02/07/30 薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会毒性・添加物合同部会議事録     薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会毒性・添加物合同部会議事録     【日時】 14年7月30日(火)14:00〜17:00 【場所】 厚生労働省専用第18会議室 【出席委員(敬称略)】 井上達、井村伸正、小沢理恵子、黒川雄二(毒性部会長)、鈴木勝士、高仲正、 棚元憲一、長尾美奈子、成田弘子、西島基弘、林眞、廣瀬雅雄、福島昭治、米谷民雄、 三森国敏、山崎幹夫(添加物部会長)、山添康、吉池信男、四方田千佳子 【事務局】 尾嵜食品保健部長、石井基準課長、吉田課長補佐 ○事務局  それでは、定刻となりましたので薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性・添加物 合同部会を開催させていただきます。本日は、御多忙のところ御参集いただきまして誠 にありがとうございます。  まず最初に本日の合同部会でございますが、毒性部会の委員12名中9名、添加物部会 の委員14名中10名に御出席をいただいておりますので、本日の合同部会が成立いたしま すことを御報告申し上げます。  それでは、まず初めに尾嵜食品保健部長からごあいさつを申し上げます。 ○食品保健部長  先生方にはお忙しいところ、またはお暑い中をお集まりをいただきましてありがとう ございます。  本日、先生方には3点につきまして御審議をいただきたいとお願いいたしております 。1つはビオチンの食品添加物としての可否につきまして御審議をいただきたいという 点でございます。2点目がヒドロキシプロピルメチルセルロースにつきましての食品添 加物としての指定の可否につきまして御審議をいただきたいというものでございます。 3点目は、昨年の9月に審議会には一度御審議をお願いしているわけでございますが、 食用赤色2号、それから臭素酸カリウムの安全性につきましての御検討をお願いしたい ということで、前回の御審議をいただいた際には幾つか宿題をいただいておりまして、 本日それにつきましての資料を整理いたしております。赤色2号につきましては御承知 のとおり、アメリカの方で使用を禁止されている。また、臭素酸カリウムにつきまして はイギリスの方で使用を禁止しておるといったものでございますが、いずれも日本では 使用されているというものでございます。それにつきましてこれまで御説明を申し上げ ましたが、国会等で御議論がございました。それにつきまして、きちんとしたデータを そろえた上で当合同部会で御審議をいただきたいということでお願いをしているもので ございます。  どうかよろしく御審議をいただきますようにお願いを申し上げまして、簡単でござい ますが、ごあいさつに代えさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○事務局  それでは、本合同部会の座長につきましては毒性部会長でいらっしゃいます黒川先生 にお願いしたいと思います。それでは黒川先生、どうぞよろしくお願いいたします。 ○黒川座長  では、座長を務めさせていただきます。配布資料の確認からお願いします。 ○事務局  それでは、配布資料の確認をさせていただきます。本日、先生方のお手元に配布させ ていただきました資料といたしましては座席表、それから青いファイルにつづった形で 資料を置いております。それから、資料の一部に誤植といいますか、差替えがございま すので、それも合わせて御説明いたします。  青いファイルにつきましては、事前にお送りさせていただいております資料と同じ物 でございまして赤い耳が付いた資料1、2、3、4、それと青い耳の資料3−1、3− 2、3−3と資料4−1、4−2、4−3という形になっております。それから、別途 2枚席上に配布させていただいております何も番号を振っていない資料でございますけ れども、右肩のところに19ページと書いてあるものと、22ページと書いてあるものがご ざいます。これはいずれも食用赤色2号の審議での資料となります資料3−3のそれぞ れ該当するページ、すなわち19ページと22ページの一部の表に誤植がございましたので 、それを差し替えるというものでございます。後ほどまた御説明いたしますけれども、 この差替えに伴いましての評価結果の変更は特にございません。 配布資料につきまし ては以上でございます。もし不足等がございましたらお申付けいただければと思います 。よろしくお願いします。 ○黒川座長  皆様、よろしいでしょうか。  それでは早速審議に入りたいと思いますが、議題1といたしましては「ビオチンの食 品添加物としての指定の可否について」ということでございます。本件につきましては 、平成13年5月14日付で厚生労働大臣より薬事・食品衛生審議会に諮問されまして食品 添加物調査会で審議を行ってきたものでございますけれども、今般その結果がまとまっ たということで本合同部会に報告されたという経緯でございます。  では、まず事務局から御説明をお願いいたします。 ○事務局  それでは、資料1に基づきまして御説明させていただきます。  1ページ目でございますけれども、調査会での報告書でございますが、ビオチンの指 定につきましては平成13年5月14日で厚生労働大臣から諮問をさせていただいておりま す。 2ページでございますけれども、調査会での審議の状況と委員の名簿が載ってお ります。調査会におきましては、合計5回御審議をいただいております。  3ページからでございますけれども、本品の品目名はビオチンでございます。用途と しましては、強化剤ということになります。  起源または発見の経緯等でございますが、本品ビオチンはL−トリメタファンとマロ ン酸ジエチルを縮合反応させて得られてくる合成のビオチンでございます。ビオチンは ビタミンH、補酵素Rというふうに言われておりまして、ビタミンB群の一種でござい ます。 アメリカにおきましてはビオチンは食品成分ということから、いわゆる安全な 物質ということで、一般的には安全と認められているGRAS物質というふうな位置付けに なっておりまして、栄養成分として一般食品への添加が認められております。また、サ プリメントに対して本品を使用する場合には食品あるいは食品成分の扱いというふうに なっております。  EUにおきましては、ビオチンを含めまして栄養強化剤につきましては添加物の範疇 に含まれずに食品、食品成分として取り扱われております。  我が国におきます状況でございますが、ビオチンはいわゆる医薬品の成分ということ で、一般用の医薬品あるいは医療用の医薬品としてこれまで使用されてきております。 具体的には、ビタミンB2主薬製剤あるいはビタミンB6主薬製剤、あるいはたんぱくア ミノ製剤等々に使われております。  ビオチンの取扱いといたしましてはいわゆる医薬品的な効能、効果を標榜すれば医薬 品という扱いになってくるわけでございますけれども、それを標榜しなければ食品ある いは食品添加物というふうに認められる成分、本質というものに位置付けられておりま して、具体的に食品衛生法の中で取り扱う場合にはこの物を食品に添加する場合にあっ ては食品添加物としての指定が必要であるということを明確にしております。こういっ たことを受けまして、日本ロシュから添加物としての指定要請がなされたものでござい ます。  4ページの方でございますけれども、有効性、必要性でございます。栄養素としての 機能でございますけれども、ビオチンは哺乳動物におきましてカルボキシラーゼの補酵 素ということで炭素固定反応あるいは炭素転移反応に不可欠、脂肪酸の生合成、糖新生 、アミノ酸代謝等に深く関与していると言われております。欠乏した場合には結膜炎あ るいは剥離性の皮膚炎等々、あるいは疲労感などの主に皮膚への影響が出るというふう にいわれております。  必要性でございますけれども、ビオチンは天然の食品中にも含まれてはおりますが、 調理過程で消失しやすいこと、あるいは食品中のビオチンというのは主にたんぱくと結 合した状態になっておりまして、生体内で吸収されるためには加水分解される必要があ るということから、天然食品からの摂取のみではビオチンが充足できていないという可 能性が言われております。  第六次改定の「日本人の栄養所要量」というところにおきましては、ビオチンの所要 量というのが設定されております。また、保健機能食品の関係では栄養機能食品の一つ といたしまして、このビオチンという成分につきましては栄養機能表示ができる。具体 的には皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素という形で、栄養機能表示ができる成分と いう位置付けになっております。  安全性でございますけれども、動物試験結果といたしまして単回投与、反復投与、あ るいは変異原性等々が行われております。単回投与毒性としましてはマウス経口あるい は単回静脈内投与で行われておりましてLD50が求められております。反復投与毒性と しましてはマウスでの60日間連日投与が行われておりまして、投与に起因する影響は認 められておりません。それから、ラットの50mgの用量での10日間経口投与でも毒性所見 は認められていないという結果になっております。その他、ラットの120日間連日経口投 与あるいはイヌでの10日間静脈内投与等の試験が行われておりますけれども、投与によ る大きな影響は認められていないという結果になっております。  変異原性でございますけれども、微生物を用いました復帰突然変異試験におきまして は変異原性を示さない結果になっております。また、L5178Yマウスリンフォーマ細胞 を用いた突然変異試験におきましては、変異原性を示さないという結果が得られており ます。代謝活性化をした後においても突然変異の誘発性は認められないという結果にな っております。  体内動態でございますけれども、ラットでの試験が行われております。主に排泄され るのは尿中への排泄という形になっております。あるいはラットの腹腔内に投与した試 験での結果も主に尿中に排泄されて、糞中の排泄は少ないという結果になっております 。  6ページの方に移らせていただきます。ラットでの肝臓を用いての取り込みを検討し た試験でございますけれども、ビオチン欠乏食を摂取したラットから得られた細胞では 取り込みの減少が認められたというような結果が得られております。それで、ビオチン の取り込みでございますけれども、温度の影響を受けた、あるいはナトリウムイオン濃 度に依存していて、acid-anionキャリアーによって促進されるというような結果も得ら れております。  ビオチンの総排泄量につきましては摂取量よりも多いという結果が得られておりまし て、これはその結腸内微生物によってビチオンが生合成されているためというふうに考 えられております。  ビオチンの吸収に関しましては、主要な吸収部位は近位、中位の小腸で、高濃度に存 在する場合には単純拡散で、低濃度の場合は輸送担体を介して吸収されるというふうに 報告されております。  その他、ヒトにおける臨床試験成績も添付されております。これは主に医薬品として 使った場合の臨床試験成績でございますけれども、皮膚科での臨床試験、爪異常症に対 する臨床試験、それから禿頭症に対する臨床試験等々が行われております。皮膚科の患 者あるいは乳児での試験結果も出ておりますけれども、副作用としましてはいずれも見 られていないという結果が得られております。  7ページの方でございますけれども、調査会におきましての安全性に関しての議論で ございます。今回提示されました安全性に関しましての資料の多くが非常に古くて、試 験内容の詳細が必ずしも十分に示されていないというようなことが指摘されました。し かしながら、ビオチンは海外におきましては食品成分等として食品に広く用いられてい ること、あるいは我が国においては長期服用も含めた一般用医薬品等としての使用経験 も長く、これまでに副作用の報告はあまりされていないということ、それからビオチン は水溶性のビタミンB群に属して基本的には長期投与による蓄積性はないと考えられる ことから、安全性について基本的には問題ないのではないかというふうに考えられてお ります。  しかしながら、調査会におきましては食品添加物として使用した場合には医薬品の場 合よりも長期摂取が考えられますので、それに起因する特に発がん性の発現が最大の懸 案と考えられました。このことを補完するために、少なくとも哺乳動物の培養細胞を用 いた変異原性試験データを示す必要があるというふうに調査会では指摘しております。 これを受けまして、マウスリンフォーマ細胞を用いた突然変異試験成績が追加、提出さ れまして、その結果が先ほど口頭でも御説明しましたけれども、(3)のところに示し ましたとおり、変異原性は認められないという結果でございました。こういったような ことも含めまして、総合的な評価としましてはビオチンによる長期毒性及び発がん性の 発現は考え難いというふうに判断しております。  以上、毒性に関する資料としては、ほかの添加物と比べまして必ずしも十分とは言え ないものの、添加物としてのビオチンの安全については特段問題はないというふうに評 価しております。  7番はADIの設定でございますけれども、ADIは設定する必要はないという結論 になっております。  8番は1日摂取量でございますけれども、海外ではカナダあるいは米国での摂取量が 文献で報告されております。我が国ではビオチンの摂取量について広範な調査は実施さ れておりませんが、通常の食生活において過剰量を摂取することはないというふうに考 えられております。また、今回栄養強化が目的で添加した食品を追加摂取したとしまし ても、後ほど述べますような使用基準に従って保健機能食品に限定するというふうに考 えておりますので、過剰な摂取は避けられるというふうに考えております。  なお、仮に過剰量が摂取された場合であっても、上記6の安全性の項に示しますとお り、保健衛生上の危害が発現する懸念は少ないというふうに考えております。  9番、使用基準の案でございますけれども、冒頭に説明しましたとおりビオチンは栄 養機能食品として機能に関する表示を行うことができる栄養成分となっております。規 格基準としましては上限値が500μg、下限値が10μgという形に設定をされております。 それで、今回のビオチンの添加物としての使用目的というのが栄養成分の強化であるこ とから、その趣旨にかんがみて栄養機能食品としての規格基準の範囲内で使用されるこ とが適当というふうに考えられます。  また、本品のいわゆるガイドライン上の取扱いでございますけれども、当初は保健機 能食品であって、かつカプセル、錠剤等、通常の食品形態でない食品の成分となる物質 の指定に関するガイドラインに基づいて指定要請がなされております。しかしながら、 その安全性についての考察は先ほど御説明しましたが、特段の問題がないというふうに 考えられましたことから、保健機能食品の範囲内で常識的な使われ方をする場合におい ては安全性が十分に確保できるというふうに考え、剤型をカプセルとか、あるいは錠剤 等にまで限定する必要性は低いのではないかというふうに判断し、従いまして使用基準 としましてはここにありますように、ビオチンは保健機能食品以外の食品に使用しては ならないという形でのみ縛った使用基準を設定しております。  最後に成分規格でございますけれども、日本薬局方外医薬品規格というのを参考にし まして別紙のとおり設定されております。  以上、長くなりましたけれども、ビオチンについての御説明でございます。よろしく お願いいたします。 ○黒川座長  それでは、これを審議なさいました食品添加物調査会の座長である廣瀬委員から補足 説明をお願いします。 ○廣瀬委員  ただいま事務局の方から詳しい御説明がありましたけれども、調査会での審議のポイ ントについて若干補足させていただきます。  ビオチンに関しましては、安全性に関して提出された資料の多くがかなり古く、ほか の指定添加物に比べて必ずしも十分とは言えなかったわけでありますけれども、先ほど の説明のとおり、ビオチンはまず我が国におきましては医薬品としての使用経験が非常 に長いということ。それから、これまでに乳幼児を含めまして副作用の報告がないとい うこと。また、これは水溶性のビタミン群に属します関係で、基本的には長期摂取によ る蓄積性はないと考えられること。更に、海外では食品としての十分な使用経験もある ということなどから、本調査会におきましてはビオチンの安全性については基本的に問 題はないものと判断いたしました。  しかしながら、医薬品とは異なりまして添加物の場合は長期摂取に起因するような発 がん性の懸念点というか、問題が考えられますので、この点を更に補完するために哺乳 動物の培養細胞を用いた変異原性試験のデータを追加、提出するよう要求したわけでご ざいます。この結果におきましても問題は全く認められず、長期摂取による影響等も含 め、ビオチンの安全性につきましては特段の問題はないものという判断をいたしました 。  また、本品につきましては当初保健機能食品であるカプセル、錠剤に限定するという ような使用基準案で要請がなされておりましたが、安全性の懸念は示されていないとい うことから、カプセル、錠剤に範囲を限定する必要性は乏しく、使用基準としましては 保健機能食品に限定するという使用基準を設定することで、十分にその安全性を担保で きるというふうに判断いたしました。以上でございます。 ○黒川座長  どうもありがとうございました。それでは皆様、御質問、コメントなどがございまし たらどうぞ。 ○井村委員  幾つか細かいことを伺ってよろしゅうございますか。  今の5ページの上から3行目からの段落に体重減少についての記述があるのでござい ますけれども、48gとか35gの減少というのは全然調査会では問題にはならなかったので ございますか。 ○廣瀬委員  減少があるんですけれども、たしか有意差はなかったと思います。そのほかに一般症 状等を勘案しますと、このビオチンによる影響は非常に少ないものではないかと考えま した。 ○井村委員  わかりました。もう2つばかり細かいことで申し訳ないんですが、6ページに総排泄 量は摂取量よりも多いという記述があるんですけれども、これはどの程度なんでしょう か。もしわかったら教えていただきたいと思いますが、ここでわからなければ結構です 。 ○黒川座長  事務局に資料はあるんですか。では、後で御報告をお願いします。 ○井村委員  それから、そのページの一番下の方に皮膚症状といいますか、皮膚科での臨床試験が ありますね。そこで皮膚症状が見られる3か月齢以下の乳児30例という記述があるんで すけれども、この皮膚症状というのはどんな症状なんでしょうか。細かいことですが、 ちょっと気になったものですから、簡単にわからなければ後で伺います。 ○黒川座長  そうですね。後でお調べ願うということで、ほかに御質問はいかがですか。 ○高仲委員  このものが蓄積性がないという御説明をいただいたのですが、5ページの体内動態を 見ますと下から7行目ぐらいに、投与3〜6日後でも肝臓に約5〜8%の放射活性が残 存しております。これに関して、蓄積性がないと判断をされたことについてお伺いした いのが1つです。 ○黒川座長  どうでしょうか。ほかの調査会の委員があと4名もいらっしゃるわけですが、どなた かいかがですか。 ○廣瀬委員  恐らくこれは残存はありますけれども、ほかの脂溶性のビタミン等に比べればはるか に少ないというようなことだと思います。 ○高仲委員  先ほどからこの薬の特徴として水溶性であることを念頭に説明されていて、そのとお りであろうと思います。なぜここで脂溶性ビタミンと比較なさるのでしょうか。  それから、もう一つ伺います。このものはADIを設定しないというご説明でしたが 、ADIを設定しないのでしょうか、できないのでしょうか。  最後に、8ページに使用基準(案)がございます。ここで規格基準としては上限値500 μg、下限値10μgが設定されております。次に添加物としての使用目的は栄養成分の強 化であることから、栄養機能食品としての規格基準の範囲内で使用されることが適当と 考えられるという記述がありますが、これとADIあるいは摂取量の関係についてどの ようにお考えでしょうか。お聞きしたいと思います。 ○事務局  一番最後のところでございますけれども、ADIの考え方は毒性の試験データから求 めるということでございますが、こちらの栄養機能食品の方の上限値、下限値につきま しては動物ではなくて、例えば諸外国等での毒性許容量といいましょうか、そういうも のを参考にして設定されている値というふうに理解しております。 ○高仲委員  同じものについて、同じように食品あるいは栄養強化のために、使う目的も同じとい うことで、一方はADIを設定して、他方では基準値を示していることに矛盾を感じま す。 委員会で御判断がなさったのは動物実験の値からであろうと思います。いただいた資料 の範囲内ではほとんど毒性が認められないので、ADIを設定しない。要するに、動物 実験からはADIを設定されなかったと思います。  それに対しての一方では上限値が出ているので矛盾を感じてお伺いしました。 ○基準課長  特定機能食品といいますか、栄養機能食品の値というのは、あくまでも栄養量の必要 量の調査の結果から決められている値であり、少なくとも意味はないし、余り多くても また意味はないということから、栄養機能食品としての範囲ということで決まっている 。ですから、毒性という観点からの数字ではないということであります。  毒性という面での関わり合いということであるとすれば、食品添加物で使用基準とい うか、いわゆる上限などを決めていくというのはあくまでも安全性の観点からの上限値 をいかに決めるかという点でありますが、この件で言えば栄養学上の使用の範囲がもう 決まっているから、それ以外のとんでもない勝手にものすごい量が使われるということ は今回使用基準の範囲では予想されないので、安全性について余り問題はないのではな いかという意味で、動物の安全性と、それから上限値、下限値の話というのはそういう 面で直接はリンクしませんけれども、安全性を考える上での参考としてこういうものも 考えていいのではないかということであります。  それから、確かに純粋に動物実験からADIを決めていけるのであればいくというの が一番整理はできるところだと思いますけれども、こういったビオチンの場合にはいわ ゆる食品の一つの成分としてずっと使われてきているということがありますし、日本で も例えばビオチンを大量に生成する酵母とか、そういうものも実際にこれまでも健康食 品の一つとして使われているいうことも一方にございます。そういう面では、果たして ADIを決められるかというと、毒性学的な面からすればかなり高いところに水準があ るので、決めてもある面では意味がない。これは食品成分でありますから、JECFA の方でも添加物としての評価というか、そういう点でのADI設定という検討も多分な されていないんだろうと思うんです。そういう面では、安全性の面で動物実験からAD Iまで設定するまでもなく、問題はなかろうということでいいのではないかということ だと私どもの方は解釈しておりまして、高仲先生がおっしゃったようなことではなかろ うかと思います。 ○福島委員  先ほどの高仲先生の発がん性の放射活性が残存しているから発がん性はどうかという ことですが、これはあくまでも14Cにラベルしたものの残存がということで、先生が言わ れるのはビオチンの発がん性ではなくて、各論的に言うと14Cにラベルしたビオチン、14 Cの発がん性がどうかというような質問に解釈してよろしいですか。 ○高仲委員  そうではございません。私は発がん性の話は一つもしておりませんで、残留性につい てです。残留しないというご説明でしたので、動態試験のデータには少量投与後、何日 間か残っている状態がありますということです。  もう一つそれに関連して聞かせていただきますと今、我々はガイドラインを持ってお りますが、これらガイドラインと、ここで行われた各種の毒性試験の間にどのような関 係がございましたか。 ○黒川座長  調査会でかなりそれぞれのデータが古くて、余りガイドラインとは整合性がないけれ どもという話ですか。 ○高仲委員  古くてもきちんとした試験が行われ、ガイドラインをベースに十分評価できるものな らばそれで良いわけですから、古い新しいではなくてガイドラインで示されていること と、評価された資料との間の関係はいかがでしたか。 ○黒川座長  必要最低限の資料ということで。 ○高仲委員  はい、そのことをお伺いしたいと思います。 ○廣瀬委員  これは少なくとも2年間の発がん性試験は行われておりませんし、90日試験も恐らく ガイドラインにのっとったような90日試験ではありません。それから、繁殖性催奇形性 についても一応催奇形性は見ている。それから、子宮内の発育も見ておりますけれども 、完全な形の繁殖性あるいは催奇形性試験は行われていないというのが現実であります 。  それに加えまして、データも古いものですとやはり我々が生まれるころ、1948年ごろ のデータもその中にはあります。 ○高仲委員  どうもありがとうございました。1948年は確かに古いかもしれません。しかし、行わ れた試験の内容と、試験条件を精査すれば、古くても十分評価に耐え得ると御判断され たと思います。我が国や世界で使われている添加物の中にはもっと古い時期の資料で評 価したものもあります。また国連でも我が国でも、一定期間を置いて必要なら再評価を やっております。資料がきちんと評価できるものならばそれなりの情報が得られると思 います。  問題は資料が十分な評価に耐えるものであるということが重要であると思いますので 、古いか否かはそれほど問題ではありません。委員会が妥当であると評価されているの であればよろしいと思います。 ○事務局  ここで先ほど井村先生ほかから御質問のあった点につきまして、わかる範囲内でお答 えさせていただきたいと思います。  まず皮膚症状が見られる乳児の関係でございますけれども、これは皮膚炎というとこ ろまでしか書いておりませんで、それ以上の情報は元の文献を見てもわからないという 状況になっております。  それから、ビオチンの摂取量と排泄量との関係で元の量よりも多いということについ ての定量的な関係でございますけれども、これにつきましても具体的な数字は残念なが ら出ておりません。ここは、結腸内の微生物によって生合成されてくるという定性的な お話が記載されているということでございます。そういうことで、データとしましては 確かに古い文献が多うございまして、必ずしも詳細が出ていないということについては 、この報告書の中にも書いておりますけれども、問題になっております。  ただ、冒頭に御説明しましたとおり、アメリカにおきましては食品成分ということでG RAS物質、いわゆる一般的に安全であるというふうに認められている物質であるというこ ととか、EUにおいてもそもそも食品成分というような扱いをされているということも ありまして、ヒトが通常摂取することを目的としない化学的な物質たる添加物とはかな り違うものであるという前提に基づいて調査会の方では御議論いただいたと思っており まして、なおかつ変異原性の試験については追加で実施していただき、それを評価して いただいているという状況でございます。先ほどの御質問についてのお答えでございま した。 ○廣瀬委員  今、説明にありましたようにデータは非常に古いわけですが、古いなりに内容は乏し いものであったことは確かです。古いけれども、内容が完全であるというようなわけに はいきませんで、古くて非常にプアーであったんですけれども、先ほど事務局から御説 明がありましたように、非常に古くから臨床等で使われているというようなことですね 。それから、外国でも長期にわたって使われているという使用経験を非常に重視したと いうことであります。 ○成田委員  成分規格の14ページですけれども、ヒ素のところはAS2O3として2.8μg/gと非常に半 端な数になっているということと、それから普通、成分規格のときにヒ素の場合は硝酸 マグネシウムなどを入れて乾式灰化が多いんですけれども、これはケルダールになって いますが、何か意味があるのかということをちょっとお聞きしたいと思います。 ○事務局  この点につきましては、医薬品の方で既に使われている成分ということは御説明いた しましたけれども、その医薬品の方で使われているときの規格としまして、日本薬局方 外医薬品規格というものがございます。このヒ素についての試験方法につきましては、 その試験方法をそのまま準用しているということから今回のような形になっているとい うことで、その辺りにつきましても日本薬局方外医薬品規格の値をそのまま取っている ということでございます。 ○成田委員  2.8というのはちょっと半端な感じがいたしますので、3ならば3にするとか、普通は大 体2が多いんですけれども、ちょっと半端な感じで。 ○事務局  恐らく規格をつくるときに実測値に基づいてばらつきとかを考慮していることだと思 いますので、その結果が2.8という値になったのかと思います。 ○成田委員  そうですか。大体2が多いんじゃないかなと思うんですけれども。 ○米谷委員  引き続いて成分規格の点なんですが、1つは先ほど成田委員がおっしゃったヒ素のと ころで、私も2.8というのはおかしいなと思いまして、一つの可能性として諸外国の方で ヒ素として2ppmと設定されたものをAs2O3として表すときに換算して二点幾つになった のかなと思ったんですけれども、2.8にはどうしてもならないんですね。2.6とか2.7くら いに多分なると思うので、これが例えば2.6とかのミスプリかなと最初に私は思っていた ものですから、2.8というのはどうしても出てこないので、多分事務局がおっしゃったよ うに実測値から出されたのかと思いますが、実測値から出すのならば3.0でもいいんじゃ ないかと思ったりします。それが1点です。  2点目が、その上の方に確認試験の2で赤外吸収スペクトルを規定していますけれど も、その一番大きな数字ですね。3,316カイザーというのがございますけれども、これは 局外規から取ってこられたということですから非常に細かいことなんですが、例えば医 薬品添加物規格などですと2,000カイザー以上の端数はゼロか5に丸めるようになってい るんですね。それで、食品添加物公定書がどうなっているかというのを見てきたんです が、2,000カイザー以上はゼロとか5が多かったと思います。ですから、3,316を公定書の 方に入れるときに数値を、もし食品添加物公定書にそういう原則があるならば変えない といけないかもしれないんです。食品添加物公定書にそういう原則があったかどうかは ちょっと記憶にはないんですが、その辺を事務局で調べていただいたらと思います。公 定書の原案作成要領にそういうものがあれば3,315にした方がよいということです。以上 です。 ○黒川座長  ありがとうございました。よろしでしょうか。それでは、時間もあれなので、今の点 は後でチェックしていただくということにして、ビオチンの食品添加物の指定の可否と いうことが諮問されているわけですけれども、可とすることでよろしいでしょうか。  ありがとうございました。それでは、可とすることで分科会に今後上程するということ にしたいと思います。  それでは次の議題でございますが、「ヒドロキシプロピルメチルセルロースの食品添 加物としての指定の可否について」ということでございます。この件につきましても、 昨年5月14日付で厚生労働大臣より薬事・食品衛生審議会に諮問されまして、調査会で審 議を行ってきたものが今回まとまって報告として出てきたということでございます。そ れでは、また事務局から御説明をお願いいたします。 ○事務局  御説明いたします。2ページ目でございますけれども、調査会での審議経過でござい ます。3回ほど調査会で御審議をいただいております。  3ページでございますけれども、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、用途はカプ セル基剤あるいは錠剤のコーティング剤というものでございます。本添加物はセルロー スのメチル及びヒドロキシプロピルメチルの混合エーテルということでございます。  我が国におきましては日本薬局方に収載されておりまして、錠剤、顆粒剤のコーティ ング剤、結合剤等々に使用されております。JECFAでの評価でございますけれども 、何回か審議が行われておりまして、最終的には1989年のJECFAにおきましてAD Iがいわゆる安全であるという意味の「特定しない」という結論になっております。米 国での状況でございますけれども、医薬品原料あるいは食品添加物として用いられてお りまして、食品添加物としましては乳化剤、フィルム形成剤等に使用されております。 欧州におきましても食品添加物あるいは医薬品添加物として認可されておりまして、基 本的に食品に一般的に使用可能な添加物という形になっております。  5番の有効性のところでございますけれども、主に医薬品添加物として使われてきた データを基にその有効性が示されております。ゼラチンカプセルとの比較ということで ございまして、カプセルの溶出性をいわゆる医薬品、抗生物質でありますセファレキシ ンを用いまして本カプセル、それからゼラチンカプセルでの各種緩衝液あるいは牛乳等 を用いましての溶出試験というのが行われております。その結果、各種緩衝液での溶出 性にpHによる差は認められなかった。それで、牛乳中での結果としましては若干溶出性 の差があったわけでございますけれども、生体内においてはどうかと見ましたところ、 吸収への影響は認められないという結果になっております。  カプセル充填物との相互作用でございますけれども、ゼラチンカプセルの場合にアル デヒド基がありますと架橋構造を形成してカプセルを不溶化させるということがありま すが、本品の場合には崩壊性の変化は観察されない。過酷な条件でもそういう変化は観 察されないという結果になっております。また、カルボニル基を有する内容物との相互 作用についてもゼラチンの場合には褐色に変化するわけですけれども、本品の場合には 着色反応は観察されなかったという結果になっております。  また、医薬品ですけれども、アスピリンを充填した場合で苛酷条件下での変化を見て おりますが、ゼラチンの場合にはアスピリンが加水分解されてかなり含量が減っており ますけれども、本品の場合にはその含量低下が少なかったという結果になっております 。  また、別のメチルセルロースコーティング錠との比較というものをやっておりますけ れども、結果としましては本品のコーティング錠というのが同様の結果であったという ふうになっております。  それで、食品中の栄養成分に及ぼす影響が5ページの方でございますけれども、カプ セル製剤における影響あるいはコーティング剤における影響というのを見ております。 アスコルビン酸あるいはリボフラビンを充填したカプセル製剤中での苛酷条件下での含 有量の変化を見ておりますけれども、特に変化はなかった。また、甘草抽出物製剤中で の変化も見ていますけれども、この場合も変化はなかったということでございます。  コーティング剤における影響の方でございますが、アスピリンあるいはアスコルビン 酸を含有したコーティング錠、非コーティング錠で特に差は認められなかったという結 果になっております。調査会におきましては、このHPMCカプセルというのは含水率 が低くてゼラチンのような反応基を持たないため、充填物との相互作用を起こしにくい というような利点があると判断しております。また、コーティング錠の溶出性について は特段問題はなく、カプセル錠剤中の食品に対しても影響を及ぼす可能性は少ないとい うふうに考えられております。  本品の体内動態でございますけれども、ラット等を用いた結果が示されていますが、 基本的には99%以上糞中より排泄され、約1%が尿中に回収されるということでござい まして、ほとんど体内に吸収されることはなく、糞中に排泄されてしまうというような 体内動態を示すということになっています。その結果、反復投与であっても同様でござ いまして、ほぼ100%が糞中に排泄されるという結果になっております。  分解でございますけれども、ラットの盲腸の内容物との反応性を見ておりますが、そ ういう盲腸内の微生物による分解は受けないという結果になっております。  7番の安全性でございますけれども、本品はメトキシル基あるいはヒドロキシプロポ キシル基の置換する度合いが異なるいろいろな高置換体、中置換体あるいは低置換体の もの、それから粘度が違う高粘度のもの、あるいは低粘度のもの、そういった若干物性 の違ういろいろなHPMCという本品を用いまして各種毒性試験が実施されております 。  しかしながら、置換度あるいは粘度の違いによりまして毒性の差はないということが 確認されておりますので、この報告書ではそれぞれの被験物質間の毒性をあえて比較す るという試験系を除いて、被験物質の種類の詳細については省略して記載しております 。それで、単回投与、反復投与、反復投与については亜急性毒性、亜慢性毒性試験、あ るいは慢性毒性・発がん性併合試験等々が実施されております。その結果、主に見られ た所見としましては下痢あるいは緩下作用といったようなものが中心でございまして、 それぞれの試験で基本的にNOAEL (無毒性量)が定まっているという形になっており ます。  9ページの方には、慢性毒性・発がん性併合試験としてラットでの1年間の試験ある いはラットでの2年間の試験というようなものも実施されておりますけれども、その成 績におきましても無毒性量が一応定まっているという形になっております。  変異原性試験でございますけれども、微生物の復帰突然変異試験が行われておりまし て、この結果は代謝活性化の有無にかかわらず変異原性を示さないという結果、それか らほ乳類培養細胞を用いた染色体異常試験も行われていまして、結果は染色体異常を誘 発しないという形になっています。それから、小核試験も誘発性は認められないという 結果になっております。  抗原性も確認しておりまして、皮膚感作試験において皮膚反応は認められないという ような結果が出ております。その他の試験としまして繁殖試験、催奇形性試験の成績が 出ております。この場合の検体はHPMCの酢酸及びモノコハク酸の混合エステルであ ります、略してHPMCASという物質を用いて実施された繁殖試験、催奇形性試験の 成績が提出されております。その結果によりますと催奇形性試験がラットで実施されて おりますけれども、母体に対する毒性は認められない。あるいは胚及び胎児に対する毒 性も認められないという結果になっております。それで、繁殖試験、催奇形性試験もH PMCAS投与による明らかな影響は認められないという結果になっております。  調査会での審議でございますけれども、試験成績の中には毒性学的な評価には必ずし も適当でないものも存在したということもあります。あるいは、その催奇形性試験、繁 殖性試験に関しましては、直接的なものではなくてHPMCASという一部構造を変え たものが提出されているというようなことが議論になっております。その辺りについて 調査会で議論をいただきましたところ、HPMCについて基本的には体内にはほとんど 吸収されない物質であるというふうに考えられること、それから医薬品としての使用経 験がもう既にかなりあるということで、なおかつその安全性に関する特段の問題は生じ てきていないというようなこと、またガイドライン的に見ましてもガイドラインの要求 を満たしているというふうに考えられることから、今回保健機能食品に係るカプセル剤 及び錠剤用に使用を限定する場合においては評価可能であるというふうに判断しており ます。  各試験におきまして、特に高用量群で下痢あるいは体重増加抑制、赤血球数の減少等 が見られたわけでございますけれども、この下痢につきましてはHPMCが非吸収性の 高浸透圧性高分子であるということから、本品が腸にとどまっているときに浸透圧性の 下痢を惹起したというふうに考えられ、体重増加抑制もその下痢に伴う変化というふう に考えられております。従いまして、この変化については物理学的な性質に起因するも のというふうに評価し、軽度なものについては毒性ととらず、毒性学的意義も乏しいと いうふうに判断をしております。  本品のADIでございますけれども、そういう評価に立って毒性量をとりましたとこ ろ、結果としまして各種毒性試験の中で最も低い無毒性量となるのがラットの90日間の 反復投与毒性試験であった。その値が2,100mg/kg体重/日ということでございました。そ れで、安全係数を100 を取りましてADIとしまして21mg/kg/日を取っております。  なお、JECFAにおきましては冒頭説明しましたとおり、こういったような化工セ ルロースによる下痢あるいは体重増加抑制というのは必ずしも毒性とはみなしておりま せん。それで、総化工セルロースのグループADIというのを特定しない。すなわち、 安全であるのでADIを設定する必要はないというように評価しております。  ただ、これらを食品添加物として使用する場合にはいわゆる緩下作用を考慮すべきで あるというような提言をJECFAの方ではしているという状況にございます。  9番は、一日摂取量の推定でございます。基本的に今、保健機能食品用のカプセルに 主に使われているのがゼラチンのカプセルということでございますので、ゼラチンの年 間生産量等を基に推定しております。それで推定いたしますと、対ADI比が0.26%に とどまる。それで、それに医薬品用途のHPMCの生産量などを足し合わせても、対A DI比で1.04%にとどまるということになっております。  錠剤コーティング剤の方につきましては生産量は極めて少ないということから、錠剤 コーティング剤に関する摂取量推定は困難であったというようなことになっております 。 そういう形にはなるわけなのですが、今度は実際に錠剤あるいはカプセル剤の含量 を基にヒトは1日当たりに何錠あるいは何カプセル取ればADIに達するかというのも 計算しております。その結果は、錠剤につきましては計算したところ、1日当たり175錠 摂らないとADIまで達しないというふうな計算結果になります。  一方、カプセル剤につきましては主に汎用されているカプセルは大きさの度合いによ って号数が違うわけですけれども、1から3号を使った場合であれば15から22カプセル というふうになるわけですが、海外においてはかなり容れ目の大きいカプセルも存在し ておりまして、仮に相当大きい00号というハードカプセルを用いたというふうに計算し ましたら1日当たり9カプセルから10カプセル、9.2カプセルを摂るとADIに達すると いうような理論上の計算結果になります。  このことから、カプセル剤につきましては通常摂取されると考えられる量とHPMC がADIに到達するまでの量との差が必ずしも大きくないということから、HPMCカ プセルを使用した保健機能食品を製造販売しようとする事業者に対しては、カプセルの 大きさあるいは摂取量等の選定に際して緩下作用の発現に留意する必要があることをあ らかじめ注意喚起するとともに、必要な場合には消費者に対しても注意喚起させるとい うことが適当というふうに判断しております。  使用基準といたしましては、当初申請があったとおり、本品については保健機能食品 の、しかもカプセル基剤あるいは錠剤コーティング剤の用途に限るという形で使用基準 を設定するということを考えております。  成分規格としましては、日本薬局方の規格を参考にして別紙2のような規格を設定す るのが適切であるというような評価となっております。以上でございます。 ○黒川座長  ありがとうございました。これも廣瀬座長の方の調査会ですけれども、何か御追加は ございますか。 ○廣瀬委員  簡単に付け加えさせていただきますと、このHPMCは催奇形性試験あるいは繁殖性 試験に関しましてはデータが不足しているという点がございまして、一般食品に対する 添加物として評価するためにはさらなる試験成績が必要であることを指摘しました。し かし、評価可能でありました試験成績については保健機能食品であるカプセル、錠剤等 に用いる添加物の指定に関するガイドラインで要求される試験成績を満たしているとい うことから、本品の用途を保健機能食品に係るカプセル基剤及び錠剤コーティング剤に 限定するということを前提条件としまして調査会での評価を行っております。  本品につきましては、毒性試験で一貫して見られている症状は高用量群で下痢、更に それに基づく体重増加抑制などがありますが、この変化につきましてはHPMCが非吸 収性の高浸透圧性高分子であるということから、本品が腸にとどまることによって浸透 圧性下痢を惹起するということに起因すると推定されまして、本品の物理学的性質によ るものと考えられるということから、軽い下痢あるいは軟便がありましても有意な体重 減少あるいは病理組織学的な所見を伴っていないものは毒性とみなしておりません。そ の上で、本品のADIを21mg/kg体重と評価しております。  なお、JECFAにおきましては化工セルロースによる下痢や体重増加抑制は必ずし も毒性とはみなしておりませんで、総化工セルロールのグループADIを「特定しない 」というように評価しております。しかしながら、今回の調査会におきましては食品添 加物は食品とともに永年にわたり継続的に摂取される可能性があるということを考慮い たしまして、より慎重を期すべきと考え、このような評価をいたしました。以上です。 ○黒川座長  ありがとうございました。それでは何か御意見、御質問はございますか。 ○三森委員  11ページのADI設定のところですが、廣瀬先生にお伺いいたします。  8番の一日摂取許容量ですけれども、ADIの根拠は90日間の反復投与毒性試験のN OAELからADI設定をされているわけですが、通常食品添加物の安全性評価の場合 には慢性毒性から得られた値、それに対して安全係数100分の1をかけてADI設定をさ れるのが常なんですが、今回この90日試験から、それもADI設定に安全係数100分の1 をかけられた根拠についてお伺いいたします。 ○廣瀬委員  通常は慢性毒性発がん性試験でADI設定を行うわけですけれども、この場合は1つ にはNOAELが慢性毒性発がん性試験よりも90日毒性試験の方が低かったということ です。それから、データが完全なものというか、まだ完全にそろったものではないとい うようなこと考慮しまして、より低いNOAELということでこの値に設定したわけで す。 ○三森委員  9ページの(ウ)の慢性毒性発がん性併合試験ですが、そこの第2パラグラフで2年 間の慢性毒性発がん性を実施していますね。それの無毒性量は5%、すなわち2.5g/kg体 重/日ということですね。90日試験のNOAELこれよりも低いということですけれども、90 日試験から安全係数を出す場合は通常1,000分の1ということを考えるんですが、これに ついては100分の1でよろしいということですね。 ○廣瀬委員  そうですね。慢性毒性の毒性量が2.5g/kg体重/日で、この90日間試験が2.1g/kg体重/ 日ですから、それとそれほど変わらないということで、安全係数は100で十分であろうと いうふうに考えております。 ○黒川座長  私もちょっとおかしいなというのであらかじめいろいろ話したんですけれども、慢毒 でちょっと高いし、それより下があるけれども、だからと言って1,000をかけてどんと下 げるという必要はない。慢毒の方で一応明らかになっているからということで、しかし ながらその90日間の試験で低いのを無視するというのもちょっとという理解なんですけ れども。 ○三森委員  了解いたしました。 ○高仲委員  関連ですが。根本的な考え方として、食品添加物は我々が好むと好まざるとにかかわ らず、生涯をかけて摂取する可能性が非常に高いものです。従って、安全性は生涯をか けて摂ったときにというのがベースになると思います。そういたしますと、この2年間 を要した慢性毒性発がん性併合試験のデータを取るべきと一義的に考えられます。  それを、90日試験で取りますと、先ほど三森先生がおっしゃったように安全係数を過 去の経験からして100にすることは非常に困難で、理由付けが難しいと思います。単に数 値が少しぐらい動いたからといって、それも21と25の差をベースに判断して、90日試験 を用い、かつセーフティファクター100にしますと、我が国の食品添加物の安全性に対す る根本的な考え方が問われることになると思います。国連でも他先進国でも、単に数値 のみが低いからといってこれを取る。それも安全係数を無視するという考え方はどうな のでしょうか。やはり生涯をかけて食べることをベースにして考えないと、今これを摂 取する消費者側の疑問に十分に、答えられないと思いまです。単に数値が低いからとい って短期の試験で出すのは非常に考え方としては異質に感じます。いかがでしょうか。 ○井上委員  これは一般論は多分ないだろうと思うんですけれども、私はこの審議そのもののいき さつは存じませんが、いろいろ御苦労なさって到達した結論だろうと思いますので、私 は三森先生が納得されたのと多分同じような意味だろうと思いますけれども、了解いた したいと思います。  その理由は、今の高仲先生の御意見は大変もっともなんですが、そのラインでいきま すと、これはむしろ慢性毒性発がん性併合試験に問題があったわけではありませんので 、その信頼性がないわけではありませんので、長期のトレランスのような形でもって毒 性が継続しないというような考え方に立ちますと、安全係数は文字どおり100で慢性毒性 発がん性併合試験のデータを取るということになるわけであります。それで安全性を考 えていいはずですけれども、ここをひとつ90日の試験も考慮して、90日の試験を取るわ けではないんだけれどもというようなニュアンスなのではないかと思いますが、ここで はこういうような扱いをする。  ただし、高仲先生がおっしゃったように、これは一般的なやり方ではないということ も一面では事実だろうと思います。私の個人的な考え方は以上のようなところでありま す。 ○廣瀬委員  そういうこともありますけれども、先ほども御説明しましたようにHPMCは一つの 物質ではなくていろいろなものが含まれておりますので、一つの慢性発がん性試験でこ ういうデータで、90日試験でこうであって、その90日試験の方が結果としてはNOAE Lが低かったわけですが、こういういろいろなものが含まれているということで、でき るだけ低いADIを取っておこうというような意思が我々にあったということは確かで あります。  それからまた、短期と長期でNOAELが幸いなことにさほど変わらなかったという ことも一つの理由であります。 ○高仲委員  繰り返しますけれども、食品添加物に対する安全性は、我々が長期にわたってこれを 摂るということを基本にして考えるべきだと思います。一般的な評価の仕方からすれば この2年間の併合試験をベースに取ってセーフティファクターを100とし、これを確認支 持するものとして十分に評価できれば90日試験を使うこととする方が良いと考えます。 考えようによっては90日試験で出た毒性と、生涯を通して行ったものが大体同じレベル の毒性であったと見るのが、私は一般的な考えと思います。  この数値が低いことだけを取るのは問題であろうと思います。繰り返しますが、我々 は生涯を通して添加物を摂取する可能性を基本に考え、生涯試験に重点を置くべきだと 思います。問題はもしもそれで解決しえないならば試験を繰り返すべきでしょう。動物 実験でもって数値が25と21とは往々にして出るべきものだと思います。 90日でファク ター100というのは、これは異質だと思います。国連の評価でこの議論は通りにくいと思 います。 ○黒川座長  ほかにいかがですか。 ○林委員  調査会のときにも、この辺はかなりディスカッションになったのは覚えております。 それで、あのときもたしか最初は今、高仲先生がおっしゃったように長期の方の値を取 って計算はしていたと思うんですけれども、それと比較してこちらの方がやはり最終的 にそのADIが少しですが、低かったということで、最終的にはここへのかけ方の問題 があるのかもしれないです。それで、できるだけ長期のことも考えるんだけれども、摂 取基準量としては低い方を取っておく方が安全じゃないかというような議論があったよ うに覚えています。 ○高仲委員  先ほどから繰り返しですけれが、それは余りにも添加物というものの使用をお考えに なっていないのではないでしょうか。それから、90日試験のセーフティファクターを100 とするのは問題があります。我が国の評価の考え方自身に疑問が出てくると思います。  ただ、私はこのデータを詳細に見ていませんので、エンドポイントの変化を評価でき るかは調査会の判断だと思いますが、一般的な考え方からすれば少なくともネズミの生 涯をベースにした試験で行うべきでしょう。そして、これが20と200とか2,000とかとい う差が出れば別ですけれども、このくらいの数値の差はその差を主張するには当たらな いと思います。以上です。 ○黒川座長  この調査会の委員で、福島先生とかはどうでしょうか。御意見はございませんか。 ○井上委員  本筋のことに関係しないんですけれども、高仲先生の御指摘は大変もっともな面があ ると思いますので、参考までにちょっとお伺いしたいんですが、もしここで90日の値が 非常に低かった場合にはどういうふうにお考えになりますか。 ○高仲委員  次はやはり毒性の内容だと思います。そして、1つはこの試験が一発試験ですべてを 決定するほどの精度と再現性を持っているとは考えられません。ですから、そのときに はもう一度試験を繰り返す必要があるかもしれません。そこまでを含めてもう少しデー タの内容を精査した上で考えるべきではないでしょうか。  それはトキシコロジー的評価で二十数mgの1桁目の数値の小さい方を低く取るという 議論はトキシコロジーの考え方あまり意味がないように思います。私は少し強引に主張 をしましたが、我が国の評価の考え方についてどうかお考えいただければと思います。 できれば数値は同じレベルですから、長期毒性試験をベースに取って、90日試験をサポ ートデータにする考え方があっても良いと思いました。もうこれで終わります。 ○鈴木(勝)委員  先ほどから審議の内容等々をいろいろ思い起こしていたんですが、たしかここは慢性 毒性の試験の結果があるということを前提にして議論を進めたように思います。その上 、先ほど廣瀬先生がお話しくださったように物質が単一のものではないんですね。すご くいろいろなものが入っていて、それで決め難いところが幾つかある。亜慢性毒性の方 でも2,100mg/kg体重/日から2,500mg/kg体重/日とかいろいろなものがあるんですけれど も、そういったようなところで慢性毒性の2,500mg/kg体重/日というのを用いてしまうよ りは、数値として具体的に亜慢性とか亜急性の方で2,100mg/kg体重/日というのがありま すから、とりあえずそれを取ろうというふうに落ち着いたのではなかったかと記憶して いるんですが、どうだったでしょうか。 ○廣瀬委員  そういうことです。何度も説明しておりますけれども、HPMCは高粘度、低粘度あ るいはいろいろなものがありますので、原則としてとにかく低い方を取っていこうじゃ ないかということが根本的にあったということです。ですから、HPMCが単独のもの でありましたら、これは高仲先生のおっしゃるとおりになっていたと思います。 ○高仲委員  追加します。この場合はどういう組合せのものだったら良いのでしょうか。ここで用 いたものの内容に対する規格はきちんと定められていると思います。それが毒性試験の 基本だと思います。こういう混合物はこういうものを使ったということが非常に重要に なると思います。  このものが単一ではないとしても、組成は当然化学的に証明されたものを使って試験 が行われているはずです。使った検体の化学的な組成、純度、不純物はきちんとしたデ ータの裏付けがあった上で行われた試験であろうと思いますし、GLPの評価ではそこ を十分に踏まえた上でデータは生かされると思います。したがって、単一なものではな いからとして毒性試験成績への考え方を変えるのはいかがなものでしょうか。 ○黒川座長  私の経験で、農薬などの場合でも慢毒より亜慢性とか亜急性の方がNOAELが低い ということもたまにあって、いろいろ悩んだといいますか、ADIを設定するのに苦労 した記憶がありますけれども、確かに高仲先生がこだわられるように、90日間試験につ いて安全係数を100と持ってきたというのは、ここだけ見るととても奇異に感じるのは確 かなようですね。それで、慢毒で3つばかり試験があって一番低いのが2,500mg/kg体重/ 日ですか。それで、2,100mg/kg体重/日にどうしてもしたいというか、それも横にらみに しているところが苦しかったんだと思うんですけれども、どうなんですかね。2,500であ るけれども、亜慢性を控えているから2,100 mg/kg体重/日まで落としてしまったという 書きぶりとかですね。  ですから、対象試験といいますか、設定試験としては一応慢毒の2.5g/kg体重/日とい うのを取っておいて、安全係数とも言えないんでしょうけれども、その辺で2,100mg/kg 体重/日となるのはどうしても無視できないということかなとちょっと思うんですけれど も。  それとも、話がちょっと大きいというか、ペンディングにしてもう一回調査会でやっ ていただけますか。私はそこまでしなくてもいいかと思いますけれども。 ○基準課長  基本論というか、難しい議論だとは思うんですが、結果を見ますと21mg/kg体重/日か2 5mg/kg体重/日かどちらかだということだろうと思うんです。したがって、リスク評価の 結果はそれほど大きな違いはないのではないか。そうすると、あとは考え方の整理をど ういうふうにするのかということでありまして、結果を調査会に戻してやっても21mg/kg 体重/日なのか25mg/kg体重/日なのかという話ですから、その意味は低いのではないかと 思います。  それで、先生方の御議論にゆだねたいわけでありますが今、部会長がおっしゃられる ように基本的には長期投与試験の2,500mgがNOAELであって、それであれば当然なが ら100の係数というふうにして、事実関係はそうでありますから、そのように事実関係を 1日許容量設定に対して書いて、その上で90日のこの数字というものを数字としてどう とらえるかという点で、混合物であるから低目の値ということでこれを取った。低い値 を更に考慮したとかというようなことでよろしければそういう書き方、いわゆる長期投 与の方からのあれを、それもきちんと考えてやったんだということでまとめるというの であれば、むしろそれは報告書の記載の内容の話でありますから、その点で御議論いた だいて、それでよろしければそのように部会長に一任されるのかわかりませんが、そう いう形にしていただくこともできるのかなとは思いますが。 ○黒川座長  一任ということで、この辺は随分いろいろやっているかと思いますが、三森先生どう でしょうか。 ○三森委員  先ほど御説明いただいて私は了解したというふうに言ったわけですけれども、調査会 の方で慢性毒性のデータも見た上でADI設定し、それを考えてもやはり、廣瀬委員が おっしゃるように混合物であるという、その辺の安全性のリスクをプラスに考えると、 やはりもう少し下の用量に取っておくべきだろうという記述をどこかに入れていただけ れば、どうして今回この90日試験からADI設定にセーフティファクター100をかけたか というところの根拠が出てくるのではないかと思うんです。ですから、1日摂取許容量 の設定のところに何かそのような文章が入ったらいいのではないかと思うんですけれど も。 ○井上委員  私も同じ考えで、修文上の問題で解決していただければこの会としてはよろしいので はないかと思います。その修文では、高仲先生もおっしゃっているように混合物である ということだけではGLP上の問題とか、毒性試験のあれでは満足しないんだからとお っしゃっているわけですから、それに対してその混合物に対してこういう例については こういう考え方で90日のものを取った。しかしながら、90日の方で安全係数1,000を取ら なかった理由については慢性毒性の結果がこうであったというようなことを上手に表現 していただければ、調査会の総意も生かせてここでの原則論にもこたえるようないい答 申ができるんじゃないかと期待しております。 ○高仲委員  くどいようですが、その場合安全係数を100にする言い訳にはならないと思います。過 去にもこのような条件で我々は添加物や農薬を評価しておりますが、多分90日間の試験 結果に、安全係数100を取っている例はほとんどないと思います。もしも低い数値のみを 望むなら、500とかの安全係数を考えるべきではないでしょうか。そうすれば、数値は当 然低くなります。  ただ、繰り返しますけれども、生涯をかけて摂るというのが食品添加物だということ を念頭に置いてお考えいただきたいと思います。 ○黒川座長  私が申し上げたのは、8番のところの設定試験はやはり慢毒のものを書いてしまおう と思うんです。それで100にしておいて、そうするとADIが25mg/kg体重/日になります けれども、そこで90日間を勘案したので、その先は21mg/kg体重/日にするかとか、そう いう書き方で私はやはりちょっと慢毒をここに書いてほしいとは思うんです。それで、 落ち着くところは21 mg/kg体重/日を無視するというのは調査会の方々も、私もちょっと それはまた問題になるかと思うので、それを勘案すれば21 mg/kg体重/日かなと。 ○高仲委員  うまく書いていただきたいのは、この安全係数100という発想を90日間試験では何とか 避けたいことです。 ○黒川座長  そちらの方ですか。90日を取っておいて……。 ○高仲委員  そうではなくて、90日試験のNOAELを取って安全係数100を取るとこの値になるわ けです。それで、一般的に我々が過去にやった300 とか500を取ればこの値はもっと小さ くなります。その小さい値をもってここへ出すと、先刻井上先生がおっしゃったように 、本当に違って来ます。 ○黒川座長  調査会の方の座長の御意見を聞かせてください。 ○廣瀬委員  国際的に通用しないほど違ってくるという意味でしょうか。 ○高仲委員  生涯を通して摂取する添加物の90日試験の値に安全係数100を用いることは、安全係数 に対する考え方に問題があるということだと思います。さらに、我が国は安全係数を100 からどうするかという考え方は決まっていませんけれども、国連では決まっています。 そういうレベルでお考えになった上でこのセーフティファクター100を説明していかなけ ればいけないので、私はそこに問題が将来に残るんじゃないかということで申し上げま した。 ○廣瀬委員  国連では90日間は100ということで決まっているんですか。私はその辺のことは存じま せんけれども、そういうことが条項として決まっているんでしたら、それは仕方がない と思いますが。 ○三森委員  通常でいきますと、慢性毒性試験で一番低いNOAELを取って、それから100分の1 というのが通常の原則だと思います。しかし、データが足りないとかということになる と安全係数300とか500あるいは1,000ということもあります。FDAやヨーロッパの政府 では90日試験からNOAELを求める場合には通常1,000分の1をかけるというのが通例 だと聞いております。これは発がん性のデータがあった上での話で、すべてのデータが あった上での評価ということですので、今回の品目とはちょっと意味合いが違うと思い ます。 ○山崎部会長  私は毒性の方の専門ではないんですが、先生方の今までの議論を承っておりまして、 調査会の先生方が慢性毒性のデータを無視して90日間の投与のデータをお使いになった のではないということは確かなわけですね。ですから、そういう意味で高仲先生の御指 摘の部分については調査会の先生方は十分検討した上で、慢性毒性の結果に対して安全 係数100をかけるというふうな操作はできたわけだと思うんです。ただし、黒川部会長が おっしゃったように、それよりも低い値が出ているから、これを考慮した方がよいので はないかというようなお考えを更にそこに加味して、こういうようなADIを設定され たんだろうという経緯が理解できるわけです。  従いまして、この場合いきなりこの8のADI設定のところに90日間の反復投与の結 果を持ってきて、これに安全係数100をかけてADIを設定したという表記は、高仲先生 がおっしゃるようにこれだけを見ますと納得できない。これは先生方が御指摘になった とおりだと思うんです。従いまして、ここでは調査会の検討の結果を尊重して、またこ この報告の内容も十分承った上で、先ほど黒川部会長が御提案になったように、慢性毒 性の結果に対して安全係数100をかける。ただし、90日の結果からこういうふうな数値が 出ているので、これを考慮に入れてADIの数値はここまで持っていきたいというよう な付記を付けるという課長が言われた案ですね。  そこで、そういう形で私はこの問題というのは結論を申し上げますと8番のところの 記述ですね。これを変えさせていただくということで、この問題というのは処理できる のではないかというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。 ○黒川座長  お隣りでサポートしていただいて、私は非常にやりやすくなってきたんですけれども 、慢性毒性試験の9ページの真ん中のウの第2パラグラフの試験の結果を全部ここに持 ってきておいて、安全係数をかけたところまでは書いて、ADIにいくときはまたそこ で修文というか、説明をしていただいて21 mg/kg体重/日に持っていくというのが、繰り 返しですけれども。 ○廣瀬委員  私もそれで異存はありません。 ○黒川座長  そうであれば調査会の方でもう一回集まっていただいて、それをもんでいただいても 結構ですけれども。 ○福島委員  確認で、私もそれは結構ですけれども、いずれにしても安全係数は100で取っていると いうことですね。 ○黒川座長  慢毒ですから、100で。 ○福島委員  最後的に21 mg/kg体重/日でくるときにはどうしても90日のときの……。 ○黒川座長  それは加味しているということで、それをぽんと持ってくるわけではないんです。 ○基準課長  今の両部会長の話を総合すれば、これは調査会の先生方及び部会の特に毒性の先生方 にも御相談して修文などをしなければいけないと思っていますが、今の考え方は25 mg/k g体重/日が基本となる。しかし、慢毒の場合のNOAELを決めるのに90日の2,100 mg/ kg体重/日というものも無視できないからということであるとすれば、そのADIはむし ろ21 mg/kg体重/日から25 mg/kg体重/日という間のようなADIという考え方というこ とにもなるんでしょうか。修文の仕方にもよるものですから、ちょっとこだわるのであ りますが。 ○黒川座長  その21 mg/kg体重/日と25 mg/kg体重/日の間ですか。私は21 mg/kg体重/日だと思うん です。その間というのは余りと思うんですが、廣瀬先生どうですか。そうなると、どこ が間かというのは足して2で割ってというわけでもないんですよね。幅をつけるという ことですか。 ○基準課長  これは過去の例でありますが、我々DEHPというフタル酸エステルのTDIを設定 する際に、なかなか一つの試験の方から取っていた数字と別の試験の方から取っていた 数字とどちらも否定し得ないみたいなところで、実はあのときにいわゆる幅のあるAD Iという考え方を一度とったことがあるものですから、大変素人的で恐縮ですが、そう いうようなことなのかなと今ちょっと感じたものですから。 ○福島委員  話を蒸し返すようで恐縮なんですけれども、高仲先生が言われました、あくまで食品 添加物ということで慢性のデータを取るという、私は三森先生が言われるのはちょっと わからなくて、ああそうなんだなというふうに理解していたんですが、考え方から言っ て確かにWHOですか。私は知りませんが、そういう慢性毒性のデータを取るというこ とが基本ということになっているそうなんですけれども、私は何もそれに拘泥する必要 はないんじゃないかと思うんです。それで、基本的に知りたいのは、この化合物の安全 性はどうかということだと思うんです。ですから、今回の試験でも90日ではむしろ低い 値が出ているということで、それは化合物に対する反応として慢性の方がより毒性が強 く出るケースもあるでしょうし、こういうようにむしろ90日間の試験において毒性がよ り強く出るというケースだってあると思うんです。ですから、私は基本的にもやはり毒 性が強いということを取るべきであって、確かに先ほど言われるように2年間の発がん 性試験を取ってから、そういうことでこの場合には最後的には90日間の試験を取ったと いうふうな書き方で……。 ○西島委員  先生、ちょっとすみません。私はこの調査会のメンバーでもないんですけれども、2,1 00 mg/kg体重/日がNOAELで最高用量だから、要するに2,200 mg/kg体重/日かもしれ なかったし、2,300 mg/kg体重/日であったかもしれないということになるんじゃないで すか。 ○長尾委員  そうなんです。慢性のときは5%を使っているけれども、90日のときはその濃度がな くて3%だからこういう値になっているというだけの問題だと思うんです。 ○鈴木(勝)委員  それだけじゃないんです。もう少し細かく見なければいけないんですけれども、慢毒 では5%というのは確かに先生の言われるとおりですが、亜慢毒のところは幾つか試験 がありまして、トップドーズのものが2つぐらい、それから中間のドーズのときにたま たま用量が3%、10%というふうになっているんですが、その間のところにいくんです ね。10%より下で3%より上というところにNOAELがきてしまうんです。ただ、実 際に設定している用量がたまたま2,100 mg/kg体重/日というところにくるだけだという ことです。 ○福島委員  わかりました。 ○黒川座長  ちょっと話が元に戻ったような気もするんだけれども。 ○長尾委員  ですから、現象としてはどちらもほとんど同じで、ですけれども、90日で保証される のは3%で21 mg/kg体重/日だという話なんだと思うんです。 ○福島委員  保証された値が21 mg/kg体重/日だということですね。 ○黒川座長  21 mg/kg体重/日というのは100をかけた場合の話で、2,100 mg/kg体重/日というのが 全部の試験で一番低いということです。要するに、8番の書き方はこのままでいくか。 私がちょっと提案したような慢毒にしておいて、ですからADIはもう21 mg/kg体重/日 ということになって、そこへの持っていき方をどこの試験から始めるかというような、 そこだと思うんです。 ○高仲委員  90日試験に安全係数100として良いのですか。21mg/kg体重/日とする根拠は安全係数 が100となります。三森先生がおっしゃっているように、一般的には300とか500 です。 これを100を用いて21mg/kg体重/日を設定するよりは、投与期間からして当然もっと 大きな安全係数を用いるべきでしょう。そうすると、この21mg/kg体重/日はより小さ い値になると思います。それよりは、慢性毒性試験を根拠にして、90日試験で出た値を 取ることを付記することになると思います。  そのようにしたとしても、まだ残るのは何故90日試験を優先したかです。慢性毒性試 験のNOAEL 2,500mg/kg/日よりも、単に数値が低いからでしょうか。それならば有害作用 を発現する量を考えると短期90日試験ではより低い用量で毒性が出るけれども、2年の 試験ではより高くなるという話になり、もしそうならば、それを証明する試験も必要か も知れません。それよりは現データから2年間の慢性毒性試験の成績を根拠に安全係数1 00を設定し、これを支持するものとして90日試験の成績を考えるべきでしょう。もしこ こで取るとすれば90 日試験のNOAEL 2,100mg/kg体重/日ではないでしょうか。 ○黒川座長  2,100 mg/kg体重/日を取って1,000で割れと言うんですか。 ○高仲委員  安全係数100については議論があるので、90日試験の成績を考慮するのならば2,100mg/ kg体重/日を取って考えるべきでしょう。この問題を評価した調査会に戻す必要はない と思います。この会は上の部会ですから、ここで決めていただければ良いと思います。 ○井上委員  私の考え方は、先ほど申し上げた修文の問題として御提案申し上げますけれども、こ の剤特有のものであるという表現が上手に修文できれば、今まで御意見が出ていたよう に慢性毒性でもって記述をして、そして90日間試験から導き出した値とはそういう意味 合いではなくて低目の値を取ったということを付記することは、特例のような表現がで きるのであればそれで構わないと思うんです。それは、90日間試験の結果と慢毒の結果 がこのような形の出方をする剤であったという、それはなぜなのかはわかりませんけれ ども、福島先生もおっしゃったように逆転する剤があるということも知られていますの で、この剤はそういうことであったということで、その特徴を正確に表現できれば修文 の問題で特例であるということが表現できると思います。  ただ、それが90日間試験から21 mg/kg体重/日を取ったということになると、それは高 仲先生のおっしゃるように当然200とか500とか1,000とかしなければならないという、た とえ慢性毒性の方を念頭に置いても、それなりにかけなければならないということは当 然ですので、そこは論理としては難しいということは私はよくわかります。 ○三森委員  ずっと話をしても進まないと思うんですが、結局今回の90日試験のデータをどういう ふうに最終的に持っていくかというところに集約されると思います。それで、通常安全 係数に1,000をかける場合というのは、データが非常に貧弱であって90日試験ぐらいしか ない。しかし、今回の場合には催奇形性・繁殖性試験と発がん性の試験までデータがあ った上での総合的な評価ということになると思うんです。ですから、このADI設定の ところには2年間の慢性毒性から持ってきて安全係数は100として25 mg/kg体重/日とい うふうになりますけれども、その下にやはりこの物質についての特性ということで総合 的に評価すると90日の2,100 mg/kg体重/日のNOAELは安全性を見る上には否定でき ないので、この値からやはり調査会としては考えたというふうな修文でいく方向性がい いのではないかと思うんですが。  慢性毒性のNOAELからADI設定にセーフティファクター100をかけた25 mg/kg体 重/日で十分いけるわけですけれども、調査会ではそこまでいろいろ議論された上での経 緯があると私は思っておりますので、その辺のところを加えた上で、調査会としてはや はりADIを21 mg/kg体重/日のところで抑えたいというふうな形の表現でいかれたらど うかと思います。ウェート・オブ・エビデンス・アプローチというんでしょうか、総合 的な評価としてADIはこちらでいったらという表現ができればと私は思います。 ○黒川座長  廣瀬先生はどうでしょうか。 ○廣瀬委員  私もそれでいいと思います。無毒性量を長期の毒性から取って2,500 mg/kg体重/日で セーフティファクターが100で、その下に何らかの修文で最終的に21 mg/kg体重/日とい うことにしていただければ、それで私としては特に問題はないと思います。 ○高仲委員  それならばADIは7mg/kg体重/日にしても良いのではないでしょうか。安全係数100で はなくて短期の90日試験ですから300を取っても無理はないわけですから、ADI 7mg/k g体重/日にしても良いわけです。  ADI 21mg/kg体重/日という数値は根拠に乏しいものです。一方2年間の慢性毒性 試験があるのに、そちらを取らないで、単にNOAEL数値が低いだけで、その他の状況を 考慮せずにその安全係数を100にしたとすれば、安全係数の決め方に、国連及び諸外国 との間に差異が生じてしまいます。この点からも21という数値になぜこだわるのか、疑 問に思います。 ○黒川座長  さて、これは堂々めぐり的になってきたと私は思うんですけれども、これは今日AD I設定までいかないといろいろな意味でまずいんですか。 ○基準課長  慎重な御議論をいただければいいと思いますが、私はもちろん一定の皆様方の合意が 得られなければしようがないと思いますけれども、ただ、調査会に戻して議論をしても また同じ議論になるのかなということもありまして。 ○黒川座長  同じかどうかはあれですが、今まで高仲先生のような指摘がはっきりなくてやってい たのかもしれないと思うんです。 ○基準課長  別なところで時間をかけることについては結構でございます。 ○高仲委員 提案させていただきます。これは私が言っているだけではなくていろいろなお話を伺っ ていますと、慢性毒試験の成績をベースにしたADI 25mg/kg体重/日という値で決める ということでよろしいと思います。90日試験を持ち出すと、いろいろな面で問題点が出 てくると思います。 ○黒川座長  これはよろしいんですか。この書き方ではなくて慢毒を書けということですか。それ は賛成する方が半分ぐらいしかまだいないんです。やはり90日間としておいてという意 見も強いようですが。 ○井上委員  最初から私は慢毒を取るべきだという立場で、高仲先生の論理は全く通っているとい う立場です。ただ、調査会でいろいろ御検討になっておられるから。 ○黒川座長  だから、具体的にはここへ慢毒の試験を乗せてきていいんですか。 ○井上委員  私はそういうふうに発言してきたつもりです。 ○黒川座長  私もそれならばいいんですけれども、そのままにしておいてはどうもまずいという。 ○山崎部会長  このままはまずいということなんです。だから、慢毒のデータを持ってきて、ただ90 日間の……。 ○黒川座長  21 mg/kg体重/日はだめなんでしょう。21 mg/kg体重/日もいいんですか。 ○井上委員  21 mg/kg体重/日は90日です。だから問題なんです。 ○黒川座長  そこのところはまだ私は結論が出ていないように思うんだけれども、90日までもって くるというと亜慢性を取り入れることになるし、25そのままだとそれはちょっと無視し ていることになるし、そこのところですね。 ○鈴木(勝)委員  考え方として、今まで話してきたような亜慢性の話のところの、たまたま出てきてい る2,100 mg/kg体重/日という数値を取るか。実態として見たときに試験に使った化合物 は少しずつ違うんだけれども、どれもが極めて似たようなところにNOAELが出てく る。それで、よく見ると最高用量のところもあるし、3%ないし10%の間のところに出て くるところも3か月のものではある。これを慢性毒性の結果と同じと見るか、これは違 うものであるというふうに見るか。同じだというふうに見てしまえば、慢毒の結果を用 いてNOAELの設定に持っていくというのは私はできると思います。  ただ、私たちの調査会の方でやったのは、物はいろいろ違う上にここで数字として2,1 00 mg/kg体重/日というのが出てしまっているものだから、それをちょっと無視するわけ にはいかないので、この数値を根拠に使おうかという話にしたんですけれども、あくま でも心としては慢毒がちゃんとありますというところからスタートしたんです。 ○黒川座長  みんなの話を聞いていたらだんだんわからなくなってしまったので、もう一回説明し ていただけますか。 ○井上委員  これは慢性毒性試験があるから、慢性毒性試験で設定される値で決めればロジックと しては問題がないわけですけれども、剤も異なっているし、90日間試験のデータも見え る。これはもちろん慢毒の試験があるから一概にそれにセーフティファクターを200、50 0とかけてそちらの方を取るということにはならないわけです。慢性毒性試験が、これは 評価に耐えないということがない限りはそういうことがないわけです。その間のところ をどう取るのかという論理の問題ですから、そしてその論理がもし90日間試験の方のデ ータをどう見るのかという点にこの剤の特徴がなければ、これは慢性毒性の方を取るし かないんですね。それは非常に明確なことなんです。  それで、私が先ほど来申し上げているのは、この間のどこを取るかというところは剤 にもし特徴があれば、それは非常に特殊なケースとして説得できるであろう。それで、 それはあたかも90日間試験に変なセーフティファクターの値をかけたように見えるかも しれないけれども、そこのところは論述の仕方でもって整理していただきたいと期待し ているということでございます。 ○黒川座長  そうすると、もっと具体的に言ってください。ここの8のところの無毒性量は……。 ○井上委員  高仲先生のおっしゃるのと今の私の考えはそんなにずれはないですよね。それで、三 森先生はどうですか。基本的にはその間を考えてどういうふうなロジックで表現するか だけですよね。 ○三森委員  ですから、この8番のADI設定のところに出てくる数値は2年間の慢性毒性試験の NOAELを持ってくるということですね。それで、セーフティファクターを100分の1 にして。 ○井上委員  その部分は一致しているんです。 ○三森委員  そういうふうに持っていきましょうとしているところは一致していると思うんです。  ただ、その後ろのただし書きをどうするかというところなんです。高仲先生は90日試 験からADI設定に持っていく場合に100分の1をかけるということは今までにはなく、 それについては300分の1をかけるなり、何らかの安全係数をもう少し付加しない限りは 科学的な正当性はないですとおっしゃっているんです。そこのところをどうするかとい うところです。 ○井上委員  私も同じ考えです。その表現をこの剤の特徴、この剤がこうだからここのところは特 殊な扱いだということをやらない限り無理だと思います。 ○三森委員  そこの理由づけを明記できたとしたら、2,100 mg/kg体重/日に100分の1をかけて21 mg /kg体重/日としてもよいと思います。 ○井上委員  ですから、最初に21 mg/kg体重/日ありきというふうな形だとあたかも100を念頭に置 いたようになるから、これは本来もっと200とか300であるべきで、けれども慢性がある から、そうしないだけのことで。 ○三森委員  ですから、私はあくまでも修文だと思うんです。通常、セーフティファクターを1,000 分とか300分の1をかける場合には催奇形性試験もない、発がん性もない、そういう場合 にはわかるんですけれども、この剤に関しては全部あるわけです。それで、慢性毒性の NOAELからいくとADI設定はこうだけれども、やはり90日の2,100 mg/kg体重/日 というのは無視できないという形でオーバーオールな評価をした上で2,100 mg/kg体重/ 日を取って、それのADIは21 mg/kg体重/日というふうな形の修文かなと思うんですけ れども。 ○黒川座長  それでよろしいでしょうか。4時になりましたけれども、修文と言っても今すっと出 てきませんので、調査会の御担当の先生方と私ども部会長、あとは高仲先生ぐらいで連 絡をして、全員でももちろんいいですけれども、そういうことでここのところを検討し ていただいて、ADIは21 mg/kg体重/日になるということでよろしいでしょうか。  それではこのADIですけれども、結局は結論的といいますか、この物の指定の可否 を云々ということでございますから、今の修文を踏まえて可とするということで御異議 ございませんでしょうか。  ありがとうございました。それでは、その先ということで食用赤色2号をどうぞ御説 明ください。 ○事務局  それでは、引き続きまして資料3の食用赤色2号につきまして御説明申し上げます。  これは、昨年9月の部会におきまして一度御議論いただいたものでございます。資料 3のところに経緯という形で書かせていただいておりますけれども、2の経緯の(6)のと ころで、アメリカにおいて発がん性が疑われるということで禁止されているといったよ うな措置状況等も踏まえまして、昨年9月の部会で安全性試験を実施する必要があるの かないのか、あるいは新たな遺伝毒性試験系であるコメット試験を用いた方法によって 陽性の結果があるといったようなことを踏まえて御議論をいただいたわけでございます 。  その結果は3.のところに書いておりますけれども、審議結果として(1)から(3 )で書かせていただいています。結論としましては、赤色2号についてはこれまでの知 見から従来の評価どおり発がん性はないという判断で問題はないだろうということでご ざいます。  (2)でございますけれども、ただし遺伝毒性試験の一つであるコメット試験におい て、マウス結腸で陽性の結果が得られているということを考慮しまして、当該試験の再 現性の確認を行う。  また、(3)としましてラットにおける毒性試験におきまして有意差はないが、腸に 腫瘍が認められているという試験も一部報告されていたということから、念のためラッ トにおけるコメット試験も実施し、腸における影響についても合わせて検討するという のが昨年9月の部会での結論であったということでございます。  3.のところは、それを受けまして新たに実施した遺伝毒性に関する試験結果を中心 にまとめております。  3の(1)は、前回の部会で議論になりました部分をもう一度再掲しているという内 容になっております。赤色2号をマウスに投与しましたところ、投与3時間後の結腸に おいて用量依存的なDNA損傷を惹起したというような内容でございます。胃において もDNA損傷が認められたというような内容が、前回の部会で議論いただいた内容でご ざいます。 そういったものの再現性を確認する意味での追加試験というのが(2)で まとめさせていただいております。大きく2つの追加試験を実施しております。1つは (イ)のマウス及びラットを用いたコメット試験でございます。いずれも資料3−3の 報告書の中で記載されております。その内容について申し上げますと、本実験の再現性 及び種差を確認するために、マウス及びラットで1から2,000mg/kgの5用量での単回投 与のコメット試験を実施しております。それで、3時間後に検体を取って標本を作製し ております。更に2,000mg/kg投与群では24時間後に取っているわけですけれども、胃及 び腸管で標本を作製して、コメット試験の特徴であります流れたテイルの長さを指標と してDNAの損傷性を計測しているというものでございます。  ただ、マウスについては長さだけではなくて、どれくらいの量のDNAが流れたかを 示す指標でありますテイルモーメントというものも同じように測定をしております。そ の結果は資料3−3の34ページ、35ページ辺りでございますが、マウスの胃の結果でご ざいます。テイルの長さ、それからテイルモーメントの結果を記載しております。マウ スにおきまして100あるいは1,000mg/kg投与の単回ではなくて3回連続投与後で、投与部 位が胃においてのみ対照群と比較して有意な平均テイル長の上昇が観察されたという結 果になっております。34ページの表16の一番下のところに有意差があったという結果が 出ております。  ただ、それをDNAの量を見るテイルモーメントで見た場合にどうかというのが35ペ ージのところにありますけれども、テイルモーメントで再評価した結果はその上昇は有 意でなかったという結果になっております。  同じコメットの試験をラットにおいてはどうかということですが、それは資料3−3 の38ページあるいは39ページに結果は記載してありますけれども、ラットにおきまして は胃及び腸管、ともにすべての条件下で対照群と差がない。すなわち、陰性の結果が得 られたということでございます。それを前回の津田らの報告と比較いたしますとこの表 にまとめておりますけれども、胃、結腸とも異なる結果ということで、コメット誘発性 については明確に陽性という結果は得られなかったということでございます。  もう一つの試験を実施しております。それは(ロ)でございますけれども、トランス ジェニックマウスを用いたin vivoの遺伝子突然変異試験であります。これも資料3−3 にまとめておりますけれども、食用赤色2号がマウスの大腸に対して遺伝子突然変異を 誘発するかどうかということをトランスジェニックマウスを用いたin vivoの遺伝子突然 変異試験により検討をしております。具体的には雄性のMutaマウスに0から2,000mg/kgの 用量で1週間間隔で4回経口投与して、大腸を中心としてLacZ、それからCII遺伝子の 変異頻度を解析するという方法でやっております。その結果、最高用量群においてわず かな変異頻度の上昇が見られたという結果になっているわけですが、それを生物学的に 有意であるかどうかを検討するという意味で変異体のシークエンス解析を行ったところ 、変異のパターンにコントロール群との差が見られなかったという結果になっておりま す。  その結果は資料3−3の23ページの表の4−5でありますが、これがその遺伝子突然 変異株の変異スペクトル、変異のパターンをコントロールと比較したものということで 、コントロール群と変異のスペクトルに差が見られなかったということでございます。  それから、大腸以外の臓器についても見ておりますけれども、そちらについては変異 頻度の上昇は認められなかったということでございます。  もう一つ、トランスジェニックマウスを用いて末梢血での小核試験というものも行っ ております。資料3−3の26ページの表4−8ですけれども、こちらに小核試験の結果 が出ておりますが、結果としては食用赤色2号を処理することによって影響は見られな かったという結論になっております。  従いましてまとめますと、食用赤色2号につきましては前回文献報告であったコメッ ト試験の結果を再現することはできなかった。それから、トランスジェニックマウスを 用いまして生体内での遺伝子の突然変異、それから生体内での染色体異常、いずれも否 定されたという結果となっております。そこで、本色素については生体にとって問題に なるような遺伝毒性を示すものではないと考えていいのではないかという資料でまとめ ております。赤色2号については、以上でございます。 ○黒川座長  これは、遺伝毒性試験が少し問題点があるようで、林委員から何か御説明がございま すか。 ○林委員  今、事務局の方から十分詳しく説明をしていただいたんですけれども、ちょっと補足 してコメットアッセイというのは一体どんなことをやっているのかというのを少しお話 ししておいた方がいいんじゃないかと思います。コメットアッセイというのは細胞のD NAに傷が付くかどうかということを、細胞をばらばらにしまして、非常にアルカリ性 の強い処理液で処理をして、その細胞を寒天の中に埋め込んだ状態でいきなり電気泳動 をする。それで、もしそのDNAに傷が付いていれば、アルカリ性にすることによって それが実際に切断に変わります。それを電気泳動することによって大きいままのDNA では全く流れないんですけれども、小さな断片になるとそれが流れてくる。それを蛍光 染色してやりますと、ちょうどすい星のように核を頭にして、それから尾っぽを引っ張 ったような像が見られるということです。それで、その指標としましてここにあるよう なテイルレングス、その尾っぽの長さ、それからテイルモーメントと呼ばれる長さだけ ではなくてどれぐらいの量のDNAが流れたかというようなものを測ってその評価をす るわけです。  それで、津田らの報告によって、この赤色2号で結腸と胃でコメットアッセイで非常 に強い陽性が出たというような報告を受けまして、我々がまたそれとほぼ同一の条件で 再試験をしてみたわけです。そうしましたら、先ほど事務局の方からも説明がありまし たように、今回行った実験の結果としては統計的な有意差があるようなものは見られな かった。多少出てくるような傾向は認められたんですけれども、津田らが言っているよ うな非常に強いものとはほど遠いものであったという結論になりました。  では、一体何が違うのかということが問題になってくるわけですけれども、正直言っ てまだその原因はわかっておりません。1つは、もちろん使ったサンプルが違うという ことで、そのロット差ということも考えられます。  それからもう一つは、このコメット試験というのは細胞をばらばらにする必要があり ます。それで、細胞がばらばらになりやすい組織ではかなり安定した結果が得られるん ですけれども、このような結腸ですとか胃のような粘膜上皮細胞になりますと、その細 胞をばらばらにするときに、そのばらばらにするというところで傷を付けてしまう場合 があります。それで、かなりデータにばらつきがある組織だということは言われており ます。  ではここでもしコメットアッセイで陽性になったとしたときに、その傷が本当に遺伝 子突然変異ですとか染色体異常に結び付く傷なのかどうかというようなことを調べる意 味で、そのトランスジェニック動物を用いて直接遺伝子突然変異試験のアッセイを行っ たわけです。そして、その結果は実際には突然変異の誘発は認められなかったというこ とと、また同時にその同じ個体を使ったんですけれども、小核試験という染色体異常の 誘発性を見る試験を行いまして、それの結果も陰性であったという結論を得たわけです 。  それで、総合的に評価いたしまして、最終的な変異原性の指標であります遺伝子突然 変異並びに染色体異常誘発性というものが確認できなかったということも踏まえて、最 終的に生体内で特段問題となるような遺伝毒性は発現しないだろうというような結論に 達したわけでございます。以上でございます。 ○黒川座長  ありがとうございます。それでは御質問、御意見をどうぞ。 ○長尾委員  津田さんたちの実験は、細胞を分離しているのではなくて核を分離してコメットアッ セイを調べていますよね。それで、この度、行われた実験ではどちらの方法をとられた んですか。 ○林委員  今回のものも、最終的には核になっていたと思います。ホモジナイズする方法が多少 違います。違うんですけれども、最終的にできたものは核までになっていて、その核を 泳動しているという点では同じものだと思います。 ○長尾委員  では、そういう方法に違いがあるということはないんですね。 ○林委員  ホモジナイズはダウンス式のホモジナイザーを使ったか、ポッター式のホモジナイザ ーを使ったかの差はあります。 ○黒川座長  ほかにどうぞ。 ○山添委員  このコメットアッセイというのは特に結腸の場合、個人差について非常に難しいとこ ろで、うちでも昔やったことがあるんですけれども、最初はテクニックが慣れないとバ ックグラウンドとして何も投与していなくてもかなりのコメット増が出てくる場合があ って、非常にそれの問題点が大きい。そこのところは非常に判断に苦しむアッセイだと 思うんですが、今回のデータを見せていただきますと、かなりサンプルによるばらつき が出ていますね。それが津田さんのところとの一つの大きな差になっているんですけれ ども、その辺についてはいかがでしょうか。 ○林委員  そのサンプルの差というか、個体差というのは確かにかなり認められます。それで、 この辺につきましてもラボでの実際の実績というか、経験の違いで出てくるものかもし れないんですけれども、そもそもこういうふうな結腸だとか、胃の評価をするための手 法というもの自身がまだ完全には確立されていないんじゃないかとは思います。それで 、赤色2号につきましてもほかのもっと曝露されているような臓器では全くコメットア ッセイでも陰性の結果になっているというようなことも考え合わせると、そもそもこの 結腸で出てきたコメットアッセイの陽性の結果というのがどれだけ信頼性のあるものか も疑わざるを得ないような状況だと思います。 ○山添委員  もう一つ気にかかるのは、こういう色素系のものというのは1つは遺伝毒性を示す場 合、アゾの還元を受けて分解されて芳香族アミンが出てくる。ところが、出てきたもの の一部はそれ自身が殺菌作用も持っているという、非常に腸内細菌とのバランスの問題 が必ず出てくると思うんですね。腸内細菌がアゾを還元をして遺伝毒性を起こすような 物質をつくり出す。  だけれども、アゾの還元体からはまた殺菌能力のあるものも出てくるというところで 、腸内細菌叢の違い、飼育条件ということになるかもしれないんですけれども、1つの 可能性としてどういう条件で飼育されていて、腸内細菌叢の組成の違い等が出るという 可能性についてはいかがなんでしょうか。 ○林委員  今おっしゃった腸内フローラでの活性化というのは十分考えられますので、確かに腸 でのこういう反応というものも非常に注目をしたんですけれども、今回は全くGLPの 条件下での試験で行っております。それで、津田先生らの方法というのがその辺までど れぐらいコントロールされた条件下で行われたのかはちょっとわからないので、直接比 較することは難しいと思いますけれども、今回のものに関しましてはかなりしっかりし たバリア内でのSPF動物を使った試験結果だということです。 ○高仲委員  これはGLPの下でおやりになりましたか。 ○林委員  このコメット試験についてはGLP試験です。 ○黒川座長  ほかにございますか。  それでは、大体御意見が出尽くしたんでしょうか。今後の取扱いということで、事務 局の方はどういうふうに対処いたしますか。 ○事務局  それでは、今回報告させていただきました結果も総合いたしますと、食用赤色2号に 関しましては発がん性はないだろうということで、現行どおり使用を認めるということ で問題ないという結論をいただいたと理解しております。それで、前回津田らの報告を 見ますと、ほかのタール系色素の問題もちょっと御指摘がありましたので、これにつき ましてはまた引き続き再現性試験等を行っていきたいと思っております。以上でござい ます。 ○黒川座長  そんなことですが。 ○長尾委員  資料3の3ページのテーブルの胃のところに、胃の津田らの報告のシグニフィカント の印が付いているところは1つ行が間違っています。32.6のところです。 ○黒川座長  ありがとうございました。ほかにいかがですか。  それでは、今日の議題の最後になりますけれども、臭素酸カリウムということでござ います。それでは、また説明をお願いいたします。 ○事務局  それでは、最後に資料4の臭素酸カリウムにつきまして御説明いたします。 臭素酸 カリウムとは、パンに用いる小麦粉処理剤でございます。現行の取扱いは30ppmまで添加 して構わないわけですけれども、最終食品の完成前に分解または除去することといった ような使用基準が我が国では設定されているというものでございます。  本品につきましても、昨年の9月の部会におきましてイギリスあるいはJECFAの 方でパンへの使用を含めて臭素酸カリウムの小麦粉使用剤としての使用は適切でないと いう評価を受けているということなど、そういったような海外における措置状況を受け まして、我が国において新たに安全性試験、あるいは新たな検討を行う必要があるかど うかということについて毒性・添加物の合同部会で御議論をいただいたものでございま す。  その結果は1ページの一番下の3.のところに書いておりますけれども、本品につい ては発がん物質ではあるものの、使用基準として最終食品に残留しないことというのが 設定されており、前回の部会の結論として、差し当たり本品の取扱いとしてはこれで問 題ないであろう。しかしながら、残量の有無は分析法の検出限界によるところ、さらな る安全性確保の観点から分析法の検出感度を可能な限り高めるべく、より高感度な分析 法の開発を検討する。更に、そのより高感度な分析法を用いて市販のパン等における調 査を実施し、臭素酸の残留の有無を確認するというような審議の結論をいただいたとこ ろでございます。それを受けまして、追加検討の結果がまとまりましたので報告させて いただくものでございます。  1つはパン中の臭素酸カリウムの分析法を改良したというような内容で、もう一つは それを受けて実態調査を行った内容ということになっております。資料としましては、 資料4−2にその結果の詳細は出ております。  まず臭素酸カリウムの分析法の改良についてでございますけれども、資料4−3で書 かせていただいておりますが、現在、分析法の改良をいたしております。資料4の2ペ ージの真ん中のところですけれども、(イ)としまして現行法に対する改良点といたし まして(1)から(3)を挙げております。(1)としましては、試料液の調製法において陰イオ ン交換カートリッジカラムも採用して、酢酸及び硝酸溶液を用いてパン抽出液に含まれ る臭素酸塩の精製濃縮操作過程を導入した。  (2)としまして、脱脂あるいは除たんぱく及び過剰の銀イオンの除去等の操作過程を削 除したというようなことを行いました。  その結果、(3)としまして定量限界が現行法の10ppbという定量限界から改良法では2pp bまで上げることができたということでございます。  その改良法の概要につきましては、(ロ)のところで書いてあるようなポストカラム 、試料液の調製、それから液体クロマトグラフィーの測定条件と、概略こういうような 方法を採用しているということでございます。  この改良した試験法を用いまして3ページの方でございますけれども、(2)といた しまして実態調査を行っております。実態調査は2つ大きく行っておりますけれども、 まず市販のパンにおける残留臭素酸の調査を行っております。全国5つの地点におきま す地方衛生研究所等の協力を得まして、大手、中小パンメーカーあるいは小規模パン製 造販売店等から山型食パン、バターロール、あんぱんから任意に2種類ずつを購入して 実態調査用の検体として分析を行っております。  この山型食パン、バターロール、あんぱんをなぜ選んだかということにつきましては 資料4−2の2ページの右のカラムの上の左に書いておりますけれども、製パンあるい は臭素酸の効果が明確に現れるのは食パンであって、角型の食パンは加熱効率が高いこ とから臭素酸の分解が容易に進むということで、臭素酸は残りにくいわけですけれども 、山型の食パンの方は加熱が弱いということから臭素酸が残存する可能性が高いという ふうに考えられたわけで山型の食パンを選んでいる。  それから、臭素酸の添加量、添加必要量という観点でいきますと食パンよりも菓子パ ン、それからいろいろな製法があるわけですけれども、中種生地製法、ストレート生地 製法、冷凍生地製法といったものになるわけですが、食パンよりも菓子パンの方が残り やすいということからあんぱんであるとかロールパンというのを選んだ。それから、冷 凍生地のものを使っている直接の焼きたてパンのような店からも購入をしているといっ たような形になっております。  戻っていただきまして、資料4の3ページの方でございます。少しはしょってしまい ましたが、山型パン、バターロール、あんぱんから任意に2種類ずつ選んだもの、それ から冷凍パン生地を用いて、できたてのパン、焼きたてのパンを出しているところから も購入して検体としている。更に、大手のパンメーカーの団体であります日本パン工業 会の協力も得て別途パンを収集しました。そういった形で収集したパン合計135の検体を 分析しましたところ、結果としましてはいずれも臭素酸は検出されないというような結 果になっております。その辺りは資料4−2の最後の方で、12ページ以降にその結果が テーブルで記載されております。  もう一つは資料4の4ページのところでございますけれども、冷凍パン生地等におけ る含有臭素酸の調査結果ということでございまして、これは検疫所の協力を得まして最 終的なパンの途中段階、輸入の冷凍パン生地等における臭素酸の含有状況というのを調 査しております。この表に結果はまとめておりますけれども、結果としましては11検体 を測りましたところ、臭素酸としてはアメリカからの冷凍パン生地に0.5ppbという臭素 酸が認められる、あるいはフランスからきているパンミックス粉、これは15.3ppbという 値が確認されております。それで、輸入先国のアメリカにおきましては日本同様、臭素 酸を使っていいということになっております。添加量としましても合法的なものとして は50ppm添加していいということになっていると聞いております。  その他、カナダ、フランス、イタリア、これにつきましては原則使用は禁止している と聞いております。マレーシアについては状況をちょっと確認できておりません。そう いったことで、フランスからのものにはパンのミックス工程で出ていることについては やや解析し切れておりませんけれども、その表の上のところに書いておりますが、小麦 粉処理用として添加されたものではなく、何らかの原因で混入したというようなことも 考えられるのではないかと考えています。  ただ、この0.5ppbあるいは15.3ppbという少量であれば、臭素酸は熱で分解して飛ぶと いうふうに言われておりますので、パンを焼いて最終的なパンができ上がる段階では完 全に分解されるというふうに考えられますことから、この量は問題となる量ではないと いうふうに判断できると思っております。  以上結論でございますけれども、定量限界を2ppbまで向上させた方法、分析法をもっ て市販のパンの実態調査を行った結果、臭素酸の残量は確認できなかった。輸入冷凍パ ン生地等の調査においても検出されないか、あるいは検出されたとしても微量であって 、パンの焼成時には完全に分解されるということと考えられますことから、安全性上、 問題となる結果ではないのではないかと考えております。臭素酸については以上でござ います。 ○黒川座長  ありがとうございました。何かありますか。 ○小沢委員  臭素酸カリウムは消費者の関心からしても歴史的な経過の中では非常に関心が高くて 、特に学校給食に使われるパンなどに使ってくれるなというお母さんたちの運動が非常 に広まった経験がございます。それで、こうやってチェックしていただいて出ないとい うことはひと安心ではあるんですが、それだけ嫌われている臭素酸カリウムは実態とし てどのくらい使われているのか。つまり、使っていないから出ないのか。使っていても 出ないのかが私にはさっぱりわからないんですが、その使用実態はどんなものなんでし ょうか。 ○事務局  行政の方で、実際の使用実態がどうかということについては正直データとしては持ち 合わせておりません。  ただ、我が国の使用基準上は30ppm添加しても構わないという扱いにはなっております 。あとは大手のパンメーカーでありますパン工業会とか、そういったところでは使用を 自粛しているというふうには聞いておりますので、類推でございますけれども、大手の パンのメーカーは使用はしていないのではないかと思われますが、輸入で入ってくると か中小のパン屋さんとか、そういうところではその使用基準に従った形で使っているこ とは想像できると思いますが、繰り返しになりますけれども、正確な実態調査というの は特に行ってはおりません。 ○黒川座長  私もちょっと興味があったんですけれども、実態調査というのはいわゆるお国からど うしても知りたいというアプローチをしても無理なわけですか。化学品の生産量とか、 いろいろデータがとれることもあると思うんですけれども。 ○事務局  添加物という観点からの実態調査というのは生産量統計といいますか、それは実際に 行っておりまして、それによりますとある一定の数字は出て、生産量というか、使って いるデータは出てまいりますので、そういった意味では使っているという実態はあると いうふうに言えると思います。 ○三森委員  事務局にお伺いしますが、この部会は前回まで臭素酸カリウムについての使用という ことについてはJECFAの考えを支持しているわけですね。遺伝毒性があった上の発 がん物質である。ですから、食品中には含まれてはいけないという形の行政をやられて いると思うんですが、今回分析法をかなり低くして、更にモニタリングをしていこうと いうことについては非常にいいことだと思います。現に4ページの表のところで、フラ ンスから輸入されているもので15.3ppbというのが見つかっているわけですね。こういう ものは現に入ってきている可能性があるわけですが、日本としては一切含まれてはいけ ないという形でいるんですが、矛盾がありますね。こういうものに対してはどういうふ うにこれから対応していくのか、お聞きしたいです。  もともと遺伝毒性発がん物質というものは使ってはいけないわけですので、パンのよ うに高熱で焼却することによってブロムとカリウムに分解してしまうので問題ないんだ という論理だと思うんですけれども、現にこういうふうに入っているわけですね。この 辺についてはどういうふうに考えたらよろしいんでしょうか。見つかった場合では一切 食パンについて、そのパン生地については返却処分とか焼却処分をするんでしょうか。 ○事務局  我が国の使用基準上は、最終食品の段階で分解されていればいいという扱いになって おります。従いまして、最終食品といいますのは焼いた後でそれを食べる段階というふ うにしておりますので、輸入の段階で冷凍のパン生地に入っていたとしても、それはそ れだけをもって違反ということにはなりませんし、小麦粉1kg当たり0.03gという量以内 に入っているということが確認できるのであれば、それはそれだけをもって違反という ことにはならないということでございます。 ○三森委員  そうしますと、この15.3ppbが含まれていたとしても、更にパンとして熱を加えること によってほとんどは飛んでしまうというふうに理解してよろしいわけですね。 ○西島委員  実際に70ppm、ppbではなく70ppmぐらい多く入っていても、最終加熱段階で、すとんと なくなってしまうんですね。恐らく臭化カリウムとか臭化ナトリウムになっているよう なんです。臭化カリウムとかナトリウムというのは食塩の中にもかなり入っていますの で、そういう点からこのぐらいの量で通常の加熱をするとほとんどゼロになってしまう のではないかと思います。非常に最終段階で見事になくなるようですね。 ○四方田委員  もう一点補足なんですけれども、水道水中に臭素酸が入っておりまして、1995年前後 だったと思いますが、WHOの基準によると20ppb以下にしろと。アメリカは10ppb以下 という数字が使われているようですけれども、日本でも臭素酸は水道水中からも検出さ れるようです。この程度のものが入っておりましても、パンの製造工程において水から 由来するということも十分考えられますので、添加したものではないのではないかとい うふうに考えております。 ○黒川座長  ほかに御質問はいかがですか。それでは、事務局から今後の取扱いということでお願 いします。 ○事務局  それでは、今回新たに開発していただきました高感度の分析法でございますけれども 、これにつきましては必要な整備を行った上で通知するという取扱いをさせていただき まして、今後のモニタリングといいましょうか、通常監視はこの新しい分析法で行うと いうことにさせていただきたいと思います。  あとは、今回の分析法をもってパン中の臭素酸についてのモニタリングをした結果に ついては、現段階の部会の意見としては、それで残存していないということを確認して いただいたというふうに理解させていただきたいと思っております。とりあえず現段階 での臭素酸についての取扱いについても再度確認をいただいたということで理解させて いただきたいと思いますけれども、それでよろしゅうございますでしょうか。 ○西島委員  この分析法はちょっとよく見ていないんですが、カラムについて大きさとか何かもう 一回見直していただくといいのかなと。基本的にはこれでとてもいいと思うんですが、 カラムについてどのぐらいのカラムを使うとか、どこか書いてあるんでしょうか。これ は固層抽出のカートリッジの方です。 ○四方田委員  カートリッジはウォータースのマックスを使っています。 ○西島委員  それはどこかにちゃんと書いてあるわけですね。ぱらぱらと見てよく見えなかったも ので。 ○四方田委員  報告書の中には書いていないかもしれません。 ○西島委員  もし全国に流すとすると、ちょっとそこら辺も御検討いただくと。 ○四方田委員  一応参考文献に載っています。食衛試の方には書いてあります。 ○黒川座長  ほかにありますか。  最後ですけれども、先ほど来、小沢委員もちょっと申されていましたけれども、本当 にメリットがあるのかないのかよくわからないもので、それで毒性の発がん性とかはっ きりしているものですから、今後の取扱いということをこの次は早急に考えるような機 会が欲しいと思うので、よろしくお願いいたします。存続ということですね。  ほかに事務局の方で何かございますか。 ○事務局  特にほかにはございません。 ○黒川座長  それでは、先ほどの修文の件は大体めどはどうしますか。 ○基準課長  できるだけ早目に、調査会の先生方と先ほどのただし書き以下というところが微妙で ありますので、いずれにしても剤の特殊性みたいなものをどのように考えてただし書き をつくるかというところにかかっていると思いますので、調査会の先生方と相談させて いただいて事務局の方で案をつくり、ある程度のところでまとまりましたら部会の先生 方、特に毒性の関係の先生方にと思いますが、時間的にいつというのは、できるだけ早 目にということでお許しいただければと思います。 ○黒川座長  暑いところですけれども、皆さんどうぞ御協力をよろしくお願いいたします。 それ では、今日はこれで終わります。ありがとうございました。 〈照会先〉厚生労働省医薬局食品保健部基準課 吉田、加藤(2453、2489)        TEL:03(5253)1111(代表)