10/06/10 第3回新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム議事録 第3回新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム(議事録) 1.日 時:平成22年6月10日(木)18:00〜20:10 2.場 所:厚生労働省 専用第21会議室(17階) 3.出席構成員:新垣構成員、岡崎構成員、小川構成員、河崎構成員、佐久間構成員、田尾 構成員、高木構成員、直嶋構成員、中島構成員、長野構成員、西田構成員、野澤構成員、野 村構成員、広田構成員、福田構成員、堀江構成員 4.議 事 (1)地域精神保健医療体制について (2)その他 5.議事内容 ○福田課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第3回「新たな地域精神保健 医療体制の構築に向けた検討チーム」を開催いたします。  本日も、構成員の皆様方におかれましては、大変御多忙中のところ、御参加をいただきま して、誠にありがとうございます。  前回に引き続きまして、私、進行役を務めさせていただきますので、よろしく御協力のほ ど、お願いをいたしたいと思います。  では、議事に先立ちまして、長妻厚生労働大臣よりごあいさつをいただきます。よろしく お願いいたします。 ○長妻厚生労働大臣 どうも皆様、こんばんは。本当に今日は3回目ということでございま すけれども、本当に充実した議論がなされ、これからも日本のこの地域精神保健医療の体制 をきちんと確立をしていくということで、是非皆様方の御指導をいただきたいというふうに 思っております。  今後、うつを始めとする精神疾患の経済的な損失額も算出をして、国民の皆様にお示しし ようというふうにも考えてございますし、いわゆるアウトリーチと言われる、やはり訪問型 の体制をどういうふうにつくっていくのか、我々としては、ちょうど10年後の社会を見据 えた少子高齢社会の日本モデルというようなビジョンを打ち出そうと考えておりまして、そ の中でも、やはり精神疾患に対する対応、取組みというのは、中核にあるべきであると考え ておりますので、是非、今後とも御指導をいただければありがたいと思っております。  本当に苦しんでおられる方々あるいは御家族の方というのは、大変多いわけでございまし て、やはりきめ細やかなチームとしての在宅での対応ということについて、これから力を入 れていこうと、我々も思っておりますので、是非よろしくお願いします。  ありがとうございました。 ○福田課長 どうもありがとうございました。本日は、山井政務官にも御出席をいただいて おります。また、足立政務官の方からは、今日は欠席ということで、御連絡が入っておりま すので、御紹介させていただきます。  それでは、今回も前回、それから前々回同様、公開のため、検討チームでの審議内容は、 厚生労働省のホームページの方に議事録として掲載される予定でございますので、委員の皆 様方には、あらかじめ御了解くださいますようにお願いいたしたいと思います。  それでは、早速、議事の方に入らせていただきたいと思います。  本日の議題は、地域精神保健医療体制についてでございます。お手元の資料で御説明させ ていただきますが、大変大部なものになってございますので、後ほど事務局の方の説明でも 言及させていただきますけれども、資料の最後の72ページから75ページのところに論点と いうものが示されておりますので、この論点をある程度念頭に置きながら資料の説明の方を お聞きいただけるとありがたいと思っております。  それでは、まず、事務局から資料の御説明をお願いします。 ○林課長補佐 それでは、資料の御説明をさせていただきます。本日は、地域精神保健医療 体制についてということで、第1回、第2回の御議論を踏まえながら、特に地域で生活され る精神疾患、精神障害者の方々にどのようなサービスをお届けするかというところを中心的 な議題として御議論いただきたいと考えております。  そして、具体的な論点として、先に72ページから後ろ、資料の一番後ろから1枚めくっ ていただいたところを、先に御紹介をさせていただきたいと思います。73ページにござい ます。現状の部分は、後ほど資料の方で御説明をさせていただきたいと思いますが、右側の 検討のところ、精神疾患の特徴を踏まえて、家族、当事者の支援のためにどのような機能が 必要であるか。また、現在の提供体制において、どんな課題があるのか、そして、その必要 な機能を構築するために、どのようなサービスが必要か、こういった論点。  そして、最後の74ページの方でサービスの提供体制の在り方としてまとめておりますが、 精神疾患の特性を踏まえ、医療から生活にわたる相談支援、ケアマネジメント、サービスを どのような体制で行うことが効果的か。  次に、地域生活支援のためのアウトリーチの提供主体についてどう考えるか、併せて担当 地域、キャッチメントエリアについてどう考えるか。  また、精神障害者への支援体制と各障害に共通した支援体制との関係についてどう考える か、医療機関の位置づけについてどう考えるか、保健所、市町村の位置づけや、今後の役割 についてどう考えるか、こういったところを提供体制の在り方として後ほど御議論いただけ ればと思っております。  論点の(3)としては「マンパワーの確保・財政負担について」としてまとめておりますが、 アウトリーチによる支援やケアマネジメントに当たる専門人材をどうやって養成していけ ばよいか。そして、アウトリーチの体制構築に必要なマンパワーの規模、それからマンパワ ーの確保の方法、そして、財政負担の仕組み、どのような公費負担が必要か、こういったこ とも具体的に、また、御意見をいただけたらと考えております。  それでは、最初に戻りまして、資料全体を、量が多いですので、かいつまんで御説明をさ せていただきたいと思います。  1枚めくっていただいて2ページからでございます。前回、御家族、当事者の方々からさ まざま御意見をいただきました。特に、やはり当事者のニーズというところから出発をして 議論すべきではないかということでございまして、今回、事務局としては多少工夫をさせて いただいて、状態像、それから御本人、御家族のニーズという部分を、まず、資料の最初に 整理させていただいております。  2ページにありますように、精神障害者の多様な状態像、少しイメージを持って議論して いただけるように、2つの切り口でまとめています。支援が届いているかどうか、それから 症状が重症であるかどうか。その2つの切り口でまとめております。  まず、1番目に医療支援を受けていない重症者、下の3ページのところでございますけれ ども、例えば特徴として、本人が病気と認識して、できない、支援を求めないような方、そ して、症状が急激に変化し、ときに緊急に危機管理を要するような方、こういった特徴の方 がいらっしゃいます。御本人、家族のニーズとしては、困っているけれども、病気が原因と いうふうには御本人が認識していらっしゃらない。そして、御家族の側としては、明らかに 異常を感じているけれども、どうしていいかわからない。自宅で本人とともに孤立していて、 誰かに助けてほしい。また、御家族が高齢化されていて、状況に対応できない。こういった ニーズがあると伺っております。  そういった方々の支援における現在の課題としては、法に基づく強制的な入院を前提とし た対応が行われることが多くて、強制入院の対象とならない方々には支援がなされにくいと いうこと。そして、医療機関に移送する方法、在宅への支援が乏しいため、結果的に御本人、 家族が孤立されているのではないかということ。現状でのマンパワーが限られていたり、在 宅医療での支援が十分に行き渡っていないといった課題があるのではないかと考えており ます。  4ページ、次に、虐待・独居等と書いてありますけれども、精神疾患を有しているにもか かわらず、家族からの支援が得られずに、医療や支援を受けていない方々の特徴として、困 難やトラブルが顕在化しにくいことや、御自身だけではなくて、御家族も精神疾患等の問題 を有することがあると、こういった特徴があります。  課題としては、御本人からのSOS、大変気づきにくいということ。児童相談所、保健所 など、さまざまな専門の機関があるわけですけれども、連携した対応が取られにくいといっ たことがあります。  3番目に、早期支援を要する方というカテゴリーを置いております。支援がまだ届いてい ないけれども、まだ、それほど重症ではないという方々をイメージしています。  特徴としては、当初は、昼夜逆転、うつ状態などの不調があって、さまざまな症状があり ます。ひきこもり・不登校、離職などで顕在化することも多い。ただ、精神疾患にかかって いらっしゃるかどうか、最初は当事者にはわからないということであります。  御本人や御家族のニーズとしては、どうしていいかわからない。いろいろ授業とか仕事、 外に出られないので、さまざまな生活上の困難がありますけれども、それにどう対応してい いかよくわからないというところ、御家族から見ると、信頼できる相談先、医療機関がどこ にあるのかわからないといった課題があります。  課題としては、早期に精神科への受診がなされないことや、仮に受診すると、投薬などの 治療はなされるけれども、生活の困難に対する相談支援などのサポートが提供されていない といったような課題がございます。  4番目の何らかの医療・支援を受けている重症者というカテゴリー、これは既に医療機関 にかかっていらっしゃるというような重症の方をイメージしております。特徴としては、症 状が急激に変化することがあったり、入院を繰り返すことがあるわけでございます。御本人 や御家族のニーズとしては、緊急時や不安なときに相談できることがほしいとか、症状が急 に悪化したときなどに頼れるところがほしいといったようなニーズがあると伺います。  課題としては、やはり在宅医療などの支援が限られた地域のみに存在して利用できない人 が多いといったこと。重症の場合は入院すべきであると皆が感じてしまっているということ。 治療の中断などによって、更に重症化することがあるといったことがあるのではないかと考 えております。  5番目に、地域生活を継続していらっしゃる大多数の方々、1〜4のような特徴ではない 方々を念頭に置いております。  特徴として、病気について理解して、医療機関に自ら通院するなどしていらっしゃるわけ ですけれども、生活支援を受けていらっしゃらない方もいて、また、治療によって軽減はし ているものの、症状が継続しており、何らかの契機に増悪することもあるといった特徴があ ります。  御本人、御家族のニーズは様々でございますが、自立した生活や自己実現をしたいといっ たこと、地域で信頼できる相談先や医療機関がほしいといったこと、今後の治療方針、病状 の変化、生活の先行きに不安を感じるといった声をよく伺っております。  課題としては、福祉サービスの整備に地域差があるなど、支援が十分に行き届いていない といったこと。  外来通院だけを継続して、その他の支援を受けていない方々が多い。特に通院しているだ けだとケアマネジメントが行われず、生活支援につながりにくいといった課題があるのでは ないかと考えております。  6番目に、退院に向けた入院中の方という分類をしておりますが、病状以外のさまざまな 要因で入院が継続していらっしゃるような方々であります。御本人や御家族のニーズとして は、御本人としては、まず、退院後の生活が想像できなかったり、退院後の生活が不安であ るといったこと、御家族の側では、家族には家族の生活があって、なかなか面倒を見られな いといったようなニーズがあります。  課題としては、やはり当事者関係者の労力が退院に向けては非常にかかるので、現状維持 にどうしてもなりがちになってしまうといったことや、御本人が退院という選択肢を現実の ものとして考えることが難しい。また、住まいの場、福祉サービスなどの受け皿が乏しいと いったような課題があると考えております。  9ページからは、精神障害者の地域保健医療に関する現行の制度ということで、大きく分 けますと、行政の制度、それから医療機関など医療の制度、そして福祉の制度、大きく分け ると、その3つに分けて資料を構成しております。  量が多いですので、かいつまんで何が書いてあるかということだけ御紹介をさせていただ きたいと思います。  まず、10ページからは、行政機関で精神障害者の方々の相談支援あるいは訪問等を行う 機関を挙げております。  1つ目に精神保健福祉センター。そして2つ目、最も数が多くてこの仕事を行うとして位 置づけられているのが保健所であります。  12ページには、保健所が受ける困難事例として、こんなものがあるというアンケートが 出ております。  そして、13ページ、危機介入・支援体制の現状ということでございますけれども、お示 ししているのは、保健所の持っているツールとして、措置入院あるいは34条移送、こうい った非常に重症な方に対する強制的な介入手法がある一方で、それ以外の方々というのは、 自発的に訪問指導等で自発的な受診を促すという対応が取られていて、困難事例に対応する ツールがあまりないということでございます。  14ページ、15ページは、保健所の業務の体制であります。業務担当の精神保健を専門と する保健師さんを置いていらっしゃる保健所が多く、また、お医者さんは嘱託の精神科医が いらっしゃるところが多くなっております。  人員の配置としては、業務担当制の場合、1人の保健師さんなど、専門職の方が8.4万人 くらいの人口を担当していらっしゃるというのが平均的な姿でございます。  16ページ、17ページは、保健所の業務の状況について取ったアンケート調査でございま すが、特に17ページの下の方を見ていただくと、保健所に取ったアンケート調査で、左に 書いてあるような状態の方々が、保健所で解決できるかどうかということを伺ったものです。  未治療の期間が長いとか、病状が治療中断で悪化しているといった方々、左から3つ合わ せて、人員や期間を要しても解決できるというような保健所を合わせて、大体4割くらいと なっております。5段目から以下、独居でキーパーソンが見つからないとか、独居で訪問受 診を頑なに拒否していると、こういった状態像であると、保健所だけでは解決困難という保 健所が大多数であって、自ら解決できるとおっしゃっているところは、約1割にとどまりま す。  こういった中で、18ページ、19ページにありますように、精神障害者地域移行・地域定 着支援事業、こういった予算を今年から始めておりまして、多職種チームで保健所等から委 託をして密な関わりをもって支援をすると、こういった支援については、一診療報酬の対象 にもなりにくいということで、こういったものについての公費負担ができるように国として も都道府県等に助成をするという制度を設けております。  20ページからが市町村についての資料でございます。  21ページは、市町村における相談の位置づけという法的な位置づけを御紹介しておりま す。精神保健に関する相談というのは、都道府県や保健所設置市においては全て行う義務が あるわけでございますけれども、保健所設置市以外の市町村においては、精神障害者の福祉 に関しては、相談を行う義務が設けられております。  その一方で、精神保健に関しては、努力義務ということで、市町村ができるだけやるとい う位置づけにとどまっているということでございます。  22ページが、相談の実際の件数の状況。  23ページが、行政機関における保健師数の年次推移ということで、近年、多少都道府県 から市町村等に移っている部分がありますけれども、概ね横ばい傾向になっているというこ とでございます。  24ページ以降は、行政に関して関連する制度、御紹介は簡潔にしたいと思いますが、措 置入院、そして34条移送、そして救急医療体制整備事業について御紹介をしております。  特に26ページ、精神保健福祉法34条に基づき、移送という制度がありまして、医療保護 入院を前提として移送するという制度がありますが、非常にがっちりとした仕組みで、実際 には全国で1年に130件程度しか行われていないということであります。  27ページからが精神科救急医療体制整備事業の実情について御紹介をしております。  30ページから33ページは、ひきこもりに関する対策についてお示しをしております。ひ きこもりの方々も原因の多くには精神疾患があるというようなこと、また、最初精神疾患が 疑われる状態においては、ひきこもりか精神疾患かということは、なかなか当事者にはわか りにくいということで、こういった支援策も併せて考えていく必要があるということで、資 料を載せております。  34ページからは、医療に関する制度でございます。まず、訪問看護についての診療報酬 の体系が35ページに出ております。  精神科を標榜する保険医療機関で行う場合、そして、訪問看護ステーションでも行うこと ができまして、こういった診療報酬の体系となっております。  この春の診療報酬改定では、訪問看護ステーションの方の複数名訪問加算というものが新 たに設けられたところでございます。  36ページが医療機関における実施状況でございます。  37ページは、在宅診療に関する診療報酬ということで、往診料、それから定期的、計画 的に訪問する場合の訪問診療料、それから1か月間の医学管理を包括的に行う在宅時医学総 合管理料というものがございます。  そして、在宅療養支援診療所または病院といった指定を受けていらっしゃる医療機関では、 これらの在宅診療に関する診療報酬が高く設定されておりますけれども、このような医療機 関で24時間対応できるということが要件として定められております。  38ページ、39ページが、精神科医療機関における往診の実施状況で、まだまだ実際にや っていただいている医療機関は少数派であるということでございます。  40ページから42ページは、関連して精神病床の現状、それから入院にかかる診療報酬と 主な要件を御紹介させていただいております。  43ページからが、訪問看護ステーションに関する資料でございます。診療報酬に関して は、先に御紹介をしたとおりでございまして、後は訪問看護ステーションの年次推移でござ いますけれども、訪問看護ステーション数全体としても増えてきておりまして、平成20年 では5,400か所あまりにまで増えております。  この中で、精神疾患の患者さんに訪問看護を提供されているかどうかということをアンケ ートで伺っております。精神疾患の方々の利用者が1名以上いる事業所というのは年々増え てきておりまして、2009年度には49.4%に達しております。  ただ、この中で、実際の事業者の割合を伺うと5%未満という事務所が33%あまりにな っておりまして、5%以上あるいは10%以上という訪問看護ステーションがむしろ少数と なっております。  46ページには、医療機関等の従事者数をまとめております。  47ページからが福祉に関する制度でございます。相談支援事業所、それから地域活動支 援センター、こういった場において相談支援であるとか、訪問支援が提供されるということ になっております。  従事者数を49ページにまとめております。  50ページは、現在、国会で議員立法として御審議いただいている障害者自立支援法等の 改正の法案、法律案の名称は非常に長くなっておりますけれども、自立支援法を始めとして、 関連する法を一括して改正する法案でございます。  この中で、訪問支援あるいは相談支援に関連して提案されていることが幾つかございます。  1つは、51ページにありますように、基幹相談支援センター、このような身体障害者、 知的障害者、精神障害者の相談を総合的に行う場を市町村が設けることができるというよう な規定を設けるということが提案されております。  そして、52ページ、右側でありますけれども、サービス利用計画の作成につきましては、 これまで非常に限定的に計画費が支給されるということになっておりましたけれども、対象 者の拡大等が検討されております。  53ページ、自立支援協議会についてでございますけれども、これについてその活動を促 すように、法律上の位置づけを明確化すべきという御意見も出ておりまして、これの位置づ けを法律に明記するということが提案されております。  54ページ、55ページにつきましては、地域移行支援・地域定着支援ということで、これ まで地域移行支援の事業で行われていたものを法定の個別給付として行うということが現 在検討されております。施設や病院に長期入所等をしていらっしゃった方が地域での生活に 移行するときの住居の確保、新生活の準備、こういった部分の給付。  それから、地域定着支援として一人暮らしされている方の夜間等も含む緊急時の連絡、相 談等のサポート体制、こういったものを法定の給付にするということでございます。  56ページ、57ページは、それに関連した資料でございます。  引き続いて、58ページ、59ページは、精神障害者の制度ではございませんで、高齢者に 関する制度でございます。  地域包括支援センターという仕組みがございます。ここにおいては、これから高齢者が介 護を要する状態にならないように、介護予防をしていこうということ。それから、また、重 症者の方のケアマネジメントに責任を持って取り組んでいこう。こういった事業を合わせて やる仕組みになっておりまして、これは市町村が主体となって65歳以上の高齢者3,000人 から6,000人ごとに保健師さん、社会福祉士、主任介護支援専門員を1人ずつ配置をすると いうことで行うことになってございます。  この地域精神保健福祉体制を検討するに当たっての参考として資料を提示させていただ いたものでございます。  60ページからは、サービス提供体制の在り方と重症者等への地域での訪問支援の実施例 でございます。  まず、前提として押さえておきたいのは、精神疾患において、医療と生活支援、これを一 体的に提供するということの必要性であります。精神疾患では、疾患の症状によって生活の 機能が障害されることによって、治療の継続が難しくなるなど、病状にも悪影響を来しがち であるということ。  したがって、疾患の治療と併せて、日常生活、社会生活の支援を行うことが、生活の質だ けではなく、治療の継続にもよい影響があるということ。  医療モデル・社会モデルの両面から支援を行うため、保健医療職と福祉職両方の価値観・ 技術を用いて支援を行う多職種チームによる支援が有効とされているといったことでござ います。  62ページからは、そのような保健医療の支援、生活支援を提供するためにどんな提供体 制があるかということを模式的に示したものでございます。  1つ目、パターンAとしては、福祉・医療分離型と仮に名づけさせていただいております けれども、医療機関で医療提供を受け、また、福祉は福祉のサービスを受けるということで ございます。症状が落ち着いていらっしゃる方を対象とする場合には、比較的調整のコスト が小さくて容易にサービスが提供できるということであり、現在、福祉サービスの提供が行 われている場合には、この体制が多いものでございますけれども、どうしても情報交換や連 携が不足しがちになったり、急激な症状等への対応が難しく、精神疾患を有する対象者の特 性に合わないような場合もあるというデメリットがあるのではないかと思われます。  パターンBとしては、医療中心型と名づけておりますけれども、医療機関が医療のサービ スを提供するということが中心になっているものでございます。  現在の精神障害者の方々では、医療のサービスを受けていらっしゃる方が圧倒的に多くな っておりますので、人数としてはこの形で支援を受けていらっしゃる方が多いものと思われ ます。  入院外来、訪問看護等のサービスが一貫して提供されるために、急激な病状変化等に対応 しやすいといったメリットがある一方で、医療機関に生活全般にわたるケアマネジメント機 能が乏しいので、相談支援や生活支援が提供されにくいといったデメリットがあるのではな いかと考えられます。  パターンCとして、医療・福祉連携型と仮に名づけておりますが、相談支援事業者等と医 療機関が連携をして支援のマネジメントをしていくという例でございます。医療・福祉が連 携すれば、包括的な支援ができるというメリットがある一方で、実効的にこのような連携を 行っていくためには、相当な工夫が必要であるということで、現在このような形というのは、 なかなか実現していないのではないかと考えております。  パターンDとしては、包括型と書いておりますが、医療福祉が連携したような包括的な提 供主体を設けて、そこから全ての支援を包括して行っていくというものであります。今まで の枠組みとは異なる新たな形ということになるのではないかと思います。  全国でさまざま未治療者、治療集団者あるいは重症者に訪問支援をされている例があると 思われますけれども、その中で幾つか福祉中心にやられているところ、医療中心にやられて いるところ、幾つか例をちょうだいして、ここに御紹介をさせていただいております。  事例1としては、地域活動支援センターKUINA、茨城県ひたちなか市のものでござい ますけれども、地域活動支援センターが中心となって、同一法人の他施設と連携をして支援 をされているというもので、未治療、治療中断者等にも積極的に訪問支援をされているとい うふうなものでございます。  事例の2つ目としては、岩手県宮古市の指定相談支援事業所れいんぼーというもので、こ こは指定相談支援事業所を中心として、自立訓練(宿泊型)事業所なども併設されておりま すけれども、そういったところとも連携しながら支援を行っているというものでございます。  3つ目は、構成員でもいらっしゃいます、長野先生の方の病院でございます。精神科病院 の地域ケア部門を主体として、医療機関の看護師等が訪問に従事をされている。  また、退院時、通院中に訪問支援を開始するような事例が多くなっていまして、精神科病 院の病棟の看護師さんが兼務で訪問されるといったようなことが多くなっていると伺って おります。  4つ目がACTで、千葉県市川市のホームでございます。これは、訪問看護ステーション において、治療継続、生活支援、就労支援など幅広い支援を行うというもので、看護師・O Tの他、精神保健福祉士も併せて配置をされているということ。また、協力医療機関の医師 1名が毎日チームに参加をして支援を行っているというものでございます。支援の対象者と しては、退院時に関わりを始めたような長期入院患者や頻回入院の患者が多いということで ございます。  事例の5としておりますのは、高木先生のところの事業紹介をさせていただいております。 精神科診療所、訪問看護ステーション、NPO法人が共同して支援を行っていらっしゃると いうことでございます。  特徴としては、看護師、精神保健福祉士、作業療法士等がチームで関わっているというこ と。チームの医師も訪問診療を実施されているということ。  危機介入の事例が多くて民間でありながら粘り強く訪問をして関わりを構築されている と伺っております。  事例6は、ACTおかやま、岡山県の精神保健福祉センターを拠点としたものでございま す。公的機関として未治療や治療中断の方を対象とすることが多いと伺っております。  県内広うございますので、遠方の市町村に訪問支援を行う委託医療機関等のチームがあっ て、そこに対する技術的支援、そこにも関わられていると伺っております。  その後、72ページ以降が論点ということで、最初に御紹介した論点にこういった資料が つながってまいります。  資料の説明は、以上でございます。 ○福田課長 どうもありがとうございました。では、これ以降は、論点に沿った形で御意見 をいただけばと思いますが、ちょっとかなり急速に知恵を詰め込んだ形なので、あれかもし れませんけれども、まず、そうは言っても基本的に精神障害者の地域生活支援のために必要 な機能、何が求められているかというところを中心にして、まず、御議論いただいて、その 後、論点2、3という形で移っていきたいと思います。それぞれある意味ではかぶりますの で、2、3のことの発言をされては困るというわけではないんですが、まずは、ニーズ、機 能というところを意識していただきながら前半に御発言をいただければありがたいなと思 っております。  それでは、高木先生、どうぞ。 ○高木構成員 ニーズを考える上で、一番重要なのが、状態像、最初のカテゴリーだと思う んです。非常にすっきりと整理していただいて、よろしいと思うんですけれども、私は、重 大な見落としが1つあると思います。私は、医療支援を受けていない重症者、ここを中心に、 かなりの数のここの方を診てきましたので、その経験から述べさせていただきますと、この 中で医療支援を受けていない重症者の特徴というのが、ほぼ患者側の責任、当事者側の責任 になっておりますけれども、私は多くの医療中断者、未治療者、これも一番の問題は医療不 信であり、精神疾患に対する偏見を自分たち自身が抱え込んでいると、その問題が非常に多 いと思うんです。それさえなければ、本来、皆さん助けを求めておられる。こちらが医療と いう枠ではなくて、いろんなニーズをくみ取って、生活支援という形で入れば、こういう人 たち、今まで入院で酷い目に遭ったとか、医療で薬漬けで酷い目に遭った、あるいは自分は そんな精神障害というような怖い、危ないものではないと必死で思っている人たちが支援に 乗ってくるんです。勿論、医療というものに乗せていくには、まだまだ時間がかかりますけ れども。  そういう意味では、ここに医療支援を受けていない重症者の方というのは、この人々、こ ういう人たちに対して、医療不信がなくなるような体制、医療への偏見、精神疾患への偏見 がなくなるような体制がつくられないと、どんな制度をつくったって、例えば今でも言われ ているように、悪いことをしたら、黄色の救急車で精神病院に連れて行かれるよと言われる ような、こちら側の医療供給体制が残っている限り、こういう人たちをどんどん再生産して いく。  更に、4番、5番、2番、3番というようなところの人たちも、自分たちがそういうとこ ろへ転落しない、転落する、いつ転落させられるんではないかというおそれの中で、常に生 きていくことになると思うんです。  例えば5番の人たちに更にいい支援体制をつくったところで、1番の人たちをつくるよう な医療不信、医療に対する不信を持たせるような医療制度がある限りは、5番の人たちも安 心して支援を受けるということにはならないと思います。そういうことがあるというのが1 つ。  それから、退院に向けた入院中のもののところに、この方々が病状が安定して受入れ条件 が整えば、退院可能なものということですけれども、他のところを見ると、ちゃんと病状が 安定していなくても、受入れ条件が厳しい中でも地域生活を、4番、5番、2番、3番の方 はされているわけで、6番の方だけが病状が安定しないと退院可能でないというのはカテゴ リーの矛盾ですね。こういう人たちも、ここで病状があまり安定しなくても退院できるとい う、そういう制度を目指さないと、今後の地域治療を支えていくということはできないんで はないかと思います。 ○福田課長 では、野村さん、お願いします。 ○野村構成員 家族会の野村と言います。今、高木先生のお話しにありましたけれども、患 者さんとか、家族の多くは、精神科の医療に関わると、自分が気違いになっていくというか、 精神障害者に全く転落していくという恐怖をやはり持っています。それは、医療のサービス を受けると、自分の自尊心がずたずたにされてなくなってしまうという経験をたくさんの当 事者が言っておりまして、なぜそうなるのであろうということ、大変不思議に思うんですが、 当事者はよく言います。  ですから、医療サービスの中に、やはり自尊心を大切にしていくという接し方が、今後の 大改革をしなければいけない問題ではないかと。  そうすると、今、ひきこもりとか医療拒否とか中断ということが大分減ってくるのではな いかと思います。やはり信頼感を取り戻さなければいけないと思います。  それは、医療の改革ですけれども、今度は地域で訪問する場合に、どのような職員、スタ ッフが地域に出ていったらいいかと言いますと、やはり自尊心を大切にするという姿勢を、 まず、身に付けていただくということが絶対に欠かせない、その人が来ては困る、嫌だと言 われることがないようにしなければいけない。来ることを喜んでもらえるような、そういう スタッフ、支援者が地域に出て行って、例えば保健師とか、看護師とか、臨床心理士だの作 業療法士いろいろいると思いますが、精神保健福祉士とか、そういう人たちをきちんと育て なければいけない。そのときに、自尊心をちゃんと大切にして、そして、上手に訪問できる。 相手と接触することがきちんとできるような人がいなければだめですね。行っても相手が拒 否するような、そういう人が行っても困る。やはり親しみとか、相手との和やかさとか、お 互いの信頼感、ちょっとしたおしゃべりができるような、そういう態度を身に付けた人が地 域に出てこなければ困る。  そういう人は養成しなければいけない。これから国を挙げて養成しなければいけないと思 うんです。今までと違ったイメージ。今までは保健師さんが来ると怖いとか、看護師さんが 来ると怖いというイメージが結構あった。それをなくして、本当に来ていただくと安心だと、 うれしいというイメージに変えなければいけない。そのリーダーを私は、最初に国で養成す べきだと思うんです。どういうリーダーになるかわかりませんが、とにかく人の自尊心を大 切にできて、安心感を持たせて、親しみが持てて、お互いに信頼関係が結べるような方をリ ーダーとして育てていかなければいけない。  それを育てるに当たっては、当事者と家族とが、きちんと育てるときに介入をしていって、 こういうリーダーは困ります。こういうリーダーはうれしいというようなことをきちんと意 見交換、情報交換しながら養成をしてもらわないと、どんなにたくさん養成しても現場には 合わないかもしれない。  そして、実際に面倒を見てもらった患者さんや家族がよくなっていくような仕事の仕方を してもらわないと困るわけです。ただ、何百回訪問してくれても、相手が助からないようで はどうしようもない。やはり現実に心を開いてニーズを打ち明けて、そして、そのニーズが ちゃんと解決されるような支援の仕方をしなければいけないというふうに思います。  支援の仕方に対しては評価と、その後、どのようになっていったか、支援を受けたユーザ ーというか、利用者がどのような人生に変わっていったかということも追跡調査をしながら、 それが評価になっていかなければいけないと思います。それが、そのチームの成績というか、 いい仕事をしたか、だめな仕事であったかということがきちんと見届けられなければいけな いと思います。  病院から退院してきて、その方を支えるということは、今、国で一生懸命始められており ますが、実は家族が抱えている方たちも、入院している方と変わらないくらい大変なんです。 ひきこもりの状況の中で、家族にすがって、家族以外誰も助けに来ない。家族だけがお世話 をしていて、お互いにいらいらしながらぶつかり合って、ときには暴力が発生して、ときに は命がなくなっているという現状は、家族だけに見させていることの大問題が、そのまま放 置されているということなんです。ですから、家族が抱えて、悲鳴を上げて助けを求めてき たならば、これはやはり地域を挙げて支援しに行かなければいけないと思うんです。そのと きに訪問とかが非常に重要になるわけで、訪問と家族支援が絶対に大事です。一家を挙げて 幸せにならないと、一人だけが幸せになるのでは、多分それほど効果がないんです。ですか ら、家族と丸ごと幸せになる。  そして、どのような支援をしたら、彼らが幸せになるかというと、ひきこもりの人に希望 を与えるということが必要なんですね。これは、医療だけではできない。やはり福祉とか就 労とか、全てがかみ合わないとできないです。  そして、家から出て、私はそこに通おう、お世話になろうという希望を持たせるような支 援の仕方を地域に構築しなければいけない。  それは、どんなことだろうというと、それは一人ひとりのひきこもりの方が魅力を感じる ものでなければいけないんです。例えば写真を写すのが好きだったら、その写真が趣味にな ったり、できれば仕事につながったり、あるいは体を動かすのが好きだったら、お掃除でも 何でもいい。その人が好きなことが見つかって、それに向けて将来の社会参加ができていく ような支援を、丁寧に一人ひとりやらなければいけないと思うんです。  これは、大変なことですけれども、しかし、そのチャンスをいろいろとその方のために用 意して、何がその人に向いているかを、そして、その人がそのサービスに乗っかっていきた いと思うようなサービスを用意しなければいけないと思うんです。ただの集まり、たまり場 とか、時間つぶしの場所ではだめです。一人ひとりの能力が見つかって、その人は、それで 一生生きていこう、これを趣味にしようという目的が持てて、初めて自発的に自立して社会 につながっていこうという希望とかが持てるわけです。私は、それが回復だと思うんです。 ただ、作業所に行って単純作業をやって、1日つぶしたと、それが回復だと思ったら、私は 違うと思います。  今、福祉の問題は、それが非常に魅力がない。行っても内職ばかりやらされる、あるいは お掃除ばかりやらされて、お金も1日働いても1,000円にもならないんでしょうかね。1か 月で数千円、1万円の工賃では、本当にこれは情けない。お金はともかくとして、本人が、 私はこれがやりたいということが見つかるような支援の仕方をして、それが見つかったなら ば、それを基に社会にちゃんと入り込んでいけるような、何がしかの支援方法を構築しなけ ればいけないと思います。  そのときに、医療はとても大切なものですけれども、その医療が、やはり自尊心をなくさ ないように、そして、本人が是非お世話になって、その医療にかかりたいというには、薬だ けではだめで、やはり心理的な支援、これは臨床心理士もそうでしょう。お医者さんもそう でしょう。その方の心の中をしっかり聞いて、その方が何を求めているか、何を目指してい るか、何を困っているかということを本当にきっちり見つけて、その方と一緒に歩んでいく ような、そういう支える支援でなければ、ただの薬と2、3分の問診だけではこれはだめで すね。そういうような支援を福祉と医療と一緒になって構築しなければいけない。  それから、あまり長くしゃべってすみません。もう一つは、気軽に相談できる窓口が絶対 に必要です。行きにくい保健所とか、精神科病院ではなかなか大変です。やはり地域に気軽 に心の苦しみとか、精神的な不調、眠れないとか、一般市民もそこに行けて、気軽に相談が できる。もしくは、私は病気でないと言っている人の家族も、うちの息子が少し変なんだけ れどもということを気軽に相談に行けるような、そういう窓口が私は必要であると。その窓 口にはちゃんと精神科の医療がつながっていて、地域のいろんなつながりを持った上での相 談窓口が必要であるというようなことを感じます。  大変長く、失礼しました。ありがとうございます。 ○福田課長 ありがとうございます。堀江さん、お願いします。 ○堀江構成員 私は、世田谷在住ですから、世田谷の地域家族会として、いろいろと見てき た経験から少し発言をさせていただきます。  地元の保健師さんも傍聴で来られているので、あまり大げさなことは言わないようにしよ うと思っております。世田谷は80万の都市ですが、一昨日から区議会が始まりました。そ こで代表質問が、自民党、民主党等を含めまして、この3日間続いて精神保健の議論が代表 質問でされています。  非常に具体的な話でして、都立梅ヶ丘病院の跡地問題に端を発しまして、ここに地域精神 保健センターをつくれと、そこの中身はまさに今日議論されているような中身を、どういう ふうに具体的にしていったらいいのだろうかという話になっているんです。  区議会の構成の各党がこんなに議論を始めたというのは、私は2年前と隔世の感があると いうふうに思います。  2年前は、我々が要請に行きますと、各党数名の議員が来られて、30分経ったら、「はい 御苦労様でした」と、聞き置くという態度だったんですが、去年から変わりました。なぜ変 わったのか。  思春期精神病様体験の話が出てきてからです。世田谷の場合に、思春期に幻聴、幻覚、妄 想等の精神病様体験をする人が15%程度いるということがわかって、大体1万人くらいの お子さんたちが、そういう状態で苦しんでいます。それがわかってから、各党の区会議員の 方たちが、ものすごく勉強を始めました。この1年間で議会の中での議論はどんどん深くな ってきています。専門の先生方にいろいろ聞きに行ったり、ある党の都会議員の女性たちは イギリスまで聞きに行くという、そういうところまでになっています。  ですから、今回も代表質問で各党が梅ヶ丘を中心にして、どうやってその地域に精神保健 センターをつくっていったらいいのか、その議論が始まっております。  そうしますと、国の会議であるここでは私たちは、もう少し具体的にそれではこれをやる ために予算はどういうふうに確保したらいいのか議論すべきではありませんか。  例えば訪問医療サービスは適切な支援として必要なのです。早期支援でも、重症だけでは なく必要ですね。そのときに、では再来年の診療報酬引き上げのために、今から検討を始め ようというふうに当然なりますし、支払い側の先生方の中からも何人か個人的に勉強会をし ようと、そういう話になってきています。  我々は、できることならば、国保連や健保連にも公開の討論をして、本当に予防が必要な のだということを、お互いに合意するという作業をしなければならないと思っていますし、 そのために専門家の方たちの検討を生かさせてもらいたいと思っている。  そういう意味で、診療報酬改定に、または介護報酬改定に関わって、具体的に再来年を目 途にして、もう今からやらなければならないわけですから、支払い側の方は、私どもが議論 を一緒にしていくという作業をしますので、診療側の方の御議論もよろしくお願いをしたい ということが1つ。  それから、具体的に保健センターをつくっていくときに、本当に来年の予算に組み込まれ るんだろうかと。高木先生が前に言われていたと思いますけれども、ああいうチームをつく ると1億円くらいかかるという話をされていましたね。これは保健の訪問支援であっても1 億円くらいかかるんだろうと思うんですが、そうすると、それを各都道府県1か所、少なく とも50か所くらいやると、50億円くらいの金が必要になる。  これは、それほど大きなお金ではないと思いますけれども、その場合に、モデルですから、 これは年末に、今年度の例のような事態が起きると大変困る。2分の1補助になってしまう と、これは1億円が確保されるという想定で自治体が施策化を図っても、それが2分の1に 急になってしまったら、施策化は止まるに決まっているわけです。  こういう場合に、それでは、総務省ときちんと話をつけて、地域主権であっても、いや、 地域主権であればこそ、国家的な基本政策については、自治体にそういうことをしてもらう、 そういうための指導というか、話し合いというのは、厚労省はされるのでしょうか。  もし、されないのなら、またはされるとしても、我々の方も総務大臣にこの問題について 申し入れをしなければならないだろうと思っています。  そういった具体的な作業をしなければ、たとえ世田谷といえども、具体的なモデルケース が進むわけではありませんので、是非そういう、これから先、10年間というふうに大臣は おっしゃっていましたけれども、中長期にわたる考えを、構想をつくっていくのならば、そ のための前提として、来年度に具体的にどこで、どういうふうにやるのか、やる場合の予算 はどうするのか。各省との間の調整をどうするのかという辺りも含めて、この場で議論する のか、その後で議論されるのかわかりませんが、そういうことも検討していただきたいと思 います。 ○福田課長 どうもありがとうございます。その他、御意見はございますか。  佐久間先生、お願いします。 ○佐久間構成員 すみません、前回資料を提出したんですが、私の視点としては、やはり基 本的な、今回、アウトリーチモデルというときもそうですが、日本の大きな課題は、これだ け皆さんが議論されて、入院患者さんがいかに多いかという問題と、それに対しての地域の 医療体制ができていないということです。かつ、ここではほとんど精神病院に入ると、みん な犠牲者になるということも言われて、大変肩身が狭いのですが、自分たちなりの努力もあ るので、なるべく簡単に御紹介したいと思います。私の病院は、福島県のあさかホスピタル と言いまして、郡山市というところにあります。2次医療圏として55万人のところに、か なりベッドがありまして、万対39くらいあります。  私たちがやったことは、ささがわプロジェクトといって、2000年から検討してNPO法 人を立ち上げながら、2002年に病院を閉院して、患者さんたちが、まず、その建物で生活 を始めたということです。  その後、今に至っていますが、その経過を説明します。基本的なプログラムとしては、右 上に上がっているOTPというサービスモデルと治療プログラム、これを基本的に関わるス タッフ全員に教育してチームをつくって行ったのです。2002年の前は、本院から転院先の リハビリ病院としてあったんですが、なかなか長期在院に至って、ここにいる方が退院でき なかった。  次のページに行きまして、2002年にその建物を病院ではなくしまして、一気に退院しま した。これはいろんな理由があってそうしました。1階は地域生活支援センター、2、3階 は共同住居として、そして訪問看護とかデイナイトの利用をしながらケアをしました。  その下に行って、これがプロジェクト前後のスタッフの変化ですが、病院時代のスタッフ、 そして、変更後、訪問看護、デイナイト、ICAN、ささがわヴィレッジとありますが、基 本的には、かなり半減に近い形のスタッフで対応できている。  そのときの収支ですが、病院時代は右上ですが、病院時代の収入、支出、これは当時4対 1看護の作業療法をやっている状態で、比較的リハビリも行っていたけれども、なかなか退 院に結び付かない状態でいたんですが、収支は安定していた。  プロジェクト以後、どうなったかというと、右のようにプロジェクト収支はとんとんにな りました。  その内訳として、その下ですが、これは医療業務においてはどうなったかと、訪問看護と デイナイトケアにおいては、収支は、要するにハード面、キャピタルコストを考えないと、 これだけの収益が上がる。  右側は、実際の建物で、当時94人の方に退院していただいて、支援するNPO法人のヴ ィレッジの生活施設のコストは非常に赤字で、結局トータルすると右上のようになったとい うことになります。  ただ、医療面だけ言えば、それは成り立ったということですね。その後、2007年、ささ がわプロジェクト、ファーストステージ、セカンドステージというところで、セカンドステ ージでどうしたかというと、基本的には自立支援法もできていましたので、個別的なケアマ ネジメントから実際に19か所に分散して、実際のグループホームや家やアパートに分散し て生活の支援をしました。結局、病院の建物はなくなりました。  更に、ずっと継続的に就労支援を行っています。その左下が、ささがわプロジェクト、セ カンドステージの概念図ですが、結局、自立支援法と医療サービスを統合しながら本人が地 域で生活するのをどう支援するのかという形で、結果的に右上のような、19か所、実際に は自宅に帰られる方皆さんいらっしゃいますが、そういう方々が、NPOを通って、就労支 援、就労移行、就労継続のサービスを受けたり、就労したり、病院のデイケアを通ったり、 あるいは訪問看護を受けたりということです。  それで、その中の78名の統合失調症の患者さんの転機としては、現在、13名が入院中、 ただ、身体疾患3名、この精神のうちの、今、正確には言えませんが、4名は認知症が重症 化して入院しています。ですから、実質的には精神病再発は6名で、ほとんど全員がフォロ ーされていて、一般的には地域生活、高齢化によるホームとか、そういうのがありますが、 病気で亡くなるのはしようがないとしても、当時55歳で長期入院の方が退院して、8年間 の経緯で、実際に8割の方は地域生活を継続できている。  次のページへ行って、利用者の主な日常活動としては、かなりデイケア、デイナイトケア の場が活用されている。1年間に想定外、訪問以外に緊急というか、不測の事態で介入した 例としては、精神症状が45%、身体症状が25%ということで、さまざまなことがあります が、7割は医療に関することでした。  それから、地域から直接寄せられた声で数は少ないんですが、否定的な声が66%で肯定 的な声が34%。肯定的な声は、何かお手伝いがあればしますよみたいなことまで言われま した。それから、あいさつをしてくれてとても気持ちがいいですというお電話もいただきま した。  ただ、否定的な声の中では、実際に迷惑な行為が60%、何もしていないけれども、40% は漠然とした不安からの問い合わせ、隣に精神障害者がいるようだけれども心配だという話 ですね。  生活の満足度としては、このファーストステージ、セカンドステージともに、満足度は、 どちらともいえないという方もいましたが、満足した方が6割に達していると。ここのまと めとしては、医療と支援の総合的アプローチで地域ケアを行ってきましたが、当事者の生活 の満足度は高まっていたと。実際の危機介入においては、医療的な事柄への介入が最も多い。 事業者は高齢化、身体、経済、再発などの不安がある、これはスライドを出していないです けれども、メンバーは「一番頼りになる人」としてさまざまな人を挙げており、非常に多様 性がありました。  課題としては、危機予防と介入、高齢化による課題、自立度の低下、身体合併症、認知症 の問題などが挙げられます。それから地域との相互理解です。  PANSSの経過を見ますと、これは60歳以上と未満を比較した場合に、継続的に5年 間改善している。ただ、60歳未満の方々は、精神症状で再発する確率が高いことが、この 5年間のフォローでわかります。右上です。右下は、60歳以上の方々は身体合併症による 再入院、要するに精神的なことよりも身体的なケアの必要度が増してくる。当たり前と言え ば当たり前ですが、5年間でメンバーの平均年齢が60歳に達しています。  その中で、左下の経済面、これは障害年金の1級、2級の方の平均的な収入、支出、内訳 を出しています。収支はほぼ一致と当たり前ですけれども、収入以上に使えないので、大体 こういう生活をされているということです。  右上、高齢統合失調症の地域ケアで制度上の問題として、精神症状の安定に伴い、障害年 金が下がって、給付金が減額して苦しくなったという例もあります。  それから、介護保険はグループホームに暮らす者は、介護保険を申請しても要介護度が低 く、介護保険ではわずかなサービスしか受けられない。しかも、介護保険を受ければ、グル ープホームは退去しなければならず、住居の確保が今は困難で、そのため、65歳以上にな っても介護保険サービスを受けずに、グループホームで何とか支援しているという実態があ ります。  それから、就労状況ですが、就労支援プログラムで45名参加して、一般就労3、障害者 雇用8、職業適用訓練が4、支援付き就労としては、いわゆるこれは医師会の病院での清掃 10、パン工房は7、食器洗浄5、調理補助4、こういう形でかなり就労に力を入れています。  次のページの左上が、うちの就労支援システムです。デイケアセンターとNPO法人の就 労移行、就労継続と一般就労を基本的に単独のジョブアドバイザーというOTを付けまして、 そして、統合的にずっと継続して評価から一般就労後のフォローまで行っています。そうい う結果として、上の一般雇用3、障害者雇用8ということと、他の就労雇用があります。  左下、精神科地域ケアはどうあるべきか、精神疾患の症状の不安定性から、継続的に精神 症状の把握と、治療的介入がやはり必要であるということと、専門職によるケアマネジメン ト、急性期から地域への流れというのを、これからますます広げなければいけないので、医 療を中心とする統合型地域ケアチームが必要であると、私はそう思っています。精神科地域 治療チーム、医療と生活支援の統合をし、チーム内共通の理念と治療技法を共有しなければ いけない。ただ人がいればいいという問題ではないと思います。  それから、訪問24時間対応、救急受入れは必須です。身体的健康の維持と継続的スタッ フ教育が必要だと。  リハビリテーションとしては、生活リズムの獲得・維持からQOLの向上、就労まで、専 門職チームによる治療としての地域リハビリテーションをしていかなければいけない。  デイケア、デイナイトケア、ナイトケア、それぞれに目的別、機能別プログラムがあり、 自立、社会適応、就労実現のために専門職が必要ではないかと思います。  それから、これは就労中や就労中断時にもデイケア、デイナイトケア、ナイトケアと、そ ういう仲間と一緒に話し合う場とか、訓練する場というのは、非常に重要であるということ です。  次は、統合型精神科地域ケアの運用や概念図で、統合型地域ケアチームと、病院とか地域 とかを問わず、常にチームが患者さんをきちんとフォローできる体制が必要で、その中では、 心理社会的なリハビリテーションと継続的なケアマネジメントを同時に常に行っていくこ とが必要だろう。  このエリア制は後で説明しますが、例えば右上ですが、次のページ、24時間包括的にサ ポートいたしますと、これはちょっと高齢者のうちのエリアのシステムですが、例えば高齢 者認証に関してもこれだけさまざまなサービスが在宅と施設で行っていますが、こういうも のを囲い込みと言われる場合もあるんだけれども、うちではほとんどその人に合ったサービ スをどうやって提供しようかということで、こういう施設があります。  右上が、医療法人安積保養園、部門別人員数ということで、今、患者さんが510名の中で、 合計524名の職員がいますが、それを病棟と外来部門で見ていくと、病棟スタッフの配置で は229人、次の外来は、135人となっています。  病棟もここで特徴的なのは、クオーレすみれ、これはストレスケアとしてうつ病中心の病 棟ですが、30床と50床、ここにそれぞれ21、24人の配置。  それから、プレッソは、精神科救急30床、全個室、このクオーレとプレッソは、30床全 個室の病棟ですが、ここに看護師58人とPSW2名で30人に対して約23人のスタッフが 配置されています。  一方で、精神療養きく、うめとありますが、そこには50人に17人、16人の配置で看て いる、これが現状です。  いろいろな特徴がありますが、もし、医療と福祉の中間的な施設があれば、この2病棟、 きく病棟、うめ病棟というのは、そちらに移行が可能ではないかというふうに私は思ってい ます。ちょっとここで全てを説明するのが難しいですけれども。  それから、外来地域エリアのスタッフとしては、訪問看護が約10人いまして、約二百数 十人の方に訪問が行っていますが、そのうちの150人が精神です。  左下、入退院の推移、入退院は毎年増えていまして、外来部門のサービスが増えて、平均 在院数は減っていると。  右は外来者数と在宅サービスの変化ですが、訪問看護、訪問介護の数が全体的には増えて いて、特にデイケア関係のそういうものが増えて、この10年間で、要するに外来部門のス タッフが約入院の半分以上になっているということです。  右下は、実際の入院者数は、現在のところ、いわゆる閉鎖救急とかストレス病棟がほとん どの入院の8割を占めていて、年間812人の入院がありますが、うちでは、今、平成18年 から、年間に入院する患者さんの統合症とうつ病を見ると、うつ病の方が多くなっています。 すなわち社会のニーズが変わっているということです。  最後のページ、左上は、平均在院日数ですが、見にくいけれども、プレッソと言うのが、 今、救急病棟ですが、ストレスケア病棟合わせて、平均在日数は48日か49日、あるいはす みれ病棟というのが、少し長くなって64日、しゃくなげ病棟というのは亜急性期で、30床 の全個室のスーパー救急ではかなり後方支援病棟が必要なので、救急の患者さんがこちらに 移動して、なるべく3か月以内で退院を目指しても、長期の方もいるので、こういう日数に なっています。  左下は、初診の患者さんを見ますと、12年と21年、これは12年からオーダーリングを 入れているので、データがあるんですが、約9年の間で、これだけ初診の患者さんの分布が 変わって、統合失調症の方も2倍以上になっているけれども、うつ病の方は4倍です。スト レス性障害の方も3倍くらい、認知症の方も2倍以上になっている。それから、F8、F9 という発達障害の方々も非常に増えている。  右上の初診の方々を見ると、20歳未満とか20代の方が非常に多くて、それから70代、 80代、要するに二方性になっていますが、かなり若年化していることが分かります。  やはりニーズとしては、発達障害はさまざまなものがありますので、右下は子どもの心外 来をやっても、これもまだ平成15年からやって、7年目になりますが、STも2名入れて やっていますが、言語療法などニーズは非常に高いです。児童は基本的には初診数も限られ ますし、実際にはニーズに応え切れないサービスですが、例えば感覚統合訓練、ペアレント・ トレーニング、さまざまなプログラムをやっていますが、児童の部門はほとんど不採算です。  現状としては、実は、細かい体制をお話しすると、急性期もスーパー救急を取って、初め てそれは成り立ちますが、他の急性期で実際に見ている病棟というのは、実際に医師、スタ ッフがそこに入り込んでいる時間数からコストを計算すると、あまり収益性が高いものでは 決してないです。ですから、なかなか大変です。  全体としては、うちは図体がいまだに大きくて、そのためにいろんな形で支援ができて、 NPO法人でのケアも支援できています。NPO法人で、今、112人の方を地域でサポート しています。  こういう流れの中で、私は現実的に言いたいのは、この私たちのプロジェクトでは、病院 を閉院して退院してもらって、それから実際に地域に出て仕事をしたりするまでには、3年、 4年、5年、6年と結構非常に時間がかかっていると、簡単にいかないということです。  ですから、例えば自立支援で2年で就労させなさいとか、そういうことは簡単にはいかな い人がたくさんいます。それは、特に長期入院を経て、施設化した方々です。ですから、あ る意味では、現実的に、今、皆さんが精神科病院のベッドを減らしましょうという議論をす るときに、どうやってするんだという1つの例としては、場合によっては、訪問とかデイケ アとか、そういう外来型のサービスにスタッフを移行しながら、例えば病棟を転換して、ま ず、一時的に生活ができる福祉施設にしつつ、そこから地域に移っていくということを含め てやっていくと、実際の今までの病棟のスタッフも外来としての支援の在り方を学んでいけ るんではないか。  要するに、うちも最初にやったときに非常に苦労したのは、病院としてのスタッフの意識 というのは、これは意識改革しないと、地域ケアにはいけないんです。そのためにスタッフ はアメリカとかイタリアに研修に出したりしましたが、要するに地域支援する意識を持たせ ることと、それから、やはり病棟にいる看護婦さんが、どうしてこの方は退院できないんだ ろうという意識を常に持てるかどうかというレベルまできちんと教育をしなければいけな い。そして、では、何を解決すればいいのかということを、チームとしてやっていかなけれ ばいけないんではないかと思います。  一応、そう言いながら、ベッドがそんなに減っていないと言われる方もいるかもしれませ んけれども、病院の機能を維持するために、地域のニーズに応えるために児童外来であると か、ストレスケア病棟であるとか、あるいは認知症の病棟あるいは合併症、うちは透析もや っているんですが、それは精神障害者や認知症の方をしっかり透析してくれるところがない からですが、そういうニーズに応えていく中で、結局、今、570床、利用は510床くらいで す。恐らくその中でも病棟として、施設に転換できるとしたら、2病棟は転換できるんでは ないかと、現実的に思っています。  ただ、その際は、今までのささがわホスピタルでやってきたよりも、また更に精神症状も いろんな意味で大変な方がいらっしゃるので、それはやはりある程度スタッフを配置した生 活の場が必要です。  今まで退院支援をいろいろやってきた中で、実は精神症状で医者や看護師が、この人は大 丈夫じゃないかといって、退院しませんかといって、うまくいった例は少ない。いろんな情 報提供をして、本人が症状にかかわらず、退院したいんだという思いを持ってくれた人は退 院できます。むしろそういうところが大事で、入院中の方に退院できる可能性やモチベーシ ョンをどうやって付けるかという意味では、うちはプログラムとしては、1クール32回に わたるプログラムです。要するにさまざまな情報提供や実際に退院した患者さんの生活や社 会資源などの紹介、それからこのOTPのプログラムなど、いろんなことをやりますが、そ ういう中で、やっぱり退院してみようという人が目的を持ってリハビリすれば、かなり高い 確率で退院できるということが、経験上そう思います。  私は、理想論がいろいろあると思うのですが、日本の社会的な問題としての、長期在院者 の解決方法としては、やはり具体的な施策を考えるべきだと思うんです。それを移行するた めに、どうやったらそれが可能で、しかもスタッフの養成も必要です。下地としては、さま ざまな基本的な知識を持った精神科病院のスタッフがきちんと教育を受けて、あるいは経験 を積んで地域に出ていくことが必要だと思うんです。実際には、精神のことが判る人は行政 にも保健所にもあまりいません。だから私はきちんとそういう制度、スタッフ教育も含めた 移行期間を設けて、いろんな形でそれを広げていけば、病院もこうすれば地域ケアの体制が できるという形ができると思うんです。  それから、ACT云々というのは、私はよくわかりませんが、まだまだ日本には重症者と いう以前に、一般的にそういう支援が整えば退院できる人がいるわけですから、まずはその 方法をきちんと見つけるべきではないかと、勿論、更に症状の重い人も見ていける体制はで きますが、それにはかなりスタッフが経験を積んでいくことも必要です。  例えば訪問のあり方も、うちでは訪問ステーションと、重症の方はデイナイトケアのスタ ッフがフォローして訪問にも行っていますし、もう一つは、今、スーパー救急で必要に応じ て退院後の訪問というものを行って、実際の生活の安全を確かめて訪問看護につなぐという ことをやっています。ですから、訪問にも多種多様な訪問があるんではないかと思います。  実際は、理想を持ってやってきた、と自分はそういうつもりですが、やはり生活支援とい うのが、単純に病気のことがわからない人にぽんと手渡すことは、私はできなくて、NPO をつくって専門職を配置してやってきています。ですから、どちらかというと、常に医療と 地域支援というものの統合的なチームというものがやはりあるべきだろうと思います。今は 診療報酬上のデイナイトケア、デイケア、ナイトケア、そして訪問看護とNPOというもの を組み合わせて、定期的にこれがチームを組んでやっているという状態です。  一応、1つの病院での1つの例として御理解いただきたい。そういう具体的な施策につな げる事例をうち以外にも挙げて、その中で、いろんなパターンでこれがどういうふうに移行 できるかという形を議論していくことが現実的ではないかと。ただ理想論を言ったり、病床 を半分にしろといっても、実際に困るのは患者さんです。ただ退院させても、就労支援のシ ステムとか社会参加のシステムがない限り、私は幸せな地域生活を送れないと思うんです。  それから、自立支援協議会はいいんですが、実際に我々が苦労しているのは、いろんな被 害に遭った方々のサポートシステムがない。いわゆるサポートネットワーク、障害者の地域 のサポートネットワークが必要だと思います。まず、第一に、それは義務化すべきだと思い ます。というのは、お金のない障害者が被害に遭ったときに、弁護士さんにも相談できない、 どこに相談したらいいかわからない。でも、実際我々が行政に相談して、福祉課に相談して も、必要な後見制度でも何でも、最後の最後にしか対応してもらえないのが現状なんです。  ですから、自立支援協議会は必要なんです。でも、現実には実際の人権を守る、あるいは 生活の中で、我々ができない法的な問題の解決をしてくれるとか、被害に遭った人を助ける というサポートネットワークは、やはり警察とか弁護士さんとか司法書士、そういう中での ネットワークは絶対に必要なんではないかと私は思います。  それから、今、国で100平米以上の建物はグループホームとかに使うときに、共同住居と か、新たな基準で用途変更して改修しなさいという基準が出ているんです。調べると、グル ープホームの4割くらい100平米以上なんですけれども、そうすると、今まではグループホ ームにできた建物が、500万、600万という改修費をかけないと、グループホームにできな いという事態か今、起こっているということと、例えば非常にうちは恥ずかしいんですが、 郡山市は何をしたかというと、100平米以上も関係なしに、グループホームは全部児童福祉 施設の基準にすると言ったんです。これは事実上、グループホームをうちではつくれません。 そういうことが行政の判断とか中核都市とかでは起こったりしていて、実際の行政の建築部 門と、いわゆる障害福祉サービスの方との整合性はほとんどない。地域に移行しましょうよ というけれども、郡山市の例で恥ずかしいですけれども、建築指導課がグループホーム、ケ アホームも全部児童福祉施設の基準にしなさいというと、アパートを借りても、そのアパー トの廊下幅から何から全部変えない限り、使えない。これは非現実的で、要するにグループ ホームができないという実態があります。  練馬区は、どうもケアホームは児童福祉施設の基準にするとなっているそうですが、いろ んな意味で、こういう建築関係の実際の住宅での改修の問題と、実際の住む場所を確保して いくという苦労の中で、行政の方々の整合性のなさというのは、いつも悩まされる状況にあ ります。  以上です。 ○福田課長 ありがとうございます。だんだん論点が1から全体に広がってまいりましたの で、各委員の先生方、そういう感じですので、ここからは基本的に1から3まで全体を通し て御意見をいただければと思います。  高木先生、お願いします。 ○高木構成員 今のお話を聞いて、それと、今日の資料にあるもう一つの御荘病院の資料も 見まして、要するに精神病院解体は可能ではないかと、私などは取ってしまうんですが、何 を佐久間先生は謙遜なさっているのかよくわからないのですが、要するに御自身の病院の中 で完結したプロジェクトとしようとしているから行き詰ってくるのであって、今、いろんな おっしゃるような機能を病院の中で立てるのではなくて、外に出ていく道筋が、外でやる道 筋ができれば、病院は縮小できると。  では、そのお金をどうするかというのが、先ほど堀江さんもおっしゃっていたような話だ と思うんですけれども、ACTのような非常に重厚な重症な人を対象とした訪問ですら1億 あればできるわけですね。これは、世界各国でもそうですし、私のところでも、ちょうどそ のくらいになっています。  しかもそれで十分に病院以上に、今、病院以上に職員の給料も保障できます。しかも、そ の財源はどうするのかという議論がいつもありますけれども、私のところは医療費で、診療 報酬で全て賄っているわけです。そうしたら、その診療報酬の中でどういう無駄があって、 それでどこへ回せばいいのかという議論になるはずなんですが、例えば精神病院が今、赤字 で困っていると言いますけれども、どういう構造があるか、例えば社会復帰ということで言 えば、今日の資料の中にもありますが、社会復帰のための作業療法士というのが病院で5,000 人おるわけですね。作業療法士というのは、大体一人でフルに働けば、年間2,000万もうけ られます。フルに働くことは無理ですから、半分としても年間1,000万です。それが5,000 人いれば500億を稼いでいるわけですが、その作業療法士の一人当たりの給料を計算しても、 400万としても200億。そうすると、300億の金が本当に社会復帰のために役立っているの かどうかというようなことは、厚生労働省の方であれば、検討すればすぐにわかるような話 だと思うんです。  そこで、我々が何か新しいことを始めようとすると、エビデンスを出せとすぐに言われる わけですけれども、せっかくいろんな数字があるんですから、そのくらいの社会復帰のため の作業療法士が本当に病院に役に立っているかというエビデンスをきちんと出していただ いたらいいと思います。  もし、役に立っていないのなら、そこに投入しているような医療費は全て地域に回したら いいわけです。今、300億が恐らく病院の作業療法士による社会復帰のコストとしてかかっ ているというふうに申し上げましたけれども、地域移行支援の今の予算を見たら、たった 17億、このとんでもない差をなんとかしていかないといけないし、なんとかするという気 があって、もう一度考えていけば、財源問題は、私はなんとかなると思います。 ○佐久間構成員 OTに関して、私は、高木先生と視点が違ってあれですけれども、今、1 対25とか、そういうレベルで、例えば退院のためのプログラムをやれるかというと、それ はやれないと思います。  あと、今、国の基準では、例えばデイケアとか、そういうものが広い見渡せるスペースで、 要するに大勢い見渡せるスペースでは、1人について何人とやっていますが、現実的なそう いうプログラムはなかなか少なくて、いろんなプログラムに分かれてやるという場合、特化 してやる場合には、かなり人数が多様化して、かなり少数、10人以下、5人以下でやるも のも非常に多いんですが、そういう意味でも、きちんとそういう流れというか、そういうも のをきちんと現実に踏まえた体制が必要なんだろうと思っています。  ちょっと話が違いました。 ○福田課長 長野先生、お願いします。 ○長野構成員 高木先生の初めの重度の方の医療中断されている方の過去のトラウマとい うのは、本当に深刻で、病院が閉じ込められる場所ではないとわかっていただくのに、やは り10年かかるのかなと私も随分そういうケースの方、不意打ちをされている方が多いんで す。警察もそうなんですけれども、ちょっと見てもらいに行こう、その日のうちに入院だと、 いろいろ事情でしようがないのもよくわかるんですけれども、私たちは私たちの病院でそれ を昔やってきていて、それをなくして、今、やっと油断していただくのに、やはり十数年か かったかなと思ったりしていて、大分最近、初診では絶対に入院させないように工夫をしな がら、でも、必要な方は絶対にいらっしゃるので、そのときは入院する。そういう時間をか けた取組みが絶対に要るだろうと思うんです。  少しお話を戻していくと、本当に精神科病院は解体が目的では全くなくて、地域の中で、 どこで支えられるか、入院が必要な方は勿論、入院でやっていくべきだと思っているので、 どう支えをしていくかというときに、本当に佐久間先生のところのやり方があって、私たち も149〜65まで減らすのに、私たちの町での、今、用意されている制度の中で、何とか赤字 を出さずに必死でここまで来たし、途中経過でこれからももっとやるんですけれども、ただ、 相当やりくりがいったのが事実なんです。財源の問題とかいろいろ出てくるんですけれども、 精神科病院を一律に減らしましょうというのは、ちょっと乱暴だと思うんです。  それは、先ほど退院したいと言った方が再発率が少ないと、まさにそうだと思うんですけ れども、逆に病院とか地域の精神保健の在り方もそうですけれども、私たちの地域は、こう いう地域での支える体制で、病床はこれくらいでやろうかといったときにも、なかなか経営 的な問題で、それを選択できないという現実がいろいろあって、建物の問題であったりとか、 例えば近代化資金で随分立派な建物をつくって、借金が残っていて、これをどうするんだと か、例えば病院が私たち、今、ちょっと小さくなって、60床になると、今の診療報酬体系 ではどうやっても経営できないので、さあこれからどうしようかとか、実際に地域に移行す る段階での経済的なところも含めて、やはり随分具体的な工夫が要るのは確かだと思います。  ただ、高木先生がおっしゃられたように、できると思うんです。やってきて思うんですけ れども、こんなことを言うとどうかと思うんですけれども、私も含めて、あまり優秀なスタ ッフがいないというと、うちのスタッフにめちゃめちゃ怒られますけれども、本当に東京か ら一番距離の遠いところで、地元の方でここまで来たんです。実は学会もあまり勉強に行け なかったりとか、本当に専門性という点では、日本で一番低いところかもしれないなと思う んですけれども、こういう方向性でやると決めて、皆さん、患者さんというか、地域で暮ら す方の可能性が本当に信じられれば、あとは世論が助けてくれないといけない。病院に入れ ておけよという世論をどうなくすかというのは、すごい大事なことなんですけれども、それ はそういう仕掛けをしていけば、何とかここまでは来られたと思っていて、やれないことは ないなと、そんなスーパーマンがいたかというと、そうでもなくて、そういうことは本当に やれると思っているので、具体的に一個一個を詰めていきたいと思うんです。  今回、状態像を分けて、何となく思い浮かぶ方が、全部のカテゴリーにいらっしゃるんで すけれども、ここまでクリアーではないのかなと思ったりもしていて、もう少し多様性とい うか、後にもいろいろ出てくるんですけれども、精神障害の方はこういうものだという先入 観がちょっと強過ぎるかなと、よく精神障害の方には頑張れと言ってはいけないとか、まだ 言われているところがあるかもしれませんけれども、私たちは毎日のように励ましています し、そういう精神障害を持たれる方に関するイメージなんかも、とにかく過去のものを1回 白紙に戻して、やっぱり実際はどうなんだという変革が今必要で、その具体的方策が要ると 思います。  あと、一番アウトリーチ体制を充実させていくときに、絶対に押さえておかなければいけ ないなと思っている点が1点あって、医療機関がアウトリーチすることは絶対に必要だと思 うんですが、私どもが平成8年からアウトリーチを始めたときに、こんなことを言うと、申 し訳ないんですけれども、スタッフの勉強のためにアウトリーチさせてもらうという位置づ けを明確にしました。  地域生活での治療を私たちは、もともと持たないですから、入院治療をそのまま持ち出し たらとても危なくて、地域生活、可能性をきちんと学ぶところをアウトリーチとして位置づ けて、それから徐々にやって少し支援らしいものに10年かけてなったかなと思うんです。  これから医療機関もアウトリーチをやりましょうというのは、是非なんですけれども、入 院の治療しか、技法であったり、知識であったり、いろんなものを持たない医療機関が地域 にどんと出ていったときに、こんなに大変だ、みんな入院させなければという感覚になって しまうだろうと思います。私も、実は医者になって2年目に初めて保健師さんに連れていっ てもらったときに、お二人山奥にいた方を入院させた覚えがあるんです。今だと絶対に入院 させないんですけれども、大変な方がいっぱい見えてくる、今までは連れてこなければ診ま せんよというスタイルだったのが、出ていくことで、逆にもっと大変さが医療機関にわかっ てきて、では入院させなければとなったときには、完全に逆行するので、アウトリーチをす るときには、地域で意地でも支えるんだと、勿論入院が必要な方も出てきますけれども、そ ういうベースが本当にないと、逆行してしまうというか、そういうことをとても危険に感じ ています。  逆に、今、私たちは病棟を必要最小限に、認知症の方は、とにかく地域で支えられて、精 神病床を受け皿にしないようにと、これは私たちが自分たちで決めたことなので、全体でや るべきとは思いませんが、やっていく中で、裏を返せば、私たち、例えばもともと150床あ った病棟を今でも満床にキープができるかというと、私自身はできるような気がするんです。 入院の方が御家族も楽で、御本人もあまり嫌がらない方というのはいっぱいいらっしゃるの で、そういう前提をきちんとしておかないと、必ず地域で支えるんだという前提の下で、ま ず、地域生活で本当にたくましく頑張っている方の姿を見ようよというところからスタート して、ダウンサイジングをセットにするのかどうかは、また議論が分かれると思うんですけ れども、入院される方を増やすようなことにはならないような、そんなアウトリーチ体制を 組まないと、アウトリーチが本当にまた逆行してしまう。  イタリアでも起こったことなんですけれども、退院促進ではなくて、やはり入院をしてい ただかずに、地域で治療できることが一番大切で、イタリアでバザリア法の前に起きたのが、 退院促進しましょうといったら、入退院ばかりいっぱい増えて病床は変わらないという現象 が起きました。私たちの町でも同じことが起きました。ダウンサイジングを始めたときは、 入退院がとても増えて、そのときは将来、40床、50床、こんなに小さな町でも急性期病棟 をつくれるんではないかと思うくらいだったんですけれども、今は、そのときの入退院の3 分の1です。平均在院日数は恥ずかしいんですけれども、一時ぐっと下がっていたんですけ れども、逆にまだ伸びてきました。入院をしていただかないということを必死でやっている とね。  ですので、初めは入退院もどんどん促進されて、入退院も増えて、退院日数も減るんです けれども、その後は長期の方たち、本当に大切にどう処遇するかとか、また、次の段階が来 るので、そういうこと一つひとつクリアーをしながら、拙速な取組みは本当に犠牲者を生む ので、こう行くぞというふうにある程度決められて、それがちゃんと選択できるようになっ て、やはり10年かけて本格的に変革をしていかなければいけないときにあるなと。  最後に1つだけ、資料で気になったので、今日、発言させていただこうと思うんですけれ ども、随分福祉センターからスタートして、いろんなものがある、確かにツールとしていっ ぱい用意されているんですけれども、実際地域から行くと、とても違和感があって、保健所 さんもそうなんで、保健所は本当に第一線で頑張ってこられたんですけれども、統廃合とか 何とかで、私たちの町も実は保健所の機能はごく限定的になってきていて、再度福祉センタ ーがどうだとか、保健所をこうしてこれを進めましょうという議論は、ちょっと私は反対で、 そこは、勿論、資源として大事なので、機能はどんどん果たしていただきたいと思うんです けれども、過去の巻き返しではちょっと変わっていかないのかなと思いますので、最後の発 言とさせていただきます。 ○福田課長 ありがとうございます。では、岡崎先生。 ○岡崎構成員 今、慢性の状態に残念ながらなられた方についての経験というのは、佐久間 先生と長野先生のお話を聞いて、かなり十分ではないかと思うんです。これをやはりちゃん と政策化をしてやるということをやらないと、やはり入院から地域へということが、具体的 に展開していかないんだと思うんです。慢性の状態になられた方の地域移行に関しては、そ ういうことで、やはり政策的な決意がはっきりなされるかどうかによって、もう決まると思 うんです。それが、今まではっきりしなかったという問題が1つあるだろうと思うんです。  もう一つは、やはり新たな入院によって慢性化する人には、入院によって生み出されるわ けではないですが、入院も伴って慢性化する人をいかに防ぐかという課題がもう一つあると 思うんです。  先ほど高木先生が医療不信と言われましたけれども、やはりかなり大きなウエイトを占め ていまして、私ども中高校生の調査とか、御家族の方々の調査を通じて、結構早く、実は最 初のコンタクトはあるんです。  残念ながら、そこで医療関係者、私も医療をやっている立場ですから、擁護するわけでは ないんですが、今の医療従事者が置かれている、特に精神科医ですけれども、時間的な余裕 のなさの中で接触しますと、やはりどうしても医療の側に、特に病院のあれが多いですから、 病院のスタッフが接触しますと、どうしても医療、それから入院という方向に引っ張って直 面した事態を解決しようと、それはどうしても出てくると思うんです。  私は、たまたま病棟がないという条件で、十数年勤務したことがありましたけれども、要 するにそのときは、なるべく入院させないようにしようという視点からやるんです。そうす ると、私の研修が始まってから十数年の経験というのは、本当に入院が少なかったんです。 大学病院でしたから、受診される方の偏りもあったかもしれませんけれども、やはりどの立 場で接触するかによって随分違うと私は思います。  ですから、やはり長野先生が言われたけれども、最初は入院させないとか、そういうガイ ドラインも必要だと思いますし、やはりその方が、大体思春期のお子さんたちは、最初は自 分の悩んでいることが、身体の症状なんかも伴って、身体的に訴えられることはあるんです が、そのときに、それに対応しないで、どうしても精神科的な解釈をして、それを説明して、 それで服薬、それが強いようだと入院という方向に引っ張りかねないというふうに思うんで す。そういったところは、やはり変えないといけないと思うんです。  ですから、最初の接触のところを非常にソフトにするという具体的な工夫をしなければい けなくて、それで外国ではヘッドスペースだとか、いろんなソフトな接点をつくったりして 工夫しているのはそういうことにあるんだろうと思うんです。  そういったことも、具体的に設けるということを考えて、日本的にふさわしいのは何かと 検討するということをはっきり決めていただけると、そこもかなり解決するんではないかと 思います。  その慢性化した状態の方と、今後慢性的にならないようにするという両方が取り込まれな いと、全体は改善しないんではないかと思っています。 ○福田課長 ありがとうございます。では、西田さん、お願いします。 ○西田構成員 一連の議論の続きですけれども、高木先生の方からも長野先生の方からも最 初の医療のコンタクトの印象が非常に悪いと、それによって治療中断が発生しているという ことが言われていましたけれども、非常に深刻な状況だと思います。  我々は調査しましても、昔に比べますと、大分未治療期間と言いますか、最初治療期間に つながる期間というのは、かなり短くなっているんです。診療所が増えたりしていますので、 これは世田谷の家族会と一緒に1,500人の調査をした結果なんですけれども、その後、最初 のコンタクトまでの時間は短くなった。しかし、治療の中断率はその後どうかというと、昔 も今も変わっていないんです。ほとんど全く変わっていないという状況です。  これはどういうことかというと、ユーザーの側が続けてそのサービスを使いたいというふ うになかなか思えない体験をすると、更に詳しく見ていくと、やはり初診時の、1回目の印 象が非常に悪いとたくさん答えられているんです。  この初診時の印象をどういうふうに改善するのかというのは非常に大事な問題で、やはり 医師だけで、短い時間で今、やらざるを得ない状況だと思いますけれども、そういうサービ スの在り方を、やはり変えていかないといけないと、チーム医療で、最初から包括的にその 人の希望に沿った支援を提供していくような体制を取らないと、その結果、サービスから切 れていってしまうということだと思うんです。  最近、自殺の問題が非常に取り上げられていて、自殺対策の中で、実は既遂する前に、多 くの方々が精神科を受診しているということを言われています。これは受診しているけれど も、それに対してあまり満足感が得られなくて、そこで絶望して亡くなられたりするわけで す。  まさに、病初期の若い方々も1回はつながったけれども、あまりそれに満足できないとい うか、逆にネガティブな体系になってしまって、以後、治療中断になってしまうと。  今日の資料の中で、治療中断、未治療者に対してどうアウトリーチで支援していくか、そ ういうテーマがありますけれども、もう一つは治療中断者を生まないような、きちんと良質 なサービスを提供して、丁寧な関わりを提供していくためには、どうしていくのかという基 本的な医療の質の向上というものを同時にしていかないと、そのままアウトリーチで既存の サービスが行っても、それは非常にいろんな波紋を呼ぶわけで、アウトリーチできる体制も 前提として、やはりユーザーが満足するサービスを届けていくと、そのためのサービス改革 をきちんとしていかないといけない。それができれば、自殺対策なんかにもしっかりとつな がってくるということだと思います。  もう一点は、医療のアウトリーチも非常に重要だと思いますけれども、保健のアウトリー チというのが非常に重要で、今日の資料の中でも、保健師さんが業務担当制だと、1人当た りで8.4万人のエリアを持っていると、こういう状況で、本当に保健活動、精神保健活動が 地域でできるのかということだと思うんです。1人で8.4万人のエリアの中のひきこもりの 背景に隠れている精神保健の問題、DVの背景にある精神保健の問題にしっかりと関わって いけるのか。こういうものが、今のかなり弱体化といいますか、保健所の数が減らされて、 保健機能が落ちてきている中で、非常に弱くなっていると、その結果、問題が顕在化した上 で社会問題になってくる。  それで、ひきこもりだったらひきこもりの対策はさまざまなお金が付いて、また、自殺対 策はまた別にいろいろなお金が付いていますけれども、精神保健の問題が根底につながって あるわけですから、そういった別々の対策として取り組むんではなくて、精神保健の大きい 機能強化をしていかないと、こういった問題が改善されないだろうと思うんです。  ですから、そういう意味で、精神医療の質の改善、その上でのアウトリーチサービスの構 築ということと、精神保健が非常に弱体化した状態で精神保健機能をしっかり強化して、い ろいろな社会問題の改善につなげていくと、この点、非常に今回大事にしていかないと、国 民全員が心の健康の問題の当事者であるというのが非常に重要な論点だと思いますので、そ ういう観点からは、精神保健の問題、それは国民全体の心の健康を増進するための政策をど うするのかというところ、勿論入院の問題も重要だと思いますけれども、そこもきちんと議 論しないと、全体像がしっかりと議論されないんではないかと思って発言させていただきま した。ありがとうございました。 ○福田課長 ありがとうございました。野澤さん、お願いします。 ○野澤構成員 障害者の地域生活をどうやって支えるかと、どういう機能が必要なのかとい うところにちょっと絞ってお話をさせていただきたいと思います。  論点の2のところに、基幹相談支援センターの整備を進めることが検討されているとあっ て、これは一体何なのかというのが、まだよくわからないと思うんですけれども、ちょっと 参考になればと思って、私に関わった、千葉県が2003年ごろ、障害者の支援費制度が導入 されたときに、地域療育等支援事業というコーディネーターの事業が一般財源化されたんで す。  それに非常に危機感を持って、是非必要な制度だから残してくれということを言ってやっ たんですけれども、そのとき、結果的に一般財源化されて廃止になった地域が多いんですが、 そのときに千葉県は、そんなに必要な制度なのであれば、県の単独事業で、存続というか、 もっとパワーアップしたものをつくろうじゃないかということでやったんです。これは、福 祉圏域に1か所ずつつくりました。  障害者だけではなくて、勿論精神だけではなくて、障害者全体、それ以外にも年寄りも子 どももとにかく困った人の相談を全部乗ってくれということでやったんです。  どういうふうな仕組みでやっているのかというのは、後でお話ししますけれども、実際に、 今、5年、6年経ちますが、どんなことをやっているのかというと、例えばある町で起きた 事例だと、認知症のおばあちゃんと障害のある娘さんが2人暮らししていたと、どうも最近 ひきこもりがちで、猫が家を出入りして、近所を児童民生委員の方が市役所に行ったり、健 康保険センターに行ったりするけれども、どうもらちが明かないですね。  そこで、中核地域生活支援センターというんですけれども、そこに持ち込んできて、そこ のコーディネーターが行って、いろいろ調べてみると、猫が40、50匹、その家を占拠して しまって、猫屋敷になっているんです。おばあちゃんも認知症で、糞だらけで、ほとんど座 ったまま寝ていると、猫にあちこち引っかかれていると、娘さんは障害があって、ひきこも ってしまっていると。  実は、2人暮らしではなくて、子どもがあと2人いて、ずっとひきこもりで、栄養失調状 態だったんです。  そこで慌ててコーディネーターが市と保健所と民生委員、それから医療機関をコーディネ ートして、それでいろいろあれこれ支援して立て直してきたわけです。  そのときに保健所の人手が足りないので、猫を何とか駆除しなければいけない。2匹しか 引き取らないと言われたので、このコーディネーターは便利屋さんにつないで、便利屋さん に入ってもらってやったとかいうわけですね。  もう一つは、中学校の先生がまた別の地域ですけれども、不登校になった生徒のところに、 家庭訪問に行ったけれども、どうも会えないと、あの家はどうも何かおかしいというような ことを言ってきたんです。そのコーディネーターはいろいろ調べてみると、単なる不登校で はなくて、そこには認知症のお年寄りがいて、お父さんが多重債務に陥ってアルコール中毒 で、お兄ちゃんがひきこもっていて、つまり介護疲れと多重債務と、うつとアルコールとひ きこもりと家庭内暴力で、もうこんがらかってしまっているんです。  そんなのは、学校の先生が1人入ってどうにかなるようなものでは絶対にないんです。何 か公的な機関が入って、そこで単独でどうこうできるものでもないんです。やはりいろんな 機能を持ったところをコーディネートして、総合力で解決しないといけなくて、結局ここは 福祉事務所と児童相談所、それから勿論ドクター、それから司法書士とか、社会福祉協議会 とか、多重債務を解決したり、いろんなことをやりながら治療につなげていくということを やっているわけです。  要するに、この手のものがわんさか出てくるわけです。要するに単独で、何か障害のある 人が困って、治療につながっていないという状況ではなくて、もっといろんな多重な困難の 家庭、どうにもなくこんがらかってしまっているというケースで、全く想定外の事態が今、 この社会では起きていると思います。  これは、行政機関や公的な機関が単独で解決することはできない。医療や看護は勿論必要 だけれども、医療だけでどうにでもなることでもなくて、医療につなげるまでの生活の立て 直しだということで、膨大なエネルギーが必要なんです。それをやっているわけです。  もう一つ大事なのは、客観的に見ると、非常にすさんで、ぼろぼろなように見えても、本 人たちは決して困っているという自覚がないというか、実際、困っていなくて、こちらはど うしても支援に入ると、しゃきっと立て直したがってしまうんです。こちらの価値観に合わ せて。ところが、彼らは彼らなりの価値観の中で、ずっと生活をしてきているもので、まっ たりとした家族の中でやっていたり、地域の中でやっていることの方が、むしろ安定して幸 せだったりするわけです。その辺のことは非常に大事ではないかと思ったりしているんです。  医療というのは、とても大事で、なくてはならないものですけれども、彼らの生活全体か ら見ると、本当に必要なときというのは、一部かもしれないし、一時的なものかもしれない し、もっともっと生活全体を支えることを考えていかなければいけないと思っているんです。  これは、例えば福祉圏域に1か所ずつというと、どのくらいかというと、例えば千葉県も 東京寄りのところなんて人口60万圏域に1か所しかないんです。あるいはもう少し遠いと ころへ行くと、11市町村を合わせたところで1か所しかない。  先ほど、アウトリーチだと1億円くらいあればできるとおっしゃったんですが、ここはど のくらいの予算でやっているのかというと、1か所2,000万ですよ。たったの2,000万です よ。コーディネーターが4、5人です。しかも、専門職というのは、そんなにいなくて、せ いぜい社会福祉士だとか、そのくらいの資格を持っている人たちなんです。  この制度設計も、我々民間の、あるいは当事者が中心になって制度設計をして、どこの法 人に委託するのかというのも、我々と県の担当者半々ずつ審査委員会をつくって、そこで決 めているんです。  どういうところが、これが母体になってやっているのかというと、小さなNPOだとか、 あるいは診療所に福祉のNPOが何か所かくっついて、1つの事業体として手を挙げてくれ たところが何か所かあります。  しかも、制度設計が非常にむちゃくちゃで、これだけの、たった4、5人のコーディネー ターしかいないのに、24時間、365日やってくれと、ワンストップで絶対にたらい回しはす るなというのが条件なんです。  診療所のあるドクターなんていうのは、自分で持ち出しで、やり始めたら、どこも際限が ないわけです。これだけのスタッフでは足りないというのを持ち出しで、24時間体制でや ったりしてくれているのがあります。  しかも、難しい事例から取り組んでくれと、絶対自分たちで抱え込まないようにする。専 門機関があるんだから、そういうところもきちんと機能するようなコーディネートをやって くれとか、そういうようなことをやってもらって、しかも年に1回評価委員会というのを暮 れにやって、なかなか定量的な評価というのは難しいんです。件数だけで挙げてきたって、 電話で5分相談して、それも1件なんてカウントされてしまうのではあれなので、年に1回 来てもらって、この1年間で一番自分たちが大変だったと、自慢できるような取組みを、み んなが評価委員会の前でプレゼンテーションしてくれということと、冒頭に申し上げたよう な事例がいっぱい出てくるんです。  これまで、そういうところに、全く手が伸ばせていないんです。その辺のところを、これ からもっともっと厳しい状況になってくるだろうと思います。そういうのをやっていかなけ れば、やはりいけないんではないという気がしているんです。  知事さんが変わってから、たった2,000万円をまた削られているんです。これは、本当に その倍くらいあって、もっと職員も増やせれば、もっともっといろんな必要なことがやれて いけるんです。  この取組みを見ていると、大抵の人は地域でやられるんではないかと実感します。やはり 地域のことは、やはり地域の中でやっていっているのが一番リアリティがあって、しかもい いのは、自分たちが予算が削られるのであれば、削られないようなこともしてくれと、必要 な資源がなければ、その資源をつくり出すのもあなたたちの仕事なんだと、むちゃくちゃな ことを要求しているんですけれども、中核市にあるところがなって、もう県がお金を出せな いとなったときに、どうしたのかというと、中核市の職員たちが、これまでの働きぶりを見 て、感動してこんなものは絶対につぶせないと、今度、市の単独事業を始めたりしているわ けです。  やはり、こういった活動みたいなものが、この基盤にあって、そこにいろんな地域の医療 機関なんかがつながっているんです。必要なときに、必要なものを、専門的な支援をつない でいくということをやっていけば、相当なことを地域でできると、私は思っております。  以上です。 ○福田課長 ありがとうございます。では、長野先生。 ○長野構成員 今の発言、本当にまさにそうだと思っていて、また、更に2,000万という話 がありましたけれども、私たちの町は、保健所クリニックという嘱託医が行くのからスター トして、それから基幹型在宅介護支援センターの一般財源、今、介護保険の健康相談という 形で、月2回雇い上げられて、月3万円ですね。そういう中で連携をしながら、私たちのア ウトリーチの資料に未治療、治療中断が0%というのは、医療機関でやるべきではないと思 っているので、別枠でそういう形でずっと関わっていて、多重債務者の問題から、いろんな 問題がいっぱい、知的障害の方、療育手帳とか、障害者とされていない知的障害の方とか、 いっぱいどろどろ出ていらっしゃるところを、そういう町との嘱託医関係の中で、今、連携 で動いていて、さっきの保健が大事だと、そういうことはものすごい労力は使いますけれど も、やはり地域でそういうことの取組みがやっていけるようなところの仕組みが要るのかな と、かつては保健所だったんですけれども、今、保健所で嘱託医というのがいっぱい出てき たんですけれども、ちょっと保健所圏域ではどうしても広過ぎるので、そこのエリアをきち んと、このことの保健活動に関してはエリアをきちんとしてつくり上げていけないのかなと いうふうに思ったりします。  以上です。 ○福田課長 では、小川さん、どうぞ。 ○小川構成員 58ページに、地域包括支援センターのイメージというのが出てきていて、 私の知っているところでは、委託型の地域包括支援センターというのは、困難事例にあまり 対応できていないところがあります。ただ、精神障害者が家族にいらっしゃるとか、生活保 護の関係だとかの事情を勘案すれば、委託型がいいのか、直営型がいいのかについては、一 概には言えません。恐らく多分、委託型がいいとか、悪いとかではなくて、そこにいい人が いるのかどうかという人材の問題なのかなと思っております。保健所の話も出ましたけれど も、今、保健所の機能が低下しているという話があって、それは、頑張っていた保健師さん たちの定年退職が要因としてあるわけですね。  そういう意味で、きちんと知識や技術やノウハウが継承されていない。むしろ、今、地域 で頑張っている田尾さんたちの方がいろんな経験を積んでいらっしゃる。人材が十分でない という意味で、どういうふうにして、これからアウトリーチを考えていけばいいのかという のは、本当に難しいと思います。  ただ、今あるいろんな人材を有効に活用していかないといけないと思っています。実際に 保健所で頑張っていた人たちは、定年退職後、地域で実際に活動をされていますね。ですか ら、そういう人たちが、今、田尾さんのような活動をしているということで、システムの問 題もさることながら、いかにそういう人材を育てていくかというところが大事だと思うんで す。  あと、システムの問題でいうと、やはり医療や福祉サービスもさることながら、基本的に いかに当事者の皆さん方の生活を守っていくか、あるいは権利を守っていくか、そういう大 事な機能は、決してこれは委託型ではできないと思います。権利擁護です。委託型ではでき ないところは、やはりきちんと市町村なりが関わらないといけないと思っています。  御本人さんが地域で生活していくための、基本的な衣食住は勿論ですけれども、いかに権 利を守っていけるかというところについて、基本のところをきちんと押さえないといけない ということがまず一つ。  あと、病院がアウトリーチをするかどうかという問題については、やはり病院の機能や今 後の精神医療の在り方について、基本的なところを押さえておいた中でないと、危ない話に なってしまうんではないかと思います。  そういう大きな方向性をきちんと示しながら、どこがアウトリーチをやるのかという問題 と、いかに人材を育てていくのかというところが、非常に難しい課題であるし、また、それ らの課題に取り組まないといけない。  今、地域でやっている方々の報酬が非常に少ない中、若い人材でなければ、少ない報酬で なかなか頑張れないところもあります。要するに、休みを使って、自立支援協議会の会合に 行ったりしているという問題が今の現状であるわけです。  ボランティアベースあるいは家族介護を前提としたような形のアウトリーチでは、根本的 な問題解決にはならないと思っています。 ○福田課長 ありがとうございます。高木先生、堀江さん、広田さん、そして河崎先生の順 番で、残り時間も勘案しながらよろしくお願いいたします。 ○高木構成員 むちゃ言うついでの委員ですので、むちゃを言いますけれども、人材の問題 ですけれども、皆さん非常に心配しておられますけれども、これは精神科の場合は、人材は いますけれども、ほぼ利用者の信頼を得ることと学歴は反比例します。つまり、大学院出の 医者が一番信用されないです。これは、地域精神医療の教科書でもアメリカではちゃんと書 いてあって、専門知識を振り回す人はいけない。心理学を学んでいる人もどうもよくないと いうようなことが書かれていまして、やはり価値観が広くて、胸幅の広い人、人を受け入れ る力の強い人と、それから世故に通じている人、それから人にこびない、特に上の人にこび ない、既に地域に出てまで医者の指令とか、そういうことをくよくよ考えないと、そういう 人であればまずいいので、本来、そういう人が育たないというのは、やはり長期収容型の病 棟が人を抱え込んでいる。価値観の転換ができていないからなんです。  ですから、私は人の問題というのは、やはりそれだけ今、人を育てる機関をどこかにつく って育てるというのでは絶対うまくいかない。やはり日本の地域精神医療を変えていくんだ という理念がまずあって、それに人がついてくる形というのを取って、それで専門知識が足 りないところはだんだんと付けていけばいいんだと思うんです。  もう一つだけ、この資料を見ていましたら、どうしても文句を言いたいところが出てきま して、私のやっている包括型のサービス提供主体パターンDで、デメリットというのに、C もDもそうですが、抱え込むという批判があるというのがありました。  勿論、そういう危険は私も思っています。でも、これは誰が言っているんだと。まず、病 院が言っているんだったら、あんたらに言われたくないよというのがあります。同じ診療所 が言っているのだったらば、分け合う機能を高めて行こうと思います。地域の人が言ってい るんだったら、では、一緒にこの人を支えていきましょうと言います。  更に、もしも、厚生労働省の方がそういうふうに思うことになったら、ちゃんと抱え込め るだけの財源と資源をくれと言いますので、以上です。 ○福田課長 ありがとうございます。堀江さん、どうぞ。 ○堀江構成員 うちの娘は入院のときに比べてCP換算で20分の1に抗精神病薬が減りま した。クリニックの時代の10分の1に減っています。減薬をした結果として、皆さん御存 じと思いますけれども、だんだんいろんなことが見えてきて、覚めてきました。フラッシュ バックも強烈ですし、親が死んだらどうするんだろうと心配ごとばかり言っています。家族 からみれば、精神医療は早急な改革が必要です。  それで、野澤さんがいい例をお出しになったんだけれども、千葉県の中核地域生活支援セ ンター事業が持ち出しで・・・という話、これは明らかに行政がちゃんと支援していなかった ということの結果なのだろうと、私は思っていまして、実は、我々の家族会でも介護保険の ヘルパーをやっていたのですが、何年間かで経済的な問題で撤退しました。私は、やはりそ ういう重要な事業は美徳にしないで、どうやったら事業が定着するかを明確にするというこ とが、この会議の主たる目的だったのではないかと思います。  世田谷でも、議論の最初のところに戻りますけれども、どういう新しい運営形態がいいの かということについて、自民党の方も民主党の方も、公明党の方も、生活者ネットの方も、 皆さん、そういう議論をされています。  どういう運営なのか、直営堅持だということは、皆さん誰も言わないのですが、同時に、 どういうやり方をするのが良いのか、当事者・家族などの社会参加とか、人権の問題だとか、 最新治療の問題だとかということをクリアしながらできるのだろうかということを議員の 方たちが一生懸命相談されている。明らかに素人ですよ。つい去年までは全くの素人だった 方たちが、この思春期の問題から火が付いて、子どもたちが苦しんでいるんだったら、何と かしなければならないというところから始まって、そして、今の精神医療のいろんな問題が あることもよくわかってきて、その上で、どういう運営の仕方をしていけばいいのかという 議論を彼らがしている。そういうことが地方自治体で前向きに検討されているのです。ここ の会議はより任務は重いのですから、具体的に次への展望を見せていただきたい。各地域で その問題をやっている方たちにとってみると、あまり待っていられないということを感じま した。 ○福田課長 ありがとうございます。 ○野澤構成員 ちょっと一言だけ。 ○福田課長 どうぞ。 ○野澤構成員 美談ではなくて、私は非難、こういう現状を許している状況を非難している つもりで言っています。これは議事録に残しておいてください。 ○福田課長 では、広田さん、お願いします。 ○広田構成員 福田さん、何分でしょう。今、8時ですけれど。 ○福田課長 3分くらいを目指していただいて。 ○広田構成員 これが当事者のニーズを聞いている国民会議でしょうか。冒頭、家族からの ニーズが出て、変な人を医療につなげるとか言っていますけれど、昨日精神科の経営者と4 時間飲んでいたんです。私がいつも言っている精神病院の社会的入院の仲間の解放と、病床 削減と、それから差別的な精神科特例廃止と、それから国民の精神科医療にするための、他 科並みの診療報酬という話が前提にあって、2人で4時間飲んで何を話したかと言ったら、 やっぱり病院から出てもそうだし、私も引っ越しました。是非皆さん来てください。何かす ごくお金のかかる話をいっぱいしていますけれど、私は、ある大会社の社長御夫婦が来られ ましたが、奥さんが「私が住みたい」と言ったくらい、すごい幸せな暮らしをしています。  そういう感じで、住宅施策が大事だと、その院長も言っていました。その中で、「やはり 不動産屋さんが、なかなか貸してもらえない」と、生活保護と、精神障害と、そういう問題 が全く出てこないで、皆さんがいろんなものをつくりたいものは、どうぞ。  皆さんの意見を今日批判する時間はないんです。そういう住宅施策、それでその住宅施策 と生活保護制度で、私の出会った仲間たち、これが私がサポートした一部分です。ボランテ ィアでやっていますから、これは不登校もいれば、ひきこもりもいれば、いわゆる報道被害 の高齢者のオウムの被害妄想の方もいらっしゃいます。これを読んでください。次回感想で も言っていただきたいと思います。  それから、なぜ医療中断になるのか、私は精神医療サバイバーになって、家族環境も不幸 にしています。  そういう中で、一番私が泣けてくる相談は、やはり男性の患者の性的不能なんです。性的 不能になってしまうんです。向精神薬が多くて、そういうふうなものを、10代で発症した ときにどばっと薬を出して、性的不能になったときに病気というものを受け入れながら、男 として、ここに出ていますよ、28に、最後のところですよ。先日も電話があって「広田さ ん、ちゃんこ鍋を一緒に食べたい」と、「彼女をつくったら」と言ったら、「結婚できない体 ですから」と、これが日本の精神医療の実態です。  ですから、私は、むしろ自立支援医療費でバイアグラとか漢方薬が出るような形をしてほ しいねということを、いわゆる院長と飲んで言っていたんです。これは多くの患者が漢方薬 で性的不能をなくすために、実際に飲んでいますから、バイアグラは相性がよくないと、そ ういう非常に現実的な話がこういうところに出ないんですよ。それで、相談支援、相談機関 というけれど、かかってきた電話で、中に出てきますけれど、男としての責任が果たせない、 何の話かなと思ってしまって終わりではないんです。男としての責任が果たせない。別室で 寝ている、そういう男性として、今日たくさん男性がいらっしゃるけれど、深刻な問題が起 きているから、院長と私が一番困る相談は、性的不能の問題。  3つ目の精神科救急でここにも出てきます。さっき警察と弁護士がネットワークという話 が出てきましたけれど、多くの患者は警察と関わりたくない。明治の精神病者監護法以来続 いている精神病院の患者を見張る体制をやめてほしい。そして、警察の現場を回っています と、「警察もいいかげんに精神のことから手を引きたい」と。  全国都道府県警の課題はうつだそうです。他と同じように。それはいろんなことをよろず やのごとく全部警察にしわ寄せが来てしまって、何でもかんでもやっているから、何でもか んでもネットワークだ、連携だと、最後は全部警察におしつけてしまう現実を、私は日々、 ここから帰っても、近所の警察に行ったり、あちこちの警察を回っていますから、よく承知 していますが、そういうことで、精神障害者の、いわゆる救急の問題は、ただ単に初診の人 がソフト救急にかかったり、または家に暮らしている人や社会的入院者が出てきて、暮らす ときの救急だけではなくて、前回も言いましたが、犯罪を起こしたときに、救急が整ってい ないと、警察は内科であれ、外科であれ、精神科であれ、持っている薬は飲ませられません から、きちんとそこで受診しなければならない。それができないと、結果的に、警察が24 条通報をかけないで送検したとしても、そう転してしまって、いわゆる精神保健福祉法25 条の検察官通報に回ってしまう。  ですから、精神医療の救急がないということが、医療を必要としている、いわゆる在宅の 人の問題だけではなくて、警察の留置場にいる犯罪を犯してしまって、裁判を受ける権利も 失っている、その3点を昨日、4時間かけて、お話ししましたが、国民の、いわゆる当事者 のニーズに応えるというには、私はおかしいと思います。  以上です。 ○福田課長 ありがとうございます。では、河崎先生、お願いします。 ○河崎構成員 日精協の河崎です。今日は、アウトリーチをどういうふうに構築するかとい う話が中心で、資料も用意をなされてきたんだろうと思っておりますけれども、ただ、今日 の話の中でも、結構やはり精神科病院がどういうふうに今後なっていくべきかという話が、 やはりどうしてもアウトリーチと精神科の病院がどうなるのかというのは、切り離すことが できない、リンクしているというような印象をすごく強く受けました。  それは、それで勿論方向性としてはそういうことなんだろうと思っているんですけれども、 私は、今日の話の中で2点、こういういろんな方たちが集まっている検討チームの中で、是 非、これからもそういう観点で話を進めていっていただきたいと思ったのは、1点は、高木 先生が先ほどおっしゃった患者の抱え込みという、そういうのがときどき出てきますね。  私は、先生がおっしゃった観点とは少し違うかもしれませんが、やはり我々民間の精神科 病院が、何か地域の中に一歩踏み出したり、あるいは地域の中で支えていこうとしたときに、 よくこの患者さんの抱え込みという批判を受けることが多いんです。  それは、そういうことによって、モチベーションが下がる場合も確かにあります。是非こ れは動こうとしているときに、そういうことでストップをかけられるということで、すごく 動きづらいという印象を持っている民間の精神科病院もあるんだということは、是非御理解 と、そしてそういうことに関する認識を持っていただきたいというのが1点あります。  それと、多分同じ意味になるのかもしれませんが、佐久間先生の今日のお話をずっとお聞 きしていて、佐久間先生がどのような形で地域の中で支えていくという実践をこれまでなさ れてきたのか、私もよく存じ上げているつもりなんですが、やはり実感として、今回のささ がわプロジェクトの中でも、受け皿としての施設のようなものがあるからこそできるみたい な部分がやはりあると思うんです。  それは、先ほどの先生の話の中に、病棟転換型の施設のようなものが、今後はあれば、も っと進むんではないかという御説明もございました。  これも非常に、例えば退院支援施設とか、地域移行型ホームとか、そういうようなものに 対する、すごく反論が、結構これまでもあったかと思うんですが、実際上、動いていく中で、 病床を減少させていく中で、こういうような病棟の転換というようなことをしながらでも、 一歩一歩前に進んでいくというところは、1つの方法としてはあってもいいんではないかと いうようなところは、私は理解をしていただきたいと思っております。 ○広田構成員 最後に爆弾発言。 ○福田課長 中島先生、お願いします。 ○中島構成員 一言も言わないと、眠れそうにないので・・・。私は野澤さんが話されたのは、 非常に説得力があったと思うんです。  今、これだけいろいろ仕組みがあるのに、悲惨なことがいっぱい起こっている、こうおっ しゃっているわけです。  ということは、今あるシステムは、制度疲労を起こしていると、こういうことだろうと思 います。そこからやっとアウトリーチという言葉を含めた、さまざまなもっと新しい試みを しなければいけないよと、こういう話が出てきている。  ところが、高木先生のような試みというのは、これは言ってみたら、量子場におけるゆら ぎみたいなもので、まだ、形になっていない。ですから、私は、今、まさにアウトリーチ・ ビッグバン・デクラレーションというのを是非やるべきときだというふうに思います。  以上です。 ○福田課長 ありがとうございます。大体時間が10分過ぎていますので、今日いただいた 御意見は、次回のところでかなり整理をさせていただいた上で、なお、追加の御意見とか、 これから意見の違う部分とかがいろいろありますので、そういったところを中心に次回のと ころでは、少し御議論を深めさせていただければと思っております。  それでは、次回の日程等につきまして、事務局の方からお願いします。 ○本後課長補佐 次回の検討チームにつきましては、今回に引き続き「地域精神保健医療体 制について」をテーマとして行いたいと考えております。  日程につきましては、17日、来週の木曜日18時から、場所は5階の共用第7会議室でご ざいます。  お手元に次回の開催通知と併せて、出席確認についての用紙を準備しておりますので、そ ちらに御記入の上、提出をお願いいたします。どうぞ、よろしくお願いいたします。 ○福田課長 どうもありがとうございました。本日も大変お忙しい中、ありがとうございま した。  以上をもちまして、第3回の検討チームを終わりたいと思います。どうもありがとうござ いました。 (了) 【照会先】 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 精神・障害保健課企画法令係 電話:03-5253-1111(内線3055)