10/06/21 第4回職場におけるメンタルヘルス対策検討会議事録 第4回職場におけるメンタルヘルス対策検討会       日時 平成22年6月21日(月)                 10:00〜12:00    場所 経済産業省別館別館1014号会議室 (担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部                              労働衛生課 古田、永田                      〒100−8916                       東京都千代田区霞が関1-2-2                       TEL 03-5253-1111(内線5181,5505)             FAX 03-3502-1598 ○永田主任中央労働衛生専門官 定刻になりましたので、ただいまより第4回「職場におけ るメンタルヘルス対策検討会」を開催させていただきます。本日は石井正三委員、岡田邦夫 委員、生越照幸委員はご欠席です。カメラ撮りはここまでとさせていただきます。  配付資料の確認をさせていただきます。議事次第と論点が1つに綴じてあります。資料2 から資料5まであります。本日のヒアリングにおいでいただいております、東邦大学の黒木 先生の資料が資料2です。相模原地域産業保健センターの後藤コーディネーターからの資料 が資料3です。五十嵐委員からの資料が資料4です。厚生労働省健康局保健指導室からの資 料が資料5です。以降の議事進行は相澤座長にお願いいたします。 ○相澤座長 議事に入ります。本日は、最初に2名の方からヒアリングがあります。その後、 論点ペーパーに基づいて議論を予定しております。配付資料の内容については、後ほどの議 論の際に説明又は紹介させていただきます。  ヒアリングを始めます。最初に、東邦大学医療センター佐倉病院精神医学研究室の黒木宣 夫教授においでいただいております。よろしくお願いいたします。 ○黒木氏 ただいまご紹介をいただきました、東邦大学佐倉病院精神科の黒木です。20分 ほどと聞いておりますので、まず私の背景からお話させていただきます。私は、週のうち 3.5日は普通の精神科の外来診療をやっております。月に半日を数社、嘱託の精神科医とし て兼務しています。1つの企業からは産業医として登録されています。精神科専門医として あとの2社はかかわっています。もう1つはかなり大きいのですけれども、精神科の専門医 として入っているのですが、産業医がメンタルの問題も扱うということで、難易度の高い難 しい事例が回ってくることもあります。それから、私の医療機関で衛生委員長と健康支援室 の責任者をしています。  次の頁は、メンタルヘルスの不調をどう把握するかということが、自殺・うつのプロジェ クトチームでは報告されております。私がどういうことをやってきたかということですが、 以前は私どもの医療機関は300床だったのですが、昨年からは451床に増床しました。職 員は常勤が約870名ですから、約900名ぐらいの事業場ということになります。  平成15年11月、それから平成17年3月に職業性ストレス簡易調査票と、CES-Dを行 っています。平成15年にはBurn Out兆候も調べました。このときは、まだ300床のとき でした。医療機能評価でも、衛生委員会は必置義務ということになっていたのですが、新し いバージョンのバージョン5からは必置義務ではなくなっています。平成15年と平成17 年に続いて、2010年7月にはWeb上で簡易ストレス調査票を予定しています。  次の頁で、平成17年3月のデータを少しご紹介いたします。私どもがメンタルヘルスに かかわらざるを得なくなった事情ですが、普通は一般に病院はかなり遅れていて、精神科の 外来があれば精神科の外来へ受診させればいいだろうということで、メンタルヘルスに取り 組むのがかなり遅れています。実際に私どもの所で従業員が自殺企図を図って運び込まれて きたことを契機に、メンタルヘルスに取り組まざるを得なくなったという背景があります。  このときは661名が対象で、回収数は545名で82%の回収率でした。それから心身の不 調があるときにどうするかということに関しては、「誰かに相談する」が62%、その誰かと いうのは「家族」が42%、「同僚」が28%でした。  次の頁で、自分の精神状態について「チェックしてほしい」という方が16.4%いました。 職種別に健康度とCES-Dの関係を見ていくと、左側に看護1から看護9、それから診療録 というところで10に分かれています。多い所で68名、少ない所で24名です。CES-Dの カットオフポイントが16点以上が陽性になりますが、どれぐらいの割合でうつの陽性率が あるか。高い所は看護5のところ、あるいは看護6の所は62%、看護9は68%、病棟によ っては7割近い人が陽性であるということです。これは、職種によってかなり違っていて、 このストレス判定図は省略させていただきます。  次は、残業時間と健康リスクです。このころはサービス残業といったこともあったので、 これは実態とはちょっと違うところがあります。リスクはこの簡易ストレス調査票では、 ICUが120、オペ室が134、診療録センターが152ということですが、これはかなり特殊 な状況があります。ICUとオペ室は非常に緊張度が高い職場ですからよくわかります。診 療録センターはほとんどがアルバイト、契約社員、パートの方で、職員は2人しかいないと いう所で、いろいろと人間関係のことがかなり問題となっていて、この当時3名の相談者が 来ています。  次をご覧ください。看護師さんの場合、CES-Dの陽性に関して病棟、職場ごとに調べて みると、一番高い病棟は7割近い従業員が陽性でした。看護師さん以外の職種を見ると放射 線部がちょっと高いのですが人数は少なくて50%、40%、16%です。医師の場合は24%、 26%です。事務部門は13.8%です。ストレスの判定図でも、要注意のところに入るのは看 護師さん以外ではいないということでした。  職場健康度(リスク)の関係では薬剤師さんが111でちょっと高いぐらいで、ほかは大体大 丈夫です。事務職は106でした。  平成16年に相談室を開設してからは私の所にすべて上がってくることになっております。 メール相談というのは、私の所に職員から直接相談が来ます。あとは室長、上司を通じて相 談が来るのがほとんどです。実際にメール相談は波があって、1人の人が何回もワッと相談 に来ることもありますが、ここ数カ月はほとんどメール相談はありません。  いま現在起こっているのは、新しい年度になって、新入職員が職場になかなか適応できな いということで、ここ2週間で4人の相談者が出てきています。これは、職場で初めて働く こともあり、学んだことと現実とは別世界であるということもあって適応できない方が来ら れています。  昨年1年間の件数と実際についてですが、支援室、これはほとんど私がかかわったもので す。月別に実数を出していますので123ということになっていますけれども、これほど多 くはないです。しかし、ケアをする上で1人の人を職場復帰させる際に毎週チェックしたり、 あるいは就業制限をかけるということで、どうしても面接回数が多くなります。  次をご覧ください。実際には約25名ほどの職員をフォローしていることとなります。右 のほうがその内容ですけれども、ほとんどが職場復帰の問題と就業制限です。あとは、本人 はパワハラだと言うのですけれども、実際にはパワハラではなくて周りがパワハラを受けて いる。しかし、その本人は被害意識を持った上でそういうことを言っていますので、なかな か扱うのが大変で業務分担をさせた事例もあります。  次です。昨年3月に具体的なメンタルヘルス対策の推進ということで出されているもので す。  次をご覧ください。ここからが私の言いたいことでありますけれども、スクリーニングと いうのは質問紙法ということです。これは利点と欠点があります。質問紙法の長所として、 1)施行方法や採点方法がマニュアル化されている、2)容易に実施できる、3)短時間で集団に も実施できる、4)評価に主観が入らない、などがあげられ、臨床場面以外の機関でも多用さ れている。一方短所としては、1)被験者の言語能力や自己評価能力に依存する、2)質問項目 以外の事を知りえない、3)意識のレベルしか知りえない、4)回答の意味(意図)を確認でき ない、5)虚偽または意識的に操作された回答のチェックが困難である等が一般的に言われ ていることと思います。簡易型臨床診断(MINI)、臨床診断面接尺度(DSM−IV版)は面 接をしながら診断を確定していく方法であるが、質問紙法と同様に患者の意図的な心理まで をも100%完全に排除することは困難であろうと考えられます。この質問紙法が絶対という ことではないです。個人の内面を本当に捉えられているかどうかというと、かなり疑問もあ るという事例もあります。私どもが気分障害、あるいはいろいろな病態を相手にする上で、 うつ病だけ取ってみてもさまざまな病態が入り込んでいることをまず認識していただくこ とが必要かと思います。  精神科医に企業の中で求められている、あるいは事業場で求められているのは、まずはメ ンタルヘルスの不調者を早期に見つけて、早期に対応するというのは最低限必要だろうとい うことです。そのために内部のメンタルヘルスの体制、上司からの情報、あるいは産業保健 スタッフがその情報を上げてくることも必要ですし、それから医療機関へどうつなぐかとい うことが必要になってきます。  欠勤や遅刻に早く対応していく。事業場だけで、職場だけで対応して健康支援スタッフの 所に上がってこないこともあります。不調があるのに職場がそれを容認していることもあり ます。最近はフレックス制度を廃止している企業が多いわけですが、逆にフレックス制度が あるためになんとか適応していた人が、フレックス制度がなくなったために遅刻が多くなっ たり、メンタル不調があぶり出されてくることもあります。  EAPに関しても各企業が入っていて契約が非常に多くなっていると聞いています。これ も大体1〜2%ということを考えると、アクセスが1〜2%で、それもリピーターが多いとい うことを考えると、外部に相談できるという点では非常に利点はあるでしょうけれども、こ れだけで担保されたと考えるのは非常に問題ではないかと思います。  メンタル不調になった人が復帰して、それをどうやって支援するかということは求められ ます。そのために上司、それから人事を含めた上で、就業制限をかけていくことが非常に大 事になっていきます。もう1つは、こういうメンタル不調を支援する上での情報管理ですが、 データをどこが管理するのかということも非常に大事なことであります。職場復帰の支援を 充実させていくことは非常に大事だろうと思います。  最後に、このスクリーニングの精神医学的な問題であります。私どもが常に頭に置いてい ることは、精神科医としては病態水準をどう把握するかということです。スクリーニングの 陽性者が必ずしも病的水準とは限りません。職場環境で、私どもの医療機関でも看護師さん の場合には非常に高く出ることもあります。職種や職場環境ということでかなり陽性に出て しまうこともあり得ます。これは、私が関係した企業でも実際にかなり高度に出ています。  スクリーニングでは、うつ状態の可能性が否定できないということであり、必ずしもこれ が要医療ということではないということであります。このスクリーニングによって、産業保 健スタッフがかかわり、陽性の背景を探ることができる、これが第一歩だろうと思います。 そこからいろいろなことが少し見えてくることはあるのではないか。それから構造化面接を 利用しながら、本当に治療が必要なのか、医療が必要なのかどうかを検討していく1つの手 段にはなり得るだろうと思います。  それから、労働者にこういう情報を与えることで、危機的状況に陥ったときに助けを求め る可能性があります。健診などで質問紙の項目のところに「眠れない」「頭が回らない」「集 中できない」といったことが残されていて、その後に自殺をされたということもあるわけで すから、こういう危機的状況に陥った人が助けを求めることもその中では起こり得るのでは ないかと思います。  労働者の精神的健康には、疲弊によって不調が起こる、対人葛藤による不調、本人の精神 疾患による病的思考によって不調が起こったり、あるいは業務や職場環境に適応できない不 調等があると思います。本人の不調が、どういう水準の病態なのかを見極めることが必要な のですが、これはスクリーニングでは不可能だろうと思います。  病態を否認する労働者、拒否をする労働者、あるいは被害的な解釈のもとに行動する労働 者もいますので、ここのかかわりにおいては非常に慎重な対応が必要になります。特に、被 害的な念慮を持っている方は、医療機関にかからない、日常生活も崩れない、しかし病的な 思考があって、そのためにいろいろな行動を起こすということですから、本人にとっては逆 に自分が被害を受けているということでいろいろな行動を起こしたりするということで非 常に説得力もあるし、周りがどんどん巻き込まれていくという状況がつくられ、対応が困難 になることがあります。  スクリーニングは陽性である、職場情報がそれに加わるということで、明らかに要医療と いう場合もあって、それを治療になんとかつなげることができるというと、労働者にとって は非常にプラスになるのではないかと思います。  大企業でこういうスクリーニングをすることによっていろいろなプラスになる面は非常 に大きいと思います。産業保健スタッフや専門医がいる場合は、このスクリーニングは非常 に有効に働く可能性が高いです。しかし、中小企業や零細企業の場合にこのデータをどうす るのか、どういうふうに対応していけばいいのかということは、単なる企業の中で対応とい うのはなかなか難しいだろうと。外部との機関を通じた対応を検討していくことが必要だろ うと思います。  私が実際にいる所では、スクリーニングの内容も毎年、検討は必要だと思います。これが 毎年、全く同じのところもあります。企業によってはWebにこれをシステムとして入れて、 毎回同じ質問にアクセスできる。そして健診のときに一斉に2週間ぐらいかけてアクセスし ましょうということでこのデータを取る。しかし同じ質問紙法で、果たして本人の状態を正 確に答えてもらえるかどうか、本人が本当に納得して回答することがあり得るのかというと、 やはりこういうことに関しては工夫が必要だろうと思います。  私が言いたいことは、このスクリーニングが第一歩だということであります。やはり人が かかわることによっていろいろなものが見えてくる。特に精神疾患は身体の診断と違ってデ ータが見えない、病態が見えないというところを明らかにしていく。それも本人の労働者が 納得いくような形で明らかにしていくことが必要だろうと思います。以上です。 ○相澤座長 ありがとうございました。黒木先生の具体的な調査内容、自分でのご経験、そ れから非常に具体的な提言をいただきました。せっかくですので、委員の皆様方からご質問 等がありましたらお願いいたします。 ○下光委員 黒木先生、貴重なご発表をありがとうございました。簡易調査票を開発させて いただいた立場からお聞きします。この調査は記名式ではなくて、無記名式で行われたので すか。 ○黒木氏 これは、最初に納得してもらって、記名です。返事をどう返したかということを 言い忘れたのですけれども、フィードバックは一人一人封書で直接返しています。その中に、 面談を希望するかどうかを一応入れて返しています。本人の場合にはストレスが高い状態で ある。したがって、もし面談を希望する場合はご連絡くださいという形で返しているのです けれども、実際に返ってきたものの返事はほとんどなかったです。現在もそうですけれども、 むしろ上司を通じて私どもの所に来るのが多いです。 ○下光委員 そうすると、セルフチェックにも使えるということですか。 ○黒木氏 セルフチェックにも使えると思います。今度考えているのはWeb上でやっても らって、パスワードを使いますので本人しか見られません。20分ぐらいかけて全部自分で やるとその結果はすぐ出てきますが、それは本人しか見られません。データ管理に関しては、 健康支援室では私と、4月から週2回来ているカウンセラーの2人しか見ることができない 形にしようと思っています。 ○下光委員 スクリーニングという言葉なのですが、うつ病のスクリーニングなのかどうか。 私どもが開発した段階では、簡易調査票に関しては、うつ病のスクリーニングはできなくは ないだろうけれども、スクリーニングに用いる目的で開発されたわけではなくて、ストレス 状態にある人たちを把握しようということで、ストレス状態にある人のスクリーニングとい うのでしょうか、職場環境の評価を含めた調査票を開発しました。その意味では使えると思 うのですけれども、うつ病のスクリーニングとしてこれが使えるのかどうかということにつ いて私どもは検討していなかったのですが、先生はどのようにお考えですか。 ○黒木氏 それでCES-Dを一緒にやっています。これが、抑うつ尺度を見るものでありま す。この得点が16点以上が一応陽性ということになっているので、それを全部に出したと いうことです。 ○堀江委員 黒木先生はいくつかの異なる立場で企業とかかわっておられるようなのです けれども、精神科医としてかかわっている場合に調査票や本人との面談から得られる会社や 仕事の情報と、産業医としてかかわった場合に得られる会社や仕事の情報を比べて相違があ ると感じておられますでしょうか。産業医のほうが正確に把握できるでしょうか。会社や仕 事の状況については、産業医としての情報がないと、場合によっては労働者の言いなりにな ってしまったり会社の状況を見誤まってしまったりすることはあるのでしょうか。 ○黒木氏 企業によって違いますけれども、上がって来るときには保健師さんと上司とか、 その上がり方はいろいろあります。あとは人事まで上がって、そこで話が来ることもありま すので、当然産業医からの情報は非常に参考になります。産業医と一緒に面談をしたりとい うことも、事例によっては出てきます。特に、身体的なことに関しては、まず産業医のほう に行くので、そこからこちらのほうにフィードバックされるということになります。 ○堀江委員 会社や仕事の情報は本人との面談や調査票以外からも収集した上でかかわっ ておられるということですか。 ○黒木氏 それでないと、我々が入っている意味があまりないと思います。 ○相澤座長 それでは、黒木先生どうもありがとうございました。続きまして、神奈川県の 相模原地域産業保健センターのコーディネーターの後藤昌弘様にお越しいただいておりま す。 ○後藤氏 ただいまご紹介をいただきました、相模原地域産業保健センターのコーディネー ターをやっております後藤です。私どもの担当は50人未満の事業場が主ですが、実際には 300人未満の事業場のメンタルヘルスについても相談に乗っております。  資料3をご覧ください。私どもが担当している相模原市の人口は約71万人です。50人未 満の事業場は約2万2,000で、そこに働いている人が15万人ぐらいです。さらに300人未 満の事業場を加えると大体18万人ぐらいの方がメンタルヘルス支援事業の対象となります。  詳しいことは省きますけれども、そういう支援事業を展開するに当たってはこの図面にい ろいろなことが書いてあります。こういう、いろいろな関係団体ということで、当然行政と か、こういう方との緊密な連絡体制、連携、協力、指導支援というものがなければ、50人 未満の事業場のメンタルヘルスに対する支援はできないと思い、こういう組織をいまつくっ ております。密な連携を取ってやっていて、いまは地域職域連携推進事業が基になると思っ て活動しています。  活動に至るのは平成16年後半からやっていて、平成17年からは精神科の先生を中心に、 月2回夜間にメンタルヘルスの個別相談をやっていました。ところが、精神科の先生ですと、 どうしてもカウンセリングだとか治療のほうにあたって、相談者の要望とは乖離がありまし た。  平成17年から始めたのは、資料の右のほうに「働き盛り層のメンタルヘルスケア支援事 業」と書いてありますが、相談員を設けました。これは、地元の企業出身の保健師さんであ り、産業看護師さんという方が中心になってまずプレチェックといいますか、先ほどお話が ありましたスクリーニングでしょうか、そういうところで話をよく聴いて、次に産業医の資 格を持っている地域の医師会に所属する産業医部会の先生、その中には心療内科の先生であ ったり、企業の産業医の先生にお願いして、そこでさらに専門の先生の対応が必要だという ことになったら、そこの先生の紹介によって専門の精神科の先生の所へ行くというシステム を確立して現在に至っております。  現在の状況ですが、これは全部個別相談ということで位置づけておりますけれども、月5 回常設の相談室を開いています。そのうち2回は夜間です。市内が非常に広いのでなかなか 来られる方がいないので3カ所で開いて、そのうち2回を夜間に開いています。当然こうい う問題を扱っている中では、中小企業の事業主のメンタルヘルスに対する理解度は非常に低 いので、メンタルヘルス不調者を見つけて相談態勢にまで持っていくのは非常に難しい状況 です。メンタルヘルス不調者を抱え悩んでいる事業主が多くいるという感じをいろいろなセ ミナーを通じたり、情報交換会を通じて感じております。  実際のセミナーは相模原市の保健所や、ここに載せたいろいろな企業団体の所でセミナー を開催し、その後に個別相談をやっています。昨年度の実績では、12会場でセミナーを開 いて、そのうち5回個別相談を開いています。それから、どうしても相談員では物足りない、 非常に緊急を要するような場合は随時開設ということで、相談員を通り越して協力医の地域 の産業医の先生、心療内科の先生にお願いしてその後の対応を続けていただくことにしてお ります。昨年度、相談員を通さずに先生にお願いしたケースが5〜6件あります。先週の火 曜日に、同じケースがありましたので先生にお願いし、専門家の先生を紹介していただきま した。  実績としては、下の括弧に書きましたように平成17年から平成21年までの間に相談に 来られた方の延べ人数です。昨年度は130名ぐらいが来られています。100回以上の相談 窓口に来られた人たちです。重複している人も含みます。この中には本人は当然ですが家族 の方もかなりいます。息子さん、娘さんについての相談であったり、職場の上司、担当者が メンタルヘルスケア支援をどう進めていいかわからない、復職についてどう対応していいか わからないということが数多く見られます。今年度に入って6月15日現在で20回の個別 相談を開設していますが、相談者は25名来ています。いままでは、相談者は是非来てくだ さいということで働きかけていたのですが、この左にあるような諸団体との連携を通じて浸 透していった結果、現在では是非動員してください、来てくださいというようなことは少な くなり、こちらからお願いしなくても来るような体制になりました。この相談体制は非常に うまくいっているということを自負しております。  提言といいますか私の考え方を述べさせていただきます。約6年間のメンタルヘルス支援 事業をやった中で考えるのは、必ずしも精神科の先生の専門的な指導だけではなくても、地 域にいる、私どもは企業出身のベテランの保健師さん、産業看護師さんといった何十年も経 験をした人たちが非常に適切な対応をしていただいていると感じています。これからのメン タルヘルス支援、特に50人未満の事業場では地域の資源を利用する、それは地元に在住す る保健師さんであり、協力医であり、精神科の先生ということが重要かと思います。それら の先生、保健師さん、地域の協力医の先生、精神科の先生で1つのチームをつくり、市内の 各所に配置され、メンタルヘルス不調者への対応ができるということを、相模原の地域職域 連携事業活動の中で提案していきたいと思っています。  それと同時に事業主の、メンタルヘルスに対する理解度は現在でも非常に少ない状態です ので、これもきめ細かいセミナーといいますか、200〜300人を集めたセミナーではなくて、 工業団地単位であるとか、20〜30人で対等な話をできる中で実施するのは非常に効果があ ります。その中では本音も聞けますし、それに対応する対策も出てくるのではなかろうかと 思います。そのためには、地域職域連携推進事業というのは、メンタルヘルス支援事業を推 進していく中で重要な原動力になるかと思っています。  いまここで説明しました、我々の相談体制をさらに発展させて行くことが、中小企業の皆 様方と接している中では切実な問題として感じられます。  是非こういう組織を早急に構築し、その人たちを助けることが、我々に求められているこ とであると思います。相模原の場合は保健所と我々地域産業保健センターが中心となり、地 域職域連携推進事業の中にメンタルヘルスを位置づけ、さらなる活動を続けていきたいと思 っております。地域でいろいろな知識を持って、いま何かお手伝いをと思っている地域企業 出身の保健師さん、産業看護師さんをうまく利用しない手はありません。そういう体制が、 地域に足をつけた活動を展開することが悩んでいる人たちを救えるのではないかと考えて います。以上です。 ○相澤座長 ありがとうございました。相模原市では大変活発にやっておられて、私も産保 の運営委員なのですけれども、こんなにやっているとは思いませんでした。委員の方々から ご質問がありましたらお願いいたします。 ○川上委員 ありがとうございました。先生のご提言がちょっと理解できなかったのでもう 少し教えてください。地域の産業看護職などを利用するというのは、健保組合とかそういう 所で働いている方をということですか。 ○後藤氏 地域で看護師さんなどを置けるような大きい企業出身の看護師さん。大概60歳 を超えているベテランの方にお願いし、その方が相談に乗るということです。それは5〜6 カ所で、しかも相談回数を多くするためには、説明しました体制を組まないと要望を受け入 れられないのです。精神科の先生なり産業医の先生が対応しても、それは数としても場所的 にも、それから先生のキャパシティを考えてもとても対応できないので、現行の相談員体制 を採用したということです。 ○川上委員 まだクリアにならないのですが、例えば大きな会社に、いま現在も勤めている 産業看護職の人のボランティアを募ってチームをつくって対応するというイメージですか。 ○後藤氏 もう、それは卒業したかもしれないです。もちろんそれを進めて、大企業の理解 が得られれば、そういう人たちで構成することも1つの手だと思います。 ○川上委員 リタイアされた産業看護師の方たちですね、わかりました。 ○後藤氏 そうです、リタイアされた方たちです。あとは神奈川の場合には、産業保健推進 センターの相談員も何人かいますので、そういう人たちの協力も得ています。 ○川上委員 先生はこの事業の中でストレスチェック、あるいはうつスクリーニングに対す ることは基本的にはされていないのですか。 ○後藤氏 基本的にはしておりません。面談中心で、1人約30分か40分の面談が中心です。 ○五十嵐委員 大変貴重なお話をありがとうございます。前回の委員会の中でも、医師会の 今村先生から地産保に保健師を置くようなことも考えるべきだというご提言があり、まさに 本日はそういうお話を伺えました。この対象のエリアの人数からいって、相談員の5名とい うのはどうなのでしょうか。本来だったらもっと多いほうがいいとか、対象人数と、対応す る相談員の割合はいかがなものなのでしょうか。 ○後藤氏 それはなかなか難しい話で、15万人の中の、いろいろな先生の話だと0.7%の人 がメンタルで休んでいるという統計を見ると、この人数では足りないです。いかんせん、こ ういうことをやっていることを知らない事業場の方が8割以上です。これを知っている方々 だけが利用しているという非常に残念な状況なのです。そういうことを周知して相談してく ださいということを地域連携の事業で、特に市などの行政の方に広報を通じて、こういう活 動をやっているから是非参加してくださいという呼びかけをお願いしたいと思います。1人 で悩んでいる人が非常に多くて、どこへ行っていいかわからない。それが、どこかへ行って しまっている。  相模原市は東西に非常に長くて山梨の県境から、相模大野ありますので、そこに拠点を置 きたいのですけれども、なかなかそれがうまくいかない。実際には相談員が10人ぐらいい て、随時かなり電話もかかってきますので、そういう対応ができたら非常にいいかと思いま す。それは、将来の構想の中には入れていきたいと思います。 ○三柴委員 貴重なお話をありがとうございます。教えていただきたいのは、相談員の方々 はどういう契約でお願いしているのか。 ○後藤氏 これは、地域産業保健センターの職員といいますか、相談員ということで、相模 原市の場合は相模原医師会の会長から、すなわち地域産業保健センターのセンター長と呼ん でおりますけれども、センター長から辞令を出して、お願いしますと。 ○三柴委員 そうしますと雇用契約ということですか。 ○後藤氏 我々コーディネーターは雇用契約まではいっていません。要するにフリーな状態 で、労働者でもない何でもないという位置づけです。ですから、同じような位置づけでやっ ています。 ○三柴委員 その相談の効果といいますか、うまくいっているということなのですが、それ はアンケートなどで確認されているのですか。 ○後藤氏 アンケートと、例えば昨年度の130人ですと、面談を始める前と終わった後、 我々と対話することを心がけています。その中の話で、面談する前と後では全然表情も違い ますし、話す内容も非常に明るくなって帰ります。ですから7〜8割の人は、相談員の話を 聞くだけでも解決して、先が見えたということで効果があると私は読んでいます。 ○三柴委員 看護職でリタイアした保健職、特にベテランの方の対応がうまくいっていると いうお話でした。特にどういう対応がうまくいったとお考えですか。 ○後藤氏 うつ状態の問題もさることながら、会社の仕組みだとか、労働契約だとか、そう いうことを知らないで悩んでいる人もいます。例えば病気になって何カ月も休んでしまった のでクビになってしまうだろうとか、そういう労働契約のことを何も知らないで悩んでいる 方がいます。企業出身で、そういう所で働いた保健師さんや看護師さんは、人事・勤労の問 題もよく知っていますので、「そういうことはないのだよ」というようなことや、将来の悩 みを聴くこともあります。  それで、ここにおじさん相談員を1人置いています。昔は、暇なおじさんやおばさんがい っぱいいて、悩みを聞いてくれる人がいたのですが、残念ながら今はいないのです。友達に も話せない、ちょっとしたことでも聞く人がいない、その対応としてこのおじさんに出てい ただいたのはまだ1回か2回なのですけれども、自分は将来どう進んでいっていいかわから ないというような、うつの問題とは違うような場合に出動していただいています。この人は、 いまお願いしている人は人事・勤労の経験者です。この件に関してはいろいろな人たちに一 応声はかけていますけれども、実際にはまだ相談は1、2回ということです。 ○鈴木労働衛生課長 今のご質問の確認なのかもしれませんが、最初のほうで相談者のニー ズと、精神科の先生の対応にかい離があるというのは、相談した内容自体がそもそもすれ違 っているということ。それから質的な問題というか、いきなり専門的な指導と言われました けれども、そういう治療的な対応をされると戸惑われるとか、そういうこともあるというこ とでしょうか。 ○後藤氏 相談者も「この薬はどうですか」とか、「これは合っていますか」というような、 相談する方の大半は、ほかの精神科の先生に通っていて、さらに相談に来る人が多いのです。 そうすると、そういう治療的な話にも至って、それが何回もリピーターみたいになって、来 られています。我々の地域産保のメンタルヘルス支援事業というのは、そういう立場ではな くて、悩んでいる人たちに対して、こうやりましょうよ、こういう道がありますということ の道筋を付けるということだと思っています。精神科の先生は、相談者の層別をするわけで はないですけれども、非常に簡単なところでスクリーニングみたいな感じでやっていただい ていることになります。 ○鈴木労働衛生課長 次に質問しようと思ったことは今のお答えにあったのですが、相談ル ートのところに依頼とありましたが、個人の方はどちらかというと、既に治療をしていたり する方が多いということですか。 ○後藤氏 治療していたり、治療をしていても精神科の先生の場合は1カ月に1回だとか2 カ月に1回になってしまうので、その間はどうしても不安なのでお話を聞きに来ましたとい う方もかなりいます。 ○鈴木労働衛生課長 事業場の方は、例えば上司が気づいて、なんとか対応したいというこ とですか。 ○後藤氏 我々の所に来るのは、上司の方が、こういう人がいるので相談に行かせますとい うことがあります。 ○鈴木労働衛生課長 先ほど、知らない事業場が8割以上もあるということでしたが、これ は管轄内でということですか。 ○後藤氏 管轄内で、ここにあるのは労務安全衛生協会、災害防止団体、法人会、商工会議 所、それからあじさいメイツは中小企業の団体ですけれども、こういう所に加盟している事 業場、これはみんな重複していることが多いです。そうすると、2万2,000社ある中で、加 盟している人たちを合わせると1万人にもならないのです。残りの人たちは、こういう活動 を知らない、知るすべもない、そういう人たちのためにどうするかが今後の課題かと思いま す。 ○鈴木労働衛生課長 今の体制が8割というお話でしたので、逆に言えば2割弱ぐらいしか カバーしていないと。それと10割にするには5倍ぐらいの体制が必要だということですね。 ○後藤氏 それだけに集中するわけにはいかないのでしょうけれども、現状としてはそうな のです。 ○鈴木労働衛生課長 ちょっと乱暴な計算かもしれませんけれども。 ○後藤氏 そうですね。そういうことで、悩んでいる人たちはきっとどこかで何か悩んでい るのかなということはあります。非常に気の毒なケースがいろいろあって、先ほど言いまし たように中小企業の事業場の場合には、1人欠けると10分の1で、大企業の場合には1人 欠けても1万分の1なのです。中小企業の経営をうまく運営していくためには、そういう人 たちに辞めていただかなければならないというケースが非常に多いようです。そういう心配 を抱えながら皆さん仕事をされているのが現状だと思います。 ○鈴木労働衛生課長 この話の流れで五十嵐委員にコメントをいただきたいのですが、現職 の保健師さんはそちらがメインになって、なかなかボランティア的にというのは難しいと思 うのです。そうなると卒業された方とか、結婚・出産などを機に家庭に入られたけれども、 そういうことを手伝ってもいいというような方にお願いするということになろうかと思う のです。その場合の条件整備とか、どのようなことがあればつながりやすいというか、何か お考えがありましたらお願いいたします。 ○五十嵐委員 後ほど私の資料でもその辺りに触れようと思っていたのですが、昨年末から の派遣村の対策の中で、ハローワークに保健師を置く事業が試験的にされました。いまお話 にありましたように、地産保とかハローワークで保健師として対応するには、やはり新卒の 保健師ではなかなか難しくて、かなりキャリアのある保健師となると、在宅に潜在的にいる 保健師の活用なども必要になってくるのだろうと思います。  それについては、日本看護協会と相談をしています。日本看護協会としても、地産保やハ ローワークに派遣するような保健師をバンクするような仕組みを考えたいということでい ま話を進めています。やはりその人材確保と、様々な相談に乗れる質の高い保健師の人材確 保です。  さらには、いま後藤さんからもお話がありましたように、行政の保健師は保健所業務には かかわっていますけれども、やはり労働現場を知っていることが非常に大きいのです。それ についても日本看護協会としては保健師の産業保健師としての教育も検討している最中だ ということです。後ほど多少付け加えさせていただきます。 ○相澤座長 後藤さん、どうもありがとうございました。議論に入る前に、資料の説明を事 務局からお願いいたします。2枚紙の表紙の付いたものですが、前回までの議論を踏まえ、 私どものほうで論点を整理させていただいております。議論は、この論点ペーパーに基づい て行いたいと思います。 ○永田主任中央労働衛生専門官 資料1についてご説明させていただきます。職場における メンタルヘルス対策のあり方に係る主な論点ということで、全部で8つあります。議題がI からIIIまであります。議題Iは「労働者のメンタルヘルス不調の把握方法について」、議題 IIは「把握後適切に対応するための実施基盤の整備について」、議題IIIは「その他」です。  議題Iの「労働者のメンタルヘルス不調の把握方法について」の論点として4つ挙げてお ります。論点1は「労働者のメンタルヘルス不調把握の目的」、これは前回ご議論いただき ましたが、それを整理いたしますと、労働者のメンタルヘルス不調把握の目的は、疾病その ものの発見ではなく、ストレスの実態を把握することなどによる一次予防につなげることで はないか。次に、労働者のメンタルヘルス不調把握の目的は、作業関連疾患の場合と同様に 取り扱うべきではないか。労働者のストレスの実態を踏まえた対応を適切に実施するととも に、これらの状況を検討し、職場環境の改善につなげることについてどう考えるか。  論点2は「メンタルヘルス不調の把握の具体的な手法」です。既存の調査票を活用し、事 業者及び労働者の双方に負担にならない方法で実施するべきではないか。また、一般定期健 康診断の際に、ストレス調査票などにより調査を実施する方法により把握することについて どう考えるか。メンタルヘルス不調の把握を、一般定期健康診断において自覚症状を把握す る一環として調査する方法についてどう考えるか。  論点3は「労働者のプライバシーの保護及び不利益取扱いの防止」です。事業者には、メ ンタルヘルス不調に係る情報が伝わらない仕組みが必要ではないか。その場合に事業者の責 務をどう考えるか。また、不利益取扱いを防止するための措置についてどう考えるか。  論点4は「専門家の関与の方法」です。地域産業保健センターにおいて、保健師等の産業 保健スタッフの一層の活用を図るべきではないか。また、役割分担を考えつつ、様々な職種 が関わって支援を行うべきではないか。  議題IIは「把握後適切に対応するための実施基盤の整備について」ということで、論点を 2つ整理させていただきました。論点1は「産業医の資質の向上と外部機関の活用」で健康 診断の有所見者に関する就業上の措置について、医師が意見を述べる制度の徹底等を図るべ きではないか。また、産業医の多くがメンタルヘルスの専門家ではなく、十分な対応が困難 な場合への対応が必要ではないか。メンタルヘルス不調者への対応に従事する産業医などの 医師の中立性・独立性はどのように考えればよいか。  論点2は「産業医の選任義務のない中小規模事業場における実施体制について」です。こ れは論点1とも関係があるのですが、健康診断の有所見者に関する就業上の措置について、 医師が意見を述べる制度の徹底等を図るべきではないか(再掲)としております。中小規模 事業場でも対応できるよう、地域産業保健センターの医師をさらに活用できるようにすべき ではないか。併せて、同センターにおいて保健師などの産業保健スタッフの一層の活用を図 るべきではないか。  議題IIIは「その他」です。論点1は「地域との連携について」で地域産業保健センターに 登録された医師・保健師等を、地域と職域との連携において活用するなどの方策が考えられ るのではないか。  論点2は「健康診断の対象労働者について」です。健康診断対象労働者の範囲拡大の必要 性について、メンタルヘルス不調の把握の観点からどう考えるか。以上です。 ○相澤座長 次に、五十嵐委員から資料4をいただいておりますので、時間は限られており ますが、この中にはどのような趣旨が書かれているかということと、また後の議論の中で必 要に応じて使っていただければと思います。 ○五十嵐委員 資料4を出させていただきましたが、結構量がありますので、内容として何 を出したかだけをまずお話させていただきます。最初の1頁は、現在保健師の教育が大学課 程から大学院課程になることも想定しながら教育の在り方が検討されている最中です。新た な保健師像として、役割と機能ということで、現在まとまっている機能としてこのようなも のがいま挙げられております。  特に強化される部分として、3の地域の健康危機管理をさらに強化しようということで、 まさに自殺対策がここに入ってくることになります。もともと保健師は公衆衛生看護の専門 家として、ターミナルケア外のところで活動する看護職として役割が期されております。当 然ここには産業保健・学校保健の領域が位置づけられています。  4頁目になりますが、そもそも、前回の委員会で、保健師は効果があるというエビデンス を出してくれということでしたので、そういう目的で本日はいくつか資料を出させていただ いております。4頁は、平成18年に日本産業衛生学会から「職場のメンタルヘルス対策に おける産業看護職の役割」に関する報告書が出されております。ここには相澤先生や川上委 員も入っています。抜粋として、産業看護職は、メンタルヘルス対策におけるすべての段階 で、活動の重要な立場にあるということ。中規模事業場又は規模の小さい事業場における取 組みでは、非常勤の嘱託産業医業務の多くが日常の産業看護職の現場活動によって支えられ ていると言っても過言ではない。産業看護職は職場のメンタルヘルス活動において、現実に さまざまな役割を期待され、意味のある活動実績を示している、ということが述べられてお ります。  日本産業衛生学会でいう産業看護職というのは、労働衛生知識を有する保健師と、あとは 学会が認めている登録産業看護師という制度があり、登録産業看護師は原則保健師なのです けれども、看護師でも公衆衛生看護のコースを勉強した人たちがいま400人ぐらいいるの ですが、産業看護師として登録されていて、そこの看護師も含むという意味で看護職と表現 されています。  次の頁は、自殺対策にみるこれからの保健師像ということです。これは、厚生労働省の保 健師教育を考える上で、その危機管理の中の自殺対策で職域・地域・学校において、いま現 在保健師がどういう役割を担っていて、どういう連携が可能かということで、自殺対策にお いてもprevention,intervention,postventionすべての過程において保健師が機能している といったこと。さらに強化すべきであるという議論がされているという資料です。  次の頁にグラフがあります。前回も数の話が出ていましたが、保健師国家資格合格者と、 保健師就業者の推移ということです。いわゆる新卒はどのぐらい出ているかというと、最新 の平成21年度を見ますと、1万1,773名がライセンスを取っています。保健師としての現 在の就職枠は大体1,000人ぐらいということで、ライセンスを取っても就職枠がいまのとこ ろ限られているということで、潜在的な数ということでは十分足りている状況です。  次の頁は、現在働いている保健師がどういう分野で働いているかということです。当然な がら行政が圧倒的に多いという図です。しかし、次に折れ線グラフがありますが、特定健診・ 特定保健指導の件があり、事業場の保健師が若干ここのところ増えています。要するに、そ ういう制度があれば雇用が増えているということを示している図です。  次のパワーポイントの図は、産業保健師がメンタルヘルスにどのようにかかわっているか ということで、今年の日本産業衛生学会で発表させていただいた内容です。産業保健師側か ら見たデータと、あとは事業者にも答えてもらっています。産業保健師側としてはファース トラインプロフェッショナルとして、労働者に最も近い立場で活動している。特に中規模事 業場においては、嘱託産業医をフォローするような立場で、中核になって仕事をしていると いう実態。  事業者の回答の最後の考察を見ていただきますと、いわゆる事業者、つまり事業者という のは人事部長以上の方々に答えていただいているのですけれども、メンタルヘルスに関して も産業保健師は非常に機能しているのだけれども、さらに職場への風土形成などもかかわっ てほしいという内容。それから先ほども言いましたように、事業者から見ても嘱託産業医の みの事業場では、産業保健師が中核となって動いているというようなところが示されており ました。  最後の頁は、先ほど日本看護協会の話もさせていただきましたが、日本保健師連絡協議会 というのがあり、我が国における保健師にかかわる団体が5団体あります。日本看護協会を はじめ、全国保健師長会、日本産業保健師会など5団体で形成している、保健師がかかわる 全ての団体です。そこで自殺・メンタルヘルス対策において保健師がどのように機能してい くかという議論をした図です。  左側の四角のところは産業医が選任なり嘱託なりで設置されている図です。今回、自殺対 策も含めて問題になってくるのは、解雇された労働者や、法律ではもれてしまう労働者数 50人未満の事業場の労働者の問題が大きいと思われますが、そこに保健師がどのようにか かわっていくかということを示したモデル図です。これは、後でもし機会があればゆっくり お話をさせていただきますが、先ほどの地産保の活用や、あるいは保健所がもともとかかわ っていた機能の復活等を含めて議論した図です。  いちばん下は、3月まで私は富士電機に勤めていましたが、嘱託産業医のみでの産業保健 師がメンタルヘルス対策において、どのような活動をしているかというところを挙げた図で す。また議論の中で適宜ご説明させていただきます。以上です。 ○相澤座長 資料5は、地域・職域連携に関する厚生労働省健康局保健指導室の資料ですが、 時間の関係もありますので後でご覧いただければと思います。あと55分あるので議論を進 めていきたいと思います。 ○相澤座長 続きまして、論点1につきましてご議論いただきたいと思います。 ○川上委員 先回、休んでしまいましたのでちょっとだけ。私が理解していないのかもしれ ません。議題III「その他」の論点2というのは、具体的にはどういう論点でしたか。健康診 断の対象労働者の範囲拡大というのはどういうお話でしたか。私の記憶になくて。 ○鈴木労働衛生課長 ご議論はいただいていないのですが、今回、論点を整理するときに一 応事務局で持っている情報や課題を座長にご提案申し上げまして全体を一緒に出すという ことで、これについて何か具体的なご指摘があったというわけではありません。ただ、内容 的には、例えばいま、いわゆる働いている時間で対象者が限定されていますので、その辺り について。要するに、いわゆるパートと言いますか、時間が短い方でもむしろストレスが加 わる方もいらっしゃると思います。そういった方の把握をどうするかとか、そういうものが 今後議論になろうかと思いまして一応。 ○相澤座長 それでは、論点1で労働者のメンタルヘルス不調把握の目的ですが、一次予防 につなげる、あるいは作業関連疾患の場合と同じように扱う、あるいは職場環境の改善につ なげるというような、そういった考え方で。これはだいぶ詰めた議論をされていると思いま すが、何か追加とか。三柴委員、どうぞ。 ○三柴委員 1のみならずということかもしれませんが、特に1に関わって。まず、この検 討会の議論に当たってその出発点を再確認する必要がおそらくあって、それはやはり深刻な 現状認識だと思うのです。業務上外の区別の問題などは個別的な問題でもありますし、これ はおそらくあとの話で、個人的には、対策にかかる費用というのは例えば労災保険料の労働 者負担といったようなことをも含めて政労使でどのように負担すべきか検討してもいいの ではないかということまで、これはあくまでも個人的にはですが、考えたりします。ただし 一般的な、例えば労災予防ですと、1対2.7のコストパフォーマンスが出るというような中 災防さんのデータもありますし、中長期的な視点で見ると、外部不経済も含めて政労使すべ てがメリットを得られるというようなことになるように収める必要がある、そういう共通の 基本認識が必要なのではないかと思います。カギはおそらく、オンデマンドで、オーダーメ ードで、徹底的に多面的な対応ができるという体制整備なのだと思います。メンタル問題、 不調問題というのは非常に手間暇がかかることでもありますので。それから、地域産保とか OSHMS(労働安全衛生マネジメントシステム)とか、既存の制度枠組は積極的に、かつ有 効な活用をすべきではないかと思います。  3点だけ簡単に申し上げます。第1に、産業医療の位置づけと体制の見直しはやはり、あ とに出てきますが、これは必要だろうと。産業医の地位、役割、権限、責任、こういったも のを例えば監査役レベルまで引き上げて、監査法人に匹敵するような独立機関の創設なども 検討しながら独立性と倫理性をより高めていく必要が職域ではあるのではないかと。場合に よってはヨーロッパの投入時間制度とか、産業医等の選任とか職務割当てとか解任とか、そ ういったところに労働者が関与するという制度も参考にしていいのかなと。  それから、産業医の質・量が足りないというところについては、保健師、看護師、心理職 などを徹底活用していくと。特に地域産保については、何人計画といったような具体的なス ローガンを挙げてもいいのではないかと思います。ただ、「第二の介護職問題」を引き起こ さないために、十分な報酬の手当等も考えないといけないのではないかと。  2番目に、属性を問わずに当事者意識と客観的な知識を持つ人間、その両方を持つ人間に よるケアとかコミュニケーション。こういう人がいると話しやすいと。特に本音をどれだけ 引き出せるかという問題が1つのカギになりますから、その当事者意識と。私自身は例えば メンタル不調の経験がありますが、やはり話しやすい、だと話しやすいという人はいますの で、そういうこともちょっと考えていいのではないかと。  最後に経営と人事労務。経営、人事労務との連携というのがあって。これは、そのうちた ぶん出てくるのかもしれませんが、デンマークモデルというのが先駆的にあります。そうい うところを参考にして、また日本型の展開ということを考えたときに、やはりOSHMS、 労働安全衛生マネジメントシステムをメンタル不調対策にも活用できるのではないかと。そ ういうものの構築と維持のメリット、これをうまく機能するために拡充する必要があると思 うのです。経営側にもメリットを感じさせるような、場合によっては、これもあくまでも個 人的にはですが、税制とか労災保険料とか、そういうことも含めて検討してもいいのではな いかと。それから、現行の事後措置の制度とOSHMSの整理統合ということも検討してい いのではないかと思うのです。以上です。すみません、雑多になりまして。 ○相澤座長 ありがとうございます。 ○五十嵐委員 論点1の目的のところですが。これは3つを見ますと、すべて、やはりその 一次予防に関わるようなニュアンスなのですが、やはりこの会のミッションの1つには自殺 予防ということもあるので、「二次予防」という言葉もやはり残しておいたほうがよろしい のではないでしょうか。2つ目の「作業関連疾患の場合と同様にとり扱うべきではないか」 という所にたぶん入っているとは思うのですが、二次予防という言葉は入れなくてもよろし いのでしょうか。要するに、早期発見、早期対応という言葉のニュアンスがちょっと薄まっ てしまうような気がするのです。 ○鈴木労働衛生課長 事務局としては、今回のミッション、2つの流れから来ていると言い まして、その時点で一般健康診断という機会があると。それから、過去に開発されてそれな りに定着しているストレス簡易調査票があると。こういったツールなり制度を組み合わせる ことで自殺・うつ病対策の前進ということで考えていたわけですが、調査票の精度なり性格 と言いますか、そういったことをこういう場でご議論いただくと、明確にその二次予防とし て位置づけるというのがこの検討会の流れとしてどうなのかなというのは微妙なところか なとは思うのですけれども。ただ、もちろん2つ目の○にそういった概念は含まれていると いうことは、そういう理解でよろしいのではないかとは思っております。あとはニュアンス の問題。それから目的自体も、先ほど三柴委員が総論的にも言われましたが、いろいろな論 点等が絡んでいると思いますので、そういったことからやはり一定の制限が、目的にあまり 高いものを持っていくとすると中小が実施できないとか、あるいは量的に受け皿がカバーで きないとか、そういった問題が起こってこようかと思います。 ○五十嵐委員 このメンタルヘルス不調への対策として、1つはその労働のあり方に、いわ ゆる一次予防にいかにフィードバックしてストレスの少ない職場にしていくかということ と、もう1つは、何らかの形でタイムリーにメンタルの不調がある人をきちんと把握して医 療機関につなげていくという両輪で、要するに、一次予防の部分と二次予防の両輪で進んで いかないといけないのかなと思うのです。  では、その二次予防のところを、何もメンタルヘルス健診ありきではなくて、先ほど黒木 先生や後藤先生からお話がありましたように、面談の仕組みだとか、体制によってそういう 不調者を把握してつなげていくということがとても重要だと思います。二次予防はメンタル ヘルス・スクリーニングだけでもないので、このメンタルヘルス不調をなぜ把握するかとい う目的の中に二次予防という言葉をやはり一次予防、二次予防という両輪で入れたほうが明 確ではないかと。要するに、そのあとのミッションが明確ではないかと思うのですが、いか がでしょうか。 ○相澤座長 そうですね、二次予防と書くか、一次予防のためにやっていくうちに、たまた ま見つかった方に対する対応も当然必要になってくるので。先生のご意見、いただいており まして。あとでまたやりましょうか。ほかにはいかがでしょうか。ありませんか。  それでは論点2、メンタルヘルス不調の把握の具体的な方法です。事業者、労働者の双方 に負担にならない方法、これはいま三柴先生からもあったと思います。それから、一般健診 でストレス調査等で調査する方法についてどう考えるか。それから、一般健診の中に「自覚 症状」という項目があるわけですが、それを把握する調査方法としてはどうなのかというこ とですが、いかがでしょうか。 ○五十嵐委員 座長に質問なのですが、いま、これは論点を確認している作業ですか。論点 2について意見を言ってもよろしいのでしょうか。 ○相澤座長 どうぞ言ってください。 ○五十嵐委員 いままでの議論からいくと、健康診断で何らかの質問紙法でメンタルヘルス のスクリーニングするというのは難しいという、そろそろ何かそういう方向性に来ているよ うに思うのですが、どうなのでしょうか。これだけ専門家がそれぞれに、いわゆる調査票を 使ってメンタルヘルス不調者を洗い出すというのは難しいと言っているわけです。可能性と しては一次予防につなげるようなものは可能かもしれませんが、そこも前回堀江委員からも お話がありましたが、現在の職業性ストレス簡易調査票が有効かどうかというのはこの場で はなかなかエビデンスとして出しにくいという話が出ていたかと思うのです。  そうすると、そろそろその辺の話をしないと、何かいつもいつもここに振り回され、先に 進めない気がするのです。私としてはやはりむしろ、先ほども何度も言っていますが、健康 診断時などに質問紙によるメンタルヘルススクリーニングは反対で、それよりも労働状況に より、相談形式によりタイムリーにメンタルヘルス不調をきちんと把握することが効果的だ と思っています。そして、本人のメンタルヘルス不調をフォローもしつつ、その問題が職場 にある場合には職場のほうにフィードバックしていくという仕組みを考えていく。さらには、 管理者教育なども行っていく。その中で産業医や保健師の役割、そういう人たちがいない中 小企業などの事業場をどのように構築していくかというシステムで考えていく議論に入っ ていったほうがいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○相澤座長 一般健診よりも先ほどの地産保のようなやり方のほうがいいということです ね。ただ、地産保の場合は対象に外れてしまう人がいるということが言われていましたので、 そういう面ではどのようにしたらいいですか。 ○五十嵐委員 いまはメンタルヘルスの切り口で議論していますが、結局は、産業保健サー ビスを受けていない労働者は非常に多いわけですよね。ですから、この取り組みをきっかけ に、身体の健康管理も含めて、全員にきちんとサービスがいく仕組みも共に考えることにつ ながると思うのです。 ○相澤座長 いかがでしょうか。 ○鈴木労働衛生課長 この3つ目の○に関連すると思うのですが、いま随時というお話がご ざいましたが、いままで、いわゆるメンタルの指針を行政として作成して普及啓発に努めて 4つのケア、それからメンタルヘルス対策支援センターで体制づくりの支援や、地産保では 具体的な労働者、事業所の相談などでそういった定着を図ってきたわけですが、なかなか、 全体では3割ちょっとの取組みの実施率に留まっている。ということからすると、1つ、事 業場はあるタイミングを捉えて一斉に、前回、堀江委員からあったと思うのですが、職場の 作業環境測定はこの分野はなかなか難しいですが、ストレス簡易調査票でストレスの例えば 負荷度を見ることによって事業者は事業所全体のそういった状況を把握するなどにも使え るのではないかと。たまたま、個票に関しては個人に還元するというような。いま実際に全 衛連さんなどが先進的にやっていらっしゃるようなもののもう少し、中小でも可能なものを 考えることによって、従来なかなか行政が普及啓発や間接的な支援でその実施率が留まって きたものをもう少し飛躍的に、その取組みの広がりを相当拡大できるのではないかというよ うなこともありますので、その辺り、もしありましたらお願いしたいと思います。 ○堀江委員 お答になるかどうかわからないのですが、論点2に挙げられています課題の整 理の仕方についての私の考え方を説明いたします。「メンタルヘルス不調」という単語から はどうしても「労働者のメンタルヘルス不調」が想定されているように思えてしまうのです が、実際に事業者に責任があり、事業場の労働衛生管理の中で対象にできるのは、「労働者 のメンタルヘルス不調」のすべてではなく、職場における心理的ストレスの状況の把握とそ れに対する対策であると思います。ですから、事業場におけるストレス対策の推進と労働者 のメンタルヘルス不調の把握とは、似ているようなのですが、本来、異なるものであると考 えます。したがって、それらはきちんと分けて考えたほうがすっきりすると思います。  例えば、肝機能の検査は一般定期健康診断に含まれていますが、それによって肝臓の疾患 を診断することは健康診断の機能と考えられがちです。その後、専門医療機関を受診して確 定診断をつけて早期治療に導入するという流れが期待されます。しかし、事業者が健康診断 を実施する本来の意義は、もし職場に存在する化学物質等の有害要因や働き方の問題が原因 となって肝機能の異常が生じたのであれば、それを事業者が見出して改善することであり、 そのようなことは事業者の責任であると思うのです。  メンタルヘルスについても同じで、健康診断において、例えば、資料の○の3にあります ように、自覚症状を聴取する際になるべく上手な尋ね方をして、この健康診断の結果で異常 を認めた場合に精神科の医師等にきちんと結びつけられるような支援はするとして、その一 方で、その異常に職場の心理的ストレスに関する課題が出てきた場合は、そこのところにつ いて事業者としてきっちりと就業上の措置等の事後措置をやっていくという流れをつくっ ていく必要があると考えます。前回の検討会の資料で就業上の措置に関する流れと保健指導 に関する流れの2つに分かれた図が出ていましたが、この両方の流れを議論する必要があり ますが、職場におけるメンタルヘルス対策としては就業上の措置のほうが重要な流れであり、 これは職場でしか対処ができない命題として、しっかり責任を持って行わなければならない 事項であると思います。一方で、労働者のいわゆるメンタルヘルス不調に対する保健指導に 関しては、なるべく医師や保健師等の保健指導から必要に応じて精密検査等に行っていただ くように支援する事項であるとと思います。 ○相澤座長 ありがとうございました。どうでしょうか。 ○栗原委員 私自身としましては、ここに「メンタル不調の把握」と書いてあるのでちょっ と抵抗を感じるところはあるのですが、やはり、いわゆる心の健康状態を把握していく方法 として考えていく必要があるのではないのかと。要は、健康診断の中に位置づけるというこ とは、私は、心身の健康状態を把握していく仕組みとしてこういうツールがある意味必要で あると思っている次第です。  それをきちんとやっていくことが実は、初回のときでしたか、私、申し上げたのですが、 自分がおりました事業場でメンタルヘルス活動を25年前に取り組みだしたときに、まず第 1回目にこの心の健康チェックをスタートさせているわけです。それで、いろいろな教育や ら職場の改善などもやってまいりました結果、早く気づいて治療にかかってくださる。そう いうことが浸透していくと、5、6年経ってくると、お休みになっても休む期間が短くなっ てくるというような結果を私は見ておりまして、是非そういう啓発の意味からも必要である し、いま堀江先生がおっしゃいましたように、私は一方で事業者がやはりストレスの要因に なってくることを見出していく1つのツールに転換していくような活用の仕方を是非やっ ていく必要があるのではないだろうかと。ですから、メンタル不調の把握というよりも、健 康状態の確認のために是非この健診の中に位置づけていただきたい。健診の中に位置づけて いかないと、事業者のほうはなかなかそういう動きに至ってこないということもまた現実な のではないか、ということを体験的に感じておりまして、意見として述べさせていただきま した。 ○相澤座長 ありがとうございました。確かに「メンタルヘルス不調」という定義は難しい ですね。人によってうつ病を考えるという人もいるし、ストレスがかかったぐらいの人を考 える。健康状態の把握という、そういうことのほうがいいというご意見ですが、どうでしょ うか。ほかにご意見はございますか。 ○五十嵐委員 栗原先生のご意見に対してです。おっしゃることはもっともなのですが、私 たちがいちばん悩ましいと思っているのは、この労働安全衛生法が事業者に開示されるもの であるということで、労働者の不利益が生じないかということで、さんざん、やはりみんな 慎重になっているわけですよね。問題は、大企業で産業医や保健師がいるような、フォロー がきちんとできる所は全く問題なく、個別フォローからそれをきちんと施策につなげられる と思うのですが、今回問題になっているのは、労働者の約半分と言われている、産業医も保 健師もまだ関わっていないようなところです。メンタルヘルススクリーニングを労働安全衛 生法の中に入れていったときのデメリットのほうしか私はどうしても浮かばないのです。例 えば特定健診に関しても、腹囲が安易に安衛法に入ることに、私たち日本産業衛生学会は、 随分抗議をしたのです。あれも法律に入らないと腹囲を測らないからということで安易に入 ってしまったのですが、やはりいろいろな問題がいまだにある。さらにそこに心の健康状態 を把握するのだからということでメンタルヘルススクリーニングを安易に入ることに対し て、私はとても抵抗があります。  仮に、前回堀江委員がおっしゃったように、安衛法の枠組みそのものを、生データに関し て事業者への開示ということをやめるなら別だ、というご意見もありましたが、そこまで踏 み込むのであればまた話は変わってくるわけですが、安衛法が、やはり事業者が見るという ことになりますととても困難なものと思います。私もいろいろな企業に呼ばれ話をしたりし ましたが、小さい企業に行きますと、事業者の机に健康診断の結果がボーンと置いてあるの をよく見るわけです。それを見てみんながパラパラめくりながら話をしている光景も見たこ とがあります。そこにいくら、メンタルヘルス不調ではなくて心の健康状態などと表記して、 ポジティブに活用すると言っても個人にも非常に問題があります、仮に職場のストレス評価 票にしても、あれは管理者のマネジメント力なども出てくるわけですが、犯人捜しなどにも つながりかねないというリスクを考えると、やはり安易に健康診断などに入れるべきではな いと思います。  ただ、栗原委員がおっしゃるように、では、どうやったら中小零細の所が救われていくか ということを考えなければいけない。それは、私はやはり仕組みの中でそういう専門家が、 先ほど後藤委員からも話がありましたが、労働者が相談したいときにすぐ相談できるような 体制づくりの方が重要かと思います。それから、事業者においても、たとえば事業場におけ る労働者の心の健康づくりのための指針に示されている4つのケアがきちんとできている かどうかということを第三機関できちんと認証するなどして、事業者がメンタルヘルス対策 にきちんと関わっている事業場については評価する取り組みも必要かと思われます。このメ ンタルヘルスの取り組みで、労働者も事業者もともによい方向にいくようなものを考えない と、非常に問題を残していくように思えてならないのです。 ○相澤座長 ありがとうございます。 ○栗原委員 いま五十嵐委員がおっしゃったことは、私も重々理解しているつもりです。そ ういう中で、一方で、五十嵐委員が先ほど来おっしゃっているように、仕組みの中に落とし 込んでいく。私も、できればそれはすてきなこと、素晴らしいことだと思っているのですが、 現実の問題として、先ほど五十嵐委員が資料でお示しいただきましたように、具体的にそう いった活動のできる仕組みの核になる方が果たして今すぐ、今すぐは別にいたしましても、 それでは、何年後には担保できるのですかという種類の問題が出てくるわけです。ある種、 1つの枠をはめていかないと、そういうソーシャルリソースもなかなか広がっていかないの ではないのかと。  そういうことのためにも、私、今年に、来年からという話では当然ないと思いますので、 そういう、ある方向づけを示した上で、そのリソースを構築していくようなステップで進め ていかなければならない問題なのではないだろうかと思います。その辺りはちょっとニワト リと卵みたいな話になってしまって恐縮ではありますが、その辺りをどう理解し、整合性の ある方策を考えるのか、という段階に来ているような気がいたします。 ○鈴木労働衛生課長 事務局から背景の補足をさせていただきます。労働者健康状況調査で 取り組んでいない事業場の主な理由は、要するに、ノウハウ、それからスタッフの問題、そ れと、ニーズがないと認識しているというようなことがあるわけです。スタッフの充実の問 題はまた別途やると。事業者がニーズがないという辺りをやはり気づいていただく必要があ る。それは、単に啓発だけではなかなか難しい。そうすると、事業場全体の何かそういう、 ストレス度とか、問題を認識していただく時代にもう入ってきているのではないかと、自殺 なりいろいろな数字を踏まえると。そういう背景が1つあります。  それから、別に一般定期健康診断の機会にこだわるわけではありませんが、体制を充実し て相談体制を確保したところで、やはり本人が認識しないと。自分はちょっと、いわゆる身 体疾患で体調が悪いんだ、というように留まってしまう危険性もあるわけです。ですから、 セルフチェックの部分をいかに強化するかというと、やはりこういった調査票などを年に1 回ぐらいやってみて、ああ、自分はメンタルの面でもひょっとしたら、というような気づき を持っていただくという両面の効果があるのかなと。  それから、先ほど個人情報の話を言われましたが、先進事例によっては、個人票は本人に 直接郵送されるということです。例えば問診の一環としてやったものについても、問診にお いて所見のあり・なししか事業者には伝わらないということも可能ですので、そういった問 診の中の一部ということにしてしまえばあまり具体的なことは事業者には伝わらないとい う方策もあるのかな、とは考えております。ですから、法的に何か情報を提供しないように するのか、それとも実行面でそういった方法で対応できるということも、今後の検討によっ てはあるのかなと考えております。随時やるにしても、何らかの本人の気づきを、きっかけ をつくってあげなければ、今の時代難しいのかなと思いますので、それを具体的にご提案い ただいたほうがいいかと思います。一般健診のタイミングだけにこだわるつもりは、事務局 としては全くございません。 ○相澤座長 健診と健診の間に少し異常を訴えた方についての対応策も十分考えておくと いうことも必要だと思うのです。よろしいですか。どうぞ。次のほうに移ってしまいますの でどうぞ。 ○三柴委員 おそらく技術的には、1つは匿名で、1つは顕名でチェックを受けて、顕名の ほうは本人の手元に、匿名のほうは職場の一次予防のために、あるいは4つのケアのために、 あえて集団調査と言うとしますと、職場とか職種の、ある程度集合的なデータとして一次予 防に活用されるように職場にフィードバックされるという方法はあるとは思うのです。本当 にこの問題は頭を抱えてしまうのですが。それがもう無理だと、面倒だということになると、 実際問題として、例えば1枚でやろうということになると、おそらく中小企業さんなどでは。 最近も医師会さんでお話をさせていただいたときにやはりフロアーのほうから、中小企業さ んではチェックをしたら事業者はもうツーカーで見てしまいますよというような本音がポ ーンと出てきまして、そうなんだろうなということを考えても、なかなか難しくなってくる のだろうと思うのです、非常に悩ましいところなのですが。すみません、まとまらない話で。 ○堀江委員 おそらく、長期的にみて重要な課題を議論しているような気がします。私は、 長期的に考えれば、最終的には地域ごとにどの事業場にもそこを担当する産業医あるいは産 業医とグループになった保健師等のチームがかかわっていく仕組みを設けることが望まし いと考えます。そのうえであれば、健康情報のような機微な情報を取得することができると 考えます。健康情報は、その利用の仕方によって一歩間違うと非常に危険な情報です。そう いう情報は生命や健康を守るという倫理観の医療職のところできちんと把握しておいて、い ざ適正配置が必要なときにはそういった情報を基に判断していくということがよいと思い ます。  長期的には、これを事業者が見られる情報にはしないような仕組みを作っていくというこ とが今後やるべきことだと思うのですが、三柴先生がご指摘のように、小規模事業場の事業 者に対して、いきなり、これまで見ることができた健康診断の生データは一切見てはならな いという政策に転換するとなると、相当に混乱する可能性があると思います。そういう小規 模事業場にかかわっている産業保健職が全然いないというところはたくさんあるわけです。 そこで、この検討会では、長期的な方向性を示しておいて、今後、できるところを検討する、 といったことがよいのではないでしょうか。 ○相澤座長 ありがとうございました。論点3のほうにもかかわるのですが、プライバシー の保護と不利益取扱の防止ということで、これについては何か具体的に、こうしたらいいの ではないかというようなご意見がありましたら。いかがでしょうか。  それでは論点4でよろしいでしょうか。専門家の関与の方法ということで、地産保では保 健師さん等の一層の活用を図るべきではないかということ、それから、役割分担を考えつつ、 さまざまな職種がかかわって支援を行うべきである、というようなことです。これは、五十 嵐先生なのでしょうね。 ○五十嵐委員 今日の私の資料4の最後の図がそうなのですが、私が話すと、何か産業医の 代わりに保健師がというように聞こえてしまってはいけないので。むしろ、今も議論であり ますが、産業医と協働しながらできる、医師とパートナーシップがとれる職種として保健師 の活用を考えていただきたい。労働衛生チームとして考えた場合、産業医がいない事業場や、 産業医が嘱託の事業場はその役割を保健師が担っていって、産業医や医師と連携をとりなが ら業務を行うことになります。中小零細企業において、地産保の役割は大変大きいと思われ ますが、そもそも平成の最初のころまでは保健所が自分の管轄内の小さな企業の健康診断を 請け負ったり相談を請け負ったりしていた時期があったのです。しかし、民間の健診機関が 出来たり、あるいは入社時の診断書が公的機関から出さなくていいといったような理由から、 保健所がかなり全面的に労働の分野から手を引いてしまった経緯があります。  しかし、この地域・職域連携を考える上で、産業の場から地域、地域から産業ということ を考えると、保健師がコーディネーターになって産業医や医師とつないでいくと同時に、 様々な機関に所属する保健師同士が連携していくことが望まれます。地域と職域をつなぐコ ーディネーターが保健師であるとすれば、企業から保健所、地産保、ハローワークなど、そ ういうところを活用していく。それで将来的には開業した保健師などが中小零細をいくつか みていくようなことも可能になってくるのかなと思っております。  そうは言いましても、すぐに保健師だけの数では足りません。例えば足立区の例なども、 いまマスコミなどでもいろいろ示されているのですが、保健師のまたその下部組織として民 生委員などの他の職種によるネットワークを持ち、それらを保健師が統合し、医師と連携し ながら自殺対策を進めています。先ほど栗原先生のお話で、これはかなり理想論だと言われ そうですが、実際に機能しはじめている地域もたくさんありますし、地域の中での自殺対策 のキーパーソンを保健師がやっているような所も多くあることをみると、労働衛生チームと して産業医・保健師など、メンタルヘルス対策に有効な職種がネットワークをつくっていく ということが非常に大事かなと思います。 ○相澤座長 これについては何かございますか。 ○堀江委員 事業場に雇用されている保健師の事業場の規模ごとの分布を見てみると、小規 模事業場というよりは、意外と大規模事業場で医師と一緒にチームとして存在しているとい うのが実態です。一方、国として、あるいは事業場のニーズとしては、もっと小規模のとこ ろでも保健師の活躍は期待できると思います。前回も申し上げましたが、韓国では、産業保 健サービスをするグループを作ってサービスをしているのですが、これは労働者数が300 人未満のところにだけに許されている形態です。また、そういうグループの中には必ず、医 師が1人以上、保健師が1人以上、そのほかにいわゆる職場環境の専門職としてindustrial hygienist、現地では産業衛生士と呼ばれている人が1人以上入ってチームを作って産業保 健サービスをするという規定になっています。現在、わが国において、小規模事業場の一部 には産業保健活動をあまり行っていないところがありますし、医師と契約しているだけで何 もできていないというところもありますが、このようなグループ・サービスの仕組みを応用 して必ず複数の専門職がチームとしてかかわりなさいというようにしておけば、それぞれの 職能のよいところを出し合って、実態として職場への訪問がしやすくなるなど効率的な仕組 みになるのではないかと思うのです。  韓国では、規模に応じて職場を訪問しなければいけない回数も専門職ごとに決まっていて、 例えば100人から300人の事業場では医師は年間4回で保健師は毎月という頻度で訪問し なければならず、100人未満の事業場では医師は2回でよいというような合理的な規定にな っています。また、一方で1つのチームが担当できる事業場数や労働者数も決まっていて、 1つの医師、保健師、industrial hygienistのチームが最大で100事業場または労働者数の 合計で1万人までとなっています。それ以上を担当するのであれば、専門職の人数も増やさ なければならない仕組みになっているのです。  このようなことは、長期的な課題になると思いますが、小規模事業場に対して医療職がか かわることができる仕組みを作ることができれば、そのサービスの中にメンタルヘルス対策 あるいは健康情報の管理も含めてやっていけるという時代が来るのではないかと思いまし た。 ○北村委員 五十嵐さんに、事実関係の確認なのですが。50人以上の事業場では産業医を 置かなければいけないというのは法律で決まっていますが、保健師さんというのは、置かな ければいけないというルールはないのですよね。だから、法律上は、どんな大企業でも保健 師さんを置かなくてもいいのですよね。臨床心理士もそうですね。だとすれば、その辺はち ょっと引っかかるところですね。 ○五十嵐委員 法律はいわゆるミニマムラインです。実際に小さな事業場でも保健師が常駐 している所もある。それはなぜかと言うと、やはり事業場のニーズだからだと思うのです。 嘱託産業医がいても保健師がいないと産業保健活動がまわらないので、法律にはなくても保 健師を置いているのだと思います。もちろん、保健師の選任を法制化できればそれはいちば んいいのでしょうけれども。今回のメンタルヘルス対策として、選任義務はなくても、保健 師を活用することというようになれば、何らかの形で保健師の活用が進んでいくと思います。 ただ私、何度も言いますが、保健師を是非活用してもらい、職場のメンタルヘルスひいては 自殺対策の成果につなげてほしいといっているわけで、保健師を法律でここに義務づけてく れと言っているわけではないので、それについてはご理解いただきたいと思います。 ○相澤座長 ありがとうございます。あと10分しか時間がありませんので今回はその辺で 議論を終えて、2頁目に行きましょうか。II「把握後適切に対応するための実施基盤の整備 について」です。論点1は、産業医の資質の向上と外部機関の活用ということです。就業上 の措置について、医師が意見を述べる制度の徹底を図るべきではないか。産業医の多くがメ ンタルヘルスの専門家でなく、十分な対応が困難な場合の対応をどうすればいいか。メンタ ルヘルス不調者への対応に従事する産業医の医師の中立性や独立性をどのように考えれば いいか、ということですが、いかがでしょうか。 ○栗原委員 先ほどの議論に上乗せした話ですが、私どもがお手伝いさせていただいており ます事業場は小規模事業所になります。そうしますと、産業医も十分に備わっていない事業 所は結構たくさんあります。いらっしゃっても、嘱託産業医であるというようなパターンで す。そういった所で私どもは、まさに五十嵐先生がおっしゃるように、私どもの所に産業保 健師として20数年間、メンタルを扱ってきたスタッフがおります。この保健師が産業医の 先生にむしろご意見を申し上げて産業医の先生を動かしていく、いわゆる法律上の機能はそ こで果たしていただくということです。  そうしたチームワークを上手につくり上げていくというのが大きな課題であって、また、 それが先ほど来五十嵐先生がおっしゃっているように、そんな活動の出来る産業看護職の方 を増やしていくというのがこれからの課題であろうと思いますし、産業医制度が十分機能し ていないところのカバーはそういう格好で当面していかざるを得ないだろうし、私どもがこ れからメンタルの問題にかかわっていくときの基本的なイメージは、そういった格好でお手 伝いさせていただくということで試行を積み重ねております。ですから、今のまさにここに 提案されている論議の中で、産業看護職を上手に機能させていくということで担保していく 必要がまず第1段階としてあるのではないだろうか、という認識をしております。 ○相澤座長 どうもありがとうございます。 ○市川委員 すみません、2回も休んでしまうと全くついていけないのですが。この論点と いうのは、出るのは今日初めてですか。この論点で議論するということは確認されたのです か。今日初めて出たペーパーですか。 ○相澤座長 いや、前回もこれについて、内容は少し変わっていると思いましたが、把握後 の措置についてはだいぶ議論が進んでいます。 ○市川委員 そうですか。 ○相澤座長 ええ。 ○市川委員 では、これで議論していくということは確認されたということでよろしいと。 ○相澤座長 そうですね、はい。これについてご意見があったらどうぞ、遠慮なく。 ○市川委員 それでは、議題IIの論点1に「健康診断の有所見者に関する云々」とあります が、これはメンタルの不調把握ではなくて、すべてにかかわるということですよね。この論 点のいちばん最初の○の健康診断というのは一般定期健康診断のことですか。 ○相澤座長 そうですね。 ○市川委員 というと、別にメンタル不調にかかわらずということですね。 ○鈴木労働衛生課長 ただ、一般健診として流れでやるかどうかはまだ決まっておらず、慎 重な議論を。 ○市川委員 こういうのを見るごとに、五十嵐先生がおっしゃるように、一般健康診断を前 提にして議論しているのかなという感じがします。私も一般健診でやることについては非常 に危惧を持っていますので、こういう論点の立て方自体が一般健診でやることありきで課題 が設定されているというような気がしましたのでちょっと伺ったということです。 ○鈴木労働衛生課長 第1回でご説明しましたように、2つの流れからミッションが来てい ると言いましたが、その1つの中には「一般健康診断の機会を活用して」というような表現 がありますので、事務局としてはその基調でどうしても書きますが、決して議論の範囲を制 限するものではありません。それから、第1回の検討会における「具体的な検討内容」の1 点目の「労働者のメンタルヘルス不調の把握方法について」というところでも安衛法に基づ く定期健康診断においてということがありますので、出発点がそこですので、どうしてもそ う書くようには座長にはご提案いたしましたが、そこを初めから決めてかかっているもので はありませんので、それはご理解いただきたいと思います。 ○相澤座長 よろしいですか。この点についてほかに何かご意見はございませんか。よろし ければ論点2のほうで。どうぞ。 ○堀江委員 ただ今の市川委員のお話に関連して、私も、一般定期健康診断の機会のほかに も、今日は出てきていませんが、過重労働による健康障害の予防対策としての面接指導の機 会もありますし、それ以外にも何かの健康相談といった機会もあると考えています。ただし、 結局、何かの施策を講じようとする場合には、そのあとの就業上の措置をどうするのかや職 場環境の改善をどうするのかといった事後措置のところをしっかりやらないと、いろいろな 検査や調査をしても無意味になるということを忘れてはなりません。やはり事後措置が重要 であるということには、私は、変わりはないと思っています。  それから、論点1の2つ目ですが、このフレーズの前半は正しいと思うのですが、後半の 産業医が職場のストレス対策を行うことについて困難があるという内容はやや疑問に思う ことがあります。即ち、産業医はメンタルヘルスの専門家ではないことが多いのですが、職 場のストレス対策に関してはむしろ産業医のほうが専門家であるはずですし、その役割を担 っていると思うのです。ですから、ストレス要因への対応はむしろ病院など医療機関にいる 先生のほうが困難を感じられるのではないかと思います。この文章における困難の意味は、 ストレス要因への対応というよりも、診療医と産業医の連携が難しいということになるので はないかと思いました。  それから、3つ目ですが、私自身も専属の産業医を15年ほどやっていましたが、確かに 産業医は、一体、労働者側の立場なのか使用者側の立場なのかと、ときどきそういう非常に ざっくりとした議論で突き詰められる場面に遭遇することがあるのは確かです。ただ、多く の仲間もそう答えていますが、私は、労使双方の立場からは独立しており、その位置はほぼ 真ん中なのでしょうけれども、若干労働者寄りかなと感じることが多いのが実態です。労使 関係ではどうしても労働者のほうが弱い立場にあるということは皆が感じていることです し、それに加えて、産業医には医師としての倫理観が根底にありますし、さらには、事業者 に対する勧告権も法律上担保されていますので、現行の法令および現場の実態として、専属 の産業医の中立性・独立性が危ぶまれているという状況にはないと考えております。 ○相澤座長 ありがとうございます。論点2のほうでよろしいでしょうか。これは先ほどか らだいぶご議論いただいていますが、中小規模事業場における実施体制ということです。医 師が意見を述べる制度。これは同じですね、再掲です。あと、地域産保の医師をさらに活用 できるようにすべきではないかということ。あるいは、保健師さんのスタッフの一層の活用 を図るべきではないかとあります。何か追加はございますか。よろしいですか。  議題IIIのところに地域との連携がありますが、これも先ほどからご議論いただいています 保健師さん、地域産保の医師・保健師さん、地域・職域の連携において活用するなどの方法 です。最後の論点2のところが、川上先生から少しご意見がありましたが、対象者の拡大の 可能性についてということです。これは川上先生、よろしいですか。 ○川上委員 論点については先ほどご説明をしたので比較的クリアになったと思います。今 後の議論として、パートなどのような短時間の労働者の方を含める必要性はあるのではない かと思います。それから、派遣労働者の方などを、現在の定期健康診断であれば、当然派遣 元がすることになりますが、実際に働いている職場環境を押さえようとすると、この職場で 押さえたほうがいいのではないかということなので、この辺りの議論が必要かなとは思って います。 ○相澤座長 ほかには何かご意見はございますでしょうか。 ○三柴委員 一次予防と不調者への対応を含めて、堀江先生からも長期的な課題ではないか というご指摘もいただいたのですが、確かにそのとおりかなと。また、やや基準の高いこと を申し上げたかもしれませんが、メンタルヘルス不調の対策の問題というのは一次予防を含 めてかなり、ある意味ぜいたくと言いますか、そういう問題、そういう取組みが求められる 課題でもあろうと思うのです。それは、言葉にするとおそらく中長期的に聞こえる問題がか なり多いのだろうと思うので、将来展望を持ちながら現実課題を議論する必要があるかなと いうことで。それに関連して1点だけ申し上げれば、やはり産業医療のあり方を再検討する というのは、この問題の対策を誰がリーダーとなって、どこを起点にして講じていくかとい う上で重要な視点になってくるように思うのです。そこで、最初にババッと申し上げてしま いましたが、そういうお話につながったということだけお伝えしたいと思います。ありがと うございます。 ○相澤座長 ありがとうございました。まだまだご意見はあると思いますが、次回も引き続 き行いたいと思いますので、本日の議論は以上とさせていただきたいと思います。多岐にわ たるご議論をどうもありがとうございました。次回も、引き続きましてこの議論を続けたい と考えております。また、次回はメンタルヘルス不調把握後の対応、非常に大事なことです ので十分な議論が必要になると思いますので、新たに精神科の先生に入っていただいて検討 を進めてはどうかと思います。次回の議論につきまして、労働衛生課長からお願いいたしま す。 ○鈴木労働衛生課長 ありがとうございます。次回は、今回の議論を踏まえまして、事務局 でさらにご意見を取りまとめたものを用意させていただきたいと思います。ポイントになる 議論については議事録を用意した上で個別にご説明させていただいて、今の時点で両論と言 いますか、議論が分かれている部分についてはそれも明確になるような形でさらなるペーパ ーを作らせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○相澤座長 ありがとうございます。それでは、次回の日程等予定を事務局からお願いいた します。 ○永田主任中央労働衛生専門官 次回は、7月8日(木)14時から17時に開催する予定と しております。正式な開催案内は別途送らせていただきます。よろしくお願いします。 ○相澤座長 よろしいですか。それでは、以上で第4回職場におけるメンタルヘルス対策検 討会を閉会いたします。どうもありがとうございました。