10/05/18 第6回職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会議事録      第6回職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会                     日時 平成22年5月18日(火)                        14:00〜                     場所 経済産業省別館825号会議室                      (担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部                           化学物質対策課 奥野                         〒100−8916                          東京都千代田区霞が関1−2−2                          TEL 03-5253-1111(内線5517)                          FAX 03-3502-1598 ○奥野安全専門官 本日は大変お忙しい中、ご参集いただきまして誠にありがとうございま す。ただいまより、第6回「職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会」を 開催いたします。はじめに、資料の確認をいたします。  会議資料の議事次第の次からが、配布資料一覧となっております。その次の1頁が資料 6-1、前回の検討会の議事概要です。5頁が資料6-2、「論点の整理」です。資料番号の後に 「再配布」と書いてあるのは、前回までの検討会で提出したものを再配布させていただいて いるものです。6頁が資料6-3-1、「局所排気装置等の要件の見直し」です。7頁の資料6-3-2 と8頁の資料6-3-3が、局所排気装置以外の発散抑制方法に関する資料です。9頁が資料 6-4-1、「一酸化炭素中毒災害等による労働災害防止について」です。10頁が資料6-4-2、「化 学物質による中毒災害の災害調査の概要」です。12頁が資料6-5-1、「職場における化学物 質管理の今後のあり方に関する検討会報告書(骨子案)」です。  18頁からが参考資料となっております。18頁が参考6-1、「業務用厨房施設における一酸 化炭素中毒災害による労働災害防止について」です。20頁が参考6-2、「鉄鋼業における一 酸化炭素中毒防止対策」で、西野委員にご提出いただいた資料です。23頁が参考6-3とな っており、ここからは頁ごとに資料番号が振られております。30頁の参考6-10までが、前 回までに提出した資料を再配布しているものです。資料としては以上です。それでは名古屋 座長、よろしくお願いいたします。 ○名古屋座長 議事に入る前に、前回の議事概要ということで、事務局から説明をよろしく お願いいたします。 ○奥村調査官 それでは資料の1頁の資料6-1、「第5回職場における化学物質管理の今後 のあり方に関する検討会議事概要」をご説明いたします。  4の「議事概要」です。(1)個人サンプラーによる測定の導入について。(1)個人サンプラ ーによる測定を新たに導入することについて検討すべき。個人サンプラーによる測定が強制 的に導入されることになると、事業者の負担が大きくなることも考えられる。導入に際して は、事業者が作業内容、作業環境などを考慮して、現行の作業環境測定と個人サンプラーに よる測定を事業者が自主的に選択できるなどの柔軟な運用・対応が必要。欧米は個人サンプ ラーによる測定が中心である。日本の作業環境測定は、定常的な作業を行う作業場では、有 効かもしれないが、場所の移動を伴う作業などについては、作業環境測定だけでは、労働者 が実際にどの程度ばく露しているのか分からないのではないかと指摘されている。作業環境 測定は一義的には、施設が適切に管理されているかどうかを確認するのに有効で、個人サン プラーによる測定は、労働者の呼吸域の気中濃度を確認するために有効。  (2)事業者がリスク評価を行うことに対してインセンティブをつけるべき。個人サンプラー による測定を導入するにしても、リスク評価の結果、リスクが低いと判定されれば、例えば 作業環境測定を年1回にするというような規制緩和の側面がなくては、さらなる管理の向上 は進まないのではないか。測定の結果に基づき、リスクを判定して、特殊健診の実施対象者 を選定するような制度はどうか。  (3)導入に当たっては、法令、体制の整備が必要。測定・評価方法の整備、個人サンプラー による測定に対応できる測定士の養成が必要。管理濃度と許容濃度の関係を整理しておかな くてはならない。作業内容の記録を行い、ばく露が高い対象者はその原因を分析・改善し、 再測定を行うような取組みが必要。作業環境測定が、場の測定から個人ばく露の測定に変わ った場合、状況が変化していないかモニターする制度、国としてばく露状況を適切に把握す る仕組みが必要ではないか。  (4)個人サンプラーによる測定のデメリット。測定結果は、全作業時間の平均として把握さ れるので、短時間高濃度のばく露に対応できない。そのため、急性毒性の防止に対応できな いのではないか。これに対しては、他の測定を併用することも考えられる。また、測定・評 価基準の定め方の問題でもある。  (2)作業環境測定の結果の取扱いについて。(1)測定結果の周知については重要であるが、 リスクコミュニケーションの観点から、慎重に行わなくてはならない。結果を有効活用し、 事業者、労働者で共通の問題意識をもつことが重要。特に測定結果が悪い場合には、慎重に 行う必要がある。専門家がリスク低減措置について提案する等、対策の議論を併せて行わな くてはならない。労働者は、個人サンプラーによる測定の結果に非常に関心を持っている。 測定対象者に結果をフィードバックすることは歓迎される。また、測定の結果を保護具等の 教育に活用すれば効果が大きく上がる。労働者も事業者とともに作業改善、環境改善を検討 するという考え方をもっと強化すべきではないか。安衛則23条の2(関係労働者の意見の 聴取)との関係の整理が必要。  (2)50人以上の事業場では、作業環境測定結果については既に衛生委員会での調査審議事 項になっているので、50人未満の事業場に絞り検討すべきではないか。50人未満の事業場 については、労働安全衛生規則第23条の2(関係労働者の意見聴取)を活用する方向で周 知を図ってはどうか。  (3)個人情報としての取扱い上の配慮も必要。  (3)局所排気装置の要件等の規制の柔軟化について。(1)リスクに応じた化学物質管理を進 めてゆくという大きな方向性に沿って、施策を進めてゆくことが重要。特別規則(有機則・ 特化則等)等で、細かくばく露防止措置が決められていては、リスクアセスメントが十分に 生かされない。抑制濃度、制御風速は、作業環境測定・評価基準が導入された時点で規制を 撤廃するべきであった、との指摘がある。作業環境測定の管理濃度、個人サンプラーによる 測定の許容濃度等、最終的に達成すべき数値を決めて、それをチェックするという方法が望 ましい。制御風速や抑制濃度は、達成するための手段なので、それに規制をかけるのは適切 ではない。事業者、測定士等がより大きな責任を持つという前提で、個人サンプラーによる 測定を行い、定量的な評価を行い、安全が担保されれば規制の柔軟化を行うことができるの ではないか。  (2)規制の手厚さについて。労働者を守るためには、二重、三重の規制であっても良いので はないか。今まで罰則がついていた規則を無くす、緩和するというには、納得できる根拠が 必要。適切にリスク評価を行い、その結果に基づいて、適切なリスク低減措置を実施すると いうのは十分納得のゆく根拠となるのではないか。  (3)有機則の特例許可を、特化則、鉛則にも広げることが出来ないか。特例許可を受けてい る事業場の業種、規模等の傾向を調べてほしい。  (4)局所排気装置の排気の屋内還流について。電気・電子業界でのクリーンルームでは屋内 の空気は大部分還流させている。非定常作業、臨時作業等を含めた局所排気装置の稼働実態 を把握する必要があるのではないか。リアルタイムセンサーの設置を要件にしてはどうか。  (4)局所排気装置以外の発散抑制方法の柔軟化・性能要件化。(1)リスク評価を行い、その 結果リスクが低いということとなれば、導入してはどうか。  (2)新規の発散抑制方法の開発・導入には、経済的な負担が相当大きい。事業者にインセン ティブをつけなくては導入が進まないのではないか。国が技術開発支援などを行い、導入事 例を紹介していくことが必要。  (3)光触媒は分解速度が遅く、また、2次生成物の有害性も考慮しなくてはならない場合が あるので、扱い方が難しいケースもあるが、それがクリアできれば作業環境濃度抑制法とし て有効な方法の一つである。  (5)その他のご意見。(1)事業者のリスクに応じた適切な措置の実施を支援するため、例え ば産業保健推進センターなどのように、各都道府県に相談窓口的機能を果たすセンターを設 けてはどうか。  (2)安全衛生の専門家といってもパフォーマンスには差がある。専門家の育成も重要。  以上です。 ○名古屋座長 ただいまの説明について、ご質問等はありますか。 ○橋本委員 4の「議事概要」の(1)の[4]、「個人サンプラーによる測定のデメリット」につ いてです。この前、「デメリット」という言葉が出たかどうかは定かではないのですが、確 かにここに書いてあるように、8時間の測定だけしかしないのだったら、短時間のことがわ からないからデメリットになります。長時間の測定と短時間の測定というのは、欧米では分 けて行われていますので、最後にあるように、測定・評価基準の定め方の問題でもあるわけ です。そういう2つの測定を利用できるようにすれば、その内容は別にデメリットではない ので、そういうように解釈したいと考えます。 ○名古屋座長 では、若干修正することにいたしましょう。あとはよろしいですか。  それでは本日の議題に入ります。本日は前回に引き続き、「より柔軟な規制の見直し」に ついて検討します。また、今回の検討会は化学物質管理のあり方についてのご議論をいただ いておりますが、一方で一酸化炭素中毒という古いタイプの災害が多発しており、第1回の 検討会のときに、事務局からお話があったと思いますが、後ほど一酸化炭素中毒の防止につ いても、併せてご議論いただこうと考えております。最初に「局所排気装置の稼働要件の規 制についての検討」ということで、まず事務局より説明をよろしくお願いいたします。 ○半田化学物質対策課長 そこに入る前に、全体の論点を今一度確認いたします。5頁の資 料6-2をご覧ください。第2回で論点を整理していただき、ア「危険有害性情報の伝達・活 用の促進」、イ「自主的化学物質管理の促進」、ウ「より柔軟な規制への見直し」という3 項目でお願いしておりました。これまでのところア、イ、ウの(4)まで、大体ご議論いただ いたと思っております。前回、(5)と(6)についてご議論いただいたわけですが、今日はその 辺りのご議論も少し深めていただければと思っております。これはもともと提出した資料を そのまま出しておりますので、このようになっておりますが、一応(5)と(6)について、今一 度確認申し上げます。  (5)は局所排気装置の稼働要件について一律に定められているものを、少し見直す必要が あるのではないかということです。一律の規制というところは変わらないわけですが、そう いうご議論です。(6)は、局所排気装置以外の発散を防ぐ方法について、認める方向にして いくべきではないかと考えているわけです。これは個別の事業場ごとに判断して、従来の発 散抑制方法以外のものを認めていくということです。今一度申しますが、(5)は一律の規制 のあり方について、(6)は個別の事業場ごとの判断について、という大きな違いがあろうか と思っております。そういうことで今日は(5)(6)のご議論を深めていただければと思います。 さらに詳細については、奥村調査官からお話いたします。 ○奥村調査官 続いて、これも再配布ですが、6頁の資料6-3-1、「局所排気装置等の要件の 見直し」についてを説明いたします。左手に現行の規制の概要があります。「労働者を有害 物から守るための主な規制」ということで、まずは局排の設置義務という要件を規定して、 作業環境管理を行っております。局排の要件の例としては、フードは発散源ごとに設けるこ と。ダクトはできるだけ短く、ベントの数はできるだけ少ないこと。排気口は屋外に設ける こと。大臣が定める性能を有することとし、抑制濃度、制御風速が定められています。これ が現行規制の要件です。  労働者を守るための措置としては、作業環境測定を行うことと、その結果に基づく作業環 境の改善と管理を行うことという規制になっております。さらに一定の場合には、保護具の 着用が義務付けられており、常時、有害物を取り扱う労働者に対しては、健康診断とその結 果に基づく就業場所の変更、保健指導等という定めがあります。  「現状と課題」を改めて整理いたしますと、有機溶剤用の局所排気装置については、署長 の特例許可を受けて、制御風速を下回っていても、第1管理区分を維持している事業場が多 くあります。すなわち、要件に従っていなくても管理が達成できていて、よい作業環境がで きていることが結構多いということです。(2)に、第1管理区分が継続している場合であって も、局排の要件による規制は必要なのかという議論があります。(3)に、排気口の屋外設置と いう要件については、例えばレンタルビル内に作業場があり、壁をぶち抜いてダクトを造れ ないというような、いろいろな制約があります。そういった所では排気口の屋外設置は困難 であり、たとえ排気を清浄化しても屋内排気は認められないので、空調エネルギー等、いろ いろなものが無駄になっているという現実の課題があります。  これに対する「見直しの方向性」としては、局排の要件のようにあまり法令で細かく縛る のではなく、作業環境測定を行って、その結果に基づく管理に重点を置くように誘導すべき ではないかと。そのために、(1)として局所排気装置の要件については、より柔軟な運用を認 めていく。(2)は前回までの議論ですが、作業環境測定結果の労働者への周知という措置で誘 導するべきではないか、という考えを示したペーパーです。 ○名古屋座長 ただいまの説明について、ご質問等はありますか。たぶん前回の議論の中で は、もともと抑制濃度と制御風速というのは昭和50年作業環境測定基準ができる前には、 測定法がなかったために、作業環境管理を行う場合、作業者を有害物質のばく露から防ぐた めの手段として制定されたものです。作業環境測定が制定されたことで本来的にはその役目 がある意味で終わったので、無くした方が良かったのですが、それなりの役割があること、 また、作業環境測定だけで有害物のばく露防止を行うことに、反対意見があったことで、そ のまま残して現在に至っている。そのため、リスク評価により、制御風速以下でも大丈夫と 判断されても制御風速が下げられない現状があります。つまり現行法との兼ね合いで二重規 制になっています。この辺を弾力的な運営をすることによって、リスク評価の意義、測定の 意義が増してくると思います。  特に前回もありましたように、「現状と課題」の(3)などでは、ビルの排出は困難というこ とはあるかもしれませんが、例えば北海道や沖縄ではそういうことがあると思うのです。つ まり、今までは作業環境で発生した有害物質をそのまま大気環境に出せていましたが、大気 汚染防止法の改正で清浄空気にして大気環境に出さなければいけないという決まりになり ました。例えば、北海道の冬場の場合、工場内で暖めた空気を空気清浄機等を使用して清浄 化した後、大気環境にそのまま排出すると、また外から冷たい空気を暖房で、室内と同じ温 度に暖房で暖めなくてはいけない。逆に夏場の沖縄のような所ですと、夏場の冷たくした空 気をそのまま大気環境中に排出して、屋外の暖かい空気を入れる。要するにエネルギーコス トがかかり過ぎてしまうということがあるので、できれば還流を認めてもいいのではないか ということだと思います。  これについてご意見等、何かありますか。ただ、有機溶剤では特例許可がありますが、ど の物質についてもいいということではありません。やはり発がん物質は外さないといけない と思います。そのほかのところではどうでしょうか。 ○福岡委員 「見直しの方向性」の文案ですが、前回の議論でも、リスク評価がちゃんと行 われたらという前提が、かなり何カ所かあったと思うのです。その点はやはりこの方向性の 中に入れておかないと。どういう場合に自由な運用を認めるのかという認めるための前提条 件の1つに、リスク評価をきっちりするという話が前にもあったと思うのです。それをやは りここにちゃんと入れておかないと、抜けることになるのではないかという印象があります。 ○名古屋座長 これは作業環境測定やリスク評価をした中で、OKだったら認めてもいいと いう形です。 ○福岡委員 そういうことはここに書いておかないと、落としたら困るのでよろしくお願い します。 ○名古屋座長 あと1つあるのは、例えば循環を認めるときに技術として必要なのは、セン サーの開発だと思うのです。センサーの使用というのは、今まであまり認められていなかっ たのですが、ホルムアルデヒドのときに検知管と同等の性能を有する場合はセンサーの使用 が認められたというように、法律で認められたと思うのです。メーカーがそのことをよく知 っていると、センサーの開発が進んでくるわけです。そうすると、例えば循環にしてもいつ もリアルタイムモニターを使ってチェックできれば、ある程度決められた濃度で管理できる からいいのではないかと思います。  ただ、そういうセンサーがなくて普通に作業環境測定をして確認することになると、ちょ っとしんどい部分がなきにしもあらずかと思います。こういうことが出来てくると、センサ ーの部分での開発、あるいは逆に今まで測定しているものを、センサーを使った測定という 新しい位置づけにもつながってくるのではないかと思います。そういう意味では規制緩和と いいますか、そういう形のものが認められると、技術レベルも一緒に付いてきて進んでくる のではないかと個人的には思いますが、どうでしょうか。  当然、測定結果に基づいた管理は大切ですが、還流を認めるのはどうかということでの提 案だと思います。よろしいですか。その案にも書かれていますように、局所排気装置の要件 については柔軟な運用ということになりますと、測定結果がある程度きちんとしてリスク評 価ができたとしたら、柔軟な運用を認めるということです。測定結果については当然、労働 者に周知させて、自分の結果を確認できる形のシステムを作るということでよろしいですか。                  (異議なし) ○名古屋座長 わかりました。では、そういう形でまとめさせていただきます。それでは次 の資料6-3-2、「局所排気装置以外の発散抑制方法について」ということで検討したいと思 います。これも事務局からよろしくお願いいたします。 ○奥村調査官 資料6-3-1のペーパーを説明する前にお断りするべきだったのですが、私ど もでは前回まで、抑制濃度と制御風速はいわゆる二重規制ではないかという指摘もあって、 廃止するべきという方向でご議論いただいていると思います。それに対して委員から、罰則 付きで規制をかけているものを撤廃するには、それなりの前提が必要で、それには条件が揃 っていないのではないかというご指摘がありました。その意見を踏まえて、抑制濃度と制御 風速を今回撤廃するのは、もうちょっと慎重に対応してはどうかと。今後の課題であるとは 思いますが、今回は見送るべき、慎重にということを考えており、資料はその方向で作って いるところです。 ○名古屋座長 たまたま管理濃度委員会の委員をしていますが、私が思うには、抑制濃度の 話と制御風速の話というのは、管理濃度委員会の検討事項として、この次以降に検討しよう という話がたぶんあったと思うのです。そこのところにも提供していただいて、その辺でき ちんとした対応をするという形でよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○名古屋座長 わかりました。ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。 ○奥村調査官 それでは、これも再配布ですが、資料6-3-2、「局所排気装置以外の発散抑 制方法について」です。現行規則では局所排気装置以外の発散抑制装置について、いくつか 規定があります。まずは有機則のほうです。上昇気流によるエアカーテンができる場合や、 有機溶剤に水を浮かべる場合は発散が抑制されるということで、その場合は局所排気装置と 同等の措置として認められるという規制になっております。特化則のほうですが、例えば病 院等で行われている、エチレンオキシドによる滅菌作業があります。滅菌器の中にエチレン オキシドガスを注入して、やがて滅菌作業が終わったら、それを外に排出するというエアレ ーションの機能が付いている場合には、局所排気装置がなくても労働者がばく露するおそれ はないので、そういった場合にはいいという規定があります。  現状の規則の「課題」ですが、以上の規則に特別に掲げている場合を除き、有害物の発散 抑制措置としては、局所排気装置以外の工学的対策は認められていません。このため、さま ざまな方法での発散抑制の対応、いろいろな試みができなくなっています。いろいろな技術 開発をしても規則で認められないのでは、事業場に導入されないという制約があります。想 定される技術の例としては、光触媒による有害物の分解のようなものがあります。  「検討の方向性」ですが、局所排気装置以外の発散抑制装置についても、幅広めに認めて いく必要があるのではないかという方向です。  これも再配布ですが、8頁の資料6-3-3、「局所排気装置以外の発散抑制方法の柔軟化・性 能要件化」の考え方ということで、どのような考え方で認めるかをまとめたものです。まず、 その発散抑制方法によって有害物の気中濃度を一定以下にできることが確認される。当然、 発散が抑制されているということを確認するという点です。次に、その発散抑制方法が、局 所排気装置のように管理が比較的容易で、適正に設置されれば誰が稼働させても抑制できる ものであればいいのですが、光触媒のような場合は十分な管理体制がないと、あまり安全で はないのではないかという心配があります。そのために気中の化学物質の濃度等が、継続的 に一定以下となるための措置がとられているということです。  例えば定期的な監査・パトロールによる維持改善等が行われていること、管理体制がしっ かりしていること、導入と稼働に当たっては外部人材でもいいので、専門家がしっかり参画 していること、さらにリアルタイムモニタリングとして常時センサーで確認することが必要 な場合もあるのではないかといったことが、あくまでも例示として考えられております。こ れには導入する技術に応じて、必要だったり必要でなかったりというものもあると思ってお ります。  このような(1)と(2)の要件を満たした場合に、有機則と特化則で規定された局排以外の「発 散抑制方法」として、採用が可能ではないかという考え方を示しております。 ○名古屋座長 ただいまの説明について、ご質問等はありますか。 ○福岡委員 (1)(2)に、一定以下であることの確認というのは、作業環境規則か何かでやると いう含みがあるわけですか。大事なことは、そうなっていることを最後に確認されていない と、なるはずだでは困るのです。それは作業環境規則などで確認するというのが、この後に 付いているということでよろしいのですか。 ○奥村調査官 (1)の確認ですか。 ○福岡委員 (1)(2)の次です。大事なことは、最後に確かに一定濃度になることを確認すると いうステップを置いておかないといけないのではないかという懸念なのです。 ○奥村調査官 当然、作業環境測定は必要になると思います。もちろん局排を設置しても、 プッシュプルを設置しても作業環境測定が必要なように、それ以外の発散抑制措置を導入し ても、当然作業環境測定は必要です。それは、この紙にはあえて書いていません。 ○福岡委員 わかりました。 ○城内委員 私が理解できないのは、「有害物の発散抑制装置として、局所排気装置以外の 工学的対策は認められていない」という点です。例えば光触媒でも何でもいいのですが、こ れはそういうことをやってはいけないという意味に読むのでしょうか。 ○奥村調査官 いまの有機則や特化則の条文には、取り扱う場合には密閉化するか、局所排 気装置を設置しなさいという規定になっています。そのほかに、例えば光触媒のようなもの で発散抑制措置を講じても、法令違反になってしまうのです。局所排気装置が設置されてい ないということで、違反になってしまっているというのが問題です。 ○城内委員 つまり、局所排気装置があってほかのものもあれば、別にいいのですよね。 ○奥村調査官 本来はそうあるべきですが、規則が。 ○半田化学物質対策課長 いや、それはあってもよろしいのです。ただ、ほかの発散抑制措 置を講じていても、現状は原則、局所排気装置を設置して、化学物質の性状に応じて定めら れた性能要件、稼働要件ですから、それで稼働させなければなりません。ですから光触媒で いくら分解していても、何をしていても、例えば0.2m/sとか、それが緩和されるという仕 組みにはなっていないですね。 ○城内委員 私の懸念は、この発想でいくと各規則にこれを使ってもいいですよ、あれを使 ってもいいですよというように、足していくことになるのではないかということです。それ は評価があって、その評価値を守ればいいという方向にもっていきたいという話が最初にあ ったのと、ちょっと矛盾してくるのではないかと思ったのです。将来的に消したり足したり していくと、前の検討会での話にもあったように、「せっかく罰則付きであるものを消すの はいかがなものか」という議論になっていくのではないかと思います。となると、対策が山 のように増えていくという話になってはおかしいのではないかと感じたのです。 ○半田化学物質対策課長 後段のほうから申し上げます。罰則付きのものを消すのはおかし いのではないかというのは、たぶん抑制濃度のご議論のことをおっしゃっていると思うので すが、私どもはそのようには理解しておりません。罰則で担保されるほどの重い規定を外す には、それなりのファクトに基づく議論が必要ではないかというご提言だと理解しておりま すので、罰則付きのものを遮二無二外してはいけないという話ではないと存じております。  それから、規制を足したり引いたりということになりはしないかということですが、冒頭 に私のほうから申し上げた、「リスクを評価してそれに応じた対策を講じていく」という方 向と矛盾するのではないかというご指摘ということでよろしいですね。 ○城内委員 いや、よくわかりません。 ○半田化学物質対策課長 私は確かにそういうことを申し上げました。究極の姿としては、 例えば管理濃度を測って第1管理区分が常時保てるようなことだけを義務付ける、方法は問 わないというのは「性能要件化」と申しております。世の中の世界各国の規制の流れは、そ もそも何をどういうようにしなさい、してはいけないという仕様基準から始まりましたが、 いまは各国、保安規制や安全規制も性能要件化に大きく舵を切り替えてきております。早い ところではイギリスが1974年にローベンス報告をまとめて、これに基づいて大きく転換し てきているわけです。それに比べますと、私どもはいまだに仕様基準でかなりガチガチにや っているわけで、それを性能要件の方向に持っていきたいという大きな目標があります。  ただ、それは安全衛生法の膨大な体系全体にかかわることですので、いま直ちに性能要件 化にガラリと模様替えをするというのは、やや困難であろうと思っております。そういう中 で出来るところからやっていこうということで、化学物質の仕様基準の最たる例である局排 設置義務、あるいは稼働要件に従っての稼働義務という部分を、一定の条件の下に緩和する という辺りから取りかかっていこうと考えております。大きな方向性としては、性能要件化 の方向に進めていきたいということと矛盾しているつもりはない、というように考えており ます。  足したり引いたりの部分で申し上げますと、先ほど議題のところでもご説明したように、 今ここでご議論いただいているスキームというのは、あくまでも個別事業場に対する是非の 話だと考えております。ですからA事業場で取り組まれた方法が非常によくて、B事業場 でもC事業場でも申請が出てくる、あるいは申請が出てこなくても、これは汎用性の高い 良い方法であるということになれば、現行の規定で言えば規則の中に局排や密閉装置のほか に、こういうものも良いというやり方を書き込むことはあり得ると思っています。  1つの例がプッシュプル換気装置です。これはたしか昭和59年に、有機則に入れたのが 最初だったと記憶しております。私どものほうで性能要件などを確認して規則の中に取り込 んでいったわけです。これと似たようなものとして、エチレンオキシドの規定もそうです。 エチレンオキシドは局排で云々というよりも、ここに書いてありますように、一定の性能を 有した滅菌器を正しく利用することによって、より合理的、効果的なばく露防止措置が講じ られることが確認できましたので、これは日本全国に通用するものだということで特化則を 改正し、平成13年に入れ込んだわけです。  そういう部分で全国汎用的な措置として認められれば、改正して規則の中に入れていくこ とはあると思います。それ以前の段階としては個々の事業場からのご要望に応じて、その内 容を判断させていただいて、諾否を判断するような仕組みを作っていくべきではないかとい う考え方でおります。お答えになっているでしょうか。 ○名古屋座長 いま思うのは、局所排気装置が設置されているということは、当然そこには ダクトがあって、それは必ず屋外に排気しようということですよね。しかし、ここで言われ ているのはそれもあるけれども、ある程度素晴らしい浄化装置があっても、それを使うとき には局所排気と同じ形になるから、当然そこで出てきたものは、ダクトを使って屋外に排出 しなくてはいけない。ただし、もし還流などが認められて、そこで完全に浄化されたら、そ れを室内に置いて使いますということにつながってくるのか。それは技術の進歩だと思いま す。たぶん、そのための緩和ではないかと思って、私はこれを見ているのです。  要するに、空気清浄機というように思っていただければいいのです。その中でそういうも のが確実にできていて、排気がちゃんときれいにできるのだったら、何も局所排気装置でき れいにしたものを外に出さなくても、ダクトを使って外に出さなくても、作業環境中で空気 を冷やさなくてもきれいにできますよね。そのための技術というのがどうも止まっているか ら、そのために緩和して、そういう技術を促しましょうということではないかと私は理解し ているのです。それは違うのでしょうか。 ○奥村調査官 還流は還流で、6頁の資料6-3-1の世界で一応完結してしまって、局所排気 装置でも、還流でもない、それ以外の全く新たな技術について、7頁以降で考えたいと思い ます。 ○名古屋座長 還流ではなく、例えば浄化能力の高い浄化装置があったときに、その浄化装 置が床に固定されている場合、局所排気装置だから当然届出義務を出さなければいけません よね。一方、浄化装置が作業場の床に固定されていない場合、移動することができるので、 届出は要りませんよね。いまは床に固定されてなくても使えるけれども、その性能がちゃん と担保されているかどうかの確認はして無い状態で使用できるはずです。もし、性能確認を して、そうした洗浄装置の使用がOKだとしたら、作業所内で空気を清浄化するので、そこ から空気を作業環境内で循環しておけば屋外へ出さなくてもすむため規制緩和になるので はないでしょうか。  それは例えば光触媒を使った場合も同様です。局所排気に光触媒を付けただけではなぜ駄 目かというと、局所排気装置の場、合処理排風量が大きいから、光触媒のように分解速度の 遅いものを局所排気装置に繋ぐと、とても完全分解できないからです。これは金属触媒を使 っても同じです。ただし、光触媒付きの空気清浄化装置を室内に使うことにすると、作業環 境中の空気を循環させますからゆっくり作業環境中の有害物質の濃度を下げていくことが できます。たぶん、そういった形のものを認めるというのが、この趣旨ではないかと思って いるのです。光触媒付きの空気浄化装置で分解しますから、そのためにはある程度、そこか ら出てくる濃度をきちんと担保しておかなければまずいのではないかと。ホルムアルデヒド を用いた歯科医療病理学的検査では全体換気を使わなくてはいけなかったけれども、全体換 気ではなかなか環境中の濃度を下げることが難しいので、代用品として屋内排気型のプッシ ュプル換気装置を認めましたが、認める条件として排出する濃度を管理濃度以下に持続させ ることにしました。ホルムアルデヒドの部分と同じことを、今度は工場でやるのではないか と私は思っているのですが、それは違うのですか。 ○半田化学物質対策課長 それでよろしいと思いますが、資料6-3-1と資料6-3-2で扱って きたテーマは違います。資料6-3-1のほうは、ある意味で全国一律の規制の見直しです。資 料6-3-2で想定しているのは、個々の事業場ごとに諾否を判断することになるだろうという ところが違います。 ○名古屋座長 しかし、その次には分解するということは、分解生成物が危ないものだとい けないから、それを浄化するための測定やセンサーというものが、たぶん付いてくるのでは ないかと思います。 ○半田化学物質対策課長 私どもが内部で議論していても難しいところは、この技術を認め るか認めないかであれば、議論は非常に収斂するのです。光触媒の是か非かであれば、スッ と議論するのですが、ここでやろうとしているのは最初に申し上げたように、結果が出せれ ば、どのような方法でもいいということにしようという基本コンセプトがあるわけです。ど のようなものでもいいということになりますと、どのようなものがあるのかということで、 ないものを議論することになりますので、そこが非常に難しいところです。 ○名古屋座長 ですからそのものではなくて、出てきたものの中から、出てくるものが環境 に影響するかどうか、担保できる方法さえ置いておけば、あと、そこのところの技術は進ん でいくのではないかと思います。 ○半田化学物質対策課長 そういうものを担保するスキームを、どのように組み立てればい いかということにつながっていくと思うのです。 ○名古屋座長 そうですね。わかりました。その辺で皆さんのご意見をお聞かせいただけれ ば有り難いと思います。最大の目標は、そういうものにしたときに現行の環境を悪化させな いことが当然ですから、それに対する測定などを担保すると同時に、もっともっと簡易的な 方法で担保できるものがあればいいということだと思います。その中の1つとして、ここに ある外部人材も入ってくるのですか。資料6-3-3にありましたよね。管理体制や専門化の参 画、リアルタイムモニタリングといった形が整うと、ある程度こうい形のものも採用する可 能性が出てくるのではないかということだと思います。どなたか意見がありましたら、どう ぞよろしくお願いいたします。 ○豊田委員 資料6-3-3の図の(2)の「気中の化学物質の濃度」云々の下に、5つの●があり ますね。これはアンドなのでしょうか。これが全部揃わないと一定の要件を満たさないとい う方式なのでしょうか。それとも、オプションなのでしょうか。 ○半田化学物質対策課長 資料6-3-3の概念は、(1)が実際に新しく取り入れようとする発散 抑制法に効果があるかどうかを確認するということです。これはある一定期間やるにしても、 どちらかというと点に近い確認になってしまわざるを得ないと思います。1年間ずっとやっ ていただくわけにもいかないでしょうから、何度か測ってみると、確かに一定濃度以下にな っているということです。それは実際に測定して確認できます。問題は、それが継続できる かどうかというのが、もう1つ重要な要件だろうということで(2)を書いているわけです。  濃度がちゃんと一定以下になっていることが継続できるということを、どうやって担保す るか、私どもはいろいろ考えているわけです。担保するための方策を考えるときのポイント として考えられるところをいくつか、私どもの知恵を絞ってお示ししたのがこの5つです。 この5つが全部必要なのか、もっと必要なのか、あるいは、そんなものは必要ない、リアル タイムモニタリングがあるのだからそれでいいではないか、というお話もあるかもしれませ ん。そういったところを先生方のご意見を承りたいと思っております。  先ほど福岡委員から、作業環境測定をちゃんとやって確認するのかというご指摘がありま した。そういうこともあろうかと思いますが、作業環境測定ですとご案内のように原則6 カ月以内に1回、平たく言えば半年に1回ですので、半年に1回の確認でいいのかという議 論もあろうかと思います。局所排気装置であれば確立した技術ですから、こういった局所排 気装置を設置して、こういう稼働要件で動かしているのであれば、半年に1回の測定で継続 していることが確認できるだろうけれども、それ以外の技術のときには果たしてどうなのか と。  例えば、内部で私どもが議論していたのは、光触媒を使った折には確かに有効だったし、 1週間後も有効だったけれども、それが半年後まで有効かどうかというのが確認できるのだ ろうかと。もう少し頻繁に測定頻度を高める必要があるのではないだろうか、3カ月に一度、 2カ月に一度、あるいは毎月。しかし毎週ということになりますと、新たな発散抑制方法を 導入したメリットは何もなくなってくるだろうということを、私どもも内部で議論しており、 うまくいい知恵がなかなかまとまらないところです。 ○福岡委員 私が先ほど申し上げたのは、既存の所ですと、作業環境測定は6カ月に1回で しょうけれども、こういう新しい方法が開発されたわけですよね。その方法が確かに大丈夫 だということを確認するための作業環境測定の場合、別に6カ月に一遍という制約ではなく、 場合によっては毎日やっていく。ともかく大丈夫だというのを確認することが要るのではな いかという意味で申し上げたわけです。  ですから(1)と(2)をやられて、確かに毎月測定をするのは大変かもしれないけれども、何ら かの方法で、この方法は大丈夫だという確認をちゃんと取らないと、認められてこないので はないでしょうか。新しく開発されたものは、どういう要件が満たされたら認めるのかとい うところでの議論ではないかという感じがしています。そういう意味では(1)(2)だけでは足り なくて確認する、作業環境測定以外に何かあればそれでいいのでしょう。そういうものがあ って、3日やれば大丈夫なのか、1年やらなければいけないかというのは、ケース・バイ・ ケースだと思うのです。どういう要件で確認するかというところが、やはり足りないのでは ないかという感じがします。 ○半田化学物質対策課長 私どもも確認することは必要だと思っておりますので、1つの考 え方として(2)に、リアルタイムモニタリングを入れているわけです。ただ、リアルタイムモ ニタリングを全部に要件と課してしまいますと、新しい発散抑制方法が認められるケースと いうのは、極めて限定されるのではないでしょうか。それはどうなのかというところが、自 分で考えていても悩んでいるところなのです。 ○名古屋座長 運用面は事業主が決めることです。要するに、メリットはどちらにあるか、 コストはどちらにあるかです。ただ、それがやりたくても出来ないシステムよりは、出来る ようなシステムがあって、その中で運用するものを事業主とスタッフで考えて、こちらはコ スト的にもいいし、メリット的にも常時監視できるからいいという形ですから、そこは心配 要らないのではないですか。ある程度きちんとした法体系の中で決めておけば、その運用を 任されても大丈夫です。そこをチェックするものが漏れてしまうといけないと思いますが、 ほかのところはきちんとこういうように決めておかれれば大丈夫だと思います。  ただ、今はその運用もできないので、運用するためにはどういうものがいいかということ です。これだけで足りるかどうか、多分もっと議論するのでしょうけれども、ある程度して いただければ、どこを採用するかは事業主にお任せいたします。それは外部専門家と判断し て、スタッフ同士で判断して、何がいちばんいいか、やはり局所排気装置がいいのか、こう いうものを付けなくてもいいのかという形で進んでいくのではないかという気がします。そ れでメリットが出ればメーカーさんも頑張って、リアルモニタリングとして良いものを作っ てくれれば、政策的にどんどん使えるものができてくるのではないか、技術の革新が進むの ではないかと思います。たぶん行政はそこのところを狙っていて、こういうことをすること によって技術革新にも結び付いてくるし、二酸化炭素の削減にも結び付いてくるということ での成果面につながってくるのではないか、というように私は理解しております。 ○堀江委員 技術的なことはあまり詳しくありませんし、言葉の問題かもしれないのですが、 リアルタイムモニタリングといいますと、常に数値を表示しているというイメージを持ちま す。もし発生している物質がある程度特定されているのであれば、ガス検知モニターのよう なもの、あるいは、一定濃度以上になったら音を出すとか、そういったものも含めて考えれ ば、もっと選択肢が広がるのではないかと思いました。  それから、産業医活動をしていますと、現場では、労働者が臭いを知って危険を感じるこ ともあります。例えば、ジクロロメタンのように、臭いの閾値よりも許容濃度のほうが低い ときには、臭いに頼るのは適当ではないこともありますが、物質によっては臭いの閾値が十 分に許容濃度以下の閾値であって、誰でも臭いを感じるものもありますので、そのようなも のであって、正確な報告ができるという環境があれば、臭いがあれば報告するといった仕組 みもあり得るではないかと思いました。 ○名古屋座長 いずれにしてもいい環境保護の規制を作る、こういう形のものができたとき に、そこで働く人たちの中に健康影響がないということが大前提だと思います。そのチェッ クをすること自体は当然ですが、それをするための1つの新しい方法として、こういう形の 緩和をすると。新しい発生抑制方法の技術を妨げない形での方法を導入することは、いいこ とかと思います。ほかに意見はありますか。 ○塩崎委員 やはり導入する方向性としては、技術性能での規定で行うべきです。職場によ ってもいろいろな作業現場があるでしょうから、その性能が実際の作業環境での目標以下の 気中濃度にするような性能を持つ方法であれば、その対策を採用、導入を認めていくという 方法がいいのではないかと思います。また、資料6-3-3(2)の評価と管理の実施は、かなり難 しいところがあります。例えば、すでに技術開発がされていてガス検があるような場合、あ るいは濃度計がちゃんとあるような場合はいいのです。それがなくて誰かに相談しようかと いうような事業者、特に中小では困るところがあるのではないかと思います。ここにはその 例として、専門家の参画ということが書いてあります。このように、中小が困ったときに相 談できる窓口設置など、をできるだけ配慮することによって、さらに採用、導入が進むので はないかと思います。ですから(2)の実施に対しては、そういうことも考慮して普及していく ようにしていけばいいのではないかと感じます。 ○市川委員 技術的なことが分からないので確認のためお聞きしたいと思います。ある新し い装置なり仕組みが非常に有効であるということで、それを使って(1)が、その方法が気中の 濃度を一定以下にできることが確認されて、なおかつ、その状態をずっと維持できるような 事業場であれば、これを入れますということが基本ですよね。そもそも最初にこの新しい装 置なり仕組みが、(1)にあるように有効であることが確認されるというのは、それが稼働して から確認されるという意味ですか。それとも何か別の実験的な所で確認されたら、それでい いのですか。先ほどのお話だと、一定期間実際に使ってみて、測定をしてという話だったの ですが、では一体いつから使っていいのか、その辺が分からなかったのです。 ○半田化学物質対策課長 そこら辺は、私どもも確たる腹案があるわけではないのです。一 応考えているのは、メーカー段階あるいは実験室で、これはできますということではないだ ろうと思います。もしもメーカー段階で、あるいは実験室段階で絶対大丈夫だと確認できる ようなものであれば、それは日本全国どこででも使えるものでしょう。そういうものを導入 する際には、そもそも規則を改正して、密閉装置、局排、プッシュプルに並べて、これをし てもいいというように書くだろうと思います。  先ほども申しましたように、ここで論じているテーマは、個々の事業場ごとにより適した 合理的な方法がとり得るのではないだろうか、そういった場合にどうするかという話だと考 えております。市川委員のご指摘のようなケースであれば、1年というわけにはいかないと 思うのですが、現実にある事業場で一定期間、ある程度使っていただいて、確かに効果が出 ているということを確認していただくのが大前提ではないかと考えております。 ○市川委員 では、その間は局排を付けてなければいけないということですか。 ○半田化学物質対策課長 そういうことになっては不合理なので、その辺りをどう設計して いくかです。それは制度設計の問題です。たぶん、その間は呼吸保護具を着用しながらやっ ていただく。これは例えばの話ですが、呼吸保護具を着用しながらやっていただいて、現実 に問題がないということが確認された後に、有効ということになっていくのではないかと思 います。いずれにしても、そこはどういうように制度を設計するかの問題だろうと考えてお ります。 ○市川委員 その期間にたまたま有効ではなく、被害が出てしまったら困るわけですよね。 その間は局排も使わなくてよくて使い始めて、うまくいけばいいのですが、仮に思ったほど の効果がなくて、働いている人に被害があったということでは困るのではないでしょうか。 ですから一体どこから局排しなくてもいいということを確認して、許可になるのかが気にな ったわけです。 ○半田化学物質対策課長 許可になるのか、認可になるのか、届けになるのかはわかりませ んが、その辺りのスキーム、どういう制度をどういうように設計するかというのは、ご指摘 の点に十分留意しながらやる必要があると考えております。 ○名古屋座長 最低、空気浄化装置を設置したと同時の直近での測定はまず必要ですよね。 あと、例えば基礎研究の中で6カ月以上性能が維持できるということだったら、それは6 カ月でいく。しかし3カ月ぐらいしか有効でないということであれば、それは当然、またメ ンテをしなくてはいけないし、メンテと同時にその直後は測定して確認するという形で、確 認する方法は何かきちんとしておかないといけないのではないかと思います。法令測定では なく、やはりその機種に応じたメンテの後には、必ず測定をして確認をしておくというシス テムを作っておかなくてはいけないのではないかという気がします。 ○豊田委員 前回も言ったと思うのですが、このテーマについては、趣旨はいいと思うので すが、こういった技術の開発については、国なり行政なりの下支えが必要ではないでしょう か。資料6-3-3でいうと、(1)はその能力の確認ですよね。(2)に関しては、言葉を換えて言い ますと、継続管理されているかどうかという確認だと思います。こういったところは先ほど の市川委員のような心配事も出ますし、やはり(1)(2)のハードルをクリヤーすることについて も、行政なり国なりの後押し、フォローという形で推進しないと、事業者だけでは、負担が 重くなかなかものにならないのではないかと思うのです。その辺もよろしくお願いしたいと 思います。 ○西委員 やはり技術論的には触媒にしろ何にしろ劣化は付きものなので悩ましいところ です。また、一緒にあるほかの物質などの影響で劣化が早まったり遅くなったりということ があります。その辺を担保するように、定期的な環境濃度は当面継続し、どこかで歯止めを やってある程度確立されてからでないと、全面的にというのは難しいのではないかという気 がします。 ○名古屋座長 いずれにしても導入することには、たぶん皆さんも賛成してくれると思うの です。運用するときはある程度きちんとした、そこで働く作業者に健康影響のないような形 のシステムを、ちゃんと作ろうという形ではないかと思います。こういう形で技術が進んで いくところの障害になるものを、防ごうというのがこの題だと思いますので、よろしくお願 いいたします。ほかにはよろしいでしょうか。  それでは冒頭でもお話したように、非常にわかりやすい災害ということで、行政でも指導 しておりますが、なかなか減少しない一酸化炭素中毒の防止についてということで、ここで 検討したいと思います。これは新しい資料ですので、事務局からよろしくお願いいたします。 ○井上衛生専門官 9頁の資料6-4-1をご説明いたします。まず表題に「一酸化炭素中毒災 害等による労働災害防止について」と書いてあります。このペーパーには書いておりません が、ここで言う一酸化炭素中毒というのは、いわゆる不完全燃焼状態で炭素化合物が燃焼す る際に発生する、無色無臭でその存在が感知しにくい気体のことを指します。一酸化炭素中 毒というのは、赤血球中のヘモグロビンと結合しやすく、このためにこれを吸入すると血液 の酸素運搬能力が下がることによって中毒になり、軽度の頭痛、吐き気などから、場合によ っては致命症に至るといった、無意識のうちに被災する特徴があります。  こうした一酸化炭素中毒が発生しやすい場所というのは、換気が不十分な場所における火 器の使用とか、トンネル工事といった建設現場などで使われるガソリンエンジン、発電機と いった、いわゆる内燃機関などにおいて発生しているという状況です。  こうした一酸化炭素中毒による労働災害発生状況については、10頁の資料6-4-2に、第1 回検討会でご紹介した一酸化炭素中毒の例という形で掲げてあります。そこに書いてあるの は一例で、9頁に沿ってご説明いたします。  労働災害発生状況としては、毎年、災害調査復命書ベースで申しますと、例年40件前後 発生しているという状況です。その中で傾向として起因別で多いものは、内燃機関の使用に よるもの、その次に、調理器具の使用によるものといった順番になっています。  また、一酸化炭素中毒ではないのですが、屋外における有害作業による中毒災害も発生し ており、そちらの災害の事例は11頁の中毒災害の例ということで、屋外廃棄物の収集再生 業や、塗装工事業などの硫化水素や塩化水素といった中毒が発生しているという事例でご紹 介しています。こちらについても第1回の検討会でご紹介した災害です。  9頁に戻って、このような労働災害が従来から発生していますが、国においては、この中 毒対策に係る規定等、防止対策として、まず労働安全衛生規則の中で、内燃機関の使用禁止 の規定を設けています。「事業者は、坑、井筒、潜函、タンク又は船倉の内部、その他の場 所で、自然換気が不十分なところにおいては、内燃機関を有する機械を使用してはならない。 ただし、当該内燃機関の排気ガスによる健康障害を防止するため当該場所を換気するときは、 この限りでない」という規定を設けています。いずれにしてもこの条文では、換気が重要だ ということです。  また、一酸化炭素中毒を業種別で見た場合に多い建設業においても、平成10年に一酸化 炭素中毒防止のためのガイドラインを策定しており、作業環境管理として一酸化炭素にばく 露されるおそれがある場合の換気、また一酸化炭素中毒を感知するための警報装置の要件を 定めています。  このような中で、3つ目の○の「最近の労働災害発生状況を踏まえて講じた行政対応」に ついてご紹介いたします。「業務用厨房施設における一酸化炭素中毒による労働災害防止に ついて」という通知を昨年12月に発出したところです。これは昨年夏以降、全国各地の外 食チェーン等の業務用厨房施設において、この中毒が多数発生したことを受けて、飲食業の 業界団体に対して、一酸化炭素中毒による労働災害防止対策の実施事項の徹底を要請してあ り、1〜6に掲げる事項、とりわけ2番目に下線を引いた「一酸化炭素警報装置(いわゆる COセンサー)の設置等」の実施の徹底を要請、また災害が個別に発生した場合には、その フォローアップにも努めているところです。  こうした流れを受けて、今後考えられる展開としては、このあと西野委員にもご紹介いた だく鉄鋼業における対策でCOセンサーの着用を徹底しているという話があるわけですが、 鉄鋼業におけるCOセンサー着用による災害の防止事例などを参考にして、業務用厨房・内 燃機関における一酸化炭素中毒防止対策の一層の推進と、一部の特に有害な屋外作業におけ る化学物質による中毒災害防止対策の一層の推進が必要ではないかと整理いたしました。  なお、いま行政対応としてご紹介いたしました昨年12月の通知については、参考6-1と して18、19頁に掲載してあります。こちらは先ほど申し上げたように「ガス燃焼機器使用 中の換気の徹底等について」ということで、飲食業の業界団体に要請したもの。19頁は、 昨年夏以降に多発していたと考えている業務用厨房施設における主な一酸化炭素中毒によ る災害事例の紹介です。資料については以上です。 ○名古屋座長 ありがとうございました。 ○井上衛生専門官 いまご紹介した参考6-1のあとに、参考6-2として、西野委員よりご提 出いただいた「鉄鋼業における一酸化炭素中毒防止対策」についても併せてご紹介していた だきたいと思いますので、西野委員にお願いします。 ○西野委員 それでは、鉄鋼業の取組みについて、お手元の資料で簡単にご説明いたします。 まず最初に、鉄鋼業、特に高炉を使っている大きな製鉄所では、鉄を作る過程でどうしても 化学反応で一酸化炭素が発生してしまうことがあって、一酸化炭素を含んだガスの配管が製 鉄所構内にたくさんあります。この一酸化炭素を含んでいるガスを、また製鉄所の中では省 エネを兼ねて、燃料として再利用もしています。  ということで至る所に一酸化炭素ガスの発生源というか漏れ源というものがあるという ことで、2枚目のスライドにあるように、鉄鋼業の死亡災害の主立った原因のワースト3の 3番目に「有害物との接触」というのがあります。これは過去4年間で8件出ていますが、 8件中、7件までが一酸化炭素中毒による死亡例になっています。  次頁は、このように一酸化炭素ガスの中毒が非常に頻発して、鉄鋼連盟でも危機感を持ち、 とりあえず自分たちで何かをしなければいけないということで、自分たちでチェックリスト を作り、一斉点検をして災害防止に努めています。それを前後するように、厚生労働省から も行政指導があって「何とかしなさい、した結果を報告しなさい」ということが求められて います。  実際にやったことはその頁の下側の1〜8番にあって、これは大項目ですが、例えば一酸 化炭素が発生する設備等を特定しましょうとか、空気呼吸器をちゃんと準備しましょうとか、 私どもがCOモニターと呼んでいますが、一酸化炭素ガス50ppm以上になるとピーピー鳴 り出し、100ppm以上になるともっと連続音で鳴っていくという装着型検知警報器を個人個 人に持たせなさいということです。個人に持たせる以外に一酸化炭素ガスが発生する近辺に は、固定式の警報器をちゃんと付けなさいということです。  水封設備というのがありますが、これは修理をしたりするときに、ガスを止めるためにバ ルブではなくて、水を封入して水の圧力によってガスを止めようという設備です。これは水 圧がガスの圧力より強ければいいのですが、設計を間違えてガスの圧力のほうが増しますと、 水が飛んでいってしまってガスが漏れてしまうという問題がありますので、余裕代を持った 設計になっているはずですが、本当にそうなっているかチェックをしなさいとか。ガスを取 り扱う場合、特にメンテ関係、補修関係ですが、そういうときの手順等をちゃんと明確にし なさい等々、チェックリストを設けてチェックをしてもらいました。  その結果、上に災害の発生状況を棒グラフで表しておりますが、下側が休業災害で、上側 が重大災害です。例えば、2002年は休業の災害が3件、死亡災害が1件というように見て ください。ひどいのは2005年に休業災害が7件で、5名が亡くなられています。このよう な状況で2006年に徹底的にこの活動を行いました。その結果、パタッと災害がなくなって、 2009年は休業災害もなかったという状態になっております。  私は個人的には作業者、例えば作業者というのは通常の操業するオペレーターだけではな く、臨時に入ってくる補修施工者などにも一人ひとり、必ずCOモニターを付けなさいと。 COモニターを元請けがちゃんと支給してあげなさいということで、全員に持たせたのです。 これがいちばん効果的だったのではないかと見ております。  先ほどいろいろ話がありましたが、そういうモニターをどんな業界に持たせるかというと、 鉄鋼業はたまたま一酸化炭素ガス発生装置があって、そういうものを含んだガス配管が至る 所にあります。したがって、危険はどこにでもあるのだからということで持たせているわけ で、それが功を奏して、このように災害防止に役に立っているということの紹介です。 ○名古屋座長 ただいまの事務局の説明と西野委員の説明の中で、質問等はありますか。 ○山本委員 いまの説明の中で、下請けの方とかに同じ装備をやってもらうということが、 非常に有効だったということですが、それ以前は違う装備というか、業者によって違いがあ ったのでしょうか。 ○西野委員 基本的には一酸化炭素ガス管理区域に入るときには、代表者がCOモニターを 付けておきなさいとか、もしくは固定式のCOモニターを持っていきなさいというようにな っていました。ただし、補修工事などをやる場合、Aさんはこっち、Bさんはこっちと結構 バラバラに別れて作業をしますので、1人だけ持っていてもあまり意味がないということで、 5人いるのだったら、5人全員に持たせなさいということを徹底させました。 ○名古屋座長 1点お聞きしたいのですが、先ほどのガス使用モニターを50ppmと100ppm にしていましたね。例えば、我々が造船などのガス溶接の所に行くと、50ppmにすると警 報装置が鳴りっ放しなのです。通達の許容濃度が50ppmなのです。通達の許容濃度という のは作業環境での50ppmですから、ばく露はもう少し高めでいいのではないか。我々は 200ppmのときに警報で、200ppmよりもう少し高いときにという、濃度の設定がなかなか 難しいのですが、作業形態が違って、狭隘な所では造船と違って溶接をしていなくて、鉄鋼 の場合は炉前が多いのでということで50ppmと100ppmに決められたのですか。その辺の 濃度の決め方を教えてほしいと思います。 ○西野委員 基本的には、いま言われたように、規定に基づいて50ppmというのを決めて おります。50ppmにしているもう1つの理由は、どうしても反応するのに時間がかかって しまい、数秒かかります。これをもっと瞬時に反応してくれるものができればいいのですが、 6秒とか7秒かかると言われていますので、あまり大きな値にすると問題だということで 50ppmでやっています。  確かに場所によってはピーピー鳴るようなケースがありました。それで問題になったのが 1件あります。最後の頁にありますが、これはどちらかというと、比較的ピーピー鳴るよう な現場で作業をしていたのですが、そのときにこのぐらいだったらいいやと安易な考えでい たので、災害になってしまったのです。このように鳴るような所は完全にエアラインマスク を付けなさい、もしくは本当にゼロであることを確認できるまでは作業をするなということ を徹底しなさいということをお願いしたものです。 ○名古屋座長 炉前だとエアラインはできるのですが、小さな作業場ではエアラインという のはなかなか難しいですよね。 ○西野委員 はい。 ○名古屋座長 ほかにありますか。 ○橋本委員 これは事務局にお願いです。COセンサーを着用するのは大変結構なことだと 思います。石油業界は硫化水素がどうしても避けられませんので、弊社でも1,000台ぐらい、 大量に硫化水素モニターを作業員が使っています。故障が結構多くて、だいぶスタディもし たし、対策もしたのですが、メーカー2、3社に聞いたのですが、モニターとかガス検知器 もありますが、そういうのを売って、メーカーのほうは年1回とか、6カ月に1回とかメー カー点検というのをやっているわけです。定期的に戻して、若干の費用でセンサーを点検し て交換する。センサーの寿命は1年ぐらいです。ところが、メーカーから聞いたのは、売っ た機器の7割以上ぐらいは定期点検に戻ってこない。だから、メーカーとしても非常に不安 なのだが、一体どのように使われているのだろうか。おそらくセンサーはもう駄目になって いるに違いないということを言っていました。だから、定期点検を必ずやるようにというの が1つです。  あとはそれを1年に1回ぐらいやっても、使っている間に水とか衝撃とかでセンサーが駄 目になるというのが結構あります。弊社の中で、例えば1年間使っていて、メーカー点検前 にランダムにつかんで、そのセンサーが生きているか死んでいるかを調べると、機器にもよ るのですが、私が調べたデータでは、10台に1台から、40台に1台ぐらいが駄目になって います。これは命を守る機器ですから、見かけ上は生きているのですが、実は死んでいると いうのは、非常に怖いわけです。弊社の中では、これはとんでもないということで、いまは 例えば硫化水素のモニターですと、自分で標準ガスを用意して月に1遍は必ずチェックする。 ほかのガス検知器は使うごとに毎日テストしているのですが、こういうことを始めました。  海外の状況を調べたのですが、例えばアメリカでは、公社から使用ごとに標準ガスで確認 しろという推奨が出ていて広く行われています。ISEAという国際ガス検知器メーカー連合 だったか、そういう団体があって、そこも同じような推奨を出しています。だから、海外で はこういうことをやっている所は結構多いのです。  ところが、日本では全くそういうガイドラインもないし、またメーカーのほうも定期点検 だけだし、ユーザーのほうも意識が低いということで、これは大きな問題だと思ってきたの です。ですから、メーカー点検をやること、あるいはより頻繁に自主的に標準ガスでチェッ クをしろということで、こういうガイドラインを出していただいたほうがいいのではないか と思っている次第です。 ○名古屋座長 測定器と同じ形ですし、測定器よりも特に命に直結するから切実だと思いま す。 ○塩崎委員 災害事例で、一酸化炭素中毒の例が掲げられています。これらの場合では、調 理器具などの安全装置などは働かなかったのでしょうか、それとも外していたのか、又はそ ういうきちんとした安全面の設備がないため、このような災害が起こったのでしょうか。そ の原因によって対策や検討する内容が違ってくると思います。それと同じようなことは屋外 での作業、有害作業事例にもいえるのではないでしょうか。これも保護具とか、防毒マスク を付けるべき作業で付けていなかったためにこうなったのか。それによって検討する内容が 違ってくると思います。  だから、守っていないのだったら「守れ」ということになるだろうし、守っていて、なお かつこういう中毒災害が起こるのであれば、またほかの検討をしなければいけないしという 意味で、この例に対して本当に何が原因だろうかというのを、ある程度のことを紹介してい ただかないと災害防止の対応を考えるのは難しいという気がするのです。 ○奥村調査官 ご紹介している災害事例について、COセンサーがあったのか、あっても稼 働しなかったのかというのは確認できないのですが、業務用の厨房施設のバーナーやレンジ にはCOセンサーは付いていないというのが一般のようです。これは業界の方たちに実態を 前に伺う機会があって、伺ったのですが、そういうことでした。  家庭用には自動消火器が付いているので、私は業務用にもすぐできるのではないかと思っ ていたのですが、実は業務用にするには10万円近くかかって、できないというのが業界の コメントだったのです。ですから、確認できませんが、この災害事例でもたぶんなかったの だろうと思います。 ○井上衛生専門官 いま塩崎委員が聞かれた話は、COセンサーとか不完全燃焼防止装置と あるうちの後者のことを聞かれていたと思います。我々が業界にヒアリングした限りでは、 不完全燃焼防止装置は一般用には当然普及しているのですが、業務用の場合はずっと使い続 けるということもあって、少なくとも古い機器に関しては不完全燃焼防止装置が付いたもの がまだ残っているという状況があります。そうした中で、結果的にCOセンサーも使われな いようなことも含めて、例えばガスフライヤーが経年劣化したということによる不完全燃焼 が切っ掛けで、そのまま一酸化炭素中毒に至っているケースがいくつかあるという状況を、 我々は確認しています。 ○塩崎委員 有害作業はどうですか。防毒マスクなどは全然付けていない状況で作業してい たのですか。 ○奥村調査官 11頁の例ですが、これらはみんなマスクを付けていません。 ○塩崎委員 私は情報もそこまで確認していないのですが、防毒マスクを付ける作業ではな いのですか。 ○奥村調査官 屋内ではマスクの着用の義務もあるのですが、屋外作業の場合は、現在のと ころ、着用義務はありません。 ○橋本委員 ただ、防毒マスクも一般的には能力に限界がありまして、普通の半面型マスク ですと、どうしても濡れますから、一般的には中の濃度は外の濃度の10分の1ぐらいにな ってしまうのです。だから、こういう事例ですと、周りが非常に高濃度だから、防毒マスク の有り無しとは関係ないと思います。 ○名古屋座長 特に飲食店関係は、いま経産省の中でガス業界が、例えば年間事例がいくつ ありました、どういう事業ですという報告は出ていますから、それを見ればわかります。多 くの場合は、たまたま私は関わったときがあって、たぶん本来の目的と違った使用の仕方を してCOとか火災という形のものは多いかと思っています。こことは若干違うかもしれませ ん。  あともう1点、西野委員にお聞きしたいのですが、センサーを付けているほかに、一酸化 炭素を対象にした作業環境測定はやられているのですか。 ○西野委員 特化則に基づいて。申し訳ありません。このことは。 ○井上衛生専門官 特化則の場合は一酸化炭素を製造又は取り扱うという場合を第3類物 質として規制しておりまして、大量漏洩防止に関する規制措置になっています。今回お尋ね の件に限っては、副性として不完全燃焼などにより一酸化炭素ガスが発生するようなケース だと思いますので、そこについては直接規制上の測定はありませんが、ガイドライン上では 建設業などにおいては測定していきましょうという行政指導は行っています。 ○名古屋座長 できたら一酸化炭素についても、いまセンサーも確かにあるのですが、一酸 化炭素はリアルモニターがちゃんとできていますので、それを使った測定方法があって、あ る程度、作業でどのような一酸化炭素にばく露するかというのは系統的にできますので、そ ういうことを導入していただけると助かると思います、ということでした。ほかにお気づき の点はありますか。 ○福岡委員 質問ですが、西野委員からの話で、資料21頁の上のほうの図で、2005年か ら2006年にかけてガタンと改善したというのは非常に素晴らしいことだと思います。先ほ どのお話の中で、その対策の1つに施工業者の作業者にもモニターを全部支給したのがかな り有効だったのではないかということでしたが、済んだことで申し訳ないのですが、2005 年までの件数の中には施工業者が被災者だったという件数はかなりあるわけですか。 ○西野委員 施工業者が被害に遭われた例というのはあります。そのときにグループでは持 っていたのですが、それが有効に機能していなかったという原因が多かったです。 ○福岡委員 それは別の見方をすると、作業を発注する側が、作業現場の安全確保に抜かり があったということもあるわけですか。 ○西野委員 すみません。そこまではよくわかりません。 ○福岡委員 私も昔、元方の立場で、薬傷危険のある製品のむ製造現場にいて、その設備の 定期点検のときに、修理する工事業者が薬傷するという事例があって、相当対策に悩んだこ とがあります。結局はその作業者に薬傷のことをよく教育することと、工事に関わる設備の 洗浄、これは我々元方の作業者で徹底するということで、対応をかなりやった経験がありま す。元方としての安全確保に責任があったと思いますが、実はひょっとしたら11頁とか10 頁の災害の中に関連するものがどのぐらいあるのか。つまり、1つは事業者が自分の作業者 にやらせる作業について、どのぐらい危ない作業をさせているのかということをどこまで認 識しているのか。管理責任はどうなっているのかという議論はあまりありませんが、その辺 りにまでやっていかないと、こういうのはなかなか防げないのではないかという感じがしま す。  厨房などの場合も、ついこの間もパロマの瞬間湯沸し器の事例がありましたが、あのよう なことになってくると、機械の装置のメーカー、あるいはユーザー、それからメンテナンス とかいろいろな絡みがあるわけです。結局は物を燃やすと一酸化炭素が発生するのだという 危険性を、事業者、作業者にどのように教育して行き渡らせているのかという辺りは、どこ から手を付けていったらいいかというのが、共通した課題としてあるのではないかという気 がするのです。  11頁へ行きますと、これは一酸化炭素以外のものですが、この中にも特に廃棄処理物な どがきたら、自分たちが扱う品物がどんな化学物質か分からないままに扱わざるを得ないと いう現状があるとこを、どうやってカバーするか。そうなってくると、先ほどのセンサーを 増すという話のほかに、化学物質のメーカーから使用者から廃棄までの段階で、有害性の情 報をどうやって流していくのかという辺りも絡んでくる問題になるのではないか。それは今 日の議論の中に入らないかもしれませんが、その辺まで突っ込んでいかないと災害をなくそ うというところになかなか行き渡らないのではないかという感じがします。 ○名古屋座長 ほかによろしいでしょうか。 ○城内委員 資料6-4-1が提出された理由がわからなくて、お話を伺っていたのですが、ど ういうことなのでしょうか。 ○奥村調査官 鉄鋼連の取組みのように、COモニターの着用が災害防止に大きく貢献する という事例がありますので、私どもはそれをどんどん推進していきたいと考えております。 橋本委員からもメンテナンスが大事だと言われましたが、そういったものを含めたガイドラ インが必要なのかと考えています。  ただ、COセンサーの着用とかセンサーの設置を、事業主に義務付けるのはどうかなとい うことも実は考えていたのです。例えば住宅用の火災報知器は過去何年間かに分けて、各都 道府県で順次設置が義務付けられて、最後に東京都を含むものが義務付けられたということ もあります。一般住宅でもそのような規定があるわけですが、火災の場合には年間の死亡者 数がかなりの数ですし、被害の規模も大きいということで強制的な規制になっているところ です。  一酸化炭素中毒については、年間の中毒発生件数は30〜40件前後と少なくないわけです が、私どもの部内で罰則付きでやるまでは難しいのかなと感じているところです。ただ、対 策を講じなければいけない災害だとは認識しておりまして、化学物質の今後のあり方検討会 の中でも、これをリマークしていただいて、対策を強化したい、するべきだというご提言を いただいて、私どもは行政指導をさらに徹底していきたいという1つのけじめというか、場 にしたいと考えて、この資料を設けたところです。  冒頭申しましたように、化学物質の災害全体を遠くから見ると、やはり一酸化炭素による 災害が、ものとしてはかなり多いわけです。それを抜きにして、いわゆる有機溶剤、特化則 のようなもののリスクアセスメントのようなことだけを議論していくと、その実態との乖離 ができる点を心配して、これについても、この検討会ではきちんと目を届かせているという 整理にしたいと思って付けた次第です。 ○城内委員 わかりました。では、私の意見を言います。教育に関する問題とか、ご提案が いろいろあったわけですが、基本的に労働災害もほかの消費者の問題もそうかもしれません が、教育をやり続けるというのは、私はそんなに簡単ではないと思っています。それの方法 の1つとして、以前から言っていますように、ちゃんとそこに情報がある、ラベルに表記す るというのが1つだと思っています。  一酸化炭素中毒について言えば、臭いもないし、色も付いていない、吸うとすぐに死んで しまうという意味から、たぶんいくら教育をしても、鉄鋼業における事例はすごくいい事例 だと思いますが、このようにうまくいくことはそんなにないのではないかと思いますので、 これだけ危ないものを扱う、かなりの確率で災害が起きる所については、やはりセンサーを 付けるとか、持たせるということを、少し強烈に進めてもいいのではないかと個人的には思 っています。 ○西委員 この検討会の1回目に事故例の紹介がたくさんありました。化学業界とか鉄鋼業 とか、いわゆる化学物質を扱っている、よく知っているという業界の人が起こした事例のほ かに、今回のものでもそうですが、例えば飲食店とか、宿泊業などの業界の事故例も多かっ たと思います。一酸化炭素だって、化学物質だと思っている人は、たぶんそういう人たちに はいない業界と思います。これからそういうところも含めて化学物質管理をやっていく、災 害を防止する、教育をどのようにやっていくのかが課題になると思います。  例えば、ここにお集まりの方に「教育をしっかりやってくださいね」と言ったところで、 たぶん飲食店の方々の事故を防止することはかなり難しい。これはテリトリーが違うので、 どうなるか知りませんが、例えば保健所を経由して飲食店とか、宿泊業などに注意喚起をす るとか、そういう形でもっと底辺を広く教育をしていかないと、ここまでシラミ潰しにやる のはかなり難しいのではないかという気がします。 ○奥村調査官 厨房施設のガス機器については、例えば東京ガスとか大阪ガスのような大手 が、大口のお客さんの厨房施設に無償でCOガスセンサーを設置するという対策を進めてい ると聞いています。私どもも経済産業省と連携をとって、そういった取組みが広がるように、 業種をローラー式に押さえていくという対策が必要なのかと考えております。他方、建設業 での内燃機関による一酸化炭素災害が多いですので、こういったものが建設業という業種の 団体等から、COセンサーの着用をジワジワ普及させていきたいと考えているところです。  あとは福岡委員がおっしゃった廃棄物処理業でのよくわからない化学物質に中毒すると いうのは、事業場内表示のような制度が定着して、容器にすべて何からのマークが付くよう になると、それがゴミとなって廃棄物処理業者にわたっても、取扱いに注意喚起されるよう になるのではないかという期待もあるところです。 ○名古屋座長 業種は、いまは例えば鉄鋼とか造船は出てきたのですが、鋳鉄の鋳物をやっ ているときも一酸化炭素は出てくる。結構立ちくらみが多いのです。なぜかというと、でん ぷんを使って出てきますので、一酸化炭素はかなり高い濃度が出ているのです。たぶん鋳物 を扱っているときに一酸化炭素が出てくると思っていないから変わってないのですが、業種 的に一酸化炭素の発生等は調べられます。  もう1つは厨房ですと、ガスの発散とセンサーを付ける位置はいいのですが、ほかの作業 は、作業形態によってセンサーを付ける位置によって応答の遅れが出てきます。ですから、 できたら作業者に付けるという形でうまく指導していく。できたら難しいでしょうが、橋本 さんがやっているようにメンテをきちんとする。作業環境測定という形の中で、屋外測定と いうのがありますから、そういう形のものをうまく作っていって、できたら化学物質中毒予 防・防止の一層の促進を図る必要という形で何かしていただければ有り難いと思っています。 ○西委員 産業廃棄物については、マニフェストを付けて、きちんと処理がやられています という形の流れと認識しています。普通の化学物質の場合は、ラベルをきちんと貼ってとか、 情報伝達をする。廃棄物についても、例えばマニフェストにどういうものが含まれているか を付けて流していくとか、そういう形で情報を共有化すれば、下流のほうで少しは事故防止 になるのかなという気がします。 ○名古屋座長 廃棄物のところは日本作業環境測定協会で1回、我々が廃棄物取扱い作業者 のばく露を測定しているのです。そこを参考にされると、一酸化炭素は当然ありましたし、 ほかの化学物質についてとか、金属類だとか、いろいろやりましたので、その辺も報告書を 見ていただくと、ある程度廃棄物処理のところはつかめるかなと思います。参考として見て いただければと思います。 ○奥村調査官 廃棄物の正規の取扱い、引渡しで送っている場合はマニフェストも付くので しょうが、倒産して、空になった工場を依頼されてきれいに掃除して、そのときには誰も管 理していないという実態があって、災害も起こっておりました。 ○名古屋座長 そうしましたら、この件のところはあとでということで、今日のところでは やりません。今日は一応これで終わりまして、また次回以降、検討することになるかと思い ます。  そうしましたら資料6-5-1、本来の骨子ということの中で、説明していただきながら進め ていきたいと思います。それでは、検討要項、報告書の骨子案を、事務局から説明をお願い します。 ○半田化学物質対策課長 お蔭さまで私どもが用意しておりましたテーマは、ひとわたり先 生方にご議論いただきました。かなり詳細にご議論いただいたものもありますし、なおもう 少し深掘りが必要なものもあるかもしれませんが、一応今日のところで出揃ったということ で、報告書の骨子案としてとりまとめてみました。  ただいま申しましたように、ものによってはかなり具体的にご議論いただいているものも ありますし、なお検討が必要なものもあります。そういった部分はこの報告書の議論をしな がら、少し必要に応じて深掘りをしていただければと考えております。それから、「論点の 整理」として資料6-2をお配りしてあります。この中ではア、イ、ウと大きく3つのテーマ があったわけですが、報告書をまとめるに際して、アの「危険有害性情報の伝達・活用の促 進」の部分は、そのまま1つの柱としていますが、イの「自主的化学物質管理の促進」、ウ の「より柔軟な規制への見直し」というように示した部分に関しては、15頁の(2)リスクに 基づく合理的な管理の促進という項目で、ひとまとめにしております。  もう一度全体を申しますと、12頁の「はじめに」で、現状などを申し述べて、14頁の3 「職場における化学物質管理のあり方」からが、今回ご検討いただいた内容のとりまとめと なっています。先ほど申し上げましたように「論点整理」の中で、アの「危険有害性情報の 伝達・活用の促進」としていた部分は、「(1)危険有害性情報の提供の促進」という項目で整 理してあります。そして、ただいま申し上げましたように「論点」のイとウの部分に関して は、15頁「(2)リスクに基づく合理的な管理の促進」というようにまとめてあります。  中身については、いくつかこの中でご議論いただくところがありますが、いまの(2)の、 16頁のウの「局所排気装置の要件等の柔軟化」については、制御風速、抑制濃度について は引き続き慎重に検討していくということが書かれていますが、管理についても言及してい ます。今日はご議論の中で、発がん性物質などは除いたほうがいいのではないかというご指 摘もあって、そういったことはまだ書かれていませんが。失礼しました。書いてあります。 では、発がん性物質は除くということです。  それから、17頁の(3)専門人材の育成・専門機関による管理の促進は、「論点」のエにあ るわけですが、ここはまだご議論があまり十分にいただいてないかと思いますので、とりあ えず3行ほど書いてあり、必要に応じてまだご議論いただければと思っています。  (4)は今日ご議論いただいた一酸化炭素中毒のことに関して、この辺に1項目設けさせて いただこうと考えています。こういったことで6頁にわたって骨子案を作ってあります。詳 細を係の者から読み上げます。 ○村上技官 読ませていただきます。  「職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会報告書(骨子案)」。1はじめ に。平成17年、労働安全衛生法が改正され、法令で定める化学物質について、その危険有 害性情報を国連勧告(GHS)に基づいて分類し、同情報を表示(ラベル)や文書(MSDS)で提 供する取組みがわが国に定着しつつあるところであるが、化学物質による業務上疾病が毎年 200〜300件前後発生しており、その発生状況をみると、容器等への危険有害性の表示等に より事業者・労働者に化学物質の危険有害性情報が伝達されていれば防ぐことができたもの が少なくない。また一日(8時間)のばく露量でみると健康影響のリスクが小さい作業であ っても、現行の作業環境測定の手法では過度に有害な作業場に評価され、設備についての過 剰な改善等が求められるおそれがある場合があるなど、リスクに基づいた規制への見直しの 必要性が指摘されている。  このような状況に加え、平成14年の持続可能な開発に関する世界サミットの合意、これ を達成するために平成18年2月に提案された「世界行動計画」に示された項目を踏まえつ つ、上述の課題に対応するため、職場における化学物質管理のあり方について検討を行った。  2現状。(1)化学物質(危険物、有害物)に起因する労働災害が、年間600件〜700件程 度発生している。(2)化学物質に起因する業務上疾病は年間200件〜300件程度発生してお り、そのうち1/4が特別則の規制対象外物質によるもの(業務上疾病調べ)であり、MSDS の交付対象物質以外による災害も少なからず発生している。また、新規化学物質の届出数は 10年前の2倍の水準(約1,500件/年)に達しており、職場で使用される危険有害な化学物 質の種類が増加している。  (3)化学物質による中毒等の労働災害は、業種別には製造業のみならず多様な業種で発生 している。特にサービス業等においては、化学物質の危険有害性について十分認識せず、労 働者への教育もなされずに災害が発生しているケースが見受けられる。事業場の規模別では、 中小規模事業場で多く発生している。  (4)危険有害な化学物質の容器等に表示がなかったため労働者の不安全な取扱いを誘発し たと思われる災害が年間30件程度発生している。現行規制では譲渡提供時に容器等への名 称、取扱い上の注意等を記載したラベル表示は義務付けられているが、工場等において労働 者が直接取り扱う容器等については、表示は義務付けられていない。  (5)化学物質についてのリスクアセスメントの実施率が低い(43%)。事業場の規模が小さ いほど低い傾向がある(労働環境調査報告:厚労省)。  (6)リスクアセスメントについてのアンケート調査で1/4の事業場が「実施するに当たっ て十分な知識を有する人材がいない又は不足している」と回答し、次いで「時間がない」、 「よく分からない」との回答が多い(中災防調べ)。  (7)他方、欧州を中心に、MSDSに記載されている情報の一部や事業場での取扱い状況の概 要をコンピュータソフトに入力すると、自動的に大まかなリスクアセスメントを実施する、 より簡便なリスクアセスメント手法が開発され、事業場に導入されているところである。  (8)有害物の発散が1日に数回しかなく、それ以外は無視できるほどの低濃度となる工程 が行われる作業場や、有害物が発散する区域に労働者は一日数回しか立ち入らず、その外部 には有害物が漏洩しない作業場などについては、現行法令に基づくA測定・B測定では過 度に有害な作業場に評価され、設備についての過剰な改善等が求められるおそれがあるとの 指摘がある。他方、これらの作業場に対し欧米等諸外国で行われている個人サンプラーによ る測定を実施した場合には、健康影響が生じないレベルと評価されるとの指摘がある。  (9)作業環境測定の結果については労働者が自らの作業環境の状況を知りたいと思っても 容易に確認できる仕組みとなっていない。このため労働者が健康障害を受ける可能性がある にも関わらず、それを知らないまま作業を続けるおそれがあるとの指摘がある。  (10)局排等の要件(制御風速、抑制濃度)について、第1管理区分が継続している場合、 局排の要件による規制は必要なのかという指摘がある。また、局排等の屋外排気のためエネ ルギーを過剰に消費させている等の問題点が指摘されている。  (11)有害物の発散抑制措置は、原則として密閉化か局所排気装置以外の工学的対策は認め られていない。その結果、局所排気装置以外の発散抑制対策の技術開発が妨げられていると の懸念がある。  (12)化学物質による中毒災害をみると、発電機等の内燃機関、外食産業や食料品製造業の 厨房施設から発生するCOによる中毒災害が多く発生しており、物質別にみるとCOは中毒 災害の約30%を占めている。このような状況の中、鉄鋼業においては、COセンサーを労 働者に着用させる自主的な取り組みにより、CO中毒の大幅な減少を達成している。  (13)周囲に風除けを設けての溶接作業、防音シートで覆われたビル外壁工事など一部の特 に有害な屋外作業については、中毒災害も発生しており、より充実したばく露防止対策が必 要との指摘がある。  3職場における化学物質管理のあり方。(1)危険有害性情報の提供の促進。化学物質管理 の原点は、その化学物質の危険有害性の情報を把握することであり、すべての化学物質につ いての危険有害性情報は、すべての関係者に伝達されなければならない。このため、職場に おいては、次の方向で職場における化学物質管理を推進する必要がある。アすべての危険有 害な化学物質についての情報提供を確立。職場において使用されるすべての危険有害な化学 物質について、GHS国連勧告が示すように、譲渡提供者から譲渡提供先の事業者に対し、 ラベル表示及びMSDSによる危険有害性情報の提供制度を確立する必要がある。ILO170 号条約(日本未批准)では、事業者は化学物質にラベル等を付し、労働者にその危険有害性 情報を提供する責任があり、労働者はその物質名、危険有害性情報等を知る権利があると定 めている。製造業のみならずサービス産業等のすべての業種において、労働者自身が取り扱 うすべての危険有害な化学物質について情報を認識することにより、職場における化学物質 の安全な取扱いが促進されることが期待される。  イ譲渡提供時の情報伝達。わが国の労働安全衛生法令では100物質をラベル表示の対象 とし、640物質をMSDS交付の対象としているように、情報伝達の対象となる物質は限定 されている。他方、欧州の「化学品の分類、表示、包装に関する規則」(CLP規則)では全 ての危険有害な化学物質を情報提供の対象としている。対象物質を法令で指定して追加する ことについては、対象物質についてのみ情報を伝達すればよいと受け止められるおそれがあ ること等の問題を踏まえ、引き続き慎重に検討する必要がある。  ウ事業内で使用する容器への名称等の表示。化学物質に起因する労働災害の防止を図るた めには、譲渡提供者から譲渡提供先の事業者に対する情報提供の確立と併せて、小分けした 化学物質を直接取り扱う労働者等に情報を提供することが必要であることから、事業内で使 用する容器等への名称等の表示制度を導入する必要がある。事業場内における表示制度の導 入に当たっては、職場に存在する化学物質の種類等の状況、取り扱う労働者の化学物質につ いての知識レベル、容器の大きさ等の物理的制約、過剰な情報の記載による情報伝達効果の 低下などに十分配慮し、代替措置を認めるなど一定の柔軟性をもたせる必要がある。事業場 内表示制度の円滑な導入のため、国は、表示制度の指針、通達、パンフレット等により、表 示制度の趣旨を踏まえた望ましい表示のあり方、代替措置を含め最低限実施すべき措置を示 すべき。また、事業者への研修等の支援が必要。  エ労働者教育の充実。提供される情報について、GHSに基づく絵表示の意味等を労働者 が理解しないと情報伝達が行われたことにはならない。化学物質の危険有害性、表示の内容、 情報の活用方法等について、管理者と労働者の双方に対する教育の内容を充実することが必 要。  オ作業環境測定の結果の労働者への周知。ILO156号勧告(1977年)は、労働者は作業 環境測定の結果を知る機会が与えられるべきこととしている。周知方法は作業場への掲示や ファイルの備え付け等によることとし、その内容は作業環境の評価結果(管理区分)とする 方向で検討する。この取組みにより、事業者による作業環境の改善が速やかに行われること、 労働者の保護具着用等、作業規程の遵守の徹底等の効果が期待される。ただし、測定の結果 第2管理区分又は第3管理区分となり、作業環境の改善が必要となる場合については、衛生 委員会での調査審議や労働者からの意見聴取をしつつ今後の対応を検討し、対処方針も関係 労働者に伝達する必要がある。さらに、産業医による作業環境測定の結果を踏まえた適切な 産業保健活動の推進が必要。  (2)リスクに基づく合理的な管理の促進。表示、MSDS、作業環境測定等により提供され る危険有害性に関する情報を踏まえ、リスクアセスメントの実施による合理的な化学物質管 理の実施を促進するべきである。このため、次の方向で職場における化学物質管理を推進す る必要がある。  アより簡便なリスクアセスメント手法の導入。(以下のような論点で検討を行う)。化学物 質管理についても専門的な人材がいない事業場においても実施可能な、簡便なリスクアセス メント手法(国際的にはコントロール・バンディングと呼ばれており、インターネットでの 対話型処理やダウンロード可能な表計算ソフトなどがある)をわが国の実情に合うように開 発し、導入する必要がある。より簡便なリスクアセスメント手法は、本来のリスクアセスメ ントを補完するものとして位置づけ、本来の手法を自ら実施できる事業場については引き続 き本来の手法により実施することとし、専門的な人材がいないこと等により、本来の手法に 対応できない事業場を対象にその導入を図る必要がある。導入にあたり、中小規模事業場や サービス業の事業場等を対象に含め、研修の実施、相談窓口の設置等の支援が必要。  イ個人サンプラーによる作業環境測定の導入に向けた検討。(以下のような論点で検討を 行う)。個人サンプラーによる測定について、当面は、A測定・B測定による測定では濃度 を過大に評価してしまうおそれがある一部の作業を対象に、法定の作業環境測定方法として 導入することについて検討するべきである。導入に当たっては、一部の作業を対象に従来の A測定・B測定との選択制にするなどにより、事業者の負担とならないようにする必要があ る。なお、個人サンプラーによる測定の導入のためには、測定と評価方法の整備、個人サン プラーによる測定を適切に実施できる能力を有する者の養成等が必要。  ウ局所排気装置の要件等の柔軟化。(以下のような論点で検討を行う)。局所排気装置の要 件については法令において詳細に定めてきたところであるが、作業環境測定の結果に基づき、 より自主的な管理を促進するべきである。このため、例えば局所排気装置の排気を清浄化し、 センサーで連続モニタリングする場合は、排気の屋内への還流を認めるなど、局所排気装置 の要件についてより柔軟な対応が可能とする必要がある。ただし労働者への健康リスクの大 きな発がん性の化学物質については、排気の還流の対象から除外する必要がある。なお、局 所排気装置の制御風速、抑制濃度の要件は、作業環境測定による管理が行われている限り不 要ではないかとの指摘があったところであるが、これらを撤廃しても労働者の安全性が損な われないことの根拠が必要であるとの意見を踏まえ、その撤廃は慎重に対応する必要がある。  エ局所排気装置以外の発散抑制方法の導入。(以下のような論点で検討を行う)。労働安全 衛生法令に基づく有害物質の封じ込め対策として、密閉化の他、局所排気装置とプッシュプ ル型換気装置以外の発散抑制方法が導入できるようにする必要がある。局所排気装置以外の 発散抑制方法を導入する条件としては、当該発散抑制方法により気中濃度を一定以下に抑制 できることを確認するとともに、気中の有害物の濃度が継続して一定以下となることを担保 できることを条件とする。そのためには、定期的な監査・パトロールの実施による維持改善、 リアルタイムモニタリングの実施、一定の要件を満たす専門家の参画等による方法が考えら れる。  (3)専門人材の育成・専門機関による管理の促進。(以下のような論点で検討を行う)。ア 化学物質管理の推進のためには、各事業場において化学物質管理を担う専門人材を養成する とともに、中小規模事業場、化学工業以外の事業場等が利用できる化学物質管理の管理代行 機関の育成について検討が必要。  (4)CO中毒、一部の屋外作業におけるばく露防止対策の検討。鉄鋼業におけるCOセンサ ーの着用による災害の防止事例等を参考にして、厨房・内燃機関におけるCO中毒防止対策 の一層の推進と、一部の特に有害な屋外作業における化学物質による中毒災害防止対策の一 層の推進が必要。  以上です。  ○名古屋座長 ありがとうございます。骨子ということで長いですので、個別に進めていき たいと思います。資料6-5-1の「はじめに」という辺りから進めていきたいと思いますが、 ここにつきましていかがでしょうか。 ○堀江委員 「はじめに」の3行目の終わりに「化学物質による業務上疾病」ということが 出てくるのですが、これはおそらく休業4日以上の化学物質の数値であろうかと思います。 そうであれば、本来は、もっと症例数は多いのであろうと思います。症例数は休業4日以上 の数字であることがわかるように記載していただければと思います。  これは確認ですが、どちらかというと急性の中毒を主体に全体が論じられているように思 うのですが、慢性のもので化学物質による発がん等の数字もこれは含めたものでしょうか。 ○奥村調査官 私どもが災害統計として業務上疾病として把握できているものがこれでご ざいまして、慢性疾病であっても業務上というように認定されたものは入っております。 ○堀江委員 承知いたしました。 ○奥村調査官 はい。がんも入っております。 ○堀江委員 逆に、一般の粉じんという分類になっているものは入っていないわけですね。 ○奥村調査官 入っていません。 ○堀江委員 やはり休業4日以上ということですね。 ○奥村調査官 休業4日以上です。 ○廣川委員 最後のほうの行にあります「世界行動計画」の前に、SAICMという言葉を入 れていただいたほうが分かりやすいのではないかなと思います。それと世界サミットについ てもWSSDという言葉を使われたほうが、一般的にわかりやすいのではないかなと思いま すので、よろしくお願いします。 ○名古屋座長 わかりました。そこを修正するという形ですね。あとほかにお気づきの点、 よろしいですか。 ○豊田委員 真ん中辺りのパラグラフの最後に「リスクに基づいた規制への見直しの必要性 が指摘されている」というのがありますが、規制だけではなくて今回の場合には、自主管理 というのもメインになっていますので、そういう文言も、ここにも盛り込んでいただけたら と思います。 ○名古屋座長 ありがとうございます。ほかによろしいですか。今日だけではなく、またこ の後たぶん議論をすると思いますので、お気づきの点だけで、また次回以降、検討できると 思いますが、よろしいですか。そうしましたら引き続き12頁、13頁にかけて「現状」とい うところで何かありますでしょうか。 ○堀江委員 13頁の(9)は、測定結果の労働者への通知といったことが触れられていますが、 この前後に作業環境測定の結果を評価したあとでの改善のあり方、作業環境測定結果の利用 の仕組みのようなものが、本来もう少しあるべきではないかという議論がこれまでの委員会 で示されていたように思います。対策のほうには少し出てくるところもありますので、「現 状」のところで、測定結果に対する作業環境改善、あるいは作業の改善といったことを、ど のようにしていくのかということが明確になっていないということを、挙げておいていただ ければ有り難いと思います。  少し付け加えますと、人間側の評価についても、健康診断の実施に関する長年の歴史の中 で、平成8年の労働安全衛生法の改正のときに、健康診断結果の利用についてそれまで法律 で規定されていなかったところ、有所見の結果については、医師に必ずその対策について意 見を聞いて、その対策を事業者が実施するという法律の条文が加わった経緯があります。し たがって、作業環境測定の結果についても同じように考えれば、本来その結果をもっともっ と専門家が利用する仕組みづくりを進めていくべきでないかと思っています。以上です。 ○西委員 (2)の後半のほうに「新規化学物質の届出数は10年前」云々というのがあるので すが、確かに増えてはいるのは事実なのでしょうけれども、基本的に新規化学物質は安全性 を確認してから使うということになっているので、このままいくと新規化学物質は全部危い のだというようなニュアンスに取れてしまうので、ちょっと違和感を感じました。既存物質 のほうがむしろ安全性なんか確認されていないので危いのだというような議論もあります ので、ちょっと表現を考えていただけたらと思います。 ○名古屋座長 そこもよろしくお願いいたします。あとほかにはよろしいですか。 ○橋本委員 (8)の下から3行目で、「これらの作業場に対し欧米等諸外国で行われている個 人サンプラーによる測定を実施した場合には」というのがあるのですが、冒頭でも言いまし たように、個人サンプラーによる測定そのものが問題があるのではなくて、これは8時間測 定を行ったときに、こういうふうに出るということなので、そのように注釈を入れていただ いたほうがいいと思います。 ○名古屋座長 はい、わかりました。これは先ほどと同じですね。 ○福岡委員 (5)の「リスクアセスメントの実施率が低い(43%)」という数字の件ですが、 これはたぶんいちばん最初に出た話ですね。この数字のベースは化学物質を扱っているとい う意識のある事業場についての調査であったと思いますので、これをこう書いてしまうと、 全国的に非常にいい数字というふうに見られて、実際は下手すれば1桁ぐらい違うかもしれ ないような可能性の数字になる。この数字はよほど注釈を付けて入れないと、マイナスでは ないかという懸念があります。 ○名古屋座長 わかりました。1%の算出のところのベースについて。 ○福岡委員 そのベースがかなり、化学物質を扱っているということを本当に意識している 工場の中で調べた数字だったと思うのですね。ところが世の中には自分たちが化学物質を扱 っていると意識せずに扱っている事業場がたくさんあるのですが、そういう人たちは含まれ ない母集団からの調査だったと思うのです。たぶん1カ所か、2カ所。 ○名古屋座長 わかりました。では修正する形にします。ほかによろしいですか。 ○廣川委員 13頁の(12)番で「COによる中毒災害が多く発生しており」と書いてあるので すが、できましたら具体的な数値を書いていただけないかなと思います。 ○名古屋座長 可能な限り、そこのところも修正という感じでよろしくお願いいたします。 ○市川委員 中身のことではないのですが、骨子という段階だからこうなのだろうと思いま すが、ずらっと並んでいるので、案にまとめる際にはタイトルで括るなりして、読みやすい ように少し工夫をしていただければと思います。 ○名古屋座長 たぶんいまのところ、たぶん一個一個チェックするという形だと思います。 たぶん直すかと思います。そうしましたら、いまのところまでよろしいでしょうか。次回以 降もたぶんもう一度やると思います。そうしましたら14頁の「職場における化学物質管理 のあり方」ということの中で、(1)危険有害性情報の提供の促進のところだけ、15頁の真ん 中までの間で、何かお気づきの点がありますでしょうか。ここはかなり議論をしたところだ と思います。 ○宮川委員 表現で気になったのは、(1)のアにありますような「すべての危険有害な化学 物質についての情報提供」という、危険有害な化学物質という言い方は、危険有害な化学物 質とそうでない化学物質があるという前提のもとに書かれていると思うのですが、わからな いものとか、あるいは量によって違うということもあり、二分できるものではないと思いま す。(1)の2行目の「すべての化学物質についての危険有害性情報」という方がより適当と と思います。「すべての危険有害の化学物質」という括り方で書いたところを、再検討して いただきたいと思います。  次は確認をお願いしたいのですが、イの「譲渡提供時の情報伝達」の最初の●の最後の行 ですが、欧州のCLP規則では「全ての危険有害な化学物質を情報提供の対象としている」 と。これも本当にそうなのかどうかをお願いいたします。 ○名古屋座長 わかりました。よろしくお願いします。 ○西委員 これはすべての危険有害物質が対象です。要するにクライテリアに合致するもの は全部対象ということになっています。危険有害な、例えば燃えるというものについても、 これ危険ですから、そういうクライテリアに合致する危険有害なものはすべてCLPの対象 となっています。 ○宮川委員 いまの最後の言い方だと非常にはっきりしていると思うのですが、すべての危 険有害な化学物質をというのと、いまのクライテリアで判断したときに合致するというのが、 私の感覚だとちょっとずれるのですけれども。一般の方が受け取ったときには、そこがどう なるかというのが疑問なところではあります。 ○西委員 条文の細かい表現は未確認ですが条文の表現はこんなようなニュアンスの表現 です。 ○福岡委員 これは危険有害性は認められたすべての化学物質、そのような表現にしたら。 ○西委員 危険有害性というのはいわゆる健康有害性だけではなくて、物理化学的なものも 含まれています。 ○宮川委員 それはそれでいいのですけれども。そうではなくて、要するに一定のレベル、 基準を作って、そこを超えたものを危険有害な物質として、それについてという。 ○福岡委員 そうです。たぶん危険有害性が認められたすべてのと、そのような。 ○西委員 ニュアンスとしてはそのような感じですね。 ○名古屋座長 そこのところを誤解があるといけませんので、少しだけわかりやすく具体的 にということだと思います。 ○福岡委員 いまの情報提供、情報伝達のところですが、化学物質のリスクアセスメントに 関しての義務付けでは、まずすべての化学物質は、すべての事業場がやらなければいけない という文面だったと思うのです。そのことはイの譲渡提供時の中に、リスクアセスメントの 実施義務からいっても提供をする必要がありますよと、そのようなことも書いておく必要が あるのではないかという意見です。その場合はすべての化学物質について危険性及びまたは 有害性についての情報を提供する必要、伝達する必要があるというふうな文言は、このイの どこかに入れておくべきではないかと思います。 ○豊田委員 (1)のタイトルの「危険有害性情報の提供の促進」のところなのですが、これ は当初の議論の中で、対策としてこの提供の促進だけでは駄目で、活用も必要ということが あったので、この「論点の整理」も「伝達・活用」というふうに並列に置いていると思うの ですね。ですから(1)のタイトルのところは、危険有害性情報の伝達・活用と並列に表現 すべきではないかなというふうに思います。 ○名古屋座長 付け加えるということですね。 ○豊田委員 そうです。 ○名古屋座長 促進と活用という形で加えてくださいということだと思います。あとはよろ しいですか。一応ずうっと追っていく形になります。 ○堀江委員 15頁のオの最後の●は、明らかに産業医の話ですので、このオのタイトルに は入らないと思いますから、できれば「カ」というのを作っていただければ有り難いなと思 います。 ○名古屋座長 さらにということですね。 ○堀江委員 そうですね。先ほどの繰り返しで、作業環境測定の結果というのを、もっと産 業医その他の専門家に必ずきちんと伝えて使うという仕組みを提言したいと思います。 ○名古屋座長 わかりました。委員の言われるように、できたら「カ」を作って処理しよう と思います。 ○豊田委員 労働者教育の充実辺りに、危険有害性情報の伝達・活用の一環として、GHS、 MSDS等の普及の仕組みといいますか、そういうものが必要とのことで議論されたと思い ますので、そこも書いておいていただければとおもいます。できれば1つ項を起こすという ことでお願いします。 ○名古屋座長 「キ」にするかどうかは別にしましても、要するに普及の仕組みという形の ものを入れてほしいということだと思います。ありがとうございました。ほかによろしいで しょうか。 ○福岡委員 いまの労働者への情報の周知のところですね。50人以上の所ですと衛生委員 会があるけれども、50人未満の所はそれがないのでという議論があったので、いまの法体 系では規模によって情報の伝達に不十分な面があるなと。そういう辺りのところはどう対応 するかという問題点がある。どこに入れるかは別なのですが。 ○名古屋座長 ここのところ入れておいたほうが、先ほど言われたように小さい所、50人 以下の所はなかなか伝わりにくいよという議論がされましたので、その辺のところに入れて いただければ。 ○奥村調査官 最後の2つ目の●に、「衛生委員会での調査審議」とあり、これが50人以 上の規模の事業場で、次に「労働者からの意見聴取をしつつ」とあり、これが小規模事業場 のものとして手当てしたつもりだったのですが。 ○豊田委員 参考6-5に再配布ということで、「表示、MSDS交布に係る規制のあり方につ いて」、見直しのイメージ図がございますね。これは前回説明があったと思うのですが、こ れは、MSDS交付の対象物質を規制で追加・拡大していくよりは、GHS分類により危険有 害とされるすべての化学物質について)、今回、点線のところを実線践にして法的根拠のあ るという指針に変え充実させたいと理解していますが、。本骨子案ではここの表現がほとん ど出てきていないのですが、やはり何らかの形でこのイメージ図を文章化しておく必要があ るのではないでしょうか。 ○名古屋座長 まだ若干決めていないところがありますから。いまたぶんそういう表現にな っているのだと思います。次回以降そのところをもう少し。 ○奥村調査官 豊田委員のご発言をもう一度確認したいのですが、参考6-5で「指導勧奨か ら対応を強化」という、この言い回しをどこかに書くべきではないかというご趣旨。 ○豊田委員 もう一度、説明していただけますか。 ○奥村調査官 参考6-5の点線による、指針による「表示、MSDS交布の指導勧奨」とい うのを、参考6-5の右のほうでは「対応を強化」というふうに書いてあると、これについて の話とは違ったのでしょうか。 ○豊田委員 私が言っていますのは、14頁の「アの1番目の●」において、GHS分類によ り危険有害とされるすべての化学物質について、その情報の提供制度を確立する必要がある と記載しているが、一方でMSDS対象物質を法令で指定して追加するということについて は、「イの2番目の●」において、慎重に検討する必要があるというところでとどまってい るように見受けられ、参考6-5のイメージ図で受けた説明が適切に文章化されていないので はないかなと、そういう問です。 ○名古屋座長 6-5の資料のところが、このイメージと文章で、少しここのイメージが文章 に盛り込まれていないのではないかなということですか。  ○半田化学物質対策課長 私は最初は6-5をお示ししてご議論をいただいたわけです。その ときのイメージでは、すべてのというところの表現は、先ほど宮川委員のご指摘にもござい ますように、どう書くかは考慮しますが、平たく言いますと、すべての危険有害物質につい ては、広くいま指導勧奨でやっているものを、もう少し対応を強化しますよというのが1 点でございました。それから、物質を指定してMSDS等々を拡大していこうということも ちょっと考えていたのですが、それについてはここでのご議論で、それは慎重にやっていく べきだというお話だったと考えております。  この資料は当初、私どももそういう素案を基にした資料としてお示ししたものですので、 そのままお出ししていますが、結論といたしましては、化学物質の指定をもっての対象拡大 はただちには行わない。それで外側の指導勧奨の部分を強化するということになったと考え ていますので、この報告書骨子の中では、まず外側の部分については、すべての化学物質に ついて云々。例えばイですと、イの最初の●では「全ての危険有害な化学物質を」云々と書 いてございまして、2番目の●で、対象を法令で指定して追加することについては慎重に検 討をするということで、今回は見合わせるという趣旨を盛り込んでいるつもりなのですが。 ○豊田委員 「アの1番目の●」と「イの2番目の●」は、セットの表現と思いますので、 仮に「イの2番目の●における「慎重に・・・」というところが、検討の末、結果的には、 MSDS交付義務対象物質を拡大するかもしれませんということになった場合、すべての化 学物質を対象にして、全部規制になるかもしれませんという受け取り方も生じる恐れを懸念 しています。ですから、ここの表現もう少しここは丁寧に事務局で検討をお願いしたいと思 います。   ○半田化学物質対策課長 では、中でもう少し。 ○奥村調査官 「慎重に対応」という言葉の問題ですね。 ○豊田委員 そうです。 ○半田化学物質対策課長 そういう懸念もわかります。はい、わかりました。 ○名古屋座長 最終的な結論までいきませんが、そういうことで今日のところは議論をして いきたいと思います。 ○豊田委員 まだこの骨子案では指針に関してのコメントもないので、それも含めてよろし くお願いしたいと思います。 ○名古屋座長 慎重に検討するという形で止めているところだと思います。では、次回以降 そのところをもう少し具体的に書ける範囲で書いていただければ有り難いなと思います。そ うしましたら先に進めてよろしいですか。15頁の(2)、リスクに基づく合理的な管理の促進 のところで、16頁のところまでで何かありますでしょうか。 ○橋本委員 例えばのアのすぐ下の(以下のような論点で検討を行う)とあるのですが、こ れは質問ですが、これはどこで検討を行うという意味なのでしょうか。 ○半田化学物質対策課長 この骨子あるいは報告書案文を検討をしていただく中で、ご検討 をいただきたい。一応、私ども、先生方のご議論を踏まえて書いてはいるつもりですけれど も、少し先走っていたり、あるいは言い足りなかったり、あるいはご議論を踏まえて書いて いますが、なお、具体的に政策に落としていくには、もう少しブレイクダウンをする必要が ある部分とか、そういった点はいくつかございます。そういった部分に関しましては、これ までのように別途資料を用意して、詰めて議論をするというよりも、この報告書をまとめる 中でご議論をいただければという趣旨で、次のような点が考えられると、そういった部分に ついてご検討をいただきたいという趣旨で書いています。 ○橋本委員 わかりました。 ○橋本委員 イの最初の●のところです。「当面は、A測定・B測定による測定では濃度を 過大に評価してしまうおそれがある一部の作業を対象に」というふうに限定しているのです が、これはある濃度の作業場があって、そこにたまにしか入ってこないような人、こういう 個人ばく露測定を行う、こういうことだと思うのですけど。逆に個人ばく露測定のほうがA 測定・B測定は過小評価していて、個人ばく露測定のほうが実は多く出る。これももちろん 状況によってはあるわけなのです。だから、そこで片方だけをなぜここで限定してしまうの か、そのような議論があったような記憶もないのですけども。だから要は、その状況に応じ て、より呼吸域の濃度の評価を現実的にできるように、柔軟に測定できるように導入をする という趣旨であって、ここで限定しないでいいのではないかと思うのですが、いかがですか。 ○名古屋座長 たぶん個人サンプラーの導入のときに、こういうことがあるから個人サンプ ラーの導入というのは1つ提案がありましたが、逆に言うといま橋本さんが言われたように、 過小評価することは結構ありますので、そういう意味では状況によっては溶接などもそうで すし、研磨もそうです。たぶんこの委員会では粉じんなどは扱いませんが、そういうことが あるかもしれないからということだと思います。 ○奥村調査官 橋本委員のお話は、実際に現場を管理をするときには、全くそのような感覚 でいらっしゃるということだと思います。私どもがこの報告書をまとめるときには、現行の 法令ではA測定・B測定のみが認められている法令上の測定であって、それに限定するの ではなくて拡大していこうという方向なので、全く2つを対等には扱い得ないというか、制 度上全くそれは位置づけが違うものなのです。ですから、それをそういったある程度のケー ス分けというか、取扱いの違いがあってこういう書き方になっています。あとはすべての測 定を、すべての測定すべき作業場というか作業を、全くフリーハンドで事業者にA測定・B 測定、あるいは個人ばく露測定というふうにできるようにするというのは、もう少しデータ の蓄積が必要ですというふうに私ども考えております。  やがてはそういうふうになるという方向ではあるのですが、いまのところは法令を動かす ときには、やはり検証的な蓄積をしてから進めていきたいと思っておりまして、当面はとい うふうな書き方で限定的に糸口だけでも突破口的に広げていくと。これは我々の中での考え 方ですが。 ○名古屋座長 たぶんそのお気持が次の、測定及び評価に対して整備をすると書かれていま すので、たぶんそういうことに通じてくるかなと思います。 ○半田化学物質対策課長 橋本委員のご指摘は奥村が申し上げたとおりなのですが、橋本委 員のご指摘は過大評価をしてしまうおそれのある作業も対象にすべきであろうけれども、逆 に過小評価してしまうような作業も検討対象に入れていくべきではないかと、そういったご 趣旨に承ればよろしいのでしょうか。 ○橋本委員 はい、そういう趣旨です。 ○堀江委員 ただいまの議論ですが、このタイトルは、ここは「リスクに基づく合理的な管 理の促進」ですから、リスクアセスメントをなるべく推進しましょうという話がまずあって、 次に、リスクの見積もりを実施した結果と作業環境測定の結果の評価とが合わない場合は、 本来、大きなリスクがあるが作業環境測定ではそれが検出できていないということになるの で、通常の場の測定だけではなく個人サンプラーによる測定をしてみたらどうですかという ことを言うべきではないかという議論ではないかと思いました。  ここに書かれているのは逆にリスクの見積もりをしたら、それほど大きなリスクではない けれども、作業環境測定では過大評価をしてしまうというものが書いてあると思います。そ もそも、リスクアセスメントをきちんと実施しようとした場合にはじめて両者の不一致がわ かるわけですから、その不一致のときに個人サンプラーを使った新しい技術を導入して評価 していく、という考え方で整理されたらいかがかなというふうに思いました。 ○豊田委員 この(2)以下というのは、「論点の整理」のイ、ウを包含してということで、そ れは賛成なのですが、(2)のあとの4行の文章がございますね。この文章だと、内容がアの リスクアセスメントの手法の導入のところに、ちょっと偏っているような表現ではないかな と思います。できましたらこの論点のイ「自主的解決管理の捉進」と、それからウ「より柔 軟な規制の見直し」というのは、このリスクがベースにあるわけですから、そこを含めてこ の4行の中に表現してやったほうがいいのではないかと思います。 ○半田化学物質対策課長 その部分はここに書いてございますように、リスクアセスメント の実施によるというか、に基づいて合理的な化学物質管理の中に込めたつもりでございまし たが、書き下す中でご指摘の点、明確になるように修文したいと考えます。 ○宮川委員 もう1点ですが、16頁のウの2つ目の●、発がん性物質について還流の対象 にしないという部分です。この表現で「リスクの大きな発がん性の化学物質については」と いうのは、これは測定してみて基準を超えていないとリスクが大きいかどうかはわからない ので、うっかりこういう表現はしてしまいがちなのですが、ちょっと言い方を考えていただ きたいと思います。 ○半田化学物質対策課長 ご指摘は「発がん性物質は」とすべきであって、リスクが大きい の小さいのという判断は入れるべきではないというご趣旨でよろしいですか。 ○宮川委員 はい。 ○西野委員 先ほどもよく私には理解できなかったのですが、エのところは半田課長のご説 明では、当面は個別事業場認定なのですよという趣旨でお話をされていましたよね。 ○半田化学物質対策課長 そうです。 ○西野委員 それがこの文章からは読み取れないのですが、よろしいのでしょうか。 ○半田化学物質対策課長 はい、わかりました。 ○名古屋座長 そこを次回以降で直していただくという形で。 ○橋本委員 再度、先ほどのところです。堀江委員から先ほどのようなコメントがあったの ですが、ここの「A測定・B測定による測定では濃度を過大に評価してしまうおそれがある 一部の作業」と限定しているのですが、逆に言うと例えばA測定では比較的いいのだけれ ども、作業がもっと近接作業で、近くでやるものだから、実際はばく露が大きいといったよ うなときに、自主的なリスクアセスメントで、それが怪しいからより高く評価してみようと、 ここを積極的に個人ばく露測定でよりしっかり評価してみよう。例えばこういうような自主 的な動きというのは、これだけに限定してしまうとそれはできないというふうになってしま うわけです。  だから、自主的なリスクアセスメントの促進という趣旨に立てば、ここで限定してしまう のはやはりどうかなと。その行うものがここが怪しいと思ったときには、より積極的にでき るような余地があっていいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○半田化学物質対策課長 委員のご指摘と違うようなことを考えているつもりではないの ですが、先ほど奥村が申し上げましたのは、最終的にはそういうことになっているのですけ れども、ここで議論をしています個人サンプラーによる測定を、いうなれば65条の作業環 境測定に準じて導入していくことを進めていくための最初の突破口というか、とっかかりは ここなのかなということを申し上げているだけで、ただいまのような自主的なリスクアセス メントをやってはいけないとか、する必要がないということを言っているつもりではないの ですが、そこも少し書き下だした中で、文章を確認していただければと思います。少し工夫 して書いてみたいと思います。 ○奥村調査官 委員のご懸念は、こういうふうに書かれると、せっかく進んでいる自主的な 取組みが後退してしまうのではないかと。こういう場合にのみ、こちらの場合だけやるべき であって、ほかにやってはいけないと受け止められるといけないという趣旨ですね。 ○半田化学物質対策課長 そこは配慮した書き方に。 ○名古屋座長 最終目的は一緒なのですが、手法が若干違ってくるということだと思います ので、まあ、どちらでもいけるような形の書き方にしていただければ有り難いかなと思いま す。 ○橋本委員 次の●のところですが、文面をどうこうするという意味ではないのですが、こ の測定と評価方法の整備が今後必要ということなのですが、議論の中ではあまりなかったか と思うのですが、次のステップとしてこの評価方法というのはやはり決めていかなければい けないだろう。それはそのとおりだと思うのです。  これは意見なのですが、そのときにいまの作業環境測定のような、ああいうあまりガチガ チのやり方、例えば5点以上測定して、あと数字はこうやって統計処理してこうやって決め るとか。あまりガッチリ決めてしまうと、結局自主的な進め方を阻害してしまうと思うので すね。実際、欧米のハイジェニストが進めるときは、最初に多くのサンプルをバンと取ると いうことは、まずしないわけですね。まずはその観察をしたり、様子を確認して、あとは簡 易測定をやったり、あるいは2、3点測定をするとかして、それでリスクが明らかに大きけ れば、もうそれで結論で対策をすると。逆にずうっとリスクが小さければもうそれでよしと する。だから多数測定するなどというのは、ある程度限られた場合なわけです。だからそう いう柔軟なアプローチをやれるようにしたほうがいいと思います。  ガチガチなやり方で決めてしまうと、結局それができなくなってしまう。そうすると、人 材育成という意味でも、もう決められたことだけやればいいと、いまの測定士を基本とすれ ばそうだと思うのです。決められたとおりにやっていればいいと、考える余地とかいろいろ な余地がなくなってしまう。  そういうことでこの評価方法は次の段階ですが、そこのところではある程度柔軟な、例え ばガイドラインとして出すというのはいいと思うのですが、法律でもうこれというふうには、 あまり決めないほうがいいように思っております。 ○名古屋座長 たぶん自主的ということになると何でもということになりますので、運用を するためには、実行する人のレベルが高くないと自主的にはできないということがある。た ぶんそれで教育をして上がっていくと思うので。 ○橋本委員 教育は重要だと思うのです。ただ、縛ってしまうと、例えば10年、20年先と かを見ますと、もうその育成という意味で大きな制約になってしまうと思うのです。 ○名古屋座長 決められたらそのとおりにやればいいということで楽になりますから。自主 的のほうがたぶんレベルは上がってくるのだと思いますが、その辺のところをまたひっくる めて。いずれにしてもここを導入するためには評価方法だとか、測定という形のものの整備 は必要だということで書かれているのだと思います。そのときに是非そういうこともひっく るめて整備をしていただければ有り難いかなと思います。 ○半田化学物質対策課長 橋本委員のご指摘もよくわかるのですが、結論から申し上げます と、いま委員ご自身もおっしゃいましたように、今後この測定基準をどう作るのか、評価基 準をどう作るのかという問題に関わってきまして、もうしばらく先の議論になりますので、 そのときにはそれを検討していただく部署にはそれなりにお伝えしておきたいと思います。  1点、少しこういうことで考えあぐんでいる部分がありますということだけ申し述べさせ ていただきます。この辺、いまのアメリカではというようなお話がございましたが、やはり この法令の問題もずっと突き詰めていきますと、国民性とか文化、考え方の違いが如実に現 れてくる部分がございまして、例えばイギリスですとよく言われていますALAP(アラープ) という考え方ですね。as long as reasonably possible。「可能なかぎり」必要な措置を講じ なさいと、こういうことを条文に書いて、それで運用ができるのですが、わが国の場合はな かなかそれが難しいような風土というのか文化というのがございます。  例えば、「常時性」という問題がよく労働衛生管理の中に出てくるわけですが、私どもの 法令の中で常時性というものに解釈を示しておりますのは、粉じん作業についてのみ。「常 時何々をするときは…」という規定がございます。これはこういう場合が常時に当たります よと解釈に書いてありますが、その他の規則では書いてない、解釈を示していない部分がご ざいます。そうしますと、それを明確に示さないと残念ながらやっていただけないというよ うな方もいらっしゃいますし、事業者によってはその常時を明確にしてくれなければ困ると。 私どもは、それはリスクを評価して、これに当たるようなリスクがあればやっていただくこ とになりますというような説明をしても、なかなかその辺のご理解を得られないというとこ ろもあります。  ですから、あまりこの評価基準をガチガチにしないほうがいいというのがよくわかる反面、 またきちんと書いてないとこれではできないというご意見もまた出てくるのも事実でして、 その辺りの折り合いをどうつけていくかというのが、非常に難しいなと常日ごろ考えていま す。余談になりますが、そういった状況もあるということをお耳に入れておきたいと思いま す。 ○橋本委員 例えばアメリカのOHSAの基準は、労働者の中の最大のばく露者がその許容 基準より下であるようにしなさいと、そういうふうに決めているのですね。だから何個測定 して、どうデータを扱ったとかそういうことはないのです。かなりフリーハンドなわけです。 それは1つの例なのですが、何らかのやり方はあると思うのです。 ○奥村調査官 アメリカの規則には、インダストリアル・ハイジニストの意見を聞きながら というのが、測定方法の柔軟性の中に必ず折り込まれてきますよね。インダストリアル・ハ イジニストの意見を踏まえて、こういうふうに柔軟にやれというようなことがあって。日本 ではその部分が往々にして、どういうふうにしてやればいいのか文章に書けと。その専門家、 日本にはいないインダストリアル・ハイジニストというような方の専門性で解決するという のは、結局責任の転換だという話になって、なかなか日本の法制度にはなじまないという。 ○橋本委員 ただ、アメリカでもこれが始まった70年ごろとかでは、まだインダストリア ル・ハイジニストというのは、それほど成熟していなかったわけで。そういう法律があった からこそ考えることが必要になって、現在のように1万人もいるような、非常に成熟した化 学技術団体としても立派なものになってきたわけです。そういうことを考えると、やはり最 初は例えば測定士とかそういう人を活用するかもしれませんが、最初のところに教育とかと いうことが相当要ると思うのですが、では、30年後の将来を考えたときにいまのままでい いのかと、あるやり方を工夫すればそういうふうに伸びていけるのではないか。欧米にそう いう意味で追い着くのではないかと思うのです。だから、そういう考えられる余地、そうい うことは大事ではないかと思っています。 ○名古屋座長 良さというところも取り入れながら、ある程度ガイドライン的なもので指導 をしていくという形ではないかなと思います。ここのところはまたあとで議論をしたいと思 います。 ○堀江委員 今日の資料の全体の2頁のところに、前回の議事概要を載せていただいている のですが、その2頁のいちばん上の(2)の2つ目のポツについてのお願いです。これは私が述 べた論点と思います。特殊健診の対象者を選ぶ際にも、現状では、やはり常時従事する者を 対象にしていますけれども、作業環境測定のほかにリスクアセスメントがきちんとやられる とか、特に個人サンプリングを正しく実施して、個人にばく露がないということが正しく評 価されているのであれば、もはや特殊健診までは必要がないという方もあると思うのです。 このように、作業環境管理と健康管理をつなげていただくことができれば、それは、(2)のタ イトルにあるように事業者にとってのインセンティブということになっていくと思います。 法令による規制以外のやり方で、技術が発展する1つの余地がここにもあるのかなと思いま す。ここの部分の項目がこの骨子の中に見当たらないので、この辺に入れていただけば有り 難いなと思っております。 ○名古屋座長 だから必ずリスク評価をちゃんと行われていると、たぶんそこまで結びつい ていく。そこが成熟してくるともう完全にそういうことになるから、そういう形の中に盛り 込むという形ですよね。わかりました。では、そこもよろしくお願いいたします。 ○福岡委員 16頁の1行目なのです。初歩的な質問で申し訳ないのですが、「個人サンプラ ーによる作業環境測定」となっていますね。個人サンプラーというのは個人ばく露の測定の 意味もあるのだけれども、作業環境ということはどういうような、こういう言葉になったの かちょっと。 ○奥村調査官 これは安衛法65条では、作業環境を測定するというように規制されており まして、個人ばく露測定。 ○福岡委員 いや、個人サンプラーをという主語になっていますね。 ○奥村調査官 ですから、個人ばく露測定であっても、それは作業環境測定という土俵の上 での話しだろうという整理をしております。それは別に大気の汚染を測定しているわけでも なくて、結局、労働者がいる作業環境はどうなのだというのを評価するわけですから。たし かに、これまで2つの測定方法について、2つに分けるときにはA測定・B測定、作業環境 測定を、個人サンプラーは個人ばく露測定という言い方があったと思いますが、法律とか制 度を考えるときには、それも1つの作業環境測定とみなそうという整理です。 ○福岡委員 そうすると2頁の(2)のところに、個人サンプラーの測定を云々、これも同じで すね。 ○豊田委員 いまの(2)の「事業者がリスク評価を行うに対してインセンティブをつけるべ き」というのは、大きな括りだと思うので、これをどこか16頁の辺りに表現していただけ たらと思います。 ○名古屋座長 いまの話は(2)のところの意見を、このところの中で少し入れていただければ ということだと思います。 ○豊田委員 事業者へのインセンティブはやはりこういう個人サンプラーとかいうのを推 進していくドライヴィング・フォースになると思いますのでどこかにお願いします。 ○名古屋座長 それを促進させる意味でも、きちんと書いておいたほうがいいということで すよね。まだ意見はあると思いますが、たぶん今日これを修正してまた次回以降、ここのと ころにまた戻ってくるのだと思いますが、最後に17頁をまとめたいと思います。ここで何 か意見がありますでしょうか。これは今日議論をしたばかりなので、すぐにということでは ないかもしれません。次回以降の修正等をするところに、皆さんの意見を反映させたいと思 いますので、何かありますでしょうか。よろしいですか。 ○橋本委員 専門人材というところで、いま日本のその資格者でいいますと、作業環境測定 士という方々が作業環境測定をしているわけなのですが、先々をこのリスクアセスメントと かを考えますと、いま測定士というのは測定をする人というふうに法律で定義されているの ですね。だから、ではリスクマネージメントのほうは参画したり、協力しないことになって いるので。この点は前回堀江委員からもこういった趣旨のコメントがあったかと思っている のですが、だから、そこであなたは測定だけする人というふうに決めちゃっているところは 大きな問題だと思うのです。  実際測定をする人は現場もよく見ているし、いちばんよくわかって経験も積んで改善のア イディアも出る人なのですね。だから、リスクアセスメントというのは評価するだけではな くて、もちろんマネージメントも含んでいますので、だから現在の測定士もそこで限定しな いで、リスク低減のための勧告はもちろんするのだけれども、それへの参画とか協力、アド バイスを積極的にするというようなことを、何か出していっていただけると、そこのところ はすごく変わってきて、また測定士もよりずっと伸びていけるというふうに思うのです。   ○名古屋座長 ありがとうございました。たぶん導入するときに前回の法律があって、なか なかそこまではいけなくて、測定士という形の括りの中で法体系を作っているから、ほかの ところに入っていけなかった。いま見てくると測定士が成熟してくると、ほかの分野もいっ ぱい成熟して作れるよと。でもそこのところにはまだ合ってないね、ということだと思って います。そういう意味でそれを作っていただけたら有り難いなということだろうと思います ので、何かのときに、そこのところもできたら有り難いなと思います。 ○豊田委員 これもタイトルの件なのですが、ここの「管理」という表現は、やはりこれも 自主管理だと思いますので、「自主的管理」とかいうふうにしていただけたらと思います。 あと最後の行の「利用」のところに、「相談」というような文言も入れて戴ければと思いま す。 ○山本委員 いまの(3)の「管理代行機関」というのは、どういうことを念頭に置いている と理解したらいいのでしょうか。 ○半田化学物質対策課長 これはまたご議論をしていただくべきところかもしれませんが、 16頁のエの発散抑制方法ですね。この中で今日もう少しご議論をいただけたら有り難いと 思っていますが、私どもの考えておりますのは、代替法といいますか、局排以外の発散抑制 法を認めるに当たって、大きくハード面とソフト面の条件があるのだろうなと考えているわ けです。そのソフト面というのは特に人の面ということなのですが、大企業であれば、もち ろんそういった専門人材も社内で抱えてできるのでしょうけれども、そうでない中小企業の 場合にどうするのか。そういったところには外部の専門家を、あるいは専門機関を活用する ことが考えられるのではないかと、そういう思いが先走ってしまいまして、管理代行となっ てしまいましたけれども。 ○山本委員 先ほどの論議でもいろいろあったと思うのですが、作業環境測定、産業衛生そ れからリスクアセスメント、いろいろな要素が入ると思うのですが、それがいまはみんなバ ラバラですよね。そういうのを統合したような新ジャンルが1つの職能として考えられてい るのかと、そこまで展望しちゃってよろしいのですかね。中期的ぐらいなところで。 ○半田化学物質対策課長 資料では、思わず「管理代行」なんて先走りましたけれども、こ の辺りはおっしゃったような意味で、「外部の専門機関」というくらいの意味です。 ○山本委員 やはり必要だと思うのですね。そういういろいろなファクターを深く広くでは なくて、ある程度深くて広くという能力、スキルというのは、非常に必要だと思うので、そ このところを少し具体的に、是非お示しいただければというふうに思います。 ○福岡委員 いまの話は、化学物質の関係ではリスクアセスメントの指針の中に化学物質管 理者というのが出てくるのですが、それはあくまで指針の中にあるだけで法的に特に試験を 受けたものではないのですね。だから、そういうものが要るのではないかと。いま指針の中 には言葉として化学物質管理者ということがありますが、それを法的に何かもう少し、中身 のある責任のある制度に入れるとか、そのようなことに絡む話かもしれませんね。 ○名古屋座長 よろしいでしょうか。そうしましたら本日は骨子ということで案を検討して 議論をいろいろ進めていただきましたが、次回以降はたぶん報告書(案)という形で検討を 始めたいと思います。今日のところを皆さんの意見を事務局でまとめていただいて、次回以 降は報告(案)として、もう一度議論をしたいと思います。その中で追加することはないで すか。そうしましたら、多岐にわたりまして議論をいろいろありがとうございました。今後 の予定を事務局から説明をよろしくお願いいたします。 ○奥野安全専門官 今後の予定ですが、次回第7回の検討会を6月1日(火)14時から17 時に、またその次の第8回の検討会を6月8日(火)14時から17時に、いずれも場所は未 定ですが、それぞれ開催したいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。 ○名古屋座長 ありがとうございました。それでは以上をもちまして第6回の「職場におけ る化学物質管理の今後のあり方に関する委員会」を閉会いたします。どうもいろいろありが とうございました。