10/06/25 第18回高度医療評価会議議事録 第18回高度医療評価会議 (1)日 時: 平成22年6月25日(金) 10:30〜12:30 (2)場 所: ホテルはあといん乃木坂413号会議室 (3)出席者: 猿田座長、山口座長代理、伊藤構成員、川上構成員、        佐藤構成員、柴田構成員、関原構成員、田島構成員、        堀田構成員、山中構成員、加藤技術委員       (事務局) 医政局研究開発振興課治験推進室長        医政局研究開発振興課高度医療専門官・治験推進室長補佐        医政局研究開発振興課高度医療係長        保険局医療課企画官   他 (4)議 題     新規申請技術の評価結果 (5)議事録:以下 ○猿田座長  おはようございます。時間になりましたので第18回高度医療評価会議を始めさせていただきます。 大変お忙しいところ、また蒸し暑いところをご出席いただきまして、ありがとうございました。本日 の構成員の出欠状況ですが、金子構成員、竹内構成員、林構成員、藤原構成員、村上構成員、山本構 成員はご欠席とのことです。本日は技術委員として加藤技術委員に出席いただいています。よろしく お願いします。事務局から資料の確認、審査の要件などお願いします。 ○事務局  事務局でございます。配付資料について確認させていただきます。議事次第、座席表、開催要綱、 構成員及び技術委員名簿のほかに、新規申請技術についての資料として資料1-1、資料1-2、資料1-3 と、参考資料1〜4を付けています。また別紙として関原構成員の意見書を付けています。本日の資料 は以上です。過不足等がございましたら事務局までお知らせいただきますようにお願いします。  利益相反について確認させていただきます。対象となる医薬品及び医療機器の企業等について、資 料1-1に記載しています、医薬品・医療機器情報をご覧ください。対象となる企業または競合企業に関 して、事前に確認をさせていただいています。事前の届出以外に特別に関与するような事例はござい ませんでしょうか。該当なしということでよろしいでしょうか。以上です。 ○猿田座長  早速、議事に入りたいと思います。議題1は「新規申請技術の評価結果」です。これも事務局からご 説明をお願いします。 ○事務局  事務局よりご説明させていただきます。なお、撮影されている傍聴者の方はここまでとさせていた だきますので、お願いします。  資料1-1をご覧ください。6頁になります。「新規申請技術の評価結果」として、整理番号027、高 度医療名は「原発性ALアミロイドーシスに対するボルデゾミブ・メルファランを用いた併用療法」で す。適応症は原発性ALアミロイドーシスが対象となっています。申請医療機関は社会保険京都病院で、 協力医療機関はご覧のとおりです。審査担当構成員として主担当伊藤構成員、副担当堀田構成員、佐 藤構成員となっております。以上です。 ○猿田座長  よろしいでしょうか。それでは、この027に関する評価結果に関して、まず伊藤構成員からご説明を お願いします。 ○伊藤構成員  実施体制の評価とか、倫理的な観点から見ていただいていますので、まず堀田構成員にお願いして よろしいですか。 ○猿田座長  堀田構成員から、まずよろしくお願いします。 ○堀田構成員  堀田でございます。それでは実施体制の評価のところを報告させていただきます。順序が逆になり ますが、医療技術の有用性から始めたいと思います。原発性ALアミロイドーシスは聞き慣れない病名 ではありますが、多発性骨髄腫という、M蛋白が腫瘍性の形質細胞から産生される病気がありますけれ ども、その類縁疾患です。産生されるM蛋白のL鎖が変性し、アミロイド繊維として全身の各臓器に沈 着することにより臓器障害が引き起こされ、特に心臓などに沈着すると致死的になる疾患であります。 多発性骨髄腫の類縁ではありますが、腫瘍性疾患というよりは、臓器障害が表に出てくる非常に希少 な病気です。  今日では、治療として通常の化学療法は有効でないことがあり、ボルテゾミブが導入され、海外で はその有効性を示すデータも一部出ている状況です。そういうことから言いますと、本申請では用法 ・用量を含めて多発性骨髄腫に準拠していますので、特別な使用法ではなく、適応外使用という形に なります。医師の体制としては、申請されている医師をはじめ、参加施設の医師は、多発性骨髄腫並 びに原発性ALアミロイドーシスに対する臨床的な対応、あるいはボルテゾミブの使用については、実 施上の問題はないと思います。  ただし、医療機関の体制として、いくつか気になるところがあります。1つは、緊急時の対応で、当 直体制が内科系、外科系を1名ずつ、あるいは全科、全病院で1名だったりするような施設もあります ので、緊急時の対応が可能かどうかという点の検討が必要と思った次第です。と申しますのは、これ まで本評価会議で検討させていただいた施設が主に特定機能病院でありましたが、特定機能病院では ない施設ではどの程度の院内体制が取られればよいかという点についての懸念です。  もう1つは、倫理審査を通ってはいますけれども、院内倫理委員会の構成が倫理指針に必ずしも準拠 していないという問題です。あとは事務局でありますが、研究事務局とデータセンターの責任者が同 一であり、データの管理の独立性といったものが保証される必要があるのではないかと思った次第で す。  もう1点は、効果安全性評価委員会が1名のみ記載であり、委員会としての体制を整えていただきた いことを、コメントとして上げさせていただき、結果として実施機関の体制というところを「不適」 としました。 ○猿田座長  よろしいでしょうか。 ○伊藤構成員  ありがとうございました。佐藤構成員にコメントを先にしていただけますでしょうか。 ○佐藤構成員  倫理的な側面からのコメントです。まず、これは堀田構成員の評価、あるいは伊藤構成員の評価と 被ってしまうところがあるかと思いますが、倫理審査委員会の問題については後に回します。倫理的 な問題の総括として概ね問題はなかろうと判断しました。同意文書の中で、利益相反の問題が金沢大 学のCOIの委員会を通っているということですが、それについては資料1-2の13頁にその説明があり ます。申請医療機関にはCOIの委員会がないものですから、こちらでやってもらったということでした。 その他、患者相談の体制や説明文書の中身については、とりわけ問題はないだろうと考えたのですが、 1点だけ、倫理委員会のことについて説明同意文書の1頁をご覧いただきたいと思います。  2の「臨床研究とは」というところの第2パラグラフですが、「当該研究専門家、法律や生命倫理の 専門家」などと説明同意文書に書いてあり、オリジナルバージョンは少し違っていたのですが、この 中に「人文科学や社会科学の専門家」という文言が入っていて、この申請医療機関あるいは協力医療 機関の倫理委員会の構成が、どうかということを見ていくと、これは実施申請書の25頁に、申請医療 機関のものがありますし、26頁、27頁に協力医療機関の倫理委員会の名簿が挙げられています。まず 外部委員として1人で、しかも社会福祉法人の財務・総務担当の方であるということ。もう1つは、人 文・社会科学の専門家と言える委員の方がお入りいただいているかというと、ちょっと厳しいので、 これは説明同意文書の手直しでいけるのか、あるいは、それでは足りないので倫理委員会をもう一度 構築していただいて、もう1回承認していただくのかについては、構成員あるいは事務局のほうに判断 をお願いしました。最終的に説明同意文書がこういうふうにできてきたのですが、それにしても、こ れは実際に通っている倫理委員会の構成とはそぐわないので、もう一度倫理委員会を開催していただ かなければいけないと考えました。以上です。 ○伊藤構成員  ありがとうございました。私どものほうでも最近の総説を確認させていただくと、原発性ALアミロ イドーシスは多発性骨髄腫と同様で、形質細胞の増殖的な病気であること。ライトチェーン、軽鎖が 組織に沈着し臓器機能不全を引き起こすのですが、その原発性ALアミロイドーシスの頻度というのは、 多発性骨髄腫に比べて10分の1程度と低い。逆にALアミロイドーシスの10%は多発性骨髄腫と併存 している。しかし、多発性骨髄腫の前段階かというと必ずしもそうではなく、ALアミロイドーシスか ら多発性骨髄腫への進展は1%ということで、1つのエンティティとして考えなければいけないと理解 しました。  その上で、原発性ALアミロイドーシスの治療として多発性骨髄腫の治療を適応する。今回の申請は そういう適応で、複数の文献で治療成績が発表されていますから、ボルテゾミブを用いることで、治 療成績の向上が期待できることについては異論がありません。それと同時に、申請施設についても堀 田構成員からお話があったように、投与経験もあるので問題はないと判断しました。  しかしながら、倫理審査委員会の体制整備や当直などの問題というのは、今後、ここで議論いただ くことなのだろうと思っていますが、事務局やデータセンターについては今回の申請者が自らなって いたり、効果安全性評価委員が1名であることなどから、モニタリング体制、記録の保管などは、信頼 性が確保できる体制整備になっていない点については、構成員の先生方にご評価いただいたとおりだ ろうと思っています。細かく読んでいくと、試験実施計画書の試験代表者が金沢大学だったり、委員 の実施責任者と第3項の先進医療届出書における実施体制が違っているなど、不備がいくつか見られる ので、そういう点については修正をいただきたいと思います。  結論としては、いまの倫理審査、データ管理の方法やモニタリング、効果安全性評価については、 再度、ご検討していただいた上で、承認の方向へ持っていくのがよろしいのではないかと、最終的に 考えた次第です。医療機関そのものについては、この場でご議論いただかないと、判断しきれるもの ではないと思いました。以上です。 ○猿田座長  いま、お話がございましたように技術面的にはいいだろうけれども、今までのところの施設と違っ て、堀田構成員がご指摘になりましたように、今までのは特定機能病院的なものが多かったと。この 高度医療評価に出てくるこういう技術に関しては、そうでない施設において緊急体制をしっかり、要 するに安全性の問題をしっかりやれる所でなければ困るということです。もう1つは、そういった面か ら言って、その施設における倫理委員会、あるいはデータマネージメント、そのほかの所がしっかり した体制がなければいけない。そこのところが少し問題かもしれないということかと思いますが、堀 田構成員、何かご意見はございますか。安全性が特に重要でこの場合には薬の副作用が出たようです ね、その体制がどうかです。 ○堀田構成員  例えばボルテゾミブでいちばん懸念されるのは、急性呼吸障害が起こったときの対応です。今はPS などで適応をかなり絞っていますので、そういう問題がかなりクリアされましたけれども、当初は非 常にそれが問題になりました。そういう意味で呼吸器の専門医に相談できる体制の確保が必要な薬だ という認識を私どもは持っています。 ○猿田座長  それでは構成員の先生方、どなたかご質問はございませんか。この倫理委員会の問題は、佐藤構成 員、どうしますか。確かにきっちりした形でやってもらわなければいけないことは事実だと思います が、ご意見がございますか。 ○佐藤構成員  倫理委員会に、どうして外部委員や人文・社会科学の専門家が必要かということとも絡んでくると 思いますが、1つは、一般の患者さんの視点が入るということが大事だと思います。申請医療機関の体 制ですと、そこは望めないという気がしましたので、少しそういう厳しいコメントを付けたわけです。 ○猿田座長  伊藤構成員、何かございませんか。 ○伊藤構成員  データ管理とか効果安全性評価委員会については、もう少し体制を整備していただいて、体制を整 備した暁には、倫理委員会を1回は通していただかないといけない案件ではないかと思います。施設と しては大変だとは思いますが、佐藤構成員がお考えになられているような要件で、委員を1人追加して いただいた上で審議をしていただく。それでよろしいのではないかと思っています。堀田構成員から 大変厳しいご指摘があって、ただ、病院そのものの当直体制とか、呼吸器の医師を雇ってこないとで きないという話にすると、ちょっと個人的には厳しすぎると思っています。ただ、ここの施設そのも のはボルテゾミブも過去に治療経験を持っている施設ですので、既存の承認範囲の用量であれば、患 者さんにとって安全に治療が可能ではないかと個人的には思っています。 ○猿田座長  もし仮に救急問題が起こったときに、すぐ救急体制がとれるということは非常に大切なことだと思 います。それと、いまの倫理委員会の問題はもう1回、そこのところは検討していただくと。 ○事務局  事務局です。資料1-2の11頁をご覧ください。事務局より事前に構成員のコメントについて、申請 者に回答を求めました。2の「院内倫理審査委員会の構成が臨床研究に関する倫理指針に準拠していな い」ということに対するコメントについて、申請者側からは、臨床研究に関する倫理指針に準拠する ように、法律の専門家を外部委員として招聘準備中であり、倫理委員会の構成が臨床研究に関する倫 理指針に準拠した段階で倫理委員会を開催し、再度審査を行いますというコメントをいただいていま す。 ○猿田座長  もう1回、やってくださるということですね。 ○事務局  はい、そういうことです。 ○猿田座長  それはやっておいていただいたほうがいいと思います。よろしいですか。ほかにご意見はございま せんか。 ○関原構成員  この病気は非常に症例数が少ないということで、患者の同意文書に細かい説明は当然ですが、患者 が知りたいのは、この病院はこの症例をどれぐらい手掛けているとか、あるいは京都でこの症例をや っている他の病院はどうかなどで、そういう情報がないと、いまの問題はなかなか解決しないと思い ます。京都で10件、そのうち8件は府立医大でやっていますとか、京都大学でやっていると言ったら、 患者はそっちへ行くのではないかという気が私はします。もちろん各病院にとって新しい治療をやる というのは大変なのでしょうが、とにかく稀少疾患で、しかも新しい今までにないような治療である としたら、本当はその辺の情報のほうが、患者はいちばん知りたいのではないかと思います。 ○猿田座長  この病気は、いわゆる日本の難病の中で特定疾患の中に1つ入っています。難病財団のほうで、どこ に、どういう分布があるか、かなり調査をしております。例えばアミロイドーシスの場合、1つは熊本 県、あとは長野県の信州大学でかなり調査されています。今回申請されてきた施設においても、かな り手掛けてこられております。堀田構成員、その辺はどうですか。 ○堀田構成員  そのとおりだと思います。ここに挙がっているメンバーは、そういう意味では日本の中で、こうい った疾患に対する診療実績は十分であり、そこはあまり問題ないと思っています。 ○猿田座長  しっかりいまの施設がやってくだされば、問題はないということです。山口構成員、何かご意見は ございませんか。 ○山口座長代理  たまたま私の親友が先月、この病気で亡くなりました。大変辛い思いをしましたので、迅速にやっ ていただきたいと個人的に思います。あと、たまたま個人的に私は京都に長いこといましたので、こ の病院の体制もある程度わかりますが、手術もたくさんやっていて、呼吸器の専門家もいますので、 こういう体制が整えられれば問題ないと思います。 ○猿田座長  ほかに、ご意見はございますか。特にございませんか。 ○伊藤構成員  関原構成員からご意見をいただきまして、ありがとうございました。一応、実施体制として、少な くとも実施責任者の方は、ボルテゾミブの術者としての治療経験が50例で、50人の方を治療されてい るということでしたから、そういう意味でこういった試験をおやりになるのに十分な資格をお持ちで あると、私どもは判断しました。 ○猿田座長  ほかに、ご意見はございませんか。そうしますと総括的には施設の問題、特に倫理委員会の問題は しっかりしていただいて、あとほかの面では、いまお話がありましたように技術的には非常にいいし、 画期的な治療としての十分な価値があるということであります。指摘された部分をお直しいただけれ ば、こことしては伊藤構成員、お認めいただいてよろしいですか。ではそういったことで、決めさせ ていただきたいと思います。倫理委員会のほうはもう1回、しっかりさせていただくということで許可 したいと思います。ありがとうございました。それでは今日はもう1つ、028に移りたいと思います。 事務局からご説明をお願いします。 ○事務局  事務局よりご説明させていただきます。資料1-1の6頁をご覧ください。「新規申請技術の評価結 果」として整理番号028、高度医療名は「再発小児固形腫瘍に対する塩酸ノギテカン(トポテカン)を 用いた化学療法」です。適応症は「再発小児固形がん」が対象となっています。申請医療機関は国立 がん研究センター中央病院です。協力医療機関はご覧のとおりとなっています。審査担当構成員とし て主担当山中構成員、副担当堀田構成員、田島構成員、技術委員として加藤技術委員に審査に加わっ ていただいています。以上です。 ○猿田座長  よろしいでしょうか。それではこの028に関して総括的なところを、山中構成員からご意見をいただ けますか。 ○山中構成員  主担当の山中でございます。14頁の資料番号1-3をご覧ください。高度医療の名称は先ほど挙げら れましたように、「再発小児固形腫瘍に対する塩酸ノギテカン(トポテカン)を用いた化学療法」で す。ノギテカンというのは本邦での一般名であり、海外ではトポテカンという名称を使っていますの で、以後、トポテカンと呼ばせていただきます。  トポテカンに対する承認状況ですが、本邦では小細胞肺がんに対して承認されています。小児がん に対する適応はありません。欧米においても小児がんに対する薬事法上の承認は事実上取れていませ ん。ただし、トポテカンが小児がんに対する標準的な薬剤というコンセンサスには至っています。特 にトポテカンにシクロホスファミドを併用する治療法は、再発小児がんに対する標準的な治療法とし て、PDQなどにも掲載されています。今回の申請はシクロホスファミドの代わりに、同系統の薬剤であ るイホスファミドを用いて、トポテカン+イホスファミドの併用レジメンで、再発小児がんに対する 有効性及び安全性を検討しようとする試験です。試験デザインについては、もともと第I/II相試験 として計画されており、既に第I相を終えて推奨用量が決定されていて、そのまま第II相へシームレ スに移行しています。第II相部分の今後を、高度医療評価の枠組みで行うという申請です。以上が概 要です。  引き続き審査結果ですが、実施体制については堀田構成員、加藤技術委員から審査いただきました。 14頁、15頁をご覧ください。お二方の先生から後ほどコメントを賜りたいと思いますが、すべて 「適」との評価をいただいています。ただし、対象集団が1歳から30歳までとなっていますので、堀 田構成員から、20代後半のような成人に対するマネージメントを小児科単独で行うことが可能なのか、 というご指摘をいただいています。  倫理面に関しては田島構成員に審査いただきました。15頁をご覧ください。田島構成員から後ほど コメントを賜りたいと思いますが、4の同意に係る手続きについては「不適」、5の補償内容について は「適」との評価をいただいています。ご指摘の事項として、同意文書の中では、トポテカンによっ てどのような治療効果が期待できるのかに関して説明が不足していること、患者相談窓口の記載がな いこと、説明文書は16歳以上を対象としているのですが16歳に理解させるには記載がやや難解である こと、こういったことが指摘されています。  プロトコールの内容については私のほうで審査しました。16頁、17頁にコメントを述べています。 総じてプロトコールは細かく規定されていると思います。予測される安全性情報についても過去の文 献を細かくレビューして記載されていますし、定期モニタリングの手順もきちんと定められています。 重篤な有害事象の報告手順も規定されていますし、改正計画も明記され、CRFもそのための情報を得ら れるように構成されています。ただし、何カ所かで記載の変更が必要かと考えます。時間の関係もあ りますので細かくは読み上げませんが、メジャーな点としては、治療完遂率を主要エンドポイントに しているのですが、その設定根拠がやや不明確と思いました。試験の結果を解釈する上で第一義的に 重要な事項ですので、この部分の説明をもう少しディスクライブしていただきたいと思っています。  総評を18頁に記載しました。試験実施体制は適切ですし、試験計画もおおむね妥当なものと思いま すので、指摘事項に対して修正がなされることを前提に、「条件付き適」と判断しました。これまで 既に研究事務局から適切にご回答いただいている箇所もありますので、残りの部分について修正をお 願いしたいと思います。  最後になりますが、堀田構成員、田島構成員からの指摘事項と、それに対する研究事務局からのレ スポンスを検討し、18頁に「推奨する」としましたが、研究事務局にお願いしたい事項があります。1 点目として、先ほど申し上げた成人の患者さんに対するマネージメントの点です。この点を考慮して、 施設ごとに内科責任者を正式に設置していただくのがいいのではないかと思っています。2点目は同意 書についてです。現在の同意書は16歳以上を対象としていますが、16歳に対する文章としてはちょっ と難解かと思います。16歳で一区切りとされているのは、おそらく臨床研究に関する倫理指針を考慮 されてのことだと思いますが、本試験の対象は大部分は小児の患者さんですから、できる限り多くの 患者さんが理解できるような文面で説明を受ける機会を得るべきだと思いますから、小児の臨床試験 に関するガイドラインに沿う形で、例えば12歳未満、12歳以上といった年齢層に分けて、アセント文 書をいくつか用意されてはどうかと思いました。この2点について推奨するという形で述べさせていた だきたいと思います。以上です。 ○猿田座長  細かくご説明いただきましたが、堀田構成員、加藤技術委員、田島構成員にコメントをいただきた いと思います。まず堀田構成員からお願いします。 ○堀田構成員  それでは実施体制の評価について申し上げます。申請医療機関は先ほどのような問題はあまりなく て、特定機能病院もしくはそれに準ずるがんセンターなど、十分に院内体制もあり、試験実施体制も 充実している施設ばかりです。診療体制あるいは医療機関としての体制については、問題はないもの と思います。  医療技術の有用性については、主担当の山中構成員がご説明されましたが、イホスファミドとの併 用というところがむしろ新しい面です。イホスファミドは本申請の対象である小児の、いわゆる肉腫 という横断的な小児悪性腫瘍対して適応がありますので、それとの組合せということになり、独自性 のある試験になっています。  問題は、対象集団が1歳から30歳というところが少し気になります。もともと小児科領域では慢性 疾患の場合に、小児時期を過ぎても小児科で診るのは一般的にあることで、例えば移植の後のフォロ ーでは成人に達しても小児科の先生が診ることは日常的にあると理解しています。しかし、今回の臨 床試験では、いきなり20代後半の方が登録されて入ってくる試験にもなるわけです。そういった場合 に小児科が初診でやるのだろうかという疑問があります。私は自分が病院の管理者ということもあっ て、管理上の問題等を含め、これで院内でスムーズにいくのだろうかという懸念を少し持ちました。 医療上に関しては、成人疾患の合併症等のマネージメントの問題もあるのではないか。この2点で内科 との協力関係をしっかり作っていただきたいという希望です。 ○猿田座長  ちょっと技術的なことで、海外のを見ているとシクロホスファミドを使っている場合がありますね。 こちらの技術では効果的ということで、イホスファミドを使っているのですかね。 ○堀田構成員  シクロホスファミドとイホスファミドは、かなり似ているのですが、一部交叉耐性を克服している ので、セカンドラインとして使うにはイホスファミドのほうがいいのかなという印象は持っています。 ○猿田座長  経験的にはイホスファミドで、ずいぶん経験を積んでいますからね。 ○堀田構成員  ファーストラインはシクロホスファミドが一般的なのですが、セカンドラインの状況だと、こちら のほうが期待はできるような気がします。 ○猿田座長  いまの堀田構成員のご説明に、どなたかご質問はございますか。よろしいですか。それでは加藤技 術委員からお願いします。 ○加藤技術委員  加藤です。ノギテカンとイホスファミドの併用について、ご説明させていただきます。我がセンタ ーの固形腫瘍の専門医との協議の結果です。実施責任医師等の体制については特に問題がなく、また 実施医療機関の体制についても特に問題がないということでした。保険適用の状況ですが、塩酸ノギ テカンについては先ほどからお話がありますように、現時点では肺小細胞がんのみが薬事承認保険適 用とされています。また、このイホスファミドについては、小児固形腫瘍が薬事承認となっていて、 がん種によっては第1選択の治療薬としても頻用されている薬剤です。  国立成育医療センターでの使用状況を申し上げると、ノギテカンについては固形腫瘍の治療抵抗例、 再発例に関して一昨年から投与が試みられています。昨年は5例に対してこれが投与され、治療効果は 明らかであり、有用な抗がん剤と考えられました。また副作用としては骨髄抑制と消化器症状が主な もので、投与しやすい薬剤であったということです。また当センターではノギテカンとシクロホスフ ァミドを併用する形で、従来は治療を行ってきたところです。またイホスファミドに関しては年間10 例以上投与されていて、小児がんにおける主要な抗がん剤の1つと考えています。  ノギテカンに期待される役割ですが、小児固形腫瘍においては、標準的な治療に抵抗する症例が少 なからずあるところから見て、それらの症例についてノギテカンは一定の効果を有することが、既に 欧米の研究で示されていますので、我が国での投与が可能となることが切望されているところです。 また固形腫瘍の再発例においては、初発時の治療によりシスプラチン、カルボプラチン等による腎障 害、聴力障害が存在することがしばしばです。そのような患者においては、プラチナ製剤を再投与す ることが難しく、腎障害を生じないような化学療法が望まれていて、ノギテカンはその中心となる薬 剤として期待されているところです。したがって、この有用性においては、塩酸ノギテカンは欧米で は既に小児固形腫瘍に対する軸となる抗がん剤と捉えているところから、日本での薬事承認を得るた めの有用な高度医療と考えるところです。以上です。 ○猿田座長  小児の領域では、外国では非常に効果的に使われているということです。どなたかご意見はござい ますか。それでは田島構成員からお願いします。 ○田島構成員  倫理的観点からの評価について、意見を述べさせていただきます。説明文書には形式的には必要項 目が網羅されていますけれども、いちばんの問題は、患者さんが、この治療を選択するかどうかを決 定するときに最も重要な要素となる、トポテカンの治療効果についての記載が不十分であることです。 「トポテカンの効果を発揮する仕組みが、これまでお使いになったものと異なります」といった記述 や、あるいは「効果があります」「効きます」といった記述があるだけで、その具体的な効果を発揮 する仕組みや、イホスファミドとの併用によって、いかなる治療効果が期待できるかについての説明 が欠けていますので、これは補充していただかなければ十分でないと考えています。  それから、研究事務局と研究代表者の連絡先の記載はありますが、こういった担当医師と全く別の 患者相談窓口が設置されていることが必要と考えますので、この窓口を設置し、それについての連絡 先の記載を付加していただきたいと思います。  また、この説明文書は、16歳以上の患者さんに理解可能なものとして準備されたとなっていますが、 16歳の患者さんには、なかなかこの説明ぶりでは理解が難しいと思います。申請者のほうが説明を受 ける側の立場に立って、わかりやすく丁寧な記載をする必要があると思いますので、そのような訂正 を是非お願いしたいと思います。以上です。 ○猿田座長  いま、ご指摘いただきましたように、説明が不十分なところがあるということ。もう1つは16歳の 方にとっては少し理解し難い記載なので、直していただければいいと思います。問題は、患者さんの 病院における相談窓口を新しく作っていただいたほうがいいということです。そういったご指摘です が、どなたかご質問はございますか。そういったところはこれから直していただくということで、ご 意見がなければ総括的に山中構成員、どうでしょうか。関原構成員、どうぞ。 ○関原構成員  1枚メモを提出していますが、いまの田島構成員のお話と基本的に同じですが、例えば先ほどの京都 の案件に比べて分量は極めて多いのです。20数頁とかで分量が多過ぎて、その結果、どのような治療 を行って、どのような効果が得られるのか肝心の説明が非常にわかりにくい。医療提供サイドからす れば、いわゆる契約書のような形になっていても、これ位は理解してほしいというのはわかるけれど も、本件は16歳以上の未成年者も対象としていることを考慮して、極力、平易な文章で簡潔に書いて ほしいというのが結論です。  この内容がどうしても必要であれば工夫をして、どうしても理解してもらわなければいけないとこ ろだけは、例えばアンダーラインを記すとか、あるいは最初に、箇条書きに2枚ぐらいで要約書を作る 工夫をする。一般的な説明、例えば“臨床試験とは何か”というようなものは全部最後に附属説明に して、あくまでも同意してもらうところについてコンパクトに記述する。それと専門用語は極力減ら す。例えば適応外薬が云々は、あまり関係ないのです。この治療というのは、基本的に最適である人 にしか使いませんと書いてある。その上で、医師が勧めるということはこれ以外に最適な治療はない ことになり、問題になるのは副作用がどうか、リスクはどうか、コストはどうかですから、そういう ことを中心に構成すればいいのですが、そのあたりを含めて全体を見直してほしい。  特にわかりにくい説明ということで、2のところに書いてみました。一番目は、なぜこの治療が最適 なのかというところがよくわからない。2番目は先ほどの適応外薬のところにもありますが、保険診療 のことをえらくたくさん書いてありますけれども、これは関係ないわけです。先ほどの効果のところ で、欧米で最も有望だという従来のイホスファミドとの組合せということで、今回の組合せのほうが 「よく効く場合がある」と書いてありますが、片方で「効果が期待できる」と断定的に書いてあるの です。何かその辺も含めてもう少し工夫が要るのではないか等々、ここに書いたようなことで全般的 に見直して、もっと簡潔にわかりやすく書いてほしいというのが私の意見です。 ○猿田座長  いま田島構成員からご指摘があったことを、また関原構成員にまとめていただきました。この形で1 回、説明文書を直していただくことが大切かと思います。ほかにご意見はございませんか。特に今度 の場合には説明文書のことがかなり問題だと思いますが、それでは山中構成員、総括的にお願いしま す。 ○山中構成員  海外で重要なキードラッグとなっている、トポテカンを組み込んだ重要な試験ですし、プロトコー ルはおおむねしっかりできていると思いますので、「条件付き適」でお認めいただけるのでしたら、 しっかり修正をしていただいて、臨床試験を実施していただきたいと思っています。 ○猿田座長  ほかに何かございますか。よろしいですか。いまご指摘いただきましたように海外で非常に効果的 であるし、早く日本へ持って来たいということですから、いまご指摘いただいたようなことは、特に プロトコールの検討と説明文書の直しということで、これは早急に直していただけると思います。あ と病院の窓口の体制も検討していただくということで、条件付きということの決定をしてよろしいで しょうか。どなたかご意見がありますでしょうか。山口構成員、何かございますか。 ○山口座長代理  これは外国で使われていて、日本で使えていないという典型だと思います。意義は大変大きいと思 いますので早急に体裁を整えるべきだと思います。関原構成員から言われたことは私も大変勉強にな りました。確かに説明文書は、どうしても厳密に書こうと思うと難しくなってしまうのですが、患者 さんがこういうことを受ける本当の気持というか、そういうのが高まるような書き方が必要ではない かと感じました。そういう点をご配慮いただき、なるべく早く書類を整えて実行していただきたいと 思います。 ○猿田座長  ほかにご意見はございませんか。もしないようでしたら、いまの点をお直しいただき、早くそれを 訂正していただくということで、「条件付き適」でよろしいですか。それではそういう形で決定させ ていただきたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございました。今日、検討する案件は この2つですけれども、事務局から何かご意見はございますか。時間が早いですが、構成員の先生方か らご質問はございませんか。もしございませんようでしたら、次回の日程をお願いします。 ○事務局  次回の日程ですが、7月30日(金)、10時30分から12時30分を予定しています。詳細等が決まり ましたら追ってご連絡申し上げます。また本日の議事録については作成次第、先生方にご確認をお願 いし、その後公開させていただきますので、併せてよろしくお願いします。 ○猿田座長  よろしいでしょうか。それではご協力ありがとうございました。これで終わりとします。 照会先 厚生労働省医政局研究開発振興課 TEL 03−5253−1111 高度医療係 松本 内線2589