10/03/05 第4回看護教育の内容と方法に関する検討会議事録 第4回看護教育の内容と方法に関する検討会 平成22年3月5日(金)15:00〜17:00 厚生労働省9階省議室 ○島田課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第4回「看護教育の内容と方 法に関する検討会」を開始いたします。  委員の先生方におかれましては、御多用の中、当検討会に御出席いただきまして、誠にありが とうございます。  昨年7月24日付でございますけれども、事務局に人事異動がございまして、医政局長が阿曽沼 慎司に変わっておりますが、本日は所用のため欠席させていただきます。  それから、本日文部科学省の新木医学教育課長は所用のため欠席でございますけれども、代わ りまして、小山田看護教育専門官に席に着いていただいております。  続きまして、資料の確認をさせていただきます。  皆様方の机に議事次第をお配りしております。その裏が座席表になっております。それ以下が 資料でございます。  資料1「これまでの委員の主な意見」。  資料2「保健師教育ワーキンググループ開催要綱」。  資料3「助産師教育ワーキンググループ開催要綱」。  資料4「看護師教育ワーキンググループ開催要綱」。  資料5−1、横の資料でございますけれども「今日の看護師基礎教育の現状と課題」。  資料5−2「看護師教育ワーキンググループの検討内容」。  資料6「保健師教育、助産師教育ワーキンググループで出された隣地実習に関する現状と課題」。  資料7「保健師教育ワーキンググループの検討内容」。  資料8「助産師教育ワーキンググループの検討内容」でございます。  参考資料といたしまして、紫色のパンフレットでございますけれども、新人看護職員研修に関 する検討会におきまして、新人看護職員研修ガイドラインを作成いたしまして、昨年12月に完成 いたしましたので、参考として配付させていただいております。  以上でございます。  小山座長、引き続きの議事の進行をよろしくお願いいたします。 ○小山座長 それでは、本日も活発な議論をどうぞよろしくお願いいたします。  第3回までの本検討会の審議事項をふまえまして、今まで3職種に分かれてワーキンググルー プで作業をしてまいりました。本日はまずワーキンググループの報告を聞き、それについての皆 様方の御意見をお伺いし、その後、実習についての議題に移る予定です。  まずワーキンググループ開催の趣旨等について、事務局から説明をお願いします。 ○島田課長補佐 資料2、3、4がワーキンググループの開催要綱になっております。御説明を いたします。  前回の検討会で保健師、助産師、看護師それぞれのワーキンググループを設置しまして、詳細 な議論を行うということで御確認をいただいたところでございますけれども、その後、保健師、 助産師、看護師それぞれワーキンググループを設置いたしました。  保助看ともに同じような内容になっておりますが、資料2は保健師のワーキンググループ開催 要綱でございます。  「1.趣旨」といたしまして、保健師助産師看護師法の一部改正が行われまして、保健師及び 助産師の国家試験受験資格として、就業年限が6か月以上から1年以上となっております。この ため看護教育の内容と方法に関する検討会にワーキンググループを設置しまして、指定規則等に おける保健師の教育内容についての検討を行うということでございます。  「2.検討課題」でございますけれども、保健師のワーキンググループでは保健師の免許取得 前に学ぶべき教育内容の充実の方策についての検討を行うこと。  そして、免許取得に必要な実習内容についての検討を行うということで、設置し開催をしてお ります。  「3.メンバー構成」につきましては、裏面にございますけれども、12名の委員の先生方に御 参加いただきまして、ワーキンググループを開催しております。  資料3に助産師のワーキンググループ開催要綱がございますけれども、保健師と同じく保健師 助産師看護師法の一部改正によりまして、教育年限が1年以上と改正されますので、これに伴い まして助産師の教育内容についての検討を行うことにいたしております。  「3.メンバー構成」は裏にございます。このようになっております。  資料4にございますのは、看護師教育ワーキンググループでございます。看護師教育につきま しては、この検討会でもこれまで3回にわたった御議論いただきましたけれども、教育年限にと らわれない看護師教育について検討してきたということで、目指すべき到達について国際的な看 護教育の動向も踏まえ、能力の視点から具体的な見直しを行うということで、看護基礎教育とし て修得すべき教育内容についての成案を得る必要があることから、ワーキンググループで議論し ていただくことにしております。  「2.検討課題」でございますが、看護師教育の到達目標について、能力の観点から見直すこ と。  そして、到達目標を踏まえ、免許取得前に学ぶべき教育内容について検討するということで議 論をいただいているところでございます。  「3.メンバー構成」については、裏面にお示ししております。  そして、ワーキンググループの今後の検討予定について、若干追加説明をさせていただきます と、本日後ほど御議論をいただきます臨地実習の在り方について、検討会での御議論を踏まえま して、ワーキンググループで具体的な教育内容についてのさらなる検討を進めていただくことを 予定しております。  以上でございます。 ○小山座長 それでは、ワーキンググループでの検討状況について報告をさせていただきます。  まずは看護師教育ワーキンググループからの報告ですが、看護師教育ワーキンググループは私 が座長をしておりますので、私から報告いたします。  看護師教育ワーキンググループは、昨年の秋から5回の検討を重ねてまいりました。まず資料 5−1を見ていただきますと、本検討会での御意見をふまえますとともに、ワーキンググループ のメンバー間でも、もう一度今日の看護師教育の現状と課題について整理いたしました。インプ ット、プロセス、アウトプットというシステムモデルを使いました。  その表にありますインプットとは「入学生/学生の状況」です。特に問題点に焦点を置いて書 いてあります。検討事項はもっとたくさんありましたが、ここにはキーワードだけを載せていた だきました。  「プロセス」というところが学生が教育を受けている期間、ここが私どもが検討する教育内容、 カリキュラム、教育方法のところになりますが、そこが今日ではどのような現状であり、課題が あるかということを検討するとともに、その改善策について検討したのが右に書いてあることで す。  卒業時のアウトプットは、卒業時には看護師の国家資格としての受験資格を得るためにはどの ようになっていなければならないか、どのような能力を身につければいいだろうかということを 検討しました。看護基礎教育では卒業時に即戦力になる看護師だけではなく、その後ずっと定年 まで働き続けるための基本的な能力ですので、卒業後もふまえながら検討しなければいけないと いうことで、そこには「卒業時/卒業後」と書いてあります。  今日これから報告するところは、「卒業時の到達目標」です。カリキュラムや教育方法について は、既に今までも指定規則等で決められておりますが、看護師の卒業時点で何がどこまでできれ ばいいかという卒業時のアウトカムについては、大学についてはありますが、養成所については 各校で決めております。  資料5−2をごらんください。卒業時の到達目標としましては、ここには「看護師に求められ る実践能力及び基礎教育修了時の到達目標(案)」としてありますが、基礎教育というのは看護師 の能力だけではなく「社会人としての一般的な能力」を入れるかどうかという議論もしましたが、 一応ここでは入れないで、看護師の看護実践能力だけの表にしてあります。  看護師の実践能力をどのような枠組みで捉えるかということをいろいろ議論しました。最初に 3案を出しまして、その他にもっといい枠組みはないか、つまり、看護師の実践能力といったと きに漏れずにカバーできる枠組みはないかということを検討しましたが、参考文献の下に書いて ある文部科学省からの「看護実践能力育成と充実に向けた大学卒業時の到達目標」の枠組みのV 群の分け方が非常によく整理されています。そして、これは大学教育ではあるけれども、看護師 養成所で通じるだろうかという検討をしましたときに、内容としてはこのような能力を養成所で も求めているということで、この枠組みを使うことにしました。しかしながら、これは大学教育 の枠組みですので、「すべてのあらゆる年限」にこのまま適用することはできません。そこで、国 際的な動向をふまえながら検討する時代にあるということで、参考文献にあります2003年度の ICNの文献が日本語に訳されておりましたので、まずはそれを参考にし、それと2008年の英語版 を最終的に訳しまして、2003年と2008年版の国際看護師協会(以下ICNと略します)の到達目 標を参考にしました。ICNはジェネラリストナースとしての到達目標で書いています。私ども は基礎教育卒業時点、つまり、「卒業時点でどこまでできていればいいか」ですので、ICNの到 達目標をそのまま当てはめることはできませんでした。  そこで、卒業時点ではどこまでできていればいいかということで検討したのがこの到達目標で す。「理解する」といってもいろいろなレベルがあるのではないか、卒業時だと何をどこまでとい うふうに具体的にすべきではないかとお考えになるかもしれませんが、私どもの中でもそのよう な意見が出ました。しかしながら、それを書いていきますと、数ページにもわたりますので、特 定行動目標ではなく一般教授目標として、しかも、短く、このようにまとめました。  「ヒューマンケアの基本的な能力」は、どのような場であれ、どのような対象であれ、人に対 するとき、看護をするときの基本的な注意事項等が入っております。  その中は、「ケアについての説明責任」「倫理的な実践」「援助的人間関係の形成」「安全なケア 環境の確保」としました。  「ケアについての説明責任」は、ただ自分のことを説明すればいいだけではく、自分ができる こととできないことについて認識するということは、学生のときには非常に重要なことであると 考えます。また3には「自らの現在の能力を超えると判断する場合は、適切な人に助言を求める」 ということを挙げました。  「倫理的な実践」については、まず、所属する組織の倫理規定ですとか、職業規定であるとか、 「行動規範に従って行動をする」ことを入れてあります。看護師の職業規定は国際的なものから いろいろとありますので、そういうことも学んだ上で行動することができる人になってほしいと いう意味です。5〜9は「対象者の個人情報や尊厳を守る」とか、看護の対象者を中心にして倫 理的な実践ができるようにということです。  ちなみに、「患者」という表現ですが、看護の対象は地域であったり、必ずしも患者だけではな いということで、「対象者」という表現にしていますことを御了承ください。  「援助的人間関係の形成」は、今までも非常に重要なこととして看護教育で行ってきているこ とです。  新しく加わえました「安全なケア環境の確保」は、看護師としては非常に重要ではないかと考 えまして、医療安全の基本的な考え方、リスクマネージメントの展開方法、顕在的なリスクと潜 在的なリスクを理解する、原則に基づき治療薬を安全に管理することの重要性を理解する、多分 学生は薬物に触ることはほとんどありませんので、「重要性を理解する」という表現にしています。 「感染防止の手順を遵守する、インシデントレポートを作成し報告することの重要性を理解する、 安全上実施してはいけないことがわかる、インシデント・アクシデントの要因・原因を分析する、 関係法規及び各種ガイドラインに従って行動する」ということ入れてあります。  II群は「根拠に基づき、看護を計画的に実践する能力」です。  「エビデンスに基づく看護」ということで、研究成果を活用することの重要性について理解す ること等を含めています。  「看護技術」は既に何をどこまでというものがありますので、ここには具体的には書いてあり ません。しかしながら、それらのすべての技術を提供する上で「対象者の反応をとらえ、安全・ 安楽・自立を考慮して実践する」ということを入れました。  「アセスメント」「計画」「実施」「評価」というのは、計画的に看護を実践する能力です。  「アセスメント」のところは、どのように対象者のニーズを理解するか、正確で意味のある客 観的・主観的データを集める、データを体系づけ統合・分析・解釈し看護アセスメントをする、 対象者の全体像を説明する等を含めています。  「計画」のところでは、今までもやってきていることですが、ケアの優先順位を決めるという こと加えて入れています。  「実施」「評価」の段階は、今、相当看護教育の中で行われていることです。  III群は「健康の保持増進、疾病の予防、健康の回復にかかわる実践能力」です。  「健康増進」は、ICNではもっとたくさん書いてあるんですが、私どもは3項目を挙げまし た。  切り口をどうするかということですが、ライフサイクルで切るのか。今は生まれてから死ぬま でということで母性看護学、小児、成人、老年、場という形でカリキュラムが組まれていますが、 意思決定がなかなか難しゅうございます。ここについては後で御意見をいただければと思います。  IV群は「ケア環境とチーム体制を理解し活用する能力」であす。  1つは「専門職の役割理解」ということで、43は看護職としての自らの役割を理解する。同僚 看護職の役割を理解するというのは、保健師、助産師、専門看護師、養護教諭いろいろな看護職 がありますので、それぞれの役割を理解することです。それから、他職種の機能役割も理解する ということを入れております。  「看護チームにおける委任と監督」は、日本語をどのようにすればいいか大変悩んだのですが、 今のところは「看護チームにおける委任と監督」という表現にしております。これは法的範囲に 合った活動を他者に委任する業務があることを理解する。例えば看護チームの中では、今、看護 補助者の方々が病棟でシーツ交換をしたりいろいろな業務をしております。それを看護師が委託 しますが、任せきりではなくて、きちんと責任をとる必要があるということの意味もあります。 「他者に委任したケアについてさまざまな側面から支援することの重要性を理解する」。学生のと きにはこういうことはできませんが、師長であるとか看護師がどのようにすれば、病棟全体ある いは職場全体としての業務がうまくいくかを理解することを含めております。  48も同様ですが、ケアを部分的にほかの人に委任する場合にも、自らの説明義務や責任を持つ ことを理解することを入れております。  「多職種間ヘルスケアの理解と協働」は多職種で仕事をする時代になっていますので、福祉も 入れました。保健・医療・福祉チームでの協働の必要性を理解する、保健・医療・福祉チームメ ンバーの役割、知識、スキルを理解し尊重する、チームメンバー間のコミュニケーションがとれ る、チームメンバーと協力関係を築くことができる、対象者に関する意思決定はチームのメンバ ーとともに行う、チームメンバーとともにケアを再検討し評価するということで、学生の卒業時 までには「チームメンバーとともに」という表現をしております。  「保健・医療・福祉を提供する場の理解」、これは実践する組織の機能・役割、地域における医 療の機能・役割、国内全般における医療の機能・役割、国際的視点、保健・医療・福祉システム の理解、保健・医療・福祉の動向と課題、さまざまな場間の連携について理解することを入れま した。今は入院期間、在院日数が非常に短くなり、クライアントが場から場へ動くときの連携の 重要性について理解するという意味です。  「実践の中で研鑽する基本能力」というのは、看護の免許を取った後も研鑽し続ける能力とい う意味です。  「継続的な学習」として、62は看護実践における自らの課題を述べるという表現で、ここは相 当迷ったのですが、自分にどのような傾向があるのかということに気づくということは大事では ないかということで、このような表現にしております。それから、継続的に自分の能力の維持・ 向上に努める、看護の質の保証・向上について理解する等でございます。  先ほどI〜V群の枠組みを、文部科学省の大学の卒業時のものを参考にしたと申し上げました が、最終的にはI群、II群、III群、IV群の表現も多少ワーキンググループのメンバーで変えさせ ていただいております。  以上が看護師教育ワーキンググループの報告ですが、皆様方からの御意見や御質問等をお伺い できれば幸いです。いかがでしょうか。  岡本委員、どうぞ。 ○岡本委員 済みません。一点教えてください。51、52は「とれる」「できる」という文末で、ほ かのところは「理解する」とか「実践する」という文末です。ここが「とれる」「できる」という 表現になっているのは何か意味があるんでしょうか。 ○小山座長 卒業時点でここはできないといけないですねということで「とれる」なり「できる」 という表現になっております。あと「理解する」などのところは、理解すると一言で言っておか ないといろいろなレベルがありますし、学年によっても違うので、このような表現がいいのでは ないかということで表現しております。  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。 ○太田委員 最初に資料5−1の質問でもいいですか。 ○小山座長 資料5−1ですか。 ○太田委員 はい。 ○小山座長 どうぞ。 ○太田委員 インプット、アウトプットという表現でお話になられたと思うんですけれども、学 生の状況と卒業時の様子はどういう関係があるか全くわからないんです。  もう一つは、看護師さんたちがよくお使いになる生活者という意味が私らには余りぴんとこな いということと、社会人と生活者がどう違うのかということと、学生を社会人としてとらえてい るということでしょうか。 ○小山座長 違います。大変申し訳ございません。ここは長い文章を短い一言にまとめたために このようにしておりますが、実際に生活者といいますのは、入学する学生たちは全体的に社会経 験が少なくなっているという意味でございます。それを生活者という言葉にしてしまったという ことですが、できればここの文言には余りこだわらないでいただければと思います。この表に対 応させようとしているのではなく、あくまでも「このような経過で検討しました」という流れの 報告でございます。 ○太田委員 そうですか。生活者としての自立度は低いけれども、卒業時に高くなったという話 ではないんですね。 ○小山座長 違います。そうではないです。  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。 ○草間委員 大変よくまとめていただいていると思います。ありがとうございます。  看護師に求められる実践能力という形で割とプラクティカルなところで書いていただいている んですけれども、1つ是非お願いしたいのは、基礎教育の中でヒトの体を知るといった基本的な こと、一般教養とは違うその辺をどこかに入れていただきたいと思います。確かに看護師の教育 の中ですべての場面に臨機応変に適応できるような能力というか、場面設定というのはできない わけですので、そういう意味では基本的なベースになる教育をきっちりしておかないと、実践の 場に出たときにあらゆる場面に対応できないような気がするんです。だから「ヒューマンケアの 基本的な能力」のところで、人の体の基本的なことを知るような能力をもう少し強化する教育を 入れていただくと、ありがたいと思いつつ見せていただきました。  すごく細かいところでは、43はあくまでも看護師に求められる、看護師の到達目標です。44な どは「看護職」でいいですけれども、43は「看護職」ではなくて「看護師」としていただきたい。 「看護師としての自らの役割を理解する」ではないかと思いました。  それと、62の「看護実践における自らの課題を述べる」は、随分議論になったというお話です けれども、ここだけが「述べる」という感じですね。やはり述べるためには理解しなければいけ ないので、ほかとのバランスを考えると語尾を合わせていただいた方がいいと思いつつ伺ったん ですけれども、いかがでしょうか。 ○小山座長 ありがとうございます。ここのところは時間切れで出しています。「述べる」と先ほ ど御指摘のあったところは、そのようにさせていただきます。  また、43はほかに44がありますので「看護師」として修正した方がいいと個人的には思います。  それから、人の体の能力を見るところは非常に重要ですが、それをどこに位置づけるかという ことは大変悩みました。実をいいますと、到達目標を達成させるにはどのような内容が必要かと いうことがこの表の右側に今度必要になってきます。そこで、健康上の患者のニーズやその患者 の状況をアセスメントするために必要な知識として具体的に到達目標を達成させるための内容は 何か、というこれからの吟味が入ると御理解いただければと思います。非常に重要ですので、必 ず入れていきたいと思います。  ほかにいかがでしょうか。 ○岡本委員 ありがとうございます。  今の人の体を見るという能力にも通じることですけれども、先ほど「チームメンバーと協力関 係を築くことができる」という項目では、必ずできてほしいということで「できる」という表現 にしたということでしたので、できれば25の「基本的な看護技術を実践する」というところは「実 践できる」という到達度にしていただきたいと思います。その辺も御吟味いただけないでしょう か。 ○小山座長 ありがとうございます。そのようにさせていただきます。お伺いいたしました。  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。 ○岸本委員 細かいことで恐縮です。「健康増進」の41です。「健康増進と保健教育に利用可能な 資源について理解する」のところですが、看護師の基礎教育として考えたときに、患者教育とい う視点で考えられると思うんですが、保健教育という言葉になると、看護師の基礎教育の段階で どこまで求めていくのかイメージが描きにくいという気がいたしました。 ○小山座長 ありがとうございます。御意見として承ります。  ほかにいかがでしょうか。  もし可能であれば、III群のところはアウトカムといいますよりも、むしろ先ほどの教育の中身 をどういう切り口で教えていくかというプロセスの部分に非常に関連があるところでございます が、ここのところの切り口について御意見をいただければありがたいと思います。  昭和43年以降のカリキュラムは母性看護学、小児、成人、老年という「ライフサイクル」と「場」 という切り口できております。ワーキンググループの中ではそれによって相当な内容の重なりも あったり、なかなか実習の場が得られないこと等もあり、どのようにカリキュラムを組めばいい だろうかということで、意見が煮詰まらないところでございます。 ○羽生田委員 到達目標の細かい文言を見ていてよくわからないんですけれども、患者さんを全 人的に見ていくというのはどこかの項目に入るんでしょうか。 ○小山座長 全人的に見ていくというのは当然入ると思うんですが、入れた方がいいということ でしょうか。余りにも当然と思っていて、ワーキンググループでは入れていないと思います。 ○羽生田委員 それぞれの専門家とか病棟でも違うわけですけれども、例えば内科の病棟に入っ ても、内科以外の疾患が隠れているとか、そういったことは幾らでもあるわけです。そういった ときに、朝から全人的に患者さんを見られるということが、早期の異常に気づくとか、そういっ たことにつながるわけですから、そういった見方ができるようにすることがどこかにあってほし いと思います。 ○小山座長 ありがとうございます。 ○岸本委員 今の全人的、というとらえ方に関しまして、先ほど座長さんがおっしゃいましたよ うに「アセスメント」27の「健康上の患者のニーズを理解する」というところのニーズの前提に は、患者さんとかあるいは対象を身体、心、精神、社会的、そして存在としての人間として全人 的に理解し、あらゆる側面からニーズを理解し、ニーズが満たされているか、どのように不足し ているのかという視点が入るかと思います。先ほどおっしゃいましたように、これを右側の具体 のレベルで出していけるのではないかと思います。 ○小山座長 ありがとうございます。草間委員、どうぞ。 ○草間委員 今、羽生田委員の言われたことは大変重要だろうと思います。どこにというよりも、 やはり全部に係ることだろうと思います。  一番最初の指定規則等の項目のところで、看護職に求められる像みたいなものがあります。こ こでいうI群からV群でこういうふうに分けていただいているんだろうと思うんですけれども、 最初の検討会で「求められる看護師像」みたいな形で7項目か8項目を厚労省の方で出していた だいたものがありますね。あれをきっちり出していただいて、その中で看護師というのが患者さ んに一番近いところで全人的に継続して見ているということをうたい込んでいただいて、どこの 項目がという問題ではないような気がします。そういう意味では本当に大きな問題だと思います ので、一番最初の求められる看護師像みたいなところにきっちり書いていただいて、それをこの 5つの項目に落とし、更に到達目標を達成するためにはどういうカリキュラムをといった枠組み にしていただくと、全体にどういう看護師像が求められているかということがわかると思います。 是非指定規則の最初の部分にある求められる像をあげて、そこの中に上手に盛り込んでいただく ということが私はすごくいいのではないかと思いつつ、今、羽生田先生の御意見を伺ったんです けれども、いかがでしょうか。 ○小山座長 ありがとうございます。  羽生田委員、いかがでしょうか。 ○羽生田委員 どういう形でもいいんですけれども、この中に入るとすれば、I群の中のどこか にそういった言葉が入るのではないかと見ていました。  27の患者のニーズを理解するというのはそうなんですけれども、患者さんが気づかないような こともあるわけですので、患者さんのニーズだけではないとも思いますので、どこかに何かしら そういった文言が入ればいいと思いました。 ○小山座長 ワーキンググループのメンバーもあまりにも当然のこととして、そこは文言として 入れていなかったと思います。ありがとうございます。  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。お願いいたします。 ○山路委員 49、50の多職種間のヘルスケアというところで、保健・医療・福祉チームとか保健・ 医療・福祉チームメンバーという形にしてあるんですが、実際問題チームとかチームメンバーと いうのは、具体的にどういう局面でチームという局面になるのか。実際多職種連携という場合、 例えば訪問看護などをやっておられる方々とか、あるいは地域に退院、戻っていく場合には、む しろチーム以外のケアマネとか介護職、事業所とか行政とかそういうものとの連携をとるという 局面がしょっちゅうあると思います。そういう場合の連携というのは、61のさまざまな場間の連 携について理解するというところで含まれていると理解していいんでしょうか。そういうことで す。 ○小山座長 そのように理解してもよろしいかと思います。チームのとらえ方について、定義は しておりませんが、今の時代は看護師が1人で仕事をするのではなくチームで働いているという 意味でとらえております。  さまざまな場間の連携という形は、チーム外といいますか、別のチームと連携をとるというこ とを含めております。  ただ、今の御意見は、チームについて私どもで定義した方がいいでしょうか。定義するように という御意見として承っていいでしょうか。 ○山路委員 保健・医療・福祉チームというがっちりしたチームがしょっちゅうあるわけではな いと思います。 ○小山座長 チームという固定的なものではなくということです。 ○山路委員 どういう意味なのかといった多少の定義づけはあった方がいいように思います。 ○小山座長 ほかにいかがでしょうか。 ○岡本委員 文科省の枠組みを基につくられたということで、前回の資料を見てみますと、III群 のところは、文科省の基のものは「特定の健康問題を持つ人への実践能力」となっていて、今回 の案では「健康の保持増進、疾病の予防、健康の回復にかかわる実践能力」と大きく変わってい ます。I、II、IV、V群は若干の修正ということなんですけれども、これはどうしてこうなった のかということを教えて下さい。  調査結果から看護の基礎教育で厚みをつける必要がある部分について、第2回の検討会で私は 発言させていただいたと思います。第2回目の参考資料4に書かれている「治療過程、回復過程 にある人々への援助」と、「終末期にある人への援助」という部分が今の看護の基礎教育の中では、 看護の専門性として厚みを付けていった方がいいと意見を述べた記憶があります。その辺りをこ の切り口の中に是非特出しをしていっていただきたい。III群のところもやはり医療に根づいた看 護師の専門性というものがあるでしょうから、少し大枠の枠組みの表現も見直す必要があるので はないかと思います。 ○小山座長 最初に申し上げましたように、一番最初のI、II、III、IV、Vという大きい枠組み は文科省のものを参考にいたしましたけれども、やはり大学卒とは違うということで、何を参考 にすればいいかと考えましたときにICNということになりました。ICNは3年課程であろう と4年課程であろうと、いわゆる全世界に通じる看護師とはということで定めております。時代 的に国際的な動きを見ながら、日本の看護も国際水準に合うような看護師になるように、ICN の考え方を照合しながら検討した結果でございます。ICNでは健康増進のところが相当多く入 っております。この4倍ぐらい入っているんですが、そこを縮小しまして、この3項目にしたの でございます。  それ以外のところの切り口についてどうするかというのは、今の日本の現状がライフサイクル でいっているものですから、急にそちらに飛び付けないというところもありましたし、どのよう に整理すればいいかで悩んでいるところです。ですから、健康増進のところはICNのものを相 当入れている、構成要素、到達目標のところは相当国際的な水準と照合しながらつくっていると 御理解いただければと思います。 ○岡本委員 勿論ICNの国際基準を尊重するとよいと思うんですけれども、やはり日本は保健 師、助産師、看護師という3職種で昔から成り立ってきた国ですので、ICNの基準というのは 看護職全般では非常に役に立つものかもしれませんが、看護師の卒業時では日本の看護師に求め られる役割と機能に特化した内容が出てくるべきではないかと思います。 ○小山座長 ただいまの御意見につきまして、皆様方はいかがでしょうか。ワーキンググループ としましては、「日本は日本」と言っていられない時代になったという考えで、国際的な視野とい いましても、あくまでもジェネラリストナースとしての基準、しかも、3年課程であるというこ とで、看護師であればというICNのものに照らし合わせて見ているんですが、ただいまの岡本 委員の御意見についてお願いします。 ○草間委員 私が先ほど一番最初に指定規則等で従来書かれていたものとお話したものの中に看 護師の業務としても、確かにヘルスプロモーションという言葉、健康増進という言葉は入ってき ていると思います。だから、そういう意味では、看護師の教育であっても、ヘルスプロモーショ ンとかプリベンションというのはきっちりやっていただかなければいけない。それから、基礎教 育の中でどこまでやるかは別として、ヘルスプロモーションが全くないというのはないと思いま す。  国際的にとか何とかではなく、日本の指定規則等でも既にしっかりあげられているというのは 認識しなければいけないと思っているんですけれども、いかがでしょうか。 ○小山座長 ありがとうございます。  島田さん、どうぞ。 ○島田課長補佐 今、草間委員からお話がありましたものは、第2回の検討会の資料5にござい ますものをおっしゃっておられたのかと思います。これは指定規則ではございませんで、医政局 長の通知としてお出ししています。指導要領の方で看護師教育の基本的考え方としてお示しして いるものでございます。補足でございます。 ○草間委員 確かに入っていますね。 ○小山座長 入っております。 ○岡本委員 看護の基礎教育にヘルスプロモーションが入ることには全く異論はありません。た だ、看護師の専門性として治療過程や回復過程にある人の援助とか終末期にある人の援助とか、 そういうところの内容が入らないというのはおかしいのではないだろうかという意見です。 ○小山座長 そういうことは健康課題別に切った場合には、当然入ってきますので、そのように お伺いしておりました。  一応看護師は制限時間になりましたので、また後で御意見があればお伺いすることにして、保 健師に移りたいと思います。 ○岸本委員 みません。IV群のMの「多職種間ヘルスケアの理解と協働」という項目に関しまし て、51、52、53、54の辺りのチームメンバー間のコミュニケーションとか協力関係というのは、 具体的に看護チームとか医療チームなどを指しているのではないかと思うんですが、その場合に こちらの見出しとの関係あるいは保健・医療・福祉チームが上側に上がっている順序性だとか、 その辺がちょっと気になりました。 ○小山座長 ありがとうございます。御意見としてお伺いいたします。ちなみに、51〜54のとこ ろは、「看護職」ではなく「多職種」と左にありますので、さまざまな職種でございます。はっき りしてないということですので、検討させていただきます。  それでは、次に保健師教育と助産師教育に移ります。御意見等は保健師と助産師の両方の報告 が終わった後にお願いします。  まずは、保健師ワーキンググループの報告をワーキンググループの座長である中山委員よりお 願いします。 ○中山委員 それでは、私から保健師教育ワーキンググループの報告をさせていただきたいと思 います。  21年秋から4回開催いたしました。寒い日もあったんですけれども、時間を延長して熱い議論 をしてまいりました。  主に4回の中で、教育側と臨床現場からのヒアリングを行っております。それで出てきた問題 としまして、すごく簡単に集約してしまっていますが、資料6を見ながら聞いていただきたいと 思います。  これは保健師のワーキンググループで出された現状と課題ということで、ワーキンググループ からのものを上段の方に書いてございますが、教育側から実際の単位とか時間数を話されるとと もに、現場の方から新卒者に求める内容というか、どういう力をつけてほしいとか、あるいは実 習の現状などについて語られたんですが、一番大きな問題として、そこに挙がっています実習施 設が不足しており、実習時間が短かったり、見学中心であったりするため、保健師としての実践 能力を身につけるのが難しくなっているとか、あるいは今、保健師の配置のされ方が変わってき ておりますので、実習できる場が限られてきている。  また、特に看護系大学の増加に伴いまして、実習にたくさんの学生が出るために実習を受け入 れる現場側の負担が大きくなっている。このことに伴いまして、実習に出てくる学生の準備性と か動機づけそういったものも弱いので、非常に実習が困難になっているという現状が語られてい ます。  特にこれまでも保健師の教育の技術項目という形ではありますが、卒業時の到達度というもの が出されているんですが、大学あるいは保健師の側からどういうふうに到達度がなっているかと いうことの調査を見ても、あるいは現場で引き受けている保健師さんの側から見ても、学生たち の卒業時の到達度の達成度は余り高くないというのが現状ではないかということで、その辺の議 論にかなり長い時間が費やされました。  それで、今、一番岐路に立っているというか、いろんな社会的な情勢の中で、保健師教育はど ういうふうにあったらいいのかということがあるんですが、これから求められる役割と機能、必 要な能力、基礎教育修了時の到達目標にいきたかったんですが、なかなかいきませんでした。  皆さんのお手元の資料7をごらんください。一番たくさんの時間を使ったのは、ヒアリングの 後の「保健師に求められる役割と機能」というところでした。かなり議論はたくさん出たんです けれども、なかなか合意が得られなかったということで、今回の報告では、その下にあります「保 健師に求められる実践能力及び基礎教育修了時の到達目標(今後検討予定)」ということで十分で はありません。保健師に求められる役割と機能が明確にならない限り、こちらの方との整合性が とれないものですから、下の到達目標の方は十分に検討されていませんし、文言あるいは上との 整合性も合っておりませんので、その点は御了承いただきたいと思っております。  今日、保健師のワーキンググループから皆様に提案できるのは、保健師に求められる役割と機 能ということで、討論をしてもなかなか全員でこれでいいというところまでいきませんでしたの で、I案、II案という形で出しております。  I案の方は、今後保健師の役割拡大といいますか、保健師がさまざまな場で働くだろうという ことを想定しまして、かなり一般的な表現でA、B、C、D、E、Fという形で保健師に求めら れる役割と機能を書いております。  II案の方は、読んでいただいたらわかると思いますが、公衆衛生学を基盤としたとか保健指導、 地区活動、ポピュレーションアプローチ、施策化、ハイリスクとかいろんな保健師の特徴を示す ような用語を用いてつくられています。  座長としましては、I案もII案もそんなに大きな違いはないんですが、表現のところ、保健師 の特徴をどういうふうに表すかというところで、どうしてもどちらか一方にすることができず2 つの案を出したという経緯がございます。今後保健師に求められる役割と機能として、どういう ところに焦点を当てていくのかということは、今日皆さんから御意見をいただければいいと思っ ております。これによりまして、もう少しワーキンググループの中でI案、II案の御意見を求め まして、到達目標の方にいければいいと思っております。  I案の方は、どちらかというと、健康の保持増進とかそういうような形のものになっておりま す。  「A.地域全体及び地域の人々の健康の保持・増進をはかり、健康状態を確認し行動変容をは かることができるよう支援する」。  「B.常に広い視野で時勢や地域をとらえ、科学的に情報収集し、地域全体及び地域の人々の アセスメントを行い、顕在化する健康問題を把握するとともに、潜在する新たな健康問題を予測 する」。  「C.地域の健康課題について、社会資源を活用・調整し、地域の人々、関係機関、他職種と 連携・協働し、適時組織的に解決をする」。  「D.健康課題の解決をはかる過程の中で、社会構造を視野に入れ既存の社会資源を評価し開 発や仕組みづくりにつなげる」。  「E.個人に対する支援、集団に対する支援を組み合わせ、互いに連動させることで、地域全 体の健康の質を維持・向上させる」。  「F.社会資源の質を保証し、公平な利用と分配を促進、運用し、平常時より危機に備えて体 制づくりや機能強化をはかり、また、健康危機発生時には健康被害の拡大防止と収束のために活 動する」という形になっています。  II案の方は、先ほど申しましたように、行政分野で働く保健師さんたちの焦点が当たっている かと思います。  「1.保健師は、地域の全ての人々の健康水準や向上と保護のために、公衆衛生看護学と社会 的公正に基づいて、人々や環境に、人々ともに、働きかける高度専門職業人」。  「2.地域特性や時代に応じ、集団/地域にも、個人/家族にも、健康増進活動および行動変 容の支援を、ポピュレーション・ハイリスクの双方のアプローチで促進、展開する」。  「3.顕在する健康課題のみならず潜在する健康課題や健康の不平等、健康格差を予測・発見 し、様々な対象者の対象がマイノリティや孤立しやすい人々であっても問題を明確にして、対象 の権利擁護と環境の基盤整備を推進する」。  「4.平常時からの地区管理で、健康づくりに関する住民主体の地域組織や自助組織に、健康 危機に対するセイフティネットの構築を支援するとともに、新興の健康課題を探索し予防的・予 測的に対応する」。  「5.多角的・系統的な公衆衛生看護診断による健康課題の明確化に基づき、企画立案・実施・ 評価を経年的・系統的に展開し、総合調整する」。  「6.地域の組織や制度、社会資源、仕組みを鳥瞰的に見て、構造的に捉え、それら環境面の 課題を明確にして、関係機関と企画調整や施策化、社会資源開発、仕組みづくり等への目標を共 有し、合意形成をはかり、協働しながら継続的・組織的に改善・開発・管理する」。  「7.行政分野だけでなく、産業保健分野、学校保健分野における2〜6を理解する」という 形で書かれています。  確かにIIの方が特徴は出るんですが、これでいいかどうかという問題も含めまして、今日は少 し専門が外れている方々からむしろ御意見をいただいて、どういうふうに保健師を考えたらいい かということの御意見をいただければ、私としては次のワーキンググループにそれを持ち帰り、 みんなで1本にまとめていくという作業をしたいと思っております。まとめ切れなかった座長か らの今日の提案でございます。 ○小山座長 一般社会、世間では保健師にはどのような役割を期待しているかという御意見をこ こで伺いたいと理解してよろしいでしょうか。 ○中山委員 そういう形で、今日はもうちょっと客観的に、違う側面から見るとどんなふうに見 えるのかということの御意見をいただいた方がいいと思います。本当に白熱した議論を展開して まいりましたが、私としては堂々めぐりをしていて、ぐるぐる回っていて、出口が見えないと思 っていますので、是非御意見をいだたければと思います。 ○小山座長 それでは、助産師ワーキンググループからの報告が終わった後に皆様の御意見を伺 いたいと思います。  引き続きまして、助産師教育ワーキンググループの報告を、ワーキンググループの座長の菱沼 委員よりお願いします。 ○菱沼委員 よろしくお願いいたします。  助産師教育ワーキンググループは、4回開催をいたしまして、教育の立場の方、臨床現場の方 からヒアリングを行っております。  資料6の保健師の下でございますが、助産師教育ワーキンググループで話題になったことが出 ております。  1つは、これまで実習を行ってきた規模の大きな病院では、産科施設の集約化によりハイリス クの妊産婦が増えていて、正常産を10例確保するための実習施設の確保は困難だという現状。そ れから、実習施設が分散化して、教員が直接指導することが困難になり、臨床現場の指導者が多 くを担っている。助産師を希望する学生は比較的多いけれども、施設の確保、教員数の確保によ り養成を増やすことができない現状であるということ。もう一つは、妊娠期の実習を行いたいと 考えても、指導できる助産師が現状少ないという状況にあるということが皆さんの意見として出 てまいりました。  私どもは求められる役割と機能、必要な能力ということで検討いたしておりまして、修了時の 到達目標につきまして細かな検討をするまでは至っておりません。これから求められる役割と機 能、それに伴って必要な能力は何かという議論に多くの時間を費やしてまいりました。  1つは、今、皆様御承知のように産科医が不足し、また小さな赤ちゃんがたくさん生まれてく るという現状もあり、より自立した助産師、特に妊娠期の妊婦健診のことがきちんとできる助産 師がもっと必要ではないか。医師が見なければならないことと助産師ができるところの役割分担 の体制をとるべきではないかということ、妊娠期の教育は余り充実してやってきてとは現状では 言えないということです。  皆様方のお手元の資料8でございます。現状から見て、今後求められるところはどこかという 話合いをした中で、全く新たに付け加えることはない。既に助産師教育の中でやってきている。 ただ、今後もっと明確にここを強化すべきというところはあるだろうということで、「今後より強 化されるべきとされた助産師の役割と機能」が整理されました。これ以外のものが必要ないと言 っているわけではなく、今後ここのところはもっと強化すべきだろうと言われたところです。  それは正常妊婦の健診の部分。超音波装置を用いた健診が現実にされているわけですけれども、 そういったことに関する教育。ハイリスク妊婦のケア。ハイリスクというのは高齢出産等の意味 でのハイリスクと予想される方たちの率が増えていますので、正常と言っているだけではだめで あろうという意味です。バースプランへの支援というのをもっと表に出してきっちり言った方が いいのではないかというところです。  分娩期に関しましては、医師がいない場での会陰切開・縫合。医師がいない場での弛緩出血等 の限定された薬剤投与。医師がいない場での新生児蘇生です。  産褥期に関しましては、1か月の母子健診。乳房ケアがあげられました。  4、5、6のところに関しましては、育児ノイローゼや虐待の対応。STI予防の対応という ところが少し出るのではないかということです。  もう一つ、妊産褥期における緊急時の母子への対応。妊娠期から育児期までの継続したケアを 強調するということで、他職種、他施設との連携について、既にこれもやっているのですけれど も、明確にしておく必要があるということが出ております。  下の表でございますけれども、実践能力といたしまして、今まで大項目、中項目を挙げていた 左に実践能力としてI、II、III、IVと4項目挙げてあります。  「I.倫理的感応力」というところは、看護師の能力で培われた上に何を強化するか、何を積 み上げないと助産師と言えないのかとを考えておりますので、助産師の場合、1つの特徴という のは、お母さんと赤ちゃんの2つの命を同時に見るというところ違うのではないか。これは看護 教育より強化すべき、新しく積み上げるべき内容ではないかということです。まだ成文化されて おりませんけれども、論議の中で出ておりますのは、2つの命を同時に尊重するということと、 2つの命を尊重するために生じるジレンマが非常に大きいところなので、それにどう対処するか ということが倫理的感応力に含まれるということです。  ピンクで印がついておりますところは、強化すべきと考えた部分で、これは既に書いてあるこ との上に赤丸をしております。先ほど申し上げました妊娠期の診断の会陰切開と新生児の蘇生、 出血の部分です。それから、1か月時の母子健診、母乳育児に対すること、母子愛着形成の障害、 児の虐待ハイリスク要因の早期発見というところが強化すべき内容と言われたところです。裏に いきまして、生後1か月までの新生児の診断とケア、保健・医療・福祉関係者との連携というと ころがもっと強化すべきと出ております。  「1.妊娠期の診断とケア」「2.分べん期の診断とケア」「3.産じょく期の診断とケア」「4. 出産・育児期の家族ケア」「5.地域母子保健におけるケア」「6.助産業務管理」が「II.マタ ニティケア能力」の中に含まれるべき項目ではないかということで整理してあります。  助産師の場合、マタニティケアの能力とウィメンズヘルスケア能力が挙げてられており、ウィ メンズヘルスケアの能力についても非常にたくさんの項目が出ておりまして、こちらについて今 後どう整理するかが1つ課題になっております。  性感染症の疾患のアセスメントというところは、先ほど出ましたような強化すべきところで印 をつけてあります。  それから、もう一つ実践能力に新たにつけ加えて提案しているのは、4番目の専門的自律能力 です。これも既に含まれていることですが、より強化すべきと言われたものです。これは助産所 を開業することに関して、助産所を開業するということはその地域における妊産褥婦さん、育児 期のお母さんたちにとっての確固たる場所、ケアを提供される場所だという認識がないと、ただ、 開きましたというわけにはいかないという責任がありますので、そういったところはもう少し強 化すべき内容ではないかということで、専門的自律能力という言葉で提案しているところでござ います。  到達目標はもともとレベルがありました。指導者がいたらできるとか、そういうとこに関しま しては、まだ検討しておりませんので、そこまでは出ていないところです。  助産師のワーキンググループは以上でございます。 ○小山座長 特にここで皆さんの御意見をお伺いしたいということはありますでしょうか。 ○菱沼委員 強化するべきところを皆様に賛同いただけるかということです。それはピンクのと ころでございます。  それから、黄色で色づけをしてありますところは追加をしておりまして、育児と母子保健と業 務管理というのは、マタニティケア能力と別個の項目にあったものをここに持ってきているんで す。ですので、内容的には変わりがありません。変わっていますのは倫理的感応力と専門的自律 能力で、先ほど説明しました中身を想定してここに挙げているということに関して、何か御意見 があるかということです。 ○小山座長 ありがとうございました。  それでは、ただいまの保健師教育、助産師教育のワーキンググループの報告に対しまして、皆 様の御意見をお伺いしたいと思います。  まずは御質問を御受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。両方につきましての御質問が あれば、お願いします。  太田委員、どうぞ。 ○太田委員 保健師に関してですけれども、私の施設ではナースの仕事をしている人で保健師の 資格を持っている人は結構いるんです。せっかく保健師を取っていても、保健師として職能を発 揮していないというかフィールドがないんです。社会はどれぐらいの保健師を必要としているか ということです。看護師は足りないと言われます。保健師は足りているんですね。それでも足り ないんですか。その辺のことをお聞きしたいです。 ○小山座長 それでは、看護課、いかがでしょうか。 ○野村看護課長 保健師の需要の部分の御質問かと思います。国としては看護職員全体の需給見 通しというものを立てておりまして、需要、供給についてそれぞれ都道府県に調査をしておりま す。その中では、保助看、准看護師もそうですが、ばらばらの職種ごとの需要というのはとって おりません。ベースのデータとしてはありますけれども、まとめた数値を公表しているところで ございます。  保健師につきましては、業務独占という部分ではなく名称独占という業務の性格や、先生のと ころものようですけれども、病院の中などでは保健師、看護師両方の免許を持って働いている方 もおられ、どちらかの免許を公表していますけれども、こちらで働いているという出し方をして おられます。独占という部分では看護師の部分だけになりますので、数値的に挙がってくる需要 の数値というのは、こういった部分は特に数字の限定というのはありませんので、あえてわざわ ざ保助看を分けて保健師の需要をとるような仕掛けにしていないということでございます。 ○太田委員 そうしますと、せっかく保健師になるわけですから、保健師でなければできない仕 事、保健師がした方がいい仕事、保健師の方がいい仕事があると思うんです。今ここに役割と機 能という非常に立派なものが挙がっていますけれども、機能を拡大して解釈していかないと保健 師の力の出せるフィールドというのは広がらないと思います。ですから、もしここに限定したよ うな内容で保健師の役割を考えるのであれば、本当に働くフィールドは小さいものになるだろう と思います。  地域という切り口がキーワードになると思うんですけれども、これから地域の看護というのは 物すごくニーズが上がるわけです。そこで保健師が活躍できるようなことを見通しておかないと、 せっかくお金をかけて保健師を育てて、ナースとしてしか働いていないという現状を反省してい かなければいけないのではないかと思います。 ○小山座長 ありがとうございました。  もう既に議論に入っていると思いますので、先ほど中山委員から保健師ワーキンググループの 方ではI案とII案が出て、I案は今後保健師がさまざまな場で働くであろうことを見越して考え ているということでありましたが、皆様方からこれからの保健師にはどのような役割が求められ るであろうか、求めたいかということについて御意見を是非お伺いしたいと思います。ワーキン ググループメンバーでは多分十分な意見交換があったかと思いますので、この場ではワーキング グループ以外の方の御意見をできるだけ広くお伺いできればと思います。お願いいたします。  阿真委員、どうぞ。 ○阿真委員 保健師さんというのは私たち健康な人にとって一番身近な行政であり、医療との接 点ではないか。つまり、私にとって一番身近な存在です。看護師さんは病院へ行ってお世話にな るもので、助産師さんもお産のことです。しかし、全く病気と関わっていない私たちもお世話に なるところが保健センターなり保健所にいらっしゃる保健師さんで、病気や医療と接点となるの が保健師さんであり、行政や国との橋渡し役だと思っています。ここにもたくさん地域という言 葉が出てきているので御承知のことだと思うんですけれども、そのように感じています。  例えばHibワクチンが打てるようになりましたとか、新型インフルエンザのワクチンのこと とか、私たち一般の母親、お父さんもいますけれども、みんな保健センターなりに電話をかけて います。ほかの検討会でも発言したと思うんですけれども、すごく残念な返事、回答がありまし た。Hibワクチンとは何ですかと保健センターに電話して言われたり、新型インフルエンザワ クチンのこともそんなことは知らないという回答があったりとか、厚生労働省に電話をかけて聞 く人は余りいなくて、私たちにとっては一番身近な存在であるので、そこにかけて的確な答えが いただけなかった。保健センターの中がすごく大変だというのも一応私たちは知っていて、担当 がすぐ変わって、出た方がついこの間まで老人担当だったから私は知らないという回答をもらっ たという会のメンバーがいたりですとか、そのような状況もよくわかってはいるんですけれども、 区役所もある意味ではそうですが、一番身近だと感じているところがちょっと残念な回答だと思 います。  国の姿勢とか、例えば消防法が改正されるとかそういうことも、どういう背景で、私たち家族、 私たち一般市民にどんな影響があるのかということをよく保健師さんたちが理解して、私たちに かみ砕いて教えてくださることができれば、私たちはどうしてそういうことが変わるのかとか、 医療は元気な私たちにとって全く接点がないので、子どもの予防接種に行ったりとかそういうと きにちょっと保健師さんが教えくださったりとか、そういうことがあるといいと思います。  私がかかっているところはすごくとてもいいところで、先ほど言ったような例は全くなくて、 私の会のメンバーから聞いた話なんですけれども、私たちにかみ砕いて教えいただける能力、国 とかそういったものを把握した上で私たちに簡単に教えていただける能力、そんなものがあった ら、私たちはもっと身近に医療を感じたり、どんなことが国で決められて、それがどんな背景で どんなふうに影響を及ぼしていくのかということがわかるのではないかと感じています。  答えになっていないのかもしれないんですけれども、今、自分のしている活動で感じている保 健師さんに対しての思いです。  以上です。 ○小山座長 ありがとうございました。 ○山路委員 外から見ていての印象なんですけれども、結論から申し上げますと、私はII案に是 非していただきたいという思いであります。保健師さんに対するイメージは今の方も語られまし たけれども、保健師にお世話になっている方以外は余り身近な存在として感じていなかったんで すが、飛躍的に保健師が身近な存在になった1つのきっかけはやはり2006年の介護保険改正によ る地域包括支援センターの設置だと思います。  地域包括支援センターは勿論主任ケアマネ、社会福祉士を置かなければいけないということな んですが、保健師の役割は非常に大きいと思います。地域包括支援センターの役割は介護予防の ケアプランをつくるということがメインになっていますが、私は東京の多摩地区の自治体の地域 包括の状況に多少関わっていまして、相談係になっているんです。医療、保健の知識がある保健 師の役割は極めて大きい。  最近の特徴として、残念なことに医療の相談窓口が自治体以外のどこにもないんです。私はし ょっちゅう言っているんだけれども、それはなかなかできない。地域包括支援センターは何でも そういう形でできるかのような役割を与えられて、医療と介護の連携とか高齢者虐待の問題とか、 その他さまざまな医療と介護に関する相談が激増しているんです。その中で保健師の果たす役割 は非常に大きいという意味では、やはり行政の中で、特に地域包括の保健師の役割はますますこ れから大きくなっていくと思います。  ここで書かれていた中身で、それとの関連でいうと、主に6が当てはまると思うんですが、6 で見て少し足りないと思うのは、今、申し上げたように、やはり個別的な医療と介護に関する相 談とかそういう事例がきて、保健師が関わった場合、家族援助とか対人援助的なことができない と事がなかなか進まないということがあります。ここで書かれている組織的に動くということよ りも、むしろ対人援助で個人的に動くような保健師の役割も求められているのではないかと地域 包括支援センターの現状を見て感じているところであります。したがって、是非II案で、今、申 し上げたような対人援助的、家族援助的な役割も入れてやっていただければということで申し上 げたいと思います。  以上です。 ○小山座長 ほかにいかがでしょうか。舘委員、どうぞ。 ○舘委員 この分野としては全く素人です。資料7で、保健師に求められる役割と機能というこ とでI案、II案があるんですが、正直言ってちょっと見たときに何が役割と機能として提示され ているかわからない。  例えばI案の一番上でいうと「A.地域全体及び地域の人々の健康の保持・増進をはかり、健 康状態を確認し行動変容をはかることができるよう支援する」とありますが、人々ができるとい うことなんだと思います。あるいは「D.健康課題の解決をはかる過程の中で」という前提があ りまして「社会構造を視野に入れ既存の社会資源を評価し開発や仕組みづくりにつなげる」とあ りますが、何の開発や仕組みづくりかわからない。当事者はわかるんだと思うんですけれどもね。  II案にしても「1.保健師は、地域の全ての人々の健康水準や向上と保護のために」というの は、何の目的かということです。「公衆衛生看護学と社会的公正に基づいて」というのは前提で 「人々や環境に、人々ともに、働きかける高度専門職業人」とあります。よく読むとわかるよう な気もするんですけれども、端的にいうとII案の1は保健師は高度専門職業人として行動する。 その内容を説明されていると思います。  I案でも健康について、人々が行動変容まで起こすように支援するということだと思うんです けれども、多分、役割、機能を示すときは体言止めで見出しをつけていただくと、一般の人間に はよくわかると思います。内容についてはよく読まなければ、体言では表し切れないんですけれ ども、やはり示していただくと、今度A、B、C、D、Eとかこの違いも見通せる気がするんで す。そういう気がします。  それから、今後の目標のところでも、1のところで地域全体云々とありますが、これはある意 味では前提ですので、健康課題を明らかにするという見出しは短くしていただいた方が項目ごと の違いが見やすいと思います。一般論で申し訳ないんですけれども、そんな印象で読みました。 ○小山座長 わかりにくいということですね。だから、わかりやすくするためにもう少し見出し 等を整理してほしいという御意見かと思います。ありがとうございます。  草間委員が先に手を挙げていらっしゃいましたので、お願いします。 ○草間委員 I案にするかII案ということについて申します。 ○小山座長 I案にするか、II案にするかではなくて、社会では何を求められているかというこ とでお願いします。 ○草間委員 まず保健師に求められる役割と機能といったときに、例えばワーキンググループの 中の問題点として、実習期間が短かったり、見学実習云々かんぬんというお話があったようです けれども、これは昨年7月の保助看法の改正で保健師の教育期間というのは6か月以上から1年 以上に変わったわけです。だから、そこをちゃんと見据えて教育内容というか役割と機能、どう いう保健師像にするかということを是非お考えいただかなければいけないのではないかと思いま す。  そういう意味では、保健師というのはまさに看護師に対する上乗せ教育であるということと、 6か月教育が1年以上の教育になったということを考えたときに、助産師はすごくわかりやすく まとめていただいていると思います。そういう意味では、何を強化するか。I案は確かに行動変 容とはありますけれども、看護師に何を上乗せしたのかということがはっきりしないです。だか ら、先ほど先生が言われたように、II案の中のキーワードをきっちり整理して、教育期間を1年 にしたために保健師の特徴的なことは何かということがわかるような形できっちり書いていただ くということがすごく大事ではないかと思います。II案の中にはかなり上乗せ教育であるという ことを意識した書かれ方をしているのではないかと思いますので、もう少し社会に対してわかり やすいような形でII案をベースにして書いていただくと、看護師像、保助看法を変えて1年にし たときの保健師像というものが浮かび上がってくるのではないかと思います。I案だと上乗せ教 育であるということの特徴が出ていないような気がするんです。  II案をベースに、もう少し6か月から1年にしたことによって、これだけのことを強化してい かなければいけないというところで、先ほど先生が言われたように、これから地域というのはす ごく大事になってくるわけですし、医療費の削減のためにも、健康増進というのはすごく大事に なってくるので、是非その辺の保健師の役割というものを強調して、II案をベースに考えていた だくといいのではないかと思いました。 ○小山座長 1年になったということはあるんですが、保健師の上乗せ教育ということは、今、 法律に載っていましたでしょうか。 ○草間委員 平成19年保助看法の改正で保健師、助産師の免許というのは、看護師に合格しない と免許が与えられないわけです。そういう意味では、少なくともより専門性を高めることだと私 は受け取っています。 ○小山座長 まだ統合とか大学教育も残っていると思ったものですから。 ○草間委員 だから、統合というのは1つの運用方法でしかないわけです。法律的には看護師の 免許を持っていないと保健師、助産師に合格しても免許を与えられないわけですので、その辺は 看護師に更に専門性を強化したと私は受け止めています。 ○小山座長 保健師は看護師の免許がなければできないということはあると思うんですが、上乗 せ教育ということで理解していいかというのはいかがでしょうか。  岸本委員、お願いします。 ○岸本委員 役割と機能あるいは役割責任というところで、どちらかというと、保健師さんは組 織的に行政ラインで動かれているという印象を周辺の者も強く持っています。国民の健康支援を あらゆる視点から見ていくといったときの像が、他の先生方がおっしゃいましたように、もう一 つ見えません。  例えば第II案であれば、7項目に関して切り口の軸が一貫しているのかどうかというところを 少し整理されたら、もう少しわかりやすいのではないかと思います。行動変容が出てきたり、権 利擁護が出てきたり、予防が出てきて、あるいは行政の施策が出てきたり、そこの並びがわかり にくいです。後になりましたが、基礎教育の上乗せというよりも基礎教育でこれだけの能力を身 につけたことをベースにして、保健師の役割機能、役割責任をどのように構築していくのかとい う具体のレベルで、ここの7項目が簡潔・明確になればいいという気がします。  例えば「アセスメントする」をいろいろな角度から出されているんですが、アセスメントをす るがあって、それから、健康課題を見出す。つまり、問題解決過程の一部をここに出されている ように思うんですが、そういう形で整理ができるのかどうだろうかという気がしました。 ○小山座長 ありがとうございます。御意見として承ります。 ○山田委員 私の勤務しておりますところに、在宅分野ですが、地域の専門看護師がおります。 その者は地域の個に対するケアに必要資源やネットワークをつくり上げていっています。当然大 学の修士課程を終えた者ですが、I案を見たときに、そういう者たちと、国家資格を持った保健 師さんたちの機能とは何だろうと実は思ったりします。  私はI案、II案を見ましたときに、正直、II案の方は文言が難しく理解できない部分もありま す。切り口もいろいろな角度から7項目の中で入っているという部分と、あとよくわからなかっ たのは、高度専門職という部分の高度というのは何をもって高度と言うのか。これは単なる疑問 です。実質的に地域の人々を対象にしてケアをする、個に対する部分というのは非常に多くの看 護師たちが関わっているので、これからのことを見据えたときに、健康増進ですとか介護予防、 健康管理、健康問題に対して、集団に関わってアプローチしていくことで、それが達成されると いうように、対象と方向性をはっきりさせていただいた方がいいのではないかと思います。  1〜7まで必要となるようなキーワードはかなり入っているように思うんですが、ほかの委員 からお話があったように、切り口が違うので、どれをこれだと言えません。「多角的に広い視野で」 という言葉がI案の方に入っていましたが、当然、常に広い地域というのを見ながら集団を対象 にして地域に必要なケアチームですとか組織をつくり上げたり、行政に働きかけたりしていただ くことが必要なのではないかと思っております。 ○小山座長 太田委員、どうぞ。 ○太田委員 余り言うと嫌われそうですけれども、今の議論を聞いていると、ソーシャルワーカ ーと何が違うかという話になるんです。20年前にソーシャルワーカーが国家資格になりました。 例えばアルコールアディクションの行動変容というのはソーシャルワーカーでもやりますし、虐 待の問題にもソーシャルワーカーは関わるわけです。そうすると、保健師だからできるのは何か ということを問われたときに、ナースのライセンスがあるということが非常に大きな強みで、し かし、ナースとしての実践があるかないかということが一番大きくて、ライセンスさえあれば保 健師の仕事ができるというのであれば、ソーシャルワーカーとどう住み分けていくのかというこ とも考えなければいけない時代がきていると世間的に見て思います。そういった意味で、ナース のライセンスがあるんだから、それをもっと生かして、ソーシャルワーカーにはできない仕事を しなければいけないと思います。 ○小山座長 「ナースのライセンスがあることを活かして」という内容として含めてほしいとい うことですね。 ○太田委員 ナースの実践です。 ○小山座長 ナースの実践が保健師に必要だということですか。 ○太田委員 ライセンスさえあればいいのではなくて、実践がなくてもいいのか、必要なのかと いう議論をしておかないといけないと思います。 ○小山座長 今の御意見に対して、いかがでございましょうか。 ○山路委員 今の意見についてよけいなことを一言つけ加えますと、ソーシャルワーカーという のは実際にそんなに専門性があるとは思えないんです。私の大学は実はソーシャルワーカーを養 成しているんですが、それは養成校に多大な問題があると思っています。そんなことを言うと身 もふたもない話なんだけれども、むしろソーシャルワーカー的にはそれを持っている保健師には 是非育ってもらいたいと思っています。 ○太田委員 それはどういう意見かわかりませんけれども、保健師教育にソーシャルワークの視 点を入れなければいかぬということだと思います。 ○小山座長 保健師もソーシャルワーカー的な要素は勉強しなくてはいけないんですが、今、太 田委員から出ましたのは、ただ看護師の免許ではなく、実践が必要ではないかという非常に大き なことだと思います。 ○太田委員 必要であるかないかを議論した上でということです。 ○小山座長 あるか、ないかの議論をここで行いますか。これは非常に大きい議論だと思います。  羽生田委員、お願いします。 ○羽生田委員 看護師を持っているというのは今のような話になると思うんですけれども、皆さ んの話を聞いていると、地域ということが非常に大きく出てくるんですが、私は個々の人たちが いて地域がある。だから、スタートラインは地域ではなくて個々の人たちがいて、例えばこの地 域では血圧が高い人が多いとか、そういったことがスタートになってくるのではないかと思いま す。地域からスタートするのではなくて、個々の人たちをどう見て地域全体として考えるかとい うスタートラインで、どちらが先になるのかわからないけれども、皆さんの話を聞いていると、 地域ということがまず前提にあってお話をしているような気がするんですが、私はどうも逆では ないかと思いながら聞いていました。切り口といいますか、スタートラインということです。 ○小山座長 ありがとうございます。  一番最初の阿真委員の御意見は、最も地域住民に身近な存在という個としての御意見でしたが、 その後、ポピュレーション、集団に変える方がという御意見があり、また今はやはり個がいての 地域なので個を大切にしてほしいという御意見も出ております。このことをまたワーキンググル ープでも十分に検討していただければと思います。  千葉委員、どうぞ。 ○千葉委員 ここで取り扱うことなのかどうかわからないんですが、今いろいろな意見が出てい る事については、保健師教育を看護の基礎教育に上積みした教育ととらえるのか、保健師教育が 基礎教育ととらえるかで、相当違うと思います。保健師教育と看護基礎教育の違いというのは、 集団の健康をアセスメントして、アプローチするということを上積み教育という意味でちゃんと 学べるところだと思っています。上積みの教育ということであれば、その部分が保健師教育とし て出てきてもいいと思います。  それから、最初の議論になってしまいますが、先に保健師教育の需要の話がありました。臨床 でも保健師教育を受けた人たち、つまり疾病予防や健康増進ということがわかったり、医療だけ でなく保健や行政なども理解した人が病院の中にもほしいということで、病院の管理者の多くは 4年制の教育、今でいう保健師教育を受けた人たちを、保健師免許はなくてもいいけれども、で きれば採用したいというニーズは結構多いと思っています。 ○小山座長 4年制の保健師教育を受けた人というのは、どういうことですか。 ○千葉委員 4年制の基礎教育を受けた人です。 ○小山座長 4年制の基礎教育を受けた人というのは、どういうことですか。 ○千葉委員 3年プラス1年でもいいし、4年制の大学という形で受けた人でもいい。今、臨床 は在日数も短いですし、地域ということがわからないで施設内の看護もできないという意味合い も非常に大きくなっています。免許と教育はちょっと違ってしまうのかもしれませんけれども、 医療現場の中にも保健師教育を受けた人のニーズはあると思います。  2つのことを言って済みません。保健師教育は看護基礎教育の上積み教育なのか、基礎教育と とらえるのかでカリキュラムは相当違うという感じがします。 ○小山座長 看護課長、お願いします。 ○野村看護課長 教育の考え方と資格の考え方は分けた方がいいと思いまして、まず保助看法で いう資格は保健師、助産師、看護師3つそれぞれの資格で、ジェネラリストという性格だという ことです。  教育について申し上げますと、考え方は昭和23年の保助看法時代と基本的には変わっていない 構成だと思っております。昭和23年にそれぞれの資格があったのを保助看法で1本のものにした 段階で、看護師の教育と重複している部分については、保健師も助産師も共通の部分としたとい うことがあると思います。看護師の教育として共通しない部分というのが保健師にも助産師にも ありましたので、そこの部分は最初は1年でしたが6か月間になり、また1年になりましたが、 そういう格好で上乗せというか追加というか、教育は必要だということでプラスになっていると いう性格のものです。  ですので、保健師の資格としての役割といいますと、看護師から継続してプラス1年の教育、 それをトータルとした人の資格だと考え方だと思っております。教育について看護師の部分のカ リキュラムと保健師の部分のカリキュラムというのは別表でも1表、3表と分けてありますので、 整理をしているわけですけれども、資格の考え方はそういう考え方で、教育はそういう関係性に あるということでございます。 ○小山座長 ありがとうございます。  まだまだ御意見をお伺いしたいところですが助産師も議論があるものですから、短くお願いし ます。どうぞ。 ○岡本委員 申し訳ございません。中山先生に十分に説明していただいたかと思うんですけれど も、少し補足説明させてもらいますと、ワーキンググループでII案の1は(2)から1、2、3、 4、5、6となっていまして、1は外出しにして、保健師というのはこういう前提の職業人であ ると出されていました。そこは御理解いただきたいと思います。  ワーキンググループの中では皆さんに御意見いただいたように、一つひとつの項目に小さなタ イトルをつけて出していた案もありました。例えば「公衆衛生看護診断は地域アセスメント」で すとか、「個と集団、特定と全体を連動したアプローチ、ポピュレーションとハイリスク双方のア プローチ」、「健康危機管理」、「組織的アプローチ」、「事業・健康プログラムという介入形態での 活動」、「健康課題に関する公共施策への提言、策定、実施評価、PDCAサイクルでの活動展開」 などを特出しした案が挙がっていましたので、また今後ワーキンググループの方でまとめていく ことは可能かと思います。  全体討議では、「社会の問題を公衆衛生の視点で分析、診断して、多角的、経年的、系統的にP DCAサイクルを展開し、統合的に活動する役割、機能」が分割したものではなく、統合的に担 っていくという役割、機能であることが非常に保健師としては特徴的で重要ということが最終回 でかなり議論されましたので、申し添えたいと思います。  それから、臨時実習に関する現状と課題のところも申したいと思います。 ○小山座長 すみません。時間の制限がありますので、助産師の方に進みたいと思います。今日 は保健師に相当な時間をとりましたので、恐れ入りますが、またワーキンググループで御検討い ただけますでしょうか。  それと、今、改めて御説明をいただきましたけれども、ほかの委員が見たときにわかりにくい ということでしたので、これをもう少し整理して、次回みんなにわかりやすい方がいいと思いま すので、よろしいでしょうか。 ○岡本委員 はい。 ○小山座長 時間が限られているものですから、申し訳ございません。  それでは、恐れ入りますが、助産師教育ワーキンググループの資料について御意見をいただけ ればと思います。  お願いします。 ○和田委員 2点なんですけれども、1点目は最近高齢出産とか出生前診断で障害を持つお子さ んが増えてきていると思うんですが、障害児を持った母に対してどう受け入れるかとか、心理的 なケアみたいなものがあったらいいと思いました。死産ということに関しては、死産に直面した 妊産婦とその家族へのケアという一文があったんですけれども、障害児を持った両親に対するケ アというのは、出生児という言葉で多分まとめてしまっていらっしゃるんだと思うんですが、別 途あってもいいのではないかと感じました。  もう一点は、今の看護師と保健師と助産師の3つを比べてみると、生涯教育という点に関して 助産師の表の中に継続的に学ぶという一文があってもいいと思います。きっとどこかに含まれて しまっていると思うんですけれども、別途共通するという意味ではあってもいいと思いました。  以上です。 ○小山座長 ありがとうございます。  ほかにいかがでしょうか。草間委員、どうぞ。 ○草間委員 助産師教育が6か月から1年に変更になったということを十分念頭に入れていただ いて、大変よくまとめていただいているのではないかと思います。だから、今日御提案いただい たようなことが助産師教育の中でやられるといいと思いました。卒業時の到達目標をどうするか というのはまた別だろうと思いますけれども、こういう形で特に強化されるべき事項というもの をこういう形で出していただいていると、教育期間が法令上倍になったということをしっかり反 映していただいているように思いました。 ○小山座長 ありがとうございます。更に強調するところが加わったことについての御意見かと 思います。ほかにいかがでしょうか。  なければ座長から1つ、「倫理的感応力」という表現にされているんですが、看護の場合は「倫 理的な実践」という表現にしています。「倫理的感応力」という表現について、菱沼委員から説明 いただけますでしょうか。 ○菱沼委員 説明を申し上げるほどの深い論議の上に決まった用語ではございませんので、倫理 的なことにセンシティブにならないといけないところだという程度の意味でございます。これで そのまま決定ではないんですが、よろしいでしょうか。 ○小山座長 わかりました。ありがとうございます。  岸本委員、どうぞ。 ○岸本委員 簡単なことですが、2ページの「IV.専門的自律能力」のところに「(開業に伴う責 任)」と挙がっていますが、これは助産師の役割、機能に関して専門的自律能力を高めていくとい うことを前提にした上での補足的な意味合いでございましょうか。 ○小山座長 菱沼委員、お願いします。 ○菱沼委員 このことにつきましても、助産教育の方では既にやっているというものなんですが、 自律的な能力をこういうふうに出した方がいいのではないかという意見になりましたのは、開業 するということが赤ちゃんを取り上げることがどうしてもメインになってくるんですけれども、 それだけではなくて、そこの地域の助産所として、地域の母子、お父さんも含めた育児、そうい うものの責任の一端を担う自律といいますか、そういう自覚を持つということが非常に大切では ないか。ですので、そこをもう少し強化する必要があるのではないかという論議でございました。 ○小山座長 よろしいでしょうか。 ○岸本委員 そこの上の3項目にそれぞれ専門的な助産師の能力が挙がっておりますので、それ らの能力を年数かけて更に高めていくという専門的自律能力かと思いました。失礼いたしました。 ○菱沼委員 先ほど御指摘がありました生涯教育という意味での自律という意味でしょうか。あ りがとうございます。 ○小山座長 ありがとうございました。  それでは、まだ御意見がおありかと思うのですが、そろそろ時間がまいりましたので、本日の 議論はこれで終了したいと思います。実習のことにつきましては、次回の検討事項とさせていた だきたいと思います。  事務局から連絡がありましたら、お願いします。 ○島田課長補佐 ただいま座長からお話がございましたけれども、効果的な臨地実習の在り方に つきましては、次回に御議論いただきたいと思っております。  次回ですけれども、5月17日14時からの開催予定でございます。場所などの正式な御案内は 別途お送りさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  以上です。 ○小山座長 それでは、これで第4回「看護教育の内容と方法に関する検討会」を閉会いたしま す。お忙しいところ御出席いただきまして、本当にありがとうございました。 照会先:厚生労働省医政局看護課     島田(陽)(4167)、島田(千)(2595)