04/10/22 第7回医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会議事録     第7回 医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会                    議事録 1.日時  平成16年10月22日(金)15:30〜16:30 2.場所  三田共用会議所大会議室(ルームA〜E) 3.出席委員  位田委員、宇都木委員、垣添委員(委員長)、具嶋委員、栗山委員、         廣橋委員、福嶋委員、柳川委員、吉倉委員         (事務局)         上田厚生科学課長、安達研究開発振興課長、高山企画官 他 4.議題  (1)臨床研究における個人情報保護に係る諸課題への対応について  (2)その他 5.配布資料  資料1:個人情報保護に関して検討すべき事項について(案)  資料2:個人情報保護法施行に伴う「臨床研究に関する倫理指針」の改正について      (案)  資料3:臨床研究に関する倫理指針(案)【見え消し版】  資料4:臨床研究に関する倫理指針(案)  参考資料1:診療情報の提供等に関する指針 6.議事 ○事務局(研究開発振興課)  定刻になりましたので始めさせていただきます。これからの1時間につきましては、 「医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会」単独で、本日最後 の議題である「臨床研究に関する倫理指針」についての議論を始めさせていただきま す。先週の第6回の本委員会に引き続きまして、「臨床研究に関する倫理指針」につい てご議論をよろしくお願いいたします。なお、この指針の見直し案につきましても、委 員会でご結論をいただきましたものをパブリックコメントにかけることとしています。 議事を進めてまいりますが、以降の議事進行につきましては垣添座長にお願いいたしま す。 ○垣添座長  どうぞよろしくお願いいたします。「臨床研究に関する倫理指針」に関して、前回の 委員会で議論されました内容を確認して、修正点について議論をしたいと思います。事 務局から配付資料の説明をお願いいたします。 ○事務局  資料1及び2については、前回の委員会でお示しした資料をそのまま引き続き提出し ています。具体的な資料1として「個人情報保護に関して検討すべき事項について(案 )」という1枚ものの資料を、資料2として「個人情報保護法施行に伴う『臨床研究に 関する倫理指針』の改正について(案)」という2枚ものの資料を提出しています。さ らに、前回机上配付資料2として示した資料に、前回からの修正点を加えたものを資料 3、「臨床研究に関する倫理指針(案)【見え消し版】」として提出しています。さら に、資料3の見え消し部分を反映させた最終版なるものを資料4として提出していま す。今後、資料4の形でパブリックコメントをすることとなります。なお、資料3と資 料4は内容的には同じものなので、後ほど行います当方からの説明においては資料4で はなく、見え消し版の資料3を使用して進めたいと考えています。さらに、前回同様、 参考資料1として「診療情報の提供等に関する指針」を提出しています。  加えて、この委員会の直前に開催されました、2省合同委員会で使用した机上配付資 料の「『ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針』対照表」についても、適時参 考にしていただければと考えています。お手元の資料に不足等がございましたら事務局 にお申し出ください。 ○垣添座長  議事に入りたいと思いますが、事務局から、前回の検討会において議論に挙げられま した論点と、その後に委員から追加で質問・意見などを受けた論点について整理をお願 いいたします。 ○安達研究開発振興課長  お手元の資料3に基づいてご説明させていただきます。見え消し版ですが、事前にお 送りしましたように、赤で修正したものについては前回お示ししたものです。前回での ご議論、その後いただいたご意見を踏まえまして、修正したものを青で示しています。  資料3の1頁、「前文」の所です。いちばん下の行が青になっていますが、個人情報 部分について導入したわけです。前回の審議におきまして、福嶋委員から、表現ぶりが 全体的に厳しくなっているのではないか、規制が強くなっているような印象を受けるの で、もう少し既存の記述と今回新たに入れた個人情報に関する記述との整合性をとって はどうか、というご指摘をいただきました。全部については柔かくなったかどうかです が、最後の「することは言うまでもない」という言い方を「遵守する必要がある」とし ています。ただ、それ以外の本文については、今回の議論が個人情報保護法に対応する ということでしたので、基本的には表現ぶり一つひとつ検討をするのは時間的にも厳し いので、告示及び細則の表現は、原則として、個人情報保護法の表現と合わせておりま す。法の要請に応えるという観点から、このようにさせていただきたいと考えていま す。  2頁は、前回の審議におきまして吉倉委員から、(2)の細則部分について、海外共 同研究を行う場合に既存の表現ぶりでは、今回の改正で盛り込まれた個人情報保護法の 規定を遵守させようとすると、規制が厳しくなりすぎて、実際上、研究が阻害される恐 れがあるのではないか、むしろゲノム指針で検討された事項を参考に規定したほうがい いというご意見をいただきました。ただ、この部分をゲノム指針のような規定にします と、逆に既存の個人情報保護以外の部分が緩くなりすぎてしまうということで、この部 分については指針全体に係る話なので、別途検討をする必要があるということで、青字 にありますように、今回、追加する個人情報保護法関係の規定についてはゲノム指針と 同様の規定を置く。具体的には法令等と比べて厳しい場合には、審査委員会での承認を 受ける、あるいは研究機関の長が適当と判断をした場合には実施できるという規定を置 くことにさせていただきました。 ○事務局  事務局から付け加えます。事前に送付いたしました資料は、この部分のみが変更とな っています。ほかの部分は事前に送付させていただいたものと同一です。 ○安達研究開発振興課長  3頁の「個人情報」の定義の部分においては、臨床研究倫理指針の審議のときにはご 意見はいただきませんでしたが、その後、疫学指針の審議の中で、ここでの「生存する 」という文言が疫学指針とこの指針とで違っている、という点をご指摘いただきまし た。事務局で整理することにしましたが、最終的には他の指針と同様、「生存する」と いう文言を新たに付け加えることにしています。  ただ、臨床研究倫理指針においては、3の(2)の「被験者」の(3)の最後にありま すように、「DNA等の人の体の一部(死者に係るものを含む。)」と記載しています ので、死者に係るものであっても、インフォームド・コンセントを受けなければならな いことは変わりありません。基本的にここで「生存する」を入れても、既存の規定に影 響はないということで「生存する」ということを入れました。  10頁の(14)の(8)で、細則を付け加えています。ここは、今回の措置に鑑みて、研 究機関の長及び研究者等の責務として、死者に係る情報についても生存する者の個人情 報と同様の安全管理措置をとらなければならないことを、細則において規定していま す。  12頁の第2の2の(6)の細則において、臨床研究機関の長も同じように、死者に係 る情報についても個人情報と同様に、必要な組織的、人的、物理的及び技術的安全管理 措置を構じなければならないということで、「生存する」を取っても問題がないように しています。  8頁の(5)から9頁の(7)にかけて、「原則として」という言葉が何カ所か出てきま す。これは、開示や各種通知をする相手を「被験者等」としていたものを、疫学指針等 に合わせて原則として「被験者」という表現にしたものです。なお、代諾者等に対する 開示については別途、課長通知によるQ&Aで具体的に記述したいと考えています。  4頁、(10)の「代諾者等」の定義に、「当該被験者にインフォームド・コンセント を与える能力がない場合に」という文言を、表現をより分かりやすくするために付け加 えています。  7頁、第2の(13)の(2)を削除しています。これは研究責任者の責務等に規定され ていた安全管理措置が、研究者等の責務に同様の規定がありますので、この規定で、研 究責任者の責務についても読めるということで、重複を避けるために削除しました。  9頁、(13)の(10)です。この(10)番の規定をここでは削除していますか、13頁の (8)に、これは「臨床研究機関の長の責務」の項目ですが、そちらの方へ移していま す。これは、開示に係る手数料の徴収についての規定ですが、これは組織的措置が必要 であるということ、もちろん予算に係るということもありますので、これまでの研究責 任者の責務から研究機関の長の責務にしたものです。  11頁、第2の2(1)です。これは前回位田委員から、個々の研究機関においては、 最終的な権限は研究機関の長にあるのだねという確認のご意見をいただきましたので、 それを入念的にきちんと明記しておこうということで、「臨床研究機関の長は、当該臨 床研究機関における臨床研究の実施に際し、個人情報保護が図られるようにしなければ ならない」ということで、最終的な責任を明確に規定することとしたものです。以上で す。どうぞよろしくお願いいたします。 ○垣添座長  ただいまの説明に関して、何か質問、ご発言がありましたらお受けしたいと思いま す。 ○吉倉委員  簡単な質問ですが、「代諾人」と「代理人」というのがあって、これは読めば分かる のですが、重複するのですか、全然別の人間ですか。 ○事務局  4頁の(10)と(12)で定義をしています。(10)で代諾者については定義をしてお りまして、「被験者の意思及び利益を代弁できると考えられる者であって、当該被験者 にインフォームド・コンセントを与える能力がない場合に、当該被験者の代わりに、研 究者等に対してインフォームド・コンセントを与える者をいう」と。インフォームド・ コンセントに関する定義です。そして代理人については開示等の関係で、「未成年若し くは成年被後見人の法定代理人又は開示等の求めをすることにつき本人が委託した代理 人をいう」というふうに定義しています。 ○事務局  補足しておきます。今回「代理人」という定義を置いたのは、個人情報保護法におけ る代理人ということで、「開示等に係る求めをする者」ということで代理人を置かせて いただきました。吉倉委員のご指摘のとおり、代諾者が代理人になり得ることはありま す。その開示等を受ける側に本人と代諾者等がいる場合があります。開示をしてくださ いとか、訂正をしてくださいという求めをするほうが代理人であって、それは法律との 整合性をとるために、法律に合わせて開示の求めをするほうが代理人として置かせてい ただいたので、今回入念的に両方とも定義に書かせていただきました。 ○吉倉委員  代諾者というのは、たしか、これこれこういう人だというのが、この中ではなくてど こかに書いてありましたね。この代理人にはその定義は適用されないと考えていいわけ ですか。 ○事務局  結構です。現行の告示の中では、代諾者の定義が明確になされてなくて、本文中、イ ンフォームド・コンセントの第4の所の2番の(1)の赤字で消してある部分で、「代 諾者等(当該被験者の法定代理人等被験者の意思及び利益を代弁できると考えられる者 をいう。)」という定義が置かれていたのですが、これを前に持ってきて、代諾者の定 義を置きました。個人情報との関係で、今度開示の求めをする者は代理人ということ が、個人情報保護法の政令に定められていますので、そこは書き分けて定義していま す。 ○吉倉委員  どこに書いてあるのか分からないのです。 ○事務局  15頁です。 ○吉倉委員  代諾者で、要するに親族とか何とかと書いてあるのがありますね。15頁の2の辺です か。 ○事務局  細則の2の辺りで親族や成年後見人が書いてありますので、ご指摘のとおり重なる部 分はありますが、個人情報保護法の世界の開示等の求めをする者は代理人であるという 整理をしています。代理人と代諾者が実質的に同じになることはあります。 ○吉倉委員  簡単にいうと、代諾者の15頁の2に書いてあるものを満たさなくても、代理人にはな れると、そういう理解でいいのですか。 ○事務局  どちらもあると思います。 ○宇都木委員  代理人を法律では「委任する」となっていたと思うのですが、ここで「委託」に直し たのはどうしてですか。 ○事務局  特にそこを意識していないので、もし法律がそうなっていましたら、そうさせていた だきたく思っています。 ○位田委員  先ほど厚生労働省の事務局が整理されたとおりで、代諾者と代理人は違うと思うので すが、もともと「代諾者」というのは法律上の用語ではなくて、ほかに適当な言葉がな かったというのは言い方が悪いのですが、民法上の「代理」や「代理人」というのは、 法律上もきちんとした概念があって、それをここの、インフォームド・コンセントの能 力がない人の場合に使うわけにはいかないので、代わりに「代諾」という言葉を使っ た。それがそのまま現在まで生きているわけです。けれども今度の「代理人」というの は、個人情報保護法に定められた法律用語としての代理人ですから、これは当然、別々 の概念だけれども、同じ人がその両方の役を果たすケースもあり得るという話です。  細かい話ですが、4頁の所で、「代諾者等」というこの「等」は要らないのだろうと 思うのです。それと青で書かれた「当該被験者にインフォームド・コンセントを与える 能力がない場合に」というのは、これはお考えになったイメージはよく分かるのです が、このまま読むと、「当該被験者にインフォームド・コンセントを与える」とも読め るので、てにをはを直されるほうがいいと思います。「当該被験者がインフォームド・ コンセントを与える能力のない場合に」というのなら分かると思います。 ○安達研究開発振興課長  ご指摘のとおりです。 ○宇都木委員  用語の定義の(2)の「被験者」のところですが、「臨床研究」という言葉が2種類 に使われています。(1)はもう求められて、それを引き受けた者ですね。まだ求められ ている段階の者が(2)だと思うのですが、すると(3)と(4)についても、そういう状況が あることになってしまうのです。(1)についてだけこの(2)が付いていて、なかなか難し いと思うのですが、後のほうで「求められた者」という言葉が出てきてしまうのです ね。すると、(3)(4)については、それを入れられなくなってしまう可能性があるので、 ちょっとしつこいですが。 ○安達研究開発振興課長  確かにご指摘のとおりなのですが、もともとの部分なもので。 ○宇都木委員  ですから、私どもの責任なのです。何かうまく使い分けられると。(2)を(1)(3)(4)の 後に持ってきて、いずれにせよ「求められた者」という形が使えればと思いました。 ○安達研究開発振興課長  告示そのものについては、然るべき手続をとって変える必要がありますので、このま まにさせていただきたいと思いますが、次回の検討の際には、検討させていただきたい と思います。それまでの間については、Q&Aで誤解がないように説明させていただき たいと思います。 ○位田委員  全然別のところで、国内における指針の適用という話ですが、2頁の細則の3です。 「本指針に規定された個人情報保護に係る規定の適用が困難な場合」とはどういう場合 をいうかということなのです。例のゲノムの指針では、相手国に指針がない場合や、相 手国の指針と内容が異なっていて、ゲノム指針を適用することが困難な場合、これは見 直しが「考え方」に書いてあるのですが、このままですと、適用が困難というのは、相 手国に指針がある場合で、相手国のほうがこの指針よりも緩い規制である場合に、適用 は可能だというケースがあり得る。また、相手国のほうの指針の内容がこの指針よりも きつい場合でも、この指針は適用の可能性がある。ない場合は適用できるわけですよ ね。いろいろなケースを考えた場合に、「適用が困難な場合」というのは、どの場合を いうのかを示す必要があります。Q&Aでも結構ですが。私はむしろ「適用が困難な場 合」という部分がないほうが、分かりやすいかなという気がするのです ○事務局  いずれにしろ、ヒトゲノムの遺伝子解析研究に関する倫理研究と併せて、ただ、我々 は個人情報保護のところのみを除外して、今までのところはそのまま適用するのだとい うところを守りたいと考えているので、そこはヒトゲノムと同じような考え方で整理さ せていただきたいと考えています。 ○位田委員  実はヒトゲノムのときに議論をして、大体こういうふうにしたと思うのですが、具体 的にどういうケースで、どちらを適用するかを考え直したときに、私はむしろゲノムの 指針のほうで議論をすればよかったのですが、この書き方だけだと判断に迷う場合があ るかなという気がしましたので。 ○安達研究開発振興課長  まず、位田委員のご指摘はそのとおりですので、Q&A等で具体的な例を示したいと 思います。ただ、ゲノム指針のほうも、「ただし、相手国において、本指針の適用が困 難な場合、相手国の」という、裸で書いておりますので。 ○位田委員  そうなのです。ですから本当はそこで議論をして、もう少し分かりやすくすればよか ったのですが、もうマスコミに出ていますので、もう少し分かりやすく書いたほうが。 現実に迷われるのではないかなという気がしますので。 ○垣添座長  ほかにいかがでしょうか。 ○具嶋委員  この臨床研究における倫理指針は去年出来たばかりであまり時間が経っていないため か、現場の先生方があまり知らない方がおられるのです。これをどう徹底していくか。  それから、臨床研究の中で遺伝子治療、疫学、ヒトゲノム、これは指針のほうを見れ ばいいわけですね。それ以外の研究というと、例えば聞かれたのは細胞治療はどうする のか、低分子蛋白の既に市販中の物を使って研究をやる場合が関わるのか、そのような 意見があったのです。低分子で既に市販中の物を使って、適用拡大の臨床研究をやられ る先生は多いと思うのですが、そういうのは関わるわけですか。その辺のことをいろい ろ聞かれて分からないことがあったのです。 ○安達研究開発振興課長  基本的な考え方として、ゲノム指針、疫学指針、遺伝子治療指針については、特別の 範囲があり、それぞれ適用範囲が決められているかと思うのです。それら3指針が適用 される場合は、臨床研究の倫理指針の適用外となっています。言い換えますと、それら 3指針が適用されないような臨床研究、それは細胞を使う場合であっても、臨床研究の 倫理指針が適用されると考えています。  ただ、もう1つ適用対象外となるものがあります。それは専ら医療の場合で、診断及 び治療のみを目的とした医療行為については、この臨床研究の倫理指針から外れます。 薬事法に基づく治験は法がありますので、臨床研究の倫理指針から外れるという整理に なっています。それ以外のものについては、この臨床研究の倫理指針が見るというふう に考えています。  最初のご指摘の、現場であまり普及していないというお話でしたが、私ども今年の7 月にQ&Aを厚生労働省等のホームページで公開するなど、あるいは本日も治験の講演 がありまして、そこでこういうものがあるのだということをお話してきたわけですが、 さまざまな機会を捉えて普及するように努めていきたいと考えています。 ○垣添座長  ほかにいかがでしょうか。 ○宇都木委員  細則の部分は前からあった部分でも変えられるのでしょうか。 ○安達研究開発振興課長  告示、細則合わせて出していますので、本来であればこの臨床研究の倫理指針の改定 については、高久委員会でのご審議が必要かと思いますが、全体4指針の整合性も必要 だということで、今回は個人情報保護に係る部分だけということで、高久委員会にもご 了解をいただいておりますので、告示、細則とも、個人情報保護に係る部分だけの改定 にさせていただきたいと考えております。全体につきましてはまた必要な時期に別途検 討をして変えたいと考えています。 ○位田委員  10頁の(9)、「(9)の規定は、次に掲げる場合であって倫理審査委員会が承認した場合 については、適用しない」ということは、例えば法令に基づく場合が特にそうなのです が、法令に定めてあって、しかし倫理審査委員会が「ノー」だと言うケースが考えられ ると思うのです。ほかは倫理審査委員会はオーケーするというのはよく分かるのです が、法律に定めているときには、倫理審査委員会が審査するのは、その法律に則った適 用であるかどうかの判断だけで、こう書かれてしまうと、倫理審査委員会が法律にはこ う書いてあるけれども、うちは駄目だぞと。この青が入っていないときにはあまり問題 はなかったのですが、より慎重にされたために、ちょっと齟齬ができるかなと思うので す。 ○事務局  いまのご指摘を踏まえて、イの部分は除く形で、ロからハにかかる形で規定ぶりを考 えさせていただきたいと思います。 ○宇都木委員  何だか分からなくなってしまったのですが、6頁の(5)の細則の2で、臨床機関の 長として病院長を挙げていますね。それで、個人情報保護法でいうところの「責任者」 というのはどういう表示になるのですか。 ○安達研究開発振興課長  ご指摘は臨床研究機関の長と法人の長との違いの点かと思います。先ほど遺伝子治療 のところでもその点についてのご審議があったと聞いています。この点については、遺 伝子治療のところでの話と同様に、内閣府と法制的な検討もした上で、然るべく対応を させていただきたいと考えています。  先ほどのイの、法令による場合はという部分については、表現ぶりを検討させていた だきまして、最終的にはもしかしたらQ&Aで対応、ということになるかも分かりませ んが、検討させていただきます。 ○栗山委員  ほかの所にもたくさん出てきていたのですが、苦情処理窓口の設置ということです が、苦情というのは誰が誰に苦情を言うのかということと、何となく「苦情処理窓口」 というと、区役所でカラスがたくさんいて困るみたいなイメージがあって、何かこの場 にはそぐわない言葉のように思うのです。 ○事務局  そう言っていただけると研究所も喜ぶのかもしれませんが、基本的にほかの所と合わ せていると思うのです。12頁の(7)で臨床機関、研究機関の長の責任として「苦情・ 問い合わせに対する体制整備」ということで、体制の整備は臨床研究機関の長です。苦 情の申し出先については、7頁の(13)で、「研究責任者の個人情報保護に係る責務等 は、次のとおりとする」ということで、そこの(4)の四で、苦情の申し出先を明示しろ ということにしています。苦情をする者がどなたかということについては、被験者又は 代諾者ですか、個人情報保護法の定義で新しく作りました代理人、4頁の(12)の代理 人になります。 ○垣添座長  栗山委員のご指摘は、苦情の具体的な例を何か1つお示しいただければ、ご理解いた だけるかなと思います。 ○事務局  確かに苦情処理には栗山委員のようなご意見はあろうかと思います。ただ、個人情報 保護法の中でも、この規定が設けられていて、またその法の中でもこの規定自体はかな り重要なツールであるという位置づけを内閣府でされているようです。特に最近、苦情 解決や公表とかが非常に重要視されている部分があります。その中で臨床研究、そこが 要らない理由は何かというと、またそこは説明が難しかろうかと思います。苦情にはい ろいろ程度はあって、取るに足りないものから本当に大切なものまでいろいろあろうか と思いますが、こういったツールを設けることで、大切なものを見過ごさないという意 味もあろうかと思って、私どもは遺伝子や疫学など、いろいろ設けさせていただきまし た。  現場においては、個人情報関係でいろいろな窓口を設けなければいけないというのは 大変ですが、例えばそれをどこか事務方で集約するのか、また、それぞれ設けるのか、 それは、それぞれの機関においてやりやすいやり方をされるのかなと思っています。 ○栗山委員  そのことは分かるのですが、苦情というのは言葉があまり適当でないような気がする のです。苦情と問い合わせと両方書いてある所と、苦情だけという所とあるのです。も し被験者の側からということであれば、問い合わせとか、意見を言う窓口とかいうほう が良くて、苦情を言いに行くということは、どんな感じかなと思うのです。 ○事務局  若干、想像も入ろうかと思いますが、例えばこの法律で個人情報保護がきちんと担保 されることを守るためには、意見というのもあれですが、苦情はもしかするとそれが侵 害されている可能性がある。そういったケースがこの苦情の中で拾われてくるのではな いかと思うのです。したがって、この苦情に対しての窓口をきちんと設けることで、個 人情報保護がきちんとなされていることを担保するものになってくるのかなと思いま す。  もちろん意見とかそういったものもあろうかと思いますが、個人情報を保護していこ うというものの侵害に当たるようなものについては、逆に苦情みたいな形になろうかと 思いますし、問い合わせについては、逆にそれぞれ情報公開をしなければいけないとこ ろがありますので、そういうところで拾われてくる部分もあります。それ以外の部分は 法とか指針の世界というよりは、それぞれの常識の世界の中でやっていただけるのかな と思っています。  今回、あえてこういった形で作りなさいという部分については、個人情報を保護する ところの関係から、苦情処理がそれを担保する手段なのかな、という感じで設けたので はないか。たぶんほかの指針もそういった意味で設けているのではないかと思っていま す。 ○位田委員  たぶん栗山委員の言いたいことは、具体的にどのようなことが苦情といわれるのかと いう話だと思うのです。例えば、これは個人遺伝情報の話ですから、臨床検査をしても らって、私の個人遺伝情報が分かったはずだと。ある時にほかの人と話をしていたら、 「あなたの遺伝情報はこうらしいわね」ということを言っていた。本来ならそれはきち んと秘密になっているはずなのに、ほかの人が知っているなんて、それはあり得ない話 なのにどうなっているのというのが苦情です。もしくは、情報が漏れているらしいの で、ちゃんとしてくれないといけないのではないの、というのが苦情だと思うのです。  それを、例えば病院なら病院の苦情受付窓口という所に文句を言って行く。本来なら 個人遺伝情報は秘密にしておかれるべきで、自分は知っているけれども、ほかの人は知 らないはずなのに、でも、知っている人が出てきてしまった。 ○栗山委員  その点は十分わかるのですが、「苦情」という言葉が少しきついのではないかなとい う気がします。 ○垣添座長  医療行為に対しても苦情というのは、毎日、山のようにあります。もちろんこういう 大変良いことがあるといって誉めていただくのもあるのですが、投書の窓口を作ってお きますと、そこに苦情という形でいっぱいいただきます。患者や家族の権利意識という のは、非常に強くなっていると思います。 ○栗山委員  保護法の第31条の2は「苦情」という言葉を使ってあっても、それがすべてに当ては まらないのではないかと思ったものですから、お伺いしました。 ○垣添座長  栗山委員のように皆さんがお考えいただけるとありがたいのですが、実際問題として は、かなり厳しくそういう所を突いてこられるような気がします。 ○安達研究開発振興課長  ご指摘の点を踏まえまして、7頁のいちばん下の、研究責任者の責務の所の四「苦情 の申し出先」とある所を「苦情・問い合わせの申し出先」ということで、苦情ももちろ ん受けますが、問い合わせも受けるという格好で修正させていただきたいと思います。 ○吉倉委員  非常に細かいことなのですが、15頁の(1)が「研究者等」、16頁の(3)の「試料 等」という赤い所。この「試料等」という言葉ですが、前のほうを見ると「試料等」の 定義があって、4頁の(6)が「試料等」となっているのです。実は疫学のとき、いわ ゆる「資料」をその定義にしているので、どちらかにしてもらったほうがいいと思うの です。 ○事務局  委員のご指摘は疫学のほうの資料で、タイトルで「資料」という言葉を使っておりま すので、そこはお互いに調整をとるようにいたします。 ○事務局  この項目につきましては、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」と整合 性をとるために入れている条項ですので、そこと整合性をとりながら、この「試料等」 がはっきりした定義でない、また誤解を生みやすい等がありましたら、事務局で検討を させていただきたいと考えます。 ○宇都木委員  8頁の(5)ですが、私にはよく分からないのです。開示は基本的には指針に従えと、 「ただし」となっていて、おそらく「ただし」の中身は特別の開示方法を求めた者には それに従うという意味なのだろうと思うのですが、これ、なかなか分からない。 ○安達研究開発振興課長  確かに2つのことが同時に書いてあるので分かりづらくなっているかと思いますので 修文を検討します。基本的に臨床研究の場合、診療と関わっている場合も多いので、一 律に最初から診療情報を開示しろと言って来たら、それは個人情報保護法に基づくもの かどうか。必ずしもそうでない場合もある。医師と患者との信頼関係の中で、なるべく 分かりやすく、本当に相手が聞きたがっていることを分かりやすく教えてあげるのが前 提であって、ただ、「いや、これは個人情報保護法に則って開示を求めているんです」 という場合は、それは法の精神に則って淡々と情報を開示しましょうということが書い てあります。そこは少し具体的な対応ぶり等を説明したいと考えています。 ○宇都木委員  「ただし、被験者又は代理人から、当該被験者が識別される保有する個人情報の開示 を求められたときは」というのは、これと、「診療情報の提供に関する指針」に従って 提示を求められたときとは違う場合だということなのですか。 ○事務局  補足して説明させていただきます。委員が分かりにくくなっているのは、個人情報保 護法の世界での開示請求についての原則は、この文章の「ただし」以下の部分が、個人 情報保護法では普通の開示請求の原則に当たるのですが、個人情報保護法とは別に、臨 床研究の世界では、まさに診療情報を扱う部分があります。診療情報を扱う世界での原 則は、まずは「診療情報の提供等に関する指針」において、開示請求というような大上 段に振りかざした手続ではなくて、医師と患者との信頼関係において、患者が「私が出 したこういう情報を知りたいので先生教えてくれませんか」と言ったら、そこは信頼関 係で出しましょうと、まずそういうソフトな規定があります。  その診療情報の部分については、ソフトな世界で対応できる部分はできるのですが、 それでもなお対応できないと。例えば医師と患者が非常に仲が悪くなってしまって、要 は法的な開示請求等をしなければ情報が出てこないという、まさに伝家の宝刀を引き抜 かなければいけない場合については、個人情報保護法の原則の開示請求をするという形 になります。時系列の順序でいくとこの書き方になってしまうのです。要は、個人情報 保護法だけを考えると、原則は「ただし」以下の部分の表現になってくるので、そうい った意味では診療情報の所を手でかくして読んでいただくと、開示というのはこういう ことなのです。それに加えて診療情報の世界がありますので、そこは人と人との信頼関 係でやりましょうという世界になっているので、そちらを見ていただけないかというこ とで、こういう書きぶりになっています。 ○位田委員  そこのソフトの部分というのは、「診療情報の提供等に係る指針」のどこに書いてあ るのですか。 ○事務局  本日この指針自身は参考資料1として出させていただいているわけですが、そのとこ ろの開示についての定義が、どこにあるかというご質問でしょうか。 ○位田委員  いいえ、ソフトな信頼関係とか言われたので、それが指針の中に書かれているのか。 ○事務局  具体的に言いますと、2頁の「診療記録の開示」の所です。ソフト・ハードといった きちんと様式を整えた書面で開示しない、するというきちんとした手続ではなくて、7 の「診療記録の開示」の(3)、3頁の「診療記録の開示に関する手続」のことを言っ ています。(1)を読ませていただきますが、「診療記録の開示を求めようとする者は、 医療機関の管理者が定めた方式に従って、医療機関の管理者に対して申し立てる。な お、申立ての方式は書面による申立てとすることが望ましいが、患者等の自由な申立て を阻害しないため、申立ての理由の記載を要求することは不適切である」、このような こと等が書いてあります。 ○垣添座長  それは医者との信頼関係とかいう話ではないですね。これは手続の話なので。私もこ この部分が分かりにくいなと思ったのは、「診療情報の提供等に関する指針に従って行 うものとする」という所の「従って」という中身は、診療情報等の提供に関する指針の 2頁から3頁にかけての7の部分ですよね。 ○事務局  そうです。 ○垣添座長  これを原則とすると。「ただし」というのは、法律文からすると例外の扱いなので、 どこがどう違うのかというのが分かりにくいと思うのです。そこはソフトとか信頼関係 とかいう話ではないと理解をしているのです。指針に「医師と患者の信頼関係によれ」 と書いてあれば、確かに言われるとおりですが、そうではないわけですよね。だからこ のただし書の「ただし」というのは、原則である診療情報の提供に関する指針のどこが 個人遺伝情報の開示という点について違うので、別のやり方をするのかというのがよく 分からないのです。 ○宇都木委員  このコンテクストで言いますと、むしろ上の2行が「ただし」です。 ○安達研究開発振興課長  たぶん、委員のご指摘がいちばん素直ではあると思うのですが、いろいろな事情がご ざいまして。 ○宇都木委員  読む人が分かればいいと思うのです。これ「ただし」というのは、何がただしなので すかね。 ○吉倉委員  私が前に開示について混乱したことと関係があると思います。いわゆる情報公開法の 開示と、臨床のほうの開示で、臨床の場合は、大体患者から聞かれたときにそれを知ら せる。情報公開保護の場合、第三者がこの臨床研究はおかしなことをやっているのでは ないかと。その辺の私が混乱したところと、非常にここがオーバーラップしているので す。要するに開示を要求する人が誰なのかが、患者という具合にとると、何か変なとこ ろもあるのです。第三者だと、まあ分かるようなところもあるし、これ一体、誰が開示 を要求しているのか。 ○安達研究開発振興課長  一義的には患者が。 ○吉倉委員  そうすると、分かりにくいなという。 ○垣添座長  これはもう少し分かりいいような工夫はできるのですか、それとも法律との関係であ まりいじれないのですか。 ○安達研究開発振興課長  むしろ、後段は法律との関係できちんと明記すべき部分であると考えています。た だ、後段だけでやりますと、実際の現場では、では患者が聞いてくれば何でもかんで も、開示しろという情報はこれねと、それをポンと渡しておしまいということになるの では、現場ではかえって弊害があるのではないかということで、前段を付け加えたとい うことです。その辺の関係を少し検討させていただきたいと思います。 ○垣添座長  分かりました。ほかにいかがですか。 ○宇都木委員  9頁(14)の(3)、これは新しく作られた意図は分かるような気がするのですが、利 用目的と相当の関連性を有するものについては、同意は必要なく通知をしろということ になっているのですが、2つ問題があって、1つは「相当の関連性を有する」というの が、結局こういうグレーの部分を設けるのが、むしろ争いを生じてしまうのではないか という点です。  もう1つは「通知をしなければならない」となっていて、同意を取る場合には同意を 取れたということで確認できるのですが、通知をするというのを、公表するとか何とか ということならいいのですが、通知をして向こうが受け取っていないということになる と、これは通知したことにはならなくなってしまって、かえって問題を残してしまうの ではないかなと思っているのですが、これを設けなければならないでしょうか。利用目 的というものの解釈で、関連性を有するものを利用目的に入れるか入れないかというこ とは、今まででもしてきたのだろうと思うのですが、そこにあえてこういう1条を設け ることの是非。私は休んでいましたので、これについては論議されたのかと思います が。 ○事務局  この情報自体は個人情報保護法との関連で、どこと対応させて我々が考えたかをまず 言わせていただきます。第18条の「利用目的の通知」の第3項の「個人情報取扱事業者 は、利用目的を変更した場合は変更した利用目的について本人に通知し又は公表しなけ ればならない」とさせていただいています。 ○宇都木委員  これは利用目的の変更とは違うと思うのです。変更は(4)にあるのですね。 ○垣添座長  宇都木委員が言われるように、利用目的の変更は次頁の(4)にありますから、(3)はな くてもいいのですか。 ○安達研究開発振興課長  法律での規定をなるべく分かりやすくというつもりで、少し噛み砕いた際に、委員ご 指摘のような少し違った点があるかも分かりませんので、もう一度基本的に条文に沿う ような表現に、他の指針も参考にしながら修正をしたいと思います。 ○宇都木委員  いまの細則の(3)の前の「細則」と書いて「特定の患者・利用者の症例や事例を」と いう、この「利用者」というのは何ですか。 ○安達研究開発振興課長  申し訳ございません。この部分は臨床研究倫理指針が医療情報とも重なる部分があり ますので、医療技術者・介護者、医療機関及び介護機関におけるガイドラインのものを もってきています。この「利用者」というのは介護施設利用者です。削除させていただ きます。 ○垣添座長  よろしいでしょうか。いま言っていただきましたいくつかのご意見を加えて修文をし て、パブリックコメントにかけさせていただいてよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○垣添座長  ありがとうございます。今後の予定に関して事務局からお願いします。 ○事務局  本日ご検討いただきました臨床指針の見直し案につきましては、ご意見等を踏まえて 事務局で修文案を作成し、座長とご相談をさせていただいた後、パブリックコメントの 手続に入らせていただきます。予定ですが、来週からパブリックコメントの募集を開始 し、4週間程度の募集期間を置いた後、11月下旬に告示ということとなっています。修 文案策定後、パブリックコメントにかける改正案については、再度、委員の先生方にお 送りする予定ですので、よろしくお願いいたします。以上でございます。 ○垣添座長  長時間のご議論を誠にありがとうございました。これで閉じさせていただきます。 【問い合わせ先】  厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:鹿沼(内線3804)  電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171