10/04/15 第4回職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会議事録 第4回職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会 日時 平成22年4月15日(木) 10:00〜 場所 経済産業省別館1014号室                       (担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部                            化学物質対策課 奥野                          〒100−8916                           東京都千代田区霞が関1−2−2                           TEL 03-5253-1111(内線5517)                           FAX 03-3502-1598 ○奥野安全専門官 本日は、大変お忙しい中ご参集いただきまして誠にありがとうございま す。ただいまより「第4回職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会」を開 催いたします。本日は廣川委員からご欠席の連絡をいただいております。  初めに資料の確認をさせていただきます。お手元の資料は最初が議事次第、次頁が配付資 料一覧です。1頁が資料4-1、前回の議事概要です。  5頁が資料4-2、論点の整理ですが、資料番号の後に(再々配付)と書いてあるのは、第 2回と第3回にも提出したものであるという意味です。6頁が資料4-3-1、事業場内表示の 考え方。7頁が資料4-3-2、各種容器への事業場内表示の案。8頁が資料4-4-1、表示、MSDS の活用による労働災害防止。9頁が資料4-4-2、表示、MSDS交付に係る規制のあり方。10 頁が資料4-5-1、MSDS対象物質の追加。11頁が資料4-5-2、MSDS対象物質の追加スケジ ュールイメージ。12頁が資料4-5-3、MSDS交付対象物質追加予定460物質の選定イメー ジ。13頁が資料4-6、職場の化学物質管理における労働者教育のあり方について(修正版)。 14頁が資料4-7、化学物質リスクアセスメント指針普及のためのこれまでの取組み。15頁 からがコントロール・バンディング関係の資料で、資料4-8-1から20頁の資料4-8-6「コ ントロール・バンディング導入の考え方」まで続いております。21頁が資料4-9、有害物 の規制の現状。22頁が資料4-10、作業環境測定結果の評価について。23頁が資料4-11、A 測定、B測定と個人サンプラーによる測定の比較。24頁が資料4-12、作業環境測定結果の 取扱いについて。25頁が資料4-13、局所排気装置等の稼働要件について。26頁が資料4-14、 局所排気装置以外の発散抑制方法についてです。  27頁からは参考資料4-1で、リスクアセスメント、化学物質情報入手に係るアンケート 結果等です。資料としては以上です。落丁等がありましたら、お気付きになり次第事務局に お知らせいただきますようお願いいたします。それでは座長、よろしくお願いいたします。 ○名古屋座長 本日の議事に入る前に、前回の議事概要ということで事務局から説明してい ただきます。 ○奥村調査官 資料4-1に沿って前回の議事概要を説明いたします。  まず(1)規制のあり方についてご検討いただきました。 [1]労働安全衛生法の対象の範囲を明確にすることが必要。消費者は対象とはならない。 [2]中小の企業において、法令を守ることが目的になっていることがしばしば見られる。法令 を守ることは、化学物質による健康障害を防止することを達成する手段であって、目的では ない。どういった目的で法律を定めているのかをきちんと知らしめ、何のために規定し、事 業者に遵守させるのか、それを実施させることをエンカレッジする仕組みを検討してはどう か。 [3]連合の2008年の調査では、中小企業においては、規模が小さくなるほどリスクマネジメ ント、MSDSが普及しておらず、安全衛生委員会も機能していない。規模間で顕著な差異 が見られる。また中小は労働組合の力も弱い、労使ともに力が弱いので、自主的な管理に任 せるのは難しい。 [4]労働者が自らの職場環境における危険有害性情報を事業者に請求し、情報が提供される枠 組みがあればよいのでは。諸外国では作業環境の測定結果を労働者に伝えなければならない こととなっている。 [5]規制はコア、つまり危険有害性の高い物質に対象を絞って規制することであり、これだけ では限界があるので、企業の自主的な取組みが必要となるというステージ、つまり危険有害 性を有する化学物質全体に網を掛けることを考えなくてはならない。ステージについては、 事業者が自主的にGHS分類をし、表示できるようなインフラ基盤を達成・熟成できるよう なものを考えなくてはならない。 [6]日本では危険有害性を知らせることを躊躇する雰囲気があるのではないか。これについて 議論する必要がある。 [7]事業者から産業医や健康診断を実施する医療機関に化学物質のラベルやMSDS情報を伝 える仕組みを設けてはどうか。また、産業医の教育制度に化学物質情報の伝達を追加すれば よい。 [8]化学物質の危険有害性情報(ハザード情報)を伝達することも重要だが、取扱いの状況等 の違いによるリスクの評価も踏まえて検討する必要がある。 [9]一般に、事故が起こるのは通常の取扱いとは異なる状況で起こるため、通常のリスク判定 ではなく、ハザードをまず伝えるのが先ではないか。  (2)表示・MSDS等による情報提供のあり方について [1]災害が発生している事例から見ると、事業者自身が、取り扱っている化学物質の危険有害 性の程度を知らず、また、化学物質に関する知識を有している管理者を配置していないため に、労働者に必要な情報が伝わっていないのが問題ではないか。 [2]化学物質の危険有害性情報が記載されていないために、安全だと誤解して使用したために 労働者が重篤な病気になった例として、HCFC123、及び2-ブロモプロパン等の問題がある。 [3]表示を事業者の自主的な取組みに任せるというのでは、徹底されない。アメリカやヨーロ ッパ等では、法律で義務化されている。義務以外の規定では表示されないのではないか。 [4]化学物質の危険有害性情報は多くの公的機関が公表しており、どのようなデータを使用し なければならないのかどうかが明確にされていないのではないか。 [5]ラベル表示は現場で取り扱う労働者に直接情報を提供するものであり、MSDSは事業者 が管理をするためのものである。例えば、急性毒性や爆発性といったものについては、労働 者に直接アピールするものであり、ラベルの表示の対象となるのではないか。一方で、MSDS は低い濃度で繰り返しばく露して問題が起きるものを管理者がチェックするというもので はないか。危険有害性の中身を考えて検討する必要がある。 [6]化学物質によっては危険有害の線引きが難しいものがある。また、線引きをして危険有害 とされなかった化学物質は危険有害ではないという誤解がされないようにする必要がある。 [7]GHSは、危険有害性がわからないものは記載する必要がないとする緩い規制である。し かし、それで果たしてよいのかという問題があり、議論する必要がある。 [8]ラベル表示及びMSDS交付により、労働災害を防げるエビデンスを確認するべきではな いか。これに対しては、ラベルにより災害がどれだけ減るかということについて、OSHA によると化学物質の危険有害性情報を表示することで約42%の職業性疾病を削減すること ができ、企業の負担も数千億円減っているだろうと推定されているという指摘があった。 [9]化学物質の危険有害性情報を伝える仕組みが重要である。法令上、情報を伝達する物質の リストを作るべきではない。欧米はリストを作らず、危険有害な物質をすべて対象としてい る。また、罰則も必要ではない。安衛法は危険な物質に対して措置を義務付けてきたが、情 報伝達を措置に位置付けないため、イビツなものとなった。 [10]リスクアセスメントを実施して、有害性の高いものから実施していく、除かれた物質につ いては、誰も見向きもしないということが起こり得る。しかし、危険有害性情報が行き届い ていれば、この物質については工学的な対策はできないが、十分に注意しようということに なる。情報をきちんと伝えた上でリスクアセスメントをするということが重要となる。 [11]化学物質の危険有害性情報を伝達するという目的を達成するためにも、「飲み込むと生命 に危険」といったことを危険有害性情報を取り扱う労働者にいかに伝えるかといった運用を 検討すべき。 [12]労働者は、ラベルに書いてある情報の細かい所を読みながら、現場で作業をするのではな い。予めラベルに書いてある内容を教育した上で作業を行うべきであり、その場合、現場は 絵表示だけでもよい。 (3)MSDS交付対象物質の追加について [1]GHS分類方法は、国連GHS文書が改定され、JIS7252が制定されたりして、そのため に混乱が生じている。統一した分類方法基準で分類して公表する必要がある。また、物質を 追加するに当たっては、例えば高リスクの物質から順番に実施するなど、全体のスケジュー ルを作成し進めるべきである。 [2]規制と自主的な取組みを組み合わせていくことが重要である。単に交付対象物質を拡大し ても空回りに終わってしまうため、教育を進めるべきである。また、追加する化学物質の選 定根拠をはっきりさせる必要がある。そのために、専門委員会のようなオープンの場で議論 すべき。 [3]MSDS交付対象物質の追加に当たっては、混合物を含めると企業の負担が非常に大きく なることに留意する必要がある。 [4]平成22年度のMSDS追加交付対象物質(案)のうち、他法令で既に規定されているとい っても、今般JIS7250の経過措置が終了するため、これに係る対応があって事業場の負担 は大変であり、対応困難である。 [5]例えば、化審法において、行政指導で昨年末に新たに98物質についてMSDSを交付する ということになった。一見100物質というと大した数ではないと認識するかもしれないが、 混合物も入れて考えなくてはならない。これに対応するため、ある企業などは約30万銘柄 の製品のうち3分の1の銘柄のMSDSの書き換えを1年以内にやらなければならないとい う事態となっており、大変である。 [6]MSDS制度については法令所管が3省に跨って縦割り行政となっており、しかも仕組み が微妙に異なっている。また、法令の改正時期がまちまちであり、五月雨式に法改正に対応 するのは事業場にとって大きな負担となっている。 [7]この問題に対しては、法令を所管している関係部局による合同審議会等を設け、GHSと MSDSを含めた統一的な管理システムによってご議論願い、抜本的な統一化を図ることが 望ましい。 (4)労働者教育のあり方について [1]労働者教育には、単に労働者への教育だけでなく、化学物質を管理する管理者への教育や 指針の「化学物質管理者」養成も含めなければ効果が出ないのではないか。 [2]資格制度の本来の姿として、専門職の免許にはすべて有効期限があるもので、免許の更新 制度も検討しなくてはならない。 [3]安全衛生教育の中で化学物質取扱いに関する教育時間が圧倒的に不足しているのではな いか。以上です。 ○名古屋座長 ただいまの説明に対してご質問等はございますか。もし後でお気付きでした ら事務局等にお知らせいただければありがたいと思います。  それでは本日の議題に入ります。危険有害性情報の伝達・活用の促進について、というこ とで事務局から説明していただきます。 ○半田化学物質対策課長 資料4-2、論点の整理メモを使って事務局から説明いたします。 ア・イ・ウとあり、エに「その他」がございますが、私がこれから説明するのはアの部分で す。危険有害性情報の伝達・活用の促進というテーマに関しては過去3回にわたってご討議 をいただきました。しかしイ・ウという議題も残っておりますので、本日は一応のところの 方向性をおまとめいただければありがたいと存じます。  危険有害性情報に関しては、大きく申しますと譲渡・提供時の情報提供の問題、それから 事業場内での情報周知の問題という2つの問題がございました。現状を申し上げますと、法 令(法律・規則等)のレベルでは、譲渡・提供時の情報はあるのですが、事業場内表示の規 定がございません。そういったことで、主として事業場内表示のあり方についてもご議論い ただいてきました。  その資料が4-3-1と4-3-2です。ここの部分では、事業場内表示を導入することについて は大体合意が得られたのかなと理解しております。ただ、そのやり方についていろいろご議 論がございます。本来ならばラベルを貼っていただくのがいちばんいいのですが、それがで きない場合もありますので、そういった場合の代替手段をどうするかを主にご議論いただい て、この辺も、委員の先生方のご意見は大体一致しているところかなと理解しております。  8頁、資料4-4-1は、危険有害性周知についていま私が口頭で申し上げたことを絵にする とこうなるということです。「メーカーからユーザーである事業所への化製品の移動に伴う 情報の伝達」という部分と「事業場内での情報伝達」という問題があるということです。  これに対して9頁の資料4-4-2は、現行規制がどうなっているか、それをどういう方向で やっていくのかということでご議論いただいたわけです。いま一度確認させていただきます と、現行では譲渡・提供時の情報提供、これが100物質について法律の57条で定められて います。事業場内の表示義務はありません。それから、譲渡・提供時のMSDSの交付義務、 これは640物質について定められています。このほかに点線で囲ってある部分、いわゆる 指導レベルで指針を出して、譲渡・提供時の表示、あるいは事業場内での表示も含めて、危 険有害性を有する化学物質に対して広くやっていただきたいという指導勧奨を行っている のが現状です。  これをどう改めていくかということをご議論いただいたわけですが、1つには譲渡・提供 時の表示義務100を拡大するのか、しないのか。事業場内表示の義務を新たに導入するの か。導入するとすれば、どれぐらいやるのか。それから、MSDSの交付義務が640物質に なっておりますが、これを拡大するとすれば、どの程度拡大するのか、こういった議論です。 ここの議論を前回は「コアの議論」、コアをいかに作るかという議論ということで整理いた しました。  これに加えて、コアのことだけではなくて、むしろ危険有害性を有する化学物質の情報を 広く、あまねく提供していただくような基本的なルールを構築すべきではないかということ で、点線の部分を実線に換えていく。努力義務程度になろうかと思いますが、そういった明 確な法令に位置づけるべきではないだろうかというご議論があり、これをステージ論と呼ん でいたわけです。特に前回は、ステージか、コアかというご議論がなされたと理解しており ます。  ステージ、コアの部分に関しましてはいろいろ議論がありました。ステージを整備してい くというところに関して、多くの委員の皆様には大体ご理解が得られたところかなと思って おりますが、コアの拡大の部分がまだご意見の分かれるところかなと考えております。  私どもが当初用意していた「コア」の部分の考え方ですが、10頁から前回と前々回に配 付した資料を付けてあります。ただし、MSDS対象物質の追加ということも考えておりま して、現在640物質のものを段階的に増やしていくということで、10〜12頁にこういった 考え方で拡大していったらどうだろうかということを提案いたしたところですが、ここのと ころはいろいろご意見のあるところかと存じております。  情報提供に関しては、併せて教育の問題が重要であるということが度々指摘されていまし た。そういったことで資料4-6に、「労働者教育のあり方について」の図を示してあります。 この修正版は今回初出の資料ということになっておりますが、元は前回、前々回とも提出し てあります。今回再提出となっていないのは、前回のご議論を踏まえて左側の上から2番目 「産業医」、それからその2つ下「安全管理者」こういった専門スタッフにも勘案していく 必要があるだろうというご指摘があり、そういう修正を加えてあります。そういう意味では 今日初出ということになりますので(再提出)とはしておりません。こういったことで危険 有害性情報の伝達のあり方についてある程度の方向を本日まとめていただければありがた いと存じます。よろしくお願いいたします。 ○名古屋座長 ただいまの説明に対して質問等を出していただきたいのですが、個別に進め ていこうと思います。まず資料4-3-1から資料4-3-2、これは事業場内で使用する容器への 表示のところです。完全なラベル化というのは難しいのでしょうが、代替的な手段として、 労働者に情報を伝えるということは意義のあることですので、ここのところを議論していき たいと思います。どうでしょうか。特に4-2-2の中で、安衛法の中でコアかなと言われたの が、GHSの本質的なところに入ってくると「コア」ではなくて「ステージ」のほうがいい のではないかというような話がありましたが、その辺についてのご意見をお聞かせいただけ ればと思います。いかがでしょうか。 ○橋本委員 資料4-3-1で、原則は[1]譲渡時のラベルをそのまま貼る。もう1つは[2]で、名 称だけは貼るがラベル自体は掲示するとか備えつけでよいということなのです。1つは、 MSDSを事業場内に備えるという規定あるいは考え方はないのかということ。ラベル情報 も、大手などではMSDSは既に備えていると思うのです。それで、ラベル情報もファイル なり何なりで備えるとなると、そこのところには実際重複作業が生じてしまうと思うのです。 ただ中小については、最低でも小分けした容器に名称を付けるというのは極めて重要だと思 います。そこでは、これは意味があるとは思うのです。だから、例えば事業場内に備えるの はMSDSまたはラベルの情報、そういう選択肢があってもいいのではないかと思うのです。  あとは、実際に労働者レベルのほうを見ますと、名称が付いているということは必須だと 思うのですが、折角GHSの絵表示が浸透してきていますので名前と絵表示も付ける、これ もかなり有効なのではないかと思うので、その考え方はいかがかと考えております。 ○半田化学物質対策課長 それもお考えかとは思いますが、MSDS自体はかなりの頁数に わたるものです。どのようなステージを作っていくかということにも関連しますが、多数の 枚数にわたるものにそれが入るのがいいのかどうかという辺りは、少し検討していく必要が あるのかなと思っております。今640物質に関しては既に法律の中で、これを周知するよ うに義務づけられておりますので、そのことも申し添えておきます。いずれにしても、その 辺りの情報をどういうふうに周知していくかというところの細部は、また改めて実際にご議 論をさせていただきたいと思っておりまして、その際、いまの橋本先生のご指摘のことも含 めてやっていきたいと存じます。 ○橋本委員 教育はまた、別途非常に重要だと思っております。譲渡時のラベルというのは 30〜40行ぐらいあって結構細かいので、実際に働いている個々人が見るかというと、私も ちょっと職場とか協力会社に聞いたのですが、なかなかそこまでは見ないのではないかと。 それはむしろ教育の資料にする。あとは監督者が見て指導に役立てる。そういう意味で、そ れはMSDSとそんなに変わらない位置づけになるのではないか。直接労働者に大事なのが 名前プラス絵表示、このように考えている次第です。 ○半田化学物質対策課長 掲示ができるだけ簡便なものであったほうがいいのかなという のは私もそのとおりだと思います。いま申し上げたのは、MSDSを掲示するということに 対してはちょっと難しい面もあるかなということですので、基本的に先生のご指摘はそのと おりだと考えておりまして、それを踏まえて検討させていただきます。 ○塩崎委員 2点申し上げたいのです。1点目は、表示のベースになる分類はGHSに基づ くべきだと思っております。このGHSの分類のやり方については、この前も申し上げまし たが、公表されているデータが複数あるため、どのデータをどのように使うか、あるいは公 表データに加えて自社のデータをどう使うか等、そういうガイドライン的なものが要るので はないかと思います。  2点目は事業場の表示に関してです。いま橋本先生がおっしゃったのと同じですが、ある 程度事業者に事業場の実状にあうようなフレキシビリティを持たせてほしいというところ があるのではないでしょうか。そのために、必要であれば、前回OSHAの説明がありまし たが、海外、例えばアメリカなどでは、どういう表示をしているかというような先行してい る各国の事例について調査、研究を行って、有効な方法を日本で採用することも考えるべき ではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○半田化学物質対策課長 分類に関しては既にJISで分類の仕方が定められております。 いまのご指摘はこの後の議論にもかかっている部分ですが、もし包括的な仕組みを導入して いくことになれば、当然それに合わせて指針などを出していきますので、その指針及びその 解説の中で、もう少し詳しいものを書いていきますし、それを書くに際しては、各国の先行 している事例は勘案しながらやっていきます。もちろんその根幹は、既に定められている JISを中心に取り組んでいくということになろうと思います。  フレキシビリティーのお話も、先ほどの橋本委員のご指摘と同じですが、今ここで細部ま では固まりませんので、細部を固める際には、実効性を確保しつつも、過剰なご負担となら ないようなやり方を、関係方面の先生方のご意見もいただきながら検討していきたいと思っ ております。 ○豊田委員 基本的に資料4-3-1でいいと思うのですが、国連の勧告書にも記載されている 「GHSの代替手段」というのをどこかにきちんと明記していただいたほうがいいのではな いかと思います。また、答申書のまとめのときにも「GHSの代替手段」(を認める)という 言葉を入れていただけたらと思います。 ○半田化学物質対策課長 説明の中でも代替手段ということは明確に申し上げております が、報告書案を作るときにも、きちんと明示していくようにいたします。 ○名古屋座長 資料の4-4-1から4-4-6まで合わせて、ほかにご意見がありましたら、どう ぞ。 ○福岡委員 ラベルの話です。管理者レベルではA4で8枚あって、末端まで行っても、そ れをしっかり持っているということが1つですが、それを労働者にどう伝えるかというとき に、ラベルというのは1種類ではないのです。資料4-3-1でいきますと、右半分に、ラベル 表示の例ということで書かれていますが、これでも多いかもしれないのです。この程度のも のもラベルだろうし。また左下に簡易な事業場内表示の例がありますが、こういった小さな 容器になると字がたくさん書けませんので、名前と絵表示ぐらい、そのようないろいろな段 階を考えないと、実際的ではないと思うのです。  もう1つはGHSの絵表示について。ここにおられる方にとっては、ごく当たり前かもし れませんが、末端に行きますと、こういうものが9種類あって、それにどういう意味がある のかということがまだ行き渡っていないのが現状だと思うのです。GHS分類の有害性が10 何種類、いくつかの言葉が1つの絵表示に載っているわけですから、それを日本の漢字で併 記するようにしないと、末端の人は、絵を見ただけではピンとこないのが現状ではないかと 思います。一定の教育期間を通って、この絵表示に末端の人がもっと慣れてくればいいでし ょうけれども、今はとてもそこまでの状況ではないと思うのです。  資料4-3-1の左下のほうにある簡便なラベルの場合でも、名前プラス絵、だけではなくて、 それに対応する漢字を入れる、そういうことを考えていく必要があるのではないかと思いま す。 ○半田化学物質対策課長 細目は改めて検討いたしますので、その際に福岡委員のご指摘も 勘案させていただくようにいたします。 ○市川委員 先ほど皆さんがおっしゃられたことと重複するところも多いわけですが、働く 者の立場で聞きますと、小分けにした容器等々にきちんとした表示がされるということは必 要であると考えていますし、それが分かりやすいものでなければいけない。いま福岡先生の ご指摘にかなり近いところがあるのです。雇入れ時とか作業が変わったときの教育といって も、それが頭の中にずっと残っているかどうかというと、そうも言えない場合もございます。 常に作業時に注意喚起ができるものをわかりやすく、きちんと明示することが大事だと思い ます。  企業側の皆さんにしてみれば、あまりいろいろなことを求められるのは、煩雑であるとい う意見もあり、フレキシビリティーという言葉も出ました。それに配慮しつつ、しかしここ だけは絶対に外してはならないという、まさしくコアの部分、何のためにこれをやるのだ、 ここだけは絶対に外してはならないのだという部分があります。この部分はきちんと規制し た上での柔軟性ということであれば賛成できますが、柔軟性ということだけが先に出るよう であれば、賛成はしかねると言わざるを得ません。 ○豊田委員 先ほど来、先生方がおっしゃっていることに関連するのですが、GHSを事業 場内に導入するに当たって、現在、製品の譲渡・提供に関しては2006年12月に安衛法に 導入されてやっているのですが、まだごく一部だと思うのです。我々が経団連にいろいろ話 を持ち込んで聞いてみましても、GHSの普及というのはまだまだだということです。GHS の普及、周知徹底のための仕組みとか所要期間というのは、導入に当たって配慮する必要が あると思いますので、是非ともお願いします。 ○名古屋座長 教育から行くということですね。 ○豊田委員 そうです。 ○名古屋座長 絵表示も、最初に見たときはなかなか難しいかもしれませんが、普及してき て繰り返し見ることになってくると、その意味というのが意外と理解できてくるのかもしれ ません。 ○塩崎委員 もう1点ご意見を申し上げたいのです。純物質は比較的やりやすいと思うので すが、混合物はやりにくいため、その取扱いについては、GHSの分類、表示に対する考え 方のようなものをある程度出していただくことが必要です。事業場内の表示についても、こ ういう考えでやるべきだというようなことをある程度出していかないと非常に難しい点が あると思います。さらに、そのような難しい点があるので、例えば実施については、純物質 から行い、その後、混合物を行うなどある程度猶予期間を持つとか、そういうことには是非 配慮する必要があるのではないかと思います。 ○橋本委員 前回の議論の議事録を読んだのですが、資料4-4-2のイメージで、事業場内の 表示義務の対象物質を仮に100物質と決める。前々回もこんなお話はあったと思うのです が、罰則付きの強い規定にする。そうすると、特に中小は罰則を気にするものだから、かな り徹底しやすいという考え方というのは、お持ちのように受け取ったのです。中小のような 所にどうやってきちんと守らせるかというのは1つのポイントだと思うのですが、アメリカ のやり方を見ていますと、無警告で立ち入り監査をして化学物質等々の管理状況をチェック すると言うのです。これはアメリカの者から聞いたのですが、ばく露管理をやっているかと かを見るのですが、実際の指摘でいちばん多いのはハザード・コミュニケーションに関する こと、それから教育とかラベル表示、MSDSの配備とかということがいちばん多いと、こ んなふうに聞いているのです。  日本では立ち入りというのはなかなか難しいという話も以前ありました。ただ、アスベス トの作業を見ていますと、弊社の事業場内でも、協力会社の作業場でも時々立ち入りがある のです。だから、立ち入りというのはある程度あり得るのではないかと思います。そういう ときに、こういう化学物質の管理、例えば教育、表示等も合わせてチェックする。そうする と、個別のハザードのチェックではなくて、仕組み全体をチェックするということになって、 長い目で見ると、仕組みそのもののチェックですから、それはむしろ個別のハザードのチェ ックよりも効果が大きいのではないかと思います。だからこういうこともやれば、一罰百戒 のような意味がある。こういうことができるのか、できないのか。できれば、そういうこと があっていいのではないかと思う次第です。 ○半田化学物質対策課長 いまの橋本先生のご指摘に特にご異論はございませんが、1点だ け説明をさせていただきます。私どもは立ち入らない、立ち入ることはできないというよう なことを申し上げたつもりはないのです。むしろ安全衛生法に書かれるということは、基本 的に私どもの権限が明確に発生するということですので、無警告の立ち入りや監督・指導が 可能になるということになるわけです。  ただ現実問題として、いまの厳しい行政改革の中で、監督官や専門官もそれだけの人数が おりませんので、随時パッと行ってというわけにはいきません。ですから、これは豊田常務 も常々おっしゃっていますが、そういった規制の部分と、事業者団体あるいは労使の自主的 な取組みをお願いしなくてはいけない部分もあって、その辺りのバランスの話も考えながら やっていく必要があるのかなと思っております。いずれにしましても、立ち入りができない ということはございませんので申し添えておきます。 ○西委員 GHSに関して、ここに集まっている方は専門家が多いので「パープル・ブック」 についてもよくご存じなのですが、私の個人的な所感かもしれませんが、「パープル・ブッ ク」は、専門家の方が集まって、非常に精緻を極めているという印象を持っています。例え ば急性毒生については、1、2、3、4、4区分の分類があります。そして絵表示は区分1、2、 3については同じ髑髏マークとなっています。労働者の立場に立って見ると、髑髏マークが あれば危ないというのはわかるのだけれども、1、2、3の区分まで教育を含めて熟知させる 必要があるのか。例えば、区分1だから手袋を2枚しましょう、3枚しましょうということ は全くあり得ないわけです。そういうことも含めて、GHSをどういうふうに普及していく のかを考えていかないと。GHSを真正面から労働者に教育するのだと言って、「パープル・ ブック」を全部教育したら、とてもではないけれどオーバーフローしてしまって理解不能だ と思うのです。ですから、例えば上級編と初級編にして、GHSに関して絵表示だけの教育 をする、髑髏マークというのはこういう意味を持っているものなのだと、そういう初級編と 上級編みたいなことをやらないと、とてもではないけれど、末端までGHSが普及しないの ではないかと思うのです。 ○半田化学物質対策課長 わかりました。細部を決めていく段階ではそういったことを十分 考慮するようにいたします。 ○豊田委員 いまのところに関連するのですが、(重要なのは、その教育の)中身です。GHS 分類に関しての事業者と労働者が使えるようなツール(を揃えてあげるとか)、そういった 意味でのGHSに関するインフラ基盤整備を(推進する必要があり、)城内先生や宮川先生 にお手伝いいただいて、我々の業界団体も(本基盤整備の推進を)やってきたわけですが、 今後も引き続きやっていかなければいけないと思っています。 ○名古屋座長 城内先生の名前が出ましたが、GHSについては、制定当時から関わってい らっしゃいますので、ご意見をいただけませんか。 ○城内委員 これは直近のご意見に対するお答えになるかどうかわかりませんが、GHSの テキストというのは、例えば国連の危険物輸送勧告のように「オレンジ・ブック」と言われ ているものがありますが、あれは一般労働者向けに作っているわけではないのです。GHS のテキストも、一般の労働者向けに作っているわけではありません。あれは行政が法規制に 入れるときに使いなさいという位置づけなので、直接労働者に教育しなければいけないとい うことはないと、私は思っています。ですので、日本でも、我々もGHSを教育するという ツールをいろいろ出していたりするので、教育という観点に関して言えば、これからいろい ろな知恵が絞れるのではないかと思っています。  話を振られたので、出された資料について少し発言させていただきたいと思います。例え ば資料4-4-1の図では、メーカーがあって、そこから譲渡・提供された製品が、ある事業者 に来て、その中で表示をどうするか、という流れでこの委員会は議論して来たわけです。私 は初めからこれに反対しています。つまり、メーカーが作った製品は、混合物であろうが、 純品であろうが、すべて危険有害性を評価して、それをラベルに貼りましょうと、それが私 が最初から主張していることです。4-4-1のような資料で話を進めていくと、それは事業場 内表示になるので、自ずと法規制対象物質の話になるだろうということだと思っていて、私 は初めからそこのところは反対してきたわけです。  今日提出されている資料4-4-2(再配付)で、これがたぶん表示に関するところのいちば んの論点だと思っていますが、この中の見直しのイメージの所で「対応を強化します。表示 等に対してGHSを基本として対応を強化しましょう。危険有害な化学物質をすべて対象に しましょう」ということで、ほかのいろいろな技術的な問題も含めて、これがきちんとでき れば、事業場内表示も自ずと解決していくだろうと思っています。ということは、この資料 の後にMSDS対象物質の追加等々のタイムフレームも含めて書かれていますが、これは無 しにして、現状の法規制のままで対象物質を追加していく。つまり、リスト化するのは一切 やめて、見直しのイメージの所でやっていただきたいと強く思っています。  労働安全衛生法でそれをやるということは非常に意味があります。まず1点目が、資料 4-4-1で示された図のように、入ってきたものに対して事業場内表示を考えるということで はなくて、メーカーや輸入者がその時点で危険有害性を把握してラベルを作るということが 非常に大事です。それは、いちばん上流から対象物質をリスト化しないで、全物質について、 危険有害性のあるものについてそれをやれば、ここでは対象として議論はしませんが、消費 者製品までずっと一連で流れるだろうと思っているわけです。労働安全衛生法は化学物質を 作るところの始まりですから、そこからやれば、廃棄まで考えたライフサイクルの中で危険 有害性をきちんと伝えましょうというフローが出来るだろうということで、労働安全衛生法 で対応を強化するということに非常に意味があると思っています。  労働安全衛生法上のもう1つの意味としては、今リスクアセスメントをしてリスク管理を しましょうという流れがあるわけですが、実は、すべての危険有害性のある物質が対象にな っていないがために、リスクアセスメントの骨の所が担保されていません。全物質を対象に すれば、リスクアセスメント、またコントロール・バンディングに関しても、いちばん欠け ている部分が担保されることになると思っています。ですからここの見直しのイメージの所 はリスト化をしないで、是非対応を強化してほしいと思っています。  日本には、危険有害性を包括的に伝えるという法律がほかには全くありませんので、労働 安全衛生法、化学物質の源のところでその法律を是非作ってほしいと思っているわけです。  罰則がなければ守らないということもあるとは思いますが、以前から申し上げていますよ うに、今ある表示に対する罰則規定のようなものには反対で、それは褒美になるのか罰にな るのかわかりませんが、良くやっている所は「良くやっていました」と名前を公表する。や っていない所は「やっていませんでした」と名前を公表するぐらいでも、GHSの導入には かなり役に立つのではないか。もし、そういう形の罰則があり得るのなら、それでいいので はないかと思っています。  あとは既にほかの先生方からご発言がありましたけれども、もし全物質に対象を広げると すれば、移行期間が必要だと思います。これはCLP規則もそうですが、混合物も含めると 5年以上になりますか。そういう期間を設けて、表示するものについてはきちんと分類・表 示しましょうということになっています。  あとは技術的な支援が必要です。現在やっている分類作業を、もし予算的に許されるもの なら、やったほうが役に立ちます。そのための専門家の育成も必要だと思いますし、教育の システムを早急に行って、GHSの絵表示とか「危険有害性」という言葉を皆さんに知って もらうことが必要になるだろうと思っています。 ○名古屋座長 リスト化をすることなく、また法的なところは、どのレベルの法にするのか。 そういう形で川上から押さえていくと川下まで伝えていけるということのお話だと思いま す。この意見について何かございますか。 ○宮川委員 いまの城内先生の発言の前半の部分、GHS文書の細部の理解や表示について です。先ほど、GHSの絵マークや何行もある長いラベルは労働者には十分わからないので、 漢字できちんと表示してはどうかというお話がありました。日本語でGHSの区分を書いて いただく、例えば「発がん性区分1」「生殖毒性区分2」とかと書いてあると、絵表示と細 かな注意書きとの間をつなぐものとして重要かなと思います。GHSのラベル表示では区分 は書かなくてよかったということを覚えておらず恥ずかしいのですが、この例にあるように 区分は書いてありません。日本語で区分がきちんと書いてあると、この辺の役に立つのかな という気がいたします。  もう1つは後段の、より重要な部分で、リスト化云々についてご意見を申し上げます。ま ず、現在あるラベル表示の100物質について、例えば事業場内表示の義務をどうするかと いう話をしたとき、製品が入ってきたときには、もともと容器にラベルが付いている。そう いうものについては、当然使うときもそのまま使われるのが自然な流れかなという気はいた します。そこをどの程度義務で縛るかというのは難しい問題があると思います。それ以外、 ラベル表示義務のある現行の100物質、あるいはMSDSの640物質、これを拡大するかど うか、あるいはそれをやめてしまうかという意見もあると思うのですが、基本としては、城 内先生がおっしゃるように、すべてのものについて、わかっているものがあれば情報を提供 するのだというのが本来あるべきあり方だということで、もし一致ができれば、この検討会 の考え方としてそういう方向をきちんと打ち出すことが将来を見据えて重要かなという気 がいたします。  ただ、いきなりすべて義務化ということは非常に困難なこともあると思いますので、1つ 考えてみました。例えばですが、義務、努力義務、罰則付きの義務、これらにどの程度の違 いがあるかというのが、業界にいるわけではないので分かりませんが、例えば譲渡・提供を 受ける側から要求があったときにはMSDSを出すというようなことを努力してください、 というようなものの考え方が世の中に定着するようになることが、すべてのものについて表 示をしましょうという城内先生がおっしゃった方向に持っていくときの1つの入り口にで もなるのかなという気がいたします。  MSDSについて言わせていただきますと、現状の640物質というのは良い選択かなと思 います。なぜかと言うと、規則等々でははっきりとは述べられてはいませんが、この委員会 で最初に説明がありましたように、この640は基本的に、産衛学会の許容濃度であるとか、 ACGIHの許容濃度とか、そういうきちんとした、定量的なリスク評価をする上での基準に なる数値となるものが存在する物質が選ばれていると思います。そうすると、このような物 についてはMSDSを活用して許容濃度等々を調べて、本来の定量的なリスクアセスメント をすることができるという意味ではコアの部分になり得る。この640が危険有害で、ほか のものは危険有害ではないということではなくて、許容濃度等があって、きちんとしたリス ク評価がしやすいものということではそれなりの意味があると思います。  そこを拡大する場合に、そのようなきちんとしたリスク評価をするための根拠となるよう なものがあるものについてMSDSを作ってもらいたいということは分かるのですが、それ がないものについて無理に急激に広げるのはなかなか困難なのかなと思います。そうすると ACGIH等で新しい許容濃度の提案があるとか、発がん性が新たに発見されて国の指針が出 るとか、あるいは現に国がリスク評価事業をきちんと定量的にやっているものについて徐々 に追加をしていくという考え方はあり得るのかなという気がいたします。後ほどリスク管理 等の関係で述べたいと思いますが、とりあえず、ここまでについて意見を述べさせていただ きました。 ○福岡委員 資料4-4-2に関係する話ですが、たしか化学物質に関するリスクアセスメント については、すべての事業者にとありますが、その「すべての事業者」の中には規模につい ての制約は書いてないと思うのです。物質も、どういう物質という制限も書いてなかったよ うに思います。ですから、ユーザーがその規則に従ってリスクアセスメントをきっちりやろ うとすると、まずベースになる危険有害性の情報が手に入らないとどう仕様もないわけです が、すべての物質についてリスクアセスメントをやりなさいと言うからには、譲渡する側が そういう情報を提供しないと、ユーザーは何もできないわけです。その場合に、データがた くさんあるか、ないかというのはいろいろあると思うので可能な範囲、現在のレベルで提供 できる範囲内のものは物質の制限なしに、きちんと提供しなさいと。いま義務づけられてい るリスクアセスメントをきっちりやろうとしたら、そういうことが実行されないと、ユーザ ーは何もできないという状況があります。範囲を決める云々よりも、それができるようなカ バーリングがほかに要るのではないかというのが1つです。  もう1つは、規則を守ればいい、そして罰則がないと守らないというような意味合いの話 が若干ありました。私の感じでは、最近マネジメントシステムとか、リスクアセスメントの 教育もやっていますが、その教育のテキストの中を見ますと、技術的な内容の説明はあるわ けですが、なぜマネジメントシステムをやらなければいけないのか、なぜリスクアセスメン トが要るのかという背景の考え方の説明はあまりないように思います。労働安全衛生法に限 りませんが、要するに法準拠型だと、過去の事例の再発防止のためのことは、きちんと書か れていますが、新しい要因に対する防止策は何も書かれていないわけです。それは厚労省が 悪いのでも何でもなくて、世の中全体、日本の国自体が、極端に言うと、法律を守ればいい のだと。一生懸命にやっている人でも、法律の隙間を狙うようなことが行われている時代に、 安全衛生法に関しても法律を守ればいいのだという風潮があるわけです。ところが、安全と 健康を守るという仕事に関しては、法律はあくまでも再発防止のことしか決められていなく て、予防的なことについては規則には書かれていない。そのためにリスクアセスメントある いは、マネジメントシステムを普及したいというお考えがあるはずなのです。そういう観点 からいくと、中小に対してのマネジメントシステムの普及の教育だとか、リスクアセスメン トの教育をするときに、なぜそれが必要かということまでよく教育しておいて、そこまでや らないと、最後は防げないのだという教育もしておかないと、なかなか行き渡らないのでは ないか。これは今日の議論に直接関係しないかもしれませんが、そういうことが背景にある ような感じがします。対応の仕方を指導する必要があれば、そういうところにも話を広げて いくことが必要ではないかと思います。 ○山本委員 いまの皆さんのお話は参考になった面もあります。いろいろ伺っていると、最 近大幅な改正があった化審法で優先化学物質が約1,000ぐらい挙げられるということなの ですが、MSDSなりGHS、両者の出発点は結局、有害危険性の特定、リスク評価をどうす るかというところで同じスタートラインにあるように思えるのです。しかし、ここで労安法 あるいは職場の化学物質のあり方、それからMSDS、情報伝達、そういうものとを別個に 議論してしまうの、という感じがします。事業者あるいは現場の作業労働者からすると、同 じことを2系統で受けるということになりかねないのかなという印象も持ってしまうので す。先ほど課長が、ここでの話はコアとステージだということで、対象物質拡大がメインな のか。コアとステージを分けるという話もありましたが、基本的にはリスク評価がどの程度 現実に進められるのかにかかっていると思うのです。リスク評価することは大変有用だと思 います。それから、危険有害性情報がわかっていれば、それを普遍的に通知する、それも非 常に重要なことだと思います。ですから、その具体的な方法論とか制度的な裏打ちはどうさ れるのかという論議になっていかないと。先ほどの説明でも、こういう制度とか規制はなる べく一元的な形で運用したいというお話もありました。実際に事業をするほうとか働くほう からすれば、それは良いことなので、出発点の論議と、これから改正の素材とするようなイ シューとがどのように関わっているのか、少し整理が必要なのかなと私の頭の中では写るの です。印象ということで述べさせていただきました。 ○西委員 少しポイントがずれるのかもしれませんが、いまの話をずっと聞いていまして、 日本の法律の考え方そのものにも響いてくるのかなと思っています。日本の法律というのは 具体的に規制するもの規制しないもの等を個別に指定する法律が多くなっています。今回対 象物質を指定するように物質を指定して、これをやりなさいと。だから、それに入っていな いからやらなくてもいいのだ、法律ではこれだけ守ればいいのだという形での法律がある。 また国民のほうも、国民性から言って、それだけをやればいいのだ、それを守ればいいのだ というようなことがある。例えばMSDSについて、あるべき姿から言ったら先ほど城内先 生がおっしゃるとおりで、「そんなものは物質指定ではなくて、有害なものは全部やるべき だ」というのは全くそのとおりだと思うのです。だから今すぐやるかどうかは別にして長い スパンで、労働安全衛生法としては、まず全部に枠を広げるのだと、そういうスタンスを打 ち出して、ただそうは言っても例えば過渡期を10年を設定するとか、それでとりあえずは コアの部分は、これだけはやってくださいとか、そういうふうに考えるのか等のスタンスを 決めないと、それでは100ですか、200ですか、300ですかという議論が延々と続くような 気がいたします。 ○名古屋座長 ちょっと先に進めなければいけませんので、いままでのところをまとめてみ ますと、ラベルを増やして伝達情報を促進するということは、たぶん皆さん合意されたと思 うのです。一方、MSDSだとか、対象物質を追加していくと事業主に負担がかかるし、ス ケジュールの問題等もありますし、リスト化する問題、物質を指定する問題というのがこれ まで議論されたと思います。これらを踏まえて、包括的に周知基準を設定していく必要があ ると思います。  一方、表示義務だとか、MSDSの対象を追加していくものをいまは決められませんから、 これから慎重に検討していくことが必要なのかと。いままで、皆さんから教育、表示、普及、 事業場内表示をいただきましたが、これもここではなかなか結論が出ませんから、いままで の意見を踏まえて、今後事務局に報告案を作成していただいて、そしてもう一度その中でま とめたものを検討することで収めさせていただいてよろしいでしょうか。 (異議なし) ○名古屋座長 それでは、本日の新しい議題の「自主的化学物質管理の促進について」、こ れはコントロール・バンディングの話だと思いますが、そこに話を進めていきます。事務局 から説明をお願いいたします。 ○奥村調査官 資料の14頁です。これまで国ではリスクアセスメント指針の普及を図って おり、これをもって自主的な化学物質管理の促進を図っているところです。これまでの取組 みですけれども、まず国による普及の徹底ということで指針の招介パンフレットの作成をし、 またホームページからダウンロードして配信できるようにしております。さらに、労働局監 督署から個別の事業場への指導、あるいは集団的な指導をしております。労働局によっては、 独自の普及パンフレットを作って普及している所もあります。右手には、国のパンフレット の絵が書いてあります。  直接国が行う普及事業は以上のとおりですけれども、委託事業として、化学物質管理支援 事業を行っており、これによる普及も図っているところです。実績としては、化学物質管理 者研修はこれまでの累計で5,819人に対して行っております。モデル事業場指導は、これま での議論の中で橋本委員とか福岡委員はこのモデル事業に関与していただき、なかなか良い 事業だったというご紹介がありました。平成20年、平成21年と96事業場に対して行って おります。この事業場からリスクアセスメントの好事例を地域の関係する事業場に浸透させ ていくという取組みをしているところです。  相談窓口というのは、事業場でMSDSの解読や、リスクアセスメントを実施するときの アシストをするために相談窓口を設置しており、いままでに1,795件の相談がありました。  アンケート調査の概要ですが、化学物質管理者研修に受講した方500人に対してアンケ ートを行いました。その結果リスクアセスメントを実施している所は、管理者研修に出てく る所ですので、取組みが前向きな所と思っていいわけなのですけれども、そういう所でも全 事業場で35%がリスクアセスメントを実施している。中小企業では30%と決して高くない 状況でした。残念ながら今後も予定することはないと言っている事業場が全体の4分の1 程度を占めています。  導入している所に問いかけますと、国のリスク指針に基づいてリスクアセスメントしてい るというのが69%、そのうち中災防方式という、よりわかりやすく噛み砕いて解釈したも のが12%を占めています。大企業を中心に、自分で開発したリスクアセスメントの方法で やっている所が19%あります。ヨーロッパのコントロール・バンディングを導入している 所が4%ありました。リスクアセスメント実施の課題としては、人材がいない、時間がない、 よくわからないという問題点が指摘されております。  このように、国としてはリスクアセスメントの普及について鋭意取り組んできたところで すが、なかなか普及が思わしくないということです。その理由は、現在のリスクアセスメン トが専門的すぎて難しいからではないかという問題点が浮かび上がっているところです。  そこで、次にコントロール・バンディングですが、イギリスから発祥し、いまヨーロッパ で普及しているコントロール・バンディングの概要を何頁かにわたってお配りしております。 コントロール・バンディングというのは、化学物質の取扱い状況、物理的物性から、労働者 のばく露量を推定し、取りうべき工学的対策を決定するということが、わりと簡単に達成で きる制度です。資料4-8-1でILOのコントロール・バンディングをベースに記述している ものをご紹介いたします。  18頁は、イギリス(HSE)の安全衛生庁のコントロール・バンディングの概要です。これ は、インターネットで誰でもアクセスできて、リスクアセスメントをコントロール・バンデ ィングによって実施することができます。この検討会でも話題になっていた、例えばマニキ ュアの作業を例にとって実施してみました。マニキュアの主成分が酢酸ブチルでしたので、 酢酸ブチルに限ってこの評価を試行してみました。酢酸ブチルのMSDSを見ると、危険有 害性情報はR20,R36/38と書いてありましたのでそれを入力しました。R20というのは、吸 引すると有害というもので、R36/38は眼や皮膚に刺激性があるものです。これは何を意味 するかわからなくても、書いてあるとおりに入力すればいいというものです。  物性は液体ですか固体ですかと聞かれますので、液体です。温度は何度ですかというので、 室温ということで25℃で使います。沸点は124℃。取扱量は、ミリリットル単位ですので スモール。1日に何回使いますかというので、通常マニキュアはお客さんに対して2時間弱 で、大体労働時間からすると5回しか使わないということですので、1日に5回、105分と 入力いたします。そうすると、この場合では「全体換気をしなさい」という答えが出てきま す。  酢酸ブチルで入力しましたが、もしマニキュアにトルエン等が入っている場合にはまた違 う結果になりますが、それは物質に応じて入力すればこういうのが出てきます。このように、 私のような素人でも答えが出てくるようなものでした。  資料の19頁は、ドイツ式のコントロール・バンディングの概要です。これもインターネ ットでダウンロードでき、自動計算してくれるエクセル表が出てまいります。これもマニキ ュアで、酢酸ブチルで試行してみました。沸点が124℃ですので、最初はミディアムと入力 します。温度は20℃、取扱量はミリリットルのスモールを入力し、真ん中辺りに短い時間 ですか長い時間ですかと出ますので、15分より短いことはないのでノーと入力します。取 扱い面積は1平方メートルより大きいですかと聞かれますが、爪ですので当然小さいと入力いたします。 そこの作業場の換気状況はどうですかと聞かれますので、全体換気ですと1番を入力します。 そうすると下側に出力され、ばく露のポテンシャルは中ぐらい又は高いです、予想ばく露量 は5〜50ppmと出てまいります。酢酸ブチルの許容濃度は150ppmですので、これより相 当小さいことがわかります。だから、全体換気でも十分間に合うというのがコントロール・ バンディングの概要です。  資料の20頁は、コントロール・バンディング導入の考え方です。私どもで考えているコ ントロール・バンディングは、あくまで補完的なものと。リスクアセスメントがきちんと実 施できる所はそれに越したことはないと考えていて、事業場を大きく2つに分けています。 自らリスクアセスメントを実施できる、必要に応じてばく露濃度を測定することができる所 は引き続きリスクアセスメントを実施してください、国としてもこれを支援いたします。次 に、化学物質管理者研修に出てくる事業場のように、やる気はあるのですけれども、なかな か人材がいない所では、やはり正攻法では中災防等の事業で支援して、リスクアセスメント を実施できるようにしていくのが本流ですけれども、できない所に対してはコントロール・ バンディングをやってはいかがでしょうか、何もやらないよりはいいですよということで誘 導していきます。こういうものがコントロール・バンディングの使い方ではないかと考えて いるところです。  もちろん、この中には安全衛生意識が低くて、化学物質管理を実施しようとしない悪い事 業場も中にはあるということですが、これについては監督署が指導するしかないと考えてい ます。指導してもやり方がわからないと言われても困りますので、コントロール・バンディ ングのようなやり方だったら簡単にできるからこれをやりなさいという指導をしていきた いと、そういう行政での使い方も考えているところです。 ○名古屋座長 20頁の資料を見ますと、当然リスクアセスメントを実施している所は、そ のまま実施すればいいのだけれども、しかしながら中小企業では、リスクアセスメントがな かなか実施できない現実があり、そうした所を、教育してリスクアセスメントを持っていく のはいいけれども、もしそれができない所は、いま説明がありましたようなコントロール・ バンディングを使って管理をしたらどうかということですが、ご意見等がありましたらお願 いいたします。 ○福岡委員 14頁の実績に、まず1番目に化学物質管理者研修の話が書いてあります。こ れは中災防がやっていて、60回で5,800人が受講したということですが、これは日本全体 から見たらごくわずかだと思うのです。これは、もっと広げていくことが大事だと思うので す。リスクアセスメントの普及に関して、リスクアセスメント担当者養成研修というのは、 通達の中にカリキュラムが作られています。最近では、日本中の労働基準協会なども主催し てやっているところですが、それでもなかなか普及は難しいです。  化学物質の管理についても、日本中の労働基準協会などでどんどんやれるような形をつく っていくことも大事ではないかと思います。そのために、現在中災防がやっている研修のテ キストは随分分厚くて、これは専門的にやる人ならそれぐらい必要なことはわかるのですが、 いまのお話のように中小でせめてコントロール・バンディングをというようなレベルを狙う のなら、管理者も1種、2種のような感じで、レベルの高い管理者と、レベルの低いといい ますか簡易な2つに分けて、簡易のほうではせめてコントロール・バンディングぐらいはや ってほしいというレベルを狙ったカリキュラムのテキストを作り、全国的に教育を展開する ようなことが1つ要るのではなかろうか。そういう方法もあるのではないかという感じがし ます。  コントロール・バンディングについては若干の情報があって、講義で我々も使うわけです が、かなり膨大な中身があります。インターネットですぐ引っ張れとおっしゃいましたが、 大体がみんな原語になっていて、日本語に訳されているのもあるのかもしれませんけれども、 出版されているのでしょうか。その辺りはまだこれからかもしれませんね。 ○奥村調査官 ですから、コントロール・バンディングはまだ日本に普及されていないので、 国としても指針に入れるなどして普及しています。 ○市川委員 2008年に、連合でも労働組合の役員を対象にアンケートを行いました。事業 場でリスクアセスメントを導入していますかと聞きましたが、やはりここに出ているように、 中小に行けば行くほど導入は低いです。これは、化学物質に限らずのリスクアセスメントで す。今後も実施する予定がないというのは、厚労省の調査よりもずっと多かったです。  なぜできないのかという理由は、資料4-7の4.にあるのと似ているのですけれども、もう 1つありましたのは、リスクアセスメントをやってどんな効果があるのかわからない。聴い ているのは組合役員で現場の人ではないのですけれども、リスクアセスメントをやるとどれ だけ良いのか、やる効果のほどがわからないという答えが多かったです。もちろん要員が割 けない、忙しい、難しい、導入が難しいという答えもありましたが、やはりリスクアセスメ ントの効果が意外と知られていないというのが、連合の組合役員に対する調査ではありまし た。  何が大事かと言ったら、健康を守るほうが大事なのですが、リスクアセスメントの効果の 方が、煩雑さよりも重要であることが、組合の役員にも十分浸透していないということがあ ります。そういうことのアピールもさらにしていく必要があるのではないか。ただ、法改正 をして、リスクアセスメントの知名度は上がっているのは間違いないです。法改正前は、リ スクアセスメントという言葉も知らない人が半数以上いましたが、知っている人の割合はだ いぶ増えています。そういう意味で、法改正で規制をかけていくということは、非常に重要 な意味もありますので、是非、中小が進めやすいような援助と、必要性のアピール、それと 併せて規制強化をお願いしたいと思います。 ○塩崎委員 リスクアセスメントの普及についてですが、現在の教育体系では資料4-6に記 載されているように、きちんと体系化されていて、本来は社内でこういう格好できちんとや らなければいけないというシステムになっているはずです。ところが、リスクアセスメント を普及させようとすると十分に普及しないということです。その改善をするためには、この 体系の中にある、どの層をターゲットにして、どういう内容を教育するかということを、も う少し具体化したほうがいいのではないかと思います。  やはり、民間に任せるだけではどうしてもなぜやらなければいけないか、というようなと ころの教育が不足するのではないかと思います。そういう意味では、国による普及の徹底、 あるいは支援事業などでの対応を続けていくことも考えたほうがいいのではないかと思い ます。 ○豊田委員 先ほど来の話に関連するのですけれども、コントロール・バンディングを導入 するに当たっては、どういうインセンティブがあるのかというところを、事業者側あるいは 労働者側にも明確に伝えてあげないといけないのではないかと思います。  もう1つは前にも言ったと思うのですが、コントロール・バンディングというような横文 字そのままというのは、この対象を中小の労働者まで(使う)ということでしたら、もう少 しわかりやすい(名称、例えば)「簡易なリスク評価方法或いは手法」としたほうがいいの ではないか。もう少し突っ込んでいいますと、ここの例示としてドイツやイギリスの(CB の)例を挙げられていますが、これらをそのまま導入するのでなく、)やはり中災防等を使 って、日本独自の、日本の風土なども考慮した、咀嚼された簡易なリスク手法のようなもの を、しかも日本語で書かれた、あまり横文字の入っていないものを準備した方がよいと思い ます。それを提示した上で、さらに事業者側や労働者側にこんなインセンティブがあります、 というような導入の仕方に配慮をお願いできたらと思います。 ○名古屋座長 リスクアセスメントをする中で、中小ではそれがなかなか進まないことに関 して、導入する1つのステップとしてコントロール・バンディングを入れることに対して、 その入れ方はいろいろあると思うのですが、そのことに関しては皆さんよろしいでしょうか。 ○宮川委員 リスクアセスメントについて2つの点から申し上げます。1つは裾野を広げて、 いままでやっていなかった所にやっていただく。その裾野を広げるという意味では、コント ロール・バンディングをもっと取り付きやすいものにして、それは名前を変えるだけでもい いかもしれませんし、BAuAが作っているようなものを考え、日本語で使用できるプログラ ムができて、誰でもコンピューターの画面に従って操作するだけで結果が出てくるようにす るのもいいかもしれません。  インセンティブというか、どういう利点があるのかということに関してですが事業場が行 うリスク評価のやり方を解説した国のパンフレットに載っているものではこのようなこと まで書いていなかったと思いますが、BAuAの資料4-8-5を見ると、そこで示された方法で は、最後に予測ばく露量が出てきて、許容濃度と比べることができる形に一応なっています。  先ほど、私は定性と定量を言い間違えたかもしれませんけれども、本来であれば定量的な、 きちんとした環境測定をやってリスク評価の基準となる閾値と比べるというのが必要です。 けれども、コントロール・バンディングでも、最後はこのBAuAのようなデータが出てく ると、大雑把な予測かもしれませんけれども、ある程度基準となる数値と比較して、いまま での作業のやり方では許容濃度を超えるレベルのばく露があったのだということがわかる といった利点があります。少しこれをPRすると、何だかわからないけれどもコントロー ル・バンディングをやっていくと作業環境管理の方法を1段上げなさいという結果だけが出 てくるというよりは、許容濃度と比較できるようなものがあったほうが、化学物質による疾 病の防止等々で役に立つということが少し明確になると思います。  BAuA等を参考にしながら、コントロール・バンディングは裾野を広げるという意味で、 是非、力を入れて普及に国のほうに努力していただきたいという気はいたします。  一方、従来方法のきちんとした定量的な本来のやり方については、リスクアセスメント全 体のレベルを上げるという意味では重要ですので、それをやめてコントロール・バンディン グに行くのだというのは正しくないと思いますので、技術がある所は本来の方法できちんと やっていただくべきであると思います。  逆に、そういう技術があって、きちんとリスクアセスメントをやる所については、その対 策については相当の自由度を持たせて、裁量の範囲を広げるというようなことでインセンテ ィブを与えることも必要ではないかと思います。 ○橋本委員 私も、コントロール・バンディングを入れていくこと自体は賛成です。いくつ かコメントいたしますけれども、HSEの方法のいちばん簡単なものが18頁で紹介がありま した。これは相当簡単で、いろいろある中でいちばん簡単だと思います。以前、私はこれに ついて実際にばく露測定をして、そのリスクを判定したときと、どれぐらいずれているのだ ろうかを研究して論文も出したことがあります。  これは、いろいろな作業に適用できるように設計されていますので、非常に安全サイドに 設計されています。ですから、こんな作業で密閉化が要るのかとか、そういうのがたくさん 出てくるのです。非常に安全サイドなのです。実際にやらないよりはもちろんはるかにいい のですけれども、欧州ではそういうときに相談できるハイジニストという専門家が世の中に いて、コンサルタントもたくさんいて、そういう所に相談しなさいということになっていま す。相談して、もう少し正確な方法でやるときちんとできる。  ただ、弊社のヨーロッパの事業所の人間にも聞いたのですが、中小にとっては、やらない よりははるかにいいと。スクリーニング手段なのですが、はるかにいい。ただし困ることが 多いから、そういう専門家がちゃんといる所でないとなかなかできないと理解しています。  日本ではどのようにやったらいいかということなのですが、先ほど中災防で進めた方法が ありましたが、それはもう少し複雑な方法で、それでテキストもやや厚いということになっ ています。その分ちょっと手間はかかるのですけれども、その中に、もし測定したり作業環 境測定とか、ばく露測定した場合は、それを使ってこのようにできるというのが入っている のです。  だから簡単にもできるし、もう少し正確な方法も含んでいてできるのです。日本では、先 ほどの専門職のコンサルタントなどはあまりないので、日本ではそれぐらいやや複雑な方法 です。ただし、それだけに教育とか普及にはちょっと骨が折れると思うのですが、そういう ほうが適しているのではないかと考えています。 ○名古屋座長 先ほど、ドイツのインターネットの話がありましたけれども、インターネッ トを使って自分でリスク評価を行えばある程度わかると思うのですが、いま中災防にそれは ないですね。 ○橋本委員 それはないです。ツールとしてのインターネットはあります。 ○福岡委員 インターネットの話がありましたが、まだ健康障害についてはないですけれど も、安全の分野では、つい最近インターネットでリスクアセスメントの進行状況ができてい ます。 ○西委員 ちょっと異論を唱えるようになるかもしれませんけれども、先ほどリスクアセス メントという言葉は拒否反応があると言われましたけれども、いままでの事業者や管理者が リスクアセスメントをやっていなかったということはないと思うのです。例えば標準作業手 順書(SOP)を書くときに、これは有害性ガスが発生するからマスクをしましょうとか、 手に付いたら火傷をするかもしれないから手袋をしましょうとか、あれも立派なリスクアセ スメントのはずなのです。だからリスクアセスメントという意識はなかったかもしれません が従来もリスクアセスメントをやっているのです。ただ、それをリスクアセスメントと聞く ものだから、これは何だ知らないぞ、それはなんじゃらほい、というようなことがあるのか という気がするのです。  だから、説明するほうにしても、リスクアセスメントという新しい概念を導入すると言う のではなくて、例えば危険予知活動であるとか、そういうものも含めて、いままでやってい たものをさらにブラッシュアップするためにやるのですと。いままでやったものは、各個撃 破で行っており漏れがあるかもしれない訳だから、それを漏れがなくなるように、例えばコ ントロール・バンディングでもいいですけれども、こういうことをやりましょうとか、そう いう形で誘導していくとか、そういう形での初歩のツールを提供するということをやってい ったらいかがかと思います。 ○名古屋座長 皆さんは、コントロール・バンディング等を導入するということ自体につい てはご理解いただけたと思います。この後で報告書をまとめる段階でもう一度確認するとい う形でよろしいでしょうか。リスクアセスメントをすると何にメリットがあるのかなとか、 無いのかなと言うことについては、この後の有害物の規制のところにかかわってくる話で、 リスクを評価することで少しメリットが出てくるのかという話につながると思いますので、 次回以降の検討事項になるかと思いますが、それでは先に話を進めていきたいと思います。 資料4-9以降の説明を事務局からお願いいたします。 ○奥村調査官 資料の5頁の論点整理のご確認をお願いいたします。これまで、アの危険有 害性情報の伝達・活用の促進のご議論をいただきました。次に、イの自主的化学物質管理の 促進についてある程度議論をいただきました。次はウの、より柔軟な規制への見直しに入り ます。  ここでは、インセンティブの付与による自主的管理の促進ということを標榜し、作業環境 測定をして、個人ばく露を導入することについて、作業環境測定の結果の取扱いについて、 屋外についての測定のあり方について、局所排気装置の稼働要件の規制について、局所排気 装置以外の発散抑制方法についてというところをテーマにしてまいります。これらを一通り ご説明申し上げます。  資料の21頁では、有害性の規制全般を1つの表に粗々にまとめてみました。まず管理体 制ですが、労働安全衛生法における管理体制として、産業医、安全管理者、衛生管理者とい った制度があります。また有機則、特化則、鉛則においては、技能講習を修了した作業主任 者を選任し、その作業主任者に作業を管理させなければいけないという規定があります。  次に作業環境測定です。屋内のみですが、有害物を取り扱う作業場において、当該物質の 空気中における濃度を測定しなければいけない。その測定結果に基づいて、設備の改善を実 施しなければいけない。その結果については記録しなければいけないと規定しております。  次に設備ですが、有害物については密閉化、あるいは局所排気装置の設置ということで、 封じ込めをしなければいけないと規定されています。局所排気装置を設置した場合には、有 機則においては制御風速、局排の風速を規定しております。また特化則、鉛則においては抑 制濃度、そのフードの周りでの濃度、有害物の濃度をこれこれ以下にしなければいけないと いう規定があります。このように特化則、有機則で稼働要件を規定しております。設備の代 替手段としてエアカーテンとか、有機溶剤に水を浮かべる等による代替手段で密閉化・封じ 込めをすれば、その場合には密閉でも局排でなくてもよいという規定がそれぞれ有機則、特 化則の中に細かく規定されています。  次は保護具です。例えばタンクの中での作業とか、どうしても設備の改善ができないとこ ろでの作業もありますので、そういう場合には呼吸用保護具、保護衣を使用しなければいけ ないという規定になっています。以上の[1]〜[4]で、労働者のばく露対策としては講じられて いるわけですが、それでも万が一にも労働者がばく露するおそれがあるということで、セー フティネットとして健康診断が義務づけられています。有害物を取り扱う労働者には、半年 に1度特殊健康診断を受けなければいけないという規定があります。その結果に基づいて有 所見、有害物にばく露していることが明らかになった場合には、その作業を変換するとか、 あるいは作業時間を短縮するような措置を講じなければいけないとなっています。  健康診断の結果の取扱いですが、行政への結果報告、有所見は何人おりましたというよう な報告をしなければいけないことになっています。さらに、あなたの健康診断結果はこのと おりでした、ということを労働者に通知しなければいけないという規定になっております。 また、その結果の記録ということもあります。この表では、作業環境測定の結果と、健康診 断の結果の取扱いについてはこのように差があるということをご確認いただきたいと思い ます。  資料4-10で、作業環境測定についてはどのように測定し、評価していくかということを フロー図にまとめております。いちばん上から作業環境測定のデザインをし、測定を実施し、 国の作業環境評価基準に基づいて区分を決定していく。いちばん左は、よく管理されている 作業場で第1管理区分ということになります。その場合には現状設備の維持を守ることとな っております。右手のほうは管理がよくされていない所です。この場合には、直ちに労働者 に呼吸用保護具を使用させて作業をさせる。遅滞なく設備の改善を図り、第3管理区分を改 善するという措置が求められているという制度です。  23頁は、作業環境測定の仕方です。作業環境測定基準を国の告示で定めていて、その測 定の仕方が規定されております。いま法定の作業環境測定として認められているのが、左手 にあるA測定、B測定という測定の仕方です。A測定というのは、単位作業場の環境の平均 的な状況を調べるためにまずA測定を実施し、作業場を6m2のメッシュに切る。格子を作 成し、そこで測定をいたします。1点当たり10分以上の測定をすることになっております。 次はB測定で、平均濃度はA測定でわかりますけれども、ピンポイントで、この場所は特 に高濃度になる、あるいはこの作業をやっている瞬間は高濃度になるということを抑えるた めにB測定を行い、ばく露が高い作業での濃度を測ります。A測定、B測定の組み合わせで 作業環境を評価する規定になっております。  個人サンプラーによる測定ですが、実はA測定、B測定というのは日本が開発したもの で、主な国では日本だけが採用している測定です。欧米諸国では、個人サンプラーによる測 定が世界標準的な測定手段になっております。測定の仕方は、個人サンプラーを労働者に携 帯させます。吸引ポンプを腰周りに付け、襟元のノズルから労働者が吸入するであろう空気 をすべて捕集するようになっております。サンプリング時間は数時間から8時間、労働者が 作業する間ずっと測ることも可能です。  下の図に書いてありますけれども、積分値でどのぐらいばく露があったかがきちんとわか る作業です。ただしこの場合には、刺激性であるとか、吸引するとたちまち気絶するような 麻酔性の物質については、ピーク時の測定を別途しなければいけないという測定になってお ります。こういう測定があるという概要をご説明いたしました。  次は資料4-12で、作業環境測定の結果の取扱いです。先ほどの21頁の図で、作業環境 測定の結果の取扱いと、健康診断結果の取扱いには差があるということを簡単にご説明いた しました。現行の作業環境測定の結果では、測定を行った後、まずその結果を衛生委員会、 これは50人以上の規模の事業場にのみ設置されているものですけれども、衛生委員会で調 査審議し、その結果に基づいて設備の改善を図り、さらにそれを記録するようになっており ます。  この課題ですが、すべての労働者が自らの作業環境の状況を知りたいと思っても、容易に 確認できる仕組みにはなっていない。まして衛生委員会の設置義務のない小規模事業場(1 〜49人)においては知る機会が与えられていない状況になっております。このため、自ら の作業環境の状況を知らないまま、健康障害を受けるおそれがあるということです。  見直しの方向性としては、私どもが考えておりますのは、作業環境測定の結果を労働者に 周知することが必要ではないか。これは、化学物質の有害性を表示によって労働者に伝える というのと考え方は全く同じで、1つの考え方としての流れに沿っていると思います。その 効果としては、事業者もそれを掲げて労働者に知ってもらうことで、設備改善の活性化につ ながるのではないかということと、労働者にとっても保護具を着用しようとか、作業標準を 守って、ばく露があまりないような作業を守ろうということになるのではないかという効果 が期待できると思っております。  25頁は、局所排気装置の稼働要件です。2で申しましたように、作業環境測定と管理濃 度の比較により、作業環境の改善を図っているところですが、それと並行して局所排気装置 には稼働要件を定めております。有機則では、制御風速という形で定めております。下の図 に、有害物とそのフードの絵があります。これは、局所排気装置の簡単な概念図です。制御 風速というのは、フード周りでの霧の流れを測定し、それが加工式フードの場合には0.4m/s 以上であればよいという規定になっています。特化則の場合には抑制濃度という規定で、下 の図6-5と書いてあるところに××が書いてありますけれども、この××のところで測定し、 濃度がベンゼンの場合には1立法メートル当たり1立方センチメートル、つまりこれは 1ppmという意味ですが、ベンゼンが1ppm以下であればよいといった規定があります。こ れについては、かねてから管理濃度と抑制濃度と制御風速というのは二重規制ではないかと いう指摘もあったところです。  資料4-14は局所排気装置以外の発散抑制装置についてです。有機則、特化則においては、 その有害物の封じ込め対策として、まず密閉化、次に局所排気装置を定める、設置するとい う規定になっております。規則上、それ以外の発散抑制措置は原則として認められていませ ん。認められているのは、先ほど申し上げましたように、規則の中で細かく書き込んでいる という言い方です。有機則においては、第12条でエアカーテンとか有機溶剤に水を浮かべ る等の対策をしていれば、密閉化あるいは局所排気装置と同等にみなすという考え方の下に 局排を設置しなくてもよいということになっております。  特化則においては、第38条の12でエチレンオキシド、これは医療用の滅菌ガスですが、 滅菌器にエチレンオキシドを注入し、その滅菌器からまたエチレンオキシドガスを排出し、 開放して滅菌した医療機器を取り出すという作業を行っています。これについても第38条 の21で、エチレンオキシドの排出をきちんとやっている場合においては、局所排気装置は 要らないという規定が設けられております。  このように細かく特例を規制に書き込んでいるのが現状です。課題としては、原則的に局 排があれば工学的対策として認められていないので、そういうほかの技術があった場合でも、 技術革新が妨げられていると考えられます。例えば、現在光触媒による有害物の分解という 技術がある程度あるわけですし、あるいは化学物質をゲル化してしまって取り扱う場合には、 ゲル化しますのであまり蒸発・発散しないという手法もあるように聞いております。こうい うものが開発されかかっていても、規則上それが認められていないことになると開発が抑制 されているということが考えられます。  検討の方向性としては、局所排気装置以外の発散抑制措置についても今後は認めていく必 要があるのではないかと考えているところです。 ○名古屋座長 ただいまの説明以外に、ほかに検討すべきこと、あるいは質疑等がありまし たらお願いいたします。 ○西野委員 いまご説明いただきました作業環境測定というのは、有機則、特化則、鉛則に 限定される見直しなのか、それとも騒音、粉じん、放射線にも同じように適用されるのかを 教えてください。 ○奥村調査官 当面は、この検討会の範囲が化学物質管理ということですので、とりあえず は有機則、特化則、鉛則を対象に考えています。 ○半田化学物質対策課長 放射線と騒音については測定の仕方が全然別の体系ですので、こ この見直しはほとんど影響してこないと思います。放射線では、既に一部、個人ばく露の規 定もあり、それは全然別の体系になっていることをまず申し上げます。  関連する部分としては、粉じんというところがありますけれども、これも別体系になって おりますので、いま直ちにここでどうこうというご議論をいただくわけにはいかないのです が、当然ながら、この有機則、特化則等の測定のあり方に変更を加えていけば、そういうと ころにも影響が及ぶものですので、粉じん則を所管しております衛生課とも協議をしながら 進めていこうとしております。 ○堀江委員 資料4-9の[1]と[5]のところです。労働安全衛生規則第13条第1項第2号は、 衛生上有害な業務に常時500人以上の労働者を使用する事業者においては、専属の産業医 を選任することを規定しています。この部分の有害な作業の中に、一部化学物質が規定され ておりますので、その部分についてもできればこの際に見直していただけるとありがたいと 思います。  その部分が、[5]の労働安全衛生規則45条の特定業務従事者の健康診断の対象者の定義に も引用される形になっています。これは労働安全法でいうと第66条第1項に該当する、通 称、一般健康診断に係るものですが、有害な業務に従事している場合には、定期健康診断を 年に2回実施する要件になっています。古い通達で、実際にはばく露濃度が非常に高い所だ けが該当することになってはいますけれども、できればここのところも少し整理していただ きたいと考えます。資料4-9で触れられているものは、法律第66条第2項の、いわゆる特 殊健康診断に係る内容と思いますが、現状は、半年に1回一般健康診断も行うというルール が併存していて、その通りに実施している事業所もあると思います。ただし、そこまでの必 要があるのかどうかという課題も含めて検討していただければと考えます。  資料4-9の[5]の中の健康診断結果に基づく措置のところですが、ここは事業者側が行う就 業場所の変更等と書いてあります。健康診断が終わり、努力義務ですけれども、労働者に対 する保健指導もやっております。有害業務に就く労働者の場合の保健指導となりますと、保 護具をちゃんと付けているか、作業位置は適切なのか、作業方法はどうなのかということも 入ってくるのかと私は考えております。そうであれば、そのことも含めて検討の対象にして いただければと思っております。  もう1点は、24頁の資料4-12で見直しの方向性のところに記載されている作業環境測定 結果の労働者への周知に関することです。特殊健康診断においては、健康診断の結果に何か 所見が認められた場合、それが作業と関係があるかどうかというのは極めて重要な意義を持 ちます。そこで、その判断する医師に作業環境測定結果を伝えられる方法があるといいと 常々思っております。このまま労働者への周知となっていて、これは非常に大事なことなの ですが、産業医あるいは健康診断を判定する医師に、作業環境測定の結果が伝わっていると いう体系ができるとありがたいと考えております。 ○半田化学物質対策課長 後のほうから申し上げますけれども、作業環境測定結果は、衛生 管理者は当然知り得るわけです。産業医も知り得るような仕組みになっていると私は理解し ているのですけれども、どこにどういう問題があるのかご指摘をいただければということが 1点です。  その前にご指摘をいただきました事項についてはいろいろ見直しをしていただきたいと いうことでしたが、具体的にこういうところということを後ほどでも教えていただければと 思います。私どもの体制ですが、ご案内だと思いますが作業管理及び作業環境管理が私ども の所管です。いろいろご指摘のありました部分は、どちらかというと健康管理の部分かと思 いますが、そこの部分は労働衛生課の所管になっております。  その所管のことで言うわけではありませんが、健康管理のほうはそれなりに体系ができて きていて、あまり問題ないと認識しておりましたので、私どもの所管の作業環境測定、ある いは設備の部分も議論していただくように準備しております。お話を承りまして、その健康 管理の部分でも検討すべきものがありましたら、それは所管課にきちんと伝達し、連携して 取り組むようにいたしたいと思います。そういうことですので、どういう点が問題なのかは 後ほど教えていただければと思います。 ○堀江委員 2点です。産業医は、尋ねると教えてもらえる立場ではあると思います。ただ、 現場を見ていますと、そこまで事業者に聞いて作業環境測定を見て判断している医師はそう 多くはないのかと思っています。やはり、事業者側から産業医に伝えるという方向の改定が あるといいのかと考えております。  2点目は、作業環境管理、作業管理及び健康管理をつなぐ部分です。現状では、作業環境 測定の対象職場も健康診断の対象者も、作業列挙あるいは物質列挙によって有害な職場や有 害な業務に従事する労働者かどうかということを規定しています。専属の産業医の選任義務 も同様の規定です。できれば、これらの規定は、リスクの大きさに基づいてそれが有害であ るという判断に変更していただけるとありがたいと思っています。そこまでいくには時間と プロセスが必要なのかもしれません。  例えば、まずは作業列挙なり物質列挙なりを行った上でリスクが十分に小さいところは対 象から除くなどの規定があると、リスクを小さくしようという事業者の意欲も高まると思い ます。 ○橋本委員 いま堀江先生がまさに言われたのですが、特殊健康診断をリスクベースで考え ていく方向に、できたらあってほしい。いまは特化物、有機物を常時使う者に対してとなっ ているので、非常に曖昧であるし、ちょっと広く網を掛けすぎである。リスクアセスメント をきちんと行ったら、そこで特殊健診対象者も絞り込めるようなインセンティブになる、と いうリスクベースの考え方を入れていただきたいと思っております。 ○名古屋座長 これにつきましては、次回以降も引き続いて議論していかなければいけない ということで、本日は新しい説明でしたので議論が進んでいかないかと思います。次回以降、 全体を通じて何かこういうことをしてほしいということがありましたら資料を作っておき ますがそれはよろしいですか。前半かなりいろいろな議論をしていただきましたので、それ については事務局が報告書を作るときに中に盛り込んでいただいて、それに対して検討しよ うということになったと思います。今後の日程を事務局からお願いいたします。 ○奥野安全専門官 本日ご議論いただきましたご意見を事務局でまとめ、次回以降より深く ご検討をお願いしたいと考えております。今後の予定ですが、次回第5回検討会を4月26 日(月)の午後2時から5時まで、経産省別館1111号室において、第6回検討会を5月18 日(火)の午後2時から5時まで経産省別館825号室において、それぞれ開催したいと考 えておりますのでよろしくお願いいたします。  前回のご案内では、5月18日を第5回と申し上げたのですが、4月26日を追加いたしま して、これを第5回とさせていただきたいと考えております。事務的なところですが、4月 26日の検討会の開催案内で委員の先生方にご案内させていただいた場所を、諸般の事情に より変更させていただきたいと考えております。本日開催案内の差し替えを机上に配付させ ていただいておりますのでよろしくお願いいたします。また、出席連絡表をいつも出してい ただいているのですが、それを添付し忘れましたので後日送付させていただきますので、そ ちらについてはいましばらくお待ちいただければと思います。 ○名古屋座長 場所、時間等の確認をよろしくお願いいたします。本日は多岐にわたってご 議論いただきまして本当にありがとうございました。これで第4回職場における化学物質管 理の今後のあり方に関する検討会を閉会させていただきます。どうもありがとうございまし た。