10/04/14 第5回医薬品の安全対策等における医療関係データベースの活用方策に関する懇談会議事録      第5回医薬品の安全対策等における医療関係データベースの              活用方策に関する懇談会                    日時 平成22年4月14日(水)                        17:00〜19:00                    場所 厚生労働省共用第8会議室 ○安全対策専門官 定刻になりましたので、第5回「医薬品の安全対策等にお ける医療関係データベースの活用方策に関する懇談会」を開催いたします。本 日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。当懇談会の構成員15 名のうち、13名の委員よりご出席の連絡をいただいています。生出委員に関し ましては遅れるという連絡がありましたので、始めさせていただきます。  本日の懇談会は公開で行うこととしておりますが、カメラ撮りは議事に入る 前までとさせていただいておりますので、マスコミ関係者の方々におかれまし ては、ご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。また、傍聴者は、傍 聴に際しての留意事項、例えば「静粛を旨とし喧噪にわたる行為はしないこと。 座長及び座長の命を受けた事務局職員の指示に従うこと」などの厳守をお願い いたします。  会議の開会に先立ちまして、年度初めの人事異動等により、構成員の変更が ありましたのでご紹介させていただきます。社団法人日本医師会常任理事高杉 敬久構成員でございます。併せて事務局の異動についてもご報告させていただ きます。医薬品医療機器総合機構安全第一部長の池田です。医薬品医療機器総 合機構安全第二部次長の依田です。また、私は佐野の後任として着任いたしま した、医薬食品局安全対策課専門官の田中と申します。どうぞよろしくお願い いたします。  これより議事に入りますので、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。 以後の議事の進行につきましては、永井座長にお願いいたします。 ○座長(永井) それではまず事務局から本日の配付資料のご確認をお願いい たします。 ○安全対策専門官 事務局より本日の配付資料の確認をさせていただきます。 まず、いちばん上に座席表、議事次第、配付資料一覧、開催要綱、構成員名簿 があります。その下に資料1として「提言骨子(案)」、これはパワーポイント のスライドの資料です。資料2として「提言作成のための資料(案)」、ワード 横書きの文書です。資料3として「今後の検討スケジュール(案)」があります。 参考資料として参考資料1「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについ て(最終提言)(案)」、参考資料2「新たな通信技術戦略の骨子(案)」、 「重点施策と具体的な取り組み(例)との対応表」、参考資料3「診療報酬明細 書等様式」、参考資料4-1「レセプトとは」、参考資料4-2「レセプトデータ分 析事例」です。最後に、藤田構成員から提出されました意見を追加資料として お配りいたしました。各構成員の先生方には、事前に資料を送付させていただ いておりますが、本日追加で配付している資料もありますので、お手持ちの資 料でご確認をお願いいたします。配付資料の不足、乱丁等がありましたら事務 局までお知らせください。 ○座長 ありがとうございました。では議題に入ります。これまで4回の懇談 会の議論を取りまとめるのが今回からの議論です。提言としての骨子を中心に ご議論いただきたいと考えております。まず議題1につきまして、事務局から ご説明をお願いします。 ○安全対策専門官 本日は議題1「提言(案)について」、議題2「今後の検討 スケジュール」の2つの議題を予定しております。議題1「提言(案)について」 につきましては、提言(案)となります資料1があります。この資料1につき ましては、座長とご相談させていただきまして、今回提示させていただいたよ うな資料を準備させていただきました。  それでは、資料1についてご説明させていただきます。資料1をご覧ください。 本懇談会におきましては、前回までに事実や知識をどのように組み合わせてデ ータベースを作成していくか、倫理面での問題や理解の共有度について活発な ご議論をいただいたところです。今回は、座長の永井先生と事務局で相談させ ていただきまして、今回からどのようにプロジェクト化をしていったらよいか という観点から、本資料を準備させていただきました。タイトルを「電子化さ れた医療情報データベースの活用による医薬品等の安全・安心に関する提言 (日本のセンチネル・プロジェクト)骨子案(コンセプト・ペーパー)」とさ せていただいております。下のスライドですが、本プロジェクトにおいて、期 待される成果といたしましては、疫学的な活用可能な医療データベースの基盤 の整備と、データベースの二次利用による医薬品等の安全対策の向上、エビデ ンスの創出と医療の標準化、医薬品等の医療技術の開発の迅速化と医療の向上 が挙げられます。  そのための課題としまして、大きく3つの課題、1つはデータ集積、データベ ース運営のためのインフラ整備、2つ目として、個人情報等の取扱いなどの情 報ルールの整備、そしてデータベースが構築されることによる、これまでと異 なった疫学等の手法の活用や開発をも含めた人材の育成等が考えられます。  次の頁をご覧ください。日本のセンチネル・プロジェクトを推進するため、 日本国内に大規模な(薬剤)疫学利用可能なデータベースを構築する目標の設 定。データの構築・活用・情報発信において、学会、医療界、産業界、行政が 協力(産学官のコンソーシアムを形成)、国民に対する医療データの二次利用 の倫理性、保健医療の安全性(安全・安心)向上に関する説明責任について考 慮する必要があります。  下のスライドですが、我が国のプロジェクトの目指す規模を示しております。 目指す規模としましては、まず米国の例を参考としますと、米国の大規模保険 グループで利用可能なレセプト等のデータは、約2,000万人規模、米国FDAの センチネルイニシアティブの目標は、1億人規模となっております。  一方、最近の副作用等の課題を考えた場合に、1万分の1程度の頻度で発生す る重篤な副作用を迅速に検出し、リスクを精密に比較評価できるようにしたい という課題があります。  こういったことを併せて考慮しますと、レセプト・データベースにつきまし ては、ナショナルデータベースの動きもあることから、こちらは可能な限り億 単位の情報を、電子カルテ由来のデータベースにつきましては、まずは1,000 万人規模を目指すところではないかとしたところです。  次の「データベースへの医薬品関係の期待と規模」と書いてあるスライドで すが、現時点におきまして、当面利用が可能と想定されるものとして、レセプ トデータと電子カルテデータがあります。レセプトにつきましては、データの 母数が大きく、傷病名、合併症名、性別、年齢、初診日、薬剤情報、検査の有 無等が把握可能であると考えられますが、データが時系列に整備されていない、 検査の結果のデータは得られないというような特徴があります。  一方、電子カルテについては、データの母数はレセプトよりも小さくなる可 能性がありますが、データの内容については、密度がより高く、傷病名、合併 症名、性別、年齢、初診日、診療日、既往歴、転帰、診断・投薬内容、検査結 果などが時系列を有するデータとして得られる可能性があります。これらの特 徴から、レセプト・データベースでは、明確な傷病名を指標として、大規模集 団の低頻度のイベントの発生頻度を把握したり、安全対策措置の実施状況の把 握、患者集団の処方、治療の実態の把握等への活用が期待できると考えられま す。  一方、電子カルテ・データベースでは、治療等のアウトカム/イベントの発 生状況・頻度及び比較、時間経過を伴うイベントの発生動向及び比較、イベン トと患者背景等の分析等への活用が期待できると考えられます。データベース の活用に際しては、双方のメリットを生かした相互補完的な活用/連結を考慮 しつつ、必要なデータの規模やタイムフレームについても考慮する必要があり ます。  下のスライドですが、現時点においては、我が国の医療情報インフラはあま り進んでいないのが現状です。現在、政府のIT戦略の動きもあることから、医 療情報インフラ整備については、IT戦略とも連携して進めていく一方で、そこ からできてくるデータベースの運用や活用の手法について、短期、中期、長期 のロードマップを示したのが、このスライドです。まずは、産学官のコンソー シアムの形成や、ナショナルデータベースの活用、中期的にはレセプトと連携 した形での電子カルテの大規模データ拠点の整備などが挙げられ、長期的には 全国ネットワーク化や地域の連携、十分な研究人材の確保や疫学研究の普及を 通じたデータベースの活用といったことが考えられます。  次のスライドをご覧ください。このスライドでは、中期的な人材育成とイン フラ整備の展開イメージをお示ししています。図の右側にありますが、大学病 院や地域の中心病院などを想定していますが、全国で5から10ヶ所の薬剤疫学 情報収集拠点を設け、これらのネットワークを形成するイメージをお示しして おります。安全性向上のための薬剤疫学調査の支援については、研究者や企業、 PMDAも含めて、資金の透明性を担保しつつ、データベースの運営費や研究資 金等を確保し、データベースの活用を推進、調査結果の活用、また薬剤疫学あ るいは情報疫学の研究者の育成をしていこう。それを通じて迅速な安全対策、 承認の迅速化、新薬等研究開発の推進に結びつけていこうというイメージです。  次に下のスライドですが、データベースの整備等や活用を進めていく上で、 データの活用に関する国民のプライバシーへの不安を解消するべきであり、そ のためには情報の取扱いや指針等の作成を考慮する必要があるのではないか。 特に、情報量が多いカルテのような情報や、情報を連結することにより詳細な 情報となった場合に、個人が判別できないような対応が必要になる点。カルテ 由来の情報等の利用に関しては、事前に患者から利用に関する包括的同意が必 要な点。研究倫理的な観点からは、計画の公開、倫理審査の実施。また利益相 反の透明化、結果公表時の利益相反の透明化などに留意することが必要だと考 えられるのではないかという点を記載させていただきました。  最後に提言のポイント(案)ですが、1「日本のセンチネル・プロジェクト の推進」。利用可能なデータの目標としては、レセプトデータで1億人、カル テベースで1,000万人。国民、関係者の医学・疫学研究利用への理解促進。医 学・薬学・情報学、製薬・情報等関係産業やその他関係者の協力。医薬品の安 全対策を含む医療の質的向上に向けた取組みと医療への還元を記載させていた だきました。  2「インフラの整備・人材育成」ですが、短期的にはナショナルレセプトデ ータベースの活用体制。中期的には大規模な電子カルテベースの国内研究・デ ータ拠点の整備、研究資金や基金の整備。長期的には十分な研究人材の育成、 全国的な医学・疫学研究の普及。  3「情報の取扱いのルール」。ここでは電子カルテベースの情報分析におけ る個人情報に対する指針整備、研究の利益相反の取扱いの明確化、薬事におけ る疫学研究の品質保証の基準の明確化等をお示ししました。  続きまして資料2についてご説明させていただきます。この資料につきまし ては、前回までの懇談会においてお示ししてきたものが基になっています。今 回の懇談会の開催に当たりまして、永井座長とご相談させていただき、新たに 資料1を先ほど提示させていただきましたが、本資料につきましては、これま でに含まれていた提言等に関する部分を資料1と移しましたので、提言作成の ための資料(案)という形で作成し直したものです。今後、提言作成のための 資料として必要な情報を、適宜追加等をしていく予定です。  内容ですが、初めに1「医療関係データベースの利用に係る現状とその必要 性について」としまして、我が国の医薬品等安全対策の現在の課題として、薬 剤疫学的手法の活用は、欧米諸国に比べて十分でないこと、「薬害肝炎事件の 検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」の最終提言におい て、今後、我が国において電子レセプト等のデータベースを活用し、医薬品使 用者数の把握、投薬情報と疾病発生情報の双方を含む頻度情報、安全対策措置 の評価のための基盤情報の整備、薬剤疫学的な評価基盤が求められているとい うことを挙げています。また、欧米等の現状、我が国の現状。我が国でデータ ベースを活用した医薬品等安全対策を推進する必要性等の記載をしています。  3頁をご覧ください。2「電子的な医療情報の活用の方向性について」ですが、 (1)として、医療関係データベースの種類についての記載があります。ここで は主なデータソースとして、[1]レセプトデータ、[2]電子カルテを挙げ、その ほかに将来的に利用が予想、期待されるものとして、DPC、人口動態統計、予 防接種統計、乳幼児検診等のデータがあります。  (2)には、各データベースの情報の活用可能な範囲と限界等をまとめていま す。  4頁の(3)です。医療関係データベースの医薬品安全対策への利用。こちらに は医薬品の安全性を検討する際に、医療関係データベースの活用により可能と 考えられる調査事例として、3つほど事例を挙げています。  5頁をご覧ください。3「データベース利用時の社会的課題」につきましては、 (1)として諸外国における個人情報の取扱いに関する考え方、(2)として個人情 報の範囲と保護、(3)として国民的な理解を得るために、(4)としてデータベー ス化と個人情報の保護、(5)として個人の特定、患者個人への通知について記 載があります。  8頁をご覧ください。4「データベース利用時の技術的課題」には、現時点で のデータベースの状況やデータベースの連結に関して記載をしています。  9頁の5「医療関係データを活用した研究のあり方について」ですが、ここは 若干提言のような記載になっていますが、(1)として調査・研究の支援体制に ついての部分では、活用可能な大規模な医療関係データベースの体制や技術基 盤の整備に国は、さまざまな支援を行うべきであること。省庁や部局を超えた 協力・支援を行うべきであること。データベースを備える研究機関はレギュラ トリーサイエンスに対する人材の育成、医薬品の規制当局との調査研究におけ る連携や人材の交流ができるような体制を構築すべきことが挙げられておりま す。また、行政の役割、大学・公的研究機関の役割、医療従事者の役割につい て記載があります。  参考資料1をご覧ください。この資料は、本年3月30日に開催された「第23回 薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」で 提示された、「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提 言)(案)」です。現在、最終提言そのものにつきましては調整中ですので、 案の形でお出ししておりますが、この提言においても、本懇談会で議論してい ただいている、医療関係データベースの活用について記載がなされております。  この資料の55頁をご覧ください。エ「電子レセプト等のデータベースの活用」 という項目があります。この部分に、諸外国の活用状況等を調査の上、薬害発 生防止に真に役立つものとなるよう、行政においても、個人情報の保護等に配 慮しながら、電子レセプト等のデータベースを活用し、副作用等の発生に関し ての医薬品使用者母数の把握や投薬情報と疾病(副作用等)発生情報の双方を 含む頻度情報や安全対策措置の効果の評価のための情報基盤の整備を進めるべ きである。また、このような膨大で多様な安全情報を医学・薬学・薬剤疫学・ 生物統計学・情報工学等の専門家が効率的・効果的に活用できるよう、組織・ 体制の強化を図るとともに、電子レセプト等のデータベースから得られた情報 を活用し、薬剤疫学的な評価基盤を整備することが必要であるといったことが、 提言として示されています。  続きまして参考資料2をご覧ください。この資料は、新たな情報通信技術戦 略、いわゆるIT戦略の骨子案として1頁の下の部分に(2)の「地域の絆の再生」 と柱に掲げている中に、具体的な取組みが記載されています。具体的には4頁 の後ろにエクセル表がありますが、2頁目に[5]として、「診断群分類データ活 用による医療の効率化」の部分に記載があります。申し遅れましたが、この資 料につきましては、IT戦略本部が作成した資料です。また、後ろのほうにエク セルの横表がありますが、[6]の部分をご覧ください。ここにも匿名化されたレ セプト情報等のデータベース化の話が記載されています。こういった通信情報 戦略、IT戦略により整備されるインフラを、先ほどご説明させていただきまし た資料1にありました課題の1つである、インフラの整備の解決の方策の1つと して、併せて活用させていただこうという考えです。  続いて参考資料3をご覧ください。参考資料3につきましては、第4回の検討 会で丸山構成員からレセプトデータについてご質問があり、事務局で準備させ ていただいた資料です。この資料では、医科入院、医科入院外、歯科、調剤報 酬明細書等のレセプトの様式をお示ししております。最終頁にもう少し具体的 なイメージができるように、実際のレセプトの記載例をお示ししております。  このレセプトの情報をどのように読み取るのかという一例につきまして、参 考資料4-1をご覧ください。1枚おめくりいただきまして、5頁と記載している ところですが、レセプトがどのような形で流れていくのかという図が描かれて おります。今回お示ししております参考資料の4-1及び参考資料4-2のレセプト データにつきましては、保険者、健保等からレセプトデータを取得していると のことでございます。  どのようにデータを収集しているかということにつきましては、6頁の図の 中ほどにありますが、[1]医療機関から、[2]審査支払機関に送付され、その後、 [3]健康保険組合に医療費の支払等の手続きのために送付されたレセプトの点 検作業が終了されたものを預かり、データ化をしているとのことでした。なお、 この資料につきましては、「JMDC Medical Data Bankのマスタ定義とデータ 概要」より抜粋させていただいたものです。株式会社日本医療データセンター が2008年12月に発行したvol.2からです。  データ化につきましては、この資料の9頁をご覧ください。ここでは医科の レセプトから読み取れる主なデータ項目が示されております。診療年月、医療 機関ID、患者ID、傷病名、転帰。薬剤情報としては、医薬品名、投与量、投与 日数。その他に検査項目等の診療行為の内容を読み取ることができます。  14頁には同様に調剤レセプトから読み取れる主なデータ項目について記載さ れております。  続きまして参考資料4-2ですが、こちらも株式会社日本医療データセンター 発行の「レセプトデータ分析事例集」より抜粋をさせていただいたものです。 実際にレセプトデータからどのような情報を得ることができるのかといった例 をいくつかお示ししております。  16頁をご覧ください。右側の頁を振っているものだと5頁になります。下の 真ん中の16頁の図、例におきましては、患者IDを活用することによりまして、 医療機関を移動したり、あるいは月をまたいで医療機関で治療されている患者 のデータを連結させている例をお示ししております。  続いて資料の77頁、右側の頁番号で7頁をご覧ください。ここではレセプト データから心房細動患者に対するワルファリンとアスピリンの使用実態の経年 変化が分析されております。2004年に日本脳卒中学会のガイドライン2004「心 房細動の抗凝固・抗血小板療法」により、脳卒中の危険因子をいずれか1つ以 上を持つNVAF患者には、グレードAでワルファリンが推奨されていますが、 2004年以降、経年的にワルファリンを投与されている患者の比率が上がってい ることがわかります。このような解析は、例えば安全対策に関する政策を実施 した際の医療実態の変化等の検出に活用できる可能性があるのではないかと考 えられます。  続いて85頁、右側で9頁ですが、レセプトのデータと健診のデータを突合さ せている例をお示しいたしました。レセプトデータと、レセプトと異なるデー タベースとの連携の可能性を示す一例としてお示しさせていただいております。  続いて97頁、右側で11頁ですが、医薬品の投与の制限が解除された場合の処 方傾向の変化の例をお示ししております。この例は、2006年1月に投薬制限が 解除されたスピリーバでございますが、図をご覧いただきますと、2006年1月 に、2週間の処方制限が解除されていますが、それ以前は赤い色で示されてい る、1回あたり14日処方がほとんどであるのに対し、1月以降は、青色で示され ているように、1回あたり28日分処方が逆転して多くなっていることがわかり ます。このことは、例えば処方日数の増加・減少等、安全対策上の措置が適切 に反映されたかどうかを把握できる可能性を示している例としてお示ししまし た。  最後になりますが、追加資料として、本日ご欠席ですが、藤田構成員からい ただいております意見です。こちらにつきましては、後ほどご紹介させていた だきます。今回お配りした資料の事務局からの説明につきましては以上です。 ○座長 ありがとうございました。ただいまのご説明に対してご質問、ご意見 をお願いいたします。 ○副座長(山本(隆)) 資料1は今日、たぶん初めて見せていただくものだ と思います。資料1、スライド番号で言うと7番目に「中期的な人材育成とイン フラ整備の展開イメージ」があります。ここで「薬剤疫学情報収集拠点を5か ら10ヶ所」と書かれているのですが、5から10ヶ所というのは何か意味がある のでしょうか。 ○安全使用推進室長 これは5から10という数字に具体的に意味があるわけで はなくて、どちらかというと、ここで言っている趣旨というのはレセプト等に ついては現在もナショナルデータベースという形で一元化することで対応して いますが、医薬品の安全対策等に用いるデータベースを作るということになる と、例えばレセプトで言えば実際の投薬日がわかるような情報など、もう少し 密度の濃い情報をデータベース化しなければならないだろうと考えられます。  その際、現実的な対応を考えると、いきなり大きなデータベースを中央に作 るというよりは、おそらく大学病院等の拠点においてそういう情報を連結した 形でのデータベースを少し分散的に作る。その体制を整備した上でネットワー ク化して、全国的な体制にしていくというほうが現実的なのではないか。その 趣旨で、大体、つかみで書くときには「5から10ヶ所」という感じになろうか と思います。全国一元的というよりはむしろ分散的なイメージということで、 「5から10ヶ所」という数字を例示として挙げています。 ○副座長 お話の趣旨はわかりました。1つはデータ収集形式がバラバラにな る可能性が否定できないということがあると思います。特に大学病院ですと、 それぞれの独自性というのがある程度出てくる可能性がある。そうすると、い くらネットワークでつないでも、お互いに比較できない情報がたくさん集まっ てしまうという恐れが1つあります。  もっと重要なのは、これは2006年にイギリスのAMSがこういった診療情報の 収集に関してのレポートを出していますし、2009年にはIOMが"Beyond the HIPAA Privacy Standard"という、こういう情報が集まっているにもかかわら ず利用が難しくなっていることに関してレポートを出しています。その中で両 方とも指摘しているのが、集めているセキュリティーが十分なのかというのは かなり懐疑的な書き方をしています。それはデータベースそのものをしっかり 守っていかないと、それから先の利用に対するコンセンサスを非常に得にくい ということを示しているのだろうと思います。  私が医療情報の専門家の立場から申し上げますと、データベースを守るとい うのはそれほど簡単ではないのです。まず物理的な要件が必ず必要です。これ はいま、一般に言うデータセンター的なもの、例えば洪水が起こっても大丈夫 とか、泥棒に入られないとか、病院の中でそういうものを確保するのは意外と 難しいです。  もう1つは人的な対策が必要で、それなりに経費のかかる話です。これを分 散するとコストがどんどん上がっていくと思うのです。例えば、それぞれの拠 点がその情報を利用する手段を持つことは全く問題ないと思うのですが、デー タの安全性を確保して、これから国民を説得して、このような利用を認めても らうというときに、やはり万全の安全対策というのはどうしても必要だと思い ます。それはそれほどやさしい事ではないのです。出来るだけリソースを集中 させてやるほうが簡単だと考えます。現実にいろいろな拠点を作ったほうが進 めやすいというのはわからないではないですが、その先にあるものを考えると、 やはり一定のリソースの集中をやらないとコストが上がってしまうと思います。 つまり、データベースの維持管理コストが上がってしまうので、持続性がなく なってくるということが起こると思います。  諸外国の例を見てもかなり集中させていますよね。韓国でもKFDAが全部集 めていますし、アメリカでもセンチネルは確かに分散しているところにクエリ ーを投げるのですが、分散しているところがそれほど多いわけではない。非常 に少ない。それぞれ、しっかりしたところに対してデータが保管されていると いうことがある。そこはあまり安易に分散させてしまうとかえってこのシステ ムが国民から信頼されない。つまり将来の利用を阻害することになりかねない という危惧があることを付け加えておきたいと思います。 ○座長 解析するのは何ヶ所でもかまわないのでしょう。 ○副座長 はい、何ヶ所でもかまいません。 ○座長 元のフォーマットの統一性、いろいろなデータベースのメンテナンス 等を含めて、元は1つにしておいたほうがいいというご意見でしょうか。 ○副座長 そのほうが安全だと思います。むしろ安全に対する責任を誰が持っ ているかというのはかなり重要なことで、自分の情報がある程度連結可能にす るかどうかは別として、全く個人が識別できないことを保証するデータばかり はないわけです。そうすると、どこかで事故があったときに、「自分の情報は どうなのか」ということが問題になってくると思うのです。そういう意味では、 責任の所在ができるだけ明確になっていることが必要ですから、あまり分散さ せてしまうとそこが不明瞭になるということになりかねないと思います。 ○座長 ほかにいかがでしょうか。ただいまのは非常に大事な、あり方に関す る基本的なご指摘かと思います。 ○宮田委員 私はもうそろそろ所用があって抜けます。少なくとも、今日は資 料1をこれからじっくり議論なさると思うので少しだけ申し上げておきます。 スライド3枚目の最初の「・」、「日本国内に大規模な(薬剤)疫学利用可能 なデータベースを構築する目標の設定」と書いてあります。「目標」だけだと 弱くて、「目標とロードマップ」とはならないでしょうか。要するに、これは 実現するための議論だと思いますので、スケジューリングも含めて、是非、 「目標」という言葉の中に含めていただきたい。たぶんそういうものが実行可 能な年月を入れたイメージを皆さんが持つと、この段階ではどういうようなイ ンベストメントが必要で、どういうような人材養成が必要だとか、国民に対す る説明が必要だという時間軸で行うという、いろいろやらなければいけない事 のイメージが明確になると思います。そういった議論を是非お願いしたい。も ちろんそうなのですが、「目標」という言葉が曖昧なので、この「目標」とい う言葉プラス「ロードマップ」も入れておいていただけるとありがたいと思い ます。以上です。 ○座長 いまの文章で「薬剤疫学利用可能な」というのがあって、ちょっと、 「薬剤」が強いように思うのですが、「薬剤をはじめとする医療疫学」ではな いのでしょうか。 ○安全使用推進室長 修正いたします。 ○座長 よろしくお願いいたします。どこからでも結構です、いかがでしょう か。 ○佐藤委員 先ほど参考資料1、「薬害肝炎の検証会議」の55頁、56頁をご紹 介いただきました。56頁のレセプト、データベースの活用に関する記述のいち ばん最後の「・」のところ、「異なる情報源からのデータがリンク可能となり かつデータのバリデーションが可能となるような仕組みがない限り、その有用 性は極めて限定的なものになる」と書かれています。  その後ろに、「電子カルテ等のデータへのリンクを可能とし、高度な分析へ の活用を可能にすることの検討も行う必要がある」と書かれています。このこ とをどのように具体化するかが、いまいただいた資料1、資料2の中に私は読み 取れないのですが、それはどのあたりに出ているのでしょうか。 ○安全使用推進室長 佐藤構成員から非常に重要なご指摘をいただいたと思い ます。「異なる情報源からのデータのリンクが可能となりデータのバリデーシ ョンが可能となる仕組み」を作らないことには、その有用性が限定的となる。 あと、要するに電子カルテ等のデータ・リンクを個人識別子等を用いて可能す るという、データのリンクという部分に対してのご指摘をこの肝炎の検証委員 会からもいただいていると理解しています。  今日の資料1で申し上げると、例えば異なるデータのソース、情報源という ものは現実的なところでいま、何が実用可能なのか。そこから入っています。 例えば「提言」の5頁、やはりレセプトをベースにするのか、電子カルテをベ ースにするのか、どちらかをベースにすることになるのだろうと思います。い ま、現状対応可能な部分、かつ医薬品の安全対策というニーズ等を踏まえてい くのだとすると、まずはこのレセプトと電子カルテというもの、また電子カル テに付随するいろいろな検査情報とか、そういったものをうまくリンクを可能 とするというところがまずやらなければいけないところかなと考えています。  そこで5頁で、レセプトと電子カルテにおける双方のメリットを生かした活 用/連結を考慮すべきということを書いています。その具体的なやり方という ところで、6頁目以降のところをご覧ください。実際、ここでは「大規模データ 拠点の整備」ということで、先ほど山本副座長からご指摘いただいた7頁とも 関連することになってまいります。拠点単位である程度密度の濃い情報をリン クさせながら、そのときにハッシュ関数などの部分の技術とかも活用するよう な形になるのかもしれませんが、拠点においてそういうデータをリンクして、 そこでは当然、バリデーション可能な形のものを作っていって利用できるよう な形を考えています。それがこの5頁、6頁の絵で描いてある部分の趣旨という ように事務局では理解をして書いているところです。  7頁の「人材育成」の「データベースの活用」という部分の真ん中のほうの 絵にも、この2つのデータの連結という形で小さく黄色で描いてあります。そ ういった形で、いま現実に使えるデータとして何があるのか。そこから対応可 能な方法として、どういう形でこのクエスチョンに答えるかという形でこうい った部分を反映させたつもりで書いているところでございます。 ○座長 レセプトの病名は、どのぐらい信頼度があるか。現実には相当いろい ろな問題があります。その辺、データの作り方についてかなり議論が必要です ね。いかがでしょうか。 ○丸山委員 いまのレセプト・データと電子カルテ・データとの連結に関して なのですが、参考資料4-2、16頁にJMDCのレセプト・データ、「退院後の治 療推移」があります。1行目以下、JMDCではMedic4という名寄せ技術により 同一患者を認識し、同一患者には同一IDを割り振って連結可能にしているとい うことです。これはどの範囲で実現されているものなのですか、この連結の仕 組みというのは。いま、ハッシュ関数をおっしゃいましたけれども、それに関 連する技術でしょうか、あるいは先ほど言いましたように、現実にどれほど普 及しているものか。あるいは、商品として販売しているものかなと思うのです が、そのあたりを教えていただければと思います。 ○安全使用推進室長 事務局でも本日詳細な情報を持っておりませんので、ま た調べて提供させていただきます。 ○座長 このJMDCというのはどういう略なのですか。 ○安全使用推進室長 JMDCは会社名でして「日本医療データセンター」が正 式名称になります。 ○安全対策専門官 参考資料4-1のいちばん下の部分に、Copyrightとして、 "2008 Japan Medical Data Center"というのがあります。こちらの略かと思い ます。 ○福原委員 この提言は安全対策課の所管の下での提言なので、医薬の安全・ 安心に関する提言になるのは当然なのですが、ここで目指していらっしゃるイ ンフラの構築・整備・人材育成の出来上がり図を見ますと、医薬の安全・安心 への活用だけではもったいないような気がします。できたらもう少し、例えば 医薬の有効性とかあるいは医薬以外の臨床疫学研究、医療の質の研究にも十分 活用できる素晴らしいインフラだと思います。できましたら、そういう文言も 加えていただければありがたいと思います。 ○座長 それは先ほどの3枚目のスライド、1枚目の裏の上、「(薬剤)疫学利 用可能なデータベース」ではなくて、「薬剤をはじめとする医療疫学利用可能 な」とお願いしましたが、そういう意図かと思います。 ○安全使用推進室長 この資料の7頁で出てきているのですが、広い意味での 安全対策でもありますけれども、医薬品の有用性の検討といったものはおそら く医療技術その他にも当然応用可能なものだと考えています。今日は一応、骨 子ということですので、福原委員のご指摘も踏まえてもう少し応用可能な部分 を書き込みたいと思っています。ただ、一方で、何でも使えるデータベースみ たいな形になると、それはそれで逆に目的なくデータを集めても何も見えない ようなものになりかねないというご指摘もあります。少し、その辺の軸につい ては先生方からもご意見をいただきながら、あまり焦点がぼけないような形に したいと思っています。 ○佐藤委員 先ほどのJMDCに関するご質問に関連します。私はいま、JMDCのデ ータを使った研究を少しやっているところです。まさに名寄せの技術を使って 個別のレセプトを患者単位で、「このレセプトとこのレセプトは同じ患者のも のである」ということを匿名化したあとに名寄せするようなことをやっていら っしゃる。どのようなやり方というのは若干企業秘密の部分もあるようです。 そういうことをこまめに普段やっておかないと、使えるデータベースにはなら ないというのが1つですね。それをやるためにはかなり膨大なワークロードが 必要で、人的資源が必要だということがあると思います。  もう1つ、JMDCで日々やられているのはデータのクレンジングです。レセプ トのデータの中で入力間違いなどによる極端なもの、年齢が150歳であるとか、 極端なデータがときどき混じっています。そういうものを見つけ出してはきれ いにしていく作業というのもかなりのワークロードをかけてやられているよう です。もし、ナショナルデータベースを構築しようと思えば、厚生労働省なり 機構なりのどこかにおそらく10人といった人たちが常時そのために日々仕事を するような部署、機関、センターですね。ナショナルデータベースを使えるよ うにする運用のセンターを設けて、そこに人を張り付けないと、とても使える ような状態にはならないと思います。その点についても、どのようにそういう 体制を作っていくかということも今後の検討課題というか、論点になるのかな と思います。 ○座長 いかがでしょうか。 ○山本(尚)委員 いくつかあるのですが、もう帰ってしまわれた宮田委員の ご意見に続いて、ロードマップを作るというのは大変重要なことでやらなけれ ばいけないことである。その先にあるのは、何年までに何をしなければならな い、というのを誰が監督して見守っていくかを明確化しておいていただけると いいと思います。目標を掲げて、「なったらいいね」という形で終わってしま うことがいままでもありました。電子カルテの普及なども目標を掲げたものの、 なかなか実現するのが困難であったということがあると思いますので、プロジ ェクト遂行の監督責任者の特定までをお願いしたいと思っています。  佐藤委員のご意見なのですが、実際に研究目的というのはいろいろあると思 います。それに応じて、必要になるデータの部分というのは個々の研究によっ て特定されると思うのですが、それに対して常時すべてのレセプトや入力ミス をクリーンアップさせていく必要があるのかどうか。山本委員がおっしゃって おられるように、これから規模が拡大していく上でさらにボリュームが上がっ ていくと人的リソースがやはり問題になります。  考え方だと思うのですが、常にきれいなものを用意しておいて、迅速にすぐ 出せるという特徴を持つデータの持ち方と、もう1つは研究目的に対して若干 の時間はかかるけれども、申請された研究に対しての部分にクレンジングをか けていくという方法とあると思います。規模が大きくなるとやはり後者のほう になっていくのではないかと思いますので、そのあたりもスタイルとしては考 えてもいいかなと思います。  いちばん最初の山本委員のご意見に少し質問なのですが、実際、セキュリテ ィーに関してセントラルに分散型であっても、統合型であっても、セキュリテ ィーの観点からなるべく一極集中にしておいたほうがリスクが少ないというの は私も大変理解できます。その一方、いま現在、山本委員が座長を務められて いる官邸主導でされている「医療評価委員会」、そのあたりで地方ベース、地 域ベースでどこかにインターネット・サーバー、そのサーバーを中心にインフ ラを浸透させていくというイメージで、いまインフラ整備が進められているか と思います。例えば一極集中になることと、地域ごとにインフラが広がってい くこととがうまくリンクするものなのかどうか。分散型と統合型とでやはりリ スクの管理の仕方はかなり違ってくると思うのですが、分散型であればどのぐ らいリーズナブルになり得るものなのかをご教示いただければと思います。 ○副座長 議論と関係あるかどうかわかりませんが、1個であるか、いくつで あるかという問題は、コストとか、バランスを考えて決めるべきものかと思い ます。いまお話があったのは、たぶん、内閣IT戦略本部が出したところで言う と、「どこでもマイ病院」というわけのわからない名前ですが、要するに全国 民にとって自分の医療情報を際限されない形で蓄えておく財布みたいなものを 全国民分作るという話です。その窓口は全部基礎自治体になります。住民との 対話になります。そうすると、基礎自治体が日本には1,000いくつあるわけで すけれども、それが一定の固まりで集まってデータにアクセスできることを考 えると、1個なのか、3個なのか、5個なのかというぐらいのベースで周知をさ せておくほうが明らかに安全だと思います。1,000いくつあったら収集がつか ない。  例えば、ここで目標にしているのが1,000万件ぐらいであれば、いまのデー タベースであれば1ヶ所で管理をすることがそれほど難しいというか、かなり 簡単なデータ量です。そういう意味では、基礎自治体が窓口で全国民分という ほど、数を必要としないと思うので、この場合は一個にしておくほうがいいの ではないか。  もう1つ、あちらは制度で決める可能性が高いのですが、こちらはやはりそ の都度、必要な情報というのは時代とともに変わってくると思うのです。その ときにシンクロナイズして集めてこないと、最初は1,000万件集めて、その次 に何か少し別のファクターが入ったときに、150万件ずつ変わっていってしま うみたいなところが出てくると思うのです。そういう場合は、そういうところ を管理する所はできるだけ少ないほうが齟齬が出にくいと思います。 ○佐藤委員 いま山本副座長が言われたクリーニングに関しては、おっしゃる とおりだと思います。たぶん、研究に限らず行政上の必要においても使うでし ょうから、常に使うであろう情報は大体データを決めておいて、それに関して はいつもクリーニングしておいて、それ以外は必要に応じるということでいい のではないかと思います。実際に台湾でそういうことがやられているようです ので、台湾のセンターでどのようなことがやられているかを参考にされてはい かがかと思います。 ○望月委員 先の話になってしまうのかもしれませんが、例えば1万人の1程度 の非常に頻度の低い副作用を見つけるためにということで、現状では、新医薬 品の場合は各製薬企業が市販後の製造販売後調査の形で、かなりのケースカー ドを集めているという状態になっていると思うのです。このデータベースが最 終的に出来上がったときに、相当膨大な資金を各企業は製造販売後調査に投入 していると思うのですが、例えば各企業が市販後調査をする代わりにこのデー タベースを使ってモニタリングをしていくとか、だったらいままで払ってきた 市販後調査にかかっていた資金を、このデータベース構築に投入できるとか、 その辺りのことは何かお考えがあるのでしょうか。 ○安全使用推進室長 望月構成員から非常に重要なご指摘をいただいたところ ですが、いまの医薬品の市販後調査は単にケースカードを集めているだけで、 投与された患者に対する情報を集めていて、一定の頻度を出すとか、そういう 目的でやっているのですが、ああいう手法でやっていきますと、基本的にケー スとコントロールみたいな対象のわからない形のままで、ただ単に数字を集め るということになっているわけです。ICH等での議論の流れ等を考えていきま すと、こういう医療情報のデータベースを活用して、きちんと疫学的な形でも 数字が解析できるような方向に持っていくべきなのではないかと。薬害肝炎の 検証委員会の提言もそういう形の提言になっていますので、市販後調査におい て、こういう医療関係データベースを活用していただくような方策があってし かるべきだろうというイメージでこれを書いています。  そのときに、例えば企業からこういうデータベースに対して依頼をして調査 をするとか、依頼をしてこのデータを活用していただくというスタイルになっ てくるので、その場合、産業界がこういったものに投資していただけるのか。 また、個々の調査を行う際に、いろいろなお金の問題などが出てきたときに、 利益相反の管理みたいなものはきちんとやっておかなければならないというこ とで、先ほどの紙の8頁に利益相反の透明化とか、そういったものを盛り込ん だ趣旨はそこにあるのです。実際こういったものを産学官で進めていった場合、 産業界としてどのように協力をいただけるのかについては、この場で私から答 えられることではないので、企業としてお金を出すというか、そういう価値が あると思うようなものなのかどうか、少し山本(尚)構成員等のご意見も伺っ ていただけるといいのかなという感じがしております。 ○座長 山本(尚)委員、いかがでしょうか。 ○山本(尚)委員 拠出金とかそういうお金の話は、私はこの場で、明確なこ とは言えないのですが、メンテナンス費用と実際に個々の研究にかかる費用と、 そのバランスによると思うのです。メンテナンスにどのぐらい費用がかかるか によって、1研究費当たりの費用は変わってくると思うのです。それが海外と 比較してリーズナブルなものであれば、これまでの製造販売後調査では1調査 当たり何億というお金がかかっているところが、データベース研究になると、 おそらく症例数には大きく左右されず、数千万の単位で済むでしょうから、代 表性が、製造販売後調査と比べてバイアスが低減できたデータが得られるとな れば、当然投資していくということになると思います。ただ、メンテナンス費 用に対してどれぐらいお支払いしていけるかどうかは、持ち帰らせてください。 ○福原委員 資料1の6枚目のインフラの整備のロードマップですが、レセプト はいいとして、電子カルテのデータを医療施設側が喜んで提出する、そういう インセンティブというか、モティベーションを与えるようなお知恵はあります か。 ○安全使用推進室長 私どもは、是非先生方のお知恵をいただきたいと思って おりますが、こういったデータベースを活用して、それが先生方の診療とか日 々の医療安全とか、そういうものに対してデータとしてもきちんとフィードバ ックがされて、それが日々の診療にも活用できるということが、医療の方々に とっていちばん大事なのではないかと感じています。各医療機関の現状を考え ていくと、一足飛びに各病院が中央に密度の高いデータを提供いただけるのか というところは、私も不安に思っている部分がありまして、山本(隆)構成員 からは先ほど一元化をしたほうがいいというご提案もいただいているのですが、 そこでかなり慎重にこういったコアとなる病院なり医療機関からスタートして いくような形、将来的には一元的な姿があっていいと思いますが、今日はそう いう形でのロードマップの案を書いたというところがあります。 ○座長 そのことに関してですが、これはかなり国家的な大きなシステムです ね。お金も人も、当然リスクもありますし、個人情報の扱いの問題もあります し、ある程度の継続性がないといけないですね。何年かやって何となくつぶれ てしまったということのないように。そうすると、がん登録ではないですが、 何か少し法律で後ろ盾があったほうがいいように思うのですが、その点につい てはいかがですか。むしろ法律家の先生方のご意見を伺いたいのですが、我妻 委員、いかがですか。 ○我妻委員 的確に答えられるかどうかわかりませんが、確かに永井座長がお っしゃるように、ロードマップの関係で言えば、8頁でカルテについて、やはり 個人情報が非常に濃くなるということであれば、事前に患者に利用に関する包 括的な同意ということですので、もともとの最初のところの国民に対する医療 データの二次利用の倫理性の説明責任ということで、国民に対していかに国な り行政機関なりが責任を持って国民の健康安全を図るのだということを、きち んと明確にすべきだと思います。その際には、必ずしも医療データには結びつ きませんが、例えばフランスでは2002年3月4日に患者の権利及び保健衛生制度 の質に関する法律によって、国が患者の権利を保護することを明文化して、医 療事故に関して一定の範囲で無過失を補償するという議論をされていますので、 そうした幅広い議論の前提として、いまおっしゃったように法律なり国民に対 してきちんと説明をする、あるいは裏打ちをする形での制度設計、仕組みを作 ることが必要不可欠だと考えております。 ○座長 がん登録はそうなっているわけですね。それに類したシステムが必要 ではないかと思うのですが。 ○福原委員 がん以外は疾患が多彩なので、それを全部登録するのは技術的に なかなか困難なのかなと思います。もう1つ、私が考え得る医療施設側のモテ ィベーションとしては、いま医療施設は、自分たちの医療施設が提供している サービスの質が全国平均から比べてどうなのかとか、そういうことを非常に知 りたがっていることは、いろいろなところから潜在ニーズがわかります。こう いう情報提供の代わりに、おたくの病院はどんな感じの質ですよという情報の フィードバック、こういうことをしてあげることも1つの誘因になるのではな いかと考えます。 ○安全使用推進室長 その点については、特にこのデータベースは医薬品を含 めて、医療全体の安全等々全国的なものに対する対処をベースに考えています ので、これをもって医療機関のクオリティを比較するとか、そういう目的は逆 に入れないほうがいいのかなという感じはしております。そこで妙な競争意識 を持ってもらうのは、このデータベースの目的ではないという感じがしている のですが、いかがでしょうか。 ○福原委員 競争意識というか、何か情報提供したら自分たちも有益な情報が 得られるという、何らかの仕組みが必要かなと思うのです。 ○座長 例えば、患者の同意も必要でしょうし、10の医療機関が同意した上で 10について比較をするという利用の仕方、そういうものがあってもいいかもし れません。 ○副座長 おそらく各医療機関は、データを提供するためには、提供するデー タを用意しないといけないわけですね。提供すると同時に、自分たちとしても そのデータを管理するでしょうから、そういう意味では自ずから全国の平均と 比較ができるようになるのではないかと思うのです。 ○座長 私たちも、いま心臓カテーテル検査のデータベースを使って作ってい て、ある大学病院と2つで比較すると全く違うのです。使っている機材とか、 疾患も違いますし、そういうところの全体像がわかってくるだけでも非常に意 味があると思うのです。成績を比較するのは先の話になりますが、いろいろな 使い方が可能だと思います。 ○副座長 本質ではないのですが、ここにレセプトと電子カルテと2極になっ ていますが、別に電子カルテである必要はないと思うのです。例えば、7割ぐ らいの大規模病院に入っているオーダリングシステムでも、多くの場合病名は 入っていますし、画像は電子的に扱っていますし、検査結果は扱っていますし、 処方は扱っているわけで、入っていないのは本当にディクテーティブな記述だ け。例えば、発疹とかそういうイベントの簡単なキーワードさえ入っていれば、 十分役立つ情報ですので、電子カルテというより診療情報システムとか何かに しておくほうが、幅広く捉えられていいように思います。 ○座長 よろしいでしょうか。確かに、何をどういうフォーマットで入れるか は、相当研究しないといけないですね。あまり重くなってもいけないし、かと 言ってレセプトを随分強調されていますが、レセプトがどのぐらい意味がある か、これも医療情報あるいは疫学の方にお伺いしたいと思います。あまりレセ プトに過度な期待があってもいけないと思うのですが、福原委員、いかがでし ょうか。もちろん、ないよりははるかに役に立つと思うのですが、このレベル でいいのかということで。 ○福原委員 藤田委員のコメントにもありますが、薬剤疫学的な研究には極め てパワフルなデータソースではないかと思います。ただ、最初の会合でも述べ ましたが、結局患者に何が起きたかというアウトカムの正確な確認が、レセプ トだけで果たして大丈夫かどうかと、そこにデータの質の問題が残るので、診 療情報からの実際のデータで確認できれば、これほど強力なことはないのでは ないかと思います。 ○座長 あと、病名の問題ですね。レセプト病名という悪しき慣習があるので すが、病名のコード化とか統一化というのはどうなのですか。 ○福原委員 十分ICD-10でされていますし、DPCですと最も医療資源を使用し た病気がDPCグループになっていますので、メジャーなイベントであればまず 大丈夫ではないかと。我々も厚生労働省の研究費で2年間やってきましたが、 十分いけるのではないかという感じを持っています。 ○座長 ICDも、ICD-11の検討作業が進んでいますね。ああいうものができて くると、こういうデータベースにもかなり活用できるだろうということでしょ うか。 ○安全使用推進室長 今日、藤田委員はご欠席ということですが、事前に今日 の骨子案についてご意見をいただいておりますので、それを事務局からご紹介 します。 ○安全対策専門官 それでは、事務局より藤田委員のご意見を読み上げます。 2種類出されておりまして、1種類目が前回の懇談会資料に関するものですので、 いちばん最後のものの、いちばん上の行に「1.スライド5の『電子カルテ・デ ータベース』について」と書いているほうをご覧ください。  [1]「治療等のアウトカム/イベントの発生状況・頻度及び比較」について。 これは極めて限定的な状況以外には、電子カルテ・データベースのみでの検討 は不可能と考える。限定的な状況とは、入院における濃厚な治療(医薬品を含 む)といった各医療施設のみで完結する治療の場合である。発生頻度(特に人 ・時間を分母とする発生率)については薬剤の使用開始時点と使用継続の情報 が不可欠である。診療所など他の医療施設での外来治療を受けてから、重篤な 疾患や有害事象の発生のために電子カルテ保有の医療機関を受診して診断がな された場合には、医薬品の使用(曝露)情報は皆無か、あるいは不完全なもの かにならざるをえない。例えば、Vioxx(Rofecoxib)による心筋梗塞のリスク増 大については、電子カルテ・データベースのみでは検討は困難である。  レセルとデータベースの結合が、多くの場合、必要である。この際、電子カ ルテ・データベースに求められる重要な情報は、正確なイベント発生(重篤な 疾患や重篤な有害事象の診断)についてのものであり、さらにそれを裏付ける 検査結果などの情報が得られることが好ましい。医薬品の安全確保や有効性の 検討のためには、電子カルテの全ての情報が必要であるとは思われない。ただ し、正確なイベント発生とその裏付けとなる情報を電子カルテ・データベース から抽出することは多大な労力が必要になる可能性があり、この点についての 技術的検討が必要ではないかと考える。  スライド4で「まずは、1,000万人規模から」としているが、特定の医薬品 の安全性について薬剤疫学研究を用いて評価する場合、研究対象集団の設定が 困難になると考える。この場合の設定には、[1]追跡開始時に検討対象の有害 事象を発生していない者、[2]当該の医薬品を使用する可能性がある者、[3]有 害事象を発生した場合に電子カルテ・データを提供する医療施設を受診する者、 という3条件が必要となるが、[3]の条件についてはかなり無理な想定を必要と する。電子カルテ・データベースのみでできることは、「治療等のアウトカム /イベントの発生件数及び発生状況の把握」程度であろう。  [2]「時間経過を伴うイベントの発生動向及び比較」と「イベントと患者背 景等の分析」について。前者は医療施設にかかわる経時的状況に依存するもの であり、例えばある疾患の治療が評判になればその疾患で受療する患者数が増 加するといった現象と交絡する。後者は医療施設の特性に依存するものであり、 その疾患の専門医療機関には重症の患者などが集中するなどの現象と交絡する。 こうした点は意識しておく必要がある。  2.スライド7ないしスライド8に関連して。「個人特定情報を保有するのはど の範囲までか」を明確にする必要がある。この際、「当面」と「将来」を分け て考えるのも一法と思われる。将来とは、「国民ID制度」の実現以降である。  当面、レセプトのナショナルデータベース等と各医療機関の電子データの内 で医薬品の安全確保に必要な正確な診断名情報との結合はPMDA等の公的機関の みが行う体制を整備してはいかがか、と考えている。また、それを監視する第 三者委員会を設置すべきと考える。  レセプトのナショナルデータベース等は、当然ながら、個人特定情報のデー タベースとは切り離し、個人を同定できない秘匿措置を講じることが原則であ る。また、個人を単位とするランダムなデータ抽出を行った上で提供データの 作成を行うなど、秘匿化するための技術的検討を必要としている。  3.スライド8の下欄について。電子カルテ・データベースのみでの限定的状 況での活用を行う場合と、レセプトのナショナルデータベースとの結合により 一般的状況での活用を行う場合とに分けて、議論する必要がある。2つの場合 で、倫理的事項もおのずから異なっている。  後者の場合、特定の研究対象者について「患者背景等の情報の粒度を下げる」 必要性はない。つまり、特定の研究対象者以外では使用できない情報を、安全 確保等の研究のために収集する必要はない。必要なのは、正確なイベント発生 とその裏付けとなる情報を電子カルテ・データベースから如何に抽出するかの 技術的検討である。レセプトのナショナルデータベースと電子診療録(EHR)等 から膨大な医療情報を単に連結しても、情報の洪水の中で取扱いが困難になる 可能性がある。以上です。 ○座長 こういう技術的な問題については、山本副座長、いかがでしょうか。 ○副座長 若干「電子カルテ」という言葉が災いしていると思うので、極めて 限定的な医療機関でしか使われていないものとしての、藤田委員のお考えだと 思います。1度目か2度目にお話したと思いますが、日本ではたとえ診療所であ っても血液検査の結果は電子化されているのです。電子的に扱えないから紙に 印刷して返っているだけで、処方せんも紙の処方せんですが、手書きの処方せ んはほとんどない。そういう意味では、そちらのほうが電子化されているわけ です。その電子化を適切に扱う手段がいまないだけの話なので、本当に国とし て取り組んでその情報をきちんと集める気になれば、おそらく半数以上、6〜7 割の情報を集めてくるのはそんなに難しくないことだと思うのです。  もちろん、患者がいつどういうことを訴えたとか、医師がどういう過程で思 考したみたいな情報は大変ですが、そういったことが必要になる調査は極めて 希だと思うのです。もっと単純な事実を集めるだけで、相当な情報量があると 思われますから、そういう意味では「電子カルテ・データベース」という言い 方ではなくて、もう少し広い意味で取っておくと、少し考え方が変わってくる のではないかと思います。  もう1つの問題は、匿名化の話とか、個人が識別できる状態で扱うとかとい うのは、たぶんこれから議論を詰めていくことだと思いますが、技術的なこと を個々によってお話することはできないと思います。個人的には匿名化、ある いは個人が識別できるできないに関することに、誰がいつどこで責任を持って いるのかということを、できるだけ明確にしておくほうがいいと思うのです。 そういう意味では、いまのレセプトのナショナルデータベースは、そのハッシ ュを使って匿名化を行っているのは各保険者ですね。そうすると、ある情報に 何か問題があったときに、かなりたくさんある保険者のどれかということを見 ていかなくてはいけない。そうではなくて、問題点に関してはできるだけ集中 して扱っているのだというほうが、納得は得やすいのではないかという気はし ています。例えば、時系列のデータを集めるにしても、匿名化した状態、ある 種の連結間を匿名化した状態で時系列データを作っていくとなると、正確さに 問題が生じる可能性があります。そうではなくて、本当に個人が識別できる状 態で連結をした上で匿名化をするほうが、安全性としては高まると思います。  そういう意味では、まず匿名化すれば安心という考えではなくて、本当に国 民にとってどういう状態がいちばん安心なのかを考えつつ、技術的な対策を考 えていかないといけないと考えております。 ○座長 いきなり大規模なシステムが作れるわけはないので、研究をしばらく やった上で、このための基礎研究からしないといけないと思うのですが、そう いうプランはお持ちなのでしょうか。 ○安全使用推進室長 事務局の考えという部分で申し上げますと、永井座長が ご指摘のように、いきなり一元化した全国大規模データベースというのは現実 的には困難だろうということもあり、今回出した拠点型はまさしくそういう部 分で、いろいろ研究的要素を踏まえながら蓄積をしていくような形からスター トしていくというイメージのロードマップの案を書いたということです。実際、 かなりモデル事業的な意味合いもあるのかもしれませんが、そこできちんと拠 点でできるということを見ていきながら広げていくというスタイルで、これは 書かれているということです。 ○座長 いかがでしょうか。 ○川上委員 いまのことに関連して、資料2の6〜7頁の表を見ると、6頁の表は レセプトに関する国、医療機関、民間の形でまとめてありますが、医療機関と 民間はいま現にあるものなので既に実現しており、国レベルのレセプトのデー タベースもある程度短期的な目標を設定して作っていけるかなと思います。7 頁は電子カルテ、これも完全な電子カルテというよりもそれに近い電子化され た診療情報とでいいかと思いますが、これについては電子カルテがある医療機 関なら、フィージビリティ・スタディというかモデル事業をやってみる、ある いはいくつかの医療機関をつなげて実施を試みることは可能かと思います。で すが、その左側、PMDA等が集積・データベース化したような日本版の電子カ ルテの集合体は、現実的には難しいかなと思うのです。  そういったものを試行する、あるいはそこにどういう情報を集積しなければ いけないのかを掌握するためにも、モデル事業、フィージビリティ・スタディ みたいなものを、拠点となり得るような医療機関の電子化された診療情報や電 子カルテを使ってやってみるのは必要なことではないかと考えます。 ○福原委員 先ほどの永井座長のご質問の追加なのですが、レセプトだけで不 足している情報としていちばん重要なのは、検査の結果だと思います。検査の 結果は診療情報からしか得られないので、医薬安全という目的からしても、単 なる死亡率とかイベントの発生だけではなくて、もし検査値が得られれば、非 常にリッチなデータになると思います。医者が書いたテキストデータとか、そ ういうものは無理なので、ミニマムな、座長がおっしゃったようなエッセンシ ャルな情報を得ると、非常に有用ではないかと感じます。 ○安全使用推進室長 先ほど来、先生方からご指摘をいただいていますように、 今日ご用意したペーパーは普通の方にも理解しやすいようにということで、イ メージとして「電子カルテ」という言葉を使っていますが、本日の議論を伺っ ていると、必ずしも電子カルテだけではなくて、いろいろな病院等で電子化さ れた情報を活用していくという趣旨ですので、本日のペーパーで電子カルテと 書いている部分については、電子化された診療情報データとか、そういう形の 言葉で置換えをしようと思います。そんな形でよろしいでしょうか。 ○座長 よろしくお願いします。それから、1つのデータベースで何もかもと いうのは無理だというのはわかるのですが、すでにいろいろなデータベースが 国家、あるいは学会規模で動いています。例えば、外科学会がNPOを作って、 大きな心臓手術、外科手術のデータベースを作っていますが、ああいうものと もうまくドッキングできるような体制、あるいは一部はもうNPOに任せてもい いのかもしれませんが、そういう分化したものをいくつか揃えつつ、だんだん 大きくしていくことも必要のように思うのです。我々心臓の領域ですと、どう いう人にペースメーカーを入れて、どういうものが使われて、何年ごとに替え ているとか、疾患ごとに特質性のあるものは多いと思うのですが、その辺の作 り方についても相当検討が必要だと思うのです。何もかもというのは無理だと 思いますが、いかがでしょうか。 ○山本(尚)委員 今日、資料1でお示しいただいた中で、レセプト・データ ベースは可能な限り億単位、電子カルテ由来のデータベースを書いて1,000万 人規模と。とても区切りがいい数字で私は気持ちがいいのですが、実際にイン フラを整備するなどの場合、これが果たして目標として妥当な数字なのかどう かという説明をしていくときに、難しさが生じると思うのですが、数字として 根拠になったものはありますか。 ○座長 例えば、タミフルなどはどうなのですか。タミフルで飛び降りが多い のか多くないのか、何万人集めればある程度結論が出せたのか。 ○安全対策課長 目標という意味で目指すところが具体的に考えられるという 点では数字があったほうがいいのではないかということですが、それぞれの数 字には、同じユニフォームなエビデンスに基づいて数字を書いたわけではない ところがあります。端的に言って、レセプトのデータに関してはナショナルデ ータベース化の話があるので、日本でいえば1億ぐらいのオーダーにはなるだ ろうから、そこは1億という数字が当面2011年というのがありますから、その ぐらいの規模にはなってしまうということでの1億です。  電子カルテのほうで1,000万人ぐらいと書いたのは、その上に書いてある1万 分の1ぐらいの副作用、これは緊急安全性情報とかそういうものを出している、 安全対策上極めて重要な案件の過去の事例を縦覧すると、あまり精度はよくな いのですが、販売数量ベースとかそういったところから見積もったイベントの 発生割合が、おおよそ1万分の1オーダーというところにあって、これをもっと 精度よく、確実にきちんとつかまえるためのインフラが、我々には必要なので はないかという考え方を持っております。  先ほど望月委員がおっしゃった市販後の使用成績調査が、およそ3,000例と か、そういった母数規模なのです。相当なお金と手間をかけてやっているけれ ど、このぐらいの母数で集めたデータで1万例につき1例という副作用を、確実 につかまえるか、あるいはどれぐらいのレベルであるかを精度よく見積もるか ということをやろうとすると、データが足りない。もっと母数を大きく取らな いと、1万分の1ぐらいの頻度の副作用を早く精度よくつかまえることは、いま はできないのです。いまできないことを実現するという目標として考えると、 このぐらいの母数をうまくつかまえて、そこから評価をすると、1万分の1ぐら いのものについてまともな議論ができるのではないかと考えて、いわゆる3の 法則と言っている、100万分の1だったら300万ぐらい集めると、1例引っかけら れるとかという話はあるのですが、1例見つけるというレベルではなくて、ど れぐらいの頻度であるかをある程度の精度で出そうということになると、もっ と大きな規模が要る。  その辺をおおよそ見積もって1,000万ぐらいの母数までいくと、1万分の1に 対してのある程度の定量的な議論ができるデータが確実性をもって得られるの ではないかと、大ざっぱな計算ですが考えて、現状このレベルのデータは日本 ではまだ集められていない。でも、それを集められると確実に意味のある仕事 ができるようになるのではないかと考えるというところで書いているので、統 計学的な推計をするための精度のいいパワーのある数字としては、もう少し精 密な議論をしたほうがいいというのはそうだと思います。ただ、オーダーとし てはこのぐらいではないかということで書いたという意味合いです。 ○山本(尚)委員 ありがとうございました。 ○川上委員 あと、目的に応じた使分けというのもあってもいいかと思います。 例えば、注射薬を投与して1〜2週間の間に起こるイベントであれば病院情報を 使ったほうがいいわけですが、外来で紹介されて入院した後に他院に転院され た方のように医療機関をまたがっていったような長い経緯での転帰を調べたい のであれば、とても一カ所の医療機関の診療情報だけでは把握できないので電 子レセプトのように共通化した情報が必要です。何を調べるのかに応じて手段 を使い分けるような意味でも、永井先生がおっしゃったようにいろいろなもの があってもいいのではないかという気がしております。 ○座長 メリットがある程度早く見えないと、皆さんやる気がなくなって続か ない。何のためにやっているのか、1つでも2つでも、このように使えるのかと わかる例が必要と思うのです。先ほどの法制化の話は、事務局はどのようにお 考えですか。 ○安全使用推進室長 先ほどの法制化の話ですが、この議論は過去の当懇談会 でも同じような議論がありまして、法制化をすることによって先ほど来議論い ただいているような個人情報の保護の関係の部分で、より着実な対応がとれる という議論と、一方でいまの現状の個人情報保護法という枠組みとは違った形 で事業としての法整備をするということで、こういった医療情報データに、よ り則した対応とか制度みたいなものが、単なる個人情報保護法とは違って作る ことができるのではないかといったご意見も、これまでにこの懇談会の中でい ただいております。  そういういろいろなメリットもある部分ではありますが、まずどういう目的 で法整備をするのかとか、ここの議論だけでは何とも言えない部分もあろうか と思いますので、もしこの提言のポイントに書き加えるとすれば、安全対策等 の目的で医療情報データベースを構築し、利用するための法整備も視野に入れ て検討するという形の文章を、このロードマップの中に入れるような対応にし てはどうかと。これもあくまで文書上の提案ですが、事務局からはそういう形 でございます。 ○座長 いまの点についてご意見はございますか。そのほうが、社会にとって もデータベースを使う人にとっても安心ですね。我妻委員のご意見では、そう いうものが必須であると。どこまでどう作るかは。 ○我妻委員 説明責任と仕組みの正当性を明確にするには、法律という形で明 確化するのが不可欠だと思います。 ○望月委員 7枚目の「中期的な人材育成とインフラ整備の展開イメージ」で すが、人材育成というところが、このスライドでは薬剤疫学研究者の育成だけ しか見えてこないのです。先ほどからの議論にもありましたように、疫学研究 者だけではなくて、情報技術とかセキュリティの問題の人材育成というか、両 方が一緒にならないといい活用の仕方につながっていかないのかなと思います。 こちらの論点整理、資料2の9頁の(3)で、「大学・公的研究機関の役割」の中 に多少それらしき記述が入っているのですが、薬剤疫学研究者だけではなくて、 それも含めた人材育成という書き方にしていただいたほうがよろしいのかなと 思いました。  それと併せて、これは先ほどからのご議論にあるのですが、走りながらデー タベースの構築を考えながら、どのように利用できるのかも研究していく必要 があるというところがありますので、いろいろな人材養成のツールとして、走 りながら作っているデータベースを使いながらそういう人材が養成できるよう な、双方向性の形を作っていただけるとありがたいと思います。 ○座長 確かに、これまでの疫学研究者でもなく情報研究者でもない、両方が わかる研究者はいままであまりおられないように思うのですが、いかがでしょ うか。少し新しいタイプの研究者を育成しないといけないということだろうと 思います。 ○副座長 そうですね。 ○座長 そのほか、何かご意見はございますか。  それでは、大体ご議論いただきましたので、いまのご議論を参考にして事務 局で修正を行っていただき、ご異論がなければ、修正いただいた本日の資料1 の案を提言の骨子ということで調整したいと思います。実際の提言は、これを 肉づけしたものとしていきますので、今月の末を目処に事務局にご提出いただ けば、事務局のほうでそれを反映して、最終的な骨子案とするということです。 ○安全使用推進室長 事務局から確認です。そういう形でこれを骨子とするに あたって、本日の議論として大きなところで修正を行う部分については、先ほ どの「電子カルテ」という呼び名を「電子化された診療情報データ」という形 に置き換えるような修正や、全体のロードマップについても山本副座長からも ご指摘いただいたように、拠点でのモデルという部分は当面行っていくにして も、長期的な部分で一元的なシステムを構築するという部分を入れるというと ころ、また座長からもご指摘をいただきましたように、先ほど口頭で申し上げ ましたが、情報データベースの構築、利用するための法整備も視野に入れて検 討するというところを提言のポイントの中に入れると。それを大きなところと して少し含めた形で、あとは細かい部分でご指摘をいただいたところを反映さ せていただこうと思います。 ○座長 よろしくお願いします。  それでは、議題2で、今後の検討スケジュールについてご説明をお願いしま す。 ○安全対策専門官 資料3をご覧ください。これまで、勉強会を間に挟んで第 1回から第4回まで検討が行われてきており、本日は第5回目ということです。 今後7月の取りまとめに向けて、次回は第6回の懇談会を5月19日に、第7回の懇 談会を6月ごろに行ったあと、パブリックコメントを募集し、第8回の懇談会を 7月ごろに行い、提言を最終的に取りまとめるというスケジュールを予定して おります。 ○座長 よろしいでしょうか。それでは、本日の懇談会は以上で閉会とさせて いただきます。どうもありがとうございました。 照会先:医薬食品局安全対策課 電話番号:03−5253−1111