10/04/26 第1回医療費統計の整備に関する検討会議事録      第1回医療費統計の整備に関する検討会    日時 平成22年4月26日(月)       13:30〜    場所 厚生労働省統計情報部会議室                       (合同庁舎5号館21階11号室) ○武田保健統計室長  それでは、定刻より若干早うございますけれども、御出席いただく委員の皆様方は御 到着でございますので、始めさせていただきたいと思います。ただいまより、第1回「 医療費統計の整備に関する検討会」を開会させていただきます。委員の皆様方におかれ ましては、大変お忙しい中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。大 変狭いところで申し訳ございません。よろしくお願いいたします。座長が選出されるま での間、今回は第1回目でございますので、事務局で司会を務めさせていただきます、 保健統計室長の武田でございます。よろしくお願いいたします。まず、本検討会の開催 に当たりまして、高原統計情報部長よりごあいさつ申し上げます。 ○高原統計情報部長  統計情報部長の高原でございます。初めに、皆様方におかれましては、大変御多忙の 中、この検討会の委員を快くお引き受けいただきまして心から御礼申し上げます。 さて、本検討会でございますが、御案内のとおり、平成20年に内閣府統計委員会におい て答申がなされ、昨年3月に閣議決定されました、「公的統計の整備に関する基本的な 計画」におきまして、「医療費に関する統計の体系的整備、国際比較可能性の向上の観 点から、学識経験者や利用者を含めた検討を行う」との指摘を受けております。医療は 国民の安心の基盤であり、国民一人ひとりが必要とする医療を適切に受けられる環境を 整備するため、医療提供者や行政、保険者の努力は勿論のこと、患者や国民も、適切な 受診を初めとする協力を行うなど、各人がそれぞれの立場で不断の取り組みを進めてい くことが求められているところでございます。平成22年度の診療報酬の改定におきまし ても、限られた財源の中でより効果的・効率的な医療費の配分の見直しが行われました 。このような状況の中で、医療に要する費用がどのくらいであったかを把握する、基本 的なデータとしての医療費統計の重要性が更に高まっております。委員の皆様方の御指 導をいただきながら、医療費統計の体系的整備、統計の精度の向上に取り組んでまいり たいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○武田保健統計室長  続きまして、委員の皆様方の御紹介をいたします。委員の皆様方には、一言ずつ、ご あいさつをいただければと存じます。よろしくお願いいたします。それでは、資料1の 別紙に構成員名簿というのをつけてございますので、併せてご覧になっていただければ と思います。まず、名簿の上からでございますが、東京大学大学院経済学研究科教授の 岩本康志委員でございます。 ○岩本委員  岩本でございます。よろしくお願いいたします。私は専門が財政社会保障ということ で、社会保障統計をユーザーの立場から見ておりますので、特に医療費統計というのは 重要な統計として日ごろ認識しております。こちらの方でも積極的に検討に参加させて いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○武田保健統計室長  続きまして、情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科教授の廣松毅委員 でございます。 ○廣松委員  廣松でございます。よろしくお願いいたします。私自身は、先ほど部長から御紹介が ありました「基本計画」を作るときに、主として人口・社会統計の整備の一環として、 医療費に関する統計の整備に関して提言を、まとめた立場でございます。その意味では、 半分、何だか自分で宿題を出して自分で答えなければいけない立場に立たされているよ うな気分でございますが、この統計の社会的な意義というか、重要性は皆様方も御存じ のことだと思います。何らかの形でお役に立てればと思っておりますので、よろしくお 願いいたします。 ○武田保健統計室長  続きまして、日本医師会総合政策研究機構研究部専門部長主席研究員の前田由美子委 員でございます。 ○前田委員  前田と申します。よろしくお願いいたします。日本医師会総合政策研究機構、という と舌が回らないのですが、通称日医総研と呼ばれております。私は、医療費を含む社会 保障費の分析と社会保障の政策を担当しております。統計というと随分難しそうだなと 思って緊張しておりますが、医療費のデータについてはいろいろ活用させていただいて おりますので、いかに活用できるものになっていくかという視点でディスカッションに 参加させていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○武田保健統計室長  続きまして、もうおひと方、本日は御都合で御欠席でございますが、国立循環器病研 究センター予防健診部長の岡村智教先生にも委員をお願いしているところでございます。 続きまして、審議協力者といたしまして、厚生労働省保険局調査課・佐藤課長補佐にも 御出席いただいています。 ○佐藤課長補佐  佐藤です。よろしくお願いいたします。 ○武田保健統計室長  続きまして、国立社会保障・人口問題研究所で社会保障給付費を担当しておられます、 勝又部長にも参加いただいております。 ○勝又部長  勝又です。よろしくお願いします。 ○武田保健統計室長  また、医療経済研究機構でOECDのSHA手法に基づく推計を担当しておられます、満武 研究部副部長にも御出席をいただいております。 ○満武副部長  満武でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○武田保健統計室長  最後に事務局でございますが、先ほどもごあいさつ申し上げましたが、統計情報部長 の高原でございます。 ○高原統計情報部長  高原でございます。 ○武田保健統計室長  続きまして、企画課長の岩崎でございます。 ○岩崎企画課長  岩崎です。よろしくお願いします。 ○武田保健統計室長  次に、本検討会の設置目的等について御説明申し上げます。資料1「医療費統計の整 備に関する検討会開催要項」をご覧になっていただければと思います。これにつきまし ては、後ほどまた詳しく事務局から御説明を申し上げますが、「目的」のところにござ いますように、「公的統計の整備に関する基本的な計画」におきまして、「医療費に関 する統計の体系的整備、国際比較可能性の向上という2点の観点から、保健医療等の分 野全体の医療費をマクロでとらえる統計を公的統計として位置付けることについて検討 する」という旨が示されてございます。 この検討を行うに当たりまして、この場で、先生方から専門的見地からの御意見・御助 言を得ることを目的といたしまして、本検討会を設置したところでございます。 下の「運営等」のところでございます。早速でございますけれども、検討会におきまし て、構成員のうち1人を座長として選任することとされてございます。これにつきまし ては、廣松委員にお願いしたいと考えておりますけれども、いかがでございましょうか。 (「異議なし」と声あり) ○武田保健統計室長  それでは、特に御異論がないようでございますので、本検討会の座長を廣松委員にお 願い申し上げたいと思います。それでは、廣松委員、以後の進行につきましてお願いい たします。 ○廣松座長  御指名ということでございますので、この検討会の座長を務めさせていただきます。 何とぞよろしくお願い申し上げます。皆様の御協力を得て、実りのある成果が上げられ るように努力をしたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。早速では ございますが、今、御説明がありました資料1、この検討会の開催要項4の「運営等」 の(2)に、「検討会に座長代理をおくことができる」という規定がございます。この 規定にのっとりまして、かつ、座長代理に関しては座長が指名をすることになっており ますので、これにつきましては岩本委員にお願いしたいと考えますが、いかがでしょう か。 (「異議なし」と声あり) ○廣松座長  特に御異論がないようですので、では、本検討会の座長代理を岩本委員にお願い申し 上げたいと思います。よろしくお願い申し上げます。それでは、議事に入ります。本日 の検討会に関しましては、お手元の議事次第にございますとおり議事が3つございます。 最初が「医療費統計の整備に関する検討会の設置について」というものでございます。 これは資料1の内容でございますが、まず、これに関しまして事務局から御説明をお願 いいたします。 ○武田保健統計室長  それでは、大変恐縮でございますが、カメラはここまでとさせていただきたいと思い ます。よろしくお願いいたします。 (報道関係者退室) ○事務局  それでは、医療費統計の整備に関する検討会の設置につきまして御説明いたします。 資料につきましては、お手元にお配りしております資料1「医療費統計の整備に関する 検討会開催要項」、それから、参考資料1としておりますけれども、「公的統計の整備 に関する基本的な計画」の抜粋ということで、この2つについて御説明をさせていただ きます。 従来、国、地方公共団体等が行っております公的統計につきましては、統計法、統計報 告調整法の規定の下に実施しておりましたけれども、平成19年に「行政のための統計」 から「社会の情報基盤としての統計へ」というものへの転換を目的としまして、昭和22 年に制定されました統計法につきまして、60年ぶりの大改正が行われております。 この改正された統計法によりまして、我が国におきます統計整備の一層の推進を図ると ともに、統計法の適正な実施を制度的に担保する観点から、従前、統計調査にかかわる 調査審議機関として設置されておりました、総務省の統計審議会、内閣府の国民経済計 算調査会が廃止されまして、これらに代わる専門的かつ中立的な調査審議機関として、 内閣府に「統計委員会」というものが設置されております。 この統計委員会におきましては「公的統計の整備に関する基本的な計画」の案に係る調 査審議、「国民経済計算」の作成基準の策定に係る調査審議、基幹統計調査の指定、こ の指定に係る計画の変更等に係る調査審議というものについて審議を行う機関として位 置付けられております。 統計委員会につきましては、平成19年10月に設置され、公的統計の整備に関して、統計 の体系的な整備、経済・社会の環境変化への対応、統計データの有効活用の推進、効率 的な統計の作成という観点から、基本的な計画案を作成するために、統計委員会の委員 全員を構成員といたします「基本計画部会」という部会を設けております。 この下に更に、1つは公的統計の整備の考え方・リソースの有効活用等に関するワーキ ンググループ、2つ目が経済統計の体系的整備に関するワーキンググループ、3つ目が 人口・社会統計関係の体系的整備に関するワーキンググループ、4つ目が統計活用・利 活用環境の整備に関するワーキンググループという、4つのワーキンググループが設置 されておりまして、それぞれのワーキンググループにおきまして、平成20年の1月から 8月にかけて専門的な検討が行われております。この検討をもとに、統計委員会におき まして平成20年12月に「答申」という形でとりまとめが行われ、翌平成21年3月に閣議 決定されております。 この検討に際しまして、経済統計の体系的整備に関するワーキンググループ、人口・社 会統計関係の体系整備に関するワーキンググループにおける議論の中で、参考資料の中 段にありますけれども「2 統計相互の整合性及び国際比較可能性の確保・向上に関す る事項」の(4)「医療費に関する統計の国際比較可能性の向上」ということで御指摘 されております。 医療費統計につきましては、国際比較の観点から、OECDで開発された医療保険対象外の 予防・健康関連サービス、医療制度の運営、設備投資等の費用を含めたSHA手法に基づ く推計を行い、これまでの公的医療保険制度に係る医療費推計に加えて、従来医療保険 の対象となっていない費用も含めた、保健医療支出推計に関する統計を整備していくこ とが必要ではないかと指摘されております。 これらの検討、指摘等を踏まえた「公的統計の整備に関する基本的な計画」の中で、参 考資料の2ページの別表に「今後5年間に講ずべき具体的施策」ということで、「公的 統計の整備に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策」という部分の中で、医療費統計に つきましては「OECDのSHA手法に基づく保健医療支出推計を公的統計として位置付ける ことについて、学識経験者や利用者を含めて検討する」と指摘されております。 厚生労働省におきましては、医療費統計以外にも人口動態統計調査、国民生活基礎調査、 賃金構造基本統計調査という基幹統計調査を初めとしまして、様々な統計調査につきま して御指摘をいただいておりますが、これらについては「厚生労働統計の整備に関する 検討会」というのを設置して一体的に検討することとしております。 しかしながら、医療費統計の検討につきましては、現在、公的医療保険制度に係る医療 費統計として「国民医療費」という統計を作成しております。国民医療費の推計結果に つきましては、国立社会保障・人口問題研究所が推計を行っている社会保障給付費、そ れから、医療経済研究機構がOECDのSHA手法に基づく推計を行い、OECDに報告を行って いるという推計など、様々な統計の作成に利用されているという現状がございますので、 これら利用者の方の御意見も伺いながら検討を行う必要があると考えておりまして、本 検討会を設置して検討を行うこととしております。 本検討会におきましては、国民医療費やOECDのSHA手法に基づく保健医療支出推計の現 状や問題点等について、学識経験者、利用者の方の御意見を伺いながら「公的統計の整 備に関する基本的な計画」の御指摘について検討していきたいと考えております。 以上でございます。 ○廣松座長  ありがとうございました。この検討会が発足するまでの経緯に関しまして、御説明を いただきました。何か御質問はございますでしょうか。 ○前田委員  趣旨について御説明いただいたのですが、参考資料1の2ページを見ますと「平成21 年度から検討を開始し、できるだけ早期に結論を得る」となっています。大まかな工程 というか、スケジュールはどういうふうにお考えなのか、ということが第1点目です。 第2点目は検討会の目的です。「検討する」ということが目的かのように思えるのです が、そういうことでよろしいのかどうかという点です。 ○武田保健統計室長  それでは、事務局からお答えさせていただきます。まず、実施時期につきましては、 ここにもございますように21年度から検討を開始するということで、私どもも内部での 検討を開始していたところでございまして、今回、この検討会におきましては、専門的 見地から御意見をいただくというところがございます。今後のスケジュールのところで ございますけれども、今後、また数回にわたりまして、いろいろな観点から先生方に御 検討、御意見等をいただきたいと思ってございます。そして、年度末までを大体の目途 といたしまして、一定の意見のとりまとめを行っていただければと考えているところで ございます。 それから、医療費に関する統計の在り方について、利用者、学識経験者等、専門の方々 からの意見を伺うというところがございますので、まずはその部分に関して御意見等を いただきまして検討する。それを土台にしまして、今後どのような形で進んでいったら いいのかということは、またその先のステップと考えてございますので、まずはこの検 討会におきまして、そのような専門的見地から広く御意見等をいただければというふう に考えてございます。 ○前田委員  理解いたしました。 ○岩本委員  統計委員会で議論されて閣議決定された基本計画ですけれども、検討することに当た っては「SHAを公的統計として位置付けてはどうか」という考え方が出てきたので、こ ういうことになったのだと思います。そうすると、この段階で議論するのは、公的統計 として位置付けるのがいいのか、悪いのかという検討なのか、「位置付ける」ことを前 提にして、実際それをどのように埋め込んでいくかという話をするのか。我々委員に意 見を委ねられている性格なのですが、それをはっきりさせた方がいいのではないかと思 います。 この方向で行くということであれば、実際どのように実現するのかということで意見は 申し上げられると思うし、そうではなく、そもそも論として公的統計として位置付けし ないという議論ができるのかどうか。まして、こういう計画が出て書き込まれていると いう前提のもとに、それができるのかどうかというあたりを教えていただければと思い ます。 ○武田保健統計室長  これにつきましては、資料1の目的のところにもございますけれども、SHA手法の導 入等も含めまして、どのようなものであるのか。そして、そういうものを仮に導入する としても、どのような課題なりそういうものがあるのか。そこも含めて、現状を把握す ることがまず最初の段階なのではないかと考えてございます。 ですから、まずここの中で御議論、専門的見地からの御検討をいただく中で、現状の把 握、場合によってはその先の課題の洗い出し、そういうことをまずは行っていただくの かなと考えてございます。 ○廣松座長  補足をいたしますと、参考資料1の2枚目、別表の「具体的な措置、方策等」の中に 書かれていますが、新しい統計法上では公的統計というのが明確に規定されております。 OECDのSHA手法に基づく推計に関しては、後ほど資料3で御説明をいただきますが、現 状のままで公的統計として認めることができるかどうか、あるいは位置付けることがで きるかどうかという最終判断を、統計委員会ですることになるのではないかと思います。 その上で、もっと上位というか、基幹統計とするかどうかということも統計委員会での 審議に委ねることになるかと思います。 その意味でこの検討会は、厚生労働省として、OECDのSHA手法に基づく保健医療支出推 計が公的統計としてふさわしいということを、提案するかどうか決めるというか、その 前の予備的な検討も含めて、この検討会で議論をするということではないかと私は理解 しています。よろしいでしょうか。 ○岩本委員  もう一つ、既にSHAというのは存在するわけですので、そのままでいいのか、あるい は国民医療費と合わせてもう一度体系的に整理を考え直すのかということだと思います けれども、私の意見からいきますと、重複している統計があるということであれば、う まく整合的な形で整理できるのではないかという問題意識は持っております。 この検討会としては、統計情報部なりで具体的な作業をもう検討されていて、それが出 てきて、ここで我々の意見を聞くということなのか。それとも、一般的な考え方をここ でまとめて、それから作業に入るのか。この検討会の1年間でどういうものが出てくる のかというのは、ちょっと気になるのですけれども、そのあたりを教えていただけませ んでしょうか。 ○武田保健統計室長  まず進め方といたしましては、どういう課題なり現状があるのかというところも含め て検討会の中で御議論いただきまして、その中で、必要に応じてどういうとりまとめを していくのかというのは、また御相談させていただければと考えております。 ○廣松座長  よろしいでしょうか。それでは、議題1の検討会の設置についてということに関しま して、以上にさせていただきまして、これから実質的な内容に入るわけでございますが、 現在公表されております国民医療費及びSHAの推計に関しまして、それぞれ概要を御説 明いただければと思います。 まず、議題の2「国民医療費の概要について」、説明をお願いいたします。 ○事務局  それでは、国民医療費の概要につきまして、資料2に基づいて御説明いたします。こ こでは、国民医療費の概要といたしまして、国民医療費の範囲、推計方法、平成19年度 の国民医療費の主な結果について御説明いたします。国民医療費につきましては「公的 医療保険制度に係る医療費の推計を行うこと」として推計を行っている加工統計であり ます。推計方法の変更・見直し等を行っておりますが、昭和29年度分より続けて推計を 行っております。 まず、資料の1ページ、「国民医療費の範囲」でございます。国民医療費は、医療機関 における傷病の治療に要する診療費、調剤費、入院時食事・生活医療費、訪問看護費、 健康保険等で支払われる移送費等について推計を行ったものであります。 傷病の治療に要する費用に限っているため、正常な妊娠・分娩等に要する費用、健康の 維持・増進のための健康診断・予防接種等に関する費用、固定した身体障害のために必 要とする義眼、義肢等の費用、患者が負担することになる入院の際の室料差額、歯科差 額は含まれておりません。 中段以降に図でお示ししてございますけれども、左側から、サービスの提供場所として 医療を提供する機関。それから、真ん中の太めの黒線で囲んでおりますけれども、これ が、提供されるサービスのうち国民医療費の推計の対象となっている費用。右端が、提 供されるサービスのうち国民医療費の対象とならないサービスということになっており ます。 図の左の列にそれぞれ提供する機関ごとにくくってございます。一番上の病院、一般診 療所、歯科診療所で提供されるサービスは、真ん中の太枠の中にあります、医科、歯科 における診療費と入院時食事・生活医療費につきましては国民医療費の推計の範囲とな っておりますけれども、その右側の列の、正常な妊娠・分娩・産じょく、差額室料、人 間ドック、介護保険法に基づき提供されるサービスについては、国民医療費の対象には なってございません。これを図でお示ししたものです。 また、左の図の下から3つ目、薬局となってございます。処方せんに基づき提供される 調剤費については国民医療費の範囲に含まれていますけれども、市販の風邪薬、頭痛薬 というものについては、範囲に含まれないということでお示ししてございます。 1ページめくっていただきまして、2ページの推計方法でございます。国民医療費は個 別の統計調査を実施して推計を行うものではございませんので、既存の統計調査の結果 ですとか、個別の行政記録をもとに作成している加工統計です。現在、国民医療費につ きましては大きく分けて4つの側面から推計を行っております。 1つは、どういう制度に基づいて支払われているかという制度区分の観点。 2つ目が、その費用についてどこから支払われているかという財源別の観点。 3つ目が、どういうサービスに基づいて支払われているかという診療種類の観点。 最後に年齢階級・傷病分類という、4つの観点について推計を行っております。 2ページの一番上にありますけれども、国民医療費の推計に当たりましては、各医療保 険制度の支払い決定額や決算額をもとに制度区分別という国民医療費の総額を積み上げ て、まず確定します。この総額をもとに、様々な統計調査結果や行政記録を活用して按 分しまして、それぞれ、財源別医療費、診療種類別医療費、年齢階級・傷病分類別医療 費という切り口ごとに推計を行っております。 制度区分別医療費の推計に当たりましては「(1)公費負担医療給付分」としてござい ますが、例えば生活保護法や、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法 律などで支払いをされている費用や、地方公共団体が単独で実施している医療などに係 る支払い確定額を用いております。 「(2)医療保険等給付分」は、各医療保険制度ごとに給付される費用の支払い確定額、 それから、労災に係る部分についての決算額を用いて推計を行っております。 「(3)老人保健給付分」、これは平成19年度の推計までですけれども、老人保健法の 規定に基づいて給付される費用の決算額、支払い確定額というものを積み上げておりま す。 これらにつきましては、それぞれの決算額、確定額を積み上げで行っておりますけれど も「(4)患者負担分」、患者が負担する自己負担分や全額自己負担の額につきまして は、そこに出てございますとおり、推計という形で出しておりまして、これらを総計し て国民医療費の総額としてございます。 ここで出ました制度区分別の総額をもとに、次の3ページになりますが、財源別医療費 としましては、公費、保険料、その他という区分になります。診療種類につきましては、 一般診療、歯科診療、薬局調剤、入院時食事・生活医療費、訪問看護費という区分で推 計を行っております。また、年齢階級・傷病分類につきましても、それぞれの区分によ りまして、必要となる統計調査結果や行政記録をもとに按分という形で推計を行ってお ります。 次に、この推計のもととなる統計調査、行政記録について4ページ、5ページに掲載し ております。ここでは統計調査結果または公表資料を中心に掲載してございますので、 全部を紹介し切れない部分がございますけれども、平成19年度の推計に当たりましては、 全部で59種類の統計調査結果もしくは行政記録を活用して推計を行っております。 4ページでございます。制度区分別の推計に当たりましては「(1)公費負担医療給付 分」ということで、ここでは、社会保険診療報酬支払基金でまとめている「基金年報」 「基金統計月報」や「社会福祉行政報告」「介護給付費実態調査報告」「都道府県決算 状況調」というようなものをもとにして推計額を確定しております。 同様に医療保険等給付分につきましては、「政府管掌健康保険・船員保険・厚生年金保 険・国民年金・組合管掌健康保険・国民健康保険・老人保健事業年報」という社会保険 庁でまとめている資料ですとか「健康保険組合事業年報」、これは健康保険組合連合会 ですが、こういうところでまとめておられる資料をもとに額を確定しております。 同様に老人保健給付分、患者負担分についても、もととなる統計調査、行政記録をこの ように活用しているというものを掲載してございます。 次に5ページですけれども、4ページの制度区分別で確定した総額を、財源別、診療種 類別、年齢階級・傷病分類別に推計をする際に、按分のもとになっている統計調査、行 政記録等について掲載してございます。 6ページ以降は、平成19年度国民医療費の概要ということでまとめてございます。 まず6ページの上段からでございますが、図1としまして「国民医療費と対国民所得比 の年次推移」を掲載しております。平成19年度の国民医療費は34兆1,360億円で、前年 度に比べて1兆84億円、3.0%の増加となっています。国民医療費の国民所得に対する 割合は9.11%となってございます。 下の表1は、図1で示したグラフのデータを掲載しているものでございます。ここで1 点、平成12年度におきまして△1.8%と減少していますけれども、平成12年度は、介護 保険法の施行に伴いまして、従来国民医療費の対象となっていた費用のうち介護保険に 移行した部分が除かれていますので、ここで一度下がるという結果になっています。 次に7ページの上段ですが、「表2 制度区分別国民医療費」ということで、ここでは 制度区分としまして、公費負担医療給付分、医療保険等給付分、老人保健給付分、患者 負担分ということで計上してございます。この中で医療保険等給付分は16兆7,576億円、 全体の割合としては49.1%、老人保健給付分は10兆2,785億円で30.1%、公費負担医療 給付分は2兆3,002億円で6.7%となっております。 下にいきまして、表3は財源別に国民医療費をみた表でございます。財源区分といいま すのは、公費、保険料、その他という切り口で国民医療費をみています。これによりま すと、公費分は12兆5,271億円で全体の36.7%、保険料分は16兆7,898億円で49.2%とい う結果になってございます。 続きまして8ページ、診療種類別国民医療費です。ここでは医療費について、一般診療 医療費、歯科診療医療費、薬局調剤医療費、入院時食事・生活医療費、訪問看護医療費 という区分で結果を分析しております。これによりますと、一般診療医療費は25兆6,41 8億円で全体の75.1%、そのうちの入院医療費が12兆6,132億円で36.9%、入院外医療費 につきましては13兆287億円、38.2%となってございます。 また、歯科診療医療費につきましては2兆4,996億円、薬局調剤医療費につきましては 5兆1,222億円になってございます。 次に9ページでございます。9ページは年齢階級別にみた国民医療費でございまして、 65歳以上につきましては17兆7,439億円、全体の52.0%となってございます。 人口一人当たり国民医療費につきましては、65歳未満が16万3,400円、65歳以上は64万 6,100円ということになってございます。 次に10ページでございます。これは医療費を傷病分類別にみたものですが、データソー スの関係上、ここで傷病分類別に把握していますのは、先ほど8ページの診療種類別医 療費の中で御説明した一般診療医療費のみでございます。これによりますと、「循環器 系の疾患」が5兆4,353億円、全体の21.2%ということで最も多くなっています。それ を年齢ごとに図示しましたのが図3のグラフでございます。 結果の概要につきましては、以上でございます。 次に資料の11ページでございます。これは、今、御説明をしております国民医療費の推 計の範囲には含まれておりませんが、この資料の1ページの図の右側に「国民医療費に 含まれないもの」として表記をしておりまして、含まれていないサービスに関係する統 計があるものについて、数値を掲載してございます。 まず上からいきまして、病院、一般診療所、歯科診療所から提供されるサービスのうち、 「正常な妊娠・分娩・産じょくの費用」に関する統計数値ということで、ここでは、人 口動態統計において毎年の出生数、「平成20年医療施設調査」におきましては、その年 に取り扱われた分娩件数が把握されています。これでいきますと、出生数は108万9,818 人でございまして、その内訳として男性が55万9,847人、女性が52万9,971人という形に なってございます。 次に、下段の「(4)『集団検診費』に関する統計数値」でございます。集団検診とい いますのは、企業、学校、地方公共団体など、様々な場所で行われている集団検診に要 した費用を指しております。これに関する統計といたしましては、私どもで実施をして いる「地域保健・老人保健事業報告」におきまして、保健所、市町村が実施した健康診 査等の受診者数を計上しております。健康診断につきましては1,387万9,174人という受 診者数が出ていますけれども、ここには、企業や学校で実施された健康診査等を受診さ れた方の人数は含まれておりません。 次に12ページでございます。「(6)『短期入所療養介護等介護保険法における居宅サ ービス』に関する統計数値」ということで、これは、病院、診療所で提供される短期入 所というサービスについての費用でございまして、「平成19年度介護給付費実態調査」 で把握されております。短期入所療養介護等介護保険法における居宅サービスの費用と いうことで、介護予防短期入所療養介護につきましては5,000万円、短期入所療養介護 につきましては57億円という結果を把握できております。 また同様に(7)として、病院、診療所における「介護療養型医療施設における施設サ ービス」に関する統計でございます。これも同様に「平成19年度介護給付費実態調査」 から、介護療養型医療施設における施設サービスの費用ということで把握されておりま す。 それから「(8)『その他』に関する統計数値」でございます。これは、病院・一般診 療所・歯科診療所において行われた医療行為のうち、上記の(1)〜(7)までに該当 しない、健康保険等適用外のもの全般を指しております。例えば保健所、市町村が、医 療機関等において実施された予防接種等の患者数が含まれておりますけれども、これに つきましては「平成19年度地域保健・老人保健事業報告」というものと「平成19年薬事 工業生産動態統計調査」でワクチン類の生産額が把握されております。 13ページにまいりまして「介護老人保健施設」というところでございます。介護老人保 健施設につきましては、平成12年度の介護保険法の施行以降、特に介護老人保健施設か ら医療に関する部分は把握されておりませんけれども、時系列観察をするということで、 1ページの表にも示しておりますが、ここで行われる施設サービス、居宅サービスにつ きましては、同様に「平成19年度介護給付費実態調査」の中で把握されているというこ とでございます。 次に訪問看護事業所でございます。訪問看護事業所で提供される訪問看護のうち、医療 に関する部分については国民医療費の範囲に含まれておりますけれども、介護保険法に 基づき提供されるサービスにつきましては介護保険の適用ということになってございま すので、国民医療費の範囲には含まれないことになってございます。 4番、助産所における、正常な妊娠・分娩・産じょくに要する費用でございます。これ につきましても、先ほどの病院、診療所で提供されるサービスと同様、「平成19年人口 動態統計」の中で出生場所ということで助産所での出生数が把握されておりまして、平 成19年におきましては1万強になってございます。 それから、薬局での買い薬の費用に関する統計数値です。これは一般用医薬品として提 供される費用を指しておりますけれども、これにつきましても生産額しか把握できてお りませんで、「平成19年薬事工業生産動態統計調査」で、それぞれ出荷額、生産額も含 めて把握されております。 最後、14ページにまいりまして「あん摩・はり・きゅうの施術業・接骨院等」で提供さ れるサービスにつきましては、施術箇所数というものが「平成18年度保健・衛生行政業 務報告」でそれぞれ把握されております。 「その他」ということで、間接治療費(健保等適用外部分)に関する費用として、補装 具に関しましては「平成19年度社会福祉行政業務報告」という調査の中で、それぞれ額 が把握されております。 また「(2)めがね等」としておりますけれども、ハードコンタクトレンズ、視力補正 用単焦点眼鏡レンズ等につきましては、「平成19年薬事工業生産動態統計調査」で生産 額が把握されているということでございます。 国民医療費の概要につきましては、以上でございます。 ○廣松座長  ありがとうございました。現在、厚生労働省で公表されている国民医療費について、 範囲と推計方法及び平成19年度の概要について、御説明をいただきました。何か御質問、 御意見はございますでしょうか。どうぞ。 ○前田委員  感想も含めてですけれども、せっかくですので教えていただきたいと思います。4点 ございます。まず1点目は、1ページの国民医療費の範囲についてですけれども、最初 に傷病の治療費に限っていると書いてあります。ですから、今で言うと、インプラント とか、レーシックとか、不妊治療とか、そういうのは入っていないと思いますし、評価 療養も入っていないと思います。含まれないものにそういうものが明確に挙がってきて いないために、私なども使うときによく間違いやすい。一瞬、インプラントやレーシッ ク、不妊治療とかは、治療ではないかなと思ってしまうけれども、治療に限っているた めに入っていないという扱いになっているので、多少明確化していただいた方が今の時 代はわかりやすいのではないかという気がいたしました。 2つ目は、2ページですが、「全額自費」という項目がありまして、この中身は自賠責 と自費診療と書いてあります。この自費診療というのも、評価療養の部分とか、レーシ ックとか、インプラントとか、そういったものではなくて、とりあえず窓口で何らかの 御事情があって全額自費で払われた方の費用だと聞いておりますので、それも書きぶり を工夫していただいた方が、どうしても自費診療といいますと、今、世の中にある、お 金がある場合に自費で高度な医療を受けられるというものと勘違いしてしまうこともあ るのではないかと感じております。 3点目は、質問というか、もし次回にわかればということですが、4ページ、5ページ に関係があることで、国民医療費の推計をするに当たり、いろいろな資料を用いて推計 されて按分をされているとおっしゃったのですが、レセプトオンライン化が始まります。 そうすると、とれるデータとか、分析の方法というのが変わってくると思いますので、 それにはレセプトオンライン化の段階に応じて対応されていくのか、それとも、一定期 間を経て検証・分析等をいろいろされてから対応されていくのかという、中長期のスケ ジュール感のようなところがわかれば、お示しいただければと思います。 単に興味があるというだけではなく、これから統計というものをどう整備していくのか、 どこまでできるのかという可能性を見ていくためには、そういうものもあった方がよか ろうかと思います。 最後に、8ページの診療種類別の国民医療費ということで、組織体としては病院、診療 所、歯科診療所、薬局というところが登場してまいります。医療費の範囲を見ますと、 医師の指示によるあん摩・はり・きゅう、接骨等は国民医療費に入ることになっている のですが、あん摩・はり・きゅう、接骨院という登場人物が毎回なくて、多分、診療所 か病院かに按分をされておられるのだと思います。やはり機関、組織として立場が違う ものですので、再掲でもそういうものがあった方が私も含めて国民の皆さんにわかりや すいのではないか。感想も含めてですけれども、以上でございます。 ○廣松座長  ありがとうございます。今の御発言に関して、何か現時点でお答えいただけるものは ございますでしょうか。 ○事務局  まず1点目、2点目の国民医療費に含まれないものの範囲でございますけれども、こ れにつきましては、私どもは1回ですべてが終わっているというふうには感じておりま せん。御指摘をいただいた「わかりにくい」という部分については、その都度改善をし ていきたいと考えておりますので、ここにつきましては、そういう部分が入らないとこ ろがわかる形の表記にしていきたいと考えてございます。 3点目のレセプトデータにつきましては、先ほどの説明の中では59種類のデータを使っ ていると。これは当然、データソースの変更というのがございますし、レセプトのオン ライン化によって、特に大きな調査といたしましては社会医療診療行為別調査などの体 系が変わってくる可能性もございますので、そういうところを見ながらデータソースも 常に変えていくといいますか、精度を上げていくために必要な調査に変えていくという ことで、検討していきたいと考えております。 最後の8ページの診療種類別のところですけれども、これにつきましては、例えば施術 所のようなところの表章が可能かどうか。按分に際して用いているデータもチェックを しながら、検討していきたいと思います。 ○前田委員  ありがとうございました。 ○岩本委員  1つは、前田委員とも重なることですけれども、ドキュメントに関する要望ですが、 私も周辺の方から、「国民医療費の計算の方法がよくわからなくて使いづらい」という ことを言われることがあります。目指す方向は、外部の人がこの文書だけを読んで、と りあえず構成できるものは構成できることが一つの目安ではないかと思います。加工統 計ですので、もとになる基礎統計があってそれは公表されている。そこから数字を拾っ ているということならば、これを読んで同じように拾えば同じものが再現できる。 その先には、聞いたところによると、別個に個票を集計してやっている部分はあるとい うことなので、それは公表されているものがないからできない。では、どこまでができ て、どこまでができないのか。できるところに関しては、同じ数字を作れるということ がはっきりすれば、これが入るか、入らないかということで悩んで、悩むということは 逆に、使いづらい、使いにくくなるということですので、そういうことがはっきりわか ることによって、みんなが安心して使えるデータになることがやはり大事ではないかと 思っております。 その他、課題に関する意見ですけれども、基本計画の方で国民医療費を公的統計と位置 付けるわけではなくSHAの方に行っているというのは、国際比較がこの統計ではできな いという性質が、統計のユーザーのニーズから見ると非常に重要だろうという気がして おります。国民医療費を見ていれば、年を重ねるごとに医療費が増えていることはよく わかりますけれども、外国とは比べようがない、日本独自の定義であってどうしてもこ こで限界がある。国際的に日本の医療費の使い方はどうなるのかということを見る場合 には、SHAのデータを使わざるを得ない。 SHAというのは、世界で議論して基準を作って、統計をよくしようということを世界規 模でやっているわけであります。OECDの基準ですけれども、EUROSTATもこれを使ってい るし、WHOもこれに則って医療費の統計をこれから集計しようということになっていま すから、医療費の統計に関しては、世界の関係する機関がSHAを使うことで合意が得ら れていることを考えますと、非常に重要な統計基準だろうと認識しております。そうい ったことが反映されて基本計画に書き込まれたのだろう、というふうに理解しておりま す。 とはいいましても、国民医療費が全く無価値というわけではなく、これまでの蓄積もあ りますし、様々なところで使われているわけです。どのようにしていくのかということ で、SHAの御説明の後でまた議論をすればいいことかと思いますけれども、1つは、SHA の中に国民医療費を統合するというかなり大きな改革もあるかもしれませんが、そこま で行くのが大変であるということであれば、それを併用していく。その場合でも、いろ いろな併用の仕方があるだろうということだと思います。国民医療費がそのまますぐ消 えてなくなることは、余りあり得ないだろうなというふうに思っております。  その他、課題としまして、国民医療費のニーズの方で押さえておきたいことですけれ ども、タイムリネスといいますか、どの段階でこの統計が公表されるかということにつ きまして、少し遅れて公表されていることが国民医療費の統計の課題ではないかと思っ ております。私は、厚生労働省の医療保険部会という審議会に入っておりまして、よく 資料で国民医療費の統計が出てきます。現在ですと、利用できる統計は平成19年度です が、もう20年、21年、22年になっているということで、かなり古い統計を見ながらこれ から先のことを議論することになるわけです。 それに関しましては、保険局で「MEDIAS」というデータベースができてきて、もっとタ イムリーな形で情報が出てきている。国民医療費の大部分をカバーする医療費につきま しては、1年早く総額ベースのデータが出ているという状態なので、国民医療費をそこ から1年かけて作っているのは、先ほど御説明がありましたように、詳細な中の分類を 作る形になっている。そうしますと、速報性ということも非常に重要な要素になってき ます。 更に言いますと、国民経済計算の方ですと四半期での国民経済計算の統計を作っており まして、政府最終消費支出では医療費というのは非常に重要な構成要素になっておりま す。そこは四半期が終わりますと、そこから1か月ちょっと後に「データがほしい」と いうニーズがございます。これは、タイムリネスということで一番早い要請ということ もありますが、それぞれの要請に応じた形のデータを出してくる。最初は粗いデータ、 後からだんだん詳しくなっていくということだと思いますけれども、レセプトの範囲の データ、MEDIAS、国民医療費、このあたりが連携して、それぞれのニーズに合わせてタ イムリーなデータを出していくという形での、医療費統計全体のコーディネーション、 そういったものが図られればユーザーにとっては非常に使いやすくなるのではないかと 思っております。そういった意味でも、レセプトのデータの早い時期での活用は大事な のではないかと思っております。以上です。 ○廣松座長  ありがとうございました。今の御発言は極めて全般的な問題ですが、ただ、ちょっと 気になったのですが、厚生労働省が公表されている国民医療費は、加工統計として一般 統計という位置付けになっているのですか。 ○事務局  総務省に対しまして、まだ手続等を行ってはおりません。 ○廣松座長  その意味では、公的統計としての位置付けはないということですね。 ○事務局  そうです。具体的に申し上げまして、加工統計につきましてどういう手続をしていく かというのもございますので、そこについてはまだ行っていないというのが現状であり ます。 ○廣松座長  わかりました。他に、いかがでしょうか。 ○岩本委員  もう一つは、もとになる一次統計がありまして、一次統計の方でしっかりデータが出 ていればもっと正確にわかるところがあるのではないか、というふうに幾つか気になる 点がありました。 具体的に言いますと、患者の一部負担ですけれども、被用者保険の統計ですと、たしか 総額がわからなくて推計されているということですね。それも、被用者保険の側で医療 費総額が把握されてそれが公表されていれば、そのまま使った方が正確のようにも見え るわけです。幾つかの要素が、一次統計の公表の仕方によって推計をせざるを得ないと いうことであれば、一次統計側に協力していただいて、「こういう数字が知りたいのだ が」ということでいろいろと協力を仰ぐ。医療費統計全体が重要ですという後押しがあ るわけですから、そういった働きかけも、できるところはやっていただければという気 がいたします。 更には、この統計を利用して社会保障給付費なりSHAなりを作られているわけですから、 そちらのニーズに合わせて必要なものをこちらで出すということも、同時に検討してい ただく。それぞれの統計でしっかり連携をとっていただいて、より精度の高い、いい統 計に仕上げていただくという視点を、勿論、持っていただいていると思いますけれども、 更に努力していただきたいというふうに思います。 ○前田委員  岩本委員に関連して、「公表が遅い」という御指摘をされまして、それは担当の方と しても、1年半、2年前のデータを使うのは使いづらいなと思うこともあるのですが、 国民医療費が今後も続くという前提でお話をしますと、ネックのところは、都道府県の 決算とか、保険者の決算だろうと思うのです。都道府県の決算を1年待ちませんと、公 費負担、医療費の区分ができないとか、保険者の決算でも、早いところは早いのですが、 なかなか決算が遅い。「国民健康保険事業年報」なども遅いので、そのあたりが恐らく ネックになっているのだろうと思います。そうしますと、例えば制度区分別のところは、 段階をおいてといいますか、スケジュールに合わせて必要に応じて最重要なものから早 く発表し、半年後とか、今ぐらいのタイミングですか、そのぐらいに制度区分別が出る と。そうすると、推計の順番が逆になってしまってややこしいのかもしれないですが、 そういうネックのところをどうするかということも、一緒に検討できたらいいのではな いかなというふうに思います。 ○廣松座長  他に、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、国民医療費の概要に関し て、今日、御説明をいただきました、国民医療費の位置付け、今後の在り方等に関して は、この検討会の次回以降でまたいろいろ御意見を伺えればと思います。 それでは、本日予定されております3番目の議題ですが、「SHAについて」資料3を用 意していただいております。財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会の満武さんから 御説明をお願いいたします。 ○満武副部長 「SHAについて」ということで、概要を10〜15分ぐらいで説明させていただきたいと思 います。 資料3をご覧いただきたいのですけれども、めくっていただいて3ページ目に、大きな 図表の1−1と書いたものがございます。まず、この図表から説明させていただきます と、一番大きな点線で書かれたところが、総保健医療支出というふうにOECDが定義した 手法に従って我々が計算をしている医療費で、下の方に書いてありますけれども、2004 年で計算すると約40兆760億円になります。 我々はこれはもともとカラーで作っているのですが、今回は白黒でございます。ここの 黒い枠の左の下の「自己負担」、これは国民医療費に入っております。右上の「標準負 担額」というところも入っておりまして、この色のところが国民医療費の範囲というこ とで、先ほど御説明していただいたところでございます。国民医療費以外のところを、 他の統計資料を使って我々が推計しているという次第でございます。ですから、我々の SHAのメインのデータソースは国民医療費になります。国民医療費のデータがあって初 めて、我々はSHAを計算しているところでございます。 毎年、SHAのデータは年度末にOECDに提出するのですけれども、今年も2007年度の国民 医療費が発表されましたので、2007年のデータを提出したところでございます。先ほど、 国民医療費の発表の時期ということで議題になっておりましたけれども、諸外国を見ま すと、2007年を出している日本と、統計資料が早い国に関しては2008年のデータを出し ているところがございます。 まず、SHAに含まれて、国民医療費に含まれていないところの概要を説明させていただ きます。右上の点線で囲んであるところは「保健医療関連部分」ということで、医療機 関への補助金、そういったものも我々は他の統計資料から算出してここに入れ込んでい ます。その下にいきますと「国民医療費の「間接部分」」ということで、保険者等の事 務経費、それも事業概要(保険者からのデータ)を収集して入れています。その下の「 介護保険部分」は、2000年から介護保険の部分が国民医療費から介護保険のある部分が 外れましたので、その部分は入れております。 左の方の少し上にいきまして、移送費(保険適用以外)、救急業務費。その上の予防・ 健康管理サービスということで眼鏡・補聴器、衛生材料。 そして、その少し上にいきますと、色がわかりにくいのですが、大衆薬と書いてありま す。これはいわゆるOTC(Over The Counter Drug)ですけれども、これに関しましては、 先ほど国民医療費の御説明のときに、資料2の13ページ、5番の薬剤費で「平成19年薬 事工業生産動態統計」というのがございましたが、我々は主にこの値を使います。 ただ、これは生産した額が幾らということでございますので、これから卸に行く、それ からそれぞれの薬局の卸に行くということになっていまして、それぞれのマージン率は 中小企業庁のデータを持ってきます。平成19年では約1.7となり、薬事工業生産動態統 計の値に1.7掛けをしてOTC(大衆薬)のところを出す、このような推計方法をしていま す。 その上のあんま・柔道整復に関しましては、保険適用のところは入れております。保険 適用外のところはデータがございませんので、入れていません。 その上の部分の現金給付は、白マルのところは我々は出していません。白マルのところ は、データソースがないために抜けているところでございます。保険給付以外の高度先 進医療もすべてがデータとしてあるわけではございませんので、そこも入れていない。 右の方にいきまして、特別料金と書いてあります。これは差額ベッドに関するものです けれども、これも信頼性のある(差額ベッドは日本で一体幾らかかっているのかという) データがないので、入れておりません。また、特別な材料による給食等、歯科自由診療、 これに関してもデータがないので、残念ながら入れていない。 我々のSHAというのは国民医療費がメインのデータソースで、約40種類の統計資料を使 って算出していますけれども、国民医療費で適用されていないところを、このように出 して入れているというところが図表1−1の説明でございます。 次のページの図表1−2は、今、私が口頭で簡単に概要を御説明させていただきました けれども、各項目は何が入っているか、何が入っていないかというものに関して箇条書 きにして書き出したものでございます。 下線部に関しましては、データ制約等の理由によりデータがないところで、我々はこの 部分は計算できないのでSHAにも入れておりません。ですから、先ほど2004年の値は40 兆760億円と言いましたけれども、ここの中には下線部分のものは含まれていないとい うことです。実際この部分が把握できたのであれば、40兆のSHAの推計値も非常に大き い額になるということでございます。 5ページの説明をさせていただきます。まず、我々が推計しているSHAですけれども、 2000年にOECDが国民保健計算の国際基準としてガイドラインを作りました。そのガイド ラインというのは、OECDのホームページに行って「SHA」と検索していただきますと、 SHAのマニュアルがすべて出ております。(提示して)これが表紙の部分でございまし て、約200ページのマニュアルに従って出している。今は「SHA1.0」というバージョン ですけれども、現在、「SHA2.0」というものを作っておりまして、来年、SHA2.0が公表 されますので、再来年から少しバージョンアップした形で、SHAも各国に計算するよ うに求められるというところでございます。 また、我々の医療経済研究機構では、平成12年(2000年)に、厚生労働科学研究費特別 事業により推計方法の研究費をいただきまして、推計方法を確立してきたところでござ います。その他にも厚生労働科学研究費によって研究手法を開発しておりまして、来年 度よりSHA2.0に基づいた推計方法が求められてくるところでございますので、今年度、 統計情報部に厚生科学研究費を申請しまして、今年度、来年度にかけて新たな推計方法 を計算していく予定にしております。 そして、SHAがどういうものか、先ほど概要を説明させていただきましたけれども、7 ページの四角で囲んだところが一つの特徴となっています。主に資金(財源)、そして 保健医療サービスの財と供給ということで、そういった資金が一体どういうところに行 くのか。3番目として、どのような種類のサービスが提供されて、どのような品目の財 が購入されたのか。これをしっかり把握できるようにしようというものがSHAになりま す。国民医療費の方でも財源別というのがございますけれども、SHAの方にもあります。 大事な指標が幾つかありまして、1つは「HC」というものです。3つの疑問に対応する 形として、図表2−1及び2−2に示す機能、我々はHCと言っています。そして、供給 主体(HP;Providers)、財源(HF)の三次元の枠組み、これが一番大きな枠組みで出さ れております。 図表2−1は、OECDに提出するデータの具体的なものはどういうものかというと、エク セルのシートで、エクセルが二次元になっておりますので、縦にHCの機能分類、横にHF あるいはHP。例えば外来の医療費が、診療所あるいは病院から提供されたのか。そうい うようなマトリックスの状態でそれぞれのコストがわかるという形で、2次元テーブル で推計をしているところがSHAの特徴でございます。 次のページを見ていただきまして、図表2−2になります。これがHCという分類になっ ております。非常に細かいもので、簡単に概要を説明させていただきますと、HC.1、HC .1.1、HC.1.3.1ということで精度が3段階になっております。そして、この3段階のす べての段階を計算しているわけではございません。これはデータソースによって、第1 ディジットでもいい、2ディジットでもいい、3ディジットのように細かいものを出し てもいいと。 これは各国によっているのですけれども、例えばHC.1は診療サービスで、HC.1.1になる と入院、HC.1.2は日帰り診療、HC.1.3は外来診療ということになっております。この外 来診療にHC.1.3.1、HC.1.3.2とございまして、HC.1.3.1だと外来診療の中でも診療所や 病院で提供されているもの、HC.3.2だと外来の歯科診療ということになります。 このように精度が求められて、この枠組みに従って我々は出しているというところでご ざいます。 HC.2はリハビリテーションサービス、HC.3は介護保険が関係してくるlong-term nursing careのデータでございます。 HC.4は医療の補助的サービスでございまして、臨床検査、画像診断等あります。日本の 場合は病院で画像診断や臨床検査が提供されていて、画像診断が幾ら、臨床検査が幾ら というのが国民医療費の方にないものですから、HC.4のものに関してはHC.1の方に含む という形でデータを提供しております。これは、「データソースがこういうものなので 」という説明付きでOECDの方に提供しています。 HC.5にいきますと、外来患者への医療財の提供ということで、HC.5.1は主に薬剤です。 HC.5.1.1は処方薬(Prescription)になります。そして、HC.5.1はOTC(一般薬)になっ ておりまして、国民医療費の方には入っていない、調剤薬局ではなくお薬屋さんで買う 頭痛薬や風邪薬、そういったものはこちらに入れ込んでおります。HC.6は予防のサービ スで、基本健康診査や母子保健のカウンセリング代、そういったものはデータがある限 り入れております。 HC.7は、保健医療管理業務、事務経費を入れております。 HC.9は「分類されないもの」で、医療費の定義が各国によって少し異なるところがござ います。そういったものはHC.9に入れるとか、もう一つ、HC.R(Health-related functions)というのがありまして、これは保健医療に関連するものということで、他の HCに含まれないものはこちらの方に入れようということで、こういった枠組みが用意さ れています。 各国がデータソースをOECDと協議して、そのデータソースでいいということになれば、 それぞれのデータソースを使って、このようなHCという枠組みにデータを入れ込んでい くという次第でございます。 9ページに「供給主体」とありますけれども、これがHPのProviderの略です。HP.1が病 院になります。病院も一般病院や精神病院といった区別がございます。HP.2は長期医療 系施設及び居住施設です。HP.3は診療所、外来医になります。 次のページをめくっていただいて、HP.4は医薬品の小売、供給です。HP.5、HP.6、HP.7、 これは見ていただいたとおりでして、このような枠組みにもなっています。 そして、HFの「財源」という枠組みもございます。これは国民医療費の方でも扱ってい る領域で、我々も国民医療費のデータに沿ってこのような財源に分けていますけれども、 HF.1は一般政府で、HF.1.1は社会保障基金を除く一般政府、またHFも、3ディジットあ るいは4ディジットのこのような細かい分類もございます。 HF.2は民間部門、民間が扱う社会保険ということで、諸外国によっては、民間が社会保 険を提供しているという民間保険の部分もございますので、こういった分類もあるとい うところでございます。 その他、RC(人的資源)とか、FSとかありますけれども、こちらの方は割愛させていた だきます。 大体どこの国もこの3つの次元に基づいてデータを出していまして、これがSHAのデータ の提出状況でございます。 最後に、では、どのような費用の構成になっているかということで見ていただきたいの が、16ページと17ページにございます。順番が逆になって申しわけないのですけれども、 まず17ページの方を説明させていただきます。図表4−2は「国民医療費と総保健医療 支出の推移」ということで図を作っております。白い棒が国民医療費、斜線の棒がSHA で計算した総保健医療支出になります。我々は、1995年までデータを遡って一貫してデ ータを出して、2007年までデータを提出しているという次第でございます。 95年から2005年を見ていただくとわかるように、2割〜3割、国民医療費よりもSHAの 方が高くなっています。そこは、OTCの薬や補助金が入っているからというふうに理解 していただければと思います。 16ページは、40兆あるお金のうち、それぞれどのような費用の構成になっているかとい うものを図示したものです。総保健医療支出があって、その下に経常保健医療支出と設 備投資が分かれています。 経常保健医療支出の下にいきますと、個別的保健医療支出と集団的保健医療支出となり まして、集団的保健医療支出に関しては予防に関するお金がメインで、あとは事務管理 経費があります。個別的保健医療支出の方にいきますと、その下もやはり医療サービス 支出と医療財への支出ということで、Medical goods、薬や衛生材料、そういったもの をメインにしたお金がこれぐらいだということです。医療サービス支出ということで、 入院、外来、デイケア、在宅、補助的サービスということになっています。また、入院 と外来に関しましては、国民医療費の方では出産に関する費用は含まれていないという ことでしたけれども、「出産一時金×正常分娩の数」はデータから我々が推計しまして、 それぞれの値をこちらの方に入れて推計値を出して提出しているといった次第でござい ます。以上、概要でございましたけれども、説明を終わらせていただきます。 ○廣松座長  ありがとうございました。SHAに関して、国民医療費との関係も含めて御説明をいた だきました。何か御質問、御意見、ございますでしょうか。 ○前田委員  教えていただきたい点がありますけれども、まず4ページで、「下線部は推計値に含 まれない」とあって、下から2つ目の枠に、政府の保健医療実務費というのが含まれな いものにカテゴライズされています。国の場合は予算も決算も組みますし、私たちが見 られるのは決算書あるいは予算書の科目別までですが、それ以下の細かい数字も当然あ るわけです。政府の無駄と言われている中、こういう費用も把握するのが難しいのかな と思って少し驚いたのですが、これはやはり按分とか、切り分けが難しいということで 出せないということなのでしょうか。 ○満武副部長  御指摘のとおりでございます。ただ、厚生労働省の保健医療事務費というところで様 々な業務をやっている中で、これだけに関連するところをどういうふうに推計するかと いうと、非常に難しい。我々推計チームもこれは非常に出したいところなのですけれど も、按分するのが非常に難しいというところで、そこは出しておりません。このとおり でございます。 ○前田委員  理解いたしました。もう一つ、教えていただきたいのですけれども、9ページに「資 本形成(HC.R.1)」という言葉が出てくるのですが、これは簡単に考えれば、医療機関 等の再投資のコストと考えればよろしいでしょうか。 ○満武副部長  資本形成は、我々はあまり出していないのですけれども、医療機器のMRIとかCT を購入するときに、例えば診療報酬点数の方から少しお金を貯めて購入するとか、そう いったものがあるとは思いますが、そこは把握できない。OECDの方では資本形成はあり ますけれども、我々はここは推計値としては提出していないということでございます。 ○前田委員  意味としては投資のためのコストと。 ○満武副部長  はい。インベストの。 ○前田委員  確かに診療報酬から広く浅く出されているものは捕捉できないと思うのですが、例え ば今風に言うと、仕分けの対象になった国立病院機構の施設整備費補助金というような ものは、捕捉するとしたらこの範囲に入るということですか。 ○満武副部長  そちらの方は入るんですけれども、補助金に関しましては、補助金の項目も我々は把 握していますが、例えば人件費として補助をしているといった項目がございます。そこ に関しては病院を運営していくためのコストという理解でとっておりますので、私ども はHC.1の診療の方にその分を入れております。 ○前田委員  それは多分、運営費交付金の方で、施設整備費補助金などは入れていないということ ですか。 ○満武副部長  そうです。 ○前田委員  理解いたしました。 ○岩本委員  SHAの保健医療支出の方が国民医療費よりもかなり大きいのは、概念的に、予防・公 衆衛生や医療設備の投資を含むということで、性格が違うということが一つ大きいので すけれども、幾つかの項目の中に「医療サービス支出」という項目があります。それは 国民医療費とかなり近い概念なので、そこと比較した場合に、国民医療費とこの概念が ずれることによってどれだけ違うのかというところと、あと、統計の拾い方で違ってい る。そのあたりがもう少しわかると、国民医療費32兆円という数字と医療サービス支出 の29.8兆円の数字の差ということになると思いますけれども、医療サービス支出の方が 小さい理由はどのようにとらえればよろしいのでしょうか。 ○満武副部長  一つの例でございますけれども、処方薬に関しましては、医療サービス支出ではなく て、「医療財への支出」の下の「医薬品その他非耐久性医療財」の方に入っております。 国民医療費のものがこの2つに分かれているということですので、そこがやはり金額的 にも大きいのではないかというふうに推察します。 ○岩本委員  HCの分類は非常に細かいのですけれども、詳細まではなかなか全部埋めることはでき ないと思います。国民医療費の方に頼っているとなると、国民医療費の方でも分類がな ければ、そちらの方には分類として細かくできないということなのか。あるいは、別途 いろいろと推計して、国民医療費にない分類も入れているのでしょうか。現在、どうい うふうになっているのでしょうか。 ○満武副部長  まず、国民医療費に入っていないもので大きなものは、例えばですけれども、出産の 費用がございます。それに関しましては、出産一時金等、出産係数がありまして、その 中で正常分娩数とか異常分娩数とかございますので、そこに関しては我々が按分係数を 使って、それぞれ何%、何%というものを出します。正常分娩に関しましては、時代に よって、出産一時金が最近は上がってきておりますけれども、35万円を掛ける。異常分 娩のところは国民医療費の方に入っておりますので、そこの部分は国民医療費の値を使 って推計するというやり方はしております。 あと、HC.4の画像診断、臨床検査に関しましては、例えばレセプトには臨床検査とか画 像診断ということで項目がありますけれども、国民医療費にそのような項目がない。画 像もすべて外来や入院の方に含まれているので、ここはデータの性格上、出せないとい うことでOECDには説明をつけて、HC.4.1、HC.4.2に関してもHC.1.3あるいは1.1に含ま れるという形で出しております。そこは、OECDが要求している水準までは出し切れてい ないところも確かに存在します。 ○岩本委員  そうすると、国民医療費の方ではそこの分類がないということで、作れば作れるかも しれないけれども、現在は作っていないということになるのでしょうか。 ○満武副部長  按分係数をしっかり作ることができれば、その部分から取り出してこちらの方に補完 することはできます。我々も毎年毎年、推計方法を考えて少しずつパッチワーク的に行 っているのですけれども、臨床検査と画像診断に関しましても按分係数さえ作れれば、 もう少しOECDの方を満たすデータ精度で提出することも可能だと思います。 ○前田委員  今のことに関連してですけれども、それを使うことがよいかどうかは別として、国民 医療費は推計に社会医療診療行為別調査を使っておられます。臨床検査と画像診断も社 会医療調査を使えばデータはあるというふうに考えますが、それは使う対象ではないと いうことですか。 ○満武副部長  社会医療調査のデータ精度に関しまして、本当にそれを使っていいのかということが ございます。ある一時点の調査でございますので、先ほどの御指摘のとおり、全レセプ トが電算化されてそのデータが使えるようになったということであれば、かなり正確に 把握できるのですけれども、やはり一時点調査のデータだけの推計方法を使うと、今年 はこの按分値、去年はこの按分値と、この按分値を比較していきますと少しズレがある。 そのズレで、膨大な費用の額をこちらの方に毎年毎年推計すると、非常にばらつきが大 きいのではないかというふうに我々の調査チームでは考えまして、そこは精度がまだ保 証できないので、推計はしていないという次第でございます。確かにここの部分は、OE CDから、何とか出せないのか、社会医療調査もあるから出せないのか、というふうにリ クエストが4、5年前に寄せられたこともございます。ただ、そういった理由で出して いないという、そういった箇所もSHAにはあります。 ○前田委員  社会医療調査は抽出調査でもありますし、年によっては偏りがあることもあるので、 こういうことに使わないという御判断には賛成ですが、一方で国民医療費の方は使って おられて若干の不整合を感じました。 ○満武副部長  ありがとうございます。 ○廣松座長  他に、いかがでしょうか。私も単純な質問ですが、現在、財団の方ではこの推計にど れぐらいのマンパワーをかけていらっしゃるのですか。 ○満武副部長  マンパワーはその年によっても異なりますけれども、最低3名は、専属ではなく、他 の業務もこなしながらやっております。今、後ろに2名おりますけれども、3名です。 そしてSHAは、今、1.0ですけれども、来年はSHA2.0に変更されるので、やはり人も増や さなければいけない。また、厚生科学研究費もいただいたということもございます。医 療制度改革があったときは我々は非常に大きなマンパワーがとられます。介護保険が導 入されたとき、また、予防のお金もかなり大きいのですけれども、2008年から特定健診 が導入されたと。そういうことになると今までの予防のデータソースが変わって、他の データソースを持ってこなければいけないというところがございますので、そういった 制度変更があったときはやはり人を増やして対応している次第でございます。 ○廣松座長  定常的には3人程度のマンパワーで出していくということですか。 ○満武副部長  はい。 ○廣松座長  わかりました。確かにこういう形の国際的に比較可能な枠組みを作ろうと思うと、な かなか大変ですし、各国のそれぞれの事情があることも事実だろうと思います。今、ほ とんどの国で大変大きな問題になっているヘルスケア関係のものに関して、何らかの国 際比較が可能な手段をお互いに見つけていかないことには、やはり建設的な議論ができ ないと思います。それらの点についてはこの検討会で、今日お示しいただいた資料のも う少し細かいところも含めて、検討させていただければというふうに思います。 さて、本日予定しておりました議題は以上でございますが、全体を通じまして何か御発 言はございますでしょうか。 ○岩本委員  先ほど言えばよかったのですけれども、SHAの推計手法を見て私が率直に気になる点 は、国民医療費の上に乗っかって作っておられるということなんです。国際基準の方で はかなり細かい別の分類を要求されていて、更にSHA2.0ですと、また細かいものがいろ いろと出てくるということだと思います。そうすると、細かいものの分類がもともとの 土台となる国民医療費の方になければ推計できない、ということになっていく。そうす ると今の体制は、国際基準の要請には応え切れないような体制で動いているような気が するわけです。 例えば、これは将来的な話ですが、国民医療費の方でレセプトデータをもとから見ると か、更には、社会医療調査の方の個票を分析するということであれば、同じ作業を更に 別のところでやるのではなく、そこのところでSHAのニーズに合わせた集計を同時にや っていただければ、SHAも充実して、更に二度手間にならない、そういうふうなことが 思い浮かぶんです。そういった方向に進むにはいろいろ障害もあるかもしれませんけれ ども、外から見た感じではそちらの方がいいのではないかと、そういう思いを持ってお ります。 ○前田委員  多分、国民医療費からスタートしてもSHAからスタートしても、科目の紐付け、名寄 せができれば、テクニカルには解決できる問題が多い。私が伺っている範囲では、今、 データがとられていない。先ほどの政府の支出もそうですが、あるいは自費になる部分 とか、そういった部分を、これはかなり横断的にというか、いろいろなところの協力を いただかないとなかなか正確は期せないと思うので、むしろそちらの体制作りの方が重 要なのではないかという気もいたしました。 ○廣松座長  勿論、国民医療費の方でも報告の類いを原資料としてたくさん使っていらっしゃるわ けですが、特に医療サービスの提供側の状況に関しては、やはり行政記録情報をうまく 使わないことには統計調査だけでは十分とらえ切れない面がある。先ほどからずっと出 ていますとおり、レセプトが電子化されてある程度利用できるようになると、少しは改 善されるのかと思いますが、レセプトが万能薬でもないように思いますから、そこを今 後、どういう形で進めて行くかということになろうかと思います。それに関しては、次 回以降、いろいろまた御意見をいただければと思います。 さて、他によろしゅうございますか。予定していた時間より早目のようでございますが、 本日の議題は以上で終わりましたので、今後のスケジュールに関しまして、事務局から 御説明をお願いします。 ○武田保健統計室長  先ほども申し上げましたように、次回の日程も含めて座長の先生とも御相談の上、調 整して、改めまして皆様方にお伝えさせていただければというふうに考えております。 ○廣松座長  それでは、長時間ありがとうございました。次回の検討会の開催につきましては、今、 室長から伺いましたとおり、皆様方と日程調整をさせていただいた上で、改めて事務局 より御案内申し上げます。 これをもちまして、本日の検討会を終了させていただきます。どうもありがとうござい ました。 (照会先)  厚生労働省大臣官房統計情報部人口動態・保健統計課  保健統計室 鈴木、藤井  TEL03−5253−1111(内7504、7505)  FAX03−3595−1636