10/07/13 第2回慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・早期発見に関する検討会議事録 第2回慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・早期発見に関する検討会 日 時:平成22年7月13日(火) 10:00〜12:00 場 所:厚生労働省6階 共用第8会議室 議 事 次 第 議 題     1 参考人からの意見聴取     ・(株)イービーエムズ 平松泰成氏(肺年齢普及推進事務局)     ・(財)結核予防会大阪府支部支部長 小倉剛氏   2 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・早期発見について     (参考人からの意見聴取を踏まえた検討) 照会先 健康局生活習慣病対策室健康情報管理係  代表03−5253−1111(内2971) ○生活習慣病対策室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「第2回慢 性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・早期発見に関する検討会」を開催させていただ きたいと思います。  委員の皆さん方には、何かと非常に御多忙の折、お集まりいただきまして誠にあり がとうございます。  本日の委員のお集まり状況でございますけれども、本日は、桂委員、見城委員、中 尾委員の3名の方が御欠席との御連絡をいただいております。  また、今回は外部から御意見をお伺いするべく、有識者の三名の方を参考人として 招かせていただいておりますので、御紹介申し上げます。  まず、株式会社イービーエムズの肺年齢普及推進事務局の平松様と森矢様でござい ます。  それから、財団法人結核予防会大阪府支部長の小倉様でございます。  それでは、以後の進行を工藤座長によろしくお願い申し上げます。 ○工藤座長 それでは、皆様どうぞよろしくお願いいたします。  前回の検討会での議論を踏まえまして、具体的な慢性閉塞性肺疾患(COPD)の 予防並びに早期発見に関する検討を進めてまいりたいと思います。  最初に、事務局の方から配付資料の確認をしていただきたいと思います。よろしく お願いします。 ○生活習慣病対策室長 それでは、お手元に議事次第、座席表、そのほかに資料1と して、第1回慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防・早期発見に関する検討会の議事 概要。  資料2として、肺年齢普及推進事務局平松参考人からの提出資料。  資料3として、財団法人結核予防会大阪支部の小倉参考人からの提出資料。  参考資料1としまして、肺年齢(パンフレット)。  参考資料2としまして、肺年齢の見かた・使い方 が今回提出させていただいている資料でございます。  もし不足あるいは落丁等ございましたら、事務局の方までお申し出いただければと 思いますが、何かございますでしょうか。  それでは、座長、よろしくお願いします。 ○工藤座長 それでは、早速議事に入りたいと思います。  まず、前回、第1回の検討会における議論の概要について事務局の方から御説明を お願いしたいと思います。 ○生活習慣病対策室長 それでは、資料1をごらんいただければと思います。  これは、前回、第1回目ということもございまして、自由討議という形でございま した。したがいまして、委員の御意見を項目ごとに分けがたい面もございましたが、 私ども事務局の方で、1.COPDの啓発について、2.COPDの早期発見方法に ついて、3.たばこ対策とCOPDについてという3つの分類項目に分けまして、特 に委員の御発言の中で今後の御検討に資すると思われるものを、論点整理に近い形で、 とりあず、まとめさせていただいたものでございます。  まず、1.COPDの啓発についてでございます。  2つ目のポツにございますように、まず最初にCOPDの概念についての啓発が十 分になされることが必要であり、その後どのようにして禁煙を動機付けていくか、そ のプロセスが重要であること。  それから、保健師、栄養士、健康運動士といった、健康に携わっておられるさまざ まな関係者に、このCOPDについての知識を広げていくことが大事であるという御 意見がございました。  2.COPDの早期発見方法については、医療機関関係、問診票関係、肺年齢関係、 健診関係という中項目を立てて分けてございます。  (1)医療機関関係におきましては、かかりつけ医が早期にCOPDを発見して専 門医に伝えていくことが現実的ではないかといった御意見。  また、医療機関において、広くスパイロメトリーが普及することが本来は望ましい が、現実的には、従事者の確保やスペース、時間的な問題によって、なかなか困難で はないかといった御意見。  それから、パルスオキシメーターにつきましては、中程度までのCOPDでは早期 発見に使用することは適切ではないといった御意見についてそれぞれ記載しており ます。  (2)問診票関係につきましては、簡単な問診票で、ある程度COPDの疑いのあ る者を見つけることは意味があるといった御意見。  また、問診票で異常があった者に対して、その全員に精密な肺機能検査を勧めるの ではなくて、問診票で異常があった者に簡易な呼吸機能測定器で肺年齢をまず測定し てもらい、その結果、実年齢より高かった人に対して精査を進めるといった、いわゆ る2段階スクリーニングという考え方もあるのではないかという御意見。  次のページ、肺年齢関係につきましては、肺年齢によるスクリーニングであれば、 かかりつけ医の先生方でもできるのではないかという御意見。  そして、肺年齢という言葉は、患者や検査で異常が出た者に説明する言葉としても よいのではないかという御意見などがございました。  (4)の健診関係でございますけれども、健診受診時であれば、年齢、喫煙歴、B MIなど、COPDの問診票に必要な項目が多く含まれているため、健診の中でCO PDについても幅広く取組むべきではないかという御意見。  1つ飛ばして、3ポツ目にございますように、既存の健診にCOPDの疑いを問診 票と組み合わせることが効率的であり、どのような種類の健診と組み合わせるかを検 討することが重要ではないかといった、今後の健診との組み合わせを示唆する御意見。  その次のポツにございますように、医療機関ばかりでなく、健診においてもスパイ ロメーターによる検査は検査技師が必要で、また時間もかかることから、健診受診者 全員に対してスパイロメーターを実施することは困難であり、問診票等である程度対 象をまず絞るべきではないかといった御意見などがございました。  最後に、たばこ対策とCOPDについてでございますけれども、その1つ目にござ いますように、多くの関係者が、肺の問題、またその背景にあるたばこの問題に取組 めるようにしていく必要があるといった御意見等がございました。  簡単ではございますけれども、今後の検討ということを踏まえた論点整理の形でま とめさせていただいたところでございます。  事務局からは以上でございます。 ○工藤座長 ありがとうございました。第1回の検討会での議論の概要を、論点整理 の形で事務局から今、御説明いただいたのですが、何かこれについて確認しておくこ と、あるいは付け加えることがございましたらお話いただけますか。いかがですか。 よろしいですか。 (「はい」と声あり) ○工藤座長 それでは、どうもありがとうございました。  続いて、肺年齢普及推進事務局の平松参考人、森矢参考人の方から、肺年齢の測定 方法について御説明をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。 ○平松参考人 平松でございます。よろしくお願いいたします。  早速でございますが、お手元に2つ、参考資料として肺年齢のパンフレット、もし くは肺年齢の見かた・使いかたというものを配付させていただいていると思いますが、 その中のポイントに関しましてパワーポイントの方で御説明させていただければと 思います。  まず、肺年齢とはということですけれども、こういう概念で設定させていただいて おります。1秒間に吐ける息の量を1秒量と言いますが、性別、年齢、身長によって、 それぞれ異なるということが大前提です。1秒量は、20歳代をピークに年齢とともに 減少していくということがわかっております。  1秒間に吐ける量というのは、1秒量、FEV1と言いますが、同性・同年代の標 準の方に比べて、自分の呼吸機能がどの程度であるかということを確認していただく ための目安が肺年齢の概念と御理解いただければと思います。  これは年齢と1秒量の関係を示しているものですが、縦軸に1秒量、横軸に年齢で す。男性と女性でそれぞれ傾きが違うのが、こちらからおわかりいただけると思いま す。と同時に、年齢とともに1秒量がこのように減少していくというのがおわかりい ただけるかと思います。  COPDと肺年齢の関係でございますが、こちらも縦軸に1秒量を示しております。 横軸には年齢を示しておりますが、例えば1秒量が3.5リッターぐらいの方でしたら、 一般的な先ほどの傾きから算出しまして、その方が健常であれば大体45歳の肺の若 さを保っているだろうというのが肺年齢の概念と御理解いただければと思います。例 えば同じ方で、同じ年代で3リッターの1秒量しかなかった方は、ずっと見ていただ きますと、45歳の若さであるべきところが、その傾きから65歳まで老化が進んでい るだろうという形で、肺の機能の状態を年齢に合わせたのが肺年齢と御理解いただけ ればと思います。  本日は、肺年齢を測定いただく機器を何種類か用意しております。スパイロメータ ーは電子診断用スパイロメーターで、医療機器のクラスではIIに分類されているもの でございます。また、ハイ・チェッカーは手動式診断用スパイロメーターという分類 になりまして、クラスIでございます。スパイロメーターは、医療機関、また詳細な 呼吸機能検査が測定可能でございます。また、ハイ・チェッカーは、医療機関から薬 局、一般の家庭でも測定できる位置付けになっていると思います。表示機能といたし ましては、肺年齢、プラス基本的な検査値が表示される形になります。  また、参考としてパルスオキシメーターというものを今日準備しております。指に このようにセットしまして、血液中の酸素濃度、正確には酸素飽和度を測定して呼吸 の状態をチェックするものでございます。  この3点、今日は実際にデモができる形で準備しておりますので、後ほど御紹介さ せていただければと思います。  肺年齢に戻らせていただきますが、その測定の実際でございます。先ほど冒頭に申 し上げましたように、スパイロメーターで肺年齢を測定いたします。そこには、性別、 年齢、身長によって、それぞれ異なった標準値がございますので、その機械に年齢、 性別、身長を入力していただきます。そして、息を胸いっぱいに吸って、マウスピー スがあるのですが、そこに力いっぱい一気に息を吐き出して、1秒間に吐ける空気の 量を測定いたします。3回測定して、最もよい値をとるのが一般的でございます。  実際、測定している風景をごらんいただければと思います。3年前の呼吸フォーラ ムのときの映像でございます。アスリートの有森裕子さんが測定したときの結果で、 非常に若い肺年齢が出ておりました。  相澤先生の論文を引用させていただいたのですけれども、肺年齢と実年齢の差が19 歳以上あると、何らかの肺機能障害が90%ぐらいの確率で認められるという結果も出 ております。  実際、プリントアウトは先ほどのVTRにも出ていたのですけれども、このような 形でスパイロメーターの測定結果値と肺年齢が表示されるものでございます。  では、実際に肺年齢の測定をと思います。よろしいですか。 ○工藤座長 測定はスパイロメーターを使うのですね。 ○平松参考人 スパイロメーターと。 ○森矢参考人 ハイ・チェッカーと両方です。 ○工藤座長 ハイ・チェッカーの方でも簡単に肺年齢ははかれるので、これは委員の 皆様方、1人に1個ずつあるようですから、お手元でやっていただいて。こちらのス パイロメーターは、恐らくお二人ぐらいしかできないかもしれないので、「私は有森 裕子さんに負けない」という方、どうぞやっていただけると。何といってもインスト ラクターの中尾委員では、どなたにやってもらいますか。竹川委員、視線が合ってし まった。 ○竹川委員 はい。 ○平松参考人 よろしいですか。御協力ください。 ○工藤座長 余り周囲を気にしないでやっていただかないと小さな値になってしま うので、リラックスしてやっていただきたいと思います。どうぞ声を出してやってく ださい。ささやかないで、皆さんに聞こえるように。 ○平松参考人 体重があるので。 ○工藤座長 年齢と体重を入力するものですから。 ○平松参考人 今、このように年齢と身長を入れて、喫煙歴等々を入れるケースもご ざいます。それで、女性で、身長で、標準値が算出される形になります。鼻から空気 が漏れてしまいますと数値がずれてしまいますので、ノーズクリップをさせていただ きます。 ○工藤座長 では、竹川委員の実演をやっていただいて。 ○竹川委員 結構しんどいです。 ○工藤座長 この検査は、胸の写真と違って、最大の努力をしなければならないとい うきつさがあります。手順として吹き方を説明して、今回は1回だけでしたけれども、 実際には3回やって一番いいものを採用するのですね。診療の検査として行う場合は、 そういう形です。相当時間がかかる。さて、年齢と体重は抑らないでいいですので、 結果はどうでしたか。 ○平松参考人 年齢からマイナス10歳で、かなりいい状態でございます。 ○工藤座長 こういう非常に優良な方もおられるということですね。あとは。 ○平松参考人 やりましょうか。 ○工藤座長 平松参考人御自身でやっていただいて。 ○平松参考人 正直申し上げましてエクススモーカーです。 ○工藤座長 昔、たばこを吸っておられた。正直に告白されております。 ○平松参考人 今はやめております。年齢46、172、体重70。エクススモーカー。出 ました。何回もやっていると慣れてきます。過去の喫煙が影響しています。 ○工藤座長 平松参考人は実年齢45歳とおっしゃった。 ○平松参考人 46です。 ○工藤座長 肺年齢57歳ということで、プラス11歳。やはりたばこを大分吸ってお られたのが影響しているのではないですか。 ○平松参考人 ハイ・チェッカーもやりますか。 ○工藤座長 皆さんにやっていただいて、入力の仕方をお話いただいた方がいいので はないですか。 ○平松参考人 まず、スイッチを入れていただきます。電源ボタンはこちらになりま すが、スイッチが入りましたでしょうか。音が二度鳴りますと、電源が入ります。 ○森矢参考人 次に、年齢の入力になります。上印か下印の矢印を押していただいて、 年齢を設定していただいて、矢印の真ん中のリターンのボタンで確定をお願いいたし ます。 ○平松参考人 次が身長でございます。 ○森矢参考人 同じく上下のボタンで身長を入力していただいて、リターンボタンで 確定いたします。  次に、性別の選択になります。こちらは、男女どちらかを同じく矢印で選んでいた だいて、真ん中のリターンボタンで確定いたします。その後にマウスピースを装着し ていただきまして、先ほどのスパイロメーターと同じような吹き方になりますが、で きるだけ深く息を吸っていただいて、息をとめてマウスピースをくわえて。この際、 6秒間、なるべく吐き続けてください。そうしますと、結果が。 ○平松参考人 今回、44歳。多分2回目で慣れてきたのだと思います。 ○工藤座長 では、実年齢とぴったりになった。  マウスピースは、今お使いになったものは真っ白で、皆さんがお使いのは青があり ますけれども、それは途中にフィルターが入っているのですか。 ○平松参考人 両方ともフィルターは入っております。 ○工藤座長 フィルターというか、息を吐くだけの一方ですね。大勢の方が使う場合 は、衛生上機械の中の空気を吸わないようになっているという構造ですかね。  今、両方の機械を見ていただいたのですけれども、スパイロメーターとハイ・チェ ッカーのような簡単なものと。この簡単なものだと、例えば5人、10人、並んで頂い て一斉に号令をかけてやれるということもあると思います。  さて、もう一つ、第1回検討会で議論になったパルスオキシメーターは、中等度以 上に進んだCOPD以外は余り役に立たないのではないかという議論だったのです が、実際に御存じでない委員もおられるかと思います。パルスオキシメーターは、ど んなものか、ここにありますので回していただいて、御自分の酸素飽和度をはかって いただきたいと思います。指先へ付けるものですね。説明してください。 ○平松参考人 今お回ししているのは、人指し指をクリップで挟めば、それで血液中 の酸素飽和度が測定できるものになります。タイプが2つございまして、はかり切り のものと、24時間以上連続して、その状態が記録できるもの、2種類お回ししており ます。機能と性能は全く一緒でございます。 ○工藤座長 相澤委員、正常値というと。 ○相澤委員 94%以上。 ○今村委員 (ハイ・チェッカーのマウスピースについて)これはディスポですか。 ○平松参考人 ディスポでございます。 ○今村委員 1個の価格はどれぐらいですか。 ○小倉参考人 100円くらい?購入する量にもよりますが。 ○工藤座長 たくさん買えば安くなるということでしょうか。ただ、御家族で使う場 合には、フィルターは一々要りませんね。家庭の中でやる場合。 ○森矢参考人 70円です。 ○工藤座長 御説明は以上ですか。 ○平松参考人 以上でございます。 ○工藤座長 それでは、どうもありがとうございました。 ○平松参考人 どうもありがとうございました。 ○工藤座長 ただいま、スパイロメーターとハイ・チェッカー、肺年齢チェッカーと 言ってもいいかもしれません。それと、実際には健診にすぐ使うわけにも多分いかな いパルスオキシメーターの3つを委員の皆さんに見ていただき、また体験していただ いたのですけれども、全体にこの測定器について、御質問あるいは御意見ございます か。 ○今村委員 質問、よろしいですか。 ○工藤座長 今村委員、どうぞ。 ○今村委員 肺年齢のときに1秒量を縦軸にとるわけですね。もともとの肺活量、努 力して吐ける全体の量が小さ目の人だと、身長でやっているので、私は例えば180ぐ らいあるから、本当だったら大きな数字になるのに、肺活量自体が小さいために、結 果的には1秒量自体も小さくなってしまうから肺年齢が非常に高くなる。肺の機能そ のものが悪くなくても、年齢が高く出るということはないのでしょうか。  スクリーニングですから、とりあえず後で分析すればいいことなのだと思いますけ れども、その辺を補正する考え方があるのかどうか、御専門の先生に。 ○工藤座長 これは、専門家の相澤委員の方からお答えいただきたい。 ○相澤委員 先生がおっしゃったようなことはあります。そして、肺活量が小さいた めに、肺が小さいために1秒量自体が小さいから肺年齢が高く出るということはある わけです。それが病気の場合と健康な場合もあるわけです。病気の場合だと、COP Dみたいな病気ではなくて、肺線種みたいな梗塞性の障害の場合もあるし、それから 肺活量にしてもプラスマイナス20%ぐらいの幅をもって見ていますから、病気ではな いけれども、先生が言われたように低目ぎりぎりのところで出ると、健康でも肺年齢 が高くなるということで、患者さんにはすごく説明しやすいけれども、肺年齢だけで 判定できるものではありません。 ○今村委員 わかりました。ありがとうございます。 ○工藤座長 そのほかに、肺年齢というのはもともと相澤委員が提唱されて、日本呼 吸器学会が取り上げて提唱してきた経緯がありますので、相澤先生、肺年齢に関して もう少し付け加えることはありますか。大体実年齢に比べて10歳よりオーバーしな ければ。 ○相澤委員 いや、大丈夫というわけではないのです。 ○工藤座長 どのぐらいで線を引くのがいいかというのは。 ○相澤委員 肺年齢は、肺機能のことを全く知らない一般の方に説明しやすいような 指標として考えたものです。私たちは、もう少し正確に1秒率とかパーセント、肺活 量とか、そういうものを細かに読んで、この人は異常があるとかないということを判 定するわけです。だから、肺年齢が高く出ても、先ほど言いましたように、本当に異 常があって高く出ている場合と、健常者であっても正常値の範囲内で高く出ている人 がいるわけです。  そういうものは、何%ぐらいの人に擬陽性が出るかというのを検討してみたら、19 歳ぐらい高くないと90%ぐらいの人が引っかかってこないということです。ただ、10 歳高い人でも、半々ぐらいに異常な人と正常な人が出てきます。 ○工藤座長 ありがとうございました。肺年齢は、基本的にはスクリーニングに使っ ていくということですね。 ○相澤委員 そうです。 ○工藤座長 あとは、健常者と言われている人たちの中で、肺年齢は喫煙の有無で差 があるのですか。 ○相澤委員 うちで計算したら、まだ病気とまでいっていなくても、健常喫煙者だと 5歳ぐらい高く出ますね。 ○工藤座長 平均的としてですね。 ○相澤委員 平均的に。 ○工藤座長 ほかに何か御質問ございますか。どうぞ、中村委員。 ○中村委員 肺年齢に関することなのですけれども、どれぐらいの年齢差が実年齢と あれば、一般の方は自分の検査の結果として問題と思うのか。客観的な差としての値 もあるのでしょうけれども、どれぐらいの差があると、例えばたばこを吸っている人 であれば禁煙を真剣に考えるのか、そういうリスク認知に関した基礎調査は何かされ ているのでしょうか。 ○工藤座長 いかがですか。 ○相澤委員 今の話で、19歳で89%ぐらいの人が異常だったというのを出しました けれども、5歳、10歳というのも全部出しています。今、覚えている大ざっぱな数字 ですけれども、5歳だとむしろ結果的に異常でなかった人の方が多いです。7割が正 常で3割が異常。ところが、10歳ぐらいになると、5割、5割ぐらいになります。そ して、19歳になると90%ぐらいの人が異常になる。  だから、まず肺年齢で見て、それから今の2つの機械みたいに、1秒率、パーセン トVC肺活量が出る機器ですと、肺年齢を見て、1秒率を見て、パーセントVCを見 て判断します。そういう判断の仕方をした場合に、どこかで異常が出てくる人が今、 言ったようなパーセント割合で出てくるわけです。 ○中村委員 質問としては、そういう客観的なリスクと、それから主観的なリスクと いうものがあると思いますけれども、肺年齢とか1秒量とかパーセントVCなどで、 話を非常に割り切って言いますと、肺年齢とか1秒量とかパーセントVCなどで異常 ありと異常なしと客観的なリスクの診断をするとします。一方、本人は肺年齢という 形で結果を知らされた場合に、個人差がありますが、これくらいの差であれば異常と 考え、これくらいの差以内であれば問題ないと考えるとします。例えば5歳ぐらい年 とっていると言われても、問題と余り考えずに、例えば10歳を超えると異常だと思 うようになるといった具合です。そういった本人側に立った肺年齢と実年齢の差が、 その人の心理にどういう影響を与えるか、また、個々人の客観的なリスクと主観的な リスクの認知の組み合わせた場合、両者のリスク認知が一致、不一致する方がどの程 度あるのかという調査があってもいいかなと思ったので質問させていただきました。 ○相澤委員 本人の意識に対する調査はやっておりません。肺年齢だけで異常とか正 常ということの判定は出していないわけです。肺年齢と一緒にスパイロのちゃんとし た読み方を試験者の方には必ず説明するようにしていますから、私たちはそれで終わ るわけです。ただ、肺年齢だけ調べた場合には、もう一段階、きちんとしたスパイロ が必要だということになります。 ○工藤座長 ただいま中村委員がおっしゃったように、肺年齢と実年齢の差について、 心理的な受けとめ方の数字はどのぐらいかというのは非常に大切なところかと思い ます。COPDが進みますと、肺年齢の値は125歳とか、とんでもない数字になる。 治療して10歳ぐらい若返っても110歳。これでは少しうれしくない。ですから、私 自身は肺年齢は、たばこを吸っていても吸っていなくても、ほとんど健康だと思って いる方がやって、それで、例えば10歳以上上がれば、ちょっと気を付けようとか、 あるいはちゃんと調べてもらおうという動機付けかと思います。  片や、先ほど有森裕子さんの例がありましたけれども、画面では実年齢が出ていま したが、41歳の方が23歳だったわけですから、そういう意味では、悪い方だけでは なくて、いい方にも肺の健康という意味で役立つのではないかと思っております。余 り座長がいっぱいしゃべってはいけないと思いますけれども、いかがですか。遠山委 員。 ○遠山委員 私どものところによく御相談があるのは、数年前に肺気腫と診断された のだけれども、私は仕事で忙しかったし、受診していなかった。息苦しさを感じるよ うになって、どこに相談したらいいのかというお電話がよくあります。初期ですと症 状が強く出ていませんので、そんなに深刻に受けとめておられないと思うのです。だ から、その点で受診に繋がる半ば強制的な誘導が必要ではないかと思いました。 ○工藤座長 ありがとうございました。ほかに、この肺年齢と機械について、どうぞ、 中村委員。 ○中村委員 ハイ・チェッカーの機器としての精度なのですけれども、スパイロメト リーと比較してみて、どの程度の精度があるのかという検討をしたような研究はある のでしょうか。例えば測定条件をそろえて熟練した医療従事者が説明・介助をして測 定した場合にハイ・チェッカーはどのぐらいの精度が期待できるのかについてのデー タです。 ○相澤委員 いいですか。 ○工藤座長 はい。 ○相澤委員 アメリカの呼吸器学会がスパイロメーターの基本的な性能のガイドラ インを示しています。細かいことは省略しますけれども、一応その基準を満たしてい るというぐらいで、医療機関できちんとした測定をするのと大差ないということです。 ただ、一番の問題は、あれは今、吹いてみてごらんになられたように、スパイロメー ターと違って、吹いた曲線の記録が出ないわけです。したがって、きちんと吹けたか どうかという判定ができないという欠点はあります。だけれども、機器自体はスパイ ロと比べて遜色ないと考えていいと思います。 ○工藤座長 よろしいでしょうか。 ○中村委員 ありがとうございました。 ○工藤座長 それでは、次のテーマに移ってよろしいでしょうか。 (「はい」と声あり) ○工藤座長 続いて、結核予防会の大阪支部長の小倉参考人から、COPDの質問票 のスクリーニング効果について御説明いただきたいと思います。 ○小倉参考人 ただいま御紹介いただきました結核予防会大阪府支部の小倉でござ います。先般、第1回目のこの会合のドラフトを少し拝見いたしまして、今回発表資 料をつくったわけですけれども、最初に前回のお話の内容と少し重複するところがあ るかと思いますけれども、今日のメインテーマでありますスクリーニング効果という ことをよりよく御理解いただくために、もう一度復習していただくといいますか、同 じような話を申し上げさせていただきたいと思います。  COPDの病因と病状でございますけれども、生活習慣病として喫煙、主に主流煙 と、プラス副流煙という問題がございます。また、日本ではもうほとんど見られなく なりましたけれども、有機燃料の煙も問題視されております。職業としては粉じん吸 入。粉じんは職業以外にも大気汚染とも関係しているわけですけれども、大気汚染と しては、ディーゼル排ガス中の粒子、それから窒素、硫黄酸化物など。こちらは、主 に環境省の所管になっておりますけれども、大気汚染の公害の認定患者さんはこちら に入っております。  それから、老化に伴う生物学的な反応でございますけれども、これはまだ決定的で はございませんけれども、老化そのものが肺気腫などの成因に関係しているというペ ーパーも出てきております。主な症状といたしましては、せき、たん、息切れ。特に 労作時の呼吸困難、階段の上り下りなどでの息切れ。  それから、進行してまいりますと、もともとやせた人が日本人は多いわけですけれ ども、高齢の結果もありますけれども、やせ、あるいはうつ症状が出てまいります。  それから、COPDの病態は、この間出ました日本呼吸器学会第3版のガイドライ ンによりましても、吸入された障害性物質による炎症反応によってもたらされる、気 管支から肺胞領域における慢性で、非可逆的で、どんどん進行していく気流閉塞であ ると定義されております。  私は前職、刀根山病院におりまして、それから予防会に入りまして1年後ですが、 健診でそういう問題がどう出てくるかということに興味を持ちまして、平成13年度、 10市3町、大阪府下の住民の検診時のデータがございますので、その問診票のデータ から症状、年齢と喫煙の関係を調べてみました。  対象総数は5万余りですけれども、息切れというのは、喫煙歴なし、今、喫煙して いる人、20本未満か20本以上か、過去に喫煙したが、やめてから5年未満か5年以 上かという分類別にその頻度をみましても、そう大きな差はなく3.6から5.1%。程 度です。ところが、せきとたんを訴える人は、喫煙歴なしの人は9.2%ですけれども、 現喫煙が20本以上の人は26%と一気にはね上がってまいります。  これを年齢で区分けしてまいりますと、60歳未満の場合、せき、たんについては、 現喫煙20本以上で23%、それから60歳以上の現喫煙では31%と、3分の1近くの 人にあらわれてくるわけです。したがって、我々は、アンケートのターゲットになる 症状は、息切れよりも、せきやたんが適当だろうと考えました。一般にCOPDのメ インの症状というのは、せき、たん、息切れという3つに集約されているように思い ます。しかしながら、息切れの頻度は年齢や喫煙歴で余り差がないということです。  次に、これはフィンランドの論文でございますけれども、喫煙に関する40歳以上 の男性1,711人の40年間にわたる観察結果です。喫煙をずっと続けている人を40歳 から観察してまいりますと、最終的には75歳、32%がCOPDになっています。途 中で禁煙した人は14%、喫煙していない人でも、これは生理的な問題がありますので、 12%がCOPDを呈してくるということでございまして、喫煙ということが非常に大 きな問題であるということを示しています。  この論文の筆頭者には山下さんの名前が出ておりますが、日本呼吸器学会の肺生理 専門委員会、委員長は今日御出席の相澤先生でございますけれども、当時の工藤理事 長とともに日本呼吸器学会が、まさに今日の会合のテーマであります生活習慣病対策 におけるCOPDの重要性「特定健康審査・特定保健指導」への提言と題する一文を 学会雑誌に載せられたわけです。  その中で、健診、人間ドック受診者の中では、どのぐらいCOPDがみられるかが 報告されております。二、三省いたものもございますけれども、対象は30歳以上と 40歳以上の報告がありますが、40歳以上で喫煙歴がある人だけを対象にしたスタデ ィーでは、実に25%ぐらいの人が1秒率が70%未満で、閉塞性換気障害、COPD と診断されています。  ところが、若い対象を含めますと、このように有病率が落ちてまいります。つまり、 40歳以上の高齢者がターゲットになると思います。中でも、男の発生率が高いですが、 これは喫煙の影響だと思います。喫煙者で高齢が集健のターゲットになるだろうとい うことでございます。  それで、COPDの特徴と早期発見のためにということですが、前回の検討会でお 話がありましたNICEstudyからのデータによりますと、罹患率は、40歳以上で8か ら10%程度。90%は未診断の状態である。それから、死亡順位は大分前から10位に 上がってきております。推定総医療費が8,055億円。この数字は、呼吸器学会のCO PDのガイドラインからとったものでございます。  COPDは、初期あるいは軽症期に禁煙、治療すれば軽快し、検査値、1秒率もよ くなり、生命予後を含めて予後が改善します。しかしながら、症状を我慢していて、 あるいは症状に悩むようになりますと、かなり進行期でして治療効果が少なく、時に 感染などが起こりますと致命的なことになります。症状は中年以降、徐々に発現・進 行するので、一般の人は気が付きにくく、気がついても、これは年のせいであると、 病気とは思わない。たばこが原因であるかなと思っても、今さら禁煙する気はさらさ らなく、健診や医療機関を受診する気もしない人がかなり多いのです。  そして、一般社会と我々医療関係者の中でも、COPDに対する関心はどちらかと いうとかなり低く、診断に不可欠な肺機能検査の機器が十分普及していません。これ は日本ばかりでなく、海外でも同じようなことが言われております。したがって、早 期発見、治療するには、啓発活動と健診が必要であるということになります。  しかし、集団健診にいきなり肺機能検査を持ち込むことは、安全性、つまりいろい ろな人にいきなり肺機能検査をすると、中には心臓疾患とか高血圧の人がおられると、 患者さんの安全性の問題が生じます。それから、機器をそれだけそろえられるかどう か、あるいはその機器を扱う人の問題、検査時間の問題、費用対効果の面で非常に問 題が多いということが考えられます。結論としては、質問票でスクリーニングしたハ イリスク者を肺機能検査で診断するのが適切ではないかとなるわけであります。  このCOPDに即した質問票をつくるためのキーポイントは何かということです が、体裁は質問票といっても、これは同意署名を必要とします。質問は、やたら詳し く、多くなると書きづらくなりますので、必要最小限の質問数が望まれます。そして、 質問は簡単でわかりやすい内容でないといけない。そして、質問に対する回答はこち らで用意して、それに対して丸を付けていただく。即ち回答の選択肢を付けることに なります。これもイエス、ノーの二者択一が一番いいわけですけれども、必ずしもそ れに適していない質問項目もございます。  それから、原因に関する項目は、先ほど来申し上げましたように喫煙が非常に大き なファクターでございますので、喫煙の本数、喫煙した期間、現在吸っているのか、 過去に吸って、今はやめているのか。あるいは、更に聞きたいところは、本人は吸っ ていないけれども、同居の喫煙者がおられるかどうかも本来は聞かなければならない 項目です。  症状に関する項目としては、かぜ症状はないのに咳がよく出るのか。痰は粘稠であ るか。それから、膿性、黄色い痰であるか。朝出るのか夕方出るのか、時を構わず出 るのかという時期の問題。呼吸困難は、安静時か、労作時か、喘息のように発作性に 出るのか、その程度は。あるいは、ぜーぜー、ひゅーひゅーという喘鳴があるのかな いのか。それから、COPDの特徴の一つのやせ。これは、特に集団健診では、体重 を身長の二乗で割りますBMI、ボディー・マス・インデックスが記録されておりま すが、それが一つのファクターになります。  それから、日常生活の活動状況。うつ状況もございますので、本来はこういうこと も聞かなければならないであろうと思われます。  これは、先ほど申し上げました、福地先生が行われたNICE studyの報告です。NI は日本で、COPDエピデミオロジーの頭文字をとってNICE studyと呼ばれており ますけれども、このスタディーでは、全部で2,343名の中から256名の方がピックア ップされてきまして、その発現率は10.9%でしたが、どういう項目で多いかというこ とが報告されております。  それによりますと、年齢は60歳から急に増えてまいります。性別は男が多いとい うのは、やはり喫煙との関係であります。現と既喫煙者では同じように15%程度の方 から発症しております。パック・イヤーというのは、1日の喫煙本数掛ける喫煙年数 を、1パックは20本入っていますので20で割るということになりますと、25以上で はCOPDの発現率が急に上がってまいります。50以上の重喫煙者では31%を超え るということであります。  それから、高いリスクの職歴がある方。どういう職歴かといいますと、今、問題に なっております石綿を扱った方や、ビルの解体工、大工さん。これは石綿を含んだ建 材を取り扱ったり、外したり、あるいは石綿を使った建物の中で改築したりしますの で、大工さんが曝露している可能性があります。それから、化学工場、農業ですね。 そういう職業に6年以上つかれた方では、やはり高いCOPDの発現率があるという ことが、2004年に英文で発表されております。こういうことから見ても、集健する場 合の質問項目というのはこういうところが大切ではないかと思います。  現在、国際的に注目されておりますのがIPAGのCOPD質問票でございます。 これは、International Primary Care Airways Groupの頭文字をとってIPAGと略さ れておりますして、日本呼吸器学会が日本語に訳されまして、学会誌あるいはホーム ページにも紹介されております。このIPAGがつくられた目的は、ヨーロッパと米 国で、日本と同じようにCOPDの罹患率が高いにもかかわらず、必須の検査である 肺機能検査がなされていない。それを臨床診断で機器を使わずに早く見つけるにはど うするかということで、アメリカ、カナダ、ノルウェーとかヨーロッパの国々で集ま って、こういう質問票がつくられたのです。  COPDをスクリーニングするためのAという質問票と、ぜんそくなどと鑑別する ためのBという質問票、2つがつくられました。このAというものをつくるための被 験者さんには、818人の40歳以上でスモーカー、そして呼吸器疾患に今までかかった ことがない方を対象に質問票を配られたわけです。  質問項目は、いろいろな呼吸器病のガイドラインから取り集められました。例えば 咳は12個のタイプの質問が用意されて、合計52の質問がつくられました。そして、 その質問票の回答が統計的に解析された結果、最終的に自己記入式の質問票Aという ものがつくられました。それは質問項目数が8つ。そして、回答選択肢が22個。因 みに、COPDの診断をするためには、気管支拡張薬を吸入させた後の1秒率が70% より小さいときにCOPDと診断して、その発現率を調べております。  これがそのIPAG質問票の和訳したものでございます。これは、前回も紹介され ていますので簡単に申し上げますと、8項目ございます。そして、選択肢は、年齢階 級別に4項目、喫煙に関しても4項目、BMI、ボディー・マス・インデックスに関 しては3項目、天候と咳については3項目、かぜを引いていないのにたんがからむ以 下の質問には、イエス、ノーの二者択一になっております。それぞれに10点から3 点、1点という点数が与えられております。  この配点は、先ほどの52項目の質問票を解析されたときのオッズ比を参考にして、 付けられております。健診で質問票を渡すときには、このポイントは勿論お見せしま せん。  今まで日本では、2つのグループの成果が発表されております。一番上のPriceの は、2006年に今申し上げたIPAGの原本、オリジナルのペーパーの結果でございま すが、818人でのハイリスクの頻度と感度が報告されています。どうしてハイリスク と認定したかといいますと、先ほどの8項目、22選択肢の得点の合計が16.5点以上 の方をハイリスクとしてあります。  そうしますと、そのハイリスクの中に本当にCOPDであった人が58.7%いるとい うことでございます。19.5でカットしますと、その感度は上がってくるというのがオ リジナルの報告でございます。こちらは今、御出席の相澤先生のグループが、日本で の評価をされて、2008年にRespirologyに発表されました。このときは93.9%という 非常に高い感度が16.5点で得られております。19.5でカットしますと84%というこ とでございました。被験者さんの数は少し少なくて、169人でした。  続いて、有村さん京都大学のグループが、186人の被験者で、18歳以上で若年者が 多いのですが、14点でカットした場合には、85%の感度を示しておられます。しかし、 対象例が少ないと、対象例の中の年齢構成とか、そういうものが変わることによって、 この感度が大きく変わってくる可能性も勿論あるわけであります。  我々結核予防会で共同研究を発足させたときには、先ほどのお二人のペーパーは発 表されておらなかったですけれども、既にIPAGの評価は日本でも進んでおるとい うことでございましたので、全国各支部共同で共同研究を進めようということで、一 般健診、住民健診の健診受診者、それから研修会参加者。予防会はたくさん研修会を しますので、そこに参加された人に質問票を渡しました。婦人会の会員とは、予防会 には関連の婦人会がございますので、会員とその家族、知り合いなどにも質問票を渡 しました。それから、人間ドックを受診された方には御協力いただきまして、全て、 先ほどの質問票を40歳以上の方で喫煙歴を問わずにお渡ししたわけであります。  そして、同意を得て回収いたしまして、先ほどの質問票の選択肢のスコアを21項 目、我々は天候と咳の質問が3項目ありました項目を1つ、2項目にまとめましたの で、21項目になっておりますけれども、その項目のスコアの合計が17点以上をハイ リスクとして、そのハイリスクの頻度と、人間ドックの肺機能検査の1秒率が70%未 満の方を気流制限例として、中でどのぐらいのパーセンテージを占めるかを見てみた わけでございます。  このIPAG質問票のスクリーニング効果の検討は、中間報告として2年前の神戸 の呼吸器学会で発表して、その後、呼吸器学会誌に、私、責任者をしておりましたの で発表させていただきました。40歳以上、喫煙・非喫煙者、人間ドック受診者が対象 で、方法は今、申し上げたとおりです。  結果を申し上げますと、人間ドック健診の対象例は11,166名、大阪が8,000以上、 福岡が1,700、宮城500、岡山が154、4つの支部に御協力いただきまして、これを合 計して解析いたしますと、ハイリスク者の頻度が27.5%、感度が66.6%、特異度が 73%ということで、有用性はうかがえるものの、絶対有用であるということは結論で きませんでした。  しかし選択肢別にみると気流制限に関連した選択肢としては、60歳以上の高齢、パ ック・イヤー(P・Y)が50以上の人。それから、天候によりせきがひどくなる。 喘鳴がよくある。この4項目に回答した人は、非常にCOPDの発現率が高いという ことがわかりました。  課題としては、BMI、朝起きてすぐにたんがからむことはない、アレルギー症状 歴はないという3項目については、COPD発現率が低かったということでございま す。  次に、IPAG・COPD質問票のスクリーニング効果についてハイリスクの頻度 だけを4つの対象集団で調査したものでございます。ハイリスク。つまり、17点以上 とった方のパーセンテージを占めたかということでございますが、健診受診者グルー プでは12,000人で36%、研修会参加者では3,200人余りで36%、婦人会会員などで は26,000人で61%、ドック健診の受診者では35%でした。3つのグループでは、ほ ぼ同じハイリスクの頻度でしたが、婦人会会員が高かったということでございます。  そこで、0とか3点とかの、点数を付けた選択肢の構成比率を見てみますと、60 歳以上の方は、健診受診者では30%、研修会参加者では25%、ドック健診受診者で は23%でしたが、婦人会会員では66%占める。つまり、高齢者が非常に多かったと いうことです。60歳以上の高齢者は8点10点の点数が与えられますので、当然、高 齢者ではハイリスクの頻度が高くなる訳です。  パック・イヤーが、25以上、つまり中等度以上の喫煙では同じように頻度は高いの ですが、婦人会会員は御婦人の方が多く、喫煙者の率は少ないのですが、BMI25.4 以下の方、やせた高齢の女の方が多い。たんが絡むとか喘鳴はそれほど大きな差はな かった。つまり、高齢でやせた非喫煙者が婦人会会員で多いので、スコアが高くなり ハイリスクの頻度が高かったということになろうかと思います。  そこで、この4つのグループ毎にでスコアの分布について、1点から41点までス コアを横軸に人数を縦軸にとってみてますと、17点以下に3つピークがあって17点 以上に2つピークがあります。ところが、婦人会のパターンをみますと、他の3つの グループに比べて19点と21点に大きなピークがございます。ということで、婦人会 は高齢の方が多いということが一つの大きな要因であったということで、やはり対象 集団によってハイリスクの頻度が異なってきます。したがって、この婦人会会員など のグループでは肺機能をはかっておりませんけれども、恐らくハイリスクの頻度が多 い割にはCOPDの頻度は低いのではないかと考えられます。  全部で35支部の集計がありますが支部当たりの数が多かった上位10支部を北から 順番に並べましてハイリスクの頻度を見てみますと、低いところは21%多くは、30 から40%ぐらいで、50を超えるハイリスクの頻度はありませんでした。  次に人間ドック受診者で、かつ肺機能検査を受けた人で、ハイリスクの頻度と1秒 率が70%未満の頻度(有病率)と感度を見ますと、先ほど11,166人の中間報告を示し ましたけれども、これは今年5月の合計数で、41,167という症例数で、約3倍になっ ております。  岩手は、ハイリスクの頻度は45.9%で、全体の中で気流制限を示した人が6.7%。 それから、全体の気流制限の中でハイリスクに引っかかっていた人が79%でした。感 度が高いのは京都で、80%を超えております。全体としても、感度は中間報告時より 高く72.3%になっております。  そこで、このデータについてオッズ比を調べてみました。各ゼロ点を付けた選択肢 の頻度を基準に、質問票の21の、回答の選択肢毎にオッズ比をみてみますと、高齢 の人は非常に高くて11.5倍。オッズ比は競馬などで出てくるものですけれども、そし て、ここが重喫煙者は4倍ぐらいの高いオッズ比が出てまいります。  BMIは余り差がございませんが。やせた人はちょっとオッズ比が高くなります。  そして、6質問はちょっと特徴がございまして、3点の配点を付けた選択肢ですが、 配点のない項目よりもハイリスクあるいは気流制限のパーセンテージが低いのです。  その他症状についての質問の中では、喘鳴があるということを訴えた人からの気流 制限発現率のオッズ比が高いということでございまして、全体としては中間報告と同 じような傾向が確認できたわけでございます。  これらを含めまして、スクリーニング方法の改善策について御意見を伺っておりま すと、感度は少なくとも80%が望ましく、90%あればという御意見もあるようでござ いますけれども、今まで申し上げましたように、今のままのIPAG質問票では80% ぐらいが関の山ではないかと思われます。  そこで、IPAG質問票の選択肢、これは欧米人を対象につくられた質問票ですの で、日本人向きの改訂が必要なのではないだろうかと思われます。特に今申し上げた 6番目の質問の、朝、起きてすぐに痰がからむことがよくあるというのは、不必要な のではないかと思われます。  それから、BMIですが、これは次のスライドでお見せしますけれども、身長と体 重というのは、日本人と欧米人ではかなり違いますので、このBMIの区別の仕方が 適切かどうか。  あるいは、質問票に本当に要るのかどうかが検討課題です。  さらに、先ほど来ずっとお話がありました、質問票とハイ・チェッカーのような簡 易測定器の組み合わによるスクリーニングはいかがかと考えられます。  あるいは、測定手技は本当に確実ということも問題になります。  これは中間報告のときの結果ですけれども、人間ドック受診者におけるBMIの数 値の分布を見てみますと、欧米人のグループでは25.4と29.7で3つに分けて、それ ぞれの対象数が33.3%つまり3等分されるように分割してあります。ところが、日本 の被験者のBMIの分布を見てみますと、ほとんどがやせているところに入ってきま す。29.7以上の肥えているところに入っている人はほとんどおらない。ということで、 もともとこの分け方が日本人と欧米人では違うのではないかということがわかりま す。  それから、カットポイントは17点で本当にいいのだろうかということでございま す。中間解析のときには17点ぐらいでいいのではないかと思われたのですけれども、 現在被験者41,176人でカットポイントを14点にしますと感度が86%、カットポイン ト15点の場合は82%と感度が上がっております。先ほど御紹介した京大グループの 報告でも、カットポイントは14点で、低い方がいいのではないかということが示唆 されておりました  しかし、カットポイントが14になりますと、ここに示しておりませんが、ハイリ スクのパーセンテージが非常に高くなり、今回の我々の集計では65%ぐらいになりま すが、17点で切ると45%ぐらいであります。つまり、ハイリスクの方すべてに肺機 能検査をするとすれば、14点でカットするとかなり多数の肺機能検査をこなさなけれ ばならないということになるわけです。  次に、質問の6を削除した場合はどうでしょうか。質問票6には3点を与えており ますので、3点引いて、カットポイントを14にいたしますと、感度が74%、特異度 が64%になります。また、質問8をカットしますと感度は76%になります。このほか、 現在いろいろな組み合わせでカットの点数を変えたり、あるいは選択肢への配点をい じるという作業が進行中でございまして、できるだけ現在の8万以上の例数をもとに より質問票をつくるための作業を早く進めていきたいと思っております。  特に、ハイ・チェッカーと質問票あるいはスパイロを並べたドック健診受診者で、 同時にスクリーニングの有効性を検討するという作業も必要ではないかと考えてお ります。  以上です。 ○工藤座長 小倉先生、どうもありがとうございました。大変詳しく現在のIPAG 質問票の状況を御説明いただいたわけですけれども、委員の皆様の御意見を頂く前に、 少し専門的なお話でしたので、御質問があれば先に出していただいて。はい。 ○今村委員 予防会でデータをたくさんとられていて、すばらしいことだと思います が、例えば先ほどの一般の健康診断などのときに、同時にこれを実施されている。そ うすると、今の質問票を配布しているのでしょうか。 ○小倉参考人 先ほどの4分割した一番左側にございましたように、質問票を配って 肺機能検査はしていないです。一般健診で肺機能検査をするのは、安全性の点でちゅ うちょしまして、現在進行しておりません。一部の支部では進行しております。 ○今村委員 私どもも、日ごろ医療機関としてさまざまな健康診断をやるときに、今、 問診票というのがほかの健診でも非常に多いのです。だから、こういうものが非常に 有用でより精緻なものになってきて、今も検討されているということなのですけれど も、非常に健診票が充実したものになる。先生もお話になったように、なるべく簡便 なものというお話もあるのですが、その辺が全体の健康診断を受ける方の中の、この 呼吸機能の問診票というものをどういうふうに位置付けたらいいのか、ちょっと私も 気になるところであります。  これだけを特定して、何か問診票を書いていただくということであれば、幾ら細か くても私は構わないと思っているので、その辺の御感想は。 ○小倉参考人 IPAGの質問項目は8項目ありました。一番上の年齢は当然健診の 問診票では聞きます。次の喫煙、これもほかの健診でも聞きます。それから、BMI も聞いております。あとは、症状に関する質問が5つ残ります。その5つの中の質問 6は要らないだろうということで、あとは4つになるわけです。そうすると、COP Dとして聞かねばならないのは、最大4つにおさまるのではないか。そのぐらいでい かがでしょうか。 ○今村委員 いや、大変ありがたいお話で、そういう形でまずは問診項目を整理して いただくということと、これはこの委員会のお話ではなくて、逆に厚生労働省等にお 願いしなければいけないことかもしれないですが、今の健診制度が、それぞれ法律の 根拠も違うし、財源も違う。そうすると、1つの問診票の中にそういうものがうまく 書き込めればいいのですけれども、こっちは何とか健診で、財源はこっちから出てく る、こっちはまた違う財源だというと、結局問診票そのものがばらばらになって何枚 も書かなければいけないということになりますね。その辺の工夫が要るのかなと。 ○小倉参考人 今、予防会本部の第一健康相談所のグループでは、問診票の中に質問 票を組み込むことをトライされておりますので、いずれそれもわかるのではないかと 思います。 ○今村委員 ありがとうございました。 ○工藤座長 ほかに何か御質問ございますか。どうぞ、中村委員。 ○中村委員 感度とカットオフの関係です。一般にはカットオフを上げていけば、感 度は上がるはずなのですけれども、今日お示しいただいた結核予防会のデータと、先 行研究もそうなのですけれども、カットオフを上げるとむしろ感度が下がっています。 これは、実際にそうなんですか?。 ○小倉参考人 4分割表で計算しますと、そういうふうになります。 ○中村委員 これは、年齢が高い方たちがそれゆえに点数が加算される割に、COP Dの頻度が少ないためにみられている現象でしょうか。 ○小倉参考人 そう解釈していますけれども、婦人会などは、特にそういうことにな るのではないかと思います。 ○中村委員 年齢の配点の妥当性について、再度検討する必要があるのかなと思った 次第です。 ○小倉参考人 それもこれから解析したいと思うのですけれども、60歳代と70以上 と分けなくても、60歳以上を一まとめにして8点ぐらいにしたら、いいのではないか という気もするのです。そうすると、質問も簡単になりますし、わざわざ2点の差が 要るのか。オッズ比で見ますと、ちょっと差があるように思うのですが、それも今後 の検討課題だと思います。 ○工藤座長 感度と特異度というお話が出てきておりますけれども、この質問票でC OPDを診断してしまおうというわけでは当然ないわけですね。最終的にはスパイロ メーターを使って、いわゆる気流制限をはからなければならない。だけど、全部それ をやったら手間と時間がかかり過ぎるのではないかということで、どうやったらうま く絞り込めるのかという目的で今、御議論があるのだと思います。  問題は、特異度を上げてうんと絞り込むということで、もしやりますと、今度は脱 落する人がいっぱい出てきてしまう。感度も特異度も両方高い方がいいのですけれど も、どちらかというと落ちこぼれをなくさなければならない。それでいて、少しスパ イロの対象者の数を、減らしたいということですね。その辺で相澤委員から何か。 ○相澤委員 カットオフをああいうふうに下げていけば、感度はどんどん上がってい くわけですね。だけれども、小倉先生言われたように、そうすると対象患者が65%と か、非常に多くなっていくから、これをこのまま利用すると仮定したら、どの辺の感 度が何%で対象患者さんが何10%ぐらい出てくるかというところが議論になるので はないかと思います。 ○小倉参考人 私ども、健診をされる立場の方、特に行政の方にお聞きすると、喫煙 者だけを集めると、気流制限の発見率は当然よくなるのですけれども、非喫煙の方か らも10%以上、気流制限が出ていますので、そういう人を健診しないということは行 政サービスの点でぐあいが悪いというお話がありますので、対象はやはり40歳以上 で非喫煙の方を含めて、ということになるかと思います。 ○瀬戸山委員 よろしいですか。 ○工藤座長 瀬戸山委員、どうぞ。 ○瀬戸山委員 今、質問票の改善策が出たのですが、COPDのリスクファクターに 喫煙と、もう一つ受動喫煙がありますね。質問票には受動喫煙が入っていない。だか ら、先ほどおっしゃった非喫煙者の中にCOPDが10%、その非喫煙者の中に受動喫 煙も入っていると思います。私どものセンターの肺がん患者のデータでは、女性の場 合、9割ぐらいは多分、受動喫煙。男性は8割ぐらいが喫煙者です。  もう一つ、60歳以上の働く人の問題、事業所は大体60歳定年ですね。ですから、 60才以上は事業所健診ではカバーできないですね。人間ドックも大体60歳ぐらいま でです。そういう意味で、年齢の設定が重要、一般国民を広くカバーしようと思った ら、例えば住民健診の場合は40才以上、あるいは事業所の場合は40から60歳、一 般の健診では対象によって年齢層はもっと分けられます。  それから、問診票の問題ですけれども、私どものセンターは、特定健診、事業所健 診、人間ドック、肺がん検診をやっていますけれども、ほとんどの健診の問診項目で 身長、体重が入っています。あと必要なのは、先ほどおっしゃった喘鳴とかせきは一 般の健診の問診項目にも入れられる。特に特定健診、事業所は労安法とか高齢者の医 療に関する法律で法律的な根拠がありますので、恐らくその辺を利用すると健診対象 をもっと大きくカバーできると思いますけれども、いかがでしょうか。 ○小倉参考人 全くそのように思っております。  それと、40歳以上をもっと年齢を上げたらどうかという御意見もあるのですけれど も、確かに発見率は上がりますけれども、健診を毎年、2〜3年に1回かは別にして、 40歳から発病率が上がっていくわけですから、早期発見して早く治療しようと思えば、 やはり40歳代の人を入れないと、高齢の人で既ににっちもさっちも行かないような 方だけを発見するというのでは、こういう生活習慣病対策としてはおかしいと思いま す。 ○瀬戸山委員 私も年齢は40歳以上に賛成。生活習慣病というのは40歳以上を対象 にしていますので、恐らく40歳以上は妥当だと思います。 ○工藤座長 ありがとうございました。ほかに何か御意見ございますか。竹川委員、 どうぞ。 ○竹川委員 今、この研究会では予防ということも大きくあるかと思います。なので、 どの辺りで切るかということですけれども、ハイリスクの患者さんをいかに拾い上げ るかということが大事になってきまして、そこでたくさんの患者さんを取り上げて、 そして肺年齢の方へ持っていって、保健師とか看護師による特定保健指導の形で移行 していって、しっかり教育していくというのが大事と思うので、点数化の方は甘くし ておいて、たくさんの患者さんを拾い上げていって、そして肺年齢に持っていく形が とても大事かなと思いました。 ○小倉参考人 よろしいですか。 ○工藤座長 どうぞ。 ○小倉参考人 私ども支部では、呼吸器症状があるのに1秒率が70%以上の人を対象 に啓発のパンフレットを渡しまして、生活習慣病としての指導はしてはおるのですけ れども、制度的に確立しないとなかなかそれは難しいと思います。 ○今村委員 ちょっとよろしいですか。 ○工藤座長 今村委員、どうぞ。 ○今村委員 私は、できるだけ大勢の国民の方が最低限問診をするとか、疑いのある 人の呼吸機能を調べるということを制度として行った方がいいと、本当にそう思いま す。ただ、いろいろな健診の制度が日本でも非常に複雑になっているので、例えば多 くのほかの健診、特定健診であるとか労働安全衛生法の健診の中でもこういうことを やるべきだということを、健康局のこの委員会の中だけで提言として出して、それを よその局との間の調整でできるのかどうかということは大変大きな課題だと思って います。  実は、特定健診保健指導ができたときも、やはり健康局でいろいろな健診項目が決 められたけれども、それが最終的に労働安全衛生法の中の事業主健診の中に位置付け るということが非常に大変だったという経験を持っているので、理屈からいえばこう いうものをすべての国民というのはそのとおりなのですが、それを例えばこの検討会 の中で積極的に提言する、やるべきだということを決めたら、それをほかの方にも持 っていけるのかどうか、その辺、厚生労働省の考えがもし聞ければ教えていただけれ ば。難しいですか。 ○工藤座長 難しい御質問ですけれども。 ○生活習慣病対策室長 この検討会においては、まさに慢性閉塞性肺疾患の予防・発 見に関する検討会ということで、その方向性を打ち出していきたいと思ってございま すから、御提言としてのお話はいただいて、そして事務局の方で報告書にまとめると きに、その取り扱いについては御説明させていただくことにしたいと思います。 ○工藤座長 よろしいですか。 ○今村委員 大変心強い御発言で、安心しました。 ○工藤座長 今日は、ハイ・チェッカー及び肺年齢のお話と質問票、両方が出てきた わけですけれども、いずれにしても質問票の方は、確かに手間はかかるけれども、お 金は余りかからないわけですね。それが最初の入り口にはなるのだろう。感度をどこ まで、先ほどのお話だと、80%以上とりたいということだと思いますけれども、そう いうやり方で絞り込む。  もう一つは、アンドなのか、あるいはオアなのか、もう少し絞り込むためにハイ・ チェッカーという問題が出てくるだろうと思いますけれども、こちらの方は、質問票 どちがって、一遍に100人やるというのは難しいと思います。これはアンドなのか、 オアなのかというと、やはりアンドなのでしょうか。質問票で絞り込んで、どの辺に 落とし込むかというのは、御意見を伺いたいのですけれども、オアだと感度は上がる、 見逃される方は少ないだろう。相澤先生、何か。 ○相澤委員 それだと、全員にできるのだと、質問票をなくして最初からやってしま って、そちらの方が手間が省ける。手間が省けるというのは、2段階やらなくていい というだけの話で、実際に測定する患者さんは膨大な数になると思うので、大変な手 間がかかると思います。 ○工藤座長 もう一つお伺いしたいのは、人間ドックでのスパイロのデータが出てい ましけれども、あれは気管支拡張薬を吸入した後の数値なのですか。 ○小倉参考人 いや、うちではそれはやっておりません。 ○工藤座長 やっていない。ドックも含めて、健診ではちょっと無理ですね。  ほかに、今日の2つの御説明を中心とした課題について、何か御意見等ございます か。 ○今村委員 ちょっとよろしいですか。 ○工藤座長 はい。 ○今村委員 先ほど、このハイ・チェッカーとスパイロの精度の問題のお話が出て、 図が出ないところで、100%のきちんとした検査かどうかの確定はできないけれども、 もう精度的にはこれで十分だというお話もあったのですが、実際に用意、実施する現 場の立場とすれば、どの程度まで用意するか、費用の面でも場所の面でも全然違うと 思うのですけれども、専門の先生からすると、それを同等とすべきなのか、あるいは どちらかということでよろしいのでしょうか。 ○工藤座長 相澤委員、話されますか。 ○相澤委員 私たちの立場からいえば、きちんとしたスパイロを最初からやってもら えれば、それにこしたことはないわけですけれども、診療施設においても、医療機関 においても、スパイロメーターが十分に普及していない状態では、健診でスパイロメ ーターというのはまず難しいことではないかと思う。こちらの方が値段にしても安い し、測定も簡単ですので、普及を推進していくとしたら、まずこちらの方からではな いかと思っています。何もしないよりか、やはりそういった機能上のデータが少しで もある方が、患者さんのスクリーニングにはすごく役に立つと思っています。 ○工藤座長 ハイ・チェッカーは、ヨーロッパ等では医療器具としてお医者さんのと ころで使っていると伺っております。ただ、日本の場合は肺機能測定器という、医療 機械をお医者さんが使って、診療報酬、診断料幾らというものとしては、記録性がな いと認められていないですね。これは数字が出るだけですから、恐らくそういう形よ りは、日本ではスパイロメーターと違って、性能は同じであってもスクリーニングと か健康ということで進められるのかなと思います。  ただ、実際に開業医の先生方のところで非常に便利に使って、チェックされるとい うことはいいことではないかと思います。 ○平松参考人 よろしいですか。 ○工藤座長 今のことですか。では、先に平松参考人。 ○平松参考人 私ども、肺年齢の事務局をやっている関係で、肺年齢に関して問い合 わせをいただきます。その際、最近は調剤薬局もしくは一般の薬局の方から、肺年齢 をどうはかったらいいのでしょうかという問い合わせが非常に増えてきています。そ の中で、スパイロメーターという機械を設置したいといったときに、先ほど先生おっ しゃったように診断の問題等が出てくるので、そのときにはハイ・チェッカーといっ たものがありますよ。そちらで、薬局に来られた方へのサービスとして提供されたら どうですかという話はさせていただいていますが、それをもうちょっと広める方策が ないのが、正直言って事務局としてジレンマがあるところです。 ○今村委員 ちょっとよろしいですか。 ○工藤座長 はい。 ○今村委員 先ほど先生からの御発表にもあったように、広く一般の健診の方に、い きなりこういうスパイロをやるリスクもあるのです。こういうことになじんでいただ くという意味は理解できるのですが、高血圧とか心疾患を基礎疾患としてお持ちの 方々などにも、どこでも広くとなると一定のリスクはあると思うのですが。 ○工藤座長 医療機器なのですけれども、グレードが違うという。 ○今村委員 そうですね。だから、例えば糖尿病の採血を街の中で啓発のためにやる としても、それは医師が行う医療行為である場合は、移動診療所のような届け出をし て、そこで実施しなければいけないというのが建前となります。今、薬局は医療機関 の扱いになっているからいいのでしょうけれども、広くいろいろなところでやるとい うことは、まだ医療機器ということであればできないということなのでしょうか。 ○平松参考人 薬局の方もこれを広めたいというメッセージが多分あると思います けれども、そこで肺年齢を使って禁煙指導を薬局でしたいと申し出があったときにど うするか、実際のところ、私どもも回答に困る部分ではあります。ただ、最近、制度 云々は別としても、血圧の測定サービスといったものをやられている薬局は多いよう です。  そういった観点で、医療機器のカテゴリーからしますと、恐らくこれを使っていた だいても問題はないということで、こういったものがあるということは御紹介させて いただいているのが現状です。ただ、それをもっと積極的にできるものかどうかとい うのは、正直言って今後の相談なのかなと理解しております。 ○工藤座長 小倉参考人、何か。 ○小倉参考人 今日、最後のスライドで見せましたように、測定手技の問題、及び被 験者側の問題も絡んでくると思います。私ども結核予防会は、呼吸の日に大阪で日本 医師会と呼吸器学会と共催でフォーラムと肺機能・肺年齢測定体験会をしたのですが、 750人以上の聴衆が見えて、450人以上の方が肺年齢・スパイロをされました。  後でフローボリュームを私と職員で全部チェックしますと、やはり吹くのが非常に 不適切で判定評価できないという例が20%以上出ました。測定の際には、横に臨床検 査士技師がついて指導吹いてもらっているのですけれども、それでも20%ぐらいが吹 き方が悪く、データが信用できないということでした。  IPAGの報告でも、8%ぐらいは評価できないといわれていますので、ずさんな やり方をすると、それがもっと多くなることになりますから、いきなり多数の方々に 測定をやっても、果たしてスパイロを使うだけの成果が上がるかどうか、問題がある と思います。被験者と測定する技師の両方に関わる問題で、特に測定上の問題はかな り大きいと思います。 ○瀬戸山委員 質問よろしいでしょうか。 ○工藤座長 どうぞ。 ○瀬戸山委員 うちは人間ドックで3,400名ぐらいCOPD健診やったのですけれど も、17点をカットポイントとしまして42%ぐらい陽性だったのですが、実際にスパ イロをやって陽性率は0.94%。ですから、うちの保健師の意見では、もっとカットオ フ値を上げた方がいいという話。今、下げるということを言っていますけれども、そ の辺はどうかと思います。無駄が多いというわけではないけれども、手間がかかった 割にはポジティブは少ないのではないかという意見もありました。先生には一応お伝 えしておきます。 ○小倉参考人 おっしゃられるとおりです。 ○工藤座長 今日、いろいろ御議論いただきましたけれども、何か。 ○中村委員 ハイ・チェッカーに関連して確認なのですけれども、これは医療機器と しての承認は得ているのでしょうか。PMDAの方に医療機器としての審査の資料を 出して、承認されているのでしょうか。 ○平松参考人 掲載されております。 ○中村委員 ただ、保険診療の中では認められないという位置付けですね。保険点数 を、この機械を使った場合とれないですね。 ○工藤座長 とれませんね。保険点数でとれるスパイロメーターというのは、さっき 申し上げたように記録性がないと。 ○中村委員 フローボリュームカーブがちゃんと記録して残せるというのが、保険診 療で使えるスパイロメーターの要件なのでしょうね。だから、この機器は医療機器と しての承認は、PMDAの審査を経て受けているけれども、保険診療の中で使っても 算定できないということですね。 ○平松参考人 承認されています。 ○工藤座長 医療機器でもグレードは3つぐらいありますね。 ○平松参考人 クラスワン。特殊なメインテインは要らない。 ○中村委員 COPDの早期発見で、例えば開業医の先生が使う場合は、やっても診 療報酬上の評価は全然ないということですね。むしろ、健診という位置づけの中で、 こういう機器を使って、その費用が健診に対する手当ての中で支払われるという理解 でいいのでしょうか。 ○工藤座長 あとは、昔、血圧をいかに家庭の中に持ち込むかというので、血圧計の 持ち込みを日野原先生や何かが随分やられていましたね。ああいう時代を見ると、血 圧を自分たちではかるときに、はかり方とか、最初はえらく戸惑っていたと思います けれども、そういう意味では、こういうスパイロなども、子どものころからおもしろ がって一生懸命吹いていれば、だんだん年をとっても上手になって、もう少しいい吹 き方ができるようになるのではないか。これも長い、時間がかかる話ですけれども、 スパイロメーターを吹くことを国民の中にいかに一般化していくかというのは、非常 に大切なことではないかと思います。そういう長期の視野を持って考えていただける といいと思います。 ○中村委員 もう一点よろしいですか。 ○工藤座長 はい。 ○中村委員 COPDのスクリーニングとして、質問票でスクリーニングする、また こういうハイ・チェッカーなどのような簡易な呼吸機能の検査を併用する。いずれに しても、何らかの形でCOPDのスクリーニングをします。その後、どういうふうに 対応していくかというところが問題になるかと思うのですけれども、余り多くの人を COPD疑いという診断をして、精密検査という形で呼吸機能専門医に紹介するとな った場合、呼吸器内科の専門医の方で受け皿としてきちんと対応できるのでしょうか。  それから、私はたばこ規制や対策のことを研究や実践としてやっておるのですけれ ども、今回の質問票の中でもパックイヤーが使われていますが、40歳以上を対象にす るのであれば、20歳ぐらいからたくさん吸っていたらある程度のパックイヤーになる のですけれども、そうでない場合、他の質問にも該当しないとスクリーニングして、 あなたはCOPDとしては大丈夫ですよということで変に安心させてしまって、たば こを吸い続けることにむしろお墨付きを与えてしまう危険があると思います。  やはりパックイヤーではなくて、現在喫煙しているかどうかということで、喫煙し ていれば禁煙の働きかけをしていくというのがCOPD健診のもう一つの重要なポ イントだと思いますし、先ほどから出てきている受動喫煙についても質問に加えて、 家族の協力とか、いろいろな問題はありますけれども、受動喫煙の防止につながる個 別の指導のほか、公共的な場所や職場での受動喫煙については今後法律でさらに規制 を強化するということが必要と思います。  COPDのスクリーニングで異常と判定した方に対して、指導も含めてどのように やっていくのかという全体の方針について、今日は時間がないのでしょうけれども、 次の検討会などで議論して、全体のイメージを持った中で早期発見のためのスクリー ニングはどうすべきか議論する必要があると思います。その中で、スクリーニングの 方法やテストの感度と特異度、ハイリスク者として判定する割合もこのぐらいが妥当 であろうという議論になってくるかと思います。そういった議論を次回以降是非して いただければありがたいと思います。 ○工藤座長 大変貴重な御意見、どうもありがとうございました。どうぞ。 ○今村委員 今の中村先生の御質問に関連してなのですが、小倉先生の予防会でそれ だけ実施されたと。そういう医療者が見つかったときに、その方たちはどういう対応 になったのでしょうか。今の連携の話に関わると思います。 ○小倉参考人 今おっしゃったように、私どもも単にCOPDを効率よくきっちりと 早期発見したいということ以外に、COPD予備群に対する指導が必要だと思うので、 別に啓発のパンフレットを付けて、あなたの結果はこうですけれども、将来こうなる 可能性はありますよということを、今おっしゃったような点を入れて再診を勧めてい ます。疑いがある人には専門医ヘ行ってくださいと指導したのですけれども、健診は 来られたのですけれども、COPD疑いがあると言っても、そこからもう一歩、精密 検診に行く人の割合ががくっと落ちるのです。  ですから、できるだけ一遍でかなりピックアップしてしまう方が良く、2回に分け てしまうと非常に効率が落ちると思います。そういう意味では、質問票でハイリスク の人にハイ・チェッカーすると説得性が増しますから、そういうやり方が一番いいの ではないか。これは全くの私見ですけれども、そういう考えを今持っております。 ○今村委員 よろしいですか。 ○工藤座長 どうぞ。 ○今村委員 私も私見なのですけれども、結局、健診機関は健診機関として、次の専 門医の連携先というのをすべてのところが具体的に持っているわけではなくて、患者 さんにも任せて、あなたはこうなるから行きなさいよというケースもかなりあると思 います。そこが、中村先生がおっしゃったように、連携のシステムというものがしっ かりしていないと、結局、次につながっていかないのかなということで、次回以降、 そこは是非議論を。 ○小倉参考人 私どもは、大阪府下の呼吸器専門医の学会の認定医のリストを全部つ くって渡しています。それでも、なかなか行かないです。 ○今村委員 なるほど。わかりました。 ○工藤座長 よろしいですか。竹川委員、どうぞ。 ○竹川委員 第1回の会議でお話しされたかと思いますけれども、COPDの概念と いうことをきちんと押さえていってもらおうというお話であったかと思います。健診 で引っかかってハイリスクになっても、今度病院へ行きなさいと言われてもなかなか 行けないというところで、もしCOPDになったらこんなふうになるのだよというこ とをきちんと理解していただくのが大事だと思います。  その理解していただく中で、COPDの方は在宅酸素療法や鼻マスク式人工呼吸療 法をしたり、終末期はかなり厳しくなるのだけれども、そういうところまで見せてい っていいのか。今のCOPDの方で、そのことを一生懸命受け入れようとして頑張っ ておられる方が、そういうCOPDの概念を見たときに、更にうつになってしまうの ではないかという懸念がありますその辺りの概念をどんなふうに打ち出していくか ということも、検討していただければいいかなと思います。 ○工藤座長 そもそもの啓発の問題ですね。ありがとうございました。  大分時間も押してまいりましたけれども、よろしいでしょうか。今日は、第1回の 検討会の中身を踏まえて、1つはIPAGの質問票、もう一つは肺年齢をはかるハ イ・チェッカー、この2つを中心に実際に見ていただいて御議論いただいたわけです けれども、IPAGの質問票のスクリーニングとしての導入については、御異議は基 本的にないのだろうと思いますが、その中身をどういうふうに項目を選ぶか、修正す るかといった問題が残されているように思います。  それから、ハイ・チェッカーに関しましても、肺年齢を何歳ぐらいで引いたらいい のかといった問題も含めて、また幾つかの問題があるわけです。更に、質問票、それ から簡易スパイロと言われている肺年齢の測定器をどういう形で組み合わせるのか、 これもまだ御検討していただかなければならないことだと思います。  最後に、中村委員、竹川委員等から出されていました、質問票等々で疑いが出てき た、あるいは受動喫煙とか実際吸っている人を、どうやって健康増進に切り換えてい ただくかも含めて。それから、実際に異常値が出た方を健診を超えた診断、第2次検 査と言ったらいいのでしょうか、そういうところへ向けていくのかという連携システ ムの問題も含めて課題があるということが、今日の先生方の御検討の中で出てきたよ うに思います。  そういうことで、今回の検討内容、委員の皆様方の御意見を更に整理いたしまして、 今後、どういう方向でまとめるかということについて検討してまいりたいと思います ので、今日はこの辺にしたいと思います。そういうことでよろしいですか。 (「はい」と声あり) ○工藤座長 では、事務局の方からひとつよろしくお願いいたします。 ○生活習慣病対策室長 それでは、ただいま座長の方からお話がございましたように、 事務局といたしましても本日の議論を整理させていただき、また、次回の日程につき ましては各委員の日程調整をさせていただきまして、後日御案内させていただきたい と思います。事務局からは以上でございます。 ○工藤座長 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとう ございました。