10/04/30 第2回じん肺法におけるじん肺健康診断等に関する検討会議事録 第2回 じん肺法におけるじん肺健康診断等に関する検討会 日時 平成22年4月30日(金)    13:30〜 場所 厚生労働省専用第12会議室 ○主任中央じん肺診査医 本日は、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。ただ今から、 第2回「じん肺法におけるじん肺健康診断等に関する検討会」を開催いたします。  本日は、委員7名全員出席をいただいています。  本日の検討会は公開で行われ、議事録は厚生労働省のホームページで公開されます。傍聴者におか れましては、会議の妨害となる行為は慎んでいただきたいと思います。また、他の傍聴者のご迷惑に もなりますので、守られない場合には退場していただくこともありますので、何とぞご理解とご協力 をお願いいたします。  以降の進行は、座長の中原先生にお願いいたします。 ○中原座長 第2回の「じん肺法におけるじん肺健康診断等に関する検討会」を始めます。議事に入る 前に、事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○主任中央じん肺診査医 お手元の資料1枚目に、第2回の検討会の議事次第があります。2枚目に資 料の一覧があります。その資料一覧に基づいて資料を確認させていただきます。  資料1として、この検討会の報告書(案)があります。参考として、参集者名簿があります。参考資 料1として「じん肺診査ハンドブック」、厚手のものがあります。参考資料2として「石綿健康被害救 済制度における指定疾病に関する考え方について」というものがあります。  委員のみの机上配付になっていますが、それ以外に「試算の詳細」という取扱い注意の資料が1つと、 前回の会議でも配らせていただいた6-2の症例のリスト、また、参考資料の6として、「呼吸機能検査 ガイドライン」という呼吸器学会のガイドラインがあります。以上です。 ○中原座長 ありがとうございました。  それでは議事に入らせていただきます。本日の議題は「石綿健康被害救済法における石綿肺の取扱 いを踏まえたじん肺健康診断のあり方について」です。まず、事務局からご説明をお願いします。 ○主任中央じん肺診査医 資料1「じん肺法におけるじん肺健康診断等に関する検討会 報告書 (案)」、これは本日のメインですが、これについてご説明させていただきます。内容が多いので、 いくつかに区切ってご説明させていただきます。  1枚めくっていただくと目次があります。第1から第5まであります。まず、第1の「はじめに」と 第2の「検討会における検討事項等」の部分まで、簡単にご説明させていただきます。  「第1 はじめに」とありますが、ここはこの検討会の経緯について簡単に記述しています。「じん 肺診査ハンドブック」の策定からその後の経緯、また環境省における石綿健康被害救済小委員会での 検討事項といったことを踏まえて、こちらの検討会が開催され、検討を行ったという経緯が簡単に書 いてあります。  「第2 検討会における検討事項等」ということで、この検討会で検討を行った概要を書いています。 職歴の調査、エックス線検査、肺機能検査を基本として行われています。これらの事項について、石 綿健康被害救済法との整合性を図り、また、最新の医学的知見に基づいた必要な見直しを行う、また、 健康被害救済法における制度改正に合わせて、迅速に見直しを行うべきかどうか、その必要性と早さ というのですか、そういったものを検討したことが簡単に書かれています。  ここまで、とりあえず事務局の説明にしたいと思います。 ○中原座長 ありがとうございました。「第1 はじめに」と「第2 検討会における検討事項等」は、 この検討会ができた前提を手短に説明されていると思いますが、特にご意見はありますか。何か誤解 を招く表現とか、そういうご指摘があれば。 ○名取委員 確認ですが、この検討会における検討事項ですが、ここにも書いてあるとおり、「じん 肺法と石綿健康被害救済法の間で、異なる基準を用いることにより生じる混乱を避け、両者の整合性 を図る」ということで、特に呼吸機能においての相違が早急に出ることが1つ問題であると私も伺って いまして、そこについては確かに問題なので、その検討を優先すると。それ以外の項目については、 今後時間をかけて検討していくと伺っていますので、呼吸機能の件を優先的に検討していただくのは 構わないのですが、ちょっとほかの職歴、エックス線写真の撮影、胸部のそういう臨床検査等につい ては、前回私は欠席したのですが、資料も、いただいているのはほとんど呼吸機能の資料だけですの で、まだ十分検討ができていないという印象があります。本日も、呼吸機能の検討を中心に、是非進 めさせていただいて、ほかの部分は資料を出しながらの検討を是非していただきたいなと。また、こ こに書いてあるように、検討事項の主な意味についても、そこの部分が主であろうかなと理解してい ますが、そういうことでよろしいのでしょうか。 ○労働衛生課長 第2の「検討会における検討事項等」の第2段落、「これらの事項について」で始ま るところですが、その第2段落の2行目から「最新の医学的知見に基づき、じん肺健康診断における見 直しの必要性の有無について確認する」ということです。ですから、現時点の医学的知見だけでは、 なかなか見直しの根拠がないとかいうことであれば、これはまた別途そういったものを集積したうえ で、検討するかどうかはじん肺部会の判断になりますので、この検討会ではそこまでは立ち入らない ということです。  ですから、環境省の小委員会の答申案を受けて、そこに書いてある項目は、じん肺のハンドブック の職歴から始まって合併症に至るまで、一応関係する記述がありますので、それに関してどうかとい う判定をまずやっていただいて、特に迅速に見直す必要性があるかどうか、そうしないと現場に混乱 が生じるかどうか、こういう観点から第1回目はラフにスクリーニングをしていただきました。今回は それの結論をいただいたうえで、特に必要な部分については詳細にご議論いただければいいのかなと 思っています。 ○中原座長 よろしいですか。 ○名取委員 はい。 ○中原座長 それでは、第1、第2について、ほかにご意見、ご質問等がなければ次へいきたいと思い ます。  引き続き、事務局から説明をお願いいたします。 ○主任中央じん肺診査医 第3は、とりあえず1、2、3の職歴の調査、エックス線の検査、胸部臨床検 査までご説明させていただき、あとは時間配分等を考えて、またご検討いただければと思います。 ○中原座長 「肺機能検査」の前まで、まず説明をするということですね。 ○主任中央じん肺診査医 はい。第3の「今後のじん肺健康診断のあり方」ですが、この報告書の主の 部分になりますので、若干時間がかかりますが、ちょっと読み上げさせていただきます。 (資料1第3の1.〜3.を読み上げ)    以上、1、2、3までご説明させていただきました。 ○中原座長 説明がありましたが、この部分についてご意見、ご質問等がありましたら出してくださ い。 ○名取委員 順番にいきます。粉じん作業についての職歴の調査ですが、ここの部分で、環境省とこ ちらの部分でいちばん問題が起きやすいとすると、一人親方や事業主の石綿肺の問題がどう扱われて くるのか、という部分が1つ大きなところになると思うのです。  そこの職業歴の扱いについては、いままで環境省は、事業主や同僚の情報を取る機能が全くない機 関でありました。現状でいきますと、じん肺で10年間以上のばく露歴があれば、これは厚生労働省所 管に行ってしまって、労働者か特別加入で建築のばく露が概ね10年を超す職歴がある場合は、厚労省 所管に行く。労働者か特別加入のばく露が10年以下になってしまうと労働者性がないことになってし まって、石綿肺であっても、厚生、労働省の石綿肺としての申請ができない状態になっているわけで す。  その部分で、職歴の調査をきちんと考えておかないと、厚労省でも環境省でも宙に浮く方が出てし まう状況があるのです。その部分の扱いについての記載を、もう少しすき間がない形にしないといけ ないので、環境省が労働者性のある方について所轄監督署に協力要請があった場合に、監督署が協力 するという記載をしていただけるように、前回欠席したものですから意見は出しておいたのです。省 庁を超えたご協力を是非していただく文言を入れていただけないかと思っています。 ○中原座長 座長があまり意見を言うとあれですが、いまの事実関係は、じん肺法の立場から見ると 何かおかしい感じもしたのですが、解説をお願いできますか。 ○労働衛生課長 従事歴等で、いま名取委員がご発言のような、解決すべき課題があるのは承知して いますし、そういうご意見がこういう場で出るのも、もちろん全く問題ないとは思うのですが、この 検討会の部会からのオーダーとしては、各項目についての、いまやっている手順のエビデンスの見直 しが必要かどうかということですので、報告書というより、部会に報告書とともに上げるときに、そ のような問題点等の指摘があったという報告を一緒にするかどうかという話かと。要するに対象者を どうするかという、この検討会の範疇を超えた問題提起だと思いますので。議事録には明記するわけ ですし。ただ、報告書の中でそれに触れるのは、この検討会の設置要綱からすると少しテーマは違う のかと。 ○名取委員 そこで先ほど確認したのですが、じん肺法と救済法の間で整合性を図る必要な部分があ るわけです。新たな石綿肺について、今までは環境省では基準がなかった。それを今回お作りになる という中で、厚生労働省のここに書いている職歴調査がいけないというわけではなくて、今までどお りでいいと私も思います。ただ、厚生労働省は職歴調査について、より優れた、細かいことまで、き ちんと十分調査できる能力をお持ちなので、その点で環境省との間ですき間のない協力をしていただ くように、うまくいくような協力関係を是非取っていただきたいということです。 ○中原座長 要するに対象者の判定ですよね。労働者性があるかないかとか、それが職業上のばく露 であるかないかとか、そういうことをここで議論するのは、あまりにもその辺の専門外の人ばかりが 集まっているので、ここはあくまでもじん肺健康診断のことについて、医学的なことを議論する場と して設定されたように思いますので、労働衛生課長がいまおっしゃったこともそういう趣旨なのでし ょう。 ○労働衛生課長 例えば、健康管理手帳の要件や従事歴をどうするかとか、そういうものを、実際に 補償された方などを分析して、あるいはそういうエビデンスを積み重ねて、例えば何年にしたらいい かとか、そういうのを決めていますので、それは別途、必要に応じて検討する場もあります、必要な ら立ち上げることになりますので、今回、環境省でああいう動きがあったとすれば、ではそういう人 たちの従事歴の取り方とか、あるいは、例えばここまでは職業性の石綿肺とすべきだから、従事歴を 何年にしようかと、そういう検討はやる必要があろうかと思いますが、今回それに見合うエビデンス がありませんので、先ほど言った現在のエビデンスで、現時点で見直す必要があるかどうかをまず判 定していただくということからすると、今回は無理があるのかと。検討課題とすること自体に、いま 必要なデータを我々も持ち合わせていませんし、おそらく委員の先生方にもまだないのではないかと 思いますが。 ○岸本委員 この会は石綿肺に特化したものではなくて、じん肺法でということですから、いまの件 はこれにはふさわしくないし、いま10年がどうのこうのというのは、私はよくわからなかったのです が、それはまた別途のところでやっていただくということにしましょう。この検討会では、とりあえ ず粉じんばく露の既往のある労働者に対するというスタンスでいいと思いますので、そこは論点では ないと思います。今日はそこに時間をかけないほうがいいのではないかと思います。 ○坂谷委員 私も1回目は出ていませんので口幅ったいのですが、いま岸本委員がおっしゃった、まさ しく環境省のは石綿健康被害に特化した検討会です。しかもそこへ掛かってくるのは、じん肺法で救 済が漏れた人たちをターゲットにして何とか救ってあげようということで、精緻に検討を続けてきた わけです。それを鏡として見て、それに映るじん肺法のほうから見て、自らをこの時点で鏡に照らし 合わせて、反省すべきところ、チェックを掛けるところがなかろうかということで検討が始まったと、 1番と2番に書かれているとおりだと思います。ですから、いま岸本委員がおっしゃったように、じん 肺全体をターゲットにして健康診断のあり方を検討するのであって、石綿に特化した話に持っていく のはいかがなものかと思います。じん肺全体をカバーする話にならないとおかしいと思います。 ○名取委員 もちろん、じん肺全体を議論するというのは、それはそれで構わないのですが、とりあ えず環境省で石綿肺の見直しがあって、その整合性を図るのが第一の目的という理解でいいわけです よね。先ほどの点にもう1回戻りますが、呼吸機能の検討を優先した迅速な見直しが必要かどうかを検 討するのが目的なので、、どのぐらいの石綿肺があるのかというところで、すき間に落ちる方が生じ かねないので、一度そこは検討しておいてほしいと申し上げているのです。 ○中原座長 すき間とおっしゃるのは、環境省と厚生労働省の法体系の、何かそこにすき間があると いうことであれば、それは全くここで議論する話ではないと思うのですが。ここで議論することは、 環境省のほうで石綿肺を中心に、石綿肺といってもこれはじん肺ですから、そこの特に肺機能などの 検査について、あちらは、こちらが30年以上やってきた法とは少し違うことを言われたと。そこにつ いては、環境省と厚生労働省の間でそんなに差があっては困ると。だから、そこについてはこちらは 見直しましょうと。それはなぜかというと、30何年前につくった基準で運用してきている。でも環境 省は、つい最近のあれで運用しようということですので、やはり時間の差があるから、最新のものに リバイスするというのはこちらとしても考えなければいけない。そういうことで始まっていますので、 先生がいまおっしゃった、両方の法律にすき間があるとかないとかいう議論は、これは私たちの所掌 範囲を超える話ではないかと思いますが。 ○名取委員 そこがないように運用願いたいということを付けるということでよろしいですか。 ○中原座長 そういうことも問題点としてはあるという意見があったということは、書くことは別に いいのでしょう。いいというか、それも必要ないということであれば話はまた別。 ○労働衛生課長 どの場所に位置づけるかは別にして、そういった課題について指摘されたというこ とは検討したいと思います。 ○安全衛生部長 いずれにしても、環境省の場合、厚労省に比べると職歴の調査のやり方などはノウ ハウを持っていないことは確かで、厚労省の場合、労働者ということもあるわけですが、ずうっとそ ういうことを基本に、粉じん作業歴を調査してきています。ですから、環境省のほうで一人親方など は非常に難しい面がある。そこで、ノウハウもない環境省サイドで担当しなければならないわけです が、それに関しては環境省からいろいろな依頼がありましたら、きちんと協力をして、両制度でうま く進むようにしていきたいと思っています。 ○中原座長 是非、いま部長の言われたことを、そういうふうにお書き添えいただければありがたい と思います。 ○坂谷委員 いまの第3の1「粉じん作業についての職歴の調査」、この10数行の文章の中に「石綿 健康被害救済小委員会においては」というのが2度も出てくるのです。ですから、石綿に特化した話と 違うかと誤解されるのはもっともですが、石綿健康被害小委員会がどうあろうとも、座長がおっしゃ ったように30数年間やってきたことですから、ほころびが出てきている。それをどうにかしようとい うのがこの会の趣旨である、ということをはっきり認識して作業すべきだと思います。だから、環境 省のほうで決められたことを、あまり気にする必要はないかもしれないと思います。 ○中原座長 これ以上この議論を続けるのはあまり意味があるとは思いませんので、名取先生あるい は坂谷先生のおっしゃった趣旨のことは、これは実は報告書と案ですが、案についてはあとでまたパ ブコメを取ったりとかいろいろなことがありますので、このとおりそのまま報告書になるとは考えに くいものですから、そこで事務局のほうで勘案して、いまの趣旨のことを取り入れてもらえれば結構 かと思います。一応、それで次へいきたいと思いますので、よろしくお願いします。  ほかにご意見はありますか。2について何かご意見はありますか。 ○名取委員 エックス線写真の検査及び読影については、おそらく前段において「じん肺の画像診断、 エックス線写真の検査及び読影について」という項目が書かれており、後段においては「胸部CT写真 について」ということが書いてあって、2つのことがおそらく書いてあるかと思います。  これも極めてじん肺の根幹にかかわる大きな問題であり、日本のじん肺のレントゲン写真の標準フ ィルムもしくはILOのじん肺標準フィルムがあり、そしてCTにも一定の基準があるというところで、 これは非常に慎重にゆっくりとした議論をしていただかないといけない所だと思います。  この件に関する資料は、私はこの検討委員会に関して見ていませんので、何か唐突にお話が出てき ているように思います。それぞれ今後資料を出すなら出していただいて、こういうエビデンスがある からということを基に、ご記載いただきたいと思いますので、現状のままこれが案になることについ ては反対です。  どの点かということについて申し上げますと、1つは、重喫煙者がじん肺と類似の不整型陰影像を呈 することがあると書いてある所です。ここについて論文なり資料なりを実際に出していただいて、そ れによってじん肺の管理区分の申請、もしくは判断、審査を誤った例がある、というあたりの論文な り資料を出していただきたい。その上で議論をさせていただきたいと思います。  第2点目として石綿肺について、「大陰影のみが認められることはない」ということを書いてあるの ですが、ここの意味がよく理解しにくくて、胸膜肥厚斑やびまん性胸膜肥厚があるからということで あれば、まだそれはわかるのですが、大陰影の話が理解しにくかったので、ここの点についてはご説 明をいただきたいと思っています。  3点目ですが、胸部CTについては、「上記の状況を踏まえながら、引き続き、必要な情報収集に努 めることが必要」ということについては賛成ですが、その手前の部分で「じん肺の所見の有無は胸部 エックス線写真により判断することを基本とし、既に撮影された胸部CT写真がある場合、じん肺にか かる診断の参考にすることが適当である」という、ここの部分の理由が、良くわかりません。こうい う場合確かにじん肺の診断がしにくいので参考にすべきだと限定して、あくまで日本のじん肺の診断 はじん肺標準エックス線写真が基本ですので、それができない特殊な場合についてのみCTを参考にす ることは理解できます。「胸部CT写真が基本で判断するものです」ので、その基本を揺るがすような 話になってしまっては困るので、ここについても十分、資料・論文を基にしながら検討していただい た上でご記載願いたいと思っています。 ○中原座長 いまのご発言は、3点ということですね。1つは、重喫煙者等の不整型陰影と類似の所見 を示すことがあると。これが本当にそうかということ。2番目が、石綿肺について、大陰影ということ について、「大陰影のみが認められることはない」と書いてあるけれども、本当にそうか。3番目が理 解できなかったのですが、胸部CTを基本にじん肺診断をやると。 ○名取委員 いいえ、そうではなくて、日本のじん肺標準写真を基に診査を行ってきたわけですから、 胸部CTの扱いは、日本のじん肺標準写真の連関がすべて付いている状況にまだなっていませんので、 あくまで部分的か、参考にしかならないので、その部分を限定したほうがいいという意見です。 ○中原座長 胸部CTを参考にする具体的な条件みたいなものを示したほうがいいということですね。 その3点をご指摘されたように思うのですが、何かご意見はありますか。 ○労働衛生課長 1点目、2点目については、いずれも小委員会でそのような言及があって、当然、こ こにおいてもエビデンスが確認された上で案になっているはずですので、それで前回、我が方のハン ドブックにはねるような記述はこれですということで出したわけです。これに関して専門家のお立場 から各委員にコメントいただいて、否定するものではないようですので、一応残してあります。ただ、 ご議論はもちろんそれぞれいただけばいいと思うのです。  3番目については、要は胸部CTの取扱いについて、現時点で、少なくともこの委員会で、今日の時 点で十分な資料なりエビデンスはないわけですから、こういった場合、この表現をどうするかという 問題だけだと思います。例えば、「診断の参考にすることが適当である」というのは、いまの状況で あれば「参考にとどめることが適当である」として、全体の検討はまた別途行うことでよろしいかと 思いますので、この辺りのご議論をいただければいいのかと。 ○工藤委員 疾患としての医学的な診断と健診というのは、目的と手法は当然違っていいわけです。 医学的診断ということになりますと、仮に肺に影が出てきて、それが何だというのがわからないとき には、当然CT、とりわけ高分解能CTをやりますし、経気管支肺生検とか、あるいは気管支肺胞洗浄等 をやるわけです。そういう医学的な診断を詰めていって、仮に、最終的な結論としてじん肺症となっ たと。あるいは、取れてきた病理組織に対して複屈折性の物質はあるかどうかとか、そういうところ までやる場合もあるわけですから、そういうものの取扱い、ここの「その他の検査」の中にもこうい った気管支鏡等の検査のことが書いてありますが、その場合は、そこでたまたま診断がついている場 合は、それは利用していいのではないかと、そういう意味だろうと。そういうところにとどめればい い。健診の基本はレントゲンですよと。そういうことで理解して、私はこれを読んだのですがね。名 取先生のおっしゃるのは、そういう意味ですよね。 ○名取委員 とどめるということで、いま言われたような中身であるならば、それはそれでよろしい かと思うのですが。 ○工藤委員 いまの段階では、健診でCTをやるべきではないだろうと、そういうことだと。 ○名取委員 あと、0/1とか1/0という判断が、CTでできて、その基準、クライテリアがあると いう状態に至っていないものですから、その点では胸部レントゲンが基本であるというところを揺る がさないで、「参考にとどめる」ということなら、それは問題ないと思います。 ○労働衛生課長 いまのご指摘を見ると、「参考にすること」というと誤解を招く可能性があります ので、先ほど私が仮に提案した「とどめる」とか「じん肺健診」としてはどうかと思いますが。 ○中原座長 3番目についてはそういうことだと思いますが、1番目、2番目については、先生のおっ しゃることは、環境省の小委員会でこういう具合に言っているから、それについてこちらもテイクノ ートすべきだということで書いただけの話で、これについて疑義があるということであれば、削除し てもいいのではないかと、即思ってしまうのですが。 ○名取委員 私も不勉強のところがあるのかもしれませんが、重喫煙者がじん肺と類似の不整型陰影 像を呈すると。それで、じん肺による所見の把握が困難になる、という論文が環境省の委員会で提出 されているならば、環境省の委員会の参考文献は、たしか20か30ぐらいあったと思いますが、その論 文のどれに該当するのでしょうか。 ○労働衛生課長 いま環境省のデータは持ち合わせていませんが、参考資料2、小委員会の答申(案) をご覧いただきたいと思います。これの4頁の(2)「画像所見の確認」の第2段落、「また、画像所見の 確認に当たっては、以下の点に留意することが必要である」という所から重喫煙者のくだりがありま す。 ○名取委員 この基の文をお示しいただいて、なるほど、これは十分エビデンスがあるということで あればわかるので、その検討をした上でご記載いただきたいと思うのです。 ○中原座長 先生方がこれについて特にご異議があるかどうかですが。 ○岸本委員 今回の厚労省の検討会で検討するべきものではないですから、それはここで議論しなく ていいのではないですか。どうしてもこれが嫌だというのであれば、いま座長が言われたように取っ てしまってもいいわけですから、そうされたらどうですか。 ○中原座長 これは、ここで検討すべきことの中心になっているわけではなくて、環境省のほうの小 委員会が留意点として挙げたというだけの話で、ここを医学論争しなければ納得できないということ であれば、ここは採用しないということでもいいのではないでしょうかと、座長としてはそう思った のですが。 ○労働衛生課長 環境省のエビデンスを確認した上で記述してあるはずですが、じん肺全般とか、こ れはあくまでもじん肺類似ということになりますので、それがここで、今後のじん肺診断に反映させ るには少し躊躇されるということであれば、今回はここは省略して、また別の機会にということで結 構だと思います。 ○中原座長 いま労働衛生課長が立場上、非常に慎重な言い回しをされましたが、簡単に言うと、医 学的に論争があるのであれば、ここでは取り上げないという判定でもよろしいのではないかと思いま す。 ○坂谷委員 岸本委員と私は環境省の判定委員会にも参加していますが、経験上、労災で認められて いない肺のくもりがある、これを主治医と患者達、労働者達は、石綿肺であると判断されて環境省へ 申請を出される。それを詳細に検討し、石綿小体もないということで、これは石綿肺でないであろう と。すなわち、タバコの重喫煙者であるがために肺気腫ですが、その肺気腫の部分の周囲の線維化が、 あたかも石綿肺のように見えるという症例が、わりあいあるのですよね。そういうことを経験上積ん だものですから、こういうことを言っているわけでして、ということが分かったと、こういう言いぶ りです。そうでありますから、岸本先生、文献的にありましたかね。 ○岸本委員 文献的に出ているかどうかはわかりませんが、喫煙も粉じんを吸入して起こってくる病 気でして、末梢気道小葉中心性に線維化が起こってもよいと思います。私もそのような論文を知って いるわけではないので黙っていたわけですが。ただ、議論が今回のじん肺とは噛み合いませんから、 これにあまりとらわれると、今日議論すべきものが議論できなくなってしまうので、この辺で置いて おいたほうがいいと私は思います。 ○中原座長 とりあえず、将来に向け検討というお扱いでよろしいですか。このレベルの話で医学論 争をここでやっても、我が検討会としてはあまり実があるとは思いませんので、この点については労 働衛生課長のほうで公平なところで、一応、私は削除と言ってしまいましたが、特に強いご意見がな ければ、ここは除くということでもいいかとは思います。少し検討していただくことにしたいと思い ます。その他。 ○名取委員 次の所で、これは私が反対しているわけではなくて、事実は事実ですが、「石綿肺につ いては、胸部単純エックス線写真において大陰影のみが認められることはないことを踏まえ」という のは、通常、 ○岸本委員 これは正しいでしょう。 ○名取委員 これは正しい。 ○岸本委員 石綿肺に大陰影はないわけですから、これは間違っていないのだったら、これはここに 置いておいたらいいではないですか。先生、小さなこの文言にあまりこだわっていると、肝心なディ スカッションができません。確かに石綿肺は大陰影がないというのは、名取先生はよく知っていらっ しゃるわけですから。 ○名取委員 そのとおりです。このあとの「何とか」があるとよくわかるのですが、「ないことを踏 まえて何とかだから」があるとわかるのですが、そこの意味は。 ○労働衛生課長 それはまた検討したいと思います。これは石綿肺に限った記述ですから、もちろん じん肺全般との違いについて明確になるように工夫させていただいて。 ○名取委員 私は、それならここで残しておいてもいいです。文言がわかりにくいということだけで すから。 ○中原座長 それは検討してもらうということにしたいと思います。ほかにありますか。 ○名取委員 3番目の「胸部臨床検査」で、先ほどの重喫煙と同じ問題がありまして、「喫煙と自覚症 状が関連することや、健康管理に重要であることを踏まえ、問診票を用いて喫煙歴の調査を行うこと としている」と。これについては私も、全く事実としてそのとおりであるし、健康管理として重要で あるとは思っていますので、それの記載は全く異論がないのです。しかし「石綿肺の鑑別として、喫 煙歴の情報が必要であるとの言及がなされたところである」。以下の、「以上より、喫煙歴の情報は、 じん肺の鑑別を適切に行うために重要でもあることから、じん肺及びじん肺の合併症の健康管理やじ ん肺の鑑別に役立てるため」云々という所の点については、健康管理のために大事だから、今後はっ きりと明記しようということについては賛成ですが、いま議論があった類似の不整型陰を呈するとい う意味の鑑別、ここの部分の文言については、上を消したと同様に省略した扱いにしていただきたい と考えています。 ○労働衛生課長 これは先ほどの(1)と連動しますので、様式欄に書くことは参考情報としては有益だ と思いますので、それは認めていただくことにして、(1)に連動した所は省略なりして適切な表現に改 めます。 ○名取委員 よろしくお願いします。 ○中原座長 その他ご質問等はありますか。それでは次へ参ります。4「肺機能検査」。そこのほうが 議論としては重要ですので、ご説明をお願いします。 ○主任中央じん肺診査医 私から「4.肺機能検査」について、また少し長くなりますが読み上げます。 (資料1第3の4.を読み上げ)  以上が本文で、別紙として、1枚めくっていただいた所に、「肺機能検査のフローチヤート(案)」 があります。こちらが(1)のフローを図にしたものです。  もう1枚めくって、別表としてAaDO2の限界値があります。これは、現在の「じん肺診査ハンドブッ ク」の内容と同じです。 ○中原座長 肺機能検査についての説明がありましたが、ご意見、ご質問等を出していただきたいと 思います。1つ言えることは、フローチャートを入れ替えるということになるのですか。 ○主任中央じん肺診査医 はい。 ○中原座長 これは見た目、かなり変わったという感じになるので、非常にわかりやすくなったこと は事実ですが、とにかく図が変わるということは、これは見た目には非常に大きな変化だと確認させ ていただきました。何かご意見、ご質問等を出していただければと思います。 ○工藤委員 1カ所だけ。大変よく、過不足なく書かれているのではないかと思うのですが、肺機能検 査の項目について、非常に細かなことですが、5行目ぐらいの所ですが、「肺胞気動脈血酸素分圧較差 (AaDO2)に加え」とありますが、あれは実は逆なのです。AaDO2というのは、動脈血の酸素分圧と炭酸ガ ス分圧の両方を踏まえて計算して出すものですから、ここの表現は「一定程度低下している場合には、 動脈血ガスを的確に評価するため、低酸素血症の指標である動脈血酸素分圧(PaO2)に加え、ガス交換障 害の指標である肺胞気動脈血酸素分圧較差(AaDO2)を考虜することが妥当である」と。これは逆にした ほうがいいと思います。 ○主任中央じん肺診査医 ご指摘ありがとうございます。医学的にはそのとおりということで理解し てよろしいでしょうか。書いた趣旨としては、いまのフローチャートではAaDO2が主体になっているの で、こういう書きぶりになっているのですが、ご意見を踏まえて。 ○工藤委員 ただ、この図の所も、図を見ていただくと、やはりPaO2、要するに低酸素血症を前に出 して、それで「AaDO2が著しく開大」となっていますので、それとの整合も含めると、そういうことに なるのです。 ○吉田委員 フローボリュームを削除するということには賛成ですが、そういう症例があるかどうか わかりませんが、%VCや1秒率が一定程度低下していない呼吸困難がIII度以上の人がいた場合という ケースは、私はたぶんないと思うのですが、従来だとそれで呼吸困難がIII度以上のときにやるという ふうになっていましたので、入れておいたほうがいいのではないかと思うのです。 ○工藤委員 おっしゃっているのはV(・)25のことですね。 ○吉田委員 そうです。実は従来だと、ここの部分で%VCが80%とか、あるいは80%以上で1秒率が 70%以上で、つまり、全く肺機能的には%VCも1秒率も異常がなくて、でも呼吸困難がIII度ある場合 の方がいたことを想定してというか、その場合も、呼吸困難がIII度の場合は動脈血をやって判定する というふうに従来はなっていましたので。 ○工藤委員 呼吸困難というのは自覚症状なのですね。この自覚症状である呼吸困難をいかに大切に するかというのは非常に重要なことなのですが、実は、厳密に言うと単純に肺活量とか、いわゆるス タティックな、静的な肺機能ですよね。それでは必ずしも表現できないものがあるわけです。安静時 の動脈血は全く正常でも、動いた途端にポーンと低酸素血症になったりする、これはよくあることな のです。ですから、そういう動的な肺機能をいかに導入できるかというのは今後の課題だと私は思っ ております。ただ、同じ静的な肺機能の1つであるV(・)25だけを引っかけるのはやめたほうがいいと思い ます。というのは、ローフローカットというのが起こる。要するに検査の限界の部分があって、そこ はコンピューターで計算して無理やり延長させたりしているわけです。実際には、先生がおっしゃっ たように、肺活量とか1秒率が正常で、そこだけが下がっているというのは、むしろ、きちんと検査を したのかということが出てきてしまう。私はそう思っています。 ○岸本委員 私も工藤先生と一緒なのですが、これはあくまでもじん肺ですよね。じん肺の呼吸器に 障害が起こる病態で、肺活量と1秒率が正常であってAaDO2だけが介在するとなると、これは呼吸器の 病気ではなくて、例えば慢性の肺動脈血栓症とか神経・筋の病気とか、じん肺以外の疾患でなってい ることがほとんどではないかと思いますので、自覚症状だけが呼吸困難度のIII度以上で肺機能が正常 な人間にAaDO2、PaO2をやる必要はないと私は思っていますし、今まで私も長い間、中央じん肺診査医 をしてきて、そういう事案が出てくるのですが、必ず、すべての総合判断をした場合にはじん肺によ るものではないということだったものですから、私は必ずしもそこは入れなくていいのではないかな というふうには思います。 ○吉田委員 私も、たぶん、そういうお答えがあるだろうなと思いましたけれども、一応、確認をさ せていただきました。 ○名取委員 いまの点なのですが、最初、この委員会の途中でいただいた案には、その肺機能のチャ ートの案が、1〜3という資料が送られてきたのです。今日見ると1だけになっていて、結果的には同 じなのですが、2だと「呼吸困難III度以上」という表現だけ残して、V(・)25はしないけれども、2次検査と して「血液ガスをして、そこで」となっていて、この案2ぐらいにしておいてV(・)25/Htは採用しないと いうような考えであまり問題はないように思うのです。、これだと何か支障があって1にされたのか、 そこをご説明いただければと思うのです。 ○主任中央じん肺診査医 お手元に資料がなくて恐縮ですが、いま名取委員が言われたのはこのフロ ーチャートのことですね。このフローチャートは、事前にお送りしていた資料がまだ途中の検討段階 ということで、3つぐらいバージョンがあって、フローチャートの右上のほうに、呼吸困難度やPRの 検査についてのセルがあるものと、3種類ぐらい送らせていただいたと思うのですが、いまの報告書に 付けている案が、環境省の検討小委員会での提示にフローとしていちばん近い図ということで載せさ せていただいています。3番目の表は、現在のハンドブックのフローチャートからいちばん近い、最小 限の修正案というような形の案として提示させていただいております。  基本的にはどれも変わらない書きぶりです。機械的に当てはめるのではなくて、最終的な評価を判 断するということだと思うので、今のハンドブックから見直しがなるべく少ないように見えたほうが 現場に混乱がないのか、もうこの際、環境省にそろえてしまったほうが現場に混乱が少ないのか、そ ういう視点で、事務局サイドで、環境省になるべくそろえてしまったほうがいいのではないかという ようなこともあって、これを提示させていただいておりますけれども、ご議論いただければと思いま す。 ○中原座長 V(・)25をやめるというのはご異論がないようですので、それはその前提で話をすると。そう すると、いまのご議論を聞いていると、呼吸困難度IIIというのが、要するに自覚症状による判定にま ず重きを置いて、そう言われたら、「それでは動脈血ガスを調べてみましょう」と。それで調べてみ たら、肺機能が落ちている、著しい肺機能障害があるということになるかもしれない。だけどそれは、 今まで呼吸困難がないのですかね。 ○岸本委員 呼吸困難はあるが、肺機能は正常という場合もあります。 ○中原座長 そうなると、AaDO2とか、そっちのほうが落ちていたとしても、それはじん肺が原因で落 ちているとは言えないのではないか、だからそれも外そうと。こういうことですね。 ○吉田委員 私自身も岸本先生と一緒で、長い間見てきていましたけれども、そういうようなものは ないですものね。 ○岸本委員 あくまでも我々の臨床経験というか、10数年のキャリアの中にはなかったと思います。 私も吉田先生も大体同じ年数だと思うのですが。 ○中原座長 理論的に考えるとそのとおりだろうと思うし、30年以上の経験で言うと、実際の臨床で はそうであったと。そうすると結論的に言うと、いま提示されているものでいいのではないかという ことですね。これについて何かご意見ありますか。 ○坂谷委員 次になるかもしれませんが、次の頁の「その他の検査」の所で、心電図の意義が薄れて きていると。会議の前に岸本先生に申し上げていたのですが、いまの話を踏まえて、心電図の検査な ども参考にしてということになろうかと思うのです。ご本人の呼吸困難と称する苦痛の解析のために 心電図も要るのではなかろうかという話が1つ。  もう1つは、(3)のいちばん最後ですが、「肺機能検査の結果の判定に当たっての留意事項」で、 「スパイロメトリー及びフローボリューム曲線の結果や血液ガス測定の結果が記録された検査報告書 を確認することが適当である」。この「適当である」を「必要である」と変えることはいかがでしょ うか。すなわち、スパイロメトリー及びフローボリューム曲線のデータの写しを提出させることを提 案してもよかろうかと私は思うのです。 ○岸本委員 そうですね。それは専門家がこのカーブを見れば、これが最大努力をしていらっしゃる かどうかというのがわかるわけです。肺機能というのは最大努力をしてこそ意味がある検査方法なの で、専門家が見ればそれがわかるわけです。  それから、いま坂谷委員がおっしゃったように、吉田委員がおっしゃった呼吸困難が強いけれども 肺機能が正常だといった場合に心電図に異常がある。心臓が悪くても肺に影響する場合があって、静 脈、肺動脈の血栓症とか、そんなものがあるわけですから、やめてしまえと書いてある心電図を復活 させていただければ、いまの吉田委員のご懸念はだいぶ減ってくるのではないだろうか。あくまでも、 著しい肺機能障害は、この肺機能は大変重要な検査ですが、総合的な判断をしている。レントゲンも 見るし、動脈血ガス分析の結果も見て総合的に判断をするということですので、この原案でいいので はないかと私は思います。 ○中原座長 いま出てきた坂谷先生がおっしゃったことをまとめると、まず、(3)の「肺機能検査の結 果の判定に当たっての留意事項」のいちばん下の所、スパイロメトリー及びフローボリューム曲線、 あるいは血液ガスの測定結果の検査報告書を確認することが「適当である」でなくて「必要である」 と。「必要である」ということになると、現場の事務量が増えてくるという話になりますよね。要す るに、地方じん肺診査医の診査を受けるためには、肺機能検査の報告書をコピーして提出しろと。添 付資料として付けろと。こういうことになりますよね。 ○岸本委員 おっしゃるとおりですが、肺機能検査をやったときに、必ずこれは打ち出されてくるデ ータですから、それをコピーして付けるだけの事務量を多いと見るかどうかなのです。これが添付さ れてくれば、地方じん肺診査医は診断が容易になるだろうということは、是非知っておいていただけ たらと思います。ほとんど皆さんきちんとやっていらっしゃいます。ほとんどやっていらっしゃる方 (健診機関)にこれをやりなさいと言うのか、随時申請で、いわゆる「著しい呼吸障害あり」という ことで申請された方のみ必ず付けるとするべきなのか、その辺りは議論があってもいいのではないか と思います。 ○名取委員 いまのところにも絡むのですが、1回だけだと再現性がないので3回するという方向はい いと思うのですが、このときに、最も良好な結果を採用するという部分が新しい判断基準として出て きますよね。 ○岸本委員 いや、新しいことではなくて、それはずっとそうだったのです。それはハンドブックに も書いてあって、最も良いデータを採用する。 ○名取委員 その最も良いという部分では、例えばFVCとFEV1が、3回やるとFVCがいちばん良くて FEV1が必ずしもいちばん良くないようなときもありますよね。そこら辺の判断基準までは今まであま り書いてないのです。ですから、そこら辺は阿部先生に今日お伺いしたかったのですが、3回やった場 合のFVCがいちばん高いけれどもFEV1は2番目ぐらいの場合というのがありますよね。そういうとこ ろの判断はどのようにお考えなのか聞きたかったのです。 ○阿部委員 今日の参考資料6の「呼吸機能検査ガイドライン」、これは2005年日本呼吸器学会の肺 生理専門委員会から出されたガイドラインです。基本的にはスパイロメトリーは、このガイドライン に従って実施すべきです。ベストカーブの選択の仕方も、16頁の下のほうの左半分に書いてあります ただ、現実問題として、このガイドラインの通りにできない方もたくさんいらっしゃいます。例えば1 回しかできなかった場合、あるいは、お年を召していらっしゃって十分な努力ができなかった場合に は、その旨を報告書に書くことになっていますので、そういうフローボリュームカーブも、総合的に 判断する材料の1つに使うということになると思います。 ○中原座長 坂谷先生が「適当である」を「必要である」に直したらどうかとおっしゃっていたのが、 いまのご議論に対する1つの解決策のように聞こえたので、現実的にそう変えて大丈夫かということを 労働衛生課長のほうに聞いてみたいというのが私の真意なのですが、医学的には「必要」ということ でしょうかね。 ○労働衛生課長 そうですね。 ○中原座長 では、そのような方向で考えるということになるのでしょうかね。 ○労働衛生課長 医療施設のほうにはお手数をかけますが、受ける側については、これは吸収できる 作業量かと思っております。 ○中原座長 それでは、坂谷先生のご提案はその方向で考えるということですね。もう1つ、ECGです ね。心電図についてはもう要らない、意義が薄れていると書いてあるけれども、そこまで考えると、 ECGも、ここまで書くのは書きすぎではないかということでしょうか。 ○坂谷委員 そうです。 ○中原座長 では、心電図については、検査の意義が薄れているというのは、いわゆる本当の呼吸の ほうから考えるとそうだけれども、健診を受ける人の自覚症状と検査データとの乖離を考えざるを得 ないようなときには、その原因として心電図を判定するのも非常に重要であるということになります ね。そうすると、ここの書き方を考えていただくということですね。 ○労働衛生課長 わかりました。 ○坂谷委員 そこに心電図と選択的肺胞気管支造影を並列に書いてあるのはちょっとまずいですね。 だから、後半の「選択的肺胞気管支造影」については明らかにもうしませんから、これは意義が薄れ ているのはそのとおりです。 ○中原座長 それでは、いまのことについてはそれでよろしいかと思います。そのほかにはいかがで すか。 ○名取委員 呼吸困難度の判定についてはどういう結論になりますか。Hugh-Jonesのほうを今までど おり採用という方向になっているのでしょうか。 ○工藤委員 呼吸困難度はいろいろな指標がありますが、日本で言えば、必ずしもそれは国際的とい うわけではないですが、ずっと使われているHugh-JonesはHugh-Jonesでよろしいのだろうと思うので す。ただ、先ほどお話があったように、そういう自覚症状と、肺機能検査や血液ガス等との乖離があ る場合は、その原因について医学的にきちっと探索をしていくべきであるという、これはもう医療に なってしまうのですね。 ○中原座長 健康診断の結果の判定というところで、そこまで考える必要はないわけですね。 ○工藤委員 ええ。これはお医者さんに行って、何に原因があるかきちんと調べなければいけない。 ○主任中央じん肺診査医 事務局から補足させていただきます。名取委員が言われたバックグラウン ドでは、いまのHugh-Jonesの分類をベースにした呼吸困難度になっているわけなのですが、それを MRCの分類にするべきかどうかということを何人かの先生方に確認させていただいていた経緯がありま して、そういったバックグラウンドで指摘されて質問されたのだと思います。事務局の案でも、そこ のところはまだ明確に委員の先生方と議論もそんなにしていないことから、とりあえずは、今後の検 討的な位置付けということにさせていただいております。 ○中原座長 Hugh-Jonesでやるというのは、「じん肺診査ハンドブック」に書いてあったと思います。 だから、それについて何も書かないということは、それを踏襲するということになりますよね。それ 自体はよろしいですね。MRCは微妙に違うという具合に聞いたので、そこを導入してしまうとおかしな ことになるといいますか、どっちかに書いてしまうのならば話はわかりやすいのですけど。その点は そういうことでよろしいですか。 ○名取委員 それにも絡むのですが、結果的にV(・)25は必要ないと思うのですが、案2ぐらいのほうが、 以前と今のものと今回の案との間ぐらいでちょうどいいのかなという気もしたのですが、このHugh- JonesIIIは残しておいていくならば、その後、血ガスなりでチェックされるので、それは残して。 ○中原座長 2番目についてコピーしてくれますか。これですよね。これを残したらどうかという。 ○名取委員 結局、3回のそういうカーブが提出されるとか、そこでかなり精度が上がりますので、そ ういう点ではそれでいいのかなという気もしたのです。 ○吉田委員 従来使っていた問診票がありますよね。あの問診票に基づいて健康診断をやっていまし たから、そういう意味合いでは、変な言い方なのですが、かえって健康診断をする側がいい加減にや るような気がするのです。呼吸困難度のIII度のとり方とか、咳や痰のとり方をいい加減にやるような 気がしますので、入れておいたほうがいいような気がします。 ○中原座長 入れておいたほうがいいという意味ですか。 ○吉田委員 ええ、そういう意味合いで、健診機関も真面目にやっている所もありますのであれなの ですが。 ○名取委員 臨床的に見ていると、結局じん肺の管理II以上の方では、Hugh-JonesがIの人はほとん どいなくて、IIからだんだんIIIになってきてという辺りとIVになっていくというのが、非常に呼吸機 能とパラレルに動いているという印象があるのです。ですから、その点では残しておくことにそう問 題はないかと思います。ただ今回呼吸機能の精度をかなり高めた。そういうことになりますよね、三 回実施が必須という形で。ですから、そこの部分が担保されれば、診査にとっては非常にスムーズに いくので、それはいいことではないかと私は思っています。 ○中原座長 臨床家の方々のご意見で最終的には決めるべきだとは思うのですが、私のように公衆衛 生学をやっている人間から見ると、できるだけ客観的な資料で判定するというのがいちばんいいので すよね。その呼吸困難度が1つのメルクマールになって、III以上になった場合に、そして動脈血ガス測 定をやるということに30年前は決めたということです。ところが、その後、肺機能検査のほうの進歩 といいますか、それをどう解釈するかというほうの進歩もあって、自覚症状云々よりも客観的な検査 データを基にして判定をして、先ほど吉田先生のご質問にあったように、呼吸困難度IIIというのがク リアといいますか、クリアという言い方もおかしいのですが、それ以上の呼吸困難度があって、なお かつ動脈血ガスがおかしいという、ちょっと理論的におかしな状態が起こるかどうかと。それをクリ アするためには心電図をもう一度重視すべきではないかという意見になったと思うのです。では、私 のような立場の人間から考えると、心電図だけで全部説明できるのかということも言ってくるのです ね。  ということで、こうなってくると臨床家の先生方がじん肺の健康診断をして、そしてその後のじん 肺の健康管理の観点から、この部分は残しておいたほうがいいとお考えになるかどうかというところ にかかってくるように思うのですが、そこら辺は何かご意見はありますか。あくまでも、これは健康 診断の判定であって、そしてその後のじん肺の健康管理に役立てるという。要するに、いまの問題で は呼吸困難度III度以上というものを生かす必要があるかどうかということになってくるわけです。今 までの歴史的経緯から見ればあってもおかしくはないのですが、私がいま申し上げたのは、できるだ け客観的なデータで判定をすべきだという基本的な考え方があるとすれば、この呼吸困難度III度以上 というものを残すことによって、じん肺の健康管理にどれだけの意義が認められるかどうかという具 合に思ってしまうのです。私は公衆衛生学の立場ですので。  環境省のほうはここを省いたのはどういう理由なのでしょうか。 ○労働衛生課長 省いたというよりは、最終的な総合的な判定の中には含まれているのだと理解して いるのです。ですから、手順として先にくるか最後の総合的判定にくるかというところで、環境省方 式のフロー図もありかなと。ただ、自覚的症状というか、聴き取ればわかる話ですから、そういった ものは、折角ですから、幅広く聴き取って、活用できるのであればもちろんすべきですから、手順の 血ガスの順番の前後をどちらにするかというだけの話かなと私は思っております。ただ、従来この方 式に慣れ親しんだ現場からすると、そのほうがいいのかもしれない。 ○名取委員 巡回健診をかなりやっている立場からすると、まず問診票が先に来ますね。呼吸困難I 度かどうかというのを詳しく聴きます。その後、呼吸機能検査にいってしまう。どう聴いてもIとい う人と、よく聴くと実はIIという人が案外いるのです。そこをはっきりさせると、I度で呼吸機能が 悪いという方はほぼないのです。自覚症状と呼吸機能にはかなり関連性があるので、そのずれを見な がら、こうではないかなという総合的判断をしていくので、案外、パッと聴いてすぐ区別できる大事 な指標であるのです。今回以降きちんとした肺機能データはデータで出すという部分も含めて、これ はこれであっていいのかなという気はしております。 ○労働衛生課長 最後にご提言いただくべき話かと思いますが、今回、どのような形で見直すにしろ、 一定期間の検証作業といいますか、データをきちんと取って、どんな影響があったかということを調 べる必要があります。その場合、この呼吸困難度の判定を最後の総合案として潜り込ませてしまうと、 検証としてもなかなか難しくなってしまう可能性はあります。 ○中原座長 おっしゃる意味を私なりに解釈すると、簡単に言うと、じん肺健康診断をこれからまた 見直すというか、新しいものに改定するようなデータを収集する場合に、今の時点で呼吸困難度を省 いてしまうと、なぜこんなことを調べるのというような感じになって、呼吸困難度の位置付けをもう 一度見直すということが難しい可能性もあるということですね。そうすると、ここの部分は歴史的経 緯もあり、今の時点では置いておいてもいいのではないかということかもしれませんね。 ○工藤委員 最近、日本呼吸器学会のCOPDのガイドラインが改訂されたのですが、昔は%1秒量でス パッとグレードのI度からIV度までずっと分かれていたのですが、今度変えたのは、そういう自覚症 状的なものも加味してという、斜めに移行したのです。その辺が、今の考え方としては、完全に機械 で切ってしまうとこれはやりやすいのです。だけど、それだともうひとつ全体を包括できない部分が あるので、それはそれで取り入れて検討していこうという、そういう形がいま少しずつ変わってきて いる。だから、これは残しておいてもいいのではないかと思うのです。 ○岸本委員 皆さん方がそうおっしゃるのであれば、別に、それほど厳しく切れと言っているわけで はありませんので。 ○工藤委員 もちろん、先ほど申し上げたように、肺機能との乖離が強い場合は、それは本当に何な のかということをきちんと追究すべきものだということは一言入れておいていいと思うのです。 ○中原座長 吉田先生は案の2のほうがいいというお立場で今まで発言されているのですね。 ○吉田委員 はい。それと、適当ではないかもしれませんが、俺はじん肺でこんなに息が苦しいとい う人が、よくよく調べてみたら心疾患だったということが結構ありますので、その辺の診断をしてい くためにも、じん肺とは関係ないということなのでしょうけれども、患者さんに納得していただかな ければいけませんので、そういう意味合いで入れておいてもいいのではないかと思います。 ○中原座長 ほかにご意見ありますか。これはかなり重要なのですが、坂谷先生。 ○坂谷委員 いや、現実的に、今日配られた案の右上の黒塗りのベタ塗りの所に「または」をもう一 つ入れて、「または、呼吸困難III度以上」と入れると、いまの指針も活かされるのではないかと思い ます。 ○中原座長 「パーセント肺活量<80%、または「云々」または、呼吸困難度III度以上」という3つの 選択肢にするということですね。いかがですか。 ○阿部委員 線が多いとすごく読みにくくなりますので。線が少なくて素晴らしい案だと思います。 ○坂谷委員 基本的には図はこのままで。それからもう1つ、ご存じのとおり、呼吸器学会は「呼吸機 能検査」なのです。じん肺のほうは「肺機能検査」なのです。これをこのままでいくか、この機会に 呼吸器学会に合わせて全部「呼吸機能検査」に統一するかどうか。文言の問題です。 ○中原座長 文言はいいのですが、これは省令とか政令とか。 ○労働衛生課長 法律で「肺機能」になっているのです。環境省の委員会が立ち上がってから、いず れ直さないといけないとは考えていたのです。 ○中原座長 申し訳ありません。法律改正までは無理のようです。そうすると、いまの坂谷提案で、 名取先生と吉田先生のほうも特に問題はないですか。私も、そういうことで、皆さんがご同意いただ けるのなら、この辺の。 ○坂谷委員 ただ、おわかりだと思いますが、判定が、即その値が、AaDO2が大きく下がっていても、 「著しい肺機能障害あり」と判断するのではないということをきちんと明記しておかなければいけな い。 ○中原座長 そうですね。それについては、先ほどの心電図の議論などにつながってくることになり ますね。 ○坂谷委員 はい。総合的に最終的に判断するのですよということが保証されていなければ、このチ ャートで著しい肺機能障害だと判断できると言われたら困ります。 ○中原座長 そのことを書いてあるのがいちばん下の※ということになるわけでしょうか。「肺機能 検査の結果及び2次検査の実施の判定にあたっては、エックス線写真像、呼吸困難の程度、過去の検査 結果他の所見等をふまえて医師の総合的評価による判定を必ず行うこと」。よろしいですか。 ○労働衛生課長 事務局で解説の図などをつくる際には、この「著しい肺機能障害あり」の前に合流 していますが、この部分できちんとその手順を踏むようには、もちろん本文はそうなりますが、図で もそういうふうに書き込むようにいたします。 ○中原座長 では、この議論はご異論ないところに落ち付いたようですので、3項目に増やすというこ とと、地方じん肺診査医の診断・審査についてフローボリューム曲線や血液ガスの測定結果等、そう いうものを確認することが「必要である」というふうに直す。それから、心電図の書きぶりについて 有用性を強調するとでもいいますか、どうもネガティブな意味の強調になるような気がしますが、そ ういう具合に直す。では、この話についてはこれで終わりにします。工藤先生、どうぞ。 ○工藤委員 これは項目だけの問題とも言えるのですが、どうも、1番〜3番ですか、ここの所は、胸 部臨床検査まではじん肺症かどうかの診断なのです。それから、呼吸機能についてはその重症度にか かわるわけです。ところが、この5番に「合併症に関する検査」があって、6番に「その他の検査」と いうのがあるのですが、これは胸部臨床検査と言っている3の流れの中にあったほうが座りがいいので はないかと思うのです。 ○中原座長 「その他の検査」を3の所に。 ○工藤委員 ええ。これは「胸部臨床検査」と書いていますが、実際は自覚症状の検査です。自覚症 状の検査というのは普通は言葉として言わないのです。これは検査というよりは問診なのですが、こ れも調査票を使ってやるから「検査」となっているのだろうと思うのです。これは、53・54年当時の 選択的肺胞気管支造影と今日のCTは普及度などが全く違うのです。あのころは選択的肺胞気管支造影 をやれる所は全国に数施設しかなかったと思うのです。ですから、そういう意味ではまるで位置が違 うので、「その他の検査」の所は前に持ってきてしまったほうがいいのではないかと思います。 ○中原座長 特に、いまの心電図の話などを考えると。 ○工藤委員 まず診断をして、じん肺かどうかの区別をして、それから重症度というような。 ○中原座長 ただ、これは法律上の言葉であれば分けるのはしょうがないですが、「胸部臨床検査」 というのも法律上の言葉ですよね。 ○主任中央じん肺診査医 はい。前回もご説明させていただいたのですが、実際には省令レベルなの ですが、じん肺の施行規則の中で「胸部に関する臨床検査」というものが定めてあって、それに基づ くものになっております。そういうことで整理させていただいております。 ○工藤委員 それは中身を変えることはできるのですか。じん肺ハンドブックの流れだと、あの当時 だと「その他の検査」というのはいちばん最後なのです。その内容を持ってくるということはできな いのですか。 ○主任中央じん肺診査医 例えば、先ほどご指摘があった心電図の検査が、呼吸困難を呈している方 の鑑別に有用であるような言い方については「肺機能検査」の所に書き込むとか、そういうことは可 能ではないかと思っております。そうすると座りがよくなるのかなと思っております。 ○中原座長 それでは、そこら辺のことを念頭に置きつつ、法令上のことだとなかなか難しくなるの で難しいですが、書きぶりを考えていただくということでしょうか。そのほかに何かご意見、ご質問 等はありますか。 ○阿部委員 「じん肺診査ハンドブック」に書いてある「Hugh-Jonesの分類」という言葉ですが、正 しくはFletcherという人が書いた分類で、それをHugh−Jonesが引用したため、日本では「Hugh- Jonesの分類」で紹介された経緯があります。従って、しばらく前から教科書では「Fletcher-Hugh- Jones」と書いてあります。直すことが難しいのであれば括弧して「(Fletcher-Hugh-Jones)」などに していただいたほうが、若い方が勉強するときに混乱することもいと思います。 ○中原座長 医学部で正確なことを教えているのに、世の中に出たら昔のそのままで、それを勉強し ろと言われる若い人もかわいそうなのですが、まあ、しょうがないですね。だから、それも事務局の 工夫で書き替えられるかどうか。あるいは、両方わかるようにしておかないと、また。 ○吉田委員 この際だから教えていただきたいのですが、BMRCがありましたよね。それをFletcherが 引用したのですか。 ○阿部委員 全部似たような分類なので、一度調べてみたいと思っています。MRCのオリジナルの論文 も探そうとすると結構大変で、日本の今のガイドラインに載っている引用文献もATSニュースか何かに 載っているものが引用されています。普通、ATSニュースというのはよほどの所に探しに行かないと出 てこないと思うのです。 ○主任中央じん肺診査医 ご指摘のところの表現は「Hugh-Jonesの分類」、正しくは「Fletcher- Hugh-Jonesの分類」という形のほうが適切ということで。表現ぶりは検討しようと思いますが、何ら か触れた形の報告書にしようと思っております。お手元の資料では参考資料1がハンドブックですが、 それの42頁に、現在のハンドブックではHugh-Jones分類についての記述があります。 ○中原座長 ということで、「Hugh-Jonesの分類である」と。これもまたこの言葉を生かしておかな いと、Fletcherと言われたら、何じゃというわからない人がたくさんいると思いますので、そこの言 葉も工夫を要するところです。  それでは、「肺機能検査」についてはこのぐらいにしまして、次に、「合併症に関する検査」「そ の他の検査」「その他」「終わりに」とありますが、説明を事務局にお願いします。 ○主任中央じん肺診査医 それでは、まとめて説明させていただきます。5番の「合併症に関する検 査」ですが、ここは読ませていただきます。 (資料1第3の5.を読み上げ)    続けさせていただきますが、第4の「その他」といたしまして、現在、肺機能検査及び検査結果の判 定等に関する改定の前に、じん肺管理区分の管理4と決定され、療養を要するとされた者等について、 継続して健康管理が行われることが適当である、ということを触れております。  第5として、「終わりに」ということで3点あります。1点目は、残された課題については、引き続 き、知見の収集に努めること。また、今回の見直しの検証を行うためにも、一定期間、調査等を行う ことが適切であること。3番目には、こういった適切な健診の実施につながって、粉じん作業従事者の 健康管理が一層充実することを期待する、というふうに結んでおります。以上でございます。 ○中原座長 それでは、心電図のこと等はご議論が済みましたので、その他で何かご意見、ご質問等 はありますか。 ○坂谷委員 個人的には、この「終わりに」の「制度改正にあわせて」というのがどうも気にくわな いのです。環境省に歩調をあわせるというか、何といいますか、もともと自主的にやるべきであった のに。でしょう。だから、環境省がそういうことをやったから渋々ではないですけれども、それに 「あわせて」という言いぶりが気にくわないですね。 ○中原座長 おっしゃることはわかります。2001年に日本人の標準が学会等から出されて、それの検 証が終わって、このじん肺健康診断にもそろそろ取り入れるべきであろうという時期に、環境省のほ うが石綿の問題で先行したから、こちらも、それではその時期だからやりましょう、という感じ。そ のニュアンスを「制度改正にあわせて」と言われるのはちょっと問題である。こちらだって認識は持 っていたと。だけど、それはそれなりに時期というものがありますから、そういうことを、ちょっと 書きぶりを変えていただきたいということで。そのとおりだと思いますね。ただ、環境省が先行した というのは、ある意味ではしょうがない部分がありまして、ある事件が起こったから、それに対する 対応を急いだということは事実だと思いますので、そのこと自体を問題にするわけではもちろんあり ません。 ○吉田委員 前からずっと誤解を受けているというか、実は、自覚症状をとった後に合併症の検査を して、その後、肺機能なのです。ですから、ここでも一緒なのですが、じん肺審査ハンドブックのと きから一緒なのですが、順番を反対にできないかなと。これでもそうなのですが、肺機能検査の後に 合併症の検査になっていますので、4番と5番を反対にするというのはとても難しいのですか。 ○岸本委員 合併症があると、肺機能検査をやってはいけないような気胸とかがありますよね。それ と、例えば続発性気管支炎などの合併症があると、肺機能検査が正しく評価されない。だから早めに 合併症のスクリーニングをしておいて、それから肺機能をということに今まではなっていたわけです。 ○工藤委員 でも、法律でできないという答えを先ほどいただいたので、しょうがないなと思ったの です。5番、6番は前に持っていったほうがいいというのはそういう意味なのです。 ○吉田委員 そうですよね。 ○工藤委員 ええ。まず、きちんとした診断をした上で、その重症度がどのぐらい軽度かということ がその次なので、肺機能はむしろ後ろに持っていったほうがいい。でも、できなければしょうがない。 ○吉田委員 フローチャートはそうなっているのですよね。 ○岸本委員 工藤先生がおっしゃられたように、順番は先生のおっしゃられたとおりなのですよね。 ○中原座長 そのとおりなのですが、法律上の並び方なのか、なかなか変えられないということがあ ることは事実なのです。 ○吉田委員 でも、フローチャートはそうなっています。 ○主任中央じん肺診査医 私の説明が誤解を与えてしまったかもしれないので解説しますけれども、 いまの順番というのは、ハンドブックで書かれている順番で記載されているということの順番という ことと、特に工藤委員のご指摘があった、胸部の臨床検査の中に自他覚症状の検査が含まれていると いうところは、法令でそういう体系になっているという意味での話をさせていただきました。それと、 実際の健康診断での検査の順番をどういう順番でやるかという趣旨とは、また別の意味で私のほうで 答えさせていただきました。検査の実施のフローチャートについては、エックス線検査と胸部の臨床 検査と合併症を確認して、その後で肺機能検査ということで、その中ではいまのご指摘のとおりとい うことでよろしいわけです。 ○吉田委員 だから書き方の順番を変えられませんかという。やはり法律上無理ですかね。 ○工藤委員 5と6を3の次に持っていったらどうでしょうか。4を6にする。 ○中原座長 要するに、臨床家の側から見ればいまの順番が正しいのですが、これ自体は、労働基準 監督官とか医学にそれほど詳しくないような人もたくさん読みますので、そこら辺で順番を変えてし まうとわからなくなるということもあるのです。臨床家であれば順番が変わっていても、これは本来 こっちでやるべきだというのは理解できるけれども。こんな言い方をすると悪いですが、医学にはう とい人たちに分かるように書くとこうなる、という面はあるのです。 ○安全衛生部長 法令上の整合性も含めて検討させていただきます。 ○中原座長 そうしていただいたほうがいいと思います。そのほかにありませんか。 ○名取委員 これで案としての検討は一応終わりということで、一旦、この検討会はしばらく休止し て、パブリックコメントを経て、上のじん肺部会等にこれを戻される。その間までに、今日の直した ようなものについての確認は改めて検討会を開くのではなくて、事務局とのやり取りで今日の中身は こうなりましたという確認をするのか、もう一回開かれるのか、そこら辺の確認をお願いします。 ○中原座長 今後の段取りですね。 ○名取委員 少なくとも、いまの話でどう文言が変わったのか見たい気もします。 ○労働衛生課長 報告書は報告書ですけれども、それを通知やシステムの改正にどうつなげるか、あ るいはパブリックコメント案は全く別の書きぶりになりますので、それに報告書として案の段階で付 けますので、そこは、これはこれで閉じさせていただいて、微修正はお諮りした上で最終報告にはし たいと思いますが、その調整は開くということではなくて、メール等のやり取りで調整した上で座長 にご一任いただいて出していきたいと思います。もちろん、事実関係とか、今日の受けとめ方が違っ て、結果的に違えば、またそれは別ですけれども、会合として開くのは今日が最後ということです。 ○中原座長 私の理解では2回で今日で終わりと。それで、一応、形の上では座長一任ということにし ていただいて、事務局側で今日の意見を聞いたり、そのほかを勘案して、修正を先生方とそれなりに やり取りをして、報告書として完成させる。その報告書ができたら、後は、これをじん肺部会に報告 して、じん肺部会のほうで議論をしていただくということになります。それについては、我々のこの 委員会は別になるということになるでしょう。それで、これについてのパブコメは、この検討会の結 論に対するパブコメですか。 ○労働衛生課長 いいえ、このエッセンスを受けて、必要な部分をこう改正します、ということに関 するパブリックコメントです。ただ、その際に、まさにエビデンスとか、どんな議論があったかもわ からずにパブリックコメント案を見せられても、国民の方は理解できないと思いますので、この報告 書と参考資料を含めて、一緒に参考として提示するということになります。ですから、そのときには 今日のご意見を反映して修正したものでないとおかしくなりますので、それは大至急やらせていただ きます。 ○名取委員 そこら辺はメールで見せていただいて、その上で著しい相違がなければ一任するという ことで進んでパブコメに行く、それで一旦閉じる、という理解でよろしいですか。 ○労働衛生課長 はい。今後の情報収集とか宿題にしてあるものは、また別途じん肺部会にお諮りし て、そういう検討会を立ち上げるべきかどうかをご議論いただいてから決定したいと思います。 ○中原座長 それでは、石綿健康被害救済法における石綿肺の取扱いを踏まえた、こういう表現をし たらいけないですね。じん肺法に基づくじん肺健康診断のあり方について検討を進めてまいりました が、一応、報告書(案)について、今までの議論を踏まえて必要な修正を加えるということでご確認 をいただきたい。それで、修正の表現ぶり等につきましては座長に一任いただきたいということです。 それでは、ありがとうございました。  最後に、安全衛生部長から一言お願いします。 ○安全衛生部長 じん肺健康診断等のあり方につきまして、4月20日の第1回検討会と本日と、特に 本日は連休の谷間にまでご出席いただきまして、中原座長はじめご参集の委員の皆様方には、大変短 い期間に、最新の医学的知見などを基におまとめいただきまして、大変ありがとうございました。  昭和35年にじん肺法が制定されて以来、50年余りが経過していますけれども、じん肺健康診断は、 労働者の健康管理対策における基本的な対策の1つとして非常に重要であると、その点は変わりないと 考えております。じん肺健康診断をはじめとして、粉じん作業に従事する労働者の健康管理対策が一 層充実していくよう、引き続き努めてまいる所存でございます。  今後、先ほどもお話が出ておりましたけれども、この検討会の結果を踏まえ、必要な見直しについ ては、パブリックコメントを実施して広く意見の募集もいたします。そして、労働政策審議会のじん 肺部会において報告し、また、お諮りをした上で、できるだけ早く速やかに対応してまいりたいと考 えております。  じん肺の予防、健康管理等について、引き続き各委員の皆様方からのご指導、ご協力をいただきま すことをお願い申し上げまして、簡単でございますけれども私の挨拶とさせていただきます。どうも ありがとうございました。 ○中原座長 その他、特段何もなければ、本日の会議を終了したいと思います。  それでは、皆様、本日はお忙しいところをお集まりいただき、活発なご議論をいただきましてあり がとうございました。以上をもちまして閉会とさせていただきます。どうもご苦労様でした。 照会先:労働基準局安全衛生部労働衛生課(内線5493)