03/03/20 第19回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録      第19回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 1 日時  平成15年3月20日(木)15:00〜17:00 2 場所  厚生労働省共用第7会議室 3 出席者 [委員] 奥平委員、勝委員、小山委員、齋藤委員、桜井委員、佐藤委員、            讃井委員、田勢委員、都村委員、中山委員、野澤委員、            長谷川委員、堀越委員、山路委員       [事務局]奥田勤労者生活部長、蒲原勤労者生活課長 4 議題    建設業退職金共済制度及び林業退職金共済制度の財政及び制度の改善について 5 議事内容 ○齋藤部会長  ただいまから第19回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会を始 めたいと思います。本日は辻村委員が御欠席という連絡をいただいています。今日の議 題はお手元の表のとおりですので、順次資料について事務局からご説明をお願いしま す。 ○蒲原勤労者生活課長  本日は3つの資料がございます。前回の議論で出ました「論点整理のメモ及びそれに 対する考え方」を資料1で説明します。資料2と資料3は前回部分と重なる部分が多々 入っていますが、全体通しで説明したいと思います。  最初に資料1をお開きください。1頁めくりますと横書きで「建退共制度及び林退協 制度に係る論点整理」ということで、左にこれまで各委員から出された意見をもとにし た論点を、右のほうにそれに対する厚生労働省の考え方を書いてあると、こういう構成 です。総論の部分と各論の部分がありますが、順に見ていきます。  1点目が制度の役割に係る認識です。特定業種に従事する労働者にとって、この制度 がセーフティーネットとしての役割を担っていることを認識すべきであるという論点で す。これに対する厚生労働省の考え方は、特定業種に従事している期間雇用者の方々に とって、この共済制度が退職後の生活の安定に大きな役割を果たしていることをきちん と認識し、その役割を将来にわたって確実に果たしていくことができるようにしていく というスタンスで臨みたいと考えています。  2点目はこの部会における議論の範囲です。(1)が建設業及び林業の置かれた厳しい 現状を踏まえて、この業種に従事される労働者の方々の労働条件全般について確保すべ きではないかという議論です。この点については、建設業及び林業の置かれた現状、あ るいはこの業種に属しておられる労働者の方々の実状というものをきちんと認識した上 で、建退共制度及び林退共制度のあり方、あるいは将来の存続の方策について議論して いきたいと考えております。  (2)は、運用利回りの見直しのみではなく、制度全般にわたって議論すべきではない かという論点です。ここの所については全く同感でして、運用利回りの見直しのみなら ず、制度の適正履行や加入促進等について、総合的に議論を行っていきたいと考えてお ります。  各論編に入ります。大きな1点目が、財政の安定化のための措置です。(1)は、現行 制度のまま維持した場合に、将来の財政状況の悪化が必至である。こうしたところか ら、運用利回りの見直しを実施すべきであるという論点です。  この点については、将来にわたって持続する制度とするため、予定運用利回りを引き 下げるという方針で、ここの所はおおむね合意を得られたのではないかと思っておりま す。具体的にどういう数字にするかについては、後ほど細かな資料でご議論いただきた いと思います。  (2)はこの運用利回りの見直しをどの時点で行うかということです。経済情勢が非常 に先行き不透明という状況で、いまの時点で見直しをすることが適当かどうか、むしろ 先送りすることがどうか、あるいは逆に、そんなことではなくて、すぐやるべきだ、こ ういう議論でした。  現行の予定運用利回りを維持した場合には、将来における財政状況の悪化というのが 試算上明らかになっているという状況を考えますと、日々生じている債務を将来に付け 回しするというのは必ずしも適当ではない。その意味では早急に予定運用利回りの見直 しを行い、財政状況の悪化に歯止めをかける、こういうスタンスを我々としては考えた いと思っております。  (3)ですが、仮に運用利回りの見直しを行った場合でも、経済情勢が好転した場合に は予定運用利回りを引き上げるべきであるということです。ここの所は我々も同じ趣旨 でして、予定運用利回りについては、今後の経済状況によるものであると思います。そ うした状況の推移、あるいは各制度の財政状況、これも諸条件によって決まってくるわ けですが、そうしたところを総合的に勘案した上で機動的に見直すようにしたいと考え ております。  各論の大きな2点目は、適正履行、加入促進です。ここの所は、種々の適正履行の対 策を講じていくべきではないか、あるいは更なる加入促進を講じるべきであるという論 点で、事務局としては全く同感です。  例えば、建退共制度におきましては、建退共制度改善方策を平成11年に作成している わけですが、その着実な実施を図る。併せて、最近その実態について十分に把握してい ない状況がありますので、実態把握のための実態調査を実施したいと思っております。  加入促進については、未加入者リスト作成による集中的な加入促進、国土交通省や林 野庁と十分協力をしながら加入促進対策を行いたいと思っております。具体的な運営改 善の方向のペーパーは、別途作ってあります。  大きな3点目が、制度改善事項です。(1)が掛金納付方法ですが、現在の証紙方式か らカード方式への移行を図るべきではないか。その際に費用負担が生じるわけですが、 この点について国からの助成措置を講ずるかどうか、はっきりすべきではないかという 点です。  掛金納付については過去に詳細な資料をお渡ししてご議論いただいているわけです が、現行の証紙方式のメリットなりデメリットをよく勘案しながら、いちばん大事なの は就労実績に応じた掛金納付が確実にされるかどうかという点ですので、そうしたこと をきちんと念頭において、中長期的課題として検討していきたいと思っております。  なお、新たな掛金納付方法の導入に伴って生ずるコストですが、厳しい財政状況など を勘案しますと、国から助成措置を講ずるということはなかなか厳しい状況ではありま すが、慎重な検討をしていきたいと考えております。  (2)として、一般の中退共においては事業主が掛金を選択できることになっているの ですが、特定業種の共済制度においても、いまの一本の掛金日額ではなくて、選択可能 な複数制の掛金日額が導入できないかという論点です。この点については、事業主側の 負担が増える可能性があるということで、負担の状況、あるいは複数掛金日額制に対す るニーズをきちんと把握する必要があること、制度導入のときに実務上の問題が生じな いか、何らかの形で労働者の日額を一定期間ごとに変更するとなると、そういうことが 本当にうまくいくのかどうか、こういったことをよく整理する必要があると考えており ます。掛金日額は、現在中退法上「単一の掛金日額」と整理されておりますので、すぐ 対応することは難しい状況にあります。  (3)ですが、国として加入促進を強化するために、掛金助成措置の拡充を図るべきで はないかという点です。現在、新規加入者の1冊の手帳について掛金助成が行われてい るわけですが、国の財政状況や掛金の引き上げ、さらには一層の加入促進の必要性とい ったいくつかの状況を踏まえて維持充実できるよう努力していきたいと考えております。  (4)として、労働者の側にとっては運用利回りが仮に下がることになると、退職金水 準が下がることになりますが、その際には掛金日額の引き上げをきちんと行って、全体 としての退職金水準の低下を抑えるべきではないかという論点です。  この点については、勤労者退職金共済機構で掛金日額が決められるという仕組みにな っておりますが、厚生労働省としても、国土交通省等関係各方面に協力を依頼している 状況です。  ここで情報提供をいたします。掛金日額の関係については、機構において事業主側と いろいろな議論がされた上で、現在10円引き上げるという方向になっています。もちろ ん手続的には、厚生労働大臣に対する認可申請や認可手続がありますので、最終決定は そのときになりますが、そういう方向が示されているということです。退職金水準の資 料は、別途後ろに入れてあります。  以上が論点整理に関する資料ですが、関係する資料を若干後ろに付けてあります。4 頁は「新たな掛金納付方法導入に係る検討状況」ということで、前にお出しした資料を 少し修正したものですが、その中の「今後について」という所で、いくつか論点があり ます。事務的に簡素なものかどうか、制度の適正履行に資するものかどうか、具体的に は、本当に働いた人について把握ができて、それが掛金納入につながるかどうか等いく つか論点があり、こうしたことを整理していきたいと考えております。  5頁以下は、業界のいろいろな実状について認識という項目がありますが、その関連 で建設関係の現状を示す資料を付けております。一部過去の資料と重複いたしますが、 1点目が「建設投資の推移」です。民間投資分が白い枠、政府投資分が黒い枠になって おります。平成4年辺りが全体の合計のピークだったわけですが、近年民間、政府とも に投資額が減っており、平成14年度においては全体で57兆円(民間が32兆円、政府が25 兆円)という状況にあります。こうしたものが将来どうなるかということが我々の関心 事項です。  「建設市場の中長期予測」は、国土交通省の関連団体である建設経済研究所がまとめ ている資料から作成したものです。いくつかのパターンで予測しているのですが、2001 年度から2010年度までの10年間のGDP成長率が2%の場合と1%の場合、2つの予測 があります。  2010年における建設投資の額が3〜5段目に、政府と民間に分けて書いてあります。 私どものいろいろな推計の前提との関係でいきますと、予測2のGDP成長率が実質ベ ース1%で、こちらのほうがよりそぐうわけです。  例えば先ほどの所で、政府投資額が平成14年度で25兆と申しましたが、それが予測2 で見ますと、22.7兆から27.8兆と書いてあります。我々が将来推計の試算をするときに は、政府見通しが22.7兆になるという所を参考にして、将来政府建設投資が減ってい く、政府建設投資と建退共の掛金収入は非常に似たような傾向値を示しているというこ とがあり、政府建設投資の減少というものを前提に将来の試算を行っております。  「就業者数の推移」については、ピーク時からは段々減ってきているという数字が出 ています。  「許可業者数の推移」についてですが、許可業者の中には、現在やっている業者とや ってない業者の両方が入っています。現在57万業者、数字的には最近段々減る傾向にな っております。  「建設業の倒産状況」ですが、倒産件数(棒グラフ)と負債総額(折れ線グラフ)を 見てください。件数ベースで見ると、全産業の約3割が建設業、負債総額でいくと、全 産業の約2割弱が建設業ということで、建設業の厳しい現状が出ております。以上が論 点整理のペーパーです。  先ほど別途のペーパーと申しましたのが資料2と資料3です。資料2ですが、この資 料は前回出したものとかなりの部分が重複しておりますので、重複部分は簡単な説明に とどめたいと思います。  1頁の「見直しの考え方」、1の建退共の所の2つ目の○について。財政安定を図る 観点から、今後5年間を通じて、単年度欠損金が生じない水準、毎年フローで黒字が出 る水準に設定するというのが基本的な考え方です。その際、これまでもケース2、ケー ス3といくつかの前提を申しましたが、ケース3というかなり厳しい経済見通しを前提 に考えるのが適当ではないか、2.7%に引き下げる必要があると考えております。  現在建退共には300億円程度の累積剰余金があるわけで、これをどう考えるかという ことがあります。一方で独立行政法人化になりますと、時価会計をしなければいけない という関係から、現在金銭信託で行われている部分の含み損の部分を実際に時価評価し なければいけないということがあります。したがって、300億円の資産があるからと言 って、安心できる状況ではないということを併せて申し上げたいと思います。  2の林退共について。林退共は建退共と違って、現在約23億円の累積欠損金が生じて いるという状況にあります。こうしたことを踏まえて、今後の財政改善に向けての取組 みとして、2つのポイントで見ていきたいと考えています。1つが見直し後5年間を通 じて単年度欠損金が生じない水準にする。これは先ほど建退共について申し上げたこと と同じです。ただ、5年間単年度フローが黒字だというだけの基準では、現在23億円の 累積欠損金を抱えている中では、将来の財政安定は必ずしも図られないということがあ ります。したがって、林退については累積欠損金比率(現在持っている実際の資産に対 する累積欠損の割合)をいまよりも拡大させない、できれば縮小させる、こうした水準 に設定するという2つ目の物指しを入れたいと考えております。こうしたことを前提 に、ケース3を念頭において考えますと、林退については予定運用利回りを0.7%に引 き下げるのが適当であると考えております。  以上の関係資料を簡単に説明いたします。2頁はいま申し上げたケース1〜3の将来 推計の前提ですので飛ばします。3頁の横長の資料ですが、これは前回出した資料と全 く同じです。先ほどケース3を前提に2.7%と申した所を数字上確認します。ここには 毎年度のフローの数字を書いているわけですが、ケース3の2.7%の所を横にずっと見 ていくと、平成16年度以降ずっと黒字になる。一方で2.8%になりますと、平成19年度 から△になる。先ほど申し上げた考え方を数字上で見ると、ケース3の2.7%という数 字が出てくるのです。総活表に続く以下の3枚については、細かな数字ですので割愛い たします。  資料の8頁の林退の数字を確認いたします。この資料も前回出したものと同じで、い わば林退についての総括表という性格になっています。先ほどケース3で0.7%と申し ましたが、この表でいいますと、いちばん下のケース3の0.7%の所です。当期利益金、 毎年度のフローの所は、平成15年度以降全部黒字になっています。しかし、先ほどご説 明した第2番目の物指しに対応する部分が、この表の資産に対する累積欠損金の割合で す。0.7%の所を横に見ていくと、平成13年度に14.0%という比率が出ているのが、平 成19年度には14.0%という状況です。これより1つ上の0.8%の欄ですと、14.6%とい うことで少し悪化傾向になります。もちろん0.7%より低い0.6%になれば、より改善傾 向になります。こうしたケース3における試算を踏まえて、私どもとしては0.7%とい う数字を提案いたしました。以下3枚の資料は、林業についての細かい推計ですので、 ここでは省略いたします。  続いて資料の13頁以降の説明に入ります。前回のこの部会において、実際に予定運用 利回りが下がった場合の退職金の額について、もう少しきめ細かく、例えば納付年数も 10年だけではなくて、20年、30年、35年も入れて出してほしいということがありまし た。  また、前回は新規加入ではなくて、すでに制度に加入している人が、今後制度変更が あったときに、退職金の額がどう変わるかという資料でしたが、この部会での議論の中 で、全く新規で加入した人がどうなるかという資料を出してほしいというご議論があり ましたので、今回、13頁以下に、いくつかのパターンに分けて整理しております。  まず、建退に新規で加入した場合の制度改正前後の差ですが、新制度に移行した場合 という所は、先ほどの議論も踏まえて、予定運用利回り2.7%の数字を入れてあります。 納付年数10年の所を見ますと、現行制度のまま、つまり予定運用利回り4.5%で掛金日 額300円で10年入っていた場合にどうなるかという数字が、ここでいう103万円という数 字です。この103万円が、予定運用利回り2.7%に下がった場合に、新規加入したらどう なるかという数字が、ここでいう91万円ということで、9割弱の水準に下がります。同 様に20年、30年、35年の現行のままの数字が左に、新しく2.7%に下がった場合の数字 が右側に書いてあります。割合としては、長くなればなるほど水準が下がるということ になっております。  14頁ですが、先ほどの資料との違いを先に説明いたします。右に書いてある予定運用 利回りは2.7%で同じですが、掛金日額を10円上げたいという機構における方針を踏ま えて、掛金日額が10円上がったという前提で数字を入れてあります。納付年数10年の所 を見ますと、先ほど説明した103万円の数字が、新制度に移行した場合は94万円、現行 に比べると91%で、9%ダウンという数字が出ております。以下20年、30年、35年もこ こに書いてあるような数字になっております。  15頁は林退の退職金額の比較です。同様に左の欄が現行制度、右側が新制度です。林 退の場合は、新制度として運用利回りが0.7%に下がったケース、日額については450円 のままという数字を載せてあります。  同じように納付年数10年の所を見ますと、現行制度の場合は2.1%、450円の日額で計 算しますと104万円という数字が出ます。これが新しく0.7%に引き下げられて掛金日額 が同じだった場合には96万円という数字になり、全体で見ると91.7%で、約8%のダウ ンという数字になります。以下20年、30年、35年の納付年数の状況もここに書いてある とおりです。  林退について、掛金日額を変更した場合にどうなるか。実は林退についても、10円引 き上げるという方向になっています。その関係で、この資料でも460円としております。 同じように10年納付したものを見ますと、現行ベースの104万円が98万円ということで、 現行に比べると94%という数字が出ております。以下20年、30年、35年の納付年数の場 合も、ここに書いてある数字になります。  以上が、新規で加入した場合にどういうふうに退職金が変わるかということですが、 17頁以下に、すでに加入している人がどうなるかという数字を出しました。事務局とい たしましても、いろいろな観点から見ていただいたほうがよいと考えまして、このよう な資料を作りました。この資料の見方ですが、建退について、一番左に納付年数があり ます。これまでの資料と同様10年、20年、30年と書いてありますが、その納付年数の半 分はすでに現行制度に入っていて、その後、新しい制度改正がなされて以降、残り半分 の期間を新しい制度で過ごす、こうした人を前提に書いてあります。  過去の利回りや日額の状況については、建退も林退も、それぞれその当時の運用利回 りをきちんと入れ込むということで、注に書いてあるような状況を前提にして計算した 資料です。  現行制度のままの場合に納付年数10年の者を見ますと103万円で、先ほどと同じです が、これが5年間現行制度に入っていて今後5年間は新しい制度に変わる、こういう場 合がここでいう右の欄で92万円、割合としては9割弱という数字になっています。以下 20年、30年はここに挙げたとおりです。  18頁の資料は、基本的な構造は全く同じものですが、前の頁の資料との違いは、新制 度の前提が、予定運用利回り2.7%は同じですが、掛金日額が310円と10円引き上げられ た数字を用いています。納付年数10年で見ると、103万円が93万円、約1割下がるとい う状況になります。以下20年、30年は、ここにあるとおりです。  19頁ですが、林退についても同じような作業を行いました。10年加入している場合 で、現行のまま制度が続けば91万円になる人が、今後5年間を新しい制度で過ごすと86 万円になるという状況です。20年、30年は、ここに書いてあるとおりです。  20頁は、新制度の予定運用利回りは0.7%で先ほどと同じですが、掛金日額が10円引 き上げられて460円となった場合の資料です。10年の場合、91万円が87万円という状況 になります。  以上いろいろなパターンがありましたが、新規加入のみならず、既加入者の制度改正 に伴う影響を退職金の水準として見ることができるような資料を、いくつかのパターン から整理しました。  21頁以降は民間の退職金がどうなっているかについての資料です。これについても前 回は勤続10年の資料をお示ししましたが、委員のほうから20年、30年、35年も出してほ しいということがございましたので、ここで整理いたしました。いずれにしても、これ は常用の方を前提とした資料です。  いちばん上の東京都の資料、これがちょうど中小企業であり、しかも建設業という業 種区分が調査対象に入っているもので、我々としては、比較として、常用の部分を除け ば近いのかと思って載せました。当然ながら20年、30年、35年と期間が長くなってくる と上がってくるということで、そうした傾向はほかの調査でも全く同じになっていま す。  2番目の関西経協の数字といちばん上の東京都の数字はあくまで300人未満の企業を 対象にしているということなのですが、下の2つはかなり大きな所を対象にしておりま す。そうしたことから、全体の退職金水準も、下の2つは上の2つに比べて高い水準に なっております。  特に建設業を対象としている調査で過去どんなふうに退職金が変わってきているかを 22頁で見てみました。先ほど4つありましたが、関西経協の場合は建設業の区分がない ので入っておらず、そのほかの3つについて整理しております。各調査とも規模の整理 は同じなのですが、調査対象企業が少し変動しているところがあり、なかなか単純には 比較できないのですが、そこはそことして見たものです。  中小企業で建設業を対象としたものを東京都の場合で見ますと、平成6年ごろは100 万円ちょっとぐらいの数字だったのが少し低下傾向になっております。  23頁の資料が平成13年度の掛金納付年数別の退職金支給状況です。前回10年を指標に して出したことの背景は、建退協と林退協、両方を通じて、掛金を納付している状況は 平均で必ずしも長くないということです。建退協で見ますと、平均納付月数が9.25年で す。これを期間別に整理しますと、16年未満の所までが8割、一方で20年以上という所 を見ますと、ここで見れば下の3つの欄で2.4、1.9、5.6で、目の子で計算すると1割 弱が20年以上の納付者という状況です。こうしたこともあり、10年の納付者を1つの指 標として前回出したのです。  一方、林退のほうも傾向的にはだいたい同じで、平均納付年数が12.42年、16年未満 が約7割弱という状況になっています。以上が資料2です。基本的には運用利回り及び それに伴う退職金の額の変更の資料ということで整理いたしました。  資料3は前回と似ておりますので、簡単に変更点だけ説明いたします。論点整理の中 で、加入促進や適正履行という項目があり、きちんとやっていくということは書いてあ ったのですが、具体的にこれからどうするかということをより細かくまとめたペーパー です。前回お渡ししたペーパーと変わっている所と変わっていない所があり、追加した 分だけ説明いたします。2頁のいちばん上の所、これは建退共に係る部分の「(3)そ の他」の1番目の○の所です。実は、建退共の適正履行のために、これまで改善方策を 作成し、発注者、事業主、元請け、下請けという流れでかなりきめ細かな対策を練って きたと我々は認識しております。実効もある程度上がってきていると考えているので す。しかし、考えてみますと、労働者の側に必要な情報提供というのは、これまで必ず しもなされてなかったのではないか。労働者の側に加入した情報なり必要な情報が入る ことによって、労働者の側がきちんと適正納付に対していろいろなアクションができ る。こういう仕掛けをつくることが必要ではないかと我々は考えました。そうした趣旨 から、機構ともかなり綿密な相談を行ったところです。  そうした結果、出てきたのがここに書いてある事項で、これは全く新しいものです。 1つ目は新規加入時における被共済者、労働者側に対して機構から加入通知を直接しよ うということをこれから検討していきたいというものです。現在新規加入の場合は、手 帳が機構から事業主に渡り、事業主から労働者に渡るという仕掛けになっているわけで すが、多くの場合は、事業主から労働者に渡った後、事業主側がまた一旦預かっていろ いろな証紙を貼るという傾向があるわけです。そうした場合に、労働者の手元に何もな いと、なかなか建退に加入しているという認識がかなり薄れていく可能性があります。 そうしたことから、新規加入のときに、あなたは建退共に入りましたということを直接 機構からペーパーでお知らせする。そして、そのお知らせの紙には、あなたは建退に入 りましたので、ちゃんと手帳があって証紙を貼ってもらえます。必要な枚数貼ってもら えれば、ちゃんと退職金の給付につながりますと。そういう趣旨のことをきちんと説明 事項で書いてもらって、それが手元に残るような形で本人に持っていてもらうようにし たらどうか。そうすることで労働者の側が自分にその権利があることをわかって、より 適正な履行につながるのではないかというアプローチです。  同じような趣旨ですが、2点目はホームページにおける共済契約者情報の提供システ ムです。これも、例えば労働者が事業所を替わったときに、新しい事業主が建退共に加 入しているかどうかを知るには、いくつかの手段がありますが、わからないこともある と思います。現在でいえば、事業主名簿の台帳が支部に置いてあって、それは閲覧でき ることにはなっているのですが、地理的な問題などもあって、アクセスしにくいことも あるのではないかと考えました。  ここでは機構のホームページでそういう事業者情報を提供し、加入者、労働者側が何 らかのアクセスをすることによって、事業主が建退共に加入しているかどうかがわかる ような、そんなシステムを構築したらどうかということです。具体的に勤労者退職金共 済機構において検討を進めていきたいと考えております。ほかの部分は従来の改善方策 の流れやそれに似たものが多いのですが、ここの所は、ある意味では全く新規事項とし て追加したという趣旨です。資料3について、後の所は同じです。  資料4については、前回、建退共、林退共で退職したときの事由別の支給状況を出し てほしいという資料要求がありましたので、その資料と、さらに事由別・年齢階層別の 内訳を参考としてお出ししたものです。  本日は、前回出せなかった論点整理ペーパーをきちんと我々として提出した次第で す。論点整理ペーパーで大きな枠組みの所をご議論いただき、それとの関係で、運用利 回りや改善方策という所を全体像としてなるべくご議論いただきたいと、こういう趣旨 ですのでよろしくお願いいたします。 ○齋藤部会長  どうもありがとうございました。それでは、いま御説明がありました資料について、 何か御質問なり、御意見なりございましたらどうぞ。 ○佐藤委員  論議も重ねてきたわけですが、掛金日額と、予定運用利回りというものは、まさに一 体のものだと、そのように主張してきたのですが、建退共の運営委員会が、実は昨日開 かれている。そして建退共が、あるいは機構が決めるものだという説明がありました が、日額310円ということで、それなりにご努力なさったのだろうとは思いますが、 「10円か」という気持もあるわけですね。資料として求めたいのは、先ほど現状のまま いって2.7%にしたら30数年でいくらになるという資料がありましたが、4.5%で300円 でいっている現状を、そのまま維持しようとしたとき、2.7%で日額はいくらにしなけ ればならないかという計算はできていますか。 ○齋藤部会長  どういう意味ですか。 ○佐藤委員  意味はおわかりでしょう。退職金額が2.7%の運用利回りでいくとした場合、退職金 の水準を維持するとしたら、掛金日額はいくらにしなければならないですか。 ○齋藤部会長  それにつきましては。 ○蒲原勤労者生活課長  わかりました。ちょっといまその数字はすぐ手元にはないのですが、それを受けて、 議論の展開はどのようなことになるのでしょうか。 ○佐藤委員  一つ言いたいのは、日額と利回りは一体のものだという議論をしてきたつもりで、厚 生労働省の側もそのようにお応えになっている。310円の評価は先ほど申し上げたとお り、ご苦労があったのだろうと思うけれども、一方で10円かという気持ちがあるという ことを申し上げている。だったら例えば、2.7%に運用利回りの議論が集中していくと した場合は、仮に掛金日額を議論するのだとすれば、いくらまで上げるべきだというよ うな試算は、当然して出されるべきではないか、そういうことを申し上げています。 ○中山委員  たいへんこのようなことを言うのもなんですが、この相対比較というのは基準になら ないと思います。4.5%で300円、2.7%で310円、その相対比率でどうかというのは、今 の厳しい現状においては比較する数値ではないと思うのですけど。ここでは建退、いわ ゆる建設のほうを議論しているわけですが、いま現状は皆さんご存じのとおり、新聞と かテレビとかいろいろなものをやっていますが、そんなに生ぬるくないです。  私も小さな会社をやっているのですが、社員をどうやって守っていくか。いつかどな たか、委員からの発言がありましたが、自分の給料を削ってでもそれをやっていかなけ ればならない厳しさと、全体の業界の中の基準、状況が今どうなのかということをベー スにすべきです。建設のほうはだいぶ余裕があって、累積剰余金300億とありますので、 それが見直しの考え方の一つの基本になっているかと思うのですが、それを頭から離さ れて、厳しさの同じ分母の中でそういうお話をなさったほうがいいのでは。ですから、 さっきの4.5%と300円、2.5%と310円の比率の計算はそぐわないと思うのですが。以上 です。 ○桜井委員  佐藤委員はたった10円かとお聞きになりましたが、実は昨日、建退共で委員会があり ました。この日額の改定問題と運用利回りについては、1年ぐらい前から財務問題委員 会でだいぶ建退共の中で議論しておりまして、ようやく1年以上かけて日額を改正する ということになったわけです。基本的な考え方は、やはりこの制度を維持していくとい うのが大前提で、業者の団体としてはこれを基本に考える。  それから、業者が日額の負担能力というものを、この厳しい状況の中でどこまで持て るか、そういうことを加味しながら考えた中で10円上げることになり、建退共もだいぶ 努力されたと思いますけれども、ようやく昨日決まった。これは、率に直しますと3% になっているのです。  だけど今日も新聞に出ていますように、賃金構造調査などで見ても定期給与が3マイ ナスという時代に、あるいは屋外職賃などを見ても、もう完全に同じ条件の労働者の賃 金がもうマイナスになっている状態で、10円上げるということ自体が、非常に我々とし てはたいへんなことだということ、これは各委員の方々にもご理解いただきたいと思う のです。そういう点から言いますと、予定利回りは日額と関連があるというのならば、 早く利回りのことを議論していただかないと。この場でたった10円かという話は、 ちょっと。 ○佐藤委員  いや、それは違うのですよ。私が聞いているのは非常に単純なことで、現在の退職金 水準を維持しようとした場合に、2.7%の予定運用利回りを先にあるものとして仮定し たら、掛金日額はいくらぐらい上げなければいけないかと聞いているのであって、10円 上げられたことについてはご苦労様ですと言っているわけですから。でも、気持ちとし ては、たったの10円かという声があるということを言っているのです。 ○桜井委員  この時期に日額を上げること自体、たいへんなことなのですがね。 ○佐藤委員  まあ、今質問として聞いているのですから、それを。 ○齋藤部会長  単純な算術計算であろうという気がするのですが、これは単純に計算したらいけない のですか。 ○蒲原勤労者生活課長  今こちらで計算いたしまして、340円程度であるとのことです。2.7%で340円まで上 がれば、退職金の水準はだいたい同じということになります。 ○佐藤委員  そこで資料にもありますが、今、経済が非常に厳しいことは皆さんおっしゃっている とおりで、我々も本当に身にしみて感じているわけで、大量に建設業から労働者が吐き 出されていくというか、多出せざるを得ない状況になっているわけですね。もう率直に 言って、行き先がないわけですよ。そういう中で、この間の掛金額の引上げの経過が17 頁に書いてあります。それは時代が違うと言えばそうですが、200円、260円、300円と いうような、それなりに理にかなった引上げ方をされてみえたと思うのです。  今度のことについて言うと、それは厳しい、率で3%も上がった、いや、みんな賃金 も下がっている時代だからそれでいいじゃないかと、そういうふうに言いきれるものな のかどうか。私は、建退共の運営委員会が決められたのだから、それはそれとしてある のだろうと思うし、ご苦労様だと思うけれども、ここの審議会で本格的に掛金日額の議 論ができないままいってしまう。そういうことがあると言っているわけです。 ○讃井委員  ちょっとお話が混乱してしまうのですが、この制度そのものは確定給付を目指してい るわけではなくて、掛金にしかるべき運用利回りを掛けて、そこで生み出されたものを 退職金として渡すという制度だと思うのです。ですから、もちろん全体的な建設労働者 の福利の向上という意味では日額の話が出てくるのはわかると思いますが、予定運用利 回りと日額を調整して退職金の総額が同じになるようにということで議論するのは、必 ずしもどうかなという気がします。  それで、事務局のほうで随分いろいろな資料を用意していただいて、10年、20年後は こうなるということを出していただいているのですが、そもそもが現行のままいくとフ ローで赤字を続けるだけではなくて、累積の剰余のほうも3年か、4年のあとにはマイ ナスになってしまう。制度としての健全性というか、存亡に関わってくるということ で、このままでは続けられないから、じゃあ予定利回りをどうしたらいいかということ で考えているわけです。4.5%のまま10年、20年、30年計算はできると思うのですが、 実際に制度が破綻してしまっては、絵に描いた餅ということになるわけですが、そのへ んはやはり現実的に考えたほうがいいのではないかという気がします。  別に資料の妥当性云々というのを論じているわけではありませんが、やはり私どもが 考えなければいけないのはどういうことか。制度をきちんと安定的に持続させること、 これが建設労働者の方の雇用の安定につながることですし、今共済の対象になっている 方々については、本来このぐらいもらえるはずだったものが、このぐらい下がってしま って残念だとか、そういう議論は出てくるかもしれませんが、対象になっていない方に もこの制度を広げるということが、改善方策の1つにも出ていました。そのへんも非常 に重要なことでして、それを考えたときに、じゃあ加入促進をすると。ただし、このま まだとこの制度はどうなってしまうかわかりませんということでは、加入促進はできな いわけですから、やはり制度をきちんと維持できるものにするということ、これを第1 に考えるということが必要になるのではないかと思う次第です。 ○齋藤部会長  他に御意見はございますか。 ○小山委員  今回の運用利回りを下げるということが、結局どういうことになるかというと、1人 1人の労働者にとっては、退職金が下がるということになります。退職金の規程という のは労働条件の1つとして、それぞれ労働契約を結ぶわけですから。私は民間の製造業 の労働組合ですから、私どもで退職金を下げるときは、退職金規程についての労働協約 の不利益変更の手続きを労使で合意していくわけです。これは大企業であろうと中小企 業であろうと、どこも同じです。厳しい現状があるわけで、それは我々も承知していま すから、下げざるを得ないときは下げるという合意をやむを得ずするわけです。  今回も結局同じことです。ただこれは公的な制度として、共済制度としてあるという ことです。現状が厳しいのは我々もよくわかっているわけですが、そのときにこれから 10%以上の、例えば10年で先ほど91%ちょっと退職金が下がるという、20年、30年にな るともっと下がっていくというときに、これは今の経済の状況が厳しいからしょうがな いのだというだけではなくて、そこで生活をしている、それをあてにして将来の生活設 計を考えている労働者にとっては、いったい今後の生活をどうするのかという厳しさに おいて、経営者の皆さんと同じような厳しさを背負っているわけです。そのときに、確 かに我々も一銭たりとも今の運用利回りを下げてはいけないと言っているわけではなく て、下げざるを得ないだろうという認識は持っているわけです。そのときに、その痛み をどう分ち合うのかという観点は、労使それぞれ当然持つべきものであろうと思いま す。その幸せはすべて労働者側にいくべきだということでは、これは社会は成り立って いかないだろうと思います。それぞれがやはり痛みを分かち合いながら、どこまでギリ ギリのところでやっていけるのだろうかという結論を出していかなければならない。  先ほど佐藤委員からの質問があった、いったいじゃあ経営側の皆さんはどれだけの負 担をされたのか、労働者側はどれだけのマイナスを生じるのか、本当に痛みを分ち合っ たことになるのだろうか。10円というお話を聞いて3%、確かにいまの経済状況でいけ ば大変だろうと思います。  しかし、それは労働者側に立っても、同じようにたいへんなのです。そのときにどう 痛みを分ち合うのかという観点がそこにあってしかるべきだろうと思います。そういう 意味で本当に適正な分ち合い方なのかどうかという意味で、きちっとした数字でそこは 比較すべきではないかということで、お考えいただければいいのではないかと思いま す。 ○勝委員  佐藤委員が先ほど日額と運用利回りは一体のものと考えているというお話があったの ですが、これは私も前回言ったのですが、労働者の側からすればそれは一体になって受 給額は決まるということで、そういう意味で一体のものだと思うのですが、この部会の 性格から考えれば、制度の存続と言うか、サクセシビリティであることを考えるのであ れば、やはり分けて考える必要がある。その中で労働側の委員がたった10円かとおっ しゃられたのですが、やはりある程度評価すべきものなのではないかと思うわけです。  と言うのは、先ほど逆算して、同じ受給額になるように日額を考えた場合、340円と いう話がありましたが、もし仮にそうした場合に、雇用者側が制度に入らないというリ スクも出てきてしまって、ここまで経済状況が非常に悪化している状況の中で、日額を 引き上げるということになってしまうと、先ほど就業者数が減っていくという試算があ りましたが、この制度自体に入らないという業者が出てくるというリスクも考えなくて はいけないのではないか。  事務局側から先ほど東京都の建設業者の平均の退職金の給付額が出ていましたが、こ れを見るとやはりトレンドとして下がっているし、絶対額としても今の引き下げの議論 があると言っても建退共のほうがもらえる金額が高いということを考えれば、やはり痛 み分けという話がありましたが、ある程度今のところで妥協していくべきなのではない かと思います。  むしろ林退共のほうが、0.7%は下げ過ぎかと思っています。というのも、林業自体、 データでは、林業のほうの就業者数の見通しとか出ていないわけですが、こちらのほう はバックアップしていくという意味から言うと、ちょっと下げ過ぎなのかという気がし ているのですが、建退共に関しては、ある程度痛み分けと言うか、そういったところな のではないかと思うのですが。以上です。 ○齋藤部会長  他に何かありますか。 ○野澤委員  私も今日初めて桜井委員のほうから、1年前から議論をやってきていますよという話 を聞かされて、これは新聞報道ですけれども、いわゆる2.5%から3%未満で、厚生労 働省に業界としては要請をする、と活字になっています。いつの時期にこういうことを やられるのがいいのかどうか、そんなことは申し上げませんが、元の日程で言えば、今 日1つの結論を出すかどうかというようなスケジュールでやってきたのも事実で、経営 側に聞きたいのは、やはりこの種のものは当該の労使がまず一定の積上げをやってきて いただいて、その上で第三者を含めていろいろな意見を聞きながら落とし所と言います か、どこに妥協点を見いだすかということで、そういう限りでは佐藤委員からは労働側 の立場でいろいろ言われてきて、使用者側の立場で言えば口を堅く結ばれて、今日これ を見て初めて、先ほど1年前から議論していますということで。私は厚労省のほうも奥 田部長を含めてたいへんよく頑張っていただいたからだと思っているのですが、申し上 げたいのは、少しこのへんの背景を含めて、使用者側のほうとしては言われたように、 こういう厳しい時期だけれども、運用利回りも下げるからしたがって思い切って片方は 310円に上げましたと。もう一片は隣り合わせにある2.5%から3%運用利回りにすると いうこと、このあたりについては書かれているような範囲で、皆さんが判断いただけれ ばそれでということなのか。事務局のほうから2.7%という数字が出たりしていますが、 そのあたりの呼吸はどうなっているのですかと、ズバリ聞きたい。  2つ目にこの背景は何かと言うと、財政問題検討委員会の中では2001年には307億円 の運用剰余金があった。これが6年、7年になるとなくなっていきますと、だから健全 にしなければいけないから、したがって今回は掛金を上げることにしましたということ なのです。  先ほど課長のほうからも出ましたが、少なくとも従来からケース3だと思ってたので すが、ケース3の3%の場合でも、200億からの剰余金がある数字なのです、今出てい る資料は。  しかし、実際は金銭信託を含めて含み損がありますと。含み損の数字も言わないで隠 したままで、それで誰が責任を取るということも何もないわけです。  もう一方ではこの新聞の中に書かれていますし、また課長の発言の中にもあります が、これは独立行政法人に移行するに当たっては、時価会計を含めてきちんとしなけれ ばいけませんと。それを含めて、厚生労働省のほうも日額の大臣認可をやりますという ことになっているわけです。  これから、いわゆる運営委員会を含めてですが、9月末までの予算を今回決められた ということですが、これが例えば運用剰余金が赤ですと、今回日額を上げることについ ては思い切って310円でやりましたと、この数字が明らかになっていけば、先ほど言う 340円とは言いませんけれども、そういうことをやはり情勢を見ながら引き上げる努力 はしていこうという思いが、この中で議論されてきているのかどうか。この新聞の情報 ですからあれですが、そのへんをこの時期にやられたということも含めて、新聞で書か れている背景はどうなのかということを少しレクチャーしていただけませんか。 ○桜井委員  何か作為的にリークしたような新聞。 ○野澤委員  いやリークではなくて、昨日やられているから今日出ているわけでしょう。こっちは 今日やっているわけですよ。 ○桜井委員  審議会の前にその委員会を開いたとかではないのですよ。委員会というのは年間スケ ジュールがみんな決まっていまして、10月に改正したいというのは根底にあるから、そ のスケジュールでやっている。審議会がバタバタと動いていたというところがあって、 そのあとに今日になったと、こういうようにご理解いただきたいのが1つ。  それから、財務問題委員会というのは、1年をかけて慎重にやってきたという話を申 し上げましたけれども、先ほど申し上げたように負担能力の問題とか、こういうものは やはり退職金の水準を1割以上も下げていいのかとかいろいろ議論をされたということ はわかっています。ただ、その中に、私は入っていませんが、そういう問題を含めて議 論しています。  そうすると、どういうことになるかというと、財政問題委員会では予定利回りを勝手 に決めるわけにいきませんから、我々としては幅を持った中で決めていただければ、退 職金自体にもこのぐらい落ちるだけで済むのではないか、こういうことを含めて要望を 出した。その要望を出すのは、要望ですから一向にいいと思っていますから、2.5%か ら3%以内で決めてもらえませんかということを言っています。根底は、先ほど言った 2つの問題です。 ○野澤委員  ここに書かれているのは結局、2001年末に307億円ある運用剰余金が6年には底をつ き、翌7年には47億円の赤字が生じることが確認されたというわけです。だから、この ことについて、財政検討委員会の中でもそうだということで確認されたのは、例えばど ういう運用利回りでやった場合に47億円の赤字になった、ということを確認されたので すかと聞きたいわけです。 ○讃井委員  4.7%のままなのでしょう。 ○野澤委員  これは誤報ですよ、このことは議論されていませんと言うのだったら、そうおっしゃ ってくださって結構です。 ○奥田勤労者生活部長  野澤委員が誤解されているといけませんので申し上げます。運営委員会というのは、 勤労者退職金共済機構の運営委員会です。運営委員は厚生労働大臣が任命をしている組 織です。  実は、その会議と全国建設業協会の会議とが、過去からずっと同日に行われるわけで す。いま、運営委員会の委員の方は全建の役員も兼ねておられるということがありま す。便宜上、全国から集まってこられますので、同日に運営委員会が開かれる。  そこで出ている議論は、勤労者退職金共済機構の理事長が昨日の会議を主催して、運 営委員会としてのご意見を承った。その中身が、1つは掛金日額については運営委員会 として310円に引き上げることを認めるので、これを機構から厚生労働大臣に申請をし てほしいということ。  もう一方は、実は昨日、私は来賓ということで招かれていましたので、会議にも出ま した。その冒頭に現在、この審議会において、運用利回りについての議論をいただいて いますということは、私からもお話をいたしました。それに対する運営委員会の回答と して、あくまで利回りを決めるのはこの部会の場であるということを運営委員会として も認識をしている。運営委員会としては、自分たちがポイントで「こうしてくれ」と言 うことはできないというように言われています。自分たちの希望としては、2.5%から 3%未満という中でご議論をいただきたいという要望が、昨日出されたということで す。  そこに至るまでの経過の中で、野澤委員がおっしゃっておられるような資産の運用状 況についての資料も機構から出されています。そういった数字をもとに、これから資産 がなくなっていくということを踏まえた上で、今申し上げたような要望が昨日の運営委 員会で提出されたということです。あくまで利回りを決めるのはこの部会の場というこ とになっていますので、昨日までの運営委員会のご議論を受けて、今私どもが利回りに ついての議論を皆様方にお願いしているという流れになっています。 ○野澤委員  ただ、今の部長のご説明で、その前提は全国建設業協会の承認を得た上で運営委員会 としては決めたということになっているわけです。事前に業界の同意を得て、そこで考 え方を含めて「わかりました」ということで、運営委員会で310円でやりましょう、利 回りはこの範囲ということを決められたという書き方をされているわけです。というこ とは、業界はこのことは同意したということでしょう。それと財政委員会の考え方は、 いわゆる7年以降については47億の赤字が生じる。だから、47億円の赤字というのは何 %の運営で、どういう数字でやってきたら47億円になるのですかということの確認も含 めて、どうされたのですかということを聞いているわけです。平成7年で47億円の赤字 が出る、そのために掛金の額を引き上げざるを得ないというように判断した。だから、 今後については、年が変わればまた徐々に数字が明らかになっていきますけれども、そ ういうことが生じた場合に、先ほどの340円などということは言いません。しかし、業 界としては誠意を持ってそれらについて改善をしていこうということが、財政検討され た委員会の一連の議論の中に、建設業界としてそういうところに意見が集約されている という思いがあるのかどうかということをお聞きしているのです。 ○桜井委員  資産運用の中身については、課長のほうがよく知っていると思います。 ○蒲原勤労者生活課長  多分、この論点は2つあって、建退共なりいろいろな機構なり、業界が試算をしたと きの前提を示せということをおっしゃっておられると思いますが、それはそれで、何か 前提があるのだと思います。しかし、我々の側では、これまでも4.5%のケースでどう なるかという数字をきちんとお出ししています。利回りの議論はこの部会の場でやるべ きことであって、協会の数字というものもあると思いますが、そこをこの部会で出せと いうのは、それ自体の意味がよく理解できないのが1点です。  もう1つ、今後業界がどう掛金の使い道を考えるかというのはあると思います。た だ、数字のところはむしろ、我々がこれまで出したものをきちんとこの部会で議論する のが筋ではないかと思います。現に4.5%の場合、将来どうなるかということは過去、 数字をお出ししているわけです。 ○野澤委員  そこで私が申し上げたいのは、今日は論点整理を含めてまとめていただいていますか ら、このことに異論は一切ありません。ただ、そういう文言の中で、この制度について は今後においても、きちんと役割を将来果たしていく。  文章を書かれたのは課長なのかもわかりません。こういう中で結局、加入促進の問題 をはじめとして、現行の維持・充実を考えていきたいとか、いろいろ書かれているわけ です。建設業界を含めて、そういう思いにありますということなのですか、隣り合わせ ですかということを聞いているわけです。  勝手に書かれたとは思っていません。隣り合わせの中で、あうんの呼吸というか、呼 吸も合っているから、そうやって出来てきたのかなと思います。ただ、桜井委員は今ま で一切こういうことに触れられていませんでしたから。自由にやられるのはかまわない のです。  だけど、この場で言われているように「決めるのです」と言いながら、実際はリーク したということではありません、正式の機関を開いてやっているわけです。業界の承認 も得てということです。だから、佐藤委員はいろいろ言われているけれども、私は善意 に解釈しているわけです。業界も今後良くなってくればまた変えていきたいと思うし、 財政が赤になれば掛金が微増と言えども努力しましょうという誠意が十分あるのです よ、佐藤委員、ちょっと言い過ぎではないですかと言われるぐらいのことを言ってもら えるのかと思っていたのです。でも、そのようなことは今まで1つも聞いていないか ら。 ○桜井委員  いや、そう言われますが、新聞にはこの1年間で何回も出ています。 ○野澤委員  いやいや、何回もというのは知りません。昨日出て今日知ったから。 ○桜井委員  いや、だから、それは記事がボッと出たときを言われているのだろうと思います。 もっと抽出されるのだったら、そのへんから見ておられたらわかると思います。 ○野澤委員  ですから、私が言いたいのは、先ほどおっしゃった4.5%などということは毛頭考え ていないのです。ただ、使用者側委員からも、何ぼだということを今まで一切触れられ てこなかった。しかし、2.5%から3%ということで一応やって、あとはこの場に任せ ますということで来ているのであれば、私どもの判断としては業界のほうも、低いにこ したことはないのかもわかりませんが、2.5%から3%まで含めて、公益委員の方々も 含めてご判断いただいたら、それに従いますというサインを送っていただいたというこ とを前提にして議論するのか、いま出ている2.7%ということを議論するのかで、全然 議論の視点が違うのです。 ○齋藤部会長  論点というか、議論が噛み合わないのですが、要するにこの場での議論をもとにして 「論点整理ペーパー」を書いていただきました。「厚生労働省としての考え方」という ように書いていますけれども、それも各委員の御発言をもとにして書かれているのだと 思います。その意味から言えば、別に厚生労働省としての考え方に桜井委員は異論を言 っておられないと見れば、この制度が大事なことだとか、これからも予定運用利回りの 見直しというのは今後の経済状勢、制度の財政状況等を総合的に勘案して機動的に見直 すとか、そのへんは当然ご賛同いただけるものと思います。建設業界の議論とこの場の 議論というのは、少し整理というか、区分けしてやらなければいけないと思います。 ○野澤委員  私が申し上げたいのは、この中ではいわゆる運用剰余金が累積で赤字になるから引き 上げることをした、新聞ではそう書かれています。300円を310円に引き上げましたと書 かれているわけです。だから、今後、実際累積剰余金はケース3の3%で見ても、200 億ぐらいの数字で平成19年まで行っているわけです。しかし、実際は金銭信託を含め て、もっと含み損がある、その含み損は皆さんに言えませんというようなことです。だ けど、このまま正しく読めば累積剰余金が赤字になるから、清水の舞台から降りたかも わかりませんが、今回300円をできる範囲で310円まで引き上げましたという話なので す。 ○蒲原勤労者生活課長  あれは赤字になるから310円に上げた、ということとは全然関係ないのでしょうか。 ○野澤委員  いや、書いてあるからお聞きしたのです。そうでないのだったら、「そうではないの です」とおっしゃってもらえばいいのです。 ○田勢委員  どこの新聞か知りませんが、新聞記事をもとにして議論するのはやめましょう。 ○野澤委員  ちょっと待ってください。 ○田勢委員  制度について議論をしてきたのに新聞がどうであるとか、誰か署名記事でもされてい るのだったら別ですが、それを議論しても始まらないでしょう、我々は読んでもいない のだから。 ○野澤委員  いや、違うのです。新聞に書いてあることはこのとおりなのですか、違うのですかと 聞いているのです。 ○田勢委員  我々は見てもいないから。あなたが持って見せているけど。 ○野澤委員  だから、私は桜井委員にお聞きしているわけです。 ○田勢委員  審議会で議論をしているわけですから、そういう話であれば他の場でお聞きになって ください。 ○野澤委員  ちょっと待ってください。ここで書かれたことは事実なのですか、どうですかと聞い ているではないですか。 ○田勢委員  それなら1対1で、どこかでお聞きになったらいいではないですか。 ○野澤委員  1対1ではないではないですか、中身がそういうことですから。 ○田勢委員  我々はその何とか委員会でもないし、新聞記者でもないのだから、そのようなことが わかるはずはないではないですか。 ○野澤委員  それはないでしょう。中山委員の発言はわかりますが、前回の田勢委員の「退職金が あるだけまだましだと思わないと」という発言はどうですか。私は、真実ですか、どう ですかと聞いているわけでしょう。 ○齋藤部会長  その議論はそれとしても、新聞がどうこうということではなくて。 ○野澤委員  いや、どうなのですかと聞いているだけです。違うなら違うと言えばいい。 ○齋藤部会長  いったい、現実にどういう財政状態になっているのか。本当に含み損が多くて、実際 に赤字になるのかどうか。 ○佐藤委員  その前に発言させてください。野澤委員が言っているのは、要するに310円にするの は下がる部分で累損が出ない、というような設定で議論されているのだとすれば、勝委 員は別個の問題だと言われたけれども、別個の問題ではないわけです。そうでしょう。 それなりの水準を確保するために、310円にするために努力いただいたと思っているわ けです。 ○桜井委員  私もそう思っています。 ○佐藤委員  思っているけれども、10円かという気持ちはあるということは言っているわけです。 だから、10円を設定するときには、いくらに金利を設定するかも含めて論議しているは ずなのです。そうでなかったらおかしいでしょう。だから、一体のものだと言っている わけです。  前から日程が設定されていたかもしれませんが、昨日も会議を開いて310円と決めた。 決める権限はそちらにあるとおっしゃられるけれども、それはコンクリートのものだと いってここで示されて、皆さん「納得です」といって済んでいく会議ですか。この間の 議論はそうではなかったではないですか。一体のものでないという議論も聞きました が、一体のものだとして議論してきたつもりです。310円がコンクリートになって、業 界としてはもうこれ以上できませんということになれば、これから運用利回りの議論に 入っていけばいいと思います。要するに、運用利回りと310円とがミックスされた答え として出ているというように野澤委員は言っているのです。それなら、答えを先取りし ているではないかということでしょう。 ○野澤委員  それと、佐藤委員の言われたことは言い過ぎかなと思いつつも、業界としてはこの議 論を読めば、田勢委員は新聞のことなんてとおっしゃるけれども、このとおりであれば 建設業界の方も心ある方が多くて、今後対応しようという思いもあるけれども厳しい状 況だから、310円も清水の舞台から飛び降りた以上のものです、そう受け止めてくださ いというサインかなと私は読んでいます。だから、その真意はどうなのですかと聞いて いるわけです。 ○齋藤部会長  ちょっと待ってください。 ○野澤委員  いや、「そのとおりです」とおっしゃったら、そのとおりでいいのです。 ○蒲原勤労者生活課長  1つは累損そのものの議論で、数字が出ていないという話がありましたので、できる ところからまず整理していきたいと思います。  累損の話については先ほど言いましたが、いま300億の剰余があるということです。 それが将来的に何もしなければ、4.5%のままであれば、おっしゃるとおり将来累積剰 余が赤字になってくるということで、利回りを引き下げるということであります。  そうした中で、累積剰余が今300億というところですが、これをどう評価するか。先 ほど口頭で言いましたが、仮に2.7%にした場合でも、今の300億というのはもともと含 み損を入れていない数字でした。金銭信託の含み損は、確実なところの数字で申します と、平成14年3月末で見ると、金銭信託について建設業で130億です。ですから、300億 の剰余があるといっても、去年の3月の段階で言うと剰余と言ってもマイナス130億ぐ らいということで、単純計算をすれば170億ぐらいということになっています。  その後、正確な数字はいま手元にありませんけれども、もう少し悪化している可能性 は十分にあるということです。単純に300億あるから安心できる状況ではない、こうい うことを先ほど数字は言いませんでしたが申し上げました。含み損の数字としては、今 の130億ということでございます。  もう1つ、議論が混乱していると思うのは「300円から310円に改定すること」という ところ、私も今新聞記事を読んでいるのですが、聞き間違いでなければ、野澤委員がお っしゃっていることは将来累積欠損が出ることとの関係で、300円を310円にするとおっ しゃっているように聞こえたのですが。そこは議論の整理として違う話ではないかと思 います。  新聞記事では、基本的には将来今のままでいくと、財政運営が悪くなってくる。そう いう観点から、運用利回りについては2.5%以上、3%未満のところに引き下げるよう 要望するということでした。まさに、将来財政の安定の関係でそう書いてあるのです。  確かに、記事の後ろではこう書いています。「予定運用利回りを極端に下げて、退職 金の水準を大幅に低下させれば、退職金制度の魅力が失われる」。そういうことから、 「こうした問題点を勘案した上で、掛金を300円から310円に改定すること」というふう になっています。あくまで、300円から310円というのは退職金制度の魅力、言ってみれ ば受け取る側の観点で見て、やはりあまり下げるのはどうだという観点でやられている ということを言っています。 ○堀越委員  我々は公益側と言われているのですが、議論が全然わからないのです。田勢委員が言 ったように、ちょっと言葉がきつかったかもしれませんが、新聞の話を聞いても、この 1時間以上、何を聞いているのかわからないわけです。遠回りな、プロ同士の話という 印象しか受けないのです。  要するに、議事進行についてきちんとしてもらいたいということを言いたいわけで す。本来なら今日あたり、結論というと怒られるのでしょうけれども、私たちは答えが 出るのだと思って出席しているのです。ところが、どうも全然違う方向か、あるいはそ れが取り消されていくような感じがしてならないのです。紳士かどうかはともかく、 ジェントルマンらしく審議を進めていただくよう、よろしくお願いします。 ○齋藤部会長  今までフリーで議論をしてきまして、特段の制約なしにやってきたつもりです。した がって、論点も制約せずにいろいろ出てきました。そういう意味で、いろいろ率直な議 論ができたと思います。  今のところは諮問があって答えなければいけないというわけでもなかったものですか ら、そこはフリーにお願いしてきました。貴重なお時間を割いていただいて、申し訳な いと思います。でも、そのほうがかえってよいのだろうと思います。 ○都村委員  この問題での基本的な視点というのは、私は中小企業で働く人たちの生活の安定の確 保ということだと思います。その点から言うと、経済状況は確かに厳しい。その中で、 各主体が制度の役割についての認識を高めることが今、非常に重要なのではないかと思 います。  制度がなくなってしまえばゼロになってしまうわけですから、財政の安定化、すなわ ち制度を維持させるということは是非重要なわけです。ここでいろいろ示された2つの 指標に基づいて、予定運用利回りを見直すということは、この際やむを得ないと思いま す。やむを得ないのですが、やはり予定運用利回りを引き下げるということだけではな くて、以前から思っていたのですが、働く人たちの生活の安定という点からパッケージ で考えるべきなのです。その意味では、今回の論点整理と課題、どういう改善をしてい くかという方策については、事務局から出されたものは非常に整理されているし、それ を納得させる資料も付いていて、非常によくできていると考えます。  特に新しい改善策、資料3の2頁に出ていた、新規加入者に通知をするというのは非 常に重要なことだと思います。なぜ、それが今まで行われなかったのかと思うぐらいで す。そういうことは基本的に、働いている人たちのための掛金の確実な納付に結びつく という点で、非常に重要な改善策だと思います。  そのほかもいろいろ、加入促進や適正履行についての改善策が出されているわけで す。先ほどから掛金が310円という議論がありますが、最後に出された個人単位での効 果、10円の引き上げがどういう効果があるかという点で見ると、10円の引き上げでも予 想していたより結構大きな効果があるわけです。ですから、やはり共済者と国がこの制 度についての認識を高めていく。なかなか厳しい中で引き上げは難しいでしょうが、今 後もその点を考えていただきたいと思います。  もう1つ、たびたび中小企業対策が大切だということを申し上げましたが、やはり国 としての政策が弱いと思うのです。国としても加入促進を強化するために掛金助成措置 の拡充を図る、あるいは新しいカード方式に移行した場合、それにかかる費用の一部な りを負担するとか、そういった点について是非、この部会から国のほうにも提言という か、働きかけていただきたいと思います。中小企業対策の重要な一環として、もう少し この制度を理解していただいて、助成を高める道はないのかどうか。それを要望してほ しいと思います。以上です。 ○山路委員  今の話、私も基本的に異論はありません。確かに今の中退金制度というのは、言われ たように確定給付制度ではないわけです。事実上の確定拠出、掛金が決まっているとい う意味では確定拠出なのですが、市場に任せているという意味での確定拠出ではないわ けです。市場の金利が下がっているから、本来なら市場に連動している確定拠出という のは、それに連動して下げなければいけないわけですけれども、中小企業の総体的に低 い退職金をどうしていくのかというために中退金制度が作られたわけです。中小企業で 働いている人たちの生活の安定と、両方の接点をどう探るのかというのが我々の課題だ と思います。  その意味では、今、都村委員が言われたように、さまざまな改善策を是非具体的に検 討していただきたいと思います。カード方式も当たり前の話なのです。今ごろ、証紙を 貼り付けてやっているという非効率な、しかもなかなか実質的にもわからないし、貼り 漏れもあるという意味では、やはり多少コストはかかってもカード方式に移行させる、 そのための国庫の助成ということも真剣に考えていただきたいということを1点申し上 げておきたいと思います。以上です。 ○佐藤委員  今、都村委員や山路委員がおっしゃった点について、私はずっと言ってきたわけで す。要するに、カード化するときに、誰がそのコストを持つのかという議論は以前あっ たと思います。今日の論点整理では、「国からの助成を講ずることは非常に難しい」と いう言い回しですけれども、「慎重に検討が必要である」と、それなりに一歩前に出て いる言葉になっていると思います。  それから「論点」の3頁、3の(3)の「維持・充実できるよう努力する」というのは かなり踏み込んで書いてもらったと思います。今、ご承知だと思いますが、最初に制度 に入る人に50枚貼付されたことになっているわけです。この助成の引き上げは私もあま り発言しませんでしたが、あまり議論されてこなかったのです。国もやはりそれなりの 努力をこれからされていく、そういう決意だろうと思ってこれを受け止めたいと思いま す。  確かに10円上がれば、その分の補助金が増えるのは誰が考えてもわかるわけです。な らば、その分だけの補助を増やせばそれでいいのかというと、痛み分けの話をすれば、 国もそれなりの努力をなさるのだという意味でここは書かれている、このまま受け取れ ばそのように思います。  皆さんにちょっとお聞きしたかったのは、310円だと示されて、そうですかといって 帰られるのが不思議だなと思ったから言ったのです。そのような議論をほとんどせず、 勝委員が前のとき、「労使の問題だ」とおっしゃったけれども、労使ではないのだと何 度も言っています。運営委員会は事業者側、簡単に言えば各県の建設業協会、あるいは 協会団体のキャップの人たちがやっているわけです。そこで物事が決められていくので あって、労働者代表は誰も入っていない。  なぜ労働者代表を入れないか、国会質問も行われています。それは事業者が作った制 度だからということでした。その当時、今もそうですが、坂口厚生労働大臣は「そうい う運営委員会はありますけれども、審議会のほうが俗な言葉で言うと」というような言 い方で、「上なのです、そこで十分議論いただきますということを言っていたから」と 言っているのです。だから、掛金日額の問題も運用利回りの問題も、制度改善の問題も 言ったわけで、勝委員は「よりクリアになった」と言ってくれたわけです。  非常におかしな議論になったと思われるかもわかりませんが、正常に議論は進んでい るのだと思います。「改善方策」の「その他」で示された、建退共から労働者に直接通 知をするということは画期的なことなのです。  いま誰が手帳を保管しているかというと、事業主が持っていたり、本人に渡さない所 がいっぱいあるのです。そのようなことから考えれば、これは画期的なことだと思いま す。ホームページでどの業者が入っているかを検索できれば、労働者は「入っていない のはおかしいではないか」と言っていけばいいわけです。そういうことから言えば努力 されていると思います。そのことを前提として、次の議論に入っていくのならかまわな いと思います。だけど、どう考えても、皆さんが310円で決まったのはいいのではない かと最初からおっしゃるのは、なぜそれでいいのか疑問に思われないのかなというのが 率直な気持なのです。 ○奥平委員  この「論点整理」は本当によくできていると思います。310円と聞いたとき、今どき 上げてくれるのかなと思ってびっくりしたのです。少ないことでびっくりしたのではな いのです。やはり今下げるという時代に。佐藤委員は「痛み分け」と言って、半分半分 と言うと40円のところを20円、20円にして、20円ぐらいがちょうど半分かなという答え になるかもしれません。たかが10円ですが、やはり今の時代に上げるということの素晴 らしさには聞いていてびっくりしました。  建設業界の経営者は、皆様のために多少でも頑張って10円上げようとしている、そう いう姿勢が見えました。だから、議論がないというよりも、私は「よかったな」という 議論のほうが多いのかなと、私の立場からするとそのような感じがしました。 ○桜井委員  中小零細企業ですから。これは上げればいいというものではないのです。民間企業は 普通、このようなものは払いませんよ。そのような現実をよく考えていただかないと。 上げるだけで精一杯だと思います。よく建退共は根回ししたなと思いました。 ○勝委員  私が「一体のもの」と言った点、佐藤委員は誤解されたようなのです。今いろいろお 話があったのは、日額の件については確かに運営機関で決められる。その意味から言う と、重要な話がここで決められるのではなくて、運営委員会で決まる。そこに労働者側 が入っていないというのは由々しき問題である。そこは制度を改善していくことが必要 でしょうが、この部会で決めるべきことは制度の安定性がやはり一番重要なものだろう ということを言いたかった。  先ほどの点、つまりいろいろな制度改善と今回の運用利回りの引き下げの問題はパッ ケージで考えなくてはいけないというのは、まさにそのとおりだと思います。ただ、制 度の改善というのは長期的な問題もかなり含まれている。喫緊の課題としては、やはり 我々は今ここで運用利回りについて、ある程度のところでコンセンサスを得て、制度の 安定的な維持というものをまず先に決めていくことが重要なのではないか。そこの部分 で、もし利回りが引き下がった場合、労働者側の給付金が低くなる一方で、日額を上げ ることによって少しでも補てんされる。その流れを考えれば、今部会で喫緊に決めなく てはならないこと、何に一番のプライオリティーがあるかを真剣に考えなくてはいけな いのではないかと思います。 ○佐藤委員  先ほど含み損の話が出ましたが、これは建退共が出されていて、以前もこういうもの を引用しました。これは正真正銘の資料です。  今、金銭信託に全体の運用の30.71%、2,834億円を預けている。これは含み損が出て いると、課長が今認めているわけです。全体の3割、31%も占めるような資産をどんど んと目減りしているところに置いている。前の課長のとき、最終的に結果責任は誰が取 るのかということを聞いたら、「厚生労働省」とおっしゃったのです。この問題につい ては、これは何も隠すことはないし、こうやってはっきりと出ているわけです。  いま、含み損も含めると大変なことである。金銭信託の運用については、以前は企業 名まで明らかにさせたわけです。今回、そういったことについてはあまり出してこな い。課長が変わったからか、やり方が違うのか、次の回ぐらいに出してくるのかなと思 っています。  本当に厳しい資産運用をやっていることは認めます。厳しいけれども、でもこの厳し い選択をしたのは一体誰なのか。我々もそのことはよしとしたかもわかりません。しか し、これをずっと放置しておく以外にないような、不良な資産を持っていることについ て誰か責任を取ってもらわないと。辞めろなどということではありません。何らかの補 てんをするなりしなかったら、結局は掛金で埋めていくことになってしまうのではない ですか。そこはあまり、明確に課長は説明をしていないと思います。 ○蒲原勤労者生活課長  先ほど、去年の3月末の数字を申し上げました。私が昨年のいろいろな議論を見たり 調べたりしていると、昨年はまさに一般中退の議論、運用利回りというよりもそれぞれ 1日1日、分野ごとに議論している中で、実際には法律改正の中で資金運用について基 本方針を作ろうという1つの題目があった。そこの議論のときに、現在の細かな運用状 況を知る必要があって、機構から説明に来たと認識しています。  今回、論点整理ということでまとめ、そうした中で運用利回りを議論するということ でした。個々の運用機関の名前なり、聞かれればお答えできると思いますが、そういう ところまでの必要性というよりは、むしろ含み損全体、130億という数字などが必要な 数字なのではないか。その意味において、いままでそのような細かな点までは出してい ないということであります。それが1点です。  もう1つ、金銭信託については、もともと資金運用というのは機構で基本ポートフォ リオを作って、その管理の中でやられているわけです。金銭信託の中身も実は国内債権 の割合が結構多く、そのほかに株式などが入っています。ほかのいろいろな資産など、 全体を見て、基本ポートフォリオに合っているかどうかをチェックしているわけです。 まさに法律に基づいてきちんと、基本方針やポートフォリオを作って、そこで管理をし ている。その意味では、昔はそういうことはなかったのですが、いまは適正な管理にな っているということだと思います。  最後にもう1点、資金運用を一般論において、一定の割合で金銭信託を入れるという ことについて、やはり、資産の運用というのはいろいろな資産をたくさん入れることで リスクを減らしつつ、リターンを上げるということだと思います。現実にも金銭信託を 入れていることで、確かに今は含み損になっているのですが、数年前はそこで結構稼い でいったこともあるのです。したがって、一時点で見て、今金銭信託でかなり含み損が あるといっても、それ自体の存在がおかしいのではないかということにはならないだろ うと。やはり、これは長期のポートフォリオの中で見る問題ではないかと思います。 ○齋藤部会長  経理に関して、一般中退と建退は別であるとしても。 ○蒲原勤労者生活課長  それは別です。 ○齋藤部会長  運用の仕方というか、仕組みは一般中退の場合と同じような仕組みでやっているので しょう。 ○蒲原勤労者生活課長  仕組みは同じです。完全に別組織ですが、仕掛けというか、規制のところは似ていま す。 ○長谷川委員  それぞれの思いでお話するからちょっと混乱しているのですが、今回この部会に付託 されたのは、このような財政状況の中で運用利回りをどうするかということだったと思 います。そのとき、基本的に重要なのは数字なわけです。今日もそのことで少しもめて いるわけです。私ども労側も、この状況がいいとは思っていません。何らかの形で、ど こかで適切な数字は考えなければいけないと思っています。しかし、なぜこうなったの かという点の原因なり、今後改善しなければならない課題は何なのか。  もう1つ、中小企業の退職金というのは、やはり中小企業の労働者の生活福祉の向上 だと思います。そういうことが基本にあって、だから政府も助成するわけです。  例えば、これを見ると皆さんよくわかるのですが、10年で4.5%だったら103万です。 今度、2.7%にすれば91万になる。もし、自分が20年ぐらい勤めれば、きっとこれに0 が1つ付くのだと思います。103万と90万と見れば11万ぐらいですが、1,300万と910万 と見たらどうですか。  そういう意味では、給付水準が下がるということは、それぞれにとってはやはり重い のです。例えば1万円下がることでも、1人1人の労働者にとっては重いことだから、 そこが議論になるのです。使用者にしてみれば、この景気の中で上げたりなど、非常に 大変だというのはお互いにわかっているわけです。しかし、個々の労働者にとって見れ ば、退職金が1円でも下がるということは自分の生活も大変なのです。1万円の重みと いうのはやはりそれぞれ違うわけで、だからここはもめるのです。これはお互いに認識 しておかなければいけない点で、だから三者構成なのです。それから、公益側の先生た ちがどうなのか、適切な運用をされたのか、こういう下げ方が妥当なのか、他者と比較 してどうなのかというところに公益側の委員の方たちの努力が入ってくるのだと思いま す。  この間、いろいろ議論してきました。佐藤委員もおっしゃっていましたが、事務方は 論点整理をして、それに対する回答や見解も示されているわけです。このことについ て、私どもも真摯に受け止めています。ご努力には感謝申し上げたいと思います。先ほ ど申し上げましたが、佐藤委員が「310円か」と言ったのは言葉の言い方かと思います。 でも、結局労働者にとってみれば、1万円でも下がることについてだけは認識が必要だ と思います。  最後にもう1つ、私から質問したいと思います。公益委員からも出ているのですが、 政府として掛金行政について維持・充実を出されているわけです。やはり、維持・充実 することについてもっと積極的な、いますぐ直ちにということが出されなければ。将来 に向かってどういう努力をしているのかについては、今後も探っていただければと思っ ています。  何回も田勢委員から言われて、そのたびにドキッとしています。その意味では、私も なるべく合理的に会議を進めることに協力したいと思います。今日、皆さんから言われ たことを事務局にも受け止めていただいて、今回2.7%という数字が示されていますけ れども、そのことについて労働側の中でももう少し検討させていただければと思いま す。 ○齋藤部会長  ほかに何か付け加えることがありますか。 ○野澤委員  長谷川委員から出ましたが、そして私も言いましたが、労働者に説明する責任はやは り労働側にあるわけです。3%から2.7%の数字が出ていますが、私はこの累積剰余金 が本当に赤字であれば、このとおり赤字ですと出してしまい、だから、この制度は運用 できないということをはっきり言わないといけないと思います。赤字を包み隠しておい て、200何ぼ累積があって、まだ3%でも黒字と言っていると説明にならないわけです。 今後はきちんと説明できるような資料を出すようにしてください。それは公に出してい いのかどうかという議論ではなく、説明があるから、3でも剰余金があるのになぜ2.7 %に下げるのですかと言われるわけです。実は2.7%の数字でも、実際は剰余金はプラ スではなく、含み損というのであれば、そういう説明をちゃんとできるようにしてもら わないと、剰余金があるのになぜ利回りを下げるのかとなってしまいます。それだけは 次回の資料として要望します。  それから、長谷川委員はおっしゃいませんでしたが、私も延々と議論しようなどとは 全く思っていません。前回からずっと議論されていますし、経営側の考えも出ています から。先ほど論点が噛み合わないとか、いろいろ言われていましたが、厚労省の担当の 方を含めて、本当によくまとめていただいたと思います。あとは金額の問題を含めて、 申し上げたように説明責任があるわけです。そのときにいまの水準の問題など、率につ いて下げざるを得ないけれども、今後良くなれば上げますということ、場合によっては 掛金も引き上げる努力をやります。ただ、状況から言うとこうですという説明が今回あ ったと思っています。そういう意味かなと思って見ました。マスコミのどこが良い、悪 いは申し上げません。要するに労働者への説明責任がありますから、次回まとめるので あればそういうことを含めて少し資料を出してもらいたいと思います。 ○齋藤部会長  わかりました。それでは、今日はこのへんでお開きとしたいと思います。今回を含め て4回、それぞれの制度の財政、制度の改編など、広範囲にわたって議論を進めてきま した。だいたい論点、あるいは各委員のご見解も出そろったところかと思います。  ついては次回、予定運用利回りの見直しについて厚生労働大臣から諮問をいただい て、当部会としての答申というか、判断をさせていただきたいと思います。次回は一 応、4月10日、午前10時から予定させていただきたいと思います。よろしく、ご協力を お願いしたいと思います。  最後に本日の議事録の署名委員ですが、佐藤委員と田勢委員にお願いしたいと思いま す。よろしくお願いします。どうもありがとうございました。 6 配付資料 (1)建設業退職金共済制度及び林業退職金共済制度に係る論点整理について (2)建設業退職金共済制度及び林業退職金共済制度の予定運用利回り見直しの考え方   (1) 建設業退職金共済制度及び林業退職金共済制度における利回り別の財政状況    の今後の見通し   (2) 予定運用利回り見直し後の退職金額について   (3) 民間の退職金額について   (4) 掛金納付年数別退職金支給状況 (3)建設業退職金共済制度及び林業退職金共済制度の運営改善の方向について (4)建設業退職金共済制度及び林業退職金共済制度における支給事由別退職金支給状   況 照会先  厚生労働省労働基準局勤労者生活部勤労者生活課  担当:河野・簑原  03(5253)1111(内線5376)