01/01/26 第2回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録 第2回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 議事録 1 日 時 平成13年1月26日(月)10:00〜11:45 2 場 所 虎ノ門パストラル桃の間 3 出席者 [委   員] 奥平委員、刀谷委員、勝委員、吉川委員、齋藤委員、              桜井委員、笹川委員、佐藤委員、辻村委員、都村委員、              中山委員、長谷川委員、堀越委員       [事 務 局] 奥田勤労者生活部長、南野勤労者生活課長 4 議 題  (1) 中小企業退職金共済法施行規則の一部を改正する省令案要綱について  (2) その他 5 議事内容 ○部会長 定刻となりました。定足数を満たしておりますので、会議を始めさせていた だきます。前回に引き続いて、諮問された事項についての審議を行いたいと思います。 最初に、前回ご欠席された使用者側委員の委員をご紹介させていただきます。 (委員挨拶) ○齋藤部会長 前回の会合で委員の皆様方からいろいろご要望がありました資料等につ きまして、提出されているようですから、事務局よりご説明をお願いします。 ○勤労者生活課長 前回22日の部会でいろいろといただいたご意見等を踏まえて、私 どもで用意した資料について、ご説明させていただきます。資料はいくつか付いており ますが、資料1については前回出したものと同じで、本部会に私どもから諮問をさせて いただいた書類です。資料2は、前回の部会において宿題を頂いた、掛金助成制度の今 回の見直しについて、考え方を整理したものです。これに沿って、今回の掛金助成制度 の見直しの趣旨について、ご説明いたします。  まず1ですが、中小企業退職金共済制度、いわゆる中退制度は、独力では退職金制度 を持つことが困難な中小企業について、退職金制度を確立して、中小企業の従業員の福 祉の増進、ひいては、中小企業そのものの振興に資することを目的とした制度です。そ の中で掛金助成制度の位置づけ、その趣旨という点について、ちょっと触れさせていた だきたいと思います。この掛金助成制度には、ご承知のように大きく2つあります。1 つは新規加入に対する掛金の助成、それから月額変更、すなわち増額の変更に対する増 額分の助成と2種類あるわけです。この掛金助成制度の趣旨と申しますと、国の助成に より、中小企業の事業主の方々の負担を軽減することによって、大企業と比較して退職 金の普及状況、あるいは、その水準が十分とは言えない中小企業について、中退制度へ の加入による退職金制度の確立、それから、退職金額の引き上げを図ろうとするもので ある、ということが言えるのではないかと思います。  掛金助成制度については、若干の制度の変遷があります。2のところですが、中退制 度における助成制度は昭和34年に中退法ができて、中退制度そのものが発足したわけ ですが、当初の国による助成制度というものは、仕組みが現在と若干異なっていて、財 源も異なっておりました。いわゆる一般会計予算によって、給付費の補助、つまり、退 職金をお支払いするときに給付費に上乗せするような形で補助をするというような仕組 みでした。  中身としては、そこの括弧書きの中に書いておりますが、掛金月額のうちの最低掛金 月額部分、現在は5,000円ですが、当時、金額はもう少し低かったわけです。この 最低掛金月額部分について、掛金納付月数に応じて一定の比率を乗じた額を補助すると いう仕組みでした。具体的に申しますと、掛金納付が120カ月以上の場合について は、最低掛金部分にかかわる給付の10%分について国の補助による上乗せを行い、掛 金納付月数が60カ月以上120カ月未満の場合は5%の上乗せを行う、こういう仕組 みであったわけです。  しかしながら、この仕組みについては、やや問題点があるという指摘をされていまし た。すなわち、給付費の補助というのは退職者、従業員にとってはメリットがあるわけ ですが、事業主にとっては、直接的な負担軽減措置ということではないということも あって、新規加入に対する直接的なインセンティブにはならないのではないかというこ と。それから、給付費の補助が掛金の最低月額に着目した制度であることから、掛金月 額も最低額に誘導される、といったような問題点が指摘されていたところです。  これは今回の事情にも繋がることですが、昭和50年代後半以降、国の財政状況、特 に一般会計については非常に厳しい状況に立ち至りまして、シーリングの設定等によっ て、一般会計予算の増が見込めない、こういう厳しい状況にありました。その中で、こ の中退制度については、普及拡大が進んで、退職者数が増加して、助成額の大幅な増が 見込まれるといったようなことから、この仕組みそのものを維持するのは極めて困難な 状況に立ち至っていたわけです。  このようなことから、昭和61年に中退法を改正して、事業主に対する加入促進に資 するということを、一番大きな目的とする制度に改めようという観点から、従来の給付 金の補助に代え、財源も一般会計から労働保険特別会計という会計に変えることによっ て、現行の掛金助成制度を創設することになったものです。  この結果、どうなったかということですが、参考資料の1頁をご覧いただきたいと思 います。これは新規加入の状況ですが、この制度改正が行われたのが昭和61年度で す。昭和60年度以前をご覧いただくと、共済契約者で言えば、新規加入者が大体1万 人台で推移をしていたところです。61年度については、制度改正当初ということもあ り非常に大きな効果があって、7万人の加入者があったわけです。ただ、62年度以降 も3万人台という新規加入者の状況があって、制度改正以前に比べると、およそ2倍ぐ らいの新規加入があったということで、制度改正の目的を十分達したということが言え るのではないかと思います。  掛金月額については、2頁をご覧ください。月額増額変更の助成を行うことによっ て、これも61年度のところは5,310円となっています。その前からも平均の掛金 月額は伸びてきており、やはり、61年以降それなりの増加率の伸びがあったと言える のではないかと思います。このように、61年度において制度改正をすることによっ て、掛金助成の趣旨というものは、十分達成できたのではないかと思われます。  3の「今回の見直しについて」ですが、このように掛金助成制度というのは、事業主 の加入促進等に大きな役割を果たしてきたということが言えるわけですが、61年以 来、制度が発足して15年を経過しております。先ほどの参考資料の1頁に戻ります が、制度改正当初は3万人台の新規加入がずっと続いていたわけですが、平成4年度を 境に、2万人台に若干新規加入が落ち込んでおります。そういう意味では、制度が変 わって15年経って、新規加入数については、近年、若干のかげりがみられるというこ とで、その仕組みについて、何らかの再検討が必要な時期に至っていると言えるのでは ないかと思われます。  (2)ですが、これは前回の部会でもご説明したところですが、労働保険特別会計に ついては、近年の非常に厳しい経済雇用情勢を反映して財政状況が逼迫しておりまし て、雇用勘定、労災勘定とも支出の大幅な縮減、及び各種助成制度の全面的な見直しが 不可避となっている状況です。例えば、昨年12月に中央職業安定審議会の建議があり ました。その建議の中で、この雇用保険三事業の給付の見直しの考え方についても、若 干触れられているわけです。口頭で恐縮ですが、いくつかご紹介させていただきます。  いわゆる転職にかかわる部分で「労働移動支援」、原則として雇入助成、すなわち賃 金助成は行わない。「安定した雇用の維持・確保の支援」という助成金については、急 激な事業活動の縮減を余儀なくされた場合の一時的な雇用調整に限り助成する。3つ目 として「雇入助成」、すなわち賃金助成については、事業主の負担を軽減する期間を原 則1年から6カ月に短縮する。こういった雇用保険三事業の給付金の見直しについて、 かなり厳しいご指摘をいただいております。  このようなこともあって、中退制度の掛金助成制度についても、全面的な見直しが不 可避となっている状況です。この掛金助成制度についても、その政策目的、これは1の ほうでも申し上げましたが、加入促進による中小企業の退職金制度の確立、あるいは退 職金額の引き上げというものを主な政策目的とするわけですが、こういった政策目的に 照らして、限られた財源の中でいかに効率的な制度としていくかということが大きな課 題となっています。中退制度そのものは、共済契約者等が、長期に加入することを目的 とした制度であるということから、助成を受ける共済契約者等の間の公平を図るといっ た上でも、限られた財源の中でいかに安定的、継続的な仕組みにするかということが非 常に必要となってくるということです。  以上のことから、今般、掛金助成制度の見直しを行うこととして、新規加入について は助成期間を短縮はしますが、助成率を2分の1に引き上げることによって、引き続 き、事業主の加入促進のインセンティブを維持できるような仕組みにしたいと考えてお ります。併せて、掛金助成の必要性の高い掛金月額の比較的低位なもの、それから、退 職金制度の普及が遅れている短時間労働者に重点を置いた仕組みに改めることによっ て、掛金助成制度を安定的、継続的な制度として再構築したいと考えております。  2枚目は、今回諮問を申し上げておりますそれぞれの制度の見直しについても、見直 しごとの考え方を簡単にまとめたものですが、これは前回の部会で口頭でご説明させて いただきましたので、省きます。  4枚目の「参考2」ですが、これは前回資料として提出するようにご指摘いただいた ものです。「掛金助成額の見込みについて」ということで、平成12年度の助成額がい ちばん左の欄にありますが、これは現行制度を維持した場合、予算額がどうなるか。 (2)は今回のような制度改正を行った場合に、予算額はどうなるかということです。  新規加入の助成については、12年度は69億2,000万円でしたが、13年につ いては、現行制度を維持した場合、78億7,000万円、制度改正を行った場合には 69億円となります。助成期間の関係もあって、実際に金額に大きな開きが出てくるの は15年度以降ということになりますが、15年度については、現行維持の場合が81 億8,000万円、制度改正の場合は50億2,000万円ということです。  2の「掛金増額助成」ですが、12年度については30億1,000万円、13年度 については現行法制度維持の場合が23億1,000万円、制度改正の場合21億4, 000万円となります。12年度と13年度でかなりの金額の差がありますが、実は、 この掛金増額助成については、毎年不用額をかなり出しております。したがって、実行 に見合った金額ということですと、現行法の維持の場合でも、13年度については、大 体23億円ぐらいあれば足りるということです。これも制度改正の場合、現行維持の場 合に比べて若干金額は減となりますが、15年については、約4億円ぐらいの減という 状況です。私からは以上です。 ○部会長 ありがとうございました。それではただいまの説明について、ご意見なりご 質問なり、ございましたらどうぞ。 ○委員 資料2ですが、前回要望したように今回の見直しについて、それなりの考え方 が出されたと思うのですが、3の「今回の見直しについて」の(1)のいちばん終わり の文面ですが、「その仕組みについて何らかの再検討が必要な時期に至っている」と。 今日と前回と議論している掛金助成の制度そのものについて、あるいは中退制度そのも のについて、根底的な見直しをしなければならないというように読めないこともない文 章になっているのかなと思われます。  3の(2)の終わりの行ですが、「限られた財源で安定的、継続的な仕組みとするこ とが必要である」と。それはそのとおりだと思うのですが、安定的、継続的というので あれば、加入促進のインセンティブということではないような文章表現になっているの です。  (1)(2)をトータルして、以上のことから今回の見直しを行う。ちょっと文面と しては、何か不足しているのか、書き過ぎているのか、そんなふうに思うのです。今回 諮問しているのは、あくまでも国の助成方法の変更であって、それ以上中退制度そのも のについて検討しようというような内容ではないと理解しておりますが、私の文章の読 み方が悪いのかもしれませんが、ご説明いただきたいと思います。 ○勤労者生活課長 私どものほうの文章の書き方にまずい点があったかと思われます が、(1)について「再検討が必要な」という部分は、あくまでも冒頭の部分にあるよ うに、現行の掛金助成制度の仕組みについて、何らかの形での工夫が必要ではないか、 やはりそういう時期に差しか掛かっているのではないか、こういう趣旨で整理したもの です。  後のほうの「安定的、継続的な仕組み」ですが、これはその上の「共済契約者等の間 の公平を図る上で」という部分もありますが、すなわち、助成制度が何度も変わること によって、そのたびに、過去に入った方、そのときに入った方、また、将来入った方に 対する国の助成というものが異なるといったようなことになると、それぞれの方の間の 不公平が生じるのではないか。そういうことからも、制度の見直しはできるだけ回数を 少なくして、その制度ができるだけ継続的に維持できるような仕組みにする必要がある という観点から、今回の見直しを行ったものであるという趣旨で書いたものです。 ○委員 いまご説明いただいた3の(1)(2)(3)では、近年新規加入者数が落ち 込んできているということですね。それに対して、助成率を2分の1に上げるという と、これは「加入促進のインセンティブ」と書かれていますが、何ら継続性がないよう に思うのです。一方では12カ月で打ち切って、もう一方では上限が5,000円の一 律ということであれば、加入主が、いわゆる経営者側がその気になれるのでしょうか ね。国の予算がないとそこの頁で出ていましたが、約10億ほど減っていくのだ、とい うことの言い訳でしかないように思うのです。24カ月間3分の1を補助するのを、2 分の1にして12カ月間にしたほうが、雇用主はこれに入ろうという気になぜなるのか という辺りが、非常に魔法のような感じがするのです。 ○勤労者生活課長 説明申し上げるのに苦労するところだと思うのですが、正直に申し 上げて、従来の掛金助成制度については、それなりの意義があったと思います。実際に その効果も働いているということですが、やはり、厳しい財政状況の中で、財源を圧縮 せざるを得なかったというところがあって、そういう中でも、従来の掛金助成制度の趣 旨をいかに維持していくか、こういう観点からの見直しが今回の諮問の内容です。そう いう意味では確かに委員がおっしゃるとおり、総額で減るのは間違いないのですが、た だ、当初の助成率を3分の1から2分の1に引き上げることによって、何とか事業主の 加入促進のインセンティブを損なわないような形での見直しを行いたいということで、 こういうようなものとしています。 ○委員 答弁が苦しいのは分かっているのですが、中小企業の退職金は非常に低いとい うのが現実なのです。ところが、これでいくと、誰でも1万円を目標にしますね。1万 円だったら5,000円を1年間でもくれますが、それを超えても5,000円しかく れない。もう少し上積みしようと思っても、反対にそういうことに結び付いていかない でしょう。トータルの中小企業の退職金共済をどう考えていくかという重要な部分です が、助成率が上がったところもありましたが、これによって掛金の絶対額は下がります よ。 ○勤労者生活課長 前回もちょっとご説明申し上げましたが、掛金が1万円以下の方の 比率は約80%ということでして、そういう意味では、かなりの加入者の方々は1万円 以下でカバーできるのではないかと考えています。また、前回菅野委員から若干制度の 整合性がないのではないかというご指摘を受けたところですが、掛金の増額変更に対す る助成制度というものもありますので、その2つをうまく組み合わせて活用していただ くような形で、退職金の引上げ措置というものについて、何とかご配慮いただきたい と、我々としては考えております。 ○委員 いまの議論は前回も聞いていて思ったのですが、やはり、助成金制度も含めて 中退共の制度自体のビジョンといいますか、中長期的なビジョンというものが見えな い。労働保険特別会計が逼迫しているから、今回の見直しがあったというような、そう いうニュアンスが感じられます。その辺で、例えば、財政が非常に厳しいという収支の 事実があるわけですが、景気循環から考えれば、当然のことながらここまで景気が低迷 していて、中小企業は非常に苦しい立場にある。そうなると、やはり、特別会計、特に 労働保険に関しては、苦しくなるのが当然であって、むしろ、そういうときこそ中小企 業への福祉の向上を図るというような考え方が必要なのではないかというのが1点で す。  もう1つは制度の見直しで、助成金の見直しについてですが、加入促進が1つの目的 にあるという話です。確かに、加入促進のためには助成金が必要だと思うのですが、一 方で、赤字といいますか、積立不足が毎年生じていて、それに対しても財政のほうから 出ているということも考えると、ある程度の全体の整合性といいますか、助成金だけで はなくて、すべてトータルで考えていかなくてはならないものではないか。  そうすると、加入促進という名目だけで助成金を考えるということになると、この制 度と競合する制度としては、例えば、特定退職金共済のように、商工会議所等が行って いるものがあると思うのです。それに関して、これは質問ですが、その助成というもの は、どのようになっているのかをお聞きしたいのです。 ○勤労者生活課長補佐 非常に多岐にわたるご質問をいただきまして、それについてご 説明しますが、一部は委員からのご質問に対する説明補足にもなるかと思います。ま ず、今回の中退制度の助成措置の見直しについて中長期的なビジョンというものがある のかというご指摘でしたが、本日資料は持参しておりませんが、前々回の審議会でご説 明申し上げたように、5年ごとに加入促進の5カ年計画というような形で、一層の普及 促進を図っていきたいと考えております。前回の5カ年計画が11年度で終わったこと から、今年度、12年度から発足したところでして、そういう形で中退制度の中での中 期的な考え方というのは、私どももある程度ビジョンを設けながら進めていきたいと考 えております。  また、景気循環的に苦しい時期だから中小企業への福祉の向上が必要だというご意見 は、非常にごもっともだと思います。しかし、一方では国の財源の問題もありまして、 現在、例えば、労働保険特別会計の中での今回の助成金などについても、中小企業に対 する助成金というのは、例えば、「安全・健康の確保」といったような面は、増額され ている部分もございます。そういう意味でいくと、中小企業に対する予算をひとまとめ にした数字はありませんが、その辺りは広くご覧いただければありがたいと考えており ます。  また、先ほどの委員からのご指摘で、事業主に対する加入促進のインセンティブに なっていないのではないかというご指摘に対するお答えになればと思うのですが、事業 主が加入されてから初めの12カ月の間における助成額を申し上げると、資料2の3枚 目に帯グラフのようなものを付けております。上の帯グラフが通常の掛金でお入りにな る方で、当初の12カ月に着目していただくと、従前では12カ月×1/3、すなわち 4カ月分の助成を受けていただけたのですが、今回の場合には、初めの3カ月が遅れま すが、9カ月×1/2で4.5カ月という形で、当初の1年間に受けていただける助成 額は、現状維持もしくは微増というぐらいにはなっています。下のパートの場合にはそ れがより一層典型的になってくるわけですが、従前ですと24カ月掛けて3分の1で8 カ月の助成を受けていただけたのですが、それが今度の場合は、スタートが3カ月遅れ るわけですが、ほぼ3分の2に近い率ですから、当初の1年なり1年3カ月の間で12 カ月×2/3でほぼ同額の助成を受けていただける。いわば助成を当初より重点化して 配分したというようにご理解いただければと思います。まず退職金制度を持っていただ くための加入促進という意味での効果を狙って重点化したという部分の1つです。  また中退制度の場合には、平均的な掛金額までは、この助成額の範囲で2分の1の助 成を受けていただけるという形になっております。中退共の被共済者は、当初は平均的 な額で入られて、何年かごとにある程度の掛金額を増額しながら引き上げてこられてい るというのが典型的なパターンかと存じます。当初からいきなり3万円で入るというの がいちばん望ましいと言えば望ましいのかもしれませんが、その事業所の負担能力で実 際に無理のない形で継続的に掛金を納めていただくという意味からすると、無理からぬ ところはありまして、典型的な中退制度の被共済者はそういう実態ではないかというふ うに考えておりますが、そのような方は今度の増額助成の改正後も、平均額の2倍にな るぐらいまで助成を引き続き受けていただけると考えておりますので、その辺りはご理 解いただければと思います。  先ほど委員ご指摘の3点目ですが、中退制度については積立不足があるのではないか というご指摘ですが、積立不足については、国庫から直接的にそれを補填するというよ うなシステムはありません。ご存じのように、現在の中退資産というのは、事業主が ずっと掛けてこられた掛金を積み上げて、それを運用しながらやってきているものです ので、積立不足の解消まで含めたようなトータルなビジョンが必要ではないかというご 指摘はもっともなご指摘ではありますが、今回はそこまでは踏み込んでおりません。  ただし、制度を安定的に運用していくという意味で申し上げますと、加入者数が年々 維持・拡大していくことが望ましいのは間違いのないところでして、全体に加入者数に 伸び悩みがあることから、一方では予算の制約があるわけですが、加入時の助成を重点 的に行って、加入者数の維持・発展を図っていきたいと考えております。  最後の商工会議所の特定退職金共済についての助成ですが、これについては、商工会 議所本体に対する助成はともかくとして、制度自体に対しては、国からは助成は行われ ていないと承知しております。 ○委員 特定の業種についてはいかがでしょう。 ○委員 私が言ったのは、商工会議所のほうの特定です。 ○勤労者生活課長補佐 同じく勤労者退職金共済機構のほうが行っている特定業種の退 職金共済、これは前回の制度の説明の中では今回の見直しの対象になっておりませんの で端折りましたが、月額で掛金を納めていただくのではなくて、給与の支払いを行う都 度、証紙を購入していただいて、それを貼っていただくというような形で掛金を納めて いただくシステムになっております。あとは、納めていただいた証紙の月数に換算した ものに応じて退職金が支払われます。そのほかは基本的に一般の中退制度と同様のシス テムになっています。  それに対する助成制度としては、期間労働者、すなわち建設現場において、継続して ではなく転々として就業されるというような労働者、あるいは、季節労働者、つまり、 林業や清酒製造業の杜氏のように、農閑期に酒造りに来られるといったような方を対象 にしていることから、特定業種退職金共済の場合には、事業主の加入当初の助成ではな く、労働者が共済制度に入られた当初の段階で助成を行うというシステムになっていま す。すなわち、被共済者の加入後1年目は助成がある手帳に証紙を貼っていただくとい う仕組みとなっています。機構に対する一般の事務費の補助も行われております。その 辺は、一般の中退と同様です。 ○委員 今回の助成制度の見直しというのは、現行の制度の1つの枠組みの中での見直 しだと思うのです。すなわち、この前にもお話しいただきましたが、労働保険の特別会 計が財源になっているということですね。労災事故自体は、すごく減少してきていま す。ですが、ストレスによる過労死や精神疾患というのが増えてきていて、労災自体で も「死の四重奏」と言われるようなものがチェックできるような、第2次検診の予防的 な給付を行うという改正が今度行われましたね。  雇用保険のほうも失業率が史上最高になっているということで、失業保険の支出のほ うが非常に増えているから、自己都合などは給付日数を減らして、リストラなどをされ た場合は、給付日数を増やすというような、重点化が行われてきたわけです。ですか ら、労災のほうも、雇用保険のほうも両方、経済的な、あるいは雇用情勢を反映した影 響があって事実厳しくなってきて、改正が行われているということですから、それを財 源にしている助成制度ということになると、今回のように加入促進あるいは効率化、公 平化、重点化というようなところにウエイトを置いた、今回のような見直し内容という のは、その枠の中で考えれば、やむを得ないというふうには思うのです。  しかし、中小企業の従業員に支援をするとか、中小企業自身をもっと振興するという のは、日本の経済にとっても非常に重要なことだと思いますので、そういう重要性に鑑 みると、先ほど委員がおっしゃった3の(1)のところで、「その仕組みについて何ら かの再検討が必要な時期に至っている」とちょうど書かれているのは、助成制度だけの ことではなくて、もっと中退制度というものの位置づけについて、あるいは財源のあり 方について、以前は一般会計からも出されていて、それは問題があったということです が、財源を労働保険特別会計のみに頼っていると、やはり両方はますます厳しくなって きているわけです。どうしてもこういうふうな見直しをせざるを得ないというところが あります。  ですから、制度の位置づけや、財源のあり方について、もう一度仕組みについて何ら かの再検討が今後の課題としてあるのではないか。ちょうどこういう審議会の部会も設 置されていることですから、今回は、私はもう労働保険特別会計によっている以上は、 その事情を考えても、やむを得ないし、その中での体制の見直しの重点化の方法として は、先ほどの図にも出ているように、工夫されているなと思うわけです。その効果がど うかということは、先ほどの参考の表1のような、これは平成13年4月1日からです から、もしこれが通れば、改正されるわけです。  改正されたあと、事業主なり共済契約者がどういうふうに動いてくるかを是非注目し たいと思うのです。そういう実態を見ながら、政策改定の効果があるのかないのかとい うことを踏まえて、また半年後とか1年後に、是非、助成金制度だけではなくて、ある いは制度のあり方も含めて、もう少しここに書かれているような何らかの再検討が必要 なのではないかと思います。今回の改正については、私はやむを得ないし、内容につい ては工夫されているなと思いました。 ○委員 いまの関連で、参考2によると、新規加入助成のほうについては、15年度は 30億ぐらい減少するということなのです。一方では、率という加入人員の促進を謳っ ていることなのでしょうが、何か極端に減っているなという感じがするのです。いまの 仕組みの効果がここに出てきたということなのですが、13、14、15について、先 ほど落ち込んでいるということですが、これが1万人なのか2万人なのか、これによっ て増えるという人員の試算の数字が、もし分かるなら教えていただきたいのです。確か に増えているのかどうかです。 ○勤労者生活課長補佐 手元に数字を持ち合わせておりませんが、これは、過去2年な り3年の実績をベースとして加入数を見込んでおります。これで見ていくと、11年度 は5カ年計画の最後ということもあって、数字が増えていることもありますので、加入 数というのは、ある程度増えていくという前提での試算結果となっておりまして、基礎 になった数字では、毎年一定程度、加入数が増えていくという試算となっております。 ○委員 プラス効果は、入っているということですか。増やそうというのが目的です ね。 ○勤労者生活課長補佐 はい。ただし、制度改正に伴う加入促進効果という見込み方で はありませんで、これまでの過去のトレンドから伸ばしているというところです。 ○委員 平準化しているというだけの話で、ちょっと疑問といいますか、おっしゃって いることと、数字の乖離が激し過ぎるといいますかね。 ○勤労者生活課長補佐 費用対効果という観点が必要なのかもしれませんが、例えば、 加入促進がどのくらい増えるといった試算の仕方がなかったものですから、過去の傾向 値でそのまま伸ばしているとご理解いただければと思います。 ○委員 雇用保険や労災にそれなりにかかわっていますので、いま委員がおっしゃった ことで、その内容は自分としては理解しているつもりなのです。「その仕組みについて 何らかの」という部分に非常にこだわるのは、もう助成はやめてしまおうじゃないか、 というようなことを将来厚生労働省がお考えになるというようなことがあってはいけな いので、今回の掛金助成制度に限っての表現であると、そういう確認をひとつしておき たいわけです。  もう1つは、委員を続けてみえる方はご承知ですが、再三にわたって運用利回りが下 がってきたわけです。そのたびに退職金額を下げてきた。今度の助成措置も、結論から 言うと、全体としては事業主の負担が増える方向にしかなっていない、というようなこ とが連続していくことです。これは中小企業に働く労働者の退職金というのは、ある意 味では労働債権ですから、減少していくことを容認するというのは、非常に難しい。労 働者側の意見のまとめは委員からされると思いますが、ちょっと明るくない話ばかりで すから、すぐさま「よろしいです」と言いにくいところです。 ○委員 この4カ月目という延ばし方ですが、これについて、ここの説明では「事業主 が原則的に加入する云々」と書かれています。ところが、何の意味でこうするのかとい うことが、結局、やめていく人は、特に中小企業の場合は辞職率が高いですから、本人 がお辞めになっていく、逆に続けるという意思よりも、やはり入ろうという動機が大事 なのです。そういうものに入っても4カ月目からというと、中小企業の事業者にとっ て、資金繰りといいますか、あとでもらう金額が大きくても、ということがあります。  特に私が不思議に思うのは、パートの部分です。短期であることで認めているのに、 なおかつ4カ月目からの助成としたら、果たして事業主が中退制度に入るだろうかとい う疑問があるのです。継続的に雇用していこうという場合は、ある程度長い年度で見れ ば分かりますが、パートの皆さんに掛金を掛けてやろうというのは、パートの場合は、 入ってくる率が非常に少ないです。そこへ掛けて4カ月目からとなると、果たして短期 間労働者に向くのかなと。これは、パートという名を使った長期労働者を見ているので すかね。この辺りは、趣旨がちょっと。  全体的に資金が不足しているのだから落としますという論議は別にして、ここが導入 されたのは、何でですか。結局、事業主が加入し続けるというよりも、それ以前に入ら れるわけでしょう。入るという行為そのものが、重要ではないかと思うのです。その人 がずっと入り続けるかというのは、事業主が勝手に入ったりやめたりするのですか、そ うではないでしょう。この辺りは、説明が矛盾すると思います。 ○勤労者生活課長 確かに、仕組みそのものが余計に複雑になっているではないかとい うご指摘は、そのとおりだと思うのですが、実際、加入して比較的間もない期間にやめ られる被共済者も結構おられるわけです。  実際、この仕組みそのものが退職金制度という性格上、当初の12カ月間というの は、お金を掛けていただいたとしても、それは掛け捨てになります。13カ月〜24カ 月目までの間は、掛けたお金よりも少ない金額しか給付されない。要するに、掛け損と いう期間が設定されているわけです。そういう意味では、早く辞められる方は助成が無 駄になっている部分という面があって、そこの部分は極力減らそうという趣旨で、この 期間を設定したわけです。この期間をあまり長くすると、委員ご指摘のように、期間が 経っても助成がもらえないということで事業主の加入意欲がそがれるということにもな りかねないものですから、その辺の接点をどのぐらいにするかというようなことをいろ いろ検討した結果、3カ月間ぐらいの期間を設定するのが望ましいのではないかという ことで、こういう仕組みにさせていただいたわけです。 ○委員 早く辞める人が多いということですが、この中で占めるわずかな数字ですよ ね。そうすると、結局、最初に入って12カ月掛けた。そのあとで辞めた人は、反対 に、いまの制度より改悪になりますね。切断しますね。 ○勤労者生活課長 いまのお話の点で申し上げますと、入って12カ月で辞めた場合 は、その部分は掛け捨て期間になるものですから、被共済者はもらえないことになるの です。 ○委員 被共済者がもらえない部分であって、いわゆる掛けるという行為と、全然リン クしないでしょう。 ○勤労者生活課長補佐 事業主がまずこの中退制度に加入することが大事ではないかと いうご指摘はおっしゃるとおりです。被共済者のうちで加入されてから12カ月以内に 辞められる方が現に5%ぐらいおられると前回申し上げたと思いますが、それを事業主 ベースで取れないかやってみたのですが、データの取り方が難しくて、被共済者の数字 でそれに置き換えたわけです。事業主が入れば、辞められなかった被共済者の従業員 は、そのまま退職金の掛金を掛け続けられるのではないかというご指摘はおっしゃると おりです。  被共済者が辞められている中には、事業主が中退制度に加入してスタートしたが結局 短い間でやめてしまったので脱退してしまったということによる脱退というのも含まれ ています。そこはある程度、割り切りというと乱暴な言い方で失礼ですが、事業主が引 き続き掛けていただけるか否か、それが、その事業主の下で働いておられる従業員に退 職金という形で報いられるか否かにかかってきますので、助成対象とするか否かを決め る上で、ずっと加入していただけるかを見極めさせていただくための期間というように ご理解いただければと思っています。 ○部会長 ほかには何かありますか。 ○委員 考え方については、先ほど委員もおっしゃったように、いまの状況の中では多 少の助成期間の見直しはやむを得ないと思うのです。ただ2つ申し上げたいのです。1 つは、今回からある制限を決めました。折角経営側の、事業主が経営努力をしながら、 高い掛金を払っている方に対しては、助成を少なくしようという考え方です。1万円を 超す所には、一律5,000円にしますということです。「2万円未満は」という制限 を付けたりしていますから、これについては、若干、今回予算の問題などがあると思う のですが、先ほどのご説明からすると、10%〜20%の間ぐらいですから、金額的に も、負担としてはそう高くかかるものではないと思います。そういう面では、一生懸命 経営努力をされている方たちに対する助成を低くするというのは、ちょっと本末転倒で はないかという感じがします。  2つ目は、委員からもありましたように、事業主は、助成が少なくなれば、総掛金を 計算すると掛金を下げてしまう。先ほど委員からあったように、過去には予定利率を引 き下げるときに、我々がいちばん心配しているのは、労働者のほうにしわ寄せが来ない ようにということだったのですが、結果を見ると、先ほどの参考資料などでも、被共済 者の掛金月額は年々上がっていますから、それは事業主の皆さん方の努力によって、金 利が下がっても、掛金は上昇しているということですから、これは杞憂に終わったわけ ですが、実際にやってみると掛金が下がるということ。こういうことのないように、中 退共の中で実際の事業運営をする中では、是非、事業主の皆さんによく説明して、労働 者側にしわ寄せが来ないような形でやってもらう。この2つを意見として申し上げたい と思います。 ○部会長 ほかにはございませんか。 ○委員 確認ですが、先ほど委員がおっしゃったように、資料2の3の(1)のとこ ろ、「その仕組みについて何らかの再検討が必要な時期に至っている」というのは、助 成制度を廃止するとか、そういう意味ではないと理解していいですか。 ○勤労者生活課長 それは委員がおっしゃったとおりとご理解いただいて結構です。 ○委員 もう1つは、先ほど公益側の委員がおっしゃっていたのですが、中小企業の退 職金制度の中で、この中退制度ともう1つ商工会議所がやっているものと2本立ての制 度があるわけですが、そういうものを中長期的にビションは何かないかという質問だっ と思うのですが、それはどうなのですか。 ○勤労者生活課長補佐 商工会議所の特定退職金共済との関係ということですか。 ○委員 そういった助成があるとすると、もしこちら側の掛金がある程度、8分の6で すか、減ることによって影響があるのかということの趣旨の質問だったのです。先ほど のお答えですと、特定退職金共済のほうはそういった国からの助成がないということで すので、特にこちら側の助成金の削減というのは、直接的にそれには影響がないと考え てよろしいわけですね。 ○勤労者生活課長補佐 はい。 ○委員 ただ、加入促進ということからみると、特定退職金共済もある程度入っている わけで、そうすると掛金の助成というものはどの程度加入促進にインパクトがあるかと いうことは、やはり引続きウォッチしていかなくてはいけないかな、という意味合いで 質問を申し上げたので、多分ちょっと長谷川委員の質問と違うかもしれませんが。 ○委員 なぜ私がそう言ったかというと、3の(2)で、各種助成制度の全面的なもの の見直しが言われているわけです。そうすると、労働保険の特別会計のところで議論す るのかなと思ったのですが、そのときに例えば商工会議所の特定退職金共済に対しては 直接に何らかの助成はしていないですが、別の形で助成されていますよね。全然ないで すか。 ○勤労者生活課長補佐 商工会議所自体の事務費は出ていたかと思います。ただし、そ れはご存じのように種々の経営指導など商工会議所の業務全体についての話ですので、 ちょっと趣旨が違うのではないかと思います。 ○委員 要するに、中小企業の人たちの退職金制度は商工会議所でやる方法と、この中 退制度でやる方法もある。そういう意味では制度が2つあるわけですが、そういう中で 例えば、こっちの中退金のほうが財政上が逼迫してきて、制度をどうしようかというと きに、中小企業の人たちはどういう方法がいいのかなとか、そういう検討というのはど こでどうしてやるのかなというのを聞こうと思ったのです。今回のは、現実的には中小 の企業経営者は結果的には、いままでの制度よりも負担増になるわけですよね。例え ば、いままでが月額8,000円の場合だと、6万3,840円だったのが4万8,0 00円になるわけですから、事実上入ってくる金額は減るわけですよね。そういう意味 では負担増になるわけです。だから中小企業の人たちから見たときに、中退制度だけで はなくてもう1つの特定退職金共済制度があるのだけれども、そのときにどっちがいい のかなと見ると思うのです。そのときに「何も2つなんかなくたっていいんじゃないの か」というのは、乱暴な言い方なのでしょうか。 ○勤労者生活課長補佐 中退制度と、商工会議所などで行っています特定退職金共済の 2つの制度がありますが、その両者の関係ということでご説明申し上げます。特定退職 金共済の場合には、もともと地域の商工会あるいは商工会議所、商店街あるいは業界団 体という形で、それぞれの事情に応じて給付の仕組みとか給付の内容といったものも含 めて、いわば自分たちのオーダーメードのものとしてやれる、制度の設計が自由である という利点があります。  中退制度の場合はそれに対しまして、例えば退職金の支給開始が1年後で、2年間は 掛け損が生じる、あるいはそのあとのカーブがどういうカーブになってくるかといった 点ですとか、掛金額についても上限、下限の制限がある、給付内容は、退職金でしか支 給できないといった制約があります。汎用的なモデルになっているものですから、逆 に、特殊なニーズがある場合には対応できないといった限界があります。  このように、両制度は一長一短ありますので、それぞれの事業主の方が自分の会社の ニーズに、より適合しているのはどちらであるかというのを選んでお入りになるという ような、もともとの性格の違いというのがあるのではないかと考えております。ですか ら、繰り返しになってしまうのですが、一定の事業主の方の集団で、制度設計として自 分たちのためのオーダーメードでやりたい部分があるというニーズに応じて、中退制 度、特定退職金共済のいずれに入るか、あるいは場合によっては両方入っている事業主 の方もおられるかと思いますが、それぞれ実施されているということではないかと考え ます。 ○委員 いまの商工会議所の特定退職金共済の問題なのですが、これはあくまで民間で すので、私が見ているところによりますと、大体民間の生保とかというところが運営し ていると思うのです。そうしますと、こういう中退のような制度ですと政府の職員の方 が皆さんでしっかりやって、そういう意味では国のサービスというのを受けていると思 うのですが、特定退職金共済の場合は事務費自体もそういう掛金から払われなければな らない制度だと思うのです。  前回もちょっとそれを申し上げたのですが、経営者によってこういう制度を知らない 人、商工会議所に入ってやっている人は、知らないうちにそういう意味での損得といっ たら変ですが、とても利益を被っている方と知らないために経費を余分に払っている方 がいるのです。それなりに皆さんのメニューが違うから、よろしいかとも思うのです が、いちばん心配するのは、こういう制度はだんだんお金が逼迫してきますと、だんだ ん民間に移譲していく傾向があるのではないのかということが漠然と気になるのです。 というのは、ここに「制度の見直し」と書いてありますが、これが掛金だけではなく て、総合的な制度の見直しに発展していかないかなということを、ちょっといまは心配 しています。いかがでしょうか。 ○勤労者生活課長 この制度自体が、中小企業退職金共済法という法律に基づいて共済 制度ができている。それから、こういう国の助成制度についても、法律に根拠があると いったような制度ですので、そういう意味では、枠組がしっかりした制度であるという ことが言えると思いますし、この資金を運用する組織そのものも、特殊法人である勤労 者退職金共済機構がありまして、そこでしっかりした運用をしているといったようなこ ともあります。そういう意味では安定的であり、かつ継続性を望める制度であると言え るのではないかと思います。 ○委員 いまのと関連して、私たちは実務家といいますか、実際にいろいろな中小企業 の人たちと接しているわけですが、一定の場所はわかりませんが、八王子と考えてくだ さい。そこの商工会議所で仕事があって皆さんやっているわけですが、いまおっしゃる ように自主運営だとすれば、ある意味では非常にリスクを伴うから、この際中退制度に 集団で移ろうという動きがあったように聞いているのです。それが1つと、それに移っ た場合は、いまの2分の1とか3分の1というのは適用になるのでしょうか。もちろん 掛金は継続して繋がっていくのだと思うのですが、その先の問題なのです。「メリット は、こっちが国だから安全だよ」と、安全は安全なのでしょうけれども、果たしてメ リットが有りや無しやという点で、いまのお話を聞いていて私は非常に疑問を感じたわ けですが、その辺をちょっと含めて感想でも結構なのです。 ○勤労者生活課長補佐 まず、商工会議所などで行っている特定退職金共済と勤労者退 職金共済機構との間で、個々の労働者の方が、その商工会議所の特定退職金共済に加入 している事業所をお辞めになって、中退制度に加入しておられる事業所にお勤めになっ たという場合については、その商工会議所と勤労者退職金共済機構との間で予め契約を 結んでおくことによりまして、退職金の原資をそのまま引き継いでいただき、また最後 の個人所得税のベースとなります就業年数のカウントなどについても通算される制度が 1つあります。  また、事業所単位で中退制度に移られる場合には、特定退職金共済から中退制度に直 接的に原資を移管するシステムは通常は措置してありませんので、その場合には過去勤 務分として勤労者退職金共済機構のほうに過去の分を合わせてお支払いいただいて加入 いただければ、それまでの加入年数を反映できるシステムになっております。  なお、中小企業の範囲の拡大が行われましたようなときには、従前は中退制度に入れ なかった事業主の方が、今度は中小企業の範囲が拡大したことによって中退制度にお入 りになれるケースもありますので、時限措置として、特定退職金のほうから、改正後1 年間に限って、事業所単位で中退制度のほうにお入りになるときに、原資をそのまま引 き継いでいただけるというようなシステムがありました。ただし、通常の場合にはそう いうシステムというのはありません。 ○委員 3分の1というのは、もらえるのですか。 ○勤労者生活課長補佐 加入時の助成というのは、一般的に中退制度にお入りになる段 階での助成というのはあります。先ほどの中小企業の範囲の拡大などで、集団で移って こられる特例的な場合というのはありません。 ○委員 今度委員にさせていただきまして初めてですので、いままでの経過を存じませ んし、前回は休んでしまいまして、ポイントがずれているかもしれません。まさに自分 自身が中小企業の経営者ですので、その観点から意見を言わせていただきます。  私自身の勉強不足もありますが、この制度は私自身は存じ上げておりませんで、入会 していません。当社は民間の保険会社の退職金制度に入らせていただいています。果た してこの制度のPRは、中小企業にどういう形で現在広めて、知らしめてくださってい るのかという点と、逆に言うとあまりにも多くなると、国の支出が大変になってしまう のかなという意味の心配もしてしまいます。ただ、やはり中小企業で働く方々というの は、たまたま当社は民間の保険会社に入っていますが、入っていないところというのが 大多数ではないかと思うのです。現状的に民間で入っているのは把握できないと思いま すが、ちょっと前にお聞きしたような気がするのですが、この中退制度に大体どのくら いの比率でまず入会していらっしゃるのでしょうか。 ○勤労者生活課長 統計の話は後ほどさせていただきますが、先ほどのどういうメリッ トがあるのか、どういうPRをしているのかというお話ですが、実は前回の会議の資料 としてパンフレット等を添付させていただいたのです。今回お持ちしなくて大変恐縮で すが、いろいろな加入促進のためのパンフレット、あるいは中退制度をPRするための パンフレット等を勤労者退職金共済機構等が作成いたしまして、それを中小企業の方々 にご覧いただいて加入促進の制度をご承知いただくと同時に、この制度に入っていただ くためのPRをしようということです。  メリットといたしましては、掛金については事業主の方のメリットなのですが、必要 経費あるいは損金算入ができるというメリットがあります。また、社外積立の制度でし て、確実に退職金が支払われる制度であるということがいえます。従来の社内積立の制 度と違いまして確実に積まれた分、非共済者の従業員の方が退職になったときに退職金 をお支払いするという仕組みになっています。あるいは、基本退職金について一定の利 回りをお約束いたしており、これは現在3.0%ということで、ほかの金融商品に比べ るとかなり利率が高くなっているわけです。 ○委員 では、還付金みたいなので返してくださるのですか。 ○勤労者生活課長 退職時に、掛金に3.0%の利回りを上乗せしてお支払いするとい うことになっています。さらに運用利回りが良かった場合には、基本退職金にプラスア ルファーで付加退職金も上乗せするという制度になっています。そういう意味で、この 制度には非常に大きなメリットがあると思います。  もう1つ申し上げますと、この事務そのものは勤労者退職金共済機構が行っているの ですが、その事務費、人件費については、基本的に国の一般会計により補助するという 仕組みがありまして、そういう意味でも、事務費とか人件費に係る負担が少なくて済む という制度でもあります。 ○委員 お聞きした記憶が定かではないのですが、私が聞いたお話で入会の比率が低 かったように記憶しているのです。例えばこういう書類にしても企業はたくさん来ます から、ただ送りましたよと、これでPRしたといっても、右から左でほとんどと言った ら申し訳ないのですが、丁寧に目を通して見られる人員がいる会社はいいですが、むし ろ中小企業というのはそこまで人員の余裕がないものですから、もうちょっと別な方法 も加えていただきますと、何かあるのではないかなと思います。この種の書類は相当た くさんいろいろなところから送られてまいります。 ○委員 この諮問に関するスケジュールをちょっとお聞きしたいと思います。 ○部会長 それでは、大体ご意見、ご議論は尽きましたか。何かおっしゃりたいことが あれば。 ○委員 一応ひとまず労働側としては、きちっと言うべきことは言っておきたいと思い ますので、スケジュールの話の前に、私どもの今回の件に関してまとめたものを説明し たいと思いますが、よろしいでしょうか。 ○部会長 はい。 ○委員 今日の会議の中で3人の委員からも申し上げましたように、基本的にはこの中 小企業退職金共済制度というのは国が行っているものであって、退職金制度や企業年金 制度のない中小企業の労働者にとっては、退職後の生活設計に関わる制度として極めて 大きな役割を持っていることは、皆さんお互いに認識できたのではないかと思っていま す。この制度を充実強化することは、現在雇用が非常に流動化しているわけですが、そ ういう中で退職金のポータブル化とか、大手と比べて低い水準にある中小企業労働者の 退職金水準を引き上げるものに結び付いているのではないかと思っています。そういう 意味では、今後もこの中退制度に対しては、安心で安全で安定という信頼性をやはりき ちっと確立して、中小企業労働者として働く労働者に、失望を与えることのないような 制度の拡充を図ることに、日常的に努力をしていかなければならないのではないか、と いうことが第1点です。  2点目は、今回の助成制度の見直しは、あまりにも唐突だったのではないか。私も制 度の見直しが、こんな簡単に出てくるのかとちょっと驚いているわけですが、そういう 意味ではもう少し時間を取って丁寧な説明とか、ヒヤリングなどもしてほしかったと 思っています。今回の提案のときに、助成率は引き上げるという提案でしたが、先ほど 別な委員からもお話がありましたように、実態は助成期間の短縮によって助成額は引き 下げられるわけでして、中小企業の経営が非常に困難で厳しい環境の中で、中小企業者 にやはり負担増を求めるような措置は、退職金制度が未整備な中小企業に対して制度加 入を勧める上で、大きなマイナスなのではないか、これは何人かから出された意見で す。掛金を増額しようとするインセンティブを著しく損なうのではないか、少しでも高 い退職金を求める労働者の期待を基本的には裏切るものではないかと考えています。  この制度を運用している勤労者退職金共済機構は、事業主の負担が増えることと、そ のために加入者の減少や掛金の引き下げなどが発生する恐れがあることを踏まえて、地 方自治体の掛金助成制度の拡充などの対応策を十分に検討しながら、さらなる加入促進 に向けて一層の努力をしていただきたいと思っています。  これまでにも予定運用利回りの引き下げが行われましたが、こういうものは実質的に 退職金水準が引き下げられてきたわけです。しかし、我が国の産業基盤を支えているの は、こうした退職金などの制度のない中小零細企業に働く、労働者の8割に及ぶ中小企 業労働者ですので、こうした実態を踏まえて、中退制度に加入する労働者の退職金水準 をさらに拡充して、労働者の福祉の向上に向けたいろいろな施策を、さらに充実するよ うに検討していただきたいと思っています。  以上、いろいろな方からそれぞれ細かいことは言われていますので、このことをき ちっと受け止めて、次の制度設計のときにはこのことを踏まえてほしいし、この制度が どういう形で定着するのか、普及していくのか、ある一定の時期にきたらその報告も、 この会議でしていただきたいと思います。 ○部会長 それでは、諮問ですので、そろそろ答申案を配らせていただきたいと思いま す。私のほうから申し上げますと、いままでのご議論等を踏まえても、この諮問文自体 については了承するということにさせていただきたいと思います。  ただ、皆さんのご意見などを忖度すると、別に答申に書くまでは必要はないと思いま すが、これからはできるだけ前広というか、早い段階にこの部会にもご相談いただけた ら、それなりの知恵の出し方はあったのではないかという気がしますので、その点はこ れからそうしていただきたいのが1つ。  それから、やはりこの制度は中小企業の振興にとって非常に大事な制度だと思います し、中小企業で働く労働者はたくさんおられるわけですから、そういうことを考えれば この制度自体が幅広く使われるようにすることは非常に大事なことだと思うのです。こ ういう助成制度も大事ですが、この退職金制度自身を運用するに当たって、できるだけ 多くの中小企業の人にわかりやすく説明をする、PRをするということも私は非常に大 事なことだと思いますし、そのほうがむしろ加入促進になるのではないかという気もし ます。その辺の加入促進についての努力というのをお願いしたいと思います。  また併せて今回の見直しによって、どのような効果が現実に現れてきたのかというこ とも、ある一定時期がきたら把握をして我々にご報告いただければ、またそれについて の考え方というのが出てくるだろうと思います。また併せて、各委員からいろいろご議 論がありましたので、その辺も十分に踏まえて、これからの運用をやっていただけるよ うにお願いしたいと思います。  答申文は、これを了承するということくらいにさせていただけたら、ありがたいと思 うのです。では、お配りしていただけますか。 ○委員 ちょっとその前によろしいですか。委員からご質問のあった参考資料の参考1 でいうと、共済契約者と被共済者がいるわけです。先ほど課長補佐の方からも中小企業 の範囲も関連するというのですが、いまの中小企業の範囲で共済契約者あるいは被共済 者、加入していない人も含めて、総数というのはわかっているのですか。中小企業の事 業所の総数と、そこで働いている人の総数というのは、わかっていらっしゃるのです か。そうすると、それが何%ぐらいかというのはわかりますよね。参考表1のこれは契 約を結んでいる人ですよね。 ○勤労者生活課長補佐 はい。いま手元に統計の数字がありませんが、事業所ベースで いって確か以前の中小企業退職金共済審議会の議事録などを見ていますと、大体10% 半ばぐらいが、中小企業の中でお入りになっているという数字だったのではないかと 思っています。1つのデータなのですが、平成9年の労働省のデータで、30人以上の 企業で取っています統計の中では、中退制度のほうにご加入いただいている方が、大体 20%といったような数字もあります。ただし対象が30人以上に限られていますの で、むしろ中退制度の主たる事業所ベースでいくとしたら、対象3分の2が10人未 満、1事業所あたり6、7人といったような規模の事業所です。事業所ベースで、大体 10〜20%ぐらいとなっています。 ○委員 ありがとうございました。 ○部会長 それでは、事務局が示した案はこうなっていますが、いかがでしょうか。 「記」という所で、「厚生労働省案は妥当と認める」となっていますが、よろしいです か。 (異議なし) ○部会長 よろしければ、こういうことにさせていただきます。 ○勤労者生活課長補佐 若干、事務的なご説明です。以前から中退審議会のほうでお世 話になってまいりました委員の方には、「記」の上の文章で「答申する」ではなくて、 「報告する」と書いてあるところに違和感をお持ちの方がおられるかと思います。前回 の部会で申し上げましたように組織が本審から分科会、部会と3段重ねになったもので すから、形式上は本審の会長に対して報告を上げていく。本審の会長から大臣に対して 答申を返す、その部分だけ答申という形になるということですが、今回の手続のように この部会限りで「記」の中の答申の内容は決めていただいて、本審と分科会のほうは 「別紙記のとおり」と自動的にそれを引用するということとなります。こちらの専決事 項となっているというのが、こういう形で出てくるわけです。  従前の中退審ですと、審議会の会長から大臣なり、大臣の代理として事務局の者にご 答申をいただいていたところですが、今回の答申の案でよろしければ、その後ろに参考 として付けてありますような3枚重ねの形の文章になるわけですが、これで部会長が本 審の会長を代理して、こちらの勤労者生活部長のほうに答申を頂戴するという手続にな るわけです。 ○部会長 では、お渡しいたします。  それでは、本件はこのぐらいにいたしまして、議題2の「その他」ですが、何かあり ますか。 ○勤労者生活課長 最後に、部会の今後のスケジュールについてご説明を申し上げま す。通常ですと、次回の部会は3月下旬に、付加退職金の支給率等についてお諮りする ということになるわけです。しかしながら現在、政府におきまして、既に国会に提出さ れています確定拠出年金法案に続いて、確定給付の企業年金についての法案の準備を進 めているところです。この法案におきましては、新規の適格退職年金契約は認めず、既 存の適格退職年金は一定の十分な経過期間を設けて企業年金制度に移行するといったよ うな方向で検討が進められているところです。  この確定拠出企業年金法案の関係で、中小企業退職金共済法につきましても何らかの 規定の整備は必要になる可能性もあります。その関係もありまして、この確定給付法案 の中身がはっきりしていない部分が多くて、この内容がある程度はっきりしてきた段階 で、改めてご説明させていただきたいと考えています。したがいまして、場合によりま しては3月の部会以前に、何らかの形で説明をさせていただく機会を設けさせていただ くこともあろうかと存じますので、よろしくお願いしたいと思います。 ○部会長 ただいまの今後のスケジュール等の説明につきまして、何かご質問等はあり ますか。なければ、またご連絡をすることにしまして、部会をお開きといたしたいと思 います。 ○勤労者生活部長 一言お礼を申し上げたいと思います。前回、今回と非常に活発なご 議論をいただき、答申をいただきましたことに厚く御礼を申し上げます。今日のご議論 の中でも、中退制度そのものについてもどんなビジョンを持っているのかというご意見 もいただいたわけですが、この中退制度の根幹を支えるのは勤労者退職金共済機構とい う特殊法人であり、税制等の特別措置が講じられているということにあります。税制に つきましては先ほども申し上げましたが、掛金は損金として算入されますので、そこの 段階では税金がかかりません。通常、こういった積立に対しては特別法人税という税金 がかかるわけですが、中退制度の場合についてはこれは免除されていること、給付時に は退職所得控除が適用されますので、実質的には税負担は軽減されています。また、国 が勤労者退職金共済機構の運営費について一般会計で補助をしているわけです。  掛金助成制度は、ここに入っていただくというきっかけを作るという意味では非常に 重要な制度ですが、中退制度に入っていただいている方は労働者数で270万人ぐらい です。もし仮に、全国の労働者が全員これに入っていただきますと、掛金助成制度は正 直申し上げてとても維持できません。そういう意味では加入のきっかけとして、助成措 置は非常に大事な制度だと思っていますが、制度の根幹は運営の仕組みと税制にあると いうことでして、その意味ではいま特殊法人改革が行政改革の中で進んでいますので、 それに対する対応が求められています。  税制につきましても、企業年金制度が整備される中で年金に関する税制、退職金に関 する税制についてはどうするのだという議論が重要な課題になってきているわけです。 当然、そういった議論がこの中退制度にも大きな影響を与えてくることになるだろうと 思います。先ほど企業年金法との関係で、また皆様方にご相談をすることがあるかもし れないと申し上げましたが、いま申し上げたような観点についても、今後いろいろな面 で皆様方にご相談申し上げなければならないことが出てくるかと思います。非常にお忙 しい中、本当に申し訳ないとは思いますが、そういったときにまたいろいろとご意見を いただけたらと思います。本当に前回、今回とありがとうございました。 ○部会長 それでは、今日はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうござ いました。 6 配布資料  (1) 中小企業退職金共済法施行規則の一部を改正する省令案要綱諮問文  (2) 一般の中小企業退職金共済制度における掛金助成制度の見直しについて (注) 配付資料については多量のため省略しておりますが、厚生労働省(大臣官房総    務課行政相談室又は労働基準局勤労者生活部勤労者生活課)において供覧してお    ります。 照会先 厚生労働省労働基準局勤労者生活部勤労者生活課    担当:山本・武村    03(5253)1111(内線5376)