02/12/19 薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会毒性・添加物合同部会議事録 【日時】 14年12月19日(木)17:00〜18:30 【場所】 三田共用会議所 3階会議室 【出席委員(敬称略)】 井上達、井村伸正、江崎孝三郎、小沢理恵子、菅野純、香山不二雄、黒川雄二(毒性部 会長)、鈴木勝士、鈴木久乃、高仲正、棚元憲一、津金昌一郎、長尾美奈子、中澤裕之 、成田弘子、西島基弘、林眞、廣瀬雅雄、米谷民雄、三森国敏、山川隆、山崎幹夫(添 加物部会長)、山添康、四方田千佳子 【事務局】 尾嵜食品保健部長、中垣基準課長、南監視安全課長、植村課長補佐、吉田課長補佐 ○事務局  それでは、まだお越しになられていない先生方も若干いらっしゃいますけれども、定 刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性・添加物合同部会を開 催させていただきます。  本日は、御多忙のところ御参集いただき誠にありがとうございます。  本日の合同部会は、毒性部会の委員13名中12名、添加物部会の委員15名中14名が御出 席いただいている、あるいは御出席いただく予定ということになっておりますので、本 日の部会は成立いたしますことを、まず最初に御報告申し上げます。  それでは、まず初めに、食品保健部長の尾嵜からごあいさつ申し上げます。 ○ 尾嵜食品保健部長   尾嵜でございます。本日、先生方には大変お忙しい中をお集まりいただきまして、あ りがとうございます。また、時間の設定が5時からということになりまして、大変恐縮 をいたしておりますが、お集まりいただきまして本当にありがとうございます。  本日は、2つの審議の案件をお願いいたしております。1つは、コウジ酸につきまし て、御承知のように既存添加物ということで、平成7年の改正のときに附則で名簿に整 理をされております添加物でございます。それにつきまして、既存添加物全体の安全性 等の確認については、逐次私ども行政の方で検証いたしているわけでございますが、今 回その安全性等についての報告がまとまりましたので、その結果に基づいて、その取扱 いについて御審議をいただきたいというふうに思っているのが1つ目でございます。  2つ目は、メチルヘスペリジンでございますが、これにつきましては、製造方法の変 更に伴う含量規格の改正の可否につきまして御審議をいただきたいというふうに考えて いるところでございます。  それと、もう一つは御報告でございますが、夏に添加物あるいは香料につきまして、 今後の国際的な使用状況あるいは国際機関におきますADI等のそういった毒性の評価 等について終了しているものについて、今後できるだけ国際的なハーモナイゼーション と申しますか、そういった方向も見ながら検討いたしたいということで、方向性につき まして御説明させていただいたことがございますが、それにつきまして、かなり時間が 経ってございますが、私どもの方でいろいろ関係方面の方に情報提供をお願いいたしま した状況につきまして、今日御報告をさせていただきたいと考えております。今後の検 討の基本的な考え方というのを改めて具体的に御相談申し上げたいということで、御報 告させていただく予定にいたしております。前の2つの案件につきましては、諮問をさ せていただく内容でございますが、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  本日は、どうもありがとうございます。 ○ 事務局  それでは、本合同部会の座長につきましては、毒性部会長でいらっしゃいます黒川先 生にお願いしたいと思います。黒川先生どうぞよろしくお願いいたします。 ○ 黒川部会長  それでは、本日の座長を務めさせていただきます。  まずは、配付資料の確認を事務局でお願いいたします。 ○ 事務局  それでは、座ったまま失礼させていただきます。  本日、先生方のお手元の方に配付させていただきました資料といたしましては、座席 表の1枚と、青のファイルでとじたものを配付させていただいております。  めくっていただきますと、まず、議事次第がございまして、その後、配付資料の一覧 というものをつけさせていただいております。順次説明いたします。  資料1といたしまして、青の耳をつけておりますが『食品添加物「コウジ酸」に関す る基準設定に係る薬事・食品衛生審議会への諮問について』。  資料2といたしまして『食品添加物「コウジ酸」について』という報告書でございま す。  資料3といたしまして『食品添加物「メチルヘスペリジン」の成分規格改正の可否に 関する薬事・食品衛生審議会への諮問について』。  資料4といたしまして『食品添加物の成分規格改正に関する調査会報告について(「 メチルヘスペリジン」に係る調査会報告書)』でございます。  資料5といたしまして「国際的に安全性が確認され、かつ、汎用されている添加物の 取扱いについて(中間報告)」という形になっております。  そのあと、赤の耳で別添の資料、参考資料とつけてございますけれども、これは資料 3のコウジ酸に関しての添付資料あるいは参考資料ということでございます。  事前に先生方にお送りさせていただきました資料との違いという意味では、赤の別添 の資料でいきますと、別添13というものを新たな添付資料ということでつけさせていた だいております。それから、資料4と資料5につきましては、表現方法を改めさせてい ただいております。  本日お手元にお配りしております資料は以上でございます。もし、過不足等ございま したら、お申し出いただければと思います。 ○ 黒川部会長  よろしいでしょうか。  それでは、時間も押しておりますので、最初に、議題1の食品添加物「コウジ酸」に 関する基準の設定について御審議願いたいと思います。この件については、先ほど御説 明がありましたので、早速、事務局から資料の説明ということでお願いいたします。 ○ 中垣基準課長  それでは、私の方から説明申し上げます。  資料1をごらんいただきたいと思います。『食品添加物「コウジ酸」に関する基準設 定に係る薬事・食品衛生審議会への諮問について』でございます。ページ数を振ってい なくて恐縮でございますが、めくっていただきますと、経緯をまとめております。その 2枚目に、厚生労働大臣から審議会会長あて食品衛生法第7条1項の規定に基づきまし て、食品添加物コウジ酸に関する基準の設定について審議会意見を求めるという趣旨の 諮問書が、12月6日付で出されております。  内容について、資料2に基づきまして御説明申し上げたいと思います。1枚めくって いただきますと、平成14年12月6日付で食品添加物安全性等評価検討会、これは食品添 加物の安全性を見直すために、予算の執行あるいはその評価のために設けられているも のでございますが、このメンバーにつきましては、ページ数を振っていなくて恐縮です が、9ページの後の紙、一番末尾に委員一覧が載せられておりまして、こういったメン バーの先生方に、立案と結果の評価をお願いしておる。ここで、今回報告書をおまとめ 願ったということでございます。  1ページに戻らせていただきます。まず、1「コウジ酸について」でございますが、 コウジ酸は先生方よく御存じの麹菌を培養して得られるものでございますけれども、麹 菌が製造するものとしては、消化酵素のジアスターゼ、タカジアスターゼとして高峰譲 吉さんが見つけて、国際的に今でも使われていることで非常に有名なものでございます が、こういったジアスターゼみたいなものも製造されますし、また、今回の食品添加物 としてのコウジ酸も生成されるところでございます。  このコウジ酸は、食品添加物としては、カニやエビなどの甲殻類の色が黒くなるのを 防止する目的で使われていたところでございます。したがいまして、いわゆる天然添加 物といたしまして、平成7年の食品衛生法改正に伴います既存添加物として、既存添加 物名簿に掲げられ、食品添加物としての使用が認められているということでございます 。具体的には、平成6〜7年の調査によりますと、延べ10社が製造し、また使っておっ たというような調査結果がございますが、後でまた申し上げますけれども、平成13年度 の調査によりますと、この10社も含め、いずれの会社も使っていない、現在では、輸入 も含めて使われていないというのが、このコウジ酸の食品添加物としての使用の現状で ございます。  しかしながら、平成6〜7年当時使われておった、既存添加物名簿にあるということ で、私ども予算の一部を使いまして、その安全性を確認すべく、国立医薬品食品衛生研 究所あるいは大学の先生方に頼んで、安全性試験をやってきたところでございまして、 その結果の概要が、以下まとめられているところでございます。  2「安全性についての検討」、(1)「一般毒性等の検討(平成8年度まで)」と書いて ありますけれども、そういった安全性確認作業の一環として試験が実施されてきたとい うことでございまして、以下、主な所見だけ述べます。2ページ目の5行目を見ていた だきますと、マウス20か月慢性毒性試験の結果が報告されておりまして、その特徴とい うのは、イのところにございますが、甲状腺の過形成及び腺腫の発生増加がすべての群 で見られた。がん腫瘍の発生頻度は、雌の3%群でのみ見られたということでございま して、甲状腺の過形成・腺腫というのが安全性上の懸念として持ち上がったわけでござ いますが、この報告書というのは既に学会誌に公表済みでございます。  また、(2)「遺伝毒性について」でございますけれども、その総括は3ページにござい まして、(3)「まとめ」のところをごらんいただきますと、遺伝毒性についてはin vitr o試験では陽性であるけれども、いずれも高用量の反応であり、更には、in vivoの小核 試験の結果が陰性であったことから、生体内において遺伝毒性が発現することは考えが たい。すなわち、閾値あるいは安全量の設定が可能なものというふうに、この当時考え られておるわけでございます。したがいまして、甲状腺の腺腫あるいは腫瘍ができるメ カニズムを検討しようということで、(2)でございますが、甲状腺に関する検討、平成8 年度から平成12年度にわたりまして、ここに書いてあるようないろいろな試験をやって いただいたところでございます。  その結果といたしまして4ページでございますが、上から7行目「結果より」という 言葉から始まる行がございますが、ここに総括がございまして、甲状腺における発がん の作用メカニズムは、ヨードの取り込みと有機化の阻害による甲状腺ホルモン合成阻害 に続くネガティブフィードバック機構を介したものである。すなわち、閾値の設定が可 能であって、その量というのは非常に高いというような結果が報告されておりますし、 また、このような甲状腺ホルモン合成阻害というのは、マウス、ラットに特徴的なもの だということが報告されたわけでございます。  一方、(3)「肝臓に対する検討」でございますけれども、甲状腺に対する影響を検討し ていただく過程におきまして、2つの報告がございます。1つには、遺伝毒性発がん物 質に感受性が高い特殊なマウスを使うと、肝臓に小増殖巣あるいは腺腫が見られた。(2) でございますが、野生型マウスにおいても腺腫の増加が見られたというようなことから 、肝臓への発がんの影響について調べろというような御意見を賜ったところでございま して、以下3つの試験が、5ページに掛けて本年の2月から7月に掛けて、その結果を 報告していただいたところでございます。これらを見ますと、5ページのちょうど中ほ ど「これらの試験結果から」というところでございますが、コウジ酸がマウスあるいは ラットの肝臓に対して発がん性を示す可能性が確認されたということでございまして、 その遺伝毒性等についてもっとよく調べろという話になったわけでございます。  それが、(4)「コウジ酸の遺伝毒性」のところでございますが、in vitroについては 、先ほども申し上げましたように、高用量でポジティブの結果が出ておりますし、in v ivoの結果については6ページでございますが、いろいろな試験結果を出していただいた ところでございますけれども、この表を見ていただきますと先生方おわかりいただけま すように、ネガティブとポジティブが錯綜しておるような結果が出ておるわけでござい ます。  この点については、また、林先生から後で追加の御説明があるかと思いますので、要 約だけさせていただきますと、7ページの上から6行目でございますが、この遺伝毒性の 結果について現段階で総括すると、試験結果が錯綜し、明確な結論を導くに至らなかっ たが、コウジ酸が肝臓において遺伝毒性メカニズムに基づく発がん作用を示す可能性は 低いけれども、否定はできないというような現段階の結果の総括でございます。  これら全体をまとめますと、(5)でございますが、繰り返しになって恐縮でございます けれども、甲状腺については先ほど申し上げましたとおり、ホルモンを介した発がんプ ロモーション作用であって、安全量の設定が可能である。  一方、肝臓に関しては、生体内で遺伝毒性が発現する可能性は低いけれども否定でき ないというようなことを総括いたしますと、その発がん性は、閾値を設定できるたぐい の非遺伝的機序によるものであるというような根拠は得られていない。ただし、コウジ 酸の発がん性の強度というのは比較的弱い。また、その用量というのは、ラットで2% 以上、マウスで1%以上であって、食品中に含まれるような低用量の暴露でそのような 腫瘍が発現する可能性というのは非常に低いのではないかというような、現段階におけ る総括をいただいておるところでございます。  また、実際に使われておるかということでございますが、繰り返しになりますけれど も、3番をごらんいただきますと、日本食品添加物協会が行いました平成13年度の食品 添加物メーカーを調査対象とします調査結果によりますと、製造・使用している業者と いうのはないということが報告されております。  8ページでございますが、輸入食品の届出を過去3年にわたって調べようということ にしまして、平成12年から平成14年8月までの結果を見ましたところ、辛子明太子、た らこ、穀物酢の計440件の輸入実績があったところでございますが、まず、辛子明太子と たらこというのは、特定の一企業によるものでございますけれども、この企業に照会い たしましたところ、従来から慣例的に書いてきたのであって、現在使用していないとい う返答が得られました。その返答を確認するために、辛子明太子、たらこ、各2検体で はありますけれども収去し、国立医薬品食品衛生研究所で分析していただいたところ、 やはり検出されておりません。従いまして、これは使われていないのだろうというふう に考えております。  また、穀物酢1件でございますが、これも照会いたしましたけれども、既に在庫がな いということで、この件というのは残念ながら分析するには至っておりませんが、国内 あるいは輸入とも使用されていないというのが現状だというふうに考えておるところで ございます。  このようなことを総まとめいたしますと、安全性については結果が一部錯綜している ところがあって、まだまだ調べる余地があるのかもしれませんが、一方では使用してい ないというような現状もあるということを考えまして、この検討会といたしましては3 点を挙げていただいております。  すなわち、(1)でございますが、マウス、ラットで肝発がんの可能性がある。かつ、遺 伝毒性については結果が錯綜して明確ではないが、その可能性は低いながらも否定でき ないというのが1つ。(2)といたしましては、食品添加物としてのコウジ酸というのは、 意図的に使用するものである。(3)といたしましては、先ほどから申し上げているとおり 、国内において現在使用されておらず、更に、輸入食品についても届出等実態としてな く、どう見てもほとんど使用されていないとしか考えられないというようなことから、 その必要性は低いということを考えますと、今後とも使用しないように必要な措置を講 じるというのが適当ではないかというような御結論を御報告いただいているところでご ざいます。  したがいまして、事務局といたしましては、今回、第7条1項に基づく基準の設定を 諮問させていただいているわけでございますが、この第7条1項に基づく基準といたし まして、食品の製造、加工、保存基準に食品添加物としてのコウジ酸を使ってはならな いというような基準をつくったらどうだろうかというふうに考えている次第でございま す。  なお、参考といたしまして「食品中のコウジ酸について」ということでまとめておる ところでございますが、先ほど申し上げましたとおり、麹菌というのは消化酵素である ジアスターゼをつくるとか、いろいろな用途に使われておるわけでございますけれども 、その大きな用途の1つとして、味噌、しょうゆ、あるいは酒などの食品の製造に用い られているところでございます。これについても文献収集あるいは製品の分析をいただ いたところでございまして、その結果を御報告いたしますと、(1)として文献によります と、製造中に麹を使うと、消化酵素などと同時にコウジ酸も産生される。しかしながら 、そのコウジ酸というのは、醸造中に微生物あるいは酵素などの影響よって分解される というような報告が出ております。具体的には、資料13でございますけれども、後でま た見ていただくとありがたいんですが、しょうゆで検討いたしますと、20日で50%、70 日で70%、150日でほぼ100%が分解されるという報告でございます。  一方、しょうゆは発酵のために180日置くということでございますので、そういう点か ら言うと、ほぼ分解が進むのだろうというような報告が文献で、農林水産省の食品総合 研究所から報告されているところでございます。  また、(2)でございますが、含有量を実際に調査していただきました。味噌30検体、し ょうゆ30検体、酒29検体について調査していただいたわけでございますが、そのうち味 噌1検体から0.5ppm検出されておりますが、その他からはコウジ酸は検出されておりま せん。参考といたしまして、平成8年12月に同じように検査した結果がございますが、 このときには味噌11検体、しょうゆ2検体を検査しまして、味噌1、しょうゆ1からコ ウジ酸が1.0ppm、その他妨害ピークが若干認められておるという結果でございまして、 麹菌の種類によりまして産生するコウジ酸の量が違うというのも文献で幾つも報告され ておりますから、そのようなことを考えますと、現状は製品中にあったとしても非常に 低い、極めて微量だろうというふうに考えております。  この文献あるいは分析結果を元に9ページでございますが、検討会といたしましては 、まず、味噌、しょうゆ等の麹菌を用いて製造される食品は、伝統食品として長い歴史 を持つというのが第1点。  第2点といたしましては、麹菌を製造に用いる食品というのは、消化酵素などと一緒 にコウジ酸も産生されるわけでございますが、そのコウジ酸というのは、微生物、酵素 等によって分解されるというような報告がなされておる。  第3点といたしましては、動物試験で腫瘍の発生が見られた濃度に比べますと、製品 中のコウジ酸濃度というのは極めて微量で限られたものであるというのが報告されてお ります。  第4点といたしましては、参考資料におつけしておりますけれども、味噌によりがん の発生が抑制されるという動物試験結果が多数報告されております。肝臓がんあるいは 胃がんなどの発生が抑制される。その原因として、イソフラボンでございますとか、ゲ ニステインでございますとか、味噌中に含まれるいろいろな物資が関与しているのでは ないかというような報告があるわけでございますけれども、このようながんの発生がむ しろ抑制されるというような結果が報告されておるというようなことを考えますと、味 噌、しょうゆ等の発がんリスクというのは、製品全体として評価することが必要ではな いかということから、直ちに何らかの措置を取る必要はないというふうな結論をいただ いておるところでございまして、報告書の全体としての御説明というのは、不十分かも しれませんが、これで終わらせていただきたいと思います。 ○ 黒川部会長  ありがとうございました。  それでは、先ほどお話がありましたように、食品添加物安全性等評価検討会のメンバ ーとして、廣瀬委員と林委員がここに御出席でございますので、順番にコメント、追加 の御発言をお願いしたいと思います。  では、廣瀬委員から。 ○ 廣瀬委員  そうしましたら、実際にコウジ酸の研究に携わっておりましたので、今までやってき た研究について若干説明させていただきたいと思います。  まず、甲状腺の方は、先ほど御説明にありましたように、マウスの20ヶ月の試験で雄 、雌とも1.5%以上という甲状腺の腺腫が高率に発生してきたということがあります。こ の実験で、はっきりと甲状腺に発がん性があるということがわかりまして、また、その メカニズムを実際にこの実験で甲状腺ホルモンあるいは刺激ホルモンを測定しておりま して、その結果から、どうも下垂体−甲状腺軸のネガティブフィードバックによるもの だろうということは、ある程度の推察がついておりました。  その後、ラットではどうか、更に、発がんに閾値があるのか、それから、メカニズム はどうかということについて検討を加えてまいりました。まず、ラットでの再現性の研 究ですけれども、これは別添4になると思いますが、ラットで2年間の発がん試験を更 に行うということは、結果が出るまでに3年あるいは4年という非常に長期間かかりま すので、一般に行われている甲状腺の2段階発がんで、発がん性あるいは発がんプロモ ーション作用があるかどうかということをまずスクリーニングしてみようということで 、DHPNという甲状腺の発がん物質をイニシエーターとして使いまして、その後に、2% あるいは4%のコウジ酸を投与したところ、2%、4%で甲状腺の腫瘍が明らかに増加 してまいりました。  次に、閾値を求めるために同じような実験系を使いまして、甲状腺の用量を0.002から 2%まで6Dose振りまして試験を行ったところ、0.125%、1,250ppm以上で前がん病変の 増加が見られたということで、この実験で閾値が0.125%であるということがわかりまし た。  次に、メカニズムですが、先ほど下垂体−甲状腺軸のネガティブフィードバック等が 示唆されると申しましたけれども、このフィードバック機構にもいろいろありますので 、その点について調べましたところ、結局このコウジ酸はヨードの取り込み、更に有機 化の阻害、これはペロキシターゼが関与しているんですけれども、その阻害によってヨ ードの取り込み、有機化の阻害が起こってくる。そのためにT3、T4、甲状腺ホルモ ンが減少して、その結果、甲状腺刺激ホルモンが増加して、甲状腺腫瘍が発生するとい うようなことがわかってきました。  しかしながら、このコウジ酸は遺伝毒性があるということですので、更に、今度はコ ウジ酸のイニシエーション作用の有無について検討いたしました。これは、まず、コウ ジ酸をイニシエーターとして4週投与して、その後に、SDMという甲状腺発がんのプ ロモーターを16週間投与するというような系ですけれども、それで実験を行いましたと ころ、コウジ酸を4週イニシエーション時に投与した群で、若干過形成が増えてきたと いうことで、これはイニシエーション作用を否定できないというところまで来たんです が、更に、次に、遺伝毒性の有無を、今度はDNAアダクトを指標としてポストラベル 法を用いて調べましたところ、これはコウジ酸を2週間投与しておりますけれども、甲 状腺で調べましたところ、DNAの付加体は検出されていない。更に、このコウジ酸は 構造に水酸基を持っておりますので、こういう水酸基を持っている化学物質の場合は、 発がんのメカニズムとして活性酸素が関与する場合が多いということで、酸化的DNA 損傷の指標として8−ハイドロキシデオキシグアノシンの測定を行いましたところ、コ ウジ酸を投与して1週間あるいは2週間でも8−OH−dGは形成されないというようなこと で、これらのin vivoの実験から、まず、甲状腺に対しては遺伝毒性のメカニズムでは ないというようなことがわかったわけであります。  甲状腺に関する結論は、先ほど御説明がありましたように、マウスの甲状腺発がんは1 .5%以上である。それから、ラットの発がんプロモーション作用が0.125%以上である。 更に、これは上のDoseで発がん性が示唆されるということ。それから、メカニズムは非 遺伝毒性メカニズムである。ラット、マウスでは、サイロイドバンイディンググロブリ ンがないということで、非常に甲状腺発がんには感受性が高いということを考えますと 、人ではほとんどこの結果は当てはまらない。甲状腺に関しましては、安全であろうと いうことがわかりました。  甲状腺は以上で、次に肝臓に移りますけれども、これはまず、別添1、2で先ほどの マウスの20か月の試験で、雌のコントロールでは0%ですけれども、3%の高用量で10 %と、インシデンスとしては非常に低いんですが、有意に肝腫瘍が増えてきたというこ とがまず挙げられます。  初期は非常にインシデンスが低いので、それほど大きな問題とは思っていなかったん ですが、その次に行ったp53ノックアウトマウスを用いた実験ですね。これは別添5に なると思いますけれども、これは、そもそも甲状腺を見るために行った実験なんですが 、その実験でp53のノックアウトマウス、これは遺伝毒性の発がん物質に非常に感受性 が高いということで、そのような遺伝毒性発がん物質のスクリーニングとしても用いら れているマウスですが、ノックアウトマウスとノックアウトしていないワイルドの野生 型のマウスで比べますと、肝臓の腫瘍の発生頻度が、これは1.5%以上ではっきりと肝臓 の腺腫が出るわけですけれども、どうもノックアウトマウスの方が発生頻度が高いとい うことがわかりました。  この結果から、ひょっとしたら肝臓の発がんに遺伝毒性が関与しているのではないか というようなことが若干懸念されたわけであります。  この実験では、更に、肝細胞の壊死あるいは炎症が散発的に見られましたので、発が んにこういうような肝細胞の障害が関与している可能性があるということで、もう一度 実験を行おうということで、別添5、6になると思いますけれども、p53ノックアウト でないワイルドのマウスを使って6か月の投与、これは0.5を1%、2%で行いましたが 、この結果でも1%以上で肝腫瘍の発生頻度あるいは個数が増えているということで、マ ウスにおける肝臓の発がん性が確認された。更に、やはりこの実験でも肝障害が高濃度 で認められております。  次に、マウスで起こったから当然ラットではどうなのかということになりますが、や はり肝臓の発がん性をフルの実験、つまり2年間の実験で行うと、トータルとして3〜 4年結果が出るまでに掛かるということで、イニシエーションプロモーションの2段階 発がん試験で、まず、肝臓にプロモーション作用が起こるかどうかということを見てみ たと。  まず最初に行った実験は別添7になりますけれども、これは甲状腺で行った実験と同 じ実験で、DHPNを投与した後、0、0.125、0.5、2%のコウジ酸を20週間投与した。DHP Nという発がん物質は、甲状腺以外に肝臓にも標的があるということで、この実験の肝臓 を出してきて、肝臓の前がん病変がコウジ酸の投与で増えているのではないかというこ とを詳細に検討したわけです。そうしますと、やはり2%の用量で肝臓の前がん病変が はっきりと増加していた。それから、DHPNでイニシエーションを行っていない肝臓でも 、2%の用量で肝臓の前がん病変が増えていたということがわかりました。  したがいまして、この実験からは、どうも2%の用量でプロモーション作用のみでな く、発がん性もあるのではないかということが非常に強く示唆されたわけであります。 更に、やはりこの実験でも肝臓の壊死あるいは炎症というような、肝臓に対する障害性 が見られております。  この実験では、発がんの強度がわからないということがありまして、次の実験で別添 8になりますけれども、ラット中期肝発がん性試験法という方法でコウジ酸を検討して います。この方法は、肝発がん性のスクリーニング法として確立された方法でありまし て、現在300以上の物質でスクリーニングがされているということで、発がんの強度があ る程度予測されるというようなメリットがあるわけです。  この実験でコウジ酸を0.125、0.5、2%で投与しますと、やはり前がん病変が2%の 用量で、コントロールに対して数あるいは前がん病変の大きさがちょうど倍ぐらいに増 えていたという結果でありました。  この実験で倍ぐらい増えるというのは、今までのモデルを使ったいろいろな化学物質 ではどういうものかあるかというと、例えば、肝臓のプロモーターであるフェノバルビ タールがやはり2倍程度、それから、カプタホールという農薬がやはり2倍程度増えてお りまして、カプタホールの場合は、これを2年間投与すると肝臓の腺腫が数十%に出て いるということでございます。  ちなみに、非常に強い肝臓に対する発がん物質である2−AAFでは、数あるいは面積が 200ppmで13倍あるいは面積が175倍と非常に高く出る。それから、環境中にあるアフラト キシンの場合でも、2ppmで数が7.3倍、面積が64倍と非常に高い値が出ている。こうい うものに比べますと、はるかに発がん性は弱いであろうということが示唆されたという ことであります。  結論的に、この肝臓の研究から、発がん性はマウスで1%、ラットでは2%以上で見 られる。そのメカニズムとしましては、細胞障害が1つの要素であろうと。更に、遺伝 毒性に関しましては、もしあったとしても非常に弱いであろうということは言えますけ れども、in vivoのデータからははっきりはわかりません。これに関しましては、変異 原の結果が非常に重要なポイントになるだろうと考えております。  それから、先ほど事務局の方で味噌の話が出ましたけれども、味噌は参考の1以下に 文献が出ておりますが、簡単に説明すると、遺伝毒性の発がん物質であるアゾキシメタ ンあるいはMNNG、これは胃に発がんが起こる、それから、アゾキシメタンは大腸に発が んが起こるわけですけれども、これと一緒に味噌を食べさせると、腫瘍あるいは前がん 病変が減ってくる。  それから、マウスでは自然発生腫瘍も、味噌の投与でかなり減ってくるというような データもありますし、特に、非常に効果があるのは、どうも乳腺に対してであるという ことで、MNU、乳腺発がん物質を投与しまして、その後に味噌を10%程度で投与しま すと、味噌単独でも発生個数が減るんですが、特に、タモキシフェンを投与すると非常 に効果が増すということで、イニシエーションを抑える作用、それから、乳腺では腫瘍 の発生を抑える作用があるということであります。  以上です。 ○ 黒川部会長  ありがとうございました。  それでは、引き続いて、林委員の方から。 ○ 林委員  それでは、遺伝毒性の方に関して説明させていただきます。  まず最初に、別添3で大体説明させていただきたいんですけれども、訂正が1か所あり ます。申し訳ございません。別添3の8/8というAppendixのところを開いていただけ ますでしょうか。下のTableなんですが、マウスの造血組織というところに「Negative」 が3つ続いた後に「Positive」というふうに表示されていますけれども、この最後の「P ositive」は「Negative」の間違いでございます。本文中はそのようになっているんです が、このTableの方が間違っておりますので、その訂正だけをまずお願いいたします。  このコウジ酸の遺伝毒性に関しましては、本当にいろいろな試験が行われています。 まず、最初に見ていただきたいのは、今の別添3の2/8ページに、in vitroの遺伝毒 性試験の結果がまとめてあります。これを見ていただきますと、同じGene mutationのA mesテストと呼ばれるようなものでもポジティブとかネガティブとかあるんですけれども 、おおむね陽性の結果が得られています。  その特徴としましては、かなり高用量のところで初めて陽性の結果が観察されるとい うことと、もう一つ、特徴的なものは、要するにS9mixと言って代謝活性化系を加えま すと、その遺伝毒性が少し弱くなるというふうな特徴がございます。  この遺伝毒性のほかに、染色体異常をも誘発することが知られているんですが、それ についても同じような系で試験をしながら陽性と陰性の結果というような、相反する結 果が出ているというふうな状況にございます。  今、廣瀬先生の方からいろいろお話がありましたように、最初は、こういうふうにin  vitroでは遺伝毒性が弱いながら認められるんですけれども、in vivoのマウスの骨髄 を使った小核試験で、十分高用量まで検討してネガティブだったということで、生体内 では起こらないだろうというような評価をしていたんですが、その後、発がん性の方の 情報等をかんがみまして、やはりもう少しin vivoでの検討をしないといけないだろう というような話になりました。ちょうどそのころに、in vivoのコメットアッセイとい うDNAの損傷性を見る試験系で陽性の結果が出たというような報告がなされまして、 では、やはりもう少しきっちりと調べないといけないというふうになったわけです。  今の4/8ページのところに、コウジ酸のin vivoの試験結果がまとめてあります。 これを見ていただいてもいいんですけれども、先ほどの8/8ページのAppendixの下を ごらんいただくと、その方が全体像が見えるかと思うんですが、マウスとラット、やは りターゲットとして肝臓ということに一番興味がありましたので、肝臓と、普通、遺伝 毒性試験で一般的に使われている造血組織の両方でいろいろ検討をしたわけです。これ で見ていただきますとわかりますように、マウスの肝臓を見ましても、同じコメット試 験で同じような方法でやっているんですが、ネガティブとポジティブという相反する結 果が出ておりますし、それから、ラットの方の肝臓にしましても、UDSではネガティ ブ、これもやはりコメットと同じようにDNAの損傷性を見るものなんですが、コメッ トアッセイではポジティブというような結果が出てきております。  コメットアッセイというのは、今も言いましたように、DNAに傷がつくかどうかと いう、突然変異とか染色体異常の初期のイベントを見ているもので、それが実際に固定 されて初めて有害性を示すということになるんですが、そのコメット試験より更に最終 的に高次な試験系というか、染色体異常ですとか突然変異を直接見ようというようなこ とで小核試験等を行ったわけです。そうしますと、マウスの肝臓で小核試験を行った結 果が報告されておりまして、これは肝臓の一部を切って再生肝をつくりまして、分裂を させて、そこで強引に見るというような方法なんですけれども、それで弱いながらもポ ジティブというような結果は報告されています。  しかし、ラットの方に関しましては、やはり肝臓で小核試験を行っているんですが、 これは2施設で独立して行って、十分高用量で行ってもこれは完全にネガティブだった という結果が得られております。これについても、種差で考えていいのか、造血組織の 方を見ると逆の結果も出ていますので、その辺非常に解釈に困っているところです。  マウスの方の肝臓で見られました小核試験では、ポジティブというような報告になっ ているんですけれども、更に、今度、肝臓での突然変異がどうかというようなことに関 しまして、最近トランスジェニック動物を用いた試験も行われたという報告がありまし た。それによりますと、1,600mg/kgというかなり高用量を28日間にわたって強制経口投 与をした後で調べても、遺伝子突然変異は見つからなかったというようなデータが提出 されております。  このように、非常に込み入っていまして、これをどういうふうに最終的に考えるかと いうようなことなんですけれども、確かにin vitroで陽性となるのは非常に高用量です が、陽性だろうと。だから、今度は、それが実際に動物の生体内で同じような現象が起 こるかどうかということ、それも特に発がんのターゲット・オルガンとなっている肝臓 で起こるかどうかというようなことになりますと、かなり否定的なニュアンスが強くな ってきているというように我々は考えております。  遺伝毒性というのは、発がんの予測だけではなくて、次世代以降への継世代的な影響 も見ることになるんですけれども、それに関しましては、優性致死試験というのがなさ れておりまして、それについては、きれいな陰性の結果が報告されております。  したがいまして、結論としては、先ほど事務局の方からお話がありましたように、こ の遺伝毒性メカニズムによる肝発がんというのを完全に否定するということはできない んですけれども、もし、あったとしても強いものではない、かなり弱いものだろうとい うようなことが現時点では考えられるというのが我々の結論でございます。  以上でございます。 ○ 黒川部会長  ありがとうございました。  極めて膨大なデータを御説明いただいたわけですけれども、まず、そのデータといい ますか、サイエンス上の御質問とかコメントがあれば承ると。その後に、いわゆる今日 の審議をお願いしている、今後これについてどうすればいいかという順序でいきたいと 思いますが、まず、いかがでしょうか。データ上といいますか、関係者のこれまでの御 説明に対して質問とか御意見はございませんか。 ○ 高仲委員  林先生、in vivoの試験の場合に、目的とする臓器・組織にどの程度到達していました か。TKはお測りになりましたか。 ○ 林委員  いえ、今回の実験でTKまでは行っておりません。行っておりませんけれども、とに かく最大耐用量までは投与していまして、予備試験で動物の死亡が確認できる直前ぐら いの用量を最高用量としております。だから、それは恐らく発がんの方で検討された用 量よりもかなり高い用量になっていると思いますので、TKはしておりませんけれども 、プラクティカルにもこれ以上の処理はできないというところまでしたというふうにお 考えいただければと思います。 ○ 高仲委員  この物が作用する部位、骨髄に、どの程度入っていたか。それによって解釈が違って くると思います。非常に高用量を投与したからといって、投与した量に比例して骨髄ま て到達したかどうがを推測するのは、難しいかも知れません。  それから、この物は体内で代謝を受けるように思いますが、ラットの慢性毒毒性試験 で性差が出ていますので、やはり動態の情報加味して評価することが必要と感じました ので。 ○ 林委員  ありがとうございます。全く高仲先生の御指摘どおりなんですけれども、ラットの肝 臓の方でも、やはり同じ小核試験をやっておりまして、そちらは全くネガティブであっ たというようなデータを得ております。 ○ 黒川部会長  ほかにございますか。 ○ 井上委員  林先生の御説明にありますように、変異原の各種の試験からの結論が、いま一つ私ど も病理毒性の立場から見た場合にわかりにくいわけですけれども、廣瀬先生の御説明の 中にありましたように、何らかの遺伝子損傷を与えるイニシエーション作用を有してい る可能性も否定できないという結果を御報告になっているわけで、この点に沿って理解 したいというふうに私は考えているんですけれども、ただ、参考のためにお伺いしたい と思いますのは、これはp53のヘテロ欠損で、しかも、CBAを使っておられますので 、ハーフプロモーションのような、つまりホモノックアウトではないものですから、ち ょうどC57ブラックのヘテロノックアウトで血液系の腫瘍が出るのと同じような形で、 肝臓系の腫瘍がバックグラウンドとしてもプロモーション的に亢進される可能性もある 背景なので、イニシエーション効果を否定できないということは全く賛成なんですが、 プロモーション効果の関与の可能性もある。若干そこの部分は結論としてはっきりは出 ないのではないかというふうに思っております。  それとの関係で、もし、やっておられたら参考になるのではないかと思うんですが、 幸いヘテロを使っておられますので、残りのアリルの方のミューテーションのようもの が観察されたかどうかというのは、もし、お調べになっていたらお教えいただきたいと 思います。 ○ 三森委員  p53ノックアウトマウスは、片側のp53アレルがノックアウトされているわけですが、 他側のアレルについての遺伝子変異というものは検索しておりません。プロモーション 作用の可能性も十分考えられます。というのは、このp53ノックアウトマウスを使った 実験では、肝細胞壊死が起こります。一方、コウジ酸を26週間投与しておりますので、 肝細胞壊死が起こって、それに対する再生性の変化があると思います。そのような再生 肝細胞に、コウジ酸がアタックしているのではないかと思いまして、プロモーション作 用以外にイニシエーション作用もあると考えています。それが明確でなかったために遺 伝子改変動物を使わなくて、通常の野生型マウスのCBAを使って再実験をしたところ 、同様の結果が出てきたということでございます。 ○ 井上委員  理解を深めるために、ついでにもう一点伺いますけれども、p53のヘテロノックアウ トでのアダクト形成が亢進するということがよくありますね。その辺はいかがですか。 ○ 三森委員  この実験に関して、アダクトの形成については、検索していません。甲状腺発がんの 実験ときには甲状腺についてDNAアダクトを見ておりましたが、肝臓については見て いないです。 ○ 井上委員  いずれにせよ、遺伝毒性発がんの可能性は否定するところにはいかないということで 理解すればよろしいわけですか。 ○ 三森委員  コウジ酸がものすごく強烈な発がん物質であるとは思いません。林先生の御説明のよ うに、遺伝毒性の方のデータも錯綜していることから、強烈な遺伝毒性発がん物質とい うものではないと思います。 ○ 井上委員  病理の結果と変異原の結果は、そういう意味ではよく合っていますね。 ○ 黒川部会長  データ上のことで、ほかにございますか。 ○ 高仲委員  事務局にお伺いしますが、この物の体内動態はわかっているのでしようか。 ○ 中垣基準課長  申し訳ございません、特別調べているかというのは、文献調査までいたしているわけ ではございませんけれども、手元にはございません。 ○ 高仲委員   先にイニシエーターで処置する2段階試験では発がんの段階で、先に行った処置によ りコウジ酸の代謝が変わることはないでしようか。  イニシエーターを選択する段階でそういう問題も検討されたと思いますが。殊に、こ の物がもし肝臓で代謝されるならば、可能性が考えられますが、その辺については文献 的な検索はなされておりれますか。 ○ 廣瀬委員  これは、イニシエーターとコウジ酸は同時にやっておりませんので、イニシエーター とのインタラクションというのはまず考えられないです。 ○ 高仲委員  両者が同時に存在する場合は、代謝酵素を介しての影響は多くは阻害として見られま すが、一方では、山添先生の御専門てすが、酵素誘導という過程がございます。一定時 間を置いて現れ、比較的長く続くものもあり、同時に与えなくても影響を受ける可能性 は考えられます。実験デサインを検討する必要がありますが、いかがでしようか。 ○ 山添委員  名前が出てきてしまいましたから、コウジ酸に関しては、多分、酵素誘導の作用は、 私の知識ではないであろうと思います。むしろ、ここで気になるのは、多分、アルコー ル基が酸化をされてアルデヒドになると、そこのところがα、β不飽和ケトンですので 、グルタチオンと反応することがある。vivoで変異原性が減弱をするのは、この系があ るところではこの系で解毒されるために出にくいのであろう考えられます。 ○ 黒川部会長  よろしいでしょうか。  それでは、データに関しての御質問は終わったということでございまして、今後の取 扱いということに関しましては、資料2番の8ページに、総括としてまとめられてある ことでよろしいかということが問われておりますので、おさらいをいたしますと、今ま で何度も出たように、総括の(1)の方では、肝発がん性の可能性、遺伝毒性を有する可能 性は低いながらも否定できないという非常に難しい日本語ですけれども、こういうこと でございます。それから、食品添加物としてのコウジ酸は意図的に添加するものである 。ところが、一方、現実には国内において使用されていないということ、この3点を踏 まえて、調査会の結論としては今後とも使用しないようにする。使用はされておりませ んけれども、行政的に今後とも使用しないような基準の策定を行うべきであるというこ とが1つでございます。  それから、続いて、8ページから9ページに掛けて、食品中のコウジ酸は最終製品中に は残存する可能性は少なく、残った場合も濃度は低い。また一方、みそについてはがん の発生を抑制するなどというメリットもある。発がん性を考えた場合には、コウジ酸濃 度は食品中で極めて低いので、食品全体として評価すべきであって、現時点では食品衛 生上問題視する必要はないという、この2つに結論が導かれていると思いますが、この 点についていかがでしょうか。 ○ 井上委員  私の職務上の立場から、一言だけ議事に残していただきたいと思って発言するんです けれども、食品の問題が今、大きな話題になっているところで、一般の食品の中にも、 これは添加したものとしてではなくコウジ酸が発生するわけですが、これとの関係がど うしても話題になると思うわけですが、それとの関係では、数値的に見れば10万倍の差 ですか、非常に大きな差があるということがありますし、それから、先ほど質問させて いただいたように、添加したものについてさえもジェノトキシシティがどうしても否定 できないというところで、この事務局の表現になっていると思いますので、これは本当 に比較にならないということを私の立場としては確認した上で、了解可能なものである ということを申し上げておきたいと思います。 ○ 小沢委員  今後のことなんですが、ちょっと先の話になりますけれども、今、食品衛生法の改正 がいろいろ図られている中で、特に既存添加物に関連して安全性に疑義が出たものだと か、それから、使用実態のないものについては消除していくというふうな中身が出され ておりますが、今後、もし改正法案が国会を通りますと、こういったものの適用という か、具体的にどういう取扱いになっていくのでしょうか。 ○ 中垣基準課長  次の通常国会に、食品衛生法の改正案を提出すべく現在検討を進めております。その 骨子案については、ホームページに既に掲示をしておりまして、先生が今御指摘のとお り、いわゆる既存添加物の取扱いについては、現在ございます既存添加物名簿は、平成 7年の食品衛生法改正当時に使われておったものをリストアップして、特例的にその使 用を認めているものでございます。この名簿というのは、平成7年の法改正においては 固定的なものでございますけれども、今、先生から御指摘のありました2点、すなわち 安全性上の新しい知見があった場合、あるいは使われていないということが確認された 場合、この2つの場合については、消除、すなわち削除することができるというような規 定を盛り込む方向で現在検討しているところでございます。  したがいまして、今回このコウジ酸について1点は繰り返しになりますが、使われてい ないということを確認したわけでございますし、今回の措置によって使われないという ことを担保するわけでございますし、また、安全性の問題は、先ほどの井上先生あるい は廣瀬先生や林先生の御発言から見ても、安全性の問題から取り消すのはできるのかど うかというのは、もう一度審議会にお伺いしないといかんのかもしれませんが、いずれ にいたしましても取り消すということになるのだろうというふうに考えています。 ○ 黒川部会長  それでは、今、課長さんの方からお話があったような方法で行くということでお認め くださったと解釈してよろしいでしょうか。               (「異議なし」と声あり)              ○ 黒川部会長  それでは、今後、分科会長と相談いたしまして、分科会の報告ということにさせてい ただきたいと思います。ありがとうございました。  それでは、次に議題2、メチルヘスペリジンの成分規格改正の点について、事務局か ら御説明いただけますか。 ○ 事務局  それでは、続きまして、議題2メチルヘスペリジンの成分規格の改正について、資料 3及び資料4に基づきまして、簡単に御説明させていただきます。資料3でございます けれども、これは審議会に対して諮問したという内容についての資料でございます。1 枚めくっていただきまして、諮問についての概要ということでございますが、本年2月1 5日付の諮問の内容でございますけれども、ほかの諮問事項と併せてメチルヘスペリジン の規格の改正についても諮問をさせていただいています。1枚めくっていただきました 2「食品添加物の成分規格改正の可否について」というところでございます。  更に、1枚めくっていただきまして、12月15日付で大臣から審議会長への諮問書の写 しでございますけれども、その3にこの内容がございます。  内容でございますが、資料4の方に移っていただきます。この内容につきまして、調 査会の方で御審議をいただいております。資料4の2ページでございますが、調査会の 方では諮問を受けまして、都合3回審議をいただいております。直近では12月12日に審 議をいただいた関係がございまして、この資料については若干、先生方への資料の送付 が遅れたわけでございます。  更に、3ページでございますけれども、その内容でございますが、メチルヘスペリジ ンといいますのは、いわゆるビタミンP、レモン汁から発見された毛細血管壁を増強す るフラボノイド化合物がございますが、その主成分にヘスペリジンというものがござい ます。このヘスペリジンをジメチル硫酸でメチル化して、水に可溶化したもの、これが メチルヘスペリジンというものでございまして、添加物といたしましては、昭和32年に 指定されまして、強化剤の用途で使われているという状況にございます。  今回の改正でございますけれども、2番でございますが、製造方法を改良したいとい うことでございまして、従来の製造方法は食塩を用いた塩析を行った後、有機溶媒を加 えて濃縮乾固するという方法を取っていたわけでございますが、その製造方法を改良い たしまして、脱塩装置による精製をした後、凍結乾燥により結晶化を行うという、より よい製造方法に改良を行うということを検討しております。  その結果、残留溶媒が減量いたしまして、結果として、この測定法で測った場合に含 量値が高くなってしまうということがございます。現行の規格というのがメチルヘスペ リジンを90%以上含むという形になっておりまして、上限は定まっていないわけなんで すが、一般通則で特に上限を定めていない場合には、100.5%までというのが一般的なル ールとしてございまして、この規格の上限100.5%を超えるというようなものが出てくる 可能性が出てまいりました。したがいまして、今般この新しい製造方法でつくった場合 の規格といたしまして、の製品の実測値の値に基づいて、新たな含量規格を改正したい ということでございます。調査会におきましては、新しい製法での実測値のデータを出 させまして、そのばらつきといったものも考慮いたしまして、ここにございますような9 7.5%から103%という含量規格にするべきというような審議結果にまとまったものでご ざいます。  4ページのところには参考といたしまして、この結果、こういったような新たな成分 規格の改正案ということになるということでございます。  以上でございます。よろしく御審議をお願いします。 ○ 黒川部会長  それでは、この検討する調査会の座長でいらした廣瀬委員から追加発言はございます か。 ○ 廣瀬委員  これにつきましては、事務局のとおりでありまして、私どもから特に付け加えること はございません。 ○ 黒川部会長  それでは、何か御質問、御意見ございましたら。 ○ 米谷委員  含量自体ではありませんので申し訳ないんですけれども、前の方の書きぶりで「本品 を乾燥したものは」というのがございますが、食品添加物公定書では「本品を乾燥した ものは」という書きぶりと「本品を乾燥物換算したものは」という書きぶりがございま す。事務局としては、その書きぶりは2つとも同じだというふうにお考えでしょうか、 それとも、あくまで「本品を乾燥したものは」というのは、乾燥した後に含量測定しな さいというように指導をされているのでしょうか。特に、今回後ろの比較を見ましたと ころ、乾燥減量を測定するのは24時間で規定していますので、24時間乾燥した後で測定 するのか、あるいは乾燥物換算ですと同時進行で並列でできますので、もし、区別され ていますなら乾燥物換算の方に変えていただくと、分析する方は非常に楽になるのでは ないかと思いますけれども。 ○ 事務局  実際的には、今、先生がおっしゃいましたような、同時進行でできるかどうかという 問題がございますので、その内容について、ほかのものの書きぶりも確認させていただ きまして、必要であれば公定書の改訂とかそういったときに検討させていただきたいと いうふうに思っております。 ○ 四方田委員  今のお話なんですけれども、定量法のときに「本品を乾燥して」というふうに書いて ありますので、乾燥して測ることになっていると思うんですが、乾燥減量が3%という のは比較的大きいですよね。ですので、含水状態が結構ばらつく可能性があることを考 えると、定量するときに乾燥する方がいいのではないかと、実際にやる側としてはそう いうふうに感じるんですけれども。 ○ 米谷委員  今回のメチルヘスペリジンのみではありませんで、公定書の方で書きぶりが2通りあ るものですから、一般的にどういうふうに解釈されているかをお聞きしたかったんです 。それで、その辺を決定していただいて統一等していただければと思います。 ○ 黒川部会長  ほかに御意見ございますか。よろしいですか。  それでは、特に御意見がないということでございますので、このメチルヘスペリジン の成分規格の改正について、可とすることでよろしいというふうに解釈させていただき ます。これも分科会長と相談いたしまして報告の手続を進めさせていただきます。あり がとうございました。  それから、次は、その他ということでございますので、事務局の方から報告があるそ うでございます。 ○ 中垣基準課長  資料5をごらんいただきたいと存じます。1枚めくっていただきますと1ページとな っておりますが、国際的に安全性が確認され、かつ汎用されている添加物の取扱いにつ いて、中間的な報告をさせていただきたいと存じます。  本件につきまして、1番に書いてありますとおり、7月26日の分科会において了承さ れたわけでございますけれども、この部会において、その分科会に先立ちまして、7月1 8日に部会を開催させていただきまして、部会においても御了承いただいたところでござ います。このような国際的に安全性が確認され、かつ、汎用されている未指定添加物の 指定について、2つの条件、すなわち1つはJECFAで国際的に安全性評価が終了しておる 。2番目でございますが、アメリカ及びEU諸国等で使用が広く認められており、国際 的に必要性が高い、こういう2つの条件を満たすものについては、国際的な整合性を踏 まえ、指定に向けて個別具体的な検討を行っていこうということで、御了解いただいて おるわけでございまして、これに基づきまして、我々作業を進めてまいりましたので、 その中間的な報告をさせていただきたいと存じます。  2番でございますが、本年10月9日に、在京の各国大使館及び食品関係団体にこの基 準を示しまして、この基準に合致すると思われるような品目について、必要性あるいは 安全性等に関する資料を提供できるのかどうかというような事項を照会いたしたところ でございます。その結果、諸外国あるいは国内企業、食品関連業界団体など26組織団体 から55品目について情報が寄せられたところでございます。このほかに、括弧書きにご ざいます既に審議会へ諮問させていただいておりますビオチン、ヒドロキシプロピルメ チルセルロース、ステアリン酸マグネシウム及びリン酸三マグネシウムというものもあ りましたけれども、これを除きますと26団体から55品目について情報が寄せられたとい うことでございます。  その内容でございますが、3番に書いておりますように、まず(1)として、1番にござ います2つの条件を満たすというものが38品目ございました。この38品目を分類いたし ますと、まず、(1)でございますが、この7月の部会あるいは分科会で参考資料としてお 示しいたしました、事務局が暫定的な調査によってリストアップした26品目というもの がございますけれども、それと同じものが17品目。  (2)でございますが、リストアップすることは事務局としてできなかったんですが、寄 せられた情報を基に条件を精査しますと、それに合致するというのが20品目。  (3)でございますが、食品添加物の定義が異なる。具体的には、これはイソプロパノー ルでございますけれども、EUでは食品添加物ではなくて加工補助剤とされている。厳 密には、加工補助剤というのは食品添加物からEUでは除くという形になっております ので、そういう意味では食品添加物ではないんですが、基本的に流通できるということ で、そういうものがあって合計38品目でございます。  なお、先ほども申し上げました事務局が部会、分科会に示した暫定的調査により想定 される添加物候補というもののうち8品目については、情報提供は今回はございません でした。  これ以外に、2ページ目でございますが、1番の2つ条件、すなわちJECFAで認められ ている、更に、アメリカ、EU両方で売られておるというこの条件を満たさないものが1 7品目あったわけでございます。これらの調査結果を基に、今後のスケジュールとして事 務局で現在考えておりますのは、まず、(1)でございますが、条件に満たすもの38品目及 び先ほど申し上げました8品目の合計46品目を当面対象に作業を個別に行わせていただ きたいというふうに考えておるところでございます。  (2)でございますが、この46品目を作業を行っていく上で、グループ分けできるものを グループ分けさせていただこうと考えています。グループ分けさせていただいて、順次 作業を進めていこうということでございまして、まず、別添2にございますようなグル ープ分け、これについては後で御説明申し上げますが、4つにグループ分けを考えてい るところでございます。  (2)でございますが、その第1グループから専門家に依頼をし、データ補充、分析等を 行っていただいて、レポートをいただいて、そのレポートを踏まえまして、来年の4月を 目途に、この部会の下にございます調査会で個別具体的な検討を始めていただく。以後 、第2グループ、第3グループという形で進めさせていただきたいと考えているところ でございます。  また、(3)でございますが、香料につきましては、現在、国立医薬品食品衛生研究所の 先生方に御検討をお願いして、その評価方法について検証し、また、JECFAの評価をした 人たちに照会をするなど、その検討を進めさせていただいているところでございますの で、その検討結果がまとまった段階で、また部会にお諮りしたいというふうに考えてお ります。  この(2)の(1)のグループ分けにつきましては、5ページをごらんいただきたいと存じ ます。まず、グループ1となっておりますけれども、この18品目をどのような形で選ん だかと申しますと、私ども事務局に指定の要請に向けた相談が来ておる。あるいは化学 構造が類似した品目を、今この審議会で議論していただいているというようなものでご ざいます。  その第1番が、ポリソルベートでございまして、ポリソルベートについては、既に具 体的な相談が来ておるわけでございまして、これが4品目ございます。  次に、ステアリン酸でございますが、ステアリン酸はステアリン酸マグネシウムにつ いて調査会で今御議論いただいているところでございます。  リン酸マグネシウムについても同様の状態にございますし、ヒドロキシプロピルセル ロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースについて御審議願っているところでご ざいます。  最後は、加工でん粉でございまして、加工でん粉のグループについては11品目あるわ けでございますが、一番下に、これらの加工でん粉は、現在「食品」として流通を認め ておるということでございまして、我が国だけ食品成分として昭和54年以降認めてきた という経緯があるわけでございます。しかしながら、国際的に見てみますと、アメリカ でもヨーロッパでも増粘剤、その他の目的で添加物として取り扱われておるという国際 的な取扱いの差というのがここにあるわけでございますので、この機会に、添加物とし て個別に検討した上で指定をするという方向で、勿論、それまでの間は、従来どおり食 品として流通するということにならざるを得ないというふうに考えておりますけれども 、添加物としての安全性の検討というものを進めていきたいというふうに考えておると ころでございます。これが第1グループでございまして、18品目ございます。  6ページをごらんいただきたいと思います。次がグループ2で、化学構造が類似した 品目が既に指定されているというものでございまして、これが12品目ございます。いわ ゆる塩違いといわれるものでございまして、アルギン酸のグループが3品目、更には、 カロテンからグルタミン酸アンモニウムまでがあるわけでございます。  グループ3が、その他の品目として14品目。このその他というのは、そういう意味で は、いわゆるナトリウムでありますとかカルシウムという塩違いのものではない新しい ものがあるわけでございますけれども、そういう品目がここに載っておるわけでござい ます。  最後、グループ4でございます。亜酸化窒素とナタマイシンでございますが、これに ついては既に平成8年の食品添加物指定のためのガイドラインというものが審議会で御 了承いただいてできておるわけでございますが、そのガイドラインに基づいて指定の要 請が事務局になされているものでございます。すなわち、厚生労働省が主体となって進 めていく品目というよりは、これは業者からの要請があったわけでございますから、そ の要請に基づいて個別の安全性、有効性について、審議会における御議論を願おうとし ている品目でございます。  したがいまして、グループ1からグループ3までを順次専門家にお願いをして、デー タの補充等をしていただいて、第1グループについては、できますれば来年の4月ぐら いから部会の下にございます調査会での御議論を賜りたいというふうに考えている次第 でございまして、本年の7月に部会あるいは分科会で御了承いただいた方針について、 作業状況を中間的に報告させていただいたところでございます。よろしくお願い申し上 げます。 ○ 黒川部会長  ありがとうございました。  ただいまの御説明に何か御質問はございますか。 ○ 小沢委員  質問というよりも、むしろ要望なんですが、フェロシアン化物の議論のとき以来、こ ういうふうに国際的な使用の状況と日本の使用の状況との齟齬がかなり出ているという ことはわかりました。そのとき暫定的にというふうにリストアップされたのは、確かあ のとき26だったと思うんですね。それが今回、関係各団体の御要望を伺うということで5 5というふうに出されていますが、私も消費者の代表という立場で繰り返し申し上げるこ とになると思いますけれども、基本的に消費者は今、食品添加物を増やしてほしいとい うことを望んでいるわけではないと。つまり、1972年の国会決議は生きているわけです し、その精神というのは基本的に尊重される必要があるというふうに思っております。 関係団体というか、勿論、外国にお聞きになると非関税障壁のことがありますから、こ れもこれもというふうにおっしゃるでしょうし、日本の業界でも、多分、業界の御都合 だと思うんです。添加物関係の団体もおありでしょうし、メーカーさんもおありでしょ う。そうすると、たくさん出てくるのは当たり前かなという気もしておりまして、つま り、消費者の側からすると、今この添加物がないから非常に困っているというわけでは ないですよね。困っているわけではないときに、やはり必然性がどういうふうにあるの か非常に知りたいと思います。  それで、例えば、ポリソルベートだとか、用途名はそれぞれ乳化剤だとか書かれてい ますけれども、必然性のレベルをもう少し知りたいなと、とても難しいことだと思うん ですが、例えば今現在、外国でどんな食品に使われているのかだとか、そういう情報の 提供が全然なく、リストだけ出てきてこういう要望があったからグループに分けて、こ の順番でやっていくというのは、非常にわかりにくいというか、もっとオープンにされ るべきではないかというふうに思っていて、今後、検討を開始される上でも、やはり使 用の目的なりどのくらい必要なのかということも、きちんと論議できるような形にして いただきたいなというふうに思っております。 ○ 黒川部会長  その点は、どうですか。 ○ 中垣基準課長  1点だけ確認させていただきたいんですが、資料の1ページにございますとおり、今 回この条件を変えたわけではございません。すなわち7月に部会にお諮りをした条件あ るいは分科会で御了承いただいた条件、その条件を変えたわけではないので、その点は 御了解いただきたいと思います。  2番目といたしまして、今、先生がおっしゃった外国における使用状況を示すべきだ という点につきましては、個別具体的な品目ごとにそのような調査もして、資料として 調査会あるいは部会にお示しをしていく方向で考えたいと思います。よろしくお願いい たします。 ○ 西島委員  これを許可するなり検討するに当たって、分析法というのが必要と思います。それは 、日本独特の方法か。既にEUとかアメリカなどが使っている分析法は非常に参考にな ると思います。あまり日本的な特殊な分析をつくるよりも、検討する先生方に、可能で あれば国際的に使用されている情報を提供して、なるべく共有できるような分析法が現 実的でいい気がします。 ○ 中垣基準課長  先生御指摘のとおりだと思いますし、是非その点については我々の方からも専門家の 先生にお願いしたいと思います。 ○ 四方田委員  ちょっとお教え願いたいんですけれども、加工デンプンですが、昭和54年以降に食品 素材として認められているということでございましたが、これはポジティブリストがあ るということでしょうか。 ○ 中垣基準課長  昭和54年の文書を見てみますと、いわゆるでん粉を加工したものだから食品素材の一 部だというような言い方をしております。したがいまして、ポジティブリストにあるの かと言われると、食品として扱うということでございますから、そういうわけではござ いませんが、食品として流通を認めたというのが書類としてあるわけでございます。 ○ 四方田委員  先日来いろいろ考えることがありまして、例えば、臭素酸のときに小麦改良剤として 、食品素材としてグルテンに脂肪酸側鎖をつけたものが開発されて売られていると。で すので、たんぱくの脂肪酸側鎖をつけた誘導体のようなものも食品素材として売られて いるということがありまして、一体、添加物なのか食品素材なのかという境界領域なる ものが非常にたくさんあって、かつ、指定添加物を増やさないというのが平成8年に出 て以来、従来なら指定添加物になってもよさそうなものが、食品素材として流通してい るのではないかと思えるところが随分ありますので、その辺の整理というのは、今後ど のようになるのかということをずっと考えておりましたもので、ちょっと質問させてい ただきました。 ○ 中垣基準課長  先生御指摘の点が、まさしくこれだと思っております。我々としても、勿論、食品と 添加物の間の境をもっとクリアにしていく。できればリストアップしてでもクリアにし ていくという努力も必要だと思いますが、今回の検討を個別具体的に申し上げますと、 アメリカでもEUでも添加物とされてJECFAでも添加物とされておる。それに、確かにで ん粉でもある。しかしながら、それを食品として認めていくという方向性よりも、添加 物としてこの場でチェックをいま一度していただいて、その上で流通を認めるというよ うな仕切り直しをした方がよろしいのではなかろうかというふうに考えた次第でござい ますので、確かに先生御指摘のあいまいさから来た問題ではあるのだろうと思いますし 、ここで御審議願うまでの間は、従来どおり食品の一成分として流通を認めざるを得な いと考えておりますけれども、よろしく御審議をお願いしたいと思っております。 ○ 黒川部会長  ほかに何かございますか。  それでは、ないようでございますので、今の報告のとおりに来年度から具体的な作業 に入っていただきたいと思いますけれども、御担当の先生方にはどうぞよろしくお願い いたします。  それでは、一応、議題は終わっておりますけれども、事務局から何か追加はございま すか。 ○ 中垣基準課長  本日は、年末のお忙しい時期にどうもありがとうございました。事務局からこれ以上 お願いすることは今日はございません。誠にありがとうございました。  なお、先ほど食品衛生法の骨子案について、既に公表したということを申し上げたわ けでございますけれども、御参考までに今からお配りさせていただきますので、よろし くお願いいたします。  どうも本日はありがとうございました。 ○ 黒川部会長  ありがとうございました。 〈照会先〉厚生労働省医薬局食品保健部基準課 吉田、加藤(2453、2489)        TEL:03(5253)1111(代表)