02/07/10 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格・毒性合同部会議事録             薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会                食品規格・毒性合同部会                    議事録 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格・毒性合同部会議事次第 1.日時:平成14年7月10日(水) 10:00〜12:06 2.場所:厚生労働省共用第7会議室 3.議事   (1)米に係るカドミウムに関する規格基準の改正の可否について   (2)その他 出席委員 江崎孝三郎、小川益男(食品規格部会長)、小沢理恵子、香山不二雄、      黒川雄二(毒性部会長)、小沼博隆、品川邦汎、鈴木勝士、津金昌一郎、      林眞、廣瀬雅雄、福島昭治、丸山務、三森国敏(敬称略) 参考人  大前和幸(慶応大学医学部教授)      櫻井治彦(中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター所長) 事務局  石井基準課長、植村補佐、滝本補佐、太田補佐 他 ○事務局  それでは、ただいまから薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格・毒性合同部 会を開催したいと思います。  本日は御多忙のところお集まりいただきましてありがとうございます。本日は、食品 規格部会が10名中6名、毒性部会が12名中9名の委員に御出席いただいておりますの で、当合同部会は成立しておりますことを御報告申し上げます。  また、参考人として本日報告を予定しております厚生科学研究の主任研究者である中 央労働災害防止協会の櫻井所長、また分担研究者であります慶応大学の大前教授に御出 席いただいております。なお、京都工場保健会の池田理事も出席を予定しておりました が、台風の関係がありまして新幹線がストップということで本日来られなくなったとの ご連絡がございました。  それでは、開催に先立ちまして本来ならば尾嵜食品保健部長よりごあいさつ申し上げ るところですが、所用で出席できませんので、石井基準課長よりごあいさつを申し上げ ます。 ○基準課長  基準課長の石井でございます。本来であれば、食品保健部長が来ましてごあいさつを 申し上げるところでございますけれども、所用がございまして出席できません。誠に申 し訳ありません。  本日、合同部会の開催に当たりまして、お忙しい中、各先生方にはお集まりいただき ましてありがとうございました。御存じのように、食品の安全性の問題というものは昨 年のBSEの問題に発しまして、その後も表示の問題など、いろいろな点で今、国民か ら非常に不信感を抱かれているという状況にございます。この点につきましては、6月 に関係閣僚会議の御報告がありましたように、リスクの評価というものを独立した安全 委員会、仮称ではございますが、そういうところで行うということで、管理と評価を分 けるというような方向づけもなされました。今、準備室ができまして今後どのように やっていくのかという点につきまして議論が行われているところでございます。そうい う点につきまして、今後いろいろ組織的なものは変わりますけれども、引き続き先生方 の御協力をお願いしたいと思います。  本日、御審議をお願いする内容は米のカドミウムの基準に関する事項です。カドミウ ムにつきましては、平成12年度から疫学調査などをやってまいりまして、平成13年度の 研究報告がまとめられ、報告をいただきました。また、平成14年度の研究ということで 進んでいるものもございますけれども、平成13年度までの報告の中で基準につきまして どのように考えていくべきなのかということを本日、相当膨大ではありますが、報告書 の中あるいはこれまでの国際的なJECFAでの動きというものも御紹介させていただ き、基準改正の可否につきまして御議論をいただければと思っております。どうかよろ しくお願いいたします。 ○事務局  それでは座長の選出を行いたいと思いますが、議題が米のカドミウムに関することで すので毒性評価が主になると思われます。本日の合同部会の座長ですけれども、毒性部 会の部会長である黒川先生にお願いしたいと思いますが、異議はございませんでしょう か。               (「異議なし」と声あり) ○事務局  それでは、座長を黒川先生にお願いしたいと思います。黒川先生、よろしくお願いい たします。 ○黒川部会長  おはようございます。財団法人佐々木研究所の黒川でございます。そういうことで今 日は合同部会の座長を務めさせていただきますので、何とぞよろしくお願いいたしま す。  それでは、まず事務局の方から配布資料の確認をお願いいたします。 ○事務局  配布資料の確認をいたします。  まず資料1ですが、「諮問書」でございます。  資料2が、「我が国における米のカドミウムに関する基準」といった資料でございま す。  資料3が「コーデックス委員会等における検討状況」に関するものです。  資料4は、「カドミウムに関する1日摂取量調査結果」でございます。  資料5が、「平成13年度厚生科学研究報告書」でございます。  資料5'といたしまして、英文のテーブルのものがございます。  資料6が、「第55回FAO/WHO合同食品添加物専門家会合要約版(抜粋)」でございま す。  資料7が、「第55回FAO/WHO合同食品添加物専門家会合(モノグラフ)」になってござ います。  資料8が「我が国における米のカドミウム含有状況」でございます。  資料9が、「米のカドミウム汚染低減対策」に関するものでございます。  以上、資料はございますでしょうか。 ○黒川部会長  資料の方はよろしゅうございますか。  それでは、早速議事に入りたいと思います。お手元の議事次第にございますように、 本日の議題は「米に係るカドミウムに関する規格基準の改正の可否について」を御審議 いただくということでございます。それでは、まず今、確認いたしました資料のうち、 資料5は研究班の先生方お2人から説明いただくことになっておりますので、資料の1 から4、6から9について事務局の方から御説明願いたいと思います。どうぞよろしく お願いします。 ○事務局  それでは、資料1から順番に説明させていただきます。最初に資料1ですが、諮問書 でございます。厚生労働大臣から薬事・食品衛生審議会会長あての諮問書でございま す。「米に係るカドミウムに関する規格基準の改正の可否について」というものでござ います。  次に資料2にまいります。「我が国における米のカドミウムに関する基準」に関する ものでございます。簡単に説明申し上げますが、食品衛生法に基づく基準というものが ございまして、昭和45年の7月に食品衛生調査会とカドミウム研究者からなる「微量重 金属調査研究会」が設置され、その中で検討が行われております。米に含まれるカドミ ウムについて安全性を検討したということで、1.0ppm未満の玄米、精白米については0. 9ppm未満は人体に有害であるとは判断できない旨の結論が得られたということでござい ます。これを受けまして、玄米についてカドミウム含有量1.0ppm未満、精白米について は0.9ppm未満を食品としての米の安全基準としたということでございます。  次に2番にまいりますが、「食糧庁による米の流通の基準」ということでございま す。昭和45年の7月に農林省は前年から実施していたカドミウム環境汚染要観察地域の 産米の配給停止の取扱いについて、微量重金属調査研究会の意見にかんがみて検討を 行ったということです。それを受けまして農林大臣談話が発表されておりまして、消費 者の間に現に不安が存在している事情を深く配慮し、これを配給しないこととする農林 大臣談話が発表されております。それ以降0.4ppm以上1.0ppm未満のカドミウム米は食糧 庁が買い入れ、非食用に処理しているということでございます。  次に3番目ですが、「農用地土壌汚染対策地域の指定要件」でございます。農用地土 壌汚染防止法は農用地土壌のカドミウム等による汚染の防止、防除等を図るため所要の 措置を規定した法律であるということでございまして、指定要件を玄米1ppm以上として おるということでございます。  その次のページですが、昭和45年7月30日の厚生省環境衛生局長からの通知で、「カ ドミウム汚染米の安全基準について」というものでございます。2段落目にまいります が、入手し得る限りの関係資料及び研究会委員の従来からの研究に基づく知見等を勘案 したということでございまして、1.0ppm未満の玄米は人体に有害であるとは判断できな い旨の結論が得られ、この結論に基づき米の安全基準を定めたということでございま す。  その次のページでございますが、別添でございます。微量重金属調査研究会の「米の カドミウムの安全基準についての報告」でございます。その中でどういった検討が行わ れたかということが書かれてございます。4段落目にまいりますが、米のカドミウム含 有量に関し、上述の1.0ppmを取り上げた場合、大人が1日に摂取するカドミウム量とい うものをこの中で算出してございます。さらに腸管吸収であったり、または動物の実験 による慢性毒性研究とか、そういったもの等から比較して、最後の方にまいりますが、 前述のごとく現存する科学的事実に基づいて検討した結果、1.0ppmという数値について はこれは人体に有害であると判断することはできないという具合に結論されたというこ とでございます。  次に資料3にまいります。「コーデックス委員会等における検討状況」ということで ございます。コーデックスの場で現在検討が行われておりまして、コーデックスの下部 組織であります食品添加物・汚染物質部会(CCFAC)において食品中のカドミウム 最大基準値案が提案され、現在検討が行われておるということでございます。それで、 精米につきましては0.2ppmということでございまして、ステップ3という状況にござい ます。その他、果実、小麦等々についても基準値案が提出されておるということでござ います。 ステップについて簡単に申し上げますと、ステップはステップ1からステッ プ8までございまして、ステップ3というのが規格原案ということでして、各国政府、 国際機関にコメントの提出を要請する段階ということでございます。この後、規格原案 が規格案という形になって、そしてステップ8へと上がっていくということで、まだ初 めの段階のものだということでございます。  その次のページでございますが、これまでのコーデックスにおける検討状況というこ とでございます。1998年のCCFACの部会におきまして、デンマークは食品の基準値 原案を提案してございます。1999年にはそれがステップ3となっているということでご ざいます。ただ、そのCCFACの議論の中でもカドミウムの毒性評価というものを精 緻に行う必要があるということで、FAO/WHO合同食品添加物専門家会合(JEC FA)にその毒性評価を依頼しており、2000年の6月のJECFAにおいて検討が行わ れたということでございます。カドミウムのリスク評価が再度行われたわけですが、評 価を行うためのデータが依然として十分ではないという結論に至ったということでござ います。そこで、疫学研究の実施が勧告されており、以下に書かれております1から7 のテーマについて研究実施というものが勧告されております。PTWIは既に定められ たものをそのまま維持したということでございまして、体重kg/weekというような形に なってございます。それで、我が国の研究はこの勧告を受けまして、我が国にとってカ ドミウムというものが非常に関心事項であるということ、また研究基盤が既にある程度 整備されているということ等を勘案して研究を実施したということでございまして、こ の勧告を受けて平成12年度から研究を実施したということです。それで、本日資料5と してありますのは平成13年度報告ということでございまして、12年からの研究成果分が そこに付けられているというようなことになってございます。  2001年の3月にCCFACがその後、開催されておりまして、これはコーデックス委 員会の方ですが、2003年のJECFAにおいて日本の実施している疫学調査結果等に基 づき、カドミウムのリスク評価を再度行う。これに基づいて基準値案を見直すというこ とが2001年のCCFACで合意されております。  ただ、リスク評価を精緻に行うのを待たずに、マネージメントの方もある程度ステッ プを進めていった方が良いのではという考えがございまして、ステップ5という形で総 会に諮ることにしたということでございます。  2001年の9月にコーデックス執行委員会が開かれまして、ただ、その中でステップ5 という形では承認されずに、まだやはり検討不十分ということでステップ4という形で 差戻しになり、CCFACではこれを受けてステップ3という形で差戻しをしたという ことでございます。  それで2002年の3月、本年の3月にCCFACのコーデックスの部会が開かれており まして、その中でも我が国で現在実施中の疫学研究をJECFAにおいて評価すること ということでJECFAに要請するということが決められてございます。そういったこ とで、2000年6月のJECFAの勧告に沿った調査研究が我が国で行われておりまし て、その我が国の研究成果を受けて2003年の6月にJECFAは予定されております が、その場で再度毒性評価等々が行われることになっているということでございます。  次に資料4でございます。「カドミウムの摂取量年次推移」ということでございまし て、国立医薬品食品衛生研究所が中心になってやっておる我が国のトータルダイエット スタディーというものでございます。それを見ますと合計というところがございます が、1980年以降30μg前後を推移しているということでございまして、平均を見ますと30 μgになっている。1日当たり1人当たり30μg平均摂取しているということでございま す。米の方を見ますと15ということでございますので、米が大体半分ぐらい寄与してお るということでございます。  その次のページでございますが、カドミウム摂取量の年次推移ということで見ますと やや低下傾向にあるのかなというような感じでございます。  その次のページでございますが、過去10年、10年で比較してみますと90.3%というこ とで約10%減少しているということでございます。  その次のページでございますが、カドミウム摂取量に占める米の割合でございます が、50%前後で推移しておるということでございます。  その次のページでございますが、過去10年の食品群別摂取割合を求めたものでござい ます。米が約半分となっておりまして、あとは雑穀であるとか豆類、野菜類、魚介とい うものが占めているというような形になってございます。  次に資料6にまいります。これは先ほど説明いたしました2000年6月の第55回のJE CFAの報告書のサマリーの部分でございます。最初にカドミウムという形で書かれて おりまして、暫定週間耐容摂取量ということでございますので、1週間当たりの暫定的 な週間耐容摂取量が7μg/kgということで維持されたということでございます。それ で、以下のようなモデルに基づいてそういったものが試算されておるということでござ いまして、このモデルが非常に複雑なものになってございますが、要はカドミウムの尿 の排出量をどの程度まで抑える必要があるかということでございまして、JECFAで は2.5ということで、2.5で抑えればそういった母集団の中で尿細管障害等を起こす罹病 率は0%であるという具合に言っております。これはいろいろシナリオがありますが、 いわゆる吸収率という生物学的利用率であったり、または尿中の排泄率をどう見込むか によって変わってございます。  2番の方の一番上の2.5というところの、このシナリオを今のところ取っておりまして 生物学的利用率が10%、尿中排泄が50%と見て取っているところでございます。そう いったシナリオの中で、尿中の排泄を2.5μgに抑えるということであれば罹患率はゼロ になるだろうということで2.5というのを出しているということでございまして、それか らそういったモデル等々を組んで試算いたしますと、カドミウムの1日摂取量が60μg/ kgになるということでございます。欧米の場合は60kgで計算しておりますので、1日体 重kg当たりとなると1.0となるということでございます。それを週間にすると7μgに なっているということでございます。  その次のページでございますが、JECFAの中で今後必要とされる情報という形で 書かれておりまして、その評価に関する信頼性を更に高めるために以下の研究を実施す ることを勧告したということで1から7の研究が勧告されてございます。この勧告を受 けて我が国の方は研究を開始したということでございます。  その次に資料7にまいります。先ほどはサマリーでしたが、こちらの方はその際のJ ECFAのモノグラフということでございます。非常に詳細なデータがここに紹介さ れ、解析を行っているということでございます。 ○食糧庁品質管理室  農林水産省でございます。それでは、引き続きまして資料8でございますが、「我が 国における米のカドミウム含有状況」につきまして御説明いたします。  農林水産省の方で平成9年産米、10年産米、全国で3万7,250点という点数につきま して分析を行った結果というのを1の方に挙げてございます。その中で0.4ppm、農林水 産省の方で非食用に処理するということで維持しております基準がございますが、それ を上回るものが0.2%、それから今コーデックスの方で基準値原案となっております0.2 ppm、これで見ますとそれを上回るものが3.2%、これぐらいの割合でここから検出され たというようなことでございます。  ちなみに全体でございますけれども、平均値は0.06ppmというレベルでございました。  それから2つ目でございますが、現在も同様でございますけれども、過去に0.4ppm以 上のカドミウムが検出されたような地域を対象といたしまして、農林水産省の方で毎年 調査を行っております。その結果でございます。調査点数の方は年によりまして若干変 動はございますけれども、毎年0.4ppm以上1ppm未満のものが11年産の場合で63点、12年 産で47点、13年産で33点という程度の点数が検出されたというようなことでございます し、1.0ppmという食品衛生法の基準を上回るものも年によって2点、あるいは3点程度 検出されているというような状況がございます。  それから3番目でございますが、先ほど申し上げましたとおり0.4ppm以上1.0ppm未満 のカドミウム含有米につきましては食糧庁の方で買い入れて非食用に処理しているわけ でございますが、その買い入れの実績をここに挙げさせていただいております。これも 年によりましてその発生度合いは違っておりますが、13年産米でございますと3月末現 在の実績ということでございますが、1,717tという量を買い入れているというような状 況でございます。 ○農林水産省生産局農産振興課  引き続きまして農水省でございますが、資料の9でございます。「米のカドミウム汚 染低減対策」ということでございます。  まず1番目といたしまして、1ppm以上のカドミウム含有米が生産された地域における 対策ということでございまして、これにつきましてはそこに書いてございますように農 用地土壌汚染防止法に基づきまして農水省と環境省が連携をして恒久対策をやっている ということでございまして、具体的には汚染のおそれのある地域につきまして2.5haに1 点という細密な調査を行いまして地域指定、または対策の計画を策定いたしまして、そ れに基づきまして土地改良等の恒久対策を行っているわけでございます。これに対しま して、下に書いてございますように対策計画の策定でありますとか、恒久対策といたし まして汚染された土を除去し、汚染されていないきれいな土をその上に客土するといっ た対策、そういったものに助成をしているというところでございます。  2枚目にまいりまして、この恒久対策の進捗状況でございますが、上の表にございま すようにこれまで基準値以上のお米が検出された地域は全国で6,626haということでござ いますが、これに対しまして県単独の事業も含めましてこれまでに対策事業が完了しま したのは5,581haで、進捗状況といたしましては84%ということでございます。  ちなみに、こういった恒久対策、土地改良に要しました国費ベースですが、下に書い てございますようにこれまでに468億円ほどの国費を投入しているところでございます。  3枚目にいきまして、先ほど説明のございました食糧庁の通達基準を超えている0. 4ppm以上1ppm未満という地域に対しての対策でございますが、この地域につきましては 営農対応として、カドミの吸収を抑制するようなことを行ってございまして、具体的に は出水時期前後の水管理をしっかりやるとか、カドミウム吸収抑制の資材を散布すると いったことの実証事業をやっているところでございます。  また、下にまいりまして研究開発といたしましてはカドミウムの吸収というのは品種 によっても差があるということでございますので、吸収の低いような品種の選定であり ますとか効果的な土地改良手法の開発、更には植物によってカドミウムを吸収して除去 するような、そういった手法について今、研究開発をしているところでございます。  4枚目にまいりまして、先ほどの吸収抑制技術について具体的に書いてございます が、具体的には石灰質資材などを投入しまして土壌のpHを高めるとか、あるいは水を しっかり張りまして還元状態、酸素がいかないような状態にいたしますとカドミウムの 吸収が抑制されますので、そういったことをしっかりやるようなことを実証しておりま すが、優良事例といたしましては下に書いてございますように、対策前が1ppmに近いよ うな数字だったものが、対策後はかなり低いといった優良事例もありますが、これはあ くまで優良事例でございまして、技術的な可能性は実証されましたが、現実問題として は十分に水があるかとか、天候にも左右されますし、また現在の特に稲作は完全に機械 化されておりますので、最後は水をずっと張っておりますと大型機械が入らないとか、 いろいろ現実的な問題がございますが、こういった実証もしているという状況でござい ます。以上でございます。 ○黒川部会長  ありがとうございました。かなりなボリュームの資料をかなり駆け足での御説明だっ たんですけれども、とりあえずここで何か御質問があれば、それぞれの資料についてお 聞きしておきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。なければ、今日の一番膨大 な資料である資料5の方に移りますが、よろしいでしょうか。  それでは、資料5の厚生科学研究の研究費補助金に基づく「食品中に残留するカドミ ウムの健康影響評価」ということで主任研究者の方々から御説明願います。櫻井先生か らよろしくお願いいたします。 ○櫻井参考人  初めに私が総括的な部分について御説明し、その後、分担研究者の方々から個別に御 説明いただくことになろうかと思います。ただ、池田班員が今日は御出席できないとい うことになりましたので、その部分につきましては概要を私から御説明させていただき ます。  この資料の5はちょっと複雑な構成になっておりまして、表紙に書いてございますよ うに厚生科学研究費補助金による研究の総括分担研究報告書でございます。しかし、こ の厚生科学研究費補助金のみによって全体の研究をやられたわけではございません。し たがいまして、17ページまでが厚生科学研究費補助金によって行われた研究の報告でご ざいます。そして、18ページ以降にそれ以外の同じ班員で行った研究の全体像をお示し してございます。厚生科学研究費補助金以外に、科学技術振興調整費あるいは農作物等 有害物質総合調査委託費等が使われております。したがいまして、18ページ以降の資料 に基づいて御説明申し上げます。  19ページから24ページまでが総括でございますので、まず概要といたしましてはそこ に沿って申し上げます。20ページに分担研究者氏名等が書いてございます。分担研究者 は京都工場保健会の池田氏、慶応義塾大学の大前氏、自治医科大学の香山氏、農林水産 消費技術センターの條氏、それから食品総合研究所の安井氏という方々でございます。  研究目的が1から5まで書いてございますが、1と2が究極の目標でありまして、食 品からのカドミウム摂取について正確な耐容摂取量を設定する根拠となる定量的情報を 得ること。それから、農産物中のカドミウムの安全な水準を明らかにすること。この2 つの目的のために、ヒトの集団についてカドミウム暴露量と健康影響の関係を調べる。 量・反応関係を明らかにすること。  それから4番目に、同じく1、2の目的に沿ってボランティアについて食品由来カド ミウムの体内取り込み動態を明らかにすること。  5番目は、搗精・製粉工程あるいは食品の加工調理においてカドミウムが減ると考え られますが、実際にどの程度減るものなのかということを調べるという研究でありま す。  20ページの右の「研究の背景」というところは、既に事務局からの御説明にございま したことから御理解いただけているかと思いますが、カドミウムは生物学的半減期が極 めて長い。10年以上とされておりますので、同じレベルに暴露していたとしても体内の 濃度は50歳あるいは60歳ぐらいでやっと平衡に達するというようなことで、その平衡に 達した時点で初めて障害が起こるとしたら、数十年オーダーで観察しないと実際にはな かなか量・反応関係を把握することが困難であるというような問題点がございます。そ れで、その障害としては腎機能障害以外に最近では骨粗鬆症の発症要因としても関連し ているというような報告もございます。したがいまして、今までのところ7μgという週 間耐容摂取量が暫定的に設定されておりますが、その根拠にはやはり限定が多々あると 認識しております。それに加えてJECFA等による検討がより精緻なTDIを求める という方向もありますので、より確実なデータに基づいたTDIを設定する根拠になる ようなデータの必要性が高まっているというのが背景だと存じます。  そして、21ページのCの「研究方法」というところですが、今までのいろいろな情報 から考えて、一般にヒトがカドミウムについて非常に大きな安全域を持っているとは考 えられませんで、動物実験のデータからですと動物からヒトへの外挿という大きな限界 がございますので、どうしてもヒトを対象にした疫学的な調査を主とした研究をやると いう方法を採用いたしました。また、女性が男性よりも大きなリスクを負っているとい うような推定が今までの情報から可能でございますので、よりリスクの高い女性に限定 し、しかも若いときよりもだんだん蓄積していって中年以降に健康障害が発症するとい うことが予測されますので、疫学研究におきましては女性の、しかも中年以降の方々を 対象とするという方針で実施いたしました。その方針に従いまして、池田班員と香山班 員が疫学研究を行いました。また、ボランティアを対象とした食品由来カドミウムの体 内取り込み動態に関する実験的研究、これは大前班員が行いました。 研究方法でございますが、「1.日本人一般人口におけるカドミウム曝露と腎機能に関 する大規模調査」、これは全国10か所に居住する35歳から60歳代の女性それぞれ約1,000 名、合計結果として10,833名につきまして尿のカドミウム、それから関連元素として尿 中亜鉛、カルシウム、マグネシウムの測定、それから腎機能の指標として尿中α1-MG、 β2-MG、それぞれを測定いたしました。その他関連情報を質問紙調査によって得まし た。  それから2番目の「鉄欠乏状態とカドミウム負荷との関連についての調査」、これも 池田班員によるものでございますが、この1万人の対象者とは別に全国6地域に在住す る20歳から74歳までの女性1,476名につきまして1と同様に尿のカドミウム、それから尿 中のα1及びβ2-MGを測定したものに加えて、赤血球系の指標として赤血球数、ヘモグロ ビン濃度、血清鉄、フェリチン、総鉄結合能を測定いたしました。これは鉄欠乏状態に おいてカドミウムの吸収効率が高まるというハイリスクポピュレーションという考え方 でございますので、その点を確実にするための研究を行ったということでございます。  3番目が香山班員によるものでございまして、これは日本全国にまたがる5地域に居 住する30歳以上の農家の女性、各地域202名から一番多いところで596名、合計1,407名を 対象といたしまして、この場合には大規模調査と違いましてより多くの項目を調べてお ります。血液中のカドミウム、鉛、その他貧血指標、肝機能指標、脂質、当然のことな がら腎機能指標、骨代謝指標、あるいは性腺刺激ホルモン、骨代謝に影響を与える因子 等、更に骨密度の測定も実施しております。また、各自持参の米とみそのカドミウムの 濃度の測定も行われておりまして、精密疫学調査と言えるかと思います。  4番目がカドミウムの体内取り込み動態に関するボランティア研究でありますが、こ れは先ほど事務局からの御紹介にございましたように、カドミウムの腸管からの吸収率 がどの程度かということが非常に重要なパラメーターになっておりますが、その点につ いていまだに十分な知見が得られていないという状況から実験的研究を行いまして、こ の場合カドミウム負荷という経口的に摂取していただくということについての倫理的課 題を解決するために非常に低い濃度のカドミウムを含む食品を調製して、それを食べて いただき、一定の平衡状態、ベース状態になったところで元の通常レベルのカドミウム を含む食品を摂取していただいてその吸収率を測定するという実験でございます。方法 のエッセンスはそういうことでございます。  それから22ページの右下の「搗精・製粉工程によるカドミウムの動態解明」、これは 米、小麦について精白していく過程あるいは製粉していく過程でどのように変わってい くか、または、加工調理の過程でどのように濃度が変わるかを調べたものでございま す。  次に「結果」ですが、それぞれの分担研究者の方々の御説明にお任せして時間を有効 に使うのがよろしいと考えておりましたが、池田班員につきましては御出席がございま せんので私から次に池田班員の結果を含めて少し詳細に御説明申し上げますが、やはり まとめの時間としてもう少しいただきまして、23ページから24ページのところに結果の 総括を最初に御紹介しておいた方がよろしいかと今、考えを変えましたので御紹介いた します。  第1に「日本人一般人口におけるカドミウム曝露と腎機能に関する大規模調査」、こ れは先ほど10,733名を対象としたということでございますが、結果としてはα1-MG、そ れからβ2-MG、いずれもクレアチニン濃度で補正したものでございますが、その上昇を もたらす最も強い要因は加齢であって、非職業性カドミウム曝露が腎機能障害の割合を 増加させるという明らかな証拠は得られませんでした。そういった結果を得たその曝露 のレベルというのは、各地域の尿中カドミウム濃度が地域のそれぞれの幾何平均値で0. 76μg/g crから3.16μg/g crの範囲でございました。これは池田らの既報の結果と同様 でございまして、日本人一般人口に対してカドミウムによる腎尿細管への影響は強めに 見たとしても限界域領域であることを意味していると考えられる。これは池田班員のま とめをそのままここに引用してございます。  それから次のパラグラフでございますが、同じ試料を使って尿中カドミウムと、それ からα1-MGとβ2-MGの濃度との関係には閾値が見出されなかったという報告でございま す。これは上のパラグラフで見た明確な腎機能障害をもたらすようなα1あるいはβ2-MG の増加はなかったけれども、それぞれの集団の中で尿のカドミウムの濃度、それから尿 のα1及びβ2-MGの濃度、いずれもクレアチニンで補正したものでございますが、非常に 低い濃度に至るまで相関が認められたために閾値を見出すことはできなかったというも のでございます。  それから3番目のパラグラフでございますが、これは過去の池田班員の情報等も加味 して、現時点において米由来のカドミウム摂取が全カドミウム負荷の中で極めて大きい 位置を占めていることが再確認されたということでございます。  それから、右のパラグラフの2の「鉄欠乏状態とカドミウム負荷との関連」、これは 別のポピュレーション、女性1,476名についてでありますが、これにつきましては貧血あ るいは鉄欠乏の状態によってカドミウム吸収の上昇あるいはそれに伴う腎機能障害の発 生は見出されなかったという結果でございます。この集団の尿のカドミウムの濃度の幾 何平均値は1.07μg/g cr、範囲として検出限界以下から6.8μg/g crでございました。  それから3の「カドミウム生涯摂取による一般住民における腎機能障害と骨粗鬆症の 関連の全国調査」、香山班員によるものでございますが、1,407名について調べておりま す。その中には、現行のカドミウム摂取量の国際基準である週間耐容摂取量を超えると 推定される曝露を受けている人も含まれておりました。それで、農家の女性の持参した 自家消費用保有米の白米中カドミウム濃度と自記式栄養調査票から得られた米の摂取量 から求めたカドミウム摂取量などから個人の総カドミウム経口摂取量を算定して評価し た結果でございますが、尿中低分子蛋白の濃度は加齢によって増加することは明らかで あり、長期のカドミウム曝露指標である尿中カドミウム排泄量の増加とか、あるいは食 べているカドミウム濃度あるいはカドミウム摂取量によって腎機能障害が増悪するとい うことは認められなかったということでございます。これにつきましては後ほど詳細な 御説明がありますので、そちらで改めて御検討いただきたいと思います。  それから4番目、体内取り込みに関する部分でございますが、女性ボランティア25名 について先ほど申し上げましたような方法で研究いたしましたところ、この実験におけ る食品中カドミウムの消化管からの吸収量は約24%と推定されます。これについても後 ほど直接御説明をいただけると思います。  それから5番目、搗精・製粉工程及び食品の加工調理における動態解明、いずれも若 干のカドミウム濃度の減少が認められてはおりますが、米についてカドミウムの濃度が こういった加工あるいはその他の工程によってそれほど大きく減少するわけではないと いう結果であったと、総合的にはまとめられると思います。  24ページの「今後の研究報告」というところですが、この研究は昨年、主に今年の3 月までに実施された研究でございまして、膨大な研究資料がこの報告書をまとめる段階 ではまだまとまっていない部分がございます。したがって、ここに書いてございますよ うに、平成13年度に研究が実施され、現段階では結果の解析が未完了な部分がございま す。骨密度あるいは骨代謝指標、肝機能、脂質代謝等の測定結果、あるいは貧血及び糖 尿病のある農家女性集団のカドミウム経口摂取における吸収率に関する研究も香山班員 によって実施されておりますが、この研究の報告は近くまとめられると存じますが、現 段階では未完成ということを申し上げておきます。  続いて、池田班員による研究の概要を御説明いたします。25ページ以降48ページまで が最初の大規模研究のメインになる部分でございます。この部分をやや詳細に御説明し たいと思います。図表に従って御説明いたします。  35ページに尿の検体収集地域、1から10までこういった地域でこういった数の検体を 主として労働衛生関係の測定機関の協力を得て尿の試料を収集し、測定を実施したもの でございます。尿の分析方法が表2に記載されております。  それから表の3はカドミウム、カルシウム、亜鉛、クレアチンについての外部精度管 理を行ったということでございます。  結果は表4以降でございますが、表4は地域別の尿中カドミウム、それからα1-MG、 β2-MGのクレアチニン補正値であります。これで見ますと、まず尿のカドミウムの濃度 の幾何平均値がそれぞれ1から10地域について出ておりますが、第3地域が3.16μg/g crと一番高く、第10地域が0.76μg/g crであります。先ほどのこの研究の対象者のカド ミウム曝露の実態というのがこういう平均値で示されているものであるということで す。最大値として第3地域で20.9、第10地域は平均値は一番低いんですが、最大値で10. 0μg/g crというのがございます。それから、α1-MGの平均値は第3地域が一番高くて3. 02、また一番低いのが第10地域で2.05でございました。最大値は第5地域で45というの が一番高かったということです。β2-MGにつきましては第3地域が129、第8地域は102 と、それぞれ最大、最小の平均値であります。また、今のは平均値でございますが、最 大値は第5地域で3,862μg/g crというものでございます。  なお、その下の方で41歳から50歳、それから51歳から60歳というふうに年齢を区切っ てみますと、カドミウムにつきましては41歳から50歳で平均1.15、51歳から60歳で1.7と いうふうに高齢者の方が尿のカドミウムの濃度が高く、α1-MGも17.7に対して20.9、β2 -MGが110に対して129というふうにそれぞれ年齢が高いほど高いという結果であります。  次に表の5、これはカルシウム、マグネシウム、亜鉛の測定値であります。表の4に は出ておりませんでしたので、これの地域別は出ておりませんが、それぞれの年齢別の 平均値を見ますとカルシウムの場合、クレアチニン補正値41歳から50歳で115.5mg/g cr、それが51歳から60歳で144.6というふうになっております。マグネシウムにつきまし ても41歳から50歳で60.9に対して51歳から60歳は70.3、亜鉛も359に対して379と、いず れも年齢が高いとこういったものの濃度は、クレアチニン補正をするとということでご ざいますが、高くなっております。  表の6、7はそれぞれ単回帰の表でございますが、それらをまとめた表の8、重回帰 分析をごらんになっていただく方が早いと思います。いろいろ相互に相関がございます ので、表の8は従属変数をα1-MG、β2-MGにそれぞれ取り、独立変数として年齢、尿の カドミウム、尿のカルシウム、尿の亜鉛、尿のマグネシウム、いずれもα1-MGあるいは β2-MGと関連が認められておりますので、これらを独立変数とした重回帰分析を行って おります。そうしますと、全年例ではα1-MGにつきましては年齢が一番有意に効いてい る。この場合、星印は0.2より大きいという表現になっておりますことを申し添えます が、カドミウムも偏相関係数として0.272、2番目に大きく関連しています。それからカ ルシウム、亜鉛、マグネシウムの順でございます。  それから、年齢別に見ますとカドミウムが第1位の独立変数になっています。β2-MG につきましてはカルシウムが最も強く寄与しているようですが、更に年齢、カドミウム というような順番になっておりまして、こういった多くの独立変数が関与しているとい うことが見られます。  表9、表10はロジスティック回帰分析を行っておりますが、α1-MG、β2-MG、それぞ れについてロジスティック回帰分析で見ております。そして、年齢別に見た場合にLog カドミウム、このカドミウムが有意にα1-MGを増やしているかどうかという点で見た場 合、例えばカットオフを5mg/g crというふうに取ったとき、41歳から50歳でも確率は0. 01%あるいは51歳から60歳でも0.01以下という確率で有意に効いております。これは表 10でも同様でございます。  表11は低カドミウム群と高カドミウム群、表12も同様でございます。ただし、表の11 で見ますと、低カドミウム群と高カドミウム群を比較いたしますと、当然のことながら カドミウムの濃度は各年齢群において片方は検出限界未満、高カドミウム群は3.37ある いは51歳から60歳ですと6.45というふうに大きく違っております。それで、α1-MGはそ れに対して1.97と2.77あるいは2.31と3.77というように、やはり高カドミウム群の方が それぞれ数値は大きいということになります。ただし、これは平均値で見た場合でござ います。  そして、カットオフ値で比べますと表の12でございますが、α1-MGを5と8.19という カットオフ値、それからβ2-MGは400と1,000というカットオフ値を使っておりますが、 それぞれ見てみますと低カドミウム群と高カドミウム群で有意な差があるのはα1-MGを カットオフ値5で見た場合でございます。それで、8以上というような大きく異常を示 している場合には、そのα1-MGの出現率に低カドミウム群と高カドミウム群の間に差が ないということでございます。β2-MGにつきましても同様で、これは400で切っても1, 000で切ってもそういう異常値を示すヒトの比率に有意な差がないという結果でございま す。  47ページがこういった地域で実施したというものでございまして、48ページがその生 データの散布図です。これは全く補正を加えない何ら統計処理をしないで横軸にg cr当 たりの尿のカドミウムの濃度、縦軸にやはりクレアチニンで補正したα1-MG及びβ2-MG の濃度の散布図でございます。一番上が全日本、真ん中の2つが第3地域、つまり一番 尿のカドミウムの濃度が高かったところで、一番下が第10地域、一番尿のカドミウムの 濃度が低かったところでございます。今まで申し上げてきたことがこれで視覚的にも比 較的良くわかるわけでございますが、例えばこの一番低い第10地域におきましても尿の カドミウムの濃度と、それからα1-MGの濃度の間に有意の相関がある。したがって、一 見してこの分布の中で閾値を見出すことはできない。その右の第10地域でも同様でござ いますし、その上の第3地域でも同様です。ただ、Logα1-MGあるいはLogβ2-MG、右の 方も同様でございますが、それの非常に大きな異常値を示すような人、上の方を見てい ただきますと一見してわかりますように第3地域と第10地域の間に差がございません。 これは直観的な見方でございますが、それを数値で解析した結果が今まで御説明したと おりでございます。  以上のことから、池田班員のまとめといたしまして先ほど御説明いたしましたように この本研究、この結果から非職業性カドミウム曝露が腎機能障害の割合を増加させる明 らかな証拠が得られなかったという結論になっております。  一方、2番目の研究でございますが、閾値に関する研究で、ページで申しますと49 ページから65ページまでございます。これは時間の関係で省略させていただきますが、 結論として申し上げますと53ページに結論が書いてございます。クレアチニンで補正し たα1-MG、それからβ2-MG、いずれもその増加と関連する尿のクレアチニン当たりのカ ドミウムの閾値は見出されなかった。一方、α1-MGとβ2-MGが尿中元素の濃度に依存し て増加すること、それからα1-MGとβ2-MGの増加をもたらす尿中元素濃度に閾値が認め られなかったことはカドミウムに限られたことではなく、他の元素にも共通する結果で あった。今後さらなる解明が必要であるという結論になっております。  この場合、先ほどのところではカドミウムだけについて閾値がないということでござ いましたが、この研究では亜鉛、マグネシウム、カルシウムについて同様の分析を行っ た結果から今の結論になっているものでございます。  次に、66ページからは「日本人一般住民に対する最も主要なカドミウム曝露源として の米飯」、これは本日の議論には直接関わりがやや薄いかと思いますので省略させてい ただきます。  75ページの1.4.、これは「鉄欠乏状態とカドミウム負荷との関連についての調 査」であります。これは表に基づいて御説明いたしたいと思います。87ページと88ペー ジの表です。表の4は群を3つに分けまして、全被験者1,476名を貧血群39名、鉄欠乏群 577名、対照群860名に分けて、それぞれ一番左に書いてございますように、血液・血清 のフェリチン、鉄、総鉄結合能、ヘモグロビン、赤血球数、それから尿のカドミウム、 α1-MG、β2-MGの濃度を測定しております。そうすると、貧血群におきましては当然の ことながら貧血があり、更にフェリチンも低く、鉄も下がっている。それから総鉄結合 能は上がっている。鉄欠乏群では貧血群ほどではないけれども、やや軽度の貧血があ り、フェリチンと鉄は対照群に比べて下がっている。にもかかわらず、尿のカドミウム の濃度は貧血群では対照群に比べて有意の差ではない。1.10に対して1.07とほとんど同 じ、それからα1-MGがやはり2.59に対して2.44、βにも114.8に対して112.5ということ であります。  それから、鉄欠乏群におきましてカドミウムが1.10に対して1.01と、これは有意に低 下しておりました。ただし、その低下の程度はカドミウムが低かったんですね。それか らα1-MGも低い、β2-MGは変わりはないということで、特段鉄欠乏あるいは貧血でカド ミウムの吸収が増えたり、あるいはこういった腎機能異常が出ているという結果には なっておりません。  表の5では、これは地域と年齢で対をつくって、地域と年齢を合わせたペアをつくっ て念入りに調べていただいております。そうしますと、貧血群と、それから対をつくっ た対照群35名ずつ、これは地域と年齢を合わせてございます。マッチさせてあるわけで す。そうしますと、カドミウムが1.13に対して1.32とわずかに多いようですけれども、 有意ではない。それから、α1-MGもβ2-MGも特に増えていない。右の方は鉄欠乏群と対 照群を比べております。0.95に対して1.03とカドミが有意に増えている。これは有意差 がございます。これは例数がこの場合、389名ですので有意になっております。ただし、 実体としてはごくわずかな上昇で、毒性学的な意味がないというふうに考察しておりま す。α1とβ2には差がないということでございまして、結論として79ページに現在の一 般日本人女性における鉄欠乏状態の程度で、非職業性カドミウム曝露によるカドミウム 吸収の上昇、それからそれに伴う腎機能障害の発生はないと言える。ただし、重度の貧 血症例についてはこの結論が適用できるとは限らないというふうに結論されておりま す。以上です。 ○黒川部会長  ありがとうございました。それでは、質疑応答はまとめてしたいと思います。89ペー ジから続いて香山先生からお願いします。 ○香山委員  報告をさせていただきます。我々はJECFAの要請を受けましてこの調査を開始し たわけでありますが、調査地域は農林水産省及び食糧庁の過去の調査結果を参考にいた しまして選択いたしました。  それで、特に今回これまでのカドミウムの研究の問題点というのはどうしても職業曝 露であったり、環境曝露と言いつつも粉塵を含む大気汚染からの呼吸器を介する曝露で すね。有名なカドミベルスタディでもまだ製錬所が動いたままの状態の大気からの曝露 があるというような場合は、バイオアベイラビリティーが非常に高いものですから影響 が非常に出やすいということが考えられます。それで、我々は食物からのみしか曝露し ていないと考えられる地域、すなわち鉱山や金属製錬所がなくてこの30年間は操業して いない。そして、それはこの30年間、余り曝露レベルが変わっていないと思われる地域 を選びました。  それで、これは今までカドミウムの疫学調査が全く行われていなかった新しい地域で ありまして、九州から東北までの5地域で単一のJAの範囲のフィールドを設定いたし ました。それで、JAの女性部に協力をいただきまして、その農家の女性で30歳以上の 方を対象といたしまして調査をいたしました。  測定に関しましては、一般的な今までもう何度か説明がありましたが、特徴は栄養調 査を精密に行ったということであります。これは、以前はがんセンターに在籍されてい て、現在は国立健康・栄養研究所に移られました佐々木敏先生が開発されました自記式 の栄養調査でありますが、110の食品につきましてその摂取量と摂取頻度を精密に聞くと いうものであります。その調査票は後ろの方に表のようにありますので御参考くださ い。これによりまして、過去1か月間にどれだけの頻度で食べたかということで調べま して、それを1週間前に書き方を説明し、その後、実際の検診の日に持ってきていただ きまして、栄養士に質問票で変な記載がないかどうかを確認の上、回収をいたします。 それから、持ってきていただいたお米とみそ中のカドミウム濃度及び鉛濃度を測定いた しました。あとはこちらに書いてあるとおりでございますが、鉛濃度に関しましてはこ この報告書に入れておりませんが、ほとんど地域で非常に低く差がありませんで、カド ミウムのような変化は見られませんでした。それから、ここでいろいろ骨代謝指標であ るとか骨密度も測っておりますけれども、この検査結果は今、慎重に解析中でありまし て、ここ2、3か月のうちには全部まとまるという予定でおります。  次にカドミウム及び鉛の測定でありますが、これは1万点に近い測定を行うというこ とで、大学の研究室レベルでは精度管理等にも完全にこれは非常に重要な研究でありま すので、国土環境という会社にお願いをして測定をいたしました。  それでは、結果に関しましては図表をごらんください。  まず表1には、5地域の米の中のカドミウム濃度の値が示されておりまして、一番上 にこの調査に協力してくださった農家の女性の数が書かれております。幾何平均を見て いただきますと、このような状況になっております。それから、Eの地域はいろいろ水 管理などがされておりました関係で、2001年前と2002年前は違う可能性があるというこ ともあったものですから、2年分のお米を持ってきていただきまして、その測定値の平 均値を記載しております。  次に図1を見ていただきますと、これで0.2ppmと0.4ppmでカットしまして、どのよう な比率になっていたかをこの地域、A、B、C、D、Eごとにお見せしております。  次のページにいきまして表2でありますが、それぞれの参加者のお米の摂取量という ものが自記式の栄養調査でわかりますので、持っていらっしゃったお米のカドミウムか ける摂取量から、米からの1日の摂取量及びみそからの1日カドミウム摂取量を見てい ただきますと、AからだんだんE地域にいきますと摂取量が増えていくというのがおわ かりになります。それから、みその方も濃度はみそ中のカドミウム濃度はAからEの地 域に行きますとだんだんと高まっておりますが、Dの地域はみその摂取量が少ないもの ですからこの地域だけちょっと少な目になっております。それで、ここでその一番下の 行に書いてありますが、お米に対してみそからのカドミウム摂取量は2%から10%ぐら いまでだということがわかります。  次に表3でありますが、米からの1日カドミウム摂取量を最初に書いてありまして、 5.5、12.9とずっと上の表から得られました計算値、これは個々の平均値でありますが、 それから我々が今回知り得たデータは特にみそのデータなんですが、それからトータル ダイエットスタディーから引用いたしまして、その結果、36.5%が米からということで すから、それ以外のものの比率で割り算してトータルという形で計算をいたしました。  この意味するところは、米と同様にその地域の食品は同程度の比率で汚染されている という最大限の評価であると思われます。それから、推定法Bに関しましては米以外か らのカドミウム摂取量は日本の平均値であるという形で、それを全部足し算するという ことであります。すなわち、米以外は全国平均と同じ汚染度であるという考え方です が、これはこれでこういう計算を出しております。すなわち、これはちょっとみそが同 じように濃度が上がっていくということでありますので、この中間ぐらいの評価であろ うと思われます。 次に図2を見ていただきますと、このPTWIとの比較をそれぞれ の個人の体重とか各食品の摂取量から算出した摂取量を求めておりますが、PTWIを 超える方というのは推定法Aでは70%近くの方が超える。それから、推定法Bでも35% の方が7を超えている方がいらっしゃる。ここで見ていただきたいのは、地域Aという ところでも、これは0.2ppmを超えるものも全くなかった非常に低いカドミウム濃度のお 米を食べている方なんですけれども、これでも推定法Bでも1人、推定法Aでも5人い らっしゃるということは、現行のPTWIの推定法が米食民族には極めて厳しいもので あるということがおわかりになると思います。  次に表4ですが、我々はこの中から解析という形でこの以下の方々を除外いたしまし た。それで、特に腎機能を悪くする病気というもので高血圧であるとか、あるいは糖尿 病の方もいらっしゃったんですけれども、そういう方々もカドミウムの汚染により、よ り影響を受ける可能性もあるということで、そういう方も含めた上で解析をするという 安全の方向に向かって解析をいたしました。より厳しく評価するという意味ですね。  次に表5について、解析対象者の年齢等が書いてありますが、Dの地域が若干若い平 均年齢を示しておりますので、我々は年代層を40代、50代、60代と分けて解析をしてい くという方針をとりました。それで、特にそれぞれの年齢階層で比べればその問題は解 決するということになりました。  次に、図3に米中カドミウムと抹消血のカドミウム、特に曝露が高かったE地域にお けるものを示しております。このように余り相関が高くない。それから、米の摂取量を かけて血中カドミウムと尿中カドミウムを検討いたしましたけれども、やはりこれでも 余り相関がよくないということであります。  それから、図7にE地域での新米と古米のカドミウム濃度の相関を見ております。こ れでも2000年度米は結構高いものがあったんですが、ほぼ同じ方が持ってきたお米がこ のように随分一定していない。ほぼ同じ田んぼ、同じ流域の隣り合ったぐらいの田んぼ から採られたお米と思われますけれども、相関が低いということで、持ってきたお米で その人の曝露を評価するというのは非常に難しいということを考えましたものですか ら、地域ごとに比較した方がより蓋然性があるだろう、妥当性があるだろうと思われま す。  次に、表6に血中カドミウムを示してありますが、これはE地域では年齢が上がるご とに高くなっております。それで、大体高くなって有意差があるところもあるんですけ れども、次に表7の尿中カドミウムを見ていただきますと、これは年齢に相関して、あ るいは地域に相対してだんだんとこのE地域になるとカドミウム排泄量が上がってくる というのがきれいに出ております。それで、明らかにその地域の米の濃度分布に比例し た形で、どの地域でもその集団の年齢が上がれは高くなってまいりますし、地域が移り ますとその方に米に比例して上がっていくということがわかりました。  次に表8からですが、影響指標としてα1-MG、β2-MGを検討いたしました。ここで各 年齢間の方を見ていただきますとわかりますように、特に有意な差は全くありませんで した。各年齢、各地域ともに比較いたしますと差はございませんでした。  次に表10で、300と1,000のカットオフ値でβ2-MGについて検討をいたしましたが、こ の腎機能障害が高いと思われる人の各地域の比率を比較いたしますと、50代で有意差が 0.05という値が出ておりますが、これはどちらかというとこういう値は地域差でむしろ Cの辺りが低いという形になっておる値でございます。それで、A地域でも19%という 形で特に差がないということであります。  次に図8からの散布図を見ていただきたいと思いますが、α1-MGカドミウム、それか ら次にβ2-MG、それからE地域におけますカドミウム及びα1-MGですね。このように相 関は非常に低いということであります。それで、単相関をいたしまして尿中カドミウム と年齢であるとかα1、β2の相関は見られておりますが、ここでまた散布図を図12、13 と見ていただきます。A地域の散布図とE地域の散布図の年齢と縦軸をα1で見ていただ きますとほぼ同じような分布、それから図14、15はβ2-MGの分布を見ていただきます と、ほぼ同じような分布をしているということがおわかりになると思います。それか ら、E地域の年齢及び血中カドミウム濃度及び尿中カドミウム濃度が図16、17に示され ておりますが、これは年齢とともにカドミウムが両方とも上がる傾向が見られます。  以上のようなことをまとめますと、年齢とともにカドミウムが上がり、それと尿中の 指標で低たんぱく尿が上がっていくということでありますので、この目的変数として表 12にα1-MGのクレアチニン補正したものと年齢及び尿中カドミウムで米中カドミウム、 次の横のカラムがβ2との関係を見ておりますけれども、このように年齢が最も大きな決 定要因であるということが各地域でおわかりになると思います。  血中カドミウムを表13に示してありますが、これもやはり相関はないということであ りますし、ましてやお米との相関は極めて低いということがわかります。  最後に、櫻井班長の御指摘を受けまして表12のβ2-MGとか、α1-MGの尿とのカドミウ ムの相関を見ております0.16とかという値がE地域で出ております。こういう相関は0. 05有意水準では数値は付くわけでありますが、ではそれはどういう関係でこういう相関 が出るのであるかということを、それはクレアチニン補正が完全に十分ではないのでは ないかということでありまして、それで試しに資料5で行ってみました。ここで見てい ただきますように、上の表にはLogのα1-MGと年齢と尿中カドミウムの相関を見ておりま すが、更にクレアチニン補正では尿の濃縮度を補正しているわけでありますが、年齢と ともに変わっていくクレアチニンの産生量であるとか、その他二重にクレアチニンを割 り算したという操作が影響を与えると、それで引っ張られているのではないかというこ とで、この解析で尿中クレアチニンを独立変数の方に入れてみますと、やはりクレアチ ニンのものが大きくなって年齢の方の偏相関係数も上昇するということがわかりまし た。  以上、我々の結果は尿中カドミウム及びカドミウムの曝露がPTWIを超えるものを 受けている方々に尿中のβ2-MG、α1-MGで見ました腎機能障害というものは特に明らか にならなかったという結論でありますし、このようにカドミウムのダイエタリー・エク スポーズ・アセスメントをきちんと行われた研究はありませんので、JECFAには非 常に評価するのに役に立つ結果になったのではないかと思います。以上です。 ○黒川部会長  ありがとうございました。それでは先へ進めたいと思いますが、大前先生の方からお 願いいたします。 ○大前参考人  慶応大学の大前でございます。142ページから152ページが私の担当いたしました調査 です。  我々は、食品中のカドミウムが何%ぐらい実際に体内に入るんだろうということをヒ トのボランティア実験で行いました。用いましたボランティアは大学生でございまし て、若い女性を使っております。この集団を使った理由というのは、1つはこの年代で すとカドミウムの蓄積についてほとんど考えなくてもいい。ゼロということはあり得ま せんけれども、考えなくてもいいということ。それから、集めやすいという実際的な理 由もございます。それから、女性というのは今までの報告ですと男性よりもいろいろな 面で感受性が高いだろうということで、女性を使ってこういう研究をすればどちらかと いいますと安全側に傾くだろうというような観点からこの集団を使っております。  私どもの研究は3つの部分から成っておりまして、最初の部分はこの報告書にはござ いません。昨年度の報告書でございまして、今、実際にスーパーマーケットで売られて おります食品中のカドミウムレベルを調べるということを昨年度行っております。なぜ それをやったかといいますと、実態調査ということもございますけれども、今回は可能 な限り低いカドミウムを含む食品を長期間摂取させまして平衡状態をつくる。その平衡 状態ができた後に少しカドミウムを負荷した場合にどうなるかということをやりました ので、非常に低濃度のカドミウム食ができるかどうかということを確認したかったとい うことで昨年度やっております。  その結果、幾つかの食品、特に穀物、それから貝とか、エビとか、ああいう類いのも のは結構カドミウムは入っているんですけれども、そのほかのものは非常にカドミウム 量が少ないものですから、カドミウムの非常に少ない食事をつくることができるという 結論でございました。  2番目の研究は、では実際に本実験をやるに当たりましてどの程度の日数がかかるの かということで予備実験を行っております。その予備実験の結果は147ページをごらんく ださい。これはほとんど同年代の3人の女性をリクルートいたしまして、現実的には 我々の教室の研究者でございますけれども、非常に低濃度のカドミウム食を食べさせ る。それで、ある時点から通常濃度といいますか、少しカドミウムが多い食事を食べさ せる。そのカドミウム量の調整というのはお米だけでやっております。お米以外の食品 は共通にしておきまして、最初は非常にカドミウム量が少ないお米を使って食事をつく る。それから、後半はカドミウム量が0.4ppm近いお米を使いまして増やしたという形で やっています。  それで、図の1が血中のカドミウム濃度の推移でございます。ごらんになりますよう に、低カドミウム食を食べますと徐々に非常にクリアにといいますか、思ったよりもク リアに血中カドミウムが下がっていきまして、非常にレスポンスがようございました。  図2は尿中でございます。ごらんのように全体としては下がっているんでしょうけれ ども、割とばらばらでございまして、尿中カドミウムは余りこの実験の指標にはならな い。 図3が便の中のカドミウム、それからシャドーで書いてありますのがCd-Iとい うものでございますけれども、これが実際に食べさせたカドミウムの量でございます。 最初の12日間は低カドミウム食を食べさせたということであります。それで、12日以降 に高カドミウムに移行したわけでございますけれども、ごらんになられますように便中 のカドミウムと、それから食事中のカドミウムはインテックが9日、10日辺りからほぼ 一致してくるということで9日、10日くらい、少し余裕を見まして本実験では12日とし ましたけれども、そのくらい低カドミウム食を食べさせますと大体、今の若い年代の女 性は平衡に達するのではないかという結論が得られましたので本実験に移りました。  その結果が149ページ以降でございます。149ページの図4は、実際のカドミウムの摂 取量でございます。実線でありますのがカドミウムを12日目に1日負荷といいますか、 高濃度のカドミウム食を食べさせた群、それから点線が1日ではなくて3日という群も つくりまして、1日だけでうまくいくかどうかというのは若干不安があったものですか ら、担保をする意味で3日というものも若干つくりました。そういう現実的な理由でご ざいますけれども、こういう形でカドミウムを食事で摂取させました。  図5が血中カドミウムの推移でございます。これは先ほどの例と比べますと余りクリ アではないかもしれませんけれども、12日くらいまで徐々に下がっているということで ございました。  図6が尿中カドミウムでございます。全体としては何となく下がっている感じがいた しますけれども、余りクリアではない。ちなみに、この図5、図6の矢印のところが高 カドミウム食を負荷した時期でございます。  図7が糞便中のカドミウムです。非常にクリアに低カドミウム食を与えますと比較的 早く一定のレベルに達しまして、12日、13日辺りに高カドミウムを負荷しているんです けれども、ごらんになられますように図4と図7を比べていただきたいんですが、この 数字、スケールが同じスケールでございます。大体摂取している低カドミウム量と便中 に出てくるカドミウム量はほぼ一致しているということで、ほぼ平衡に達しているんだ ろうという当初の目的は達したのではないかと思っております。  ということは、逆にいいますとカドミウムの吸収はゼロではありませんので、便の中 のカドミウムと、それから摂取カドミウムがほぼ平衡するということは、幾ばくかのカ ドミウムは腸管に排泄されているということを意味していると思います。それは胆汁か ら出ているのか、あるいは腸管の上皮から出ているのか、そこら辺はオリジンはわかり ませんけれども、いずれにしても腸管内へのカドミウムの排泄があるということでない とこの現象は説明できません。  それで、この摂取量と便中の排泄量を基にいたしまして計算いたしました吸収率とい うのが151ページと152ページでございます。カドミウム消化管吸収率のAとBとござい ますけれども、Aの方はちょっとやり方が違いますのでBの方で説明したいと思いま す。すなわち、図8の2と図8の4でございます。この2と4の差は1日か3日かとい うことでございますけれども、いずれにしましても平均的なカドミウムの摂取率が、こ れは吸収率と言っていいのか、あるいは体内に残る率と言っていいのか、そこら辺は言 葉の問題はあるんですけれども、結果といたしましては23.9もしくは23.6と、おおむね 24%ぐらいのお米の中のカドミウムが食物の中から消えたということになります。  ちなみに、この24%という数字でございますけれども、これは先ほどのJECFAの 資料を見てみましてもこんなに高い吸収率の想定をしておりません。5%とか10%と か、そのくらいのレベルで想定をしているわけでございますが、過去の文献を繰ってみ ますと確かに5%、10%以内という報告が多くございます。ただし、実験のやり方には 2つございまして、10%以内というのを示している文献の多くが、食べ物の中に主とし て塩化カドミウムの形でカドミウムを添加いたしまして、これは放射性同位元素を使っ ているのが多いのでございますけれども、添加した状態で食べさせている。それらの実 験は今、言いましたように10%以下のものがほとんどでございますけれども、ごく最近 そういう形ではなくてカドミウムの安定同位体を使いまして、それを水耕栽培の水の中 に入れてやって、植物の中にダイレクトに取り込んで普通にお米を栽培する、あるいは 小麦を栽培するというのと同じようなやり方で安定同位体のカドミウムを小麦に取り込 ませてやった実験の結果が2000年に出ております。  これを見ますと、例えば成人女性3名でたかだか4日間の実験なんですけれども、こ のデータですと42%ぐらいの吸収率というような評価が出ております。それから、これ は随分古いんですが1976年、これは日本で男性2人の研究者が通常の食事を30日間、陰 膳方式、それからその間に出ている便を全部集めまして、その中のカドミウムを測って どれぐらい入っていたかという計算をやっているデータがございまして、これを見ます と2人で各々25%あるいは23%という数字が出ております。したがって、今まで5とか 10とか言われてきました数字、これは主として先ほど言いました食べ物に塩化カドミウ ム等を添加してやった形で投与した場合の吸収率と、それからごく普通のというんです か、食物の中に入っているカドミウムの吸収率は若干違うのではないかというのが今回 の我々の結論でございますし、それから過去の文献との比較でひょっとしたらそうかな という感じがしております。以上でございます。 ○黒川部会長  ありがとうございました。その後のデータについては説明は略することになっている んですね。 ○櫻井参考人  それでは、ごく簡単に説明させていただきます。153ページ以降です。2つの研究がご ざいます。  まず搗製・製粉工程というものにつきまして、161ページと162ページの表4と表6を ごらんください。表4の方は原料玄米の濃度に対して精米する、あるいは無洗米、胚芽 精米でどの程度のパーセンテージ、カドミウムの含有量がどの程度の比率になるかとい うデータですが、表4の一番下をごらんいただきますと精米では104.5%とむしろ増えて いるような結果です。無洗米というのはもう既にぬかを取る工程を経ていて、そのまま 洗わなくても食べられるという意味だそうですが、洗っていないお米という意味ではな くて洗わなくても食べられるお米ということです。  したがって、やはり精米につきましても、あるいは無洗米につきましても、低くなる ことが予期されていたんですけれども、こういうふうにむしろ高い。あるいは胚芽精米 も280%、これは結局大規模に精米を行う工場で最初の玄米を取って、それからその後、 出てきた製品のサンプリングをしてこのようにデータが出ているので、そういうやり方 では正確に把握できない。残念ながら、明確なカドミウムの動態を把握できなかったと いう結論でありました。  一番右の試験搗精というところで、小規模な搗精の機械で実際に実験的にやってみた 結果というのがこれでございます。そうすると、精米では96.8%に減少し、ぬかの方は 139%であった。これは大体予期した結果でありますが、90%ぐらいに減るという文献が あるようですが、それに比べると減り方は少なかったということです。  それから、表の6は麦ですね。玄麦に対してこういう1等粉、2等粉、3等粉云々の 比率を見ております。1等粉というような一番品質の高いものほど麦の芯に近い方だけ の粉ということで、末粉というのは一番外側で、ふすまは御承知のように小麦の皮のく ずということでございまして、表面ほどカドミウムの濃度が高いということでありま す。したがって、芯に近いところほど低い濃度であるという結果になっております。  163ページ以降は加工、調理によるものであります。それで、166ページ以降に図がご ざいます。これは実は表1から表5というのがあったのにこのまとめでは抜け落ちてお りまして、大変分担研究者の方に失礼をいたしましたが、その核になるのは図の1のカ ドミウムの場合というものをごらんいただきますと、洗米の回数を重ねていってもそれ ほど減少しない。マグネシウムのようなものがよく減少するけれども、カドミウムは余 り減少しなかったということでありまして、163ページの一番上のところに要約が書いて ありますが、カドミウムは米の加工調理における損耗が少ない。精白米の洗米・炊飯過 程で約95%が残存していた。  大豆では、煮豆にすると90%ぐらいに減る。豆腐にすると、元の大豆の約60%が移行 するというような結論です。それから、皮に一番多いものですから、もし皮を取るとか なりカドミウムの低減効果が考えられるという結論です。以上です。 ○黒川部会長  ありがとうございました。膨大な研究の報告を約1時間20分ぐらいかかってやってい ただきました。では、ここで御質問などありましたらどうぞお願いいたします。 ○廣瀬委員  尿中のカドミウムを指標としていろいろな調査を行っているわけですが、この尿中の カドミウムは曝露状態を示すのか、あるいは腎臓等の臓器の沈着を反映しているのか、 その辺はいかがなんでしょうか。 ○櫻井参考人  私からお答えいたしますが、恐らく尿中に出てくるカドミウムに寄与しているのは血 液中に存在するものと、それから腎に存在するものと両方だと考えられますが、どちら かというと腎にあるものが寄与率が高いというふうに考えている人が多いと思います。 それで、結局過去の曝露の指標であるというふうに見ることができるのではないかと思 います。もし血液中のカドミウムの寄与が大きいとすれば比較的最近の曝露ということ になりますが、その寄与は若干はあるとしてもそれほど大きくはないというふうに考え られています。 ○黒川部会長  よろしいですか。 ○津金委員  私も廣瀬先生と同じ疑問を持ったんですけれども、尿中カドミウムが年齢とともに相 関するというようなことや、ある高い地域が存在しているというようなことは、過去の 今までの曝露の摂取量を表しているというふうに考えていいんですか。それとも、例え ば尿細管障害の結果としてβ2-MGの排泄量が増えて、同時に尿中カドミウムも増えると いうようなこともあり得るんでしょうか。β2-MGとカドミウムとは、少し相関が見られ ていますけれど。 ○櫻井参考人  尿のカドミの濃度は、主に過去の曝露を示しているというふうに考えていいと思いま す。しかし、曝露レベルが下がると尿のカドミウムの濃度も下がりますから、過去の曝 露がそのままそこに反映しているのではなくて、過去に曝露し、更にまた下がっている とすると、一番曝露したときの濃度を必ずしも示してはいないと思います。  それから、尿へのカドミウムの排泄は腎機能障害を起こすと急に増えるという事実が ございます。したがいまして、明確な腎障害が存在する。例えばβ2-MGとかα1-MGとい う低分子たんぱく尿が明白であるような方々ではどうも尿中への腎からのカドミウム排 泄が増えて、したがってその時点では尿のカドミは高くなり、その後では低くなってし まうという現象もあろうと思います。ただ、ここで調べられている集団では明白な低分 子たんぱく尿の増加が認められているとは思えないので、したがってそういった腎障害 がカドミウムの排泄に影響を及ぼしているとは私は考えておりません。 ○津金委員  関連で、個人の尿中のカドミウムをずっと測定したデータが大前先生の実験でありま して、個人内格差が非常に大きいと思うんですけれども、そこら辺はどういうふうに考 えられるんでしょうか。過去の曝露ということを考えると、余り変動しないということ が期待されるような気がするんですけれども。 ○大前参考人  我々の実験の対象者は、お米を食べる量もせいぜい100gぐらいしか食べませんし、も ともとカドミの曝露が少ない方々で、毎日おしっこを取りましてあれだけ大きな変動が あるということですので、変動があること自体はごく普通の状態だと思います。それ で、ほかの先生方のは大体1回の尿でございますが、その変動の中のどこかの点を取っ ているということだと思います。それをマスで見た場合には大体のことは言えると思い ますけれども。 ○櫻井参考人  今のことで追加させていただきますが、尿のカドミは非常に確かに変動が大きい。も ともと尿のカドミの濃度が高い人についても低い人についても同様に大きな変動がござ いますが、当然一番大きく効いているのは尿の濃さ、尿の濃縮の程度だと思います。そ れは通常クレアチニン濃度で補正しているわけですが、にもかかわらずたとえクレアチ ニンの濃度で補正したとしても変動は残存するというのが1つございます。したがいま して、血液のカドミの方が安定した指標であるということは言えると思います。 ○津金委員  血液のカドミウムと尿細管障害の指標との相関と尿中のカドミウムとの相関というの は同じであると。要するに、先生のデータに関しては同じようになかったということで すね。 ○香山委員  はい、相関はありませんでした。特に血中カドミウムの方が相関はほとんどなかった ということです。 ○黒川部会長  ほかにございますか。 ○津金委員  大前先生の実験の中で、吸収率が比較的過去のいろいろなシミュレーションに比べて 高目のような気がするんですけれども、これは実験条件で非常に低カドミ食を摂取して いたことによって、栄養学的にカドミウムを考えてはいけないのかもしれませんが、枯 渇状態みたいな形になって、そのカドミウムを蓄えるプールみたいなものが余裕ができ たという状況において摂取したのがそこに回っていって、見掛け上吸収率が普通の状態 よりも高くなったというようなことは考えられるでしょうか。 ○大前参考人  まず1つは、この集団は貧血はございません。したがって、鉄欠乏のことはまず考え なくていいという集団でございました。それから、先ほど申し上げましたようにこの集 団はもともとカドミの蓄積が非常に低い人です。したがって、カドミを蓄積する余裕が たくさんある集団であるという意味では、その吸収率を上げる方向に働いている可能性 はあります。  ただ、もっと重要な可能性というのは、これはあくまでもまだ仮定なんですけれど も、塩化カドミウムのような形で食べさせる実験というのは、これはイオンの形でとり ますので、例えばペクチン酸とか、あるいはファイバーとか、そういうものにいったん 吸着してしまいますと割とすっと抜けてしまう感じがするんです。それで、食物の中に どういう化学形態で入っているかというのは今までだれも調べていないのでわからない んですが、その場合はむしろそういう形では便の方にいかない可能性があると思います ので、やはり吸収動態が違うのではないか。そちらの方がむしろ大きなファクターだと いうふうに今、考えております。 ○福島委員  大前先生にお聞きいたしますが、まず確認で、先生の本実験の方の対象者というのは 若い年齢の方でよろしいわけですか。そうしますと、腸管からの吸収率が24%というこ とですが、これは加齢が加わるとその吸収率は変わってくるのかどうか。その辺りのこ とについてはどうでしょうか。 ○大前参考人  先ほど幾つか文献があるというふうにお示ししましたけれども、例えば水耕栽培で小 麦に安定同位体を入れたカドミをやった成人女性は、たしか年齢が40歳代でした。それ で、これが42%ぐらいという数字でございます。したがって、現実的に年齢が変わると どういう吸収率が変わるのかというのは、恐らくデータまでまだないんじゃないかと思 います。  ちなみに、その同じ実験で12か月の子どもを9人くらい同じ実験でやっているんです けれども、これは吸収率が18%ということで、このデータですと成人女性よりも少し下 がっているというようなことでございました。具体的に何歳になるとどれぐらい増える か、あるいは減るかということは今のところ多分わかっていないんじゃないかと思いま す。 ○三森委員  櫻井先生にお伺いいたします。今回の厚生科学研究でなされた実験結果は、来年の6 月に開催されるJECFAに提出されると伺っております。それで、資料6の前回のJ ECFAで評価されているシナリオがございますが、今回の実験データからかんがみ て、シナリオの2番におけるPTWIの元になりました1μgの計算の根拠についてはど のようにお考えになるのか、その辺をお聞かせください。 ○櫻井参考人  この考え方は、吸収率がどの程度であるならばこの基準をどのように考え得るかとい う一つの考え方の枠組みが示されているわけなんですが、例えば2の食事中のカドミウ ムの生物学的利用率10%と書いてございます。それは吸収率と、それから消化管への排 泄率の差であるということなんですね。ですから、本当の意味での消化管での吸収率と 排泄率の差であるネットの吸収というものは、今回のヒトの曝露実験で正確に把握され ているかどうかという点に疑問があると私は考えております。  これはこのデータの解釈の問題で、先生方にもお考えいただけるとありがたいと思う んですが、ここに出ている吸収率24%というのがいったん下がってそこでの吸収であっ て、そうするとその吸収がもしもう少しまた続くと血液中の濃度も上がり、それに応じ て排泄量も上がるであろう。この場合は時間のずれがあって、吸収の部分だけとらえて いるけれども、上がったものに対する排泄という部分が把握されていないというふうに 私は解釈できるのではないかと思っております。ですから、本当は24%吸収し、何%か 排泄し、残りの何%というものがネットであって、それでこのシナリオに対応できると いうことではないかと思っております。  したがって、これ自体を検討するデータにはなり得ていない。恐らくそういう研究は 相当困難だなという気はしております。つまり、予備実験のデータ等を見ましても血液 中の濃度が割合早く減少しておりますから、従来考えていた以上に血液中の濃度という のは早く変動している。つまり、消化管に排泄しているということを示していると思っ ております。  それで、尿への排泄を2.5μg/g crというのを有害な閾値というふうに仮定しておりま す。これは私の考え方としては、やや安全側かなと思われる指標ではあるけれども、お おむね妥当ではないかと思っておりましたが、今回のデータを見ますと池田班員のデー タ等を見ましても、10地域のうち1地域は平均が2.5μg/g crを超えているわけです。3. 2ぐらいでございました。にもかかわらず、その集団として低分子たんぱく尿の起こって いる比率に全くほかと差がないという点から考えると、量・反応関係という意味では関 係がまだ存在しない。ですから、2.5というのが本当にぎりぎりの閾値であるかどうか、 むしろもう少し高いところにあるのではないかというふうに私は想定しておりますが、 そういったデータでこの2.5というもの、それだけで2.5をもう少し高いところに持って いくというようなことが可能かどうかは、どのように皆さんが考えるかということで決 まるんだと思います。 ○三森委員  もう一つ、カドミウムの尿中排泄率についてのデータは今回の研究には含まれていな いわけでしょうか。これについては今後、実施されるわけでしょうか。 ○櫻井参考人  今回、できれば排泄率が測定できるような実験であると考えておりましたけれども、 それは例えば血液の濃度がこんなに早く変動するとは想定していなかったんです。血液 の濃度もほぼ変わらない。そうしますと、残った糞便の濃度というのが、食べた糞便の 濃度と、それから排泄される糞便の濃度の差が排泄量であるというふうに考えていたん です。  ところが、どんどん血液の濃度が下がってしまったものですから、そう単純に計算で きるようなものではなくなってしまったということで、今回は排泄量については全く データがないとしか言いようがないと思います。 ○香山委員  我々が調査した限りで、米の濃度も変動がかなりある。それから、尿中カドミウム濃 度も変動を起こしているということなんですが、吸収率に関してもその方々がどのよう な曝露状態にあるかによって、そう簡単に何%であると出せないような状況があるので はないかということを今、我々は感じております。  なぜかと申しますと、我々はこの千四百数名の集団の中から糖尿病の方の集団と、そ の年齢をマッチさせたコントロール、及び貧血の方の方がもう少し若いわけですが、そ れで見てみますとまだまだ解析の途中なんですけれども、かなり違うデータが出てきて おりますので、現状としては年齢あるいはこの方々は同じ0.4ppm前後のお米をずっと食 べてきた、それで定常状態になっている方の吸収率というのはまた全然違うだろうとい うふうにラフな計算では出ておりますので、このシナリオどおりにいくのはまず不可能 だと私は感じております。  櫻井先生と御一緒に55回のJECFAに行った者としては、ある意味ではコンパート メントモデルで計算してきてシナリオをつくったということでありまして、特にまたこ のデータは労働現場での職業性曝露のデータを下敷きにしておりますので、バイオアベ イラビリティーが非常に違うということを皆さん納得した上でこういうガイドラインを つくったということであります。ですから、今回このダイエタリー・エクスポーズ・ア セスメントのちゃんとしたものが出てくれば、それを土台にしてやり直すということが やはりサイエンティフィックに食品中の基準を決めるにはより妥当だと思います。 ○三森委員  そうしますと、かなり不透明な点もいろいろあるということですので、あくまでも前 回のJECFAで出したシナリオはモデルだけのことということですね。そうすると、 次回のJECFAで今回日本からデータが提出されたとしてもこのPTWIはほとんど 変わらない、出しようがないということですから、暫定的な1μgをキープするような形 になると香山先生はお考えでしょうか。 ○香山委員  それは将来のことなのでわかりませんし、我々のデータをどういうふうに評価してい ただけるかということはわかりませんけれども、実際にこれだけ緻密に経口摂取を調査 した人で、それもこれだけの高い曝露を受けている人はこういうふうにサイエンティ フィックに調べられる場所ではあり得ないわけでありまして、ヨーロッパでどういう影 響があるという調査結果が出ておりますけれども、それはほとんどが経口摂取は極めて 微々たるものという地域であります。  ですから、それを元にして今までこういう推論がすべて進んできたということであり まして、我々もこのような調査が今までできなかったというのがよくなかったことだと は思うんですけれども、これをどういうふうに科学的に議論していくかというJECF Aの過程の中で、より現実に沿った結果が国際的に議論されて、実際にお米を食べてい る人間がこうなんだということをわかってもらうしかないんじゃないかと思います。 ○鈴木委員  不思議だなと思っていることがありまして、櫻井先生あるいは大前先生にお伺いして おきたいと思っているんですけれども、低濃度のカドミウム食を食べた場合に比較的早 くに血中濃度は下がるとは言っても継続してとどまっていますよね。その場合の血中に 表れてくるところのカドミウムの起源というのが、どうも腎臓とか肝臓にたまっている ものが出るというよりはもっと別のところ、一応低濃度ではあるけれども、長期に捕捉 されているとすると骨などを考えないといけないんじゃないかと思うんですが、その辺 のところの出入りを考えないと、今の腸管吸収と、それから腎臓からの排泄だけで物を 論ずるのは不安だなと思っているんですけれども、いかがなものでしょうか。 ○櫻井参考人  血液の中でカドミがどんな存在形態であるかということにまず帰着する部分があっ て、割合早く出る部分と、それから血液の中でもメタルチオネインと結合して割合安定 した形で存在するものもあるであろうと思います。それで移動、それから比較的出やす いような形で存在する部分、例えば一番濃度が高いのは肝臓と腎臓なわけですけれど も、腎の方は比較的そこに固着しているが、肝の方はもうちょっとターンオーバーが早 い。したがって、もし濃度が下がると肝臓からまた血液中に移行し、あるいは腎に移行 するというようなことも想定されておりますので、今、骨がどうであろうかということ をおっしゃいましたが、それは余り今まで定量的には大きな寄与があるというふうには 考えられていないと思います。 ○黒川部会長  よろしいでしょうか。それでは、今日の議題というのはそもそも米のカドミウムの規 格基準の改正の可否ということでございますが、お気付きのように櫻井先生が最初の方 で御説明になった結論、特に24ページにありますように本年じゅうにまた新たなデータ が出てくる。つまり、未完了のかなりの重要なデータがあるということなのでございま すけれども、その報告を受けて理解してからでもよろしいかと思いますが、今日の議題 としてその可否ということで改正を緊急に何かする理由があるというふうにお考えの方 は御意見をいただきたいと思います。  ほかの理由としては、最初に事務局から御説明があったトータルダイエットスタ ディーで現在の日本でのカドミウム摂取量30μg/day/manでやりまして、JECFAのP TWIと比較すると6割程度と随分低いところにあるということ。それから今、申し上 げたような追加データでかなり重要なものが出てくるということ。これは大体この11 月、12月にはということですか。 ○事務局  本年中をめどに提出していただく予定でございます。 ○黒川部会長  そういう背景がございますが、御意見はいかがでしょうか。  それでは、御意見がないようですので、規格基準改正の可否ということでは現在緊急 的に改正する必要はないという御意見で一致したというふうに理解させていただきたい と思います。  それでは、そういうことは次回、いつかはまだよくわかりませんけれども、こういう 会を開いてまた可否について検討をするということにいたしたいと思います。それで、 そのときにはカドミウムの毒性評価をまた重点的に行うということになりますが、審議 体制を変える必要があるという事務局の提案がまいっておりますので、どうぞ御説明く ださい。 ○事務局  事務局で考えておりますのは、やはりこの議論を行うにあたってカドミウムの毒性評 価というものをまず最初に重点的に行っていただく必要があるのではないかと考えてお ります。  そこで、黒川部会長と御相談の上、疫学とか臨床医学等の分野の外部の専門家にもで きるだけ御参加いただきまして、毒性部会にそういった専門家が参加した形でカドミウ ムの毒性評価をまず重点的に御議論いただくというのはいかがかなと考えています。毒 性部会においてカドミウム毒性評価というものの結果がある程度まとまった段階で、食 品規格部会と毒性部会との合同部会を再度開催いたしまして、それで米の基準値等につ いて御議論いただければと考えておりますが、いかがでございましょうか。 ○黒川部会長  小川先生、食品規格の方ではいかがでございますか。 ○小川部会長  今の議論を聞かせていただきまして、私たちが参加させて頂く前に、毒性評価につい てもう少し専門的に検討しておいて頂くのがよろしいかと思いますので、是非よろしく お願いします。 ○黒川部会長  では、御意見がなければ、そんな審議体制といいますか、まずは毒性部会、それから 合同部会というふうにしていってよろしいでしょうか。  ありがとうございます。大体これで議事は終わったと思うんですけれども、その他が 何か事務局からございますか。今後の時期的なことはまだ未定でしょうか。 ○事務局  次回の時期につきましては、研究もまだ残っておりますので、その未完了な部分の研 究報告が提出され次第、できるだけ早い段階で開催したいと考えております。 ○黒川部会長  そういうことでございますので、ほかにございませんでしたらこれで終わりたいと思 います。どうもありがとうございました。                                     (了) 照会先 :医薬局食品保健部基準課 太田・横田 電話  :5253−1111(内線2484・2488) ファックス:3501−4868