03/09/02 薬事・食品衛生審議会平成15年9月2日(火)毒物劇物部会議事録           薬事・食品衛生審議会 毒物劇物部会 議事録 1.日時及び場所   平成15年9月2日(火) 14:00〜   厚生労働省専用第21会議室 2.出席委員(9名)五十音順   赤堀 文昭、 井上  達、◎井村 伸正、○櫻井 治彦、   白濱 龍興、 鈴木 和夫、 松本 和子、 百   弘、   森田 昌敏   (注) ◎部会長  ○部会長代理   欠席委員(3名)五十音順   金原  勲、 出川 雅邦、 吉岡 敏治 3.行政機関出席者   中尾 禎男(化学物質安全対策室長)、 渡辺 喜久彦、 江野 英夫、   下川 昌文  他 4.備考   本部会は、公開で開催された。 ○化学物質安全対策室長  定刻になりましたので、ただいまより平成15年度第1回薬事・食品衛生審議会毒物劇 物部会を開催いたします。私は7月1日付けで化学物質安全対策室長を拝命した中尾で ございます。よろしくお願い申し上げます。  本日の毒物劇物部会総委員数は12名でございますので、定足数は過半数の7名という ことになっております。今のところ7名の委員が御出席でございまして、お二方の先生 がこれから御出席、それから御欠席予定の先生が3名ということで、既に7名の委員に 御出席いただいておりますので、この会議は定足数を満たしていることを御報告申し上 げます。それから本日の会議は公開で行われまして、資料、議事録とも公開となってお りますので御報告申し上げます。  それでは僭越ではございますけれども、まず開会に先立ちまして私の方からごあいさ つ申し上げます。本日は鶴田大臣官房審議官が出席予定でございましたけれども、国会 案件が急に出てまいりまして、恐縮でございますが欠席させていただきます。  部会の先生方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして本当にありがと うございます。本日の部会はほぼ1年ぶりの開催ということで、この1年間の化学物質 行政をめぐる動きといたしましては、当省と経済産業省、それから環境省の3省が共管 しておりますけれども、化審法、正式には化学物質の審査及び製造等の規制に関する法 律が、今春の国会の審議を経て5月に成立、公布されましたので、簡単に御紹介させて いただきます。  この改正新法は四つの柱がございまして、一点目は環境中の動植物への影響に着目し た審査・規制制度の導入、生態系への考慮ということ。二点目は難分解・高蓄積の既存 化学物質に関する規制の導入ということで、まだ毒性が確定していないけれども、PC Bのように難分解性・高蓄積性を有する既存化学物質の規制を導入するということ。三 点目は環境中への放出可能性に着目した審査制度の導入ということで、閉鎖系や中間物 で直ちに他の物質に転用されるものについては特例措置を設けるということ。四点目は 事業者が入手した有害性情報に報告の義務を課すということで、今現在の化審法ですと 届出時のみデータの提供が要求されるわけでございますけれども、後日新たに分かった 事項も報告させるということ。この四つを柱といたしまして、来年4月に施行される予 定となっております。厚生労働省といたしましては、GHSのような国際的な化学物質 の分類、表示の調和の動きを踏まえつつ、化学物質の管理の充実に努力する所存でござ います。  本日の部会においては、7案件の毒物劇物の指定・解除についてこの部会にお諮りす る次第でございます。委員各位の忌憚のない御意見、御議論を賜りますよう、よろしく お願いいたします。  それでは引き続いて次の事項でございますけれども、今年1月に部会委員の改選がご ざいました。それ以降初めての毒物劇物部会でございますので、先生方は既に御案内か とは思いますけれども、大変失礼ながら各先生方を簡単に御紹介させていただきます。 まず井村部会長でございます。赤堀委員でございます。井上委員でございます。櫻井委 員でございます。白濱委員でございます。鈴木委員でございます。百委員でございま す。白濱委員が今回から当部会に御参加いただくということでございます。なお、長年 当部会に御参画いただいた香川慶応大学名誉教授におかれましては御退任ということで ございます。なお、御紹介が遅れましたけれども、本部会の部会長でございます井村先 生は6月に薬事・食品衛生審議会の会長にも御就任ということで御報告させていただき ます。  それでは議案に入る前に部会長の件でございますけれども、6月の総会で毒物劇物部 会長については井村委員が決定されております。それでは井村先生、よろしくお願いい たします。 ○井村部会長  どうもありがとうございました。それでは議事の進行をさせていただきます。最初に 部会長代理を決定する必要があるのですが…。 ○化学物質安全対策室長  薬事・食品衛生審議会においては、部会長が仮にお出にならないときには、当該部会 に属する委員又は臨時委員のうちから部会長があらかじめ指名する者がその職務を代理 するということになっておりますので、部会長に部会長代理を御指名いただきたいと思 います。よろしくお願いいたします。 ○井村部会長  それでは大変申し訳ないのですが、長年部会長代理を務めていただいて調査会の座長 をしておられる櫻井委員に、また部会長代理をお願いしたいと思います。どうぞよろし くお願いいたします。 ○化学物質安全対策室長  それでは井村部会長の御指名でございますので、櫻井先生、恐縮でございますけれど も、部会長代理をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。では先生、部 会長代理の席にお移りいただければと思います。           ── 櫻井委員、部会長代理席へ移動 ── ○井村部会長  それではよろしいですか。審議を始めさせていただきたいと思います。どうぞよろし くお願いいたします。まず最初に恒例でございますけれども、配付された資料について 事務局の方から確認をお願いします。 ○事務局  では資料の確認をさせていただきます。まず本日の議事次第が2ページあります。そ れから座席表、毒物劇物部会の名簿がそれぞれ1ページあります。それから本日の議事 次第に沿って7物質の検討をしていただくわけですけれども、その資料が全部で七つ、 29ページまであります。それから「毒物劇物の新判定基準」ということで2ページ付い ております。それから、事前に先生方に配付した資料において5ページを開いていただ きたいのですけれども、上から2行目の化学物質の名前が「4-エタンスルフィニル」 となっておりましたが、「4-エチルスルフィニル」ということで今回差し替えの資料 が入っておりますので御留意ください。資料は以上です。不備等がございましたらお申 し出ください。 ○事務局  本日、「毒物劇物の新判定基準」をお配りしてございますけれども、昨年度GHSや OECDの新しい急性経口毒性試験法の適用等の理由から、毒劇物の判定基準を改正い たしました。本日三番目に御審議いただく物質が、動物愛護の観点より新しい試験法で あるOECD試験ガイドラインの423の急性毒性等級法、つまり正確なLD50ではなく て、LD50が50〜300mg/kgといった幅で出る方法に基づいて試験が行われており、今回 の審議会より新判定基準で判断するのが適当であると考えまして、新しい判定基準の資 料を用意してございます。以上でございます。               ── 松本委員着席 ── ○井村部会長  ありがとうございました。今の御説明に対して何か御質問はございますか。よろしゅ うございますか。先に進めさせていただいて、それでは審議に入らせていただきます。 最初の議題でございますが、ウンデセンニトリルの混合物とその製剤についての審議で ございます。では、事務局の方から議題1について御説明をお願いいたします。 ○事務局  資料1により御説明させていただきます。これは(E)-9-ウンデセンニトリルが45〜 55%、(Z)-9-ウンデセンニトリルが23〜33%、10-ウンデセンニトリルが10〜20%を 含有する混合物となっております。混合物となっている理由でございますが、これは合 成する前の原料がもともと3種類の混合となっておりまして、結果として3種類の混合 物となっております。この混合物は有機シアン化合物として現在劇物に該当いたします けれども、この混合物に関して急性毒性データが提出されたので、劇物から除外が可能 かどうかを御審議いただきたいと考えております。この混合物は常温で淡黄色の透明な 液体でございまして、用途としては香料として使用されるものでございます。  配付資料の4ページに原体の試験結果の概要が記載されております。原体の急性経口 毒性、急性経皮毒性試験ともLD50値は2,000mg/kg以上となっております。原体の吸入 毒性試験については、ミストの4時間暴露においてLC50が5.254mg/Lより大きくなっ ております。原体の皮膚刺激性試験については4時間暴露で刺激性が認められておりま すけれども、腐食性は認められておりません。皮膚刺激性試験において刺激性が認めら れた場合には、動物愛護の観点から眼刺激試験を実施することが国際的に認められてお りませんので、眼の刺激性のデータはございません。以上のことより、調査会において はこの混合物の原体とその製剤は劇物から除外することが適当であるとの御意見を頂い ております。御審議をよろしくお願いいたします。 ○井村部会長  ありがとうございました。ただいまの御説明に対して何か御質問、御意見等はござい ますか。もしなければ、櫻井先生、調査会の方から何かございますか。 ○櫻井部会長代理  大したことはございませんでしたが、混合物であるということからいつも同じような 混合比率であるかどうか若干議論がございました。しかし、これは比較的安定してこう いった混合物であることが予想されることから、その問題は考慮しなくてもこのような 判定を下していいだろうという結論になったと記憶しております。 ○井村部会長  ありがとうございました。何か御意見はございますでしょうか。どうぞ、百委員。 ○百委員  用途は香料とおっしゃいましたが、香料の中には食品とか化粧品とかいろいろあると 思うのですけれども、これは何でしょうか。 ○事務局  化粧品と記憶しております。 ○百委員  分かりました。 ○井村部会長  よろしゅうございますか。ほかにございませんでしょうか。どうぞ、松本委員。 ○松本委員  化学式なのですけれども、(3)の一番左は「CH2」だと思いますが、チェックをし ていただきたいと思います。ちょっと本質と違うことですけれども、二次結合があって CH2だと。 ○事務局  そのように修正いたします。 ○井村部会長  (3)はそうですね。ありがとうございました。ほかに御質問、御意見はございますでし ょうか。よろしゅうございますか。それでは、この三つの混合物であるウンデカ-9-エ ンニトリルとウンデカ-10-エンニトリルの混合物とその製剤については、劇物から除外 するということでよろしゅうございますか。ありがとうございました。  それでは議題2に進ませていただきます。事務局の方から議題2について御説明をお 願いいたします。 ○事務局  資料2により御説明させていただきます。本物質は別名エチプロールと呼ばれるもの でございまして、これも有機シアン化合物に該当いたします。現在劇物に該当いたしま すけれども、本物質に関して急性毒性データが提出されたので、劇物からの除外が可能 かどうか御審議いただきたいと思います。本物質は白色の結晶性粉末で、用途といたし ましては農薬として使用される予定となっております。  配付資料の10ページに原体の試験結果の概要が記載されております。原体の急性経口 毒性についてはLD50値は7,080mg/kg以上となっております。原体の急性経皮毒性につ いてはLD50値は2,000mg/kg以上となっております。原体の吸入毒性試験については、 ダストの4時間の暴露でLC50値は5.2mg/Lより大きいとなっております。原体の皮膚 刺激性試験については4時間の暴露で刺激性は認められておりません。原体の眼の刺激 性試験についても刺激性は認められておりません。以上のことより、調査会においては この化合物の原体とその製剤は劇物から除外することが適当であるとの御意見を頂いて おります。御審議よろしくお願いいたします。 ○井村部会長  ありがとうございました。ただいまの御説明に対して何か御質問がございましたらど うぞ。特にございませんでしょうか。櫻井先生、調査会の方で何かありましたらお願い します。 ○櫻井部会長代理  これについては特段問題となる事項はございませんでした。なお、この判定は御承知 のように…、これは原体ですね。 ○化学物質安全対策室長  有機シアン化合物全体が劇物に指定されております。 ○櫻井部会長代理  有機シアン化合物として既に劇物と指定されているものを劇物から除外していいかど うかということで、その判定基準はお手元の新判定基準でも今までと変わりなく、毒物 劇物の製剤の除外に関する考え方、これは製剤の除外に関する考え方の方でございます から…。それとは違いますね。今ちょっと混乱いたしましたが…。 ○井村部会長  製剤も入っていますね。 ○櫻井部会長代理  そうしますと、この10の安全率を導入するということになりますと、劇物が経口では 50〜300ですから、実際は10の安全率というと3,000mg/kg以上であれば全く問題ないわ けでございますが、事実上は実験の都合で…、これは7,080以上ですから問題ないです ね。それで吸入の方が幾つでございましたか。 ○井村部会長  吸入ですか。原体は5.2mg/L以上です。 ○櫻井部会長代理  それも事実上吸入のダストミストですと、1mg/Lの10倍の10mg/L以上であれば全く 問題ないわけですけれども、事実上実験の最大値である5.幾つで毒性徴候が認められ ないということで判定しているわけであります。 ○井村部会長  ありがとうございました。今の御説明はよろしゅうございますか。何か御質問がござ いましたら…。よろしいですか。これは事務局の方にもう一度念を押させていただきた いのですけれども、今の櫻井先生の御説明の中で製剤の劇物からの除外については、一 応原体の一番弱い数値から10倍というルールがあります。しかし、ルールから行くと 3,000以上なのだけれども、この場合では2,000以上ということになっているというお話 がございましたが…。 ○事務局  この物質の場合は原体そのものに毒物劇物に該当する毒性がございませんので、10倍 の安全率の部分は関係ございません。 ○井村部会長  ということだそうです。 ○櫻井部会長代理  やはり途中で混乱していたということで、失礼いたしました。このことは今日後ほど 少し問題になるものですから、あらかじめ申し上げようと思ったのですが、これについ ては該当しませんでしたので申し訳ございません。 ○井村部会長  何か御質問がございましたら…。よろしゅうございますか。それではこれも劇物から 除外するという取扱いをさせていただいてよろしゅうございますか。ありがとうござい ました。  それでは四番目は少し時間が掛かりそうですのでどんどん先に行かせていただきます が、議題3について事務局の方から御説明をお願いいたします。               ── 森田委員着席 ── ○事務局  資料3により御説明させていただきます。本物質も有機シアン化合物に該当いたしま して、現在劇物ということになりますけれども、本物質に関して急性毒性データが提出 されたので、劇物から除外が可能かどうか御審議いただきたいと思います。本物質は白 色の結晶性粉末で、電子機器の液晶に使用されるものでございます。  配付資料の14ページに原体の試験結果の概要が記載されております。原体の急性毒性 については、LD50値は2,000mg/kg以上となっております。原体の急性経皮毒性試験に ついては実施されておりません。原体の吸入毒性試験については、ダストの4時間の暴 露でLC50値は3.74mg/Lより大きいとなっております。原体の皮膚刺激性試験につい ては、4時間の暴露で弱い刺激性が認められておりますけれども、腐食性はございませ んでした。以上のことから、調査会においては本物質の原体及びその製剤は劇物から除 外することが適当であるとの御意見を頂いております。御審議よろしくお願いいたしま す。 ○井村部会長  ありがとうございました。ただいまの御説明に対して何か御質問はありますでしょう か。よろしゅうございますか。櫻井先生、経皮毒性についてのデータが全く出ておりま せんが、調査会ではこのことについて問題にならなかったのですか。 ○櫻井部会長代理  それはそれで手元にあるデータで判断すると。 ○井村部会長  ありがとうございました。何か御意見はございますでしょうか。それでは今櫻井先生 からお話がございましたが、ここに得られているデータから判断いたしまして、この議 題3の化合物も劇物から除外するという判定をしてよろしゅうございますでしょうか。 ありがとうございました。それではそうさせていただきます。  それでは議題4について、今までは有機シアン化合物だったのですけれども、今度は カルバメート系の化合物です。事務局の方から御説明をお願いいたします。 ○事務局  資料4により御説明させていただきます。本物質は別名ピラクロストロビンと呼ばれ ているものでございまして、現在農薬としての申請がなされているものでございます。 毒劇物の判定について御審議いただきたいと思います。  配付資料の19ページに原体の試験結果の概要が記載されております。表の左の番号で 御説明いたしますと、1と3の原体の急性経口毒性試験においてLD50値は5,000mg/kg 以上、5の原体の急性経皮毒性試験においてLD50値は2,000mg/kg以上、9の原体の皮 膚刺激性試験においては刺激性がございましたが、腐食性はございませんでした。11の 眼の粘膜の刺激性試験においてほとんど刺激性はございません。しかし、7-1と7-3の原 体の吸入毒性試験において劇物相当の毒性が見られておりますが、7-2の原体の吸入毒 性試験において強い毒性は見られておりません。調査会においてはこれらの試験間の結 果の違いは、吸入試験を実施する際の媒体とする物質の違いによるピラクロストロビン の粒子径の違いによるものということでありまして、7-1と7-3はアセトンを媒体とした 試験で、7-2はソルベッソを媒体として行ったものでございます。アセトンを媒体とい たしますと粒子径が細かくなって肺に達しやすくなるということで毒性が出てきたもの で、本物質そのものには毒性があるという御意見を調査会で頂いております。8-3の6.9 %製剤の吸入毒性試験結果においては、LC50値は5.7mg/L以上となっております。  次に31ページの毒劇物の判定基準を御覧いただきたいのですが、「2.毒物劇物の製 剤の除外に関する考え方」の(1)の(1)において、経口投与の場合「2,000mg/kgの投与 量において使用した動物すべてに投与物質に起因する毒性徴候が観察されないこと。」 となっております。経口投与に関する劇物除外基準と横並びで考えますと、吸入毒性試 験についても5.0mg/Lで投与した動物すべてに、投与物質に起因する毒性徴候が観察さ れないということになります。配付資料には記載されておりませんけれども、5.7mg/L で5匹中1匹に本物質に起因する死亡が見られております。6.9%製剤を劇物から除外 するかどうかということについて、投与限界において1匹死亡しておりますので毒性徴 候が見られているということで、調査会では製剤は除外できないという御意見を頂いて おります。したがいまして、調査会といたしましてはピラクロストロビンについて、原 体とそれを含有する製剤を劇物とすべきであるという御意見を頂いております。御審議 をよろしくお願いいたします。 ○井村部会長  ちょっと分かりにくかったと思うのですが、櫻井先生、先ほどのお話はこの点だろう と思いますけれども、ちょっと御説明いただけますか。 ○櫻井部会長代理  まず今の6.9%製剤の問題に絞って御説明いたしますと、LC50値としては4時間で 5.7mg/Lより大きいと。これは5.7だけでやっているわけでございますが、その際5分 の1という死亡がありましたので、今の新判定基準の2枚目、31ページの(1)の(1)に 抵触してくると。実際は、この10分の1程度であれば全く問題ないというふうに一応申 し合わせているわけでございます。10分の1ということは10mg/L以上であればという ことになりますが、事実上そういう実験はできなくて、この実験系で最大の投与濃度で ある5.7mg/Lで実験をやっていると。そういう場合に投与量、投与濃度の限界において 安全が確認されたものについては、当該経路における急性毒性は現実的な危害のおそれ がないものと考えることとしております。例えばこれは経口ですが、200の10倍の2,000 で使用した動物すべてに投与物質に起因する毒性徴候が観察されないことと申し合わせ ておりますので、この場合吸入ですからこの例に直接は当てはまりませんけれども、そ れを類推すればやはり5.7でもすべてに毒性徴候が見られないということが条件になっ てまいりますが、それには当てはまらないと。1匹死んでおりますので、除外するとい う判断はできないという結論になったと。先ほどの事務局の御説明と同じことを繰り返 してちょっとしつこいようですが、そういうことでございました。 ○井村部会長  いかがでございましょうか。ただいまの事務局と櫻井先生からの御説明に対して、何 か御質問がございましたらどうぞ。よろしゅうございますでしょうか。やはり吸入毒性 における劇物の除外規定のきちんとしたものを考える必要があるかなという気がしてお りますが、差し当たって我々が今持っているルールからするとそういう心配もあるの で、この製剤を劇物から除外することについてはやはりちょっと問題があるだろうとい う調査会の結論だったと思います。その調査会の結論をそのまま部会で認めてよろしゅ うございますでしょうか。その辺の判断はよろしゅうございますか。ありがとうござい ました。それではそのようにさせていただきまして、これは劇物として扱うということ にさせていただきます。どうもありがとうございました。  それでは議題5に移らせていただきます。あとの三つはかなり反応性の強い化合物が 出てまいります。それでは議題5について事務局の方から御説明をお願いいたします。 ○事務局  フルオロスルホン酸について御説明させていただく前に、これから御審議いただくフ ルオロスルホン酸、三塩化チタン、六弗化タングステンの3物質を御審議いただくに至 った経緯について御説明させていただきます。これら3物質については、国立医薬品食 品衛生研究所において急性毒性試験を行ったものでございます。危険物輸送に関する国 連勧告というものがございますが、これらの物質はこの国連勧告において腐食性物質、 毒性高圧ガスに指定されておりまして、日本では現在毒劇物に指定されていないもので すから、毒劇物への該当性を調査するために国で試験を行ったものでございます。  それではまず議題5のフルオロスルホン酸の試験についてでございますけれども、資 料5により御説明させていただきます。フルオロスルホン酸は現在有機化合物の合成反 応の触媒に使用されております。硫酸より強酸でありまして、極めて腐食性の高い無色 の発煙性の液体で、水、水蒸気と反応して毒物の弗化水素が発生いたします。  資料の23ページにございますように、急性毒性試験についてはコーン油で懸濁液を作 成しましたが、作成直後より発熱を伴って反応し、試料の調整が困難で経口投与が不可 能であったため、試験を実施しておりません。資料にはお示ししておりませんが、急性 経皮毒性試験については原液を1,000mg/kgで1匹に投与したところ、塗布面の表皮と反 応し燃焼しているような状態を示しまして、5分後に死亡いたしました。原液100mg/kg を3匹に投与したところ3匹とも死亡は認められなかったものの、皮下の筋肉や脊椎ま で腐食作用が認められました。試験結果から判断いたしますと、LD50値は100mg/kgと 1,000mg/kgの中間にあると考えられます。皮膚刺激性試験については経皮毒性試験の結 果から強い皮膚腐食作用がございましたので、動物愛護の観点もあり試験を行っており ません。経皮毒性試験の結果、LD50値は100〜1,000mg/kgの中間では毒物か劇物か判 断し難いわけでございますけれども、本物質が水や水蒸気と激しく反応して毒物の弗化 水素が発生することも考慮に入れまして、調査会といたしましてはフルオロスルホン酸 とその製剤を毒物とすべきとの御意見を頂いております。御審議よろしくお願いいたし ます。 ○井村部会長  ありがとうございました。御質問はございますでしょうか。どうぞ、森田委員。 ○森田委員  フルオロスルホン酸はとても毒性が強いので、全体として毒物という判断はいいと思 うのですが、これを含有する製剤というのは実際にはあり得るのでしょうか。これほど 反応する試薬を製剤として使うようなケースというのは実際にあり得る…。 ○事務局  事前に流通調査を行いましたところ、原体しか流通しておりませんでした。ただ、法 令でこの物質を指定いたしますときには、その混合製剤が出たときにも対応できるよう に製剤も含めて指定を行うよう考えております。 ○井村部会長  かなり恐ろしい化合物でございますが、櫻井先生、調査会の方で何か…。 ○櫻井部会長代理  特段ございません。先ほどの事務局の御説明のとおりで、これはやはり毒物だと。 ○井村部会長  どうもそういう印象を強く受けます。それでは毒物という判断でよろしゅうございま すね。ありがとうございました。それでは次もまた非常に反応性の強い三塩化チタンな のですけれども、議題6について御説明をお願いいたします。 ○事務局  資料6により御説明させていただきます。本物質はポリオレフィン重合用触媒に用い られているものでございます。暗紫色の潮解性結晶で、常温で徐々に分解する不安定な 物質でございますので、試験は20%の三塩化チタンの塩酸溶液を使用しております。こ の塩酸溶液の塩酸濃度は2〜3%となっております。  資料の26ページにございますけれども、急性経口毒性試験の結果はLD50値は130mg /kgとなっております。ただ、このLD50値は原体換算のLD50値ではなく、20%製剤 のLD50値でございます。経皮毒性試験の結果はLD50値は2,000mg/kg以上でございま すが、激しい皮膚の腐食性が見られております。皮膚刺激性試験については動物愛護の 観点から実施しておりません。以上の急性経口毒性試験の結果から、調査会においては 原体のLD50値はもっと小さくなると考えられるので、原体とその製剤は毒物とするこ とが適当であるとの御意見を頂いております。御審議よろしくお願いいたします。 ○井村部会長  ありがとうございました。何か御質問はございますでしょうか。これも櫻井先生、お 願いいたします。 ○櫻井部会長代理  この130というのが20%塩化チタン溶液としてという実験のデザインになっているこ とから、仮に5分の1だと26になるわけですが、そのようにはいかないかもしれません けれども、毒物の判定基準である50mgと相対的に考えて、それから極めて激しい皮膚の 腐食性があるという点から、やはり毒物と判定しようということだったと思います。 ○井村部会長  ありがとうございました。いかがでしょうか。これは毒物ですよね。数値をうんぬん するのが非常に難しくなってくるのですけれども、こういうデータが出ておりますし、 その性質そのものから考えて毒物という判定をしてよろしいかと思いますが、それでよ ろしいでしょうか。どうぞ、森田委員。 ○森田委員  チタンの塩化物の類塩に四塩化チタンがあると思うのですが、それとの並びはどうな っていますでしょうか。 ○事務局  四塩化チタンについては現在のところ毒物劇物に指定しておりませんけれども、毒物 劇物の判定をするのに十分なデータが現在まだ集まっておりませんで、今回は三塩化チ タンのみ御審議いただいております。 ○井村部会長  御満足いただけましたでしょうか。 ○森田委員  いいのだと思いますが、多分チタンの安定な化学形は四塩化チタンで四価の方だと思 うのですけれども、三塩化というのはちょっと珍しいチタン化合物ですね。そのせいで 毒性が強いかどうかというのがちょっと気になったものですから。 ○井村部会長  ほかに御質問はございませんでしょうか。これは毒物でよろしゅうございますか。で は毒物という取扱いをさせていただきます。残ったのが最後の一つでございますけれど も、議題7の六弗化タングステンでございます。事務局からこの御説明をお願いいたし ます。 ○事務局  資料7により御説明させていただきます。六弗化タングステンは半導体の配線原料に 使用されております。無色で吸湿性の不安定な気体で、加水分解により毒物の弗化水素 が発生いたします。本物質はガスであるため、吸入毒性試験のみを行っております。  資料の29ページにございますが、1時間の暴露でLC50値は雄が105.3ppm、雌が184.7 ppmとなっております。本物質は空気中の水分と反応して、1molの六弗化タングステン から6molの弗化水素を生成することから、六弗化タングステンの毒性は空気中の水分 と反応した毒物の弗化水素によるものが大きいと考えられます。以上のことから、調査 会においては本物質の原体とその製剤を毒物とすることが適当であるとの御意見を頂い ております。御審議よろしくお願いいたします。 ○井村部会長  ありがとうございました。御質問はございますでしょうか。森田委員、どうぞ。 ○森田委員  核兵器の原料ですので、多分核の管理物質の一つになっている…、そうではないです ね、タングステンですね。失礼しました。 ○井村部会長  ほかにございますでしょうか。これは弗化水素が出てまいりますし、今の御説明のと おり毒物という判断をしてよろしゅうございますね。それではこれは問題なく毒物とい う取扱いをさせていただくことにいたします。  以上で本日用意された議題が全部終わったわけでございますが、委員の方々から特に 何か御意見等がございましたら拝聴いたしたいのですが。百委員、どうぞ。 ○百委員  ちょっと聞き漏らしてしまったのですが、議題3の物質の用途を教えてください。 ○井村部会長  事務局、いかがでしょうか。 ○事務局  三番目の物質でございますか。これは電子機器の液晶となっております。 ○百委員  ありがとうございます。 ○井村部会長  ほかに何か御意見なり御質問ございますか。よろしゅうございますでしょうか。何か 事務局の方から連絡事項がございましたらお願いいたします。 ○事務局  本日御審議いただいた件については、9月22日の薬事・食品衛生審議会薬事分科会へ 報告する予定でございます。また、本日の議事録については事務局において取りまとめ をした後、先生方に御確認していただき公開の手続を進めさせていただきます。また、 次回の部会の日程でございますが、現時点では未定でございます。改めて日程調整をさ せていただきますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。 ○井村部会長  ありがとうございました。先ほどもちょっと話題になりましたように、判定をすると きに今のルールでは非常に判定しにくいということが時々出てまいりますが、その点に ついて事務局の方で、例えば吸入毒性の除外規定などについてもう少しきめ細かく検討 するとか、そういう御予定はございますでしょうか。 ○事務局  調査会において、吸入毒性の観点から劇物を除外する基準について若干議論がござい ます。経口毒性の場合は1回飲んでしまえばすぐに毒性が出るということで今の除外規 定でいいのですが、吸入毒性の場合は4時間もの間細かい粒子のものをずっと吸い続け るという暴露形態はなかなか想定しにくいこともありまして、経口毒性と同じように10 倍値を適用した考え方にするのがいいのかどうなのかという御意見がございましたの で、また事務局の方でその部分については検討したいと思っております。 ○井村部会長  それでは櫻井先生、調査会の方でその点について御検討いただけますか。 ○櫻井部会長代理  これについては既に調査会でかなり議論をしましたが、もう少し明確な条件等いろい ろ準備したペーパー等を基に、さらに調査会での皆様の御意見を十分に頂いた上で調査 会なりの結論ということになるのか、それは調査会で検討するのかどうなのかもあるか と思いますが、もしやれとおっしゃればそれはいたします。  例えば議論の内容について少し追加いたしますと、ある物質は経口のデータで毒物に なっており、今回のこの例のようにある物質の経口の毒性はLD50値で2,000mg以上とい うように非常に低いと。吸入にすると非常に強い毒性が明確に現れてくると。そうする と、基本的には生体内に吸収されれば毒性を発揮するのだから毒物であるという判断、 それを一つの重要な原則としてその物質の真の毒性が毒物であるという考え方が一方に あると。  それからもう一つは、リスクという点から行くとそれプラス暴露の状況を考えてリス クを判定するわけですので、同じ毒物でもこの物質と経口で毒物になったものとのリス クが同様であるかどうかということになると、暴露の確率がどの程度ありそうかという 点でやはり差があるのではないかという考え方もあると思うのです。4時間コンスタン トにそういうものを吸入するような条件が成り立つことは、経口のように何かの間違い で飲んでしまったり、意図的に飲んだり飲まされたりということに比べると、暴露の確 率は低いのではないかと。それを条件を付けずにただ毒物というふうに表に出すことが 適切かどうか。これは吸入によって判断した毒物であるとか、経口によって判断した毒 物であるとか、経口では毒物にならないけれども吸入だと毒物になるとか、そういう情 報があれば非常に役に立つけれども、そうではなく今のような分類の場合には、もしか すると毒劇物の分類に対する迷いと申しますか、それを扱う方の立場でそういう問題が 生ずるのではないかという懸念。実は今このように申し上げているのは私自身の意見な のですが、調査会としての御意見をまとめる立場ですので、今後も皆様方の御意見を十 分集約し議論した上で結論になればいいと思っております。 ○井村部会長  どうもありがとうございました。何か御意見ございますでしょうか。よろしゅうござ いますか。それでは本日の議題はすべて終了しましたので、これでお開きにいたしたい と思います。どうもありがとうございました。                                     ( 了 ) 連絡先:医薬食品局 化学物質安全対策室 室長補佐 江原(内線2426)