03/08/12 厚生労働省独立行政法人評価委員会調査研究部会第6回議事録          厚生労働省独立行政法人評価委員会 調査研究部会                  第6回議事録 日時   平成15年8月12日(火)13:28〜15:26 場所   厚生労働省専用第21会議室 出席委員 五十嵐委員、岩渕委員、大久保委員、黒澤委員、酒井委員、清水委員、      武見委員、田村委員、政安委員、安井委員 1.開会 ○大久保部会長  定刻より少し早いようですが、岸委員以外の全委員がお集まりになっていらっしゃい ますので、ただいまから独立行政法人の評価委員会の第6回調査研究部会を開催させて いただきます。委員の皆様方にはご多忙の中、ご参集いただきまして大変ありがとうご ざいました。  本日の議題は、総合的な評価、これが1番目でございます。2番目に財務諸表に関す る意見、3番目に剰余金の使途に関する意見の取りまとめとなっています。ただし最後 に、(4)その他、といたしまして少し時間をとっていただきまして、今回の評価作業 を通じて今後の課題につきましてご意見をいただきまして、当部会として整理をしてお きたいと考えております。  それでは審議の前に、事務局から何かございますでしょうか。 ○山田政策評価官  お手元に資料5−5というのがお配りをしてあると思います。これにつきましては前 回のときに修正をいただきまして、それをまた再集計をしたものでございまして、すで に結果についてはご自宅のほうに郵送させていただいております。  主な変更点だけご紹介をいたしますと、まず1枚目の栄養研のところにつきまして は、5番目の「社会的ニーズの把握」のところですが、この評価結果のところで赤く なっているところが修正点でございますが、評定をBからBプラスに、それから19番の 「研究協力の推進」がAからBプラスに、23番の「職員の人事に関する計画」がAから Bプラスへと修正をされております。  それから2枚目の産業安全研究所でございますが、10番の「産業安全に関する国内外 の科学技術情報、資料等の調査」がCプラスからBです。それから18番の「運営費交付 金以外の収入の確保」のところがBからBプラスに、19番の「予算、収支及び資金計画 」のところがCプラスからBへと修正がなされております。  それから産業医学総合研究所でございますが、7番の「基盤的研究」のところがBプ ラスからBへ、17番の「労働衛生分野における国内外の若手研究者等の育成への貢献」 がBからBプラスへと修正がなされております。以上でございます。  それからもう1点でございますが、起草原案につきましては各起草委員の方々に作成 をいただいたわけでございますが、昨日、起草原案としてファックスをさせていただい ているところでございます。枚数が多いために職場あてに送らせていただきましたの で、昨日あるいは本日の午前中に職場におられなかった委員の方にはまだお目通しをい ただいていないところでございまして、それはご容赦をいただきたいと存じます。  以上、2点でございます。 2.議事 (1)総合的評価について ○大久保部会長  ありがとうございました。それでは審議に移らせていただきます。まず総合評価につ いてでございますけれども、総合的な評価書、財務諸表に関する意見、及び剰余金の使 途に関する意見の起草につきまして、起草委員の方々にはご多忙の中をご尽力いただき まして本当にありがとうございました。今回は、初めに総合的な評価について審議をさ せていただきます。  総合的評価書起草(案)につきまして、第4回の部会のときに、報告をいただく起草 委員を指名しておりましたので、初めに各法人の起草(案)についてご報告いただきま して、そのあと3法人まとめて審議をしたいと思います。  まず国立健康・栄養研究所につきましてご報告をいただきたいと思いますが、各報告 者の報告時間はおおむね15分以内でお願いをいたします。  それでは五十嵐部会長代理、よろしくお願いいたします。 ○五十嵐部会長代理  国立健康・栄養研究所についての総合評価の評価結果について、ご報告申し上げま す。お手元に資料がございますが、第1ページ目の「平成14年度の業務実績」というの がございますが、「評価の視点」は、多分3研究所ほとんど変わっていないと思います ので、これについては省略させていただきます。昨年度の評価の過程で生じたいろいろ な作業の中から、今後の課題だとか総務省政策評価・独立行政法人評価委員会から当委 員会に提案された第1次・第2次意見等を参考にして、一応ここに書いてあるように (1)から(9)までの新たな評価方針を加えて評価を行ったということでございます。これ は3研究所、多分全部共通した事項だと思いますので、私が最初ですので紹介させてい ただきました。  そのページの下のほうにございますが、「14年度の業務実績全般の評価」でございま すが、そこにありますように前年度以上に、平成14年度につきましては、利点を利用し て組織をフラット化するとともに、栄養所要量の改定だとか、社会問題化しております いわゆる健康食品対策等に向けて、新たな業務を機動的に立ち上げたと。それから、国 際的な見地から最新の技術を導入するなど、業務全般にわたり、新しい取り組みを積極 的に行ってきたということがございます。  当研究所の設置目的を達成するために、業務の中心になっております調査研究業務の 実績に関しましては、今継続中のものにつきましては今後の実績を見ませんと何とも言 えませんけれども、個別項目に関しましては、その評価結果が出ておりますように、全 般的に行政ニーズ、あるいは社会的ニーズを十分に的確にとらえた効果的なものであっ たと評価できる、というふうに記載しております。  それから次の段落ですが、栄養改善法に基づいて行います国民栄養調査の集計業務に つきましても、調査項目は増えておりますが、中期目標期間中の目標であった集計の早 期化ということに向け、停滞することなく着実に前進しておるということで、公表を早 く行うということに向かって成果があったというふうに考えられると思います。  それから職員のインセンティブの向上につきましても、LANを通じた個人別の業績 登録システムを活用した理事長の面接による評価とか、その結果を研究費に反映させる とか、所内での公募制の奨励研究制度の活用などに工夫が見られるということでござい ます。  財務につきましてはいろいろございますが、全体的にいいますと、当研究所の目的で あります公衆衛生の向上及び増進に資するものであり、適正に業務を実施したと評価で きるというふうに記載をいたしました。  それから次に、2番目が「具体的な評価内容」でございます。(1)でございます が、「業務運営の効率化」ということでございますけれども、これにつきましては、国 際産学協同研究センターの設置によります成果の幅広い還元、機動的な研究推進の中軸 となるプロジェクトリーダーによる行政関係者及び現場の栄養士、管理栄養士双方に連 携強化をするということと、これ、栄養所要量が最近変わりまして食事摂取基準になっ ておりますが、この策定のための系統的レビューを行うということで、ニーズを先取り して新しく新規プロジェクトを構築する。あるいは任期付の研究員の長所・短所はござ いますが、採用を行って有効な取り組みを行ってきた、ということがございます。  その次にもありますように、創造的特別基礎奨励研究費の研究制度を活用して、研究 員のインセンティブを高めているということがございます。  その他、いろいろございますけれども、研究施設の利用につきましては、この研究所 は独立の建物を持っていないという制約がございますが、その中で市民へのプール施設 の提供による健康影響調査の実施、あるいはいろんなことをして弾力的に運用していこ うという工夫が見られると。ヒューマンカロリーメーターを初めとする主要な設備の共 同利用の推進が今後の課題というふうに考えております。  それから(2)でございますが、「国民に対して提供するサービスその他の業務の質 の向上について」でございますが、調査・研究に関する業務内容。ここにありますよう に、これは今までもお話ししておりますが、行政ニーズ、あるいは社会ニーズに則した 研究を行っていくと。そのために、目的であります国民の健康の保持・増進に資するた めにこういうことを行っているわけでございますが、着実に実施をして、概ね前年度以 上の実績があったと認めております。  それから社会ニーズの把握につきましても、いろいろなことがございますが、栄養士 会とかNPOとか、産業界にもいろいろ講師を派遣するということで、着実に進捗をし ております。しかし単発的なことではなくて、今後、継続性に留意して対象の拡大も検 討すべきではないかというふうに考えております。  それから重点的調査研究ですが、エネルギー消費量の測定だとか解析のための日本で 初めてのヒューマンカロリーメーターを用いるというようなことがございますが、ある いは世界的な標準法になってきております二重標識水による研究方法によって、より精 度の高い研究を進めると。  それから、食品成分表の改定に合わせて国民栄養調査データ処理・解析システムを充 実したこととか、健康食品の安全性・有効性評価など、アップツーデートな調査、ある いは情報提供をしてきたことなど、有効な取組があったのではないかと考えておりま す。  それから基盤的な研究につきましては、ここに若干書いてございますが、生活習慣病 の遺伝子要因と食事・運動との関連など、所内公募によって将来発展性のある課題研究 の推進、あるいは生活習慣改善のための自己学習システムの開発など、これは社会的ニ ーズの高い課題でございますので、こういうのを含めた学術発表と社会一般への普及の 双方をにらんで柔軟に取り組みを進めていくと。今後、自己学習システムの一般市民レ ベルへの早期普及だとか、中長期的な観点での先見的研究への一層の取組を期待したい と思っております。  そうしたことにつきましては、いろいろ今まで実ったこともございますし、ここにあ りますように、栄養改善法に基づく調査だけではございませんで、特別用途食品である とか、あるいはそこの次にありますように、現在行っています保健機能食品などについ て消費者にアドバイスを行うアドバイサー養成制度なども立ち上げているわけでござい まして、これにつきましても今後の成果を見ていきたいと思いますし、健康食品にかか わる安全情報ネットワークの構築など、いろんな積極的な取組がなされていますので、 こういうわけで今後の成果というもの注目していきたいと思っております。  その次にまいりまして、4ページ目でございますが、調査研究成果の普及及び活用で ございますが、学会発表、論文発表等につきましては、特にインパクトファクターの高 い欧米誌への掲載が多いなど、水準も高い点が高く評価できるということでございま す。  それから、インターネット等による情報の発信につきましては、前年度と比べてホー ムページの内容が充実しまして、かなりよくなっているというふうに判断いたします。 機関誌、マスコミ等を通じた多面的な情報発信もなされておりまして、講演会等への講 師派遣等も積極的に行っていると。今後につきましては、対象者を拡大するとか地方で も開催するとか、いろんなことがございますし、中高生に対する見学機会の提供などは いい例でございますが、今後はそれは戦略に基づいて普及方策を考えて、産業界、消費 者団体、一般国民への普及を推進していくことが期待されるということになります。  その他、知的財産につきましては1件の出願でございますが、知的財産の還元という 意味では、健康づくりを行っております栄養士などへの技術支援、相談等にも配慮をし ていくことが重要であるということになって、今後の課題ということにもなっていま す。  その次、外部機関との協力の推進でございますが、これにつきましても、いろんな外 部機関との協力を推進しているわけでございまして、特にこれにつきましては評価でき るというふうに思っております。  それから若手研究者等の育成につきましては、特別研究員規程の見直しによりまし て、より現場に還元できる形で、多くの若手研究者の育成が図られるようになって、大 学、大学院などとの連携のための制度創設などをこれから行うなど、それから外部に対 し、人材の育成や協力に努めるとともに、これが研究従事者にとっても活力になってい る点が評価できると思っております。  その他、研究協力につきましては、アジア諸国、WHOなどの国際機関などとの国際 協力及び産業界との連携を重視した積極的な取組を行ってきたことは、評価できるので はないかと思います。  その次にいきまして、最後、「財務内容」でございますが、一応私のほうから簡単に 紹介しておきますが、2段目にありますように競争的研究資金、受託研究の収入につい ては、広く多領域から獲得しており、その額も前年度を大幅に上回り、運営費交付金収 入の3割以上に達しており、研究の質の高さと信頼性を認知されていると言えると。た だし、自己収入につきましては、それにかかわる費用を適切に管理し、経費節減に取り 組むことが望ましい、というような評価が出ております。  またその他、人事あるいは設備、施設の整備も計画通り実行されておりまして、人事 につきましては国立公衆衛生院から組織の一部が移管されたことに伴いまして、組織の 再編成というようなことも行いまして、任期付の研究員を6名採用するなど、、現在ま でのところは特に問題はないのではないかというふうに考えております。  そこに書いてございますが、国際産学共同研究センターにかかわります経費等につき ましては、目的積立金の取りくずしなどによって工夫をしておりますが、今後は予算執 行にかかわりがないような経費につきましては、予算計画に反映させて、予算と執行に 継続的な乖離が生じないように配慮をする必要があるだろうというふうに考えておりま す。  なお、最後でございますが、積極経営は評価できるが、新規導入事業等について中期 的に財務への見通しを十分検討していくことが今後の課題ではないかと思っておりま す。以上でございます。 ○大久保部会長  どうもありがとうございました。それでは次に産業安全研究所でございますが、これ は私、大久保が報告をさせていただきたいと思います。  まず「平成14年度の業務実績」につきまして、「評価の視点」でございますけれど も、これは先ほど五十嵐部会長代理がご報告されたとおりでございますので、これにつ きましては省略をさせていただきまして、2の「平成14年度業務実績全般の評価」から 報告をさせていただきます。1ページの下でございますが、平成14年度は独立行政法人 として主体的な業務運営が求められるとともに、2年目を迎えまして、平成13年度の業 務実績評価におきまして指摘された事項につきまして改善が求められました。  そのような中で、平成14年度は、平成13年度の評価委員会からの指摘事項も踏まえま して、災害調査等、研究外業務への積極的な対応が可能になるように、内部進行管理の 改善が図られるなど、新しい取組がなされました。2ページでございます。また、業務 の中心であります調査研究については、継続中の調査研究の今後の成果に留意が必要で はございますけれども、個別項目に関します評価結果に見られますように、全般として ほぼ適切に行われているというふうに評価をいたしました。また、厚生労働大臣からの 要請等に応じて引き続き迅速かつ的確に産業災害の調査も実施をしておりまして、これ らを踏まえまして、行政通達などにも有効にこれが反映をしております。  以上を踏まえますと、平成14年度の業務実績につきましては、全体として当研究所の 目的であります労働者の安全の確保に資するものでありまして、適正に業務を実施した と評価できますが、以下の3点に留意をしていただく必要があるということでございま す。  その第1番目でございますが、これは平成14年度の業務実績は我が国の労働者の安全 に関するプロジェクト研究や基盤研究に加えまして、労働災害の原因調査など一定の評 価がなされるものでありますが、当研究所の研究内容が国民にとっての具体的なメリッ トがより一層提供できるようになるように、一層の努力をしていただきたいということ でございます。  第2番目でございますけれども、独立行政法人創設の目的の1つでございます弾力的 かつ効果的な業務運営や、これに関する事項につきまして、平成13年度に引き続きまし て努力を傾注しておりますが、限られた資源の中で、年々増えます調査、研究ニーズに 的確に対応するためには、より効率的な業務運営が必要となるという意見もございまし た。このような意見を踏まえまして、外部資金の積極的な獲得などを通じて、より効率 的な業務運営を図っていくことをお願いをします。  第3番目でございますけれども、調査研究結果の成果の普及など国民に対します情報 提供の在り方につきましては、ホームページの更新あるいは法人の紹介、CDの作成な ど、平成14年度に新たな取組もされております。これらにつきましては、今後、中期目 標を達成するために、中期計画に沿って業務を運営していく中で逐次評価を行っていた だいて、見直すことが必要だというふうに考えております。  なお、中期目標に沿った具体的な評価結果の概要につきましては、次のとおりでござ います。  まず「業務運営の効率化」につきましてでございますけれども、業務運営の効率化に つきましては、業務運営体制、内部進行管理の進捗が認められまして、中期目標に沿っ た取組が行われております。業務運営体制に関しましては、組織体制の見直しが進めら れるなど、一層の効率的な業務運営がはかられておりまして、中でも複数の研究グルー プにまたがる調査研究を、平成13年度の4課題から6課題にしたこと。第2番目でござ いますが、任期つきの研究員の採用などの努力がされていること。などでございます。  なお、内部進行管理につきましては、当研究所の重要な任務の1つであります災害調 査等の研究外業務への貢献度も勘案した研究予算の配分等、バランスのとれた研究業務 の推進等に向けたインセンティブ付与の仕組みが構築されておりまして、これが有効に 機能しているように考えます。今後、このような内部管理改善の取組が実際に当研究所 の目的に添った業務運営に結びついてくことが、期待されるところであります。  さらに、経費の削減につきましては、施設整備管理業務、具体的には警備ですとか清 掃等でございますが、3ページでございますが、これの契約方法等の見直し等を行いま して、経費削減を図っております。  また、幅広い領域から競争的な外部研究資金に積極的に公募をしていらっしゃいます けれども、実績は今のところ5件となっております。  さらに、研究施設、研究設備の共同利用等につきましては、共同研究室も10件から12 件と増加をしておりますし、要員、スケジュール等が大変限られている厳しい状況下に おきまして、施設貸与等についても、もう3件行っておりまして、着実に研究支援の効 率的な、有効な活用を図っているというふうに評価をいたします。  2番目の「国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上について」でござ います。まず第1番目に、調査研究に関する業務内容でございますが、当研究所の目的 であります労働者の安全の確保への寄与という点からは、適正に実証されているという ふうに評価をいたしました。  労働現場のニーズの把握につきましては、産業安全に関する情報交換会の開催、労働 安全・衛生コンサルタントなどの有識者の講演、討論の機会等が設けられたほか、産業 安全関連団体、学会等、56の各種の委員会への委員の派遣、委員会を通じた現場のニー ズの把握などの実績を着実に上げております。労働現場のニーズの把握は、現場に対応 した研究を主眼とする等、研究所にとりましては非常に重要なことであります。したが って、関係機関との連携を一層図ること等、より効果的なニーズの把握に積極的に努め ることが重要であるというふうに思います。  また、機関委員会に委員として多数出席をしているために、業務に対する影響につい て懸念をするという意見もございましたことから、今後、機関委員会の質的な内容につ いて精査をしつつ行うことについて留意が必要というふうに考えます。  また、プロジェクト研究につきましては、中期計画に基づき、行政ニーズ及び社会的 ニーズを踏まえた研究活動を実施し成果を上げているとともに、当研究所の外部専門家 による研究評価も適切に行われて、これを研究管理に反映をさせております。  さらに基盤研究でございますけれども、中期計画に基づいて研究活動を実施するとと もに、年度途中にも必要に応じて年度計画になかった研究を積極的に立ち上げて、34課 題の基盤的研究を実施しているところも評価をしております。  なお、研究については、その費用対効果ですとか、あるいは国民ニーズを把握すると ともに、将来的な成果についても、より定量的に客観的に説明することが求められると 思います。  上記の研究の他方、当該法人は行政機関等からの要請に対応して迅速かつ的確に産業 災害の調査をすることが求められておりまして、これを着実に実施したことは高く評価 をするところであります。これらの結果でございますけれども、行政通達などに有効に 反映され、同種災害の防止に寄与をしております。なお、国内外の労働安全に関する基 準の制度改正等に際しましては、当該法人の研究成果を各種委員会において提供して、 労働者の安全、作業快適性の改善等の向上に多大の貢献をしているというように評価を しておりますし、さらに国際的にもISO等の国際規格に十分反映して、国際的な貢献 も果たしているというふうに評価をしております。  また、産業安全に関する国内外の科学技術情報、資料等の調査につきましては、各種 業務活動の中で国内外の安全にかかわる情報、資料の収集に努力をしているほか、行政 からの要請のあった3件につきまして調査を行ってご報告をしていらっしゃいますけれ ども、行政からの要請に対応するだけでなくて、国内外の産業安全に関します情報、資 料の収集を積極的に行うとともに、国民一般に対するよりわかりやすい方法等を行いま して、積極的な社会貢献についても、今後、応えていただく必要があるというふうに考 えます。  4ページの2番目でございます。調査研究成果の普及及び活用でございますけれど も、これも中期目標に照らして適正に実施されているというふうに考えます。国内外の 学会での発表、論文発表等に関しましては、中期目標を達成するためには十分なもので ありまして、活発な研究発表活動をしておりまして、質的な面に関連いたします学協会 論文賞等を受賞するなど、質的な面でも高く評価をすることができます。  また、研究成果を安研ニュース、研究報告、安全資料等の中で発信をするとともに、 技術専門誌、雑誌、講演、ホームページなど幅広い手段により、その成果の普及を行っ ていることは評価をできます。なお、産業分野における安全問題に、国民の関心が最近 非常に高いので、さらに一層、国民へのわかりやすい成果の普及にぜひ努めていただき たいというふうに思います。  さらに、知的財産の活用促進に関しましては、一般的に特許権の取得が大変困難な分 野でございますけれども、当研究所の研究成果の社会的な活用という重要性にかんがみ まして、その法人化後の出願件数が着実に増加をして、出願5件、実施3件の成果を得 ているなど、積極的にこれに取り組んでいるところは高く評価をするところでございま す。今後、研究所の業務の性質を踏まえつつも、その成果が期待されるところでござい ます。  次に、外部機関との協力の推進でございますが、若手研究者等の育成への貢献につき ましては、研究員等の受け入れ、研究所職員による他機関への講演や技術支援、労働研 修所、安全衛生教育機関、災害防止団体等における研修講師としての派遣等の協力によ り、直接的な安全にかかわる担当者の育成を実施しているところは評価をできるところ でございます。また国内外の研究機関との研究交流、国内民間機関、大学等との共同研 究を積極的に行っておりまして、関係者との研究協力につきましては国際研究協力協定 に基づく派遣及び新たな協定の締結などを含め、成果を得ている点は評価をできます。 今後は、その成果、内容につきまして具体的に明らかにしますとともに、一層の取り組 みをされることを期待をしております。  次に、「財務内容の改善等について」でございますけれども、簡単にご報告申し上げ ます。運営費交付金以外の収入の確保につきましては、競争的研究資金の獲得に難しい 研究分野でありますけれども、運営費交付金以外の外部資金の獲得がやや少なく、今 後、この面における積極的な活動を実施していくことが必要と考えます。また、自己収 入につきましても、それにかかわる費用を適切に管理し、経費削減に取り組んでいただ くことが望ましいと思います。また、職員の採用、人事の計画については、計画どおり 適正に実施されているというふうに評価をしてございますが、今後、予算の執行が相当 程度乖離している事業の経費につきましては、予算計画に明確に位置づけまして、予算 の執行が長期にわたり乖離が生じないように配慮をする必要があるというふうに考えて おります。  以上、産業安全研究所に関連するご報告をさせていただきました。  最後に、産業医学総合研究所につきましてご報告いただきたいと思います。安井委 員、よろしくお願いいたします。 ○安井委員  産業医学総合研究所の業務実績の評価結果について、ご報告をさせていただきます。  1ページ目の1の「平成14年度業務実績」、(1)の「評価の視点」につきまして は、お2人の先生方と全く同じ理由で省略をさせていただきたいと思います。  下のほうの(2)以下でございますが、ここは全般的な評価について書かれている部 分でございますが、これまた他の研究所と似たような形になっておりますが、平成13年 度の業務実績の評価において指摘された事項の改善等を含めていろいろと、どのような ことが行われたか評価をしたということでございます。平成14年度に関しましては、ま ず国際研究交流情報センターを設置することとして、その新たな組織ということになっ ておりますということが大きいこと。さらには、個人の業績評価システムの導入により まして職員の意識改革といった新しい試みがなされているということが、評価できるの ではないかということでございます。全般といたしまして、業務の研究につきまして継 続中の調査研究、あるいは個別項目の評価等を見まして、ほぼ適切に行われているとい う評価をさせていただいております。  その次でございますが、また厚生労働大臣からの要請に応じまして、問題になってお ります化学物質ばく露等といった災害の状況と原因、あるいは12件の災害調査等を迅速 かつ的確に実施されているということでございますし、さらに研究成果を行政に提供し てその規則改正に資すると、そういった寄与もなされているということで、じん肺がそ のような例であろうかということを指摘させていただいております。  これらを踏まえまして、平成14年度の業務実績につきまして、全体としてはその目的 であります労働者の健康の確保ということに資するものであり、適正に業務を実施した と評価できるけれども、若干、今後の改良点といたしまして次の点を指摘させていただ こうというスタンスになっています。  まず、(1)でございますが、平成14年度の業務実績はとにかく評価できるのだけれど も、やや中長期的に今後何をするかということをそろそろお考えいただけないだろう か、ということを指摘させていただいております。その視点でございますが、この労働 者の健康確保というものが、国民のニーズに従って今後どうなっていくかということが もう少し的確に把握できるのが必要ではないかということ。それから、この国際的視点 というその字面は国際的視点なのですけれど、いろいろ中身があるのではなかろうか と。特にこのセンターの活動を大体どちらの方向に向けていくのかといったようなこと を、そろそろ具体的にお考えいただけないだろうということで、そのことを指摘をさせ ていただいております。  それから2番目でございますが、独法化して弾力的・効果的な業務運営ができるよう になって、それはかなり努力が行われているということではございますが、さらにより 効率的な業務運営が必要なのではないかという意見も一部にはありました、ということ でございます。では具体的に何かと申しますと、ほかの研究所に比べまして、どちらか というと任期付きの研究員といったところをもう少し強化するほうがいいのかもしれな い。いずれにしても、これは一例でございまして、そちらにあまりとらわれていただき たくはないのでありますが、その次に書いてございます「弾力的な人事施策」というこ のキーワードをむしろお読みいただいて、より効率的な業務運営という方向に向かって いただけたらという指摘をさせていただいております。  それから、調査研究等の普及啓発でございますが、学会発表、学術雑誌への論文発表 等、量、質とも高い水準であると。それから、それ以外の部分でございますが、研究所 の一般公開あるいは近隣小学校への協力等、いろいろな新たなな取組もなされておりま すけれども、規模的に見ても、また対象にしても、さらに広範な取り組みを行うことが 可能なのではないかということを指摘させていただいておりまして、その中期目標を達 成するために適宜評価を行い、見直すことにより、より適切な対応をしていただきた い、ということを指摘させていただいているということでございます。  それで、その2ページの下の2で、「具体的な評価内容」でございますが、今も若干 ご説明いたしましたが、確かに文章はこうなっておりますが、その裏を含めまして少し ご説明をさせていただきたいと思います。  まず(1)の「業務運営の効率化」でございますが、これは業務運営体制、あるいは 内部進行管理、あるいは外部資金の獲得、あるいは経費の削減と、こういった4項目に ついて、とにかく行われていること、一定程度で行われているということをまず指摘さ せていただいておりまして、それから研究グループの構成等でございますが、そのグル ープ別の組織編成が機能して、重点研究領域特別課題の約8割がこの枠を越してプロ ジェクトチームで動いていると。これは評価すべきことではありますが、ある意味で当 然だというところもないわけではないだろうと。それから次の国際交流情報センターに 関しましても、評価すべきであるけれど、はっきりいえば中身がこれから問題であろう ということだと思います。  それから内部進行管理につきましては、内部評価委員会の存在はこれは評価すべきで あろうということでございますし、次のページにまいりまして、特に個人業績のデータ 登録管理システムを導入していくということは、個人の意識の向上に多分有効であろう ということを指摘させていただいているということでございます。同時に、こういった 厳しい評価システムというのができてきますと、逆にある意味では落ちこぼれあたりの 圧制がこわいところであります。そういうことはなかなか書けませんが、やはりそうい うものに対する心配りもおそらく同時に重要だろうということだろうと思われます。  それから経費の削減に関しましては、光熱水料の削減、あるいは競争入札の徹底化等 で、経費削減が行われていることも十分に評価できるし、また幅広い領域からの外部的 競争資金というものを21件といった形でかなり確保がされているということは評価され るだろう、ということでございます。  それからその次でございますが、その研究施設あるいは設備の共同利用に関しまして は、これは多分いろいろと問題があるところではないか、ということを踏まえた記述に なっているわけでございますけれども、日本全体から見れば、確かにこういったものは 公開をしていろんな人に使ってもらうというのが効率的なのかもしれないのですが、 いったいこの研究所の設立の目的はどうかということを考えますと、何らかの戦略性が 必要なのではないかという指摘をさせていただいています。その理由は、そういった施 設を単に賃貸しをして、しかも研究員がそのメンテに、あるいはそのお世話をするのに 時間をとられるというようなことでは、多分トータルにはマイナスであって、そういっ た利用が将来の共同研究につながるような、何かこう戦略的なうまい設備の運営方法を 考えていただいたらいかがか、といったような指摘をさせていただいているわけであり ます。  それから(2)でございますが、「国民に対するサービスの質の向上」でございま す。まず、調査研究に関する業務内容でございますけれども、とにかく目的であるその 労働者の健康確保に寄与しているということを押さえさせていただいた上で、労働現場 のニーズの把握に対しましても、協議会を開催したり、情報交換が行われて、現場ニー ズの把握に取り組んでいるということは書かせていただいております。  それからプロジェクト研究に関しましても、行政ニーズあるいは社会ニーズに合致し た研究活動を実施しているということを書かせていただいております。  さらにその基盤研究につきましても、中期計画に基づき、行政ニーズあるいは社会ニ ーズに合致した研究活動を行っているということでございますが、このあたりは次の下 のほうの記述ともまた絡むのでありますが、おそらく基盤研究というのは、研究所が持 続的に発展していくためには、やはり研究者の自己研鑽を積む課題、あるいは将来何か プロジェクト研究に育つような課題ということを基盤研究で行うのだと思うのでありま すが、その辺の位置づけをやはりもっとはっきりするべきかという気もいたしまして、 それは一番下になりますが、そのような形の記述がなされております。  そのちょっと上でございますが、これらの研究以外に、産業災害の調査の実施、これ は迅速かつ的確に行われていると。加えまして、その労働衛生に関します国内外の科学 技術情報、資料等につきましても、3万件以上といったデータベース、データベースは かなり量がないと意味がないのでありますが。3万といいますとかなりの多数になると 思いますが、そういった多数の業務上の疾病事例等が分析されているといった点が評価 できるだろうと。このように多くの情報を収集し、行政に提供しているということでご ざいます。  それから国内外の話、国際貢献でございますが、まずその労働衛生の基準制定改訂に つきましては、いわゆる国際機関でありますWHO、ISO、OECD等に設置されま した委員会に、16人役職員等を派遣していて、国際的な標準には貢献をはかっているわ けでございますが、今後、そのときの立場として、日本代表という形で行くのがよろし いのか、それとも場合によりましてはアジアの代表としての立場というスタンスで行か れるのか。その意味といいますか、自分たちの意識といいますか、そういうことを含め て、何か将来あったほうがいいのかなということも含めて、このような記述になってい るわけであります。あと、研究成果が、一般国民に対しましては、疲労蓄積度自己診断 チェックリストであるとか、あるいは問題になっておりました労働者へのダイオキシン ばく露といったような形の報告書の作成に大きく寄与している点は、評価すべきであろ うということでございます。  下の3行は、先ほどもうすでにご説明申し上げました。  4ページにまいりまして、(2)の(2)でございますが、この調査研究成果及びその普 及及び活用に関しましては、非常に積極的に学会発表、論文発表等が行われているとい うことでございまして、数値目標は十分達成しているということでございますが、それ 以上に、そこにもございますように、学協会論文賞等7件とれたというのは高く評価す べきではないかということになります。これはひょっとすると来年厳しいかもしれませ んですが、こういうことではないかと思うわけでございます。  それから学会のみではなく、ほかのメディアであります技術専門誌であるとか雑誌、 講演、ホームページ等の幅広い手段を活用しているということですし、またシンポジウ ム等も行っているということを述べさせていただくと同時に、この産業医研の国際貢献 として『Industrial Health』という雑誌を継続的に発行していることは、おそらく非 常に高く評価すべきことであろうと思っておりまして。ただ、このスタンスも、今後ど ういったスタンスでやるのか。例えばアジアに視点を移すのか移さないのか、国際的な 一流誌を目指すのか、等々といった戦略的な対応が必要なのかというような気がしてお るわけではございます。  それからあと、近隣の小学校でございますが、これは先ほど申しましたように、もう 少しその小学校、あるいは一般公開も別の工夫もあるのかなという気がいたしまして、 そのような形になっております。  それから知的財産でございますが、前年度に制定した職務発明規程で、特許出願等を 行っておりますが、特に特許を出せばいいという研究所ではないとは思いますが、使わ れる特許が少数でも出ていくことが重要かなということでございます。  それからあとホームページ等は、昨年に比べますとホームページをよく見ているので すが、非常によく改善は行われているようでございますが、アクセスの解析等を行いま して、あるいは研究所の一般公開もそうなのですが、成果報告と同時にやはり一般社会 との共同研究みたいなものを、そういったものでうまくシーディングといいますか、種 をつくるといったようなことが重要かということで、このような記述をさせていただい ております。  それから外部機関との協力の推進でございますが、研究員等の受け入れ、あるいはそ の他の機関への派遣につきましては、計画どおりぴったりと行われているだろうし、ま たその労働衛生分野におけるCOE的な機関として、国内外との交流であるとか大学と の共同研究も行われていて成果を得ていると。ただ、こういった交流というのは、こう いった交流が数何件ということではなく、やはり共同研究に進むとか、あるいは共同研 究による学会報告、あるいは学術誌への報告がふえるとか、あるいは本当に中核的研究 機関に人が集まるとか、そういった実質的な成果を生むように改善をすべきではないか ということでございます。今も悪いということではないのでありますが、そういうこと を書かせていただいております。  それから「財務内容」。(3)でございますが、競争的資金受託研究等21件で、前年 比2.2 倍というのはかなり頑張ったのであろうということでございますし、あと、技術 指導・委員派遣等についても、自己収入を確保して積極的に進んでいるという評価をさ せていただいております。  それから施設、基盤整備の更新につきましては、今後検討していただきたいというこ とと同時に、これがちょっとどうかということで書かせていただいておりますが、これ もご検討いただけたらと思いますが、業務の外注ということと同時に、あの研究所はも う少し人をふやしたほうがいいという観点もあり得るのかなと思って、非常勤職員の雇 用というようなことと外注費のバランスあたりはお考えいただけるとどうか、というこ とを書かせていただいているということでございます。  それからその最後の3行は、もうすでに申し上げたことでございますが、適切に実施 はされているけれども、任期つき研究員の活用等がもう少し弾力的に行われる(そちら よりも、どちらかといいますと弾力的な運用というところに重点を置きたいのでありま すが)、それをご留意いただけたら、という形でございます。以上でございます。 ○大久保部会長  どうもありがとうございました。それでは、以上、ご報告いただきました3法人の総 合的な評価書(案)でございますけれども、これにつきまして何かご意見がございまし たらよろしくお願いいたします。  どうぞ、黒澤委員。 ○黒澤委員  産安研の報告書の中の3ページ、下から10行ぐらいでしょうか、のところの「基準の 制改正」となっていますが、これは「制定・改定」というふうにしたほうが、はっきり してわかりやすいのではないのでしょうか。「制改正」という言葉より、「制定・改正 」としたほうが、あるいは「制・改定」とする。両方に「定」がかかりますから、その ほうが意味がわかりやすい。表現の問題ですが、「制定・改定」のほうがいいのではな いかと思います。 ○大久保部会長  ありがとうございます。そのほかに、どなたかいらっしゃいますでしょうか。  小さな改正でございますけれども、これは産安研の2ページの、(1)、(2)と番号が 振ってありまして、(2)のところ、一番最後の1つ上でございます。「より効率的な業 務運営を図っていくこと」。「こ」が抜けているということで、「こ」を入れていただ きたい。ということと、次の3ページでございますけれども、これは真ん中ごろの「34 課題」の「4 」が下の行に降りておりますので、できましたら上の行に上げていただけ ればよろしいかと思います。その点、よろしくお願いいたします。  ほかにございませんでしょうか。それでは特にないようでございますので、先ほど賜 りました修正等の小さいところでございますけれども、ここのところを修正していただ きまして、平成14年度の業務実績に関する評価結果として、各法人に伝えるとともに公 表をさせていただきます。よろしいでしょうか。ありがとうございました。 (2)財務諸表に関する意見について (3)剰余金の使途に関する意見について ○大久保部会長  それでは次の議事でございますけれども、財務諸表に関する意見と剰余金の使途に関 する意見につきましては、当委員会の意見を聞いた上で厚生労働大臣が承認をすること になっています。それでは、「財務諸表に関する意見について」と「剰余金の使途に関 する意見について」につきまして、清水委員から、概ね10分内外でまとめてご報告をお 願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○清水委員  それでは、まず最初に「財務諸表に関する意見」のほうでございますけれども、お手 元のほうに資料5−9という思料が配られているかと思いますが、まず国立健康・栄養 研究所の平成14年度の財務諸表についてということでございますけれども、おおむね適 正であるということで、「独立行政法人会計基準に準拠して作成されており、適正であ ると認める」というふうにしましたのち、3点ほど指摘をしております。  まず1点目でございますけれども、現在、会計方針としましては費用進行基準という ことで、運営費交付基準を収益化しておりますけれども、こちらにつきまして、経営努 力の効果をより一層明らかにし、業務の効率化を推進するために、今後はその業務内容 に着目しながら、期間進行基準ですとか、あるいは成果進行基準の一部導入ということ についても引き続き検討していく必要があるということを、まず述べております。これ については、昨年と同様でございます。  第2点目でございますけれども、文部科学省の科学研究費補助金等の会計処理の取扱 いについては、他の経費と区分して処理は行われているものの、損益計算書において機 関収入として計上されておるということを指摘させていただいております。これにつき ましては、一般に公正妥当と認められます会計処理に従いまして、預り金として処理 し、損益計算書の作成について留意する必要があるという指摘を述べさせていただいて おります。これについて若干補足させていただきますけれども、これは委員の先生方か らもご指摘がございましたように、こちらについては他の法人ではすでにこういった預 り金処理ということでもって会計処理をされておりまして、会計監査の報告も受けてい るところでございます。  そういった意味からしまして、この機関収入として処理する方法をとりますと、非常 に比較可能性を損なうというような結果となっております。また、特に栄養研の場合 は、この金額がかなり多うございまして、1億4,700万程度はあると聞いております。 そういった意味からも財務諸表との比較可能性は損なっているものと考えております。 一般的に個人に所属する研究費であり、資金管理は法人が行うけれども法人の収入では ないということで、預り金処理するという会計処理方法は、これはすでに一般的に確立 した会計処理でございまして、独立行政法人にかかわらず、ほかの機関でも発生主義会 計をとっているところではこういう処理がなされているのが実情でございます。  また、独立行政法人会計基準というものがございまして、ご存じのとおりでございま すけれども、こちらにつきましては独立行政法人に特殊な会計処理を主に定めたもので ございます。そういった意味からしまして、その冒頭でも述べておりますように、そこ で言及のないものについては、やはり一般的に公正妥当な企業会計の基準に従うべきで あるとされております。したがいまして、その独法の会計基準に明文化して書かれてい ないものについてはどういう処理をしてもよいというものではございませんので、そこ のところは十分ご留意いただきたいと思っております。それが第2点目でございます。  それからさらに、最後の行でございますが、損益計算書の各項目については、表示方 法の継続性に留意する必要があるというように書かせていただいておりますが、これに つきましては、前回もご報告しましたように、図書印刷費のような科目が新設されると か、あるいは経費の中身は集計されているものの内容が違っているというようなことに なりますと、やはりこれも期間比較というものが非常に困難になってしまいますもので すから、ここのところは十分ご留意して、表示方法の継続性ということをぜひお願いし たいと思っております。  以上が国立健康・栄養研究所でございまして、次に産業安全研究所でございますが、 だいたい栄養研と同じなのでございますが、まず1点は、適正であると認めるというよ うに判断しましたのち、やはり運営費交付金債務の収益化につきましても、費用進行基 準をとっておりますが、一部の期間進行基準ですとか、成果進行基準を導入することに よって、経営努力というものを一層明らかにしていく必要があるというようなことを書 かせていただいております。また、表面的にはあまり新設の科目等はなかったわけでご ざいますが、科目の中身の入り繰り等が若干ございましたので、表示方法の継続性とい うことについてもこちらも留意していただきたいということで、最後に書かせていただ いております。  あと、産業医学総合研究所につきましても同じでございまして、適正に作成されてい るわけでございますが、やはり運営費交付金債務の収益化の基準についてもさらにご検 討いただきたいという点、それから損益計算書の各項目の表示方法の継続性にはご留意 いただきたいという点を述べさせていただいております。  以上が財務諸表に関する意見でございます。  続きまして、「中期計画の剰余金の使途に充てることについて」というふうに、資料 5−10ですか、配られていると思いますけれども、こちらのほうでまず産業安全研究所 の利益処分計算書案のほうなのでございますが、「利益の残余のうち、通則法の第44条 の第3項に基づき、中期計画に定められた剰余金の使途に充てること」というふうに、 案で書かれております約600万円につきましてですが、このうち約500万円につきまして は、施設対応収入、謝金等収入及び利息収入ということで、運営費交付金以外の収益か ら生じた利益でございまして、経営努力により生じたものと考えることができますの で、この3項の積立金ということに充当することは妥当であると考えております。  また、残り約100万円の残資産相当額でございますが、こちらにつきましては民間受 託によって購入した機器の未償却残高相当額であるということでございまして、この民 間受託の契約に際しましては、当初の契約時の合意によりまして、受託研究終了後も引 き続き法人に使用が認められているものということで、税法の耐用年数を使われたとい うことでございます。  したがいまして、そういった意味では、この受託研究から生じました自己収入、また はその法人の利益の一部を構成するものということがいえますので、こちらについても 中期計画に定めた剰余金の使途に充当することができると考えております。  それから2枚目の、産業医学総合研究所の「中期計画の剰余金の使途に充てることに ついて」でございますけれども、こちらにつきましては、600万円全額が運営費交付金 に基づく収益以外の収益から生じた利益であり、経営努力により生じたものであると考 えられますので、通則法第44条第3項に基づき、中期計画に定めた剰余金の使途に充て ることは妥当であるというふうに考えております。以上でございます。 ○大久保部会長  どうもありがとうございました。それではただいまの清水委員のご報告のほうに関し まして、何かご意見等ございましたら、委員の先生方、よろしくお願いします。  特にございませんでしょうか。はい、どうぞ。 ○国立健康・栄養研究所田中理事長  今、清水委員から、3研究所の比較性でうちの財務諸表は他の2研究所に合わせるべ きであるような印象をちょっと私、受けたものですから、発言させていただきます。  私も、この会計処理のことについては専門家ではありませんので十分理解していない 面があるのですけれども、実は去年も退職引当金等の処理について、私どもの研究所は 他の2研究所と違う処理をいたしました。そのときにこの評価委員会では、今年の先生 方のほとんどおられない昨年の評価委員会であったのですけれども、非常に厳しい評価 を受けました。そのために40分以上のディスカッションが行われました。  ところが、この上の総務省のほうへ行きましたら、私どもの会計処理に対して非常に 高い評価を受けたんですね。私どものほうが正しいと。しかも、参議院の厚生労働委員 会にも3理事長が招聘されたときにも、同じような評価を受けたわけです。  今回もちょっと見てみますと、この評価結果の最後のほうになりますが、(3)の 「財務内容の改善について」も、私どものところは他の2研究所に比べて、私は非常に 厳しい評価であると。点数も2点をつけられている方もありますし、非常に厳しい評価 を受けております。財務諸表についても、私は他の2研究所に比べて、これは非常に穏 やかに書いてはいただいていますが、かなり厳しい評価のように思うわけです。  そのために、私どもの財務諸表の在り方についての意見を、ぜひ議事録に残していた だきたいと思います。こういう趣旨から、事務部長とこの財務担当の監事に、私にかわ ってちょっと意見を述べさせていただきたいと思います。では、事務部長からお願いし ます。 ○大久保部会長  どうぞ。 ○国立健康・栄養研究所事務部長  栄養研の事務部長でございます。清水委員には前回の委員会の前にいろいろご教示を いただき、ご指導いただきましたことをありがたく思っておりますが、今回の財務諸表 につきまして、お手元の資料5−9の「また、」以下の文章でございますが、「文部科 学省の科学研究費補助金の会計処理の取扱いについては」というところのうんぬんでご ざいますが、「文部科学省の補助金に係る直接研究費が機関収入として計上されている ので、独法会計基準等に従い、預り金として処理し、損益計算書の作成に留意する」と いう文章でございますが、この独立行政法人会計基準及び会計基準の注解は15年3月3 日に改定されたものでございまして、その中に補助金等の会計処理という項目が、3月 に新たに追加されました。  その中では、「預り金、補助金等は補助金の交付の目的に従った業務の進行に応じて 収益化を行う」と。それから、最後のほうになりますが、この適用時期につきまして は、「改定後の基準及び注解は今後、新たに設立される独法法人を念頭に作成したもの であるが、先行して設立された独法に対しても適用される。先行して設立された独法法 人については、平成15年4月1日以降開始する事業年度から適用することが適切である 」というふうに書かれておりますので、ここのところの解釈につきまして、よろしくご 指導をお願いしたいというふうに思っております。 ○国立健康・栄養研究所監事  続きまして、健康研の監事をやっている横山と申します。一言、ちょっとお話しした いと思います。今、科学研究費補助金等についてのお話は事務部長の言われているとお りだと思います。私と意見は全く一致しています。私の背景だけちょっとお話しします が、私はSEC監査を20年ぐらいやっておりまして、日本の証取監査を10年ぐらいやっ ております。  会計基準の適用というのは万国共通でありまして、適用時期、実施時期というのを明 確にしてあります。ですから科研費については、これは会計基準ではないのですが、Q &Aの中の64-2というところに記載されております。「会計基準及び注解」は総務省と 財務省がこしらえたわけですけれも、「Q&A」のほうは公認会計士協会が加わって実 務指針という形で出されています。「会計基準」では、明瞭でない部分を明文化したの が「Q&A」でありまして、一般の会計基準であるというところまでいっていないがた めに、ここで「Q&A」として明記したということです。  これについてもちょっと問題がありまして、私自身は独法の評価というのはこの2年 間、この評価を受けまして、一応経験を積んで、会計制度上の欠陥という部分が明らか になりつつあると思います。ぜひともこの評価委員会の2年間の経験を踏まえて、欠陥 のあるところは正していただきたいというふうに考えています。  例えば財務諸表が単年度になっています。これは表示の欠陥だろうと思います。最 近、財政制度等審議会(財務省)、国のほうで公会計基準の設定を検討しております。 その中に清水委員も参加して、国際基準の説明をされているんですね。国際公会計基準 の中に、1号というのがあります。そこのパラグラフ60で「比較財務諸表」をもとめて います。  それから、日本の公会計のほうの「特別会計の財務諸表作成」というのは、財務省か ら今年の6月30日に公表されています。これは「前年度と比較して、財務諸表を表示す る」ということになっています。比較表示することによってわかりやすくし、ほかの評 価委員の方も意見を述べられるような状況になるのだろうと思うんです。これは評価委 員会がどうするということはできないものですから、少なくとも評価委員会のこの経験 を踏まえて、会計基準設定委員会のほうに提言していただきたいと思うんですね。  それからもう1つは、今の科研費の問題ですが、「個別項目に関する評価結果」とい う、項目20、「運営交付金以外の収入の確保」というところがあります。皆さんに評価 していただいたわけですが。これはやっぱり科研費の問題も含まれてくると思います。 評価する場合、多分、運営費交付金以外の収入のところに目が行ったのだろうと思うん ですね。健康研の場合は科研費を含めているわけです。今、清水委員が言われているの は、科研費を簿外処理をしないさいよという意味なんですね。科研費預り金・補助金と いうものを一度上げまして、これはオンブックですね。帳簿には上がるのですが、債務 として上げますよと。個人の名前ですから、個人にお金を渡した段階で預り金が消えま す。補助金の収入と経費が損益計算書にのらないということを今、言っているわけです ね。  はたしてそれでいいのでしょうか、というのは、何もこの評価委員会で議論する問題 ではないので。少なくとも会計基準のほうで議論していただきたいと。これはどうも納 得しかねるのではないかなと思うんですね。科研費の収入・費用は、オフバランスにな ります。損益計算書にのらない形になります。「個別項目に関する評価結果」でいう項 目20というところの「運営費交付金以外の収入の確保」というところでは、評価委員会 の方が見られない状況になります。会計基準のほうでもうちょっと練っていただいて、 私は修正していただきたいと思うんです。というのは、健康研で研究されている研究員 の活動が損益計算書にのらないという形になるんですね。これは何か理に適わないので はないかと。この独法の趣旨に反するのではないかなという感じがするんです。清水委 員の言うこの預り金処理自身は、独法の制度が出る前に出たようなんですね。ですから 独法ができて、その間のすり合わせというのもやっぱり必要なのではないかなと、個人 的には思うわけです。  それからもう1つは、減価償却のところなのですが、これも会計基準です。会計基準 で減価償却をするものと、損益外の減価償却をしないものがあります。で、あるものは 減価償却をする、あるものは減価償却をしないというような仕組みになっているんです けれども、原則的には全部減価償却をするようにするべきだと思います。これも会計基 準の問題です。  少なくともこの3点については、そういう過去の2年間の経験を踏まえて、会計基準 なのですが、制度上の欠陥を解消していただきたい。少なくとも担当者レベルではそう です。監事としても、あるいは事務を担当する人にとっても、そのあたりを明確にして もらいたい。要するに混乱を避けていただきたいということです。以上です。 ○大久保部会長  以上でございますか。はい、ありがとうございます。  清水委員、これに関しまして何かコメントはございますか。よろしくお願いします。 ○清水委員  ただ、最初に事務部長さんから「ご教示いただきたい」というふうにおっしゃったこ とについてですが、一応先ほどのご説明ですね、財務諸表についての意見のところで述 べたことの繰り返しになりますが、独法の会計基準では企業会計を引用しているところ がございます。したがいまして、ここの「独法の会計基準等に従い」の「等」につきま しては、独法の会計処理基準も、あるいは注解、それとQ&Aのみならず、それが引用 しているところの企業会計の一般的な基準というのを当然含んでいると考えられると思 います。そこでは、先ほどから申し上げておりますように、一般的にそういった補助金 の性質に着目しまして、会計処理としては固まっているということが言えると思いま す。  繰り返しになりますが、ここに基準自体に書いてない部分について、どういうふうな 処理をしてもいいということではございませんで、やはり一般的に行われている会計基 準はどういうものかということを調査された上で適正な会計処理をとっていだだきたい ということが言えると思います。  それから、実際この文言につきまして何が問題になるかということで、ちょっとよく わからないのですが、今、文言としましては、「損益計算書においては、文部科学省の 補助金にかかる直接研究費が機関収入として計上されているので、独立行政法人会計基 準等に従い、預り金として処理し、損益計算書の作成について留意する必要がある」と いうようになっているわけなのですが、仮にこの規程が、その会計基準の新たなQ&A の公表によって15年度以降に適用されるものだというような解釈としましても、この文 言では特に問題ないというふうに考えております。  それから、監事さんのほうからおっしゃったことについては、それは会計基準の内容 につきましては、私は意見を申し上げる立場にはございませんので、ここで申し上げる ことはできませんけれども、当然その補助金によりましても性質が違うわけでございま すから、その性質に着目した会計処理をとるべきだというふうに思います。ですので、 ここでのQ&Aに示されております科研費の補助金の取扱いといいますのは、当然その 性質に着目したものと言うことができると思います。国際公会計基準の問題の比較可能 性というものとは、直接関係ないものと考えております。 ○大久保部会長  ありがとうございます。はい、どうぞ。 ○国立健康・栄養研究所 事務部長  今、清水委員からのお答えで、Q&Aも会計基準も4月1日からの適用ということで あれば、それでも問題がないということにつきましては、これは14年度の財務諸表でご ざいますので、15年4月1日からの適用であれば、今回の評価の中には入らないのでは ないかというふうに理解をします。 ○大久保部会長  以上でございましょうか。それでは先ほど田中理事長のほうからございましたよう に、議事録に残してほしいということでございますので、これにつきましてはよろしい でしょうか。それでは、議事録として今のご意見等を残させていただくことにします。  そのほかに、委員の方々からのご意見はございませんでしょうか。  それでは意見もないようでございますので、これにつきましては今後、当委員会の黒 川委員長にご了解いただきまして、独立行政法人評価委員会として厚生労働大臣、法人 等へ提出させていただくことにいたします。どうもありがとうございました。 (4)その他 ○大久保部会長  その他の議題でございますが、最後に「その他」といたしまして、一番最初に申し上 げましたように、今回の評価作業を通じまして、今後の課題について整理をしておきた いと思います。事務局から資料が提出されておりますので、初めに事務局からご説明を お願いします。 ○山田政策評価官  それではお手元の資料5−11を出していただけますでしょうか。「評価に関する今後 の課題についての委員の主なご指摘」ということで、前回いただいたご意見がかなり多 いと思いますけれども、今後の評価作業というものを考えたときに、いろいろと今回、 評価作業にあたられて思われたことというのをかなりいただいたので、それを少し整理 をしてございます。  1番目は「評価項目について」ということですけれども、3研究所とも20項目以上と いうことにつきまして評点をつけていただいたわけですが、評価項目が多過ぎるのでは ないかと。もう少し大括りにするなどの整理が必要ではないかと。あるいは、財務関係 などについては、最初と最後と両方に入っていて重複するようなことがあって整理が必 要ではないかと、こういうようなご意見もいただいております。  この点につきましては、我々事務局としても、今後考えなければならないことと認識 をしているわけですけれども、その際、1つ難しい点は、この評価項目自体、中期目 標、中期計画のそれぞれの設定された目標というものについて項目をつくっているもの でございまして、それぞれ設定してただいた目標に対して実績がどうだったのか、ある いはそれをどういうふうに評価するのかということを、作業として一つ一つこなすとい うことが必要ではないかなと、そういうような側面もあろうかと思います。ただ、おっ しゃるようなことも当然あろうかと思いますので、そのあたりを含めてどう考えるかと いうことが1つあろうかと思います。  それから2番目の「中期目標・計画との関係について」と、こういうことでございま す。いろいろ評価をされる中で、目標自体が具体性が非常に少ないので、なかなか客観 的な評価が難しかったと、こういうようなご指摘。それから3研究所ともそれぞれ目 的、性格が違うというような状況の中で、目標についてはあまりに同じ枠組みでつくら れているというようなことで、そこはある程度バラエティーのある目標設定が必要では ないかというようなご指摘。そろそろ次の中期目標についても考えておくべきではない かと、こういうようなこともご指摘としていただいております。  ちょっとこれと関連するには遠いのかもしれないのですけれども、これはぜひお伝え をしておく必要があるというふうに思っていた事柄でございまして、参考資料1−14と いうのをお出しいただきたいと思います。  このペーパーは、8月1日に閣議決定されたペーパーでございます。「中期目標期間 終了時における独立行政法人の組織・業務全般の見直しについて」ということで、表題 がついております。どういうことが書いてあるかと申しますと、独法通則法の35章に 「主務大臣は中期目標期間終了時において、独立行政法人の組織・業務全般にわたる検 討を行って、所要の措置を講ずる」ということになっております。その検討にあたって は、評価委員会の意見を聞かなければならないと、こういうことになっているわけでご ざいますが、ちょっと一番最後につけておりますスケジュールの表をご覧いただきます と明らかになろうかと思いますが、今の3法人とも、中期目標期間というのは13年の4 月から18年の3月ということで設定をされております。  この独法通則法の字義どおりにとりますと、中期目標期間が終了したときにその業務 ・組織全般の見直しを行うと、こういうことになるわけですが、もしそういうことをそ のままやるといたしますと、もうそれは次の中期目標期間に入ったあとということにな ってしまいます。したがって、その実際的なやり方としては、それよりも前、具体的に は17年の4月に中期目標期間の4年間が終わった段階で、その4年間の評価というもの をする中で、業務・組織全般の見直しというものをある程度、前倒し的に検討するとい う必要が出てくるであろうと。それに応じた形で、18年度の概算要求、あるいは次期の 中期目標期間にどういうことをしていくのかということを、ある程度、路線を引いてお く必要があるだろうと、こういうことがこのペーパーの中には書かれておるわけでござ いまして。  したがいまして、これから3研究所の運営につきましても、5年間と思っていたのが 若干、4年ぐらいの実績の中で次の中期目標期間がどうなるかというようなことを評価 されるような部門も出てくるというようなことをご留意をいただく必要が出てきている ということでございます。  ちょっと話が横にそれましたけれども、もとの資料5−11に戻っていただきますと、 3番目のところに「ニーズへの対応と効率化などのトレードオフの問題について」とい うことで、これは評価作業そのものをどうすればいいというよりも、もっと何か難しい 問題であろうかというふうに考えております。要は、そうした質の向上というような面 と、効率化というような面、両方を求められるという状況の中で、法人側のマンパワー 等にも無理が生じてきているのではないかと。それから。本来業務をしっかりやらなけ ればならない、受託研究もふやさなければならないというような状況の中で、過重負担 になっているのではないだろうかと。そういうようなことを考えますと、常に新しい取 組がなされないと評価できないという状況の中では、長期的には続かないのではないだ ろうかと、こういうようなご指摘もございました。  それから4番の「その他」といたしましては、短期、中期の成果のみならず、長期的 な成果も重視して評価するということが必要ではないだろうかと。それから、リバース ・エンジニアリングというような言葉も出まして、この業務を実施しなかったらどんな マイナス現象が生じるか、という観点からの評価の視点というのも必要ではないだろう かと。知的財産権等については、商業ベースだけではなくて、国民の財産としての価値 の重要性というものも踏まえて評価することが重要ではないかと、こういうようなご指 摘をいただいております。 ○大久保部会長  よろしいでしょうか。ありがとうございました。  それでは、ただいまの事務局からのご説明も含めまして、委員の諸先生方が今回の評 価作業で感じられましたこと、すでにこの6回の委員会を通じましていろいろとご意見 をいただいておりますけれども、さらに何かご発言いただくことがありましたら、今後 の評価に向けての解決すべき課題ですとか、いろんなことがございますので、フリート ーキングという形で、きょう結論を出すというものではございませんので、あとで事務 局にまとめていただくということで進めていきたいと思いますけれども、何かございま せんでしょうか。ございましたら、よろしくご発言を。どうぞ。 ○五十嵐部会長代理  今、政策評価官のほうから説明がございましたのですけれども、実はこれは期間的な ことでございますけれど、拝見すると、17年4月からというふうになっていますが、私 が多分それでは遅すぎるのではないかという気がしますのは、次の5年間の中期目標を つくる時期でございますね。そうしますと、かなり前もって案をつくって成案が出てい ませんと。1年ぐらい前にできてここで討論するならいいのですが、私はこの期間だと ちょっと遅過ぎるのではないかという気をもっていて。中期目標の原案自身は、各研究 所からはその前につくっておいていただいて、この年度にこの辺で討論して大臣のほう に上げていくというような格好がいいのではないかというのが1つ、私の意見でござい ます。  それからもう1つは、今回につきましては最初に評価委員会ができる前に大臣のほう からすでにこういう中期目標でということで認可をされてきたというのでスタートして おりますから、いろいろ細かいところで我々もよくわからないところがあったりしたわ けでございますけれども、今回、それ以後はないと思いますが、途中で少し修正を加え るようなことができるのかできないのかと。ちょっとはっきりはしないのですけれど も、研究所自体が中期目標を5年間スタートさせて、もうまる2年たって、3年目に 入っているのですが、そうしますと、修正をして坂口厚生労働大臣が認可するというこ とがあり得るのかどうかという点を、私、わかりません。ちょっと質問させていただき たいのですが。 ○大久保部会長  それでは、よろしくお願いいたします。 ○山田政策評価官  まず1点目の、中期目標を作成する時期の問題でございますけれども、作業的なこと はおっしゃるようにかなり前倒しぎみにやっていく必要があるのではないかと思ってお りますが、やはり中期目標期間にどういう成果があったかということをある程度評価し たうえでないと、なかなか次の中期目標期間をどうするかということも出しにくいかと 思うわけでございまして。そういう意味では、タイムリミットが17年の概算要求と。そ れまでにある程度中期目標を、次の中期目標期間にどういう形にするのかということに ついて、ある程度の成案を得ておく必要があるのかなということでございます。  それから中期目標について、この評価委員会として大臣に意見を言うと、こういうこ とでございますか。 ○五十嵐副部会長  そういうことです。 ○山田政策評価官  それは仕組みとしてそういう形になっておりますので、そこは評価委員会の意見を聞 いた上で、次の中期目標を、大臣はその法人に対して指示をすると。それを受けて、法 人のほうでは中期計画というものをつくると、こういう流れになろうかと思います。 ○大久保部会長  よろしゅうございますでしょうか。  ほかにご意見、あるいはご質問等、ございますでしょうか。どうぞ。 ○安井委員  この資料5−11にいろいろご指摘いただいているのですが、それ以後気になった点を 2、3、ちょっとご指摘させていただきたいと思いますが、3番の「ニーズへの対応と 効率化」にかかわるような問題ではないかと思うのでありますが、本来の業務というこ とと受託研究等、それから場合によっては企業なみの特許を取るというような行為をま さに際限なく続けていきますと、やはり本来の業務、いわゆるコンフリクト・オブ・イ ンタレスト、要するに利益相反といいますか、業務とそれからあと利益を生むようなこ とで、何か利益相反が起きてくる可能性があるだろうということを。この間、ちょっと 栄養研の方と議論していてそういうことになったわけでありますけれど、そのそれぞれ の研究所で今、その辺の状況というのはどうなんですかね。  ですからその辺が、まだ今はあまり問題はないのかもしれませんけれど、例えばある ところが特許を目指していっぱい書いていってしまうと、これはある意味で認可を与え るとかそういうこともあるわけですよね。そうなりますと、民間との共同研究もどこま で進めていいのかとか、いろいろ難しい問題が出てきそうな気がするのですが。その辺 も、まだ私自身把握していないのですけれど、少し把握したほうがこの委員会としてい いかなというような気がしております。それがまず1つですね。  それからもう1つの知的財産権なのですが、これは確かに商業ベースでとらえるので はなく、国民の財産としてと、こういう考え方もあるのでありますが、大学みたいなと ころは実をいうと組織としてのコンフリクト・オブ・インタレストは比較的少ないとこ ろだものですから、我々のところなんかですと、その知的財産権みたいなものを、次の 共同研究であるとかプロジェクト研究なんかの種に使っていくと、そういう拡大の1つ のキーポイントといいますか、原点に使うみたいな考え方をもっていますが。そういう ことも、先ほどの話と絡むのですけれど、はたしてこの研究所ができるのか、できない のかといったようなことも、そろそろこの評価委員会の中でコンセンサスをとっておい たほうがいいかなという気がいたします。以上です。 ○大久保部会長  ありがとうございました。それでは第1番目のコンフリクトの問題でございますが、 これはどちらかの法人からご答弁いただけますか。  では、まず栄養研からお願いします。 ○国立健康・栄養研究所田中理事長  私はある程度、この本来の業務と受託研究とは両立の可能性があると思っておりま す。と申しますのは、非常に卑近な例でいいますと、私どもは栄養あるいは健康増進に かかわる研究をしておるわけでして、それ以外のことについての受託研究のはとれない と思いますね。例えば、極端な言い方をしましたら、この産業医学研究所のやっておら れるような労働者の健康管理のことをせよと言われても、我々はそんなことはできない と思いますし、がんのメカニズムについての研究をせよと言うても、それに応募するこ ともないと思いますね。やはり広い意味で健康増進や栄養学にかかわる研究について、 競争的資金をとろうという努力をしますから、ある意味では両立は、私は可能だと思い ます。突拍子もなく離れた研究課題について、受託研究はとらないと。  しかし、研究者というのはやっぱり本来自分の興味をもっている研究、ある意味では 学問の自由的なことでやっているものと、こういうプロジェクト研究との両立というの はかなり難しい面もあるかと思います。各研究者のやっておるところは非常に深い、本 当に特化した分野でやっておりますから、それとプロジェクトとの並立というのが一番 我々の苦労しておるところですね。どう、そういう知的な興味を生かしていくかという ことと、プロジェクト研究との両立ということですが。だから本質的には、プロジェク ト研究に研究者が従事し、それを補充するという意味で競争的資金をとっていくと。文 部科学省の場合も、科学研究費補助金というように“補助金”という言葉がついており ますから、そういうことを補助するという意味であれば、両立は可能であるのではない かと、そんなような理解はしております。そういう中からいい論文が生まれてきたら、 なお一層いいのではないかなと、そのように感じています。  それから特許については、もう私、再三申しましたように、私のところの研究は非常 に努力はしておりますが、その努力に対して報われるだけのものが出てくる自信は、正 直なところございません。ですから、もしお許し願えるのだったら、私はもうここから 引きたいと。要するに知的財産、特に特許のところからは。かなり投資しても実施に至 るようなものは出てこないのではないかな、ぐらいに思っております。しかしながら、 評価は悪いですから、2点をつけられる方もあるわけですから、そうするとやっぱり努 力せんといかんのかな、かなり投資しなければならないのかなというようにも考えさせ られますし…。そういう努力しているのが今年は報われなかったので、私は非常に意気 消沈したと、この前も申したわけですね。2点をつけられる方がおるわけですから。そ うしたらこれ、どうしようかということですね。特許をとるようにするには、所掌に反 するぐらいのこともするという意識改革しないといかんわけですね。しかし私ども、何 べんも言いますように研究員が少ないわけですね。だからそこは、むしろ非常に相反す ることがあって苦悩しておるというところであります。 ○大久保部会長  どうもありがとうござました。2点にこだわっていらっしゃいますけれど、非常に評 価は高いですので。そういう面では我々、非常に高く評価をしておりますけれど。  安井先生、何かございますか。 ○安井委員  お答えいただいたのですけれど。ちょっと質問の仕方が悪かったのかもしれませんけ れども、要するに元国立の研究所であるゆえに、何か民間の活動あるいは行動について 許認可権みたいなものをもっていないか、という話をさせていただいたつもりだったの ですけれど。 ○国立健康・栄養研究所吉池研究企画評価主幹  先ほどの特許の話ともかかわるのですが、ある機能をもった食品について、製品開発 にかかわる部分で企業と共同研究をして特許を取るというのが非常に見えやすいスキー ムだと思います。今、安井先生がおっしゃられたような許認可とかかわる部分と、研究 所として、あるいは個人レベルでもかなり重なることがあります。厚生労働省等が認可 する食品の審査委員等を務めている者もいます。書類の審査等もしていますので、その 辺の部分は慎重に対応しなければいけないと思います。その結果、個別的な食品開発に かかわる特許が取りにくいという現状がありますし、やはり公的な機関としての役割を きちんと保った上で、開発等にかかわる研究とつき合っていかなければいけないのかな と思っています。 ○大久保部会長  ありがとうございます。どうぞ。 ○産業安全研究所尾添理事長  受託研究のことについて若干、私の考えていることを申し上げさせていただきたいと 思いますが、私どもの研究所は行政ミッション型の研究所でございまして、行政と密接 な連携をとりながら、災害防止に役に立つ研究をするということになっておりまして、 具体的に中期目標の中で研究課題等はこと細かく、指示がされているのが実状でござい ます。例えばプロジェクト研究は、「5か年間にどういう研究課題で、研究の中身はど ういうことで、その目標の達成についてはこういうことが達成の目標ですよ」というこ とまでこと細かくみんな決められています。これはだから厚生労働大臣の指示に基づい てやってきているということで、我々はその中身で研究をずっと実施してきているとい うことです。行政ミッション型ということもあって、そういった行政ニーズ、社会的ニ ーズに対応するような研究課題、5か年分というのはある程度固まってきていると、き ちんと業務として固まってきているというようなことがあります。  一方、いわゆる独法制度の中で、財務というか、国のお金の節約の観点だと思うので すけれども、とにかく自己収入の確保ということもやりなさいよということで、別の観 点から入ってきているわけです。それがその中期目標の中に入ってきているということ が現実にあるわけです。  一方で、産業安全の研究というのは、実際に自己収入の確保ということで受託研究を 取っても、来るのは例えば100 万円とか70万円とかそういう金額なんです。そういうも のをやっていくと、実際には今ある業務の中で、それプラスアルファとしてそういう受 託収入を得るための受託研究をやっていかなければならないということは、業務は完全 にそれだけオーバーしてくるんです。取れば取るだけ、簡単にいえば中期目標で示され た研究のところにいろんな影響が出てくるという問題点があるわけです。これは例えば 1億円とか5千万円とかあれば、これでオーバーヘッドを取り除いておいて、それで新 しく人を採用してやれば、それはそれでまたできるんですけれども、産業安全の研究と いうのはそういうものはとても望むべくもない話でございまして、先ほど言ったような 事情であります。  しかし一方で、こういった評価の中で自己収入の確保と言われますので、それもきち んとして重要な目標と設定されていて、やっていかなければならないということもある し、我々としては、行政サービスの一環として、我々のもっている産業安全の研究に対 するいろんな研究資源、物的な資源もありますし、人的な資源もありますし、ノウハウ もありますけれど、そういったものを有効活用するという観点からも、受託研究は重要 だと思っているのですが、先ほどの問題があって、そこにジレンマが生じているという ことが事実としてあります。だから、どこまで受託研究の本数をふやしているかという ことは、先ほど先生のおっしゃっていますように、際限なくということは、これはあり 得ないのかなということがあります。どこで押さえ込むかというふうなことが1つ、問 題として考えられるということでございます。  それから特許につきましては、私どもは特許は、これは積極的にやっていこうとして います。これは自己収入の確保という観点もあるのですけれども、特許を積極的にやっ ていこうということで考えています。特許というのは、わかりやすい成果の普及の1つ の手段でもあります。論文を書くこともいいですし、委員会に出ていろんな成果を発表 したり、行政の委員会へ出ていろんな規則改正等、そういったところに貢献するのも重 要ですが、特許を取って、特許を実施にもっていくということも非常に有効な手段であ るというふうに、我々は考えていますし、それでうまくいけば自己収入の道にもなると いうことで、これは積極的に対応をしていきたいと考えております。 ○大久保部会長  ありがとうございました。それではお願いします。 ○産業医学総合研究所荒記理事長  コンフリクトの問題が出ましたもので、この面で一言申し述べさせていただきます。 一般的な問題としまして、当然このようなコンフリクトは出てくるわけですね。私ども の研究所の評価項目は22項目があるわけでして、これを徹底的にその業績を求められた 場合に、片側では、もともと私どもの研究所は今までずっともっていた行政ミッション という目的があるわけです。本来業務ですね。それとは必ずしも完全には一致しないわ けです。ですから、これはあまり徹底してこの22項目の点数を上げることばかりを考え ていくと、行政サービスという本来の業務から離れてしまう危険がある。これは非常に 難しい問題で、私が今申し上げている本来業務は狭い意味での本来業務という意味で とっていただきたいのですが。広く解釈すれば何でも行政ミッションになるのですが、 ただマンパワー、あるいは施設も資源が限られておりますから、本来業務を拡大解釈し て22項目のあれもこれも業績を上げようとのみするわけにはいかない、こういう矛盾が あるわけです。  私どもの産業医学という学術の特性は、私は大学の医学部で公衆衛生学を担当してい たのですが、公衆衛生学というものが非常に学際的な、非常に広い領域で、産業医学は その主要であるが一部の領域を占めているのにすぎないのです。それで私に限らず、研 究所の研究員、もちろん医学以外の方がたくさんいらっしゃいますが、それぞれの専門 性を持っていて、それがこのような22項目の徹底的な業績が求められた場合、本来業務 から離れた周辺の研究を進めてしまう危険がある。これは私、悪いと言っているのでは ないのですが、当然この辺の矛盾、これを私はコンフリクトと解釈するのですが、これ を克服することを考えなければいけない。どのように克服していくかと。それをいろい ろ思案中なのですが。  ただ、やはり片側では新しく社会的に導入されたこの独立行政法人の趣旨をそのまま 徹底してやらなければいかんと。そのためには、22項目をもう徹底的に業績を上げるこ と、差し当たりはもちろん必要だと思います。そうなのですが、短期的にも、あるいは 長期的にも、当然そのようなコンフリクトが出てくるので、それをどのように解決して いくかということが大事だと思っております。 ○大久保部会長  ありがとうございました。安井委員、よろしゅうございますか。 ○安井委員  はい、おそれ入ります。 ○大久保部会長  そのほかに、どなたかいらっしゃいますか。田村委員、よろしくお願いします。 ○田村委員  先ほどからのご意見を伺いながら思ったのですが、この評価がかえってマイナスにな るようなことがあってはならないということは、やはり我々、よく考えなければいけな い問題ではないかと思います。先ほど来のお話でございますけれども、徹底的によい評 価を得るということであれば、中期計画に忠実にやっていけば確かに評価は得られるわ けです。いつも私は申し上げているのですけれども、長期的に、本来あるべき研究機関 としての目標達成ということを考えるときに、はたしてそれでいいのかということは、 常に考えなければいけない問題ではないかという気がします。  そういった意味で、こういったことが具体的に可能かどうかわかりませんけれども、 事務局のほうから、今後の課題について非常によくまとめていただいたのですけれど も、例えば1の評価方法について、各年度でこれだけの項目について評価をするという ことは本当にいいのだろうかという気がするわけです。中期計画が終わった段階で個別 の項目について評価するということは当然ですが、各単年度の評価については、もう少 し大まかな評価であってもいいのではないかと。むしろそれによって弾力的な運営がで きる、あるいは先についての展望について考えられるゆとりがもてるといいますかね。 そういった評価の在り方というのが、やはり今後重要ではないかと。  この2年評価をやってきまして、評価がこれからの研究のますますの発展につながる ようなものであれば、これは大変結構なのですけれども、むしろマイナスになるような ことがあっては、これはいけないのではないかという気が、感想としていたします。 ○大久保部会長  ありがとうございました。そのほかに、どなたかございませんでしょうか。黒澤委 員、よろしくお願いします。 ○黒澤委員  今、トレードオフの問題がいろいろ出ておりますけれども、公益的な研究機関という もののやる仕事の内容というのはどういうものであるべきなのか、こういうことだと思 うんです。つまり、一般の商業ベースというか、いわゆる実利的なテーマを追いかける ということは、私は基本的にむしろやるべきではないと。ですが、知的財産権は取るべ きだというのが私の考えです。むしろ、公益に貢献するゆえに取らなければいけないと 思います。  端的に表現しますと、国にその特許を買ってもらうという考え方に切りかえるべきだ と思います。つまり一般の営利企業がやらないようなことを特許にし権利化する。知的 財産権化する。これは公益研究を正当に評価してもらうのに非常に有力な手段なんです ね。知的財産権化することによって、国際的にも評価される。それから国内的にもで す。例えば将来、無償で提供するようなことになっても、これが仮に200億の価値があ るものですよと、「これが国によって開発されて、無償で皆さんに提供されているのだ 」ということをはっきりさせるのだということですね。つまり、公益研究という概念の 中には、民間では取らない特許、権利にしないようなものがたくさんあるんですね。  従来は、国が所有しているということのゆえに、別に特許にしなくてもよかったんで す。ところがグローバルな競争が激しくなりますと、ほかの国でどんどんそういう仕組 みを取り入れているんです。日本がそういうふうに安閑として国内的な事情だけで評価 をしていますと、とんでもないことが起こり得るということが、現実にあるわけです。 情報システムなんか、まさにそうなんです。いつも日本は知的財産権に遅れをとって、 いろんな意味でひどい目にあっているんですね。ですから、こういう公益的な機関ほ ど、むしろ国家的な知的財産権を確保すべきで、積極的にとっていくべきです。  これは、民間が買ってくれるというものではないですね。むしろそれは国が買ってく れる、あるいは国民が買ってくれると、こういう切り口でアプローチされれば、私は意 味が出てくると思う。むしろ客観的に評価されて、国民からよく理解されやすいと、こ ういうことですね。例えばこれが1,000億円の価値のある基準でありますよと、こうい うことが特許であるということになれば、これを無償で使わせてもらっているのだとい うことを広報すべきであると、こういうふうに思います。  そういう意味で、私は知的財産権は公益研究機関ほど積極的にとっておくべきだと、 こういうふうに思います。特にビジネスモデルなんか、まさにそうなんですね。そうし ませんと、国として提供している様々な、例えば栄養研の場合、非常に意味があると思 うのは、日本は大変な長寿国なんです。世界一の長寿国になっているんです。これは何 の成果から得られているかということですね。そういう意味では、私は栄養研の貢献が 非常に大きいのではないかと思うんです。そういうものが国際的に見ると非常に大きな 意味のある、また価値のある財産ですよね。これを何らかの形で知的財産権に置きかえ ておくことは非常に重要だと思います。国際化すればするほど重要になってくる。国の ステータスを維持するためにも、私は非常に重要だと思います。そういう視点から知的 財産権を位置づけていただきたいと、こういうことです。 ○大久保部会長  ありがとうございました。何かご発言ございますか。 ○国立健康・栄養研究所田中理事長  いや、もうごもっともですが、むしろそういう意味のことは非常に難しいのではない かと思っているんです。私らの能力の問題があるのかもしれませんが、今、先生のお話 を聞いていて、そういう見方があるのかということで非常に励みになり、感激致しまし た。我々は従来はそれを研究業績、つまり論文とか学会発表という形で、栄養学なり健 康科学の進歩に貢献していたので、それが国民へ返っていっているし、世界の多くの 人々へ返っていっておると認識していました。  今おっしゃいましたように、現在、いわゆる開発途上国というところは、日本を見習 えと。日本は非常に厳しい栄養状態を経験してきて、これを克服し、今、平均寿命の、 また健康寿命の長い国になったのだと。アメリカやヨーロッパを真似しておると虚血性 心疾患の多発につながっていく。本来ならば、アメリカやヨーロッパは日本よりはるか に平均寿命が長くても不思議ではないわけですけれども、日本がそうなったから日本を 見習えという話になってきておるわけですね。だからそういう形での国際貢献も考え、 一般の人々や、世界の特に開発途上国の人々への還元ということを考えております。  それを特許的な形で具体化していくというのは、非常に難しいなと思っていまして ね。むしろ、何か物質を、今盛んに言われております機能性食品等を開発したほうが、 いわゆる特許には結びつきやすいですね。今、先生がおっしゃっているやつをどういう 形で特許にもっていくかというのが、非常に難しい感じはいたしますね。しかし非常に ありがたいお話でございました。 ○黒澤委員  ちょっと補足しますと、例えばいろんな栄養関連の基準みたいなものがたくさんあり ますね。 ○国立健康・栄養研究所田中理事長  はい。 ○黒澤委員  これらの基準は私どもも非常に参考になっている面もあるんですね。一般の方がその データベースを活用したり、知識を得ることによって、大変価値のある情報をたくさん いただいているわけですね。それによって日本の国民が啓発されて、健康を志向したり ですね。あるいは、食べ物を改良したり改善したり、自分自身で積極的にそういう方向 を目指しているということがありますね。そういうことが、実は財産なのだと思いま す。それをただで国に提供しているのだと、だからいいのだというのではなく、それは やはり何らかの形で第三者が見て評価できる形に置きかえておくということが、私は大 事なことだと思います。  それは結局、国に買ってもらっている。交付金というのは、国に買っていただいてい るのだと思えばいいんですよ。国からお金をもらっていると考えないで、国に売ってい るのだというふうに考えれば、私はいいのだと思うんですね。そういう仕組みで考えれ ば、例えば「国民1人あたり1万円のお金を出して買ってもいいよ」ということになる わけです。私は、知財というのはそういう性格をもっていると思います。単なる工業所 有権とか、営利企業がとる特許権のイメージとはちょっと違う考え方です。  著作権なんか、まさにそうなんです。ソフトウェアの時代になりますと、まさにそれ が非常に大きな影響をもっていましてね。OSなんかはまさにその典型ですね。ですか ら、ベーシックなソフトウェアというのはまさにビジネスモデルであるというふうに言 えると思うんですね。これらを何らかの形で知財化すべきです。国の公益研究機関とい うのは、やはり積極的に対応すべきだというふうに私は思います。以上でございます。 ○国立健康・栄養研究所田中理事長  はい、ありがとうございます。 ○大久保部会長  どうもありがとうございます。そのほかに。酒井委員。 ○酒井委員  これは感想にしかすぎませんけれども、私が考えていたことはすでに事務局に意見の 反映としてまとめていただいているわけですけれども、短期間にこれだけの作業に参加 させていただいて、これは私自身も研究所を運営していて、これはとんでもない労力を 皆さんかけてここへ臨んでいられるということは、非常によくわかりました。  そういう中で、確かに私の自分の専門領域と近い産医研の皆さん、産安研の皆さん方 が、独立行政法人になってから確実に変化をしているということは理解できています。 ただ、これだけの人と労力を使って、国民がというと大きいかもしれませんけれども、 期待している爆発的な変化ということが、こういう作業を繰り返していて起こるのかな というところが、最後、今、これは感想ですが、自分自身の課題として残っています。 このことについてはもう一度、少し時間をかけて自分なりに考えて、結果は出ないかも しれませんけれども考えてみたい。そのことが最大の感想です。本当にご苦労さまでし た。まあお互いになのですけれども。私にとっても非常にいい勉強の機会になりまし た。 ○大久保部会長  ありがとうございました。そのほかにどなたか、ご発言をされる委員はございます か。どうぞ、清水委員。 ○清水委員  直接今のお話とは関連がないかもしれないのですが、先ほど出ていました自己収入で すとか、知的財産権の活用といったところの評価の仕方についてなのですが、やはり研 究所によって大分状況が違うわけです。私は研究内容が詳しくはわかりませんけれど も、そういった意味で、どちらかというと横断的に評価するというふうな視点ではなく て、その法人に着目して、過去の傾向ですとか、あるいは一番いいのがおそらく当期度 の目標に比べてどうだったかということで評価していくのが、おそらく視点としてはい いのではないかと思っております。  ただ、ヒアリングの過程で、そういった観点から、「では、昨年は何件でいくらでし たか」というふうなご質問を何度かさせていただいたのですけれども、そういった意味 で過去の傾向、それから過去の傾向だけにはとらわれてはいけないと思いますので、今 年の、ほかとのバランス等も考えたところの目標といいますか、件数、金額、そういっ たものをご説明いただいた上で、それが達成できたのかどうかといったところで、今後 はなるべく評価するような形にさせていただきたいなというように思っておりますの で、そこのところは、ヒアリングのときに詳しくご説明いただけるとよろしいかなと思 います。端的にいえば、予算がそれを示しているのかと思いますけれども、そこのとこ ろの、「予算であらわされているところの目標といったものに照らしてどうだったのか 」といったところを中心にご説明いただければと思います。 ○大久保部会長  ありがとうございました。そのほかにどなたかいらっしゃいますか。ございませんで しょうか。  ありがとうございました。それではちょっと早いようですけれども、この6回の評価 部会、評価をされる側も評価をする側も、本当に貴重な時間をお使いいただいて、真摯 なご評価をいただきましたことを本当に、部会長として心から、まず御礼を申し上げま す。ありがとうございました。  とはいいますものの、この独法評価につきましては、先ほど委員会の中、あるいは事 務局でのご報告どおり、まだまだ未知数といいますか、試行錯誤の部分も多いと思いま す。そういう意味では、毎年、毎年のこの評価が非常に貴重なトライアルであり、また ある意味では実験でもあるというふうに考えております。  ということで、この6回で、様々な場でいただきましたご意見、あるいはご感想等に つきましては、今後行われますいわゆる総会の場を通じまして、先ほど清水委員もおっ しゃっておりましたけれども、ぜひご提案をしておきたいと。また、次年度から新しい 評価をされる、独法化をした法人も出てくるわけでございますので、そういうものにぜ ひ有効に生かしていただきたいというふうに考えております。  それでは長時間にわたりまして本当に、委員の諸先生、3法人の皆様には心から御礼 を申し上げまして、きょうの委員会を終わらせていただきます。どうもありがとうござ いました。                                      以上 照会先:政策統括官付政策評価官室 企画係 電話 :03-5253-1111(内線7783)