま す。  第二点目として「FFPの貯留保管の開始」でございますが、これについては8月18 日から全センターに対して貯留保管の開始を指示いたしまして、既に始まっておりま す。7月28日の段階で約20日分ありましたものが、10月24日の段階では43日分まで在庫 として確保されております。今年度中に在庫として2か月分を確保することを目標にし ております。ランニングストックも含めて、2か月の貯留保管ができた時点で貯留保管 済みのものを出庫していく体制を採っていきたいと考えております。この2か月分を超 えますと、将来的には現在の各センターにおける貯留可能分を超えますので、貯留施設 を新たに造るなどの施策を採り、17年の3月をめどに4か月分の貯留保管をすると。17 年度中に6か月分の貯留保管を、できれば秋くらいまでに行いたいと考えております。 先ほど次年度の原料血漿の保管の目標量が設定されましたが、これに上乗せする格好で 採血計画を立てて実現を図っていきたいと思っておりますので、各地方自治体での採血 計画の際にもそのような御指導を併せてしていただければと考えております。  第三点目として「輸血用血液の感染性因子の不活化について」でございますが、これ については既に幾つかの方法も出ており、またある一部のものについては安全性が危惧 されて中断されているものもございますが、実現の可能性のあるものは具体的な検討に 入っていきたいと思っております。ある一つの方式につきましては、10月に機材一式を 受けまして、これを用いウイルスと細菌を不活化できるのかどうか、技術投入を図る際 にどのような問題があるのかという検討に入ることを考えております。同時に製造承認 体制をどのようにつくっていくのか、それも並行して検討に入りたいと思っておりま す。  第四点目として「NATの精度向上」についてですが、従来より次世代の核酸増幅検 査について試薬の提供可能なところと情報提供しあい、共同で開発していくことも検討 しているわけですけれども、その一つの会社から得られた試薬については年内にそれが 有効なものかどうかという点について検討を開始したいと思っております。精度向上に 関しては、プールサイズというだけではなくて数で言うと大変比較しやすいわけです が、基のサンプル量がどうかとか濃縮する方法が可能かといった幅広い視点で精度向上 を考えていきたいと思っております。  第五点目として「医療機関での輸血用感染症に関する全数調査」についてですが、三 つの県を選びそこで約1,000例の患者を輸血前後フォローアップしていく予定で今プロ ジェクトを組んでいるところで、第一回目の会合も持たせていただきました。1,000件 ですので、1万件弱の輸血についてはフォローアップができるかと思います。輸血の感 染症はリスクだけを考えても数万件に1件ですので、どこまでそこで数値が出せるかと いうことはありますが、先ほどから少し問題になっているHBV抗体の陽転の前という ところに焦点を置きながら検討を進めていきたいと思っております。  第六点目の「HEVについて」ですが、これは既に厚生労働科学研究の三代班という ところで検討することになっております。そのためのサンプルで肝機能の一つのALT が高くて使用できなかった血液を現在各センターにおいて集めておりまして、一定数に なりましたら核酸増幅検査等で検討することを予定しております。  第七点目の「白血球除去(特に血小板)の開始」につきましては、成分由来血小板につ いては11月からフィルター付きキットがメーカーでの生産が開始され利用可能となりま すので、今後バリデーションを出せばある程度白血球を低減したものが出るわけです。 確かにそうであるということを証明できる体制を整備しまして、その整備状況に応じ来 年7月には成分由来の血小板はすべて白血球除去済みの製剤として提供できるようにし たいと考えております。以後、成分由来の血漿については17年度、全血については18年 度を順次予定しておりますが、全血由来の血液についてはそれに関連する周辺機器の整 備、あるいは改良が必要でございます。フィルターが付きますので、かなり大型のもの になります。そうすると、真空や減圧で採血する装置なども現状では使えなくなります ので、そういった装置の検討を10月から始めていきたいと考えております。以上です。 ○溝口部会長  どうもありがとうございました。それではただいまの説明に御質問、御意見ございま すか。どうぞ、橋委員。 ○橋委員  議題1では血漿分画製剤の問題ということで申し上げなかったのですが、遡及調査に 関しては非常に教訓的にいろいろなこともあったわけです。現実的に患者サイドにどの ように御説明するかというところで、非常に大きな問題がございます。それはやはりそ の事実だけを伝えるだけでは済まないわけで、どうしてこういうことになったかという 背景を説明することが必要になろうかと思っております。輸血学会でこの問題を議論し ておりまして、できればそのひな形を提示したいと考えております。  それからもう一つの問題は、先ほど日赤の方もおっしゃられましたように、輸血前後 の感染症検査がHIVに関しては輸血後2か月という格好で明記されていたわけです が、B、Cに関してはそういうことがはっきりしなかったということで、今度の遡及調 査の関連で調べてみましてもほとんどやられていないのが現状なわけです。それに関し ても、できれば時期をある程度一致させて、例えば6か月前後までに輸血後のHIVあ るいはHBV、HCVの検査をするということを保険上でよく認めていただく。可能で あれば輸血前の検査も認めていただければ、先ほど御紹介がありましたような原因確定 という面では非常にはっきりするのではないかと思います。  それから最初に血液法のところで御説明がありました、新しい審議会の構成というと ころで需給調査会、あるいは安全技術調査会等で役割分担が決まっているわけですが、 先ほど重要なお話が出て、情報公開という問題がありましたけれども、これは先ほど申 しましたように患者さんにお話を伝える上でも非常に重要なわけです。例えば血液の危 険性が現在どうなっているかとか、国の方針というのはどうなっているかが毎年しっか り改定され、それが整理された形で出てくることが大事だと思うのですが、この新しい 審議会の中でそれをやるのは運営委員会なのでしょうか…、あるいは情報を整理してま とめて白書にすると。あるいは先ほど日赤の方が言われた、日赤で準備されている遡及 のガイドライン、あるいは輸血学会でそれを保管する医療機関内の説明文書等をまとめ る機関、私は情報公開以上に情報を整理してそれをみんなが使えることが大事だと思う のです。一般的に「情報公開」と言うと、個別的に自分の血液に関しては大丈夫だから どうかということだと思うのですが、そうではなくて日本の輸血はどうなっているかを 整理してまとめるという作業が非常に重要だと思うのです。先ほども議論がありました 血漿分画製剤に関してもやや混乱が見られたのは、数年間前の一時的と思われる通達が 生きていて、それ以降の方針見直しがなかったからだと思うのです。それを先ほどの議 論で毎年しっかりやるということだったのですが、それをどこの委員会でおやりになる のか教えていただけますか。 ○溝口部会長  事務局から何かございますか。 ○血液対策企画官  今のお話につきましては、基本的にいろいろな事項の整理は私ども事務局になるかと 思いますが、その後で外へ出す場合については部会に御相談なり、必要に応じてお諮り するなりして進めていくことになるかと思います。部会においてそれぞれ専門の調査会 なり何なりで御検討ということであればそういたしますが、基本的には部会の御了解を 頂いて進めることになると思います。 ○橋委員  その際にできれば今回の遡及調査以前から、輸血学会は輸血の安全性を高めたいとい う人間の集まりですので、厚生労働省や日本赤十字社と適宜共同でこういうことに積極 的に関与していきたいので是非使っていただければと考えております。 ○溝口部会長  よろしくお願いします。ほかに何かございますか。どうぞ、中村委員。○中村委員  簡単に二点お伺いします。第一点は、資料D-2-1の生物学的製剤基準の2ページの (3)でチメロサールに関して簡単に説明がありましたが、これを整理して「適当な保存 剤」という表現になっていますけれども、現在血液製剤に使われる保存剤というのは規 定があるのでしょうか。量とか種類とか…、それを確認したいと思います。  第二点は日赤に伺いたいのですが、まず第一点からお願いします。 ○溝口部会長  いかがですか。 ○事務局  チメロサールに関してですが、現在チメロサール以外の保存剤としては2-フェノキ シエタノールが用いられているところかと思います。この2-フェノキシエタノールに つきましては、現在のところワクチン関係で認められているということで、また認める 際には生物学的製剤基準には「適当な保存剤」という書き方になっておりますが、各承 認書の方でどういった保存剤を使うのか、具体的な名前と分量を定めて個別に承認を取 っているという状況でございます。 ○中村委員  分かりました。第二点は日赤にお伺いしたいのですけれども、先ほど7項目の安全対 策についてのお答えで、その前のいろいろな細菌混入等について報道がありましたが、 細菌汚染されてショックになったということは平成12年ですよね。それでさらに遡及調 査を再開するという御報告があったのですが、具体的にどういったことを調査されたの か、3年間のブランクがあってきちんとした遡及調査ができるのかどうかちょっと不安 ですが、その点で何か具体的に動いているものはありますか。  もう一つついでにお伺いしますが、細菌等のコンタミネーションについては不活化処 理すれば一番安全ですが、日赤はやっていないですよね。海外ではやっているところも あるということですが、不活化ができないというのは単に技術的な問題でしょうか、製 造、設備、人員配備等も含めたコストの問題でしょうか。どちらかお伺いします。 ○溝口部会長  参考人、いかがですか。 ○参考人  2年前の症例につきましては、新たなサンプルを使って検討するのは難しいと思いま すので、結果に基づいて総合的な判断をするということを専門家を交えて御相談させて いただくことになろうかと思っております。今出ている例については、同様にいろいろ な公的機関にも検査を出すと。その調査結果に基づいて判断することになると思います が、御存じのように細菌汚染についてはなかなか判定が難しいのです。なぜかと言う と、細菌というのは置いておけば増殖してしまうということもありますし、患者さん自 身の体の中にも細菌がいると、一応製剤を確保しても例えば逆流するとか、その部屋に も菌がいるとかいろいろ難しい問題がありますし、一部検体を保管しているといって も、保管により菌が死んでしまい培養しても出てこないということもありまして、なか なか評価の難しい問題があります。ですから、今後輸血学会にも是非御協力いただきた いと思っているのですが、こういう事例があったときにどのような検体の保管をすべき なのか、どう処置すべきなのかという点をやはりガイドラインを作っていかないと、こ の問題の原因究明というのは大変難しいと考えておりますので、その辺も合わせてこう いった例を積み重ねる中で検討して、科学的に解明して安全対策につなげてまいりたい と思っております。  それから不活化につきましては、現状では入れておりません。世界でもいろいろ入れ ている国はありますが、我々としては何を入れるべきかはまだ検討段階ですので、もち ろんコストも非常に高いわけですけれども、それを主要な問題とは考えておりません。 どうしても国民が必要であれば薬価等も含めて御検討いただけるものと思っております ので、日赤としては技術的にそれが有効で安全なものかという評価と、導入に際してど のような設備等を改善していく準備が必要なのかといった点を総力を上げて検討してい きたいと考えております。 ○溝口部会長  ほかにどなたかございますか。どうぞ、橋委員。 ○橋委員  今の感染症の問題や先ほどの遡及調査のガイドラインの問題もそうですが、今まで日 赤に相当安全対策をお任せしてきた部分がございます。ところが、最終的には医療機関 や輸血部門の共同作業ということがございますし、日赤でやる仕事に関してもこれでい いのかという検証をこういう会議で定期的にやって、それも先ほど言った白書の中に盛 り込むという格好は非常に大事ではないかと思います。最近の議論を聴いていますと、 相当安全性が高まっているはずなのに逆行しているのだとか、大変な危険が新たに出て きたととられている方が一般に多いように思うのです。ところが、現実には新たに隠れ ていた危険性が認識されているだけであって、そういうことにも迅速に対応できるよう な会議であってほしいと思います。 ○溝口部会長  この問題は、運営委員会などが動くのですか。緊急の出来事で安全にかかわることで すから。清水先生、いかがですか。輸血による細菌感染などというものはすべて終わっ たものだと思っていたところに出てきたわけで、非常にショックが大きいわけですが。 ○清水委員  これは日赤のデータが公表されているのもあるのですが、欧米に比べると製剤から菌 が検出されたということと、その菌に汚染された血液が輸血されて今回御紹介があった ような敗血症を起こすのとはイコールではないのです。ですから、菌は検出されるけれ ども、患者さんには無害だという場合もあるわけです。その菌が検出される率を見ます と欧米の頻度より10分の1くらい低いのです。ですから、それは我が国の血小板保存期 間が72時間であること、あるいは赤血球の保存が21日だということと関係していること もあろうかと思うのですが、やはり日赤の採血技術は非常にいいのではないかと私は評 価したいと思ってはいるのです。  したがいまして、ここのところに出てきたのですが、むしろ非常に皆さんの関心を呼 んで、今までひょっとするとあったかもしれないというものが出てきたのではなかろう かという印象がありまして、フランスやイギリスでは全国的なサーベイランスが、イギ リスはボランタリーに、フランスはたしか強制的な方法でやっているのです。そういう ところでは、やはりやったことによる評価、その結果として採血したときに最初の20〜 30ccを破棄した場合には細菌汚染例が半分近く減ったといった報告がありますが、そう いうことと比べてみても今日赤からの報告はやはり少ないのではないかという印象がご ざいます。それだけにまたこういう問題が出てきますと、大きく取り上げられるという 反面教師的な問題もあるのかもしれませんが、そういうことではないかと思います。で すから、これは今から30〜40年前などというのはしょっちゅうとは言えませんが、かな り大きな問題で、いかに輸血による敗血症を予防するかというのは、輸血療法の最大の 関心事の一つであったという時代もあったわけです。そういう観点からいきますと、現 在非常に安全性が高くなっているということは肝炎、ウイルス等と同じ経過であるので はないかと思っております。 ○溝口部会長  確かにこの安全性の問題を日赤任せにしないで、やはり輸血学会や安全技術調査会な どでの議論が必要ではないかと思うのです。やはり採血ドナーの問題、採血方法の問 題、保存の問題、注射の方法、すべての経路においてチェックして、こういうことがも しも起こったのだとすれば非常に大きな問題ですので、やはり解決するような方向で是 非お願いしたいと思います。 ○大平委員  今清水先生がおっしゃったお話と、社会的な問題としての背景なのですが、やはりこ うした問題の因果関係がはっきりしないと、輸血への信頼性というものが損なわれるの が患者から見た一番大きな心配事だと思うのです。ですから、先ほど日赤の方で遡及の 問題としては個別NATを全部検索していくというのは大変な作業が要るとおっしゃら れましたが、10月1日の日赤新聞に出ていましたけれども、平成8年から日赤で検体保 管をして、NATの検査ができるような体制を採っていると書いてあります。これを見 ますと、やはり検体保管をした場合にどういうふうなシステマチックとしてきちんと遡 及ができる形を最初から構築しなければいけないか目途を定めて計画を決めて、輸血の 安全性を確保していくことを日赤できちんとやっていってほしいということが一番大き な信頼性を生む問題ではないかと思います。ですから、大変レアなケースで細菌汚染の 問題などが出てきておりますが、普通の一般の人たちは輸血で細菌感染するということ を恐れるという感じになってしまうと大変困りますので、やはりきちんと因果関係を検 体で調べて、輸血からの感染ではなかったことが早くはっきりできるようにすること が、広報としては大変重要なのではないかと思います。そのためには、やはり運営委員 会などでそういう方向を是非日赤、国の方に働き掛けていきたいと思います。 ○溝口部会長  どうぞよろしくお願いします。清水委員、何かございますか。 ○清水委員  生物学的製剤基準の一つの問題ですが、実は小児用の血液、特に赤血球の用量が大人 用の200ccや400cc全血由来のものでは大き過ぎるのです。したがいまして、できればこ れを分割投与可能なように、そういう項目を一つ入れてもらえないかということなので す。  それから5単位の新鮮凍結血漿というのは非常に溶かしにくくて、非常に扱いにくい という部分があります。これをできれば二つに、チューブではつながっていても構いま せんが、同じ由来のものを同じ患者さんに入れるのが一番望ましいので、その対比に非 常に工夫が要るかとは思うのですが、少なくとも400ccのものを200ccずつにしていただ くと非常に使い勝手が良くなるという問題がございますので、これを是非御検討いただ きたいということです。  それからもう一つ、これは日赤の方から言っていただいた方がいいかと思うのです が、実は400cc全血採血から得られたFFPというのは大体3単位分採れるのです。と ころが、今3単位の基準というのはございませんから、わざわざ3単位分から1単位の 血漿を抜き取って2単位にしているわけです。こういう手間暇を掛けているということ がございまして、私の考えではむしろ抗凝固剤の入らないネットの血漿だけで計算した 場合に、400cc由来のものから目一杯血漿を採りますとネットで大体3単位に相当する のですね。成分採血で採った400ccの血漿はネットで6単位に相当するのです。したが いまして、1単位、2単位というのはもうやめてしまい、3単位を新しい1単位として 400由来のものを1単位、400の成分採血由来のものを2単位という形にするということ も考えられるのではないかと思います。取りあえず赤血球濃厚液と新鮮凍結血漿の小児 用の分割、それから400cc成分由来のものを2分割して供給するということができない だろうかと。それから血小板についても、今20単位以上採ろうと思えば採れる場合もあ ったりしますが、一般的な1回使用量は10単位になっております。したがって、この20 単位を10単位ずつに2分割して供給することができないだろうかということ。これは血 小板の有効期限が72時間という問題がありますので、まだ難しいことがあるかもしれま せんが、いずれにしても分割ということが可能な方が使い勝手がいいという問題があり ますので、この基準の中にできれば入れてもらうことができないだろうかということで す。 ○溝口部会長  分かりました。一応予定した時間となりましたので、この辺で終わらせていただきた いのですが、輸血用血液製剤、血漿分画製剤の安定供給と安全性は非常に大きな問題で ありますし、今の御議論も踏まえ今後とも事務局と参考人には作業を進めていただきた いと思っております。  本日の議題は以上でございます。参考人のお二方におかれましては、審議に御協力い ただきありがとうございました。次回の日程はまた追って御連絡させていただきます。 どうもありがとうございました。                                    ( 了 ) 連絡先:医薬食品局血液対策課 課長補佐 中山(2905)