10/02/01 第2回救急救命士の業務のあり方等に関する検討会議事録 第2回救急救命士の業務のあり方等に関する検討会                     日時 平成22年2月1日(月)                        15:00〜                     場所 厚生労働省省議室9階 ○中野専門官 定刻になりましたので、ただ今より、「第2回救急救命士の業務のあり方等に関する検 討会」を開催します。本日はご多忙のところご参集いただきましてありがとうございます。  本日の司会は、医政局指導課 救急・周産期医療等対策室 救急医療専門官を拝命しております中野 でございます。よろしくお願いします。  座長の島崎先生に議事進行をお願いする前に、第1回検討会からだいぶ時間が空いておりますので、 委員の先生方を再度ご紹介させていただきたいと思います。  救急振興財団救急救命九州研修所教授の郡山一明委員です。札幌市消防局救急課長の佐々木靖委員 です。杏林大学医学部救急医学教授の島崎修次座長です。星ヶ丘厚生年金病院病院長の杉本壽委員で す。日本看護協会常任理事の永池京子委員です。東京消防庁救急部長の野口英一委員です。藤田保健 衛生大学医学部救急科教授の野口宏委員です。読売新聞東京本社編集委員の前野一雄委員です。  なお、東京大学法学部教授の樋口範雄委員は、用務により少し遅れるとのご連絡をいただいていま す。  また、日本医師会常任理事の石井正三委員と福島県立医科大学地域・家庭医療部教授の葛西龍樹委 員は、用務のためご欠席の連絡を頂戴しています。  関係省庁からは、消防庁救急企画室の溝口救急専門官、海上保安庁警備救難部救難課の森本専門官 にご出席をいただいています。厚生労働省からは、医政局長の阿曽沼は、本日、用務により欠席です が、指導課長の新村、救急・周産期医療等対策室長の中山、指導課長補佐の福原、指導課長補佐の高 宮、私、救急医療専門官の中野が出席しています。よろしくお願いします。  それでは島崎座長に以後の議事進行をお願いしたいと思います。島崎先生、よろしくお願いします。 ○島崎座長 ただいまから始めたいと思います。事務局から資料の確認をお願いします。 ○中野専門官 お手元の資料の確認をお願いします。席次表、議事次第、開催要綱、資料1が「第1回 検討会での方向性について」、資料2が厚生労働科学研究班の報告書(案)、参考資料1が「メディカ ルコントロール協議会における事後検証の状況」、参考資料2が「病院前救護体制の一層の充実につい て」という指導課長通知、参考資料3が「消防法の一部を改正する法律について(概要)」、参考資料 4が「病院実習の修了状況等の調査結果について」、参考資料5が救急救命処置の範囲等の関係条文の 抜粋です。あと、机上配付のみですが、第1回検討会の資料と議事録を配付しています。  本日は議事次第には記載していませんが、追加資料1、2として、東京消防庁と札幌市消防局から資 料の提出があります。これは第1回検討会の議論の中で、1年間にどれくらいの症例数があるか、総論 的な議論をするためのデータが必要ではないかというご指摘がありましたので、野口委員、佐々木委 員よりご提出いただきました。以上です。 ○島崎座長 では、議事に入りたいと思います。資料の説明を事務局からお願いします。 ○中野専門官 資料の説明をさせていただきます。資料1をご覧ください。「第1回検討会での方向性 について」ということで、平成21年3月25日に第1回検討会を開催しましたが、その中で3行為につ いて検討することになりました。第1が「血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与」、第2 に「重症喘息患者に対する吸入β刺激薬の使用」、第3に「心肺機能停止前の静脈路確保と輸液の実 施」です。この3行為について検討することになり、厚生労働科学研究の野口先生のグループで検討し ていただくことになりました。  2頁で、研究班で検討すべき視点として、医学的有効性があるか、安全に行うことができるか、行為 を実施するに当たってどのような条件が必要であるか、教育体制や研修体制、メディカルコントロー ル体制といった諸々の条件について検討していただきました。そのほか、より適切な救急医療機関へ の搬送が可能となるかどうかについて、検討していただきました。  資料2が、その研究班の報告書(案)です。「救急救命士による救急救命処置に関する研究」で、こ れは現在は報告書案ですが、野口宏先生がまとめておられます。これは後ほど説明していただく予定 です。  参考資料1ですが、「メディカルコントロール協議会における事後検証の状況」です。これはMC体 制の事後検証の状況ですが、2頁をご覧ください。各都道府県に都道府県のメディカルコントロール協 議会を設置し、各地域に地域メディカルコントロール協議会を設置しています。都道府県のメディカ ルコントロール協議会が地域のMC協議会を兼ねている場合もありますが、各都道府県でMC協議会が開 催されている状況で、平均2.9回の開催状況です。  3頁以降は、各都道府県における都道府県のMCと地域MCの事後検証の状況を載せています。4頁、5 頁は各々例示ですが、各都道府県の事後検証症例についていろいろ書いています。  参考資料2は指導課長通知で、「病院前救護体制の一層の充実について」という通知です。これは2 年間で128時間以上の救急救命士の再教育が必要であるということを、従前、通知していましたが、平 成20年12月26日に、2年間で128時間以上の病院実習のうち、メディカルコントロール体制の活用を 念頭にという前提ですが、2年間で48時間以上の病院実習が最低限必要であり、残りの80時間相当は 日常的な教育の中で、そういった再教育が対応可能であることを示した通知です。  参考資料3ですが、「消防法の一部を改正する法律について(概要)」です。これは平成21年5月 1日に公布され、平成21年10月30日に施行した法律ですが、傷病者の搬送及び受入れを円滑に行う ために、都道府県において、医療機関や消防機関等の関係者が参画する協議会を設置し、各地域の実 情に合わせて地域の搬送・受入れに関する実施基準を作ろうという法律です。現在、各都道府県にお いて協議会の開催と、それに向けて実施基準の策定について動いているところです。  参考資料4ですが、「病院実習の修了状況等の調査結果について」です。これは総務省消防庁と医政 局指導課が連名で毎年1回、救急救命士の気管挿管と薬剤投与の実習について、どれぐらいの方が認定 されているかを調査しているものです。  2頁をご覧ください。現在、消防機関において救急救命士の資格を持っている方が2万3,386人おら れます。気管挿管及び薬剤投与は追加講習を受け、その後に病院実習を修了し、その後にMC協議会に よって認定されているということです。現在、挿管認定救命士が6,821名、薬剤認定救命士が8,677名、 挿管と薬剤の両方とも認定を受けている救命士が4,483名となっています。2頁と3頁で若干数値が違 います。これは病院実習を受けて修了し、MC協議会により認定がなされるのですが、その間に認定待 ちという方もいますので、2頁と3頁で若干数値の差があります。  6頁をご覧ください。現在、救急救命士の気管挿管・薬剤投与の実習について、病院実習を受け入れ ている協力施設は、平成21年4月1日時点で、気管挿管については735施設、薬剤投与については560 施設あります。  病院実習等についての問題点ですが、病院実習の受入医療機関が少ないとか、症例数が気管挿管で 30症例ということがあり、なかなか症例数が集まらなくて病院実習の期間が長期化したり、それに伴 って人員の確保が困難であるといった問題点も挙げられています。  参考資料5ですが、これは救急救命処置の範囲について、救命士ができる処置行為を規定しているも のです。その関係条文についての抜粋です。2頁、3頁で救急救命士が行える処置の範囲について記載 しています。(8)は平成21年3月にエピネフリンの投与が解禁され、それが新たに記載されています。  追加資料1、2は、東京消防庁及び札幌市消防局のデータです。これは後ほどご説明していただきた いと思います。以上です。 ○島崎座長 ありがとうございました。いまの説明について、ご確認、ご質問があればお願いします。 1年近く経っているのですが、よろしいでしょうか。もしなければ、この後の研究班の報告を野口先生 に発表していただき、その後、ご質問等があればお聞きしてもよろしいかと思います。  では野口先生に、研究班の「報告書(案)」について説明をしていただきたいと思います。野口先 生、よろしいですか。 ○野口(宏)構成員 野口でございます。いまご説明いただきましたけれども、平成21年度の厚生労 働科学研究補助金で、主任研究者が山本保博名誉教授ですけれども、組織の中で「救急救命士による 救急救命処置に関する研究」です。私は分担研究者ということで、資料2をご参照いただきながら、ご 説明させていただきます。  50頁に研究協力者の一覧が載っています。この検討会の委員のお一人でもある郡山先生は、山本研 究班の別の研究班で研究分担者をしておられますが、我々の処置拡大に関する研究にも加わっていた だき、作業を進めさせていただきました。国士館大学スポーツ科学教授の田中秀治先生にも研究協力 者に加わっていただき、主に教育面のほうを担当していただきました。日本医科大学の田邉晴山先生 にも加わっていただきました。第1回のときは私は海外出張中でしたので、愛知医科大学救命救急セン ター教授の中川隆先生に、私の代わりにここで報告をしていただきました。  この5人の方と、今回、我々に課された3つのテーマがありましたので、第1回の検討会のときにご 指導いただきましたが、喘息の専門の方として東京都保健医療公社荏原病院小児科部長の松井猛彦先 生、それから糖尿病の専門家、これはいずれも学会からのご推薦もいただいたと聞いていますが、順 天堂大学医学部代謝内分泌学講座准教授の綿田裕孝先生、愛知医科大学高度救命救急センターに救急 救命士として勤めておられる小澤和弘氏にも加わっていただき、これらの方々で、救命士の救急救命 処置に関する研究の報告書をまとめさせていただきました。  数回の検討会を一堂に会して検討しつつ、それぞれに分担も決めて報告書を作成していますが、い ずれもこの検討会で検討を加えて総意ということで、この報告書はまとめさせていただいているとこ ろです。現在、まだ案ということですが、我々としては最終案のつもりで、本年度の研究に関しては ある程度の審議は終了したものです。その概略をご説明させていただきます。後ほど、郡山委員にも ご発言をお願いできればと思っています。  1頁から5頁はサマライズしたところですが、これの全体的な総論の報告書作成にあたっては郡山先 生におまとめをいただきました。それぞれ後ほどご報告しますが、検討対象の中心的な3つの項目に関 しては、それぞれ分担を決めて、中心になって報告書をまとめたということです。  研究概要ですが、研究対象として3つの項目に関して検討するということです。その基本的な考え方 としては、救急救命士の業務に求められる行為に関し、総論的な考え方を整理しようということで、 これは特に郡山先生にこの辺の考え方をまとめていただきました。要望にあった先行的な研究を中心 にして、できる限りの臨床情報を集め、科学的観点から安全性や有効性に関する検討を行う目的で、 この研究会を遂行してきたわけです。  検討項目としては、先ほど来の3つの項目として、血糖測定と低血糖に対するブドウ糖の投与、重症 喘息に対する吸入β刺激薬の使用、心肺機能停止前の静脈路確保と輸液の実施です。その前に、先ほ ど来申し上げているように、救急救命士の処置拡大に関する総論的な考え方の整理をすることを大前 提にして、この3つの項目と、もう1つは処置拡大に伴う救急救命士の教育のあり方も、ここでまとめ ようということです。  救急救命士の処置拡大に関する考え方としては、1頁の下から5行目辺りに基本的なことを書いてい ます。救急救命士の処置範囲を拡大していく際には、「緊急度と診断の確実性」、「処置を病院前で 実施することの有効性」、「搬送に要する時間」などの観点で検討することが必要であり、その際の 検討基準として、以下の(1)〜(5)の5点を定義しました。  (1)は良質かつ適切な医療提供の一環であること。(2)は診断の確実性と緊急度が高いものであること。 (3)は国際蘇生連絡協議会という、これは世界的統一基準を5年に1回ずつ、各国の有識者が集まって検 討する会ですが、ここでガイドラインが出てきます。これのクラスI、もしくはIIaなど、要するにエ ビデンスの高いものをガイドラインとして採用し、これを基本にしてこれから構築していきます。(4) は迅速な搬送を妨げないこと。これが非常に問題になるところで、いろいろな処置を現場でやること によって搬送時間が長くなってしまうと、それは最終的に予後にプラスになるのか、マイナスの影響 を与えるのではないかということも問題になるところですので、これも掲げました。(5)は処置が単純 明瞭でプロトコール化できることです。  それに加えて、要望のあった3つの行為のほかにも、今後、拡大を検討すべきものがあるということ も明示しました。(1)が既往歴のある狭心症発作に対する冠拡張薬の使用、(2)が心電図で所見が明らか な急性冠症候群に対するアスピリン経口投与、(3)がアナフィラキシーに対するアドレナリン投与です。 この3つも一つひとつ希望に合ったところを検討していくのではなく、国際蘇生連絡協議会等のガイド ラインに出ているもの、あるいは国際的に病院前にやられて効果があると言われているものも、この 際検討しようということでした。  救急救命士の処置拡大に関しては、すべての事例に対して行うものではなく、メディカルコントロ ールとの連携のもとに、必要な時に行うものであって、病院前救護では、医療機関への迅速な搬送が 最優先されることを忘れてはならないということを、あえてここでしっかりと明示させていただきま した。  この辺のところを郡山先生に担当いただき、総論としてきちっと前面に出して、それに引き続いて 宿題と申しますか、ご指示いただいた検討内容として、(2)の「既往歴のある喘息発作に対するβ刺激 薬スプレーの使用」ということで、結論的には次の3頁です。  今後、教育あるいは再教育等のガイドラインをきちっと示した上、あるいはそれを履修していただ いた上という条件は、すべての項目に当てはまりますけれども、適応となる患者さんの条件として、 (a)は、SABAと言っていますけれども、β刺激薬を予め処方されている方、処方歴のある方で重症な副 作用を認めていないという条件、(b)は喘鳴を伴う呼吸困難、陥没呼吸のある方、(c)はSpO2値が大気 下で95%以下の方、(d)は救急隊現着時より20分以内にSABAの吸入がなされていない方、あまり頻回 投与されていないという条件ですが、この(d)に関しては少し意見が分かれるというか、必ずしも必須 ではない。これがなくても、場合によっては使われていいのではないかという意見です。少なくとも (a)〜(c)に関しては必須条件とするということで、これが救急救命士にやっていただくこととして、 文献的あるいは諸般の研究結果から有効であろうということですので、結論的には教育等の条件下に おいては、救命士に業務拡大してもいいということです。  (3)の「意識障害を認める傷病者に対する血糖値の測定と低血糖の補正」ですが、基本的に血糖値の 測定に関しては、手技的には決して難しいものではなく、一般の方も行っているということです。現 状では、座長から第1回のときにご指摘いただいた非観血的に行う方法が、現在、試験段階と申します か、ある程度そういう方法があるということは知れ渡りつつあり、それも我々は意見を交わしました が、現状ではまだ必ずしも一般的ではないということで、その辺に関しては座長には大変申し訳あり ませんが、そういう結論です。一般にいま、患者さんが自分でやっている程度の血糖測定はそれほど 難しくないし、かなり参考になるので、それを行うことに対しては問題はないだろうということです。  「低血糖を疑い血糖測定を行う患者の条件」として、(1)は意識障害を認める傷病者に関して行う。 (2)は抗糖尿病薬(血糖降下剤あるいはインスリン自己注射)による治療歴があること。(3)は病歴によ り、低血糖発作が疑われること。以前に低血糖発作が起こっている方に血糖測定を行っていただく。3 頁のいちばん下に「なお」と書いていますが、「傷病者本人及び家族等による病歴聴取ができない場 合には、糖尿病手帳や薬手帳等による治療歴の確認を行うべきである」ということも加えました。こ れも先ほど来申し上げているとおりですが、「実施にあたっては、教育体制・研修体制等のより一層 の充実と、メディカルコントロール体制の充実が不可欠である」としています。これはすべてにおい て強調していますが、この面に関しても充実が必要であるということです。  (4)の「病院前救護における心肺機能停止前の静脈路確保と輸液の投与」ですが、もう既に救急救命 士は養成の段階、あるいは、現在、心肺停止下のアドレナリン投与を行っていただいていますので、 手技的にはかなり習熟していますから、静脈路確保に関しては問題はありません。  実施基準を設けたほうがいいということで、(1)が多発外傷や明らかに中等量以上の出血があると想 定される重度外傷傷病者が対象であること。(2)がオンラインメディカルコントロールの医師の指示に よることです。これは当然のことだろうと思いますが、あえて「オンラインメディカルコントロー ル」としています。プロトコールで、いわゆるオフラインメディカルコントロールではなく、直接、 医師の指示を受けた上での業務として行っていただきます。ただ、先ほど申し上げましたが、救急救 命士が心肺停止前の傷病者に対して静脈路確保や輸液を行うという、個々の救命士の観察力やスキル の向上が必要であるために、地域の救急救命士の教育・研修体制、再教育体制が充実していること、 およびメディカルコントロール体制のより一層の充実がなされることが前提であることは、先ほど来 の項目と全く同じです。  (5)で教育体制に関しては、現在、田中先生も養成所で大活躍していただいている経験とか、国士館 大学で学術的な検証も進めながら、救急救命士の教育のあり方に関してもいろいろなトライアルをし ていただいています。お二人が特に中心になり、処置拡大に伴う救急救命士の教育のあり方のところ のご意見をたくさんいただき、なおかつ報告書としてまとめていますので、それは後ほどご参照いた だきたいと思います。  3行為について、1)手技(スキル)トレーニングの必要時間、2)病院実習で取得すべき病態、3)座学 で学ぶべき医学的知識等、4)シナリオトレーニング、5)イーラーニング教材による病態の理解、によ り構成される新たな教育内容の案を報告書の後段に出していますので、それを提示させていただきま した。  また、今後の処置拡大は、低侵襲的処置から高度な医学的知識と技術を必要とする高侵襲的処置へ 拡大していく傾向があることは十分想像できることですので、救急救命士の教育の現状と問題点につ いても検討し、今後、救急救命士の養成課程の見直し、多くの臨床経験を積めるような認定実習のほ か、追加講習や生涯教育体制の充実、先ほども出たイーラーニング教材を活用した講義の導入等の改 善が必要と考えています。この辺に関しては、先ほど申し上げたように後段に、アメリカの教育シス テムとの比較と、検討した結果を出しています。  雑駁ですが総論を申し上げました。これが、我々の報告書の概略です。強調したいのは、これから 業務拡大を行うにあたり、ご指示いただいた検討対象について、救急救命士の業務拡大に関しては必 要である、あるいは有効性があるという結論です。ただ、実際にこれからどういう格好で認めていく のか、あるいは研修していくかということに関しては、最後に強調した5つです。教育内容、教育のシ ステムを充実させる必要があるところを、是非、ご勘案いただきたいと思います。以上です。 ○島崎座長 ありがとうございました。いま野口委員からは、主に総論的なところのお話がありまし たので、各論にいく前に、この総論全体のところのディスカッションを15分ほどお願いしたいと思い ます。主に1頁から5頁ぐらいのところを中心に、各論的には後ほどまたご検討いただきたいと思いま す。いかがでしょうか。  ポイントは、1頁の5つの原則をきっちりと守ることで、今回の3つの医療行為を認めていくという ところです。それぞれ各論的には適応をきっちり決めて、それでβ刺激剤のスプレーの使用、血糖の 測定と補正、病院前の心肺機能停止前の静脈路確保と輸液の実施を認めてもいいだろうと。そのため には救命士の教育が具体的に重要だと思うというお話です。いかがでしょうか。 ○野口(英)構成員 たぶん私がこのメンバーに加わっているのは、現実的に救急救命士が、いま社 会の中で何を行っているかというと、消防の救急の中で活動しているという前提に立ってこれを読ん だときに、何を感じるかということだと思います。意見ではなくて質問です。  1頁の3の「結果と考察」の(1)です。先ほど野口先生が、忘れてはならないのは「緊急度と診断の 確実性」、それに「搬送に要する時間」との対比は当然あって然るべきだと言われました。我々の救 急現場で考えてみると、設備が整わない中の、さまざまな不安定要素の中での確実性というのを、ど の辺まで求めるかということが、我々としては非常に心配なところなのです。その辺はどう考えてい らっしゃるか。  現実的には天候であったり、外なのか内なのか、あるいは時間的制約があるわけです。こういった 中で確実性を考えるわけですが、そうなってくると搬送に要する時間にすべてが集約される気がする のです。つまり、それぞれの地域の中で全国一律に診断の確実性を求めるのは、現場活動をしている 我々からするとどうなのか。つまり、ある地域では病院との距離の中で、その時間をかえって費やし たほうが効果的だと思われる地域と、東京みたいに、ある程度の病院が揃っている所は、確実性とい う時間を費やすのにどうしても搬送との対比が出てくる。そうなってくると、この確実性をどこに置 くかについてはさまざまな議論があるのではないか。  2点目は2頁の(5)です。「処置が単純明瞭でプロトコール化できること」というのは、そのとおりで すけれども、今回議論されている心肺機能停止前のというのはちょっと違うのかもしれませんが、喘 息や低血糖という場合に同意というのをどう考えるかです。つまり、ある薬を投与すべきという状態 のときに、低血糖の場合については「意識障害を認めること」と書いてありますが、完全に意識がな いわけではないので、そうなってくると処置が単純明瞭でプロトコール化できるということを考える とき、エピペンのときもそうですけれども、現実的に持っているものを救急隊の救急救命士が処置を するときに、患者さんの同意を得ることが簡単にプロトコール化できるのか。そこが私たちは引っか かるということを申し上げたいわけです。  次に3頁で、SABAというものに対する処方歴とか、いろいろなものが条件として出てきます。こう いったことを眺めてみたときに直感的に感じるのは、例えば近くに家族がいるとか、親戚や友人がい る、または、ある年齢ならば学校の先生がいるとか、こういったある人との中で親権とか、ある時間 帯においてその人を管理する方がいる場合に、あえて救急救命士が、そういうことをする必然性が出 てくるのかどうか。そういうことも条件という中には出てくるのではないかと思います。  4頁に心肺停止前の静脈路の確保の問題があります。これを眺めるときに、今までは患者の条件が今 度は「実施の条件」となっています。この患者の条件というのは(1)がそれに当たるのだろうと思いま すが、我々の現場で考えたときに、ここに時間的な問題を入れなくていいのか。我々がイメージする のは、例えば交通事故で閉じ込められたり挟まれて、救助という時間を要する中で、速やかに搬送で きないという、そういう時間軸を考える必要があるのかどうかということを思いました。 ○島崎座長 ありがとうございました。野口先生、いま4つあったのですが、1つは地域によってすぐ 送れる所と、例えばドクヘリに乗せて延々と時間がかかる所と、かなり地域によって差があるのでは ないかということです。その辺のところはいかがですか。 ○野口(宏)構成員 これは最初のところで私がお話したとおりで、処置を行うことで時間が遅れる ようなことは大前提としてはあり得ない。どういう人に、どういう処置をするかということに関して は、いわゆるこういう医療行為を行う上では大前提で、時間、効果、例えば点滴をとるのに時間がか かるような暗い所であれば、点滴を諦めざるを得ないので、その辺のところが理解できるような教育 体制を、もう一度作っていただきたい。その上でのことですので、これは後で郡山先生に上手に説明 していただきますが、我々の議論も、この辺をどう強調するかに終始したわけです。それを総論のと ころに散りばめたつもりですが、これはおっしゃるとおりです。それを判断できない場合はその業務 はできないわけで、基本的にいちばん担保できるのは、医師に直接指示をもらうオンラインメディカ ルコントロールになります。病院まで5分であれば、何もしないで連れて来てくださいという話になる ということで、端的に表現できるかと思います。それが搬送時間、地域、診断の確実性。  これは郡山先生のところで書いていますので、先生に説明いただければと思いますが、8頁に「緊急 度」と「診断の確実性」の図を描いています。アナフィラキシーショックの場合には、茶色いところ の赤い部分です。こういうところは診断もそれほど難しくはなく確実性が高い、緊急度も高いという ことで、現場で処置を行うことの必然性をこの辺に表しています。この辺を現場の救急救命士の方々 がどう判断するかというところですので、これをどういう教育でやるかが、これからの教育体制の充 実の中に含まれているとご理解いただければと思います。  郡山先生、いまのところを説明していただければと思います。 ○島崎座長 どうしましょうか。あと野口委員の話は、いま言った総論の、地域によって違うだろう ということと、プロトコールの重要性をどう評価するかということで、野口委員は、オンラインMCが 基本的に必要だろうということです。あと野口委員がおっしゃっていたのは、喘息は家族や学校の先 生がICにどう絡んでくるかということ、心呼吸停止以前の患者のコンファインドスペースメディスン の話も各論になるので、どうしますか。そのときに話をしてもらいましょうか。全体の中で何か発言 はありますか。 ○郡山構成員 全体のまとめ方のところで、最初のところはかなり重なっているので、これを先に説 明します。私の担当のところでいいですか。 ○島崎座長 そこだけ説明をお願いします。 ○郡山構成員 資料の6頁からになります。まず検討するに当たって、今後のこともですけれども、許 可と運用面と2つあると思います。現状、運用面の前の段階として、まず何を考えていくのかをまとめ てみました。というのは、病院前救護のこういう検討会というのは何年に一度とか、そうよくあるわ けではありませんし、何よりもこういう会がやっていくべきことは、大事なことは何かを明確にして、 それを長い時間をかけて作っていく。そういうことをやらなければいけないわけで、思い付いたこと を短期間でやっていきましょうということはあってはならないというところで整理しました。  6頁で1の「はじめに」と書いてあるところは、我が国の医療の大原則である、国民に対し良質かつ 適切な医療を提供するという大前提のもとに行うこと、ということを強調しています。その上で医療 法にも書いてあるとおり、関連するサービスとの有機的な連携を図る。それは医療人であればすべて が行わなければならないことですから、その一環であるという位置付けを明確にしました。  2の「検討すべき項目の抽出」ですが、これは先ほど事務局から説明がありました、参考資料2の5 頁に別添1としてある「救急救命士の再教育」に関係しています。この7頁の3「再教育の対象とすべ き項目」のところで、循環虚脱、呼吸不全、急性冠症候群、小児の急性疾患が再教育の対象として挙 がっています。つまり、これらの疾患については超急性期の医療が機能分化していること、対象医療 機関が専門特化していること、そういう観点から挙がったものです。これが既に我が国で進められて いる施策ですので、過去の施策との連続性を踏まえれば、資料2の7頁の表で、いちばん右側の初期治 療のところに当たる項目をきちんと検討していくことが、今後のきちんとしたビジョンを作っていく ことになるだろうと考えました。したがって検討項目は、右側のモルヒネ、アスピリン、硝酸薬のカ ラムになります。  8頁ですが、この項目を「診断の確実性」と「緊急度」に分けてみました。これは概ね分けたという ことで、この分け方について議論があれば、ここをみんなで検討していけばいいのだろうと思います。 ただし、何が変わってきているかというと、従来、AEDがなかったときにはVFについて、それがVFか どうかがよくわからないと、人間にかなり任されていた部分がありましたが、今はコンピュータの解 析によって、それがVFだということが明確になる時代になったわけです。そうなると確実性はずっと 上がります。つまり時代とともにこういう確実性が変化してきていることを、私どもはきちんと認識 しなければならない。  その上で緊急度が高いものとして、右上の四角の中に入ってくるものから順番を付けて、おそらく 私どもは検討していくことになります。そうなると「明らかな出血所見がある場合の低容量性ショッ ク」は非常にわかりやすい。「異なる誘導でST異常がある場合のACS」というのは、私どもが心電図 を持っているからわかります。持っていなければわからないですが。ちなみに、既に患者が自分で持 っていて、処方することを許可されているものを、緑色のマルで示しました。こうなると緑色のマル に一致するところは緊急性が高く、診断の確実性が高いところに一致するものと思われます。左上の 四角で、例えば巣症状がある場合の脳出血か脳梗塞かは、実はCTを撮るまでわかりませんので、確実 性としては非常に低いことになり、これについて病院前に何かを行うことは不可能となります。  8頁の下ですが、今度はそういう患者さんが日本にどれだけいるか、どれだけの人がこれで命を失っ ているかを当然検討するべきです。これは人口動態統計から取ってきたものですが、もちろんガンが いちばん高くて、赤で薄く書いている急性心筋梗塞をはじめとする、いわゆる急性冠症候群が非常に 多い。それから脳梗塞、いわゆる脳卒中がかなりの数を占めることがわかります。これからいくと喘 息は対10万人当たり2.0、交通事故は6.6と著しく低いことになります。  9頁の図2で年齢分布を見ました。これを見る限り、いわゆる急性冠症候群というのは、まさに40 代後半からかなりの率で上がっていきますので、これについては一番に考えながら、私どもは今後、 体制を整えていくべきだということになります。  9頁の3の「処置を病院前で実施することの有効性」については、既に諸外国で提案されている、も しくは実施されていることを示しました。(1)のACS(急性冠症候群)に対するアスピリン、亜硝酸製 剤、モルヒネの投与、(2)のアナフィラキシーに対するアドレナリン投与などは、既にかなりの有効性 を持って諸外国では実施されている状況があります。これについては後ろのほうに研究で念押しされ ています。(5)の明らかな出血がある場合の低容量性ショックに対する輸液については、10頁に書いて いますが、これは一定の結論には至っていません。先ほど野口委員からもあったように挟まれている とか、まさに迅速な搬送を阻むような状況がある場合にあっては行うことになるのだろうと思います。 つまり、一つひとつを明確に、こういう時はこう、こういう時はこうと、医療の中で一言一句定義す ることはできない状況がありますので、それで、いざという時には実施できるように、事前に許可を しておくところまでを検討している状況です。  10頁で4の「効率性」ですが、これは全国の救急隊の搬送時間からの検討です。まさに野口委員か らいまご指摘があったところで、これは地域によって全く違います。それからいくと11頁になります が、いちばん最初に申し上げた急性冠症候群では、年間搬送件数が1,000件以下の隊が担当する地域で は、約半数が単純計算で、おそらく現場を離脱してから37分程度はかかる。我が国の隊別年間搬送件 数は1,050ぐらいですので、1,000件以下というのは、おそらく我が国の約半数に近い隊が37分ぐら いはかかる状況で、もちろん短いものもあります。この37分間に冠拡張薬を使う、もしくは喘息のス プレーを使うことが有効なのかを議論すべきだろうと思います。  さらに、重症外傷の場合、救急要請をして37分以内に50%以上が専門医療機関に到達できるのは、 隊別年間搬送件数が1,500となりますから、かなり大都市でないとそこには行き着かないことになりま す。そうなればなるほど、実は地域格差の問題が、野口委員がご指摘のとおり、それによって異なっ てくることが明らかだと思います。  12頁で5の「実効性」です。ここで「結論」と書いていますけれども、最初に示している5点は、 これを選択するにあたり、きちんとガイドラインに従ってやるということで、(1)良質かつ適切な医療 提供の一環であること、(2)診断の確実性と緊急度が高いものであること、(3)有効性が既に認められ ているもの、(4)迅速な搬送を妨げないこと、(5)プロトコール化できること、をガイドラインとしま した。  ここで、「指標に従うと以下のような処置を拡大すべきとの結論に至る」という書き方がいけなく て、「指標に従うと以下のような処置について、長期的に検討を続け、その体制を構築していくべき と考える」というのが、私のここでの言いたいことです。  そうなると(1)〜(5)で、(1)異なる誘導でST異常がある場合、(2)アナフィラキシーに対するアドレ ナリン投与、(3)既往歴のある喘息発作に対する気管支拡張薬スプレー使用、(4)既往歴のある狭心症 発作に対する冠拡張薬スプレー使用、(5)搬送時間が長くなる状況での輸液路確保が挙がります。  いま申しましたように、「直ちに」ではないといったことをなぜ強調するかというと、表3にありま すが、現状の救急救命士教育がそれに追い付いているかというと、私どもの調査では残念ながら追い 付いていません。これは決して救急救命士が怠惰であるということではありません。私どもがやって きた教育体系そのものがこういう体系になっていないのです。医師の教育を何となく縮小化したもの を教科書として、その中でまさに血液疾患は凝固系のカスケードなどを問われるといった、言わば病 院前から見ると全く意味を持たない教育を繰り返し行ってきた。そこを改善しない限り、これはでき ないことになります。したがって、ここに示したビジョンに基づき、長い年月というのは5年なのか 10年なのかわかりませんが、たとえ政権が代わっても引き継がれてやっていく体制構築こそ、私ども は専門家としてここで提唱したいと思っているわけです。  13頁の図5ですが、実際に私どもの研修所に来て1カ月間、専門的な研修を行うことで、例えば単 純な輸液路確保のやり方についても時間を短縮することができる。つまり、それぞれの地域に任せる と言っているメディカルコントロール下での教育とは別にと言いますか、私どものように教育施設と マンパワーが充実している所で、国としてまさに自治体職員に対して何が行えるのかを、明確に国民 の健康のために提供するべきではないかと考えています。  最後に強調になりますが、「全ての処置に対して行う」と、つまりプロトコール化したならば、 「全ての事例に対して行う」というのではなく、それが「必要に応じてできるように事前に許可をし ていく」ことが、この会のいちばんの目的であるという観点で書かせていただいた状況です。以上で す。 ○島崎座長 ありがとうございました。今回の3点の医行為以外にも、結局、2頁に書かれている(1)(2) (3)を含めて、今後とも長期的に検討が必要ですよということです。よくわかりました。長期的に検討 が必要ということは、頭の隅に事務局のほうもとどめていただきたいと思います。総論で全般的なも のとして、ほかにいかがですか。 ○樋口構成員 いまの郡山さんのお話は、私が不十分なのかもしれませんが、非常によくご説明いた だき、ありがとうございます。今のと関係して質問なのですが、私は法学部におりまして、何を教え ているかというと、たまたまアメリカの法律を基本的には教えているのです。後のほうでロサンゼル スの例も出てきていますので、それに関連した話を、素人向けで申し訳ないのですが教えていただけ ればと思います。  その前に、先ほど郡山さんがおっしゃったことは非常に重要で、この会は一体何のためにあるのか という話です。「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」ということですが、ここにおられる 方は、私が釈迦に説法で言う必要はないのですが、ご存じのように救急救命士という専門職があって、 一定の範囲のことをやれるようにしている。しかし、実際にはやれないようにしているというのもい っぱいあります。しかし救急の現場にいちばん先に行くのは、救急救命士なものですから、そこで、 本当はこういうこともやれたらいいのではないかということも、まだまだいろいろあるのではないか ということで、こういう検討会をやっていると思うのです。そのときに、絶対に間違ってはいけない のは、英語を使って申し訳ないのですが、mayとmustの違いという話で、何々ができるという話と、 できるのだからしなくてはいけないという話は、やはり大きな乖離がある。できるということにした から、明日からやれと言っても実際にやれないのです。長期的なということもおっしゃった。あまり 長期では困るような感じが素人としてはしますが、段取りをつけて、ちゃんとしたものがあってとい う話なのだけれども、そこへ行くためにも、いちばん初めに「まずできないのだよ」と言ってしまう と、全然何もいかないのです。mayという話をまず作っておいて、それで実際にやれるようにするため にはどうしたらいいかという話をしていく。そのための会なのだろうと私は理解しております。  郡山さんのお話もそういうことだったのだろうと思うのですが、その上で、アメリカとの比較でな くても構わないのですが、例えば、同じ冊子の最後に参考資料があって、54頁、55頁、ここを材料に して、ごく簡単に答えていただければいいです。今日問題になった3行為。これは55頁にいろいろな 薬剤、こういうものが向こうでは可能なのだよということが書いてあるのですが、この表に基づかな くてもいいのですが、ロサンゼルスではできることなのだろうか。これが第1問です。  2つ目ですが、54頁のいちばん上に、どなたかが調査に行かれたのでしょうけれども、ロサンゼルス 市内とロサンゼルスのカウンティでは、当然市内だと搬送時間が短いために、用意してある薬剤が16 剤だけれども、カウンティになると搬送時間がずっと長くなりますから、薬剤投与も30剤ということ で、mayという点ではカバーしているのでしょうけれども、実際にやっているのは、結局需要に応じて なのでしょう。体制を変えているという話があるので、我が国ではそうはきっとならないと思うので すが、我が国は北海道で救急のことをやっている所と、あるいは横浜や東京とは全然違う話なのに、 何かこういうことで1つ制度が変わると、みんな一律にやらなければいけないのではないかと。私だけ なのかもしれないのですが、そのような誤解があるといけない。そんなことはここの人たちはないの でしょうけれども。ここにあるような、同じロサンゼルスといったって、ロサンゼルスの市内とカウ ンティは全然違うのだという、そういう発想です。それが我々の業務拡大というのも、先ほどのmust でないといけないという話と関連していると思うのですが、柔軟な考え方で、どこでも何かやらなく てはいけないという話はないと思うのです。いちばん需要があって、かつ、そういう体制がとれると ころから。教育も全国一律にきちんとやっていこうと思うと、それは大変なことになるはずなので、 濃淡をつけるような対応ができないものだろうかということ。  それから、本当は聞きにくいことなのかもしれないのですが、今日問題になっていることはロサン ゼルスだと、みんなできることなのだろうかと。きっとできるという答えなのだろうと思うのですが、 それは違うということがありますよね。救急救命士と向こうのパラメディックと全然違うのだろうか。 そのような違いがどういうところなのかということを第1問で教えていただいて、第2問はコメントな ので省略します。  3つ目の質問ですが、54頁の5行目以下ですが、オンラインメディカルコントロールに関しては、一 定の範囲の薬剤投与については、スタンディングオーダーとして現場の救急隊員の判断に任されてい る。メディカルコントロールということを日本ではもちろん強調していて、それが原則として当たり 前のことだと思うのですが、ここに書いてあることについてはどうなのですか。それはアメリカのパ ラメディックだからできることで、日本ではそんなことはあり得ないことなのですよというのか、あ るいは日本だってあり得ることなのか。アメリカとの比較の中で、2点だけ教えていただけるとありが たいと思います。 ○野口(宏)構成員 これは郡山先生に関係することですが、まず、mayとmustは非常に重要で、先 生のおっしゃるとおりなのです。郡山先生が13頁に書いてくださっているのは、そういう意味ですよ ね。13頁の「最後に救急救命士の処置拡大の大前提は、『全ての事例に行う』のではなくメディカル コントロールとの連携のもとに『必要な時にできるように事前に許可をしておく』」という意味がそ の意味です。我々あらゆるところでそれは確認をしながら、先ほど申し上げたのが、先生のおっしゃ るmay、mustなのです。ただ、確かにこれはよっぽど徹底しないと、先生がおっしゃったように、一般 の方、特に救急にあまり堪能ではない医師が間違うのです。それがいろいろな批判のもとに、延々と 救急車は出発しない、すぐ病院があるのに出発してこないよと。それだけを見て、中でごちゃごちゃ やっているのだと、こういう言い方になるのです。これがmay、mustの問題だと思うのです。ただ、我 々としては、今日は野口委員がお見えですが、反省すべきはそういう誤解を招いていることも事実な のです。これがすべてにおいての原点であるということは、先生のおっしゃったとおりでございます。  アメリカの話ですが、アメリカの場合もいろいろございます。徹底的にメディカルコントロールを している。スタンディングオーダーなどいろいろ言葉がありますが、基本的には業務に関してはあら ゆることができる状態です。いわゆる救急業務という救命士がやることは、基本的にはできます。シ アトルとかいろいろありますが、きちんとやっている所ほど、徹底したメディカルコントロールをし ています。それが結果の検証である場合があります。その日のうちに検証して真っ赤にして返す。た だそれは、全部無責です。こうすべきがよかった、どうしたほうがよかったとか、注釈を真っ赤にな るぐらいメディカルディレクターがチェックしています。ただし、いざとなれば、現場として、それ をやらざるを得ないと必要に迫られてやったと判断したことに関しては、あとのチェックで反省させ られるだけであって、責任は取らなくていいというのが、私のアメリカの解釈です。ですから、先生 がおっしゃった最初の答えとしましては、あらゆることができる状態に救命士は教育をされているし、 許可もされているということです。お答えになりましたでしょうか。郡山先生、もし追加があれば。 ○島崎座長 おっしゃるとおりで、今回の3つに関しても、救命士はこれができるという報告ですよね。 もしできるならできる。しなければならないではなしに。それは気管挿管や従来の3点セットもできる。 気道確保の1つとして挿管ができるという形ですから、先ほどのような両方できる救命士は20%、30 %。教育システムが終わった後で、実際にできる人はこれぐらいだというような報告になっているの で、樋口先生がおっしゃるのは、そういう形になっていると思いますし、これからも先生の言うmayで、 可能性としてそれができるというような形になっていると思います。 ○野口(宏)構成員 例えば気管挿管が非常に良いサンプルになると思います。アメリカでは気管挿 管は日本のような条件設定はないのです。気管挿管が必要だと思えば彼らはやるわけです。初期のこ ろは心停止に限定していたかもしれませんが。日本は限定しています。その上で、日本は地域によっ ていろいろな条件設定をしています。もっと言えば、気管挿管って、我々が救急をやっていた医師は、 特に搬送に時間がかかるということだけの時間設定で、あとは第一選択が気管挿管という方法を選ぶ のが今まででしたが、救急救命士は違います。いままである比較的侵襲度の少ない気道確保の方法が できればそれをやりなさいということですが、この辺がアメリカとの違いなのです。それはむしろ先 生が最初におっしゃった、気管挿管は合併症が多いからできるだけ避けましょう、もっと言えばやら せないでおきましょうというニュアンスが入っていたというように解釈したほうが、より簡単だと思 います。ちょっと乱暴な意見ですが。そういうことを含めて、あらゆることをそういうので縛ってい きますと、非常に難解なことになってしまいますので、やはりmayとmustの違いで、事を分けたほう がいいという意見に大賛成です。 ○島崎座長 先生の言っているmayとmustと、ちょっと意味が。それなりのものをきっちりと担保で きた後で、そういう形でできる人がやりなさい、そういう形でできない人はやっては駄目ですよとい うのが日本型で、アメリカは基本的にできる人はやりなさいという格好で、日本のとは違うなという 気はするのですが、いずれにしても気管挿管をしなさいではなく、気道確保の1つとしてできるという 形で、薬剤もそうなっています。ですが、その実習が全部できて、気管挿管できる、薬剤投与ができ る救急救命士が、日本では、それはしなければならないという話ではないです。実習を30例やって、 できる人が気管挿管の適応があればできるという話で、やりなさいではないと思います。 ○杉本構成員 私も先ほどの郡山先生が説明してくださったことは非常に合理的であると思うのです が、今回の検討会は何について話すのか、少し整理してもらう必要があるのではないかと思います。 私の理解では、喘息、低血糖、それといまの輸液の3点だと思うのですが、もっと議論を広げて話をし ていこうという考え方なのですか。まずそれが1点です。 ○島崎座長 座長としての理解は、総論的にいま郡山先生が言ったようなものをひっくるめて、長期 的な検討は必要だというのを総論の中で、今回のあり方委員会としては、3つのものに限定してそれを どうするかという話で、もしそれがOKだとしても、私の理解では、もしやってもいいですよというこ とであればできるというような形で理解しているのですが、それでいいのですよね。事務局、いかが ですか。 ○中野専門官 そのとおりです。 ○杉本構成員 議論としては、その3つ。 ○島崎座長 総論的な話の中で、郡山先生の話が出てきたのですが、各論的には、今から3つについて どうしようという話で、時間がだいぶ過ぎていますがそのつもりでおります。 ○杉本構成員 その中で、アメリカの話が出ているのですが、ほかの国も含めて、特にアメリカはそ うですが、州によって全く違うし、場所によって全く違いますよね。アメリカは連邦政府としてこう しましょうという議論をしているわけではないのです。ところが日本の場合は、日本政府として日本 全国こうしましょうという話になっている。そこのところは少し分けて考えておかないと、日本の中 でも、例えば東京はどうしようかというのだったら、全く違う形のものが可能だろうし、大阪もそう だろうと思いますが。ところが、北海道でどうしようか、できるものは何かという議論になってくる と、東京や大阪とは全く違う話になってしまう。ですから、これはあくまで日本全体としてこうする のだという前提に立ってやっている話だと理解しておかないと、話が全く違うようになってしまうの ではないかというように思います。  3点目は、ちょっと気になったのですが、郡山先生が非常に合理的な、考え方としてよくわかる、理 解しやすいお話をしてくださったのですが、その中に、低血糖というのが入っていないというのは、 どういうことなのか。片や低血糖をいま議論しようというのだけれども、7頁の表1に低血糖そのもの が入っていない。これを我々はどう考えたら良いのかということです。  4点目は、コメントと言っていいのですが、基本的には、私自身は救急救命士の業務を拡大していく ということには賛成の立場なのですが、気管挿管もそうですし、ほかのことに対してもそうなのです が、教育等を含めて、随分と経費がかかります。非常に大きな経費をかけて、人的にもそうだし、医 療側の負担もそうですが、非常に大きな経費、コストがかかってくるわけですから、その中でどれが いちばん有効なのかというものの見方をしておかないと、あれもやっていいよ、これもやっていいよ、 そのためにもっと教育しましょうよと、それはそれで大いに結構なのですが、コスト面の問題を考え ないと、実現は非常に難しい。特に、小さな消防本部は、人員的にも非常に限られているから、講習 なり実習に行って誰かが休んでいる間、ほかの者で補えるほどの人員的な手当ても行われていない。 そのことを考えないでやっていくと、人員的に恵まれている所とそうでない所の差がますます大きく なってしまうようなことが起こってくる。そういう意味合いを含めて、やはりコスト面でどうするか というような考え方が必要なのではないかと思います。  もう1つ。これは最後の質問なのですが、各論に少し入りますが、郡山先生が示してくださった図5 に対してですが、確かに訓練の効果で短くなったという形で出ているのですが、これはハイポボレミ ックショックに対しての訓練の話なのでしょうか。というのは、心肺停止をしている方の輸液をとる、 あるいはショックでない方の輸液をとる、これは比較的容易ではないかと思うのですが、私の理解で は、少なくとも出血性ショックに対して、末梢から輸液路をとるのは非常に困難を伴うことが一般的 であって、2分足らずで輸液をとれるのかというのは、非常に疑問です。これは、後でも結構ですから、 お答えいただけたらと思います。 ○島崎座長 まず最初の、今回の委員会の報告のゴーあるいは駄目だというのは、オールジャパンの 話で、もちろんそれに付随して、地域によってMCが充実しているとか、実習が十分行えないとか、教 育システムが不十分だというところは、それなりにシステムが充実してからと。その温度差というか、 場所によって実施の差が出てくるのは当然だと思いますが、できるという前提のもとで、オールジャ パンとしてできるという話だと思います。  それから、いま言ったお金のある所、ない所、教育システムが充実している所、できない所、ボト ムを全部揃えて、はい、ゴーというわけではなく、地域によっての差が出てきても、それはいいとい うことですよね。 ○中野専門官 そういうことになります。 ○島崎座長 当然でしょうね。3番目は郡山先生。 ○郡山構成員 先生ご指摘の、7頁の表になぜ血糖が入っていないのかということですが、ここで選ん でいる疾患というのは、要するに病院前の機能が分化をしている、しかも超急性期の医療が非常に特 徴的だということで、血糖チェックなんて二次医療機関でいいでしょう、どこでもできるでしょうと いうことで外してあります。したがって、今回、理屈だけで攻めているつもりで、私は血糖の測定を するということに、決して反対ではないのですが、私のガイドラインからいくと、これは入ってこな い。だけれどもそれは私の考えであって、それをどう検討していくのかということだと思っています。  13頁の図5ですが、これは人形での訓練です。ただし、実は生体でやるときのというか、挿管を1 つ例にとってなのですが、人形で訓練することで、ラーニングカードがどのように変わるかというの を、私どもはつい最近、ある一定の結論を見いだしているところがあって、立上りをかなり早くして 教育効果を上げるというのをグラフ化することができましたので、そういうところに反映できるので はないかなと思っています。 ○島崎座長 ほか、いかがでしょうか。 ○佐々木構成員 いま杉本先生からお話があったとおり、教育体制や研修体制を充実させるというの は、かなりお金のかかることなのだと思うのです。今回、3つのことに関して、やれるようにするかし ないかというような話なのですが、さまざまな条件なり現状がありますから、いろいろなことが救急 救命士もできれば、それはそれにこしたことはないと思います。いろいろな条件の中で、これはやっ たほうがいい、やらないほうがいいというのは、もちろんあると思うのですが、先ほどから北海道が 出てきていますが、確かに札幌市内は、それなりに病院もたくさんありますし、それほど時間はかか らないで搬送できる地域だと思うのです。ほかの地域だとどうかなというところはありますと、やは り北海道内はかなり広いですから、さまざまな地域があるのだと思います。その中で、3項目ができる ようになる。それに対してきちんとした質を確保しなければいけないですから、それの教育・研修体 制を作る。ただ、例えば札幌市内でそういう患者さんが出たときに、100%それをやるかといったら、 やらなくてもいいかもしれない。普段は本来やらなくてもいいものなのでしょうけれども、ただ、条 件によっては、もしかすると1%でも2%でもやるケースが出てくるとなると、やはりそれなりに、き ちんとできるように、訓練なり研修をしておかなければいけない。それをずっと維持するというのは、 結構大変なことなのかなという感じがします。  消防で参画しているのは、うちと東京消防庁さんですから、大きなところでの意見で、この3つをつ ぶしたくないなというところはあるのですが、先ほど樋口先生がおっしゃいましたように、一律でや らなくてもいいということにはなるのですが、条件によっては東京でも札幌でもやらざるを得ない、 やらなければいけないという条件があるとすると、やはり質的には全国救命士一律でできるようにし ておかなければいけない、ということになってしまうのかなという感じがしました。 ○永池構成員 私からも、私の解釈を確認させていただきます。この検討会は、やはり「より良い病 院前救護」を目指して、安全性や診断の確実性を確保しつつ、いかなる救急救命士の業務が拡大でき るのかを現在検討していると思っております。その際に、ここで示された処置拡大の3点が、いま拡大 できる行為と判断するかどうか、この検討会で議論して回答を出していく。ご参考に、これまで科研 で野口先生等がおやりになられた結果を見ながら、安全性や実行性を判断し、最終的に結論を出して いく。そこまではよろしいでしょうか。 ○島崎座長 はい。プレホスピタル。 ○永池構成員 プレホスピタルでよろしいですよね。そういたしますと、この報告書を私が読んでど のように解釈したかと申しますと、むしろ3行為はできるであろう。さらに状況であったり、条件整備 であったり、指標を使うことによって、プラスアルファーいくつかの処置も拡大できるであろうとい うように現時点で読めてしまうのです。ですが、いま郡山先生からの説明の際には、いや、そうでは ないと、教育が整わなければいけないということが前提にあるので、先ほどおっしゃったような、処 置を拡大すべきとの結論に至るということは、ここで修正されたというように解釈してよろしいでし ょうか。  つきましては、現実的にいって、教育の体制がこういうことをやろうとした際には不十分であり、 さらに充実した教育が必要であるので、長期的な視野に立って、まず検討すべきことはそこにある。 そして、郡山先生がお話されてはいなかったのですが、私はこのように考えます。そうした教育体制 が整備され、教育が実践され、費用対効果等もありますが、実践された際には、また改めて、教育の 効果であったり、技術的な訓練の効果を検証した上で、同様にこうした検討会が開催されるべきであ ろうと受け止めてよろしいのでしょうか。 ○郡山構成員 私が書いた報告書については、「郡山一明」と書いてあるので、私が責任を持ってお りますので、私は全くそのように解釈しております。 ○島崎座長 今回は郡山先生が、今後検討すべき項目も入れて、本来こうあるべきだというのを総論 の中でおっしゃっていて、今回は具体的には、この3つについては教育・研究システム、あるいはMC の状況などを含めて、できるかどうかを検討したいということです。ですから、あと30分の間に、3 つを検討すると。 ○永池構成員 あくまでも報告書では、いま3つの処置を拡大すべきという結論には至らなかったとい うことで。 ○島崎座長 今からそれを検討するということですよ。 ○郡山構成員 実は報告書で言っていることは、有効性のことについて、私どもは検討してきました。 要するにポリシーオプションをまず出して、それの有効性について十分に検討を行った。実際にこれ を日本全国でするということにあたっては、実行性をこの場で検討しなければいけないと思っていて、 そこのところを明確に分けたつもりなので、ここで、実行性で駄目だということになれば駄目でしょ うと考えております。 ○総務省消防庁(溝口救急専門官) 総務省消防庁の溝口と申します。先ほどから地域の話とオール ジャパンでの方向性という話がありましたが、地域差の話をされる中で、できる所からやるという発 想と、そうではなくて、必要な所からやらなければいけないという発想の方とに二分されるのではな いかと思って伺っておりました。非常に重要な点は、おそらく必要な所と念頭に置いている所は、医 療資源もかなり乏しくて、MC体制の構築なども非常にシビアな状況にあるような所かなというのが私 の感想です。オールジャパンでやるときに、どちらを目指すのか。やれる所からやる、ガイドライン の作成のときにはよくやることですが、わかっている所からやるという形にするのか、そうではなく て、必要な所から攻めていくのだという方向性にいくのかは、検討しながらでいいと思いますが、そ こはちょっと切り分けないといけないのではないかという印象を受けましたので、一言コメントをさ せていただきました。 ○島崎座長 座長としては、必要な所からすべきなのですが、必要な所がいちばんプライオリティー が高いという格好でいくと、結局時間的に必要な所ほどいつまで経ってもできないというようなこと があり得るわけです。そうすると、やはりできる所からやっていくというほうが、現場としてはより 本来の適切な医療をできるだけ早く現場に持ち込むという意味では、意味があるのかなと思います。 もちろんプライオリティーの高い必要な所への教育システム等を含めてどうするかというのは、非常 に重要だと思います。 ○野口(英)構成員 実は、先ほど私はプロトコールが簡単にできるというときに、患者の同意はど うするのかと、もう1点は、ある処置をしていた薬に対して、救急救命士が必然的にそれをやる必要が あるのかと、2つ申し上げましたが、私は現場として、地域の救急医療の中で消防救急というのは、そ の地域の医療の提供体制と、自ら持っている病院前救護における技術力と住民の理解なのです。です から、理解というのは不可欠だと思いますから、できることからではなくて、必要な所からやるとい う視点ではないかと思います。 ○島崎座長 必要な所の教育システムをきっちり組んでくださいということですよね。それは当然で す。 ○郡山構成員 たぶんそのように考えていくときに、いちばん最後の所に「時間短縮」と示しました が、要するに全国から集めて、一定の所でやるというように教育を変えれば、それは全く可能なので す。 ○野口(英)構成員 まさにおっしゃるとおりなのです。だから、これはある面では、救急救命士の 処置範囲の拡大と言いながらも、基本的には地域の救急医療をどう設計するかという問題なのです。 であるから、住民がそこだけ求めるのなら、先ほど佐々木先生が言ったように、必然的に市町村消防 の単位でやるかやらないかという経緯を論じても、ナンセンスだと私は思います。 ○島崎座長 そのとおり。一応総論的な話としては、いまのようなことでディスカッションを打ち切 りたいと思います。基本的には、皆さんおっしゃっていることは当然の意見です。  もう30分しかないのですが、3つについて、一つひとつ大体10分弱でお話を伺いたいと思います。 各論の血糖と喘息、心肺停止の静脈の確保の資料の中身については、それぞれが各論のデータを出し ていただいているのですが、簡単に説明していただけますか。 ○野口(宏)構成員 いずれも最後の結論のところを。23頁の喘息です。結論的には有効性があると。 病院前救護で救急救命士にこれをやっていただくことに対して有効性があるという結論で、我々の委 員会ではそういう報告書にいたしました。  22頁の安全性ですが、我が国では一般に使用されているSABAに関しては、この辺が少し意見が分か れたところが無きにしも非ずで、我々の委員会では、大体これで結構だということですが、心血管系 への影響は軽微であるということで、これを非常に心配される学者もおみえになるということをあえ て申し上げておきます。  高齢者は若年者に比べて副作用が現われやすいということですから、その辺は注意をしなさいとい う注釈を付けた上で、6番の救命士に必要な教育ということで、喘息の発作の病態、この辺りは郡山先 生がおっしゃっているところですが、観察、判断、乳幼児の場合にもし使うとすれば、SpO2をきちん と測定できているかどうかを見極める能力が必要になるということ。そして薬剤の副作用と、もし吸 入器を使うとすれば、その理解が必要であるというようなことです。  基本的な結論を申し上げれば、特にアレルギー学会の先生方は是非やらせてくださいということで す。以上です。 ○島崎座長 続いて血糖は。 ○野口(宏)構成員 血糖は25頁です。低血糖に関してと、血糖測定の意味に関してです。極めて当 たり前ですが、27頁に正直に書かせていただきました。「6時間以内と比較的短時間でも重度の後遺症 を残しうる可能性が示唆される」というところで、極めてエビデンスの高い報告は、我が国では見つ かりませんでした。ただ、最近は外国でいろいろな研究があって、まだエビデンスを測るところまで いっていないようですが、後ほどの痴呆の原因になるというペーパーがちらほら出てきていることは 事実で、その程度であるということです。これはデータがあると思いますが、現場の救急をやってい る人たちの中で、低血糖そのものの事例はかなり多いということと、もう1つは、副次的なことと我々 は捉えて報告書にも書いていますが、意識障害の方に、まず低血糖の鑑別診断を病院前で、少し搬送 に時間がかかるような場合にはしていただくと、低血糖であるということがわかれば、そこでブドウ 糖の投与をして意識が改善すれば、次の病院選定に役立つ可能性がかなりあります。こういう事例が 現場ではかなり多いということで、委員会としては、これも病院前でやっていただくことは有効であ ろうという結論に達しました。 ○島崎座長 3番目の心肺機能停止前の静脈路確保。 ○野口(宏)構成員 これは先ほども杉本教授からありましたが、まずスキルに関しては、基本的に は問題がないと報告書には書かせていただいています。当然、個人の力量においては個人差が大きい ということも加味しておかないといけないということです。ただ、これは我が国でも、ある地域から かなりしっかりしたレポートが出ています。特にドクターカーやドクターヘリからのデータでは、病 院前で多発外傷に輸液をすることの有効性は証明されているという論文がありますので、病院前救急 で行うことに対して、特に救急救命士がすることに対しての有効性は高いという結論を出しました。 以上です。 ○島崎座長 ということで、大体先ほどからのディスカッションで、それぞれ端々に各論的な話が出 ているのですが、まず血糖測定と低血糖発作へのブドウ糖投与の処置拡大に関する問題点、課題。教 育システムが必要だ、MCの充実が必要だ、実習等の教育医療機関をどうするかという話は、3つに共通 することですから置いておきまして、それを除いて各論的にこのことに関していかがでしょうか。順 番が喘息からとなっていますが、いかがですか。 ○杉本構成員 資料2の3頁の下にある「患者の条件」というのは、(1)、(2)、(3)すべてが満たされてい るという理解でいいのでしょうか。 ○野口(宏)構成員 そうです。 ○島崎座長 この3つはand。 ○杉本構成員 (1)+(2)or(3)というわけではないですね。 ○島崎座長 これ、andで、(1)で(2)で、しかも(3)だというと、(3)がわからないことがあるのではないで すかということでしょう。 ○杉本構成員 血糖を測るからいけるということですね。 ○野口(宏)構成員 そうですね。 ○島崎座長 だからこれは(1)、(2)、(3)という理解で。侵襲のときであろうが何であろうが、血糖値を 測定して、その上でという理解でいいわけですね。 ○野口(宏)構成員 そうですね。 ○島崎座長 「測定を行う条件」。意識障害で、周りに誰もいなくてわからなければ駄目だというこ とですね。そういう患者の血糖を測定するのは駄目だということですね。 ○野口(宏)構成員 駄目というか、ちょっと曖昧ですね。 ○島崎座長 プロトコールも、もしできれば。 ○杉本構成員 血糖測定だけ、ちょっとここのところ、こうだというようにやっておかれたほうが。 ○島崎座長 andはどうなるのですかね。それはディスカッションで話が出ましたか。特に出なかった ですか。 ○野口(宏)構成員 そうですね。ちょっと記憶にないです。申し訳ございません。 ○杉本構成員 どちらとも、間違えられるといけないからと思って。 ○島崎座長 ほかにいかがでしょうか。野口先生がちょっとおっしゃっていた、非観血的測定装置を 使った血糖測定は、まだはっきりしないので、当分はペンディングにするということですか。 ○野口(宏)構成員 そういうことです。 ○島崎座長 わかりました。 ○永池構成員 低血糖のところでは「メディカルコントロール体制の充実が必要不可欠」と書いてあ りますが、具体的にはこれもオンラインメディカルコントロールと解釈してよろしいですか。 ○島崎座長 これは基本的に3つともメディカルコントロールですよね。 ○永池構成員 オンラインと解釈してよろしいですね。 ○野口(宏)構成員 はい。 ○杉本構成員 血糖はこの文面からいくと、教育体制・研修体制等ということになってくると、オフ ラインメディカルコントロールで十分という意味合いで私は理解したのですが、そうではないのでし ょうか。 ○島崎座長 私は3つともオンラインだと思って話を聞いていたのですが。 ○杉本構成員 血糖を測定するのもですか。 ○島崎座長 測定ということですか。 ○杉本構成員 測定して、要するに血糖値。 ○島崎座長 私はそういう具合に解釈していたのですけれども。 ○杉本構成員 そこはちょっと正確に決めておいたほうが。 ○島崎座長 and、orのところも含めて、オンラインで聞けばいいのかなと思ったのですが。 ○野口(宏)構成員 郡山先生、どうでしたか。私は、この辺のところはすべてオンラインだと思う のですが。そのもとでの指示を得てということで、許可というとあれですが、相談をしていただくと いうことで、先ほど樋口先生からもアメリカの話が出ましたが、アメリカは、実は勝手にやっている ことはほとんどないのです。それが事前・事後も含めて、みんなオンラインです。ですからオンライ ンを原則に、私はするべきだと思うのです。 ○郡山構成員 まず、するかしないかを有効性で決めて、それをするならば、オンラインにするかオ フラインにしていくのかとか、そのようにやっていけばいいのではないかなと思います。 ○島崎座長 まずやるかやらないかを決めて。 ○郡山構成員 とにかくオンラインでならよさそうだなと。要するに、それは患者に対する侵襲の問 題ですよね。オンラインでやるか、オフラインでやるかは、侵襲はどうかということと、それに対す る安全性がどうかというのは、まさにコストパフォーマンスの問題などいろいろあるので。 ○野口(英)構成員 どうしても有効かどうかという、先生方が研究されたことについて私は言及は できませんが、消防救急から必要性ということをどうしても考えてしまうのですが、いいですか、こ の追加資料を。 ○島崎座長 簡単にお願いします。 ○野口(英)構成員 追加資料1を見ていただくと、これは昨年の4月1日〜12月31日の速報です。 いちばん初めに、「糖尿病及び喘息に纏わる」と書いてありますが、要は搬送人員なのですが、そこ の4月〜12月ですから約9カ月間なのですが、初診時程度で“糖”と名のつく病気で運んだ方たちは、 死亡した方が1人、重篤が46人と、ずっと書いてありまして、トータルで3,835人というのがうちの 数字です。この分母というのが、約43万8,000人なのです。43万8,000人の中のトータルが3,835人 ですから、大体1000分の8ぐらいです。どの方たちを症状として対象にするかということによって、 よけいパーセンテージが違うということです。  “低血糖”と明確に書かれた方は、同じように43万8,000人のうちの2,869人。  下の枠を見ていただきたいのですが、意識レベル10以上というのは、要するに正常な会話ができる かできないかという境目で判断しますと、“糖”を含む傷病者が1,256人、“低血糖”と書かれたのが 1,152人です。こういったボリュームの中で、有効と必要性というのを私たちは考えてしまうのですが、 例えばこういった地域の中で、たぶん佐々木さんからもデータを出されていると思うのですが、どの 程度の頻度があるのかということが出てきて、ちょっと話がずれますが、先ほど杉本先生もコストと いう話をされましたが、まずそれが出てくるのが1つです。  もう1つは、救急救命士法そのものは、もともとが命にかかわるというところから始まって、救急現 場において必要な処置というもので我々消防機関も賛成してきているわけです。しかし、この話は、 資格ができたあとに更に何をやらせるかという議論じゃないですか。そうなってくると、本当にこれ が必要なのかと、または望んでいるのかという、その辺が非常に疑問だということが1つあります。  それから、対象を見たときに、先ほどの話をぶり返して申し訳ないのですが、我々はいまMCでは、 重症以上は救命救急センター、中等症の場合に二次救急医療機関と言われています。そうすると、わ ざわざ耳たぶを傷付けるとか、そういう状況でやるだけの必要性は、医療の中における病院前救護と してあるのか。どうしてもそれが納得できません。 ○島崎座長 血糖の測定と、糖の投与に関する、少し批判的な現場でのご意見というように受け取っ ていいですか。 ○野口(英)構成員 そのとおりです。 ○島崎座長 全国救急隊シンポジウムがこの前金沢でありましたね。消防本部を含めて80%か90%近 い回答率の全国アンケートで、かなり信憑性が高いなと思っているのですが、あれは総論的な話なの ですが、糖投与にかかわるほかのものもひっくるめて、やったほうがいいだろうという意見に80から 90%ぐらいの方は賛成されていました。野口委員がおっしゃったことは、実はそれまで少しひっかか っていて、現場は救急救命士から見て、あるいは救急隊員から見て本当にどうなのだろうと思ってい たのですが、あれを見て、意外とそういう方向で現場も考えているのだなというようには受け取った のですが。野口さんが言う各論の各地域と、実際の総論的に言う話とはちょっと違うかもわかりませ んが、私はそういう具合に受け取ったのですが。そういう意見があるというのは、現場に負担ばかり かかるよという話は出ておりました。ほかにいかがでしょうか。 ○樋口構成員 現場を知らない人が、何だかんだと言うのもちょっととは思いますが、今の野口さん の発言は、結局のところは、全くmayとmustが一緒になっているという話ですよね。そんな権限は要 らないよと。やれるようにされたら我々は迷惑だと言わんばかりの話というのは、ちょっと私は筋が 良くないのではないかなと思います。できるという話があった上で、その上で、本当に必要があるか どうかという話を考えるだけの専門家の裁量を発揮するのはそれからであって、入口のところでシュ リンクするというのはいかがなものだろうと、素人的な感想ですが。 ○島崎座長 僕も全国救急隊シンポジウムのデータを見て、意外とそういうことに関しては、それな りの積極性があるなというようには受け取ったのです。ですから、樋口委員がおっしゃるような方向 でと考えていたのですが。 ○総務省消防庁(溝口救急専門官) 一応データの話なので。あれは有効回答率が何パーセントかと いう話だったのと、インターネットにアクセスして回答したというので、そもそもそこで若干バイア スがあるということなので、オールジャパンの全体の救急救命士の8割がそうだったという話とは、ち ょっと違います。 ○島崎座長 回答者のでしょう。 ○総務省消防庁(溝口救急専門官) 回答者の有効回答率ということなので、そこでちょっとバイア スが。 ○島崎座長 回答者の有効回答率が80%ぐらいで、その80%か90%が、新しい3つの方向には賛成だ ったという話だと思うのです。 ○総務省消防庁(溝口救急専門官) かなり意識が高いというのが。 ○島崎座長 だから、まさに樋口委員がおっしゃったような話だと思うのですが。 ○野口(英)構成員 私は樋口先生のおっしゃるのはよくわかります。それで、ちょっと提案をした いのですが、本当はこういうのは試行するのがいちばん良いのです。つまりやってみて、どれだけの 有効性があるかということです。別に先生のおっしゃっていることはそのとおりなので、私はそれで 結構だと思うのですが、試行といっても、じゃあ実際にやるのかという話なのですが、やはりそうい ったことはなかなかやりづらいのだろうと思うのです。  そうすると、各消防本部にはそれなりに活動記録というデータがあるじゃないですか。何時何分に 救急隊が要請されて、最終的にどのように現場で処置をして、その後病院に搬送したと。我々は、そ の後の確定診断というのを持っていないわけです。ですから、先ほどお見せしたように「疑い」とか、 そのように記載されているとしか言いようがないのです。そうなってくると、実際にどのような活動 事例があったのかということと、1年ぐらい前なら、病院でもある程度の回答を、プライバシーの問題 はよくわかるのですが、その辺を継ぎ合わせてみて、いまここに書かれているいろいろなものが、ど のように反映できるのかということをやってみるというのも、私は必要ではないかなと。 ○島崎座長 試験的運用。 ○野口(英)構成員 まではいきませんので、データをもった症例研究というのが必要なのではない のかなと。そうなると、よけい問題点や有効性が出てくるのではないかということを提案したかった のです。 ○島崎座長 ここにある数の患者の実際の確定診断と予後をもう1回出せばいいのではないかというこ とですか。 ○野口(英)構成員 我々が持っているデータの中で、少なくとも東京消防庁ならばこれだけの件数 があるわけですから、そういった事例を前提にして、この有効性をそこで確認したらいかがですか、 ということを私は申し上げているのです。それには病院から確定診断をいただかないと、単なる低血 糖という初診の程度だけでは明確ではないでしょうから、そのあとの予後からしてどうだったという ようなこともできるのではないかと思います。そういう事例研究というか症例研究をやると、よけい 有効性が見えてくるのではないかということです。 ○島崎座長 野口先生、どうですか。 ○野口(宏)構成員 それは全くおっしゃるとおりだと思います。何ごとによらず、そういうデータ がなかなか取りづらいので、これを前提条件にするかどうかは別にしまして、基本姿勢としては全く そのとおりでございます。是非おやりいただければと思います。 ○島崎座長 例えばOKになったら、OKになったそれなりのシステムを作っていく中で、もう1回、そ ういうのも検討してほしいということですか。それとも、それが出てから是非を決めるということで すか。 ○野口(英)構成員 そんなに難しい話ではないと思うのです。先ほど郡山先生もおっしゃったよう に、地域によっても違うのだろうと思うから、例えば都市部でこのようなことが起きたときには、こ のような症例があったよ、事例があったよという中で、具体性をもって検討したほうが、いろいろな ものが見えてくるのではないですか。搬送の時間とか、いろいろと違いが出てきますから。 ○野口(宏)構成員 全くおっしゃるとおりなのですが、そうなるとこれは特区にするなり何なりで。 本来、いまは血糖測定自体が許可されていませんので。採血することすら、どのような方向にしろ全 く認められていませんので。 ○島崎座長 だから、その症状だけを見て、それがどうなっているのかというのを、ということでし ょう。 ○野口(宏)構成員 わかりました。それは失礼しました。 ○島崎座長 だけれども、それは東京消防庁がここに出してくださっているデータ以上に。医療機関 側のフィードバックがかかっていないからということですか。 ○野口(英)構成員 そのとおりです。 ○島崎座長 先ほど野口委員がおっしゃったように、日本にはほとんどデータはないのです、いくつ か症例報告的に小さなデータがありますが。実は、低血糖の予後を、プレホスピタルでどうしたらど うなったというのは外国にもないのです。そういう意味で、データを集めるのは大変だという気はし ます。北海道からもデータをいただいていますが、ここには「診断された」と書いていますが、これ は病院がそう診断したということですか。 ○佐々木構成員 札幌のデータは、本来は初診時の数であるべきなのでしょうけれども、後日、病院 から診断名を確認させていただいています。それで出してきたデータです。 ○島崎座長 説明していただけますか。 ○佐々木構成員 1番目「意識障害傷病者の血糖測定」ということで、低血糖の傷病者発生状況です。 低血糖と診断された傷病者は706人です。これは平成20年のデータで、6万2,788人のうちの706人で すので、1.1%です。東京も1.8%ですから、それほど変わらないと思います。その中で傷病程度別に 見ますと、死亡は1名、重症は11名、中等症は270名です。  事故種別で見ますと、急病の中が若干細分化されていますが、急病で672人。脳外科に関して65あ ることについては、推測ですが、意識障害などがあって脳外科を選定し、その結果は低血糖であった というところだと思います。そのぐらいの割合です。先ほど、病院選定でもというお話がありました が、0.1%ぐらいの搬送の中で、脳外科に低血糖で意識障害の患者さんが行っているというところです。 ○島崎座長 ということですが、どうでしょうか。いまからもう一度全部のデータを洗い出して、低 血糖を各医療機関にフィードバックしてといったらすごく時間がかかるような気がするのですが。こ の低血糖のデータは医療機関のデータですね。 ○佐々木構成員 医療機関からいただいた確定診断名から出しています。 ○野口(英)構成員 すべてを洗い出すというのは難しいので、ピックアップした症例がどのような ものなのかを見ていただく中で、いま現在研究された内容を確認することが実証的になるのではない かと思うのです。  ですから我々としては、仮に東京消防庁が協力するとするならば、「傷病名に“低血糖”を含む」 と書いてあるもので、中等症なら中等症というものが、少なくとも1,337件あって、そのうちのすべて を洗い出すわけにはいきませんから、我々が活動時間が平均だと思うものの中で、ある事案をピック アップさせていただいて、これを場合によっては厚生労働省のご協力を得て、病院からの確定診断と 突き合わせてみて、その中で、東京ではこのような事例が起こるのかということを、2、3こちらで報 告させていただいて、野口先生たちが研究されたものと突き合わせてみる。  我々だと、搬送時間が7分くらいになってしまうので、そうなってくると、我々の都市部だけでは駄 目なのでしょうから、例えば特区という話がありましたが、私はどこだかわかりませんが、そこの消 防本部が持っているデータの中で、こういう事例があるというものを同じように突き合わせてみると か、そういうことが必要なのではないかと思うのです。そうすると実証できるのではないかと思いま す。 ○野口(宏)構成員 やはり野口さんはわかっておられないのです。いま言っておられるのは、しな くてはいけないためのデータを集めなさいと言っているわけです。してもいいというだけの話、入り 口のところだけの話なのに、必ずしなくてはいけないというのだったら、これだけの必要性が本当に あるかどうかを検証しなさいということを言っているので、議論を完全にすり替えているのです。し てもいいという、本当の入り口のところだけの話なのです。  現実的にはそういう圧力がかかるだろうという意味は、本当はわかるのですが、そこを区別しない と議論は始まらないのです。札幌は札幌の事情があります。そういうことを全国一律でなくても許し てあげるような仕組みを作ったほうがいいのです。それを入り口のところで、全部駄目だという話に してしまうと、何も始まらない。  そういう何かの立証責任を負わせるというのだったら、してはいけないというデータを出してくだ さいというくらいです。してはいけないというような、そちらの方のデータを出してくれるのだった ら、それは患者その他は納得します。こんなことはしてはいけないのだよというような話であれば。 ○島崎座長 私自身は基本的に樋口先生のおっしゃることに賛成なのですが、野口委員がおっしゃっ ているのは、1%近い低血糖と言われている患者が、本当の意味で低血糖はこんなにたくさんいなくて、 低血糖の測定と糖投与はやっても意味がないのではないかということをおっしゃりたいのですか。 ○野口(英)構成員 先ほど私は、そのとおりだと言いましたので、それについては肯定しますが、 私がお話していることは否定的に取られているのですが、現場の風景として、このような搬送が行わ れているということを知っていただきたいのです。それは決して否定するために出すのではなくて、 その有用性を立証することにもなるのではないかということなのです。  つまり何かと言うと、現場でこういう患者さんが、こういう状態で発生しているということを踏ま えて、有用性を議論したほうがいいのではないかということなのです。それを地に着いて議論したほ うがいいのではないかということです。 ○杉本構成員 基本的にはmayとmustの話があるのですが、片方は実務ですから、mayというのであ れば、やってもいいというようなことは、救急救命士を含めて世の中にいっぱい増えてくると思いま す。ただ、これは実務として、それを実際にやらないといけないという立場になれば、必ずコストの 問題は付いて回ります。  それと、もう1つは受ける人たちのモチベーションの問題です。これは絶対に必要だからやろうとい うもので、これも重要です。それは必ずしもmayとmustだけの話ではなくて、実務としてやるときに はどうなるかという見方をすべきだと思います。野口さんがおっしゃっているのは、東京の消防庁の 責任者として、こうだろうという、当然の理論であろうと思います。  それと、例えば気管挿管もそうなのですが、気管挿管をやることが本当に救命率上昇の役に立った のかということも、実際に評価し直さないと、あのために費やしている経費は大きなものがあるし、 医療側も麻酔科を中心として、患者さんも先生も含めて、大きな負担をかけているわけですから、何 でもやってOKだよといかないのが1点です。  それともう1点は、これに伴って救急救命士の負担が増えることも事実です。救急救命士が、それは mayだからやれなくてもいいということで、それで国民が納得するならいいけれども、基本的には、ど うしてやってくれなかったのかと。私の知っている中には、挿管をやることをあえて避けている救急 救命士もいます。それは、いろいろなトラブルが起こったときに対する補償もはっきりしていないと いうところにあるわけだから、効率性が高いのはいいのですが、効率性があまり期待できないものを 救急救命士に負担をかけることについては慎重に考えておく必要があると思います。 ○島崎座長 最後に樋口さんにお聞きしようと思っていたのですが、mayでいって、実際に実習してOK だということができる救急救命士がいたとして、それがやらなかったら、法律的に訴えられるのです か。ちょっと考えておいてもらえますか。 ○郡山構成員 それは声を大にして言いたいのですが、そもそも救急救命士は医師の指示の下に行い ますから、医師がオンラインでやるということであれば。 ○島崎座長 やれと言ったときにやらなければ、法律的に問題が。 ○郡山構成員 本来、オンラインのプロフェッションは自分で責任を取るべきなのです。それがプロ フェッションの定義ですから。しかし、それが嫌だというのであれば、医師が責任を取りましょうと いうことでしょう。 ○島崎座長 それがまさにメディカルコントロールですね。野口さん、そういうことなので、一部、 札幌もこのようなデータが出ているので、いかがですか、そういう形で。血糖の測定と糖投与を一度 やってみるという方向ではどうでしょうか。まだデータが足りないということですか。 ○野口(英)構成員 ここは出したデータはすべて開示しなければいけないのですか。例えば我々の 持っている、現実的にはこのような患者さんが発生しているということを見ながら議論していただい たほうが、有用性を確認するのでもいいのではないかと思いますので。 ○島崎座長 こういう患者さんもいますというのは、低血糖だと思ったけれども、低血糖ではなかっ た患者さんもたくさんいますという意味ですか。 ○野口(英)構成員 いや、逆に言えば、低血糖というのがわかった患者さんについては、こういう 場所で、このように発生しているということを見ていただいたほうがいいのではないかと思いました ので。 ○島崎座長 そういう患者の発生率ですか。 ○野口(英)構成員 そうです。だって、これはもともとは病院前救護の話ですから、それで議論し ていただいたほうがいいのではないかと思います。 ○島崎座長 野口さんから出していただいた追加資料1と、札幌で出した佐々木さんのデータが非常に 近いので、現場での救急救命士の症状による低血糖の診断は、そうおかしくないのではないかと思っ て見ていたのですが、まだそれで不足だということであれば、そういう形にして、その結果を見てと いうことになります。  だけれども、これは大きく違っていて、低頻度でしか低血糖は発生していなかったというようにな ったとしても、血糖を測定して、低血糖に糖投与を行うというのは、全国で0.001%でもできるという ことで、その患者が本当の低血糖であれば、私はそれはそれでいいのではないかと思っているのです。 頻度と関係なしにということです。やりなさいという話とは違うと思っているので、先ほどから樋口 さんに、そのとおりだなと思っているのですが、どうですか。 ○野口(英)構成員 杉本先生がおっしゃっていただいたように、我々としては実務という部分があ りますので、どうしても有用性というのと重なるのです。 ○島崎座長 私も全国救急隊シンポジウムのあのデータを見るまでは懐疑的だったのですが、全国デ ータから見ると、80%から90%ですから、60か70%は皆さんOKなのかなとは踏んでいたのです。 ○郡山構成員 低血糖はACSのように特別な所に行くというのではなくて、二次病院に行けばいいので す。うちに来ている研修生にやっているのは、どこでも20分ぐらいで二次病院には行くのです。とな れば、20分の間に糖を付加するような意味があるのかということだと思うのです。そこはなかなか明 らかにならないのですが、そこを明らかにしたほうがいいと思っています。 ○島崎座長 そういう意味でも、いいのではないかという意見ですし。 ○総務省消防庁(溝口救急専門官) 先ほど地域性で、mayという立ち位置に立った場合に、ベターな 点はどこかと。要するにデメリットもありまして、時間を要する部分がありますので、どちらがいい かという判断材料がほしいということになると思います。だから、mayとした場合でも、ここの地域は 何でやらないのか、ここの地域は何でやるのかということが、説明するときに必要になってくるので す。そうでないと、病院がしっかりしているからですよという話だけでいくと、選択できないサービ スであるが故に、病院みたいに選んで行くということができないので、その辺の目安は要るのだろう と思っています。ただ、それがいきなりできるわけではないです。  先ほど野口部長から、試行的なのがいいという話もあったのですが、仮にmayで進めて、試行的なこ とができるのであろうかということは、確認させていただけるとありがたいなと思います。 ○島崎座長 ほかもそうなのですが、例えばゴーサインが出て、いろいろ教育システム、MCの問題、 経済的な問題も含めて、教育等にかかるお金等も含めて、なかなか大変だということで、ある地域で 試験的運用をやる方向というのはありなのですか。 ○高宮指導課長補佐 医療に関することなので、基本的に、実験的に何かの行為を行うことには慎重 な検討が必要だと考えています。ただし、過去、業務範囲について、モデル事業を実証事業としてや っている例はないかと言うと、特別養護老人ホームでの痰の吸引とか、救急救命士の薬剤投与につい てはドクターカーでの検証をやった後に、それを踏まえてもう一回検討をし、薬剤投与を認めていま すので、実証研究のやり方というのは、考えるとそれなりのものはあるのかもしれません。そこはま たこちらで考えて、検討会の場でご相談させていただくということもあります。 ○島崎座長 ありだという話になってからですよね。駄目だという話になると、試験的にはできませ んね。 ○高宮指導課長補佐 はい。 ○島崎座長 モデル地域でやるという手はOKだと。 ○高宮指導課長補佐 検討会の場で、そのような検証が必要だという結論であれば、そのような方法 については、またこちらで考えたいと思います。 ○野口(英)構成員 もしそれができるのであったら、やられたほうがいいと思います。 ○前野構成員 お話を聞いていましての感想ですが、これまで審議会の流れは救急医療の救命力を高 める観点から救急救命士に可能な業務拡大を容認していこうというものと理解していました。しかし、 今になって、野口構成員からそのような意見が出て、とても違和感を覚えます。日本の救急をリード する東京消防庁として、そうなのかなと思うと、個人的にとても残念です。現場の救急救命士のモチ ベーションがもっと拡大できるのではないかという積極性に基づいているのかと勝手に判断したので すが、そうでもないということですね。  救急救命士に容認すべきか、審議している3つの業務としての中で、低血糖に関しては、いちばん基 本的なものであって、そう難しいものではないのではないかという認識を持っています。例えば糖尿 病治療をしている患者本人が、自分がやることができなかった場合、代替してやるものでないでしょ うか。3つの課題の中では、いちばん基本ではないかという認識を持っています。それが、この時点で、 果たして必要かどうかという論議になると、また元に戻ってしまいます。  もう1つは、東京消防庁は搬送までに7分程度ということですが、それは東京消防庁の特性であって、 そんな早くいかない地域差も多々あります。血糖治療に関しても、そういう地域のほうがより切実な 問題であって、東京消防庁の事情を中心に議論するのは、全国的には果たしてどうなのかという気が します。  確かに救急救命士の負担が増えるということは、事実でしょうが、血糖値ぐらい大した負担になる のでしょうか。数的にはそれほど多くないものですし、地方であれば、病院まで行く間に、命取りに なることは考えられます。やはり救命を中心に考えるべきであります。数の問題と言われましたが、 明らかに命取りになるケースが考えられます。糖尿病患者はもっと増加していくものでありますので、 高齢社会の時代に対応するあり方ではないのかと思います。血糖値でそのような障壁を設けるのであ れば、他の2つの課題に関しても、次に行かない感じがします。救えるべき命を救う救命力のアップを 目指す救急医療のあり方というところで議論をしないと話が進まないし、また新たに調査云々という のは、時間の浪費ではないかと思います。 ○島崎座長 ということなので、野口さん、どうでしょうか。地域での試験的運用も含めて、一応OK だということで。 ○野口(英)構成員 前野先生のお話に反論するわけではないのですが、私が言いたいのは、先ほど 杉本先生もおっしゃっていただいたように、自分の頭の中でmayとmustをなかなか分離できないので す。現実的に我々が活動をする中で、さまざまなことを考えているわけです。ただ、地域によって違 うということはおっしゃるとおりであって、我々東京消防庁ではこうだという話なのです。  私がデータをこのようにやったらいかがという話は、当然地域差はあるのでしょうから、そのとき に発生した患者さんというのがどのように処置されて、どのように運ばれているかを見ながら議論し たほうが、より内容が煮詰まるのではないかということを申し上げているのが1つありました。  それから、どちらにしても、現実的に活動するにあたって、そういう試行的なことができるのなら、 それはやったほうがデータとしてはよりアップデイトできるのではないかというお話をしています。 ○島崎座長 ゴーサインをするにしても、ある地域での試験的あるいは実証的運用を含めて検討する ということとさせていただきます。細かいところは、具体的にシステムの運用などいろいろなことが あるのですが。 ○永池構成員 いま座長から、ゴーということで一定の見解を得たというご発言に対してです。そう した見方があることを前提に話しながら、地域全体の救急医療体制のあり方も踏まえながらというご 発言も中にあったかと思います。  特にプレホスピタルの中で、脳卒中等との鑑別が必要な糖尿病の低血糖発作を鑑別するために、血 糖値を測定するほかに何か手段はないかという議論は、今後必要ではないかと思っています。  例えば諸外国の中で、「私は糖尿病患者です」というIDタグを身に付ける指導・教育が十分になさ れており、そうしている方が多いと思います。それがあった場合には、より適切な搬送機関をその時 点で判断できる材料にもなろうかと思いますし、もしここで低血糖を疑い、血糖測定を行う患者の条 件の中に、治療歴があるとか、疑われるということをより確実にするといった方法も、いまのような ことを更に国として検討していくことも加えられてはどうか。検討会の報告書の中に、そのような点 を盛り込んでいただいたらどうかと思いました。 ○島崎座長 昔から、病歴のチップを持っているとか、タグを持っているとか、それが、例えば3頁の (2)、(3)のところで、よりはっきりするのではないかということですね。野口さん、よろしいでしょう か。 ○野口(英)構成員 結構です。 ○島崎座長 次に2番目、重症の喘息に対する吸入β刺激剤の使用です。先ほど野口委員からデータを 示していただきましたが、いかがでしょうか。 ○野口(英)構成員 刺激薬は、所持した方に対してやるという前提があるのですよね。つまり、救 急隊がそういう患者さんを診断して行うというのではなくて、携行してやるというのではなく、患者 さんが携行していることを前提にしているのですよね。 ○野口(宏)構成員 そうです。 ○島崎座長 そういう意味では、かなり限定的だと思います。 ○杉本構成員 それでいいのですか。常備しているような形で書いていませんでしたか。従事者は常 備しないという理解でいいのですか。「持っていない時」とか、どこかに書いてあったように思いま すが、私の読み間違いだったらそれでいいのですが、一度確認しておいてください。 ○島崎座長 医師から指示されていて、そのときたまたま持っていない患者をどうするかというのは わからなかったのですが。 ○杉本構成員 そんなことが書いてありましたね。その中で、23頁の7の「今後の課題」の(1)で、 「手元に欠けている状況もあるので、救急隊が装備する必要がある」というのは、今後の課題という ことで、今はそれは要らないと。今回それを行う場合に、これは要らないという理解でいいのですか。 ○野口(宏)構成員 そうです。 ○島崎座長 今回は、本人が持っているというのが前提ですね。 ○野口(宏)構成員 そうです。 ○島崎座長 それから、先ほど野口委員から話がありましたが、インフォームドコンセントの取り方 で何かおっしゃっていましたね。 ○野口(英)構成員 これは認めるか認めないかの話とは違うのですが、要するに、所持したものを 使うというときに、私はそれを使ってほしくないと言われたときにどうするかなのです。そこまで救 急隊がやることを求めているのかということにつながる話なので、大事なところだと思ったのです。 ○野口(宏)構成員 基本的には、患者さんの同意が要りますので当然なのですが、この喘息に関し ては、最初の検討の段階では、意識のない人にやっても無駄ではないかという意見もありまして、そ れでこの委員会からご指示をいただいて、喘息の専門家の意見を聞きなさいということで、専門のア レルギー学会の先生に来ていただいて、積極的にやってくださいということで、ものすごく積極的だ ったということです。  そういう意味ですから、患者さんの同意が取れる取れないというのは、持っている場合には代わり にやるという前提での同意なのです。ですから、意識のある方で、私はこれ以上吸いたくないとおっ しゃれば、ある程度は説得するでしょうけれども、それは普通の医療現場と同じ対応でよろしいと思 います。 ○総務省消防庁(溝口救急専門官) 必ず起こり得るだろうと思っていることが1点あります。これは スプレーに限定していますので、ディスカスタイプのようなものは除かれるのだと思いますが、おそ らくステロイドのスプレータイプのものを喘息の方が持っているときに、樋口先生もおっしゃいまし たが、救急救命士はやっていいことだけをやっているので、ステロイドを吸入させた場合、いいのか という話も出てきてしまいそうで、若干懸念するところです。そこは筋を通すような形で、持ってい るスプレー缶は全部よしとする考え方も1つの考え方としてあるでしょうし、そこはあるかなと。それ は実際にやってみて、そのような問題点があるのだといってまとめていくという、mayの立場に立つと いう方向もあると思いますが、そこは、若干念頭に置いていてもいいのかなという気がします。 ○島崎座長 今回はβスティミュレーターに限って検討しているので、ステロイドやほかの薬剤はど うかという話は今後ですね。今回それを入れてやり出すと、OKという結論をここでそう簡単に出さな いほうがいいと思います。 ○総務省消防庁(溝口救急専門官) 走りながら考えていけるということがあるのであれば、かなり いけるのではないかと思います。 ○島崎座長 今後の課題として、ACSの患者のことで話がありましたが、今回はこの薬剤に限るという ほうがいいと思います。 ○郡山構成員 先生のおっしゃるとおりだと思います。つまりmayかmustかということで、今回は mayということで、まずはβスティミュラントでやって、それで全国で。先ほど野口委員がおっしゃっ たように、メディカルコントロール下の中で検証作業として当然上がってこなければいけないことで すから、そこで、持っていなかったのでできなかったとか、持っていて、やったらもっと悪くなった とか、そういうのが出てくるのではないでしょうか。  そうすると、その先にステロイドのことも出てくるでしょうし、冠拡張薬のことも出てくるでしょ うし、本人の持っているスプレー缶は全部そうなるといいかもしれないとか、そういう議論ができて いくのではないでしょうか。 ○島崎座長 β吸入刺激剤のみに限っての使用に関して。 ○杉本構成員 これは確認ですが、野口先生が、吸入に関しても意識障害云々とおっしゃいましたが、 これは意識障害は関係ないという理解でいいですね。 ○野口(宏)構成員 そうです。 ○島崎座長 これを見たら、適応の中には入っていないですね。 ○杉本構成員 喘息で意識障害というと、かなり重篤かなというところがありますが、それは関係な いと考えていいわけですね。ご本人が持っていて、もちろん意識があって、普通の場合は自分でやら れると思いますが、何らかの理由でやれないという場合に、救急隊の救急救命士が代わりにやると。 ○郡山構成員 意識はない患者で、倒れて、もう死にそうな人というのがいるから、その人々にやら せてくださいというのが、アレルギー学会の先生の意見であって、そういう人ほど必要なのではない ですか。 ○杉本構成員 もちろんそれはいいのですが、いま意識障害ということを前提にされているのか、意 識障害がなくてもやるのかということを明確にしておかないといけないということです。 ○島崎座長 これを見たら、研究報告書ではそれは入っていないですよね。 ○杉本構成員 それをやっておかないと、意識障害といってもレベルは随分あるわけです。これはCO2 のナルコーシスか、あるいはハイポキシアが多いと思いますが、そのときの意識レベルは随分差があ るから。 ○島崎座長 直接適応の中には入っていないということでよろしいと思います。 ○杉本構成員 確認ですけど、それを外してやるという理解でいいわけですね。 ○郡山構成員 私どもは意識障害の患者にもやっていいと思っているのですが。 ○島崎座長 意識障害は関係ないですよということでしょう。 ○杉本構成員 持っていてやってもいいんだろうけれども、意識障害のない人にやっても問題はない のかという質問です。 ○島崎座長 科研研究班としては、そういうことだったのですよね。 ○野口(宏)構成員 郡山先生、どうでしたかね。大事なところですので、確認させていただきます。 ○郡山構成員 意識障害があってもなくても、意識が不鮮明な人でも、300の人でも。 ○島崎座長 本人ができなければいいと。ここに書いているような適応がきっちりとあれば。 ○野口(宏)構成員 杉本先生のご指摘は大変重要です。私も無責任で申し訳ないのですが、アレル ギー学会の人たちはこういう喘息で完全な意識障害というよりも、もちろん酩妄状態を想定されて言 っておられるので、それであえてこういう書き方にしていただいたということだと思います。  ただ、アレルギー学会の専門家の人たちは、吸入療法は有効だということで、データとしてきちん と持っておられますので、是非ご理解いただきたいと思います。 ○杉本構成員 私も呼吸器をやったことがあるものですから、この中ではこれが一番必要性が高く、 有効性が高い処置かと思いますが、そのときに意識障害というのが曖昧な形で議論になっていたもの ですから、それは明確にしておいたほうがいいかなと思ってのことです。 ○野口(英)構成員 よくわからないのですが、22頁の(a)で、「SABAの処方歴があり、重症な副作用 を認めていない」というのが適応条件になるのですよね。「(a)〜(c)は必須条件」とありますが。こ れは純粋に分からないので聞くのですが、例えばある患者さんがいて、これをやるというときに、先 ほどのしっかりした診断ができなければいけないという中に、その方は確かに薬を持っているという ことは、重症な副作用は認めないという話になるのか、それは別個確認しなければならないという話 になるのかということなのです。つまり、実際にできるかできないかというときに、重要な副作用が ネックになるのだったら、それをどうやってクリアするかを考えておかないと、議論が空回りしてし まうと思ったものですから。 ○島崎座長 処方されているということは、基本的には、動悸、不整脈、頻脈とかの副作用のない患 者にしか渡さないのでしょう。 ○野口(宏)構成員 はい。そう理解しています。 ○島崎座長 プロトコールの中で、そういうことを含めて、絶対に重要になってくると思うのです。 ○杉本構成員 これは先ほどの低血糖もそうなのですが、基本的に既往歴がある云々、喘息の場合だ と小児喘息があって、大人になって残っていない人もいますから、この辺の細かい文面とか文言とい うのは、もう1回詰めて点検したほうがいいと思います。  ただ、スプレーを出していても、随分昔にもらったものとか、中には、ご家族の中に誰かいて、同 じような症状だからと使っている人が実はいるのです。共用している。そのようなことがあるので、 これは実務的な問題として、詰めたらいいと思います。 ○島崎座長 いずれにしても、教育システムと平行して、3つともプロトコール等は非常に重要だと思 います。ということで、このβ刺激薬の使用は許可してもいいということでよろしいですか。 (異議なし) ○島崎座長 ありがとうございました。では3番目の「心肺機能停止前の静脈路確保と輸液の実施」で す。4頁に、多発外傷や明らかな中等量以上の出血があると推定される重度外傷傷病者が対象であるこ と、MCの指示下でやること。これはオンラインメディカルコントロールはすべてにそういうことだと いうことです。  質問ですが、コンファインドスペースメディスンで、圧挫されている患者などは、クラッシュイン ジュリーの準備状態の患者にはどうですか。 ○野口(宏)構成員 適応になります。 ○島崎座長 ほかにどうでしょうか。私は、それは非常に重要だと思うのですが。 ○杉本構成員 心停止前の輸液には、静脈路の確保が末梢からそれほど簡単にできるのかという疑問 があります。それが1点です。  それと、先ほどドクターヘリやドクターカーで、病院前から輸液をしたほうが成績がいいというデ ータが出始めているというお話があったのですが、それをそのまま今のプレホスピタルケアに演繹す るのは危険ではないかと思っています。  というのは、ドクターカー、ドクターヘリは、医師等も含めて、そのエキスパートが乗って行って いるから、輸液だけではなく、その間に病院の救急室と同じレベルとは言いませんが、医師がエキス パートとして行い得る薬剤等も含めてのコントロールをしていることが前提になっています。輸液路 をとることも難しいですが、仮に輸液路をとることができたとしても、それをもって成績がよくなる とは簡単に言えないと思います。  もう1つは、いま言ったように、輸液路を確保する場合は、出血性ショックは心停止と本質的に違う ので、非常に難しい中で、おそらく現場でいちばん時間を費やすだろうというのは、外傷患者を長く 診てきて、挿管などは時間はかかりませんが、末梢からラインをとることになってくると、いちばん 苦労するところで、現場ではそこにいちばん多くの時間を費やしてしまう危険性が高いと思います。 その前の低血糖あるいは喘息発作は、救急車に収容した後でも、走りながらでも可能でしょうけれど も、こちらは動いている救急車の中で輸液路を確保するのは極めて難しい処置になると思います。こ れは、それこそ実証をやられる必要性はあると思います。 ○郡山構成員 私はやらせるべきだと思っています。先生のおっしゃるとおり、心肺停止後の患者と 心肺停止前の患者と、どちらがルートをとりやすいかというと、心肺停止前のほうがとりやすいです よね。 ○杉本構成員 それは根本的な間違いです。心肺停止後のほうがとりやすい。それはなぜかというと、 末梢血管が収縮するのは、神経があって交感神経が働いているから収縮するのであって、心停止を起 こしてしまって、中枢神経の働きがなくなったら血管は緩むから、だからとりやすいだけのことです。 ○郡山構成員 それはしかし、ある程度時間がいかないと。 ○杉本構成員 いや、出血性ショックのときのほうが、一般には難しい。 ○郡山構成員 出血性ショックで、もちろん交換神経がぎんぎんになっているときにとりにくいのは わかるのですが、そこのところは先生とあれとして、次に私が図の5で挙げていることは、静脈路確保 に要する時間の訓練効果というところで、少なくとも2分30秒以内にできるようになる。つまり、こ れが現場まで5分の中での2分30秒かというなら意味がない。だけれども、JR西日本の事故を見れば わかるように、挟まれてしまってから1時間とかかかる人がいたときには、これは意味があるのだと思 うのです。そうなると、私は、消防の人間である救急救命士こそ、災害に立ち会う人間として、これ は絶対にやるべきだと思っています。 ○杉本構成員 だから私が最初に、図5はハイポボレミックショックの患者さんでやられたことかと聞 いたのは、そのためです。これは人形でやられたということですから、人形でやったことを、ハイポ ボレミックショックの患者にそのまま演繹することは暴論と言ってもいいぐらい無理な話ではないか と思っています。 ○野口(宏)構成員 杉本先生のおっしゃることも郡山先生のおっしゃることも、当然、それなりに 意味があります。先ほども樋口先生に整理していただいたのですが、まさにmayとmustなのです。や れる状態を作ってあげたいのです。効果があることは間違いないのです。これはスキルの問題は別な のです。我々もそうです。だから鎖骨下をやったり、中心静脈のああいう方法を、アメリカなどでは 救急救命士にも教えているのです。日本はそこまでは暫くは駄目でしょうけれども。だから、とれた らの話なのです。 ○杉本構成員 それは、先生がこれを書かれている前提に反しているのではないかと思うのです。先 生はここで書かれて、輸液をしたものと輸液をしていないものとを見たら、有意差はないと。まさに エビデンスそのものがないということをおっしゃっています。実際に動物実験でもそうですが、輸液 をやることによって、かえって出血を増強させますから、それで予後が悪くなるという研究もありま す。だから、そういう意味合いでも、エビデンスを基にやるという研究報告そのものの中の、最初の そういう考え方そのものに則っていないことになるのではないかと思って、このことに関してはエビ デンスがない中で、どうしてそれをやることになってしまうのか。これは言い換えたら非常にコント ラバーシャルな世界の話ですから、それをやる必要が本当にあるのかどうかを慎重に考えるべきだと 思います。 ○島崎座長 出血性ショック以外はどうですか。例えばクラッシュインジュリーなんかは。リパーフ ュージョンを起こす前に輸液するというのは、私は有効だと思うのですが。 ○杉本構成員 いま、尼崎のJRの話も出ましたが、あの場合もそうなのですが、そこには医師を含め てたくさんの人間が行っています。だから、実際には点滴をとりながら処置をしていますし、むしろ このことを考えていくのであったら、出血性ショック、閉じ込めを含めて考えるのであったら、医師 を含めて、ドクターカーであろうが、ドクターヘリであろうが、どのような形でそこにどのように人 を投入するかを考えるべきではないかと思います。 ○島崎座長 災害現場で、ある一定の時間内に救急救命士が行く時間のほうが早いのですが、医師も 行くのだから、医師にさせたらという話がありますが、その話が出たときに、災害現場へ行っている DMATの先生方から、閉鎖空間とか非常に危険な場所に医師自身が入って、素人がそういう場所で医療 処置をするよりも、むしろ経験を積んだ救急救命士がある種の危険を冒して、回避しながら医療行為 をしたほうが有効だろうという話が出ました。それで、医師が現場の危険な場所にあえて入って行っ て、逆立ちしながらとは言いませんが、挿管するようなことはなしにしましょうという話になったと 思います。そういう意味では、私はいいのではないかとは思っています。 ○杉本構成員 そういう設定で、やはり明確にしておく必要があると思います。救急医療と災害医療 とは、本質的には状況や設定は異なってきます。だから、災害医療のことを前提として、日常の救急 医療ではこういうことはやる、やらないという議論であったら、全く違う議論になってしまうと思い ます。  災害時は非常時ですから、いろいろなことが許されます。神戸の震災でもそうでしたが、平時でし かできないことをしていたらできないのは間違いないのです。そこのところです。平時の救急医療と しての議論とされるのか、あるいは全国にこういうことをやろうという形でいくのか、あるいは災害 時のことを含めてこの議論をしようとするのか、ここは明確にして議論をしないと、災害時にこうい うことが起こるからということでやれば、どんどん拡大していくと思います。 ○島崎座長 私自身は、災害時も含めてと理解していたのです。というのは、いま言った閉鎖空間で 閉じ込められて圧挫の患者は大災害時にのみ発生するわけではなく、車に引かれた場合にも起こるし、 1つの家屋の崩壊だけでも起こると考えていたので、これはそのまま大災害時の患者にも適応できると、 両方を頭に入れていたのです。それだからコンファインドスペースの患者には有効だと思ったのです が、先生のおっしゃるような、出血性ショックはどうなのという話になってくると、ちょっと難しい です。  ただ、それをやると悪いというデータは本当にあるのかという話になったら、マドックスというの が、出血性ショックに輸液をしたらかえって死亡率が増えたというのがありまして、あのデータだけ です。あれはアメリカではかなりクリティサイズされているので、何とも言えないです。 ○杉本構成員 逆にここでも出ていますように、それをやったら成績が良くなったというデータが少 なくともここに示されていないです。これは統計学的には有意差がないという形になってしまってい るわけです。統計学的に有意差がないというのは、効果があることは証明できなかったというだけで あって、効果があるかどうかわからないということです。 ○島崎座長 日本で許されていないから、データがないからね。 ○郡山構成員 出血性ショックのところでデータがという話なのですが、それは輸液を全開にするの か、絞るのかというのは、あとでオーダーを出せばいいことだと思うのです。それが1点です。  私は12頁のところで、「搬送時間が長くなる状況での輸液路確保」ととにかく書いているのです。 その効果については言っていなくて、現状、心肺停止患者に対しては、それが認められているという 大前提があって、それがあるのであれば、これをすることで誰に対して害が及ぶのですかと。つまり、 輸液路確保は心肺停止患者にすることで、悪くなることは、いまのところ搬送時間だけです。そうで あれば、搬送時間は2分何十秒なので、それが40分かかる人にとって2分何十秒というのは、それは やはり福音ではないですかというのが私の意見です。 ○杉本構成員 それは、救急救命士に気管挿管も含めて、心肺停止前の者にされたかという前提をも う1回確認する必要があると思います。心肺停止に関しては、それを放っておいて、それ以上悪いこと はないから、いろいろなことが行われて、仮に挿管の誤り、あるいは心破裂が起こることもあるでし ょうけれども、そういう危険性があっても、心肺停止を放っておいて死亡するよりも、悪いものがな いから、それは認めようというのが大前提です。それを抜きにして、心停止の者にやっているから輸 液を心肺停止前の者にもやってもいいとなってくると、話はどんどんと拡大していってしまうだろう と思います。 ○郡山構成員 一言だけ言わせてください。大前提で書いてあるのは、とにかく救急救命士は医療従 事者と認められているわけです。国民であれば適切な医療を提供するというのが、私たち医療従事者 の大前提だというところがあって、その関連するサービスの連携というところに、救急救命士は当然 含まれるはずだと。その大前提に立てば、平成3年のその状況と今とは違ってきているというわけでし ょう。それこそが、行政がやることなんだと思うのです。 ○島崎座長 杉本先生のおっしゃっているのは、輸液路を確保して輸液をすることが出血性ショック に有効だというデータがないから駄目だということです。だから、ほかのはいいのですよね。災害時 にだけクラッシュインジュリーが発生するわけではないです。偏に、出血性ショックに駄目だとおっ しゃっているのは、輸液路がとれないから駄目だというわけではないですよね。 ○杉本構成員 1つは輸液路がとれないから。 ○島崎座長 それはできるということであれば、mayであればいいと。 ○杉本構成員 そうです。時間がかかるという現実的な問題です。  もう1つは、この報告書を書かれている前提として、エビデンスがあるものという前提で書かれてい ます。ところが、いまの話は、これに関しては有効性を証明していないという中で、どうしてこれだ けに関してはそのようにやられるのかと。この報告書の一貫性に関して、これはどうしてですかと言 われたときには、私はこの委員会の構成員として、それに責任を持って答えることはできないだろう と思います。 ○島崎座長 1つには、日本ではその有効かどうかのデータは出せないですよね。というのは、心停止 前の輸液路を確保して輸液することが認められていませんから。諸外国では、アメリカ等を含めてや っているのですが、それにかかわるデータは自明の理で出していないのではないですか。 ○杉本構成員 それはまず自明の理ではなり得ないと思います。もしデータがあるのだったら、必ず 有効であるというなら、必ずこれはやらないと。それほど、これは科学的に考えても自明の理と言え るようなレベルの話ではないだろうと。 ○島崎座長 有害というわけではないですよね。 ○杉本構成員 もう1つ言っておきますが、外国のデータを読むときに、日本でやっている救急救命士 に認められている範囲内の行為でやっていくことを前提にしないと、例えばカテコラミンとか昇圧剤 を同時に使うこともできますよとか、あるいはこういうことができますという前提の下で、それをや ったものとやっていないものを比べたら、差が出る可能性は多いです。それはいま言ったように、ド クターカーあるいはドクターヘリで、ドクターあるいは看護師も含めてエキスパートが行って、実際 に輸液だけではなく、それに伴う一連の処置をやりながら搬送した場合と、そうでない場合を比べた ら、それは差が付くだろうというのと同じことが。 ○島崎座長 では、データを出しようがないではないですか。 ○杉本構成員 データがないということだったら、この報告書の最初の設定で言えば、そういうエビ デンスがないものは進められないことになるだろうというのが、私がさっきからお聞きしていること です。 ○野口(宏)構成員 論理性からみれば杉本先生がおっしゃるとおりなので、データがないことは事 実です。だからこのような報告書になっているのです。たくさん書いているのは、メディカルコント ロール下できちっと、教育も含めてコントロールをしなさいということです。今度は逆に、やっては いけない条件設定、これはこういうことだから駄目だよという条件設定をするしかしようがないわけ です。ただ、それはまさにこの報告書が、先生がおっしゃったとおり、エビデンスのあるものだけを 全部捉えたという書き方をしておりますが、輸液に関してはそうではないのです。エビデンスなどど こにもないと言った方がいいのです。これは郡山先生がおっしゃっていただいたことで、あえて2つは 言いませんが。そういう意味でこれはいろいろ書いて、先生がおっしゃったようにある程度現場で安 定させたほうが良い、搬送が良いとかその程度しかないのです、現場では。  ただし、一般我々医学常識として輸液をしないで処置しますか。静脈路を確保して、ある程度輸液 で、維持でもそうです。あとは医療行為の選択になりますから。それをやらせないというか、許可を しないで何が成り立つのですかというところなのです。報告書に関しては、先生の論理性に勝つもの を私は用意できていませんけれども、これは宿題としてこういうものを出したほうが。エビデンスが ありませんからやるとは言えないという結論でもそれは構いませんけれども。そのような報告書は世 界にないですよね、輸液に関しては。以上です。 ○杉本構成員 今おっしゃっている中で、救命救急センターなり病院にこのような患者が運ばれてき て、輸液路を確保しないでやることはないでしょうと。それはまったくそのとおりです。でも、その 前提が違うと思います。病院でやるというのは、それに伴う一連の医療行為をやることが前提になっ ております。いま言いましたようにドクターカー、ドクターヘリが現場に行き、そこから輸液を含め て他の処置もやっていくことに関してもやれるということであれば、それを止める必要は全然ないこ とです。しかし、救急救命士にいま認められている範囲の中で、そういう病院なり、ドクターカー、 ドクターヘリでやれば有効だからといって救急救命士が輸液をして、どんどんと輸液をすることが本 当に有効であると、本当に言えるかどうか、そこは全く違う話であって、前提条件がまったく違うと ころで、それをやる、やらないと言っても、これは水かけ論的になってしまうだろうと思います。 ○島崎座長 先生は有害とは思ってはおられないのでしょう。 ○杉本構成員 私自身は有害の可能性は十分あると思っています。 ○島崎座長 そのデータは。 ○杉本構成員 それはもちろんないです。 ○島崎座長 それでは同じじゃないの。 ○杉本構成員 先生がおっしゃるのはよくわかります。ただ、1つは、少なくとも肝臓をクラッシュし た実験を教室員にアメリカでやらせました。要するに圧挫をしたままで出血をコントロールしないで 輸液をやった症例は死ぬことがわかっています。だから、そのような時はむしろ輸液をしないでやっ た方がいいだろうという結論が。 ○島崎座長 止血機能が働くというわけですね。 ○杉本構成員 そうです。そういうことがあるし体温が下がってしまうこともありますので、科学的 にはこれはどちらかとは言えないだろうと私は思いますから、あえて言っております。 ○総務省消防庁(溝口救急専門官) 1つには、災害時点において輸液ができるような形がいいのでは ないかという話は、究極的な平時ではないという話ではしばしばなされることです。ただし、平時で やはり慣れていないと、いきなり出来るという話ではないと。これもまた真実だと思います。  いま話で出ているポイントは、投与と輸液を積極的な治療としてイメージをしているか、あるいは ルート確保ということだけのイメージに留めているのかということで、話が大きく異なってくると思 います。先ほど前野先生からもありましたけれども、何で後ろ向きなんだと見られるかもしれません が、やはり重要な点は、メリットとデメリットがあることが非常に今回の議論で難しいことであって、 条件の設定をどうするかで、いまの杉本先生のお話を重々斟酌するのであれば、輸液の投与というの は、もっと条件設定を考えるべきだということになるでしょうし、確保までどうするのだという話と はまた分けて考えないといけないということと、その条件設定をきちんと見直していけるんだという 話が、やはりどこまで確保できるのかが、全体をとおしての重要なポイントではないかなと思います。 気管挿管のときは、持ち出すつもりはないですけれど、条件を一旦決めたら、もう二度と変えられな いという話ではなく、データが積み上がればフレキシブルに変えていく姿勢がこの報告書なり何なり に出てくれば、もう少し対応できるのではないかという印象がございます。 ○島崎座長 どうですか杉本先生。いまの話は輸液路確保をして、メディカルコントロール下で指導 する医師が、そこのところをプロトコールできっちり決めてやるようなことを考えてはどうかとおっ しゃっていると思います。 ○総務省消防庁(溝口救急専門官) この辺は本当に必要で、何でもかんでもメディカルコントロー ルでというように持って行きますと、例えば。 ○島崎座長 オンラインですよ。 ○総務省消防庁(溝口救急専門官) 例えば熱中症のときはどうなんだとか、では慢性腎不全の聴取 を聞き忘れたのではないかという、後は現実論とフィージビリティの話がありますので、そこは診断 ということを外して時間的な要素でやるかどうか、その辺の条件設定は更に議論が必要ではないかと いう印象があります。 ○郡山構成員 慢性腎不全でもルート確保するでしょう。間違っていればカリウムのないやつに変え ればいいだけです。 ○総務省消防庁(溝口救急専門官) だから、ここの中では「輸液の投与」という形になっています。 ○郡山構成員 ですから、そこのところをこんなふうに書き直したらいいんではないですかという意 見ならわかりますが、「輸液の投与」と書いてあるから、全体がそれで始まっているから駄目だとい うのでは、何も新しいことは出来ないのではないですか。 ○総務省消防庁(溝口救急専門官) ですから、条件設定が第一ではないですかという話です。それ だけですべては語れないと思います。 ○島崎座長 私はオンラインメディカルコントロールで、そこの杉本先生がおっしゃっていることも、 溝口さんが言っていることも、郡山先生が言っていることも、解決できると思います。 ○杉本構成員 静脈路を確保するということで、これをやろうとしているのですか、出血性ショック などで。そんなばかな。 ○島崎座長 出血性ショックに対しては、そういうことではないでしょう。 ○杉本構成員 そんな話のすり替えみたいなことはやってはいけないと思います。これは静脈路を確 保するのと。 ○島崎座長 そう言われればそうだけどね。 ○杉本構成員 これはあくまで、それは輸液をすると。おそらく乳酸加リンゲル液だろうと思います が、それをやるための輸液路を確保する。だって、他の薬剤を直接投与することはないわけですから。 そこのところは明確にして議論をしておいたほうがいいと思います。 ○島崎座長 わかりました。先生が偏におっしゃっているのは、出血性ショックに対する静脈路確保 と輸液の実施については反対だということでよろしいですか。 ○杉本構成員 私個人が反対したからってどうにもならないけど。 ○島崎座長 いやいや、先生個人が反対したら、ひょっとしたら、これはやめましょうという話にな るかもしれません。 ○杉本構成員 私としては、少なくともそれは説得性においてどうだろうかと。特に、これはどうし てそう認められたかというときに、明快にそれに答えられないなと思います。 ○島崎座長 とにかく他の病態に関しては、先生はよろしいですか。多発外傷や明らかな中等量以上 の出血。「多発外傷や」という「や」以下がなければよろしいですか、圧挫症候群などを含めて。そ れが、先ほど溝口さんが言ったような、いろんな広がっていくという問題があって、それは私は良し とはしませんけれど。 ○総務省消防庁(溝口救急専門官) 私は重度外傷のときは、もうロードアンドゴーの話なので、 JPTECの話なので、そもそもこの条件設定が良いと言って主張をしているわけではなくて、そもそもこ の条件をもうちょっと詰めなくてはいけないのではないかと。突っ込むとすると、中等量以上って何 が中等量以上なのという話から始まってきますので、実際の具体運用からするとですよ。本当に重度 外傷をいきなり運ばずに輸液で時間をかけていいのかという、そういう話ではないのですけれど。そ こは切り分けてやらなくてはいけないのではないかという気がします。 ○永池構成員 いまのご議論を伺っておりまして私も同じことを感じておりました。実施の条件(1)の ところを、更にもう少し詰めてご提示をいただくことは、次回の議論のときに可能でしょうか。 ○島崎座長 もちろん可能です。 ○永池構成員 では、今日ここでmayとした場合にやってよろしいというご意見を出すことは、少し後 日にしていただけたらと思います。 ○島崎座長 3番に関しては、適応を含めてもう少し詰めるということで、これはペンディングとさせ ていただきます。野口先生よろしいですか。 ○野口(宏)構成員 わかりました。 ○島崎座長 そうすると、いま杉本委員がおっしゃったようなデータが外国にでもあれば、ちょっと 検討していただくということと、有る無いにかかわらず、いま言ったような適応をもう少し検討して いただくと。杉本先生よろしいですか。 ○杉本構成員 もちろん結構です。ただ、特に救急救命士の処置拡大ということですから、それに直 接は関係ないのですが、今のも含めて、特に搬送距離の長い所では、どうしてもそういうことが必要 なことは十分に理解しているつもりです。それらに関してやはり、ドクターヘリなりをもっと導入し ていけるような形を同時にやっていく必要があるのではないかと思います、システム全体として。 ○島崎座長 それは教育も含めてですね。というような結論にさせていただきますが、具体的に条件 として、オンラインメディカルコントロールでやるということと、教育システム、先ほどからたびた び言っていますメディカルコントロールは地域による差が結構ありますので、それを充実させて、き っちりとできる所、実習医療機関も協力医療機関がちゃんとある所を含めて許可をするということで、 3番に関してはいま言ったように適応を少し検討していただきたい。そういうことで、3に関しまして はペンディングということでよろしいですか。 ○野口(宏)構成員 委員会の報告書としては、これでまとめてありますので、これを変えることは 私の一存では出来ません。これを踏まえて、この委員会として私一任として、責任ある答えができる かどうかはわかりませんが、いまの杉本先生のご意見を何とか尊重しながら、私なりに考えてみます が、あまり時間がございませんので、しっかりとしたここでの報告書ができるかどうか、少し心配に 思っていますが、努力はさせていただきます。 ○杉本構成員 私も、この報告書そのものに関しては、文言を訂正しようとか、そのようなつもりは まったくございません。読ませていただいて、これは非常に立派によくまとまった報告書だなと思っ た中の、あくまでも、この委員会としての疑問点という意味合いで言った話です。 ○島崎座長 いまの、特に3番目に関しては、委員長を含めて意見をおまかせいただくということでは 駄目ですか。杉本先生どうですか。 ○杉本構成員 委員長の責任でやられることに対して、私はとやかく言う立場ではないですので。 ○島崎座長 そういうことに、適応を含めて委員長におまかせいただくということではいかがでしょ うか。杉本先生よろしいですか。委員長に、適応を含めてもう一度検討して、おまかせいただくと。 問題があるなら問題あるで、もう一度開きます。 ○高宮指導課長補佐 事務局から今後のスケジュールなのですが、3月にこの検討会をもう一度開きま すので、その場で、今日の議論を踏まえた報告書の案というものを出します。そちらのほうでご議論 いただければと思います。事務局のほうで座長と相談しながら案を作りまして、また委員の皆様にも 事前にお配りして、ご意見をいただきながらまとめていきたいと思います。 ○島崎座長 3月の検討のときにそれを持ち越していけるのですか。 ○中野専門官 大丈夫だと思います。 ○島崎座長 ということで、3番に関しては、いまいろいろ意見が出たことをひっくるめて、ある程度 まとめた意見を出させていただき、それをもう一度検討すると。それまでに検討内容に関わるところ は委員の皆様方にご相談するというようにさせていただきます。本当に活発なご議論ありがとうござ いました。では事務局のほうから。 ○中野専門官 長時間にわたり活発なご議論ありがとうございました。3月にもう一度検討会を開催さ せていただきますので、その時にまたご議論いただければと思います。本日はどうもありがとうござ いました。 ○島崎座長 どうもありがとうございました。お疲れ様でした。座長として申し訳なく思っておりま す。ありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省医政局指導課 救急・周産期医療等対策室 救急医療専門官 中野 (代)03-5253-1111(内線2559)