01/09/17 第4回厚生科学審議会生殖補助医療部会議事録 第4回 厚生科学審議会生殖補助医療部会 議 事 録 厚生労働省雇用均等・児童家庭局 母子保健課 第4回 厚生科学審議会生殖補助医療部会議事次第 日 時  平成13年9月17日(月)14:00〜17:03 場 所  厚生労働省共用第7会議室(第5合同庁舎)5階 議 事 1.検討課題1について   2.その他 ○桑島生殖補助医療対策準備室長  定刻になりましたので、ただいまから第4回厚生科学審議会生殖補助医療部会を開催 いたします。  本日は大変お忙しい中、お集まりいただきましてまことにありがとうございます。  本日は鈴木委員、町野委員、相良委員が欠席でございます。  それでは早速議事に入らせていただきたいと存じます。矢崎部会長、議事の進行どう ぞよろしくお願い申し上げます。 ○矢崎部会長  本日もお暑いところ、多くの委員の皆様にご出席いただきましてありがとうございま した。議事に入る前にまず資料の確認をよろしくお願いします。 ○桑島室長  それでは議事に入ります前に資料の確認をさせていただきます。  資料といたしましては2つございます。1つ目は検討課題1の本日版でございます検 討課題1について整理をしたもの。2つ目に、相良委員からお寄せいただいたご意見を まとめたものがございます。参考資料といたしまして、ご意見募集で寄せられた意見に ついて、これは平成13年8月25日から9月10日までに寄せられたものをまとめたもので ございます。  なお、今回机上配付をさせていただいた資料として、荒木委員より「倫理的に注意す べき事項に関する意見」と、安藤委員から提出をいただきました「安藤委員提出資 料」、それから、1つ冊子になってございますけれども、「不妊患者支援のための看護 ガイドライン」「不妊の検査と治療のプロセス」といった冊子、この3つについてご提 供をいただいてございます。机上配付資料につきましては、荒木委員、安藤委員から簡 単にご説明をいただきたく存じます。 ○矢崎部会長  それでは議事1の検討課題1について入りたいと思います。前回は事務局が作成した 検討課題1の要検討事項を整理した資料……。 ○桑島室長  部会長、申しわけございませんが、資料の少しご説明を。荒木先生はまだお越しにな っていらっしゃいませんけれども。 ○矢崎部会長  そうですね、ごめんなさい。では安藤委員から、よろしくお願いします。 ○安藤委員  よろしくお願いいたします。私からは看護職の不妊看護の認定教育の現状が今どうな っているのかというところで資料を提供させていただきました。また、もう一つは、不 妊患者支援のための看護ガイドライン、この2つを提供させていただきました。  まず最初に看護職の不妊看護の認定教育の実態というところで現在看護職が不妊看護 についてどのような卒後教育がなされているのかというところで認定のところを2つ、 最初の資料のところなのですけれども、「不妊カウンセラー・体外受精コーディネー ター養成講座」というものが、これは日本生殖医療研究会というところが行っておりま して、平成10年から9回行われています。認定者が 237名、不妊カウンセラーが 117 名、体外受精コーディネーターが 120名です。参加者の内訳は2)のところに書いてお ります。  それから、不妊カウンセラーとIVFコーディネーターの役割の違いがその下に書い てあります。その後、ずっと第1回から9回までの養成講座のプログラムが入っており ます。  それが終わりまして、2番目のところですが、日本看護協会で不妊の認定看護師とい うものが認定されまして、後ろの方、真ん中から、よろしいでしょうか、ページ数を付 けてなくて申しわけございません。卒後教育の中で認定看護師というものが日本看護協 会にありまして、がん看護、ストーマケア、リエゾン看護、そういった領域がありまし て、不妊看護の領域も平成11年に申請をいたしまして昨年の2月に認定されました。そ して来年、平成14年度から実際に開始することになっております。後ろの方にこの養成 のねらいとするもの、カリキュラムについて書いてあります。6カ月の期間をもちまし て教育を行うことになっております。認定の教育の実態はこのようなものです。そのほ かに認定がないものとしまして、日本家族計画協会で年1回2日間、これまで5回開催 されておりまして、150人ほどが参加しております。そのほかに日本看護協会の各都道府 県に研修センターがありまして、そこでトピックス的に研修が行われているという状況 です。これが今現在看護職が卒後教育として不妊看護のための教育が行われている実態 です。 それから、あと不妊看護のためのガイドラインの方を見ていただきたいと思います。 これは平成10年から12年にかけまして厚科研の補助を得まして、研究成果の報告書とし て作成されたものの一部です。不妊患者支援のための看護ガイドライン作成グループか ら提供していただきました。ぜひ、参考にしていただきまして、看護のために、どんな ところをもう少し強化していったらいいか、今後不妊医療システムの中でいろんな医療 チームメンバーの中でどんな役割が果たせるかというところでご検討いただければと思 います。 以上です。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。荒木委員からの資料はいらっしゃってからご説明い ただくことにさせていただきたいと思います。  通常厚生労働省の審議会は2時間ぐらいなのですけれども、これは3時間ですので、 4時ぐらいにちょっと水入りをさせていただいて、コーヒーブレイクということで、そ のときにコーヒーを出させていただきたく思いますので、それまで2時間楽しみにしな がら議論していただければと思いますのでよろしくお願いいたします。  それでは議事に入らせていただきます。まず議事1が「検討課題1について」という ことです。前回は事務局が作成した検討課題1の要検討事項を整理した資料に基づきま して個々の検討項目について具体的な検討を開始いたしました。この際、各委員の間で 大変活発な意見交換が行われまして、その中で委員の方々で概ね合意が得られたもの、 合意は得られないにしても考え得る幾つかの選択肢のようなものがその中からおのずか ら浮き上がってきたのではないかと思います。  そこで前回お話申し上げたように、事務局でこうした観点から前回の議事録に基づい て議論の結果を資料の中に盛り込む形で整理していただきました。ごらんになるとおわ かりのように、「●」の部分は委員の間で概ねの合意が得られたものではないかと思わ れるもの。それから、(案1)、(案2)というように幾つかの選択肢が示されている 部分は、合意は得られなかったにしても考え得る幾つかの選択肢のようなものが議論の 中であったということでまとめていただいたものであります。詳細について事務局から 説明よろしくお願いいたします。 ○桑島室長  それでは前回の議事録をもとに事務局でまとめさせていただいたものを簡単にご説明 申し上げます。2ページ目でございますが、前回の議論の中でそれぞれ要検討事項に対 していろいろと先生方でご議論いただいたものをまとめております。  まず1つ目ですが、真ん中のところ(要検討事項)、「ウイルス性の性感染症や遺伝 性疾患を理由とした当生殖補助医療の実施を認めないということでよいか?」というこ とで検討をいただいてございますけれども、「●」でお示しをしてございますとおり、 本部会での検討事項とはしないということで一応の結論を得たと理解をしてございま す。  2つ目、加齢により妊娠できない、この部分の具体的な判定基準はどう考えるのかと いうことでございます。ここは非常に意見が分かれたところでございます。それで(案 1)、(案2)、(案3)とまとめてございますが、(案1)といたしましては、基本 的には、医師の裁量といたしますが、自然閉経の平均年齢であります50歳ぐらいを目安 とし、それを超えて妊娠できない場合には「加齢により妊娠できない」こととみなす旨 の判定基準を国として示すと書いてございます。国として示すと申しましてもいろいろ とレベルがあるわけでございまして、後ほども出てまいりますが、義務的な基準という ことでかなりきつい基準を設けて、さらにはその可能性としては罰則も考えられる。こ ういうレベルもあれば、考慮すべき基準として非常に望ましいというレベルで定めるも の、これからご議論の中で先生方のご検討をお願いしたいところでございますけれど も、何らかの形で国としての基準を示していきたいというのが1案でございます。  続きまして、(案2)につきましては、医師の裁量としますが、自然閉経。具体的な 数字は入れておりませんが、自然閉経を基準として、自然閉経をもって「加齢により妊 娠できない」ということを国の基準としてお示しをする。  (案3)といたしましては、医師の裁量とするというところにとどまりして、国とし ての判定基準は特にお示しをしない。  以上の3つが、私どもの方でまとめさせていただいた案でございます。  次の検討課題でございますが、対象となる夫婦につきましては、子の福祉の観点か ら、夫婦が子育てに耐えられるかというような要件も必要なのではないかということで ご議論いただいたわけですが、この部分につきましても、(案1)、(案2)に分かれ てございまして、(案1)につきましては、医師の裁量とするということで特に基準を お示しをしません。  (案2)は、夫婦の年齢のみではなくて、健康状態、経済状態、精神的に安定的な子 育てができるか、養育ができるかということについて着目をして、総合的に国の基準を 示すことについてご提案をいただいてございます。  関連といたしまして、生まれた子どもを安定して養育していけるかについてのカウン セリング、これは検討課題2(来年以降になりますけれども)においての検討内容とし ても関連してくるわけでございます。  それから、新たな検討課題といたしまして、その次の行、特別養子制度のように、親 となる者の年齢の下限を設ける必要はないだろうかということでご提案をいただいてご ざいます。この部分については特段なまとめはございません。  次の項目でございます。自己の精子・卵子を得ることができるということですが、こ の具体的な判定基準はいかがかということですが、この部分で、次のページになります が、基本的には医師の裁量とする。国としての義務的な基準は示さないということで 「●」を付けてございます。ただし、国が実施するに当たっての準則となる考慮すべき 基準を示す。具体的に基準については、この後お示しをしてございますけれども、精子 ・卵子・胚ごとにお示しをするということでございます。((1)〜(4)参照)と書いてご ざいますのは、この後、5ページ以降に、例えばAID、提供卵子、提供精子、提供胚 についてそれぞれ分けて(1)〜(4)に各胚ごとに示してございますので、それらをご参照 してくださいという意味で括弧してございます。  次の検討課題は精子・卵子の提供を受けることができる者について優先順位を設ける ことについてでございます。これにつきましても意見が大きく分かれてございまして、 (案1)、(案2)に大きく分かれてございます。(案1)につきましては、国として 特に基準を示さないということでございます。  (案2)については、国として義務的な基準をお示しをしません。ただし、準則とな る考慮すべき、つまり望ましいというような基準についてはお示しをします。  それぞれ(案2)の中で分かれてございまして、(案2−1)につきましては、待機 期間を基準とする優先順位を示す。  (案2−2)については、医学的、待機期間、その他の理由を併せまして総合的な優 先順位を示す、こういうふうに分かれたと整理してございます。  それから、上記の関連事項になりますが、これらの精子・卵子・胚の需要の情報を全 国一元的に管理して、それをもとに提供者と提供を受ける人をコーディネートするシス テムの構築が必要なのではないかということでございます。以下いろいろとご議論がご ざいました。  次のページにまいりますが、(2)の中で、この生殖補助医療ごとにそれぞれ適用さ れる条件をご議論いただいたわけでございますが、(1)のところでAID(提供精子によ る人工授精)のご議論をいただきました。  その中で精子の提供を受けなければ妊娠できないということに対する具体的な基準を どうするかということでございますが、次のページでございます。基本的には「●」で お示しをしておりますように、医師の裁量とすると。ただし、国が実施に当たっての準 則となる考慮すべき基準を示す。具体的な基準につきましては日本産科婦人科学会の会 告、先生方のお手元にご用意してございます関連資料集の 112ページにお示しをしてご ざいますが、それに準ずるという形でご議論をいただいてございます。 それから、精子の提供について優先順位を設けるか?というところでございますが、 これにつきましては、先ほど4ページでごらんいただきましたけれども、基本的には国 として基準を示さないという考え方と、示すとしても考慮すべき基準を示して、その中 で待機期間、医学的な理由等を考慮して基準を設けるべきといろんな意見に分かれてご ざいました。  (2)でございますが、提供精子による体外受精でございます。  基本的には検討課題2つに分かれてございましたが、女性に体外受精を受ける医学上 の理由、精子を提供受けなければ妊娠できない。これらの基準についてどう考えるかと いうことですが、「●」でお示ししておりますとおり、医師の裁量とするということで まとまってございます。  ただし、次のページですが、国が実施に当たっての準則となる考慮すべき基準を示す ということでございます。  その具体的な基準として「精子の提供を受けなければ妊娠できない」ことについて は、日本産科婦人科学会の会告が出ておるわけでございます。  2つ目のポツにございますが、「女性に体外受精を受ける医学上の理由」について は、これは要検討でございますけれども、案2つ出ておりまして、日本産科婦人科学会 の会告、資料集94ページにお示ししてございますが、それでいいというお考えと、さら に会告に加えて、加えてと申しますか、(案2)のただし書きでございますが、ただ し、「機能性不妊」や「原因不明不妊」、「AIDの施行回数」などの基準を別途示す というご意見をいただいたところでございます。これは少し表現がわかりにくいです が、現在でも夫婦で行われております生殖補助医療の中で多少あいまいな部分があるわ けでございますが、そういったものの中で実施の基準をさらに少し細かく別途示す必要 があるのではないかということでお示しをしてございます。  精子提供についての優先順位については、先ほどご説明を申し上げたところでござい ます。  (3) 提供卵子による体外受精につきましても、卵子の提供を受けなければ妊娠ができ ないという検討項目に対して、次のページの真ん中のところ「●」、基本的に医師の裁 量とする。ただし、国が実施に当たっての準則となる考慮すべき基準を示す。  具体的な基準については、まだまだご議論があるわけでございますが(卵子のエイジ ングに起因する妊孕力、いわゆる妊娠を維持していく力の低下の問題も含めて、要検 討)をお願いするということで議論されたと理解してございます。  もう一つ、それぞれの提供卵子についての優先順位は設けるべきか?ということにつ きましては、先ほどご説明を申し上げたところでございます。  以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。ちょっと座長からの提案でございますが、今、事務 局でいろんな選択肢を提示していただきました。また、これを1つひとつ詰めていくと なかなか全体の見通しが立たないということもございますので、とりあえずはこういう 整理をさせていただいて、また全部このような検討課題をこの後もこういう整理の仕方 をして、そしてもう一回、二回り目でその選択肢についてどう我々は考えるかという議 論を進めさせていただければと思います。生殖補助医療全体を見渡した上でまた議論を 進めていただいた方が少し全体像が把握できてより効率的な議論ができるかと思いまし たので、そういうような提案をさせていただきたいと思いますけれども、よろしいでし ょうか。                (「はい」と声あり) ○矢崎部会長  どうもありがとうございます。  それでは、荒木委員がいらっしゃいましたので、机上配付資料の「倫理的に注意すべ き事項に関する見解」について一言ご説明いただきたいと思います。 ○荒木委員  遅れて申しわけございませんでした。学会でこのような倫理的に注意すべき事項に関 する見解」の別冊をつくっておりますので、先生方のお手元にあれば便利かと思って配 付させていただいた次第でございます。よろしくお願いします。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございます。  それでは、本日は事務局から全般説明がありました(3)の「提供卵子による体外受精」 からご議論いただきたいと思いますけれども、まず「卵子の提供を受けなければ妊娠で きない」ということの基準をどのようにするかということ。  これは医師の裁量とする。国が実施に当たっての準則となる考慮すべき基準を示すと いうことになっているかと思いますが、具体的な基準につきましては、精子のところま では学会の基準がございましたので、それに準ずるといったまとめを1つの選択肢にい たしました。卵子に関しては、たしか学会の基準はございませんですね。 ○荒木委員  ありません。 ○矢崎部会長  今後それは基準をつくられる可能性はございますでしょうか。 ○荒木委員  そういう予定は今のところございません。 ○矢崎部会長  この基準につきましては大変専門性の高いものでございますので、ここで具体的な基 準について議論するのはなかなか難しい感じがいたしますが、委員の皆様何かご意見ご ざいますでしょうか、格別なるご意見あれば承りたいと思います。吉村委員から何かコ メントございますでしょうか。 ○吉村委員  初めに書いてある文章で「卵子の提供を受けなければ妊娠できない」、これはもとも とは卵子がない方といいますか、早発閉経のようなものをイメージして、卵子の提供を 受けなければ、要するに卵子がないから卵子をもらわなければ妊娠できないということ でこれは決まったと思います。卵子があっても卵子のエイジングによってなかなか受精 できないとかそういったことが起こってくると、当然のことながらそういう方も、例え ば体外受精や顕微授精したにもかかわらず卵子のエイジングにより妊娠できないという ことが、こういった卵子提供の範疇に入ってくると思います。その辺は大変難しいこと だと思いますけれども、それが医師の裁量でいいのかどうかということが問題になって くると思うのですが。一応、問題提起のような感じですけれども。 ○矢崎部会長  提供卵子の体外受精の場合には、精子と違っていろいろ問題点があるということで、 今、吉村委員から提案がございましたけれども、いかがでしょうか。 ○加藤委員  もとの趣旨は、自分で赤ちゃんをつくることのできる卵子のある人は提供を受けるこ とができないというのが本来の趣旨だったのですね。 ○吉村委員  そうです。 ○加藤委員  それをこういうふうに表現するといろいろ難しい問題が起こってきてしまうのです。 ○矢崎部会長  吉村委員のご意見は、卵子を持っておられないか、あるいは卵子を持っておられても 明らかな異常がある方で顕微授精を。 ○吉村委員  そうですね。括弧の中に書いてございますけれども「○」の3つ目、どうやってこう いった人がこの医療を受けられるようになるのかということは問題だと思います。例え ばここには「形態的・質的な明らかな異常があり」と書いてありますけれども、そうで なくても異常は当然わからないことが多いので、形態的には全く正常であるけれども受 精できない方とか、受精しても受精後の発育が起こらない方は当然お見えになるわけで して、こういった卵子提供の医療をやっていいのかどうかということだと思います。 ○平山委員  一応現場のニーズ・声としては、今回の議論で患者さんの高いニーズとしては、今、 吉村先生がおっしゃったように、卵は採れるけれども、どうしても妊娠できない方は、 今回卵子提供が受けられるのではないかという非常に大きな期待を持っておられるのは 事実だと思うのですね。もちろん具体的な基準を決めていくというのは非常に難しい点 ではあると思いますが、私は基本的には選択肢があるということの非常に大きな精神的 な意味があると思うのですね。選択肢を選ぶか選ばないかはまた次の問題ですけれど も、いきなりそこを「できないもの」としてカットされてしまうと患者さんにとっては つらい状況になると思うので、私個人としては卵は採れないというだけではなく、妊娠 できる状態にないということで判断をしていただくような基準づくりをしていただいた 方がいいかと思うのですけれども。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。 ○金城委員  卵子の提供を受けなければ妊娠できないというのは、仮に卵はつくれて、しかし、そ れが妊娠できないような卵しかつくれないとしたらできないことと同じだと思うのです ね。それから、できるけれども、妊娠に至らないような卵しかつくれない。ですから、 それは全く同じですので、いちいちそういうことでガイドラインを作る必要はないと思 います。ですからあくまでも医師の裁量とする。エイジングも含めてよろしいのではな いかと思います。  私は思うのですけれども、最終的にはご本人の選択だと思うのです。自分と遺伝的な 関係がある方がいいと思う方が多いと思いますので、ご本人は最後まで努力をなさると 思う。にもかかわらずつくれないから、では提供を受けましょうということになると思 いますので、それは最終的にはご本人の判断に任せて、いちいちガイドラインその他を つくっておく必要はないのではないか。ですから医師の裁量によると。そして具体的な 基準は示さないということでよろしいと思います。 ○矢崎部会長  そのほか、いかがでしょうか。 ○石井委員  私はどちらかというと吉村先生がおっしゃったように、もともとの発想としては卵子 がない人にという考え方の方が強かったものですから、一番問題になるのは「加齢によ る」という前に決めたところが50歳ラインというのがあるので、多分40代の人あたりが 年齢による卵の不良化というといけないのかもしれませんが、妊娠しにくくなる。その 関係と卵ができないという、そこの判断との分かれ目になるかと思うのですが、私自 身、完全に加齢で卵がうまく妊娠できないというものを排除すべきかというところまで 言い切れないのですが、優先的には卵のない人を優先にした方がいいのではないかとい う考えを持っているということが1つ。  もう一つは、国として義務的な基準までは示す必要はないかもしれませんが、この前 のときも申したかもしれませんが、吉村先生がおっしゃっていたように、お医者さんが というか、割に提供卵というものが乱用される危険がある。つまり卵がないわけではな いけれども、妊娠できないので提供卵子を認めるとすれば、それに当たっての一定の基 準みたいなものは医学的にある程度まで示していただいた方がいいのではないか。 ○加藤委員  卵があっても妊娠できない人と卵のない人を今区別する必要ないというのが金城さん の意見だったのですね。 ○金城委員  そうです。 ○加藤委員  だとすると、妊娠できるような、自分の卵子を持たない人は提供を受けることができ る、そういう趣旨でいいので、つまり卵があっても妊娠できない人と卵がなくて妊娠で きない人を区別する必要があるかないかという議論になるのではないですか。 ○矢崎部会長  そうですね。卵があって妊娠できないという臨床的な判断がなかなか難しいので、そ の辺、吉村委員いかがでしょうか。 ○吉村委員  卵があるかないかは判定できると思うのです。それを体外に採り出し精子をかけ体外 受精あるいは顕微授精をやってみて、受精が起こらない。あるいは受精が起こるけれど もその後の発育が悪くて最終的に妊娠に至らない方をどうするかということは大変難し い問題だと思います。  石井先生がおっしゃるように、そういった段階で、例えば42〜43歳になって卵子も採 れる、受精もできる、体外受精2〜3回したけれどもなかなか妊娠しない。それを繰り 返しているうちに45になってしまった。その45の方は、前の基準で言えば、自然閉経は 51〜52歳、その自然閉経までということであるならば卵子提供を受ける。そうすると卵 子提供のニーズは大変多くなるだろう。また、安易にとは言いませんけれども、そうい った流れにいく可能性はないのかという心配は現場の者としてありますけれども、この 辺は大変難しい問題だと思います。 ○加藤委員  判定基準は難しくても、医療アクセス権という意味では差別する必要ないというのが 基本的な考えではないでしょうか。 ○矢崎部会長  全く同列で扱って、医師の判断に任せると。 ○加藤委員  ええ。 ○新家委員  今、吉村先生が「安易に」とおっしゃったのですけれども、実際には実施する医療機 関や実施する医師も決まるわけですから、そんなに勝手な判断で実施するとは私は思え ないのです。今の状況とはちょっと違ってくると思うので、余り細かいことまで決めな いで、最終的には妊娠しない人という判断でよいのではないかと思います。 ○矢崎部会長  今、多くの委員の方はそのようなご意見を述べられましたが。 ○福武委員  またもとに戻るのですけれども、医学的な範疇で妊娠できないかどうかというのを考 えるのと、あと吉村先生がおっしゃったように、ニーズが増えるのではないかというこ とを危惧されるというのとは別問題だろうという気がします。つまり卵子をもらって、 ある夫婦が生まれた子どもの親になるということがそもそも望ましいのかどうかとか、 いろんな問題もまた別個に入ってくる話だと思うのですね。ですから、ここではむしろ 医学的な問題なのですよと。あと、例えばそれを全部この患者さん(夫婦)に実施する のについて、医師の判断、当該医療機関の判断だけでいいのかどうかという問題はまた 別の話だろうという気がするのですが。 ○加藤委員  医療アクセス権というレベルで言えば、提供卵子がなければ妊娠できない人は提供を 受ける権利があるというのは確率は0と1で考えているわけですね。ところが実際には 四十何歳の主婦が0か1かは判定できないので、45%かもしれないし66%かもしれない と。そうなるといわばアクセス権というレベルでは0か1かで定義されるけれども、実 際どういう適用になるかという医学的な判断はまだら色というか、たまむし色なのでは ないでしょうか。だから、それについては何か基準を設けるのか、それとも医師の判断 に任せるのかという問題になるのだと思うのですけど。 ○矢崎部会長  よろしいでしょうか。 ○福武委員  今、私が申し上げたのは、医師が判断するときに医師のいわゆる自由裁量に任せるの か、それをある程度外から基準を決めて、羈束裁量(法規裁量)といいますか、そういっ たものにするかという問題はきちんとすべきだと思うのです。あとニーズが増えるの か、それが可能なのかどうかというのはまた別の要素が入ってくるのでないか。別の要 素というのは検討課題2及び検討課題3に大きく絡んでくると思うのです。  ですから、ここの段階では、できるだけ医者の方の裁量に任せるけど、それの基準を 決めるというくらいで決めておけばいいのではないかという気がするのですが。 ○矢崎部会長  「医師の裁量」といった場合になかなか医学的なファクターだけではならないのが現 実で、総合的な判断という意味でも医師の裁量に期待するところが大きいのではないか と思いますが、吉村委員何か。 ○吉村委員  特にありませんが、私がニーズが増えると言いましたのはちょっと誤解されてとられ ているのかもしれません。要するにたくさんの方がそういった医療にいくという危険性 がありますよということを言っているだけでありまして、全く逆の立場で福武先生はお とりになっているかもしれないのですが。ここでは「●」で書いてあるのでよろしいの ではないかと思います。 ○矢崎部会長  そうしますと、先生も余り考慮すべき基準まで示さないで、すべて医師の裁量に任す と。 ○吉村委員  実施に当たっては、考慮すべき基準を示すということでよろしいのではないでしょう か。例えば具体的に日本産科婦人科学会も精子の提供に関してはこういった症例、こう いった症例にやりましょうということを示しておりますし、卵子提供に関しても、考慮 すべき基準を示すということでよろしいのではないかと思います。ですから医師の裁量 というよりは、ここに書いてあるとおりでよろしいのではないか。実施に当たっては、 具体的に顕微授精をどのくらいしたら妊娠できないとか、顕微授精とか夫婦間でできる ものであるならば、できる限りそういった子をつくってあげたいというのが私たちの希 望ですし、精子提供と同じように卵子提供のある程度の基準をつくっていくことは必要 だと思います。  矢崎先生、そんな感じでよろしいでしょうか。 ○荒木委員  ここで議論されている基準はどういう基準、例えば具体的な疾患とかそういう状況を 挙げるというのが基準なのでしょうか。学会では案といたしましては、基準になります かどうかわかりませんけれども、女性側に先天性卵巣欠損、例えばターナー症候群な ど、卵巣性無月経、悪性腫瘍などによって両側の卵巣摘出を行った症例、放射線あるい は抗がん剤治療によって卵巣機能が欠落した症例という具体的なものはいいのではない かというようなことは委員会では合意しているのですけど、その基準がわかりにくいの ですけど。 ○矢崎部会長  今その基準をどうするかということで議論しているわけですけれども、まとめます と、事務局案に従いますと、整理するとすれば、医師の裁量とする。(基準を示さな い。)  (案2)が裁量とする。しかし基準については、今、荒木委員が言われた卵子を持っ てない人にする。 ○加藤委員  今、荒木さんの言ったのは逆立ちしても自分の卵子は出てこないという事実例なので すね。 ○矢崎部会長  (案2)ですね。(案3)は金城委員が最初に言われた、卵子があってもどうしても 妊娠できない人もそこに含めるという3つの選択肢で、また再び議論していただくとい うことで、この場はとりあえずそういう選択肢でまとめさせていただいてよろしいでし ょうか。大変恐縮ですけれども。  それでは、次の「卵子の提供についての優先順位」。これは恐らく基準に沿ってまた 決まるところで、これは精子と同じことだと思いますので、そういうふうにさせていた だきたい。一応卵子の提供はそういうようなまとめでよろしいですか、事務局。 ○松尾委員  先生にきれいにまとめていただいた議論を少し蒸し返すようで申しわけないのですけ れども、例えば真性半陰陽であるとか、先天性のステロイド合成障害というような疾患 の人は、卵はあるけれども妊娠はできないそういう事例、いわばグレーゾーンの病態が ありますので、卵があるかないかという分け方が果たしていいかという気がいたします けれども。 ○矢崎部会長  (案3)は、卵があっても、先生のおっしゃったものを含めて裁量でチャンスがある という案でございますけれども。 ○松尾委員  物理的に卵が1個でもあるかないかということで、2つに分けてまとめるということ になりますか。 ○矢崎部会長  (案2)と(案3)の分け方ですね。それは吉村委員。 ○吉村委員  今、松尾先生がおっしゃったようなケースも(案3)でいけると私は思いますので、 それはまた後日そのことについてお話しする。もちろん松尾先生がおっしゃったケース はあると思いますし、そういったものに対してどう対処していくかということは大変な ことだと思います。 ○石井委員  医学的なことは私たちわからないので、その基準づくりみたいな、(案3)の中のも う少し細かい、どういうことになるのかというのをお医者さんの方で少し整理していた だけるとありがたいと思うのですが。 ○矢崎部会長  わかりました。それでは宿題でございますけれども、吉村委員にいつも申しわけない ですが、お願いします。  では(4)の「提供胚の移植」に移らせていただきたいと思います。「胚の提供を受けな ければ妊娠できない夫婦が、提供された余剰胚の移植を受けることができる」。  説明として、「他の夫婦が自己の胚移植のために得た胚であって、当該夫婦が使用し ないことを決定したもの」ということになるかと思います。  まず初めのご議論いただく点として、医師の裁量とするか?具体的な判定基準を設定 するか?ということにもなるかと思いますが、これは卵子・精子に準じて考えてよろし いでしょうか。  そうしますと、おのずから医師の裁量に任せるけれども、その基準としては、内容、 括弧の中にございますような、精子・卵子の両方に問題がある場合と精子か卵子一方に 問題があって体外受精をやってもどうしても妊娠できない。そういういろいろな基準の レベルがありますが、そこに書いてある基準はそういうような基準でございます。これ につきましては、恐らくどこにもはっきりした基準が設けられていないのではないかと 思いますが、まず専門家のお立場から少し解説をいただいて、その後に委員の皆様から ご意見をお聞きしたいと思いますが、吉村委員、荒木委員どちらかでも。 ○吉村委員  矢崎先生がおっしゃったことでよろしいかと思うのですが、胚の提供は、もともとは 胚の提供を受けなければ妊娠できない夫婦が余剰胚の移植を受けることができる。この 基準は当然胚の提供を受けなければならないということですから、ご主人に精子がなく 奥様に卵子がない、こういった場合に当然胚の提供を受けられる。こういった方は極め てまれだと思います。  その際に、その次の10ページですけれども、卵子の提供を受けなければ妊娠できない 夫婦もこの胚の提供で代用することができる、簡単に言えばそういうことです。この点 については、パブリック・コメントでもさまざまなご意見をいただいたところです。こ ういったものを卵子提供の代用として果たしていいのかということと、これは卵子提供 にもかかわってくるわけですけれども、要するに卵子提供者が当然ないということが前 提となりますと、余剰胚で代用するということが起きてくるわけですが、ここがこの委 員会の先生方の中で本当にコンセンサスが得られるかどうかということが非常に大きな 問題だと思います。私は卵子提供に関して余剰胚の移植がどうかということを、まず皆 様に意見を聞かれた後にこういったことについて少し話せばいいかなと思います。  「○」の3番目ですけれども、胚の提供を受けなければ妊娠できない夫婦は、余剰胚 の提供を受けることが困難な場合には、精子・卵子両方の提供によって得られた胚の移 植を受けることができる。これも同じようにパブリック・コメントで非常に大きな問題 となりましたので、この辺を少しお話し合いしていただいた後に、胚の提供のコンセン サスを得たらいいかと思っていますが、どうでしょうか。 ○矢崎部会長  ただいまの意見は、少し先の案件まで一緒に議論されたらいかがというお話を伺いま した。 ○加藤委員  アクセス権については同じ条件なのですね。卵子だけの場合と精子だけの場合も大体 同じに考えていいのですね。ただ、提供の形態が余剰胚のみという考え方と、精子と卵 子の両方の提供を受けてそれで妊娠する、その可能性を認めるかどうか、2つの問題が 重なっているわけですね。 ○吉村委員  そうですね。 ○矢崎部会長  そもそも論に入ると大変でございますので、まず余剰胚の問題は比較的委員の方々の ご意見がいただけるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○金城委員  私は最終的にはあくまでもご本人の選択ということにしたらいいと思いますので、余 り制限を設けるべきではないというのが基本的な立場です。ですからこの場合にして も、卵の提供はほとんどないと思う。でも余剰胚の提供ならある可能性があるわけで す。しかし不妊のご夫婦としては、どちらかというと遺伝的な関係がある方がいいとお 思いになると思うのですね。にもかかわらず卵の提供がどうしてもない。では仕方がな いからということで胚の提供を受けて子どもを産むと。それはご本人がどうするかとい うのは最終的な選択として認めていく必要があると思います。  ですから「胚の提供、卵の提供の代用とする」、これでよろしいかということについ ては、私はイエスと考えております。 ○矢崎部会長  ありがとうございます。ただいまのご意見は、余剰胚の最初の「○」は、精子も卵子 も両方に問題がある方ということをある程度言っております。2番目の「○」が、今、 金城委員が言われた卵子の提供を受けなければ妊娠できない夫婦も余剰胚で妊娠する選 択肢を残すというのが「○」の2でございますね。 ○金城委員  今、吉村委員がおっしゃった最初の問題ということを議論するのかなと思って、ちょ っと早かったのかもしれません。 ○加藤委員  金城さんは最初の方はもちろんオーケイなのでしょう。 ○金城委員  ええ、それは構いません。 ○福武委員  日弁連でずっと議論していて2000年3月に出した提言では、胚の移植については むしろ今の時点ではすべきではないというのが結論だったのですね。それは多分国民の 意識調査の中でも、精子をもらう、卵子をもらうというのだったらどちらかと血のつな がりがあると。だけど胚の場合には全く血のつながりのない、いわば特別養子の胚段階 でのものだという形だったと思うのです。そうしたときに本当にそれを今こういった形 で認めていっていいのかということについてはかなり法律家といいますか、弁護士のサ イドとしては疑問があったのですね。ですから、その後、卵の提供がなければとか、そ ういった話にいきなり行ってしまうというのにかなり疑問を持っているのです。  もう一つは、この段階で、それをこのご夫婦については胚の提供をしますよといった ときの決定者がだれなのかというのが、本当にこの患者さんたちを診ている医者の自由 裁量でいいのかという問題は特に大きくなってくるのだろうと思うのです。カウンセリ ングだけでも難しいという気がしますので、その場合には、例えばどうしてもその選択 肢を残すということでしたら、ほかの公的な審議機関の方が個別的なチェックをすると か、そういったことまで考えるべきではないかという気がするのですね。  ですから卵の提供、精子の提供と同列になってしまうというのに対してかなり疑問を 持っているということです。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。 ○加藤委員  質問。日弁連では、遺伝的なつながりがなくても人様の胚でも、自分のおなかを痛め て産みたいという要望については配慮しなかったのですか。 ○福武委員  要望があるということと、全部要望どおりに認めていっていいのかということは別問 題だろうということだったのですが。今、実際に養子の制度を見ていると、夫の連れ 子、妻の連れ子をそのまま養子にするケースは物すごく多いのですね。それに対しては 別に家裁の許可はいらないのです。それで後、離婚するとかという話になってくるケー スはあるのです。けれども、両方とも血のつながりがなくて、しかもそれが非常に小さ な子どもの場合には家裁の関与というのがありますので、そういったところから比較す れば、精子・卵子の提供と胚の提供は次元としては違うと考えるべきではないかという ことです。 ○矢崎部会長  ごもっともなご意見だと思いますが、いかがでしょうか。そうしますと、日弁連とし ては、絶対だめですよということではなくて、まず最初の「○」、両方いろいろ問題が あって、この方は絶対精子あるいは卵子の提供でもお子さんが生まれないご夫婦を対象 とした場合、例えば今養子のケースの家裁の関与というお話がありましたが、公的機関 とかそういうところである程度承認すれば実現が可能になるようなプロセスを考えてよ ろしいのでしょうか。 ○福武委員  随分議論があったものですから、最終的な提言の中では時期尚早であるという形にな りました。絶対だめだという意見もあったのです。もともと生殖補助医療技術そのもの についてかなり強い抵抗があるのは事実なものですから、それでいろいろあれこれあれ これ議論をまとめている中で、あるところではオーケイ、あるところまではだめだとい う話になったときに、この胚の提供については、むしろ家裁の関与だとかいろんな面の 公的な第三者の関与があるということが将来的に条件が整うなら可能性はあるかもしれ ないけれど、現時点ではそれは難しいだろうから、胚の提供についてはやめるべきだと いうような意見だったのです。 ○才村委員  今の意見に私もほぼ賛成の意見かなと思うのですけれども、先日深夜のNHKの教育 テレビでシンポジウム、石井委員さんとかが出ておられたのを見ていたのですけれど も、そこのところに、これは日本ではなくてフランスの紹介だったのですけれども、不 妊治療をされているときに最初に必ずカウンセリングを受けると。そのカウンセリング の内容が養子縁組というか、養子を得ることについてはどうかということを必ず勧め て、そして、その夫婦が一たん持ち帰って考えて、本当にそういう形で養子を得る方が 望ましいのではないかみたいな話の説明を受けた上で、夫婦が生殖補助医療を受けるこ とを決定するといったことが出ていたのですね。  私も特別養子縁組と生殖補助医療との整合性はどの辺でつけたらいいのかというのを ずっと考えてきているのですけれども、精子のみや卵子のみの提供の場合も私自身は整 合性を考えるべきだと思っているのですけれども、両方とも自分自身の血のつながりの ない子どもを得る場合には特に特別養子縁組との整合性を考えるべきではないかと思い ます。  この間の話で、公的管理機関の中で、それをどう役目を持たせるのかという論議はま だ煮詰まってないので、そこのところはどうなるのかわからないのですけれども、そこ で一括して情報管理をするということであれば、そこでそういう得たいという人へのチ ェック機能、そちらの方で持つということも考えねばならないのではないか。情報を一 括して管理をしなくて、各それぞれのお医者さんに任せられるというのであれば、そこ まで難しいのかと思ったのですけれども、1カ所で情報を管理するということがあるの であれば、そこである程度の子どもを育てることに耐えられるといいますか、そういう ところでのガイドラインなのかチェックリストなのかわからないのですけれども、そう いうものが必要ではないかと思います。  それとついでというか次々で申しわけないのですけれども、これはまた別の論議にな ると思うのですけれども、全部関連してきますので、兄弟姉妹とか友人からもらう場合 には、そういうチェック機能を必ずやるというふうなことで案がなっていますね。そこ だけをチェック機能で審査するというのはちょっとおかしいかなと。その辺ではもう少 しそれを広げるべきではないかと思います。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。 ○平山委員  今回議論している精子・卵子・胚の提供に関してはすべてのケースにおいてドナーや レシピエントに対して心理学的(もちろん医学的・社会学的なものも含め)、スクリーニ ングであるとかカウンセリングは必要であるという共通認識があると私は思っておりま したので、もし胚の提供が認められた場合にも当然心理学的なスクリーニング、それは 養子も子どもを持たないことも、それからこの治療を受けることも同じ太さの道として 選択できるよう、カウンセリングというのは絶対そういうふうにやっていくのですね。 これをしなさいとは絶対言わない。ですからたとえこういう希望があって来てもそうい うふうにやっていくのです。  ですから、今、才村委員がおっしゃったような点に関しては、カウンセリングだけで はもちろん不十分なのですが、ある程度のカバーはできるかと思います。 ○矢崎部会長  今までのご議論で、生殖補助医療をいかに医療として定着させるには、ある程度の ルールと、今言われたともかく医師とクライアントのご夫婦だけで話を進めるのではな くて、しっかりしたサポートシステムを構築するというのが前提だと思います。  胚の場合は、それだけでなくて、もう少し公的機関のチェックが必要ではないかとい うお話をお伺いしまして……。はい、どうぞ。 ○石井委員  このもととなるものをつくった委員として一応の説明をさせていただきたいと思うの ですが、確かに血縁を考えるとどちらかとつながっている、それが望ましいという考え 方はアンケート調査などでも見えるところですが、1つは、妻が卵子がない場合には卵 子提供を受けられる。夫が精子がなければ夫は精子をもらえると。たまたまた夫婦がそ れぞれなかったら胚をもらうという形にするということを認めるという、その順序でい けば認められていいだろう。  そして、より私たちが考えたのは余剰胚である。余剰胚というのは、他人を新たに傷 つけることなく、現実にはその胚は今研究に利用するとかという話もいろいろ出てきて いますけれども、この世に命として生まれてくることはなく終わってしまう、その余剰 胚を生かす。この世に人の命として生まれてくることにつながるのだから、それなら認 めてもいいのではないかという、かえって先まで言えば、提供卵のような第三者を傷つ けることなくできることであるから認めてもいいのではないかというのがかなりあっ た、その2つ目の理由であり、養子とパラレルに考える。「受精卵養子」などという言 い方も私もしたりするのですけれども、その点でいけば、確かにどちらともつながって いないのだから、慎重な手続が必要だという考え方、私もそれに半分賛成する面もある のですけれども、これは実子を求める。自分たちの実子として子どもを得るための医療 行為として考えるという観点で、既に生まれている子どもと親としてうまくいくかとい う観点、そこでの特別養子の判断とは違って、生まれたときからその人が親、まさしく 産んだ人が母となって育てる、そういう親子関係ができるものという前提で進めるもの として考えるので、特別な手続をここの段階では特に提案せずに、普通の手続で提供胚 の場合についても医療行為として行うことを認めていいのではないか。私はそのような 理解として、この案はいるのですけれども。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。 ○新家委員  この胚の提供を受ける場合、精子も卵子もなくてどうしても妊娠しないという場合の 理論の方が分かりやすいと思います。卵子の提供を受けなければ妊娠できないという場 合は卵子の提供がないから胚で代わりにやろうという考え方で、国民は納得するでしょ うか。もしそうなってきますと、また血縁の話になってしまうのですが、遺伝子的に全 くつながってない親子、それは10カ月間妊娠して分娩しただけで実子であり、するとも う一方で、代理懐胎というのを否定したわけですが、これは遺伝子がつながっているけ れど産んではいないから養子だということになります。何か逆になるような気がするの ですが。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。 ○渡辺委員  臨床家なものですから、家庭の中の異母兄弟とか継母に育てられた経過を経て大人に なった人たちの深い話を聞く体験があるわけですね。それで子どもは、物心がついたと きから絶えず日常の親子のやりとりの中で、どの部分が父に似て、どの部分が母に似て いるかということを絶えず自分でチェックして、自己像を形成していくというプロセス がどの子にもあるのですね。  そのプロセスの中で、たまたま未婚の母親から生まれてすぐに手渡され、とてもいい 両親に育てられてすばらしく偏差値の高い女子校を1番で卒業した子どもが、17歳のあ る日、精神錯乱状態に陥り、どこの精神科に行ってもだめで私のところに来たという例 があるのです。その子は物心のついたときから、自分の親ではあり得ないことを自分の 観察ではっきりと知っていて、それは絶対に自分の勘で正しいから、どうやったら確認 できるかを生きがいに生きてきて、高校時代に戸籍で調べてわかったという経緯がある のですね。  この子一人ではなく、多くの子どもたちが、例えば異父兄弟、異母兄弟で一緒に何も 言われなくて育っている普通の賢い子どもたちのほとんどが、小さいときにそういうこ とに気付いているわけですね。気付いているけれども言えない雰囲気がある。言っては いけない雰囲気があるために言わない。そのためにどれほど思春期に一番信頼できる親 に不信感を抱き、本当に生まれてよかったのかという自己疑念を抱きながら苦しみ生き ているかが、現実につぶさに語られるわけですね。  私は、生殖補助医療の持つリスクは、産むところまでいくら厳密に考えても、生殖補 助医療自体が、家族、育てる親にも育っていく子どもにも背負わせる非常に複雑な問題 に関して、慎重さというものをお互いに共有していかなければニーズも親の自由もな い。生まれてきた子どもたちはどうなるのだろうと、本当に思うのですね。  この会議に参加しながら、現実に社会的に活躍しているけれども、過去にそういう体 験のある人たちと数時間職場以外の時間を使って話し込んでいます。自分が生殖医療の 子どもとして生まれるのだったらそれは嫌だ、はっきり断ると、その人たち自身が大人 として発言しているのですね。それは自分の親を憎まなければいけないというすごく苦 しいところに立たされ、その親が本当に苦しんだことを自分が了解できるまで40年、50 年かかるというのですね。  私は、特に胚の問題は遺伝的な形質がはっきり違うことは子どももわかりますから、 これから先のDNA検査は子どものお小遣いやお年玉でできる時代になると思うので す。ですから、なぜ遺伝的なつながりが少しでもあった方がリスクが少ないかなどとい う、私たちが長年共有してきた現実の認識に立ち戻らないと、私たちの日本社会は遺伝 的なつながりがない子どもが安心して暮らせるほどの、成熟したゆとりのある社会では ありません。遺伝的なつながりがあっても、両親が一生懸命育ててもうまくいかない状 況がいっぱいある社会です。その辺の一般市民感情というのですか、生まれてくる子ど もの、普通の子どもたちの常識からもう少し国民の心情とともに歩む生殖医療というぐ らいのテンポで私は十分ではないかと思うのですね。  日弁連の方たちは特別な専門家で、精神的な専門家でなくたって、遺伝的なつながり のない胚の方がずっとリスクが高いという直観があるわけですし、特別養子縁組が努力 してつくられながら、そういうものは嫌だという人たちが自分たちの好きなようにやり たいという流れが事実あるわけです。アメリカなどでは既に大勢の人たちが生殖医療の 持つ精神的な危険は、この医療が人類愛に立つものではないことだとはっきり言ってい ます。私は、大いに議論して、その辺をもう少し確認しなければ、ちょっとこの先は議 論についていけないという気持ちが率直にいたします。 ○矢崎部会長  大変重たい発言をされましたけれども、委員の方としてはごもっともな。 ○金城委員  質問、よろしいですか。今までAIDで生まれた子どもは、実施基準として必ず秘密 ということがありました。ですから親も秘密で、ですから生まれた子どもは親に対して 不信感を持つということはあったと思うのですね。でも物心ついたときに、実はこうい うことで生まれたのだと。子どもが本当に欲しかったのだと、だから産んだのよという 話をもしもしていたら、これは随分違った親子関係ができるのではないかと思いますけ れども、そんな事例はないのでしょうか。 ○渡辺委員  私は特別養子縁組の例で「つぎ木の会」という会が、赤ちゃんのときから「あなたは 本当に望まれてもらわれてきた」ということを日常の育児の中で語り、本当に歌うよう に、子守歌のように語り継ぎながらやっているという会を知っています。そこでは自分 たちの選んだ脈絡、つまり遺伝的につながっていなくても本当に我が子として愛してい るのだということを親が語り継いでいます。その中に秘密はないのだよ、真実なのだよ というメッセージを伝えているのですね。  家族関係の中で真実というものが損なわれてしまったときに、家族ほど苦しめるもの はない。例えばこの間の生殖医療の中で真実をオープンにしていくことがみんなで共有 できていない中で、こういう形で、自分のおなかを通ったから、というあたりで1つお 茶を濁されている中で、子ども自身は、例えば自分の出自に関しての嘘、そして、気が ついている自分を偽って気がついてないふりをしながら親子関係を続けていくという 嘘、この二重の嘘は苦し過ぎるというふうに、例えば異父兄弟、異母兄弟の人たちも言 うわけですね。ですからここら辺の秘密の問題、生まれてくる子どもたちが安心して、 ありのままの真実でいいのだという流れを社会的につくっていかなければ、両親が秘密 をするのは、社会がそういった出自の子どもたちをいじめるということを知っているわ けです。ですから、社会が秘密の問題に関してもっと取り組んで、オープンにできるよ うな流れをつくっていかなければ、生むところまではよくてもその後は虐待のリスクが 高まると思うのですね。偏見という社会的な虐待の中で、子どもたちが生まれると思う のですね。 ○金城委員  先ほどの特別養子縁組について小さいときから話をして、そういう場合には理想的な 親子関係というのはできるのでしょうか。 ○渡辺委員  理想的な親子関係というものはないと思いますね。普通の親子関係も全く理想的なも のではないのですけれども、でもその方たちは困ったときに仲間がいて相談し合います し、私の方に相談に来ます。そうしますと、お互いに組み合わせが悪い性格の親子は、 普通の親子でも起きますけれども、こういう場合に、血がつながってないからではない かと落ち込んでいくのをほぐすことは早くできるのですね。正直に真実の中でやってい くことの方がはるかに痛みを共有できるその分だけ、子どもは長期的に守られると思う のですね。 ○才村委員  里親制度のところで養子縁組の斡旋を勧めてきた経験があるのですけれども、里親さ んには小学校へ上がる前からの幼児のころにまず第1回目の真実告知をしようというこ とで指導してきたのですね。そのときには日本ではまだまだないのですけれども、アメ リカとかだったらすごいたくさん絵本とかがあるのですね。同じような養子を得るとい うふうな事態の方がたくさんいらっしゃるので、絵本を見ながら子どもにわかりやすい 形でまず1回目を言い、そして小学校へ上がったころにまた2回目を言いと、真実告知 を何回もしながら、そして本当にあなたは私たちの欲しかった子どもだよということを 何べんも何べんも伝えていくと。  そして、先ほど言われたような、子ども同士の里子というか、養子同士のピアカウン セリング、一緒にキャンプに連れていったり、親子でいろんな問題が起こったときに、 子ども同士での支え合いと里親さん同士といいますか、養親同士でいろいろ悩みを打ち 明ける。研修でも真実告知の仕方をどうするのかということで何回も繰り返し里親会と かで研修をしたりしまして、だから、ほかの人がこんなふうに子どもに言っていたとき に、こんなふうに子どもは反応が起こってきたよということで、そういうふうにするの かといった具体的なイメージがわいてくる。そして、その中で乗り越えながら、思春期 より前に告知をしながら、来るべき親子関係で一番難しい思春期を乗り越えていくとい うことをしている現状があります。 ○平山委員  私も渡辺委員のおっしゃったことは当然だと思いますし、そこまで社会は成熟してな いのにどうかというのはあるかもしれないのですけれども、真実告知は大事だと思いま す。これ(提供による生殖補助医療)をもしやっていくのであれば、大前提であると思い ます。アメリカやオーストラリアでの研究でたくさんあるのですけど、いつどういうふ うに告知をするか。オーストラリアが一番進んでいるようで、就学前に半数ぐらいは告 知をしているのですね。あなたはドネーションで生まれている、といった告知をしてい る。  それに対する子どもの受け入れは、これは調査研究ですから、面接研究ではないです からどこまで深いものかは言えませんけれども、大体受け入れはいいといった結果がど の研究を見ても大体なっているのですね。  ですから私たちもこの議論をしていく上で、真実告知というか、秘密にしてやってい くものではないという前提でやっていかないと確かに議論は進んでいかないだろうと思 いますし、生まれた後のケア、子どもが疑問を持ってとき、親が子育てに悩んだときの フォロー態勢というのもシステムとしてつくっていく。  渡辺先生は、そこまで社会が成熟してないから、多分今の段階ではやるべきではない というご意見だと思いますけれども、私は個人的にはシステムをつくっていく時期であ ろうと考えております。 ○松尾委員  私も福武委員のご意見に全面的に賛成です。里親制度というのが定着してない我が国 で胚の提供を導入するのは、時期が早過ぎると思います。胚の提供を受けて生まれた子 どもが仮に医学的に問題のある子どもだったり両親に不幸が合った場合にその子はどう なるのかというようなことや、渡辺委員が言及なさったような問題を横へ置いておいて 先に進むのは少し時期が早いのではないかと思います。 ○矢崎部会長  なかなか難しい、解決しなければならない問題が多々ありますけれども、1つは子の 人権、福祉の点からのお話多かったと思いますけど、条件設定としては、実現をするに しても、公的機関の関与が必要ではないかというお話と、新しい親子関係がきっちりで きるようなシステム、子への告知の問題とかそういう条件整備が必要ではないかと、主 なポイントはそういうところにあったかと思いますが。 ○平山委員  もう一つよろしいでしょうか。 ○矢崎部会長  どうぞ。 ○平山委員  ちょっと議論が多分ずれてしまうので、もしずれていたらまた戻していただいたらと 思うのですけれども、余剰胚の問題ということで言えば、数ある程度集まると思うので す。実施可能になってくるということ。私はこういう制度をつくるのであれば、実施可 能でないと意味がないと思っているのですね。現実に患者さんが選べない制度はつくっ ても意味がないと考えておりますので、そういう意味では提供胚、余剰胚というのは純 粋にドネーション(寄付)、それこそドネーションの気持ちでできるのですね。例えばあ る方が、体外受精で妊娠されて出産された。でも卵はまだ凍結で残っていると、そうい う方は私の残っている卵でよかったら本当に無償でという気持ちは現実的に訴えられた こともあります。そういう患者さんがいらっしゃいましたし、そういう意味では現実的 にはあり得る、かなりいろんな方法の中ではできる可能性のある方法であると思う。  それがもし提供を受けたいという患者さんのために使われるのであったら、私は望ま しいことではないかと思っております。 ○矢崎部会長  先ほど専門委員会のご議論は石井委員からおっしゃられたことに尽きると思いますで すね。何か石井委員から追加でお話しされることございますでしょうか。 ○石井委員  少し違うのですけど、議論を蒸し返すことになってしまうかもしれませんけれども、 確かに両方がつながってないということの問題性ということを言うならば、片方がつな がってないことだって同じように問題になるので、要するに両方がつながってないと、 何かあったときに少なくともつながっている方は親として引き受ける、そういう発想で すね。血のつながった人が親である。そこのところが最終的に担保してくれるという発 想になるのではないか。  私も渡辺先生がおっしゃるように、今の日本社会がそんなに成熟してないということ には賛成するのですけれども、確かにこれで世の中が変わるとはとても思えないから危 険性はとっても高くなるとは思うのですが、かなりこの医療を医療として受け入れると いうのは、血縁が親子である、そこを絶対視するという考え方をしているという、そこ にスタートがあって、初めて提供精子・卵子・胚というものの医療を認めると、そこの ところをちゃんと受け入れる人でなければ、この医療を受けられない、そういう医療な のではないかと思っているのですけれども。 ○金城委員  今、渡辺先生がおっしゃったことようなことについて、日本の社会は非常に血縁中心 で、そういう意味では成熟していないということ言えると思うのですね。でも、そうい う社会の中で生きているご両親が、にもかかわらず胚の提供を受けて産みたいと言った ときには無条件ではなくいろんな問題、渡辺先生がおっしゃったようなことを十分お話 しをして、その上でも本人が産みたいというときには、これは認めていっていいのでは ないかと思うのです。  そして、しかもその後いろいろと問題が起こったときに、いかに真実告知をするかと いうことについて、さらに育児についてのサポート態勢もきちんとつくっておくという ことにしていくということで、私は胚の提供も認めてよろしいのではないかと思いま す。余り遺伝ばかりこだわる、親子とは遺伝なのだと、そういう社会的な常識を変えて いく1つのきっかけにならなければいけないのではないかと思いますが、いかがでしょ うか。 ○渡辺委員  不妊の方たちがここまで思い詰めるという背景には、今、石井先生や金城先生がおっ しゃった思いとは逆に、つまり乗り越えようとするというスローガンは私も大賛成なの ですけれども、現実に女性たちが、そして男性たちが、つまり私たちが子どもが産めな いということに関して、子どもが産める人間が子どもが産めない人間に対して長年家制 度の下で微妙に言葉を使わずにやってきたプレッシャーというのが現実にあるわけです よね。その歴史の厚みというものがちゃんと吟味できてない中で、そういう乗り越え方 ができる、もし乗り越えられていたら生殖医療などなくたって、自分の近所の子ども、 自分の知っている子どもをかわいがりながらみんなでやっていく世の中になっているわ けですね。  ですから、おっしゃっていることは、私はスローガンとしてはいいのですけれども、 それと全く同じことが、子どもを持てない人たちを追い詰めていっているわけですね。 ですから、それは私はそんなレベルではないでしょうと、不妊症の方たちの苦しみは。 本当に私たちが生ませてあげなければいけないと思い詰められるほど苦しいわけです ね。だから医学だって応援しているわけですね。そのことそのものがすごいとらわれで あって、まるでフィンランドなどの子どものない国だったら今のような議論はわかるの ですけれども、子どもがこれだけあふれていて、しかも一人ひとりの子どもが大事にさ れてない。今既にいる子どもたちが大事にされてない世の中で、もっと社会的な全体の 子どもたちの苦しみというものを現実に毎日いろんな問題が出ているにもかかわらず。  実際にはもうちょっとはっきり申し上げますと、私どもの臨床経験では不妊治療を受 けたり、不妊の経験があったりした後、生まれた子どもの育児というのはすごく苦しい 育児です。すごい緊張ですよ。産むまで緊張で緊張で生きている心地がしなかったと か、産んだ後も、その子が息をしているかと思って物すごい緊張でのぞき込むわけで す。事実です、それは。次に生まれた子どもがこんなに楽だったというのは何なのだろ うといって、お母さんたちは正直におっしゃるわけですね。不妊治療の後の子どもとい うのは楽しめなかったと、育児が。それくらい皆さん緊張して、不妊を克服しなければ いけないものであるかのように生まじめに頑張れるわけですね。  だから、そういう1つの体質自体、個々の女性たち、まじめな誠実な良心的な女性た ちが負っている、そういったものをもっとほぐしていくようなものにならなければ、一 方では、医療として定着していくことが、やらなければいけないかのようになっていっ たときには人生の選択が逆に狭まるわけですよね。そういう私たちの思いとは逆のこと が起きうるということを同時に考えていかなければいけない複雑性を持っているものだ けに物すごくいろんな観点から吟味しなければいけないと思うのですね。ですから簡単 に血のつながりを乗り越えようと、私もそう思って今やってきています。私どもは看護 婦たちは障害のある子どもたちを日々、医者も我が子のようにかわいがっていますけれ ども、そうでも、子どもはやはり親を求めているし、日本の社会自体が親が最終的に一 番守りやすい、そういう社会なのですね。ですから、そういう現実というものは私は重 いと思います。 ○金城委員  ありがとうございました。ただ、まさに血のつながりがある親子の間で、今、児童虐 待というようなことが出ているわけで、ですから不妊治療受けても普通に産んでも、親 子の関係というのは非常に難しいのだということは言えるのではないかと思うのです ね。 ○矢崎部会長  子育ての問題になると、私協力したつもりでも余り実体験がありませんので、ただ、 家内に話聞きますと、1番目の子は物すごい思いでと育てた。2番目の子どもはついで に生まれて育てたというような、言葉は悪いのですけど、そんな苦労しなかったという ことで、ですから不妊治療で長年悩まれていた方がお子さんが生まれたときのすごい今 までの思い入れと、将来の子どもが大きくなったときの不安にさいなまれてお母さんは 物すごく大変だという、非常に男の私どもすごくわかるような気がします。  ただ、そこだけで、この専門委員会のせっかくのご議論をここで認めないということ も、また皆さんの英知でいろいろと考えていかなければいけないと思います。  休憩を4時ごろと言ったのですけれども、喫茶店の都合か、今来てしまいましたの で、白熱した議論を少し静めるということで、3時45分まで10分間ここで一息入れさせ ていただいて、また落ちついたところで今のご議論を始めさせていただきたいと思いま す。よろしくお願いいたします。                  (休 憩) ○矢崎部会長  それでは、議論を再開したいと思います。傍聴の方々には水入りなくて大変申しわけ ないと思いますけれども、先ほどの胚の議論で大変重たい議論がありました。これはな かなか親子関係、特に女性の気持ちが強く入る領域でございます。女性の中でも幾つか の議論の分かれるところがございましたけれども、専門委員での話は石井委員からお話 いただきましたが、専門家の吉村委員からよろしくお願いします。 ○吉村委員  これは福武先生にご質問なのですが。私も福武先生の日弁連から出された案のときに もご報告を受けて、1つわからないことがあります。例えば先生の日弁連の中でお考え になっていることは、例えば精子提供による体外受精であっても卵子提供による体外受 精であっても、同じようなことが言えるのではないか。また渡辺先生がおっしゃったこ とも同じことではないかと思う。ですから日弁連がどうして胚の提供だけはペンディン グしようとなった意味合いが私にはわからない。  それはどういうことかといいますと、それは本当に遺伝的に両親とも違うのと、片親 だけ違うのと、例えば先ほどお話にも出たのですが、子どもが親がどうだったかという ことはDNAを調べればすぐわかるような時代になってきて、同じことなのではないか ということですね。それが先生に対する質問です。  それともう一個は、医療側から、私たち生殖医療をやっている人間から考えた場合 に、第三者からいただいた配偶子、胚によって生殖医療をやる場合に一番問題になった 点は、第三者に危害を与えてはいけないと。それが大前提になるわけであります。そし て子の福祉ということも考えていかなければならない。これはどんな医療でも同じこと でありまして、第三者に危害を与えない。いかにして商業主義的なことを排除できるだ ろうかと考えた場合に、卵子提供というのは大変難しさがあるだろうと。しかし、もし こういった胚というものが廃棄されるような胚であるとするならば、こういったものを いただいて不妊の患者さんに対して子どもを持てるようにすることは本当にいけないこ とだろうか。  私は個人的にはこの胚の提供に関しても卵子提供よりいいのではないかと今も思って いますし、この専門委員会の答申書でも胚の提供については、私はある程度賛成をいた しました。それはどういうことかというと、卵子提供よりは問題が少ないだろうと思っ たわけです。子どもについての問題点は、卵子提供も精子提供も胚提供も皆同じだと思 うのですね。ですから、両親が遺伝的に違うからということだけで反対されているのは 少しおかしいのではないかと私は思うのですが、その点ではどうでしょうか。 ○福武委員  もともと精子提供も卵子提供も胚提供についても、弁護士サイドの見解はかなり否定 的な面が強いのです。それで精子提供に関しては現実に1万人以上生まれていることが あったということがあるのですけれど、意見書をまとめる段階では、精子提供でも卵子 提供でもむしろ第三者の関与が必要ではないか。その夫婦がオーケイする、その夫婦が 生殖補助医療を使って子どもをもうけるについては第三者の関与が必要ではないかとい うようなときに、その関与の仕方として裁判所の関与もありましたし、公証人の関与も ありましたしいろいろあったのですね。  ただ、裁判所の関与については、そこまでは必要ないかもしれないというのは、連れ 子さんの養子が現実に多い点とかいろいろあったものですから、それとのパラレルの関 係では、精子の提供については、それは現状追認的なところもあるのですが、オーケイ だった。ただ、卵子提供については、これはどちらかといえば否定的な方が強かったの です。それは果たして女性がボランティアで提供するのかどうか、ほとんど無理ではな いかというような意見もあったのですが、排卵誘発剤を使っていろいろな問題が起き て、現実に医療機関を訴えているケースも今あることはあるのですね。そういうことを 考えれば、卵子提供もおかしいではないかというのがあったのですけれど、もしうまく この医療が進歩して、そこまでの負担がかからないような形で提供できるようなケース があり得るのだったら、男と女とそんなに差をつけるのもおかしいのではないかという 意見もあったのです。ただ、それでも医療機関だけ、及び医療機関にいる患者さんだけ のオーケイではなくて、もっときちんとした形の同意とかそういうものをやるべきだと いうような形での意見書にしたのです。  それで、吉村先生がおっしゃったのは、胚に関してなぜそれだけ違うのかということ ですが、どうしても弁護士のところに来るのは、結婚するときに相談に来るわけでなく て離婚のときに相談に来るものですから、離婚するときに子どもをどうするのかとか、 親子関係がうまくいかなくなったときにどうするかということを考えるものですから、 そうするとどちらとも血のつながりのない子という形になった場合に、それを今の時点 でそのまま実子という形、それは本当にフィクションだと思うのですが、そういったフ ィクションの形式の中に入れ込むというのは時期尚早ではないかということだったので すね。  それでいろいろ検討していたときには、特別養子が一体どのぐらいあるか調査してみ るとそんなに多くはないのです。かつて昭和62年に法律ができたときには年間 1,800人 ぐらいオーケイになったのですが、今は 500人切っているのですね。そういう意味では 精子提供によって生まれた子どもが年間二百数十人ということですから、弁護士の感覚 だと第三者の精子・卵子を使う場合についても、裁判所の方の関与の方が必要なのかも しれないというような議論を今やり始めたところです。  胚については、先ほど言いましたように、どうしても日本は血縁主義が多い。離婚に なったときに、子どもさんを取り合う夫婦が多いのですが、中には本当に実子でも押し つけ合う夫婦もいるものですから、そういう面での危惧というものをどうしても感じて きたということがあるのだと思っております。 ○矢崎部会長  大分議論が出尽くしたと思いますけれども、この問題はなかなかまとめるのは難しい と思います。この余剰胚の移植について、賛成される方と反対される方が今意見がござ いましたけれども、私自身は生殖補助医療を推進派ではということではないのですけれ ども、我が国では不妊症で悩んでおられる女性の方の悩みというのは物すごく大きいの ではないかと私自身推測するわけであります。  そのときに医学の、特に医療技術の発達によって、そういう方の悩みを少しでも救っ てあげる技術が今目の前にあるときに、これをどう医療として定着させることができる か。あるいは社会がそれをどのように受けとめるかということが、これから生殖補助医 療だけではなくて、あらゆる分野で問題になってくる課題であります。  したがいまして、この問題につきましては、今委員の皆様から言われた意見をまとめ て、また事務局の方で少し整理していただいて、先ほど福武委員からももう少ししっか りした観察機関、サポートシステムが必要ではないかということですので、それは課題 を進めている間にその問題が出てきますので、また、そのときにご議論いただくと。こ の場でイエスかノーかというのはなかなか議論尽くせないかと思いますので、胚につい てはご議論を承ったということで、事務局の宿題ということでよろしくお願いします。 それで、また戻って議論を賜ればということになるかと思います。  そこで(4)というのは議論が終わったということではなくて、議論を整理させていただ くということで、(2)で「子宮に移植する胚の数の条件」、これは医学的には、胚と いうのはどうこう議論が済んでませんけれども、もし胚ということがあれば、これは医 学的には卵子に準じて特に問題ないと思いますので、この議論はまた胚の移植の話が進 展したときに議論を進めさせていただくということで……。 ○平山委員  胚提供だけではなくて、卵子提供にしても精子提供にしても体外受精の場合は戻すの は胚でありますので、今議論してもよろしいのではないでしょうか。 ○矢崎部会長  ごめんなさい。そういうことで日本産科婦人科学会の会告に多胎妊娠に関する見解と いうことがございます。そこでこの体外受精・胚移植又は提供胚の移植に当たって、1 回に子宮に移植する胚の数でございますけれども、原則として2個、移植する胚や子宮 の状況によっては、3個までとする、という専門委員会の提案がございます。要検討事 項として、枠組みの中にございますけれども、これは技術の進歩により変わる可能性が あると思いますが、吉村委員と荒木委員から少しコメントをいただければと思います。 ○荒木委員  学会ではこの会告、きょうの会告のまとめの冊子をごらんいただきたいと思います。 50ページでございます。平成8年にこのような会告を会員に周知しております。その中 では「原則として3個以内」としております。その大きな理由は51ページのところの右 側でございますが、周産期医療を我々やっておりますと、双胎、3胎、4胎といくに従 って非常にハイリスク妊婦が出てまいります。ベビーにとりましてもハイリスクベビー となっております。具体的にここに書かれているとおりでございます。  それから、今の医療現状におきましても、3胎、胚をたくさんかえしますと4児ある いは3児、4児ということが出てまいりますと、当然出産するときには低出生体重児、 未熟児というような事態になり得ることが多いわけでございます。そのNICUの収容 のキャパシティーも我が国においては非常に限られております。つくってはいいのです けれども、産んだ後の危惧をしているのが我々でございまして、このように3胎までと して、まだ三つ子なら何とか育てていけるということ。それがたくさんかえして四つ 子、五つ子になってしまった事態は大変なことになるということで、この会告をつくっ たわけでございます。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。吉村委員から追加ございますか。 ○吉村委員  今、荒木先生がおっしゃったことでよろしいかと思うのですけれども、海外ではどう いうふうになっているかといいますと、意外と制限をしてない国も多い。日本はこうい った移植する胚の数を限定したという国としては、先進諸国では早かった方でありま す。原則として2個が、この専門委員会ではよいのではないか。通常は、2個を戻せば 生まれても双胎である。一卵性双胎である場合があって3つになる場合もないことはな いのですが、非常にそういったケースは少ないわけですから、原則として2個。しか し、日本産科婦人科学会でも3個まではよろしいということになっておりますので、胚 の子宮の状態によっては3個までにする。そういうようにこの専門委員会でも決めまし た。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。胎児と母体の安全を期して、原則として2個。最大限3個 までとすると、専門家のご意見ですけれども、これはお認めいただきたいと思います。 ○平山委員  吉村委員と荒木委員にお伺いしたいのですけど、当然これは技術の進歩によって変わ ってきますね。例えば今Blastocyst transfer(胚盤胞移植) などでは1個から2個を戻 すのが常識になりつつあるわけですね。品胎予防というのは不妊症治療をしておられる 先生方の最も大きなテーマになっていると思いますので、柔軟にまた変わっていく可能 性はあるということですね。 ○吉村委員  もちろん。 ○加藤委員  少なく変わっていくでしょう。増やさないと困るというふうに変わっていくわけでは ないのでしょう。 ○吉村委員  そうです。 ○矢崎部会長  最初に申し上げたように、医療技術の進歩によって、この個数の問題は変わっていく と思いますので、その点については、またフレキシブルに、この項目に関しましては状 況によっては変わりうるということで納得いただければと思います。 ○金城委員  そうすると、ここを2個というふうにすると2個しなければいけないというふうにな りますから、原則として2個まで、状況によっては3個までとしておけば、1個になっ ても対応できるということになると思います。 ○石井委員  まで、とするのは両方に。 ○加藤委員  両方、までとすると。 ○石井委員  わかりにくいから2個までと書いた方がよさそう。 ○矢崎部会長  そうですね。確かにわかりにくい点があるかもしれませんので、専門委員会の承諾を 得て、もう少しきっちりとした形で変えさせていただくかもしれません。よろしいでし ょうか。  それでは12ページの今度大きな2番目ですが、はい、どうぞ。 ○桑島室長  先生、今のご議論は了解したのですけれども、要検討事項のどういう状態であれば、 3個までというのを、これは先生ご議論いただけないでしょうか。 ○矢崎部会長  原則でない場合、数を増やす場合ですね。 ○加藤委員  やってみてだめなら増やすのではないですか。 ○金城委員  ですから医師の裁量でいいのではないですか。 ○矢崎部会長  これは医師の裁量ですね。専門家の医師以外はコメントできませんから、医師の裁量 とすると。  では「精子・卵子・胚の提供の条件」ということで、(1)精子・卵子・胚を提供… …はい、どうぞ。 ○石井委員  今、医師の裁量でと、私もそう思ったのですけど、唯一考えられるというか、多少議 論したのは、もし3胎になったときにも3胎受け入れると、そういうことも1つの判断 材料ということにはあると思うのですね。提供卵とか提供していただいて、それを減数 すると、それは望ましくないわけで、だから、逆に言えば3胎で安全に産めるという、 そういう条件ということかもしれませんし、本人も三つ子になっても育てられるという 人でないと3つ戻すのは問題があるかもしれない。そういうことも考えていただいた方 がいいかもしれないです。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。それは先ほどの荒木委員もそういう趣旨のご発言だと思い ますので、その点も十分考慮していただくということで。 ○松尾委員  このことで産科側と小児科側が若干見解が違うわけですけれども、多胎妊娠の場合は しばしば低体重児の出産になるわけですが、それを受け入れる施設やケアする新生児専 門の小児科医が不足しています。荒木先生が触れられましたけれども、こういう医療 は、産科側の縛りだけではなく子どもを受け入れる小児科側の医療施設も考慮していた だかないと、子どもの健康が担保できないと思います。 ○矢崎部会長  貴重なご意見ありがとうございました。そのほか、この際ということがございました ら。よろしいでしょうか。また後でもう一回議論を繰り返しになるかと存じますので、 そのときにまたご指摘いただければ大変ありがたいと思います。  それでは、一応今のご意見をまとめて、また事務局の方でテイクノートして箇条書き にしていただければ大変ありがたいと思います。  では、また12ページに戻りますが、これは提供できるものの条件としては、参考とし て産婦人科学会の会告の「『非配偶者人工授精と精子提供』に関する見解」がありま す。この件につきまして、また吉村委員お願いしていいでしょうか。 ○吉村委員  (1)ですか。 ○矢崎部会長  はい。まず「提供者の年齢及び自己の子どもの有無」。 ○吉村委員  (1)の「提供者の年齢及び自己の子どもの有無」ということについて説明させていただ きます。精子提供をできる人は満55歳未満の成人とする。この55歳というのは専門委員 会でも問題となったのですが、特に根拠はありません。これはイギリスの方針に従った ということでありまして、何歳までにするかというのは大変難しい問題でした。日本産 科婦人科学会は「匿名の第三者」ということにしておりますが、委員の中でも、父親か らの提供ということについて強い意見をおっしゃる方もお見えになりました。できる年 齢についてはコンセンサスが得られなかったと私は理解しています。イギリスに従っ て、一応「55歳未満」というようにしたということであります。  卵子を提供できる人ということに関しましては、これは卵子のエイジングやその他の 受精能力ということを考え合わせまして、若い体外受精においても受精率が大変高い35 歳未満の方がよろしいであろうと。36歳以上になりますと体外受精の成績が非常に悪く なるということも勘案いたしまして、「35歳未満」。この点については、世界的に大体 35歳以下に統一されております。しかし、その際には自分の子どもがいるということが 必要であろうと。要するに産んだ経験があると、子のいる成人に限ると。若い女性がア ルバイト感覚で卵子を提供するということは決してあってはならないといったことから 「35歳未満の子にいる成人」ということにしました。  そして「※」が書いてありますが、これはいわゆる「シェアリング」という制度であ りまして、欧米などでも認められております。例えばある夫婦が体外受精を受ける。そ の夫婦が当然医療費を払うわけですが、医療費の半分程度を負担いたしまして、採れた 卵を半分以下の割合で卵子提供を受けたいと思っているクライアント夫婦にお渡しをす るということであります。これはかなりいい制度のように思えますが、現実面としてな かなかこれが根づいていないというのは、体外受精を受ける夫婦は原因がわからない方 も多いわけでありまして、なかなか妊娠できない方が多いわけであります。  ところがこういったクライアント夫婦、要するに卵子の提供を受けたいと思っている 方は卵子がないから妊娠できないわけでありまして、不妊原因がほかにないという夫婦 が多いということを考えますと、もらう側が妊娠をよくすると。あげる側はなかなか妊 娠できないといったことから、もう二度とシェアリングはしたくないという方が大変多 いそうでして、欧米でも、いい制度のように見えますがなかなか根づいてないというの が現実みたいです。それが(1)の説明です。  もし、石井先生、加藤先生、間違っていましたら、よろしいでしょうか。 ○加藤委員  間違っているなんて、とても先生に言えません。 ○石井委員  全然間違ってはいないのですけれども、私の印象としてあるのは、女性の方だけ子ど もがいるというのは、排卵誘発とか薬を使った場合に、自分が子どもが欲しいと思った ときにできなくなってしまう危険を考える、もし起こったら困るので、そういうことが ないためにも、既に子どものいる、そういうことを考え、子どもを持つということの意 味がわかっている人でないと卵子を提供するということの意味もわからない。そういう ことを考えると女性の場合には子どもがいると。男性の場合は精子を提供するときに、 そこまで考える必要があるかどうかはわからなかったのですが、女性の場合は十分な注 意が必要であるということが1つあった。  あとシェアリングの方は、いつも吉村先生は凍結卵はまだ無理だとおっしゃるのです が、私たちが議論をした中では、卵の凍結ができるようになればシェアリングというの も可能になってくるのではないかという話を随分して、技術的にそこがまだ無理なので というので、今の段階は胚を凍結することしかできないので、自分がまだ生まれてない ときに提供するという、それはなかなか難しいだろうという話はしました。 ○加藤委員  吉村先生に聞きたいのですが、シェアリングの場合、まず提供者と被提供者は同時に おなかの中に卵を戻すのですか。提供者の方をまずやってみて、うまくいったら、大丈 夫だというので、被提供者というか、提供を受ける人の方に卵を入れるという順番を、 手順を踏むのではないのですか。 ○吉村委員  それはないと思います。卵を採り出してきますと、本当に体外受精をする夫婦ござい ますね。その方もご主人に来ていただいて精子かけなくてはいけないし。 ○加藤委員  サケの産卵場みたいな情景ですね。 ○吉村委員  そうです。そうしまして、もらう方の側はまたご主人に来ていただきまして、精子を かけますね。そして受精が起こる。その受精卵は当然凍結して保存しておくこともでき ますし、その周期にかえすこともできますから、いずれにしましてもそんなにサイクル は違えないで普通はやると思います。ただ、いただく方の夫婦はその先でもそれは全然 構わない。3カ月先でも4カ月先でもタイミング合わせてすることはできると思います けど、ただ、受精卵をつくるということは同時にやらないと難しい。  先ほど石井先生がおっしゃったように、フリージングということですが、これは将来 的に可能にはなってほしいと思いますし、これができればこの医療形態も変わってくる と思います。ただ、現実的に今までに十何例から20例ぐらいの報告はもちろんあると思 うのですけど、その程度でありまして、これがこういった医療に利用できるという段階 までは到底達していないと思います。あと10年ぐらいはかかるのかもしれませんし、5 年ぐらいでできるのかもしれませんし、今の段階で未受精卵の凍結ということはこうい った医療には応用できないと思います。 ○金城委員  質問なのですけれども、卵の提供は無償ということなのですが、シェアリングという ことになりますと、医療費は半分ずつ負担していいということになりますので、ある意 味では有償になるわけです。その辺りの矛盾はどうお考えになってシェアリングの提言 をなさったのでしょうか。 ○石井委員  確かに有償制を持つ可能性はあるのですけれども、自分が採卵するためにはお金かか るわけですね。それがほかの人がやってくれる。その分の医療費を負担するということ ですね。提供卵のときも相手から採る採卵の費用は卵をもらう人が負担するわけです ね。それと同じです、医療費の負担は、有償とは必ずしも言えない。つまり卵をもらう 分の卵の採取にかかる費用は少なくとも費用ですね。 ○金城委員  そのときに体外受精の医療費なのですけれども、多くのところは卵の採取のところに 体外受精の費用の多くはいくと思うのですね。そうしますと貧しいご夫婦で高額の医療 費が負担できないというような人の場合に、このシェアリングで半分は持ってもらえる ということになると、何かお金をちらつかせながらシェアリングを進めるというような ことになりかねないと思うのですね。ですから私はこのシェアリングについては、ある 意味では体外受精を受けたい、でもお金がないので、というような人に対して卵の提供 を、強制とまでは言いませんけれども、誘発することになるのではないかと思いますの で、若干疑問視をしているわけです。 ○石井委員  それで先ほど申しましたように、卵子で凍結できれば、自分たちの子どもができた後 でそれをあげる、それができますので問題が少なくなるのではないかということはそう いうことなのですね。 ○金城委員  現段階では若干問題が残るということですね。わかりました。 ○矢崎部会長  そういう少し可能性も考慮に入れるということでお話を伺っておきたいと思いますけ れども、そのほか、よろしいでしょうか。  次の(2)に移ってよろしいでしょうか。「同一の者からの卵子提供の回数制限」、これ は専門委員会でのご議論だと思いますが、3回までとすると。 ○吉村委員  この点につきましては、卵子提供、ちょっと忘れましたけど、(2)は過排卵をかける人 のことでしたね。卵子提供できるのは1人が3回までということでしたよね。 ○石井委員  はい。 ○吉村委員  要するに過排卵操作をいたしますので、卵巣に対して過剰刺激を与えるということ で、これが将来的にいかなる問題点を持ってくるかということについては未知の部分も あります。例えば卵子提供に関してはもちろん無償ということなのですが、「実費相当 分は」という文言もございましたし、この点に関して何度も何度もするのは医学的にも 非常に患者さんに与えるリスクは大きいということから、せいぜい3回までであろう と。それ以上はすべきではないのではないか。ただ、兄弟姉妹が入ってまいりますと、 この点がある程度ひっかかってくる場合もあると思います。それはどうしてかと申しま すと、今の妊娠率は大体20%前後であります。そういうことを考えますと、簡単に言え ば、5回に1回ということになってまいりますので、3回までというのは制限になるか もしれませんが、与えるリスクということを考えると4回、5回とやるのはどうかなと いうことを思っています。 ○矢崎部会長  これはある程度医学的な判断だと思いますが、荒木委員の産婦人科学会ではこれをま だ認めておられないですが、専門医の立場から排卵ということで妥当な線と考えてよろ しいでしょうか。 ○荒木委員  いいと思います、3回ぐらいで。 ○岩田雇用均等・児童家庭局長  この提供の回数というのは排卵の回数ですか、第三者に差し上げる回数ですか。 ○吉村委員  これは第三者に差し上げる回数だと思うのですけれども、例えば注射を打ちます。そ うすると1周期が6日、8日、10日とかかるわけだと思いますけど、そして排卵前にな りまして、針で刺すわけです。その回数が3回。ですからそれは1周期は1回です。そ して、また3カ月後、6カ月後、あるいはわかりませんけれども、ある程度の期間を置 いて、排卵誘発をやりまして、また刺します。この回数がこれで1回。ですから3周期 ということになります。 ○平山委員  吉村先生に確認させていただきたいのですけれども、3回のエビデンスについて、ア メリカ生殖医学協会のガイドライン、昨年11月に出ているのでは6回の排卵誘発周期と いうことになっているのですが、そこら辺の整合性について教えてください。 ○吉村委員  それは別に3回がいいのか6回がいいのかということは議論したわけではないのです が、できる限り少ない方がいいだろうという私たちの考えはありました。しかし、兄弟 姉妹ということがありましたので、そういったことで1回でやめようとか、そうなりま すとなかなか1回で妊娠しない場合も当然多いわけでありますから、6回という線はあ ることはもちろん知っておりましたし、私も5回ぐらいにしようかなということも思っ たのですけれども、原則が匿名の第三者ということがありましたけれども、兄弟姉妹と いうこともありましたので、一応そういうことも考慮に入れて3回程度にしようかと。 科学的な根拠はもちろんございませんが、こういったリスクは少なければ少ないほどい いのではないか。本当は1回でやめた方が私はいいと思いますが。 ○金城委員  質問なのですが、もし提供を受ける人が特定していれば、排卵誘発を打ったときには 十数個採れますよね。 ○吉村委員  はい。 ○金城委員  胚にして冷凍すればいいわけですね。 ○吉村委員  はい。 ○金城委員  ですから兄弟姉妹であっても、それを3回すればもう十分ではないかと思いますけ ど。普通は3個しか入れないのだったら、3個しか採れないでやめるのですか。 ○吉村委員  先生のおっしゃることは大変よくわかります。現実面で1周期に12個採れたとして も、12個が凍結しておいてもなかなか妊娠できないという現実があります。そういった ものも入れましても日本全体の成績でせいぜい20%の妊娠率ということを考えますと、 こういった患者さんはある程度不妊原因がわかっておりますから、少しは妊娠率が高く なるかもしれません。通常の夫婦間よりも原因不明の方が多いですから25%ぐらいにな るかもしれませんが、そういうことを考えても、3回程度は必要かということを思った のですが。12個採れてどうして妊娠しないのとおっしゃるのはよくわかるのですが、大 体受精率が7割から8割ぐらい。分割して移植できる胚が6個、半分ぐらいになってく るという単純計算でよろしいかと思います。12個採れても6個ぐらいしか本当にかえす 胚はできてこないということを考えますと、3回ぐらいかなと思ったのですが。 ○矢崎部会長  この場合の「3回」というのを恐らく考慮すべき基準というようなものになるかと思 いますけれども、よろしいでしょうか。  次は(3)「同一の人から提供された精子・卵子・胚の使用数の制限」で、これは古山委 員から資料が前にいただいたと思いますが、それに大体載っておった。また議論になる と思いますが、10人ということについて。 ○古山委員  資料の要点を簡単に申し述べさせていただきます。釈迦に説法になるかもしれません が、同一人より提供された精子・卵子・胚の生殖補助医療により出生する子同士が偶然 に結婚すると、精子・卵子の提供を受けた配偶者の子同士は半同胞結婚、異母兄弟が結 婚するということになります。胚の提供を受けた配偶者の子同士は、同胞結婚で、これ は兄弟同士が結婚するということになります。  半同胞結婚、同胞結婚における生物学的な影響は、子のすべての遺伝子座について同 型接合になる確率が高くなること。今正確に言いましたがわかりにくいと思いますの で、子の遺伝子が常染色体劣性遺伝病の遺伝子といたしますと、子が遺伝病に罹患する リスクが高くなると、そういうことであります。  いとこ結婚では遺伝子頻度 0.1(10人に1人遺伝子頻度)の劣性遺伝病の非近親婚に 対する相対的リスクは1.56倍ですが、遺伝子頻度が 0.001というようなまれな劣性遺伝 病の相対リスクはいとこの場合63.4倍。これが半同胞結婚では 125.9倍、同胞結婚では 250.8倍となります。 私が先生方に差し上げた資料で、半同胞結婚とか同胞結婚、こういう数字は現実には 法律では認めていないので教科書には載ってない数字であります。 そういうことで、半同胞結婚、同胞結婚は民法で禁じられているというのはご承知の ことと思います。したがいまして、このような近親婚を生じさせない方策が大変必要で はないかと考えるわけであります。生殖補助医療をした場合、子にそういうことをしま したよと。お父さんは違う人ですよということを子どもに告げることは、日本の習慣と しては避ける傾向があるやに思います。 石井先生の著書の中にイギリスでのそういう実情というのがありますが、そこを拝見 いたしますと、「現在親は子どもに対してこのような形で生まれたことは教えない傾向 だが……」と、イギリスでも日本と似たような実情があるようです。近親婚を避けるた めにはぜひ真実を告知することが大切ではないかと思います。 以上でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。10人という数はイギリスの例をもとにして専門委員 会で出されたということをお聞きしていますけれども、妥当な線と考えてよろしいでし ょうか。 ○吉村委員 フランスは5人になっています。ですけど、5人となると大変難しいだろうというこ とで、これは世界を通じてそういった根拠は余りないと思います。今先生おっしゃった ように、出自を知る権利をどこまで認めるかということにまたなってきますけれども、 イギリスでも近親婚を避けるためにドナーを特定できるようにしておくということはあ るわけですから、そういったことは必要だろうと。 ○加藤委員  最終的には匿名性でチェックはできる仕組みをつくるのだけれども、それ以前の状態 として、私の子どもが 500人いるとかというのはよくないということなのですね。 ○矢崎部会長  それでは一応マキシマム10人ということで括らせていただきたい。専門委員会のとお りということでよろしくお願いします。 (4)は、「提供精子の採取、使用に当たっての感染症等の検査」でございますけれど も、これも専門委員会でAIDの場合と体外受精の場合、提供精子からの感染症につい てのお話でございますけれども、要検討事項でどのような感染症について提供者の検査 を行うか。これは提供精子ですので、学会の基準があると思いますけれども、まず事務 局から読んでいただいて、荒木委員、吉村委員からコメントをいただければ。 ○桑島室長  先生方のお手元の関係資料集の 113ページでございます。4.「精子提供者は健康 で、感染症がなく自己の知る限り遺伝性疾患を認めず、精液所見が正常であることを条 件とする。精子提供者は、本法の提供者になることに同意して登録をし、提供の期間を 一定期間内とする。」  (解説)のところで「精子提供者は、感染症(肝炎、AIDSを含む性病等)、血液 型、精液検査を予め行い、感染症のないこと、精液所見が正常であることを確認する。 また、自分の2等親以内の家族、および自分自身に遺伝性疾患のないことを提供者の条 件とする。その上で提供者になることに同意する旨の同意書に署名、拇印を押し、提供 者の登録を行う、提供者の感染症の検査は、少なくとも年一回施行する。提供者の同意 書、および検査結果は少なくとも提供期間中は保存しておく。同一の精子提供者からの 出生児数を考慮し、精子提供の期間を2年以内とする。余剰精液を凍結する場合、その 保存期間は2年以内とする。」  以上でございます。 ○矢崎部会長  荒木委員から何かコメントございますでしょうか。 ○荒木委員  感染症に関しては、学会としては(肝炎、AIDSを含む性病等)と書かれている。 それ以下の具体的な疾患に関しての検査というのは挙げておりません。ただ、AIDS に関しては、使うまで、吉村先生、これは6カ月ですか。 ○吉村委員  6カ月です。 ○荒木委員  6カ月の凍結を要した後に使うということは会員に周知させております。 ○金城委員  その点なのですけど、このガイドラインをつくったときにはまだ凍結保存はなかった のですね。 ○吉村委員  そうですね。 ○金城委員  その後、どうも慶應などでも凍結してということになりましたので、そういうことが 改めてこれに加わったということ。現状ではどうなのでしょうか。もっと検査は簡単に なってないですか。 ○吉村委員  HIVだけに限って言いましても、ウインドウ・ピリオドをもう少し短くすることは もちろんできても完全になくすことはできない。現行法でも拡散法という方法でも難し いと。2週間から3週間程度であろうということですので、HIVに関しては凍結保存 してダブルチェックをしてということが必要になると思います。  今、荒木先生もおっしゃいましたけれども、肝炎に関してはHCVとHBS、ワッセ ルマンとAIDSを日本では大体普通はやっていると思います。アメリカなどでは、精 子提供に関してはクラミジアとサイトメガロをやっています。それをどうするかという ことももちろん問題ですし、その次に書いてあります卵子提供に関しては、欧米でも提 供者に対してチェックはしているのですけど、ウインドウ・ピリオドを全然考慮に入れ ていませんのでそれは不可能です、卵子凍結ができない現実を考えますと。ですから現 実面では、女性に関してはチェックはできない。陰性であった人から採って、そのまま 使わざるを得ないと思います。 ○石井委員  2つあるのですが、1つは卵子から感染するという、精子と同じように感染する。 ○吉村委員  それは証明できていません。精液中にはエイズウイルスが出ることはわかっていま す。精液中にウイルスは検出できます。ただ卵胞液中に検出できるかどうかということ については、そういう事例も少ないです。例えばエイズに感染した人から卵子を採って くるという可能性が非常に少ないということもございますね。ですからなかなかそれは 検出できてないのですが、卵胞液中にエイズウイルスがいても何もおかしくはないと思 います。 ○石井委員  もし感染するおそれがあるのだとすれば、卵子は凍結できなくても受精卵は凍結でき るわけですから、受精卵の凍結をして検査することはできるのではないですか。 ○吉村委員  受精卵をつくっておいて、現実面では可能ですけど。本当に卵子にエイズウイルスが 感染するかどうかということも私はちょっと読んだことがないのですが。 ○矢崎部会長  そのほか、いかがでしょうか。一応学会の基準に則って行うということでまとめさせ ていただきたいと思います。卵子は今吉村委員から言われたように学会の基準がござい ませんし、検査により感染が判明しない期間、いわゆるウインドウ・ピリオドというも のが卵子では適用されませんので、そういう意味ではいろいろ問題があるということ で、これについては、卵子を採取する際の検査と提供を受ける方のインフォームド・コ ンセントを得るということでよろしいでしょうか。 ○金城委員  そういうときに生物学的な違いがあるわけですから、男性と女性異なって扱ってもそ れはやむを得ないということでございます。  それから、今学会の基準だとクラミジアなどは入ってないということでしたけれど も、それは安全性の問題ですので、できるだけすべての点について安全性が確立できる ような形で検査項目は基準として入れた方がいいと考えます。 ○荒木委員  これはいろんな検査は望ましい、たくさんあった方が望ましいのですけど、費用の場 合はどこが負担するのですか。提供者ですか、それを受ける方ですか。 ○金城委員  そうです。 ○荒木委員  エイズ、HIV検査1つとっても大変なお金かかるわけですね。そのほかにプラス感 染症もろもろ、どの程度まで増やしてやっていくのか。 ○金城委員  いろいろあると思うのですけど、例えばクラミジアは今すごいですね、日本でも。昔 はそんなことなかったわけですけど、かなり皆さん持っていらっしゃることが多いの で、そういうものは入れておいた方がいいのではないかと私は思いますが、費用はもち ろん問題かもしれないのですけれども、それは将来いろいろ考えていくということで、 できるだけ必要なものはきちんとチェックをするという態勢でいく必要があると思いま す。 ○吉村委員  ちなみにAIDにおいては医療機関が負担しています。ですから当然のことながら、 現状のコストでやればほとんどが利益はないと。そちらの方に費用ばかりかかってしま うと。ですからダブルチェックをする場合もHCV、ワッセルマン、HB、HIVはは 調べまして、エイズに関しては2回分は当然病院が持つというスタイルでやっていま す。今後はこういった医療をする場合、医療機関が持つのか、あるいはどうするのかと いうことはまた考えていかなくてはいけないと思います。  私も思うのですが、こういった医療をやることになったら、クラミジア、サイトメガ ロウイルスくらいはやっておいた方がよろしいのではないか。医療機関がかなり限定さ れると思いますので、その医療機関で考える、あるいはこの部会の中で考えるというこ とが必要になってくると思います。 ○矢崎部会長  では学会の基準+安全性を確認するためにできるだけの検査を行うということでまと めさせていただきたいと思います。  感染症のほかに検査すべき項目として、先ほど遺伝子疾患ということが入っていまし たけれども、これはどこまで想定すればよろしいのでしょうか。大変難しい問題かと思 いますけれども。 ○荒木委員  これは予診、聞き出す意外にはないと思います。実際にその方の遺伝子を調べること は不可能だと。問診の程度だとこの学会の見解はそうです。 ○矢崎部会長  ありがとうございます。それと検査結果を提供者に知らせるかどうか。現実では、吉 村委員からお話しいただけませんか。 ○吉村委員  この検査結果については提供者に対して当然知らせないと、またその方がお見えにな って提供するということになってしまいますので、この4項目については当然結果をお 知らせしていきます。どういった検査が増えるかどうかわかりませんけれども、当然そ れはお知らせすることでいいのではないかと思いますけれども。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。  それではこの項目は一応そういうことで、次のもう時間が迫ってきましたが、できる だけ議論を済ませるということで、(2)の「精子・卵子・胚の提供に対する対価の条 件」、これも産婦人科学会の会告にございますが、専門委員会では「精子・卵子・胚の 提供に係る一切の金銭等の対価を供与すること及び受領することを禁止する。ただし、 実費相当分については、この限りではない」と30ページに書いてありますが、検討項目 そこにございますように、「実費相当分」として認められるものの具体的な範囲をどの ように設定するかということであります。  さらに「実費相当分」の金銭等のやりとりの方法はどのようにするか?という問題で ございます。  先ほど実費相当ということに関しましては、交通費、通信費など、かかった医療費に 関してのコメントがございましたが、現在は精子の提供でとどまっておりますが、吉村 委員の病院ではどう対応されていますでしょうか。 ○吉村委員  一応この点に関しましては病院側と話し合いまして一定の値段を決めておりまして、 1万円前後、ですから治験費と同じぐらいのお金を、治験のために患者さんに来ていた だいたときに払う。これは安いところで 7,000円ぐらい、高いところでは 12,000円ぐら いすると思うのですけれども、1万円前後を病院側から支給していただいています。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。 ○加藤委員  純粋に実費と計算するのは難しいのですね。私が鳥取からここへ来るのに新幹線で来 た場合と飛行機で来た場合と、新幹線の割引切符が通用する場合と通用しない場合と、 途中で降りた場合と降りなかった場合と全部違うので、とても厳密な実費なんて計算で きないですよ。ですから大体あてがいぶちで計算するので、多少プラスアルファがあっ てもいいのではないかと思いますけど。 ○矢崎部会長  そういう漠としたことでよろしいでしょうか。 ○石井委員  私はかなり実費を計算するのが難しいので、ある程度基準幾らという考え方はあると 思うのですけれども、加藤先生がおっしゃったようにプラスアルファまで認める。つま り2つの意味ですね。お金で提供するという誘因にするべきではないということが1 つ。もう一つは、人間の体を売るということは認めないという基本的な考え方を保つ。 いわんやこれは精子・卵子・胚となると子どもにつながる。人身売買を禁止する流れの 一環としても認めないという考え方からするとかなり厳格に制限的にというふうに私は 考えたいと思っていますが。 ○矢崎部会長  確かに実費を計算するのは難しいので、例えば大阪と東京であればこのぐらいとい う。 ○加藤委員  対価というのは完全にゼロでボランティアで交通費も提供者に支給させろという完全 ゼロ主義というのもあるのです。それから、普通に実費主義というのがあるのですね。 それから、志といって、幾らやるから提供しろというのではなくて、提供したら、あ、 これだけくれたという志主義というのがあるのですよ。それから、これだけ出したら、 これだけ提供するぞといういわば取引型というのもあるのですよ。取引型までくると問 題だけれども、志型までだったならば認めていいのではないかと思いますね。 ○矢崎部会長  商業的な要因は除くけれども……。 ○加藤委員  お布施と同じ。 ○矢崎部会長  今、吉村委員から言われた、医療の進歩のために協力していただく方には1万円前後 というお話伺いましたけれども、そのぐらいは認めてあげてもよろしいのではないか。 ○加藤委員  何か質問カードに記入したりするのでしょう、提供者は。 ○吉村委員  質問カードというのは。 ○加藤委員  最初に提供するときにはアンケートみたいのに答えるのでしょう。 ○吉村委員  アンケートというよりは同意書ですね。 ○加藤委員  同意書。それから、遺伝子疾患がないことについての問診の結果とか、ある意味で痛 くない腹も探られるわけではないですか。だったら多少寸志がついたっていいのではな いですか。 ○矢崎部会長  実際採血なども。 ○吉村委員  もちろん感染症の採血もします。 ○石井委員  議論を蒸し返すのはあれなんですけれども、これはかなり専門委員会で議論した部分 で、そのときに出てきたのは、確かに1万円を高いと見るか安いと見るかというのはあ るのですが、治験というのもあそこで払っているというのが1つ目安と考えられるとい うのがあったと。逆に血液はただですし、もっとしんどい骨髄移植の提供も全くの無償 であるということを考えると、1万円というのは治験で払っているからいいということ に必ずしもならないのではないかという議論もしたところです。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。 ○吉村委員  もう一つ考えていただきたいのは、精子提供は、初めにお話をして、カウンセリング して、検査をして、また6カ月後に検査をする。そういうことはもちろん必要。そんな に3〜4回も病院に来ていただくということで、もちろんカウンセリングもあって3〜 4回で済まないかもしれませんが、物理的には3〜4回で済む。  しかし女性の場合は第三者に対してかなりの回数を来ていただかなくてはいけないで す。少なくとも14〜15日は最低来ていただかないと、注射を打ちに来て、あるときは血 液も採られるでしょうし、超音波の検査をさせられて、採卵も行われてとなりますと14 〜15回から15〜16回、ちょっとすると20回ぐらい来ていただくことだってあり得ると思 うのです。そうするとその1万円も毎回毎回治験のように一回ごとに支払われていくと 20万円ぐらいの対価になるわけですね。こういったことも専門委員会では大変問題にな りました。 ○岸本委員  私の知っているある地域の方で今週、今アメリカはああいう形になっているのですけ ど、予定として卵子提供をしに行く方がいらっしゃるのですね。その方の意見としてこ の間お電話でいろいろお話ししている中で、今ここに書いてある「実費相当分」という ことで、これはその提供を受ける方のご意見なのですけれども、今、吉村先生がおっし ゃったように、提供してくださる方は何回も病院に行って、サイクルを合わすのがすご く大変だと。  ちょうど半年ほど前に提供卵子を受ける予定だったのですけれども、どうしても提供 する方のサイクルが自分と合わなくて半年ほど延びてしまったのですね。それで結局プ ラス100万円払うことになるかもしれないと言っていたのですけど、提供する方の女性 が、例えば仕事を持っていると。仕事を持っていて、仕事を休んでまで病院に何回も来 てくれていることを思うと、提供をしていただく方の女性が言っていたのですけど、仕 事を休んでまで来てくれるのは、その仕事料というのですか、給料というのも見ていっ てあげた方が、私はもらう方の立場として相手に申しわけないとおっしゃっていたので すけど、その辺、交通費と通信費以外に、商業主義ではないですけれども、今、加藤先 生もおっしゃったように志ですか、仕事を休んでまでボランティアで卵子を提供しよう というその思いを酌んであげる意味では交通費だけにとどまるというのはちょっとどう かなというのがその方の意見でした。 ○矢崎部会長  今、高久委員がせっかく来られていますけれども、先ほど骨髄移植の件についてお話 がありましたけれども、実際、先生から。 ○高久委員 骨髄移植の場合、対価は払っていません。ただ、骨髄摂取するときに入院をしてもら いますが、それはある程度保険でカバーされるはずです。その他の検査費用やコーディ ネーション、傷害保険などは当然本人が支払うことはありませんので、財団は骨髄の提 供を受ける人から50万円ぐらいいただいています。ただそれでは実際には足りないもの ですから、財団は赤字に苦しんでおります。 骨髄提供のために仕事を休んでいただくということに対しては、財団は各会社にその 休みの期間を有給休暇の形にしていただくようお願いして、かなりのところはそういう ふうになっていると思いますが、全部はなっていないと思います。対価は全く払ってい ません。 それから、提供を受けた人はだれからもらったかということはわからないようになっ ていますので、提供を受けた方から志というような形でお金がいくことはありません。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。 ○高久委員 ついでですが、たしか治験については当時の文部省が国立大学の病院にある程度のス タンダード、先生がおられたときに来てなかったですか。4,000〜 5,000円、あるいはも う少し高かったです。 ○矢崎部会長  1万円。 ○高久委員  1万円でしたかね。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。それでは時間が参りましたので、「実費相当分」のところも事務 局で、(1)、(2)と書いていただかないと、どこまでいったか、どこまで議論が進 んだか十分わかりませんので、よろしくお願いしたいと思います。  もう終了の時間がまいりましたので、大変な宿題、胚の問題が残されておりますが、 本日は議論をこの程度でとどめたいと思います。次回も引き続き、この続きの検討をさ せていただきたいと思います。今後の予定、事務局からよろしくお願いします。 ○桑島室長  それでは次回の当部会の日程を申し上げます。10月12日(金曜日)14時から17時まで の予定となってございます。場所につきましては、厚生労働省17階専用第21会議室とな ってございます。よろしくお願い申し上げます。  なお、各委員からのご意見、ご指摘を引き続きメール、ファックス等で事前にご送付 いただければ幸いでございます。資料作成の関係上、締め切りを申しわけございません が、10月10日正午ということで期限を切らせていただきます。申しわけございません。 事務局からは以上でございます。 ○石井委員  事務局には大変宿題もたくさんあるし、甘えていて申しわけないのですが、この資 料、ここに置いてあるのと同じように、各委員からの意見もためてここに置いていただ けませんでしょうか。きょう古山先生のも必ず持ってくればいいのですが、なかなか持 ってこれないものですから、ここに置いておいていただけるとありがたい。 ○桑島室長  わかりました。 ○矢崎部会長  毎回、各委員からこういうふうにお寄せいただいたご意見、貴重な参考資料になりま すので、よろしくお願いします。また、毎回大変貴重な資料とご意見をお寄せいただき まして、委員の皆様に厚く御礼申し上げたいと思います。  それでは、きょうはこれで終了させていただきます。どうもありがとうございまし た。 照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課 03−5253−1111(代) 桑島(内線:7933) 小林(内線:7940)