10/03/24 第4回子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議議事録 第4回子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議 議事録 (照会先:雇用均等・児童家庭局母子保健課 小林(内線7939)) 日時:2010年3月24日(水) 14:00〜16:15 場所:厚生労働省 共用第8会議室 出席者:  委員   柳澤座長、今村委員、奥山委員、神尾委員、齋藤委員、澁谷委員、丸山委員、南委員  厚生労働省   宮嵜母子保健課長、森岡母子保健課長補佐、今村母子保健課長補佐   太田虐待防止対策室長補佐、成重精神・障害保健課対策官心の健康づくり対策官   日詰精神・障害保健課 発達障害対策専門官 議題:   1.開会   2.議事    (1)都道府県が実施する事業についてヒアリング     ・神奈川県(神奈川県立こども医療センター・児童思春期精神科医長 新井卓氏)           (神奈川県立こども医療センター・臨床心理室 小柳恵子氏)     ・山梨県(山梨県福祉保健部障害福祉課 小林京子氏)     ・鳥取県(鳥取大学医学部脳神経小児科教授 大野耕策氏)         (鳥取県福祉保健部子ども発達支援室主幹 稲村潤一氏)     ・佐賀県(肥前精神医療センター・小児科医長 瀬口康昌氏)         (肥前精神医療センター・心理療法士 中山政弘氏)    (2)今後の事業評価について    (3)その他   3.閉会 資料:   資料1 第3回「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議」議事録(案)   資料2 (神奈川県)神奈川県における子どもの心の診療拠点病院機構推進事業   資料3 (山梨県)子どもの心の診療拠点病院機構推進事業   資料4 (鳥取県)鳥取県子どもの心の診療拠点病院機構推進事業   資料5 (佐賀県)子どもの心の診療拠点病院   資料6 子どもの心の診療体制アンケート結果   資料7 子どもの心の診療拠点病院機構推進事業 実施自治体調査 結果   資料8 子どもの心の診療拠点病院機構推進事業 拠点病院調査 結果      参考1 「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議」開催要綱   参考2 母子保健医療対策等総合支援事業実施要綱(抄)    議事: ○宮嵜母子保健課長  定刻となりましたので、ただ今から第4回「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有 識者会議」を開催いたします。本日はお忙しい中、また足元の悪い中をお集まりいただきま して誠にありがとうございます。  本日の委員の出欠状況でございますが、青山委員から事前に欠席のご連絡をいただいてお ります。また、齋藤委員が若干遅れているようでございます。  それでは、これからの議事進行につきましては柳澤座長にお願いいたします。よろしくお 願い申し上げます。 ○柳澤座長  それでは早速でございますけれども、議事を進めさせていただきます。  まず、本日の議題に入ります前に、事務局からお手元にお配りしてあります資料の確認を よろしくお願いいたします。 ○森岡母子保健課長補佐  それでは資料の確認をさせていただきます。最初に議事第の1枚紙、それから座席図の1 枚紙がございます。それから資料1といたしまして、第3回「子どもの心の診療拠点病院の 整備に関する有識者会議」議事録(案)、資料2といたしまして、神奈川県からいただいてお ります「神奈川県における子どもの心の診療拠点病院機構推進事業」の資料、それから資料 3といたしまして、山梨県からいただいております「子どもの心の診療拠点病院機構推進事 業」の資料、資料4といたしまして鳥取県からいただいております「鳥取県子どもの心の診 療拠点病院機構推進事業」の資料、資料5として佐賀県からいただいております「子どもの 心の診療拠点病院」の資料がございます。また、資料6として「子どもの心の診療体制アン ケート結果」、資料7として「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業実施自治体調査結果」、 資料8として「子どもの心の診療拠点病院機構推進事業拠点病院調査結果」の資料がござい ます。また、参考1として「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会議」開催要 綱、参考2として「母子保健医療対策等総合支援事業実施要綱(抄)」を付けております。以 上です。  またお手元にお配りしております資料1の前回の会議の議事録(案)につきましては、事前 に各委員からご意見をいただいており、その修正を反映しておりますが、再度ご確認いただ きまして、修正がございましたら1週間を目途に事務局にお伝えください。以上でございま す。 ○柳澤座長  ありがとうございました。よろしいでしょうか。議事録(案)の対応をよろしくお願いいた します。  それでは早速、本日の議題に入りたいと思います。前回までの会議におきまして、いくつ かの都府県、このモデル事業を実施している中央拠点病院である国立成育医療センターの他 に11の都道府県があるのですが、そのうちの七つの県、岡山・石川・東京・三重・大阪・ 長崎・静岡についてヒアリングといいますか、具体的な取組の状況を発表していただきまし た。今後の事業のあり方についてご意見をいただきました。今回の会議では残りの四つの県 の事業についてご発表いただければと思います。  それでは県が実施する事業について、本日は神奈川県、山梨県、鳥取県、佐賀県から現時 点での取組状況について、それぞれ10分程度ずつ発表していただきます。今回は特に形式 等は指定せずに発表の準備をお願いいたしました。  そういうことで、はじめに神奈川県から発表していただきます。ご担当の方は、よろしく お願いいたします。 ○新井氏(神奈川県)  神奈川県立子ども医療センターの児童思春期精神科医長の新井といいます。神奈川県にお ける拠点病院事業の取組みについて、限られた時間内でありますけれども、お話しさせてい ただきます。  主に要綱に示されています1)・2)・3)という項目別に平成21年度の活動内容を簡単に触 れさせていただきまして、その後に課題あるいは振り返って私たちが考えたことを話してい きます。まず1)「子どもの心の診療支援・連携事業」という項目の中で、多機関・多職種 連携会議という項目に入るであろうことを、平成21年度の活動内容を挙げてあります。黒 字の部分は従来、拠点病院が始まる以前から我々が既に行っていたことで、拠点病院が始ま ったことで新たに行ったことを赤字で示しております。「KCMC」というのは我々の機関の 略称です。  内容をお話しします。「児童相談所の合同連絡会」というのは、特に事例を挙げずに、と にかく今、課題となっていることについての情報交換や連絡会ということを例年行っており まして、今年は虐待に関連した症例の親権問題、例えば親権の一時停止というような問題に ついて、いかがかというようなことを情報交換させていただきました。  そして2番目の「多機関・多職種連携会議」は事例です。非常に処遇困難な入院症例とし て、こちらで研究した子どもがいまして、関連機関だけではなく、広く警察や少年鑑別所の 職員など、担当ではなくても広く声をかけさせていただいて連携会議を開きました。  次の「第1回福祉・医療連絡会」と「第1回教育・医療連絡会」というのは、似た形式で 行っているのですけれども、我々の施設に直接出向いてもらって、実際に外来診療あるいは 入院治療というのはどういう場で、どのように行われているかというところを見ていただき、 かつ、我々の方で用意した福祉に関連する、あるいは教育に関連する講義を1時間ほどさせ ていただいたということで、福祉に関しては児童相談所や養護施設の職員の方に来ていただ きました。教育に関しては、今年は学校カウンセラーに来ていただきまして、お話をさせて いただきました。  「司法・福祉連絡会」というのは少年鑑別所で事例を検討させてくださいというご依頼が ありまして、こちらから出向いてカンファレンスを行っています。これは従来から行ってい る事例ごとの関係者会議で、これは関連している機関や、いろいろな福祉あるいは教育機関 のスタッフが集まって患者に対しての情報交換あるいはカンファレンスを行ったというこ とで、実際に我々が出向いていって、地域で会議を行ったものです。  次のお話をします。これは児童福祉施設コンサルテーション事業ということで、我々が挙 げているのですけれども、従来から横浜市にある情緒障害児短期治療施設いずみ学園とは年 に2回の会議を持たせていただいているのですけれども、この事業が始まって、はじめは 我々の医療機関に通院している子どもを中心に児童養護施設から通院している子どもがい ますので、通院だけではなくて、逆にこちらから施設に出向き、どういうところで生活をし ているかということを拝見しながら、その子どもと関連しているスタッフとのお話をカンフ ァレンスを通じてやって、プラスアルファとして「実はこういう子どもがいるのだけれども、 どうだろうか」というようなお話があったり、その方が有意義だったというようなところが あって、これは5か所ではなくて6か所で行っております。  次は今回始めて計画して、どのように発展していくかというところが難しいのですけれど も、県の中央児童相談所が中心となって我々が設定した時間枠で集めていただいて、我々が そこに出向く形で、今回は3例に関して3か所でカンファレンスに出向きました。実際に行 くと4〜5例ぐらいの事例の相談を受けるというようなことで、こちらは通院中ではない子 どもが中心です。  次の2)は心の診療関係者研修事業という内容の項目に入ることで、この黒字は従来から 30年近く我々がずっと病院で行っているようなことを、この拠点病院の中に組み込んだも のですけれども、赤字の「精神医学セミナー」というものは、今回我々が始めさせていただ いて、小児科医療との連携を密に持とうということで、我々は精神科医ですけれども、小児 科医との連携を深めるためにセミナーを開催したところ、かなり好評で、65名の県内の小 児科医に参加していただいたということで、下の「連携のためのセミナー」というのは、来 年度からの選択に入っているのですけれども、児童養護施設での訪問事業に先駆けて、施設 長からの意見を聞きたいということで講演をしていただいて、これもかなり好評でした。  次は「普及啓発事業」として公開講座を、児童虐待に関してのお話を椎名先生にご講義い ただいて、ちょうど虐待防止週間の11月にお忙しい中を来ていただいたのですけれども、 かなり好評で、先生には我々の施設も見ていただいて、親権の問題等について、その後もご 相談させていただいています。  これが大体の活動内容で、次年度の話ですけれども、これは字で示させていただきますけ れども、概ね今年度平成21年度に準じた内容を計画しています。この赤字で書いているの は特に重点を置きたいと思っているところですけれども、平成21年度は実際に6か所の児 童養護施設に出向いたところ、非常に多いニードがあることがわかり、計画的に児童福祉施 設・擁護施設に行く時間をつくることによって、我々がお役に立てるのではないかというこ とで、福祉施設の施設長会議でお話をさせていただいた結果、かなり求めがあるということ で計画しています。  それから、この「葉山町子ども支援事業」というのは、葉山町は少し特殊な地域で、なか なか我々がかかわるところが非常に手薄になってしまうような地域で、むしろその葉山町の 方からの要請がありまして、これは我々の施設で拠点病院事業としてお手伝いさせていただ こうということで、来年度から本格的に協力要請に応えてていきましょうということで、「施 設見学を兼ねた情報提供というのは先ほどの第1回福祉・医療、教育・医療の連絡会という ものを、さらに対象を広げて養護教育や学校の保健室の先生、あるいはそれ以外の子どもと かかわる教育あるいは福祉の関係の方に実際に我々のところに来ていただいて、どんなとこ ろでどんな治療をするのかを具体的に見ていただくというイメージを非常に持っていただ けるということで、計画を広げるつもりです。  あとの研修事業・普及啓発活動については着々と今、計画している状況です。これが平成 22年度の事業計画です。  それで雑感ですけれども、本事業の影響、どのようなメリットがあり、結果がどうなった かというのは、なかなか数字として出てくるものではないのですけれども、印象として小児 科医との連絡が我々の中で非常にできたというところがあります。総合病院の小児科の先生 から摂食障害の相談が非常に多くなって、実際に入院数も2倍以上に膨れ上がっているとい うところで今、対策を練っています。  あとは先ほどの養護施設へのコンサルテーションを通して非常に我々が必要とされてい る実態を把握することができたということがあります。  あとは病院の中での問題ですけれども、出張がしやすくなったということがこの事業の非 常にメリットであったということであります。  次は私が考えたところですけれども、この事業の問題点というか、これは地域によって非 常に本事業に求められる内容が質的に違うので、一律に評価できないということを非常に感 じました。もともとやっている地域というのがやはりあるのです。拠点病院の機能を工夫し て既にやっている自治体があるので、これを拠点病院が始まってどうなったかということを 評価するときに、開始以前と開始後を単純に比較してよいのかというのは非常にあります。 既に、かなり無理をして病院スタッフが外に出てやっている地域に関しては、前後であまり 変わらないという可能性があるのです。その辺をご理解いただきたいというところがありま す。  あとは事業主体ですけれども、どこが主導でやるのか。我々のところは、はっきり言いま すと、病院がほとんど主導でやったのですけれども、これから行政主導でやると、また違う のかなというところがありまして、これも地域によって差があると思います。これをどちら かで決めてやってしまうと、非常に難しくなる地域もあるのだろうということを私は感じま した。  最後に、これはモデル事業ということで、どうしても仕方がないでしょうけれども、「結 局、3年で終わりですよね」ということを言われて、続けられないというような、いわゆる 信頼の問題ですよね。なかなかその後どうなるのですかということで見送りになった計画も ありまして、これは一つ残念だったなと思っています。  それから、結果はすぐには出ない。これは5年単位、10年単位の問題なので、あまり数 字に振り回されてほしくないなというところが、私の正直なところです。実際に我々はこの 事業を受けて非常によかったと思っております。スタッフも増えないとこういう事業はでき ないですけれども、そういうことで増えた中でかなり計画できたのでよかったと思っていま す。 ○柳澤座長  ありがとうございました。神奈川県の平成21年度における活動内容、それから平成22 年度の計画、そして今後の課題といったところまで発表していただきましたけれども、全体 的なディスカッションは全ての県の発表後に行いたいと思いますが、ただ今の説明について、 何かご質問があればここで承っておきたいと思います。よろしいでしょうか。  それでは先に進ませていただきます。次は、山梨県のご担当の方、お願いいたします。 ○小林課長補佐(山梨県)  私は県の福祉保健部障害福祉課の心の健康・発達障害担当の課長補佐をしております小林 と申します。本日はよろしくお願いいたします。  子どもの心の診療拠点病院機構推進事業という国のモデル事業を、本県では「子どもの心 の診療支援事業」ということで、平成21年度から取り組んでおります。事業開始の経緯、 平成21年度の事業報告、平成22年度の事業計画の順で説明したいと思います。  まず事業開始までの経緯について説明いたします。モデル事業は平成20年度から開始い たしましたけれども、実は山梨県ではいち早く県立北病院の藤井院長がこのモデル事業に取 り組みたいということで、県の児童家庭課等にお申し出になったときは、どこで担当するの か医療保健福祉が関係するということで議論したようですけれども、担当課が決まらないま ま取組ができないような状況に置かれておりました。  しかしそうは言っても子どもの心の健康問題について、何とかしなければいけないと、福 祉保健部長から絵柄を描いて山梨県の対策について検討するようにということで、昨年の2 月16日に県庁の医療・保健・福祉・教育等の関係機関、それから児童福祉施設、児童養護 施設等の庁外の関係者が一堂に会しまして、本県の児童思春期の心の問題への対応状況につ いて現状を出し合いました。1〜5のように全ての機関で受診が殺到しており、深刻な待機 状況がある。本格的な精神科治療を要する児童が増加している。それから生活の場がなく、 例えば北病院に入院し、退院しても高校にも行っていない子どもの居場所がない。児童相談 所も虐待・発達障害というようなことで非常に対応困難化している。それから児童養護施設 はそういった子どもたちが増加しているということで、支援の困難化や、不安定化が著しい という状況を確認いたしました。  それで「基本的な方向」を1、2、3、4にまとめ、福祉保健部長に3月12日に報告しま した。子どもの心の問題や医療を県の政策医療として、児童・思春期医療を拡充するという こと、そのためには後期臨床研修を県立北病院が中心となり実施し、児童精神科医を人材育 成して確保すること、それからいろいろな関係機関が一堂に会して子どもの心の問題等を検 討する会議も設置することを確認しました。県としての方向性を確認したのが昨年の3月 12日だったのですけれども、ちょうど昨年の3月26日に第2回有識者会議が開催され、傍 聴の機会を得たわけです。その際に1、2件の枠がまだあるということで、急遽県に持ち帰 りまして、枠があることを伝え、この事業に取り組むことを部として確認し4月当初からエ ントリーの準備を始めました。事業化するに当たって、財政課や人事課の理解を得ることが 非常に大変で、時間がかかってしまいました。モデル事業に取り組むために、県内の心の問 題を抱える子どもの増加、不登校児童は山梨県は発生率がワースト1という状況でもありま すし、いろいろな相談が増加の一途をたどっています。また、県内の総合病院の思春期外来、 あけぼの医療福祉センター、子どもメンタルクリニック、県立北病院など子どもを扱う医療 機関も全て受診待ちということで、十分な医療が受けられないという現状と課題を把握いた しました。ですから対応方針として、児童・思春期精神科医療の拡充と、医療・保健・福祉・ 教育が連携した支援体制の構築を目指すために国のモデル事業に取り組むこと、もう一つは 県立北病院で後期臨床研修制度を導入して、2名の研修医を確保する方向性を示して、事業 を組み立て、9月補正で予算化いたしました。  障害福祉課が実施主管課で、拠点病院ですけれども、本県には子ども病院というものがご ざいません。身体的なものも精神的なものも両方ないのです。平成18年4月に「子どもメ ンタルクリニック」を児童相談所の中に開設したときに、やはり児童・思春期の精神科医療 を充実するために児童精神科医を育成しなければならないということで、部局人材育成研修 を実施してまいりました。スライドの拠点病院のところに書いてありますが、中央児童相談 所子どもメンタルクリニックが中心となって、医師の症例研修を毎月3回こつこつと積み重 ねてきております。  精神保健福祉センターでは、関係専門職員の研修を月1回、県立北病院では思春期病床を 持っていますので、入院している子どもの症例検討を毎月1回やってきておりましたので、 この三つの機関を3拠点病院と指定しました。事業を三つの機関で、得意なところを受け持 つということで分担することとしました。  まず3か所の拠点病院の特徴を少しお話ししたいと思います。「中央児童相談所子どもメ ンタルクリニック」は平成18年4月に開設いたしました。医師1名、心理士1名で、発達 障害者支援センターも同時に開設いたしまして、発達障害についての確定診断、被虐待児や その親の診療・治療が期待されている医療機関です。  当初、再診はしないということで始まったのですけれども、やはり地域に受け皿ががあり ませんので、再診をやらざるを得ないということで、開設後間もなく初診・再診とも受診待 ちが増大いたしました。  精神保健福祉センターは、従来から思春期精神保健福祉に関する相談や人材育成、技術支 援、普及啓発をずっとやっておりますので、特にまた所長の近藤医師は児童精神科医であり、 部局のこれまでの人材育成研修を取りまとめて指導医としてかかわってくださっておりま す。  県立北病院は病床数が200床の単科の精神科病院で、県内では唯一思春期病床を、10床 前後待っていますけれども、専任はおりません。新患が700人ぐらいの中で、ここのとこ ろ児童が170人とぐんぐん増えているのですが、一般の精神科医が外来の中で診るという ことで、非常に苦労されておられるような状況です。  また、この平成22年4月から独立行政法人に移行するということで、いろいろな大変な ことがあるのですけれども、県立北病院は思春期病床を持っておりますので、この事業には、 はじめから取り組みたいと言っておりましたので、熱心に取り組んでくださっているところ です。このような体制で10月から開始いたしました。  それでは平成21年度の事業報告です。まず1の「専門医療機関の診療体制強化」は、中 央相談所の子どもメンタルクリニックは初診3か月、再診5か月待ちということでしたから、 そこを何とかしたいということで、児童精神科医と心理士を週1回、人探しは大変でしたが、 1日追加配置いたしました。  何とか平成22年の2月末現在で初診が2.8か月待ち、再診が3.8か月待ちというように 多少の縮減はできたところです。  それからイの「児童精神科医等のスキルアップ研修」は、毎月3回実施している中で、こ の事業で予算が付いた分で、県外から講師を招いて先進的な内容について研修をいたしまし た。次がそのスキルアップ研修ということで1月29日、同日に大分県と慶應義塾大学から お二方の先生をお招きして、医師・看護師・保健師・心理士・精神保健福祉士等49名の参 加を得て実施したところです。  (2)「小児科医及び精神科医等の診療体制強化」は、まず小児科医・精神科医の先生方にご 協力していただくということで、当課の方で事前に小児科医会や精神科病院協会等に伺って 事業の説明を行いました。小児科医の先生方は日ごろ子どもの診療で心の問題を取り扱うこ とも多く、精神科医療との連携の必要性を認識されておりまして、非常に関心が高く、非常 に協力的です。研修会にも積極的に参加してくださっています。3月12日と26日の2回、 26日は今週末ですが、山梨県を国中地域と郡内地域、富士山に近い方と甲府市の2か所で 各1回ずつということで開催しました。医師は28名、小児科医を中心に参加していただき ましたし、せっかくの機会ですので他の関係の職員もということで総勢58名の参加が得ら れ、活発な質疑応答が行われたところです。これにつきましては「子どもの心の診療支援に ついて」ということで、国立成育医療センターの笠原真理先生に12日も26日もおいでいた だくことになっています。それからイの「先進地研修及び専門研修」拠点病院の専門職員を 先進地の医療機関や学会等に派遣する事業です。先進地研修では、県立北病院の思春期病床 担当の医師・看護師・心理士・作業療法士・精神保健福祉士等がこぞって三重県のあすなろ 学園で研修させていただきました。先進的な取組を思春期病棟に持ち帰ることができました。  各種専門研修に参加した実績を次のように表に示しています。限られた予算でしたが、皆 で乗り合って公用車で行くなどの工夫をして、大勢参加しました。一番下に「事例検討会」 と書いてありますが、これは平成22年度からの事業ですが、関係機関の連携と児童思春期 の心の問題の理解と対応力を向上する機会としての重要性を認識していまして、児童自立支 援施設の甲陽学園の児童で入院や通院をしている児童について事例検討を県立北病院、児童 相談所、甲陽学園等の関係機関の職員が一堂に会して県立北病院で開催しました。実施して 本当によかったということで、来年度事業の動機付けが高まったところです。  次は「関係機関との支援連携会議及び庁内会議の開催」です。庁内会議と支援連携会議を それぞれ平成21年11月20日と平成22年2月9日に開催しました。事業についての共通 理解と機関連携をして、今後の課題に取り組む方向性について検討を行う場として設置した ところですが、庁内会議ではそこに書いてありますとおり、17機関の21人が集まりました。 まず平成20年度の検討課題と本県の子どもの心の問題に対応する方向性を確認して、本事 業への取組を全庁的に確認して理解と協力を得ました。平成22年の2月9日には県内の児 童・思春期の心の問題とかかわっているさまざまな関係者26人に集まっていただきました。 小児科医会、精神科病院協会の先生方たちにも大勢集まっていただきまして、それぞれの立 場から現状と課題を新たに持ち寄り協議しました。こういった幅広いメンバーが一堂に会す ることにも意味がありますし、いろいろな課題を協議し、今後に期待が大きいと評価された ところです。子どもの心の問題については、医療だけでは完結しませんので、多職種、他機 関や学校、地域との連携が重要で欠かせないということ。地域の相談支援体制の検討、確保 したいと熱心なご討議をいただいたところです。特に小児科医会の先生方は敬意を表したい ほど熱心にかかわってくださっておられ、平成22年度もお願いしているところです。  私どもは平成21年度は10月からの半年ということでまだ始まったばかりですが、平成 22年度は平成21年度を基本にして予算的にはかなり膨らませました。平成21年度の事業 を基本としていますが、子どもメンタルクリニックに今度は週1回ではなく、常勤の児童精 神科医と心理士を各1名ずつ追加配置し、医師2人体制ということで何とかいけそうです。 それから県立北病院に後期臨床研修医募集をし、2名の研修医が確保できたところです。こ の研修を北病院が独立行政法人化しますので委託します。人材を育成し、定着を図りたいと いう意気込みで県立北病院の藤井先生、人材育成の担当の近藤先生はじめ期待しているとこ ろです。  それから「小児科医及び精神科医等の診療体制強化」の中の専門医の研修につきましては、 手弁当でやっていたものに予算が付いたということで、年3回は県外から先生をお招きする ことでやる。それから「診療対応力向上研修」で小児科医、精神科医の先生方は、笠原先生 に研修を今年度していただきましたので、それの反響を踏まえまして、新たに計画をして県 内2カ所で各1回ずつ開催する予定にしています。  医師及び専門職員を先進地研修及び専門研修へということでも、今年度はあすなろ学園に お邪魔したので、またどこかにお願いすることになるかもしれませんが、その節にはよろし くお願いします。  エの医師、看護師等の専門職員への子どもの心の問題に関する講演では最新情報を6回シ リーズで開催しようと思っています。6回のうち3回は県内の講師で、あとの3回は県外か ら講師を招いて行いたいと計画しています。  それと今度は地域で子どもの心の問題にかかわっている保育士や教員等への研修を開催 します。これは精神保健福祉センターで従来から思春期コンサルタント事業ということでや っていますが、これに1回増やして、この事業では1回ですが、山梨県とすると合わせて3 回となりうるので枠が増えて、地域の保育士や教員等への研修も充実する方向にあります。  それから次年度は普及啓発事業を県立北病院に委託して実施します。まずホームページへ の掲載を早々に準備して啓発を図りたいと思います。それから県民向けの講演会やシンポジ ウムを1回開催することにしていまして、多くの県民の参加を促し、子どもの心の問題につ いての理解を進めたいと思っています。  「子どもの診療支援連携会議」は、アは平成21年度の関係機関の支援連携会議と庁内会 議を、平成21年度の規模で各1回ずつ開催します。イは新たに予算はないのですが、定期 的に、通院や入院が必要な児童思春期事例にかかわる関係機関職員による合同事例検討会を 実施します。県立北病院に通院・入院をしていて、施設や学校や児童相談所など多くの機関 がかかわっている事例です。関係機関の職員が、守秘義務の問題等もありますが、注意しな がら合同事例検討会を開催して、地域の対応力の向上と支援体制を強化したり連携を深めた いと思っています。一応それが平成22年度の事業計画です。  次が最後ですが、本県は「平成23年度以降の子どもの心の健康対策」ということで、こ のようなプランを立てています。「子どもメンタルケアセンター」というものを開設する予 定です。子どもメンタルクリニックと発達障害者支援センター機能を中心に置きまして、児 童相談所・精神保健福祉センターの業務の一部を統合し、診療部門・相談支援・療育支援・ 人材育成、研究等の機能を果たすセンター開設に向けての準備を、この事業実施と同時並行 して、モデル事業で予算をいただいて力を付けて、平成23年度以降の山梨県の対策につな げていこうということで取り組んでいます。以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。山梨県の取組について詳しく説明をいただきましたが、 どなたかご質問はありますか。どうぞ。 ○宮嵜母子保健課長  後期研修医について教えていただきたいのですが、県立北病院に委託と強調されていたの ですが、採用が県職員で研修を委託ですか。 ○小林課長補佐(山梨県)  そうではないのです。平成22年4月からは独立行政法人となりますので。 ○宮嵜母子保健課長  非公務員型ですか。 ○小林課長補佐(山梨県)  公務員型です。独立行政法人の方に非常勤という形で採用になって、この事業の予算では 財政課に、研修医の給料ということでお願いしたのですが、それは駄目だということで、県 立北病院に。研修医の研修を委託するという形で事業を活用させていただくことになりまし た。 ○宮嵜母子保健課長  加えて、この研修というのは何年くらいの研修ですか。 ○小林課長補佐(山梨県)  3年です。 ○宮嵜母子保健課長  専門医制度との関係というのは、県庁の人に聞くのは酷かもしれないので、後で教えてい ただければと思いますが、関連学会との関係で専門医制度との関係はどのような位置付けに なるのかも、わかったら後で教えていただければと思います。 ○小林課長補佐(山梨県)  わかりました。 ○柳澤座長  よろしいでしょうか。それでは次に鳥取県の大野先生、よろしくお願いします。 ○大野氏(鳥取県)  それでは、鳥取県の事業報告をさせていただきます。私は鳥取大学医学部付属病院の大野 と申します。よろしくお願いいたします。鳥取県の子どもの心の診療拠点病院の推進事業で すが、三つの柱があります。子どもの心の診療支援の事業と、子どもの心の診療関係者の研 修事業と普及啓発・情報提供事業です。  まず、鳥取県は実施主体が鳥取県福祉保健部の子ども発達支援室です。そこが中心になり まして、拠点病院のネットワーク会議を開催しています。そのネットワーク会議が事業の提 案、支援の要請をしている。そしてそれを受けますのが、拠点病院の中にあります事業運営 チームで、そこで具体的なことを立案してやっていく。そして、事務局を拠点病院の推進室 がやっているということです。やっているものは今言いました三つでありまして、機関支援 及び連携、それから人材育成の事業と普及啓発の事業をしているということです。  今までの取組とその評価について報告させていただきます。まず、診療支援事業ですが、 一つはネットワーク会議と事業運営チーム、福祉施設への支援について報告させていただき ます。ネットワーク会議ですが、今言いましたように鳥取県の福祉保健部の発達支援室がや っているということで、役割としては事業提案、それから支援を要請するということでアか らオまでの役割を考えています。  スライドを次にお願いします。鳥取県の特徴は、まず鳥取大学付属病院はもともと精神科 の先生がつくられた大学です。下田先生という学長をされた方で、精神科に強い大学だとい うことです。もう一つは脳神経小児科というのがありまして、36年ほど前に小児科とは別 に、子どもの発達や障害児を診る小児科があるということで、鳥取県の発達クリニックや発 達障害など障害児医療を担う小児科が脳神経小児科の医師だということです。それともう一 つの特徴は、一昨年に鳥取大学医学部に初めて臨床心理学のコースをつくりました。医学部 に臨床心理学のコースができたのは初めてですが、医学部の中に臨床心理学の修士のコース を設けたということです。それともう一つは、鳥取大学の中に脳研というものがありまして、 脳神経内科、脳神経外科、脳神経小児科、脳神経病理というものがありましたが、それを改 組しまして、今年度から鳥取大学付属病院脳と心の医療センターをつくりました。それが精 神科も含めてまとまったところで診療するという体制をつくりました。それに加えて、臨床 心理のコースの人たちを引き込んで、このような子どもの心の診療拠点について、鳥取県全 体をうまくリードしていけないかということを考えまして手を挙げたというのが本当のと ころです。  ネットワーク会議は今申しましたように、診療拠点の精神科、脳神経小児科、小児科の医 師、臨床心理士、3講座ありまして、その中に不登校や自閉症をしていらっしゃる教授の先 生に入っていただいています。外部医師として精神科医、小児科医、児童福祉施設の代表、 県の福祉関係機関、児童相談所、精神保健センター、総合医療センター、療育センター、児 童自立支援施設、発達障害支援センターと教育関係の方が入ってネットワーク会議を作成し ているということで、今まで4回やっています。平成20年度が3月に1回、それから平成 21年度に3回、今までに行っています。  特に今のところ問題になっているのは、子どもの方は比較的よろしいのですが、学童から 思春期にかけて、子どもの心を診る医療機関がいま一つはっきりしていないところがありま すので、その辺をアンケートを取りまして、どこがどこまで診るのかのアンケートを集計し まして、これから学童・思春期を含む子どもの心のネットワークの支援マップを作成すると いうのが、今の大きな課題になっています。  それから学内の事業運営チームですが、学内運営チームを拠点病院の推進室に置きまして、 メンバーは今申しましたように脳神経小児科、精神科、小児科、それから臨床心理学と拠点 病院に配置されました臨床心理士が中心になりまして、月に1回開催しております。ネット ワーク会議でする事業の計画、それから研修会、講演会、それからパンフレットなどの作成 を計画しているところです。  三つ目の支援事業は児童福祉施設への支援ですが、これまで鳥取県内の児童福祉施設を幾 つか回りました。まだ回っていないところがありますので、これから回らないといけません ので、そのようなところのニードを把握するということ。児童福祉施設で一番ニードの高い ところに関しまして、施設に対して職員を派遣するということで、児童福祉施設を週1回、 職員のコンサルテーション、事例検討会、それから合同研修会を派遣しているということで す。それから他県との情報交換につきまして、スタッフを神奈川県立こども医療センターに 出向いて行かせまして、勉強させていただきました。支援事業の評価を以下のようにしてい ます。  次に「子どもの心の診療関係者の研修事業」ですが、医師に対する研修と地域支援・フォ ローアップ人材の育成ということです。医師に対する研修ですが、鳥取県は東部・西部・中 部と90キロの範囲で東西に長くなっていますが、東部と西部につきましては医師を対象に 研修会を開きました。それが平成21年2月と平成21年の6月。それから学校保健の先生 方を対象に講演会をしました。私どもの事務局が「講演する先生には事務局の仕事なので謝 金は出せません」と言うので人に頼みにくいもので、私が全部やってしまいましたが、次か らは他の人にも出てもらうようにしています。子どもの心の診療関係者の研修事業で、一つ は臨床心理の先生方をお願いしまして、家庭療育の支援講座、ペアレントトレーニングの事 業をやっていただきました。それから、これは共催ですけれどもPARSの講習会で辻井先 生に来ていただきまして、大人のアスペルガーの方たちに参加してもらいまして、大人のア スペルガーの方たちへの支援について話しました。それから学童期のAD/HDに対しては久 留米市のサマートレーニングプログラムをやっている方たちに来ていただきまして、学童の 支援を久留米市のような体制をつくってやれないかということを皆さんで今考えていると ころで、久留米のスタッフをたくさん来ていただきまして、どのようなことをしているのか、 具体的なことを教えていただきました。これも事業の評価をまとめています。  あとは「普及啓発・情報発信事業」ですが、市民向けの啓発活動として、まずこの事業を 受託したときに加藤進昌先生に来ていただきまして、子どもの心と脳のはたらきについてお 話しいただきました。5月には私が学会をやりましたので、その際に市民公開講座として共 催しまして、香山リカ先生、それからシンポジウムとして奥山先生に来ていただきまして、 私どもの人たちと一緒に発達障害とこころの問題について考えるシンポジウムをさせてい ただきました。今年度の1月になりまして、杉山登志郎先生においでいただきましてお話し いただいて非常にたくさんの方が集まっていただきました。これは、ホームページを作成し ているということです。普及啓発・情報発信の事業評価ですが、問題はリーフレットの作成 ができなかったので、もう少し一般向け、保育士向けのリーフレットを至急に作成したいと 考えています。  次に、平成22年度の事業計画ですが、子どもの心の診療支援ということで、分野別の支 援ネットワーク、もう少し分野別にいろいろやっているところを明らかにした上でそこにア ドバイザーの臨床心理士、または医師を派遣するということ。それから今1か所だけ児童自 立支援施設に行っていますが、そのようなところへの支援を強化したいということです。そ れから今お話しました支援マップの作成を急いでいるということです。それから医師に対す る研修事業は鳥取県の東部にしていませんので、東部にするということ。医師の養成につき まして、今、精神科の専門医、小児神経科の専門医のコースはありますが、それにプラスし て鳥取県の専門の研修支援事業を支援していただきまして、鳥取県は子どもの心の診療の専 門の病院がありませんので、鳥取県の事業を利用させていただいて、そのようなところに研 修をさせていただいて、精神科の専門医プラス子どもの心の診療医という資格を取れるよう にしたいと思っていますが、子どもの心の診療医はまだ専門医の資格ではありませんので、 ぜひ子どもの心の診療医を専門医の資格に奥山先生にしていただけたらと思います。よろし くお願いします。それと地域支援・人材の育成ですが、もう少し保健師たちが手軽に子ども たちに指導できるようなペアレントトレーニングの指導者の養成をしたいと考えているこ とと、児童福祉施設の職員に研修の機会を多く与えたいと考えています。あとは市民向けの フォーラムを開催することと、保護者向けのリーフレット、保健師が使用できるリーフレッ トを作りたいというのが平成22年度の計画の予定です。以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。ただ今、鳥取県の取組をご説明いただきましたが、どな たかご質問はございますでしょうか。よろしいですか。  それでは今度は佐賀県のご担当の方、よろしくお願いします。 ○瀬口氏(佐賀県)  佐賀県独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センターの小児科医長の瀬口と申します。 よろしくお願いします。私どもの資料を見ていただくとわかるのですが、特に特色があると 自分たちで考えています事業を二つほど新規で始めましたので、その二つの事業を中心にし た報告になります。ですから、これまでの三つの県のご報告と少し形式が異なる感じがする かもしれませんが、ご容赦をお願いします。  まず、事業の概要ということですが、私どもが独立行政法人国立病院機構の病院というこ とで、平成20年度にまだこの事業に参加することができなかったという特殊な事情があり まして、平成21年度からいろいろな法的な問題をクリアできるということで、新規に手を 挙げさせていただきました。昨年平成21年9月1日より、佐賀県健康福祉本部の母子保健 福祉課が実施主体で、当院が拠点病院として事業委託をさせていただいています。簡単に当 院のこれまでの位置付けについてまとめています。当院はベッド数が500床プラスアルフ ァくらいの精神科の単科の病院です。どちらかというと医療観察法の病棟の立ち上げですと いうようなものを、この数年は熱心にやっていましたので、そちらの印象が強いかもしれま せんが、児童精神科の臨床というものも1983年くらいから情動行動障害センターというも のが設置されていまして、それ以降、主に行動療法的なやり方で臨床経験を積んでまいりま した。特に最近では全国児童青年精神科医療施設協議会の正会員施設にさせていただいて、 北部九州の児童精神科の入院施設も持っている基幹医療施設の一つとして、臨床させていた だいておりました。  当院のこれまでの取組を簡単にまとめています。一つは当然ですが、さまざまな心の問題 を抱えた子どもに対しての診療です。虐待の子どもや複雑化した発達障害の子どもなど、そ のようなさまざまなレベルで処遇が難しい子どもたちに対しての支援会議に参加して、医療 的な立場から意見を述べさせていただくということはしておりました。児童相談所や県の精 神保健福祉センターの思春期相談や、そのような嘱託医業務というものもずっとやっており ました。特別支援教育事業における学校コンサルテーションですとか、福祉施設等の関係機 関への施設コンサルテーション、そのようなものも事例的にずっと行っておりました。あと 医療・福祉・教育、ときには司法です。家庭裁判所の調査官の方などを含めてさまざまな職 種の方たちに職員研修に対して講師を派遣することも行ってきました。特にAD/HDの子ど もに対しての、子どもを持っている親御さんに対してのペアレントトレーニングのプログラ ムをつくってきたという経緯がありまして、そのペアレントトレーニングのファシリテータ ーを養成する講習会を行ったり、今でも年に2回2クールのペアレントトレーニングをやっ ていますが、そこに各地から見学スタッフを受け入れるとか、そのようなことはずっと継続 してやっていました。そういうことで診療の拠点として、さまざまな関係機関との連携をず っと図ってきたという経緯がありました。  今回、新たに子どもの心の診療拠点病院推進事業を始めたわけですが、本事業を進めるに 当たって、まずはこれまで取り組んできたものを維持して、それをさらに発展させる。子ど もの心の問題に対しての診療体制の強化、関係機関への医療的支援の強化。そのようなもの に寄与することが期待できるような新規事業を行う。そのような大きな二つの柱を考えて進 めようと考えています。  そういった取組を行うに当たって、当院に期待される役割というものを、改めて整理して 視覚化したものです。右上の方に「新しい役割:5本柱」と書いていますが、特に医療機関 ならではの役割としては、児童専門の精神科医を養成すること。県内の臨床医の診断技術の 向上に寄与すること。常設の児童精神科専門相談窓口を開設すること。早期診断の診療待機 患者の解消を図ること。県の発達障害支援等のさまざまな事業が既に走っていますので、そ ういった事業のメディカルなバックアップを強化すること。そのようなことを五つの柱とし て関係機関との連携を行ったり、診療支援を行ったり、さまざまな情報提供、人材育成、そ ういったものをしてくことを確認しました。  その中で、平成21年度の重点事業として、まず二つのことに取り組みました。その一つ は診療体制を強化するための新規事業という位置付けで、不登校の子どもたちを対象にした 入院治療プログラムを立ち上げました。もう一つが地域への医療面での支援のための新規事 業として、特別支援教育における教師支援プログラムを立ち上げました。その二つのプログ ラムの概要をとりあえずご報告したいと思います。まず「不登校入院治療プログラム」、別 途ネームを「つくし合宿」という名前が付いていますが、このプログラムの目的というのは、 入院治療を、不登校状態の子どもたちが非社会的でひきこもった生活を変えるチャンスとし てとらえてもらって、自宅を離れて集団でさまざまな経験を積む中で生活リズムを整えても らったり、同年代の人と一緒に過ごすことや、教師を含めた大人に対しての否定的なイメー ジの修正を図ったり、さまざまな経験やプログラムを通して感情のモニタリングや、感情の コントロールといったスキルも高めていってもらえればということを目的としています。概 要ですが、期間は約3か月と設定しました。対象としては不登校状態にある小学校5年生か ら中学校3年生、人数としては3〜7名と考えていますが、4〜5名くらいが一番動かしやす いサイズと考えました。入院形態としては任意入院です。プログラムの詳細に関してはこの スライドには挙げていないのですが、プログラムを行う別の建物を用意しまして、そこを「つ くし学校」とネーミングしています。当院にはもともと病弱児の病後学校の訪問部がありま したので、その訪問部の先生たちにも協力していただいて、強化学習もプログラムの中に含 めて教育機会を確保して、多職種によるさまざまなプログラムを提供していきます。その内 容としてはクリニカルパスを意識して、各職種による8週間のプログラムとしました。毎週 ミーティングを行って、その中で子どもたちの変化であるとか、生じた問題点であるとか、 そういった情報共有を図っていきました。  次がもう一つの新しい事業ですが、「特別支援教育における教師支援プログラム」、別途ネ ームとしてHTTPという名前を付けています。このプログラムの目的ですが、もともと特 別支援教育事業における専門家コンサルテーションチームのメンバーとして当院スタッフ と協力はしていたのですが、そういったコンサルテーションとはまた違った形で、子どもに 直接かかわっている先生たちに対して、もっと何か効果的な支援体制がつくれないだろうか ということを模索していく中で、やってみようということになったプログラムです。特別支 援教育のコーディネーターの先生方への研修機会を提供するという目的です。対象としては 保育園、幼稚園、小学校に勤務する発達障害児の支援を担当する教師ならびに特別支援教育 コーディネーター6名としています。幼稚園・保育園が3名、小学校が3名です。また、特 別支援学校のコーディネーターとしての巡回相談員の先生方もオブザーバーとして参加し ました。期間は1回2時間で全6回でワンクール、隔週で開催しました。概要ですけれども、 先ほど簡単に触れましたが、当院では以前から特にAD/HDの子どもですとか、一般的な知 的障害の子どもを持っている、そういった発達障害を持った子どもの親御さん向けの支援プ ログラム、肥前方式親訓練(HPST)というプログラムを持っているのですが、そのプログラ ムを改変して、より学校現場に応用しやすいように修正したものを使っています。端的に言 いますと、支援を見直したい児童や生徒の取り組みたい行動を具体的に挙げていただいて、 前半部は全員参加の講義を行って、後半部は実際に標的とした行動をどうやって変えていく かを実際にディスカッションしながら、行動が変容されていくプロセスを経験していただく。 そういった少人数による個別相談形式。そういったやり方のプログラムを行っています。以 上今年平成21年9月以降の取組についてのご報告という形での発表です。どうもありがと うございました。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。佐賀県におけるこれまでの歴史のこもった取組と、この 事業に参画してからの取組をご説明いただきましたが、どなたかご質問はございませんでし ょうか。 ○澁谷委員  瀬口先生ありがとうございました。クリニカルパスを意識した8週間のプログラムがある のですが、その前に約3か月間と書かれているのですが、大人だと大体2か月くらいのクリ ニカルパスが標準的なのかなという気がするのですが、この辺の違いと、これはそうすると 保険診療の入院になるということでしょうか。 ○瀬口氏(佐賀県)  今のご質問に関しては、今日一緒に来ています心理士の中山がご回答します。 ○中山氏(佐賀県)  失礼いたします。中山と申します。よろしくお願いします。先ほど3か月のプログラムの 中で8週間ということですが、3か月ですと12週になって、実際は最初の1週間は病棟生 活にまず慣れてもらうことを基本においていまして、そこから8週間をこちらで計画したプ ログラムに参加していただくということで8週間を過ごしていただいて、残りの期間に関し ては、提供したプログラム以外のことを体験していただく。具体的にはお別れパーティーと いう言い方をしていたのですが、実際に今回のクールの子どもたちが4名参加したのですが、 自分たちでお別れパーティーをどのような形で企画していくかという話し合いを持っても らって、そのことに対してスタッフが協力をしていくという形を残りの期間でつくっていく 形で計画しましたので、8週間のこちら側から提供するプログラムと全体を合わせて12週 ということでつくっています。 ○柳澤座長  佐賀県として取り組んでおられる不登校児の入院治療ということについての具体的な説 明をしていただいたのですが、大体3か月を目標とした入院治療、それによって退院した子 どもの状況というのはどうでしょうか。これは座長からの質問で申し訳ないのですが。 ○中山氏(佐賀県)  それに関しましては、今2クール目が始まっているところですが、第1クールの子どもた ちに対してはフォローアップも兼ねて、OB会ということで月に1回来ていただくことにな りますので、2回ほど来ていただいて今参加しているプログラムの子どもと一緒に交流をし ていただいたり、スタッフと話をしていただいたりということで、様子を見せていただいて います。話をしている様子や表情も良くなっているという印象を持っています。 ○柳澤座長  もう一つ、澁谷委員からの質問で、この入院治療の保険、診療報酬についてのことはわか りますか。 ○瀬口氏(佐賀県)  診療報酬につきましては、当院の児童思春期の精神科病棟を使っていますので、そこはい わゆる児童思春期の管理加算も取っている病棟です。一応初診の時点でカルテを作っていた だいて、学校に行けない状況は精神医学的に見ますと明らかな不適応状態でありますし、対 人恐怖という診断がついたり、中にはうつという診断がついたり、何らかの精神科的な診断 がつく子どもたちですので、一方ではそういった一般的な精神科の治療という枠の中で実際 には主治医も付くのです。主治医も付いて、一般の入院治療のようにしながら、一方では日 中は別のプログラムに参加していただくという、そういったやり方になっています。通常の 保険診療の枠の中で診せていただいています。 ○柳澤座長  よろしいでしょうか。他に何かご質問はございますでしょうか。 ○神尾委員  続きになるので今、質問させてください。そうするとこの不登校のプログラムの主目的は 主訴となる精神医学的な問題ではなくて、他の子どもたちと共に生活をするという点にあり、 それにもとづいて入院の時期が決まっているということになるわけですね。 ○瀬口氏(佐賀県)  そういう意味では、確かに純粋に精神科的な問題だけを取り上げますと、絶対的な入院の 適用とまではいかないくらいのレベルの方を対象にしています。 ○神尾委員  これはここで話すのが適切かどうかわからないのですが、不登校の人には精神医学的症状 が必ずしもあるとは限らないので、あるとしても極めて個別的になるので、精神症状にもと づいた治療期間を設定したプログラムではなくて、外来でも可能かもしれない教育プログラ ムを3か月と区切って入院のプログラムを立てるという発想は、通常の診療のもの、通常の 診療のものとは別の発想だと思いますが、それを子どもの心の診療拠点病院機構推進事業に しようとした、そもそものお考えを教えていただけますか。 ○瀬口氏(佐賀県)  一つは子どもの問題に関しての医療の提供体制は、そもそもまだまだ貧弱ですし、私ども の病院の中でもいろいろな意味で効率化を図るべきだろうという考えは以前からありまし た。その中で小集団を対象にしたいろいろなプログラムをもう少し充実させていければ良い という思いは以前からあったのです。そういったプログラムを立ち上げて、それを洗練させ ていくステップアップとしても実はこの合宿を使わせていただいているということはあり ます。 ○柳澤座長  ありがとうございました。ここまで神奈川県、山梨県、鳥取県、佐賀県からそれぞれ取組 についてご発表いただきましたが、全体を通じての意見をこれから伺いたい。ただ、事業評 価ですとか、今後の事業展開の詳細については次の議題で触れていただくわけですが、今の 四つの県での取組を全体にわたって何かご意見・ご質問がありましたらどうぞ。 ○神尾委員  ご発表をありがとうございました。神奈川県の新井先生にお聞きしたいのですが、連携に 関していろいろな取り組みを以前からやってこられたと思いますが、評価が非常に難しいと いうことも指摘されておられました。おそらく「連携」という言葉がさしているところの実 態というのは、さまざまで、それぞれの経緯があって段階があるだろうと思います。この事 業ではどのような段階のどういう連携を具体的に目指しておられるのでしょうか。例えば、 さきほどご説明いただいたように他領域の方に講義をするというのも連携の第一歩かもし れませんが、その先に目指しておられる連携の形としてはどのようなところを目的において おられるのでしょうか。県内で地域ごとにそれぞれ異なる段階にあるのではないかと。その ような段階を含めれば、評価ということも可能かと思いました。それで先生方が目指してい らっしゃるところと、今ご紹介いただいた連携活動はどの辺りの段階と位置づけておられる のかを教えてください。 ○新井氏(神奈川県)  なかなか難しい質問ですが、最終的な目標は医療を求めている子どもが医療が受けられる ようになることで、そのためにこの子どもに対して精神科医療が必要なのか、あるいはこの 子どもにとって精神科医療というのが役に立つのかという知識も、あるいは現場の子どもと 直接接している学校の先生や保健関係者、福祉関係の方たちが十分把握されているかどうか も、今はまだ曖昧な段階で、実際に顔を見てこのような子どもが入院治療をしています、こ のような子どもが入院対象となっています、治療対象となっていますという話をしていくこ とで、それなら自分たちのところにも大変な子どもがたくさんいるとか、そのような話がで きるようになるというのが目的なので、イメージとして段階というところまで私の中でイメ ージができないのですが、そういうところです。 ○神尾委員  そうすると、まだニーズを発掘されていない子どもたちの紹介が今後もっと増えるという ことが予測されるということでしょうか。 ○新井氏(神奈川県)  特にそれが深いと思ったのが、児童養護施設の子どもたちが非常にいろいろな意味合いで 医療につながっていないということがわかってきて、具体的に言うと語弊があるかも知れな いのですが、児童養護施設の方たちの医療に関してのアクセスにはハードルがあって、判断 を直接医療者がしていない。いわゆる福祉関係者がしていたり、施設の方がしていたりとい うことで、そこはむしろ入っていかなければというようなところで一番感じました。 ○神尾委員  ありがとうございます。 ○柳澤座長  順番に、ありますか。手短かに。 ○神尾委員  佐賀県の瀬口先生、特別支援教育の先生方へのペアレントトレーニングのプログラムも、 私が十分理解していないのかもしれませんが、医療的ケアと関係しているのでしょうか。 ○瀬口氏(佐賀県)  それはどちらかといいますと行動療法の考え方を使って、望ましい行動を増やしながら学 んでいただいて、実際にそれを実践して子どもが変化することを体験していただく。逆に望 ましくない行動を別の代替行動に置き替える。そういったプロセスを経験していただくとい う内容です。 ○神尾委員  わかりました。ありがとうございました。 ○柳澤座長  よろしいですか。他にご意見は。どうぞ、齋藤委員。 ○齋藤委員  山梨県の方に伺いたいのですが、子どもメンタルケアセンター開設という最終的なゴール が挙げられているのですが、非常にユニークな発想だと思いますが、その辺をもう少し。先 ほどの説明では十分こちらに伝わってこなかったので、具体的に今考えていらっしゃること をお話しいただけますでしょうか。 ○小林課長補佐(山梨県)  平成20年度の終わりに県下の医療、保健、福祉、教育等の関係者が一堂に会しまして、 子どもの心の健康対策にいろいろな課題があるということを確認しました。お医者さんが不 足していて、すぐに診てもらいたいのに診てもらえない。地域の受け皿もない。児童養護施 設の問題や、児童相談所の問題などあらゆる問題が討議されました。県としてまだこのモデ ル事業の利用は念頭にないというところで話し合った訳です。県では子どもメンタルクリニ ックを平成18年4月に開設し、発達障害者支援センターも同時に開設しました。発達障害 の確定診断やすぐに一杯となり、受診待ちの状況となりました。発達障害者支援センターも 相談件数は増加の一途です。95%は継続指導になっている。子どもメンタルクリニックも 医師は1人で休むこともできない状況で、お辞めになりたいのを慰留してきている状況でし た。受診待ちを何とかしなくてはいけない。山梨県のような小さい県は先生を県外から招へ いすることもなかなかできないですから、自分たちで育てていかなくてはいけないと、平成 18年度からは部局の人材研修として精神保健福祉センターの近藤先生が中心になって、こ つこつとやってきていました。けれども、そういった状況を声にしてきちんと部として絵に して示して、知事に理解してもらい、議会で子どもの心の健康についてきちんと取り組んで いかなければいけないということになりこのような形になったのです。機能や人員について は今まさにワーキンググループで検討中です。子どもメンタルクリニックは診療で手一杯で、 スーパービジョンをしたり、人材育成をしたり、研修をしたりということも期待されていた のですが、とてもそこまで手が回らないという状態でした。2年後からは先生をもうお一人 お願いして2人体制にして、発達障害を担当とする先生と、子どもの心の問題を担当する先 生を考えています。メンタルクリニックの7、8割は発達障害の子どもです。精神科的な問 題を持っている子どもは2割くらいです。県立北病院は精神科単科の病院なので、非常に敷 居は高くて受診しにくいですし、総合病院の中央病院にも思春期外来があったのですが、実 は4月から県立中央病院と県立北病院が独立行政法人になるのですが、どうも県立中央病院 の思春期外来は、非常に重要な場所ですが、どうもそこに医師がいないということで閉鎖に なる可能性もあって、心配な状況になっているのです。メンタルケアセンターは、発達障害 者支援センターと子どもメンタルクリニックの機能を中心にして、精神保健福祉センターと 児童相談所の機能を一部持ってきて療育もしたり、人材育成ももっと積極的にして、それか ら県立北病院で後期臨床研修をするのですが、県立北病院は専門の児童精神科医はいらっし ゃらないので、部局研修にも来ていただいて、県全体で子どもの心の診療医の育成をしてい きたいという構想で子どもメンタルケアセンターを開設しようと思っています。  中身については、ご意見をお伺いしていきながら、今後詰めていきます。小児科の先生方 からは、地域の方に下ろしていく機能も持たなければいけないと、全部センターで抱え込む ようなことにはならないようにと言われています。小児科医会の先生方、小児神経科医の先 生方とも連携しながら、今個別のケースについての連携はできていると思いますけれども、 システムとしての支援体制はこれからなので、発達障害についても今そういった地域の支援 体制づくりをしていますのでそれとタイアップしながら、センターで抱えるのではなくて、 地域の支援体制をつくりつつ、センター機能の果たせるような「子どもメンタルケアセンタ ー」を考えているところです。そのようなところでよろしいでしょうか。 ○齋藤委員  既存のいろいろな機能を統合して拡大しながら新しい機能を持たせる。 ○小林課長補佐(山梨県)  新しい職員は増やせないので、そこも大変なのです。 ○齋藤委員  あともう1点ですが、先ほども話にありました県立北病院での後期臨床研修医の研修です が、これに関しては児童思春期だけを専門にやる後期研修医ということではない。 ○小林課長補佐(山梨県)  そうです。まず基本的には精神科医療ということで。ですから前半は全般をして、その後 児童思春期のコースとかアルコールとかさらに専門を選んでいただくことだと聞いていま す。ですから、100%児童思春期ではないのですが、できるだけ児童思春期の方に来ていた だくように考えています。 ○齋藤委員  ありがとうございました。 ○柳澤座長  はい、どうぞ。 ○南委員  先ほどのご質問と関連があるので先に1点だけ。先ほど神奈川の先生が神尾委員のご質問 に対して連携の会議の中で、本当に医療が必要な子どもに医療がいくことを目指してという 話があったのですが、おっしゃるとおりで本当に困っている方の話を伺いますと、この子ど もに何が必要なのかがわからなくて困っているという方が非常に多いと思います。医療にア クセスしたものの待機させられたまま、子どもはどんどん育っていっているという事例もあ ると思いますが、実際子どもに必要な特定の、この子どもに対して何が必要かを連携して相 談していただくことは非常に意味のあることだと思いますが、その中で福祉に関して多少ハ ードルだとおっしゃった意味は、結局福祉の関係の方にはできることの中に限界があるとい う意味なのか。それとも認識をトレーニングか何かで変えていただければ随分変わるという 意味なのか。その辺のことを少し教えていただけますでしょうか。 ○新井氏(神奈川県)  実は先ほど会議をやったページでいうと、資料2の心の診療関係者研修事業の中の第1 回連携のためのセミナー、児童福祉施設における諸問題というところで、施設長にいらして いただいて、お話を伺ったときに非常に勉強になったのですが、いわゆるここは神奈川でと いうことで全国かどうかはわかりませんが、福祉側から見ると子どものいろいろな情緒的な 問題が、いわゆる施設の職員がもっとかかわることによって変わるのではないか、マンパワ ーによって変わるのではないかといった医療ではなくて、違う部分でもっと手厚くしてあげ れば解決する問題だという認識が多いと言われました。私も非常にそれは感じたのですが、 そのような意味で、病院にまで行かなくても良いだろうという部分から、医療が少し遠ざけ られている部分があるというような施設長のご意見がありました。そこにはもちろんいろい ろな逆の意見もあると思いますが、そういった部分で、もちろん我々は来た患者さん全員に お薬を出して、全員を入院させるわけではないわけで、そこで判断するのが私たちの役目だ と思っています。ですから、そこで逆に言えばお薬も必要がないですし、通院も必要がない ということも確かにあるのですが、その判断が非常にまちまちで施設によってもばらばらと いう現状があるということを痛感させられたので。そのような意味です。 ○柳澤座長  よろしいでしょうか。あと鳥取県の取組については今までのところ質問がないのですが、 何かありますか。よろしいでしょうか。今日はこの四つの県での取組をご発表いただいたわ けで、各県の担当者の方々はここで退席していただいても結構ですが、引き続き傍聴される 場合はぜひそのままの席で。また、議論に加わっていただいても結構だと思いますので、ど うぞよろしくお願いします。どうもありがとうございました。  それでは、ここからは議題2の「今後の事業評価について」、ご議論いただきたいと思い ます。  まず、先ごろ調査しました全都道府県を対象とした子どもの心の診療体制アンケート調査 結果、そして子どもの心の診療拠点病院機構推進事業の実施状況に関するアンケート調査結 果について、事務局から報告をお願いします ○森岡母子保健課長補佐  それでは、資料6と資料7と資料8に沿ってご説明します。子どもの心の診療体制の状況 について知るために、3種類のアンケート調査を行っていまして、全都道府県を対象とした アンケート調査が一つ目、モデル事業を実施している都府県に対する状況のアンケート調査 が二つ目、三つ目として拠点病院に対するアンケート調査があります。  最初に、一つ目の全都道府県を対象とした子どもの心の診療体制のアンケート結果につい てご説明します。資料6で、回答があった都道府県数は45でした。1ページ目の下の部分 ですが、「医療計画に、子どもの心の診療提供体制確保に関する記述がありますか」という 問いについて、事務局で拠点病院事業を実施している自治体と拠点病院事業を非実施の自治 体で分けて集計していますが、事業を実施している自治体については記述があるというもの が30%、事業を実施していない自治体については14.3%ということで、事業を実施してい る自治体において高くなっていました。  次のページにまいりまして、2-1「心の診療を必要とする小児の入院治療機能を持つ医療 機関が存在しますか」と聞いています。モデル事業を実施している自治体においては、8割 があると回答していまして、モデル事業を実施していない自治体よりも多くなっています。 次の2-2ですが、整備されていると答えた29自治体の病院の詳細について聞いています。 「病院の種類」については、総合病院が49%で半分近く、その次に多いのが精神科単科病 院で32%、その次に多いのが小児専門病院で8%という結果になりました。「病院の開設者」 につきましては、一番多いのが私立病院、2番目に多いのが県立病院などの公立病院、3番 目として国立大学法人という結果です。[3]のところですが、「心の診療を必要とする小児が 入院できる病床数」というものも聞いていまして、一番多いのが11〜20床、それと同じ値 で21〜40床というところが32%で一番多い割合になっています。また、「子どもの心の診 療に専従する医師がいますか」という質問ですが、いると答えたところが大体3分の1ぐら いで、いないと答えた自治体の方が多くなっていました。次のページにまいりまして、2-1 で整備されていると答えた29自治体の「その病院の詳細について教えてください」という ことで、子どもを診療している精神科の医師数と子どもを診療している小児科の医師数につ いて聞いています。精神科の医師数の方が多くなっていて、1〜5人が40%あまりというこ とで一番多くなっています。小児科の場合は0人が37.9%で多くて、次に1〜5人が30% あまりという結果になりました。その下のアのグラフですけれども、「処遇困難な子どもの 心の問題について、関係機関等との連携会議を開催していますか」ということで、本庁での 会議に限って連携会議を開催しているかどうかを聞いています。モデル事業を実施している 自治体については50%で、モデル事業を実施していない自治体については31.4%というこ とで、モデル事業を実施している自治体の方が多くなっていました。  次のページにまいりまして、「子どもの心の問題対応者からの医療的な相談及び診療支援 の体制が整備されていますか」ということで、診療支援の体制について聞いています。モデ ル事業を実施している自治体は70%が整備されていましたが、モデル事業を実施していな い自治体は45.7%で、モデル事業を実施している自治体の方が高くなっていました。下の アのグラフですけれども、「日ごろより、重篤な心の問題を有する子どもが発生し、緊急に 治療を行う必要がある場合等に備えて、医師の派遣の準備を整えていますか」という質問に つきましても、モデル事業を実施している自治体が50%、実施していない自治体が25.7% ということで、実施している自治体の方が多くなっていました。  次のページですが、「子どもの心の問題に関して、医療関係専門職に講習会を実施してい ますか」という質問です。これについては、全般として実施しているという割合がかなり高 くなっていましたが、モデル事業を実施している自治体で80%、モデル事業を実施してい ない自治体で74.3%で、モデル事業を実施している自治体の方がわずかに高くなっていま す。下のグラフにまいりまして、「普及啓発を行っているかどうか」について聞いています。 ここについては、モデル事業を実施している自治体が6割、モデル事業を実施していない自 治体が11.4%で、かなり開きが大きくなっていました。  次のページにまいりまして、最後の質問ですが、「子どもの心の診療体制を整備すること を困難にしているものは何だと考えますか」と聞いていますが、大きくまとめると、子ども の心の診療に携わる専門医が不足しているという答えが一番多くて、22の自治体でそのよ うな答えが返ってきました。以上が全国の調査の概要です。  次に、資料7にまいります。モデル事業を実施している自治体の調査です。11自治体が 対象でしたが、9自治体からの回答でした。2008年10月1日から1年間で、診療支援に関 する相談を受けた件数については、最小値が0件、最大値が50件、平均値が15.7件になっ ています。また、同時期に地域の保健福祉関係機関から医学的支援に関する相談を受けた件 数についても、最小値が0件、最大値が200件、平均値が60.5件になっています。(3)に処 遇困難として連携会議を行った主なケースの例を二つほど上げています。(4)にまいりまし て、2008年10月1日から1年間に地域の保健福祉関係機関との連携会議を開催した回数 については、最小値が0回、最大値が244回、平均値が31.1回となっています。  研修事業についての設問に対する回答がこの後です。2008年10月1日から1年間に医 師等の関係専門職に対する実地研修等を実施した場合、その回数などについて回答をいただ いています。実施していない自治体が3自治体、それ以外の実施している自治体が六つあり まして、その内容について主なものを以下に記載させていただいています。  また、(2)にまいりまして、同じ時期に関係専門職以外の保健福祉関係機関の職員に対す る講習会を開催した場合についても、その回数等について回答をいただいていまして、行っ ていない自治体はないという状況で、9自治体の研修の内容を以下に記載しています。3ペ ージです。  次に、普及啓発・情報提供事業の実施体制について聞いています。3ページの3の(1)の ところで、ホームページの作成状況とアクセス数で、ホームページを作成している自治体が 7自治体ということになりました。ポスターを配布している自治体は6自治体で、リーフレ ットを配布している自治体は7自治体という結果になっています。その他の普及啓発事業の 例は、五つほど記載しています。また、今日参考2として資料をお配りしていますが、その 実施要綱に記載されていない事項で、本事業の内容として実施してほしいものということで、 幼児健診後の発達相談等への専門医の派遣が挙がっていました。  次に資料8にまいりまして、拠点病院調査の結果について報告します。拠点病院12の病 院に回答をいただいて、それを10自治体を経由してこちらで取りまとめたものです。1自 治体から回答が得られませんでした。それでは、診療拠点病院等の体制ですけれども、心の 診療が必要な小児が入院できる病床数ですが、最小値は0床、最大値が264床、平均値が 51.3床となりました。子どもの診療を行う精神科の常勤医師数ですけれども、最小値が5 人、最大値が24人、平均値が11.6人となります。心の診療を行う小児科の常勤医師数です が、最小値が0人、最大値が17人、平均値が3.4人で、精神科の方が小児科よりも多くな っています。子どもの心の診療に専従している医師数については、最小値が0人、最大値が 12人、平均値が4.4人という状況です。外来看護師の人数ですけれども、最小値が1人、 最大値が14人、平均値が6.1人です。入院の病棟看護師の人数ですけれども、最小値が0 人、最大値が137人、平均値が32.7人という結果になりました。  診療拠点病院の診療実態についても聞いていまして、月平均の外来患者数の最小値が90 人、最大値が3,645人、平均値が926.7人です。月平均の初診患者数につきましては、最小 値が9人、最大値が203人、平均値が53.4人です。予約外の受診患者数月平均ですけれど も、最小値が7人、最大値が118人、平均値が53.9人という状況になっています。また、 初診外来予約した者のうち、受診しなかった者の割合は低くなっていて、最大値は13%、 平均値が3%となっています。紹介率ですけれども、最小値が10%、最大値が100%、平 均値が63%で6割ぐらいです。逆紹介率は、最小値が5%、最大値が40%、平均値が23.8% です。入院の方の平均在院日数ですけれども、最小値が51日、最大値が392日、平均値が 153.9日でした。  教育・研修の状況について聞いていますので、そこもご報告します。これは自治体ごとに 各拠点病院の実績を合計したものです。臨床研修生の受け入れについては、医師の臨床研修 を受け入れている自治体が4自治体です。それ以外につきましては、看護師、言語聴覚士、 作業療法士等の職種がありますけれども、受け入れている自治体は0自治体から2自治体ま でという状況でした。後期研修医の採用状況につきましては、4自治体で子どもの心の診療 科として後期研修医を採用しているという回答です。また、その他の枠組みで後期研修医を 採用して子どもの心の診療トレーニングを行っているという所が5自治体ありました。院外 の専門職への研修状況につきましては、医師向けの研修を行っているという所が6自治体、 看護師向けの研修を行っている所が4自治体、それ以外の所につきましては、言語聴覚士、 作業療法士等がありますけれども、一番行っているのが最大で4自治体となりました。初期 研修医への研修状況ですけれども、診療拠点病院のうち初期研修医を採用している病院があ るという所が3自治体、うち初期研修医が子どもの心の診療科をローテーションする病院が あるのは1自治体となりました。以上です。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。今、事務局から全都道府県を対象とした子どもの心の診 療体制のアンケート調査、それからこの事業を行っている自治体に対するアンケート調査、 それからその自治体における拠点病院を対象とした調査という3種類の調査について報告 いただいたわけですが、何かご質問がありますでしょうか。 ○澁谷委員  事務局に質問ですが、この事業を実施しているのは11自治体ですね。それで、2自治体 や1自治体で返事がない所があるのですが、これは催促したりしているのでしょうか。都道 府県で45しか返ってこないということと、この11自治体の中で二つ返ってこないという のとでは全然意味が違うと思います。この事業をやったところのデータですから、これはす べてきちんと11のアンケートを取るべきだと思いますが、その辺はどうなのでしょう。こ れは事務局へ質問です。 ○宮嵜母子保健課長  お答えします。もちろん督促してお願いしていますし、最終的に出していただこうと思っ ていますけれども、この年度末のお忙しい時期で、予算や議会などいろいろと他のことも含 めて、今日の会議の集計に間に合わなかったとご理解いただければと思います。 ○澁谷委員  最終的には取っていただけるということですね。 ○森岡母子保健課長補佐  モデル事業を実施して、まだ期間が短いなどの事情で、回答いただけないということもあ りましたが、そこを除いてきちんとデータの方は取るようにしたいと思います。 ○奥山委員  細かいことで申し訳ないのですけれども、資料6の4ページ目の下に子どもの心の診療体 制が整備されているところで、子どもの心の診療に専従する医師が「いる」というのが10 自治体ですね。資料8の1の(4)を見ると、子どもの心の診療に従事している医師が全くい ないというのが1自治体です。そうすると、この10自治体のうちの9自治体はモデル事業 をやっている所と考えてよろしいのですか。 ○森岡母子保健課長補佐  すみません。資料6の[4]ですか? ○奥山委員  資料6の4ページの下の[4]で、子どもの心の診療に専従する医師がいるというのは、29 自治体の中のいるが10自治体になっていますね。 ○森岡母子保健課長補佐  はい。 ○奥山委員  資料8を見ると、1の(4)で小児の心の診療に専従している医師数、これは数ですけれど も、0というのが1自治体しかないということは、9自治体は何らかの医者がいるというこ とですね。 ○森岡母子保健課長補佐  はい。 ○奥山委員  ということは、資料6の[4]のいるの10自治体のうち9自治体はモデル事業をやっている 所と考えてよいのですか。 ○森岡母子保健課長補佐  モデル事業を実施している10自治体の二つの所は入院機能を持つ医療機関がないのです けれども、専従の診療医がいる場合がありますので、奥山委員のご指摘のようにはならない と思います。 ○奥山委員  そうすると、具体的に[4]の「いる」の中で、モデル事業をやっている自治体は何自治体で すか。 ○森岡母子保健課長補佐  そのように集計していませんでしたので、今はわからないのですが、確認して後日お伝え します。 ○柳澤座長  他にありますか。今村委員、どうぞ。 ○今村委員  専門医の先生にお聞きしたいのですけれども、心の診療を必要としている子どもたちとい うのは、相対的に虐待を受けやすい状況にあるのでしょうか。もし、そういうデータがあれ ば、いま非常に大きな社会問題となっているので、より一層重要度が増すのではないかとい うことが一つです。  それから、それと少し関係すると思いますけれども、この問題を早期発見して早期治療す るというのは、明らかに何らかの面で優れているという価値といいますかエビデンスがある のでしょうか。非常に限られた医療資源の中で、こちらに力を入れて投入しなければならな いという明らかなエビデンスがあるのかどうか。もしあったら、あるいはそれがはっきりと しないのかというところを教えていただきたいです。 ○柳澤座長  専門の先生方がたくさんいらっしゃいますから、どなたか。奥山委員。 ○奥山委員  虐待に関しては、実は「鶏と卵」の問題になりやすいのです。要するに精神的な問題、特 に発達障害系の問題を持っているから虐待を受けやすいという問題と、虐待を受けているが 故にそういう似たような症状をもってきやすいという両方がありますので、非常に難しい点 ではあるのですけれど、杉山登志郎先生がご覧になっている1,000人近い患者さんを全部分 析された結果では、今はっきりとは覚えていないのですが、発達障害と診断できる患者が6 割ぐらいおられたと思います。それで、男女比を見るとやはり男の子の方が多いという発達 障害と似た分布になるので、発達障害があるために虐待を受けている群も結構多いのではな いかという結論を言われておられたのを覚えています。  それからもう一つ、早期発見に関しても、特に高機能広汎性発達障害などの場合には、早 期に発見しないでずっと後まで行ってしまうと、いじめのような問題の対象になりやすいと いうことがありまして、それが二次障害を持ってきやすい。これは私どもの調査でもそうだ ったのですけれど、やはり早期に発見するかどうかというところで、二次的な精神障害を持 ってくる率が違ってくる。発達障害そのものは治るわけではないのですけれども、二次的な 障害を持ってくる率が違ってくると考えています。 ○今村委員  そうだとすれば、専門医をきちんと養成する意義というのは非常に大きいと判断するわけ ですね。この前の会で以前にも少しお聞きしたこともあったのですけれども、それではこの 心のケアをする、診療する専門医というのが、どの程度必要なのかという議論ですけれども、 これについて現在のきちんとした数が、もしわかっていれば教えていただきたいのですが。 ○柳澤座長  その辺は今、奥山委員が研究代表者をしておられる研究班などで、そういうことはどうで しょうか。検討されていますか。今までの平成17、18年の子どもの心の診療に携わる医師、 医療従事者の養成に対する検討会ですか。それから、そこで並行して行われていた研究班と いったことでも、今、今村委員がご質問になったようなことに関しては、常に話題の一つの 中心でもあったわけですが、どうでしょうか、何か。 ○今村委員  必要だというのはわかりますが、非常に医師の数が不足するという状況の中で、非常に喫 緊を要する分野というのがありますね。多分、この分野に特化された専門医というのは、な かなかその他の分野の診療ができにくいのだろうと思います。そうすると、「これだけの人 数が必要なのです」と決めてかかった方が、理想数の活用という面で非常に大事なことなの ではないかと思います。1人の医師を育てるのに1億円ぐらいかかると言われていますので、 そこのところの必要数はきちんと見定めた方が良いのではないかと思います。 ○柳澤座長  座長から申し上げるのも恐縮ですが、今までの特に厚生労働省の検討会あるいは研究班で の議論で、子どもの心の診療に携わる医師というものを非常に広くとらえて、その一番裾野 には一般の小児科医や一般の精神科医で、子どもの心の診療を幅広くやっている医師、その 中間的なレベルといいますか類型として、定期的にといいますか、例えば週に1回そういう 専門的な外来を行っている小児科医あるいは精神科医、その頂点に専ら子どもの心の診療に 携わる本当の意味の専門医師というような模式図を書いてありますけれども、それぞれその 先端の部分について、どれぐらいの人数が実際に必要なのか、それからどれぐらい必要なの かということは、きちんと議論されていかないといけないと思いますけれど。 ○奥山委員  あのとき数字を出したのですけれども、はっきりした数字を覚えていないのですが、一番 最先端の方といいますか、本当にそれだけをやっている専従でという数に関しては、かなり 入院を対象に診るという考え方だったものですから、かなり少なくて、何千人ではなくて何 百人という単位だったと思います。ただ、本当にそれだけでできるのかというのはもっと議 論しないといけないところだと思いますけれど、柳澤座長がおっしゃったように、その代わ りサブスペシャリティとして、例えば小児科で心を診ている先生方あるいは大人の精神科医 をやっているけれど思春期までは診てくださるような方々も、きちんとやっていただくとい う前提の下で、それだけの人数は最低、全く専従ということで必要ではないかというのが出 ていたと記憶しています。 ○柳澤座長  他にありますか。それでは、いろいろと議論はあるかと思いますけれども、「今後の事業 評価について」のディスカッションに進みたいと思います。この有識者会議の役割というの は、平成20、21、22年度に行われるモデル事業の評価をするということが中心的なものだ と思いますので、今後これらの事業を評価していくに当たって、どのようなことがポイント になってくるかということをご議論いただければと思います。  議論の前に、この事業評価について、事務局から何か説明がございますか。 ○森岡母子保健課長補佐  この検討会の検討項目の一つですけれども、参考2に要綱を示していますが、拠点病院を 中核として関係機関と連携して、支援体制の構築を図るということが目的なのですけれども、 この事業ですが、平成20年度から3か年のモデル事業となっていますので、平成22年度 中に有識者会議として、本事業の評価をとりまとめていただきたいと考えています。この後 の事業のあり方などの検討を行うために、夏ぐらいまでには今から申し上げる三つの点につ いて、ご議論いただきたいと思っています。モデル事業全体の評価についてということで、 参考2の要綱にありますような事業内容での自治体の取り組みについて、どのような評価に なるのかというところが1点目です。  それから2点目として、モデル事業の中で特に評価できる点、評価できない点などがあれ ば、教えていただきたいと思っています。この事業内容としては、診療支援事業と研修事業 それから普及啓発・情報提供事業と大きく三つありますけれども、その三つのところについ て、評価できる点、評価できない点などがあれば、ご意見をいただきたいと思っています。 また、子どもの心の診療に関して、今後、力を注ぐべきではないかというところがあれば、 またご意見をいただければ幸いです。 ○柳澤座長  今、事務局から説明をいただいたことに関連して、何かご意見・ご提案などありますか。 どうぞ。 ○齋藤委員  [3]の「普及啓発・情報提供事業」ですけれども、先ほどのアンケートでもポスターやリー フレットを作っているという団体が数多くあったのですが、具体的にどのようなポスターを 作ったり、あるいはリーフレットを作ったりしているのかを事務局の方で少し集めていただ いて、見せていただけると非常に参考になるのではないかと思いますが、可能でしょうか。 ○森岡母子健康課長補佐  事務局としても、今までいろいろとヒアリングも実施しておりますので、それも参考にし て取りまとめたいと思います。 ○柳澤座長  他に。 ○丸山委員  診療支援の中身のところで、現場側から見ると、先ほど新井先生の所も巡回相談をやって いただいています。多分、都内に限定しますと、約3,900人の要保護の子どもがいて、その 6割ぐらいが被虐待の子どもです。そういう意味では、かなり心のケアが必要な状態という 中で、現場の病院の先生にはニーズに合わせた形で、いわゆる巡回相談までやっていただい ている実態。これは前回も大阪府か静岡県のときにお聞きした気がしたのですけれども、そ の辺の実態もお知らせ願えるのか。それは、先ほど今村委員がおっしゃったように、いわゆ るニーズというものに対して供給が限られている中で、どれだけ効率的かということから考 えると、やはり現場の声としてはその辺のところが知りたい気がします。 ○柳澤座長  どうでしょうか。どうぞ。 ○澁谷委員  ずっとそれぞれのところを聞かせていただいて、やはりかなり地域性が違うということで あり、我々がここで例えば何かを評価して、そしてそれを全国の皆さまの所でやってくださ いとお示しするということを考えると、ある程度共通な部分とそれぞれの地域独特のやり方 の部分があると思います。それを分けて、どこでもできる内容と、それぞれの所で工夫をし ているところを評価する2本立ての内容の評価を考えることがいいと思います。例えば先ほ どの啓発のようなことは多分どこでもできると思いますが、例えば複数の病院で拠点病院を 形成する地域もあれば、一つの病院でできる地域もあるというように、地域によってかなり 条件が違うものは、その条件を尊重したような評価の仕方や出し方が必要です。それを見た 所が参考にできるように、あまり一律の評価にならないまとめ方がよいのではないかと思い ました。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。評価をまとめるに当たって、共通な部分と地域性や個別 性といった両面から評価するべきではないかと。どうぞ。 ○神尾委員  アンケートにも心の専門医の人材が少ないということがありますし、完璧な事業というの はないのですが、それでも実際のニーズにあわせて、ご紹介いただいたようなプログラムが 今後、各地域で参考にされていくのだと思います。ですから、ターゲットをはっきりと絞っ たプログラム、例えば新井先生ならば福祉にいて医療のニーズがあるのに受診していない人 をターゲットとして引っ張ってくるというようなことですが、ターゲットをはっきりしてい るとよいと思います。全部引っ張るのであれば、今のデータにもありましたように、逆紹介 が圧倒的に少ないことから医療機関にたまってしまって事態は悪化するかもしれません。な ので、こういう人たちにこのようなサービスがあるということがきちんと伝わらないと、宣 伝だけして患者サービスの待機ばかりが増えてはいけないので、ターゲットを明確にするこ とが重要と思います。子どもの心の問題といっても多種多様で、発達障害から早期精神病ま でありますし、精神疾患以前の状態もあります。その状態に応じてですから、たとえば身体 化レベルの問題でしたら一般小児科の先生が得意とされるでしょうし、複雑なものは精神科 など。対象と、それに対応できる機関や職種などがわかるようなアピールにしないと、あま り普遍的にユニバーサルなものだときちんと伝わらないのではないかと。それから人材育成 ですが、先ほど臨床実習は1億円かかるという話もありましたが、研修で会得できるものも 極めて限界があります。本来は文部科学省がきちんと長期的に人材育成を大学などでしなけ ればいけないところを、患者を担当している病院の先生が出張して他地域で研修を担当する のは、やはり本当は正常なあり方ではないと思います。限界のなかで今の地域のニーズに応 えるためには、どのような子どもにどういうことができる、と明確に現状を伝えること、そ して根本的な人材育成をせずに子どもの心はひととおり対応できるようになったという誤 解を与えることは避けるべきだと思います。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。他に委員方からご意見はありますか。南委員、どうぞ。 ○南委員  各先生方がおっしゃることはそれぞれそのとおりで、国民からすると、やはりどのような 所に生まれても育っても自分の地域で一番必要な何らかの支援が受けられるということに なるかと思います。その場合にはやはりおっしゃるように、まずは非常に幅広に交通整理と いいますか、やはりこの子どもに必要なのは医療なのか、福祉なのか、教育でできるのかと いった振り分けがまずきちんとされれば。この前の会議のときに散々先ほど柳澤座長がおっ しゃったように部類分けして、その最先端の先生から振り分けられる方までという議論はし たわけですけれども、そこを一つには徹底的にどこの地域でも均てん化してきちんとしてい ただくということが一つあります。  それから、やはり問題がわかったときには、やはり多少遠隔であってもどこか行く所がは っきりと示されるようなことが必要なのだと思います。どうしてよいかわからないまま、時 間を労するということは非常に困るということで、皆さま方がおっしゃったことはそこでつ ながると思います。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。丸山委員、何かありますか。 ○丸山委員  2、3年前に虐待の実態をやって、多分先ほどの奥山委員と絡むのですけれども、3か月 で8,000ぐらいをやって、発達障害系がやはり2割ぐらいいました。私どもの児童相談所の 援助方針会議で医師と心理士がかなり専門的に調査をやった議論の中で、このアスペルガー はいわゆる愛着形成不全で多動性障害が出てきたのではないかというケースがかなり出始 めているところがあるので、その辺を今の医学では、多分心理点でいわゆる診断名というこ とになるかもしれないけれども、その辺のもう少し前の段階でという中で、アメリカのピッ ツバーグだと思いますけれども、就学前にいわゆる愛着形成不全の虐待の子どもにプログラ ミングをやってIQが良くなったなど、かなりそのようなデータを出している所がもう既に あるので、日本でもそのようなアプローチをやっている所があれば、逆にそのような先進的 な先駆的なものをぜひとも取り上げていただきたいと思います。 ○柳澤座長  どうでしょうか。今後の評価全般にわたって。どうぞ。 ○奥山委員  今、研究の方で、一緒に研究してくださった青木先生などが乳児期の愛着にターゲットを 当てた養育を乳児院でやるのとやらないのでは、かなり愛着形成が変わってくるのはわかる のですけれども、それは事前に普通の養育をした分では、正直言って愛着の状況に基づく症 状はある意味悪くなるのです。それが愛着形成にターゲットを当てた養育をすることによっ て、ある程度症状は減るということはわかっているのですが、それはたまたま、まずはトレ ーニングをする前に、こちらでプログラムを組んでいる間に普通の養育をやっているところ を前後で比較し、それからプログラムをやって前後で比較しということで倫理的にはクリア しているのですけれども、やはりやらない所とやった所を明確に分けてしまうのは少し倫理 的に難しい面はあるかと思います。おっしゃるとおり、まだまだそのようなことをやってい く余地は十分にあるのではないかと思っております。 ○柳澤座長  時間が限られておりますけれども、他にありましたらどうぞ。 ○神尾委員  さきほど南委員が医療と福祉と教育との関連についておっしゃったのですけれども、これ は大変難しい問題で、その意味で評価も難しいのだと思います。医療がずいぶん頑張って対 応している子どもたちはもしかしたら早期に介入していたら医療化しなかったかもしれま せんし、そういうケースが困難化した状態で、専門性の高い先生が頑張って対応されている ということで、地域の連携システムが機能すれば早期に介入できるようになり、長期間医療 が抱え込まなくても教育や福祉などのサポートを受けて地域で生活でき、医療はモニターを ときどき行う程度でやっていけるケースが増えるかもしれません。ですから、評価するとき、 単に医療機関で対応した人数とかではなくて、こうした他機関の連携がいかになされていて、 子どもの心の問題が一生それらのうち一番適切などこかで支援を受けることができている かという視点は必要であると思います。となると、やはり長期的な視点が要ると思います。 ○柳澤座長  ありがとうございました。よろしいでしょうか。他に何かありますか。どうぞ。 ○南委員  すみません、一言だけ。私も全くそのとおりだと思います。これまでに私も子どもの心の 問題で専門家にいろいろとお話を伺ったりすると、すぐに連携などと簡単に言うけれども、 連携ではないと。「連携ではなくて、すべてだ」ということを何度も強調されたので本当に そうなのだろうと思います。ですから、評価に関しては私も少し難しくて、医療・教育・福 祉の関係はわかりませんが、やはり少なくとも、そのすべてが必要であるという認識の下で 事業に関してはきちんと取り組んでいかなければいけないということだと思います。 ○柳澤座長  どうもありがとうございました。非常にまとめ的なコメントをいただきました。本日さま ざまなご議論いただいた内容と、またそれを踏まえて事務局で事業の評価案を取りまとめて いただくようにお願いしたいと思います。先ほど事務局から日程的なことも少し触れました けれども、今年の夏ごろを目途に、有識者会議としてこの事業に対する評価を取りまとめる ことになっているようですので、そのような方向でこれからもご協力をお願いしたいと思い ます。他に何かありますか。もしなければ、本日の議論は事務局にお返ししたいと思います。 ○森岡母子健康課長補佐  それでは最後に事務的なご連絡をさせていただきます。次回の第5回目の会議につきまし ては、5〜6月の間で開催を予定しております。追って委員の皆さま方の日程調整をさせて いただきますので、よろしくお願いいたします。以上です。ありがとうございました。 ○柳澤座長  それでは、これをもちまして第4回「子どもの心の診療拠点病院の整備に関する有識者会 議」を閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。