04/10/22 第7回医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会議事録  第8回 ライフサイエンス研究におけるヒト遺伝情報の取扱い等に関する小委員会    第7回 医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会                    議事録 1.日時  平成16年10月22日(金) 13:30〜15:30 2.場所  三田共用会議所大会議室(ルームA〜E) 3.出席委員 位田委員、宇都木委員、垣添委員(座長)、具嶋委員、        黒木委員(座長代理)、栗山委員、富永委員、豊島委員、廣橋委員、        福嶋委員、柳川委員、吉倉委員、小幡委員、鎌谷委員、辻委員        (事務局)        文部科学省:小田大臣官房審議官、安藤生命倫理・安全対策室長        厚生労働省:上田厚生科学課長、高山研究企画官 他 4.議題   (1)遺伝子治療臨床研究及び疫学研究における個人情報保護に係る諸課題への対      応について   (2)その他 5.配付資料   資料1―1:「遺伝子治療臨床研究に関する指針」について個人情報保護に関して         検討すべき事項について(案)   資料1−2:「遺伝子治療臨床研究に関する指針」における個人情報保護に関する         見直しの方向性について(案)   資料1−3:「遺伝子治療臨床研究に関する指針」新旧対照表(案)   資料2−1:「疫学研究に関する倫理指針」について個人情報保護に関して検討す         べき事項について(案)   資料2−2:「疫学研究に関する倫理指針」における個人情報保護に関する見直し         の方向性について(案)   資料2−3:「疫学研究に関する倫理指針」新旧対照表(案) 6.議事 ○高山研究企画官  定刻になりましたので始めさせていただきます。本日は、先週に引き続きまして文部 科学省「ライフサイエンス研究におけるヒト遺伝情報の取扱い等に関する小委員会」、 厚生労働省「医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会」の第2 回目の合同開催です。  会議の進め方としては、まず「遺伝子治療臨床研究に関する指針」について検討を行 っていただき、その後、「疫学研究に関する倫理指針」について検討を行っていただけ ればと思っております。なお、2省の合同の会議のあとになりますが、厚生労働省の専 門委員会の先生方におかれましては、引き続いて「臨床研究に関する倫理指針」につい て、ご検討を行っていただくこととなっておりますので、よろしくお願いいたします。  本日は予め、菅委員、橋本委員、堀部委員、武田委員、南条委員よりご欠席とのご連 絡をいただいております。  本日の合同委員会においては、先日ご議論いただいた結果を基に、修正した指針の見 直し案を資料としておりますので、そちらを中心にご議論いただくこととしておりま す。  また、先週の委員会以降、特段の追加意見はいただいておりませんので、先週の委員 会での議論の結果を踏まえた修正が中心となっています。  今後については、できれば本日の委員会で指針の見直し案をとりまとめていただき、 これをもとにパブリックコメントを行いたいと考えております。非常にタイトなスケジ ュールで恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。  参考までにゲノム指針については、本日よりパブリックコメントを開始することとし ておりますので、ご承知おきください。  それでは、議事を進めてまいります。座長の垣添先生、お願いします。 ○垣添座長  皆さん、こんにちは。大変タイトなスケジュールでの検討で恐縮ですが、よろしくお 願い申し上げます。事務局から説明がありましたように、本日議論いただきました結果 を踏まえてパブリックコメントにかけるということですので、どうぞよろしくお願い申 し上げます。  まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○事務局  本日は大きく2つのグループに分かれております。資料1のグループが遺伝子治療臨 床研究関係、資料2のグループが疫学研究関係です。資料1−1は、「遺伝子治療臨床 研究に関する指針」についての「個人情報保護に関して検討すべき事項について(案) 」に、それぞれ検討すべき事項を書いております。資料1−2は、それをさらにもう少 し簡略化したもので「見直しの方向性について(案)」としてまとめました。資料1− 3は、指針そのものの新旧対照表です。  一方、疫学研究のほうの資料2のグループも基本的には同じ構成です。資料2−1が 検討すべき事項、資料2−2が見直しの方向性、資料2−3は新旧対照表となっていま す。  机上配付資料として、ご参考までにゲノム指針の対照表、併せて参考資料をお配りし ています。 ○垣添座長  それでは、本日の議事に入ります。冒頭で事務局からご説明がありましたとおり、本 日はまず「遺伝子治療臨床研究に関する指針」の検討を行って、その後「疫学研究に関 する倫理指針」の検討に入ります。最初に資料1−1、1−2、1−3について、一括 して事務局からご説明をお願いします。 ○事務局  それでは、「遺伝子治療臨床研究に関する指針」関係の資料1についてご説明いたし ます。基本的には資料1−3の新旧対照表に基づいて、特に前回からの変更点を中心に ご説明し、個人情報の保護の主体、つまり責務を誰に課すかについて、きちんとご議論 いただきたいことから、それについてのみ資料1−1でご説明したいと思っておりま す。  資料1−3の1頁については、保有する個人情報で、前回と基本的には同じで、それ ぞれ定義を加えました。3頁についても「審査委員会の審査を受けたうえで」というこ とで、これも前回と同じで、法定代理人等の同意についての審査審査委員会の要件を加 えたものです。4頁の総括責任者の関係でいくつか追加されています。基本的には本来 入れるべき事項、分かりにくかった事項を加え、修正したもので、技術的な修正です。 4頁の下は、「個人情報保護に関し必要な事項に関する細則」です。二で第三者提供の 適用除外の要件をより正確に書いたものです。5頁については特段変更はありません。 6頁に六「第六章 個人情報保護に関する措置」とありますが、これも実施施設の長の 所で本来は入れるべきものが漏れていたということで付け加えました。7頁、8頁は特 にありません。  9頁の「個人情報の保護に関する措置」です。これから以降についてご議論いただき たいのですが、この指針においては、9頁の実施施設の長に対して、「個人情報保護が 図られるようにしなければならない」となっております。前回、位田先生だったかと思 いますが、臨床研究指針の議論の中で、最終的な責任はどこなのかというお話もあった ことも踏まえております。ただ、これは法律との関係で実施施設の長なのか法人の長な のかという議論があろうかと思っています。こちらは法律を所管する内閣府にも確認し た上で、本来は決めるべきものかと思っておりますが、いずれかの長に責任を課すとい う形で考えております。  10頁です。二の「実施施設の長」、または、これが法人の長になった場合は、「研究 を行う機関の長」になって、委任規定を設ける。その委任規定として、ほかの場合が全 く考えられないわけではないのですが、基本的には総括責任者が、インフォームド・コ ンセント等においても重要な役割を果たしますので、総括責任者に置かれるのではない か。ただ、ほかの形態もあり得るということで、「総括責任者等当該機関内の適当な者 に委任することができる」としています。それ以降、「利用目的の特定」以下について は、資料では「総括責任者」となっていますが誤りで、総括責任者以外に委任されるこ ともありますので、これ以降は「総括責任者等」とお読みいただければと思います。総 括責任者等に委任されたあとは、このような形で責任が任されるという構成で書いてい ます。  資料1−1でもう一回説明させていただきます。5頁のいちばん下に「『個人情報の 保護に関する措置を行う者』の位置づけについて」とあり、一般的な個人情報を対象と する通常の個人情報保護法、一般的な個人情報を対象とする行政機関関係の個人情報保 護に関する法律などでは、個人情報取扱事業者や行政機関の長、独立行政法人であれば 独立行政法人という形で個人情報保護に関する責務を規定しています。  一方、遺伝子治療臨床研究においては、通常の場合は個人情報に関する実務は研究グ ループ単位で、組織的関与が必要な場合についても実施施設単位で運用されているとい う状況です。このため、こうした研究の特殊性を考慮して、個人情報保護の実効性を一 層確保する観点から、どうしても組織対応が必要なもの、例えば安全管理措置などがあ りますので、このようなものについては委任できないだろうということで実施施設の長 にあります。もちろんこれは委任規定がありますので、全く委任できないわけではあり ませんが、基本的には委任するものではないのではないかということで、実施施設の長 に課し、一方で、開示など諸々の実務的な部分の事項は総括責任者等にあるとして整理 してはどうかと考えております。あとでご意見があればお聞かせ願えればと思っていま す。  資料1−3の10頁は、他には前回と比べて特に変更はありません。個人情報保護の関 係で「利用目的の特定」「利用目的による制限」「内容の正確性確保」「安全管理措置 」等、法律で求められているものを書いたものです。  11頁です。次に誤解を招きやすい表記がありますので、修正をいただければと思いま す。右側の「見直しにあたっての考え方」に「執るべき措置の例を細則にて規定」と書 いてありますが、例というと、この中で行わなくてい良いものがあるのかとも思われま すので、例というよりは「執るべき措置の内容を細則にて規定」という形で考えていた だければと思います。  安全管理措置に関しての事項も、ゲノム指針とも整合性がありますし、前回委員会に 出したものと同じ資料の内容を入れています。  12頁の「技術的安全措置」です。これは(6)に「個人情報の移送・通信時の対策」と いうのを追加しました。  12頁の「委託者等の監督」です。先般のときは、委託に関する監督しか盛り込んでお りませんでした。ここは個人情報保護法と照らし合わせたときに、従業者への監督があ りませんでしたので、それを二として新しく付け加えています。法第21条の「従業者の 監督に関する規定」を付け加えました。  13頁については、「第三者提供の制限」ですが、これも基本的には法律に基づくもの で、先般の資料と変更はありません。  14頁は「個人情報の開示」「訂正」の関係で、基本的に先般の資料と変更はなく、法 律に基づいたものです。  15頁の「利用停止等」、16頁の「理由の説明」「苦情の対応」、いずれも先般の議論 のときと基本的に変更はしていません。「苦情の対応」の部分については、窓口の設置 という形になりますので、基本的には実施施設の長だろうということで、ここの部分は 「実施施設の長」としております。  17頁は変更がありますが、施行の年月など、単純で事務的なな修正をしています。 ○垣添座長  それでは、ご意見がありましたらお受けしたいと思います。特に前回の議論から変更 した部分を中心にご説明いただきましたが、事務局として、第六章の「個人情報の保護 に関する措置」の「実施施設の長」の部分に関して、何かご意見があったら承りたいと いうことですが。 ○鎌谷委員  一般的なことですが、もともと遺伝子治療そのものの倫理問題が何であったかを考え ておく必要があると思います。遺伝子治療に関しては、本質的な問題はジャームライン とソマティックセルの遺伝子が違うのだということだったと思います。ジャームライン とソマティックを切り離して、ジャームラインは禁止することが倫理問題の本質だった と思います。最初にこのガイドラインが出たときは、ジャームラインという言葉を、ち ゃんと理解しておらず、生殖細胞と書いてありましたが、実はそうではなく、結構難し い概念で、そのために修正されて、2頁の第六で、「人の生殖細胞又は胚(一つの細胞 )」云々と書いてあるわけです。これはジャームラインということの比較的正しい定義 だと思います。ですから、倫理問題を考えるときには、本質をちゃんと理解して、何が 問題かを切り離して、その問題点を注意することが大事で、それをとったお蔭で遺伝子 治療が行われ、日本でも元気になっている子供がいるわけです。  なぜこういうことを言うかというと、今回のことも問題は、インヘリタンスとジェネ ティックスの切り離しだと思いますが、どちらも日本では「遺伝」と訳されていて、ほ とんど誰も区別をしていないと思います。  遺伝子治療の場合の倫理問題についても、それを理解するのが非常に大きなステップ で、現実にはなかなか分からないまでも、それを勉強しながら問題点を指摘することが 大事だと思います。今回の遺伝子を調べることの本質も、私は次の世代に伝わるという ことはジャームラインという概念で、遺伝子治療の問題点だったところを言っているの です。インヘリタンストとジェネティックスの違いは、本質的には違うと思います。ま た次の世代に伝わるということを長々と書かなければいけないと思うと大変だとは思い ますが、本質を捉えずに議論するのは、後々また修正しなければいけないことになるの ではないかと思います。個人情報の保護はもちろん大事ですが、今回は遺伝子治療につ いては、本質の問題はそこにあって、本質的な問題ではないかなと、この前も主張した のです。 ○垣添座長  先生はゲノム指針の検討のとき、いまと同様のご意見をいただきましたが、ご指摘の とおりだと思いますので承っておきたいと思います。 ○吉倉委員  12頁の「委託者等の監督」で、これは委託する側から書いてあるのですが、委託され る側のガイドラインはどの辺で読んだらいいのですか。 ○事務局  委託の内容にもよると思いますが、研究部分の委託であれば、委託元の病院や研究機 関がきっちり監督することで、個人情報の保護が図られることになると思っています。 また、個人情報が関係しない委託の内容であれば話は別だと思います。 ○吉倉委員  いま聞いたのは、「必要かつ適切な監督に関する細則」を読むと、委託する側が、委 託契約書においてきちんとすればいいという内容ですが、委託される側はこれをどのよ うに使ったらいいのか、ちょっと分かりにくいのです。 ○事務局  例えば委託契約書において、委託者には当然安全管理措置の規定があるでしょうか ら、それに基づいて契約の中で相手側に対しても、こういうことをきちんと守ってくだ さいと規定する。それによって委託していても、トータルで見て、委託する前の状態と 比べて、個人情報の保護がきちんと図られている体制にあることが担保される。そのよ うなことは、契約の中で担保されていけばよいということで、規定しているつもりで す。 ○吉倉委員  確認ですが、契約は担保しなければいけないという常識で対応すればいいという話で すね。 ○事務局  そういうことです。 ○宇都木委員  委託の内容にもよるとは思いますが、基本的には個人情報を扱った研究機関という扱 いになることもあるわけですよね。そうすると、それは基本的に研究機関に対する倫理 指針が全体的に適用になりますね。 ○安藤室長  基本的に計画を立てて研究を行う人に対して適用される指針ですから、委託を受けた 者が、計画を立てる必要がある行為を行うのであれば、それは受託者としてではなく、 研究を行う人としてこの指針が適用されるということですが、基本的には研究を行う者 を通じて受託者も管理をするという考え方で作られているのだと思います。研究の内容 によっては、研究を実施する人とみなさなければいけない場合もあると思います。 ○宇都木委員  そうすると、吉倉委員がおっしゃったように、受託機関についてのガイドライン的な ものが必要になるかもしれませんね。 ○垣添座長  その場合は受託機関が、契約書の中に盛られている内容が守れないと考えれば契約は 成立しないわけです。ですから、そういうことで規制されるのではありませんか。個人 情報保護という観点から、「これこれの研究内容を受託してください」と言い、向こう は「します」というときに、個人情報保護は、その大前提として盛り込まれることにな るのではないかと私は思っていたのですが、違いますか。 ○宇都木委員  そうすると、契約書に全く依存するということになると。 ○上田厚生科学課長  一般論として申し上げると、まず受託するほうにも個人情報保護法が適用される場合 があります。それから、いまこちらから申し上げたように、そこが民間の研究所等であ れば、法が適用されないが、この指針が適用される場合もあります。それについては委 託契約書の中で縛っていただく。その中で、こういう場合はどうするのかを取り決めて いただくとか、違約した場合にはどうするかなど、決めてもらうのだろうと考えられま す。ですから、一応網の目はすべてかかっていて漏れはない。ここで受託者の側に立っ て、あらゆることを想定して細かいことまで決めるのはなかなか大変でしょうから、委 託をする側から縛っていただくという形で、この指針は作られているとご理解をいただ きたいのです。  なお、もし違約が起こった場合に賠償を取るなどという規定も、その中に盛り込むこ とは可能だろうと考えます。 ○宇都木委員  そうすると、ガイドラインとしては、委託契約について、本当はもう少しガイドをす べきなのかもしれませんね。委託契約の中身についてはどこにも規定はありませんね。 ○事務局  もちろん委託のいろいろなケースによると思いますが、研究そのものを委託してい く。そうすると、相手も研究を行う場合、委託という形で読むのか、共同研究という形 もありますので、そちらで読むのか。基本的にこの場合については、名前など個人情報 が匿名化されずに提供されて、研究をしているのなら、委託先もこれに基づいてやって いただくことになります。  ただ、検査の部分の委託であって、特に個人情報が入っていないのならば、委託先 は、このガイドラインに従う必要はないと思います。例えば、そこで情報が外に漏れる ことがないように、委託元はきちんと安全管理措置などを設けなければいけない。どう いう内容を委託するか、研究そのものを委託して、いわば分担してもらっている形にな るのか、作業的なものを委託しているのかで扱いが変わってくると思っています。 ○垣添座長  ここで想定されているのは、後者の作業的な部分だと思います。 ○上田厚生科学課長  受託、委託というのは、実際にはそういった解析や名簿の管理など他の分野ではしば しば行われていることで、それに準じて考えていただければ、これは当てはまるのだろ うと思われます。 ○具嶋委員  この点については、最初のころに議論されたと思います。遺伝子治療の場合は問題が ありませんが、例えばゲノム解析の場合に、受託元は、委託先が倫理指針に基づいてき ちんと承認したという書類か何かが欲しいという議論があったと思います。そういう書 類が当然出ると予想されてこうなっているのでしょうか。例えば、私がかかわっている 倫理審査委員会では、委託先で委託元の倫理委員会で承認されたという書類を一緒に付 けて審査してもらっていますが、そういうのは当然のように想定されていればいいと思 います。 ○位田委員  何を委託するかという、ある程度具体的な例がいくつか出てくれば分かりやすいと思 いますが、研究を一緒にする、つまり、全体として遺伝子治療の臨床研究をやるのです が、その一部を委託して、それも研究機関として扱う場合には、当然これがかかるとい うのは問題ないわけです。  問題は、解析なり、先ほどソフトを作ると言われましたが、そういう話のときに、こ このガイドラインの指針の案の規定だけで大丈夫かなという懸念があるわけで、今の案 の提案では委託契約の中にきちんと、個人情報についての安全管理はするようにと書い ておけば、それで終わりということになりますよね。本当にそれでいいのかというのが 宇都木委員の懸念だと思いますし、私もそう思います。実際に委託先に個人情報が一緒 に行くというケースをお考えで、そのときに委託契約の中に、そこをちゃんと書いてお けば、要するに委託する側に責任を被せておけばそれでいいという話なのでしょうか。 現実には、委託先に個人情報まで一緒に行くことはあまりやられないのではないかと理 解をしていますが。  そうだとすると、例えば委託先には個人情報を流さないというか、個人情報を付けて はいけない、つまり識別不可能な形で、資料なり情報なりを委託するという書き方をし たほうがよいのではないでしょうか。現在の案だと、仮に個人情報が行ったとしても、 契約で縛っているだけなのです。契約で縛っているということは、基本的には何かあっ たときには、ある意味では損害賠償請求ぐらいしかできないということなのではないで しょうか。共同研究機関になれば、これでいけますから、それは問題ないと思います。 ○小幡委員  遺伝子治療やゲノムなどということに鑑みますと、確かにちょっと不安はあります。 今回は個人情報保護法との関連で見直すという話だったので、個人情報保護法はすべて 委託先がしっかり監督して契約等でやればいいのだとしか書いていないものですから、 たぶん、そこに対応した見直しとしては、委託するのならしっかりした会社や機関でし っかりやってくれるかどうかを確かめなければいけない。そこの責任で貫徹させている のです。ですから、法律よりもさらに上乗せ的に、もっと要るかという話なのだろうな と思います。委託の状況が非常にさまざまで、個人情報ごとにいく場合もあって、法律 はそれを想定して委託先の責任にしているわけですから、そういう場合があり得るとは 思いますが、ここで書き切る時間があるかどうかということではないかと思います。 ○事務局  位田委員、小幡委員からいろいろご指摘がありましたが、事務局としても個人情報を 簡単に流していいというつもりではありません。これについては研究機関に課せられて いる安全管理措置の中で、当然そのようなことは入っているだろうと思っています。  どうしても個人情報を流さなければいけないということが、万が一あった場合に、必 要最小限の範囲で流すことは、研究機関に課せられている安全管理措置等の中に当然規 定されていると思います。必要最小限で流されたときに、その個人情報について、契約 書にいろいろ書き込んだり、研究機関で執られている安全措置と同じように、委託先で も安全管理措置をきちんと執るようにとすることで、トータルとして担保できると思っ ています。 ○鎌谷委員  私は、なぜ遺伝子治療指針を個人情報保護法ができた途端に見直ししなければいけな いのかというのが分からないのです。遺伝子治療の中で、遺伝子検査や臨床検査を行う ときには、確かに問題が生じますが、それは一般的な治療の問題で、あの人はこういう 病気で、こういう治療をしていますというのを流してはいけないのと同じことだと思い ます。ですから、本質的に遺伝子治療の部分については、そういう個人情報との関連で 特殊な問題はほとんどないのではないかと思います。  再三申し上げているように、遺伝子治療は遺伝子改変という倫理的なもっと別なもの すごく大きな問題があって、そこで倫理問題が課せられていて、それを自動的に個人情 報保護法がきたから見直さなければいけないというのは、理解できないのです。なぜ、 一般的な臨床研究や臨床治療の個人情報保護の範囲でカバーできないのか。いま議論さ れていることも本質的には遺伝子治療に特異的なことではなく、むしろ遺伝子情報の保 護や解析に関することなのです。遺伝子治療に関しても、その部分が生じた場合は、当 然そういう法律のカバーできる範囲になるし、そうすることのほうが、これについてま た同じような議論をするよりも、本質的な部分を捉えられると思います。 ○垣添座長  おっしゃるとおりだと思います。 ○事務局  いまのご意見はごもっともだと思います。ただ、個人情報保護法では学術研究分野が 適用除外になっているため、この指針を設けることにより法の規定されていることを担 保しようとして書いているつもりです。この点について、遺伝子治療だから法にさらに 何か上乗せする必要があるかについては、正直、思い浮かびませんので、たぶん同じだ と思います。基本的にこの部分は、ほとんど個人情報保護法と規定を合わせています。 遺伝子治療には何か特殊なものがあり、委託の場合に特別な規定が必要と想定できれ ば、法に上乗せして指針を設けることも考えられますが、そのような想定はできません でした。 ○垣添座長  委託に関しては、このまま進むということでよろしゅうございますか。ほかに何かご ざいますか。 ○栗山委員  何をどのように伺っていいのか分からないのですが、いろいろな指針が出ていて、大 体同じように個人情報保護の見直しについてやっていただいているわけですが、今の話 などを伺っていると、あまり細かく縛ってしまうと、研究のほうに差し支えがあるので はないかという気がしました。  それに関連して、どの指針でも苦情の窓口を設けるということで付けておられます が、どの程度のことが苦情なのでしょうか。研究によっては1つの施設から次にどんど ん情報が移っていき、それがどこかで漏れたときは提供者も知っているのでしょうか。 それとも最初にこういうことだからということで、被験者の側はいろいろ情報提供され たとして、それはもう預けたものとして、何がどの部分で苦情が出るかということで す。もう1つは、あまり法律で細かく決めてしまうと苦情が出やすくてできなくなる。 倫理委員会も機能しているわけですから、その兼ね合いで、あまり縛ってしまうのはと いう感じを持ちました。 ○鎌谷委員  歴史的にはもちろんそうだったわけですが、現実にいま日本で遺伝子治療がどのぐら い行われているかというと数えるぐらいしかないわけです。しかも現実には、遺伝病の 人たちや家族にとって遺伝子治療は希望の星なのです。その部分も考えなければいけな いと思います。いまのご意見とすごく似ていると思います。  アメリカで起こった遺伝子治療の倫理問題は、最初のジャームラインとソマティック セルでジャームラインを切り離すという決断がなされたわけです。それでうまくいって いたのですが、ある人が遺伝子治療をしたら患者が亡くなり、遺伝子治療は今はストッ プした状態です。  そのときに出てきた倫理問題は、1つはインフォームド・コンセントで、もう1つは 本当に遺伝子治療をしたらどうなるかという見通しが甘かったという、その2つです。 それはどちらも個人情報保護とはほとんど関係のない問題で、むしろ遺伝子治療の本質 的なことがどこにあるのかを、あまりワーッとやると薄めてしまいます。今後日本で遺 伝子治療の中で倫理問題が生じたときに本質的なことがあれば、そこに集中して、「こ れはこの辺が問題だ、こうしたらいいのだ」とすべきかと。現実に日本でも、遺伝子治 療をした子供が元気になっている例はあります。それは確かに倫理指針ができていて、 最初は多少問題があったと思いますが、ジャームラインを切り離して、これはやらな い、ソマティックだけをやると決断したから、ちゃんとできたと思います。法律の先生 には申し訳ないのですが、これもこれもとやるのは、今後、むしろ問題だと思います。 ○垣添座長  いま言われたように日本での遺伝子治療は、非常に数は少ないのですが、少なくとも これまでは、規定に従って問題なく進められており、今回は個人情報保護法と関係する 部分だけに関して整合性をとる努力をしているわけです。前回の議論、本日の議論を聞 いておりますと、前回の議論に基づいて修正したものが本日提出されていますが、基本 的によろしければ、これで議論を閉じさせていただき、パブリックコメントにかけたい と思います。 ○小幡委員  1点、言葉だけの問題ですが、「総括責任者等」というのは何だろうと思いますと、 3頁の「見直し案」で「総括責任者又は総括責任者の指示を受けた医師である研究者」 と書いてありますが、10頁の「見直し案」の赤で書いてあるところですが、個人情報保 護に関する実施施設の長が委任することができるとなっていて、それ以降ずっとある 「総括責任者等」というのは、委任を受けた人も含むのですね。それならそのように書 いた方がよいように思いますが。 ○事務局  この「総括責任者等」は、いま委員ご発言のとおり、総括責任者等だけではなく、委 任を受けた人です。 ○小幡委員  個人情報に関しての委任を受けた者という意味ですね。 ○事務局  そうです。こういうことが、いま具体的に想定されるわけではありませんが、例えば 個人情報の専門部署を大学で設ける、病院で設けるときに、研究の責任者がやるのでは なく、苦情対応はその部署の人が行うこともあり得ると思いますので、それをここであ まり縛るのもどうかということで整理をしました。したがって「等」と書いたのは誤り です。 ○位田委員  先ほど説明のときに取り上げられた「実施施設の長」とするのか、「遺伝子治療研究 をする機関の長」とするのか、その辺はどうなのでしょうか。 ○事務局  本日この場でいろいろご意見があればと思っていましたが、ある程度法制的な仕切り に従うのであれば、その法律との関係でどちらとするのかを内閣府に相談します。。実 施施設の長であれば、例えば病院という単位にはなっていますので、それでも構わない のか、法との関係を整理して適切なほうにしたいと考えています。もしこの場でいろい ろご議論があれば、それを踏まえていこうと思っています。 ○位田委員  いくつか指針が出ていて、臨床指針は研究機関の長で、これは実施施設の長でとバラ バラになると混同すると思います。しかも法は事業者ですので、その辺の統一をとって いただきたいと思います。もしほかのを変えるのであれば、これも変えておかなければ いけないという気がします。 ○吉倉委員  カルタヘナ議定書との関係での申請は機関の長というのは、例えば、今度国立病院が 1つの機構になりましたので、九州から北海道まで理事長が機関の長になっているので す。全部で200ぐらいありますので、ちょっと考えたほうがいいかもしれません。 ○事務局  疫学指針やゲノム指針との整理は、いま事務局で考えているところです。これは内閣 府の議論でどうなるか分かりません。ゲノム指針でも、疫学指針でも、試料を提供する 機関があり、研究を行う機関があるというケースが一般的に想定されます。ましてや疫 学指針のほうは個人情報を匿名化せずに行くこともあり得る状況です。これは機関ごと に長を定めて、これを分離すると、いろいろな問題が出てくると思っています。  一方、遺伝子治療臨床研究指針については、こういうケースは基本的には想定しにく い状況ですので、実施施設の長にしてよいと思います。仮にそのようなことを提供する ことがあれば、第三者提供などとして取り扱えばよいと思っています。これについても 法制的に内閣府とよく詰めたいと思います。 ○福嶋委員  別の問題で、個人情報保護とは直接関係ないかと思いますが、ゲノム指針のでは、今 回、共同研究についての取組みというかやり方が明確になったのですが、遺伝子治療で も、遺伝子治療の製剤を作る部分と実際に患者に使う部門は、これから共同研究が盛ん になると思います。患者に使うほうだけが実施機関なのか、製剤を作るところも一緒に 含めたものなのか、その辺をゲノム指針に準じて、共同研究の場合は両方の機関の倫理 委員会を通ることとか、きちんとされていったほうがいいかと思います。 ○事務局  共同研究の場合は、倫理審査委員会が必要かと考えております。読みにくい点、はっ きりしない点があれば、ここで明確にするか、Q&Aで対応するかについては、よく考 えさせていただければと思いますが、基本的には両方必要だということです。 ○位田委員  ごくテクニカルな話ですが、文章のあとが「何々しなければならないものとする」と いう表現がたくさんあります。最近は「ものとする」という言葉は、法律を作るときに はあまり使わないようにしていると思いますので、できるだけ単純な表現でいいのでは ないかと思います。 ○事務局  指針の中でも分かりやすい表記と出ておりますので、指針自体も分かりやすいように したいと思います。 ○垣添座長  修文、その他は座長と座長代理にご一任いただくことにし、この形でパブリックコメ ントにかけさせていただきます。どうもありがとうございます。  続きまして、資料2−1、2、3に沿って、「疫学研究に関する倫理指針」の議論に 移ります。まず、事務局からご説明をお願いいたします。 ○事務局  資料2−3に基づいてご説明いたします。先ほどの位田委員のご質問にお答えする形 で説明させていただきましたが、こちらは基本的には法人の長を考えております。それ は先ほど申しましたような理由から、そういう整理をしております。  1頁です。個人情報保護法を踏まえて、今回いろいろ規定を置きましたので、「個人 情報の保護」を「目的」の中に入れました。ちなみに、先ほどの遺伝子治療研究では、 具体的に列挙しているところがなかったものですから、並びが悪かったので入れており ません。こちらは「個人の尊厳及び人権の尊重等」とありますので、その中に入れまし た。1頁の下は技術的なものです。  2頁です。研究計画書に記載すべき事項に関する細則がいろいろ書いてあります。基 本的には先週の会議のときと同じですが、インフォームド・コンセントを受けない場合 もありますので、その場合のことをいろいろ明記しております。例えば、計画書に記載 すべき細則の5番目のポツの「インフォームド・コンセントのための手続(インフォー ムド・コンセントを受けない場合はその理由及び当該研究〜)」というところや、いち ばん下のポツの「研究対象者からインフォームド・コンセントを受けないで試料等を利 用する場合」と、表現の明確化、疫学研究の場合はインフォームド・コンセントを受け ない場合もありますので、そういうことに対してのそれぞれの手続を書いています。  3頁については、法第20条の安全管理措置の1つとして(6)を新しく加えています。 これも先般の資料と同じです。  4頁の「インフォームド・コンセント受領に関する細則」です。基本的にはこれも先 般の資料と同じですが、最後に「問い合わせ、苦情等の窓口の連絡先に関する情報」を 新しく加えました。5、6頁は特に変更はありません。  7頁の「見直し案」の(2)の(2)に「競争上の地位の保全」とあり、ゲノム指針で も倫理審査委員会の議事内容の非公開要件として入っているものを合わせて規定してお ります。  9頁の「インフォームド・コンセントの簡略化等に関する細則」です。法第18条第1 項において、取得に際して利用目的の公表という規定があることから、「試料の収集・ 利用の内容」となっていたのを、「試料の収集・利用の目的及び内容」という形で表現 を適正化しております。9頁、10頁、11頁に同じような修正があります。  12頁です。「インフォームド・コンセントを受けない場合においての細則」です。法 第24条第1項において、保有個人データに関連する事項として、こういうのを公表しな さいという事項がいくつか盛り込まれています。インフォームド・コンセントを受けれ ば、そこで本人に知らせていますので、いいということですが、インフォームド・コン セントを受けない場合について、法第24条の規定に基づいて細則を規定しています。  12頁に「公衆衛生の向上のために特に必要がある場合であって」を入れています。こ れも先般の資料と変更はありません。  13頁から14頁、個人情報の保護に関する部分がいろいろあります。研究を行う機関の 長と、安全管理が図られるよう、必要かつ適切な従事者の監督についての規定、利用目 的の特定、利用目的による制限、内容の正確性の確保、安全管理措置、いずれも先般の 議論と内容は変えておりません。  15頁に「安全管理措置に関する細則」が書いてあります。これも遺伝子治療の指針と 同じですが、右側の「見直しにあたっての考え方」に、「安全管理措置に関して、各機 関の判断で適切な措置が円滑に講じられるよう、執るべき措置の例を細則にて規定」と 書いてありますが、誤りで「例」ではなく「内容」です。  15頁で、安全管理措置のところが尻切れとなっておりましたが、きちんとほかの指針 と合わせて書いております。具体的には16頁にいろいろ書いていますが、この辺も遺伝 子治療臨床研究指針と合わせております。  17、18頁の「委託者の監督」「第三者提供の制限」、19頁の「個人情報の開示」「訂 正等」、20頁の「利用停止等」、21頁の「理由の説明責任」等は、法律の条を踏まえて 入れており、遺伝子治療研究とも同じですし、前回の資料から特に変更はしておりませ ん。  22頁は、利用目的の範囲を超えた利用の関係、利用目的の変更の関係でいくつか規定 をしています。研究者が研究開始前に採取された試料を利用する場合に、本人同意を原 則としながら、それができない場合に以下に該当しなければいけない。(1)は「連結不可 能匿名化又は連結可能匿名化であって対応表を有しない」。要するに、個人情報保護法 上の個人情報に当たらないケースで、以下、法の要件に併せて入れています。利用目的 の変更関係と範囲を超えた利用関係を一緒にしたため、やや整理が悪い部分があるかも しれません。あとできちんと整理いたしますが、内容的には、法律に基づいた利用目的 の変更のためにはこういう要件が必要で、範囲を超えた利用の場合にはこういう要件が 必要ですということをたものに並んで盛り込もうということです。  23頁です。「既存資料等の提供に当たっての措置」で、(1)は匿名化を明確にして 「連結不可能匿名化又は連結可能匿名化であって対応表を有しない」。対応表を有して いる場合は扱いが違ってきますので、そういうものをまず(1)で除外していきながら、 (2)(3)でそれぞれの要件を書いています。これも基本的には先般と並んでいるのです が、(2)について、細則との関係が分かりにくくて読みにくいという部分がありました。 細則に書いてあったものを指針のほうに盛り込み、できる限り読みやすくしたつもり で、内容を変えたものではありません。  24頁は、若干文言の変更はありますが、特に大きな変更ではありません。  25頁の「個人情報」の定義に、「生存する」を入れています。これも前回説明したこ とと同じですが、個人情報に関しては、本人同意などいろいろ求められることが挙べら れています。その中で死者の情報を今までと同じように入れていくと、整理しにくい部 分がありますので、ここの指針では「生存する」にして、死者の情報については、細則 で「安全管理措置等」と書いてありましたが、そういうところできちんと担保する。ま た亡くなった方の情報であっても、それが遺族に関するものであれば、遺族の個人情報 という形で整理される場合もあろうかと思います。いずれも個人情報保護法に並ぶよう な形で整理しています。  26頁も「保有する個人情報」の定義を書き、以下、番号を付け直したものです。 ○垣添座長  前回の議論から変わった部分を中心にご説明いただきましたが、ご質問ございます か。 ○富永委員  前回の委員会の最後のころにも、12頁の細則の(2)の、研究対象者が未成年者の場合、 特に16歳以上の場合は、代諾者とともに、研究者本人からのインフォームド・コンセン トを受けなければならないという点、これは何とか再考してほしいと2度、3度繰り返 しました。  分かりやすいように具体例を出しますと、高校生などを対象にして、喫煙実態調査を やります。かなりの研究者が過去にも行っています。飲酒の実態の調査もありますし、 場合によっては異性との交遊の面の調査もやっています。それらの調査は学校で実際に 行われており、100%無記名です。個人情報の保護という観点では、アンケートも封を して回収しておりますから、個人情報の保護に関しては全く問題ありません。  高校生、未成年者で18歳、19歳の大学に入っている人、あるいは社会人になっている 人を対象にして、代諾者(具体的には保護者)からもインフォームド・コンセントを得 なければならないと縛りますと、この種の調査はほとんどできなくなり、実際に平成14 年6月以来、ゼロではありませんが、非常にブレーキがかかっています。研究自身は公 衆衛生学的な意義も十分あると思います。  代案として、無制限に代諾者からのインフォームド・コンセントを削除するのではな く、倫理審査委員会に研究計画などをきちんと見てもらい、この種の調査だったら高校 生、未成年者の判断に任せて、代諾者(保護者)からのインフォームド・コンセントは 省略してもよかろうというようにしていただくと現実に即しますが、このまま残される と、大変難しいのです。実際に多くの疫学研究者から悲鳴が上がっています。 ○垣添座長  研究の現場からのご発言かと思います。 ○柳川委員  私も同じような立場ですが、このような制限が加わりますと、例えば、学校に調査を お願いするときに、学校自身が引いてしまい、協力していただけないということが起こ ります。例えば教育委員会なども、そういう条件を加えると、非常に仕事が難しくなり ます。したがって、16〜19歳の方々対象の疫学調査、例えば検体を提供していただくと か、血液を採取する場合には代諾者の承認が当然要りますが、いま富永委員が言われた ような種類の調査は、これを加えることによって、「調査をするな」と言うのと同じぐ らいの制限を加えたことになると私は思いますし、これは倫理委員会で判断していただ いていいのではないかと思います。 ○垣添座長  事務局、何かありますか。 ○事務局  こちらは先般も非常にご議論が出たところだと思っています。もちろん事務局として も公衆衛生のこのような研究を進めるべきという気持は非常に強くありますので、疫学 研究について、できるだけ研究が進むような形をとりたいと思っております。  一方で、このような観点から未成年者に関する規定が大変だということも、非常によ く分かるのですが、未成年者の権利という意味で、ほかの法制的なものから見て、非常 に大きな議論になる部分もあるのかと思っています。今回は特に個人情報保護の点に絞 って修正をしたわけですが、まさに未成年者の権利については、大激論になって、なか なかまとまらないのではないかと思っています。ほかにもいろいろ研究の進展との関係 で修正されたいところもあろうかと思いますが、今回は個人情報の保護に絞りたいと考 えております。そのほかの今のような論点については、今後見直しをしていく中で、大 きな議論として取り上げていただき、そのときの社会情勢、法制度上、未成年者をどう 扱っているか、そういったものとよく比較考量しながら、議論をしていく必要があるの ではないかと思っています。  ちなみに先ほど富永委員からご指摘のあったケースは、場合によっては11頁の(2) の(2)の「人体から採取された試料を用いない場合」のアに当たるケースにもなるのか と思います。既存資料以外のものですが、人体から採取される試料という話でなけれ ば、「インフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しない」ということにな ってきますので、ものの程度によってインフォームド・コンセントが必要な場合、必要 ではない場合が出てこようかと思っています。また現場でいろいろな問題点があろうか と思いますが、その辺も教えていただきながら、これから考えていきたいと思っていま す。 ○福嶋委員  いまの問題は、研究計画を立てる人ではなく、依頼したときに学校の協力が得られな いということですので、インフォームド・コンセントが要らない研究もあり得るという ことをQ&Aの形で示していただけると、研究計画者は学校に、Q&Aにこういうこと が書いてあるから、インフォームド・コンセントを得なくてもいいのですよ、と説明で きると思います。ですから、何らかの形で周知徹底をお願いできればと思います。 ○位田委員  前回、私が未成年者の保護のためには、この規定は必要だと申し上げたのですが、原 則と例外の関係をどう考えるかで、原則は未成年者の保護のためには、18歳であろうと 19歳であろうと、もしくは15歳、16歳であろうと、本人の同意だけではなく、当然、保 護者なら保護者の保護が要ります。  ただし、先ほど事務局からも説明があったように、必ずしも人体の試料を採取しない 場合には、インフォームド・コンセントが必要ではないケースもあり得る。これは全部 倫理審査委員会にかかるわけですから、原則はこの規定で、しかし人体から試料を採ら ない場合、それから、インフォームド・コンセントを取るのが、さまざまな事情から難 しい場合というのがありましたが、そういう形で例外は、それぞれの所に書いてあるの で、それに合うかどうかを判断していただければ、クリアできる問題ではないかと思い ます。  高校側がオーケーしてくれないのは、高校が分かってくれないだけで、そこは研究を される方がきちんとこの指針のこの規定があって、こういうことはできて、我々はこう するのだからという説明で、協力の同意を取り付けていただければ、できない話ではな いと思っています。 ○柳川委員  そういう議論もあるかと思いますが、実際に実施してきた立場から言うと、非常に難 しい。  いま例外の話がありましたが、12頁の(2)に「未成年者の場合」と、きちんと書いて あります。この場合も、ほかの条項の例外を取り入れていいのかどうか。いま言われた ような大変有難いご意見をいただいて、そういう例外として認められ得るのであれば、 それでいいと思います。でも、ここに書いてあるのを見る限り、そうではないように私 は見えたものですから。 ○富永委員  私も、いま柳川委員がおっしゃったご意見と全く同じことを言おうとしたのです。11 頁の(2)のアで、未成年者もちゃんとこれが含まれていることが分かればいいのですが、 未成年者は例外である、未成年者保護のためには代諾者からのインフォームド・コンセ ントも必要であるということになってしまうと、12頁の細則の(2)に行ってしまい、ま たストップがかかってしまいます。ここはもう一度別の機会に、個人情報の保護以外の 観点で見直したいとおっしゃいましたが、近日中に実際に計画していただけるのなら待 ってもいいのですが、個人情報保護以外に疫学倫理指針全体の見直しについて確約でな くてもいいのですが、そこをきちんと言っていただけないと納得できません。 ○垣添座長  富永委員や柳川委員がご指摘の研究の重要性は、たぶん皆さんもよくお分かりだと思 いますし、そういう研究が、こういう規定があることで動かなくなるのも大変具合の悪 い話だと思いますから、福嶋委員からご提案のように、例外措置に対するQ&Aのよう な形で、研究が現実に動き得るという形を保証していただく工夫ができるのではないか と思いますが、いかがでしょうか。 ○事務局  おっしゃるとおりだと思います。ちなみに事務局の解釈としては、11頁でインフォー ムド・コンセントを必ずしも要しない場合にはこういうのがあるということです。た だ、要する場合ももちろんあるかもしれません。12頁の8の代諾者については、インフ ォームド・コンセントを受けなければいけない者について、受けることが困難な場合は こうですということですので、そもそも受けなくてもいい、インフォームド・コンセン トが必要ない者については、8は意味をなさなくなってくるのではないかと思っていま す。非常に分かりにくい点があるのかもしれませんが、それは福嶋委員、座長からご指 摘のように、Q&A等々できちんと分かるようにしていきたいと思っております。 ○富永委員  11頁の(2)のアに、「未成年者の場合も該当する」ということを明記してほしいので す。 ○鎌谷委員  私も富永委員の意見には大賛成です。なぜかというと、皆様方は疫学研究がどれだけ 大切か、まだ認識が薄いと思います。というのは、今まで日本は、アメリカがやった疫 学研究に基づいて方針を決めればいいということでやってきたと思います。これからは そんなことではなく、どのような治療をするか、どのような政策をするかというものま で疫学研究にかかってくるわけです。そうすると、こういう場合、未成年者がインフォ ームド・コンセントができないとなるとどうなるかというと、例えば薬を投与して、非 常に重大な副作用がたくさん出たとします。でも未成年者はインフォームド・コンセン トが取れないから除外しなければいけないとなると、この薬は安全な薬だという結論に なるわけです。そうすると、10万人ぐらいの人に同じ薬を投与されるということに当然 なります。ですから、疫学研究に関しては2つあって、1つはそれが国民の健康を守る ためにいちばん重大なものであるというのと、拒否され除外をされると、反対の結論が 出るという2つのことで、インフォームド・コンセントの撤回、あるいは私は入りたく ないということに関しても、最大の個人情報を保護しながら、やはりバリアを設けてい ただきたいと思います。  もう1つ、インフォームド・コンセントが必要ではない場合に、「公衆衛生」と書い てありますが、これがどのぐらい含まれるか、私は心配なのです。もともと言葉が悪い のかもしれませんが、衛生というと、消毒など疫病だけに限られるような気がするので す。私の解釈では公衆衛生というと、ウイルス疾患や感染症だけに限られると取れるの で、「国民の健康を守るために」などということで解釈してよろしいのでしょうか。 ○上田厚生科学課長  厚生労働省はそのように考えてはおりません。幅広く国民の健康に資するということ です。 ○鎌谷委員  そのようには書けないのですか。 ○垣添座長  公衆衛生という言葉は長く使われています。 ○鎌谷委員  本当のことを言うと、疫学の「疫」というのは流行り病のことですが。 ○上田厚生科学課長  これは非常に伝統ある言葉ですから、ここにおられる方はご存知だと思いますので、 正しくご理解いただきたいと思います。 ○垣添座長  言葉の使い方としては、将来の問題として、そういう研究に携わる方にもう少し分か り易い、あるいは現代に即した言葉を工夫していただければと思います。ご指摘はその とおりだと思います。 ○鎌谷委員  言葉が概念に結び付いていると思うのです。 ○垣添座長  公衆衛生に関して言えば、鎌谷委員のご心配は分かりますが、いま世の中の理解は、 かなり幅広く取り上げられているのではないかと思います。一般の国民が、そのような ことを見たときに、確かに誤解を生む可能性がありますから、将来の問題として学会あ るいは疫学研究などにかかわられた先生方が、そういう工夫をしていただければと思い ます。 ○豊島委員  確かに座長のおっしゃるとおりだとは思いますが、鎌谷委員のおっしゃることも一理 あります。例えば、薬剤に対する反応などは、今の日本では公衆衛生とは誰も考えてい ないと思います。いちばんの問題は、健康に関することなのであり、その辺のことは事 務局がおっしゃるのは私は納得できません。 ○位田委員  あまり事務局ばかりを責めるわけにはいかないと思います。というのは、法律上の用 語で概念的にも定義上も決まっている用語は、官庁としては使わざるを得ないところも ありますし、使うときに公衆衛生というのは、たぶん英語のパブリックヘルスか何か を、役人が訳したのか科学者が訳したのかは分かりませんが、公衆衛生と訳したのでし ょう。少なくとも公衆衛生という言葉を使うときには、これこれこういう概念であると いうことがある程度厚生労働省なら厚生労働省ではっきりしていれば、説明を求めれば 誤解はなくなると思います。薬剤反応性が入るかどうかは、私の能力の範囲外ですが、 もともと入っているのであれば、そのような説明を厚生労働省からいただければ、そう いう理解でいけると思います。入っていなければ、入っていない部分について、ここに 盛り込むのかどうかという議論をする必要があると思います。言葉の使い方だけで議論 をしても、あまり生産的ではないと思います。 ○鎌谷委員  原因はもともと明治時代には、確かに北里柴三郎の疫学には、ばい菌の消毒がいちば ん大事だったわけです。そこに研究が集中したために、こういう名前になったと思いま すが、現実の問題として、例えば、薬の副作用による死亡が、年間5万人と言われてい ます。それはものすごく大きな問題で、おそらくそちらにも相当集中しなければいけな いと思います。位田委員は言葉の問題と言われますが、実は概念がものすごく変わって いて、本当は国民にもそのように理解していただかないと、我々も一緒に考えていけな いわけです。その辺を法律だからと言われて、何となくごまかされているように私は思 うのです。いま言った副作用の問題が入るのか入らないのかです。 ○上田厚生科学課長  決してごまかしてはいません。副作用の問題は、例えばゲノム疫学という考え方もあ りますし、治験の分野でも取り扱うことがありますから、幅広く「公衆衛生」あるいは 「疫学」と。疫学というのは非常に広い意味ですから、公衆衛生の一分野と見たり、手 法としていろいろな形があるわけですが、これは非常に一般化した言葉です。個人情報 保護法でも公衆衛生という言葉を使って扱っていますから、その点もご理解いただきた いと思います。また、私ども厚生労働省の諸規定にも公衆衛生という言葉が山ほど出て きますから、よくお読みになっていただきたいと思います。 ○鎌谷委員  それを書いていただきたいと思います。 ○黒木座長代理  1頁の目的のいちばん上に、疫学研究については確実な定義が与えられていますの で、この定義の下に指針ができているのでよろしいと思います。 ○柳川委員  公衆衛生の向上というのは、確かに非常に幅広い意味で使われてはいますが、いちば んコアとなる重要なところは、健康水準の維持・増進、健康阻害を防止するというとこ ろだと思います。それに関連するいろいろな要因があるわけで、それは病原体だったり 環境だったり食品だったり薬物だったり。したがって、いまの薬の副作用などは当然含 むわけです。疫学なども、決して曖昧な言葉ではなく、はっきりした定義があります。 疾病の発生原因を科学的に、証拠に基づいて明らかにしようとする立派な学問で、確か に疫学の「疫」を疫病の「疫」と判断される方がおられるかもしれませんが、エピデミ ィオロジーという言葉は、決して疫病という意味ではありません。 ○垣添座長  分かりました。では、一応この場はこれで収めさせていただきます。 ○栗山委員  公衆衛生という言葉を、全くの素人が聞いた場合、少し前までは消毒などは大きな要 素だったと思いますが、今は全く世の中は違ってきて、もっと広い、全体の健康を管理 するという、疫学的な要素が強い概念として捉えていると思います。 ○垣添座長  言葉の意味するものと実態は、昔と現在は随分変わってきているというご指摘を多方 面からいただきましたが、用語の問題に関しては、この場で簡単にできることではあり ませんので、将来の課題として残させていただき、この場は一応法律にもあることです ので、そのまま使わせていただきたいと思います。ただ、世の中の理解を得て研究を進 めるという観点からすると、疫学とか公衆衛生という言葉が、もっと適当な言葉がある ようでしたら、是非、関係者のご検討をお願いしたいと思います。 ○位田委員  細則にタイトルが入れられている部分と、そうではない部分とがありますが、例え ば、9頁の「インフォームド・コンセントの簡略化等に関する細則」は、もともとは 「細則」としか書いてなかったのを、このように書かれている。しかし、第3の7は、 「インフォームド・コンセントを受ける手続等」ですから、わざわざそこまで書く必要 があるのでしょうか。書くのだったら、細則には、頭に全部タイトルを付ける必要があ ると思います。 ○事務局  適切なほうに統一したいと思います。 ○垣添座長  お願いいたします。ほかにいかがでしょうか。 ○位田委員  16頁の(1)から(8)まで並んでいるところですが、この指針だけではなく、ほかの指針 も関係するところですが、少し分かりにくい表現があって、「個人情報のアクセスにお ける識別と認証」というのは、何を識別して、何を認証するのですか。  「個人情報のアクセス記録」と書いてありますが、「個人情報へのアクセス記録」か と思いますし、少し分かりやすくなればと思います。 ○事務局  (4)については、「の」ではなくて「への」ですので、修正いたします。  「識別と認証」については、個人情報にアクセスしようとする際に「IDやパスワー ドによる認証を行う」または「生体認証を行う」という意味で「識別と認証」としまし た。ですから、少々分かりにくいと思います。 ○位田委員  個人情報にアクセスしようとする人の、という意味ですかね。 ○事務局  そうです。 ○垣添座長  どちらか分かりにくいので、文章の工夫ができるのではないかと思います。ほかにい かがでしょうか。いまご指摘いただいた点を修文する際は、座長と座長代理にお任せい ただいて、よろしければこの案をパブリックコメントにかけさせていただきたいと思い ます。よろしくお願いします。  それでは、今後の予定について事務局からお願いいたします。 ○高山研究企画官  先週、今週と引き続きまして、いろいろご議論いただき、ありがとうございました。 先ほどから2つの指針をご検討いただきまして、一部修文等がございますので、そこは 事務局で整理して、座長と座長代理にご確認、ご相談したあとに、パブリックコメント の手続をとりたいと思います。  今回、2省合同ですが、今後の予定として、ゲノム指針も含めて3省合同の委員会に ついて、次回は11月2日(火)の午後2時から4時半の予定で開催したいと考えており ますので、よろしくお願いいたします。内容については座長、座長代理ともご相談した いと思います。  このあと、厚生労働省の専門委員会単独の開催となりますので、厚生労働省の専門委 員の先生方におかれましては、引き続きよろしくお願いいたします。 ○垣添座長  ありがとうございました。2省合同の委員会はこれで終了させていただきまして、3 時から「臨床研究に関する倫理指針」をご議論いただきたいと思います。                                 ―――了――― 【問い合わせ先】  厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:鹿沼(内線3804)  電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171