10/03/16 第1回化学物質の健康障害防止措置に係る検討会議事録 第1回化学物質の健康障害防止措置に係る検討会 日時 平成22年3月16日(火) 14:00〜 場所 経済産業省別館825号会議室 (担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部             化学物質対策課化学物質評価室 井上 〒100−8916 東京都千代田区霞が関1−2−2             TEL 03-5253-1111(内線5518)             FAX 03-3502-1598 ○井上労働衛生専門官 定刻になりましたので、ただいまより第1回「化学物質の健康障害防止措置に 係る検討会」を開催させていただきます。当初、化学物質対策課長の半田よりご挨拶を申し上げると ころでございましたが、所用のため遅れておりますので後ほどにさせていただきます。  最初に出席者の皆様をご紹介させていただきます。本日の出席者につきましては、資料1別紙に、参 集者に限ってですが名簿が付いておりますのでご参照ください。まず、慶應義塾大学医学部衛生学公 衆衛生学教室教授の大前委員です。大前先生におかれましては、化学物質のリスク評価検討会有害性 評価小検討会の座長をお務めいただいております。 ○大前委員 大前です。よろしくお願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 旭硝子株式会社CSR室環境安全保安統括グループ主幹の岡部委員です。 ○岡部委員 岡部です。よろしくお願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 独立行政法人労働安全衛生総合研究所人間工学リスク管理研究グループ上席 研究員の小野委員です。 ○小野委員 小野です。よろしくお願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 労働衛生コンサルタントの唐沢委員です。 ○唐沢委員 唐沢です。よろしくお願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 独立行政法人労働安全衛生総合研究所環境計測管理研究グループ部長の菅野 委員です。 ○菅野委員 菅野です。よろしくお願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 十文字学園女子大学人間生活学部食物栄養学科教授の田中委員です。 ○田中委員 田中です。よろしくお願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 早稲田大学理工学術院教授の名古屋委員です。名古屋委員におかれましては、 化学物質のリスク評価検討会ばく露評価小検討会の座長をお務めいただいております。 ○名古屋委員 名古屋です。よろしくお願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 産業医科大学産業保健学部長の保利委員です。 ○保利委員 保利です。よろしくお願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 次に有識者の紹介をさせていただきます。中央労働災害防止協会労働衛生調 査分析センター技術顧問の櫻井先生です。櫻井先生におかれましては、化学物質のリスク評価に係る 企画検討会座長をお務めいただいているところです。 ○櫻井企画検討会座長 櫻井です。よろしくお願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 日本バイオアッセイ研究センター副所長の長野様です。 ○長野氏 長野です。よろしくお願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 事務局の紹介をさせていただきます。化学物質対策課長の半田です。化学物 質評価室長の島田です。化学物質対策課調査官の奥村です。環境改善室副主任中央労働衛生専門官の 徳田です。化学物質評価室室長補佐の長山です。同じく有害性調査機関査察官の平川です。最後に私 は中央労働衛生専門官の井上です。よろしくお願いいたします。議事に入る前に、化学物質対策課長 の半田よりご挨拶を申し上げます。 ○半田化学物質対策課長 先生方には、年度末のお忙しい中をこの会議にご参集いただきましてあり がとうございます。日ごろ先生方には大変お世話になっておりますので、この検討会の経緯を縷々申 し上げるまでもないとは存じますけれども、一応簡単にこれまでのことを振り返りながら申し上げさ せていただきます。  ご案内のとおりこのリスク評価というのは平成18年度に導入され、有り体に申し上げますと、それ まではどちらかというと非常に固い取組みをやっておりました化学物質規制に対し、少し予防的なア プローチということから、ここに自らリスク評価を行って必要な対策を講じていこうという取組みが 始まっているわけです。これまでご案内のようにホルムアルデヒド、ニッケル化合物、砒素及びその 化合物等を特定化学物質障害予防規則の対象物質として導入する等のことをやってきました。  こういうことで過去何年間かやってきておりますが、いろいろな制度には見直すべき課題等も出て くるわけです。このリスク評価が始まって4年目になるわけですが、いくつかの課題に対応すべく、過 去3年間の経験を基に見直しを行っております。その1つがこの検討体制で、ご案内のとおり、まず全 体的なことを検討するための企画検討会、それを踏まえてリスク評価をするためのリスク評価検討会、 そして本日先生方に検討をお願いいたします、そのリスク評価の結果何らかの対応が必要かどうか、 必要とすればどういう対応が必要かということの点を検討していただくための、健康障害防止措置の 検討会と、この3つの検討会に編成し直したところです。この最後の健康障害防止措置の検討会という のは、最終的に私どもの行政施策に直接かかわる委員会に検討をお願いするわけですのでよろしくお 願いいたします。  もう1つ見直した点があります。過去にはこのリスク評価を行うに当たり、全体的な作業を大体1年 間という非常に短期間の中でやっていたわけですが、この辺りも慎重に、より的確な対策を講じてい くということから、初期リスク評価と、詳細リスク評価という2段階に分けたやり方も導入いたしまし た。こういうことで本日お願いいたします、健康障害防止措置の検討会、行政政策にどのように反映 させていくかということにかかわる重要な検討をお願いするわけですので、先生方にはよろしくご検 討、ご審議のほどをお願い申し上げます。よろしくお願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 本日は第1回検討会ということですので、座長の選出を行います。どなたさま かご推薦はありますでしょうか。ないようでしたら、事務局としては菅野委員にお願いしたいと存じ ますがよろしいでしょうか。 (異議なし) ○井上労働衛生専門官 それでは、菅野委員に座長をお願いすることといたします。菅野座長からご 挨拶をお願いいたします。 ○菅野座長 僭越ではございますが、私が座長を務めさせていただきます。この会は、働く人の健康 障害を防止するという、非常に重要な会議だと思います。皆様方の活発なご議論を基に、有効な防止 措置ができますように努力したいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 以降の議事進行については菅野座長にお願いいたします。 ○菅野座長 まず、資料の確認を事務局からお願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 配付資料一覧に沿ってご説明させていただきます。資料1「化学物質による労 働者の健康障害防止措置に係る検討会開催要綱」、資料2「平成21年度のリスク評価の検討体制」、 資料3「労働者の健康障害防止に係る化学物質のリスク評価方針」、資料4「平成21年度リスク評価の 進捗状況」、資料5「健康障害防止対策の検討手順(案)」、資料6「健康障害防止措置の検討シート (案)」、資料7「国が実施するがん原性試験について」、資料8「指針対象8物質の関連情報」、資 料9「指針予定8物質の製造等事業場実態調査結果」、資料10「指針予定8物質の指針(案)」、資料 11「今後の予定」です。  参考資料1「労働者の有害物によるばく露評価ガイドライン」、参考資料2「平成22年報告版有害物 ばく露作業報告の書き方」、参考資料3「指針予定8物質のがん原性試験結果」です。 ○菅野座長 検討会の開催要綱、検討体制、リスク評価方針、進捗状況について事務局から説明をお 願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 資料に沿ってご説明いたします。資料1、検討会開催要綱の1の趣旨・目的で すが、職場における物質の取扱いによる健康障害防止を図るため、平成18年度から国は、重篤な健康 障害のおそれのある有害化学物質について、労働者のばく露状況等の関係情報に基づくリスク評価を 行い、リスクが高い作業について、リスクの程度に応じて、特別規則による規制を行う等のリスク管 理を講じているところです。  このリスク評価は科学的・中立的に行う必要があるところですが、特別則に基づく規制については、 対策の実現可能性等も考慮して導入する必要があるところです。このため学識経験者、健康障害防止 措置の関係者からなる検討会を開催し、リスク評価において労働者へのリスクが高いと認められた化 学物質に関し、ばく露防止措置等の健康障害防止措置について検討するものです。  3番の構成等については、本検討会は別紙の参集者により講成するということ、3の(3)必要に応じ、 別紙参集者以外の有識者の参集を依頼できる。4のその他として、原則として公開とさせていただいて おります。本検討会は、平成21年度の検討事項に関する報告書を取りまとめた時点で終了いたします。 資料1の説明は以上です。  資料2のリスク評価の検討体制です。大きく3つの検討会に分けます。いちばん上に化学物質のリス ク評価に係る企画検討会。真ん中のリスク評価検討会、さらにその下に有害性評価小検討会とばく露 評価小検討会、そして最後に本日の検討会であります化学物質の健康障害防止措置に係る検討会を設 置しております。企画検討会においては、リスク評価方針の検討、リスク評価対象物質の毎年度の対 象の選定、周知等を行うことを議論していただく位置付けです。真ん中のリスク評価検討会について は、それぞれの小検討会で、有害性の評価と、ばく露の評価等を行うことにしております。資料2の説 明は以上です。  資料3の1番はリスク評価の目的です。職場における化学物質の取扱いによる健康障害防止を図るた めには、事業者が自らの責務として、個々の事業場でのばく露状況等を把握してリスクを評価し、そ の結果に基づき、ばく露防止対策を講ずる等の自立的な化学物質管理を適切に実施することが基本で す。しかしながら中小企業等においては、自立的な化学物質管理が必ずしも十分でないことがあり、 平成18年度から、国は重篤な健康障害のおそれのある有害化学物質について、労働者のばく露状況等 の関係情報に基づくリスク評価を行い、健康障害発生のリスクが高い作業については、リスクの程度 に応じて特別規制、規則による規制を行う等のリスク管理を講じてきているところです。  2番目は、リスク評価の現状です。(1)平成18年度以降5物質、10物質、44物質、また平成21年度 については20物質についてそれぞれリスク評価を行っております。このうち平成18年度に評価を行っ たものの中から、ホルムアルデヒド、1,3-ブタジエン、硫酸ジエチルの3物質について、特別則である 特定化学物質障害予防規則等の改正を行い、規制の強化を図りました。  [2]ニッケル化合物、砒素及びその化合物の2物質についても同様に規制の強化を図ったところです。  2頁の3の平成21年度のリスク評価の方針です。(1)検討体制の強化ですが、先ほどご紹介いたしま したように、大きく3つの検討会に分けています。そこに掲げる選定手順・基準の明確化、透明性の確 保といったこと等をはじめとする5つの観点から体制の見直しを行ったところです。  (2)ではそれぞれの検討会の位置付け、目的が書かれています。資料2の説明と重複しますので、か い摘まんでご説明させていただきます。(2)の1)化学物質のリスク評価に係る企画検討会は、リスク評 価に係る基本方針の策定、がん原性、これは国が行うものですが、がん原性試験の実施が必要な物質 の選定を行う。また、ステークホルダー間の相互理解を促進するため、労働分野におけるリスクコミ ュニケーションのあり方を検討する、といったことを検討してきております。2)のリスク評価検討会 については、小検討会の2つに分け、有害性の評価とばく露評価を並行して審議を行ってきております。 3)の化学物質の健康障害防止措置に係る検討会については、リスク評価が取りまとめられた物質につ いて、政策ベースの検討が可能となるようヒアリング等も行う等して、円滑かつ適切な健康障害防止 措置の導入を目指すということです。平成21年度においては、詳細リスク評価が実施されている状況 で、実質的な検討は平成22年度以降となる見込みです。また、国による試験において発がん性が確認 された物質については、その取扱い等に係る行政指導等の検討を行い、その方針を取りまとめること としているところです。  (3)リスク評価に係る情報提供等の推進についてはパブリックコメント、またリスク評価の節目にリ スクコミュニケーションを実施する等、国民にわかりやすい情報提供に努めることとしております。 このほかMSDSの作成、ばく露実態調査における個人ばく露測定等のために策定された測定分析方法に ついての情報提供等についても、推進に取り組んでいるところです。資料3については以上です。  資料4のリスク評価の進捗状況についてご説明いたします。両面印刷になっておりますが、表の資料 については、毎年度有害物ばく露作業報告の報告を受けている物質の中で、平成21年1月から3月に 報告を受けた20物質については、平成20年度中に報告があったもの18物質、報告がなかったもの2 物質です。報告があった18物質については、初期リスク評価に7物質が着手しております。残りの11 物質については有害性評価のみを実施しています。アンチモン及びその化合物から、ヘキサクロロエ タンについては有害性評価のみを実施している状況です。報告がなかった2物質については、有害性情 報の収集のみということで、有害性評価のみ実施と書いてある中の20のヘキサクロロエタンと、有害 性情報の収集を行っている2物質の計3物質については次回の有害物ばく露作業報告の対象物質とし、 新たな報告スキームで報告を求めることにしております。  上の初期リスク評価に着手したものについては、有害性評価とばく露評価を行い、その結果高いば く露が確認されたものについては、詳細リスク評価に移行する。また高いばく露が確認されなかった もので、行政指導を行うという形で終了するものということで、次年度以降に分かれる予定です。  裏面のその2の資料については、もう1年有害物ばく露作業報告の対象期間が早くなっておりますが、 平成20年1月から3月に44物質について、有害物ばく露作業報告の対象としたところです。このうち 報告があったものが24物質、報告がなかったものが20物質です。報告があった24物質のうち、平成 20年度のうちに初期リスク評価を終えているものが20物質、有害性評価だけを終えたものが4物質で す。平成21年度については、それぞれ初期リスク評価が終わった20物質のうちの7物質について高い ばく露が確認されたことから、詳細リスク評価に移行しているものと、初期リスク評価が終わった20 物質のうち、残り13物質については評価は終了。行政指導等の手法をもって終了しているところです。  報告があった24物質のうち、昨年度は有害性評価だけを実施した4物質については、今年度は初期 リスク評価着手ということで予定してきたところで、この中で1,2-ジブロモエタンについては調査を 終えた状況です。また報告がなかった20物質については、平成21年度は有害性ばく露情報の収集に努 めてきました。(15)ヘキサクロロベンゼンと(19)りん化インジウムを除く緑色太字については、平成22年 度、次回の有害物ばく露作業報告の対象物質とさせていただいております。  いちばん上の詳細リスク評価に移行した7物質については、いま現在ばく露調査、また有害性調査を 行っているところで、3月31日以降のリスク評価検討会の中で、リスク評価書の取りまとめを行って いくことになっております。次年度以降の色を付けたところの健康障害防止措置の取りまとめという ふうに進む予定です。駆け足になりましたが、資料1から資料4についての説明は以上です。 ○菅野座長 ただいまの説明について、ご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。 (特に発言なし) ○菅野座長 特にないようですので、本日の議題に入らせていただきます。平成21年度リスク評価対 象物質の健康障害防止措置に係る方針の検討についての説明を事務局からお願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 資料5と資料6に沿ってご説明いたします。資料5の健康障害防止対策の検討 手順です。その検討手順を本文に沿ってご説明いたします。1番は、基本的な検討の流れです。6つの 四角に書かれたもののフローを示しております。リスク評価を行った物質については、そのリスク評 価結果のレビューから、リスク作業実態の調査、健康障害防止対策の検討、最適な対策の検討、対策 導入の方針の検討、対策導入の方針の決定と大きく6段階を検討の流れとして用意させていただきまし た。  2番目は、検討内容とその手順です。(1)リスク評価結果のレビューです。リスク評価については、 初期リスク評価から着手するわけですが、この初期リスク評価の結果取りまとめられた初期リスク評 価書の内容について分析をするところからレビューは始まります。これがアの部分です。  イの部分ですが、この初期リスク評価の結果、リスクが高いと考えられる物質については、詳細リ スク評価に移行するスキームにしております。なお書きに書いてありますが、初期リスク評価の結果、 速やかに実施すべき措置があるものについては、この詳細リスク評価に移行するのに先立ち、行政指 導等の検討を行うこととしております。  ウは、詳細リスク評価の内容の分析です。詳細リスク評価についても、その詳細リスク評価書を取 りまとめるわけですが、この内容を分析する。エのところで、この詳細リスク評価の結果、リスクが 高いと判断された物質については、規制を含めて健康障害防止措置の導入の必要性を検討するところ までが、第1弾のリスク評価結果のレビューとして考えております。  (1)のリスク評価結果のレビューを踏まえ、第2弾のリスク作業実態調査に移行いたします。リスク 作業実態調査としては、詳細リスク評価の結果、リスクが高いと判断された作業について、関係する 団体等からヒアリングを実施し、アからエに掲げる事項について確認することといたします。アから エに掲げている事項は、当該作業の実態と、この作業について事業者が実施している健康障害防止対 策、また団体としてこの対策の推進の方針や取組みの動向、この健康障害防止対策を講ずる際に留意 すべき事項の4点について確認するということを念頭に置いたヒアリングを実施いたします。聴き取り 調査を行った内容については検討会に報告することにしております。ここまでが、6段階あるステップ のフローの中の第1段階と第2段階です。  第3段階として、健康障害防止対策の検討に移ります。健康障害防止対策の検討については、2頁の (3)に記載してありますように、まず健康障害防止対策の案の検討が必要になってまいります。先ほど のレビューと、作業実態の調査(1)(2)に掲げた事項から、リスクが高いと判断された作業の分析と、 次に掲げる観点を踏まえ、事務局側が必要な対策を整理し、検討会に提案し、検討を行っていただく ことを考えております。  (ア)は効率的な検討方法です。これは仮置き的に1案、2案という置き方をさせていただきました。 (1)の第1案として、個々の規制措置の要否を検討する方法。(2)の第2案として、現行の規制措置のセッ ト、例えば特定化学物質、第二類物質の一般的な規制措置のセットを前提として検討する方法の2つが あるのではないかと考えております。(1)については、現行の規制措置のセットを前提とはしない。個 々の規制措置の要否を検討した上で、最適な対策の策定が可能となるのではないかという考え方です。 (2)は第二類物質を前提といたしました、現行の規制措置のセットを前提とした検討を進めたほうが、 対策の策定においては容易という考え方もあるのではないか。  (イ)は最適な規制措置のラインアップです。ここでは、現行の規制措置を前提に検定するのでは なくて、例えば(1)の作業時間の短縮の措置、(2)の技術指針の発出、そのフォローアップといったよう な取組みによる確信的な健康障害防止措置があるのではないかと考えております。(1)の短縮措置につ いては、例えば1日8時間労働を前提としているところを、半分の4時間に短縮すればリスクは半減す ると取ることができるのではないか。(2)の技術指針については、発出された指針を踏まえ、業界が自 主的に対策をとっていただく。そのフォローアップをさせていただくことで、取組み状況を確認する という考え方もあるのではないかということです。  その次に、技術的課題の検討が必要になってくるわけですが、この措置を導入する上で、技術的な 課題が認められるような場合、その関連技術開発の動向として、保護具やメーカー等の関係者からヒ アリングを行うことを検討してもいいのではないかと考えております。(ア)から(ウ)ですが、リ アルタイムモニタリングの関連機器の実用化の可能性や保護具の性能、マスクの有効性の確認技術と いったこと等についてヒアリングを行うことが技術的課題の検討として考えられるのではないかとい うものです。  (ウ)規制化の必要の検討ですが、2つ上の(3)アの健康障害防止対策案の検討の中で検討された、 措置ごとに規制化の要否を検討していくというものです。この場合、個々の物質についての検討に先 立って、規制の要否の判断に係る考え方について明確化を図る必要があるのではないかと考えており ます。(ア)の規制化の要否に係る整理ですが、考え方として2つあります。規制した場合に健康障害 防止措置の導入が進むという考え方がある一方で、あるいは逆に必要と考える健康障害防止措置の導 入が現状で進まない場合があったとして、その場合に当該措置の規制化が必要と判断する考え方もあ るのではないかというものです。また、防止措置が進んでいる場合には、措置の導入、進捗状況とい ったこと等を義務づけることにより、同等の施策効果があるのではないかと考えているところです。  こうしたことを踏まえ、健康障害防止措置の導入が進まない場合の例として、中ポツで6つ列挙して ありますが、次のような場合が挙げられるのではないかと考えております。例えば、健康障害防止措 置の導入コスト、いわゆる経済的な側面。生産効率、産業制限的側面、技術的な問題、技術的な側面、 行政指導が十分に機能しない。これは、事業者団体等に加入する組織率が低いために指導の徹底が困 難である。緊急性が高く、早期の導入に至らない場合。用途が多岐にわたり、措置の汎用性が低いと いうような場合等が、健康障害防止措置の導入が進まない場合の例として挙げられるのではないかと 考えています。  第4段階は最適な健康障害防止対策の検討に移ります。アの対策オプションの提案ですが、まず最適 な対策を策定するためには、対策のオプションを用意し、これらを比較検討する必要があります。検 討に当たっては、事務局のほうで(ア)から(ウ)までの3つの対策オプションを検討会に提案させて いただければと考えております。  オプション1は、原則規制措置の導入を前提として作成するもの。オプション2は、関係事業者団体 が、妥当な健康障害防止対策を推進している場合には、当該自主的対策を維持すること、即ち規制化 しないことを前提として作成するもの。オプション3は、現行の対策を維持する(結果的には新たな規 制を導入しないこと)ことを前提として作成する。この3つを用意できないかと考えております。  イの対策オプションの比較検討に移るわけですが、これらの比較検討は、必要な労働者の健康障害 防止対策が図られていることを前提に、次の(ア)から(キ)までの考慮事項といえるものに基づい て行い、その結果を踏まえて対策オプションの中の措置の見直しを行い、最適な対策の取りまとめに 持っていけないかと考えております。  (ア)効率性や技術的な実現可能性、コンプライアンス遵守の可能性という意味ですが、産業活動 への影響。措置の継続性、遵守進捗状況の把握の容易性ということ。それぞれの考慮事項を考えてい く必要があるのではないかと考えております。  ウのところですが、通称RIAと言われている規制影響分析の実施です。これは、一般的に行政が規制 を行う場合には、例えば厚生労働省の場合には厚生労働省規制影響分析規定に基づき、規制影響分析 を実施いたします。この分析手法について、健康障害防止措置の場で、先ほどのイの対策オプション の比較検討の結果、規制の導入が必要と判断された場合には、RIAの分析を行うものです。  その分析に当たっては、(ア)の選択肢1から選択肢3までの比較する手法で実施できないかと考え ております。選択肢1としては、イの対策オプションの比較検討で取りまとめられた最適な対策。選択 肢2は、その上の対策オプションの提案のところのオプション1又は2の対策。選択肢3は、同じくオ プション3の健康障害防止対策、これは現行対策維持という意味になります。それぞれを比較する手法 で実施できればと考えております。  エの留意事項ですが、イの対策オプションの比較検討のところでの検討の結果、規制の導入が必要 と判断された場合には、下に示す留意すべき事項として以下の検討を行うということです。(ア)リ スクが低いとされた作業に係る規制措置の緩和、免除といったものに関する事項。もう1つは、健康障 害防止対策の実施に際し、効率的な実施を支援する施策に関する事項。この2つについて留意すべき事 項として考えていく必要があるのではないかと考えております。  (5)対策の導入方針の検討です。アの導入方針の提案については、(4)最適な健康障害防止対策の検 討の対策オプションの比較検討で取りまとめられた対策について、事務局のほうで導入方針を作成し、 検討会に提案したいと考えております。その際には、導入する健康障害防止対策の内容、管理方針、 今後期待される技術開発の動向について盛り込むことを考えております。  イの導入方針の検討ですが、検討会においては導入方針の提案を受け、これを審議していただいて、 導入方針を決定していただくという手順を考えております。  最後にウの具体的方針及びスケジュールの検討です。導入方針の検討で決定いたしました方針を踏 まえ、その具体的な方針スケジュールを作成していきます。ここでスケジュールと申し上げましたが、 健康障害防止対策の導入に際してとるべき手順、準備期間等の明確化を図るため、目安として作成す るものです。  これら資料5の内容については、もう1つ用意しております資料6の健康障害防止措置の検討シート (案)についてまとめさせていただく流れになります。1頁は、リスク評価の概要ということで、6つ あるステップの1段階目、リスク評価のレビューになります。物理化学的性質から有害性ばく露評価、 またリスク評価の結果がどうなっているかを一覧で整理するものです。  2頁は、第2段階であるリスク作業の実態調査、業界団体からヒアリングをした結果について、業界 団体の概要、取り組んでいる作業の採用状況、取組み、また少量といった特殊な作業があるかどうか。 措置の導入に当たって考慮が必要な事項はどうかというものを、ヒアリング結果として2頁目にまとめ ます。  3頁については、健康障害防止対策の検討に当たり、一般的な対策、特定化学物質の二類物質の中で、 発散抑制措置、作業環境測定の実施、特殊健康診断の実施といった、それぞれの対策があるわけです が、それらについて一通り網羅的に整理しています。情報提供から、労働衛生教育、発散抑制措置、 作業環境の改善、漏洩防止措置、作業管理、作業環境の測定と健康診断と大きな措置事項として分け ております。  4頁は、健康障害防止措置を検討していくに当たり、技術的な課題、措置導入の可能性について、規 制化の必要性について、措置内容のそれぞれについて自主的な改善の進捗状況等がどうかといったも のを整理し、総合評価という形で括ることにしております。総合評価については、(1)規制が必要であ る、(2)規制が望ましい、(2)事業者の自主的対策が可能、(4)規制は不要という形で、総合評価をそれぞ れの措置内容について整理することを考えております。  5頁は、最適な対策の検討の第4段階である対策オプションです。オプション1から3までを比較で きるように整理する。また、オプション1から3それぞれ規制導入を重視した対策、規制と自主管理を 併用する対策、現行管理を維持する対策という位置づけですが、1から5に掲げる考慮事項、効率性等 の考慮事項を踏まえて対策オプションを比較することにさせていただきます。(2)最適な対策として、 措置内容と規制化の要否、導入に当たって考慮すべき事項を整理させていただくということで考えて おります。  6頁は、この対策オプションの比較の後に留意事項として、リスクが低いとされた作業に係る規制の 考慮と、技術指針といった作成等の留意事項についても、必要性の留意事項についても、ここで留意 事項として整理させていただく。(4)では規制影響分析の手法を、この検討会の中にも導入したいとい うことです。選択肢1から3のそれぞれについて、期待される効果等について整理する。ここで整理し たのはニッケル化合物、並びに砒素及びその化合物の規制措置を図った際の、行政で行ったRIAの結果 を参考までに整理させていただいたものです。  8頁ですが、最後にこれらの検討を踏まえ、対策導入の方針の検討、対策導入の方針の決定に至りま す。その最後の対策導入の方針について、(1)措置の導入方針、これは導入方針や技術開発の要否、管 理手法といったものについてまとめさせていただくということと、目安として規制導入のスケジュー ルを下に用意させていただきます。このスケジュールについては、措置導入に係る準備期間の目安で、 措置の導入予定ではありませんので、あらかじめご承知おきいただければと思います。議事1に係る資 料の説明は以上です。 ○菅野座長 ただいまの説明について、ご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。 ○保利委員 資料6のオプション1、オプション2、オプション3というのは、資料5のオプションと 対応しているということでよろしいのでしょうか。資料5の3頁のオプション2は、自主対策の維持と いうことで規制化しないと書いてあるのですが、資料6のほうは規制と自主管理を併用と書いてありま す、これはどのように考えたらよろしいのでしょうか。規制をするのかということです。 ○井上労働衛生専門官 いま保利先生のほうからご指摘のあった点ですが、資料6の5頁にあるオプシ ョン2の括弧書きにある規制というのは、新たな規制ということではなくて、現時点で何らかの規制が かかっているものについては、その現行の規制と、それを前提にした自主管理を併用という形で書か せていただいたものです。資料5の本文のほうに書かせていただいている、規制化しないというところ とは、内容としては矛盾はないところです。 ○菅野座長 これから検討する物質について、現在規制がかかっている部分があるわけです。 ○唐沢委員 保利委員のご質問とも関連するのですが、資料5の4頁のウの規制影響分析RIAの実施の ところの最後の選択肢3のアのオプション3の健康障害防止対策として現行対策の維持と書いてあって、 それは3頁の(4)のアの(ウ)に返るわけですね、そのように書かれていると思うのです。それで資料 6をパッと見ると、おそらく資料6の5頁の4の対策オプションの(1)の表に、既に現在の特化則の第 二類物質で規制されている局所排気装置、密閉設備局所排気装置、全体換気装置等々のメニューは一 応入っているということです。  過去の例からすると、ホルムアルデヒドが第三類物質であったものを、第二類物質にしたので、そ れは新たな規制をしたという理解なのだろうと思うのです。ホルムアルデヒドではなくて、今後本検 討会で、いままであまり規制措置の対象になっていなかった物質について、ある特定の毒性なりリス ク評価の結果、新たなアクションを起こそうと。それは何も規制ではないかもしれないというのはよ くわかります。その場合に、ただいまお話のありましたオプション3というのが、新たな規制を導入し ないこと、しかも現行の健康障害防止対策を維持するというのはよくわからないのです。  つまり、いまの特化則第二類物質レベルの規制がかかっている物質というのは制限列挙で一定の物 質しか対象にならないわけだから、それ以外の物質については、仮に完全に行政指導だけで対応する というオプションもあり得ると思います。その場合にも、資料5の3頁の(4)のアの対策オプションの 提案の(ウ)のケースであるというつもりなのでしょうか、その点をお聞きします。 ○島田化学物質評価室長 このオプションは、5頁の4の対策オプションの(2)の最適な対策を決める ためのプロセスですので、必ずしもこの括弧がすべてこうでなければいけないということではないの ですが、一応1番目としては、フルに規制として導入したほうが対策自体がうまく組めるのではないか ということで、規制を前提とするもの。  真ん中のものについては、既存の規制があるものについては、既存の規制を入れて、それから自主 的な対策が進んでいるものについては規制にせずに、自主的な対策をうまく利用して、行政指導をし ていくというようなやり方です。  3番目は、いままさにおっしゃられたとおり、行政指導的な面、あるいは技術的な指針をお出しし、 このようにやるとうまくいきますという対策を提示していくものであり、この3つの対策を比較検討 させていただいた場合に、どれがいちばん最適になるかということで比較をしていただくということ です。 ○唐沢委員 そういうことですか。もう1点、資料5の3頁の(4)のアの対策オプションの提案のとこ ろの(イ)オプション2、これはこれでかなりきちんと整理して書いていただいていると思うのです。 今後、より物質の種類とか毒性、あるいはリスク評価の結果が具体的に展開されて議論が進む場合に、 特に関係業界団体が妥当な健康障害防止対策を推進している場合には規制化しないというのはあり得 る結論だと思います。  従来、規制するか規制しないかということで、いまひとつ論点があったのは、公正競争の維持のた めには規制が必要だという論点です。公正競争の維持というのは、関係業界団体が全部カバーしてい ればいいのですけれども、どうしてもアウトサイダーがいるだろうと。そのアウトサイダーに対して は、業界団体の規範力というのは及ばない、指導力は及ばない面があります。そのアウトサイダーが 多かったりする場合、しかも予想される健康障害の程度が相当程度ある場合には、関係業界団体に所 属してきちんと対応している所はコストがかかるわけです。逆にアウトサイダーの所は、そういう措 置を無視して対応するとすればコストはかからない、これでは公正競争が維持できないことになりま す。  オプション2の考え方はわかりますけれども、公正競争の維持ができるかどうかという観点は、留意 事項としてはちょっと考えたほうがいいのではないかという気がしております。なお、過去に規制す るかどうかという議論をした場合には、いまのような論点もかなり検討された場合があります。念の ために。 ○島田化学物質評価室長 いま唐沢先生からお話いただいた点というのは、我々は十分認知できない ものがあるということです。その辺りのご議論をいただければすごくありがたいと思っております。 いまの点は、資料5の2頁のウで規制化の必要性の検討の中で、3頁にいきまして規制の導入の必要性 という部分については、例えば健康障害防止措置の導入が現状のままでは進まない場合は、やはり規 制化というものが必要ではないかという点をそこに書かせていただいております。  2つぐらい下がったパラグラフのところに、健康障害防止措置の導入が進まない場合の例ということ で書いてある4点目に、行政指導が十分に機能しない場合というのがあります。事業者団体等の組織率 が低いということで、これはいま唐沢先生が言われたアウトサイダーが存在するという意味だと思い ますが、指導の徹底が困難な点があるのかということはとりあえず挙げさせていただきました。この 部分の例として挙がっているようなもので、まだ我々が十分わからないような部分で、先生方でお気 づきの点があれば出していただくとすごくありがたいということです。 ○唐沢委員 ただいまの点は、具体的な物質とかリスクの程度等を基に、さらに議論をしていくべき だろうと思います。ただ、業界団体の方々に話を伺うチャンスがときどきあるのですけれども、業界 団体の会員、インサイダーの会員に対して必ずしも業界団体としてあまり規範力がない場合もあり得 ると思いますので、その点もちょっと気をつけたほうがいいのかという感じがしています。 ○菅野座長 これは、資料6の2頁の業界団体等の概要というところで、組織化率を調べることになっ ていますが、どのぐらい可能なのでしょうか。 ○島田化学物質評価室長 これは事前に業界団体の方々から話を伺いまして、会員企業数を出すとい うのはなかなか難しいであろうと言われていますので、場合によっては後ほど検討させていただくよ うな形にして、少し定性的な話になるかもしれません。ただ、いずれにしても2番のシートというのは、 業界の方に来ていただく形が前提になっております。つまり、ある物質であればその物質を使ってい る事業者に現状を話していただき、その内容をここのシートにまとめていくという作業をさせていた だくつもりです。それは、この席上で先生方からも直接業界に話を伺うような形になると思います。 ○菅野座長 資料5の4頁のエの留意事項のア)にリスクが低いとされた作業とありますが、これはこ れから検討する各物質についての個々の作業と理解すればよろしいのでしょうか。 ○島田化学物質評価室長 これについては、規制を導入するということになった場合の留意事項とし て、先ほど唐沢先生からホルムアルデヒドのお話がありましたが、いわゆるその物質一辺倒に、つま り横並びで全部規制を同じようにかけてしまうと問題が起きるような事例が過去にもありまして、そ ういった点について事前に確認をさせていただいた上で、この場でどういう配慮をすべきかご検討を いただくということです。つまり、少量の使用みたいなものについても同様に厳しい規制をかけるこ とが妥当かどうか。あるいはリスクの非常に低いような作業、例えばラベルの貼り替えとか、そうい ったものに対してもその物質の取扱いとすると非常にきつい規制にもなり兼ねませんので、その辺り の妥当な判断をいただくという趣旨の部分です。 ○菅野座長 その場合ですと、2頁の対策の方法として、「現行の規制措置のセット」というのが挙げ られています。そうすると今後は例えば特化第二類物質と同等の規制をすると原則で決めた場合でも、 作業によって規制から外れる作業もあると考えればよろしいのですね。 ○島田化学物質評価室長 はい、そのとおりだと思います。 ○菅野座長 ほかにはいかがですか。 ○島田化学物質評価室長 事務局として十分詰まっていない部分があるのは、最適な対策を組んでい く上での基準の部分について、資料5の3頁にイ「対策オプションの比較」があります。これは後々い くつかのオプションを比較していただく場合のメルクマールとして我々が事務局なりに取りまとめた ものです。(ア)から「その他」まで含めて(キ)まであります。これは先ほど井上からご説明をさ せていただきましたが、1番目としては健康障害防止措置の効率性を重視しなければいけないのではな いかということと、技術的な実現可能性、これは特に保護具で使えるものと使えないものが当然出て くると思いますので、使えないものがあるにもかかわらず、規制をかけてしまう状況になると問題が 起きる。そういった点を見ていただく趣旨です。  コンプライアンスというのは、その施策自体が作業者が守りやすいものを採用していかなければい けないという視点です。「産業活動への影響」というのは、できるだけ規制は産業活動への影響を最 小限に止めるという趣旨が妥当ではないか。次の頁も「措置の継続性」ということで、継続性から言 いますと、やはり法律で規制をするのが継続性ではいちばん強いですが、当該オプションとして捉え たものがどうかということを検討していただく。次の(カ)は行政側になりますが、外から見てちゃ んと遵守しているか、あるいは進捗状況として改善が図られているかということを、外から見てわか りやすい制度にするべきではないかという点です。その他、あとは特定的に物質の固有の配慮が必要 なものもありますので「その他」を入れております。こういった点について、この中でもしご意見等 があれば賜りたいと思います。 ○菅野座長 いかがでしょうか。オプション3つについて、これだけの観点から比較しますと、どちら が優れていると、個別に判定できるかどうかなかなか難しいような気もいたします。これは別に重要 性の順に並べてあるわけではなくて、これを並列に比較するということですか。 ○島田化学物質評価室長 そうではないのです。併せてどれが重要かという判断も、我々はまだつき 兼ねているということです。 ○井上労働衛生専門官 先生方からご意見をいただいたのですが、進行の都合もありまして、もしよ ろしければ、先生方の中で追加のご意見やご質問、またご不明な点等がございましたら、24日(水) を目処に事務局のほうにメール等でご連絡をいただければ、事務局で取りまとめさせていただきたい と思いますので、その点をよろしくお願いいたします。 ○菅野座長 何分にも内容が盛りだくさんですので、事務局からのご提案のとおり24日までに。 ○唐沢委員 ファイルで送っていただくと。 ○井上労働衛生専門官 ファイルにつきましては、事務局から先生方にメールでご案内をさせていた だきたいと思います。 ○唐沢委員 そのほうがコメントしやすいでしょうから。 ○井上労働衛生専門官 はい、そうさせていただきます。よろしくお願いいたします。 ○菅野座長 メールで添付されるとして、この資料をお配りいただくということでお願いいたします。 この件に続きまして、労働安全衛生法第28条第3項の規程に基づく指針。これはがん原性指針ですが、 この検討につきまして、事務局からご説明をお願いいたします。 ○平川査察官 それでは事務局から資料7から資料10につきまして説明いたします。私は有害性調査 機関査察官をしている平川と申します。よろしくお願いいたします。順番に説明いたします。「国が 実施するがん原性試験」についての資料です。厚生労働省におきましては、労働安全衛生法第57条の 5の規定に基づいて、化学物質による労働者の健康障害防止のための国の援助の一環として、がん原性 試験を実施しております。  当該試験の結果、対象化学物質ががんを労働者に生ずる恐れのあるものということで判断される場 合には、厚生労働大臣が、当該化学物質を製造し、また、取り扱う事業者が当該化学物質による労働 者の健康障害を防止するための指針を労働安全衛生法第28条第3項に基づきまして公表するというこ とになっています。  がん原性試験の実施に係るスキームについては、がん原性試験を開始する前に、これは最近のスキ ームですが、がん原性試験の実施を判断するフィージリビティテストを実施して、これを踏まえて試 験が可能となった物質の中から吸入試験について1物質を選び試験に着手する。これは平成22年度か らということで、従来は吸入試験と経口試験1物質を選んで試験に着手をしていたということです。試 験につきましては、対象物質の容量が決定する2週間試験、13週間試験を実施した上で、2年間の試験 を行っております。最終的には試験結果の公表までには5年程度を要しており、試験の実績と実施中の 物質につきましては、裏の別紙にあります。このような形でこれまで行いました、もしくは行ってい る状況です。  これらの結果につきまして、今年度からのスキームということで参考欄にフロー図を付けておりま す。がん原性試験の実施を行いまして、その結果を有害性評価小検討会で評価していただきます。そ の中で法第28条第3項第2号に持っていくか持っていかないか判断をしていただくとともに、なお、 おそれがある場合につきましてはリスク評価の対象物質とすることへの企画検討会への提案の検討も 併せて行うということになります。さらにおそれのある場合につきましては、下にある指針の作成と いう形に移っていきます。この指針の案の作成後、この化学物質による労働者の健康障害防止措置に 係る検討会を行うということが、今年度からのスキームということです。なお、今回ご議論をさせて いただく8物質につきましては、すでにあるがん原性試験についての評価が行われていた8物質があり ます。これについての指針案の作成をこの検討会で行っていただきたいということです。その8物質が 今回のものです。  次に資料8をご覧ください。これに8物質リストが載っています。この8物質につきましては、これ までのがん原性試験の結果評価が行われて、がん原性についての証拠があるということでまとめられ た8物質です。これら8物質の結論としては、行政対応が必要であるという結論は出ておりますが、具 体的にどういった形での指針案にするかといったところの中身につきましては、まだ実は議論はして いなかったので、今般、リスク評価のスキームも入ってきました。そうしたこともありますので、改 めてご議論をいただきたいということで、この8物質につきまして今回議題として挙げております。  (1)の塩化アリルという物質です。性状につきましては無色透明の液体です。用途はがん原性試験が 着手されたときにあった用途です。許容濃度は産衛学会ではありませんがACGIH:1ppmといったような 指標があるということです。  このがん原性試験につきましては、日本バイオアッセイ研究センターで行ったがん原性試験の結果 です。下線部のところがいちばん用量が低い所で見られた所見です。吸入試験の実施の結果、100ppm の群の雄に膀胱の移行上皮癌及び甲状腺の濾胞状腺腫の発生増加が見られた。またマウスでは雌雄と も100ppm以上の群にハーダー腺の腺腫の発生増加が認められました。  がん原性試験と関連する変異原性情報につきましては陽性ということで、最大比活性値、微生物を 用いた変異原性試験におきます最大比活性値、培養細胞を用いた染色体異常試験のD20値を得られてい るということです。  なお比活性値の解説につきましては、簡単に申し上げますと、被験物質単位用量当たりについて微 生物のDNAに対し、突然変異を頻発する程度ということでの指標です。またD20値につきましては、細 胞の20%に染色体異常を誘発する被験物質の濃度を表した指標です。  2.オルトーフェニレンジアミン及びその塩ということです。オルトーフェニレンジアミンと塩酸塩 ということで2つ書いております。と言いますのが、実際に当時試験を行おうとしたところ、オルトー フェニレンジアミンを動物に経口でやろうとしたところ、試験がうまくいかなかったということで、 二塩酸塩に代替して試験を行いましたので、2つ併記しております。CAS番号はそれぞれ別々です。沸 点、融点も若干塩酸塩と違う。性状も若干違うということですが、実際には体内に入った場合の所見 がほぼ同じであろうということもありますので、今般はオルトーフェニレンジアミン及びその塩とい う形で一応指針案という形でままとめさせていただきたいと思います。  がん原性試験につきましては、経口(混水)の試験で行いました。ラットにおきましては雌の肝細 胞腺腫の発生が500ppm以上で認められた。マウスにおきましては雄の肝臓腫瘍の発生増加が500ppmま で認められたということです。  また変異原性試験におきましても微生物を用いた変異原性試験の最大比活性値ならびに培養細胞を 用いた染色体異常試験のD20値がそれぞれ求められている状況です。  (3)1-クロロ-2-ニトロベンゼンにつきましては、黄色針状結晶です。日本産衛学会の許容濃度はなく、 ACGIHもないということです。がん原性試験につきましては、経口(混餌)の試験で行われております。 いちばん低い所見はマウスの所見で、腫瘍の発生増加が雌雄の肝臓に見られた。これらの腫瘍の発生 増加が認められた濃度は雌雄とも最低濃度100ppmであったということです。これにつきましても変異 原性情報につきましては、微生物を用いた変異原性の最大比活性値、培養細胞を用いた染色体異常試 験、それぞれにおいて値が求められております。 (4)2,4-ジクロロ-1-ニトロベンゼンについてです。性状につきましては単黄色の固体ということです。 許容濃度につきましては、日本産衛学会ACGIHともないということです。これにつきましてはがん原性 試験は経口(混餌)の試験で行われております。いちばん低い所見につきましては、マウスでの所見 です。発生増加が認められた濃度は肝臓腫瘍が最低濃度である雄750ppmで認められているということ です。これについての変異原性情報につきましては、微生物を用いた変異原性試験の最大比活性値、 培養細胞を用いた染色体異常試験のD20値が求められている状況になっております。  次は(5)(6)(7)(8)です。(5)1,2-ジクロロプロパンについては、性状は無色透明の液体です。許容濃度が ACGIHで10ppmとなっております。がん原性試験につきましては吸入試験で行われており、いちばん低 い所見がラットの鼻腔腫瘍が発生した濃度として雄200ppm以上。マウスにおきましては雄のハーダー 腺の腺腫、雌の肺腫瘍とも200ppmという所見があります。これにつきましては、微生物を用いた変異 原性試験につきましては、これでも陽性という結果が別途出ておりますが、数値につきましては出て いるデータがなかったということです。  (6)ノルマル-ブチル-2,3-エポキシプロピルエーです。これにつきましては、性状は無色透明の液体 です。許容濃度等につきましてはACGIHで3ppmとなっております。吸入試験につきましては、いちば ん低い所見で申しますと、マウスの所見で雌雄とも鼻腔に血管腫の発生増加が認められ、その濃度は 雄が5ppm以上の所見があったということです。変異原性情報につきましては、微生物を用いた変異原 性試験における最大比活性値、培養細胞を用いた染色体異常試験において数値がそれぞれ出てきてい るということです。  (7)パラ-ニトロアニソールについては、性状につきましては結晶ということです。許容濃度につきま しては、現在のところないということです。がん原性につきましては経口(混餌)の試験で行われて おり、いちばん低い濃度で認められたのがラットの子宮の腺癌の発生増加です。4,000ppm以上の群に 認められたということです。変異原性情報につきましても、微生物を用いた変異原性試験の最大比活 性値、培養細胞を用いた染色体異常試験において、D20値が求められているということです。  (8)1-ブロモ-3-クロロプロパンについては、性状は無色透明の液体です。日本産衛学会ACGIHもいま のところ許容濃度はありません。試験につきましては、吸入試験で行われており、いちばん低い試験 につきましては、マウスでの所見で細気管支-肺胞上皮増生の発生増加が25ppmあり認められたという ことです。  変異原性情報につきましては、微生物を用いた試験の最大比活性値と培養細胞を用いた染色体異常 試験のD20値がそれぞれ求められているということです。したがいまして、変異原性ということで申し 上げますと、すべての物質については、変異原性がある物質について共通点があるかと存じます。こ ういった物性のものについて今回指針化をさせていただきたいと思います。  資料9、先ほど資料5のところで、リスク関係の調査を行うというものが書いてありましたが、それ とは一切関係ない別途の調査ということでやらせていただいたものですので、一応念のために申し上 げますが誤解のないようにお願いいたします。  これにつきましては、日本化学工業協会、化成品工業協会さん等のご協力をいただきながら、事業 場の紹介をいただいてまとめたものです。塩化アリル、オルトーフェニレンジアミン及びその塩、1- クロロ-2-ニトロベンゼン、1,2-ジクロロプロパン、ノルマル-ブチル-2,3-エポキシプロピルエー、1- ブロモ-3-クロロプロパンにつきましては、実態調査の結果として出てきました。残り2つのもの、 2,4-ジクロロ-1-ニトロベンゼンとパラ-ニトロアニソールにつきましては製造等を行っている事業場 が現在のところ把握できなかったということです。  この実態調査の結果ということで、全般的に傾向として見てとれるのが、基本的には1から8までの 原料を使って投入して別のものに変えていく。もしくは1から8を直接作るといったように、基本的に もそれを作るか、一時利用をしているかというのがほとんどだったと理解しております。  それぞれの物化性状を見させていただいたところ、2を除いて概ね液体という形で使っていることが 確認できました。2番のみ固体で使っているということです。いちばん大きな傾向としては、保護具の 使用に特に大きな傾向があるのではないかと思われます。1番や2番を除いて、防じんマスク以外の防 毒マスクをほとんどが使用しているのですが、2番のオルトーフェニレンジアミンの部分だけは防じん マスクが使用されている状況が見えたということです。こちらも実態調査の結果として見たところ、 そういった傾向は少し見えましたが、ほかの物の傾向としてはあまり大きくは見られませんでしたの で、そういったところが今のところ傾向を占めているということで報告をさせていただきます。  そういった状況でしたので、資料10の指針案をこういった情報をもとにして作成いたしました。指 針予定8物質の指針案ということで、1から8までまとめております。今般、実態調査の中で出てこな かった物質につきましても、過去に使われていたり、輸入していた状況があって、物質の選定をして いる状況もありますので、指針案としては入れさせていただきたいということです。  1頁の(1)「塩化アリルによる健康障害を防止するための指針(案)」をご覧ください。基本的なパタ ーンとしては、基本的な労働衛生対策について、これはほぼ従来どおりの形で、要するにリスク評価 のスキームが入る前からあった指針案をベースに作っております。  その中で1カ所変えたのが、2-(1)-イ-(イ)です。塩化アリルのところで「有機ガス用防毒用マス ク」は、従来は呼吸用保護具の形で書いておりました。これにつきましては、作業実態等を踏まえた あと物性も踏まえてこのような形で書かせていただきたいということです。  その関係で言いますと、(2)オルトーフェニレンジアミン及びその塩による健康障害防止等の指針に ついても同じところの記載がありますが、そこにつきましては「防じん機能を有する防毒マスク」と 書かせていただきました。この「防じん機能を有する防毒マスク」の記載につきましては、「防毒マ スクの比較」というのがありまして、そこに掲げていた表記を使っております。実態としては防じん マスクだけのものもあったのですが、ある事業場におきましては併用して使っている所もありました ので、ここは併用して書くほうが妥当ではないかと考えて、このような形で書かせていただきました。  その他の内容につきましては、作業環境測定、労働衛生教育、労働者の把握危険有害性の表示とい うことでの指針です。3.作業環境測定につきましては、これまでの通達で出ているもので申しますと、 通常特別則でやる作業環境測定につきましては、管理濃度という指標で作業環境管理をするのですが、 この指針で行う作業環境測定の指標としては、管理濃度がすでにあるものについては管理濃度でやる のですが、そういったものがないものについては、基準濃度を決められるものについては基準濃度を 決めていた状況がありまして、別途基準濃度を決めていたものもあるという状況です。  指針もそうですが、指針に関係するそういった情報も併せて取りまとめを行っていきたいと考えて いるところです。指針案の内容は、基本的に従前のリスク評価が始まる前のバージョンでの内容で出 しております。委員の皆様方の忌憚ないご意見等をいただければと思います。よろしくお願いいたし ます。 ○菅野座長 ただいまのご説明につきましてご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。 ○田中委員 資料10の1頁目、塩化アリルについてご説明をいただいた保護具に関しては詳細にしま したということですが、(3)「保護具について云々」とありますが、「また送気マスクを使用させたと きは当該労働者が」ということはイの(イ)作業管理で有機ガス用防毒マスク、もしかしたら、この 前に送気マスクが選択できるような形に記載したほうがよろしいのではないかということが言えるか と思います。  「とりわけ保護手袋等の保護具の使用」の記載がありますが、保護手袋も素材、材料によっていま は基準は透過しやすい、透過しにくいというのが1つのJIS規格の基準ですので、透過しにくい手袋と いうのは調べないとわからないのですが、いままでの既存のデータの中で透過しにくい手袋があれば それを記載してあげれば、事業場で手袋を選択するときにその素材を選ぶことができるというわけで す。  そういう意味では、資料9で事業場で使っている保護具を調べていただいているといったときに、例 えば保護手袋の記載のところにどんな素材を使っているかという情報があると、指針を作るときに参 考になるのではないか。防じんマスクを使っているところが防じんマスクの選定をする際に、濾過剤 の補修効率がいま80%、95%、99.9%以上と3段階のグレードをいま市販しているので、事業場でど のグレードのものを使っているか。80%以上の濾過剤を使っているかというような情報がわかると、 指針を作るときにより丁寧な。「防じんマスク」と書いたときに、どの程度のグレードのものを使用 したらいいかということが記載できるのではないかということで、お願いできればということです。 ○菅野座長 これはすべての物質について最適なものを指定するということですか。 ○田中委員 できるものもあるし、また情報としてまだまだ保護具についてはデータがないものもあ る。その辺も明確にした上で指針を作ることが必要ではないかと思います。すべて記載できるという ことではないと。いまの現状でわかっているところで記載をするところかと思います。 ○平川査察官 今回指針ということで出させていただくのですが、そのほかに指針をさらによりわか りやすくするという形で、行政通達を出しているものもあります。今回、指針ということで大臣が出 す指針のみ出させていただいておりますが、最終的に出す場合には指針と、それをさらに噛み砕く形 で通達を出させていただいております。どちらにするかというのは、追って相談をさせていただくこ とになろうかと存じます。 ○菅野座長 通達のほうが入れやすいということなのでしょうか。 ○平川査察官 そこまではわからないです。 ○唐沢委員 作業環境測定が例えば塩化アリルでもいいのですが、2頁の3に書いてありますが、これ は法定の作業環境測定の義務づけではないから、管理濃度はまだ定められていない。あるいは管理濃 度が定められないものもあるかもしれませんが。ただ基準濃度という話からちょっと出たように思い ますが、作業環境測定を指針ベースで書く以上は、その作業環境の評価の拠り所となるものが普通は いりますよね。それは何かお考えになっていらっしゃるという意味ですか。時間がなかったのであま りお述べにならなかったのかもしれないのですが。 ○平川査察官 これまでの指針の中身ということで申しますと、書き方としてはここまでの書き方。 あと評価ができるものについては評価を行うという形で書いております。評価が行えないような濃度 の定めがないものについては、「評価」と書いているものは、要するにあったり、なかったりという 状況です。  実際に、いまのところはリスク評価に全部持っていくものではないのですが、将来的な話として、 リスク評価に仮にいった場合には、リスク評価の中でさらに特別則ということで、基本的には特化則 になろうかと思いますが、そちらのほうにいきましたら、管理濃度の決定という形の話が出てくるの ではないかと思います。  この物質がそこのスキームに実際行くかどうかというのは将来的な話ですので、はっきりとしたこ とは言えないのですが。一方、基準濃度をどういう形で作っていくかということになりますが、28条 の3項の指針というのが罰則規定を有していないという指針でもありますので、どこまで基準濃度を厳 しく整値させて決めるかということにつきましては、管理濃度はまさに法規範でそれを守らなければ 何かしらの罰則がかかりますが、それとは違いますので、そこまで精致に作るかどうかということに つきましては、管理濃度ほどは整値して決めるところまではいかないのではないかと考えております。 ○島田化学物質評価室長 補足をさせていただきます。いまリスク評価にいった物質の今後の委員  少し言い過ぎかもしれませんが、この指針でよろしいでしょうかと意見を一応求められている立場か らすれば、過去に安衛法28条第3項の指針はたくさん出ていますが、そのレベルの指針においては作 業環境測定はとにかくやってくださいよと書いてあると。その場合には必ずしも基準値まできっちり 書いてなくても、やはり作業環境測定はしていただいたほうがいいから指針の中に盛り込まれている という意味であると。あんまりここは神経を使わなくてもいいということなのですかね。今後の発展 の方向としては、ただいま島田室長がおっしゃったように、最終的にはリスク評価が必要なものにつ いては、今日お諮りをいただいている8物質も含むこともあり得ますよと。その途中経過として、こう いう指針を出すと。途中経過というのは表現が適切でないかもしれませんが。ご提案の指針も存在価 値は十分にあるというふうに理解してよろしいのですか。 ○島田化学物質評価室長 現行の基準がない場合は掲示的に作業環境を測定していただいて、できる だけ下げていただくような方向で作業測定をしていただくということです。 ○唐沢委員 そういうことなのですね。 ○大前委員 いまの件の追加ですが、指針の予定物質、あるいはがん原性試験の候補物質とあります が、こういう物質はすべてリスク評価の対象にされてはどうかと思います。これは物質を選ぶときに 使われていることはわかっていて、かつがん原性が疑われそうなものを選んでいると思いますので、 基本的にはリスク評価対象物質にして、できればがん原性試験の結果が出るころには初期のリスク評 価表ができているくらいの形になっているといちばんいいのではないかと私は思います。 ○岡部委員 指針案のほうですが、いわゆる以前のベースを使って呼吸器、保護具といろいろ謳って いるわけですが、例えば塩化アリルで言えば、がん原性の試験という形では吸入試験のデータと変異 原性のデータを使っていると思いますが、そういった形でたぶんこの指針ができていると思います。  例えばエチルアルコール等は経口で吸入摂取をすればがん原性とかになる。ところが経皮であれば 消毒にも使います。経皮ではがん原性が認められていないといったような曝露経路によるアセスメン ト、保護・防止措置といったようなものは、今回の中で1つでもがん原性が出れば吸うのも駄目、皮膚 も駄目という形で含まれると思いますが、将来的にそういった形の考え方はお持ちですか。 ○島田化学物質評価室長 リスク評価の中では、大前先生の検討会でやっていただく場合には経皮毒 性が非常に高いとか、経皮吸収性が高いとか、を含めてやっていただくことになります。たまたまこ こでは従来から職業癌は吸入毒性を中心に扱いましょうということで、試験自体は吸入、あるいはそ れができないものについては経口という形でやっておりますので、それが必要だという判断であれば、 それはリスク評価で、ほかの文献情報から調べる必要があると思います。 ○菅野座長 大前先生のご意見では、すべてリスク評価に入れるべきであるということですが。 ○大前委員 そういった場合はポジティブに出る可能性が多いものを選んでいると思いますので、そ ういう意味ではこの結果とリスク評価の結果が同時くらいに出ますと、非常に情報としては有用なの ではないかと思います。 ○菅野座長 手順としては、この指針はまず出して、その後にリスク評価というようなことですか。 ○島田化学物質評価室長 先ほど平川のほうからご説明を差し上げましたが、これはあくまでも法的 規制というよりは、技術的指針(行政指導)ということで出させていただくものですので、問題があ るものについてはリスク評価をして必要があれば規制をかけていく。その場合に本検討には、防止措 置が必要である旨を付してフィードバックはされます。 ○名古屋委員 そのとき例えば、こういうシートで出していきますよね。いまここに出ているのは、 製造業の事業場は把握できていることになりますよね。もしそれが本当だとしたら、そこまで踏み込 むのは辛い部分があるのか。ただ委員として物質を出してきて拾うことは大切かもしれませんが、そ このところはすみ分けておかないと、対象物質を扱っていない所が化学物質を扱ってもなかなか難し いのかなと思いますが。 ○島田化学物質評価室長 試験対象物質の選定の経緯をご説明します。がん原性物質の選定の段階で は非常に使われていることが選定の前提です。当該物質の使用動向については、私どもから日化協、 化成協に協力を求め、聴き取りという手法で調査したものですから、十分なものになっていない可能 性があります。一方、お手元のパンフレットにはる有害物暴露作業報告は法的な義務報告ですので、 もし製造・取扱いがあれば、あまねく報告が出てくることになりますので、リスク評価を実施するこ とになれば、報告がなされる可能性は十分あると思います。 ○半田化学物質対策課長 唐沢先生にお尋ねしますが、先ほどのご指摘の趣旨は、この指針の中で測 定について一応指導レベルですが、こういうことをやったらいかがと書いてあるわけです。そうであ れば、それに対して何らかの基準濃度みたいなものは示してはいかがかというご趣旨でしょうか。 ○唐沢委員 作業環境測定をやらないよりはやったほうがはるかにいいですから、それはそれで意味 があると思います。折角やるのであれば、もし評価をする場合の指標があれば、なおベターだという 意味で申し上げました。 ○半田化学物質対策課長 わかりました。そのことについては先ほど平川もお答えしましたが、もう 少し補足させていただきます。実際そういう基準を定めることになります。またそこを所管している 改善室とのご相談も十分必要になるかと思いますので、先生のご指摘も踏まえて、これまではこうい うことをやってきておりましたが、その辺も検討させていただきたいと思います。 ○小野委員 1つだけ確認させていただきたいのですが、対策とかを考えるときに、より実効性のある ものとか、そういったものから優先的にという書き振りだったと思います。一般的に考えるときは、 管理のヒエラルキィーといいますか、毒性に応じてまずそれを使うかどうか。それから全体をきれい にすることを考えて、最後にマスクというヒエラルキーがあると思うのですが、それを踏まえた上で 実効性のあるものを採用していくというか、ケース・バイ・ケースでプロセスを考慮に入れるという ことを、先ほど作業によって変えることも考えているとおっしゃっていましたので、基本的なところ は踏まえた上で、実効性のあるものをよりアピールしていくといいますか、そういったことと理解し てよろしいのですか。 ○島田化学物質評価室長 これは技術的指針の範疇ですので、いまおっしゃられたとおり、実効性の あるものとして企業側が利用しやすい形でご提案をすることといたします。御指摘のあった作業環境 を良好なものにすることは前提として、それが作業環境の改善が多少難しい場合には保護具を使用す るという流れは基本的については、指針であっても、規制であっても同じであると思います。なお、 局面局面で保護具でないとうまく機能しない場合もあると思います。  事務局から照会させて頂きます。8つの指針対象物質のうち、例えば6番の物質とか8番の物質は、 他の物質に比べて癌が低濃度で出ていますが、この辺りで、特に注意すべき点や対応をとる必要性に ついてご意見があればいただきたいと思います。大前先生、これは6番目の物質は血管腫が5ppmで発 生しているということですが、これは安全係数を掛けますとかなり低いレベルの管理濃度なり、基準 値になるのでしょうか。 ○大前委員 これは出ている癌は鼻腔のみですかね。これは全部鼻腔ですかね。例えば2行目の90ppm では、雌雄の扁平上皮癌と書いてあるのですが、これも鼻腔の話ですか。どうでしょうか。 ○長野氏 この物質は、ラットでは鼻腔に雌雄の90ppmで高率に扁平上皮癌が出ております。 ○大前委員 どちらにしても鼻腔だけの、少なくとも6番の物質に関しては鼻腔以外の臓器にはあまり 出ていないという解釈でいいわけですよね。そうしますと、この場合はこの物性がよくわかっていな いのですが、非常に水に溶けやすいとか、何だかんだで鼻腔に止まって、あとは肺のほうには入って いかない可能性がある物質だとしたら、安全係数の考え方といいますか、それは変えなければいけな いと思うのです。システマティックに入っていくものは非常に重要だと思いますが、ここだけで納ま ってくる物質は入らないことがメインなので、例えば防御の観点からいくと、これは確実にマスクを するのがベストで、作業環境をいくら良くしてもあまり効果がないというか、駄目かなという気がす るのですが。これは、ここに書いてある試験結果が全部鼻腔のみだとしたら、実際はそういうことだ と思います。  8番の物質は肝臓のほうにいっているので、これは刺激等々による影響ではなさそうですから、これ はもちろん防具、マスクでもいいのですが、作業環境を良くすることに関しては結構厳しく考えなけ ればいけない。25ppmくらい出ているわけですから、肺腫瘍が出ているわけですから。6番と8番の物 質は別に考えてもいいのではないかと思います。 ○保利委員 吸入試験のppmと、経口でのppmでは同じではないと思うのですが、経口の場合はどうい うふうな形で出されているのでしょうか。 ○長野氏 今回の資料は投与している水あるいは餌中の濃度です。 ○保利委員 濃度ですね。ですから、摂取量とは直接関係ないですよね。ですから、その辺のところ はゴッチャにしないようにしておかないとまずいかなと思います。 ○大前委員 先ほどの6番を見ますと、ACGIH値が3ppmというのは随分高いですものね。別の理由で3 を取ったのだと思いますが、提案理由を読めば別の理由が書いてあると思うのですが。 ○名古屋委員 (5)だとACGIHというのは10ppmで、本試験は200ppmですよね。1桁のオーダーの違い でもありますよね。これは安全率がその辺を掛けているのか、それとも主に動物の扱いが違うのか、 疫学的な調査のあれが違うのかによっても差が出てくると考えたほうがいいのですが。要するにACGIH の10ppmと、こちらの実験だと200ppmですよね。その下は3と5だから、大体似ているので納まるの ですが。 ○島田化学物質評価室長 もともといわゆる発癌性試験をやられていなかったもので、それを選択し ておりますので、10ppmというACGIHの数字のエンドポイント(対象となる有害性)は癌ではないと思 います。すなわち、ほかの病気の問題として10ppmがセットされていると思います。 ○菅野座長 長野先生、混餌と水とありますが、例えばラットで水の場合1,000ppmは気中濃度の何 ppmに相当するとか、そういうことがデータの。 ○長野氏 試験によっても違いますが、水や餌の摂取量を測っておりますので、実際に1日平均で体重 kg当たりどの程度という数字が出ております。そういう意味では、その数字を使えば気中濃度への変 換はある程度可能です。ただし経路が違う問題もありますので、そこでは差があると思いますが。 ○菅野座長 かえって難しいですかね。この点につきましてもいかがいたしましょうか。やはり24日 までにご意見があればいただきたいということで。 ○井上労働衛生専門官 この場でも先生方からいろいろご意見をいただいたところですが、追加等で お気付きの点等がございましたら、先ほどの健康障害物質措置と同様に24日(水)までにご意見をい ただくということでお願いしたいと思います。その前に、私ども事務局から先生方に措置の関係する ペーパーと併せて、この指針関係につきましても電子媒体と一緒に送信させていただきたいと思いま すので、よろしくお願いいたします。 ○菅野座長 あと10分ほどありますが、この場で発表すべきことがおありでしたらお願いいたします。 ○島田化学物質評価室長 それでは1つ確認ですが、先ほど大前先生から8物質についてはリスク評価 の候補とすべきとの提案がありましたが、、本検討会として、当該8物質を櫻井先生のほうでやられて いる企画検討会にリスク評価対象物質として提案することを決定したということでよろしいですか。 ○菅野座長 いかがでしょうか。先ほどの大前先生のご提案を決定事項とすることでよろしいですか。 (異議なし) ○菅野座長 わかりました。それではすべてリスク評価対象物質とするほうがよろしいというのが、 この会の意見であるということでよろしいですか。 ○島田化学物質評価室長 リスク評価については、優先順位が出てくると思いますので、それは櫻井 先生の検討会のほうにお任せをさせていただきたいと思います。 ○菅野座長 それでは全物質につきましては、櫻井先生の検討委員会にご報告を差し上げることにし たいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○井上労働衛生専門官 ただいまの議題は以上ということで、座長よろしいですか。 ○菅野座長 はい。 ○井上労働衛生専門官 つきましては、資料11の「今後の検討予定」の1枚紙をご覧ください。第2 回目の化学物質の健康障害防止措置に係る検討会は、4月14日(水)午後2時から6時まで、場所は 経済産業省別館10階の1014号会議室で行います。議事につきましては2点ございます。1点目は「労 働安全衛生法第28条第3項の規程に基づく指針、がん原性指針の検討について」です。2点目は「平 成21年度リスク評価対象物質の健康障害防止措置に係る方針の検討について」ということで、今日の 議題の延長ということです。よろしくお願いいたします。 ○菅野座長 指針につきましては、次回で決定するということですか。 ○島田化学物質評価室長 事務局としては、今日のご議論、その後にいただく意見を取りまとめて、 次回の4月14日でご承認をいただけるようであれば、その場で決定させていただきたいと思います。 ○菅野座長 それでは少々時間が余りましたが、これで「第1回化学物質の健康障害防止措置に係る検 討会」を閉会いたします。どうもありがとうございました。