02/05/20 第2回労働政策審議会勤労者生活分科会議事録          第2回労働政策審議会勤労者生活分科会                     日時 平成14年5月20日(月)                        15:00〜17:00                     場所 経済産業省別館1020会議室 ○齋藤分科会長  それでは第2回労働政策審議会勤労者生活分科会を開催いたします。最初に、委員の 異動がありましたので、それを御報告させていただきます。労働側委員であった刀谷さ んが、3月31日付で辞任をされ、後任に野澤委員が就任されました。それから、公益委 員の菅野委員が4月23日付で辞任されて、新たに鵜飼委員が就任されました。以上です 。なお、今日は翁委員、渡辺委員、田沼委員が御欠席になっています。  事務局のほうも替わったようですが、最初に事務局を代表して部長から御挨拶をお願 いいたします。 ○奥田勤労者生活部長  勤労者生活部長の奥田でございます。事務局の代表として労働基準局長が御挨拶をす る予定でしたが、急な用事が入って出席できませんので、私が代わって御挨拶をさせて いただきます。  労働政策審議会勤労者生活分科会においては、昨年のこの審議会発足のときに一度開 催をして、以来その後は長らく開催をしてきませんでした。この間、税制改正等、いく つかの点については制度改正を図ってきたわけですのでこれらの御報告も含めて本日の 会議を開催することといたしました。  また、当分科会の下に置かれている中小企業退職金共済部会の方では、中退共制度に ついての審議を精力的に行ってまいりまして、その結果、本国会において中小企業退職 金共済法の改正法案の成立を見たところです。このことについては後で御報告をさせて いただきます。  今後とも勤労者財産形成促進制度の発展等を通じた、勤労者福祉の向上に向けて、皆 様方の御指導、御協力を賜りますようにお願いを申し上げて、私からの御挨拶とさせて いただきます。 ○分科会長  事務局のメンバーを御紹介していただけますか。 ○勤労者生活部長  事務局の方も私から紹介させていただきます。企画課長の伊岐でございます。労働金 庫業務室長の保坂でございます。勤労者生活課長の南野でございます。勤労者福祉事業 室長の犬飼でございます。 ○分科会長  議題に入りたいと思いますが、まず最初に会議の公開についてお諮りしたいと思いま す。事務局から御説明をお願いいたします。 ○伊岐企画課長  当分科会の議事の公開に関しては、昨年1月18日の第1回勤労者生活分科会の席上で 委員の皆様にお諮りして、当面、議事録は公開するけれども、会議の内容については非 公開ということで御了解をいただいたところです。  その後、1年数カ月が経過して、厚生労働省発足後、様々な機会に各分科会、あるい は部会等が開催されてきました。労働政策審議会の分科会の1つである安全衛生分科会 に関しては、既に議事が公開されて3回の会議を重ねているところです。また、後ほど 御報告のある中小企業退職金共済部会においても、今年に入って議事の公開を委員の皆 様に御了解いただいて、公開の制度が明記されたところです。  このような事態を見て、当分科会においても、議事の一層の透明性を図るために、分 科会の運営規程に明記した上で議事の公開を図ってはどうかと考えて、お諮りをする次 第です。  資料No.1を御覧下さい。「労働政策審議会勤労者生活分科会運営規程(案)」の第 6条のところが改正案です。第6条第1項「会議は原則として公開とする。ただし、公 開することにより、個人情報の保護に支障を及ぼすおそれがある場合、個人若しくは団 体の権利利益が不当に侵害されるおそれがある場合又は率直な意見の交換若しくは意思 決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある場合には、分科会長は、会議を非公会と することができる。」、第2項「分科会長は、会議における秩序の維持のため、傍聴人 の退場を命ずるなど必要な措置をとることができる。」という条項を新設させていただ きまして、疑義のない形で会議の公開を図りたいと考えています。何とぞ御審議のほど お願い申し上げます。 ○分科会長  以上の御報告、御説明について、何か御意見、御質問はありますか。               (異議なし) ○分科会長  異議が無いようですので、このように規程を設けることにいたします。それでは次の 議題の御説明をお願いいたします。 ○企画課長  議題2と議題3を一括して御説明させていただきます。まず資料No.2を御覧下さい。 No.2には引き続いて図表が付いているので、これも併せて御参照いただきたいと思い ます。  本日は、初めての委員の方もおられますので、財形制度について大変お詳しい委員の 方には恐縮ですが、若干制度の御紹介をしながら、その実施状況について御報告を申し 上げたいと思います。資料No.2に沿って御説明いたします。  まず、勤労者財産形成促進制度、いわゆる財形制度の概要ですが、本制度は、昭和46 年に制定された勤労者財産形成促進法に基づいて、勤労者が退職後の生活の安定、住宅 の取得、その他の資産形成を目的として貯蓄を行い、事業主及び国がそれを援助する制 度です。事業主は、給与天引の実施、給付金等による貯蓄援助等を行うことになります 。国は、貯蓄の非課税、住宅融資に対する利子補給等を実施しています。  本制度の内容ですが、まず、財形貯蓄制度として、一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財 形住宅貯蓄の3種類があります。一般財形貯蓄制度は、使途を限定しない貯蓄というこ とで、現在は利子等が課税となっています。平成13年度末現在の契約件数は881万9,000 件、貯蓄残高は10兆3,720億2,900万円です。  この一般財形貯蓄の実施状況の推移は、図表1に経年的に示してあります。グラフを 見ていただくと、折れ線グラフの方が契約件数で、棒グラフの方が貯蓄残高です。昭和6 3年から平成元年にかけて急激に契約件数が減っているのは、この時点で一般財形貯蓄 について利子非課税制度がなくなり、課税となったためです。  その後、市中金利等が非常に低くなってきたことに合わせて、契約件数が逓減傾向に あります。なお、貯蓄残高については、逓増傾向が昨年度までは続いていたという状況 です。  財形年金貯蓄は、60歳以降の年金支払を目的とする貯蓄で、平成13年度末現在、契約 件数が279万1,000件で、貯蓄残高は4兆5,143億7,700万円です。推移は図表2を御覧下 さい。  これも一般財形貯蓄と同様に、契約件数が逓減傾向にあり、貯蓄残高は数年前まで上 昇傾向にありましたが、現在は若干の低迷という状況にあるところです。この財形年金 貯蓄については、次に申し上げます財形住宅貯蓄と併せて、利子非課税制度が設けられ ています。  財形住宅貯蓄は、住宅の取得、増改築等を目的とする貯蓄で、平成13年度末現在、契 約件数は183万件で、貯蓄残高は3兆8,159億3,600万円です。推移については図表3を 御参照下さい。これは平成元年に創設されていますが、契約件数が逓減傾向にあります 。なお、最近、財形住宅融資の貸付決定件数が増加しており、住宅の取得等のために貯 蓄を引き出す件数も多いためか、貯蓄残高についても逓減傾向に至っています。以上が 財形貯蓄制度です。  次に財形融資制度です。これは、銀行、生命保険会社、証券会社等の財形貯蓄等取扱 機関に集積された一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄の総額の一部を原資とし て、勤労者の各財形貯蓄の総残高に応じた一定の範囲内で、各種融資制度を実施する制 度です。  まず財形持家分譲融資ですが、これは事業主等に対して、勤労者に持家として分譲す るための住宅の建設・購入資金を貸し付ける制度です。なお、貸付当初5年間の利子補 給制度を設けていますが、現在その利子補給制度が働くような事態に立ち至っていない という状況です。  平成13年度末現在で貸付決定件数は19件、貸付決定金額累計は987億4,900万円で、こ れについては図表5に推移を示しています。特に近年、件数が急激に落ちてきています が、これは、企業が自らの負担を伴って、また当局から融資を受けて、従業員のために 住宅建設をするという余裕がなかなか見られないということを反映しているかと思いま す。  次に、財形持家個人融資です。これは、財形貯蓄を行っている勤労者に、その者の財 形貯蓄残高の10倍相当額の範囲内で、自ら住宅を建設、購入又は改良するために必要な 資金を貸し付ける制度です。これについても利子補給制度がありますが、現在はそれが 発動する状況になっておりません。  貸付決定の推移については図表6を御覧下さい。平成13年度末現在の貸付決定件数は 2万2,002件、貸付決定金額累計は3兆5,076億4,200万円ですが、先ほどの財形持家分 譲融資に比べて、貸付決定件数が近年急激に増加してきています。これは、後ほど御説 明いたしますが、現在、本融資に係る利率が非常に低い状況にあり、御利用しやすくな っているということを反映しているのかと考えている次第です。  最後に財形教育融資です。これは、財形貯蓄を行っている勤労者にその財形貯蓄残高 の5倍相当額の範囲内で、450万円を限度として、本人又はその親族が大学等で教育を 受けるために必要な資金を貸し付ける制度です。  平成13年度末の貸付決定件数は92件で、累計の貸付決定金額は72億2,600万円です。 貸付決定の推移については図表7のとおりで、これについても貸付決定件数が非常に落 ち込んでいます。この原因について様々な立場の方にお聞きしているのですが、「比較 的少額の融資の割には手続が煩雑である」、「利子が相対的に他の金融機関がお持ちに なっている金融商品よりも高いのではないか」等の指摘をされる方々がおられるところ から、この辺りの利用のしやすさが課題かと認識しているところです。  その他の制度として、まず、財形給付金・財形基金制度があります。これは財形貯蓄 を行う勤労者に対し、事業主が年10万円を限度に拠出し、勤労者の貯蓄を援助する制度 で、契約の形態により給付金制度と基金制度の2種類があります。  これについては、実施状況の推移を図表8と図表9に示しています。財形給付金制度 の実施企業数が平成13年度末現在で2,377社、財形基金制度の基金数は71基金で、それ ぞれ実施企業数あるいは基金数について、逓減傾向ないし伸び悩みの状況になっている ところです。総資産高についても御覧のとおりです。  次に財形活用給付金・助成金制度です。これは勤労者が一般財形貯蓄から払い出した 金銭を特定の事由のために必要な資金に充てた場合に、勤労者に対して一定の給付金を 支払う事業主に対して、国が助成金を支給する制度です。  平成13年度末現在、支給件数が877件、うち中小企業が113件となっています。支給実 績の推移については図表10に実数値で示しています。直近の数字が平成13年度の数字で 、総支給件数は平成12年度に比べてやや逓増、中小企業についてもやや逓増しています が、当初期待したほど飛躍的に伸びているかと言うと、そこまでは立ち至っていないと いう状況です。  最後に、事務代行制度・中小企業財形共同化支援事業助成金制度があります。これは 中小企業の事業主が財形貯蓄等に係る事務を厚生労働大臣指定の事業主団体に委託でき る制度で、現在59団体に対して大臣の指定が行われているところです。  この事務代行制度を普及させるために、国の方から中小企業財形共同化支援事業助成 金制度という形で、普及のための費用を助成していて、この助成制度を活用いただいて いる団体は、現在のところ累計で68団体となっているところです。  以上が財形制度に関する簡単な制度の御説明と実施状況です。  引き続き資料No.3を使って、最近行った勤労者財産形成促進制度の改善についての 御報告をさせていただきたいと思います。  まず、勤労者財産形成促進法施行令の一部改正です。改正点が2点ありまして、まず 第1点目として、勤労者財産形成住宅貯蓄の利子所得等が非課税とされる適格払出しの 範囲に、地震等に対して安全な構造方法に関する技術的基準に適合させる工事等に該当 する修繕又は模様替えのための払出しを追加させていただきました。  申し上げるだけですと分かりにくいので別紙を付けさせていただいています。手書き で加えていると思いますが、住宅ローン減税制度とパラレルに制度要求をしたもので、 耐震改修の必要性が阪神淡路大震災の教訓としてクローズアップされましたが、これま で行ってきた融資、補助による支援だけでは十分にこの耐震工事が広がっていかないと いうことで、今般、税制上の特例措置にもこの耐震工事を含ませて、一層の普及を図ろ うというものです。  さらに詳しい説明は、17頁の参考の図を御覧いただければと思います。現在、財形住 宅貯蓄で適格払出しの対象としているのは、増築、改築、建築基準法に規定する大規模 の修繕又は大規模の模様替えのほか、一定の壁又は床の全部について行う修繕等と、大 規模な修繕又は模様替えです。したがって、筋かいの設置、あるいは金具による土台補 強、基礎の補強というものは、これまでは対象となる増改築等に当たらないものとなっ ていましたが、これを当たることとするという内容です。  次に、資料No.3の1の(2)、施行令の一部改正の内容の等2点目です。これは先 ほど少し触れた利子補給の関係で、中小企業勤労者を対象として講じられている一定の 新築住宅及び良質な既存住宅に係る財形持家転貸融資等に係る貸付利率に関する暫定措 置の適用期間を平成19年3月31日まで延長するものです。  これも分かりにくいので、19頁を御覧ください。これまで、財形持家融資の貸付基準 利率が、例えば住宅金融公庫の貸付基準金利等と比べて非常に高いというケースにおい ては、利子補給制度を講じるという仕組みを作ってきたところです。この表を見ていた だくと分かるように、貸付金額710万円以下であれば、一般勤労者については、年金基 金貸付基準金利より上回っている場合の利子補給として、当初2年間はそれを下限に2 %以内、次の3年間は1%以内となっています。中小企業勤労者に対しては、貸付基準 利率の比較対象を住宅金融公庫の貸付基準金利として、それより上回っている場合に、 その基準金利を下限として2%以内の利子補給ができる制度となっているところです。  かつて財形持家融資に係る利子が3%を下限としていた頃には、この利子補給制度を 柔軟に動かして、本融資制度を利用しやすく運用させていただいていたところですが、 現在は、調達金利が0.86%と非常に低い利率で調達ができていることを踏まえて、貸付 金利が1.55%と低利で融資を行わせていただいているということ、そのため住公貸付基 準金利の2.70%、あるいは年金基金貸付基準金利の3.11%より相当低い利率になってい ることから、この利子補給制度は制度としては延長させていただきますが、現在におい ては発動の必要が全く無いものです。今後5年間にこの発動をする必要が生じた際に、 政令改正の意味が出てくるというものです。以上が政令改正についての御説明でした。  もう1つ御報告いたします。勤労者財産形成年金貯蓄と勤労者財産形成住宅貯蓄につ いては、租特法の施行規則で非課税申告書類の書式の色の指定を行っていたところです が、この色指定が企業内のオンラインで財形事務を処理する場合に大変不自由だという 要望を承って、これを税務当局にお願いしたところ認められたということで、色指定を 外すという措置が今年の4月1日から施行されたということです。政令改正、租特法施 行規則の改正とも、今年からスタートさせていただいていますので、どうぞ御利用のほ どお願い申し上げたいと思います。以上です。 ○分科会長  ただいまの御説明について何かありましたらどうぞ。 ○杉浦委員  この図表を見ると、やはり各種財形とも特に契約件数が大きく減少していて、それが 止まっておらず、残高もピークとなってきたということが改めて理解できました。ただ 、勤労者にとって財形制度は大切だという立場から見ると、これは由々しいことではな いかと思っています。  そこでお聞きしたいのですが、非課税の話がありましたが、それ以降ずっと契約件数 が減っていますので、「低金利のためではないか」とか、住宅融資は額が伸びているの でこれは明るいニュースだと思いますが、「そのための引き出しがあって落ちたのでは ないか」等の要因が考えられるとは思いますが、しかし、契約者数自体が逓減している ため、その要因をどう見るのか、それに対してどう対応していったらよいのかというこ とがかねてからの課題なのですが、現状での御意見などがありましたら教えていただけ ればと思います。 ○企画課長  まさにずっと御説明をしておりまして、説明している人間も、一部の融資以外は、す べてにおいて利用の度合いが減っていることを憂慮しているところです。  先ほど少し申し上げたように、いわゆる低金利時代において財形制度そのものの魅力 が、働いている皆様に若干感じられない状況になっていることは事実としてあるかと思 います。ただし、それだけではなくて、既に昨年の1月来様々な方面から、この制度の 中で御利用になりにくい点についていろいろと御指摘を賜っているところですが、こう いうことを着実に見直し、改善する努力が必要だということは事務当局としても非常に 強く感じているところです。  なお、周囲を見渡すと、一方では税制絡みの各種施策については、現在、経済財政諮 問会議で様々な御議論をいただいておりますし、特に控除措置であるとか、細かい税制 については厳しいお声をいろいろといただくこともあるかと思いますので、そういうこ とも頭の中に入れつつ、他方で、この財形制度をどうやって御利用いただけるようにす るかという、非常に難しい局面に立たされている状況であるかと思っているところです 。 ○杉浦委員  関連してですが、低金利と言ってもどうしようもないので、制度としてはなかなか難 しいのですが、最近は失業率も高いし、転職もあって、やはり会社を辞めると財形もや めざるを得ないというようなことで、じりじり減少していくということも影響している かと思うのですが、これに対しては何かお考えですか。 ○企画課長  一般的に、現在、企業全体で働いていらっしゃる労働者の方の中で、昔で言う正社員 と言われている方々から、いろいろな形で非典型的な就労という形の雇用なら雇用、あ るいは雇用以外の形態も含めて、その働き方にシフトしている状況もあるかと思います ので、御本人が財形をやめるという考えの下にやめるケースもあれば、先ほど言ったよ うに流動化の中で、この財形制度を利用できる立場からそうでない働き方にシフトされ たケースもこの中には含まれているかもしれないとは思っています。ただ、残念ながら その部分を正確に分析をしておりませんので、なお少し我々も勉強させていただかなけ ればいけないと思っております。 ○分科会長  他に何かありますか。 ○倉島委員  中小企業財形共同化支援事業助成金制度は、68団体という御利用数ですけれども、何 かちょっと少ないように思われます。そこで、対象となる団体数がどの程度あるのか、 今後どのようなお考えで、どのくらいの普及といいますか、御利用をお考えになってい るのか、ちょっとお伺いしたいと思います。 ○企画課長  事務代行団体となっていただけるために、傘下の事業主さんが400以上という要件を 設けてお願いをしておりますことと、それから先ほど言いましたように助成制度を設け まして、最初はまず普及をしていただいて、その中でうまく代行に滑り込んでいただく というような仕組みを設けて進めてきたところですが、その普及制度に乗ってやってみ ようと思っていただける団体を、なかなか思うようにたくさん集められないというのが 正直なところかと思います。  その1つには、逆に事務代行すること自体が非常に御煩雑だと思われる団体が多く、 最終的には普及でお金をもらうだけでは駄目で、事務代行していただけるということを 前提に助成金をお払いしておりますので、事務代行を責任持ってやれるという、その事 務の煩雑なところを被っていただいて、やっていただけるというところまでなかなか行 き着かないのかなと思っております。私どもも、この辺りをもう少し分析して、実際に 代行数を増やしていきたいとは思っております。 ○分科会長  ありがとうございます。 ○杉浦委員  先ほど住宅でいろいろ金利を下げたりして利用が増えたということで、大変敬意を表 しているのですが、1つ、要望があります。14頁の財形活用助成金について、例えば教 育のために一般財形貯蓄を引き出した際に、助成金を受けるための必要書類を調べてみ て少し驚いたのですが、例えばある大学に入るといった場合、まず、案内パンフレット が必要です。もちろん、5校受ければ5ついるわけです。それから、受験料を納めた証 明書も必要です。それから、幸運にも受かった場合は、その大学の初年度の納入金の領 収書も必要です。それから、入学したことの証明書も必要です。入学でもその4つが必 要になります。後は、下宿の場合には下宿したことの証明書が必要です。それから、礼 金や家賃の支払いの証明書、引っ越しの証明書も必要です。チェックが難しいのかもし れませんが、書類が7つも8つも要るとなると手間が掛かり過ぎるという気がしました ので、何か御検討いただければと思います。 ○企画課長  多分、非常に手続きが煩雑ということでの御要望かと思いますので、承って、精査を させていただきます。 ○分科会長  他に何かございますか。 ○奥村委員  今の指摘に絡むような話なのですけれども、まず年金財形を日本版401Kにというよ うなことが、以前、財形審議会の中でいろいろ議論されておりまして、それから、財形 活用給付金・助成金制度というのが、またこういった場で議論され、前回の分科会では 、中小企業をもっと重視した内容に変えていきましょうという議論がなされたと思うの です。財形制度はその大きな流れの中にあるわけですが、今、この実態が実は下がって いるというような意見が出ていますけれども、それ以前に、全勤労者を考えた場合に、 財形制度が元々どの程度普及しているのかという基本的な議論があると思うのです。  財形制度が頭打ちになっていることについては、バブルがはじけた辺りくらいから既 に議論されています。一方で、それが全体に普及していない中で、大企業・中小企業に 普及度合いの格差があるため、それを解消するという議論もずっとなされてきています 。  先ほどの年金財形の話はさて置きまして、中小企業への財形の普及度合いを見た場合 に、今は低金利だから財形をなかなか利用できないのではないかというようなお話があ りましたけれども、皆さん当然御承知のとおりなのですけれども、今の財形の仕組みの 中でどのように財産形成するかということについては、財形制度がスタートして以降、 金融商品が多様化しているとか、ペイオフなどの問題があるとか、社会保険料等の負担 が増えてきて可処分所得が減っているとか、世界で最高レベルの賃金水準の是正だとか 、様々な変化があって、現状ではかなりいろいろな問題が生じてきているのではないか と思います。  財形助成金制度や、財形活用給付金・助成金制度が創設された際に、こういった補助 金的な仕組みでは中小企業には普及しないのではないかと申し上げました。前回は、大 企業・中小企業のうち、特に中小企業への普及を図るため、活用助成金の支給水準を変 えたと、こういうことがあったわけですけれども、これについても、中小企業への普及 の有効な手立てとは考えられず、事務効率化の問題や、金融市場の自由化の動きへの対 応など、もっと財形自身の基本的な問題があるということを申し上げたわけです。  資料を出していただいて非常にありがたいのですが、そういった指摘について、この 実績を見た場合にどのように評価しているのか、分科会の一員として勤労者福祉に関し ていろいろ検討に加わらせていただく者として、事務局としての御見解をお聞かせいた だきたいと思います。先ほど言った事務代行機関への助成金や、活用助成金など、かな り大きな費用を投じているようですが、例えば、どれだけの費用を投じて、実際そのと きに狙いとしていた効果というのが上がったのか、また、実際に勤労者の皆さん方が、 この制度というのを非常に利用しやすいと思って利用するようになったのか等について 、御見解を伺いたいと思うのです。前回の分科会の際の事務局の御意見では、これでも って中小企業への普及が図れるはずですと、こういうことであったと思うのですね。  もう1つ、あえて付け加えるならば、この14頁の資料を見ますと、中小企業への普及 というのがあまり進んでいない、むしろ進んでいないというように言えるのではなかろ うかということと、やはり中小企業以外の企業、基本的には規模の大きな企業であると か、労働組合がきちんと存在する企業であるとか、そういうところを中心にこの財形と いうのは普及が進んでいるし、給付金・助成金制度も利用されていると、こういうこと だと思うのです。そうだとすると、やはり前回の議論での事務局の御説明については、 もう少し補足説明をしていただかないと、実際に勤労者福祉に関わる人間としては、そ の責任を果たせないなと、このように思っていまして、それをちょっと御説明いただき たいなと思います。 ○企画課長  先ほど、私が御説明しました各種契約件数等の落ち込みについて、当局としてこの勤 労者生活分科会に対し、どういう原因だと分析しているのか公式に述べよ、ということ であるかと思いますが、繰り返しになりますけれども、もちろん金利の問題もさること ながら、昨年来、1月18日の勤労者生活分科会だけではなく、その前の段階でも様々な 御意見をいただいてまいりました金融の自由化であるとか、あるいは雇用の流動化であ るとか、様々なものに対応する仕組みとして、私ども、なかなか改善し切きれない部分 があるということは、原因の1つにはなり得るであろうと思います。  ただ、大変恐縮ながら、この契約件数の逓減が、那辺の理由によって生じているのか についての、もう少し科学的な分析をと言われれば、それは今現在十分でないと言わざ るを得ません。  逆に見れば、一般財形がかくも厳しい様々な状況の中で、なおこれだけの方々に御利 用をいただいている理由、全部バッと脱兎のごとく一般財形から逃げていかずに、なお これだけの残高を有している理由というような逆方面からの分析も含めて、我が方でも 少し分析をさせていただかなければいけないのかなと思っているところです。  それから、中小企業への普及のためということで、いろいろと制度を改善しているも のについて、それが十分に効果を上げていないのではないかという2番目の御指摘です が、中小企業の普及率を計るための物差しというものが、大変恐縮ながら、明確に整備 されていないという状況にあります。これも昨年、例えばこの図表1に応答する中小企 業の勤労者の貯蓄残高等々をお尋ねいただいて、それにお答えし切れなかったわけです が、実は金融機関から、大企業と中小企業とに分けて報告を受けるという仕組みにして いないために、これを直接に物差しとして計ることができない状況なのです。それで別 の調査、これは「就労条件総合調査」という私ども厚生労働省で行っております承認統 計の中で、財形貯蓄についての導入率を調査したものがございまして、これによれば、 やはり、平成11年時点での導入比率として、1,000人以上の大企業が91.7%であるのに 対して、30人から99人のかなり小さい規模の企業ですと56.2%に留まっているというよ うな格差があることについて強く認識しているところです。  この格差につきましては、平成8年からの比較をしてみますと、拡大もしていないの ですが、残念ながら縮まってもいないということでして、平成8年に法改正をさせてい ただいたにもかかわらず、残念ながらその効果そのものが他の理由で減殺されたのか、 効果が全然無かったのか、そこはさらに分析が必要ですが、とりあえず目に見えて導入 率を上げるというような効果には至っていないというのが現状です。  その原因の1つとして我が方が反省しなければいけないこととして、先ほどの事務代 行制度の有効活用が不十分ではないかという問題意識がございますので、これは倉島委 員もおられますので、中小企業団体様により一層御活用といいますか、普及をお手伝い いただけるような我々自身の取組みを、もうちょっと頑張らなければいけないと考えま す。  また、活用助成金については、先ほど平成13年度の数字を見ていただきましたとおり 、急に中小企業が飛躍的に増えたようにはなっておりません。一方で、若干その負担分 が発生いたしました大企業さんについても、その制度を解約と言いますか、急激に減る ということにはなってはおりません。逆に言えば、企業規模にはあまり助成金制度が直 接の影響を与えていないという感じを、平成13年度限りの数字では得ておりまして、こ の辺りを総合的に、これまた誠に恐縮ながら分析して、制度のお使いになりにくい点で 少なくとも当面すぐ改正することができるようなものについては、前向きに検討して取 り組んでまいりたいというように考えております。 ○奥村委員  追加して言いますと、今の企業の運営の実態と言うと大袈裟になるのですけれども、 私などが属している企業グループの中でも、今までは本当にライバルメーカーだったと ころと、いろいろな事業分野ごとにいろいろな提携をし、合弁会社をどんどん作ってい くという動きがあります。そういうことをやり始めますと、かなり大きな規模のところ でも、どんどん中小企業に分割されていきます。そのような中小企業は、まず事業あり きですから、そこからスタートするのですけれども、そうすると、まず福利厚生をがっ ちり作ってから会社をスタートするということにはなりません。  そうすると、先ほど言った、転職した場合に財形制度をどうするのだろう、という問 題が立ち所に出てきます。今の競合メーカーさんの場合、財形は当然あるということに はならず、福利厚生をどうするかという基本議論から始めなければいけないところもあ ります。このまま放置しておくと、この財形制度というのは、勤労者の多数の方が利用 できなくなった状態で、ただ制度として残るということにもなりかねません。  ですから、財形は良い制度だと思いますので、特に反対だという意味ではなく、勤労 者の置かれている社会環境等を含めて、勤労者福祉として今どういうことが求められて いるのか、その中にあって、財形制度というのは何ができるのかというようなことを基 本的に議論しておく必要があるのではないかと思うのです。  本日も一応報告ということですから、承認ということで終わりだろうと思うのですけ れども、次回どうするのと言ったときに、また1年経って同じような、「実態はどうで しょう」、「分かりません」というようなことをしているだけでは、まさに勤労者の皆 さん方に対して、こういった分科会の末席を汚させていただいている者として、非常に 申し訳ない。  これまでずっと何回も、いろいろ申し上げてきたことも、皆さんにだんだん御理解を いただいているところもあるのではなかろうかと思いますし、財形制度というのはもと もと昭和40年代にドイツに倣ってできた制度なわけで、その基本は全く揺らいでないと 思うのですけれども、制度も全然揺らいでいなくて、そこにいろいろなものが付け加わ ってきたというのが、日本の財形制度の歴史だと思うのです。そこで、今後どのように 本制度を作っていって運用するかということを、一度、まさに学識経験の方も含めて、 労使が、必ずしも意見が一致するわけではないと思うのですけれども、議論しておかな いと、いつも結局は実績報告、質議応答で終わってしまい、勤労者福祉として見れば何 も進まない、ということになるのではないかと非常に心配しております。 ○大賀委員  今の御意見と関連してなのですが、私も、これだけ契約件数なりが減っているという のには、先ほど御説明していただいた様々な理由があるというように思うのです。ただ 、それらの理由を踏まえて、施策としての財形制度の今後の方向性について、奥村委員 がおっしゃるように、全くこの中で議論が無いと、これは来年になっても再来年になっ ても、いろいろな理由で下がりましたという説明の繰り返しになってしまうというよう に思うのです。したがって、この財形制度の存続の理由を含めて、どこに問題があるか というものを、やはりきちんと突き詰めて議論をしないと、同じことの繰り返しになる のではないかと思いますので、是非とも今後の存続する必要性も含めて、根本的な議論 をする必要があるのではないかと思います。 ○山口委員  皆さんの意見に私も全く賛成で、現状の制度の枠の中で分析をするというのも大変重 要だと思うのですけれども、税制の問題や、住宅金融公庫の廃止の問題等も念頭に置い て、中小企業への普及策等をもっと充実していかなければいけないと思う一方で、充実 するのが難しい環境にもあるというように認識しています。そういう点では、これは私 見ですが、財形制度の趣旨や目的に照らして、新しい観点から抜本的な見直しとなる、 中小企業の人たちに特化したような制度についても、1つの研究テーマとして、是非こ ういう場で議論していただきたいというように思っております。 ○企画課長  お三方から、それぞれ根本から見直せというような御意見であります。私ども自身も 、先ほど来御意見がありましたような、周辺の大幅な環境変化というのを、目をつぶっ て見過ごそうと思っているわけではございませんし、また、様々なお立場でこの制度に ついての御期待なり、あるいは御要請なり、あるいは御注文なりがあるということは、 日々いろいろなところで御意見をいただく中で感じているところです。  そういう環境変化について私どもが、どういう方向で皆様に御検討いただこうかとい う腹積もりをするのに、もう少しお時間を頂戴したいとは思いますが、少なくともこの 場所で申し上げられることは、今後の財形制度の在り方については、今いろいろおっし ゃられたようなことも含めて、様々な方法により検討いたしてまいりたいと思っている ということです。その際には、もちろん財形だけを俎上にのせるだけでは不十分でして 、既にお話にありましたような様々な勤労者福祉対策との関係も十分念頭に置かなけれ ばいけませんし、ひいては、場合によりましては先ほど奥村委員が少し触れられました ような年金制度との関係にも意を用いなければいけないかと思っております。そういう 意味では、勤労者生活全般の在り方を念頭に置きながら、総合的な勉強をするというこ とも、私ども事務局としては必要なこととして、自らの義務だと思っているところです 。 ○勤労者生活部長  補足になるかどうかは分かりませんが、昨年の分科会では、確か数字だけの資料をお 出しして、ここまで推移がわかるような資料は多分お出ししていなかったというように 記憶をしているのですが、今回こういった資料をお出ししましたのも、財形制度がどの ようになっているかということについて、皆さんに私どもと同じような認識をしていた だこうということで、あえてこういった資料をお出ししました。  結局マル優制度が一般財形については無くなって、年金と住宅に限定をされた段階か ら、財形貯蓄の伸びが止まり、最近は件数そのものが減ってきております。  件数の減り方について、もう少し詳しく見てみますと、特に年代別の財形加入率を見 ますと、40代、50代の加入率は比較的高いのですが、それは若い頃に入ったものがその まま引き続いているわけで、20代、30代の加入率が極めて低い。ですから、会社を辞め ていかれる方たちが財形から出ていくと、その後新しい人が入らないという形になって きているということです。  では、若い人がなぜ入らないのかというところがまず1つあるわけですけれども、全 体的に見れば他のいろいろな制度が充実をしてきている中で、財形の持っている制度の 魅力が薄れてきているということと、金融界の状況が相当大きく変化をしてきていると いうことが確かに影響しているというように率直に思っております。また、以前ですと 、会社の中で財形加入促進を相当熱心にやっていただいておりましたけれども、最近は かなりこれが少なくなってきているというのも事実です。金融機関にしてみますと、特 に中小企業との関連で言いますと、大企業で一括して財形に入っていただいて、何千人 、何万人という加入があれば、相当事務コストが低くなり、大きな利益が出るわけです けれども、規模の小さい企業ですと、その掛ける手間だけの利益が財形から上がってこ ないという、そういう厳しい現実があるようです。  私どもでは昨年来、銀行の方、生命保険業界の方、証券会社の方などいろいろな方々 に集まっていただいて、なぜ今財形がこのような状況になっているのかということにつ いていろいろな御意見をいただいたりする中で、今のようなことが少しずつ分かってき ているわけです。  それからこの間、財形に関連するいろいろな制度に関して、いろいろな出来事がござ いました。今皆様方から御指摘がございましたように、年金を巡りましても、まず公的 年金の議論がまた始まってきております。それから私的年金につきましては、確定給付 年金制度と確定拠出年金制度がそれぞれ新しく発足するというようなことがございまし て、これとの関わりで財形年金について今後どのようにしていけばよいかというような ことがございます。  それから特殊法人改革の中で、住宅金融公庫が廃止されるという動きが出てまいりま した。国として住宅政策を今後どのように考えていくのかということの中で、貯蓄の形 成と持家の取得を目的とした今の財形法との関係を今後どのように考えていくかという ようなこともあるということで、私どもはそういうこと全体をにらみながら勉強してい るところです。  それからまた、税制そのものが今、相当議論をされております。昨年末の税調におい て、高齢者マル優について、今後廃止をするということが決定されました。この過程に おいて、過去に老人マル優の議論があるときには財形のマル優についても一緒に議論さ れてきた経緯がございますので、私どももこの間、どういうような形で財形についての 議論がなされるかについて注意をして見ていたわけですけれども、今後も利子について の非課税制度がどのようになっていくかということも、検討の項目になると思われます 。  それから、今税調の中で、勤労所得と資産所得とを分けて課税をしようということが 議論されておりまして、これは長期的課題というように整理されているようですけれど も、そのようになってまいりますと、単に利子だけについての課税というものはあまり 意味をなさなくなってくるということも考えられます。  それから、金融界そのものが相当大きく変化をいたしまして、今は銀行で投資信託が 売られるという時代なものですから、そういう中で、今の財形制度というのは、そうし た金融機関の変化を全く想定しないで制度ができておりますので、それへの対応も考え なければなりません。そういう意味では、ちょうどよい時期というのは変なのですけれ ども、いろいろな意味でこの財形制度について考えなければならないというような問題 意識を持っているわけです。  それから諸外国につきましても、ドイツの財形制度を調べてみますと、相当大きく変 化をしてきておりまして、勤労者の資産を株式のほうに回そうというような政策が取ら れてきております。イギリスにおきましても、そういう色彩の政策がかなり強く出てき ておりますし、アメリカですと、ESOPでありますとか401Kでありますとか、勤労 者の所得を株式にという大きな流れが、やはり出てきております。しかし、これについ ては慎重にという御意見も片方でございますので、そういった動向も今勉強をしている ところです。  この1年余は、あまり財形の議論を皆様方と一緒に御議論いただくという場を持つこ とができないでおりましたけれども、今申し上げましたようなことを整理をさせていた だきまして、財形制度に係る様々な問題についてどのように考えていったらよいかにつ いて、また皆様方のお知恵をいただきたいと思っているわけです。 ○松井委員  今、部長からそのような御回答をいただきましたが、こういった審議会をそのテーマ で毎回開くというわけにはいかないと思いますし、やはり根本的な議論をするというこ とであるならば、それなりに時間が掛かると思います。そういたしますと、何か法改正 をしなくてはいけなくなった、というときにバタバタとやるのではなくて、別に来年法 改正をするということでなくても、本当に根本的な議論をするならば、じっくり時間を 掛けて、そしてまた1年後、ここで何だかほとんど進展がなかったというお話でなくな るような形での運営を是非考えていただければと思います。 ○倉島委員  地元の中小企業を見ておりますと、資金繰りに追われておりまして、例えば、消費税 を滞納している、社会保険を滞納している、貸しはがしにあっている、失業率が増えて いるというような相談ばかり受けます。なかなかこの財形というところの問題にまで取 り組むという考え方が、今のところ極めてやりにくい状態にあります。中小企業がどの ような進み方を今後していくのかというところが、極めて曖昧、混沌とした現状にある わけです。これは、この審議会で議論すべき問題ではないと思いますが、早く21世紀の 日本のグランドデザインをきちんと確定させていただいて、その中で、企業が、そして 働く方々が、どういう状態でいかなければならないかということを考えていただく必要 があると思います。是非そういうような将来に対する展望を開いていくことを、どこか できちっとやっていただくことから始めていただく必要があるのではないかと、大変大 それたことを申し上げるようですが、遠回りにはなるものの、今はそこが大事なのでは ないかと意見として申し上げさせていただきます。 ○野澤委員  初めて参加させていただいて恐縮ですが、奥村委員の御意見を含めて是非そういう検 討が必要ではないかと考えております。いつもいろいろな人に言っているのですが、私 は60歳を過ぎているのですが、かつてはどんなに苦しくても300万円貯めなさいと言わ れたものです。300万円貯めると年5%、15万円の金利が付き、年に2回は家族旅行 に行けるとか、それを基に結婚資金を借りることができるとか、様々に活用を図ること ができたわけです。要はこの財形制度は、真面目にやっている人が報われるような制度 ですよね。  企業のほうも様々な助成を含めて応援するというのは、やはり、大変厳しい環境の中 でも、企業も従業員が真面目に貯蓄するのを応援していこうということだと思うのです 。ややもすると金利の世界の範疇でしかものを見ていないように感じるのですが、若い 人たちにこれから財産形成をやりなさいと言っても、ほかよりも金利が少し高いという だけでは魅力がないわけです。例えば家を持てば税制で1%安くなるという税の恩典が あるように、10兆円からの財形貯蓄を活用すれば、財形に参加している人の生活をもっ といろいろとサポートできるような仕組みを作ることができるのではないかと思うので す。  住宅についても、今は、財形制度を活用して購入した住宅が良質の住宅なのかという と、買った途端にどんどん土地の値段が下がり、造られた建物の価値も落ちていきます 。それが2割、3割は当たり前だということでは、にっちもさっちも行かなくなります 。  財形制度の場合、資産を持つことだけではなくて、その使途をも含めて支援していく 必要があるのではないかと思います。  例えば、住宅の場合、財形制度を活用して建てた住宅は、2割以上価値が下がること はありませんというくらいの品質保証をしてもよいのではないかと思うのです。財形制 度の魅力付けについては、金融機関の金利に委ねるのではなくて、いろいろな角度で各 界の知恵を集めて、財形貯蓄を活用した新たな勤労者支援策を組み立てることが必要で はないかと思います。  これまで労働組合でも、様々な福祉活動を行うために基金をたくさん作ってきました 。この間もある所へ行きましたら、1億5,000万円の基金で、かつては750万円の利足が 付いたため、それによってNPOやいろいろなところを応援してきたのに、今は7万5,0 00円しか利息が付かないと言うのです。地方自治体等が、基金を運用して福祉活動を行 おうと思っても、利息がほとんど付かないのです。せめて、そういう公的な財団や基金 には特別の金利を付け、NPOやボランティア団体や勤労者に係る福祉等をもっとサポ ートできるようにしましょうと言えばできないことはないと思うのです。  こうした公的な基金は、組合関係だけでも各県で100億円近くあるのではないかと思 います。ところが、それがすべて0.0何%という金利ですから、1億5,000万円の基金で も7万5,000円程度の利子しか付かず、様々な福祉活動を行うことができないのです。 株式による運用等も考えられますが、元本保証があって安全な商品に係わるような環境 作りも併せてやるなど、真面目にやっている人を応援しますというエールだけは忘れな いでほしいと思います。  繰り返しになりますが、金利面で応援しないのであれば、それ以外のところでこれだ け応援するというのをはっきり打ち出して、真面目にやっている人を応援するというエ ールだけは消さないようにしてほしいと思います。本日皆さんがおっしゃられるような ことについて、厚労省を始めとする関係各省がよい知恵を出し合って、財形がばら色に 近い制度となるような取組みを是非お願いしたいと思うのです。  財形だけではなくて、中小企業の関係で言えばサービスセンターなどもいろいろな援 助をやっていこうということになっていますが、掛け声倒れになっているところもあり ますので、運営を含めてフレキシブルにしながら、もう少し総合的に、いろいろな角度 から、制度のあり方を検討されたらどうかと思うのです。また、中小企業退職金共済制 度についても、真面目に働く人が財産形成できるという制度のあり方を、是非国も、経 営者側も、労働組合側も、各先生方も、それぞれの立場で応援し、前向きに検討してほ しいと思います。以上です。 ○分科会長  いろいろ御議論がありましたが、この議論をやっていますと時間がなくなってしまい ますので、とりあえず議論はこれくらいにさせていただきたいと思いますが、少し議論 を整理しないといけないと思うのです。税制のように、いわば財形制度の外の制度、年 金や経済情勢もそうなのかもしれませんが、それらがどうなるかを見た上で財形制度を 考えるのであれば、いつになるか分かりません。税制改正については、それが全部終わ った後で、それを受けてどうしましょうかという話になるのでしょうが、しかし、それ はそれとして、今伺っているところによれば、制度自身の中にもいろいろ問題点がある のではないかという御議論もあったと思うのです。外の話は少しわきに置いておいて、 制度自身の中の今までいろいろ言われている問題点なり何なりを整理していただいて、 それを基にして議論をしておくのが、将来本制度をどう変えていくかに当たっての参考 にもなるのだろうと思うのです。  皆さんの御意見では、いろいろと議論をする場を作りたいという話ですし、全部終わ ってからやろうとするといつになるか分かりませんので、現行制度の中に内在している いろいろな問題点を少し探り出してもらって、それを基にして皆さんで御議論をしてい ただく場を作ったらどうなのでしょうか。 ○企画課長  分科会長に今おまとめいただきましたのと、先ほど松井委員もおっしゃられたように 、制度改正をやるから急に検討してくれというお願いの仕方は大変失礼であろうかと思 います。事務方も分科会長が整理された2つの要素、要は周辺の様々な大きな激動をど こまで読み込んだ上でこの制度を考えるかという話と、逆にこの制度に内在している、 平成8年改正以降、6年ほど経過した中での様々な積み残しとをどうやって整合的に、 あるいは場合によってはどちらを優先して検討するかについて、恐縮ながら、現時点で はこうすればできるという腹案を持っているわけではありませんが、いずれにしても、 腹案を持って何らかの形で御検討いただく際には、法改正の直前になってバタバタとお 願いするというのではなくて、かなり前広にお願いできるような形を取りたいというこ とだけは申し上げておきたいと思います。 ○分科会長  それはそれとして、別に法律改正をやらなくてもよいから、運用でもって何とかした ほうがよい、こういう手段があるのではないかという御意見があるかもしれないため、 制度の中身自身の話はもう少し早く議論したほうがよいのではないかという趣旨なので す。それはまた日程その他を伺いながら、事務局の準備の都合もあるでしょうから、そ れを見ながら適当な時期にやることにしようと思います。  次の議題に移ります。「中小企業退職金共済部会の開催状況について」です。 ○南野勤労者生活課長  私から議題4、「中小企業退職金共済部会の開催状況について」の御報告をさせてい ただきます。資料No.4と資料No.5を併せて御覧いただきたいと思います。  資料No.4です。先ほども御説明にありましたが、この勤労者生活分科会に、中小企 業退職金共済制度に係る重要事項等を調査・審議するための部会として、中小企業退職 金共済部会が設けられています。ちなみに齋藤分科会長が中退部会の部会長も兼務され ておられるわけですが、ちょうど中退制度の改正を行ったということもありまして、昨 年の1月以来これまで13回ほど部会を開催いたしています。  部会の開催状況についてはそこにあるとおりですが、特に昨年の8月以降、専ら制度 改正に係る審議をお願いいたしまして、1月24日時点で中退部会から部会としての建議 をおまとめいただいています。それを基に私どもで法案を作成いたしまして、2月12日 に法案要綱という形で中退部会に諮問をさせていただいて、同日付で内容を適当と認め る旨の答申もいただいたところです。  22頁に、1月24日付で中退部会からいただきました建議を御用意させていただいてい ます。規則によりまして、部会の建議がそのまま労働政策審議会の建議として扱われる ということになっていますので、正式には労働政策審議会の会長名で坂口厚生労働大臣 あて建議をいただいています。  具体的な内容は23頁以降です。中退制度そのものですが、中退制度は独力では退職金 制度を設けることが困難な中小企業向けに、法律に基づく国の制度としまして設けられ た退職金共済制度です。およそ40年前の昭和34年に発足いたしまして、一般の中退制度 においては、42万企業、270万人の労働者が現在のところ加入されている状況です。  事業そのものは、特殊法人の勤労者退職金共済機構が運営をしていますが、資料がな くて恐縮ですが、事業主が、5,000円から3万円の範囲内で従業員ごとに毎月決まった 額の掛け金を勤労者退職金共済機構に納付していただきまして、機構はその掛け金を集 めて運用して、従業員が退職した際に直接その従業員の方に退職金を支払う仕組みにな っています。  Iが「改正に当たっての基本的な考え方」の部分ですが、制度改正の総論について考 え方を整理していただいたものです。現在、一般の中退制度で資産総額が3兆1,000億 円ほどありますが、3.0%の利回りをお約束していることもありまして、累積の欠損金 、積立不足が相当増えています。この建議ですと、第3パラグラフの「一方」のところ です。そこにありますように、「我が国においては、景気の低迷が長引き、金利や株価 が極めて低い水準で推移している。このため、一般の中退制度においては実際の運用利 回りが予定運用利回りを下回ることにより、責任準備金の積立不足が増大し、平成12年 度末現在で2,000億円を超える累積欠損金が存在する等厳しい財政状況となっている」 。こういう状況を踏まえまして、Iの下から4行目に「今後とも、中退制度を維持し、 その安定的な運営を図るため、早期に基本退職金に係る予定運用利回りを見直すととも に、経済社会情勢の変化に的確に対応できる仕組みに改め、長期的に安定した制度とす る必要がある」という考え方の下に、具体的な改正内容について審議会から御提言をい ただいています。  1つ目は、IIの1「予定運用利回りの見直し」です。これは、給付をお約束している 利回りについて、現行の3.0%を引き下げ、1.0%とすることが適当であるという御提言 です。  多少端折らせていただきますが、2つ目は、2「退職金額等に係る規定の政令事項化 」です。実は平成になりましてから、これまで3回ほど予定運用利回りを引き下げてき ています。しかしながら結果としまして、実体経済の金利の低下が非常に大きかったこ ともありまして、その実体経済の金利の低下に追い付かずに後追いの改正になってしま ったこともあります。その結果、2,000億円程度の累積欠損金が溜まってしまったとい うことがあります。このようなことを背景としまして、最近の激しい経済金融情勢の変 化に的確に対応し、予定運用利回りを見直すことが可能となるよう、予定運用利回りに 基づく退職金額等は現在、法律の別表という形で法律で規定されているわけですが、そ れを政令事項に変更すべきであるという御提言も併せていただいています。  その他、中退制度を運営している勤労者退職金共済機構による資産運用の充実や、こ の機構の業務の見直し等々について御提言をいただいたところです。  これを踏まえて、今通常国会に「中小企業退職金共済法の一部を改正する法律(案) 」という形で、政府提案の法律として提案をさせていただいています。その中身につい ては、先ほど説明した建議を法案として取りまとめたものですが、資料NO.5「中小企業 退職金共済法の一部を改正する法律の概要」にありますように、「(1)退職金額等の 政令化」ということで、現在法律で3.0%に設定されている予定運用利回りについて政 令化をするということ、「(2)勤労者退職金共済機構における資産運用の充実」、「 (3)機構の業務の縮減」等となっております。これらの事項について、その内容とい たします法律案を取りまとめて国会に提出をさせていただいたところですが、審議は比 較的順調に進みまして、4月26日に国会で可決成立をしまして、5月10日に公布をした ところです。以上です。 ○分科会長  ありがとうございました。ただ今の御報告について、何か御質問等はありますか。 ○松井委員  この件は、おそらく御報告を受けるだけのテーマだとは存じており、一応勤労者生活 分科会をトンネルするような形で、私どもも認めた形に最終的にはなるのかもしれませ ん。  1点だけちょっとお聞きしたいのですが、2,000億円の累積欠損金について、今後運 用実績が良くなって、なおかつ低いままの予定運用利回りでやっていってどうにか埋め 合わせるお考えなのか、これをどういう方向で今後解消しようと考えているのかをちょ っとお聞かせ願いたいと思います。 ○勤労者生活課長  まず3%のままで維持をするとなりますと、運用実績そのものがかなり悪くなって、 赤字がどんどん膨らんでいく状況にあります。そういうことでこの予定運用利回りをど こまで下げるかについて、部会でかなり突っ込んだ議論をしていただきました。その結 果、2,000億円の累積欠損金を確実に解消する方向に向けていくためには、やはり1.0% まで下げる必要があるのではないかということで、話をまとめていただいたところです 。今後1%まで下げれば、当分の間はそれなりの運用実績を上げることができるのでは ないか、単年度ごとに見れば、黒字を確保することができるのではないか、もちろん日 本経済が今後どうなるかによってその辺は左右される部分もありますが、そういう見込 みの下に1%まで下げ、それによりまして、累積欠損金の解消に向けて今後その制度を 運営していくということになったわけです。 ○松井委員  ちょっと細かいことですが、残高は3兆1,000億円くらいで、累積欠損金が2,000億円 ということですが、年度の収支はどのくらいになっているのでしょうか。 ○勤労者生活課長  平成12年度単年度で見てまいりますと、単年度の当期欠損金が207億円です。 ○野澤委員  新聞で以前、毎月1万円ずつ40年間積み立てると、かつては2,000万円弱の退職金が もらえたにもかかわらず、3%になるとそれが900万円くらいで、1%になると一体い くらになるのだろうか、この金利を基に計算しているだけで、本当にこういうものの趣 旨が成り立つのかという投書を目にしたことがあります。先ほどと関連するのですが、 モデルで言うと実際、今後どれぐらいの退職金をもらえることになるのですか。今まで 6%の時代はこうでした、3%の時代はこうです、1%になったらいくらになるという のを教えて下さい。私が今までほかから聞いたところによれば、大体1人120万円程度 の退職金を受け取ることになるのではないかということですが、共済制度を作って支援 する意義というか、先ほどの財形制度もそうですが、実際にその人が受け取るときにど のくらいの価値があるものなのか、モデルで数字だけを教えて下さい。 ○勤労者生活課長  加入期間10年で掛け金月額は5,000円から3万円までの範囲ですが、現在、平均で見 ると9,000円くらいです。したがいまして、1万円を10年間納付した際の退職金額とい うことで申し上げますと、3.0%の現行でいきますと、141万円となります。これを1.0 %に下げますと128万円程度になるということです。 ○分科会長  ほかに何かありますか。よろしければ次の議題に移ります。  次は「特殊法人等整理合理化計画」です。 ○企画課長  資料No.6を御覧いただきたいと思います。当勤労者生活分科会に所掌していただい ています事項に関連します特殊法人が、平成13年12月19日に閣議決定された「特殊法人 等整理合理化計画」にのっとりまして、今後その姿を変えることが予定されていますの であらかじめ御報告をいたしておきたいと思います。  1点目が、雇用・能力開発機構です。この雇用・能力開発機構は、様々な職業能力開 発等に関する事務を行っていますが、当分科会の所掌事務の関係で言いますと財形の融 資関係業務を担っているものです。昨年末の閣議決定においては、資料No.6の1枚目 にあるような各種講ずべき措置が指摘されていますが、いろいろ書いてあります中には 財形融資業務についての指摘はありません。したがいまして、縮小しろであるとか廃止 しろということは、昨年の閣議決定においては言われていないわけです。  したがいまして、この頁の一番下の●にありますような「独立行政法人とする」とい う決定に従いまして、財形業務を抱えたまま、法人の形を独立行政法人とさせていただ く手はずを今後取らせていただくことになろうかと思います。スタートの時期は平成16 年度当初、場合によっては平成15年度中にもということが言われていまして、鋭意、厚 生労働省でこの独法化法の作業をいたしています。当然その中には財形法の形式改正も 含まれるわけですが、これは作用法、いわゆる法令における政策部分の内容ではなくて 組織関係の部分の改正ですので、あらかじめお許しをいただきまして当局にお任せをい ただきたいと思う次第です。  同様に、2点目が勤労者退職金共済機構の件で、同じく昨年12月の合理化計画におい て、いくつか内容にわたる指摘を受けているところです。ただ、例えば従業員のための 福祉施設融資業務等々無駄な業務はやめなさいという御指摘については、既に先ほど御 紹介を申し上げました今般の法改正で手立ていたしているところであり、今後はこの「 独立行政法人とする」という方向に向けまして、これも中退法の形式的な改正を伴いな がら作業を進めさせていただきたいと思います。  以上、2団体を独立行政法人化することについての御報告でした。どうぞよろしくお 願いいたします。 ○分科会長  今の件について何かありますか。よろしいですか。そのほかに何か御意見、御質問等 はありますか。それでは、今日の議事はこれくらいにさせていただきたいと思います。  最後に議事録ですが、署名委員は本日は西山委員と前田委員にお願いいたしたいと思 いますので、どうかよろしくお願いいたします。  どうもお忙しい中、ありがとうございました。御苦労さまでした。 照会先 労働基準局勤労者生活部企画課企画係  内線5352