03/01/09 第22回厚生科学審議会生殖補助医療部会議事録         第22回 厚生科学審議会生殖補助医療部会              第1  日時  平成15年1月9日(水)  自午後 2時00分                         至午後 5時00分   第2  場所  三田共用会議所 第3特別会議室   第3  議題  ご意見の募集について           検討課題3について           その他について 〇室長  定刻になりましたのでただいまから第22回厚生科学審議会生殖補助医療部会を開催い たします。本日はお忙しい中ご出席いただきましてありがとうございます。  本日の出欠でございます。加藤委員、金城委員、才村委員、澤委員、新家委員、渡辺 委員がご欠席ということでご連絡いただいております。出席されてない委員につきまし ても、後ほどいらっしゃるものと存じております。早速、議事に入ります。  矢崎部会長進行をお願いいたします。 〇矢崎部会長  最初に、きょうもたくさんの資料があるようですので資料の確認をお願いします。 〇室長  本日配付しております資料は資料1から6までです。  机上配付資料は、胚提供に関する生殖補助医療に関する倫理委員会見解(案)という 荒木委員より提出いただいたものです。  また資料3につきましては別紙1〜4。参考資料が1〜3までございます。ご確認よ ろしくお願いします。 〇矢崎部会長  よろしいでしょうか。今回は、資料1にございます法務省から法制審議会生殖補助医 療関連親子法制部会の検討状況についてご説明いただこうと思います。では法務省の大 臣官房参事官のシセキさんからよろしくお願いいたします。 〇参事官  法務省の大臣官房参事官のシセキでございます。よろしくお願いします。  お手元の資料1に基づき、法制審議会の状況等についてご説明をさせていただきます 。はじめに、平成12年12月に生殖補助医療技術に関する専門委員会が報告書をとりまと めになられました。この報告書の内容に基づく制度整備の具体化の検討を行うために、 厚生労働省さんには当部会を設置されたわけでございます。  この報告書には、ご承知のように生殖補助医療の結果生まれた子どもの親子関係の規 律のあり方についての提言も含まれております。これがお手元の資料1の1ページ目2. (1)に書いてある提言でございます。  こういう提言も含まれておりましたことから、法務省におきましても、資料の最初に 書いてありますように、平成13年 2月16日第 133回法制審議会総会に諮問をいたしまし た。この問題を取り扱う専門部会である生殖補助医療関係親子法制部会というものを設 置したわけでございます。当部会の部会長であられます矢崎先生にもメンバーになって いただいているわけでございます。  この部会におきましては、専門委員会の報告書に盛り込まれました親子関係に関する 提言、先ほど見ていただきました1ページ目の四角で囲んである部分でございます。こ れにつきまして、制度整備の具体化の検討を進めてきたわけでございます。1ページ「1 .これまでの経緯」の 2つ目に書いてありますように、平成14年 8月の会議の後、審議を 中断して今は休止状態であります。  これは法制審議会での検討をさらに進めますためには、生殖補助医療制度の具体的な 内容が相当適度固まる必要がありまして、それを待つ必要があるというふうに考えられ たためでございます。  生殖補助医療制度の具体的な内容につきましては、当部会における審議が相当進んで まいっておるわけですが、親子関係の確定に関しまして、当部会でお決めいただかない とならない事項というふうに法務省側では思っている事項で、当部会でご議論がほとん どされてない部分がございます。  そこで当部会でお決め願いたい事項とその理由について、これからできるだけ簡単に ご説明をさせていただきたいと思います。資料1ページ目の四角の部分と 2ページ目を ご覧いただきたいと思います。  生殖補助医療技術に関する専門委員会のご報告関係で、親子関係に関する部分を4つ ここに書いてあります。その内の上から1つ目「提供された卵子・胚による生殖補助医 療により子を妊娠・出産した人を、その子の母とする。」ということです。2つ目「妻 が夫の同意を得て、提供された精子・胚による生殖補助医療により妊娠・出産した子は 、その夫の子とする。」この2点につきましては、休止前の法制審議会における議論に おきましても、このご提言に沿った立法をするということで、ほぼ固まっているところ でございます。  固まっていないのはその後です。3つ目「妻が提供された精子・胚による生殖補助医 療により妊娠・出産した場合には、その夫との同意は推定される。」という部分。4つ 目の「精子・卵子・胚を提供した人は、当該精子・卵子・胚の提供の事実をもって、当 該提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療により生まれた子の父母とはされない 。」これに関する部分でございます。全部ではございません。  このうち、きょう申し上げたいのは第3の部分の関係のところでございます。  第3の文、夫の同意があったことについて、専門委員会では「その同意は推定される 」という形で、その同意がなかったということを訴訟で親子関係が問題になった場合に は、夫の側が立証しなければならないというご提言をなさっておられるわけでございま す。ここが決まっていないわけでございます。  なぜ決まっていないかと申しますと、これは生殖補助医療の結果生まれた子どもと、 生殖補助医療を受けた女性の夫の関係の間で、親子関係の存否が訴訟で問題になる場合 です。これの具体的な典型例を申します。夫が生まれてきた子どもが自分の子ではない というふうに主張して、民法上で嫡出否認の訴えという訴えがあるわけでございますが 、この嫡出否認の訴えを起こすというのが、もっとも典型的な場合でございます。  夫婦間で婚姻期間中に生まれた子は、夫の子どもと推定するということになっており ますが、その推定を打ち破るための訴訟を夫が提起することができる、これが嫡出否認 の訴えでございます。  この嫡出否認の訴えを夫が起こした場合に、専門委員会のご提言では、夫の同意を推 定することによって、夫が自分が同意していない生殖補助医療によって子どもが生まれ たということを立証しないと、嫡出否認は認められないという形にしてはどうかという ご提言がされているわけでございます。  この場合、夫の同意書があるのかないのか、それからその内容に関する情報を訴訟関 係者のうちの、誰が、どのようにして、いつから、この同意書を管理されることになっ ている公的管理運営機関から入手することができるのかということを、この部会でお決 めいただけませんと、はたして立証責任をこの専門委員会のご提言のように、夫の側に 負わせるのがいいのかどうかということを決められないということでございます。  なお、いま申し上げております同意書の存否内容の情報の取得という問題は、この部 会でご議論をいただいております出自を知る権利というものがございますが、この出自 を知る権利とは全く別のものでございます。  つまり公的管理運営機関は、生殖補助医療を受けた夫婦の同意書を管理する業務を行 う、ということにきょうの資料でもなっているわけでございますが、その業務の一つと しまして、生殖補助医療の結果生まれた子どもと、生殖補助医療を受けた女性の夫との 間の親子関係の存否が訴訟で問題となった場合に、夫側あるいは子ども側のいずれから 、同意書の存否内容について、この公的管理運営機関に照会がされた場合に、業務運営 のあり方として、その照会に応じることとされるのかどうかです。  照会に応じるとした場合には、いずれの側の照会であれば応じるのか。あるいは両方 どちらからでも応じるのか。どちらか片方、子どもの側でないとだめなのか。夫側は同 意書を出しているはずですから、夫側からだけを応じるのか。両方なのかということで す。  それから照会に応じる場合には、同意書が存在するのが普通のはずですが、存在する とした場合に、その謄写とか謄本、つまりコピーの交付に応じるのかどうかということ をお決めいただかないとならないということでございます。  2ページ「(3)裁判における同意書の利用(夫の同意)」と書いてあるところをご覧 いただきます。夫の同意の有無が訴訟で争われます場合に、同意書が重要な資料と書い てございますが、訴訟における決定的に重要な資料であると申し上げて過言ではないわ けでございます。恐らく、裁判で問題になる場合には、普通はこの生殖補助医療機関と して指定される機関が運用をされるわけですから、必ず同意書をおとりになると思って おります。するとその同意書は公的管理運営機関の手元にあるはずです。  したがって、訴訟で問題になるのは、同意書にサインがされている、あるいは記名押 印がされるということになっておりますが、それが自分がしたものではないということ を夫の側で主張し立証する。それがそうなのかということが多分問題になると考えられ るわけです。同意書自体が裁判の場に出ないと、問題の解決の余地がないということに なってしまうわけでございます。  それが立証責任との関係でどういうふうに問題になるのかといいます。普通は立証責 任というのは、決め方についていろいろなルールがあるのですが、一つの立証責任の決 め方としまして、証拠に近い側に立証責任を負わせるというルールがございます。  この場合にはしかし同意書は公的管理運営機関の手元にありますので、裁判になりま すと、夫と子どものどちらの側がより公的運営機関から情報を入手しやすいのかという ことを決めていただきませんと、どちらに立証させるのか。つまり夫の側に自分は同意 していないということを立証させるのか、子どもの側に夫は同意したということを立証 させるのか、ということが決められないわけでございます。  したがいまして(1)に書いてありますように、「同意書の有無の確認、同意書の入手が 可能であることが絶対に必要」なのですが、(2)に書いてあるように、「夫の側が同意の 不存在を立証しなければならないこととするのか、それとも、子の側が夫の同意の存在 を立証しなければならないのかを決める。これが法制審議会の課題なわけでございます が、その前提としまして、誰がどのように同意書を入手できるのかということをお決め いただく必要がある」ということでございます。  なお、これは確認ですが、民事訴訟法という法律が訴訟の問題を規律しておりますが 、民事訴訟法には文書提出義務という規定がございます。この文書提出義務というのは 、裁判所が文書提出命令というものを発した場合に、文書をもっている人に文書提出義 務が生じるわけでございます。これはこの公的管理運営機関の場合ですと、第三者です ので、それに応じないと科料の制裁がかかるということになりまして、その提出義務の ある文書の中にこの同意書が入ることになるだろうというふうに考えられるわけです。 最終的には裁判所にはそういう手段があるわけでございます。  ただ、これは伝家の宝刀でございまして、その前段階として、普通は裁判所はこうい うしっかりした公的管理運営機関が設けられる場合には、公的管理運営機関に対して同 意書があればお出しくださいという送付嘱託というものをすることができるという、こ れまた民事訴訟法に規定がございます。これも裁判所からの嘱託ですので、その嘱託に 応じる義務が嘱託された側は「ある」というふうに解釈されております。ただこれには 制裁がないというところが、文書提出義務と違うところです。  だだ、こうやって裁判所が自ら出でこないと、同意書が訴訟の場には現れないという ことになりますと、これは訴訟の円滑な運営であるとか、あるいは当事者の方あるいは その訴訟代理人である弁護士の方々が訴訟の準備をなさる上で非常に無駄が多く、支障 が生じるということになるわけでございます。  したがいまして出来ることなら、どちらか少なくとも一方が、ある程度の段階で文書 を公的管理機関から同意書を取得して、それを裁判所に出すことができるという形にし ていただけると、訴訟としては非常にスムーズにいくわけです。それがいいのかどうか というのは、また別の公的管理運営機関のあり方の問題、さらには生殖補助医療そのも ののあり方の問題にも係わるかと思いますので、当部会でご審議の上ご決定いただけれ ばと思っているわけでございます。  次に、お手元の資料の「(4)裁判における同意書の利用」ということが書いてござい ます。これは(提供者の同意)と書いてございますが、これはしたがいまして専門委員 会の報告、この1ページの四角で囲んだ部分の最後の「精子等を提供した方は生殖補助 医療により生まれた子の父母とはされない」これに係わる問題でございます。  ここに書いてあるように、訴訟において精子を提供された方が父親ではないか、とい うことが争われる場合というのがあり得るわけでございます。これは先ほどの、夫と生 まれてきた子どもさんとの間での紛争に比べると、可能性としては非常に低いものでご ざいます。  先ほどいいましたように、民法上「夫婦が婚姻中に妻が妊娠した子どもは夫の子と推 定する」ということになっております。しかも先ほど申しました嫡出否認の訴えという のは、子どもが生まれたことを夫が知った日から1年以内でないと起こせないというこ とになっております。その訴訟を起こして、夫がその訴訟で勝つ、つまり同意をしてい なかったということになって勝った、するとその子どもさんには父親がいなくなってし まいますので、精子提供者を自分の父親であるとして、扶養してくれというような訴え を起こす、それは認知の訴えということになるわけですが、そういう訴えを起こす場合 です。  ですから非常に限られた場合ではありますが、精子提供なさった方と生まれてきたお 子さんとの親子関係が問題になる場合がありうるわけでございます。   したがってこれも決めておかないとならないわけです。この場合も同じように、精子 を提供される方については、同意書を同じようにおとりになるということになっており ますので、この同意書があるのかないのか。あるとした場合に、その情報を訴訟当事者 が頂戴できるのか、裁判所は必ず頂戴できることになるはずですが、裁判所が直接やる までもなく、当事者がいただけるのかということをお決めいただく必要が、同じように あるということでございます。  最後に「(5)同意書の保管について」ということが書いてございます。夫や精子提供 者の同意書というものが訴訟になった場合に、決定的といっていいほど重要であるとい うことは、いま申し上げたとおりでございます。当部会におかれましても、きっちりし た保管体制を取るということで、公的管理運営機関を設けられて、そこで一元的に管理 をしてくださって、しかもその保管も80年間きちんと保管していただけるということで 、これは非常にありがたいと思っているわけでございます。ぜひ保管についても、保管 されていないとどうしょうもないわけですので、保管につきましては、なにとぞこのラ インで最終決定をしていただければと思っております。よろしくお願いします。 〇矢崎部会長  ありがとうございました。これはご説明を受けるだけではなく、いまのお話ですと、 検討してくださいということですね。これは石井委員と福武委員以外はこの方面に対し ては素人でございますので、焦点を絞ってお諮りしないと、このままではなかなかご意 見が難しいと思います。  今までの議論では、同意書というのはインフォームド・コンセントでとっております ので、これについては、保管については公的管理運営機関というお話ですが、ふと思っ たのは、これは法務省も関係するから、法務省で保管していただいてもいいのかなとい う感じもしました。  それは別としまして、いまいろいろなケースが起こって、この認知の問題ですね。争 いのとき、同意書というものが裁判官が判定する極めて重要な資料になるので、それを しっかりとってほしいということと、裁判になったときに、誰がそれを入手して、訴訟 のときに提供できるのかということですかね。  法律的にはよくわかりませんが、私は素人的にはそう大きな問題はないように思いま すが、石井委員いかがでしょうか。 〇石井委員  私も訴訟そのものはよくわかりませんので、実際をやっている福武先生のほうが確か であろうと思います。提供者の同意のほうについては、ほとんど私は裁判所の命令によ っても見せる必要性が生じることがあるのかどうかということは、ひとつ疑問です。同 意書の同意があることによって、提供者は父にならないということを免れるということ からすると、ほとんど生じる可能性はあまりないのではないか。そもそもが、認知の必 要な状況にならないはずですよね。提供者が誰であるか、ということがわかる形にはな らない設定を考えているのではないかというのが1点目です。  2点目というか、元々の夫の同意のほうについては、私は直感的には裁判所の嘱託手 続きによって提供するということでは足りないのだろうか。当事者が簡単に入手できる 必要を認める必要があるのかどうか、というふうに思っているということです。以上で す。 〇福武委員  いま嫡出否認の話だけをおっしゃっていると思いますが、現実に出てくるのは、夫が 死亡した後の話ですね。夫が死亡した後で親子関係不存在確認訴訟が起きているケース というのはかなりあります。現実に私も起こしております。誰と誰との間で争われるの かというと、死んだ男の妻と子ども(嫡出子とされている人)との間、あるいはもう一 つは兄弟同士です。これは先妻の子ども、後妻の子どもという形で争われることが多い 。  そういうことになってくると、当事者の夫自体は死亡しておりますから、その場合に は同意があったのかどうかというのは、いわば戸籍上の推定規定を確実に見做し(みな し)にする、つまり夫を父と見做す重要な要素になると思います。その場合は裁判上は どうしても必要になってくると思います。戸籍上の記載は、任意に、例えば親子になっ ているところに、嫡出否認ですと届出ても訂正が認められるわけではなく、みな訴訟上 の決定として出されてはじめて訂正されていますから、その意味では、資料は、裁判所 を通じて、今後は全部家庭裁判所になるのでしょうか、家庭裁判所を通じて取るという ことで足りるのだろうと思います。  ただ、その時どうしても前々から気になっているのは、そもそも医療機関でとってい る同意というのは、治療を受けることにおけるインフォームド・コンセント上の同意な のです。親子関係を設定する意味を持つ同意として考えていいのか、という問題は出て くるだろうと思います。  石井先生は、提供者の同意のほうは必要性があるとは考えられないという話でありま すが、例えば今後、子どもさんが父を知る権利を認められた場合には、それは考えられ ると思います。親子関係不存在確認の訴えを、夫の死亡直後に起こして、親子関係があ りませんという形になれば、その後に認知請求できるという形になっておりますから、 それはありうるという気はします。  ですから、この同意というのは、その意味では戸籍上の親子関係を形成するのに等し いぐらいの法的な意味を持っているのだと思います。ですから私はなぜ保存期間は80年 なのかは疑問です。戸籍と同じぐらいの保存期間ぐらいはあってもいい。戸籍自体は事 実上はほとんど無制限になっているので、それと同じようなものでもいいのではないか という気はします。  ただ同意をしたということの内容が、その時に施術をするときの同意という形になっ ているわけですよね。現実にはね。これが生まれた子どもの父親と本当になるのか。そ ういう疑問としてひっかかることはひっかかっております。  訴訟自体は、今はDNA鑑定をすれば親子関係の有無というのは、かなり簡単に2週 間ぐらいで出ておりますので、その意味では親子関係を否定するような訴訟というのは 、親子関係を否定するが材料として出ていて、それで現実には、戸籍上の父が「自分は 父です」ということを言わないといけないのだろうと思います。だからその意味では同 意書及びそれによって現実に生まれているということを、ワンセットできちんと保管し ないといけないだろうと思います。要するに治療の経過と出産の経過までを含めてです 。だから同意書だけ法務省が保存するということも変な話ですね。 〇矢崎部会長  法務省というのはさっきそういっただけです。恐らく、公的管理運営機関が保存する と思います。 〇町野委員  まだよくわからないところがあります。要するにこちらの審議がすっきりいってない ので、法制審議会の審議が中断しているという話ですが、どうしてそういう話になるの か私にはぜんぜんわからないところがあります。  ひとつは、おっしゃることは、検討事項というか、妻が夫の同意を得て云々というと き、その時に推定するという、これが今の状態ではこの結論をとれないこともあるとい うことでしょうか。 〇参事官  その通りです。 〇町野委員  しかし取れないということは、結局書面がある、もし書面がどこかに保管されている ということですと、すると書面がないときについては、お前の同意がなかったというこ とが証明されたと考えていいということでしょうか。  管理されているということが決まっているということが必要だとおっしゃったが、そ れはどういう意味でしょうか。 〇参事官  専門部会のご提言の第3の関係のところの推定のところですが、夫の側に立証責任を 負わせるというのはどういうことかと申します。先ほど申しましたが、夫の側に自分は 同意していないという立証責任を負わせる。このように「ない」ことの立証責任を負わ せるということは、きわめて異例なことでございます。法律的にはですね。ですからそ れを負わせるのであれば、夫の側に同意していないということの立証が、子どもの側と 比べてはるかに立証は容易であるということがなければならないだろうという議論が、 法制審議会の中にございました。  するとその場合に、同意があったのか・なかったのかという決め手となるのは、同意 書の存否と、存在している場合に、それが果たして夫自身がした同意書であるのか。こ れは筆跡鑑定などで調べるわけです。そこが問題になるわけでございます。  したがって、同意書がしっかり管理されているということが、どちらに立証責任を負 わせるにしても必ず必要なことですが、管理されていても、その同意書に一体どちらが より容易にアクセスできるのか、5:5なら推定させてもいいのかというのは、さらに 議論しないといけないということでございます。  例えば、いま石井委員がおっしゃられたように、裁判所の嘱託にだけ応じるというこ とになりますと、どちらも5:5ということになりますので、その5:5の状態の中で 「ない」ことの立証責任を、何らかの政策的な理由から夫に負わせることにするべきな のか、ということを更に議論するということになるわけでございます。 〇町野委員  この2ページ目の書きようですと、(3)の(2)ですが立証責任をどちらに負わせるかの 前提としてと書いてありますから、そのこともまだ決まってないということですか。 〇参事官  決まってない、決められないということでございます。 〇町野委員  つまりこちらがきちんとしないと、もしかしたら夫の側に反証の義務を負わせるとい う立場を放棄するということになりうるということでしょうか。つまり専門委員会の報 告書ではそうしろということであったのですが、それに従わないことも法制審議会とし てはあるということですか。 〇参事官  もちろんあり得ます。 〇町野委員  そうですか。はいわかりました。 〇矢崎部会長  第一の観点で、いままで私どもが同意書としてきたものが、法制側からみて、これが 親子関係の同意を立証するものになっているのかどうかということがひとつ議論がある かと思います。インフォームド・コンセントのときには、根底は婚姻関係のある夫婦の 間のみ行われるということですので、それは一応、確か夫が同意したというふうに、イ ンフォームド・コンセントの様式にはそういう項目は入ってなかったのですよね。石井 委員あるいは福武委員ご記憶はどうでしょうか。  私は当然、ご夫婦が同意したうえではじめて同意書ができる、というふうに今まで理 解していたのです。親子関係を決定するための事項というのは、加えておいたほうがい いということになりますでしょうか。 〇参事官  私はここで確たることは申し上げられないのですが、私が個人的に理解をしておりま したのは、生殖補助医療によって子どもを作ることに同意をするということは、すなわ ち夫の側からみれば、その子を自分の子とするこということの同意であるという意味で あろうと理解をしていたところでございます。そこは福武委員のお考えと若干違うのか もしれません。 〇矢崎部会長  そういう理解でまずいのでしょうか。 〇石井委員  よろしいでしょうか。これは以前にも申し上げたのですが、ここではインフォームド ・コンセントの内容のところの親子関係の法的な関係については、厚生審議会というと ころでいつも十分に議論しないままで、私はそれを担保する人的な設備等の条件の中に 、そこもちゃんとしないといけないのではないかということも前にも申し上げたと思い ます。  その説明をきちんとする、その上で同意がなされて、はじめて法的な親子関係ができ るということも同意しているという形になるのではないかと思います。 〇福武委員  日本の結婚制度というのは届出主義です。ですから届け出てはじめてそれは夫婦だ、 法的な夫婦である。それと同じような形で今回この同意書を作って、それを公的な管理 機関に届け出て、はじめてそれが単なる推定を越えた父子関係の創設という形になると いうことだと思います。だからその意味では、公的管理機関というのが、いわば役所と 同じぐらいの権限ないし権威というものを持っているのだと思います。  だからそこがはっきりしていれば、同意書の文面をあとはきちんとさせておけばいい のだと思います。 〇矢崎部会長  そうしますと、親子関係をきちんと文言として証明するような字句を、今まではそう いう観点から十分に議論してなかったので、インフォームド・コンセントの検討課題2 、これでは資料5ですが、ここに少し書き加える必要がございますでしょうか。 〇町野委員  私はないと思います。結局、参事官もいわれましたとおり、承諾するということは、 これで親子関係を認めて差し支えないという具合に考えようということですから、結婚 して自分の子どもができたときに、親子関係を持つことに同意するのかといわれて、そ れでそういう関係を持つということはあり得ないわけです。それと同じことですから、 それを一々インフォームド・コンセントを全部とらないといけない、石井さんはそうい われるが、私はそういうことはないと思います。それで恐らく報告書を作ったときに、 そういう意図で作られたわけですね。全部法律的なことまでみんなインフォームド・コ ンセントをやって同意しないといけないということはないと思います。 〇鈴木委員  今の町野委員のお話ですと、嫡出否認の裁判の件はともかくとしても、例えばドクタ ーとか妻を相手にというか、民事として説明義務違反に対しての慰謝料請求というもの はありえませんか。つまりそういう説明は私は聞いてない、それによって非常に心理的 なダメージを被ったということで、民事裁判を起こされるということはあり得ませんか 。説明文書にきちんと書かれていないことを理由にですね。  その意味では私は、同意書の中に、これは法的にはこういう意味ですよ、ということ をきちんと書いておいたほうがいいと思いますし、そういうことを私たちはわかりまし た、というところで同意書を用意しておいたほうがベターであると思います。 〇町野委員  私はそういうことはないだろうと思いますが、書くなら書いても結構ですが、いまの ご議論ですと、それを書いておかないと全部親子関係はなくなってしまう、認められな いということになりますから、そういうことは恐らくあり得ないという趣旨で申し上げ たことでございます。  だからそれをこの様式の中に、インフォームド・コンセントの中に付け加えるという ことになりますと、ますます混乱が起こるだけだと思います。 〇矢崎部会長  中に何回も法律上の夫婦という言葉が入って、その方が医療を受けるということにな っておりますので、改めて一行を、生まれた子に対する親権をここで保証しますという 文言がなくてもどうでしょうか。法務省としては。 〇参事官  法務省としてとおっしゃられると困ってしまうのですが、事前に決裁をとっているわ けではないのです。私の個人の感想は先ほど申し上げたとおりで、部会長がおっしゃら れたように、法律上の正式なご夫婦の間で生殖補助医療によって子どもをもうけるとい うことの同意をしているわけですから、そのもうけた子どもは自分の子としてもうける ということの同意に、当然ながらなるのだろうと思います。  だから鈴木委員がおっしゃられた点については、私も町野委員と同じく、そういう目 茶滅茶な訴訟でも起こす人は起こすのですが、起こして裁判所がそれを認めるというこ とはまずないのではないかと思いますが、この辺は福武委員がご専門でございます。 〇吉村委員  現在AIDに関しましては、生まれた子どもは自分たちの子どもである、夫婦の子ど もであるということは同意書には書いてあります。それにサインをしていただいており ます。  それは法制審議会でもその同意書はちゃんとお見せしてありますし、そのようになっ ております。  ただ同意書の内容として、いろいろなことを書かないといけない、これだとすごくた くさんの同意書になってしまうわけです。AIDの場合にはそこまでたくさんのことが 書いてありません。4項目ぐらいですので、4項目のうちの1項目として「自分たちの 子として嫡出子として認めそして育てる」ということを、同意書では、現行ではとるよ うになっております。 〇石井委員  重要なのは、生まれてくる子どもに対して、その夫婦のみが親としての責任を負う。 つまり提供者は親にならなくて、自分たちだけが親となって責任を負うということの自 覚をきちんと持ったうえで、治療を受けてもらう。その手続きが必要だと思います。同 意書があるということは、それについて説明をうけて、同意したということがわかる。 その同意書に書いてあるのかどうかということよりは、プロセスが重要ではないかと思 っております。 〇鈴木委員  あとはこれもずっと同意のところで気にしていた問題です。例えば、ご夫婦の了解が 得られて、第1回目AIDをなさったとします。1回目で妊娠しなくて3回4回5回と 続けてきて、 1年半ぐらいたったとします。6回目を受けようというときに、実例とし てあるのですが、きょう6回目の例えばAIDを夫に黙って受けてきましたという方が いらっしゃったのです。だからその意味で、初回同意が際限なくということになるので しょうか。その辺を教えてください。 〇吉村委員  いまは3〜4年ぐらい前から毎回毎回署名捺印をいただいております。1回ごとにい ただいております。そういうご意見が4〜5年前にありまして、私たちも確かにその通 りであると思いまして、4〜5年前から毎回・毎回の同意をいただいております。 1回 毎の施術ごとに、それが来ないと次は受けられないということになっております。自筆 でいただいております。 〇鈴木委員  私たちのこの委員会ではその辺りがどう決定されたのか、私は記憶が曖昧になってお ります。 〇矢崎部会長  これは毎回とるということは、当然そのように考えております。いまの同意書の件で すが、ここで法律上のご夫婦の間の治療ということで繰り返し述べておりますが、ご意 見の中には、もう少し付け加える必要もあるのではないか。例えば先ほどお話のあった 認知の問題だけではなく、両親が生殖補助医療で生まれた子を、同意書にサインしたご 夫婦だけが養育する責任があって、しかもしっかりフォローしないといけないというこ とを、さらに認知させるような文言が、同意の中に少し入ったほうがいいのではないか というご意見もあったかと思います。  この場で議論できませんので、それについてはまた法務省の方と事務局とで、少し議 論していただいて、そういうことまでこの中に含まれるということであれば、このまま にしていただきますし、もう少し補うことが必要であれば、また次回のときにご議論を いただきたいということです。  同意書についてはその程度の議論で終わらせていただきたいと思います。同意書をど なたが入手するのか、これは裁判所に当事者がお願いして、それでそこで判断されると いうことではいけないのでしょうか。 〇参事官  ただいまのご質問につきましては、最低限、裁判所の嘱託がされた場合には、速やか に裁判所に同意書をお出しいただくということが確保できれば、これは訴訟で使えるこ とが間違いありませんので、それを前提にして、訴訟におきます立証責任をどちらに負 担させるのかという問題を、私どものほうの審議会でご議論をいただくということにな ろうかと思います。  ただそれで最低限は確保できると思いますが、訴訟される方は事前に準備をされる必 要もありますし、その準備が十分でないと訴訟に時間がかかるという問題もございます 。ご承知かと思いますが、政府では訴訟の結果は2年以内に判決までもっていかないと いけないようにするという方針でもあります。  できればそういう観点からだけ申しますと、一番望ましいのは、訴訟を起こす前に同 意書の存否と内容を訴訟当事者が把握できるということが、その観点からだけいえば望 ましいのですが、果たして訴訟を起こすかどうかわからない段階でそういうものを出す のがいいのかどうかというのは、また別途のご考慮が必要かと思いますので、最低限と しては部会長のおっしゃられたラインでも結構かと思います。  さっきの部会長からのご質問に答えるときに、チェックを忘れました。本日の資料3 の別紙2の2ページ、これは提供者ですね。失礼しました。別紙1の夫婦に対する説明 の内容についての2ページ「3.提供により生まれた子について」という説明事項に「(1 )親子関係(出生する子の法的地位)について」というものがございます。先ほどご議論 されたところは、今回のパブリックコメントに出されるものとしては、生まれてきた子 どもは同意をされたご夫婦の子どもになるのです、ということが説明されて、その説明 を受けた上で同意しましたということが同意書に記載されるということになっているの ではないでしょうか。そうであれば完璧だと思います。 〇矢崎部会長  そういうつもりであったのですが、それを中にインフォームド・コンセントをとる過 程で、それが明らかになっているのかどうかというのは、その点は少し確認しておく必 要があると思います。 〇町野委員  今の点はそれでいいのですが、まだわからない点がありますのでお教えください。夫 が同意したのではないということの立証責任を夫が負うというのが、負わせるようにす るべきだというのが報告書の立場ですね。その立場をもしそのまま法律にしようという ことであるとするなら、どういうことが望ましいのでしょうか。同意文書についてね。 今のご議論ですと、どうやって提出させるのか、どこに保管させるのかということを待 ってから、はじめて立証責任をどっちに負わせるのか検討するということですが、私は 議論が逆ではないかと思うのです。  むしろ報告書の方向というのは、皆さんおそらく是認されていると思うので、それに 基づくと、どのような体制が望ましいのかという議論をするべきだと思いますし、そう であるとしたら、どのような体制が望ましいと法制審議会の方がお考えであるのかとい うことを聞きたいわけです。 〇参事官  いまおっしゃられたことの繰り返しになりますが、立証責任をどちらに負わせるのか ということは、原則としては、ある事実があったことを立証するということが民事の原 則です。「ない」ことを立証させるのは、これは悪魔の立証といいまして、「ない」こ とは立証できないというふうにいわれております。「ない」ことを立証させるというこ の専門委員会のご提言というのは、非常に特殊なご提言です。  ですからそれを認めるためには、夫の側がないことの立証が非常に容易にできるとい うことが、子どもの同意があったことを立証することが非常に困難であるという状態が あることが、絶対にそれがないとならないと言い切れるかどうかということは、まだ審 議会で議論していただいている途中ですのでなんとも申し上げられませんが、それが一 つのメルクマールになりうるわけです。 〇町野委員  わかりました。すると結局は夫の側に責任を負わせても、不都合でないと思われるよ うな体制が必要であるということですね。そのためには何をどのようにしたらいいので しょうか。 〇参事官  さっき話が途中だったのですが、この専門委員会のご提言というのは、あくまでも厚 生省の審議会の中の専門委員会のご提言にすぎない、そういうようにいうと恐縮ですが そうです。親子関係は法務省の所管しております事項でございますので、ここでご提言 がされたから、それが当然の前提になるというふうには、私どもは全く考えてないわけ でございます。  ですから親子関係の立証責任などをどうするのかというのは、法制審議会で、このご 提言を参考にしながら、それが望ましいのか、別の方法によるべきかということを今ご 審議いただいているということです。 〇町野委員  ゼロから出発しているということですか。 〇参事官  ゼロではございません。そういう方向性が専門委員会で出されたということを前提に 、法律問題の専門家、それには矢崎先生をはじめ医師の先生にも入っていただいており ますが、主として医療法律訴訟問題の専門家に集まっていただいて、どういうふうに立 証責任をさせるのかということをご議論いただくわけでございます。 〇町野委員  要するにここの委員会で、どのように文書の管理体制それからアクセシビリティを決 めるかということによって、これからゆっくり法制審議会として考えようということで すね。立証責任をどっちに負わせるのか。そういうことですね。要するに態度は未定で あるということですね。 〇参事官  態度は未定であるということはその通りです。ただゆっくりというのは違うと思いま す。 〇町野委員  なるべく早急に、可及的速やかにですね。しかしこちらが決定しなければ動かないと いうことですか。 〇参事官  どっちをどうお決めになるかによって、検討する前提がかわるということでございま すので、決めないと動けない。ですから私がここにまいっているわけでございます。 〇町野委員  私はちょっと誤解しておりました。この委員会は推定のことを決めたわけではないの ですが、報告書は前の委員会であったと思いますが、そちらに一応この委員会も、その ようないろいろな体制を一応は維持しながら進んでいる。法制審議会も恐らくそうでは ないかと思っておりましたので、そのようにするためには、どういう体制をこっちで作 るのが必要かというご質問であると思ったのです。そうではないということですね。わ かりました。 〇吉村委員  ちょっと確認をしたいと思います。専門委員会のときにもこれが一番問題になったの です。法務省の方が一番これに対して抵抗された。ぼくもそれは夫の同意は推定される という言葉は、子どもにとってはたいへん良いことだから、いいのではないかと、我々 はそういう考え方でした。父親のない子ができるような状況は敢えて少なくなるわけだ から、同意が推定されればね。だからいいのではないかということで、私は石井先生の 意見に賛成をしたわけです。  でもこれは石井先生がおっしゃった意見であって、あまり我々はよくわからなかった わけです。正直申しましてね。  もし、この同意が推定されるという項目がなくなると、つまりこの3番目がなくなっ てしまうと、かなり子どもにとって不利益ということはあり得るのでしょうか。 〇参事官  そうなるかどうかは、同意書は確実に出していただけると思いますが、確実に出して いただければ、どちらに証明責任を負わせるのかということは、実際の訴訟の場で、そ れで決定的に問題になるということは恐らくあまりないのではないかと思っております 。そうであるとすれば、この専門委員会で出されたような特別の極めて異例な証明責任 規定を設けるまでの必要性があるのかどうか、ということを議論することになるかと思 います。 〇矢崎部会長  そうしますと同意書がある程度きっちりした形であれば、前提にも対応していくとい う話になるわけですね。 〇参事官  ただ、きょうのお話ですと裁判所の嘱託があった場合だけお出しいただけるという前 提ですから、そうなると夫も子どもも5:5という形になるわけです。夫のほうから請 求があったときには、夫にはお出しになるということに仮になるとすれば、また話が変 わりうるかもしれない。ですからそれを認めないのかどうかということを決めていただ くとありがたいということでございます。 〇町野委員  どう話が変わるのかご説明いただければと思います。 〇参事官  夫の側のほうが容易に同意に関する事柄についての証拠が入手できるということにな りますので、夫のほうに証明責任を負わせるということの説明がつきやすくなるわけで ございます。ですから、専門委員会の提言のようにするということにも合理性がある、 というふうに考えられる可能性が高まる。はっきりしたことがいえなくて恐縮ですが、 これは審議会で決めていただくことなので、私がとやかく申し上げるのは妥当ではない ので、こういう言い方になりますが、そういうことでございます。 〇町野委員  端的にいうと、夫の側が請求をしたとき、公的管理機関がそれを開示するような体制 を作っておけば結構だということですか。 〇参事官  そうなれば絶対に専門委員会のご提言を含むような条文ができることになるかどうか はなんとも申し上げられませんが、そうなる可能性が、夫の側が請求しても開示しない という場合に比べると高まるということはいえると思います。 〇石井委員  夫の側といった場合、夫がいない、夫の承継人になっている場合もありうると思いま すが、夫であれば自分が同意書を書いたかどうかというのは少なくともわかるので、夫 は自分は書いてないということを自信をもって裁判を起こすということですね。  ということは、夫のほうが事前に開示してもらえるかどうかということは、あまり関 係ないのではないかと思います。 〇参事官  それは訴訟の関係からすると、そういうことは決してないわけでございます。さっき も申しましたが証明責任の分配というのは、証拠へのアクセス、立証の容易の側がどち らかということも重要な決める要素でございます。どちらも5:5であれば、一般の証 明責任の原則に従うということになるかと思います。 〇福武委員  実は実務家の感覚からいえば、まず訴訟を起こすかどうかということがあります。そ の時に例えば亡くなった男の人が、同意を現実にしているのであれば、それはその子ど もなのだから、わざわざ訴訟を起こすことはないだろう。だからあらかじめ同意をして いる書面があるということがはっきりすれば、訴訟までやらなくてもいいという形にな るのだと思います。  それがわからない時点で、取りあえず訴訟をやってみようかというのは、なかなかい かないものです。  裁判のことを先ほどおっしゃいましたが、裁判所が2年以内に結論を出すというとき に、事前に証拠を集める制度を作りつつあるのです。その時にこういう公的管理機関に 夫・子ども、あるいは夫が亡くなったときには、戸籍上の関係者がアクセスして、そこ で何らかの資料を得ることが可能であれば、わざわざ裁判を起こすことがかなり減るだ ろうと思います。その意味で、どこの範囲まで開示をするのかということは、結構大き な問題になるのかなという気はします。 〇矢崎部会長  そうしますと今のお話をお聞きしますと、夫と子が請求した場合には、同意書の存在 を、あるいはそのものを提示する。夫と、父となるべき方が亡くなった場合がどうする のかということになりますですか。 〇福武委員  いえ、夫が要求したとき、あるいは子どもが要求したときでも出すのかどうかという のが大きな問題であろうと思います。それはどちらかに決める必要はあると思います。 〇矢崎部会長  それは今のお話ですと、もし出さないとなれば、裁判を起こさないと出てこないわけ ですよね。ですから裁判をしなくてもある程度の事態が解決するということであれば、 開示するという方向ですよね。そういうことはこの審議会というか検討部会で検討する マターなのでしょうか。 〇福武委員  私は違うと思う。むしろそれは法制審議会のほうで決めるとか、もう少し実務的なレ ベルで決めるのがいいのではないかと言う気がします。 〇参事官  少なくとも法制審議会のマターではないと思います。といいますのは、なぜかといい ますと、これは公的管理機関が文書である同意書に関する情報を一手にお持ちなわけで す。公的管理機関の業務のあり方の問題ですから、それを法務省の側でこうしろとかあ あしろということは、所管からしてとても言えないものでございます。ですから法制審 議会で議論する問題ではないと思います。ですから当部会でご議論をいただくか、ある いはもう少し実務的な問題であるということで、公的管理運営機関の実務的な運営の一 こまとして、どこかでご議論をいただくということになると思います。  ただ、福武先生がおっしゃられたことは非常に大事なことです。訴訟はできれば起こ さないで済ませることができるなら、済ませたいというのが普通の日本人ですので、証 拠を入手するために訴訟を起こさざるを得ないということは、とりわけ一番典型的な場 合として、嫡出子の訴えの場合を申し上げたのですが、実際には福武委員がおっしゃら れたように、同意をされたであろう夫が亡くなって、その子ども同士で主として先妻と 後妻の子どもということになると思いますが、その間で本当に同意したのかとか、勝手 にやったのではないかということで、相続争いの一端としてこれが問題になるというこ とが一番考えられる可能性が高いのです。  その場合には、訴訟まで起こさないと同意があったのかどうかわからないというのが 、本当に望ましいのかどうかということをお考えいただく必要はあると思います。 〇矢崎部会長  考えるのはここで考えて、正確にやれるのかどうかということはちょっと難しいと思 います。それともう一つは公的管理機関といっても、まだ今はいわゆる公的管理機関と いうのが、ここが本当に厚生労働省の直轄のものになるのか、国のものになるのか。80 年ですから、どこかで厚生労働省に係わっていただかないといけない部分が大きいと思 いますが、もし同意書とか裁判の部分は、法務省で管轄ということはできないのでしょ うか。親子関係の部分のものは法務省管轄で預かっていただくとかです。 〇参事官  これはインフォームド・コンセントの同意の問題です。親子関係にももちろんそれが 極めて重要な影響を及ぼすからこそ80年という保存期間にしていただいていると思いま す。ある意味で公的管理機関の一部を法務省の側というのは、ちょっと考えてなかった のです。 〇矢崎部会長  事務局の側では何かございますか。 〇母子保健課長  極めて実務的な裁判とかになる話でございますので、厚生労働省と法務省でこの扱い について整理をさせていただきまして、次回、結論になるかどうかわかりませんが、ご 提言させていただきたいと思います。  先ほどからの話の補足といいますかご説明です。資料5の検討課題2の中に、これま で先生方にご検討いただいたわけでございますが、実際、治療をうける方々に対する説 明事項にどういうものがあるのか、どういうことを同意していただくのか、それに至る までにカウンセリングはどういうカウンセリングを受けるのか、ということをかなり詳 しく議論していただきました。  そういうことが例えば資料5の8ページの真中辺りです。「(1)親子関係について」 がございます。これはまだ法制部会で検討中ということですが、法的地位についてちゃ んと説明をするということ。下の赤字になっておりますが、生まれた子からの開示の手 続き及び予想される開示に伴う影響について、いろいろなことがあります。  こういうこともちゃんと説明しなさいという言い方をしていただいております。同意 書も同じようなことを同意する内容として規定をするべきだ、というご意見をいただい ておったところでございます。  28ページになりますと、カウンセリングの内容のところで下から3行目です。生殖補 助医療が行われた場合に、「一連の措置が持つ意味をちゃんと理解することができるよ うにする。」このようなカウンセリングもちゃんとした上で、同意をとりなさいという 議論をこれまでしていただいておりますので、これでかなり厳しい目のものができてい るのではないかというふうに我々は理解しておったところでございます。 〇矢崎部会長  私もそういう理解です。同意書として残した場合に、こういうことの上で同意書をと りましたといえば、いま課長がいわれたようなことで、法務省の立場としては、これは 子の親であることを認めた同意書であるというふうに法的に見なしても大丈夫であると いうことであれば、このままでいいのです。これでよろしいでしょうか。 〇参事官  私はこれで結構かと思います。 〇矢崎部会長  するとこれは、すべて読んで納得しましたという意味の同意書の形式にすればよろし いわけですね。 〇参事官  そうであれば問題はないと思います。 〇矢崎部会長  そうですね。そうすれば石井委員の先ほどのものはよろしいでしょうか。 〇石井委員  今の点と関連してです。先ほど福武先生がおっしゃったことにも関連しますが、法制 審議会では従来の同意の取り方がかなりルーズというのは失礼ですが、本当に本人なの かどうかもわからないで同意が取られているということもあって、同意書があるという だけで親子と認めてよいのかという議論もあった。この委員会でどういう手続きできち んと同意がとられるということを踏まえないと、同意の有無によって親子関係が決めら れるかどうかが問題になるという議論があったと思います。  ですから法制審議会のほうで、ここで議論をしたことを踏まえて、決めていただくと いうことだろうと思います。  また、これは法制審議会の問題ですが、この同意書がなければ親子にはならないのか という問題がもう一つはあると思います。同意といった場合に、必ずこの手続きによら ないといけないのかという問題が、もう一つあると思うということです。  もう 1点は、先ほどの裁判前に同意書の有無がわかったほうがよいということは、確 かにあるかもしれません。情報に誰がアクセスできるのか。同意書があるということは 、その生殖補助医療によって生まれた、提供者によって生まれたということがわかると いうことでもあるわけですから、そう簡単に誰でもが情報にアクセスできるということ は困るのです。ですから一定の制限が必要ではないかと私は思っております。  ただ、どういう法的なシステムを作るか、厚生労働省と法務省との間ですり合わせて いただいた上で、公的審議機関がどのような場合に誰に開示できるのかということは、 決めていただければ、ここで議論しなくてもよろしいのではないかと思います。 〇矢崎部会長  ありがとうございました。そうしますと、同意書の性格と、どこまで開示するかとい うことも、ちょっと議論していただきたいと思います。  もう一つは、この提供された配偶子による生殖補助医療は、これに則ってやってもら わないと困るということですよね。ただ世の中は往々にして、これ以外に行われた場合 に、生まれたお子さんをどういうふうに対応するのかということは、これまた別問題で す。これまた法制審議会のほうでそういう違反の親子関係は議論していただく。ここは 違反がないという前提で議論をしておりますので、それはそこでやっていただければと 思います。  まとめです。同意書は、これをすべてチェックした上での同意書だということで、法 制的には親子関係を立証する有力な証拠書類となるということを、一応、認めていただ く。新たにここに書き加える必要はこれ以上はない、という立場でよろしくお願いしま す。  提示する範囲ですが、裁判所で訴訟になってから開示というのは、今後の世の中の流 れからいうとなかなかそれでは済まされない部分もある。例えば夫となるべき人、生ま れた子ども、あるいは亡くなった場合の代理の方であるとか、どこまでそれを広げるの かということについては、もう少し事務局と議論していただき、最善の案を出していた だき、ここで認めていただくということにしたいと思います。  提供者の同意です。これはもうこの同意書で親にならないという前提がありますから 、何か問題はありますか。例えば20年ぐらいたって、生まれたお子さんが出自を知る権 利で同定するような事態が起こったときに、そういうことが起こりうるということでし ょうか。何かケースありますか。福武委員、提供者が問題になるようなことはあります か。 〇参事官  まず私から露払いをいたします。冒頭にもお話をしましたが、提供者の側が問題にな ることは非常に少ないです。実際上はね。 〇矢崎部会長  ただ不認知を勝ち取った場合の親をどうするのかということでしたか。 〇参事官  ご夫婦の間でこの治療は行われますので、ご夫婦ですから夫の子どもであると推定さ れますから、その推定で覆った場合にはじめて嫡出でないということになった場合に、 父親がなしということになってしまいますので、その段階で精子提供者の出自を知る権 利で精子提供者が誰であるかということを知った場合に、その人を父親として、親とし ての責任をとってくれという訴訟を起こすということが論理的には考えられるというこ とでございます。  その場合に、きちんと同意書がとられてやっておったのであれば、この生殖補助医療 に全部が則っているのかどうかというのは同じような問題があるわけですが、おおむね 則ってちゃんとやって精子を提供したのであれば、生物学的には親と子の血のつながり があっても、親にはならない。そういう仕切りにするというのが専門委員会のご提言で す。法制審議会でもそのラインで考えているわけです。  裁判になった場合、そうであることを立証しなければなりませんので、その時にちゃ んとこの同意書が出てきて、その同意を自分自身がちゃんとしているということを精子 提供者側が立証して、自分は父親としての責任はないのだということを立証するという ことになるわけでございます。 〇矢崎部会長  このインフォームド・コンセントをとった上で生まれた子は、両親は決まっているわ けですよね。 〇参事官  普通の場合はそうですが、例えば夫に成り済ました人が同意をしたとか。それが問題 です。 〇矢崎部会長  それは、ここはそういうことを考えないで、法律上の夫婦で行われるという前提にな っているのですね。だからその可能性まで広げていろいろと議論をすると、我々では対 応できない。ですから、我々の定めたプロセスで生まれたお子さんが、何か訴訟でどう なるのかという可能性がなかなか浮かばないのです。これ以外で行われたという場合に はいろいろな問題が出てくると思います。 〇参事官  ですから夫の同意の側からしますと、生殖補助医療に則ってないというか、医療機関 側は則ってやっているのですが、だまされてという形で、本当はご本人の同意がなかっ たというような事態が生じた場合、しかし精子提供者の側がそうであっても、この生殖 補助医療の制度に則った形で同意して精子を提供したのであれば、父親にはならないと いう仕切りになるべきだろうと思いますので、そこをちゃんと精子提供者側が立証でき るような手だてを講じていただく必要がある。  ですから、お決めいただく内容は同じでございます。精子提供者側なり子どもの側が 精子提供者の同意書を見られるのか見られないのか。見られるとしたらその時期はいつ かということでございます。 〇矢崎部会長  どうでしょうか。 〇松尾委員  どうも素人にはよく理解できないのです。日本の法律のシステムとか体系と非常によ く似ている国で、親子関係をどう処理しているのかという事例を、何かご紹介いただく ことは可能でしょうか。 〇参事官  いま手元に資料がないのです。 〇松尾委員  今でなくても結構です。 〇参事官  検討させていただきます。 〇町野委員  お教えください。今のように摘出否認の訴えが出て否認の訴えが通り、父と子という 関係が否定された。そういうことになると、その時のその子の父親というのは、自動的 に提供者のほうになるという前提でしょうか。そうではないですね。 〇参事官  そうではございません。まず父親がいない状態に一端なるわけでございます。それで 父親がほしいということになりますと、誰か認知請求をするということになります。 〇町野委員  認知請求をして精子提供者がわかったら、それが父親であるということが認知される という前提ですか。 〇参事官  そうではなくて、この生殖補助医療制度に則った適法な精子提供がなされている場合 には、親にはならないという考え方でございます。 〇町野委員  そうですか。すると本人が同意をしてちゃんと提供をしたが、向こうのほうの父親が 同意してなかったということで、摘出否認が通って、ひっくり返ったときについて、誰 も父親がいない状態があってもいいということになるわけですね。 〇参事官  それはやむを得ないことでございます。 〇町野委員  わかりました。そのように報告書自体がそう考えていたのか、ちょっと私はわからな いのでお聞きしました。そういう前提ですね。 〇参事官  はい。 〇町野委員  それはもう既にそういう前提で動いているということですか。法制審議会では。 〇参事官  法制審議会ではそういう議論でございます。多分、石井委員からご説明をいただいた ほうがいいかもしれませんが、12年の専門委員会もそういう前提でお考えであったので はないかと思います。 〇町野委員  わかりました。それはかなり問題であると思いますが、わかりました。 〇石井委員  だからこそ推定規定が入っているのです。 〇町野委員  それは別の考えではないでしょうか。でも話が多くなるのでやめておきます。 〇吉村委員  しかし矢崎先生、別に我々のところは、こういう前提でこうやっていくということを 決めればいいのですから、いまのような事象に関しては、法制審議会でまた話し合って もらう。これはこのままで終わってもいいと思います。これは全然意味のないことです し、同意が推定される部分、3番目の項目だって、なくしてもかまわないのではないか と思います。これが法務省でいつも問題になっているのです。これは我々が話し合って も意味がないと思います。進まない。ですから、なかったときにどうなるのか。今まで のインフォームド・コンセントの同意の取り方ではいけないのか。子どもにとって不利 益なのか。そうでなかったらなくしてもいいと思います。 〇矢崎部会長  そうしていただくとありがたいです。法務省のほうではここである程度判断していた だかないと、また向こうの審議が進みにくいという話をいただいたのです。いまのお話 で大体納得されましたでしょうかね。 〇参事官  ですから精子提供者の場合も、夫の場合と同じように同意書、別の同意書ですが、誰 がどのように入手できるのかということだけを決めていただければ、それでいいわけで ございます。 〇矢崎部会長  そうしますと、先ほどの夫の同意書と同様に少しもんでいただいく。ただ、法制審議 会のほうは、恐らく親のない状態に子どもをなるべく置きたくないので、いろいろと仕 掛けを考えてみましょうという基本的な姿勢がありますね。ですからあらゆることを考 えながら、この場合にはこのように仕組みを作ろうということです。  だからとても我々では考えられないケースも、それが生じた場合に生まれてきた子を どう法的にしょうかという親心ですね。だからそういうところを十分に理解しながら、 我々も進めていきたいと思います。  あまりにも専門的な、あるいは個々のケースがどういうケースであるのかという具体 的なイメージは湧きませんので、少なくとも同意書は、提供者あるいは提供受ける者の 同意書は、これで一応認めるということです。  それから開示する方々の範囲ですが、十分に法務省で検討していただいくということ でよろしいでしょうか。 〇鈴木委員  質問です。簡単なお答えで結構です。確かそちらの委員会で話されていたと思います が、母による嫡出否認という話は結局はどうなりましたか。つまり夫は同意書の話とか で嫡出否認というのができる可能であるということになっております。妻の場合には、 例えば卵提供でもらった卵で生んだ子どもを、妻の側が嫡出否認するということは、絶 対にあり得ない、その話もそちらでなされていたようですが、どのような結論になった のでしょうか。もちろん同意がないということはあり得ないと思います。 〇参事官  まだ最終的な結論ではないわけですが、中断前の議論では、女性が自己以外の女性の 卵子を用いた生殖補助医療によって子どもを懐胎して出産した場合には、その出産した 女性を子の母とするということで、女性の嫡出否認は認めないということです。 〇矢崎部会長  それだけ女性は強いのですけどね。取り方によりますが、絶対的な関係ですよね。あ りがとうございました。 〇相良委員  父親の嫡出否認が成立したときに、子どもに父親がいなくなりますが、その段階では 、子どもも母親も精子提供者のことは知らないはずだと思いますが、その段階で精子提 供者を探し出して同意書を確認するということになるのですか。 〇参事官  精子提供者に対して、認知を強制するためには精子提供者がだれであるかということ がわからないと、強制のしようがありませんので、まずそこはここでご議論をいただい ている出自を知る権利でそれを知って、その上で行使するということになると思います 。  ただ、さっきから何回も申し上げておりますが、こちらのほうは、そもそも夫のほう は実は同意してないということで嫡出否認とかということ事態も、ケースとしてはレア であると思いますが、精子提供者の側が訴えられるということは、それに比べても遥か に可能性としては低いと思っております。万が一そういうことが起こったら、私どもは 万が一悪いことが起こったときにどうするのか、ということを考えなければならない仕 事なので、万が一そういうことになったときに、ちゃんと精子を提供した人が、父親に 突然にさせられるということがないようにするにはどうすればいいのか、という観点か ら、同意書の保管と共に、同意書の提供についてもご審議をいただきたいというなわけ でございます。 〇相良委員  出自を知る権利をどこまで認めるのかということも、精子提供者を特定できるかどう かということもまだはっきりしてないと思いますが、それができない場合には、その請 求も成り立たないということですね。 〇参事官  そうです。 〇町野委員  失礼ですが、そうなりますか。結局、そちらのほうに資料の開示請求を認めれば済む ことですから、必ずしも出自を認める権利とリンクする問題ではないと思います。 〇参事官  私の理解が不十分なのかもしれませんが、子どもに対して、一定の年齢から出自を知 る権利を与えるということは、他の人にはそういうものは与えないという前提かなと思 っていたのです。ですから他の人は精子提供者が誰かということは、知り得ないという 前提でご議論をされていたのではないのでしょうか。 〇町野委員  そういうことはなかったと思います。議論はしてないと思います。つまり今のような 事例が起こりますと、やはり母親というか、そちらのほうにそれを認めなければどうし ょうもないことですよね。だからそれをするように我々は議論をするのかという問題だ ろうと思います。だから出自を知る権利とリンクしてないということは、そうだと思い ます。 〇矢崎部会長  この同意書は出自を知る権利とは全然別なので、またそれを一緒に議論をするとやや こしくなります。それで、これは同意書ということで対応していきたいと思います。わ が国の民法で根底をなすものは親子法でありますので、法務省は万が一の場合もいろい ろとケースを考えながら、親子関係を定めていかないといけないということで、法制審 のほうは、今後もたくさんのケースを、この場合はこういうようにということを考えな がら議論を進めていかれると思います。きょうはそういうことでこの議論は終了させて いただきたいと思います。     (休憩) 〇矢崎部会長  後半の議論をはじめます。最初の議題です。きょうは最初に法務省のお話ですごく時 間をとってしまいました。産婦人科学会からきょう資料を出していただきましたが、荒 木先生にちょっとご説明をいただいて、質疑応答は次回ということで、きょうはパブリ ックコメントを次回までに得たいということで、それには前回まで行いました検討課題 3を含めたおさらいをしておかないといけませんので、荒木先生には大変に失礼を申し 上げますが、きょうは会告と倫理委員会のご報告について説明をしていただければと思 います。 〇荒木委員  本部会でも日本産婦人科学会の考え方をしばしば述べてまいりました。学会として、 特に倫理委員会として見解がまとまった「胚提供に関する倫理委員会見解」についてお 示しさせていただきます。  経過は、日本産科婦人科学会は平成13年5月、胚提供の是非について日本産科婦人科 学会の中にあります倫理委員会に諮問しまして、平成14年 6月 4日に答申を受けました 。その答申をもとに、学会の倫理委員会が広く議論し、ここに見解として提案したわけ でございます。この委員会提案は本年の 1月号発行の日本産科婦人科学会雑誌を通して1 6,000弱の会員に提案させていただいたわけでございます。その会員から、本年の 3月31 日までにご意見を出していただきまして、そのご意見をもとに委員会で検討し、最終的 にまとめられれば、これを学会の理事会と代議員会に図りまして、会告としたいと考え ます。  胚提供による生殖補助医療に関する倫理委員会の骨子は、大雑把にいいますと、胚提 供による生殖補助医療は認めないという見解でございます。  その理由としましては2つ上げました。1つ目は、生まれてくる子の福祉を最優先す るべきである。このことから認めないということになりました。2つ目は、親子関係が 不明確化であるということがございまして、これらの見解から胚提供を認めないという ことです。少し説明させていただきます。  まず私ども、子の福祉を最優先することを先に上げました。その理由としましては、 胚提供による生殖補助医療で生まれた子は、遺伝的父母ともう一つは分娩の母、及びい ま議論がありました社会的父という異なる二組の親がいることになってしまいます。  また兄弟姉妹からでも2組の親が存在することになってしまいます。こういうことが 更に問題を複雑にします。例えば出自を知ったときに、子が抱く葛藤あるいは社会的両 親への不信感、そういう問題が出てきたときに、まだまだ解決されてこない問題がたく さんあります。  また胚提供によって生まれた子が、もし障害をもって生まれ、あるいは親に死別する など、全く予期できない事態に遭遇した場合、これは前者は社会的親に、また後者では 事情を知るその親族に、その子の養育を継続することを期待することは恐らく不可能に なる、または著しく困難になるのではないかということが危惧されます。  こういうことが生まれてくる子の福祉を最優先するべきだという委員会の見解でござ います。  また継続的なカウンセリング制度などがまだ未熟あるいは未整備な現状においては、 胚提供による生殖補助医療は認めない、ということで委員会が提案させていただきまし た。  また親子関係が不明確化するという点も大きな問題があります。私どもは、実親子関 係は遺伝的なつながりがあるところに存在すると考えております。そのようなつながり があって、親子関係であるということができると思います。こういうことが崩れると、 いろいろな子に対する自然の情愛、あるいはいろいろな不信感がいっぱい出てまいりま して、いろいろと複雑化することが危惧されるわけでございます。  すなわち胚提供における法的親子関係については、誰が親であるのか、必ずしも現時 点では明確になっておりません。したがって現時点では胚提供による生殖補助医療は認 めないという見解であります。  しかし、いろいろな部会でも議論をされておりますように社会的な考え方も変わって くることも考えられます。そこで付帯事項を付けました。  これは生殖補助医療の意識調査を行った矢内原班の報告にありますように、第三者か らの受精卵の提供を利用するか否かの問いに対しては、約84.1%が配偶者が望んでも利 用しないという回答をしております。しかし100 %ではございません。  また胚提供による利点もございます。卵の採取に関しては非常に肉体的な身体的な危 険度もあると思います。胚提供にはこのようなことはなく、スムーズに提供されるとい うことの利点がございます。自由な意思による同意を得て行うのであれば、医学的な見 地からこれを認めないとするのは、論拠に乏しいという意見もございました。  また卵子の提供がなかなか難しいのではないかという、我々の日本における現状を鑑 みれば、これは胚提供を用いることが、子どもを望む婦人にとって、利点となるのでは ないかということでございます。  将来、法の整備あるいは社会的通念がかわってくれば、再度学会として種々検討して 新たな見解を出していきたいという付帯事項を付けました。  しかし現時点では、委員会、これは理事会も承認された事項でございますが、現時点 では胚提供による生殖は認められない、という見解を会員に周知したところであります 。意見をただいま聞いているところです。  これが大体の我々の委員会提案の決定になった文書でございます。 〇矢崎部会長  ありがとうございました。これについてまたご議論がたくさんあると思いますが、先 ほど申しましたように、きょうで検討課題3までまとめましてパブリックコメントをい ただきたいのです。このご議論は、二回り目の胚の提供のときにまたご討論いただけれ ばと思います。この審議が進めば、付帯事項というものはある程度生きてくるというこ とはありえますね。  でははじめて議題に入ります。ご意見の募集です。これについて事務局からご説明い ただけますでしょうか。 〇室長  ご連絡です。シセキ参事官は急用のために席をはずしました。  ご意見募集につきましてです。資料2と資料3の別紙と参考ということで、それぞれ 説明させていただきます。  ご意見募集でございます。一順目ということで3つの検討課題を残しております課題 等がございますが、国民等の意見を聞くという趣旨で行うものでございます。  メールまたは郵送で 1月14日から 1月31日までの間、ご意見を募集したいと考えてお ります。その間に示します資料としましては、これまでに検討いただきました3までの 課題、この3の検証課題は検討いただいてないのでこの中に盛り込んでございませんが 、そういうものを整理しております。資料3もあわせてご覧いただきたいと思います。  この中ではこれまで検討いただいたものを載せてございます。専門委員会報告書で示 されております部分を点線で囲いまして、それに対応しまして、皆さまに検討いただい た部分で確定したものを検討結果として実線で囲っております。  これまでの検討の中では、専門委員会報告書の中で書かれておるものも広く含まれて おりましたが、そういう部分で特に議論がなく確定させていただいたものについてはこ の中で省略しております。  したがいまして、専門委員会報告とこちらの検討結果案とあわせて一般の方に見てい ただきまして、内容について検討していただきたいという内容になっております。  またインフォームド・コンセントの内容につきましては、かなり詳細になってござい ましたので、提供を受けるときに対する説明内容についてということで別紙1、提供者 に対する説明の内容についてということで別紙2がございます。  また、実施医療施設における施設整備、施設・設備の規準につきましても、煩雑にな るということで別紙3にございます。  参考の1〜3につきましては、参考の1「生殖補助医療のあり方についての報告書の 概要。」参考の2「専門委員会報告の報告書。」参考3日本産科婦人科学会の会告とし まして『「体外受精・胚移植」に関する見解』及び『「非配偶者間人工授精と精子提供 」に関する見解』を付けておるわけです。  こういうものをホームページ上に掲載しまして、意見をと考えているところです。以 上です。 〇矢崎部会長  よろしいでしょうか。こういう資料のもとで皆さんから意見をいただくということで す。 〇石井委員  今後の議事進行によると思うのですが、 2週間というのはあまりにも短いのではない のでしょうか。可能ならもう少し延ばして意見をいただく、せっかく募集するのであれ ば、意見を出していただけるような形にできないのであろうか。次回の 2月 6日に間に 合わせるために、 1月31日という設定だとすれば、27日に間に合わせるという形で延ば せないでしょうか。 〇母子保健課長  これまでも部会に、国民の皆さま方のご意見があればその都度それなりにお出ししま して、今回も一応まず部会に今後の議論の中で反映させていただくために区切るという 形で、 2週間というのは短いかもしれませんが、集中的にいただきたいという形で出し ました。必ずしも、散発的にその後に来たものをオミットするというわけでは決してご ざいません。その意味から集中的に議論をしていただくための一つの法として 2週間と いう設定でやらせていただければと我々は思っております。その辺でご理解いただけな いでしょうか。 〇町野委員  これが最後のパブリックコメントというわけでは当然ないですね。 〇鈴木委員  私も2週間では難しいと申し上げようと思ったのです。個人で意見を出すのなら1週 間とか2週間でまとめることができるかもしれませんが、グループとかは、私どもの会 も含めて多いですし、2週間というのは、文書の準備というのは非常に厳しいのです。 例えば、私はこれが最後ではないということがわかったので、延びてもいいのかなと思 いましたが、この文面では一般の方は恐らくそう思われないでしょうし、これが最後か と思われてしまったりもするのではないでしょうか。  もう一つ、 3月までのスケジュールをどのようなふうにお考えになって、このような 設定になっているのか、その後、私たちがパブリックコメントを受け付けたあと、パブ リックコメントを貰うのはいいのですが、どの審議会でもらっても、ちゃんとそれを生 かして意見を本当に受け止めているのか。あるいは私自身も例えば既にいろいろな意見 をいただいているわけですよね。これまでもね。私たちはその意見を皆で共通に読みあ ったことも一度もありませんし、いただいた意見をどのように私たちが処理するのか、 考えるのか、そのこともちょっと含めて教えてください。ここでパブリックコメントを 求める意味・意義・目的をお願いします。 〇矢崎部会長  私から申し上げます。一応、きょう検討課題3で前回まで議論があったところをきょ うもう一度揉まないといけない、それを一応は終わったという区切りでパブリックコメ ントをいただくということです。  私個人としては、タイムスケジュール的に、恐らく問題点は限られた部分が残ってい るだけでありますので、3月中に、2月と3月に計 4回ぐらいで大体の方針がたてれば というふうに私個人は思っております。  パブリックコメントは確かに 2週間というのは短い、きょうは 1月早々に開かせてい ただきましたが、ただこのパブリックコメントの期間を長くとれば、それだけ広い範囲 のパブリックコメントを得られるかもしれませんが、ある程度区切って、そして後から そういういただいたものについては、また先生方にいままでも申しましたように、意見 がこの部会に寄せられたものは全部委員の方々にお配りしておりますので、それを十分 にお読みいただいた上でご発言をお願いしているわけで、その意味で、パブリックコメ ントに対して、個々のコメントに我々が対応するということは一切しませんでしたが、 全体の議論の中では十分に生かせるような会の運営をしてきたつもりでございます。  私としては、このスケジュールでやっていただいて、後から届いたものは整理しなが ら議論に反映するということではいかがでしょうか。事務局、何かよい案はございます か。 〇母子保健課長  部会長がおっしゃいましたように、できましたら次回からは第2ラウンドに入るので 、それまでの整理の資料として、国民のご意見をまとめて、事務局として整理させてい ただいて、第二ラウンドに入っていただければという気持ちでございます。  まさに五月雨式に出てくるものについてオミットするつもりはございませんで、随時 まとめて提供していくつもりでございますので、それを踏まえながらまたご議論をいた だければというのが率直な気持ちでございます。 〇矢崎部会長  その辺のこともわかるように何かですね。ただ延ばしても意味がないですね。2週間 か3週間ぐらい受け付けますということでよろしいでしょうか。では検討課題3で最終 的な議論が残っております。よろしくお願いします。 〇室長  検討課題3につきましては、資料4です。また資料3の別紙4ということで、提供さ れた精子・胚・による生殖補助医療の流れ図があります。こちらも併せてご覧いただき たいと思います。  前回の意見をいただきまして変更した点です。生殖補助医療を受けた夫婦の同意書、 それから提供された方の同意書。それから当該提供によって子が生まれた場合、または 子が生まれたかどうか確認できない場合について、実施医療施設が 5年間、公的管理運 営機関が80年間それぞれ保存するということです。子が生まれたかどうか確認できない 場合でも保存を行うということについて確定してございます。  4ページ目、開示請求に関するものです。こちらについては専門委員会報告からです 。精子・卵子・胚を提供した人に関する個人情報の開示により、当該提供された精子・ 卵子・胚による生殖補助医療により生まれた子と当該精子・卵子・胚を提供した人が受 ける影響を事前に予測することは困難であり、開示した後ではいかようにも取り返しが つかない事態を招く恐れがあるから、提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の ために精子・卵子・胚を提供する人が自己の個人情報を開示すことを承認する範囲を決 定し、又は当該生殖補助医療により生まれた子がその子に係る精子・卵子・胚を提供し た人の個人情報を知ることを希望する範囲を決定するに際しては、当該個人情報を開示 すること又は知ることに伴い、それぞれに及ぶことが予想される影響についての十分な 説明・カウンセリングが行われることが必要である、ということです。  カウンセリング部分について明確にしてございます。  それから、要検討事項です。開示請求を出来るのはどのような者か?ということです 。(案)としましては「非配偶者間の生殖補助医療により生まれた者及び自分が非配偶 者間の生殖補助医療により生まれたかもしれないと考えている者」ということでかなり 広めな対象ということを案として考えてございます。  開示請求できる年齢は何歳からか?ということは、かなり前回議論になってございま す。ここは空欄ということです。  開示に関する業務を行う機関はどこか?ということです。(案)としましては「公的 管理運営機関(公的管理運営機関は開示に関する相談業務をあわせて行う)」というこ とです。  開示される提供者の個人情報の範囲をどのように設定するか?ということです。これ は検討課題1のふた回り目の次回以降で検討いただきたいということです。  開示に関する手続きはどのようになるのか?ということです。(案)です。  「(1)開示に関する相談」  「(2)開始手続き及び予想される開示に伴う影響についての説明及びカウンセリングの 機会の保証」  これは検討課題としまして「提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受ける 夫婦に対する十分な説明の実施」、「精子・卵子・胚を提供する人及びその配偶者に対 する十分な説明の実施」、の中に含まれるものでございます。  「(3)開示請求」。書面による会議請求。開示範囲の指定。  「(4)開示」。書面による開示。  このような手続きになるのではないかということです。  続きましての要検討事項です。  近親婚とならないための確認をできるのはどのような者か?ということです。(案) としましては「非配偶者間の生殖補助医療により生まれた者及び自分が非配偶者間の生 殖補助医療により生まれたかもしれないと考えている者。」このように広めに案をたて ております。  年齢についてでございます。近親婚にならないための確認をできる年齢は何歳からか ?(案)これは「男性が満18歳以上。女性が満16歳以上」ということです。結婚可能な 年齢以上ということで考えてございます。  近親婚とならないための確認を行う機関はどこか?ということです。(案)「公的管 理運営機関」です。ここの業務、また相談業務もあわせて行うということでございます 。  確認の結果、示される情報はどのような情報か?ということです。(案)「近親婚で あるか否かの結果のみをお知らせする」ということでございます。  近親婚とならないための確認に関する手続きはどのようになるのか?ということです 。(案)「(1)確認に関する相談。」  「(2)確認手続き及び予想される確認に伴う影響についての説明及びカウンセリングの 機会の保証。」  「(3)確認請求」書面による請求を行う。  「(4)結果の通知」書面による結果の通知を行う。このような順番でございます。  7ページです。フォローアップに関する議論もございましたが、ここも要検討事項と いうことでどのように行うかということでございます。  (案)としましては、インフォームド・コンセントの中に以下のような内容を位置づ けていくということでございます。  「(1)生まれてくる子どもの健康面や福祉面問うでの追跡調査(フォローアップ)が重 要である」ということ。  「(2)妊娠・出産の経過を実施医療機関に報告すること。」  「(3)生まれた子の心身の発育状況、親子関係の調査など、公的管理運営機関から依頼 があった場合は可能な限り協力する」ということ。  「(4)住所の変更等があった際は、速やかに公的管理運営機関にその旨連絡すること。 」そういうことを十分に説明をして同意書をいただくというのが案でございます。  9ページでございます。ここは審査会の構成メンバーということです。私どものミス ということで修正をしている部分でございます。「審査会は10名前後で構成され、その うち 2名以上の女性が含まれていること」というのが案でございました。この部分につ きましては、元となりました材料と申しますのは、ヨシムラ(?)班の研究報告に基づ きましてこのような記載をし、案としてこのようにまとめてございますが、事務局でも またこの部分はまだ検討課題であるという認識をもってございまして、男女共同参画プ ランの中では、国におきます審議会等におきましては、 3割以上の女性の参画を2005年 までのできるだけ早期のうちに達成するということが目標課題になっております。また そういうことを考えますと、 3割以上の女性が含まれているということもひとつの考え 方なのかというふうに検討し考えているところでございます。こちらのほうもまたご検 討いただきたいと思います。  10ページです。精子・卵子・胚の提供数と希望数をどのように把握するか?ここの部 分もご議論がございました。この部分につきましては「提供数の把握と、希望数の把握 をそれぞれ行う」ということであります。  「(1)提供数の把握」については、公的管理運営機関は提供医療施設から報告をうけて 登録を受けて行うわけでありますが、そのタイミングとしては、「精子・胚が提供され る場合には、提供者から精子・胚の採取及び感染症の検査を実施した後、速やかに、定 められたフォーマットに従って行う」ということです。  また卵子につきましては、「卵子の提供者から提供についての同意を得た早期の段階 で、速やかに、登録を行う」ということでまとめてあります。  「(2)希望数の把握」につきましては、「提供を受けることを希望する夫婦から提供を 受けることについての同意を得た後に、速やかに、登録を行う」ということでまとめて ございます。  12ページです。提供された精子・卵子・胚を提供医療施設から実施医療施設に移管す る場合、どのようにして行うか?ということです。  その場合には、「実施医療施設の職員が提供医療施設側に赴きまして、移管する精子 ・卵子・胚を携行して実施医療施設に運搬する。卵子につきましては夫の精子と授精さ せた受精卵という形で運搬する」ということであります。  あわせまして「提供者に対する個人情報も同時に携行して移管することとする」とい うふうにしてございます。  また12ページ・13ページの実施医療施設の指定許可という議論がございました。こち らにつきましても私どもで検討したところですが、指定に関します用語の問題としまし て、指定と申しましても強制的に医療機関を指定するということは実際上では想定され えなくて、法令用語として確かに許可と指定という差はあるわけですが、実際上ではそ れほど大きな違いはないのではないかということで指定という形に整理をさせていただ いているところでございます。  実際上の医療機関の用例としましては、病院を設立する際には許可という用語を使っ てございますが、それ以降の例えば育成医療を実施する施設であるとか、感染症を治療 施設であるとか、そういう形で特定の機能を特定の医療機関に与えるというような場合 には、指定という用語を使っておりまして、そういうところで統一を図っていくという ことで今の段階ではいいのではないかという整理をしているところでございます。  続きまして14ページ目です。「規制方法について」です。規制について十分行うべき ではないかというご議論がかなりあったというふうに聞いております。この部分につき ましては専門委員会報告の中で、専門委員会の中でかなり検討されてございます。そう いうものをひきうつすというか、現状として(案)としてございます。  基本的な考え方としては、「営利目的での精子・卵子・胚の授受・斡旋の規制」「代 理懐胎のための施術の斡旋の規制」「提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療に 関する職務上知り得た人の秘密を漏洩することの規制」こういうものについては罰則を 伴う法律によって行うべきであるということでございます。  その他の部分でございます。結論の実効性を担保するための規制の方法につきまして は、罰則だけではなくて専門家の自主的な指針による規制など、さまざまな方法がある わけでございます。一方で「生命、自由及び幸福の追求に関する国民の権利については 、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と いう憲法の行政上の内容から、罰則によって規制を行うということについては、慎重な 検討が必要であるということも一方にある考え方です。  実際上としては最後の15ページにあります結論ということであります。「その規制す る範囲、罰則を伴う法律によって規制する範囲については、他の法律、他の制度とのバ ランス比較などもございますので、立法過程によって慎重な検討が必要である」という 結論に落ち着くのではないかということでこのように掲げてございます。  要検討事項としましては、またこのような罰則や規制ということに関することの一つ でございますが、代理懐胎などの日本で認められていない非配偶者間の生殖補助医療を 海外で行うことについて規制するかどうか?ということでございます。こういう論点も あるかなということでございます。  若干、途中でご議論がある際にはまた補足させていただく点もあるかと思いますが、 以上でございます。 〇矢崎部会長  ありがとうございました。前回、議論をいただいた部分と、今回事務局で案を作成し ていただいた部分とございます。たくさんの内容でございまして、一つひとつ議論を進 めていかないといけないのですが、中には出自を知る権利、その他のところで議論を済 まさなければ、なかなか具体的な手続きその他が議論できないところもありますので、 きょうはある程度議論を絞ってお話いただければと思います。  第1は5ページの開示請求できる年齢は何歳からかということでありました。前回、 才村委員から、専門委員会では成人後というふうに書いてあって、成人というのは、20 歳ということをイメージしますと、それは極めて問題ではないかということもございま して、きょうは事務局から資料6に出自を知ることができる年齢についてという資料が ございますが、説明をいただけますか。 〇事務局  では資料6の出自を知ることができる年齢についてというものについてご説明をした いと思います。これにつきましては、開示請求できる年齢を何歳にするのかということ との関係で、他の法令において実際どういう形で例があるのかということについて、主 なものを拾ったものでございます。  1.でございますが、いま部会長からご説明をしていただいたように、専門委員会報告 においては成人後というふうに記載がされております。枠囲みの下のところに、なぜ成 人後という表現をしたのかということについて、理由が書いてございます。  精子・卵子・胚を提供した人に関する個人情報を知ることができる年齢については、 自己が当該生殖補助医療により生まれてきたこと又は当該個人情報を知ることによる影 響を十分に判断できる年齢であることが必要であることから、成人後としたものである 。こういう考え方に基づいて成人後とされております。  2.他の法令等における規定、ということでございます。(1)20歳、(2)18歳、(3)男1 8歳・女16歳、(4)15歳、というものをあげてございます。  20歳については民法の中で「20歳をもって成人とす」という規定がございます。  18歳ですが、児童福祉法の中で児童とは満18歳に満たない者をいう、という規定がご ざいます。この考え方についてですが、児童福祉法が児童の範囲を18歳未満としたのは 、労働基準法が18歳未満を年少者としていることを参考にして、これをひとつの保護年 齢と考えたからである、という考えでございます。ただし児童というものについて、児 童福祉法では18歳ということで定義をしているものでございますが、必ずしもこれはす べての法令において統一されているわけではございませんで、憲法には「児童は、これ を酷使してはならない」という規定がございます。特に児童というのは何歳かというこ とについては、規定をしておりません。  また母子及び寡婦福祉法においては、児童を20歳に満たない者としている、というよ うなことがございます。  次に男18歳・女16歳ということでございます。民法731 条に婚姻適齢というものがご ざいます。男は満18歳に女は満16歳にならなければ婚姻することができないというふう になっております。参考ということでございますが、平成 8年の法制審議会総会決定と いうものを付けてございます。これは民法の一部を改正する法律案要綱というものがこ こで決定されたものでございまして、婚姻については満18歳にならなければこれをする ことができないものとする、というのが決定として出されております。ただしこれにつ きましては、これに基づく改正法案というのは国会には提出されていないという事情と いうことでございます。  (3)の考え方について、男性と女性の差を現在は18と16ということで差があるわけで ございますが、これについては幾つかの婚姻最低年齢の制度の趣旨として考えられる要 因がございます。肉体的・精神的・社会的・経済的に未熟な段階での婚姻が当事者の福 祉に反する懸念があり、社会的にもそのような婚姻は好ましくないという配慮に基づく ものということでございます。  近年の社会情勢におきましては、その中でも社会的・経済的な面をみるべきではない か、そういう時に男女の差を設けるのはいかがなものかということで、18歳ということ で決定されたものであると聞いております。  次に15歳でございます。民法にあります15歳未満の養子、代諾養子ということがござ います。養子となる者が15歳未満であるときには、その法定代理人が、これに代わって 縁組の承諾をすることができる。逆にいいますと15歳になりますと、自らが養子となる ということを承諾できる。一定の判断ができるというふうになるというものでございま す。  次に同じく民法ですが遺言能力というものがございます。これについても満15歳に達 したものについては遺言をすることができるという規定がございます。  臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)というもので、厚生省 の保健医療局長通知で定められているものがございます。この中では臓器の移植に関す る法律における臓器提供に係る意思表示の有効性について、年齢等により画一的に判断 することは難しいと考えるが、民法上の遺言可能年齢等を参考として、法の運用にあた っては、15歳以上の者の意思表示を有効なものとして取り扱う、とされておるところで す。  最後ですが、日本医師会が作成しております診療情報の提供に関する指針というもの がございます。これは日本医師会の会員の倫理規定として制定されたものでございます 。  診療記録等の開示を求めることができる者は、原則として次のとおりとする。  (1)患者が成人で判断能力がある場合は、患者本人。となっております。  (2)患者に法定代理人がある場合は、法定代理人。ただし、満15歳以上の未成年者に ついては、疾病の内容によっては本人のみの請求を認めることができる。となってござ います。  満15歳については代諾養子を認めた規定ですとか、あとは遺言能力を認めた規定など が満15歳以上の未成年者に対して行為能力を認めたことを参酌して選んだ年齢である。 ちなみに、後者から、満15歳以上の未成年者も、移植のための臓器提供の意思を表明で きると解釈が導かれている。というふうになっているところでございます。以上でござ います。 〇矢崎部会長  いかがでしょうか。前回は、才村委員からできるだけ年齢を下げるというご要望があ りました。何歳ということについていかがでしょうか。 〇松尾委員  思春期年齢が適当だと思います。理由は児童が自己のアイデンティティクライシスに なって情報開示を求めるわけでございますので、生殖年齢の前の段階での開示が必要と 思います。思春期年齢を何歳ととらえるかは更に議論をするとして、一般論として、思 春期でいいのではないかと思います。 〇矢崎部会長  これは15歳ということではまずいのでしょうか。 〇松尾委員  15歳は思春期の後半になります。 〇平山委員  私もいまの松尾先生の意見に賛成というか近いのです。年齢という形で区切る必要が あるのかどうかというのは疑問に思うので、その点が 1点です。  理想的な関係でこの医療が行われた場合に、すごく早いうちから告知をしているとい う可能性がありうるわけです。現在でも例えば養子などでも小さいときからそのことを 伝えている場合もある。今回の非配偶者間生殖医療で同様なときに、ではお父さんはど ういう人なのかということを知りたいとか、お母さんはどういう人か知りたいというと きに、開示請求がある程度早い時期から行われる可能性はあるかなと思うのです。もち ろんそれを認めるかどうかというのは、ここで決めることでしょうが、それを考えると 、年齢でいちがいに区切るのは難しいのではないかと思いました。 〇矢崎部会長  そうですね。年齢で何歳と決めるのはこういうのは相応しくないかもしれません。た だ、個々のアイデンティティを確定するために、安易に開示をすることはできないと思 うのです。開示したためにかえって不安定になってしまうということもありますからね 。 〇平山委員  もう一つ問題としては、開示請求が誰でもできるというか、疑ったものは誰でもでき るということになっている以上、すると、それこそ思春期には自分の親が誰であるのか ということを疑う時期というのは、正常な発達過程では出てくるわけですから、対応し なければならないケースが非常に多くなり業務量の問題等も危惧する部分ではあります 。 〇矢崎部会長  前回、開示を請求できる人は、本人であって、あなたはそういうプロセスで生まれた 子ではないということを教えても、法的運営機関が教えてもいいのではないかという議 論をいただいたように思います。  この情報はこういうプロセスで生まれましたということは、比較的必要であればある 程度早めに教えることもあり得ると思います。開示でどこまで教えるのかということは 、そもそも出自を知る権利をどこまで認めるかによって大きくかわってきます。これは 出自を知る権利の情報を含めた開示になると思います。ちょっと慎重に議論をしないと いけないと思います。 〇鈴木委員  これは4の開示の相談というか、そういう問い合わせがあって、まずカウンセリング を義務づけようという話になっていたのではないかと思うのですが、そのカウンセリン グの内容によっても、どのくらいのレベルのカウンセリングをイメージするかにもよる 。そこの部分がかなり充実したものが準備できるのであれば、私は思春期年齢というよ うな幅のある言い方でも可能ではないかというふうにも考えます。 〇矢崎部会長  欧米の今までお聞きしたものも、開示に関しては相当に慎重であるということで、い くつもの手続きで、相当にいろいろな方がディスカッションした上で、はじめてこの方 にはこういう情報をお伝えしようということを決めているようでございますので、わが 国でもそういうプロセスをちゃんと作っておく必要があって、請求があったらすぐに開 示ということにはならないと思います。  ただそういうプロセスがあったとしても、幾つかぐらいからそういうプロセスのステ ップに乗れるのかということですね。 〇鈴木委員  ステップに乗れるかどうかというところを凄く重要に考えるのであれば、むしろ思春 期のほうが望ましいのではないかと考えます。そこから乗せてあげないと、逆に本人た ちは辛いだろうと思います。 〇石井委員  質問ですがよろしいでしょうか。ステップに乗せた上で、あなたはまだ無理だから開 示はしませんという決定もできるというシステムなのかどうかです。権利として認めて 何歳以上は請求があったら開示するということにするのか。どこまで開示するのかとい うことにもかかわると思いますが、問題があるような場合は教えないのかという問題も あると思います。 〇松尾委員  皆さまの議論は僕も同感です。例えばがんの告知を子どもにするという場合に、告知 の仕方というのは年齢の段階によって違うわけです。この告知の場合も非常に詳しい告 知はあまり低い年齢では必要はないと思います。あなたの父親はいま一緒に暮らしてい る父親とは違う、あるいは別のところにいる。伝えるということは、子どもの精神安定 性を取り戻すために役立つと思います。多くの場合ですね。それを隠していたり、ある いは嘘をつくということは非常にまずいことなのです。だから告知の仕方や程度という ことで考えるべきです。常にこれはカウンセラーがいないと非常にまずいことです。当 然、カウンセラーの存在というのは前提条件として求められると思います。 〇矢崎部会長  カウンセラーというか、その子の権利なのか、本当にその子にとって必要なことなの かどうかということですね。それを判定するというのは大変に難しいことですね。いま の時代、子どもは皆本当に自分の親なのかというのも出てきて、簡単にそう思って、実 はあなたはということになりますよね。だからいろいろなケースがあって難しい。 〇町野委員  カウンセリングを前に先行させるというのは妥当だろうと思います。そこでスクリー ンするということは認められないと思います。やはりそこでカウンセリングを受けた上 で、請求しないほうがいいのではないかということはありうると思いますが、それでも 私は知りたいといったら、その時に拒絶するということはできない。それなら権利を認 める意味はない。  例えばドイツなどでは、中絶をする前に相談所にいって一回相談をうける。それでも だめだ中絶するということであれば中絶を認める、そのかわり今のようなカウンセリン グを受けないでただちに中絶をすることは認めない、というやり方をとっているわけで す。スクリーンをさせるということになると、それが妥当かは問題だろうと思います。 要するに権利であるといっておいてそれを奪うものですよね。 〇吉村委員  開示請求できる年齢は何歳からかという問いに対しては思春期年齢でよろしいかと思 います。ただわが国の現状を見ますと、特別養子制度でも、できるかぎり早期から親が 子どもに対して特別養子であるとこを伝えなさい、ということはリコメンドしている。 それにもかかわらず 4分の1ぐらいの夫婦しか子どもに伝えていない。現実は非常にギ ャップがあるわけです。  子どもにとって出自を知る権利を早く知らせるということは、大変によいことだとい うことは、皆さん非常にコンセンサスを得ているようにみられるが、親と子との関係を 見ると、なかなかそこまで世界各国が成熟してない状況にあると思います。  ですからこういう問いに対しては思春期年齢ということでいいのであって、後でもう 一回出自を知る権利のところで、検討すればいい。どこまで本当に出自を知る権利とし て認めるのかということを検討したほうがよろしいのではないか。ここでは思春期年齢 というのが妥当であろうと思います。それはできる限り早期のほうがこれはいいと思い ますが、それは何歳というわけにはいかないから思春期年齢としか書けないのではない かと思いますがどうでしょうか。 〇矢崎部会長  では思春期年齢ということですね。 〇石井委員  かなり人によってイメージが違うのではないかと思います。 〇町野委員  年齢は決めざるを得ないと思います。やはりその場でお前は未熟であると決めるのは 、そういうことはできないわけです。ある程度画一的にならざるを得ないということは 、現場で判断するときに、思春期であるとなると困るでしょうね。 〇松尾委員  わが国の子どもの思春期は肉体的には非常に早いのですが、女性の思春期の始まりは1 0歳です。しかし、中学校入学以降ぐらいの年齢が妥当ではないかと思います。 〇荒木委員  松尾先生、我々産婦人科領域では思春期は女性が主に使われますが、男性でも思春期 というのでしょうか。 〇松尾委員  はい。使います。 〇荒木委員  例えば月経が始まったときからとかいろいろな経緯がありますが、男性でも一般的に 思春期という言葉を使うのですね。 〇松尾委員  使います。造精機能の出現が思春期ですね。一応,二次性徴の発現した段階で思春期 が始まったと考えるのが普通だと思います。 〇石井委員  権利として認めるとすれば、何歳になれば知ることができるということを明確にしな いと、困るのではないかというのが 1点です。  10歳といわれると、10歳で本当に与えられる情報を咀嚼できるのか。出自を知る権利 で知った提供者と自分との関係がどういう関係であるのか、法的なことも含めてですが 、理解しないといけないわけです。どこまで理解することができることで足りるのかと いうことにも関係すると思います。 〇鈴木委員  仮に最終的に、例えば、個人が特定できるようなことまで開示しようということにな ったとしても、例えば10歳の子に教えるのはそういうことではないと思います。その時 の親たちの状況であるとか気持ちとか、そういうことからゆっくり話をしていくものだ ろうと私はイメージしていたのです。例えばそれで 1年後に、またあなたが苦しくなっ たりしたらまたいらっしゃいという言い方で、順々に情報をステップアップしていく。 その子の成長にあわせてね。そういうカウンセリングというかカウンセラーの存在をイ メージしていました。いきなり来て、所定の手続きが済んだから、個人の特定としてこ れがそうですということで書類を渡すということでは決してないように考えていたので すが、いかがでしょうか。 〇安藤委員  私もそう思います。開示請求があった場合に、その状況に応じて説明をしていくもの だろうと思います。反対に、シングルマザーが結構多くて、そういうお母さんたちから 私が相談を受けたりするときに、中学生入学後ぐらいに子どもさんがお父さんと会いた い、自分の父親と会ってみたいということに対してどういうふうに対応したらいいのか 、ということをよく相談されます。  やはり思春期の中学ぐらいからはそういう対応をしていかないといけないのではない かと思います。 〇矢崎部会長  いかがでしょうか。シングルマザーの場合にはお父さんを求めるのですが、この場合 には形としては両親が揃っていますから、またちょっと違うかもしれない。 〇相良委員  開示請求と、開示に関する相談とは意味合いが違うと思います。この資料4の5ペー ジの一番下の(案)のところに(1)から(4)まで書いてありますが、開示請求できる年齢 というのは、この(3)あたりのところをいっているのだろうと思っていました。開示請求 に関してはある程度の年齢を設定したほうがいいと思いますが、  (1)と(2)に関しては、あまり年齢を制限する必要はないのではないかと思います。た だその場合に、例えば小学生、10歳というと小学校の 5年生とかですね。そのぐらいの ときに一人できてこういう相談をするということには、無理があるような気がするので 、ある程度若い年齢の場合には、ご両親と一緒に来ていただいてカウンセリングをして いくとか、そういう配慮が必要なのではないかと思います。 〇平山委員  (1)(2)までは年齢は関係ないような気がします。(3)からは年齢を決めたほうがいいと 思いますが、でも実際の運用となったときに、(1)(2)も本当にやろうとすると、すごく 大変なプロセスになって、全国から今の状況だとかなり限られた人数で多分、公的管理 運営機関のカウンセラーやソーシャルワーカーが対応する、対応しないといけないとす ると、全国からの開示相談というものを受けるとなると、非常に実質的には困難なので はないかと思います。私はカウンセリングをしますが、カウンセリングをやる人間とし ては、何百ケースも持てるわけは絶対にありませんし、だから本来は(1)(2)はウエルカ ムで本当は疑いをもった方が相談ができる窓口は絶対に必要だと思うのですが、この医 療で生まれてない人は違うのだから、すぐに書面でできるのだからいいのではないか、 といわれるかもしれないのですが、そういうわけではないと思います。  というのは、まずはそういう疑いを持つことに誠実に対応をしないといけないという ことも一つですが、本筋をいうと、そういうふうにあなたは違いますというふうにすぐ にいわれなかった、迅速処理されなかったということは、この医療で生まれたというこ とをすぐに悟ってしまうと思うわけです。その時にどうカウンセリングをしていくのか と思うのです。  ですからその意味でも実際には難しいのだろうと思って、結論は何もないのですが、 理想は(1)(2)はいつでも年齢制限はないほうがいいと思うし、(3)以降は年齢制限があっ たほうがいいと思うのですが、実際上は難しいというのが私の意見です。 〇矢崎部会長  これはご両親は知っているわけですよね。要するに提供された配偶子であなたは生ま れたかどうかということはね。だからここで請求されるというのは、親が教えないから 子どもがこっちに尋ねてくるということはありますが、ここは大体は、出自を知る権利 の開示がメインではないかと思います。  その時に、子どもがどうも親が違うのではないかということで、親には聞きづらいの でこういうところに聞いてくるということはあり得ると思います。ですからそういうと きに、あまり小さい子では考えにくいかなという気もします。だからそれが15歳ではち ょっと年齢が高すぎるのかどうかということですね。原則として15歳とするというので はどうでしょうかね。 〇鈴木委員  疑いをもって、こういうセンターがあって、たまたま電話をして電話をかけてくる子 は十分いると思います。小学校高学年辺りから十分にあり得るだろう。通常は誰かが電 話をうけて、どうしてそのように思ったのという話から入っていくと思います。ですか ら受付窓口は多分年齢制限はないということになるでしょうし、必要であれば10歳、あ るいは少なくともここでカウンセリングを受けられるのは中学に入った子なら受けられ るという言い方だと思います。せいぜいね。なので、(1)(2)に関しても積極的な相談で あれば中学 1年生から受けられるという、受入れ体制はありますというインフォメーシ ョンの仕方です。  開示に関しては何の根拠もないのですが、15歳もしくは18歳、ただこれはどこまで開 示するのかということにもよります。 〇松尾委員  この思春期というのは、肉体的な思春期を意味しているわけではなく、社会心理的な 思春期を考えているわけです。会長がいわれたように少し遅い年齢でもそう悪くはない と思います。一応の目安というようにしておいて、そこに幅を持たせたらどうでしょう か。場合によってはもっと早い時期ですね。 〇矢崎部会長  わかりました。あとは出自を知る権利をどこまで認めるのかということは、最終的に 議論はしていません。今までのご議論をお聞きしていると、請求があったらイコールで 個人を同定するような情報をお教えするということはあり得ない。提供者の権利もある 程度はあるわけです。ですからその兼ね合いを考えると、ある年齢でないとなかなか難 しいところもある。  開示に関する相談、先ほど(1)(2)は、開示に関する相談ですから、これは電話相談室 のような感じでやっていただく。本当に出自を知る権利、開示請求できる年齢としては 原則としてここの出ている一番低いのは15歳です。これは相当に深刻な問題ですよね。 恐らく、才村委員がおられれば15歳というのはとんでもないという話になるかもしれな い。きょうはおられないので、その声が聞こえません。 〇吉村委員  しかし年齢を決めるというのは大変に難しい、ですから思春期以降という感じでいい と思います。開示請求できる年齢は何歳からかというのは、思春期以降である。それは ある人では18歳かもしれない。ある人は15歳かもしれない。12歳かもしれない。それは カウンセリングという(1)(2)の段階を経てするわけでしょうからね。そのようにしてお いたほうがいい。  15歳だったら大丈夫とか、私は16歳だからさせてくださいという問題でもないと思い ます。ですから年齢を決めるというのはどうでしょうか。 〇矢崎部会長  法律的にはどうでしょうか。思春期以降というのはありえますか。法律用語ではない のですが、こういうところで開示請求できるのは思春期以降というのは、あり得ますか 。 〇福武委員  何らかの指針などを作るときには、そこに思春期年齢といれるのは非常にまずい。ど こかで年齢は区切らざるを得ないと思います。実際には、請求してきても、すぐに個人 を特定できる情報まで開示しなくて、大体カウンセリングをやるのですよね。  法律的な意味のある指針に思春期年齢というものを定められると、これはなんだとい う話が出てしまうと思います。だから開示請求そのものについては、何歳という形で決 めるしかないと思います。 〇矢崎部会長  先生は今までのご経験で、15歳というのはなかなか難しいでしょうか。 〇福武委員  家庭裁判所の関係では、15歳ということで結構線を引くのです。遺言能力の問題にし ても養子縁組をできるかということもね。だからイメージとして15歳というイメージは 持っていたのです。つまり義務教育が終わるぐらいというイメージでした。確かに、思 春期で中学生ぐらいでいろいろと悩んでも何も聞けないのは困るかもしれないが、それ はいろいろな相談を受けてやっていくぐらいでいいのではないかという気はしたのです 。  ですから実際にここでは出自を知る権利を行使する上での開示ですから、15歳ぐらい でもいいのではないかという印象は持っております。 〇町野委員  これは本当に専門家でないとわからないところであると私も思います。今のご議論を 拝聴しておりますと、大体カウンセリングと結びつけて段階的に行うという方向にある と思います。ただ、カウンセリングをされるほうの方が、スクリーニングされる。ここ から先はお前は知らないほうがいいから言わない、というようなことは認められない。 年齢を認めた以上はですね。しかし先行させるのは必須であると思います。段階に進ま ないといけない。  最初からがばりと紙 1枚で出すというのはできないと思います。そうしますと、今ご 意見がありましたように15歳ぐらいがいいのではないかと思います。 〇矢崎部会長  出自に疑問とかは、松尾先生がいわれる思春期から受け付けるが、本当に深刻な情報 の開示というのは、15歳をめどということでと思います。よろしいでしょうか。 〇石井委員  すみません。せっかくまとまったところに異義を唱えるわけではないのですが、2点 気になることがあります。  1点は、養子の場合は15歳で本人ができるのだが、未成年の場合には家庭裁判所が一 応は判断するというもう一つの歯止めがあるということです。だから15歳で本当に大丈 夫かということです。養子縁組における家裁の役割をどこかが担わないと困るのではな いかということが 1点です。  もう 1点は、この年齢になったら開示できるとなると、それ以前にはカウンセラーも どういう人であるのかということも知ることはできないということですね。カウンセリ ングを受けながら、何の情報もなく、15歳になったら知ることができますという形でカ ウンセリングをするということになる。  つまり、段階的に知るという手続きを置くのかどうかということなのだろうと思いま す。年齢に応じて情報を知る範囲というものが、うまくいくかどうかわかりませんが、 そういう可能性があるのかという 点でございます。15歳に反対をするつもりはないので すが、引っかかるということだけです。 〇町野委員  私自身の考えですが、第 1点はとにかく15歳で権利があるという具合にする。ただ段 階的に進むので、そこから先の、大丈夫かということを判断するのはカウンセラーだろ うと思います。しかしカウンセラーがだめではないかと思っても、本人がイエスといっ たらそれを認めざるを得ないだろうと思います。そこを拒絶することは、権利を認めた 以上はおかしいと思います。しかしカウンセリングはちゃんとやらないといけないとい うのはそうだろうと思います。  その前の段階のときはどうするのかという問題は、それはまた別の問題であろうと思 います。もしこの時に、14歳ぐらいの子どもがきて、いろいろと相談して、これは教え たほうがいいのではないかとカウンセラーの方がいろいろと考えたときに、その時に告 知することが、秘密漏洩になるのかどうかです。その点の手当もある範囲でするかどう かという問題であろうと思います。 〇平山委員  15歳と法律が決まって周知徹底したら、どういう状況になるのかというと、多分15歳 未満で相談ということもありえますね。中学生や小学生のカウンセリングをしている人 は、実は現在でもこういう相談を現実的に受けているわけです。ですからその時に15歳 になったらこういうところに問い合わせて、あなたはそういうことを知る権利があるの ですよということをカウンセラーが、別に公的管理運営機関ではなくて、市井のカウン セラーや精神科医たちが、そのような情報として持っているという風に変化するので、 いまご議論を聞いていると、さっきの15歳でいいのかなというふうにも思ってきました 。 〇矢崎部会長  15歳で本当にいいのかどうかというのは、ちょっと法務省の家庭裁判所あたりで判断 してほしいといわれたら、とんでもありませんという断りの返事を誰かにして、これは 法務省の扱う民事とこういうものは全然違う性質のことですよね。ですから、これはま た別の仕組みで判断しなければいけないそうです。  すると益々公的運営機関というのが、どんどん難しい懸案は全部公的なもので、今は 言葉の中では公的運営機関に、法務省も裁判所もそういうものは関与しないということ になりますと、公的運営機関というものは、全部我々が責任を押しつけておりますが、 これをどういう形にするのかというのは、極めて難しい問題です。これは恐らく厚生労 働省がこういう役割をするということでもない。  例えば臓器移植の場合には、臓器ネットワークという独立した財団があります。そう いうところでやるわけです。あるいは骨髄移植のマッチングということも財団でやって おります。するとこういう提供された配偶子の生殖補助医療のいろいろなマッチングの 問題であるとか、管理の問題であるとか、先ほどのソーシャルワーカーやカウンセラー の話とかはいろいろと出てきて、そういうものは絶対にそういうところでやってもらい たいといった場合に、その費用はどなたがどのように負担するのかということも極めて 大きな問題です。それこそボランティアでやっていただくということにならざるを得な い状況もあり得ます。  例えば、臓器移植の場合には、心臓移植ではぼくは随分時間を費やして現場にいった りしますが、全部ボランティアです。脳死判定をしたりするのはね。  ですからこういうものをどういう仕組みでやっていくのかというのは、行政側でも限 界があると思います。非常に理想的なものを作ってくださいと申し上げるのは簡単です が、実際にそれをそこまでカウンセラーの方であるとかソーシャルワーカーの方、ある いは倫理に詳しい方、あるいは法律に詳しい方が、実際にどこまで関与していただける のかということも、今後に残された大きな課題です。そういうことも少し頭の隅に入れ ながら検討を進めていただければ大変にありがたいと思います。  時間がまいってしまいました。本当にもう少し議論をしたかったのですが、最初の法 務省の難題が出まして、これは我々にとって、突然に微分や積分の問題がボンと出され たようでなんとも答えようがなかったのです。一応は事務局で対応してくださるという ご返事が得られましたので一安心したところであります。  では先ほど、いろいろなご議論がありましたが、一応パブリックコメントを2週間を めどにいただいて、それを取りあえず次回の 2月 6日に整理していただく。その後のパ ブリックコメントは、そこでシャットアウトしないでできるだけ拾ろう。一応、締め切 りはここですといいながら、終わりのほうでもう 1週間伸びますというメールを入れて もいいですね。最初から3週間というと皆が遅れますからね。2週間としておいて、も う少し広い範囲で意見を聞きたいのでもう 1週間延ばしますということもよろしいです よね。  では事務局からご連絡ください。 〇室長  次回の日程でございます。 2月 6日木曜日、午後 2時から 5時ということでよろしく お願いします。場所は未定となっておりますので、決まり次第ご連絡させていただきま す。 引き続き各委員からご意見やご指摘をいただきますと、次回の資料ということで 配付させていただきますが、 2月 4日の火曜日午前中までということで準備の都合上お 願いします。私どもからは以上です。 〇矢崎部会長  新年早々、去年も年末の忙しいときにお集まりいただきましてありがとうございまし た。きょうはこれで終了させていただきます。ありがとうございました。                     照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課                         03−5253−1111(代)                         宮本(内線:7933)                         天本(内線:7939)