02/07/19 第5回社会保障審議会児童部会議事録            第5回社会保障審議会児童部会議事録 時間 平成14年7月19日 10:00〜12:00 場所 厚生労働省専用第18会議室 次第   1 開会   2 自由討議「子ども・家庭をめぐる状況について」   3 閉会 ○岩男部会長  それでは、定刻となりましたので、ただいまから第5回社会保障審議会児童部会を開 催させていただきます。  本日は、大変お忙しい中、また、大変お暑い中をお集まりいただきまして、ありがと うございました。  まず、本日の出席状況について、事務局から御報告をお願いいたします。 ○皆川総務課長  おはようございます。  本日は、堀委員が所用により御欠席という御連絡をいただいております。それから、 武藤委員も少し遅れられるというふうに御連絡をいただいております。あとお2人ぐら いの先生がまだお見えになっていませんが、じきにお出でになるのではないかと思いま す。 ○岩男部会長  それでは、議事に移りたいと思います。  これまで委員の先生方から、テーマごとに大変興味深い御報告をいただいてまいりま した。本日は、2つ課題があると思います。1つは、各回の会議において御報告者に対 する御質問であるとか、関連の御意見をいただくということについて十分な時間を取る ということができませんでしたので、まず、それに時間を当てるということが1つでご ざいます。それから、もう一つは、今後の本部会における検討テーマの絞込みについて 御議論いただく、この2つを本日の主な課題というふうに考えております。そのため、 これまでの御報告や御議論を事務局で整理していただきましたので、その資料に基づい て御議論をいただきたいと思います。  それでは、まず、事務局から資料の御説明をお願いいたします。 ○皆川総務課長  私の方から資料の御説明をさせていただきたいと思いますが、その前に、お手元に厚 い『子どもと家庭に関する資料』という冊子を配付させていただきました。これは、表 紙をおめくりいただきますとおわかりのように、これまで2回目に私どもが御説明させ ていただいた子どもを巡る状況、それから、3回目にお話をさせていただいた家庭を巡 る状況あるいは地域を巡る状況、4回目にお話をさせていただいた児童福祉等のサービ スを巡る状況、これらの資料について1冊にまとめております。それぞれ重複があった ところは省いたり、少し新しいデータを入れたりしてまとめさせていただきました。も し、よろしければお持ち帰りいただきたいと思います。  それでは、部会長の御指示に基づいて資料の御説明をしたいと思います。資料1から 3までございますが、まず、資料2でございます。これは、これまでの部会で先生方の お話を少し取りまとめたものでございます。左側には、私どもが1回目にお出しした主 な審議事項としてこういうものがあるのではないかという項目でございまして、右側に は、それに対してこれまでの御発言等について取りまとめたものでございます。  例えば「子どもとは」ということでは、右側でございますが、子どもという特徴をと らえ直す必要がそろそろあるのではないか。従来は、大人との違いを過大評価して子ど もをとらえて政策的対応をしてきたのではないかという御指摘がありました。  それから、「子どもの発達を保証するための理念・指針」などにつきましては、例え ば、サービス提供機関とサービスを受ける人たちのパートナーシップで進めるべき分野 と、虐待等それが機能しない可能性のある分野をきちんと分けて検討するべきではない か。それから、いずれにしろ、子どもの代弁者の視点で情報を発信していくべきではな いか。  子どもの発達課題につきましては、子ども自身の力をつけることが重要ではないか。 あるいは、具体的に小児科での課題の中で、思春期のやせの問題、虐待、いじめの問題 が深刻化しているのではないか。特に、青少年の自立の遅れなどの御指摘もございまし た。  家庭や社会の育成責任につきましては、今現在プライバタゼーションというあらゆる 分野で進んでいるけれども、特に、子どもを嫌う日本の傾向があるのではないか。そう いう中で、私を活かし公に参加するという考え方が重要であり、こういう理念を普及し ていくべきではないかという御指摘がありました。  それから、子育ての社会化については、失われてきた社会の親心を別の視点で地域社 会・行政レベルで復活するということが重要ではないか。あるいは親の子育て力の低下 をどう見て、どのように社会化するのかを検討していくべきではないかということでご ざいます。  それから、「子ども家庭支援のためのサービスの在り方」について。特に、まず、 サービスの体系と提供組織については、次のような御議論がありました。例えば、一般 的なサービスと個別サービス、これは具体的に、多くの人を対象とするようなサービス と、問題のある子ども等を対象とする特殊なサービス、これはそれなりにあるんだけれ ども、その間の中間的なサービスというものをどう考えるか、あるいはそういうものが ないのではないかというようなこと。それから、実績がこの分野では、さまざまある自 治体、こういう個別の自治体の積極的な取り組みを国の施策として取り組んでいくべき ではないかということ。  それから、次は、家庭の状況とサービスの在り方という項目については、次のような さまざまな御指摘がありました。1つは、子育て支援策の有効性の評価をすべきだけれ ども、その場合に、子どもや親の持つ個々のリスクの評価をどうするか、これは極めて 重要ではないか。あるいは、これも類似の御視点だと思いますが、子どもや家族資質に 合った援助の必要性をどうとらえていくか。それから、孤立した子育て環境に社会シス テムをどう対応するかということで、例えば、社会的な親、最適な親、子育ての社会 化。要するに、実親だけではなくてそういう親というものをとらえていくべきではない か。それから、家族機能の不全というものをきちんととらえて対応すべきではないか。 例えば、父母連合という言葉がありましたが、父親と母親が連合して子育てをするとい う連合が最近極めて薄くなっているのではないか。そういう中で、従来あった世代の境 界とか性差の境界というものが薄まりながら、家族機能の不全というものが生じてきて いるのではないか。あるいは育児に悩むこと自体は問題ではないというエールを送るこ とが必要であり、そうしたことを実施していくべきではないか。それから、具体的な御 指摘ですが、例えば、妊娠期から産前産後の訪問等の支援が重要ではないか。それか ら、多様な母親像を前提とした子育て支援をどう考えるか。例えば、就学前の児童の保 育所と書いてありますが、そもそも居場所をどう考えていくかという理念をはっきりす べきではないか。次は、先ほどもありましたけれども、例えば、虐待の分野等で保護者 が介入を望まない分野での介入システムあるいはそういう中で任意的に実施するもの、 行政・司法と段階を追った家庭問題への介入の在り方をきちんと確立していくべきでは ないか。これも別の見方ですが、保護者を子どもの代理人と位置付けられないような場 合のサービス提供の在り方という法体系をきちんとすべきではないか。それから、そう した場合に、分離した親子の心理的援助・ケアシステムをどうするか。  それから、子育てだけではなくて、親育てということも先生方の方から御指摘があり ました。例えば、親になる前の思春期青年期対象のこれから親になる子どもたちにどう 対応していくか。それから、親そのものの教育をどうするか。具体的には、ニュージー ランドのプレイセンターにおける親育ての試みなども御紹介がありました。更には、地 域で親たちが集える居場所機能といった具体的な御提言もあったわけです。  施設の在り方については、今後は施設の小規模化あるいは脱施設化、地域でのグルー プホーム、里親等に支援の軸足を移していくべきではないかというような御指摘でし た。  次の大きな項目で「サービスの資質の向上」がありましたが、例えば、施設等におけ るサービスの質の向上については、保育所・幼稚園におけるサービスの質の改善をすべ きである。その際に、子育て支援策の有効性の評価や子どもや親のリスクの評価、先ほ どもありましたけれども、こういった個々のリスクの評価をどうしていくのか、これが 重要になる。  人材の確保と専門性の向上につきましては、そもそも子育てを支援する人たちに支援 プログラムを社会的・行政的に構築していくべきではないか。  そういう中で、専門家のケアマネジメントの確立ということですが、市町村の諸機関 を通じたケースマネージメント、ケアだけではなくてケースについてのマネージメント を確立していくべきではないか。  対象者へのアクセス等についても、これは私ども用意をしていなかったんですが、い ろいろ先生方から御議論がありました。例えば、今は非常に特定の人について入り口は 開かれているんだけれども、先ほど中間的なサービスということもありましたが、そう いったサービスを利用できないあるいはしない人をいかにサービスに結び付けるか、こ ういう入り口論をきちんとすべきではないか。1つ飛んで、併せて入り口に入ったら出 口の議論がこれまで薄かったのではないか。それから、その上ですが、効率的な情報提 供のためにインターネットによる情報提供はすべきだけれども、一方で、情報格差問題 というものも広がっているのではないか。それから、私ども特に弱い思春期までを視野 に含めた自律支援計画の重要性の御指摘がありました。具体的な御指摘として、例えば 母子保健分野におけるサービスが今はアクセスがなかなかできていない。あるいは、母 子保健のサービスの提供主体の多様化。例えば、新しく発達していきている訪問看護ス テーションの活用等も考えるべきではないか。それから、一般論かもしれませんが、必 要なときに的確・迅速に支援援助ができること。保護者が介入を望まない分野での介入 システムの確立が重要だということ。  最後の項目でございますが、行政等の在り方あるいは関係機関のパートナーシップの 在り方については、右の方2つ目、分権化の問題とサービス供給主体の多元化を今後真 剣に議論していくべきではないか。具体的な1つの在り方として、児童虐待に関する市 町村ネットワークの活用あるいは保健福祉と実質のある連携・ネットワークの構築。そ れから、更には、母子保健活動から保育所などの専門家同士の連携という御指摘があっ たわけです。それから、高齢者サービスと児童サービスの結び付きなどの可能性につい ても検討したらいいのではないか。中でも、市町村におけるいろいろな機関があります から、その機関の連携をどうすべきか。  それから、民間についても御議論がありました、民間のパワーの活用や民間と行政の ネットワークの強化といった御議論がありました。  まだ漏れている分野もありますし、私自身の説明が不十分なところもあるかもしれま せんが、後ほどまた御議論いただければと思います。  併せて、資料3でございますが、こういった御議論を基に、もう一回確認する意味で 議論の視点について「検討メモ」と書いてありますが、議論の視点あるいはこれまでの 検討内容、以下どのように考えていくか等について、私どもの専門官の間で議論した ペーパーがありますので、御紹介したいと思います。  今までの議論などを踏まえて、現代の養育環境を例えば親子の発達、発育、家族機能 の状態、社会生活の形態、個人、家族と地域社会とのつながりの分析を通して構造的に 評価した上で、これからの子ども・家庭のニーズを明確にできないか。そうしたニーズ を明確にした上で、次の行の中ほどからですが、親子が健全に育ち健やかに生活できる 新たな地域社会づくりの方向性を示せないか、その上で、具体的な方策を提言していた だけないか。  これを進めるために、住民、教育、行政、保健医療、企業おのおのに期待する役割、 その可能性を検討していただけないだろうか。  これまでの主たる検討内容は、資料等にも書いてありますが1から4のようなことを 御議論いただいたわけですが、併せて次のようなことも考えていっていただけないかと いうことでございます。1つは、子ども・家庭のニーズと現代の養育環境ということ で、人間としての生涯発達という視点をどういうふうに考えていくか。家族機能の議論 もいろいろ出ましたけれども、例えば、家庭の養育力、家庭以外における養育力の補完 についてどういうふうに考えていくか。一方で、子育ちに本当に必要な養育水準という ものはどのようなものなのだろうか。具体的には、子育ての前提となる家庭運営の知識 とか技術というものは、今どういう水準あるいはどういう状況になっているのだろう か。  21世紀の子育ち親育ち社会づくりの関する基本理念について、例えば、子どもとはあ るいはこれからの子どもの価値、子どもの権利について御議論願えないだろうか。ある いは健全な子育ち親育ちに必要な資源、仕組み。そして、将来の我が国がどんな子育て 社会であることを目指すのかという御議論があるのではないか。  そういう中で、例えば今後の主要な論点として、資料1でございますが、これは1回 目にお配りしたものを今のような御議論を踏まえて、論点として整理するとこういうこ とになるのではないかということでございます。1つは、現在の子ども、家庭、地域社 会の問題状況をきちんと把握していく。子どもの状況については、先生方の御議論もあ りましたけれども、自立の遅れ、思春期の問題、対人関係の問題。家庭の状況について は、子育て力、養育力と言うのでしょうか、あるいは育児不安、虐待など。地域社会の 状況については、地域社会の子育て機能の低下などをしっかり把握し、認識しながら、 子どもと家庭支援の理念を打ち立てていきたい。  具体的には、子どもの代弁者の視点をどういうふうに見ていくか。パートナーシップ とそれが機能しない分野について、これは介入の話などを含めてきちんと確立をし、法 制化も含めて検討してもいいのではないか。それから、子育て・子育ちと社会的支援の 理念をどういうふうに整理していくか、確立していくか。  そういう整理を踏まえて、具体的なサービスの在り方について以下のような分野で検 討をしていったらどうか。例えば、育児をする家庭の支援、子育ての支援、親になるた めの教育など具体的に検討できないか。それから、今度は家庭ではなくて子ども本人の 発達の支援ということで、健全育成をどう考えていくか。特に、思春期問題をどういう ふうな手法で考えていけばいいのか。子どもの中でも今度は具体的に個別のサービスで ございますが、要保護児童対策とか保育対策としての支援をどういうふうに考えていく か。サービスの提供方法、サービスの体系、施設の在り方。そういった地域や施設で提 供されるサービスの評価と質の向上のために、次のようなことを議論したらどうか。  例えば、サービスの評価あるいはケースマネージメント、支える人材の資質、サービ スへのアクセスなど。  子どもと家庭支援を支える組織の在り方については、都道府県、市町村の役割分担、 児童相談所等の在り方、権限の配分、児童相談所等の組織や人材の在り方、市町村にお ける体制の整備、こうしたものを具体的に検討していったらどうか。それから、関係行 政機関や民間の協働については、ネットワークの在り方、NPO、NGOとの協働の在 り方、関連領域と実質的連携の強化などについて御議論していただければどうか。  これら全体をまた横断する問題として、特に、私ども他の児童虐待防止法等の関係な どから、少し児童虐待問題という切り口で、これは論点整理とは別に児童虐待問題への 対応について早急な検討が必要だと思っておりますので、それについては、議論の仕方 についても別途御相談をさせていただけないかというふうに思っております。  最後に、もし、論点を取りまとめていただいた後の今後の議論のイメージでございま すが、今日は主要な論点について自由に御議論いただいて、前にいただきました御予定 等に基づきまして、9月27日に私どもで今日の御議論を取りまとめるということで、主 要論点を取りまとめさせていただきたいというふうに思っています。  また、先ほど申しましたように、こういった大きな問題状況の把握や今後の議論を着 実に進めていくための論点整理、更には、それに基づく議論とは別に、少し児童虐待と いう切り口で別途御議論させていただきたいので、こういう児童虐待の問題についての 議論の進め方などについても、この9月27日にお諮りできないだろうかと思っていま す。  更に、11月以降は大体2か月に1回、もし、9月27日に論点の整理がまとまるのであ れば、その中の特に今イメージしていますのは、どちらかというと総論とか問題意識の 状況はそれぞれの回にまたやるとしても、その中でどちらかというと政策的、具体的プ ログラムレベルに結び付くような検討を少し項目を絞りながら逐次御検討いただけない だろうかというふうに思っております。  以上です。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、ただいまの御説明についての御質問も含めまして、御議論をお願いしたい と思います。そこで、議論を少し整理した形で進めていくということで、参考資料1の 白い○ごとに少しくくりながら御発言を進めていきたいと考えております。それと、た だいまの皆川課長からの御説明に関する御質問というようなことで、まず、第1番目の 「現在の子ども、家庭、地域社会の問題状況」という点について、御質問あるいは関連 の御発言をお願いしたいと思います。 ○阿藤部会長代理  現在の子どもを巡る環境というときには、既に生まれた子どもの話だけが前面に出て きてしまっているんですけれども、子どもの状況、家庭の状況、地域社会の状況という ことから言えば、日本全体といいますか、社会全体として子どもが少なくなっていると いうことが、まず、大きな話としてあると思うんです。ですから、マクロ的な状況とい うものもある程度踏まえた議論をしていただきたいと思います。 ○遠藤委員  私は、今までの討議の中で、お2人の先生からいただいた貴重な御意見というのをこの 場でもう一度確認といいますか、私の方から繰り返させていただきたいと思うのです が、1つは、服部委員の方から御紹介いただいた、そもそも人間の生物体としてたどっ ていくエネルギーという、命への感動といようなことを御発言いただいたかなというふ うに思っております。私は、先生のおっしゃいました、かなり多くの方々が今よりよい 生活が保障されないと結婚しないとか出産しないという現状の中で、まさに生物体とし てたどっていくエネルギーで命の感動というのをどう味わっていくかというのは、非常 に大きな体験だというふうに思っております。そういう意味では、先ほど生まれた子ど もを対象にするということではなくて、子どもを持つということ、それから、性をどう 体験するかというか、ということを盛り込んでいく必要があるのではないかというふう に思います。まとめますと、命への感動をどう体験していくかということを1点入れた いと思いました。  もう一点は、前回の議論だったかと思いますが、これからの家族と家庭を展望した子 育て、家庭支援の在り方という概要を御報告いただいたのですが、その中に、配偶者、 パートナーとの関係性という重要な御指摘をいただかと思っております。これは、まさ に「現代の子ども、家庭、地域社会の問題状況」の中でとらえていかなければならない 視点だろうと思いますので、是非、家庭の状況になるのか、地域社会の状況になるの か、この辺りで「など」という表現の中に多分くくられているのだろうと思いますが、 大きなこれから視点で取り組んでいかなければならないのだろうというふうに感じまし た。 ○岩男部会長  ただいまの御発言に付け加えさせていただきますと、私がこれまでしてきたことの我 田引水のようで恐縮なんですけれども、やはり家庭の中の父母の連携といいますか、あ るいは夫婦の関係、家庭における男女共同参画の実現ということがほかの先生からも既 に出ていると思いますが、その視点は明確な視点として盛り込んでいくといいますか、 ある意味では前提であるというふうに理解していきたいと思っております。 ○松原委員  私も指摘させていただいたところなんですが、かなり実際に政策レベルのところでは 裾野が広がってきていて、ある意味で、かつてのように問題対応型の対策だけではなく なってきているということを考えますと、発想の原点で問題状況というところからだけ 始めていいのかなという気がしていまして、今、地域の社会の中でも、生き生きと子育 てをしている家庭だとか、豊かに育っている子どもたちというのもありますので、そう いう今、我々が参考にすべき活動というものあるいは状況というものもあるので、全部 問題という状況から始めるのか、そうではなくて、もう少し今ある力をあるいは今ある 意味ですばらしい状況というのを取り込みながら、それをサポートしていくというよう な発想で、ここの部分でも少しそういう発想で資料等を集めたり、あるいは場合によっ てはヒアリング等ができればいいかなというふうに考えています。 ○大日向委員  今の松原先生のおっしゃったことと関連しまして、地域社会の子育て機能の低下と書 かれています。確かに、私たちは地域というと子育て機能の低下というふうにとらえが ちなんですが、全国を回ってみますと、非常にいい取り組みが始まっているところもあ ります。地域といっても、では、どこの地域を指しているかによって、実は日本社会は 多様なんだなということを考えさせられまして、地域をもっと細かく見ていくこと、そ して、こういう取り組みがあるんだということを紹介することで、ほかの地域のモデル にもなるでしょうし、萌芽的な取り組みをしていらっしゃるところには励ましの意味も あると思いますので、今、松原委員さんがおっしゃったように、問題状況があるんだけ れども、一方で、問題だけではなく、よい事例も積極的に取り上げるような視点を私も 欲しいと思っておりました。 ○網野委員  先ほど遠藤委員がお話しされたことと一番結び付くのでしょうが、やはり根本にある 生まれてくることとか、生きていくこと、それから、結婚すること、子どもを産み育て ること、これをやはりもう少し軸として、全体をそれからとらえるということは私も強 く同感しております。特に、配偶者、パートナーとの関係、前回もちょっと報告させて いただきましたが、その重要性を十分に認識する必要がありますが、それだけではな く、要するに、よい配偶者関係であるというだけではない、子どもを産み育てる基盤と いうのでしょうか、もっと踏み込めば、例えば一人親であろうと、未婚であろうと、親 が育てるということと社会がともに親と一緒に育てるということを、もう少しパースペ クティブに深くとらえて理解し共感していく方向、何か起こったら、これが問題ですと いうことも大事なんですが、もう一つ、基本になる子どもを産み育てるということの基 盤をもう少し国民的に共通の理解を持てる、そういう方向を議論してはどうかと思いま す。 ○岩男部会長  これまでのいろいろな御発言は、大変大事な御指摘があったと思います。1つは、問 題状況から出発するのではなくて、あるべき姿と言うと強過ぎると思いますけれども、 こういう状況が望ましいんだということで、既にそこに近づいているあるいは既に実現 しておられるような好事例も示しながら、問題がある場合には、こういう問題をカバー していかなければいけないというか、支援をする必要があるというアプローチことを明 確にするだろうと思うんです。  それから、もう一つは、遠藤委員が言われ、また、網野委員が指摘された点だろうと 思いますけれども、更に関連してどなたか御発言がございましたら、もう少しこの点に ついても議論をしていきたいと思います。 ○山崎委員  どのように子どもをとらえるかという問題とも関連しますし、参考資料2の最初のと ころで書いてくださっておりますが、従来大人との違いを過大評価するとか、その違い を強調してきたということが確かにあるわけで、私はやはり子どもというものを、単独 で考えるのではなくて、子ども−大人関係という中でとらえていく必要があるだろうと 思います。また、今の御議論と関連するんですが、我々は生命の連鎖だとか、あるいは 世代の連鎖という縦のつながりと、社会の中での横のつながりをどういうように位置付 けていくかが大切だと思います。よく言われることですが、我々には親が2人いて、さ らに二人の親がいてと、ずっと過去にさかのぼっていきますと同時に、我々が子どもを 産み育てていくということで未来へつながってくわけです。子どもというのはまさに日 本の未来でありまして、そういう未来に対して我々がどのような期待を寄せていくか、 あるいは現在我々は、子どもがどういう社会で育っていくかということに対する大人と しての責任をどう考えているか、こういったこととリンクさせながら、子どもの問題を 位置付けるという視点が大事だと思います。部会長がおっしゃったような、基本的なも のをここで確認し合うということは大事だという気がいたします。 ○岩男部会長  その関連で御質問させていただきたいんですけれども、貧しい社会では、いわゆる楽 しい子ども時代などというのはなくて、子どもは労働力として、労働財としてみなされ ていたわけですね。それがだんだんと豊かな社会になってきて、耐久消費財というよう な言葉を使われるようになった。私は子どもは社会の公共財だからという、自分の子ど もというよりも社会全体の子どもだからというような言葉を使って、大学院の学生に話 をしましたら、その中にやはり自分の子どもでなければ育てるつもりはない公共財なん てとんでもないというような言い方をされていささかショックをうけたんです。とにか く当事者たちの意見がどうであるかということも十分に把握した上で、これからの私た ちの考え方を整理していく必要があると思います。今の若い人たちの子どもに対する考 え方あるいは社会、公というものに対する、先ほど「活私参公」という言葉がありまし たけれども、その辺りをどういうふうに考えたらいいのか。 ○阿藤部会長代理  最初の論点というのは、現在の子ども、家庭、地域社会の問題状況というか全体的な 状況を把握するという意味で、核になるような理念みたいなものがあると思うんです が、やはりもう少し社会の構造的な変化といいますか、そういう変化の中で、今、子ど もの置かれた環境がどう変わってきているんだということをある程度示しておかない と、非常に抽象的な空間の中で子どもの問題が議論されるということになりがちだと思 うんです。例えば、前回あるいは前々回は、今までは3世代家族の中で育っていたもの が、都会の核家族の中で子どもが育つということによって、いろいろな問題が発生して いるのではないかという議論があったように思いますけれども、そういうことで言え ば、例えばそういう3世代家族が減ってきて核家族世帯に変わってきているとか、そう いう非常に基本的な構造変化があると思います。  それから、例えば、離婚率が増えて再婚率が上がっているということから言えば、母 子家庭、父子家庭が増えて、義理親と言いますか、そういうものもアメリカほどではな いにしても、そういう問題も出てくる可能性も相当大きくなっているというようなこと がありますので、当然そこで育つ子どもというのは状況が変わってくるわけですから、 そこら辺をそれぞれについて踏まえた上で、個別の問題を議論していただきたいと思い ます。 ○渡辺委員  非常に複雑で大きな問題に私どもは直面させられているときに、やはり自分自身の 立っている現場での実感ということが一番大事だと思うんです。私は、小児科の入院治 療と外来治療に日々携わっておりますけれども、例えば、新生児室では日々染色体異常 の重度心身障害の赤ちゃんがどんどん生まれてくるわけです。そこから、親子関係や家 族が始まる人たちもたくさんいるわけです。そうかと思いますと、例えば、あるところ まで順調にいっていて、そして、思春期に子どもが服薬自殺をしたり、拒食症になった りして、こんなはずではなかった、こんなに幸せに子どもを育てたはずなのにという親 御さんの嘆きなどもあるわけです。そういったものが全部一緒くたに小児科では日々展 開しておりますけれども、そのときに赤の他人である私どもが、よく知らない御家族に 対してどのようなアプローチをしたときのみ本当のことが伺えるのか。したがって、本 当のことが伺えなければ本当の援助はできないわけですから、どういうときに一番あち らが私どもに心を開いてくださって、私どもも持つ力を最大限に発揮できるかという、 そういった勝負が起きるわけですね。その勝負のときに私が実感するのは、いろいろな 観念的な情報はさておいて、1対1で向き合ったときに、相手が赤ちゃんであれ、お年 寄りであれ、お父さんであれ、お母さんであれ、相手が私を人間として出会っていいと いうふうに、この関係はクオリティがあるという、自分のクオリティ・オブ・ライフの 一部として私という、例えば、医者であってもいいし、看護婦であってもいいし、だれ でもいいんですけれども、私と出会ってもいいというあちらの主体性が発揮できないと きには、どんな専門性があっても、どんなすばらしい議論を展開しても全く無効です し、逆に反発を食らったり、すごい攻撃的な非難を浴びることになるわけです。ですか ら、私どもは、この情報化社会の中に多様な要素を抱え込みながら日々生きております けれども、恐らく出発点はやはり向き合う、こちらが発信するときとあちらが発信する ときの出会いの接点の瞬間というものの質がかなり問われているのだと思うんです。  例えば、幸いにしてこの1週間随分いろいろなケースがありました。1週間でよく なっているケースがあるわけです。例えば、手首を切っている女の子、ヒステリー性の 意識障害で昏睡状態で入ってきて女の子が、1週間入院した後、明るくなって家に帰っ ていける状況があるわけです。そのときに何をしているかというと、お父さんとお母さ んがぶつかり合っていて否定的なことを言っている裏にあるものを、私たちがフェアに 見てあげて、例えば、私はお母さんはヒステリーなのではなくて、これはたくさんの要 求でつぶされていてうつなのではないかと。だから、精神科の先生にちょっと見てもら いたいという視点を専門家として入れただけで、子どもがはっと気がつく。私はよく言 うんですけれども、子どもの荒れる背景には必ずうつな母親がいて、そして、うつな母 親をヒステリーだと思っている、ガミガミの奥さんだと思っている夫がいて、そういっ た誤解が私の中にたくさんの経験としてパターンとしてあるから、あなたたちもそうで はないのという視点を入れてあげることによって、そこではっと気がつくんです。その はっと気がついたときに、それが観念で終わっているかどうかを試すときに、非常に素 朴なんですけれども、例えば「お父さんとお母さん、ばかなことを言うようだけれど も、まず、私の言うとおりにしてちょうだい。お2人で手をつなぎ合って」という課題 を出すわけです。そうすると、手をつなぎ合うときにじっと見ていると、どっちが先に 手を出すか。そうすると、私も見ていますけれども、夫と妻同士がどっちが手を先に出 すかということをまるでスパイのように勘ぐりながら手を出し合って、そして、より追 い詰められている人間の方が手を出さないんですよね。そういった人間対人間の組み方 の質がすごく苦しいものになっているという、そこら辺を見ていくことが大事だと思う んです。  ですから、例えば、染色体異常があって障害があって、1年しか生きられない赤ちゃ んが生まれても、そのときにお父さんが「お前そっくりのかわいい子だ」とか「俺たち の子だよな」と言えるお父さんがいたり、あるいはお父さんがいなければ、私たちが 「お母さんが死にたくなっているのは親心だよ」と言って、苦しんでいる背景にある親 密な関係の思いをフェアに翻訳してあげるというのでしょうか、そういうことができる といいのではないかと思うんです。そういうときに私が思うのは、フィンランドなんで すけれども、フィンランドは児童精神医学がかなり前、1960年代に随分発達していたと 思うんです。それは、とりもなおさず少子化で子どもたちがいなくなってしまった。子 どもたちが少なくなったときに、初めて我が子というふうに言っていられない状況が生 じて、我が子だけではない、私たちの愛するこの土地とこの家とこの村を継いでいって くれる人を大事にしようという視点ができて、そして、フィンランドの児童精神医学と いうのは、変な話ですけれども、ダウン症の子ども1人の教育プログラムをちゃんと1 人ずつ、まるでメニューをつくるみたいにしてつくるんですね。それが実際には不経済 なんですけれども、そういうことが行われている。  それから、私が今見ているフィンランドの仲間たちのやっていることは、例えば、産 科病棟でも医者が大丈夫だと言ったケースは、助産婦が普通にジーパンにTシャツを着 ながら、家族病室というものがあって、この部屋の8分の1ぐらいの部屋に好きなもの を全部置いてあげて、お父さんとお母さんとお友達が好きなように、お産をした後育児 をしていいし、必要なときはいつでも呼んでくれれば産湯にも入れていくしというふう にして、家族がクオリティ・オブ・ライフで触れ合いを本当にいい思い出にしていける ような接点を一刻一刻大事にしていくというんです。それに対する費用が実は掛からな いんだということを言っているんです。例えば、助産婦さんが言っていましたけれど も、毎朝5時、6時に検温をしていた私たちは何をやっていたんだろう、ばたばた母親 の眠りを妨げていたけれども、お父さんとお母さんを一緒にすれば、お父さんはお母さ んを見守っていれば検温なんか必要ない。それぐらい費用も減ったし、私たちの気も穏 やかになったし、病棟全体が非常に温かい、家庭的なものになったというんです。  ですから、先生方皆さんおっしゃっているのは、私たちの体の実感の中に、私たちが 戦後生き延びてきた中に非常に温かい素朴ないいものがあったと。ところが、それが余 りにも素朴であるために、今、新しい情報化社会の中でそれをけなしていかないと物が 売れないということがあると思います。例えば、私は臨床の中で非常にダサイ、言って は悪いんですけれども、学歴が低いとか、センスが一見悪いお母さんたちをじっと見て いますと、そのお母さんたちが本当にしがみつくように自分の家庭を何とか生き延びよ うとしているんですね。それを私が本当に若い先生と一緒に「このお母さんはすごいよ ね、肝っ玉のお母さんだよね」と言ってあげると、暗かったお母さんは見る見る明るく なって、そして、本音を夫にぶつけていくということがあるんです。ですから、日本の 古きよきものが今やけなされる形で消費文化が展開しているという1つのごまかしに対 して、私たちは声を上げていく。  例えば、思春期やせ症の子どもたちのダイエットですけれども、20歳前の子どもたち にダイエットをさせると子宮が発達しませんし、骨はつくれませんし、ダイエットはア ルコールやたばこよりももっと害があるわけですね。その女性のクオリティ・オブ・ラ イフをがたっと下げる可能性があるわけです。つまり、思春期の10歳代のダイエットが 老化現象を早くするので、痴呆症や心筋梗塞などのリスクも明らかに高くなるというこ とが産婦人科や小児科で出てきているわけです。ですから、商業主義の見てくれに対し て本質的なものをきちんと提示していくということを、みんなで手をつないでやってい くということができれば、私は日本はまだまだ間に合うのではないかというふうに思っ ております。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、そろそろ次の「子どもと家庭支援の理念」。既に、今、渡辺委員がおっ しゃったことも理念の問題だと思いますけれども、渡辺委員がお使いにならなかった、 別の言葉で言うと信頼とかたくましさに対する励ましとか、そういったような幾つかの キーワードというものがあるのかなというような思いでお話を伺いました。  それから、もう一つ私たちが考えなければいけないと思いましたのは、例えば、20歳 前のダイエットの問題などでも、正しい情報がちっとも伝わらないという、その情報発 信の仕組みをいかにうまく組み立てていくかというようなことも考える必要がある。い ろいろな情報が今競合するんですね。その競合している中で、正しい健全な情報がちゃ んと必要な人に伝わるという、そこを考えないといけないのかしらという思いで伺いま した。  どうぞ、次のテーマについて御発言をいただきたいと思います。 ○大日向委員  3つ目の◆に「子育て・子育ちの社会的支援」とありますが、先ほど岩男部会長が、 今の若い学生さんは、子どもを公共財とは受け入れられないというお話がありまして、 確かにそうだと思います。私が教えている学生さんもそうですし、もしかしたら私もそ うかもしれないなと思うんですが、なぜ子どもを産むかというと、やはり社会が少子化 だといって危機感を持っているから産もうとは思わないんですね。愛する彼の子どもが 欲しいとか、我が分身が欲しいとか、私的状況から子を産むということは始まっている と思います。でも、その私的状況をずっと子育てに引きずっていくから、育児不安とか 育児ストレスが強まらなくてはならないほど息苦しくなってくる。また、子どもは基本 的には「子育ち」とここに書いていただいていますけれども、自分で育つ力があるけれ ども、それをみんなで見守るということが必要だとなりますと、そこで、やはり子育て をする親、そして、育っていく子どもを社会で支えていこうというところで、「公共 財」という言葉が適切かどうかわかりませんが、社会みんなの宝というところにようや く目が開かれていく、そんな支援が今は本当に求められているというふうに思います。 ○柏女委員  先ほど渡辺委員がおっしゃったことにすごく感銘を受けたんですけれども、実は、渡 辺委員がおっしゃったことというのは、私たちが捨ててきたものをどう生き返らせるか というものだろうと思うんです。もう一つは、阿藤委員がおっしゃった社会が構造的に 変わってきている、その変わってきている構造的な変化ということを押さえた上で、支 援の在り方とか理念を考えていかなければいけない。この2つの中で、この子ども家庭 福祉の問題というのは、いつも行きつ戻りつしているわけですね。  例えば、育児リフレッシュのために保育所でお子さんをお預かりするというような サービスを展開しようとすると、そんなのは育児放棄につながるという話になってし まって、そこが進まない。今、阿藤委員がおっしゃったように、社会全体の変化を地域 の中で支えていくべきではないかという議論と、そうではなくて、それは親がやるとい うか、そういう肝っ玉母さんの幻想があって、それがやるべきでしょうというところで 行きつ戻りつしていて、政策が一向に進んでいかないという状況になっているのかなと 思うんです。それを考えると、私はこの理論立て方で、これは1つ1つが独立した論点 だと思うので、このとおりにつながる、報告書が上から下へ行くということではないと 思いますけれども、何となくこれを見ていて、従来の児童福祉の検討をしているような そんな気分になるんです。そのやり方でいったら、またこれまでと同じ児童福祉だけで 固まった状況になるのではないか、何となくそういう思いを抱きながら、では、どうし たらいいんだろうかというのは、なかなか思い至らないんですけれども、1つの考え方 として、子どもと家庭福祉と言っても、社会の他の状況と全く独立してコップの中のシ ステムを考えているわけではないわけですから、高齢者サービスについては一体どう なっているんだろうか、あるいは障害者サービスについてはどうなっているんだろう か、あるいは教育サービスについてはどうなっているんだろうかというところからの比 較、その議論をどこかでしていった方がいいのかなと。例えば、地域社会の子育て機能 の低下というふうになっているわけですが、高齢者の場合の地域社会の介護機能の低下 といったきに、その介護機能の低下を補完するサービスが非常に多くなっているわけで すね。多くなっていて低下を食い止めているんだとすれば、それがいい状況になってい るのだとすれば、子育て機能が低下するのに支援サービスはほとんどないという状況 で、もし、支援サービスが例えばたくさんあったら、全体としての地域社会の子育て機 能が向上するのであれば、それは高齢者のサービスの整備状況を1つ参考にして、で は、なぜ子育ての問題についてはそれがうまくいかないのかという議論の立て方をして いけないか。まだ、ちょっと抽象的なんですけれども、そんな思いで聞いておりまし た。 ○岩男部会長  それは事務局の方でちょっと比較になるような形で、今の柏女委員の御要望を。 ○皆川総務課長  後でまとめてすべてお答えしようと思っていますが、そういうことは幾らでも可能で すが、今日は論点を整理していただきたいと。 ○遠藤委員  先ほど申し上げましたことに重ね重ねのような状況になりますが、やはり「子どもと 家庭支援の理念」というところでは、生まれてきた子どもをどうするかという社会的支 援の視点プラスやはり子どもを持とうと思う気持ち、それから、出産の在り方というも のを是非この理念の中に1本立てていただけると、社会的な整備ばかりをいくら充実し ても、人は子どもを産む気になるかというところの論点では、やはりもう少しそのもの にアプローチすることが大事なのではないかと思っております。 ○服部委員  前の論点とも重なりますし、参考資料3に「人間としての生涯発達という視点」とい う言葉を入れていらっしゃいますが、今生まれてきた子どもたちも育っていかねばなら ない。そして、親たちも思春期を済ませたばかりで非常にまだ未熟で、それは決して不 思議なことではない。ですから、子育て・子育ち、親育て・親育ちという言葉はどうし ても必要かなということで、全生涯が発達をしていく可能性を持っているということを 非常にポジティブな形でメッセージを社会に送り出すべきで、今の段階で評価をしてし まうのではなくて、まだまだ未知の発達の可能性があるという明るい側面というのは、 親たちへのメッセージでまず育てていく基本であろうというふうに思いますので、やは り長い大きなスパンの生涯発達ということ、親育て・親育ちが要るということだと思い ます。  そして、基本の基本というのは、先ほど渡辺委員もおっしゃいましたし、私も臨床を しておりまして一番大事なことは、ベーシック・トラストかなと、ベーシック・セキュ リティということでしょうか。手首を切った少女が、先生のお話で何か気付く、その気 付く準備性というのは、自分の命や自分の親との関係性の基本にきずながあるから気付 くのであって、そこまで教えにくいんですね。できたら、それを持っていってほしい。 あるいは染色体異常の子どもを抱きながら、我が子なんだと思うお父さんは、そこで教 育されたのではなくて、もっともっと深い、遠い昔からやはり自分の命に対する、遠藤 委員が最初におっしゃってくださいましたとても重要なことなんですが、自分の命に対 するベーシック・トラストがあるから、その場面で先生のお言葉がぱっと心の中に響 く。だから、呼び声は私たちは発していきたいと思うんですが、個々人の中にその呼び 声に目覚めてくれる基盤というのは、言葉としては基本的信頼感のベーシック・トラス ト、ベーシック・セキュリティという言葉を私は精神科でよく使いますが、これはやは り人生というのは遠感で、親は育ち、もう次に子どもが来て、次々に螺旋階段を上がっ ていくように続いていきますから、どこかが出発点ということになりますれば、今生ま れてくる子どもたちに、例えば視点を当てる。そして、遠藤委員のお仕事のような妊 娠、周産期。その前の思春期にどうのこうのとまた返っていってしまうんですが、1つ の切り口は、やはり今生まれようとしている子どもたちの最初の一歩をいかに大切に持 つか、それがベーシック・トラストの最も敏感に形成される時期という、その認識は生 涯発達論の中でも強調すべき点かなというふうに思いますので、周産期だとかあるいは マタニティ・ブルーだとか、あるいは乳児期の幼児虐待に陥っていかないような育児不 安への支援という、どこも大事なんですが、もし、強調するとしますれば、やはり人生 の最早期への非常に深い眼差しを向けるべきだという点が、私の感じでございます。  ありがとうございました。 ○津崎委員  「子どもと家庭支援の理念」の部分についてですが、ここにも書いていただいており ますように、子どもの代弁者の視点、それから、パートナーシップとそれが機能しない 分野というふうな指摘ですね。これについて、基本的に私たちのこれまでの支援の視点 が、要は、子どもと家庭を支えることが大切なわけですけれども、ほとんどが保護者の ニーズを前提にして子どもというものをとらえ、家族を支えてきた。ところが、今はそ うではなくて、パートナーシップがうまくいかないといいますか、いわゆる保護者の利 益と子どもの利益が場合によってはずれる、あるいは対立をするという部分、その部分 に対する子ども側の立場に立った支援の展開が制度として余りないわけですよね。だか ら、基本的には、子どもと家庭支援の理念を確立するときには、一方でパートナーシッ プがうまくいかないときに、いわゆる子どもの立場に立った支援のシステムをどういう 形で社会としてセッティングするのかということをきっちりと押さえたサービスの在り 方ということを確立しないと、親のニーズと食い違う子どもたちの援助が、なかなかう まくいかないということを、特に、相談者の立場から見ましたときの課題としてお伝え しておきたいと思います。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  ほかにどなたか関連の御意見あるいは御質問ございませんでしょうか。 ○山崎委員  ただいまの御指摘は、この問題を考える場合の非常に大事な視点だろうと思います。 したがいまして、下の2つの「子どもと家庭支援のためのサービスのあり方」と「子ど もと家庭支援を支える組織のあり方」の理念との問題は不可分のものだろうと思いま す。その場合、ちょっと先取りして申し訳ございませんが、やはり子育て・子育ち支援 あるいは親育て・親育ち支援という社会的支援の問題を考える場合に、単に家庭生活の 支援だけではなくて、職業生活との連関の問題を抜きにしては考えられないのではない かと思います。まさに厚生労働省ですから労働時間の短縮の問題だとか、あるいはフ レックスタイムの問題だとかいろいろあるでしょうが、そういう職業生活や社会生活全 体の見直し、その2つのバランスをどう取っていくかという問題との関連で、子どもと 家庭支援の理念なりあるいは具体的な組織のあり方を検討する視点を入れていただいた らいかがかと思うんですが。 ○岩男部会長  パートナーシップとそれが機能しない分野というのは、これは理念のところに入れる べきなのか、それとも下のサービスの在り方の方に移した方がいいのかちょっと疑問に 思っていたところなんです。つまり、理念は、例えば子どもの代弁者の視点とか、今お っしゃったような男女共同参画の視点と言ってもいいかもしれませんけれども、そうい った理念の話で、具体的な在り方は次のくくりで議論した方がいいのではないかという ふうに思っております。ですから、今おっしゃった働き方の問題というのは、要するに 、親が家庭責任をきちんと果たすことができるような状況をつくるというのが前提なん ですね。ですから、そういう形の社会的な支援というのでしょうか。 ○山崎委員  働いている人を単に労働者と見るだけではなくて、父親であり母親であると見る観点 を入れて、両方の観点からとらえていくという問題になるかと思います。 ○岩男部会長  わかりました。  それでは、次のくくり「子どもと家庭支援のためのサービスのあり方」に移りたいと 思います。 ○松原委員  そういう意味では2つ発言したいんですが、1つ目は、理念に入れた方がいいのかな と悩みつつ発言をします。総合性とか一貫性ということが非常に大切だと思います。具 体例で言いますと、例えば、自治体によっては保育は児童課とか児童家庭課がやってい ますと。学童保育になると教育委員会あるいは青少年課がやっていますということです ぱっと切れてしまう。子どもを育てている親からすれば、働いている状況に変わりがな いとすれば、3月31日か4月1日になって、すぱっと対応する課が違ってしまうと。あ る意味で、今はまだまだ学童保育というのはこれから充実していくべき分野だと思うん ですけれども、それについては、今度はどこに話を持っていっていいかわからない等々 というようなこと、それだけではないと思うんですが、例えば、保健衛生の分野でも、 今、児童虐待対策の施策が進められています。そういうものが、てんでんばらばらに なって展開をされているあるいは年齢によって今度は逆に、今言いましたように区分を されているということで、子育てをしている親側にしてみると、その辺の分断をされて いるということについては、利用するという入り口の部分でも非常に困惑をするでしょ うし、実際にいろいろなサービスを受けていく場合にも困難を伴うと思うし、ある意味 で施策的に言って、そんなに二重にお金を掛けなくてもいいような部分もあるかもしれ ないので、そういう総合性あるいは一貫性みたいなことを1つ挙げておきたいと思いま す。  それから、2番目に津崎委員がおっしゃったように、児童虐待はそうだと思うんです けれども、社会的な介入が必要なことについては、やはりきちんとそのシステムをつ くっておくべきだなということがあります。と同時に、今その分野で児童虐待の対策を 見ると、親子分離イエスかノーかで分離をして施設入所という、これも足りないです が、在宅でやるサービスというのがほとんどないですね。ここだけではなくて、もう少 し広い分野で考えていって、今まで日本は割合とそういう施設ということで考えてきま したけれども、まとめていただいた中にもあるんですが、子どもの分野でも少し脱施設 化をしていくというようなこと。今は、里親ということも推進されているようですが、 ほかにもいろいろ地域で利用できるサービスというものをどうやって充実していくのか というようなこと、あるいは場合によっては、親子で通所とか宿泊をするような形の施 設もあって、親子分離をしなければいけないケースというのはたくさんあると思います けれども、そうではない場合。それから、虐待ということではなくて、もう少し幅広い 意味での地域での子育て支援のときの在宅部分の充実をどういうふうに考えていくかと いうことも、勿論、入所施設の充実ということもあると思いますが、論点に加えて考え るべきではないかと思います。その2点を。 ○津崎委員  サービスの在り方で、是非この場で十分討議をして押さえていただきたいのは、先般 のときも少し提言させていただきましたけれども、低年齢の子どものサービスの仕方を 基本的にどういう形で行うのか。いろいろな先生方のお話の中から、子育てを支援しな いといけないということははっきりしていますよね。なかなかその辺のところの子育て がうまくいかない。前に資料を見せていただきましたように、0歳児、1歳児、2歳児 というのは、ほとんどが家庭で養育をされている。3歳児以降になると、かなり社会的 な養護が入って保育所であるとか幼稚園というふうな部分で支えられています。ところ で0歳児、1歳児、2歳児の子育ての負担度が増している。それを例えば、保育のニー ズは今後多分上がっていくだろうと思うんですが、いわゆるゼロ作戦というような形で 保育所そのものの拡充で支えていくのか、あるいはもっと違う形の社会的子育てという ことをいろいろ工夫していくのか。例えば、家庭で見るということを前提にした形での 何らかの支え方、そういうものがあるのかないのか。あるいはまた、ベビーシッター的 な要素を社会として促進させて、親の子育てをサービスとして取り込みやすくするのか とか、あるいはファミリーサポート事業をやられていますよね。ああいう形でもっと協 働的な子育ての支援みたいなものを推進していくのかとか、あるいはまた0歳児、1歳 児、2歳児辺りの母親の労働力を企業が取り込むのであれば、その分についての保育も 同時に企業が取り込むような、いわゆる企業内保育的なものをもっと推進していくよう な形にするのかとか、その部分の方向性がはっきりしないと、例えば、これを全部保育 所で対応していきますとなったときに、前に説明していただいた内容では、保育の財政 的ウエートが相当大きいわけですから、更に0歳児、1歳児という部分がそこに大量に 入ってくるとなったときに、本当にそういうふうなサービス体系が取れるのかどうかと いう不安があります。是非その辺の低年齢の子育ての部分を、社会としてどういう形の サポートということが最も合理的で、あるいは実際上の効果という面でも基本的にいい 形なのかということを相当詰めないといけないのではないかというふうに思います。 ○柏女委員  それに関連してなんですけれども、その議論をするときに、子育てというのはだれの 責任で行うのかということが絶対問題になってくると思うんです。例えば、自分の子ど もをどこかへ連れて行く、ディズニーランドでもいいんですけれども、ディズニーラン ドに連れて行く、これは親が自由にやればいいということですね。もう一つは、親が子 どもを外に全く連れ出さないという問題があると、これは虐待の問題ですから、公が子 どものために代弁をして、公が必要なサービスを子どもに提供するということはよくわ かるんですけれども、保育の場合にはどちらの仕組みになるのか。つまり、親が自主的 にやるべきということなのか、あるいは公が肩代わりをすべき分野なのか。保育は現在 は、公が肩代わりをするというシステムになっているわけですね。だからこそ、市町村 が保育所と契約を結んで提携をするというやり方になっていて、そして、保育所長さん には子どもの監護、教育、懲戒について必要な措置を取る権限が親とは別に与えられて いると。つまり、公の責任で子どもの社会化を図るという仕組みに今はなっているわけ です。幼稚園はそうはなっていないわけですね。幼稚園は親が自分の子どもを委託する という形になっているわけです。この保育の分野を公がやるのかあるいは私がやるのか という議論が直接契約制をどうするかとか、そういう議論になっているのだと思うんで すけれども、そこを本当にそういう二者択一の議論にするのか、あるいは保育所に入所 するのでも親が直接入所する分野もあってもいい、あるいは公が入所の決定を行うもの があってもいい、あるいは司法決定で家庭裁判所が入所の決定を行う、児童養護施設と 同じようにですね。あなたは保育所に通わせなさいという命令を出す分野があってもい いというふうに、入り方、サービスの利用の仕方をもう少し議論しないとならないなと いうふうに思っています。もし、今までの議論の仕方だと、例えば、児童養護施設は公 がやる部分の比重が大きいから措置制度でいきましょう、それから、保育所については 親が直接契約してやれる部分が多いから、幼稚園のような形に持っていきましょうと か、何か二者択一の議論になってしまうような気がして、特に保育の分野というのは分 かれ目のところですので、慎重な議論が必要なのではないかというふうに思っていま す。 ○網野委員  「子どもと家庭支援のためのサービスのあり方」のところで一番関連すると思うんで すが、主要な論点でむしろ1つ独立して検討テーマとして加えていただきたいと思うん ですが、専門職をどう確立するかということです。これは、組織の在り方とも関係する でしょうし、先ほど来議論されています理念とも関係するかと思うんですが、例えば、 ちょうど今お話がありましたような保育所、幼稚園というようなことで例を挙げます と、保育士というのが今度の法律改正で定められたことは、ある意味で私は子ども家庭 福祉の中で最先端でニーズに対応しなくてはいけない分野での専門性の再確認、再検討 が始まっていることを意味していると思います。その内容は、私は、保育士のような職 あるいはそのような専門性というのは、社会的親としての典型の内容だと思います。そ ういう点で言えば、実の親と一緒に子育てにかかわる知識とか技術とかマインドという のは、ある意味で今、一番求められている部分でして、ひょっとしたら、それは中学校 や高等学校の教育や地域でのかかわり、家庭もそうですが、その中でだれもがそのとき から身に付けてもいい知識や技術がかなりあるのではないかというふうに思います。そ ういう意味では、まず、専門性の背景として一番バッググラウンドになる、基礎とな る、場合によってはジェネラルな部分もあるかもしれませんが、そういうものを専門家 を養成して、縦割りでがっちり組み込んでではなくて、だれもがそのような知識、技 術、素養を持って欲しいという部分の専門性ということも1つ保育士のような例が典型 だと思うんですが、それは子育て支援とかあるいは「支援」という言葉をもっと超え て、一緒に育てるという、ある意味では児童福祉法の第1条の理念に沿ったものだと思 いますが、そのような趣旨からも、まず、専門性ということで1つ、それをどう検討し ていったらいいかというのがあるかと思います。  更に、具体的にはさまざまな専門職が縦割り型で今成立していますけれども、保育士 にしてもケアワーカーとともにソーシャルワーカーの部分がこれだけ求められてきてい る。ちょっと細かいことで恐縮ですが、例えば、児童福祉施設で児童指導員とかあるい は児童館、児童遊園での遊びを指導する職員というような人たちの専門性の厚さ、薄 さ、深さ、広がりというのは、全くばらばらだと思います。例えば、子どもの権利擁護 のために一番汗水垂らさなくてはいけない部分も含めて、従来から何度も検討されてい ますように、このような資格でいいのかという検討がやはり必要だと思うんです。そう すると、子ども家庭ということでの子どもが育つこと、あるいは育てることへの一番専 門的な、非常に深い分野を踏まえた専門職を縦割りではなくて、ソーシャルワーカーも ケアワーカーももう一度視野に全部入れ直して総合的に検討する。その拠点は、例え ば、児童相談機関のようなところかあるいは施設なのか、あるいは例えばグループホー ムをつくるときにも、そのような人はすごく専門性があった方がいいかとか、そういう 総合的な視点での子ども家庭福祉のための専門職、これは、これだけ重要な議論をいろ いろしていく中では欠かせないと思います。  特に、山崎委員もおられますし、武藤委員も参加されていますが、学校教育との関係 で言いますと、なぜ生活総合学習がこのような形で重視されてきているか。実態はもう 本当に進み始めていますよね。どちらかというと、子どもたちは非常に喜んで、先生方 が苦労しているという、やはり養成とか資格取得のプロセスで、もう今の状況では難し いのではないかという部分が、例えば、教育の分野でもあると思いますし、あるいは医 療、保健を含めて福祉などの分野での養成の在り方として、ここで論じられていること は、かなり関係していると思いますので、ちょうど児童福祉法の第3条が、第1条、第 2条の原則はすべて児童にかかわるものについて適用しなくてはいけないというような 趣旨があるのと同じように、やはりこれだけ大事な子どもの育ちとか子育てにかかわる 専門職に関しても、第3条のような趣旨を今はしっかりと検討すべきであると思いま す。余り縦割りで、これがあるからこの組織に見合う専門職、これがあるからこれに見 合う専門職ということではない、まず、総合的にもう一度体系も含めて議論することが 必要なのではないかと思います。 ○岩男部会長  今、網野委員が御指摘になりましたことは、非常に詳しく御説明をいただいたわけで すけれども、恐らくここのサービスの評価と質の向上の支える人材の資質というような ところで、保育士に限らず、広く支援をする側の人材の専門性の問題がここに入ってく るのではないかと、私はそんなふうに理解しておりました。  今、網野委員が御指摘になったことも含めて、松原委員がおっしゃった一貫性とか総 合性の問題あるいは今の縦割りの問題もそちらに入ってくるのかもしれないんですけれ ども、支援の一貫性、総合性あるいは津崎委員が言われた多様性みたいなものも、この 理念の方に少し大きな考え方としてしっかり入れていく。そして、具体的なところは勿 論具体的にサービスの在り方を考えるということだと思いますけれども、重要なポイン トは理念の方でしっかり書いておくということも必要ではないかとような感想を持ちま した。 ○服部委員  育児をする家庭の支援のところに「親になるための教育」という言葉がございます が、「教育」という言葉が少しなじまない。つまり「親自身の自主的成長への支援」と いうような言葉の方がなじむのではないかという気がするんです。といいますのは、は 古くから家庭教育教室が実施され、それぞれ今まで歴史を持ってやっておられました が、なおかつ、親というものが実際の親性というか内面性が育つとは限らなかった。つ まり、与えられる教育ではなくて、人間として十分成長するチャンスがあるということ で、親自身の成長を支援するという形が大切と思います。そして、特に子育てグループ というのが今のキーワードかなと思うんです。つまり、グループ子育てです。核家族化 し、都市化した今を嘆いていても始まりませんし、そして、親たちがほとんど群れを経 験していない。子ども期から核家族化で対人関係が非常に狭い、それは個人の資質と関 係なく経験量で圧倒的に少ないということを考えますと、やはり社会の中で孤立した家 庭がこれから先開かれて、非常に自主的につながりながらグループをつくり、そこで対 人関係のスキルを身に付け、子どもの情報も親同士の中で得ていく、あるいは経験から 学ぶ、親自身が学んでいくという、そこの理念がとても大切と思います。できる限りよ い、つまり、親を壊さないで親自身の自主性がいかにうまく伸びるかということを公的 支援は配慮すべきかなと。公的なサービスというのは、例えば、講演会をするとか何か イベントをするとかがあるんですが、そこで解決されることも一部ないわけではないん ですが、本当に息が長く続くのは、やはり地域の中で子育てのグループができていくこ とです。そして、子どもがやがて小学校に行く。例えば、小学校のいじめの問題を私は よく見るんですが、1人のいじめられている子どもがいる場合、クラスの親たちはほと んどそのことを知っています。そのときに、幼児期からのつながりのようなものがあり ますと、親同士が自分の子どもの属するクラスの中で動き始める。そういう意味で、ま たしても生涯発達なんですが、幼児期だけではなくて次の学童期、思春期にもつながっ ていく、大げさに言えば地域の教育力にもなるのでしょうけれども、やはり子育てグ ループというキーワードが大切で、親自身の成長、自主的な成長の支援という言葉がこ れからの支援の理念でもあり、サービスの在り方でも考えられるのかなというふうに思 います。 ○大日向委員  先ほど津崎委員がおっしゃったことと関連しますが、子育て支援のサービスの在り方 をどういう方向を目指して考えるのかを明確に論ずるべきだと言われまして、私も本当 にそのとおりだというふうに思います。そのときに是非とも考えておきたい点は、保育 所保育を拡大することが家庭の、親の育児放棄につながるという問題の立て方がはたし て適切なのか否か、検討が必要だと思います。たしかに、一部には、保育所待機児童を ゼロにすることで、親の育児放棄や、育児の負担を下ろし過ぎることになるという指摘 は当たっていないとは思いませんけれども、必ずしもそうではないという考え方が必要 だろうというふうにも思います。  先ほど、部会長が家庭の中の問題、男女共同参画の視点を是非入れておくことが必要 だとおっしゃってくださいましたが、私はこの部会が、岩男先生が部会長でいらっしゃ ることをとても心強く思っております。男女共同参画社会の実現は、21世紀の日本社会 が進むべき明確な1つの道だと思います。多様なライフスタイルを認める、これは本当 に尊重しなくてはいけないけれども、社会全体が少子高齢社会に入って、労働問題も含 めて子育てを考えるというときに、男女共同参画の視点を明確に打ち出した上での子育 て家庭支援でなくてはならないと思います。  その参考として、ニュージーランドの例を御紹介したいと思うんですが、ニュージー ランドはいろいろな保育支援をしております。そのときに、2つとてもいいことを言っ ているんですが、1つは、先ほどの服部先生もおっしゃったように親を育てる支援の必 要性です。最初から立派な親はいないということなんですが、親を育てるために具体的 に各地域にいろいろな保育の施設をつくっています。そこに投ずる予算、お金というの は決してむだではないと言っていることなんです。例えば、保育に掛けるお金というの は、保育者の雇用にもつながるわけです。社会的雇用にもつながる。また、子どもを一 時的にしろ保育所に預けることによって、親が、女性が社会的労働に入ることができる 。日本はその点はとかく保育園にお金を掛け過ぎて、税金の不公平な使い方をしている というような議論が先行するところがあると思いますが、私はその点は、ニュージーラ ンドの子育て支援の基本的な理念に学ぶ必要もあるだろうと思います。もっとも、だか らといって、ではどんどん専門職の方にお任せすればいいわというような育児放棄につ ながらないような、対応勿論大事です。そのためにも、網野先生が言われたような、専 門性のある子育て支援体制というものを早急に構築していく必要があるだろうと思いま す。 ○阿藤部会長代理  今、私がお話ししようとしたことを大日向委員に先に言われてしまったところもある んですけれども、この保育の問題というのは、やはり男女共同参画の視点と非常に微妙 に議論の中ではコンフリクトを起こして、いろいろ意見の違いが出てくる場面だと思う んです。具体例として、たしか日本でも公務員は育児休業を3年間という話が、私の印 象では余り議論がなく、すっとそちらの方向に行ったように思うんですが、国際比較的 に見ると、育児休業3年間というのは、ドイツとかオーストリアという、割と考え方と して伝統的な家族を重視するような国で取られていて、北欧などは育児休業というもの はもともと最初に導入したにもかかわらず、1年とか1年3か月とかある程度限定し て、その後保育サービスでやっていこうという考えがあるように思うんですが、その辺 で何となく日本の場合は、余り質的な違いの意味を議論せずに、どうもそっちの方向へ 行ったのかなという感じもちょっと私はしているんです。北欧の場合には、基本理念と して男女共同参画ということがあって、勿論、育児休業の場合でも男も女もということ があるわけですけれども、やはり、職場復帰を早くして、そして、女性の労働力を生か すと同時に、女性自身が社会的に貢献できるようなシステムとして考えられていたと思 うんです。これを比較的保守的な価値観の強い中で、例えば、育児休業3年間という と、どうしても女性がほとんど育児休業を取る。そうすると、実質的に職場復帰がだん だん難しくなってしまうという問題が背後にあるように思うんです。ですから、その辺 を余り議論なしに、例えば、育児休業3年間、4年間は非常に結構ですという話になっ てしまうと、男女共同参画という視点とそごを来すというところがあるように思うの で、是非この議論の中でもそういう具体例もそうですが、子育て問題というものと男女 共同参画というのは、ペアで常に議論してほしいというふうに思います。 ○岩男部会長  一言今のお話に付け加えますと、今はアメリカを中心にしてこの問題について言って いるのは、ワーク・アンド・ファミリー・バランス又は、ワーク・アンド・ライフ・バ ランスなんですね。必ずバランスという言葉が出てくる。そこで、多くの人々も納得も し、安心もしということ。  それから、私たちは子どもの代弁者の視点と言っておりますけれども、例えば、長時 間保育をしてほしいというような要求が働くお母さんたちからあるわけですが、やはり 子ども自身も保育所にいればくたびれるんですね。ですから、そういう子どもの視点は 常に失わないで、やはりあるところでは、これは行き過ぎですよというようなことをは っきり言わなければいけない。そうしないと、結局、男女共同参画社会の実現がうまく いかなくなるという今の御指摘だと思います。 ○津崎委員  子どもを支えますときには、特に、低年齢の子どものサポートも非常に重要なテーマ なんですが、一方で、やはり思春期あるいは自立をしていく年代層の子どもをどう支え るのかという部分ですよね。この自立支援のサポートのシステムというのは、今はほと んどこれといった施策がありません。ところが、一方で社会的自立がうまくいかないと いう現象が広がってきている。だから、そういう自立を支援していくときに、どのよう な具体的で総合的な支援の施策ということがあり得るのかということも、低年齢とまた 違った意味合いの施策が要るような気がします。「子どもと家庭支援のためのサービス のあり方」の中に、自立年齢層の支援体系ということもきっちりと議論して、自立を支 えるシステマティックな支援の在り方ということも非常に重要なテーマではないかとい うふうに思っていますので、そのように1つ指摘させていただきます。 ○岩男部会長  それでは、次のくくりにも移りますので、どうぞ関連してお話しください。 ○山崎委員  阿藤委員あるいは津崎委員のお話とも関連するわけですけれども、1つは、国際比較 の問題をこの視点の中に入れることが必要だと思います。先ほどニュージーランドの話 が出ましたが、阿藤委員の方からもドイツの育児休業3年という話が出ました。あれは バイエルンなどを中心とした保守的なところで実施されていて、今の政権党のSPD支 配のところでは北欧型がやられており、両方ございます。ただし、バイエルンの場合 は、必ず職場復帰を保証した形の3年間の育児休暇ですし、そういういろいろなことを もう少し我々はきっちり調べることが必要だろうと思います。また、津崎委員からお話 が出ましたが、ドイツの場合も自立支援のためといいましょうか、社会教育施設が非常 に充実しており、日本で言いますと児童館の問題等と関連しますが、学校教育と社会教 育が非常に密接に連携して、大体16歳とか18歳ぐらいまで自由に、しかも、夜間かなり 遅くまでそういう施設に出入りすることができますし、専門の指導員がおります。それ こそ子どもの支援の問題を幅広くトータルに考えております。したがいまして、そうい う点で次の話と関連するんですが、ヨーロッパの国々でも子どもの問題、少子化の問題 が非常に大きな問題になっており、そういう問題を解決するためには、まず、隗より始 めよということで官庁が、子どもの問題を中心にした、省庁連絡会議というようなもの を持ちまして、子どもの問題を先ほどお話しに出ました統一性とか一貫性とか多様性と いうものをもってきちんと考えるシステムができておりますので、案外そういうような ことも今後提言する場合に、考えていく視点の1つに入れてもいいのではなかろうかと 考えております。 ○柏女委員  ちょっと時間がなくてこれから出ないといけないものですから、全体を通じてという ことでもよろしいでしょうか。1つ、先ほど岩男部会長のおっしゃった、原理原則的な ことは「子どもと家庭支援の理念」のところで少し整理したらどうかというお話がござ いましたので、ここの視点の中で営利性の視点も少し議論できないかなというふうに 思っています。  それから、もう一つは、子ども家庭福祉と他のサービスと違う固有の専門性の視点、 これに何があるのだろうか、ないのだろうかという議論が、ここで整理されるといいか なというふうに思いました。  それから、もう一つは、最後のところで「子どもと家庭支援を支える組織のあり方」 ですが、ここの中で、1つは、障害児問題をどうするかという議論を入れておかないと いけないのではないかというふうに思いました。御案内のように、児童相談所の相談件 数だけで言えば、半分以上が障害児の相談ということですので、この児童相談所の在り 方を考えるときにも障害児問題をどうしていくのかということは切っても切れない問題 になると思いますので、是非それを入れておいた方がいいのではないかなと思います。  それから、もう一つは、先ほど来、私も申し上げております公の関与の在り方論とい うのをここで1つ入れていく必要があるのかなというふうに思います。  それから、最後ですが、先ほど皆川課長さんの方からお話がございました、私の方で 申し上げた、子どもの家庭福祉サービスと他の福祉サービスあるいは教育サービスとの 違いを評価していくときに、是非それをお願いしたいというふうに思うんですが、子ど も家庭福祉サービスの中のいろいろな他の分野というものの比較もお願いできればと 思っています。例えば、里親制度の改革の中で、今回の予算で里親に委託された子ども のレスパイトケアが公費で行われるというサービスが入ったわけですね。というのは、 社会的養護は恐らく公全体でやっていこうという話だと思うんです。つまり、これは子 育てをしている親のレスパイトを公で行うということの子どもの分野では初めてです ね。高齢者、障害者ではリフレッシュ保育とかリフレッシュ介護とかそれは全部公で、 勿論、費用負担の関係とか仕組みの問題はありますけれども、一方は税金で、一方は介 護保険でみているわけで、そうしますと、では、今残っているのは何かというと、一般 の子育て家庭のためのレスパイトが制度としてないわけです。これをどう考えていった らいいのか。つまり、子どもを乳児院に預けて2泊3日でスキー場に行く。これに対し て公費を投入するのかしないのか、この問題です。ここをやはり議論しておかなければ ならないのではないかというふうに思います。  それから、もう一つは、介護や子育てに対する金銭給付の問題です。例えば、今回の 里親制度では親族里親が入るというふうに言われています。親族里親というのはおじい ちゃん、おばあちゃんあるいはおじ、おばが子どもをみるときに一定の条件のもとで金 銭を給付するというシステムだろうと思いますが、介護の場合も確か議論になったと思 うんですが、介護保険で家で高齢者を見るときにお金を提供するか否かという議論が あって、それは家庭の中で行う介護を奨励することにつながるということでそれはなく なったわけですけれども、その議論を一体どう考えていったらいいのかというようなこ とも併せて、公の関与の仕方、あるいは子育ては一体だれが行うのかという議論を一度 詰めておかないといけないのではないかというふうに思います。  以上です。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  今のお話を伺っていて、以前、直接給付をすることに対するお役所の方からの反論 で、おむつを買うならいいけれども、音楽会に行くのに使われてはいけないとおっ しゃったので非常に驚いて、音楽会に行くというのは親が豊かな気持ちになるのであっ て、これは当然子育てにプラスになるのに、おむつというように非常に直接的なものし かお役所では考えられないのかと思って大変驚いたことがありまして、今のお話を伺い ながら思い出したところです。 ○松原委員  2点ありますが、1つは組織の在り方ということで、児童分野の措置という制度を残 してきまして、保育あるいは母子生活支援施設と変わってきた部分はありますけれど も、理念のところで子どもの代弁者ということを考えて、これを将来、措置という社会 的な制度として残すのか、もう少し別の形の社会的な介入というものを新たに起こすの かという議論は、一方でしなければいけないと思うんですけれども、現状で言う措置と いうのを前提にしますと、割と我々がサービスを提供するなら、それは受けていなさい と。いつまでやるかわからんし、どういう内容かもこちらに任せなさいみたいなことが あって、余り法律は詳しくないので、前に「社会的」という言葉をつけますが、社会的 な契約という側面がないんですね。こういうサービスを提供します、こういう形でお互 いに総合評価しましょう、こうなったらもうサービス提供をやめますよというような形 のものというのが、それぞれの組織で体系立ててやれないかなというのが1点。  これは、別の形になるんですが、NPO、NGOとの協働というのが書いてあるんで すけれども、例えば国とか都道府県が直接NPO、NGOと契約ができるかどうかとい うものも考えていいかなと思うんです。今までは補助金という形の申請はシステムとし てあるんですが、そうではなくて、ある一定のアクション・プログラムに対して、都道 府県なり国がその必要性を認めて、契約関係を結んで2年とか3年単位でお金を出す と。それの公募から審査、評価については、それぞれの公のところが第三者を組み込ん でやるというような形で、全部が全部そうなるというのは難しいと思うんですけれど も、少しそういう民間の先駆性というものを支援し、逆に、政策的なものに取り込める ようなシステムとして、そういうことも考えられないか。NPOはNPO、NGOはN GOでやってくださいと、そこで現場レベルで協働しましょうということも大切なんで すが、もう少しそういう育成とか支援というところでの協働というのが考えられないか なという、この2点を考えています。 ○岩男部会長  ほかにいかがでございますか。  ただいまの御発言の関連なんですけれども、行政機関とNPOとNGOとが契約する ということは、別に問題は全くないように私は思っていたんですけれども、それはいか がなんですか。 ○皆川総務課長  それは、いろいろな仕組みの下で、それぞれに応じて決まってきます。ただ、一般論 から言うと、基本的には全く問題はない。ただ、いろいろな補助金とかお金の流し方に よっては、その運営主体をどういうふうに各補助金なら補助金の適下法でどういうふう にとらえていくかと、経理とか生産の仕組みの中で可能かどうか、そういうことは見る わけで、それは各法律に応じて従う。しかし、一般論としてNGOだろうが公人だろう が公的機関と契約するというのは全く問題ないし、現実にかなり行われているというこ とです。 ○岩男部会長  特に、この最後の○の部分について御発言がございましたら。 ○津崎委員  組織の在り方の中では、児童相談所のことも幾つか書いていただいていますので、一 言だけ触れておきたいんですが、児童相談所の具体的な相談業務は実務的に言います と、大きく3つの分野に分かれるんです。1つは、要保護児童の相談の分野と、柏女さ んも今言われてましたが、障害の相談の分野と健全育成の分野、その3つの分野が多少 ニュアンスが違ったり、仕事の具体的な質等も違っているんです。今、虐待等の急激な 増加で要保護児童がほかの機関が余り代替できないということで、相談所の業務そのも のが要保護の部分に相当エネルギーをそがれるという事態になってきている。そういう 意味で、ここの部分は相談所しかできないですから、それについては、今後とも主導的 な役割を担っていかないといけない。しかし、体制としては限度がありますから、そう なってきますと、健全育成の分野、それから、障害の分野をある程度他の機関に分散と か整理ということも考えていかないといけないだろうというふうに思っています。  例えば、件数そのもので言いますと、さっきも指摘がありましたように、半分は障害 の相談なんですね。今、児童福祉司の数はいろいろ努力していただいて少しずつ増える ような対応をしていただいているわけですが、心理判定員というようなことになってき たときには、その対応がいまひとつ定かではない。  一方で、心理判定員は今何に手がそがれているかというと、療育手帳の判定業務に追 われているんですよね。養育手帳は御存じのように、子どもの場合は児童相談所でしか 判定機能が持てないという形になっています。併せて、2年に1回原則再判定をしなけ ればいけない。つまり、その分野の業務量がすごく多いために、いわゆる要保護の相談 業務の中に心理判定員がなかなか入り込んでいけないという事態になっています。だか ら、そういう意味では、やはり要保護ということを前提に児童相談所が動くということ になれば、療育手帳の判定業務は、場合によっては児童相談所でなくてもほかの機関で もできるわけです。例えば、身障手帳であれば、いろいろな機関が指定的な形で分散し てやっているわけですから、療育手帳もそういう形で他の機関でできるような手だてを 考えるとか、総合的な役割分担を考えないといけない。一方的にいろいろなケースが集 中してきて、その業務の全体を児相がしないといけないという形になったときに、本当 に必要な活動ができないという事態に今置かれているということがありますので、その 辺の役割分担ということを今後検討していただければというふうに思っておりますの で、一言その点だけを触れておきたいと思います。 ○岩男部会長  非常に大事なポイントで、これまでに入っていなかったところだと思いますので、是 非、検討課題に取り込んでいただきたいと思います。  ほかに何か御発言はございますでしょうか。 ○渡辺委員  津崎先生の御発言のちょっと前の御発言に関して、私も追加したいと思ったんですけ れども、支援の場合に最早期、乳幼児期の問題、それから、思春期の問題の2つがある というふうにおっしゃられましてそのとおりだと思うんですけれども、2つは、相関連 し合う2つの柱だと思うんです。というのは、小児科では13歳の妊娠などが増えており ますと、もう思春期は親になっていく準備であるわけです。ですけれども、その思春期 の10歳代の妊娠の背景には、乳幼児期に満たされなかった寂しさをそういう形で癒して いるということがあるから、思春期の問題の背景には乳幼児期のその子にとっての寂し いといますか、満たされない身体感覚レベルの記憶があって、そして、例えばニュー ロ・サイエンス的に、ダイアグラム的に申し上げますと、やはり人間の発達というのは 単純化はできませんけれども、少なくとも二段発射ロケットみたいに、乳幼児期の0歳 から3〜5歳の脳の発達が急激にありますと同時に、今度は10歳から15歳まで急激に脳 がまた高次機能を発達させますし、この2つが大事なんですけれども、その2つは相関 連し合っていると思うんです。例えば、私はこの2週間に見た子どもたちのお母さんた ちですけれども、育児ができないあるいはしにくい背景には、産後のうつがあるんです ね。産後のうつがありながら隠されている。そして、更に、産後のうつになっているそ の前の思春期には、思春期の摂食障害があるんです。ですから、思春期の摂食障害は、 今、国際的に育児障害のリスクだというふうに言われていて、私どももそういう文献を 読んでおりましたけれども、実態として摂食障害の人たちは育児にすごく苦しむ、育児 をしにくい。ですから、思春期と乳幼児期とが、やがて親になっていく人たちの大事な 2つの柱であって、この2つはどっちが大事というのではなくて、相関連し合っている という視点で、思春期のワーカーと乳幼児期のワーカー、つまり保育師さんと、それか ら、いろいろな児童の思春期の人たちがともに勉強し合っていったり、ともに一貫した ライフサイクルの土台という辺りのトレーニングしていくといった社会支援システムと いうのを少し強調したいと思います。 ○岩男部会長  ほかに御発言ございませんでしょうか。  それでは、そろそろ予定の時間にまいりましたので、いろいろ大変貴重な御意見をい ただきました。これを事務局の方でまた整理をしていただきまして、次回にもう一度検 討するというふうにしていきたいと思っております。  部会の進め方について、皆川課長の方から御説明をお願いしたいと思います。 ○皆川総務課長  今日は本当にありがとうございました。取りまとめについては、ほとんどの御意見に ついて対応させていただきたいと思いますし、我々が言葉足らずで表現をしたところ は、かなりの先生方と同じ思いで表現をしたと。そういうものについては、また改めて もう少しわかりやすいように記述をしたいと思います。  ただ、2〜3点私どもの気持ちを少し申し上げたいと思います。1つは、これからあ と10年、20年掛けてずっとやっていくなら別ですが、2年ぐらいの単位でやるときに、 やはり審議のコアをどこに置くかということが重要だと思います。具体的に申します と、例えば、いろいろな他の審議会でやられている事項も相当ありますし、今日の御発 言でも与件とか視点としてとらえながらも、我々の審議は一体どこに中心を当てるべき か、こういうことは私ども事務局としてはインターフェイスとして、我々として御提示 をさせていただきたいというふうに思います。  それから、もう一つは、我々も余り書かなかったんですが、今日のお話を聞いて、1 つは、今度は一方でいろいろな制約条件があります。今日のお話にも出ましたが、お金 の問題とか人材の問題。そのときに幅広い議論を先生方にもどういう優先順位をつけ て、議論していただけるのだろうか、そういう視点はなくていいのかという感想があり ます。  それから、もう一つ、最後ですが子どもの問題、子育ての問題が、勿論私ども役所と してはかなりの重点があるし、それから、当委員会というのはそういう場だと思ってい るんですが、かなりの場所で議論がされています。具体的に言うと、政府だけではなく て与党等の中でも議論されています。これは、物すごい議論が左から右までかなり幅広 くされています。いろいろな意味で、これから理念を整理し、決めていかなければいけ ないとは思うんですが、一方で、対立軸が出てくると思います。そのときに、我々が非 常に科学的な議論をするということと、対立軸が本当に子どものためにどういうふうな 議論をすればいいかという視点に立って、議論の進め方をしないと、実際、今後実現し ていくに当たってはかなり問題が出てくる可能性があるので、それはよく御相談をしな がら進めさせていただきたいと思います。  そういう前提で、今いただきました御意見を踏まえて、隣にいます吉野君がまとめて くれますが、9月27日に御報告して、それなりに固めていただく。ただ、これも時点で 最終的に固まるわけではなくて、その後の御議論を踏まえながら、いろいろモディファ イしながらやっていくという前提で、私どもまた作業をさせていただきたいと思いま す。 ○岩男部会長  それから、虐待の問題については御触れにならなくてよろしいんですか。 ○皆川総務課長  冒頭触れましたが、一方で、若干時間的に迫られているのは、平成16年に虐待防止法 の見直しという課題が一方でございます。それについては議員立法でしたので、参議院 あるいは衆議院の先生方を中心に、議会において議論をされていますが、それに対応す るような形で政府としての問題点の洗い出しをしたいと思いますし、場合によっては、 政府としての提言提案ということもしていかなければならない。そういうときに、この 場の先生方、この部会の下にどういう形になるかわかりませんが、ワーキングチームみ たいな、更に少し専門家を交えた形でチームをつくらせていただきたいと思います。そ の正式の御相談は9月27日にさせていただきたいというふうに思います。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、ちょうど時間にもなりましたので、本日の会合は閉会とさせていただきた いと思います。皆様大変ありがとうございました。                                     (了) (照会先) 雇用均等・児童家庭局総務課 03−5253−1111(7823)