02/05/14 食品規格・毒性合同部会議事録         薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会            食品規格・毒性合同部会                議事録 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格・毒性合同部会議事次第  1.日時:平成14年5月14日(火) 14:00〜16:15  2.場所:経済産業省別館 第1028 会議室  3.議事   (1)麦類等に係るデオキシニバレノールに関する規格基準の設定について   (2)その他  4.出席委員 池上幸江、井上達、小川益男(食品規格部会長)、小沢理恵子、         香山不二雄、黒川雄二(毒性部会長)、小沼博隆、品川邦汎、鈴木久         乃、長尾美奈子、中澤裕之、成田弘子、林眞、丸山務、三森国敏(敬         称略)    参考人  熊谷進(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)         高鳥浩介(国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部長)         小西良子(国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部第四室長)    事務局  尾嵜食品保健部長、石井基準課長、坂本補佐、滝本補佐、太田補佐         他 ○事務局  それでは、定刻となりましたので、食品規格・毒性合同部会を開催いたします。  本日は御多忙のところお集まりいただきましてありがとうございます。  本日は食品規格部会が10名中8名の委員に御出席いただいております。毒性部会が12 名中7名ということですので、当合同部会は成立しておりますことを御報告申し上げま す。  また、本日は参考人といたしまして、東京大学の熊谷教授、それから国立医薬品食品 衛生研究所から高鳥部長、小西室長に御出席いただいております。  それでは、開催に先立ちまして、尾嵜食品保健部長よりごあいさつ申し上げます。 ○尾嵜食品保健部長  食品保健部長の尾嵜でございます。先生方には食品規格部会・毒性部会の合同会議の 開催をお願いいたしましたところ、非常にお忙しい中をお集まりいただきまして、あり がとうございます。  一言ごあいさつする前に、両部会に直接ではございませんが、もう御承知いただいて おりますように、先週の金曜日の屠畜場での全頭検査において、スクリーニング検査で 陽性の牛が見つかりまして、確認検査に回っていたわけでございますが、一昨日、専門 家会議を開催いたしまして、確定検査の結果を基に最終の診断をしていただいた結果、 日本で4頭目のBSEという診断がついたところでございます。  4頭目ということもあり、わりと落ち着いた取り扱いをしていただいたというふうに 考えておりますが、これからもまた年間100万頭以上の牛が検査に回ってくる、屠畜場 に回ってくるという状況でございますし、また屠畜場に回って来る前の死亡牛等につき ましても、農林水産省の方で検査法を充実していただけるような方向になろうと思って おりますし、まだまだBSE問題というのは継続して対応していかなければならない事 柄でございますが、一言御報告に代えさせていただきたいというふうに思っております 。  今日、合同部会をお願いいたしました内容につきましては、後ほど私どもの方から資 料等に基づきまして御説明をさせていただきますが、食品中のかび毒、マイコトキシン 対策にかかる事案でございます。本日付けで合同部会の方に諮問をさせていただくとい うことでお願いをいたしているわけでございますが、このマイコトキシン関係について は先生方御存じのとおり、コーデックス委員会でも熱心な議論がされておるという状況 でございます。こういった国際的な基準というものについても活発な議論が進んでいる ようでございます。  今回、御審議をお願いいたしますのは、私どもの方で、厚生科学研究の中で昨年度、 麦類についてかび毒の一種でございますデオキシニバレノールに関する調査研究を行っ てまいりましたが、その報告書がまとまりまして、この内容を基に、このデオキシニバ レノールに関します規格基準の設定について諮問をさせていただき、御審議をお願いい たしたいという内容でございます。  本日、現時点で、合同部会の方に幾つか資料をお出しさせていただいておりますが、 規格基準の設定について十分な内容かどうかも含めて、御検討いただければありがたい というふうに考えているところでございます。  先ほど御紹介ございましたように、参考人として熊谷先生はじめ3人の先生方におい でいただいておりますが、各位の先生方、どうかこういった諮問をさせていただきまし た内容につきまして、活発な御議論をいただければありがたいというふうに考えており ます。どうぞ、よろしくお願いを申し上げます。 ○事務局  それでは、座長の選出を行いたいと思いますが、議題が食品の規格基準の設定に関す ることですので、本日の合同部会の座長を食品規格部会の部会長である小川先生にお願 いしたいと思いますが、異議はございませんでしょうか。  それでは、座長を小川先生にお願いしたいと思います。  小川先生、よろしくお願いいたします。 ○小川部会長  小川でございます。本日の合同部会の座長を務めさせていただきます。どうぞよろし くお願いいたします。  それでは、最初に事務局の方から配布資料の説明をお願いします。 ○事務局  配布資料の確認をさせていただきます。配布資料でございますが、一番最初が食品規 格部会及び毒性部会委員の名簿になってございます。そのあとに資料1といたしまして 諮問書を付けております。次に資料2でございますが、デオキシニバレノールについて ということで、概要のペーパーを付けております。資料3でございますが、厚生科学特 別研究事業の報告書でございます。次は資料4でございますが、第56回のFAO/WH O合同食品添加物専門家会合(JECFA)の報告書の要約版でございます。資料5で ございますが、同じくJECFAの報告書のモノグラフでございます。次は資料6でご ざいますが、諸外国の規制状況をまとめたものでございます。資料7でございますが、 麦類の生産量及び輸入量並びに食品用途に関するものでございます。それと、あと、カ ラーのもので赤かび病の防除に関する1枚紙のものを付けさせていただいております。 資料、ございますでしょうか。 ○小川部会長  それでは、資料はそろっているようですので、議事に入りたいと思います。本日の議 題の1番目、麦類等に係るデオキシニバレノールに関する規格基準の設定について、御 審議をお願いいたします。  資料の6は、諸外国の規制状況等に関するものでございます。これにつきましては後 ほど御説明していただくことにしまして、まず資料の1から5までと7について、事務 局から説明をお願いいたします。 ○事務局  それでは資料について説明をさせていただきます。  まず最初、資料1でございます。諮問書ということでございまして、厚生労働大臣か ら薬事・食品衛生審議会会長あてのものでございます。「麦類等に係るデオキシニバレ ノールに関する規格基準の設定について」ということでございます。  次に資料2について説明させていただきます。デオキシニバレノールというものに関 する概要でございますが、赤かび病菌として知られるフザリウム属真菌が産生するマイ コトキシンの1つということでございます。この赤かび病と申しますのが、そういった 作物に、穀物ですが、菌が付着しまして増殖しますと赤紫色になることから赤かび病と いうぐあいに言われているということでございます。  このフザリウム属の真菌でございますが、畑等の土壌に多く生息しているということ でございまして、特に麦類とかトウモロコシとか、そういう穀類に被害を与えるという ことでございます。雨腐れ病と言われていまして、ちょうど開花期から乳熟期にかけて 、雨が続きますと、こういった穀物が汚染される。かびが生えてきまして、かびがマイ コトキシンを出すということでございます。  それで、そういったマイコトキシンの中でもトリコテセン系と言われておりますが、 A、B、Cの3つのグループに分かれておりまして、今回御議論いただきますのはデオ キシニバレノールというものでございます。ちなみに、この研究報告の中にはデオキシ ニバレノールのほかにニバレノールについても調査が行われております。  毒性の強さはC、A、Bという順でございまして、トリコテセン系の中でもデオキシ ニバレノールは毒性的には強くはないということでございます。ただ、汚染量がほかの ものに比べて多いということでございます。  それと、人においては悪心、嘔吐、下痢等の消化器症状というのが中心になっており ます。また、マウスへの投与実験においては胸腺、脾臓、心臓、肝臓への影響が報告さ れております。水溶性ではございますが、熱安定性ということで、通常の調理過程では 減毒されないということでございます。  次は、順番が少し違いますが、資料の7を先に説明させていただきます。「麦類の生 産量及び輸入量、並びに食品用途」ということでございます。小麦・大麦というのがど ういった流通実態になっておるかということでございます。小麦につきましては、9割 が輸入ということで、大部分が輸入されているということでございます。大麦も輸入が 大部分ということになっています。はだか麦は量は少ないですがこういった形になって おります。小麦の輸入先ですが、アメリカが半分ぐらいで、あとはカナダ、オーストラ リアという形で、この3か国で100%という形になっております。  小麦の食品用途でございますが、小麦の場合は97%、つまりほとんどが製粉用という 形で小麦粉に一旦加工されます。その後、小麦粉からパンとか麺類等の食品になるとい うことでございます。あとの残りの3%が醤油とかそういう形で使われるということで ございます。  次に大麦でございますが、大麦は半分程度が飼料に使われておりまして、残りの半分 が食用対象になるということでございます。ただ、その食用になるものも相当部分がビ ールの麦芽とかそういったものに使われるということでございます。残ったものが1〜 2割程度になると思いますが、それは焼酎とか麦茶とかに使われていくということでご ざいます。  あと、はだか麦につきましては、押麦、味噌というところに食品用途があるというこ とでございます。  戻りますが、資料3について説明させていただきます。資料3でございますが、「食 品中のかび毒のリスクアセスメントに関する調査研究」ということでございまして、平 成13年度、厚生科学研究費補助金において行われております。総括研究と分担研究から なっておりまして、分担研究をまとめたものが総括でございますので、総括研究を中心 に説明させていただきます。  この報告書は、デオキシニバレノール関連部分を抜粋ということでございまして、実 際にはアフラトキシンM1も行われておりまして、その部分については、今回は割愛さ せていただいております。  次のページでございますが、まず総括ですので、こう書かれているんですが、「牛乳 中アフラトキシンM1汚染と麦類中デオキシニバレノール汚染の実態について」という ことでございます。  アフラトキシンM1について簡単に説明いたしますと、少し順番が前後いたしますが 、9ページ目をごらんいただければと思います。ここに牛乳中のアフラトキシンM1の 汚染実態ということで書かれておりますが、平均値が0.09、最大値が0.29ということで ございまして、コーデックスの方で、基準が0.5 で定められておりますので、コーデ ックスの値と比較すると全く問題となるような値ではなかったということでございます 。  1ページ目に戻らせていただきますが、アフラトキシンM1についてはそういうよう なことから、肝臓がん等が発生する可能性というものは0に近く、無視できる範囲であ ると考えられたと総括されてございます。  次にデオキシニバレノールに話を移しますが、2ページ目でございます。後段部分か ら、我が国における麦類の、DONと言っておりますが、DONの汚染実態というぐあ いに書かれております。それでDONの毒性影響ということでございますが、一番最終 行になりますが、「他の数種のトリコセテンに比べればその作用は弱い」ということで ございます。「しかし、その特徴は他と共通であり、食欲不振と分裂の盛んな細胞を障 害する点にある」ということでございます。  次の3ページにまいりますが、マウスに投与したところということで、3行目に比較 的長い実験ということで、35日〜56日間ということでございますが、それでは、脾臓、 胸腺、リンパ節、腸管、骨髄、肝臓、腎臓等に変化が認められたということでございま す。次の段落にまいりますが、マウスを用いた2年間長期毒性試験では、IgAの上昇が 認められたということと、あとは肝臓と脾臓の総体重量の減少が認められたということ でございますが、腫瘍を含め他の変化は認められなかったということでございます。  次に、人における知見と下から2行目に書いてあります。次は、4ページ目でござい ます。人については食道がん等との関係というものが疑われていたようですが、それに ついては発がんリスクとの相関が認められていないという形になっております。  アジアにおいては、嘔吐、下痢、頭痛を伴う急性中毒事例というものが報告されてい るということでございます。ただ、0.4〜13mg/kgでございますので、ppmになる と思いますが、それの汚染で急性中毒が認めれなかった等も報告がされているようでご ざいます。それで、3.の少し上でございますが、そういった各国の状況等々から判断 しますと、数ppmレベルの穀物の汚染ではヒトに重篤な急性中毒を招来しないものと 推測されるというような形になっております。  それで、この調査研究の中で行われた実態調査の結果に移りますが、6ページ目でご ざいます。小麦の汚染レベルと書かれておりますが、小麦玄麦でございますが、その小 麦についてデオキシニバレノールを測定したということでございます。輸入品は20サン プルについて行われております。国産の1の地域でございますが、それは10サンプルで ございまして、国産2の地域で26サンプルについて調査が行われております。  輸入品につきましては、こういった値で、1,000以上という目で見ますと、1,000以上 のものはなかったということでございます。国産1について見ますと、非常に低いもの であったということでございます。国産2の地域で見ますと、1,000を超えるものが4 サンプル、1,500が4サンプル超えておるというようなことになっているということで ございまして、輸入品の割合、国産の割合、また地域の割合等々ございまして、地域も 2地域と非常に限定されておりますので、平均値でどこまでそういう正確性があるかと いうことでございますが、平均値は285になっておるということでございます。  その次の8ページ目にまいりますが、小麦以外の麦類ということで、大麦とはだか麦 について調査が行われております。これについては汚染度は非常に低いものになってい るということでございます。  4ページ目に戻らせていただきますが、そういった形で、小麦について1,500を超え るものが4サンプルあったというようなことになっております。  JECFAと呼ばれる、FAOとWHOの合同の食品添加物専門家会合というところ でございますが、こういった場におきまして、PMTDI(provisional maximum toler able daily intake)ということでございますので、暫定の最大一日耐容摂取量という ことでございますが、それが昨年の2月に定められております。1μg/kg/dayとい う形になっております。そして、そういったものと国民栄養調査による小麦類の摂取量 、またヒト体重50kgということで計算いたしますと、直接ヒトに入るものですので、小 麦粉で見ますと、下に表がありまして書かれておりますが、ヒトで557ppbというのが1 つのレベルになるのではないかということが書かれてございます。  ただ、小麦から小麦粉にするに当たって製粉されるわけですが、その際にふすまと言 われるような殻の部分とか、そういったものが飛びますので、それによって、減衰とい うことが起こるのではないかということでございまして、その加工過程において大体30 %〜50%ぐらいが減衰するのではないかと思います。厳密に申しますと、小麦粉が更に 小麦食品という形で、麺類、パン類になって、人に摂取されるということで、その過程 においても減衰するのではないかということでございます。  ただ、熱耐性ということでございますので、食品にもよりますが、麺類みたいもので あれば、茹でますとある程度そこで減衰するのではないかということが言われておりま す。この場合、まずは小麦粉ということです。小麦粉に一旦レベルを当てまして557と いうことになってございます。あと、その減衰率で割り戻しまして、30%で割り戻しま すと、小麦玄麦レベルで795ppbということでございます。50%で割り戻しますと、1,110 ppbという値になるということでございます。  あとは、米等もこういうところに寄与するのではないかと言われておりまして、そこ ら辺のシナリオが書かれております。米については、我が国の実態調査でそういった報 告はなされておらないということでございます。  次の5ページにまいりますが、こういった平成13年度汚染実態というものの調査結果 と、あとJECFAの評価等を受けまして、こういった形で整理いただいております。 1段落目でございますが、最初の行でございますが、輸入品については3か国由来の玄 麦を調べております。国産品については2地域由来の玄麦、小麦でございますが、それ ぞれについて分析をしているということでございます。  1段落目の終わりの方にまいりますが、JECFAで設定した暫定耐用摂取量の1μ g/kg/dayに相当する汚染レベル1,110ppbを超えるサンプルが4検体認められている ということでございます。そういうことでありますので、「今後、小麦について、DO N摂取による健康被害を未然に防止するための対策を検討する必要があるものと考えら れる」というぐあいに書かれてございます。そのあとに但し書きがしてございますが、 こういった高汚染レベルの玄麦は認められたわけでございますが、玄麦は大部分が小麦 粉として利用されるということでして、そこで、混合希釈されるということでございま す。高いものも低いものも混じっているので均一化されるということでございます。  あと、米国とかカナダの状況であったりとか、またJECFAによる試算によると、 欧州アジア地域では暫定耐容摂取量の1.4〜2.4倍のDONを摂取している等々の報告が なされておりまして、そういったものから勘案すれば、直ちにヒトの健康障害が招来さ れるということは考え難いレベルの汚染であったということで書かれています。  次の段落でございますが、本研究においてそういった調査が行われたわけでございま すが、やはり米についで摂取量が多いということですので、今後は米についても汚染実 態を究明することが必要であるというように書かれております。また、小麦が小麦粉に なる過程で減衰というものがございますので、そういった加工工程に伴う減衰について も今後調査をしていく必要がある、研究していく必要があるということでございます。  あと、気候条件の影響を受けやすいということですので、やはり継続して汚染実態を 調べていく必要があるのではないかということでございます。  最終段落はデオキシニバレノールではなくてニバレノールについて書かれてございま すが、ニバレノールは今回それほど高い値のものはなかったわけでございますが、ニバ レノール汚染については、DON汚染ほどに緊急的な対策を要しないだろうと考えられ るということでございます。しかし、今後継続して汚染実態を監視し、その結果によっ ては対策が必要になることも考えられるというぐあいに書かれてございます。  11ページ以降から分担研究という形になってございまして、これをまとめたのが総括 研究ということになってございます。  それでは、資料4に移らせていただきたいと思います。資料4が第56回JECFAの 報告書のサマリーが出ておりまして、それのデオキシニバレノール部分を抜粋し、仮訳 したものでございます。  これの2ページ目でございますが、先ほどと重複いたしますが、2行目に高用量の動 物の実験では、胸腺、脾臓、心臓及び肝臓に影響が見られたということでございます。 マウスによる2年間の試験においては最低用量0.1mg/kgbw/dayで、わずかな体重減少 が観察されたが生物学的な意義は乏しいと考えられ、この用量において、その他の変化 は認められなかったので、NOEL(無影響量)を0.1mg/kgbw/dayとされたというこ とでございます。  また、IARC(国際がん研究機関)においてワーキンググループが行われておりま して、デオキシニバレノールをグループ3ということでございまして、ヒトへの発がん 性ありとは分類できないということで、グループ3として分類したというぐあいに書か れてございます。  その下の方にまいりますが、人における症状というところでございまして、悪心、嘔 吐、消化管症状、めまい、下痢及び頭痛が人における急性症状としてアジアで多く発生 しているというようなことが書かれてまいります。  その後、ざっと行っていただきまして、6ページ目でございますが、評価という形で まとめられております。JECFAのこれまでの評価では、マウスの2年間の混餌投与 試験の結果デオキシニバレノールは発がん性を有しないと推察されたというぐあいにな っております。  その4行目にまいりますが、委員会はこの試験のNOEL100μg/kgbw/dayと、安全 係数を100を掛けまして、それでPMTDIという暫定最大1日耐容摂取量を1μgと いうぐあいに定めたということでございます。委員会はこのレベルの摂取は免疫系、成 長あるいは生殖に対してデオキシニバレノールは影響を及ぼさないと結論したというぐ あいに書かれてございます。  資料5に移らせていただきますが、資料5は同じくJECFAの報告でして、それの より詳細版という形で、モノグラフでございます。詳細な動物実験の結果などがここに 掲載されてございます。  事務局からの説明は以上でございます。 ○小川部会長  ありがとうございました。御質問をいただく前に、厚生科学特別研究報告書をつくっ ていただきました主任研究者の熊谷先生、何か補足することはございますか。 ○熊谷参考人  今、御説明いただきましたものでほとんど補足すべき点がないんですけれども、もし 申し上げるとすると、米の汚染が我が国ではまだよくわからない、しかし、世界を見る と、一部の国で比較的高い汚染が認められているという事実があります。  しかしながら、いろいろなデータを総合しますと、世界地域で相当ばらつきがあると いうこと、汚染レベルそれから汚染頻度ですね、それから、年によってもかなりのばら つきがあるということで、基本的にはやはり何年間か汚染実態をフォローする調査を踏 まえて、最終的にもし規制値を設定するとすると、そういう仕方が望ましいのではなか ろうかと。 それからもう一つは、コーデックスで今はまだ意見が集約できていないと いうところもあるということもやはり踏まえるべきであろうというふうに考えます。  それから、小麦粉の加工工程において、あるいは小麦粉にする過程においてどのぐら い減少するかということにつきましては、パブリッシュされているデータが幾つかある んですけれども、まだまだデータが足らないといいますのは、小麦粉を精製するプロセ スもどうもいろいろあるようでして、ですから、それらに相応する十分なデータという ものを今後やはり集めるべきだろうと。  それから、小麦粉から先の工程につきましても、減少率を見た研究というのは非常に まだ少ないんです。ですから、パンのつくり方にしても恐らく幾つかあると思うんでけ れども、よく知りません。あと麺類のつくり方も、スパゲティとかうどんとかいろいろ あると思うんですけれども、それらに対応した減少率のデータをこの先もう少し集める べきであろうと。それらを踏まえませんと、最終的な、これでよしという規制値を設定 しようとしますと、なかなか割り出せないという気がしてまいります。  それからもう一つは、米についても実態調査も我が国で何年かにわたって続けていく 必要があるだろうということが言えると思います。  それから、今回、高いレベルの小麦が一部認められましたけれども、資料3の26ペー ジを見ていただきたいんですが、そこの第13表に世界各地におけるデオキシニバレノー ルの1日当たりの摂取量という、これはJECFAの会議で計算されたものですけれど も、そこに中東、極東というような形で、総摂取量というのが書いてあります。そうし ますと、これは体重1kg当たり、例えば中東を見ますと2.411μgを1日当たりに摂取 している、それから極東ですと1.588μg摂取しておるというようなデータが並んでお ります。それからヨーロッパにおきましても1.472μgというふうな数値になっており ます。  これはあくまでも、非常に限定された地域の汚染実態と、それからそれぞれの品目の 穀類の摂取量、これは平均摂取量で非常に丸めた数字といいますか、つまり平均摂取量 なわけです。その地域で平均摂取量がわからないものはほかの例えばヨーロッパの平均 摂取量を当てはめるというような方法を使っておりますので、あくまでも非常に何とい いますか、粗い数字なわけですけれども、一応、計算上このぐらいは摂取しているとい うことなわけです。これはJECFAで提唱した1日摂取耐容量を超えているわけなん です。言い換えますと、これだけ摂取しているけれども、特にこれで人がばたばた死ぬ とか、それは少し大げさにしても食中毒症状を示すとかということが報告されてないわ けです。  というわけで、実際に、今回我が国で幾つかのサンプルにつきましては、高い値が認 められましたけれども、直ちに人に被害が生ずるということはないと考えられます。そ れは小麦粉の段階で1つは混じり合わさるということもありますし、ということで、直 ちにはヒトの健康障害は懸念されないだろうということが言えると思います。  けれども、一応、JECFAで出した暫定耐容量を超えるサンプルがぱらぱらとある ということは、今後、何らかの対策を検討する必要があるであろうというふうに考えま す。 ほとんど事務局で御説明いただいたものと変わらない内容で申し訳ないですが、 以上でございます。 ○小川部会長  ありがとうございました。それでは、事務局の説明とただいまの補足説明に対して、 何か御質問ございますか。 ○三森委員  厚生科学研究分担研究報告書の16ページ、第3表、DONの遺伝毒性試験結果という データが載っておりますが、これはJECFAから抜粋してきたものと思います。この 中でin vitro試験におきまして陽性結果が3つほど得られていますね。チャイニーズハ ムスター培養細胞を用いた染色体異常、ラット初代肝細胞を用いたUSD、それに細胞 形質転換でも陽性が得られており、in vivoでも染色体異常で陽性結果が得られている わけですが、これについて、遺伝子傷害性がないと見なした根拠がJECFAの資料か らは、読み取れなかったんですが、これが1点です。  もう一点は、資料4のJECFAの報告書の抜粋、要約版の6ページの評価のところ ですが、「マウスの2年間の混餌投与試験の結果、デオキシニバレノールは発がん性を 有さないと推察された」と言っておりますが、通常、発がん性評価の場合にはラット・ マウスの発がん性試験を実施した上で評価するのが常なんですが、今回はマウスだけで 評価しています。これについて安全性上、どういう形でJECFAは最終的な評価をさ れたのか、その辺をお伺い致します。 ○小川部会長  これについてはどなたにお答え願えますか。 ○林委員  関連の質問なんですけれども。 ○小川部会長  それでは、先にお願いします。 ○林委員  今の遺伝毒性のところなんですけれども、確かに三森先生がおっしゃったように染色 体異常が出ております。それも特にin vivoで異常が出ているということで、私も気に なりましてかなり慎重に見させて頂きました。このJECFAの資料5の447ページの 下のところに、2.2.4、1番の最後のパラグラフなんですけれども、そこに、「このも のは遺伝子突然変異は誘発しないけれども、染色体異常をin vitro、in vivoで誘発す る」というふうになっています。それでいて、今も三森先生がおっしゃった評価のとこ ろでは、この遺伝毒性に関する最終的な記載がありません。ということは、JECFA の方としては、これを何らかの形で余り意味のないものというふうに考えたと思うんで すけれども、その辺のところをどなたが御存じの方があれば、御説明いただきたいと思 います。  実際に染色体異常試験の結果をもう少し詳しく見てみようと思って文献を探したんで すけれども、なかなか手に入りにくい文献が多いようでして、特にin vivoでの染色体 異常試験の文献というのはすぐには手に入らないようなもので、内容も確認することは できなかったんですけれども、JECFA等の報告書の中身から推察すると、実際には 余り問題にするようなものでもないだろうというような印象は持っております。 ○小川部会長  ありがとうございました。それでは、熊谷先生お願いします。 ○熊谷参考人  今、御指摘の資料5の502ページの上から5番目のパラグラフで、デオキシニバレノ ールはバクテリアではmutagenicではなかった、以下の文章で、chromosomal aberration sが見付かった、しかしながら大抵のaberrationはgapということで、相対的に見て、こ れは議論がある点ではあるけれどもというような表現になっております。それから、資 料4で要約版の翻訳版の2ページで、3つ目のパラグラフが、今のところにちょうど相 当する部分ですけれども、そういう記載がされています。  それから、発がん試験について、確かに御指摘のように1種類の動物種しか使ってい ない点につきましては、その要約版の6ページですけれども、別の動物種ラットにおい ても行われることを推奨しています。全体としては、発がん性についてはpositiveでは ないだろうという判断になっております。  それから、デオキシニバレノールは最初に事務局から御説明いただきましたように、 トリコテセン化合物の骨格を持っていまして、その作用様式は他のトリコテセン化合物 と非常に類似しているということがわかっております。IARCでしたか、あそこの発 がん評価がかつて行われたことがあるんですが、このデオキシニバレノールについては 実験動物においても発がん性があるとの十分な証拠がないということ、それから、今ち ょっと時間が掛かりそうであれなんですが、デオキシニバレノール以外のトリコテセン について発がん性の評価が行われているのが幾つかあります。ニバレノールとフザレノ ンXというデオキシニバレノール以外のトリコセテン化合物についてIARCで評価さ れています。それも発がん性については、発がん性ありとの十分な証拠はないという判 定になっております。 それらを考えますと、少なくとも今あるデータからデオキシニ バレノールが遺伝子毒性を持つ、発がん性を持つということは考え難いのではないかと いうふうに考えています。 ○小川部会長  ありがとうございました。ただいまのご説明についていかがでしょうか。 ○林委員  今の染色体異常のところで、ギャップが主だからいいというような御説明があったん ですけれども、実際に、本当にデータを見てみないと何とも言えないんですけれども、 今、このギャップというのは遺伝毒性の分野では一応観察するときに記録はするけれど も異常のカテゴリーには含めないというのが一般的な考え方でして、それで、染色体異 常の本当にほとんどの部分がギャップだけで、ほかの異常がないというようなことであ れば、ここで言っているような結論、すなわち、実際に生体で影響を及ぼすような遺伝 毒性はないというふうに考えてもいいのかというふうに思います。  あと、手に入る範囲で調べたところでも、確かに染色体異常が統計学的には陽性にな っているところもあるんですけれども、それも非常に弱かったり、再現性がなかったり というようなことで、染色体異常誘発性ありというJECFAの評価自体が少し強めに 、きつめに取ってあるのかなというような印象を持ちました。 ○小川部会長  ありがとうございました。ほかにございますか。 ○三森委員  今の染色体異常の面から、林先生かおっしゃったようにアフラトキシンのような強い 遺伝毒性物質とは違うものであるということであれば、マウスのデータはあるので、発 がん性はないと評価してもよいと思います。しかし、やはりラットで通常評価している ものが多いですので、今後そのようなデータがどうしても必要になるのではないかと思 います。明らかにラットの発がん性試験でも陰性だという結果が得られれば、問題ない と結論できると思います。以上です。 ○小川部会長  ありがとうございました。ということで、今後の問題が残されているという見方かと 思いますが、今の段階でいかがでしょうか。特に御意見ございませんか。  それでは、ないようですので、今後の研究課題として、この問題は残されるというこ とにして、今の段階ではJECFAの判断を一応踏まえて先に進むということにさせて いただきたいと思います。  ほかに何か御質問ございませんでしょうか。 ○池上委員  資料3のところで、小麦についての汚染の実態が、調べられておりますが、国産の1 と国産の2というのがかなり汚染実態が異なるんですが、この背景は何なのかというの が少し気になっているところです。  先ほど熊谷先生からも御説明がありましたけれども、汚染実態の食品の種類が年によ ってかなり動くということですが、気候条件などの関連が明確になっているのでしょう か。  それから、これは質問ではありませんが、日本人にとっては米の摂取量が多いことを 考えますと、お米の実態調査というのは綿密な形で是非やっていただきたいという要望 です。  それから、今、色刷りのパンフレットを配布していただきましたけれども、実際に今 、農業の現場においてこの赤かび病の徹底防除というのはどんな形で行われているのか を3番目の質問とさせていただきます。 ○小川部会長  ありがとうございました。最初の御質問について、これは熊谷先生の方からお答えし ていただけますか。 ○熊谷参考人  2地域につきましては、これは地域的にそこに生息している菌が異なるということに 由来するのと、もう一つは季節的な要因、資料2にありますように、開花期から乳熟期 にかけて湿度が、雨が降るというような条件ですと、この毒素が産生されやすいという 、そういうことを反映してのことだと思います。  小麦は全国的につくられておりますので、今回、たまたま2地域しか見ておりません ので、その他の地域については今後どうしても汚染実態をフォローしていかなければい けないだろうというふうに考えています。  それから、このかびにつきましては、地域差、それから気象条件、そういうことにつ いて、ちょっと先生。 ○高鳥参考人  補足させていただきます。今のまず地域によってとか、年によって、毒素の産生状況 という問題は、これは多分生物の問題で、つまりかびの問題になってくると思うんです 。まずこのDONに関して、産生するかびの方でお話していった方がいいと思うんです けれども、フザリウムというこのかび、一般には中温とか低温でよく発育してくるタイ プのかびです。非常に湿っぽいところで発生しやすい。  それから、もともと植物寄生性の非常に強いかびですので、例えば麦、ここで米とか いう問題がありましたが、とにかくここでは麦ですね、麦に非常に寄生性が強い。その 背景としては今言ったように湿っぽくて、ほどほどの気温であると、そういうことにな っている。そうすると、逆に言うと、乾燥しているような年がかなり続いていた場合は やはり産生量としては少なくなっていく。そういうタイプのかびであるということを頭 の中に入れておいた方がよろしいかと思います。  小西先生から出されているコーデックスのディスカッションペーパーで、この中に書 かれているんですけれども、要するに乾季ではやはり産生量が少ないというデータが出 ています。それから、非常に湿気の多いシーズンでは産生量が多いというデータが報告 されております。それを付け加えさせていただきます。 ○小川部会長  ありがとうございました。よろしいですか。 ○池上委員  防除はどういうふうにしているんですか。 ○小川部会長  その後のことですね。 ○池上委員  はい。 ○小川部会長  防除の問題については事務局の方にお願いいたします。 ○事務局  防除について、後ほど資料3と一緒に説明させていただく予定にしておりますが。 ○小川部会長  ほかに御質問ございますか。もし御質問が特にないようでしたら、デオキシニバレノ ールに関する規格基準の設定についての方へ議論を進めたいと思います。ただいまの報 告書の説明あるいは質問から、今すぐ現時点で規格基準設定ということはかなり難しい のではないかというように皆さんも印象を持たれたかと思います。今後いろいろ研究し なければならない面があるということで、そういう状況を踏まえまして、ここでは次の 3つの点に絞って議論をいただけたらと思います。まずその1つは、今回の研究で認め られた小麦の汚染によって直ちに健康障害をもたらすかどうか、そのことが1つ。それ からもう一つは、現時点では規格基準の設定は困難と思われるけれども、この研究結果 を踏まえて、当面何か対応をしなくてよいかどうか。それから3番目は規格基準設定の ために、今後どのような調査研究を積み重ねていったらいいか。この3点について御討 論いただきたいと思いますが、このような方法でよろしいでしょうか。では、そういう ことで、これから一つずつ御審議いただきたいと思います。  まず第1点目の本研究で認められたレベルの小麦の汚染によって直ちにヒトの健康障 害を招くかどうかということでございます。御審議をお願いいたします。  先ほど熊谷先生からは今までの研究を取りまとめていただいた立場での見解をいただ いているわけですけれけども、委員の皆様いかがでしょうか。  熊谷先生のおまとめでは今すぐどうこうということはないでしょう、直ちにこれが健 康障害に結び付くというところまでは考えなくてもよろしいのではないかということだ ったかと思いますが、この考え方に対して御意見ございますでしょうか。大体先ほどの 議論の中にも出てきているかと思いますけれども。 ○中澤委員  資料の3の6ページと7ページの実際測られたデータ、これを拝見していますと、国 産の1と国産の2というのは先ほど御質問がありましたように、2の方が例えば2,000 という数値を超えたのが2か所あります。1,500、1,900という値もあるんですが、逆に 2とか3とか5とか非常に少ない数値のデータもあります。かなりここは分布がばらつ いていますが、これを測定された神戸市の環境保健研究所というのは私もよく知ってお りますし、先生方のレベルも極めて高い機関です。それから、このレポートを拝見して おりますと、分析もLC−MSを使っております。LC−MSのイオン化もつい最近登 場してきた、大気圧で、しかも紫外線を照射してイオン化するような、かなり最新の分 析技術を使って、しかも検出限界は従来よりも相当上がっています。従ってこの数値は 分析の立場から見ましてもかなり信頼できる数値であると思います。  そうしますと、相互の値の違いを見ると、これは一体、先ほどの地域の中でのまたロ ットとかいろいろあってたまたまこういう数値が出てしまったのかというふうに考える と、やはり今、がちっとした基準というものを設定するのは非常に難しい様に思います 。しかもこの値が毒性の先生方からごらんになったときに、健康障害が出るのかどうか という判断材料には余りにも少な過ぎるのではないかという印象を少し持ったんですけ れども、いかがでしょうか。 ○小川部会長  ありがとうございました。これは次にお諮りしたいと思っていたんですが。いろいろ と問題があるということは先ほどの報告の中でも出ておりまして、今後、研究を積み重 ねなければいけないだろう、けれども、いろんなデータを重ねてみると、いますぐどう こうということにはならないのではないかという御説明だったと思います。しかし、将 来の検討課題として先ほど熊谷先生からお話があったようなことがあると思いますが、 そのことで熊谷先生、何か御意見ございますか。 ○熊谷参考人  資料3の22ページに「各国の穀類のデオキシニバレノール汚染状況」というのがあり ます。先ほど計算された平均摂取量というのを私は申し上げたんですけれども、こちら の表は実際の汚染レベルの実態調査結果でありまして、平均汚染濃度とか、それから最 大汚染濃度というのが書いてあります。その最大汚染濃度を見ますと、米国とか南アフ リカ、カナダにおきましても非常に高いレベルがぽつぽつと認められている。今回、日 本で認められたよりも更に高いレベルを認めているわけです。こういった点も考え合わ せる必要があるのであろうというふうに思います。 ○小川部会長  いかがですか。よろしいですか。ほかに何かございますか。 ○香山委員  現実的に非常にロットによって随分違うデータが出ているというのが、ここに示され ているわけでありまして、実際に輸入品であるとか国産品にしても、ときどき高いもの が出る可能性があるということでありまして、これが製品になって混ざって大規模な製 粉工場で製粉になって、混ざって出てくれば濃度としては低くなるということで、現実 的な基準をつくるという段階では今ないと私は考えるんですけれども、実際には、これ はお米のことにも拡大して考えるべきだと思うんですけれども、実際にこのようなかび などが付いた可能性があるという、あるいはそういう気候条件でそういう発生が見られ るというときに、そういう製品がどのような形で対応されているか、処分されているか 、あるいは製品になっているのかどうかということが、農業の現場でのgood manufactur ing practiceが行われているかどうかということが一番大事かと思うんです。  そこできちっとした対応がなされていれば、こういうマイコトキシンが食品の中に加 わってくるということは防げると思われるんですけれども、それが更に食品に向かない ので飼料にされるということになりますと、これはミルクの汚染につながるということ が非常に心配ですので、そこら辺の農業での現場でのやり方か、あるいは指導の仕方と いうことも、この委員会で少し意見を聞いたり調べていただいたりということを希望す るのはいかがかなというふうに思っております。 ○小川部会長  それはどう対応していくかという問題ですので、また後でお話ししたいと思います。  それでは、どうでしょうか。いろいろありましたけれども、報告書の5ページ中ごろ にあります「本研究で認められたレベルの玄麦の汚染によって直ちにヒトの健康障害が 招来されることは考え難い」という認識で、これからの議論を進めてよろしいかどうか 。いかがでしょうか。  では、この熊谷先生の報告のこの見解に基づいてこれからの議論をお願いするという ことにさせていただきます。 ○事務局  それでは、事務局の方で整理させていただきたいんですが、まず食品の加工過程等で こういったデオキシニバレノールが減衰していきますということが1点と、それから、 小麦粉になりまして、その後にいろいろな多くの製品になるということですので、そう いう過程でかなり均一化されるのではないかということが2点目と、あと2,200ppbとい うのがございますが、カナダの方で、資料4にございますが、規制値を2,000という形 でやっておりまして、そういう中で見ますと、それをやや上回る程度ではないかという 感じを持っていまして、そういうような点から、これについては直ちに健康障害を招来 するようなことは考え難いということで整理させていただいてよろしゅうございますで すか。 ○小川部会長  よろしいでしょうか。今、事務局に整理をしていただきましたけれども。  それでは、次のステップの第2番目の課題であります、現時点では規格基準の設定は 困難と思われるが、本研究結果では高い値が出ているという実態を踏まえまして、当面 どのように対応したらよろしいかということについて審議をしていただきたいと思いま す。  まず事務局から資料6、それから赤かび病の防除対策について農林水産省から説明を お願いします。 ○事務局  それでは資料6について説明をさせていただきます。諸外国の規制状況等というテー マでございます。諸外国の規制状況でございますが、ここに書かれておりますが、recom mendation,ガイドラインレベルというふうに書かれておりまして、我が国の規格基準 というような法的拘束力のあるものとは少し違うレベルのものであるということでござ います。ただ、こういった形である程度目安となるような値が定められているというこ とでございます。  ECを見ますと、これは最近定められたものということでございますが、小麦粉でご ざいますが、小麦粉で750μg/kgというのが定められてございます。あと穀物製品に も定められているということでございます。  スイスが製品でございますが、1,000μg/kgということでございます。次はカナダ で、これは軟質の小麦でございますが、2,000μg/kgというのが定められてございま す。米国は小麦製品という形になってございます。ただ、米国の方も実態としてはカナ ダ並びで小麦については2,000μg/kgを目安にしておるというぐあいに聞いておりま す。  コーデックス委員会の動向でございますが、CCFACという食品添加物汚染物質部 会において現在検討中でございまして、まだ基準値案自体は出てきておりませんが、来 年の3月のCCFACには基準事案が提案されてくるのではないかというような状況に なってございます。  あと、先ほど申し上げましたが、JECFAという場で毒性評価が行われていまして 、PMTDIが1μgというぐあいに定められているということでございます。  次に、赤かび病の徹底防除についてです。 ○農林水産省  農林水産省生産局農産振興課の生産の方を担当しております榊と申します。本日はこ のような場で説明の機会をいただきましてありがとうございます。  私どもの方から麦の生産現場でどのような対策をしているかということについて若干 御説明をさせていただきたいと思います。  私どもは4月2日に例のBSE問題に関する調査検討委員会の報告書が出て以来、消 費者に軸足を置いた施策に大臣以下取り組んでいるところでございます。この赤かび病 につきましても、従来、麦の病害ということで、農家におきまして赤かび病の防除をし てきたわけでございますけれども、昨今コーデックス委員会の活発な議論等々を踏まえ まして、より消費者の安全という観点からも赤かび病の防除を徹底すべきということで 、私ども農林水産省としましても現場の指導をしているところでございます。  その一環としまして、1つは本年の4月の当初、4月4日でございますけれども、文 書を持ちまして関係機関にこの赤かび防除の徹底を図る、あるいは被害を受けた麦につ きましては、健全な麦との仕分けを徹底する、更には品種によりまして、病気に対する 感受性が異なりますので、できるだけ赤かび病に抵抗性の強いものを選んで作付けする 。こういった現場での対応を徹底するようにというような指導を文書をもってしており ます。  また、合わせまして、農協系統におきまして、本日お配りさせていただいております ようなチラシ、これは全国で12万強の麦をつくっている農家の方がいらっしゃるわけで ございますが、このチラシを13万部ほどつくりまして、全農家に配布できるようという ことで、今年の4月、これは先ほどから出ておりますように麦の開花期に入る前という ことで、4月の冒頭にこれを全国に配布して、農家に防除の徹底をしていただくように というふうなことで通知、注意喚起をしているところでございます。  以上、赤かび病の生産段階、農家段階の防除の徹底ということに加えまして、私ども 従来から農産物検査法に基づく検査におきまして、赤かび病で被害を受けた粒につきま しては全体の1%を超えてはならないという基準を設けて従来から規制しているところ でございます。以上でございます。 ○小川部会長  ありがとうございました。池上先生、先ほどの御質問をどうぞ。 ○池上委員  そうすると、今まではどうされていたのかということが気になります。具体的な対策 と、先ほどもほかの委員の先生から御質問もありましたが、今は文書で指示をされたと いうことで、具体的な対応はどうだったのかということを、合わせて質問させていただ きます。 ○小川部会長  よろしいでしょうか。 ○農林水産省  今までもやはり赤かび病というのは年によって出ていることもございましたけれども 、その段階でも、今申し上げましたように、農家段階では必ず防除をするようにという 指導をしておりますし、農家では防除していただいております。併せまして、今申し上 げましたように検査の段階で赤かび粒は除く、検査の前に乾燥しまして調製、選別する 段階で赤いものは除くというような作業も中に取り入れてやっております。 ○小川部会長  当面の対応ということで今御説明いただきましたが、先ほど質問がありましたことを 、先にお答えいただきました。皆さんから御質問なり御意見なり、ございましたらお願 いいたします。 ○鈴木委員  小麦粉を消費する立場から、結果的に規制が何らかの形でできても、1,000とか2,000 μg程度のものが入っているという前提になったときに、小麦粉で、先ほど熊谷先生が いわゆる減衰率のようなものをもう少し加工のプロセスも含めていわゆる実態を把握す る必要があるとおっしゃいましたけれども、現在、例えば小麦粉として消費者が入手し たもの、今、スーパーですと1kg当たりの紙の袋に入って売られています。あの中にあ る程度のものが入っていたと仮定したとき、実際に消費者の立場に立ちますと、その1k gの小麦粉を恐らく半年ぐらいそのまま台所に放置して使っている可能性があるわけで 、特に夏場とか湿度の高いときに、きちっとした乾燥剤も入れずに置いておいたという 状況なども含めて、ある程度その辺の実態などをこれからお調べいただいて、いわゆる 包装の仕方とか、あるいは管理の仕方等についても、少し消費者教育に役立つような示 唆をしていただければありがたいと思います。 ○小川部会長  ありがとうございました。今後の問題点の1つかと思いますが、ほかにどなかたござ いますか。  こういう値が出てきた以上、何か対応をせざるを得ないと思うんですけれども、どう いう対応をしたらいいのかということだと思います。  熊谷先生からもこれからしなければならない研究事項が先ほど来示されているわけで すが、その研究を待つ間、放っておいていいのか、すぐすべきことはないかということ かと思うんですが、委員の皆さんから御意見がないようでしたら、事務局の方で何かお 考えがございますか。 ○事務局  まず、諸外国の規制状況ということでございまして、ガイドラインレベルというよう なものを諸外国とも定めておりますので、これに近いようなものを我が国で設定すると いうような考え方が1つあるのではないかなというぐあいに思っております。 ○小川部会長  それは正式の基準というよりは、暫定基準というようなものということですか。 ○事務局  そうですね。イメージ的には暫定的な基準というようなイメージで、厳密に言います と、規格基準ではございませんので、そういった法的な拘束力は持ち得ないというもの でございます。 ○小川部会長  いかがでしょうか。ただいま事務局で考えておられることについて御説明いただきま したけれども、法的拘束力はない暫定的な基準を設けたらどうかということでございま す。  暫定基準を設けるということであれば、それをどのぐらいにするかという問題が引き 続いて起こるわけですが、その辺も含めて御議論いただければと思います。いかがでし ょうか。  データが不足しているということが先ほどからいわれているが、放っておくわけにも いかないから暫定基準でとりあえずは対応しようということかと思いますけれども。こ ういう姿勢について、よろしいでしょうか。こういうデータが出てきているわけですか ら、何もしないというわけにはいかないと思うんです。といって、かっちりした基準を つくるほどのデータもまだ集められていないということで、当面暫定基準で対応したら どうかということについて。 ○井上委員  座長のおっしゃいますようにかっちりとした規制のできない段階でもそうしたことが 行政技術的に可能であるならば、それ自体は現段階での科学でわかる範囲のことを暫定 的に指示するという意味で意義のあることだと思います。 ○小川部会長  ありがとうございました。ほかにございませんでしょうか。 ○品川委員  今実際にあるデータは小麦を測ったわけですね。小麦粉というのが、暫定にしても、 先ほど30%〜50%ぐらいに減るだろうというのですが、我が国の状況のデータというの はやはり作成していただかないと、実際どのぐらいになっているのかというのが、十分 ではありません。今はあくまでも、確かに製造によって異なるのでしょうけれども、市 販されているものでは、もしくはどのような地域性があるのか、全く地域性というもの がなく、大体このぐらいだという、そのようなデータがないと、小麦でのデータが示さ れたけれども、小麦粉に関してはこれらのデータから推測するしかないわけですね。30 %〜50%ぐらいに減るということで、暫定にしても、こういう形で行うかどうかという ことは、もう少しデータを詰めていただければ、その辺がわかりやすくなるのではない かと思いますけれども。 ○小川部会長  これからの研究課題として先ほど減衰率ということの指摘がありましたけれども、直 ちに、小麦粉までここで暫定基準を設けるということになると、それはもう一つ難しい 問題を抱え込むことになるかもしれませんね。その辺の御意見いかがでしょうか。世界 的に見ますと、小麦だけ、小麦粉までというところがあるようですが、暫定的に設ける とすれば、いかがでしょうか。その辺、御意見を。 ○品川委員  小麦になるとどちらかというと生産現場の方が強いわけですね。消費者にとってはや はり小麦粉の方が実際に使われている。小麦をそのまま買ってくるというのは実際には ないし、そういう形のものが今暫定で設けられれば、保健所なりで調べられるとしたら 、ある程度厚生労働省としても実際に使われるものに対して、市販品でどういうふうに なっているのかということが必要になってくるのではないかなと思われます。 ○小川部会長  いかがでしょうか。 ○基準課長  あまり行政という管理をする方が話をしてしまって申し訳ないと思っていますが、小 麦粉そのもので食品衛生法の基準を設ける方が素直だと思いますが、小麦としての流通 もありますので基準設定に向けての検討に当たっては、小麦と小麦粉を両方やるのか、 小麦粉だけでいいのかという点も課題として取り上げていきたいと思っております。今 回、この研究は一切小麦粉をやっていないということがありまして、すべて玄麦だけで やっているということもあります。  したがって、今、部会長の方からもいろいろ御意見を伺っているところでありますが 、今の時点で何らかの基準値を設けて指導的にやれるところはどこだろうか、それをや る必要があるだろうかというところを実は我々の方としてはお聞きしたかったというの が一番の今日の大きな課題でございまして、暫定的なものでやはりやるべきだというこ とであれば、今の段階ではやはりデータから見ると、まずは小麦の玄麦について、とも かく生産の段階で一定以上のものを出さないような指導を生産段階とそれから生産の小 麦を買う段階、あるいはそういった段階で指導をしてもらうという意味での指導をでき るだけ早くするべきではないかと思っております。考え方はそういうことで、あとは数 値を、外国の数値をどう取るのか、もう少し科学的な裏付けでやるのかどうなのかとい う点について御議論をいただければと思います。 ○小川部会長  ありがとうございました。今回のデータはごらんいただいているように小麦だけしか ない。小麦粉でやるとすればまた1年なり2年なりかけて小麦粉のデータを出すことに なる。そうすると、延びていってしまうということでございましたけれども、いかがで しょうか。そういう問題も含めてトータルで考えると、小麦粉ということはどうでしょ うか。今回、もし暫定でやるとすれば小麦の段階でという今の御提案について御意見ご ざいますか。 ○香山委員  これはある意味では製品になっていない原料の方を規制するということでは随分新し い考え方だと思うんですけれども、それがもしも農林水産省にこういうことをお願いす るという形で踏み出して、厚生労働省が踏み出してやれるというのであれば是非やって いただきたいなと私は思います。 ○小川部会長  ありがとうございます。 ○基準課長  私ども全く目新しい観点からやっているつもりはございませんで、残留農薬基準など はすべて小麦それから米、いわゆる野菜、なまものについて基準設定しておりますので 、そういう面で私はそういうふうに申し上げて、決して農水省さんにお願いをするとい うことではなくて、これはこちらでもできることでございます。  ただし、生産現場の防除対策とか、そういうことになりますと、私どもではなくて一 緒に農水省さんの協力を得てやらなければいけないわけでありますが、できた玄麦、麦 そのものは食品衛生の対象になってきますので、これは両方でやる話でありまして、決 して目新しい話ではなくて、今でもやっているという認識でやっておりますので、その 点は御理解をいただきたいと思っております。 ○小川部会長  流れとしては小麦の段階で暫定基準ということになってきているように思うんですが 、よろしいでしょうか。  では、そういうことで、小麦について暫定基準を設けるとなれば、次はその数値をど うしたらいいかということですけれども、先ほどから何回も御説明をいただいているわ けですが、熊谷先生、御研究いただいた立場からもう一度ここで整理をしていただけれ ばありがたいと思います。 ○熊谷参考人  一応、今わかっているのは玄麦の汚染レベルがどうも一部超えていると。これをこの まま放置するわけにはいかないだろうということの考えに立ちますと、一つは玄麦から 小麦粉をつくる段階でどのぐらい減衰するかという、先ほど申しましたようにデータが 、パブリッシュされているデータが非常に少ないんです。少ないとはいえ、70%近辺の データがあることはあります。  それから更に、自然汚染ではないんですけれども、小麦粉に毒素を、既知量の毒素を 混ぜ込んで、それからうどんとかパンをつくった場合にどのぐらい減衰するかという実 験が、これも非常に数が少ないので、もっともっと重ねる必要はあるんですけれどもあ りまして、それでも数十パーセントは減衰するという報告があります。それやこれや含 めますと、非常に限られたデータですけれども、小麦粉にして更にそれを製品にする、 あるいは家庭でつくる場合はかかる熱がかなり少ないので恐らくほとんど壊れないだろ うと思いますけれども、30%とか50%減衰を見込むのはいかがかなというふうに考えま す。  そうしますと、先ほどの報告書の4ページの表で、加工による減衰率30%と50%とし た場合に、小麦のみを考慮したときに、小麦粉汚染レベルがJECFAの設定したレベ ルですと557ppbになるんですけれども、それに、それらの30%と50%減衰率を計算に入 れますと、玄麦の汚染レベルが795とか1,110ppbになります。ここらが一応JECFA が設定したPMTDIに基づいた非常にラフなレベルになるだろうというふうに考えま す。  それと諸外国の規制状況、これは、このJECFAの2001年のPMTDIをベースに したものではほとんどないわけです。従来から使っている各国の規制値といいますかガ イドラインレベルですけれども、それらを横目でにらんでどうかという、そういう形で はないかなと、非常に回りくどい話ですが。 ○小川部会長  今795と1,110という数値が出ましたけれども、ざっくばらんに議論がしやすくなるよ うに、ちょっと石を投げるつもりで御提案いただけませんか。 ○熊谷参考人  各国の規制状況も横目に置きますと、玄麦の汚染レベルで1,110近辺に暫定的に置い たらどうかなというふうに私自身は思います。 ○小川部会長  ありがとうございました。無理なお願いをいたしまして。  今、いろいろ文献や世界の様子等を見て1,110辺りのところを暫定としたらどうでし ょうかということでした。なかなか先生方も議論しにくい点だと思いますので、具体的 に出していただけると、議論が出やすいかと思いまして、あえてお願いしたわけでござ います。いかがでしょうか。  これはJECFAの1μg/kgというのを基準にして計算した値で、世界的に見れば 、これより高いところもあるという御説明でした。これは科学的にぴしっとこれだとい うようにはなかなかいかないところがあり、御発言もしにくいかと思いますけれども、 あくまでも詳細な研究を進めて最終的な基準をつくるまでの暫定基準であるということ で御理解をいただき発言願いたいと思います。いかがでしょうか。 ○丸山委員  私もこういうのは専門外でよくわからないんですが、その暫定的とはいえ、数字を出 すということになれば、それだけのきちっとした根拠、いろんなところから言われる意 見に対して、これこれこういうことだから1,110にするとかということがきちっと暫定 基準であっても、それが言える数字というものをやはり出していかなければ、この委員 会としておかしいんだろうと。その1,110というのは先ほど熊谷先生、いろんな横をに らんでとかいうふうないろんなファクターを挙げておっしゃったんですが、何か私には 十分、理解が悪いのかもしれませんけれども、これでいいのかなというのがどうしても 残ってしまうような気がするんですが、そういう数字の根拠を示せるのであれば、1,11 0でも、1,000でも750でも私はいいと思いますが。 ○小川部会長  何か熊谷先生御意見ありますか。 ○熊谷参考人  一応、先ほど申しましたように、非常にパプリッシュされているデータが少ないんで すけれども、それらデータを踏まえると、1,100という数字、それを、今それらのデー タをここに用意してありませんので、それをきちんとどういうデータに基づいて設定す るかという、そこを示した上で、このppbで数字で示すということはできます。もし そういう方向にするということになりましたら、今、限られていますけれども、そのデ ータに基づいて、一応ここでは30%と50%と丸めた数字を挙げさせてもらっていますけ れども、試算をするために挙げさせてもらっていますが、もう少しデータそのものに基 づいて計算した値を示すことはできます。答えになっていますか。 ○小川部会長  私自身よくわからなかったところがあったんですが。科学的にもっと整理できるとい うことは、今までのデータを使ってできるということですか。 ○熊谷参考人  そうです。 ○小川部会長  それは具体的にどういうことですか。この数字はどういうぐあいになりますか。 ○熊谷参考人  これはパブリケーションが幾つかありますので、それらの数値を一つだけといいます か、平均値にせざるを得ない、平均値あるいは代表的なものを選んで使うということに ならざるを得ないと思いますけれども、そういう値を使って玄麦の汚染レベルを求める と。 ○小川部会長  それは日本の国の値ですか。 ○熊谷参考人  日本のデータです。そういうパブリケーションは幾つぐらいありますか。 ○小西参考人  日本のものでしたら、3つ4つぐらい。過去を含めて、5個以上あると思います。 ○熊谷参考人  5個以上。データにばらつきが、それぞれの数値に差がありますので。 ○小川部会長  そうしますと、今、ここに出て来たデータと、その5個のデータと、科学的にどちら がどれだけ正しいかという議論が出てくるかと思うんですが。  どうでしょうか。とにかく今何かやらざるを得ないということでは皆さん一致してい ただたいわけですね。では、どうするか。十分なデータはないけれども、厚生科学研究 でこういうデータが出てきた。JECFAでもこういう基準がある。ということで、J ECFAのいろいろなデータを、これは日本のデータも何か幾つか入っているようです けれども、使って基準値をつくっているわけですね。それをもっと科学的に説明できな ければだめではないかということでしょうか。確かに、この委員会の委員としては困る ところはあるのかも知れないですが、これは暫定で、とにかく今、放っておけないから とりあえず何かしなければならない。するとなれば、これから研究していたのでは間に 合わない。今、研究データが5つぐらいあるということですが、それが本当に科学的根 拠に基づいて説明の根拠になり得るかどうかという問題はまだ残っていると思うんです 。  ですから、そういう意味で、それをやり直して、どのぐらいの自信を持つことができ るかということが1つあると思うんですが、いかがでしょうか。 ○長尾委員  あくまでも、暫定的な取り組みだと思うんですが、具体的に、例えば、非常に汚染度 が高いものをどうするかというと、汚染度の低いものと混ぜるのではないかと思うんで すが、そうするときに、これはずっと出ていますが、一体どれぐらいのスケールの、こ の1ロットがどのぐらいのスケールの話なんですか、これは。私が素人的に混ぜたらい いのではないかと考えますが。 ○小川部会長  これは混ぜるということではないと思うんです。高いものを低いものに混ぜるのでは なくて、実際に、流通の過程で混ざってしまうというのでは。 ○長尾委員  でも、実際に摂取することを考えれば、希釈すれば、1人の人がそういう高濃度のも のに汚染されないわけですから、この例えば2,200といったそういうもののものは、ど ういうふうに処理するといふうに考えられているのかとか、そういう、規制をどのぐら いすることによって、ダメージがどのぐらいあるかという、不確かな情報でそういうこ とを規制するときには、一体、その不確かなことで決めることによって、どのぐらいの ダメージがあるのかということも判断材料に重要ではないかと思ったんです。 ○小川部会長  それは確かにそうだと思うんです。ただ、今、先生のそういうことを決めるのにまた 何年かかかると思うんです。 ○長尾委員  ですから、暫定的に決めるのにはどのぐらいのダメージを我慢するのかというファク ターを考えなければいけなくて、例えば2,200、これがどのぐらいトキシックかリスク があるかわからないけれども、それでは、こういうものはどのぐらいの大きさのものが あって、その運命はどうなるということは私たちは考えて、これがリスクがあるとかな いとかということを決めるのかということだと思うんです。どうなんでしょう。 ○小川部会長  熊谷先生、何かお答えいただけますか。 ○熊谷参考人  済みません。余りよくフォローできてないんですけれども。 ○香山委員  私が今感じているのは、暫定のガイドライン、ガイドラインですから、法的な規制は ございませんので、まずそのモニタリングを活性化して、ガイドラインが決まれば、そ れぞれの場所でモニタリングを始めますので、それによって、いろいろな情報を集めて 対策を打っていこうということが厚生労働省のお考えだと感じているんですけれども、 それであれば、私はむしろ余り科学的根拠がどうのこうのと、まだ不確かな状況で計算 して、この根拠はどうですというよりも、諸外国で行われている管理に近いものを、こ れを採用しましたという形で、実際には情報を集めるということにすることが一番現実 的ではないかなというふうに感じているんですけれども。 ○小川部会長  ありがとうございました。いかがでしょうか、ただいまの御意見について。 ○品川委員  実際に国産の2の方というのはこれだけの、例えば、今、暫定的に1,120とすると、 その予備軍を含めたら、26検体中相当の数となり、ガイドラインとしても実際にやって いけるのだろうか。実際に、この部分というのは、このデータで見ると汚染率の高いも のが多いと推定されます。それをガイドラインをつくったら、私の考え方では、むしろ 高いところはもっと高く、場合によっては季節によってはもっと高く出るのではないで しょうか。ここでは900とか1,000近くのものもありますし、場合によってはもっと高い ところが出てくるし、実際に1,100ぐらいで切ったときに、その数が多過ぎるのではな いか。実際にガイドラインとして行政的にもやっていけるだろうかということが気にな ります。 ○小川部会長  もっと高くしないと外れるものが多すぎるということですか。 ○品川委員  ここでの959というのが、場合によってはばらつきがあり2,000になってしまうとか。 そうすると、相当の数があるのでは。だから、この国産2の検体がどういう形でサンプ リングされたのか。または同じような地域でサンプリングされたのなら理解できるけれ ども、違うところで取られてこれだけ数があれば、実際にガイドラインで何かをやろう としたときに難しくなるのでは。 ○小川部会長  でも、今は何もない状態ですよね。ですから、厚生省としては先ほど御意見がありま したように、何か暫定的に基準を設けて、モニタリングなりいろんな研究を進めて最終 的なものをつくっていこうとするのか、それとも、それができるまで何もしないで待つ ことにするのかということかと思うんです。 ○品川委員  だから、国産2の検体をもう少し解析していただきたいと思います。国産2のものと いうのは、どういう地域でサンプリングされ、またその地域だけのものが全体を示して いるのか、ほかのところでも検査したらあちこち出てきて、そういう中で実際にガイド ラインをつくっても、運用ができるのかというのは少し心配です。 ○小川部会長  まだガイドイランをつくるには早過ぎるということですか。 ○品川委員  もう一つは、このものの危害性、要するに、ヒトへのリスクというのが実際日本でど のぐらいあるのかということも資料が必要、しかし日本にはこれらのデータが多分ない のでしょうね、消化器疾病を示すところなんですが、症状を示すものが外国ではたくさ んあると書かれていますが、それがどのぐらいで、どのような症状が出るのか、その辺 の人への危害の根拠が必要と思われます。 ○小川部会長  おっしゃることはわかるんですが、そういうことをわからせるにはまだ研究が必要だ から、そして、何もしないで放っておけないので、とりあえず暫定でということだと私 は今までの議論で理解しているんですが、そうではないんですか。 ○熊谷参考人  1つ補足したいんですけれども、小麦のデオキシニバレノールというのはパブリケー ションは少ないながらも、過去に幾つか実態調査がされていまして、それは数百止まり が非常に多いです。ですので、今回、この2,000幾つというのが出てきましたけれども 、このような高い数値は今まで確かなかったと思います。ですので、頻度としては恐ら く少ないだろうと。今回、サンプル数が非常に少ないんですけれども、要するに、1地 域で取れる生産量に比例したサンプルサイズで全国的に調査を掛けるのが一番正確に出 てくると思うんですけれども、今回はそうではなくて、恐らく生産量に見合ったサンプ ル数ではないのではないかと思っています。 ○品川委員  今回のデータは農場がそれぞれ違うと考えていいわけですか。例えば、国産2のサン プルはそれぞれ農場が違うところでサンプリングを行い、こういう成績が出たと考えて いいんですか。 ○熊谷参考人  そこの情報までは、ちょっとそこがわからないんですけれども。 ○高鳥参考人  資料の3、ページが23、24、この表の10があるわけです。今、熊谷先生、今回の報告 書の中では、国産1、2云々と言われていますけれども、ここで日本について、少なく とも5年間もう既に取られたデータがあります。これは生物の方からいきますと、5年 間の間に例えば今このフザリウムというかびが多いか少ないかということが多分出てく ると思うんですけれども、それを見ていきましても、例えば小麦で5年で150検体、82 が最小の最大で1,600という値が出ています。平均で87という、こういうような値が出 ています。かなり数値としては小麦では、今、熊谷先生がおっしゃったように低いとい うことが、こういうことがわかるんだろうと。それを見ながら、多分JECFAの方で 暫定的に耐容一日摂取量(PMTDI)を出されているわけですから、ですから、やは りこれを一つの根拠として進めていかれるのがいいのではないかと思っているんです。 それが先ほど熊谷先生がおっしゃった数値にも近いんだろうと思うんです。 ○小西参考人  あと毒性の面でお話をさせていただきたいんですけれども、このかび毒の場合、急性 毒性というものは滅多に起こることはないです。食料難ですとか食べるようなものがな い場合に無理して食べて消化器系の病気を起こすということがありますけれども、それ 以外ではほとんどないと言っていいんですけれども、ただ、トリコテセン、特にかび毒 の場合の今話題になっていますデオキシニバレノールが特殊なんです。トリコテセンの 場合ですと細胞分裂の盛んな臓器がターゲットになりますので、まず免疫系が冒される 場合がある。それもがんのような毒性で出てくる可能性があるということと、大人より も子どもが影響を受ける可能性が高いということで、急性毒性というよりも慢性毒性の 方が懸念されていることを御承知おきいただきたいと思います。  それから、先ほど、農水省の方が御説明されました赤かび病のことなんですが、赤か び病で目に見えて赤くなった小麦を取り除けばマイコトキシンがないわけではなくて、 このトリコテセンの場合は一見見ても正常な麦と変わらなくても中にマイコトキシンが 含まれているということもあるということがあります。以上です。 ○小川部会長  ありがとうございました。今、いろいろ議論がありましたけれども、丸山先生、いか がでしょうか。やはり、暫定基準であっても無理でしょうか。 ○丸山委員  私が申し上げたのは、その数値を示すのであれば、その根拠がきちっとしているのが 一番大事だということで、先ほど、高鳥先生がおっしゃったように日本のデータも入れ て、このJECFAでもってこういうふうに決めている。今のところ、データが十分で ないんだから、これを根拠にやったということに統一をきちっとできれば、そういう根 拠があればいいでしょうというふうに私は思う。根拠をきちっとするということがまず 大事だということを申し上げただけなんです。 ○小川部会長  ありがとうございました。あとは品川先生、そういうことでよろしいですか。 ○品川委員  私の心配というのは、先ほど高鳥先生が言われたことですが、そうすると、この国産 2というのは異例のデータと思っていいんですか。7ページの国産2というのは、非常 に全体に高い。日本のデータから、先ほど言われたように、20何ページのところから比 べれば高いですが。 ○高鳥参考人  私は実はこの背景はよくわかりませんけれども、ばらつきとして出てくるものではな いかなというようには感じていますが。その辺の背景については存じてないのでわかり ませんが。 ○小川部会長  どうでしょうか。 ○三森委員  丸山先生の御意見を確認させていただきたいんですが、JECFAのPMTDIをベ ースに、それから1日許容量を出すという形でそろえていくしかないと思います。先ほ ど基準課長は、とにかく小麦については基準値を設けるとおっしゃいましたが、この1,1 10についてはすべて小麦を食べただけでPMTDIに到達してしまうのでしょうか。そ れともほかの米やトウモロコシの汚染とかもあるわけですが、それについては一切無視 して、とにかくPMTDI、すべては小麦から食べた摂取量という形で計算される、と 理解してよろしいでしょうか。 ○丸山委員  いえ、私はそこまで深く考えたわけではなくて、先ほどから言っているように、数値 で示す、暫定であっても数値で示すわけですね。それは、どういう根拠でその数値がこ こで決められるのかということをきちっと根拠を示しておくべきだということを言って いるだけなんです。 ○三森委員  ですから、小麦をとにかく100%食べた場合、それで暫定的なTDIに到達するとの 根拠なのですね。 ○丸山委員  はい。そうです。 ○小川部会長  よろしいでしょうか。その辺は先ほど熊谷先生からいろいろ御説明がありましたので 、ほかに何か御意見ありませんか。御意見がないようですので、座長として、どのよう に取りまとめたらいいか、非常に難しいところですが、おおよその流れは、とにかく現 状を踏まえて暫定基準をつくる。それは小麦だけに今の段階では限る。そして、具体的 な数値としては1,100ぐらいのところで、十分ではないが、現在持っているデータから こうだという説明ができそうだということで、まとめていいのかどうか。  どうでしょうか、皆さんの御意見は。あるいは事務局の方の御意見も伺いたいと思う んですが。 ○事務局  今、御議論を聞いていますと、とりあえずこの報告書をベースにある程度そういった 暫定的な基準値というものを定めていくというような話になっているのかなというぐあ いに理解をしております。それで説明ぶりといたしましては、JECFAで定めたPM TDIというものをベースに算出しているということでして、その際に国民栄養調査の 小麦類の摂取量、また減衰率というものを考慮して、現時点では活用できるそういった 科学的知見というものに基づいて当面の間の対策としてどこまで妥当かということだと 思いますが、妥当なものとして、定められた値として1,100ですか、ちょっとそこら辺 は議論いただくことですが、そこら辺のものが整理としてあるのかなというぐあいに感 じております。 ○黒川部会長  総論的に言いますと、暫定的なガイドラインレベルというものを置くことは私は賛成 で、私は6、7年前にダイオキシンを一番最初に10ピコというのを、あれも暫定レベル で、それに従っていろんな予算が付いて、例えば焼却場のレベルとかいろいろどんどん 下がってきたところでまたWHOの勧告に合わせてまた4ピコにしたということで、そ れを4ピコにしたときには、実際はそれ以下の現実レベルになっていたという非常にい い効果があったんで、そういう意味では暫定レベルをつくるのは絶対必要なことだと思 います。  それと、減衰率のところなんですけれども、30%ないし50%と報告されているという ことになりますと、私の経験などから言うと、そういうものの場合はワーストの方を取 って安全率といいますか、安全性を少しは担保しておくということになりますと、50% 減るよりは30%しか減らないと考えざるを得ないというような、その辺がよくわからな いんですけれども、それにしても微妙な数字ですから、1,110などというよりは、その 間で1,000でもいいのかなという感じがいたします。 ○小川部会長  ありがとうございました。いかがでしょうか。数値についての具体的な御提案がござ いましたけれども。どなたか御意見ございませんか。 ○事務局  これも1つ参考情報ということでございますが、先ほど委員の方から諸外国の規制状 況等も横目に見ながらという質問に、香山先生からこういうのをもっと参考にしたらど うかという意見もあったんですが、例えばECの小麦粉というのを見ますと、750μg というぐあいになってございます。こういう試算がどこまで適切かということはあるん ですが、減衰率30%という値で見ますと、1,070ぐらいになってきまして、50%でやり ますと1,500ぐらいになるというような形です。諸外国で今やられているそういったガ イドライン値というレベルでは、そこら辺が今最も低い値の設定になっているというこ とでございます。 ○井上委員  かび毒のことは若干の実験をやったことしかないから余り細かいことはわからないん ですけれども、今まで御説明を伺っていますと、今我々にとって必要なことは毒性の問 題について、ダイオキシン当時のときに認識されていたようなかなりはっきりした問題 というよりも、とりあえず状況をより正確に把握したいということが我々にはあるよう に思うんです。そういう意味でも、安全性を見てより低くすればいいという状況に至っ てはいないのではないかと思うんです。基準値を決める暫定的な値を決めるとともに、 先ほど私は賛成して発言させていただいたわけなんですけれども、実際に値につきまし てはとにかく諸外国の今幾つか挙げられている例であるとか、EUの例であるとか、そ ういったものの中の比較的現実的な問題が起こらないような値で我々は基準値を決めて も、大きな差し障りはないのだろうと思うんです。しかも暫定的であるし。そういう意 味では必ずしも安全をより今見越さなければならない段階ではないような、そういう印 象を私は受けます。 ○小川部会長  ありがとうございました。いろいろ御意見がありまして、どれを代表値として取るか ということは難しいんですけれども、外国の状況だとかいろんなことを踏まえると、暫 定基準値としては1,100辺りがいいのかなという印象を受けてきたんですが。細かく言 えばいろいろあると思うんですが、いかがでしょうか。どこかに決めなければならない わけですから、暫定基準として、1,100という具体的な数字は一番説明のしやすいデー タという感じを受けましたけれども、いかがでしょう。よろしいでしょうか。では、1,1 00でよろしいですね。1,100ということで暫定基準を決めさせていただくということに なれば、次はどうやって検査するのかということになるわけですが、その辺は今日はど ういうことにしましょうか。 ○事務局  まず分析法につきましてですが、この研究報告書の中では先ほどありましたが、LC −MSが使われておりまして、これですと1日にできる検査の数とかそういったものも 限られてきますし、そもそもこういった高額の機器を有する検査機関が少ないのではな いかと伺っておりますので、方法としては、LCのUVとか、GCのECDといった形 で実施して、確認としてGC−MSとかLC−MSを用いるというような方法があるの ではないかというぐあいに考えています。  あとサンプリング法につきましては、アフラトキシンのB1についてサンプリング法 が出ておりまして、また平成5年度に厚生科学研究が行われておりまして、サンプリン グ法についての検討されたようなものがありますので、そういうのを参考にして設定す ることが可能ではないかなというぐあいに考えています。  この場で御議論いただければ一番いいのですが、資料等も提出されておりませんし、 検討がどこまでできるのかなというのがございまして、暫定的なそういった基準値を設 定するということになった場合、速やかにそういった通知等をして、実行に移すのが必 要ではないかなと考えていますので、そう考えた場合、時間的にももう一度部会を開催 して、その場で分析法やサンプリング法について御議論いただくのは時間的に厳しいの ではないかというふうに思っています。  それで、事務局からの提案なんですが、分析法、サンプル法につきまして、小川部会 長と、それからその方面の先生方と、相談させていただきまして、その上で取りまとめ をさせていただくというのはいかがかなということでございます。そういった暫定基準 値であったり、またそういった分析法、サンプリング法に関しての通知については、各 委員の先生方に送付させていただくという形で整理いただければという御提案でござい ます。 ○小川部会長  ただいまの御提案、何か御意見ございますでしょうか。 ○中澤委員  分析法に関しては今事務局の方から御説明があった内容で私はいいのではないかなと 思いますが、資料の4の3ページ一番下の方に、こういうことをしたらどうかという提 案的な内容が記載されています。その中に薄層クロマトグラフィー(TLC)、ELI SAが有用ではないかということも書かれています。ここのページを見てみますと、こ のデオキシニバレノールあるいは関連物質の分析は、上から10行目のところに、ばらつ きの合計が13%であるというようなことが記載されています。  ですから、今、これだけの時間議論されている数値の信頼性がどれだけ担保されてい るかというのが、新たに研究をされるときに是非確認していただきたいと思います。特 に今回、2,000とか1,000とか、かなり高い数字のものに関しては、1つの研究機関では なくて、同じサンプルをクロスチェックするというスタンスを是非取る必要があると思 います。これだけの先生方が集まって議論する根拠の数値が本当に大丈夫かというのは 、ppbレベルの分析をやっているわけなので、是非今後押さえていただいたらいいの ではないでしょうか。  そして、先ほど事務局がおっしゃったように、多数の検体をいろんなところでできる ようにするという意味では、TLCとかELISAも、検討していただくとともに、高 い数値の場合にはここにあるような機器分析を駆使するというような方法を構築してい きませんと、基準値が設定されたときに、全国のいろんなところで分析されて出てきた 数値が一人歩きしてしまいます。行政あるいは生産者もすごく大変だということになり かねないのではないかというのが、今日ずっと伺っていて感じたんです。 ○小川部会長  ありがとうございました。このことについてはまた後ほど触れたいと思います。 ○長尾委員  それからお伺いしたいんですが、こういうふうにデオキシニバレノールの汚染度が非 常に高いときに、ほかのマイコトキシンは測定しなくてよろしいのでしょうか。 ○小川部会長  それについては先ほどもありましたようにいろいろあるんだということで、ですから 、今後の課題の1つになると思うんですが、それでよろしいですか。そうすると、いか がでしょう、検査法について今の事務局の提案でよろしいですか。  もう時間が過ぎてしまっているのに申し訳ないんですが、あと2つほどお諮りしなけ ればならないことがございます。  では次に進めさせていただきます。以上のようなことで、暫定基準をつくるというこ とになったわけですけれども、先ほど来、今後研究しなければならないことがたくさん あるということの御指摘がございます。そのことを御討論いただきたいと思いますが、 いかがでしょうか。もう先ほど来、熊谷先生の方からも幾つか出ておりますし、皆さん からも注文がございました。これらについては事務局で整理していただいていると思い ますが、そのほかに何か研究事項としてこういうものを取り上げるべきだというのは。 ○長尾委員  toxicityのところで、gap-junctional communicationがinhibitされるということと、 in vitroのtransformationがpositiveだという報告がありましたので、in vivoでもや はりtumor promotion活性があるかどうかは見ていただきたいと思います。 ○林委員  今までの点で、最初の方でいろいろお話をしたんですけれども、染色体異常が出てい るということで、それはやはりin vivoで本当にそういうふうな危険があるのかどうか をはっきり確かめるということは必要ではないかと思います。 ○三森委員  先ほどから挙げていますように、ラットの発がん性がありませんので、これはやって おいた方がいいと思います。 ○小川部会長  ほかにございませんか。先ほど報告書のところで幾つか今後の課題をいただいており ます。それから、皆さんからも、何人かの方からこういうことが必要ではないかという ご指摘をいただいております。細かいことを言うといろいろあると思うんですが、いか がでしょうか。ほかにございますか。  先ほどから出ているのは全国レベルの汚染実態調査、特に地域差の問題とか季節の問 題が1つ出ていたと思うんです。それから、小麦から小麦粉に加工される段階、あるい は小麦粉から更に食品に加工される段階での減衰状態がどうなっているかということを 含めて、小麦粉とかいろんな製品の汚染実態を知るということが1つあろうかと思いま す。  それから、米の問題が指摘されました。米についても上述のような姿を明らかにする 必要があるだろうということ。小麦粉についても先ほど指摘がありました。それから、 毒性について幾つかの御質問があり、その辺りをどうするかということがあったかと思 います。細かいことを言うともう少しあるかもしれませんが、大きくまとめると、こう いうことかなと思うんですが、いかがでしょう。よろしいでしょうか。熊谷先生、よろ しいですか。  それでは、今日の審議を踏まえて、今後具体的にどのように当面対応されるのか、事 務局の方から。 ○事務局  済みません。ちょっと話が泳ぐかもしれないですが、暫定的な規定値を定めるという ことでございますが、その後、正式なと申しますか、規格基準設定という話になると思 うんですが、その間が余り開き過ぎるのが果たしていいのか悪いのかというのがござい まして、ちょっと気になっておりますのが、動物実験等をやっていくと時間的にどれぐ らいかかるものなのかというのが一つ気になっておりまして、そこら辺を御教示いただ ければというふうに思います。 ○小川部会長  今の毒性の問題についてどなたか。 ○三森委員  発がん性試験は2年間かかるものですので、それをまとめる事業をやりますと3年以 上掛かります。 ○基準課長  今の3年、多分それ以上かかるのではないかと思っております。いわゆる1つのリス クの管理をするという意味での基準づくりというものは、多分実験データを待っている というよりは、実験は実験として進んでいながら、やはり国際的な基準づくりのコーデ ックスの動向を見ながら、そこは私どもの方はある面では柔軟にデータ上きちっとした 基準ができるという判断がつけば、またこの部会にお諮りをして暫定基準を正式基準に 持っていくという考え方でやりたいと思っております。  それで、毒性の方については、コーデックスの方でも、そういったJECFAの方で もラットの発がん性試験は推奨するということでありますので、私どもが責任持ってで きるか、どこかの国がやるのか、その辺はいろいろありますので、その辺の情報収集と いうものはこれからも続けていって、それがまとまれば毒性の評価というものをJEC FAでもやるでしょうし、また毒性部会の方でもお願いするという話題が出てくるかも しれません。 したがいまして、そういう点はそれとして、安全性の方についてはでき ることはさせていただきますが、基準の設定に向けての暫定基準を今回つくり、できる だけ早く指導通知を出し、そのための分析法とサンプリング法につきましては、正式基 準に至るまでは、先ほど中澤先生がおっしゃるように、相当の分析法、サンプリング法 自体でも時間がかかる検討課題だと思っております。したがって、暫定基準向けの分析 法というものをできるだけ早く専門家の皆さんの御意見を今、我々の方である程度検討 しておりますので、御意見をいただいて、それはそれとしてできるだけ早めに通知なり で示させていただきたいと思っております。  正式な基準設定に向けてはそれほど長い、3年とかという時間はとても無理ではない かと思っておりまして、そのための研究としては先ほど部会長がおまとめいただいたよ うな小麦の更なる全国レベルの汚染実態調査でありますとか、小麦粉に加工される場合 の減衰率をどう見るのかとか、あるいは小麦粉そのものがどんなふうな実態になってい るのかということをデータがありませんので、そういうものを調べますとか、あるいは 日本人の場合には米が主食でありますから、米の状態はどうなのか、そこまで基準を、 正式基準の際にはそこまで広げる必要があるのか、そういった面も含めて、これは中期 的といいますか、長期的ではなくて、そういう面での基準設定に向けての検討はさせて いただきたいと思っておりますが、そのような考え方で進ませていただければと思って おります。 ○小川部会長  いかがですか。よろしいでしょうか。ではそういうことで御了解いただいたというこ とにさせていただきます。  そのほかに何かございますでしょうか。委員の先生方。 ○事務局  今後の予定のところで、先ほど説明しなかったので、今説明させていただきます。  今回の合同部会の審議結果に基づきまして、速やかに関係者に対して行政上の指導指 針となると思いますが、その行政の指針としての暫定的な基準値等について通知すると いうことを予定しております。それで、御議論いただきました今後の調査研究について もできるだけ早い段階で実施できるように努めていきたいというぐあいに思っています 。  次回の合同部会を、そういった調査研究の結果を受けて開催して、その場で規格基準 の設定に向けて御検討いただければというぐあいに考えております。 ○小川部会長  何か今の事務局の御説明に御意見ございますか。よろしいですか。委員の皆さんはほ かにございませんでしょうか。  それでは、ないようですので、これで合同部会を終わらせていただきます。どうもあ りがとうございました。                                     (了) 照会先  :医薬局食品保健部基準課 太田・横田 電話   :5253−1111(内線2484・2488) ファックス:3501−4868