02/06/14 第14回厚生科学審議会生殖補助医療部会議事録          第14回 厚生科学審議会生殖補助医療部会                   議事録          厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課         第14回 厚生科学審議会生殖補助医療部会議事次第 日時  平成14年6月14日(金)14:00〜17:00 場所  厚生労働省専用第21会議室(第5合同庁舎17階) 議事  ○ 生殖補助医療に関する有識者からのヒアリング   ・棚村政行氏  早稲田大学法学部教授(アメリカにおける生殖補助医療の現状)   ・三木妙子氏  早稲田大学法学部教授(イギリスにおける生殖補助医療の現状)   ・松川正毅氏  大阪大学大学院法学研究科教授(フランスにおける生殖補助医療           の現状)   ・床谷文雄氏  大阪大学大学院国際公共政策研究科教授(ドイツにおける生殖補           助医療の現状)   ・菱木昭八朗氏 専修大学名誉教授(スウェーデンにおける生殖補助医療の現状) ○桑島室長  ただいまから、「第14回 厚生科学審議会生殖補助医療部会」を開催いたします。  本日は、大変お忙しい中をお集まりをいただきまして誠にありがとうございます。  本日は荒木委員、相良委員、新家委員、古山委員、町野委員がご欠席のご連絡をちょ うだいしてございます。安藤委員、石井委員、松尾委員におかれましては、多少遅れら れるというご連絡をいただいてございます。  それでは、早速、審議に入りたいと思います。部会長、どうぞよろしくお願いいたし ます。 ○矢崎部会長  それでは、まず資料の確認を事務局からお願いします。 ○桑島室長  それでは先生方のお手元にご用意してございます資料の確認をさせていただきます。 資料1といたしまして、課題2を事務局で整理をさせていただいたものでございます。 これは前回から提出させていただいてございます。  資料2がアメリカの制度の内容でございます。資料3がイギリス、資料4がフラン ス、資料5がドイツ、資料6がスウェーデンでございます。  参考資料といたしまして、寄せられましたご意見についてまとめたものをご用意させ ていただいてございます。  以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  よろしいでしょうか。それでは議事に入らせていただきます。前回、最後に渡辺委員 から、児童精神医学の生殖補助医療とのかかわりについてお話を伺いまして、最後に質 疑応答する時間がございませんでした。きょう5名の先生方からヒアリングを行います ので、渡辺委員からのご説明は、次回(第15回)にまとめて行わせていただきたいと思 います。特に今渡辺委員にご質問ということはございませんでしょうか。よろしいで しょうか。  それでは次回まとめて討論したいと思います。  それでは、本日は引き続いてヒアリングをご説明いただくということでございます。 3回目でございますが、今回は諸外国における生殖補助医療の現状についてのヒアリン グということになっております。実は平成13年度に厚生科学特別研究で、「諸外国の精 子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療に係る制度及び実情に関する調査・研究」が 産業医科大学の公衆衛生学の松田教授の下で実施され、その結果が報告書として完成 し、きょうそれに基づきまして、担当された研究班員の各先生方から、アメリカ、イギ リス、フランス、ドイツ、スウェーデンの各国についてご説明いただくことになってお ります。  それでは、お手元の資料に従いまして、最初に「アメリカにおける生殖補助医療の現 状について」、棚村先生からお話をお伺いしたいと思います。  きょうご説明いただく先生が5名いらっしゃいますので、大変恐縮ですが、ご説明は 25分以内によろしくお願いしたいと思います。 ○棚村氏  ただいまご紹介いただきました早稲田大学の棚村でございます。アメリカ法の現状と いうことで、特に政策と法というレベルでお話しをさせていただきます。時間が限られ ておりますので、簡単にお話しを始めたいと思っております。  まず「はじめに」というところでは、アメリカの生殖補助医療規制をめぐる公共政策 の特色ということで、アメリカ法について既に存じ上げている先生方はおわかりだと思 いますが、連邦制がとられていまして、法の多元性・多様性ということが、生殖補助医 療をめぐっても特色として挙げられます。特に家族法、医療法は伝統的に州の規制に服 しておりまして、もちろん連邦の法規制というものもいろんな形で及んでおります。し たがって、50の法域ごとに規制が異なるという特色があります。  それから、権力の分立、チェック・アンド・バランスということの徹底のために連 邦・州の機関、部局、そういうところごとに非常に重層的な規制構造も持っているわけ です。  3番目に、社会生活や個人の自由の尊重というようなことが特に重視されまして、国 家とか州、行政が介入をすることに対して極めて抑制的である。不介入主義、自由主義 ということを基調としておりますので、基本的な生殖補助医療という新しい技術に対し てもそれが当てはまってくるということになります。したがって、生殖補助医療技術に ついての公共政策形成過程においても、集団よりも個人を尊重するという個人主義、社 会福祉というか、公共の福祉というよりも個人を中心とした自由を尊重する。画一的な 規制や適合性よりも技術革新とか進歩、研究開発。そして市場原理とか中央集権的な方 式の包括的、一般的な規制ではなくて個別的・具体的なケースごとに形成をしていくと いう傾向が非常に強いということになっております。  したがって、例えば連邦議会が1985年に、生物医学倫理諮問委員会を設置しましたけ れども、中絶をめぐる政治的な対立に巻き込まれて頓挫をしまして、報告書すら提出で きないままに、89年に解散をしました。そしてアメリカでは専門職能団体というのです か、専門家の団体である生殖医学会とか医療学会、ASRM、こういうようなところの 自主的なガイドラインと当事者の自己決定とかプライバシー権を重視し、個人の権利救 済を目的とする司法裁判所が個別的ケースごとに生殖補助医療についてもコントロール するという傾向が非常に強いわけであります。  したがって、ヨーロッパの諸国が生命科学とか遺伝子工学、生殖医療技術の発展に対 して、人間の尊厳とか家族の保護、こういうものを国家の責務、公共政策の柱として重 視をするのに対して、アメリカは個人のイニシアチブと生殖の自由というものを第一に して、問題ごとに必要最小限の何らかの規制と個別的な権利侵害に対する司法のコント ロールというものを重視した非常にレッセ・フェールというのですか、無干渉主義的な ものが基本原理に置かれているということが言えるかと思います。  それから生殖補助医療の現状、実施施設とか患者数、出生児数等については、CD C:疾病管理予防センターと訳しますけれども、そこが報告書を出しておりまして、詳 しくは、先ほど報告がありました研究報告書の、13ページ以降のところにございます。 大まかなところだけ言うと、1998年段階で390 施設がありでデータを提出しているクリ ニックが360 ということになっております。  それから、出生児数等についてなのですけれども、報告書、そこに書いてあるものを 見ていただければわかるのですが、大体360 とか370 を超えるクリニックで、人工授精 の方がなかなかはっきりした数字が出てきません。体外受精についてはCDCなどで報 告を集めていますので、ある程度の数は出てくるのですけれども、2〜3万というので すか、そういうような人工授精の数を挙げる人もいますし、6万ぐらいあるのではない かというのもありますし、このあたりの正確なデータがはっきりしません。ただ、AS RMなどでいいますと、大体6万ぐらいが体外受精で生まれているのではないかとか、 あるいは2〜3万が人工授精、全体としては約9万から10万ぐらいというような話もあ ります。このあたり、なかなか正確な統計がきちんととられていないということをご了 解いただければと思います。  生殖補助医療の規制方式なのですが、これも結局基本的にはプライベート・オーダリ ング・モデル(Private Ordering Model)という、要するに基本的には私的自治とか自 主規制というものでいくというあり方と、それから、ステート・レギュレーション・モ デル(State Regulation Model)という国家規制モデルが基本的なタイプとしてありま す。国家が生殖補助医療に関して、当事者の意思の実現とか自己決定とか、こういうこ とを重視して、余りうるさく監督や規制をかけていかないという立場と、基本的にこう いう新しい技術について、利用者の資格とか利用できる技術の範囲とか、条件を法で規 制をして、治療とか研究の実施体制、もちろん親子関係にもかかわるわけなので、かな り厳格に法で規制をしていくタイプがあると思います。  結局各国これから見ていくことになりますけれども、ドイツ、フランス、ヨーロッパ の国々は基本的に国家規制モデルをベースにしながら、細かい点では専門職団体の自主 規制を働かせるとか、アメリカとか日本ですと、日本は特に緩やかになってしまうかも しれませんが、基本的に私的自治・自主規制モデルということで、アメリカなどでも個 別的契約とか同意、カウンセリング、専門職団体のガイドライン、こういう緩やかな規 制のモデルがとられる。  中間的なアプローチと言っていいかと思いますけれども、イギリスでは許認可庁みた いなものを設置して、必要最小限の枠組みだけは法的規制をして、最後は実施要領とか ガイドラインという指針で弾力的に規制をかける、こういう方式が考えられるのだと思 います。  各対応についてなのですが、これも報告書の方に、各州法の一覧表を載せました。こ れはかなり膨大なものですから、とても全部細かく書くということにいきませんので、 まず31ページに人工授精に関して各州法を少しまとめたものがあります。  32ページ以下に、代理母契約について、各州の規制状況というのですか、法の状況に ついて書いています。  36ページ以下で州ごとに簡単に州法の規定、どんなところに触れているかということ と、根拠になっている州法の条文ごとにまとめたものが63ページまでございます。この あたりも大まかなところにとどめさせていただきたいのですが、AIDについてはほぼ すべての州で認められているわけで、同意をした夫はAIDの出生子の法律上の父とな る。提供者は父とはならない、こういうような規定が置かれております。  AIDの実施に当たって、感染症とか遺伝性の疾患、こういうものについてのチェッ クを義務づける州がございます。これも州の一覧表のところに書いてあります。  それから、提供精子による体外受精、提供卵子による体外受精について、これは制定 法上規定を置いているところは余り多くありません。したがって、専門職能団体である ASRM、要するに生殖医療学会のガイドライン、こういうようなことでの自主規制と いうことに多くを任せているということになるかと思います。  胚移植についてもやはり同じであります。  代理懐胎については、ここに書いてありますように、代理母契約を無効とする法域 と、有効とする州と幾つかあるわけですが、有効とする場合にもいろんな条件を課して いるところがございます。  2000年に改訂された統一親子関係法でも、代理母契約の場合には書面による合意が必 要で、裁判所に事前に承認を求めるというような形で、関係者全員が参加をして裁判所 で承認・チェックを受けるということになります。不妊という医学的な診断、親になろ うとするものの適格性とか契約内容に対して十分理解している、あるいは子どもを持っ た出産の経験があること、カウンセリング、医療費の支払い、こういうことについてき ちんと確認をする。 あと細かいことは報告書のところにも書いてありますので参照し ていただければと思います。後で親子関係のところを若干お話ししようと思います。  それから、生殖補助医療の監視機関というか監督機関ですが、先ほどから出ているア メリカの生殖医療学会、これも1944年に設立をされた生殖医療の研究のための民間の非 営利団体、学会員は90%以上が産婦人科医で、各州を代表するような1万人ぐらいの会 員から成っております。  業務委員会というか実務委員会とか倫理委員会、こういうところを設けてガイドライ ンとか報告書を作成をしている。ただ、具体的な苦情とか問題の解決をするという機関 ではありませんで、会員に対して非常に啓蒙的な情報の提供とか教育的な機能を果た す。ただ、アメリカの場合にはリゾルブ(Resolve)という不妊を経験をしている人たち に対する教育やサポートの提供とか、患者側を中心とした全国規模の非営利団体が活発 な活動をしております。この団体がリプロダクティブ・ヘルツの増進と不妊とかそのほ か、生殖上の障害を持っている人たちに対して、生殖医療へのアクセスとかいろんなこ とのサポートをしているわけで、4,000 人以上の会員と50の支部を持っていまして、全 米的な規模でボランティアの運営委員によって運営をされております。  それから、ナショナル・コアリッション・フォー・オーバーサイト・アセステュー ト・リプロダクティブ・テクノロジー(NCOART)、これは生殖補助技術の監視の ための全米連合というのですか、これはアメリカン・バー・アソシエーション(ABA)の この部門に強い弁護士さん、ASRMの担当者、CDCの疾病管理防止センター、食 品・医薬品局、これは連邦の機関ですが、それからリゾルブ、こういういろんなところ の代表者が集まって、生殖補助医療にかかわるような問題について定期的に会議を持っ て情報交換を行っておりました。空港に近いホテルに陣取って、全米から朝集まってき て、夕方までびっりりやってそれぞれ帰っていくというような、そういう会議を傍聴さ せていただきましたけれども、かなりそういう意味では民間の機関と行政、弁護士会、 いろんな団体の代表者が情報交換をして議論をしている。これは公式な組織になってな いようですけれども、非常に注目される存在であります。  生殖補助医療における契約と親子関係ということですが、ここでも問題になっていま すインフォームド・コンセントとカウンセリングの関係であろうかと思います。先ほど 言いましたように、アメリカというのは、プライベート・オーダリング・モデルを原則 としていますので、契約における説明義務ということとインフォームド・コンセント、 十分納得した上で同意をしていく。かなり詳細な契約モデル、ひな型がきちんと整って いるということが特色だろうと思います。  細かいことは各クリニックとかそれによって少しずつ違ってくるわけでありますけれ ども、後でまた包括的にお話ししますが、一般的に言いますと、不妊の原因とか医療を 受ける適格性、治療内容や方法、その副作用、危険性、生まれてくる子の親として責任 を持たなければならないということ。情報の管理の問題、費用負担、不要になった胚な どの処分・措置、いろいろ重要事項についてきちんとわかりやすい説明がされて、十分 理解をしたということで、同意したことが書面にされる。  おもしろいのは、クリニックに行きますと、危険性についてずらっと何十項目もあっ て、それについてもパートが幾つかに分かれて、リスクとか危険性についてどういう治 療を受けて、どういった危険・問題が出てくるのだろうか。そういうこと全てを納得し ましたと記載されます。自分が英語をちゃんと理解して、話もわかります、内容もわか りますというようなことも事細かに書かれたものに署名をする。そういうものについて も、立会いをする人をつけたりもできるようになっている。特に重要な問題について は、公証人の認証というのですか、ただ、日本で言う公証人とちょっと違いまして、た くさんその辺にいらっしゃって、ノータリー・パブリック(Nortary Public)というの が書面の意思をきちんと真正に成立したという認証がされることが多いようです。  それから、精子・卵子・胚の提供者、配偶者からも医療処置の内容、副作用、配偶子 の生殖医療への使用とか、子に対する権利の放棄、責任の免除、こういうことについ て、医師や医療機関から説明があって、書面による同意が得られていく。  特にカウンセリングなのですが、独立した不妊の心理カウンセラー、生殖補助医療の 心理カウンセラーが独立した形で置かれています。これもASRMなどのガイドライン を見ましても、リプロダクティブ・ヘルス・ケアにかかわるような、もちろん精神医 学、心理学、ソーシャルワーク等の学位と最低1年間の実務経験、そしてASRM、そ のほかの専門職団体の主催するワークショップや研修への参加が資格要件というような 形で様々な心理的な支援という形で行う、カウンセリングをきちんと受けましたという ことが求められています。カウンセラーも署名するようなところがありまして、医療機 関の業務をサポートするようなカウンセラーではなく、全く別個独立に医療機関とは 違った立場でサポートをして、それを受けて意思決定や自分が同意をしているのだとい うことを明らかにするシステムになっております。  それから、配偶子の提供契約とか代理出産の契約についても報告書の方で書いており ます。ただ、費用等の問題が出てくるのですが、ASRMでも、アメリカ生殖医療学会 でも、金銭や報酬が主たる目的にはなってはならないというガイドラインをしいて、原 則無償だとするのですが、実費については支払いを認めています。そうすると交通費と かいろいろなものが入るということなのですが、リスクや不便に対する補償も認めると いうことになるので、なかなかこのあたりが有償とみるのか無償とみるのかむずかしい ところです。実費相当額は何かというのは、ここでも問題になると思うのですが、そう いう議論がございます。  それから、精子・卵子・胚の保存の管理と法的な取扱いについてかなりいろいろと問 題が出ております。例えばルイジアナ州などでは1986年に法律を制定しまして、初期胚 のための高度の注意と慎重な管理義務を課して、生存可能な胚の故意の破壊とか卵とか 胚の売買、こういうものを禁止をする。初期胚というのは、親とか医療機関の所有とい うことではなくて、もし紛争が起こったら、胚の最善の利益に従って裁判所は決定をし なければならないというようなことで、かなりユニークなのは、父母が胚に対する権利 を放棄することができて、他人の妻に移植することで別の夫婦の養子にできるというよ うなところです。いずれにしても胚にも法的な主体性を認めながら、ヒトとしての部分 と物としての部分の中間的な扱いで段階に応じてかなりヒト的な扱いをしていくという ことになる。  離婚、死亡、婚姻の破綻をめぐって凍結胚の扱いはかなり問題になっている。これも 後でご質問があれば、判例のところでご紹介をしたいと思います。  それから、生殖補助医療から生まれた子の親子関係の確定なのですが、これは2000年 の統一親子関係法の改定がございまして、そこで今まで統一親子関係法が整理されまし て、1つは、精子又は卵子の提供によって子が出生した場合に提供者は子の親ではない ということが明示をされております。  同意をした場合、AIDのケースで、夫が妻の生殖補助医療に同意をする。AIDだ けではありませんけれども、夫は出産した子の父となる。同意についても書面であるこ とと、夫婦両方の書面が必要です。細かいことは報告書にも書いてありますけれども、 生殖補助医療の合意がされたのだけれども、実際の移植以前に婚姻が破綻をした、こう いうような場合には、以前の夫は生まれた子の法律上の親とはならない。ただし、そう いう場合にも父となる旨の同意がある場合はこの限りではないとされる。  それから、死後の生殖補助医療の実施についても規定を置いておりまして、死後の実 施の結果、生まれた子の父となる旨の同意がある場合、この場合もかなり厳格な同意で すけれども、法律上の父と認められる。  それから、代理出産から生まれた子の親子関係についてはかなり慎重な立場をとっ て、親となり得るのは法律上の夫婦に限られるとか、先ほど言いました医学的な不妊で あるという診断、代理母については出産経験、健康に危険をもたらさないこと。既婚者 が代理母であるときは夫の同意と権利放棄ということも要求をされまして、裁判所は共 同で参加者全体がきちんとした申立てをした場合でも、合理的な医療関係費についての 規定、家庭調査とか親としての適格性の審査ということを行って認証というか承認をす る、こういうことになります。認証や承認をした後でも、代理母が妊娠するまでは合意 解消ができることになっております。これも報告書に書いております。アーカンソーな どでは、代理出産の場合に出生登録の関係で出産した女性を母とする規定などを置いた りしています。  大分時間がなくなってまいりましたけれども、子どものアイデンティティを知る権利 と提供者のプライバシーということなのですが、アメリカでは3分の1ぐらいの州で秘 密保持とか記録の保存に関する制定法を持っておりまして、医師がカルテや診療記録と いう形で記録の保管を義務づける。例えばカリフォルニア州などではそうです。イン ディアナ州のように、州の保健局に同意書とかワンセットを封印して保管をさせると、 こういうところがございます。ただ、医師の場合には、簡単に手続がとれるということ と、プライバシーや秘密の確保みたいな点でも、一応簡単にはできるのですが、ただ、 小さいクリニックだと経営者がいなくなるとか、かわってしまうと不明になるというこ とで、公的記録と比べてメリット・デメリットがあります。ただ、同意書の記録は正当 な理由があるという裁判所の決定がない限り、閲覧は許されません。  子どものアイデンティティを知る権利ということで、ほとんど判例とか制定法も今な くて、養子のアイデンティティを知る権利というものの規定が類推をされるということ で、これもいろんな意見がありまして、本人の精神的・情緒的な安定とか、遺伝的な疾 患とかいろいろ有無ということを確認する上でも積極的に認めるべきだという立場と提 供者のプライバシーを考える、あるいは提供者が少なくなるのではないかということで 消極的な立場もあります。これも細かくはいろいろありますけれども、提供者に事前の 同意を求めていたり、あるいはノーアイデンティファイングのインフォメーションとい うのですか、身体的な特徴とか医学的な情報、要するに本人を特定できないような、住 所、氏名、出生年月日、そういうものでない情報については認めるべきではないかとい う傾向にあります。  提供者について、匿名が原則になっているのですけれども、それによって提供者を確 保しようということなんですけれども、民間のあっせん業者などの場合には、直接配偶 子の提供契約みたいなものを契約するということもありまして、そういう場合にはわか るということになるわけです。ただ、最近では、先ほども言いましたように、氏名、住 所は開示はできないけれども、本人を特定できない情報については詳しく開示してもい いという提供者というのはもちろん多くなっているようであります。  あとは、保険の適用についても報告書で書いておきました。  それから、最近のケース、2000年以降のものについては幾つか用意をしていたのです けれども、これについても時間の関係がありますので、ご質問があればその中でお答え するということで終わらせていただきます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。大変貴重なお話を伺いましたが、時間が大分迫って おりますが、ぜひということであればお受けしたいと思います。既に事務局から説明い ただく先生方には、姉妹からの卵子の提供についてどうかということと、出自を知る権 利はどうか、提供に対する対価の条件について触れていただくということご連絡あった と思います。  今のお話では、アメリカでは商業主義を排除することにはなっていますが、実費の支 払い、実費の範囲は不明確である。我々議論をいろいろしたような結果がそのまま反映 されていると思います。出自を知る権利も匿名が原則で特定できないような情報のみの 提供が主流であるというようなお話を伺いました。匿名原則ですけれども、姉妹からの 卵子については一言いかがでしょうか。 ○棚村氏  対価については、むしろ商業主義は排除されていなくて、商業主義が極端に走ってい るものですからいろんな問題が出ているという状況です。ただ、学会の自主規制のガイ ドラインでは、有償というのか、お金を目的とする提供は非常に問題が多いので、原則 は好ましくないという形になっている。  兄弟姉妹の方が非常に問題なのですが、ASRMのガイドラインなどでも、兄弟姉妹 の場合の提供は、特に制定法ではもちろん制限をしていませんけれども、遺伝性疾患と か異常とか家系的なことでのリスクみたいなものをきちんと検査をしろということと、 それから、提供をする前とした後の心理的、法的、社会的ないろいろの問題についてき ちんとカウンセリングを強く求めるというようなガイドラインをおいています。特に第 三者の提供に比べて、近親者、兄弟姉妹、知人、そういう人たちの場合には、なぜ提供 するんですかとか、提供した後、近い関係であるためにどういう問題が起こるかわかり ますかとか、そういう非常に厳格なカウンセリングと同意を要求をしているということ で対応しようとしているようであります。  ただ、同性愛の人たちのケースなどでも最近トラブルが多いのは、みんなで協力し て、提供し子を持つですが、関係が破たんしたり、解消して、それで訪問をさせろと か、あるいは看護権をよこせとか、こういうことなので、近親者からとか知人からの提 供の場合は、ほかの多くの国ではかなり厳しい規制をかけておりますけれども、後がな かなか難しいという感じはアメリカでもしております。  ガイドラインではそういうことで、特に近親者の場合、知人の場合には、動機、目 的、その後、生ずるようなトラブルとかいろんなことについてきちんと問題を把握して 理解しているかどうか。それに対してどういうトラブルの解決方法を考えているかとい うようなことについてまでチェックをすることが望ましいとなっております。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。いかがでしょうか。 ○金城委員  先ほどカウンセラーについてインディペンデントだと。そして医療機関に付属したカ ウンセラーではないというお話があったんですね。日本はほとんどがインディペンデン トではないので、インディペンデントでないとどういうことが保障されないかというこ とが1つ。何でアメリカではインディペンデントなのかという質問にかえてもいいと思 うんですね。  それからもう1つ、そういう方々はどういう形で営業しているのでしょうか。その2 つをお願いいたします。 ○棚村氏  1つが先ほど言ったプライベート・オーダリング・モデルというのは契約でもって、 自分たちの合意でやることについては最大限保障しようことですから、当然形式だけの 同意をとったり、かたちだけの同意、書面だけ揃うということでは困るということにな ります。そうだとすると事前、事後、最中もきちんと撤回ができるような保障もしなけ ればいけない。特に自己決定をする場合にカウンセリングが重要なものとなってきま す。  私が言った民間のクリニックの場合も、これは全く別のところへ行ってカウンセリン グ受けるということになりますと、費用とか時間とか、そういうことで実質大変なこと になりますので、そこに提携をしているようなカウンセラーについて、そして、そのカ ウンセリングも独立に、カウンセラーに1時間幾らということお金を払って、受けまし たということになるわけです。  ですから医療機関では提携はしていますけれども、カウンセラーの協会とか団体が あって、これも質もいろいろばらばらだという話もありますけれども、1時間当たり幾 らで、そういう心理カウンセリングを実施をするということになっています。独立のカ ウンセラーを設けておかないと非常に形式に流れてしまうという危険性があることと、 それからお医者さんの側では、カウンセラーが言うのは親子関係とか家族とかというこ とも非常に影響があるので、単に心理的なサポートというだけではなくて、ある程度法 的、社会的に起こり得る問題についての知識みたいなものも持つということで、役割分 担をして、そしてカウンセリングを受けたことを条件にしていくような場合には、特に そういうカウンセラーの役割は重要なのだろうと思います。  それから、2番目が……。 ○金城委員  どんな形で営業している場合が多いのですかということです。 ○棚村氏  私も幾つかの例しか知らないのですけれども、ほとんど医療機関と提携をしていると ころが多いのではないでしょうか。 ○金城委員  お給料は医療機関からもらうのではなくて、カウンセリングをする相手からカウンセ リング料を。 ○棚村氏  小さなクリニックではそういうような形でしていて、実際に診断をしたり相談に乗る ところは普通のオフィスみたいなビルの一角にあって、治療を受けるところはラボラト リーで、ちょっと離れたところに行ってやっています。だから相談とか、ちょっとした 不妊の診断みたいなものについてとか、カウンセリングを受けて治療方法とか、それを 受けるとか受けないとか、そういうことについては部屋があって、そういうところで受 けているような形でした。  ただ、カウンセラーについては倫理コードとか、そういうものがあるわけですので、 お医者さんとは全く別の立場で支援をする。カウンセラーの公正中立性、専門性、独立 性というのが保障されています。日本では、公的な資格がきちんと整備をされていない という部分で問題はあろうかと思います。 ○矢崎部会長  簡単によろしくお願いします。 ○才村委員  私はソーシャルワーカーなんですけれども、先ほど心理カウンセラーの資格として ソーシャルワークの学位を持ったという一言あったと思うのですけれども、生殖補助医 療におけるソーシャルワークないしはソーシャルワーカーの果たす役割があるのか、日 本でも必要なのではないかと思っているのですけれども、アメリカでは、今、法的、社 会的なサポートも単に心理的にだけではなくされると聞いたのですけど、その辺の実態 もしわかれば教えてください。 ○棚村氏  専門の、どの程度の経験や資格の人が実際にやっているのかというあたりはわかりま せん。ただ、ASRMとかいろんなところのガイドライン、カウンセリングについての 報告書みたいなものを見ていると、かなり広範囲な、今言ったメンタルヘルスのケアが できるというのと、ソーシャルワークなどをやっている人たちがやっています。ダブル メジャーみたいな形でやっているのか、そのあたりよくわかりません。法律とカウンセ リングにかかわるようなことはかなりアメリカの実例を知っているのですけれども、医 療とカウンセリングにかかわるようなところは私はよくわからないものですから。た だ、ソーシャルワークというもののバックグラウンドを持っている人がいる、あるいは 認められているということについては報告とかいろんなところで出てきております。 ○平山委員  少しだけよろしいですか。今のソーシャルワークのことですけれども、アメリカのメ ディカル・ソーシャルワーカーはマスターレベルなんですね。その修士課程で基本的な カウンセリングの資格があるというふうになっています。ですからアメリカでのマス タークラスのカウンセラーと同等のカウンセリングをする権利がある。ただ、サイコセ ラピーはできないと、そういういろんな細かい規定はありますので、アメリカ生殖医学 会のメンタルヘルス・プロフェッショナル・グループにソーシャルワーカーも属してい るということがあるとは聞いています。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。時間も過ぎておりますので、棚村先生少し急がせて すいませんでした。 ○棚村氏  どうもありがとうございます。 ○矢崎部会長  それでは引き続き、早稲田大学の三木先生から「イギリスにおける生殖補助医療の現 状」ということで、よろしくお願いしたいと思います。大変恐縮ですが、また時間の方 をよろしくお願いいたします。 ○三木氏  それでは、イギリスについてお話し申し上げます。イギリスについては多くの方が既 に知識を持っていらっしゃると思いますので、かなり絞った形でご説明申し上げたと思 います。  私は5項目立てましたけれども、最後の代理出産は、これは省かせていただいてもよ ろしいかと思っております。もし時間がありましたら、先ほど部会長がおっしゃられて おりました対価、支払いの問題を5番目に充てるということにさせていただこうかと今 考えました。  まず基本的なことでございますが、イギリスの生殖補助医療についての基本を定めて おりますのは、ご承知のとおり、90年の「ヒトの受精及び胚研究に関する法律」という 法律でございます。これは49箇条4附則から成っておりまして、当時世界でも最もコン プリフェンシブな立法であるというふうに言われました。しかしその後、95年にカナダ のヴィクトリア州が199 箇条「不妊治療法」という法律を制定いたしましたので、今で はヨーロッパの中で最も包括的な立法を持っているというふうに言えるかと思います。  それでこの法律の最も基本的な部分は、ご承知のとおり、ヒトの受精及び胚研究に関 する認可庁と申しましょうか、そういう独立の庁を設置したということにあるかと思い ます。この構成メンバーはチェアマンと委員長、副委員長と19名の委員から成っており まして、いずれも保健大臣によって任命されます。そのほかスタッフはかなりの人数を 擁しておりますし、パートタイムでこの認可庁に協力する専門家は大変に多いわけで す。  この認可庁の権限でございますが、大変広範囲にわたりますが、最も重要なものは、 認可:ライセンスを出すということであろうと思います。この認可は生殖補助医療を実 施する機関に認可する、配偶子を保存することを認可する。それと研究、生殖補助医療 に関連する研究を行うことを認可する。この3つについて決定権を持っております。こ の認可を決定するかどうかを決定するために、19名の委員の中の6名でしたか、専門に それに当たる委員会を構成しております。最終的には全体会議でもちろん決定されるわ けです。  それから、指示をする権限でありますが、これは多様な問い合わせがまいりますの で、それに対して非常に大きなことから小さなこと。自分の死んだ夫の凍結精子を、夫 は同意してなかったのだけれど、保存してもらったので、生殖補助医療の規制が緩い ヨーロッパの、例えばベルギーに持ち出すということの許可がほしいとか、輸出の許 可、輸入の許可とか、そういうことを含めて非常に多様な指示をする権限が与えられて おります。  それから認可に劣らず重要だと思われますのはコード・オブ・プラクティスをつくる 権限であります。これは一応「実施規程」というふうに訳しておきますけれども、これ は90年の法律の中で認可庁には実施規程をつくる権限があるというふうに定められまし て、発足と同時につくりました。それが昨年の3月で第5版までいっているわけです。 4回改訂をされました。大幅な基本的な方針変更はございませんけれど、通してみます と、増補改訂をしているなという感じがいたします。  報告書には、第5版で目立った変化、増補分といたしまして、これも過去何年か大変 問題になっておりましたエッグ・シェアリングにつきまして、一定のガイドラインを出 しましたので、71ページから72ページにかけて訳しておきました。  それから、カウンセリングは当初の実施規程から記述はございますが、次第に充実し てきていると思われますので、それについても報告書の中で、100 ページ以下に関連箇 所を訳筆しておきました。  それとこの第5版の新しい点といたしましては、先ほど部会長がおっしゃいました費 用の問題があります。費用と言ってよろしいのか、何といいますか、ペイメント・オ ブ・エクスペンセスという言い方でございますが、要するに出費をしたことに対する支 払いの計算の仕方とその上限についてガイドラインを出したというのが第5版の目立っ た点かと思います。  この実施規程というものは、これはイギリスでは珍しいことではございませんけれ ど、ご専門でない方のために申し上げますと、これは法的拘束力があるわけではなく て、したがって、このガイドライン、実施規程を守りませんでも、直接民事上又は刑事 上の責任を問われることはありません。そういうわけで、任意的であって強制的でない というふうに言うことができます。しかし、遵守してないという事実は、認可委員会に よって考慮されまして、認可の変更とか場合によっては取り消しを招くことはあるかと 思います。実際にその例はまだないように伺えます。  これが実施規程でございますが、立法では細部について規定をしないで、実施規程に 任せるということが非常に広く行われております。  HFEA:認可庁の権限は大変広範囲でありまして、一般人の一番目に触れる活動と しましては、まず広報活動があろうかと思います。患者のためのガイドブックを出す。 各認可をしたクリニックについての情報を一般人に提供するということです。それか ら、後で出てまいりますが、各クリニックが実施した治療に関係する様々な情報を一括 して認可庁が保管をしているということもあります。これからはその開示ということが 問題になってくるわけです。認可庁についての基本的なことはこれくらいにさせていた だきます。  次に生殖補助医療を受けることできるものなのでありますけれども、これにつきまし ては、婚姻身分によるというようなことは一切法律では定めておりません。治療を受け ることができるものとして規定した条文は、90年法の13条の5項がそれに当たるかと思 われるわけなので、重要な条文でございますので、読んでまいりますと、「女性に対す る不妊治療サービスは、その治療サービスの結果、生まれてくる子の福祉(その子に とっての父の必要性を含む)、及びその子の出生により影響を受けるべきその他の子の 福祉を考慮した上で提供しなければならない。」というのが治療を受けるための前提に なっております。 この13条5項は実施規程の中でも繰り返し、生まれてくる子の福祉 を考慮して実施するか否かを決めるのだということが言われております。生まれてくる 子の福祉を考慮して、提供するか否かの決定は、どこがするかと申しますと、認可を受 けた各実施機関がするわけであります。その場合に、その決定をする主体であります が、それにつきましては、担当医師だけというわけではなくて、実施規程の言葉を借り ますと、マルチ・ディスプリナリーに判断するのだということを言っております。これ は職種を異にする様々な人たちの集まりでもって決定をするのだということで、カウン セラー、ソーシャルワーカー、看護師、そういう人を含めて考えているものと思われま す。婚姻、身分、あるいは性的な志向によって、年齢によって絶対的に法律によって決 められているわけではございませんので、すなわち独身の女性でもレズビアンでも、そ れから新聞では60歳の女性が娘のために出産をしたとか、そういうことが報道されます が、年齢の問題、それからある種の疾病を患っている人についてはどうかということに ついては、13条5項の基本原則で判断されるという以外にないわけでございますが、 ちょっとおもしろいと思いましたのは、単身女性と言っていいかどうかわかりません が、X,Y、Zという人は、Xは生まれたときに女性で、性転換手術を受けて男性に なっている人が、パートナーの、生まれながらの女性のYにAIDを施してもらって子 どもを得たのです。Zが生まれたわけです。それでこのXは、社会的には男性として通 用しておりますので、その事件は、Xが自分をZの出生届の父の欄に自分の名を書いて ほしいということを言って、それが入れられなかったんですね。父というのは、生物学 的に生まれながらに男性である者に限るということでX,Y、Zの請求が入れられな かったという事件なのですが、本日の問題から申しますと、どこがこの事件をおもしろ いかと申しますと、YがAIDを受けるためにクリニックに行ったときに、性転換をし た人と同棲をしている女性が子を生むということは子の福祉になるかどうかということ が判断された様子がわかるのです、判例を読みますと。最初そのクリニックは、倫理委 員会にかけたのです。これはイギリスでは当然のことではなくて、倫理委員会のないク リニックもあるのですけれども、倫理委員会にかかりまして、そこで不妊女性、不妊か どうかはあれなのですが、女性のパートナーが性転換者であるということで治療を断ら れました。  ところが、このX,Yはあきらめないで、ヨーロッパの文献等を探し出して、性転換 者又はレズビアンカップルから生まれた子どもがいかに健全にというとおかしいのです が、いかに普通に育っていて、性的に偏向してないという論文を探し出して提出をいた しましたら、二度目にその倫理委員会はその実子を認めたということが判例集からわか るので、ちょっとおもしろいと思ってご紹介をいたしました。  それから、レズビアンなのですが、これは判例集ではなくて新聞記事だけであります けれども、11年間安定したレズビアン関係にあった人が、ホモセクシュアルの男性に接 近されまして、そして自分の精子で子どもを産まないか、という声をかけられまして、 それで産んだのですが、これも法的に誰が父かというのは面倒なことになりますけれど も、レズビアンでも不妊治療を受けることができるというのはかなり数が多いと。統計 的にはあらわれてきませんけれども、大変に数が多いということが言われますので、こ の事件などもおもしろいかと思いました。  それから年齢なのですが、60歳で実施された人もおりますけれど、年齢を限るという ことは各クリニックに任せられておりますし、国民健康保険でやる場合には、各地区の 保健当局が独自に方針を立てることができるわけです。そしてそのシェフィールドの保 健当局は、25歳から35歳に限るという方針を立てました。それでこのシールという女性 は、37歳であったがために断られたわけです。これが、その決定が保健当局及び病院当 局の決定は不当であるということで争いましたけれども、結局それは敗れました。35歳 で限るということは、限られた至近ということを考えますと、許される範囲内であると いうふうになりました。  それから、HIVポジティブの女性のことなんですけれども、これはBMJの雑誌 で、2001年に発表されたものですが、57のクリニックを調査いたしましたところ、41ク リニック(72%)はポリシーとしてHIVポジティブであっても治療はするという返事 をしたわけです。しかし、そのうちの多くは、前年度は行わなかったけれどもという回 答をしたということなんですね。そこからわかりますことは、HIVの患者に対して、 イギリス全土に普遍的に共通するようなガイドラインは存在してないということがわか る。これに対して批判をする人もおりますし、それでいいのだという人もおりますが、 いずれにいたしましても、「生まれてくる子の福祉」という基準に照らして判断をする ということになります。  ありとあらゆることが13条5項でもって判断をされて結論が分かれるわけなんですけ れども、近年こういう原則を維持するということは問題であるという意見が出てまいり ました。前にもぼつぼつとあったのですけれども、特に正面から13条5項について疑問 を呈したのがことし出ました『モダン・ロー・レビュー』というイギリスではなかなか 権威のある雑誌に、生殖補助医療にとって、生まれてくる子の福祉というのは関連性が ないのだということで、原則を維持することを認めるべきではないという論文が書かれ ました。  この論文をご紹介する時間はありませんし、それほど意味があるかどうかもわかりま せんが、ぼつぼつそういう声が出てきているので、何でもかんでも困ったことは、「子 の福祉」を言っていればいいのだというわけにはいかなくて、もう少し子の福祉という 白紙条項的な規程を置くのだったら、もう少し具体的に細かな物差しを法律の中に書き 込む方がいいのではないかという声がちらほら聞かれるようになってきているというこ とを申し上げたいと思います。  これは、私は法律の論文しか見ておりませんけれども、『ソーシャルワーカー』と か、『ヒューマン・リプロダクション』といわれる雑誌の中にも、ぼつぼつこの福祉原 則、子の現存する子の福祉を基準にして判断するのは親子法の原則でありまして、養子 法の原則であって、それはいいのですけれども、このように存在しない子ども、これか ら生まれてくる子どもの福祉を基準にして判断することに対しては問題が感じられてい るということだけを申し上げたいと思います。  次に記録の保存及び開示ですが、これが出自を知る権利ともいうことができると思い ますけれども、先ほど申し上げましたとおり、実施をした各機関の記録は集中して認可 庁に集められます。そしてその開示の問題は、既にほとんどの方がご承知だと思います けれども、18歳以上であれば、子ども本人が不特定の情報であれば得ることができると いうことですが、具体的にはそのための規則を制定しなければならないのですが、いま だに制定されていないわけです。ましてドナーに関する特定の情報をどうするかという ことが、この法律を制定する前の84年のワーノック・レポート以来、イギリスでは大変 大きな問題になっております。  これはほとんどやむことなく引き続き保健省の中で、それを検討する委員会が機能し ているように思われます。いつコンサルテーションペーパー、中間報告であっても出る かということで、新聞はたびたび、もうすぐ出る出るということを言っておりましたの ですけれども、結局は昨年の11月に、これはまだコンサルテーションの段階であります けれども、公表されました。大いに待たれていたものでありますが、確たる方針が出て いるわけではなくて、現状のままで構わないということと、もう少しドナーについて収 集しておく特定の事項の種類を増やすというのでいいのだと。余りに増やすと不特定の 情報とはいえ、それは本人を特定することになるのではないか。それだったら特定でも いいのではないかとか、そういう問題点の整理は確かにされておりますが、保健省自体 がどういう方針を今後とっていくのかということについては判断はできないと思いま す。  パブリック・コメントの締切日が間もなく7月1日でありますので、それまではわか らないということですが、7月が近づいてまいりますと、また議論が大変盛り上がりま して、どうなるのかということでありますけれども、予測は余りしないことにいたしま すけれども、新聞でジョアンナ・ローズという、これは29歳の女性なのですけれども、 29年前にAIDによって生まれた子どもなのですが、この人ともう一人、6歳の子ども をその不妊治療によって得た親とがイギリスの高等法院に対しまして訴えを起こしてい るのですね。ドナーについての情報が欲しいとクリニックに行ったけれど、それは開示 はできないと断られたということの不当性を司法審査という手続に訴えたことと、それ からこの原告2人は、国の立法でどうなるかわからないから、それを待っていられない ので、任意に生まれた子どもと提供者、その他関係者が知りたい場合には、その意思表 示をしておく。任意にそういう登録法をつくるという、それを認めろと、そういう訴え を起こしておりますが、ことしじゅうに結論が出るかわかりませんけれども、ともかく 受理されたということはびっくりいたしました。  それから、5月13日にワーノック・レポートのバロネス・ワーノックがある団体で講 演をする多分先日だと思いますけれども、これはワーノックさんではなく、こちらなの ですけれども、私が84年のときにドナーについては特定の情報を与えるべきでないと 言ったのは、あれは間違いであったということをはっきり言うのですね。子どもたちに はドナーを追跡させるべきであるということを申しまして、大変大きく報道されまし た。そのワーノック発言の後の新聞記事は、当然のことながら、医師のうちでドナーが いなくなるという、従来からの反対論の人と、それからワーノックに全面的に賛成だ と、80年とは全く社会が変わったのだということの意見が新聞を賑わせましたのと、そ れから21歳の青年:ドナーが、この人はレギュラリーに提供しているのだそうですが、 まだ子どもは恐らく10人生まれてないのでしょう。その人が、ワーノック発言は大いに 結構だ。自分も知りたい。自分の精子からどんな子どもが生まれたかぜひ知りたいとい うことを申しまして、訪ねてきてくれるとしたら、ファンタスティック・エクスペリエ ンスではないかということを言ったのが写真入りでBBCにも登場したそうでありま す。  イギリスの予想するのはやめますけれども、イギリスの保健省が十分把握している情 報といたしましては、コモンウェルス諸法域の最近の立法動向、そういうものがござい ます。私が注目すべきだと思いますのが、ヴィクトリア州の95年の立法でありますが、 これは本日はご紹介できないと思います。といいますのは、知る、情報の開示というこ とにつきましてだけで30箇条規定を置いております。これは子どもだけではなくて、レ シピエントの方です。それからドナーが知りたいと言った場合と、子ども自身と子ども の直系卑属はどういう場合に知ることができるかということと、ドナーの知る権利とい うことについて詳細に書いております、30箇条、ご紹介はできませんけれど、知る権利 というのは双方向的だという認識を95年にヴィクトリア州は明らかにしたと思います。 これは特定情報、18歳以上であれば、カウンセリングを経てでありますけれども、特定 情報を開示するということでありました。  それで、オーストラリアも95年に立法ではなくて、規則でもって生物学的出自につい ての特定情報を得ることができるということにいたしましたけれども、それを2000年に はもうちょっと立ち入りまして、ドナーはそれを甘受しなくてはいけないのだというこ とでいろんな勧告をしておりますが、ディスカッションペーパーでありますけれども、 ドナーは提供するときにカウンセリングを経て特定情報の開示に同意をしなければ提供 はできない。胚が形成された後は同意の撤回はできないとか、その上、ドナーについて の情報を正確にするためには、18年前や何やらの情報ではいけないということに気がつ いたのだと思いますが、ドナーは毎年コンタクトをとって、子孫のためにと言っている のですが、子孫のためにアップデートで詳細な情報を提供するようにエンカレッジされ なければならないというようなディスカッションペーパーを2000年に出しております。  そのほかに、子どもの権利ばかり認めますけれども、ドナーの方はということに対し ましては、知りたいドナーのためには、教えてもいいよ、あるいは訪ねてもいいよと子 どもが言うことのできるボランタリーなレジスターを任意的に設置するから、そちらの 方でということで、子どもの権利の方が優越していると思われます。  それからニュージーランドですが、これは現在法案でありますけれど、18歳以上です と、ドナーについての特定の情報を得ることができます。18歳未満であっても、不特定 な情報は得ることができます。  それから、ドナーの方の権利ですが、18歳以上の子どもには、子どもの同意があれ ば、ドナーに開示されます。子どもが25歳以上になりますと、同意しなくてもドナーは アクセスできるというようなドナーの権利が規定されております。  それから、カナダですが、これが一番新しい法案で、これは10年以上やっております ので、恐らく成立する可能性は高いと思いますけれども、これは子どもについて年齢に 言及をいたしません。子ども直系卑属はドナーについての不特定情報を得ることができ る。ドナーのアイデンティティ、ドナーの特定のために用いられると期待される情報が ほしい場合には、ドナーの書面による同意がなければ開示されない。ドナーの同意にか かわらせているという規定であります。  それから、イギリスで16歳以上で婚姻する場合には、という例の規定ですが、我々2 人、婚約者同士は兄弟ではないか、それを教えてくれというあの規定がありますが、そ れをこういうふうに変えているのです。一切年齢は申しません。2人の者の申立てによ り、もしかしたら1人のドナーによって我々は生まれたのではないかと信じる理由があ る場合には、2人の間に遺伝的つながりがあるかどうかについて知らせてくれというこ とが言える。これは婚姻にかからしめておりませんので、同棲でもよろしいし何でもよ ろしいわけですけれど、半血の兄弟同士かどうかもチェックできるということになりま す。  開示の問題はそれくらいにいたしまして、近親者友人による提供、提供者の匿名性の 問題と関連いたしますけれど、これはノンドナーは許容されております。これは90年法 の中に規定がないのでどうもはっきりしなかったのですけれども、同意書の中に誰々の 配偶子によって施術されるという、そこに誰々のと入れる書式がございますので、当然 ノンドナーを認めているということと、それから実施規定の中に、知られた者である場 合には、そのことが子の福祉に対して持つ意味を考慮して実施の決定をなさいというの があるのですね。ですからノンドナーであることが非常にプラスに働く場合とマイナス に働く場合と判断してからなさいということで、プラスになる場合もあるということを 前提にしていると思います。  この問題については、余り大々的に論じられたことがないと思うのですが、1つ注目 すべきなのは、英国医師会が代理懐胎について、90年と96年に報告書を出しておりま す。90年のときは、姉妹、友人による提供というのは認めなくて、代理母は匿名でなく てはいけないという原則を大々的に指示したのですけれど、それが5年たったら、5年 の間に係る議論の背景がかなり大幅に変わってしまったというのですね。そういうこと で、90年当時は複雑な家族関係云々というようなことが言われたのですけれど、複雑な 家族関係は多くの者にとっては、現在ではもう普通のことであって、そのような関係は 必ずダメージをもたらすとみることはできないというようなことと、それからむしろ積 極的に知り合っている方がいいのだということなんです。代理母で頼むときばかりちや ほやされますけれども、出産後は非常に退けられるということがその人にとってどんな に打撃になっているかとか、子どもは育っていく関係で親族とか友人の間で拡大した親 しい間でその子が育つということの利点、それをファミリー・サポートというような言 葉で言いますけれど、それが望ましいのだというふうに、96年の報告書では変わってき ているというわけです。それは個々のケースによって違うけれど、時代は複雑な家族関 係ということに耐えられるし、受容できる家族構成の範囲も著しく変わってきたという ことと、子どもの遺伝的背景に関する情報を共有したいという意識が非常に強まってき ているのだから、近親者、友人による提供はむしろ好ましいというふうに変わってきて おります。  ニュージーランドでありますが、これは2001年のときもそうでしたが、2002年の3月 の中で、この委員会はナショナル・エティクス・コミティというのは、全ニュージーラ ンドの全国的な不妊についての倫理委員会でありますけれど、その中で代理母につい て、分娩の母は依頼した親の家族又は親しい友人であることが好ましいという一文が 入っていることをご紹介させていただきます。  時間が超過しているようでございますので、あとは省略させていただきます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。大変コンプリフェンシブな内容を理解しやすくご説 明いただきましてありがとうございました。テキストの中に、今お話いただいたものが 大部分含まれておりますが、何かご質問ございますでしょうか。もし、今ぜひというこ とでなければ、休憩を入れさせていただいて、3時40分から次の松川先生のお話をお伺 いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  どうも、三木先生ありがとうございました。                   (休憩) ○矢崎部会長  それでは再開したいと思います。大変スケジュールがタイトで、ご説明される方及び 部会の委員の方々に窮屈な思いをさせて大変申し訳ありません。続きまして、フランス における状況を、大阪大学の松川先生からよろしくお願いいたします。 ○松川氏  ただいまご紹介頂きました大阪大学の松川でございます。ただいまからフランスの人 工生殖と法律の問題についてご説明申し上げたいと思います。限られた時間ですので細 かいことは申し上げなくて、余り情報が豊富でない分野でありますので、非常に粗っぽ いですけれども、概略を知るという意味で、粗っぽいデッサンといいましょうか、そう いうつもりでしゃべることにいたします。お手元のレジュメに沿ってしゃべるつもりで す。大きくはフランスにおける人工生殖の実施基準と親子法という2つの柱を立ててい ます。フランスにおける人工生殖とはどういうことか。  本論に入りますけれども、フランスの場合は1994年に「生命倫理法」という名前の下 に法律ができております。それが民法典とか保健法典とかに組み入れられて現在の姿に なっております。その基礎が1994年にできております。この立法がどのような形ででき ていたかということをお話しするに当たり、フランスでは目的とか何のためにというの をまず大切にするということを指摘することができます。  人工生殖に共通の目的として、これは病の治療ということを大義名分として挙げてい るわけであります。だから、そこから病の治療でないものが排除される可能性が出てき ます。  もう1つは、重大な遺伝病の回避ということもありますけれども、どれが重大な遺伝 病であるかということは、これは医療の現場に任されているのが現状ですので、今回は 余り触れないことにいたします。  それで人工生殖が病の治療ということと、もう1つは、人工的なものではありますけ れども、自然の流れを根本的に変えていくということはなるべくしないでおこうという 1つの配慮があります。そこからどういうことが言えるかといいますと、人工生殖を求 める者はどういう人かといえば、これは男女からなるカップルであるべきという制限が できてきます。男女からなるカップルですので、婚姻関係と自由結合(内縁)関係も含 まれてきます。また男女ですので、男・男・女・女の関係、もしくは女性だけというの は、ここから排除されてくるというふうになっております。  それと生殖年齢にあることということも条件につけ加わります。本来、自然であれ ば、生殖可能である年齢にあることということも条件として求めております。  それと生存し、同意可能なことという条件もつけております。生存し、同意可能とい うことは、死後の夫の精子を用いての人工授精というのは自然の時の流れに反するとい うことで排除していくわけであります。そこで生存し、同意可能という条件を課すわけ です。これは人工生殖を求める側の要件になりますが、なるべく自然の枠内でという配 慮の1つということができます。それと体外受精に関しましてはフランスは伝統的に非 常に敏感な態度をとります。生命が始まっているということを非常に重要視します。  体外受精の場合の問題点は、後にまた触れていきますけれども、これは提供する場合 の問題とかであらわれてきます。どういうことになるかといいますと、そこであたかも 養子を連想させるような手続が受精卵の提供のところであらわれてくるということであ ります。これも、体外受精に関する非常に敏感な態度ということが言えると思います。  非常に簡単ですけれども、一応これが1番目のフランスにおける人工生殖ということ で、人工生殖に共通する目的として、一応病の治療ということを挙げて、できる限り自 然の枠内で行う、そういう姿勢を示しているということが1つの大きな特徴と言えま す。  フランスの法律の流れは1994年の生命倫理法と2000年に保健法典が改正されておりま す。この2つが大きな法律になっております。  それでは、2番目の実施基準と親子法の問題です。  人工生殖を行うに当たっては説明義務と意思の確認という2つの柱があるということ にお気づきになると思います。説明義務というのは、施術に先立って医療班、医者と精 神科医と心理学者などから構成するとなっていますけれども、そういう医療班の説明を 受けることです。これはこれから受けようとする人工生殖が一体どのようなものであっ て、どうなるのかという内容の説明で、ただ、その後で、そんなことはなかったのだと いうことがないようにするのが1つの目的なのだそうです。だから、精子をもらって人 工授精する場合は、ああなって、こうなるというような話をするのが「説明」というこ とであります。その説明の中には法律的な状況、こういう立場になるというところまで 説明するということであります。  それともう1つは、意思確認が2段階に分かれて行われます。一番最初の施術を受け たいという意思、それがまず第一段目です。説明を受けた後でもう一度確認します。そ れが一連の意思確認の作業でもあります。その作業が済んだ後、1カ月置いて熟慮期間 ということで、また1カ月後に出頭して意思を確認するシステムになっております。こ れが一般的な人工生殖の意思確認の手続であります。  そこに提供精子もくしは提供卵子の問題が入ってきますと、今度は提供を受けるとい うことに関して特別の説明が入ってきます。先ほどちょっと混ぜて説明してしまいまし たけれども、一般的な人工生殖の施術の説明に、もしそこに提供ということが入ってき ますと、それにプラスアルファが行われるということです。  それで体外受精、先ほどもお話しましたけれども、フランスでは精子の提供が可能で あります。卵子の提供も可能であります。受精卵といいましょうか、体外受精の場合 は、片方が夫婦のものであれば可能になります。ただ、両方を、精子卵子をともにもら うことは、これは養子法の逸脱というふうに考えていく傾向があります。だから片一方 だけの提供を認めております。両方の場合はどうなるかといいますと、これはまた手続 が、先ほど申しましたように、第三者に提供する場合の問題になってきます。かなり例 外という位置づけをした上で、ここではあたかも受け入れ家族が受精卵が生まれてきた 場合、育てるに十分な家庭であるかどうかということを審査するわけであります。まさ に養子縁組の過程を連想させるわけであります。  それで、次ですが、提供者の場合ですが、フランスは精子の提供は、これは医療の伝 統:セコスという機関が長年設けた基準があります。現行法はほぼそれを受け入れてお ります。セコスの基準というのは、提供者はどういうものであるかということですが、 子のいる夫婦から不妊の夫婦へのプレゼント、慈善であるという、ここでもまた理屈が 出てきます。その柱を立てます。だから、夫婦から夫婦へのいわゆる慈善の行為である というのが提供の基礎を貫く考え方になっております。  したがいまして、提供者は夫婦でなければならない。しかも子を設けている夫婦でな ければならないというふうに限ってきます。子を設けているというのは、子を産む行為 でありますので、それが自らできていない者が提供することはおかしいと、そういうふ うな考え方を根底にあります。医者の側では、いわゆる精子の能力がわかるのでという のもちらっと本音のような形で述べられております。それと、もし夫婦でありますと、 提供者は配偶者の同意が要ります。 それとフランスの人工生殖を貫く基本原則としまして無報酬というのが挙がっておりま す。お金を対価として受け取ってらはならないという原則がすべての人工生殖に貫かれ ております。提供は無報酬ということになります。これは人体の一部、産物であります ので、売買の対象とならない。贈与の対象だけという形をとるわけであります。贈与と いう言葉は不正確でありますので、撤回します。  あと、もう1つは、匿名性でありますけれども、これもフランスの無報酬制と並んで 匿名性というのは非常に重要な形になってあらわれてきます。すべて特定の人物、誰で あるかということにはアクセスできないシステムになっております。ただ、医療上、治 療の上で必要な場合は、その人がどういう人であるかという情報まではアクセスするこ とが可能になっております。これが匿名性の話であります。  そこから言えることは、人工生殖提供に当たっては指名ができないということになり ます。指名をしますと、そこで匿名性の原則が崩れていくという考え方が1つにありま す。そこからまた兄弟姉妹の、また親子間で提供し合うということは排除されていくわ けであります。なぜ兄弟姉妹で親子間で提供は認められていないかといいますと、1つ は匿名性の原則に反するからということと、もう1つは、子どものいる夫婦から不妊の カップルへの慈善行為であるという、その原則にも反するからであるという説明がなさ れます。  あとは提供者から何人まで生まれるかというのは5人まで。これは厳格に定めており ます。一般の産婦人科に行って治療を受けまして、提供精子によるしか人工生殖の可能 性がないという診断書をもらいますとセコスに行きます。各大学病院の附属機関にあた ります。そこへ行って、提供精子しか手がないという診断書を提供します。そうすると リスト・スタンバイが続きますが、何月何日に来いということになりますと、夫婦で行 くわけであります。そのときにセコスの医者が、2人の外形上の特徴をコンピュータに 入れまして、そこから外形上生まれる可能性のない子をのぞくわけです。可能性として 生まれるであろう外観性、それに注意した精子が選ばれてきます。当事者は魔法瓶を 持っていき、その精子の入ったあれは何というのでしょうか、パレットというのでしょ うか、精子の入った細い冷凍の棒をもらってきます。それを魔法瓶に詰めてもらってか かりつけの医師のところに戻ります。かかりつけの医師は、セコスからの書面を確認し た上で、間違いなく、それであるということを確認した上で施術を行うことになってお ります。  その結果を医師はセコスへ報告義務があるわけです。うまく生まれたか生まれてない かをいちいちきっちりと報告することになっています。AIDですけれども、そういう ふうな形がとられております。  生の精子の利用、これは認められないことになっております。  提供精子、提供卵子の場合の可能性ですが、親子関係の問題をどうするか、次の問題 とも絡んできますけれども、これはどうしてもうそが絡んでおります。本当の父親でな いというところにうそが入ってきます。フランス法は現在まだ迷っておりますけれど も、この2人を親子であるというところまではまだよう言わない状態であります。どこ まで言えるかといったら、争うことはできないという形で解決方法をとっております。 だから提供者で同意をする。その同意を当事者だけではだめでありまして、公の公証人 もしくは裁判官の面前で、提供精子を受けて人工生殖を行うという同意。先ほどの医療 での同意+裁判官、公証人の面前での同意と二重構造をとっております。そのことに よって、同意した夫は人工生殖で生まれてきた子に対して、あと身分関係を争うことは できないという形で、言うなれば消極的ですが、身分の安定を図っているということが 言えると思います。  あと、提供精子による場合の親子関係。そうしますと事実上AIDの場合は父親とい いましょうか、提供精子を受けて人工生殖をした妻もしくはカップルの夫が父親になり ます。公証人の面前で合意をしているからということです。  ただ、但し書きが付いております。夫は人工生殖によって生まれたのではないという ことを証明する場合は身分関係を争うことができるということになっております。これ はフランスのきれいな人工生殖の法律、きれいというのは、一応体系立ったと言う意味 ですが、この人工生殖に関する法律ができる以前実際にあった話ですけれども、いわゆ る妻が夫以外の異性と関係を持ち、それを人工生殖ということでカムフラージュする。 そういうことはしてはならない、このような考えが背後にあります。  あともう1つですが、現在ではこの問題は離婚絡みで親権等の問題にもなってきてい るのが現状ということであります。  あと、提供卵子の場合は出産した女性が母ということになっております。  そうしますと、フランス型の立法は、当事者の意思が必ずしもすべてではない、その 姿勢を貫いております。言うならば、公序というものを非常に大切にしたがっている国 であります。無報酬制、これも現在非常に揺れ動いております。科学の発展とかで特許 等々で無報酬制をどこまで維持できるか、現在非常に議論が闘われております。  匿名性、原則は匿名性ということですが、これも現実は母親、父親の方で、子どもに 対して真実を漏らしてしまうことが多いのだそうです。今までシークレットであるべき というところは、匿名出産の女性の権利というのがあります。日本の場合は出産すれば 自動的に母親になりますが、それをX(匿名)ということで出産する権利が認められて おります。それがシークレットの世界の1つであります。  もう1つは、特別養子のところであります。本当の父親へのアクセスは原則としてな し、シークレットの世界であります。  もう1つ、シークレットがここのAIDとか提供者のところであります。これは子ど もは知る権利なしということでやっておりますが、フランスの社会は動いております。 2002年の1月ですが、昨日その情報を入ったのですけれども、子どもの知る権利を認め る改正がなされということであります。秘密の砦の一角が崩れつつあるということがフ ランスの現状であります。ただ、匿名出産の制度を廃止するということではなくて、ほ んの少し修正をするという形で行っております。したがいまして、出生を知る権利は将 来何らかの修正が行われる可能性が非常に高い分野と思っております。  どうもご清聴ありがとうございます。 ○矢崎部会長  どうも松川先生、大変時間をきっちり守っていただき申し訳ありません。どなたか、 これはということでご質問ございますでしょうか。 ○加藤委員  匿名出産というのはどういうねらいのある制度なんですか。あるいはどういう権利を 守るために必要な制度なんですか。 ○松川氏  匿名出産の場合は、男性の場合はシークレットでほっとくことできますね。自ら認知 するか、認知されるかということはありますが、原則として自分が認知しない限りは生 物上親子関係があっても法律的には関係なし。言うなれば、シークレットと言えばシー クレット。ただ、母親の場合は出産の事実がありますので自動的になってしまいます。 それに対して反省が1つあったわけです。  もう1つは、これは社会的な問題となりました嬰児殺しが時どきあったわけでありま す。そうすることを避けるという政策もあったと聞きますが、とにかく産めということ で、親子関係は形成せずに特別養子縁組へと流れる、そういう流れをつくっていったわ けであります。これが2番目であります。  3番目は、理由ではありませんが、匿名出産の説明になってしまいますけれども、匿 名出産の今までの特徴は、子から親、認知の場合、父子関係の場合は認知の訴えがあり ますが、匿名出産になりますと母親を探していくことはできないことになっていたわけ です。だから法律上ここはアクセスできないという姿勢をとっていたのが匿名出産であ ります。女性の権利を守るという流れの中と生まれたばかりの子どもを守るという、こ の2つの流れから出てきた制度であります。 ○矢崎部会長  フランスでは代理懐胎は法的に認められてないわけですよね。 ○松川氏  代理懐胎は認められておりません。これはいわゆるお金が絡むことはないですが、人 身売買といいましょうか、それに類するイメージを持ってしまいます。これが1つの理 由であります。  もう1つは、民法の基本原則といいましょうか、親子の関係というのは当事者の意思 で変更できないというのがあります。代理出産の場合は、何やかんやと当事者の意思で 変更するというのが入ってくるわけです。だから、これは民事身分の付可処分制という 古い伝統があるのですが、そこからも理由を引き出して説明されております。そういう 意味で、フランスでは代理出産は認められておりません。  一言加えますと、それに対して刑事罰を設けておりますけれども、現在全然作動して いないということであります。 ○加藤委員  匿名出産という制度を悪用すれば、事実上代理出産が可能だとは言えないのですか。 ○松川氏  どうやるんですか。 ○加藤委員  実際に代理出産を頼んでおいて、産んだ母親は匿名で産んで、そして、生まれた子ど もを養子としてもらうという。 ○松川氏  それはあるかもしれない。でも、今のは完璧なフランス法の考え方でやりますと、匿 名出産をクリアーしたとしても、あと養子縁組でひっかかる可能性が出てきます。養子 縁組は絶対的無効になりますので、目的は達成されず、これはちょっと無理ですね。当 事者だけの問題であればいいですけれども、養子縁組が否定される可能性がありますの で無理だと思います。 ○矢崎部会長  そのほかよろしいでしょうか。  それでは、どうもありがとうございました。松川先生にフランスの事情をお話いただ きました。ありがとうございます。 ○松川氏  どうもありがとうございました。 ○矢崎部会長  続きまして、同じく大阪大学の床谷先生から、ドイツにおける現状についてお話しを 伺いたいと思います。大変恐縮ですけれども、25分以内でよろしくお願いします。 ○床谷氏  ご紹介いただきました大阪大学の床谷と申します。お手元に比較的原稿調の資料をお 渡ししているかと思うのですけれども、時間の関係もあるでしょうし、ここでお話しす る整理もあるでしょうしということで、あとは読んでいただければといいなというぐら いのつもりでお渡しをいたしました。  ドイツは、アメリカやイギリス、フランスのように非常に複雑ないろんな制度を置い ているということはありませんので比較的話は簡単であります。ドイツ法では人工生殖 ということにつきましては非常に謙抑的でありまして、法律自体まだこれを禁止するも のが、胚保護法という特別な法律はありますけれども、それ以外の一般的な人工生殖・ 生殖補助医療に関する法律というのはございません。これは現在ずっと議論はしており ますけれども、包括的な生殖補助医療法をつくるべきではないかということをここ1〜 2年の間真剣に議論はしておりますが、まだ成案ができるというか、まとまる話には なっておりません。  ドイツは隣国といいますか、オーストリアと歴史的には非常に近いし法律的にも近親 関係がございますけれども、オーストリアでは民法に生殖補助医療によって生まれてき た子の親子関係を定めたり、生殖補助医療法と称する手続に関する法律もあります。ま た、スイスにおきましても、同様なものが新世紀に入りまして、生殖補助医療に関する 新しい法律がつくられておりますけれども、ドイツ法はこうした隣国の近い関係にある 国の法律の動きを見ながらもなおとどまっております。  人工生殖といいますか生殖補助医療につきましては、基本的には夫婦の間の生殖補助 医療ということで、いわゆるAIDということと、in vitroの体外受精、これについて もいずれも基本的には夫婦の間のものであると考えております。特にAIDにつきまし ては、これは各医療機関で行っておりますので、その実態をよく把握するというところ は全くありません。現地の医療機関に尋ねましても、非配偶者間の人工生殖について は、実態はやっているけど、よくわからないというようなことでありまして、手続自体 は一応ガイドラインで定めておりますので、AIDを行う際の注意事項を医師が配慮す べき事柄等についてはある程度ガイドラインで定められております。  また、体外受精についても、これは夫婦間のものは正面切って行いますけれども、提 供精子が絡むものについては極めて慎重でありまして、これについては個々の医師会の 倫理委員会に相当する委員会で判断を行う。これは申請するのに相当手数料もかかると いうこともありまして、極めて例外的なものということになっております。  また、夫婦に限ると申し上げましたけれども、基本的には法律上の夫婦ということ で、オーストリアも事実婚夫婦にも認めておりますけれども、ドイツでは法律上の夫婦 を原則としておりまして、これはボン基本法、憲法に当たる法律上の婚姻の保護条項と 生まれてくる子どもの福祉ということが理由としては指摘されております。ただ、学説 といいますか意見としては事実婚のカップルについても認めるべきではないかという意 見はありまして、オーストリアと同じような一定期間の実績があれば認めてもいいので はないかというような声はございます。ただ、今のところ、まだ正面切って認めており ませんので、これにつきましても、倫理委員会の個別の審議という形で事実上ほとんど 行われてはいないというふうに聞いております。  人工生殖・生殖補助医療がこういう形で夫婦の間の提供しない形のものを基本とした 医療行為というふうに認識されていることから、提供精子に伴う法律的な問題というこ とも法律できちんと整理しているという段階ではありませんので、親子関係につきまし ても、AIDについての判例による整理というのが若干あるだけでありまして、正面か ら民法を改正するといったようなことはまだ行われてはおりません。(本年4月に改 正)  手続の問題としては、初めに指摘されるべき事項としてカウンセリングの問題、説明 の問題、インフォームド・コンセントの問題があるということですが、これは配偶者間 のものは一応別にしまして、提供型のAIDの場合、あるいは例外的に審議されるであ ろう体外受精による提供型の場合(精子)ですけれども、この場合につきましては、そ れぞれの医師会のガイドライン、保険給付が絡む場合は保険給付の面からのガイドライ ンもございまして、医師会についてはガイドラインが98年のガイドラインで現在のとこ ろ進められております。また、保険給付、公的保険の給付絡みの問題につきましては、 97年のガイドラインというのが現在あり、それで動いているというところがあります。 ただ、この保険給付のガイドラインは、ことしの2月に新しいものができ上がりました けれども、7月から施行されるということで、これはいわゆるICSIという問題に対 して、卵細胞質精子注入法というものについての動きがありましたので、その部分を対 応するために改正をするものでありますから、基本的なものは変わってはおりません。  それでガイドラインの中に見る限り、あるいは現地で関係している人に話を聞いてい る限りでは、このカウンセリングとかインフォームド・コンセントについては慎重に行 うということでありまして、こうした行為がいかなる精神的な意味、社会的な意味を持 つか、法的な意味を持つかということを依頼してくる夫婦及び提供型の場合は提供す る、これは精子に限られておりますので、精子を提供する男性に対してそうした問題に ついての説明を十分行うということになっております。その場合は、誰が行うかという ことについては、ガイドラインでは医者というふうにしか書いてありませんけれども、 その他、サイコセラピーの専門家とか心理学の専門家、同僚が行うとか、そういう説明 がございますけれども、それ以外に法的な問題ということ、つまり後でも申し上げます けれども、親子法の関係で、ドイツは特異な立場をとっておりますので、そうした問題 を十分説明をすることが求められております。  それに対して依頼者である夫婦、提供者が同意した場合、それを文書として残し、公 正証書、公証人がそれにかかわるということでありますので、恐らく公証人が説明をす るのではないかと思われます。  実際の治療を行う医師と説明をする医師とは別の人が行うということで、カウンセリ ングを受けたという証明書をもらって、それで治療を受ける人のところに行くという形 になっているようであります。これは手続の問題ですけれども、実際これ以上の実態が 余りよくわからないということで、ガイドラインに書かれてあることを中心に今説明を させていただきました。  精子の提供ということに限られるということを今申し上げましたけれども、卵子の提 供につきましてはドイツでは認められておりません。女性の側の卵子と出産による母親 関係が異なる事態は認められないという考え方を通しておりまして、これは胚保護法、 養子縁組のあっせん、代理母のあっせんに関する法律によって代理母の現象、代理懐胎 といったもの、あるいは卵子の依頼する女性以外の人が分娩するような形でのものは認 めないことになっておりますので、あくまで提供できるものは精子ということに基本的 にはなっております。  ただ、当事者が自分たちのためにということでつくり上げた胚が、事情によって用い られなくなった場合にどうするかということにつきましては、これについては胚保護法 でも明確な規定はありません。最初から他人にやる目的で胚をつくることは禁止されて おりますけれども、自分たちが使うつもりだったのに事情によって使わなくなった。そ の後のことについては特段規定がありません。実際の手続の場合には、もし使われなく なった場合には、それをどうするかということも含めて当事者の意思をあらかじめ聞い ておくという形にしているようですけれども、これは明確な規定がないために、現実的 に余剰になった胚を他の夫婦が使いたいと言ってきた場合にどうするかということにつ いては明確な規定がガイドラインの中にも法にもないということで、これは実態的には 法律の解釈からすれば禁止されてないのだからできるだろうというふうな考え方を聞き ました。ただ、現実にはまだ実際にそういうことが行われたとは聞いておりません。  したがいまして、ドイツでは男性精子の提供のみということを念頭に置いていろんな ことが議論されているということであります。  兄弟による提供がどうこうということですが、これは出自を知る権利とのかかわりか ら、ドイツ法は出自を知る権利を認めておりますので、事実が明らかになることを前提 とした上で、兄弟間の提供ということを議論するべきことなのだろうと思うのですけれ ども、実はこれに関していろいろ文献を見てみたのですが、はっきりしたことは何も書 いてありませんで、これは向こうの人にインタビューをしたときも、日本では兄弟関係 の提供を認めるかどうかかなり大きな議論になっていて、自分としては兄弟はやめた方 がいいのではないかと思っているんだけれども、どう思いますか、といった質問をした のですが、そういうようなことが議論になっているのかということでびっくりしている ぐらいでありまして、余り意識されていないということでありました。  これは提供されるものが体外受精の場合、それほど倫理委員会にかかってやっている ことはあるけれども、それ以降、その中身が余りよくわからないと。AIDの場合も公 式にフォローしていないということもあって、実態的にはあるのかもしれません。そこ のところは見る限りの資料では明らかになりませんでした。印象的にはそういうことは 余り考えていないというようなことでありました。  提供の面については、そういったようなことなのですけれども、生殖補助医療によっ て生まれてきた子の親子関係、それと出自を知る権利の問題ですが、ドイツ法の場合 は、自己の親を知る権利というものも認めておりますし、それから親子関係の面につい ても、AIDの場合も夫が自分の同意をしたことで生まれてきたAIDの子どもに対す る否認権を行使することもできるというふうに考えられております。これはこの資料の 中に簡単に判例法ということでまとめてありますけれども、当事者が夫が同意をした上 でAIDの処置をした場合であっても、その後、夫が自分の意思を覆して否認の訴えに 相当する裁判を起こすといった場合に裁判所はこれを認めるという形のものが基本的に 判例法ということになっております。  これは権利の乱用ではないかとか、信義に反するのではないかという議論はもちろん ございますけれども、そうではないというふうに言っておりますし、事前に同意したこ とによって否認権は失うのではないか、そういうことも議論はありますが、現在はそう いうふうには考えていないということであります。  ただ、反対意見も結構強い。むしろ学者と言われている人たちは反対意見が強くて、 ほかの国の動向から考えても、これはかなり特異な判例ではないかということで、同意 をした父親から否認権は失わせるべきではないか、そういう学説は有力ですし、そうい う方向の立法改正を行うべきであるという意見は常にございます。法律案と言われるも のもありますけれども、まだ法案の段階、成案ということではありません。(本年4月 に改正されています。)この点はほかの国の立法では、AIDを受けた場合、同意した 夫が父親になるというのが多数であることに対して、少し異なる道をこれまでのところ たどってきていたということがございます。  それから、子どもの養育上の負担とかそういうことについてはまた別であるというこ とで、否認はできるけれども、養育費は払うというのが夫の立場のようでありまして、 これが判例であります。  それから、母親の否認権というものも、ドイツ法では98年に施行された法律改正で導 入されましたけれども、母親自身がAIDをして、自分で否認をするということは認め るべきではないという考え方がありますが、これも父親の場合と同様のことであるよう です。つまり自分のAIDによって産んだ子どもの父親は夫ではないということを母親 自身が言うことができる。子ども自身も言うことができるということでかなり広がって おります。これは基本的には子どもが自分の親を知る権利というものが憲法上保障され た人格権になるという考え方に基づくものでありまして、既存の嫡出否認とか父性否認 に関する議論の中で、自分の親を知る権利ということの規定を正面から認めていくとい うことで否認権の拡大ということが行われてきたわけですが、生殖補助医療について は、これを前提として現実の医療行為が行われるということでありますので、カウンセ リングの場合も、将来的に提供者に対しては、子どもの要求があれば、あなたの名前、 特定できる情報を子どもに伝えるということがありますということは言った上で同意を 求めるという取扱いにしているようです。その点が、子どもの親を知る権利という意味 では、ヨーロッパのフランスなどに比べてもかなり強烈に認められているということが あります。  ただ、具体的にどういう形で認めていくか、それを認めるための制度的な手当てをつ くっているかというと、実はそうはまだいってないわけで、生殖補助医療を行った人の データを一括管理をするという組織(センター)が必要ではないかという議論はありま すが、そういうものはありません。どこの提供者によって誰が生まれてというような情 報をフォローするような公的な組織はありません。検討というか、そういうものが必要 だという意見はありますけれども、具体的なものにはなっておりません。  体外受精の実態については、わずかに体外受精を行った医療機関が中央の医師会レベ ルでデータを収集をしているということで、どれぐらいのセンターが体外受精を行って いて、どれくらいの夫婦が対象になって、どれぐらいの子どもが生まれてきているか、 どういう実施が使われているかということの大まかな資料はあります。ただ、これは全 部でありませんので、関連する施設は100 を超えると言われておりますが、公式なとい いますか、医師会レベルのそういうデータ簿に登録をしてデータを送っているところが 90ぐらいでありますので、全部を捕捉しているというものではありません。  お手元に若干の数字なども出しましたが、これは98年の登録簿をもとに若干ご紹介し ましたが、今2000年のものまで出ておりますけれども、差し当たりの2年前のデータで すけれども、載せさせていただきました。  あと、対価の問題ですが、先ほど男性精子の提供だけが認められるということだった わけですが、これにつきましても基本的には無償ということですが、実際どういう扱い なのかということを確認しましたところ、血液の提供、いわゆる献血の際の取扱いに準 じるというような説明でありました。それがどれぐらいの金額になるかということまで は聞きませんでしたが、考え方としてはそれに伴う交通費とか、そういうものを考えて いるのではないかと思います。  あと、代理懐胎の問題なのですが、これは先ほどから申し上げておりますように禁止 をされているということですが、ただ、母親につきましては、民法の改正をいたしまし て、出産をした女性が母親であることを明示しております。ドイツは陸続きであります ので、ベルギーなどに行って処置を受けてくるケースが結構あるようでして、その後の 問題とか、そういうことに対応するためにこういうものが必要である。出産した女性が つながりが深いということと、子どもにとって体内での発育がもたらす影響ということ を重視すべきであるということから、こうした規定が設けられたと言われております。  以上、お手元にお配りさせていただきました資料に基づきましておおよその説明をさ せていただきました。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。ただいまのドイツにおける現状について、どなたか ご質問ございますでしょうか。 ○松尾委員  1つお教えいただきたいのですが、連邦体外受精記録簿というシステムについて、も う少しおわかりでしたら教えていただきたいと思います。 ○床谷氏  これは各医師会の連合体が連邦の医師会がまとまりとしてあるわけですが、個々の処 置をしたものが、各単位の医師会に対して報告を上げて、それを全体で集計をして公表 しております。これはリューベク大学のプロフェッサーが中心になってやっているよう ですが、82年からございまして、ドイツは体外受精はイギリスに遅れること4年、82年 から始まっておりますけれども、それに関しての主な取扱いを徐々にやっております。 ここにありますけど、こういう簡単な冊子なのですが、82年には実施している5施設が 報告を上げているということで、それが98年の段階で86から90ということで増えており ます。ただ、これはあくまでも任意の報告でありますので、これにかかわる医師会とし ては報告を上げるべきであるということで、事前にどこが登録に参加するかということ は集計されているようですけれども、きちんと送ってこないところもあるし、送ってき たものがいいかげんなので使わないとか、そういうようなデータもあって、全体的な、 これが全部を示しているというわけではなくて、大まかな傾向だけはうかがわれると いったものです。 ○松尾委員  どういうデータを登録するかということについては何かおわかりでございますか。 ○床谷氏  これは処置、扱っているセンターの数、どれぐらいの処置を行ったか、これは体外受 精、ギフト法、凍結保存、ICSIの問題、そういうものとか、それから処置を受けた 女性の数、年齢。年齢は保険上は40歳未満なのですが、このデータには44歳超女性も受 けておりますので、保険適用と受けられるというのは別の話として統計数字が出ており ます。  そのほか男女のどういうような比率で職業とか、どういう原因で不妊とか、受けに来 た理由、そういうもの。それから、どれぐらいの期間、子どもが欲しいということで希 望してきていたかといったようなこと。最初に処置をしてから、それぞれの実施に応じ て最終的に何人生まれてきたか。途中で妊娠が成立したのはどれぐらいで、それが出産 まで至ったのはどれぐらいであるか。双子がどれぐらい生まれて、三つ子がどれぐらい 生まれてとか、そういうもの。それから流産に終わったものとか、そういうものの数。 一人の場合、双子の場合、それぞれどれぐらいの体重で生まれてきたといったようなこ となどもあります。大体そういったようなことであります。 ○矢崎部会長  そのほか、いかがでしょうか。それでは、床谷先生ありがとうございました。また、 最後に総括で時間があれば、今までご説明いただいた先生にも質問をお受けしたいと思 います。  それでは、最後にスウェーデンにおける現状について、菱木先生よろしくお願いしま す。前回、スウェーデンについてはお話をお伺いしましたので、今回はもしつけ加える ことがあればということで、大変恐縮ですが、手短にご説明いただければと思いますの で、よろしくお願いいたします。 ○菱木氏  座って説明させていただきます。菱木でございます。私の持ち時間は10分ということ でございますので、先般4月25日にスウェーデン国会を通過いたしました改正体外受精 法のことについて簡単にお話しをさせていただきたいと思います。  大体門者外口の卵子・精子・胚の提供者による生殖補助医療に係る制度及び実情に関 する調査研究、平成13年度総括研究報告書のスウェーデンのところに改正案ということ で書いてありますけれども、この報告書を提出したときはまだまだどうなるかわからな かったのですけれども、4月25日、正式に2002年法律第252号「体外受精法の改正に関す る法律」として成立しました。今度の改正で大きく変わった点は、体外受精制度適用範 囲が配偶者間体外受精のみならず非配偶者間体外受精にも拡大されたということが1 つ。  もう1つ、今までは体外受精という1つの言葉で呼ばれておった体外受精が、体外受 精に使われる受精卵とつくられた受精卵を女の体に入れるという2つの行為、別々の概 念で規定されておるということでございます。というのは、これにはいろんな理由が あって、1つは、精子・卵子の採取と採取された精子・卵子を受精させる、さらに受精 した胚を女の体に入れるというようなことが、それぞれ時期が異なって行われるという ことが可能になったからです。  と同時に、後で説明申し上げますけれども、使用許諾を撤回できるという規定が設け てあるので、それとの兼ね合いで、このような規定が設けられるようになった次第で す。  それから体外受精を受けることのできる者ですが、今回の改正でもほとんど前の体外 受精法と変更がなくて、体外受精を受けることのできる者は有夫の婦に限るということ になっています。有夫の婦というのは何かというと、法律的に結婚しているのみならず 同棲している男女。つまりサンボー(sambo)、そういった人のことをいいます。  それと同時に、この間、パートナーシップ登録法、これは日本で言うと同性婚といい ますか、ホモ夫婦の場合に、特にレズビアンの場合、体外受精を認めろというような意 見があったのですけれども、最終的にはこれはまだ早過ぎるということでだめになりま した。  それから、体外受精を受ける場合に夫の同意が必要です。後で父性の問題でとやかく 言われると困るということで同意を必要としました。ただし、本人の同意書は不要であ るというふうになっています。  さらに体外受精を受ける者としては、子どもを立派に育てられるだけの資力、能力が なければいかんということが体外受精法の5条1項で規定されています。というのはこ れはどこでそういうことを調査・審査するのかというと、体外受精を受けるときに病院 で、医者がもちろん中心になるのでしょうけれども、児童心理学者ですとかいろんなク ラトールとかいろんな連中が集まってきて、そこで調査をします。そして、これだった らいいだろうということになりますと体外受精を認められます、もしだめだったらどう なるのか。例えばアル中とか貧困者の場合です。拒否された場合、体外受精を受けたい と思う人はそのまま泣き寝入りをしなければならないというと、そのときには社会庁に 対して、異議申立てができるようになっています。  それから、今までは異議の申立ては社会庁でとまっておったのですけれども、今回の 改正で、さらに社会庁の決定に異議がある場合には地方行政裁判所に、さらに地方行政 裁判所の決定に不服があれば、高等行政裁判所へ訴えてよろしいということになってお ります。  それから、体外受精を受ける人の上限年齢を幾つにするかという問題があったのです けれども、社会省のプロメモリアでは42歳と一応決めたのですけれども、いろんなとこ ろから異議が出て、年齢をあえて法律で決める必要はない、これは医師に任せろという ことでその規定は変更されました。  今回、非配偶者間体外受精が認められることによって生命倫理の観点からいろいろな 問題が起こってくるということもあって、体外受精に使われる精子・卵子を限定しよう ということで、体外受精に使用される卵子を中心に、妻の卵子が使われる場合には第三 者から提供された精子を使用することもできるが、体外受精に第三者から提供された卵 子が使われる場合には、夫の精子に限る、とされることになりました。  それから、さらにそういったこともあって、いわゆる余剰胚というのですか、そうい うものの利用はできません。さらにそれを発展させていって、代理懐胎、これもノーと いうことになっております。  さらに体外受精に使用される精子・卵子の問題で、精子あるいは卵子の提供者が、精 子・卵子を提供した後に死んだ場合にその精子・卵子は使えるかというような問題が起 こったのですけれども、その使用は認められないということになりました。  と同時にプロメモリアの段階では、中絶胎児から採取された卵細胞はどうか、という 問題がありましたがこれもだめということになりました。  この時点で体外受精に使用される精子・卵子との関連でいろんな問題が提起されまし た、受精卵の保存期間をどうするか。体外受精に使用される受精卵の数、受精卵の処分 をどうするのかといった問題です。結局保存期間は人受精卵の取扱いに関する法律第3 条で5年とされているところから、それでいいということになりました。さらに体外受 精に使用される数はどうするか。これは法律で定めるべきだという考え方もあったので すけれども、この問題は改めて政令で定めると同時に社会庁で作成される体外受精実施 要綱の中で決めていこうということになっております。  それから次は、体外受精に使用される精子・卵子の提供者についてですが、これはど ういう者かというと、成年に達しているということが必要である。  さらにその次にプロメモリアの段階までは、自分で体外受精を受ける者でなければだ めだというようなことになっていたのですけれども、そういう制限がなくなりまして、 成年に達していればよろしいということになりました。ただ、その場合に、成年という のは、スウェーデンの場合、18歳ですけれども、婚姻による成年規定が適用されるかど うかということについては必ずしも明確になっていません。  体外受精に使用される精子・卵子との関係で問題になった点としては近親者、友人等 特定のグループから提供された精子を使えるかというようなことがありましたけれど も、これは認められることになりました。  さらに、体外受精に使用される精子・卵子を提供する場合に、提供する者は必ず使用 許諾という意思表示をしなければなりません。文書によって使用許諾をしておかなけれ ばなりません。この使用許諾というのは、受精卵が作成されるまではいつでも撤回でき ます。しかしいろんな問題があります、長い間、10年もとっておいて、後でやるといっ た場合、その間に死んだ場合どうなるのか、といった問題もありましたけれども、結 局、受精卵つくられたら撤回はできないということになっています。  それから、さらに今回の法改正で大きな改正は、体外受精を行う病院が配偶者間体外 受精と非配偶者間体外受精を行う病院で区別されました。というのは、非配偶者間体外 受精を行う病院は大学病院に限るということになっております。また体外受精を行った 病院はいろいろなことが義務づけられております。例えば審査義務、体外受精を受ける 者を審査する。適格性の審査義務があります。さらに体外受精の実施記録の保存義務、 これは70年です。  さらに裁判で、父性、母性の問題が起こった場合に、裁判所の請求があれば、必ず実 施記録を裁判所に提出しなければならないことになっています。これはスウェーデンの 秘密保護法で体外受精の記録は秘密保護の対象になってみだりに公開できないというこ とがありまして、特別の規定が設けられました。  それから、さらに非配偶者間体外受精も同じように自己の出自を知る権利がありま す。ただ、今回の改正体外受精で問題になったのはこれは既定の事実である。しかし、 実際どのくらい親が子どもに教えているかというと、必ずしも立法者が期待したほどの 成果が上がってないということで、今後これをもっともっと徹底させようということに なって、社会庁から近く発表される体外受精実施要綱において細かいルールが設けられ ることになっています。  次は監督官庁の規則制定権について説明します。今までこんなものはなかったのです けれども、1998年に多胎妊娠を防止するために社会庁勧告として受精卵の使用を1つと したのですけれども、それがリコメンデーションだったものでほとんど効果が上がらな かったということで、新しく監督官庁、特に社会庁に規則制定権を持たせて、これを強 制的に1つにしようと。例外的に2つということにしようということで規則制定権が設 けられるようになりました。  次は非配偶者間体外受精子の父性、母性の問題ですけれども、父性の問題は非配偶者 間人工授精とほとんど変わりありません。ただ、母親についてはどうするかということ でありまして、これは子どもを産んだ者が母親なのだというような規定が改正親子法第 1章第7条が設けられております。  それからさらに、母親以外の者の卵子を使って体外受精を行って子どもが生まれた場 合、こういうときに父親あるいは母親が自分の子どもでないと言えるかというと、そん なことはない。そういう場合でも、母親の場合には産んだ者が母親だけれども、父親も もちろん同意を与えている限り子どもの父親だというふうになっております。  これは体外受精で生まれてきた子どもについて、奇形児、二つ子、三つ子、さらにそ れによって生まれてきた子どもの障害、体重等についてこれは1982年から1995年までに 体外受精によって生まれた子どもの全部記録があります。何人二つ子があって、三つ 子、四つ子があって、さらに低体重者はどのくらいか。そういった子どもがどういう障 害を持っているかというような事柄が記録されています。  これが新しい改正法のプロボッションという政府法案の説明です。  ということで、私の説明は終わらせていただきます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。ただいまのお話で、どうぞ。 ○才村委員  子どもの出自を知る権利を認められているというふうなことで裁判所へ請求できる年 齢は、子どもは何歳からできるのでしょうか。 ○菱木氏  何歳と言われると困るのですけど、もし子どもが十分に成熟しているならばという極 めてあいまい。というのは、まず人工授精法がつくられたときに、成年(18)にしよう としたのですが、いろんな議論が出て、18歳がよくて17歳はなぜ悪いのだと。そこで一 応判断力がある時点ならいいではないかということになりました。  というのは、18歳でないと考慮能力がありませんから、私の親はどこにいるのだ、誰 だと言われても、あなたは無能力者だと言われると困るということで、そういう年齢に して、未成年者のために社会福祉委員会で、私の父親は誰であるかを探すに協力してく れというと、これは必ず協力しなければならないと義務づけられています。しかし、 今、そういう請求した人がいるかということですといない。  2〜3日前もウプサラ大学のアンデッシュ・アゲール先生に、今こういうことになっ ているので、あさって私はしゃべるのだけれども、実際そういうのはあるかと言った ら、すぐ彼は、社会庁へ電話して聞いて、ないということでした。 ○吉村委員  出自を知る権利にちょっと関係するのですけど、先生のお話だと社会庁が、スウェー デンでもテリングが余りうまく行われてない。クライアント夫婦がテリングは余り子ど もに対してしてないという現実があるわけですね。それは社会庁は将来的にテリングを リコメンドするということはわかるのですけど、そういったことは例えば義務づけると か、将来的にそういうようなことも考えているのでしょうか。 ○菱木氏  この間の養子法の改正があって、養子に対して、特に海外から来る養子、これに対し ては義務づけるという規定が設けられたのです。一部にはこの規定を体外受精、非配偶 者間にも適用すべきだという議論あるのですけど、まだそこまではいっていません。た だ、医者と体外受精を受ける者の意識改革を徹底的にやろうという意向はあるようで す。この間も説明したように、この間の調査では、約半分、今実際に子どもに教えてい るというのは10%ですけれども、将来教えたいと思っているのは40%、約半分は教えた いと思っていると。あとの半分はどうなるかわからんというので、ここをいかに親が子 どもに対して自己の出自を知る権利を教えたいという意欲を喚起させるかというような 指導をするようです。 ○矢崎部会長  そのほかいかがでしょうか。そうしますと特定できる情報に関しての開示は、裁判所 か社会庁が一たん受け取って判断して開示するということですか。 ○菱木氏  裁判所はただ、父性、母性の問題で争われたときに、資料を出せというだけであっ て、子どもに代わってやるということはありません。というのは、出自を知る権利とい うのは一親専属権なもので、本人が知りたくないというなら、それまでやることはない と。 ○矢崎部会長  本人は社会庁とか裁判所に聞くわけですね。 ○菱木氏  ソシアルネムンデ(socialnamnden)という社会福祉委員会があるんで す。そこへ行けば、必ず協力してくれるということになっています。というのは、体外 受精とかそういうものをやると、公立病院だから、常にお互いの交流があるわけですか ら。 ○才村委員  社会福祉委員会のメンバーはどのようなメンバーがされているのかわかりませでしょ うか。 ○菱木氏  それは市町村の選挙で選ばれた町会議員とか市会議員、によってで構成しされていま す。コミューンというのですけど、コミューンにはそういう社会福祉委員会というのが あって、かなり強力な体制をしいていて、子どもがいじめられたら全部そこへ行きま す。そうするとそこがすぐ出向いていって調査をする。いろんな問題があれば警察にも 言うでしょうし、社会庁にも言うでしょう。そういったいろんなネットワークというの ですか、そういうものが確立されています。 ○矢崎部会長  菱木先生どうもありがとうございました。総合的にディスカッションしてご質問を受 ける予定ではありましたが、ちょっと時間がないので、今回は大変恐縮ですが、これで この検討会を終わらせていただきたいと思います。ご説明をいただいた先生方に大変時 間を制限しまして失礼しました。お許しいただければ大変幸せです。  それでは、次回の検討ですが、遺伝カウンセリングについて、コーディネーションに ついて、インフォームド・コンセントについてお話をお伺いしたいと思いますが、きょ うみたいに余りタイトなスケジュールにならないように、ディスカッションできるよう にスケジュールを組んでいただければ大変ありがたいと思います。  それでは事務局から連絡のほどをよろしく。 ○桑島室長  次回の当部会でございますけれども、6月27日(木)14時から17時までの予定とさせ ていただいてございます。場所につきましては、17階専用第21、今回と同じお部屋と なってございます。また、毎回お願いしてございますけれども、資料等につきまして、 先生方のご意見をいただけますれば、6月25日(火曜日)の午前中までとさせていただ きたいと存じます。  事務局からは以上でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。 ○鈴木委員  きょういただいた資料大変貴重なものだと思うんです。多分ここの委員以外の傍聴の 方などを含めて一般の方でもぜひ欲しいという方はいらっしゃるのではないかと思うの ですが、その辺はどうなっていらっしゃいますでしょうか。 ○矢崎部会長  この研究班の報告書のことですね、このグリーンの冊子ですね。 ○桑島室長  厚生科学研究費でございますので、基本的には大学の図書館ですとか、一般の図書館 には送らせていただいてございますけれども。  申し訳ございません。今の発言訂正させていただきますが、一般のそういった図書館 には実は公表してございませんので、ただ、これの扱いにつきましては、私どもイン ターネットを通じまして載せるか載せないかについて中で検討させていただいていると ころでございます。また、ご連絡を申し上げたいと思います。 ○矢崎部会長  私も何回も経験していますが、部数が決まっていて、関係のところにお送りします が、一般に配布する目的ではつくっておりませんので、今、事務局言われましたよう に、少なくともインターネットである程度資料としてわかるようにできればお願いした いと思います。 ○石井委員  ドイツでも、AIDに同意した夫を父とする法律が、成立しているようです。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。そのほか、よろしいでしょうか。  それでは、きょうの部会は終了したいと思います。どうもありがとうございました。                    照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課                          03−5253−1111(代)                              桑島(内線:7933)                              小林(内線:7939)