03/07/04 第1回労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会議事録        第1回 労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会                     日時 平成15年7月4日(金)                         15:30〜                     場所 経済産業省別館1036号会議室 ○企画課長  ただいまから第1回労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会を開催させてい ただきたいと存じます。大変お暑い中お集まりいただきまして、誠にありがとうござい ました。司会を務めさせていただきます、勤労者生活企画課長の伊岐でございます。  本日は基本問題懇談会としての最初の会合となりますため、座長が選出されますまで の間、私が議事進行役を務めさせていただきます。事務局を代表しまして、勤労者生活 部長の奥田よりご挨拶を申し上げます。 ○勤労者生活部長  勤労者生活部長の奥田でございます。前回、6月6日に勤労者生活分科会を開催いた しまして、その場で基本問題懇談会の設置が決まりました。その後、日程調整をさせて いただきまして、最も早いところで皆様方がお揃いになる日ということで、本日開催を させていただいたわけでございます。  前回の勤労者生活分科会でもご説明申し上げましたように、財形制度をとりまく状況 は、相当大きく変化をしてきております。雇用の状況、金融の情勢、少子・高齢化の進 行など、非常に大きな動きが起こっているわけですが、そういう中で発足以来30年、こ の制度ができてから経っているわけですが、いろいろな点で制度そのものの見直しを図 らなければならないという状況に立ち入ったと認識をしているわけです。  今回ご参集をお願いいたしました基本問題懇談会におきましては、これまでの審議会 の場でもお話をしてまいりました、いろいろな点につきましてご検討をいただきなが ら、今後また30年間、それはオーバーかも知れませんが、長い間十分に通用する新しい 勤労者財産形成制度に、私どもとしては作り直したいと考えています。そういう観点か らのご議論をいただきたいと思っているわけでございます。  その意味で、この懇談会で数回ご議論をいただいて、すぐ法改正に結び付くというふ うには、なかなかいかない面もあるのではないかと考えております。ただ、ゴールとい たしましては、この議論を将来の法改正に繋げたいと思っているわけです。現在のとこ ろ、私ども具体的にいつまでにということは日程的には区らないで、皆様方のご参集を いただいたというのが実情です。そういう意味で、今後議論の展開の中で、それぞれ テーマを皆様方にお願いいたしまして、それが総合的に新しい財形制度として、どうい うふうに組み立てていったらいいのかということについてのご議論をおまとめいただき ながら、新しい財産形成法に繋げていきたいと考えているわけでございます。  今後議論が多岐にわたると思いますし、他制度の動きも相当注意深く見ていかなけれ ばならないと思っています。先般発表された政府税調の答申の中にも、財形貯蓄の非課 税制度については見直しを行うことが明記されています。いわゆる401Kについても、 今後更に改善を図っていくということもあります。そういう中で財形制度をいろいろな 諸制度の中で、どう位置付けていくかといったことも出てくるかと思いますので、ほか の動きも見ながら、また税制の全般的な大きな動きも見ながら、この制度を新しいもの としていきたいと考えているわけです。こういう状況の下で、これから皆様方のご議論 をお願いしまして、簡単ですがご挨拶とさせていただきます。 ○企画課長  議事に入らせていただきます。議題(1)の「基本問題懇談会の運営」についてで す。この基本問題懇談会の開催に当たりましては、まずは座長の選出を行わせていただ きたいと思っています。これに関しまして今日、参考1として付けています「労働政策 審議会勤労者生活分科会運営規程」をご参照いただきたいと思います。この第9条第3 項に「懇談会に座長を置き、懇談会に属する公益を代表する委員及び臨時委員のうちか ら、懇談会に属する委員及び臨時委員が選挙する」となっていますが、いかがいたしま すか。 ○松井委員  公益の委員の方からということと、金融の問題の絡み、税制度の問題等も絡むもので すので、ご経歴から私が推察するに、日高委員に座長をお願いをしてはいかがかと思う のです。 ○企画課長  ただいま日高委員を座長にというご発言をいただきましたが、何かご意見がございま すか。                  (異議なし) ○企画課長  異議がないということですので、これから日高委員に座長をお願いいたしたいと存じ ます。 ○日高座長  日高でございます、よろしくお願い申し上げます。指名ですので、これから私が座長 を務めさせていただきたいと思います。いろいろ難しい問題ではありますが、皆様方の ご支援もいただきながら、この懇談会を実りあるものにしたいと考えていますので、ど うかよろしくお願い申し上げます。  早速、本日の議事に入らせていただきます。まず事務局から資料2の「労働政策審議 会勤労者生活分科会基本問題懇談会運営規程」について、説明をお願いいたします。 ○企画課長  ご説明申し上げます。資料2ですが、先ほどご紹介いたしましたように、勤労者生活 分科会運営規程にも、一定範囲で懇談会に関する事項が定められていますが、その他の 部分であらかじめ定めておきたいものを、お手元の資料にとりまとめていますので、簡 単に説明いたします。  第一条が分科会運営規程に定めるほか、この規程に定めるところによる、という制定 文的なものです。第二条が懇談会に属すべき委員及び臨時委員の人数です。第三条は懇 談会が必要に応じ、学識経験者の意見を聞き、及び実地に調査を行うことができるとい う内容です。第五条が懇談会の検討結果を分科会に報告する旨の内容の条文です。第六 条がこの規程に定めるもののほか、議事運営に必要な事項につきまして座長が懇談会に お諮りして定めていただくという旨の条文です。  このあたりについて特段のご異論はなかろうかと思っていますが、特に第四条に関し てご相談といいますか、説明をしておきたいと思います。  これが懇談会の公開に関する規定です。「懇談会は原則として公開とする。ただし、 公開することにより、個人情報の保護に支障を及ぼすおそれがある場合、個人若しくは 団体の権利利益が不当に侵害されるおそれがある場合、又は率直な意見の交換若しくは 意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合には、座長は、会議を非公開と することができる」ということで、原則公開、そして折々にご判断をいただき、座長の 権限で非公開とすることができる、という規定にさせていただきたいと考えています。  なお、第四条の2に「座長は、懇談会における秩序の維持のため、傍聴人の退場を命 ずる等必要な措置を講ずることができる」と、公開に絡む規定を置いています。基本的 には分科会規程における公開の原則を引き写したものなので、このあたりも含めて皆さ まのご意見をお伺いしておきたいと思っています。よろしくお願いいたします。 ○日高座長  いかがですか。 ○新村委員  これは会自体を公開するという規定ですね。議事録はどういう扱いになりますか。 ○企画課長  原則として資料と議事録は公開を前提として、今日も速記の方が入っています。 ○新村委員  公開するからといって議事録は出さないというか、まとめないということではないで すね。 ○企画課長  ないです。 ○勤労者生活部長  非公開の会議でも議事録は公開します。 ○松井委員  感想めいた意見だけなのですが、このぐらいの人数だったら非常にカンファタブル で、議論はしやすいという感じはもっています。仮に公開になると、ここはこれであっ て観衆がずうっといるというイメージになるわけですね。私はどちらでもかまわないの ですが、皆さんが議論をしやすいのがどういうものか、ということでやったらいかがか なとは思っています。  後のほうの資料でどのぐらいという開催回数があるのですが、大きな部屋だと取れな いから開催ができないということはあってほしくない、ということだけを申し上げてお きたいと思います。物理的に公開すると、それなりに大きなスペースは必要になってく ることだけは事実ですね、どんなものなのでしょうか。 ○日高座長  それは特別の縛りはないとは思います。 ○松井委員  先着2名様だけなどとやるのですか。 ○企画課長  キャパシティに応じてあらかじめ人数を絞らせていただく、という手法はよくとって います。抽選だったり、非常に希望者の多い審議会は、そういう形で絞らせていただい ているようです。 ○日高座長  ほかにいかがでしょうか。 ○企画課長  規定をどうするかという話と、具体的に公開をしていただくかどうかという話がある かと思いますが、規定の中で原則非公開とするほどのことか、あるいは座長を煩わせつ つ、その都度状況を見てご判断をいただく、ということでよろしいのかということです が、いかがですか。 ○日高座長  最近はこういう形式の規定が多いのではないですか。はじめから原則非公開とする と、すぐに叩かれてしまうでしょうから、規定そのものはこれでよろしいですか。本日 及び毎回決めるとなると、次回はどうするかということになりますが、その点について 何かございますか。 ○松井委員  毎回決めるのも難しいと思います。最初のところはプリミティブなやり取りもあるの かもしれませんし、議論の状況を見ていただいて座長にご判断いただいたうえで、公開 の必要性が高いかどうかはお考えいただいたらいかがなのでしょうか。どうしても今、 しなくてはいけないとも思えないですし、当初は勉強をしてあまり恥をかかないような 議論をしていくのが必要なのかとも思うのです。それはどちらでもかまいません。山口 委員はどうですか。 ○山口委員  正直、公開しろと目くじらを立てるようなグループは、あまりいないのではないかと 思っていますから、こだわる必要はないと思っています。 ○日高座長  1回目の本日については、事務当局の説明がかなり多い部分ですし、いわば実質的な 中身に入るわけでもないので、公開するといっても何を出すのかなという感じがしない でもありません。そのようなことがありまして、今回は非公開ということでよろしいで しょうか。2回目以降をどういう方向で議論をしていくかが分からないと、判断ができ ないと思いますので、状況を見ながら次の回のことをどうするかを決めるか、あるいは 会の当日にどうするか、ご相談をさせていただくということで、とりあえず本日は非公 開でこれから審議を進めさせていただく、ということでよろしいでしょうか。  では、議題(2)の「今後の進め方について」という点に入ります。この点について は資料3がありますが、その辺も含めて事務局から説明をお願いいたします。 ○企画課長  資料3ですが、お読みいただければお分かりいただけるような単純なペーパーになっ ています。開催頻度は2カ月に1回としたいところですが、諸般の事情も考慮して2〜 3カ月に1回という形で書いています。検討事項については、先に開きました勤労者生 活分科会でもご紹介をしました、昨年度の委託研究「企業内福利厚生のあり方と今後の 勤労者財産形成促進制度の課題について」と、これについて挙げられている諸課題を中 心に検討をするとさせていただきたいと思います。  もちろんその検討をいただく過程において、先ほど部長がご紹介しましたような、さ まざまな外的な変化もありますし、あるいは、それぞれ委員の方がお気付きになられた 問題点などもあろうかと思います。そのほか財形制度を取り巻く情勢で重要事項の報告 なども、検討事項の中に入れたいと思っています。  もう少しブレイクダウンをしますと、2の(2)の検討事項に列挙しているようなも のですが、2の(2)の(1)から(4)までは、今日お配りしています委託研究の77頁の、 「時代の要請に適合した制度の構築等に向けて」と題して、課題を列挙している最初の 基本的な考え方の第1、第2、第3、第4あたりを意識して書いてあるものです。順番 的なものとして、ここに書いてある順番そのものではなく、私どもの気持としては、い ま非常に雇用・失業情勢が厳しく、流動化の話などが話題になっているので、その関連 の部分を最初にご検討をいただくこともよろしいのかなという気持で、第1に「企業の 関与を基本としつつ、企業形態の変化や労働慣行の変化を受けての制度の構築」を挙げ ています。  (2)が「より多くの勤労者が財形制度のメリットを享受できるようにするための改善 策」、これらが非正社員の方々への浸透であったり、中小企業の方々への拡大であった りということを含んでいます。  (3)が「一人一の勤労者が多様な選択を行うことを可能とするための改善策」であり、 これもこの報告書にもあるような商品の多様化などを念頭に置いているものです。  (4)が財形制度のいまの考え方を更に広げる、あるいは見直すというような、制度の 根幹に係わる話です。  (5)が、もしかしたら運営面も含めたその他の報告書では書き漏れていることである とか、あるいは外的なさまざまな変化に対応するものと考えて整理しています。  順番はいま申し上げたように、できれば(1)(2)(3)(4)という形でやっていければと 思っていますが、これは委員の方々の特段のご希望、ご要望があれば、また考えてまい りたいと思っています。  中間とりまとめですが、2の(3)にあるように、一定の時期に中間とりまとめを行 いたいと考えています。いってみればこの検討事項が一巡して検討をしていただけた時 点でまとめの案を示して、ご議論をいただいてまとめる作業に入ることになるかと思っ ています。時期的に言いますと、勤労者生活分科会の基本問題懇談会は、当然勤労者生 活分科会の任期に一応縛られているので、その任期中の適切な時期に、まずは中間とり まとめをさせていただくことを考えています。  明確な時期をいまターゲットとして示すのは、私どももいろいろな外界の変動を考え ると言いにくいのですが、とりあえず1年程度ご議論をいただいた成果を、1回はとり まとめるのかなと思っていまして、来年の今ごろには1回中間まとめができればいいな と考えているところです。以上です。 ○日高座長  ただいまの説明に対して、ご質問ご意見はございませんか。 ○大賀委員  (1)の「企業の関与を基本としつつ」という部分ですが、確かに企業の関与は必要だ と思うのです。昨今を見ていますと、個別企業ということでは非常に難しいということ もあるので、できれば個別企業だけではなくて、例えば業界とかグループとか幅広い部 分での議論も必要なのではないか。個別企業ということですと、なかなか難しいかなと いう雑感めいたことですが、そのような感覚を受けています。 ○企画課長  その点につきましては、この報告書の中でも「事業主の負担軽減」ということで、例 えば事業主そのものが、いま現在、制度上負担しているものを、引き続き制度上維持す るのか、いま言われたようなグループ化なり、いま現在もっています事務代行制度の拡 大みたいなことも含めて、負担のない方法を考えていくのかということは、この報告書 の中にも課題として取り上げられています。  「企業の関与を基本としつつ」としながらも、企業形態の変化や労働慣行の変化を受 けて、どうしましょうかという中に、いま言われたグループ化であるとか、そういうこ とを意識して入れているつもりです。ただ、「基本としつつ」というのは、財形制度の いまの基本的な考え方が企業の福利厚生を支援する仕組みなので、そこの考え方をドラ スティックに変えるという意味での議論であれば、それは(4)になっていくのかなと考 えまして、あえて整理をしてあります。 ○奥村委員  いま勤務している所から離れた人をどう救うかということから言うと、基本だからそ ういうことでいいのかもしれないのですが、企業から離れた人のことを考えた場合に、 特に次の転職までの期間が長いだとか、例えば子どもが生まれたり、育てられたりとい うことがあるから、「企業の関与を基本としつつ」というのはちょっと意味が違うので すが、場合によってはこれもいろいろな留保条件を付けたりすべきかなとは思います。 ○勝委員  1点だけ、中間とりまとめを1年後に行うということで、いまの問題も含めてなので すが、その方向性は漠然としたものを提示するのか、あるいはかなり具体的な設計図ま でこの懇談会で決めて、分科会に提出するのか、その辺はどうお考えになっているので すか。 ○企画課長  前回の勤労者生活分科会でも、実はご発言が委員の方の中からあったのですが、全部 とりまとめてしまわなければ何も改善しない、というのでは時代の変化に合わないだろ うということで、法改正を要せずできるものについては、こういう所でご議論をいただ いた成果をあまり時間を置くことなく、我々も政策のほうに取り入れたいと思っていま す。一方で大がかりに検討をしたその骨組みをきちんと構築してからでないと、動かし にくい部分については、中間とりまとめを更に精緻化して、最初に部長が申し上げたよ うに、ターゲットとしてある時点での法改正に繋げたいと思っています。  したがって中間とりまとめの中には、もしかしたら中長期的に、あるいは少なくとも すぐにではないが、法改正の方向として「こういうの」というのがある一方で、現実の いますぐやるべき制度改正についても、「このような」という両方が入ったものではな いかと、現時点で事務局としては思っています。 ○日高座長  そのへんはもう少し議論の進展を見ないと、何とも言えないのかもしれません。 ○奥村委員  それに関連してですが、2〜3カ月に1回程度、1年後ぐらいを中間とりまとめ目標 ということなのですが、実は既にいろいろな問題提起をさせていただいていることから して、むしろ中間とりまとめ以前にもある程度結論が出るものについては、どんどん改 善をしていくということが必要だと思いますし、お願いしたいと思います。  例えば活用助成金給付金の問題についても、もともといろいろな議論があって、発端 のところでは、一般財形にはマル優がないのだと、マル優を適用するようにしてはどう かという議論があった。しかし、なかなかそれは通らない。むしろマル優については見 直しという動きが全体的にあって厳しい。そういうところで、特に中小企業の勤労者に 財形を普及しようということで、活用助成金給付金制度という案が出てきたわけです が、そのときに例えば、一体どの程度の支援をするのだというときに、マル優ありせば という、マル優の適用が受けられればというところが1つのメドかなということで、給 付金等の水準が決められたと理解しているのです。  いま非常に低金利だということがあって、いろいろな予算措置等でこれだけの活用助 成金給付金ということで計画を作られて、それが運用されることになっているのです が、これだけの低金利の状況になってしまうと、その制度をスタートする時にマル優あ りせば、これだけの支援ということがあるのではないかと、こういうことで作った数値 というのは、当然変わってくるのです。それがいまの状態です。もともと活用助成給付 金については一体効果があるのか、中小企業に対する普及の目的にかなった制度かと、 疑問であるということを再三指摘しているのです。  更にこの制度を続けるにしても、その支援の水準自体がマル優がありせばというとこ ろから見ても、今日、概算要求の数字なども出していただいているのですが、見直すべ きというか、こうではないかという例えがあるのです。そういったことをどう考える か、中間とりまとめまで放置する形でその議論の決着もつけないということは、勤労者 にとっても申し訳ないのではないかと思います。皆さんのご意見を聞かせていただきた いと思っています。  最初に部長から「30年間通用する制度」というお言葉があったのですが、そういった 制度が作れれば非常にいいのですが、これからいろいろ制度を作って運用していくこと が大事だという時に思うことは、環境の変化状況の変化が非常にある。どうも最近の世 の中を見ていると、いろいろな新しいことが起こってくるし、そのサイクルも短くなっ ているということがある。  例えばいろいろな予定利率の問題であるとか様々な制度を見ていると、固定的に数値 でセットしてしまうと、それが状況の変化に付いていかない、問題を起こすということ がある。そういう経験からすると、良い制度、長くもつ制度ということも当然なのです が、もう一つは諸条件、環境状況の変化に対応し得るような、柔軟な制度を作ってお く。例えば活用助成金給付金などの支援水準レベルであると、それを額として1回作っ てそれでずっと運用するのではなくて、その都度その都度の状況の変化に応じてその仕 組みを見直していく、支援レベルを見直していくことが必要だということを強く感じて います。それを1つ申し上げておきます。 ○新村委員  検討事項の中で何か30年というような、私は中長期のほうに関心があるのですが、そ もそも論みたいなところは、先ほどのご説明では(4)になるわけですか。それとも(1)に なるのですか。どこで議論をするのかよく分からなかったのです。 ○企画課長  いまのスキームに根本的な検討を加えるというものは、私どもの意識では(4)を考え ています。 ○新村委員  あとのほうで、とりあえずどうやろうか。いま問題となっているところを検討して、 中長期的な大きな制度変更に結びつくような議論は、そのあとにしようということです か。 ○企画課長  奥村委員からのご発言もありましたように、少し制度周りの話ですぐ実現に結びつけ たほうがいいもので、できるものは先に整理をする。その過程でのいろいろな議論も含 めて、例えばコストパフォーマンスが悪いみたいな話が出てくれば、それは最後あるい は(4)の根本論に関係してくるのかなという、私どもの整理で(4)にそういうことを入れ ていただこうかと思っているところです。 ○藤田委員  いまのご意見もそうだと思うのですが、ここで取り上げている「制度」というのは、 財形制度のことですね。ですから報告書に出されていた福利厚生の問題は、とりあえず はやらないということですね。 ○企画課長  はい、先ほど言いました77頁以降の課題です。 ○松井委員  もちろん財形制度を議論することだと思いますが、それを議論する時には企業の福利 厚生制度みたいなのが、どんな方向になっているのか、そういうことがバックにあっ て、では、財形がどうあるべきかという議論になるのではないかと、私は思っています から、全く離れているということはないと思っています。そういうことで藤田委員が ずっと研究をしてくださったと私は認識をしているのです。 ○奥村委員  例えば年金財形に関して言うと、年金制度との関係だとかいうことの議論が当然ある わけですから、そういう意味では議論は財形制度に完全に閉じてしまう、ということで はないかなとは理解してはいます。 ○松井委員  私ども日本経団連として、最終的にどのようにするかはまだ決めていないのですが、 いま年金本体の議論をしている中にあって、それ以外の私的年金をある程度サポートし ていかなくてはいけない。そうなると財形の中で言えば、例えば財形年金は、どういう やり方をしていったらいいのかも、議論の1つとしてあり得ると思うのです。年金本体 を議論しているところは、社会保障審議会の年金部会ですが、そこにこれもあるよと 言っていくのか、あるいは遅れてトコトコ付いて行くのかということも、論理的にはあ り得ると思うのです。どうやるかというのは、いろいろやり方はあるのではないかと思 います。 ○奥村委員  座長が最初に言われたように、他制度との関連は常に見ておくということが当然ある わけですから、財形制度にクローズして財形だけ議論するということはないのだろう な、というのを申し上げたつもりなのです。77頁以降だけではない。 ○企画課長  77頁以降に書いてあることをご議論いただく過程で、当然関連する制度なり周辺状況 も見ていただくというつもりですが、それでよろしいですか。 ○勝委員  私、今回初めて参加させていただいたのですが、多分過去にかなりいろいろな議論が あって、いま奥村委員が言われたように、その問題点というのはかなりあぶり出されて いると思ったのです。そういったものをもう少し叩き台というか、まとめていただけれ ば、もう少し議論の方向性が分かってくるのではないかと思うのです。 ○企画課長  そういう問題点は折々に出されていたものが十分整理できていなかったことが、この 委託研究を行った1つの原因です。不十分かもしれませんが、このように整理をしたの が1つの端緒でした。  この間も超特急でご説明をしたので、問題点の部分を全部細かくご紹介していないの ですが、ここにご出席の藤田委員、奥村委員、山口委員ご参画の研究会で、かなり問題 点を出していただきました。言われたことはそれほど落とさず入れてあるつもりなので すが、ただ、網羅的にたくさんやり過ぎたので、今度はパーツに分けてあるべき方向性 みたいなことに、議論を集約していただけないかなという思いで、今回、基本問題懇談 会を立ち上げていただきました。 ○日高座長  他にはいかがですか。 ○山口委員  追い追いやっていきましょう。ただ1年という中と、この個数の関係で、本当にその ペースで1年後にできるのかなと、自分の能力も踏まえつつ、ちょっと大変だという気 はします。 ○日高座長  実際に中間とりまとめまで何もしないのかと言われたら、それは「はい、そうです」 とはなかなか言いづらいところはあるのだろうと思います。実際にこの財形絡みの、国 からの支援策というのは、どうしても税制が前面に出てくるのが今までの流れですが、 その税制改正については、例えば16年度の税制改正に向けて、厚生労働省としていろい ろな考え方、あるいは制度全体の中で、いろいろなご議論がされてくるのだろうと思い ますが、そういう時に、この懇談会は懇談会としていろいろな課題を議論しながら、税 制改正の要望については、全く別の場で議論が進められていくというのであれば、ちょ っと問題かなという気もします。例えばそういう報告は適宜な時間に開いて、報告ある いはご意見があればそれを伺うという場が必要になるのだろう。  先ほどの年金の話も今年の秋が1つの大きな節目になるので、年金財形の話をどうい う形でそこに入れるのかというのは、物理的になかなか難しい面があるのだと思います が、その辺、社会保障制度審議会なり、あるいはその制度内部とのいろいろな動きを見 ながら、折角懇談会を開いた以上は、何かやったなと言えるようにしていかなければい けないのかと、私自身は思っています。  ですから完全に皆様方の意見がまとまって、それを1冊の冊子にするまでは何もやら ないのだということではなく、そこはあまりリジブルに考えなくてもいいのかなとは 思っています。この辺はまた政府部内の流れをよく見ながら、事務当局ともよく打ち合 わせをしながら、折りに触れて皆様方のご意見も伺わせていただきたい。こういう形で 会議を開くということではなしに、ご意見を伺うこともあるかもしれませんので、その 辺はもう少し成りゆきに任せていこうかということで、今日のところはいかがでしょう か。 ○勤労者生活部長  後で説明させていただきますが、前回、松井委員からここで提案された事項が、法律 事項なのか政省令の改正ですむものなのか税改要望なのか、そういうものを示してほし いということがございましたので、今回この資料を作りました。それでお感じ取りいた だけると思うのです。  法律改正事項がかなりこの中にあるのですが、これについて、つまみ食いでやるわけ にはいかないものですから、全体的な思想をどうするかを固めた上で、出していく必要 があると思っていますが、事柄によっては法律改正ではなくて、税改要望でできるも の、政省令のレベルでできるものもあります。表現は悪いのですが、緊急性があるなら ばつまみ食い的にやったほうがいいのではないかと判断しているものもありますので、 早くできるものは早く実現していき、大がかりに議論していくものについては、全体の 考え方をまとめて、先ほど申し上げたような新しい財形制度を構築をしたいと考えてい ます。  その意味で議論の順番についてあまり硬直的にする気はありません。現実的に1番に 書いてあることが、実は新しい財形そのものに関わっていることも十分あります。それ も後の資料を説明する中で、皆様方に気づいていただけると思うのですが、いろいろな 問題が入り組んでいるので、きれいに箱が分れていないだろうと思います。そういう面 は臨機応変にやっていきたいと思っています。 ○日高座長  いま部長からお話がありましたが、ただいまのいろいろなご議論とも絡む点がありま すし、政府の税制調査会の答申及び資料5を、事務方からとりあえず説明をしていただ いて、その上でただいまの議論についてご意見があれば、またご議論をするということ でいかがでしょうか。 ○財形専門官  財形制度を取り巻く動向で重要事項の報告と、本日用意しました資料について説明を させていただきます。  まず報告事項です。資料4の「政府税制調査会等における議論の動向について」で す。先日、政府税制調査会から「少子・高齢化社会における税制のあり方」と題する答 申が提出されています。この中で既にご承知と思いますが、「財形貯蓄といった残され た貯蓄優遇税制についても、さまざまな貯蓄手段の税負担の公平性確保の要請等を踏ま え、見直しを行うべきである」とされたところです。  財形貯蓄制度の税制関連については、下の所に平成14年度の税調の答申があります が、2頁に平成13年12月に出された答申の中で、「少額貯蓄非課税制度等の見直しにつ いては、本制度は基本的には廃止に向けて検討を進めるべきである」とされまして、そ の時老人マル優が廃止されています。  実は昨年の6月ですが、政府税調の中期答申として「あるべき税制の構築に向けた基 本方針」をまとめています。昨年の中期答申の中では、財形貯蓄の税制については、財 形貯蓄に直接触れた記載はなかったのですが、今回は財形貯蓄に係わる見直しについて 書かれていますので、報告申し上げます。  次に、雇用保険法の改正の中で財形貯蓄についての附帯決議がされているので報告い たします。この中で衆議院では「失業中の中途払い出しを可能にする等、見直しの検討 に努めること」と書かれていますし、参議院では「解雇等により、やむを得ず中途払い を行う場合について、特別な配慮を行うことができるよう検討に努めること」とされて います。以上が報告事項です。  資料5「財形制度改善策に関連する規定について」を説明いたします。これは勤労者 生活分科会で報告いたしました「企業内福利厚生のあり方と今後の勤労者財産形成促進 制度の課題について」と題する委託研究ですが、その中で財形制度の改善策として掲げ られた内容です。この改善策について、どのような法令の改正が必要であるかをとりま とめたものです。  税法とか税制関連の通達を改正する場合、又は税制に影響する事項、例えば財形年金 貯蓄であるとか、財形住宅貯蓄を改正する場合には、財務省に対して税制改正要望をす る必要があります。それも備考で記載しています。各項目について簡単に説明いたしま す。  (1)のaのイ、「一般財形貯蓄の預替期間の短縮」。一般財形期間については任意に 預替えができるわけですが、財形貯蓄を3年していないと預替えができないという規定 です。この規定は財形法第6条の8項に「3年以上の期間預けていなければならない」 と規定しているので、これを少し短縮しようということであれば、財形法の改正が必要 です。  ロ、「財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄への任意預替えの導入」。一般財形について は、任意預替え制度がありますが、年金、住宅貯蓄にはありません。これを非課税財形 である年金、住宅貯蓄に拡大するのには、財形法第6条8項の改正、又は8項の他に財 形年金、財形住宅に準用する規定の追加が必要です。さらに租税特別措置法施行令に、 同様の規定を設けていただくことになります。その預替え等の手続きについても、租税 特別措置法の施行令で規定する必要があると考えています。  ハ、「財形残高の分割預替えの導入」です。財形法第6条6項には、「一般財形につ いて退職をした場合に預替えができる」という規定があります。第6条7項について は、第6条6項の規定を年金・住宅財形に準用する旨の読替え規定があります。それと 財形法施行令の第14条の26に預替える金銭については、全額である旨の規定がありま す。これらの規定を改正することが必要であると考えられます。  ニ、「財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄の複数契約」です。財形法第6条3項、5項 で、複数契約を禁止する旨の規定があります。また、租税特別措置法の第4条の2は財 形住宅貯蓄について非課税にする、第4条の3は財形年金貯蓄について非課税にすると いう規定ですが、この中に非課税財形貯蓄の申告を既に提出している場合は、更なる申 告書の提出はできないという規定がされているので、改正する必要があると思っていま す。  ホ、「複数契約機関の指定の義務づけ」です。企業に対しては、いま複数の金融機関 と財形貯蓄契約をしてもいいわけですが、必ず複数の金融機関と契約することを義務づ けようとした場合には、財形法等で新たに条文を追加する必要があると考えています。  bのイ、「対象となる投資信託の要件の緩和」です。これは財形則の第1条に株式投 資信託の要件を規定しています。株等の組入れ割合等の要件を規定していますが、これ を改正する必要があります。これは税制改正要望が必要ですが、一般財形だけの改正で あれば、多分税制改正要望は不要だと考えています。  ロ、「対象となる有価証券の拡大」です。財形の商品はいろいろな商品があります が、その商品を規定している条文が財形令の第2条です。その中に金融商品として株式 を追加する必要があると考えています。  ハ、「投資信託の銀行等への拡大」です。財形法第6条の1項で、有価証券を購入す る際の金銭の預託ですが、これは証券会社にしか認められていないので、この規定を改 正する必要があります。  (2)のaのロ、「事務代行団体の要件の緩和」、ハの「事務代行団体の届出制」、ホ の「事務代行団体の範囲の拡大」です。これらについては、財形法の第14条の2に「事 務代行団体については事業主団体でなければならない」ということとか、「厚生労働大 臣の指定が必要である」という規定があるので、これらの規定の改正が必要ですし、又 は、財形の規則の第25条の3に「事務代行団体の指定基準」、事業主団体であってもこ れらの団体でなければ指定できないという指定基準であるとか、指定手続等の規定があ ります。これらの改正が必要だと考えています。  ニの「事務代行団体の広域化等による活用促進」ですが、これらについては指定要綱 の改正が必要になります。  (2)のbのロ、「有期契約労働者や派遣労働者の財形制度の利用可能性の拡大」です。 財形貯蓄への預入期間は有期契約者などですと、いま一般財形であれば3年以上の契約 が必要ですし、年金、住宅の財形では5年以上の契約期間が必要です。これらの規定を 短縮しようということになると、財形法の第6条の「財形貯蓄の定義規定」を変更する 必要があります。  ハ、「事務代行団体を通じた直接加入」ですが、これは事業主からの給与天引を財形 法第6条で規定しているので、これについても法改正が必要だと考えています。  (3)のa、「雇用の流動化の対応」です。そのロ、「転職承継期間の延長」です。現 在、勤労者の方が事業場を退職しますと、一定の条件であれば、新たに再就職をした場 合に転職承継ができる規定があります。これは現在1年とされていますが、これを延長 するには、財形令の第14条25の改正になり、政令改正です。ただし、「期限自体を撤廃 をする」ことになると、財形法第6条の6項の改正が必要となります。  ハ、「適格払出要件の拡充」です。財形年金、財形住宅貯蓄については、死亡、重度 障害の場合は非課税で払い出すことが可能です。これに失業中の生活費等に従事するた めには、財形法第6条の財形契約の規定を変更する必要があります。ただし、失業中の 生活費として不適格払出しをしても、5年間遡及課税をしないだけの特例を設けるとい うことであれば、租税特別措置法施行令の変更で可能です。  ロの「転職承継期間の延長」と、ハの「適格払出要件の拡充」については、税制改正 要望をするべき検討をしています。現在、実務的な対応が可能かどうか、金融機関等に も照会中です。  ニ、「特例自己積立制度及び事務代行制度の拡充」です。これについても特例自己積 立の条文、事務代行団体の条文の法改正が必要です。  ホ、「財形年金貯蓄の据置期間の延長」、ヘ、「財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄の年 齢制限の延長」です。これは財形法の第6条の定義規定に記載されているので、法改正 が必要になります。  (3)のb、「事業主の負担の軽減(関与のあり方)」です。イ、「事業主による給与 天引きの見直し」、ロ、「財形住宅融資における事業主の負担軽減措置等の要件の撤廃 」、ハの2つ目のポツの「財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄の統合」、ホの「福利厚生会社 への出資要件の見直し」ですが、それぞれ該当条文の改正が必要になります。  5頁の(4)、「新たな領域での勤労者施策の拡充」のイです。これは財形給付金・基 金の規定の条文が、財形法第6条の2と財形法第6条の3ですが、これらの改正が必要 と考えています。ロ、ハですが、こちらも財形法の改正が新たな条文追加、定義規定の 改正等が必要と考えています。  (5)の「現行制度に関するその他の改善策」では、イの「非課税限度額の拡大」とか、 「非課税限度額超過分の取扱い」については、これは税法の改正になるわけです。その 下のイの「財形融資制度の見直し」や「財形活用助成金の見直し」、これを廃止という ことになりますと、財形法の改正が必要となります。以上です。  これらの条文は改正するという内容がきちっと決まっているわけではありませんの で、改善に際して考えられる代表例ということで記載しています。財形制度改善策に対 する規定の説明は以上です。  引き続いて、資料6です。平成15年度予算がすでに確定していますので、説明をさせ ていただきます。  一般会計です。平成15年度予算、総額で一般会計で1,154万1,000円。対前年度3万 6,000円の減になっています。もう1つの労働保険特別会計は18億5,417万6,000円、対 前年度1億8,216万4,000円の減です。トータル予算額は18億6,568万7,000円、対前年度 で1億8,220万円の減です。私からは以上です。 ○日高座長  ありがとうございました。先ほど来のご議論、いまの説明をお聞きいただいた後で何 かご質問、ご意見があれば合わせてどうぞお願いいたします。 ○松井委員  来年度への税改要望は、厚生労働省が毎年やっていると思いますけれども、この中で はどれをいうか、何かお考えがすでにありますか。大体さっきので。ここというのをも う一度。 ○財形専門官  いま検討しているものについては、資料5の3頁の(3)のロ、転職承継可能期間の延 長と、ハの適格払出要件の拡充についてです。適格払出要件の拡充については法改正で はなくて、できる改正ということで不適格払出しをした場合に、5年間遡及課税をされ ることになりますが、その遡及課税をやめていただこうということです。税法の条文で いうと、租税特別措置法施行令の第2条の28、または第2条の33等の改正でいけると考 えていますので、その辺を検討しています。  これについては、いろいろな金融機関の応援や金融機関が実際に事務的にできるのか とかいう検討もありますので、その辺について金融機関に検討させたりというようなこ とを、いましている最中です。 ○松井委員  ロの転職承継可能期間の延長は、財形法本体ではなくて、政令、財形令の改正と、税 改、租特法の改正があればできると、そういうご判断ということですか。 ○財形専門官  はい。転職承継期間、承継するための期間、一定の期間で1年か2年にするというだ けであれば、政令改正でいきます。では、期間自体を全く撤廃して、何年経ってもでき るというような改正をするとすれば、これは法律を改正しないとできないことです。 ○日高座長  政令ですか。税改は。 ○財形専門官  税改要望いたしまして、それで税改要望が通りましたら、私どものほうで財形法施行 令の政令改正をするということになります。 ○企画課長  租特法でなくて、租特令でよろしいのですね。 ○日高座長  租特令でいいんですね、このロは。 ○財形専門官  ロは財形法の施行令の改正も必要ですし、租特令の改正も必要です。 ○松井委員  ハは租特法本体も必要だという読み方をするのでしょうか。 ○財形専門官  ハは条件によってですね。 ○企画課長  あまり微細に細かく、場合わけして記載しておりませんが。 ○財形専門官  非常に技術的な話になるのですが、生命保険関係については実は、最後に利息という か、差益が発生しますので、遡及課税をされると、5年間の遡及で留まらずに、初めか ら全部遡及課税されてしまうのです。それを改正するためには、租特法の第4条の3の 改正も必要と考えます。 ○新村委員  遡及課税の停止というのは、不適格ではあるけれども、税金だけ遡及しないという、 そういうことはあり得るのですか。 ○財形専門官  あります。 ○新村委員  要するに適格要件には入らないわけですね、いま失業の場合というのは。不適格であ ると。というのはあまり正攻法ではないような気がしたものですから。 ○財形専門官  現行規定では、災害疾病等の理由によって払い出した場合に、税務署長の認可を、税 務署長にそれらの理由として申し立てて、税務署長から確認申請書をもらって、それを 金融機関に持っていけば、遡及課税はできないという規定があります。租税特別措置法 の第2条の28に。 ○新村委員  それは災害の場合。 ○財形専門官  ええ。それに失業を加えてやれば。 ○奥村委員  だから、それも自発的な転職と、リストラ解雇というか、すごい違いだとか、かなり 取扱いが違ってくるんじゃないですか。転職というだけでこれ、そうじゃない。 ○企画課長  いま考えておりますのは、非自発的な失業に限って、税改要望に載せる意味合いから すると、そういう方については特別の事由が、天変地異や中途の疾病に見合う大きな問 題があって、可哀想だろうということで主張できないかということを、検討しておりま す。 ○奥村委員  我々が流動化対応だとか、そういうことでの転職ということでイメージするのは、も う分社化されてしまって、新しい会社に制度がまるきりないようになってしまってい る。本人の意思とは関わりなく財形制度を、例えば利用できなくなるだとか、そういう ことを救うというのが流動化対応だというふうに、僕などは理解しているのですが。  だから転職だというときに、そういう説明の際に、非自発的な失業だとかいう場合の 転職ですという条件をつけて話していただかないと、みんなの解釈がばらばらで、それ は前進かと思う所もあれば、何だそういうことかというふうに判断が違うと思うので ね。それを申し添えます。 ○勤労者生活部長  いまの措置は緊急避難的なものなのです。正攻法でやろうとすると、同じ資料5頁の (4)のハにあるように、いまですと持ち家を建てるとか、年金の目的だけで払い出せる わけですね。それを失業中の生活費としても引き出せるというのを財産形成の目的その ものの中に、入れ込まなくてはならないのです。これは法改正事項の候補としては考え ているのですが、そうなりますと、いまの財産形成法の財産形成とは何かというところ に関係してくるものですから、相当根本的な哲学論争をやらなきゃいけなくなる。  いまの財形は、年金や持ち家のようなもののために貯蓄をするということなのです が、考え方を勤労者生活全般にわたるいろいろなイベントのようなこと、あるいは事故 とかに備える貯蓄というようなことに変えれば、失業ということも組み込まれると思っ ているのですが。これはかなりの議論を必要とすると思います。ただ、とりあえずは自 分の意思ではないのに失業させられてしまった人が、本来自分の意思で解約しているの ではないのですが、財形貯蓄を解約せざるを得なくなってしまった。そのときにも5年 間遡ってその利息に課税されてしまうということは、あまりに気の毒ではないかという ことから、緊急避難としてそういう方には非課税を認めてあげてくださいと。その方は 失業されて生活に困っておられるのに、その方からも税金を取ってしまうのは、極めて 気の毒ではないかということで、いま我々は要求を出そうというふうに考えているわけ です。 ○新村委員  とりあえずの措置という理解の形ですね。 ○勤労者生活部長  そうです。抜本的な改革ではないのですが、いま救える方法としてはそれしかないの かなと。 ○新村委員  非自発かというのは、本人申告ですか。 ○企画課長  もちろんそれに加えて、離職に関する手続の中で自発か、非自発かで。雇用保険関係 の手続上の書類が使えますので、その辺りで確認をするというようなことを考えていま す。 ○新村委員  雇用保険でそんなことありますか。 ○勤労者生活部長  いま自発的なのと、非自発的なので、失業給付のあり方が変わっていますので、かな りシビアに認定をして、この方は自発的な失業だ、この方は非自発だということを安定 所が認定する仕組みがあります。一応役所の証明として、非自発的な失業だと設定でき るのではないかと思っています。 ○企画課長  ええ、適用できるという。 ○勤労者生活部長  失業の場合、例えば55歳以前でリストラで希望退職に応じてやめたという方があった 場合、年金財形の場合は5年間しか据え置きはできないわけです。そうすると54歳で辞 めてしまうと、59歳までしかつなげなくなるものですから、結局それは、60歳以降の 年金にならないのです。本来はそこは年金にしてあげたいのですが、これについては5 年間をこえる課税管理ができないということがありまして、最終的には納税者番号制な り、そういうことが出来てくれば可能になると思っているのですが、いまの仕組みでは それも救えない。だから一時的にではありますが、年金財形にはならないのだけれど も、5年間の利子分には課税されないところまでは救ってあげられないかと考えている のです。いずれも、緊急避難なりそういうような措置であることをわかった上で、お願 いしていこうと思っております。 ○日高座長  現在の、いまの税制改正手続、私も最近のことを知らないのでありますが、これはい つやって、大体いつまでにやるものですか。 ○企画課長  夏です。 ○勤労者生活部長  1年を2年に延ばした措置というのも、実は本当にニーズがあるかどうかなかなかよ くわからないのです。失業して生活費に困る方が多いはずなものですから、そういう 方々が財形はそのままにしているのかなと。2年にしたとしても、この間に皆おろして 使ってしまうのではないかという意見もあり、また、金融機関にしてみると、2年間管 理するというのは相当大変なことのようなのです。その辺りも調査をしているのですけ れども。 ○財形専門官  2年間延長の場合の課税処理の方法も問題があるわけです。 ○企画課長  本来であれば、もう今日はこういう案で出していきたいということをお諮りしたり、 ご相談をするというのが理想だったのですが、いま申し上げたような、少し補強してお かなければいけないことがありますので、概括的な説明で留めさせていただいていま す。また次の会合で報告するのは当然として、必要に応じて情報提供なりをさせていた だきたいと思っています。 ○勤労者生活部長  先ほどご紹介した雇用保険法の附帯決議に対する対応としては、とりあえずいまのよ うなことで対応するしかないのかなと考えています。  私からもう1つだけ補足させていただくと、お手元に「少子・高齢社会における税制 のあり方」という答申そのものをお配りしています。この中で、いまは財形の所だけを 抜きましたが、財形に係わって、同じように重要なことがあります。12頁第三、「その 他の課題」。一、「金融・証券税制」の第1節の最後に、いまの「生損保控除や財形貯 蓄といった残された貯蓄優遇税制についても、他の様々な貯蓄手段との税負担の公平性 確保の要請等を踏まえ、見直しを行うべきである」とあります。その後に、「金融資産 性所得に対する課税のあり方」ということが議論されています。「こうした中、今後の 課税のあり方については、簡素かつ公平で、安定的な制度の構築を念頭に、金融商品間 の中立性を確保し、金融資産性所得をできる限り一本化する方向を目指すべきである」 ということで、その後にまた、「納税者番号制など納税環境の整備を進めていくことも 重要である」ということや、「諸外国の状況を見ると、二元的所得税などの新たな租税 論の展開が見られる」。そういったようなことをやりながら、金融資産性所得に対する 課税の一本化を検討しようと言っています。  いま財形は利子に対する課税だけを議論しているのですが、株式の場合ですと配当も 入ってきますので、金融商品としての財形を考えたときには、この税制がどうなるかは 極めて大きな影響がある。最初の挨拶で、この辺のところも睨みながら財形の商品とい うものを考えていく必要があるのではないかと申し上げました。 ○日高座長  ほかに何かございますか。 ○松井委員  いまの点に関連いたします。ご説明では、利子非課税のものは今後どう、何かかなり 危ないというか、維持が難しいという、そういう前提で議論をするのか。それは置いて おき、何ができるかと議論するのかというのは、仕組み方としても相当違うのではない かと思うのです。方向性はこれでもう決まりなのか、どういう見方をしたらよろしいの でしょうか。 ○日高座長  なかなかお答が難しいのでしょうね。 ○勤労者生活部長  政府税調の議論に、我々が直接関与するということが難しいものですから。政府税調 の中には経営の方が入っておられますし、労働組合の方も入っておられますので、そう いう立場から勤労者の税制として重要だというようなご指摘をいただきながらというこ とは、随分あると思っています。 ○日高座長  たまたま今日お昼に石税調会長の講演を聞いていたのですが、いまの質問に出まし た、納税者番号を前提とした一体課税、金融商品もですね。それについて、こういうふ うに書き込んだけれども、使用者側も労働者側もそれぞれの消費者代表も、特に反対は ありませんでしたと。おそらくなかなかできないという前提で、皆さん考えているので はないでしょうかというような、講演の内容でした。 ○勤労者生活部長  そうなのかなと思います。ただ、財形貯蓄の非課税制度についての指摘は今回だけで はなく、ずっと続いていまして、少額貯蓄非課税制度等の、等というのは実は財形のこ とを指しています。老人マル優はすでに廃止されたのですが、「等」の所はいまのとこ ろ残っているものですから、今回わざわざ指摘をしていますので、これはいずれは、議 論になってくるものと思っています。この議論の時期によっては、私も財形の検討を相 当急がなくてはいけないこともあり得るのではないか。  ただこれは中長期的なあり方の答申ですから、来年からいきなりということにはなら ないだろうとも思いつつ、皆さまに検討をいただこうと思っているのが正直な気持ちで す。 ○日高座長  今日、石さんの話ですと、政府全体としても貯蓄から投資へという基本的な考え方は あるので、それはいろいろな所で謳われていますから、そういう前提でいろいろな個別 商品ごとの特例措置はやめていく方向に考えていかざるを得ない、という言い方を一般 的にはしておられました。ですからそういう環境があることは、これは税制調査会とい うことではなしに、むしろ政府全体の考えの中にそういう方向があるとすれば、松井さ んが言われた点も、なかなかはっきりそうですとか、そうではないとは言いづらいので しょうけれども、事務方としてもですね。何となく頭の隅には置いておかないといけな いのかなという気はいたしますが。 ○新村委員  いまのことですが、この答申を読んで、ちょっと思ったわけですが、税制優遇のない 財形というようなコンセプト、いま一般財形がそうですね。ということも片隅というよ りは、やはりきちっと考えていったらどうかなと思ったのです。特に、いまみたいな低 金利だと、そのメリットは非常に小さくて。アンケート調査でも、最大のメリットが天 引きで強制的に貯蓄してくれることだなどというのを、またこれも主体性がなくてちょ っと悲しいなと思ったわけですけれども、何かそういうような形で、無理のない形のも のも中長期の話としては是非考えていきたいと感じました。 ○勤労者生活部長  方向としては、まさに利子の非課税の制度はなくなってしまうだろうという、そのと きの財形のあり方ということ。  それから利子だけにしないで、まさに金融商品として捉えて、金融商品から出てくる 利益といいますか、利子や配当、譲渡益というものすべて含めて、それに対する課税と いう仕組みで考えるのか、というのがあるのではないかと思っています。それは、現役 の勤労者が置かれている状況をどれだけ配慮するかということになってくると思いま す。他の国民層に比べて税制上の優遇をする必要があるのか、ないのかという議論にな るのではないかと。 ○山口委員  もう何回も言うのも嫌ですけれど、一般的にまさに財産形成からとか、試しみたいな 話はやはりやれる部分とやれない部分があるということを明確にして、いまの財形で大 企業の人たちはそうだなと言うのと、本来財産形成を援助すべき人たちがどうなのかと いうのは、逆に、我々としてはきちっと議論して耐えられるような制度改正に。本当に そういう流れがいかんともし難い流れかもわからないので、我々が反対している。だっ たら、それに耐えられるような新たな枠組みたいなものを、やはり我々は考えるべきで はないかな。是非そのあたりできる、できないにしても、もっと。 ○奥村委員  それとちょっと関連する話で非課税のことで言うと、非課税が良い悪い、なくなった らどうするということで言うのではないのですが、非課税という魅力が年金財形、住宅 財形にあって、なおかつ、例えばその中小企業に普及しない。ということは、大企業に かなり普及しているという前提で考えると、中小企業に本当に普及しない理由というの は、もっというと財形の制度がいろいろ使いにくいとか、わかりにくいとかいうことが 元々あると指摘しているわけですけれども、非課税貯蓄があって、なおかつ、そうだと すると、やはり使いにくいとかそういった問題は大きな問題だと思うのです。  だから非課税があって魅力あるからという議論の前に、その制度の仕組みというもの が本当に中小企業の勤労者の方々に、中小企業の経営者の方々に利用しやすい仕組みに なっているかどうかというところを議論すべきだと思うのです。だから、いまの転職の 方をこれで特例的なケースで救えますといっても、たぶんそれは全然、財形制度を広く 勤労者の方に利用する仕組みにしたということにならないと思うので、もっと本質的な 議論が必要ではないかと思います。 ○松井委員  おそらくその関連でいきますと、この2番の(2)、「より多くの勤労者が財形制度の メリットを享受できるようにするための改善策」という中が、その今のあるべき姿を議 論していくものにはなると思うのです。おそらくここに書かれている事務代行以外のこ とも、制度そのものも含めてそういうのは議論しなくてはいけないのではないかという 感じはちょっとします。 ○日高座長  先ほどの検討すべき課題の順番がどうこうというお話がありましたが、どうもいまま でのご議論を伺ってみると、それぞれ関連があるわけですから、一応この順番というこ とは念頭に置きながらも、それぞれに関連することは、どうぞご遠慮なく議論をしてい くということにさせていただきたいと思いますが、よろしいですか。  それでは大体時間がまいりましたので、本日のところはこれで終了させていただきた いと思います。  議事録についてですが、議長の私と、私の指名するお二人の方に署名を押していただ くことになっています。これまでと同様に労働者を代表する方1名と、使用者を代表す る方1名にお願いしたいと思います。申し訳ありませんけれども、今回は山口委員と松 井委員にお願いしたいと思います。よろしくお願い申し上げたいと思います。  本日お忙しいところをありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたしま す。              照会先 厚生労働省労働基準局勤労者生活部企画課企画係                  03−5253−1111(内線5353)