03/04/10 第20回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録 第20回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 1 日時 平成15年4月10日(木)10:00~11:00 2 場所 厚生労働省専用第22会議室 3 出席者 [委員] 奥平委員、勝委員、小山委員、齋藤委員、桜井委員、 佐藤委員、讃井委員、田勢委員、辻村委員、都村委員、 中山委員、野澤委員、長谷川委員、堀越委員 [事務局]松﨑労働基準局長、奥田勤労者生活部長、蒲原勤労者生活課長 4 議題 中小企業退職金共済法施行令の一部を改正する政令案要綱について(諮問) 5 議事内容 ○齋藤部会長 ただいまより「第20会中小企業退職金共済部会」を始めます。本日は山路委員が欠席 です。「中小企業退職金共済法施行令の一部を改正する政令案要綱」について諮問があ りましたので、その内容について、事務局から説明をお願いいたします。 ○蒲原勤労者生活課長 資料の確認ですが、資料1から4までの4つの資料を用意しております。資料1が諮 問に関するものです。なお、事務局提出資料とは別に、「労働側意見」という資料が配 付されているかと思いますが、後ほどご紹介いたします。 資料1ですが、本日付けで「中小企業退職金共済法施行令の一部を改正する政令案要 綱」について、労働政策審議会の意見を求めるということで、厚生労働大臣より諮問を しているものです。具体的な内容ですが、「政令案要綱」という資料をご覧ください。 これまでの当部会の議論を踏まえて、建設業及び林業の退職金額について変更するもの でございます。ポイントとしては、建設業については「年2.7%の予定運用利回りに基 づき定める額」とし、林業については「年0.7%の予定運用利回りに基づき定める額」 とそれぞれ改定することになります。施行時期については、平成15年10月1日を想定し ております。なお、経過措置として、すでに加入されている方々の施行日前の分の退職 金については、引き下げ前の利回りで計算した額を支給することとしております。これ は、従来の改定における経過措置の考え方に沿ったものであります。 以上が政令案要綱の諮問のポイントでございますが、その他の資料2、3、4は、こ れまでの部会において事務局から提出した資料と同一のものを出しております。いまの 諮問に関係する部分をポイントのみ簡単に説明いたします。 資料2は、「予定運用利回り見直しの考え方」で、前回説明したとおりでございま す。建退共については、見直し後5年間を通じて単年度欠損金が生じない水準、さらに 経済状況が非常に厳しいことを踏まえて、2.7%とした考え方を整理しております。2 点目の林退共については、現時点で約23億円の累積欠損金があることから、建退共と同 様の考え方に加え、いま持っている資産に対する累積欠損金の割合を拡大させない、あ るいは縮小させるという考え方で、期日の計算をいたしまして、その結果、0.7%にし たいということでございます。 以下、この資料の中には、これまでお示しした試算の内容がすべて入っております。 資料2の中程以降には、建設業・林業それぞれについて、現行の利回りのままであった 場合の退職金額と利回りの引き下げ後の退職金額を資料として付けてあります。その 他、もともと勤労者退職金共済機構で定めている「掛金日額」について、それぞれ10円 ずつ引き上げるという方向が出されているので、それを踏まえた資料も作成しておりま す。いずれも、前回提出の資料と同様でございます。以上、資料2が利回り見直しの関 係の資料で、ポイントのみご説明いたしました。 資料3も、前回提出の資料と同様でございますが、これまでの議論を「論点整理ペー パー」としてまとめたものでございます。資料4は、「建退共及び林退共の運営改善の 方向」ということで、加入促進なりさまざまな改善方策をこれから講じていくというこ とで、これまでご説明した中身と同様です。 以上でございますが、これまで数回にわたりご議論いただいた点をペーパーとして整 理しつつ、今回諮問をさせていただいたということでございます。是非とも委員の皆様 方にご審議いただき、最終的なご判断をいただきたいと考えております。 ○齋藤部会長 前回までの議論を踏まえて、厚生労働大臣から諮問がなされました。ただいまの説明 について、何かご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。 ○田勢委員 資料4は、厚生労働省が事務方として議論のために作成したもの、そのような性格の ものだということでよろしいですね。この部会でそれをオーソライズしたということで はなく、議論の資料だと認識してよろしいのですか。 ○蒲原勤労者生活課長 今回は、予定運用利回りについての諮問ということでございますが、これまでの部会 において、制度全体について幅広く議論をするということでしたので、その議論を踏ま えて事務局としてはこのように考えている、という性格の資料としてお出ししておりま す。今回、諮問の対象になるのは、あくまでも政令案要綱の部分ということでございま す。 ○田勢委員 「決めたということではない」という点を確認したかったのです。 ○蒲原勤労者生活課長 私どもが、このような方向でこれからやっていきたい、ということを紹介したという ことです。 ○佐藤委員 いまの発言との関わりで、資料4の、とりわけ1の「(3)その他」の部分が、内容 的に非常に重要なものを含んでいると思うのです。これまで勤労者退職金共済機構にお いてなされてきたことから踏み込んだ、直接加入通知やホームページにおける情報の提 供といった問題、さらに確実な証紙貼付と退職金受給ための措置というのは、非常に前 進的に受け止めているわけです。この部会がこれを決めたという形を取らないにして も、これは、勤労者退職金共済機構において進めてもらうものであるという認識で受け 止めていますので、是非そのようにお願いしたいと思います。 ○勝委員 佐藤委員が言われたように、運営改善のところが非常に重要な部分ではないかと思っ ています。この部会ではかなり長い時間をかけて、利回りの引き下げを審議してきたわ けですから、これについては早急に決めていただきたいと思っております。もう1つ は、運営を改善し、特に、資料3の別添の「検討状況」では、例えばICカードの普及 といった掛金納付方式の変更について検討を行うという表現があるわけで、これもタイ ムテーブルというか時間軸で是非実行していただきたいと思います。 ○都村委員 いままでいろいろな議論の過程でさまざまな意見が出たわけですが、今回、資料3と 資料4で論点整理、特に厚生労働省としての考え方が明記されたことと、今後の運営改 善の方向について、きちっとペーパーとして書かれたことは、たいへん意義のあるもの だと私は受け止めております。今後も、議論が一定の段階までいったところで、このよ うな論点整理、あるいは厚生労働省としての考え方の明記などを、今後の部会において も是非続けていただきたいと思います。特に、制度の改善の事項がいろいろと書かれて いるわけですが、これについては、今後この線に沿って、是非充実するような形で実施 してほしいと思っております。 ○長谷川委員 労働側委員を代表して、私から総括的な意見を4点にわたって述べたいと思います。 この間は非常に貴重な時間で、皆様と意見交換ができ、事務方及び関係者の方々にお礼 を申し上げたいと思います。本日、皆様からもご意見がありましたが、労働側委員とし ては、今回の運用利回りの見直しに当たり、4点について意見を述べたいと思っており ます。 1つ目は、改めて言うまでもないわけですが、建設業退職金共済制度及び林業退職金 共済制度の役割について、きちっと確認をすることが重要なのではないかと考えており ます。そもそも、建設業退職金共済制度というのは、建設現場で働く労働者の福祉の増 進と雇用の安定を図り、建設業の振興と発展に役立てることをねらいに創設されたもの であり、建設労働者は次々と現場を移動するわけですが、どこの現場で働いても、働い た日数分の掛金が全部通算されて退職金が支払われるという、非常に安心確実な制度と して定着し、広く利用されているものと考えております。 林業退職金共済制度は、林業を営む事業主が林業労働者の働いた日数分に応じて掛金 を納め、退職時にそれまでの掛金を通算して退職金を支払うという、林業の現場で働く 労働者の福祉の増進と雇用の安定を図り、我が国の林業の発展に役立てることをねらい に創設された制度であり、今後ともこの建設労働者及び林業労働者にとっては大切な制 度であるということについて、関係者は深く認識し、制度のさらなる充実に向けて努力 することがより望まれるのではないかと考えております。 2つ目は、今回の審議で非常に議論の中心になった予定運用利回りの引き下げについ てであります。厚生労働省事務局から、我が国の景気の低迷や、金利や株価の水準等の 推移から、建設業退職金共済制度の予定運用利回りについては、現行の4.5%のまま推移 すると平成17年度もしくは平成18年度には累積欠損金が生じるという見込みがあると将 来推計し、このため財政の安定を図る観点から、予定運用利回りを4.5%から2.7%に引 き下げたいということが提起されました。また、林業退職金共済制度の予定運用利回り については、平成13年度現在23億の累積欠損金が生じ、資産に対する累積欠損金の割合 が14%に達しており、これ以上累積欠損金を拡大させないために、もしくは縮小させる ために、予定運用利回りを0.7%に引き下げることを提起されました。このことは部会 の中でもいろいろな方が述べられましたが、労働側としては、運用利回りの引き下げと いうことは、退職金給付水準を引き下げることとなり、労働者にとっては非常に大きな 痛みであるということでたいへん遺憾なことであると思っております。このことは、何 度も申し上げたいと思います。 3つ目は、なぜ、このような状況になったのか、この状況を打開するためにはどのよ うな政策が望まれるかということであります。私どもとしては、政府の経済政策の転換 よりも景気回復を行うことが非常に必要だろうと思っております。この予定運用利回り を大幅に引き下げることの主な原因は何かと言えば、政府の経済・財政政策の失敗にあ るものであることは明らかであり、政府の経済・財政政策の失敗のツケを、なぜ建設労 働者や林業労働者が受けなければならないのか、私は非常に理解に苦しむところであり ます。いま政府が行うべきことは、市場原理主義に基づく構造改革と財政健全化路線の 政策転換をし、需要を健全につくり出す対策を強化し、早急に景気を好転させることに あるのではないかと考えております。 4つ目は、本日も皆様から意見が出た運営改善の実現であります。今回、事務局より 運営改善についていろいろな資料も出していただきましたし、部会の中でいろいろな検 討項目の整理もしていただきました。したがって、これらについては、是非実現できる ような努力をしていただきたいと思います。建設業退職金共済制度における運営改善と して、証紙の貼付の完全な履行とか、カード方式の導入と環境整備、新規加入者に対す る国からの助成措置の拡充、労側委員からは現在50日分となっておりますが、それを増 加することなどについて、掛金日額について、現行の300円単一方式から複数選択肢方 式の導入を行うことなどについても、是非実現していただきたいと思います。林業退職 金共済制度においては、林業への新規就業者数が増加しているにもかかわらず、林業退 職金共済制度の加入は減少傾向にあることから、是非加入促進を強化し、規模の拡大を 行っていただきたいと思っております。 なお、本日この意見書の中に、活字では示しておりませんが、おそらく政府では平成 16年度の予算編成に向かっての作業が開始されていると思います。今回、この部会で労 働側委員が述べた国からの助成措置50日分をもっと拡大できないかなどということにつ いて、是非、真摯な事務局としての検討を引き続きお願いしたいと思います。以上、労 働側を代表し、4点について意見を述べました。是非、この実現に向けて努力をお願い したいと思います。 ○齋藤部会長 別に特段の意見がなければ、この部会では本日を含めて5回、建退共、林退共の制度 の改善や財政問題について議論を進めてきました。その間、いろいろとご意見もいただ き、議論の過程において整理した事項については、本日、資料として改めて提出されて おります。先ほど、長谷川委員より労働者側委員を代表しての意見等がありましたの で、いままでの審議と併せて、概ね議論は尽くされているのではないかと思います。つ きましては、諮問いただいた事項について、答申の取りまとめをしたいと思いますの で、事務局より答申案を配付いただきたいと思います。 (答申案配付) ○齋藤部会長 答申案の1枚目、労働政策審議会会長から厚生労働大臣に答申するということです が、その前段階として、勤労者生活分科会長から労働政策審議会会長あてにこのような 報告をするということであります。さらにその前段階として、部会長たる私から分科会 長たる私へ報告をするということになります。いちばん最後の頁の「記」が肝心なとこ ろで、「厚生労働省案要綱により、中小企業退職金共済法施行令の一部を改正すること を適当と認める」という形に取りまとめたいと思いますが、よろしいでしょうか。 (異議なし) ○齋藤部会長 それではそのような形で答申をし、労働基準局長にお渡ししたいと思います。 (部会長から局長へ答申を手交) ○松﨑労働基準局長 ありがとうございます。 ○齋藤部会長 この答申に関連して、松﨑労働基準局長からご発言をお願いいたします。 ○松﨑労働基準局長 では、ご挨拶させていただきます。本日まで委員の皆様方、5回にわたり熱心なご審 議をいただき、本日答申を頂戴しましたことをお礼申し上げます。本日まで5回の議論 の中で、私は全部参加したわけではありませんが、常に報告をいただき、建退共、林退 共の予定運用利回りの変更がメインである一方、これに限らず、制度全体のの運営の関 係についてもいろいろと熱心なご審議をいただきました。本日も皆様方からポイントを 絞ったご意見をいただき、長谷川委員からは全体についてのご意見もいただきました。 特に、建退共・林退共の制度の意義に関する御意見につきましては、特定業種だけでは なく、中退制度全体にとって非常に意義のあることであると考えております。最近のよ うに厳しい経済状況の折、民間企業において福利厚生の見直しが叫ばれる中で、中小企 業退職金共済制度の意義というものも、また違った新しい重さを持つようになってくる のではないかと考えております。 こうしたことを受けまして、中退制度全体について、加入を増やし、またポイントに なる運営の改善といったことに今後とも努力していきたいと思っております。資料4に もございますように、運営の改善のいろいろな方向性について一応の提示をさせていた だきましたが、これについても、引き続きこの場において皆様方にご議論していただ き、できるものから順番に行っていきたいと考えております。今後ともご支援、ご協力 をお願いいたします。ありがとうございました。 ○齋藤部会長 本日はこれで終了いたします。今日の部会で中退法施行令の改正に関わる審議は、ひ とまず終了となります。各委員の皆様、大変熱心にご議論いただきましてありがとうご ざいました。次回開催の際には、また改めてご連絡させていただきます。最後に、本日 の議事録の署名委員は、辻村委員と中山委員にお願いいたします。どうもありがとうご ざいました。 6 配付資料 (1)中小企業退職金共済法施行令の一部を改正する政令案要綱について(諮問) (2)建設業退職金共済制度及び林業退職金共済制度の予定運用利回り見直しの考え方 (1) 建設業退職金共済制度及び林業退職金共済制度における利回り別の財政状況 の今後の見通し (2) 予定運用利回り見直し後の退職金額について (3)建設業退職金共済制度及び林業退職金共済制度に係る論点整理について (4)建設業退職金共済制度及び林業退職金共済制度の運営改善の方向について 照会先 厚生労働省労働基準局勤労者生活部勤労者生活課 担当:田尻・石川 03(5253)1111(内線5376)