04/10/13 第5回医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会議事録   第6回 ライフサイエンス研究におけるヒト遺伝情報の取扱い等に関する小委員会     第5回 医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会             第5回 個人遺伝情報保護小委員会                    議事録 1.日時    平成16年10月13日(水)10:00〜12:40 2.場所    経済産業省 第1〜3共用会議室 3.出席者    (委員) 位田委員(座長代理)、江口委員、垣添委員(座長)、具嶋委員、         栗山委員、黒木委員(座長代理)、佐々委員、菅委員、武田委員、         辻委員、富永委員、豊島委員、南条委員、廣橋委員、福嶋委員、         藤原委員、柳川委員、吉倉委員    (事務局)文部科学省:清水研究振興局長               佐伯研究振興局ライフサイエンス課長               安藤研究振興局生命・倫理安全対策室長         厚生労働省:松谷技術総括審議官               上田厚生科学課長               高山厚生科学課研究企画官         経済産業省:塚本製造産業局次長               河内製造産業局事業環境整備室長 4.議事次第    (1)遺伝情報等の個人情報保護を中心とする研究における倫理上の諸課題への       対応について    (2)遺伝情報等の個人情報保護における法制上の措置の必要性について    (3)その他 5.配付資料  資料1−1   個人情報保護法に関して検討すべき事項  資料1−2   「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」における個人情          報保護に関する見直し概要について  資料2−1   研究の進展等に伴う見直しの論点について  資料2−2   「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」における研究の          進展に伴う見直し概要について  資料3     「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」新旧対照表(案)  資料4     法制化をめぐるこれまでの議論について 6.議事 【高山研究企画官】  それでは定刻になりましたので始めさせていただきます。  本日は、文部科学省「ライフサイエンス研究におけるヒト遺伝の取扱い等に関する小 委員会」、厚生労働省「医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員 会」、経済産業省「個人遺伝情報保護小委員会」の第4回目の合同開催となっていま す。  本日は、あらかじめ宇都木委員、小幡委員、鎌谷委員、橋本委員、堀部委員より欠席 との連絡を受けています。  冒頭、議事に入ります前に、事務局より、本日の委員会の進め方について説明しま す。まず初めに、これまで議論いただきました点を踏まえて、事務局で整理した指針の 見直し案を提出させていただいておりますので、その内容について確認いただきたいと 思います。できましたら、本日の委員会で、これを取りまとめいただいて、広く意見を 伺うパブリックコメントの手続きに入らせていただきたいと思っておりますので、よろ しくお願いいたします。  なお、前回、研究の進展の論点で積み残した点がございましたが、一部の論点につい ては、資料3の「新旧対照表」に盛り込ませていただいておりますので、資料3の議論 の際に、この点を踏まえて議論いただければと思います。また、これ以外の論点につき ましては、その後、議論いただきまして、今後の見直しの検討の際に、今回の議論が生 かせればと思っておりますので、今後の提案というようなことでも結構ですので、意見 をいただければと考えています。  続きましてもう一つ、参議院の附帯決議等にありますとおり、本分野についての個別 法の必要性についても検討が求められておりますので、本日、この点についても意見を 伺えればと考えています。  それでは議事を進めてまいりたいと思います。以後の議事進行につきましては、座長 の垣添先生にお願いいたします。 【垣添座長】  皆さん、おはようございます。大変慌ただしいスケジュールで、委員の皆様方には大 変ご苦労をおかけしておりますが、本日もどうかよろしくお願いいたします。  まず事務局から、本日の資料の確認をお願いいたします。 【事務局】  本日お配りしております資料について確認をお願いいたします。  本日の資料は、資料1−1といたしまして、『個人情報保護法に関して検討すべき事 項について』。資料1−2は、それを概要としてまとめたものです。資料2−1といた しまして、『研究の進展等に伴う見直しの論点について』。資料2−2は、これの概要 をまとめたものです。資料3といたしまして、『「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関す る倫理指針」新旧対照表(案)』をお配りしております。そのほか、資料4といたしま して、『法制化をめぐるこれまでの議論について』をお配りしております。それからフ ァイルにとじたものを参考資料集ということで、いつもと同様にお配りさせていただい ております。そのほかに、本日、机上配付といたしまして、『医療・介護関係事業者に おける個人情報の適切な取扱いのためにガイドライン(案)』、これは9月30日に厚 生労働省の検討会の中で出されたものでして、検討の途中の案ということでご覧いただ ければと思います。また本日の資料3の中にも、このガイドラインが出てきますので、 そういった意味で参考で出させていただいております。  それからもう一点、前回の議事録でございますが、ここに書いてありますあて先に、 10月20日(水曜日)までにファックスで、ご指摘等がございましたら、連絡いただ きまして、その後、確定ということで、公表の手続きを取らせていただきたいと思って おります。  資料等につきまして不足等がございましたら、お申しつけください。以上です。 【垣添座長】  ありがとうございました。それではお手元に配られております前回議事要旨は、10 月20日までにコメントをいただいて、それをもって確定といたしたいと思います。よ ろしくお願いします。  それから、冒頭、案内がありましたように、前回の議論との関係からまいりますと、 資料2−1の『研究の進展等に伴う見直しの論点について』の途中から続ける予定でし たが、少し予定を変えまして、資料3に沿ってまず議論をいただきたいと思います。  まず資料3について、事務局から説明をお願いいたします。 【高山研究企画官】  それでは、資料3に関しまして説明申し上げます。  資料3につきましては、本日の資料1及び2で示した論点につきまして、これまで議 論の結果を踏まえ、現行指針をどのように見直すべきか、案として示ししたものです。 左の欄には現行指針、真ん中の欄には見直し案、右の欄には、どういう点で見直したか を記しています。  なお、資料1−1、1−2につきましては、基本的には前回の議論の過程で了解はい ただいているものと考えていますが、今回、その意見等を踏まえて、前回の資料の一部 を若干修正しております。また、前回、研究の進展の論点で積み残した中の一部で、見 直し案が従来の議論を踏まえて作成できそうなものにつきましては、資料3に盛り込ん でいます。この部分については、このような方向性でよいかの確認も含めてご検討をい ただければと思います。当該箇所につきましては、その過程で追って説明させていただ きます。 【垣添座長】  それでは、説明いただきましたように資料1−1と資料1−2の内容を資料3にまと めていただきましたので、この資料3に沿って議論いただくということになります。  資料3といたしましても、かなり膨大ですので、ある程度区切って検討してまいりた いと思います。まず第1番として、1ページの「基本的考え方」ですか、1ページから 3ページまでに関して発言がありましたらお願いしたいと思います。では、この中身に ついて説明ください。 【高山研究企画官】  資料3の第1の「基本的考え方」から説明させていただきます。1の「基本方針」に つきましては、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の過程を通じて得られる遺伝情報自身が子 孫に受け継がれ、個人の遺伝的特徴や体質を示すようなことにつきまして明確化する観 点から、文言を追加しています。また、「注」におきまして、遺伝情報が提起する可能 性のある問題をわかりやすく示すための文言を追加しています。下線が引いてある部分 です。  2の「本指針の適用範囲」につきましては、機関として組織体制の整備や環境の整備 が図られることが重要であるということから、文言を追加しています。個人情報保護法 の趣旨を踏まえ、研究を行う機関の長を、法人の代表者及び行政機関の長として規定す るということで整理した関係から、ここで法人あるいは行政機関としても、体制の整備 に留意しなければならないと規定しています。  次に臨床検査及びそれに準ずるヒトゲノム・遺伝子解析は、医療に関する事項とし て、今後、慎重に対応すべき問題であり、本指針の対象としないことは従来どおりで す。ただし、この秋に厚生労働省で個人情報保護法に基づき、医療・介護関係事業者に おける個人情報の適切な取扱いのための指針の作成が予定されていることから、診療を 行う医師においては、これに従うことを規定したものです。  細則では、平成13年3月の現行指針施行前の研究については、従前どおり、指針の 適用外としておりますが、個人情報保護法の施行により、これに必要な規定については 適用されるとしています。また(2)のところですけれども、国際共同研究における指 針の運用にかかる規定の具体化を行っています。すなわち、共同研究を行う相手国の指 針等と我が国の指針と内容が異なる場合に、現行指針では、原則として我が国の指針を 適用する旨、規定されていますが、特別な理由がある場合に限り、例外を認めることと し、その基準を細則の中で具体的に規定しています。  続いて3の「保護すべき個人情報」についてです。現行指針では、個人情報について 用語の定義のところで規定していましたが、今回、個人情報保護法の制定を踏まえ、第 1の「基本的考え方」において明確に規定することといたしました。  保護すべき個人情報の範囲として、連結不可能匿名化及び連結可能匿名化情報につい て、当該情報を保有する法人内において、匿名化のための対応表を有している場合を除 き、個人情報に当たらないこととしていますが、この指針に沿って適切に取り扱うこと としています。また連結可能匿名化された情報が対応表を有する当該機関内にあるとき には、法における個人情報であるという整理をしています。  以上です。 【垣添座長】  ありがとうございました。  それでは、意見をいただきたいと思います。1ページから3ページまでの「基本的考 え方」についてです。 【辻委員】  3の「保護すべき個人情報」のところで、連結可能匿名化された検体についての扱い ということで、(2)のほうには、対応表を保有していない場合には、法の対象としな いと書かれてあって、それから同一機関内においては、それは個人情報に当たると書い てあるわけですけれども、研究の現場で考えますと、同一機関内にあっても対応表は有 していないわけです。それが匿名化の意味だと思います。ですから同一機関内にあって も、匿名化された検体を扱う部門に関しては、やはり(2)と同じような扱いをすべ き、あるいは、その工夫をすべきではないかと思います。一応、機関の長は、細則のと ころで、いろいろ書いてはいただいていますが、その内容がちょっと十分に理解しにく いといいますか、最後のところの数行、3〜4行のところですけれども、ちょっと説明 が苦しいのではないかとも思います。現場から見ると、やはり匿名化されて、対応表を その現場では持たないということで研究をするということが原則であるということで、 これまでやってきていると思いますし、その限りにおいては、やはり(2)と同じよう な扱いをしたほうが、現場としてはやりやすいのではないでしょうか。しかも個人情報 は十分守られるというか、機関としてはそれを保障するというのは当然必要なことだと は思います。 【垣添座長】  ありがとうございました。では、福嶋委員、どうぞ。 【福嶋委員】  今、辻先生が言われたものと同じことを言いたかったのですけれども、それと別の項 目としましては、2番目、「本指針の適用範囲」のところでかなり明確に、研究実施に 必要な組織体制や環境の整備を図ることが重要であることも留意しなければならないと 記載していただきました。さらに、こういう組織体制や環境整備を行うための予算的措 置という言葉を何とか入れていただけないかというのが私のお願いです。これだけだと お題目で、「うん、ちゃんとやっているよ」で終わってしまいそうな気がします。ボラ ンティア的に皆さん関係者が頑張ってということで、お金もなしでこういうことをやら されると、どうしても今のままになりがちなので、ぜひお願いしたいと思います。 【垣添座長】  2点、指摘をいただきました。何か発言はありましょうか。 【藤原委員】  法律をやっている人は少ないようなので、一言申し上げます。  それから私、今日、途中で失礼しなければいけないので、少し長くなるかもしれませ んけれども、ご容赦ください。  まず前提として伺いたいのですけれども、今のお二人の先生の発言に対して、連結可 能匿名化、つまり一方の機関で匿名化して、研究部門に提供するという場合ですけれど も、連結の可能な形に匿名化して、片方だけが対応表を持っている場合に、お互いに対 応表はほとんど使わない、つまり対応表が置いてあって保管してあるけれども、数年に 1度、例えばデータの更新のために比較する程度のもので、対応表を用いた情報のやり 取りはまったくないという前提なのでしょうか。現場のことは存じませんので教えてい ただきたいのですけれども。 【垣添座長】  今の点に限って、まず辻委員から。 【辻委員】  研究によってさまざまであろうと思いますけれども、基本的には、めったにそういう ことはないと思います。いったん計画を立てて、必要な匿名化作業をして研究を行うわ けですから、確かに更新であるとか、何かそいうことがない限りは匿名化された範囲の 中で研究は行われると思います。 【藤原委員】  「研究によってさまざまであろうが、基本的には」と二つの留保がつくと、どちらと 取っていいのかなと、ちょっとわからないところがあるのですが。 【辻委員】  頻繁に行ったり来たりして情報を確認するということは、まずないと思います。 【藤原委員】  二つ目ですけれども、これは事務局に対する質問ですけれども、この倫理指針の適用 を一番多く受ける機関というのは民間の機関なのでしょうか、それとも国立大学法人、 あるいは国立研究所等なのでしょうか。 【上田厚生科学課長】  数というのが、今、ちょっと理解できないのですが、機関数ということですか。 【藤原委員】  はい、そうです。 【上田厚生科学課長】  あともう一つ、実際に、その機関の中で研究が実行されているかどうかという問題が ありますから、例えば病院というカテゴリーだと、8,000とか、9,000あるわけ です。 【藤原委員】  いや、可能性の問題ではなくて、実際に実施できる体制があって、かつ現在、実施し ているという質問に変えさせていただいても結構です。 【上田厚生科学課長】  今、ちょっと私に明らかなデータはございませんけれども、やはり、こういう研究を 一番やるというのは大学です。その数は、医学部を中心ですから、100とか、それぐ らいの数しかないということになります。それとあと、病院の一部になりますので、こ れも数百。民間となった場合に我々としては把握はまったく今のところできてないので すが、これから民間も増えていくと思っています。 【藤原委員】  つまり、国立大学法人とか、国立の研究機関、もちろん民間の研究機関もございます けれども、現在、主にこの研究をしていて、ここで指針ができると、その適用を受ける ことになるのは、かなりの部分が国立大学法人であるとか、国立の研究機関であると考 えてよろしいかという質問なのですが。 【上田厚生科学課長】  現時点ではそうだと思います。ただ、将来的には民間も相当増えてくるのだろうと思 っています。 【河内事業環境整備室長】  民間につきましては、事前に調査をしたことがあるのですけれども、バイオ関係の企 業を対象に調査して、現在、30社程度、ゲノム解析を実施しているという結果が出て おります。 【藤原委員】  前提として現場のことを教えていただきたいのですが、1回目から2回目のときに、 連結可能匿名化というのを、もちろんこれまでの議論は尊重しますので、当然、これま での議論に沿って整理をすべきだと考えているのですが、その前提として、以前に「個 人情報であるとされると、現場としては何が不都合なのですか」という質問をしまし た。そのときに、第三者提供を念頭に置いているのではないと、確か辻先生からお答え があったと記憶しております。すると、個人情報とされると、他の場面で具体的にやり にくいというのは、差し支えがない範囲で結構なのですけれども、どこになるのでしょ うか。 【辻委員】  むしろ逆に教えていただきたいのですけれども、個人情報保護法の対象とすると目の 前にある、あえて連結可能匿名化された検体について、それを対象と明示することが意 味する実態を教えていただいたほうが逆によいかと思います。 【藤原委員】  よろしいですか。質問に対して質問というのも非常に困ります。私自身の感じです と、この指針というのは、個人情報であれば、先ほど辻先生が指摘になった情報に関す る細則のところで、個人情報の管理責任者を置いて、かなり厳しい安全管理体制を定 め、そうでなくても、遺伝情報であるということで、必要最小限のことはやっていただ くという仕組みだと思っています。審査委員会等もあって、きちんとそれが機能してい るという前提に立つのであれば、個人情報であると言われて、具体的にどこが困るのか なという疑問がずっと頭から離れないものですから。 【辻委員】  私の質問に答えていただけないので余計に答えにくいのですけれども、基本的に研究 の現場から考えると、場所によって(2)の適用になる場所と、そうでない場所と異な ってくるということが、何かとても不合理であるように感じます。それから現場として は、やはり匿名化をとても重要視していて、そういう形のプロセスを経た上で研究とし て扱うのだという理解です。やはり匿名化ということは非常に重いと研究者は考えてい ると思います。ですから、法の適用とかということに関していうと、僕らの理解だと、 やはり対応表の管理、それから対応表と連結するというところにおいて極めて厳しい管 理が存在しなければいけないと思います。匿名化して研究を行うということにおいて は、どこで研究するにせよ、それは同じ扱いをしたほうが研究者はとても理解しやすい と思います。 【藤原委員】  匿名化して、よく管理していても、結局、対応表があって、それが見られるのであれ ば、もしそれがある程度使われているのであれば、それは個人情報であるということな のです。  それから、先生の質問に対して答える前提なのですけれども、その匿名化した機関と いうのは、前回、江口委員が言われたように、学部単位程度のことを考えてるのでしょ うか。それとも、だれだれ教授のプロジェクトチームで匿名化し、それを同じ医学部内 のだれだれ教授のプロジェクトに提供した場合、A教授のところでは対応表を持ってお り、個人情報だけれども、B教授のところでは研究だけをやって、対応表を持ってない から、それは個人情報ではないと考えているのでしょうか。 【辻委員】  今の質問は、結局、匿名化というプロセスをあまり信用していないというか、何か話 が少し逆になってしまうように思います。 【藤原委員】  いや、単位を教えていただきたいだけで、匿名化は信用しています。 【辻委員】  例えば、どこでもそうだと思いますけれども、匿名化する部門というのが一応ござい ます。それは別にどこかの教授が教室の中でやっているということではなくて、そうい う機構は持っていて、そこで匿名化していることになっています。実際に対応表という のは、「先生、ちょっと見せてごらん」といって、見せてもらえる形にはなっていない です。それからまた連結するという意味では、機関の外にあっても、それは連結可能な わけですから、たとえ機関外にあったとしても、その検体については連結可能であると いう意味では同じように扱うべきだと思います。物理的に若干違うところにあるか、比 較的近いところにあるかという違いはあるにしても、本質的に対応することは可能であ るということは、どこに存在しようとも、それは同じだと思います。  もう一つは福嶋先生の意見にもありましたが、匿名化する機構というものに予算措置 して、よりしっかりしたものにしていったほうがよいと思います。 【藤原委員】  予算のことはガイドラインに書くかどうかはともかくとして、お答えの前に伺ってい るのは、どの単位でやっているかというのは明らかにはならないということなのでしょ うか。 【辻委員】  例えば私が所属している機関におきましては、そういう部門があります。そこはゲノ ム研究をしているところではなく、情報管理のプロのいらっしゃるところで、そういう 機構を持っています。かなりしっかりした匿名化という作業をしています。ですから、 「ちょっと見せてごらん」といって見せてもらえる形にはなっていないのです。 【藤原委員】  それは例えば大学であれば、医学部のほかのところに頼んでおられると、そういう意 味なのでしょうか。 【辻委員】  いえいえ、大学の中にそういうユニットを設けています。他機関で匿名化するという 議論も一時ありましたが、それは現実的ではないという議論もあったと思います。 【藤原委員】  いや、そういう趣旨で伺っているのではなくて、匿名化する機関と研究する機関が二 つに分かれて、そこで違う扱いということなので、その単位が前回、江口委員からも質 問があったように、どの単位なのか知りたいという、それだけの質問なのですが。例え ば、他の大学に頼むとか、他の学部に頼むとか、あるいは学部内で頼むとか、いろいろ やり方があるので、現場ではどうやっているのか教えていただきたいというだけです。 【辻委員】  それは病院であったり、あるいは大学の中に機構を設けて、研究所とは独立の形でや っていると思います。研究者は、その作業をとても重要視し、やっています。重みのあ る匿名化作業をやってきているにもかかわらず、それをまったく信じないという議論 は、本末転倒になると私は思います。 【垣添座長】  いや、信じないと言っているわけではないでしょう。 【辻委員】  おっしゃっていることは、背景に、そういうことがあるように聞こえますけれども。 【藤原委員】  そんなつもりは毛頭ありません。 【位田座長代理】  今、辻委員がおっしゃったように、ある一つの研究機関の中で、匿名化をある部門が 専門にやっていて、どのプロジェクトであっても、そこの部門を通って匿名化をすると いうのは、それが本当にほとんどすべての研究機関で言えるのでしょうか。少なくとも 私の知っている限りでは、プロジェクトごとに個人識別情報管理者というのがあって、 それは特にどこかの部門に属しているという形ではないと思います。むしろ、そちらの ほうが私の印象としては多いように思います。 【辻委員】  私は2カ所しか知らないのですが、2カ所はそうやっています。位田先生がおっしゃ るように、こうやるべきであるということを非常に強く指示して、そこはかなり強い形 で指針を示して整備する。むしろ、そういうことを私はやるべきだと思います。 【位田座長代理】  私も同じ法律家なので藤原先生とよく似たラインになってしまいますが、ある部門で 個人識別情報を管理したとしても、同じ機関の中であれば個人情報として扱うというこ とで統一することのどこがやりにくいのかなと思います。  多分、辻先生が考えられているのは、機関によって違うからという話なのでしょう か。もともと匿名化したものを預かっているというのは、同じ研究機関であっても、個 人情報管理室のようなものがあって、そこで対応表を置いているから、実際に研究して いるところは、いわゆる個人情報と考えなくていいのだという話ですよね。そうすると 匿名化されていても、個人情報であるという取り扱いでどこが不都合なのかというのが よくわからないのです。機関によって扱いが違うということの不合理さはあると思いま すが、もしすべての機関で同じように個人情報で扱うとすれば、それでどこがいけない のでしょうか。どこが研究がしにくいとおっしゃるのか、よくわからないです。 【辻委員】  一つは、機関によって、その検体がどこにあるかによって扱いが違うということに不 合理性を強く感じます。それからもう一つ、研究者がこれまでの三省指針に沿って匿名 化ということを非常に重視して、それは非常に大切なことであるということを考えて、 一生懸命やってきていると思います。そのプロセスをできるだけ担保して、匿名化した 検体を扱う部分に関しては、それは研究として個人情報から切り離されたものです。個 人情報としての問題が生じるところは連結するところにあるわけですから、その連結と いうプロセスに関して厳しい規制をかければ私は良いと思うのです。 【福嶋委員】  今の議論を伺っていて、(2)のところに連結不可能匿名化された情報は、個人情報 に該当しないと書いてあります。それであれば、連結可能であっても、使うときに個人 の識別が不可能な状態で取り扱われる場合には、個人情報に該当しないというのとパラ レルだと思います。いくら対応表があるからといって、研究の現場では、個人識別が不 可能な状態で取り扱われているわけです。そこまできっちり匿名化作業をしましょうと いうことを述べれば、連結不可能匿名化ということと個人識別が不可能な状態で取り扱 われる場合というのはまったく同じことだと思うので、同じように扱われるべきだと思 います。 【安藤生命倫理・安全対策室長】  事務局で、この案で考えさせていただいたのは、結局、匿名化をするということ、こ れは非常に重要だと思いますけれども、匿名化をするという行為も、結局は機関・組織 として体制をつくり、匿名化をするということも考えないといけないからです。そうす ると、組織としては、どういう体制をとるかというのは、その組織のまさに判断である ということですから、匿名化の対応表がその組織の中にある限りは、外から見たら、そ こでの管理というのは、どこにあっても同じであり、そういう見方もやはり重視しない といけないのだろうと思います。従って法律上の責任ということについては、その組織 として管理するという考え方に基づけば、その組織においては、どこであっても個人情 報ということになると考えます。ただ、先ほど細則にも少し書かせていただいています のは、中で扱う場所によって、法人として、匿名化も含めて、どういう体制をとるかも 考えた上で、各部門における管理体制というものを適切なものにしていけばよいのでは ないかと思います。つまり十分な匿名化が行われているのであれば、匿名化を行った後 の管理というものは必要最小限のものにしていくということで考えていけばよいのでは ないかということで、この案を出させていただいたところでございます。 【豊島委員】  今の現実面から考えますと、辻先生が言われることはよくわかるのですが、あらゆる 大学のあらゆる場所でそうなっているというのは、やっぱり考えにくいです。だから、 現実面としては、あまりそれを認めてしまうと、また全体のカバーが厳しくなり、これ も困る。だから、今、例えば完全に匿名化された、あるいは連結不可能と同じような扱 いにしていいという立場と、そうじゃない場合との違いというのは、例えばDNAを分 析する人とか、それのデータとの対比を調べるような人が非常に限定された人に固定さ れるということになりますと、ある研究の場としては非常に難しいときがあるのです。 ですから、そういう意味では、その研究室にいる人は、だれでも、そこにアクセスして 分析したいということがあるというのが、かなり匿名化されているという状況のもとで はあり得るし、だから、それをやっぱりやりたいというのは研究の一つのインセティブ としてはあると思うのです。だから、基本線としては、別機関でなければいけないとし ておいて、そのときに、こういう規制をとった場合には、特例として、それは連結不可 能と同じような匿名化されたものと扱い得るという一つの例外規定をつくったほうがよ いのではないかなという気がします。 【垣添座長】  今、豊島委員が指摘の点は、細則のところに書いてあるのではないのでしょうか。つ まり、「研究部門については必要最小限の安全管理措置を定めるなど、当該機関全体と して適切な取り扱いがなされるようにしなければならない」と。 【豊島委員】  ならないというのと、この場合には、その例外としての措置を認めるということは違 いますから。だから、ならないというのは、たとえ、一応、そこに対応表がなくても、 気をつけて扱わなければいけないということは、ここに出てきているわけで、それは一 般論としてはそうだと思うのですが、特別の、対応表を一般の人が手に入れられないよ うな状況にした場合というのは、ここには入っていないのではないかと思います。 【藤原委員】  先ほどの答えが残っていますし、これを法律的にどう考えるかという、まだ本論をお 話ししていませんので、申し上げたいと思います。  先ほど辻委員をはじめ先生方に何度かお伺いしたのは、自分が議論を間違えるといけ ないので、現場を教えていただこうという意図しかありませんの。誤解のないようにお 願いしたいと思います。  まず、今から申し上げていることをお聞きいただければ、別に信頼していないのでは ないということはわかっていただけると思います。この書き方で気づいたところだけ申 し上げておきますと、最初のところに海外との共同研究に関する細則がありますが、忘 れないうちに申し上げておくと、それの(2)のところに「提供者の個人情報やプライバシ ーが保護されていること」と書いてあります。しかし、私の感覚では、プライバシーと いう言葉を使うと、かえって現場は困るのではないかなと思います。非常に包括的な概 念ですから、「個人情報が保護されていること」で十分ではないかと思います。プライ バシーというのは非常に包括的なので。私は、そういう意味で法制度的なことを申し上 げようとしているだけです。  それから2番目ですけれども、先ほどの福嶋委員のお話等を考えると、このガイドラ インで、そもそも2.(2)で、「連結不可能匿名化された情報及び連結可能匿名化さ れているが」云々は、この三つの法律における個人情報には該当しないと言い切る必要 があるのだろうかというのが疑問です。要するに、この細則に書いてあるような三角形 の形で、先ほど福嶋委員が言われたように、匿名化の状態とか、匿名化の仕方によって は、本指針でいう個人情報として扱わない場合があり得るということが確認できれば、 それが一番、私は、よろしいのではないかと思います。  と申しますのは、今出ているいろいろな省庁のガイドラインで、法律の定義に当た る、当たらないと言い切っているものは多分ないと思うということが一つです。それか ら二つ目は、それで先ほど主な対象機関を聞いたのですけれども、あるいは辻先生に質 問させていただいたのですが、内閣府が出している本の中で、多分、今の公定解釈的な ものだと思いますけれども、容易に識別できるかどうかというところで、匿名化した り、システムが違ったりして、簡単に参照ができないものであれば、それは容易に照合 できないから、個人情報としては扱わないという記述がございます。ただ、その中に、 組織として、組織内で経常的に使っていたり、事業者同士で匿名化しても、頻繁に情報 交換しているような場合は、そうではないと書いてあるので、どのぐらいの頻度なのか ということを確かめたのです。  どこが主な対象かと聞きましたのは、個人情報保護法を軸にこれが書いてあるのか、 スタンスが若干ぶれているような気がしたので聞きました。と申しますのは、初めのほ うの議論で「個人情報とは」ということで高芝委員等から質問があって、「他の情報と 照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることなるものを含 む」ということでした。この書き方は、個人情報保護法の書き方ではなくて、行政機関 法とか、独立行政法人法の書き方ということが確認されたわけです。つまり、容易性と いう要件を外してしまったわけです。そうすると、その点だけを取り上げると──ここ は法律家と医学をやっておられる方の頭の使い方の違いだということは承知した上で申 し上げるのですけれども──他の情報と照合することができて、識別することができる というのならば、対応表が置いてあれば、個人情報ではないかということになります。 要するに行政機関法とか、独立行政法人法のほうが厳しいということです。その厳しい ほうに合わせたということは、現在、国立大学等でやっているので、個人情報保護法で 書いたところで、行政機関個人情報保護法とか、独立行政法人等個人情報保護法も適用 される以上、かえって現場の方々がやりにくくなるといけないから、両方をにらんだ末 に、こういうふうに書くことにしたのかなと理解しているのです。  そうすると、ここで匿名化云々という話が出てくるわけですけれども、先ほどの辻委 員の議論というのは、例えばA大学の医学部が、大学の医学部と附属病院の形で、匿名 化にした情報を提供すれば、法人としての単位で見られるのに、例えば、それが全く違 うB大学とか、B大学の附属病院というところで交換することになると、その途端に情 報の性質が変わるというのは、いかにも不合理ではないか、そういうふうに相対的に考 えるのは論理的ではないのではないかという質問だと思います。私はそれはおっしゃる ことは大変よくわかるのです。ただ、わかるのですけれども、結局、そういう技巧的に 説明しなければならないのは、今申し上げたようないろいろな条件のもとで、連結可能 だけれども、対応表をしっかり管理して、そしてお互いに使えないようにしたら、もう それは個人情報でないとみないと現場としては非常に困るということであると、技巧的 ではあるけれども、そういう説明をせざるを得ないのだろうなということで申し上げて いるわけで、合理的か、不合理かといえば、それは不合理という向きがあることは多分 そうだと思います。しかし、不合理さを解消しようとすれば、もとの原則に戻って、ど こへ行っても個人情報ですと言うのが筋となります。やはり個人情報ですと言えば、不 合理さは解消できると思いますが、それを避けるために、ここで今まで議論をしてきた のかなと考えています。  それからもう一つだけですけれども、それじゃ、匿名化してきたことに対するインセ ティブ、一生懸命、現場の先生方が匿名化してきたのにインセティブが働かないじゃな いかということですが、それは先ほど事務局からも、座長からも説明がありましたよう に、3ページの一番下に、匿名化したら、やはりインセティブが働いていて、管理の次 第によっては、安全管理措置の程度は違ってくるわけで、それなりの意義があるのだと いうことだと思います。法律というか、個人情報保護法とか、ほかの法律を見ながら、 質問にお答えすると、そういうことになるということです。 【垣添座長】  ありがとうございました。 【辻委員】  私は、今議論しているのは、やはりヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針で ありますから、そういう指針を打ち立てていくというのが、ここの役割だと思います。 法解釈を書くということではないと思います。ですから、私は、やはり機関における─ ─これは提案ですけれども、機関における匿名化の仕方についての厳密な指針というも のを示すことは必要であって、それを実現した形においては、連結可能匿名化された検 体については、法の対象としてではなくて、研究の対象として扱えるとすべきです。そ の検体がどこに存在していても、その色が変わるということはないほうがよろしいと思 います。それが私の提案です。検討いただければと思います。 【垣添座長】  ありがとうございました。 【吉倉委員】  今、議論を聞いていて、大事な議論だとは思うのですけれども、今の段階で、この文 章に対するどういう対応をするかということを考えた場合に、そもそもの質問は、(3 )のところがよくわからないという話だったと思うのです。それで、私の提案ですが、 この(3)というのは、ちょっと試みですけれども、例えば2行目ですね。「遺伝情 報、診療情報等個人の特徴や体質を示す情報などを考慮し」というのを、「個人情報の 判断に関する細則」の3行目の「具体的な状況に応じて個別に判断することとなる」に 加える。つまり、個人情報となるか否かを「遺伝情報、診療情報等個人の特徴や体質を 示す情報を考慮し、具体的な状況に応じて個別的に判断する」という文章で落ち着けた らどうかなというのが提案です。 【垣添座長】  ありがとうございます。  座長としては、これはもっと議論すべきだというのは重々承知しておりますけれど も、スケジュール的に、これは極めて厳しい状況に置かれているというのは繰り返して 申し上げているとおりで、今の議論に関しましては、資料3の1ページから3ページま でにまとめられているもので一応、この場はまとめさせていただいて、ただ、辻委員 や、あるいは福嶋委員から発言のような意見は付記する形で、とりあえずこの場はおさ めさせていただきたいと思います。  それから、福嶋委員から指摘の環境整備に予算措置も加えるべきであるというのは、 それはこういう指針に関してはどうかなという感じはいたします。既に福嶋委員の発言 の趣旨は、これまでの議事録の中にも十分盛り込まれておりますし、それでこの場をお さめさせてください。  それから、先ほど藤原委員の指摘のプライバシーの件ですが、これは確かに指摘のよ うに除いたほうがよろしいのではないかと感じました。  誠に申しわけありませんけれども、一応、1ページから3ページまでは以上で終わら せていただきまして、先に進ませてください。  次は研究者等の責務についてお願いします。 【高山研究企画官】  続きまして、5ページの「研究を行う機関の長の責務」でございます。ここにつきま しても、先ほど議論いただいたことを踏まえて定義等を見直していますので、よろしく お願いします。  まず、言葉の問題といたしまして、「機関の長」の用語につきましては、現行指針に おいて必ずしも法人の代表者及び行政機関の長を意味せず、学部長や附属病院長を想起 させますので、新たに「研究を行う機関の長」として、ここでは整理しています。その 「研究を行う機関の長」の位置づけとしましては、個人情報保護法の責任は、法人の代 表者及び行政機関の長にあることに鑑み、個人情報保護法の実施にかかる者を含め、本 指針に基づいて研究実施の最終的な責任を行う機関の長は、法人の代表及び行政機関の 長であるということを想定して整理しています。  また(2)に、現行指針において「研究機関の長」として例示されている学部長、保 健所所長等は、法人の代表者あるいは行政機関の長の命を受け、責任と権限を明らかに することによって、研究を統括的に実施する役割を担うことができる「統括的な責任を 有する者」を規定できるようにしています。  また、(3)のところについては、安全管理措置にかかる規定として、個人情報の漏 洩、滅失の防止等のための安全管理措置を講じることを規定し、その旨について細則中 に示しています。措置の具体的内容については、各機関で、この指針に沿って適切なも のが定められるという形になります。  加えて死者の情報について、7ページに整理しています。法は、生存する者の個人情 報をその保護の対象としていますが、人としての尊厳等を配慮すべき点があることも考 慮して、本指針においては、死者の情報についても、同様に安全管理措置を講じて適切 に保護すべきものとして扱うこととして、細則中に規定するという形での整理案です。  あと、(4)につきましては、先ほどの保護すべき個人情報でも触れましたが、個人 情報でない情報を扱う際にも倫理指針として適切に管理することを規定しています。  (5)では、法第22条の趣旨を踏まえ、研究にかかる業務を外部機関に委託する際 の委託者の監督者責任を規定しています。  (7)におきましては、法第19条の趣旨を踏まえ、データの内容の正確性の確保に ついて規定しています。  以上です。 【垣添座長】  ありがとうございました。この部分に関して何か意見はありますか。 【江口委員】  1点だけ、先ほど議論になってなかったところで、コメントだけ、議事録に載せてお いていただきたいのですが。  2ページの海外との共同研究の細則の(3)で、共同研究を海外と実施する場合に、 「海外の研究計画の科学的・倫理的妥当性について、相手国または相手国における機関 内の倫理審査委員会により承認され」というのは、これはマストの条項として入ってい るとしたら、相手国に倫理審査委員会がない場合には、ほとんど共同研究ができませ ん。その場合には、日本国における倫理指針に従って、この精神にのっとって進めると いうのが実際的であって、向こうの海外の研究機関に、現在、倫理審査委員会がないと きに、つくりなさいといって、努力するのは非常に実態的には大変じゃないかなという 思いがいたします。  それから今回のところで初めて、「統括的な責任を有する者」というものが出てきた のですけれども、これを置いた背景というのは何でしょうか。私は、研究機関の長の例 示の細則で病院の場合は病院長、保健所の場合は保健所長、大学医学部の場合は医学部 長というのは非常にすっきりと頭の中に入るのです。しかし、法人の長となって、なお かつ「統括的な責任を有する者」というものが新しく入って、それが病院長になりまし た。これは、これ以降、何かこの指針全体で生きてくる責任者なのでしょうか。どうい った位置づけなのでしょうか。 【安藤生命倫理・安全対策室長】  これまでの委員会の議論中で、組織として、あるいは組織の長としての責任がどうな るのかという議論がなされていたところです。個人情報保護法上の責任を考えた場合 に、いわゆる組織、法人の長がその責任主体となるといったことも考慮して、この指針 上の規定ということで、研究を行う機関の長、つまり最終的な責任を負う者は法人の長 である、代表者であるといったことで、きちんと確認させていただこうということで、 この規定を置いたものです。  ただ、実際上は、かなり研究の実施にあたっては、現行の指針にありますように、長 の命を受けて、その下の者、学部長等が行っているという実態があると思いましたの で、そこはきちんと長の命を受けて、その責任関係も明らかにした上で、そういった者 が、これまでと同じような形で行うといったことで規定し直したものです。 【垣添座長】  ありがとうございました。今の江口委員の発言の前段の部分は、議事録にもちろん残 させていただきますし、可能な部分は取り入れて修正させていただきたいと思います。 後段の部分に関してはよろしゅうございましょうか。 【江口委員】  こう理解してよいのでしょうか。今日の資料の中では、連結可能匿名化であっても、 それが病院を持っているところと研究所を持っているところというのが二つ、例えば、 がんセンターもそうだろうし、老人総研さんも、そういったところがあるかとは思うの ですけれども、そういったときに病院が主体になって研究を進め、そのあるデータにつ いての解析を研究所に対してお願いをしたときには、おそらく病院の中で個人情報保護 法の精神にのっとって、なおかつ倫理指針にのっとった手続きをやっていくのだろうけ れども、研究所については、緩やかな形で、今日の資料では個人情報ではないという形 で言われていますけれども、そういった取り扱いになる。研究所と病院とは違うという イメージでいたのですけれども、今日の、ここの研究を行う機関の長というのが、もっ と上の法人の長だとすると、その辺は私の二つに分けた理解、病院はかなり厳しいのだ けれども、そこでかなり匿名化されて厳しくやっているのだけれども、そのデータを解 析をお願いするとか、タイピングをお願いするとか、そういうのを研究所にお願いした といったら、研究所のほうは、また緩やかな形で対応していいと理解してよいのでしょ うか。 【安藤生命倫理・安全対策室長】  先ほど来、議論になっていたところとも関係があると思いますけれども、この案の中 では、研究所と病院が同一法人内にあれば、それは研究所に行ったところについても、 個人情報として扱ってはどうかというものです。ただ、病院において匿名化をしている ということ、きちんとした管理をしているという実態も考慮しながら、実際に研究所に おける遵守すべき安全管理措置の内容については弾力的に考えていこうということで、 この細則を規定させていただいものです。 【垣添座長】  廣橋委員、国立がんセンターの病院と研究所の関係で、例として発言いただけます か。今の指摘に関して。 【廣橋委員】  国立がんセンターも、その例ですけれども、一つの組織の中に病院と研究所がありま して、病院で試料が採取される、あるいは場合によっては、江口先生がおっしゃったよ うに、臨床研究が行われる場合もある。そこで、その試料を採取する機関の中に個人情 報管理室がありまして、管理室には管理者がいて、そこで匿名化が厳密になされる。そ の後、連結可能匿名化された試料と臨床情報が研究所に運ばれ、研究所では匿名化され た状況で研究を行います。その段階を個人情報とみなすか、みなさないかというのが、 先ほどからの議論なのです。今回の案では、それを細則で、必要最小限の管理を行うこ とになっているのですけれども、ちょっとそれがどういうものであるかということが具 体的になっていないというところもあって、実行上、やや難しいかなという感じを私は 持っています。むしろ匿名管理のところをきちんとやっているということで、一般的な ゲノムの指針で今までやってきたような範囲内で監督するのが、もう一つのあり方だと は思っております。 【位田座長代理】  先ほどの江口委員の質問や意見では、研究を行う機関の長というのは、もちろんここ に書いてあるのだけれども、「統括的な責任を有する者」というのが、この後、本指針 の中では出てこないから、例えば病院長とか、研究所長とか、そういうのはどうなるの だという話ですよね。基本的に今回の見直し案というのは、責任の体系として、一番上 の研究を行う機関の長、つまり大学で言えば学長なり、総長なりが最終的な責任を持 つ。しかし、実際に研究をしているのは、例えば医学部であり、医学研究所でありとい う形になっているので、それぞれの機関の長に権限を下ろすという形で実際には研究を していただきましょうということです。それぞれの研究所なら研究所、学部なら学部の ところで、きちんと例えば匿名化の措置をとるのだけれども、しかし、その責任は一番 上の学長となります。学長は、きちんとそれぞれの研究の現場で、もしくは、それぞれ の学部なり、研究所のところできちんと匿名化し、もしくは個人情報を管理するシステ ムがとられるように監督します。そういう一番最終的な権限と責任は一番上が持ってい ますが、現実には、それを下ろすことによって、つまり「統括的な責任を有する者」に 下ろすことによって、ここに書いてある研究を行う機関の長と、この後にずっと書いて あることは、場合によっては「統括的な責任を有する者」に読みかえてやるということ です。そうすると、大体、これまでの指針どおりの考え方でいけると思いますが、そう いうことではないでしょうか。  要するに今度は、責任の体系をはっきりさせたということです。今までは、一番上ま であ上がらなかったのを、法人として扱いますから、法人の長の責任が最終的にはあ り、権限のもともあります。しかし、実際にその法人の長が全部を監督するというの は、なかなか難しいですから、それぞれの研究所の長なり、学部長なりに権限を下ろし て、それぞれの学部長なり、研究所長が、ここで言う研究を行う機関の長とみなして、 実際に研究を行い、個人情報の取り扱いもやることになります。しかし、何か問題があ ったときには一番上が責任を取るという趣旨だと思います。 【江口委員】  今、先生が言われたことは、凡例か、何かわかりませんが、どこかで書いてないと、 理工系の人間にとってみれば、単語を普通にサーチしたときに、これ以降はないですよ ね。「統括的な責任を有する者」という言葉は何なんだろうというのを疑問に思って、 読みかえしなさいと言われると、法律って、そういうものかと、何かちょっとついてい けないところがあります。 【垣添座長】  わかりました。江口委員の指摘はもっともだと思いますので、これは事務局で何か工 夫できると思いますので、発言を取り入れてください。よろしくお願いします。  それでは、研究を行う機関の長の責務ということに入りましたので、(8)から(17 )、9ページから12ページまでの説明をお願いしたいと思います。 【高山研究企画官】  それでは、研究を行う機関の長の責務のところで、(8)からです。  (8)としましては、細則2の2で多施設共同研究における倫理審査のあり方につい て規定しています。  そして次の10ページの(13)については、例えば研究責任者が苦情等の窓口の担 当者を兼ねた場合は、苦情を申し出にくくなることも想定されるため、機関のケースバ イケースによって配慮が必要であることを規定しています。  また(14)については、試料等の提供が行われる機関及び研究を行う機関の長が、 法人の代表者あるいは行政機関の長となることに伴い、同一機関内で資料提供部門から 研究を行う部門への試料等の提供が行われる場合、匿名化が必要になるということを示 したものです。  12ページの(16)(17)ですがが、(16)については、法第26条の趣旨を 踏まえまして、提供者から個人情報の訂正等を求められたときは対応すべきことを示し ております。(17)については、訂正等を求められた場合に、その求めに応じないと きは、本人への理由の説明等、努めるべきことを規定しています。しかし、その理由を 説明することが本人の精神的負担となる等、適切でない場合もあるため、慎重に検討す べきこととしています。  以上です。 【垣添座長】  ありがとうございました。今の部分について何か発言はありましょうか。 【江口委員】  9ページの共同研究の取り扱いに関してすが、共同研究というのは、指針で過去にも 述べられていますが、共同研究の内容というのを規定する必要があると思います。例え ば大きな医学部と大きながんセンターが共同研究をしているというのはイメージしやす いですが、例えば大きな医学部がサンプルを集めようとしたときに、町のお医者さんに 頼んで、サンプルを集めたりしますよね。その町のお医者さんというのが、例えば10 床ぐらいベッドを持っているとか、あるいは20床ぐらい持っているとかという機関が たくさんあって、そういったところに大学の先生が頼みに行って集めてくる。そうする と、それも共同研究という枠の中で入れちゃうと、9ページの下の7〜8行目にありま す「他の参加機関の倫理審査委員会が機関特有の問題がないと認める場合には」と、そ こも倫理審査委員会があるかのような形で書かれている。患者さんに日々接して、診断 をやられている先生方の参加がもうちょっと楽なように考慮していただけるとありがた いのじゃないかなと思います。ただ、これは間違っているかもしれません。できれば、 福嶋先生、意見をいただければと思うのですが。 【福嶋委員】  これは多施設共同研究ということで、ある一定規模の複数の施設の共同研究というこ とだと思います。江口先生が言われたような事例というのは、一つの研究計画の中で、 主任研究者はある機関、大学にいて、試料を提供する方は、同じ研究計画の中の協力者 のような形の位置づけでいいのではないかと思います。施設間ではないので、その各施 設での迅速審査なんかも必要ない。一つの共同研究であるという位置づけでよろしいの ではないでしょうか。 【垣添座長】  ありがとうございました。 【吉倉委員】  この共同研究ですが、共同研究は国内の場合もあるし、国外との共同研究もあると思 います。ここで書かれた内容というのは、おそらくは国内の共同研究を頭に置いて書か れた文章のように思います。もしもそうであれば、これは国内における共同研究と明確 に書き、国外は前に規定していたと思います。 【垣添座長】  はい、わかりました。指摘のとおりではないかと思います。ここは国内のみに限定し ておいて、国外のものは先ほどの規定に従いたいと思います。 【辻委員】  11ページの真ん中ぐらいでしょうか、細則のところですけれども、ここでも、試料 等の提供が行われる機関において、みずから匿名化を行い、研究を行う場合も、連結可 能匿名化された情報は個人情報に該当すると明記しています。さっきの議論と同じこと になりますけれども、全体として統一性のある形の記述に工夫いただいたほうがいいの ではないかなと思います。ここは単純に書いていますから、先ほど議論もいろいろござ いましたけれども、同じことが適用されるところかと思います。 【垣添座長】  わかりました。ありがとうございます。 【豊島委員】  今の共同研究の場合ですけれども、先ほど江口委員がおっしゃった場合の一つとし て、例えば製薬会社などが、認可後の薬の調査を行う場合に、例えば小さい開業医程度 のところでも、その認可後の調査には参加していることはよくあるのです。そのとき に、例えば今後の問題として、薬の副作用その他をチェックするということであれば、 それは爪かもしれませんし、血液かもしれませんが、そういうものをいただくこととい うのはあり得ます。その場合、現時点では、データ整理に関しては、地域の中核病院か 何か、きちんと倫理委員会を持っているところが中心になって、そこでまとめてデータ 整理をやっていますので、それに対応するような形で試料の収集及び匿名化というのを 行うということがあり得るのではないかなと思います。そうしないと、現実の現場の問 題として、認可後のそういう検討ができなくなるのじゃないかなという気がします。 【垣添座長】  今の豊島委員の指摘は、いわゆるトシコジェノミクスということでしょうか。薬が販 売された後、いろいろ調査するとか、あるいは臨床治験にかかわる多施設共同研究のよ うな場合に非常に重要になってくると思います。しかし、これは遺伝子解析研究に関す る三省指針の個人情報保護法との対比の関係でありますので、治験に関するものは本 来、ここに含まれてないのです。ただ、指摘の点は非常に重要だと思いますので、これ は別途、本省内で何か検討されているのじゃないかと思いますが、これは事務局から何 か発言はありましょうか。 【高山研究企画官】  治験に関することですので、薬事法関係を所管する厚生労働省の中の医薬食品局にお いて、その取り扱いについて検討しているかと思いますが、今のところわかりません。 ただ、今回、こういう意見が出たということは、事務局のほうから伝えさせていただき ます。 【垣添座長】  今後の研究の上で非常に重要な点なので、ぜひ検討ください。 【江口委員】  現在の倫理指針は、治験に関しては外しているのですけれども、私の知る限りにおい ては、治験の中で遺伝子研究をやるということは明示的に書かれていないために、ある 製薬会社においては、治験のための委員会と同時に別途、この倫理指針に基づく委員会 を設けて二重で審査しているというのが実態だろうと思います。  今、豊島委員の言われたことは、この倫理指針は、治験等は外れるのだからいいんだ じゃなくて、本当にこの枠組みの中で重要な問題として今後あらわれてくるだろうと思 います。それを、ここで本当は議論しなければならないのですが、時間的なものもある のでコメントだけは述べさせていただきたい。 【垣添座長】  ありがとうございます。まさしくお話のとおりだと思います。本当は、この場で、こ の三省指針の見直しをかけるときに、今のようなことを含めて議論すべきだというの は、私も重々承知しているのですが。 【具嶋委員】  製薬企業で治験とか、臨床治験とかは薬事法で外されているので、議論にしたくはな かったのですけれども、FDAが今年の末には、ファーマコジェノミクスのガイダンス を出すことによって、臨床治験における遺伝子検査に基づく治験は進むと思います。そ れについては、この三省庁の倫理指針を尊重しながら、また業界としても、独自の何ら かの検討を始めているし、行政においても、FDAと同時に、ファーマコジェノミクス で国際的に遅れないように、何らかの措置を出してくれると思います。 【垣添座長】  ありがとうございます。それでは、先に進ませていだたきます。 【高山研究企画官】  「研究者の責務」のところで、12ページ、13ページからです。  (3)の細則については、まず個人情報保護法第23条第4項第3号の個人データを 共同で使用する場合の要件について追加しています。また第29条を踏まえ、インフォ ームド・コンセント取得の際の規定の追加をしています。  15ページの(6)につきましては、住民等、一定の特徴を有する集団対象に地域集 団の遺伝的特質を明らかにする可能性がある研究の実施にあたり、研究の透明性の確保 の観点から、地域住民に対する説明会の開催や、継続的な情報提供、対話に努めるべき ことを規定しています。  (10)につきましては、研究の一部を外部に委託する場合の手続きとして、委託機 関側で倫理審査委員会の承認等を得たことを受託機関へ提供することを規定していま す。  7の「個人情報管理者の責務」につきましては、(3)個人情報管理者の業務を明確 化するための記載を追加しています。  8の「倫理審査委員会の責務及び構成」については、(6)の細則で、倫理審査委員 会の議事内容の非公開要件に競争上の地位の保全を規定しています。  以上です。 【垣添座長】  ありがとうございました。何かありましょうか。 【位田座長代理】  15ページの(6)ですが、「地域住民等」ということで、「地域」ということが入 っていますが、その「地域」ということを書くと、何となく限定されたような形になる ので、必ずしも「地域」という言葉は、ここでは必要ないのではないでしょうか。「地 域」というと、何となく例えば久山町とか、熊野町とか、そういう単位を考えてしまう のですけれども、もっと幅広いケースもあるでしょうし、これは将来の話ですが、例え ば日本人全体をというケースもあり得るでしょうから、それでは「地域」とは言えませ ん。要するに国民と言う必要があると思います。「地域」を除いて例えば「住民」、も しくは「地域住民」を除いて「一定の特徴を有する集団」だけでもいいのではないでし ょうか。そのほうが幅広く意味できるのではないかと思います。 【垣添座長】  今の位田委員の発言に関していかがでしょうか。 【佐々委員】  今申し上げるのが適切かどうかわからないのですけれども、この会に出席させていた だいて終始、教育とか、そういう病気であるないにかかわらず、ヒトゲノム研究や遺伝 子解析に対して、市民も理解を深め、協力できることは協力するし、また市民の権利も 認められるということをお願いしてきたつもりなのです。今回、それに関する項目が、 夕べ見た範囲では見つけられなくて、予算措置まではとてもつかないような状況である と思うのです。あえて読みかえをするとき、今のところの継続的な対話というところ で、地域とか、市民での理解を深めるというようになるのかなと思いまして、ここのと ころをもう少し幅広くお願いするしかないかなと思います。「一定の特徴を有する集団 」というと、とても全体の理解が進みませんので、どこかで、そういうことを考えてい ただきたいと思います。 【垣添座長】  わかりました。今の指摘の点は、少し修文することで取り入れることができると思い ますので、工夫させていただきます。 【南条委員】  今のことで、「地域住民」を取っちゃうと、すごい限定した専門集団みたいなイメー ジも与えると思います。一般の本当に素人で、よくわからないような人たちに、これか らいろいろな検体を取っていくというところでという議論が随分前に行われたと思いま す。だから、このままでよいと思います。「等」というところで、いろいろな解釈が出 てくればよいので。「市民」というと、まったく意味が違ってくるし、「住民」という と、何かよくわからなくなってしまいます。やっぱりこのままでいいと思います。これ を変なふうに変えると、また別のイメージが出てきてしまいますから。 【垣添座長】  ありがとうございました。ほかに意見はありませんか。 【福嶋委員】  今、佐々委員が言われたことは非常に重要なことで、できれば、基本方針のところに (8)という項目を設けて、社会全体の理解を深めるために努力するという趣旨で盛り 込んではいかがでしょうか。ただ研究を行うためだけではなくて、社会基盤の形成とい うことにも力を入れるべきだということは述べたほうがいいように思います。 【垣添座長】  ありがとうございます。「地域住民」の点はいかがでしょうか。 【柳川委員】  私も疫学の立場で、よく地域を対象に研究を進めることが多いので、意見を述べさせ ていただきます。「地域住民等」という例示は私は適切だと思います。というのは、地 域または集団の遺伝的特性が明らかになるというのは、やはり比較的、地域が多くて、 しかも小地域の場合が多いです。そのほか「集団」というのは、地域ではない集団、例 えば国際的には人種であるとか、ある一定の年齢層であるとか、ある特質を持った人た ちということはあり得ますけれども、「地域」が一般的であり、これを示したほうがい いと思います。 【垣添座長】  ありがとうございました。それでは、「地域住民等」というのは残すことにいたしま しょう。 【吉倉委員】  先ほどの一番最初に(8)として、対話のことを入れるというのは私は賛成です。 【垣添座長】  ありがとうございます。  では、先にまいります。今度は「提供者に対する基本姿勢」ということで、9の「イ ンフォームド・コンセント」、20ページから26ページにまいりましょうか。お願い します。 【高山研究企画官】  それでは、「提供者に対する基本姿勢」に入ります。  20ページの(3)ですけれども、現行指針においては、研究責任者のみにインフォ ームド・コンセント取得の責務が課されていますが、インフォームド・コンセントを受 けるにあたり、研究責任者の指導・監督のもとで説明などを行う履行補助者の活動が可 能であることを規定しています。前回の議論も踏まえ、場合によっては、医療従事者の 活用が必要であることを基本としています。  また細則では、試料等の提供が行われる機関に属さない者に履行を補助させる場合の 条件を規定しています。この論点は、前回途中で議論終了となっていましたので、一つ のまとめ方を示させていただきましたが、方向性も含めて検討いただければと思いま す。  続いて、23ページの(6)に、法における利用停止の要求があった場合、すなわち インフォームド・コンセントの撤回があった場合の試料の取り扱いについて、廃棄する ことを基本として、また細則として、同意が撤回された試料を廃棄しない場合の取り扱 いについて、倫理審査委員会の承認を得るべきことなどを規定しています。併せてユネ スコの国際宣言を踏まえ、提供者の希望に基づいて処理することを規定させていただき ました。この論点も前回の積み残しですので、方向性も含め検討をお願いできればと思 います。  24ページの(7)につきましては、個人情報保護法を踏まえ、説明文書に記載すべ き内容について追加するべき事項を細則中に規定しています。この中で、長期間継続す る研究では、研究を継続して実施するために必要な組織体制等に対する研究機関として の考え方を盛り込んでいます。この論点につきましても前回の積み残しですので、方向 性も含めて検討をお願いいいたします。 【垣添座長】  ありがとうございました。 【福嶋委員】  (3)の「インフォームド・コンセントの履行補助者に関する細則」のところで、今 までの三省指針にはなかったインフォームド・コンセントの説明の部分と同意の部分を 機能的に分けたというのは非常にすばらしい案だと思います。それで、説明は医療従事 者ではなくても、きちんと研修を受けた人であればいいということですが、それはその とおりだと思います。  もう一歩進めて、同意を得るというプロセスですけれども、通常は、試料提供という のは、どうしても採血という医療行為をイメージしているので、医療従事者が最後はか かわるだろうということだと思います。しかし、研究の進展によって、爪ですとか、髪 の毛ですとか、必ずしも医療行為を伴わずに試料が提供されるということも予想されま す。そうすると、なぜ同意を得るところが医療従事者でなければいけないかということ を考えると、これは個人情報が漏洩されない措置という意味だと思うのです。そういう ことを考えますと、必ずしも試料提供というのが医療現場で行われるわけでもないわけ ですので、原則としては、医療従事者がインフォームド・コンセントの同意を受ける、 そのプロセスに立ち会うというのは原則だろうとは思いますが、インフォームド・コン セントの多様性ということを考えますと、そのほかの場合ということも考えておいたほ うがいいと思います。医療従事者が行わない場合には、個人情報が漏洩されない措置が なされているということについて倫理委員会で承認を得ておく。倫理委員会できちんと 個人情報が漏洩されない、同意書の管理がしっかりしているということが担保されてい るのであれば、必ずしも最後の段階、同意書の管理というものを医療従事者が行わなく てもいいのではないかと思います。 【垣添座長】  ありがとうございます。この部分は、前回の研究の進展等に伴う見直しの論点という ところで、途中で終わっているところなので、もう少し議論いただきたいと思います。 要するにインフォームド・コンセントの際に、説明をする人と同意をする人を分け、説 明に関しては、前回の議論で、一定の訓練を受けた人がそれを担当することができると いうふうに、大方、意見は一致をいただいたのではないかと思います。しかし、同意に 関しては医療従事者でないといけないかどうか、もう少し発言をいただければと思いま す。 【栗山委員】  これは、お互いの信頼関係というのが一番大事なことになってくると思うので、補助 者をきちんと説明できるように機関で育てるということはすごく大事なことだと思いま す。その人が、訓練を受けた人であるかどうかというのがわかるようなことを、資格み たいなものを与えられたら、もっとよいのではないかなと思います。変な例ですが、今 朝だったか、新聞で見たら、薬を売って説明する人、それがきちんとできるという人に は、洋服を、普通の一般人でない服装にさせるとすごくわかりやすいのではないかとい うようなことが出ていたと思います。何かそういう工夫をされて、信頼関係さえあれば 特に問題はないのではないでしょうか。もちろん個人情報の管理がきちんとされている という前提のもとですけれども。そういう方が説明されたり、取得されたりしても問題 はないのではないかなと思います。 【垣添座長】  ありがとうございます。今の資格ということに関して、何か福嶋委員、お考えです か。 【福嶋委員】  こういう方面について我が国では、全国共通で十分な知識を持ち、あらゆる研究に関 して説明ができる、そういう資格というのがまだないのです。私たちの学会(日本人類 遺伝学会)では、認定遺伝カウンセラー制度というのを来年4月からスタートさせます けれども、そういう人材が、こういうものにコミットして貢献できるようになればいい なと思っています。けれども、全国的に見れば、すべての研究計画を説明できるという 人材は、まだ育ってないと思います。ただ、次の細則の中で、倫理委員会がきちんと評 価するということになっていますよね。それぞれの研究計画ごとに、補助者を使う場合 には、評価するということになっていますので、徐々に、こういう人材が育ってくると いうのを期待しています。 【垣添座長】  それは間違いないことでしょう。ありがとうございます。 【位田座長代理】  説明は必ずしも医療従事者でなくてもいいと思いますが、同意のところで、もちろん 信頼関係は必要なのですけれども、しかし、場合によっては、全く初対面の方が説明を されるというケースもあり得るわけですし、そのときに信頼関係をどう築くかという問 題があるので、基本的には制度ができるのが一番よいと思います。しかし、今、制度が できていない段階で、説明は必ずしも医療従事者でなくても、それがよくわかる人であ れば、理解してもらいやすいように説明をしていただく。これはよいことだと思いま す。同意は、その人が同意をしたということの秘匿性というか、そこを確保するのにど うするかという問題ですから、少なくとも制度が整っていない限りは、現状において は、医療従事者であって仕方がないのではないかと思います。何らかの形で、それ以外 の者に責任を負わせるような体制ができれば、全国一律に、そういう制度ができれば、 そちらに広げてもいいでしょうけれども、同意と説明は別な話だと私は思っていますの で、福嶋先生の意見には反対をしたい。  それからもう一点、履行補助者ということについては、20ページの一番下の・のと ころで、倫理審査委員会が承認をするという話は、試料等の提供が行われる機関に属す る者以外の者だろうと思いますので、これは一般的に履行補助者を使う場合にはという 形にはなっていない。私はむしろ、本則は研究責任者が説明をして同意を取るという話 だと思うのです。しかし、例外として、(2)で履行補助者に説明をしてもらうことに なります。そうすると、原則に対する例外という点でいえば、こういう例外をやってい ますということも当然、研究計画の中に記載していただいて、履行補助者の名前はだれ それということを書いて、それも倫理審査委員会で一応、承認をしていただくというの が本筋だと思ういます。研究機関以外の者の場合だけ、倫理審査委員会にかけるという 話では、ちょっと不十分ではないでしょうか。みずからがインフォームド・コンセント を受けるのに必要な業務を実施することができるかどうかという話は、一応、倫理審査 委員会の審査を通すのではないでしょうか。そうでないと、本則と例外の関係があいま いになると思います。 【垣添座長】  ありがとうございました。 【辻委員】  2点あるのですけれども、1点は、今、位田先生が、本則は研究責任者が説明をし て、インフォームド・コンセントを得るのであるということですけれども、今の研究の 規模の拡大とか、実態を考えると、それは現実的には非常に難しいことだと思うので す。ですから、それが本則であるという考え方で書くのが、ちょっと現実との乖離が大 き過ぎると思います。 【位田座長代理】  (2)の件ですか。 【辻委員】  ええ。ですから、規模が非常に大きくなっていますから、いずれにしても、研究責任 者が、例えば実際、今、検体の収集というのは、数千とか、数万とかというオーダーが あり得るわけですから、それを特定の1人の人が行うということ自体があり得ないこと ですので、それを本則とするのはちょっと現実との乖離が大き過ぎるのではないかと考 えます。現実に対応する形をもう少し表現を工夫していただいたほうがいいかと思いま す。  それから2点目は質問なのですけれども、こういうことが頻繁に行われるという意味 ではまったくないのですけれども、この前も質問しかけたのですが、例えば研究責任者 が郵送で、遠隔地にいる方に対して説明を十分にして同意をいただいて、それで郵送で また研究者本人に対して送っていただくという形でのインフォームド・コンセントの取 得とか、検体の収集ということは例外的にはあり得ることかと思います。研究テーマに よってはですね。そういったものが、この説明の中で十分にOKであるというふうに読 めるのか、あるいはそういったことも含めて対応するとなると、もう少し工夫が要るの かというところを質問させていただきたいと思います。 【垣添座長】  これは研究に携わっておられる方から答えていただいたほうがいいかもしれません が、確かに研究の進展によって、本当に1対1の関係で説明して、同意をいただいて、 サンプルをいただくというようなことから、もっと広がって、疫学研究とか、今、辻委 員が指摘のように、最終的には郵送で資料を送って、それに同意していただくとか、あ るいは、その中にアンケートのような形のものも含めての話まで広がっていくことがあ るわけです。ですから、その点に関して、もう少し説明していただければと思います。 【位田座長代理】  二つ質問があったと思うのですけれども、本則は、辻先生がおっしゃっているのは大 規模な研究の場合には、確かにおっしゃるとおりなのですけれども、しかし、これは小 規模なやつも全部含めてですので、原則は(2)で研究責任者が説明をし、同意を取 る。これが一般なので、しかし、それが非常に難しい場合、例えば大規模の研究の場合 にはそうだと思いますので、それは(3)となる。ただし、誰が説明をし、誰が同意を したかというのは、やはり研究計画に書いていただくというのが本来の話だと思うので す。それを私は原則と例外と申しましたけれども、全体としては、原則は責任者が説明 をし、同意を得る。しかし、できないときには、これは例外としか言いようがないと思 いますが、一定の条件を課して、研究責任者でなくても説明をしてもよろしいとする。 同意を取るときにも、研究責任者じゃなくて、だれか医療従事者であればよろしいとい う形で下ろしていくというのでしょうが、条件をつけながら、例外として扱っていく。 ただ、誰が説明をし、誰が同意を取ったかというのは、やはり一つの研究計画の中であ れば、それは研究計画に書いていただきたいと思っていまして、それは倫理審査委員会 に研究計画全体がかかりますので、そういう形で倫理審査委員会が承認をする。そうい う手続きを取るべきだと思います。  それから、二つ目の質問については、ここには多分、郵送でという話はあまりもとも と考えてなかったので、倫理指針をつくったときには、そんな議論はほとんどしていな いと思います。ただ、これだけで郵送でよいかと読めるかと言われると非常に難しい。 可能性があるとすると、その何かもう一つ、細則でもつくって、その他の方法、つまり 対面で説明をし、同意を取る以外の方法で、研究が可能な条件、もしくは研究をしない といけないような条件をきちんと書き込んで、それが倫理審査委員会で承認される、そ ういう形をとらないとしょうがないのじゃないかと思います。現実におっしゃったよう なことは、これから大いにあり得ると思いますし、場合によってはDNA鑑定なんか は、そういう形で、例えば爪を入れていただいて、郵送してもらうというのはあり得る と思います。 【垣添座長】  わかりました。そうすると(2)に原則が書いてあって、赤で書いてある(3)と細 則の部分に、これまでの議論が取り込まれていますので、もしよろしければ、この赤の 部分はこのまま認めていただいて、今、郵送とか、新たな研究方法に関しては、もう一 項加えるような整理でいかがでしょうか。 【位田座長代理】  (3)のところに、やはり研究計画にそれをちゃんと書いておくということが必要だ と思います。 【垣添座長】  細則のところに書いてあるけれども。 【位田座長代理】  細則のところは、試料等の提供が行われる研究機関に属する者以外の者にということ なので。 【垣添座長】  研究計画に記載するのは、指摘のとおりだと思います。それは修文させていただきた いと思います。 【福嶋委員】  位田先生に質問ですけれども、先生が医療従事者にこだわる理由というのがわからな いです。個人情報の漏洩がなされない体制が整えられているのであれば、医療従事者に こだわる必要はないと思うのですけれども。 【位田座長代理】  私は、基本的に職業として守秘義務がかかっているということが重要だと思っている ので、それで、例えば体制はどっちにしてもつくってもらわないといけないわけです。 そのときに、今度は実際に同意を取る人が職業として守秘義務があるという認識がきち んとあって、場合によっては解雇されるケースもあり得ると思うのです。それほど守秘 義務というのは重い話だと思っているので、個人情報の保護という観点においては、体 制があればという話以上のものが必要だと私は思っています。しかも、個人遺伝情報の 場合にはそうだと思っています。 【垣添座長】  福嶋委員の質問は、結局、研究履行の補助者は、補助者として研究に加わってもらう ときに、既に何か守秘義務のことは当然、医療従事者でなくても、前提条件として説明 した上で研究に加わっていただくことになると思いますから、あえて医療従事者に限定 しなくてもいいのではないかという質問だと思いますが。 【辻委員】  先ほど、私の2番目の質問に対して、位田先生のほうからコメントをいただいたので すが、その点に関しては、できれば文面を工夫をいただいて、細則のところに加えてい ただくということでいかがでしょうか。 【垣添座長】  わかりました。 【吉倉委員】  遺伝学会で、もしもそういう職業をつくるというようなことがあるとすると、この文 章のままだと、逆にそれはうまくいかない傾向になるかもしれないので、「医者及び看 護師等、医療従事者等、職業として守秘義務を持つ者でなくてはならない」という具合 にしておけば、そういう職業がつくられればいいのではないのですか。 【垣添座長】  はい、わかりました。 【豊島委員】  ちょっといいですか。今現実に行われていることと、位田先生がおっしゃることと二 つの問題があるのですが。位田先生がおっしゃるのは、職業をつくるということではな くて、法律的にそうなっている人を非常に重視するということを言っておられるので、 その点だけが食い違っているところだと思います。  それから現在、現場でやっているのは、医療従事者の多分、定年になったような方を 教育して、何時間も何回も教育します。それを中央で雇って、それぞれの病院などに張 りつけて、それでやっていただいています。基本はそういうことです。 【位田座長代理】  わかりました。 【福嶋委員】  これがアメリカであれば、ジェネティックカウンセラーというのが2,000人もい て、医療職として働いているわけです。たまたま日本では、新しい医療職をつくること ができないという現実があって、現在、学会が中心になって、そういう人材を養成しよ うとしている。ちゃんときちんとした教育をして、能力もある人が、これからどんどん 出てくるはずなのに、その方はたまたま法律にのらないばかりに、こういう重要な仕事 ができなくなる。そこで縛りをかけてしまってはいけないと思うのです。ですから、ぜ ひこれは医療職というのを外して、ただ、「十分な教育を受けて」にしてほしい。  もちろん、不適切な方を雇ってやったら、研究責任者に責任が問われるわけですか ら、そこで縛りというのはかかると思います。実質的には十分な能力がある人がやれば 問題はないと思います。 【垣添委員長】  ありがとうございました。 【江口委員】  医師及び看護師等の医療従事者に関しては、その担保さえはっきりしておけば、外し てもいいと個人的には思っています。これがある限り、福嶋先生の言われたとおりであ り、新しいアクティビティーが生まれてこないと思います。  もう一点は、文書についてなんですが、先生方が文書を読むというのは、読みやすい のでしょうけれども、サンプルを提供する人が、本当に文書を読んで、理解できるのだ ろうかというところが非常に辛くて。インフォームド・コンセントの説明をする機会は 履行補助者、最終的な同意を取るところは別の人となっているので、文書についても、 そのすべてにわたって文書でいいというのは、ちょっと何か制限を加える必要があるの ではないでしょうか。私、昔読んだことがあるのですが、このインフォームド・コンセ ントは読んでもわからない。そのわからないテクニカルタームを説明するために、また 数ページにわたって説明がある。それを私は、サンプル提供者が本当に読むとは思えな いのです。 【垣添座長】  今の江口委員の指摘に関しては、確かにそういう問題が過去にいろいろありました し、現在もあるかもしれません。説明を口頭でするのと文書で説明するの両方がありま すが、説明同意書の中身が非常にわかりにくいというのは、それを解決するために、さ まざまな努力をしています。倫理審査委員会が審査するときに、わかりよさ、わかりに くさに関してもかなり立ち入った発言が増えてきていますので、今は状況は変わりつつ あるのではないかと考えます。 【佐々委員】  郵送ということについて、今回、細則をつけるのは少し早いような気がします。それ で、やはり新しい技術とか、新しいものを理解するときに、国民の理解は、この前申し 上げたようにゲノムと遺伝子とDNAの区別もつかない状態で難しいわけですから、今 回、やはり履行補助者という考えが出てきたというところまでが、みんなにも見えて、 安心できる領域ではないかなと感覚的に思います。  それで、今の説明で、数が多いからとか、研究に間に合わないからというのは、何か 本当は、それはみんなのために研究をしてくださっているのだと思うのですけれども、 勇み足に見えてしまう気持ちがするのです。だから、勇み足ではないということを、や はりいろいろなインフォームド・コンセントの取り方とか、履行補助者の活動が市民か ら信頼されて、「本当にみんな、一生懸命やっているのだ」ということが認識されるこ とが大事です。それまではやはり、ちょっと時間が熟すのを待ったほうがいいような気 がします。 【垣添座長】  ありがとうございます。 【栗山委員】  今言われたことなのですが、先ほど信頼関係と申し上げたのは、初対面だからとか、 知らない人だからということではなくて、その人が信頼できる資格を持っているかどう かというところなので、今さっき位田先生が、そういうまだ資格というのはないのだと おっしゃったところから、私は、やっぱりここに書かれているように、最終的には医師 及び看護師など、医療従事者というところに重点を置いていただいていいのではないか と思うのです。  それで、その補助者については、なるべく資格を持てるように研究機関の中で、やり やすいような資格を今度検討されたら、こういう資格を持っている人だからということ で、初対面だからとか、何とかということではなくて、信頼をもって対応できるのでは ないかと思います。 【垣添座長】  ありがとうございました。 【位田座長代理】  今、佐々委員がおっしゃったことと同じなのですが、基本的に郵送によるという、対 面でのインフォームド・コンセント以外の方法については、ここではほとんど議論して いないので、今後の研究の進展に伴う見直しで、もう一度きちんと議論をして、例えば どういうケースで、どういうふうな対面以外の方法があるかということをちゃんと議論 しておかないと、今すぐに入れろと言われても、私は審議は必ずしも十分ではないの で、これはこの次にしていただきたいと思います。 【黒木座長代理】  今の位田委員とほとんど同じ意見なのですけれども、郵送の場合、例えば採血を送っ てもらう場合は、本人のものであるというのはきちんと証明されていると思いますが、 例えば口腔粘膜を自分で採取する場合には、本当に本人のものかどうかというのが保証 されていないので、やはりもうちょっと細かい点も詰めたほうがよいように思います。 【辻委員】  皆さんの意見はそのとおりだと思いますし、そのことにまったく同意するのですけれ ども、研究の病気の種類によって、そういうことではないとなかなか難しいということ が例外的には起こり得ます。具体的に私が知っている範囲では、自分の専門ではござい ませんが、例えば糖尿病の兄弟の方に協力をいただきく際、遠くに住んでおられる方 が、自分は協力しますという状況があったときに、実際になかなか、対面でのインフォ ームド・コンセントを取ってという手続きが、かえって、いろいろな点で摩擦を生みや すいというところもあるという現実があります。極めて慎重に対応するとしても、病気 の種類あるいは研究の内容によっては、そういったところを考えないと、なかなか難し い面が多いというところは例外的にはあり得るのだと思うのです。だから、そういった ものを、すべて何でもいいですよという意味で言っているわけではなく、研究の進展に よっては、そういう部分というのはどうしても出てくるので、十分に検討した上での倫 理審査委員会で認めて、それを実行することが可能な道というものを今、つくっておい たほうがよいのではないかなと思います。縛りが非常に強くなることで、実際に研究が 止まってしまうという、進捗ができないということは起こり得ることですし、アメリカ では、そういう例は実際にいろいろあり、かなり柔軟な形でのインフォームド・コンセ ントが行われていますので、そういう例外的な場合に、そういうことがあり得るのだと いうことは、やっぱり今、対応しておいたほうがよいのではないかなと思っています。 【福嶋委員】  医療従事者にこだわるのですけれども、本来であれば、遺伝カウンセラーという医療 職がなければいけないのです。法律で決められた守秘義務が課される者をつくらなけれ ばいけないのです、こういう時代になっては。ですけれども、それは現実的にまったく 動いてないですし、難しい。医師、看護師というのは別の本分があって、説明したり、 遺伝のことについての心理的なサポートするという訓練を受けている人たちではないの で、本来の仕事とは違うのです。たまたま守秘義務が課されている仕事だから、あな た、やりなさいということで、やらされるわけです。ですから、今の日本というのは、 手段がないにもかかわらず、ただ、やりなさいと。ここで初めて、説明に関しては医療 職じゃなくてもいいですよということになって、ただ、同意を得るところが、専門家で はない医師及び看護師という守秘義務の課されている人でなかればだめだと縛られちゃ っているわけです。本来であれば、全部、こういうことを統一してできる能力のある人 を養成して、法律で定めて、守秘義務を課すというのが理想だということをまずはっき りさせておいて、その過渡期にあって、どういう態勢を取るかということで議論すべき だと思います。 【垣添座長】  その点をまさに議論していただいていると思いますが、原則といいましょうか、福嶋 委員の指摘は私もまったくそのとおりだと思うのです。遺伝カウンセリングのことが、 前回は議論されていませんけれども、これまでたびたび発言をいだだいて、そのとおり だと思うのですが、ここの取りまとめとしては、一応、履行補助者というのが新たに認 められたということで一歩前進ということで、それで一気に郵送等の研究までは含めな いで、もう少し世の中の理解を待つということにさせていただきたいと思いますが、い かがでしょうか。辻委員の意向には沿えないのですけれども、もうワンステップ置いて から考えたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。はい、ありがとうございま す。 【福嶋委員】  医療従事者は残るのですか。 【垣添座長】  医療従事者は残ります。 【辻委員】  一ついいですか。福嶋先生の意見にも賛成ですし、例えば大規模に説明をする、ある いは同意を取るというときに、今の研究費で補助員として、科研費でもって、補助員と してお願いする場合の謝金というのは決まってしまいます。実際に医療従事者的な形の 人に対して、それだけ相応の謝金というのを出すルールがないように私は思いますし、 こういうことはお題目としては結構ですけれども、逆に研究費でもって、そういう人を 本当に雇用できるかという問題もあるのです。医療職として雇用するわけではありませ んから、現実にはいろいろ問題もあるとと思います。 【福嶋委員】  個人情報が漏洩されない措置がなされていることが、倫理委員会で承認されていると いうことでは、なぜ不十分なのかがわからないのです。 【垣添座長】  医療従事者でなくてはならないというのを、さらにかぶせる理由はないのではないか ということですね。 【豊島委員】  非常に難しい議論になっていますけれども、基本線としては、そういうことが望まし いからやってほしいという附帯事項をつけるというのも一つの方法ではないかと思いま す。それは、前から何度も言っていますけれども、例えば守秘義務を破ったときの罰則 といいますか、例えば差別を、健康保険なんかで差別をしないようにという法律をつく ってほしい。これは何度も言っていますけれども、なかなかうまくいかない。だから、 そういうことを、やっぱりやってほしいということを、この文書とは別に一つ、附帯事 項としてつけていくというのが一つの方法ではないかなということです。 【垣添座長】  ありがとうございます。大変建設的な提案だと思います。そういう形で整理したら、 福嶋委員、いかがでしょうか。 【福嶋委員】  原則として、医療従事者が行うというのはよいのです。ただ、その他の場合にあって は、倫理委員会で、きちんとやっているということを承認を受けていれば、それでよろ しいのではないでしょうか。倫理委員会の重みというのは、そんなに軽いものなのです か。 【位田座長代理】  研究の重要性というのは私もよく理解していますが、個人情報、とりわけ個人遺伝情 報の重みというのが大きいと私は思っています。だから、先ほどお答えしたことは繰り 返しませんけれども、そういう観点からすると、今の制度においては、医療従事者が適 当だろうと思います。法律で縛られているとやりにくいから、現実と合わないから、法 律以外の制度を我々でここの指針の中でつくってというのは、何のために法律をつくっ ているのかなという話なので、基本は、やはり先ほど豊島先生がおっしゃったように、 何か付言をつけて、こういう制度をつくってほしいという形で、物事は進めていくべき だと思います。  あと、研究費ではなかなか賄えないからというのは研究する側の事情であって、それ を出されると、個人情報はどうなるのと言いたいので、その話は少し置いておいていた だきたいと思います。 【福嶋委員】  それでは、新しいこういう医療職をつくるべきであるというのを附帯事項で記載する ということですね。賛成です。 【黒木座長代理】  日本人類遺伝学会での制度づくりが、今、始まったばかりだというわけですから、そ のときに今日の議論を踏まえて、きちんとしたものをつくっていただいて、それが出て きたときに、本当にここに入るかどうかということをもう一回、何らかの形で検討する ということになるのじゃないでしょうか。 【垣添座長】  ありがとうございます。 【辻委員】  次のステップがいつかがはっきりわからないのです。それが極めて近い将来であれば いいのですけれども、やっぱり研究の進展に伴って、しかも十分に国民の方にも信頼を いただいて、研究を進める形の議論というのはぜひしていただきたいと思います。先延 ばしではなくて、具体的にそれを検討いただけるような形を取っていただきたいと強く 提案したいと思います。 【垣添座長】  辻委員の意向は私もよくわかります。ただ、この場の議論を聞いておりますと、一 応、ここに提案されたもので、この場は取りまとめをしまして、附則といいましょう か、望ましい将来の方向性というのを別に付記するということで取りまとめをさせてい ただきます。よろしくお願いします。  では、「遺伝情報の開示」から「見直し」まで、26ページから34ページまでお願 いします。 【高山研究企画官】  26ページ、「遺伝情報の開示」については、(1)のところに法を踏まえまして、 開示の方法及び開示しない場合の要件について規定しております。細則では、開示しな いと決定した場合の取り扱いについて追記しております。  28ページの(3)の細則におきまして、試料提供者以外への遺伝情報の開示につい て規定しています。  以上です。 【垣添座長】  ありがとうございました。この部分に関して何か意見はございましょうか。 【吉倉委員】  「遺伝情報の開示」は、開示要求する人が提供者だけを想定しているのですが、それ でもいいかもしれないのですけれども、逆に提供者以外の人には開示しないという条文 なのでしょうか。というのは、こういうデータベースなんかの運営その他について、い ろいろな疑義があったときに、調査が入ることがあり得ると思うのです。そういうこと は一切、この場合は、別の法律のもとになるという理解でいいのですか。開示の対象が 提供者だけというぐあいに考えていいかと。 【垣添座長】  事務局、どうなっていますか。 【安藤生命倫理・安全対策室長】  他の法令に基づいてやるというのは、またこことは別の話だと思いますけれども、こ の指針上は、28ページの(3)が提供者以外の人に対する開示ということで規定を設 けておりますので、提供者本人だけの開示だけを規定したということではありません。 【吉倉委員】  代諾者のところですね。代諾者だけなのですよね。 【安藤生命倫理・安全対策室長】  1が代諾者ということで規定していまして、2に、遺族、血縁者ということで、この 二つを考えています。 【吉倉委員】  それ以外は想定しないという理解でよいですね。 【安藤生命倫理・安全対策室長】  この指針の中では想定しておりません。ただ、当然、他法で、それを認めるというこ とであれば、それは指針がそれを越えるものではないと思います。 【垣添座長】  先にまいります。次は16の「用語の定義」ということから最後まで。34ページか ら40ページについて説明をお願いします。 【高山研究企画官】  それでは、最後の「用語の定義」のところです。  34から35ページに行きます。(3)のヒトゲノム・遺伝子解析研究の細則のとこ ろにおきまして、プロテオーム情報は原則として本指針の対象外であることを規定して おります。また、教育目的の遺伝子解析実習等の扱いについて規定しています。  (4)のところでは、最初にありました1の「基本方針」と同様、遺伝情報の子孫に 受け継がれ、個人の遺伝的特徴や体質を示すことについて明確化してます。  38ページの(11)については、個人情報保護法を踏まえ、研究を行う機関を法人 の代表者及び行政機関の長として整理したために補足を行っています。  (12)の細則では、個人情報保護法第23条第4項第3号を踏まえ、個人データを 共用して使用する場合に、共同研究機関間の共同利用が第三者利用に当たらないように するための要件を定めています。  以上です。 【垣添座長】  ありがとうございました。この部分に関して何かご発言はありましょうか。 【福嶋委員】  せっかくの機会なのでお伺いしたいのですけれども、対象として、医学を中心にこの 審議が進んでおりますが、正常のヒトの形質を対象とした運動学ですとか、体育学です とか、栄養学とか、そういうところでヒトの遺伝子が扱われることがどんどん増えてく ると思うのです。先日、報道がありました国立スポーツ科学研究所での金メダル遺伝子 とか、そういうものは当然、これにかかってくると考えていいわけですか。 【垣添座長】  体質に関する研究ということですね。何か事務局、ありますか。当然、含まれること になると思いますが。 【安藤生命倫理・安全対策室長】  先生が指摘されているプロジェクトが今、具体的に予算化をされているとかという話 は現時点では承知していないところです。確かに新聞で出たことはありますけれども、 具体的に予算措置で動いているというふうには承知していません。 【垣添座長】  現実はそうかもしれませんけれども、これから、次々にそういうことが出てくる可能 性がありますよ。 【豊島委員】  基本的には、金メダル遺伝子なんてあり得ないのですよ。これは非常に数の多いとこ ろを調べなければ、その能力の差は、生活習慣とか、体育の訓練とか、それにかかわっ てきますから。金メダルなんて数が少な過ぎて、その対象にはほとんどならない。例え ば肥満とか、そういうことに関してはなり得るので、これはこれに準じた形で当然行わ れているとお考えいただいていいかと思います。 【垣添座長】  ありがとうございます。 【豊島委員】  もう一つ、いいですか。先ほどの佐々委員がおっしゃった人数が多いというのは勇み 足だというお話なのですけれども、これは実は非常に難しいのですけれども、今申しま したように、生活習慣病とか、体質とかということに関しては、ある一定の数がない と、データにならないのです。ですから、全部むだになっちゃうので、そういう意味で はある数をやらなければいけない。どうしても数を扱う、統計学的にやるというときの 問題としては、そこのところは辛抱していただく。そのためには、そういう方々にかな り十分な説明をするのですが、それ以外の方がほとんど聞きに来ていただけない。なん べんもあっちこっちでやりますけれども、そういうことで、なかなか世の中の理解が得 られにくい。努力はいたします。 【垣添座長】  佐々委員の指摘の点は、前文のところでしょうか、一番最初のところに、何か文章を 入れさせていただくということで整理させていただいております。  一応、これで資料3は大変不十分ではありますけれども、通してごらんいただいたこ とになりますが、いくつも貴重な意見をいただきましたので、これを中に取り入れた り、修文をしたりさせていただきたいと思います。その上でパブリックコメントを行う ことにさせていただきます。修文につきましては、私と座長代理に一任いただければ幸 いです。  それから、連結可能匿名化の議論に関しましては、一応、この文章をもとにして取り まとめます。ただし、辻委員や、あるいは福嶋委員を中心にして発言いだたいた点は大 変貴重なものがありますので、それは付記するということで、その内容に関しても私と 座長代理に任せいただければと思います。よろしくお願いします。 【黒木座長代理】  ちょっと修文に関していいですか。 【垣添座長】  はい、どうぞ。 【黒木座長代理】  最初、1時間ぐらい時間をかけた、連結可能匿名化のページ3のところは、やはり問 題は非常にわかりにくいと思います。同じことが11ページの下に書いてあります。1 1ページの赤で書いてある個人情報の取り扱いの細則は非常に明解に書いてありますの で、こういう文章をもとにして、ページ3をわかりやすく書き直す必要があると思いま す。 【垣添座長】  議論の際に吉倉委員から指摘いだたいた点を取り入れて、修文をさせていただきたい と思います。その際、黒木委員もぜひ協力ください。  それから、資料2−1ですか、『研究の進展等に伴う見直しの論点について』と、そ の方向性については本日議論すべきでありましたけれども、時間が足りませんので、一 部は取り入れて議論いただきましたが、この点に関しては、今後の見直しの際の論点と して議論につながるように事務局で整理をしていただければありがたいと思います。  なお、お手元に資料4が配られていると思いますが、これはとても本日は十分議論は いただけませんが、方向性だけ、少し発言いただければと思います。つまり、『法制化 をめぐるこれまでの議論について』です。まず事務局から説明ください。 【高山研究企画官】  事務局から、資料4につきまして、おそらくこの会の最初のころでも一度お示しした ものですけれども、個人情報保護法の関係での国会審議にあたりまして、附帯決議が出 ています。資料4の冒頭につきましては、衆議院の特別委員会における附帯決議でし て、特に5番目の「医療、金融・信用、情報通信等、国民から高いレベルでの個人情報 の保護が求められている分野について、特に適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要 がある個人情報を保護するための個別法を早急に検討すること」、一方で三のところに 「学問の自由」という形で、それを妨げてはならないという本法の規定の趣旨を徹底す ることというものです。  その下は参議院の特別委員会における附帯決議で、先ほどの医療の中に括弧して「遺 伝子治療等先端的医療技術の確立のための国民の協力が不可欠の分野についての研究・ 開発・利用を含む」というものがついておりまして、この分野から法制化についての検 討をすべきということともに、「個人情報保護法の全面施行時には、少なくとも一定の 具体的結論を得ること」となっています。一方で、三のところに、「主務大臣は権限行 使に当たっては……学問の自由……を妨げてはならないとする本法の規定の趣旨を徹底 すること」という規定があります。  さらに政府において、個人情報保護法に従いまして基本方針を決めた際の閣議決定文 書の一番最後のところですけれども、「特に適正な取扱いを確保すべき個別分野におい て構ずべき施策」として、「個人情報の性質や利用方法等から特に適正な取扱いの厳格 な実施を確保する必要がある分野については、各省庁において、個人情報を保護するた めの格別の措置を各分野(医療、金融・信用、情報通信等)ごとに早急に検討し、法の 全面施行までに、一定の結論を得るものとする」となっています。これらに基づいて医 学研究分野について一定の検討をいただきまして、法制化が必要なのかどうなのかとい うことを今後検討しなければいけません。本日、少しでも意見をいただければ、後につ ながると思います。 【垣添座長】  わかりました。今後議論いたしますが、本日残った時間を使って、医学研究に関して 法制化が必要かどうか、個人情報保護法との関連で必要かどうかということに関して意 見があったら承りたいと思います。 【位田座長代理】  我が国で、法律の位置づけというか、社会一般における法律の位置づけとか、法律と いうのがどういう役割を果たして、どういうものであるかというイメージが多分、諸外 国と違うと思うのです。ただ、諸外国、特に欧米の先進国を見てみますと、個人情報、 特にここでは個人遺伝情報ですが、それに関連する個別法をつくるか、もしくは一般の 個人情報保護法の中で遺伝情報に関する規定がある、もしくはそういうふうに読んで適 用している。それが多分、先進国としては普通の状態だと思うので、私自身は、今すぐ できるかどうかは別として、原則は個別法をつくるべきだと思っています。  そのときに、例えば先ほど福嶋先生、辻先生がおっしゃったような制度を入れると か、そういう話もきちんとしておけば、法を離れて、こういう倫理指針の議論をすると いうのは、なかなか本来は難しい話なので、本来はきちんとした法の基盤ができて、そ れに乗っかって指針をつくっていくという話だと思います。私は個別法をつくることに は賛成ですが、それが今すぐにできるかどうかというのは、これからきちんと議論しな いといけません。  ただ、法律をあまり毛嫌いするといってしまうと科学者の方たちにしかられるかもし れませんが、法に対する何となく嫌悪感というのか、不信感というのか、それは法律家 に対する不信感かもしれませんが、ただ、やっぱり欧米の先進国は法の支配、つまり社 会の基盤は法でもってつくられています。その上で、いろいろな人間の活動があるとい うことで、きちんと法をつくってやっていくケースが多いのです。日本の場合には、何 となく法を用いて何かをするということに対して不信感というのか、非常に躊躇があっ て、例えば裁判所に持っていって紛争を解決するというのも、最近は増えてきました が、嫌がる傾向にあるので、そういうことはこの分野では払拭していただきたいと思い ます。とりわけ個人情報とか、個人遺伝情報というのは、非常に重要なものであり、研 究の重要性もわかりますけれども、私は、研究の重要性を凌駕するほど重要な価値を持 つものだと思っていますので、基本は個別法をつくるべきだと思います。ただし、その ためには十分な議論をしないといけない。 【垣添座長】  ありがとうございます。研究者の皆さんから何か、法制化が必要であるという原則論 に対してはどうでしょうか。 【豊島委員】  先ほどから問題になっている遺伝カウンセラーの立法化とか、遺伝情報に基づく差別 化の禁止だとか、そういう立法をできるだけ早く検討していただきたいというお願い事 項を入れておくというのが良いのではないかと思います。  それから最後に一つだけ。先ほどの郵送の問題を辻委員がおっしゃいましたけれど も、実は一つ、具体的な例を申し上げます。だから、やっぱり検討してほしいと私も思 っているわけですが。例えば患者さん団体から、こういう検査をしてほしいという申し 入れがあった場合に、我々で全部準備してやりますと、違うお医者さんへ行ったり、違 う人にカウンセリングを受けたり、いろいろしなければならないのです。そうすると、 患者さんとしては、今まで自分のかかっていたお医者さんですべて済ませて、こちらか らのインフォームド・コンセントを送って、それをお医者さんと相談しながら、そのお 医者さんが適切な試料を採取して、研究者に送りつけてやるということが、やはり望ま しい場合があります。これは確実にあると思います。それで、そういうことも含めて、 近い将来にお考えいただいたほうが嬉しいという気がいたします。 【垣添座長】  ありがとうございました。 【辻委員】  現場の率直な考え方を述べさせていだたきますと、やはり実態の整備がまったく伴っ ていないのです。確かに立派なガイドラインとか、いろいろなことは大事なことだと思 いますけれども、それを最適に進めるための具体的な施策というのが、まったくと言っ ていいほど、我が国はないと思うのです。その結果として、研究自体が適正に、しかも スピーディーに進むことが阻害されていると思います。また個人的に極めて無理がかか ってくることもありますし、豊島先生が今おっしゃいましたけれども、インフォームド ・コンセントの取得とか、検体の収集とかということに関しても、実際に患者さんの要 望があっても、それに実際に適切に応えられていないという現実もあるのです。  ですから、やはり今回の議論は極めて短時間、まあ、事情はわからなくもないのです が、十分に議論をしつくされていないと思いますし、大事な問題であるからこそ、十分 議論すべきだと思います。それを何とかしてほしいと思いますし、十分な議論をするこ とと、やはり具体的に施策というか、予算措置というか、そういうのを含めて動かして いただけるのだったら、現場はどれほどエンカレッジされるかというところはあると思 うのです。それがないために、極めてディスカレッジされています。 【垣添座長】  辻委員の指摘は私もよくわかりますが、今の発言と例えば法制化との関係では何か。 つまり、そうすると、今の悩みが解決されて、前向きに進むかですね。 【辻委員】  研究のことよりも個人情報が凌駕するとおっしゃったわけですけれども、研究の本当 の現場での推進というものを同じ程度に考えていただきたい。どうしてもそこは軽視さ れていると思うし、十分に担保されていて、十分にそこのところが処置されていれば、 現場の研究者はどういう形であろうとも、そんなにナーバスにならないと思うのです。 ガイドラインであろうとも、法制化であろうとも、実態が本当に良いのであれば、そん なに気にしないことではないかなと思います。やっぱり現場の整備というものが全然ケ アされないでいて、一方のところだけが進むことに関して、とても対応しづらいという ところが本音かと思います。  法制化が適切かどうかということに関しては、現場の直感としては、むしろ指針とし て示していだたいたほうがやりやすいというところはもちろんございます。 【垣添座長】  わかりました。 【栗山委員】  今の法制化の話なのですけれども、法制化すると罰則というものがつくのでしょう か。  やはり私は、医学の研究をどんどん進めていただく態勢というのは大事ではないかと 思うのです。倫理指針というのは、今回初めてできたものなのか、前々からあって、こ れを見直しているのかというところなのですけれども、もし新しくこういうものを出し てやろうというのだったら、何年か、1年でも、2年でも、これでやって、先ほど補助 者の話でも出たように、資格というものが必要です。何が必要で、これは法制化したほ うがいいという部分を見つけて、そして法制化に持っていかれたらよろしいのではない かと思います。 【垣添座長】  倫理指針に関しては、3年前からスタートしているわけです。現場でいろいろ使われ ていて、その間に新たに個人情報保護法が出てきたので、それに対する対応を考えてい るというのが実態です。ただ、この3年間に研究が物すごく進歩しましたから、辻委員 や、あるいは福嶋委員からたびたび指摘のような、三省合同のゲノム指針そのものの中 身をもっと検討しなくてはいけないという状況に来ているという状態だと思います。 【黒木座長代理】  最初は、法律なんかないほうが我々にとってはわかりやすいと思っていたのですけれ ども、いろいろ議論を聞いていると、例えば先ほどの遺伝カウンセラーの話にしても、 それが医療職として認められないとなると、やはりそれを法制化の中できちんと位置づ けることによって、こちらの指針というものの、例えば連結可能匿名化もうまく整理で きて、非常にわかりやすいものになるのだったら、やはりその基本となる法律というも のを、ちょっと長い目で見てつくったほうがいいと思っています。そのときは、遺伝だ けではなくて、診療情報とか、いろいろなものを含めた、もうちょっと大きい範囲でつ くる。そして医療従事者の定義とか何かがうまくいかなかったことを、うまくまとめる ような法律ができれば、今後、一番よいのではないかなと少し思いが変わってきまし た。 【江口委員】  辻先生が言われるのはわかるのですが、法制化の問題というのは研究を対象としてい るだけではなくて、個人遺伝情報全体を対象とするものだということと、それと研究は どんどん進みまして、今、世界的にも、センドでヒトのゲノムをシーケンスしてしまお うとかという人もいます。おそらく研究の現場から離れていって、一般の社会の中で、 個人遺伝情報というものが採取されたり、それが取引されたりするような場というの は、そんなに遠くない時期にあらわれてくるのだろうと思います。研究を縛るというよ りも、個人遺伝情報を保護するというのは、ぜひとも法制化を今すぐ議論を進めていた だかないと、社会が先に進んでいってしまうと思います。 【垣添座長】  ありがとうございました。では、議論をここでいったん打ち切らせていだたきまし て、今後、この法制化に関してどうするかということは、また改めて議論させていただ きたいと思います。  それから時間をオーバーして申しわけありませんが、10月1日に、経済産業省の個 人情報保護小委員会が開催されたということですので、委員長の位田座長代理から、そ のことに関して報告いただければと思います。 【位田座長代理】  手短にお話しします。  10月1日に、経済産業省の産業構造審議会科学バイオ部会個人情報保護小委員会が こざいました。私が委員長をさせていただいております。  ここの合同委員会では、個人遺伝情報を用いた研究面への対応について議論してきま したけれども、経済産業省では、事業の分野においても、別途、やはり検討しておく必 要があるのではないかという意見を、この合同委員会の議論の過程でいただいておりま すし、経済産業省の委員会の先生方の意見もいただいております。  そこで、経済産業省が所管する事業分野におきまして、個人遺伝情報の保護もしくは 適切な利用のために、どういった問題があって、それに対してどのような措置か必要か ということについて、この10月1日の委員会で検討をいたしました。10月1日の委 員会の結論では、個人遺伝情報を利用した事業の実態を踏まえて議論いたしましたが、 やはり事業者が遵守すべきガイドラインが必要であろうという結論が得られました。次 回の委員会では、具体的にそのガイドライン案を検討することにしております。経済産 業省の検討の進捗状況については、今後も適当な形で報告させていただくつもりです。  以上です。 【垣添座長】  ありがとうございました。  本日は、何としても資料3をひととおりごらんいただいて、パブリックコメントに回 すところまでたどり着かなくてはけないという、事務局として、内閣府から強い要請が ありますので、その線に沿って、皆さん方にも、非常に不消化な議論で誠に申しわけな かったですけれども、協力をいただきまして、ありがとうございました。  今日の議論にありましたように、これは一応、研究ということで議論をいただいてお りますけれども、実は医療情報とか、あるいは研究からさらに事業、あるいは治験の話 にも当然つながっていきますし、遺伝カウンセラーの整備が十分にいっていないとか、 あるいは差別禁止法が必要であるといったインフラの整備とか、あるいはそれに関係す るような非常に広範な問題を実は含んでいるということが改めて明らかにされてきたの ではないかと思います。今後は、法制化の問題と、それから三省指針の研究面のもっ と、今申し上げたいくつかの点などを、さらにどの時点で議論できるかということも含 めて、パブリックコメントの後にまた議論いただきたいと思います。  今後の予定を最後に事務局からお願いいたします。 【高山研究企画官】  本日も、大変、貴重な意見をいただきましてありがとうございました。検討いただき ました指針の見直し案につきましては、事務局のほうで整理させていただきまして、座 長及び座長代理の先生方と相談させていただいた後、事務的にパブリックコメントの手 続きに入らせていただきます。  なお次回は、この三省委員会の合同での開催は11月2日(火曜日)の14時から1 6時30分を予定しています。進め方については、また座長、座長代理の先生方と相談 させていただきたいと思います。  なお、その間に、医学研究における指針は、あと三つございますので、それに関係す る省の委員会で検討させていただきたいと思いますので、この中の先生方にも関係する 部分につきましては、別途案内させていただいておりますので、よろしくお願いいたし ます。本当に大変ご足労、ご苦労をおかけして恐縮でございますが、よろしくお願いい たします。  また、恐れ入りますけれども、参考資料集については机上に置いていただきますよ う、よろしくお願いします。  どうもありがとうございました。                                 ── 了 ── 【問い合わせ先】  厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:鹿沼(内線3804)  電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171