02/06/11 第4回社会保障審議会児童部会議事録        第4回社会保障審議会児童部会議事録 時間     平成14年6月11日 10:00〜12:00 場所     厚生労働省専用第21会議室 次第 1.開会 2.行政や地域社会による支援の現状についてヒアリング  ・服部委員(大阪人間科学大学人間科学部教授)  ・松原委員(明治学院大学社会学部社会福祉学科教授)  ・事務局説明  ・自由討議 3.その他  ・これからの家族と家族を展望した子育て家庭支援のあり方についての報告 4.閉会 ○岩男部会長  時間がまいりましたので、ただいまから「第4回社会保障審議会児童部会」を開催さ せていただきます。本日は大変お忙しい中を御出席いただきましてありがとうございま す。  まず、本日の出席状況について事務局から御報告をお願いいたします。 ○総務課長  本日は、堀委員、山崎委員、柏女委員から所用により御欠席されるという御連絡をい ただいております。それから、二、三、委員の方、遅れておられるようですが、間もな く御着席だと思います。 ○岩男部会長  それでは、議事に移りたいと思います。前回より各委員の先生方に御報告をいただい ておりまして、前回は「親、家庭の状況について」、大日向委員、遠藤委員から御報告 をいただきました。今回は、行政や地域社会による支援の状況について、服部委員と松 原委員に御報告をお願いしております。  それでは、まず服部委員から御報告をお願いしたいと思います。約20分くらいお願い したいと思います。 ○服部委員  きょうのテーマに即すものでありますかどうかわかりませんが、私は児童思春期の精 神科医ですので、その視点から大変大きなテーマではございますが、「現代日本の子ど も・若者・家族について」ということで考えを述べさせていただきたいと思います。  まず、1の「現状の分析」から入らせていただきます。  レジュメの順番ではなく、ちょっと変えさせていただきまして、3番目の「児童・思 春期精神科臨床からの報告」というところからはじめたいと思います。  もともと児童期を経て思春期を迎えた若者は、性の目覚めや自己の目覚めとともに、 それまでの自分の再構築を図る作業に入りますとともに、大人世界への接点に立ち、大 人及び大人世界への反発や批判、また矛盾や偽善、欺瞞に対する激しい攻撃心を突出さ せ、その中で自己を見つめ、自己のアイデンティティを獲得していくという作業を若者 はしているわけでございますが、思い上がりと自信のなさ、あるいは独立心と依存心と いった非常に強い葛藤をも抱いており、「思春期は揺れ動く嵐の季節」であることが健 康な姿であると思われます。  現に三十数年前は、10代の若者にもいわゆるスチューデントパワーが吹き荒れました 。あるいは二十数年前から十数年前ごろまでは今もそうでございますが不登校や家庭内 暴力がとくに多くありました。私は三十六、七年臨床医をしておりますけれども、10年 くらい前までの思春期の問題を持つ彼らは、非常に不安と混乱を抱き、しかしその中で 悩みつつも、内面にある種の激しいエネルギーが渦巻いているというのを感じたもので ございます。  しかし、ここ数年来、思春期の若者に出会って感じますことは、同じ嵐の季節でも多 少様変わりをしてきているように思われます。レジュメに書いておきましたが、彼らに 会って感じますこと、これはクリニックで出会う若者やあるいは大学で教鞭をとってお りますので、10代から20代の初めにかけての学生たちに会っていても同じことを感じる わけでございますが、若者たちは「疲れた」という疲労感をよく訴えます。また「何も したいものがない」とか「ゆううつです」という抑圧感も強い。また「生きていても何 の意味もない」「何をやっても変わらないではないか」といったような、非常に空虚な 思いを抱く者が多くて、いわゆる生きる喜びとか希望とか活力が弱くなっているという 印象が臨床医としてはございます。  一方、対人関係でございますが、ひとりぼっちです。とてもさみしがります。心をつ なぐ人がいないという孤立感とか、人に愛されたいし、認められたい。しかし、そうい う人に出会うことができない、あるいはのけものにされているような気がするという疎 外感とか、あるいは人に対してムシャクシャして腹が立つとか、ちょっとしたことで怒 りを感じるというような攻撃心、そういうものを強く持っていて、他者との共感性とか 親密性、あるいは他者への忠誠心とか、罪の意識といったような心が非常に弱くなって いるという感じがいたします。  全体として眺めますと、表面は明るいように見えるんですけれども、内面がグルーミ ーで抑うつ的で、ワクワクと未来に向けて伸び上がろうというエネルギーが乏しいとい う印象が三十六、七年やってまいりました臨床医の感想として、ここ数年来強くなって いるという思いがございます。  では、そういった思春期は一体どこから来るんだろうかというふうに考えますときに 、そのカギの一つとして、「大阪レポート」を眺めてみたいと思います。  「1.現状の分析」の1で「大阪レポート」からの報告があります。これは私が実施し たというより、大阪府の衛生部が行政の一環としまして、1980年に大阪のある市に生ま れた全数児2,000 人を対象にして、ゼロ歳〜6歳まで、6回のアンケート調査を行いま した。そこから子育ての実情の分析と考察を行ったものでございます。  これはしっ皆調査でございまして、回収率が80〜90%という、この種の調査研究では 最も信頼性の高いものであろうと思われますが、この「大阪レポート」につきましては 、拙著でございますが、私と原田正文という精神科医が2人で『乳幼児の心身発達と環 境−大阪レポートと精神医学的視点』というタイトルで名古屋大学出版会から1991年に 詳細をデータとともに刊行させていただいたものがございます。実は対象児が1980年生 まれでございますので、今、ちょうど20歳でございます。この10年ほど思春期を歩いて きた子どもたちと同世代人ということで、「大阪レポート」から何らかのヒントが得ら れるのではないかと思うわけでございますが、「大阪レポート」の母親たちは1980年に 子どもが生まれているわけでございますので、母親の年齢あるいは生まれを眺めますと1 950年から1955年生まれがピークでございます。といいますことは、1955年から73年の 日本の高度経済成長期にちょうど合わせる形で生まれてきて、育っていった母親たちで あるということが言えるかと思います。  人口的に眺めてみましても、1950年は人口の5割を農業、漁業の従事者が占めており ました。それが1970年には20%を割るという、家庭環境が大変大きく変わっていきまし たが、その中で幼少期、思春期を過ごした母親たちです。また、都市の人口も1950年に は3,000 万人だったものが、1975年には8,500 万人になるという、急激な都市化の中で 育っています。そして田舎から出てきた母親たちがある意味で中流志向あるいは専業主 婦、かつては非常に厳しい農業、漁業あるいは自営の中で働きつつ子育てをしていた母 親たちが専業主婦になっていく、そのプロセスの中でこの「大阪レポート」の親たちは 育っていったということは大変興味深い点かと思います。  専業主婦率は1975年までずっと上昇し、最高に達したというデータがございますから 、この母親たちは自分の親が専業主婦へとどんどん変わっていく中で育っていったとい うわけでございます。そして、1980年に子どもをつくったこの「大阪レポート」の親た ちも専業主婦が大変多うございました。「大阪レポート」の母の就労率は最初のアンケ ートが4カ月でございますが、乳児を抱える親たちの17%が働いておりますが、そのう ち外勤が9%で、残りの8%は内職あるいは自営でありますから、10人に1人弱くらい が外に出て働くという、ほとんど専業母であるということが大変興味深いデータであろ うかと思います。  そういう時代背景の中で、1980年に生まれた子どもたちを育てる家庭や親の特性を眺 めますと、まさに核家族が急激に進んでいき、彼らも核家族をつくっていく。少子家庭 、そして高学歴が急激に進んでいき、そして専業母が熱心に子どもを育てている。そし て子どもを間違いなく立派に育てたいという完全欲求、それから親や近隣の先輩たちか らの情報の少ない中で、育児書が非常に急激に出てきて、そういう形の情報が親たちを 取り囲むという世代に父親や母親になっていったということでございまして、まず親の 特徴は育児熱心であるということが大変強く印象づけられました。  これは内容的なこともございますが、一番興味深かったのは、実は「大阪レポート」 のもとになります調査は、約400 項目に及ぶ子どもの日常生活や心理的・社会的な環境 、あるいは子どもの発達状況についての大変細やかな質問がB4版4枚にわたる調査票 でございました。これを80%、90%の親が回答しているということは、調査元が母子手 帳をもらい、ある意味で育児の非常に大きなよりどころであった保健所というところへ の信頼感が高かったというバックがあるといたしましても非常高い、つまりこの親たち が育児ということについてはこんなに熱心に考えて、回答を寄せたということで、まず 大変興味深くまた印象的でございました。  と同時に、育児不安が非常に大きくクローズアップされてまいりました。育児不安に 関しましては、参考資料の中で少し用意しておりますので、御覧いただければデータと して出ているわけでございますが、育児はいつの時期が心配であったかとか、子育てが 疲れるとか、あるいは気がかりであるとか、あるいは質問項目がここに出ておりません が、特に障害があるとかないとかではなくて、何となく子どもが大丈夫だろうかという 心配、そういった熱心さゆえの育児不安、そういうものが非常に強いという印象がござ いました。そしてその育児不安をもたらす要因は何かと400 項目に近い中から統計的に 有意の関係性を探りましたところ、ここに掲げました5つの大きなカードが見えてまい りました。  「子どもの欲求がわからない」「具体的心配項目が多く、それが解決されない」ある いは「出産以前に子どもとの接触経験及び育児経験の不足」「近所に母親の話し相手が いない」「夫の育児への参加・協力がない」といった5項目は、2,000 人の子どもたち の6回にわたる追跡の中で、明らかなる統計的な有意さを持って言うことができた項目 でございました。その内容につきましては、参考資料を御覧いただければ幸いでござい ます。  それを眺めますときに、母親たちはとても熱心に子どもを育てたいと思っていて、専 業母として熱心に子どもを育てていこうという背景の中で、実は体罰も多い。これも「 大阪レポート」で報告しておりますが、体罰は質問項目の中で「打つ」「つねる」「縛 る」というだんだん陰険になってまいりますが、そういう具体的な表現を使って「子ど もを叱るときに体罰を与えますか」と尋ねています。これに対して10カ月児で「いつも 」というのはさすがに少ないんですが、「ときどき」を入れますと32%という数値が出 ました。3人に1人弱でございましょうか、10カ月の子どもに「打つ」「つねる」「縛 る」という体罰は少し多いという気がいたします。また、1歳半になりますとこれが59 %、6割になります。3歳半で67%になります。このことは非常に熱心でしかも不安と いう、ある意味の熱い思いと、それに対する不安感の高まりの中の体罰として、私ども は大変強く目を向けました。体罰を与える親たちと育児不安との相関がまた非常に強く 、これも「大阪レポート」の中で検証しておりますが、どうも育児熱心、そして育児不 安、それが非常に覆いかぶさってくるときに体罰になり、そこから児童虐待の道がほの 見えてくるということを既に1991年の「大阪レポート」で私どもは報告したわけでござ います。  「子育てインターネねっと関西」と申しますのは、「大阪レポート」を受けまして、 また1990年でございましたか、1.57ショックがありまして、いよいよ子どもが少なくな る、そしてさらにこういった育児不安から虐待の道がほの見えているのに、思春期を専 門とする私どもが思春期まで待っているわけにはいかないということで、ボランティア グループでございますが、1995年に立ち上げました。そして、それはどんな健康な女性 でも、非常に孤立、不安、競争の中にあっては育児不安に陥りやすい。そのために安心 と信頼、共同の子育てに変えるための活動を行おうではないかということで、大阪レポ ートから来る示唆に対する一つの対応策をと思って立ち上がったものでございます。皆 さんのお手元に紙を入れさせていただいておりますが、「子育てネットワーク全国研究 交流集会」を今度の7月に行います。7年前は「子育てグループってなに? サークル ってなに?」という質問が多かった時代でございました。しかし、今は子育て支援、子 育てネットワークということで、今回は文部科学省と厚生労働省のご支援をいただきな がら、国立婦人教育会館NWECと共同で全国の大きな会を催そうということでやって いるわけでございます。いよいよネットワークづくりをせねばならないという時代にな ったわけでございます。  さて、思春期の続きをもう少しさせていただききます。2ページ目に入りますが、現 代の思春期のそういったグルーミーで先行きが見えてこない、素直で必ずしも歪んでい るとは限らないんですが、エネルギーが低くて、対人関係も下手で、何よりも爆発的な 思春期らしい、生あるいは性のエネルギーが何となく乏しい、そして未来への展望がど うも開けてこない、そういう思春期の若者はどこから来るのでしょうか。そこでそれま での幼少期を考えますときに、「大阪レポート」ともダブりますが、家庭では育児熱心 なんですが、心配と期待感の大きい親あるいは専業母で子どもの幸福の切符を手に入れ させてあげたいというひたむきな思いで子育てに努力や苦労する親たち、そういう姿を 見て育った子どもが多くて、必ずしも親像が悪いわけではないのですが、親子で楽しむ 遊びであったり、あるいは親子で生き生きとした活動体験するということが乏しいとい う特徴が思春期の若者に会って、インタビューをしながら感じます。  つまり、明朗で活気のある親像、生き生きと生きている親の姿とか、家庭のイメージ がどうも持ちにくかったのではないか。さらに学校や社会では自由に群れる経験が乏し い。自己の内面での自由と統制の体験や訓練が乏しい。自由というのは自己愛とか自己 中心という、自分を生かしたい、自由に羽ばたきたいという思いですが、一方では自己 を統御して人とともに生きていこうという統制のバランスをとる力が非常に弱くて、社 会化が遅れているという、そういった幼少期を経て、私のさっき申し上げた思春期にた どり着くように思います。。  そして、たどり着いた若者たちの行く手を次に眺めてみますと。まず夢と現実の乖離 した結婚、育児があります。「働きたい」という女性も確かに増えておりますが、依然 としてM字型の「子どもを持ったら家庭に入りたい」という保守的な若い女性たちが必 ずしも少なくはない。ところが、彼女たちが願った結婚、育児は、非常に現実から乖離 したもので、前回、大日向先生がおっしゃってくださいました「こんなはずではなかっ た」という、非常に乖離した苦しみやら、あるいは苛立ちやら、不安やらを持つ若い親 たちが非常に増えているということが現代の思春期の行く手にあります。  それから、晩婚化・未婚化。これは『結婚の社会学』や『パラサイトシングルの時代 』という、大変優れた本をお出しになられた山田昌弘先生のいわゆるパラサイトシング ルですね。親同居未婚者は現在1,000 万人と言われています。ごく最近合計特殊出生率 の1.33という数字が出ても、もはやショックも何もないのかというほど、ある意味では1 .57のショックの方が大きかったような気がいたしますが、とにかくどんどん少子化し ていくことに関連しています。思春期の性の明るい、爆発的な躍動が恋愛、結婚、出産 、子育てという、生物体としてたどっていく健康な展望なのですが、それが非常に先行 きが閉塞感があって、前に行きにくさが増えている。子どもを持っても良いことがない という思い、専業主婦志向の女性もキャリア志向の女性も、それぞれが今よりもいい生 活を保証されない限り、なかなか結婚に踏み切り、子どもを持つことができない。そう いった意味で、パラサイトシングルは大変重要な現象であろうかと思われます。  それから、3番目。これは病理性が高くなりますが、性が真っ直ぐ成就していく道が なかなかほの見えてこない中で、非常に擬似的な性、ビデオだとかインターネットによ る人間関係やつながりであたかも性の欲動がそのような形で成就していくということや 援助交際のような商品化された性であったり、あるいは人を恋するということがストー カーのような、極めて歪んだ形の執着心になったり、あるいは思春期の若者の非常に激 しい行為障害の中に、性の欲動が非常に抑圧された中で起こっているというような事例 も増えておりまして、どうも性のねじれ、壊れが大きくなっているという行く手が現在 見られるように思います。  さらに、「勇敢にも結婚し、子どもをつくった」と私はよく今の親たちに申し上げる のですが、その親たちの中で追い詰められていく家族がまた増えています。最も大きい のは育児不安と児童虐待ということかと思いますが、ただ現在の育児不安の親は「大阪 レポート」の親と多少違うのではないかというふうに私は思っております。なぜならば 、20年前の親たちは、ある意味ではひたむきで、子どもを熱心に育てており、ある意味 の明るさがありました。だだ幸福の切符を手に入れられると思って頑張る、その反面の 育児不安のようでした。ところが、今の親たちはどちらかというと生き生きとした家庭 像や親像が少ない中で育ち、モデルが少ない中で育ったために、親性のようなものが非 常に未熟であること。それから、親自身が乳幼児、思春期をたどる中で人格及び対人関 係を十分に育てておらず、非常に未熟で、人生に対する対応がまずくてスキルが乏しい 。そういう中で育児不安に陥っていくというタイプが増えているのではないかと思いま す。これは「大阪レポート」から20年たった現在、細やかな検証が必要であろう、同じ 育児不安でも違うタイプの育児不安ではないかというふうに思います。  さてこうした現状を踏まえました上での対応の手がかりとしまして、これは大変大き な問題ですから簡単には思います。言えないのですが、まず結婚、出産、子育てに対し てポジティブシンキングを抱くことのできる社会が私はやはり必要であろうとつまり、 経済的な意味での明るさ、そして親子で楽しめる場所や機会の豊かさ、閉塞感のない子 育て、何よりも「子どもを育てる」ということの健康な意義深さ、そういうものが若い 人にメッセージとして伝わっていくことがまず基本として必要かと思います。  孤立化することの危険性は何度も申し上げました。これは急速に核家族化し、そして 2代目の専業主婦に育てられてますますモデルの少なくなって孤立化していく子育てで すから、そして社会学者が言うように、人類の史上初めての、親だけによる子育てとい う現代ですから、非常に狭い閉塞した中の子育てそのものが既に人間の発達から考えま しても不自然であるということを認識し、新しいファミリーネットワークが必要だろう と。これは祖父母、近隣、子育てグループが大切ということです。きょうの「地域」と いう言葉がキーワードになるかと思いますが、私どもの「こころの子育てインターネッ ト関西」といったささやかながら、そういったネットワークの必要性は今後ますます大 きくなるであろうと思います。  そして、地域の教育力も大切です。地域というのはそれこそ日々の日常生活にかかわ るところです。例えば例としまして、大阪府では地域教育協議会、「健やかネット」と いいますが、これを3年かけまして336 の中学校区に設置いたしました。そして、幼児 教育に関する関係者もこの「すこやかネット」の中で集まろうと。そしてみんなで同じ 年代を持つ子どもにかかわる親や教師の集い、そして小学校の先生たちも集まって、子 どもたちの顔が見えて、声がかけられてという、地域での教育力を高めることが必要だ ろうと思います。  そして、最後が「支援を必要とする子どもや若者、家族への迅速かつ適切な対応」と いう、これもきょうのテーマでございましょうが、「地域」ということが必要でありま す。一つの例としまして泉大津市のCAPIOという虐待防止ネットワークの資料を今 回入れさせていただております。どこの地域でも恐らくいろいろな形で虐待防止は今ネ ットワークを組んでいると思いますが、たまたまこれは大阪府の審議会で一つのモデル ということで私も聞かせていただいて大変感動したものです。泉大津という、自転車で1 5分もあれば端から端まで行かれる、このサイズでネットワークを組む。それが意義深 いのです。そして、途中のページを開いていただきますと、代表者会議と実務者会議が 真ん中辺にございますが、子どもにかかわる役所も病院も福祉、保健関係、弁護士さん から消防本部まで加わっています。小さな市ですから、端から端まで、声をかければ「 さあ今だ」と言ってすぐ中心になる人物が集まれるのだそうです。そしてここのおもし ろさはネットワークの図が書いてございますけれども、事務局が児童福祉課であって、 家児相のようなところで、ここで事務連絡を全部仕切りまして、そして実務者へと迅速 に緊急度を見ながらつなぐ。このケースは関与機関A、このケースは関与機関Bという ふうに非常に迅速に振り分けしながら実務者会議を開いていく。小さな市ですから、い ちいちアポイントをとらなくても、集まれる人はすぐ集まれるのだそうで、そういう中 でできるだけ必要な人に必要なだけ、援助・支援をしていこうという試みがうまく機能 しているということです。CAPIOという名称もなかなかすてきです。  そういったわけで、子育ての現状は若い思春期も、20代、30代になった人たちも人間 として最も健康で自然である、子どもを産んで育てていくということや、持続的で深い 親密性に富んだ、子どもを愛するということが実は自分の人生を非常に豊かにし、発達 上非常に重要なことであるとしっかり感じることが大切と思います。それは子どもをつ くる、つくらないということだけではなくて、育ちゆく子どもを見守るということが実 は個としての自分も、あるいは社会に生きる自分にとっても、自分自身の人格形成上に もプラスになるというような思想的な潮流、考え方のようなものが今日本に最も求めら れているという気がいたします。  子どもをつくると損ばかりする、キャリアは分断され、つらいことが多いであろうと いうムードが強くなればなるほど、子どもを持つことに対する恐れと不安により、ます ます日本の社会全体のエネルギーが閉塞感の中で衰えていくのではないかという気がい たします。思春期屋として三十六、七年見てまいりまして、今の思春期の若者、とても いい子が多いんですが、何となく元気のない彼らを見ていますと、思春期の健康なエネ ルギーというものを回復して、そして次の世代を育てていく道を彼らが歩いていくこと 、思春期をもう少しパッショネットな、力強いものにすることが大切なのではないかと いうふうに考えております。時間を超過したかもわかりません。ありがとうございまし た。 ○岩男部会長  大変興味深いお話をありがとうございました。御質問等は松原委員のお話が終わって から一緒にさせていただきたいと思います。  それでは、松原委員、御説明をお願いいたします。 ○松原委員  明治学院の松原です。いただいた時間は20分ですので、きょうは私が研究者として行 政等あるいは民間活動にかかわらせていただいた個々の事例というよりは、そこからや や抽象化した概念というか、考え方をお話しして、かつ第1回目の会議のときだったと 思うんですが、私がこの児童会でこんなことで関心があるという入り口の部分と出口の 部分をお話をしましたので、そこを中心にお話したいと思います。  資料というところで3枚ほど、図を含めたものを掲げてございます。  最初に、「施策対象の拡大と利用者」ということですが、ここは入り口の部分に当た ります。一番下に「ニーズ」をあげておきました。ここの端のところを実線ではなくて 波線にしてある理由は、ここはどこまで政策的にこれを社会的に対応するニーズなのか ということを切り取るためには、さまざまな議論が必要だろうということだと思います 。例えば、時間を遡ってみれば、非定型的な保育を政策的に切り取ったというのはつい 最近のことでもありますし、それまではそれはいわゆる地域社会あるいは親に任せられ ていたわけですから、そういったものを切り取ることの議論、ニーズの調査というもの も必要だろうと思います。  それを政策的に「この部分をやります」ということになると思うんですが、私が最近 考えるのは、全部、公的な施策で対応できるというふうには考えておりませんで、民間 活動がそこで対応する部分もたくさんあるのだろうなというふうに考えております。  例えば、最近、私はある都市でチャイルド・ラインという、これは全国で四十何カ所 か設置されているようですが、子どもの声を聞く電話の活動にかかわっているんですが 、神奈川県は初めて設置したところなんですけれども、今、電話の受け手が少ないもの ですから、週に1回、おおよそ6時間ほどの電話なんですけれども、受話器を置くとす ぐ電話が鳴る。それから、留守電は50件しか録音できないんですが、それが数日たつと フルに満杯になっている。こういう電話相談は行政でもやっている、あるいは福祉だけ ではなくて教育でもやっているはずなんですけれども、民間のところへかけてくるとい う子どものニーズもあります。非常にかわいらしいですね。「あの子が好きなんだけど 、どうやって打ち明けたらいいでしょう」というものから摂食障害を疑うような電話ま でかかってまいります。  私はそこで全体的なお手伝いとスーパービジョンをして、受け手の訓練をしておりま すので、実際にモニタリングをさせていただいて、もちろんここは訓練のためですから 、一切記録を残しません、プライバシーの保護をいたしますけれども、それを聞いてい くと実に多様なものが集まってまいります。こういうものを行政でやったら来ない部分 も恐らくあるのだろうなというふうに感じております。  上の方に、「制度」というのをあげてきました。ここは政策より広がっている部分が あるんですが、これはいろいろな地方自治体の単独施策を見ているとわかるように、国 として政策的に切り取る前に、地域住民の要望等で先にはじまっているというものがた くさんあります。そういう意味では、地方自治体のいわゆる主体性というのも今後認め ていく部分があって、それを今度は実績を踏まえて、政策的にどう切り取っていくか、 取り込んでいくかということが課題になると思います。  民間活動のところに話を戻しますと、そういう民間活動と行政のネットワークは弱い なというふうに常日ごろ感じております。これもある地域で、私も虐待にかかわるネッ トワークをやっております。確かに、弁護士ですとか、民生委員という、一定の背景、 資格を持った方は民間人という立場でもちろんネットワークに入ってきますが、例えば 子育てネットをやっている親たちが入ってくるか、民間活動をやっている民間の人が入 ってくるかというと、なかなか入ってこない。私もそこで「こういう人をネットに呼ん だらどうですか」と仕掛けるのですが、「ちょっとそれは行政がやるネットワークとし ては呼びにくいですね」という反応が、比較的先駆的な自治体でも返ってまいります。  少し入り口の方に話を焦点化していきたいと思うのですけれども、制度が対応してい ても、あるいは制度が未整備でなかなか政策が意図したところまでできていない、例え ばできる規定であって、なかなか自治体の方で政策が進まないというものもあるかと思 うんですが、全体としてはaで、情報の不足、情報を知らない、認知をしていないとい う部分で、実際に利用に結びついていないという部分があるかと思います。ここには、 やはり情報提供のシステムを制度としてどう確立していくのか。一般に、例えばインタ ーネット等というふうに言われますけれども、そのことも大切だろうと思います。今度 はいわゆる情報格差の問題がありますから、インターネットを使わない人、使えない人 、そういった人たちも含めてどういう情報提供のシステムを構築していくかということ が課題になると思います。  それから、bにもかかわるんですが、地域環境−−服部委員も「これがキーワードに なるでしょう」というふうにおっしゃっていましたが、地域環境の整備も必要だろうと 思います。東京の児相センターは比較的数の多い電話相談をやっておりますが、これは 匿名でどこに住んでいるか言わなくてもいい相談ですが、住んでいる地域をお話してく ださるという方の2〜3割は東京都外からかかってきます。これは近所に相談したくな い−−つまり、家族だけでは子育てはできないんだということを我々は思っています。 行政や民間活動、ひいては地域の力を借りて子育てをしていこうというふうに我々は考 えても、一般的にはまだまだ子どもは親が育てるのは当たり前だと。「ああいうところ に行くのは……」という意識は強いのだろうと思います。  松崎委員がいらっしゃるのであれなんですが、最近、児童相談所に対する認知ってす ごく高まってきたと思います。十数年前ですと、児童相談所を知っている人は2〜3% というものだったんですが、これだけ虐待の問題が社会的に着目される中で、児童相談 所は着目されてきましたが、逆に地域で起きている現象は「え、児童相談所が来たの? 」とか「児童相談所に行くの?」と。これは虐待だけの相談ではないんですけれども、 虐待を疑われてしまうというところで、だんだんbの部分にかかわるんですが、利用へ の躊躇ですとか、拒否感ですね。拒否まで来ると、恐らく制度的な課題というよりは実 践的な課題になるのかもしれませんが、しかし、躊躇、拒否というものへの対応として 、アクセスビリティの確保ということが大切になってくると思います。  これは物理的なアクセスビリティがまずあるかと思います。行きやすい、相談しやす いということは距離あるいは適正な配置状況ということにもかかわってくるかと思いま す。もう一方で、いわゆるソフト面でのアクセスビリティ、行っても何となく冷たい対 応をされて嫌な思いをしたという経験が一つでも二つでもあれば、それは次に「行こう 」という気持ちを失わせていきます。ソフト面の方は、これも実践的な課題だというふ うにすれば、ハード面での課題ということで、いかに地域の中にさまざまな相談ができ る社会資源があるか、あるいは子育て、子どもの育ちを支援できる社会資源があるかと いうことになるかと思います。  例えば、保育所は二万二千数百カ所ございますが、次に多い児童施設というのが児童 館、これは4,000 くらいのオーダーにたしか下がると思います。その下はたしか児童養 護施設で五百幾つということで、個々の施設は非常に実践されていますけれども、いわ ゆる生活をしている地域レベルということで考えると、そこで対応できるという数字で 、500 というのは全国ということを考えるとほとんど力としては期待できないというこ とになりますので、どういう形で、特に日々のちょっとした相談あるいは手助けをシス テムとして配置していくかということも大切だろうと思います。そのときに、それをす べて行政がやるのかというと、そうではなかろうかというふうに思います。さまざまな 民間活動がありますので、そこを含めたネットワークを考える必要があるかなと思いま す。  2枚目にいきたいと思うんですが、民間活動も含めて、子育て支援のすそ野が広がっ ています。昨年度、私は児童環境づくり等総合研究事業からお金をいただきまして、「 児童委員の業務の計量調査」をさせていただきました。一般的には、民生・児童委員、 民生委員の活動の方に活動の重点がいっていて、なかなか児童委員活動ができていない のではないかというような考え方もあるんですが、実際に調査をさせていただいて、幾 つか課題も見えてきましたが、非常に勇気づけられたのは、特にヒアリングをしにいっ たところがそうなんですが、非常に児童委員、主任児童委員の方はいい活動をされてい ます。それは、ある意味でまさに地域としての活動になっている。もちろん、児童委員 としての立場でやっているんですけれども、次第にそれが地域社会の方へ主体を移して いく、あるいは行政や社会福祉協議会を含めて連携する機関が増えていくというような ことで、たしか6年前にこれは全国の民生・児童委員協議会の方でされた調査をフォロ ーアップしまして、その後数年たってその活動が続いているかと。70%が続けていらっ しゃるということで、その継続性、それからそのときの広がりということもこの調査の 中から見えてきました。  ただ、まだまだ全体として連携が進んでいないということと、入り口にかかる部分な んですが、ちょうどこの図であげました子育て支援とあるいは児童虐待対策等のその中 間の部分というんでしょうか。「これだけの活動をやっている、いい成果を上げていま す。だけれども」−−これはこの調査の中の複数の方がそういう指摘をしているんです が、「こういう活動の場にあらわれない人たちがいます。家族がいます。ここに私たち の活動の課題を感じています」という指摘がありました。  一方で、非常に私はある意味で希望を持ちましたのは、そういった指摘の中で、これ も期せずして、幾つか違う地域から、こういった児童員、主任児童員がかかわる活動の 中から、そこに書きましたけれども、新しいコミュニティ形成がはじまっていますと。 子育てということを通じて、昔のような形での近所関係というのではない、新たなコミ ュニティづくりという、これは本当にびっくりしたんですけれども、地域が違うところ で「新たなコミュニティづくり」という単語が3つか4つスッと出てきましたので、こ れは「ああ」と思いましたけれども、こういった面が育ってきているということが大き いかなと。  したがって、その入り口という部分を、もちろん施策的な意味合いでの入り口という こともあるかと思うんですけれども、もう少し、いわゆる官民といいますか、公私の協 働の中で考えていく必要があるのではないかというふうに思います。  そのときに、いわゆるネットワーク、そして実践的なかかわりの中ではケースマネジ メントということが必要になってくるかと思います。私も「ケースマネジメント」とい う言葉をずっと使い続けてきていますが、あるところで、最近、「高齢者、障害を含め たケアマネジメントなんだから、子どももケアマネジメントじゃないんですか」とケー スマネジメント研究会の一番最初のときに言われて、そこを説明するのに一、二回使っ た記憶があるんですが、私は児童の部分では「ケースマネジメント」を使うべきだと思 います。英米の文献を見ても、90年代後半くらいのものを見ても「ケースマネジメント 」という言葉がずっと使われ続けています。  その理由として3点、養育者の生活力そのものが弱体化してきているということと、 子どもの代弁、アドボケートをしなければいけないということは単にケアの提供だけで はない、生活全体そのものの援助をマネジメントしなければいけないということがある かと思いますし、もちろん複数機関施設が関与していくということもその中の一つにな ると思います。  そのときに、ネットワークいうことが大切になるんですが、従来のネットワークとい うのは、お上があって、下に幾つか傘下の組織があってというような形だったろうと思 います。それが少し変わってきて、上に立って「従え」というネットワークはさすがに 少なくなってきましたけれども、まだ上の図が多くて、一つの機関は全体を把握してい るけれども、個々のところは情報は提供するけれども、下の4つはお互いに何をしてい るか知らないという、まだそういうネットワークがかなり多く残っているのではないか と思います。先ほど服部委員は「声をかければすぐ集まってくる関係ができている」と いうお話をされましたけれども、お互いがお互いをわかっているようなネットワークに なっていくことが必要ではないかと思います。  さて、時間の関係もありますので、ネットワークのステージのところを少し飛ばさせ ていただきまして、3番目の出口のところをお話ししたいと思います。  一つは、継続的支援というものが子どもの成長、発達に応じて、まさに思春期まで視 野に含めて必要だろうと思います。そのときに、自立支援計画というものを今立てると いうふうになってきていますが、そのことを充実していく必要性というのを感じており ます。それは、母子生活支援施設等についても同じことが言えるかというふうに思うん ですが、具体的にいえば、今、虐待等で親子分離はするようになりました。しかし、親 子再統合に関する社会的システムというのが私は欠如しているのではないかと思います 。仮に、親子再統合した場合に、これは入り口の部分にもかかわりますけれども、では 地域社会でどれだけ支援する、再統合された後の家族の子育てを支援する社会資源があ るのか、公私を含めてその社会資源の育成が必要になると思いますし、それから継続的 にということであれば、親子再統合できないケースもありますので、自立援助ホーム等 のの拡充等も考えていかなければいけないだろうと思います。  それから、母子生活支援施設のところでは、利用という制度に変わってきていますの で、利用者が参加して、自立ということについて考えていくシステムづくりも必要かな というふうに考えております。  与えられた時間20分が過ぎてしまいますので、最後の概念のところだけ一、二分コメ ントさせていただきます。  今、全体としていわゆる父権主義的な対応からパートナーシップを持って対応しよう というふうに児童福祉政策全体としては変わってきていると思います。ただ、児童虐待 等の中で、社会的な介入だとか、権限ということを行使するときに、その施策としてど れだけ権限を担保できるのか、またパートナーシップでいけるのかどうかということは 議論しなければいけないところだろうというふうに思います。  そして、もしパートナーシップということを考えるのであれば、Participation をど う保証していくかということが課題になりますし、そのときにはそこにPrivatization というふうに書きましたけれども、いわゆる行政だけがやるということではなくて、公 私の協働ということがここでも課題になるというふうに思います。  いずれにしても、その中でいわゆる支援側のProfessionalism 、資質、専門性をどう いうふうに高めていくのか、維持をしていくのかということも課題になるのかなという ふうに思います。ちょうど20分くらいだと思いますので、終えたいと思います。 ○岩男部会長  どうもありがとうございました。  それでは、事務局の方から補足説明があるということでございますので、皆川課長、 お願いします。 ○総務課長  毎回のことで恐縮ですが、我が国全体として行政がどういうふうに進められているか 、厚い資料をもとに御説明させていただきます。  前々回は子どもの状況、前回は家庭の状況でございますが、きょうはテーマに従って 「地域社会、行政による支援に関するデータ」等を中心に御説明させていただきたいと 思います。  1ページから数ページ、戦後の児童福祉、母子保健の歩み、これは後ほど御覧いただ きたいと思いますが、昭和23年に児童福祉法ができて以来、進化をし続けてきたという ことで歴史的な背景と児童福祉の歩みを記載させていただいております。特に、私ども この部会を設けましたのは、3ページの「急速な少子化への進行の対応」という中で、 あるいは地域社会、家庭が変化する中で、さらに児童福祉のあり方をもう一歩進化させ たいという気持ちでございます。  そうした中で、4ページにございますように、今のお話にもありましたが、制度、政 策としては50年以上の歴史の中で多くの体系ができてきているわけです。例えば、縦軸 に出産から年齢を引いて、右の方の表頭ですが、健康の確保、子育ての支援あるいは児 童の保護・育成と仕事の両立、あるいは虐待・非行対策、経済的支援、それぞれのパー ツを見ますと、それなりの制度、対策というのは先に地方でできたものもありますが、 政策体系はできている。  お金の全体の全体の使い方を見ますと、次の5ページでございますが、平成14年度の 予算、下の方に合計5,818 億円と書いてございます。そのほかに児童手当の国庫負担金 あるいは児童扶養手当の国庫負担金を入れますと、国としては1兆円を超える対策費を 児童福祉の分野に投入している。それから、地方を含めますと恐らく2兆から3兆の金 が、いわゆる行政的な経費として使われている。こういう中で、どういうふうな形で展 開されているかというのが上の図でございますが、市町村を中心とした保育対策に4,780 億円ということで、ほぼ全体の半分くらいがここに使われていると。ただ、いわゆる 児童手当の国庫負担金とか児童扶養手当の国庫負担金、これは現金給付を除きますと、 全体で6,000 億のほとんどが市町村を中心とする保育、それから下の方に都道府県を中 心とするセーフティネットということで900 億円使われているわけですが、虐待の問題 とか非常に地域的な広がりが大きくなる中で、子どもの養護、保護の分野にどれだけの お金が使われているか。具体的にいうと、「すべての子どもの健全の育ち」にはまだ138 億円程度ということで、私どもとしては児童福祉法の中で保育とセーフティネット、 この部分は相当投入してきたんですが、今の時代の移り変わりの中で、この間に陥って いる部分をどういうふうに強化していくかということが大きな課題ではないかというふ うに思っております。  それから、全体の児童福祉行政の基盤とか、「児童福祉法に基づく事務の実施主体」 も大分変わってきておりますが、後ほど御覧いただきたいと思います。  次のページ以降は、児童福祉の各機関でございます。児童相談所については8ページ でございますが、全国で175 カ所、約6,000 人強の職員が働いております。中でも右の ページの中心的なケースワーカーであります児童福祉司については、近年、急速にその 人数が増大してきております。ただ、8ページの下の方にありますが、これは地方交付 税で措置をされていますが、その配置基準が11年16、17、21と急速に増えておりますが 、11年以前は昭和30年代からほとんど変わっていなかった。これが地域における虐待の 問題とか、児童の問題とかの高まりを受けて、私どもとしても交付税要求をして、この 3年間、急速に増やしてきたという状況でございます。  それから、児童福祉の各県の状況あるいは相談の推移については後ほど御覧いただき たいと思います。  それから、一つ、県レベルではなくて市町村レベルで12ページに家庭児童相談室、こ れは福祉事務所に設置されておるわけです。数字は後ほど御覧いただきたいと思います が、私どもとしてはこの機能をもう一回再評価して、再構築していくかというのは地域 における大きな課題だと思います。先ほど服部先生から御紹介があったのは、家庭児童 相談室の非常に有効なあるいは効果的な使い方だと思いますが、全国ではむしろまだそ の例は少ないと思っていただいた方がいいのではないかというふうに思います。  それから、おめくりいただきまして、保健所、市町村保健センターの概要は14ページ でございます。保健所については、大きな四角の一番右側に母子保健法の事務をやって いるわけですが、これは類似の改革あるいは母子保健法の改正の中で、次第に市町村の 方に事務が移管されてきております。そういう意味では、15ページの市町村保健センタ ーの母子保健関係の仕事が急速に充実している。一方で、地域保健における保健所にお ける児童福祉あるいは児童の分野についての機能も決して小さくないわけで、個々の保 健所あるいは都道府県単位の衛生分野における児童問題への位置づけというものも大き な課題になっているかと思います。  16ページは、先ほどの話で児童委員のお話が出ました。昨年の児童福祉法の改正で、 いわゆる児童委員法が制定されました。それまでは民生委員法という中で、民生委員が 児童委員を兼ねるということだったのですが、児童福祉法の改正により、中ほどの黒い 四角に児童福祉法の中で児童委員の職務あるいは職責が明確に規定されたと。それから 、従来、通知でやっていた主任児童委員は法律上の委員になったということでございま して、それに合わせて右の下の表でございますが、平成13年12月1日に主任児童委員の 数をそれまでの一万4,000 人台から6,000 人ほど大幅に増やしたと。これは各小学校区 に複数配置をするというような発想のもとで増やしております。  施設の関係についてもお触れいただきました。23ページ、「児童福祉施設の推移」が ございます。先ほどもお話がありましたが、全体の傾向を申し上げますと、一番左の「 里親」については漸減傾向ということで、私どもは本年度の予算から里親のてこ入れ、 専門里親制度の創設等をして、大幅に活用したいと願っております。それから、乳児院 、児童養護施設については、近年は数は減っていますが、定員充足率が急速に増えてき ている。それから、情緒短期治療施設も設置数が増え、充足率も徐々に増えてきている 。一方で、児童自立支援施設については、充足率は低水準でむしろ推移しているという 状況でございます。  24ページ以下は、そうした児童福祉施設の児童の状況あるいは措置委託の原因みたい なものが書いてございますので、のちほど御覧いただければと思います。  それから、虐待の関係で、32ページでございます。これは新しく13年度の数値が出た ので、ここでご報告し、公表させていただきたいと思うわけですが、平成2年から統計 をとりはじめて12年は1万7,725 、13年のこの数値は相談の受付件数ですから、処理件 数とは少し違いますが、11年から12年にかけて急速に伸びました。その伸び率は若干減 ったものの2万件台を大きく超えて、2万4,792 件、これが受付件数になっております 。  ただ、全体の流れを見ますと、やや月別の相談件数を見ますと、13年度6月をピーク に次第に落ちつきを示している。それでも11年12年に比べると全体として各月水準は高 い状況で推移している状況でございます。今のは児童相談所で受付けたり、処理をした 件数です。その他の施設でどのくらいの児童虐待の御相談を受けているのだろうかとい うのが36ページ、これは国立生育医療センターの谷村先生が御研究された報告でござい ますが、中間報告については前年も出ていますが、最終的に調査の結果を御報告いただ くことになっております。36ページの1)でございますが、発生頻度ということでござ いますけれども、先ほど児童相談所では2万4,000 件と申しましたが、社会的介入を要 する虐待の年間の新規発生件数は3万5,000 件、これくらいが見込まれる。これはもち ろん新規発生件数ですから、このほかに継続の件数とか、あるいはもちろん発見されな い件数も当然あるわけです。全体としては児相を含めて考えられるほとんどの機関で受 付件数は3万5,000 件にのぼるのではないか。なおこれは12年度の数字で、先ほど私が 申し上げたのは児相の数字は13年でございます。  それから、37ページについては、その若干の内訳、分類等がございますので、後ほど 御覧いただきたいと思います。  それから、服部先生からご紹介いただいた市町村でのネットワークの設置状況は38ペ ージに書いてございます。38ページ、一番上の表でございますが、全市町村数3,300 弱 の中で、右側の方にございますけれども、820 の市町村が何らかの形でネットワークを つくっていると。ただ、ネットワークのあり方はいろいろでして、虐待を専門とするネ ットワークのほかに、下の方にございますが、例えば虐待以外に子育て環境全般をネッ トワークでカバーするとか、あるいはその他のいろいろな事業をやっているということ で、それは市町村の子どものかかわり方あるいはほかのいろいろな関係でさまざまであ るということでございます。私どもとしては、こうしたネットワークを全国的になるべ く早く展開してもらいたいということで、手だてを講じているわけでございます。  それから、40ページから母子保健関係でございますが、個々の政策関係でございます が、母子保健も思春期からお子さんをお産みになるまで、さまざまな健康診査あるいは 保健指導、療養、援護あるいは医療対策等を行ってきております。その実数が41ページ から載っておりますが、例えば42ページにございますように、最近はいろいろな検査は 一番右の実施主体にございますように、ほとんど市町村になっております。特に、母子 保健法の改正が平成6年に行われたわけですが、ここで3歳児健診が都道府県から市町 村に動いた。こういう中でほとんど母子保健関係は市町村になっているという状況でご ざいます。  それから、幾つか資料がございますが、計数については飛ばさせていただきます。  46ページですが、前々回の子どもの状況で少し栄養状況が悪くなっているというふう に申し上げましたが、子どもの数が少なくなる中で、原因についてはまた専門家の先生 方に御示唆いただきたいのですが、例えば低体重児の数が増えてきている、特に1500g 未満の出生が多くなってきているという状況がございます。  それから、母子保健については、これも単なる行政の政策だけではなくて、48ページ にありますように、国民あるいは専門団体、民間団体含めて国民的な運動にしたいとい うことで、昨年を初年度にする母子保健の国民運動計画というものも(1)〜(4)に掲げる ような名目あるいは具体的な目標を立てて10年間の運動をやっていくということで、こ としはその2年度に当たります。個々の目標については49ページ以下でございます。  それから、51ページ以降は保育でございますが、保育については施設数の計にござい ますように、平成12年までは施設としては数は減ってきておりました。これは後ほど申 し上げますように、保育所整備自体は増えてきたんですが、都会では待機児童が増える 一方で、3,000 くらいを超える市町村ではむしろ待機児童がいない、あるいは供給数が 多いという状況の中で、新設の保育所に比べて廃止される保育所が多かったという状況 をあらわしております。  ただ、一番右にございますように、都市部を中心に、それから私立の保育所を中心に 、充足率が急速に高まってきております。中でも充足率の高まりは、53ページにござい ますように、特にゼロ歳児、1歳、2歳児を中心とした低年齢児の保育というものが都 市部を中心に広範に行われてきているということでございます。  それから、54ページは、1回目の資料でも掲載させていただきましたが、6歳以下の 子どもが保育所、幼稚園を含めてこういった施設で教育あるいは保育をされているとい うような状況をお示ししております。ただ、これは幼稚園、保育所全体をあわせますと 大体400 万くらいの定員があります。やがて子どもの数が、人口研の推計どおりですと 、年間仮に70万とか、60万台しか生まれないと、すべての子どもが保育所、幼稚園に入 っても大体カバーできるような今のキャパシティ。ただ、これは最初に申し上げました ように、地域でものすごく偏りがありますので、こういう問題を今後どう処理していく かということが私どもとしは大きな課題だと思っています。  それから、待機児童については55ページでございます。これはよく言われております が、都市部を中心に特に150 〜160 の市町村を中心にかなり多くの数の待機児童がいる ということで、私どもは待機児童解消のために、重点的に保育所待機ゼロ作戦等を行っ ておりますが、56ページにありますように、数だけではなくて、システムの問題等も踏 まえてあるいは公設民営化の動きなども促進するような、システムの問題としてとらえ て今後推進していこうと思っております。  それから、先ほどもご紹介がありましたが、いろいろな保育が昭和50年代、60年代か ら特別保育対策ということで取り入れられていまた。新エンゼルプランのもとでも計画 的に進めております。その状況を58ページあるいは59ページにお示ししております。  一方で、認可外保育施設も増えてきております。60ページでございますが、今現在、 表にございますように、22万人の方が認可外施設にいる。うち事業所内保育施設が5万 人ですから、約十六、七万人の方が認可外保育施設で保育をされているということでご ざいます。  認可外保育施設については、特にベビーホテルの問題を中心にいろいろな問題が起き ておりますので、60ページの下にございますように、昨年、児童福祉法が改正されまし て、認可外保育施設の届出制の義務化あるいは利用者への情報の提供の許可等々、規定 をされた法律が制定されております。  それから、61ページは、今、都市部において特に増大する保育事業に対応するために 規制緩和の経緯を載せております。かなりの規制緩和を行った結果、特に私立保育所を 中心に充足率の拡大が進められているという状況でございます。  それから、62ページは、健全育成関係の施設、事業でございますが、先ほども御紹介 がありましたように、児童館、児童センターは表の一番左の下、4,399 でございます。 それから、放課後児童クラブについては、詳細は64ページでございますが、今、児童館 や学校の余裕教室を使って、約2万弱のところで登録児童数50万万弱でございますが、 放課後児童クラブが運営されております。  それから、思春期対策のお話がありましたが、私ども非常に問題意識を持っている。 なかなか打つ手がないということもあるんですが、それなりの事業も主な思春期対策事 業ということで、思春期における保健福祉体験学習事業とか、健全母性育成事業等々を やっております。ただ、これらについても十分だとは決して思っておりませんので、今 後この部会等のご議論も踏まえながら、私どもとしては例えば思春期の食育とか性育関 係の事業を強化していきたいというふうに思っております。  それから、健全育成のほかに地域の子育て関係の状況について、68ページですが、保 育所を中心に地域子育て支援センター事業というものを展開しております。これは保育 所に入所されるお子さんだけではなくて、地域の子育て支援の拠点にしたいということ で、数年前からはじめたものですが、着実に増えております。ある意味で地域の拠点に なりつつありますので、私どもとしてはこのセンターを今後どういうふうに強化するか 、あるいは地域の拠点として横の連携をどうするかということは大きな課題だと思って おります。  それから、民間活動についても種々御示唆がございました。70ページ、これはたまた まですが、昨年、少子化への対応を推進する国民会議と私どもの財団の児童育成健全推 進財団が東京の少子化対応推進地域フォーラムをやったときに、集まった出展団体が右 の方にございます。もう私どもがとらえ切れないほど、急速にこの世界は拡充・拡大し ておりまして、さまざまな団体あるいは個人が子育てについて活動をされております。 私どもなりに分類すると72ページでございますが、広場型とか託児等サービス型、育児 サークルネットワーク型、遊び場環境づくり型等々、いろいろな分類ができると思いま すが、20世紀は介護でいろいろ地域活動があったんですが、21世紀は本当にこの方に軸 足がシフトしていくのではないかと思うほど動きが地域で展開されているようです。こ れについても、前回、柏女先生からありましたけれども、もう少し実態を我々なりに調 べさせていただいて、何かこの会でも御報告させていただきたいと思っております。  それから、73ページはファミリーサポートセンター、別の意味の子育て支援のセンタ ーでございます。今、全国193 の自治体で実施されております。特に熱心な埼玉の例を7 4ページにあげておきました。いろいろなケースがありまして、例えば埼玉の2つ目、 これは労働関係から発達いたしましたので、例えば経済部が直営でやっているものもあ れば、保育課が委託してやっているケース、さまざまなものがありますが、こうしたも のも地域の子育ての資源としてどういうふうに全体をコーディネートしていくかという のがこれからの課題だと思っております。  それから、子育てサークルについてのお話もありました。これも先ほどの話と重複す るかもしれませんが、76ページ、さまざまな子育てサークルについて調査した概要を載 せております。例えば、サークルのメンバーは60人、設立してから平均年数が5年とか 、77ページですが、サークルのメンバーの多くは30代の専業主婦、メンバーの平均年齢 は33歳となっているということです。  最後、その他いろいろ児童健全育成の制度がありますが、児童手当制度がございます 。これは先ほど予算のところで申し上げましたが、かなり国庫負担を投じた制度でござ いまして、全体としては78ページの下の方にありますが、給付費で4,310 億円になって おります。第1子・第2子5,000 円、第3子以降1万円の健全育成のための手当として 、一般家庭対策として、右の方にございますが、昭和47年に発足し、幾多の改革を踏ま えながら、今日の制度の状況になっているということでございます。  それから、82ページでございますが、前回も急速に母子家庭が増大しているというこ とを御報告申し上げました。そのために今国会におきまして、総合的な50年間の歴史を 踏まえた母子家庭対策を抜本的に改めるということで4本の柱を掲げてございます。生 活の場の整備、あるいは就労支援、養育費の確保、経済的支援の4本の柱を据えた総合 的な母子家庭対策の推進をする法律を今国会に私ども提出させていただいておりまして 、厚生労働委員会に付託されております。  その関係で、児童扶養手当制度の改革、あるいは84ページに母子相談員とありますが 、こうした方々を母子自立支援員と名前を改めて体制の充実・強化を図ってまいりたい と思っております。  最後に87ページ、これはDV、ドメスティック・バイオレンスの関係ですが、私ども 従来売春防止法に基づく施設ということで、婦人相談所あるいは婦人相談員あるいは一 時保護ということをやっておりますが、2番、3番にごらんいただけるように、夫等の 暴力からの御相談あるいは一時保護が極めて多くなっている。そういう意味で、これら 施設を改めてDV法に基づく施設としても活用するということで議員立法がなされてお りまして、積極的にこうした施設あるいは相談をしながら、DV対策、ひいては児童の 対策を講じているという状況でございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは質疑に移りたいと思います。服部委員からは支援を求めている母親、子ども の問題をお話しいただきましたし、松原委員から支援する側の問題提起のお話をいただ きました。また、今、課長の方から行政が行っておられる支援についていろいろ膨大な 資料がございましたけれども、説明いただきました。これから大体40分、自由に討議を 行いたいと思います。どなたからでも御発言をお願いしたいと思います。どうぞ。 ○阿藤部会長代理  服部先生の御報告に関しまして御質問したいと思います。最初に、1970年代半ば以来 、日本の出生率がいわゆる置き換え水準以下となる少子化現象がずっと続いていて、そ の原因として、通常は女性の社会進出による仕事と子育ての両立の難しさとか、あるい は最近でこそパラサイトシングルが大分話題になりましたけれども、どちらかというと そういう経済条件とか、子育てのコストが上がっているというような議論が強かったと 思います。個人的には、確かにそういうものも重要だけれども、何か若者自身の変化と いうものが少子化問題に関係してはいないかと想像しておりました。そこで、こういう ご報告を伺って大変参考になったとまずは思います。  ただ、幾つか質問があります。一つは、これは1980年生まれの方の調査を中心にして 、そこから得られた知見をお話しになったんですが、その母親は1955年とかその近辺に 生まれた方々だということになります。しかしながら、少子化現象そのもの、あるいは 少子化の背後にある未婚化、晩婚化というのは70年代半ばからずっと起きているという ことになりますと、世代的にはもっと前の方からはじまっていることになります。つま り、70年代半ばから80年ごろにもう既に20代の方からそれ以前の方と違った行動をとり はじめているということです。きょうのお話はそういう意味では80年生まれですから、 まさに今思春期、二十歳前後という世代ですが、その以前の世代も人口行動的には大変 大きな変化を既にしているわけですね。  そうすると、きょうお話になったこういった若者の、先ほどから伺っていると大変グ ルーミーな感じがしてくるのですが、そういう心理状況あるいは育ち方というものは先 生の長いご経験の中で、継続的に、徐々に累積的に拡大してきたのか、それとも80年生 まれくらいが非常に突出しているのかどうか、そういう時系列的な変化というものがも しわかれば大変参考になると思うんです。  それから、もう一つは、例えばこの御説明の中では、核家族化、専業主婦化、これは 大阪ですから、都市における核家族の孤立化みたいなことが背景にあるというお話であ りましたけれども、欧米では核家族というのは伝統的にあるわけですね。そうすると、 そういう核家族化現象は日本ではある時期に起こった一時的な現象だとしますと、これ からは核家族が主流になってくると思うんですけれども−お話しになったような子育て の仕方はいわゆる3世代家族から核家族に移る一時期の種の過渡的な現象であるのか、 そもそも核家族になるとこういう子育ての仕方が定着してしまうのかどうか。ものの考 え方として、こういうことは一過性というか、過渡的なものと考えた方がいいのか、永 続的なものと考えた方がいいのかというあたりにちょっと疑問を持ったものですから、 御質問したいと思います。 ○岩男部会長  では、服部先生。 ○服部委員  私は思春期屋ですので、思春期の子どもとその親、さらにその親がその親に育てられ たという3代を見ます。そういう意味で、一つは「大阪レポート」の親たちというのは 、その先代の親たち、つまり、零細といいましょうか、大変苦労して仕事と子育てをし ている親を見ていますが、自分の子ども時代にでだんだん親たちが中流志向、専業主婦 化していく姿を見て育っています。高度成長期でしたので非常に夢の生活だったと思う んですね、子どもの育児を専念できるという。 その最初の世代の高度成長期に生を受 けた母親が3,000 万人から8,500 万人という数値が示すように都会化していく中で育っ たのです。この短さで、わずか1950年から75年の間に、欧米のように100 年以上かかる ことをわずか25年で変化したわけです。それが親像というものをとても変動のさせたと 思います。「大阪レポート」の親たちは、最初は田舎生まれの人が多いんです。ところ が、どんどん都会に出てきて、自分の親がどんどん専業主婦化していく中で育ち、そし ていよいよ自分たちが専業主婦になっていく世代として登場してくるんだと思うんです ね。  まず最初のご質問の、日本の若者変化というものが時系列的にどこから変化したかと いうようなことでございますが、一つのデータは1975年が不登校最低で、ずっとそれか ら上がり続けます、ひたすら。減ったことは一度もございません。不登校がいいとか悪 いとかではありませんがこのあたりが一つの変化です。それまでは、若者について言い ますと、いわゆるスチューデントパワーという激しい波が押し寄せた時代の後で、スチ ューデントアパシーというのがやってきます。社会全体に対する一種の世直しというよ うな、自分の人生を賭けていくという、若者にとって最も忠誠心を注ぎ込める、良きに つけ悪しきにつけ、そういうテーマを持っていた昭和40年代、1960年安保の後ですね。 反動のようにアパシーが来ます。70年代です。その若者のアパシーあたりから、不登校 の事例が神経症的なものからだんだん無気力型へと変わっていく世代になるんですね。  つまり、親も時代の波の中で自分が育ってきた時の親のモデルと自分、そしてやがて 自分の親業もしていくという、二重にも三重にも眺めてみますと、私はやはりどこかで 転換点があるとしますと、やはりスチューデントアパシーの1970年代あたりからのよう に思います。そして専業主婦率が私の持っているデータでは1975年くらいが最高ですね 。このあたりでしょうか。  といますのは、経済が安定期から低成長に切り替わっていきますね。しかし、期待は 高学歴であり、日常生活の維持ということで考えますと、当然、母親が専業主婦からだ んだん働いて子どもを育てる。しかし、定職にはなかなかつきにくい、女性のある種の バリアもある。だから、非常にアルバイト的な形が増えてきたんだと思うんです。そう しますと、もともと専業母で熱心な母親に育てられた今の20歳くらいの子どもたちは、 「大阪レポート」のような、ある意味の非常に中流志向の強い人たちで「教育ママ」と 言われた、もう死語でしょうか、「教育ママ」とか「ママゴン」という言葉を私たちは 知っておりますが、自分の見果てぬ夢、かつてできなかった夢を託したいという親の時 代から、安定期から低成長期に入っていくにつれて、母親が今度は家庭から出ていき始 めています。私は外国におりまして、日本に帰りましたときに、81年ですが、何と密着 型の親が多いかと思いました。そして、不登校、家庭内暴力−−家庭内暴力は特に日本 的現象と言われまして、その最大の背景は70年代あたりからですが、母子密着、過干渉 、過保護が日本の親の特徴と言われた。これは専業母に集中していたんだと思うんです ね。  それが経済的な低成長とともに、母親が家庭から遠心的に外に出始める。そして、育 児が外注されていく。保育所というのは、必ずしも働く母にきっちりと与えられる形の サポートではなくて、子どもをあずけて非常に安い賃金で働いては塾のお金を出してい く親たちがどんどん増えていく。その中で子どもたちは勉強も外に人に習う、スイミン グも自転車乗りもみんな外注されていく。そして親子関係が非常に希薄になっていく。  だから、専業母の時代のある種の濃厚な形で親子が育っていくという時代から、非常 に親像が希薄になりました。ですから「大阪レポート」の子たちもだんだんそうなって いくわけですけれども、実際の日常生活の中で母親像がだんだん希薄になっていく中で 育ってきて、その勢いというのは今もますます増えている。経済が苦しければ苦しいほ ど、母親が外に行く度合いが増えていきますと、親子関係が、必ずしも悪いとは限らな いんですが、非常に希薄なんですね。そういう中で育つ子どもたちがどんどん私の前に 来る、思春期に今後増えるであろうと。  だから、欧米の歴史の流れとは非常に違う日本の経済と核家族化、そして専業母から 働く、それもキャリアを持って堂々と働いていくという道はなかなか日本に開けないで 短い時間の働き方しかしないけれども、子どもにとってみるとかつてのように自分のそ ばにいてくれた母はいないという事態がおこっているように思います。  そういう意味では、濃厚な母親像があった時代の、家庭内暴力の治療指針とは全く反 対の「もう少し子どもとかかわってください」という母親の助言に現在変わりつつある 。今後ますます子どもとのかかわりが少なくなるかもしれない。つまり、自分の母のイ メージがだんだんなくなる世代、専業母の熱い、重たい、過干渉さえなくて、非常に希 薄な母に育てられた子ども世代が親になりつつあるように思います。ですから繰り返し になりますが、今の親たちの育児不安はかつてのような熱心さの裏返しというよりも、 ただひたすら重荷である、非常に苦しい、あるいは自分自身の人生の中の一種の停滞感 、そういった思いが強い。親になるモデルもないし、自分自身も親になる過程を育てて もらっていない。その二重のものから今後だんだん、虐待もそうですが、ニグレクトの ような、無関心で、かかわりを持つことが乏しい親が増えるのではないか。本人の愛情 のある・なしではなくて、本来親としてのかかわり方を知らない親たちが増えていくよ うに思います。60年代、70年代、80年代と子ども自身も違うし、親自身もどんどん変わ らざるを得なかった。それらの合作のような21世紀の子どもたちのこれから先を眺めま すと、一過性の変化というよりも、質がだんだん希薄になるという危険性は継続してい くように思います。 ○岩男部会長  簡単に一言だけお答えいただければと思うんですが、思春期を臨床医として見ておら れて、男の子と女の子の違いというようなことにお気づきでしょうか。質的な違いなど あるかないかくらいで結構です。  ほかの方もいろいろお聞きになりたいと思いますので。 ○服部委員  男の子よりも女の子の方がやはり変わってきたように思います。そして、女の子の方 が迷っていて、悩んでいるように思います。  かつては男の子の方が不登校も多かったし、問題行動が多かったんですが、表面化し ている・いないは別にして、女の子の方が未来像に揺れが大きくなっているという気が します。 ○岩男部会長  どうぞ。 ○津崎委員  皆川課長にいろいろ行政説明をいただいたのですが、説明の中で54ページの「就学前 児童の居場所」というところですね。それが今後の子ども支援施策を考えたときに非常 に重要意味をもつなように思います。  今、保育所ゼロ待機作戦とおっしゃったですけれども、この居場所の割合図が変わら ないという前提であればゼロ作戦が可能かもわかりません。この図では3歳児で家族・ 幼稚園・保育所がほぼ3等分です。2歳児になると76.1%が家庭です。1歳児になると 家庭の割合がさらに高くなり、ゼロ歳児はほとんど家庭です。しかし、今後は家庭の割 合がもっと下がっていくのではないかと思うのです。  ゼロ作戦という形での施策展開を考えていくと、2歳児、1歳児、ゼロ歳児の保育ニ ーズを実際には喚起することになってきて、最終的には、全部、保育所対応しないとい けないという事態が来る懸念が生じます。  といいますのは、各先生方、おっしゃっていますように、子育ての相対的な負担感は 増してきていると思います。やはり子育てというのは大変です。いろいろな社会の物事 が便利で簡単という一つの流れで進む中、子育てだけが唯一私は例外の仕事ではないか と思っています。全く、子育ての部分は合理化できない。そうすると、その部分の負担 感はすごく増していっていることが一つは少子化の裏にある要因ではないかなというふ うに思っているんです。  働いている女性に聞きますと、家で子育てだけしているよりも働いている方が楽だと 言う方が多くいます。保育所に預けて働いて子育てしている方が24時間べったりと子育 てしているよりいろんな意味で楽だと。そうなってきたときに、2歳児、1歳児、0歳 児のこの子育て層が、これから国が保育のゼロ作戦をしてくれるということになってき た時、そうしたら全部保育所に預けて、子育てしてもらおうかということになってくれ ば、ゼロ作戦なんて言っていられないのではというふうな危惧があります。そういう意 味で就学前の乳幼児を本来どういう形で育てるのが最も望ましいのか。望ましいという 考え方だけでは流れはできないんでしょうけれども、その部分を押さえておかないとい ろいろな施策をとっても、なかなか現実にマッチしないという部分があって、その辺の 乳幼児の子育ての考え方、特に従来であったら「3歳児までは家庭で」ということがあ りましたけれども、それは逆に女性の社会進出を妨げるものになってきて、母性神話で 間違った考えでというふうになってきていますね。  そういう流れの中で、どのような乳幼児の子育てのあり方を前提にして、それをもと にしてどういう施策をつくっていくのかということがないと、単に、今、入れない保育 所に全部入れます、入れるまでどんどんとつくりますという形で本当にいけるのかなと いう気がちょっとしていますので、その辺のところの考え方があればお聞きしたいと思 います。 ○総務課長  御指摘のとおりだと思うんです。というのは、我々、今回、岩男先生も委員になられ て、待機児童ゼロ作戦というのは当面、都市部において現実に存在する待機児童をどう するかということで、ゼロ作戦といいながら、3年間でとにかく5万人ずつ受け入れを 増やしましょうという短期的な対策を今とっているわけです。  その委員会における議論も、今の津崎先生のおっしゃるような、子ども全体と社会の かかわりをどうするかという議論を踏まえてやった議論ではないので、だからこそ私ど もとしては児童部会で少し先を見据えた議論をしていただきたい。  ただ、現実的には、そうはいってもゼロ歳児あるいは1歳児の保育所は増えると思い ます。それとゼロ作戦は別にしまして、もっと根本的な議論をいただきながら、施策に 反映していただくような、ある程度の方向をお出しいただきたい。そのためにこの児童 部会で2年くらいかけて御議論いただきたいと思っているわけです。 ○岩男部会長  先ほど自由討議の時間が40分ということでたっぷりあると思っていたのですが、その4 0分はどこにいってしまったかということで、いただいたスケジュールを見ますと、も う既に次に移っていなければいけないことになっておりまして、次回の会合ではほとん ど自由討議に使うといいますか、たっぷりとるということをお約束させていただきまし て、大変恐縮でございますけれども、きょうのところは次のスケジュールに移らせてい ただきたいと思います。  次は、事務局の方から、「これからの家族と家庭を展望した子育て家庭支援のあり方 」についてということで、吉野室長から御説明をいただくことになっておりますので、 お願いいたします。 ○吉野室長  資料を差し替えさせていただきます。片面コピーしてしまったので、1ページずつ飛 んでおりましたので差し替えをしております。  昨年度の予算の中で、女性のライフコースの多様化に関連して、これからの家族、家 庭を展望した子育て家庭支援のあり方について、調査研究いたしまして、その報告書が まとまりしたので、簡単に御報告させていただきたいと思います。  厚い方の冊子もお配りしているかと思いますけれども、この調査の表紙にございます ように、三和総合研究所に委託いたしまして、委託先に調査委員会を置いて実施いたし ております。具体的には6ページにございますけれども、本部会の委員でもございます 網野先生に調査委員長をお願いいたしまして、そのほかは大沢先生、小沼先生などの委 員の皆様に御指導いただきながら、調査を実施したというものでございます。  資料4の1ページ目で御説明いたしますが、調査目的は、結婚、出産、退職などさま ざまな場面でのライフコースの選択に関する要因など、そういったライフコースの多様 化に応じた子育て支援のあり方の方向性を研究するということでございまして、調査対 象は上の子が12歳以下である、まさに子育て真っ盛りの女性3,300 人でございます。調 査方法は、一般的な調査用のモニターを対象といたします郵送のアンケートでございま す。  モニターによる調査ということでございますので、モニターの選定の段階でややバイ アスの心配というのはあるわけですけれども、一方では(5)にございますように、有 効回答率が94%近い数字になっておりまして、通常の住民基本台帳から無作為に抽出い たしましてアンケートをとりますと、回答率が50%に満たないことも多いと思いますの で、どちらがよりバイアスがかからないかというのはなかなか難しいところだと思いま すけれども、今回はモニターによる調査という形をとってみたということでございます 。  この調査のポイントは、ライフコース、就労のコースと今後の生活の重点をどこに置 きたいかという2つの観点から見たものでございます。  就労コースは、保育とか再就職の支援、こういったもののニーズによく違いが出ます けれども、後で御説明しますが、一方で子育てそのものの意識にあまり差がなかったと いうこともありまして、今後の生活の重点をどこに置きたいかという観点からも分析い たしております。  2ページを御覧いただきたいんですけれども、就労コースについてですが、真ん中の 表にございますように、全体を5つのグループに分けて分析しております。ずっと退職 経験のない継続就労グループ、一度退職した経験のある再就職グループ、それから現在 働いていない人で結婚退職のグループと出産退職のグループ、それから一度も働いたこ とがないという未就労のグループに分けてあります。  2ページ以下は各グループの特徴を書いてございますが、4ページの表の方で御説明 させていただきたいと思います。今回の調査は、どの項目が多かったいうよりも、それ ぞれのグループでどのようなグループごとの特色があるかという点に焦点を絞っており ます。  まず、就労形態の方では、結婚退職、出産退職、ここはやめる前の就労形態ですが、 いずれも正社員が多かった。それから、再就職グループでは、現在も働いている働き方 で、パート・アルバイトが多くなっている。継続就労は正社員が多いという就労の状況 です。  それで、各グループごとに「今の生活の重点をどこにかけているか」という意識が表 2でございますけれども、いずれも「子育てに一番時間をかけています」というのが一 番多いわけですけれども、継続就労のグループでは「仕事に時間をかけている」という のが多くなっているのが特色でございますし、再就職グループでも「仕事が多い」とい うのが同様ですけれども、あわせて「配偶者・パートナーに時間をかけている」といっ た方があるというのも他のグループと違う特色になっています。  5ページの表3ですけれども、「今後どこに時間をかけたいか」ということについて は、継続、就労グループあるいは再就職グループ−−「今は仕事に時間をかけている」 という人が比較的多いグループですけれども、「子育てに時間をかけたい」という人が 他グループと比べた差があるということでございます。それから、再就職グループでは 、「仕事にもっと時間をかけたい」という人が多くなっているというのも特色でござい ます。それから、結婚退職グループでは「自分の時間をもっとかけたい」という人が多 くなっているのが特徴になっています。  表4では、就労コース別に各生活分野についての満足度を聞いたものです。ここに書 いてありますものも、一番多かったものというよりも、他のグループと比べて有意に差 がある、特徴のあるところを書いてございます。  そういう意味で、結婚退職グループというのは、仕事について「普通」だと答えた人 が一番多いというのが特徴であるくらいで、全体的に大きな特徴はないというのがあえ ていえば特徴になります。  出産退職グループでは、生活全体の満足は高いのですが、仕事について「大変不満」 。これは、今仕事をしていない人たちですから、仕事がないことについて「大変不満で ある」という方が多いというのが特徴になっています。それから、自分の時間について もとれていないという方が多い。  再就職グループについては、「生活全般とか、あるいは配偶者について不満度が高い 」というのがございます。一方、「仕事にはかなり満足している」というのが多くなっ ています。  それから、継続就労グループについては、「仕事には大変満足している」というのが 他グループと比べて特色が出ていますが、「自分の時間については不満が多い」という のが特徴でございます。  次の6ページ、表5でございますけれども、就労コース別に子育ての楽しさ・喜びあ るいはマイナス面の不安・悩みについてのものです。  まず、上の方の結婚退職、出産退職の両グループとも「子育てそのものについて非常 に楽しんでいる」といった特徴が出ておりますが、一方で悩み等については結婚退職グ ループでは、「子育てについての情報が多い」ということについての悩みが出ている。 出産退職グループについては、「自分の時間が持てない」というのが多くなっていまし て、これが先ほどの仕事とか自分の時間への不満につながっているのかなと思われます 。  それから、再就職グループ、継続就労グループでは、「子育て経験が役立った」と答 える人が多くなっています。一方で、不安・悩みについては、再就職グループについて は「子どもと触れ合う時間がない」とか、「子育てについての意見が合わない」という ことで、このあたりが配偶者への不満の原因になっているように見えます。それから、 継続就労グループは、「自分の時間」あるいは「子どもと触れ合う時間」といった「時 間」についての悩みが多くなっているということが出ております。  表6の仕事と子育て両立していることについての良い点・悪い点ですけれども、これ は働いている人ですから、再就職グループと継続就労グループについて書いてあります が、再就職グループについては、子育てと仕事の良い点については「社会との接点」と か、「生活のメリハリ」とか「いろいろな人と接する」とか、下の継続就労グループが 「キャリアの中断」とか「やりたい仕事ができる」というふうに答えているのと比べま して、どちらかというと社会参加的な色彩がある答えが多くなっています。こういった ことが、逆にいいますと再就職グループが仕事に不満を持っているといったことにつな がっているのかもしれません。  それから、子育てと仕事の両立の問題点についても、再就職グループでは仕事そのも のについての不満がかなりあるのに比べまして、継続就労グループの方では、「体力、 時間的に難しい」とか、「子育てに時間をかけられない」といったような両立について の問題点が多いということも両グループの違いとなって出てきているように思われます 。  7ページの表7は、「下の子どものために使いたいサービス」ということでございま す。これは御覧いただければと思います。  表8は、「今後の就労希望」ということです。いずれも、今、働いていない結婚退職 、出産退職両グループとも「子どもが大きくなったら働きたい」という人が多いのです けれども、結婚退職グループについては、「働きたくない」とか「わからない」とか、 こういった回答が出産退職グループよりも多くなっているというのが一つの特色ではな いかと思われます。  飛ばしました2ページ、3ページには、今申し上げましたようなことについて各グル ープごとに特徴だけ書いてございますので御覧いただければと思います。  各生活分野の満足度の中で、実は子育てという項目については、就労コース別にはほ とんど差がありませんでした。そういったことで、8ページ以降で別の切り口で切って みようということで、今後の生活の重点をどこに置きたいかということでグループ分け を別途やってみたということです。  「今後もっと時間をかけたい活動は何ですか」という項目について、「今後はもっと 仕事を重視したい」という人、「今後はもっと子育てを重視していきたい」という人、 それから「配偶者・パートナーとの時間を重視したい」という人、それか「自分の時間 を重視したい」という人に分けて特徴を見てございます。これも恐れ入りますが、10ペ ージで御説明したいと思いますけれども、「今後どこにかけたいか」ということで分類 していますが、上の方で「今時間をかけているのはどこですか」ということとの関係で す。「将来、自分の時間を重視したい」と思っている人の中では、現在は子育てに時間 をかけている人が一番多い。それから、子育て重視をしている人は他グループと比べて 、今は仕事に時間をかけている人が多いというのが特色になっています。「仕事を重視 したい」という人は、「今は自分の時間をとれている」と答えている人の割合が多くな っているというのが特色です。つまり、今、子育てに時間をかけている人は自分の時間 が欲しくなる。あるいは自分の時間がある程度とれていると思う人が仕事がしたくなる 。仕事に時間をかけていると、今度は子育てに時間をかけたくなる、こういったあるい は構図というのがあるのかもしれませんということです。  表10は、「今後どこに時間をかけたいのか」ということと就労コースに関係あるかと いうことですが、これはあまり大きな差はないと。両者は独立した変数ではないかとい うふうに思われているということです。  表11は、生活のいろいろな分野の満足度をそれぞれ調べたものですが、これも特徴が あるところが書いてあります。「自分の時間を重視したい、今後自分の時間をもっとと りたい」という人については、生活全般、あまり高い満足度がない、満足しているとか いうのが他グループと比べて出ていないということが特徴になっています。一方「子育 てを今後もっと重視したい」という人は、仕事には満足できているというのが特色にな っています。  11ページにいきますが、今後もっと仕事を重視したいという人は当然ですが、仕事に 対する満足度が非常に悪いと。一方、自分の時間については、満足する比率が多くなっ ているということです。それから、「将来は配偶者・パートナーとの時間をもっととり た」という人たちについては、これは生活全般についてすごく高い満足度があるという のがこのグループの大きな特徴になっております。  長くなりましたが、表12ですけれども、配偶者とかパートナーについての関係ですが 、「自分の時間を重視したい」という人たちは「配偶者がいてくれて良かったことが特 にない」と言っているのが比較的多いのが目立ちます。それから、不満あるいは期待に ついては、「自分の時間を持てるように、パートナーに協力してほしい」というのが多 くなっているということがあります。それから、子育て重視希望派については、不満・ いてくれて良かったこと、ともにあまり挙がっていないというのが特徴になっています 。  「仕事を重視したい」という人については、「妻の仕事に理解がない」とか、「自分 の趣味を優先する」といったようなことについての不満が多いというのが特徴でありま す。それから、「配偶者との時間をもっととりたい」という人たちは、精神的なサポー トについて「いてくれて良かった」あるいは「今後の期待」ということが多くなってい るのが特徴として挙げられるのかと思っております。  最後に表13ですけれども、今後の生活の重点別に見た子育ての楽しさとか喜びあるい は悩み・不安についてですが、「今後は自分の時間をもっととりたい」というグループ は、悩みとか、不安については、子育てそのものについて自分の時間が持てないとかい う悩みを持つ人が多い。それから、子育て重視希望派の方は、楽しさ、喜びの方は「成 長に喜びを感じる」とか、子育てそのものについての喜びがかなり多くなっています。 悩みについても「子どもと触れ合う時間がない」というような子育てについての悩みが 多くなっている一方で、「仕事をこれから重視したい」という人は、子育ての楽しさ、 喜びについては「忍耐強くなった」とか「仕事に役立った」とか、自分の成長について 述べる人が多い一方で、子育ての悩みについても経済的負担とか、住宅事情といった、 どちらかというと外的なことについての悩みを持つ人が多いというのが特徴です。  それから、「パートナーとの時間をもっととりたい」という人については、子育ての 楽しさ、喜びについて、家族関係について述べるというのが特徴になっていますし、一 方で悩みについては「特にない」というのが多くなっているというのが特徴でございま す。  以上、駆け足でございましたけれども、こういう形の調査が出ています。詳細には冊 子の方に記されておりますので、こちらを御覧いただければと思います。調査委員長を お願いしました網野先生、もし何かコメント等ございましたらよろしくお願いいたしま す。 ○網野委員  時間が差し迫っていますので、この児童部会との関連で一つだけ申し上げたいと思い ます。  今回の調査研究は、今まで子育てと仕事の両立を図るためにはどうしたらいいかとい う調査は非常に数多く、いろいろなデータがもう出ております。ですから、ほとんどそ の場合、例えば保育サービスを増やすとか、経済的支援をするとか、病気のときのサー ビスとか、そんなに大差はない結果が出ていました。  今回の調査研究は、むしろその面だけではなくて、最初に吉野室長が説明されました ように、いわゆるライフスタイル全体を通じて今後どういうふうに進めていくかという 点も含めて見ていった、特に、今後の生活の重点ということで見ていったというところ が一つの特徴だったかと思います。具体的にいえば、女性を対象とした、母親を対象と した調査ですので、女性の生活の満足度であるとか、自己実現を重視してとらえたわけ です。  私自身は、一番この調査の中で申し上げたいことは、最後の今後の子育て支援のあり 方の真ん中あたりに触れていますけれども、今の調査の特徴でいうと、もし結婚して、 子どもを産んで育てていくプロセスで、配偶者・パートナー−−必ずしも婚姻という法 律上のものだけでは含まれませんが、要するに配偶者・パートナーとの関係というのは かなり重要な軸になっているのではないかということです。それが生活全体とか、子育 ての満足度とか意識に影響を与えている。  先ほど説明がありましたように、配偶者・パートナーとの時間を重視するという人た ちには比較的ほかのグループより「不満は特にない」という要素が高いんですね。しか も、ほかの人は、例えば仕事を今までやっていないから仕事をしたいとかいう不満と今 後の重点とはやはり関連するんですが、配偶者・パートナーとの関係が比較的満足して いると、今後もそれを重視していきたい。その中で子育てを一緒に相互に理解しながら 進めていきたい。  非常に抽象的にまとめると、私はこのあたりの調査結果が今回一つ特徴になったのか なと思います。先ほど津崎委員が発言されていましたように、乳幼時期の子育てそのも のをどう考えるかという点では、そろそろ母親は働いているかとか働いていないかとか 、何歳からの就労がどうのこうのとか、両立か専業主婦かという議論を超えて、さまざ まな選択肢の中で、本当に良いケアの質が確保できるような家庭生活それから保育サー ビスもそうですし、地域の育てる力もそうですが、本当にそのような方向が重要ではな いか。もうその時代に来ているのではないかというふうに私たちは受け止めております 。 ○岩男部会長  ありがとうございました。ただいまの御報告についてもご質問があるかと思いますけ れども、それは次回にさせていただきたいと思います。  また、きょういただきました御報告それから御質問などのポイントを事務局の方で整 理して、次回の検討会の資料をつくっていただきたいと思います。  次回でございますけれども、正式な御案内は事務局から届くはずでございますが、7 月19日(金)の午前10時〜12時を予定しております。その次の会合でございますけれど も、現時点ではこれを9月27日(金)の10時〜12時に予定しておりますので、今から御 予定の中に入れていただきたいと思います。  本日は大変お忙しい中を、またどうも時間の配分がうまくまいりませんで、大変密度 の濃い御報告がありましたものをそのまま次回に持ち越すということになってしまいま したけれども、どうぞいろいろ論点をお忘れなく、次回に御議論いただきたいと思いま す。どうもきょうはありがとうございました。                                     −了− 照会先 雇用均等・児童家庭局総務課 03−5253−1111(7823)