10/03/26 第1回医療裁判外紛争解決(ADR)機関連絡調整会議議事録        第1回医療裁判外紛争解決(ADR)機関連絡調整会議                     日時 平成22年3月26日(金)                       10:00〜12:00                    場所 ホテル ルポール麹町2階会議室 ルビー ○事務局 定刻になりましたので、ただいまから、第1回「医療裁判外紛争解決(ADR)機 関連絡調整会議」を開催します。委員の皆様方には、本日大変お忙しい中、遠方よりご出 席を賜りまして誠にありがとうございます。開催に当たりまして、医政局長の阿曽沼より 挨拶申し上げます。 ○医政局長 おはようございます。厚生労働省医政局長の阿曽沼です。今日は、委員の先 生方には大変お忙しい中をお集まりいただきまして、また、この会議の委員の就任をお引 き受けいただきまして、誠にありがとうございます。 医療事故に関する民事訴訟の数は、平成16年をピークに、ここ数年は少し減少傾向にあ ります。しかしながら、民事訴訟による紛争解決には解決まで時間がかかる、あるいは訴 訟にかかる費用が高い、さらに経過や結果が公開されるなど、患者側の、あるいは医療側 の双方にとって大きな制約もあると言われております。こういう背景の中で、医療分野に おいても訴訟とは違う紛争解決手段として、この裁判外紛争解決(ADR)制度の活用が注目 されているということです。  この医療ADRの活用については、弁護士会において主として全国の高等裁判所が存在す る地域の弁護士会を中心に活動が展開され、また茨城県においても、地元医師会を中心と した茨城県医療問題中立処理委員会等が取り組まれています。さらに昨年の12月には、千 葉県の「医療紛争相談センター」が、医療に特化したADR機関としては全国で初めて法務 大臣から認証されたということも承知しています。  このような医療ADR機関の設置が、今後も益々増えていくものと私どもは考えておりま して、厚生労働省としても、患者側や医療機関側の双方が利用しやすい環境を整えていか なければならないものと考えています。  この会議においては、実際に現場で活躍されている医療ADR機関の方々を中心に、活発 なご議論、あるいは情報の共有を行ってまいりました。私どもとしても、今後のADRの活 用の在り方など、幅広く学ばせていただきたいと考えています。  最後になりましたが、本日お集まりいただいた委員の皆様方におかれましては、この会 議の開催趣旨にご理解をいただいて、より実りある会議となりますようにお願いを申し上 げて、簡単ですが私どものご挨拶とさせていただきます。 ○事務局 医政局長につきましては次の予定がありますので、ここで退席をお許しいただ きたいと思います。 続きまして、委員の皆様方を50音順に紹介させていただきます。第1回ということです ので、お名前を私どものほうから紹介させていただいた後に、時間の関係もありますが、 委員の方からも一言ご挨拶をいただければと思います。まず最初に広島弁護士会仲裁セン ターを代表して、今田健太郎委員です。 ○今田 広島の今田です。広島で医療ADRの仲裁センターの設置の責任者を務めています。 よろしくお願いします。 ○事務局 続いて千葉の医事紛争研究会会長の植木哲委員です。 ○植木 はじめまして、千葉大学の植木と申します。医事紛争研究会の会長をやっており ます。ただいまご紹介をいただきました千葉県の認証第1号を取得したセンターです。よ ろしくお願いします。 ○事務局 仙台弁護士会紛争解決支援センター代表の小野寺信一委員です。 ○小野寺 仙台の小野寺です。よろしくお願いします。 ○事務局 続いて大阪の総合紛争解決センターの北川和郎委員です。 ○北川 大阪総合紛争解決センターの北川と申します。よろしくお願いします。 ○事務局 第二東京弁護士会代表の児玉安司委員です。 ○児玉 弁護士の児玉です。よろしくお願いします。東京三会ADRで斡旋人を務めさせて いただいておりまして、また病院側の代理人として、東京に限らず何箇所かのADRで紛争 解決に尽力しております。ユーザーの側でも発言をさせていただく機会があるかもしれま せん。ADRの発展を祈念しておりますので、先生方、どうぞご指導のほどよろしくお願い します。 ○事務局 続いて茨城県医療問題中立処理委員会代表の小松満委員です。 ○小松 茨城県医師会は中立処理委員会として、4年前に設立しております。担当副会長 の小松です。よろしくお願いします。 ○事務局 続いて日本病院団体協議会代表の小山信彌委員です。 ○小山 日本病院団体協議会の代表としてやってきました。私の立場は、病院側の医師の 立場、その病院の医師の立場によって、この会に参加させていただきました。よろしくお 願いします。 ○事務局 続いて医療過誤を考える会代表の佐々木孝子委員です。 ○佐々木 佐々木と申します。よろしくお願いします。現在、私は医療過誤を考える会を 設立して、活動をしておりますが、実は私も16年前に息子を医療過誤で亡くして、民事裁 判をしました。途中から本人訴訟ということをやりまして、いろいろ考えることがありま した。よろしくお願いします。 ○事務局 東京弁護士会を代表して鈴木利廣委員です。 ○鈴木 よろしくお願いします。 ○事務局 愛媛弁護士会を代表して田口光伸委員です。 ○田口 愛媛弁護士会の田口と申します。よろしくお願いします。一応、愛媛弁護士会は 総会員数が130人ということで、小規模会での医療ADRをどういう形でやっていくのかとい うことで、ご参考になればと思います。よろしくお願いします。 ○事務局 福岡県弁護士会医療ADRを代表して徳田宣子委員です。 ○徳田 福岡から参りました弁護士の徳田と申します。私自身、ご覧のとおり若輩者です し、福岡の医療ADRについても去年の10月にスタートしたばかりの、まだ若いシステムなの で、ここでいろいろなことを学ばせていただけたらと思っています。どうぞよろしくお願 いします。 ○事務局 続いて法政大学大学院法務研究科教授の中村芳彦委員です。 ○中村 法政大学の中村です。いまから20年前、第二東京弁護士会が、初めて弁護士会AD Rを全国に先駆けて設置しました、併せて私はそのときの委員でもありまして、この間、A DRの手続の運営、あるいはADRのあり方などについて考えたいと思いまいりました。どうぞ よろしくお願いします。 ○事務局 第一東京弁護士会を代表して西内岳委員です。 ○西内 弁護士の西内です。また後ほど簡単にご紹介させていただくかと思いますが、東 京の3つの弁護士会は、平成19年9月から医療ADRを開始しております。よろしくお願いしま す。 ○事務局 続いて札幌弁護士会紛争解決センター運営委員会委員長の橋場弘之委員ですが、 到着が遅れられているようです。  続いて全国有床診療所連絡協議会を代表して前田津紀夫委員ですが、前田委員もこちら のほうに向かっているという連絡をいただいております。  愛知県弁護士会紛争解決センターを代表して増田卓司委員です。 ○増田 愛知県弁護士会の紛争解決センターの副委員長、それからADR調査室の室長をやっ ております増田と申します。よろしくお願いします。 ○事務局 岡山仲裁センターを代表して水田美由紀委員です。 ○水田 昨年9月に設立した医療仲裁センター岡山を運営しております、岡山弁護士会の水 田です。よろしくお願いします。 ○事務局 医療過誤原告の会会長の宮脇正和委員です。 ○宮脇 医療過誤原告の会の宮脇です。私どもは医療過誤に遭って、裁判を検討又は医療 過誤裁判を闘っている原告で作っている団体です。医療過誤の場合は、医療被害者が原因 究明の壁に非常に苦しんでいて、ほとんどの被害者が闘うことをあきらめざるを得ない状 態です。今回、ADR機関が発足されましたが、本当に各機関の皆様、ご苦労さまと思います。 医療被害に遭って闘いをあきらめざるをえない人たちにとって納得のいく受け皿となって いくように、発展を願っています。よろしくお願いします。 ○事務局 京都大学大学院法学研究科教授の山田文委員です。 ○山田 京都大学の山田です。民事手続法、ADRを勉強させていただいております。よろし くお願いします。 ○事務局 続いて一橋大学大学院法学研究科教授の山本和彦委員です。 ○山本 一橋大学の山本です。大学では民事訴訟法、倒産法を教えています。ADR法、ある いは仲裁法にも関心を持って勉強しています。よろしくお願いします。 ○事務局 早稲田大学法務研究科教授の和田仁孝委員ですが、本日は遅れて出席される旨、 事前にご連絡をいただいております。  日本弁護士連合会を代表して渡部晃委員です。 ○渡部 日本弁護士連合会ADRセンター委員長の渡部晃と申します。日弁連は、一昨年の6 月に医療ADR特別部会というものを作りまして、全国8高裁所在地近辺に、それぞれの弁護 士会に医療ADR紛争解決センターを作ろうということで、取組みを始めました。この3月に はほぼその目的が達せられたところですが、これからはその医療ADRを充実させるべく頑張 りたいと思っています。この機会も、この時期にそういった場を厚労省に設けていただき まして、大変ありがたいことだと思っています。よろしくお願いします。 ○事務局 また、本日はオブザーバーとして、最高裁判所事務総局民事局第二課長の朝倉 課長にご出席いただいております。 ○朝倉 最高裁で民事訴訟、民事調停などを担当している朝倉です。医事紛争について、 社会全体でどのように解決していくのが、不幸にも起きてしまった場合に、患者の方々、 それから医師の方々にとって何がいちばんいいのかという観点から、ADRについて今日はい ろいろなお話を聞きながら、裁判との役割のあり方、もしくは連携の仕方などについても 考えさせていただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。 ○事務局 続いて事務局職員を紹介します。医政局総務課長の岩渕です。大臣官房参事官 として医療安全を担当している塚原です。医政局総務課医療安全推進室長の中野です。最 後になりましたが、私が事務を担当している医療安全推進室長の川畑と申します。本日は よろしくお願いします。  続きまして、当会議の議事進行等をお願いする座長について、お諮りしたいと考えてい ます。私どもの考えとしては、座長には一橋大学大学院法学研究科において教授を務めら れ、ADR、仲裁法に関する研究や教育に当たっておられる山本和彦先生にお願いしたいと考 えています。本日ご出席の委員の皆様、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○事務局 ありがとうございます。異議なしということで、理解させていただきます。誠 に恐縮ですが、それでは山本委員に座長をお願いしたいと思います。山本委員、よろしい でしょうか。                  (異議なし) ○事務局 では、以降の進行については山本座長にお願いしたいと思います。本日は報道 機関の方々もお見えですが、カメラの撮影についてはここまでとさせていただきますので、 よろしくお願いします。 ○山本座長 ただいま座長を仰せつかりました山本です。一言、私からご挨拶を申し上げ たいと思います。先ほど来、皆さんのご発言にありましたように、裁判外紛争解決手続( ADR)というのは、様々な分野において重要な役割を果たすことが社会から期待されており、 また、そのような方向に向けていろいろな政策が取られていると理解しています。とりわ けこの医療の分野においては、裁判外での解決というものが重要な意味を持っていると理 解しています。  先ほど医政局長がお話になりましたように、裁判外での迅速な問題の解決、あるいはな るべく費用がかからない形で問題を解決していくということは、非常に重要だと思われま す。また、このような事故、不幸な事故が起きた場合に、患者あるいはご遺族の方々が期 待する事故再発の防止という問題は、なかなか裁判の手続でそのニーズに応えていくとい うことは難しいところがあると思われます。そういう意味では、この医療ADR、医療におけ る裁判外紛争解決というものの社会からの期待というのは、非常に大きなものがあると理 解しています。 ただ、このADRというものは、何か制度を作ったり、法律を作ったりすればうまくいくと いうものではなくて、それを実際に運用する手続であるとか、あるいは運用される人という ものが、非常に重要なものであると思います。そういう意味では、ここにお集まりの、実際 にADRを行われている方々、あるいはそれに関心を持っておられる方々が率直に意見を交換 し、情報を共有し、問題点を認識し、それを解決するために取り組んでいくという作業は、 極めて重要なことであると理解しています。  私自身は、座長という大任には到底応えられない非力な者ではありますが、この場におけ る議論ができるだけ円滑に進められ、初期の目的を達成することができるように尽力してま いりたいと思いますので、委員の皆様方にも是非ご協力のほどをよろしくお願い申し上げま す。  それでは議事に入りたいと思います。まず、あらかじめお断り申し上げたいと思いますが、 この会議はご覧いただいて明らかなように、公開で行われることになります。議事録につい ては、厚生労働省のホームページで公表されると伺っておりますので、その点についてもご 了解をお願いしたいと思います。なお、意見交換等でご発言の際は挙手をいただいて、私の ほうから指名させていただきますので、その後にご発言をお願いできればと思います。  それでは、まず最初に事務局のほうから資料のご確認をお願いします。 ○事務局 本日は5種類の資料を用意させていただいております。資料1として、「医療裁判 外紛争解決(ADR)機関連絡調整会議」の開催要綱とメンバーの一覧を付けています。資料2 -1として、東京三弁護士会のほうからご紹介いただく取組みの資料です。資料2-2として、愛 知県弁護士会紛争解決センターにおける医療のADRについて発表いただく資料です。資料2- 3として、特定非営利法人医事紛争研究会のほうから発表いただく資料となっています。そ していちばん最後ですが、札幌弁護士会紛争解決センター運営委員会からの情報提供の資料 として、資料3を配付させていただいております。以上がお手元に配付している資料です。 ○山本座長 ありがとうございました。資料はおそろいでしょうか。よろしいですか。それ では最初に、本日の議事の全体について、事務局からご説明をいただきます。 ○事務局 本日の議事の流れを説明させていただきます。議題1として、まず本日の会議の 目的をもう一度先生方とおさらいしたいと思っていまして、それを冒頭に説明させていただ きます。続いて東京三弁護士会、愛知県弁護士紛争解決センター、及び千葉医療紛争相談セ ンターの順番で、それぞれ20分程度、取組みや特徴についてご紹介いただきたいと考えてい ます。その後、残りの時間を使って、紹介のあったADR機関についての取組み状況や課題に ついての意見交換等を行っていただければと考えています。また、今後のこの連絡調整会議 の議論の方向性についても、合わせて幅広くご議論いただければと考えています。  なお、第2回以降の会議においても、今日は3つの弁護士会からご紹介いただくわけですが、 引き続きこのような紹介を続けてまいりたいと考えているので、何とぞよろしくお願いした いと思います。 ○山本座長 ありがとうございます。それでは、まず第1の議題です。本会議の開催目的等 についてということですが、事務局からご説明をお願いします。 ○事務局 資料1の開催要綱をご覧ください。今般、先ほどの医政局長の挨拶にもありまし たとおり、まず私どもはこの医療裁判外のADR機関、いままでは医療の分野ということも、 なかなか取組み事例が少なかったと認識しておりますが、弁護士会や茨城県の医師会、千葉 の紛争解決センター等を通じて、医療の分野におけるADRがだんだん広がってきたと認識し ています。この活用をどのようにしていくかということで、まずはその活用のあり方を推進 するために、各取組みをされている現場の皆様にお集まりいただきまして、情報共有と意見 交換を行っていただければと考えています。  特に弁護士会の皆様におかれましては、既に弁護士会内部における連絡協議会のような意 見交換の場はあると存じていますが、それ以外の組織において、ADRの機関との意見交換と いうことがまだまだなされていないのではないかと、こちらのほうで考えまして、医療の分 野のADR機関の皆様に広く意見交換を行っていただくために、実際の医療裁判外ADR機関、 医療界の皆様、法曹界の方、患者団体の方々からお集まりいただいて、ここの場で情報を共 有していただければというのが、いちばんの目的です。  また、この会議は通常の検討会等とはちょっと性格を異にしておりまして、物事をここで 決めていくというよりも、情報共有をして、またここで何か皆様方で決めて、何か取組みの 方向性として、自発的に認識していただくということであれば、私どもとしても非常にあり がたいと思っています。例えば、3カ月、あるいは4カ月に1回という形で、常設委員会とい うような形の形式を持って、定期的に開催していきたいというのが、この会の趣旨です。  連絡調整会議は、私どもの医政局長が主催する会議として位置づけています。私ども医療 安全推進室が事務を担当させていただきます。くどい説明になりましたが、以上です。 ○山本座長 ありがとうございました。以上がこの会議の目的等として、事務局がお考えの ところです。委員の皆様方からご質問、ご意見等があれば承りたいと思いますが、いかがで しょうか。特段、いまの説明で疑問の点等はございませんか。よろしいですか。  それでは、いまのような会議の目的等を確認させていただいたということで、次に本日の 中心的な議題、ADR機関の取組み等の紹介及び意見交換に移りたいと思います。本日は第1回 目の会議ということから、医療関係の裁判外紛争解決に先駆けて取り組まれているとお伺い している東京三弁護士会、愛知県弁護士会紛争解決センター、千葉医事紛争相談センターの それぞれの代表の方からご発表をお願いしているところです。それぞれ20分ずつ程度のご説 明と承っています。まず最初に東京三弁護士会の取組みについて、第一東京弁護士会の西内 委員からご発表いただいて、その後に東京弁護士会の鈴木委員、及び第二東京弁護士会の児 玉委員から補足の説明をお願いしたいと思います。それでは、まず西内委員、よろしくお願 いします。 ○西内委員(第一東京) それでは私から東京の三弁護士会医療ADRについて、簡単にご説 明させていただきます。お手元の資料2-1に沿って進めさせていただきます。まず1枚目です が、これは日本弁護士連合会の機関誌である『自由と正義』の2007年11月号に掲載されたも のです。東京には3つの弁護士会がございます。そして従前から東京弁護士会は紛争解決セ ンター、第一東京、第二東京弁護士会は仲裁センターを各々設置しておりまして、従前から こういうADRの取組みは、事件分野に限らず行われていました。その経緯の中で、この1枚目 の「スタート!医療ADR」というところのいちばん上に書かせていただいておりますが、平 成19年9月から東京の3つの弁護士会の各紛争解決センターと仲裁センターの中に医療ADRを 新設してスタートさせております。  この東京三弁護士会医療ADRというのは、仲裁・和解あっせん人の人数として1名、2名、3名 の3つの体制があります。そのうち1名体制というのは先ほど申しましたように、従前から各 紛争解決センター、仲裁センターに所属されている仲裁・和解あっせん人が関与されるとい う形態です。それに対して2名、3名体制というものは、特に3名体制、場合によっては2名体 制を含むこともありますが、いわゆる東京三会方式と言われているものです。ちょっとわか りにくいかもしれませんが、そういうあっせん人の人数の体制ごとに分かれ ているという特徴がひとつあります。  次に資料の2枚目に移ります。その特徴ですが、ここから以下は専ら3名体制、ときに2名 体制を含む、いわゆる東京三会方式というものについてのご説明となります。これは、1枚 目の広報記事の中のそれぞれのパーツをアップで取り上げたものです。2名、特に3名体制の 特徴ですが、医療紛争の仲裁・和解あっせん人に関わるものとしては、医療紛争を数多く扱 う経験豊富な委員として、患者側で経験豊富な弁護士15名、それから医療側で経験豊富な弁 護士15名につき、それぞれの名簿を作成しております。3つの弁護士会がございますが、三 会共通の名簿として使用しております。それぞれ患者側で経験豊富、医療側で経験豊富な者 の各1名ずつが、仲裁・和解あっせん人として関与します。それからもう一人、先ほど申し ました従前から行われている仲裁・和解あっせん人が1名加わり、都合3名のあっせん人があ くまで中立な立場で仲裁・和解あっせん人として関与していくということを基本型としてい ます。この2名の新しい仲裁人が関与することによって、紛争解決を目的とするADRにおいて のスムーズな話し合いを導くことができるのではないか、その解決に至る可能性も高まるの ではないかという考え方、コンセプトに基づいております。  資料の3枚目がそれを図式化したものです。もちろん申立は患者側と医療機関側、いずれ もできます。そして、その次の白枠の中で書かれていることが、先ほど申し上げたことで、 この3名の仲裁・和解あっせん人が相互に協力しながら、両当事者間のスムーズな話し合い のお手伝いをする、調整役をするという形です。  次に資料の4枚目ですが、ここに「注意点」というのがあります。いま言ったように、患 者側で経験豊富、医療側で経験豊富なそれぞれの仲裁・和解あっせん人が関与するという点 について、最近は代理人をされる弁護士には相当程度、理解が浸透して来ているようですが、 患者側、医療側のそれぞれの仲裁・和解あっせん人が、患者側あるいは医療機関側について、 それぞれの代理人的な立場、あるいは代言をしてくれるのではないかという誤解が結構あっ たのです。先ほど申しましたように代理人をされる弁護士の間では、相当程度そうではない という理解が浸透してきておりますが、この3名は、それぞれの紛争解決の豊富な経験的知 見を活かしていただいて、そして、あくまで中立的な、公正な立場から関与していただく、 そういうコンセプトです。そこが、従前はかなり誤解されていたように聞いておりますが、 そこはくれぐれも東京三会方式の本当に基本的なスキームの点ですので、よくご理解をいた だきたいと思っています。それぞれの3名が中立的な立場から各々の医療紛争解決の豊富な 経験的知見を活かし、当事者の自主的な紛争解決を目指すべく、話し合いをスムーズに進め、 解決のために当事者が求めている事実関係の説明あるいは争点の整理などのお手伝い、調整 役をさせていただくという立場で関与していくものです。  このような特性を有するあっせん人による関与という制度は、裁判所による調停や訴訟上 の和解には見られない東京三会方式の特徴としております。  そして、まさにこの点を正確に理解していただかなければ、つまり誤解されると、東京三 会方式はうまく機能しないことから、あえて「注意点」として明記しているものです。  次に資料の5枚目ですが、具体的な進行はどうなるのかといいますと、当事者の努力によ る円満な紛争の解決をADRは目指すものですから、過失や因果関係という法的観点、つまり 法的な結論を導くために必要な過失はあるのかないのか、因果関係はあるのかないのか、そ ういうところが責任論として法的には問題になるわけですが、しかしそのような法的観点だ けに絞らない、その点に絞らずに他のものも含めて当事者の意向や要望などを広く話し合い の中で取り上げていくということを考えています。そして、そういう幅広く両当事者の意向 ・希望・要望を取り上げ、そしてそれらについても必要な話し合いをしていただく、そして その調整役をあっせん人はいたします。そのことによって相互理解の促進と柔軟な解決を図 る、あるいは目指すということを考えています。  少し下にいきます。赤線部分は私が引いたものですが、その意味でADRというのは、訴訟と は異なり、証拠によって白黒を付けるものではないという点です。ここがいちばん違う点だ と思いますが、当事者の話し合いや説明によって相互理解を図ることから、まずスタートし ます。だから幅広く要望事項・希望事項は取り上げ、その説明、話し合いによって相互理解 を促進する。これを第一ステップと位置づけています。この相互理解が促進されることによ って、両当事者間に解決に向けた気運が醸成され、高まってくれば、次のステップとしては 解決についての内容、あるいは方法などについての話し合いを行う。これを第2ステップと いう形で考えています。  先ほど申しましたように、東京三弁護士会医療ADRは平成19年9月からスタートしておりま す。そして、申立件数が70件を超えてきたこともありまして、あまり詳しく言うと皆さんは おわかりにならないかもしれませんが、東京には3つの弁護士会がありまして、それぞれに 紛争解決センター、仲裁センターというのがございます。その三会共通で設けた東京三弁護 士会仲裁センター連絡協議会というのがあります。そしてもう1つは東京三弁護士会医療関 係検討事件協議会というのがあります。この二つの協議会が平成21年3月に合同で東京三弁 護士会医療ADRのそれまでの運営の現状に関しての検証のプロジェクトチームを設置して、 調査・検証作業を進めてまいりました。もう報告書は取りまとめてあり、完成しております。 そして3月中には、公表に向けた三弁護士会の各会の決裁手続が終了する見込みです。それ が完成・終了すれば、場合によっては検証の報告書もこの会議にご提出できるかと思います。 私からは以上です。 ○山本座長 ありがとうございました。それでは鈴木委員から補足をお願いします。 ○鈴木委員(東京) いまの資料のいちばん最後の頁に、日本弁護士連合会が各会に照会を したものがあります。私も東京三弁護士会の数字を集計してみたのですが、細かな数字は、 若干の違いがありますので、大雑把なことを今日は申し上げたいと思います。  いま西内さんから説明があったように、全国の各弁護士会の取組み方について、スタート は、東京三会が日弁連を通して各地の弁護士会にご提案させていただいたというもので、 東京三会方式という所から本格的にスタートしたわけです。それ以前でも、特に愛知県弁護 士会などは、医療紛争を積極的に取り上げるというような形でやってきましたが、大げさに 言いますと日本全国の弁護士会、日弁連から東京三会方式を1つの参考にしながら、取組み を開始してみたらどうかということです。ここに書いてありますように、東京以外でも愛知 は前からありますが、大阪、広島、岡山、福岡、仙台、札幌、愛媛が始まっていることにな ります。  まだ始まった所もあれば、一定期間やっている所もあります。東京三弁護士会の合計数字 がいちばん多いわけです。大雑把に言いまして、この2年半のいくつかの弁護士会の活動の 数字的な統計からいいますと、申込件数は291件となっていますが、応諾率は約60%台後半 ですね。この数字ですと、応諾率は69%になります。東京三会ですと、63%ぐらいが応諾率 になっていることになります。そして応諾したもののうち、既に手続が終了してその中で成 立したものが、この表ですと約58%になりますし、東京三弁護士会ですと60%ぐらいになり ます。非常に大雑把な数字ですが、3件のうち2件が応諾されて、そのうちの約6割が和解に よって終了していることになりますので、全体からいいますと、申立件数のうちの約40%ぐ らいが和解によって終わっていることになります。  課題としては、これから細かな個々の事案の経験などを持ち寄って交流しながら、いかに して応諾率を高めていくのか、いかにして和解成立率を高めていくのかというところです。 以上です。 ○山本座長 ありがとうございました。 ○児玉委員(第二東京) 第二東京弁護士会の児玉です。東京に3つの弁護士会があること をご存じなかった方もいらっしゃるのではないかと思いますが、さまざまな歴史的な経緯が あって、東京には東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会と3つの弁護士会が ありまして、それぞれに組織を持っています。そして、このADRについても仲裁センターと いう形で、3つの弁護士会にそれぞれ医療ADRも含めた仲裁センターが置かれている状況です。  資料のいちばん最初にありますように、この医療ADRについては、もともと仲裁センター 発足時から、どのように進めていくかという問題意識をお持ちであったと伺っています。医 療に関してはさまざまな困難がある中で、今日この会に出させていただくのに先立ちまして、 第二東京弁護士会仲裁センター運営委員長の出井先生ともいろいろお話をさせていただいて いる中で、医療ADRについてこれまで一生懸命取り組んでくる中で、三会にある意味共通の 足場を持つ形で、かつ三会それぞれの仲裁センターの従来の仕組みを生かしながらやってく るということで、医療ADRの発展について「糸口がつかめてきた状態ではないか。この状態 を大変積極的に評価はしているので、さらに発展させていきたい」というお言葉を仲裁セン ターの運営委員長からいただいていますので、お伝えをしておきます。  第二東京弁護士会が特別な制度として設けておりますのが、手続管理者という制度です。 これは細かい話になりますので、資料等は配付していません。どうもADRという言葉につい て、漠然としたイメージは次第に市民の中に共有をされているところですが、いざ始めると いうことになってみると、いざ弁護士会にお出でいただいてみると、どのように進めていっ たらいいかわからないというような方もいらっしゃるわけです。これについて、第二東京弁 護士会では、手続に関する相談、いわゆる手続相談という制度をADRの前に置いていまして、 この手続相談の制度を医療ADRに応用する形で手続管理者を置いて、特にADRをスタートする、 実際にあっせん人が間に入って双方の意見を聞きながら、紛争解決の手続をスタートする前 の部分の導入のところで、さまざまなサポートをしていただいていると承っています。  現在この手続相談のやり方について、いろいろと実際に手続相談に携わっておられる先生 に何人もお話を承ったのですが、こういうやり方で、こういうマニュアルで、このように進 めているというものが確定的にあるというお話ではありませんでした。第二東京弁護士会の 手続相談についても、さまざまな模索が続けられている状況だと思います。  私は個人的には、医療に関する裁判も大変多数取り扱ってまいりましたし、それからこの ADRに関しても、あっせん人として、また病院側の代理人として何度も事例に参画をさせて いただきました。もちろん裁判であれ、裁判外紛争解決手続であれ、紛争解決は理屈も人情 もあるものでなくてはいけないと思っていますし、また実際そのように進められているとこ ろです。とりわけADRの手続の中では、理屈もある、人情もあるという良い解決が実績とし て積み重ねられているように思っています。  どこかの時点でお話を聞きたいと思っているのは、山田文先生がADRの手続と秘密性につ いて論文をお書きになっていて、本当はこのADRがどのように活動して、どのような良さが あるかということを、東京三会のこれだけの数の経験をお伝えしようとすれば、こういう外 枠の説明ではなく、日々どんな取組みが行われているか、具体的な事例をお話できればとい うような、やや隔靴掻痒の感を感じています。ただ、ADRの中での手続の秘密性ということ を視野に入れながら、よく考慮しながら、市民の方に医療ADRの取組みを十分ご理解いただ くというのも、この会議の1つの役割ではないかと思っています。以上です。 ○山本座長 ありがとうございました。大変重要な問題提起をいただいたかと思います。そ れでは、いまの東京三会のご報告についてご質問等もおありかと思いますが、ご質問、意見 交換については、一応、本日の3つのご報告すべてが終わったあとにしたいと思っています。 引き続きで恐縮ですが、愛知県弁護士紛争解決センターの取組みについて、増田委員からご 紹介をお願いします。 ○増田委員(愛知) それでは、愛知県弁護士会の紛争解決センターにおける医療ADRの取 組みについてのご報告をさせていただきます。資料としては、2-2を配付しています。1〜9 頁まであります。6頁以降は、愛知県弁護士会の紛争解決センターのリーフレットをコピー したものですので、これを適宜ご覧になりながら説明をしたいと思います。  愛知県弁護士会の医療ADRというのは、特に東京三会のように「医療ADR」と銘打っている わけではありません。一般の紛争解決手続の中で、医療事件を取扱っているということです。 まず簡単に、愛知県弁護士会紛争解決センターの概要について説明をさせていただきます。 平成9年4月に、愛知県弁護士会の本会に「あっせん・仲裁センター」を設置しました。これ は、愛知県弁護士会でいいますと、10番目のADRセンターということになります。平成11年 4月に、愛知県の西三河支部という所にも、「あっせん・仲裁センター」を設置しました。 そして平成20年6月に、ADR法第5条に基づく法務大臣の認証取得を得まして、これをきっか けに「あっせん・仲裁センター」から「紛争解決センター」に名称を変えています。  その概要ですが、取扱事件としては、民事紛争すべて。これは話合いで解決するものであ ればすべて持ち込んでいただくということになります。医療事件もこの対象にしていまして、 その部分がいわゆる医療ADRということになります。後にご説明をしますが、愛知県弁護士 会の取扱事件の中で多いのが、この医療事件と建築紛争ということになります。申立件数に ついては、3年間の資料の数字を出していますが、平成19年が、本会と西三河と合わせて30 8件、平成20年が316件、平成21年が292件ということで、年間大体300件ぐらいの数で推移を しています。管轄については特に制限がありませんので、医療事件でも、お隣の静岡県の方 が静岡県の病院を相手に申立をされて解決をしたという事例もあります。  手続としましては、和解のあっせん、仲裁の2つです。和解のあっせんというのは、当事 者が話合いをして最終的に和解契約書を作って、それで終結をするということです。仲裁に ついては、これは仲裁法の手続に従って、最終的に仲裁判断をして終了をするといった事件 で、これは年間、仲裁で終結をするのが一般事件を含めて2、3件というところです。手続に ついては、当事者一方からの申立によって開始し、相手側が応諾をすることによって開始を するということです。申立をしても相手側が応諾をすると、要するに応諾率を高めることが、 このセンターで紛争解決をしていくうえの1つの重要な要素になります。申立に当たって相 談前置を取っている弁護士会もありますが、愛知県の場合は弁護士の相談を経なくても、当 事者が本人でそのまま申立をすることができるということで、窓口としては広く設定をして います。  費用としては、申立手数料が1万500円、期日ごとの手数料はいただいていません。そして、 事件が和解、仲裁等によって解決した場合の成立手数料としては、これは解決額に応じてい ただいています。例えば、解決額が100万円であれば、現在は6万4,400円、500万円であれば 17万6,400円です。これは、申立人、相手方当事者の折半が原則になっています。これは、 申立人、相手方双方にとって、我々センターで解決したことが利益になるという考え方に基 づいています。  それから、あっせん・仲裁人の候補者ですが、ここに書いてありますように、弁護士、カ ウンセラー、建築士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、それから国際商事といった形で、候 補者を選任しています。愛知県弁護士会の会員が全体で1,300名ぐらいですので、弁護士15 3名というのは、その1割強ということで、弁護士経験、それから法曹経験も含めてですが、 10年以上の弁護士を候補者として選任をしていることになります。  その次にキの所で「専門委員」と書いてありますが、これは医師3名、歯科医師2名を候補 者として選任をしています。専門委員というのは、実際に手続実施者となるのではなくて、 医療事件についての専門的な知識をあっせん・仲裁人等に教えるといいますか、あっせん・ 仲裁人の医療事件に関する専門的な知識を補充するために、お手伝いをいただいているとい うような位置づけです。  紛争解決センターの運営は、基本的には運営に関する特別委員会が行っていまして、その あとにADR調査室と書いてあります。これは、昨年の7月からスタートしまして、当会の場合 には先ほど申しましたように、相談前置を取っていませんので、あらゆる紛争、法的にあま り整備されていない紛争といったものが持ち込まれますので、ADR調査室委員6名が週3日午 後2時間ずつ交代で事務局に張り付いているのです。そちらのほうで、いわゆる裁判所です と書記官的な役割をする。申立書を点検をして、それについて補正をする必要があるものに ついては、書面や電話等で補正をすると。それから事件の内容を検討したうえで、その事件 にふさわしいあっせん・仲裁人を選任するといったことをしています。  このADR調査室を立ち上げたことによって、事務局は選任で3名でやっていますが、単に手 続相談に留まらない内容に渡るような相談まで事務局に持ち込まれることがあります。 そういったものについては、このADR調査員が対応していることになります。  次に、愛知県弁護士会の医療事件の処理です。基本的には、一般のあっせん・仲裁の手続 と同様ということですので、原則として、あっせん・仲裁人の人数は弁護士1人を選任して います。通常は、医療事件の代理人経験のない弁護士を選任していまして、ただ例外的規則 上は事案に応じて3名まで選任するということができることになっていますので、事案に応 じて1名から3名の範囲で選任をすることになります。  先ほど東京三会からも報告がありましたが、日弁連ADRセンターで東京三会方式を参考に しながら医療ADRの充実を図るということで、一昨年6月から動いています。私ども愛知県も、 昨年の8月に、事案によっては東京三会方式、いわゆる医療側代理人経験のある弁護士、患 者側代理人経験のある弁護士、経験のない弁護士の3名体制による審理制度を導入をしまし た。そして、医療側、患者側の代理人経験のある弁護士のあっせん・仲裁人を候補者として 8名ずつ選任をしています。ただ現時点では、東京三会方式による3名体制による実施例はご ざいません。これはなぜかと申しますと、後ほどまた説明をしますが、愛知県の場合には相 手方、特に医療機関側ですが、代理人が選任される場合が非常に多いです。それから、申立 人側も代理人が付く場合が多いです。その代理人というのは、医療事件にかなり習熟してい ますので、争点がかなり整理をされて出てきます。そうすると、あえて東京三会方式をとら なくても、医療事件の経験のない弁護士が間に入って、あっせん、あるいは仲裁することに よって十分解決が可能です。  医師の専門委員制度ですが、これは先ほど申しましたように、あっせん・仲裁人の医療知 識を補充するといった役割です。候補者として専任していますのが、消化器外科、整形外科、 産婦人科、それから歯科医師が2名です。愛知県には4つの大学病院と歯科大学が1つありま すので、この候補者の選任は、そういった所に推薦を依頼しています。  愛知県の実績ですが、資料の4頁以下をご覧ください。愛知県の場合には、平成9年4月に あっせん・仲裁センターが立ち上げられたときの1号事件が、医療事件でした。これまでの 10年余りの中で、医療事件についての申立件数が250件を超えています。平成19〜21年の3年 間を合わせますと、合計101件の申立がありました。代理人が選任をされている率について は、申立人については平均で59.4%、平成21年については70%です。それから相手方の代理 人の選任率は平均で82.2%、平成21年で見ますと80%です。双方に代理人が付いているのが、 3年間平均で49.5%、平成21年は55%になっていまして、代理人の選任率が非常に高いこと が特徴かと思います。  仲裁人の数ですが、弁護士仲裁人の数としては101件のうち99件が1人で担当していまして、 2件について2人で担当をしています。この2人は、いずれも医療事件についての経験のない 弁護士です。それから医師の専門委員を付けた事件は、3年間で延べ5人ということで、平成 21年は3件ありました。これは代理人が付いているけれども、あまり医療事件について経験 のない方であったり、あるいは本人申立であったりといった事件について医師の専門委員を 選任して、あっせん・仲裁人の医療手続を補充していただいたということです。  次の応諾ですが、愛知県の場合は非常に応諾率が高くなっています。3年平均で89.2%、 平成21年は93.4%です。医療側がどうして応諾するのかということですが、愛知県の場合に は、医療事件を中心的に扱っている事務所が、ある程度限られているというところ。医療側 としても、紛争解決センターに申立られた事件に応諾し、その手続の中で、医療機関側とし て説明責任を果たしたいというお考えをお持ちだということです。また、愛知県の場合は期 日手数料を取っていませんので、期日手数料をもし取ることになれば、お金を払ってまで説 明会に行くのはどうかということになるのかもしれませんが、期日手数料をいただいていな いことも、医療機関側がセンターに出てきやすくなっているのではないかと思います。終結 結果については、これまで101件中37件が和解で成立しております。継続中の事件を除きま すと74件ですので、そのうち解決した事件の半数が和解で解決していることになります。  5頁ですが、和解により終結した事件については、第1回期日から終結までの日数は、平均 で93日、3カ月ということになります。通常、第1回期日は申立から1カ月以内に入れており ますので、大体4カ月程度で解決しています。審理回数は最高6回、平均3.4回です。解決額 については最高3,700万円、平均371万円です。和解の内容としては金銭の支払いもあります けれども、再発防止であったり、今後の経過観察のために病院に赴く場合、治療費は医療側 で持つといった、単に金銭解決だけではない和解ができているかと思います。  レジュメの2頁のいちばん下から、過去3年間の実例ということで、3頁にいくつかの事例 を挙げております。これはいずれも和解によって解決した事件です。アが一般的な医療事件 です。この中には有責性について争いのある事件もあります。イが歯科の事件、ウが美容整 形、エが鍼灸院等の医療の類似行為ということで、医療にかかわる事件を幅広く処理してお ります。  3頁の(5)の「特徴」にまとめましたように、愛知県弁護士会の紛争解決センターにおいて は、有責事案における賠償額の確定だけではなく、有責性に争いが有る事案についても解決 しています。申立人、相手方のいずれも医療事件に習熟した代理人が付くような事件では、 その場で争点がかなり整理されています。そういったものに基づいて話合いを重ねていけば、 妥当な解決が得られているというところがあります。医療機関側としては説明会ということ で、患者さんに何とか説明をしたい、そういう場はなかなかないけれども、紛争解決センタ ーで説明をしたいということで、そういう受け皿になっているところはあります。医療側の 経験のある弁護士にお聞きしますと、こういう所で説明を尽くした事件については、その後、 裁判を提起されたりする頻度は非常に少なくなっているとお聞きしております。ウは、いま 申しましたように、医療事件に習熟した代理人の選任率が高いということ、エは、医療側の 応諾率が高いということがあります。オのあっせん・仲裁人の医療知識の補充については、 愛知県の場合は、医師の専門委員を活用しています。私からのご報告は以上です。 ○山本座長 続いて千葉医療紛争相談センターの取組みについて、植木委員からよろしくお 願いいたします。 ○植木委員(千葉) 我々の名前は、特定非営利法人医事紛争研究会というのが母体です。 こういう研究会をつくったのが平成15年の9月です。私が、たまたま平成15年に千葉大学に 着任したこともあり、その中で医療紛争に特化した研究会をつくりましょうということにな ったわけです。そのときになぜこういう会合が可能になったかというのには、2つの理由が あります。  1つは、千葉地裁との間で従来から、複数鑑定を一緒に研究するという機会がありました。 このため医療裁判において鑑定方法を見直すというか、裁判になったときの問題として、鑑 定のあり方をどうしようかということをお互いに研究しておりましたので、裁判所との関係 が非常に緊密でありました。もう1つは医師会との関係も、非常に友好的に運んだというこ とです。医師会の会員の中に、ADRによる医療紛争の解決に非常に関心の高い理事の先生 がいたりして、こういう研究を是非これから進めようということで、医師会も団体として加 入されたわけです。また、弁護士会も是非一緒にやろうという機運が高まり、大学関係者と 協議をして、こういう研究会を始めたわけです。  その過程で平成18年にADR法ができましたから、これを中心のテーマにして、これからど ういう制度設計をするのがいいかということについて、検討していこうということになりま した。これも非常に偶然ですが、たまたま当時の千葉地裁の所長さんが、ADR法を自ら法務 省の参事官として作られたという経験があったこともあり、その所長さんも非常に熱心で、 一緒に研究するというラッキーな状況が重なって、ADR法の研究を大いに進めることになっ てきました。  それから平成19年に、認証に向けてどういう具体的なプロセスを取ったらいいのかという ことで、千葉県の担当者といろいろ相談をしたところ、任意団体としてのNPOの法人化がい ちばん手っ取り早いだろうという形に落ち着き、この医事紛争研究会というのが機構として、 千葉県知事の認証を得ました。それが整った後で、千葉県のほうから若干の補助金が出て、 これをさらに進めてもらえないだろうかという話があり、平成20年度から認証に向けて、法 務省と折衝を始めたということです。  その過程で、やはり実績を少し出してほしいと言われました。そのためには我々の別働機 関である医療紛争相談センターというものをつくって、実績をつくらないといけないという ことになったものですから、これからご説明する相談センターを別の部隊と言いましょうか、 その下部機構として平成21年の4月に実働させました。そういうようにしてだんだんと機構 を整え、相談委員候補者の研修や調停委員候補者の研修を随時行う形で、法務大臣からの認 証が12月1日に出るようになりました。これが昨年のことです。  全体の機構図は、資料の最後に添付してあるパンフレットの通りです。これを見ていただ くと分かりますように、我々のセンターは2つの大きな問題の簡潔を前提にして考えられて います。1つは最後の頁にあると思いますが、医療紛争が発生したとき、手続の申込みや受 付をするわけですが、そのときに必ず医療相談をやります。電話がかかってきて日程を調整 して、必ず医療相談を1時間受けていただきます。そのため医療のエキスパートである相談 委員の先生方とは、随分と長いこと時間をかけて相談の取扱について検討してまいりました。 これにより医療相談を受けていただきますと大体8割方は、そこで解決するというのが医療 紛争の現実だと思います。  それでもまだ紛争が継続・深刻化する場合には、調停・あっせんの申立を自主的にしてい ただきます。その中で申立が出れば、当然のことながら調停委員会というものを設置して、 事案ごとに、医療の専門家である医師と医療に関係する弁護士さんが中心となり裁判所類似 の手続、調停の手続をやることになります。それに学識経験者が加わり、第三者的にそれを 監視していく立場の三者構成で、調停を運営していくことになります。それが実際の流れと いうことになってまいります。認証は12月1日ですが、実際に動いているのは昨年の4月6日 からですので、この4月になりますと1年になります。  私の見たところ、その間の大きな事項をまとめたものが、手続の実施状況と書いてあるも のです。電話はたくさんまいりますけれども、必ず医療相談を受けていただくことになりま すので、相談者は、実際に1時間の予約を取って千葉まで来ていただくことになりますと、 関東一円の方が圧倒的に多いわけです。千葉県が半分ぐらいで、東京が半分の半分、その他 に茨城や埼玉といった所が入ってくるという感じでやっております。これまでに大体151件 の医療相談を受けていただいております。そういう中で調停手続へ入っていくのは2割弱、 申立件数は現在24件となっております。申立の中身は23件が患者さんからの申立ですが、そ の他が1件、医療機関から説明をしたいという方もいらっしゃるわけですから、当然、医療 機関から申立をされる場合も例外的にあります。  そこにありますように、そのうち応諾件数が8件、不応諾が13件、その他が3件となってい ます。非常に応諾が悪いように見えるかもしれませんが、実はそうではなく、申立件数その ものが24件ということで、大体15ないし16%ぐらいですから、大半は医療相談の手続の中で、 ある種の不満というのは解消していることになります。そういう中で応諾をされたものが8 件です。それから、これはもう状況的に見て裁判に行ってもらうほうがいいという形で、診 療側で不応諾という形をとられるものが13件、その他ということになっております。  そこで申し立てられた診療科目ですが、そこにありますように内科、外科、整形外科等で す。そこには医療紛争の代表的な事案が連なっていると思います。通称、医療紛争御三家と 言われるものがあるわけですが、これをザッと見て産科の事例がないということに、若干の 驚きがあるかもしれません。おそらく産科の場合は無過失補償制度が実施されましたから、 当面はそちらのほうへいっているものと思います。それが後に紛争事案となってくればくる のかもしれないという状況です。医療機関の種別等は、多くは公立であれ私立であれ、病院 関係が比較的多いということです。もちろん民間の診療所もありますけれども、それほど多 くないというのが現実です。  応諾があった場合の処理状況についてお話します。応諾されたものの中では、今ずっと審 理をしている最中ですが、すでに調停が成立した事案が2件、不調になったものが3件、係属 中が3件というように、少しずつ調停が整いつつあるというのが現実です。また、法務省の 認証も得られましたあとからは、これからますます成立の方向へ動いていくのではないかと 私は考えております。  結局、組織体制をどうするかということになりますと、相談委員は大変な仕事と言えます。 各申立人に医療相談を1時間受けていただきますので、ベテランのお医者さんを探してくる のがいちばん大変です。今のところ医師2名、歯科医師1名、看護師1名の4人体制で、月・水 ・金と、週のうち3回時間を取ってやっています。そのうちの大半は相談で解決してくれま すが、どうしてもあっせん・調停へ移行したいという方もいらっしゃいます。そのため調停 委員候補者をあらかじめ指定してお願いしておきます。今21名を予約しております。各診療 科目の代表的なものはほとんど網羅するということで、調停委員として医師12名、歯科医師 1名、裁判官を経験された方を含めて弁護士4名、学識経験者4名という体制でやっておりま す。事務局は、ここには1名と書いてありますが、4月から2名になります。1人は相談につい ての事務をやる方で、もう1人、4月からは千葉地裁の書記官を定年でお辞めになっている方 にお手伝いしていただき、調停事項の事務を担当していただきます。こういう2名体制でや っております。  まだできたばかりですから、確定的な評価は当然できないわけですが、私の印象だけをこ れから少し申し上げます。これはあくまでも私見ですので、公式の見解とは違います。私が これにかかわって見たところ、いくつかの問題点を含めて感じることがあります。1つは、 申立診療科目を見ていただいても分かりますように、一般に紛争がよく出る診療科目と、そ うでない科目というのがあると思います。ここでは産婦人科のケースが取り上げられており ませんが、とりあえず今、産科補償制度、無過失補償制度が動き出したところですから、当 面はそちらのほうへいって、紛争としてはまだ出てきていないということでのバラつきもあ るのだろうと思います。要するに、おおむね裁判所の紛争事例とそれほど変わらない申立の 診療科目があろうかと思います。  それと、今のことにも関連するわけですが、こういうセンターを開きますと、我々は開く 前によく言われたことがあります。特に医師の先生方からは、こういうものを開くと、たぶ ん紛争や裁判が増えて大変になるのではないか、というご心配の向きもあったように思いま す。あるいは、これは最終的に保険による支払いとの関係がありますので、保険会社におい ては保険の出費が増えるのではないかという懸念を随分聞きました。しかし、認証されてわ ずか3、4カ月ぐらいですが、その間の経過を見ておりますと、必ずしもその批判は当たって いない、あるいは、それは杞憂にすぎないのではないかという印象を持っております。  それはなぜか。裁判所との関係で申しますと、千葉地裁では年間大体26、27件の紛争事例 が裁判になっております。3月が終わらないと統計が出ませんから、何とも言えませんけれ ども、昨年12月末の段階で裁判所にお聞きしますと、昨年度に入ってきたのが18件でした。 今年、最終的に3月末までにどのぐらいになるのか、22、23件ぐらいになるのかどうかは分 かりませんが、いわゆる裁判になる事例というのは、相対的に少なくなっているのではない かという印象を持っております。  もう1つは、同時に私は千葉県医師会の紛争処理委員会にも入れていただいているわけで すが、最近の傾向をずっと見ておりますと、月に大体10件が審査をされてきたというのが、 これまでの経験でした。これが1月、2月の段階になってきますと、非常に減って3件前後に なっています。これが何を意味するかというのは、もっと分析をしてみないと分かりません が、申立人が仮に患者さん側であったとしても、裁判までして最終的に争い事をして解決を するということを、本質的に望んでやっているということではないのです。是非ともそれに 替わるものとして、迅速かつ専門的な判断のできる第三者の公正な機関があれば、そこへ委 ねることは十分あり得る、という選択肢をとっていらっしゃるのではないかと思っておりま す。  また、千葉県は当然のことながら、医療法に基づく医療相談事例の報告をしなければいけ ませんから、その相談事例がどのぐらい来ているのかということが問題になります。これも 7月か8月ぐらいにならないと結果は見えてきませんけれども、いわゆる紛争事例というのは、 私は相対的に減っているのではないかと思っています。これは憶測なので真偽のほどはわか りません。  このように、1つには、医療ADRができたから医療紛争が頻発委るとか、増長するというこ とは、たぶんないでしょう。もう1つ、裁判所などの関係で言いますと、産科の事例が今こ こに入ってきていないことからも見られるように、たぶん今後は裁判所とADRの間で、解決 の方法についてある種の住み分けを考えなければいけないということです。それはどうして も問題になってくるだろうと思います。仮に産科の事例が出てきたとして、ADRでそれが解 決できるかというと、なかなか難しいだろうという印象を持ちます。それはなぜかと申しま すと、やはり金額がすごく嵩みます。もう1つは、原因の特定が非常に多岐で難しいという ことであろうかと思います。そういうものは、最終的に裁判所で争って解決していただくほ うがいいのではないでしょうか。  いままでの経験からしますと、大体100万円前後の和解金が出るものが多いことからしま すと、軽微な診療過誤に関連するものと、いわゆる説明義務違反に関する事案というのが、 ADRの解決としては圧倒的に多くなるわけです。応諾があった事件の処理件数や処理の状況 を見ても、それらを類型化すると大体4つか5つぐらいに分かれます。1つ目は診断について の争い事、2つ目は治療、処置・手術等に関する争い事、3つ目が治療中の医療機関側の対応 についての争い、4つ目が医療事故発生後の医療機関に取られた対応についての主張・文句 というか争い、その他というようになっています。そういう中で解決した事案を見ますと、 全部が裁判所に行く必要のない事案が多く存在するのです。そのことから判断して、ADRは 裁判所を補完をしながら紛争の解決に当たることができること、その意味で裁判とADRはそ れぞれの特徴を活かして共存できるのではないかというのが、私の考えているところです。  もう1つは、そういう医療ADRの基本プランは、どういう風に評価されているのかという ことです。少なくとも千葉県の場合は、県の協力やいろいろなこともありまして、少し認 知度が増えてきています。特に認証があった後はまた増えて、こちらのほうへ解決を委ね る県民の方が多くなっているということを、実感として持っております。県民の皆さんは 比較的よく思っているというか、解決された内容についての異論・反論はあまり聞いてお りませんので、当事者は非常に満足して解決されているという印象を持っております。  こういうことをやっていて、結局問題はどこにあるのか。医療相談の先生、調停委員、 事務局等と合わせて、総計30名前後を事前に確保しておくことが必要になります。最終的 にはこれに要する財政負担というのがいちばん大きいわけで、これをこれからどうやって 解決していくのかということです。いままでは千葉県から若干の補助金を出していただい ておりますが、将来的にはどういう形で予算化していただけるのかということも含め、検 討しなければいけません。あるいは、これをもっと全国的に展開するとすれば、どういう 形がいいのかということについては、その設置・機構体制を含めて、財政的な基盤をどう やって確保していくのかということが大きいと思います。いまはほとんどボランティアで 手弁当でやっております。これがずっと制度として確立したときに、ボランティアでいつ までも続くかというと、やはり難しいだろうという印象を持っております。以上です。 ○山本座長 ありがとうございました。以上、3つのADR機関からご発表いただきました。 大変貴重な興味深い情報提供をいただけたかと存じます。残された時間で、いまのご報告 に対してのご質問あるいはご意見、何でも結構ですのでお願いできればと思います。 ○小松委員(茨城) 茨城県の中立委員会の小松でございます。いま3人の委員から発表さ れましたけれども、この委員会のメンバーを見てもわかるように、医師会から出ているの は私1人です。正直言ってこのADR関係の委員会というか、組織というのは弁護士会を中心 になされているというのが事実かと思っております。私どもが中立委員会というものを組 織したのは、医師会側の提案でつくらせてもらいました。いままでの3つの組織と違うとこ ろは、予算を茨城県医師会から出していることです。これが年間400万円で、会員から集め た会費から出しております。それと、もう1つ違うのは、申立料も成功報酬も一切取ってい ないということです。また、どんな人でも申し立てることができるというのが特徴かと思 っています。  そこで、増田先生に質問です。解決額が高いですよね。この額が日本医師会の賠償責任 保険の関係とは、どのようになっているのでしょうか。あれはまず、最初に日医に出さな いと保険が下りないことになっていますよね。その辺が私の所でも非常に問題になってい ると思うので、これを教えてほしいと思います。 ○増田委員 制度の運営にはかかわっておりますけれども、実際に相手方の医療側の代理 人ではないものですから、日医との関係でどういうようにお金が出ているのか、私自身は よく分かりません。 ○児玉委員 利用者として、医療機関側でADRを使わせていただいているのですが、医療機 関側あるいは代理人も関与しながら、保険との関係調整は適切に進められて、ADRの中で保 険を利用した、しかも保険会社側から見ても納得のいく解決というのが、もう随分事例が 積み重ねられているところです。医師会の関係にかかわる事案でも、東京ですでに事例が 随分出てきております。 ○植木委員 最終的にはお金の問題ですから、保険で出していただかなければ、どうしよ うもなくなってきます。そこで我々が制度設計をするときに、その点をどのように解決す べきか、またどうすればいいのだろうかといろいろ考えました。ご案内のように日本医師 会の場合、100万円以上は日医のほうで承認を得なければいけないということになっており ますので、そのことも含めて県の医師会とも相談しました。たまたま我々の組織について は、県の医師会は当然のことながら問題はないという見解であり、100万円までについては 絶対的に県の医師会の保険から出す、保険から填補することに吝かではないという了承を 得ました。これを公に言っていいかどうかは分かりませんが、100万円まで保険で補填され れば、その同額程度は医師の個人負担で解決するほうが良いとする会員は増えることにな るでしょう。問題は100万円を超える場合ですが、この点につき日本医師会側と交渉しまし たら、同会につきましても千葉県のADRはそれほど変なことをやっていないということを認 識されつつあると思っています。そこでできるだけ善処するという返事をいただいており ます。私は「誓約書を書いてほしい」と申し入れましたけれども、そこまではできないけ れども尊重するという形で、日医のほうはご理解を得られつつあるのではないかと思いま す。  もう1つは、今のところ、それはあまり中心的な問題にはなっていないということです。 被申立人のほうが病院が多いことから、病院は日医の保険に加入していない場合は自家保 険をやっています。そちらのほうは自分の保険会社と調整をされたら解決する問題ですの で、いまの日医の限度額の問題というのは、直接的には問題になっていないと理解してお ります。 ○小松委員 ありがとうございます。 ○山本座長 非常に重要な問題ですが、よろしゅうございますか。 ○宮脇委員 原告の会の宮脇です。いまのお話を伺って、大変学ぶことが多くありました。 被害者側も病院側も紛争を解決していく上では、やはり事実関係の明確化や正確な原因究 明が基本的に大事だと思います。ADRの報告をお聞きしまして、特に愛知県の場合は代理人 の選任という形をとられていて、そこで事件の整理がされているとおっしゃっていました。 病院側からの説明責任を果たしたいということが相当強いということでしたが、ADRを本当 に成功させていく上では、やはり病院側の態度というか、積極的にかかわっていく姿勢が 非常に大きなカギだろうと思います。そういう点で千葉県でも、相談段階でその点をかな り努力されているのではないかと感じました。ADRでの病院側の積極的な姿勢を、どうやっ て引き出す工夫をされているのか、愛知県と千葉県についてお話いただければと思います。 ○増田委員 愛知県の場合は平成9年の4月に立ち上がって、それから延べ250件の医療事件 をやっております。そうすると医療側の代理人もこの10何年の間に、紛争解決センターで 解決することが、本当に患者さんにとっても、もちろん医療側にとってもいい解決になり、 お互いにこれからの質のいい医療を進めていく上で大事だという認識を、次第に深められ てきています。そういったこれまでの積重ねが、医療側が紛争解決センターによって応諾 をして解決したいという事例につながっているのだろうと思います。 ○植木委員 最終的にこれは和解調停ですから、病院側が応諾をするということでないと、 当事者が申し立てただけではどうにもならない。仲裁とは違いますので、話合いが着かな いだろうと思います。この問題について、いまは確かに患者側からの申立が圧倒的に多い というのは、ある意味で当然のなりゆきだと思うのです。しかし、医療機関側からも申立 をされている例もあります。それが1件ということで今は少ないにもかかわらず、やはり申 立をされている。このときに患者さんが応諾されるかということになりますと微妙ですし、 応諾されなければ、もうどうしようもなくなってきます。いずれにせよ、両方で応諾して いただくことが不可欠な要件になりますから、当事者がそういうことを思っていても、相 手方が乗ってこなければどうしようもない。これは両方ともに言えるわけです。  ただ、今のところは先ほども申しましたように、あっせん・調停に行くのが医療相談事 例の15%か16%程度ですから、その前に一所懸命に原因の説明をしてあげれば、大半の紛 争は解決するというのが、むしろ大きいと私は理解しております。そういう意味では、医 療相談をされる先生が、信頼のできるちゃんとした対応をされたら、結局、紛争というも のはある程度は収まるのです。裁判まで行くのは、そのうちもっと少なくなるのではない かというのが私の印象です。 ○佐々木委員 私も息子を医療過誤で亡くしており、裁判で医療者に説明を求めたのです けれども、誠実な説明がなかったので、裁判という手段を取らざるを得なかったわけです。 医療者の誠実な説明というのは、被害者にとっては本当に大切なことだと思います。それ で納得できる、それによっていい感じになると思うのです。しかし被害者になった場合、 どこに行ったらいいか、持って行き場のない気持が訴訟という手段を取らざるを得なくな るのです。そうしたときにADRがあれば、そこへ行って聞こうということになります。そこ には医療者との対話、必ず当事者同士が会って話をして、医療者にしっかりとした誠実な 説明をしていただきたいのです。  人間というものは、命や身体にどういうことが起こるかわかりません。不可抗力もあり ます。一生懸命していても突発的に亡くなってしまう場合もあります。そういったときに は誠意を持って、一生懸命に医療者が説明をすることによって、「ああ、そうだったのか」 ということで、患者も被害者になった方も払拭できるわけです。そういう場合があると思 います。もし、そこにミスがあるのであれば、しっかりと説明されて、そこで謝罪すると いうことになれば、患者サイド、被害者も納得できるわけです。  ADRは、確かに迅速で、負担も少なくできるわけですが、弁護士の先生方の仲裁で医療者 の出てこない中で、本当に納得できているのかということを私は感じます。それが駄目で あれば、裁判のほうに行かれるかもしれませんが、裁判の中でも弁護士と裁判官と私たち との闘いになります。しかし、そこには医療者の顔が見えないわけです。そうなりますと、 準備書面の中での話合いで終わってしまって、本当に医療者の顔が見えない、いちばん聞 きたいところが出てこないということになります。そうなりますと、証人尋問などで呼ん でいただきたいという申入れをします。  私の場合は和解の話がきました。途中で証拠が見つかって、「これ以上争うことはない。 もう金だけの問題だから」と弁護士に言われたのです。私はそうではないと。金銭的なも ののために裁判をしているのではない、なぜ死んだのかという真相究明がしたい、それを 説明していただきたいということで裁判をしているわけです。そこで、金銭だけではない ということを言いましたが、弁護士においては「民事裁判で勝ち取るものは金銭である」 と言われて、私は弁護士を解任して、本人訴訟を裁判長に申し出て、2人の医療者を1時間 ずつ、2時間証人尋問いたしました。そして本人尋問も受けました。そこで、初めての症例 でわからなかった、ということが初めて解明されたわけです。本当に簡単な事案ながら、5 年という歳月がかかりました。これは大変な負担です。本当にその医療者に誠意があれば、 そこでラウンドテーブルで話し合えば、短時間で済んでいたことでしょう。この双方にと っての負担は、大変な損失だったと思います。そういうことでわかって、裁判の法廷の中 で認められたわけです。  これはこれで一件落着ですけれども、残された我々にとっては、当然のことが当然にわ かっただけで、死んだ命は返ってこないのです。命は返ってこないけれど勝ち取ったとい うことは、うれしいことではないのです。当然のことがわかったのだから、これをもっと 早く誠意を持って話してくださっていたならば、もっとお互いが癒されていたのではない かと思います。被害に遭った方というのは、受けとめてくれる持って行き場というものが 必要なのです。それはやはり医療者との当事者同士の対話だと思います。それからADRに申 し出をしていくということもいいかと思います。 ○小松委員 いま、医療者と患者さん側との対話のことをおっしゃったのですけれども、 医師会には医事紛争処理委員会がありますが、患者側は全然出てこないのです。もちろん 医者も出てこないということで、当事者は出てこないのです。ところが中立委員会は医療 者と患者側の両方を呼びます。それで両方の意見を聞いて、場合によっては両方を同席さ せ話合いをします。そうすると、単独で医療者が患者さんに対して言うよりは、第三者が いるものですから、大変話しやすくなって、正直に謝罪することもできるし、医療者にと っては医師も委員の中に入っているということで、非常に安心感があって、比較的うまく いっているのではないかと。当事者同士が話し合える機会としては、私の所のやり方は非 常にいいのではないかと思います。 ○山本座長 いまの佐々木委員からの問題提起で児玉委員、どうぞ。 ○児玉委員 対話というのは本当に大切なことです。医療機関側もこの10年、対話の機会 をつくる努力を一所懸命やってきたと思います。また、対話をしていく上でのスキルと言 いますか、わかってもらいやすい話し方というのも、医療機関側での習練がだいぶ進んで きたように思います。私も当初は、死亡事案や、植物状態になってしまったような重大・ 重篤な結果を招いた事案で、かつ、場合によっては法律的な責任がないというお話をしな くてはいけない事案については、ADRでの解決は無理ではないかと思っていたのです。  しかし実践の中で、いま申し上げたような重大事案でも、ADRの手続に持ってくる前に病 院のドクターがきちんと向き合って、患者さん、あるいは患者さんご遺族との対話を、し かも初動からきちんと持つような体制を持っております。それでもなお最後の最後に、対 話だけでは納得がいかないという気持が残るときに、やはり外部の、しかも中立の第三者 が間に入って話を聞くと。東京三会でも他の会でも同じだと思いますが、弁護士だけでは なく、もちろん病院のお医者様にもおいでいただいて、訴訟の場とは随分違った形で、ま さにラウンドテーブルを囲んでご遺族や患者さんとお話できるような場を、実際に私自身 もあっせん人の立場でいろいろと配慮をしながら、つくろうとしてまいりました。  逆に医療機関側代理人として、これはとても無理ではないかと思っているような事例で も、仲裁の手続を活用してこられた練達の先生方の巧みなリードと、ともすれば理屈に傾 きがちな裁判の審理に比べて、本音というか、人の気持を大切にするような、納得がいか ない気持の焦点は一体どこであるのかということを丁寧に引き出すような仲裁人、あっせ ん人のリードによって、双方が納得して解決できるようなところにたどり着いた事例も経 験しております。そういう意味では対話のない、弁護士が判断するADRではなく、外部の中 立性、第三者性というものを導入しつつも、医療と患者の対話を促進していく1つのあり様 であるということを、実践の中から感じております。 ○佐々木委員 よくわかりました。これからそういう方向に行かれるということを、私は いま感じました。それから、弁護士の合議体で進められるということを聞きましたけれど も、これには結局、専門の医療者、協力医というものが必要だと思います。また、私たち も被害に遭った人の情報を、弁護士の先生に全部提供していかないといけません。そして 弁護士さんのほうからも、医療者からの情報提供というのがどの程度か、カルテの開示も 私たちに教えていただけるのか、ということを感じましたのでお願いいたします。 ○山本座長 それはいずれか。東京はどうでしょうか。 ○児玉委員 私が対応させていただいている範囲では、きちんとした病院ではもうすでに 大小を問わずカルテ開示をしたうえで、納得のいかない方にはきちんとご説明をするとい うところが出発点になっています。病院でそういう努力をしても、なおご納得いただけな い事例で、しかも双方にとって負担になる裁判という手続を選ぶよりは、ADRという場で一 度話をしてみませんかということを、こちらからお話する場合もあります。ですから情報 開示をしないでやっているわけではありません。むしろその前に医療機関で一生懸命、説 明会や情報開示をしたうえで、さらに話合いを続ける場としてADRを利用させていただいて いるという状況です。 ○山本座長 名古屋も千葉も、それはそういうことでよろしいでしょうか。 ○植木委員 皆さんに聞いてください。 ○山本座長 それでは和田委員、どうでしょうか。 ○和田委員 今日は所用で途中からの参加になってお話を聞けなかったので、もしかした ら、もうお話の中に出てきたかもしれないのですが、今のことと関連して、客観的なデー タを教えていただきたいのです。まず、ここを利用されている場合の弁護士の選任率です。 当事者本人が来られるのですか。あるいは申立があり、応諾とか、それぞれ位置づけられ たケースの中で、弁護士の選任率と当事者本人が来るケースについてです。  もう1つは、いま児玉先生からお話がありましたけれども、ラウンドテーブルのような形 で同席で実施しているのか、別席でそれぞれからお話を聞くような形でやられているのか。 どちらがデフォルトで、どちらがエクセプションなのか、状況によってはどちらも使うのか、 どちらかしかやらないのか、その辺りを客観的なデータとしてご教授いただければと思いま す。 ○山本座長 もし今の段階でおわかりであれば、まず東京からお願いします。おわかりでな ければ、また後で資料を補充していただくことは可能ですので、おわかりの範囲でお願いし ます。 ○西内委員 本日、東京三会からお配りしたのは資料2-1です。このデータの末尾に、いま ご質問のあったものは出ておりませんが、いま進めております検証の報告書の中では出てお ります。詳細はそちらのほうに書いてあります。 ○山本座長 同席で行っているかどうかというのは。 ○西内委員 同席型かどうかというのは、調査は取っていなかったように記憶しております。 ○児玉委員 同席か別席かというように、分別してやるような手続の設計にはなっておりま せん。当然、ADRでは仲裁の実務をたくさん経験してきた者がやっておりますので、同席と 別席を併用し、ケース・バイ・ケースで柔軟に使い分けていくというのが、ほぼすべての手 続でそのようになっていると思います。ただ、東京三会以外のADRで、それはそれとして1つ のポリシーかもしれないのですが、期日決めも含めて、完全別席という制度をとっておられ るように感じた所があります。それは少し変わった形なのだろう、何か考えがおありになる のだろうと感じました。少なくとも弁護士会関連のADRセンターで私が知っている限り、問 題は同席か別席かではなく、その2つの方法をいかに柔軟に的確に使っていくかという状況 です。ですから今後とも同席率、別席率というのは統計の取り様がない。それぐらい柔軟に 交じり合って存在しているとご理解いただければと思います。 ○山本座長 名古屋については、代理人選任率は資料2-2の4頁でご説明いただいたかと思い ますが、同席かどうかという問題についてはどうですか。 ○増田委員 愛知県は同席か別席かということについて、特に規則上の規定があるわけでは ありません。いま児玉先生がおっしゃったように、あっせん・仲裁人が事件を解決するに当 たって別席にしてみたり、最終段階では同席にしてみたりということで、それは非常に柔軟 に使い分けていらっしゃるだろうと思います。基本的にはと言いますか、多くのあっせん・ 仲裁人がやっているのは、最初は別席だろうと思います。 ○山本座長 千葉のほうは植木委員、いかがでしょうか。 ○植木委員 最初に代理人が付かなければいけないかという問題ですが、千葉はそういうこ とは一切関係ありません。付かれてもいいし、付かれなくてもいい。特に患者さんのほうが 申立をされる場合に、代理人を強制しておきますと、裁判所へ行ったのと何ら変わりがない ということになります。そのようなことをしなくてもADRが利用できるところにメリットが あると思っておりますので、大半は申立をされる患者さんの側で、ご自分で自分の主張を述 べられる場合が圧倒的に多いと思います。被申立人である病院側の場合は、代理人が付く場 合と付かない場合の両方があります。両方ともそれぞれ長所・短所があります。 それはそれなりに個別の事案の中身の問題ですので、それぞれ自由にご判断されていいので はないかと思っております。  実際に調停を行う場合は、今度は弁護士の調停員が主としてリードをされるという形にな ります。通常、弁護士さんの経験からすれば、裁判所でやられているやり方を踏襲してやっ ていらっしゃるのが、ごく普通だと思います。そういう意味では原則として別席でやって、 最後にちゃんと解決するときには同席していただいて、和解書にサインをしていただくこと が必要です。その書面を作る場合には、当然のことながら同席していただくということをや っております。そこで解決した場合は、ほとんど円満に解決しているというのが現実です。 今後の方向としてはこれをそのまま続けるのか、少し改めるのかについては現在協議中です。 ○鈴木委員 同席・別席に関しては、誰と誰の同席なのですか。申立人が患者側である場合 は、申立人本人が来ることが非常に多いというか、ほぼ100%そうだろうと思います。相手 方の医療機関の場合に誰が出てくるのか、誰が同席するのか。同席対話促進型というのは、 基本的に担当医と患者さんのコミュニケーションが非常に大事だろうと思うのですが、多く の場合、代理人が付いた場合も付かない場合も病院管理責任者です。これは院長が出てくる わけではなく、医療安全担当の方が出てきたり、総務課の人が出てきたりしているので、申 立人側から見ると、「あなたと話をしてもしょうがないでしょう」という人が出てきてし まうので、その場合は同席のしようがないのです。そういうことも一方であります。  私は東京三会では5件、あっせん人として担当しました。私のやり方は、誰が同席者であろ うが同席を原則にしながら、別席にする場合には、特別の配慮をしなければいけないときに、 例外的に別席にしようという考え方です。3人のあっせん人の中では、弁護士の中でもそれ ぞれの経験がありますので、その辺りは協議をしながら、問題意識を持ちながらやらないと うまくいきません。真ん中に座っている手続主催者が、これまでのような民事調停型の調停 委員のやり方をやっていると、どうしても別席原則だと思い込んでいる場合があります。医 事紛争の1つの特殊性として、やはり同席を非常に重要視する必要があるということで、あ っせん人の中で協議が整えば、同席のほうに重きを置いていくことになると思います。そう いう中で、担当医とのコミュニケーション、対話を求めたいという場合に、それをどの段階 でどういう形でやるのかで、我々もかなり苦労をしています。あっせん人が日程上難しいの で、あっせん人抜きで当事者間で病院で説明をしていただくというのを、期日外に設けてい ます。そこに担当医が出てきて、手術の手技ミスに関しては深くお詫びをして、わだかまり を取るという形で、その後は金銭的な交渉に入ると。その金銭に関しては、当事者があっせ ん人の提案を尊重したいということなので、あっせん人の間で協議をしてご提案をさせてい ただくという形です。  つまり、どうすれば紛争解決が可能なのかということです。紛争解決の出発点は、当事者 が両方とも、この紛争を解決したいという意欲がないと紛争解決はしないわけです。何とか 振り切りたいと思って、自分の言い分を100%相手に認めさせようというところからスター トする場合が多いので、その段階で同席でいきますと、話が壊れてしまうこともあるのです。 それはケース・バイ・ケースですけれども、まずは紛争解決が大事だということで一致点を 見出せれば、いろいろなやり方を工夫していけます。  東京三会もこの2年半やってきて、西内先生が委員長になって外側のデータ的なことは、 検証として少しやり始めました。今後はそれぞれの経験で問題点を抽出して、どうするのか という方針をみんなで議論していきます。今日は水田先生がおいでになっていますけれども、 岡山弁護士会は、最初からこういうやり方でやろうではないか、ということを利用者にメッ セージとして送っているのです。これは我々も非常に参考にさせていただいて、最初からこ ういうやり方でいくというのもあれば、経験の中でつくってきたものを段階的に、こういう やり方にだんだんと収斂させていこうというやり方もあるのです。いまの論点としては同席 か別席かとか、法律関係をどの程度重視するのかとか、いろいろな論点があるので、それを どうやって越えていくのかという段階ではないかという気がします。 ○児玉委員 先ほどの植木先生のご発言で、まさか誤解はないと思いますが、議事録に残る ことですので補足させていただきます。裁判所での和解手続もずっと別席でやって、最後に 合意するときにだけ同席にするというやり方は、現在はとられておりません。別席にしたり 同席にしたり、両方のコミュニケーションのあり様を活用しながら、柔軟に手続を進めてい くというのが、昨今の裁判所での和解のあり様だと思います。それに加えてADRは、フォー マルな雰囲気の場ではありません。  例えば、私が知っている大変熱心な手続主催者で、ADRの手続に大変慣れておられる先生 がいらっしゃいます。あまり形式ばった弁護士会の会議室を使っていたのでは進まないとい うことで、みんなの合意で、ある事務所の部屋を決めて、土曜日でも日曜日でもみんなで集 まって、ドクターにも来てもらって、ざっくばらんに話をしていこうと。紛争解決というの は、対話やコミュニケーションの技術が大事だなということを感じさせていただけるような、 本当に涙もあり、怒りもあり、そして笑顔もあるような、そういうコミュニケーションの中 で和解が成立していったという成功事例も聞いております。 ○山本座長 大変貴重な意見交換で、先ほどの佐々木委員の問題提起とも密接に関連するよ うなお話だったのではないかと思います。鈴木委員が言われたように、まさに医療事故にお ける紛争解決のあり方というのは、今みんなが手探りで求めていっている段階であると思い ます。そのためにこの会議も催されているのだろうと思いました。私の不手際で、必ずしも まだ十分に意見の交換ができていない部分もあろうかと思いますが、この会議は定期的に継 続していくものですので、引き続き今日のご議論を深めていっていただくことはできるかと 思います。  問題提起として出たさまざまなこと、例えば応諾率を高めるための努力はどのようにある べきか、財政基盤の問題、保険との関係といった問題は、おそらく医療関係のADRにとって、 必ず乗り越えていかなければならないハードルであろうと思います。  また、今日の3つの機関のご報告でも、それぞれ微妙にやり方が違います。例えば、専門 的な知見をどのように取り入れるかという観点では、患者側、医療側の弁護士を加えてやっ ていくけれども、医師自体は必ずしも直接は関与されないという東京の方式とか、医療の専 門委員という制度を設けて、それに対応していこうとされている名古屋の方式とか、直接医 師を調停委員に加えていこうという千葉のやり方と、それぞれ微妙に違っていたかと思いま す。それぞれの利点、どういうところに特質があるかということを検討していくというのも、 今後のこの会議の役割ではないかと思いました。  今後ともさまざまな機関から、引き続き実情のご報告をいただきながら問題意識を共有し て、論点を深めて、よりよいADRのあり方を探究していきたいと思います。どうか引き続き ご協力のほど、よろしくお願いしたいと思います。  本日は資料3として、札幌弁護士会の紛争解決センターの橋場委員から、ペーパーのご提 出をいただいておりますが、時間が超過してしまいましたので、これについては次回以降、 ご説明等の時間を設けたいと思います。非常に興味深いデータが出されているかと思いま す。それでは次回以降の連絡について、事務局からお願いいたします。 ○事務局 次回以降、第2回の会合については別途、各先生方と日程調整をさせていただき ます。次回以降もADR機関の取組みについて、発表を重ねさせていただきたいと思いますの で、こちらもそれぞれ個別に調整させていただきたいと思っております。また、本日の議 事録については、原案ができた段階で各委員にご確認をしていただいた後、厚生労働省の ホームページで公表させていただきたいと考えております。 ○山本座長 本日は長時間にわたりまして、ご議論をどうもありがとうございました。ま た第2回以降の開催についても、どうぞよろしくお願いいたします。本日はこれにて終了し たいと思います。 以 上   (照会先)  厚生労働省医政局総務課  医療安全推進室   03−5253−1111(2579)