01/10/12 第5回厚生科学審議会生殖補助医療部会議事録 第5回 厚生科学審議会生殖補助医療部会議事録 厚生労働省雇用均等・児童家庭局 母子保健課 第5回 厚生科学審議会生殖補助医療部会議事次第 日 時  平成13年10月12日(金)14:00〜17:00 場 所  厚生労働省専用第21会議室(第5合同庁舎)17階 議 事  1.検討事項1について  2.その他 ○桑島生殖補助医療対策準備室長  ただいまから第5回厚生科学審議会生殖補助医療部会を開催いたします。  本日は大変お忙しい中、お集まりをいただきましてまことにありがとうございます。  本日は安藤委員、新家委員、高久委員、古山委員、町野委員がご欠席のご連絡をいた だいてございます。  それでは早速議事に入りたいと存じます。矢崎部会長、議事の進行をどうぞお願い申 し上げます。 ○矢崎部会長  議事に入ります前に、まず本日の資料の確認をお願いします。 ○桑島室長  それでは配付資料の確認をさせていただきたいと存じます。資料は資料1、資料2、 参考資料と毎回ご用意させていただいてございます資料集と、今まで各委員からいただ いてございます意見も併せて机上に配付させていただいてございます。欠落等ございま したら、ご指摘をいただければと存じます。よろしゅうございますでしょうか、お願い いたします。 ○矢崎部会長  では早速議事の1、検討課題1について入りたいと思います。前回も各委員の間で大 変活発な意見交換を行っていただいたところですが、前回同様に事務局の方で議事録に 基づいて議論の結果を資料の中に盛り込む形で整理していただきました。8ページの(3) の「提供卵子による体外受精」から、16ページの(2)「精子・卵子・胚の提供に対する 対価の条件」の「『実費相当分』として認められるものの具体的な範囲をどのように設 定するか?」までが、今回新しく「●」、(案1)、(案2)というようにつけ加わっ た部分かと思いますが、詳細につきまして事務局から説明をお願いいたします。 ○桑島室長  それではお示しをいたしております資料1に基づきまして、前回の議論を事務局で取 りまとめたものをご説明申し上げます。資料の8ページをお開き願います。見開きにな るかと思いますが、8ページ、9ページにわたってございますが、(3)で「提供卵子によ る体外受精」のところでございます。  検討課題としては「卵子提供を受けなければ妊娠できない」、このことに対する具体 的な基準をいかがかということでご議論いただいてございます。  9ページの方にまいりますが、真ん中の中ほどのところでございます。 ●医師の裁量とする(法律やガイドラインで、国として義務的な基準は示さない)。 (案1)ただし、国が実施に当たっての準則となる考慮すべき基準を示す。 具体的な基準については、(案1−1)自己の卵子が存在しない場合のみならず、自 己の卵子では妊娠できない場合も対象とする(機能性不妊、原因不明不妊等の場合も対 象とする)。  具体的な基準は?ということですが、この部分につきましては、専門家の先生方にご 依頼できればということでご議論をいただいておったかと思います。 (案1−2)自己の卵子が存在しない場合に限る、ということでまとめさせていただい てございます。 (案2)実施に当たっての準則となる考慮すべき基準も国として特に示さない。 卵子提供についての優先順位を設けるか?  これは前回、前々回でご議論いただいてございますが、4ページをごらんいただけれ ばと思います。中ほどから若干下の方になりますが、(優先順位について)ということ で、(案1)法律やガイドラインを含め、国として基準は特に示さない。 (案2)法律やガイドラインで、国として義務的な基準は示さない。ただし、国が実施 に当たっての準則となる考慮すべき基準を示す。  具体的な考慮すべき基準としては、 (案2−1)待機期間を基準とする優先順位を示す。 (案2−2)医学的理由(無精子症、ターナー症候群・早発閉経など)や待機期間、そ の他の理由(年齢、既に有している子どもの人数)などを総合した優先順位を示す。  こういった整理をいたしてございます。  次のページをお開き願います。次は胚についていろいろと先生方にご議論をいただい たところでございますが、ここはかなり議論が出てございまして、まず(案1)と(案 2)に大きく分かれてございます。 (案1)提供胚の移植を認める。胚の提供を受けなければ妊娠できないことの具体的な 判定基準は医師の裁量とする(法律やガイドラインで、国として義務的な基準は示さな い)ということでございます。  ただし、国が実施に当たっての準則とする考慮すべき基準を示す。  具体的な基準につきましては、先ほどもございましたけれども、専門家にこの部分は ご依頼できないかということで議論がございました。  医学的な基準以外の子を安定して養育していけるか、生まれた子に対する真実告知。 この部分は後日ご議論いただきます関連した部分が、生まれた子の出自を知る権利(検 討課題3)などに大きく影響してまいります。 (案1−1)カウンセリングにおけるスクリーニングやインフォームド・コンセントで 対応することとする。この部分につきましても、課題2でカウンセリング、インフォー ムド・コンセントの内容等に関連してまいります。 (案1−2)個別の事例について、公的な第三者機関(公的管理運営機関?)の審査を 行うこととする。  関連といたしまして、課題3に出てまいりますが、公的管理運営機関の具体的な業務 の中でご議論いただくということに考えてございます。 (案2)そもそも提供胚の移植は、(当分の間)認めないというご意見も一方でござい ました。  胚の提供についての優先順位につきましては、先ほど4ページを見ていただきました とおりでございます。  胚の部分でかなりご議論が大きく分かれたところですが、胚に関しまして、その後の 2つ大きな課題がございまして、その問題として、卵子の提供を受けなければ妊娠でき ない夫婦も、卵子の提供を受けることが困難な場合には、この余剰胚の移植を受けるこ とができる、ということで、そもそものところでかなりご議論があったわけですが、次 のページをごらんいただきますと、(案1)で「卵子の提供を受けなければ妊娠できな い夫婦」も卵子の提供を受けることが困難な場合には、提供された余剰胚の移植を受け ることができることとする。まずできるのだということを(案1)では言っておりま す。  その際の「卵子の提供を受ける」ことが困難であることの具体的な判定基準?につき ましては、この部分も専門家のご意見をいただきたいということで、具体的にはまだご 議論ございませんでした。 (案2)それそも余剰胚の移植は(当分の間)認めない。  大きくこの(案1)、(案2)に分かれたわけでございます。  それから、追加部分ですが、「卵子のシェアリング」及び「兄弟姉妹からの精子・卵 子・胚の提供」について検討いただくという部分もこのシェアリング等につきましては 残っておるわけでございます。 胚の提供を受けなけれは妊娠できない夫婦は、余剰胚の提供を受けることが困難な場 合には、精子・卵子両方の提供によって得られた胚、新たにつくられた胚の移植を受け ることができることができる。この問題につきまして、ここも大きく分かれるわけでご ざいます。 (案1)「胚の提供を受けなければ妊娠できない夫婦」は、余剰胚の提供を受けること が困難な場合には、精子・卵子両方の提供によって得られた胚の移植を受けることがで きることとする。  その際の「余剰胚の提供を受ける」ことが困難であることの具体的な判定基準は?と いうところで、この部分については特にご議論が残ってございますけれども、クエスチ ョンマークとなってございます。 (案2)この胚の移植は当分の間認めない、ということで、大きく(案1)、(案2) ということで分かれてございます。  次のページに移りますが、「卵子の提供」が困難な場合に、「卵子のシェアリング) と「兄弟姉妹等からの卵子の提供」(後述)と上記による「余剰胚の提供」をどのよう な優先順位で適用するか?ということにつきまして、これはまた後ほどの課題というこ とでございます。  次に、(2)「子宮に移植する胚の数の条件」でございますが、そもそも原則として 2個、移植する胚や子宮の状況によっては、3個までとするということで、専門委員会 の結論をいただいておるわけでございますが、その部分についてのご議論の結論は 「●」でお示しをしてございますが、医師の裁量とする、ということで結論をいただい てございます。 (関連)といたしまして2つございまして、1つ目が、1回に2個以上の胚を子宮に 移植する場合における提供を受ける夫婦に対する品胎(3胎)を受け入れることについ てのインフォームド・コンセント、つまり減数術をしないというようなことをちゃんと インフォームド・コンセントしておくということが(検討課題2)の関連でございます が、あるということ。  2つ目といたしまして、未熟児の出生に備えた受入医療施設の確保等に関する実施医 療施設の基準、これも(検討課題2)の関連でございます。  次のページにまいりますが、今度は、精子・卵子・胚を提供する側の条件でございま す。この部分につきましてはかなりの部分が専門委員会のご議論の結論をそのまま引っ 張ってきてございます。 (1)提供者の年齢及び自己の子どもの有無  ○ 精子を提供できる人は、満55歳未満の成人とする。  ○ 卵子を提供できる人は、既に子のいる成人に限り、満35歳未満とする。ただし、 自己の体外受精のために採取した卵子の一部を提供する場合には、卵子を提供する人は 既に子がいることを要さない。 (2)同一の者からの卵子提供の回数制限  ○ 同一の人からの卵子の提供は3回までとする。 (3)同一の人から提供された精子・卵子・胚の使用数の制限  ○ 同一の人から提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受けた人が妊娠し た子の数が10人に達した場合には、当該同一の人から提供された精子・卵子・胚を提供 された精子・卵子・胚による生殖補助医療に使用してはならない。 (4)提供精子の採取、使用に当たっての感染症等の検査  ○ AIDの実施に当たっては、提供精子からのHIV等の感染症の危険があること から、そうした事態を未然に防ぐため、提供精子の採取・使用に当たっては十分な検査 等の予防措置が講じられるべきである。 ○ 提供精子による体外受精の実施に当たっても、提供精子からのHIV等の感染症 の危険があることから、そうした事態を未然に防ぐため、提供精子の採取・使用に当た っては十分な検査等の予防措置が講じられくべきである。  次のページでございますが、どのような感染症について提供者の検査を行うか? (案1)日本産科婦人科学会の会告「非配偶者間人工授精と精子提供」に関する見解 4. (p112)及びその解説の当該部分に準じた検査を行うこととする。  具体的に(※1)、(※2)でお示しをしてございます。 (※1)精子提供者は健康で、感染症がなく……  (※2)精子提供者は、感染症(肝炎、AIDSを含む性感染症等)……を予め行 い、感染症のないこと、……を確認する。 (案2)現在のAIDにおける一般的な検査に準じた検査を行うこととする「(案1) に加えて、血清反応、梅毒、B型肝炎ウイルスS抗原、C型肝炎ウイルス抗体、HIV 抗体検査等についても検査を行う」。 (案3)、(案2)に加えて、クラミジア、サイトメガロウイルス抗体検査についても 行うこととする。 卵子提供者の感染症の検査を行う場合、卵子凍結が技術的に確立していないため、検 査による感染が判明しない期間(ウィンドウ・ピリオド)を考慮した感染症の検査が困 難であるが、これについて、提供を受ける者のインフォームド・コンセントを得ればよ いこととするのか? (案1)ウィンドウ・ピリオドに関するリスクについて提供を受ける者のインフォーム ド・コンセントを得ることとする。 (案2)受精卵を凍結しておいた上で、ウィンドウ・ピリオドが終了した後、感染症に ついて再検査し、陰性を確認した上で移植をする。  次の課題は感染症のほかにも検査すべき項目はないか?ということでご議論いただき ました。 ● 遺伝性疾患に関しては、日本産科婦人科学会の会告「非配偶者間人工授精と精子提 供」に関する見解及びその解説の当該部分に準じたチェック(問診)を行うものとす る。具体的なところは(※1)精子提供者は……自己の知る限り遺伝性疾患を認めず… …を条件とする。  (※2)自分の2親等以内の家族及び自分自身に遺伝性疾患のないことを提供者の条 件とする。  そうした検査の結果を知らせるのか? ● 知らせることとする。 (2)精子・卵子・胚の提供に対する対価の条件ですが、「実費相当分」というところ で具体的にはどの範囲を言うのかということでございます。ここもかなり細かく案が分 かれてございます。 (案1)個々の事例について、精子・卵子・胚の提供のために提供者が実際に支払った 金額のみを「実費相当分」として認める。 (案2)個々の事例について、提供者が精子・卵子・胚の提供のために通常支払う額を 算定して、それに一定額を加算した額を「実費相当分」(の上限)として認める。 加算を認める具体的な額(の上限)としては、 (案2−1)治験に準じた額とする(具体的には1万円前後?7千円〜1万2千円ぐら いが適当ではないか?) (案2−2)寸志程度の一定額とする(具体的な額はということではまだクエスチョン がついてございますが、そういうご意見もございました)。 (案3)「実費相当分」という以上の具体的な基準は特に示さない。 以上が、前回のご議論をまとめさせていただいた結果でございます。どうぞよろしく お願いいたします。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。前回と同様に委員の方々のご意見が大体一致したところは 「●」で示し、一致しないところは案として網羅的に整理していただいたつもりでござ います。ごらんのように、「●」のところがほとんどないということは、これからまた 議論しなくてはならないということかと思います。 ただ、このように全部問題点をまず検討課題1でリストアップして、そして2回り目 にこの案をもとにして、またご議論をいただいて進めたいと思っております。  そこで、今、事務局から説明申し上げました「●」案の中で、委員の方々で何か特段 の、これが落ちているとか、そういうものがありますれば、コメントいただければと思 いますが、いかがでしょうか。 ○鈴木委員  前回お休みしてしまったので、今、事務局に質問ですが、よろしいですか。○矢崎部 会長 はい。 ○鈴木委員  14ページの(2)「同一の者からの卵子提供の回数制限」、卵子提供は3回までとすると なっていて、これについても若干議論はあったようなのですが、何を3回ということに 議論が落ちついたと今の段階では考えておければよろしいのでしょうか。 ○矢崎部会長  これは議論の中では、卵子を採取する回数と私は理解していましたが。 ○鈴木委員  採卵の回数が3回までですね。 ○矢崎部会長  はい。 ○矢崎部会長  そのほか、よろしいでしょうか。  それでは、この件案につきましては、また2回り目でご議論、何か永遠に結論がつか ないような感じしますけれども、できるだけ皆さんのご意見が反映したものにまとめた いと思いますので、よろしくご協力のほどお願い申し上げます。  では本日残された検討課題1の部分に入りたいと思いますが、事務局から説明がござ いましたように、17ページの最初の部分、「実費相当分」の金銭等のやりとりの方法は どうするか?  これも前回少し議論が入ったと思いますけれども、これはここの委員会で議論するの はなかなか困難と思いますので、これは事務局でそれぞれ「○」で残しておいていただ ければよろしいかと思いますのでお願いします。  その下の「※」の「他の夫婦が自己の体外受精のために採取した卵子の一部の提供を 当該卵子の採卵の周期に要した医療費等の経費の半分以下を負担して受け、当該卵子を 用いて提供卵子による体外受精を受けることも認める」と。専門委員会の報告書の29 ページに書いてありますが、少し記憶を新たにする意味で、下の「○」と検討事項につ いて、事務局から読んでいただけますか。 ○桑島室長  それでは、今、部会長からご指摘をいただいた部分の下の「○」のところから読ませ ていただきます。 ○ 他の夫婦が自己の体外受精のために採取した卵子の一部の提供を受けて提供卵子に よる体外受精を行う場合に、卵子の提供を受けた人が当該卵子を提供した人に対して、 当該卵子の採卵の周期に要した医療費等の経費の半分以下を負担することは、他の方法 による卵子の提供に際して当該卵子を提供する人にかかる医療費等の経費を当該卵子の 提供を受ける人が負担することと本質的に相違はないものと考えられる。(p30) (要検討事項)  他の夫婦が自己の体外受精のために採卵した卵子の一部の提供を受けて提供卵子によ る体外受精を行う(卵子のシェアリング)場合に、卵子の提供を受けた人が当該卵子を 提供した人に対して負担する「当該卵子の採卵の周期に要した医療費用との経費」の具 体的な内容はどのように設定するか? ○ 卵子のシェアリングの場合に、卵子の提供を受けた人が当該卵子を提供した人に対 して負担する「医療費等の経費」には何が含まれるのか? 精子・卵子・胚の提供に対する対価の条件において認められる「実費相当分」と同じ とするのか? ○ 卵子のシェアリングの場合に、卵子の提供を受けた人が当該卵子を提供した人に対 して負担する「医療費等の経費」は実費とするか?標準的な医療費等の経費から経費を 一律に設定するか? ○ 排卵誘発・採卵までの経費とするのか?提供する夫婦の胚の凍結や胚移植にかかる 経費も含めるか? 卵子のシェアリングの場合に提供する卵子の数(又は割合)はどうするのか?  採卵された卵子の数の半分以下とするか?提供者が決めることとするのか?また、採 卵された卵子の数が少なかった場合にはどうするか?さらに、卵子のシェアリングの場 合に、卵子の提供を受けた人が当該卵子を提供した人に対して負担する「医療費等の経 費」の額は、提供を受ける卵子の数(又は割合)に比例させるのか?  卵子のシェアリングの場合に提供する卵子の選別を認めるか?  (選別は認めないこととするのか(ランダムに選択するのか?)卵子の質などにより 提供者が選別できることとするのか?また、卵子の質により卵子の提供を受けた人が当 該卵子を提供した人に対して負担する「医療費等の経費」の額に差異を設けることを認 めるのか?)  以上でございます。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。この項目は、経費の視点から議論になっておりますが、そ の後半の2つは、シェアリングした場合の提供する卵子の数、あるいはその卵子の選択 を認めるかということで少し異質なところがありますので、順次1番目から議論を進め させていただきたいと思います。  それでは「医療等の標準的な経費」、この内容は何が含まれるかというのは、これは 枠で囲ってある中の一番上の「○」ですが、内容は何が含まれるかについては、精子・ 卵子・胚の提供に対する対価の条件において認められる医療費等の標準的な経費である 「実費相当分」ということでよろしいでしょうか。  もしご議論がなければ「実費相当分」というふうにさせていただきたいと思います。 その場合に、今申し上げた2番目の「○」は標準的な医療費、さっき先走って「標準 的」という言葉を使ってしまいましたが、標準的な医療等の経費から、経費を一律に設 定するのか、あるいは次の排卵誘発・採卵までの経費とするか?提供する夫婦の胚の凍 結や胚移植にかかる経費も含めるか?経費の内容をどこまで認めるかということでござ いますが、何かご意見ございますでしょうか。  これは一番最後の排卵誘発・採卵までの経費、すなわちそのプロセスのトータルの経 費を積算して、それを実費として負担いただくか、本当の採卵だけの直接経費だけを実 費にするかというふうに理解されると存じますが、何か特段のご意見ございますでしょ うか。○小泉委員 「実費相当分」というのは、排卵誘発・採卵を行った医師に対し て、それを受けた患者さんが具体的に支払われた金額という意味なのでしょうか。「実 費相当分」というものの内容を少し教えていただきたい。 ○矢崎部会長  小泉委員が言われた内容は、この一番下の「○」の部分ではないかと思うのですけれ ど。 ○小泉委員  そうですね。 ○矢崎部会長  下の「○」の部分と思いますが。 ○小泉委員  それに限らないという意味ですか。今申し上げた、下の「○」の部分に限らず、それ も含めて「医療費等の経費」ということでしょうか。 ○矢崎部会長  これは理解としては「実費相当分」というのが根源にあると思いますので、小泉委員 の言われたとおりのことが行われるのではないかと理解されます。 ○吉村委員  これは「経費」と「実費」という言葉が出てくるから紛らわしく、先生のように疑問 を持たれると思うので、ここで書かれているのは排卵誘発と採卵をした経費というご理 解でいいと私は思うのです。ただ、今のような体外受精が行われている状況では、これ は保険適用にはなっておりませんし、機関によって随分値段が違います。施設によって 排卵誘発は保険になされている施設もあります。それからしっかりと自費で取っておら れる施設もあります。ですから、患者さんが支払いするお金は随分違ってくる。  しかし保険の制度から見ますと、当然排卵誘発に関しても、これは自費でやるべき問 題だと思うのです。排卵誘発に関しましてもGnRH・アゴニストというのを使います と、これは結構なお金がかかるわけです。1本が2万ぐらいかかります。それが1本で 済まないことがあるとなると4万円それでかかってしまう。それを保険でやるのか、や らないのかによって随分違います。ですから施設に、値段はお幾らぐらいでされていま すかという質問をしても、ある機関は保険を適用している機関でいかにも安そうに見え ますけれども、まじめに医療をされているところは自費で全部取っているとなると当然 と高くなるわけでして、施設によって値段が違ってくるというのはそういうことも関係 している。  ですから、ここでおっしゃっているのは、当然これは排卵誘発、採卵に関しては現在 のところ自費で考えます。そのかかった費用、その半分をどうするか、シェアリングに 関しては問題になってくる、そう考えます。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。より明確に具体的にご説明いただきました。よろしいでし ょうか、そういう意味合いでとって。 ○小泉委員  はい、結構です。 ○矢崎部会長  ありがとうございます。  では、次のシェアリングの場合に提供する卵子の数はどうするか?ということについ て、これはまず専門家の立場からお話しいただけますか。 ○吉村委員  このシェアリングというのは一般的には大変いい制度のように見えるわけですけれど も、なかなか根づかないのは、この前もお話しましたけれども、要するに通常の体外受 精を受ける、卵子を提供する側からしてみますと不妊原因がわからないこともあるわけ です。ですからその方がなかなか妊娠できないのです。例えば卵子の提供のためにこう いうシェアリングを受けるとすると、卵子がないという原因がわかっておりますから非 常に妊娠しやすい状況になる。そうすると善意であげた方が妊娠できなくて、お金を出 してもらった方が妊娠できるという状況が必ずシェアリングには出てまいります。です からこのシェアリングは根づかない。1回目はしたけれども、2回目は私嫌ですと。  もう一個の問題点は、周期によって何個採れるかということが余り明らかではない。 排卵誘発をして、ある周期には15個採れたのですけど、次の周期5個ということもあり ますし、このシェアリングを何個という決まりは外国においてもないと思います。例え ば半分をあげるとかそういういうふうになっている。だから、こういった細かく決めて いる基準はないと思います。 ○矢崎部会長  外国でもそういう細かい規定がないということですが、したがって、提供者が決める ということでよろしいのでしょうか。 ○吉村委員  提供者が決めざるを得ないです。そして契約をするしかないように思います。いわゆ る普通には半分と書いてあります。治療費も半分払うと。7個のときに何個にするのか わかりませんし、選ぶときにもどうしても卵を見て選ぶわけですから、それを無作為 に、順次きれいにグレードを分けていくのか、その辺も大変難しいと私は思うのですけ ど。 ○金城委員  シェアリングをするといって実費を半分ずつという契約が成立するのであったらば、 公平の観点から見て、半分ずつだし、グレードも順次分けていくということで、提供す る方がいいものをとってとか、数も提供者が決めるのだというわけにはいかないと思う のですが、ですからそこは公平にやっていくより、シェアリングと決めたからにはやる 方が妥当だと思いますけれど。 ○石井委員  疑問もあるのですけど、まず今の点については私は逆なので、最初の3個、つまり3 個は本人に戻すわけですね。その3個はまず優先的に提供者は確保できた上で、残った 卵について半分という方がいいのではないか。契約とはいってもボランティアで提供す る……。 ○吉村委員  先生、それは不可能です。卵子を取りますね。例えば先生から採ってだれかにあげる 場合、先生から10個採れました。その時点で、ご主人の精子をかけるのか、他のご夫婦 の精子をかけるのか決めないといけないので、胚では決められないですから、卵子を採 った段階で卵子を分けなければいけないわけです。それに各々の精子をかけるわけです から、できた胚はどうなるかということはわかりません。  ですから現実面として大変難しいとは思うのですけど、金城先生がおっしゃったの は、グレードの一番スーパーなものがあったとしたらば、あげる人にもまたグレートの スーパーなものをできる限りそうすると。次にまた3番目のものを自分に、実際にやる 人にあげたらば、提供者に4番目のものをあげる、そういうふうにして分けていくとい うことですね。  それ以外に胚によって3つ戻せるからとか、それは結果でしかないので、例えば卵子 凍結がしっかりできるような状況であれば、石井先生の言われることは可能ですけれど も、現段階では難しいと思います。 ○石井委員  グレード1、2、3は本人にということです、私の考えは。 ○吉村委員  そういう考え方もあります。 ○石井委員  本人の方が優先するのではないかということが1つと、疑問は相対の契約と言ったの ですが、ここでは完全に提供者ともらう人とが契約する、そういうイメージなのでしょ うか。そうするとだれが提供してということがわかる、そういうシステム。そうではな い、たまたま提供者はシェアリングで提供されているだけであって、匿名関係は維持さ れる関係だと私は思っていたのですが、違うのですか。  先ほど吉村先生がおっしゃったように、あちらの方が妊娠したとか、そういうことが わからない方がいいこと考えますと、絶対に当事者同士がわかる関係で契約するという ことはよくないように思うのですが。 ○吉村委員  確かに石井先生のおっしゃることはよくわかりますし、その方がベターです。もしそ ういうことができれば非常にいいと思いますけど、そうすると何らかのそれをちゃんと やってくれる機関がないとできないです。お互いに別々に話を聞いてくれるところがな いと、一医療機関ではなかなか難しいかもしれません。 ○矢崎部会長  吉村委員、卵子に体外受精させた場合に、これは採卵した医療施設でやらないと難し いのでしょうか。 ○吉村委員  今の段階ではそうだと思いますけど。それをどのくらい置いていたら過熟がきてしま うかわかりません。せっかく採ったものであるならば、早めに3時間、4時間後、せい ぜい待っても24時間ぐらいではないか。時間をおいても大丈夫ということもありますけ れども、それはその機関でやられた方がいいのではないか。例えばどこかへ運ぶという システムももちろんありますけれども、それよりはせっかく妊娠できるような状況であ るならば、早い方がいいから、その機関でやるのがベターだとは思います。 ○矢崎部会長  後で議題になります公的機関というのがどこまで実際の運営に関与するか、情報の管 理だけにとどまるのか、議論しなければならない項目ですが、そういう公的機関ができ たとしても、そこに何か介在するというのは時間的にみてなかなか困難なところがござ いますですね。 ○吉村委員  そういうことはあります。ただ、匿名性を守るということになると、1つの機関で匿 名性を守ってやっていくことはなかなか難しいと思います。シェアリングやる場合。 ○矢崎部会長  石井委員いかがですか。今の卵子をとっておけないという現在の医療技術の段階で、 なかなか難しい面がございますですね。 ○石井委員  この前もお話したかと思うのですが、精子の方は移動できるので、精子を動かすこと によって解決できないかと思ったりもするのですけれども、同じ機関の中でも小さいと ころでなければうまく処理できるのか、その辺はわかりませんけれども。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。今のご意見は提供者のお気持ちを斟酌するか、機械的に公平に半 分に分けるかという2つのご意見だと思います。 ○加藤委員  機械的に公平にというのは、最初の委員会のときはそういう考え方は出なかったので はないかと思いますけど、あくまで提供者が、せっかく赤ちゃんができるかもしれない リスクをなるべく減らさない方がいい。また、リスクは多くなるのだとすると提供者が 事実上ほとんどいなくなってしまう。ともかく最初提供する人にとっては、それ以上、 なるべく迷惑をかけないと、危険も負担も出さないと、そういう条件でないと実際にシ ェアは不可能だと、そういう考え方だったような気がするのです。  ですからシェアといっても必ずしも共同所有物を2つに分けるというのでなくて、あ くまでも自分にとって、これがスペアになったものについては自発的に捨てる必要はな いのだから分けましょうと、そういう概念がシェアという言葉の中にありますから、必 ずしも共同所有型にシェアという言葉を理解する必要はないと思います。 ○金城委員  わかりました。そうすると現実問題としてはシェアリングというのは余り起こらない と思うのですね。いくら採り過ぎたって、みんな精子と一緒にして、胚にして冷凍して おけば治療に使えるわけですから、よほどのことがない限りはシェアリングはあり得な いと考えると余り議論する必要はないのではないかと思いますけど。 ○平山委員  でも、現在体外受精が保険適用になっていないという状況の中で、医療費を半分負担 してもらえるということは、患者サイドにとって、ある意味、それであれば体外受精も う一度できるなとか、そういう可能性もあり得る。今、加藤委員や石井委員がおっしゃ ったように、自分の例えばグレード2のいい方からとっていけるということがあるので あれば、シェアリングを希望します、医療費も自分の分が軽減できるのだし、とおっし ゃる方はいらっしゃる可能性はあるのではないかというふうにも少し思いますが。 ○金城委員  私はそれはお金をちらつかせて提供させるということに通じるから、私はシェアリン グは認めるべきではないというのがまず基本的な考え方だったわけです。ですから、こ の間申し上げたと思います。でも何か分けるのだからいいのではないかとおっしゃるの で、では認めるとしてということで申し上げたわけです。そういうことであれば、すご い恐ろしいことになるのではないかと思うのですけれども、むしろそれよりは保険を適 用するとか、そちらの方で解決すべきであって、シェアリングというような方法で提供 を何とかというのはまずいのではないかと思いますが。 ○矢崎部会長  でもただになるわけではないですよね。ですから経済的なインセンティブといって も、どうなのでしょう。どこまで働くのか、これは提供者の意思である程度決めるとい う道を可能であれば残してもよろしいのではないかと思いますけれども。 ○金城委員  あえて絶対にという意見ではございませんけれども、そういうことなので余り進める ような方向で検討する必要はないのではないかと思います。 ○矢崎部会長  そのほかいかがでしょうか。 ○鈴木委員  私も意見が整理できているわけではないのですけれど、金額が半分になるということ で、例えば今体外受精、顕微授精は平均で35万から40万1回当たりかかるわけですね。 それは採卵の費用は別としてです。それが例えば仮に20万円で済むと。要するにもう一 回できるということになるという動機は結構大きいのではないかという気がするので す。比較的卵のたくさん採れる方はシェアリングやってもいいというふうにおっしゃる 方は出てくるかもしれないと実態として思うのです。  ただ、これが、先ほどのお話で、契約としてそもそも成り立つのかという問題がある だろうと思うのです。最初にお金半分払いますから、あなたが例えば10個採れたら5個 ちょうだいね、と約束、内容としてはそういう契約ですよね。最初の約束事というの は。それが仮に10個採れないときも当然あるわけで、3個しか採れなかったときにそれ がどう解決されるのか。あるいは採卵がキャンセルになることも当然あるわけですし、 そのときにはもともとの約束はどうなるのか。それでも採卵までの排卵誘発は行ってい るわけではないですか。卵が採れなかったときは払いませんよという話になるのか、そ の辺がよくわからないと思いますし、難しいのではと思うのです。 ○矢崎部会長  石井委員が言われた契約というのは、そういうぎりぎり詰めた契約ではなくて、ある 程度のお互いの秘密は保持しながらも了解が必要ではないか、根底には。ですからこれ は提供者の意思が優先されるということで、例えば半数でどうのとかという細かいこと ではなくて、提供者の意見を入れるというのはまずいですか。 ○鈴木委員  そうしますと、例えば途中で気持ちが変わったから、今回はやめますと。私、5個し かグレードのいいのが採れませんでした。あなたにあげたくありませんということも言 えるのかと。そういう一方的に破棄の可能な約束なのですか、このシェアリングは。そ ういう話で始めるものなのでしょうか。 ○加藤委員  まず初めから幾つあげるからという契約ではなくて、結果として3個余ったからあげ るというようなもので、もしだめだったらあきらめてくださいという話だと思うのです ね。お金については、そういう半額までの金銭の授受があったとしても、それを許容す るということであって、私は要らないという人がいれば、もちろんそれは無料提供にな りますし、あくまでそれは自発的な提供であって、例えばもらった人が支払い能力がな いとか、払えなくなったという場合に、法律に訴えて、それを請求できるかというと、 そうではなくて、私は「お布施型」というのですけれども、あくまで提供者の自発的な 意思で提供した場合に、それを禁止しないと、そういう性質のものではないかと思いま す。 ○福武委員  卵子提供の場合には本当に1対1の契約みたいな形でやるのか、あるいは例えばイギ リスみたいにある機関があって、そことの間の契約、機関を介在させて別々の契約でや るのかで全く意味が違ってくるのだろうと思うのです。ですからお金の授受がどうのこ うのと議論する前提として、どういったやり方をするのか。つまり1つの医療機関の中 で、AさんとBさんとが契約するような形をするのか、それとも先ほど言ったように、 何か機関をつくって、そこに対して何かを提供して、そこがどこかまた使う人にやると いうような形でやるのかで、ここでの議論をどちらかに決めていかない限り、決まらな いのではないかという気がするのですが。 ○矢崎部会長  それはどうですか、吉村委員。 ○吉村委員  私は今おっしゃったような、シェアリングする場合にはある機関を決めておいて、そ こが仲介をやるといった方が匿名性ももちろん守れるしその方がいいのではないか。医 療機関が委託されてやるという感じでもいいと思いますけど、そうしないと匿名性も守 れないし、3個しか採れなかったとき、どうするのだと言われて、向こうから、これは 契約違反ですか、と言われても困る。その辺はもらえない場合もあるのですよというこ とはちゃんと言わなくてはいけない。たくさん採れた場合に差し上げるのだという感じ の方が私はいいと思います。 ○加藤委員  吉村先生に聞きたいのですけど、実際に結構卵子を採って、3個で赤ちゃんができる という確率は非常に乏しいのですか。大体の人は3個あれば。 ○吉村委員  乏しいです。まだそこまで全然いっていません。いい卵を戻した場合には妊娠率はも う少しいいのでしょうが、日本全体の成績を見ますと、20%ぐらいの妊娠率だというこ とを考えますと、これは非常に難しい。 ○鈴木委員  シェアリングに限らない話だと思うのですけれども、そもそも卵提供に対して対価と いうことですが、これは不妊の人であろうが、そうでない人であろうが提供には変わり ないわけで、角膜移植というのは角膜に対する対価は払わないですけれども、例えば、 それに対する手数料というような形で角膜を提供してもらった方はお金を支払っていま すよね、保管料とか。角膜への対価という形には表面上なっていませんが、例えば自分 の分の手術の費用とかそういったことは負担しているわけです。それは基本的に財団と いうかアイバンクの方がいろんな形で手続きしていったりするわけですので、多分そう いった形でのお金も含めた仲介のできる機関が必要なのではと私はこの問題については 理解しているのですけれども。 ○矢崎部会長  そのほかいかがでしょうか。 ○平山委員  まだ私もシェアリングの場合のイメージがわからないので、吉村委員に教えていただ きたいのですけど、シェアリングの場合でも当然レシピエントの方も胚移植ができる子 宮の状態に整えるためのE+P(ホルモン補充)とか、そういうのをやっていかないと いけないということは、排卵誘発周期、提供者の方で排卵誘発をしているときから準備 を始めてないとできないということになりますよね。そこら辺の実質的な流れのイメー ジがいまいちまだつかめないのですけど。 ○吉村委員  先生おっしゃるように、一緒にやっていく場合も1つのケースですし、例えば精子提 供者の、精子を使って受精卵をつくって凍結していい周期に戻すというイメージもある と思います。恐らく後者の方になることが多いと思います。 ○矢崎部会長  では今ご議論のあったところを、事務局また「○」をつけて、全然まとまってないよ うな感じですけれども、すいません。 ○小林主査  整理の都合上確認させていただきたいのですけれども、17ページですけれども、2つ 大きく分けて問題がありまして、1つはドナーが払う医療費等の経費といった場合に、 その経費をどういう範囲にするかということで、部会長から、普通の場合の提供の対価 と同じようにするということで、その場合に今のところ(案1)、(案2)、(案3) があると思うのですけど、ここは通常の場合の提供にかかる対価の条件と同じような形 に揃えるという理解でいいのか。その場合、例えば(案2)をとったりすると、実際に 本当にかかった費用以上の、ある意味、若干謝礼的なものも入ってくるのだけれども、 そういうのもいいのかということがありますのと、あと17ページの3つ目の「○」です が、経費といった場合にどこまでのプロセスでかかったものとするかということで、1 つが排卵誘発と採卵まで。もう一つが、それより先の提供する側の夫婦の胚の凍結や胚 移植にかかる経費まで含めるかというところで、ここは吉村先生から、排卵誘発・採卵 までという御意見があったと思うのですが、ここは排卵誘発・採卵までということでよ ろしいのかということを、もし確認できればと思うのですけれども。 ○矢崎部会長  ありがとうございます。先ほどのご意見ではかかった費用の実費ということで、です から医療施設によって標準的な医療費の経費とかそういうのは出しにくいので、実際か かった実費、吉村委員が言われた採卵までの経費ということで話がまとまって、この前 の(案1)に当たる部分ではないかと理解しましたけど。 ○荒木委員  大部分の委員の方は提供者が決めるというような私は印象を持ったのですけど、これ に実施医師は全く関与しなくていいのですか。提供者とレシピエントの話し合いはもち ろん重要ですが、その点をもう少し、この話し合いの中に実施医師は入らないのです か。 ○矢崎部会長  この場合の介在するもとしては、さっきご意見が出たのは、これから議論する何か別 の機関があって、実施施設機関に運営上いろいろな関与をしてもいいのではないかとい うご意見があったかと思います。その際には医師の意見も当然反映されるということで すけれども、先ほどある医療機関の中で行われた場合にはプライバシーの保護、その他 がなかなか保てない可能性があるのでというお話をいただいたので、そういう可能性が ありますよというお話であったかと思いますが、それでよろしいでしょうか。 ○吉村委員  当然その際に実施する医師が、これは私やりたくないと言えば、成り立たないと思う ので、医師の判断は大切になってくると私は理解しているのですが。このイメージがな かなか最後までわかりにくいというのは、まずやる機関がイメージができてないという ところが大変問題でして、医師がこのシェアリングについても当然大きなファクターを 占めるということは私は事実だと思います。今話し合っている項目については、これは ドナーとレシピエントの問題であることが非常に多いことから医師の話が抜けたのでは ないかと思います。実施する機関、公的審議機関、公的管理運営機関というものがイ メージされてくれば、その実施医師がどうかかわってくるかということをもう一度話し 合わなくてはいけないとは私は思います。 ○加藤委員  実際問題としては、公的管理運営機関というのがそれぞれの場合について意思決定を するというイメージと、単に記録を管理して、長期の情報を管理して、何か起こった場 合にそれを開示すると。だから公的機関の意思決定というのは、その情報を開示するか しないかの決定に主としてかかわるものであると、そういうイメージで考えますと、実 際にこれは2人の患者さんが両方話し合って決める問題ではなくて、患者さんとお医者 さん、お医者さんと患者さんというふうに、患者さん同士は一度も顔合わせないと。実 際には病院の待合室で顔を合わせているかもしれないし、ベッドが並んでいるかもしれ ないけれども、当事者であることは全くご存じないと、そういう形になるので、法律上 どういう性格になるかわかりませんけれども、すべて患者と患者との話し合いはなく て、全部お医者さんが取り仕切るというか取り結ぶと、そういう関係になるというイ メージが基本になるのではないでしょうか。 ○矢崎部会長  議論が最初の問題提起が経費のところから入ってしまったので、一番大事な卵子のシ ェアリングの本質的な話が少し抜けてしまっていたことがございますですね。今議論の 中でどうしていくか、卵子のシェアリングを認めるか、認めないか、これはある程度認 めてよいだろうという委員の方々の一応認められたところだと思いますが、実際に施行 するに当たって、費用の部分は、先ほどの範囲以内のかかった費用をお互いに折半する のがいいだろうということで、実際に一番難しい、プライバシーをどう保護するか。シ ェアリングの具体的な進め方とか、卵子の数とかいいものを提供者が選べるのかどう か、そういう議論が、最初の設定の質問以外に重大なものがあったので、こういう議論 に発展したかと思います。委員の方々がそこに疑問を持たれていろいろご意見いただい たと理解しています。  吉村委員から、先ほど同じ病院でやるざるを得ないと。そのときにいかに公平性を保 ち、プライバシーを保つには、医療機関というのは医師も含まれますけれども、そこだ けはなかなか難しいかというお話を少しいただいたので、そういう面を担保する機能も 公的機関にお願いしてもいいのではないか。ただ、現実にどこまで実際のプロセスに関 与できるかわかりませんけれども、1つ設問として、そういうことも考慮して公的機関 の在り方を後ほど議論させていただいてもよろしいかと思います。 ○加藤委員  それをまたもとに戻って、またもう一遍議論する。 ○矢崎部会長  はい。そういう整理にさせていただきまして、次の選択を認めるか否か。これはまた 先ほどの議論に戻ってしまいますが、金城委員は選択は認めないでよろしいのではない かという意見と、現実的には提供者が選択できることの可能性、機会を残しておいた方 がいいのではないかというご意見とあったかと思いますが、それをまた2つの「○」で 括ってしまってよろしいでしょうか。そうすると、また議論が一見進んだように見えま すが、全然議論が進んでいないということになる可能性もありますので、よろしくお願 いします。  それでは次の(3)の「精子・卵子・胚の提供者における匿名性の条件」、これも極 めて大きな部分であります。これは事務局から読んでいただけますか。 ○桑島室長  (3)精子・卵子・胚の提供における匿名性の条件  (参考)といたしまして、日本産科婦人科学会会告の部分を引かさせていただいてご ざいます。それは部会長いかがいたしましょうか。その部分も含めて。 ○矢崎部会長  結構です。下のところから。 ○桑島室長  わかりました。 (1)精子・卵子・胚の提供における匿名性の保持  ○ 精子・卵子・胚を提供する場合には匿名とする。 (2)兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供  ○ 精子・卵子・胚の提供における匿名性の保持の特例として、精子・卵子・胚を提 供する人が兄弟姉妹等以外に存在しない場合には、当該精子・卵子・胚を提供する人及 び当該精子・卵子・胚の提供を受ける人に対して、十分な説明・カウンセリングが行わ れ、かつ、当該精子・卵子・胚の提供が生まれてくる子の福祉や当該精子・卵子・胚を 提供する人に対する心理的な圧力の観点から問題がないこと及び金銭等の対価の供与が 行われないことを条件として、兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供を認めることと する。  ○ 兄弟姉妹等から提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を行う医療施設 は、その実施内容、実施理由等を公的管理運営機関に申請し、当該生殖補助医療が上記 の要件に則して行われるものであることの事前の審査を受けなければならない。 (要検討事項) 兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供を認めるのか?  兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供における公的管理運営機関の審査基準を具体 的にどのように設定するか?  よろしくお願い申し上げます。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。いかがでしょうか。荒木委員から何かコメントいただけま すでしょうか。 ○荒木委員  ここのところが私どもの学会と前回の専門委員会の報告書の大きく違う点で、学会は これは第三者に限るということですから、兄弟姉妹からの精子・卵子・胚の提供は反対 という見解に立っています。  その理由といたしましては、提供者である近親者の遺伝的な親がすぐそばにいるとい うことは非常に親子関係が複雑になっていくのではないかという危惧があるわけです。 だからといって、カウンセリングをしっかりやればいいというものの、生殖補助医療を 施した時点ではうまくいくかもわかりませんけど、子の成長とともにいろんな環境も変 わってくるわけでございます。また近親者の兄弟姉妹から提供を求めることは心理的な 圧迫が強く働き、兄弟、姉・妹から頼まれれば、これは断りきれないという近親者特有 の関係はぬぐい去ることはできないと思います。そこにいろんな問題が派生してくると 思いますので、学会としては、これは反対せざるを得ないという結論に至ったわけで す。 ○矢崎部会長  この専門委員会の答申が出た後で、学会の中で、それに対しての議論が行われたとい うことはございますでしょうか。 ○荒木委員  会員から広く学会の倫理委員会の見解、特に兄弟姉妹からの提供に関して意見を求め たところ、2〜3の会員あるいは団体から、兄弟姉妹からの精子、卵子提供をもう少し 緩やかにして、当分の間はこれを認めていいのではないかという意見が寄せられてまい りました。しかし、学会としてその意見をもとに検討して結論を出すには至っておりま せん。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。ここは学会のご意見と専門委員会の違いでございますが。 ○加藤委員  論点は2つあるわけです。顔見知りで親子関係が混乱するというようなこと、もう一 つは、結局そういう枠を許容すると事実上強制が働いてしまうのではないかということ ですね。  2番目の論点についてですが、例えば生体の臓器移植の場合に、そういう枠を認める と、結局近親者に対して強制力が働くと。特に産んだお母さんは、なぜ、おまえが提供 しないのかと、相当ひどい圧力がかかるのではないかというようなことも言われました ですね。そのときの考え方としては、たとえそういう圧力があり得たとしても、その可 能性を法律で排除するほど厳しく排除しなければならない事例であるかどうかというこ とについて疑問が残る。あくまで当人の自発的な判断で強制がないように配慮すべきこ となのであって、可能性が起こらないように法律でなくしてしまうのはやり過ぎだとい う、法律の行き過ぎだという考え方です。  もう一つは、リコンフォーメーションといいましょうか、一度お決めになってもいろ んな事情を判断して、最後の土壇場になって、あなたは考え方を翻して、今お断りにな っても全く差し障りありませんし、その理由なども外に漏らしませんから、と言ってご 当人に再確認をするということをやろうということで実行している病院が多いと思いま す。  その2つの理由で、かなり危険が伴うけれども、あえて枠は残すという考え方になっ たのだと思います。 ○荒木委員  臓器移植がしばしばこの例として出されるのですけど、臓器移植と生殖補助医療を用 いた不妊治療とは内容が全く違うわけですね。臓器移植は生きるか死ぬかの方の瀬戸際 に立っているわけです。  私ども学会といたしましては、産まないと決めたカップル、子どもは要らないと決め たカップルに対する配慮というものも必要ではないかと考え、これを一緒にさせて議論 することには反対します。臓器移植と不妊の治療とは、いろいろな点で一緒には議論で きないという見解に立っている。 ○矢崎部会長  その他。 ○才村委員  2番目の方の議論に進んでしまっているのですけど、まず1番目の方の根本からの議 論をもう少ししたいと思うのですけれども、私が児童相談所でいろんな子どもさんを預 かって、乳児院とか長年施設で暮らしていた子、そして里親さんと養子縁組で大きくな ってきた子どもさん、それぞれ思春期になりますと、自分のルーツを探るというか、 ルーツを求めるという親探しの旅に出るといったことがありまして、なかなかそういう ところで預かる子どもさんというのは親の状態がどんなのか全然わからないのですけれ ども、でも例えば本籍地であるとか、住民票の住所の家まで歩いて行って、そこに家が なくても、ここで生まれたのだとか、自分が生まれ、そこからスタートしたのだという ところを探すということで、今の自分を少しでも確実なものにしていきたいという願い がある子がたくさんいたわけです。そんな中で生殖補助医療で生まれてきた子どもは、 生殖補助医療であることをずっと知らされないで秘密なまま大きくなることも多いと聞 いてはいますけれども、知った場合に、そういうことを何で言ってくれなかったのか、 と親を恨むといった人の意見もあったと聞いていますし、匿名性ということなのですけ れども、提供者の生物学的な親を知るという、出自を知る権利なのですけれども、子ど もは親の、私は名前まで知るという権利もあっていいのではないかと思います。  管理情報のところで、いろんな子どもの情報が管理されるといったことですけれど も、そこには近親婚を排除するためには一応名前とかは、提供者の知られたくないとい う権利もあると思うのですが、それをどこで折り合いをつけるかというところで、諸外 国でも認められていないということでは、そこまで匿名性でないというところで決定し たところは余りないとは聞いていますけれども、でも子どもにとって、自分が本当の親 はだれなのかというのを知らないという秘密のままでいくということが、自分自身を確 認するためには、それがなしではすごく不安定な状態のまま生きなくてはならないとい うことになるのではないかと思うのです。  そんな中で、情報をプールされる中に名前とかも多分あるわけでしょうし、その中で 子どもが知りたいというときに、名前を排除して、例えば血液型とか、ほかの情報は知 るといったこと、そこまでここで議論するわけではないと思うのですけれども、ほかの ところは開示するけれども、名前は匿名とするということになっている案なのですけれ ども、名前まで知るべきではないかと思います。  もし2番目の兄弟姉妹からの胚の提供なのですけれども、もし名前まで知って、すべ ての状態が親もわかるとなれば、2番の問題も同じことだと言えますし、兄弟姉妹で複 雑な要因になるから、そこだけを反対されるという学会の意見もあるようなのですけれ ども、今の日本の中でいろんな複雑な親子関係の問題とかが生じてきておりますし、そ んな中では、そういった複雑ないろんな親子関係を乗り越えて、異質なものへ排除しな い、そういったいろんなことを受けとめながらサポートしていく態勢が子育てには必要 なのかなと思うのです。意見があちこちしましたけれども、もう一回、1番を飛ばして 2番に行くのでなくて、1番の論議をもう少ししていただきたいと思います。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。今お話の内容は、後で「子の出自を知る権利」とか、子に 知らせる属性の一致はどこまで図るかということもございます。ただ、大前提として、 まず初めは匿名性の確保から始めないといけないということで、(1)があったわけであり まして、これがすべて未来永劫匿名ということではなくて、最初匿名性がありきという ことでご理解いただければということで、全部飛ばしたという意味ではありませんの で、匿名性については、また後ほど案が5個も6個も出てくるような議論が続いて出て くると思いますので、そのときに、また今のご意見をお話しいただければと思います。 ○小泉委員  今、部会長がおっしゃったこと、私賛成ですけれども、「匿名性」という言葉だけで 議論していますと、今のようなことになりますから、提供における匿名性といいましょ うか、そういうことに限定するということをお互いが了解して記録に残した上で議論し てはいかがでしょうか。 ○矢崎部会長  わかりました。まとめのときはそれを気をつけて行います。 ○小泉委員  別のことでよろしいですか。ちょうどパラグラフの3行目に「十分な説明・カウンセ リングが行われ」という言葉がありますが、これはこの箇所に限ったことでなくて、一 般論としてまた後ほどご議論いただいてもいいと思うのですけれども、説明とカウンセ リングは同じなのか違うのか。それはどういう資格の人が行うものであるか。あるいは 説明なりカウンセリングを受けたいという気持ちに基づいて行われるのか、それとも気 持ちは別として、例えば医療を行う医師の方から積極的に説明するというような、そう いうものであるのか、その辺のことをはっきりしておいていただきたいという希望で す。 ○矢崎部会長  平山委員から何かコメントございますか。 ○平山委員  また、そこは多分検討課題2のところで詳しくなると思いますし、私の方でも、でき る限りの資料をお見せする予定ではございますけれども、まず原則といたしまして、カ ウンセリングは説明ではありません。説明というのは多分この医療の分野ではドク ター、コーディネーター等の医療専門家が行うべき内容であろうと思います。その説明 があった上で、ではどういうふうに選択をしていくのだろうか、どういった決断をして いくか、選択をしていくかということの援助をしていくのがカウンセリングです。  ただ、第三者生殖においては、カウンセリングはカウンセラーという人がやるわけで すけれども、そのカウンセラーの役割としてもう一つスクリーニングという問題も出て まいります。スクリーニングというのはレシピエントやドナーがレシピエントになるべ き、あるいはドナーになるべき資格があるかどうかというのを心理学な観点から選別と いうか審査するようなことがあるわけですけれども、そういうことも含むと思います。  これまでにも文面的に「説明・カウンセリング」といろいろ出てきていますが、多分 それぞれでまた内容が違うと思いますし、きちんとそこら辺は、このときにはこういう 意味でというのをしっかり実際には決めていかないといけないことだろうと考えており ます。 ○小泉委員  課題2で説明・カウンセリング、特にカウンセリングの一般論について少し議論をし ていただいて、また、提供における匿名性の場合のカウンセリングというのは、その1 つの各論ということで、総論が済んだ上でまた検討の場をいただけませんでしょうか。 ○矢崎部会長  ありがとうございます。これは医療の1つではありますけれども、社会的な影響が極 めて大きい。特に親子関係というところにかかわりますので、これを医療として定着す るには相当環境の整備で、今、小泉委員の言われたカウンセリングのこととか、匿名性 を担保する、プライバシーをいかに保つか、あるいは子の福祉の立場からどう考える か、非常に複雑な要素が絡まっておりますので、恐らくその条件が十分そろわないと、 医療機関だけの判断で進められないということで、こういう審議会があるのではないか と思います。  ただ、最初の部会のときにも申し上げましたように、既に専門委員会で一応議論が済 まれたので、我々としては今のこのような第三者提供の配偶子の生殖補助医療をいかに 医療としてルールをつくって、社会に定着するかという、ルールづくりで今苦労してお りますので、その点を十分ご配慮いただいて、また議論を続けていただければと思いま す。  タイミングよくコーヒーが来ましたので、10分間休憩をいただいて3時45分から始め たいと思います。よろしくお願いいたします。                  (休 憩) ○矢崎部会長  それでは時間になりましたので議論を進めさせていただきたいと思います。今、極め て難しい「兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供について」でございますが、学会の ご意見は、これは正式には「当分の間」と入っておるわけですか。 ○荒木委員  入ってません。 ○矢崎部会長  学会としては認めないという今のお話でございました。委員の方には環境整備するま での当分の間というお考えと、条件が整えば認めるというようなご意見であったかと思 いますが、19ページの「公的管理運営機関」の位置づけが、この場合大きなことになる かと思いますが、これはまた後ほど検討課題でこれがどういう役割を果たすか、どのよ うな位置づけになるかというのは具体的にそのときに検討していただくということで、 事務局で今申し上げました選択肢で整理していただければと思います。 ○福武委員  よろしいですか。その辺は非常に大きな問題だと思うのですね。ここでは匿名性とい うことで一括りになっていますけれど、考えてみると、幾つかに匿名性の条件としては 分かれると思うのです。それともう一つは、今ここで匿名性が問題になるのは、結局親 子関係をつくるときに、今は養子と実子という区別があって、生殖医療によって第三者 の精子・卵子をもらって生まれた子どもを実子の範疇に入れるという前提でやっている のだと思うのですね。そのときに実子であるのに血縁関係そのものはないということ で、いわば実子というのがフィクションになっているのだと思うのです。  そういったときにおける匿名性の問題ですから、もう少し分解して、どういった形で 何が問題なのか、考えるべきではないかという気がするのです。というのは、ドナーが だれであるかということをレシピエントに教えるのかという問題と、レシピエントがだ れであるかということをドナーに教えるという問題が1つあって、それとレシピエント から生まれた子どもに対して、あなたは生殖補助医療によって生まれた子ですよという ことを教える、要するに何らかの形で知るような形になるというのと、もう一つは、子 どもがレシピエントをすっ飛ばしてドナーの方の状況を知りたいというような形にい く、そのどこの段階での匿名性を考えるかということがあるのだろうと思うのですね。  それともう一つは、私は専門委員会の報告書ですごく疑問だったのは、精子・卵子の 提供に関しては、公的管理運営機関の審査云々は一切抜きなのに、なぜ兄弟姉妹からの 提供の場合だけこれをやるのかというのが疑問としてはあるのです。胚については、私 はかなり疑問を持っておりますが、精子・卵子を提供することについても一種の養子だ ということを考えれば、何らかの機関、例えば家庭裁判所だとか公的管理運営機関と か、そういったところでのチェックはどうしても必要なのではないかと思うものですか ら、何かここでこのままストレートに、すっといいですよ、終わりますよという形でい ってしまうのは私としてはかなり疑問は持ちます。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。 ○渡辺委員  大事な部分なので申し上げたいのですけれども、精子・卵子・胚の提供における匿名 性の保持は手続き上提供してもらうときだけの匿名性であるということの確認が必要で す。この匿名性は生まれた子どもに対する匿名性には必ずしもならないからです。生ま れた子どもが人格発達の大事なプロセスとして必ず匿名性を破ってくるだろうというこ とも覚悟することが必要です。これは既にいろいろな文学作品にも書かれています。例 えば実際に、ある双子の1人が預けられてもらいっ子になった。もらいっ子になったそ の人は精神医学者か心理学者になった。しかしそれとは別に、自分がもらいっ子にされ た怨念を抱きながら生きている。私どもはそのような同業者に対しカウンセリングをし てやらなければいけない。それ位、仮にその人が心の専門家になっても、心のルーツを 巡るトラウマは人を苦しめる。そういう深刻な世界に足を踏み入れるという認識を、家 族精神学者や精神分析学者や臨床心理学者の協力を得ながら生殖医療の中に根付かせて いく必要があると思うのですね。  それから兄弟姉妹からの精子・卵子・胚の提供に関しては、産科婦人科学会が言うま でもなく、精神医学では近親相姦の掟を破ったときに人間がさまざまな混乱を引き受け なければならないのと同様の、パンドラの箱であると考えます。人間がこうやってサバ イブしてきた、つまり精神的に少なくともいろんな問題を抱えながらも1つの社会や集 団を存続できた背景には、秩序があります。その秩序は、例えば家族の中においては子 どもに対して父母が連合して、子どもは子ども、大人は大人という世代境界を持つ。そ れから性差境界がある。思春期以降は父親と息子、母親と娘という1つの性差境界をき ちんと持たないと、さまざまな精神障害がその人の代のみならず子どもの代あるいは孫 の代に出ることが実証的に研究されています。その秩序を崩していくということにはリ スクがあります。敏感で優秀な子どもほど、一度気がつきますと執念をかけてずっと追 っていきます。出自の疑問を持つ人自身が遺伝学者になったり専門家になって、自分の ルーツを探すとともにそういったルーツに関して発言していくということも起きるわけ です。社会秩序を本当にもう一度よく勉強し直し、遺伝学的なレベルでも家族精神学的 なレベルでも人間社会の秩序に関する認識を明確にしないと危険であると思います。  この精神医学の常識は言うまでもなく人類の知恵の中で共有され、吟味されてきたも のであり、いろんなことが起きるだろうなという感覚は、庶民の中にもあると思いま す。私はこの委員会の意識はもう少し、人類のつくってきた社会の秩序の原理に立ち戻 っていただきたいと思います。 ○岸本委員  私はターナー症候群の患者団体の会長をさせていただいているのですけど、実は数年 前にアンケートをとらせていただいたときに、子どもを産む、産まないはご夫婦の選択 肢であると思うのですね。アンケートの中の答えの中で養子をもらいたいという方もも ちろんいらっしゃいましたし、また子どもを持たないのも1つの人生やという方もいら っしゃいましたし、絶対自分の兄弟姉妹から欲しいという方もいらっしゃって、先週な のですけど、会員の方からお電話がありまして、まだ結婚されてないのですけれども、 20歳ぐらいでお姉ちゃんがいてるので、ぜひお姉ちゃんの卵子をもらって産みたい、と 言っているということをお聞きして、今はまだ生殖医療はきっちりした形で決まってな いですけど、ということでお話しさせてもらって、さっき荒木先生がおっしゃったよう に、第三者はよくて、なぜ兄弟姉妹間がだめなのかという部分では全然納得いかないの ですけど、第三者の方がいいという方も、会員の方でアメリカに行った方もいらっしゃ いますけど、でも絶対遺伝的な自分の先祖を残していくと。例えば、私でしたら岸本家 を残していくために兄弟姉妹間でないと嫌やという人もたくさんいらっしゃるのです。  これも要望書に厚生労働省と産科婦人科学会の方に要望書を出させていただいたので すけれども、それを第三者しかだめだと。兄弟姉妹間はだめだというのはおかしいかと 思うのですね。  この間、意見を荒木先生がおっしゃっていた、兄弟姉妹間で染色体異常が生まれて、 後で問題になるのではないかとか、そういう部分をお聞きして、障害とか染色体異常と いうのが起きたら問題になるということを聞いて、個人的に、いや、それは違うのでは ないか。障害を持っているということをこの世から排除するということを、これは多分 第1回の部会のときにお聞きしたのですけれども、障害を持っているとか、染色体異 常、ターナー症候群はX染色体異常なので、それを排除するというのはすごく間違って いると。どんな障害があっても、一緒にこの世界で共生していくというのがすごく個人 的には大事だということを思うのです。  兄弟姉妹間がだめで、この前ありましたけれども、余剰胚ですか、例えば卵子だけが なくて、ご主人、ターナーの人が結婚して精子はあるのに卵子がもらえないだけの理由 で余剰胚をもらうというのは、この兄弟姉妹間がだめで、何で余剰胚という、卵子も精 子も全然血がつながってないのがよくて、遺伝的なつながりのある兄弟姉妹、お姉ちゃ んとご主人の精子がなぜだめなのか、その辺が私的には矛盾しているなという部分があ るのですけど、余剰胚にしても、ただ、卵子が採りにくいというだけで、それだったら 養子という、第三者の卵子・精子使うのであれば、養子の問題も考えていくべきだと思 うのですけど、兄弟姉妹間に限っては、選択肢の1つとして残していくべきだと私は願 っています。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。いろいろなご意見があると思います。1番目の匿名 性の保持ですが、これは先ほど申し上げましたように、小泉委員のご提言がありました ように、精子・卵子・胚の提供時における匿名性をまず確保して、その後、福武委員の ご疑問その他については、またご議論させていただきたいと思っております。 と申し ますのは、すべての生殖補助医療の匿名性ということをここでなかなか大きな問題です ので議論できませんので、そういう場面に限って限定させていただいて、その後、個々 の匿名性の問題については普遍的にまたご意見をいただきたいと思っております。  小泉委員と松尾委員からファックスでご意見をいただいておりますので、簡単に両委 員からコメントをいただければ大変ありがたいのですけど。 ○小泉委員  資料2に、私の書いたものをご採択いただきましてありがとうございました。また、 発言の機会ありがとうございます。  ごく簡単に補足させていただきますと、私の文章の最初のパラグラフの3行ちょっと ですが、ここで私が申し上げたいことは、生殖補助医療というのは、現代医療にも共通 するQOLの向上というのが特徴であると。しかし医療といいましても、原因疾患の治 療ではなくて、妊娠成立過程への医師の直接関与であるということを申し上げたいわけ でして、何らかの疾患のゆえに不妊である方に対してその疾患の治療を行うというの は、これは生殖補助医療ではないというふうに私は定義したいのです。これは生殖医療 ではありますけれども、その疾患を治療することによって不妊が解消すれば、それは大 変結構なことで、しかし、ここで言うのは、妊娠成立過程に医師が直接かかわるという ことでございまして、医師の仕事の中でこういう仕事は他に余りないと思うのですね。 ですから妊娠成立過程にかかわるということによって、その成立した妊娠ということに 関して、もちろん出産ということに関してもかかわった医師には無関係ではないという よりも、むしろ関与することにおいて、そのことに十分留意する必要があるということ を、私は医師会の立場ですから、医師の役割という点をこの辺ではっきり認識しておき たいという意味で書いたものでございます。  以上です。ありがとうございました。 ○矢崎部会長  松尾委員から何か。 ○松尾委員  前の専門委員会のご議論で、子どもの福祉を担保できるかという議論がほとんどなさ れていないという危惧を持ちました。ファクスのコメントはその関連事項でございまし て、全く血縁のつながりのない子どもというのは、血縁を持った子どもに比べて相対的 にリスクが高い成育環境におかれることは当然のことだと思います。それをぜひ確認し ていただいて、それに合った対応を次に考えるべきではないかと思います。  先ほどの兄弟姉妹の問題については日本産科婦人科学会の見解に全面的に賛成でござ います。姉妹からの胚の提供による生殖は、一種の近親相姦だと思います。これを許し ている社会は存在しないと理解しています。長い歴史で人類が学んできた問題を破るこ とは、非常に危険だと思います。以上です。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。 ○小林主査  部会長、すいません、ちょっとよろしいでしょうか。 ○矢崎部会長  はい、どうぞ。 ○小林主査  ちょっと補足なのですけれども、専門委員会の報告書の構成ということですが、きょ うの資料の18ページですが、(1)として、「精子・卵子・胚の提供における匿名性の保 持」というのがあって、ここで言っているのは、冊子の方の31ページから抜いている話 で、これは子どもとドナーの間での匿名性を言っているのではなくて、あくまでも提供 する夫婦と提供される夫婦との匿名性を言っているということかと思います。そしてそ れの例外としての兄弟姉妹等からの提供ということで次の特例が書かれているというこ とかと思います。もし間違えていれば、専門委員会の先生から指摘していただければと 思いますが、一応補足ということです。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。そうしますと、先ほど言ったのではなくて、提供者とレシ ピエント間の匿名性と、それに限っているというふうに理解してよろしいですか。 ○小林主査  はい。 ○矢崎部会長  わかりました。どうもありがとうございました。 ○相良委員  資料の31ページの方へ戻ってみますと、「精子・卵子・胚を提供する場合に匿名とす る」という項目の枠外の2つ目の「○」のところに、「また、提供された精子・卵子・ 胚による生殖補助医療により生まれた子が当該精子・卵子・胚を提供した人を知った場 合」ということで、これは出自を知る権利までも含むような書き方をしていますけれど も、今おっしゃったこととちょっと矛盾するかと思うのですが、どういうふうに考えた らよろしいでしょうか。 ○矢崎部会長  私もそういう意味で議論をしたのですけれども、ですから提供時という括りにしたら どうかと思いました。この場合は、ただ専門委員会ではそういうご議論であったので、 それはそれで、記述と少し乖離があるところがあるかと存じますが、そういうふうに理 解していただければ、非常に委員の方々ご納得いただけるかと思いましたので。どうも ありがとうございました。 ○石井委員  提供時におけるレシピエントとドナーとの間のことですね。 ○矢崎部会長  そうですね。その場合に子どもはまだ胚の状態ですから、子はまだ関与できないとい うことで、当然そうなるわけですけれども。 ○石井委員  よろしいでしょうか。 ○矢崎部会長  はい。 ○石井委員  整理はできてないのですが、どうも先ほどから兄弟姉妹のところで、近親相姦だ、近 親相姦だと出てくるのは気になるのですが、妹がお姉さんに提供するという関係で、倫 理的な観点での近親相姦の問題はあるかもしれませんが、それがいわゆるその間では、 つまり男性がお姉さんと離婚した後、妹と結婚するということはできる事柄ですよね。 だから、法的にそこに問題が生じる関係ではないだろうとは思うのですね。同時的に関 係を持つことはもちろん禁止されるわけですけれども、世界的に見れば、宗教的にお姉 さんと妹を両方妻にするということを認める国もある。それを認めるつもりはないので すが、近親相姦だという言い方をしてしまっていいのかなということが1つあるという ことです。  もう一つは、我が国の観点からいくと、それをいいかどうかは別として、先ほど岸本 委員が家を残したいと言われると、私困るなと思うのですが、養子縁組については長い 間、兄弟姉妹の子どもをもらうということが行われてきている。それがいいかどうかは 別として行われてきているというのが我が国の現状としてあると。そういう中で、自分 が子どもができないときに、お姉さん、妹、そういう関係からという希望は多いだろ う。そういう点は考えたということはあると思っています。私がいいとか悪いとか別と して、それは歴史的に認められないという言い方をされると少し違うのではないかとい うところなのですけれども。 ○渡辺委員  申し訳ありません。お答えした方がいいと思うので申し上げますけれども、例えば岸 本委員が家を残したいといっても、思うような健やかな家が残るのであれば私も賛成で すけれども、そうでない例もたくさんあるわけです。つまりある感受性を持つ人の中に は、例えば自分の精子が弟夫婦の子どもの中に生きていることがすごく響いて、そうい う時点から家族関係の1つの枠組みが揺らぐこともあり得るわけですね。極端な場合は 嫉妬妄想などの幻想がわいてきたり、当事者が悪夢を見出したり、そうではない例もあ りますけれども、そういうリスクがずっと高まっていく。  そして、普通の日常的な家族の営みの中に、例えばこの子は知っているだろうか、知 らないだろうかと、普通に想像していただいて構わないですけれども、普通の家族では 守られている人格の成熟に必要な安心感やシステムが脅かされていくのです。最近の新 しいニューロサイエンスでは未熟児や新生児の研究で、子どもはかなり早い時期からそ ういう複雑な家庭の中の雰囲気をキャッチするということが報告されているのです。  この辺は1つの未知の領域であり、私たちが思い込んでいるほど簡単にはこの問題を 弄れないという認識があるわけですね。個人が本当の意味での幸せに到達するには社会 も皆で応援しなければならないけれども、岸本さんが考えているような形で家を残そう と思っい、その残っていく家が苦しみ合う家族の家にならないためにも、子どもの心の 発達の人格形成の土台をもう一度見ていかなければならない。そのプロセスを抜きにし てただ命を生み出せばいいという問題ではないことを、少し集約した形で申し上げたい のです。わかりやすい1つの警告として、近親相姦的な世界と言い切ってもいいくら い、リスクは高いと申し上げているのです。 ○岸本委員  家を残したいというのは、私個人1人の意見ではなくて、会全体の卵子がない方たち のいろんな意見を聞く中で、遺伝的に自分の先祖を残していきたいという部分では、兄 弟姉妹間しか嫌やという人が本当に何人かいるわけです。必ずしも兄弟姉妹間だと破壊 するとか、家がぐちゃぐちゃになるとは限らないと思いますし、また第三者だから絶対 問題が起きないとも限らないと思うのですね。必ずというのは絶対ないのです。第三者 だったら必ず幸せになるとか、兄弟姉妹間だったら絶対なる。それは個々に違うのであ って、それをあえて兄弟姉妹間にすると問題が出てくるからというのを国で決めてしま うというのは、例えばそれを望んでいる人をそこだけ排除するというか、その人たちの 選べる選択肢を抑えてしまうということに関しては、ここでだめだとするのは私はよく ないと思います。 ○渡辺委員  表立って個々の人たちのプライベートな苦しみが公表されていないから皆さんお分か りにならない。けれども少なくとも子どもや当事者は必ず、より複雑な課題で悩んでい ます。心理的課題の中で生きていかざるを得ない人の苦しみを、十分に共感し共有して いくプロセスがなければならないと思います。大丈夫とか大丈夫でないという問題では なく、どの人も自分の出自や経緯に関しては疑心暗鬼になったりといろいろ苦しみ、当 事者である子どもにとっては非常に重いものになっていく。その重いものは、それを抱 えた子どもを育てる両親も背負わなければいけない。でも、それをご両親が背負える範 囲のものにしていくために、社会的、専門的な人類の知恵を生かしていかなければいけ ないという観点に立つのです。個々人が幸せになりたいという願いは無条件に応援しま すけれども、その思いがそのまま届くほど、人格の発達は単純ではない。ですから私た ちは専門家として迷い、恐れ、危惧もし、その危惧についてできる範囲で発言している のです。私は非常にリスクがあると思っていることを、限られた時間で一応申し上げて いるのです。個々にご説明すれば奥はもっと深いと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。まず(1)の部分ですけれども、これは原簿を変えるわ けにいかないのですか。「提供する場合には」と言うとすごい広い範囲の匿名性にとら れてしまうので、今お話になったように、「提供する場」、その場では匿名性を維持す るということに限るような文章に可能であれば直していただければ、今の委員の方々の ご意見はある程度解明されると思います。 ○才村委員  匿名のところですごいこだわっているのですけれども、提供時における匿名性という ことで今おっしゃっていたのですけれども、提供するときには、後でもし論議をする場 でやるならば、それはまた後で論議していただいたらいいのですけれども、提供者の名 前とかは情報としてどこかで管理されるわけですね。 ○矢崎部会長  はい、前提で。 ○才村委員  それはそれで大前提として、名前すら情報として、どこかにプールしないということ ではないわけですね。 ○矢崎部会長  全部情報はプールする。 ○才村委員  近親間のこともあるので、その人はある程度そこまではすると。だけど、相手には知 らせない、そういうことですか。 ○矢崎部会長  はい。そういうインフォームド・コンセントを提供者からもとって、それで後で議論 しますが、どこまで開示するかというのは。 ○才村委員  するかどうかですね。情報としては管理をするところが公的管理機関とかでやると。 ○矢崎部会長  情報は全部いただくという。ただ、その場合には、提供いただいたときには匿名性は 担保しますということで。 ○加藤委員  「連結可能匿名性」という変な言葉ができているのですね。 ○才村委員  連結可能匿名性。 ○矢崎部会長  それと今兄弟姉妹について、これは重い課題で、極端なご意見は当然この部会ではあ ると思います。これは絶対許せないというご意見から、医療として環境が整えれば、担 保できればいいのではないか。専門委員会はそういう意見に近いところかもしれません けれど。 ○加藤委員   100%危険だとか 100%安全だとかということは言えないのです。 ○矢崎部会長  言えないですね。これからの医療ですから。 ○加藤委員 ほんの狭い枠でも残した方がいいという考え方だと思います。 ○矢崎部会長  ここで近親相姦というお話をされるとなかなか議論が進まないところもあるので、ど ういう状況が生まれてくる子にとって社会としてサポートしてあげるか。環境整備をど うしたらいいかということを、渡辺委員の言われるように極めてリスクが高いと言われ た場合には、リスクをどう対応していったらいいかということを考えるのも我々の役割 だと思いますし、この委員会の使命は極めて重く、学会の会告とこの委員会の結論とは 少し重みが違うところがありまして、 100%だめだということであれば、ある程度縛る ことができますけれども、そうでない場合の対応をどうするかというのはこの部会での 英知の絞りどころではないかと私は少なくともとらえております。 そういう意味で、この議論を尽くすと24時間、泊り込みでセミナーやってもなかなか 結論、何も私急いで結論しようということではなくて、ここである程度の方向性が出た 場合には、それをどう社会でリスクをできるだけ少なくするような方策を立てていくか ということに知恵を絞る必要がある。それには専門の立場の委員の方々から、適切な助 言をいただければ大変ありがたいということであります。 ○吉村委員 この専門委員会でも兄弟姉妹は3回か4回くらいやったのですが、平行線で、賛成す る方、反対する方がお見えになって意見がまとまらなかったのですね。最大公約数的に というか、要するに賛成者多数という感じでこれが決まったのです。  この領域というのは未知の領域で、岸本さんがおっしゃることもわかるし、渡辺先生 のおっしゃることも大変よくわかります。これはどちらの立場に立ってモノを考えてい るかによって随分違ってくるのです。岸本さんの考えとか不妊症の夫婦の考え方という のは、まず子どもをつくることがありき、子どもをつくりたいのだということが前提に 出てくる。そして、生まれてくる子どもを中心に考えるとさまざまな問題点が起こって きますよということを渡辺先生は提起されている。これはいつまでたってもかみ合わな いというところは、自分の思いを必ず言うからです。  私はいつも思うのは、兄弟姉妹のことを考えていると、出自を知る権利と当然つなが ってくると思いますし、匿名性ともつながってくると思うのですね。その際に考えなく てはいけないことは、医療サイドもそうですけど、不妊夫婦がまずこういった医療を受 けるときには、出自を知る権利があるということをまず認めなくてはいけないです。そ して子どもに伝えるということをまず初めにしない限り、こういった医療は私はできな いと。特に兄弟姉妹に関しては。ですから兄弟姉妹からもらうときには、初めから子ど もに対して知らせるべきだし、そういった家庭環境をつくっていかないとこれはまずで きないと思うのです。  今の第三者の医療を受けたいと思っている方は恐らく匿名性でいってほしいと思って いる。知らせないでほしいと思っていると思うのです。そういった不妊症夫婦の考えで はこういった医療は成り立たないと私は思うのです。ですから自分から言うような姿勢 でないとこういった医療はできない。  そうするとこの匿名性も、「匿名性の保持」とは書いてあるけれども、何もなくなっ たようなものになる。骨抜きになってしまうのです。そういったことでないとこの医療 はできないと思うので、生まれてくる子どもを考える場合については、私たちの専門委 員会では少し議論が私は足りなかったと思います。足りなかったと私は思って反省はし ていますが、不妊症夫婦もこういうことを考えないといけないと思いますね。  例えばターナーの方が、私は別に染色体異常だから子どもを産むなとかそういうこと は全然言いません。子どもをつくられていいと思います。卵子提供に関してはターナー の方は優先的に与えられるべきだと思います。そうは思いますけれども、その子どもの こと、そういった医療をしたということをちゃんと言えるような状況でないといけない と思います。ですからそうやって、初めて生まれてくる子どもの福祉というものが担保 されるのではないかと思うので、兄弟姉妹をもし認めるということであるならば、こう いった場合には必ず初めに開示をして、そして子どもにもちゃんと知らせて、そういっ た家庭環境をつくることが大前提で、そして認めていくような社会ができればいいので はないか。  そうでない限り兄弟姉妹というのは大変難しい。これを隠していくことは不可能です し、子どもが怪しいと思うかもしれないし、そういったことがあると思うので、まず自 分たちにできて、初めてこういった医療を受ける資格ができるというか、そういったレ ベルに達しないとこういった医療は受けられないのではないかと思うのです。 ○矢崎部会長  大変まとめのようなご意見をいただきまして、事務局はほっとされているのではない かと思いますけど、(3)と(4)が並んで同格に報告の31ページにあるのは、今吉村委員が 言われたことが根底にあって並んで、ずっと後に「出自を知る権利」とかそういうのが 出ていますので、そういうことで、これは今吉村委員の言われた点を事務局でよく相談 の上、皆さんが納得できる案をつくっていただければと思いますので、よろしくお願い します。 ○鈴木委員  質問が1つあります。今、兄弟姉妹についてのお話をしていたかと思うのですが、こ こに「兄弟姉妹等」とございまして、これが専門委員会の議事録を読み返しても、結局 のところ、どこまでを含んでいるのかよく意味が読み込めなかったというのがあります ので、そこをまず確認したい。親友まで含めるか含めないのかというご議論もあったか と思います。そのことをちょっと確認させてください。  今、私も幾つか感想と意見なのですけれども、今、吉村委員のおっしゃったこと、私 もすごく共感しながら受け取っておりました。多分先ほど福武委員がおっしゃったよう に生殖補助医療技術によって生まれる子どもは、今、全部実子という枠の中で黙ってと いうのでしょうか、子どもには言わずに内緒にしながらやっていこうよという話で進ん でいると思うのです、別に兄弟姉妹に限らず。  むしろこれは養子という枠の中で見つめていく必要もあるのではないか。養子制度は 真実告知をしましょう、できるだけオープンにして育てましょうという社会の流れが今 あって、一方、提供で生まれてきた子たちは黙って実子で育てていくという、子どもに 対して二重の立場があるというのも私は何か釈然としない部分があるのです。  あともう一つ、兄弟姉妹に関してなのですけれども、先ほど岸本委員のお話で、なる ほどなと思ったのは、ご相談が先日ありましたということですけれども、お母様から電 話があったということ、それでお姉ちゃんの卵子をもらって産みたいと。お姉ちゃんの 意見は一体どこにあるのだということなのです。そのお姉さんがあげたいと言っている のか、結局周りから「あんた、あげたら」あるいは「もらいたい」という中で、本当に その人があげたいと思えるのかどうかということ。「あなた、もらえばいいじゃない」 という強制も1つに働くと思うのですね。私は逆に姉妹とか、例えばだんなの兄からな どもらいたくないと、そんなことしたくないと言っている人に対して「もらえばいいじ ゃない」と周りが言う、そういう話が実際に出ているのも聞いていますし、それも困る なという気はします。  1つ兄弟姉妹のことで問題なのは、本来子どもをつくる、つくらない、あるは産む、 産まないというのはあくまで夫婦2人がプライベートの中で決めていくことだと思うの ですね。その決定に対して家族というものがかかわってきちゃう、家族の意思というも のが入り込んでしまうというのは非常にまずいのではないかと私は思うのです。  あともう一つ、国が禁止するかどうかという話はすごく難しいと思うのですが、そも そも先ほど小泉ドクターが、きょうのご意見で出していただいたところにとても大事な ことが書いてあったと思うのですが、そこまで医療が助ける、手助けする義務があるの かということも1つ本質的な問題として問われると思うのですね。子どもが欲しいと言 っている人たちに、技術があるからということで際限なくその医療技術を使うというこ とは、それは病気を直すという意味とは質が随分違うと思いますので、そのことを改め て今考えています。以上です。質問の件だけお願いします、「等」は何を。 ○矢崎部会長  「等」というのは。 ○加藤委員  本当のこと言うと「等」をどこまで定義するかという議論はくたびれ果ててやらなか ったと思います。例えば兄弟姉妹、いとこ、はとこ、おじさん、おばさん、広げていく と姻戚関係だけでもかなり年齢差開いても提供の可能性というのがあるわけですね。そ れから、いわゆる血縁がなくても、今の若い世代を見ていると、「私、産めないわ」と 言ったときに、「私、助けてあげる」という、そういう親友関係というのはかなりあり そうな気もします。ですからその辺はあいまいなんですけれども、必ずしも血縁のない 人を排除してはいなかったのではないかと思います。 ○石井委員  意見としては親友というのが出てきたときに際限なく広がるというよりは、姉妹がい ない人はだめなのかという話になるのではないか。そうすると姉妹と同じように、そう いう意味では心からその人を助けたいと思うような、「兄弟姉妹」という言葉が出てく るのは、多分お互いによく知っているから、その痛みをよくわかって提供してあげよう と、そういう人になりやすいという、そこが血縁だからということもありますけれど も、そこのところがある。  そういう意味では親友のように、本当にボランティアで提供したいという人がある。 それを排除をするのか。兄弟姉妹を認めるのだったら、それを認めてなぜ悪いという意 見があって「等」がついたということで、際限なく広げるという、そういうことではな かったと思います。 ○加藤委員  実際適切かどうかということについては、個別事例について第三者機関なり何なりが 評価するということもあり得ると思いますね。 ○矢崎部会長  要するに匿名性が保持できないケースというふうに考えてよろしいわけですね。 ○加藤委員  これは私の個人的な意見ですけれども、日本で何か提供するというときに、だれかわ からない人に提供するというのはすごくボランティアが少なくて、だれだったらば提供 するという提供者はかなりいるのですね。  こういう生殖補助医療という枠組みをつくっても、実質的に提供者がゼロで、看板は 立てたけれども、店じまいと同じという制度ではなくて、何か可能性があればそれは開 いておいてあげたいと、そういう気持ちも私にはありました。 ○金城委員  そうすると簡単に言えば、対価はもらってなくて、心理的圧力もなくてカウンセリン グを受けました。子の福祉についても考えました。そういう形でだれかを連れてくれ ば、それは審査は受けるにしても、一応認めるというふうに考えてよろしいでしょう か。とにかく連れてきた。 ○加藤委員  はい。 ○矢崎部会長  小泉委員、先ほどの鈴木委員からのご意見ですけれども、医療技術がどんどん進歩し ますね。例えば遺伝子治療、臓器移植、生殖補助医療、どんどん技術は今まで考えられ なかった医療を現実のものにする。それを利用して、少しでも人類に役に立てようとい うことで技術が発達してくると思うのです。しかし、技術の進歩で先行きどういう結果 かわからない。そのときに我々がどう対応するか。それが対応してないと、例えば個人 の立場で思い切ってジャンプをするという方も出てこられるわけですね。本当に環境を 整備しないで技術だけで医療が行われてしまうという可能性もあって、この部会は少な くとも、これは1つの先端医療技術ですけれども、それをいかに社会にソフト・ランデ ィングするためにはある程度のルールをしっかりつくってやっていこうという基本的な 立場が私どもはあると思うのですけれども、そういう意味から、小泉委員からそういう ことに対するご意見といいますか、コメントをいただければと存じます。 ○小泉委員  非常に簡略に申し上げれば、よく言われるベネフィットとリスク、もう一つはベネフ ィット・コストということでまとめられます。今、部会長がおっしゃったようにこれま ではベネフィットの追求にほとんど専念してきたのですね。また、それが社会でも支え られ歓迎されてきたわけですけれども、最近になって、今例を引いておっしゃったよう ないろいろなリスクの問題、そういうベネフィットを得ることに伴って生ずるリスクに 対する認識が急速に高まってきています。  もう一方では医療費の問題でよく言われるようにコストの問題が起こってきました。 ところがベネフィットを追求する立場はリスクやコストとかいうことを念頭に置かず、 専ら科学の進歩を追求してきました。そこに問題があると思うのです。  ではどうしたらいいのかということですが、現時点で言えることは、ベネフィットの 追求に当たって、描いている夢が実現したときには、それに伴ってどういうリスクが生 じるかとか、あるいはコストはどうなのだということも併せ考えながらベネフィットを 求めていくということしかないと思っております。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。 ○相良委員  頭の中、まとまってないのですけど、先ほど吉村委員のお話で何となく出自を知る権 利を前提として兄弟姉妹等の配偶子の提供もいいのかというような雰囲気に少しなった ような気もするのですが、私は現時点では何となく納得がいかないのですね。ここに 「子の福祉や提供者に対する心理的な圧力の観点から問題がないこと……条件として」 とありますが、これを確認することは恐らく不可能だと思うのですね。  ですから、現時点でこれをもしやるとしたら、どういうふうにやるのか。遠い将来、 こういった医療が日常茶飯事で、むしろ第三者の配偶子を遺伝的に持っているような子 どもの方が多いような状況にもし仮になれば、それは非常に問題ないと思うのですが、 その過渡期の段階のリスクをどうクリアーしていくのか。それは部会長がおっしゃった 「環境整備」という言葉の中に含まれているのだろうと思うのですが、全く私にはその イメージがわかないのですけれども、その辺はどうお考えなのでしょうか。 ○矢崎部会長  専門委員会のときに、今までの人工授精、顕微鏡下の授精と第三者提供配偶子の生殖 補助医療というのは全く違う異次元の世界に踏み込むわけですね。ですから、その場合 の、吉村委員が言われた、今までの子どもに関してはなるべくそれを隠してということ で今まで来れたかもしれませんけど、この世界に入ると極めてそれが、渡辺委員の意見 ではございませんけれども、すごく大きなリスクが入ってきますよね、子の立場から見 ますと。ですから恐らく「子の出自を知る権利」とかそういう条件が入ってきたと思い ますが、環境整備の一番大事なところは、子どもがどう育っていくか、なるべくリスク を少なくするためにはどうしたらいいかという、私は環境整備と言いましたけど、何か そういう意識の改革とか、そういうのは欠かせないもので、今まで吉村委員がやってこ られた生殖補助医療ともちょっと違うニュアンスになるのではないか。  ですから、そこをどうするか、匿名性の問題とか。 ○加藤委員  まず第一の前提は、「連結可能匿名性」というのをとにかくベーシックな方法論とし て採用するという、これを全部やってみたけど連結可能匿名性はやめるとなったときち ょっともたないのではないかと思います。それから民法的に見て、親の権利や子どもの 権利を今までの民法と多少は変更するわけでしょう。ともかく子どもの権利の確保を法 律的に確保する。  それから、今言った提供の強制の問題、これは法律的に担保するのは難しいと思うの です。例えば借金をするときには、心理的な強制が働かないという条件が成立した場合 に民事契約として借金は有効であるともし言ったとすると、担保しろと言われても全然 無理なのですね。かなり心理的にデリケートで、お母さんが子どもに血液を提供すると いったときに、本当に自発的かどうかというのを見きわめる方法があるかといったらご 当人に聞いてもわからないという現実があると思うのです。ですから、それは周りから 見ても、例えば確認できるとか、考え方として、たとえ卵子の提供を言われても、あな たは拒否権ありますよということをはっきりと確認するとか、その程度のことができる わけで、余り微妙な心理的な条件にまで踏み込めないということが一番基本になるので はないかと私は思っています。 ○金城委員  その心理的な強制ですけれども、それはある程度カウンセリングを十分やることで断 れる力をつけてあげるみたいなことだと思いますので、ある程度はそれで対処できるの ではないかと思います。ですからカウンセリングは要件だということが必要だと思いま す。 ○福武委員  実は兄弟姉妹からもらうとか、そういうことについてはすごく社会文化的な要素が多 くなると思うのですね。日本にいる例えば韓国籍や朝鮮籍の人などに聞くと、そんなこ とは考えられない話になるわけです。つまり朝鮮などの儒教国から見れば、例えば日本 みたいに夫が戦死したからその弟と結婚するというようなことは有り得ない話なので す。それは同胞を娶らずというような形の考え方がずっと来ていますから、今の民法そ のものもまだそのとおりなのですね。そういったところで、弟と結婚するということは 有り得ないというような社会がずっと形成されてきているわけですから、日本のこうい った議論は理解できないということを言われたことがあるのです。  そういったお隣の国、同じ東南アジアの地域の中で文化的な観点もまるで違うような ところで、日本だけ兄弟姉妹でもいいですよみたいなことを言って認めてしまうのは何 か非常に不思議な気がするのと、もう一つは、弁護士というのは兄弟姉妹の争いという のをしょっちゅう見ているものですから、骨肉の争いになってくるのですね。そうする と他人同士の争いよりも「本当に顔を見るのも嫌だ、いなくなってほしい、日本から出 て行ってくれ」。そんな話が出てくると、いやこれで大丈夫か、うまくいっているとき はいいが、そうでない時はどうするのかという気がするものです。そういう点でも兄弟 姉妹だけ公的管理運営機関で申請してチェックすればいいですよというのはどうも理解 できないですね。そんな気がするのですが、そういう意味では、社会文化的な意味で、 儒教国から見れば、今、近親相姦云々という話が出たけど、確かに近親相姦の考えにな ると思うのです。そこは日本とは全く違うのではないかという気がいたします。 ○平山委員  別に揚げ足をとるわけでも何でもないのですけど、韓国は兄弟姉妹からの実際の第三 者提供をやっていますね。そういう儒教国でもやっているわけです。それが1点。です から別に儒教国だからやってないわけではないというのがある。  ほかの国、もちろんいろいろあると思うのですが、我が国の文化として考えていくべ きことで、確かに近親相姦的なところが出てくるのかもしれないけど、戦前、戦後もも しかしたらあったのかもしれませんが、本当に生まれたばかりの兄弟の子どもを実子と して育てているというケースが非常に多く文化的にはあったわけですよね。歴史的に日 本の文化の中ではいい、悪いではなくあったわけです。そういう歴史がある。それを受 容してきた、どういうふうに受容されてきたかはまた問題はありますが、兄弟姉妹から の今までの養子のケースや実子として育てられた方々が、果たして本当に問題ばかり起 こっているのか、実際に幸せに暮らしている人たちはいないのか。どういったことにな っているのかということが、もしどなたか児童福祉の専門の方や養子の専門の方で何か そういう資料を出していただければ1つの参考にはなるのではないかと少し思うのです けれども。 ○鈴木委員  匿名性の話なのですけれども、1つは子どもを守るということもあると思うのです ね。こちらのカップルに、例えば提供者の人が、うちの子どもが病気で骨髄よこせと か、そういうようなことがよく危惧として出されますけれども、その当事者間での子ど もの奪い合いなり何なり、子どもをめぐってのトラブルが起きないようにというのも1 つ、匿名性ということの目的だろうと思うのです。だからこそお互いがわからないよう にというふうにしてあるのだと思いますし、だとすると、お互いがわかっていることの リスクがどれだけあるのかということだと思うのです。  それは先ほどおっしゃっていたように、うまくいっている場合はよいですが、ひとた びこじれた場合には物すごいことになるのではということが考えられますので、その辺 はむしろどうなのでしょうか、伺いたいところですが。 ○矢崎部会長  常識的に言いますと、こじれた場合は逃げ場がないというか、非常に深刻な問題にな ってしまう可能性はあると思います。ですからリスクが高いということを専門委員会で は随分議論されて、それをどうしたら克服できるかというようなご議論があったのでは ないかと思います。したがって、心理的な圧力を排除するとか、公的管理機関が運営に 関与するとか、そういう文言が中に入ってきているのではないかと思います。 ○松尾委員  先ほど部会長から、兄弟姉妹からの生殖細胞の提供について、イエス、ノーというこ とではなくてどうしたら可能になるかという条件整備を考えろというようなお話だった と思うのですけれども、現実は非常に厳しいと思います。子どもの立場から見ておりま すと、家庭の崩壊は物すごいスピードで進んでいるわけですね。アメリカと日本は社会 的変化において大体約20年のタイムラグがあることが多いと思いますけれども、アメリ カの場合ですと実の両親が揃っているという家族は50%を下回っておりますし、虐待さ れる子どもの数は少なく見積もっても年間 200万人いると言われています。 日本もこのような社会を迎えようとしていると考えますと、子どもを守る家族の背景 は非常に弱体化していくと予測されるわけですね。ですから条件整備をするどころか、 今の状態よりもっと悪くなるという前提で物を考えなければいけないと思います。  近親相姦のことについては、石井先生はちょっと誤解されているのですけれども、法 律的な問題とか遺伝的問題を申し上げているわけではありません。要するに家族内の基 本的人間関係に混乱が起きるという意味なのですね。近親相姦は広汎なカルチャーの下 でタブーになっているわけですね。これは長い歴史をかけて人類が学んできたものなわ けですね。ですから、この程度の議論で破るというのは非常に危険だと思います。 ○加藤委員  異議あり。 ○松尾委員  はい。 ○加藤委員  近親相姦が人類がタブーだというのはレビ・ストロースの学説ですから、非常に有名 なのですけれども、同時にレビ・ストロースは近親相姦の範囲が婚姻形態によって物す ごく違うと。だから、そういうことも述べているのですね。  ですから、今松尾先生のおっしゃったのは少しその点で訂正をする必要があると思い ます。 ○松尾委員  私が今問題にしているのは、姉妹である母親と社会的な母親という二重構造が生まれ るということです。要するに同じ家庭の中に母親が2人いるという状況が生まれるおそ れがあるわけですね。これが果たしてよいのかということを論じているわけです。 ○平山委員  本当に、今の松尾先生のお話も渡辺先生のお話もすごく重く感じています。リスクと いうこと、子どもから見たときのリスクというときに、もう一つ、私たちのグループが 考えておかなければいけないのは、本当に子どもを欲しいと願っていて、夫婦が仲がよ くて子どもを望んでいるご夫妻が得られる子どもと、ただ血がつながっているというだ けで望まれない子どももたくさん今生まれているのが現状で、どちらのリスクが高いか は簡単ではない。その社会が問題であるというのは、渡辺先生が毎回おっしゃってくだ さっているとおりですけれども、そういう現実もある。  つまりリスクというのは一概に言えないと私は考えています。その個々のケースにお いて、今、兄弟姉妹のことを言っていますからあれですけど、兄弟姉妹からの提供だか らといってリスクが高いとは限らないですし、そこは私たちはいちがいにいけないとは 決めつけるのはどうなのか。ふだん本当に子どもが欲しいと思っている方と毎日毎日面 接している私としては、そこの疑問も1つ投げかけておきたいと思います。 ○岸本委員  以前に記事でちょっと見たのですけど、夫婦間でもなかなか妊娠しないで不妊症のカ ップルがいて、ようやく何年か越しで、いろんな体外受精だとか人工授精とか行って、 ようやく子どもができたと。子どもができて、今までの不妊の苦しみというのが救われ たのかと思うけれども、でも何か違うという、そういうグループができているという記 事を見たのです。夫婦間にもおいても、ただ単に周りから「まだ子どもができへんの」 とか、そういう心理的に圧力かかって、ただ、それだけで子どもが欲しい、漠然的に子 どもが欲しいという、これは夫婦間の遺伝的つながりがある子どもでも、いざ子どもが できてみて、子育てしてみて、その過程において、今までの苦しみ何やったの、子育て って大変やなって、ちゃんとしたご夫婦が、なぜ子どもが欲しいのか。今、平山先生が おっしゃったみたいに、なぜ、子どもが欲しいのか。ただ周りの圧力だけで子どもが欲 しいのではなくて、なぜかという、きっちりした自分の人生観とか目的観、子どもが欲 しくて、どう育てていくのか、人生観をきっちりした夫婦は、例えば本当の血のつなが りがなくても、ちゃんとした家庭ができるのではないかと、私は今平山先生がおっしゃ ったことにすごく賛成ですけれども。 ○荒木委員  兄弟姉妹からの提供に関する意見、ここに出てきた専門委員会の意見の一番大きな問 題は、卵子提供がないのではないかということが大きな理由だと思うのですね。しか し、それを今特例だけを議論していると、特例が自然に消えてしまって、皆さん生殖補 助医療を受けたい人はまずここにファースト・チョイス、第一選択をこちらへ持ってい くということが非常に私は危惧しているところでございます。  だから今回「特例」という文言をを削除して、一度何年かの期間を第三者の匿名者に 限るということの方がよいと思います。その間、今までの議論にある卵子提供もいい、 胚の提供もいいというような意見まで大部分の方から出ておりますので、その道を求め た方がよろしいのではないか。それでも提供者がいない場合に、改めてここで兄弟姉妹 からの精子・卵子提供を議論した方がよろしいのではないでしょうか。当分の間は匿名 者に限る。当分の間、何年になるかわかりませんけど、そういった方でいければよろし いかと私個人は思っております。 ○岸本委員  若干おかしいような気がするのですけど、何年か様子を見て、第三者の卵子がなけれ ば、そしたら兄弟姉妹間も認めようというのは、荒木先生のおっしゃることが、私は納 得いかないのですけど、何年かしてなかったら認めようというのと、数がないから認め ようという理由として、今反対している意味が全然、ちょっとおかしいかと思うのです けど。 ○荒木委員  言葉が足らなかったのですが、そのときにもう一度検討しようということです。認め ようということを今言っているわけではないのです。そのときにどうしたらいいのかと いうことを、この兄弟姉妹からの提供も含めて検討していったらどうか。その当分の間 を何年にするかはここで議論していただいて、2年なら2年まずやってみると。  私が一番危惧するのは、これがファースト・チョイスになって、兄弟姉妹からの精子 ・卵子提供が安易に行われてしまうのではないかということが心配しているわけです。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。もう定刻の時刻になりました。皆さんお一人お一人 が責任を非常に強く感じておられて、こういう新しい医療を始めたときに、こういうリ スクがある。こういうリスクを無視しないでほしいというご提言だと思います。大変貴 重なご意見でありがたく存じます。  兄弟姉妹等の課題については、先ほど吉村委員がまとめのようなことをおっしゃって いただきましたけれども、その後、また意見がたくさん出て、最後に荒木委員がおっし ゃられた。ですからどういうリスクを重く見て、どういうリスクにウエイトを置いてこ の医療を考えるかによって随分考え方が違ってくると思います。これは恐らく満場一致 の意見は得られないと思いますので、一応きょうは議論は兄弟姉妹等については、今の ご意見で、また案をつくっていただいて、これは「●」はつけないと思います。  次回も兄弟姉妹については、きょうはほとんどこの議論で時間がとられてしまいまし たが、一応事務局で案を提示していただいて、次回も大変恐縮ですけれども、検討1の 課題の次の匿名性をどこまで担保するか。これ以降は子どもの立場に立った議論によう やくなってくると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。それが終わってか ら、また順々に案の中で、「●」を1つでも多くつけながら進んでいきたいと思います ので、よろしくお願いいたします。  事務局の方から連絡ありますか。 ○桑島室長  ありがとうございました。それでは、次回の生殖補助医療部会の日程をご連絡申し上 げたいと思います。次回は11月8日(木曜日)14時から17時の予定となってございま す。場所は厚生労働省の17階、同じフロアでございますが、専用第18会議室となってご ざいます。  なお、各委員からのご意見、ご指摘等を引き続きメールあるいはファックスで事前に いただければと思ってございますが、恐縮ではございますが、締め切りを切らせていた だきす。11月6日までの午前中までとさせていただきたいと存じます。  それから、先生方のお手元に配らせていただきましたいつもの資料集と、それから併 せて配付させていただきました各委員からのご意見、これは恐縮でございますけれど も、机の上に置いていただければと思っております。  以上でございます。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。小泉委員、松尾委員からのご意見も次回にはこの資料2の 中に綴じ込められるわけですね。それではほかの委員の方々も、きょうの議論で何かご 意見賜れば、事務局にファックスしていただき、次回短くコメントをいただければ大変 ありがたく思います。  本日も3時間にわたって、長い間ご熱心にご議論いただきました。ありがとうござい ました。 ○加藤委員  矢崎さんはそれを楽しんでいるようですけど。 ○矢崎部会長  いやいや、疲労困憊しています。ですから外見でも見えないように、次回からは深刻 な顔をしながら議論を進めていきたいと思いますけれども、次回も懲りずに、委員の 方々、傍聴にメディアの方がたくさんいらっしゃいますけれども、これは決して予断で 進めませんので、いろいろ議論をしながら、できるだけ委員の方々のご意見を聞いて、 しっかりした結論に導いていきたいと思いますので、傍聴の方々もよろしくご協力のほ どをお願いいたします。  本日はどうもありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課 03−5253−1111(代) 桑島(内線:7933) 小林(内線:7939)