01/12/20 第10回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録    第10回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録 1 日時  平成13年12月20日(木)14:00〜15:00 2 場所  経済産業省別館 1014号会議室 3 出席者 [委員]  奥平委員、勝委員、菅野委員、齋藤委員、笹川委員、            桜井委員、佐藤委員、千原委員代理、辻村委員、都村委員、            中山委員、堀越委員       [事務局] 奥田勤労者生活部長、南野勤労者生活課長 4 議題  (1) 特殊法人改革の動向  (2) 建議素案 5 議事内容 ○部会長  ただいまから、第10回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会を 始めます。  本日の議題は、「特殊法人改革の動向」「建議素案」となっています。順次議題に沿 って進行していきます。最初に、「特殊法人改革の動向」について事務局から御説明く ださい。 ○勤労者生活課長  配付資料は、資料1から資料10まで御用意しておりますが、資料5から資料10に ついては、既にこれまで配付している資料であり、本日の審議の参考にしていただくと いう趣旨で添付しておりますので説明は省略させていただきます。  まず、資料1の特殊法人改革の動向について御説明します。特殊法人改革の進捗状況 については、本部会でも適宜御報告させていただいておりますが、最終的に、「特殊法 人等整理合理化計画」としてまとめられ、昨日閣議決定されたところです。全体的に見 てまいりますと、特殊法人と認可法人、併せて163の法人のうち共済組合等が45法 人あり、これを除いた118法人について何らかの方向性が示されたわけです。内訳と して、このうち17法人が廃止、45法人が民営化等、38法人については36の独立 行政法人に再編することとされました。その他政府系金融機関等についてはペンディン グのものもありますが、全体的な方向性としては、このようになっております。  勤労者退職金共済機構については最終的に次のようにまとまっております。事業につ いて講ずべき措置と組織形態について講ずべき措置と大きく2つの指摘に分かれていま す。事業について講ずべき措置については、4つの事項について指摘を受けております 。これは8月10日に公表された行政改革推進事務局の事務事業の見直し案をベースに 、事務局と当省との間で調整を行った結果のものです。  (1)の退職金共済業務全般については2つの指摘があります。1点目は、特殊法人に 係る情報公開の対象法人と同様の情報公開を行うこと、2点目は、明確な運用目標の設 定、適切な事後評価、運用管理・チェック体制の充実強化を実施することです。また、 運用内容や結果について、適切に情報を公開することです。  (2)の中小共済というのは、一般の中小企業退職金共済制度を指しており、経済・金 利情勢に的確に対応した制度設計が可能となるよう、予定運用利回りを弾力的に設定で きるような仕組みに改め(法律事項を政令事項に変更)、積立不足を解消することにつ いての指摘です。以上の3点については、当初の事務事業の見直し案からは若干の字句 の修正はあるものの、ほぼ当初の案どおりの内容となっています。  最後のところで従業員のための福祉施設融資業務については廃止するとされています が、これについては、8月10日の事務事業の見直し案の段階では、行政改革推進事務 局から、実績が少ないので廃止するという意見が付されております。それに対して厚生 労働省としては、実績が少なくなったということを踏まえ、そのあり方を検討すると意 見を述べております。最終的に調整した結果、この融資事業については廃止をするとい う整理がなされました。  2つ目の組織形態について講ずべき措置としては、独立行政法人とするとの判断が示 されております。なお、8月10日の行政改革推進事務局の事務事業の見直しの案の中 では、資金運用について4つの事業を一括化して、1つの体制で運用してはどうかとい う指摘がなされていたところですが、私どもとしては4つの事業の運用責任が曖昧にな ることから、反対意見を申し述べておりました。その結果、この整理合理化計画からは 、資金運用の一括化については落ちております。最終的に見てまいりますと、一時、組 織形態については民間法人化という話も出たわけですけれども、当方の主張をそれなり に御理解いただけたものと考えております。  今後のスケジュールとしては、当初は平成17年度までに必要な措置を講ずるとされ ておりましたが、スケジュールが若干早まり、原則として平成14年度中に法制上の措 置、その他必要な措置を講じ、平成15年度中には具体化を図るという方針が示された ところです。以上です。 ○部会長  いまの説明について、御意見、御質問はございますか。 ○委員  勤労者退職金共済機構そのものが独立行政法人になるのであって、事業本部制をとっ ているそれぞれについては、現在の形のまま残り、個々の事業本部が独立行政法人にな るということはないと、そういう意味でいいですか。 ○勤労者生活課長  はい。 ○部会長  ほかにないようでしたら、次の問題に移ります。議題2の建議について議論する前に 、前回までに皆さんから御要望のあった事項について資料を配付しておりますので、そ れについて事務局から説明をお願いいたします。 ○勤労者生活課長  資料2の実質GDPの成長率の予測です。いろいろな機関がGDPの予測をしており ますが、他の機関がどのぐらいの予測をしているのかというお尋ねがありましたので、 簡単に整理をしております。  横表のいちばん上は、政府の経済見通しであり、昨日決まったところです。平成13 年度と平成14年度を見てみますと、平成13年度の実質のGDPがマイナス1.0% 、平成14年度については0.0%となっております。下のほうにあります民間の予測 に比べると、やや高目の設定となっております。  経済財政諮問会議における経済財政の中期展望の中で、やや先までの見通しが示され ております。これについては、構造改革が実行されない場合と、された場合とに場合分 けがされています。構造改革が実行されない場合については、2010年度までの各年 度の成長率は、平均で0.5%程度、長期金利が急上昇すれば0%近くという見通しが 示されています。構造改革が実行される場合には、平成14年度と平成15年度は0近 傍の成長で、2004年度以降は1.5%程度とされています。  その下が民間機関の予測です。28のシンクタンクの平均について、今月時点で予測 が出されておりますが、平均を見ると平成13年度がマイナス1.1%、平成14年度 がマイナス0.7%となっています。内訳は次の頁にあります。実質と名目とがありま すが、軒並みマイナス成長となっており、平成13年度については、すべての機関にお いてマイナスとなっています。平均で見ると、実質成長率がマイナス1.1%、名目成 長率がマイナス2.4%となっています。平成14年度でプラスを予測しているのは、 28機関中2機関だけであり、それ以外はすべてマイナスです。平均すると、実質成長 率がマイナス0.7%、名目成長率がマイナス1.9%です。  最後に、国際機関における我が国の成長率の予測については、予測時点に若干バラつ きがありまが、すべて暦年ベースで、OECD、IMFはそれぞれ平成13年度、平成 14年度ともマイナス成長です。世界銀行は平成13年度がマイナス成長で、平成14 年度が若干のプラスという予測をしております。以上が各機関の成長率の予測にかかわ る資料です。  併せて資料3の御説明をさせていただきます。前回の部会で、剰余金の配分ルールに ついて、付加退職金と累積欠損金の解消に2分の1ずつを充てるという考え方を明らか にする必要があるという指摘を、本日は御欠席でございますけれども、委員から頂いて おりましたので、これについて簡単に整理したものです。  1の剰余金の配分ルールの設定の必要性は御理解いただいているとおりです。平成1 2年度末で2,000億円、平成14年度末になると3,000億円を超えるような、 多額な累積欠損金が存在する場合には、制度の中に累積欠損金を解消するための仕組み を設けて、制度の安定的運営を確保することが求められます。このため、各年度ごとの 剰余金をすべて付加退職金として配分するのではなくて、その一部を累積欠損金の解消 に充てるための配分ルールを設定する必要があるというものです。  具体的な配分ルールとしては、剰余金の配分に当たっては、基本退職金の利回りにつ いて確実に累積欠損金の解消を図ることができる水準に設定することが大前提になると 思われます。その上で、下の図にあるような2つの考え方があるのではないかと思われ ます。  ひとつ目は累積欠損金が解消するまでは付加退職金は基本的に支給しない、即ち、剰 余金はすべて累積欠損金の解消に充てるという考え方でありますが、そうなるとその期 間の加入者については実際の運用利回りよりもかなり低い給付しか行われないことにな ります。  矢印のところに書いてありますように、たまたまその期間に在職する者に、過去のツ ケを負担させるということとなり、その期間に在職しない者との間に著しい不公平を生 じさせることになるのではないか、加入期間によって不公平が生じることになるのでは ないかと考えています。  ふたつ目は、剰余金は、本来付加退職金として被共済者にすべて支給するという考え 方です。そうなると、累積欠損金はいつまで経っても解消されないということになるわ けであり、赤字が出ればどんどん累積欠損金が溜まっていくことになります。そうなる と、制度の安定的運営に非常に大きな支障が生じる結果になってしまいます。  大きく分けてこれらの二つの考え方があると思われますけれども、この2つの考え方 の均衡を図るという意味で、剰余金の2分の1を累積欠損金の解消に、残りの2分の1 を付加退職金の支給に充てることを基本とすることが適当ではないかと考えています。 両方のちょうど中間の考え方をとるという意味で、バランスをとって2分の1ずつに配 分するという考え方が成り立つのではないだろうかと考えています。以上です。 ○部会長  いまの説明について、御質問等はございますか。特にないようですが、これは参考資 料として参照することいたします。  それでは、次の資料ですが、これまで、当部会でいろいろ議論してきましたけれども 、これを踏まえて、建議素案を作ったものであり、これについて御議論をお願いします 。事務局から朗読していただきます。 ○勤労者生活課長  資料4の建議素案でございます。前回の論点整理の資料を中心に、これまでの議論を 踏まえて肉付けしたものです。読み上げさせていただきます。  I 改正に当たっての基本的な考え方    我が国において、退職金制度は、労働条件の一つとして大企業では広く導入され   ているが、中小企業では大企業に比べると十分に導入されているとは言い難く、そ   の支給水準も低いなど、大企業と中小企業との間でいまだ大きな格差がある。    こうした中で、中小企業退職金共済制度(以下「中退制度」という。)は、国が   簡便かつ加入が容易な退職金共済制度を提供することにより、単独では退職金制度   を設けることが困難な中小企業において、退職金制度を確保するために重要な制度   であり、今後ともその果たすべき役割は大きい。特に、厳しい経済情勢が続く昨今   においては、社外積立として保全され、確実に支払いが行われる中退制度の退職金   は、中小企業で働く勤労者の退職後の生活資金として、その役割はますます大きく   なっている。    一方、我が国においては、景気の低迷が長引き、金利や株価が極めて低い水準で   推移している。このため、一般の中退制度においては実際の運用利回りが予定運用   利回りを下回ることにより、責任準備金の積立不足が増大し、平成12年度末現在   で2,000億円を超える累積欠損金が存在する等厳しい財政状況となっている。   累積欠損金の存在は、本来得られるべき運用収入が得られないことにより積立不足   が一層拡大し、制度の財政の健全性を大きく損なうことになるとともに、制度運営   に対する信頼を損ね、ひいては加入者の減少を招くおそれもあることから、その解   消を図る必要がある。    このようなことから、今後とも、中退制度を維持し、その安定的な運営を図るた   め、早期に基本退職金に係る予定運用利回りを見直すとともに、経済社会情勢の変   化に的確に対応できる仕組みに改め、長期的に安定した制度とする必要がある。  II 具体的な改正の内容  1 予定運用利回りの見直し    基本退職金の予定運用利回りについては、確実に累積欠損金の解消を図り、制度   の財政の安定化を図る観点から、現行の3.0%を引き下げ  %とすることが適   当である。    なお、予定運用利回りを上回る運用実績を上げ、剰余金が生じた場合、それを累   積欠損金の解消にも充てるべきである。その際には、被共済者間の公平性等を勘案   して、剰余金の2分の1を累積欠損金の解消に、残りの2分の1を付加退職金の支   給に充てることを基本として、各年度ごとに当審議会の意見を聴くこととするべき   である。  2 退職金額に係る規定の政令事項化    最近の激しい経済・金融情勢の変化に的確に対応し、予定運用利回りを見直すこ   とが可能となるよう、現在法律に規定されている予定運用利回りを前提とした退職   金額等について、政令事項に変更するべきである。    なお、退職金額等を見直す際には、必ず当審議会において調査審議を行うこと等   により十分に議論の透明性を確保すべきである。  3 勤労者退職金共済機構による資産運用の充実    厳しい経済金融情勢が続き、勤労者退職金共済機構における運用方法等が資産運   用結果に与える影響が大きくなっている中で、勤労者退職金共済機構による資産運   用の重要性が一層高まっている。    このため、資産運用に当たり、運用目標を明確化し、外部の専門家も含めた事後   評価を行い、運用管理・チェック体制を整備するとともに、情報公開について一層   の充実を図るべきである。また、資産運用の主体としての勤労者退職金共済機構の   責任を明確にするとともに、より効果的な資産運用を行うため、規制の見直しや資   産運用の対象の拡大を図るべきである。  4 勤労者退職金共済機構の業務の見直し    勤労者退職金共済機構の業務のうち、最近の実績が減少している融資及びこれま   で実績がない保健施設等の設置については、特殊法人等改革の動向や社会経済情勢   の変化を踏まえ、見直すべきである。  5 掛金日額の範囲の引上げ等    特定業種退職金共済制度における掛金日額について、関係業界等の意見も踏まえ   た上で、今後、必要に応じて引き上げが可能となるよう、賃金の上昇等を勘案して   、掛金日額の範囲を見直すことを検討するべきである。    また、過去勤務通算月額の上限額について、これまでの掛金月額の推移等にかん   がみ、引き上げるべきである。  6 その他    予定運用利回りの見直しについては、責任準備金の積立不足の増大を可能な限り   抑える観点から、周知期間等を考慮しつつ、できるだけ早期に実施すべきである。 以上です。 ○部会長  いま読み上げていただきましたけれども、これを基にして議論をしていきます。何か 、御意見等はございますか。 ○委員  本日この建議をまとめてしまうということではありませんね。 ○部会長  もう少し議論したいと思います。 ○委員  そういう前提でお話をさせていただきます。改正に当たっての基本的な考え方ですが 、情勢のとらまえ方としてはこれでいいと思うのです。実質的に運用が予定したとおり いかなかった。それは、厳しい経済情勢という分析があるのですが、ある意味では結果 責任といいますか、金銭信託に相当なウエイトを置いて、含み損もあるということを明 確に言われたわけです。そういう運用の問題についての一定の責任という問題をどこか に入れるべきではないでしょうか。  全体の基調が安定的というふうに言われておりますが、前のほうに、勤労者にとって 重要な労働条件だということを言っているわけです。その次の具体的なところと絡めて もらってもいいのですけれども、被共済者になる労働者の痛みというものを、もう少し 表現すべきではないだろうかと思います。  本日は、労働者側の筆頭委員がいないからフリーに言わさせていただきます。数字が 空いているところは、言われてから発言したほうがいいとは思いますけれども、率直に 言って生保がまだ1.5%を持続しているわけです。社会的には何も発表していない。 中小企業退職金共済制度が仮に0.5%なり1.0%への予定運用利回りの引下げを発 表すれば、一般紙も含めて世間に公表されることになる。  国がやっている退職金の共済制度が、生保も1.5%前後としているなかで、最も悪 い水準の運用利回りに変更するというのは、ちょっと納得ができない。これまでの議論 からいえば、落ち着くところは1.5%ではないでしょうか。議論はあると思いますの で、そこはまた議論したいと思います。  まとめて言わせてもらいます。政令化の問題については、基本的にはやむを得ないも のと考えますが、この表現がちょっと不満です。私は、こういう言葉の使い方について よく承知していないので、詳しい方に教えてほしいと思うのです。「必ず当審議会にお いて調査審議を行うこと」で切ったらどうか。さらに、「また」を付けて、「パブリッ ク・コメント等により国民が議論に参加できる」とすることでいかがか。ずっと読んで いくと、透明性を確保するのが、「必ず当審議会の」にかかってくるように読めます。 ここは一旦切ってもらって、必ず審議会にかかるというふうに直されたらどうだろうか と思います。  さらに、責任の明確化ということを言っています。私は、この審議会の中でも責任と いうことをよく言ってきましたし、先ほども結果責任と言いました。素案の中の、勤労 者退職金共済機構の責任を明確にするとは具体的にどういうことを指すのでしょうか。 責任を取るというのであれば、それは理事長に責任を取ってもらうことなのか。極端に 言えば辞任してもらおうということも考えられないこともない表現です。だから、どの 程度のことをここで言おうとしているのか、その際に、国あるいは厚生労働省との兼合 いの問題はどうなのか、その辺りについて説明をいただきたいと思います。  保健施設の設置については、実質的にその役割はないと思います。掛金日額の検討は これでいいのではないでしょうか。施行時期については、生保との関係の問題から言う と、いずれ下げると言われていますが、平成15年度からだと、生保はもっと早く下げ るだろうという感じがするからいいようなものの、できるだけ早期に実施すべきである ということとの兼合いで、先の3つの問題と同じことになるのですが、この辺りはもう 少し議論させてほしいということです。 ○勤労者生活課長  ここに書いてありますように、低金利時代が続くと、勤労者退職金共済機構がきちん と効率的に資産運用を実施しているのかどうかということが非常に重要なポイントにな ってきます。その際に、運用主体としての責任の問題をきちんと法律上も位置付けるべ きではないかと考えます。  実際に、他の公的な資産運用機関、例えば年金資金運用基金とか、厚生年金基金連合 会においては、最近の法律改正により、資産運用に関する責任の規定を設けております 。そういった例を参考にしながら、機構についても資産運用の受託者責任に係る規定を 盛り込んではどうかという考え方です。  具体的に申しますと、これは機構の役員に義務がかかってくるわけです。資産運用に 係る業務を忠実に執行する義務、これを一般的には忠実義務と言っております。  2つ目は、利益相反行為の禁止と呼ばれているもので、自己又は第三者の利益になる ような形での資産運用を行うことを禁止するものです。これらの規定を、法律上明確に 位置付けてはどうかという趣旨であり、これらについては、現在内閣法制局とも検討を 進めているところです。  厚生労働省とのかかわり方については、こういった義務に反する場合には、厚生労働 大臣の権限として役員を解任することになるのではないかと思います。 ○部会長  これは、独立行政法人になると、また性格が違ってくるのではないかと思うのですが 、それはどうなるのですか。 ○勤労者生活課長  独立行政法人になると、より法人の自主性が重視されることになります。裏を返せば 、役員の責任がさらに重くなることになります。その辺りは、現在ある独立行政法人の 通則法について、今回の特殊法人等改革によってかなりの数の特殊法人が独立行政法人 になるため、見直しが検討されているようです。そういったものを見ながら、再度必要 な手直しがある場合には、勤労者退職金共済機構について独立行政法人としての新しい 法律を作る際に改めて検討していくことになろうかと思います。 ○委員  経済見通しの予測を見てため息をついているのですが、確かにここ数年こういう厳し い経過で推移するだろうと思います。ただ、この前も申し上げたとおり、長い期間で見 れば、それぞれの長期予測でも平成15年、あるいは平成16年辺りにはプラス成長に 向かう形になっております。ここの空欄の所の何パーセントかという論議になるわけで すが、1.5%ぐらいで、なんとか欠損をさらに大きくしない範疇で頑張って、数年経 って欠損部分を補充していくというような長期展望に立った利回りを考える必要がある のではないのだろうかと考えます。  委員も言われましたように、生保が1.5%で頑張っているので、労働者に対して私 どもも説明できないと思うのです。そういう点も含めて、1.0%と1.5%という考 え方があろうかと思いますが、できるだけ私どもとしては1.5%ぐらいの線で、さら に審議をいただければと思っております。 ○委員  いまのお話では、1.5%で頑張ってというお話があるわけです。心情的には、高い 利回りに設定するのが、労働条件の向上を図るためには必要だというのは十分わかるわ けです。ただ、先ほどの見通しでもかなり厳しい予測が出ているということでしたが、 現実はもしかしたらもっと厳しいのかもしれない。不良債権の問題を見ても、いま第2 分類のところがいちばん多いわけですけれども、80兆円ぐらいの不良債権があって、 それは5割ぐらいが建設、不動産、小売に集中している。この部分をどう整理するのか ということがいま非常に大きな課題になっています。マイカルのような第2分類のとこ ろが、急に破綻してしまうということが現実に起きている中で、政府が2、3年で不良 債権を処理すると言っている下では、かなり厳しい状況がここ2、3年、あるいは80 兆円ということを考えると、もう少し長く続くかもしれないということも考えておかな ければいけないのではないでしょうか。  もちろん1.5%で頑張るということも考えられるわけですが、現実にそのシナリオ が悪くなれば悪くなるほど、欠損金は拡大してしまうわけであり、制度の維持のほうが 重要であって、そういった客観的な情勢も踏まえながら議論するべきではないのかと考 えています。  ここまで赤字が膨んでしまったというのも、1990年代に入って予定運用利回りが 高い水準にあって、引下げへの対応が遅れたということがいまの状況の背景にあるとす ると、ほかの生保との比較というのではなく、勤労者退職金共済機構の欠損金の現状、 経済の厳しい状況を考えなければならないのではないかと思います。  もし、そういう意味であれば、先ほどもいろいろ出ていましたように、受託者責任を 一層明確化して運用を拡大することを図り、運用がたまたま良くなれば、それも半分は 利回りとして上乗せされるような形にしたほうが、むしろこの制度の存続ということを 考えた場合にはリスクが小さいのではないかと思います。 ○委員  今朝ほど、特定退職金共済の利回りのことを聞いてきました。各商工会議所によって 多少の差はあるらしいのですが、大体いまは1.5%だそうです。まだ、確実な日にち と数字はわからないのですが、下げていく方向で検討しているそうです。私どもが1. 5%にこだわって、いままで累積をつくってきたという前例をまたここで積み重ねるこ となく、なるべくその欠損金を少なくしていかないと、永久にいままでと同じような形 で進んでいくと思います。  ある程度、ここで思いきった数字で少しでも欠損金を少なくする方向に持っていくべ きではないかという感じがしています。 ○委員  経済見通しの数字が本当にミゼラブルで、こんな経済がいつまで続くのだろうかとい う気持は全く同感です。来年度の政経見通しが昨日発表になりましたが、逆を言うと実 質ゼロということです。名目は0.9%マイナスなのです。消費者物価も卸物価もマイ ナスということで、金利の面から見ると、実質金利はプラス1でも、デフレーターがマ イナス1であればプラス2ということになります。  金利の世界というのは、名目のほうですから、本当はもっと厳しく、実質でゼロとい うことで尺度を測るよりは、もっと数字はきついというふうに見たほうがいい、実際の 商売の取引とか、利息がいくら付いてくるかというのは名目の世界ですから、もうちょ っと厳しいだろうと思います。民間の生保とか、特定退職金共済といったところも1. 5%を守りきれないということでいまそういう動きになっているということだと思いま す。  こちらが1.5%になったから、実際の経済が1.5%で回るようになるということ ではなく、経済のメカニズムは外の全体の需給といったところで決まってくる話ですの で、そういう動きにいかに合わせてリーズナブルな金利水準を設定するかということが 重要だと思います。そういう面で見ると、1.5%を維持したいというのは、我々事業 者の立場も、気持としては全く同じですが、やはり、赤字を出さないというレベルでリ ーズナブルな水準に設定していくということで考えるべきではないかと思っています。  建議の素案の文章の関係ですが、全体的にはよろしいのではないかと思います。Iの 基本的な考え方のところは、場合によると中退制度の重要性みたいなことを、もうちょ っとプレーアップされたらいいのかなと思います。  その背景は、先般まとめた与党の来年度の税制改正で、連結納税制度などの仕組みが できましたけれども、一方では、退職金引当金をこれから段階的に制御していくことに なっています。大企業では4年、中小企業では10年ということで、段階的に無税積立 てが廃止されます。また、401kとか新型の確定給付年金といった制度ができていま す。これらと並んで、こういう制度に代わる措置として、小さい企業でも利用できる仕 組みの重要性をもうちょっと強調し、なるべくたくさん加入してもらうようにというこ とで、少し中に触れられたらどうかという気がいたします。 ○委員  委員の提案ですが、「見直す際には必ず当審議会において調査審議を行う」という文 章は確かに曖昧で、後ろにかかっていくような感じがあります。ここは、審議会できち っと審議するのだ、ということを明記するという意味で、委員が言われたように、その 前のところで切ったほうがいいのではないかと思います。  運用利回りの見直しについてですけれども、将来の中退制度の財政の安定をいま一番 考慮すべき事項だと思うのです。年金でもそうなのですけれども、先になって考慮する と、なお悪化していくということがあるわけです。いま対策を講じないと、さらに悪く なっていくということがあります。給付経理の将来推計を見ても、そのパーセントが0 .5%違っただけで、かなり将来的に累積が膨んでくるわけです。  そういうことを考えると、中退制度の財政の安定ということをいま考えるべきで、も し運用実績がうまくいった場合には、具体的な改正の内容のところで、配分していくと 書かれているわけです。この見直しについては、やや厳しくせざるを得ないのではない でしょうか。GDPの成長率の予測なども、それぞれの国際機関がいろいろな要因を分 析して出していますので、わりと客観的なデータとして捉えることができると思います ので、中退制度の財政の安定ということをいまいちばんに考えるべきではないかと思い ます。 ○委員  現在は3%の利回りです。これを引き下げるということは反対ではありません。引き 下げなければいけないし、財政の安定化にも考えを及ばさなければいけないと思ってお ります。ただ1.5%に変更して、ケース2よりは日本の経済は良くなるのではないか と思うのです。  ケース2で見ても、平成17年度以降欠損金が改善に向かうわけです。いつも言って おりますように、もう少し長い目で、労働者福祉ということも考えていくならば、ただ 単に財政安定化だけでなく、受け取る側のことも考えて御審議いただきたいという気が します。 ○委員  同じようなことになりますし、公益の方や、経営側の方がおっしゃっていた辺りのこ とも、全くわからないで言っているわけではないのです。労働者の側から見ると、いま は非常に失業率が高くなって、ますます上がるだろうと言われています。実質的な賃金 も、名目賃金も下がってきている。労働条件は非常に悪化している。経営者の側も中小 企業の場合は大変な立場に立たれていると思うのです。  そういう中で、一般に言われるボーナス、この冬のボーナスもマイナスになると言わ れています。何も良い話がないわけです。折角国が関与している退職金の問題について は消えてなくなるわけではないわけですが、どうなってもいいとは思っていないわけで す。2.0%にしろとか言っているわけではないのです。ここは、労働者の前に示して 恥ずかしくないような数字にしていただきたいと思うのです。  私たちの立場からすると、生保は1.5%をやってるじゃないかという話が必ず出ま す。そういうことの説明がつかないのです。これは、勤労者退職金機構の運用が非常に まずかったからだという説明をしてもいいのならそれで説明します。現実に270万人 ぐらいの労働者、組織されていない人も結構いるわけですが、これはこれとして、私た ちは説明の責任があります。  そのことを考えると、選択肢は非常に狭められている中で、なんとか1.5%という ものが残り得ないのかどうかということを考えてきたわけですが、何度言っても同じこ とになりますが、そんなことです。 ○委員  日経新聞によると、生保は来年度中に0.5%下げる予定だと書いてありました。来 年ということですから、そちらが後なのかもしれませんが、確かにおっしゃるとおりだ と思います。どうせ近い将来には下げる可能性もあるのではないですか。 ○委員  そのことは承知しています。ところが、この審議会がこういう建議を行ったり、答申 を行うと、必ずニュースになり、新聞に報道されます。中小企業退職金共済制度の予定 運用利回りは1.0%になったという見出しが出るわけです。いまおっしゃっているよ うに、生保が下げるという話は十分承知のことなのです。  でも、現実の問題としてそんなことは多くの勤労者にとっては知らない話であって、 関心のある人は知っているかもしれないが、いま現実には生保は1.5%でやっている ということは私たちも説明しています。それぞれの業界の中で、企業年金等をいろいろ やっているわけです。  そこで、国が積極的に進めてきた中小企業退職金共済制度が先んじて1.0%という のは何と言ったらいいのでしょうか、非常に困った話だということです。 ○委員  いま、生保等がやっている1.5%というのは、いままでの中小企業退職金共済制度 の3.0%に対応する1年半とか2年前からそういう水準でしたから、それとの比較な のだと思います。いまのいろいろな金銭信託とか、財投の運用利回りとか、金融債等の 利回りといったものの金利の水準で、これからどういうふうに運用できるかということ を生保も検討しているわけです。これからの金利水準がどうなるかということをたぶん どこでも議論しているのだと思います。  後先の問題があって、これは法律で出さなければいけないから、若干こっちの方が先 行することになるのかもわかりませんが、それは実態経済の中での金利水準がどう動く かに視野を据えて議論するということでいかざるを得ないのではないかと思っておりま す。その問題は、心情的な問題があることは我々も十分わかりますけれども、その実態 経済での金利の動きがどうなるかということを中心的視座に据えて議論せざるを得ない ということではないかと思います。 ○部会長  この問題についての議論は出尽くしたのではないかと思うのですが、いままでの御議 論を伺っていて、前文のところで、こういう事態を招いたのは一体誰の責任かという話 がありました。誰の責任と言われても困るのですけれども、いずれにせよこういう事態 になったということは非常に残念なことだし、特段誰が悪いというわけではないにしろ 、こういう事態になってしまったということは、制度を仕組んだ人にも責任があるのか もしれませんが、非常に遺憾なことだということぐらいは書いておいたほうがいいので はないでしょうか。 ○委員  生保や、財団法人みたいに基金の運用益で事業をやっている所も、みんな同じく苦し んでいるのです。特定の所だけが非常におかしい運用になっているということだったら そこの責任があるのだけれども、これはマクロ経済の失敗のツケだと思うのです。どこ かの基金の運用がものすごく成績が悪いということではなく、こんな低金利、あるいは こんな経済運営になるとは誰も予想していなかったということで、それはマクロ経済運 営の失敗だと思います。だから、そこをしっかりやっていただきたいと言いたいのです 。  あまりそこを言っても仕方がないので、さはさりながら資金運用は少しでも有利にや ってもらいたいということの意味が、後の各論の3の話だと思うのです。あまり責任を 問う問わないというのもなかなか難しい話ではないかという気がします。 ○部会長  言い方を変えるとすれば、このような事態を踏まえて、予定運用利回りの引下げとい うか、退職金を実際に受ける人たちに対して期待感を失わせるという意味のことをやら ざるを得ないというのは非常に遺憾なことだと思います。苦渋の選択みたいなニュアン スがもう少し出るように吟味したほうがいいのではないかと思います。いまのお話を伺 っていると、これから健全な運用を図るためには予定運用利回りとともに、運用をしっ かりやるという趣旨のことが出てこないといけないような気がします。  2番目の、政令化するときのところの書き方が持って回ったような書き方だから、そ の辺をもう少し工夫してもらったら、もう少し明確化できるのではないかと思います。 3番目の責任を明確化するというところも、ちょっと抽象的すぎるような気がしないで もないから、もうちょっと例示を具体的に書いたほうがいいのではないでしょうか。あ とは、空欄の数字をどのように書き込むかということですが、この辺はいろいろ御議論 があるところだと思いますので、少し頭を冷やして、国の予算も終って、どのような論 調が月末から年初にかけて出てくるかということも踏まえた上で、1月に改めて議論す ることにしたらどうかと思います。 ○委員  いまおっしゃられたように、早く世間に出ることの影響というのもあると思いますの で、ここの議論については、あまり早く出ないようにして、いま言われたようにタイミ ングを考えてやっていただくほうがよろしいのではないかという気がします。 ○委員  それならそれでよくリークされるのか、それは向こうが取っていくのかはよくわかり ませんが、こういう問題は報道のほうが先に出てしまうということがあります。みんな 興味を持っているわけですので、そこは委員が言われたようにしていただけたらと思い ます。 ○勤労者生活部長  予定運用利回りをどうするかということですが、私の正直な気持としては、決定はで きるだけぎりぎりまで延ばしていきたいというのが本当の気持です。ただ、そうは言っ てもあるところで、こういう水準にしますということをアナウンスしていかなければい けないと思うのです。いまの経済状況の変化が非常に激しいものですから、1カ月前の 判断が、もう今月は違っているというようなことが起こります。ですから、空欄をいく つにしようか、まだ申し上げておりませんが我々の腹として大体の案はあります。しか し、本当にそれでもいいのかという不安もあります。  それから、委員がおっしゃるように、なにか神風が吹いて経済が良くなってというこ ともなきにしもあらずかなということです。その意味では、どのタイミングで何%とい うふうに入れるか、非常に悩ましいと思っています。これまでの議論で、今回の法律改 正の中での最大のポイントになるのは、形式的な話ではあるのですけれども、いままで は法律で決めていたこの利回りを、政令化するということになるわけです。  政令化されることのメリットというのは、いくつにするかということを決めるときに 、この審議会で決められるということなのです。国会で政令化するということを認めて いただければ、直前の状況を見て、何パーセントにするかということを、この審議会で もう1回決められるということもあります。ですから、そのようなことも考えながら、 ここは議論していきたいと思っています。  ただ、国会に提出するときに、今度はいくつにするのだと、ここは白紙で出してきた のかというのも、通らないという気がしますので、ここの空欄をいくつにするかという ことについては、十分に皆さんの意見をお伺いし、時期も見極めながら決めていきたい と思っております。 ○委員  3番の資産運用の充実の下から3行目に、「責任を明確にする」というのがあります 。これは課長から、「法律で明記する」と説明がありました。ただ、責任を明確にする というだけだと、ちょっと曖昧な印象を持ってしまうので、例えば「責任を法的に明確 にする」といったような形で、受託者責任を法律で明記するという流れにあるというこ とを明確にしたほうがいいのではないかという気がするのです。 ○部会長  その点も踏まえて、ここのところはもう少し検討していきたいと思います。次回は1 月18日ということで1カ月ありますので、皆さんもよくお考えいただきたいと思いま す。どうもありがとうございました。 6 配布資料  (1) 特殊法人改革の動向  (2) 各機関による実質GDP成長率の予測  (3) 剰余金の配分ルールについて  (4) 建議素案  (5) 予定運用利回りについて  (6) 剰余金の配分について  (7) 剰余金の配分について考慮した場合の退職金額モデルケース  (8) 中小企業退職金共済制度の資産運用について  (9) 勤労者退職金共済機構の業務について (10) その他の事項 (注)配付資料については多量のため省略しておりますが、厚生労働省(大臣官房総務    課広報室又は労働基準局勤労者生活部勤労者生活課)において供覧しております    。    ┌───────────────────────────────┐    │照会先 厚生労働省労働基準局勤労者生活部勤労者生活課     │    │    担当:河野・武村                   │    │    03(5253)1111(内線5376)       │    └───────────────────────────────┘